| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
|---|
|
21 (1290) |
霊界物語 | 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 | 19 祓戸四柱 | 第一九章祓戸四柱〔二六九〕 日の神国を知食す神伊弉諾の大神は 撞の御柱大御神神伊弉冊の大神と 天と地との中空の黄金の橋に現はれて 天の瓊矛をさしおろし高皇産霊大御神 神皇産霊大神の神勅畏み泥海を 許袁呂許袁呂と掻き鳴して矛の先より滴れる 淤能碁呂島を胞衣となし神国を造り固めむと 二仁の妻に手を曳かれ黄金の橋を渡会の 天教山に下り立ちて木の花姫と語らひつ 常磐堅磐の松の世を千代万代に築かむと 月の世界を知食す神伊弉冊の大御神 日の神国の主宰なる撞の御神と諸共に 雪より清き玉柱見立て玉ひて目出度くも 月雪花の神祭り一度に開く木の花の 三十三相に身を変じ五十六億七千万 長き月日を松の世のミロクの御代を建てむとて まづ淡島を生み玉ひ伊予の二名や筑紫島 豊葦原の中津国雄島雌島や壱岐対馬 佐渡や淡路の島々に生みなしたまふ国魂や 山川木草の守り神各自各自に任け玉ひ 治まる御代を三柱の撞の御柱大御神 天の御柱大御神国の御柱大御神 この三柱の大神は国祖の神の宣り玉ふ 天に坐します御三柱実にも尊き有難き 古き神代の物語聞くぞ目出度き今日の春 百の草木に魁て匂ひ出でたる白梅の 雪より清き其の香り一度に開く常磐木の 常磐の松の茂りたる実にも尊き神の国 須弥仙山に腰をかけ守り玉ひし野立彦 野立の姫の二柱顕幽二界修理固成し 根底の国を固めむと天教山の噴火口 神の出口や入口と定めて茲に火の御国 岩より固き真心は猛火の中も何のその 火にも焼かれぬ水さへに溺れぬ身魂は鳴戸灘 根底の国に到りまし浮瀬に落ちて苦しめる 数多の身魂を救はむと無限地獄の苦しみを 我身一つに引き受けて三千年の昔より 耐へ耐へし溜め涙晴れて嬉しき神の世の その礎と現れませる神の出口の物語 鬼の来るてふ節分や四方の陽気も立つ春の 撒く煎豆に咲く花の来る時節ぞ尊けれ。 天地の大変動により、大地は南西に傾斜し、其のため大空の大気に変動を起し、数多の神人が、唯一の武器として使用したる天磐樟船、鳥船も、宇宙の震動のため何の効力もなさざりき。その時もつとも役立ちしは神示の方舟のみにして、金銀銅の三橋より垂下する救ひの綱と、琴平別が亀と化して、泥海を泳ぎ、正しき神人を高山に運びて救助したるのみなりける。 天上よりこの光景を眺めたる、大国治立命の左守神なる高皇産霊神、右守神なる神皇産霊神は、我が精霊たる撞の大御神、神伊弉諾の大神、神伊弉冊の大神に天の瓊矛を授け黄金橋なる天の浮橋に立たしめ玉ひて、海月の如く漂ひ騒ぐ滄溟を、潮許袁呂許袁呂に掻き鳴し玉ひ、日の大神の気吹によりて、宇宙に清鮮の息を起し、地上一切を乾燥し玉ひ、総ての汚穢塵埃を払ひ退けしめ玉ひぬ。この息よりなりませる神を伊吹戸主神と云ふ。 而して地上一面に泥に塗れたる草木の衣を脱がしめむため風を起し、風に雨を添へて清めたまひぬ。この水火より現はれたまへる神を速秋津比売神と云ふ。再び山々の間に河川を通じ、一切の汚物を神退ひに退ひ給ふ。この御息を瀬織津比売神と云ふ。瀬織津比売神は、地上の各地より大海原に、総ての汚れを持ち去り、之を地底の国に持佐須良比失ふ、この御息を速佐須良比売神と云ふ。以上四柱の神を祓戸神と称し、宇宙一切の新陳代謝の神界の大機関となしたまふ。この機関によつて、太陽、大地、太陰、列星、及び人類動植物に至るまで完全に呼吸し、且つ新陳代謝の機能全く完備して、各其の生活を完全ならしめ給へり。この神業を九山八海の火燃輝のアオウエイの、緒所(臍)の青木原に御禊祓ひたまふと云ふなり。 因に九山八海の火燃輝のアオウエイの御禊の神事については、言霊学上甚深微妙の意味あれども、これは後日閑を得て詳説する事となすべし。 (大正一一・一・二〇旧大正一〇・一二・二三加藤明子録) |
|
22 (1337) |
霊界物語 | 07_午_日の出神のアフリカ物語 | 12 熟々尽 | 第一二章熟々尽〔三一二〕 八『本当にだよ、たうとう腰抜かしよつたナ。併しながら俺が腰を抜かしたお蔭で、貴様たちは助かり、コシて安心して居れるのだよ。コシコシ云ふない、腰抜野郎奴』 鹿『シカし、健寅とか云ふドエライ目を剥いた宣伝使は何処へ逃げたのかイ、酋長さまは居らつしやらぬじやないか』 甲『只今ナ、天から日の大神様とか日の入の神様とかいふお方がヒヨツクリコと現れて三五教の宣伝歌を歌はれたのだ。さうするとウラル彦の乾児の健寅彦奴が、あの大きな目をサツパリ閉ぎよつて、デカイ頭を拘へて縮こまつて了つて、終ひには野鼠のやうに小鼠と一緒に山の奥へ逃げて行きよつたよ。そして酋長さま夫婦に日の暮とやらの神様が、ウラナギとかウラナミとかいふ名を下さつて酋長さま夫婦は喜ンで、この山へドンドンお出で遊ばしたのだワ』 鹿『何ツ!、ウラ那芸?ウラル彦の為にナギな目に会つたのでウラナギといふのかい』 甲『知らぬわい』 乙『知らぬなら言うてやらうか。ウラナギぢやない、ツラナギぢやぞ。その名の因縁はマア、ザツトこの方の申す通りだ。エヘン、ツラツラ惟みるにツライこの世にツライ目して蛸をツラれて聞きヅライ宣伝歌を聞かされて好いツラの皮ぢや。俺アもう首でもツラねばならぬかと思ふほどツラかつた。それをツライとも思はずにジツとして耐へて御座つて、酋長さまはツライナンギを辛抱し、外へ落す涙を内へ溢して素知らぬ顔して飲みたい酒も呑まず、鋭い刃を目の前へ突きつけられ、ツラを晒されても何のツラからうといふやうなツラ構へをしてござつたのぢや。それでツラナギの神、ツラナミの神さまだ。分つたか』 鹿『へー、ツラツラと大きな面をしよつて何劫託をツラねさらすのだい。そンな事を聞かされるのも良いツラの皮だ。ヤイ、そこいらにウラル彦の宣伝使が酒でも忘れて行きよりやせぬかなあ』 一同四辺を見まはして、 『おゝ彼処にも此処にも沢山徳利を置いとるわい。ロハの酒なら呑ンでやろかい』 甲『ヤイヤイ、おけおけ、それを呑む位なら俺達は、こンな辛い目はしやせぬのだよ』 乙『きまつた事だい。彼奴の前なり、酋長の前だから、気張つてゐたが、健寅彦の居らぬ後なら何ぼ飲ンだつて分らぬぢやないか。宣伝使の前で飲むのは剛腹だからなア』 丙『それでも神さまは見てござるぞ。おけおけ』 斯く言つて口々に喋てゐるところへ、現はれたのは酋長の妻面那美の神なりき。面那美の神は一同に向ひ、 『お前達は神様の教を守つてよく忍むでくれた。これからは妾が酋長となつて、お前たちを守つてやる。我が夫は今日より三五教の宣伝使となつて、世界の人民を助けにお廻り遊ばすのだよ。今までは此の小さい白雪郷だけ守つてゐたが、もはやそンな時期ではない。こンな郷位は妾一人で沢山だから、今日限りこの郷を御出立遊ばすのだから、お前たちもお暇乞ひにこの山奥まで出てくるがよい。ウラル彦の宣伝使のやうに酒ばかり飲むことは出来ぬが、今日は門出の祝だから、充分に酒も飲むがいい』 乙『それ見たか、今日は飲ンでもいいつて最前から俺が言つたじやらう。そこいらにウラル彦の宣伝使が残した酒がある。みんな飲ンでやらうかい』 一同は先を争うて、その徳利を拾い上げて飲みはじめたるを、面那美の神はこの光景を見て顔をしかめ、 『人間といふ奴は口卑しいものだなア。あゝこれでは夫の留守番もなかなか大抵ぢやなからう。兎も角何ごとも神様にお任せするより外に仕方がない』 と独り言を言ひながら小声になつて宣伝歌を歌ひ、もと来し道へ引返し行く。老若男女は片手に徳利を抱へながら、姫神の後に従つて山奥に進み入るに、少し平坦なる処に、日の出神は酋長と共に美しき女性の前に端坐しゐたり。この女性は前に述べたる祝姫の宣伝使なり。祝姫は健寅彦の数多の弟子共に取り囲まれ、酒と剣とを以てこの酋長のごとくに責められたりしが、少しも恐れず、諄々として、三五教の教理を説き諭しければ、一同は大いに怒りて祝姫を今や打殺さむとなす折しも、日の出神現はれ来りて大音声に宣伝歌を歌ひたる。その声に何れも縮み上り、コソコソと四方八方に姿を潜めし際なりける。 ここに日の出神、面那芸の神、祝姫の三柱は白雪山を下り、一たん白雪郷の酋長の家に一泊し、歓びを尽して宣伝に出発したりける。 (大正一一・一・三〇旧一・三桜井重雄録) (第八章~第一二章昭和一〇・二・二二於増田分院王仁校正) |
|
23 (1353) |
霊界物語 | 07_午_日の出神のアフリカ物語 | 28 不思議の窟 | 第二八章不思議の窟〔三二八〕 巌窟内の唸り声は刻々強烈となり、百千万の虎狼の一時に吼え猛るが如く、四辺の山々も木草も凡て一切のものを戦慄せしめたり。小島別は殆ど失神の状態にて、大地に仰向けに倒れたるまま、手足をビクビク慄はせ居たりける。日の出神は、 日の出神『オーイ、オーイ』 と合図をすれば、この声に応じて何処よりともなく祝姫の宣使と面那芸の宣使は現はれきたり、ここに三柱は小島別の倒れたる巌窟の前に立ち現はれ、日の出神は歌を歌ひ、面那芸の宣使は石と石とを両手に持ち拍子を取り、祝姫は日蔭葛を襷に掛け、常磐の松を左手に携へ右の手に白扇を広げ舞ひ始めたり。 祝姫の歌、 祝姫『天と地との火と水の呼吸を合せて国治立の 神の命の造らしし心筑紫の神の島 大海原を取囲み浦安国は豊の国 熊襲の国は神の園常磐堅磐に築立てし 天の岩戸は是なるか国治立の大神は 心の汚き八十神の曲神の企みの舌の根に 懸らせ玉ひて天津神日の大神の戒めを 受けさせ玉ひて根の国に退はれませど皇神は 何も岩戸の奥深く隠れ玉ひて世を忍び 天地四方の神人の身魂を永遠に守ります その勲功は千代八千代常磐の巌の弥堅く 穿ちの巌の弥深く忍ばせ玉ふこれの巌 忍ばせ玉ふこれの巌岩戸を開く久方の 天津日の出の神言を堅磐常磐に宣る神は 日の出神と祝姫面那芸彦の三柱ぞ 浮船伏せて雄々しくも踏み轟かす巌の前 神の小島の宣伝使建日の別と現はれて 天の三柱大神の任のまにまに上り来る されど心は常暗の未だ晴れやらぬ胸の闇 心の岩戸は締め切りて開かむよしも無きふしに 恵も深き国治立の神の命の分け魂 建日の別の大神は天の岩戸を開かむと 導きたまふ親心神の心を不知火の 小島の別の宣伝使千々の神言蒙りて 心に懸る千万の雲霧払ひ晴れ渡る 御空に清く茜さす日の大神の御恵みに 常世の暗も晴れぬべし赦させ玉へ建日別 熊襲の国の守り神人の心も清々と 誠の道に服従ひて心安らけく純世姫の 神の命の御魂をばこれの巌窟に三柱 千木高知りて斎かひつ天津祝詞の太祝詞 宣るも尊き巌の前日の出神の言霊を 建日の別も諾なひて御心和め玉へかし』 と涼しき声を張上げ調子よく歌ひながら、汗を流し帰神して舞ひ狂ひける。面那芸神は石と石とを打ち合せて面白く拍子をとりしが、さしも猛烈なりし巌窟の大音響は夢のごとくに止まりにける。小島別はムツクと立上がり細き目を開きながら三柱の神を眺めて驚き、夢か現か幻か、合点の行かぬこの場の光景と、自ら頬を抓めり指を噛み、 小島別『アヽ矢張り夢では無かつたかナア』 日の出神は、 日の出神『オー貴下は小島別の宣伝使、最前よりの貴下の様子、如何にも怪しく何事ならむと、木蔭に佇み聞きをれば此巌窟の唸り声、如何なせしやその顛末を詳細に語られよ』 と尋ねられ、小島別は三柱の宣伝使に黙礼しながら、 小島別『イヤモウ、大変でしたよ。私は神界に仕へてより、何一つ功名もいたさず、智慧暗き身の悲しさ、大慈大悲の大神の御心を誤解し普く天下を宣伝して、やうやうこの亜弗利加の嶋に参りましたのは一月以前のことであります。国人の話に依れば、此処には立派な巌窟ありて、時々唸りを立てるといふ事。私も一つ修業の為と思ひ、嶮しき山坂を越へ谷を渡りて、漸くこの巌窟に辿り着きし間もなく、色々の国人がこれこの通り参拝いたして、頻りに何事か祈つてをる。耳を澄して聞けば、常世神王の教を奉ずる人間計り、これでは成らぬと背水の陣を張りて、命を的に三五教の宣伝歌を歌ひ始めました。数多の人々は私の宣伝歌を非常に嫌つて四方八方より迫害せむとする。なに、吾々は天地の教を説く神の使の宣伝使だ。たとへ火の中水の底も、潜りて助けるは吾々の天職と、有らゆる勇気を出して漸く彼らを改心させ、ホツト一息吐く間もなく此巌窟の奥の方より異様の姿朦朧と現はれ、「アハヽヽハー、オホヽヽホー」と嘲弄はれ、あらむかぎりの吾々の弱点を並べ立てられ、イヤハヤモウ埒もなくきつく油を搾られました。吾々は未だ身魂が磨けて居りませぬ。いよいよ一つ決心をして、今までの取違を改めねばなりませぬ』 と大略を物語りける。日の出神は厳然として宣るやう、 日の出神『ここは尊き神様の御隠家、建日別とは仮りの御神名、やがて御本名を名乗り玉ふ時も来たるべし。貴下は此処へ永らく鎮まりて、この巌窟の前に宮を建て、純世姫命の御魂を祭り、熊襲の国の人民を守つて下さい、吾々はこの山を越えて肥の国に行かねばなりませぬから』 これを聞くより小島別は、 小島別『如何なる神の御引合せか、思ひ掛なき尊き日の出神様に御目に掛り、こンな嬉しきことはありませぬ。仰せに従ひ大神様の岩戸の神の御名を戴き、これより建日別と改め永遠に守護をいたします。どうぞ御安心下さいませ』 と答へける。日の出神は満足の色を現はし、この場を後に三柱の宣伝使を伴ひ、又もや宣伝歌を歌ひながら、この谷間をドンドン登り行く。 (大正一一・二・一旧一・五高木鉄男録) |
|
24 (1420) |
霊界物語 | 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 | 40 言霊解二 | 第四〇章言霊解二〔三九〇〕 『殺されましし迦具土神の御頭に、成りませる神の御名は、正鹿山津見神、次に御胸に成りませる神の御名は淤縢山津見神、次に御腹に成りませる神の御名は奥山津見神、次に御陰に成りませる神の御名は、闇山津見神、次に左の御手に成りませる神の御名は志芸山津見神、次に右の御手に成りませる神の御名は、羽山津見神、次に左の御足に成りませる神の御名は、原山津見神、右の御足に成りませる神の御名は戸山津見神』 殺された火の神の頭に成りませる神はよい神ではない。即ち正鹿山津見神は強く尊い位置にある悪い神といふ意味であります。ヤといふ事は、言霊上、ア行は天の声、ヤ行は人の声、ワ行は地の声、即ちヤは人の声、世界一般人種の衆口愚論でマツミは魔積みでありますから、ヤマツミといふ事は言論界に悪魔が住むといふ意味で、これが正鹿山津見神の起ることになります。頭に成りませるとは、即ち上の方はいらぬと云うて、今日のデモクラシーの如く、人類は平等に天の恵を享くるといふ説で、階級撤廃なぞといふ思想が起るといふ事であります。 次に『御胸に成りませる神の御名、淤縢山津見神』の胸といふのは、人間の身体にたとふれば、心臓や肺臓や乳の辺で、政治家でいへば、大臣とか、親任官とか、勅任官などが胸であります。即ち是等の人々の思想が書いてあるのであります。下から種々な思想上の戦争が起つて、それに胸を痛めて、おどおどして居るから軍隊や、警察の力で圧迫脅威するといふ意味になります。 次に『御腹に成りませる神の名、奥山津見神』といふのは、国民の中堅即ち中流社会といふことで、人体にたとふれば臍に当るのであります。 オは心、クは組むとか、苦むとかいふ事で、中流階級は中央に立つて、何うしたらよからうかと云うて、苦んで居るのであります。即ち保守主義でも行かず、新しい主義でも行かず、その中を採つて、うまくやりたいといふ言霊上の意味になるのであります。 次に『御陰に成りませる神の名、闇山津見神』といふのは、ほとは農業に従事する民で、人体にたとふれば陰部に当りまして、子を産み出す所であります。即ち農家といふことになります。この百姓は現在如何なる思想があつて、その意味が何であるかわからず、指導者に依つて如何でもなることを意味して居るのであります。全く時の勢に依つて何方にもつく無定見な思想が闇山津見神といふことになります。 次に『左の御手に成りませる神の名、志芸山津見神』の、この左の手といふことは上の方の手といふことで、即ち政治家で、右の手は実業のことになります。総て政治家は神の左手の役、実業家は右の手の役で、右の手で仕事をして、左の手で治めることになるのであります。志芸山津見神のシは水で、ギは神と国と重なりたる意味であります。さうすると政治家は精神文明に気がつかずに、精神教育よりも、物質の方に重きを置くといふ意味になります。今日は到る所に排日思想が起つて居りますが、この思想の問題は思想で抑へつけなければならぬのに、貿易の上にも圧迫を受け、軍備も彼方はよく整へて居るとなりますと、此方にも日本なれば八々艦隊を造つたり、陸軍を増たりして、国を護らうとして居る考への盛んな時のことを志芸山津見神といふのであります。 次に『右の御手に成りませる神の御名、羽山津見神』といふのは、下々の百姓や労働者、実業家を指したものであります。即ち戦争が起れば人気が悪くなるかも知れぬが米が高くなつたり、物価が騰つたりするから、米を貯へて置いて儲けてやらうとか、又沢山品物を仕入れて置いて一儲けしようとか、如何したら金が儲かるかと云ふことばかりを考へて居る。実に下の人民の真心が、乱れた利己主義といふことになります。 ハは開くといふことでありますがハヤマツミと続きますと、何か変動が起れば儲けたいと云つて考へこむ意味で、即ち大火事があれば材木が騰るから、今の中に之を仕入れてやらうとか、饑饉が来て百穀実らず、不作であつたら今の間に米を沢山買込んでおいて一儲けしようとか、実に不都合な利己主義にかぶれて、何事か変動を待つて居る魂を、羽山津見神といふのであります。 次に『左の御足に成りませる神の名、原山津見神、右の御足に成りませる神の名、戸山津見神』といふのは、この足は海外へ発展する考へを持つ人の事で、海外へ行くなら外国の思想を研究して来てやらう、外国は真の文明国だ、わが国は未開国だ。向方の国と親善をして談笑の裡に、国際間の紛擾を都合よく解決をつけたいといふ、即ち西洋文明に憧憬て居る、総ての学者の説が、左の足の原山津見神であります。 トヤといふのは外に開くといふことで、この戸山津見神は、移民とか、出稼とかいふ事で、外国に移民を送るとか、外国は外国で移民排斥とか、種々の大問題が勃発する事で、丁度今日の世の中によく似て居るのであります。この移民といふことは、神代では何ういふ事を示されたものか判りませぬが、斯ういふ風に言霊的予言が示されて居るのであります。即ち吾が同胞が遠国の空で、排日のために悔し残念を耐へて、言ふに言はれぬ苦労をして居るのに国民が冷淡であるとか、政府は何をして居るかというて、反対やら、不平やらを持出す、其の状態を戸山津見神といふのであります。 『是に其妹伊弉冊命を相見まく欲して、黄泉国に追往でましき。爾ち殿騰戸より出向へます時に、伊弉諾命語詔ひたまはく、愛くしき我那邇妹命、吾汝と作れりし国未だ作り竟へずあれば、還りまさねとのりたまひき、爾に伊弉冊命の答曰したまはく、悔しきかも、速く来まさずて吾は黄泉戸喫しつ。然れども愛くしき、我那勢命入来ませる事恐ければ還りなむを。且く黄泉神と相論はむ。我をな視たまひそ。如此白して其殿内に還り入りませる間甚久しくて待ちかねたまひき。故、左の御美髪に刺させる湯津津間櫛の男柱一箇取闕きて、一火燭して入見ます時に、蛆集り蘯きて、御頭には大雷居り、御胸には火雷居り、御腹には黒雷居り、御陰には拆雷居り、左の御手には若雷居り、右の御手には土雷居り、左の御足には鳴雷居り、右の御足には伏雷居り併せて八の雷神成り居りき』 この御言葉は地球上の霊魂なる大国魂の守護が悪いから、斯うなつたのであり、火の文明即ち物質文明の惨毒の為に斯の如く世界が殆ど滅亡に瀕したのであります。 伊弉諾命は霊で、伊弉冊命は体であります。この世の中は霊ばかりでもいけない、即ち霊肉一致でなければならぬのであります。我日本は霊主体従の教を以て、世界の国魂を生かし、世界万民を安育させて行かねばならぬ国であります。世界を道義的に精神文明の徳沢を以て、全地球一切を愛撫すると曰ふ至仁至愛の大御心から、日の大神が地球を完成し玉ふ為に、伊弉冊命に会見を申込み、遥々と御降りになつた事であります。 『其の妹伊弉冊命を相見まく欲して黄泉国に追往でましき』といふ、この黄泉国は死後のことをいうたのでなくして、今日の全世界の状態が黄泉国であります。そこで天から、本当の神様が下つて来て岩戸の騰戸をば少し開いて見られたのであります。さうすると世界各国、戸が閉つてゐる。この戸といふことは閥の事でありまして、門閥だとか、政党閥だとか、資本閥だとか、学閥だとか、宗教閥などいふものが戸であります。 その戸を開けて、伊弉諾命が曰れますには、『我が愛くしき』と云ふ事は、要するに地球の国魂も世界一般の人民も、森羅万象一切のものを皆愛し玉ひての御言葉であります。すなはち霊系と体系と相俟つて、美はしい世界を作らむとしたが、火の神所謂火力文明のために、世界は黄泉国と化つたのである。それで今一度元に還れと曰はれたのであります。この太元に還れといふことは、神の教に従つて神が改心し、国魂が改心し、人民が改心して、上下一致し以て完全なる国を作らむとの意味であります。即ち地球上の悪の守護神に、改心してくれといふことになります。 そこで伊弉冊命は答て曰るるには、『悔しきかも速く来まさずして、吾は黄泉戸喫しつ』とあります。これは残念なことを致しました。吾は黄泉戸喫した。モウ少し早く御注意下さらば、茲まで地球上の一切は腐敗せなかつたで在らうに、今日となつては実に曇り切り、濁り切り、腐り切りた世の中で手のつけやうもない。往きも戻りも、上げも下しも、二進も三進も行かぬ状態であるといふ意味であります。 即ち神も、吾も、人も、共に皆汚されて居ることでありますから、天から誠の神が御出下さいまして、地球が破滅せむとするのを直してやらう、完全なる天国を建設してやらう、と曰れますのは、誠に恐れ多い、尊い、忝ない神の御言葉でありますから、私は国魂即ち世界一般の神人が改心すれば、と曰ふ事を『還りなむ』と申すのである。しかし一寸黄泉神と相談して見ますから、それまで御待ちを願ひますと答へられたのであります。この黄泉神といふのは、現代の暗黒世界を支配して居る各体主霊従国の主権者や大統領といふことでありまして、相論うといふことは、一応この事を相談して見ませう、多勢に理を説いて聞かせて、その意見を聴いて見ませうといふ事であります。 次に『甚久しく待ちかねたまひき』といふのは、この議論が一寸や、そつとの間に纏まらずに、やれ物質主義がよいとか、金銀為本がよいとか、天産自給だとか、いろいろの議論があつて、二年や三年で尽き果てぬのであります。神様は今ぢや早ぢやというて早く改心せよと、明治二十五年から言ひ続けに言はれて御急ぎになつて居るが、黄泉神の議論は中々纏まらぬといふ如うな意味であります。 (大正九・一一・一於五六七殿講演外山豊二録) (大正一一・二・一〇旧一・一四谷村真友再録) |
|
25 (1422) |
霊界物語 | 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 | 42 言霊解四 | 第四二章言霊解四〔三九二〕 『其妹伊弉冊命吾に辱見せたまひつと言したまひて、即ち黄泉醜女を遣はして追はしめき』と云ふ事は、以上の如くに乱れ果てたる醜状を、神の光なる一つ火に照らされ、面の皮を曳剥られて侮辱されたと言つて、大本であれば心に当る醜悪なる教信徒が一生懸命に大本や教主に反抗すると云ふことであり、世界で言へば、益々立腹して大本を圧迫し、窮地に陥れむとする人物の出現すると云ふ事で在るから、誠の教を開くと云ふ事は、随分六ケ敷事業であります。今日のやうな無明闇黒の社会に容れられる様な教なら別に苦労艱難は要らぬ、四方八方から持て囃されるで在らうが、その様な教なら現代を覚醒し、人心を改造する事は出来ない。国家を泰山の安きに置き奉らむとするの志士仁人は凡ての迫害と戦ひ、総ての悪魔に打ち克ち、身を以て天下に当るの勇猛心を要するのであります。黄泉醜女は決して悪い魔女の事では無い。今日の人間は上下共に男も女も、八九分通りまで醜女であります。何処にも一点の男子らしき、勇壮なる果断なる意気を認むる事は出来ぬ。斯ういふやうな黄泉醜女らが、大本の一つ火の明光に照されて、夏の虫の如くに消しに来ては却つて自分が大怪我をするのであります。今日の大本は四方八方から攻め立てられ、人民を保護す可き職に在る人々までが、時には逆様に攻撃妨害を加へむとして居るのであります。是が大本を四方突醜目で見てをると云ふのであります。 然し至誠思国の吾々大本人は、所在総ての圧迫と、妨害に打ち克つ為に、一つの力を貯へねば成らぬ如く、世界に対しても我国は、充分の準備を整へねばならぬ。即ち神典に所謂黒御鬘を投げ打つて掛らねば成らぬのであります。 『爾伊弉諾命黒御鬘を取りて投げ棄て玉ひしかば、乃ち蒲子生りき』 之を今日の大本に譬へると、幽玄美はしき神の御教を、天下に宣伝する事を『投げ棄て玉ひき』といふのであります。『蒲子生りき』と云ふ事は、美はしき誠の新信者が出来たと云ふ事であります。黄泉神醜女は、また之に向つて一人々々に種々の圧迫妨害を加へると云ふ事が、『是を拾ひ食む』と云ふのであります。何れの教子にも悉く四方突軍が御蔭を堕さしに廻つて居る。その間に又一つの戦闘準備に着手する事を『逃げ出でますを』と云ふのであります。 『猶追ひしかば、亦其の右の御角髪に刺せる、湯津津間櫛を引闕て、投げ棄てたまひしかば乃ち笋生りき』 蒲子とも言ふべき信仰の若い信者を、片端から追詰め引落しにかけ乍ら、なほもそれに飽き足らずして、大々的妨害を加へむとの乱暴には、神も終に堪忍袋の緒が断れたので、右の御角髪にまかせる湯津津間櫛を引闕て、乃ち神界の一輪咲いた梅の花の経綸を表顕して、所在四方突醜女に向つて宣伝した所が、終に箏と云ふ、上流貴紳[※身分の高い人という意]の了解を得、至誠天に通じて、いよいよ大本の使命の純忠純良なる事を、天下に知らるるやうに成るのを箏生りきと云ふのであります。是は全地球上の出来事に対する御神書であれども、総ての信徒に了解の出来易いやうに、現今の大本と将来の大本の使命を引用して、説明を下したのであります。 『是を抜き食む間に逃行でましき』 又々邪神の頭株が、大本の折角の経綸を破壊せむと、百方苦心しつつ在る内に、いよいよ神国の危急を救ふ可き、諸々の準備を整へ、何時にても身命を国家に捧げ奉つて、君国を守るべき用意を整へて行くと云ふ事が、『是を抜き食む間に逃行でましき』と云ふ意義であります。 『旦後には其の八種の雷神に千五百の黄泉軍を副へて追はしめき』 之を大本に譬へて見ると、八種の雷(前に詳述)に加ふるに社会主義者または仏教家、基督教徒などの、数限りなき露骨なる運動を起して、力限り攻撃の矢を向け来る事であります。之を世界に対照する時は、前述の八種の悪魔の潜在する上に、千五百軍即ち或る国から、日本の霊主体従なる神国を攻めて来ると云ふ事になるのであります。黄泉軍と云ふことは、占領とか、侵略とか、利権獲得とか、良からぬ目的の為に戦ひを開く国の賊軍隊の謂ひであります。 『爾御佩せる十拳剣を抜きて、後手に揮きつつ逃げ来ませるを』 霊主体従の神軍は戦備を整へながら即ち十拳剣を抜きながら、充分に隠忍し敢て戦はず、なるべく世界人類平和の為め、治国安民の為に言向平和さむとする意味を指して『後手に揮きつつ逃げ来ませる』と云ふのであります。 『其の坂本なる桃の子を三個取りて待撃ちたまひしかば悉く逃げ帰りき』 ヒラサカのヒの言霊は明徹也、尊厳也、顕幽皆貫徹する也、照智也、光明遍照十方世界也、日の朝也、大慈大悲五六七の神徳也。ラの言霊は、高皇産霊神也、霊系の大本也、無量寿の大基也、本末一貫也。 サの言霊は⦿に事ある也、栄ゆ也、水の音也、水の精也。 カの言霊は、蒙せ覆ふ也、光り輝く也、懸け出し助くる也。 以上ヒラサカ四言霊の活用を約むる時は、尊厳無比にして六合を照し、世界を統一し以て仁慈を施し、霊系の大本神たる日の大神の本末一貫の徳と、万世一系の皇徳を備へ、⦿に変ある時は、水の精なる月光世に出で、皇国の栄えを守り、隠忍したる公憤を発して、駆け出し向ひ戦ひ、神威皇徳を世界に輝かすてふ、神軍の謂ひであります。 又坂本は神国の栄え行く大元といふ事であります。大本といふも坂本の意義である。桃は百の意義で、諸々の武士といふ事であります。霊主体従日本魂の種子が乃ち桃の実であります。『三箇取りて待ち討ちたまひし』とは日本男子の桃太郎が、智仁勇に譬へたる、猿犬雉を以て、戦ふと云ふ事であります。猿は智に配し、雉は仁に配し、犬は勇に配するのであります。亦三ツと云ふ事は、変性女子なる三女神の瑞霊の御魂であります。そこで三ツの御魂即ち十拳剣の精なる神の教に依て悠然として、待ち討ちたまうた時に、黄泉軍は悉く敗軍遁走して了つたと云ふ意義であります。 『爾に伊弉諾命桃子に告り曰はく。汝吾を助けし如、葦原の中つ国に、有らゆる現在人民の苦瀬に落ちて苦患む時に、助けてよと告りたまひて、意富加牟豆美命といふ名を賜ひき』 茲に於て日の大神様から、聖なる至誠の団体や、三つの御魂に向つて、能く忠誠を尽し、国難を救うて呉れたと、御賞めになり、なほ重ねて世界人民が戦争の為に、塗炭の苦みを受けるやうな事が、今後において万一にも出来したら、今度のやうに至誠報国の大活躍をして、天下の万民を救うて遣つて呉れよ。汝にはその代りに意富加牟豆美命と名を賜うと仰せになつたのであります。このオホカムツミの言霊を奉釈すると次の如くであります。 オの言霊は、霊治大道の意である。 ホの言霊は、透逸卓出の意である。 カの言霊は、神霊活気凛々の意である。 ムの言霊は、組織親睦国家の意である。 ツの言霊は、永遠無窮に連続の意である。 ミの言霊は、瑞の身魂善美の意である。 之を一言に約むる時は、霊徳発揚神威活躍平和統一高照祥光瑞霊神剣発動の神と言ふ事であります。即ち惟神の大道を天下に宣伝する至誠至忠の聖団にして、忠良なる柱石神なりとの御賞詞であります。アヽ現代の世態に対し、神の大命を奉じて日本神国のために身心を捧げ、麻柱の大道を実行する大神津見命は、今何処に活躍するぞ。天下の濁流を清め妖雲を一掃し、災禍を滅し、世界万有を安息せしむる神人は、今や何処に出現せむとする乎。実に現代は黄泉比良坂の、善悪正邪治乱興廃の別るる大峠の上り口であります。 (大正九・一一・一於五六七殿外山豊二録) (大正一一・二・一一旧一・一五谷村真友再録) |
|
26 (1423) |
霊界物語 | 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 | 43 言霊解五 | 第四三章言霊解五〔三九三〕 『最後に其妹伊弉冊命、身自ら追来ましき』 今迄は、千五百の黄泉軍を以て攻撃に向つて来たのが、最後には世界全体が一致して日の神の御国へ攻め寄せて来たと云ふ事は、伊弉冊命身自ら追ひ来ましきといふ意義であります。是が最后の世界の大峠であります。すなはち神軍と魔軍との勝敗を決する、天下興亡の一大分水嶺であります。 『爾ち千引岩を、其の黄泉比良坂に引塞へて、一日に千頭絞り殺さむと申したまひき』 千引岩とは、非常に重量の在る千万人の力を以てせざれば、微躯とも動かぬ岩といふ意義であります。千引岩は血日国金剛数多といふ意義で、君国を思ふ赤誠の血の流れたる大金剛力の勇士の群隊と云ふことであつて、国家の干城たる忠勇無比の軍人のことであります。また国家鎮護の神霊の御威徳も、国防軍も皆千引岩であつて、侵入し来る魔軍を撃退し又は防止する兵力の意義であります。 『中に置き事戸を渡す』と云ふ事は、霊主体従の国家国民と、体主霊従の国家国民とは、到底融合親睦の望みは立たぬ。堂しても天賦的に、国魂が異つて居るから、神国の行り方、異国(黄泉国)はその国魂相応の行り方で、霊主体従国と体主霊従国とを立別ると云ふ神勅が事戸を渡すと云ふ事であります。 善一筋の政治や神軍の兵法は、体主霊従国の軍法とは根本的に相違して居るから、一切を茲に立別て、霊主体従国は霊主体従国の世の持方、体主霊従は体主霊従の世の治め方と、区別を付けられた事であります。要するに神国の土地へは、黄泉軍の不良分子は立入るべからずとの御神勅であります。人皇第十代崇神天皇様が、皇運発展の時機を待たせ玉ふ御神慮より、光を和げ塵に同はりて、海外の文物を我国に輸入せしめ玉ひし如く、何時までも和光同塵の制度を、墨守する事が出来ないので、断然として、事戸を渡さねば成らぬ現代に立到つた如き有様であります。事は言辞論説の意味で、戸は閉塞するの用であります。要するに日本は皇祖大神の御聖訓を以て、治国安民の要道と決定され、一切体主霊従国の不相応なる言論を輸入されないと云ふ意義が、乃ち事戸を渡し給うと云ふ事であり、之を夫婦の間に譬へますと離縁状を渡して、一切の関係を断つと云ふ事であります。何時までも和光同塵的方針を採るのは我々の今日の処世上に於ても一考せなくては成らぬ。悪思想や貧乏神には、一日も早く絶縁するが、家の為めにも一身上の為にも得策であります。今日の我国家も、一日も早く目覚めて我国土に不相応なる思想や、論説や哲学宗教なぞと絶縁して、所謂事戸を立て渡し度いもので在ります。 『伊弉冊命宣りたまはく愛くしき我那勢命如此為たまはば汝の国の人草、一日に千頭絞り殺さむとまをしたまひき』 黄泉大神の宣言には、我々の愛慕して止まない、神国兄の国の神宣示を以て、斯の如く黄泉国の宗教学説を排斥さるるならば、此方にも一つ考へがある。汝の国の人民の、上に立つて居る所の頭役人どもを黄泉軍の術策を以て、一日に千人即ち只一挙にして、上の方の役人どもを馘つて了つてやる、即ち免職をさせて見せようと云ふ事である。 惟神の大道即ち皇祖の御遺訓に依つて思想界を統一せむとする守護神があれば、直に時代に遅れた骨董品格にして、役人の頭に採用せないのみならず、直に首を馘られて了ふから、伊弉諾命即ち日本固有の大道を、宣伝実行する事を、避けむとする利己主義のみが発達するのであります。 是皆黄泉軍、体主霊従魂の頤使に甘んずる腐腸漢計りに成つて居る現代であります。我々は伊弉諾命の神教、即ち天神天祖の聖訓を天下に宣伝し実行せむとするに当つて、黄泉の軍の体主霊従国魂の守護神から圧迫され、日々千人即ち赤誠の信者を、大本より離れさせむとして、黄泉神の手先が、百方邪魔をひろぐのも同じ意味であります。 たとへ日本の神の教が結構と知り、又大本の出現が、現代を救ふには大必要である事を、充分了解し乍ら世間を憚り且つ又、旧思想家と云はれ、終には現今の位置より馘られ、社会的に殺され葬られて了ふ事を恐れて世間並に至誠貫天的の、社会奉仕の大本を悪評し、かつ圧迫するを以て、安全の策と心得て居る守護神許りで表面上大本の信者たる事を標榜するが最後、直に其の赤誠人は軍人と言はず、教育家と言はず会社員と言はず、馘られ職を免ぜられると云ふ事が『一日に千人絞り殺さむとまをしたまひき』と云ふ事になるので在ります。 『爾に伊弉諾命詔り玉はく、愛くしき我那邇妹命、汝然為たまはば吾はや、一日に千五百産屋立ててむと詔りたまひき。是を以て一日に必ず千人死に一日に必ず千五百人なも生るる』 茲に伊弉諾命は、我愛する那邇妹命よ、思想問題を以て日の御国を混乱せしめ猶ほ亦、今一致して武力を以て、我国を攻め給ふならば、我にも亦大決心がある。吾は惟神の大道を発揮して、以て一日に千五百の産屋を立てて見ませうと仰せられた。御神諭にある産の精神の人民、生れ赤子の心の人民を養成する霊地を、産屋と云ふのであります。 チは血なり赤誠也、霊主体従の意也、父の徳也、乳也、塩也。 イ[※ヤ行イ]は結び溜る也、身を定めて不動也。 ホは、上に顕はる也、太陽の明分也、照込也、天の心也。 ウ[※ア行ウ]は結び合ふ也、真実金剛力也、親の働き也。 ブは茂り栄ふ也、世の結び所也、父母を思ひ合ふ也。 ヤは固有の大父也、天に帰る也、経綸の形也。 以上のチイホウブヤの六言霊を納むる時は、神の血筋因縁の身魂が集り合ひて、赤誠の実行を修め、霊主体従の本領を発揮し、天の父たり、地の母たるの位を保ちて、仁恵の乳を万民に含ませ、大海の塩の如く、総ての汚れを浄め、総ての物に美はしき味を与へ腐敗を防ぎ、有為の人材一団と成りて、我身の方向進路を安定し、以て邪説貪欲に心を動かさず、俗界の上に超然として顕はれ、大神の大御心を宇内に照り込ませ、太陽の明分即ち日の神国の天職を明かに教へ覚し、至真至実の大金剛力を蓄へ、世界の親たるの活動を為し、上下の階級一つの真道に由りて結合し、日々に結びの力を加へ、終には世界を統一結合し、父母として万民慕ひ集まり固有の大父なる国祖大国常立神の御稜威を仰ぎ、天賦の霊性に帰りて世界を経綸し以て、三千世界を開発し、救済する聖場の意義であります。要するに、地の高天原なる綾部の大本の、神示の経綸は、乃ち千五百産屋に相当するのであります。大本の御神諭には『綾部は三千世界の世の立替立直しの地場であるから、日の大神様の御命令によりて、世界の人民を天の大神の誠一とつで此の世を治める結構な地の高天原であるぞよ』と示されてあるも、所謂千五百産屋の意義にして、生れ赤子の純良なる身魂を産み育て玉ふ神界の大経綸の中府であります。故に何程黄泉大神の精神より出でたる、過激的思想も侵略的の体主霊従国軍も、綾部に千五百産屋の儼存する限りは、如何ともする事が出来ないのであります。亦之を文章の侭に解する時は、一日に千人死して千五百人生れ出づる時は、結局人口は年を追うて増進する故に、之を天の益人と謂ふのであります。天の益人は天下国家の為に利益を計る、至誠の人の意味にも成るのであります。我大本の誠の信徒は、皆一同に天の益人とならねば成らぬ。亦日本全体を通じて天の益人たるの行動をとつて、国家を開発進展せしめ、黄泉国なる国々に其の範を垂れ示さねば、神国の神民たる天職を尽す事は出来ぬのであります。今日社会主義や過激派にかぶれた、不良国民が黄泉軍の眷属となり、大官連中に不穏なる脅迫状を送つたり、大本の幹部連中に向つて、同様の脅迫状が舞ひ込んで来るのも、千人を殺さむと白したまひきの意味であります。米国加州の排日案が通過したのも、西伯利亜満洲支那朝鮮の排日行動も、排貨運動の実現も、各地の小吏が大本に極力反対し、且つ我行動を妨害しつつあるのも、皆黄泉軍の一日に千人くびらむ、と白し玉ひきの実現であります。 太陽面に、地球の七八倍もある円形にして巨大なる黒点が出現し、約七万哩の直径を有し、吾人の肉眼を以て明視し得る如くに成つて居るのも、日の若宮に坐す伊弉諾命を、黄泉軍の犯しつつある表徴であります。亦この黒点が現はれると、其の年及び前後数年間は、従来の記録に依つて調べて見ると、第一気候が不順で、悪病天下に蔓延し、饑饉旱魃等は大抵その時に現はれ、人心の騒擾極点に達する時であります。天明の大饑饉も、太陽の黒点と時を同じうして現はれて居る。今日此頃の天候の不順も亦この黒点の影響である。況んや今度の如き、開闢以来未曾有の大黒点に於ておやであります。アヽ一天一日の太陽の黒点、果して何を意味するものぞ。伊弉諾命の持たせ玉へる一ツ火の光も、半ば消滅せむとするには非ざるか、我等は一日も早く千五百産屋は愚、八千五百産屋万産屋を建て、以て君国の為めに大活動を開始せざるべからざるを切に感ぜざるを得ないのであります。 『故其伊弉冊命を、黄泉津大神と謂す。亦其の追及しに由りて、道敷大神と称すとも云へり』 チシキの大神の言霊を解すれば、 チは血也、数の児を保つ也、外に乱れ散る也。 シは却て弛み撒る也、世の現在也。 キは打返す也、打ち砕く也。 之を一言に約する時は、数多の児即ち千五百軍を部下に有し、血脈を保ち外に向つて乱を興し終に自ら散乱し現在の世の一切を弛廃せしめ、以て正道を打返して、邪道に化し、至仁至愛の惟神の、生成化育の道を打砕く、大神と云ふ事であります。現代は国の内外を問はず、洋の東西を論ぜず道敷の大神の最も活動を続行し玉ふ時であります。 『亦其の黄泉の坂に塞れりし石は道反大神とも号し塞坐黄泉戸大神とも謂す』 チカヘシの大神はウチカヘシの大神と云ふ事で在り、又邪道を塞ぎて邪道を通過せしめずと云ふ意義であります。古来町の入口や出口には、塞の神と謂うて巨大なる石が祭つて在つたもので在ります。是も邪悪を町村内に侵入させぬ為の目的であります。吾人の家屋を建つるにしても、礎石を用ゐ、又その周囲に石を積み、又は延べ石を廻らすも、皆悪鬼邪神の侵入を防止するの意義より、起元したもので在ります。今日の思想界にも此の大石が沢山に欲しいものであります。 『故其の所謂黄泉津比良坂は、今出雲国の伊賦夜坂とも謂ふ』 伊賦夜坂の言霊を解すれば、 イ[※ア行イ]は強く思ひ合ふ也、同じく平等也、乱れ動く也、破れ動く也。 フは進み行く也、至極鋭敏也、忽ち昇り忽ち降る也、吹き出す也。 ヤは外を覆ふ也、固有の大父也、焼く也、失也[※「失」は「矢」の誤字の可能性がある。「言霊の大要」(『神霊界』大正7年3月1日号p20)では「矢」でフリガナが無いが、大石凝眞素美の『大日本言霊』では「矢」に「ヤ」とフリガナが付いている。黄泉比良坂の古事記言霊解は大正9年11月1日に綾部の五六七殿で講演した講演録であり、3つの文献に掲載されている。『神の国』大正9年12月1日号(皇典と現代2)p24では「失(うしなふ)」、『霊界物語』第8巻第43章「言霊解五」(大正11年2月9日再録、昭和10年3月4日校正)では「失(しつ)」、『出口王仁三郎全集第5巻』(昭和10年6月30日発行)p59は「失(しつ)」になっている。]、裏面の天地也。 ザ[※以下の活用は「ザ」ではなく「サ」の言霊の活用である。]は騒ぎ乱る也、⦿に事在る也、降り極る也、破壊也。 カは一切の発生也、光輝く也、懸け出し助くる也、鍵也。 イフヤザカの五言霊を約言する時は善悪正邪の分水嶺であります。男神の伊弉諾命と女神の伊弉冊命と、互ひに自分の住し、かつ占有する国土を発展せしめむと、強く思ひ合ひて争ひ賜ふ所は同じく平等にして何の差別もなく、只々施政の方針に大なる正反対の意見あるのみ。然れど女神黄泉神の御経綸は惟神の大道に背反せるが故に、終に海外の某々の如く悉く大動乱大破裂の惨状を露出したのは、近来事実の確証する所であります。 男神の神国は、日進月歩至極鋭敏にして、終に世界の大強国の仲間入りを為したり。されど忽ち昇り忽ち降るの虞れあり。黄泉国の二の舞を演ぜざる様、注意を要する次第であります。ヤは日本にして、何処までも徳を積み輝きを重ねつつ、外面を覆ひ、以て克く隠忍し、天下の大徳を保ちて天下に臨むと雖も黄泉国の八雷神や、千五百の妖軍は何の容赦も荒々しく、焼也、天也、の活動を成し、裏面の天地を生み成しつつあり。故に世界各国は殆ど騒乱の極みに達し正義仁道は地を払ひ、⦿に事の在りし暴国なり。茲に仁義の神の国の一切の善事瑞祥発生して、仁慈大神の神世に復し治め、暗黒界を光り輝かせ、妖軍に悩まされ滅亡せむとする、国土人民に対しては身命を投げだして救助し治国平天下の神鍵を握る可き、治乱興亡の大境界線を画せる、現代も亦これ出雲の国の伊賦夜坂と謂ふべきものであります。(完) (大正九・一一・一午前五六七殿講演外山豊二録) (大正一一・二・一一旧一・一五谷村真友再録) (第三七章~第四三章昭和一〇・三・四於綾部穹天閣王仁校正) |
|
27 (1497) |
霊界物語 | 10_酉_黄泉比良坂の戦い | 27 言霊解一 | 第二七章言霊解一〔四五七〕 皇典美曽岐の段 『是を以て伊邪那岐大神宣り玉はく』 『是を以て』とは前の「黄泉大神と事戸を渡し玉ひ」云々の御本文を受けて謂へる言葉であります。 イザナギの命の御名義は、大本言霊即ち体より解釈する時は、イは気なり、ザは誘ふなり、ナは双ことなり、ギは火にして即ち日の神、陽神なり。イザナミのミは水にして陰神なり、所謂気誘双神と云ふ御名であつて、天地の陰陽双びて運り、人の息双びて出入の呼吸をなす、故に呼吸は両神在すの宮である。息胞衣の内に初めて吹くを号けて天浮橋と云ふ。その意義はアは自らと曰ふこと、メは回ることである。ウキはウキ、ウクと活用き、ハシはハシ、ハスと活用く詞である。ウは水にして㎞也。ハは水にして横をなす、即ち㎎である。水火自然に廻り、浮発して縦横を為すを天浮橋と云ふ。大本神諭に『此の大本は世界の大橋、この橋渡らねば世界の事は判らぬぞよ。経と緯との守護で世を開くぞよ。日の大神月の神様は、此世の御先祖様であるぞよ』とあるは此の意味に外ならぬのであります。 天地及び人間の初めて気を発く、之を二神天浮橋に立ちてと云ふのである。孕みて胎内に初めて動くは、天浮橋であり綾の大橋である。是の如く天地の気吹き吹き、人の息吹き吹きて、其末濡りて露の如き玉を為す、是れ塩累積成る島である。水火はシホであり、シマのシは水なり、マは円かと云ふ事で、水火累積て水円を成し、息の濡をなす、その息自づと凝り固まる、之を淤能碁呂嶋と云ふのである。要するに伊邪那岐、伊邪那美二神は、地球を修理固成し、以て生成化々止まざるの御神徳を保有し、且之を発揮し、万有の根元を生み玉ふ大神である。併し一旦黄泉国の神と降らせ玉へる時の伊邪那美の大神は、終に一日に千人を殺さむ、と申し玉ふに立到つたのであります。更に日本言霊学の用より二神の神名を解釈すれば、伊邪那岐命は万有の基礎となり土台となり、大金剛力を発揮して修理固成の神業を成就し、天津神の心を奉体して大地を保ち、万能万徳兼備し⦿の根元を定め、永遠無窮に活き徹し、天津御祖の真となり、善道に誘ふ火水様である。次に伊邪那美命は、三元を統べ体の根元を為し、身体地球の基台となり玉となりて暗黒界を照し玉ふ、太陰の活用ある神様であつて、月の大神様であり、瑞の御霊である。斯の如き尊貴円満仁慈の神も、黄泉国に神去ります時は、やむを得ずして体主霊従の神と化生し給ふのである。此処には御本文により男神のみの御活動と解釈し奉るのであります。 『吾は厭醜悪穢国に到りて在りけり』 アの言霊は天也、海也、自然也、○也、七十五声の総名也、無にして有也、空中の水霊也。これを以て考ふれば、吾とは宇宙万有一切の代名詞である。この宇宙万有一切の上に醜悪汚穢充満して、実に黄泉国の状態に立到つたと曰ふ事である。現代は実に天も地も其他一切の事物は皆イナシコメシコメキキタナキ国と成り果てて居るのである。政治も外交も教育も実業も道義も皆悉く廃れて、神の守り玉ふてふ天地なるを疑ふばかりになつて来て居るのであります。 『故に吾は御身の祓為なと詔りたまひて、筑紫の日向の立花の小門の阿波岐原に到りまして美曽岐祓ひたまひき』 大々的宇宙及び国家の修祓を断行せむと詔りたまうたのである。御神諭に、『三千世界の大洗濯、大掃除を天の御三体の大神の御命令に依りて、艮の金神が立替立直しを致す世になりたぞよ』と示されたるは、即ち美曽岐の大神事であります。 ツは実相真如決断力也、照応力也。 クは暗の交代也、三大暦の本元也、深奥の極也。 シは世の現在也、皇国の北極也、天橋立也。 ノは天賦の儘也、産霊子也、無障也。 ヒは顕幽貫徹也、無狂也、本末一貫也。 ムは押し定む也、国の億兆を成す也、真身の結也。 カは晴れ見る也、際立ち変る也、光り暉く也。 ノは続く言也。 タは対照力也、平均力也、足り余る也。 チは溢れ極まる也、造化に伴ふ也、親の位也。 ハは太陽の材料也、天体を保つ也、春也。 ナは火水也、真空の全体也、成り調ふ也、水素の全体也。 アは大本初頭也、大母公也、円象入眼也。 ハは延び開く也、天の色也、歯也、葉也。 ギは霊魂の本相也、天津御祖の真也、循環無端也。 ハは切断力也、フアの結也、辺際を見る也。 ラは高皇産霊也、本末打合ふ也、無量寿の基也。 以上の言霊を約むる時は、筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原は、実相真如の顕彰にして一切の事物を照応し、決断力を具有して、暗黒界を照変し、神政を樹立し、御倉棚の神なる宇宙経綸の三大暦即ち恒天暦、太陽暦、太陰暦の大本元を極めて、深甚玄妙の極を闡明し、現在の世を済する為に天橋立なる皇国の北極に天賦自然の産霊子を生成化育して、障壁なく狂ひなく顕幽貫徹、本末一貫、以て万象を押定め、真身の結に依りて国の億兆を悉皆完成し、光輝以て神徳を発揚し、青天白日の瑞祥を照して、宇宙一切の大変革を最も迅速に敢行し給ひ、上下一致、顕幽一本、平均力を以て、善悪美醜清濁を対照し、全智全能にして、親たるの位を保ち、溢れ極まる霊力を以て造化に伴ひ、太陽に等しき稜威を顕彰して天体を保有し、春の長閑なる松の代を改立し、真空の全体たる霊魂球を涵養し、水素の本元たる月の本能を照して、宇宙一切を完成調理し、万有を結びて一と成し、天地を祭り人道を守り、国家を平けく安らけく治め幸はひ、男性的機能を発揮し、大仁大慈の神心を照し、造化の機関たる位を保ち、元の美はしき神世に突き戻し、円象入眼、総ての霊と体に生命眼目を与へ、大母公として世の大本となり、初頭と現はれ、無限に延び無極に開き、蒼天の色の如く清く、且つ高く広く、生成化育の徳を上下の末葉に及ぼし、天津御祖神の真を体得し、循環極まりなく、各自霊魂の本相を研ぎ尽し、妖邪を切断し世の辺際を見極め、言霊力を以て破邪顕正し、本末相対して世を清め洗ひ、一切無量寿たるの根基を達成すべき霊系高皇産霊の神業を大成する霊場と曰ふことである。現代の世に於て、斯の如き霊場たる神界の経綸地が、果して日本国に存在するであらう乎。若し存在せりとせば、其地点は何国の何れの方面であらう乎、大本人と云はず、日本人と云はず、世界の人類は、急ぎ探究すべき問題であらうと思ふのであります。 次に美曽岐の言霊を解釈すれば、 ミは水也、太陰也、充也、実也、道也、玉と成る也。 ソは風の種也、身の衣服也、⦿を包裏居る也。 ギは活貫く也、白く成る也、色を失ふ也、万に渡る也。 要するに、所在汚穢を清め塵埃を払ひ、風と水との霊徳を発揮して、清浄無垢の神世を玉成し、虚栄虚飾を去り、万事に亘りて充実し、活気凛々たる神威を顕彰し、金甌無欠の神政を施行して、宇内一点の妖邪を留めざる大修祓の大神事を云ふのである。現代の趨勢は、世界一般に美曽岐の大神事を厳修すべき時運に遭遇せる事を忘れては成らぬ。大本の目的も亦、この天下の美曽岐を断行するに在るのであります。 『故投棄つる御杖に成りませる神の御名は衝立船戸神』 御杖の言霊、ツは大金剛力決断力で玉の蔵であり、ヱは中腹に成就し行き進み玉を保つことであつて、即ち神の御力添へをする役目であります。然るに神は、この杖までも投げ棄て玉うたと云ふことは、よくも汚れたものであります。現代で曰へば大政を補弼する大官のことであります。 衝立船戸神の名義は、上と下との中に衝立ち遮り、下情を上に達せしめず、上の意を下に知らしめざる近親の神と云ふことである。現代は何事にも総てこの神様が遮り玉ふ世の中であります。杖とも柱とも成るべき守護神が、却て力に成らず邪魔になると曰ふので、伊邪那岐大神は、第一着に御杖を投げ棄て賜うたのであります。 『次に投棄つる御帯に成りませる神の御名は道の長乳歯の神』 御帯の言霊は、オは霊魂、精神を治め修むることで、亦神人合一の連結帯である。ビは光華明彩、照徹六合の意である。即ち顕界の政を為すに当りては、必ず精神的に天地人道を説き諭し、以て億兆をして帰依せしめ、顕界の政治に悦服帰順せしめねば成らぬのである。是が所謂神の御帯であります。神は此御帯も穢れて使へなく成つたから投げ棄て玉うたのであります。 道の長乳歯の意義は、天理人道を説く宗教家、教育家、倫理学者、敬神尊皇愛国を唱ふる神道家、皇道宣伝者、演説説教家等の大家と曰ふ事である。この帯を投棄て給ふと云ふ事は、総ての教育、宗教、倫理の学説を根本より革正し給ふと曰ふ事であります。 (大正九・一・一五講演筆録谷村真友) |
|
28 (1574) |
霊界物語 | 12_亥_天の岩戸開き | 28 三柱の貴子 | 第二八章三柱の貴子〔五二四〕 神代の太古、伊邪那岐命よりお産れ遊ばした天照大御神様、この神様は日の大神様と申上げて、本部綾部に御祀りしてあります所の神様であります。このへんから申上げます。 伊邪那岐命が 『筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐ケ原に於て禊身し玉ふ時、左の御目を洗ひ給ひて成りませる神の御名は天照大御神、次に右の御目を洗ひ給ひて成りませる神の御名は月読命』 といふことが書いて御座います。目といふものは吾々肉体から申しますると、右と左と両方に持ちて居りまして物を視るといふことの上に最も大切なものであります計りか、眼は心の窓と申します位重要なもので御座います。所が一歩進んで考へて見ますと、総てこの宇宙間に形を持つて居るものは森羅万象残らず目すなはち眼目といふものがなくてはならぬ。実際凡ゆるものに眼目があると云ふ事は吾人は常に之を認め得るのであります。姿こそ人間のやうな姿ではないけれど、他の動物に於てもこの眼をもつて居ります。禽獣虫魚草木の類に至るまで此眼のないものはありませぬ。また一つの文章を読みましても、この中にも必ず眼目といふものがあります。御勅語の中にも眼があります。 『皇祖皇宗国ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ、汝臣民克ク忠ニ克ク孝ニ』 これが教育勅語の眼目であります。また戊申詔書には、 『淬礪ノ誠ヲ輸サバ国運発展ノ本近ク斯ニ在リ』 これが詰り眼になつて居る。その通り初め天地をお造りになるに当つても、この宇宙を治める為にはどうしても、眼といふものが必要であるといふので、そこで伊邪那岐命は天地の主をお創めになつたのであります。すなはち伊邪那岐命は、先づ天の主をこしらへたい、この霊界の主宰者をこしらへたいと思召しになりまして左の目を洗ひ給うた、この左の目といふのは日であります。太陽神であつて上である。右の目といふのが太陰神であつて下であります。言霊の天則から申しますと左は男、右は女と、これは既に神様の御代から定まつた掟である。然るにこの左の目を洗うてお生れになつたのが日の大神、天照大御神であつて、右の目を洗うてお生れになつたのが月読命、さうすると目からお生れになつたのは、変性男子女子でありました。左の目をお洗ひになつて直ぐお生れになつたのが変性男子の天照大御神でありました。これで詰り左を宇宙霊界とし、右を地球として、天上天下の君をお生みになつた訳であります。 『次に御鼻を洗ひ給ひしときに成りませる神の御名は建速須佐之男命』 はなは初めに成るの意義で即ち初めである。物質の元であります。花が咲いて而して後から実を結びます。人間の身体が出来るにつきましても、先づ胎内に於て人間の形の出来る初めは鼻である。それから眼が出来る。絵師が人間の絵を描きましても、その輪廓を描くのに何より先に鼻を描く、鼻は真中である。鼻を先へ描いて然る後に目を描き口を描いてそこで都合好く絵が出来るのである。この初めて出来た統治の位地にお立ちになるのが須佐之男命であります。俗に何でも物の完成したことを眼鼻がついたと申します。神様も此世界をお造りになつて、さうしてそこに初めて眼鼻をおつけになつたのであります。 『此時伊邪那岐命太く歓喜して詔り給はく』 愈天地が完全に出来たから、神様は非常にお喜びになつた。これまでに神様は随分沢山な御子達をお産みになつて居りますが衝立船戸の神様から十二柱ありました。その次に三柱お生れになつてをるので都合十五柱であります。男神様は我はかやうに沢山の子を産むだが、しかし今度の様な眼鼻になる所の子は初めてである。 『吾は御子生みて、生みの果に三柱の貴子得たり』 と仰せられまして、やがて、 『其御頸珠の玉の緒母由良に取りゆらかして』 即ちむかしの勾玉と申したやうな、高貴な人が飾りとしてかけて居つた頸珠であります。丁度今で申しますと大勲位章とか、大綬章とか、一等勲章とか云ふ意味の、曲玉のやうなのを掛けて居られたかと思はれます。 そこでこの玉を自分からお取り脱しになつて天照大御神にお渡しになつた。母由良にとりゆらかしてといふことは何でも非常に喜んで物を渡すときには、自然に手や身体が揺れる。一面から云へば揺つて渡す。頂くときにも亦揺つて頂く、今は然う云ふやうなことでは御座いませぬけれども、本当に嬉しいときには然うなつて来るのであります。さて之を揺りよい音鳴りをさせながら天照大御神に賜ひまして詔給はく、 『汝が命は高天の原を知らせ』 と高天原を主宰せよと仰せになつて珠をお授けになつたのであります。 『かれ其御頸珠の名を御倉板挙之神と申す』 此の御倉板挙之神といふことは、言霊学上から見ても、神様の方で申されまする暦――此世界には恒天暦、太陽暦、太陰暦の三つの暦が常に運行循環して居るのであります。で、此御頸珠をお授けになつたといふのは、所謂御倉板挙之神、即ち恒天暦、太陽暦、太陰暦をお授けになつたのであります。 『次に月読命に詔給はく「汝が命は夜の食国を知らせ」と事依さし給ひき』 右の眼よりお生れになつた月読命に夜の主宰をせよと仰せられた。知らせといふことは、大事に守護り能く治めよといふ意味で、太陰の世界を主宰せよと仰有つた。高天原は全大宇宙である。夜の食国は昼の従である。それで月読命はどこまでも天照大御神を扶けて宇宙の経綸に当れと、斯う云ふ詔であります。 『次に建速須佐之男命に詔給はく「汝が命は海原を知らせ」と事依さし給ひき』 須佐之男命は鼻からお生れになつた方であります。海原といふのは此地球上のことであります。地球は陸が三分の一しかありませぬ、三分の二といふものは海であります。で地球を総称して大海原と申すのであります。斯うして伊邪那岐命様は深いお考へから夫々其知ろしめす所を、各々にお分けになつて、汝は高天原を、汝は夜の食国を、汝は地球上即ち大海原を知ろしめせと、御神勅になつたのであります。今日は天照大御神の三代の日子番能邇々芸命が、どうも此お国が治まらぬといふので天から大神の神勅を奉じて御降臨になつて、地球上をお治め遊ばして、さうして我皇室の御先祖となり、其後万世一系に此国をお治めになつてあるのでありますが、それより以前に於きましては、古事記によりますと須佐之男神が此国を知召されたといふことは前の大神の神勅を見ても明白な事実であります。 『故各々依し給へる御言の随に、知らしめす中に、速須佐之男命、依さし給へる国を知らさずて、八拳髯胸前に至るまで啼いさちき』 須佐之男命は大神の仰に随つて地上に降臨遊ばされた。地上を治める為めに、お降りになりましたけれども、その時この地上は乱れて居つて、神代にも丁度今日のやうな世があつたものと見えます。で今日のやうに政治であらうが、宗教であらうが、教育であらうが、何から何まで一切のものが行き詰つて了うて、もう行きも戻りも上げも下しも出来ぬ様になつて居つた。それで須佐之男命様は、この世の中を安らけく平けく治めて大神を安堵させ奉る事が出来ないから非常にお歎きになつて、『八拳髯胸前に至るまで』長く長く髯が延びて胸前の所まで下つて来るまで御心配をなすつた。人といふものは髯を拵へたり髪を整へたり、いろいろのことをして、容貌を整へなくてはならぬけれども、此国を治めようといふ事に、余り御心配を遊ばしたのでありますから、知らぬ間にこの髯が八拳に長く伸びて居つたのであります。 『泣きいさちき』 といふのは、世の中の一切悉くのものが、もうどうしても、これから進むで行くとか、開けて行くとか、どうしたらよいかといふ方法がない、手のつけやうがないといふまでに非常に行き詰つて了つた状態を、お歎きになるさまに形容したのであります。 『其泣き給ふ状は』 どういふ工合であつたかといふと、 『青山を枯山なす泣き枯らし』 今まで山などの草木が青々と生ひ繁つて居たのに、世が行き詰つた為に枯れて了うた。枯らして了うた。山がすつかり一変して枯山となつてしまうた。これは今日の状態によつく似て居るではありませぬか。今まで十年計画、百年計画といふやうな風にいろいろな事業が企てられた。何会社が立つの、或は何事業が起されたと、無茶苦茶に四五年前から本年の春までは偉い勢で、好景気を謳歌して、青々とした山の如くに有頂天になつて居りましたが、青山がいつまでも天空につかへないが如くに、なんぼ木が伸びたつて天につかへる気遣ひのないやうに、一朝行きつまれば最早さう云ふ勢はすつくり枯れて了ふ。今年の春からこの方、元も子もなくなつて、青山は枯山になつた。どうしても伸びる方法もない、火の消えたるが如き有様になつて了つたのであります。 『河海は悉に泣き乾しき』 山が枯山となつたと同じく、河も海も悉く乾いて了うて、一滴の水もなくなつたといふのであります。今日の世の中に譬へて申しますれば、郵船会社とか、商船会社とか其他いろいろの海運業も追々と仕事がなくなつて二進も三進も行かなくなつた。すると此海河の労働仕事に従事して居るものは、稼殖の途のなくなるのは勿論、稼業に離れる、職に離れるといふことになつて来ると一家は子供に至るまで、悉く泣き乾しになる。最早や食ふ道がないやうになると、もう乾干になるより仕様がない。総て海に稼いで居る者も、河に従事して居る者も、其他一切のことに従事して居る者も、みんな泣き乾しになつて了うたのである。 『是を以て悪神の音なひ、狭蠅なす皆沸き、万の物の妖悉に発りき』 神代に於ても世が行き詰つて来れば、そこにいろいろの不祥なる事件が起つて来たものと見えます。 畏くも明治天皇陛下が、 『之ヲ古今ニ通ジテ謬ラズ之ヲ中外ニ施シテ悖ラズ』[※教育勅語の一節] と仰せられましたやうに、真理といふものは何れの時代にも適応するので御座います。既に古事記の明文にある所で御座います。今日の状態を考へて見れば、丁度此岩戸開き前の状態と克く似て居る。世がどん底に行き詰つて労働しようにも仕事がない、仕事がなければ妻子眷族を養ふことが出来ない。生活といふことが出来なくなるとそこで悪神の音なひとなり、いろいろの騒動が起つて来る、人間の心が荒んで来る。衣食足つて礼節を知る、今まで善い魂を持つて居つたものも、だんだん悪い魂の力に押へられて悪化して了ふ。食ふか食はぬか、死ぬか生きるか、喰うて死ぬか食はずに死ぬか、斯う云ふ苦しい立場になりますと、人心は日増しに悪化して善くないことが往々始まる。甚だしきは警察へ行つて御厄介になつた方が楽で、養なつて呉れて安全だといふものが出来る。監獄に入れば食はして呉れる、金銭はなくても可いといふ具合に自暴自棄的に悪神の音なひが始まる。此音なひといふのは、神様の御真意に背いた所の、いろいろの論説が出て来るといふので、あちらからも此方からも異端邪説が叢り起ることであります。然うした結果が、うるさい所の五月蠅のやうにブンブンブンといろいろの事が湧いて、 『万の物の妖悉に発りき』 一切のものに災禍が起つて来る。外交の上に於きましても、内治の上に於きましても、商工業の上にも、一切万事、何も彼にも、世の中のありと凡ゆるものに向つて、みな災禍が起つて来るのであります。そこで天から伊邪那岐大神が之を御覧になつて、 『速須佐之男命に詔給はく』 仰有るのには、 『何とかも、いましは、事依させる国を治さずて泣きいさちる』 そなたは、此大海原の国を治めよと言うてあるのに、何故それを治めぬのか、世の中を斯う云ふ難局に陥らせたのか、何うして騒がしい世の中として了うたのか、と大変にお責になつたのであります。すると須佐之男命は、誠に相済まぬ事であります。兎も角これは私に力が足らぬからであります。私が悪いのでありますとお答へになつた。併し斯うなつて来ては如何なる人が出て来ても、此時節には敵はない。治まるときには治めなくても治まるが、治まらぬときに之を治めるといふ事は難かしいものであります。人盛んなれば天に勝ち、天定まつて人を制す、悪運の強い時には如何なる神もこれを何うも斯うもする事が出来ない。艮の金神様も此時節の勢には敵はぬと仰せられて、それで三千年間あの世に隠れて、今日の神政成就の時節を待つて、現在に顕はれ天の大神様の御命令を奉じて、三千世界の立替立直しをなさらうといふのであります。大神様でさへもさう仰せに成るのでありますから、況して須佐之男命が大変に行き詰つた地上を治めようとなさつてもどうして治まらう筈がありませう。然らば何故須佐之男命御一人では治まらないのであるかと申せば、それは今日文武百官がありまして、亦た政党政派が互に相争ひ、一方が斯うすれば一方が苦情を持ち出して思ふやうにならぬ如く前に申しましたやうに既にいろいろの神様達が沢山あつて、其神々様が各自に天津神の御心を取り違へて、所謂体主霊従に陥つて居られたので、一人の須佐之男命がどれ程誠の途を開かうとなすつた所で、更に耳に入れるものがない、各自に勝手な真似をなさる。丁度強情な盲と聾との寄合のやうであります。そこに千仭の谷があつても盲は顛覆へるまでは知らぬ顔をしてをる。どれ程雷が鳴つても聾は足下に落ちるまでは平気である。それに強情を張つて誰が何と注意しても聴かない。神代の人もそのやうに体主霊従で、どうしても命の命令を聴かなかつた。それで須佐之男命は、これは取りも直さず自分の責任である、自分の不徳の致す所である、到底自分の力では及ばないのであると、自らをお責めになつて、 『あは妣の国、根の堅洲国に罷らんと思ふが故に泣く』 私はもうお暇を頂いて、母の国に帰らうと仰せられたのであります。根の堅洲国と申すのは母神の伊邪那美命がおいでになつてゐる所であります。尤もこれまでの或る国学者達は根の堅洲国といふのは地下の国であると云つて居りますが、併し一番に此伊邪那美命は月読命と同じく月界に御出でになつたのでありますから、月界を根の堅洲国と言つたのであります。で須佐之男命は自分の力が足らないのである、不徳の致す所であるからして自ら身を引いて、根の堅洲の国へ行かうと仰有つて、一言も部下の神々の不心得や、其悪い行状を仰せられなかつた。如何にも男らしい潔白なお方で御座います。所が伊邪那岐命は非常に御立腹になつた。 『然らばみまし此国にはな住みそ』 其方のやうな此海原を治める力量の無いものならば、二度と此国に住むではならぬ。勝手に根の堅洲国へ行つたがよからう。一時でも居つてはならぬぞとお叱りになつたけれども、伊邪那岐命は須佐之男命の心中は疾くに克く御存知である。自分の子がどうして此国を治める事が出来ないか、どうして自分の珍の児の言ふことを万の神々が聴かぬか、腹の底では充分に御存知でありますが、それを彼此仰有らない。心の中には千万無量のお悲しみを持つて居られまするけれども、他に多くの神々に傷をつけるといふことは考へ物である。それで須佐之男命に刑罰を与へて罪人としたならば、その他の八百万の神、これに随いて居る所の神等はそれを見て皆改心するであらう、その悪かつたことを悟るであらうと思召して大神様は自分の子を罰せられたのでありまして、普通の者の出来難いことで御座います。その広大なるお情深い御心は、誠に勿体ない次第でありませぬか。此須佐之男命を罪に問うたならば、あれこそ吾々の為めに罪せられたのである、誠に済まないことであるから、吾々は悔い改めて本当の政治をしなければならぬ、改心を早く致して命の罪を赦されむ事を八百万の神々が思ふであらうと思召して伊邪那岐命は此処置をお取り遊ばしたのであるが、矢張体主霊従に陥られた八百万の神達は容易にそれがお解りにならず、あれは当然である、政治の主権をあんな者が握つて居つては国の治まらう筈がない、あれが居なくなれば又善い神様が来るに違ひない、否吾々の力で充分に世を治めようといふやうな頗る冷淡な間違つた考へを有つて居つたのであります。寔にこんな世の中を治めようとするには並大抵の事ではないので御座います。 (大正九・一〇・一五講演筆録) (大正一一・三・五再録谷村真友録) |
|
29 (1581) |
霊界物語 | 13_子_フサの国・半ダース宣伝使 | 01 言霊開 | 第一章言霊開〔五二七〕 天の岩戸 故れ須佐之男の大神は清明無垢の吾御魂 現はれ出て手弱女を生みしは乃ち吾勝ちぬ 勝てり勝てりと勝ち荒びに神御営田の畔を放ち 溝埋め樋放ち頻蒔し大嘗殿に屎散りて 荒びに暴び給ひけり故れ然すれど皇神は 咎め給はず屎如すは那勢の命の酒の所為 屎には非で吐ける也田の畔を放ち溝埋は 地所惜らし思ふため那勢の命の罪ならじ 神心平に安らかに直日に見直し詔直し 言解き給へど荒び行未だ止まずに転てあり。 ○ 若日女機屋に坐して神御衣織らしめ給ふ時 機屋の棟を取り毀ち天の班駒逆剥て 墜し入れば神衣織女驚き秀処を梭に突て 終に敢なく身亡せけりここに皇神見畏み 天の岩屋戸閉立てて隠りたまへば天の原 とよあし原の中津国常夜となりて皆暗く 黒白も判ぬ世と成りぬ曲津の神の音なひは 五月の蝿の沸く如く万の妖害みな起る。 ○ 百千万のかみがみは安の河原に神集ひ ここに議会は開かれて議長に思兼の神 思ひ議りて常夜なる長鳴鶏を鳴かしめて 安の河原の石を採り天の香山の鉄を採り 鍛冶真浦を求き寄せて石凝姥のみことには 八咫の鏡を作らしめ玉の御祖の命には 八阪の曲玉造らしめ天の児屋根や太玉の 命を呼びて香具山の男鹿の肩を打抜きて 天の羽々迦を切採りて占へ真叶はしめ給ひ 天の真榊根掘して上枝に八阪の玉を懸け 八咫の鏡を中津枝に下枝に和帛を取垂て 祭祀の御式具備りぬ是れ顕斎の始めなり。 ○ 故太玉のみことには太幣帛を採り持たし 天の児屋根の命には太祝詞ごと詔曰し 天の手力男のかみは窟戸のわきに隠り立ち あめの宇受売命には天の日蔭を手襁とし 天の真拆をかづらとし竹葉を手草に結占て 窟戸の前に槽伏せて踏轟かしかしこくも 神人感合の神懸り至玄至妙の幽斎を 行ひ給ひし尊さよ胸乳掻出で裳緒をば 番登に忍垂れ笑ひ鳧命の俳優に天地も 動りて神等勇み立つ皇神怪しと思召して 窟戸を細目に開きまし御戸の内より詔賜はく 吾いま岩窟戸に篭りなば高天原も皆暗く あし原の国暗けむと思ひ居たるに何故に 宇受売の命は楽びしぞ百千よろづの神等も 歌舞音楽に耽るやと怪しみ給へば智慧深き 宇受売命の答けらく皇大神にいや勝り 尊き神ぞ現れ坐り夫れゆゑ歓ぎ遊ぶなり。 ○ 斯く宣る間に二柱八咫の鏡をさし出て 皇大神に奉るいよいよ怪しと思召て 御戸より出て臨み坐すその時戸わきに隠り立ち 天の手力男の神は御手持曳き出し奉り 斯れ太玉の命には尻久米縄を御後へに 引張渡し此処よりは内に勿還り入りましそ 言葉穏いに願ひけり大神御心平かに 御戸出でませば久方の高天原も葦原の 中津御国も自ら隈なく光り冴え渡り 万の神々いさみ立ち天晴れ地晴れ面白や あな尊しや佐夜計弘計目出度窟戸は開き鳧 是れ顕斎の御徳にてまた幽斎の賜ぞ。 ○ 仰ぎ敬まへ神国に生を享けたる民草よ 天津御神の神勅以て直霊の御魂現はれて 至粋至純の神の美智顕斎幽斎鎮魂の 尊き神業を説明し地上億兆蒼生に 向ふ所を覚すなり神の御恵み君の恩 神国を思ふ正人は固く守れや神の道。 鎮魂 豊葦原の千五百あきみづほの国の神の苑 栄え久しき常磐木の松の御国に生れたる 七せん余万の同胞は日出るくにの国体の 外に優れて比類無き奇すしく尊き理由を 究め覚らで有るべきや万世変らぬ一すぢの 天津御祖のさだめてし皇大君の知ろしめす 国は日の本ばかりなり神代の昔那岐那美の 二尊あらはれ坐々て修理固成の大御神勅 実践ありて国を産み青人草や山川や 木草の神まで生給ひつひに天照大御神 また月夜見の大神や速須佐之男の大御神 現出坐し目出度さよ皇神甚くよろこばし 今迄御子を生みつれど是に勝りし児はなし 吁尊しや貴の御子生み得てけりと勇み立ち ただちに天に参上り皇産霊の神の太占に 卜ヘ賜ひて詔賜はくあが御児天照大神は 高天原をしろしめせまた月夜見の大神は 夜の食国を守りませ速須佐之男の大神は 大海原を知らせよと天津御祖の御言もて 各自々々におす国を持別依さし給ひけり。 ○ 茲に大神おんくびにまかせる八阪曲玉の 五百津御魂美須麻琉の玉緒母由良に取揺し 高天原を知らさねと日の大神に賜ひけり 故その御頸珠の名を御倉棚のかみとなす これ其魂を取憑けて日の神国の主宰神 たらしめなむと神定め玉ひし畏き御術なり 是鎮魂のはじめにて治国の道の要なり。 ○ 天照し坐すおほみかみその神業を受け賜ひ 二二岐の命に天の下統治の権を譲らるる 其みしるしと畏くも三種の神器を賜はりし この方世々の天皇は大御心をこころとし 即位の御制と為し給ふこれ鎮魂の御徳なり かくも尊き縁由ある御国に生ひし国民は 台湾千島の果てまでも尊奉崇敬おこたらず あさな夕なに奉体し神の稜威を仰ぐべし。 ○ そも鎮魂の神わざは天津御祖の定めてし 顕幽不二の御法にてかみは一天万乗の 畏き日嗣の天皇の祭政一致の大道より 下万民にいたるまで修身斉家の基本なり 然のみならず斯の道は無形無声の霊界を 闡明するの基礎ぞかし神の御国に住む人は 異しき卑しき蟹が行く横邪の道をうち捨てて 束のあひだも神術に心を清め身をゆだね 天にむかひて一向に幽冥に心を通はせて おのが霊魂の活動を伊豆の魂に神ならひ 身も棚知らに鍛へかしこの正道を踏みしめて 国家多端のこの際に神洲男子のやまと魂 地球の上に輝かし天にもかはる功績を 千代万代にたてよ人勇み進めやいざ進め 直霊の魂を経となし厳の魂を緯として 八洲の国に蟠まる曲津の軍の亡ぶまで 進めや進めふるひ立て醜の悪魔の失せる迄。 富士山 富士山は古来不尽山または不二山と書き、芙蓉の峰、福知ケ嶺と称し、天教山、扶桑山とも謂ひ、木花咲耶姫命の御神体とも云ひ、鳴沢ケ岳、二十山、秀穂山、山君ケ嶽とも別称され、この山の名義については、色々と古来の解説があれども何れも皆謬りなり。日本は古来言霊の幸はふ国と云ひ、只一つの小山にも山の活用を名に現はし居るなり。 フジのフは力なり。地球の中心より、金剛力を以て、火煙を噴出すをフと云ふ。ジは火脈の辻であり浸み出る言霊なり。 またフジの霊返しはヒなり。ヒは火なり、霊なり、日なり。故に富士の火山とも云ひ、霊峰とも称へ、日本国の代表とも成り居るなり。今は木花冬篭りの状態で休火山なれども、何時発動して元の活火山に復するかも知れざる神山なり。猶ほ細かく調ぶればフの言霊は天中の常也、世界一切の活用を司る也、生の常也、忽ち往き忽ち来り、忽ち昇り忽ち降り、忽ち出で忽ち入り、進退兼持ち火熱の合結となり、機臨の府となる也、八咫に照る也の大活用あるなり。 ジの言霊は強く守る也、打ち固める也、辻立つ也、予誓也の大活動なり。 ヒの言霊は明かに通徹する也、日の結也[※「総説」及び「第一章」はもともと『神霊界』大正10年(1921年)1月号p71-81に「八面六峰」と題して掲載されたものである。「日(ひ)の結(むすび)也」の該当箇所は、「八面六峰」(p81)では「日(ふい)の結(むすび)也」になっている。「ヒ」の活用として「日(ひ)の結び」では意味がおかしい。「ふい」の結びが「日(ひ)」である、と解した方が意味が通る(水茎文字ではフとア行イの結合がヒになる)。]、無不所照也[※「総説」及び「第一章」はもともと『神霊界』大正10年(1921年)1月号p71-81に「八面六峰」と題して掲載されたものである。「無不所照(むふしよせう)也」の該当箇所は、「八面六峰」(p81)では「無所不照(てらさざるところなき)也」になっている。漢文としては「無所不照」の方が意味が通る。また古来より使われている熟語である(中国語だと「无所不照」)。「無不所照」の場合、漢文の「無不」は「~しないものはない」という二重否定であり、「所照」は「照らすところ」なので、「照らす所がないことはない」と解すれば、「無所不照」と同じ意味になるか?]、日也、昼也、顕幽皆貫徹する也、大慈大悲の極也、⦿の形を照り顕はす也、悉皆帰伏而一致一和の意也。尊厳也、⦿の朝也、⦿の寿也、三世照明也、等の活用あるなり。 以上の言霊活用を思考する時は、大日本国の[※元々は「天津日嗣天皇の統御し給ふ大日本国の」だが、御校正本で「天津日嗣天皇の統御し給ふ」が削除されている。]表徴にして、神国と神民との最優最秀なる天職を発揮し、世界万国を教へ救ふ神国天賦の本能を顕はせる、神霊の活用する神峯と云ふ事になるなり。彼の有名なる白扇倒懸東海天の句を始め、富士山に関する詩歌は随分沢山ありて、詩にも歌にも、句にも此富士山位詠まれたものは無かるべし。契冲の歌にも 富士がねは山の君にて高御座空にかけたる雪の経笠 実に上品な歌にして、天皇の高御座の上に釣るす経笠の如くにて然も天空高く、白皚々たる、純白の雪を戴き、群峰の上に屹として、一番高く峙え立ち居る富士山は実に山の中の君主なりといふ意味なり。 心あてに見し白雪はふもとにて思はぬかたに霽るる富士ケ嶺 あの辺が頂上かしら、雲に包まれて見えぬのかと、あせりあせり見る中に、雲が晴れると、ヤア何だアンナエライ高い雲表にニヨツキリと頂が現はれて居ると云つて茫然自失、今更にその高さに驚かされ、且つ崇高の感に撃たれて居る真境を写し出したる歌なり。 元朝に見るものにせむ富士の山 これは宗祇の作句なり。正月も近い目出度い元旦の見ものとして富士の山に越したものは無く、尊しと云ふの意味なり。万葉集にも随分富士を賞めたる和歌が沢山載せられあるが、凡て此の富士山は日本国の崇高なる意義を代顕したる神峰なり。 東洋独立玉芙蓉万古千秋不改容 清嶽鮮山朝揖処五刕高聳此仙峰 以上の数篇は大正十年一月号の神霊界に所載したるものなり。其中神旗の由来、霊力体、天岩戸、鎮魂等の章は孰れも明治三十三年の王仁の旧作なるも、今また都合に依りここに再録するものなり。 (大正一一・三・一七旧二・一九王仁) |
|
30 (1588) |
霊界物語 | 13_子_フサの国・半ダース宣伝使 | 08 醜の窟 | 第八章醜の窟〔五三四〕 夜は漸く明け放れたと見え、天津日の影は見えねども、天地はホンノリと明るくなつて来た。 鷹彦『オイ岩彦、何うだ、貴様もモウこれで我が折れただらうナア』 岩彦『ヤー今度に限つて徹底的に我が折れたよ。モウ心配して呉れな。併し日の出別の宣伝使は何うなつたのだらう。どうも腑に落ちぬ行動ぢやないか』 鷹彦『貴様は未だソンナ事を言ふから駄目だ。何うならうと、斯うならうと神様の御経綸が、吾々の如き一兵卒に分つてたまるかい。日の出別命がフル野ケ原の魔神を平げると仰有つた以上は、屹度先へ行つて水も漏らさぬ経綸をしてござるに違ひないワ。ソンナ事は吾々の容喙すべき所で無い。サアサア皆一時に用意だ用意だ』 音彦『ヤア鷹サン、待つて下さい。腹の虫が休戦の催促を頻りに志てゐます』 鷹彦『オーさうだつた。各自に腹を拵へねばならぬ』 と言ひつつ固きパンを出して、各自に噛じり乍ら旅装を整へ、西北を指して、宣伝歌を歌ひ歌ひ進み行く。 鷹彦『サア是からが戦場だ。孰れもしつかり戦闘準備に取りかかれよ。音に名高いフル野ケ原の醜の窟だからのう』 岩彦『其の窟には、一体ドンナ魔神が居るのだ』 鷹彦『夫れは種々雑多の悪魔が棲息しとるのだ。夜前斥候隊が来ただらう』 岩彦『ウン彼の化か。ナーニアンナ奴位は屁のお茶だ』 音彦『油断大敵だ。小敵たりとも侮るべからず、大敵たりとも恐るるべからず。機に臨み変に応じ、変幻出没、進退自由の大活動を吾々は開始するのだ』 鷹彦『アヽ神様は能く仕組まれたものだ。醜の窟には六個の入口がある。其処へ六人と云ふのだから恰度都合がよい。各自に其の一つ宛の穴を担当して進入するのだナア』 岩彦『それは面白からう、俺が一番槍の功名手柄。併し乍ら肝腎の大将が見てゐて呉れねば、働きごたへが無いやうな気がするぢやないか』 鷹彦『貴様はそれだから未だいかぬのだ。大将が見て居らうが、居らうまいが、自分の職務は力一杯全力を傾注してやればよいのだ』 岩彦『それでも蔭の舞、縁の下の踊りになつては骨折り甲斐が無いやうな気がする。ナア梅公、音公』 音彦『イヤ吾々はソンナことは決して思はぬ。どうせ碌な勝利は得られないのだから。下手なことをして居る所を大将に見られては却つて恥かしい。兎も角獅子奮迅の勢を以て力限りのベストを尽し、能ふ限りの奮戦をやるのだ』 梅彦『オイ鷹彦、何うだ。此辺で一寸休息をして各自に策戦計画を定め、悠乎と行かうぢやないか。化物退治は夜の方が却つて都合がよいかも知れぬぞ』 岩彦『さうだ。昼の化物は見たことが無い。化物の留守に行つた所で変哲が無いから。時機を考へて六方から突撃を試みると云ふことにしようかい』 一行六人は風に吹かれ乍ら勢よく進み行く。前方を見れば原野の中央に屏風の如く長く衝立てる岩山あり、その岩山の頂に一人の人影が立ちゐる。 鷹彦『オイ皆の者、彼の醜の窟の上に何が居るか一寸覗いて見よ。あれは夜前姿を隠された日の出別の宣伝使に間違ひ無からう。吾々の行くまでにチヤンと悪魔を封じて遁走せないやうな計略と見ゆる。サアもう大丈夫だ。急げ急げ。オイ岩公、もうウラル教は思ひ切つただらうな』 岩彦『思ひ切つたも切らぬもあるかい。テンでウラル教ナンか、夢にも思つたことは無いわ』 鷹彦『アハヽヽヽ、勝手な奴だ。マア何うでもよい。駆歩だ』 一二三と言ひ乍ら、醜の窟を指して駆けついた。日の出別は岩上に立つて声も涼しく宣伝歌を歌ひゐる。 日の出別『神が表に現はれて善と悪とを立別ける 此世を造りし神直日心も広き大直日 直日の神の分霊此世の曇りを吹き払ふ 日の出の別の宣伝使雨もフル野ケ原を越え 醜の窟に来て見れば出口入口塞がりて 百草千草生茂り何処をそれと白真弓 射向ふ的もあら風に吹かれて立てる此の窟 岩より堅き鋭心の誠心を振り起し フサの天地を曇らせし八岐大蛇の分霊 醜の曲津を言霊の珍の気吹に払はむと 待つ間程なく鷹彦や巌の身魂のあと五人 漸く此処に現はれて曲の砦に立ち向ふ あゝ勇ましや勇ましや神の力の開け口 出口入口わからねど草をわけても探し出し 言向け和さで置くべきか言向け和さで置くべきか 朝日は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも たとへ大地は沈むとも神に任せし此の身体 神の御ため世のために捨てて甲斐あるわが生命 来れよ来れいざ来れ葎茂れる岩の戸を 隈なく探りし其上に天津祝詞の太祝詞 声も高天と詔りつれば天津御神は久方の 天の岩戸を押開き八重雲四方に吹きわけて 誠の願を聞し召し国の御祖の大御神 国治立の大神に随ひ給ふ百神は 山の尾の上や川の瀬の伊保理をさつと掻きわけて 吾が祈言を悉く聞し召すらむ三五の 神の教の隈も無く光り輝くフル野原 払ひ清めむ曲津霊の醜の曲業逸早く 汝が心の真寸鏡照して醜の正体を 現はす時ぞ来りけり現はす時ぞ来りけり あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ』 と声も涼しく歌ひ興じつつありけり。鷹彦一行は漸くにして此場に安着したり。 岩彦『ホー貴使は日の出別の宣伝使様、夜前は大変にお先へ御無礼を致しました』 日の出別『イヤ御無礼はお互ひだ。昨夜は別に変つたことはなかつたかな』 岩彦『ヤー別に大したことはありませぬ。曲津神の斥候隊が一寸やつて来て、岩彦の言霊の気吹に吹き散らされ、鼠のやうに小さくなつて狐鼠々々と消えて了つたのですよ。イヤモウ悪神と云ふものは弱いものです』 日の出別『それは結構だつた。併し一寸腰を抜いたでせう』 岩彦『ヤー此奴は変だ。日の出別と見せかけて昨夜の化助奴が、又此処に作戦をやつて居るのぢやなからうか。ハテナ合点の行かぬ事もあればあるものだ。オイこらお化、馬鹿にするない。貴様日の出別命に化けて居よるが、其の手は喰はぬぞ。化物の証拠には昨夜俺が腰をぬかしたことを知つて居つたぢやないか。本当の日の出別は吾々を置去りにして、お先へ御免とも何とも言はずに、ドロンと其場から消滅して了つたのだ。大体が日の出別からして怪体な代物だが、彼奴は貴様のやうに化けないから安心だ。コラ夜前の化けの同類、夜前は夜分だつたから一寸ねむた目に相手になつてやつたのだが、今日は真剣だぞ。じたばた致してもモウ敵はぬ百年目、サア尋常に兜を脱ぐか、返答は如何ぢや』 日の出別『キヤツハヽヽヽ』 岩彦はトンと腰を下して、 岩彦『キヤツキヤツ、キヤツハヽヽとは、そりや何吐かす。合点の行かぬ脱線だらけの笑ひ声をしよつて、キヤツハヽヽヽキユツフヽヽのとは何の態だ。奴畜生の化けた証拠には、拗音や鼻音を使用してゐるぢやないか』 日の出別『アハヽヽヽ、日の出別は何吐かすと云ふが、さう云ふお前は腰ヌかす』 岩彦『吐かすない吐かすない、黙つて居れば何を吐かすかわかつたものぢやない。ヤイ一同の者、ぬかるな。此奴も変智奇珍だぞ』 鷹彦『アハヽヽヽ、オイこら岩公、貴様はよつぽど瓢六玉だ。彼の立派な日の出別命様が化物に見ゆるのか』 岩彦『見えいでかい。定つた巾着、揚げたお豆腐。何ほど俺をおどかさうと思つたつて豆腐に鎹、糠に釘だ。坊主鉢巻でチツトもこたへないのだ。俺は岩より固い岩サンだ。化物の百匹や千匹位群をなして押寄せ来るとも何のものかは。ウラル教のオツトドツコイ三五教の誠の神の言霊の気吹に依り、気吹き払ひ給へ清め給へと申すことの由を天津神国津神八百万の神等共に小男鹿の耳振り立て聞し召せと、畏み畏み申す。ポンポンだ』 日の出別『アハヽヽヽ、相変らず面白い奴だ。オイ岩彦、本当だ、本物だ。日の出別に間違ひは無いぞ。安心せい』 岩彦『サーその弁解が気に喰はぬ。何でも嘘を言ふ奴はうまい事弁解をするものだ』 音彦『オイオイ、貴様疑ひが深過ぎるぢやないか。さう深はまりしては物がさつさと片付いて行かぬ。後家婆サンの宿換へのやうに何でも手軽に片付けるものだよ』 梅彦『ヤー昨日と云ひ今日といひだ』 駒彦『本当に皆目一体全体訳がわからぬやうになつて来た。化物退治にやつて来て何だか化物に玩弄になつてゐるやうな気がする、又夢ではあるまいか』 鷹彦『夢々疑ふ勿れ。夢ではないぞ、現ではないぞ』 岩彦『イヨー此奴又怪しくなつて来たぞ。矢張フル野ケ原の醜の窟式だ』 日の出別は拍手を打ち声も涼しく天津祝詞を奏上する。其の声は天地六合に鳴り渡るが如く、忽ち雲の戸破れて日の大神は西天に温顔を現はし、一行の迷ひの雲をさらりと解き給ひける。 ここに岩彦以下の宣伝使は始めて真正の日の出別命なることを確認し、いよいよ黄昏を期してこの岩窟に進入することとなりにける。 (大正一一・三・一七旧二・一九外山豊二録) |
|
31 (1613) |
霊界物語 | 14_丑_小鹿峠(弥次彦・与太彦) | 03 鷹彦還元 | 第三章鷹彦還元〔五五三〕 鷹彦、梅彦、亀彦は心の堅き岩彦の改心を喜びて、駒彦諸共、駒に鞭打ち堂々と小鹿峠を登り行く。爪先上りの山道を神の教に夜の道、早頂上に登り着いた。 鷹『御蔭で、小鹿峠を見極めました。ご一同ここで馬を休息させて参りませうか』 と一同は鷹彦の提議に満場一致賛意を表はし馬よりヒラリと飛び下りた。 岩『何れも方、余りの急坂でお疲れでしたらう。然し、音彦の宣伝使は居ませんなア』 梅『アヽさうですな、どうしたのでせう。途中に馬でもへたつたのではありますまいか、真逆あれほど大きな声で呼んだのだから聞えぬ筈もなからうし、目の醒めない道理も無い。之は的切り落馬されたのではありますまいか。弥次、与太の二人も居ませぬなア』 岩『ナニ大丈夫ですよ。一人なれば心配もして見なくてはならぬが、三人連だから滅多に紛失する心配もありませぬワ、アハヽヽヽ』 亀『何だか私は気懸りでなりませぬワ、途中でウラル教の目付役に打つかつて苦戦して居られるのではありますまいか。音彦の宣伝使は温順で胆力があるから、如何なる難関も容易に切り抜けられませうが、新参者の弥次彦、与太彦が要らぬ空元気を出して一悶着やつて居るのではあるまいかと気が気でなりませぬ』 駒『亀サン貴方もさう思ふか、私も同感だ、何だか気懸りでなりませぬワ。なんでもこの辺はウラル教の根拠地だと云ふ事です。ウラル山アーメニヤの驍将共は大分フサの国に集まつてゐると云ふ事ですから油断は出来ませぬよ。鷹彦サン、御苦労だが貴方の特能を現はして、一寸鷹に還元して、偵察をして下さるまいか。大丈夫と云つても充分の安心は出来ませぬからナア』 鷹『承知致しました。暫く待つて下さい』 と忽ち霊鷹と変じ中天高く姿を隠した。 後に四人は此処に神言を奏上し、過来し方の物語りに時の移るのも知らなかつた。東の空は茜晒して、日の大神の影、タカオ山脈の頂より登りたまふ。 岩『アヽもう夜が明けた。鷹彦さまはどうだらう。木乃伊取りが木乃伊になつたのではあるまいかなア』 梅『真逆ソンナ事はあるまい。音サンの事だから今に何とか音づれがありませう』 駒『本当に音サンの連がないのは音づれないのと同じ事、道中が淋しい様な気がする』 斯る処へ、四人の男覆面のまま峠を西方より登り来たり、 甲『ヤア居るぞ居るぞ、而も三五教の宣伝使が四人だ。オイ八公、貴様は早く源五郎の大将に報告して沢山の捕手を差し向ける様にして呉れ。吾々はそれ迄此処に彼奴等の遁げない様に監視をして居るから』 と小声に囁いて居る。 岩『オイ其処へ来るのはウラル教の捕手ぢやないか、皆サンお早うから御苦労様だなア、緩り一服なとしなさい。海山の話しを致しませうよ』 梅『斯う峠の頂きから四方を見晴らしもつて、世間話をするのも余り悪くはありませぬよ。さう恟々として落着かない態度をせずに、吾々と一所にどつかと腰を下して御一服なさいませ』 甲『ヤアその方等は紛ふ方なき三五教の宣伝使だなア。吾々は汝等の察する如く、ウラル教の捕手の役人だ。最う斯うなる以上は百年目だ、たとへ神変不可思議の術を使つて天を翔り地を潜る共、此方にはまた此方の不可思議力がある、サア神妙に手を廻せ』 岩『アハヽヽヽヽ、仰有ります哩。鉛で拵へた仁王サンのやうに四角四面な顔をして、さう頑張るものぢあない。同じ天の神様の氏子だ、持ちつ持たれつ、互に助け助けられ、この世に生きて栄えて、誠の神の御用を致す尊い人間同志だ、マア緩りと一服なさるがよかろう』 乙『この期に及んで要らざる繰言、聞く耳持たぬぞ。貴様は三五教といふ邪教を天下に宣伝する曲津神だ、それ丈の悟りがあるなら何故そのやうな教を信ずるのだ。巧言令色致らざるなく、乞食の虱ぢやないが口で殺さうと思つたつて、ソンナ事に迂濶々々乗る六サンぢやないぞ。エヽグヅグヅ吐さずと従順に手を廻せ、ウラル山の砦に拘引してやらうか』 駒『アハハヽヽヽ、マアマア、マアこの日の長いのに朝つぱらから、さう発動をなさると草臥れますよ。マア鎮まつて一服しなさい。吾々が丁寧に鎮魂でもして上げませう』 六『ナヽ何を吐しよるのだ、その鎮魂が気に食はぬのだ。グヅグヅ吐すと貴様の命は瞬く間に沈没だぞ』 亀『何とウラル教といふ教は荒い言葉を使ふ教理だな、恰で雲助サンと間違へられますよ。言霊の幸はふ世の中、尠とは丁寧な言葉をお使ひなさつたら如何ですか』 六『喧しい哩。貴様の様に表は蚤も殺さぬ様な態度を装ふて、鬼か大蛇か狼か獅子か山犬かといふ様な表裏反対の教とは雲泥の相違があるのだ。温和い顔をして悪念を包蔵する奴程、この世の中に危険な者はない。外面如菩薩、内心如夜叉、悪鬼羅刹の化の皮今にヒン剥いてやるから覚悟を致せ。吾々ウラル教の御方は上から見れば荒削りの仁王サンの様だが、心の綺麗な事は竜宮の乙姫サンか天教山の木の花姫が素足で逃げ出す様な綺麗な御霊の持主計りだぞ。余り見違ひをして貰ふまいかい』 岩『それはそれは結構な教ですな、しかしながら霊肉一致といつて心の色が外に表はれるものだ。心が和ぎ美しければ其人の言行はやつぱり柔かく美しくなくてはならぬ。黄金の玉を襤褸で包むと云ふ道理は無い筈だ』 六『エヽ好うツベコベ団子理窟を捏ねる奴だナ。今の世の中の奴は、口許り発達しやがつて、男までが女のやうな言葉を使ひ、髪に油をつけ洒落る時節だ。俺らの様な、天真爛漫素地その儘の人間が鉦や太鼓で探し廻つた処でさう沢山はありはせぬぞ、悪魔は善の仮面を被つて好う誑らかすものだ。貴様等もその伝だらう、言ふべくして行ふべからざるものは教の道だ。グヅグヅ云はずに、もう斯うなつちや仕方が無い、因縁づくぢやと諦めてこの方の仰せに服従致せ』 岩『アハヽヽヽヽ、ウラル教は随分理窟は極めて巧妙に仰有りますな、否、聞いて見なくては分からぬものだ、誰も世の中の人間は食はず嫌ひが多くて困る。お前の云ふのが本当なら吾々もウラル教を信ずるのだ。然し乍らウラル教は言行相反する邪教だ。実の事を云へば吾々は元はウラル教の宣伝使だ、竜宮の一つ島に渡つて宣伝をし乍らつい一月前までウラル教の宣伝使を勤めて居たのだ。然し乍ら吾々は三五教を聞いてウラル教と比較して見れば実に天地霄壤の差ある事を心の底より悟つたのだ。要するに何程教が立派でも行ひが出来なくては却て社会に害毒を流す様になる。三五教は不言実行の教だよ。何ほど立派な教でも宣伝使にその人を得ざれば、折角の金玉を泥濘に埋没した様なものだ。お前たちもどうだ、今から三五教に帰順して了つたが後生の為だらう否この身このまま無限の安心と光栄に浴する事が出来るであらう。三五教は現当利益の教理だよ』 六『ヤイヤイ皆の奴、どう仕様かな。この四人の宣伝使は元はウラル教の宣伝使だと云ふ事だ。吾々も茲に到つて沈思黙考の余地は充分に存するではないか』 甲『今更らしい事を云つたつて仕方がないぢやないか。今に八公の報告に依つて、源五郎の大将が数多の部下を引連れ押し寄せて来るといふ手筈になつて居るのだ。コンナ処で、三五教になろうものなら、それこそ大変だぞ。何、構ふものか、弱音を吹くな、たとヘウラル教が悪の教であらうと、毒食はば皿まで嘗ぶれといふ事がある、行く処まで行くのだよ』 六『アヽ此処はサル山峠の頂上だ、此処へ降る雨は紙一枚の違ひで、一方は東へ流れ落ちる、一方は西へ流れ落ちる、善悪正邪の分水嶺だ。吾々も一つ此処で向背を決せねばなるまい』 この時、天空より舞ひ下つた一羽の霊鷹は見る見る身体膨張し、一丈許りの羽を拡げてバタバタ羽ばたきした。 岩『アヽ鷹様か、音彦の様子は如何に』 鷹彦は羽を納め元の姿となり汗を拭き乍ら、 鷹彦『御連中、大変ですよ。音彦の宣伝使はウラル教の大目付、鷲掴の源五郎の為に包囲攻撃をされ、命からがら小鹿峠の方面に遁れ去つたといふ事です。而うして源五郎は自分の馬の下敷となつて腹を破り悶死したさうです。八といふ男が一隊を引き連れて音彦様の後を追跡したと云ふ事です』 六『そりや大変だ、八といふ名は沢山にあるが源五郎といふ大将の名は一人だ、そうすれば吾々の大将は討死したのか、エヽ残念ぢやない哩、残念なのは源五郎御自身だ。常平生からウラル彦の大将を笠に着よつて、虎の威を藉る古狐に罰は覿面、死様にも種々あるに、自分の乗つた馬の背中に押へられ死ぬとはよくよく因果な者だナア。ヤア最う安心だ、何時もいつも吾々を圧迫しよつた報いだ。モシモシウラル教の元の宣伝使、三五教の新米のヌクヌクの宣伝使の御歴々さま、私も三五教に帰順いたしますワ』 岩『要らぬ事を沢山云ふものぢやない。旧だの新だのホヤホヤだのと、それだからウラル教は口が悪いと云ふのだ。帰順するならするで、ベンベンダラリと前口上を並べなくても好いぢやないか。モシモシ鷹彦さま、この男は今お聞きの通り帰順すると言ひました。貴方のお留守中にコンナ勝利品を得ました、ホンの一服休みに一人の帰順者を得たのですから随分豪勢なものでせう』 鷹『相変らず、喇叭吹きがお上手ですなア』 六『オイオイ皆の奴、小頭の六サンが帰順したのだから、貴様たちも俺に殉死だぞ。異議はあるまいな』 一同『あーりーがー度く存じませぬワイ』 六『なんだ、曖昧ぢやないか、しつかり云はぬかい』 辰『お前の云ふ通り、善悪正邪の分水嶺だ、一雨降るまで待つて呉れ。決着が着かぬ哩』 六『執着心の深い奴だナア、置け置け。人間は淡白とするものだ。三五教の宣伝使の音彦や二人の伴のやうに、吾々に両方から包囲攻撃されて深い谷間に身を躍らして飛び込み冥土の旅をした事を思へば屁でもない事だ。牛を馬に乗り換へる丈の事だ。とかく人間は諦めが肝腎だよ。断の一字は男子たるものの必要欠くべからざる宝だからのう』 岩『モシ六サンとやら、音彦が谷へ飛び込んで死んだと云ふのは、そりや本当かい』 六『私も三五教に帰順した以上は、何、嘘を申しませうか、誠も誠、現に私が実地を目撃したのですもの』 駒『そりや大変だ、こりや斯うして居られぬ哩』 六『モシモシ三五教は刹那心ですよ。過ぎ越し苦労はお止しなさい。もう今頃は三途の川の婆アに着物を強請られて渡す着物は無し当惑して居る最中ですだらう。何ほど泣いても悔んでも、一旦死んだ人は呼べど叫べど何の答へもないぢやくり、泣いて明石の浜千鳥』 岩『オイオイ六、ろくでも無いことを云ふな、冗談処ではないワ』 六『六道の辻で六サンが………と云ふ所ですワイ』 岩『エヽソンナ冗談処かい、神言を奏上してせめては音彦一同の冥福を祈り、幽界宣伝の加勢をして上げねばなるまい。……頓生菩提音彦、弥次彦、与太彦の御魂、神の御国に幸あれよ。アーメン、ソーメン、ドツコイ南無妙法蓮、陀仏、遠神笑みため、惟神祓給へ助け給へ、妙々』 鷹『アハヽヽヽヽ、岩彦サン、ソンナ混雑した祝詞がありますか』 岩『イヤもう親密なる友人の訃を聞いて心も心ならず、何れの神様を祈つたら音彦の御魂サンを守つて下さらうかと一寸麻胡つきました。然し乍ら之が人間の真心ですワ』 亀『岩彦サンは好う麻胡つく方だなア、シヅの窟で私たちの骨なと肉なと拾ふてやろうと仰有つた時のお麻胡つき方そつくりだワ』 岩『アハヽヽヽヽ、一寸余興に洒落て見ました』 駒『これは怪しからぬ、友人の訃を聞いてそれ程可笑しいですか』 岩『アハヽヽヽ、可笑しい可笑しい、苟くも三五教の宣伝使たるもの、尊き神の御守りある以上敵に包囲攻撃されたと云つて、自ら谷へ飛び込んで自殺を遂げると云ふ事がどうしてありませう。屹度助かつて居ると、吾々の何だか琴線に触れる様な心持ちがして来ましたアハヽヽヽ』 遽に聞ゆる人馬の物音、五人の宣伝使は一斉に立ち上り音する方を眺むれば、数百人のウラル教の捕手の役人、各自に柄物を携へて此方に向つて登り来る。 岩『ヨー、お出たお出た』 六公『サア面白い、一行の宣伝使様、此処で六公が三五教に帰順しました心底を現はして見せませう』 と捻鉢巻をしながら、六公は峠の真ん中に大手を拡げ大音声、 六公『其方は悪逆無道の鷲掴の源五郎か、自分の馬に押し潰されて死んだ奴めが。未だ娑婆が恋しいと見えて数多の亡者を引き連れて、三五教の宣伝使を召し捕むとは片腹痛い。サアこれから六サンが三五教に寝返り打つた初陣の活動、吾が言霊の神力に往生いたせ。アーオーウーエーイー』 この声終ると共に、大将源五郎の騎馬の姿も、数多の軍卒の影も忽ち煙の如く消え失せて、後には、尾の上を渡る松風の音が聞ゆるのみ。 六『アハヽヽヽヽ、何と源五郎の奴、執念深い奴だ。亡者になつても未だやつて来よる。しかし乍ら、三五教のお蔭で亡者隊は、モジヤモジヤと煙となつて消え失せたり。ヤア宣伝使御一同様、何卒これを証拠に貴方のお弟子にして下さいませ。お荷物でも持たして頂きませう』 岩『自分の荷物は自分が持つべき物だ。吾々は人の力を借りるといふ事は絶対に出来ない。六サンは六サンの荷物を持つて随いて来なさい』 六『御存じの通り、私の荷物は此の槍一つで御座ります。もう斯うなる以上は槍の必要もござりませぬ。コンナ物は谷底へやり放しにして、是れから大いに、神様の宣伝をやりませう。やり繰上手の六サンは一つ足らぬ許りで何時も七つやの御厄介、是からは、三五教の御厄介になりませう』 岩『アハヽヽヽヽ、滑稽諧謔口を突いて出ると云ふ風流人だナ、面白い面白い。お前の荷物と云ふのは外でもない、まだ一匹残つてゐる、四足の副守護神だよ』 六『エエソンナ物が居りますか』 岩『居るとも居るとも、その副サンが滑稽諧謔の主だ。然し乍らお正月言葉許り使つて居る宣伝使中には、時に取つては副サンも必要だ。或る時機までは大切に背負つて行きなさい』 六『六の身体から一つ取つたら五つになります。五ツの御霊の宣伝使にして下さいな』 岩『宜しい宜しい、もう暫らく副サンを保留して置くんだよ』 遽に一陣の強風吹き来ると見る間に、馬の蹄の音、何処ともなく響いて、木の間に現はれた眉目清秀の宣伝使あり。 鷹『貴方は、日の出別の宣伝使様、能う来て下さいました。一同の者がどれ丈け、憧憬れて居つた事ぢやか知れませぬワ』 日『ホー皆サンご苦労でした。しかし音彦、外二人は、コシカ峠においてウラル教の捕手の為めに包囲攻撃されて、進退維谷まり、千仭の谷間に身を投じて気絶をしてゐます。時遅れては一大事、サアサア皆サン早くお支度をなされ、一鞭当ててコシカ峠の溪間に、宣伝使を救ひに参りませう』 一同『ヨーそれは大変』 と云ふより早くヒラリと馬に跨り、九十九折のサル山峠の坂道さして『ヤア六サン来れ』と一目散に日の出別の神に従ひ走り行く。 (大正一一・三・二三旧二・二五藤津久子録) |
|
32 (1642) |
霊界物語 | 15_寅_顕恩郷/スサノオの経綸/高姫登場 | 10 神楽舞 | 第一〇章神楽舞〔五七七〕 神素盞嗚尊の治食す大海原の国々島々は、国治立尊、野立彦の神と現はれて、埴安彦命に神言依さし、黄金山下に現はれて三五教を開き給ひ、豊国姫尊は野立姫神と現はれ、神素盞嗚尊の水火を合して、埴安姫命となり、三五教を経緯より天下に宣伝し、神人皆其徳に悦服し、天が下四方の国は一時は無事泰平の神国と治まりけるが、天足彦、胞場姫の霊の邪気より現はれ出でたる、八頭八尾の大蛇を始め、金狐、悪鬼諸々の醜女、探女は油の浸潤するが如く、忍び忍びに天下に拡がり、邪悪充ち、荒ぶる神の訪ふ声は、山岳も揺ぐ許り、河海殆ど涸れなむとす。 神素盞嗚大神は、大海原の国を治めかね、熱き涙に咽ばせ給ふ折しも、御父神なる神伊邪諾大神、尊の前に現はれ給ひ、 神伊邪諾大神『爾は何故に吾が依させる国を守らず、且女々しくも泣きつるか』 と言葉鋭く問はせ給ひければ、神素盞嗚大神は、 神素盞嗚大神『われ、大神の勅を奉じ、昼夜孜々として神政に心力を尽すと雖も、地上の悪魔盛にして、容易に帰順せしむ可らず。到底吾等の非力を以て、大海原の国を治むべきにあらず、吾は是より根の堅洲国に至らむ』 と答へ給ひぬ。此時父伊邪諾大神は、 伊邪諾大神『然らば汝が心の儘にせよ、この国には住む勿れ』 と言葉厳しく詔らせ給ひぬ。茲に素盞嗚尊は已むを得ず、母の坐します根の堅洲国に至らむと思はし、天教山の高天原に坐ます姉の大神に暇乞ひをなし、根の堅洲国に至らむと、雲霧押分けて、天教山に上らせ給ふ。その勢当るべくもあらざる如く見えければ、御姉の大神は、いたく驚かせ給ひ、 天照大御神『吾が弟神の此処に上り来ませるは、必ず美はしき心ならざらめ、此高天原を奪はむとの汚き心を持たせ給ふならむ』 と部下の神々に命じ、軍備を整へ、防戦の用意に掛らせ給ひける。 神素盞嗚尊は、姉大神の斯くも深き猜疑心に包まれ給うとは夢にも知らず、コーカス山を立出でて、天磐船に乗り、天空を翔りて、天教山に下らせ給ふ時、姉の大神は伊都の竹鞆を取佩ばして、弓腹振立て、堅庭に現はれ給ひ、淡雪の如く、土石を蹶散らし、勢猛く弟神に向ひ、高天原を占領するの野心ある事を厳しく詰問されたりける。 茲に神素盞嗚尊は、案に相違の顔色にて答へ給ふよう、 神素盞嗚尊『吾れは、貴神の思さるるが如き汚き心は露だにもなし、父大神の御言もちて、吾泣く有様を言問はせ給ふが故に、応へ難くて、吾れは母の坐します根の堅洲国に行かむと思ふ、恋しさの余り泣くなりと答ふれば、父大神は、然らば汝が心の儘にせよと仰せあり。母の国に行かむとするに先だち、姉大神に一目遭ひまつらむと思ひてこそ上り来つれ、決して怪しき心なし。願はくば姉の大神よ、吾が心の清き事を悟り給へ』 と涙と共に答へ給ひぬ。 茲に姉大神は、 天照大御神『然らば汝が心の清き事、何を以て証明せむ』 と詰り給へば、弟神は、 神素盞嗚尊『吾が持てる十握の剣を姉の命に奉らむ、姉の命は御身にまかせる八尺の曲玉を吾にわたさせ給へ』 と請ひ給へば、姉大神も諾かせ給ひて、玉と剣の交換の神業を始め給ひ、天の安河を中に置き各も各も天の真名井に振り滌ぎ、佐賀美にかみて吹き棄ち給へば、素盞嗚尊の神実なる十握の剣より三柱の女神現はれ給ひ、姉大神の纒せる八尺の曲玉より五柱の男神現はれ給へば、ここに神素盞嗚大神の清く、若く、優しき御心現はれ玉へり。姉大神は始めて覚り、 天照大御神『此三柱の女神は、汝が霊より現れませるやさしき瑞の霊なり。また五柱の男神は、あが霊より生れませる雄々しき男神なり』 と了解け給ひぬ。 ここに姉大神の疑は全く晴れたれども、未だ晴れやらぬは、神素盞嗚大神に仕へまつれる八十猛の神々の御心なりき。吁、八十猛の神の無謀なる振舞に依りて、天照大御神は、天の岩戸の奥深く隠れ給ひ、再び六合暗黒となり、昼夜咫尺を弁ぜず、万妖悉く起り、草の片葉に至る迄、言問ひさやぐ悪魔の世を現出したりける。茲に高天原に坐します、思慮分別最も深き神と聞えたる、金勝要の大神の分霊思兼神は、八百万神を天の安の河原辺に、神集へに集へ、神議りに議りて、再び日の大神の御出現を請ひ奉る其神業を行はせ玉ひける。 三五教の道を伝へたりし数多の宣伝使は、天の安の河原に集まり来り、尚も進んで天教山の天の岩戸の前に現はれ給ひ、五伴男の神、八十伴男の神を始め八百万の神達、天津神籬を立て、真榊を囲らし、鏡、玉、剣を飾り、出雲姫命は天の鈿女命と現はれて、岩戸の前に桶伏せて、一二三四五六七八九十との天の数歌うたひ上げ、舞ひ狂ひ給ひし其可笑しさに、八百万の神は思はず吹き出し、常暗の世の苦しさも忘れて、笑ひ興じ給へば、天照大神も岩戸を細目に押開き給ふ折しも、手力男神は岩戸を開き御手を取りて引出しまつり、六合の内、再び清明に輝きわたる事を得たり。ここに八百万の神は此度の事変を以て神素盞嗚尊の罪に帰し、手足の爪まで抜き取りて、高天原を神退ひに退ひ給ひしなり。是より神素盞嗚大神は、今迄海原の主宰神たる顕要の地位を棄て、心も細き一人旅、国の八十国、島の八十島にわだかまり、世人を損ふ八岐大蛇の悪神や、金狐、悪鬼の征服に向はせ給ひける。嗚呼、今後の素盞嗚大神の御身は如何になり行くならむか。 (大正一一・四・二旧三・六松村真澄録) |
|
33 (1643) |
霊界物語 | 15_寅_顕恩郷/スサノオの経綸/高姫登場 | 11 大蛇退治の段 | 第一一章大蛇退治の段〔五七八〕 『故、退はれて、出雲の国の肥河上なる鳥髪の地に降りましき』(古事記の大蛇退治の段) 出雲国は何処諸の国と云ふ意義で、地球上一切の国土である。肥河上は、万世一系の皇統を保ちて、幽顕一致、神徳無窮にして皇朝の光り晴れ渡り、弘り、極まり、気形透明にして天体地体を霊的に保有し、支障なく神人充満し、以て協心戮力し、完全無欠の神政を樹立する至聖至厳至美至清の日本国といふ事なり。 鳥髪の地とは、十の神の顕現地と云ふ事にして、厳の御魂、瑞の御魂が経と緯との神業に従事し、天地を修斎し玉ふ神聖の経綸地といふことなり。要するに世界を大改良せむ為めに素盞嗚尊は普く天下を経歴し、終に地質学上の中心なる日本国の地の高天原なる至聖地に降臨し玉ひたるなり。明治三十一年の秋八月に、瑞の御魂の神代として高座山より神退ひに退はれて綾部の聖地に降りたるは、即ち素盞嗚尊が、一人の選まれたる神主に憑依し給ひて、神世開祖の出現地に参上りて神の経綸地たることを感知されたるも同様の意味なり。古事記の予言は古今一貫、毫末も変異なく、且つ謬りなき事を実証し得るなり。 『此時しも箸其の河より流れ下りき』 ハシの霊返しはヒなり。ヒは大慈大悲の極みなり。ハシの霊返しのヒなるもの、ヒノカハカミより流れ来たると云ふ明文は実に深遠なる意義の包含されあるものなり。又箸は凡てを一方に渡す活用あるものにして、川に架する橋も、食物を口内へ渡す箸もハシの意味に於ては同一なり。悪を去り善に遷らしむる神の教のハシなり。暗黒社会をして光明社会に改善せしむる神教もハシなり。故に御神諭にも、綾部の大本は世界の大橋であるから、此大橋を渡らねば、何も分りは致さむぞよ云々とあるも、改過遷善、立替立直しの神教の意味なり。その箸は肥の河より流れ下りきとは、斯る立派な蒼生救済の神教も、邪神の為に情無くも流し捨てられ、日に日に神威を降しゆく事の意味なり。是を大本の出来事に徴して見るに、去る明治三十一年に瑞の御魂の神代として十神の聖地に降りたる神柱を、某教会や信者が中を遮り、以て厳の御魂、瑞の御魂の合致的神業を妨害し、瑞霊の神代を追返し、彼等の徒党が教祖を看板として至厳至重なる神教を潜め隠し、某教会を開設したる如き状態を指して『ハシ其の河より流れ下りき』といふなり。 『於是須佐之男命其の河上に人有りけりとおもほして尋ね上りて往まししかば老夫と老女と二人在りて童女を中に置きて泣くなり』 茲に顕幽両界の救世主たる須佐之男命は、肥の河上なる日本国の中心、地の高天原に神人現はれ、世界経綸の本源地有りと御考へになり尋ねて御上りありしが、変性男子の身魂現はれて、国家の騒乱状態を治めむと血涙を吐き乍ら昼夜の区別なく、世人を教戒しつつありしなり。二人といふ事は、艮の金神様の男子の御魂と、教祖出口直子刀自の女子の身魂とが一つに合体して神業に従事し玉へると同じ意義なり。ヒトとは霊の帰宿する意義で人の肉体に宇宙の神霊憑宿して天地の経綸を遂行し玉ふ、神の生宮の意なり。老夫と老女と二人とあるは女姿男霊の神人、出口教祖の如き神人を意味するなり。 『童女を中に置きて泣なり』とはオトメは男と女の意味にして、世界中の老若男女を云ふ。又老と若ともなり、現在の世界の人民を称して老若男女と云ふ。霊界にては国常立大神、顕界にては神世開祖出口直子刀自の老夫と老女とが、世界の人民の身魂の、日に月に邪神の為に汚され亡ぼされむとするを見るに忍びず、手を尽して足を運びて救助せむと艱難辛苦を嘗めさせられ、天地の中に立ちて号泣し給ふことを、童女を中に置きて泣くなりと云ふなり。 亦神の御眼より御覧ある時は世界の凡ての人間は、神の童子なり女子なり。故に世界の人民は皆神の童女なる故、人民の親がその生みし子を思ふ如くに、神は人民の為に昼夜血を吐く思ひを致して心配を致して居るぞよ、と御神諭に示させ給へる所以なり。亦オトメの言霊を略解する時は、 オは親の位であり、親子一如にして、大地球を包む活用であり。 トは十全治平にして、終始一貫の活用であり。 メは世を透見し、内に勢力を蓄へて外面に露はさざる意義なり。 之を約むる時は、日本固有の日本魂の本能にして、花も実もある神人の意なり。 『汝等は誰ぞと問ひ賜へば、其の老夫僕は国津神大山津見神の子なり、僕が名は足名椎、妻が名は手名椎、女が名は櫛名田比売と謂すと答す』 明治三十一年の秋瑞の御魂の神代に須佐之男神神懸したまひて綾部の地の高天原に降りまし、老夫と老女の合体神なる出口教祖に対面して汝等は誰ぞと問ひたまひし時に、厳の御魂の神代なる教祖の口を藉りて僕は国津神の中心神にして大山住の神也。神の中の神にして天津神の足名椎となり手名椎となりて、天の下のオトメを平かに安らかに守り助けむとして、七年の昔より肥の河上に御禊の神事を仕へ奉れり。又この肉体の女の名は櫛名田姫と申し、本守護神は禁闕要の大神なりと謂し玉ひしは、以上の御本文の実現なり。クシナダの クシは神智赫々として万事に抜目なく一切の盤根錯節を料理し、快刀乱麻を断つの意義なり。 ナは、万物を兼ね統べ、能く行届きたる思ひ兼の神の活用なり。 ダは、麻柱の極府にして大造化の器であり、対偶力であり、主従師弟夫妻等の縁を結ぶ神なり。 要するに、櫛名田姫の守護厚き天壌無窮の神国、大日本国土の国魂神にして、神諭の所謂大地の金神なり。 『亦、汝の哭由は何ぞと問ひたまへば、吾が女は八稚女在りき。是に高志の八岐遠呂智なも、年毎に来て喫ふなる。今その来ぬべき時なるが故に泣くと答白す』 以上の御本文を言霊学の上より解約すると、吾が守護する大地球上に生息する、息女即ち男子や女子は、八男と女と云つて、種々の沢山な神の御子たる人種民族が有るが、年と共に人民の霊性は、鬼蛇の精神に悪化し来り至粋至醇の神の分霊を喫ひ破られて了つた。高志の八岐の遠呂智と云ふ悪神の口や舌の剣に懸つて歳月と共に天を畏れず地の恩恵を忘れ、不正無業の行動を為すものばかり、人民の八分迄は、皆悪神の容器に為れて、身体も霊魂も、酔生夢死体主霊従に落下し、猶も変じて八岐の遠呂智の尾となり盲従を続けて、天下の騒乱、国家の滅亡を来しつつ、最後に残る神国の人民の身魂までも、喫ひ破り亡ぼさむとする時機が迫つて来たので如何にしてか此の世界の惨状を救ひ助け、天津大神に申上げむと、心を千々に砕き天下国家の前途を思ひはかりて、泣き悲しむなりと答へ玉うたと曰ふことなり。 高志といふ意義は、遠き海を越した遠方の国であつて、日本からいへば支那や欧米各国のことなり。海外より種々雑多の悪思想が渡来する。手を替へ品を替へて、宗教なり、政治なり、教育なりが盛んに各時代を通じて、侵入して来り敬神尊皇報国の至誠を惟神的に具有する、日本魂を混乱し、滅絶せしめつつある状態を称して、高志の八岐の遠呂智の喫ふなると云ふなり。亦外国の天地は、数千年来此悪神の計画に誑らかされて、上下無限の混乱を来し、国家を亡ぼし来たりしが、彼今猶其計画を盛んに続行しつつ、遂に日本神国の土地まで侵入し、天津神の直裔なる日本オトメの身魂まで、全部喫ひ殺さむとする、それが最近に迫つて居る、只一つ神国固有の日本魂なるオトメが後に遺つた許りである。之を悪神の大邪霊に滅ぼされては、折角天祖国祖の開き玉へる大地球を救ふ事は出来ない。どうかして之を助けたいと思つて艱難辛苦を嘗めて居るのである。実に泣くにも泣かれぬ、天下の状態であると云つて、之を根本的に救ふ事は出来ない。どうして良いかと途方に暮れ、天地に向つて号泣して居りますとの、変性男子の身魂の御答へなりしなり。 『其の形は如何さまにかと問ひたまへば、彼が目は赤加賀知なして、身一つに頭八つ尾八つあり。亦其の身に苔、及び桧、すぎ生ひ、其の長さ渓八谷、峡八尾を渡りて、其の腹を見れば、悉に常血爛れたりと答白す。(此に赤加賀知といへるは、今のほほづきなり)』 そこで其形は如何さまにかと、問ひたまへばと云ふ意義は、八岐の遠呂智なす悪思想の影響は如何なる状態に形はれ居るやとの須佐之男命の御尋ねなり。 そこで変性男子の身魂なる老夫と老女は、彼悪神の経綸の事実上に顕現したる大眼目は、赤加賀知なして身一つに、頭八つ尾八つありと云つて、悪神の本体は一つであるが、その真意を汲んで、世界覆滅の陰謀に参加して居るものは、八人の頭株であつて、此の八つの頭株は、全地球の何処にも大々的に計画を進めてをるのである。政治に、経済に、教育に、宗教に、実業に、思想上に、其他の社会的事業に対して陰密の間に、一切の破壊を企てて居るのである。就ては、尾の位地にある、悪神の無数の配下等が、各方面に盲動して知らず識らずに、一人の頭目と、八つの頭の世界的大陰謀に参加し、終には既往五年に亘つた世界の大戦争などを惹起せしめ、清露其他の主権者を亡ぼし、労働者を煽動して、所在世界の各方面に、大惑乱を起しつつあるのである。赤加賀知とは砲煙弾雨、血河死山の惨状や、赤化運動の実現である。実に現代は八岐の大蛇が、いよいよ赤加賀知の大眼玉をムキ出した所であり、既に世界中の七オトメを喫ひ殺し、今や最後に肥の河なる、日本までも現界幽界一時に喫はむとしつつある処である。要するに八つ頭とは、英とか、米とか、露とか、仏とか、独とか、伊とかの強国に潜伏せる、現代的大勢力の有る、巨魁の意味であり、八つ尾とは、頭に盲従せる数多の部下の意である。頭も尾も寸断せなくては成らぬ時機となりつつあるなり。 『亦其身に苔及び桧すぎ生ひ、其長さ、渓八谷、峡八尾を渡りて其の腹を見れば、悉に常も血爛れりと答白す』といふ意味は地球上の各国は皆この悪神蛇神の為に、山の奥も水の末も暴され、不穏の状態に陥り、終には尼港事件の如く、暉春事件の如く、染血虐殺の憂目に人類が遇つて、苦悶して居ることの形容である。また苔と云ふ事は、世界各国の下層民の事であり桧と云ふ事は上流社会の人民であり、すぎと云ふ事は国家の中堅たる中流社会である。要するに上中下の三流の人民が常に不安の念に駆られて居る事であつて、実に六親眷属相争ひ、郷閭相鬩ぎ戦ふ、悲惨なる世界の現状を明答されたといふ事である。御神諭に、『今の人民は外国の、悪神の頭と眷属とに、神から貰うた結構な肉体と御魂を自由自在に汚されて了うて、畜生餓鬼の性来になりて居るから、欲に掛けたら、親とでも兄弟とでも、公事を致すやうな悪魔の世になりて居るが、是では世は続いては行かぬから、天からは御三体の大神様がお降り遊ばすなり、地からは、国常立尊が変性男子と現はれて、新つの世に立替立直して、松の五六七の世に致して、世界の人民を歓ばし、万劫末代勇んで暮す神国の世に替へて了はねばならぬから、艮の金神は、三千年の間長い経綸を致して、時節を待ちて居りたぞよ。八つ尾八つ頭の守護神を、今度はさつぱり往生いたさすぞよ』云々と明示されてあるのも、要はこの御本文の大精神に合致して居る一大事実である。 『爾、速須佐之男命、其の老夫に是汝の女ならば、吾に奉らむやと詔たまふに、恐けれど御名を覚らずと答白せば、吾は天照大御神の同母男なり。故今天より降り坐つと答へたまひき。爾に足名椎、手名椎、然坐さば恐し立奉らむと白しき』 右御本文の老夫にとあるは艮の金神国常立尊神霊に対しての御言である。また足名椎手名椎神と並び称せるは、肉体は出口直子であつて手名椎の神であり霊魂は国常立尊の足名椎の意である。 茲に天より降り給へる須佐之男命は、老夫なる国常立尊の神霊に対し玉ひて、是は汝の守護し愛育する所の、至粋至醇の神の御子たる優しき人民であるなれば、吾に是の女の如き可憐なる万民の救済を一任せずやと、御尋ねになつた事である。そこで国常立尊は実に恐縮の至りではありますが、貴方は如何なる地位と、御職掌の在す神で居らせらるるや。御地位と御職名とを覚らない以上は御一任する事は出来ませぬと白し給ひければ、大神は至極尤もなる御尋ねである。然らば吾が名を申し上げむ、吾は天津高御座に鎮まり坐ます、掛巻も畏き天照大御神の同母弟であつて、大海原を知食すべき職掌である。されば今世界の目下の惨状を黙視するに忍びず、万類救護の為に、地上に降り来たのである。故に国津神たる汝の治むる万類万民を救はむが為に、吾に其の職掌を一任されよ然らば汝と共に八岐の大蛇の害を除いて天下を安国と平けく進め開かむと仰せになつたのである。茲に変性男子の身魂は、大変に畏み歓び玉うて、左様に至尊の神様に坐ますならば吾女なる可憐なる人民を貴神に御預け申すと、仰せられたのである。是は去る明治三十一年の秋に変性男子と変性女子との身魂が二柱揃うて神懸りがあつた時の御言であつて、実に重大なる意義が含まれて在るのである。然し乍ら是は神と神との問答でありまして、人間の肉体上に関する問題ではないから、読者に誤解の無いやうに御注意願つておく次第である。 『爾速須佐之男命、乃ち、其の童女を湯津爪櫛に取成して、御角髪に刺して、其の足名椎、手名椎神に告りたまはく、汝等、八塩折の酒を醸み、且、垣を造り迴し、その垣に八つの門を造り、門毎に八つの棧敷を結ひ、その棧敷毎に酒船を置きて船毎にその八塩折の酒を盛りて、待ちてよと、のりたまひき』 湯津爪櫛の言霊を略解すれば、 ユは、天地、神人、顕幽、上下一切を真釣合せ、国家を安寧に、民心を正直に立直す大努力の意であり、 ツは、日の大神の御稜威を信じ、大金剛の至誠心を振り起し、言心行一致の貫徹を期し、以て神霊の極力を発揮するの意である。 ツは、生成化育の大本合致し、大決断力を発揮し、実相真如の神民たりとの意である。 マは、人種中の第一位たる資格を保ち、胸中常に明かにして無為円満なる意である。 グは、暗愚を去つて賢明に帰し、万事神助を得て意の如く物事成功するの意である。 シは、信仰堅く、敬神尊皇報国の忠良なる臣民の基台なりとの意である。 以上の六言霊を総合する時は、霊主体従の真の日本魂を発揮せる神の御子と立直し玉ふ、神の経綸を進むると謂ふことである。 御角髪の言霊を略解すれば、 ミは、形体具足成就して、日本神国の神民たる位を各自に顕はし定めて真実を極め、以て瑞の御魂に合一する意である。 ミは、⦿の御威徳を明かに覚知し、惟神の大道を遵奉し実行し、以て玲瓏たる玉の如き身魂と成るの意である。 ツは、神の分身分霊として天壌無窮に真の生命を保全し、肉体としては君国を守り、霊体としては神と人民とを助け守るの意である。 ラは、言心行の三事完全に実現し、本末一貫、霊主体従の臣民と成りて、自由自在に本能を発揮するの意である。 以上の四言霊を総合する時は、愈日本魂の実言実行者となりて、其の霊魂は神の御列に加はるべき真の御子と成りたる意である。 要するに、瑞の霊魂なる速須佐之男命は、二霊一体なる神政開祖の神人より、男と女の守護と化育とを一任され一大金剛力を発揮して、本来の日本魂に立替へ立直し、更に進んで其の実行者とし賜ふた事を『其のオトメをユツツマグシに取成して御角髪に刺して』と言ふのである。 斯の如く、天下の万民の身魂の改良を遊ばして、足名椎、手名椎の御魂に御渡しになるに就ては、相当の歳月を要したのである。或は神徳を以てし、或は物質力を以てし、或は自然力を以てし、或は教戒を以てし、慈愛を以てし、種々の御苦辛を嘗めさせ玉ふ其神恩を忘れては成らぬのである。そこで速須佐之男命は、足名椎手名椎なる変性男子の霊魂に対つて告り給ふた御言葉は左の通りである。幸ひ残れるオトメは斯の如く、湯津爪櫛に取成し、御角髪に刺て立派に日本魂を造り上げたと云ふ事は、全く天津神の御霊徳と、吾御魂の活動と、汝命の至誠の賜であるから、第一に天地八百万の神に、精選した立派な美味なる、所謂八塩折の神酒を醸造し、且つ汚穢を防ぐ為に清らかな瑞垣を四方に作り廻して、其の垣毎に祭壇を設け(八つ門)て、祭壇毎に祝詞座を拵へ、酒を甕の戸高知り甕の腹満て並べて神々に報恩謝徳の本義を尽すべく、詔りたまふたのである。凡て酒と云ふものは、大神に献る時は、第一に御神慮を和げ勇ませ歓ばせ奉る結構な供へ物であるが、体主霊従的の人間が之を飲むと決して碌な事は出来ないのである。同じ種類の酒でも、人間は御魂相応に、種々の反応を来すものであつて、悪霊の憑つた人間が呑めば直ちに言語や、動作や精神が悪の性来を現はし、且つ酔ひ且つ狂ひ乱れ暴れるものである。或は泣くもの、笑ふもの、怒るもの、妙な処へ行きたくなるものなぞ、種々雑多に変化して、身魂の本性は現はし、吐たり倒れたり苦しみ悶えたりするものである。常に至誠至実の人にして、心魂の下津岩根に安定したものは、仮令酒を常に得呑まぬ人でも、少々位時に臨んで戴いた所が、決して前後不覚になつたり、倒れたり苦しんだり、動作や言舌や精神の変乱するもので無く、心中益々壮快を覚え、笑み栄え勇気を増し、神智を発揮するものである。故に酒は神様に献る所の清浄なる美酒と雖も、心の醜悪なるものが呑む時は、忽ち身魂を毒し弱らしむるものである。同じ酒を甲は一合呑んで酔ひ潰れて了ふかと思へば、乙は一升呑んでも酔はず、丙は三升位呑まなくては少しも酔うた如うな心持がしないと、云ふ区別の附くのは、乃ち身魂の性質に依りて反応に差異ある事の証である。甲は呑んで笑ひ、乙は怒り、丙は泣くと云ふ如うに、同じ味のある同じ種類の酒でも、区別の附くと云ふのは、実に不思議なもので、是はどうしても身と魂との性来関係に依るものである。 『故、告りたまへる随にして、如此設け備へて待つ時に、其の八岐大蛇、信に言ひしが如来つ。乃ち、船毎に、己々頭を垂入て、その酒を飲みき、於是、飲み酔ひてみな伏寝たり。爾ち速須佐之男命、その御佩せる十拳剣を抜きて、その大蛇を切散りたまひしかば肥の河、血に変りて流れき』 そこで変性男子の身魂は命の随々芳醇なる神酒を造りて、天地の神明を招待し、以て歓喜を表し賜ひ、神恩を感謝し給うたのである。八岐の大蛇の霊に憑依された数多の悪神の頭目や眷族共が大神酒を飲んで了つた。丁度今日の世の中の人間は、酒の為に腸までも腐らせ、血液の循環を悪くし、頭は重くなり、フラフラとして行歩も自由ならぬ、地上に転倒して前後も弁知せず、醜婦に戯れ家を破り、知識を曇らせ、不治の病を起して悶え苦しんで居るのは、所謂「飲み酔ひて皆伏寝たり」と云ふことである。爾に於て瑞の御霊の大神は、世界人民の不行跡を見るに忍びず、神軍を起して、此の悪鬼蛇神の憑依せる、身魂を切り散らし、亡ぼし給うたのである。十拳剣を抜きてと云ふ事は遠津神の勅定を奉戴して破邪顕正の本能を発揮し給うたと云ふことである。そこで肥の河なる世界の祖国日の本の上下一般の人民は、心から改心をして、血の如き赤き真心となり、同じ血族の如く世界と共に、永遠無窮に平和に安穏に天下が治まつたと云ふ事を「肥の河血に変りて流れき」と云ふのである。流れると云ふ意義は幾万世に伝はる事である。古事記の序文に、後葉に流へんと欲すとあるも、同義である。 『故其の中の尾を切りたまふ時、御刀の刄毀けき。怪しと思ほして、御刀の端もて刺割きて見そなはししかば、都牟刈之太刀あり。故此太刀を取らして、怪異しき物ぞと思ほして天照大御神に白し上げたまひき。是は草薙太刀なり』 中の尾と云ふ事は、葦原の中津国の下層社会の臣民の事である。其臣民を裁断して、身魂を精細に解剖点検し玉ふ時に、実に立派な金剛力の神人を認められた状態を称して、御刀の刄毀けきと云ふのである。アヽ実に予想外の立派な救世主の身魂が、大蛇の中の尾なる社会の下層に隠れ居るわい。是は一つの掘り出しものだと謂つて、感激されたことを、怪しと思ほしてと云ふのである。御刀の端もてと云ふ事は、天祖の御遺訓の光に照し見てと云ふ事である。 『刺割きて見そなはししかば都牟刈之太刀あり』と云ふことは今迄の点検調査の方針を一変し、側面より仔細に御審査になると、四魂五情の活用全き大真人が、中の尾なる下層社会の一隅に、潜みつつあつたのを初めて発見されたと云ふことである。都牟刈之太刀とは言霊学上より解すれば三千世界の大救世主にして、伊都能売の身魂と云ふ事である。故、此太刀なる大救世主の霊魂を取り立て、異数の真人なりと驚歎され、直ちに天照大御神様、及びその表現神に大切なる御神器として、奉献されたのである。凡ての青人草を神風の吹きて靡かす如く、徳を以て万民を悦服せしむる一大真人、日本国の柱石にして世界治平の基たるべき、神器的真人を称して、草薙剣と云ふのである。八岐大蛇の暴狂ひて万民の身魂を絶滅せしめつつある今日、一日も早く草薙神剣の活用ある、真徳の大真人の出現せむことを、希望する次第である。 また草薙剣とは、我日本全国の別名である。この神国を背負つて立つ処の真人は、即ち草薙神剣の霊魂の活用者である。 (大正九・一・一六講演筆録谷村真友) |
|
34 (1665) |
霊界物語 | 16_卯_丹波物語1 大江山/冠島沓島/丹波村 | 05 秋山館 | 第五章秋山館〔五九五〕 高天原を追はれて千座の置戸を負はせつつ 八洲の国を漂浪の旅に出立ち給ひたる 神素盞嗚の大神の行衛如何と案じつつ 東の空を打眺め心にかかる村肝の 雲の渦巻サラサラと晴れて嬉しき今日の朝 君の便りを菊月の上九日の菊の宴 親子主従めぐり会ひ胸の岩戸も秋山彦の 神の司の真心に綾と錦の機を織る 赤き心は紅葉姫万代祝ふ亀彦が 暗を照らして英子姫心地もわけて悦子姫 廻り会うたる折柄に表に聞ゆる鬨の声 忽ち開く表門秋山彦は立出でて 寄せ来る魔軍に打向ひ天の数歌勇ましく 力限りに宣りつれば敵の人数も大江山 鬼雲彦が部下共大地にドツと打倒れ 苦み悶ゆる状態は実に面白き限りなり 顔色赤く目は青く棕櫚の赤髪を振紊し 六尺計りも踏張つてノソリノソリと遣つて来る 鬼雲彦が懐の刀と頼む鬼彦は 虎皮の褌締め乍ら牛の様なる角目立て 大口開けて高笑ひ。 鬼彦『アハヽヽヽ、猪口才千万な、秋山彦が言霊の防戦、左様な事でたぢつく様な鬼彦と思うて居るか。此方には雲霞の如きジヤンジヤヒエールが、数限りもなく控へて居るぞ。仮令汝獅子王の勢あるとも、此鬼彦が片腕を揮ふや否や、汝の身体は木つ端微塵、今日は九月九日、大江山の本城に於ては、鬼雲彦の御大将、バラモンの大祭典を御執行の贄として、神前に暖かき人肉を供へ、血の酒を献らねばならぬ。それに就ては、バラモン教を目の敵と狙ふ三五教の張本人、素盞嗚尊一族の者、汝が館に隠れ忍ぶと聞く、四の五の吐さず、速に主人を吾面前に引ずり出せ。ゴテゴテ吐さば、それがし自ら踏み込みて、片つ端から腕を捻ぢ、脚を折り、量を低く致して此網代籠に詰め込み、汝諸共神の神饌に供してくれむ』 と言ふより早く、秋山彦の襟首をグツと握り、締め附けたり。秋山彦は豪力無双の鬼彦に捻ぢ伏せられ乍ら、委細構はず言霊を奏上せむとするや、手頃の石を拾つて秋山彦の口に捻ぢ込み、其上に猿轡を啣ませ、 鬼彦『アツハヽヽヽ、最早大丈夫だ、サア秋山彦、汝が唯一の武器と頼む言霊も、モウ斯うなつては叶ふまい。オイ言霊はどうだい……ヤアヤア皆の者共、最早心配は要らぬ。速に立上れ』 と云ふ間もなく、言霊に打たれて苦悶し居たる部下の魔神共は、やうやう立上がり、真つ青な顔に、空元気を附け、ガタガタ震ひの空威張り声、 『ウワアウワア』 と鬨を作つて、盛に示威運動を開始するこそ可笑かりける。 奥には糸竹管絃の響、長閑な歌の声、此場の光景を知らず顔に響き渡りける。魔軍は力限りに鬨の声を揚げ呶鳴り立て居たり。此方の奥殿には、此声を峰の嵐の音と聞き流し酒宴の真最中、慌ただしく駆けつけ来る門番の銀公、加米公はピタリと両手をつき、頭を畳に摺り附け乍ら、 加米公『申上げます、表門はタタ大変で御座います』 紅葉姫『ヤア汝は加米、銀の両人、大変とは何事なるぞ。委曲に物語れ』 加米公『ハイハイ申上げます、あのモシ……あの……何で御座います。夫れは夫れは申上げ難い事で……マアマア大変な事が出来ました……斯う言へば、申上げずとも大抵、御判断が附きませう』 紅葉姫『早くしつかり申しなさい』 加米公『オイ銀公、お前は上役だ。詳しい事は、お前が知つとる筈だ。御主人の御容子を……』 銀公『ヤア此方は折悪く雪隠に往つて居つたのだから、実状は承知して居らぬ。加米、貴様は実地目撃して居つたのだ。直に申上げぬか』 加米公『上役の分際として、御主人様が危急存亡の場合、雪隠へ隠れよつて、慄うて居つたぢやないか。俺は何分大勢の寄せ手に、肝を潰し、目は眩み、実地目撃不充分、貴様は安全地帯に身を隠し、雪隠の窓から覗いて居よつたのだ。早く申さぬと、御主人様の口に石を捻ぢ込み、猿轡を箝め、高手小手に縛しめて、網代籠に、手足をもぎとり量を低うして、今日の祭典に大江山の本城に連れ帰り、犠牲にするかも知れぬぞや、早く実地を申さぬかい』 銀公『ハア申上げます。加米公の申した通り、寸分違は御座いませぬ。早く何々をなさらぬと、鬼彦が御主人様を何々して、何々へ何々するかも知れませぬ。どうぞ一時も早く表門に立向ひ、御主人様をお助け下さいませ』 素尊『ハヽヽヽヽ』 国武彦『ヤア面白い事が出来ました。鬼彦とやらの軍勢を、当館を開放し奥深く侵入させて、彼等が手振り足振りを眺め乍ら、悠くりと菊見の宴を張りませう』 亀彦『これはこれは国武彦の御言葉とも覚えぬ。今承はれば、秋山彦は敵の為に囚はれの身となり、危機一髪の場合、チツトは紅葉姫の御心中も察し上げねばなりますまい。それだから此亀彦が、寄せ来る敵に向つて進まむと致せし時、横合から吾が行動を止めさせられたは、其意を得ぬ。冷淡至極の貴下が振舞、秋山彦を見殺しになさる所存か返答聞かう』 と目を怒らし、腕を張つて詰め寄せたれば、国武彦はニツコリしながら、 国武彦『秋山彦の一人や二人犠牲にした処で、何騒ぐ事があるか。一人を殺して吾々数人が助かると云ふものだ。一人を損するか、吾等一同を損するか、利害得失を能く胸に手を当て、算段をして見よ。情を棄つるか、理智を棄つるか、二つに一つの性念場だ。情に惹かされ、大事を謬る天下の痴呆者、仮令秋山彦の三人、五人殺されようとも、神素盞嗚尊様さへ御無事ならば、吾等は是れにて満足致す。マアマアゆつくりと、酒でも飲みて、今日の酒宴を賑やかに致せ。喜悦の座席に血腥い話を持込まれては、サツパリお座が醒める』 亀彦『汝国武彦とは真赤な詐り、大江山に現はれたる、鬼雲彦が鬼の片腕、国武彦と名を偽り、三五教に忍び込み来たり、内外相応じ、神素盞嗚尊を損はむとする者ならむ、首途の血祭り、亀彦が一刀の下に斬りつけ、蹴散らかして呉れむ』 と短剣ヒラリと引抜いて、切つて掛かるを、国武彦は少しも騒がず、体を左右に躱し、あしらひ乍ら、 国武彦『アハヽヽヽヽ、亀の踊は格別面白う御座る、ヤア素盞嗚の大神殿、御愉快では御座らぬか』 素尊『ワハヽヽヽヽ面白い面白い』 亀彦『是れは怪しからぬ、利己主義の中心、個人主義の行方……高天原を神退ひに退はれたは、寧ろ当然の成行、此亀彦は今迄貴神が悪逆無道の心中を知らず、至善至美至仁至愛の大神と信じて居たは残念だ。モウ斯うなる上は、天下の為に汝を滅し、吾れも生命を棄てて、宇宙の悪魔を除かむ』 と切つて掛るを、英子姫、悦子姫は其前に立塞がり、 英子姫、悦子姫『オホヽヽヽヽあの亀彦の元気な事、さぞお草臥でせう。妾が代つて一芝居致しませう。マアマアお休み遊ばせ』 紅葉姫は声を挙げて泣伏しける。 亀彦『是れは是れは紅葉姫様、お歎き御尤も、主人の災難を聞き乍ら、女房として此れがどう忍ばれませう。あかの他人の亀彦さへも、残念で残念で堪りませぬワイ。斯う云ふ時に助けて貰はうと思つて、秋山彦が日頃の親切、イヤモウ気楽千万な素盞嗚の御大将呆れ蛙の面の水と申さうか、馬耳東風と言はうか、味方の危難を対岸の火災視し、一臂の力も添へざるのみか、愉快気に酒を飲むで戯むれむとするは、人情軽薄紙の如く、イヤもう実に呆れ果てて御座る。サア紅葉姫殿、斯かる連中に斟酌なく、亀彦と共に表へ駆け出し、秋山彦が弔戦、此細腕の続かむ限り、剣の目釘の続く丈、縦横無尽に斬り立て、薙ぎ立て、敵の奴輩一人も残さず、秋の紅葉を散らせし如く、大地を血汐に染めなし、血河屍山の大活動を仕らう、紅葉姫、サア亀彦に続かせ給へ』 と表を指して行かむとす。英子姫は腰の紐帯を取るより早く、亀彦が首にヒラリと打かけ、グイと引戻せば、亀彦は細紐に喉笛を締められ、脆くも仰向に其場にパタリと倒れたり。表に聞ゆる人声は、刻々に館の奥を目蒐けて近づき来る。 紅葉姫は、 心も魂も捧げたる神素盞嗚の大神に 力の限り身の限り仕へまつるか但し又 此場を棄てて吾夫の秋山彦を救はむか。 神命は重し又夫の身の上は、妻の身として坐視するに忍びず、千思万慮とつおいつ、心の中を紅葉姫、顔に散らした唐紅の血汐漲る鬨の声、胸はドキドキ、刻々に、近付き来る敵の勢、姫が心ぞ憐れなる。 此場に近付き来るかと聞えし声は、何時しか消えて跡なき小春空、秋山彦は悠然と騒がず、遽らず、奥の間指して帰り来る。亀彦、紅葉姫の両人は、余りの嬉しさに、ハツと胸逼り、ものをも言はず、其場に打倒れ、夢か現か幻かと、吾と吾が心を疑ひ、思案に時を移すのみ。国武彦は立ちあがり、 国武彦『亀彦、紅葉姫、心配致すな。吾等が眷族鬼武彦をして、鬼雲彦の悪逆無道を懲す為神変不思議の神術を用ひ、敵の本城に忍ばせたれば、少しも案ずる事勿れ』 と始めて事情を打明けたるにぞ、亀彦、紅葉姫は、 亀彦、紅葉姫『ハヽア、ハツ』 と計りに嬉し泣き、暫しは顔を得上げざりしが、素盞嗚尊は亀彦に向ひ、 素尊『ヤア亀彦、汝が心の中の美はしさ、吾れは満足致したぞよ、イザ是れより賑々しく酒宴を催し、大江山の本城は彼等眷族に打任せ、吾々一行は由良の湊より船に乗り綾の高天原に進まむ』 と宣示し給へば、亀彦は勇み立ち、 亀彦『アヽ、ハツハヽヽヽ芽出たし芽出たし、愈是れより大神の御伴致し、聖地を指して逸早く進み上り、神政成就の基を開かむ、ヤア秋山彦、紅葉姫、お喜びあれ。貴下が誠忠、至誠、至愛の真心天地に通じたり。併し乍ら吾々一同当家を去らば、再び大江山より鬼雲彦の部下の者、又もや押し寄せ来るも計り難し、随分心を附け召されよ』 秋山彦夫婦は涙を揮ひ、 秋山彦夫婦『何から何まで、貴下の御親切、骨身に徹して辱なう存じます。併し乍ら吾等は神素盞嗚大神の御守りあれば、必ず御心配下さいますな、一時も早く聖地を指して御上り下され。神政成就の基礎を樹立する為、御奮励の程偏に希ひ上げ奉る』 と慇懃に謝辞を述べける。 素尊『ヤア秋山彦夫婦、多大いお世話になりしよ。我れは是より一先づ聖地に立向ひ、天下の悪神を掃蕩すべき準備をなさむ、船の用意を致せ』 秋山彦『ハハア委細承知仕りました。……銀公、加米公、汝は一時も早く湊に出で、御船の用意にかかれ』 銀公『ハヽア委細承知仕りました。併し乍ら船は敵軍の為に殆ど占領せられたるやも計られませぬ。万々一船なき時は、如何取計らひませうや』 秋山彦双手を組み頭を傾け思案にくるるを、国武彦は、 国武彦『ナニ心配に及ばぬ、御船は残らず国武彦が眷属を以て守らせあれば大丈夫なり。安心致せ。且又当邸の周囲には、最早敵の片影だもなし、勇み出船の用意をせよ』 銀公、加米公は、 銀公、加米公『ハイ』 と答へて此場を立去りぬ。又もや糸竹管絃の響は屋外に洩るる陽気と一変したりけり。 神素盞嗚尊は突立上り、声も涼しく歌はせ給ひぬ。 素尊『高天原を立出でて四方の国々島々を 世人を助け守らむと彼方こちらと漂浪の 旅を重ねて西蔵やフサの荒野を打渡り ウブスナ山に立籠りイソ山峠の絶頂に 仮の館を構へつつ熊野樟毘命をば 留守居の神と定めおき我れは悲しき隠れ身の 愛しき娘は四方八方に四鳥の別れ釣魚の涙 憂を重ねてやうやうに渡りて来る和田の原 醜の曲津も大江山鬼雲彦を言向けて 世人の悩みを救はむと船に揺られて由良湊 心も赤き秋山彦の館に暫し身を休め 四方の国形伺へば十里四方は宮の内 内と外との境なる大江の山にバラモンの 神の司の鬼雲彦が又もや砦を築きつつ 醜の荒びの最中に訪ねて来る艮の 神の命の分霊国武彦と現はれて 我れに附添ひ右左前や後を構ひつつ 鬼武彦の伊猛るの神に従ふ白狐共 暗夜を照らす朝日子や月日明神神徳も 高倉稲荷の活動に悩ませられて悪神は 愈今日は運の尽月に村雲花に風 心の錦秋山彦の神の司の真心は 紅葉の姫の如くなり光眩ゆき英子姫 すべての用意も悦子姫万代固むる亀彦が 忠義の刃研ぎすましさしもに猛き曲神を 言向和すは目前吁、面白し面白し さはさりながら神心凡ての敵を救はむと 善をば助け曲神を懲して救ふ神の道 青垣山を繞らせる天津神籬磐境と 現はれませる世継王山深き仕組を暫くは 雲に包みて弥仙山本宮山に現はれて はちすの山の蓮華台三五教の御教を 常磐堅磐に搗固め鬼も大蛇も丸山の 神の稜威に桶伏や汚れを流す由良の川 言霊響く五十鈴川曲の健びは音無瀬の 水に流して清め行く科戸の風の福知山 めぐりて此処に鬼城山鬼も悪魔も無き世ぞと 治むる御代こそ楽しけれ治むる御代こそ楽しけれ』 国武彦は立ちあがり歌ひけり。その歌、 国武彦『宇宙を造り固めたる大国治立神の裔 国治立の大神と綾の高天原に現はれて 天地の律法制定し天地を浄め照さむと 思ひし事も水の泡天足の彦や胞場姫の 邪気より成れる鬼大蛇醜の狐や悪神の 荒びの息は四方の国充塞がりて月も日も 光失ひ山河や木草の果てに至るまで 所得ずしてサワサワに騒ぎ烈しき醜の風 誠嵐の吹き荒び日の稚宮に坐しませる 日の大神の思召し根底の国に退はれて 百千万の苦しみを嘗め尽したる身の果ては 野立彦の神と現はれて天教山を胞衣となし 猛火の中を出入し此世を守る我が身魂 世を艮の神国と鳴り響きたる中津国 自転倒島の中央に姿隠して今は早 国武彦となり下り五六七の御代の来る迄 心を尽し守らむと神素盞嗚の大神の 瑞の御霊と諸共に愈此処に厳御霊 三と五との組合せ八洲の国を三五の 教の則に治めむと心尽しの益良夫が 花咲く春を松の世の松の緑に花が咲き 一度に開く白梅の花の香を天地に 揚ぐる時こそ待たれける我は是より世継王の 山の麓に身を忍び弥勒の御代の魁を 勤むる艮金の神神素盞嗚の大神は 一旦聖地に現はれて三五教の礎を 築固めたる其上に又もや海原打渡り 大地隈なく言向けて五六七の御代の魁を 開く神業に真心を注がせ給ふ瑞御霊 三五の月のキラキラと明き神代を望の夜の 月より丸く治めませ治まる御代は日の本の 誠一つの光なり誠一つの光なり』 英子姫は立上り、 英子姫『父大神の御言もて妾姉妹八乙女は 豊葦原の中津国メソポタミヤの顕恩の 郷に籠れる曲神の鬼雲彦を平げて 三五教の神の道八洲の国に照さむと 思ふ折しも曲神が醜の企みの捨小船 波のまにまに流されて流す涙も海の上 荒き汐路を踏み分けてやうやう此処に揺られつつ 由良の湊に来て見れば秋山彦が真心に 妾等二人は照されて心の暗も晴れわたる 斯る浮世に鬼無しと世人は言へど大江山 鬼の棲家のいと近く人の生血を絞り喰ふ 此有様を聞き乍らどうして此場を去られうか 父大神や国武彦の神の命の出立は 是非に及ばず然り乍ら妾は後に残り居て 鬼雲彦の一類を言向和し世の中の 醜の災禍根を絶ちて聖地に進むも遅からじ 許させ給へ父の神国武彦の大神よ 偏に願ひ奉る偏に拝み奉る』 と両手を合せ、二神に向つて拝礼し、涙と共に頼み入る。 国武彦『英子姫の願、一応尤もなれども、多寡が知れたる鬼雲彦が一派、何の恐るる事かあらむ。神力無限の鬼武彦をして、彼れ悪神が征討に向はせたれば安心あれ、サアサア一時も早く聖地を指して進み行かむ。躊躇に及ばば、鬼雲彦が一派鬼掴の眷属共、我等が到着に先立ち、聖地を穢すの虞あり、イザ早く……』 と急き立つれば、神素盞嗚の大神は、装束整へ、一行と共に悠然として此家を立出で、由良の湊の渡船場、世継王丸に身を任せ、折から吹き来る北風に真帆を孕ませ、悠々と河瀬を溯り給ふこそ尊けれ。 (大正一一・四・一四旧三・一八於瑞祥閣松村真澄録) |
|
35 (1712) |
霊界物語 | 18_巳_丹波物語3 玉照姫の誕生 | 01 春野の旅 | 第一章春野の旅〔六二九〕 風暖かく八重霞春日と伯母はクレさうで クレナイに包む弥生空朧の月は中天に 照らず曇らずボンヤリとかかる山家の夕まぐれ 川の流れは淙々と轟き渡る和知の里 空を封じて立並ぶ老樹の下の小径を トボトボ来る宣伝使神の教をどこまでも 伝へにや山家の肥後の橋月の光を力とし 神の恵を杖となし烏は眠る鷹栖の 川辺の里に進み来る顔も容も悦子姫 水の流れの音彦ややがては来る夏彦の 九十九曲りの山路を曲つた腰のトボトボと 這はぬばかりに加米彦が草鞋に足を擦り乍ら 神子坂橋の袂まで来る折しも向ふより スタスタ来る二人連れ何かヒソヒソ囁きつ 夜目に透かして一行を心有りげに眺めゐる。 二人(英子姫、亀彦)『モシモシ、一寸お尋ね致します。最前から承はれば、路々宣伝歌を謡ひつつお出になつた様で御座いますが、若しやあなたは、三五教の宣伝使様では御座いますまいか』 加米彦は、 加米彦『ヤアさう仰有るあなたは、何だか聞覚えのあるやうな感じが致します。朧夜の事とてハツキリお顔は分りませぬが、どなたで御座いましたかなア』 男(亀彦)『私は三五教の宣伝使亀彦と申す者、今一人の方は素盞嗚尊様のお娘子英子姫と云ふ方で御座います』 悦子姫『アヽお懐しや、英子姫様で御座いましたか、妾は悦子で厶ります。好い所でお目にかかりました。妾は剣尖山の麓に於てお別れ申しましてより、真奈井ケ原の貴の宝座を拝礼致し、それより三岳の岩窟を言向和し、鬼熊別の割拠する鬼ケ城山の岩窟を、四五の同志と共に言霊を以て包囲攻撃致し、それから生野、長田野を越え、神知地山の魔神を征服し、高城山に立向ひ、再び道を転じ、和知の流れに沿うて聖地に引返し、あなた様に御目にかかり、今後の妾等が取るべき方法を、御相談申上げたいと思ひまして、遥々夜を冒し、此処まで参りました』 英子姫は喜び乍ら、 英子姫『アヽ左様ですか、妾は其方に別れてより、神様の命に依り、弥仙の深山に、或使命を帯びて登山し、今又父大神の神霊のお告に依りて、亀彦を伴ひ、伊吹山に参る途中で御座います。アヽ好い所でお目にかかりました。お連れの方は何方か存じませぬが、何れ三五教の方でせう。此川音を聞き乍ら、出会うたを幸ひ悠くりと休息致しませう』 悦子姫『それは願うてもないこと。妾もどこか良い所があれば一休み致したいと思うて居ました。……此方は音彦加米彦の宣伝使、一人はウラナイ教に暫く入信して居た夏彦と云ふ男で御座います』 亀彦『私は亀彦です。貴下は由良の湊の人子の司、秋山彦の門前に於てお目にかかつた加米彦さまですか、コレハコレハ妙な所でお目にかかりました。又音彦さまとは、フサの国でお別れ致しました私の旧友ぢやありませぬか』 音彦『左様その音彦で御座いますよ』 亀彦『遥々と此自転倒島へお越しになつたのは、何か深い仔細が御座いませう』 音彦『これに就いては、種々珍談も御座いまするが、ユルリと後から申上げませう。サアサア皆さま、打揃うて此芝生の上で骨休めを致しませうかい』 一同『宜しからう』 と一同は老樹の蔭に打解け、手足を延ばして休息したり。 茲に六人の宣伝使六つの花散る冬も過ぎ 風に散り布く山桜香りを浴びて来し方の 百の話に花咲かせ思はず時を移しける。 音彦『モシ英子姫様、最前あなたの御言葉に依れば、弥仙山へ神務を帯びて御登山になつたと仰せられましたなア。音彦も一度其霊山へ、是非登山致したいと存じて居ます。随分嶮岨な所でせうなア』 英子姫『お察しの通り、実に嶮峻な深山で御座います。昼猶暗く、鬱蒼たる老樹天を封じ、到底日月の光は拝む事は出来ませぬ。併し乍ら、貴方方は登山なされますならば、大変都合の好い事が御座います。妾は父の神勅に依りて、一つの経綸を行うて置きました。どうぞあなた方一度行つて下さいませ』 音彦『其御経綸とは、如何なる御用で御座いました。予め仰有つて下さいませぬか。音彦も其覚悟を致さねばなりませぬ』 英子姫『只今申上げずとも、お出になれば、……ハハア之であつたかなア……と自然にお判りになりませう。先楽しみに、此お話は暫く保留して置きませう』 加米彦『エー英子姫様さう出し惜みをなさるものぢやない、アツサリと云つて下さいナ』 英子姫『イエイエ宣伝使の言葉に二言は御座いませぬ。一旦申上げぬと云つた事は、金輪際口外する事は出来ませぬ』 加米彦『あなた様は綺麗な女神にも似ず、随分愛嬌のない事を仰有いますなア。初めて加米の御願ひしたことを、直様お聞き容れ下されず、クルツプ式砲弾を発射し、加米等の欲求を撃退なされますか。シテ、あなたは愛嬌の定義を知つて居ますか』 英子姫『イヤもうおむつかしい議論を吹つかけられますこと。マアマアぼつぼつと御登山なされませ。それはそれはアツと言ふ様な仕組がして御座いますワ』 加米彦『何だか諄々として詭弁を弄するお姫さまだナア。キベン万丈加米当る可からずだ、アハヽヽヽ』 悦子姫『コレコレ加米彦さま、さうヅケヅケと無遠慮に物を仰有るものでない。チトたしなみなさらぬか』 加米彦『ハイハイたしなみませうよ、悦子さま。無礼ぢやとか、謙遜ぢやとか、遠慮ぢやとか、たしなみぢやとか、種々の雅号が沢山有つて、取捨選択に殆ど閉口頓死致します』 音彦は顔をシカメ、 音彦『エー縁起の悪い。閉口頓死なぞと、せうもない事を言ふものでない。お前達は哲学とか道学とか云ふ親不孝、不作法の学問をかぢつて居るから、仕末にをへない、マアマア英子姫様の仰有る通りハイハイと温順しくして居れば良いのだ。吾々六人の中では、最もお偉い方だ、言はば吾々のお師匠様だ。師の影は六尺下つても踏むなと云ふ位だ』 加米彦『あなたも縁起の悪い事を言ひますネ。加米が閉口頓首と云つた事を咎め乍ら、あなたは死の影がどうの斯うのつて、夫れこそ自縄自縛ぢやありませぬか』 音彦は吹き出し、 音彦『ハヽヽヽ、訳の分らぬ団子理屈を能く捏ねる男だなア』 加米彦『お前こそ団子理屈だ。吾々のは餅理屈だ。蚋が餅搗きや加米彦が捏ねる、ポンポンと音彦がすると云ふぢやないか、アハヽヽヽ』 亀彦は立ち上がり、 亀彦『サア皆さま、何時まで御話を致して居つても際限が有りませぬ。冗談から暇が出る、瓢箪から駒が出る。駒に鞭打ち、一日も早く目的地へ向つて発足致しませう。ナア英子姫様……』 英子姫『折角お目にかかつて嬉しいと思へば、神界の御命令、止むにやまれませぬ。英子も直様お別れ致しませう。皆様左様なら、何れ又お目にかかる機会が御座いませう』 と会釈し、早くも歩み出したり。 悦子姫は会釈しながら、 悦子姫『左様ならば、姫様、ご機嫌よくお出で下さいませ。亀彦様、御如才は御座いますまいが、どうぞ姫様の御身辺に注意を払つて下さいませやア』 亀彦『亀彦、委細承知仕りました。必ず必ず御煩慮下さいますな。サアこれからコンパスに油を注して進みませう。悦子姫さま、音彦、加米の宣伝使殿、夏彦さま、左様ならば御機嫌よう……』 一同『お二人様、お仕合せよう抜群の功名手柄を現はし給はむ事を念願致します、アリヨース』 と双方に袂を分つ。二本の白い杖のみ朧月夜の山路を、川上指して上り行く。 春の夜は瞬く中に明け放れ、霞の空を押し分けて、天津日の大神は、まん円き温顔を差し出して、四人が頭を照し給ふ。心持よき春風に、道も狭きまで散り布く山桜、花を欺く悦子姫、山路通る床しさは、画中の人の如くなり。 音彦は急坂を打ち仰ぎ、 音彦『アヽ随分嶮しい坂ですなア。英子姫さまが一切沈黙を守つて居られたのも、斯う云ふ胸突坂が沢山あるので、吾々が恐怖心を起し、折角張詰めた精神を、薄志弱行の逆転旅行と出かけるかと思つての御心配り、イヤもう恐れ入りました。人を導き、向上させてやらうと思ふ宣伝使の御心は、又格別なものですなア』 悦子姫は、 悦子姫『イヤ決して決して英子姫様の御心中は、さうではありますまい、モ少し意味の深い事があるのでせう。妾も英子姫様の御言葉の端に、深い深い意味があると、直に胸の琴線に触れました。マアマア行く所まで行つて見なくては分りますまい』 音彦『さうですかなア。音彦の様な木訥な人間は、ソンナ微細な点まで気が付きませぬ、何分仁王の荒削り然たる男ですからなア、ハヽヽヽヽ』 加米彦は大声で、 加米彦『コレコレ音彦さま、巧妙い事言つてるぢやないか。悦子姫さまと、此細い道を引つ付く様にして歩き乍ら、似合うの似合はぬのつて、ソラ何を言ふのだ、鬼が笑ふぞよ、アツハヽヽヽ。オイ夏彦、貴様は苦しさうに、汗をたらたらと流して居るぢやないか』 夏彦『きまつた事ですよ。夏ヒコに当れば、汗は滝の如く流れ出るのが、昔からきまりきつた、天地の御規則。汗をかかねば、天則違反の罪に問はれるよ加米さま』 加米彦『何を言ふのだ。鼈に蓼を咬ました様に、大きな鼻息をしよつて……』 夏彦『加米彦、鼈だつて、カメ彦だつて同じ事ぢやないか。鼈が荒い息をする様に、亀が一匹、どこやらで、ヤツパリ、フースーフースーと呼吸をし乍ら、法界悋気をやつて居るやうだワイ、ハツハヽヽヽ』 加米彦『アヽ夏チヤン、ホーカイなア』 音彦『オイオイ加米彦、夏彦の両人、早う来ぬか、ナンダ、斯ンなチツポケな坂に屁古垂れよつて………随分足の遅い奴だなア』 加米彦『喧しい言うて呉れない音彦さま、上り坂は前が高いワイ。其代りに下り坂になつたら、ドンナものだ、一瀉千里の勢で、アフンとさしてやるぞ。併し乍ら此日の永いのに、さう急ぐにも及ばぬぢやないか、そこらの木蔭で一つ切腹したらどうだい』 音彦は、 音彦『エー又縁起の悪い事を云ふ加米だナア。エヽ仕方がない。悦子姫様、此の平地で一服致しませうか、両人の奴、大変に屁古垂れて居る様ですから』 悦子姫は気軽るげに、 悦子姫『マア此処で悠くりと待つてあげませう』 加米彦は小柴の茂る小径を、ガサガサ喘ぎ喘ぎ、手負猪の様な鼻息を立て、玉の汗を絞りつつ、漸く二人の側に登り着きける。 足を容るる許りの細路を、粗朶を背に負うて降り来る二人の女あり、四人の姿を見て、 女『コレハコレハ皆様、狭い路を量のたかい物を負うて通りまして、誠に済みませぬ、どうぞ御勘弁下さいませ』 加米彦は、 加米彦『サアそれは仕方がありませぬ、天下御免の大道、否、羊腸の山路、………サアサア皆さま、林の中へ暫く沈没致しませう。そして敵艦二隻、暗礁を避けた安全海路を通過させてやりませうかい』 四人はガサガサと、木の茂みへ避けると、二人の女は汗を片手に、手拭にて拭ひ乍ら、 女『コレハコレハ皆さま、済みませぬ』 と板を立てし如き細き坂路をエチエチ降り行く。 加米彦は二人の後姿を見送りて、 加米彦『アヽ無事に御神輿通過も済ンだ。サアサア皆さま、一服のやり直しを致しませう……』 音彦『あの女は沢山の粗朶をムクムクと負うて帰りよつたが、一体何と云ふ雅名だらう』 加米彦『あれかい、きまつて居るワイ。オハラ女が柴を負うて通つたのだ』 音彦『ナニ、斯ンな所に大原女が通つてたまるものか。叡山の麓ぢやあるまいし』 加米彦『それでも大きな腹をして居つたぢやないか』 音彦『あれはヤセの女だよ。八瀬大原と云つて、畑の小母の産地だよ。此処もヤツパリ山地には間違ひない。前の女は大変な痩女、後のは孕み女だ。それで一人はヤセ女、一人はオハラ女だ、斯う宣り直せば、双方の意見が成立して、複雑な議論も起らぬだらう』 加米彦『モシ悦子姫さま、あなた最前音彦と、大変仲ようして歩いて居ましたなア。気をつけなされませや。此音彦は、女房の五十子姫は竜宮の一つ島へ行つて居るものですから、やもめ鳥も同様、ウツカリして居ると、今行つた女ぢやないが、今はヤセ女のあなたでも、何時の間にか大腹女になりますよ』 悦子姫『オツホヽヽヽ、お気遣ひ下さいますな、決して決して御心配はかけませぬから』 加米彦『アヽそれならマア私も御安心だ』 音彦『オイ加米彦、冗談も良い加減にせぬか、永い春日が又暮れて了ふぞ』 悦子姫『サア皆さま、参りませう』 と九十九折の嶮しき小径を登り行く。 音彦『今度は加米彦、夏彦、先へ行け、又煩雑い問題を提起されては処置に困るから』 加米彦『さうだらう。ヤツパリ物がある奴は、何処までも注意深いものだ、イヒヽ』 加米彦は悦子姫の後に、三尺許り離れて随いて行く。七八丁登つたと思うと、胸突坂を登り来る二人の姿、半丁許り谷底に、笠ばつかり揺ついて居る。 加米彦『ヤア、大きな白い松茸が登つて来るワイ。オイ音彦、夏彦、悦子姫さまが夫程恥かしいのか。何だ、笠で顔も体もみな隠しよつて……』 悦子姫『加米彦さま、又貴方は嘲弄ふのかい、良い加減、冗談はよしにしなさいよ』 加米彦『此さみしい山路、私の様な鳴り物が一つあるのも亦重宝でせう。併し乍ら、お気に入らぬとあれば仕方がない。冗談はこれ限りヨシコ姫に致しませう、アツハヽヽヽ』 悦子姫『それまた、冗談を仰有るワ』 加米彦『仰有いますな。加米彦に憑依して居る雲雀彦の守護神奴、山へ来ると親類へ帰つた様に思つて、はしやいでなりませぬワイ、ウフヽ』 悦子姫『大分音彦さまが遅れなさつたよな塩梅ぢや。少し待ち合はせませうか』 加米彦『ヤツパリ気に懸りますかな、遅れとるのは音彦ばつかりぢやありませぬ。腰の曲つた夏彦にもチツとは目を呉れてやつて下さいナ。あなたは博愛心がどうかしてますネー』 悦子姫『何だかケンケン言つてるぢやありませぬか』 加米彦『エーあれや雉子ですよ。音彦の兄弟分ですがなア。二つ目にはケンケンコンコンと言つては頭を打たれ、腰を打たれ、攻撃の矢ばつかり喰つて居ます。雉子も鳴かねば撃たれまい………と云ひましてなア……』 悦子姫『雉子と云ふ鳥はコンナ深い山に棲みて、何を喰つてるのでせう』 加米彦『アルタイ山の蛇掴の様に、蛇ばつかり喰つて居よるのです』 悦子姫『丸で加米彦さまの様な鳥ですネー』 加米彦『ソラ何を仰有います。私が何時蛇を喰ひましたか』 悦子姫『蛇ぢやありませぬ。あなたは何時も、ヘマばつかり喰つてるぢやありませぬか、ホヽヽヽ』 加米彦『ナアンダ、屁でもない屁理屈を能く並べなさる。あなたも随分言霊の練習が出来て、お口丈は悦子姫ぢやなくて、悪子姫になりましたなア』 悦子姫『ホツホヽヽヽ』 加米彦『アヽ何だか交通機関が倦怠して来ました。音彦の来るまで待つてやりませうかい』 悦子姫『重宝なお口だこと、進退維れ谷まりて、待つておあげなさるのでせう』 加米彦『ハハア、あなた用心しなさいよ。悪神が憑いて居ますで………随分言霊が濁つて来ました。一つ神霊注射をやつてあげませうか』 悦子姫『有難う。またユルユル皆さまの御協議の上で、御願致します』 と悦子姫が蓑を敷いて、一年越の霜枯れの萱の上にドツカとすわる。 千歳の老松杉檜槻楓雑木も苔蒸して 神さび立る左右の密林躑躅の花の此処彼処 白に紅青黄色艶を争ふ其中を 藪鶯や山雀四十雀ガラ鳴き立つる 山路を越えて何時しかに小広き田圃に流れ出る 古き神代の物語唯一言も漏らさずに 書き伝へむと土筆鉛筆尖らし道の辺に 待構へ居るしほらしさ麦の青葉は止め葉うち 筆を隠して青々と手具脛ひいて待つて居る 花は一面田の面に艶を競ふて咲きぬれど 床には置くな、矢張野で見よ紫雲英虎杖草のここかしこ 万年筆の芽を吹いて書き取り清書の準備顔 此物語の主人公四辺の景色も悦子姫は 音彦、加米彦、夏彦を吾子の如く労はりつ 親になつたる気取りにてお山を見当てに進み行く。 加米彦『アーアナント云ふ佳い景色だらう。……音彦さま、向ふに雲の被衣を着て居るズンと高い高山がそれぢやないか』 音彦『さうだ、あれが目的の木の花姫の御分霊の祀られてある弥仙のお山だ』 加米彦『道理で、首から上は、雲の奴、スツカリ包みて、峰の姿を……ミセンの山だな、併し乍ら泰然自若として動かないあの姿を見ると、実に癪に障るぢやないか。俺達ばつかりにテクらせよつて、一歩も動かず、ヂツとして、俺が見たけら此処まで御座れ、と云ふ塩梅式だ。丸で吾々を眼下に見くだし、奴隷視して居るぢやないか。何だか軽蔑せられる様な心持がしてきたワイ』 音彦『アハヽヽヽ、云ふ事が無いと、何なと言はねば気の済まぬ男だなア。さう心配するな、今に、何程威張つて居る弥仙山でも、頭の頂辺を、吾々の足で踏みにじる様になるのだよ。さうだから、時節を待て……と云ふのだよ』 夏彦『皆さま、此美しい紫雲英野で、お弁当でも開いて、お山を拝み乍ら休息致しませうか』 加米彦『待て待て、女王様の御機嫌を伺つた上、認可してやらう。暫く控へて待つて居らう』 夏彦『随分薬鑵が能く沸騰りますなア、否かめは能く沸騰しますナア、アハヽヽヽ』 悦子姫『皆さま、どうでせう、此麗しい野原で、お山を遥拝し乍ら、くつろぎませうか』 夏彦『ソラ、どうだい、以心伝心、吾輩の身魂は暗々裡に、女王様に感応して居たのだ。斯うして見ると、肉体は主従だが、霊は……』 加米彦『その次を言はぬかい、霊魂が何だい、狸身魂の鼬みたまをして、何だか物臭い事を言ふ奴だ、斯ンな怪体なスタイルをして、能うソンナ事が云はれたものだワイ』 夏彦『ナーニ、スタイルで女が……ウンニヤ、ムニヤムニヤ』 加米彦『又行詰りよつたナ、閻魔さまの浄玻璃の鏡の前では、心の奥まで照されて、恥かしさに忽ち唖とならねばなるまい。グヅグヅして居ると、舌を抜かれて了ふぞ』 夏彦『舌の一枚や二枚抜かれたとて、沢山に仕入れてあるから大丈夫だよ。今の人間に一枚や二枚の舌で甘ンじて居る様な者は、それこそ不便極まる片輪人足だ』 加米彦『本当に能う廻る舌だなア。俺も此奴には一寸ビツクリ舌、イヤ感服舌、アツハヽヽヽ』 斯かる所へ、小夜具染の半纒をまとひ、あかざの杖を突き乍ら、ヒヨコリヒヨコリと一人の老翁、四人が前に立現はれ、 翁(豊彦)『皆さま達は、弥仙のお山へ御参拝のお方と見受けますが、どうぞ私の家へお寄り下さいませぬか。一つお尋ねをしたり、お願ひしたい事が御座います』 加米彦はシヤシヤり出で、 加米彦『ヤアお前さまは、北光の神さまの様な、崇高な容貌をしたお爺さまだな、コンナ若い宣伝使や、若い男に、老人が物を尋ねるとは、チツと間違つては居やせぬか。一年でも先へ此世へ飛び出した者は、経験が積み、社会学に達して居る筈だ、怪体な事を言ふお爺さまだなア。わしは又、お前さまの姿が木蔭にチラと見えた時から……ヤア占た、一つ沓でも穿かして上げて、張子房ぢやないが、太公望の兵法でも伝授して貰はうと思うて楽しみて居たのだ』 爺(豊彦)『世界の事なら、一日でも先へ生れた丈わしは兄貴だ、教へても上げるが、これ丈長生をして、世の中の酸いも甘いも悟りきつた此爺に、どう考へても合点のいかぬ事が一つあるのだ。これはどうしても神様のお道の人に聞かなくては、分らぬ事だと思うて、お山へ詣るお方を、婆アと二人が、茅屋へ寄つて貰ひ、種々と尋ねて見るけれども、どのお方も完全な解決を与へて下さらぬのだ。此間も英子姫さまとやら……此お女中よりもズツと綺麗な、神様のお使ひのお方が凛々し相なお従者を連れて通らしやつたので、一つ尋ねてみた所、二人のお方はニヤツと笑うて、何にも仰有つて下さらず、やがて女一人男三人の一行が、お山詣りをするから、其者に会うて尋ねて呉れいと仰有つたので、毎日日日首を長うして待つて居つたのだ、もしや、お前さま等の事ではあるまいかと思うて、重い足を引きずつて出て来たのだ』 加米彦『アヽさうだつたか、社会学はまだ未完成だが、神様の事ならば、ドンナ事でも解決をつけてあげよう。英子姫さまも流石は偉いワイ。手柄を俺達に譲つてやらうと思召して、昨夜会うた時にも仰有らなかつたのだ。流石は先見の明ありだ。古今来を空しうして東西位を尽したる、世界の外の世界迄踏み込んで、宇宙の真相を悉皆看破したる、此加米彦がお出でになると云ふ事を、流石は明智の英子姫様、予期して御座つたと見える。サアサア何なりとお尋ねなされ。神界に関する事ならば決して退却は致さぬ、三五教には退却の二字は有りませぬから………オツホン』 爺(豊彦)『さうかな、若いにも似合はず、能うそこまで勉強をなさつた、感心々々。今時の若い者は、皆心得が悪くて、神さまなンテ、此世の中に有るものか、人間が神さまだ、神があるのなら、一遍会はして呉れ、そしたら神の存在を認めてやるなンテ、大ソレた事を云ふ時節だ。それにお前さまは、何も彼も御存じとは、実に偉いお方だ、此爺も今迄コンナ方に会ひたいと思うて、待つて居ました……アヽ神様、有難う御座います、これと云ふのも全く弥仙のお山の木の花姫様の篤き御守護……』 と袖に涙を拭ふ。 夏彦『モシモシお爺さま、此奴ア、由良の湊の秋山彦の門番をして居つた男です。偉さうに口ばつかり開くのですよ。朝から晩まで門を開くのが商売だから、其惰力が未だに残つて居つて、大門の様な大けな口を開きよるのだ。相手になりなさるな。此男の云ふ位な事は、私だつて、年の功は豆の粉だ、豆の粉は黄な粉だ、黄な粉はヤツパリ豆の粉だ。猪喰た犬は、犬のどこやらに勝れた所が有りますワイ。私が教へてあげませう』 加米彦『コレコレお爺さま、此奴はなア、ウラナイ教の黒姫と云ふ、口ばつかり達者な奴に十年間も朝から晩まで、法螺を仕込まれて来た奴だから、何を言ふやら、蜜柑やら、金柑桝で量るやら、なにも分つた代物ぢやありませぬワイ』 爺(豊彦)『最前から此老爺が一生懸命に頼みて居るのに、お前さま達は、此老人を飜弄するのかい、エーエやつぱり英子姫さまの仰有つた偉いお方は、此御連中ぢや有るまい。アーア阿呆らしい、コンナ事なら此重い足を、老人が引摺つて来るのぢやなかつたのに……』 音彦『モシモシお爺さま、さう腹を立てて下さるな。此等二人は雲雀や燕の親類ですから、どうぞお望みの事を、私に仰有つて下さいませ。私の力限り神様に伺つて御答を致しませう』 爺(豊彦)『アヽさうかなア、お前さまはどこやらが、締りのある男だと思うて居つた。此処では話が出来ませぬから、お前さま一人、私の宅へ来て下され、婆アや娘が待つて居ります』 音彦『お爺さま、それは有難う御座いますが、私の……此処に御主人とも先生とも仰ぐ悦子姫さまがいらつしやいます。此お方は吾々の大先生で御座いますから、此方を捨てて私ばつかり参る訳にはゆきませぬ』 爺(豊彦)『アーさうだらうさうだらう、ソンナラ、悦子姫さまの先生とお前さまと来て下され、斯ンな若い男は此処に待たして置いたら宜しからう』 音彦『併し乍ら、四人はどうしても離れないと云ふ不文律が定められてあるので、此男二人を此処に放棄して置く訳にはゆきませぬ、四人共参りませう。それがお気に入らねば仕方がありませぬから御断り申すより途は御座いませぬ』 爺(豊彦)『アヽソンナラ来て下さいませ。コレコレ二人のお若いの、私の家へ来て下さるのは構ひませぬが、あまり喧しう言つて下さるな、娘の身体に障ると困りますから……』 加米彦『オイ夏、貴様一杯奢らぬと冥加が悪いぞ、此中で一番の年長だ、それに「お若いの」と云はれよつたぢやないか、是れと云ふのも、俺の好男子の余徳に依りて若く見られたのだよ。それだから老爺さまが、娘の体に障ると困ります……ナンテ予防線を張るのだよ。険呑な代物と見込まれたものだなア、アツハヽヽヽ』 音彦『サア悦子姫さま、御苦労乍ら、一寸老爺さまの宅まで寄つてあげて下さいませ』 悦子姫『不束な妾でもお間に合ひますれば、お爺さま参ります』 爺(豊彦)『ハア有難い有難い、御礼は後で致します。老爺の家は此向ふの森を一つ廻つた所で御座います。私の座敷から、あなた方が此処に御休息になつて御座るのが、手に取る様に見えました位ですから、ホンの一寸の廻りで御座います』 と先に立ち、ヨボヨボと己が家路へ伴ひ行く。 (大正一一・四・二四旧三・二八松村真澄録) |
|
36 (1887) |
霊界物語 | 26_丑_麻邇宝珠が錦の宮に奉納 | 02 真心の花(一) | 第二章真心の花(一)〔七六七〕 天火水地結の竜宮の麻邇の玉の無事、秋山彦館に安着せし歓喜と、感謝を兼ねたる荘厳なる祭典は無事終了し、直会の宴は盛に開かれ、いよいよ五個の神宝は聖地を指して賑々しく由良川を遡り送らるる事となつた。それに就ては一同由良の港の川口に出て御禊祓を修し、再び神前に立帰り祭典を行ひ、美はしき神輿を造り、これに納めて聖地へ、水に逆らひ、金銀色の帆に風を孕ませ上る事となつた。 茲に一同は玉の安着を祝する為、各立つて歌をうたひ舞ふ事となつた。先づ第一に秋山彦は立つて、神素盞嗚尊、国武彦命に一礼し、許可をえて、金扇を両手に拡げ、宣伝使服を身に纏ひ、悠々として座敷の中央に歌ひ舞ひ始めた。 秋山彦『年てふ年は多けれど月てふ月は多けれど 生日足日は沢なれど今日は如何なる吉日ぞや 九月八日の秋の空四方の山々紅葉して 錦織りなす佐保姫の機の仕組も目のあたり 綾の高天に宮柱太しり建てて永久に 鎮まりいます国治立の厳の命や豊国姫の 瑞の命の生御魂国武彦や言依別の 貴の命と現はれて裏と表の神界の 仕組も茲に仄見えて天火水地と結びたる 竜宮島の麻邇の玉己が館に入りましぬ あゝ惟神々々御霊幸はへましまして 一度ならずも二度も三つの御霊の神柱 神素盞嗚大神の大御恵のいや深く 吾館にとまりましまして深遠無量の御経綸 心の色は紅葉姫唐紅の大和魂 輝き初めし今日の空あゝ有難し有難し 恵は深き由良の海清き流れの川口に 百の罪咎浄めつつ貴の玉筥いや清く 五つの御玉を納めたる新つの御船に身を任せ 心も涼しき神風に黄金の真帆を掲げつつ 聖地に送る尊さよ三千世界の梅の花 一度に開く常磐木の松の神世も近づきて 海の内外の極みなく瑞の御霊の御恵の 堅磐常磐に照り渡る瑞祥は思ひ知られけり あゝ惟神々々御霊幸はへましまして 波斯の国より遥々と降り来ませる素盞嗚の 瑞の御霊の大御神四尾の山に奥深く 隠れて時を待ち給ふ国武彦の御前に 心の幕も秋山彦の賤の男が真心を こめて祝ぎ奉るあゝ惟神々々 御霊幸はへましませよ』 紅葉姫は又もや立上り、 紅葉姫『月日の駒はいと早く思ひ返せば満三年 辛酉の菊月の八日に吾館に出でましし 神素盞嗚大神の尊き御影を拝してゆ 心も赤き紅葉姫誠の限り身を尽し 仕へ奉りし甲斐ありて天地に充つる喜びは 又もや廻り甲子の九月八日の今日の空 嬉しき便り菊月の薫り床しき此祭典 金剛不壊の如意宝珠古き神代の昔より 波に漂ふ沓島の巌の中に秘めおける 神秘の鍵を預りし秋山彦の表口 黄金の鍵を高姫にまんまと盗み出されて 一同心を焦ちしが漸く島に馳せついて 危き所を発見し高姫さまを伴ひて 吾館に帰り来る折忽ち腹に呑み込みて 雲を霞と逃げられし其古事を思ひ出し 又もや麻邇の此宝珠無事に聖地に御安着 遊ばす迄は村肝の心を配り気をくばり 送らせ給へよ人々よ朝な夕なに高姫が 玉に心を抜かれつつ隙ゆく駒の隙あらば 又もや腹に呑み込みて如何なる事を仕出かすか 計り知られぬ一大事あゝ惟神々々 御霊幸はへましまして神素盞嗚大神が 天地を救ひ助けむと配らせ給ふ真心を よく汲み取りて仕へませ初稚姫や玉能姫 玉治別や其外の百の司の御前に 紅葉の姫が老婆心僅に披瀝し奉る あゝ惟神々々御霊幸はへましませよ』 と歌ひ終り舞ひ納めた。初稚姫は又もや立ちあがつて金扇を拡げ、歌ひ且自ら舞ふ。 初稚姫『遠き神代の其昔日の大神の御水火より 生れ出でませる稚姫君の神の命は天が下 四方の国々安国といと平けく治めむと 心を尽し身を尽し神の御業に朝夕に 仕へ給ひし折もあれ八十の曲津の醜魂に 取り挫がれて妹と背の道を誤り大神の 御教に触れて底の国身魂を隠し給ひつつ 天より高く咲く花も地獄の釜のこげ起し 百の悩みを身に受けていよいよ心を立直し 時を待ちつつ時置師の神の化身の杢助が 妻のお杉が腹を借り初稚姫と現はれて 国武彦と現れませる国治立大神の 尊き神業に仕へむと心を配る幼年の 年端も行かぬ身ながらも言依別命より 尊き神業命ぜられ三千世界の神宝 金剛不壊の如意宝珠千代に八千代に永久に 動かぬ松の幹の根に隠し奉りて開け渡る 天の岩戸も五六七の世開かむ為の御経綸 深き心を白浪の高姫司や黒姫が 玉の在処を探らむと現界幽界の瀬戸の海 太平洋の荒浪を乗り越え乗り越え竜宮の 一つの島に上陸し隠せし場所を探らむと 焦ち給ふぞ悲しけれ玉治別や玉能姫 神の司と諸共に高姫さまを気遣ひて 荒浪猛る海原を見えつ隠れつ漕ぎ渡り 御身の上を守りつつ妾も同じ竜宮の 一つの島へ上陸し人跡絶えし荒野原 山を踏み越え谷渉り黄金の波を湛へたる 玉依姫の隠れ場所諏訪の湖水に辿り着き 神の御旨をあななひて三五教の御教を 彼方此方と布き拡め弘め終つて八咫烏 黄金の翼に乗せられて朝日輝き夕日照る 竜の宮居にいまします玉依姫命より 天火水地を統べ結ぶ紫色の麻邇の玉 無言の儘に拝受して梅子の姫の御前に 捧げ奉りし嬉しさよ仰げば高し天の原 雲霧分けて自転倒島の秀妻の国の中心地 外の囲ひと聞えたる由良の港の人子の司 秋山彦が御館降り来りし嬉しさよ あゝ惟神々々御霊幸はへましまして 十曜の紋の十人連れ空前絶後の神業に 仕へ奉りし嬉しさを吾等一人の物とせず 高姫司や黒姫の神の使の御前に 此喜びをかき分けて手を携へて天地の 尊き道に仕へなば三五教の大空は 月日も清く明かに厳と瑞との神界の 機織り上げて綾錦輝く宮に永久に 仕へて互に歓ぎつつ教の栄えを見るならむ あゝ惟神々々御霊幸はへましまして 初稚姫が真心をうまらにつばらに聞し召せ 神素盞嗚大御神国治立大神の 分の御霊の御前に畏み畏み願ぎまつる 畏み畏み祈ぎまつる』 梅子姫は立上り歌ひ舞ひ始めた。 梅子姫『父大神の神言もて顕恩城に現れませる バラモン教の神司鬼雲彦や其外の 捻け曲れる人々を誠の神の大道に 言向け和す神業に八人乙女は身をやつし エデンの河を打渡り種々雑多と気を配り あらむ限りのベストをば尽せし事も水の泡 太玉命の神司顕恩城を主宰して 教を開き給ひつつ吾等姉妹各自は 顕恩城を後にして彼方此方と三五の 道を伝ふる折柄にバラモン教の醜人に 情容赦も荒浪の寄る辺渚の捨小舟 波に漂ひ竜宮の宝の島に上陸し 小糸の姫を守立てて五十子の姫や今子姫 宇豆姫伴ひ地恩郷光を隠し黄竜姫の 貴の命を表とし影身に添ひて大神の 尊き御教を説き示し心配りし甲斐ありて 身魂も清き小糸姫バラモン教の醜道を 弊履の如く脱ぎ棄てて誠の道に服従ひし 其嬉しさは如何ばかり高山彦や黒姫も 心を尽し身を尽し三五教の御教に 尽し給へど村肝の心にかかる執着の 雲晴れやらず黄金の玉の在処に魂抜かれ 教の道を外にして朝な夕なに気を焦つ 其御心の憐れさよ時しもあれや三五の 神の教の宣伝使初稚姫や玉能姫 玉治別と諸共に浪路を分けて来ります 神の柱の高姫が地恩の城に来りまし 高山彦や黒姫を密かに誘ひ一つ島 後に見棄てて波の上南洋諸島を隈もなく 探し索めて瀬戸海の淡路の島の司神 東助館に出でまして玉の在処を疑ひつ 再度山の山麓に国依別を訪ねつつ 執着心はまだ晴れず彼方此方と彷徨ひて 玉の在処を索めますその御心ぞ可憐らしき 地恩の城を後にして黄竜姫や蜈蚣姫 テールス姫や友彦を伴ひ山の尾打渉り 深き谷間を潜り抜けネルソン山を後にして ジヤンナの郷やイールの郷玉野ケ原を踏み越えて 金砂銀砂の輝きし諏訪の湖水の手前まで 漸う進む折柄に紺青の波を湛へたる 波上を駆る金銀の八咫烏やアンボリー 取りつく島もなき折に黄竜姫を先頭に 初めて悟る神の道心の空は忽ちに 転迷開悟の花咲きて朱欄碧瓦の竜宮城 玉依姫の御館奥の一間に参入し 一行五人の五つ身魂初稚姫の一行と ものをも言はずしづしづと玉依姫の御前に 月の形の座を占めて月光輝く麻邇の玉 心も色も紫の色映え渡る初稚姫の 貴の命はしとやかに吾手に渡し給ひけり 初稚姫の真心は雪より清く紅葉の 色にも優る御姿妾は忽ち感じ入り 無言の儘に受取りて黄金の翼を拡げたる 八咫烏に助けられ漸くここに着きにけり あゝ惟神々々神の御心汲み取りて 三五教に仕へたる神の司の高姫や 高山彦や黒姫や竜国別や鷹依姫の 貴の命と諸共に玉依姫の賜はりし 麻邇の宝珠の神業に仕へまほしき吾願ひ うまらにつばらに聞し召せ三五教を守ります 国治立大御神豊国姫大神の 御前に畏み願ぎまつるあゝ惟神々々 御霊幸はへましませよ』 と歌ひ終り、悠々として吾席に帰り給うた。 (大正一一・七・一七旧閏五・二三松村真澄録) |
|
37 (1891) |
霊界物語 | 26_丑_麻邇宝珠が錦の宮に奉納 | 06 大神宣 | 第六章大神宣〔七七一〕 素盞嗚尊は儼然として立上り、荘重なる口調を以て歌はせ給うた。 素尊『豊葦原の国中に八岐大蛇や醜狐 曲鬼共のはびこりて山の尾の上や川の瀬を 醜の魔風に汚しつつ天の下なる民草を 苦め悩ます此惨状を見るに見兼ねて瑞御魂 神素盞嗚と現はれて八十の猛の神司 八人乙女や貴の子を四方に遣はし三五の 神の教を宣べ伝へ山川草木鳥獣 虫族までも言霊の清き御水火に助けむと ウブスナ山の斎苑館後に残して八洲国 彷徨ふ折りしも自転倒の大和島根の中心地 綾の高天の聖域に此世の根元と現れませる 国治立大神の国武彦と世を忍び 隠れいますぞ尊けれ此世を救ふ厳御霊 瑞の御霊と相並び天地の神に三五の 教を開き天が下四方の木草に至る迄 安息と生命を永久に賜はむ為に朝夕を 心配らせ給ひつつ三つの御玉の神宝 高天原に永久に鎮まりまして又もはや 現はれ給ふ麻邇の玉五づの御玉と照り映えて 三五の月の影清く埴安彦や埴安姫の 神の命と現れませる神の御霊も今茲に いよいよ清く玉照彦の貴の命や玉照姫の 貴の命の御前に納まる世とはなりにけり 瑞の御霊と現れませる三五教の神司 言霊幸はふ言依別の神の命は皇神の 錦の機の経綸を心の底に秘めおきて 松の神世の来る迄浮きつ沈みつ世を忍び 深遠微妙の神策を堅磐常磐にたてませよ 神素盞嗚の我が身魂八洲の国に蟠まる 八岐大蛇を言向けて高天原を治しめす 天照します大神の御許に到り復命 仕へまつらむそれ迄は蠑螈蚯蚓と身を潜め 木の葉の下をかいくぐり花咲く春を待ちつつも 完全に委曲に松の世の尊き仕組を成し遂げむ 国武彦大神よ汝が命も今暫し 深山の奥の時鳥姿隠して長年の 憂目を忍びやがて来む松の神世の神政を 心静かに待たせまし竜宮城より現はれし 五つの麻邇の此玉は綾の聖地に永久に 鎮まりまして桶伏の山に匂へる蓮華台 天火水地と結びたる薫りも高き梅の花 木花姫の生御魂三十三相に身を現じ 世人洽く救はむと流す涙は和知の川 流れ流れて由良の海救ひの船に帆をあげて 尽す誠の一つ島秋山彦の真心や 言依別が犠牲の清き心を永久に 五六七の神世の礎と神の定めし厳御魂 実に尊さの限りなりあゝ惟神々々 御霊幸はへましまして国治立大神の 厳の御霊は今暫し四尾の山の奥深く 国武彦と現はれて草の片葉に身を隠し 錦の宮にあれませる玉照彦や姫神を 表に立てて言依別の神の命を司とし 深遠微妙の神界の仕組の業に仕へませ 朝日は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも 仮令大地は沈むとも厳と瑞との此仕組 千代も八千代も永久に変らざらまし天地の 初発し時ゆ定まりし万古不易の真理なり 万古不易の真理なり此世を造りし神直日 心も広き大直日只何事も神直日 大直日にと見直して天地百の神人を 救はむ為の我が聖苦思ひは同じ国治立の 神の尊の御心深くも察し奉る 深くも感謝し奉る』 と歌ひ終り、一同に微笑を与へて、奥の間に姿をかくさせ給うた。 国武彦命は神素盞嗚尊の御後姿を見送り、手を合せ感謝の意を表し、終つて一同の前に立ち、稍悲調を帯びた声音を張り上げ歌ひ給うた。 国武彦『天の下なる国土を汗と涙の滝水に 造り固めて清めたる豊葦原の国の祖 国治立の厳御霊御稜威も高き貴の宮 高天原に現はれて百の神等人草の 守らむ道を宣り伝へ神の祭を詳細に 布き拡めたる元津祖天足の彦や胞場姫の 捻け曲れる身魂より生れ出でたる曲身魂 八岐大蛇や醜狐醜女探女や曲鬼の 怪しの雲に包まれてさも美はしき国土も 汚れ果てたる泥水の溢れ漂ふ世となりぬ 醜の曲霊に憑かれたる常世の彦や常世姫 千五百万の神々の罪や穢を身に負ひて 木花姫の守ります天教山の火口より 身を躍らして荒金の地の底迄身を忍び 根底の国を隈もなくさ迷ひ巡り村肝の 心を尽し身を尽し造り固めて天教の 山の火口に再現し野立の彦と名を変へて 洽く国内を駆け巡り豊国姫の神御霊 野立の姫と現はれてヒマラヤ山を本拠とし 身を忍びつつ四方の国夫婦の水火を合せつつ 世界隈なく検めて再び来る松の世の 其礎を固めむと自転倒島の中心地 綾の高天と聞えたる桶伏山の片ほとり 此世を洗ふ瑞御霊四尾の山に身を忍び 五つの御霊の経綸を仕へまつらむ其為に 日の大神の神言もて天の石座相放れ 下津磐根に降り来て国武彦となりすまし 神素盞嗚大神の御供の神と現はれぬ 此世を思ふ真心の清き思ひは仇ならず 現幽神を照り透す金剛不壊の如意宝珠 黄金の玉や紫の貴の宝は逸早く 自転倒島に集まりて三千世界を統べ守る 其礎はいや固く国常立となりにけり 又もや嬉しき五つ御玉波に漂ふ竜宮の 一つ島なる秘密郷金波漂ふ諏訪の湖 底ひも深く秘めおきし五つの御霊と称へたる 青赤白黄紫の光眩ゆき麻邇の玉 梅子の姫や黄竜姫蜈蚣の姫や友彦や テールス姫の御使に持たせ給ひて遥々と 黄金翼の八咫烏天津御空を輝かし 雲路を別けて自転倒の松生ひ茂る神の島 綾の聖地に程近き恵も深き由良の海 其川口に聳り立つ秋山彦の神館 心の色は綾錦空照り渡る紅葉姫 夫婦の水火も相生の松葉茂れる庭先に 十曜の紋の十人連しづしづ帰り降り来る 其御姿の尊さよいよいよ茲に五つ御玉 国武彦も永久に隠れて此世を守り行く 玉依姫のおくりたる麻邇の宝珠は手に入りぬ あゝ惟神々々時は待たねばならぬもの 時程尊きものはなし此世を造り固めたる 元の誠の祖神も時を得ざれば世に落ちて 苦み深き丹波路の草葉の影に身を凌ぎ 雨の晨や雪の宵尾の上を渡る風にさへ 心を苦しめ身を痛め天地の為に吾力 尽さむ由も泣くばかり胸もはり裂く時鳥 八千八声の血を吐きて時の来るを待つ間に 今日は如何なる吉日ぞや神世の姿甲子の 九月八日の秋の庭御空は高く風は澄み 人の心も涼やかに日本晴れのわが思ひ 瑞と厳との睦び合ひ八洲の国を照らすてふ 三五の月の御教の元を固むる瑞祥は 此世の開けし初よりまだ新玉のあが心 あゝ惟神々々天津御空の若宮に 鎮まりいます日の神の御前に慎み畏みて 国治立の御分霊国武彦の隠れ神 遥に感謝し奉る千座の置戸を身に負ひて 此世を救ふ生神の瑞の御霊と現れませる 神素盞嗚大神の仁慈無限の御心を 喜び敬ひ奉り言依別の神司 此行先の神業に又もや千座の置戸負ひ あれの身魂と諸共に三柱揃ふ三つ身魂 濁り果てたる現世を洗ひ清むる神業に 仕へまつらせ天地の百の神たち人草の 救ひの為に真心を千々に砕きて筑紫潟 深き思ひは竜の海忍び忍びに神業を 仕へまつりて松の世の五六七の神の神政を 心を清め身を浄め指折り数へ待ち暮す あが三柱の神心完全に委曲に聞し召し 天津御空の若宮に堅磐常磐に現れませる 日の大神の御前に重ねて敬ひ願ぎまつる あゝ惟神々々御霊幸はへましませよ』 と歌ひ了り給ひ、一同に軽く目礼し、其儘御姿は白煙となりて其場に消えさせ給うた。一同はハツと驚き、直に拍手し天津祝詞を奏上し、御神慮の尊さを思ひ浮べて、感涙に咽ぶのであつた。 (大正一一・七・一八旧閏五・二四松村真澄録) |
|
38 (1987) |
霊界物語 | 30_巳_南米物語2 末子姫と言依別命の旅 | 08 露の道 | 第八章露の道〔八五〇〕 久方の天津御空の月も日もいとうららかにテル山峠の 山の麓の樟の森露の宿りの夢枕 夜は漸くに明け放れ鵲の声、小雀の 囀る声に目を醒ましあたりを見れば草も木も 神の恵の露にうるほひ昼の暑さに萎れたる 姿も水のしたたりて涼味うるほふ夏の朝 気もサヤサヤと勇み立ち神素盞嗚大神が 八人乙女の末子姫旦の風にゆらぎつつ デリケートなる山百合の花の色こそ床しけれ 百合の花にも擬ふなる乙女の姿ユラユラと 楠の森の下蔭に佇む姿は芍薬か牡丹の花か 菖蒲も薫る五月空見るも涼しき優しの姿よ 末子の姫に近く侍りてまめまめしくも朝夕に 心の有らむ限りを尽し身もたなしらに主の為 舎身の活動続けたる神の教の司人 捨子の姫のあだ姿何れ劣らぬ花と花 色香も淡き濃きあり雲突く計りの荒男の子 心も固く骨節の巌の如き石熊が 足の運びもカールの司心も口も身も共に カールカールと鳴く烏羽の色にも擬へたる 日に焼きつけられし黒面あゝされどされど神の御前に只管に 尽す心も血も赤く雲焼けしたる東の空に 日の大神の豊栄昇りに昇ります如く清き心ぞ雄々しけれ アルゼンチンの宇都の国其名も高き正鹿山津見の神の 永久に鎮まりゐましける教の館を預りし 従僕の神の国彦が御子と生れし松若彦は 主の君に三五の教の道を任けられて 謹み仕へまつりつつ日々に栄ゆる言霊の花芳ばしく 教の林も日に月に茂り合ひたる宇都の国 道のほまれも高砂の花と歌はれ来りける あゝ惟神々々誠の神の功績に 集まり来る撫子の汚れに染まぬ神心 誠一つに身を固め松若彦の教司に 左守の神と仕へたる心も清き正純彦や 魂も直なる竹彦の朝な夕なの起伏にも 心を配り大神の御為世人の為に村肝の 心尽すぞ雄々しけれ宇都の館の松若彦が 山海万里を越えさせ玉ひはるばる茲に出でませし 珍の乙女の神司迎へむ為に遥々と 春、幾、鷹の三人を心も厚き出迎へ 赤き心は提灯の明りの如く十曜の神紋唐紅の色に見えにける 末子の姫は捨子姫石熊司、春、幾、鷹の大丈夫を 或は前或は後に守らせ乍らしづしづと 晨の露を踏み分けて宇都の国にて名も高き 巽の池に荒ぶる神を皇神の生言霊に言向け和さむと か弱き女の身にも似ずいそいそ進み出で給ふ 実にも尊き神人の厳の雄健び言霊の 如何に照るらむ如何に輝き渡るらむあゝ惟神々々 皇大神の御経綸仰ぐも尊し三十余万年の 清き神代の物語厳の御霊の名に負へる 伊豆の神国田方の郡狩野の川の激流を 眺めて茲にあらあらと述べ伝ふこそ楽しけれ あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ。 樟の森を立出でて、巽の池の大蛇の魔神を帰順せしめむと、末子の姫に従ひて、一行は心もいそいそ、三里の道程を朝露をふみしめ乍ら、涼しき朝風に送られ、霧こむる山野を、南へ南へと進み行く。 カールはコンパスの長短の醜さを隠す為、又もや歌を謡ひ、ヤツコス踊りをし乍ら、大地をドンドン威嚇させつつ、先頭に立つて進み行く。 カール『悪魔の大蛇が潜むなる池の堤に立出でて 動きの取れぬ言霊を遠慮会釈も荒波の おのもおのもに発射して神の力を発揚し 霧立昇る魔の池を隈なく払ひ清めつつ 汚れ切つたる曲霊魂心の底より帰順させ 栄え久しき松の世を治し召します大神の 神素盞嗚の神の水火世界の曲を払ひつつ 底ひも知れぬ此池に立籠りたる醜大蛇 力と頼む三五の尽きせぬ神の御光に 照らし清めて潔く艮めを刺さむ此カール 七人揃ふ其中に二人のナイスを別にして 抜き出て偉い此男根底の国に潜むとも 望みの通り口鉾に屠り散らして暗の世を 日の出の御代と立直し古き司や新しの 隔て構はぬ吾れ先に屠り散らさむ今日の旅 魔神の猛ぶ此池を見すてて是が帰られうか 昔の神の神力に目出たく大蛇を言向けて 百の人々平けく安らかなれと只管に 祈る誠の宣伝使雪より清き神心 選りに選りたる七人が世人の為に今茲に ラリルレローと濁りたる悪神共の棲処をば 一時も早く掃き清め珍の国なる人々の 疫病災禍平らけく鬼も大蛇も打払ふ あゝ惟神々々五十鈴川の言霊に 汚れを洗ふ勇ましさ神が表に現はれて 善と悪とを立別ける巽の池に潜みたる 醜の大蛇を逸早く誠の道の言霊に 服従ひ和し世の人の曲をことごと払拭し カール司の腕前は先づ先づ斯くの通りだと 宇都の都に立帰り松若彦の御前に 法螺吹き立てる頼もしさあゝ惟神々々 神の御霊の幸はひて石熊さまの言霊に 必ず兆のなき様にカールが願ひ奉る 乾の滝に現はれた大蛇の牡に狙はれて 此世乍らの活不動思ひ廻せばまはす程 あんな恥し事はないそれでもヤツパリ石熊は 早慢心の登り口末子の姫に打向ひ 巽の池の醜神に向つて宣らむ言霊は 私に任して下されと頼んだ心の可憐らしさ それ程任して欲しければ遠慮は要らぬドシドシと 大蛇に巻してやりませうまかれて石熊舌を巻き 尾を巻き乍ら鉢巻を前に結んでスタスタと 生命カラガラ一散に逃げて行くのは目のあたり カールの歌ふ言霊を聞いて恨むでない程に お前の大事と思ふから悪い事は言はないぞ 末子の姫の御座るのに力も足らぬ石熊が 虎の威を仮る古狐池の大蛇を言霊に 服従へますとは何の事身の上知らずも程がある 早く心を改めて謙遜りつつ姫様の 御後に従ひ来るが良い何程弱そに見えたとて お前は大蛇に相対し服従ひ和す資格なし あゝ惟神々々神の心に省みよ 昨日が日迄三五の神の教に敵対うて 千変万化の計略を包み来れる曲津神 お前の放つた醜犬は珍の館にヤツと居る 改心したとは云ひ乍らお前は神の罪人ぞ 如何に末子の姫様がお許しありとて鼻高く 先頭に立つは何事ぞお前の前途が案じられ 口がカールか知らね共友達甲斐に言うておく 俺の誠の親切がチとでもお前に分つたら 今日は遠慮をするが良い呉れ呉れ気を付けおきまする あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ。 旭は照る共曇る共月は盈つとも虧くる共 仮令大地は沈むともお前の様な魂で 大蛇が言向け和されよか控えて居るが第一だ くどい乍らも気を付ける必ず必ず俺のこと 悪くは取つて呉れるなよ神々様も見そなはせ カールの赤き胸の内あゝ惟神々々 神の心に立帰れ神の心に通へよや』 と歌ひつつ足拍子を取り進んで行く。石熊はカールの此歌に首を傾け、手を組み、思案に暮れ乍ら、力なげに従ひ行く。 (大正一一・八・一五旧六・二三松村真澄録) |
|
39 (2032) |
霊界物語 | 31_午_南米物語3 国依別の旅 | 23 化老爺 | 第二三章化老爺〔八八九〕 秋山別は烈風に吹き散らされ、力と頼みしモリスには別れ、止むを得ず只一人、屏風山脈の帽子ケ岳を目当てに登りつつ、又もや日を暮らして、老木茂る木蔭に立寄り、身を横たへて茲に夜の明くるを待つ事とせり。 満天の星光は燦然として金色の光を放ち、紺碧の空は、何となく爽快を覚え、天を仰いで神徳を讃美しつつありし折、俄に山岳も崩るる計りの大音響聞え来り、一天忽ち曇りて、大粒の雨バラバラと降り出でぬ。 秋山別は止むを得ず、老木の蔭に立寄り雨を避けむとする折しも、忽然として現はれたる白髪異様の大怪物、鏡の如き巨眼を剥き出し、鼻高く、口大きく、銅の如き面相にて、秋山別を睨めつけにける。秋山別は轟く胸を押へ、臍下丹田に神を納め、怪物の顔を瞬きもせず睨めつけゐたり。怪物も又、ビクともせず、地上より生えたる樹木の如く突立つて、赤、青、白、黒、黄、紫と幾度も顔色を変じ、爪の長き毛だらけの巨腕をヌツと前につき出し、今や秋山別を、一掴みにひン握り、投げ捨てむとするの勢を示しけるにぞ、秋山別は心の中にて……国治立大神、豊国姫大神、国大立大神、日の出神、木の花姫神、金勝要大神、守り玉へ幸はひ玉へ……と祈願をこらし居たりしが、怪物は大口をあけて、雷の如き巨声にて笑ひ出しぬ。 怪物『アツハヽヽヽ、秋山別の宣伝使、能つく聞け!吾こそはアマゾン河の森林に永住致す八岐大蛇の化身であるぞ。 イヽヽー如何に汝、勇猛なりとて吾等が一族に向つて言霊線を発射し、吾等が永年の棲処を荒さむと致す憎き奴原、 ウヽヽーうつかり森林に向うものならば、某が神変不思議の術を以て、汝が身体を寸断し呉れむ。万一汝改心をなし、是より引返すに於ては、汝が罪を許し、生命を助け遣はすべし。返答は如何に』 と呶鳴り立てけるを、秋山別は不退転の信念を固め、 秋山別『エヽヽー面倒な、某は国治立大神の教の御子、三五教の神司、汝が如き曲神の言を用ゐて、のめのめ引返す様な腰抜武士ではないぞ。 オヽヽー恐ろしき其面構へを致し、活神の宣伝使を脅しつけようと致しても到底駄目だ。早く姿を隠せ』 怪物『ヤイ秋山別、良つく聴け。 カヽヽー神々と申すが、国治立尊が神ならば、八岐大蛇も亦神であるぞよ。神と云ふ点に於て何処に違つた所があるか。此方はウラル教を守護致す元の神にして、世界の先祖と聞えたるアダム、エバの霊より現はれ出でたる者なるぞ。言はば汝ら人民の祖神である。子が親に対してたてつくと云ふ道理は何処にあるか、 キヽヽ鬼門の金神とはそりや何の囈言、八岐大蛇が悪神なれば、鬼門の鬼の字は又鬼ではないか、 クヽヽ下らぬ事を申すより、早く往生致せば、苦労なしに神徳が頂けるではないか、 ケヽヽ見当の取れぬ神界の模様、人間の分際として如何して分らうぞ、 コヽヽ是位神が言葉を分けて申したら、如何な頑迷な其方でも、合点が往つたであらう。 サヽヽさつぱりと今迄の心を取直し、大蛇の神に帰順致すか、 シヽヽしぶとう致して居ると最早量見はならぬぞ、 スヽヽ好だ嫌ひだと、神に区別を立て、世界をうろたへまはる腰抜共、 セヽヽせせこましい事を思はずに、天地一体の真理を弁へ、早く此方に帰順せよ、 ソヽヽそれが其方に取つて最も安全な道であるぞ、 タヽヽ高天原の聖地錦の宮の神司だとか、イソの館に鎮まる素盞嗚尊の部下だとか、 チヽヽ小さき隔てを立てて、自ら小さき穴に迷ひ込み、 ツヽヽ月の大神許りを持て囃し、 テヽヽ天に輝く日の大神を次に致し、 トヽヽ十曜の神紋を閃かし、世界を宣伝使面さげて、うろたへ廻るとは何のたわ事、早く此方の傘下に集まり来つて、吾神業に奉仕するか、さもなくば汝が身体は風前の燈火だ。ハヽヽヽヽ』 と四辺に響く高笑ひ。秋山別は暗夜、此深山に於て、斯かる怪物に出会ひ、胸轟き、身の毛もよだつ計りに恐ろしくなり来たりぬ。されど飽く迄も、一旦心にきめた信仰を翻さじと、臍下丹田に息をこめ『一二三四五六七八九十百千万』と辛うじて、天の数歌を奏上すれば、怪物の顔は漸くに和ぎ少しく笑を湛へ居るにぞ、秋山別は吾言霊の非常に効力ありしことを心中に打喜び、怪物に向つて、 秋山別『オイお爺イさま、随分偉い勢で、吾々を威喝したぢやないか。そンな事を怖がる様な者は只の一人もないぞよ。俺の怖いと云ふのはそンな化州でも何でもないワ』 怪物『ワツハヽヽヽ、それなら其方は何が一番怖いと思ふか。此爺は恐ろしくないか』 秋山別『ヘン、何が恐ろしいのだ。夜になればそンな偉相な面をして出て来るが、お日様がお出ましになると、すぐに消えて了ふ代物が恐ろしくて、此世の中が生きて行けるかい。コリヤ此方は三途の川を渡り、焦熱地獄へ往き、地獄の底まで探険して、実地修養を経た秋山別の宣伝使だぞ。お前達が怖くて堪らうかい』 怪物『そンなら、一つ怖い者があると云つたのは何の事だい。俺の怖いと云ふのは誠と云ふ一字許りだ』 とウツカリ怪物は口を辷らしたるを、秋山別は之を聞いて、 秋山別『ハヽー此奴、誠が怖いと云ひよつたなア。大方言霊に恐れてゐるのだらう。ヨシ、之からグヅグヅ吐しよつたら、言霊を連発してやるのだナア』 と腹の中で決定て了つた。 秋山別『オイ爺、モウしめたものだ。貴様は誠が一番怖いと云ひよつた。誠生粋の大和魂の言霊をこれから発射してやるから、其積りで居れ。 ナヽヽ何と申しても、此言霊は俺の口から出るのだから、貴様の力でとめる訳にも行こまい、早く改心を致さぬと、 ニヽヽ二進も三進も行かさぬ様に、秋山別がここで封じて了つてやるぞ』 怪物『ヌヽヽ吐すな吐すな。強盗猛々しいとは其方の事だぞ。主人の娘を盗み出さうと致した痴者奴、 ネヽヽ佞け曲つた其方の言霊が、此方に対して応用が出来て堪るものかい、 ノヽヽ野天狗、野狸、野狐の様な厄雑神の容物となり、言霊を発射するのなンのと、 ハヽヽ腹が撚れるワイ、余り可笑しうてのウ。 ヒヽヽ姫の後を野良犬の様に嗅ぎまはる、 フヽヽ不束者奴が、 ヘヽヽ屁でも喰つたがよからうぞ、 ホヽヽ呆け野郎奴、 マヽヽ誠が怖いと申せば直に附け上り、言霊を発射してやらうなどと、心の中で北叟笑みを致して居るぞよ。この方は余りの可笑しさに、 ミヽヽ見つともない、其面付で女に対し、恋の鮒のと、ソリヤ何のたわ事。 ムヽヽ昔から無理往生の恋が遂げられた例しはないぞ。 メヽヽ盲滅法界に、 モヽヽ盲目的に、 ヤヽヽやり切らうと思うても、 イヽイ行きは致さぬぞよ。 ユヽヽ幽冥界へ落されて、焦熱地獄に迷ひ込み、火の車に乗せられ、 エヽヽえぐい、熱い苦みに会ひ、 ヨヽヽヨウもヨウも幽界の探険をして来たなどと、口幅の広い事を云はれたものだ、 ラヽヽらつちもない、 リヽヽ悋気喧嘩を致したり、 ルヽヽ坩堝の様な黒い洒つ面をして、 レヽヽ恋愛の恋慕のと、ソリヤ何を吐くのだい、 ロヽヽ碌でなし奴。 ワヽヽ吾れの身分を考へて見よ。 ヰヽヽいたづら小僧の分際として、 ウヽヽ囈言のような恋を語り、 ヱヽヽ縁があるの、ないのと、 ヲヽヽ可笑しいワイ。貴様の怖いのは大方女だらう。女の為に、シーズン河へ投込まれ、有るに有られぬ苦労を致し、地獄の八丁目迄落されて来よつたのだから、女にはコリコリ致したと見えて、元気のない其面付は何だい』 秋山別『ヨシ待て、糞爺、今に秋山別が神力無双、円満清朗なる生言霊の弾丸を其方の面体に向つて乱射してやるから覚悟を致せ。コリヤ取つときの言霊だぞ。最前のは鉛の玉だつたが、今度は銀の玉と金の玉だ。化物に向つて金の玉を発射すれば、化者は滅亡するのは昔から定まつてゐる。サア良いか』 怪物『アハヽヽヽ、睾玉を発射するのも面白からう。其方は最早女に絶縁し来た以上は、睾玉は不必要だ。サア何ぼなと発射せい。受取つてやらう。併乍ら只の二つより有ろまい。其代り、其二つを発射したが最後、其方の勇気はなくなり、言霊戦はモウ駄目だぞ』 秋山別『馬鹿だなア。そんな睾の玉とは違うのだ。一言天地を震憾し、一声よく風雨雷霆を叱咤する黄金の言霊だ』 と云ひ乍ら、 秋山別『一二三四五六七八九十百千万』 と四五回も繰返せば、流石の怪物も追々其容積を減じ、遂には二三尺の童子の姿となり、小さき声にて、 童子(怪物)『コリヤ秋山別、其方は俺の一番怖がる誠の言霊を発射して攻めよつたな。ヨシ此方にも考へがある。今日はこれで別れてやるが、明晩キツと仇を打つてやるから其積りで居れ。ウーーツ』 と唸りを立ててパツと其儘消え失せにけり。 (大正一一・八・二〇旧六・二八松村真澄録) |
|
40 (2065) |
霊界物語 | 33_申_玉の御用の完了/高姫と黒姫の過去 | 01 高論濁拙 | 第一章高論濁拙〔九一六〕 厳の御霊に由緒ある伊豆の神国田方の郡 湯ガ島温泉湯本館軒を流るる狩野川 連日連夜の大雨に水量まさり囂々と 伊猛り狂ふ水の音又もや降り来る大雨に 亜鉛板の屋根を轟かし耳さわがしき雨館 皇大神を斎りたる奥の一間に瑞月が 安全椅子に横臥して瑞の御霊に由緒ある 三十三巻物語完全に委曲に述べ立つる あゝ惟神々々御霊幸はひましまして 待ちに待ちたる霊界の三十の三巻の物語 皇大神の道の為世人の為に三五の 教の蘊奥を説き諭す此真心を諾なひて 神の教は日に月に茂り栄えてどこ迄も 道の柱となさしめよ朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも仮令大地は沈むとも 神の言葉は何時までも天地の続く其限り 月日と共に変らまじ天地開けし初めより 天津神達八百万国津神達八百万 中にも分けて国治立の神の命の御来歴 其外殊に御功績の著しきを選り集め 雲霧分けて瑞月が宇宙の外に立ち乍ら 松雲太夫に筆とらせとく物語永久に 五六七の御世の末までも照らさせ玉へ惟神 神の御前に願ぎまつる神の御前に願ぎまつる。 蒼空一点の雲影もなく天津日は東天に 高山の頂きを掠めて昇らせ玉ひ 平和の輝きを地上に投げ玉ひ 涼しき風は天然の音楽を奏し 山野の樹木は惟神的に競うて舞踏をなす 蝶は翩翻として心地よげに飛びまはり 魚は溌溂として清泉に躍る 実に名にし負ふ高砂島の瑞祥を、目の前り 天地四方に現はしぬ今日はしも神素盞嗚大神 天降り玉ひてアルゼンチンの珍の神館に 出でさせ玉ひ八人乙女の末の御子 末子の姫の花の春一度に開く木の花の 莟の上におく露もいとすがすがしげに見えにける。 三五教の神司竜の腮の球の玉 其神徳を身に受けて救ひの神と輝ける 国依別の神司を珍の都の主とし 末子の姫に娶はして千代に八千代に高砂の ほまれを四方に伝へむと心欣々大神は 今さし昇る天津日に向つて両手を合せつつ 祈り玉ふぞ尊けれ。 愈結婚の式は今宵と差迫り、松若彦、捨子姫は数多の神司を初め、信徒を使役して、今夜の慶事の準備万端に全力を注ぎ、何れも甲斐々々しく東奔西走して、喜色満面にあらはれ、上下一致、手の舞ひ足の踏む所を知らず、吾を忘れて大活動をなせる折柄、此慶事を少しも祝せざるのみか、体主霊従の限りを尽し来りし国依別が、瑞の御霊の生娘、末子姫に娶ひて、清き御魂を混濁し、折角ここ迄造り上げた高砂島の瑞祥を黒白も分ぬ暗の夜に覆へさむは目の前り、神の御為世の為に、飽く迄も之を拒み遮り破約せしめむと、夜叉の勢凄じく、彼方此方と駆巡り、目を釣り上げ、顔を赤らめ、口を尖らせて運ぶ歩みも荒々しく、今夜の準備に目のまはる程多忙をきはめ居たる松若彦が館を叩き、慌ただしく入り来るは例の高姫さまであつた。高姫は門口より尖つた声で、 高姫『御免なさいませ……私は皆さまに憎まれ者の名を取つた身魂の悪い高姫で御座います。急々お目にかかつて申上げたい事が御座いますから、どうぞ松若彦様に少時で宜しいから、御目にかかりたう御座います。どうぞ御取次を願ひます』 とエライ権幕で呼はつて居る。カールは此声に表へ駆出で、 カール『これはこれは、貴き高姫さまで御座いましたか。よくマア御入来、何の用かは存じませぬが、今日は貴方も御聞及びの通り、瑞月祥日と申しまして、アルゼンチン開けて以来、又とない結構な御日柄で御座います。御存じの通り、一片の雲影もなき青空に、天津日の大神様は赫々として輝かせ玉ひ、夜は三五の明月、銀玉を空に懸けたる如き瑞祥の今日、イヤもう目出たうて目出たうて、鶴は千年、亀は万年、東方朔は九千年、三浦の王統家五千歳[※「鶴は千年~三浦の王統家」は伊都能売神諭大正八年一月二七日の一節。]、三千年の御仕組の一厘の花も開きそめ、目出たいの目出たくないのつて、何を仰有つても、今日に限つてグサグサした言葉はテンと耳には這入りませぬ。御用があれば更めて明日承はりますから、どうぞ今日は早く御帰り遊ばし、貴方も御結婚の準備の御手伝に御殿へお上り下さいませ。さぞ末子姫様が御待ちかねで御座いませうぞえ』 高姫『コレコレ、カール殿、お前に話さうと思つて来たのぢやない。主人の松若彦に意見をしようと思うて来たのですよ。主人にも取次がず、僣越至極にも門前払ひをくらはすとはチト脱線ぢやありますまいか。又此高姫に対し、早く御殿へ上り、御手伝ひをせよと仰有つたやうだが、そんな命令を下すお前に、ヘン、権利がありますかい。グヅグヅして居ると、日が暮れます。さうすりやサツパリ後の祭り、サアもうお前さまに係り合つて居つては、事が遅れる。エヽそこ退つしやれ』 カール『コレコレ高姫さま、貴方は強行的家宅侵入をするのですか、法律を心得てゐますかなア』 高姫『エヽ小癪面をさげて、法律の糞のて、何を言ふのだ。法律は死物だ、生きた人間が之を使へば活きるが、お前のやうなデモ法律家が何を吐いたつて、三文の価値もありませぬぞや。それだから神様が法律を変へるぞよと仰有るのだよ』 カール『高姫さま余り馬鹿にして下さるな。これでも赤門出のチヤキチヤキの法学士、而も優等で出たカールさまだよ。余り馬鹿にして貰ひますまいかい。やがて博士の称号が下らむとしてゐる所だ』 高姫『博士が聞いて呆れますぞえ、お前のは博士でなうて、バカセだ。昔はハカセとよんだが今はハクシと読むのだよ。読方も知らぬような法学士が何になるか、法学士でなうて、方角知らずと云ふ馬鹿者だらう。薄志弱行の徒計りが集まつて居るから、今ではハクシといふのだ。白紙主義と云うて、白紙の様な清い精神なればまだしもだが、真黒々助の濁つた魂で、法学士も博士もあつたものかいな。法律を殺して皆墓へ埋めるのだから、ハカセと昔は云つたのだ。此頃は松若彦さまの庭先に立つて、箒を以て庭掃かせになるとこだと云つて威張つて居るのだらう。何程箒(法規)が立派でも、神様の自然の憲法には抵抗することは出来ますまい。法律と云ふものは其源を神界の憲法に発して居るのだ。其元を掴んだ日本魂の生粋の高姫に対し、何程弁護士もどきに滔々と懸河の弁を揮つても駄目ですよ。舌端火を吐き、炎を吹いて高姫を煙にまき、追ひ帰さうと思つても、いつかないつかな日の出神の…オツトドツコイ……日の出る様な勢でも、只一口ジユンと水を注したら、忽ち消滅して了ふ様な屁理屈を云ふものぢやありませぬぞえ。それだから、人間の作つた不完全な学問は駄目だと云ふのですよ。『学ありたとて、知慧ありたとて、神界の仕組は人民では分るものではないぞよ』と此世の根本を御造り遊ばした大先祖の国治立命様が仰られて御座るぢやありませぬか。其大神様の片腕となつて御手伝ひ申す身魂の云ふことを、揚げ面して聞くと云ふやうな不都合千万の罰当りが、どこにありますか。エーエ面倒臭い、家宅侵入だらうが、何だらうが、そんな事を構うてゐる暇がない、カールさますつこんでゐなさい』 斯く争ふ所へ、松若彦は慌ただしく、何事ならむと奥の間より走り来り、 松若彦『ヤア貴方は高姫様、何御用か存じませぬが、なることならば明日、どうぞ御訪ね下さいませ。万一御都合が悪ければ、私の方から明日更めて御伺ひ致す考へで御座いますから……』 高姫『間髪を容れざる危急存亡の今日の場合、そんな暢気な事を云つて居られませぬ。何でもかでも、お前が発頭人だから、ここで一つ生命に代へても往生させねばならぬ大問題が差迫つて来て居ります。後の後悔は間に合ひませぬからなア』 松若彦『これはこれは何の御用かと思へば、大変な急用との御話、そんなら私も結婚の準備に付いて、何かと繁忙をきはめ、只今言依別様の御館へ出仕する所で御座いましたが、僅五分間だけ繰合せまして御話を承はりませう』 高姫『別に五分間もかかりませぬ。お前さまが高姫の云ふことを……ウンさうか、御尤も……と首を縦に一つふりさへすれば、それで万事解決がつくのだ』 松若彦は言依別、国依別、竜国別より昨夜の高姫の妨害運動を早くも聞かされてゐたので、テツキリ、此事ならむと早合点し、 松若彦『高姫さま……如何にも御尤も、仰有る通りに致します……ウンウン……』 ガクリガクリと首を縦にふり、 松若彦『左様なら……』 と言つたきり、足早に裏口よりぬけ出し、言依別命の館を指して、雲を霞と逃げて行く。 高姫『コレ……松、ワヽ若、ヒヽ彦何をビコビコとしてゐるのだ。奥の間にかくれて居つても、埒はあきませぬぞえ。……ヤツパリ気が咎めると見えて、蒟蒻のやうにビリビリふるつて、奥の間に隠れたのだな。蚤が蒲団の縫目に頭計り隠して、尻を出しとるやうな、アザとい事をしたつて駄目ですよ。今日は奥の手の、とつときの日の出神様を現はして侵入しますぞ。今日は肉体の高姫では御座いませぬぞ。改めてカールさま、念押しておくから、後で刑法だの、民法だのと小言を云うて下さるなや』 と云ひながら奥の間さして足音高くかけ込んだ。見れば松若彦の影もない。 高姫『ハテ、どこへ隠れたか』 と言ひつつ、窓をガラリと開けて外面を眺むれば、松若彦は一生懸命、裏道を尻ひつからげて、どこかを指して走り行く姿が見えた。高姫は地団駄ふんで悔しがり、 高姫『エヽ卑怯未練な松若彦、彼奴を往生させねば此世はサツパリ泥海だ。千騎一騎の神界の御用だ』 と云ひながら、裏口あけて松若彦が後をトントントンと追つかけて行く。 (大正一一・八・二四旧七・二松村真澄録) |