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ひふみ神示 3_富士の巻 第2帖 か一の八マに立ちて、一れ二りて祓ひて呉れよ、ひつくの神に仕へている臣民、代る代るこの御役つとめて呉れよ。今は分かるまいなれど結構な御役ぞ。この神示腹の中に入れて置いてくれと申すに、言ふ事きく臣民少ないが、今に後悔するのが、よく分りてゐるから神はくどう気つけて置くのぞ、読めば読むほど神徳あるぞ、どんな事でも分かる様にしてあるぞ、言ふこときかねば一度は種だけにして、根も葉も枯らして仕まうて、この世の大掃除せねばならんから、種のある内に気つけて居れど、気つかねば気の毒出来るぞ。今度の祭典御苦労でありたぞ、神界では神々様大変の御喜びぞ、雨の神、風の神殿ことに御喜びになりたぞ。此の大掃除一応やんだと安緒する。この時、富士-二二-鳴門がひっくり返るぞ、早やう改心して呉れよ。八月の十一日、のひつくの
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ひふみ神示 6_日月の巻 第12帖 三ハシラ、五ハシラ、七ハシラ、コトアマツカミ、ツギ、ウヒジニ、ツギ、イモスヒジニ、ツギ、ツヌグヒ、ツギ、イモイクグヒ、ツギ、オホトノジ、ツギ、イモオホトノべ、ツギ、オモタル、ツギ、イモアヤカシコネ、ミコトト、アレナリ、イキイキテ、イキタマヒキ、ツギ、イザナギノカミ、イザナミノカミ、アレイデマシマシキ。足許に気付けよ。悪は善の仮面かぶりて来るぞ。入れん所へ悪が化けて入って神の国をワヤにしてゐるのであるぞ、己の心も同様ぞ。百人千人万人の人が善いと申しても悪い事あるぞ。一人の人云っても神の心に添ふ事あるぞ。てんし様拝めよ。てんし様拝めば御光出るぞ、何もかもそこから生れるのざぞ。お土拝めよ。お土から何もかも生れるのぞ。人拝めよ、上に立つ人拝めよ、草木も神と申してあろがな。江戸に攻め寄せると申してあろがな。富士目指して攻め来ると知らしてあること近付いたぞ。今迄の事は皆型でありたぞ、江戸の仕組もお山も甲斐の仕組も皆型ぞ、鳴門とうづうみの仕組も型して呉れよ。尾張の仕組も型早よう出して呉れよ。型済んだらいよいよ末代続くまことの世直しの御用にかからすぞ。雨降るぞ。十月二十八日、ひつ九のかみ。
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ひふみ神示 7_日の出の巻 第18帖 富士の御用は奥山に祀り呉れよ、カイの御用も続け呉れよ、江戸一の宮作りて呉れよ、道場も同じぞ、海の御用とは海の鳴門海の諏訪と海のマアカタと三所へ祀りて呉れよ。その前の御用、言葉で知らした事済みたぞ、海マアカタとは印幡ぞ。十柱とは 火の神、 木の神、 金の神、 日の出の神、 竜宮の乙姫、 雨の神、 風の神、 地震の神、 荒の神、 岩の神であるぞ。辛酉の日に祀りて呉れよ。暫く御神示出ないぞ。皆の者早く今迄の神示肚に入れて呉れよ、神せけるぞ。神示読めば神示出て来るぞ。神祀り早く済せて呉れよ。十二月二十一日朝、一二のか三。
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(245)
ひふみ神示 8_磐戸の巻 第9帖 富士と鳴門の仕組わかりかけたら、いかな外国人でも改心するぞ、それ迄に神の国の臣民改心して居らぬと気の毒出来るぞ。天狗や狐は誰にでもかかりてモノいふなれど、神は中々にチョコラサとはかからんぞ、よき代になりたら神はモノ云はんぞ。人が神となるのざぞ、この神は巫女や弥宜にはかからんぞ、神が誰にでもかかりて、すぐ何でも出来ると思ふてゐると思ひが違ふから気つけておくぞ。かみがかりに凝るとロクなことないからホドホドにして呉れよ。この道は中行く道と申してあろがな。戦すみたでもなく、すまぬでもなく、上げもおろしもならず、人民の智や学や算盤では、どうともできんことになるのが目の前に見へてゐるのざから、早う神の申す通り素直に云ふこときけと申してゐるのざぞ。長引く程、国はヂリヂリになくなるぞ。米あると申して油断するでないぞ、タマあると申して油断するでないぞ。命あると申して油断するでないぞ。この神示よく読めば楽になって人々から光り出るざぞ、辰の年はよき年となりてゐるのざぞ、早う洗濯してくれよ。一月十一日、のひつ九
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(305)
ひふみ神示 11_松の巻 第14帖 裏切る者沢山出てくるぞ、富士と鳴門の仕組、諏訪マアカタの仕組。ハルナ、カイの御用なされよ。悪の総大将よ、早よ改心なされ、悪の神々よ、早よ改心結構であるぞ。いくら焦りてあがいても神国の仕組は判りはせんぞ。悪とは申せ大将になる身魂、改心すれば、今度は何時迄も結構になるのぞ。日本の臣民人民皆思ひ違ふと、くどう知らしてあろが。まだ我捨てぬが、水でも掃除するぞ。六月二十九日、あめのひつぐのかみ神示。
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(459)
ひふみ神示 21_空の巻 第4帖 建直しの道つづき、結び、展く、日月出で、よろづのもの、一二三とみち、つづき鳴り成り、ひらく大道、真理の出でそむ中心に、マコト動きて、元津神栄ゆ、元津神は真理、真愛、大歓喜の大道ぞ、うづぞ、神々のうづぞ、ナルトぞ、人のよろこびぞ、代々の大道ぞ、真理、真愛、大歓喜は、中心にひかり、ひらき極まる道ぞ、展き極まる世ぞ、鳴り極み、ひらき、うごく大道、うごき、和し、なり、大歓喜、足りに足り足る世、生れ出づる世、うごき更にひらき、次々に栄え極みて、新しきはたらきの湧く次の大御代の六合つづく道、つづき睦びて、富士晴れ極み、鳴門は殊にひかり出でて、大道は日神の中心にかへり、亦出でて、ひらき、大道いよいよ満つ、焼く神々、早くせよ。一月六日、一二
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(479)
ひふみ神示 22_青葉の巻 第10帖 よき神にはよき御用、悪き神には悪き御用、自分で自分がつとめあげるのぢゃ、人になんと云はれても腹の立つ様では御用六ヶ敷いぞ、腹立つのは慢心ぢゃと申してあろがな。仕組途中でグレンと変り、カラリと変る仕組してあるのぢゃ、其処に一厘の仕組、火水の仕組、富士と鳴門の仕組、結構々々大切致してあるのぢゃ。仕組変り変りて人民には判らんなり、よき世と致すのぢゃ、いくら智あっても人間心では出来ん仕組ぞ、智捨てて神にすがりて来ねば分らん仕組ぢゃ、と云ふて人間世界は人間の智いるのぢゃ、智でない智を神が与へるぞ、神人共にと申してあろがな、つとめ上げたら他にない結構な御用。八月三日、ひつ九
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(824)
ひふみ神示 33_星座の巻 第2帖 ナルの仕組とは成十(七十)の経綸であるぞ、八が十になる仕組、岩戸(言答)ひらく仕組、今迄は中々に判らなんだのであるが、時節が来て、岩戸がひらけて来たから、見当つくであろう、富士(二二、普字)と鳴門-七 十、成答-の仕組、結構致しくれよ。
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(833)
ひふみ神示 33_星座の巻 第11帖 自由も共産も共倒れ、岩戸がひらけたのであるから元の元の元のキの道でなくては、タマ(玉)の道でなくては立ちては行かん、動かん二二(普字、富士)の仕組、ひらけて渦巻く鳴門-七十、成答-ぢゃ。新しき人民の住むところ、霊界と現界の両面をもつ所、この岩戸ひらきて二度とない九十(光透)でひらく仕組。
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(902)
ひふみ神示 36_至恩之巻 第16帖 太陽は十の星を従へるぞ、原子も同様であるぞ。物質が変るのであるぞ、人民の学問や智では判らん事であるから早う改心第一ぞ、二二と申すのは天照大神殿の十種の神宝にを入れることであるぞ、これが一厘の仕組。二二となるであろう、これが富士の仕組、七から八から鳴り鳴りて十となる仕組、なりなりあまるナルトの仕組。富士(不二)と鳴門-成答-の仕組いよいよぞ、これが判りたならば、どんな人民も腰をぬかすぞ。一方的に一神でものを生むこと出来るのであるが、それでは終りは完う出来ん、九分九厘でリンドマリぞ、神道も仏教もキリスト教もそうであろうがな、卍も十もすっかり助けると申してあろうがな、助かるには助かるだけの用意が必要ぞ。用意はよいか。このこと大切ごと、気つけおくぞ。なりなりなりて十とひらき、二十二となるぞ、富士-普字-晴れるぞ、大真理世に出るぞ、新しき太陽が生れるのであるぞ。
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(904)
ひふみ神示 37_五葉之巻 第2帖 霊界に方位はない、人民東西南北と申してゐるなれど、今に東の東が現れてくるぞ。霊界では光のさす方が北ぢゃ、その他の東西南北は皆南ぢゃ、北が元ぢゃ、 北-基田-よくなるぞと 申してあろうがな。 鳴門の 渦巻を渡る時はカヂをはなして、手放しで流れに任せると渡れるのであるぞ、カヂをとると同じ処をグルグルぢゃ。カヂをはなせる人民少ないのう。何んでも彼んでもカヂをとって自分の思ふ通りに舟を進めようとするから大変が起るのぢゃ、渦にまかせる時はまかさなければならんぞ、ナルトの仕組の一面であるぞ、大切ごとぞ
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(988)
ひふみ神示 39_月光の巻 第56帖 そなたは何時もあれもよいらしい、これもよいようだと迷って、迷ひの世界をうみ出し、自分で自分を苦しめて、気の毒よなあ。これと一応信じたらまかせきれよ。梶をはなして鳴門の渦の中にまかせきれよ。まかせきるとひらけてくるのぢゃ。悟れたようでゐて、そなたが悟り切れんのはまかせきらんからぞ。そなたはいつも孤独、そなたの不運は孤独からぢゃ。友をつくりなさい、友つくることは己をつくることと申してあろうが。友つくることは新しき世界をつくることぞ。一人の世界は知れたものぞ。一人ではマコトの道を生きては行かれんぞ。友と申しても人間ばかりではないぞ。山も友、川も友、動物も植物も皆友ぞ。大地も大空も皆友となるぞ。何も彼も皆友ぢゃ、皆己ぢゃ。皆々己となれば己はなくなるぞ。己なくなれば永遠に生命する無限の己となるのぢゃ。御神前で拝むばかりでは狭いぞ。野菜拝めば野菜が、魚拝めば魚が己となるのぢゃ。拝むことは和すこと。和すことが友つくる秘訣ぞ。友を己とすることは、己を友とすることぢゃ。友にささげることぢゃ。親は子にささげるからこそ、子が親となるのぢゃ。判りたか。赤ん坊のお尻をふいてやることもあるであろうがな。そなたが赤ん坊と同じであったら出来ない芸当ぞ。お尻を出すものがあっても、決して怒ってはならん。子のお尻と思ってきれいにふいてやれよと申してあろうが。お尻を持ち込まれるのは、持ち込まれるだけのわけがあるからぞ。利子は後から支払えばよいと、そなたは思ってゐるが、先に支払ふこともあるのであるぞ。先にお尻をふかねばならんことも、世が迫ってくると出てくるのぢゃ。その代り、後では神がそなたのお尻をきれいにふいて下さるぞ。ぶつぶつ申さずに勇んでやって下されよ。そなたは他にものを与えることに心せねばならんぞ。与えることは頂くことになるのであるから、与えさしてもらう感謝の心がなければならんぞ。強く押すと強く、弱く押すと弱くはねかえってくること、よく知って居ろうがな。自分のものと云ふものは何一つないこと、よく判って居る筈ぢゃ。
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(1208)
霊界物語 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 46 神示の宇宙その一 第四六章神示の宇宙その一〔一九六〕 我々の肉眼にて見得るところの天文学者の所謂太陽系天体を小宇宙といふ。 大宇宙には、斯くの如き小宇宙の数は、神示によれば、五十六億七千万宇宙ありといふ。宇宙全体を総称して大宇宙といふ。 我が小宇宙の高さは、縦に五十六億七千万里あり、横に同じく、五十六億七千万里あり、小宇宙の霊界を修理固成せし神を国常立命といひ、大宇宙を総括する神を大六合常立命といひ、また天之御中主大神と奉称す。 小宇宙を大空と大地とに二大別す。而して大空の厚さは、二十八億三千五百万里あり、大地の厚さも同じく二十八億三千五百万里ある。 大空には太陽および諸星が配置され、大空と大地の中間即ち中空には太陰及び北極星、北斗星、三ツ星等が配置され、大地には地球及び地汐[※オニペディア「霊界物語第4巻の諸本相違点」の「地月・地汐・汐球」参照。]、地星が、大空の星の数と同様に地底の各所に撒布されあり。大空にては之を火水といひ、大地にては之を水火といふ。大空の星は夫れ夫れ各自光を有するあり、光なき暗星ありて凡て球竿状をなしゐるなり。 大地氷山の最高部と大空の最濃厚部とは密着して、大空は清く軽く、大地は濁りて重し。今、図を以て示せば左の如し。 [#図第一図小宇宙縦断図] 大空の中心には太陽が結晶し、その大きさは大空の約百五十万分の一に当り、地球も亦大地の約百五十万分の一の容積を有せり。而して太陽の背後には太陽と殆ど同形の水球ありて球竿状をなし居れり。その水球より水気を適宜に湧出し、元来暗黒なる太陽体を助けて火を発せしめ、現に見る如き光輝を放射せしめ居るなり。故に太陽の光は火の如く赤くならず、白色を帯ぶるは此の水球の水気に原因するが故なり。 太陽は斯くの如くして、小宇宙の大空の中心に安定し、呼吸作用を起しつつあるなり。 [#図第二図大空の平面図] 又、地球(所謂地球は神示によれば円球ならずして寧ろ地平なれども、今説明の便利のため従来の如く仮りに地球と称しておく)は、四分の三まで水を以て覆はれあり。水は白色なり。この大地は其の中心に地球と殆ど同容積の火球ありて、地球に熱を与へ、且つ光輝を発射し、呼吸作用を営み居るなり。而て、太陽は呼吸作用により吸収放射の活用をなし、自働的傾斜運動を起しゐるなり。されど太陽の位置は大空の中心にありて、少しも固定的位置を変ずることは無し。 [#図第三図大地の図] 地球は大地表面の中心にありて、大地全体と共に自働的傾斜運動を行ひ、その傾斜の程度の如何によりて、昼夜をなし春夏秋冬の区別をなすものなり。自働的小傾斜は一日に行はれ、自働的大傾斜は四季に行はる。彼岸の中日には太陽と地球の大傾斜が一様に揃ふものなり。又六十年目毎にも約三百六十年目毎にも、夫々の大々傾斜が行はれ、大地および地球の大変動を来す時は即ち極大傾斜の行はるる時なり。 太陽は東より出でて西に入るが如く見ゆるも、それは地上の吾人より見たる現象にして、神の眼より見る時は、太陽、地球共に少しも位置を変ずることなく、前述の如く、単に自働的傾斜を行ひてゐるのみなり。 天に火星、水星、木星、金星、土星、天王星、海王星その他億兆無数の星体ある如く、大地にも亦同様に、同数同形の汐球が配列されありて、大空の諸星も、大地の諸汐球も、太陽に水球がある如く、地球に火球がある如く、凡て球竿状をなしゐるものにして、各それ自体の光を有しゐるなり。なほ、暗星の数は光星の百倍以上は確かにあるなり。 太陰は特に大空大地の中心即ち中空に、太陽と同じ容積を有して一定不変の軌道を運行し、天地の水気を調節し、太陽をして酷熱ならしめず、大地をして極寒極暑ならしめざるやう保護の任に当りゐるものなり。 而して太陰の形は円球をなし、半面は水にして透明体なり。而てそれ自体の光輝を有し、他の半面は全く火球となりゐるなり。今図を以て示せば次の如し。(第四図参照) [#図第四図太陰の図] 太陰は大空大地の中心を西より東に運行するに伴ひ、地汐をして或ひは水を地球に送らしめ、或は退かしむるが故に満潮干潮の現象自然に起るものなり。神諭に、 『月の大神様は此の世の御先祖様である』 と示しあるは、月が大空と大地の呼吸作用たる火水を調節するの謂なり。火球は呼気作用を司り、地汐は吸気作用を司る。 『富士と鳴門の仕組が致してある』 といふ神示は、火球の出口は富士山にして、地汐は鳴門を入口として水を地底に注吸しゐることを指示せるものなり。火球及び地汐よりは、なほ人体に幾多の血管神経の交錯せる如く、四方八方に相交錯したる脈絡を以て、地球の表面に通じゐるものなり。 (大正一〇・一二・一五旧一一・一七桜井重雄録)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 36 言霊の響 第三六章言霊の響〔二三六〕 『昔の昔、其昔国治立の大神は 天地四方の神人の拗け曲れる霊魂をば 直さむために神柱四方の御国に遣はして 世の立替へを知らせむと東や西や北南 千々に其の身を窶しつつ雪の晨や雨の宵 虎棲む野辺も厭ひなく神の救ひの言の葉を 科戸の風に吹き拡め四方の国々隈もなく 行き渡りたる暁に天教山に現はれし 野立の彦の大神や木花姫の御指揮 地教の山に現はれし野立の姫の大神の 宣示を背にいそいそとめぐり車のいとはやく 変る浮世の有様を心にかくる空の月 つきせぬ願は神人の霊魂、霊魂を立直し 清き神代に救はむとわが身を風に梳り 激しき雨を浴びつつも三千世界の梅の花 一度に開く常磐樹の常磐の松の神の御代 心も清き木花の開いて散りて実を結び スの種四方に間配りし神の恵を白浪に 漂ふ神こそ憐れなり朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも假令天地は倒に 地は覆へり天となり天はかへりて地となるも 何と詮方千秋の恨を胎すな万歳に 神の恵の言の葉に眼をさませ百の神 耳を欹だて聞けよかし聞けば香ばし長月の 九月八日のこの経綸九つ花の開くてふ 今日九日の菊の花花より団子と今の世は 体主霊従の神ばかり世は常暗と鳴門灘 渦まきのぼる荒浪に浚はれ霊魂は根の国や 底の国へと落ち行きて消えぬ地獄の火に焼かれ 或は氷の刃もて無限の艱苦をなめくじり 蛙に出会うたその如く天地はかへる蛇の群 蛇に等しき舌剣を振ふは大蛇の悪神ぞ その悪神に取りつかれ素より清き大神の 霊魂と生れし神人は知らず識らずの其間に 体主霊従となり果てぬ体主霊従となり果てぬ この惨状を救はむと国治立尊もて 百の神々天教の山に集ひて諸共に 赤き心を筑紫潟誠を尽す神々の 清き心も不知火の波に漂ふ憐れさよ 暗路を照らす朝日子の神のみことの隠れます 天の岩戸はいつ開くこの世は終りに近づきて この世は終りに近づきて鬼や大蛇やまがつみや 醜女探女の時を得て荒振る世とぞなりにけり 荒振る世とぞなりにけりあゝ神人よ神人よ 神の救ひの声を聞け耳を浚へてよつく聞け 眼を洗つてよつく見よ眼を洗つてよつく見よ』 と節面白く謡ひながら異様の扮装にて、数多の神人に取囲まれ謡ふ神があつた。祝部神はこの声を聞き、何となく心勇み、祝彦、杉高彦と共に、肩を搖りながらその声目蒐けて突進した。 激しき風に吹き捲くられて、地上の一切は、見るも無残に落花狼藉、神人は烈風に遇ひし蚊の如く、蟆子のごとく中天に捲き上げられてしまつた。されど臍下丹田に心を鎮め神力を蒙りし神のみは、大地より生えたる岩石の如くびくとも動かず、悠々として烈風吹き荒ぶ広野を、風に向つて濶歩しつつ、雄々しくも宣伝歌を謠つた。その声は風の共響きに送られて地教山の高照姫神の御許に達した。真澄姫神、祝姫神の耳にはことさらに痛切に響いたのである。果して何人の宣伝歌であらうか。云はずと知れた月照彦神と祝部神の宣伝歌であつた。 高照姫神は黄金の幣を奥殿より取り出し、烈風に向つて左右左と振り払ひ給へば、風は逆転して東北より西南に向つて吹き捲つた。その時二神使はまたもや歌をよまれた。その歌は地中海の西南なる埃の宮を通行しつつある夫神の耳に音楽のごとく微妙に響いた。真澄姫神は地教山の高閣に登り言葉涼しく謡ひ始めた。 『仰けば高し久方の天津御空に澄み渡る 月照彦の大神の恋しき御声は聞えけり 雨の晨や風の宵この世を思ふ真心の 君が御声は天の下四方の国々鳴り響き 響き渡りて今ここに地教の山まで届きけり 地教の山まで届きけり嗚呼尊しや言霊の 誠の響きは鳴り渡る雄々しき声は雷か 雷ならぬ神の声その声こそは世を救ふ 神の御旨に叶ふべし神の御旨に叶ふべし 妾は茲に大神のみこと畏み日に夜に 世の神人らを救はむと思ひあまりて村肝の 心の空も掻き曇る心の空も掻き曇る 曇るこの世を清めむと心も清く身も清く 光隈なき月照彦の神の命の雄叫びに 四方の草木も靡き伏し伏して仕へむ天地の 草木の神も山川の正しき神は君が辺に い寄り集ひて統神の教へたまひし言の葉の 三千世界の梅の花曇る心の岩屋戸を 一度に開く梅の花月照彦の大神の 霊魂は照るとも曇るとも神の依さしの神業に はむかふ魔神は非ざらむあゝ勇ましき月照彦の 神の命の功績やあゝ勇ましき祝部の 神の命の宣伝よ』 と声涼しく謡ひ始めた。風は涼しき声を乗せて地中海の西南にいます二神の許に送り届けた。二神は勇気百倍して、さしも激しき烈風の中を撓まず屈せず、またもや声を張り上げて、山野河海の神人らに警告を与へつつ、ヱルサレムの聖地を指して進む。 (大正一一・一・一二旧大正一〇・一二・一五加藤明子録) (昭和一〇・三・三〇朝於吉野丸船室王仁校正)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 44 夜光の頭 第四四章夜光の頭〔二四四〕 ロッキー山の山颪、世を艮と吹く風に、スペリオル湖の水面は、忽ち怒濤を捲き起し、小船を前後左右に翻弄した。ここに少彦名神は数多の神人とともに漂うた。風は刻々に唸りを立てて激しくなつた。空は一面の暗雲に鎖され、船の前後に数限りもなく出没する海坊主の姿は実に凄じき光景である。少彦名神は忽ち祝詞を奏上し、声爽かに、 『朝日は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも スペリオル湖の浪高く吾らの船は覆るとも 変らぬものは神心神の心を胸にもち 寄せくる怒濤を言霊の息吹の狭霧に吹き払ひ 払ひ清むる神の道浪も鎮まれ風も凪げ されどもされど常暗の心の暗き魔神は 慄ひ戦き顔の色土と鳴門の渦巻や 嗚呼凪げよ凪げなげ科戸彦科戸の風の永久に 吹くなら吹けよ吾々がこの湖水を安全に 渡つた後にどつと吹け今は吹くなよふくの神 今は吹くなよふくの神』 と暴風に向つて謡へば、不思議にもこの声の止まると共に、さしもの暴風もぴたりと止まり、浪は俄に凪ぎ、海面は恰も畳を敷き詰めたるが如き平穏に帰してしまつた。 青瓢箪が寒さに怖ぢけた時のやうな面構へをした常世国の人々も、にはかに蘇生の思ひをなし、少彦名神に向つて、異口同音に嬉し涙と共に感謝する。 少彦名神は節面白く、例の宣伝歌を唱へた。神人の中に秀でて逞しき、色浅黒き背の高き男は口を尖らせながら、少彦名神に向ひ、 『貴下は何れの宣伝使なるぞ、貴下の言霊の威力に風も海も皆従ひたり、願はくは御名を吾らに聞かせたまへ』 と云ふ。少彦名神は、 『吾こそは、この世の宝その物にたいして、凡夫の如き無限の欲望は少彦名神なり』 と枕言葉を沢山に並べて名乗り、而してそろそろ大神の御徳を説き始めたりける。 『総てこの広大無辺の宇宙間は、無限絶対無始無終の全智全能力を有し給ふ、一柱の大国治立の大神御座しまして万有を創造したまひ、その至粋至純の神霊を伊都の千別きに千別きたまうて、海河山野などの神人を生みたまうたのである。故にこの世界は神の御座さぬ処は一寸の間もない。神を讃美し、かつ神に頼らねば、吾々は片時の間もこの世に生存へることは出来ない。いま吾々が呼吸する息も皆神の御息であつて、決して自己のものでなく、昆虫の端に至るまで、皆神の慈をうけざるはない。ゆゑに天地間において最も敬すべく親しむべく信ずべく愛すべきは、第一に世界の造り主なるただ一柱の真の神なる大国治立尊の尊さを措いて外にはないのである。この大神の聖霊によつて分派出生したる海河山野の神人もまた尊敬しなくてはならない、何事も皆このごとき弱き凡夫は、神の力を借るより外にはないのだ』 と説示した。船中の神人らは各自に口を開いて、 『果して宣伝使の言はるる如くならば、今このスペリオル湖の水中にも神はいますか』 と尋ねける。少彦名神は、 『海には海の神、河には河の神、また船には船の神がある。決して吾々は神を汚してはならないのだ』 船はだんだんと進んで西岸に近づいた。湖辺に明滅する漁火の光は、あたかも夏の夜の暗に螢の飛び交ふごとく、得も云はれぬ光景なり。船中は暗の帳に包まれて真黒である。 このとき頭のピカピカと光つた神は頓狂な声をふりあげ、 『ヤア殺生な、オレを馬鹿にするない』 といふ。船の片蔭にはクスリ、クスリと笑ふ声さへ聞えてゐる。 廿日の月は東の山の端を出でて皎々として輝き始めた。第一番に禿頭は鏡のごとく照り出した。よくよく見れば、ズクタンボー[※但馬地方の方言で「ずぶ濡れ」を意味する「ずくたんぼ」のことだと思われる。]である。禿頭は声を尖らし、 『暗の中で知らぬかと思つて、吾々の頭に尿をした奴がある。暗がりでも神の目は光つてをるぞ、承知がならぬ』 と目の玉まで光らして怒りたてる。傍にゐた屋根葺の手伝ひか、炭焼のやうな顔した黒い男は立ち上り、 『海には海の神があり、船には船の神が御座すと聞いたから、神(髪)なき頭に尿ひつかけたのが何が悪い』 と逆捻を喰らはす。禿頭の男はぶつぶつ呟きながら、湖水の水に光つた頭を洗ひはじめた。船は漸くにして西岸についた。少彦名神は又もや宣伝歌を謡ひながら、西へ西へとあてどもなく進み行く。 (大正一一・一・一三旧大正一〇・一二・一六加藤明子録)
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霊界物語 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 04 烏の妻 第四章烏の妻〔三五四〕 波は高砂日は照り渡る智利の都に月は澄む と、船頭は節面白く海風に声をさらしながら唄ひはじめたり。日の出神は船中の人々に対して、天地の神の高徳を諄々と説き始めたる折しも、俄に一天掻き曇り、颶風吹き荒み、波は山岳のごとく立ちはじめ、今まで元気張つてゐた猿世彦、駒山彦は、蒼白な顔になり、片隅にブルブルと慄へゐる。数多の船客は、何れも船底にかぢりつき我が命は風前の燈火かと不安の念に駆られて、口々に何事をか祈り始めけり。 船中は俄に人声ピタリと止り、ただ小さき祈願の声のするのみなりき。波の音はますます高く、時々潮を船に浴せて猛り狂ふ。この時日の出神は、声を張り上げて大音声に呼ばはりたまふ。 『高天原を知ろし食す天の御柱大神の 神勅畏み天の下四方の国々隈もなく 神の教を宣べ伝ふ闇夜を照らす宣伝使 日の出神の鹿島立ち神の御ため国のため 世人を救ふそのために潮の八百路の八塩路の 潮を分けつつ進み行く吾は尊き神の御子 瑞の教を謹みて聴く諸人の真心を 憫みたまへ天津神救はせたまへ国津神 科戸の神や水分の正しき神は何事ぞ 波路も高く竜神の底の藻屑と鳴門灘 渦巻わたる海原も御国を思ふ真心の 道に通ひし宣伝使吾が言霊は天地に 充てる誠の神の声大海原を知ろし食す 海原彦や豊玉姫の神の命は今いづく 神に祀れる玉依姫の神の命はいま何処 雨風繁く波高くこの諸人を脅かす 大綿津見の枉神を伊吹きに祓へ吹き祓へ 伊吹き祓ふの力無く吾が言霊の聞えずば 吾はこれより天地の神に代りて三五の 言挙げなさむ綿津神科戸の彦や科戸姫 疾く凪ぎ渡れ静まれよとく凪ぎ渡れ静まれよ』 と、清き言霊を風に向つて述べ立てたまへば、さしも猛烈なりし暴風も、車軸を流す大雨も、忽然として静まり、天津御空は黒雲の上衣を脱ぎて、紺碧の肌を現はし、日は晃々として中天に輝き、海の諸鳥は悠々として翼をひろげ、頭上に高く喜ばしき声を張り上げて、口々に叫びはじめけり。紺碧の海面は、あたかも鏡のごとく凪ぎ渡り、地獄を出でて天国の春に逢うたるごとき心地せられ、船中の諸人は、ほとんど蘇生したる面色にて、日の出神の身辺に寄り集まり、その神徳を感謝し、なほも進みて教理を拝聴することとなりぬ。船中の人々は日の出神の神徳に感じ、心の底より信仰の念を起し、なほも進みてその教理を聴聞したりける。 ここに清彦は、今までの凡ての罪悪を悔い改め、日の出神の弟子となり、高砂島に宣伝を試むる事となりぬ。猿世彦、駒山彦は、清彦の後を追ひて、何事か諜し合せ、高砂島に上陸したりけり。 またもや船中に雑談の花は咲き出でにけり。 甲(民)『やれやれ恐ろしい事だつたのう。すんでの事で竜宮行きをする所だつたが、渡る浮世に鬼は無い、天道は人を殺さずとはよく言つたものだ。日の出神様がこの船に乗つて居られなかつたら、吾々は鱶の餌食になつて了つたかも知れない。若しもソンナ事があつたら、俺は死ぬのは天命だと思つて諦めるが、国に残つた妻や子が、どうして月日を送るだらう。女房が「あゝ恋しい民さまは」と云つて泣くかも知れぬ』 乙『コンナ処でのろけるない。貴様が死んだつて泣く者があるか。村中の悪者が無くなつたと云つて、餅でも搗いて祝ふ者もあらうし、貴様の嬶は、鹿公と入魂だから、邪魔が払はれた、目の上の瘤が取れたと云うて、餅でも搗いて祝ふかも知れぬよ。泣く者と云つたら烏か、柿の木に蝉がとまつて啼く位だ。アツハツハヽヽ』 民『馬鹿にするない、死んで喜ぶ奴が広い世界に有つて堪るか。天にも地にも、一人の夫一人の女房だ。俺が国許を出立する時、女房が俺の袂に縋りついて、ドウゾ一日も早う帰つて来て頂戴ネ、あなたのお顔が見えねば夜も明けぬ、日も暮れぬ、毎日高砂の空を眺めて待つて居ます、エヘン、あの優しい顔で泣きよつたぞ。そこを貴様に見せてやりたかつたワイ』 乙『馬鹿にするない。あの優しい嬶も有つたものかい、頭の禿げた神楽鼻の、鰐口の団栗目の、天下一品珍無類の御面相の別嬪を、烏だつて顧みるものは有りやしないよ』 丙『左様も言はれぬぞ。何時やらも野良へ出て働いて居る時に、側の森に烏が来よつて、カカア、カカアと呼んで居たよ』 民『ソンナ話は止めにして神様を拝まぬかい。また波でも立つたら、今度はもう助かりつこは無いぞ』 丁『此間も、面那芸の宣使さまとかが船に乗つて、筑紫の島から天教山へ行かれる途中に海が荒れて船は暗礁にぶつつかり、メキメキと壊れて了つた。そして客は残らず死んで了つたと云ふことだよ』 民『その面那芸の宣使はどう成つたのだ。ソンナ時には此処に御座る日の出神様の様に、何故神徳をよう現さなかつたのだらう。面那芸の司とは噂に聞く宣伝使でないか』 乙『さう、宣伝使だ。併し神徳が無いから、危急存亡の場合に人を救ふ様な事は、薩張りようセンデン使だよ。それで自分も一緒にぶくぶくと脆くも沈んで了つて、あゝあゝ苦しい辛い難儀な事に成つたと泡を吹いた。そこでつらなぎの司ぢや。誰も彼も皆辛い難儀な目に逢つて、つらなぎのかみに成つて了つたのだ。最前のやうに、清彦さまの様な説教をする宣伝使もあるし、若しも日の出神が此の船に乗つて居られ無かつたら清彦の宣伝使が、また面那芸の司の様な運命に成つたかも知れぬ。さうすれば俺らも皆面那芸のめに逢うとるのだ。日の出神様の御神徳を忘れてはならぬぞ、あゝ有難い、有難い』 と口々に私語てゐる。日の出神はこの雑談中に、面那芸の司の乗れる船の沈没した事を聞いて胸を躍らせ、その顔には、颯と不安の色漂ひにける。 (大正一一・二・六旧一・一〇東尾吉雄録)
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霊界物語 10_酉_黄泉比良坂の戦い 25 木花開 第二五章木花開〔四五五〕 天雲も伊行きはばかる遠近の鮮岳清山抜き出でし 天教山の真秀良場や心もつくしの山の上 地底の国より吐き出す猛き火口に向ひたる 天津日向のあをぎ原穢き国に到りたる 醜のけがれを清めむと神伊邪那岐の大神は 日の出神と諸共に千五百軍を呼び集へ 浅間の海に下り立ちて御身の穢を払ひます 大神業ぞ勇ましき天の教を杖となし 進む衝立船戸神心の帯を固く締め 曲言向けし神ながら道之長乳歯彦の神 国治立の大神の御稜威の御裳になり出でし 道の蘊奥を時置師一度に開く木の花の 散りては結ぶ大御衣神の心も和豆良比能 宇斯能御神や御褌になります神は道俣神 心の空も飽咋の宇斯能御神と冠りに 戴き奉り左手の手纏に救ひの御手を曲神の 穢れの上に奥疎神四方の大海国原も 神の心に奥津那芸佐毘古奥津甲斐弁羅神 神世幽界辺疎神辺津那芸佐毘古 辺津甲斐辺羅神十二柱の神たちは 黄泉の島へ出でましてこの世の曲霊を照し給ふとき 穢に生れし神ぞかしアヽ麗しく尊さの 限り知られぬ神業よ限り知られぬ神業よ。 伊邪那美大神 伊邪那美大神『久方の天津御神の言霊の伊吹の狭霧に黄泉島 黄泉軍を言向けて暗よりくらき烏羽玉の 常夜の空も晴れ渡り天と地とに冴え渡る 日の出神の功績はこの世の光となりぬべし 三五の月に弥まさり御魂も清き月照彦の 神のみことの宣伝使尊き御代に大足彦の 神のみことの言霊別や嶮しき国は平けく 狭けき国は弘子の神の伊吹に払はれて 世の曲神も少彦名神の光の高照姫や 心も清き真澄姫八咫の鏡の純世姫 清き教も竜世姫地教の山に現はれし 神伊邪那美大神の御稜威輝く瑞御魂 世は望月の永遠に円く治まる五六七の世 天津御国も国原も堅磐常磐に常立と 開化くる御世ぞ楽しけれ天津御神の御教は 一度に開く木の花の咲き匂ふなる天教山の 嶺永遠に動揺なく天津日嗣の何時までも 変らざらまし神の御世豊葦原の瑞穂国 御稜威も高き厳御魂この世の泥をことごとく 洗ひ清むる瑞御魂厳と瑞との二神柱は 天に現はれ地に生れ清き神世を経緯の 錦の御旗織りなして天津御空の星の如 八洲の国の砂の如天の益人生み生みて 世を永久に永遠に雲に抜き出た高砂の 珍の島ケ根の尉と姥千歳の松の弥茂り 栄え尽きせぬ神の国限りも知れぬ青雲の 棚引く極み白雲の向伏す限りたてよこの 神の御稜威に治むべし神の御稜威に治むべし』 と歌ひ終らせ、伊邪那美大神はあをぎが原の神殿深く御姿を隠し給ふ。 木花姫命は満面に笑を湛へ、諸神の前に現はれ給ひて声音朗かに歌ひ給ふ。 木花姫命『豊葦原の中国に一輪清く芳ばしく 匂へる白き梅の花神世の昔廻り来て 国治立の大神が日に夜に心配らせし 常夜の国も晴れ渡り曲津軍も服従ひて 一度に開く木の花のうましき御代となりにけり 闇より暗き世の中を天津御神の神言もて 黄泉の島に天降り醜の国原言向けて 日の出神と現れし天と地との大道別の 神の命と勇ましく事戸を渡し琴平別の 厳の御魂の百引千引岩をも射ぬく誠心を 貫き徹す桑の弓弓張月の空高く 輝き渡る神々の功は清し天教山の 尾根に湧き出る言霊は湖の鏡に映るなり 移り替るは世の中の習ひと聞けど兄の花姫や 咲き匂ふなる春の日も瞬く間に紅の 色香も夏の若緑涼しき風に送られて 四方の山々錦織り紅葉も散りて木枯の 風吹き荒み雪霜のふる言の葉にかへり見て 心を配れ神々よ心を配れ神々よ 春の花咲く今日の日は吾胸さへも開くなり 吾胸さへもかをるなりかをりゆかしき神の道 一度に開く梅の花一度に開く梅の花 一度に開く梅の花』 日の出神は、神人らの総代として凱旋の歌を詠ませ給ひぬ。その歌、 日の出神『日の若宮に現れませる神伊邪那岐の大神は 妹伊邪那美の大神と天津御神の神言もて 天と地との中空に架け渡されし浮橋に 立たせ給ひて二柱撞の御柱大神と 天の瓊矛をさしおろし溢れ漲る泥海を こをろこをろにかきなして豊葦原の中津国 筑紫の日向のたちばなのをどのあをぎが原の辺に 天降りまし木の花姫の神の命と諸共に この世の泥を清めつつ珍の国生み島を生み 万の神人生みまして山川草木の神を任け 大宮柱太知りて鎮まり給ふ折からに 天足の彦や胞場姫の醜の魂より現れし 八岐大蛇や鬼狐荒ぶる神の訪に 万の災群れ起り常夜の暗となり果てし 世を照さむと貴の御子日の出神に事依さし 大道別と名乗らせて世界の枉をことごとに 言向け和せと詔り給ふ力も稜威もなき吾は 恵みの深き木の花姫の三十三相に身を変じ 助け給ひし御恵みに力添はりて四方の国 荒振る曲を言向けて黄泉の島の戦ひに 神の御稜威を顕はせしその功績は木の花姫の 神のみことの稜威ぞかし厳の御魂や瑞御魂 三五の月の御教に世界隈なく晴れ渡り 千尋の海の底深く竜の宮居も烏羽玉の 暗き根底の国までも天津日かげの永遠に 明し照さむ神の道富士と鳴門のこの経綸 富士と鳴門のこの経綸弥永遠に永遠に 神の大道を天地と共に開かむ、いざさらば 鎮まりませよ百の神鎮まりいませ百の神 桃上彦の貴の御子堅磐常磐の松代姫 心すぐなる竹野姫色香目出たき梅ケ香姫の 神の命の三柱は意富加牟豆美の桃の実と この世に現れ厳御魂瑞の御魂と何時までも 三五の月の御教を堅磐常磐に守り坐せ 堅磐常磐に守り坐せ』 この御歌に数多の神々は歓喜の声に満たされて、さしもに高き天教山も破るる許りの光景なりき。 木の花の鎮まり給ふこの峰は 不二の三山と世に鳴り渡る (大正一一・二・二五旧一・二九上西真澄録)
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霊界物語 22_酉_鷹鳥山の鷹鳥姫 01 玉騒疑 第一章玉騒疑〔六九三〕 天と地との元津御祖、国治立大神は、醜の曲津の猛びに依りて是非なく豊国姫尊と共に、独身神となりまして御身を隠し給ひ、茲に大国治立尊の御子と坐します神伊弉諾大神、神伊弉冊大神の二柱、天津大神の御言を畏み、海月なす漂へる国を造り固め成さむとして、神勅を奉じ、天の浮橋に立ち、泥水漂ふ豊葦原の瑞穂国を、天の瓊矛を以て、シオコヲロ、コヲロに掻き鳴し給ひ、滴る矛の雫より成りしてふ自転倒島の天教山に下り立ち、天の御柱、国の御柱を搗き固め、撞の御柱を左右りより廻り会ひ再び豊葦原の中津国を、神代の本津国に復さむと、木花姫命、日の出神と言議り給ひて、心を協せ力を尽し、神国成就の為に竭し給ひしが、天足彦、胞場姫の霊より現はれ出でたる醜の曲津見、再び処を得て、縦横無尽に暴れ狂ひ、八百万の神人は又も心捩けて、あらぬ方にと赴きつ、復び世は常闇となりにけり。 茲に天照大御神、神素盞嗚大神は伊弉諾命の御子と現れまして天津神、国津神、八百万の神人に誠の道を説き諭し給ひしが、世は日に月に穢れ行きて、畔放ち溝埋め、樋放ち頻蒔き串差し、生剥ぎ逆剥ぎ、屎戸許々太久の罪、天地に充満し、生膚断、死膚断、白人胡久美、己が母犯せる罪、己が子犯せる罪、母と子と犯せる罪、子と母と犯せる罪、畜犯せる罪、昆虫の災、高津神の災、高津鳥の災、畜殪し蠱物せる罪、許々太久の罪出で来り、世は益々暗黒の雲に閉され黒白も分かずなり行きたれば、素盞嗚大神は葦原国を治め給ふ術もなく日夜に御心を砕かせ給ひ、泣き伊佐知給へば、茲に神伊弉諾命、天より降り給ひて、素盞嗚尊にその故由を問はせ給ひ、素盞嗚尊は地上の罪悪を一身に引受け、部下の神々又は八岐大蛇醜神の曲を隠し、我が一柱の言心行悪しき為なりと答へ給へば、伊弉諾大神は怒らせ給ひ、 伊弉諾大神『ここに汝は海原を知食すべき資格なければ、母の国に臻りませ』 と厳かに言宣り給へば、素盞嗚尊は姉の大神に事の由を委細に申し上げむと、高天原に上り給ふ。此時山川草木を守護せる神々驚きて動揺し、世はますます暗黒となりければ、姉大神は弟神に黒き心ありと言挙げし給ひ、茲に天の安河を中に置き、天の真奈井に御禊して、厳之御魂、瑞之御魂の証明し給ひ、姉大神は変性男子の御霊、弟神は変性女子の御霊なる事を宣り分け給ひぬ。 素盞嗚尊に従ひませる八十猛の神々は大に怒りて、 八十猛神『吾が仕へ奉る素盞嗚大神は清明無垢の瑞霊に坐しませり。然るに何を以て吾が大神に対し、黒き心ありと宣らせ給ひしか』 と怒り狂ひて、遂に姉大神をして天の岩戸に隠れ給ふの已むなきに到らしめたのは、実に素盞嗚尊の為に惜しむべき事である。 茲に素盞嗚大神はいよいよ千座の置戸を負ひ給ひ、吾が治せる国を姉大神に奉り、高天原を下りて、葦原の中津国に騒れる曲津神を言向け和し、八岐大蛇や醜狐、曲鬼、醜女、探女の霊を清め、誠の道に救ひ、完全無欠、至善至美なるミロクの神政を樹立せむとし、親ら漂浪の旅を続かせ給ふ事となつた。 大洪水以前はヱルサレムを中心として神業を開始し給ひしが、茲に国治立尊の分霊国武彦と現はれて、自転倒島に下りまし、神素盞嗚大神と共に五六七神政の基礎を築かせ給ふ事となつた。それより自転倒島は、いよいよ世界統一の神業地と定まつた。 顕国玉の精より現はれ出でたる如意宝珠を始め、黄金の玉、紫の玉は、神界における三種の神宝として、最も貴重なる物とせられて居る。此三つの玉を称して瑞の御霊と云ふ。此玉の納まる国は、豊葦原の瑞穂国を統一すべき神憲、惟神に備はつて居るのである。 茲に国治立命は天教山を出入口となし、豊国姫神は鳴門を出入口として、地上の経綸に任じ給ひ、永く世に隠れて、五六七神政成就の時機を待たせ給ひぬ。素盞嗚尊は其分霊言霊別命を地中に隠し、少彦名命として神業に参加せしめ給ひしが、今又言依別命と現はして、三種の神宝を保護せしめ給ふ事となつた。言依別命の神業に依りて、三種の神宝は錦の宮に納まり、いよいよ神政成就に着手し給はむとする時、国治立命と豊国姫命の命に依り、未だ時機尚早なれば、三千世界一度に開く梅の花の春を待ちて三箇の神宝を世に現はすべしとありければ、言依別命は私かに神命を奉じて、自転倒島の或地点に深く隠し給ひし御神業の由来を本巻に於て口述せむとす。有形にして無形、無形にして有形、無声にして有声、有声にして無声なる神変不可思議の神宝なれば、凡眼を以て見る事能はざるは固よりなり。 凩荒ぶ冬の夜の月の光を浴びながら 心にかかる黒雲の晴るる隙なき黒姫が 言依別命より言ひつけられて人知れず 納め置きたる黄金の玉の在処を調べむと 丑満時に起き出でて独りスゴスゴ四尾山 麓の一つ松が根に匿まひ置きし石櫃の そつと蓋をば開き見て思はずドツと打倒れ 吾責任も玉無しの藻脱の殻の悲しさに 如何はせむと起き直り思案に暮れて居たりしが 忽ち人の足音に気を取直し立ちあがり 木蔭を索めて帰り行く。 窺ひ寄つたる二人の男、松の根元に立寄りて、 甲(テーリスタン)『ヤア黒姫さまの様子が怪しいと思うて跟いて来たが、大方これは蜈蚣姫が占領して居つた黄金の玉を、言依別命から信任を得て、黒姫が隠して置きよつたのだなア』 乙(カーリンス)『併し黒姫さまは蓋を開けるが早いか吃驚して尻餅を搗いたぢやないか。大方紛失して居たのぢやあるまいかな。そんな事だつたら、黒姫もサツパリ駄目だがなア』 甲(テーリスタン)『あんまりの玉の光に驚いて、尻餅を搗いたのだらう、それに定つて居るよ。誰一人こんな所に隠して置いたつて、探知する者がないからな。肝腎の紫姫さまでさへも御存じない位だから………』 乙(カーリンス)『イヤどうも怪しい黒姫の姿、影が薄い様だ。一つそつと尋ねて見ようぢやないか。グヅグヅして居ると、姿が分らなくなつて了ふよ』 甲(テーリスタン)『サ、早く往かう。最早姿が見えなくなつたぢやないか』 とキヨロキヨロ其処らを見廻して居る。忽ち下手の溜池にバサリと人の飛び込む水音、二人は驚いて池の辺に駆けつけ見れば、何の影もなく、唯水面を波が円を描いて揺らいで居る。月の影さへも砕けて、串団子の様に長く重なり動いて居る。 甲(テーリスタン)『ヤア此処に履物が一足脱いである。こりやてつきり黒姫さまのだ。ヤア大変だ、カーリンス、貴様は早く帰つて言依別様に申し上げ、大勢の信者を引率して救援隊を繰出して呉れ。俺はそれ迄此処に保護して居る』 カーリンス『馬鹿言ふない。グヅグヅして居る間に縡れて了ふぢやないか』 と云ふより早く、カーリンスは、薄氷の張りかけた池に、赤裸となつて飛び込み、水を潜つて黒姫を引抱へ、漸くにして救ひあげた。黒姫は最早虫の息となつて居る。 カーリンス『オイ、テーリスタン、誰にも此奴ア、様子を聞く迄極秘にして置かなくては、黒姫さまの為にはよくなからうぞ。兎も角俺も寒くて体が凍てさうだ。そつと此処で火を焚いて黒姫様の体を温めて息を吹き返さすのが第一だ。オイ貴様早く、そつと帰つて二人の着物を……何でも良いから持つて来て呉れ』 テーリスタン『ヨシ合点だツ』 とテーリスタンは黒姫の館へ駆けつけ、そつと衣服を二人前、小脇に抱い込み帰つて来た。其間に黒姫は息を吹き返して居た。テーリスタンは息を喘ませながら、 テーリスタン『サア漸く持つて来た。早く着て呉れ。寒かつただらう』 カーリンス『アヽそれは御苦労だつた。サア黒姫さま、兎も角これを着て下さい』 黒姫『お前はテー、カーの両人ぢやないか。なぜ妾の折角の投身を邪魔なさるのだい。どこまでも妾を苦しめる心算かい』 カーリンス『コレ黒姫さま、チツと確りなさらぬか。お前さまは精神に異状を来して居るのだらう。生命を助けて貰つて不足を云ふ者が何処にありますか。なア、テーリスタン。御苦労だつた位云つても、あんまり損はいくまいに………こんな怪体な事を聞いたことはないのう』 テーリスタン『コレ黒姫さま、お前さまが覚悟で陥つたのか、過つて陥つたのか………そら知らぬが、吾々二人は生命を的に、此寒いのにお前さまの生命を助けたのだ。なぜそんな不足さうな事を言ふのだい』 黒姫『妾はどうしても生きて居られぬ理由があるのだよ。どうぞ死なしてお呉れ』 と又もや駆け出さむとするを、カーリンスは大手を拡げ、 カーリンス『待つた待つた、死んで花実が咲く例しがない。仮令どんな事があつても、死んで言訳が立つものか。却て神界に於て薄志弱行者として冥罰を受けねばなるまい』 黒姫『何と云つても死なねばならぬ理由がある。どうぞ助けてお呉れ』 カーリンス『助けて上げたぢやないか』 黒姫『助けると云ふのは、妾の自由に為して呉れと云ふのだよ』 カーリンス『自由にするとは、そりや又どうすると云ふのだい。一日でも生きよう生きようとするのが人間の本能だ。死ぬのを助かるとはチツと道理に合はない。そこまでお前さまも覚悟をした以上は、どんな活動でも出来るだらう。生命を的に神界の為に活動し今迄の罪を贖ひし上、神様のお召しに依つて国替するのが本当だよ』 テーリスタン『此位な道理の分らぬ貴女ぢやないが、何故又さう分らぬのだらうかナア』 黒姫『何も彼もサツパリ分らぬ様になつて来ましたよ』 テーリスタン『お前さま、言依別命様より保管を命ぜられた、黄金の玉を紛失したのだらう』 黒姫『何ツ、それが如何してお前に分つたのか』 テーリスタン『私は貴女がチヨコチヨコ夜分になると、宅を出て往くので、此奴ア不思議だと、二人が何時も気を付けて居つたのだ。さうすると、四尾山の一本松の麓へ行つて居らつしやる。今日も今日とて不思議で堪らず、来て見れば、お前さまは松の木の根元で、唐櫃を開いて腰を抜かしなさつただらう。てつきり黄金の玉を誰かに盗まれ、其責を負うて自殺しようとしたのだらうがナ』 黒姫『何ツ、お前は何時も妾の行動を考へて居たのか。油断のならぬ男だ。そんなら其玉の盗賊はお前達両人に間違なからう……サア有態に仰有れ』 テーリスタン『これはしたり、黒姫さま。それは何と云ふ無理を仰有るのだ。能う考へて御覧なさい。吾々両人が其玉を仮りに盗んだとすれば、どうしてお前さまを助けるものかい。池へ陥つたのを幸に、素知らぬ顔をして居るぢやないか』 黒姫『兎も角、あの松の木の下へは、お前達二人、何時も来ると云ふぢやないか。玉の在処を知つた者が盗らいで誰が盗らう。何と云つても嫌疑のかかるのは当然ぢや。妾もあの玉に就ては生命懸に保護をして居るのだから、お前の生命を奪つてでも白状させねば置かぬのだよ』 とカーリンスの胸倉をグツと握り、首を締め、 黒姫『サア、カーリンス、玉の在処を白状しなさい』 テーリスタン『コレコレ黒姫さま、何をなさいます。あんまりぢや御座いませぬか』 黒姫『エー喧しい。お前も同類だ。白状せぬと、カーリンスの様に揉み潰して了はうか。二人が共謀して居るのだから、見せしめに此奴の息の根を止め、次にお前の番だから、其処一寸も動くこたアならぬぞえ』 カーリンス『アヽ苦しい苦しい。オイ、テ、テ、テーリスタン、婆アさまを退けて呉れ、息がト、ト止まる』 と声も絶え絶えに叫んで居る。テーリスタンは已むを得ず、黒姫の腰帯をグツと握り、力に任せて後へ引いた。黒姫は夜叉の如く、声も荒らかに、 黒姫『モウ此上は破れかぶれだ。汝等両人白状すれば可し、白状致さねば冥途の道伴にしてやらう』 と死物狂ひに両人に向つて飛び付き来る其の凄じさ。二人は、 テーリスタン、カーリンス『黒姫さま、待つた待つた。私ぢやない。さう疑はれては大変な迷惑を致しますよ』 黒姫『ナニ、貴様は高春山で悪い事ばかりやつて居た奴だから、また病気が再発したのだ。改心したと見せかけ、鷹依姫と諜し合はして、此玉を盗り、尚其上如意宝珠の玉を持つて逃げる計画に違ない。アヽさうなると、妾も今死ぬのは早い。お前達の計画をスツカリと素破抜いて、根底から覆へさねばならないのだ。サア如何ぢや、何処へ隠した。早く言はぬかい』 テー、カー両人は泣声になつて、 テーリスタン、カーリンス『モシモシ黒姫さま、それはあまり残酷ぢやありませぬか』 黒姫『ナニ、どちらが残酷だ。妾に是れ丈の失敗をさせて置いて、白々しく、知らぬ存ぜぬの一点張で貫き通さうと思つても、此黒姫が黒い眼でチヤンと睨んだら間違はないのだよ。斯う云ふ所で愚図々々して居ると人に見付かつては大変だ。サア妾の館までそつと出て来なさい。ユツクリと話をして互に打解けて、玉の在処をアツサリ聞かして貰ひませう。さうすれば妾も結構なり、お前も言依別命様にとりなして幹部に入れてあげる。何時までも妾の宅に門番をして居つても詰らぬからナア……』 テ、カ(テーリスタン、カーリンス)『ハイ、そんなら御言葉に従ひ、お宅へ参りませう』 黒姫『ア、それでヤツと安心した。素直に在処を白状するのだよ』 テーリスタン、カーリンス『ハテ、困つた事だなア』 と二人は思案に暮れてゐる。 (大正一一・五・二四旧四・二八松村真澄録)
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霊界物語 22_酉_鷹鳥山の鷹鳥姫 19 山と海 第一九章山と海〔七一一〕 佐田彦は腰帯を解き、幾重にも包みたる玉函をクルクルと両端に包み、肩にふわりと引掛け得るやうに荷造りした。波留彦は驚いて、 波留彦『コリヤ佐田彦、大切な御神宝を、何だ、貴様の肌につけた穢苦き三尺帯に包むと云ふことがあるか、玉の威徳を涜すと云ふことを心得ぬか。さうして其の態は何だ。帯除け裸体になつて、みつともないぞ』 佐田彦『お前の帯を縦に引裂いて、半分呉れなければ仕方がない。藤蔓でもちぎつて帯にしよう』 波留彦『エー、そんなことして道中が出来るか、みつともない。自分の帯は自分がして行け。神玉の御威徳を涜すぞよ』 佐田彦『イヤ波留彦、さうでないよ。此山続きは随分バラモンの連中が徘徊してゐるから、貴重品と見せかけて狙はれてはならぬ。幾重にも包んだ宝玉、滅多に穢れる気遣ひはない。斯うして往かねば剣呑だから』 波留彦『如何に剣呑だと云つて、そりや余りぢやないか』 佐田彦『万劫末代に一度の大切な御用だ。二度目の岩戸開きの瑞祥を祝するため、言依別様が此再度山の山頂で、二度とない結構な御用を仰せつけられたのだ。失策つては大変だから、斯うして往くが安全だよ』 波留彦は、 波留彦『なんだか勿体ないやうな心持がするのだ。併し乍ら肝腎の宝を敵に奪られては一大事だから、そんならお前の言ふ通りにして行かう。サア、俺の帯を半分やらう』 と縦に真中からバリバリと引裂いて佐田彦に渡した。佐田彦は、 佐田彦『イヤ、有難う。これで確かり腹帯が締つて来た。併し乍ら玉能姫さま、初稚姫さま、貴女等はそんな綺麗な服装で御出になつては、悪漢に後をつけられては詮りませぬよ、何とか工夫をなさいませ』 玉能姫『ハイ、吾々二人は着物を裏向けに着て、気違ひの真似をして参りませう』 佐田彦『ヤー、それは妙案だ。流石は玉能姫様だ。サアサア、佐田彦が着替へさして上げませう』 と立ち上らむとするを玉能姫、初稚姫は首を左右に掉り、 玉能姫『イエイエ、滅相な、妾も玉能姫、自分のことは自分で処置をつけねばなりませぬ』 と云ひつつ、クルクルと帯を解き、裏向けに着物を着替へて了つた。 初稚姫も亦着物を脱がうとするを、玉能姫は少し首を傾け、 玉能姫『一寸待つて下さい。気違ひが二人もあつては却つて疑はれるかも知れませぬから、貴方は気違ひの娘になつて下さい』 初稚姫『そんなら気違ひのお母さま。サア、何処なつと参りませう』 玉能姫『オイ佐田公、波留公、貴様は何処の奴だ。余程好いヒヨツトコ野郎だな』 佐田彦『これはしたり、玉能姫さま、姫御前のあられもない、何と云ふ荒いことを仰有りますか』 玉能姫『知らぬ知らぬ、アーア、斯んなヒヨツトコ野郎の莫迦者と道伴れになるかと思へば残念だ。気が狂ひさうだ』 波留彦『玉能姫さま、今から気違ひになつて貰つては波留彦も堪りませぬで』 玉能姫『伊勢は津で持つ、津は伊勢で持つ。大根役者が玉を持つ、コリヤコリヤコリヤ』 佐田彦『玉能姫さま、洒落も可い加減になさいませな。これから未だ沢山な道程、今から気違ひの真似して居つては怺りませぬで』 玉能姫『なに、妾を気違ひとな。エー残念だ。バラモン教に於て其の人ありと聞えたる鬼熊別の妻、蜈蚣姫とはわが事なるぞ。汝は三五教の腰抜宣伝使、この蜈蚣姫が尻でも喰へ。残念なか、口惜しいか。あの詮らぬさうな顔付ワイの。オホヽヽヽ』 と臍を抱へて笑ひ倒ける。 佐田彦『アー、仕方がないなア、あんまり嬉しうて玉能姫さまは本当に逆上せて了つたのだらうかなア、波留公』 玉能姫『定めて逆上せたのであらう。逆上せ切つた蜈蚣姫の再来が、お前の頭をポカンと波留彦だ』 と言ひながら波留彦の横面をピシヤピシヤと撲り、 玉能姫『アハヽヽヽ』 と腹を抱へて笑ひ倒ける。 波留彦『なんぼ女にはられて気分が好いと言つても、キ印に撲られて怺るものか。さア行きませう、玉能姫さま、確かりなさいませ』 玉能姫『ホヽヽ、私は玉能姫ぢやないよ、狸姫だよ』 波留彦『エー、怪体の悪い、肝腎の御神業の最中にやくたいだなア。初稚姫さま、ちつと確かり言つて聞かして下さいな。コリヤ本当に逆上せて居ますで』 初稚姫『お母さま、往きませう』 とすがり付く其の手を取り放し、 玉能姫『エー、お前迄が私を気違ひと思つて居るのかい。アヽ穢らはしい。斯んな所には一時も居れない』 と二つの玉を包んだ帯を肩に引つかけ、山伝ひに雲を霞と走り行く。 初稚姫は負けず劣らず、玉能姫の後に随ひ矢の如く走り行く。佐田彦、波留彦は遁げられては大変と一生懸命に後を追ふ。何時の間にか玉能姫、初稚姫の姿は見えなくなつた。 佐田彦『オイ、波留彦、大変なことが起つたものぢやないか』 波留彦『貴様が確り握つて居らぬから、到頭狸が憑りやがつて持つて去んで了つたのだい。アヽもう仕方がない、神様に申訳がない。此絶壁から言ひ訳のために身を投げて死んで了はうかい』 佐田彦『さうだと言つて、そんな事をすれば益々神界の罪だよ』 と心配さうに悔んでゐる。 向ふの木の茂みから、 玉能姫『オーイ、波留彦さま、佐田彦さま、此処だよ此処だよ』 と玉能姫は呼んでゐる。 波留彦『ヤア、在処が分つた。気違ひ奴、あの禿げた山の横の小松の下に顔だけ出してゐよる、表から行くと又逃げられては大変だ。廻り道をしてそつと捉まへようかい』 と二人は山路を外し、木の茂みの中を蜘蛛の巣に引つかかりながら、漸く玉能姫の間近に寄つた。 玉能姫『あの二人の御方、よう来て下さんした。たまたま御用を仰せつけられながら、玉能姫に玉を奪られて玉らぬだらう。さアさア初稚姫さま、あんなヒヨツトコ野郎に構はず行きませうよ。ホヽヽヽ』 と嘲笑ひと共に掻き消す如く、又もや一目散に木の茂みを脱けて、何処へか姿を隠した。二人は一生懸命に追ひかける。初稚姫の計らひで処々に小柴が折つて標がしてある。 佐田彦『ヤア、流石は初稚姫さまだ。子供に似合はぬ好い智慧が出たものだ。俺達に之を合図に来いと云つて、小柴を所々折つて標をつけて於て下さつた。オイ、之を探ねて走らうぢやないか、のう波留彦』 波留彦『オーさうだ』 と二人は捩鉢巻しながら、小柴の折れを目標に追ひかけて行く。 鷹鳥ケ岳の山麓の松林に七八人の男、胡床を掻き車座になつて、ひそびそ話に耽つてゐる。 甲『オイ、大変に強い女もあればあるものぢやないか。俺達の兄分のスマートボールやカナンボールを苦もなく滝壺へ投げ込み、剰つさへ俺達を谷底へ投り込みやがつて、此通り痛い目に遇はせ、終局の果には蜈蚣姫の教主様まで、あんな目に遇はせよつた。彼奴は何でも偉い神様の再来かも知れないよ』 乙『なアに、彼奴は玉能姫と云つて鷹鳥山の鷹鳥姫の婢奴となり、清泉の水汲をやつて居つた奴だ。あの時は此方は女や子供と思つて油断をして居たから、あんな不覚を取つたのだ。何れ此辺へ迂路ついて来るかも知れない。なんでも彼奴を捉まへて三五教の宝の在処を白状させ、バラモン教へ占領せねば、到底此自転倒島に於ては俺達の教派は拡まらない、なんとかして、まア一度彼奴の行方を探ね、目的を達したいものだ』 丙『そんな危ないことは止しにせエ。生命あつての物種だ。蜈蚣姫さまでさへも彼奴の乾児がやつて来て、谷底へ放り投げたやうな強力が随いてゐるから、うつかり手出しは出来ないよ』 甲『ちよろ臭いことを云ふな。計略を以て旨く引張り込めば何でもない。俺が一つ智慧を貸してやらう』 丙『どうすると云ふのだい』 甲『貴様等二三人が俺と一緒に女に化けて鷹鳥山に乗り込み、三五教の求道者となつて誤魔化すのだ』 乙『貴様の面では女に変装したつて到底駄目だよ。貴様が変装したら、それこそ鬼婆に見えて仕舞ふぞ』 甲『鬼婆でも、鬼爺に見えなければ宜いぢやないか。それで完全な女になつたのだ。善悪美醜は問ふところに非ず。俺は皺苦茶婆さまになつて入り込むから、貴様は皺苦茶爺になつて、杖でもついて腰を屈め、俺の後に踵いて来い』 乙『いつその事、堂々と男の求道者になつて行つたらどうだ』 丙『そんな悪相な面をして行かうものなら、忽ち看破されて了ふぜ』 斯く雑談に耽る折しも、向ふの方より一人の女、何か肩に引つかけ、髪を振り乱し、衣服を裏向けに着ながら、女に似合はず大股にトントンと此方に向つて来る。 七歳ばかりの少女は、 少女(初稚姫)『お母さまお母さま』 と連呼しながら後追ひかけ来る。又もや続いて二人の荒男、 二人の男(佐田彦、波留彦)『オーイオーイ。待つた待つた』 と一生懸命に息を喘ませ進み来る。 甲『アリヤ何だ、あた嫌らしい。髪を振り乱し着物を裏向けに着やがつて、褌に何だか石のやうなものを包んで走つて来るぢやないか。彼奴はてつきり気違ひだよ。気違ひに噛ぶりつかれでもしたら、まるで犬に喰はれたやうなものだ。オイ、皆の奴、すつこめすつこめ』 一同『よし来た』 と林の草の中に小さくなつて横たはる。その前を踏まむ許りに玉能姫、初稚姫は、 玉能姫、初稚姫『キヤアキヤア』 と金切声を張り上げながら通つて行く。二人の男汗を垂らし、 二人の男(佐田彦、波留彦)『オーイ、気違ひ待つた』 と又もや一生懸命西方指して進み行く。一同はやうやう頭を上げ、 甲『ヤー何処の奴か知らぬが、女房が気が狂つたと見えて、偉い勢で追ひかけて行きよつた。可愛相に、あんな娘がある仲で、女房に発狂されては怺つたものぢやない。併しなかなか別嬪らしかつたぢやないか』 乙『さうだなア、可愛相なものだ。先へ行つたのはあれの爺だらう。後から行く奴はヒヨツとしたら下男かなんかだらうよ。何は兎もあれ、どえらい勢だつた。まるきり夜叉明王が荒れ狂うたやうな勢だ。マアマア俺達は無事に御通過を願うて幸ひだつた』 と話してゐる。暫らくすると蜈蚣姫は、スマートボール、カナンボール其他拾数人の部下を引連れ、一生懸命に此場に駆け来り、五六人の姿を見て、 蜈蚣姫『オイ、お前は信州、播州、芸州の連中ぢやないか。なにして居る。今此処へ玉能姫が通つた筈だがお前は知らぬか』 信州『最前から此処で一服して居ましたが、玉能姫のやうな奴は根つから通りませぬで。髪振り乱した気違がキヤアキヤア云つて通つたばかり、後から爺が可愛相に汗をブルブルに掻いて追つかけて行きました』 蜈蚣姫『どうしても此処を通らにやならぬ筈だが、ハテ不思議だなア。それなら大方杢助館へでも廻つたのだらう。一体何処へ行きよるのか。皆の奴、斯うしては居られない。再度山の山麓、生田の森に引返せ』 と慌しく呼ばはつた。スマートボールを先頭に全隊引率れて、東を指して一生懸命バラバラと走り行く。 梢を渡る松風の音、刻々に烈しくなり、瀬戸の海の浪は山嶽の如く吼り狂うてゐる。玉能姫、初稚姫は漸々にして高砂の森に着いた。四辺に人なきを幸ひ、乱れ髪を掻き上げ、顔を立派に繕ひ、着物を脱ぎ替へ、元の玉能姫となつて了つた。息急き切つて走り来つた佐田彦、波留彦は此の姿を見て、 佐田彦『ヤー、玉能姫さま、気がつきましたか。大変心配でしたよ』 玉能姫『オホヽヽヽ、お約束通り上手に気違に化けたでせう。須磨の浜辺の難関を、あゝせなくては通過が出来ませぬからなア』 佐田彦『イヤもう恐れ入りました。流石言依別命様が御見出し遊ばしただけあつて、佐田彦如き凡夫の到底及ばぬ智慧を持つてゐなさるなア』 波留彦『本当に七尺の男子波留彦も睾丸を放かしたくなつて来ました。アハヽヽヽ』 佐田彦『それにしても初稚姫さま、小さいのによく踵いてお出でなさいましたなア。何時もお父さまに甘へて負はれ通しだのに、今日は又どうしてそんな勢が出たのでせう』 初稚姫『神様が私を引つ抱へて来て下さいました。あの大きな神様が御目に止まりませ何だか』 佐田彦『さう聞くと何だか大きな影の様なものが、始終踵いて居たやうに思ひました』 初稚姫『かげが見えましたか。それが神様の御かげですよ。オホヽヽヽ』 佐田彦『子供の癖によく洒落ますなア。シヤレシヤレ恐れ入りましたもので御座るワイ』 玉能姫『サア、これから高砂の浜辺へボツボツ参りませう。幸ひに日も暮れました』 と玉能姫は先に立つ。三人は欣々と後に随ひ、浜に立ち向ふ。 五月五日の月は西天に輝き、薄雲の布を或は被り或は脱ぎ、月光明滅、四人が秘密の神業を見え隠れに、窺ふものの如くであつた。鳴門嵐の暴風は遠慮会釈もなく海面を撫で、山嶽の如き荒浪は立ち狂ひ、高砂の浜辺に押寄せ、駻馬の鬣を振つて噛みついて居る。 佐田彦は、猿田彦気取りで先に進み、船頭の家を叩き、 佐田彦『モシモシ、船頭さま、これから家島へ往くのだから、船を出して下さいな。賃銀は幾何でも出しますから』 船頭は家の中より、 船頭『何処の方か知らぬが、何を呆けてゐるのだ。レコード破りの荒浪に、如何して船が出せるものかい。こんな日に沖に出ようものなら、生命がいくつあつても堪るものでない。マア、二三日風の凪ぐ迄待つたらよからう』 佐田彦は小声で、 佐田彦『ハテ、困つたなア。吾々はどうしても家島へ渡らねばならないのだ。せめて中途の神島までなつと送つて呉れないか』 船頭『なんと言つても此の時化には船は出せないよ。桑名の徳蔵ならばイザ知らず、俺達のやうな普通の船頭では、到底駄目だよ。こんな日に船を出す位なら、家もなんにも要つたものぢやない。そんな分らぬことを言はずと、二三日待つたがよからうに』 佐田彦『どうしても出して呉れませぬか、仕方がない。それなら船を貸して下さいな』 船頭『滅相もないこと仰有るな。船でも貸さうものなら商売道具を忽ち滅茶々々にされて了うて、女房や子の鼻の下が乾上がつて了ふ。一つの船を慥へるにも百両の金子が要るのだ。自家の身代は此の船一つだ。マア、そんなことは絶対に御断り申さうかい』 佐田彦『未だ外に船頭衆はあらうな』 船頭『此の浜辺には二三十人の船頭が居る。併し乍ら開闢以来、この荒浪に船を出すやうな莫迦者は一人も居りませぬワイ。今日は五月五日、菖蒲の節句、神様が神島から高砂へ御出で遊ばす日だから、尚々船は出せないのだ。仮令浪はなくとも今日一日は、此の海の渡海は出来ないのだ。暮六つから神様が高砂の森へお越しになるのだ。モー今頃は神島を御出立遊ばして御座る時分だよ。何としてそんな処へ行くのだい』 佐田彦『俺は家島へ行くのだ。浪の都合で一寸御水を頂きに神島へ寄りたいと思ふのだよ』 船頭は不思議な奴が出て来たものだと呟きながら表に立出で、 船頭『ヤー、見れば若い御女中に娘さま。お前さま等も御一行かな』 玉能姫『ハイ、左様で御座います。どうぞ船を御出し下さいませ』 船頭頻に首を振り、 船頭『アーいかぬいかぬ、途方もないこと云ひなさるな。男でさへも行かれぬ処へ、妙齢の女が渡ると云ふことは到底出来ない。平常の日でも女は絶対に乗せることは出来ませぬワイ』 初稚姫『小父さま、そんなら其の船を売つて御呉れぬか』 船頭『売つて呉れと云つたつて、中々安うはないぞ。百両もかかるのだから』 初稚姫『それなら小父さま、二百両上げるから、お前の船を売つてお呉れ』 船頭『百両の船を二百両に買つて貰へば、船が二隻新調出来るやうなものだ。それは誠に有難いが、併し乍らみすみすお前さま達を海の藻屑となし、鱶の餌食にして了ふのは何程欲な船頭でも忍びない。そんなことは言はずに諦めて帰つて下さい。男の方なら二三日したら船を出して上げよう』 初稚姫『女は何うしていけないのですか』 船頭『アヽ、いけないいけない。理屈は知らぬが、昔から行つたことがない島だから』 佐田彦『船頭さま、そんなら時化が止んでから明日でも俺達が勝手に漕いで行くから、二百両で売つて下さい』 船頭『百両のものを二百両に売ると云ふことは、大変に欲張つたやうで気が済まぬが、併し船を売つて了へば、次の船が出来るまで徒食をせねばならぬから、貯蓄の無い俺達、そんなら二百両で売りませう』 佐田彦『有難い、そんなら手を打ちます。一、二、三』 と船頭と佐田彦は顔を見合せ、手を拍つて了つた。 初稚姫は懐より山吹色の小判を取出し、 初稚姫『サア、小父さま、改めて受取つて下さい』 と突き出す。船頭は検めて見て、 船頭『ヤー、有難う、左様なら。モウ一旦手を拍つたのだから、変換へは利きませぬよ』 と言ひ捨て、恐さうに家に飛び込み、中よりピシヤンと戸を閉め、丁寧に突張りをこうてゐる。波は益々猛り狂ふ。 佐田彦『アヽ此の船だ。サア皆さま、乗りませう。ちつと荒れた方が面白からう』 と佐田彦は先に飛び込んだ。三人も喜んで船中の人となつて了つた。 佐田彦『サア、波留彦、櫂を使つて下さい。俺は船頭だ。艪を漕いで行く。随分高い浪だよ』 とそろそろ捩鉢巻になつて、艪を操り始めた。 月は雲押し開きて利鎌のやうな光を投げ、四人の乗つた神島丸を照して居る。不思議や暴風は忽ち止まり、浪は見る見る畳の如く凪ぎ渡つた。二人は一生懸命に櫂を操りながら、沖に浮べる神島目標に漕ぎ出した。漸くにしてミロク岩の磯端に横付けになつた。 玉能姫『皆さま、御苦労でした。貴方等二人は此処に待つて居て下さい』 佐田彦『イエ私も御供を致しませう。これ丈篠竹の茂つた山、大蛇が沢山に居ると云ふことですから、保護のために吾々両人が御供致しませう。言依別の教主様より「両人の保護を頼む」と云はれたのだから、もし御両人様が大蛇にでも呑まれて了ふやうなことが出来したら、それこそ申訳がありませぬ。是非御供を致します』 初稚姫『その大蛇に用があるのだから、来て下さるな。大蛇は男が行くと大変に腹立てて怒るさうですから』 波留彦『大蛇でも矢張り女が好いのかなア。斯うなると男に生れたのも詮らぬものだ』 玉能姫『さア、初稚姫さま、参りませう。御両人の御方、決して、後から来てはなりませぬよ。用が済んだら呼びますから、それまで此処に待つてゐて下さい』 二人は頭を掻き乍ら、 佐田彦『エー仕方がない。役目が違ふのだから、そんなら神妙に待つて居ます。御用が済んだら呼んで下さい』 玉能姫『ハイ、承知しました。何うぞ機嫌よう待つて居て下さいませ』 と初稚姫の手を把り、篠竹を押分け山上目蒐けて登り行く。 辛うじて二人は山の頂に到着した。五六歳の童子五人と童女三人、黄金の鍬を持つて何処よりともなく現はれ来り、さしもに堅き岩石を瞬く間に掘つて了つた。 初稚姫『アー、貴女は厳の身魂、瑞の身魂の大神様、只今言依別命様の御命令に依つて、無事に此処まで玉の御供をして参りました。さア、何うぞ納めて下さい』 五人の童子はにこにこ笑ひながら、ものをも言はず一度に小さき手を差出す。初稚姫は金剛不壊の如意宝珠の玉函を取り、恭しく頭上に捧げながら五人の手の上に載せた。十本の掌の上に一個の玉函、忽ち五瓣の梅花が開いた。童子は玉函と共に、今掘つたばかりの岩の穴に消えて了つた。 三人の童女は又もや手を拡げて、玉能姫の前に進み来る。玉能姫は紫の宝珠の函を取り上げ、恭しく頭上に捧げ、次で三人の童女の手に渡した。童女はものをも言はず微笑を浮べたまま、玉函と共に同じ岩穴に消えて了つた。玉能姫は怪しんで穴を覗き見れば、童男、童女の姿は影もなく、只二つの玉函、微妙の音声を発し、鮮光孔内を照らして居る。 二人は恭しく天津祝詞を奏上し、次で神言を唱へ、天の数歌を歌ひ、岩蓋をなし、其上に今童女が捨て置きし、黄金の鍬を各自に取り上げ、土を厚く衣せ、四辺の小松を其上に植ゑて、又もや祝詞を奏上し、悠々として山を下り行く。 玉能姫は、 玉能姫『お二人さま、えらう御待たせしました。さア、もう御用が済みました。帰りませう』 佐田彦、波留彦両人は口を揃へて、 佐田彦、波留彦『それは結構で御座いました。御目出度う。これから私等が一度登つて来ますから、暫らく此処に待つて居て下さいませ』 初稚姫『モー御用が済みましたのですから、一歩も上つてはなりませぬ。さア帰りませうよ』 佐田彦『折角此処迄苦労して御供をして来たのだから、埋めた跡なりと拝まして下さいな』 初稚姫は首を左右に振つてゐる。玉能姫を見れば、是亦無言の儘首を左右に振つてゐる。何処ともなく雷の如き声、 声『一刻も猶予はならぬ。これより高砂へは寄らず、淡路島を目標に再度山の麓に船をつけよ。サア、早く早く』 と呶鳴るものがある。此言葉に佐田彦、波留彦は、 佐田彦、波留彦『ハイ、畏まりました』 と玉能姫、初稚姫を迎へ入れ一生懸命に艪櫂を操りつつ、再度山の方面指して帰り行く。 (大正一一・五・二八旧五・二外山豊二録)
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(1876)
霊界物語 25_子_豪州物語2(地恩城の黄竜姫) 14 園遊会 第一四章園遊会〔七六〇〕 オーストラリヤの一つ島は、現在は殆ど夏計りなれども、此時代は僅かに春夏秋冬の区別がついて居た。日中は年中殆ど同じ暑熱であつたが、朝夕夜間の気候には自然に四季の区別を現はして居た。 我国で言へば殆ど晩夏の頃、城外の天を封じて立てる老樹の遠近に生茂る馬場に於て友彦夫婦の為に大園遊会が開かれた。四面山に包まれたる地恩郷は、平地としては全島に於ける第一の高地であつた。谷川は南北を流れ、崎嶇たる岩石、谷々に壁の如く突つ立ち、奇勝絶景並ぶものなき景勝の地である。 一つ嶋に於ける景勝の地は、第一に諏訪の湖、第二にヒルの郷のクシの滝壺の近辺に指を屈するのである。されどヒルの渓谷は区域最も狭くして、平地は殆ど無く、地恩郷に対して、其大小広狭の点に於て比べものにならない。土地高く風清く、且つ面積広く、大樹鬱蒼たる点は、全島第一と称せられて居る。 門外の広場の森林には所々に赤、白、黒、青、紅等の面白き形をしたる岩石、地中より頭をもたげ、一見して大なる花の地上より咲き出でたる如く思はる。岩石の大部分は、蓮華の花の咲き出でたる如き自然形をなし、国人は単に之を蓮華岩と云ひ、或は蓮華の馬場とも名づけて居る。 黄竜姫以下数百人の人々は、右往左往に、思ひ思ひの遊戯をなし、歌ふ、踊る、舞ふ、岩笛を吹く、石を拍つ、一絃琴、二絃琴、三絃琴の音嚠喨として響き、横笛、縦笛、磬盤などの音は最も賑しく、思はず身を天国にのぼせ、妙音菩薩の来りて楽を奏する如き感に打たれ居る。梅子姫は中央の最も高き紫色の蓮華岩に登り、面白き歌を歌つて興を添へた。 梅子姫『芙蓉山と聞えたる天教山に現れませる 木の花姫の御身魂一度に開く梅子姫 皇大神の統御げる皇御国のスの種を 四方に間配り大八洲数ある中に自転倒の 島根の国の真秀良場や青垣山を繞らせる 下津磐根の蓮華台芙蓉山の御移写 神の教に国人の心も開く蓮葉の 匂ひ出でたる地恩郷蓮華の花の此処彼処 咲き乱れたる其台神の教を麻柱ひし 貴の御子たる八乙女の開き初めたる梅子姫 三千世界の神人を招き集ふる此斎場 教の稜威も高天の原に坐します日の御神 月の御神の御恵の御水火を受けて黄竜姫 大海原の波を分け雲を起して久方の 天津御国に昇る如御稜威畏き神司 母と現れます蜈蚣姫豊葦原の中津国 メソポタミヤの顕恩郷エデンの河と諸共に 清き誉を流したるバラモン教の神司 鬼熊別の片柱天地四方の神人を 誠の道に救はむと大国別の御言もて 埃及国や波斯の国印度の国まで教線を 布かせ給ひし雄々しさよ父大神の神言もて 天の太玉神司エデンの河を打ち渡り 顕恩城に出でまして天津誠の御教を 𪫧怜に委曲に宣りつれど天運未だ循環り来ず 鬼雲彦の荒神は神の心を慮り兼ね 雲を霞と自転倒の島に渡らせ給ひつつ 率ゆる人も大江山稜威の砦を構へ立て 教の花の開く様みくにケ嶽や鬼ケ城 北と南にバラモンの教の射場を造りつつ 同じ天地の珍の子と生れ出でたる三五の 神の司に追はれまし再び波斯の本国へ 帰り給ひし痛ましさあゝさり乍らさり乍ら 此世を造りし大神の恵の露は天地の 百の神人草木まで漏れ落ちもなく霑ひて 誠の道に敵もなく味方の差別もなき世をば 小さき意地に搦まれて右や左や北南 種々雑多と名を変へて荒び居るこそ悲しけれ 転迷開悟の蓮花愈開く常磐木の 松の神代のめぐり来て敵と味方の区別なく 心合せし一つ島地恩の郷に三五の 教を開く嬉しさは高天原に手を曳いて 歓ぎ遊べる如くなりあゝ惟神々々 御霊幸はひましまして一度叛きし友彦が 心の空に月は照り輝き渡る今日の宵 国治立大神や神素盞嗚大神の 此有様を詳細に眺め玉へば如何ばかり 歓ぎ給ふか白雲の包む谷間ぞ床しけれ 科戸の彦や科戸姫御霊幸はひましまして 地恩の郷や吾々が心を包む雲霧を 一日も早く吹き払ひ天国浄土の真相を 宇宙主宰の大神の御前に現はし奉るべし 神は吾等と倶にます親子兄弟睦び合ひ 此楽園に神国の春を楽しむ一同の 花も開きし蓮華台堅磐常磐の岩の上に 千代も八千代も万代も栄えませよと願ぎまつる あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ』 と歌ひ終つて、紫の蓮華岩を下り来り、芝生の上に息を休め居る。 蜈蚣姫は稍くの字に曲つた体を揺ぶり乍ら、両手を拡げて手付き面白く、廁の水浸き然として歌ひ踊り始めたり。 蜈蚣姫『豊葦原の瑞穂国根分けの国と伝はりし メソポタミヤにバラモンの足場を作り天が下 世界十字に踏みならす蜈蚣の姫の身の果は メソポタミヤを後にして波斯を越えて印度の国 大空駆ける磐船に身を任せつつ自転倒の 島に渡りて彼方此方と教を開き黄金の 玉の所在を探らむと思ひし事も水の泡 阿波の鳴門や淡路島生命の瀬戸の海越えて 小豆ケ島や南洋の竜宮島のアンボイナ 男滝女滝に身を浴し浪路も遠き太平の 洋を渡りて進み来る船脚早く沓の島 ニユージランドの玉森に一度息を休めつつ 波を辷りて此島に着くや間もなく地恩郷 神の立てたる三五の教柱の黄竜姫 来りて見れば吾娘小糸の姫の面影は 老の眼もうるみなく擬ふ方なき愛娘 教の光久方の天津御空の雲分けて 天降りましたる朝日子の日の出神の御守り 金勝要大神が御分霊なる真澄姫 天と地との神々の其懐に抱かれて 安々送る老の身の心に懸る雲もなし さはさり乍ら白雲の彼方に遠き波斯の国 夫の命は黄竜姫が少女の命の今日の様 未だ知らずにましまさむ翼なき身は如何にせむ 空漕ぎ渡る鳥船も皇大神の警告に 今は用ゆる術もなく空行く雲の吾為に 篤き心のあるならば一日も早く夫の辺に 吾等親子の喜びを一日も早く伝へかし 遠く四方を見渡せば霧に隠れし地恩郷 何の目的も梨礫鳩の使の片音信 執着心の曲鬼を伊吹祓ひに打祓ひ 速川の瀬に清めむと心に覚悟は定め乍ら 忘れ難きは恩愛の止むる由なき吾涙 梅子の姫よ友彦よテールス姫よ宇豆姫よ スマートボール鶴公よ其他並居る教子よ 神の真道に入り乍ら心もつれし吾姿 眺めて笑うて下さるな道は道なり親と子の 情は世界の始めより今に変らぬ玉椿 千代も八千代も永久に動かぬものと神直日 見直しまして何時迄も吾等親子を親子とし 堅磐常磐に道の為尽させ給へ惟神 神の御前に久方の天津祝詞の声清く 仕へ奉らむ蜈蚣姫あゝ惟神々々 神に誓ひし教子よ教を守るピユリタンよ』 と歯の抜けた口から、不整調な言霊にて歌ひ終り、蓮華岩の上に腰を打下し、ホツと息を吐いた。続いてスマートボール、宇豆姫、鶴公其他の歌は数多あれども、山鳥の尾の余り長々しければ省略す。 黄竜姫以下幹部は、園遊会を切りあげて表門を潜り、各居室に姿を隠した。貫州、武公、マール、ミユーズ其他の連中は、後に残りて酒に酔ひ、クダを巻き、解放的気分になつて、彼方に五人此方に三人と、木蔭に足を投げ出し、芝草をむしり乍ら雑談に耽つて居る。マールは口を縺れさせ乍ら、 マール『モシモシ、貫州のボールさま……蜈蚣姫さまも昔はバラモン教の立派な大将株で終局にや海洋万里の自転倒島まで玉を探しに往つたり、宣伝をされたり、三五教を目の敵の様に敵対うて御座つた癖に、自分の娘が三五教の神司、地恩城の女王さまになつたと思つて、俄に心機一転し、三五教を此上なき結構な教の様に思つて御座るのは、チツと可笑しなものですな。梅子姫さまに、最前の様に耳の痛い歌を歌はれて、何とも思筈、自分も立つて踊り狂ひ、妙な歌を歌はしやつたが、一体全体何の態だ。俺やモウ胸糞が悪くて、三五教にお仕へするのも厭になつて来た。……貫州さま、今日限りお暇を頂戴して、又元の土人の仲間へ還元しますから、どうぞ悪からず御承認を願ひます』 と巻舌になり、フーフと酒臭い息を貫州に吹き掛け乍ら、覗き込む様にして詰寄つた。 貫州『神様の道の信者にはイロイロと径路があるものだ。悪いと思へば直に改良するのが所謂惟神の道だよ。貴様の様な一本調子で、神様の信仰が出来るものか。要するに神の道は理智に依つてかたづけようと思つても駄目だ。信入も悟入も、左旋も右傾も、消極も積極も一寸見た所では大変にかけ離れて居る様だが、実際は皆一体だ。何方から入信つた所で、落着く所は天地創造の元の神様を信仰するのだ。所謂江南の橘は江北の枳殻だ。バラモン教であらうが、三五教であらうが、誠の道に二つはない。畢竟人間の考へに依つて種々の雅号を附けたり、勝手な障壁を拵へて威張る丈のものだよ。蜈蚣姫さまの……吾々は……態度に就いては大賛成だよ。貴様もそこまで理屈を言ふ様にならば、最早信仰の門口に這入つたのだ。宅の女房の名がお竹でも、お松でも別に変りはないぢやないか。お竹の名がお松にならうと、お松の名がお梅にならうと、人間其者はチツとも変りがないと同様に、神様は一株だから、よく考へて見て、其上に去就を決した方がよからうぞ。バラモン教と云ふも三五教と云ふも、但はジヤンナイ教と云ふも、ウラル教も、教を伝ふる人間の解釈に依りて、深浅広狭の区別が付くまでだ。兎も角深く広く、入り易く、愉快な教を信仰して、其日其日を安心立命して行くのが、神の教を信ずる信者の本領だ。モチツト話してやりたいが、さうヅブロクになつて居ては、折角の高論卓説も貴様の耳には這入るまい。先づ酔が醒めてから、悠りと説明するから、明日の事にしよう』 マール『何だか知らぬが、チツとばかし、気に喰はなくなつて来たのだ。そんなら明日改めて聞かして貰はうかい』 と行歩蹣跚として、目も霞、右の腕で両眼を横にツルリと撫で、鼻をツンとかみ乍らあつちやにヨツたり、こつちやへヨツたり、八人脚になつて門内へよろめき入る可笑しさ。一同は手を拍つて『ワツハヽヽヽ』と笑ひ転げる。 紺碧の空は俄にドンヨリとして来た。ネルソン山の峰を圧して、天空高く現はれ来る異様の女神七八人、瞬く間に朱欄碧瓦の神殿現はれ、数多の人々の影、手に取る如く天空に筍の生えた如く、ポツリポツリと現はれ来る。 武公は初めて此蜃気楼を眺め、『アツ』と驚き、黄竜姫に注進せむと、転けつ輾びつあつちやへヨツたり、こつちやへヨツたり、八人連れの歩みをし乍ら、奥深く姿を隠し一同は天を仰いで、蜃気楼の立派なるに打驚き、園遊会の余興だと、興がつて居る。 武公の注進に依りて、黄竜姫、梅子姫其他の最高幹部は高殿に上り、ネルソン山の頂上より此方に向つてパノラマの如く、チクチクと位置を転じ来る、諏訪の湖の蜃気楼を熟視すれば、数多の女神に手を曳かれ、左守神たりし清公其外四人連れ、何事か神勅を受け居る姿を眺めて、一同は手を拍つて驚喜し、直に天に向つて天津祝詞を奏上した。蜃気楼は益々明瞭に、且つ左右に長く展開し、湖面に浮かぶ白帆まで判然と映つて居る。黄竜姫は蜃気楼を見て言霊の歌を歌ひ始めた。 黄竜姫『アふげば高し久方のイ域の空に現はれし ウヅの宮居の蜃気楼エにある様な姫神の オホ空高く現はれてカミの御前を伏し拝み キヨき正しき太祝詞クモ井に高く詔りあげし ケ色は殊に美はしくコバルト色の山の上を サシ登りたる清公のシロき顔容珍の衣 スワの湖影清くセマり来れる地恩城 ソラ高々と現はれぬタカ天原の神の国 チ五百万の神人のツキ添ひまつる崇高さよ テニ手に玉を携へてトコ世の空を打眺め ナガき影をば和田の原ニシや東や北南 ヌりたる如き空の色ネ底の国まで照り渡る ノゾミも遂げて神人がハナの顔容月の眉 ヒダリ右りの侍女はフジの額に雪の肌 ヘグリの山のそれの如ホホベも春の花の色 マナコ涼しく眉濃くミダレ髪さへ顔に垂れ ムツび合うたる神と人メグり大足神の世の モモの花咲く弥生空ヤ千代の君を寿ほぎて イヅミも清き湖の底ユフに言はれぬ麗しさ エに見る如き光景はヨにも稀なる眺めなり ワが言霊の清ければヰづくの空も澄み渡り ウきつ沈みつ行雲のヱらぎ栄えて永久に ヲサまる御代を守れかしあゝ惟神々々 御霊幸はひましまして左守神と仕へたる 心の空も清公が地恩の城を後にして 身を下したるタカ港屋根無し船に揺られつつ ヒルの港に漕ぎつけて谷間に荒ぶ曲津霊を 言向け和しセーランの山の麓を踏越えて 露の枕も数重ね一望千里の玉野原 厳しき暑熱を浴び乍ら進み進んで諏訪の海 湖辺に漸く辿りつき天津祝詞を奏上し 身禊払ひてスクスクと水児のみづの魂となり 湖中に浮び漂へる男島女島に助けられ 転迷開悟の教の花開いて散りて実を結び 天女の如く浄化して黄金の船に迎へられ 朱欄碧瓦の高殿に導かれたる有様は 今目のあたり見えにけりあゝ惟神々々 神の恵に隔てなし心の空に塞がれる 雲を払へば天津日の光は清く照り渡る 三五の月を包みたる八重棚雲も忽ちに 科戸の風に払はれて円満清朗望の月 尽きせぬ神の御恵は天垂る地垂る海に垂る 人の身魂にたり充ちて一二三四五つ六つ 七八九つ十の空百千万の神達の 守りも深き竜宮嶋妾もいかで此儘に 地恩の郷に悠々と空しく月日を過さむや いざこれよりは村肝の心を清め魂磨き 清きが上にも清くして神の集まる竜宮の 諏訪の湖へと立向ひ天火水地と結びたる 珍の宝を拝戴し自転倒島に宮柱 太しき建てて永久に鎮まり居ます大神の 御前に捧げまつりなば三五教の礎は 云ふも更なり天が下四方の国々永久に 黄金世界を造りなし貴き神の功績を 堅磐常磐に現はさむ三五教の人達よ 天に輝く蜃気楼神の姿を目のあたり 眺めし上は如何にして安きを貪る時ならむ 一日も早く片時も妾と共にネルソンの 高嶺を越えて西の空虎狼や鬼大蛇 醜の曲津の猛ぶ野を神の光を身に浴びて 安々進み行かむとす早々用意召されよ』……と 促す姫の一言に蜈蚣の姫を始めとし 神の花咲く梅子姫宇豆姫友彦伴ひて テールス姫も諸共に旅装を整へしづしづと 地恩の城を後にして身装も軽き蓑笠の 露押し分けて進み行くあゝ惟神々々 御霊幸はひましませよ。 (大正一一・七・一一旧閏五・一七松村真澄録)