| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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霊界物語 | 74_丑_太元顕津男の神の物語2 | 13 水上の月 | 第一三章水上の月〔一八八一〕 顕津男の神一行の白馬隊は、漸く黄昏れむとする時、玉野湖畔に着き給へば、御空を渡る満月の光は、緩やかに湖面を照し、縮緬の波穏やかにたゆたふ。 玉野森は広き湖水の彼方の岸に、月光を浴びて森厳そのものの如く、地上と湖底に描かれて居る。 顕津男の神は湖面に向ひ、心静に御歌詠ませ給ふ。 『仰ぎ見る夕の月は玉野湖の 波に浮びて静なるかも こんもりと夕の地上に描きたる 玉野の森は清しきろかも 吾は今駒に鞭うち大野原 遠く渡りて今来つるかも 鏡なすこの湖に浮びたる 月の面一入広かりにけり そよそよと湖を吹く風もなく この天地はしづまりて居り 村肝の心静けくなりにけり 月の浮べる湖の鏡に わがい行く玉野の森は波の彼方 かすみて湖路遥けかりけり 葦蘆の茂らふ荒野を渡り来て 今ひろびろと波の月見つ 虫の声岸のあちこち聞えつつ わが霊線の清しさを覚ゆ 真鶴の黒雲を見しわが目には 一入静けく思はるるかな 暫しの間駒を休ませ水飼ひて 彼方の岸に乗りて渡らむ 波渡る舟さへもなきこの湖は 駿馬の背こそ力なりけり 久方の高日の宮を出でしより かかる静けき湖を見ざりき ままならばこの湖の真寸鏡 主の大神の土産となさばや 久方の御空は蒼し湖青し 月天地に清しく浮ぶも 雲の蒼湖にうつるか湖の青 雲にうつるか月の鏡に 空蒼く水また青き湖の面に 浮く白鳥のかげのさやけさ 満天の星を写して輝ける 湖は千花の匂へるが如し 星の花水底に浮び湖の青 天に浮びて清しき宵なり 見の限り御空は蒼く水青く 中を流るる月舟のかげ 月見れば心清しも湖見れば わが霊線はひろごりにつつ 玉野比女の姿なるかも青き湖の 面に浮ぶ満月の光は わが心湖水の月と輝きつ 玉野の比女の住所照らさむ 麗しも紫微天界のたましひか この湖の面に浮ぶ月光は 高照の山の宮居を立ち出でて 清しき湖にいむかひ居るかも 濁り河渡りし時のわが霊も 月照る湖の青に洗へり 天高く湖底深し我は今 神の御稜威を深く悟りぬ 湖の面いや広々と目路遠み わが行くおもひ遥けくもあるか』 遠見男の神は御歌詠ませ給ふ。 『瑞御霊御供に仕へ清しくも 今宵の月に魂を洗へり 果しなきこの天地を照します 月光今宵は湖に浮べり 白銀の玉と輝く月舟の これの湖水にかがやき給ふ 月も日も星も浮ぶなるこの湖の あをく清きは神の心か 如意宝珠玉の月光明らけく 浮べる湖の清くもあるかな 小波も立たぬ夕の湖の月は 玉の宮居を写してさゆるも 汀辺の千草の虫も月光の 清きに鳴くか声冴えにけり 乗りて来し白馬の背に露おきて 玉とかがよふ今宵の月光 仰ぎ見る御空の月も湖の底の 月も太元顕津男の神よ』 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『月盈ちて今宵のかげは圓屋比古 神の姿は湖にうかべる 久方の御空うつして玉野湖の 底明らけく澄みきらふかな 黄昏の闇は迫れど天渡る 月に明るく透きとほるなり 青雲の色を写して夕暮の 月澄み湖のあをみたるかも ぼんやりと彼方の岸に描きたる 玉野の森は水に映えたり きらきらと輝く波は不知火の 海原照す如く見ゆめり 雲の上高く聳ゆる真鶴の 山ほの見えぬ月の光に 見の限り雲霧晴れて空蒼み 星きらめきて清しき宵なり 国土生みの御供に仕へて珍しく 冴えたる月を今宵見るかな 乗りて来し駿馬白く月に浮きて 水底までも影を写せり たのもしき旅なりにけり荒野渡り 玉野湖水の冴えたる月見つ 何となくわが魂線の和みたり 今宵の月の光の清しさに 主の神の御水火に成りし国土ながら かく麗しと思はざりけり 月読は光の限りを光りつつ 波の面に静に浮けるも 山かげのただ一つなき広野原に 一つ浮べる月の湖 ともかくも岐美のみあとに従ひて 今宵の内に彼岸に渡らむ』 多々久美の神は御歌詠ませ給ふ。 『天清く湖また清き中にして われは楽しく歌詠まむかな 虫の声湖畔に冴えて更け渡る 今宵の空の長閑なるかも 大空に輝く月も水底に 写れる月も瑞の御霊よ 駿馬もこれの景色に見惚れしか 嘶く声は清しかりけり 渡り行く彼方の岸の神森は 水底深くうつろひにけり 吾は今この水月を駿馬の 蹄に砕くと思へば惜しきも ままならばこの湖の月光を 空にあづけて渡らまほしけれ 月の浮く湖面を渡るこの宵は 御空の雲の上行く如し』 宇礼志穂の神は御歌詠ませ給ふ。 『歓の天地に充つるこの国土は 紫微天界の真秀良場なるも 瑞御霊御供に仕へて天界の 真秀良場に照る湖の月見つ 真鶴の稚き国原わかわかしく 湖水のみどりに潤ひ栄えむ 久方の天をうつせるこの湖は 天津月日も永久に宿らす この清き水底に遊ぶ魚鱗は 月を仰ぎて浮び上りつ 天も地もよみがへりたる心地して 湖面に浮ぶ宵月を見つ 夕されど御空の月の底ひまで 輝く湖畔は明るかりけり とこしへの歓び充つる天界に 生きて歎かふ神は曲なれ 空高く底深みつつこの湖の 面にうかぶ蒼空の色 主の神の言霊清く幸ひて 澄みきりますかこれの湖 澄みきらふ月のしたびに吾立ちて 湖底の月を下に見るかな 瑞御霊出でます道の幸ひを 明して冴ゆる湖上の月光 千万の悩みにあひて今此処に 清き御空の下に月見る』 美波志比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『近ければ天の神橋をかけ渡し この湖を渡らまほしけれ 紫の雲の神橋を渡りゆく 月は御空の宝珠なるかも 久方の御空は蒼く限りなく 果しも知らに湖に写れる 名にしおふ紫微天界の真秀良場や この湖に月宿るなり いや広に月の光はひろごりて 湖水のあらむ限りを照せり そよ風は吹き出でにけり黄金なす 波のおもてに月はさゆれつ 波の間に浮べる月の光清し 湖面を見つつ心躍るも つぎつぎに科戸の風は強まりぬ 波間に浮ぶ月を砕きつ そよ風に波紋描きて湖の面は 右と左に月をひろげつ 百千々に砕けて月は波の面に 世の移りゆくさまを示せり』 産玉の神は御歌詠ませ給ふ。 『夕凪の湖に忽ち風立ちて あたら月光千々に砕けつ 湖の月は砕けて乱るれど 御空の月は変らざりける 冴え渡る月天心に輝きて わが立つかげも短くなれり 天心にいつきて動かぬ月光は 雄々しかりけり瑞の御霊か 虫の音もいよいよ高くなりにけり 水の面にをどる月をめづるか 向つ岸に岐美の渡らす今宵なり 風もしづまれ波もをさまれ 波がしら白々光る湖の面に 夕を浮ける水鳥白しも 水鳥の翼かがよふ月光は いやますますに冴えわたりつつ 岐美が行く波路静に守れかし 湖底に潜みて守る神々 瑞御霊御供に仕へ玉野湖 渡らむ今宵は静なれかし』 魂機張の神は御歌詠ませ給ふ。 『たまきはる生命うるほす月読の 神守りませ水の上の旅を つぎつぎに風高まりぬ波荒れぬ 月は砕けぬうれたきの夜や 水底に潜むは正しく生代比女の 神の魂とわれ覚ゆなり ナノヌネニこの言霊の功績に 今立つ波をなぎふせて見む ナノヌネニこの言霊の功績に 曲の荒ぶる術なかるらむ 清き明き心になり出る言霊に 如何でしるしのなかるべきやは ほのぼのと湖面に狭霧たちこめて 波は漸く凪ぎ渡りけり この清きさやけき湖に狭霧たちて 水底の月は光うすらぎぬ 瑞御霊進ませ給ふ今宵なり 水底の神よ狭霧晴らさへ』 結比合の神は御歌詠ませ給ふ。 『つぎつぎに狭霧は立ちてひろびろと 輝く湖を稍狭めたり 水底の月は次第にかくれつつ 御空の海のみ月の浮べる 写るべき月は狭霧に包まれて この湖の面は薄ら暗きも 生代比女恨みの炎かたまりて またもや狭霧の湧き立つならむか よしやよし黒雲四方を包むとも 生言霊に吹きはらひ見む』 美味素の神は御歌詠ませ給ふ。 『主の神の依さしに国土生み神生みの 旅に立たせる岐美と知らずや 湖底の神よ静に聞し召せ この湖も神のたまもの 国土生みの妨げなさむ神あらば 伊吹き払はむ言霊の水火に 駒並めて今や渡らむ湖の 面を晴らして風よしづまれ この風は科戸の神の水火ならず 水底の曲の詛の水火なる 愛善の国の真秀良場にあらはれし これの湖水に曲は無からむ 曲神の住処とすべき湖ならず 早く去れ去れただに退け 言霊の水火も恐れぬ神なれば この天地に住まはせじと思ふ』 真言厳の神は御歌うたひ給ふ。 『われこそは真言の厳の神なるぞ 湖を晴らして岐美を通せよ 湖の神よわが言霊を聞かずして はむかひ来るか生命知らずに 千早振る神の造りし湖に 穢あらすな瑞御霊神』 かく神々は、各も各もに御歌うたひて、湖の神をなだめつ諭しつ時を移し給へども、生代比女の神の恋の炎は強く猛く、神々の生言霊の光さへ、包みかくすぞうたてけれ。 (昭和八・一〇・二三旧九・五於水明閣白石恵子謹録) |
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霊界物語 | 74_丑_太元顕津男の神の物語2 | 15 晴天澄潮 | 第一五章晴天澄潮〔一八八三〕 顕津男の神の仁慈の籠れる言霊の御歌に、生代比女の神が恋の恨みも炎も、玉野湖の水泡と消えて、水面には月の鏡を写し、雲霧の幕何れにか取り外されて、大空の蒼にきらめく星影を湖底に描き、天国浄土の光景と回復したるぞ不思議なる。 遠見男の神は、今目前展開したる天地の光景を眺めて湖面に向ひ、御歌詠ませ給ふ。 『天晴れ天晴れ瑞の御霊の言霊に 天地四方の雲晴れにけり 恐しきものは恋かも思ひかも この天地を闇となしける 天地を深く包みし闇雲も 情の言葉に晴れ渡りぬる 瑞御霊神の苦しき御心を 悟りて吾は涙に暮るるも 玉野湖の鏡に月は冴えにつつ 波は静に香りこそすれ 八千尋の底まで澄めるこの湖の 深き思ひを和らげし岐美よ 目路遠く彼方の岸にうつろへる 玉野神森見え初めにける 一片の雲さへも無き大空の 心にかがよふ神の霊線 大愛の神の心に比ぶれば 吾は小さき愛に狂へるも 今日よりは心の手綱ひき締めて 大愛の道進まむと思ふ 恋すてふ心は愛し清しもよ 天と地との中に輝く 湖原をなでて吹き来しそよ風の わが面吹きて香る宵なり 見の限り月の下びに草も木も 安き眠りにつきにけらしな 荒風に揉まれて汀の葭葦は 片靡きつつ露に光れる 瑞御霊恵の露の霑ひに この天地は洗はれにける 闇深く湖原荒れしたまゆらを 吾は艱みぬ御供に仕へて 吹きすさび荒れ狂ひたる湖風も 静まりにけり岐美の情に 頼むべきものは神かも恐るべき 邪曲は恋かもこの天地に かくならば勇みて御供仕へつつ 吾渡り行かむ神馬の守りに』 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『はろばろと岐美の旅路に仕へ来て 吾は悟りぬ世の状態を 恋心燃えつ消えつつまた燃えつ 天と地とを恨みにとざせり とざしたる天地の闇も情ある 生言霊に明け放れたり 大空を隈なく包みし黒雲は 恋の炎と思へば恐し 美しき紫微天界のことごとは 愛より生みしと思へば畏し 愛善と愛悪交々ゆきかひて 紫微天界は固まり行くも 天も地も圓屋の比古の神の稜威に 丸く治めむ神のまにまに 神と神国と国との交らひを 丸く治めむわが誓ひなり 丸々と御空の月は玉野湖の 上と下とにかがよふこの宵 この宵の移り変りのさま見つつ わが行先の光見つむる 目路遠きこの神国を固めむと 駆け廻ります瑞の御霊はや』 多々久美の神は御歌詠ませ給ふ。 『わが力及ばざりけり恋雲の 四方をふさぎしその束の間を 国土造る神の御供の畏さを 思へば心ゆるされぬかな 湖荒れて大蛇の出でしたまゆらを 吾は畏み見て居たりける 玉野湖の岸辺に立ちて吾はただ 浪凪ぎ渡る時を待ちつつ 不甲斐なき吾と思へど恋雲を 晴らさむ術なく黙し居にけり 瑞御霊艱める態を目前 見つつ術なき吾を悲しむ 言霊に恵の露の輝きて 大蛇の胸は和みたりけむ 恐しく忌はしきものは恋すてふ 心に生まるる影なりにけり 縹渺と限りも知らぬ大野原も 月の光に輝きそめたり 久方の天また地を黒雲に 包みし邪曲は恋なりにけり 国土生みの供に仕へて恐しき 恋てふものの影見たりけり 村肝の心静めて黙しつつ 眺むる恋の大蛇すさまじ』 宇礼志穂の神は御歌詠ませ給ふ。 『天地によみがへりたる心地して 鏡の湖の月仰ぐかな 天心に輝く月のかげ冴えて 玉野湖水は澄み照らひけり 移り行く世の状態をつくづくと わが目前偲びけらしな 言霊の厳の力も揉み消して 恋の炎は燃え立ちにけり 燃え立ちし恋の炎は雲となり 雨となりつつ天地を包めり 瑞御霊貴の神業御子生みの 艱み思へば謹みの湧く 謹みて国魂神を生みまする 神の神業の難きを偲ぶも 地稚く漂へる国土を固めずば 紫微天界は栄えざるらむ 愛善の神代ながらも兎もすれば 恨み憎みて争ふが憂し 葭葦の生ひ茂りたる国原を 拓かす岐美の艱みを思ふ』 美波志比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『吹き荒ぶ荒野の風も湖風も ひたをさまりぬ情の言葉に 神々はいふも更なり天界の 総ては情によみがへるなり 天界に情を知らぬ神は無し 瑞の御霊の艱み畏し 天地を包みし雲も晴れ渡り 清しくなりぬわが魂線は 広袤万里稚き国原拓きます 岐美の功の畏さ思ふ 大空の月の御霊と生れませし 瑞の御霊の功光るも 大空の月さへ雲に覆はるる 世に言霊の稜威を思へり 言霊の御稜威に生りし天界は 澄みきらひつつ塵の無き国 罪穢塵さへも無き国原を 曇らせ荒ぶ恋の黒雲 天界に恋すてふことなかりせば 天地を包む雲は起らじ 愛善の光の満つる天界を 穢さじものと言霊宣るも 善悪のゆきかふこれの天界は 雲霧立つも是非なかるらむ』 産玉の神は御歌詠ませ給ふ。 『野路遠く岐美を守りて玉野湖の 岸辺に見たり世の状態を 永久に祟ると宣りし比女神の 心思へば悲しかりける 永久に恨みを残す曲業を 改めませよ神ます国土に 愛しさのあまりあまりて比女神の 恨みの心燃え立ちにけむ 世を恨み神を恨むも恋すてふ 心の糸の縺なりけり 村肝の心の縺解くよしも なくなく悲しき恋なりにける 神生みの神業に仕ふる岐美なれば 一入愛しく思し給はむを 愛善の天界なれば愛しさの 心は何れの神も持つなり 比女神の深き思ひは湖の 底ひもつひに湧き立ちにけむ 恐しきものは恋かも恨みかも この神国も破れむとせし』 魂機張の神は御歌詠ませ給ふ。 『たまきはる生命の恋を遂げむとて 艱みの果は大蛇となりぬる 玉の緒の生命惜まず細女の 恋の炎は天をこがせり 瑞御霊情の籠る言霊に この天地は明け放れたり 深々と夜は更けにけり月影も 西空低ううつろひにけり 大空に傾く月のかげ冴えて わが駒の影長くなりけり 主の神の神言の儘に国魂神 生まさむ岐美を愛しと思ふ 凡神の身にしおはさば非時に かかる艱みに逢はせまじものを 凡神の眼に写る我岐美の 神業は悪しと写りこそすれ 凡神の妬み嫉みの恐しさに ましてつれなき恋のあだ神 果しなき艱みを胸に包みつつ この湖原を渡らす岐美はも わが岐美の心の艱み思ひつつ わが目の涙湖と漂ふ』 結比合の神は御歌詠ませ給ふ。 『天と地を結び合せて月日の 影を宿せる玉野湖天晴れ 月も日も澄みきらひたる湖原の 岸辺に立ちて世を思ふかな 虫の音もいやさやさやに響きつつ 水面の月は強く冴えたり 湖に浮べる月の影見れば 瑞の御霊の心を思ふ 天地を結び合せの神ながら この恋綱を吾如何にせむ 兎も角も生言霊の御光に 明し進まむ玉野森まで 駿馬の足掻き急しく地をかきて 吾を促すさまの愛しも 湖に浮べる月の影見つつ 駒は勇むか足掻きせはしも』 美味素の神は御歌詠ませ給ふ。 『月読は東に天津日は西に ゆきかひにつつ湖面を照らすも 西空の雲井の幕を押しわけて 東に進ます月読の神 東雲の空押しわけて天津日は 日毎に西の空に沈むも 右左月日のゆきかひあればこそ この天界は栄えこそすれ 月と日を天と地とをまつぶさに 結び合せて神代を守らむ』 真言厳の神は御歌詠ませ給ふ。 『此処に来て思はず時を移しけり 愛と恋との艱みの幕に 天高く国原広し月読は 恵の露を隈なく配りつ いざさらば駒を並べて御供せむ この湖原はよし深くとも 駿馬の手綱をしかと握りしめ 泳ぎ渡らむ駒もろともに おほけなくも吾先頭に仕ふべし 続かせ給へ百の神等』 斯く謡ひ終へて白馬にヒラリと跨り、一鞭あてて月照る湖面を、竜蛇の躍るが如く浪を蹴立てて走り行く。顕津男の神を始めとし百神等は、真言厳の神の踏切りし浪の穂を伝ひて、驀地に馬上進ませ給ふ。 (昭和八・一〇・二四旧九・六於水明閣森良仁謹録) |
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霊界物語 | 74_丑_太元顕津男の神の物語2 | 17 真言の力(二) | 第一七章真言の力(二)〔一八八五〕 産玉の神は、凪ぎ渡る湖面に写る天津日影を打ち仰ぎ、四方の光景を讃美しながら、御歌うたはせ給ふ。 『久方の天は晴れたり荒金の 地はよみがへる真鶴の国よ 主の神の依さし給ひし天国の 態ありありとわが目に生くるも 凄まじく浪逆巻きし湖原も 凪ぎ渡りたる鏡の湖はも 月影は草にしのべど天津日の 豊栄昇る稚き国原 鳳凰は高く翼を天に搏ち 鶴は清しく鳴き渡る国 湖の面を真白に染めて白鳥の 遊べる姿はわが目にさやけし 湖の青空の蒼にも染まらずに あはれ白鳥浪に游げる 白鳥の湖面に遊ぶ態見れば 蓮の華の咲けるがに思ふ 遠く近く浪に浮べる白鳥の 限りも知らぬ今朝の喜び 国土未だ稚くはあれど瑞御霊 出でます大野は栄えの色見ゆ 天地の中にこんもり浮びたる 玉野の森の緑さやけし 瑞御霊生代の比女神と真心の 合せ鏡に御子孕みましぬ 目出度さの限りなりけり産玉の 神の功に御子を守らむ 安々と生みます吉日寿ぎて 産玉神は御歌まゐらす 永久に生れます御子よ幸くませ まさきくまして世を生かしませよ 千早振る神の依さしに生れませる 御子はくはしく賢しくましませ 瑞御霊神に仕へて吾は今 御子孕みます吉日にあひぬる 真鶴の稚き国原固めむと 経綸の御子は宿りましけむ 久方の空の蒼みに溶け入りて 今日の楽しき幸にあふかな 久方の御空は高し湖深し 瑞の御霊の恵はあつし 広き厚き大御心を照らしまして 生代の比女を生かし給へり 生代比女の神よ今日より御腹なる 御子に朝夕心を配らせ給へ この御子の生れます上は真鶴の 稚き国原いや栄ゆべし 御供に仕へて遠く渡りこし 吾は始めて生甲斐を思ふ 産玉の神の司と任けられて 産の御霊の御子を守らむ 神々の孕ます御子を平かに いと安らけく生ませ奉らむ 産玉の神なる吾は産の神 万代までも産子を守らむ 天地の中に生れし真鶴の 稚き国原に生れます御子はも 大空に天津日輝き地の上に 百草萌ゆる稚国原よ はしけやし真鶴の国の中空に 神代を祝ひて鳳凰舞ふなり 玉野森常磐の松の繁り枝に 御子を育つる真鶴の群 八十日日はあれども今日の生日こそ ためしもあらぬ喜びに満つるも 願くは千代万代に栄えませ 真鶴の名を負ひし国原』 魂機張の神は御歌詠ませ給ふ。 『たまきはる生命の限り天地の 真言の道に吾は仕へむ 孕ませる御子の生命を永久に 守り生かさむ魂機張の神は 一片のあだ雲もなく澄みきらふ 御空の下に満つる喜び 洋々と凪ぎ渡りたる湖の面に 浮き浮き遊べる白鳥あはれ 天地も寿ぎますか中空に 真鶴鳳凰舞ひつ遊びつ 九皐に清く響ける真鶴の 声に生るる千歳の喜び 勇ましき姿なりけり湖の面を 駒立て並べ渡らす姿は 竜頭に豊に立ちて浪の穂を 進ませ給ひし女神の尊さ 瑞御霊あとに従ひ駿馬に 夜の湖原やすく渡りし 駿馬の嘶き今朝は殊更に 澄みきらひつつ朝日はかがよふ 若楊の風に髪をば梳る 姿は生代の比女に似たるも 青苔の浪を洗ひて天津風 おもむろに吹く玉野湖はも 次々に汀は広くなりにつつ 湖の水量ひきくなりゆく 瑞御霊国土造りますしるしにや つぎつぎかわく玉野湖 そよと吹く風にも靡く葭葦の 縺れて生くる天地の道 縺れ合ひ絡み合ひつつ葭と葦は 天地の水火をささやきてをり さらさらと葦の葉渡る風の音に のりて匂へる白梅の香 白梅は所狭きまで玉野森の 彼方此方に笑へる目出度さ 白梅の花は清しも芳しも 生代の比女の粧ひに似て 白梅の花の唇吸ふ蝶の 心やさしき瑞御霊かも 打ち仰ぐ御空は清く澄みきらひ 地は青草の萌ゆる楽土よ 斯かる世の斯かる神業に仕ふるも 神のたまひし幸なりにけり まだ国土は稚くあれども天渡る 月日の影はさやけかりけり くはし御子今や御腹に宿りまして 国土の柱と立ちます尊さ たまきはる御子の生命を永久に 守りて吾は仕へ奉らむ 山に野に満ち足らひたる主の神の 恵の露に栄ゆる神等』 結比合の神は御歌詠ませ給ふ。 『久方の天津高宮晴れ渡り スの言霊は鳴り響くなり 言霊の清しき水火を結び合せ 生れます真鶴の国のさやけさ 愛善の天界なれば夜嵐も 生言霊に吹き止みにける 恋雲の深く包みし比女神の 心は晴れぬ生言霊に 天津真言籠らずあれば言霊の 水火も曇りて露だも光らず 一時のなだめ言葉は久方の 天津真言の水火にかなはず 瑞御霊なだめの言葉を打ち消して 天津真言に比女を生かせり 毛筋ほども偽りのなき天界に その場のがれの言葉は応はず 目前吾は真言の言霊の 力を見たり光を拝めり 久方の天津真言と国津真言 結び合せて栄ゆる道なり 天津日の豊栄昇る神国に 如何で許さむなだめ言葉を 善悪の差別をただし天地の 神を導く世なれば安し 水火と水火結び合せの神となり 国土生み神生みの神業守らむ』 美味素の神は御歌詠ませ給ふ。 『スの声の言霊𪫧怜に宣り上げて この稚国土を拓き固めむ 美味素の神と現れ吾は今 真鶴国の真秀良場に立つ 真鶴の国の真秀良場玉野森に 国土生みますと待たせる女神よ 玉野森常磐の松の白きまで 巣ぐへる鶴の声澄みきらふ 真鶴の只一声のひびかひに 静まりかへる百千鳥かも 夜の湖駒の背に乗り渡り来て 主の大神の恵を思ふ 主の神の生ませ給ひし国原に 邪曲の猛びの如何であるべき 村肝の心曇りて邪曲を生み 禍を生む神代なりにけり 神々の迷ひの水火の集りて 天地の水火汚すは恐し』 真言厳の神は御歌詠ませ給ふ。 『厳しくも雄々しくもあるか瑞御霊 雄心照りて御子孕みませり 生代比女神の真言の現れて 瑞の御霊の露を宿せり 万代の末の末まで光るらむ これの目出度き神嘉言かも 草も木も生言霊に靡きつつ 花咲き満ちて晴れ渡る国土 そよと吹く科戸の風の芳しさ 経綸の花の咲き満てる国土 白梅の花の粧ひ岐美に見る 今日の湖畔の清しき眺めよ 目の限り大野の原は晴れ渡り 真鶴山は空に聳えつ 国中比古の神の功に真鶴の 山の常磐樹繁らへるかも』 一行の神々は歓びに満ち、天地の光景を讃美しながら、再び駒の背に跨り、程遠からぬ玉野の森の聖所をさして進ませ給ふぞ勇ましき。 (昭和八・一〇・二七旧九・九於水明閣森良仁謹録) |
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霊界物語 | 74_丑_太元顕津男の神の物語2 | 19 玉野の神丘 | 第一九章玉野の神丘〔一八八七〕 白梅の薫る玉野の森の白砂を、馬の蹄に踏みなづみながら、老松の蔭を潜りて、漸く玉野比女の神の鎮まり給ふ聖所に着き給ふ。 この丘は、玉野丘と称し、南北一里、東西二里にわたる平坦の高地にして、白銀の砂は、天津日に照りかがよひ、神苑を包める常磐樹は蜿蜒として枝を交へ、紫微天界の粋を集めたるばかり思はるる聖所なりける。 顕津男の神は、山の麓に駒乗り降り給ひ、丘の上をふりさけ見給ふに、紅、白、紫、黄、青の五色の幔幕を張り廻され、何事か尊き神の御降臨ありし様子なり。茲に顕津男の神は御歌詠ませ給ふ。 『国土生むと駒に跨り来て見れば 箒目正しく清められあり 何神の天降りますかは知らねども いと尊くぞ思はれにける 玉野比女わが出で立ちをよそにして 出迎へまさぬは訳あるらしも ともかくも謹みいやまひこの丘を 心清めて登り見むかな』 斯く歌ひ給ふ折しも、駒を早めて入り来りし生代比女の神は、ひらりと駒を飛び降り、御歌詠ませ給ふ。 『瑞御霊早くも此処に来ませるよ 吾は急ぎて後追ひまつりぬ この聖所主の大神の天降りますか いと厳かに思はるるなり 神生みの神業に仕へし吾にして 岐美に後れむ事をはぢけり 主の神の天降りますにや吹く風も かをり妙なり白梅の丘に いざさらば前に立ちませわれこそは 御後に従ひ御山に登らむ』 斯く歌ひ給ふ折しも、遠見男の神一行其他の神々は、漸く駆けつけ給ひ、一斉に駒を飛び降り、老松の枝に手綱を結びつけ、息を休ませながら、遠見男の神は御歌詠ませ給ふ。 『道遠み白駒かけて漸くに 岐美の在所をさぐり来にけり 何神の天降りますにやこの聖所 空吹く風も妙にかをれり 真鶴の国の真秀良場この聖所は 国土生み給ふにふさはしきかも 此処にして国の御柱たて給ひ 真鶴国を治め給ふか この丘に繁れる常磐の松並木 すぐれて太く栄えけるかも 松毎に千歳の鶴の巣ぐひたる この清丘は神の御舎 主の神の天降りましたる心地して 登りなづみぬこの清丘を』 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『如何ならむ尊き神の天降りますか わが足さへも縮まりにけり 稜威高き神の鎮まる神の丘を わけは知らねど吾は畏みぬ 吹く風も穏かにしてわが面を 清しく照らす木洩陽のかげ』 斯く歌ひ給ふ折しも、玉野比女の神は大麻を手にしながら、悠然として現れ給ひ、御歌詠ませ給ふ。 『岐美待ちて気永くなりし玉野比女 常磐の松と共に老いぬる 神生みの神業に仕ふと永年を 岐美待ちかねて老いにけらしな 幾万里の荒野をわたり訪ひ来ます 岐美の真心嬉しかりける 幾度か指折り数へよき月日 待つ甲斐ありて岐美に逢ふかも 主の神はいと厳かに天降りまし 奥殿深く臨ませ給へり いざさらば顕津男の神登りませ われは御前にたちて仕へむ』 顕津男の神は御歌詠ませ給ふ。 『千万里の大野をわたり公許に 今日は漸く訪ね来つるも 苔むして神さびたてる老松の かげをし見れば公の偲ばゆ 姫小松はや老松と栄ゆまで 待たせる公をいとしみ思ふ かくならば神生み為さむ詮もなし 心を合せて国土を生まむか 生代比女吾を迎へて貴の御子 孕ませ給へり公に代りて』 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『音に聞く玉野の比女の御姿の 尊さ清しさ畏みまつる 真鶴の山の精より生れ出でで 吾御子生みの業に仕へし』 玉野比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『愛らしき生代の比女の心かな 心安かれ吾も祝はむ 神業を果し給ひし生代比女 神の神言を尊しと思ふ 今よりは御腹の御子を育みて ともに神国を造らむと思ふ』 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『有難し玉野の比女の御言葉 いくよの末まで忘れざるべし 国魂の神を孕みし吾にして 公の言葉を有難く思ふ』 顕津男の神は御歌詠ませ給ふ。 『けなげなる玉野の比女の言葉かな 我はいふべき言の葉も無し ともかくも玉野の比女に従ひて この清丘に進み登らむ』 玉野比女の神の御供に仕へまつり、此処に現れ給ふ本津真言の神は、御歌詠ませ給ふ。 『吾こそはウ声に生れし本津真言の神よ 今日嬉しくも岐美を迎へし 比女神の待ちに待たせる瑞御霊 迎ふる今日ぞ嬉しかりけり はろばろと荒野をわたり海を越え 来ませる岐美を尊く思ふ 主の神の天降りましける聖所に 着かせる岐美は雄々しき神はも 真鶴の国のひらけし始めより かかる目出度き例はあらじ 主の神は天降りましまし瑞御霊 此処に現れます今日ぞ目出度き 玉野比女は岐美迎へむとおぼせども 大神のみそば離れかねつつ はろばろと岐美の出でまし出迎への 後れし罪を許させ給へ 玉野比女神に代りて今此処に ことわけのぶる本津真言の神よ』 待合比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『朝まけて主の大神は降りまし 瑞の御霊は今現れましぬ 愛善の紫微天界の真秀良場に 今日は嬉しも神々迎へて いざさらば玉野の比女の導きに 登らせ給へこの清丘へ』 顕津男の神は、 『有難し三柱神の出で迎へ 厚き心を我は嬉しむ』 と歌ひ給ひつつ、しづしづと緩勾配の丘道を登らせ給へば、遠見男の神以下の神々は、主の神の御降臨と聞きて畏み、山の登り口に両掌を合せ神言を奏上しながら、時の到るを待たせ給ひける。 遠見男の神は御歌詠ませ給ふ。 『思ひきや瑞の御霊に仕へ来て 主の大神の天降りにあふとは 主の神の天降り給ひしこの国は いやますますに栄えますらむ 鬱蒼と天を封じてそそり立つ 常磐樹の森によき事を聞くも かくならば吾等は謹み畏みて 主の大神に清く祈らむ』 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『老松の四方をかしこみしこの森に かかる目出度さ思はざりけり 主の神の天降り給ひしこの丘に 紫の雲棚引きにけり 五色の幕を清しく張り廻し 主の大神を斎きたるらし この幕を越ゆる術なきわが御魂 まだ晴れやらぬ心の曇りに 智慧証覚未だ足らねば主の神に まみえむ術の無きが悲しき 久方の天より降りし主の神の 功を拝む丘の麓に』 多々久美の神は御歌詠ませ給ふ。 『智慧証覚よし劣るとも真心の 光しあらばのぼり得べけむ よしやよしわが真心は足らずとも 神国を思ふ心は尊し さりながら瑞の御霊の大神の 御許しなくばのぼる道なし 玉野比女瑞の御霊と生代比女に 生言霊をのべて帰らせり 神々に一言だにもかけまさず 帰り給ひし事のうたてさ 真心の光は未だこの丘に のぼらむ力無きぞうたてき』 宇礼志穂の神は御歌詠ませ給ふ。 『うれしくもこの清丘の麓まで 御供に仕へしわが幸を思ふ 言霊の澄みきりあへぬ吾にして これの聖所に来りしを喜ぶ 老松のかげに心を清めつつ この真清水にうつしてや見む あちこちに魂を洗へと真清水は 湧き出でにける神の功に 幾何の御手洗池のある中を ただによぎりし事のくやしさ わが来る右りと左に湧き出でし 清水は魂を洗ふ真清水』 美波志比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『宇礼志穂の神の言霊に照らされて われ恥づかしくなりにけらしな 身を浄め魂を洗ひて進むべき 真清水の池通り来しかも 黙々と神は教を垂れ給ひ 魂も洗へと清水湧かせり 瑞御霊御供に仕へてしらずしらず わが魂線は傲ぶりにけむ』 産玉の神は御歌詠ませ給ふ。 『幾百と限りもしらぬ玉野池の かたへをただに通りしを悔ゆ この森のあらむ限りの真清水の 池を求めて魂洗はばや 取返しならぬ過ち為しにけり この御手洗を軽く見なしつ 自ら森の樹蔭に湧きし水と 軽く思ひしことを今悔ゆ』 魂機張の神は御歌詠ませ給ふ。 『たまきはる生命の清水を見ながらに 掬はむ道を忘れゐたりき 行く先をただ急ぎつつ目の下の 清水をよそにわが来つるかも 主の神の天降りましたるこの森は 清き御魂の進むべきのみ 玉野森馬蹄にけがせしわが罪を 許させ給へ主の大御神』 結比合の神は御歌詠ませ給ふ。 『いざさらば元来し道に引返し 駒を止めて徒歩歩きせむ 主の神の今日のよき日に天降りますを 知らず進みし迂濶さを悔ゆ』 美味素の神は御歌詠ませ給ふ。 『常磐樹の松に清しく鳴く鶴は 吾をいましむ神声なりけり 愚しき吾と思へば恥づかしく 瑞の御霊にまみえむ術なし 瑞御霊生代の比女は吾を後に かけ出でましし御心悟りぬ 今となり瑞の御霊の御心を 思ひはかりて恥づかしくなりぬ 何時の間にかわが魂線は傲ぶりて 禊の業を忘れゐたるよ 主の神の天降りましたるこの森を 馬の蹄にけがせし悲しさ』 真言厳の神は御歌詠ませ給ふ。 『今となりて吾恥づかしくなりにけり 真言いづみの禊忘れて いざさらば神々たちよ駒並めて 元来し道に引返し見む この森の外に抜け出で数多き 泉に御魂洗ひて進まむ』 斯く神々は、馬の蹄に知らず知らず聖所を汚せし事を悔い、一目散に元来し道に引返し、駒を玉野の森の入口遠く繋ぎ置き、各も各も真清水に身を清め心を浄め、天津祝詞を奏上し、再び主の神の天降ります丘を指して、真砂に足を踏みなづみつつ、其翌る日の黄昏るる頃、辛うじて丘の麓に着き給ひける。 (昭和八・一〇・二七旧九・九於水明閣林弥生謹録) |
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霊界物語 | 74_丑_太元顕津男の神の物語2 | 22 天地は曇る | 第二二章天地は曇る〔一八九〇〕 茲に生代比女の神は、顕津男の神と共に導かれ給ひけるが、玉野比女の神の御顔どことなく美しからぬ心地しければ、松の樹蔭に身を潜めて、その身の愚さを悔い、さめざめと泣き給ひつつ、ひそかに主の大神に詫言を宣り給ひつつ歌はせ給ふ。その御歌。 『あさましき吾にもあるか聖所に 登りて魂は戦き慄ふも 主の神の大御心に叶はぬか わが魂線はうち慄ふなり 玉野比女神の心の悲しさを 吾は思ひて堪へやらぬかも 瑞御霊神の心を悩ませし 吾は怪しき女神なりしよ 恋すてふ怪しき雲に包まれて 吾は神業を妨げにけむ 斯くなれば天地にわが身の置場なし ゆるさせ給へ主の大御神 真鶴の神山恋しくなりにけり 煙となりて消えたき思ひに 玉野比女神の神言の神業を 犯せし吾は邪神なりしか 如何にしてこの罪穢払はむと 思へど詮なし御子は孕みぬ 瑞御霊一目もかけず吾を後に 御前に進ませ給ふ畏さ 村肝の心の神に責められて 吾恥づかしく死なまく思ふも 聖所を汚さむことの恐しさ 吾行く道は閉されにけり 万代の末の末まで恋せじと 吾は悟りぬ聖所に来て 胸の火の燃え立つままに天地の 道ふみ外し罪の身となりぬ おほらかに生むべき御子にあらずやと 思へば悲し重きこの身は 御手にさへ触れず孕みしこのからだ わが魂線の怪しさを思ふ 一度の手枕も無く情なや 想像妊娠の今日の苦しさ わが歎き凝固りて雲となり 御空の月日覆ひ隠さむ 主の神の御前に白す言霊の なき吾こそは悲しかりける 天渡る陽光も月の顔も 吾恐しく拝むよしなし つらつらに思へば罪の恐しさ わが玉の緒は切れむとするも 玉の緒の生命はよしやまかるとも 岐美思ふ心の如何で失すべき 果しなきわが思ひかも天地に 只一柱の岐美を恋ひつつ わが恋ふる岐美はすげなく玉野比女に 御手を曳かれて奥に入らせる 善悪の乱れ混交る天界に わが縺れ髪解くよしもなし 玉野丘の聖所に吾は導かれ 斯かる歎きに逢ふぞ悲しき 瑞御霊玉野の比女と出でませる 後姿を吾は見送りて泣く 神の影側になければ吾一人 憚ることなく泣き飽かむかも 常磐樹の松は繁れど白梅は 匂へど吾は悲しく淋し いと清き白砂の丘に只一人 世をはかなみて吾は泣くなり 如何にして今日の艱みを払はむと 思へばなほも悲しくなりぬ 主の神の依さしに反き瑞御霊の 心汚せし吾を悔ゆるも あだ花となりしわが身の恋心 斯かる歎きの御子を孕みて 思ひきやこの聖所に導かれ 松の樹蔭に潜み泣かむとは』 斯く歌ひ給ふ折しもあれ、大幣を左右左に打振りながら、ザクリザクリと庭の白砂を踏みくだきつつ近寄り給ふ神人あり。生代比女の神の忍ばせる松の樹蔭に悠々近寄り給ひ、大幣を左右左に又もや打振りながら、 『常磐樹の松の樹蔭にしのびます 生代比女神勇み給はれ 吾こそは力充男の神なれば 公迎へむと急ぎ来つるも 何事も神の心と思召せ 歎き止めて勇ませ給へよ 如何ならむ艱みおはすか知らねども この聖所は喜びの国土よ 悲しみも艱みも知らぬこの丘に 勇ませ給へ生代比女の神』 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『有難し貴き公の言の葉に 吾は悲しさ弥まさりける 主の神の天降らすこれの清丘に 汚れある身の恐しさに泣く』 力充男の神は御歌詠ませ給ふ。 『何事のおはしますかは知らねども 力を添へむ充男の神吾は 天渡る月も流転の影ぞかし 歎き給ひそ惟神なれば 罪穢ある身は如何に急るとも この聖所にのぼり得べきや 聖所にのぼらす力おはす公は 罪穢なぞ塵ほどもなし いざさらば心の駒を立て直し 玉の泉に禊給はれ 主の神の御心によりて吾は今 公迎へむと急ぎ来しはや』 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『有難し力充男の神の宣 わが魂線はよみがへりたり 死なましとひたに思ひしわが心 公の神言によみがへりぬる 愛善の天津神国に生れ合ひて 歎きに沈みし愚さを思ふ わが心ひがみたりけむ玉野比女の 御顔を畏れちぢみつ』 力充男の神はまた詠ませ給ふ。 『安らかに心広けく勇ましく 雄々しく優しくおはしませ比女よ 愛善の天界なれば恋すてふ 心をどらむ惟神にて 天界のこの真秀良場に出でまして 何を歎かむ月冴ゆる庭に いざさらば玉の泉に案内せむ 進ませ給へ生代比女の神よ』 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『薨らむと思ひし事も真言ある 公の心によみがへりける いざさらば公の真言に従ひて 玉の泉に禊せむかも 真鶴は御空に舞へり白梅は 樹の間に匂へり何を歎かむ 見の限りすべてのものは勇むなるを 何に迷ひて吾歎きけむ 主の神の天降りませる聖所を 吾涙もて汚せし悔しさ 村肝の心一つの持ちやうに 明るくもなり曇らふ神代かな 情ある公の言葉にわが魂の 力は充ちて雄々しくなりぬ』 力充男の神は前に立たせながら、御歌詠ませ給ふ。 『樹下闇時雨に晴れて天津日の 光は清しく輝きにけり 村時雨晴れたる後の月光は 一入明るく冴え渡るなり 高ゆくや月も流転の影ぞかし 何を歎かむこの天界に 果しなき思ひの雲霧晴れ渡り 瑞の御霊の月かげを見む』 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『一夜の契りも知らぬ生代比女の 神の歎きのあさましきかな 真鶴の国原遥けく閉したる 雲霧晴れて清しき吾はも 主の神の愛善の御水火に包まれて ひがみ歎きしことを悔ゆるも 斯くならば雲霧もなしわが魂は 月日の如く冴え渡りつつ 大幣にわが魂線を清められ よみがへりたる嬉しさに居り』 力充男の神は、大幣を打ち振り打ち振り老松の蔭に展開せる、玉泉の汀に導き給ひつつ、御歌詠ませ給ふ。 『主の神の清き心のしたたりに あらはれ出でし玉の清水よ 玉野比女朝夕に禊ませる この玉泉の底ひ知れずも 瑞御霊七度の禊終へ給ひ 大宮深く進ませ給ひぬ 吾も亦朝夕をこの水に 洗ひ清めて魂を生かせり 真清水は澄みに澄みつつ掬ぶ手に 梅の香ただよふ香ゆかしき いざさらば天津祝詞を奏上し 禊がせ給へこれの泉に』 生代比女の神は喜びに堪へず、御歌詠ませ給ふ。 『高天原に生れませる 清けき清水真清水に 朝な夕なを浮びます 月の鏡の弥清く 弥さやさやに照りはえて 紫微天界の神国に 恵の露を降らせまし 百の草木をはごくみて 永久に生かせる真清水清水 斯かる聖所に導かれ わが魂線を洗へよと 宣らせ給ひし有難さ この真清水や主の神の 潔き清しき御心の鏡かも この真寸鏡真寸鏡 玉の真清水うまし水 清しき水よ玉の緒の 生命保たす生き水よ 生ける御神の霊線の 恵の露のしたたりか この玉泉拝めば わがからたまも霑ひて 若々しくもなりにける 生命の清水真清水よ』 と御歌うたひ終りて、天津祝詞を声朗かに奏上し給ひし折もあれ、急ぎ此処に現れ給ひしは、さきに瑞の御霊に仕へたる、待合比古の神におはしける。 待合比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『生代比女神の姿のおはさぬに 吾心づき迎へ来つるも 神生みの神業仕へし公なれば 早く御供に加はりまさね いざさらば吾導かむ急がせよ 主の大神も待たせ給へば』 生代比女の神は意外の喜びに、よみがへりたる心地して、御歌詠ませ給ふ。 『有難し忝なしと申すより 答の言葉わがなかりける いざさらば御前に仕へ奉るべし 清き心に月日浮べて』 茲に生代比女の神は、待合比古の神に導かれ、力充男の神に守られて、大宮居に進むべく広庭の白砂を踏みなづみつつ静々と進ませ給ふ。 (昭和八・一〇・二九旧九・一一於水明閣森良仁謹録) |
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霊界物語 | 74_丑_太元顕津男の神の物語2 | 26 総神登丘 | 第二六章総神登丘〔一八九四〕 顕津男の神、玉野比女の神等は、本津真言の神の化身に驚き給ひしが、又もや力充男の神の天の高鋒の神の天降りませる化身に驚きを新しくし給ひ、わが霊線のいたく曇りたるを恥ぢらひながら、玉の宮居の聖所にうづくまりつつ、御歌詠ませ給ふ。 顕津男の神の御歌。 『天晴れ天晴れ真鶴国を固めむと 二柱神天降りましぬる わが霊は曇らひにけるか二柱の 化身をしらですましゐたりき 毛筋程の隙間もあらぬ天界の 神の神業ぞ畏かりける 地稚きこの国原を固めむと 主の大神の天降りませしよ 有難し辱なしと申すより わが言の葉は出でざりにける 月も日も清く照らへる玉野丘に われ面はゆくなりにけるかも かくの如曇れる霊を持ち乍ら 国土生みの業をおぼつかなみ思ふ 主の神の功によりて真鶴の 国土固めばや霊を清めて かくまでも尊き神の経綸とは 悟らざりけり愚なる我は 今よりはわが霊線を練り直し 勇み進まむ国土生み神生みに 果てしなきこの国原を詳細に 固めむ業の難きをおもふ 畏しや本津真言の大神は 主の大神にましましにける 高鋒の神は聖所に天降りまして わが霊線を照らさせ給ひぬ 久方の御空は清く輝けり 仰げばわが霊恥づかしきかも 遠見男の神を見捨てて玉野丘に 登りし我の霊は曇れり 神々を丘の麓に残し置きし わが過をいま悔ゆるかも 今よりは心を清め身を清め 麓の神を導き来らむ』 玉野比女の神の御歌。 『本津真言の神の言葉を諾ひて 吾は百神を残し置きしはや 瑞御霊神の罪にはあらざらめ 本津真言の神の御心 二柱天津高空ゆ降りまして これの聖所を照らさせ給ひぬ 常磐樹の松にかかれる月光も 昼なりながら清しかりけり 天渡る日光も清く月光も 冴えにさえたり今日のいく日は 二柱神の神言を畏みて われ百神と国土造らばや 迦陵頻伽ときじくうたひ聖所の 鶴は神代を寿ぐ今日かも 白梅の薫り床しくそよ風に 送られ清し玉の宮居は 白梅は玉の宮居を封じつつ 松の樹蔭に神代を薫れり 草の蔭に虫の声々さえさえて 常世の春を迎はしむるも この丘に瑞の御霊の生れまして 輝き給ふ国土生み嬉しも』 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『生代比女いくよの末も常磐樹の 松に誓ひて世を守るべし 底深き玉野湖水の心をば 岐美に捧げて御子を守らむ 真鶴の山は雲間に聳ゆれど 岐美の功に及ばざるらむ 瑞御霊生言霊に生り出でし 真鶴山に生れし吾はも 吾こそは瑞の御霊の言霊の 水火に生れし比女神なるぞや 国魂の御子を詳細に生み了へて 又真鶴の神となるべし 白砂を踏みさくみつつ白駒に 跨りて来し玉野森清し 玉野丘黄金の真砂踏みしめて 尊き神の御声聞きたり 主の神の深き恵にうるほひて 吾貴の御子孕みたるかも 目路の限り白雲霞む真鶴の 国をひろらに拓きませ岐美よ わが魂は真鶴山に鎮りて この神国を永遠に守らむ 吾は今気体なれども御子生まば 又霊体となりて仕へむ 御子生むと吾は気体の身と変じ 岐美を恋ひつつ仕へ来しはや 吾恋は幾万年の後までも 天地とともに亡びざるべし 愛善の紫微天界に生くる身も 恋故心の曇りこそすれ 恋故に心は光り恋故に 心曇るぞ浅ましの世や』 待合比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『神々の生言霊を清らかに 聞く今日の日は楽しかりける 久方の天津御空の神の声を 居ながらに聞きし幸をおもふも 智慧証覚足らはぬ吾も天津神の 神言ほのかに聞きし嬉しさ 三柱の女男の神等に従ひて われ永久に守り仕へむ』 かく御歌うたひ給ふ折しも、御空を封じて、幾千万とも限りなく、真鶴は玉野丘の空高く、左より右りに幾度となくめぐりめぐり、清しき声を張り上げて、神代の創立を寿ぎ乍ら、庭も狭きまで聖所の上に下り来つ、各も各も頭をもたげて、天津高宮を拝する如く見えにける。 玉野丘の麓には、遠見男の神を初め、圓屋比古の神等九柱は、己が魂線の曇りたるを悔い給ひて、玉の泉に身を清め、言霊の水火を磨き澄ませつつ、瑞の御霊の招き給ふ時を待ち給ひ、各も各もに御歌詠ませ給ひぬ。 遠見男の神の御歌。 『梅薫る玉野の丘に登りましし 岐美の音信聞かまほしけれ わが魂は曇りにくもり言霊は 濁りて神丘に登るよしなし 恥づかしきことの限りよ玉野丘の 麓に吾は捨てられにけむ 遠の旅御供に仕へて今となり 吾恥づかしき憂目に逢ひぬる 繋ぎ置きし駒にも心恥づかしく なりにけらしな言霊濁りて 玉泉に御魂ひたして洗へども 智慧の光の暗きをおそるる 真鶴は常磐の松の梢高く 長閑にうたふ玉野森はや 真鶴の翼ありせば吾も亦 この玉野丘に登らむものを 南方の国を治らせとわが岐美の よさしの言葉如何に仕へむ 生代比女神を魔神と思ひしに これの神丘に登りましける いぶかしも生代比女神のすたすたと 振り向きもせず登らせにける 生代比女の曇れる魂に比ぶれば なほわが魂の濁り深きか いや広き紫微天界の中にして 吾恥づかしく心をののく 世をおもふ清けき胸の高鳴りに もだへて夜半を泣きつ戦きつ 国土生みの御供に仕ふる道なくば 野辺吹く風となりて亡びむか 歎くとも詮術もなきわが身かな 瑞の御霊に遠ざかりつつ』 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『遠見男の神よなげかせ給ふまじ 神の試練とわれは喜ぶ いと清く正しく広く真鶴の 国の司とならむ汝が身ぞ 汝こそは瑞の御霊のよさしたる この国原の司なるぞや 真鶴の国を𪫧怜に生み了へて 汝は永遠に鎮まるべき身よ 主の神の天降りましたる丘なれば 今しばらくを待つべかりける 主の神の御許あれば吾は直に この神丘に登らむと思ふ』 宇礼志穂の神は御歌詠ませ給ふ。 『とにもあれかくもあれかし玉野森に わが来しことを嬉しみおもふ 徳未だ全からぬを主の神を 拝まむ事の恐しとおもふ 月も日も御空に清く輝ける この神森にいねし嬉しさ 歓びの光に充つる玉野森を 吾嬉しみて魂をどるかも 嬉しさの極みなるかも玉野森の これの聖所に来りし幸よ』 美波志比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『瑞御霊神に別れて一夜を 月に照らされ心ときめきぬ やがて今主の大神の言霊に みはしかからむ玉野の丘に みはしなき山に登らむ術もなし 今しばらくを待たせよ百神 国土造る神の神業よ安々と この神丘に登り得べきや』 産玉の神は御歌詠ませ給ふ。 『やがて御子生れます日まで産玉の 神吾ここにひかへまつらな 真鶴の声高々と聞ゆなり 主の大神の帰りますにや 迦陵頻伽白梅の梢になきたつる 声は神代を寿ぐなるらむ 白梅の薫り床しきこの森は 主の大神の天降らす聖所か 月も日も松の繁みに閉ざされて 砂に描ける樹洩陽のかげ わが力未だ足らねば森かげに ひそみて待てとの神慮なるらめ』 魂機張の神は御歌詠ませ給ふ。 『たまきはる生命の神と現れて われは守らむ御子の生命を ここに来て心清しくなりにけり この神丘に登り得ねども この森は紫微天界の写しかも 見ることごとは輝きにけり』 結比合の神は御歌詠ませ給ふ。 『二夜の禊終りて吾は今 結び合せの神業に仕へむ 天と地と神と神とを睦じく 結び合せて神代を守らむ いや広く常磐樹繁る玉野森に 梅の香清し神います苑は 玉野比女神の鎮まるこの丘の 輝き強しわが目まばゆく この上は主の大神の御心に 任せまつりて時を待つべし 何事も神の心のままなれば われ一言も言挙げはせじ』 美味素の神は御歌詠ませ給ふ。 『美味素の高天原より下ります 主の大神の功尊き 主の神の霊の光に包まれて 夜も明るき玉野森はや 月光は御空に高く冴えにつつ 松を透して吾等を照らせり 白梅の花のよそほひ見るにつけ 玉野の比女の偲ばれにける』 真言厳の神は御歌詠ませ給ふ。 『はろばろと岐美に仕へて吾は今 玉野の森の月に照らさる 真鶴の国土を造ると言霊の 水火清めたり玉の泉に 主の神の天降り給ふと聞く丘に 真鶴の声高く聞ゆる 主の神の生言霊を畏みて 此処に来つるも国土造るとて 常磐樹の松苔むして天津空 閉せる森に歓びあれかし』 かく神々は述懐を歌ひ給ひ、時を待たせる折もあれ、太元顕津男の神は、玉野比女の神、生代比女の神、待合比古の神、其他数多の神々を従へて、悠々と丘を下り、諸神に敬意を表し給ひ、再び丘の上に一柱も残らず導き給ひ、いよいよここに国土生みの神業に、諸神力を合せて、従事し給ふ事とはなりぬ。ああ惟神霊幸倍坐世。 (昭和八・一〇・三一旧九・一三於水明閣林弥生謹録) |
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霊界物語 | 75_寅_太元顕津男の神の物語3 | 02 言霊の光 | 第二章言霊の光〔一八九六〕 抑紫微の天界はスの言霊の水火によりて鳴り出でませるが故に、天地万有一切のものいづれも稚々しく、柔く、現在の地球の如く山川草木修理固成の域に達し居らず、神また幽の幽にましまし、意志想念の世界なれば、到底現代人の想像も及ばざる程なり。清軽なるものは高く昇りて天となり、重濁なるものは降りて地となる。これの真理によりて紫微天界は五十六億七千万年の後、修理固成の神業完成すると共に、其重量を増し、次第々々に位置を大空中の低処に変ずるに至りたれば、我地球こそ、紫微天界のやや完成したるものと知るべし。 紫微天界に於ける数万丈の山岳と雖も殆ど気体なれば、柔かく膨れあがり、伸びひろごりたるもの、次第々々に収縮作用を起し、最高二万数千尺の山岳を止むるに至りたるなり。紫微天界に於ける国土生み、神生みの神業も、この柔かき一切の気体界を物質界に修理固成する迄の年処は、五十六億七千万年の久しきを経たるなり。故に紫微天界の神々の御活動は、無始より無終に連続して止む時なし。故に神代に於ける愛の情動も、亦現代人の如く濃厚執拗ならず、時、処、位に応じて愛の情動起り、忽ち消散して後なき極めて淡泊なる情動なりしなり。併しながら世の次ぎ次ぎ下るに従ひて、山川草木其の硬度を増し、人情又濃厚執拗となりて、遂には愛恋の乱れ、争闘を起すに至れるも自然の結果止むを得ざる事と言ふべし。故に主の大神は紫微天界の最初にあたり、天之道立の神をして、世の混乱を防ぐべく、天津真言の道を天地万有に永遠無窮に教へ導き給ひ、乱れゆく世を建正すべく経綸されたるは深き神慮のおはします事なり。 紫微天界に於ける山川大地は、浮脂のごとく漂へるを以て、現代人の如き重濁なる身をもつては、殆んど空中を行く如く、水上を歩むが如く、如何ともすべからざれども、神代の神人は気体にましませば、浮脂のごとき柔かき地上を歩みて何の支障なく、恰も現代人の現界地上を歩むと異なるところなきなり。国土の修理固成なりて硬度を増すに従ひ、神々も亦体重を増加し、遂には人となりて地上に安住するに至りたるなり。我地球の今日の如く確固不動に修理固成さるるまでは、五十六億七千万年の年処を経たるを思へば、神界の経綸の幽遠なるに畏敬の念をはらはざるべからざるなり。 斯くの如く主の大神を初め、種々の神等の努力の結果完成したる地上に人と生れ、安住せしめらるる其広慈大徳は到底筆紙に尽すべき限りに非ず。況んや全地の中心にして四季の順序調和したる中津国に生を享けたる人生に於てをや。我々は主の大神の住はせ給ひし紫微天界の完成期に近づける地球の中心葦原の中津国なる日の本に生れ、万世一系の皇神国の天皇に仕へまつりて、神の宮居となり、神の子となりて仕へまつる幸福は、三千大千世界の宇宙の世界中到底求め得べからざる仁恵に浴せるものと知るべし。故に我皇神国に生れたる大御民は、海外の諸国に比して特に敬神尊皇報国の至誠を披瀝し、其大慈洪徳に報いまつらずむばあるべからず。紫微天界の完成したる神国なるが故に、我国を皇神国と称へ、其の君を天皇と申し奉るなり。 ためしなき此神国に人と生れ 清き身魂を濁すべきかは 久方の天津皇国を生みませし 神の御稜威を夢な忘れそ 言霊の水火は次ぎ次ぎ固まりて この美しき天地は成れり 智者学者数多あれども天界の なり出で初めたる真相を知らずも 主の神の恵思へば地の上に 住むもつつしみの心湧くなり 神々の恵も知らず世の中を はかなみ思ふ愚かなる人よ 愛善の光にみつる神の国を 火宅とをしへし曲津の教かな 現世も亦幽界も主の神の 領有ぎたまふ国土と知らずや 久方の天より降りて中津国を 永久に知召す主の神の御子よ 葦原の国なり出でし遠因を 思ひて敬神尊皇に尽せよ 言霊の生ける活用白雲の 空に迷へる学者あはれ もろもろの学びあれども言霊の 真言の学び悟れるはなし 世の中に学びは数多ありながら 学王学の言霊知らずも 言霊の学びは総ての基なり 其他の学びは末なりにけり 根本を悟らず末の学びのみ 栄ゆる此世は禍なるかな 世の中の一切万事は言霊の 光によりて解決するなり 言霊の真言の道を知らずして 此神国の治まるべきやは 我は今神の依さしの言霊の 学びに真道を説かむとするなり 皇神国の大本を知るは言霊の 生ける学びによるの外なし (昭和八・一一・三旧九・一六於水明閣加藤明子謹録) |
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霊界物語 | 75_寅_太元顕津男の神の物語3 | 04 千条の滝 | 第四章千条の滝〔一八九八〕 瑞の御霊顕津男の神並に真言厳の神の生言霊に、真鶴の広き国原は天地震動して前後左右に揺り動き、暴風雨頻に臻り、遂に玉野丘を中心とする一帯の地は、いや次々にふくれ上り拡ごりて、驚天動地の光景を現じたれば、神々は言霊の威力に感歎措く能はず、各自生言霊の御歌を詠みて、国土造りの神業を寿ぎ給ひぬ。 玉野比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『主の神の神言畏み此処に来て この神業を初めて見るも ときじくの香具の木の実に生り出でし 吾は主の神の分霊なるかも 二柱天津高宮ゆ降りまし この神業を助け給ふか 久方の天は轟きあらがねの 地は揺りて国土固まりぬ 久方の空に閃めく稲妻の はやきは神の神業なるらむ 雷のとどろき強し曲神は 恐れ戦き消え失せにけむ 罪穢れ過ち洗ふと玉泉 滝と流れて世を生かすなり 神生みの業に後れし吾にして 国土生みの場に立つぞ嬉しき 月読の御霊と現れし顕津男の 神の功のたふときろかも 玉泉清くあふれて玉藻山の 尾の上ゆ高く落ちたぎちつつ 落ちたぎつ滝の響に言霊の 水火籠らひて世を生かすなり 年月を玉野宮居に仕へつつ かかる目出度き神業を拝むも 真鶴の国の栄えを目のあたり 吾は玉藻の山に見るかな 久方の天に伸びたつ玉藻山の 生ける姿は神にぞありける 天地の総てのものは主の神の 清けき水火の固まりなるかも 万世の礎固め給はむと 現れ出でますか瑞の御霊は 厳御霊宣らせ給へるまさごとを 普く神に宣りて生かさむ いきいきて生きの果なき天界に 生きて栄えむ身の楽しさよ 真言厳の神の尊き言霊に 玉野の湖水も乾きたるかな もうもうと湯気立ち昇り玉野湖は 底ひの水も次にかわける 真鶴の国の柱となりませる 顕津男神の姿いさましも』 生代比女の神は寿ぎ歌詠ませ給ふ。 『真鶴の山の御魂と生れたる わが神生みの神業を畏む 天も地も澄みきらふ中にそそりたつ 玉藻の山に御子を生まむか 厳御霊瑞の御霊の水火凝りて 御子わが腹に宿らせ給ふか 真言厳の神の言霊幸ひて 四方の国原いや拡ごりぬ 言霊の水火の力を目のあたり 見つつ尊き神世をおもふ 天界に気体のかろき身をもちて 御子生む神業の難きをおもへり さりながら主の大神の言霊の 功を見つつわが胸やすけし 安々と御子の生れます日を待ちて この神国につくさむと思ふ 目路の限り湯気むらむらと立ち昇るは 水火のいきの燃ゆるなるらむ 見渡せば四方の国原に湯気立ちぬ 国土生みの神業あざやかにして 立昇る湯気に御空の月も日も うすら霞めり真鶴の国は 玉野森の聖所は膨れ拡ごりて 御空に高く聳えたるかも 玉藻山の名を負ひまししこの峰に われ謹みて玉の御子生まむ 玉の御子の生れますよき日を楽しみて 朝夕宣らむ生言霊を 朝夕を玉藻の滝に禊して 国魂神を育みまつらむ 時を追ひてわが腹膨れ拡ごりぬ 真鶴の国の生れしに似て 玉野比女の清き心にほだされて われ怯気なく聖所に立つも』 美波志比古の神は寿ぎ歌詠ませ給ふ。 『ときじくに科戸の風は天地の 塵を払ひて清しき国原よ 地の上の百の汚れを悉く 水分の神は洗ひ給ふも 科戸辺の神と水分の神まして 真鶴の国は罪穢れなし 雷鳴神は天に轟き天地の 曲を払ひて新しき国原 永久の闇と曇を照すべく かがやき走る稲妻あはれ 瑞御霊国土生み神生みの神業終へて 鎮まりゐませこの神国に 永遠にこの神国に鎮まりて 𪫧怜に委曲にひらかせ給へ 主の神の聖所と現れし玉藻山は 幾千代までも動かざるべし』 産玉の神は寿ぎ歌詠ませ給ふ。 『玉泉に瑞の御霊は禊して 今日の神業を興させ給ひぬ 玉泉の面にうつりし月かげを 見る心地すも岐美の面は 雄々しくてやさしくいます瑞御霊の 生言霊はわれを泣かしむ 味ひの良き言霊を宣らす岐美の 功は遂に国土生ましける 真言厳の神の御霊は久方の 天之道立神の御樋代よ 道立の神の御樋代と悟りけり 宣り給ひたる言霊の光に 主の神のよさし給ひし玉藻山に 厳と瑞との霊生れましぬ 道立の神の御樋代と吾知らず 居たりし事を恥づかしみ思ふ 生代比女の御腹の御子を安らかに 生ませまつらむ産玉われは 生代比女神よ安けくおはしませ 産玉神は御子をまもらむ 大なる神業に仕ふる吾ならず 貴御子守ると生れし神はや 玉泉の汀に立たせる生代比女の 神のすがたは光なりける 真鶴の山より生れし神なれば 生きの生命の永かれと祈る 生れまさむ御子の生命を永久に われは守らむ真言をこめて 此処に来てわが神業の一端を 仕へむことの嬉しかりけり』 魂機張の神は寿ぎ歌詠ませ給ふ。 『天清く地明らけくなり出づる この目出度さを如何に称へむ 真鶴の国土生みはなり生代比女の 神は国魂神を孕ます 真鶴の国土は𪫧怜に生みをへて 国魂神を生ますたふとさ たまきはる御子の生命を永久に 守ると吾は現れにけり 見るからに気高くなりし玉藻山の 常磐の松は色まさりつつ 玉野森のあなたこなたに湧き出でし 泉は残らず滝となりける 万丈の高きゆ落つる玉藻滝の 外に千条の滝現れにけり 神々は朝な夕なに謹みて 禊なすらむ千条の滝に 言霊の幸ひ助くる神世なり 如何で禊を怠るべきかは 朝夕に心清めて禊する 神の常磐の生命守らむ 主の神のよさしに吾は魂機張 生命の神となり出でしはや 久方の天にも地にも神々にも 木草にも皆生命あれかし わが魂線を総てのものに分配りて 永久の生命を守らむと思ふ 八十日日はあれども今日のいく日こそ 真鶴国の創始なりけり 玉藻山尾の上に立ちてをちこちの 国形見れば湯気立ちのぼるも むらむらと湯気立ち昇る国原を はらし固めむ水火の生命に』 宇礼志穂の神は寿ぎ歌詠ませ給ふ。 『嬉しさの限りなるかも玉藻山 天津御空にそそり立ちぬる そそり立つ玉藻の山にひかされて 玉野湖水は山となりけり 天地に例も知らぬ目出度さを 眺めて嬉し涙にくるるも 喜びの満ち足らひたる神国に 何を歎かむ宇礼志穂の神 空見れば嬉したのもし地見れば わが魂線はよみがへるなり 愛善のこの神国に喜びの 魂線配りて総てを生かさむ 天も地も嬉し嬉しの神の国に 生れし神の幸をおもふも 歎かひの心起れば主の神の 生言霊によりてはらはせよ 歎くべき何物もなき神国は 嬉し嬉しの花ぞ匂へる 白梅の花の薫りにあこがれて 神世をうたふも迦陵頻伽は 鳳凰も玉藻の山に下り来て 世を祝すべく翼うつなり 真鶴はこれの神山により集ひ 神世をうたへる声の清しも 神世よりかかる目出度きためしあるを 吾は嬉しみ待ちゐたりける 喜びの極みなるかな真鶴の 国の栄えと御子孕ませり 何事も喜び勇め喜びの 満ち足らひたる神国なりせば 天地の真言の水火に育てられて われは生命の嬉しさをおもふ 顕津男の神の尊き瑞御霊 潤ひに生くる真鶴の国よ 月読の露の雫のしたたりて 玉の泉は湧き出でにけむ 玉泉溢れ溢れて滝となり この国原を清めたまはむ 天も地も喜びに満つる神の国 常世にませとわが祈るなり』 美味素の神は寿ぎ歌詠ませ給ふ。 『言霊の水火幸ひて真鶴の 国は𪫧怜に生れましける 国原に味ひなくば如何にせむ 百の木草も生ひたつ術なし 神々の心に味はひなかりせば 貴の神業如何でなるべき 美味素の神と現れ天地の 総てのものの味を守らむ 玉泉湧きたつ水も味なくば すべての生命を守る術なし 主の神のよさしのままに美味素 神は永遠にあぢはひ守らむ 言霊の水火の濁れば天地の 味はひ消ゆるも是非なかるらむ 言霊の味はひありて天地の すべてのものは生き栄ゆなり』 結比合の神は寿ぎ歌詠ませ給ふ。 『厳と瑞の生言霊を結び合せ 玉藻の山は固まりにけり 厳と瑞と結び合せの水火をもて 笑み栄えゆかむ真鶴の国は 山と河を結び合せて真清水を いや永久にわかせ生かさむ 真清水の露の味はひなかりせば 百の木の実もみのらざるべし 吾は今この神国に天降りして 岐美の神業をたすけむと思ふ 玉野比女生代の比女の御心の 味幸ひて国土は栄ゆも なりなりてなりの果てなき言霊に この天地はめぐり栄ゆく 大空に轟き渡りし雷も 音やはらぎて御空はれたり 見渡せば目路の限りは真鶴の つばさかがよふ神の国はも 白梅は玉藻の山の尾の上まで 咲き満ちにつつ辺りに匂へり 白梅の清き薫りに包まれて 国形を見る今日の楽しさ』 待合比古の神は寿ぎ歌詠ませ給ふ。 『瑞御霊来まさむよき日待合せ 今日の目出度きよき日にあふも 玉野丘の聖所は厳の言霊に 雲井の空まで飛び上りつる 鳳凰は翼を並べ真鶴は この国土生みを寿ぎてなくも 幾年を待合せたる吾にして 清く生り出し国形見るも 月も日も御空に高く輝きて 玉藻の山をてらし給へり 今日よりは玉藻の滝に禊して 瑞の御霊の神業を守らむ』 かく神々は真鶴の国のいやひろに、いや遠に膨れ上り拡ごりしを喜び寿ぎ、歌をうたひをへて、頂上なる玉野大宮に感謝の神言を宣らせ給ひしぞ目出度けれ。 (昭和八・一一・三旧九・一六於水明閣林弥生謹録) |
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霊界物語 | 75_寅_太元顕津男の神の物語3 | 05 山上の祝辞 | 第五章山上の祝辞〔一八九九〕 顕津男の神、玉野比女の神を始め、百の神等は生言霊の功によりて、真鶴の国の広き国原豊けく膨れ上り、玉野湖水の底ひまで水乾きて、土地はいよいよ高く空に伸びたち、横に拡ごり膨れ膨れて果しなき光景を目撃しながら、喜びのあまり玉野宮居の聖所に立たせ給ひて、各自主の大神の洪徳を感謝しつつ、よろこびの御歌詠ませ給ふ。 顕津男の神の御歌。 『久方の天津高宮ゆ天降ります 神の功に国土うまれたり はしけやしこの国原を眺むれば 目路の限りは湯気立ちのぼる もやもやと湯気立ち昇り国原は かわき固まり栄えむとするも わが立ちし玉野の丘の聖所 膨れあがりて高根となりぬる 高照の山の高きに比ぶべき 玉藻の山の稚々しもよ 山稚く地柔かにありながら 常磐の松はみどりいやます 白梅の花のかをりの芳しさは 主の大神の御旨なるかも 真鶴の千歳の栄えを寿ぐか 九皐に鳴く鶴の音清しも 紫微の宮立ち出で吾は方々の 宮に侍りて細し国土生みぬ つぎつぎにわが言霊は清まりて うまし神国は生れたりける 国魂の神生む神業慎みて われは来つるもこれの聖所に 宮柱太しきたてて永遠に 鎮まりいます主の宮居はも 幾万劫の末の神世のかためぞと われ雄健びの禊せしはや 振魂の禊伊吹の禊まで 我は委曲に行ひしはや 雄詰の禊の神業に玉野丘の 霊は笑みて山となりぬる 鳥船の禊畏み玉泉に わが言霊を甦らせり 玉泉万丈の滝と落ちたぎつ 四方に響かふ言霊さやけし 言霊の天照り助け幸へる 国土となりけり稚き真鶴は 地稚き真鶴の国は言霊の 伊吹と禊にひろごりにける 有難し尊し天之峰火夫[※「峯火夫」という表記が多いが「峰火夫」という表記も第75巻以降に少し使われている。]の 神の功に国土造りをへぬ 久方の天津高宮の主の神は 天降りまして我を救ひませり 瑞御霊如何に言霊清くとも いかでなるべき此国原は 主の神の清き御稜威を蒙りて 我は正しく国土を生めりき 真言厳の神は正しく厳御霊 天之道立神におはせしか 厳と瑞の言霊の水火合はざれば この美国は生り出でざるべし 久方の天之道立神の功 隈なく悟りし今日ぞ嬉しき 千万里駒に跨り玉野森に 進みて永久の国土を生みしよ 真鶴の国は𪫧怜に生れましぬ いざ国魂の神よ出でませ』 真言厳の神は御歌詠ませ給ふ。 『久方の天津高宮の主の神の 神言のままにわれは天降りつ 瑞御霊国土生みの神業助けよと 神言かしこみ吾は来つるも 紫微天界開けし昔ゆかくの如 目出度き例はわれ聞かざりき 千代八千代万代までも栄えかし 常磐樹しげる真鶴の国は 瑞御霊来まさむ先に主の神の 神言のままに待ち居たるかも 目路はるか遠の国原見渡せば 瑞光輝き紫雲たなびくも 紫の雲のとばりを押し分けて 天津日の神かがやき給ひぬ 昼月のかげはさやかに大空に かかりて今日の喜び寿ぎませり 天地も揺り動きつつ真鶴の 国土は常磐に固められける アオウエイの生言霊の生みませる 伊吹の風の音の強しも サソスセシ生言霊の御稜威より 恵の雨は降りしきりたり パポプペピ生言霊は雷と なりて天地に響き渡れり 雷の厳の雄健び雄詰に 四方の醜雲散り失せにける 東より西に閃めく稲妻の いとはやばやと国土は生れし 見の限り葭と葦との茂りたる 国土は忽ち稲田となれかし 八束穂の稲種普く蒔き足らはして 神のいのちを永久につながむ 樛の木のいやつぎつぎに国土生みの 神業を仕へて神国を守らせむ』 玉野比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『久方の主の大神の神言もて われ玉野森に気永く仕へし 朝夕に生言霊は宣りつれど かかる例はあらざりにけり 二柱天津高宮ゆ降りまし 厳と瑞とに国土は生れけり 厳御霊瑞の御霊の水火合せ 生ませる国土の清しくもあるか 今日よりは真心の限りを主の神に 捧げまつりて国土造らむかも 水清き玉の泉に朝夕を 禊のわざに仕へ来しはや 朝夕に洗へど濯げどわが魂の 時じく曇るを恥づかしく思ふ 一日だも禊のわざをつとめずば ただちに曇る霊魂なりけり 時じくの香具の木の実の主の霊ゆ 生れし吾もにごるをりをり 大神の生言霊に生り出でし 天津祝詞の功たふとし 大前に朝な夕なを太祝詞 白せば清しわが玉の緒は 幾年もこの神国に生き生きて はてなき神業に仕へまつらむ 足引の山はあちこちに生れ出でぬ 地を固むる神の経綸に あらがねの地は総てのものの生命 永久に生ませる御手代なるも 見渡せば紫の雲たなびきて 神世の栄えを彩りにけり』 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『真鶴の山に生れてわれは今 これの聖所に岐美と立つかも 惟神俄に恋しくなりしより 瑞の御霊に水火合せけり 水火と水火合せて御子を孕めども 怪しき心はつゆだに持たず 一柱御子生れませしあかつきは 真鶴山に一人住むべし 国中比古神の神業を朝夕に 助けまつりて神国を開かむ』 近見男の神は御歌詠ませ給ふ。 『顕津男の神の御尾前近く仕へ この喜びにあひにけらしな 南の国を知らせとのたまひし 瑞の御霊の言葉かしこし 真鶴の国生り出でし今日よりは 御子を助けて永久に仕へむ 玉野比女の心つくしの功績を 今目のあたり見るぞかしこき 生代比女の御腹にいます貴御子の 国魂神とならすたふとさ 真鶴山玉藻の山の神社に 天かけりつつ仕へまつらむ 天翔り地駆りつつ真鶴の 国土の栄えを永久に守らな 天界は愛善の国土よろこびに 満てる神国と漸く悟りぬ 曇りたるわが魂線は愛善の 国の光をおぼろげに見し おぼろげにわが見し紫微の天界は いよいよ明くきよく見えたり』 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『玉野湖の百のなやみを乗り越えて 瑞の御霊は国土生ましませり 一時は如何になるかと危ぶみし 心づかひも夢となりける かくのごと深き経綸のあらむとは 圓屋比古われさとらざりける 高地秀の峰とひとしき高山の 尾の上に立ちて見る国土さやけし 玉藻山千条の滝のしろじろと 落ちたぎちつつ言霊響くも 玉藻山滝の水音響かひて 曲神たちは眼醒まさむ 五日目に風は吹けかし十日目に めぐみの雨は降れかし神国に 雨も風も神国の栄ゆる基ぞと 思へば尊し科戸辺水分の神』 宇礼志穂の神は御歌詠ませ給ふ。 『久方の雲井に高く聳えたる 玉藻の山は紫微の宮はも 玉藻山尾の上に建ちし大宮は 紫微の宮居に等しかるらむ 主の神の天降りますなる大宮は 雲井の上にそそりたつかも 玉野丘は次第々々に高まりて 今は雲井の上に立たせり 目の下に湧き立つ八重雲いとほして 下界に天津日かげはさせり 玉藻山尾の上に仰ぐ月かげは 一入さやけく思はるるかな 吾駒はいかがなしけむ森の外の 並木に永久に繋ぎ置きしを 言霊の水火に生れます白駒の 行方思ひて安からぬかも』 かく歌ひ給ふ折もあれ、玉野森の外廊遠く繋ぎ置きたる駒は、玉藻山の膨脹とともに大地膨れあがり、山の七合目あたりに清く嘶き居たりしが、宇礼志穂の神の生言霊に感じけむ、蹄の音もかつかつと、山の傾斜面を真白に染めて、単縦陣をつくり、神々の前に駆けのぼり来つ、新しき神国を祝する如く、声もさはやかに嘶きける。 宇礼志穂の神は再び御歌詠ませ給ふ。 『めづらしもわが言霊の澄みぬるか 言下に駒はあらはれにけり 駿馬の嘶き清し新しき 国土の生れを寿げるにや 主の神の七十五声のみいきより 生れし駒ぞたふとかりける』 (昭和八・一一・三旧九・一六於水明閣白石恵子謹録) |
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霊界物語 | 75_寅_太元顕津男の神の物語3 | 11 魂反し | 第一一章魂反し〔一九〇五〕 太元顕津男の神は、如衣比女の神の御魂を招くとして、八種の神歌を歌ひ、鎮魂祭を行ひ玉ふその御歌。 (一) アチメオオオオアメツチニ キユラカスハサユラカスカミハカモ カミコソハキネキコウキユラカス (二) アチメオオオオイソノカミ フルノヤシロノタチモカト ネカフソノコニソノタテマツル (三) アチメオオオサツヲラガ モタキノマユミオクヤマニ ミカリスラシモユミノハスユミ (四) アチメオオオノボリマス トヨヒルメガミタマホス モトハカナホコスエハキホコ (五) アチメオオオミワヤマニ アリタテルチガサヲ イマサカエデハイツカサカエム (六) アチメオオオワキモコガ アナシノヤマノヤマヒトト ヒトモミルカニミヤマカツラセヨ (七) アチメオオオタマハコニ ユウトリシデテタマチトラセヨ ミタマカリタマカリマカリ マシシカミハイマゾキマセル (八) アチメオオオミタマカリ イニマシシカミハイマゾキマセル タマハコモチテサリタルミタマタマカヤシスヤナ 斯く招魂の神歌をうたひ給ふや、如衣比女の神の神霊忽ち感応来格して、春風到り芳香薫じ、常磐樹の松は前後左右に揺れ動きて、他神の目にも歴然と御姿を拝し得るに至れり。茲に顕津男の神は御歌詠ませ給はく。 『神去りし如衣比女神は大前に 珍し御姿を顕し給へり 我と倶に在りし其の日と比ぶれば 一入御姿たふとくおはすも 四柱の御子生みをへし今日の日を 祝ひて比女の御魂招きぬ 霊界によし坐しますともわが造る 紫微天界を守らせたまへ 如衣比女神の神去りましてより われは心を建て直したり 公の魂わが身辺を守りますか 今日まで事無く神業仕へし 朝夕に公を慕ひしわが霊も 神業せはしくかへりみざりき 漸くに真鶴の国の生りたれば 公の功をおもひてまねきし 在りし日の事思ひ出で比女の魂を わが真心に招ぎ奉りける』 如衣比女の神霊は、しとやかに御歌詠ませ給ふ。 『何事も主の大神の御心ぞ 御魂となりてわれ仕へゐるも 瑞御霊われを招かす真心に ほだされ此処に降りつるはや 八雲立つ出雲の雲の八重雲を かきわけ玉藻の山に降りし 身体は大蛇に呑まれ失するとも わが魂線の生命は永久なり 中津滝にわが魂線は洗はれて 罪穢れなき今日の身軽さ 幽界に吾生き生きて瑞御霊 大御神業を守りまつらむ 千代鶴姫命の生ひ先き朝夕に 岐美の御霊と思ひて守らむ 頼みなき顕世を吾のがれ出でて 永久の生命の天国に栄えつ 八十比女神御魂守りて主の神の よさしの神業あななひまつらむ いざさらば雲路を別けて帰るべし 主の神います天津高宮へ 恋ひなづむ心なけれど別れゆく このたまゆらの惜しまるるかな』 顕津男の神の御歌。 『果てしなき紫微天界の中にして 水火と水火とを合せたる公よ 天路はろか下り来まして今直ぐに 帰らす公を惜しくも思ふ 主の神のよさしの神業をへぬれば われも天界に昇らむと思ふ 久方の天津高宮主の神の 御前恋ふしくわれなりにけり 真鶴の国はやうやく生れたり この行く先きの悩みを如何にせむ さまざまの悩みにあひて国土造る われをたすけよ如衣比女の御魂』 如衣比女の神は軽き御姿を現しながら、御空の雲を押し別け神馬に跨り、いういうとして、天津高日の宮のあなたをさして帰らせ給ひぬ。 玉野比女の神は、そのやさしく神々しき御姿を拝しまつりて、御歌詠ませ給ふ。 『畏しや如衣の比女の神の御魂 紫微宮の状を具さに宣らせり 仰ぎみるさへも眩きばかりなる 如衣の比女の姿たふとき 生死の差別さへなき天界と 悟りてわれは神世を楽しむ 死りたる神も姿を現して 言霊宣らす神世ぞ畏し 朝夕を玉の泉に禊して 清まりし目にうつらす御姿 魂は幾万代の末までも 生きてはたらく由を悟りぬ 吾は今年さびぬれど魂線の 生命の若きを思へば楽しも 生替り死替りつつ神の世に 永久に仕へて国土を守らむ 中津滝の大蛇の腹に葬ふられし 如衣の比女は生きてゐませし 顕津男の神の悲しき御心を 思へば知らず涙こぼるる 鶏の尾の長の別れと思ひてし 如衣の比女に岐美はあひませり』 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『神去りし如衣の比女の御姿を いま目のあたり拝みて驚きぬ かねてよりかかる例のある事は 聞けども今更おどろきにけり 久方の天津高宮に仕へます 如衣比女神の御姿清しも 顕津男の神の御心推しはかり われは思はず涙にくれたり 生き生きて神の御殿に仕へます 如衣の比女の幸を思ふも 愛善の天界なれば⦿の神の 厚き心に護られにけむ 生死のなき天界に玉の緒の 生命を保つ身こそ幸なれ』 遠見男の神の御歌。 『玉藻山の上つ岩根の清庭に 天降りて御言宣り給ふ比女よ 隠り世に坐ませし神の瑞御霊の 生言霊によみがへり坐しぬ たまきはる生命を常永に天国に 保ちて神業に仕ふる比女神よ 愛善の光と徳に充たされし 神国の神人の姿やさしも 御子生みの神業をへて神国に のぼりし神人の姿生きたり 玉藻山の此の清庭に天降りたる 如衣比女神のいとしき心よ 瑞御霊の神の心の雄々しさよ すべての執着を打ち払ひつつ』 宇礼志穂の神の御歌。 『足引の山の尾の上に禊身して 死りし神人に逢ひし不思議さ 死りたる神人と思ひしを目のあたり 生ける御姿拝みけるかも 玉の緒の生きの命の果てしなきを 見つつ天界に生れしを嬉しむ 真鶴の国生れ出でし目出度さに 天降り坐しけむ如衣比女の神は 生代比女神は嘸かし嬉しからむ 国魂神の子やすく生まして 御子生れし玉藻の山の頂上に 玉の神の子生れし嬉しさ みまかりし神も御山に降りきて 御子生れますを寿ぎ玉へり』 美波志比古の神の御歌。 『久方の空にも御橋の架れるか 如衣比女神往来ましけり 久方の天の浮橋渡らひて 天津高宮に帰らす女神はも 真鶴の国やうやくに固まりて 死れる神もことほぎに来る 目出度さの限りなるかも真鶴の 国魂神は産声冴えにつ 瑞御霊御魂反しの宣り言に 如衣比女神天かけり来ませる 言霊の御稜威の力今更に 覚らひにけり魂反しの祝詞に 村肝の心正しき神司の 生言霊の神妙なるかも』 産玉の神の御歌。 『かくり世の神も来りて玉藻山 御子生れし日をことほぎ玉へり 神妙くもあるかな既に身死りし 神も天降りて国を祈らす 顕津男の神の苦しき御心を 偲びまつれば吾堪へ難きも 地稚き国土は次ぎ次ぎに固まりて 隠世の神さへ天降り坐しぬる』 魂機張の神の御歌。 『魂機張る神人の神言の尊さよ 生死一如に栄え果てなき 万有の主宰と現れし神人の身は とこしへまでも亡びざるべし 常遠の生命保ちて天界の 神業に仕ふる神人ぞ幸なる 鎮魂の八種の神言宣りまして 死れる神人を招ぎ給ひしはや 言霊の天照り助くる国なれば 斯かる例もあるべかりける 千代鶴姫命の生れますこの山に 鶴のうたへる声は澄めるも 幾千年万年まで姫命 しづまりいまして国土守りませ』 美味素の神の御歌。 『天国は尊き国よ甘美し国よ 常永に生死の境なければ 生き生きて生きの栄えの果てしなき 天津神国の住居たのしも 吾は今生死一如の真諦を 悟りて心勇み立つなり 久方の天津高宮ゆはろばろと 天降りし神の心愛はし 愛善の天津神国の真諦を いま目のあたり見つつ楽しも 玉の緒の生命は永久に亡びざるを 覚る今日こそ楽しき吾なり 地稚き玉藻の山の山の尾に 死りし神の御姿をがめり 瑞御霊の生言霊の味はひに 天降り給ひぬ如衣比女神は 愛の善信の真をも旨として 生れし天国は歓喜の園なり とこしへの生命を保つ天界に 生れし幸をたふとみ思ふも』 結比合の神の御歌。 『久方の御空は高しあらがねの 大地は広し生命はながしも 生死の別ちなき天界に生れあひて 楽しきものは言霊の幸なり』 国中比古の神の御歌。 『地稚き真鶴国の国中に 珍しき神事をろがみにけり アチメオオオオ魂反しの行に 如衣比女神天降りましけり』 (昭和八・一一・二六旧一〇・九於更生館出口王仁識) |
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霊界物語 | 75_寅_太元顕津男の神の物語3 | 19 日南河 | 第一九章日南河〔一九一三〕 ロシヤの俚言に、お伽噺は作り事にして、伝説は実際あつた事なりと言つてゐるのは、要するに伝説の確実性を言つたものである。わが唱ふる物語は、お伽噺でもなく、伝説でもなく、伝奇物語でもなく、確実なる言霊学上より見たる史詩である。伝説とは後世の人々の口に伝はり、其の事実が次第々々に誇張され、又は濃厚の度を重ねて面白く出来上つてゐるが、この『霊界物語』は何人にも伝はつたものでなく、只単に天地に充満せる水火の水火の妙用原理にもとづき、宇宙創造の状態より、諸般の事象に就いて説示したるものである。 この物語を著すに就いては、日夜神界の枢機に参じ、宇宙万有発生の歴史的事実に到るまで開示したるものなれば、現代学者の耳目には怪しく思はるるは当然である。 未だ見ざる、聞かざる、伝はらざる幽玄微妙の宇宙の物語にして、有史以前の事象なれば、何人も善悪の批判を加ふる余地はなかるべし。万々一この物語に対して、批判を加ふる者あらば、そは迂愚の骨頂にして、論議すべき価値なきものである。 惟神的道徳上の義務に服し、天界に奉仕し、自己を制して自己以外に寛大なる神人は、其実際に於て精神上の自由を有し、一切万事公共の為、何一つ成らざるはなきものである。之に反し、惟神的道徳上の義務を省みず、自己の欲望にのみ執着し、自己に寛大に、他に対して残忍である所の神人は、其の実運命の手に縛られてゐるのである。 天之峯火夫の神の、皇神として君臨し給ふ紫微天界は、未だ霊と言霊の世界にして、形あるものは気体の凝れるもののみなれば、一に意志想念の世界と称しても他なき事である。故に善良なる意志想念は、善良なる神人の姿を現じ、醜悪なる意志想念は、最も醜悪なる形を現ずるも、自然の理である。八岐の大蛇神あり、十二の頭を持つ鬼神あり、半鬼あり、大山を懐に包みて提げ歩く如き巨大なる神あり、山の姿を為し、河の形を為し、岩石の形を現ずる神等数多あるも、意志想念の現ずる姿なのである。我説くところの物語も、種々の神、動物の現るる事あれども、決して怪しむに足らずと知るべし。 顕津男の神は、七日七夜の旅を重ねて、濁流滔々と漲る、幅広き水底深き日南河の南岸に着かせ給ひけるが、この時早くも天津日の神は三十度の位置に昇らせ給ひ、晃々と輝き渡りて、日南河の速瀬の波を、金銀色に彩らせ給ひける。 顕津男の神は、日南河の岸辺に駒を下り立ち、激流を眺めて御歌詠ませ給ふ。 『日並べて荒野が原を渡り来つ 日南の河の岸辺に着きぬ 滔々と流るる水の波頭に かがやく太陽の黄金色はも 日南河黄金白銀紫の 波を交へて永遠に流るる 目路はるか彼方の岸に霞めるは 大蛇のすめるスウヤトゴルの山 スウヤトゴルの山に立ちたつ黒雲は 曲神の水火か天をにごせる 駿馬は嘶き勇めど日南河 流れを渡る術もなきかな さりながらわが言霊に光あれば この河水も暫しは引かむ 日並べて昼夜の旅をつづけつつ 諸神も亦つかれけるかな 駿馬の脚を休めて今暫し 河水引かむ時を待たむか 足引の山はあなたに霞みをり 燃ゆるが如く雲立ち昇る 真鶴の国の広原渡り越えて 今や進まむ西方の国土へ 河中に波せき止めて聳え立てる 巌は曲の化身なるらむ いざさらばわが言霊に払はばや 醜の大蛇の化身の巌。 一二三四五六七八九十 百千万千万の 生言霊の神々は ここに天降りて醜神の 御魂をきため給へかし 国土を生み御子生みの旅にさやりゐる この曲神は主の神の 神業にそむく醜大蛇 守らせ給へ神々よ 瑞の御霊の言霊に 真心こめて願ぎ奉る ああ惟神々々 御霊の幸を給へかし』 斯く歌ひ給へば、激流をせき止めて、峙ちし千引の巨巌は、忽ち水中に沈むよと見る間に、巨大なる蛇体となりて、北側の岸辺にかけ上り、忽ち暴風雨を起し、黒雲に乗り、一目散に逃げゆきぬ。 この巨巌の怪物退きしより、河水は次第々々にその量を減じ、時ならずして向つ岸辺に渡り得る所まで引きたれば、ここに顕津男の神はひらりと駒に跨り、河に向つて御歌詠ませ給ふ。 『主の神の生言霊の助けにて わが宣る水火は輝きしはや 曲神は千引の巌と身を変じ わが行く道にさやりゐしかも わが目路のとどかぬ迄にいや広き 河の流れもあせにけらしな 言霊の水火の光の尊さを 今更ながら悟らひしはや この先は曲津のすさぶ醜の国土よ 心そそぎてわれは進まむ 四柱の神勇ましくわが後を 守りて此処に送り来ませり 四柱の神よこれより帰りませ 真鶴国土を開かむために いざさらば別れて行かむ西方の 国土は真近に迫りけらしな』 ここに宇礼志穂の神は、顕津男の神の乗らせる神馬の轡に手をかけ乍ら、御歌詠ませ給ふ。 『ヒーローの岐美とは知れど斯くまでも 光りますとは思はざりしよ 吾は今岐美に別れむ苦しさに 空にしられぬ雨ぞ降るなり いざさらばまめにおはして国土生みの 神業𪫧怜に仕へませ岐美よ いや広き日南の河の河水も 岐美の言葉にあせにけらしな』 魂機張の神は、別れの御歌詠ませ給ふ。 『八十日日を岐美に仕へて今此処に 別るる思へばさみしかりけり 恙なく道の隈手を渡り来て 光の岐美に別れむとすも 真鶴の翼そろへて送りける この河岸は国の境よ わが岐美の生言霊に醜神の 巌は砕けて河あせにける 斯くの如水火の光を満たせます 岐美の行く先き思はるるかな 果しなき思ひ抱きて玉藻山 真鶴山に吾等は帰らむ 遠見男の神に仕へて今日よりは 神国守らむ安く思ぼせよ』 結比合の神は御歌詠ませ給ふ。 『はろばろと岐美を送りて今此処に 別ると思へば何か悲しき 愛善の国に悲しみなけれども 今は涙の止めどなきかも 嬉しさに又悲しさに迸る わが目の涙いぶかしきかも スウヤトゴル山にひそめる曲神を 言向和すと出でます岐美はも 山も河も巌もことごと醜神の 化身なりせば心し行きませ この河は高照山の溪々ゆ 流ると思へば尊かりけり 日南河見るにつけても思ふかな 如衣の比女神神去りし日を』 美味素の神の御歌。 『高照の山より落つる日南河の 水はあせけり生言霊に 河底の岩むら見えて水浅み 大き小さき魚族はねをり 魚族も神の水火より生れたる 御魂なりせばおろそかならじ いざさらば岐美に別れむ真鶴の 国治むべく後にかへさむ さりながら向つ岸辺に着かすまで われは佇み見とどけ奉らむ』 顕津男の神は諸神に答へて御歌詠ませ給ふ。 『種々の悩みしのぎてわが旅を 送りし功うれしみ思ふ 玉野比女生代比女神その外の 神につたへよわが河越を』 ここに顕津男の神は諸神に別れを告げ、馬背に鞭を加へ、水あせし河底を悠々として、またたく間に彼方の岸に上らせ給ひければ、四柱神は安堵の胸を撫で下し、ひらりと駒に跨り、元来し道をたどりたどり、両聖地をさして急がせ給ひける。 (昭和八・一一・二九旧一〇・一二於水明閣谷前清子謹録) |
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霊界物語 | 75_寅_太元顕津男の神の物語3 | 21 岸辺の出迎(二) | 第二一章岸辺の出迎(二)〔一九一五〕 顕津男の神はこの光景を打ち眺め、莞爾として愉快げに御歌詠ませ給ふ。 『風も吹け雨も降れ降れ雷も 轟けわれは楽しみて見む 雷は天にとどろき稲妻は 闇を裂きつつひた走るかも 日南河濁水みなぎり河底の 巌は下手にころがり落つるも 曲津見は力の限りを現して われ威嚇さむと雄猛るらしも 曲神よ力の限りをわが為に 猛びて見せよ地割るるまで かくのごと児戯に等しき雄猛びを 何か恐れむ光のわれは 面白き雄猛び見るもスウヤトゴルの 山よりおろす雨風いかづち 言霊の幸はふ国土よ曲津見の 雄猛び強くもわれは恐れじ』 茲に臼造男の神は、瑞の御霊の不退転の態度にいたく驚きつつ、御歌詠ませ給ふ。 『曲神の雄猛び強き河の辺に 立たせる岐美の大らかなるも 岐美こそは紫微天界の中にして 国土生みませるヒーローの神よ スウヤトゴルの山の曲津見今ここに 力の限り雄猛びけるかも 国津神はこの雄猛びになやめども 光の岐美は動きたまはず 河水はいやつぎつぎに澄みきらひ 河底までもすきとほりけり 日南河水の底ひの小魚のかげ 見えわくるまで澄みきらひたり 曲津見の神の雄猛びも束の間の 河水濁せしばかりなりけり もろもろの鳴物入りの曲津見の 業も忽ち消え失せにける 瑞御霊光の岐美の現れましし 西方の国土はいよよ栄えむ 西方の国の司の照男神も 大曲津見になやみ給ひぬ 山となり巌となりて曲津見は 西方の国土を曇らせ行くなり 朝夕を雲に包まれ西方の 稚き国原は月日だもなし 今日よりは光の岐美の現れませば 御空の月日も輝き給はむ 上と下の臼を造りて神々の 食物の種磨くわれなり 左より右にめぐりて五穀の 荒皮をはぎ神にまゐらす 天の狭田長田に生ひし稲種も 実らずなりぬ曲津見の水火に 今日よりは天地清くひらけなむ 光の神の出でましぬれば』 内容居の神は御歌詠ませ給ふ。 『われは今照男の神の御供して 瑞の御霊を迎へむと来し 幾万里山野を越えて出でましし 光の岐美を雄々しく思ふ 国土を生み国魂神を生ましつつ 万里の旅に立たす岐美はも 西方の国土は曲津見はびこりて 草木も萌えず稲種みのらず 神々のなげきの声は西方の 国土の天地をとざしてやまず 曲津見は十二の頭を持ちながら 時折風雨をおこして荒ぶも 曲津見の荒ぶ度毎神々は 邪気に打たれて倒るる悲しさ 朝夕に禊の神事をいそしみて われは漸く生命保てり えんえんと天に冲する黒雲は みな曲津見の水火なりにけり 愛善の国にもかかる曲津見の 潜みゐるとは知らざりにけり 力なき吾にはあれど村肝の 心をきよめ言霊きよめむ 駿馬の嘶きさへも清々し 光の岐美の出でませしより 日並べて曇り重なる西方の 国土の行末案じつつゐし かくのごと光の神の現れまさば 西方の国土に望みわきけり』 初産霊の神は御歌詠ませ給ふ。 『言霊の光の岐美の現れますと 聞きしゆわれはいさみ迎へぬ 真鶴の国土を固めて瑞御霊 今西方の国土に来ますも 嬉しさの限りなるかも悩みてし 国土を救ふと神現れませる 生れませる神悉く亡びゆく 西方の国土を悲しみしはや 曲津見の大蛇の邪気に襲はれて 神も草木も萎れつ亡びつ 亡びなき天津神国の中ながら 醜の猛びは防ぐよしなし ヒーローの神現れましぬ光り満てる 神現れましぬ目出度き今日を 月も日も御空の雲に包まれて 今日まで乱れし西方の国土 スウヤトゴルの清き山脈の頂上ゆ 折々放つ邪気はうれたき 高照の山より落つる日南河の 清瀬にたちてわれ禊せむ 一日だも禊の神事を怠らば 曲津見忽ちわれを襲ふも 国津神は朝夕日南の河波に 禊をはげみて息つきて居し 今日よりは西方の国土の大空に 月日も清く照り渡るらむ 仰ぎ見れば雲のはざまゆ天津陽の 光はさしけり河のおもてに 天津陽の輝く日こそなかりけり 岐美河岸に立たせし日までは 国津神は御空に輝く天津陽の 光を始めて拝みけるかも 西方の国土に集る曲津見の 水火重なりて黒雲となりぬ 黒雲を晴らさむよしもなかりけり 生言霊の力足らねば』 愛見男の神は御歌詠ませ給ふ。 『待ち待ちて今日のよき日にあひにけり この河岸に岐美を迎へて スウヤトゴルの山の姿は麗しく はき出す水火は天を包めり 万丈の黒煙はきて大空の 月日を包みし雲の憎かり 今日よりは曲津見の邪気つぎつぎに 散りて御空は清くなるべし 朝夕を禊の神事に仕へつつ 岐美の出でまし久しく待ち居し』 かかる所へ、美波志比古の神は駒に鞭うち、しづしづと此場に現れ給ひ、顕津男の神に黙礼しつつ、御歌詠ませ給ふ。 『わが岐美の旅に先立ち出でて来し われは神業をあやまりしはや 御供に仕ふべき身を知らず識らず 心傲りて先き立ちしかも 何事もおもひにまかせず苦しみぬ 岐美より先に出でにし罪かも みゆきある道の隈手をみはしかくると 出でにし吾は夢となりける 美波志比古の神にはあれど瑞御霊 御許しなくば何事も成らず 今となりてわが愚しき心根を つくづく思へば恥づかしきかな 瑞御霊ゆるさせ給へ今日よりは 神言のままに動きまつらむ 曲津見の神の輩下に捕へられ われは今日まで苦しみにけり 瑞御霊ここに渡らせし功績に 曲津の神はわれを許せり 曲津見の神はいろいろ手向ひの わざととのへて岐美を待ち居り 心して進ませ給へ曲津見は 光の岐美を亡ぼさむとすも 八尋殿数多並べて曲津見は 岐美屠らむと待ちかまへ居るも 曲津見の喉下に入りて漸くに 虎口を遁れ帰り来しはや 表むき曲津の神に使はれつ 暫しの間をたすかりて居し』 ここに美波志比古の神は、わが身の職掌を尊重するあまり、瑞の御霊のみゆきに先き立ち、渡り難き難所にみはしを架け渡し、御便宜を計らむとして先に立ち出で給ひしが、瑞の御霊の御許しなかりし為に、一切万事齟齬を生じ、一も取らず二も取らず、遂には曲津見の神の謀計の罠に陥りて、生命さへも危くなりけるが、早速の頓智に曲津見の神に媚びへつらひ、今まで虎口を遁れ居たりしぞ嘆てかりける。 (昭和八・一一・二九旧一〇・一二於水明閣白石恵子謹録) |
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霊界物語 | 75_寅_太元顕津男の神の物語3 | 22 清浄潔白 | 第二二章清浄潔白〔一九一六〕 円満にして霊肉の合致したる顕津男の神は、礼儀に富み、慈愛に富み、風雅の道に富み給へば、到る処物に接し事に感じて、御歌詠ませ給へり。顕津男の神は今や日南河を渡り、悪魔のはびこれる西方の国土を造り固めむとして神心を悩ませ給ひ、高地秀の宮にまします八柱の比女神や、八十比女神の身の上を追懐し、しばし悲歎の涙にくれ給ひつつ、御歌詠ませ給ふ。 『若草の妻をやもめに生れし子を 父なしとするわが旅淋しき 空閨に泣く妻の身をおもひやり 我は日に夜に血を吐くおもひすも 国魂の御子を生めども永久に あひみることのかなはぬ父なり 斯くの如苦しき神業に仕ふるも 世のため道のためなればなり スウヤトゴルの峰は遥かの野の奥に よこたはりつつ邪気を吐くなり 今よりは心の駒を立て直し スウヤトゴルの曲津言向けむ 国土生みと御子生みの神業に仕へ来て わが身はいたく疲れたりけり この疲れ休めむとする暇もなく また立ち向ふ曲津のすみかへ 巌となり山河となりて曲神は わが行く先きにさやらむとすも 澄み渡る日南の河に禊して いざや進まむ曲津の在所に』 茲に顕津男の神は、日南河の流れに下り立ちて禊の神事を修し給へば、八柱の神々も吾後れじと速瀬に飛び込み、浮きつ沈みつ天津祝詞を奏上しながら、禊の神事を修し給ひける。 顕津男の神はじめ八柱神は、漸く岸辺に立ち上り『わが心地清々しくなりし』と宣らせ給ひて心静に御歌詠ませ給ふ。 顕津男の神の御歌。 『高照の山より落つる河水に 心すがしく禊せしはや 気魂にかかれる罪や穢れまで 洗ひおとしぬ速河の瀬に 水底をかい潜りつつ気魂の 汚れを全くはらひし清しさ 村肝の心清しも真清水の 流れに禊をはりしわれは 水底も明るきまでに光りたり わが気魂の清らかにして かくの如光りかがやく気魂を 八十比女の前に見せたくぞ思ふ 我ながら驚きにけり何時の間にか わが気魂は光となれる 身も霊も光り輝き水底の 魚族までも歓ぎつどひ来 我こそは生言霊の幸ひて 光の神となりにけらしな 眺むればわが身は骨まで透き徹り まさしく瑞の御霊となりぬ 水晶の如くに骨まで透き徹る わが身は少しの曇りだになき 斯の如光となりし我なれば 伊行かむ道に夜はなからむ 天伝ふ月の光もかくまでに 光らざるべし照れるわが身よ 四方山の百花千花にいや増して 美しきかなわが気魂は』 美波志比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『わが岐美の後に従ひ速河の 瀬々の流れに禊せしはや わが魂は大曲津見の水火うけて 墨の如くに穢れゐたりき 河水の色変るまで気魂の 垢ながれける禊の神事に 斯の如わが気魂は清まりぬ いざや進まむ曲の征途に 村肝の心くもれば忽ちに 曲津見の罠に落さるるなり 肝向ふ心くもりて美波志比古 われは曲津見にをかされにけり 斯くの如光らす岐美を知らずして 先行きしわれの愚さを悔ゆ 日南河に御橋かけむと進み来て 曲津見の巣に迷ひ入りけり 雄健びの禊の神事にわが神魂 真清水のごと清まりにけり』 内津豊日の神は御歌詠ませ給ふ。 『瑞御霊迎へ奉ると此処に来て 禊の神事に仕へけるかも 身も魂も清しくなりぬ今よりは 岐美に仕へて雄健びせむとす 曲津見の御空をふさぐ世の中に 光の神は現れましにけり 顕津男の神の御霊の御光に わが気魂は清まりにけり 気魂も神魂も神の御光に けがれなきまでに照り渡りつつ 内津豊日の神の御名まで負ひながら 心のくもり晴れざりにけり わが岐美に従ひ流れに禊して はじめて内津豊日となりぬる 曲津見の所得顔にすさび居る 西方の国土今日より生れむ 非時に黒雲湧き立つ西方の 国土照らさばや禊を重ねて スウヤトゴル峰の曲津見は荒ぶとも 今はおそれじ岐美ましませば 国津神ゑらぎ栄えむ水晶の 神の光に照らされにつつ 草も木も月日の御光あびずして 如何で繁らむ地稚き国土は 高照の峰より落つる日南河に 今日をはじめと禊せしはや 主の神のウ声に生れし吾ながら 禊のたふとささとらざりけり 朝夕に禊の神事に仕へつつ 西方の国土を生かさむと思ふ』 大道知男の神は御歌詠ませ給ふ。 『大道を知男の神の吾にして 禊の神事を怠りしかも 惟神神のひらきし大道は 禊の神事ぞ要なりける 禊してわが身わが魂清まりぬ 醜の曲津見もはやをかさじ 国土を生み御子を生ますと出で給ふ 瑞の御霊は光なりしはや 仰ぎ見るさへもまぶしくなりにけり 瑞の御霊の光の神を 斯くの如光りかがやく生神の 現れましし上は何をなげかむ 日に夜に嘆きつづけし西方の 国津神等よみがへるべし 吾もまた朝な夕なに大道を さとしつつなほ禊知らざりき 天界にいともたふとき神業は 禊のわざにしくものはなし 西方の国土の御空を包みたる 雲も禊の神事に散るべし 斯くの如禊の神事の尊さを 吾は今まで覚らざりけり 気魂も神魂も清くなりにけり 速河の瀬に禊せしより』 宇志波岐の神は御歌詠ませ給ふ。 『このあたり吾はうしはぎゐたりしが 曲津見のため曇らされつつ 惟神禊の神事知らずして 治めむとせし吾の愚さよ 禊して生言霊を宣る身には 醜の曲津見もをかす術なし 今日よりは国津神等に惟神 禊の神事を教へ伝へむ 近山は早くも緑となりにけり 岐美が禊の光の徳に 曲津見は青山となり沼となり 巌となりてひそみ居るかも 久方の天津高宮ゆ降りましし 光の神はここにいますも くもりたる心抱きて瑞御霊の 光の前にあるは苦しき 山に野に百花千花匂へども 曲のすさびに色あせにつつ 虫の音も次第々々に細りけり 曲津見の水火に苦しめられつつ 今日よりは鳥の鳴く音も虫の音も 風のひびきも澄み渡るらむ 迦陵頻伽非時歌へど西方の 国土には亡びの響きなりけり 今日よりは迦陵頻伽の歌ふ声も 冴えに冴えつつよみがへるべし 天渡る月日のかげの見えわかぬ 西方の国土は風の冷ゆるも ひえびえと吹く山風にあふられて 百の草木はなかばしをれつ 今日よりは草の片葉に至るまで 岐美の光によみがへるべし 月読の恵の露も今日よりは 豊にくだらむ草木の上にも』 臼造男の神は御歌詠ませ給ふ。 『禊すと水底くぐり身重さに おぼれむとして苦しみしはや つぎつぎに禊の力あらはれて わが身は軽く澄みきらひたる 河水を濁して流るる気魂の 垢の深さにあきれたりしよ 斯くならば蚤や虱のすみどころ 消えてあとなき水晶の気魂よ 水晶の如くわが魂わが身まで 照り輝けり禊終りて』 内容居の神は御歌詠ませ給ふ。 『滔々と流るる水に内容居 神の神魂は清まりにけり 曲津見の水火に曇りし西方の 国土に生れて吾くもりけり 河底の砂利まで光る日南河の 流れは清しも瑞の御霊か 仰ぎ見る瑞の御霊の顔は 月の面にまして光らすも 月読の神の御霊と現れましし わが岐美なれば光らすもうべよ 日南河向つ岸辺は真鶴の 岐美の生ませし光の国土なる 今日よりはおのもおのもが禊して 西方の国土を照らさむとおもふ 千引巌これより北の大野原に あちこち立てるも曲津見なるべし わが来る道にさやりし千引巌は 八十曲津見の化身なりしよ わが魂はくもらひければ曲津見の 化身の巌を知らず来つるも かへりみれば千引の巌ケ根わが行かむ 道の行手をのみふさぎたる わが岐美の教へ給ひし禊の神事に わが魂線を輝かしゆかむ 禊して岸にのぼれば気魂も 神魂も軽さ強さを覚ゆる 愛善のこの天界に生れ来て 禊せざれば忽ち曇らむ 神にある吾なりながら惟神 禊の神事をなほざりにせしよ 日南河の清き流れは国津神に 禊をせよと教ふるものを 愚なる吾なりにけり朝夕に この清流に居向ひながらも 天も地も一度にひらく心地かな 禊をはりしそのたまゆらは 醜雲の四方に立ちたつ西方の 国土はこれより月日照るらむ』 初産霊の神は御歌詠ませ給ふ。 『わが心よみがへりたり気魂も 軽くなりたり禊の神事に 禊する神事を初めて覚りけり 百の罪とが洗ふ神事と 罪けがれ洗ひ清めて吾は今 はじめて産霊の神業を知る 禊すと水底くぐれば大魚小魚 わが気魂をつつきめぐりぬ 気魂の垢をつつくと大魚小魚 わが身辺を取り巻きにけり 苦しさをこらへ忍びて水底に 神魂の罪を魚にとらせり わが肌は真白くなりぬ魚族の 垢は餌食となりて失せぬる 河底も明るきまでに瑞御霊 光り給ひて禊ましける かくのごと光の神も惟神 禊の神事に仕へますはや 曇りたるわが身は非時禊して せめて神魂の垢洗はばや 光なきわが身なれども朝夕の 禊に神魂冴ゆるなるらむ』 愛見男の神は御歌詠ませ給ふ。 『日南河水の底ひをくぐりつつ 禊の神事ををさめけるかな 天界の総ての穢れを洗ひ去る 禊の神事ぞ尊かりける ウの声の生言霊に生れし吾も いつの間かは曇らひにける 磨かずば忽ち曇る神魂よと 吾は覚りぬ禊に仕へて わが眼清しくなりぬ山も河も 今は雄々しく色冴えにけり わが耳はさとくなりけり虫の音も 禊終りて清しく聞ゆる わが鼻も透き徹りけむ百花の 薫り清しくなりにけるかも 言霊の水火も清けくなりにけり 禊の神事の貴の功に 天も地も清しくなりぬ気魂と 神魂の垢の洗はれしより いざさらば光の岐美に従ひて 曲津見のすみかをさして進まむ 神々を言向け和し光明に 満ち足らひたる国土造らばや 大空を包みし八重の黒雲も 散りて失せなむ岐美の光に 西方の国土はこれより輝きて 曲津見の魂もまつろひぬべし』 斯く神々は各自禊終り、其の功を讃美し乍ら、顕津男の神の御後に従ひ、柏木の森を目当に、スウヤトゴルの曲津見を征服すべく、意気揚々と轡を並べて立ち出で給ふ。 (昭和八・一一・三〇旧一〇・一三於水明閣内崎照代謹録) |
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霊界物語 | 75_寅_太元顕津男の神の物語3 | 23 魔の森林 | 第二三章魔の森林〔一九一七〕 スウヤトゴルに姿を変じて、西方の国土の天地を吾物とし、邪気に包み居たる大曲津見は、高地秀の宮より降らせ給ふ朝香比女の神を、自ら顕津男の神と称し迎へ奉りて、御子生みを為し、西方の国土を完全に占領せむものと、計画をさをさ怠らざりし処へ、真正の太元顕津男の神の間近に来り給ひしに驚き、途中にて瑞の御霊一行を全滅せしめむと、部下の邪神等を集めて種々評議の結果、最も狡猾にして性質悪く、嘘つき上手で、自己の利益のみを巧妙に計らふ醜狐を柏木の森に遣はし、種々の謀計を与へて之に当らしめて居る。此狐を醜女の神といふ。醜女の神は柏木の森の手前に姿を隠しながら、顕津男の神の一行の駒の脚許近く、微なる声にて、 『右行かば必ず勝たむ 中行かば必ず負けむ 左行かば必ず亡びむ 主の神の教ぞ』 と姿を隠して歌つて居る。 顕津男の神は耳敏くも、醜女の神の歌を聞きて微笑みつつ御歌詠ませ給ふ。 『醜神の醜の言葉を聞きにけり 左に行くも我は亡びず 三ツ栗の中津道をば我行かむ 亡びを知らぬ面勝の神は 右行かば勝たむといひし醜の声は 我を謀る偽り言なり この森は奥深くしてほの暗し 駒の蹄に踏み破りなむ 右行かば必ず曲津の深き罠に かかりて百神亡ぶなるべし いざさらば亡ぶといひし左の道を 駒の蹄にかけて進まむ』 この御歌に七柱の供神は稍不安の面持しながら、各自に御歌詠ませ給ふ。 美波志比古の神の御歌。 『スウヤトゴル醜の曲津の先走り 醜女の神の謀計なるらむ 美波志比古吾は進まむ瑞御霊の 御許しを得て左の道を わが岐美の光を恐れてスウヤトゴルは 此処に謀計の罠を造れるか スウヤトゴル輩下に仕ふる醜狐 この森林に仇すると聞く この森を拓き渡りてスウヤトゴルの 曲津のすみかに進まむと思ふ 兎も角も吾は御前に仕ふべし 瑞の御霊よ続かせ給へ』 斯く歌ひて、左へ行けば亡ぶべしとの曲神の言葉踏みにじりつつ、奥へ奥へと一行八柱は馬上豊に御歌うたひつつ進み給ふ。 顕津男の神の御歌。 『柏木の森は小暗く繁りたれど 我は恐れじ悪魔のすみかも 大空を封じて小暗き柏木の 森を照してわが行かむかな スウヤトゴル大曲津見の潜みたる 峰は彼方の空に聳えつ 四方八方ゆ怪しき声の響き来る われ柏木の森を拓かむ 曲神の勢如何に強くとも 生言霊に拓きすすまむ 愛善の光を四方に照し行く 我に仇する曲津は亡びむ 醜神の亡ぶといひし森林の 左の道を伊行くは楽しも 大空の雲はちぎれて天津日の 光は静にさし初めにけり 曲神は雲を起して御空包み 月日の光をさへぎりて居り』 内津豊日の神の御歌。 『時じくに怪しき音の聞ゆなる 柏木の森は曲津のすみかよ 今とならば何を恐れむ瑞御霊 光の岐美の現れましぬれば 亡びなむと醜女の神の叫びたる 道行く吾は楽しかりけり 亡ぶべき道を明して進み行く 光の岐美の雄々しきろかも 斯くならば如何なる醜のさやるとも 何か恐れむ禊せし身は 惟神禊祓ひしわれなれば 醜の犯さむ術なかるべし わが行かむ道の隈手も恙なく 守らせ給へ皇大神 主の神のウ声に生れし吾にして 醜女の言葉に動くべきやは 地稚き西方の国土は彼方此方に 曲津見潜みて仇を為すかな 今日よりはこの国原は天国と 新に生れし聖所なるぞや』 大道知男の神の御歌。 『惟神大道知男の神われは 左の道に災なしと思ふ 右行けば災せむと醜女神 力かぎりに謀らみ居るも この森は東西十里南北は 三十八里の曲津のすみかぞ スウヤトゴル輩下の神の大方は この森林に潜み居るとふ 兎も角も柏木の森の醜神を 言向和せて進みませ岐美 行けど行けど果しも知らぬ森林の 木蔭を渡る風は冷たき 曲神の水火凝り凝りて風さへも わが身の骨を浸み透すなり 言霊の水火を照してこの森を 駒の蹄に踏みにじり行かむ 曲神の醜の謀計は飽くまでも 深くあれども底力なし 表面のみ強く見ゆれど曲神は 生言霊にあひて消ゆるも 言霊の幸はふ国よ言霊の 天照る国よ恐れなき国よ 今日までは曲津の神に襲はれしが 今や真言の力得にけり 禊して清まりにけるわが魂は 昨日に増して百倍強きも』 宇志波岐の神の御歌。 『この辺り宇志波岐居れど柏木の 森に足をば入れし事なし 今日までは怪しの森と捨て置きし 曲津のすみかを踏みて破らむ 心強くも光の神の御供して 曲津のこもる森行く今日は スウヤトゴル峰の魔神もこの森の 亡びを聞かば忽ち消ゆべし 果しなき小暗き穢きこの森は 曲津のすみかに応はしきかな 百木々は半ば枯れつつ各も各も 邪気吐き出でて世を汚しつつ 曲津見の邪気の集るこの森を 生言霊にきよめひらかむ この森に醜の狐の棲むと聞けば 分け入りし神今までになし この森に迷ひ入りたる国津神は 生きて帰りし一柱もなし 瑞御霊岐美に仕へて進み行く 吾等に邪気は襲はざりけり わが駒は邪気の集る森中を いななきながら進み行くかも 顕津男の神の御稜威に驚きて 醜の曲津は逃げ去りにけむか 安々と渡り行くかも魔の森の 茂みを分けて八柱の神は』 臼造男の神の御歌。 『岐美行かば柏木の森は明らけく 光り初めたり曲津は何処ぞ 仰ぎ見ればスウヤトゴルの山脈は いやつぎつぎに遠去りにける 顕津男の神の光に曲津見は 恐れ山もて逃げ去ると見ゆ この森は生言霊に縛りあれば 曲津も動かす能はざるべし 醜女神この森林に永遠に すまひて国土の仇をなしつつ 曲津見の輩下の神は八百万 この柏木の森にひそめる 曲神の数の限りを言向けて 神の聖所に清めむとぞ思ふ 亡ぶべしと曲津の宣りし左の道は 心安けかり神の光に 月も日も御空の雲を押分けて 柏木の森の上に輝く 輝ける御魂々々を照しつつ 出で行く道に曲津の姿なし 日南河禊の神事の功績に 安く渡らむ柏木の森を 曲神は姿を潜めて静なり 梢を渡る風の音のみにて 迦陵頻伽時を得顔にうたふなり 曲津見の森にも天津日照らひて 百花は露を帯びつつ森蔭に 艶を競ひて咲き出でにける 花蓆敷き並べたる如くなり わが行く森の木下蔭の道は 醜神のすまへる森は忽ちに 花匂ひつつ小鳥はうたひつ 虫の音も小鳥の声も天国の 春をうたふか冴え渡るなり 斯くの如花咲き満つる柏木の 森に曲津のすむと思へず 岐美が行く道の隈手に曲津はなし 花咲き匂ひ鳥うたふのみ 真鶴の国より来るか幾千の 鶴は御空に舞ひ初めにけり 斯くならばこの魔の森は天国よ 醜女の神は逃げ去りにけむ 勇ましき岐美の旅かも山も野も 木草の果までよみがへりつつ 幾千の鶴の鳴く音は西方の 国土の万世うたふなるらむ 右左道を違へず進み来し 今日の旅路は安けかりけり 右行かば醜女の神の謀計に 落ちて吾はも苦しみにけむ 曲神の謀の裏をかきながら 岐美は雄々しく出でまししはや 吾も亦光の岐美の御恵に 心安けく魔の森を行くも 処々清水湛ふる泉ありて 天津日の影浮べて澄むも この清水今日が日までも濁らひしを 生言霊に甦りたるよ 斯くならば手に掬ぶとも汚れまじ 長き生命の糧ともならむか』 内容居の神の御歌。 『月読の神の御霊に従ひて 心安けく魔の森を行くも 大曲津見醜のすみかのこの森の 岐美のみゆきに清まりしはや 曲津見は恐れをなしてスウヤトゴルの 山もろともに遠去りにける 醜狐数多棲むてふこの森も 月日輝く神園となりしはや 吹く風も清しく冴えて光るなり 木々の梢は千代ささやきつ 大空を包みし醜の黒雲も 散りて跡なく月日は照らふ 斯くならば未だ地稚き西方の 国土は栄えむ草木は萌えむ 天津醜女神は何処の野の果に 逃げ去りにけむ姿だにもなし 次々に岐美の光の輝きて 醜の魔神の隠れ所もなし 天翔り地を潜りて逃ぐるとも 如何でのがれむ神の眼を 西方の稚き国原にやうやうと あらはれましぬ光の岐美は この国土は八十比女神のいまさずば 殊に乱れし曲津のすみかよ 曲神は八十比女神のいまさぬを よき機会として雄猛び狂ふも 主の神の依さし給ひし八十比女の 神の御稜威は国土の鎮めよ この国土に八十比女の一柱ましまさば 斯くも曲津は猛ばざりしを 漸くに光の神の出でましを 仰ぎて国原よみがへりつつ 主の神の神言畏み国原を 廻れど曲津は亡びざりける 八十日日はあれども今日の生日こそ 国土の始めの吉日なるかも 濛々と黒雲立ちて昼もなほ 小暗き国土を照し給ひぬ わが岐美の厳の御水火に大空を 包みし雲も散り失せにけり 黒雲は紫の雲と変じつつ この国原はあらたに生れむ 八雲立つ黒雲立ちたつ西方の 国土を照して光る岐美はも 待ち待ちし光の岐美は現れましぬ 神に祈りし功なるらむ 今日よりは国津神等導きて 禊の神事に世を生かすべし 四方八方は雲と霧とに包まれて 月光さへも見ぬ国土なりけり 仰ぎ見れば天津日の光月の光 御空の碧に輝き給ひぬ 空碧く地は緑に木草生ひて 生れし国土は神国なるかも 高照の山は東に聳えつつ 紫の雲わき立つが見ゆ 今日までは高照山の頂上も 雲に包まれ見えずありしよ』 初産霊の神の御歌。 『駿馬の嘶き強し御空にも 鶴の鳴く音の冴え渡る今日 この国土に始めて見たる日月の 光のさやけさに吾魂生くるも 黒雲に空は閉され国津神は 始めて拝む月日なりけり 真鶴の空に舞ひつつ歌ひつつ 岩戸開けし国土を祝ふも 大空を十重に二十重に包みたる 雲散り行きて御空高しも 碧々と底ひも知らぬ空の海を 静に渡らす月舟の影 嬉しさは何に譬へむ百千花 咲き匂ひたる新しき国土を 山に野に百花千花咲き満ちて 吹き来る風も芳しき国土』 愛見男の神の御歌。 『天国と早や愛見男の神柱の 国土はさやけく雲晴れにつつ 瑞御霊光の岐美の出でましに 新しき国土生れたるかも スウヤトゴル曲津見潜む山脈は 今を限りに遠ざかりつつ 曲神を言向け和せ西方の 国土の月日を永久に拝まむ 草も木も小鳥も虫も今日よりは 岐美の御稜威をうたひ奉らむ 有難き日は来りけり瑞御霊 光の岐美の御稜威あふれて 雲霧は四方に立ち立ち風冷えて 木草の生育も乏しき国土なりし 永遠の光の岐美の言霊に この稚国土はよみがへるべし 西方の国土には八十比女神坐さず 曲津見処得顔に猛びし 待佗びし光の岐美の国土造り 喜び迎へむ国津神等は』 斯く神々は各自生言霊の御歌うたひつつ、曲神の棲めるてふ、柏木の森を何の艱みもなく突破し、スウヤトゴル山脈さして、駒の轡を並べ悠然として進み給ふぞ畏き極みなりけり。 (昭和八・一一・三〇旧一〇・一三於水明閣森良仁謹録) |
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霊界物語 | 76_卯_世界の神話/朝香比女の神の物語 | 04 怪しの巌山 | 第四章怪しの巌山〔一九二一〕 八十曲津見の神は、鋭敏鳴出の神の生言霊にうたれて、雲霧となり、西吹く風にあふられて、一度は東の御空遥かに逃げ失せたれども、ここに再び陣容を立て直し、飽くまでも神の神業にさやらむと、古綿をちぎりたる如く、雲を次々吐き出だし、幾千丈とも限りなく重り合せて、遂には天を貫く大巨巌となり、蜿蜒数百里にまたがる巌骨の山を築き上げ、その前面に千尋の深き溪川をつくりて、一歩も進ましめざらむとし、力を尽すこそ忌々しけれ。 ここに、高野比女の神一行は、駒の轡を並べて、夜を日についで進ませ給ふ折しもあれ、前途に横はる思ひがけなき巌山に、行手を遮られ、暫し思案にくれ給ひけるが、ここに鋭敏鳴出の神は、曲津見の醜の雄猛びものものしやと宣りつつ、かたへの千引巌を、頭上高くさし上げながら、「うん」と一声、深溪川の巌ケ根に向つて打ちつけ給へば、巌と巌とは相摩して、迸り出でたる火の光に、曲津神は驚きて、さしもに堅き巌山も、どよめきそめつ梢後方に退きにける。 紫微天界に於ける、火の生れ出でしは、鋭敏鳴出の神の巌投げによりて始まれるなり。曲津見の神は激しく飛び出でし火の光に、驚きて肝を冷し、今までの勇気はどこへやら、数百里にまたがる巌山も、次第々々に影うすらぎ、遂には白雲となりて、御空遠く消え失せたるぞ不思議なれ。 高野比女の神はこの態を見て、感嘆のあまり御歌詠ませ給ふ。 『鋭敏鳴出の神の功に生れ出でし 火は曲神を追ひ散らしける 巌骨の山と変じて曲神は わが行先をさへぎりしはや 千引巌の摩擦によりて現はれし 炎はすべてを焼きつくすらむ 天界に始めて見たる火の光 四方を照らして曲をやらへり 巌ケ根ゆ火の出づること悟りけり 鋭敏鳴出の神の神業によりて』 鋭敏鳴出の神は御歌詠ませ給ふ。 『曲神は巌骨の山と変じつつ 行手にさやれど何か恐れむ 巌と巌の軋りて生れし火の神の 功たふとくわれをろがみぬ 谷底に散りたる火花に怖ぢ恐れ ときはの巌山も崩れ初めたり 堅磐常磐の巌の山と見ゆれども 雲と雲とのかたまりなるも アオウエイ生言霊を宣りあげて この巌山を雲と散らさむ』 かく歌ひつつ、鋭敏鳴出の神は、声も朗かに御歌詠ませ給ふ。 『アオウエイ天津真言の言霊に 巌骨山は跡なく消えむ カコクケキ輝き渡る大空の 天津日光に亡びよ曲津見 サソスセシ さやりたる醜の曲津見の曲業も 生言霊の水火に消えなむ タトツテチ たつくもの重り合ひて巌となりし 曲津の山をば崩してや見む ナノヌネニ ながながと広野の中に尾をひきし この巌山もいまに消えなむ ハホフヘヒ空吹く風の功績に 雲と散るべしこの巌山も マモムメミ 曲津見の醜の猛びの深くとも われには言霊剣ありけり ヤヨユエイ 八十曲津見力の限りさやるとも 如何で悩まむ神なるわれは ワヲウヱヰ わくらはに力あつめて生り出でし 曲の巌山いまに砕かむ 一二三四五六七八九十 百千万の神守らせたまへ』 斯く歌ひ給ふや、蜿蜒として幾百里にわたりたる巌骨の山も、次第々々に煙となりて砕けつつ、風のまにまに散り行くぞ愉快なれ。 天津女雄の神はこの態を見て、御歌詠ませ給ふ。 『天晴れ天晴れ鋭敏鳴出の神の功績に 醜の巌山早や崩れたり 曲神の奸計の深溪川さへも 底あせにつつかくろひにけり 天地の中に生れて主の神の 恵みを知らぬ曲津神はも 火の神の在処を始めて悟りけり 巌と巌との中にいますを 曲神の醜のとりでを亡ぼさむ ためには強き力の火なるよ あらがねの地にも火にも神ますと われは始めて悟らひしはや 曲神は火の御光に怖ぢ恐れ 雲の彼方に影をかくせり かくのごと力の限りを集めたる 曲の仕組の山は崩れぬ 言霊の水火に生れし天界に 尊きものは言霊なるかも 何一つ武器は持たねど言霊の 水火の剣に守られ行かむ 真心をつくしの宮居より降り来し われ面白きことを見たりき 駿馬は勇みすすみて天界の この清しさに嘶き止まずも』 梅咲比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『面白き旅に立つかも行先に 曲の構へし砦を破りつ 主の神の御稜威は高しわが岐美の 功は広しと思へば楽し 曲神の心つくしの巌山も 生言霊に跡なく亡びぬ 曲神は偽りごとをたくみつつ さやらむとする心浅ましも 天津真言の生言霊の幸はひに 生りし森羅万象は永久に亡びじ』 香具比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『御樋代神とわれは選まれ東の 宮居に仕へておもふ事なし 今までの心の雲り晴れにつつ わが背の岐美を尊くぞ思ふ 恋しさの心は消えて背の岐美を 敬ふわれとなりにけらしな 鋭敏鳴出の神の功の尊さを 悟りてわれは心はづかし 力なき女神の身もて神業に 仕ふる日々の重さを思ふ さりながら辞まむ術もなかりけり 神の依さしの尊かりせば わが心曇らひにつつ背の岐美の 神業にさやりし事を悔ゆるも 言霊の水火も清めずひたすらに 岐美を慕ひし愚かさを恥づ』 寿々子比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『ここに来て神の奇しき神業を 近く眺めつおどろきしはや 何事も生言霊の幸はひに 生り出づるよしを悟らひにけり やすやすと神に仕へて朝夕を 過せしわれは愚かなりける 朝夕の禊の神事をおこたりし われは御子生み叶はざりしよ 今日よりは瀬見の小川に禊して 生言霊を清め澄まさむ 鋭敏鳴出の神の言霊清ければ 流石の曲津見も逃げ失せにけり』 朝香比女の神は御歌うたひ給ふ。 『御樋代の神とはいへど言霊の 濁りにそひます神はあらまじ わが岐美を恨みし事の今更に はづかしきかも水火の曇れば 曇りたる水火もて少しも曇りなき 水火にあはすと思ひし愚かさ 吾のみか八柱比女神も悉く 生言霊は濁らひますらむ 御子生みの神業に離れし過も みな言霊の濁ればなりけり 今日よりは心の奥より清め澄まし 神の依さしの神業につくさむ 御樋代の神と任けられいたづらに この年月を暮すべきやは 言霊の清くありせば曲神の 千引の巌も崩れこそすれ 朝な夕な瀬見の小川に禊して 慎しみ敬ひ神業に仕へむ 曲神の強き猛びも恐れずに 進み行かむか言霊剣もて』 宇都子比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『宇都子比女われは御樋代神として 今日が日までも待ちあぐみたり 真心をつくしの宮居に詣でつつ 主の大神の光りにうたれつ 主の神の依さしの神業成らずして あだに月日を過す苦しさ 鋭敏鳴出の神の言霊清ければ 御空の月日も澄み渡りつつ 曲神は雲霧となり雨となりて わが行先にさやりこそすれ 万世の末の末まで生き生きて 神業に仕へむ若返りつつ 若返り若返りつつ神業に 仕へむとして言霊磨くも』 狭別比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『いざさらば進み行かなむ曲津見は 影だにもなく逃げ失せにけり うづ高く積みて造りし巌山も 跡なく消えて春風わたる 言霊の旅を重ねてをりをりに 曲津の奸計をめづらしみ見つ 言霊に消えて跡なき巌山の あとに匂へる百花千花よ 言霊の水火の濁れば雲となり 曲津見となりて世を塞ぐなり 百神の曇れる水火の固まりて 八十曲津見は生れ出でにけむ 斯の如悟りしわれは今日の日を さかひとなして言霊みがかむ わが神魂清まりぬれば自ら 生言霊も澄みきらふらむ 天界の旅をつづけて今更に 生言霊のたふとさを知る 洗へども磨けどおちぬ魂線の 曇りを如何に払はむかと思ふ 神を愛し神を信じつ朝夕に 魂洗ふよりほかに道なし』 花子比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『われもまた御樋代神と仕へつつ 高地秀の宮居に年をふりけり 高地秀の宮居の聖所に朝夕を 曇りし心に仕へ来しはも 愛善の真言の光におはす神は われをきためず許しましぬる 今日よりは心の駒を立て直し 小さき事にかかはらざるべし 大らかにいます岐美ゆゑ大らかに 仕へて神業に勉むべきなり 村肝の心の闇は晴れにけり 主の大神の御旨さとりて 何事も神の御心と知りながら をりをり小さき心のわくも 妬み嫉み今まで続けし八柱の 御樋代神を愚かしみおもふ 御樋代の神の中にもすぐれたる きたなき心持ちしわれなり 花のごと清くあれよと主の神は 花子と名づけ給ひしものを 花も実もなき言霊を宣りにつつ わが背の岐美を悩ませしはや わが罪の深さ重さを悟りつつ 神の御前に詫びつつ泣くなり』 小夜子比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『夜も昼も神の恵みに抱かれて 天界に住むわれはたのしも 楽しかるこの天界に生れあひて かこち過せしことを今悔ゆ 言霊の幸はひたすくる天界に われは亡びの道を歩みし 知らず識らず亡びの道を辿りけり 妬ましき心いやかさなりて 御樋代神かたみに妬み嫉みつつ 高地秀の宮居を曇らせしはや 清らけき心の玉をかがやかし かたみに仕へむ神の御前に 主の神の七十五声の言霊に 国津神たち数多生れにき 国津神の上に立てよと主の神の 依さし給ひしわれ等なりける 国津神の心におとる魂線を もちて仕へむことの難きも 真心のあらむ限りを照らしつつ 世のため神のためにつくさむ いざさらば百神駒に召しませよ 東の宮居は遥かなりせば』 高野比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『鋭敏鳴出の神はわが行く先に立ちて 進ませたまへこの広原を 天津女雄の神は後方を守りつつ 進ませたまへ東の宮居へ』 斯く歌ひ給へば、鋭敏鳴出の神は、高野比女の神其他一同に黙礼しながら、ひらりと駒に跨り、いざや道案内せむと、馬背に鞭うち蹄の音も勇ましく、鈴の音を四辺に響かせながら、春風わたる青野ケ原を進ませ給へば、一行は轡を並べてしづしづと御心も朗かに進み出で給ふ。 (昭和八・一二・五旧一〇・一八於水明閣白石恵子謹録) |
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霊界物語 | 76_卯_世界の神話/朝香比女の神の物語 | 07 外苑の逍遥 | 第七章外苑の逍遥〔一九二四〕 長途の旅に疲れたる百神等は、各自春の日の夢を結ばせ給ひ、高地秀の宮居の広庭は水を打ちたる如く静まりて、小鳥の春を囀り交す声のみぞ聞ゆ。 胎別男の神は駒の疲れを休ませむとして、限りも無き広き外苑の若草萌ゆる清庭に、駒を放ちて遊ばせ給ひつつありける。 春風は徐ろに吹き花の香を四辺に送り、四方はおぼろに靄立ちこめて、げに長閑なる晩春の景色なりける。 朝香比女の神は長途の疲れもいとひ給はず、この長閑なる春日を眠るは惜ししと、花の蕾のほぐれたる清庭に立ち出で給ひ、心静に御歌詠ませ給ふ。 『梓弓春の女神は夏山の みどりの園にうつらせ給ひぬ 吹く風も長閑なりけり晩春の 野辺の景色は湯の沸ける如し 百千草所せきまで萌え出づる 野辺の遊びは心地よろしも 露おびし若草の上を踏みて行く 素足の裏のさも心地よき 紫の花はほぐれて池水に 咲くも床しき庭のあやめよ やがて今あやめの花は紫と 日々に匂ひて夏深むらむ 池水の底に泳げる大魚小魚 鰭の動きのすみやかなるも 背の岐美はいづくの果てにお在すらむと 朝な夕なを思ひわづらふ 爛漫と咲きほこりたる桜木の 花もつれなく散る世なりけり 白梅は早や散り果てて若葉萌ゆる 梢につぶら実のぞきゐるかも 天津日は霞の空にほのぼのと 光やはらげて昇りましける 駿馬の嘶き強く草むしる 愛ぐしき姿に夏は来むかふ 山も野もみどりの衣着飾りて 夏の粧ひものものしけれ われもまた御樋代神の一柱 ただいたづらに時を待つべき 天地の森羅万象はうつり行く この天界に黙しあるべき いたづらに岐美を恋ひつつ歳を経し わがおろかさを今更悔ゆるも 御樋代神は御子生みのみにあらずとは 知れど如何でか忍ばるべしやは 岐美を恋ふる心の駒ははやり立ちて 女神の胸は高鳴り止まずも 草の露素足に踏みて行く庭の 果てにも霞む晩春の色 躊躇の弱き心を立直し 勇み進まむわが背の岐美許に 吾行かば背の岐美怒らせ給ふらむ 言霊照して和らげて見むかも 鋭敏鳴出の神の出でましし大宮居は 弥栄えなむわれ居らずとも 百神に議らば心ず止められむ 吾はひそかに旅立たむかも 天津日の西にかたむく夕暮を 駒に跨り御空をたづねむ』 朝香比女の神はひそひそと述懐歌をうたひ乍ら、芝生を逍遥し給ひけるが、胎別男の神は耳ざとくも朝香比女の神の御歌を聞き給ひ、驚きて大宮居に馳せ帰り、七柱の御樋代神始め鋭敏鳴出の神、天津女雄の神に事の由を詳細に告げ給へば、各自驚き給ひて夢を破らせつつ、朝香比女の神の出立を止めむと、夏草萌ゆる外苑に立出で給へば、朝香比女の神は吾乗らむ駒の背に鞍を置かせ給ひ、片御手に手綱を取り、左の御足を駒の鐙に半ばかけむとし給ふ折なりければ、高野比女の神は驚き給ひて馳せより、駒の轡を堅く握らせ給ひて御歌詠ませ給ふ。 『春さりて夏来むかへる清庭に 何故汝は駒に召さすか 駿馬に跨りいゆく旅衣も 早や夏の日となりにけらしな 草枕旅に立たすは春と秋の 花と紅葉の頃なるべきを』 朝香比女の神は右手に手綱を取りながら答の御歌詠ませ給ふ。 『背の岐美の御上思へば恋ふしさの 心つのりて得堪へずなりぬ 八十筋に乱れ初めにしわが心 つかねむ由もなかりけるかな 大道に違ひ奉ると知りつつも 吾進まばや背の岐美許に 駿馬のはやる心を止めます 公の言の葉恨めしきかな いか程にとどめ給ふもわが心 はや旅立ちを定めたりける なまじひに止め給ひそわが駒は 旅に立たむと足掻き止まずも』 高野比女の神は儼然として御歌詠ませ給ふ。 『主の神の汝は依さしの御樋代よ 許しなくして旅に立たすか 天界は主の大神の御樋代よ いかで許さむ独断心を』 朝香比女の神は答の御歌詠ませ給ふ。 『主の神の道に背くと知りながら 恋ふしさつのりて死なまく苦し 日に夜に苦しみもがきし吾魂は 消なば消ぬべく死なば死ぬべし 矢も楯もたまらぬまでの恋ふしさに 胸の高鳴り苦しく止まずも 今となりて恋ふしき心をひるがへす 力なきわれを許させ給へ』 鋭敏鳴出の神はこの様を見て驚きながら、御歌詠ませ給ふ。 『主の神に御樋代神とまけられし 公にあらずや省みましませ 草枕女神の一人旅立ちは 危ふかりけむ時を待たせよ いか程に心はやらせ給ふとも この稚国土は進む道なし』 朝香比女の神は決然として歌ひ給ふ。 『よしやよし万里の荒野を渉るとも 吾は恐れじ言霊剣もてれば 言霊の貴の剣をふりかざし さやらむ曲津を斬りはふり行かむ 高地秀の宮居は尊し背の岐美は 一入なつかし黙しあるべきや 吾一人これの宮居にあらずとも 鋭敏鳴出の神ひかへますなり 遠くはかり深く思ひて吾は今 御子生みの旅に立たむとすなり 主の神の依さしの神業遂ぐるまで 吾は帰らじ許させ給へ 御樋代の比女神等よわが願ひ 𪫧怜に委曲に聞きて許さへ わが心千引の巌より重くして 如何なる力も動かし得ざらむ』 梅咲比女の神はしとやかに御歌詠ませ給ふ。 『背の岐美を思はす心のあさからぬ 朝香の比女の真言を悲しむ 吾とても日々に恋ふしく思へども 御許しなければせむ術もなし あらためて神の許しの下るまでは 朝香の比女よ暫く待ちませ いたづらにわが思ひねをつき通し 後にて悔います公を悲しむ 御樋代の神と仕へてわれとても 心苦しくけ長く待ちぬる 汝が心吾は知らぬにあらねども 神の許しのなきを恐るる 兎も角も高地秀の宮居に帰りませ 汝が心のはやりいませば 落ちつきて身の行く末を語らひつ 静かに静かにおこなはせませ』 朝香比女の神は御歌もて答へ給ふ。 『ありがたし梅咲比女の神宣 心に刻みて忘れざるべし さりながら生命消ぬまでこがれてし 岐美はわが身に捨て難きかも 百神はいかにわが身をはかゆとも 恐れず行かむ駒に鞭うちて 御樋代の神等宮居の司等 わが旅立ちを詳細に許せよ いざさらば駒に跨り出で行かむ すこやかにませ御樋代神等』 と言ひつつ、再び駒に跨らむとし給ふにぞ、寿々子比女の神は駒の轡をきびしく手握り給ひて、御歌詠ませ給ふ。 『吾とても岐美を恋ひつつ朝夕を 歎きて暮らす神魂なりけり さりながら主の大神の許しなくて これの聖所をはなるべしやは 汝が神の清き心のそこひまで 吾は悟れりとどむるも悲し 止めあへぬ涙かくして夜昼を なげきし吾はかくもやつれし さりながら神の依さしの重ければ 忍びて待ちぬ長の月日を この度は思ひ止まり給へかし 牡丹の花も開き初むれば 爛漫と咲き匂ひたる桜花も 夜嵐に散る世を思ひませ 愛善の紫微天界も永久に 花も梢のものならざらむ』 宇都子比女の神は、駿馬の前にしとやかに立たせ給ひつつ、朝香比女の神の旅立ちを止めむとして御歌詠ませ給ふ。 『春さりて夏はやうやく来向へる 野に若草は萌えさかりける 夏草の萌ゆる聖所を後にして 旅立たす公の心あやしも 願はくば暫しを待たせ主の神の やがて許しの下る日来らむ 何事も己が心のままにならば 吾も黙して止まらざるべし 汝が神の切なる心は悟れども 天界のために吾はとどめむ 大宮居に朝な夕なを仕へます 汝の勤めを汚し給ふな 言霊の御樋代神とつつしみて 高地秀の宮居に暫し仕へませ 吾とても同じ思ひに泣きながら 忍びて宮居に仕へゐるなり』 狭別比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『朝香比女神の神言の出で立ちを とどめむとする吾は苦しも 苦しさを忍びてとどむるわが言葉 うべなひ給へ朝香の比女神よ 高地秀の峰の桜は散り果てて 野は常夏の色をそめたり 高地秀の春のはじめの桜花も はや散りにけり御樋代神の身に 春過ぎし花なき木草の如何にして 花なる岐美と水火の合ふべき 夏草は所せきまで萌え出でぬ 汝が神すでに歳古りにける 歳古りし御樋代神は言霊の もとゐとなりて天界を守れよ 吾も亦歳ふりし身よ言霊の 御樋代神となりて仕へむ 高地秀の宮居の名花を散らすかと 思へば惜しし公の旅立ち』 花子比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『花子比女花の姿はあせにけり 朝香の比女も斯くやましけむ あさからぬ朝香の比女の志 とどめむとして涙あふれつ 顕津男の神の御後を訪ねむと 思ほす公の心かなしも 顕津男の神は国土生み神生みの 神業忙しく顧みたまはじ 遥々と遠の山野をのり越えて 無情に泣かす公を悲しむ 村肝の心の駒を立て直し 止まり給へ高地秀の宮居に』 小夜子比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『小夜更けし身ながら光の顕津男の 神の御後を訪はす術なさ 春さりて夏の夕べを旅立たす 公を悲しとおもひて泣くも』 朝香比女の神は、決心の色を面に浮べて御歌詠ませ給ふ。 『神々のあつき心は悟れども 心の駒の足掻き止まずも わが神魂愛ぐしと思し給はれば 許させ給へ今日の旅立ちを よしやよし曲神道にさやるとも 生言霊になびけ進まむ 言霊の幸に生れしわれにして 言霊の水火輝かざらめや 駿馬のはやる心を貫ぬきて 吾は進まむ背の岐美許に』 天津女雄の神は憮然として歌ひ給ふ。 『朝香比女の強き心は悟れども 今暫くを待たせたまはれ 比女神の矢竹心をおさへむと 百神等の真心かなしも 百神のやさしき心をよそにして 旅立たむとする公ぞつれなき』 朝香比女の神は矢も楯もたまらず、決然として鞭を右手に手握り、左手に手綱をささげながら御歌詠ませ給ふ。 『いざさらば百神等よ大宮居に 朝な夕なを仕へましませ 百神等の御旨にそむくと思へども かたき心をわれ如何にせむ』 と言挙げしつつ一鞭あててまつしぐらに夕闇の幕分けつつ一目散に駆け出で給ふぞ是非なけれ。 (昭和八・一二・六旧一〇・一九於水明閣谷前清子謹録) |
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霊界物語 | 77_辰_田族比女の神の物語(万里の島) | 19 邪神全滅 | 第一九章邪神全滅〔一九五一〕 茲に五柱の男神は、谷間の嶮を千辛万苦を重ねつつ辛うじて突破し、魔棲ケ谷を囲める丘の廻りに佇み給ひて、各自力限りに生言霊の征矢を間断なく放ち給ひければ、遉の曲津見も居耐らず此処を先途と必死の力を現はし、百千の邪神は雲霧となり岩となり火の玉となり、前後左右に狂ひ廻り、幾度となく五柱神の身辺を襲ひ危険刻々に迫りければ、霊山比古の神はもはやこれ迄なりと臍下丹田に力を籠め、 『アオウエイ』 と繰り返し繰り返し宣らせ給ひければ、山麓の小笹ケ原の傍なる楠の森に、手具脛ひいて待ち給ひける三柱の比女神は、わが乗り来りし駿馬に向ひ、 『タトツテチ ハホフヘヒ』 と力限りに言霊を宣り給ひけるにぞ、駒は忽ち大なる翼を生し、長大なる鷲と化しけるにぞ、三柱比女神はこれぞ全く神の賜なりと、鷲馬の背に跨り、一目散に魔棲ケ谷の邪神の巣窟さして中空高く翔りつき給ひ、天上より大なる鷲の嘴もて、竜神の頭を啄き、或は太刀膚を傷り、獅子奮迅の勢をもて挑み戦ひ給へば、遉の曲津見も敵し得ず、谷川は忽ち血の川となりて邪神の影は跡もなく清まりける。この大勝利を見るよりも、三柱の比女神は、其儘中空を翔り、御樋代神の屯し給ふ泉の森をさして、一目散に復命申し給ひ、御樋代神の感賞の言葉を頂き給ひける。 扨て五柱の比古神は、大蛇の群の永久に棲みし魔棲ケ谷の巣窟に、生言霊を宣りつつ進み給へば、周章狼狽のあとありありと見えて、数多の宝玉は彼方此方に飛び散りて、目も眩ゆきばかりなりければ、五柱の男神は戦利品として悉く拾ひ帰り、田族比女の神に奉らむと評議一決し、金銀、瑪瑙、瑠璃、硨磲、白金、金剛石なぞ、数限りなき宝玉を五つの苞に包み、勝鬨あげて一先づ泉の森に引き返し給ふ事とはなりぬ。 総て真言の天津神はスの言霊より生れたるさまざまの声の水火より生れませる神にましませば、全身悉く光に輝き、恰も水晶の如く透明体にましませば、ダイヤモンドまたは金銀珠玉の装飾物を要せずとも其光彩妙にましましにけり。之に反して曲神は、身体曇りに満ちぬれば種々の宝玉を全身に附着して光に包まれ、真言の神を真似むとするものなり。例へば真言の神は孔雀の如く曲津神は烏の如し、烏は孔雀の翼の美しきを羨みて、其落ちし羽根を拾ひ吾翼の間に挿み置きて数多の烏に其美しさを誇るが如く、曲津神は競ひて宝玉を集め、其輩に対して光を誇るものなれば、曲神の強きもの程数多の宝玉を身に附着し居りしものなり。此度の言霊戦によりて太刀膚の竜神も、長大身大蛇も、百の竜神も、装ふべき宝を取り纒むる暇もあらず、倉皇として天の一方に逃げ去り、天日の光に照らされて、次第々々に亡び失せけるこそ目出度き限りなりけれ。 併し乍ら太古の神々は、光なき天然の石を琢磨きて五百津御須麻琉の珠をつくり首飾、腕飾又は腰の辺りの飾となし給ひしかども、決して金剛石の如き光を放つものを身に帯ぶることを卑しめ給ひしものなり。何故なれば、神の御身体はすべて光にましませば、光の宝玉を身に纒ふ時は神自身の光の弱きを示す理由となりて、他の神々に卑しめらるるを忌み給ひたればなり。今の世にも貴婦人とか称するもの、令嬢とか言へるものはさておき、すべての婦人等が競ひてダイヤモンドの光に憧憬れ、千金を惜しまず競ひ購ひ、身体の各部に飾りつけて其豪奢を誇り、美を誇り、光を誇れるは、恰も烏が孔雀の落羽根を吾翼の間にさして誇れるのと何の選ぶところなかるべし。全身を光強き金剛石につつむなればまだしも、唯一局部に小さき光を附着して誇るが如きは、実に卑劣なる心性を暴露せる卑しき業と言ふべし。 愛善の徳に満ち信真の光添はば、身に宝石を附着せずとも、幾層倍の光を全身に漲らせ、知らず識らずの間に尊敬せらるるものなり。吾人は婦人等の指又は首のあたりに鏤めたる種々の宝石の鈍き光を眺めつつ、浅ましき卑しき心よと、常々嘔吐を催し、其人々の醜さを層一層感ぜしめらるるなり。 五柱の神は、魔棲ケ谷の醜神を根底より剿滅し、歓喜に堪へず、常に黒煙を吐きて国土をなやませたる曲津見の棲処を瞰下しながら、稍小高き丘の上に立ち、御歌うたひつつ踊り舞ひ狂はせ給ひける。其御歌、 『天晴々々四方の国原晴れにけり 白馬ケ岳の南側の 百谷千谷を集めたる 大谷川の上流に 潜みて醜の曲神の 猛び狂ひしそのありか 世を曇らせし元津場 雲を起せし醜の山 霧を涌かせて物皆の 育ちを妨げ荒びたる 元津砦は亡びけり 万里の島根は今日よりは 醜の荒びの黒雲も 冷たき霧の涌きたちも 跡なく消えて久方の 蒼き御空の奥深く 天津陽の光輝きたまひ 月読の神はさやかなる 光を雲井にとどめまし 地上に恵の露ふらし すべてのものの命をば 千代に八千代に守りまし この神国は永久に 花咲きみのり穀物 豊になりて牛馬も 肥え太りつつ日に月に 栄ゆる神世となりぬべし 此国原は未だ稚く 国津神等の影もなし 蛙と鼠の輩は 田畑を耕し穀物 育てて命を保ちつつ 弥永久に永久に 月日と共にやすらはむ ああ惟神々々 生言霊の幸ひて 三柱比女神逸はやく 鷲馬の背に跨りて 大空高く翔り来つ 吾等のなやみし戦を たすけたまひし雄々しさよ 曲津の神の秘めおきし 百の宝は欲りせねど 今日の戦の勝鬨の 印と集め包みとし 駿馬の背に積み満たし 御樋代神の御前に 供へまつらむ勇ましや 天地創めし昔より かかる例はあら尊 神の依さしの神業を 𪫧怜に委曲に仕へし吾等は 千代に八千代に伝はりつ 世の語り草となりぬべし 思へば嬉し勇ましし 思へば畏し主の神の 生言霊の光なれ 貴の御水火の力なれ 久方の天はせ使ひ 事の語り言も是をば。 烏羽玉の夜は迫り来むいざさらば 下りて帰らむ泉の森まで』 五柱の神々は数多の宝玉を戦利品として背に負はせつつ、百津石村の碁列せる難所を神言を奏上しつつ漸くにして山麓の小笹ケ原の楠の森に着かせ給ひければ、五頭の神馬は主の帰りを待ち佗びつつ、樹下に頭を並べ整列し居たりける。 霊山比古の神は之を見て御歌詠ませ給ふ。 『吾駒は雄々しく正しく待ち居たり 生言霊の耳にさへしか 白馬ケ岳荒ぶる神を打ち払ひ 勝鬨あげて帰りきつるも 村肝の心晴れたりわが魂は 駿馬なして勇みつるかも 復命確に申さむ嬉しさに この黄昏も心明るき』 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『吾いゆく道に遮りし曲津見も 煙と消えて今日の勝鬨 中空を翔り来ませる比女神の 力に曲津は苦もなく破れし 今日よりは白馬ケ岳に立ち昇る 雲はいづれも紅に映えむ 稚き地稚国原の草も木も 今日を限りと繁り栄えむ かくのごと雄々しき正しき神業に 仕へし吾身の幸を思ふも 非時に黒雲立ちし白馬ケ岳の 魔棲ケ谷は晴れ渡りつつ 面白し曲津の砦を打ち破り 明日は御前に復命せむ』 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『岩根木根踏みさくみつつ登りゆく 谷間の道は嶮しかりけり 曲津見は女神となりて吾行手に 遮らむとせり浅はかなるも 五柱水火を合せて宣り上ぐる 生言霊に曲津はさやぎぬ 岩となり火の玉となりいろいろに 力尽して射対ひ来りぬ 危しと見るより霊山比古神は 水火を凝らして言霊宣らせり 言霊の終る間もなく比女神は 鷲馬に跨り翔り来ましぬ 後の世に語り伝へむ今日の日の 生言霊の奇びの神業を』 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『村肝の心にかかりし神業も 苦もなくすみて空晴れ渡りぬ 天津日は白馬ケ岳に傾きて 大いなる影さし来りつる 山蔭は横に倒れて御空より 地より闇は迫り来らしも 顧みれば吾勇ましよ諸神と 水火を合せて曲津を退ひし 黒雲と霧に艱みし万里の島の 天地は清く明け渡りぬる』 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『諸神の功は千代に万代に 輝きたまはむ語草にも いざさらば駒に鞭うち大野原 急ぎ帰らむ泉の森まで』 ここに神々は駒の背に跨り、黄昏の野路を、轡を並べて泉の森へと急がせ給ひける。 (昭和八・一二・一六旧一〇・二九於大阪分院蒼雲閣加藤明子謹録) |
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霊界物語 | 77_辰_田族比女の神の物語(万里の島) | 余白歌 | 余白歌 肝心の天地と人の元素なる言霊の道疎んず可きやは〈第3章〉 言霊の光に一切万有はいや永遠の生命を保つも〈第3章〉 食物に含める五味のことごとは皆言霊の力なりけり〈第5章〉 人間の言葉にさへも味はひを与へて守らす主の神天晴れ〈第6章〉 言霊の正しき人は久方の天の恵を満たせる神なり〈第6章〉 肝向ふ心正しくあらざればその言霊は濁るものなり〈第6章〉 肝向ふ心に誠ある時は知らず識らずに言霊澄むなり〈第7章〉 音曲家のその大方は言霊の活用知らねばリズムを乱せり〈第7章〉 言霊の活用覚りし暁は謡曲浄瑠璃律に合ふべし〈第8章〉 識者は牛の尻かと思ふまで学者の智慧の暗みたるかな〈第9章〉 識者にあらねば馬尻帽かむらせて我大本の宣伝なさしむ〈第9章〉 久延毘古の神今の世に現はれて平安の道説き諭すなり〈第9章〉 何事も天津誠の正道にそむきて成れるものはあらじな〈第12章〉 真鶴の翼に乗りて天翔り地翔りせむ時の到らば〈第12章〉 学王学研き極めて大宇宙生り出でし状態をつぶさに覚らへ〈第12章〉 到る処魔棲ケ谷の砦ありて曲神に苦しむ人の多かり〈第14章〉 東方の空に雷轟きて都大路に血潮の雨ふる〈第16章〉 思はざる時に思はぬ事ありて思はぬ人の世に立つ春なり〈第17章〉 地の上の人種残らず経済になやまされつつ世は曇るなり〈第17章〉 惟神月充ち天津日足らひつつ弥勒の神世生れむとすも〈第18章〉 地の上の国のことぐ愛善の光りに満つる世は近みかも〈第18章〉 天地の神の守りに地の上のすべてを救ふ神人出で坐せ〈第18章〉 鳥が啼く東の空の旅にありて移り行く世の状を見るかな〈第19章〉 かた時も国を忘れず世の民を思ふは神の心なりけり〈第19章〉 高山の頂雲に掩はれて地上に闇は落ちかかりけり〈第21章〉 百年も千年も同じく有れかしと願ふ曲神の心痛まし〈第23章〉 君国の為に家族を打忘れ獅子奮迅に吾は努むる〈第24章〉[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました] |
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霊界物語 | 78_巳_朝香比女の神の物語(葦原新国) | 02 波上の追懐 | 第二章波上の追懐〔一九五八〕 朝香比女の神の乗らせる磐楠舟は、薄霞棚引く初夏の海原を悠々として辿り行くを、御影の隠るるまで、田族比女の神の一行は名残惜しみつつ見送らせ給ひ、御歌詠ませ給ふ。 『天晴れ天晴れ光の神は出でましぬ 浪の秀隈なく照らし給ひつ 懐かしき光の神に永久に 訣別ると思へば悲しき吾かも 美はしき優しき雄々しき比女神の 御舟を送る悲しき吾なり 手をあげて訣別を惜しみ給ひつる 比女の優しき心ばせかも 顕津男の神の天降らせ給ひてし 思ひするかな比女の出でましは 顕津男の神に訣別るる身のつらさ 思ひ浮べて悲しき吾なり 此広き神国の親と選まれて 吾は悲しき今日に逢ひける 今よりは心の駒を立直し 比女の心に報ひ奉らむ 八潮路の潮の八百路の八潮路を 踏み分け出でます功尊き 永久に此島ケ根に宮居建てて 比女の御心安んじ奉らむ 片時も早く御舎仕へ奉り 比女の御魂を斎き奉らな 御姿はよし見えずとも神社に 御魂祀りて御功偲ばむ 刻々に遠ざかり行く御舟の 御影は吾を泣かしめにけり 万斛の涙湛へて御来矢の 浜辺に御舟を送り奉るも 主の神の定めと思へど今一度 会はまくほしき公なりにけり 八潮路の浪の秀の旅安かれと 神言宣りて御神に祈らむ』 輪守比古の神は海原を打見やりつつ御歌詠ませ給ふ。 『天晴れ天晴れ御舟は遠くなりにけり 吾は悲しさ弥まさりつつ 幾千代も公の御姿わが胸に 輝きまして忘れざるべし 今日の日は浪平かに天津日は うららに照れり御舟幸あれ 振返り振返りつつ出でませる 神の姿の優しくもあるか 高地秀の峰より天降りし神なれば 一入尊く御在ましける 御姿に再び見えむ術なしと 思へば今日の訣別惜しまる 果しなき大海原の浪別けて 進ます公の幸かれと思ふ』 霊山比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『御訣別余り惜しさに悲しさに われ言霊を参らせざりける 万里の島の光を賜ひし比女神の 出でまし送りて何か淋しき 朝香比女神の珍しき出でましに 稚国原はよみがへりたり 浪路遥かに御舟小さくなりにつつ 吾眼界を離れむとすも』 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『白馬ケ岳清き姿は弥永に 公の御行を送りまつらむ 吾眼小さくあれば公が行く 御舟は早くも見えずなりけり 白馬ケ岳の峰羨ましも比女神の 御行を永久に送りまつれば 御来矢の浜辺に立ちて送り奉る 御舟は早くも目路を離りぬ 永久に留まりたまへと祈りてし 光の公は帰りましける 此上は御樋代神に真心を 尽して国土に仕へまつらむ 此国土の宝と比女の賜ひたる 燧石の光に世をまもらばや』 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『此国土に光となりて天降りましし 神は情なく帰りましける 会ふ事の嬉しきものを今日はしも 悲しき訣別に御舟送るも 永久に忘れぬ公となりにけり 此稚国土に光を賜へば 朝夕に火の若宮に仕へつつ 公の功を讃へ奉らむ 心清く優しくまして雄々しかる 比女は真言の神なりにけり』 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『舷に打寄す浪の響さへ いや次々に遠ざかりける 輝ける白き優しき御面は 浪の秀高く隠れましけり 天津日の浪に沈ます思ひかな 光の神は目路を離れり 永遠に仕へ奉ると思ひてし 朝香の比女は此国土になし 田族比女神の神言に畏みて 吾は朝夕仕へまつらむ 白馬ケ岳の醜の曲津も比女神の 功に驚き逃げ失せにけむ 牛頭ケ峰白馬ケ岳の頂を 振返りつつ御覧すらむ 白馬ケ岳の麓に小さき吾ありと 偲ばせ給へ朝香比女の神』 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『今となりて惜しみ奉るも詮なけれ 只真心を捧げ御魂に仕へむ 御舟の影さへ見えず歎かひの 涙しげしげまさり行くかも 此島の森羅万象おしなべて 公に名残を惜しみつつ泣かむ 百草の花も萎れて今日の日の 浜辺の訣別惜しむがに見ゆ 御空行く陽光も薄ら曇らひつ 今日の訣別を惜しませ給へる』 山跡比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『天も地も照らして隈なき比女神の 御姿今は見えずなりける せめてもの記念と賜ひし燧石は 万里の神国の光なるかも 宝石の光は如何に貴くとも 国土を救はむ代にはならず 奉るものもなければ止むを得ず 卑しき宝を奉りける 心よく受けさせ給ひし比女神の 優しき心を忝なみ思ふ 如何にせむ光の神は帰りましぬ 万里の海原の浪踏み別けて 永久に公の功を畏みて 火の若宮に仕へまつらむ』 千貝比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『国土稚き万里の島根に吾ありて 今日の悲しき訣別に遇ふも 懐かしく優しく雄々しき比女神に 吾魂線はいつかひにけり 吾魂は公の御身にいつかひて 海原遠く守り行くらむ 御功の尊くませば比女神の 霊衣は広く四方を照らせり 真心の尊さ始めて覚りけり 御身に溢るる貴の光に 天も地も公の宣らする言霊に 従ひまつると思へば畏し』 湯結比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『今日よりは比女の賜ひし燧石の 功に清き湯をむすぶべし 朝夕に火の若宮に仕ふべく 御湯をむすびて禊せむかな みはるかす大海原は広らかに 御舟の影も見えずなりける いざさらば田族比女の神の吾公よ 万里の聖所に帰りまさずや いつまでも浪の秀見つつ偲ぶとも 詮なきものを早や帰りませ』 茲に田族比女の神一行は、目路を離りし御舟に諦めの心を定め、雄々しくも駿馬の背に跨り蹄の音も勇ましく、其日の黄昏るる頃、無事万里の丘の聖所に帰り着き給ひ、時を移さず夜を日に継いで火の若宮の工事にかからせ給ひけるが、旬日ならずして神の幸ひ弥厚く、荘厳なる若宮は築かれにける。 茲に湯結比女の神は朝夕火の若宮に仕へまし、主の神を始め火の神と称へまつりし朝香比女の神の生魂に白湯を沸かして笹葉に浸し、左右左に打振り朝々の身魂を清め御湯を御前に奉りて忠実に仕へ給ひける。是より今の世に到るまで何れの神社にも御巫なるものありて、御湯を沸かせ、神明に奉る事とはなりたるなり。 朝香比女の神は御来矢の浜を立出で給ひ、御舟の中より田族比女の神の一行に訣別を惜しみつつ、振返り振返り御手を挙げさせ給ひ御歌詠ませ給ふ。 『天晴れ天晴れ御樋代神の現れませる 万里の島根に訣別れむとすも 神々の優しき心に絆されて 思はず月日を重ねけるかも 永久に住みたく思へど主の神の 依さしに背く術なき吾なり 雄心の大和心を振り起し 惜しき訣別を告げにけるかな いつまでも訣別るる機会のなかるらむ 雄々しき健き心持たずば 神々の心知らぬにあらねども 神業思ひて吾は訣別れし 神々は浜辺に立ちて吾舟を 心優しく見送り給へる 万世の末の末まで忘れまじ 真言輝く神々の心は 百年の親しき友に会へる如 隔てなかりし神々を思ふ 吾舟は浪路遥けくなりにける 島の神々安くましませ 真鶴の声も悲しく聞えけり 万里の新国土去らむと思へば』 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『二柱比女神等の神宣 聞くにつけても涙ぐまるる 斯の如優しき清き神々の 生言霊を聞かざりにけり 比女神は斯くあるべきを大方の 心は嫉み妬みに満つるも 御樋代の神と神との言問ひの 其優しさに涙ぐまれつ 御来矢の浜辺にはろばろ見送りし 神の優しき心ばせを思ふ 地稚き国土を拓かす苦しさを 思へば吾は心畏む 真心の限りを尽し愛善の 道に進ます百神天晴れ 吾舟は浪の秀遠く離りつつ 浜辺に立たす神見えまさず 次々に舟遠ざかり行く海原に 益々近く親しき神々よ 神々の御姿見えなくなりにけり 白馬ケ岳の峰は光りつ 白馬ケ岳聳立つ国土におはします 神々等の御姿なつかし』 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『広き稚き国土は吾目路離りつつ 白馬ケ岳の峰のみ光れる 万里の海に浮べる万里の生島は 永遠に栄えよ天地と共に 刻々に遠ざかり行く島ケ根を 懐かしみつつ吾は行くなり 果しなき此海原の中にして 万里の島根は恋しき国土なり』 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『御樋代の神に仕へて万里ケ島の 聖所に清く吾は遊びぬ 草も木も百鳥千鳥も稚国土の 春をうたひて長閑なりけり 雲霧も隈なく晴れて天津日の 御影清しき万里の国土はや 御樋代の神御自ら御来矢の 浜辺に公を見送りたまひし 吾舟は浪の鼓を打ちながら 比女に訣別を告げにけらしな 比女神の優しき姿目に浮きて 忘れぬ君となりにけらしな 顕津男の神に見合ひす其日まで 若く優しくいませと祈るも』 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『天も地も晴れ渡りたる海原を 公に訣別れて行くは淋しも 比女神を始め十柱神等の 優しき心仰がるるかな 優しくて雄々しくいます神々は 醜の曲神を退ひ給ひし 漸くに御来矢の浜も遠くなりて 白馬ケ岳はひとりかがよふ 吾舟は太平の浪を辿りつつ 公を守りていや進むなり 海原を包みし霧も晴れ渡り 楽しき今日の舟の旅かも』 (昭和八・一二・二〇旧一一・四於大阪分院蒼雲閣森良仁謹録) |
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霊界物語 | 78_巳_朝香比女の神の物語(葦原新国) | 16 天降地上 | 第一六章天降地上〔一九七二〕 葦原比女の神の一行は、朝香比女の神の一行を送りまゐらせつつ、忍ケ丘の山麓に春の永日は黄昏れければ、ここに一夜の露の宿りを定めまし、常磐樹生へる丘の上に各自登らせ給ひ、葭葦をもて国津神の編み作りたる清畳を、いやさやさやに敷き並べ、御空の月のさやけさに溶け入りながら、各自に生言霊を宣り、或は御歌を詠ませつつ暁の至るを待たせ給ひける。 天の一方を眺むれば、一塊の雲片もなき紺青の空に、上弦の月は下界を照し給ひ、月舟の右下方に金星附着して燦爛と輝き渡り、月舟の右上方三寸ばかりの処に土星の光薄く光れるを打ち眺めつつ、三千年に一度来る天の奇現象にして稀有の事なりと、神々は各自御空を仰ぎ、葦原の国土の改革すべき時の到れるを感知し給ひつつ、御歌詠ませ給ふ。 葦原比女の神の御歌。 『澄みきらふ御空の海を照らしつつ 月の御舟は静かに懸れり よく見れば月の真下にきらきらと 光の強き金星懸れり 月舟の右りの上方に光薄く 輝く土星の光のさみしも 天界にかかる異変のあるといふは 葦原の動くしるしなるべし 光り薄き土星は天津神にして 金星即ち国津神なり 上に立つ土星の光は光り薄し 月の光に遮られにつつ 下に照る金星の光はいと強し 月の御舟の光支へて 葦原の国土に天降りし天津神の 心をただす時は近めり 朝香比女神の神言よ月と星の 今宵の状を言解き給はれ』 朝香比女の神は御歌もて詠ませ給ふ。 『天津神の言霊濁り水火濁り 光の褪せし土星なりけり 国津神の中より光り現はれて 世を守るてふ金星の光よ 月舟の清き光は葦原比女の 神の御魂の光りなるぞや 此処にます天津神等心せよ 朝な夕なに神を斎きて 天津神は神を認めず国津神は 真言の神を斎きまつれる 千早振る神は光に在しませば 神にかなへる魂はかがよふ 神を背にし信仰の道欠くならば 神魂の光り次ぎ次ぎに失せむ』 葦原比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『有難し光の神の神宣を 宜よとわれは頷かれける 二十年を曲津の神に艱みしも 神に離れし報いなりける 主の宮居に仕ふる天津神等は 心を清め魂を磨けよ 主の神は天津御空に奇なる 兆を見せて警め給ふも』 真以比古の神は驚きて御歌詠ませ給ふ。 『知らず識らず心傲りて主の神に 仕ふる道を怠りにけり 朝香比女神の神言の御教に わが魂線は戦きにけり 国津神の艱みを思ひて朝夕に 主の大神に祈りまつらむ 葦原比女神の御魂は御空行く 月の光と輝き給へる かくの如輝き給ふ葦原比女の 神とは知らず過ぎにけらしな 光薄き土星の魂を持ちながら 月の光の上にのぼりつ 貴身小身の道を乱しし報いかも 今まで曲津の猛びたりしは 葦原の国土の守りの吾にして 御樋代司をうとみけるかも 御樋代神よ許させ給へ今日よりは 真言をもちて仕へまつらむ』 御樋代神は御歌もて答へ給ふ。 『汝こそは真言をもちて大前に 仕へまつらむ御名なりにけり 曲津見に清き御魂を曇らされ 土星の如く薄らぎて居り とにかくに土星の光出づるまで 地に降りて世に尽せかし 金星は国津神等の仰ぎつる 野槌の彦の御魂なりける 今日よりは野槌彦をば天津神の 列に加へて司と為さむ 真以比古其他の神々悉く 地に降りて魂を清めよ 野槌彦は今日より其の名を改めて 野槌の神と仕へまつれよ』 野槌彦は答ふ。 『国津神賤しき吾は如何にして 国土の宮居に仕へ得べきや 如何に吾金星の光保つとも 一柱もて仕へむ術なし』 葦原比女の神はこれに答へて、御歌詠ませ給ふ。 『天津神の野槌の神よわが宣れる 言霊謹み国土に仕へよ 国津神の清き正しき魂選りて 天津神業を言依さすべし 葦原の国土のことごとまぎ求め 清き御魂を選びて用ひむ』 朝香比女の神は、葦原比女の神の大英断に感じて御歌詠ませ給ふ。 『葦原比女神の神言の雄々しさよ 天と地とを立替へ給ひぬ 光なくば黒雲包む葦原は 黒白も分かぬ闇の世なるよ 常世ゆく万の災群起きるも 曇れる神のたてばなりけり 御樋代神の上に輝く神々の 土星の御魂を浄めさせ給へ 今すぐに金星の如光らねど 倦まずば遂に御楯とならむ 久方の空に奇瑞の現はれしは 我国土生かさむ御神慮なりける』 成山比古の神は驚きて御歌詠ませ給ふ。 『桜ケ丘の宮居に二十年仕へ来て わが魂線は世を濁らせる 今となりうら恥づかしく思ふかな 御空に魂の性現はれつ 御樋代の神の言葉を畏みて 吾今日よりは地に降らむ 国津神の列に加はり斎鋤を 持ちて田畑を耕し生きむ 葦原の国土に涌き立ちし黒雲も 吾等が為めと思へば恐ろし 天地の神の御恵深くして わが過を許させ給ひぬ』 霊生比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『吾も亦土星の魂となり果てて この国原を乱しけるかも これよりは土星の性にふさはしき 地に降りて田畑を拓かむ 地の性持てる賤しき魂線の 如何で御空に光るべしやは 今迄は真言の天津神なりと 心傲りつつ年を経にけり わが魂の曇りは土星と現はれて 忍ケ丘の地に墜ちける 御樋代の神の言葉は主の神の 御水火なりせば背かむ由なし 国津神の照れる御魂を引き上げて 豊葦原の国土守りませ 御供に仕へまつるも畏しと 思へばわが身戦き止まずも 久方の天津空より荒金の 地に降りし今宵の吾かも 知らず識らず御魂曇りて天津神の 位置は地上にうつらひにけり』 栄春比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『栄春比女神と仕へて朝夕に 御樋代神の御魂汚せし 主の神の尊き御前を知らず識らず 礼なく仕へしわが罪恐ろし 鷹巣山に雲わき立ちて葦原の この稚国土は風荒びたり 野槌比古神の清しき魂線は 御樋代神の司となりませり 今日よりは野槌の神の御光の 隈なく照らむ葦原の国土に 曇り果て乱れ果てたる国原を 救ふは野槌の神の功よ』 八栄比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『東の国土の果てなる桜ケ丘に 仕へし吾の終りは来にけり おほけなくも女神の身ながら宮居の辺に 仕へまつりし事を悔ゆるも 今となりて何を歎かむ村肝の 心の曇りの報いなりせば 朝夕に神の供前に太祝詞 吾怠りつ今に及べり 主の神の御水火になりし葦原比女の 神さげしみし罪を恐るる 吾なくば葦原の国土は治まらじと 思ひけるかな愚心に 愛善の神は今までわが罪を 許させ給ひし事のかしこさ 畏しと宣る言の葉も口籠り わが胸の火は燃え盛るなり 今宵限り天津神なる位置を捨てて 野に降りつつ田畑を拓かむ』 朝香比女の神は又もや御歌詠ませ給ふ。 『天の時地の時到りて葦原の 国土の光は現はれにけり 葦原の国土の標章と今日よりは ⦿の玉の旗を翻しませ ⦿の玉を並べ足らはし十と為し 真言の国土の標章と定めよ』 葦原比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『有難し国土の始めの旗標まで 賜ひし公の功は貴し 万世に吾は伝へてこの旗を 国土の生命と祀らせまつらむ 天津神の野槌の神は国の柱 定めて吾に奉れかし』 野槌比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『有難し葦原比女の神宣 吾選ぶべし四柱の神を 天津神の列に加はる神柱は 高照清晴彦を選ばむ』 葦原比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『高彦を高比古の神照彦を 照比古の神と名を改めよ 清彦は清比古の神晴彦は 晴比古の神と名乗り仕へよ』 野槌比古の神は感謝しながら御歌詠ませ給ふ。 『有難し天津神の位置に選まれし 吾等五柱は身をもて仕へむ 今宵すぐに駿馬使を馳せにつつ 四柱神を招き仕へむ』 葦原比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『一時も早く此の場に招き寄せて この葦原の神柱たてよ』 かくして、四柱の神は小夜更くる頃、駿馬に鞭うたせつつ、此処に集り来り、葦原比女の神の宣示のもとに、かしこまり天津神の列に加はり給ひぬ。 夜は森々と更け渡り、暁近く百鳥の声は爽かに響き、春野を渡る風は、かむばしき梅ケ香を送り田鶴は九皐に瑞祥をうたひ、鵲は常磐の松の梢に黎明を告げて寿ぐが如し。 ああ惟神恩頼ぞ畏けれ。 (昭和八・一二・二二旧一一・六於大阪分院蒼雲閣林弥生謹録) |