| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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1 (142) |
ひふみ神示 | 5_地つ巻 | 第5帖 | 片輪車でトンテントンテン、骨折損の草臥儲けばかり、いつまでしてゐるのぞ、神にまつろへと申してあろうがな、臣民の智恵で何出来たか、早う改心せよ。三月三日、五月五日は結構な日ぞ。九月十六日、ひつ九のか三。 |
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2 (183) |
ひふみ神示 | 6_日月の巻 | 第10帖 | ツギ、アメノトコタチノミコト、ツギ、クニノトコタチノミコト、ツギ、トヨクモヌノミコトトナリナリテ、アレイデタマイ、ミコトスミキリタマヒキ。辛酉の日と年はこわい日で、よき日と申してあろがな。九月八日は結構な日ざが、こわい日ざと申して知らしてありた事少しは判りたか。何事も神示通りになりて、せんぐりに出て来るぞ。遅し早しはあるのざぞ。この度は幕の一ぞ。日本の臣民これで戦済む様に申してゐるが、戦はこれからぞ。九、十月八日、十八日は幾らでもあるのざぞ。三月三日、五月五日はよき日ぞ。恐ろしい日ざぞ。今は型であるぞ。改心すれは型小さくて済むなれど、掃除大きくなるぞ。猫に気付けよ、犬来るぞ。臣民の掃除遅れると段々大きくなるのざぞ。神が表に出ておん働きなされてゐること今度はよく判りたであろがな。 |
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3 (217) |
ひふみ神示 | 7_日の出の巻 | 第4帖 | 旧十月八日、十八日、五月五日、三月三日は幾らでもあるぞと申してあろが、此の日は臣民には恐い日であれど神には結構な日ざぞと申してあろが、神心になれば神とまつはれば神とあななへば臣民にも結構な日となるのぞ。其の時は五六七の世となるのざぞ。桜花一度にどっと開く世となるのざぞ、神激しく臣民静かな御代となるのざぞ、日日毎日富士晴れるのざぞ、臣民の心の富士も晴れ晴れと、富士は晴れたり日本晴れ、心晴れたり日本晴れぞ。十二月二日、ひつくのかみ。 |
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4 (252) |
ひふみ神示 | 8_磐戸の巻 | 第16帖 | 世の元からの生神が揃うて現はれたら、皆腰ぬかして、目パチクリさして、もの云へん様になるのざぞ。
神徳貰うた臣民でないと中々越せん峠ざぞ、神徳はいくらでも背負ひきれん迄にやるぞ、大き器もちて御座れよ、掃除した大きいれものいくらでも持ちて御座れよ、神界にはビクともしぬ仕組出来てゐるのざから安心して御用つとめてくれよ。今度はマコトの神の力でないと何も出来はせんぞと申してあろが、日本の国は小さいが天と地との神力強い、神のマコトの元の国であるぞ。洗濯と申すのは何事によらん、人間心すてて仕舞て、智恵や学に頼らずに、神の申すこと一つもうたがはず生れ赤子の心のうぶ心になりて、神の教守ることぞ。ミタマ磨きと申すのは、神からさづかってゐるミタマの命令に従ふて、肉体心すてて了ふて、神の申す通りそむかん様にすることぞ。学や智を力と頼むうちはミタマは磨けんのざ。学越えた学、智越えた智は、神の学、神の智ざと云ふこと判らんか、今度の岩戸開きはミタマから、根本からかへてゆくのざから、中々であるぞ、天災や戦ばかりでは中々らちあかんぞ、根本の改めざぞ。小さいこと思ふてゐると判らんことになると申してあろがな、この道理よく肚に入れて下されよ、今度は上中下三段にわけてあるミタマの因縁によって、それぞれに目鼻つけて、悪も改心さして、善も改心さしての岩戸開きざから、根本からつくりかへるよりは何れだけ六ヶ敷いか、大層な骨折りざぞよ。叱るばかりでは改心出来んから喜ばして改心さすことも守護神にありてはあるのざぞ、聞き分けよい守護神殿少ないぞ、聞き分けよい悪の神、早く改心するぞ、聞き分け悪き善の守護神あるぞ。この道の役員は昔からの因縁によってミタマ調べて引寄せて御用さしてあるのざ、めったに見当くるわんぞ、神が綱かけたら中々はなさんぞ、逃げられるならば逃げてみよれ、くるくる廻って又始めからお出直しで御用せなならん様になって来るぞ。ミタマ磨け出したら病神などドンドン逃げ出すぞ。出雲の神様大切申せと知らしてあること忘れるなよ。子の歳真中にして前後十年が正念場、世の立替へは水と火とざぞ。ひつじの三月三日、五月五日は結構な日ぞ。一月十四日、 |
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5 (271) |
ひふみ神示 | 9_キの巻 | 第14帖 | 三月三日から更に厳しくなるから用意しておけよ、五月五日から更に更に厳しくなるから更に用意して何んな事起ってもビクともせん様に心しておいてくれよ、心違ふてゐるから臣民の思ふことの逆さ許りが出てくるのざぞ、九月八日の仕組近ふなったぞ、この道はむすび、ひふみとひらき、みなむすび、神々地に成り悉く弥栄へ 戦争つきはつ大道ぞ。一時はこの中も火の消えた様に淋しくなってくるぞ、その時になっておかげ落さん様にして呉れよ、神の仕組愈々世に出るぞ、三千年の仕組晴れ晴れと、富士は晴れたり日本晴れ、桜花一二三と咲くぞ。三月十七日、ひつぐの神。 |
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6 (279) |
ひふみ神示 | 10_水の巻 | 第5帖 | 外国のコトは無くなるぞ。江戸の仕組旧五月五日迄に終りて呉れよ。後はいよいよとなるぞ。神が申した時にすぐ何事も致して呉れよ、時過ぎると成就せん事あるのざぞ。桜花一時に散る事あるぞ、いよいよ松の世と成るぞ、万劫変らぬ松の世と成るぞ。松の国松の世結構であるぞ。この神示声出して読みあげてくれよ。くどう申してあろがな。言霊高く読みてさえおれば結構が来るのざぞ。人間心出してはならんぞ。五月一日、三のひつ九のかみ。 |
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7 (288) |
ひふみ神示 | 10_水の巻 | 第14帖 | 今迄は闇の世であったから、どんな悪い事しても闇に逃れる事出来てきたが闇の世はもうすみたぞ。思ひ違ふ臣民沢山あるぞ。何んな集ひでも大将は皆思ひ違ふぞ。早ふさっぱり心入れ換へて下されよ。神の子でないと神の国には住めんことになるぞ。幽界へ逃げて行かなならんぞ。二度と帰れんぞ。幽界行きとならぬ様、根本から心入れかへて呉れよ。日本の国の臣民皆兵隊さんになった時、一度にどっと大変が起るぞ。皆思ひ違ふぞ。カイの御用はキの御用ぞ。それが済みたら、まだまだ御用あるぞ。行けども行けども、草ぼうぼう、どこから何が飛び出すか、秋の空グレンと変るぞ。この方化けに化けて残らずの身魂調べてあるから、身魂の改心なかなかにむつかしいから、今度と云ふ今度は、天の規則通り、びしびしとらちつけるぞ。御三体の大神様三日此の世をかまひなさらぬとこの世はクニャクニャとなるのざぞ。結構近づいて居るのざぞ。大層が近づいて居るのざぞ。この神示読みて神々様にも守護神殿にも聞かせて呉れよ。いよいよあめの日津久の神様おんかかりなされるぞ。旧五月五日、みづのひつ九か三。 |
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8 (468) |
ひふみ神示 | 21_空の巻 | 第13帖 | 我が勝手に解訳してお話して神の名汚さん様にしてくれよ、曇りた心で伝へると、曇りて来る位 判って居ろがな、神示通りに説けと申してあろが、忘れてならんぞ。履物も今に変って来るぞ、元に返すには元の元のキのマヂリキのない身魂と入れ替へせねばならんのぢゃ、 |
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9 (771) |
ひふみ神示 | 30_冬の巻 | 第1帖 | 宇宙は霊の霊と物質とからなってゐるぞ。人間も又同様であるぞ。宇宙にあるものは皆人間にあり。人間にあるものは皆宇宙にあるぞ。人間は小宇宙と申して、神のヒナガタと申してあらう。人間には物質界を感知するために五官器があるぞ。霊界を感知するために超五官器あるぞ。神界は五官と超五官と和して知り得るのであるぞ。この点誤るなよ。霊的自分を正守護神と申し、神的自分を本守護神と申すぞ。幽界的自分が副守護神ぢゃ。本守護神は大神の歓喜であるぞ。神と霊は一つであって、幽と現、合せて三ぞ。この三は三にして一、一にして二、二にして三であるぞ。故に肉体のみの自分もなければ霊だけの自分もない。神界から真直ぐに感応する想念を正流と申す。幽界を経て又幽界より来る想念を外流と申すぞ。人間の肉体は想念の最外部、最底部をなすものであるから肉体的動きの以前に於て霊的動きが必ずあるのであるぞ。故に人間の肉体は霊のいれものと申してあるのぞ。又物質界は、霊界の移写であり衣であるから、霊界と現実界、又霊と体とは殆んど同じもの。同じ形をしてゐるのであるぞ。故に物質界と切り離された霊界はなく、霊界と切り離した交渉なき現実界はないのであるぞ。人間は霊界より動かされるが、又人間自体よりかもし出した霊波は反射的に霊界に反影するのであるぞ。人間の心の凸凹によって、一は神界に、一は幽界に反影するのであるぞ。幽界は人間の心の影が生み出したものと申してあろうがな。総ベては大宇宙の中にあり、その大宇宙である大神の中に、大神が生み給ふたのであるぞ。このことよくわきまへて下されよ。善のこと悪のこと、善悪のこと、よく判って来るのであるぞ。故に、人間の生活は霊的生活、言の生活であるぞ。肉体に食ふことあれば霊にもあり、言を食べているのが霊ぞ。霊は言ぞ。この点が最も大切なことじゃから、くどう申しておくぞ。死んでも物質界とつながりなくならん。生きてゐる時も霊界とは切れんつながりあること、とくと会得せよ。そなた達は神をまつるにも、祖先まつるにも物質のめあてつくるであろうがな。それはまだまだ未熟な事ぞ。死後に於ても、現実界に自分がある。それは丁度、生きてゐる時も半分は霊界で生活してゐるのと同じであるぞ。自分の衣は自分の外側であるぞ。自分を霊とすると、衣は体、衣着た自分を霊とすれば家は体、家にゐる自分を霊とすれば土地は体であるぞ。更に祖先は過去の自分であり、子孫は新しき自分、未来の自分であるぞ。兄弟姉妹は最も近き横の自分であるぞ。人類は横の自分、動、植、鉱物は更にその外の自分であるぞ。切りはなすこと出来ん。自分のみの自分はないぞ。縦には神とのつながり切れんぞ。限りなき霊とのつながり切れんぞ。故に、神は自分であるぞ。一切は自分であるぞ。一切がよろこびであるぞ。霊界に於ける自分は、殊に先祖との交流、交渉深いぞ。よって、自分の肉体は自分のみのものでないぞ。先祖霊と交渉深いぞ。神はもとより一切の交渉あるのであるぞ。その祖先霊は神界に属するものと幽界に属するものとあるぞ。中間に属するものもあるぞ。神界に属するものは、正流を通じ、幽界に属するものは外流を通じて自分に反応してくるぞ。正流に属する祖先は正守護神の一柱であり、外流に加はるものは、副守護神の一柱と現はれてくるのであるぞ。外流の中には、動植物霊も交ってくることあるぞ。それは己の心の中にその霊と通ずるものあるためぞ。一切が自分であるためぞ。常に一切を浄化せなならんぞ。霊は常に体を求め、体は霊を求めて御座るからぞ。霊体一致が喜びの根本であるぞ。一つの肉体に無数の霊が感応し得るのざ。それは霊なるが故にであるぞ。霊には霊の霊が感応する。又高度の霊は無限に分霊するのであるぞ。二重三重人格と申すのは、二重三重のつきものの転換によるものであり、群集心理は一時的の憑依霊であると申してあろうがな。霊が元と申してくどう知らしてあろうが。人間は現界、霊界共に住んで居り、その調和をはからねばならん。自分は自分一人でなく、タテにもヨコにも無限につながってゐるのであるから、その調和をはからねばならん。それが人間の使命の最も大切なことであるぞ。調和乱すが悪ぞ。人間のみならず、総て偏してならん。霊に偏してもならん。霊も五、体も五と申してあらう。ぢゃが主は霊であり体は従ぞ。神は主であり、人間は従であるぞ。五と五と同じであると申してあろう。差別則平等と申してあらう。取り違い禁物ぞ。神は愛と現はれ、真と現はれるのであるが、その根はよろこびであるぞ。神の子は皆よろこびぢゃ。よろこびは弥栄ぞ。ぢゃがよろこびにも正流と外流とあるぞ。間違へてならんぞ。正流の歓喜は愛の善となって現はれて、又真の信と現はれるぞ。外流のよろこびは愛の悪となって現れるぞ。何れも大神の現れであること忘れるなよ。悪抱き参らせて進むところにマコトの弥栄あるのであるぞ。神は弥栄ぞ。これでよいと申すことないのであるぞ。大完成から超大大完成に向って常に弥栄してゐるのであるぞよ。宇宙は総てに於ても、個々に於ても総てよろこびからよろこびに向って呼吸してゐるのぞ。よろこびによって創られてよろこんでゐるのであるぞ。故によろこびなくして生きないぞ。合一はないぞ。愛は愛のみではよろこびでないぞと申してあろう。真は真のみでは喜びでないと申してあろうが。愛と真と合一し、 |
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10 (1105) |
霊界物語 | 03_寅_十二の国魂/大道別/天使長の更迭 | 序文 | 序文 艮の金神出現以後三十年の立替は、いよいよ明治五十五年、すなはち大正の十一年、三千世界一度に開く梅の花の機運に到達したのである。つぎに坤の金神出現以後二十五年、桃李もの言はずして桃李ものとなりし神の教示も、いよいよ開く桃の春、五十二歳の暁に、月の光に照らされて、霊界探険物語り、ももの千草も、百鳥も、百の言問ひ言止めて、三月三日五月五日の神の経綸を詳細に、悟る神代の魁となつたのも、まつたく時の力といふべきである。明治三十三年九月八日の神筆に、 『出口直は三千世界の根本の因縁から末の世のことまで書かす御役なり、それを細かう説いて聞かせるのが海潮の役であるから、一番に男子が現はれて、次に女子が表はれたら、大本の中の役員も、あまり思ひが違ふてをりたと申して、きりきり舞をいたして喜ぶ人と、きりきり舞をして苦しむ人と、力一杯われの目的のために、男子女子を悪くまをすものとができるぞよ。神を突込みておいて我で開いて、まだ悪く申して歩行く、取次がたくさんにできるぞよ。云々』 大本の筆先は、どうしても男子女子でなければ真解することはできぬのは神示のとほりである。しかるに各自の守護神の御都合の悪いことがあると、「女子の筆先は審神をせなそのままとつてはいかぬ」と申す守護神が現はれてくる、困つたものだ。九月八日にいよいよ神示のとほり女子の役となり、隠退して霊界の消息を口述するや、またまた途中の鼻高がゴテゴテ蔭で申し出したのである。女子の帰神の筆を審神者する立派な方が沢山できて、神様も御満足でありませう。 また、明治五十五年の三月三日五月五日といふ神の抽象的教示にたいして、五十五年は大正十一年に相当するから、今年は女子の御魂にたいして肉体的結構があるとか、大本の神の経綸について花々しきことが出現するかのやうに期待してをる審神者があるやうにきく。されど、神の御心と人間の心とは、天地霄壌の相違があるから、人間の智慧や考へでは、たうてい、その真相は判るものでない。五十五年といふことは、明治二十五年から三十年間の神界経綸の表面に具体的にあらはれる年のいひである。 三月三日とは三ツの御魂なる月の大神の示顕が、天地人三体に輝きわたる日といふことである。日は「カ」と読む、「カ」はかがやくといふことである。今まで三十年間男子の筆先の真意が充分に了解され、また従道二十五年に相当する女子の御魂の光が、そろそろ現はれることを暗示された神諭である。二十五年間、周囲の障壁物にさまたげられた女子の御魂の神界経綸の解釈も、やや真面目になつて耳をかたむくる人が出現するのを、「女子にとりて結構な日である」と示されたものである。あたかも暗黒の天地に、日月の東天を出でて万界を照らすがごとき瑞祥を、五月五日といふのである。五は言霊学上「出」であつて、五月五日は出月出日の意味である。二十五年の天津風、いま吹きそめて経緯の、神の教示も明らけく、治まる御代の五十五年(出神出念)、いよいよ神徳出現して、神慮の深遠なるを宇宙に現出すべき時運にむかふことを慶賀されたる神示であります。 月光世に出でて万界の暗を照破す、これ言霊学上の五月五日となるのであつて、けつして暦学上の月日でないことは明白である。三月三日と五月五日に、変つたことがなければ信仰をやめるといふ無明暗黒の雲が、遠近の天地を包むでゐるやうに思はれましたから、一寸略解をほどこしておきました。これでもまた女子の御魂の言は審神者をせなくてはいかぬと、唱ふる豪い人々が出現するかもしれませぬ。これが暗黒の世の中といふのでせう。 神諭に「女子にとりて結構な日である」云々は微々たる五尺の肉体にたいしての言ではない。神霊そのものの大目的の開き初むるを慶賀されたる意味であることを了解すべきである。千座の置戸は、瑞の御魂の天賦的神業たることを承知してもらひたい。 霊界物語を読ンで、初めて今日までの神諭の解釈にたいする疑雲は一掃され、心天たちまち晴明の日月をうかべ、霊体力に光輝をそへ歓喜と了解の日月出現していはゆる三月三日五月五日の瑞祥を神人ともに祝することになるのである。 五月五日は男子の祝日、菖蒲の節句である。三月三日は女子の祝日で、桃の節句である。女子の御魂聖地に出現してより二十五年の間桃李物言はず自ら蹊をなせしもの、ここに目出度く世にあらはれて苦、集、滅、道を説き、道、法、礼、節をはなばなしく開示することとなつたのも、神界経綸の神業成就の曙光をみとめ、旭光照破の瑞祥にむかつたので、神人界のともに祝福すべき年であります。 ○ この物語のうちに大自在天とあるは、神典にいはゆる、大国主之神の御事であつて、大国彦命、八千矛神、大己貴命、葦原醜男神、宇都志国魂神などの御名を有したまひ、武力絶倫の神にましまして国平矛を天孫にたてまつり、君臣の大義を明らかにし、忠誠の道を克く守りたまふた神であります。本物語にては大自在天、または常世神王と申しあげてあります。 大自在天とは仏典にある仏の名であるが、神界にては大国主神様の御事であります。この神は八代矛の威力をふるつて、天下を治めたまうた英雄神である。皇祖の神は、平和の象徴たる璽と、智慧の表徴たる鏡とをもつて、世を治めたまふのが御神意である。故に我皇孫命の世界統御の御神政は、飽く迄も道義的統一であつて、武断的ではないのである。故に天津日嗣天皇の世界御統一は、侵略でも征伐でもない、併呑でも無い、皇祖大神の大御心を心とし玉ふたのである。劍を用ゐ玉ふは、変事に際してのみ其神聖不可犯の御威力を発揮し玉ふので、是又止むを得ざるに出でさせ玉ふ御神業であります。決して大自在天的武力統一ではない、御仁慈の御政治であります。[※「故に我皇孫命の」から「御仁慈の御政治であります。」までは、戦前の版・聖師御校正本には書いてあるが、戦後の版からは削除されている。霊界物語ネットでも削除されていたが、2020/4/27に追加した。] また盤古大神塩長彦は一名潮沫彦と申し上げる、善良なる神にましますことは、前篇に述べたとほりであります。この神を奉戴して荒ぶる神人等が色々の計画をたて、神界に活動して国治立命の神政に対抗し、種々の波瀾をまきおこしたことはすでに述べたとほりである。そこでこの世界を救ふべく、諾冊二神がわが国土を中心として天降りまし、修理固成の神業を励ませたまふこととなつた、ありがたき物語は篇を逐うて判明することであらうと思ひます。惟神霊幸倍坐世 大正十一年一月三日 王仁識 |
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霊界物語 | 07_午_日の出神のアフリカ物語 | 総説 | 総説 神界の示教は、到底現代人のごとく、数理的頭脳の活力を以て窺知することは出来ないものである。神は言霊即ち道である。言葉を主として解すべきものである。神諭の三月三日五月五日の数字についても、現代の物質かぶれをした人士は、非常な論議の花を咲かして居られるさうです。出口教祖の直筆の文句には『明治三十年で世の立替云々』と、明治三十三年ごろになつても、依然として記されてあるのを見ても、神界の示教の現代的解釈に合致せないことは明瞭であります。 また教祖の直筆は所謂お筆先であり、そのお筆先を神示に随つて、取捨按配して発表したのが大本神諭である。之を経の筆先と称して、変性女子の緯の筆先と区別し、経は信ずるが、緯は信じないと謂つてゐる人々が、処々に散見される様ですが、経緯不二の真相を知らんと思へば、教祖の直筆をお読みに成つたら判然するでせう。お筆先そのままの発表は、随分断片的に語句が列べられ、かつ一見して矛盾撞着せし文句があるやうに浅い信者は採るやうなことが沢山ある。また教祖が明治二十五年より、大正五年旧九月八日まで筆先を書かれたのは、全部御修行時代の産物であり、矛盾のあることは、教祖自筆の同年九月九日の御筆先を見れば判然します。 変性女子のやり方について、今日まで誤解して居たといふ意味を書いて居られる。その未成品の御筆先しかも変性女子みづから取捨按配した神諭を見て、かれこれ批評するのは、批評する人が根本の緯緯を知らないからの誤りであります。私はもはや止むに止まれない場合に立到つたので、露骨に事実を告白しておきます。要するに教祖は、明治二十五年より大正五年まで前後二十五年間、未見真実の境遇にありて神務に奉仕し、神政成就の基本的神業の先駆を勤められたのである。女子は入道は明治三十一年であるが、未見真実の神業は、同三十三年まで全二ケ年間で、その後は見真実の神業である。霊的に言ふならば教祖よりも十八年魁けて、見真実の境域に進ンでゐたのは、お筆先の直筆を熟読さるれば判りませう。 三千年と五十一年、三四月、八九月、正月三日、三月三日、五月五日なぞの数字に囚はれてゐた、いはゆる○○派、○○派の説明に誤られてはならぬ。五十一年の五は、厳の意味であり、十は火水[※「火水」は御校正本にルビなし]、または神の意、一年は始めの年の意味である。要するに三千年(無限の年数)の間の、大神の御艱苦が出現して、神徳の発揮さるる最初の年が、明治二十五年正月からと云ふ意義である。九月八日の九はツクシであり、月はミロクであり、八は開く、日は輝くの意味で、梅で開いて松で治めるといふ意義である。九月とは松で治める意義、八日とは梅で開く意義である。また正月三日の正は、一と止と合した意味であり、月は月光、三は瑞または栄え、日は輝くことで、神徳の完全に発揮されることを、正月三日といふのである。故に神諭の解釈は容易にできない。また筆先と神諭の区別も弁へて読ンで貰はねばなりませぬ。 この霊界物語も、人智を以て判断することは出来ませぬ。たとへ編輯人、筆録者の解説といへども、肯定しては成りませぬ。ただ単に文句のまま、素直に読むのが、第一安全でありますから、一寸書加へておきます。 大正十一年瑞月祥日 於瑞祥閣王仁識 |
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霊界物語 | 09_申_松竹梅の宣伝使の南米・中米の旅 | 09 鴛鴦の衾 | 第九章鴛鴦の衾〔四〇二〕 久方の天津御空も地土も左右りと廻る世に 邂逅うたる親と子の心の空の五月暗 晴れて嬉しき夏の日の緑滴る黒髪を 撫でさすりつつ入り来る父の便りを松代姫 心の竹のふしぶしに積る思ひをいたいけの 花の蕾の唇を開く梅ケ香姫の御子 三月三日にヱルサレム館を抜けて三人連れ 月雪花の照彦は主従都を竜世姫 いよいよ此処に月照彦の神の御魂の鎮まれる 珍の都の主宰神桃上彦の掌る 珍の館に着きにけり五月の空の木下闇 五日は晴れむ常磐木の五月五日の今日の宵 父子夫婦の廻り会ひくるくる廻る盃の つきの顔五月姫松竹梅の千代八千代 栄の基となり響く宴会の声は此処彼処 珍の都も国原も揺ぐばかりの賑はしさ。 正鹿山津見神は五月姫との結婚の式ををはり、淤縢山津見、駒山彦、珍山彦三柱とともに、宴会の最中、朝な夕なに心を痛めし故郷の、松、竹、梅の最愛の娘子の訪ね来りし事を聞き、歓喜の涙に咽ぶ折しも、国彦の案内につれて一行は此場に現はれぬ。三人の娘は嬉しさに胸逼り、父の顔を見るより早く三人一度に首を垂れ、傍に人なくば飛びつき抱きつき互ひに泣かむものと、思ひは同じ親心、桃上彦も暫し喜びの涙に咽びて、唯一言の言葉さへも出し得ず今まで賑はひし宴会の席も、何となく五月の雨の湿り気味とはなりぬ。珍山彦は、 珍山彦『ヤア、これはこれは、目出度い事が重なれば重なるものだ。今日は五月五日、菖蒲の節句だ。黒白も分かぬ暗の世を、あかして通る宣伝使の、天女にも擬ふ五月姫、三月三日の桃の花にも比ぶべき桃上彦の命と、偕老同穴の契を結びし矢先、瑞霊の三人連、松のミロクの代を祝ふ御娘子の松代姫様、直な心の竹野姫様、三五教の教も六合一度に開く梅の花、綻びかけし梅ケ香姫様の親子の対面、何と目出度い事であらうか。それにまだまだ目出度きは月照彦の神の名を負ふ照彦さまの御供とは、何とした不思議な配合だらう。あゝこれで鶯宿梅の梅の喜び、桃林の花曇り、五月の暗もさつぱり晴れて、月日は御空に照り渡るミロクの神代が近づくであらう。三五の月の輝いたその夜に初めて会うた五月姫、父の名は闇山津見でも、もうかうなつた以上は照山津見だ。皆さま、今日の此の御慶事を祝ふために、親子夫婦の睦びあうた目出度さを歌ひませうか』 淤縢山津見は、 淤縢山津見『それは実に結構で御座います。どうか発起人の貴方から歌つて下さいませ』 と願ふにぞ、珍山彦は、 珍山彦『然らば私より露払ひを致しませうか』 と、今までの怪しき疳声に似ず、余韻嫋々たる麗しき声音を張り上げて歌ひ始めたり。 珍山彦『朝日は照る照る月は盈つ天地の神は勇み立つ 誠の神が現はれて三月三日の桃の花 花は紅葉は緑緑滴る松山の 青葉に来啼く時鳥八千八声の叫び声 晴れて嬉しき五月空喜び胸に三千年の 花咲く春に桃上彦の神の命の妹と背の 千代の喜び垂乳根の親子五人の廻り会ひ 五月五日の今日の宵遠き神代の昔より 夕暮れ悪しと忌みし世もかはりて今は夕暮れの 天地に満つる喜びはまたとありなの滝の上 鏡の池の限りなく清水湧き出る如くなり 神代を祝ぐ松代姫一度に開く梅ケ香姫の 貴の命のすくすくと生ひ立ち早き竹野姫 貴の都を後にして珍の都に月照の 空高砂の珍の国珍山彦の木の花は 弥高々と高照姫の神の命に通ふなり 大蛇の船に乗せられてここに四人の神人は 主従親子の顔合せ心合せて何時までも 厳霊を経となし瑞霊を緯となし 三五の月の御教を天地四方に輝かせ 天地四方に輝かせ』 と歌ひ終れば、淤縢山津見神は、またもや口を開いて祝歌を歌ふ。 淤縢山津見『三月三日の桃の花三千年の昔より 培ひ育てし園の桃君に捧ぐる桃実の 心も春のこの宴会五月五日の花菖蒲 香り床しき五月姫御空も晴れて高砂の 尾の上の松の下蔭に尉と姥との末長く 清く此世を渡りませ頭は深雪の友白髪 松、竹、梅の愛娘世は烏羽玉の暗くとも 月日は空に照彦の光眩ゆき佳人と佳人 鶴は千歳と舞ひ納め亀は万代舞ひ歌ふ 秋津島根の珍の国五男三女と五月姫 千代に治まる国彦の栄をまつぞ目出度けれ 栄をまつぞ目出度けれ』 珍山彦は、 珍山彦『ヤア目出度い目出度い、コレコレ五月姫さま、貴女は此家のこれからは立派な奥様、今三人の御娘子は貴女の真の御子ぢや、腹も痛めずに、こんな立派な月とも雪とも花とも知れぬ天女神を子に持つて、さぞ嬉しからう。縁と云ふものは不思議なもので、佳人が醜夫に娶られたり、愚人が美女と結婚するのは世の中の配合だ。然るに貴女は正鹿山津見神様のやうな智仁勇兼備、何一つ穴のない、あななひ教の宣伝使を夫に持ち、佳人と美女の鴛鴦の契の夢暖かく、夫婦親子が花の如く月の如く雪の如く、清き生活を送らるると云ふ事は、またと世界にこれに越した幸福はあるまい。恋には正邪美醜賢愚の隔てがないと云ふ事だが、貴女の恋は完全ですよ。桃と菖蒲の花も実もある千代の喜び、幾千代までもと契る言葉も口籠る。鴛鴦の衾の新枕、実に目出度い、お目出度い』 五月姫は、 五月姫『有難う御座います』 と唯一言、顔赭らめて稍俯いて居る。珍山彦は、 珍山彦『もしもし五月姫さま、貴女は今晩の花だ。一つ華やかに歌つて貰ひませうか』 五月姫は耻かしげに立ち上り、長袖淑やかに歌ひ舞ひ始めたり。 (大正一一・二・一三旧一・一七加藤明子録) |
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霊界物語 | 09_申_松竹梅の宣伝使の南米・中米の旅 | 11 蓬莱山 | 第一一章蓬莱山〔四〇四〕 松代姫の歌。 松代姫『松は千年の色深く厳のみろくの守り神 瑞の御魂と現はれし三五教の宣伝使 三葉の彦の神魂清き尊き玉鉾の 広道別と改めて黄金山に宮柱 太知り立てて神の代を治め給ひし神業を 朝な夕なに嬉しみて天地に願ひを掛巻も 畏き神の引き合せ恋しき父に邂逅ひ 心の丈を語りあふ今日の月日を松代姫 待つ甲斐ありて今茲に松竹梅の姉妹は 恋しき父に巡り会ひ又もや母の懐に 抱かれて眠る雛鳥の吾身の上ぞ楽しけれ 吾身の上ぞ楽しけれ朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも千代も八千代も変りなき 心やさしき五月姫母の命と敬ひて 心を尽し身を尽し力の限り仕ふべし あゝ垂乳根の父母よ親と現はれ子となるも 遠き神代の昔より天津御神や国津神 金勝要の大神の結び給ひし神業と 聞くも嬉しき今日の宵竜世の姫や月照彦の 神の命の守ります高砂島は幾千代も 山は繁れよ野は栄え花は匂へよ百の実は 枝もたわわに結べかし五日の風や十の日の 雨も秩序をあやまたず稲麦豆粟黍までも 豊に稔れ永久に蓬莱山も啻ならず 鶴の齢の末長く亀の寿のいつまでも 夫婦親子の契をば続かせ給へ国治立の 神の命よ豊国姫の神の命よ平けく いと安らけく聞しめせ天教山にあれませる 木の花姫の御守りは千代も八千代も変らざれ 千代も八千代も変らざれ神に任せし親と子の 心は清し惟神御霊幸はへましまして 世の大本の大御神開き給ひし三五の 言葉の花は天地と共永遠に栄えませ いや永遠に栄えませ』 と述懐歌をうたひ、しとやかに舞ひ納めたれば、竹野姫は又もや起つて、長袖ゆたかに歌ひ舞ふ。 竹野姫『あゝ有難し有難しいづの身魂のみ守りに うづの都を立ち出でてえにしも深き海の上 おさまる胸は智利の国かがやき渡る天津日の きしに昇りて山河をくもなく渡る四人連れ けしき勝れし珍の国こころも晴るる今日の空 さかえに充てる父の顔しら雪紛ふ母の面 すずしき眼月の眉せみの小川の水清く そそぎ清めし神御魂たなばた姫の織りませる ちはた百機綾錦つぼみも開く梅ケ香に てる月さへも清くしてとこよの暗も晴れてゆく なに負ふ清き高砂のにしきの機を織りなして ぬなとも母揺にとり揺らしねがひ叶ひし親と子は のどかな春に逢ふ心地はるる思ひの鏡池 ひびに教ふる言霊のふかき恵みを仰ぎつつ へに来し夢も今はただほーほけきよーの鶯の ま声とこそはなりにけれみじかき夏の一夜さに むすぶも果敢なき夢の世のめぐりて此処に親と子は もも夜の春に逢ふ心地やちよの椿優曇華も いや永遠に薫れかしゆくへも知らぬ波の上 えにしの船に乗せられてよを果敢なみつ進み来る わが身の上を憐みていづの御魂や瑞御魂 うきに悩める姉妹のゑがほも清き今日の宵 をさまる夫婦親子仲四十五文字の言霊の 花も開いて実を結ぶ結びの神の引き合せ 娘と父と母神の今日の団欒ぞ嬉しけれ 今日の団欒ぞ楽しけれ』 梅ケ香姫は又もや起つて歌ひ舞ふ。 梅ケ香姫『ひは照る光る月は冴ゆふかき恵みの父母よ みたりの娘を何時までもよは紫陽花と変るとも いつくしみませ永久にむすぶ縁の糸柳 ながながしくも親と子はやちよの春の来るまで こころ変らぬ松の世のときは堅磐に何時までも もも上彦と現はれて千々の民草守りませ よろづのものを救ひませひがしに昇る朝日影 二日の月は上弦のみいづかくして世を守る よしも悪しきも難波江のいつしか晴るる神の胸 むかしの神代廻り来てなく杜鵑声高く 八千代の春を祝ふらむこころも清き梅ケ香の とこよの春を迎へつつももの千花に魁けて ちり行く後に実を結ぶよろづ代祝ふ神の国 ひかり洽き神の国ふかき恵みに包まれて みろくの御代を松代姫よし野に開く花よりも いつも青々松緑むつびに睦ぶ神人の なさへ目出度き高砂ややま河田畑美はしく こころも直き竹野姫ときは堅磐に栄ゆべし もも上彦の知らす世は千代も八千代も限りなく よろづ代までも栄えませ万代までも栄えませ 思ひは胸に三千年の一度に開く梅の花 心のたけのすくすくと世は治まりて伏し拝む み民の心ぞ尊けれみ民の心ぞ尊けれ 常世の松代くれ竹野世のふしぶしに潔く 色も香もある桃の花梅ケ香慕ふ鶯の 声も春めき渡りつつ血を吐く思ひの杜鵑 声も静かに治まりて松吹く風となりにけり 松吹く風となりにけり緑滴る夏山の 霞をわけて天津日の輝き渡る五月姫 三月三日の桃の花五月五日の花菖蒲 桃と菖蒲の睦びあひ松竹梅の千代八千代 栄ゆる御代ぞ目出度けれ栄ゆる御代ぞ目出度けれ』 と節なだらかに、舞ひ終り座に着きぬ。珍山彦は、 珍山彦『ヤア、天晴々々、これは秀逸だ。天の数歌を三度も繰返された御手際は、三月三日の桃の花よりも、五月五日の花菖蒲よりも、美はしい、尊い目出度い歌であつた。さあさあ、これからは照彦さまの番だよ』 照彦は儼然として立上り、声高々と自ら歌ひ自ら舞ふ。 照彦『天地百の神たちのその喜びをただ一人 うけさせ給ふ桃上彦の神の命の宣伝使 地の高天原を出でまして御稜威も高き高砂の 島に現はれ正鹿山津見の命の珍都 音に名高き淤縢山祇の神の命や村肝の 心の駒山彦司御稜威輝く蚊々虎の 名もあらたまの貴の御子木の花姫の御恵に 珍山彦と宣り直し心も晴るる五月姫 鴛鴦の衾の幾千代も外へはやらぬ悦びは 御稜威も高き高砂の浜辺に繁る松代姫 世は呉竹野すくすくと梅ケ香匂ふ神の島 月日は清く照彦の神の恵ぞ尊けれ 波も静かな国彦の従属の神と諸共に 珍の御国に永久に鎮まりまして高砂や この浦船に帆を揚げて月照彦と諸共に 出潮入潮平けくいと安らけく凪ぎ渡る 大海原に浮く島の国の栄えぞめでたけれ 国の栄えぞめでたけれ』 駒山彦は、 駒山彦『妙々、天晴々々』 と感嘆の声をもらすのみ。珍山彦も手を拍つて、 珍山彦『天晴々々。天晴れ国晴れ皆晴れよ、晴れよ晴れ晴れ晴れの場所、晴れの盃親子の縁、ここに目出度く千代も八千代も、弥永久に祝ひ納むる』 (大正一一・二・一三旧一・一七東尾吉雄録) |
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霊界物語 | 10_酉_黄泉比良坂の戦い | 総説歌 | 総説歌 世は常暗となり果てて再び天の岩屋戸を 開く由なき今の世は心も天の手力男 神の御出まし松虫の鳴く音も細き秋の空 世の憂事を菊月の十まり八つの朝より 述べ始めたる霊界の奇しき神代の物語 三つの御魂に因みたる三筋の糸に曳かれつつ 二度目の岩戸を開き行く一度に開く木の花の 色香目出たき神嘉言常世の国の自在天 高く輝く城頭の三ツ葉葵の紋所 科戸の風に吹きなびき思想の洪水氾濫し ヒマラヤ山頂浸せども明の烏はまだ啼かず 長鳴鳥も現はれず橄欖山の嫩葉をば 啣みし鳩の影もなし天地曇りて混沌と 妖邪の空気充ち充ちて人の心は腐りはて 高天原に現はれしノアの方舟尋ね佗び 百の神人泣きさけぶ阿鼻叫喚の惨状を 救ひ助くる手力男の神は何れにましますぞ 天の宇受売の俳優の歌舞音曲は開けども 五つ伴緒はいつの日か現はれ給ふことぞかし つらつら思ひめぐらせば天の手力男坐しませど 手を下すべき余地もなく鈿目舞曲を奏しつつ 独り狂へる悲惨さよ三五教の御諭しは 最後の光明艮めなりナザレの聖者キリストは 神を楯としパンを説きマルクス麺麭もて神を説く 月照彦の霊の裔印度の釈迦の方便は 其侭真如実相か般若心経を宗とする 竜樹菩薩の空々はこれまた真理か実相か 物理に根ざせる哲学者アインスタインの唱へたる 相対性の原理説は絶対真理の究明か 宗教学者の主張せる死神死仏を葬りて 最後の光は墓を蹴り蘇へらすは五六七神 胎蔵されし天地の根本改造の大光明 尽十方無碍光如来なり菩提樹の下聖者をば 起たしめたるは暁の天明閃く太白星 東の方の博士をば馬槽に導く怪星も 否定の闇を打破る大統一の太陽も 舎身供養の炎まで残らず五六七の顕現ぞ 精神上の迷信に根ざす宗教は云ふも更 物質的の迷信に根ざせる科学を焼き尽し 迷へる魂を神国に復し助くる導火線と 秘かに密かに唯一人二人の真の吾知己に 注がむ為の熱血か自暴自爆の懺悔火か 吾は知らずに惟神神のまにまに述べ伝ふ 心も十の物語はつはつ爰に口車 坂の麓にとどめおくあゝ惟神々々 御霊幸はへましませよ。 ○ 三箇の桃と現はれし松、竹、梅の姉妹が 獅子奮迅の大活動智仁勇をば万世に 残す尊き言の葉のいや永久に茂りつつ 八洲の国の礎を造り固めしその如く 数多の人を大神の誠の道に誘ひて 雄々しき魂となさしめよ黄泉比良坂大峠 昔も今も同じこと三つの御魂に神習ひ 三月三日の桃の花五月五日の桃の実と なりて御国に尽せかし神は汝と倶にあり 御仁慈深き大神の御手に曳かれて黄泉国 うとび来らむ曲神を誠の教の剣もて 善言美辞に打払ひその身その侭神となり 皇御国の御為に力限りに尽せよや 神を離れて神に就き道に離れて道守る 誠一つの三五教の月の心を心とし 尽す真人ぞ頼母しきあゝ惟神々々 御霊の幸を賜へかし。 大正十一年二月廿七日旧二月一日 於竜宮館王仁識 |
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霊界物語 | 19_午_丹波物語4 玉照姫と玉照彦 | 03 千騎一騎 | 第三章千騎一騎〔六四八〕 高山彦は魔窟ケ原の岩窟を後にし、一生懸命に聖地を指して進み行く。漸く白瀬川の畔に着けば、降り続く五月雨に河水汎濫し、波堆く渡川は絶対に不可能となりぬ。 高山彦は川の岸を下りつ、上りつ、地団太踏みて口惜しがり、現在目の前に聖地世継王山を眺め、玉照姫の御座所は彼方かと憧憬の念に駆られて狂気の如くなり居たり。斯る処へ息せき切つて馳来りしは、妻の黒姫なりける。 高山彦『ヤーお前は黒姫か、何しに出て来たのだ』 黒姫『高山さま、ソラ何を言はつしやる。此儘にして置く訳には行きますまい。あれ彼の向ふに見ゆるは世継王の神山、三五教の隠れ場所、玉照姫様は彼の森のしげみに御座るであらう。サアサア早く渡りなさい』 高山彦『渡れと云つたつて此の激流が、どうして渡れやうか』 黒姫『生命を的に渡るのだよ。それだから男は真逆の時に間に合ぬと云ふのだ。お前さまも鼻高の守護神の御厄介になつて中空高く渡りなさい』 高山彦『ソンナことを言つたつて、さう易々と元の体に還元することは出来ないよ』 黒姫『還元出来ないと云ふ道理があらうか、貴方の信仰が足らぬからだ。火になつても蛇になつても、此の川渡らな置くものか』 と云ふより早く、見るも恐ろしき大蛇の姿となり、激流怒濤の真ン中を目蒐けて、ザンブとばかり飛び込み、漸く対岸に渡り付きたり。 高山彦は此の気色に恐れ戦き、ガタガタ慄ひの最中、蛇体の身体より黒雲起り一団となりて、川の上空を此方に渡り高山彦の身体を包むよと見る間に、高山彦は川の対岸にバタリと落ち来たりぬ。蛇体は忽ち元の黒姫と変じ、 黒姫『サア高山さま、コンナ放れ業は一生に一度より出来ないのだが、千騎一騎の此場合、黒姫が信念の力が現はれたのだ。サアサアこれに怖れず、今後は斯様なことは無い程に、妾に続いてお出でなさい』 高山彦は慄ひ声で、 高山彦『ナント女と云ふ奴は恐ろしいものだなア』 黒姫『コレ高山さま、お前はモーこれで愛想がつきただらうな。愛想をつかすなら、つかして見なさい、此方にも一つ考へがありますよ』 と冷やかに笑ふ。高山彦は眼を瞬たき、高き鼻を手の甲で擦り乍ら、 高山彦『イヤ何事も黒姫さまに御任せする、此後は一切構ひ事は致さぬ。貴女のお好きの様に御使ひ下さいませ』 黒姫『大分改心が出来ましたナア、それでこそ妾の立派なハズバンドだ。サアサア往きませう、エヽなンとした足つきじやいな、確りしなさらぬか、此川を渡るが最後、油断のならぬ敵の縄張りだよ』 高山彦『さうだと云つて、ナンダか脚がワナワナして歩けないのだもの』 黒姫『エー何とした卑怯な人だらう。誰が恐いのだい。たかが知れた紫姫、青彦の連中ぢやないかいナ』 高山彦『青彦、紫姫も、ナンニも恐くはない。恐いのはお前の性念だよ』 黒姫『高山さま、斯う見えても矢張女は女だよ。御心配なさるな。これでも又大事にして可愛がつて上げますワ』 高山彦はブルブル慄ひ乍ら、 高山彦『ヤーもう可愛がつて貰はいでも結構です。私の様なものは貴女のお側に寄るのは勿体ない。畏れ多い。どうぞ草履持になつとして下さいな』 黒姫『エー此人は又何とした卑怯なことを云ふのだらう。アヽもうすつかり愛想が尽きちやつた、嫌になつて了ふワ』 高山彦『どうぞ愛想をつかして下さいな。嫌になつて貰へば大変に好都合です』 黒姫は声を尖らし、 黒姫『ソリヤ何を云ふのだい、嫌になつて呉れと言つたつて、今となつて誰がソンナ軽挙なことをするものかいな。蛇に狙はれた蛙ぢやと思つて諦めなさいよ』 高山彦『ハイ諦めます。何事も因縁づくぢやと思つて、コンナ悪縁も辛抱致しませう。前生の悪い因縁が報うて来たのだから』 黒姫『何が悪縁だへ。お前さまは男の心と秋の空、直に飽縁だらうが、妾は何処迄も秋の空で、何処々々迄も好いて好いてすき透つてゐますよ、ホヽヽヽヽ』 高山彦『モシモシ黒姫様、何卒人を一人助けると思つて私の罪を赦して下さいな』 黒姫『そりや又何を言ふのだえ、モー斯うなる上は赦してたまるものか。竜宮の海の底まで伴れて行つて呑みたり、噛みたり、舐つたり大事にして上げようぞへ』 高山彦『モー大事にして貰はいでも結構です。何卒其の御心遣ひは御無用になさつて下さいませ。返礼の仕方がありませぬワ』 黒姫『エーわからぬ男だ。話は後で悠くりして上げよう。サア一時も早く往かねばなるまい。恰度日も暮れて来た』 と高山彦を先に立たせ、夏草茂る露野ケ原を世継王の山麓指して辿り行く。 五月十三夜の月は、楕円形の鏡を空に照してゐる。馬公、鹿公は月の光を眺め、 馬公『アヽ何といい月ぢやないか、のう鹿公』 鹿公『ソリヤ馬公、きまつた事だ。五月五日の宵に玉照姫様がお越し遊ばし、記念すべき月だもの。古往今来コンナよい月があるものかい。それに就ても可哀相なのは黒姫ぢやないか。この通り御空に水晶の玉照姫様が輝き渡り、この又屋内にもお玉さまに、玉照姫さまぢや、之を三つ合せて三つの御魂と云つても宜いワ。アヽ、 濡れて出たやうに思ふや雨後の月 とは如何だ』 馬公『ヤー鹿公、貴様俳句を知つて居るのか』 鹿公『ハイ句でも、歌でも、何でも知らぬものは無い。何なと言うて見よ。当意即妙、直に作つて御目にかける鹿公だよ』 馬公『ソンナラ今彼のお月さまに黒雲がさしかかり、今や隠さうとして居る。彼れを一つやつて見よ』 鹿公『黒姫に玉照姫は包まれて馬鹿を見むとす青彦の空』 馬公『何と云ふ縁起の悪い歌を詠むのだ。宣り直さぬかい、鹿公奴』 鹿公『大方馬公がさうお出ると思つて居た。今度が真剣だよ。 青彦や紫姫の大空に月の玉照姫ぞ輝く とは如何だ』 馬公『ヨーシモー一つやれ』 鹿公『いくらでも、月を題にするのなら月は先祖よ。月の大神様が此世の御先祖様であるぞよ。馬公志つかり聞けよアーン、 月に叢雲花には嵐東に旗雲箒星 天の河原は北南星の流れは久方の フサの御国に落ちて行く高山彦や短山の 嶺より昇る月影も今日は芽出度き十三夜 たとへ黒姫かかるとも伊吹の狭霧に吹き散らし 忽ち変る大御空紫姫や青彦の 清き姿となりにけり。 とは如何だ』 馬公『随分長い歌だのう、鹿公』 鹿公『長いとも長いとも、今に長い奴が黒い顔してやつて来るのだ。横に長い奴と、縦に長い高山彦の青瓢箪だ。うまくやらぬと馬鹿を見るぞよ。変性男子の申す事は一分一厘違ひはないぞよ』 馬公『何を吐すのだ、モー好い加減に止めて貰はうかい。オイオイ彼れを見よ、二つの影が蠢いて居るぢやないか、鹿とは判らぬけれど』 鹿公『ヨオ来居つたぞ、太い短い奴と細い長い奴だ。ヤー此奴は高山彦に黒姫だ。愚図々々して居ると空のお月さまの様に、黒姫に呑まれて了つちや、玉照姫様が一大事だ、サアサア戸を締めろ』 と云ふより早く、鹿公は飛込みてピシヤリと錠を下ろしたり。 馬公『オイ俺も入れて呉れないか』 鹿公『エー邪魔臭い。貴様は何処か叢の中へ潜伏して居れ、馬じやないか。俺は中から此の関所を死守するのだ』 二つの影は段々近寄つて来る。鹿公は何うしても開けぬ。馬公は已むを得ず茅のしげみに身を隠して慄ひ居る。 二人の影は戸口に現はれたり。一人は女、一人は男、 女(黒姫)『モシモシ一寸此処を開けて下さいな』 鹿公『ナンダ、暮六つ下つてから他の家を訪れる奴があるかい。夜は魔の世界だ、用があれば明日出て来い。此門口は鹿公は絶対に開けることは出来ないぞよ』 女(黒姫)『左様で御座いませうが、ホンのチヨイトで宜しい、一尺許り開けて下さい。申し上げ度い一大事がございます』 鹿公、戸口に立つて、 鹿公『其方で一大事があつても此方も亦一大事だ。ナント言つても開けないよ。モシモシ青彦さま、貴方一寸来て下さいな。どうやら黒姫がやつて来たやうですワ』 青彦は奥の間より、 青彦『誰がなんと言つても開けられないぞ』 鹿公『さうだと言つて馬公が外に、這入り損ねて隠れて居ますがな』 黒姫は此の声を聞き、辺りの叢を尋ね、 黒姫『ヤアお前は馬公ぢやな。サアもう大丈夫だ。コレコレ高山さま、用意の綱をお出しなさい。エー何をビリビリ地震の様に慄ふて居なさる。気の弱い獣だな』 と云ふより早く自分の細帯を解いて、馬公を縛つて了ひ、 黒姫『サア馬公、此方へ来るのだよ。此戸を開ける迄、お前は人質だ。若し開けなかつたら此黒姫が正体を現はして、一呑みに呑みて了はうか』 馬公『エーコンナことだと思つて居つた。それだから神様が言霊を慎めと仰有るのに、鹿公の奴、黒姫が何うだの斯うだのと言ひよるものだから、コンナ破目に陥るんだ。オイ馬公は括られたよ、鹿公開けて呉れないか』 鹿公『貴様は括られる役だ、俺は中で長くなつてグツスリ休む役だ。マア夜が明ける迄、其処で立往生するがよいワ。お優しい黒姫さまと、色男の高山さまとのお伴れだもの、あまり淋しくもあるまいがな』 馬公『ソンナ冷酷なことを言ふものぢやないよ、お前もちつとは朋友の道を弁へて居るだらう』 鹿公『マア待て、今これから紫姫様が十八番の言霊の発射を為さるところだ。さうすれば黒姫だつて高山彦だつて風に木の葉の散る如く、悲惨な目に会つて滅て了ふのだ』 馬公『さうしたら俺は何うなるのだ』 鹿公『貴様の事まで、未だ研究はして居らぬ哩。オイ黒姫の奴、誠に以てお気の毒千万、御心中御察し申す。高姫様に嘸お叱言を頂戴なさつたでせう。併し乍ら何程お前さまが玉照姫様をお迎へしようと思つてもモー駄目だから足許の明るい間に、トツトと帰りなさい。其処に馬が一匹居るから、ソレに乗つてお帰りなさいよ』 馬公『コラ鹿公、無茶ばつかり言ふない、俺は決して黒姫さまの馬ではないぞ』 黒姫『どうしても開けませぬか、開けな宜しい。黒姫は道成寺の釣鐘ぢやないが此の家を大蛇となつて、十重二十重に取捲き、熱湯にして見せうか』 鹿公『モシモシ紫姫さま、青彦さま、確りして下さい。トツケもないことを言ひますぜ』 紫姫は言葉静に、 紫姫『ホヽヽヽヽ、御心配なさいますな。鹿さま、確かりと戸を締めて置きなさいや、モシモシ黒姫さま、誠に貴女には御気の毒でございますが、神界の為め、世の中の為には貴女に対して不親切なことを致すのも已むを得ませぬ。どうぞ帰つて下さいませ』 黒姫『何と云つても帰らない。青彦と紫姫の素首を引抜いて、フサの国の高姫様にお目にかけ、玉照姫様を御迎へ申さねば置きませぬぞや』 青彦『何と執念深い婆アさまぢやな、青彦も呆れたよ。いい加減に執着心を放棄したらどうだい』 黒姫『執着心はお前のことだよ。お前から除つたがよからう。さうして玉照姫さまと、お玉さまを此方へ渡しなさい』 青彦『此の執着心だけは何処までも放されない。決して個人の私有すべきものでない、神政成就の大切な御宝だ。たとへ天地が覆へるとも、こればかりは承諾は出来ない、どうぞ早くお帰りになつて下さい』 黒姫『何と云つても黒姫は帰りませぬ』 紫姫『玉照姫様は三五教に於ても無くてはならぬ結構な神様でございます。又ウラナイ教にも必要な神様でございます。さうだと申して両方の欲求を充すと云ふ事は、到底出来ませぬから、いつその事貴方が御改心をなさつて、三五教にお入り下さつたら如何ですか。貴方が御改心なさつた以上は、高姫さまも自然御改心になりませうから、紫がさう云つたと高姫さまに伝へて下さいませ』 黒姫『権謀術数を弄し折角妾が望みた玉照姫様を計略を以て、横領なさつたお前さまこそ改心を為され。どちらが善か、悪か、心の鏡に照して御覧なさい。貴方の行り方は三五教の精神を破壊する行り方、つまり優勝劣敗利己主義ではありませぬか』 鹿公『エー八釜敷い云ふない、黒姫の奴、貴様こそ利己主義ぢやないか。此の玉照姫様は三五教の神様が御経綸遊ばして悦子姫様が取り上げまでなさつた因縁があるのぢや。何と云つても正義だ、先取権があるのだ。他の宝に垂涎して要らぬ謀叛を起し煩悶をするよりも、すつかりと思ひ切つて気楽になつたら如何だ、鹿公は腹が立つワイ』 黒姫『何と云つても是れ許りは貫徹させなくては置くものか。仮令千年万年かかつても祈つて祈つて祈り勝つて見せよう。ヤアコンナ馬公を人質に取つたところが、何の役にも立たない。サア馬公、世界中放し飼だ。何処なと勝手にお出でなさい』 と縛を解けば、馬公は、 馬公『ヤアヤア黒姫さま有難う。ヤアどつこい、お前に縛られて、お前に解かれたのだ、有難うと云ふ筋が無い。エー取返しのならぬ失策をやつたものだ。馬鹿々々しい』 此時紫姫の涼やかな声にて、天の数歌が轟き渡りける。忽ち黒姫は頭部真白と変じ、高山彦の手を引き雲を霞と西北指して逃て行く。 馬公『オイ鹿公、モー黒姫夫婦は逃て了つたよ。どうぞ開けて呉れないか』 鹿公『ヨシヨシ』 と戸をガラリと引き開け、 鹿公『オイ馬公どうだつたい、貴様縛られて居つたぢやないか』 馬公『ウン縛られたよ。併しチツトモ痛くはなかつた。黒姫の奴、俺を縛るときに一生懸命に小声になつて、「大神様済みませぬ、赦して下さい。罪も無い馬公を縛ります、これも御道の為ですから、神直日、大直日に見直し、聞直して下さいませ」と念じて居つた。人の性は善なりとは、よく言うたものだなア』 青彦はこれを聞いて両手を組み、頭を首垂れ思案に沈む。紫姫は直に神前に感謝の祝詞を奏上する。玉照姫は俄にヒシるが如く泣き出し給ひける。お玉は驚きあはてて玉照姫の背を撫で擦り、慰め居たり。 空には白き魚鱗の波を湛へた雲の切れ目に月は朧に輝き、悲しげに山杜鵑の声峰の彼方に聞え居る。 (大正一一・五・六旧四・一〇外山豊二録) |
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16 (1772) |
霊界物語 | 21_申_高春山のアルプス教 | 凡例 | 凡例 一、本巻の原稿は全部口述者の周到なる校閲を経たものであります。お蔭で校正上のいろいろな注意に就て得る所がありました。 一、既刊第二十二巻[※初版の発行日は、第21巻は大正12年4月5日だが、第22巻はそれより早く大正11年7月30日に発行されている。その理由は第22巻初版の凡例に「本年旧五月五日迄の成績を公表せんがため」と記されている(この一文は初版だけに書いてある)。その成績とは第22巻凡例の前半に書いてある。]及び其他の巻の『百足姫』はオサムシと訓すべきですから、『蜈蚣姫』となるべきでしたのを、活字が無かつたので已むを得ず『百足姫』としておきましたが、本巻より全部『蜈蚣姫』と訂正しておきました。 一、『物語』の中に屡『言霊戦を発射する』といふ言葉が現はれて来ますが、それは『言霊線を発射する』の誤りです。が、『言霊戦に参加する』といふ如き場合は無論『言霊戦』でよい訳です。 一、『……でありません』とか『……であるんだ』とかいふ場合の『ん』は本巻より全部『……でありませぬ』又は『……であるのだ』に訂正しましたが、読む時には矢張『……でありません』『……であるんだ』といふ風に読むのださうです。 大正十二年三月編者識 |
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17 (1794) |
霊界物語 | 22_酉_鷹鳥山の鷹鳥姫 | 凡例 | 凡例 一、昨年十月十八日より始められました霊界物語の口述筆録も、本年五月廿八日を以て二十二巻を完了し、ほつと一息した次第であります。其間の日数二百二十三日、大祭とか、節分祭其他休むだに日数を加へて、恰度十日に一冊の割合であります。左に各巻の口述日数を表示して御覧に供します。 巻口述日数口述場所備考 第一八日[※口述日は10月18~26日なので日数は9日の間違いではないか?]松雲閣本巻に限り第十三章以後の日数とす 第二十三日右同本巻第一章(通章第五十一章)口述の夜毒松茸にあてられ閉口す 第三十四日瑞祥閣竜宮館前半は亀岡の瑞祥閣にて後半は教主殿竜宮館にて口述さる 第四十五日竜宮館口述者自ら筆録されし箇所は本巻に最も多し 第五十日竜宮館岩井温泉口述筆録の方が主か入湯の方が主か分らんやうな生活をしながら、五、六の二巻を完了す 第六八日岩井温泉 第七四日錦水亭岩井温泉より帰綾後節分祭までの四日間に完結す 第八五日瑞祥閣高熊山に参拝せし後口述筆録にとりかかる 第九六日右同巻中身代りを立てる箇所を口述さるるや天候険悪となり風雨強かりき 第十七日右同錦水亭口述筆録に妨害を受けしは、本巻を第一とす 第十一四日松雲閣 第十二五日右同本巻口述中蓄音器に祝詞と宣伝歌を吹き込まる 第十三五日右同 第十四三日松雲閣本巻は総章数十七より成り通章五百六十七章を末尾とす 第十五五日錦水亭天国楽土の状況廿一世紀以後の有様を口述しあり 第十六四日錦水亭瑞祥閣本巻より始めて今の日本国に起れる事を説き十里四方宮の内の三十五万年前を口述しあり 第十七三日右同 第十八四日右同弥仙山の因縁が口述されあり 第十九五日松雲閣 第二十三日右同錦水亭 第廿一五日松雲閣 第廿二五日右同本巻完了の日霊鷹五六七殿内を飛び廻ること三回 (註)第一巻、第二巻、第十一巻、第十二巻、第廿二巻を松雲閣に於て口述されし事と、本年旧三月三日迄に五六七大神に因める第十四巻第五百六十七章の口述を終られし事と旧五月五日までに口述者瑞月大先生の誕生日なる旧七月十二日に因縁ある第廿二巻第七百十二章迄を口述されし事と総体の筆録者数が三十三名なりしは惟神的とはいへ、実に不思議と謂はねばなりません。 [※初版にはここに次の一文が記されている。「一、本篇を特別篇として第十篇に先立ち刊行しましたのも、本年旧五月五日迄の成績を公表せんがためでありまして、神界経綸の虎の巻であるとか、旧五月五日の瑞祥が本篇に在るとか、二十二人の生魂に因めるが故ばかりではありません。」(注・当時は「巻」ではなく「篇」と呼んでいた)この一文は三版以降は削除されている(二版は未調査)。] 一、本巻には各巻中でも、最も執着心を取除くことに努むるのが肝腎であると口述され、又第一巻に示されたる地獄や鬼は、皆心の執着から生れ出づるもので、決して今の行刑所や押丁の様に備はつて居るのではないと口述されてありますから、一応読者に御注意を促して置きます。 一、本巻は前巻までを順序よく読まなくとも、全然要領を得られぬといふやうな事は無く、本巻を読んだだけでも解り易く完結されてあります。 一、本巻の原稿紙は千二百二十三枚でありましたが、不思議にも五百六十七枚目に五六七大神の御出現(黄金像)と、其の貴重なる御教示が始まつたのであります。 アヽ月光菩薩は五十二歳にして、其の胎蔵されし苦集滅道を説き、娑婆即寂光浄土の真諦を述べ、道法礼節を遺憾なく開示して居られるのであります。 大正十一年五月廿八日綾部並松和知川畔松雲閣にて 編者識 |
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18 (1795) |
霊界物語 | 22_酉_鷹鳥山の鷹鳥姫 | 総説 | 総説 天の下に生きとし生ける万物の中にありて、最も身魂の勝れたる人間には、天より上中下三段の御霊を授けて、各自の御霊相応に世界経綸の神業を負はしめ給ひ、天国の状態を地上に移してそれぞれ身魂の階級を立別けられてあるけれども、今の世は身魂の位置顛倒して霊肉一致の大道破れ、八頭八尾の邪霊や金毛九尾の悪狐の霊や邪鬼の霊魂なぞ人類の精神を誑惑し、終には地上の世界を体主霊従、弱肉強食の暗黒界と化せしめたるため、今の世界の惨状である。是だけ混乱した社会を何とも思はぬやうに成つたのも、地上の人類が皆邪神の霊魂に感染し切つて居るからである。 天下経綸の神業に奉仕すべき人類の御魂が全然脱退て了ひ、九分九厘まで獣畜の心に堕落して世界は上げも下しも成らぬやうになり、彼方の大空より此方の空へ電火のひらめくが如き急変事の突発せずとも断定しがたい。世界の人類は一日も早く眼を覚し、誠一つの麻柱の道によりて霊魂を研き、神心に立帰らねばならぬ。 真心とは天地の先祖の大神の大精神に合致したる清浄心である。至仁至愛にして万事に心を配り意を注ぎ、善事に遭ふも凶事に遇ふも、大山の泰然として動かざるが如く、微躯つかず、焦慮らず、物質欲に淡白く、心神を安静に保ち、何事も天意を以て本となし、人と争はず能く耐へ忍び、宇宙万有一切を我身魂の所有となし、春夏秋冬、昼夜風雨雷電霜雪、何れも言霊の御稜威に服従するまでに到らば、始めて神心を発揚し得たのである。又小三災の饑病戦、大三災の風水火に攻められ、如何なる艱苦の淵に沈む時ありとも介意せず、幸運に向ふも油断せず、生死一如と心得、生死に対しては昼夜の往来を見るが如く、世事一切を神明の御心に任せ、好みなく憎みなく、義を見ては進み、利を見て心を悩まさず、心魂常に安静にして人事を見る事、流水の如く天地の自然を楽しみ、小我を棄て大我に合し、才智に頼らず、天の時に応じ、神意に随ひ、天下公共の為に舎身の活動を為し、万難に撓まず屈せず、善を思ひ、善を言ひ、善を行ひ、奇魂の真智を照らして大人の行ひを備へ、物を以て物を見極め、他人の自己に等しからむことを欲せず、心中常に蒼空の如く、海洋の如く二六時中意思内にのみ向ひ、自己の独り知る所を慎み、その力量才覚を人に知られむことを望まず、天地の大道に従つて世に処し、善言美辞を用ゐ、光風霽月少しの遅滞なく神明の代表者たる品位を保ち、自然にして世界を輝かし、心神虚しくして一点の私心なき時は、その胸中に永遠無窮の神国あり、至善至美至真の行動を励み、善者又は老者を友とし、之を尊み敬まひ、悪人愚者劣者を憐み、精神上に将又物質上に恵み救ひ、富貴を羨まず貧賤を厭はず侮らず、天分に安んじ社会のために焦慮して最善を竭し、富貴に処しては神国のために心魂を傾け、貧に処しては簡易なる生活に感謝し、我欲貪欲心を戒め、他を害せず傷つけず、失敗来るも自暴自棄せず、天命を楽しみ、人たるの天職を尽し、自己の生業を励み、天下修斎の大神業に参加する時と雖も、頭脳を冷静に治めて周章ず騒がず、心魂洋々として大海の如く、天の空しうして百鳥の飛翔するに任せ、海の広大にして魚族の遊踊するに任すが如く不動にして、寛仁大度の精神を養ひ、神政成就の神業を輔佐し、仮令善事と見るも神界の律法に照合して悪ければ断じて之を為さず、天意に従つて一々最善の行動を採り、昆虫と雖も妄りに傷害せず、至仁至愛の真情を以て万有を守る。又乱世に乗じて野望を起さず、至公至平の精神を持するの人格具はりたる時は、即ち神人にしてその心魂は即ち真心であり神心である。 利害得失のために精神を左右にし、暗黒の淵に沈み良心を傷め、些少の事変に際して狼狽し、忽ち顔色を変へ、体主霊従、利己主義を専らとするものは、小人の魔心より来るのである。内心頑空妄慮にして、小事に心身を傷り乍ら表面を飾り、人の前に剛胆らしく、殊勝らしく見せむとするは、小人の好んで行ふ所である。霊界を無視し万世生き通し生死往来の神理を知らず、現世の外に神界幽界の儼存せる事を弁へず、故に神明を畏れず、祖先を拝せず、単に物質上の欲望に駆られて、天下国家のために身命を捧ぐる真人を罵り嘲り、死を恐れ肉体欲に耽り、肝腎の天より使命を受けたる神の生宮たることを忘却する小人数多現はれ来る時は、世界は日に月に災害と悪事続発し、天下益々混乱し、薄志弱行の徒のみとなり天命を畏れず、誠を忘れ利欲に走り、義を弁へず富貴を羨み嫉み、貧賤を侮り己より勝れたる人を見れば、従つて学び且つ教へらるることを為さず、却つて之を譏り嘲り己れの足らざる点を補ふことを為さず、善にもあれ悪にもあれ、己を賞め己に随従するものを親友となし、遂に一身上の災禍を招き、忽ち怨恨の炎を燃やすもの、是魔心の結実である。執着心強くして解脱し能はず、自ら地獄道を造り出し邪気を生み、自ら苦しむもの天下に充満し、阿鼻叫喚の惨状を露出する社会の惨状を見たまひて至仁至愛の大神は坐視するに耐へず、娑婆即寂光土の真諦を説き、人生をして意義あらしめむとの大慈悲心より、胎蔵せし苦集滅道を説き、道法礼節を開示したまひたるは、此の物語であります。非は理に克たず、理は法に克たず、法は権に克たず、権は天に克たず、天定まつて人を制するてふ真諦を、神のまにまに二十二巻まで口述し了りました。神諭に曰ふ、 『三月三日、五月五日は変性女子に取りて結構な日柄である云々』 と、いよいよ大正十年九月八日に神命降り十日間の斎戒沐浴を了つて、同十八日より口述を始め、大正十一年壬戌の旧三月三日迄に五六七の神に因みたる五百六十七章を述べ了へ、続いて五月五日までに瑞月王仁に因みたる七百十二章を惟神的に述べ了りたるも、又神界の御経綸の毫も違算なきに驚歎する次第であります。本年五十二歳の瑞月が、本書を口述し始むるや、パリサイ人の批難攻撃相当に現はれ、随分編輯者以下筆録者も甚だしく苦しまれたのですが、神助の下に辛ふじて本巻まで口述筆記を終り、神竜の片鱗を爰に開示し得たるを、大教祖の神霊に謹んで感謝し奉り、外山豊二を始め加藤女史、松村真澄、谷村真友、近藤貞二、谷口雅治[※「雅治」は底本通り。正しくは「正治」または「雅春」。]、桜井重雄、北村隆光、山上女史その他本書関係の諸氏が渾身の努力を、茲に謹んで感謝する次第であります。 大正十一年五月二十八日旧五月二日於松雲閣 |
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19 (1814) |
霊界物語 | 22_酉_鷹鳥山の鷹鳥姫 | 19 山と海 | 第一九章山と海〔七一一〕 佐田彦は腰帯を解き、幾重にも包みたる玉函をクルクルと両端に包み、肩にふわりと引掛け得るやうに荷造りした。波留彦は驚いて、 波留彦『コリヤ佐田彦、大切な御神宝を、何だ、貴様の肌につけた穢苦き三尺帯に包むと云ふことがあるか、玉の威徳を涜すと云ふことを心得ぬか。さうして其の態は何だ。帯除け裸体になつて、みつともないぞ』 佐田彦『お前の帯を縦に引裂いて、半分呉れなければ仕方がない。藤蔓でもちぎつて帯にしよう』 波留彦『エー、そんなことして道中が出来るか、みつともない。自分の帯は自分がして行け。神玉の御威徳を涜すぞよ』 佐田彦『イヤ波留彦、さうでないよ。此山続きは随分バラモンの連中が徘徊してゐるから、貴重品と見せかけて狙はれてはならぬ。幾重にも包んだ宝玉、滅多に穢れる気遣ひはない。斯うして往かねば剣呑だから』 波留彦『如何に剣呑だと云つて、そりや余りぢやないか』 佐田彦『万劫末代に一度の大切な御用だ。二度目の岩戸開きの瑞祥を祝するため、言依別様が此再度山の山頂で、二度とない結構な御用を仰せつけられたのだ。失策つては大変だから、斯うして往くが安全だよ』 波留彦は、 波留彦『なんだか勿体ないやうな心持がするのだ。併し乍ら肝腎の宝を敵に奪られては一大事だから、そんならお前の言ふ通りにして行かう。サア、俺の帯を半分やらう』 と縦に真中からバリバリと引裂いて佐田彦に渡した。佐田彦は、 佐田彦『イヤ、有難う。これで確かり腹帯が締つて来た。併し乍ら玉能姫さま、初稚姫さま、貴女等はそんな綺麗な服装で御出になつては、悪漢に後をつけられては詮りませぬよ、何とか工夫をなさいませ』 玉能姫『ハイ、吾々二人は着物を裏向けに着て、気違ひの真似をして参りませう』 佐田彦『ヤー、それは妙案だ。流石は玉能姫様だ。サアサア、佐田彦が着替へさして上げませう』 と立ち上らむとするを玉能姫、初稚姫は首を左右に掉り、 玉能姫『イエイエ、滅相な、妾も玉能姫、自分のことは自分で処置をつけねばなりませぬ』 と云ひつつ、クルクルと帯を解き、裏向けに着物を着替へて了つた。 初稚姫も亦着物を脱がうとするを、玉能姫は少し首を傾け、 玉能姫『一寸待つて下さい。気違ひが二人もあつては却つて疑はれるかも知れませぬから、貴方は気違ひの娘になつて下さい』 初稚姫『そんなら気違ひのお母さま。サア、何処なつと参りませう』 玉能姫『オイ佐田公、波留公、貴様は何処の奴だ。余程好いヒヨツトコ野郎だな』 佐田彦『これはしたり、玉能姫さま、姫御前のあられもない、何と云ふ荒いことを仰有りますか』 玉能姫『知らぬ知らぬ、アーア、斯んなヒヨツトコ野郎の莫迦者と道伴れになるかと思へば残念だ。気が狂ひさうだ』 波留彦『玉能姫さま、今から気違ひになつて貰つては波留彦も堪りませぬで』 玉能姫『伊勢は津で持つ、津は伊勢で持つ。大根役者が玉を持つ、コリヤコリヤコリヤ』 佐田彦『玉能姫さま、洒落も可い加減になさいませな。これから未だ沢山な道程、今から気違ひの真似して居つては怺りませぬで』 玉能姫『なに、妾を気違ひとな。エー残念だ。バラモン教に於て其の人ありと聞えたる鬼熊別の妻、蜈蚣姫とはわが事なるぞ。汝は三五教の腰抜宣伝使、この蜈蚣姫が尻でも喰へ。残念なか、口惜しいか。あの詮らぬさうな顔付ワイの。オホヽヽヽ』 と臍を抱へて笑ひ倒ける。 佐田彦『アー、仕方がないなア、あんまり嬉しうて玉能姫さまは本当に逆上せて了つたのだらうかなア、波留公』 玉能姫『定めて逆上せたのであらう。逆上せ切つた蜈蚣姫の再来が、お前の頭をポカンと波留彦だ』 と言ひながら波留彦の横面をピシヤピシヤと撲り、 玉能姫『アハヽヽヽ』 と腹を抱へて笑ひ倒ける。 波留彦『なんぼ女にはられて気分が好いと言つても、キ印に撲られて怺るものか。さア行きませう、玉能姫さま、確かりなさいませ』 玉能姫『ホヽヽ、私は玉能姫ぢやないよ、狸姫だよ』 波留彦『エー、怪体の悪い、肝腎の御神業の最中にやくたいだなア。初稚姫さま、ちつと確かり言つて聞かして下さいな。コリヤ本当に逆上せて居ますで』 初稚姫『お母さま、往きませう』 とすがり付く其の手を取り放し、 玉能姫『エー、お前迄が私を気違ひと思つて居るのかい。アヽ穢らはしい。斯んな所には一時も居れない』 と二つの玉を包んだ帯を肩に引つかけ、山伝ひに雲を霞と走り行く。 初稚姫は負けず劣らず、玉能姫の後に随ひ矢の如く走り行く。佐田彦、波留彦は遁げられては大変と一生懸命に後を追ふ。何時の間にか玉能姫、初稚姫の姿は見えなくなつた。 佐田彦『オイ、波留彦、大変なことが起つたものぢやないか』 波留彦『貴様が確り握つて居らぬから、到頭狸が憑りやがつて持つて去んで了つたのだい。アヽもう仕方がない、神様に申訳がない。此絶壁から言ひ訳のために身を投げて死んで了はうかい』 佐田彦『さうだと言つて、そんな事をすれば益々神界の罪だよ』 と心配さうに悔んでゐる。 向ふの木の茂みから、 玉能姫『オーイ、波留彦さま、佐田彦さま、此処だよ此処だよ』 と玉能姫は呼んでゐる。 波留彦『ヤア、在処が分つた。気違ひ奴、あの禿げた山の横の小松の下に顔だけ出してゐよる、表から行くと又逃げられては大変だ。廻り道をしてそつと捉まへようかい』 と二人は山路を外し、木の茂みの中を蜘蛛の巣に引つかかりながら、漸く玉能姫の間近に寄つた。 玉能姫『あの二人の御方、よう来て下さんした。たまたま御用を仰せつけられながら、玉能姫に玉を奪られて玉らぬだらう。さアさア初稚姫さま、あんなヒヨツトコ野郎に構はず行きませうよ。ホヽヽヽ』 と嘲笑ひと共に掻き消す如く、又もや一目散に木の茂みを脱けて、何処へか姿を隠した。二人は一生懸命に追ひかける。初稚姫の計らひで処々に小柴が折つて標がしてある。 佐田彦『ヤア、流石は初稚姫さまだ。子供に似合はぬ好い智慧が出たものだ。俺達に之を合図に来いと云つて、小柴を所々折つて標をつけて於て下さつた。オイ、之を探ねて走らうぢやないか、のう波留彦』 波留彦『オーさうだ』 と二人は捩鉢巻しながら、小柴の折れを目標に追ひかけて行く。 鷹鳥ケ岳の山麓の松林に七八人の男、胡床を掻き車座になつて、ひそびそ話に耽つてゐる。 甲『オイ、大変に強い女もあればあるものぢやないか。俺達の兄分のスマートボールやカナンボールを苦もなく滝壺へ投げ込み、剰つさへ俺達を谷底へ投り込みやがつて、此通り痛い目に遇はせ、終局の果には蜈蚣姫の教主様まで、あんな目に遇はせよつた。彼奴は何でも偉い神様の再来かも知れないよ』 乙『なアに、彼奴は玉能姫と云つて鷹鳥山の鷹鳥姫の婢奴となり、清泉の水汲をやつて居つた奴だ。あの時は此方は女や子供と思つて油断をして居たから、あんな不覚を取つたのだ。何れ此辺へ迂路ついて来るかも知れない。なんでも彼奴を捉まへて三五教の宝の在処を白状させ、バラモン教へ占領せねば、到底此自転倒島に於ては俺達の教派は拡まらない、なんとかして、まア一度彼奴の行方を探ね、目的を達したいものだ』 丙『そんな危ないことは止しにせエ。生命あつての物種だ。蜈蚣姫さまでさへも彼奴の乾児がやつて来て、谷底へ放り投げたやうな強力が随いてゐるから、うつかり手出しは出来ないよ』 甲『ちよろ臭いことを云ふな。計略を以て旨く引張り込めば何でもない。俺が一つ智慧を貸してやらう』 丙『どうすると云ふのだい』 甲『貴様等二三人が俺と一緒に女に化けて鷹鳥山に乗り込み、三五教の求道者となつて誤魔化すのだ』 乙『貴様の面では女に変装したつて到底駄目だよ。貴様が変装したら、それこそ鬼婆に見えて仕舞ふぞ』 甲『鬼婆でも、鬼爺に見えなければ宜いぢやないか。それで完全な女になつたのだ。善悪美醜は問ふところに非ず。俺は皺苦茶婆さまになつて入り込むから、貴様は皺苦茶爺になつて、杖でもついて腰を屈め、俺の後に踵いて来い』 乙『いつその事、堂々と男の求道者になつて行つたらどうだ』 丙『そんな悪相な面をして行かうものなら、忽ち看破されて了ふぜ』 斯く雑談に耽る折しも、向ふの方より一人の女、何か肩に引つかけ、髪を振り乱し、衣服を裏向けに着ながら、女に似合はず大股にトントンと此方に向つて来る。 七歳ばかりの少女は、 少女(初稚姫)『お母さまお母さま』 と連呼しながら後追ひかけ来る。又もや続いて二人の荒男、 二人の男(佐田彦、波留彦)『オーイオーイ。待つた待つた』 と一生懸命に息を喘ませ進み来る。 甲『アリヤ何だ、あた嫌らしい。髪を振り乱し着物を裏向けに着やがつて、褌に何だか石のやうなものを包んで走つて来るぢやないか。彼奴はてつきり気違ひだよ。気違ひに噛ぶりつかれでもしたら、まるで犬に喰はれたやうなものだ。オイ、皆の奴、すつこめすつこめ』 一同『よし来た』 と林の草の中に小さくなつて横たはる。その前を踏まむ許りに玉能姫、初稚姫は、 玉能姫、初稚姫『キヤアキヤア』 と金切声を張り上げながら通つて行く。二人の男汗を垂らし、 二人の男(佐田彦、波留彦)『オーイ、気違ひ待つた』 と又もや一生懸命西方指して進み行く。一同はやうやう頭を上げ、 甲『ヤー何処の奴か知らぬが、女房が気が狂つたと見えて、偉い勢で追ひかけて行きよつた。可愛相に、あんな娘がある仲で、女房に発狂されては怺つたものぢやない。併しなかなか別嬪らしかつたぢやないか』 乙『さうだなア、可愛相なものだ。先へ行つたのはあれの爺だらう。後から行く奴はヒヨツとしたら下男かなんかだらうよ。何は兎もあれ、どえらい勢だつた。まるきり夜叉明王が荒れ狂うたやうな勢だ。マアマア俺達は無事に御通過を願うて幸ひだつた』 と話してゐる。暫らくすると蜈蚣姫は、スマートボール、カナンボール其他拾数人の部下を引連れ、一生懸命に此場に駆け来り、五六人の姿を見て、 蜈蚣姫『オイ、お前は信州、播州、芸州の連中ぢやないか。なにして居る。今此処へ玉能姫が通つた筈だがお前は知らぬか』 信州『最前から此処で一服して居ましたが、玉能姫のやうな奴は根つから通りませぬで。髪振り乱した気違がキヤアキヤア云つて通つたばかり、後から爺が可愛相に汗をブルブルに掻いて追つかけて行きました』 蜈蚣姫『どうしても此処を通らにやならぬ筈だが、ハテ不思議だなア。それなら大方杢助館へでも廻つたのだらう。一体何処へ行きよるのか。皆の奴、斯うしては居られない。再度山の山麓、生田の森に引返せ』 と慌しく呼ばはつた。スマートボールを先頭に全隊引率れて、東を指して一生懸命バラバラと走り行く。 梢を渡る松風の音、刻々に烈しくなり、瀬戸の海の浪は山嶽の如く吼り狂うてゐる。玉能姫、初稚姫は漸々にして高砂の森に着いた。四辺に人なきを幸ひ、乱れ髪を掻き上げ、顔を立派に繕ひ、着物を脱ぎ替へ、元の玉能姫となつて了つた。息急き切つて走り来つた佐田彦、波留彦は此の姿を見て、 佐田彦『ヤー、玉能姫さま、気がつきましたか。大変心配でしたよ』 玉能姫『オホヽヽヽ、お約束通り上手に気違に化けたでせう。須磨の浜辺の難関を、あゝせなくては通過が出来ませぬからなア』 佐田彦『イヤもう恐れ入りました。流石言依別命様が御見出し遊ばしただけあつて、佐田彦如き凡夫の到底及ばぬ智慧を持つてゐなさるなア』 波留彦『本当に七尺の男子波留彦も睾丸を放かしたくなつて来ました。アハヽヽヽ』 佐田彦『それにしても初稚姫さま、小さいのによく踵いてお出でなさいましたなア。何時もお父さまに甘へて負はれ通しだのに、今日は又どうしてそんな勢が出たのでせう』 初稚姫『神様が私を引つ抱へて来て下さいました。あの大きな神様が御目に止まりませ何だか』 佐田彦『さう聞くと何だか大きな影の様なものが、始終踵いて居たやうに思ひました』 初稚姫『かげが見えましたか。それが神様の御かげですよ。オホヽヽヽ』 佐田彦『子供の癖によく洒落ますなア。シヤレシヤレ恐れ入りましたもので御座るワイ』 玉能姫『サア、これから高砂の浜辺へボツボツ参りませう。幸ひに日も暮れました』 と玉能姫は先に立つ。三人は欣々と後に随ひ、浜に立ち向ふ。 五月五日の月は西天に輝き、薄雲の布を或は被り或は脱ぎ、月光明滅、四人が秘密の神業を見え隠れに、窺ふものの如くであつた。鳴門嵐の暴風は遠慮会釈もなく海面を撫で、山嶽の如き荒浪は立ち狂ひ、高砂の浜辺に押寄せ、駻馬の鬣を振つて噛みついて居る。 佐田彦は、猿田彦気取りで先に進み、船頭の家を叩き、 佐田彦『モシモシ、船頭さま、これから家島へ往くのだから、船を出して下さいな。賃銀は幾何でも出しますから』 船頭は家の中より、 船頭『何処の方か知らぬが、何を呆けてゐるのだ。レコード破りの荒浪に、如何して船が出せるものかい。こんな日に沖に出ようものなら、生命がいくつあつても堪るものでない。マア、二三日風の凪ぐ迄待つたらよからう』 佐田彦は小声で、 佐田彦『ハテ、困つたなア。吾々はどうしても家島へ渡らねばならないのだ。せめて中途の神島までなつと送つて呉れないか』 船頭『なんと言つても此の時化には船は出せないよ。桑名の徳蔵ならばイザ知らず、俺達のやうな普通の船頭では、到底駄目だよ。こんな日に船を出す位なら、家もなんにも要つたものぢやない。そんな分らぬことを言はずと、二三日待つたがよからうに』 佐田彦『どうしても出して呉れませぬか、仕方がない。それなら船を貸して下さいな』 船頭『滅相もないこと仰有るな。船でも貸さうものなら商売道具を忽ち滅茶々々にされて了うて、女房や子の鼻の下が乾上がつて了ふ。一つの船を慥へるにも百両の金子が要るのだ。自家の身代は此の船一つだ。マア、そんなことは絶対に御断り申さうかい』 佐田彦『未だ外に船頭衆はあらうな』 船頭『此の浜辺には二三十人の船頭が居る。併し乍ら開闢以来、この荒浪に船を出すやうな莫迦者は一人も居りませぬワイ。今日は五月五日、菖蒲の節句、神様が神島から高砂へ御出で遊ばす日だから、尚々船は出せないのだ。仮令浪はなくとも今日一日は、此の海の渡海は出来ないのだ。暮六つから神様が高砂の森へお越しになるのだ。モー今頃は神島を御出立遊ばして御座る時分だよ。何としてそんな処へ行くのだい』 佐田彦『俺は家島へ行くのだ。浪の都合で一寸御水を頂きに神島へ寄りたいと思ふのだよ』 船頭は不思議な奴が出て来たものだと呟きながら表に立出で、 船頭『ヤー、見れば若い御女中に娘さま。お前さま等も御一行かな』 玉能姫『ハイ、左様で御座います。どうぞ船を御出し下さいませ』 船頭頻に首を振り、 船頭『アーいかぬいかぬ、途方もないこと云ひなさるな。男でさへも行かれぬ処へ、妙齢の女が渡ると云ふことは到底出来ない。平常の日でも女は絶対に乗せることは出来ませぬワイ』 初稚姫『小父さま、そんなら其の船を売つて御呉れぬか』 船頭『売つて呉れと云つたつて、中々安うはないぞ。百両もかかるのだから』 初稚姫『それなら小父さま、二百両上げるから、お前の船を売つてお呉れ』 船頭『百両の船を二百両に買つて貰へば、船が二隻新調出来るやうなものだ。それは誠に有難いが、併し乍らみすみすお前さま達を海の藻屑となし、鱶の餌食にして了ふのは何程欲な船頭でも忍びない。そんなことは言はずに諦めて帰つて下さい。男の方なら二三日したら船を出して上げよう』 初稚姫『女は何うしていけないのですか』 船頭『アヽ、いけないいけない。理屈は知らぬが、昔から行つたことがない島だから』 佐田彦『船頭さま、そんなら時化が止んでから明日でも俺達が勝手に漕いで行くから、二百両で売つて下さい』 船頭『百両のものを二百両に売ると云ふことは、大変に欲張つたやうで気が済まぬが、併し船を売つて了へば、次の船が出来るまで徒食をせねばならぬから、貯蓄の無い俺達、そんなら二百両で売りませう』 佐田彦『有難い、そんなら手を打ちます。一、二、三』 と船頭と佐田彦は顔を見合せ、手を拍つて了つた。 初稚姫は懐より山吹色の小判を取出し、 初稚姫『サア、小父さま、改めて受取つて下さい』 と突き出す。船頭は検めて見て、 船頭『ヤー、有難う、左様なら。モウ一旦手を拍つたのだから、変換へは利きませぬよ』 と言ひ捨て、恐さうに家に飛び込み、中よりピシヤンと戸を閉め、丁寧に突張りをこうてゐる。波は益々猛り狂ふ。 佐田彦『アヽ此の船だ。サア皆さま、乗りませう。ちつと荒れた方が面白からう』 と佐田彦は先に飛び込んだ。三人も喜んで船中の人となつて了つた。 佐田彦『サア、波留彦、櫂を使つて下さい。俺は船頭だ。艪を漕いで行く。随分高い浪だよ』 とそろそろ捩鉢巻になつて、艪を操り始めた。 月は雲押し開きて利鎌のやうな光を投げ、四人の乗つた神島丸を照して居る。不思議や暴風は忽ち止まり、浪は見る見る畳の如く凪ぎ渡つた。二人は一生懸命に櫂を操りながら、沖に浮べる神島目標に漕ぎ出した。漸くにしてミロク岩の磯端に横付けになつた。 玉能姫『皆さま、御苦労でした。貴方等二人は此処に待つて居て下さい』 佐田彦『イエ私も御供を致しませう。これ丈篠竹の茂つた山、大蛇が沢山に居ると云ふことですから、保護のために吾々両人が御供致しませう。言依別の教主様より「両人の保護を頼む」と云はれたのだから、もし御両人様が大蛇にでも呑まれて了ふやうなことが出来したら、それこそ申訳がありませぬ。是非御供を致します』 初稚姫『その大蛇に用があるのだから、来て下さるな。大蛇は男が行くと大変に腹立てて怒るさうですから』 波留彦『大蛇でも矢張り女が好いのかなア。斯うなると男に生れたのも詮らぬものだ』 玉能姫『さア、初稚姫さま、参りませう。御両人の御方、決して、後から来てはなりませぬよ。用が済んだら呼びますから、それまで此処に待つてゐて下さい』 二人は頭を掻き乍ら、 佐田彦『エー仕方がない。役目が違ふのだから、そんなら神妙に待つて居ます。御用が済んだら呼んで下さい』 玉能姫『ハイ、承知しました。何うぞ機嫌よう待つて居て下さいませ』 と初稚姫の手を把り、篠竹を押分け山上目蒐けて登り行く。 辛うじて二人は山の頂に到着した。五六歳の童子五人と童女三人、黄金の鍬を持つて何処よりともなく現はれ来り、さしもに堅き岩石を瞬く間に掘つて了つた。 初稚姫『アー、貴女は厳の身魂、瑞の身魂の大神様、只今言依別命様の御命令に依つて、無事に此処まで玉の御供をして参りました。さア、何うぞ納めて下さい』 五人の童子はにこにこ笑ひながら、ものをも言はず一度に小さき手を差出す。初稚姫は金剛不壊の如意宝珠の玉函を取り、恭しく頭上に捧げながら五人の手の上に載せた。十本の掌の上に一個の玉函、忽ち五瓣の梅花が開いた。童子は玉函と共に、今掘つたばかりの岩の穴に消えて了つた。 三人の童女は又もや手を拡げて、玉能姫の前に進み来る。玉能姫は紫の宝珠の函を取り上げ、恭しく頭上に捧げ、次で三人の童女の手に渡した。童女はものをも言はず微笑を浮べたまま、玉函と共に同じ岩穴に消えて了つた。玉能姫は怪しんで穴を覗き見れば、童男、童女の姿は影もなく、只二つの玉函、微妙の音声を発し、鮮光孔内を照らして居る。 二人は恭しく天津祝詞を奏上し、次で神言を唱へ、天の数歌を歌ひ、岩蓋をなし、其上に今童女が捨て置きし、黄金の鍬を各自に取り上げ、土を厚く衣せ、四辺の小松を其上に植ゑて、又もや祝詞を奏上し、悠々として山を下り行く。 玉能姫は、 玉能姫『お二人さま、えらう御待たせしました。さア、もう御用が済みました。帰りませう』 佐田彦、波留彦両人は口を揃へて、 佐田彦、波留彦『それは結構で御座いました。御目出度う。これから私等が一度登つて来ますから、暫らく此処に待つて居て下さいませ』 初稚姫『モー御用が済みましたのですから、一歩も上つてはなりませぬ。さア帰りませうよ』 佐田彦『折角此処迄苦労して御供をして来たのだから、埋めた跡なりと拝まして下さいな』 初稚姫は首を左右に振つてゐる。玉能姫を見れば、是亦無言の儘首を左右に振つてゐる。何処ともなく雷の如き声、 声『一刻も猶予はならぬ。これより高砂へは寄らず、淡路島を目標に再度山の麓に船をつけよ。サア、早く早く』 と呶鳴るものがある。此言葉に佐田彦、波留彦は、 佐田彦、波留彦『ハイ、畏まりました』 と玉能姫、初稚姫を迎へ入れ一生懸命に艪櫂を操りつつ、再度山の方面指して帰り行く。 (大正一一・五・二八旧五・二外山豊二録) |
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霊界物語 | 23_戌_木山の里/竜宮島へ出発 | 12 家島探 | 第一二章家島探〔七二四〕 負ぬ気強き高姫は折から漕来る漁夫船 是幸ひと飛び乗りて海の底より尚深き 執着心に駆られつつ三つの宝の所在をば 諸越山の果て迄も探し当てねば措くものか 仮令蛇となり鬼となり屍は野べに曝すとも 海の藻屑となるとても此一念を晴らさねば 大和魂が立つものか日の出神の生宮と 自ら謳うた手前ある愈実地を嗅出して 日の出神の神力を現はし呉れむと夜叉姿 髪振り乱し海風に身を梳り荒浪を 乗り切り乗り切り漸くに高砂沖にと着きにける。 船頭『もしもしお客さま、右手に見ゆるはあれが有名な高砂の森、それから続いて石の宝殿、曽根の松の名所、如何です、一寸彼処へお寄りになつては』 高姫『や、妾はそんな事どころぢやない。一時も早く家島迄行かねばならぬのだ。お前、御苦労だが何卒気張つて一刻でも早く漕つて下さい。それそれ後から今の五人の悪党者が追ひ駆て来る。追ひ付かれては大変だからなア』 船頭『儂も力一杯漕いで居るのだが、何と言うても向方は五人だから、交る交る身体を休め以て来るのだから旨いものだ。然し乍ら儂も此界隈にては艪では名を売つたもの、船頭の東助と言へば名高い者ですよ。其代り賃銀は他人の三人前払うて貰はねばなりませぬ』 高姫『三倍でも五倍でも十倍でも構ふものか。一歩でも早く着きさへすれば払つてやる。然し一歩でも後れる様の事があつては矢張三人前ほか払ひませぬぞや』 東助『有難う、それなら是から一気張り致しませう。何程上手な者でも此東助には叶ひませぬからな』 と捩鉢巻を締め浸黒い膚を出して凩に向ひ汗を流し乍ら、一層烈しく艪を漕出した。 高姫『これこれ、船頭さま、左手に饅頭の様な島が浮いて居るが、あれは何と言ふ島だい』 船頭『あれですか、あれは瀬戸の海の一つ島と言ひ神島とも言ひましてな、それはそれは恐ろしい島ですよ。昔から私の様な船頭でも寄りついた事は無いのですから』 高姫『あの島へ去年の五月の五日に船を漕いで行つた女があるだらう。お前、聞いて居るだらうなア』 東助『滅相も無い事仰有いますな。常の日でさへも彼の島へ船は着きませぬ。况して五月五日と言へば神島の神様が高砂の森へお渡り遊ばす日だから、船頭は総休みです。此辺一帯は昔から五日の日に限つて船は出しませぬ。万一我慢をして船を出さうものなら、忽ち船は顛覆し生命をとられて仕舞ふのだから、何処の阿呆だつて、そんな日に船を出したり恐ろしい神島などへ渡りますものか』 高姫『あの島には何か宝物でも隠してある様な噂は聞きはせぬかな』 東助『沢山の船頭に交際て居ますが、そんな話の気位も聞いた事はありませぬワイ。神様の話を言つても海が荒れると言ふ位だから、もう此話は是きりにして下さい』 高姫『さうかなア、矢張さうすると家島に違ひない。さア早く頼みます』 東助『承知しました』 と一生懸命、向う風に逆らひつつ漸く家島の岸に着いた。 高姫『あゝ御苦労だつた。流石は東助さま、よう早う着けて下さつた。お礼は沢山に致しますぞえ、後からの連中が来ても妾が此山へ登つたと言つてはいけませぬぞえ。若しも尋ねたら、高姫は神島に上がらしやつたと言うてお呉れ、屹度だよ』 東助『はい、承知致しました』 高姫はパタパタと忙がしげに老樹こもれる山林の中に姿を隠して仕舞つた。東助は只一人舷に腰を掛け松葉煙草をくゆらして居る。 半時ばかり経つと、玉能姫の一行を乗せた小船は矢を射る如く此場に寄り来り、 玉能姫『あ、お前さまは高姫さまを乗せて来た船頭さま、まア御苦労で御座いましたな。高姫さまは此山へお登りでしたか』 東助『え……その……何で……御座います』 と頭をガシガシ掻いて居る。其間に船は岩端に繋がれ五人は上陸した。 玉能姫『あなたの乗せた来た女の方は此山へ登られましたか』 東助『はい、登られたか、登られぬか、つい……昼寝をして居つたものですから根つから分りませぬ。貴女等が若し此処へおいでになつてお尋ねになつたら、神島へ行かしやつたでせう』 鶴公『ハヽヽヽヽ、何と歯切れのせぬ、どつちやへも付かずの答だな。一体船頭さま、お前は神島へ寄つたのかい』 東助『滅相も無い、誰があんな所へ寄せ着けますかい』 鶴公『そんなら、如何して高姫さまが神島へ寄つたのだ、実の処は此家島へ着いたのだけれど、神島へだと言つてスコタンを喰はして呉れと頼まれたのだらう。それに違ひない。お前は船頭に似合はず腹の黒い者だな』 東助『何を言つても金のもの言ふ世の中ですからな。船頭だつて金儲けは矢張大切ですワイ』 鶴公『ハヽヽヽヽ、分つた分つた、てつきり此島だ。玉能姫様、さア早く登りませうか。貴女の大切な宝を掘り出して呑まれて了はれちや大変ですぜ』 玉能姫『それもさうですが、余り慌るには及びませぬ。探すと言つたつて是だけ広い島、さう容易に見当るものぢやありませぬわ、まア一服致しませう』 貫州『玉能姫様の仰有る通り慌るには及ばぬぢやないか。高姫は高姫で勝手に探すだらう、一日や二日歩いたつて探しきれるものぢやないから。まア、玉能姫様、先づゆつくりとさして貰ひませう。随分疲労れましたから』 玉能姫『あ、さう為さいませ。私は実の所、宝の所在は存じませぬ。只一度手に触れた計り、後は竜神様が何処かへお隠しなされたのですから……此広い世界の何処かの島に隠してあるのでせう。妾が此処へ追つ駆てきたのは、高姫様のお身の上を案じ、お気が違うては居らぬかと、宣伝使としてまさかの時にお助け申さうと思つて来たのですから、斯んな危い山に上るのは止しませう。まアまア木蔭へでも這入つて、風の当らぬ暖い処で日向ぼつこりを致しませう』 と先に立ち二三丁山を登り、日当りよき処にて休息する。見れば非常に大きな清水を漂はした池が展開して居る。 鶴公『何と好い景色で御座いますな。こんな高い山に大きな池があるとは不思議ですわ』 玉能姫『此処は陸の竜宮かも知れませぬな』 東助『此島には斯んな小さい池だけぢやありませぬ。山の頂上にも中程にも大変大きな深い池があつて、底知らずぢやと言ふ事です。実に不思議な島ですわ。此広い島に昔から誰一人住んだ人がないのも一つの不思議、何でも大きな大蛇が出て来て、人の臭がすると皆呑んで仕舞うといふ噂ですから、誰だつて、此処に住居する者はありませぬ』 貫州『さうかな、随分恐ろしい所と見えるわい。斯んな所に一人放かして置かれたら堪るまいなア』 清公『そりや、さうとも。誰だつてやりきれないわ』 色々雑談に耽り一時ばかり光陰を空費した。 貫州『さア玉能姫様、高姫さまは屹度此山の頂上さして登られたに違ひありませぬ。宝を先に掘り出し呑まれて仕舞つては大変ですから、ボツボツと出掛けませうな』 玉能姫『妾は少し足を痛めましたから、此処に休んで待つて居ます。何卒御苦労だが貴方等五人連れ行つて下さい』 貫州『いや、それはなりませぬ。もう斯うなれば本音を吹くが、吾々は絶対に高姫崇拝者だ。こりや、お節、斯うなる以上はジタバタしてもあかないぞ。綺麗薩張と玉の所在を白状致せ。四の五のと吐すが最後、此池へ岩を括り着け、四人の荒男が放り込んで仕舞ふが如何だ』 玉能姫『今更そんな啖呵をきらなくても、淡路島より船を出した時から、高姫と八百長喧嘩をし、目と目と合図をして居たでせう。そんな事の分らぬ玉能姫ですか。そんな嚇し文句を並べたつて迂濶と乗る様な不束な女とはチツと違ひますぞ。繊弱き女と思ひ侮つての其暴言、此玉能姫は斯う見えても若彦が妻、教主言依別命様より御信任を辱ふした抜目のない女です。お前さん等の五人や十人が何程捩鉢巻をして気張つた処で何になりますか。ウンと一声、霊縛をかけるが最後、気の毒乍ら万劫末代動きのとれぬ石地蔵になつて仕舞ひますよ。それでも御承知なら、何なりと試みにやつて御覧』 貫州『あゝ仕方の無い女だなあ』 鶴公『もしもし玉能姫様、嘘言ですよ。貫州はいつもあんな狂言をやつて空威張りをする癖があるのです。アハヽヽヽ』 東助『何だ、お前達は山賊か知らぬと思つたら、此山中で気楽さうに芝居をしてゐるのか、随分下手な芝居だなア』 玉能姫『何でも宜しいよ。之から高姫さまに会うて玉の所在でも知らして上げませうかな』 貫州『やア流石は玉能姫様ぢや。実に立派な御精神、貫州誠に感服仕りました。宣伝使はさうでなくては往きますまい。堅いばつかりが女ぢや御座いませぬ。まアよう其処まで打解けて下さいました。貴女がさう出て下されば、敵もなく味方もなく三五教は益々天下泰平、大発展は火を睹る如く明かで御座います。さア玉能姫様、お手を引いて上げませうか。……おい清公、貴様はお腰を押してお上げ申せ。俺はお手を引いて此急坂を登るから』 玉能姫『ホヽヽヽヽ、年寄か何ぞの様に如何に女の身なればとて、これしきの山が苦しうて如何なりますか。何卒お構ひ下さいますな。さアさアお先へお上り下さい。妾は一番後から参ります』 貫州『いや、さうはなりませぬ。高姫さまの御命令ですから……オツトドツコイ……そりや嘘言だ。中途に逃げられては虻蜂とらずになつて仕舞ふ。あゝ迂濶副守の奴、囁来よつた。もしもし玉能姫様、此奴ア皆私に憑依してる野天狗が混ぜ返すのだから、お心に触へて下さいますな』 玉能姫『霊肉一致の野天狗様が仰有つたのでせう、ホヽヽヽヽ左様なれば貴方等の御心配成さらぬ様に真ん中に参りませう。玉能姫が逃げない様に十分御監督なされませ』 貫州『別に貴女を監督する必要もありませず、悪い所へ気を廻して貰つては困りますよ』 玉能姫『何れそちらは高姫様を加へて荒男や神力の強い方が六人、此方は一人、到底衆寡敵しますまい。一層の事此池へ飛び込んで死にませうかな』 鶴公『それは何と云ふ事を仰有るのだ。死ぬのはお前さんの勝手だ。然し乍ら此方が困る、宝の所在を白状した上では死ぬるなつと生るなつと勝手になされ。それ迄はどうあつてもお前に死なれては高姫さまの願望が成就致しませぬから、何程死なうと踠いたつて、斯う五人の荒男が付いて居る以上は駄目ですよ。観念なさいませ、あゝ然し乍ら可惜美人を死なすのも勿体ないものだなア』 玉能姫『それでお前さま達の腹の底はすつかり分りました。妾にも覚悟がある』 と言ふより早く後から跟いて来る三人を苦も無く突倒し、急坂目蒐けて韋駄天走りに元来し道へ降り来る。五人は捩鉢巻を締め乍ら、 五人『オーイ、玉能姫、待つた、逃がして堪らうか、おいおい皆の奴、彼奴が船に乗る迄に引つ掴まへねばなるまい。さア急げ急げ』 と一生懸命に追つ駆ける。玉能姫は阿修羅王の如く髪振り乱し、血相を変へて力限りに下り来る。道の真ん中に大手を拡げて立ち現はれた一人の婆は高姫であつた。 高姫『オホヽヽヽ、到頭高姫の計略にかかり此島まで引摺り廻されて来よつた。いい馬鹿者だな。さアもう斯うなる以上は何程踠いても駄目だ。何処にお宝を隠したのか、神妙に白状するが宜い。此期に及んで愚図々々言ふなら、お前の生命でもとつて仕舞ふまいものでもない。此高姫の身の上にもなつて見て貰ひ度い。いい年をして、お前の様な若い女や初稚姫の様なコメツチヨに馬鹿にしられて、如何して世の中が歩けませうぞ。賢相でも流石は若い丈けあつて、肝腎の知慧がぬけて居る。さア如何ぢや、玉能姫、もはや否応はあるまい』 玉能姫『オホヽヽヽ、何処までも疑ひ深い訳の分らぬ方ですこと。知らぬ事は何と仰せられても知りませぬ。仮令首が千切れても言はぬと云つたら言ひませぬから、其心組で覚悟遊ばせ』 斯く争ふ処へ五人の男、地響き打たせ乍ら此場にドヤドヤとやつて来た。玉能姫の身辺は危機一髪に迫つて来た。流石の玉能姫も進退谷まり如何はせむと案じつつ一生懸命に『木花姫命助け給へ』と祈願を籠めた。忽ち四辺は濃霧に包まれ咫尺を弁ぜず、恰も白襖を立てた如く見えなくなつて仕舞つたのを幸ひ、玉能姫は少しく道を横にとり、あと振り返り見れば濃霧は高姫一派の附近に極限され、外は一面の快晴である。玉能姫は神恩を感謝し乍ら磯端に漸く辿り着いた。 玉能姫の消息如何にと案じ煩ひ、虻、蜂の両人は一艘の船を操り乍ら、丁度此場についた所である。 玉能姫『ア、お前は虻、蜂の両人、よう来て下さつた。話はまア後でゆつくりしよう』 虻公『何卒此船に乗つて下さい』 玉能姫『いえいえ妾は乗つて来た船がある。一人で操つて帰りますから、お前さまは其儘妾に従いて帰つて下さい』 と言ふより早く船に飛び乗り、高姫の乗り来りし船の綱を解き放ち、波のまにまに漂はせ置き二艘の船は矢を射る如く再度山の麓を指して帰り行く。 (大正一一・六・一二旧五・一七北村隆光録) |