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(128)
ひふみ神示 4_天つ巻 第21帖 みろく出づるには、はじめ半ばは焼くぞ、人、二分は死、みな人、神の宮となる。西に戦争しつくし、神世とひらき、国毎に、一二三、三四五たりて百千万、神急ぐぞよ。八月七日、ひつくのかみふみぞ。
2

(164)
ひふみ神示 5_地つ巻 第27帖 天地には天地の、国には国の、びっくり箱あくのざぞ、びっくり箱あけたら臣民みな思ひが違ってゐること分るのぞ、早う洗濯した人から分るのぞ、びっくり箱あくと、神の規則通りに何もかもせねばならんのぞ、目あけて居れん人出来るぞ、神の規則は日本も支那も印度もメリカもキリスもオロシヤもないのざぞ、一つにして規則通りが出来るのざから、今に敵か味方か分らんことになりて来るのざぞ。学の世はもう済みたのぞ、日に日に神力あらはれるぞ、一息入れる間もないのぞ。ドシドシ事を運ぶから遅れんやうに、取違ひせんやうに、慌てぬやうにして呉れよ。神々様もえらい心配なされてござる方あるが、仕組はりうりう仕上げ見て下されよ。旧九月になればこの神示に変りて天の日つくの神の御神示出すぞ、初めの役員それまでに引き寄せるぞ、八分通り引き寄せたなれど、あと二分通りの御役の者引き寄せるぞ。おそし早しはあるなれど、神の申したこと一厘もちがはんぞ、富士は晴れたり日本晴れ、おけ。十月の四日、ひつ九のか三ふみ。
3

(197)
ひふみ神示 6_日月の巻 第24帖 ココニ、イザナギノミコト、イザナミノミコトハ、ヌホコ、ヌホト、クミクミテ、クニウミセナトノリタマヒキ、イザナギノミコト イザナミノミコト、イキアハシタマヒテ、アウ、あうトノラセタマヒテ、クニ、ウミタマヒキ。コトの初め気付けて呉れよ。夜明けたら生命神に頂いたと申してあろがな。太陽あるうちはことごとに太陽の御用せよ。月あるうちはことごとに月の神の御用せよ。それがまことの臣民ぞ。生活心配するでないぞ。ことわけて申せば今の臣民すぐは出来ぬであろが。初めは六分国のため、四分自分の為、次は七分国のため、三分自分の為、次は八分国の為、二分自分のため、と云ふ様にして呉れよ。これはまだ自分あるのざぞ。自分なくならねばならぬのざぞ。神人一つになるのざぞ。十一月二十日、ひつ九
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(293)
ひふみ神示 11_松の巻 第2帖 神の国を、足の踏むところない迄にけがして仕舞ふてゐるが、それで神力は出ぬぞ。臣民無くなるぞ。残る臣民三分むつかしいぞ。三分と思へども、二分であるぞ。邪魔せん様に、分らん臣民見物して御座れ。ここまで知らして眼覚めん臣民なら手引いて見てゐて御座れ。見事仕上げて見せるぞ。雀ちうちう烏かうかう。六月十八日、あめのひつ九か三。
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(352)
ひふみ神示 14_風の巻 第1帖 用意なされよ。いよいよざぞ、愈々九 三。神のみこと知らすぞ。知らすぞ、眼覚めたら起き上がるのざぞ。起きたらその日の命頂いたのざぞ。感謝せよ、大親に感謝、親に感謝せよ、感謝すればその日の仕事与へられるぞ。仕事とは嘉事であるぞ、持ち切れぬ程の仕事与へられるぞ。仕事は命ざぞ。仕事喜んで仕へ奉れ。我出すと曇り出るぞ。曇ると仕事わからなくなるぞ。腹へったらおせよ。二分は大親に臣民腹八分でよいぞ。人民食べるだけは与へてあるぞ。貪るから足らなくなるのざぞ。減らんのに食べるでないぞ。食よ。おせよ。一日一度からやり直せよ。ほんのしばらくでよいぞ。神の道無理ないと申してあろが。水流れる様に楽し楽しで暮せるのざぞ、どんな時どんな所でも楽に暮せるのざぞ。穴埋めるでないぞ、穴要るのざぞ。苦しいという声此の方嫌ひざ。苦と楽共にみてよ、苦の動くのが楽ざぞ。生れ赤児みよ。子見よ、神は親であるから人民守ってゐるのざぞ。大きなれば旅にも出すぞ、旅の苦楽しめよ、楽しいものざぞ。眠くなったら眠れよ、それが神の道ぞ。神のこときく道ざぞ。無理することは曲ることざぞ。無理と申して我儘無理ではないぞ、逆行くこと無理と申すのざ。無理することは曲ることざ、曲っては神のミコト聞こへんぞ。素直になれ。火降るぞ。相手七と出たら三と受けよ、四と出たら六とつぐなへよ、九と出たら一とうけよ、二と出たら八と足して、それぞれに十となる様に和せよ。まつりの一つの道ざぞ。の世の世にせなならんのざぞ、今はの 世ざぞ、 の 世 の 世となりて、 の世に入れての世となるのざぞ。タマなくなってゐると申してあろがな、タマの中に仮の奥山移せよ、急がいでもよいぞ、臣民の肉体神の宮となる時ざぞ、当分宮なくてもよいぞ。やがては二二に九の花咲くのざぞ、見事二二に九の火が鎮まって、世界治めるのざぞ、それまでは仮でよいぞ、臣民の肉体に一時は静まって、此の世の仕事仕組みて、天地でんぐり返して光の世といたすのぢゃ。花咲く御代近づいたぞ。用意なされよ、用意の時しばし与えるから、神の申すうち用意しておかんと、とんでもないことになるのざぞ。の世輝くと となるのざぞ、 と申して知らしてあろがな。役員それぞれのまとひつくれよ、何れも長になる身魂でないか。我軽しめる事は神軽くすることざ、わかりたか。おのもおのも頭領であるぞ、釈迦ざぞ。キリストざぞ。その上に神ますのざぞ、その上神又ひとたばにするのざぞ、その上に又でくくるぞ、その上にもあるのざぞ、上も下も限りないのざぞ。奥山何処に変っても宜いぞ、当分肉体へおさまるから何処へ行ってもこの方の国ぞ、肉体ぞ、心配せずに、グングンとやれよ、動くところ、神力加はるのざぞ、人民のまどひは神無きまどひぞ、神無きまどひつくるでないぞ、神上に真中に集まれよ。騒動待つ心悪と申してあること忘れるなよ、神の申した事ちっとも間違ひないこと、少しは判りたであろがな。同じ名の神二柱あるのざぞ、善と悪ざぞ、この見分けなかなかざぞ、神示よめば見分けられるように、よく細かに解いてあるのざぞ、善と悪と間違ひしてゐると、くどう気付けてあろがな、岩戸開く一つの鍵ざぞ、名同じでも裏表ざぞ、裏表と思ふなよ、頭と尻違ふのざぞ。千引の岩戸開けるぞ。十二月二十五日、ひつぐのかミ。
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(513)
ひふみ神示 24_黄金の巻 第2帖 日本が日本がと、まだ小さい島国日本に捉はれてゐるぞ。世界の日本と口で申してゐるが、生きかへるもの八分ぞ。八分の中の八分は又生きかへるぞ。生きかへっても日本に捉はれるぞ。おはりの仕組はみのおはり。骨なし日本を、まだ日本と思うて目さめん。九十九十と申してカラスになってゐるぞ。古いことばかり守ってゐるぞ。古いことが新しいことと思うてゐるなれど、新しいことが古いのであるぞ。取違ひいたすなよ。神は生命ぞ。秩序ぞ。秩序は法則ぞ。為せよ。行ぜよ。考えよ。考へたらよいのぢゃ。為すには先づ求めよ。神を求めよ。己に求めよ。求めて、理解した後為せ。為して顧みよ。神のいのち其処に弥栄えるぞ。今迄の日本の宗教は日本だけの宗教、このたびは世界のもとの、三千世界の大道ぞ。教でないぞ。八分の二分はマコトの日本人ぢゃ。日本人とは世界の民のことぢゃ。一度日本すてよ。日本がつかめるぞ。日本つかむことは三千世界をつかむことぞ。悪の大将も、そのことよく知ってゐて、天地デングリ返るのぢゃ。物の食べ方に気つけよ。皆の者、物ばかり食べて御座るぞ。二分の人民、結構に生きて下されよ。喜び神ぞ。十一月十七日。ひつ九のか三
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(584)
ひふみ神示 24_黄金の巻 第73帖 四十八柱、四十九柱、それぞれの血筋の者引き寄せておいて、その中から磨けた者ばかり選り抜く仕組。磨けん者代りのミタマいくらでもあるぞ。お出直しお出直し。世界が二分ぢゃなあ。もの見るのは額でみなされ。ピンと来るぞ。額の判断間違ひなし。額の目に見の誤りなし。霊界には時間、空間は無いと申してゐるが、無いのでないぞ。違って現はれるから無いのと同様であるぞ。あるのであるぞ。悪の霊はミゾオチに集まり、頑張るぞ。こがねの巻は百帖ぞ。こがねしろがね とりどりに出るのぢゃ。あわてるでないぞ。十二月二十七日一二十
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(788)
ひふみ神示 30_冬の巻 第18帖 病、ひらくことも、運、ひらくことも、皆己からぢゃと申してあろう。誰でも、何でもよくなるのが神の道、神の御心ぢゃ。親心ぢゃ。悪くなると云ふことないのぢゃ。迷ひが迷ひ生むぞ。もともと病も不運もない弥栄のみ、喜びのみぢゃ。神がよろこびぢゃから、その生んだもの皆よろこびであるぞ。この道理よくわきまえよ。毎日々々、太陽と共に、太陽について起き上がれよ。その日の仕事、与へられるぞ。仕事いのちと仕へまつれよ。朝寝するからチグハグとなるのぢゃ。不運となるのぢゃ、仕事なくなるのぢゃ。神について行くことが祈りであるぞ。よろこびであるぞ。 食物、食べ過ぎるから病になるのぢゃ。不運となるのぢゃ。口から出るもの、入るもの気つけよ。いくさ起るのぢゃ。人間の病や、いくさばかりでない、国は国の、世界は世界の、山も川も海も、みな病となり、不運となってくるぞ。食べないで死ぬことないぞ。食べるから死ぬのぢゃぞ。一椀をとって先づ神に供へよ。親にささげよ。子にささげよ。腹八分の二分はささげよ。 食物こそは神から、親から与へられたものであるぞ。神にささげずにむさぶるからメグリつむのぢゃ。メグリが不運となり、病となるのぢゃぞ。運ひらくのも食物つつしめばよい。言つつしめばよい。腹十分食べてはこぼれる。運はつまってひらけん。この判りきったこと、何故に判らんのぢゃ。ささげるからこそ頂けるのぢゃ。頂けたらささげると今の人民申してゐるが、それがウラハラと申すもの。衣類も家も土地も、みな神から頂いたのでないぞ。あづけられてゐるのであるぞ。人民に与へられてゐるものは食物だけぢゃ。日のめぐみ、月のめぐみ、地のめぐみだけぢゃぞ。その食物節してこそ、ささげてこそ、運ひらけるのぢゃ。病治るのぢゃ。人民ひぼしにはならん。 心配無用。 食物、 今の 半分で 足りると 申してあらうが。遠くて近いものヒフミの食べ方して見なされよ。運ひらけ、病治ってうれしうれしと輝くぞ。そんなこと位で、病治ったり、運ひらける位なら、人民はこんなに苦しまんと申すが、それが理屈と申すもの。理屈悪と申してあるもの。低い学に囚われたメクラ、ツンボと申すものぞ。理屈すてよ。すててやって見なされ。みなみな気つかん理、気つかん病になってゐるぞ。ツキモノがたらふく食べてゐることに気づかんのか。 食物 節すればツキモノ改心するぞ。先づ百日をめあてに、百日過ぎたら一年を、三年つづけたら開運間違ひなし。病もなくなってうれしうれしとなるぞ。三年目、五年目、七年目ぞ、めでたいナア、めでたいナア。六月九日、ひつくの神。以上
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(916)
ひふみ神示 37_五葉之巻 第14帖 一升マスには一升入ると思ってゐるなれど、一升入れるとこぼれるのであるぞ、腹一杯食べてはならん、死に行く道ぞ、二分を先づ神にささげよ。流行病は邪霊集団のしわざ、今にわからん病、世界中の病はげしくなるぞ。
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(943)
ひふみ神示 39_月光の巻 第11帖 病むことは神から白紙の手紙を頂いたのぢゃと知らしてあろう。心して読めよ。ありがたき神からの手紙ぞ。おろそかならん。腹八分、二分は先づささげよ。運ひらけるぞ。病治るぞ。
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(1131)
霊界物語 03_寅_十二の国魂/大道別/天使長の更迭 24 蛸間山の黒雲 第二四章蛸間山の黒雲〔一二四〕 蛸間山には銅色の国玉を鎮祭し、吾妻別を八王神に任じ神務を主管せしめ、妻には吾妻姫を娶はし内面的輔佐を命じ、国玉別を八頭神に任じ国玉姫を妻として神政を輔助せしめられ、駒世彦を宮司となし駒世姫をして祭事に従事せしめられたりしなり。しかるにこの蛸間山には、かねて地の高天原より、言霊別命神命を奉じて国魂の神を鎮祭し、荘厳なる宮殿まで建立しあれば[※第2巻第9章「タコマ山の祭典その一」参照]、つまり二個の国魂を並べ、祭祀さるることとなりぬ。ここに二つの国魂の霊現はれて互ひに主権を争ひたまへば、蛸間山は常に風雲たちこめ、時に暴風吹きおこり強雨降りそそぎ樹木を倒し、河川の堤防を破壊し、濁水地上に氾濫して神人その堵に安ンずること能はず、神人の嫉視反目は日に月に激烈の度を加へ、東天より西天にむかつて真黒の雲橋かかりて天地は為に暗黒となり咫尺を弁ぜず。ここをもつて常夜ゆく万の妖ことごとく起り、国土間断なく震動し、草の片葉にいたるまで言問ふ無道の社会を現出し、所々に大火あり大洪水あり疫病蔓延して神人まさに滅亡せむとし、また銅能宮は日夜震動して妖気を吐き、国魂の宮また同時に大音響を発して百雷の一時に轟くかと疑はるるばかり凶兆しきりにいたり、神人ともに心安からず、戦々兢々として纔に日を送る状態を馴致したりける。 国魂の神よりしてすでに斯くのごとく互ひに主権を争ひ、ほとンど寧日なきの有様なりければ、その霊精また一は八王神に憑依し、一は八頭神に憑りてつねに狂暴の行為多く、ことに八頭神には前の国魂神憑依して、八王神の命令に一々反抗し、たがひに権利を主張して相譲らず、犬猿もただならず氷炭相容れず、混乱紛糾ますます甚だしく、神人塗炭の厄に苦しみ、荒ぶる神人の言騒ぐその声は、五月蠅のごとく群がりおこりて修羅道を現出し、動乱止むことなく饑饉相次ぎ、虎狼、豺狼、毒蛇、悪鬼、妖怪なぞの邪霊は地上に充ち満ちたり。このことただちに国祖の御耳に入り、国直姫命の口をかりて、大八洲彦命に神教を伝へしめたまひける。 国祖の御神教の大要は、 『天に二日なく地に二王なきは天地の神則なり。汝らさきに蛸間山に国魂の神を鎮祭しおきながら、国魂神には何の通告もなさず、新に同じ神山に二個の国玉を奉斎せるは、おのづから秩序を紊乱し争乱の種をまくものなり。彼ら八王神八頭神は名利にふけりて争ひ憎み、たがひに怒りて天下を騒擾せしむるの罪軽からずといへども、要するに一所の霊山に二体の国魂を鎮めたる失敗の結果にして、ただちに二神を懲戒すべきに非ず、このたびの出来事はすべて汝らの一大責任なるぞ。神は神直日大直日に見直し詔り直し、もつて今回はその罪を問はざるべし。一日も早く改言改過の実をあげ、蛸間山を境として国土を南北に両分し、その持場を決定し、騒乱を鎮定し国祖の大神に復命せよ』 とおごそかに宣りたまひける。 大八洲彦命は恐懼措くところを知らず、みづからの不明不徳を謝し、大足彦とともに蛸間山に向つて出発したまひけり。 大八洲彦命は八王神に、大足彦は八頭神にむかつて神示を説き諭し神恩の忝なく尊きことを慇懃に宣り伝へける。八王神はただちに天使長の懇篤なる説示を承り、翻然として前非を悟り、かつ国魂の神のもつとも恐るべき威力に感じ、正心誠意をもつて神業に厚く奉仕し、かつ如何なる神勅なりとも、今日かぎり断じて違背せじと、心底より誓約をなしたりにける。 これに引替へ、大足彦は八頭神なる国玉別にむかひ順逆の道を説き、神の威徳をさとし言辞を竭して説示したるが、国玉別は天使の教示を聞くやたちまち顔色獰猛の相をあらはし、口をきはめて反抗し容易に屈伏せず、ほとンど捨鉢となりて天使大足彦の面上に噛みつかむとせるを、大足彦は、心得たりと両手の指を交叉し鎮魂の姿勢をとり、ウーと一声発くその言霊に、国玉別は地上に仰天し倒れ伏し、口中よりは多量の泡沫を吐きだし悶え苦しみけり。天使はなほも一声言霊の矢を放つや、八頭神の体内よりは、にはかに黒煙立ちのぼるよと見るまに、金毛八尾の悪狐の姿現はれ、雲をかすみと西の空めがけて逃失せにけり。 国魂神の嫉妬的発動の狂態を洞察したる常世国の邪神は、貪・瞋・痴の迷につけ入り、たちまち憑依の目的を達し、進ンで八王神を倒し、八頭神を失墜せしめ、蛸間山を攪乱せむとしゐたりしが、八頭神は始めて覚醒し、天使にむかつて以前の無礼を謝し、我が精神空弱にして意志強からず、つひに邪神の容器となり、神を無視し長上を侮蔑し、天地の律法を破りたる大罪を悔い、低頭平身罪に処せられむことを願ひけり。大足彦は、 『国魂の神ある上に重ねて再び、国魂の神を斎りたるは天使長以下の経綸を誤りたる結果なれば、その責任は吾らも同様なり。されど仁慈ふかき大神は、この度の事件に関しては寛大なる大御心をもつて、神直日大直日に見直し聞き直し詔り直したまひて、吾らがたがひの大罪を忘れさせたまひたり。心安く思召されよ』 と満面笑をうかべて宣り聞かせたるに、国玉別は神恩の尊く忝なさに涙を滝のごとく流し、衷心より改悛の情をあらはし、八王神に忠実に仕へける。それより天地和順し上下よく治まりて、松の神代の常永に時津風枝も鳴らさぬ聖代を招来したりける。 今まで天空に橋状をなして横たはりし黒雲は、次第に散乱して拭ふがごとく、天明らけく地清く、神人和楽の極楽浄土を現出したるぞ目出度けれ。これより二個の国魂を南北に分ち祭られ、国土を二分して、北方は八王神吾妻別これを主管し、南方は八頭神国玉別これを主管することとなりぬ。君主的神政の神界の経綸も、ここにいよいよ民主的神政の端を啓かれたるぞ是非なけれ。 (大正一〇・一一・二〇旧一〇・二一午後八時東の天より西の天に向つて一条の怪しき黒雲横たはり、天を南北に区劃し、天地暗澹たる時、竜宮館において、加藤明子録)
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(1188)
霊界物語 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 26 庚申の眷属 第二六章庚申の眷属〔一七六〕 有国彦は、常世会議より脱退せむことを宣言し、降壇せむとするや、 『暫く、しばらく』 と、大声に呼ばはりたる神司は、ヒマラヤ山の八王高山彦なりき。高山彦はただちに登壇し満座を睥睨し、おもむろに口を開いていふ。 『そもそも今回の会議は、八王の撤廃をもつてその眼目とするもののごとし。八王大神はさきに八王聯合を図り、一大団結力をもつて、聖地ヱルサレムの天使長大八洲彦命以下の神司を協力一致弾劾して失脚せしめたるは、今日にいたつて考ふれば、吾々は実に天則違反の非行為なりと思ふ。その後の世界一般の形勢は、ますます悪化し紛糾混乱の巷と化し去りしは、はたして何に原因するものぞ。吾々は思ふ、これ全く国祖の大御心に叶はざるがためなりと。しかるに今回の提案たるや、各山各地の八王八頭の政令おこなはれず、地上の世界はあたかも修羅の巷と化しさりしを口実に、また八王の無能を口実としてこれを撤廃し八王大神みづから特権を握りますます欲望を完全に達成せむとするの下心あることは、吾々の天地の大神に誓つて声明するところのものである。ゆゑに吾々の考へとしては、八王の撤廃論をすみやかに撤回し、八王一致団結して各自の中より主宰者を選出し、確固不動の団結を造り、もつて国祖の聖慮に叶へる神政を顕彰し、地の高天原に従前の過失を詫び、国治立命の管理のもとに服従し、誠心誠意帰順の実を挙ぐるに如かずと思ふ。諸神司の賛否如何』 と述べ了るや、満場破るるばかりの拍手と賛成の声に充たされける。 高山彦は笑を満面にたたへながら、 『諸神司は吾が主張にたいし、十二分の賛成を表したまへり。これより総統者の選挙に移らむ』 と言ふや、高座の上左側に控へたる行成彦はふたたび登壇し、 『高山彦の説に吾々は双手を挙げて賛成するものなり。ついては従前のごとく八王大神をもつて総統者と選定せば如何』 と提議したり。満場の諸神司は行成彦の提議に一も二もなく賛成の意を表したれば、いよいよ八王の撤廃は否決され、八王大神これを総統することとなり、地の高天原に直属し、柔順に国祖の神命に奉仕すべきことを決定したりけるは、世界平和のため慶賀にたえざるなり。 高山彦はふたたび口を開き、 『世界平和のために各自の神司らの武装の一部を撤廃するの件は、諸神司においても御異存なかるべきを確信す。賛成者はすみやかに起立されむことを』 と述ぶるや、諸神司のほとんど八分までは、一斉に起立し、かつ賛成を唱へたる。その声あたかも常世城も震動するばかりなりける。 八王大神は高座の中央に黙然として控へ、庚申の眷属よろしく、見ざる、聞かざる、言はざるの三猿主義を採り居たるもののごとし。常世姫は事ここにいたつては如何ともするに由なく、たちまち容色を和らげ満場の諸神司にむかつていふ。 『諸神司らの誠心誠意世界の平和を希求さるるは、八王大神をはじめ吾々の実に欣喜に堪へざるところであります。要するに八王大神をはじめ大自在天の提議にかかはる八王の撤廃案は、その実諸神司の誠意のあるところを伺はむための反正撥乱[※一般的には「撥乱反正」と書く。「みだれた世を治め、正しい状態にかえすこと」〔広辞苑〕]的神策でありまして、もはや吾々は諸神司の至誠公に奉ずるの御精神を実地に拝察しました以上は、何とも申し上げやうはありませぬ。従前のごとく八王大神をもつて八王の総統者となし、聖地にたいし協力一致帰順の誠をいたせば、今回の大目的は、完全に成功したものといつて差支へはないのであります』 と打つて変りし常世姫の燕返しの変節改論に、諸神人は思はず顔を見合はし、その先見の明と機敏に舌をまきにける。 常世姫はふたたび口を開き、 『かくの如く決定する以上、たがひに和衷協同の実を挙げ、もつて律法を遵守し、至誠至実の結合を見たる上は、あながちに、各神人の武装を撤回するの必要は無きものと考へます。要はただ諸神司の心を改むるにあるのみ。この点については、いま一応御熟考を願ひます』 といつてのけ、自分の席に帰りける。 (大正一〇・一二・二四旧一一・二六外山豊二録)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 17 勢力二分 第一七章勢力二分〔二一七〕 大国彦は、大鷹別以下の神々とともに常世城において、堅固なる組織のもとに神政を開始した。しかして大自在天を改名して常世神王と称し、大鷹別を大鷹別神と称し、その他の重き神人に対して命名を附すこととなつた。 ここに八王大神常世彦は、常世神王と類似せるわが神名を改称するの必要に迫られ、ウラル彦と改称し、常世姫はウラル姫と改めた。そして盤古大神を盤古神王と改称し、常世神王にたいして対抗する事となつた。各山各地の八王神は残らず命を廃し、神と称することとなり、八頭は依然として命名を称へ、八王八頭の名称を全部撤廃してしまつた。これは八頭八尾の大蛇の名と言霊上間違ひやすきを慮つたからである。されど数多の神人は従来の称呼に慣れて、依然として八王八頭と称へてゐた。国祖御隠退の後は、常世神王の一派と盤古神王一派は東西に分れ、日夜権勢争奪に余念なく、各地の八王八頭はその去就に迷ひ、万寿山、南高山を除くのほか、あるひは西にあるひは東に随従して、たがひに嫉視反目、紛糾混乱はますます劇しくなつた。この状況を蔭ながら窺ひたまひし国治立大神は野立彦命と変名し、木花姫の鎮まります天教山に現はれたまうた。また豊国姫命は野立姫命と変名してヒマラヤ山に現はれ、高山彦をして天地の律法を遵守し、天真道彦命とともに天地の大道を説き、神人をあまねく教化せしめつつあつた。また天道別命は国祖とともに天教山に現はれ、神界改造の神業について、日夜心魂を悩ましたまひつつあつた。幸にヒマラヤ山は東西両方の神王の管下を離れ、やや独立を保つてゐた。また万寿山は磐樟彦、瑞穂別の確固不抜の神政により、依然として何の動揺もなく、霊鷲山の大八洲彦命、大足彦とともに天下の形勢を観望しつつあつた。 天道別命は、野立彦命の内命を奉じ青雲山に現はれ、神澄彦、吾妻彦とともに天地の大変動のきたるを予知し、あまねく神人を教化しつつあつた。 盤古神王およびウラル彦は、常世神王の反逆的行為をいきどほり、各山各地の神人をアーメニヤの仮殿に召集し、常世城討伐の計画を定めむとした。されども神人ら(八王八頭)は、常世神王の強大なる威力に恐れ、鼻息をうかがひ、盤古神王の召集に応ずるもの甚だ尠かつた。いづれも順慶式態度をとり、旗色を鮮明にするものがなかつた。また一方常世神王は、各山各地の八王八頭にたいし、常世城に召集の令を発し、神界統一の根本を定めむとした。されどこれまた前のごとく言を左右に託して、一柱も参集する神人がなかつた。この参加、不参加については、各山各地とも、八王と八頭とのあひだに意見の衝突をきたし、八王が常世神王に赴かむとすれば、八頭は盤古神王に附随せむとし、各所に小紛乱が続発したのである。このときこそは実に天下は麻のごとく乱れて如何ともすることが出来なかつた。八王および八頭は進退谷まり、今となつてはもはや常世神王も盤古神王も頼むに足らず、何となくその貫目の軽くして神威の薄きを感じ、ふたたび国祖の出現の一日も速からむことを、大旱の雲霓を望むがごとく待ち焦がるるやうになつた。叶はぬ時の神頼みとやら、いづれの八王八頭も各自鎮祭の玉の宮に致つて、百日百夜の祈願をなし、この混乱を鎮定すべき強力の神を降したまはむことを天地に祈ることとなつた。 地上の神界は常世神王の統制力も確固ならず、盤古神王また勢力振はず、各山各地の八王八頭は各国魂によつて独立し、つひには常世神王も盤古神王もほとんど眼中になく、ただたんに天地創造の大原因たる神霊の降下して、善美の神政を樹立したまふ時のきたるを待つのみであつた。八頭八尾の大蛇および金毛九尾の悪狐および六面八臂の邪鬼は、時こそ到れりと縦横無尽に暴威を逞しうする事となつてしまつた。 附言、言葉の冗長を避くるため、今後は八頭八尾の大蛇を単に大蛇といひ、金毛九尾の悪狐を単に金狐と称し、六面八臂の邪鬼を単に邪鬼と名づけて物語することといたします。 (大正一一・一・九旧大正一〇・一二・一二加藤明子録)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 39 海辺の雑話 第三九章海辺の雑話〔二三九〕 西に高山を控へ東に縹渺たる万里の海を控へたる浜辺に立ち、山嶽のごとき怒濤の荒れ狂ふ光景を眺めて雑談に耽る四五の男があつた。 甲『あゝ世の中は変になつて来たではないか、あの濤を見よ。海か山か判らぬではないか。この間も宣伝使とやらが遣つてきて、海は変じて山となり、山は変じて海となると、大声に叫んで吾々の度胆を抜いた。されど「馬鹿いへ、この深い海が山になつてたまるものか」と冷笑してゐた。それにあの濤は爺の代からまだ見たこともない。この間もタコマ山の半腹まで海嘯が押し寄せると云つて、宣伝使が呶鳴つてゐたよ。この辺も今に海嘯で浚はれるかも知れない。汝らも一つ思案して、タコマ山の頂辺か、地教山へでも避難したらどうだらうね』 と首を傾けて思案顔に言つた。乙は冷笑を浮べながら、 『なに、ソンナ馬鹿なことがあつてたまるかい。この間の宣伝使といふ奴は、ありや気違ひだよ、星が降るとか、洪水が出るとか、人が三分になるとか、訳の判らぬ、舁いて走るやうな法螺ばかり吹きよつて、吾々をびつくりさせて喜んで居るのよ。この世に神もなければ、又ソンナ大変動があつてたまるものぢやない、万々一ソンナ事があれば世間並ぢやないか。この世の神人が全部死んで了つて、僅に二分や三分残つたつて淋しくて仕様がない。ソンナことを云つてくれな、それよりもこの前に来た宣伝使のいふことあ気が利いて居たよ』 丙『気が利いて居るつて、ドンナことを云つたのだい』 乙『ドンナ事をいつたつて、そりや大変な結構なことだよ。天来の福音といつたら、まあアンナことをいふのだらう』 甲『天来の福音て何か、「三千世界一度に開く梅の花」とか、「たとへ大地は沈むとも、誠の神は世を救ふ」と云ふことだらう』 乙[※ここから章末まで乙が九箇所、丙が一箇所あるが、校正本では乙と丙が入れ替わっているようだ。入れ替わっていると考えないと文脈がおかしくなる。校定版も愛世版も乙と丙を入れ替えている。霊界物語ネットも入れ替えた。]『馬鹿いふない、この天地は自然に出来たのだ。雨が降るのも風が吹くのも浪が高くなるのも海嘯も、みな時節だよ。この世は浮世といつて水の上に浮いてゐるのだ。ソンナけち臭い恐怖心を起すやうな、たとへ大地は沈むともなぞと、吾々はちつと気に喰わないよ。アンナ歌を聞くと、吾々の頭はガンガンいつて、今の彼の浪よりも業腹が立つよ。吾々の聞いた福音といふのは、ソンナけち臭い白痴おどしの腐れ文句ぢやない。古今独歩、珍無類、奇妙奇天烈の福音だ。まあコンナ大事なことはとつとこうかい。汝らに聞かしたら吃驚して癲癇でも起すと迷惑だからな』 丙『何だい、貴さまの云ふことあ一体訳が判らぬぢやないかい、偉さうに人の受売を勿体ぶつて天来の福音だなぞと、おほかた駄法螺でも吹音だらう、癲癇の泡吹音くらゐが関の山だ』 乙『だまつて聞いてゐろよ、たとへ大地が沈むとも間男の力は世を救ふのだ。弱蟲や腰抜蟲の前でコンナことを云つたら、冥加に盡て天罰が当るかも知れぬ。やつぱり却つて汝らの迷惑になるから止めておこかい』 丁『あまり勿体ぶるない、三文の大神楽で口ばつかりだよ、こいつな、この間も自分の小忰が井戸へはまりよつただ。その時に狼狽へよつて矢庭に手を合せて「お天とさま、お天とさま」と吐かしてな、吠面かわきよつて拝み仆してゐたのよ。その間にその小忰がぶくぶくと泡をふきよつて沈んでしまつたのだ。その時に自暴糞になりよつてな、この世に神も糞もあるものか。全智全能の神だつて、尻が呆れて雪隠が踊る、小便壺がお出で、お出でをすると吐かして怨んでゐたよ』 乙『要らぬことをいふない、人の欠点までコンナとこで曝け出しよつて、貴様の嬶が死んだ時どうだつたい。男らしくもない、冷たうなつて踏ん伸びて、石の様に硬うなつた奴を……こら女房、お前は儂を後に遺してなぜ先に死んだ、も一度夫といつてくれ……ナンテ死んだ奴に物をいへと吐かすやうな没暁漢だからね』 丁『馬鹿云へ、俺の嬶、神さまだ。貴様の嬶のやうな蜴の欠伸したやうな変な面付した嬶とは種が違ふだよ。死んでからでも毎晩々々おれの枕許へきて介抱する、そりやホントに親切だよ。そして天人の天降つたやうな立派な装束を着てゐるよ』 乙『一遍手水を使うて来い、そりや幻だよ、すべた嬶にうつつ三太郎になりよつて、毎日日日息のある間はお嬶大明神と崇めよつて、朝晩に屁つぴり腰をしよつて、嬶のお給仕に涎を垂らしてをつたお目出度い奴だからね』 一同転げて笑ふ。このとき海鳴ますます激しく浪は脚下まで襲うてきた。これは大変と真蒼な顔して一丁ばかり山へかけ登つた。 丁『偉さうに太平楽のへらず口ばかり並べよつたが、そのざま何だい。浪が来たつて真蒼な顔しやがつて、腰を抜かさぬ許りに山へ駆登つたそのぶざまつたらないぢやないか。見られたざまでないよ、ソンナざまして天来の福音なんて福音が聞いて呆れらあ、呆れ入谷の鬼子母神だ。それもつと早く意茶つかさずに癲癇の泡吹音とやらを、吾々御一統の前に畏み畏み奏聞仕るが後生のためだよ』 乙『その後生で思ひだした、この間もな、ウラル彦の宣伝使だと云つて五升樽を供に担がして大道を呶鳴つて来たのだ。それだ、天国の福音といふのは』 丁『何の事だい、べらべらと序文ばつかり並べよつて、おほかた酒を喰ふことだらう。まあこいつらの福音といふのは樽さへ見せたらよいのだ。口に唾一ぱい溜めよつて、蟹のやうな泡をふきよつてな、喉をぢりぢり焦げつかして、餓鬼が飲みたい水を飲まれぬ時のやうな憐れな面付をして、その宣伝使の後から跟きまはつて、犬が猪の後をつけるやうに鼻ばかりぴこつかして歩いていつたということだ。こいつ等の福音といふことは、酒の匂ひを嗅ぎつけて、よう飲みもせず、けなりさうに指をくはへて、宣伝使の臭い尻からついて歩きよつて、宣伝使が厠へでも這入つてゐるまに、樽のつめをポンと抜いて、長い舌を樽の中へ入れべそべそやつて居ると、雪隠の窓から宣伝使に見つけられて平謝りに謝つて、その代償として立派な美しいお尻を拭かしてもらつた臭い奴があるといふ評判だつた。大方こいつ等のことだらうよ。天国の福音でなくつて糞放の尻拭音だよ。馬鹿々々しい、糞が呆れらあ』 乙は拳を握り、むつとした顔付きで、 『貴様アよい頬桁だなあ』 丁『頬桁より桐下駄がよいのだ、あまり穿きちがひするなよ』 乙『穿きちがひは貴様のこつた、人の下駄で人を踏みつけやうとしよつて、泥足で三千世界泥の海なんて、泥棒の言ひ草みたいなことを吐してな、馬鹿らしい、それよりも酒の代りに泥水でも飲んだら、ちつと天来の福音が聞けるだらう。 飲めよ騒げよ一寸先や暗よ 暗のあとには月が出る ヨイトサ、ヨイトサ』 丁『酒もないのに酒を飲んだ気になりよつて、踊る奴があるものかい』 乙『ごてごていふない、早う帰つて嬶の幽霊になと会つてこい、かまふない』 とたがひに腕を捲りあげ格闘を初めたとたんに、はるか前方より三柱の宣伝使は、 『三千世界一度に開く梅の花、開いて散りて実を結ぶ』 と謡つてくる。乙は矢庭に眼を塞ぎ、顔を顰め、両手に頭を抑へながら、 『こいつはたまらぬ』 と大地にしやがんだ。 折しも暴風ますます激しく、浪は脚下へ襲うてくる。一同は先を争うて又もや山上めがけて逃げ出した。 (大正一一・一・一三旧大正一〇・一二・一六井上留五郎録)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 29 山上の眺 第二九章山上の眺〔三二九〕 行けど行けど限り知られぬ足曳の、山路を辿る宣伝使、激潭飛瀑の谷川を、右に左に飛び越えて、夜を日に継いで進み行く。ここに三人の宣伝使、さしもに高き山の尾に、腰打かけて四方山の景色を眺めて雑談に耽りゐる。日の出神は、 日の出神『曲津神と云ふものは、何処から何処まで、よくも仕組をしたものだな。こンな未開の筑紫の嶋の山奥まで、眷族を遣はして、どこ迄も天下を席巻せむとする執念深き仕組には、吾々は実に感服の至りだ。悪が八分に善が二分の世の中、吾々もうかうかとしては居れない。ヤヤ、あの北の方に怪しい煙が立つではないか』 祝姫『如何にも妙な煙が立ちますな、紫の麗しい何ともいへぬ煙の色。あそこには何でも尊い神様が居らつしやるのでせう。斯うして高山の上から四方を見はらせば実に世界一目に見るやうな雄大な心地が致しまして、実に壮快ですな』 日出神『いかにも壮快だ、人間は山へ上るに限る。かうして展開された四方の山や海を眼下に見下す心地よさは、丁度天教山から自転倒嶋を見下すやうだね。ヤヽ、あの煙を見られよ、ますます麗しき五色の彩になつたぢやないか』 面那芸『彼処は肥の国でせうかな』 日出神『さうだらう、何でもこの熊襲山の山脈を境に肥の国があつて、そこには武日向別[※建日向別のことか?]が守つてゐる筈だ。しかしながら常世神王の毒牙に罹つて、彼国の神人は又もや悪化してゐるかも判らない。一つ行つて宣伝をやつて見やうかな』 面那芸『それも結構ですが、良い加減に帰りませぬと、常世の国へ船は出て了ひはしますまいかな。こンな嶋に置いとけぼりを喰つては堪りませぬぜ』 日出神『何、構ふことがあるものか、何事も惟神だ。船はあれ計りじやない、また次の船が来るよ。折角神様の御計らひで常世の国へ行く積りが、こンな処へ押し流されたのだから、何か深い神界の御都合があるのだらう。我々は翌日の事は心配しなくてもよい。今と云ふこの瞬間に善を思ひ、善を言ひ、善を行つたらよいのだ。我々はその刹那々々を清く正しく勤めて行けばよい。取越苦労も過越苦労も、何にもならない。一息後のこの世は、もはや過去となつて吾々のものではない。また一息先といへども、それは未来だ。人間の分際で取越苦労をしたり、過越苦労をしたつて何にもならない。マア何事も神様に任したがよからうよ』 祝姫『貴神の仰せの通り、何事も惟神に任せませう』 面那芸『如何にもさうです、然らばぼつぼつ参りませう』 三人の宣伝使は、又もや宣伝歌を歌ひながら、五色の雲の立昇る山を目当に疲れた足を進ませ嶮しき山を下りゆく。 山の尾を伝ひ、谷に下り、また山に上り谷に下りつ進み行く折しも、何処ともなく人声聞え来たるにぞ、三人は人里近しと立停まつてその声を聞き入りぬ。 谷間には、数十人の以前の如き黒い顔の人間が、何事か囁きながら谷間の奇石怪岩をいぢつて居る。 甲『おい、詰らぬじやないか。毎日日日こンな重たい石を担がされて、腹は空るなり、着物は破れるなり、掠り疵はするなり、掠り疵はまだ宜いが、鈍公の様に岩に圧へられて、身体が紙の様になつて死ンで了つちや、たまつたものぢやないぜ。皆気を付けぬと、何時石に圧へられて、また鈍公のやうな目に逢ふかも知れないぞ。気を付けよ』 乙『気を付けるも良いが、貴様らは神さまを知つてゐるかい。神さまさへ信神すれば、怪我なンかしやしないよ。あの鈍公の野郎はな、俺が三五教の宣伝使の教を聞いて、「貴様も神様を信仰しないと、今日はえらい怪我をするぞ、貴様の顔には不審しい曇りが現はれて居る」と気をつけてやつたのに、鈍公の野郎「なに、神さまだ、そンなものが何処にあるかい。神さまがあるなら俺に逢はしてくれ、一目でも神の姿を見せて呉れたら本当にする。屁でさへも、姿見えでも音なりとするだらう。それに音もせねば声もなし、姿も見えず、そンな便りないありもせぬ神が信神できるかい。俺のとこには、立派な、ものもおつしやる、手伝うても下さる結構な嬶大明神といふ現実の神様が鎮座ましますのだよ。それに何ぞや、屁でもない神さまを信神せなぞと、雲を掴むやうなことを云ひよつて、人を馬鹿にするない、俺の目は光つて居るぞ、節穴じやないぞ」と劫託を吐き散らして、鼻唄を唄ひよつて、石運に行きよつた。さうすると彼の大きな岩奴が、鈍公の方にごろりと転けたと思ふが最後、きやつと一声この世の別れ、忌やな冥土へ死出の旅、気の毒なりける次第なりだ。貴様も、ちつと神さまを信神せぬと、また鈍公の二の舞だぞ』 斯く囁く折しも、三柱の宣伝使は宣伝歌を歌ひながら谷間に向かつて下りきたる。 (大正一一・二・一旧一・五井上留五郎録)
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霊界物語 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 36 大蛇の背 第三六章大蛇の背〔三八六〕 一同の宣伝使は、蚊々虎の面白き講釈に或は感じ或は笑ひ、其雄弁を口々に褒めちぎり居たる。折しも何処ともなく青臭い風がゾーゾーと音を立てて吹き来たりけり。 駒山彦は驚きながら、 駒山彦『ヤア出よつたぞ。あの声は大蛇の音だらう。吾々は一つ覚悟をせなくてはならぬ。腹帯でも締めて行かうかい』 蚊々虎は、 蚊々虎『正鹿山津見さまが此山には大変な大蛇が居るなぞと、吾々の胆を試して見やうと思つて、嘘言ばかり云つたのだな。長いものと云つたら此処まで来るのに、蚯蚓一匹居やせなかつたぢやないか。マア、一つ此涼しい風を十二分に受けて、大蛇の来るやうに歌でも歌つて踊らうかい。大蛇山には蛇が居るぢやげな、大きな、大きな蛇ぢやげな、嘘言ぢやげな』 正鹿山津見『蚊々虎さま、吾々は苟くも天下の宣伝使、決して嘘言は申しませぬ。大蛇はかういふ木の茂つた処には居りませぬ。この峠を少しく下ると、山一面に茫々たる草ばかりです。その草の生えた所へかかると、大きな奴が彼方にも此方にも、沢山に前後左右に往来して居ます。大蛇の王にでも出会さうものなら大変ですよ。マア道中安全のために神言を奏上しませう』 蚊々虎『それじや蚊々虎のじや推でしたか』 駒山彦は、 駒山彦『コラまた洒落てゐるナ、大蛇の峠を通行しながら、ソンナ気楽な事を云つて居るものがあるか。如何に口の達者な蚊々虎さまでも、実物に出交したら、旗を捲いて退却するに決つて居るワ』 蚊々虎は態と悄気たやうな顔をして、 蚊々虎『さうかなア、此方さまは如何な敵でも恐れぬが、大蛇だけはまだ経験が無いから、些とおろちいやうな気がする。駒公、貴様今度は先に行け、此方は五人の中央だ』 駒山彦『態見やがれ、弱虫奴が』 と争ひつつ大蛇峠をどんどん東に向つて下る。駒山彦はどこともなくびくびく胸を躍らせながら、態と空元気を出し、宣伝歌を歌つて、大蛇峠を下つて行く。その声はどこともなく慄うて居る。蚊々虎は、 蚊々虎『オイ、お先達、その声はどうだい、慄つてるぢやないか。半泣声を出しよつて、ソンナ声を聞くと、大蛇先生、女だと思つて飛びつくぞよ』 駒山彦は首をスクメながら、 駒山彦『ヤア、出た出た、ド豪い奴だ。アンナ奴がこの山道に横たはつて居ては、通る事は出来はしない』 と、どすんと道の傍に腰を据ゑる。蚊々虎は、 蚊々虎『どれどれ、俺が見てやらう』 と右の手を額にあて、 蚊々虎『ヤア、おい出たおい出た。素適滅法界に太い奴だ。向ふの山から此方の山まで、橋を懸けた様になつて居よるなあ。こいつは面白い。ドツコイ尾も頭も黒い大蛇峠。オイ駒さま、今日は一番槍の功名だ。毎度此方さまが先陣を勤めるのだが、あまり厚顔しうすると冥加が悪い。今日は先陣をお前に譲つてやらう。サア立たぬか、ハヽヽ腰を抜かして、胴の据わつとる駒山彦の宣伝使様か』 駒山彦は、 駒山彦『ナヽ何だか足が重たくなつて歩けませぬわ。蚊々君、頼みだ。お前先へ行つて呉れ』 蚊々虎『ドツコイさうはいかぬ、君子は危きに近づかずだ。飛んで火に入る夏の虫だ、アンナ長い奴にピンと跳ねられて見よ。それこそ吾々のやうな人間は、天に向つてプリンプリンプリンぢや。此方はプリンプリンプリンとやられた機みに天教山までポイトコセーと無事の御安着だ。貴様達はお上りどすか、お下りだすかの口だよ』 淤縢山津見『刹那心だ、蚊々虎も屁古垂れたな。どれ私が責任を帯びて先陣を勤めませう』 と怯まず怖れず、どしどしやつて行く。大蛇の横たはる数十歩前まで淤縢山津見は進んだが、 淤縢山津見『ヤア、あれ丈太い奴が居つては跨る訳にも行かず、飛び越える事も出来ず、これや一つ考へねばならぬなあ。蚊々虎妙案は無いか』 蚊々虎『有るの無いのつて、越えられるの越えられぬの、怖いの怖くないの』 駒山彦『何方が真実だい。越えるの越えられぬのと、どつちが真実だい』 蚊々虎『まあ蚊々虎さまの離れ業を見て居なさい』 と云ひながら、大蛇の前につかつかと進み、拳を固めて、大蛇の腹をポンポンと叩きながら、 蚊々虎『オイ、オイ大蛇の先生、同じ天地の間に生を稟けながら、なぜ此様な見苦い蛇体になつて生れて来たのだ。俺は神様の救ひを宣べ伝ふる貴き聖き宣伝使だ。貴様も何時までも此様な浅間しい姿をして深山の奥に住居をしてゐるのは苦からう。日に三寒三熱の苦みを受けて、人には嫌はれ、怖がられ、ホントに因果なものだナ。俺は同情するよ。是から天津祝詞を奏上してやるから、立派な人間に一日も早く生れて来い。其代りに俺たち五人を背に乗せて、珍の国の都の見える所まで送るのだよ。よいか』 大蛇は鎌首を立て、両眼より涙をぼろぼろと落し、幾度となく頭を下げてゐる。 蚊々虎『よし、分つた。偉い奴だ。此処に居る四人の宣伝使は盲目だから俺の素性を些とも知らないが、貴様は俺の正体が分つたと見える。よしよし助けてやらう』 大蛇は又もや両眼より涙を垂れ、俯伏せになつて、早く乗れよと云ふものの如く、長き胴体を三角なりにして待つて居る。 蚊々虎は手招きしながら、 蚊々虎『オイ皆の奴、ドツコイ皆の先生方、早く乗つたり乗つたり。随分足も疲労たらう。大蛇先生、吾々一行を珍の国の都近くまで、送らして下さいと頼みよつたぞ。サア早く早く乗りなさい。乗り後れるとつまらぬぞ』 一同は舌を巻いて、何とも彼とも云はず、呆然として佇立み居る。五月姫は、 五月姫『御一同様、どうでせう、乗せて頂きませうか』 駒山彦は呆れて、 駒山彦『これはこれは大胆な女だなあ。アンナものに乗せられて耐るものか』 蚊々虎は、ひらりと大蛇の背に飛び上り、手を振り足を踊らせて、平気の平左で宣伝歌を歌ひ出す。五月姫はつかつかと走り寄つて大蛇の背にひらりと飛び上りける。 駒山彦『ヤア女でさへもあの膽玉だ。エイどうならうと構ふものか。皆さま如何でせう、乗つてやりませうか』 淤縢山津見『よからう、正鹿山さま、如何でせう』 正鹿山津見『イヤ私も乗りませう』 と茲に五人の宣伝使は、大蛇の背に飛び乗りたり。 蚊々虎は、 蚊々虎『サア大蛇大急行だ。走つたり走つたり。 大蛇の背に乗せられてじや推の深いじや神らが 如何じや斯うじやと案じつつ珍の都へ走り行く 大蛇に乗つた蟇蛙軈ては珍の都まで 引かれて帰る蟇蛙ホントに愉快じやないかいな』 蚊々虎は出放題に歌ひゐる。大蛇は蜒々と、前後左右に長大なる身体を振動かしながら、勢よく山を下り行く。 (大正一一・二・一〇旧一・一四加藤明子録) (第三二章~第三六章昭和一〇・三・四於綾部穹天閣王仁校正)
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霊界物語 10_酉_黄泉比良坂の戦い 23 神の慈愛 第二三章神の慈愛〔四五三〕 大国姫命は、武虎別と共に、此場の怪しき光景に胆を奪はれ、呆然として何の辞もなく佇み居る折しも、日の出神と称する大自在天大国彦は、四五の従者と共に此の場に現はれ来り、 日の出神(に化けた大国彦)『ヤア、ロッキー城は大変な事が起つて来た。常世城常世神王、数多の軍勢を引連れ叛逆を企て、味方に於ては淤縢山津見、固虎彦を以て之に当らしめ居れども、始終の勝利は覚束なし。汝大国姫、今より秘かに黄泉島に渡り伊弉冊尊と称して出陣し、味方の士気を鼓舞し以て大勝利を博し、神軍を追払へよ。然らば如何に広国別勢猛く攻め来るとも、汝が武威に恐れて忽ち降服せむ。本城に立籠り、暗々広国別に滅ぼされむは策の得たるものに非ず。吾は是より本城に止りて、寄せ来る敵を待ち討たむ。汝は一時も早く黄泉島に向へ』 大国姫『委細承知仕りました。併しながら怪事多き此城中、十二分の御注意あれ』 と言ひ棄て、天の磐船に乗りて天空を轟かしながら、四五の従兵と共に、黄泉島に向つて急ぎ進み行く。 この時又もや門外騒がしく、淤縢山津見は、固山彦と共に周章しく入り来り、 淤縢山津見『日の出神に申上げます。ロッキー城は、最早刀折れ矢尽き、遂に敵の占領する所となりました』 日出神(に化けた大国彦)『エヽ腑甲斐なき奴輩奴。吾は是より広国別の軍に向ひ勝敗を決せむ。淤縢山津見、固虎、吾に続け』 と言ひながら、駿馬に跨り、威風凛々として少数の軍卒を率ゐ、ロッキー山城を後に見て、ロッキー城に向つて駆けつくる。 ロッキー城に致り見れば、表門は開放され、一人の敵軍もなければ味方の影もなし。贋日の出神は怪しみながら、将卒を率ゐて四方に心を配りつつ奥深く進み入る。見れば、狐の声四方八方より、 狐の声『狐々怪々』 寂として人影もなし。 日出神(に化けた大国彦)『合点の行かぬ今の鳴声。アイヤ、淤縢山津見、固虎彦、残る隅なく捜索せよ』 淤縢山津見『オー、吾こそは三五教の宣伝使、今まで汝が味方と云ひしは、汝の悪逆無道を懲さむ為なり。サア、斯くなる以上は尋常に降服するか』 日の出神(に化けた大国彦)『エヽ』 固山彦『汝は日の出神と名を偽り、ロッキー城に立籠り、神界の経綸を根底より破壊せむとせし悪鬼羅刹の張本、斯くなる以上は、隠るるとも逃ぐるとも、最早力及ばぬ。覚悟を致せ』 日出神(に化けた大国彦)『ヤー残念至極、大国姫は黄泉島に向つて進軍し、部下の勇将猛卒は、或は出陣し或は遁走し、今はわが身一つの、如何とも術なし。サア、汝等斬るなら斬れよ、殺すなら殺せよ』 淤縢山津見『アイヤ贋日の出神、よつく聴け。天地の神明は愛を以て心となし給ふ。吾々人間として如何ともなし難きは空気と水と死とである。死するも生くるも神の御心だ。徒に汝が如き命を奪ひて何の効かあらむ。仮令肉体は死するとも、汝の霊は再び悪鬼となりて天下に横行し、妖邪を行ふは目に見るが如し。吾は汝の生命を奪ひて以て事足れりとなすものでない。汝が霊魂中に割拠せる悪霊を悔い改めしめ、或は退去せしめ、改過遷善の実を挙げさせむと欲するのみ。三五教は汝らの主張の如き、武器を以て人を征服し、或は他国を略奪するものにあらず。至仁至愛の神の教、よつく耳を洗つて聴聞せよ』 日の出神(に化けた大国彦)『オー、小賢しき汝の言葉、聞く耳持たぬ。斯くなる以上は最早吾等の運の尽、鍛へに鍛へし都牟刈太刀を味はつて見よ』 と言ふより早く、太刀をズラリと引き抜いて、淤縢山津見、固山彦に斬つて掛かるその勢凄じく、恰も阿修羅王の荒れ狂ふが如し。淤縢山津見、固山彦は剣の下をくぐり、一目散に表門指して逃げ出す。 日出神(に化けた大国彦)『ヤア、卑怯未練な奴。ナゼ尋常に勝負を致さぬか』 固山彦『エヽ残念だ、淤縢山津見さま、如何に三五教の玉の教なればとて、斯の如き侮辱を受けながら、旗を捲き鋒を納めて、この場を逃ぐるは卑怯と見られませう。変事に際して剣の威徳を現はすは、神も許し給ふべし』 淤縢山津見『イヤイヤ、至仁至愛の神の心を以て吾は此場を逃ぐるなり。竜虎共に戦はば勢ひ互に全からず。彼を斬るか、斬らるるか、彼も神の子、吾も神の子、神の御子同士傷つけ合ふは、親神に対して申訳なし。暫く彼が鋭鋒を避けて、更めて時を窺ひ悔い改めしめむと思ふ』 固山彦『エヽ三五教は誠に以て行り難い教であるワイ』 と地団駄踏んで口惜しがる。日の出神は見え隠れに後をつけ来り、この話を聞いて大いに驚き、思はず、 日の出神(に化けた大国彦)『ワツ』 とばかり泣き伏しにける。 固山彦『ヤア、なんだか暗がりに泣声が致しますよ』 淤縢山津見『さうだなア、何だか妙な泣声だ、よく似た声だ。ヤア、暗中に泣き叫ぶは何人なるぞ』 暗中より、 日の出神(に化けた大国彦)『私は日の出神と名を偽つた大国彦であります。只今貴方の仁慈に富める御言葉を聞いて、感涙に咽び思はず泣きました。私は今迄の悪を翻然として悔い改めます。どうぞ御赦し下さいませ』 淤縢山津見『ホー、満足々々、斯くならば敵も味方もない、全く兄弟だ。兄弟を助けたさに、吾は宣伝使となつて苦労を致して居るのだ。貴方の知らるる如く、吾も旧は大逆無道の醜国別、神の仁慈の雨に浴し、悔い改めて宣伝使となりし者、かくなる上は貴下と共に是より常世城に進み、常世神王広国別を神の教に帰順せしめむ』 固山彦『ヤア、流石は淤縢山津見さま、本当に感心だ。実地の良い教訓を受けました。サアサア日の出神……ではない大国彦殿、これより常世城に向ひませう』 嚇し上手の淤縢山津見、固い一方の固山彦、目から火の出る日の出神の、意外な憂目に大国彦、今は全く悔い改めて、心の駒も勇み立ち、三人一同に連銭葦毛の駿馬に跨り、魔神の猛る常世の暗の常世城、群がる敵を物ともせず、神を力に信仰を杖に、生死の境を超越し、勇気を鼓して敵の群衆に向つて、馬の蹄の音勇ましく、ハイヨーハイヨと鞭を加へて進み行く。 竹山彦その他の部将は、この光景を見て、抵抗するかと思ひの外、馬上より、 竹山彦『ヤア、大国彦命、ウローウロー、目出度しめでたし、一時も早く奥殿に入らせられよ』 と案に相違の挨拶ぶり、大国彦は怪訝の念に駆られながら、淤縢山津見、固山彦と共に、馬上ゆたかに奥へ奥へと進み行く。今まで雲霞の如き大軍と見えしは、夢幻と消え失せて跡形もなく、奥殿には嚠喨たる音楽響き渡り爽快身に迫る。一同は奥の間に端坐し、天津祝詞を奏上し宣伝歌を唱ふ。 是よりロッキー城も常世の城も、十曜の神旗翻へり、神徳を讃美する声天地に響き、常世国は一時天国楽園と化したるぞ目出度けれ。 (大正一一・二・二五旧一・二九松村真澄録)
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霊界物語 12_亥_天の岩戸開き 10 深夜の琴 第一〇章深夜の琴〔五〇六〕 夏山彦は一同に向ひ、 夏山彦『最早夜も深更に及びましたれば、緩りと御寝み下さいませ。また明朝、緩々と御話を承はりませう』 と一同に会釈し一間に姿を隠した。 初公『蚊取別さま、この度は夢ぢやなからうなア。アイタヽヽヽ』 蚊取別『アハヽヽヽ、矢張り痛いか、痛けりや本当だ。安心して寝むだら宜からう』 初公『あの一絃琴の音はどうだ。小督の局が居るのぢやなからうかな。 「峰の嵐か松風か、恋しき人の琴の音か、駒を留めて聞くからに、爪音しるき想夫憐」 と云つた奴だナア』 蚊取別『馬鹿云ふな。夫れは何十万年未来の世の出来事だ。今は天の岩戸隠れの神代だぞ』 初公『過去現在未来を一貫し、時間空間を超越するのが神界の経綸ぢやないか。己が斯うして夏山彦の館に一絃琴を聞いて彼是噂して居た事を何十万年の未来の世の狂人が、霊界物語だと云つて喋べる様になるのだ。是も神界の仕組だよ。さうだから、ちつとでも今の間に善い事をして未来の人間に持て囃される様にならねば困る。天の岩戸開きの神業に奉仕するのは、末代名の残る事だ。それを思うと一分間でも無駄に光陰を費やすと云ふ事は出来ないワ』 蚊取別『喧しう云はずに寝る時分には寝るものだ。最早子の刻だ。三人の宣伝使が御疲れだから、貴様一人寝るのが厭なら、門へ出て其辺を迂路付いて来い』 初公『子の刻だから寝ると云ふのか、妙なコヂツケだな』 蚊取別『コヂ付けでも何でもない。開闢の初めから定まり切つた言霊の規則だよ。戌の刻限は、人間のいぬる時だ。ぬるの言霊は寝るのだ。亥の刻限にはゐと云うて休む時なのだ。ゐも又寝るのだ。子の刻にはねるものだ。戌亥子の三時は人間が一日の疲れをすつかり休めて華胥の国に遊楽する刻限だ、即ち寝る時だよ。十分体が休まつて、ウーシとなると明日の働く元気が身体一面に、ウーと張り切りシーと緊り、トーと尖つて芽をふき、ラーと左旋運動を起す。それが寅の刻だ。丑寅の刻に元気を付けて、ウーと太陽が卯の方に上る時に人間も起き出で、日天様を拝し顔を洗ひ嗽ひをし、身魂を清めてそれから飯を食ひ、辰の刻が来れば立つて働く。巳の刻が来れば、霊魂にも体にも、みが入つて一日中の大活動時機となる。午の刻になれば日天様は中天に上られ、人間の体も完全に霊と体との活用がウマク行はれるのだ。未になれば火の辻と云うて、火と水との境目だ。それから段々下ると申の刻、そこら一面に水気が下つて来る。酉の刻になれば一日の仕事を取り纏べて、其辺中を取片付け、御飯をとり込んでまた神様にお礼を申し、皆揃うて戌の刻になるといぬるのだよ』 初公『お前は割とは難かしい事を知つて居る宣伝使だねえ』 蚊取別『根ツから葉ツから蕪から菜種迄、宇宙一切万事万端解決が着かねば、宣伝使にはなれないのだよ。牛の尻ぢやないが、牛の尻にならぬと世界を助け廻る事は出来ぬ。兎も角宣伝使が尤も慎むべき寅の刻、オツトドツコイ、虎の巻は何事も省ると云ふ事が一等だ、卯の刻ではない、己惚心を出してはならぬぞ。自分は足らはぬ者ぢや、力の弱い者だ、心の汚れた者だ、罪の塊だと、始終心に恥ぢ、悔い、畏れ、覚り、省みる様にならなくては神様の御用は出来ない。辰と緯との機の仕組、神の因縁を良く諒解し、一方に偏らず、其真ん中の道を歩み、巳の刻ではない、身魂を磨き身を慎み、身贔屓身勝手は捨て改め、猥りに人を審判かず、心は穏かに春の如く、午の刻、否うまく調和を取つて神に等しき言霊を使ふのが本当の神の使だよ』 初公『蚊取別さまの御話で大体甲子(昨日)から随いて歩いて、漸く十二分の干支九(会得)が出来た。然し一絃琴の音が益々冴えて来たぢやないか。寝よと云つたつて、琴の音に耳を澄まされ子る事は出来はしない。ことの外真夜中過ての一絃琴だ。一言禁止する訳には行こうまいかな』 蚊取別『ハテナ、あの琴の音はどうやら、秘密が潜むで居るワイ。此処に来たのも何か神様の一つの絃に操られて来たのだらう』 一絃琴の音はピタリと止むだ。高光彦を始め初公は漸く眠りに就いた。蚊取別は一絃琴の耳に入りしより何となく胸騒ぎ、心落着かず眠り兼ね寝床の上に双手を組むで思案に暮れて居た。又もや微に聞ゆる琴の音、微かに歌ふ声、蚊取別は眠られぬ儘に、琴の爪音を探りさぐり近付いて襖の外に息を殺し静かに聞き入つた。一室に女の歌ふ声、 祝姫『世は烏羽玉の暗くして黒白もわかぬ人心 此世の曲を天地の神の伊吹きに祝姫 山の尾の上や川の瀬に威猛り狂ふ曲神を 言向け和し宣り和め神の恵みを四方の国 百人千人に白瀬川言の葉車の滝津瀬と 逸れど曇る世の中は何の効果もナイル河 滝の涙も涸れ果てて緑の色も褪せにけり 夏山彦の神館百日百夜のもてなしも 早秋月の滝の水乾くよしなき今の身は 生きて甲斐なき宣伝使北光彦の媒介に 蚊取の別の妻となり比翼連理の片袖も 今は湿りて濡衣の乾くよしなき浅猿しさ シナイ山より落ちかかる秋月滝に身を打たれ 醜の魔神にさやられて神に受けたる玉の緒の 息も絶えなむ時もあれ情も深き夏山彦の 貴の命に助けられ病き悩む現身を これの館に横たへて朝な夕なの慈み 身も健かになりぬれば愈此家を立ち出でて 天が下をば駆巡り三五教の御教に 常夜の暗の戸をあけて荒振る神や醜神の 魂照さむと思ふ間思ひがけなき夏山彦の 貴の命の横恋慕夫ある身も白瀬川 流す浮名の恐ろしく操破らぬ祝姫 アヽさりながらさりながら世人の口の怖ろしく 戸もたてられぬ我思ひ義理と情にほだされて 操の松も萎れ行く嗚呼如何にせむ蚊取別 夫の命が此噂聞し召しなば如何にせむ 夏山彦は名にし負ふ心目出度き貴の司 神ならぬ身の祝姫夫持つ吾と知らずして 恋の小田巻繰返し返し重ねて朝夕に 心の丈を割りなくも口説き給ふぞ悲しけれ 此の世を造りし神直日心も広き大直日 只何事も人の世は直日に見直し聞き直し 世の過ちを宣り直す三五教の守り神 百の神たち我胸の暗き帳を引きあけて 心を晴らせ八重雲を伊吹き祓ひて日月の 光照らさせ給へかし蚊取別てふ背の君は 今は何処に荒野原独り苦しき漂浪の 旅を続かせ給ふらむ逢ひたさ見たさ身の詰り 只一言の言霊の夫の命に通へよや 峰の嵐や松風に寄せて妾が琴の音を 夫の命に送れかし夫の命に送れかし』 と静かに歌つて居る。蚊取別は思はず、ウンウンと溜息つきながら足音高く我居間に立帰り、四人と共に床の上にコロリと伏し、夜の明くるを今や遅しと待ち居たりける。 (大正一一・三・九旧二・一一藤津久子録)
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霊界物語 14_丑_小鹿峠(弥次彦・与太彦) 14 一途川 第一四章一途川〔五六四〕 小鹿峠の四十八坂をば、一行四人はやつと打越え、見渡す限り茫々たる雑草茂る広野原、足にまかせて進み行く。ピタリと行当つた、水勢轟々として飛沫を飛ばし、渦まき流るる谷川の傍に辿り着いた。 弥『アヽ吾々はやうやうにして、小鹿峠の四十八坂を越え、此処の広野原を一行四人連れ、てくついて来たが、此処にピタリと行詰まつた、偉い川が横はつて居るワイ。これからフサの都へ渡り、コーカス山に行く迄は、随分長い道程だが、それまでには沢山の難所が在るだらう。それにしても絡繹として続く日々の老若男女の参詣者は、一体何処を通つて行くのだらう。この頃街道は雑沓だと云ふ事だのに、吾々の通過する処は人の子一匹居らぬぢやないか。ナンデも之れは小鹿峠の下り終ひから行手に踏み迷ひ、反対の方向に進んで来たのではあるまいかなア』 与『何だか、ご気分の冴えぬ天候と云ひ四辺の状況と云ひ、まるで幽界旅行の様だ。いつやら谷底に落ちて魂が宙に迷ひ、とうとう六道の辻まで行つて銅木像に逢つた時の様な按配式だぞ。どうやら此川も三途の川の兄弟分ぢやあるまいか、何だか変な風が吹いて来るぞ。アヽ此奴は不思議だ、今の今まで泰然自若乙に構へこみて居た山岳の奴、知らぬ間に何処かへ消えて仕舞ひよつた、まるで三途の川のやうな按配式だ、ナア弥次彦、貴様はどう思ふか』 弥『吾々の言霊の御神力に恐縮しよつて、山の奴雲を霞と逃げ散りよつたなア。随分三五教の吾々は豪勢なものだワイ』 勝『オイ此処は冥土を流るる三途の川ぢやなからうかな。何だか娑婆の川に比べて調子が違ふやうだ』 弥『調子が違つたつて御心配なさいますな、この弥次サンはドンドンながらポンポンながら、カンカンながら、前後〆めて弐回までも、幽界探険の実地経験を持つて居るお兄サン。最初与太公と遣つて来た時には、三途の川は実に綺麗な水だつた、それが第二回目に来た時には何とも知れぬ、臭気紛々たる川風が鼻を突くやう、小便大便黒血鼻啖の混合したやうな、汚くるしい物が流水代用の芸当を静かにやつて居た。その時三途の川の渡守兼脱衣婆奴が、世の中の奴が汚れた事をしをるから、この清い川がコンナに汚くなつたと云ひよつた。どうせコンナ汚い娑婆が、さう俄に清潔になるものぢやないから矢張冥土にある三途の川なら、依然として汚濁の水が永久に満ち流れて居る筈だ。之はまた素敵滅法界な清流だ、これを思へば三途の川とは、どうしても受取れないワ』 六『モシモシ皆サン、彼処の枝振の洒落た松の根許に小さい家が現はれて居るぢやありませぬか、あれやきつと三途の川の鬼婆の本宅かも知れませぬぜ』 弥『ナーニ、あれや瓦葺だ。婆の御館と云ふものは、それはそれは立派なものだ。どうしても比較にはならない黄金蔵の様だよ』 与『黄金蔵つて何だい、この前に貴様と旅行した時には見すぼらしい雪隠小屋の様な庵じやなかつたかい』 弥『アハヽヽヽ、頭の悪い奴だナ、雪隠小屋の様だから、当世流に黄金蔵と言霊を詔り直したのだよ』 与『何を吐しよるのだ、然しどうも臭いぞ。一つドンナ奴が居るか訪ふて見やうかい』 弥『マア待て一つ考へものだ。熟思黙考の余地は十二分に存する』 与『ヤア構はぬ当つて砕けだ。一つ善か悪か虚か実か爺か媼か、絶世の美人かおかめか、検非違使の別当与太衛門尉無手勝公が首実検に及ばうかい』 弥『アハヽヽ、又そろそろはつしやぎ出したなア、それほどはつしやぐと、日輪様が御出ましになつたら、貴様の細腕が燻ぼつてしもうぞ』 与『何を言ふのだ、燻つて来たら、この川にザンブと浸れば好いのだ。採長補短、水欠水補だ、ソンナ事に心配するな。自由自在の天地を跋渉する、三五教の宣伝使の候補者だ』 と云ひながら小屋の傍にツツと立寄り妙な腰付きをして、両手を蟷螂の様に構へたまま膝をくの字に曲げ、尻を振りながら、一軒屋の無双窓を覗き、 与太彦『モウシモウシお媼サン一夜の宿を願ひます それはお易い事ながらこれなる部屋を開けまいぞ それは誠に有難う今宵は此処にゆつくりと 足を伸ばして寝るであらうお婆は口を尖らして これなる居間を開けまいぞ言ひつつお婆は谷川に 手桶をさげて水汲みに後に与太彦只一人 今なるお婆の云ふたにはこれなる部屋を開けなとは てつきりおむすの添伏しか何は兎もあれ開けて見よ 左手に襖カラリ開けつらつら見ればこは如何に あちらの隅には手があるこちらの隅には足がある 今宵この家にとまりなば手足も骨もグダグダに 出刄で料理つて塩つけておほかたお婆が喰ふであろ これやたまらぬと泡を吹き裏口指して尻からげ スタコラヨイサノ、ドツコイシヨドツコイサノエツサツサノ、エンサノサ エツササノエササ、エササノサツサイ アハヽヽヽ』 弥『コラこの大馬鹿、何を洒落るのだ、此処はどうやら三途の川だぞ。まごまごして居ると本当に三途の川の鬼婆が、又着物をすつくり取り上げて、親譲りの洋服まで渡せと吐しよるぞ、君子危きに近づかずだ、早くこちらへ逃げてこぬかい』 与『エヽ今回も前回もあつたものかい、カイツクカイのカイカイカイだ。オーイ三途の川の鬼婆、先達来た与太公が又来たぞ。モウ何時ぢやと思ふて居るのだ、好い加減に起きぬかい』 家の中より、中婆の声として、 婆『誰れぢや誰れぢや、折角夜中の夢を見て居るのに、門口であた八釜しい吐す奴は何奴ぢやい』 与『誰でもないワイ、俺様ぢや』 婆『俺様と言つたつて名を言はな分るかい、貴様も智慧の足らぬ奴ぢやなア、目に見えぬ肝腎なものを落として来よつたと見えるワイ』 与『コラコラ三途の川の鬼婆奴、何を愚図々々と言つて居るのだい。早く手水をつかつて与太サンの一行に、渋茶でも汲まないかい』 婆『八釜しい言ふな、病人があるのに病気に障るワイ、ゲンの悪いことを言ふて呉れな、冥土か何ぞの様に三途の川ぢやのと、此処は一途の川ぢやぞ』 与『ヤア時節柄物価下落の影響を受けて、ドツと踏張りよつて二途を引き下げたな、サヽ投げ売り投げ売り、只より安い買ふたり買ふたり。このカリカリ糖は食べれやおいしい、食や美味い、ボロリボロリと歯脆うて歯につかぬ、湿る例しもなし、雨が降つてもカーリカリだ、アハヽヽヽ』 婆『エヽー、アタ八釜しい、お前は何処の奴乞食じや。ソンナ芸位いしたつて一文もやらせぬぞよ』 与『一門残らず討死と、聞く悲しさは嵯峨の奥、泣いてばつかり暮せしに、一途の川の乞食小屋とやらに、鬼婆がお坐しますと、一行四人は手に手を取つて、此処まで来たのがおみの仇、思へば思へばこの与太は、去年の秋の病気に、一層死んでしもうたら、斯うした歎きは在るまいもの、娑婆塞ぎになるとは知りながら、半時なりと生き長らへたいと思ふて来たのが吾身の仇、今の思ひに較ぶれば、なぜに三年も先にこの川へ、エーマ身を投げて死ななんだであらう、アヽヽヽチヤチヤチヤンチヤンチヤンチヤンチヤぢや』 弥『また演劇気分になつて居よるナ、門附芸者の様な、見つともない。洒落は止めたがよからうぞ』 婆『何処の奴乞食か知らぬが、表の戸をプリンと押して這入つて来なさい。田子の宿で飲んだ様な小便茶なと汲んで上げやうかい』 与『オイオイ弥次公、何を怕々して居るのだ、婆アサンが結構な茶をヨンデやらうと云ふて居るぞ。早う来て一杯グツと頂戴せぬかい』 弥『モシ宣伝使様、どうしませうかな』 勝『兎も角這入つて見ませうか』 三人は与太彦の後に随いて門口を跨げた。這入つて見れば外から見たよりは、比較的広き二間造りの座敷に、この家の主人と見え中年増の婆が横はつて居る。その傍に少し若さうな一人の婆が、何かと病人の世話をして居る。 勝『ヤア見れば当家には御病人が、おありなさると見える。是れは是れは御取込みの中に大勢のものが御邪魔を致しました』 婆『ハイハイ、ようマア立寄つて下さつた。此処は一途の川と云つて、お前サン等の身魂の洗濯をする処だ。二人の婆がかたみ代りに、往来の人の身魂の皮を脱がして洗濯をする処だ。サア此処へ来たが幸ひ、真裸にして親譲りの皮を脱がして上げやう。お前の顔は蕪の千枚漬ぢやないか、随分厚い皮だ。サア一枚々々隙がいつても仕様がない、年寄に苦労を掛けて困つた人だな、これもウラル彦の神様の御命令ぢやから仕方がないワ。お前等は三五教の宣伝使や信者であらう、アヽ三五教と云ふやつは、男子ぢやとか女子ぢやとか吐して、俺達の世の中を奪うとする奴ぢや。お前もその乾児だからエーイ出刄でも持つて来て、その厚い皮を剥いて遣らうかい。男子の方はまだしもだが女子と云ふ奴は瑞の御魂で、カメリオンの様な代物だ。アンナ奴の立てた教に呆けて、まだそこら中に開きに往くとは不都合千万、エーイ腰の痛い事だワイ』 と右手に出刄を持ち左手を握り、腰の辺を三つ四つポンポン打ちながら、 婆『アーエーイ、腰の痛いこつちや』 弥『オイ貴様はウラル教の悪神の乾児だな。道理で星の紋の付いた布団を着たり、羽織まで星の紋を着けてゐよるワイ、コラ婆アサン貴様こそ改心したらどうだい』 婆『エーイ八釜しいワイ、常世姫命様のお台サンが病気で寝て御座るのに、何をガアガアと騒ぐのだ。神妙にせぬと十万億土と云ふ処へ、送り届けて万劫末代この世へ上がれぬ様にして遣らうか』 与『何だ出刄を提げよつて、強圧的に矢張りウラル教はウラル式だ、奥州安達ケ原の鬼婆見た様な奴だなア。貴様はかうして此川辺に巣を構へよつて、三五教の宣伝使や信者の身魂を引抜く奴ぢやな。コレヤ、その手は喰はぬぞ、貴様の身魂をこなサンが引抜いてやらうか』 婆『何ほど八釜しく、じたばたしても恟とも動くものかい。俺は善の仮面を被つてヱルサレムの宮に、出入をして居つた常世姫命の一の家来の、木常姫の生れ替りだぞ、酢でも蒟蒻でも往く婆でないぞ』 弥『貴様は木常姫の生れ替りだな、木常姫と云ふ奴は仕方のない奴だ』 婆『仕方がなからう、小鹿峠の二十三峠の上で、この婆が貴様を苦しめた事を覚えて居るだらう、恐かつたか恐れ入つたか』 弥『エー何だか俺の背に虻がとまつたかと思つたら、貴様だつたなア。何をへらず口叩きよるのだ、愚図々々吐すと言霊の発射だぞ』 木『オホヽヽ、仰有るワイ仰有るワイ、あの時に日の出別と云ふ我楽多神が出て来よつて、いらぬチヨツカイを出しよるものだから、戦ひ利あらず、時非なりと断念して、茲に第二の作戦計画を立て、手具脛引いて待つて居たのだ。モウ斯うなつては此方のものだ、袋の鼠も同様、これや此出歯の言霊で霊なしにしてやらうか』 弥『アハヽヽヽヽ、婆の癖に剛情な奴だなア。貴様のやうな奴は屹度死んだら、三途の川の脱衣婆の後任者となつて、終身官に任ぜられる代物だナ』 婆『オホヽヽヽ、脱衣婆の役は俺の姉さまの役だよ、わしは其妹だ、酢でも蒟蒻でも梃でも棒でも、いつかないつかな恟ともせぬ、我の強い岩より堅いカンカンの鬼婆だ。如何に三五教の宣伝使でも此婆には敵ふまい。一遍に行かねば、二度でも三度でも、仮令十年百年千年かかつても、貴様の身魂を抜き取らな置くものかい』 弥『何と執念深い婆ぢやないか、早く修羅の妄執を晴らしよらぬかい。天国に往くのが好いか、地獄に行くのが好いか、此処は一つ思案の仕処ちやぞ』 婆『俺は天国は大嫌ひぢや。天国へ往かうとする奴を片つ端から、霊を抜いて地の底へ送るのが、俺の役だ。偽の変性男子だぞ。此処に寝て居る常世姫の懸る肉体は、偽の日の出神ぢや、竜宮の乙姫もタンマには憑つて来るぞ。三五教の奴は、日の出神を地に致して竜宮の乙姫殿のお活動で、この世を水晶に致すとぬかしよつて威張つてをるが、この世が水晶になつて耐るかい。日の出の世になつたら、俺達の居る処は無くなつてしまうワ、それだから貴様等のやうな馬鹿正直な頓痴気野郎や、腰抜け女を鼠が餅を引くやうに、チヨビリチヨビリと引張り込んで、日の出の神は此処ぢや、竜宮の乙姫も此処に現はれて居ると、三五教の奴を誑かして、女子の霊魂を困らしてやるのだ。アハヽヽヽ、気分の好い事ぢや、心地が好いワイ、イヒヽヽヽ』 勝『ヨウ貴様等は不届至極な婆達ぢや、最早貴様の口から自白致した以上は、弁解の辞はあるまい。曲津と云ふ奴は賢い様でも馬鹿だなア、蛙は口から吾と吾手に白状致し居つた。アハヽヽヽ』 婆『ドウセ貴様は只で帰す奴ぢやないから、俺達の企みを隠す必要もなし、因果腰を定めて、貴様の霊を一々手渡しせい。愚図々々吐すと俺が手づから、貴様の土手腹へ此奴をグサリと突つ込み、一抉りに抉つて取つてやるぞ』 弥『何を吐すのだ。顋太許り叩きよつて、脅したりすかしたり貴様の奥の手は好く分つて居るぞ』 婆『貴様達は三五の月の御教だと吐して居るが、その月は運の尽ぢや、片割月ぢや、ソンナ月が間に合ふか。 十五夜に片割月はなきものを 雲に隠れて此処に半分 と云ふ事を貴様は知つて居るか、本当の真如の月は、此処に半分どころか、丸で隠れて居るのだ、切れてばらばら扇の要だ。三五教は自在天と盤古大神の系統の神に、ばらばらに骨を抜かれよつたぢやないか、肝腎の要は此処に握つて居るのぢや。神の奥には奥があり、その又奥には奥がある、その又奥に奥がある、昔々去る昔、ま一つ昔の其昔、その又昔の大昔から、この世を自由に致さうと思うて、八頭八尾の大神様や、金毛九毛のお稲荷様、酒呑童子のお身魂様が、この一途の川の片傍に、仕組を致して居るのを知らぬか。好い加減に目を醒まして、魂をこちらへ潔く渡して、生れ赤子になつて悪神の眷族にならぬかい』 弥『アハヽヽ、コラ二人の婆、何を劫託ほざきよるのだ。勿体なくも五六七大神様が地の高天原に顕現なされた以上は、何程貴様等が火になり蛇になり猿になり狼になり狸になり、或は大蛇、狐、鬼になつて、黄糞をこいて藻掻いたつて駄目だぞ。一日も早く改心を致したがよからう』 婆『イヤイヤ、誰が何と言うても、仮令百遍や二百遍、生命がなくなつても、誠の道は嫌ひだ。誠の道と見せ掛けて悪を働くのが俺達の身魂の性来だ。金は何処までも金ぢや、瓦は何処迄も瓦ぢや。俺達は善の仮面を被つて、高い処へとまつて、熱さ寒さも知らず顔に、世界の奴を睨み下ろして居る鬼瓦ぢやぞ』 与『こりや鬼婆、イヤ鬼瓦、道理で冷酷な奴ぢやと思うて居つた』 婆『定つた事だ、俺達の眷属や系統のものが世界の奴の霊をスツクリ引抜いて、鬼瓦の霊と入替へをして置いたから、世の中の奴は皆冷酷無残な動物霊になつて、餓鬼修羅畜生の境遇になり、優勝劣敗、弱肉強食の体主霊従的非行を盛んに続けて居るのだ。最早三千世界は九分九厘まで、俺の心の儘に曇つて来居つたが、困るのはモウ一輪の所だ。変性男子の身魂はどうなつとして、チヨロマカして来たが、歯切れのせぬのは金勝要の神魂だ。そこへ我の強い変性女子の御魂や、木の花咲耶姫の御魂が出しやばりよつて、俺達の仕組の邪魔をさらすものだから、多勢の者の難儀と云ふたら、口で言ふやうなものでないワイ。貴様等も変性女子やら木の花姫の、霊主体従の教を開きに廻つて、俺等の邪魔をする奴ぢや。何と云つても貴様の霊を引抜かねば、常世姫命に対して申訳が立たず、第一盤古大神や自在天様に申訳がないワイ。婆アの一心岩をも突貫く、いい加減に因果腰を据ゑたが好からうぞ。イヒヽヽヽヽ』 勝『ヤアこの婆、貴様はよつぽど因縁の悪い奴だ。本当にこの世界がほしいか、執着心のきつい奴だ』 婆『ほしいワほしいワ、欲しい印に星の紋が附けてあるのも知らぬかい。星の紋は米の紋ぢやぞ。それが欲しいばつかりに夜昼なしにやきやきして居るのぢや、オーンオーンアーンアーン、何でもかでも欲しいワイ欲しいワイ。三五教はどうしてもやめてほしい、此方の方へ魂を渡して欲しい、是丈け梅干婆にほしいほしいが重なつて、目にまで星が這入つたワイ。蛙の干乾の様な痩た身体になつても、それでもまだ欲しいワイ。欲に呆けた為に俺の着物も梅雨が来て、アチラコチラに星が入つて来た、早う土用が来てほしいワイ、土用干でもせな星がとれぬワイ』 弥『コラ婆アサン、その星を取つたが好いのか、とらぬが好いか、どつちやか返答が一寸きかしてほしいワイ』 婆『着物の星は取つてほしいが、俺のほしいは取つてはならぬワイ』 与『イヤア此婆、五右衛門風呂の蓋のやうな事を吐きよるな、入るときに要らぬ、入らぬときに要る風呂の蓋だ。オイ風呂蓋婆、梅干婆、貴様も棺桶に片足突込んで居つて、好い加減に我を折つたらどうだい。ほしい、おしい、可愛い、憎い、欲に高慢、恨めしい、苦しい八つの埃と吐かす十九世紀の転理数のやうな奴だな』 婆『エーエー言はして置けば止め度なく、痢病患者のやうにビリビリとよう垂れる奴ぢや。くだらぬ理屈を管々しく垂れ流してエヽ汚苦しいワイ。何も彼も綺麗さつぱり御塵払ひをして、この婆に根こそげ奉納しよらぬかい。愚図々々して居ると、俺の方から行動を開始するぞ。コレコレ常世姫の神、もう起きてもよかろう、サア早く起きて下さい、二人寄つて此奴等四人を真裸にして、ソツと猫糞をキメやうかいな』 伏婆むくむくと起き上り、 婆(常世姫)『ヤア最前から病人と詐はり、様子を考へて居れば、ようマア理屈を垂れる娑婆亡者、此処は三五教の女子の系統の魂がほしさに、寝ても起きても一途の川の脱衣婆アサンぢや、車の両輪、飯食ふ箸、人間の二本のコンパス、両方からばばとばばが狹み打ちをしてやる、サアどうぢや』 四人一度に身構へをなし、 四人『ヤア何と吐いた、サア来い勝負』 と手に唾し、グツと睨み付けた。婆は手に手に出刄をひらめかし、突いて掛るを四人は汗みどろになつて、前後左右に身を躱し、奮戦格闘すること殆ど半時ばかり、勝彦は常世姫の出刄に、腰骨をグサリと突かれた途端に目を覚ませば、豈図らむや一行四人は二十五峠の麓の谷底に風に吹かれて落ちこみ居たりける。 (大正一一・三・二五旧二・二七谷村真友録)
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霊界物語 16_卯_丹波物語1 大江山/冠島沓島/丹波村 20 思はぬ歓 第二〇章思はぬ歓〔六一〇〕 竜灯松の麓に落下し爆発したる大火光団は大小無数の玉となり、見る見る容積を減じ遂には小さき、金、銀、水晶、瑠璃、瑪瑙、硨磲、翡翠の如き光玉となり、珠数繋ぎとなつて悦子姫の全身を囲繞し忽ち体内に吸収されし如く残らず浸潤し了りける。其刹那悦子姫は得も云はれぬ神格加はり優しき中に冒すべからざる威厳を備へ、言葉さへ頓に荘重の度を加へて、一見別人の如く思はれ、無限の霊光を全身より発射するに至りぬ。一同は驚異の眼を見張り頭を傾け口を極めて讃嘆する。悦子姫は儼然として立上り、 悦子姫『ハア一同の方々、妾は日の出神の神霊を身に浴びました。之より真名井ケ嶽に向つて進みませう。前途には大江山の魔神の残党、処々に散在し居れば、何れも十二分の御注意あれ、妾は之より一足先に参ります、左様なら』 と云ふより早く、矢を射る如く見る見る姿を隠したりける。 後見送つて一同は、アーアーアーと歎息の息を漏すのみなりき。 音彦『折角此処迄同道申して来たのに、悦子姫さまは無限の神徳を身に浴び、吾々を後に残して御出発になつた。随分拍子抜けのしたものだ。万緑叢中紅一点のナイス、花を欺く悦子姫さまに放つとけぼりを喰はされて好い面の皮だ、七尺の男子殆ど顔色なしで御座る哩』 岩公『本当にさうだなア、せめて岩公だけなりともお伴につれて行つて下さりさうなものだのに、余り水臭いなア』 音彦『お前のやうな純朴な人間は間に合はないから、連れて行つて下さらないワ、音彦でさへも、置去りに遇うたのだもの』 岩公『生れ赤子のやうな、貴方の仰の通り純朴な吾々を何故連れて行つて下さらないのだらうなア』 鬼虎『岩公、貴様は余程お目出度い奴だ、音彦さまが純朴と仰有つたのは、間の抜けた人と云ふ事を婉曲に善言美詞に宣り直されたのだよ。約り純朴と云ふのは社会の訓練を経ない、元始的の犬猫同様の人間と云ふ事だよ』 岩公『馬鹿云ふな、音彦さまは蹴爪の生えた宣伝使だ、三五教の骨董品的苔の生えた、洗錬に洗錬を加えた、押も押れもせぬ宣伝使様ぢや。滅多の事を仰有るものか、オイ鬼虎、それはお前の僻み根性と云ふものだよ。この岩公は斯う見えても、何事も善意に解釈するのだ、物事を悪意に取れば何も皆悪になつて仕舞ふワ、貴様は改心の坂が越えられぬと見えるワイ』 鬼虎『それでも岩公、よく考へてみよ、不思議千万の事許りぢやないか、火の玉が幾つとも数限りなく分離して、終の果には容貌の麗しき悦子姫さまに、皆染着して仕舞つたぢやないか、神様の御霊でも矢張吾々のやうな形の汚い、魂の美しい奴よりも、姿の綺麗なナイスがお好だと見える、あゝコンナ事ならなぜ女に生れて来なかつたらう、エヽ天地の神様も聞えませぬ哩、父さま、母さま、何故私を絶世のナイスに生みて下さらなかつたのです、お恨めしう御座います、オンオンオン』 鬼彦『アハヽヽヽ、何を吐すのだい鬼虎の奴、お岩の幽霊の様な面をして、神様は申すに及ばず、大江山のお化だつて貴様の御面相を見たら、二の足も三の足もふむに極つて居るワイ、ソンナ謀反気を出さずに、神妙に、醜面児は醜面児らしくして居るのだよ』 鬼虎『エヽ一つ云うては一つかち込まれ、俺の身になつて見て呉れてもよいぢやないか。隣のお多福には肱鉄砲を喰ひ、お八には尻をふられ、嬶にや逃げられ、何とした因果な生れ付だらう、俺が三五教の信者になつたのもどうぞして美しい男になり、天下のナイスをして、此鬼虎に視線を集注させようと思ふばかりに入信したのだ。アーアー、神さまも顔や姿ばかりは何うする事も出来ぬのかなア、情ない、コンナ事なら死ンだが増だワイ』 一同『アハヽヽヽ』 鬼虎『ヤイヤイ、お前達は何を笑ふのだ、俺はこれでも真剣だぞ、一生懸命になつてるのだ、余り馬鹿にして貰ふまいかい』 鬼彦『憂愁煩悶の権利は貴様の自由だ、俺達は別に圧迫もせなければ干渉もせないよ、力一ぱい愁歎場の幕を開いて吾々一同に、永当々々御観覧に供するのがよからうよ、観覧するのもせぬのも吾々の、これ又自由権利だ、アハヽヽヽ』 音彦『ヤア、からりと夜が明けた、サア日輪様を背に負うて、又テクの継続事業をやらうかなア』 加米彦『サア、竜灯松を基点として岩滝迄、マラソン競争だ。腹帯を確り締めて、草鞋を確り結び、中途に落伍しないやうに、駆歩だ。オイチ二三』 一同は岩滝目蒐けて膝栗毛に鞭打ち、一目散に走り行く。岩公、後方より、 岩公『オイオイ待つて呉れ、俺一人遺して行くのか、折角神様がお造り遊ばした大切な人間様を、粗末にして道の端に零して置くと云ふ事があるものかい、オイオイ人間一匹袂にでも入れて一緒に走つて呉れい、俺は何うしたものか交通機関の何処かに損傷を来したと見えて、テクれない哩』 一同(?)『エイ喧しい云ふな、愚図々々して居ると決勝点を人にしてやられる哩』 と一生懸命に後をも見ず雲を霞と駆け出したり。 岩公『アヽ、馬鹿ぢやなア、為いでも好い辛労をしよつて、此処から船に乗つて天の橋立を越え岩滝へお先にご安着だ。一つ皆の奴を威嚇して度肝を抜いてやらうかな』 と云ひつつ岩公は松の下に繋ぎある船の綱を解き、鱸を操りながら岩滝指して悠々と辷り行く。船は漸く岩滝に着きぬ。 岩公『アヽ智慧の足らぬ奴は可憐さうなものだワイ、この岩公は昔船頭をして居つたお蔭で地理に精しい。弓と弦程違ふ道程、何程走つたつて追ひ着きつこがあるものか、マア悠くりと成相山にでも登つて股覗きでもしてやらうかい』 斯かる所へ音彦一行は息せき切つて走り来り、 音彦『サアサア皆さま、一寸一服致しませう、随分走りましたなア』 鬼彦『随分汗が出ましたよ、それにつけても岩公の奴、今頃は途中で屁古垂れてオイオイ俺を零して行くのかなぞと怨言を並べて居るぢやらう。足弱を連れて居ると却つて迷惑だ、彼奴は性来跛者だから、マラソン競争は不適任だ』 鬼彦『岩公の奴、片方の足が短いものだから、彼奴を走らすと恰で蛸が芋畑から逃げ出すやうなスタイルだ、随分奇妙奇天烈なものだナア、アハヽヽヽ』 岩公、木の茂みの中より頭ばかり突き出して、 岩公『岩公の足は片方が短いのじやない、片方が長いのじやぞ』 鬼彦『ヤ、怪体な、岩公の声じやないか、何時の間に来よつたのだ、化物見たやうな奴じやなア』 岩公『ヘン、馬鹿にするない、片方の足が長いのだけ、それだけ貴様等とは行進が早いのだ。おまけに悦子姫さまがソツと俺の懐中へ玉を入れて下さつたものだから、宙をたつやうに此処迄無事御安着だよ。アハヽヽヽ』 鬼彦『ヤア岩公、嘘を云ふな、貴様はマラソン競争の規則を破つて窃と船に乗つて来よつたのだらう、竜灯松の下に繋いであつた船が此処に着いて居るぢやないか、条約違反だ、貴様はこれから三五教を除名するからさう心得ろ、ナアもし音彦さま、加米彦の宣伝使さま、吾々の提案は条理整然たるものでせう』 音彦、加米彦『アハヽヽヽ、オイ岩公司、アヽ結構々々、吾々は智慧の文珠堂に休みながら、其智慧を使ひ忘れた、お前は偉いものだ、アヽこれから、文珠の岩公司と名を呼ぶ事にして遣らう』 岩公肩を聳やかしながら、 岩公『ハイハイ有難う御座います、オイ鬼彦、鬼虎其他の端武者共、あの言葉を聞いたか、文珠の智慧の文珠の岩公司だ、之から何でも岩公司に智慧を借るのだぞ、オホン』 鬼彦『これだから馬鹿者には困ると云ふのだ、一寸褒めて貰へば直に興奮して、華氏の百二十度以上に逆上よる、一つ逆上の下るやうに海水でも呑ましてやらうか、ア、ドンブリコとやつて遣らうか』 岩公『大きに憚りさま、又今度お世話に預ります、サアサア音彦の宣伝使様、之から先は勝手知つたる道程だ、私が猿田彦の御用を勤めませう』 音彦『ヤアそれは調法だ。先頭は岩公司にお願ひ致さう』 岩公『これはこれは不束な岩公司に対し格外の抜擢をして下さいました。此上は恩命に報ゆるため粉骨砕身と迄は行きますまいが、可成道案内に対して可及的のベストを尽します。何うぞ御安心下さいませ』 鬼虎『岩公司の御先頭か、ねつから葉から安心なものだ。アハヽヽヽ』 岩公の案内につれ音彦一行は黄昏前、比治山の手前に辿り着きける。 音彦『何うやら今日も之でお終ひらしい、何処かの家へ入つて一夜の宿を願ひ、明日早朝真名井ケ原の豊国姫様の御降臨地を探しませう、悦子姫さまも定めしお待ちかねでせうからねえ』 岩公『少し手前に幽かな火が見えませう、彼処に行けば大きな藁葺きの家が御座います。戸を叩いて一夜の宿を貸して貰ふ事にしませう、サアもう一息です』 と先に立ち潔く駆け出し、一同漸くとある一つ家の前に着きたり。岩公は門口に立ち、 岩公『もしもしお爺さま、お婆アさま、私は比沼の真名井や比治山の神様に参詣する者で御座います、竜灯松から此処迄テクつて来ましたが、日はすつぽりと暮れ、膝坊主は吾々の命令を肯ぜなくなりました。何うぞ庭の隅でも宜敷いから一夜の雨露を凌がせて下さいませ』 爺『これお楢、何だか門口に人声がするやうだ、門を開けて調べてお出で』 お楢『平サン、お前あれだけ酒を呑みてもまだ買うて来いと云ふのかい、かう闇くなつてから私だつて堪らないぢやないか、去年のやうに大江山の鬼雲彦の家来の鬼虎にでも出遇つたら、ドンナ目に遇ふか分つたものぢやない、家の娘もとうとう鬼虎に攫はれて仕舞つたぢやないか、オンオンオン』 平助『アヽ、年が寄つて耳の聞えぬ奴も困つたものだ。アヽ仕方がない、私が行つて開けてやらうかな、ドツコイシヨ、アイタヽヽ、腰の骨が強ばつていやもう庭を歩くのも大抵の事ぢやないワイ』 と傍の杖を取りエチエチと表に出て戸をガラリと開け、 平助『この闇いのにお前さま達は何用あつて御座つた』 音彦『ハイ、吾々は比治山の神様に参詣を致すもので御座います、御覧の通り日も暮れました、何うぞ庭の隅つこでも宜敷いから一夜だけおとめ下さい、お弁当も持参致して居ります、唯とめてさへ貰へばそれで宜敷い』 平助『見れば随分沢山の同勢だが野中の一つ家だと思つて当て込みて来たのだな、とめる事は金輪際出来ませぬ哩、サアサアとつとと帰つて下さい、爺と婆と二人暮しの家ぢや、不都合だらけ平にお断り申ます』 音彦『左様で御座いませうが、折入つてお頼み申す、吾々は決して怪しいものでは御座いませぬ』 平助『去年の此頃だつた、お前のやうな日が暮れてから家の門口に立ち、庭の隅でもよいからとめてくれと云うて二人の旅人が出てきよつた、其奴が又どえらい悪魔で大江山の鬼雲彦の家来とやらで何でも鬼彦、鬼虎と云ふそれはそれは悪い奴ぢや、其奴めが爺と婆とが爪に火を点して蓄めた沢山のお金を掠奪り、天にも地にも掛け替へのない一人の娘を掻攫うて、今に行方が分らぬのだ、お前さまも大方ソンナ連中だらう、皺の寄つた爺と婆とが細い煙を立て暮して居るのだが、婆は爺が頼り爺は婆が頼りだ、婆とは云ひながら矢張女だ、昔の別嬪だ。もし婆でも夜の間に掻攫へられて仕舞ふものなら、この爺は蟹の手足をもがれたやうなものだ、エヽ気分の悪い、帰りて下され』 とピシヤツと戸を締める。 音彦『アヽ困つたなア、何うしたら宜からうか、今晩は野宿でもして一夜を明かさねば仕方があるまい』 岩公『もしもし音彦さま、千本桜の鮓屋の段ぢやないが、愛想のないが愛想となると云ふ事がありますが、此処の爺さまは一旦此鬼彦、鬼虎に偉い目に遇つたものだから、人さへ見れば怖い怖いと思うて居るのですよ、日の暮に宿を頼む奴は人奪りだと云ふ先入思想に左右されて居るものぢやから、アンナ事を云ふのでせう、誠の力は世を救ふと云ふから、も一つ頼みて見ませう』 と又もや戸を叩き、 岩公『もしもし、お爺さま、吾々は三五教の宣伝使のお伴して来た誠一つの人間で御座います。何卒一晩だけとめて下さいな』 平助『ナニツ、三五教だと、ソンナ教は未だ聞いた事もないワ、穴が無うて彼岸過の蛇のやうに探して歩いとるのか、ソンナ人には尚更宿つて貰ふ事はお断りぢや、一人よりないお楢を掻攫つて去なれては耐らぬからなア、ゴテゴテ云はずにお帰りなさい』 岩公『アヽ、仕方がない、これ程事をわけてお頼みするのに聞いて下さらぬ、世界に鬼はある。鬼と悪魔の世の中だ、慈悲も情も知らぬ奴許りだ。オイ鬼彦、鬼虎の両人、偉う沈黙して居よるな、貴様の古疵が物を云うて今晩の難儀だ、貴様一つ謝罪らぬかい』 鬼彦『もしもし音彦様、一晩位寝なかつたつて好いぢやありませぬか、これも修業だと思つて野宿を致しませうかい』 鬼虎『アヽさうだ、一晩や二晩野宿して斃ばるやうな事では三五教の信仰は出来ない、ねえ宣伝使様、如何で御座いませう』 音彦『ソンナラマアさうするかなア』 岩公『ヘン旨い事を云つて居やがらア、爺婆に会はす顔があるまい、旧悪露見の恐れがあるから、貴様としては無理もないが、綺麗薩張と爺様婆様にお断りを申たら何うだ、何時迄も悪を包みて居ると罪は取れぬぞ、罪と云ふ事は包みと云ふ事だ、何卒改心の証拠に爺さまに一つお詫をして思ふざま十能で頭を打いて貰つたら、ちつとは罪が亡びるだらうよ』 鬼彦、鬼虎、両手を組み首を傾け、大きな息を漏らし居る。此時前方より二人の女走り来るあり。一同は目を円くし、よくよく見れば、悦子姫と一人の娘なりけり。 娘『これはこれはお姫様、いかいお世話になりました、これが妾のお祖父さま、お祖母さまの家で御座います、サア何卒お入り下さいませ、嘸や祖父や祖母が喜ぶ事で御座いませう』 悦子姫『ヤア妾は此処迄送り届けたならばこれで安心してお暇致しませう』 娘『何卒さう仰有らぬと見苦しい破家なれど、渋茶なりと上げたう御座います、一寸でも宜敷いからお入り下さいませいナ』 闇の中より、 男(音彦)『ヤア貴女は悦子姫様では御座いませぬか』 悦子姫『さう云ふお声は音彦さま。この闇がりに何をして居らつしやるの』 音彦『余り暗くなりましたので一夜の宿をお強請りして居るのですが、お爺さま仲々許して呉れないのですよ』 悦子姫『ヤア、委細の様子は此娘さまから聞きました、済みた事を云ふぢやないが、随分鬼彦さまも鬼虎さまも罪な事をなさつたものぢやナア、お爺さまが泊めて呉れないのも無理はありませぬ、妾がこれからお爺さまに此娘を渡し、願つて見ませう』 娘『お祖父さま、お祖母さま、節で御座います、神様に助けられ無事に帰つて来ました。何卒開けて下さいませ』 平助此声に驚き、 平助『ヤア何、節が帰つた。オイオイお楢、節が帰つたといなア』 お楢『爺さま耳が確り聞えぬが、節が帰つたと云うたのか、ハテ合点の行かぬ事だ、大方大江山の悪神の眷族奴が節の作り声をして此家に入り込み、一つ家を幸ひに吾等夫婦の者を引つ張つて去ぬ計略かも知れぬ、迂闊り開けなさるなや』 門口より、お節は優さしひ声で、 お節『お祖父さま、お祖母さま、何卒開けて下さい、節で御座います』 平助『何吐しよるのだ、其手は食はぬぞ、作り声をしよつて、お祖父さま、お祖母さま、節で御座います……ナアーンテ大江山に捕へられて鬼の餌食になつた娘が戻つて来て耐るかい、これやこれや門口の奴共、ソンナ計略に乗る平助ぢやないぞ、入れるなら入つて見よ、陥穽が拵へて釘が一面に植ゑてあるから、命が惜く無ければ無理に入つて来い』 娘は無理に戸を押し破り飛び込みたるを、爺は、これを見て、 平助『ヤア紛ふ方なき娘のお節、好うまア帰つて呉れた。オイ、ぢつとしてぢつとして、動くと危ないぞ、一つ踏み外せば陥穽に陥る、大江山の鬼の来た時の用意に陥穽が拵へてあるのぢや、今お祖父が指揮をしてやるから、其外は歩く事はならぬぞや』 と云ひながら杖をもつて庭に線を引張つた。お節は線の上を歩いて、爺の居間に進み入る。 お楢『ヤア、お前はお節、好う帰つて下さつたナア』 と嬉し泣きに泣き伏しぬ。平助もお節の体に獅噛みつき、 平助『ヤア戻つたか、どうして居つた』 お節『お祖父さま、お祖母さま、会ひたかつた哩な』 と三人一度に声を放つて泣き崩れける。 (大正一一・四・一六旧三・二〇加藤明子録)