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ひふみ神示 38_紫金之巻 第8帖 千引岩今ぞあけたり爽し富士はも。 神は宇宙をつくり給はずと申して聞かせてあろうが、このことよく考へて、よく理解して下されよ、大切なわかれ道で御座るぞ。福はらひも併せて行はねばならん道理。光は中からぢゃ、岩戸は中からひらかれるのぢゃ、ウシトラがひらかれてウシトラコンジンがお出ましぞ、もうよこしまのものの住む一寸の土地もなくなったのぞ。
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霊界物語 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 01 霊山修業 第一章霊山修業〔一〕 高熊山は上古は高御座山[※高御座は天皇の玉座のこと。]と称し、のちに高座といひ、ついで高倉と書し、つひに転訛して高熊山となつたのである。丹波穴太の山奥にある高台で、上古には開化天皇を祭りたる延喜式内小幡神社の在つた所である。武烈天皇[※第25代天皇。]が継嗣を定めむとなしたまうたときに、穴太の皇子はこの山中に隠れたまひ、高倉山に一生を送らせたまうたといふ古老の伝説が遺つてをる霊山である。天皇はどうしても皇子の行方がわからぬので、やむをえず皇族の裔を探しだして、継体天皇[※第26代天皇。応神天皇5世の子孫。近江国高嶋郷(現・滋賀県高島市)で誕生。越前国を統治していたが、武烈天皇が後嗣を定めずに崩御した後、天皇に迎えられ、河内国で即位した。]に御位を譲りたまうたといふことである。またこの高熊山には古来一つの謎が遺つてをる。 『朝日照る、夕日輝く、高倉の、三ツ葉躑躅の其の下に、黄金の鶏小判千両埋けおいた』 昔から時々名も知れぬ鳥が鳴いて、里人に告げたといふことである。自分は登山するごとに、三ツ葉躑躅の株は無いかと探してみたが、いつも見当らなかつた。大正九年の春、再度登山して休息してをると、自分の脚下に、その三ツ葉躑躅が生えてをるのを見出し、はじめてその歌の謎が解けたのである。 『朝日照る』といふ意義は、天津日の神の御稜威が旭日昇天の勢をもつて、八紘に輝きわたり、夕日輝くてふ、他の国々までも神徳を光被したまふ黄金時代の来ることであつて、この霊山に神威霊徳を秘めおかれたといふ神界の謎である。 『三ツ葉躑躅』とは、三つの御霊、瑞霊の意である。ツツジの言霊は、万古不易の意である。『小判千両埋けおいた』大判は上を意味し、小判は下にして、確固不動の権力を判といふのである。すなわち小判は小幡ともなり、神教顕現地ともなる。穴太の産土神社の鎮座ありしも、御祭神が開化天皇であつたのも深い神策のありませることと恐察し得られる。これを思へばアゝ明治卅一年如月の九日[※明治31年(1898)旧2月9日、新暦3月1日。]、富士浅間神社の祭神、木花咲耶姫命の天使、松岡芙蓉仙人に導かれて、当山に自分が一週間の修業を命ぜられたのも、決して偶然ではないとおもふ。 神示のまにまに高熊山に出修したる自分の霊力発達の程度は、非常に迅速であつた。汽車よりも飛行機よりも電光石火よりも、すみやかに霊的研究は進歩したやうに思うた。たとへば幼稚園の生徒が大学を卒業して博士の地位に瞬間に進んだやうな進歩であつた。過去、現在、未来に透徹し、神界の秘奥を窺知し得るとともに、現界の出来事などは数百年数千年の後まで知悉し得られたのである。しかしながら、すべて一切神秘に属し、今日これを詳細に発表することのできないのを遺憾とする。
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(1010)
霊界物語 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 13 天使の来迎 第一三章天使の来迎〔一三〕 自分はなほ進んで二段目を奥深く究め、また三段目をも探険せむとした時、にはかに天上から何ともいへぬ嚠喨たる音楽が聞えてきた。 そこで空を仰いでみると、白衣盛装の天使が数人の御供を伴れて、自分の方にむかつて降臨されつつあるのを拝んだ。さうすると何十里とも知れぬ、はるか東南の方に当つて、ほんの小さい富士の山頂が見えてくるやうな気がした。 自分のその時の心持は、富士山が見えたのであるから、富士山の芙蓉仙人が来たものと思つた。しかしてその前に降りてきた天使を見ると、実に何とも言へぬ威厳のある、かつ優しい白髪の、そして白髯を胸前まで垂れた神人であつた。 神人は自分に向つて、 『産土神からの御迎へであるから、一時帰るがよい』 との仰せであつた。しかし自分は折角ここまで来たのだから、今一度詳しく調べてみたいと御願ひしてみた。 けれども御許しがなく、 『都合によつて天界の修業が急ぐから、一まづ帰れ』 と言はるる其の言葉が未だ終らぬうちに、紫の雲にわが全身が包まれて、ほとんど三四十分と思はるる間、ふわりふわりと上に昇つてゆくやうな気がした。しかしてにはかに膝が痛みだし、ブルブルと身体が寒さに慄へてゐるのを覚えた。 その時には、まだ精神が朦朧としてゐたから、よくは判らなかつたが、まもなく自分は高熊山の巌窟の前に端坐してゐることに、明瞭と気が付いた。 それから約一時間ばかり正気になつてをると、今度はだんだん睡気を催しきたり、ふたたび霊界の人となつてしまつた。さうすると其処へ、小幡神社の大神として現はれた神様があつた。 それは自分の産土の神様であつて、 『今日は実に霊界も切迫し、また現界も切迫して来てをるから、一まづ地底の幽冥界を探究する必要はあるけれども、それよりも神界の探険を先にせねばならぬ。またそれについては、霊肉ともに修業を積まねばならぬから、神界修業の方に向へ』 と仰せられた。そこで自分は、 『承知しました』 と答へて、命のまにまに随ふことにした。 さうすると今度は自分の身体を誰とも知らず、非常に大きな手であたかも鷹が雀を引掴んだやうに、捉まへたものがあつた。 やがて降された所を見ると、ちやうど三保の松原かと思はるるやうな、綺麗な海辺に出てゐた。ところが先に二段目で見た富士山が、もつと近くに大きく見えだしたので、今それを思ふと三穂神社だと思はれる所に、ただ一人行つたのである。すると其処に二人の夫婦の神様が現はれて、天然笛と鎮魂の玉とを授けて下さつたので、それを有難く頂戴して懐に入れたと思ふ一刹那、にはかに場面が変つてしまひ、不思議にも自分の郷里にある産土神社の前に、身体は端坐してゐたのである。 ふと気がついて見ると、自分の家はついそこであるから、一遍帰宅つて見たいやうな気がしたとたんに、にはかに足が痛くなり、寒くなりして空腹を感じ、親兄弟姉妹の事から家政上の事まで憶ひ出されてきた。さうすると天使が、 『御身が今人間に復つては、神の経綸ができぬから神にかへれ』 と言ひながら、白布を全身に覆ひかぶされた。不思議にも心に浮んだ種々の事は打忘れ、いよいよこれから神界へ旅立つといふことになつた。しかして其の時持つてをるものとては、ただ天然笛と鎮魂の玉との二つのみで、しかも何時のまにか自分は羽織袴の黒装束になつてゐた。その処へ今一人の天使が、産土神の横に現はれて、教へたまふやう、 『今や神界、幽界ともに非常な混乱状態に陥つてをるから、このまま放つておけば、世界は丸潰れになる』 と仰せられ、しかして、 『御身はこれから、この神の命ずるがままに神界に旅立ちして高天原に上るべし』 と厳命された。 しかしながら自分は、高天原に上るには何方を向いて行けばよいか判らぬから、 『何を目標として行けばよいか、また神様が伴れて行つて下さるのか』 とたづねてみると、 『天の八衢までは送つてやるが、それから後は、さうはゆかぬから天の八衢で待つてをれ。さうすると神界の方すなはち高天原の方に行くには、鮮花色の神人が立つてをるからよくわかる。また黒い黒い何ともしれぬ嫌な顔のものが立つてをる方は地獄で、黄胆病みのやうに黄色い顔したものが立つてゐる方は餓鬼道で、また真蒼な顔のものが立つてをる方は畜生道で、肝癪筋を立てて鬼のやうに怖ろしい顔のものが立つてゐる方は修羅道であつて、争ひばかりの世界へゆくのだ』 と懇切に教示され、また、 『汝が先に行つて探険したのは地獄の入口で、一番易い所であつたのだ。それでは今度は鮮花色の顔した神人の立つてゐる方へ行け。さうすればそれが神界へゆく道である』 と教へられた。しかして又、 『神界といへども苦しみはあり、地獄といへどもそれ相当の楽しみはあるから、神界だからといつてさう良い事ばかりあるとは思ふな。しかし高天原の方へ行く時の苦しみは苦しんだだけの効果があるが、反対の地獄の方へ行くのは、昔から其の身魂に罪業があるのであるから、単に罪業を償ふのみで、苦労しても何の善果も来さない。もつとも、地獄でも苦労をすれば、罪業を償ふといふだけの効果はある。またこの現界と霊界とは相関聯してをつて、いはゆる霊体不二であるから、現界の事は霊界にうつり、霊界の事はまた現界にうつり、幽界の方も現界の肉体にうつつてくる。ここになほ注意すべきは、神界にいたる道において神界を占領せむとする悪魔があることである。それで汝が今、神界を探険せむとすれば必ず悪魔が出てきて汝を妨げ、悪魔自身神界を探険占領せむとしてをるから、それをさうさせぬやうに、汝を神界へ遣はされるのだ。また神界へいたる道路にも、広い道路もあればまた狭い道路もあつて、決して広い道路ばかりでなく、あたかも瓢箪をいくつも竪に列べたやうな格好をしてゐるから、細い狭い道路を通つてゐるときには、たつた一人しか通れないから、悪魔といへども後から追越すといふわけには行かぬが、広い所へ出ると、四方八方から悪魔が襲つて来るので、かへつて苦しめられることが多い』 と教へられた。間もなく、神様の天使は姿を隠させたまひ、自分はただ一人天然笛と鎮魂の玉とを持ち、天蒼く水青く、山また青き道路を羽織袴の装束で、神界へと旅立ちすることとなつた。 (大正一〇・一〇・一八旧九・一八外山豊二録)
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霊界物語 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 31 九山八海 第三一章九山八海〔三一〕 大八洲彦命は、杉松彦、若松彦、時彦、元照彦の部将とともに、八島別の現はれし天教山に引きかへし、ここに防戦の準備に取りかかつた。稲山彦は大虎彦と獅子王の応援を得て勝に乗じ、天教山を八方より取りまいた。 稲山彦は潮満の珠をもつて、天教山を水中に没せしめむとした。地上はたちまち見渡すかぎり泥の海と一変した。このとき天空高く、東の方より花照姫、大足彦、奇玉彦は天神の命によりてはるかの雲間より現はれ、魔軍にむかつて火弾を発射し、天教山の神軍に応援した。されど一面泥海と化したる地上には、落ちた火弾も的確にその効を奏せなかつた。ただジユンジユンと怪しき音を立てて消えてゆくばかりである。されど白煙濛々と立ち昇りて、四辺を閉ざすその勢の鋭さに敵しかねて、敵軍は少なからず悩まされた。 このとき稲山彦の率ゆる魔軍は天保山に登り、まづ潮満の珠をもつて、ますます水量を増さしめた。天教山は危機に瀕し、神軍の生命は一瞬の間に迫つてきた。折しも杉松彦、若松彦、時彦は、天教山にすむ烏の足に神書を括りつけ、天保山に向つて降服の意を伝へしめた。烏の使を受けた稲山彦は、意気揚々として諸部将を集め会議を開いた。その結果は、 『大八洲彦命が竜宮城管理の職を抛つか、さもなくば自殺せよ。しからば部下の神軍の生命は救助せむ』 との返信となつて現はれた。この返信を携へて烏は天教山に帰つてきた。神書を見たる杉松彦、若松彦、時彦は密かに協議して、自己の生命を救はむために大八洲彦命に自殺をせまつた。 大八洲彦命は天を仰ぎ地に俯し、部下の神司らの薄情と冷酷と、不忠不義の行動を長歎し、いよいよ自分は天運全く尽きたるものと覚悟して、今や将に自殺せむとする時しもあれ、東の空に当つて足玉彦、斎代姫、磐樟彦の三部将はあまたの風軍を引きつれ、 『しばらく、しばらく』 と大音声に呼ばはりつつ、天教山にむかつて最急速力をもつて下つてきた。忽然として大風捲きおこり、寄せきたる激浪怒濤を八方に吹き捲つた。泥水は風に吹きまくられて、天教山の麓は水量にはかに減じ、その余波は大山のごとき巨浪を起して、逆しまに天保山に打ち寄せた。 天保山の魔軍は潮干の珠を水中に投じて、その水を減退せしめむとした。西の天よりは道貫彦、玉照彦、立山彦数万の竜神を引きつれ、天保山にむかつて大水を発射した。さしもの潮干の珠も効を奏せず、水は刻々に増すばかりである。これに反して天教山は殆ど山麓まで減水してしまつた。南方よりは白雲に乗りて、速国彦、戸山彦、谷山彦の三柱の神将は、あまたの雷神をしたがへ、天保山の空高く鳴り轟き天地も崩るるばかりの大音響を発して威喝を試みた。 ここに稲山彦は、天保山上に立ちて潮満の珠を取りいだし、一生懸命に天教山の方にむかつて投げつけた。水はたちまち氾濫して天教山は水中に陥り、大八洲彦命の首のあたりまでも浸すにいたつた。 泥水はなほもますます増える勢である。このとき東北に当つて、天地六合も崩るるばかりの大音響とともに大地震となり、天保山は見るみるうちに水中深く没頭し、同時に天教山は雲表に高く突出した。これが富士の神山である。 時しも山の頂上より、鮮麗たとふるに物なき一大光輝が虹のごとく立ち昇つた。その光は上に高く登りゆくほど扇を開きしごとく拡がり、中天において五色の雲をおこし、雲の戸開いて威厳高く美しき天人無数に現はれたまひ、その天人は山上に立てる大八洲彦命の前に降り真澄の珠を与へられた。その天人の頭首は木花姫命であつた。 この神山の、天高く噴出したのは国常立尊の蓮華台上に於て雄健びし給ひし神業の結果である。その時現代の日本国土が九山八海となつて、環海の七五三波の秀妻の国となつたのである。 天保山の陥落したその跡が、今の日本海となつた。また九山とは、九天にとどくばかりの高山の意味であり、八海とは、八方に海をめぐらした国土の意味である。ゆゑに秋津島根の国土そのものは、九山八海の霊地と称ふるのである。 (大正一〇・一〇・二二旧九・二二加藤明子録)
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霊界物語 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 32 三個の宝珠 第三二章三個の宝珠〔三二〕 神山の上に救はれた大八洲彦命は、天より下りたまへる木花姫命より真澄の珠を受け、脚下に現はれた新しき海面を眺めつつあつた。見るみる天保山は急に陥落して現今の日本海となり、潮満、潮干の麻邇の珠は、稲山彦および部下の魔軍勢とともに海底に沈没した。稲山彦はたちまち悪竜の姿と変じ、海底に深く沈める珠を奪らむとして、海上を縦横無尽に探りまはつてゐた。九山の上より之を眺めたる大八洲彦命は、脚下の岩石をとり之に伊吹の神法をおこなひ、四個の石を一度に悪竜にむかつて投げつけた。悪竜は目敏くこれを見て、ただちに海底に隠れ潜んでしまつた。 この四つの石は、海中に落ちて佐渡の島、壱岐の島および対馬の両島となつたのである。 そこへ地の高天原の竜宮城より乙米姫命大竜体となつて馳せきたり海底の珠を取らむとした。稲山彦の悪竜は之を取らさじとして、たがひに波を起しうなりを立て海中に争つたが、つひには乙米姫命のために平げられ、潮満、潮干の珠は乙米姫命の手にいつた。乙米姫命はたちまち雲竜と化し金色の光を放ちつつ九山に舞ひのぼつた。この時の状況を古来の絵師が、神眼に示されて「富士の登り竜」を描くことになつたのだと伝へられてゐる。 乙米姫命の変じた彼の大竜は山頂に達し、たちまち端麗荘厳なる女神と化し、潮満、潮干の珠を恭しく木花姫命に捧呈した。 木花姫命はこの神人の殊勲を激賞され、今までの諸々の罪悪を赦されたのである。これより乙米姫命は、日出る国の守護神と神定められ、日出神の配偶神となつた。 ここに木花姫命は大八洲彦命にむかひ、 『今天より汝に真澄の珠を授け給ひたり。今また海中より奉れる此の潮満、潮干の珠を改めて汝に授けむ。この珠をもつて天地の修理固成の神業に奉仕せよ』 と厳命され、空前絶後の神業を言依せたまうた。大八洲彦命は、はじめて三個の珠を得て神力旺盛となり、徳望高くつひに三ツの御魂大神と御名がついたのである。 (大正一〇・一〇・二二旧九・二二桜井重雄録)
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霊界物語 03_寅_十二の国魂/大道別/天使長の更迭 10 無分別 第一〇章無分別〔一一〇〕 天使長大八洲彦命の命により、須賀彦は第二の使者として、伴をも連れずただ一騎竜馬にまたがり蹄の音高く、鬼城山にむかひて出馬したりけり。須賀彦は、容貌うるはしく眉目清秀にして、あくまで色白く肌滑らかにしてあたかも天女の再来かと疑はるるばかりの美男子なりけり。 須賀彦は鬼城山の城門を何ンの憚る色もなく、竜馬に鞭うち奥ふかく侵入し、玄関先に馬をすて奥殿に進みいり、大音声をあげていふ。 『我こそは、地の高天原を司りたまふ国治立命、天使大八洲彦命の直使として出馬せり、言ひ渡すべき仔細あり。美山彦はあらざるか、国照姫は何処ぞ。すみやかに我が眼前にまかり出で、直使の命を承れ』 と呼ばはりし。その言霊の力は、実に雷鳴のごとく轟きわたり何となくすさまじき中にも優しみありき。美山彦は須賀彦の言霊にのまれ、やや恐怖の念にかられて躊躇逡巡の色見えにける。 この時国照姫は一室より走りいで、須賀彦の容姿端麗にして、どことなく権威に充てるその態度に荒肝をひしがれ、何の言葉もなく頭を垂れて黙視するのみなりしが、又もや静に入りきたる女性あり。須賀彦は一目見るよりハツタと睨み、 『反逆不忠の口子姫、見るもけがらはし、片時も早くこの場を立ち去れよ』 とにらみつけられ、口子姫は恨めしげに須賀彦の顔を見あげ、袖をもつてしたたる涙をふきながら四辺に眼を配り、わが胸を押へ、何事か口には出さざれど秘密のこもれることを暗示する様子なりける。 美山彦の一女に小桜姫といふ絶世の美しき若き女性あり。この小桜姫は最前よりの須賀彦の容貌端麗なるを、戸の陰より垣間見つつ心臓に劇しき波を打たせゐたるが、つひに耐へかねて顔を赤らめながら戸を押しひらき、静々と須賀彦の立てる前にはづかしげに両手をつき、慇懃に述ぶる挨拶も口ごもるそのしほらしさ。 小桜姫は思ひきつて面をもたぐるその刹那、須賀彦とたがひに視線は合致せり。いづれ劣らぬ花紅葉、色香争ふ美人と美人、両者の眼は何事かを物語るやうに見へにける。このとき美山彦、国照姫、口子姫はその場に現はれ、山海の珍味をもちだし須賀彦を丁寧に饗応し、ここに五人の神司は互ひに打ちとけ談話を交換したりける。 須賀彦はおもむろに使者のおもむきを伝へ、美山彦の返答を促しければ、美山彦は、 『使者のおもむき、たしかに拝承し奉る。しかしながら、城内の諸神司をあつめ一まづ協議を遂ぐるまで、数日の猶予を与へたまはずや』 と顔をやや左方にかたむけ、須賀彦の返答いかにとその顔を見上げたり。須賀彦はその請求を許し、数日城内に滞在し返事を待ちゐたり。国照姫は小桜姫に命じ、須賀彦の身辺に侍せしめ用務を便ぜしめける。 遠きやうでも近く、難きに似て易きは男女の道とかや。ここに須賀彦、小桜姫は人目の関を破りて割無き仲となり終りぬ。この様子をうかがひ知りたる国照姫、口子姫はおほいに喜び、須賀彦をとどめて婿となさむと思ひ、種々心を配りゐたりける。 それより須賀彦と小桜姫は両親の黙認のもとに夫婦きどりになり、緊要なる大神の使命を忘却するにいたりけるぞ歎てけれ。須賀彦は小桜姫に魂をうばはれ日夜姫を相手に淫酒にふけり、あまたの城内の神司とともに花見の宴を催したるに、諸神司は酒に酔ひつぶれ、かつ庭前にいまを盛りと咲き香ふ桜木の下に、あるひは謡ひあるひは舞ひ、鐘や太鼓の拍子に乗つて踊りくるひ、かつ須賀彦の手をとり、「貴下も謡ひたまへ、舞ひたまへ」と、諸手をとつて大桜木の下に誘ひ、春風に散る花吹雪を浴びつつ愉快気に、須賀彦は酒の威力を借りてうたひ出しけり。その意味の大要を、今様式にここに挙ぐれば左の意味の籠れる歌なりける。 『花の顔色月の眉富士の額に雪の肌 天津乙女の再来か小野の小町か照手の姫か ネルソンバテーか万竜か欣々女史か楊貴妃か 褒似の姫か難波江のよしもあしきも判きかぬる 富田屋八千代も丸跣年は二八か二九からぬ 小桜姫の微笑は天下の城も傾けむ 鬼神もおそるる幽庁の閻魔もよだれを流すらむ 優び姿は海棠の雨の湿ほふごとくなり かかる美人がまたと世に三千世界にあるものか 有明月のまるまると背は高からず低からず 一度にひらく紅梅の露に綻ぶ姿かや 口より見する歯の光光明姫か衣通姫の 美し命の再生かすずしき声は鈴虫か さては弥生の鶯か松の神代に遇ふよりも 小桜姫ともろともに仲も吉野の山ふかく 竹の柱に茅の屋根虎狼の住家をも なぞか厭はむ糸桜夜半の嵐に散るとても 散らぬ両人の恋衣恋に上下の隔てなし 隔てないのが恋の道隔てないのが恋の道 心須賀彦須賀々々と八雲の琴の須賀掻も シヤツチンシヤツチンシヤツチンチンシヤツチンシヤツチンシヤツチンチン』 と二弦の琴を弾じながら、あたりかまはず土堤を切らして踊り狂ふ。 かくして須賀彦は、つひに恋の虜となり、地の高天原への復命をなさず、敵城の養子婿となりすまして不義の臣とはなりにける。楽しき鴛鴦の契もつかのま、いづこよりとも知らず白羽の矢は飛び来りて須賀彦の胸を貫ぬきたれば、あはれ悶死を遂げにけり。あゝ、実に慎むべきは男女の道にこそあれ。 (大正一〇・一一・一五旧一〇・一六有田九皐録)
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霊界物語 03_寅_十二の国魂/大道別/天使長の更迭 岩井温泉紀行歌 附録岩井温泉紀行歌 瑞月作 岩井温泉紀行歌 瑞の御魂に縁由ある壬戌の一月の 雪降りつもる銀世界黄金閣をあとにして 八日午前の巳の刻に身魂の垢を清めむと 岩井温泉さして行く湯浅篠原植芝や 松の大本の竹下氏恵みの風も福島の 近藤の湯治を送らむと信仰かたき石の宮 家並は古く朽ちぬれど名は新町の正中を 足並速き自動車に揺られて綾部の駅につく 汽笛一声汽車の窓記者の外山氏加藤女史 西村徳治を伴ひて心も勇む石原の駅 煙をあとに初瀬の橋飛びたつばかり進み行く 科戸の風の福知山聞くも恐ろし鬼ケ城 見捨てて走る山間の上川口や下夜久野 降り来る雪を突破して安全守る上夜久野 梁瀬を渡りゴウゴウと輪音も高き和田山や 篠竹しげる養父の駅八鹿江原を打ち過ぎて 外山に包みし豊岡の昇降客のいと多く 但馬名所の玄武洞右手にながめて城ノ崎の 温泉場を振り返へり竹野や佐津の駅も過ぎ 日本海をながむれば雪雲とほく香住駅 山腹包む鎧田の雪つむ景色面白久 谷を埋むる白雪は山陰寒気の表徴と ながめて走る汽車の窓煙草正宗菓子饅頭 お茶お茶弁当の売声に空しき腹を満たすとは ま坂思はぬまうけもの車のすみに居組つつ いよいよ汽車も申の刻岩美の駅に降りけり 雪より白きお梅さま雲井の上の雪の空 緩高梅の田舎道ホロの破れし自動車に 一行六人ぶるぶると自身神也屁の車 廻る駒屋の温泉宿湯治々々と月代の 一同夕餉も相済みて腹もポンポコ湯冠りの ヤレヤレヤレの拍子歌いと面白き雪の庭 なが夜を茲に明しける大正十年十二月 十の二日の未明新暦一月九日に 激しき吹雪降りすさみ寒さに凍えた瑞月は 炬燵の中の侘住居横に立ちつつ千早振 神世の奇しき物語外山加藤井上氏 筆を揃へてかくの通り ○  来訪者名読込歌 温泉の神と現れませる出雲に坐す大己貴(出口王仁三郎) 岩井の湯口細くとも薬の王と聞えたる 神の仁慈の三ツ御魂心地も日々に朗かに 病の根まで断り払ふ効験は岩美に名西負ふ(西村徳治) 田舎の村の湯の御徳療治を加ねて藤くより(加藤明子) 明々つどひ遊び来る男子と女子の宿りたる これの駒屋の温泉は外に又なき客の山(外山豊二) 豊二暮す玉の井のこの上もなき御神徳(井上留五郎) 留る三階に五郎々々とねころびながら霊界の ありし昔の物語石より堅き信仰の(石渡馨) 丹波に馨る神の道常磐堅磐の岩よりも(岩淵久男) かたき誠の教の淵汲取るものは久方の 天より降る変性男子この世の峠や嵯峨の根に(嵯峨根民蔵) さまよふ民蔵救はむと誓ひ出ます神の世に 生れ大野は只ならじ深き因縁の著次郎く(大野只次郎) 田づね来て見よ神の村天地を兼太郎大神の(田村兼太郎) 黄色の色や白梅の佐和に佐木たる神の苑(佐々木清蔵) 清き蔵昔のそのままの紙より白くすがすがし(紙本鉄蔵) 世の大本の金鉄の身魂蔵めし万代の 亀のよはひの本宮山二代教主にかかりたる(亀山金太郎) 金勝要の太み神肌への色は山吹の 清郎比ぶるものもなき景色も藤や田子の浦(藤田武寿) よはひも今は武寿の古き昔を田どる時(古田時治) 治まる波路を加露ケ浜船にて越え来し三保の関(船越英一) 英米須の神を祭りたる山陰一の神霊地 稜威も高嶋あとに見て浪路を進むゆかしさよ(高嶋ゆか) 神の御魂を迎遠藤綾部に居ます牛虎の(遠藤虎吉) 神の吉詞をかしこみてやうやう平田にたどりつき 田植の中の道芝を神のま盛りに踏みて行く(植芝盛隆) 降々昇る旭影竹はなけれど松梅の(竹下斯芸琉) 御杖を下げて道草の斯芸琉野路を勇ぎよく 東の空の色良しと俊老いたまふ大教祖(東良俊) 桑原田原の道別けて喜び一行幽世を(桑原道善) 知食します大社栄ゆる松や神の田の(松田政治) 尊き政治を偲びつつ苔むす藤のいと高く(藤松良寛) からむ社の千代の松心持良く胸寛く 進む小林神の森秀づる尾の上の弥仙山(小林秀尾) 鶴山亀山右左神威を保つ一の鳥居(小林保一) 稲田の姫の命をば救ふて得たる村雲の(稲村寿美) 劔の光寿美渡り須賀の宮居を建了へて 横暴無道の悪神の山田の大蛇を斬放り(横山辰次郎) ひの川上に辰雲の光も殊にいち次郎く 神の功ぞ尊とけれ諸木の下を潜りたる(木下泉三) 谷の泉も素鵞の川三山の奥村芳りつつ(奥村芳夫) 夫婦はここに八雲立出雲八重垣つまごめに 八重垣作る八重垣の誉れは今にコン近藤(近藤繁敏) 栄えて繁る長の敏我日の本のあななひの 道を教へし大己貴浦安国の田のもしく(安田武平) 武力絶倫国平の鉾を皇孫に奉り 君の御尾前仕へなむこれの誓ひは万代も 田賀へじものと手を拍つて青紫垣にかくれたる(田賀鉄蔵) 事代主の金鉄の堅き御言蔵尊とけれ すぎ西むかしの物語神有村の老人に(西村菊蔵) 詳しく菊蔵ありがたき地の高天原にあれませる(原祐蔵) 神の祐蔵うれしみて詣でし一行十五人 神徳岡さぬ皇神の重き御命を拝しつつ(徳岡重光) 神の光を照さむと藤き山路や原野越え(藤原勇造) 勇み来る造艮の神の生宮直子刀自 社の前に田知よりて祈る誠の美千香る(前田美千香) この音づれを久方の雲井の空や土の上に(井上敏弘) いと敏やかに弘めかし神の真毛利は八洲国(毛利八弥) 弥常永に伝はりて栄え目出度瑞穂国 秋の足穂の御田代は太田の神に神習ひ(田代習) 教の苗を植付ける国常立大神の 高木勲を寿ぎて三柱神の神の教(高木寿三郎) 田中も山も佐嘉栄吉し五六七の御代に住山の(田中嘉栄吉) 人の心は泰平蔵雲井の上も葦原も(住山泰蔵) 熊蔵なき迄住渡る清けき富士の高山に(上原熊蔵) 金銀竜の二柱世人を真森田すけむと(住山竜二) 御心くまらせ玉ひつつ大矢嶋国栄えゆく(森田くま) 祥たき御代を松の世の浦安国の磯輪垣の(矢嶋ゆく) 秀妻の国蔵尊とけれ元気も吉田の一行は(松浦秀蔵) 身魂勝れて美はしく聖地を西にあとに見て(吉田勝美) 町や山村伝ひつつ又蔵降り来る五月雨を(西村伝蔵) おかして伊佐み田庭路の福知へ帰り喜一郎(伊佐田喜一郎) 途上つはりの心地して二代スミ子は澄渡る 石原の小泉すくひ上げ教祖手づから清泉を(小泉熊彦) 口に富熊せ玉ひつつ国武彦の真森田る(森田勘太郎) 綾の勘部の太元に雨の中尾ば六月の(中尾豊弘) 四日に豊かに弘前に神徳高く山の如(山本惣吉) 頭にいただき帰ります大本役員惣一同 今日の生日の吉き日をば祝ひ納むる吉祥の(同納吉) 宴を平木て大神の御稜威かしこ美山川の(平木稜威美) 供物を献じ石の上古き太初の皇神の(山川石太郎) 直なる武の田ぐひなき誉れを今に伝へける(武田なを) 大正三年の春の頃十三才の直霊嬢 瑞月柳月の三人が出雲大社へ礼参り 其往きがけに岩美駅馬車にゆられて晃陽の やかたに再び逗留しいよいよ三度の入浴に 身魂の垢を洗ひつつ五ツと六との霊界の 昔語りを新らしく天地宇宙の外に立ち 言葉も清くいさぎよくまはる駒屋の温泉場 心の垢をあらひつつあらあらかくは識しけり 皇道発祥の霊地日向国宮崎市の公会堂に於て昭和神聖会支部の発会式を盛大に挙行したる翌朝七時四十分、同市神田橋旅館の二階の間大淀河の名橋や清流を眺めつつ誌し置く。いよいよ霊主体従寅の巻の校正を終る。 (昭和一〇、一、一九早朝) 附言 明治三十四年旧五月十五日、教祖様神勅を受けて、八雲立出雲の国の天日隅の宮に御参拝の節、山陰道を徒歩し一行十五人、岩井温泉駒屋に一泊せられ、帰路ふたたび同家に宿泊されたる、大本にとつて由縁浅からざる温泉なり。瑞月は大正三年の春、三代直霊、梅田信之氏とともに一泊したることあり。今回にて三度目の入浴なり。静養かたがた霊界物語の口述をなすも、神の御仁恵と歓びのあまり、筆記者および信者の訪問して色々と御世話下されし其の厚意を感謝するため、諸氏の芳名を読込み、長歌を作りて第三巻の巻尾に附する事となしぬ。
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霊界物語 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 46 神示の宇宙その一 第四六章神示の宇宙その一〔一九六〕 我々の肉眼にて見得るところの天文学者の所謂太陽系天体を小宇宙といふ。 大宇宙には、斯くの如き小宇宙の数は、神示によれば、五十六億七千万宇宙ありといふ。宇宙全体を総称して大宇宙といふ。 我が小宇宙の高さは、縦に五十六億七千万里あり、横に同じく、五十六億七千万里あり、小宇宙の霊界を修理固成せし神を国常立命といひ、大宇宙を総括する神を大六合常立命といひ、また天之御中主大神と奉称す。 小宇宙を大空と大地とに二大別す。而して大空の厚さは、二十八億三千五百万里あり、大地の厚さも同じく二十八億三千五百万里ある。 大空には太陽および諸星が配置され、大空と大地の中間即ち中空には太陰及び北極星、北斗星、三ツ星等が配置され、大地には地球及び地汐[※オニペディア「霊界物語第4巻の諸本相違点」の「地月・地汐・汐球」参照。]、地星が、大空の星の数と同様に地底の各所に撒布されあり。大空にては之を火水といひ、大地にては之を水火といふ。大空の星は夫れ夫れ各自光を有するあり、光なき暗星ありて凡て球竿状をなしゐるなり。 大地氷山の最高部と大空の最濃厚部とは密着して、大空は清く軽く、大地は濁りて重し。今、図を以て示せば左の如し。 [#図第一図小宇宙縦断図] 大空の中心には太陽が結晶し、その大きさは大空の約百五十万分の一に当り、地球も亦大地の約百五十万分の一の容積を有せり。而して太陽の背後には太陽と殆ど同形の水球ありて球竿状をなし居れり。その水球より水気を適宜に湧出し、元来暗黒なる太陽体を助けて火を発せしめ、現に見る如き光輝を放射せしめ居るなり。故に太陽の光は火の如く赤くならず、白色を帯ぶるは此の水球の水気に原因するが故なり。 太陽は斯くの如くして、小宇宙の大空の中心に安定し、呼吸作用を起しつつあるなり。 [#図第二図大空の平面図] 又、地球(所謂地球は神示によれば円球ならずして寧ろ地平なれども、今説明の便利のため従来の如く仮りに地球と称しておく)は、四分の三まで水を以て覆はれあり。水は白色なり。この大地は其の中心に地球と殆ど同容積の火球ありて、地球に熱を与へ、且つ光輝を発射し、呼吸作用を営み居るなり。而て、太陽は呼吸作用により吸収放射の活用をなし、自働的傾斜運動を起しゐるなり。されど太陽の位置は大空の中心にありて、少しも固定的位置を変ずることは無し。 [#図第三図大地の図] 地球は大地表面の中心にありて、大地全体と共に自働的傾斜運動を行ひ、その傾斜の程度の如何によりて、昼夜をなし春夏秋冬の区別をなすものなり。自働的小傾斜は一日に行はれ、自働的大傾斜は四季に行はる。彼岸の中日には太陽と地球の大傾斜が一様に揃ふものなり。又六十年目毎にも約三百六十年目毎にも、夫々の大々傾斜が行はれ、大地および地球の大変動を来す時は即ち極大傾斜の行はるる時なり。 太陽は東より出でて西に入るが如く見ゆるも、それは地上の吾人より見たる現象にして、神の眼より見る時は、太陽、地球共に少しも位置を変ずることなく、前述の如く、単に自働的傾斜を行ひてゐるのみなり。 天に火星、水星、木星、金星、土星、天王星、海王星その他億兆無数の星体ある如く、大地にも亦同様に、同数同形の汐球が配列されありて、大空の諸星も、大地の諸汐球も、太陽に水球がある如く、地球に火球がある如く、凡て球竿状をなしゐるものにして、各それ自体の光を有しゐるなり。なほ、暗星の数は光星の百倍以上は確かにあるなり。 太陰は特に大空大地の中心即ち中空に、太陽と同じ容積を有して一定不変の軌道を運行し、天地の水気を調節し、太陽をして酷熱ならしめず、大地をして極寒極暑ならしめざるやう保護の任に当りゐるものなり。 而して太陰の形は円球をなし、半面は水にして透明体なり。而てそれ自体の光輝を有し、他の半面は全く火球となりゐるなり。今図を以て示せば次の如し。(第四図参照) [#図第四図太陰の図] 太陰は大空大地の中心を西より東に運行するに伴ひ、地汐をして或ひは水を地球に送らしめ、或は退かしむるが故に満潮干潮の現象自然に起るものなり。神諭に、 『月の大神様は此の世の御先祖様である』 と示しあるは、月が大空と大地の呼吸作用たる火水を調節するの謂なり。火球は呼気作用を司り、地汐は吸気作用を司る。 『富士と鳴門の仕組が致してある』 といふ神示は、火球の出口は富士山にして、地汐は鳴門を入口として水を地底に注吸しゐることを指示せるものなり。火球及び地汐よりは、なほ人体に幾多の血管神経の交錯せる如く、四方八方に相交錯したる脈絡を以て、地球の表面に通じゐるものなり。 (大正一〇・一二・一五旧一一・一七桜井重雄録)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 22 神業無辺 第二二章神業無辺〔二七二〕 爰に天の御柱の神は、女神の宣言を喜び給はず、いたく怒り給ひて、歌もて其の怒りを洩らさせ給ひぬ。其御歌、 『天津御神の御言もて天の柱となり出でし 吾は高天原を知らすべき神のよさしの神司 雲井に高き朝日子の光りも清き神御魂 汝は国土知らすべき豊葦原の神つかさ 天と地とはおのづから高き低きのけじめあり 重き軽きのちがひあり天は上なり地は下よ 男子は天よ女は地よ天は下りて地は上 此逆さまの神業は本津御神の御心に いたく違へるひが事ぞ天は上なり地は下 男子は上ぞ女は下ぞ天と地とを取違ひ 上と下とを誤りていかでか清き御子生まむ いかでか清き国生まむ再び元に立帰り 天津御神にさかしらのこの罪科を詫び了へて 再び神のみことのり祈願奉り御柱を 改め廻り言霊を宣りかへしなむいざさらば いざいざさらば汝が命』 と稍不満の態にて、男神は元の処に帰り給ひけるに、女神も其理義明白なる神言にたいし、返す言葉もなく再び元の処に、唯々諾々として復帰し給ひたり。 その時成り出でましたる嶋は、前述のごとく淡嶋なりき。淡嶋は現今の太平洋の中心に出現したる嶋なるが、此天地逆転の神業によつて、其根底は弛み、遂に漂流して南端に流れ、地理家の所謂南極の不毛の嶋となりにける。 而て此の淡嶋の国魂として、言霊別命の再来なる少名彦命は手足を下すに由なく、遂に蛭子の神となりて繊弱き葦舟に乗り、常世の国に永く留まり、その半分の身魂は根の国に落ち行き、幽界の救済に奉仕されたるなり。 この因縁によりて、後世猶太の国に救世主となりて現はれ、撞の御柱の廻り合ひの過ちの因縁によりて、十字架の惨苦を嘗め、万民の贖罪主となりにける。 ここに諾冊二尊は再び天津神の御許に舞上り、大神の神勅を請ひ給ひぬ。大神は男神の宣言のごとく、天地顛倒の言霊を改め、過ちを再びせざる様厳命されたり。 ここに二神は改言改過の実を表はし、再び撞の御柱を中に置き、男神は左より、女神は右より、い行き廻りて互ひに相逢ふ時、男神先づ御歌をよませ給ひける。其御歌、 『浮世の泥を清めむと天津御神の御言もて 高天原に架け渡す黄金の橋を打ち渡り おのころ嶋におり立ちて八尋の殿をいや堅に 上つ岩根につき固め底つ岩根につきならし うましき御世を三つ栗の中に立てたる御柱は つくしの日向の立花や音に名高き高天原の あはぎが原に聳え立つ天と地との真釣り合ひ 月雪花の神まつり済ませてここに二柱 汝は右へ吾は左左は夫右は妻 めぐりめぐりて今ここに清き御国を生みの親 神伊邪那美の大神の清き姿は白梅の 一度に開く如くなり嗚呼うるはしき姫神よ 嗚呼うるはしき顔容よ汝が命のましまさば たとひ朝日は西の空月は東の大空に 現はれ出づる世ありとも夫婦が心は相生の 栄え久しき松の世を常磐堅磐に立てむこと いと安らけし平けしいざいざさらばいざさらば 天津御神の御言もて国の安国生みならし 島の八十嶋つき固め百の神達草木まで 蓬莱の春のうまし世に開くも尊き木の花の 咲耶の姫の常永に鎮まり居ます富士の峰 空行く雲もはばかりて月日もかくす此の山に 稜威も高き宮柱撞の御柱右左 めぐる浮世の浮橋はこの世を渡す救け船 救けの船の汝が命見れども飽かぬ汝が姿 阿那邇夜志愛袁登女阿那邇夜志愛袁登女 夫婦手に手をとりかはし天と地との御柱の 主宰の神を生みなさむ主宰の神を生みなさむ 浦安国の心安くみたまも光る紫の 雲のとばりを押分けて輝きわたる日の光 月の輝きさやさやにいやさやさやに又さやに 治まる両刃の剣刃の天の瓊矛の尖よりも 滴り落つる淤能碁呂の嶋こそ実にも尊けれ 嶋こそ実にも尊けれ』 と讃美の歌を唱へられたりける。 (大正一一・一・二〇旧大正一〇・一二・二三井上留五郎録) (第二二章昭和一〇・二・一二於木の本支部王仁校正)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 24 富士鳴戸 第二四章富士鳴戸〔二七四〕 二柱は茲に撞の御柱を廻り合ひ、八尋殿を見立て玉ひ、美斗能麻具波比の神業を開かせ玉ひぬ。美斗能麻具波比とは、火と水との息を調節して、宇宙万有一切に対し、活生命を賦与し玉ふ尊き神業なり。撞の御柱の根に清き水を湛へたまひぬ。これを天の真奈井と云ひまた後世琵琶湖と云ふ。撞の御柱のまたの御名を伊吹の御山と云ふ。天の御柱の神は九山八海の山を御柱とし、国の御柱の神は塩の八百路の八塩路の泡立つ海の鳴戸灘をもつて胞衣となし玉ひ、地の世界の守護を営ませ玉ふ。また鳴り鳴りて鳴りあまれる、九山八海の火燃輝のアオウエイの緒所と云はれて居るは不二山にして、また鳴り鳴りて鳴り合はざるは、阿波の鳴戸なり。『富士と鳴戸の経綸』と神諭に示し玉ふは、陰陽合致、採長補短の天地経綸の微妙なる御神業の現はれをいふなり。鳴戸は地球上面の海洋の水を地中に間断なく吸入しかつ撒布して地中の洞穴、天の岩戸の神業を輔佐し、九山八海の山は地球の火熱を地球の表面に噴出して、地中寒暑の調節を保ち水火交々相和して、大地全体の呼吸を永遠に営み居たまふなり。九山八海の山と云ふは蓮華台上の意味にして、九山八海のアオウエイと云ふは、高く九天に突出せる山の意味なり。而て富士の山と云ふは、火を噴く山と云ふ意義なり、フジの霊反しはヒなればなり。 茲に当山の神霊たりし木花姫は、神、顕、幽の三界に出没して、三十三相に身を現じ、貴賤貧富、老幼男女、禽獣虫魚とも変化し、三界の衆生を救済し、天国を地上に建設するため、天地人、和合の神と現はれたまひ、智仁勇の三徳を兼備し、国祖国治立命の再出現を待たせ玉ひける。木花姫は顕、幽、神における三千世界を守護し玉ひしその神徳の、一時に顕彰したまふ時節到来したるなり。これを神諭には、 『三千世界一度に開く梅の花』 と示されあり。木花とは梅の花の意なり。梅の花は花の兄と云ひ、兄をこのかみと云ふ。現代人は木の花と云へば、桜の花と思ひゐるなり。節分の夜を期して隠れたまひし、国祖国治立の大神以下の神人は、再び時節到来し、煎豆の花の咲くてふ節分の夜に、地獄の釜の蓋を開けて、再び茲に神国の長閑な御世を建てさせ玉ふ。故に梅の花は節分をもつて花の唇を開くなり。桜の花は一月後れに弥生の空にはじめて花の唇を開くを見ても、木の花とは桜の花に非ざる事を窺ひ知らるるなり。 智仁勇の三徳を兼備して、顕幽神の三界を守らせたまふ木花姫の事を、仏者は称して観世音菩薩といひ、最勝妙如来ともいひ、観自在天ともいふ。また観世音菩薩を、西国三十三箇所に配し祭りたるも、三十三相に顕現したまふ神徳の惟神的に表示されしものにして、決して偶然にあらず。霊山高熊山の所在地たる穴太の里に、聖観世音を祭られたるも、神界に於る何彼の深き因縁なるべし。瑞月は幼少の時より、この観世音を信じ、かつ産土の小幡神社を無意識的に信仰したるも、何彼の神の御引き合はせであつたことと思ふ。惟神霊幸倍坐世。 附記 三十三魂は瑞霊の意なり。また天地人、智仁勇、霊力体、顕神幽とも云ひ、西王母が三千年の園の桃の開き初めたるも三月三日であり、三十三は女の中の女といふ意味ともなるを知るべし。 (大正一一・一・二〇旧大正一〇・一二・二三加藤明子録)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 25 金勝要大神 第二五章金勝要大神〔二七五〕 天津御神の造らしし豊葦原の瑞穂国 泥の世界と鳴戸灘天の瓊矛の一滴 言霊姫の鳴り鳴りて鳴りも合ざる海原の 穢れもここに真澄姫竜世の浪も収まりて 天地四方の神人は心平に安らかに この浮島に純世姫御稜威も高き高照姫の 神の命と諸共に神界、現界事完へて 根底の国を治めむと地教の山を出でたまひ 野立の姫の後を追ひ救ひの神と鳴戸灘 同じ心の姫神は根底の国へ五柱 千尋の深き海よりも業の深き罪咎を 清むるための塩をふみ浪路を開きて出でましぬ 無限無量の御恵みは現界、幽界、神の世の 救ひの神の御柱ぞ。 茲に五柱の女神は、地球の中軸なる火球の世界に到り給ひ、野立彦神、野立姫神の命を奉じ、洽く地中の地汐、地星の世界を遍歴し、再び天教山に登り来つて、大海原の守り神とならせ給ひける。 ここに天の御柱の神、国の御柱の神は、伊予の二名の島を生み、真澄姫神をして、これが国魂の神たらしめたまふ。之を愛媛といふ。一名竜宮島ともいひ、現今の濠洲大陸なり。而て我が四国は、その胞衣にぞありける。 つぎに純世姫神をして、筑紫の守り神となさしめ給ひぬ。これを多計依姫といふ。筑紫の島とは現代の亜弗利加大陸なり。わが九州はこの大陸の胞衣にぞありける。 つぎに言霊姫神をして、蝦夷の島の守り神たらしめ給ひぬ。これ現代の北米なり。而て我が北海道は、その大陸の胞衣にぞありける。 つぎに竜世姫神をして、高砂の島を守らしめ給ひぬ。ゆゑに又の名を高砂姫神といふ。高砂の島は南米大陸にして、台湾島はその胞衣にぞありける。 つぎに高照姫神をして、葦原の瑞穂国を守らしめ給ひぬ。これ欧亜の大陸にして、大和の国は、その胞衣にぞありける。 かくして五柱の女神は、その地の国魂として永遠に国土を守護さるる事となれり。但しこれは霊界における御守護にして、現界の守護ならざる事は勿論なり。是らの女神は、おのおのその国の神人の霊魂を主宰し、或は天国へ、或は地上へ、或は幽界に到るべき身魂の救済を各自分掌し給ふ事となりける。故にその国々島々の身魂は、総てこの五柱の指揮に従ひ、現、幽、神の三界に出現するものなり。 併し此の五柱の神の一旦幽界に入りて、再び天教山に現はれ、国魂神とならせ給ふ迄の時日は、数万年の長年月を要したまひける。その五柱を総称して、金勝要神といふ。 天は男系、地は女系と云ふは、霊界のこの消息を洩らせしものなり。神諭に、 『大地の金神、金勝要神』 とあるは、これの表示なり。また、 『この大神は、雪隠の中に落された神』 とあるは、総ての地上の罪悪を持ち佐須良比失ふ所の鳴戸の意味なり。 天教山は口に当り、鳴戸は地球の肛門に当るが故なり。神の出口、入口といふは、この富士と鳴戸の御経綸の意なり。大地の金神を金勝要神と称するは、大地の金気の大徳によりて固成され、この神の身魂に依りて凝縮保維されてゐるが故なり。 (大正一一・一・二一旧大正一〇・一二・二四外山豊二録) (第二三章~第二五章昭和一〇・二・一二於新宮市油屋旅館王仁校正)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 08 羽衣の松 第八章羽衣の松〔三〇八〕 日の出神を乗せたる大船は、熊野の浦を漕ぎ出で、折から吹き来る順風に真帆を揚げ乍ら、東に向つて進ませたまへり。 さしもに高き天教の九山八海の山は、白扇を逆様に懸けたる如く東海の波に、その影を映す長閑さ。夜を日についで進み来る浪路も遥かに遠江。忽ち浪は天上に向つて立ち上り、船は木の葉の如くに漂ふ危ふさ。一同の乗客は、叶はぬ時の神頼み、各自に手を拍ち大海原の神に向つて、厚き祈願を駿河湾。天教山は何時しか雲に包まれにけり。 この難風を避けむとて、向ふに三保の松原や、天の羽衣の老木の松を目標に、船は漸う岸に着きたり。一行の顔はあたかも死人のごとく色蒼白めて、立つ勇気さへも無くなりてゐたり。 日の出神は、真先に上陸し、続いて人々は生命からがら白砂青松のこの島に辿り着き、ほつと息を吐きけるが、風はますます烈しく、浪は猛り狂ひて羽衣の松は、ほとんど水に没せむとするの勢なりける。 この島に救ひ上げられたる日の出神をはじめ、数多の人々は島の小高き処に駈け登り、海の凪ぎ行くを待ちつつありし時しも微妙の音楽天上より聞えて、馨しき色々の花を降らせ宛然花莚を布き詰めたる如くなりける。 暫時ありて男女の二神は、雲に乗つてこの場に降り来り、日の出神に会釈しながら流暢なる声張り上げて、天女の舞の歌を舞ひ始めたりける。 『これや此の世界にほまれ駿河富士よしや此の世は愛鷹の 山より高く曲事の積れば積れ天教の 山に坐します木の花姫の神の命の御光に 世は照妙の薄衣天の羽衣纏ひつつ 瑞穂の国は千代八千代芽出度き国と舞ひ納め 治めて清き神の国村雲四方に塞ぐとも 赤き誠の心もて誠の道を麻柱つ 誠を通せ誠ある神の日の出の宣伝使 荒風猛り吼ゆるとも浪は険しく立つとても わが日の本は神の国木の花姫の鎮る限り 世は永久に心安き神世を三保の松原や 松も千歳の色添ひて緑添ひなす三保津彦 三保津の姫は今ここに現はれ出でて汝が前途 清く守らむ沫那岐の神の命や沫那美の 神の命の守ります大海原も安らけく 常世の国に渡りませウラルの山に現はれし 魔神は今に常世国日の出ケ嶽を立出でて 再び御国を襲ひ来る今や経綸の最中なり 今や経綸の最中なり沫那岐彦や沫那美の 神の守りにすくすくと早や出でませよ宣伝使 早や出でませよ宣伝使』 と声も涼しく歌ひ、中空に舞ひながら天教山に向つて、その姿を隠したまひける。 この沫那岐、沫那美の二神は、いま現はれたる三保津彦、三保津姫の分霊なり。是より日の出神は、種々の苦しみに堪へ、遂に再び常世の国に渡りける。 (大正一一・一・三〇旧一・三外山豊二録)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 24 筑紫上陸 第二四章筑紫上陸〔三二四〕 日の出神は唄ひ玉ふ。 日の出神『天津御空も海原も真澄の姫の永遠に 鎮まりゐます冠島名さへ目出度き竜宮の 宝の島を後にして科戸の風の吹くままに 流れ流れて今ここに筑紫の島の島影を 幽かに眺め皇神の深き仕組も不知火の わが身の魂の愚さよ心つくしの益良雄が 深き仕組を駿河なる富士の御山に千木高く 鎮まりゐます木の花姫の神の御言を畏みて 塩の八百路を渡りつつ心の空も純世姫 神の命の永遠に鎮まりゐますこの島は 天津御神の造らしし宝の島と聞ゆなる 珍の島根を目のあたり越えて又もやこの島の 宝を探る楽さは黒白も分かぬ闇の世を 天津日の出の東天に現はれ給ひし如くなり 現はれ給ひし如くなり』 (船客の一人)甲『オイ、今の歌を聞いたか。この昼中に目の玉の闇だとか、暗がりだとか仰有つたじやらう。東の空から、お日さまが出るとか聞いたじやらう、一寸可笑しいじやないか。日天様は西の空に傾いてゐらつしやるのに、苟くも人を教へる宣伝使ともあるものが何であンな訳の分らぬ事を言ふのだらうね』 乙『貴様はそれだから困るのよ。何でもかでもチヨツピリと聞きはつりよつて、知らぬ者の半分も知らぬくせに、知つた者のやうにナゼそンな脱線した講釈をするのだ。貴様と一緒に連なつてゐると、俺アもう情ない。あまりわけが分らなさ過らア』 甲『分らぬ分らぬて、何が分らぬ。分らぬとは貴様のことじやないか。嬶アや子のあるざまをしよつて、五十の尻を作つて居り乍ら、貴様のとこのおさんの○○へ○○しよつて、嬶アに見つけられ、それがために嬶アは悋気の角を振ひ立てて、死ぬの生きるの暇をくれのと、毎日日日犬も食はぬ喧嘩をおつ始め、近所の大迷惑だつたよ。酋長の木兵衛さまが心配して、いろいろと道理を説き諭して噛ンで飲むやうにおつしやつても、貴様は死ンでも彼奴とは別れぬとか、分らぬとか吐かしたぢやないか。ソレに俺が分らぬもあつたものかい』 船頭『サアサア船が着きましたよ。お客さま、また此処で十日ばかり風を待たな、常世の国へは行けやしない。グヅグヅしとると、この船は何処へ行くか分りやしないぞ。早う立たぬかい』 甲『八釜しう言うない。立てらりやせぬわ』 乙『立てないつて貴様何して居るのだい』 甲『貴様ら先へ上れ、俺は後から上る』 乙『腹の悪い奴だナ。皆上つた後で何か忘れ物でもあつたら、猫ババでもキメ込まうと思ひよつてケツが呆れらア』 甲『そのケツだよ』 乙『貴様ケツて何だい。ははあ坐つたままで、糞を放れよつたのだな。ハヽーそれで読めた。じつとしてをれ。バタバタすると臭いぞ。臭い野郎だナ』 船頭は心せはし気に、 船頭『おい、早く立たぬか』 甲『はいはい、今立ちます』 船頭『そのババたれ腰は何だい』 甲『本当にタレたのだい』 船頭は真赤になりながら、 船頭『すつくり掃除せい。掃除せにや上がらせぬぞ。糞放奴が』 日の出神は二人の宣伝使と共に上陸し、又もや宣伝歌を歌ひながら、後をも見ずに奥深く進み行く。 (大正一一・一・三一旧一・四桜井重雄録)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 49 乗り直せ 第四九章乗り直せ〔三四九〕 折から吹き来る真夏の夜風に面を吹かせながら、船頭は舳に立つて、 竜宮見たさに瀬戸海越せば向ふに見えるは一つ島 と歌ひ出したり。 船は小波の上を静かに辷り行く。空一面に疎の星が輝き、月は中空に水の滴るやうな顔をして海面を覗いてゐる。海の底には竜の盤紆るやうな月影沈ンでゐる。この時前方より艪を漕ぎ舵を操りながら、グーイグーイ、ギークギークと音をさせて、此方に向つて進み来る一艘の船があつた。その船の舳に蓑笠を着し、被面布をつけた男が立つてゐる。北光神は、その船に向つて声を張上げ、 北光神『心を尽し身を尽し天地の神に麻柱の 道を立て抜く宣伝使四方の国々巡り来て やうやう此処に北光の我は目一箇神なるぞ 名告らせ給へその船の舳に立てる宣伝使 舳に立てる神人よ』 と歌へば、その声に応じて向ふの船より、 広道別『天津御神や国津神木の花姫の御教を 四方の国々島々に広道別の宣伝使 汝は何れに坐しますか我はこれより亜弗利加の 熊襲の国に渡るなり熊襲の国は猛くとも 神の依さしの言霊に四方の曲霊を悉く 言向和はせ天教の山に坐します木の花姫の 神の命や黄金の山の麓に現れませる 埴安神の御前に奇しき功を立つるまで 浪路を渡る宣伝使稜威も広き広道別の 神の使は我なるぞ神の使は我なるぞ』 と歌ふ声も幽かになり行く。二人は互ひに立ち上がり、被面布を振つてその安全を祝し合ひける。船中の人々は亦もや雑談を始め出したり。 甲『もう、つい竜宮城が見えるぜ。おとなしくせぬと、竜宮さまが怒つて荒浪を立てられたらまた昨日のやうに八百屋店を出して苦しまねばならぬから、小さい声で話しをしようかい』 乙『お前らこの竜宮の訳を知つてるか、今こそかうして船に乗つて瀬戸の海から竜宮城まで楽に行けるが、昔は竜宮と瀬戸の海との真中に、それはそれは高い山があつて、その山はシオン山というてな、何でもえらい玉が出たといふことだ。それが大洪水のあつた時に、地震が揺つてその山が地の底に沈ンで了ひ、竜宮と瀬戸の海とが一つになつて了うたといふことだよ』 丙『そんな事かい、そんな事は祖父の代から誰でも聞いてゐる事だよ。もつと珍しい話はないのかい』 乙『竜宮城には稚桜姫といふ、それはそれは美しい神様があつて、そこに大八洲彦命とか、大足彦とかいふ立派な神様が竜宮城とヱルサレムの宮を守つて御座つた。さうすると常世の国の常世姫といふ偉い女性が竜宮を占領しようと思うて、何遍も何遍も偉い神様の戦ひが始まつたということだのう。今の竜宮もヱルサレムの宮も昔の話と比べて見ると、本当にみじめなものだ。ヨルダン河というて大きな河があつたのが、その河も洪水の時に埋つて了ひ、今では小さい細い川となつて、汚い水が流れて居る。変れば変る世の中だ。これを思へば何ンな偉い神様でもあかぬものだな。翔つ鳥も落ちる勢の稚桜姫といふ神様も、大八洲彦といふ神様もさつぱり常世姫とかにわやにされて、今は吾々の行く事のできぬ富士とやらへ逃げて行かれたといふ事だよ』 丙『フーン、さうかい。さうすると我々も今豪さうに言つて居つてもどう変るやら分らぬな』 乙『知れた事よ、神様でも時世時節には敵はぬのだもの、我々はなほ更の事だ。併しこの船には立派な宣伝使が乗つて居られるといふ事だが、一遍話を聞かして貰つたら如何だらう』 甲『イヤ最う宣伝使の歌も好い加減なものだよ。神が表に現はれて善と悪とを立別けるなンて、冷飯に湯気が立つたやうな事を吐かすのだもの、阿呆らしくて聞かれたものぢやない。そンな歌は大洪水前の事だ。大洪水のときは善の神様は天教山とか天橋とかに助けられ、悪い者は洪水に漂うたり、百足虫の山や蟻の山に揚げられて、善悪の立別がハツキリあつたさうだ。俺等の祖父の代の話だから詳しい事は知らぬが、今ごろにそんな事を歌ふ奴は、死ンだ子の年を数へるやうなものだ。阿呆らしいぢやないか。これだけ開けた世の中が、さう易々と立替はつて堪るかい。善と悪とを立別けるとか変るとかいふが、俺の処の村の久公のやうな悪人は段々と栄えて来るなり、新公のやうな善人は益々貧乏して、終ひには道具を売つて親子夫婦が生別れして乞食に出たぢやないか。俺はそれを思うと神様を頼む気にならぬがなア。宣伝使の歌なンて古めかしいわい、六日の菖蒲十日の菊だ。併しながら、憂晴しに聞くのは善いが、それをほンまの事だと思つたら、量見が違ふぞ。宣伝使といふものは、方便を使つて吾々に悪い事をせぬやうにするのだが、今日のやうに悪が栄えて善が衰へるやうな暗がりの世の中に、何ほど宣伝使が呶鳴つたところで、屁の突張にもなつたものぢやないよ』 この時、船の一方より、 宣伝使『神が表に現はれて善と悪とを立別る』 甲『それ始まつた、頭が痛い。こいつは耐らぬ。この船には怪体な奴が乗つてけつかるものだ』 宣伝使『この世を造りし神直日心も広き大直日 ただ何事も人の世は直日に見直せ聞直せ 身の過は宣り直せ』 乙『オイ貴様心配せいでもよいわ。宣伝使が今乗り直すと言つてゐた。今其処へ来る船に乗り直して呉れるわい。さうしたらいやな歌は聞かいでもよいわ』 甲『早く乗り直しやがらぬかいな』 宣伝使『神が表に現はれて……』 甲『ソレ亦始めよつた。アイタヽヽヽ』 宣伝使『善と悪とを立別る……』 甲『あゝたゝ怺らぬ怺らぬ』 と言ひながら、甲は立つて、 甲『やいやいやい宣伝使それ来るそれ来る船が来る お前のやうな痛い事囀る奴はあの船に 一時も早く乗り直せ早う乗れ乗れ乗り直せ そら来たそら来た船が来た乗らぬか乗らぬか宣伝使 貴様のお蔭で頭痛がする』 と呶鳴つてゐる。後の方より亦もや乙の宣伝使が立つて、 宣伝使『神が表に現はれて善と悪とを立別る』 甲『また出よつた。一体この船は何だい。もう船の旅は懲り懲りだ』 船頭『お客さま、船が着いた。早く上らつしやれ』 と叫ぶ。甲は頭を抱へて、いの一番に船を飛出し、どこともなく姿を隠したり。この男は果して何者ならむか。 (大正一一・二・二旧一・六桜井重雄録)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 附録 第三回高熊山参拝紀行歌 附録第三回高熊山参拝紀行歌 王仁作 高熊山参拝者名簿(一) (大正十一年四月十三日旧三月十七日) (一) 出の御魂の開け口神の稜威も高熊の(出口王仁三郎) 清き霊地に詣でんと大本信徒の一隊は 世継王山を後にして仁愛の神の教のまに 三月弥生の十五日円満清郎澄渡る 月野御影を頼りとし崎を争ひ信徒が(野崎信行) 進み行くこそ雄々しけれ世に勝れたる大本の(勝本安太郎) 教は浦安国の果太平洋をのり越えて 光は日々に増り行く山川野原谷の底(増川康) 康に栄ゆる神の道誠の神の御心を(佐藤勝治) 佐藤る霊界物語優勝劣敗今の世の 汚れを清め治め行く皇大神は石の上(石川保次郎) 古き神世の昔より禊身たまひし五十鈴川 国家保護の神徳は他教にまさりていち次郎く 東の海や西の洋塞がり渡る村雲を(西村寛之助) 寛仁無比の言霊之助に開き初めつつ(初田彦九郎) 教へ導く猿田彦九郎するがの富士の山 仰げば高き雲の橋喜美の恵は常永に(高橋喜美) かがやき渡る雲の上下津石根や川の底(石川こずえ) 木々のこずえに至るまで輝やき和田る中津国(田中亀太郎) 亀の齢の充ち太郎下津岩根の日の本は(岩本なみ) なみも静かに治まりて村雲四方に晴れ渡る(村橋金一郎) 橋は黄金の一筋に老若男女の牧ばしら(牧近一郎) 遠き近きの隔てなく一心不乱にさざれ石(石川はつ) 清く流るる和知の川水瀬はつよく稜威高く(高野久) 御代野栄えは永久に岩城の如く美治よし(岩城よし) 露西田たる青葉蔭お津留雫も三な上と(西田津留) なりて水かさまさり行く瑞の御魂の海潮が(三上まさ) 雨ふる郷の亀岡や瑞祥閣に立籠り(岡基道) 五六七の基の神の道田加熊山の岩中に(田中嘉太郎) 修業なしたる物嘉太り上田喜三郎が生家より 東にあたる川原條内外の区別弁まへず(東條内外) 夢中遊行月の夜に西山口に進三行く(山口三蔵) 蔵さは暗し松の森御国の幹を造らんと(森国幹造) 議り玉ひし御神慮を堅く真森て種々の(森種次) 苦労艱難なめ次ぎつ上中下なる三段の(三段崎俊介) 御縁崎はふ神の業鬼も大蛇も戌の俊 神の介けに石田ふや天馳せつかい富士の山(石田要之介) 扇の要之助け以て西の穴太の村外れ(西村ゆき) ゆき未だ残る奥山の草村わけて辿りつつ(奥村貞雄) 神の貞めの霊場に尋ね行くこそ雄々しけれ (二) 田舎の村に生れたる神に仕ふる神兵が(田村兵次郎) その霊術も著次郎く屹立したる岩城に(岩城達禅) 漸く達し悠然と座禅姿の帰神術 雲井の上を泣渡る山郭公血を吐いて(井上武仁) 武男と仁義の大御代に太田る民の幸も吉く(太田幸吉) 君の恵を仰ぎつつ悪しき心を桐山に(桐山謙吉) 力をかくす謙譲の徳の光りはさえも吉く大和心の信徒が 西尾見当てに金峰山手前の神山に次ぎて行く(西尾金次郎) 治まる御代に大崎の外国人に勝れたる(大崎勝夫) 誠に強き大丈夫は数回有田の九皐氏(有田九皐) 瑞穂栄ゆる玉の井の村に生れし上田の子(同瑞穂) 世は吉祥と治まりて国威も四方に輝きし(井上祥治) 明治は三十一の年春の初めに斎藤の(斎藤弁治) 借家を夜半に立出でて咫尺も弁ぜぬ暗の夜を 神の大道に治めんと稜威も高木神の山(高木寿三郎) 経綸も長き三千寿の三国一の不二の峰 秀妻の国も平けく遠き神代の其ままに(秀平遠安喜) 波風安く治まりて喜悦に充てる松たけや(同たけ) 梅野花咲く門口を如月九日子の刻に(野口如月) 小松林の御眷属やゑの村雲掻別けて(林やゑ) 天の羽車轟かし小さな宿房に降り来て(車小房) 顕幽二界の溝渠をば上下の別なく取り放ち(溝下とみ) 厳とみづとの神の教し加藤諭さん吉き人よ(加藤吉人) 吾に続けと松岡の貴の道柴田どりつつ(柴田健次郎) 生れ付いたる健脚を神使に次ぎて喜三郎(藤岡しか) 藤蔓からむ神の岡しかと踏みしめ漆原(漆原一郎) 一心不乱に小竹の中かや生ひしげる山路を(竹中かや) 神の御杖にすがりつつ梅咲き匂ふ宮垣内(同すが・同梅) あとに見捨てて登り行く水音高く沢々と(高沢たか) たか天原となり渡る川西あればいさましく(川西いさ) 栄え目出度き松野代の声もしづかに杉原や(松野しづ) 喜び重ねて大本の誠一つの信徒が(杉原喜重) 道の泉の水口を尋ねて進む惣部隊(水口惣夫) 老若男女夫婦連松野しげみの下蔭を(松野しげ) 心いそいそ平原の松樹丈余に伸びも吉く(平松丈吉) 野山崎々たつね行く今日初ての鹿島立(山崎つね) 二回目三回四回迄登山を為せる人もあり(初島政) 一回毎に政り行く歩みも吉田の黄金に(吉田黄金) 彩どる野辺を眺めつつ小石の転ぶ田圃路(石田ちよ) かたへの林にたちよりて原をふくらす弁当の祐(原祐蔵) 胃蔵の虫を歓ばせ小雨の空に一行を(西尾藤之助) 西尾目指して先藤之横芝勇士に手を曳かれ(同与一郎) なやむ足元与一々々と稲む色なく田どり行く(稲田愛五郎) 万有一切愛五郎谷と谷との落合の(落合平三郎) 少し平らな芝の上三人五人と名西尾(西尾たね) たかねを井きせき上りつつあやに畏こき神の山(井上あや) 牧の柱のすぐすぐと慎しみ敬ひ平坦な(牧慎平) 巌窟前の木下蔭一同の胸も秋月の(秋月晴登) 晴れたる空を登る如杉山越えて勇ぎ吉く(杉山勇吉) 村草分けて上方へ八重野陣をばしき乍ら(村上八重野) 小笹ケ原を進みきぬ一同息をやすめつつ(小原きぬ・同やす) 青年隊の行く後江寿らすら次々かけ登る(青江寿次) (以下第九巻)
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霊界物語 09_申_松竹梅の宣伝使の南米・中米の旅 余白歌 余白歌 久方の天の八重雲押し開き地に降ります三柱女神よ〈第1章(三版)〉 五月雨の空鳴き渡る郭公血もかれはてて四方にさまよふ〈第2章〉 言へば言へそしらばそしれ今はただ神の御心に任すばかりぞ〈第2章〉 桃の実は分れて三つの魂となり大海原の波に浮べり〈第3章(三版)〉 大空に雷鳥の声かしましく轟く春を山桜散る〈第4章(三版)〉 山桜今を盛りと咲きほこる庭面に立ちて御代を思へり〈第4章(三版)〉 天地の神に仕へて日の御子に赤き心を尽しまつらな〈第4章〉 乱れたる世を治めむと祈るこそわが大本の教なりけり〈第4章〉 待つ甲斐や有馬の山の松ケ枝に澄み渡りたる望の月影〈第4章〉 大神の道踏み分けて進む身にも醜の曲神時じく障りく〈第5章〉 浪狂ひ船は岩根に砕くとも愛善の神は守り給はむ〈第5章(三版)〉 比類なき神の大道を醜草の蔓延り塞ぐ忌はしの代や〈第7章〉 常世往く烏羽玉なせる暗き世の光とならむ吾願ひかな〈第7章(三版)〉 立替の日は迫りたり吾は今立直しすと静にはかりつ〈第7章(三版)〉 立替は手間いらねどもその後の立直しこそ大謨なりけり〈第7章(三版)〉 言ふてよき事は言はずに言はずともよきことを言ふ醜人あはれ〈第7章〉 大本の金門を破る醜の仇は筆と舌との剣なりけり〈第11章〉 宰相の徳なき人の立つ御代は怨嗟の声に閉されて居り〈第16章(三版)〉 外国の醜の教の本城も棟木に生ける白蟻の群〈第17章(三版)〉 日本の神の教を余所にしてからの教に迷ふたぶれよ〈第17章(三版)〉 春深み桜の花は匂ふ夜の月にとどろく鳥船の音〈第17章(三版)〉 松の葉の心になりて世を渡れ細くかたくて風に破れず〈第18章(再版)〉 伸び縮み心の船のままぞかし神の経綸は人にありせば〈第19章〉 春深み桜の花も匂ふ夜の月に轟く鳥船の音〈第19章〉 大神の教の妨げするがなる醜神つかさ助けたきもの〈第19章〉 葦原や悪木醜草蔓延りて誠の道を塞ぎけるかも〈第19章〉 三五の月の教はうば玉の暗路を照らす光なりけり〈第20章(再版)〉 村雲に包まれて啼く吐血鳥一度は聞け忍ぶ思ひを〈第21章〉 まことある神の誠のとりつぎをはやすけに来よ誠ある人〈第23章(三版)〉 富士といふ謎を覚らず高山の動くと見るは愚なりける〈第25章〉 温かき言葉の花は人皆の荒き心を和ぐるなり〈第26章〉 和田の原浮べる八十島八十の国は皆大神の御秀処なりけり〈第29章(三版)〉 常世往く闇の深きに日月の光包みて風荒るるなり〈第30章(三版)〉 いつ迄も誠心を望月の光りかがやく神の大道〈第30章〉 身も魂も神に捧げて進み行く松竹梅の心たふとき〈第30章〉 むすぼれし心の髪をときほどく奇しき教は神の御言葉〈第36章(再版)〉[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました]
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霊界物語 10_酉_黄泉比良坂の戦い 25 木花開 第二五章木花開〔四五五〕 天雲も伊行きはばかる遠近の鮮岳清山抜き出でし 天教山の真秀良場や心もつくしの山の上 地底の国より吐き出す猛き火口に向ひたる 天津日向のあをぎ原穢き国に到りたる 醜のけがれを清めむと神伊邪那岐の大神は 日の出神と諸共に千五百軍を呼び集へ 浅間の海に下り立ちて御身の穢を払ひます 大神業ぞ勇ましき天の教を杖となし 進む衝立船戸神心の帯を固く締め 曲言向けし神ながら道之長乳歯彦の神 国治立の大神の御稜威の御裳になり出でし 道の蘊奥を時置師一度に開く木の花の 散りては結ぶ大御衣神の心も和豆良比能 宇斯能御神や御褌になります神は道俣神 心の空も飽咋の宇斯能御神と冠りに 戴き奉り左手の手纏に救ひの御手を曲神の 穢れの上に奥疎神四方の大海国原も 神の心に奥津那芸佐毘古奥津甲斐弁羅神 神世幽界辺疎神辺津那芸佐毘古 辺津甲斐辺羅神十二柱の神たちは 黄泉の島へ出でましてこの世の曲霊を照し給ふとき 穢に生れし神ぞかしアヽ麗しく尊さの 限り知られぬ神業よ限り知られぬ神業よ。 伊邪那美大神 伊邪那美大神『久方の天津御神の言霊の伊吹の狭霧に黄泉島 黄泉軍を言向けて暗よりくらき烏羽玉の 常夜の空も晴れ渡り天と地とに冴え渡る 日の出神の功績はこの世の光となりぬべし 三五の月に弥まさり御魂も清き月照彦の 神のみことの宣伝使尊き御代に大足彦の 神のみことの言霊別や嶮しき国は平けく 狭けき国は弘子の神の伊吹に払はれて 世の曲神も少彦名神の光の高照姫や 心も清き真澄姫八咫の鏡の純世姫 清き教も竜世姫地教の山に現はれし 神伊邪那美大神の御稜威輝く瑞御魂 世は望月の永遠に円く治まる五六七の世 天津御国も国原も堅磐常磐に常立と 開化くる御世ぞ楽しけれ天津御神の御教は 一度に開く木の花の咲き匂ふなる天教山の 嶺永遠に動揺なく天津日嗣の何時までも 変らざらまし神の御世豊葦原の瑞穂国 御稜威も高き厳御魂この世の泥をことごとく 洗ひ清むる瑞御魂厳と瑞との二神柱は 天に現はれ地に生れ清き神世を経緯の 錦の御旗織りなして天津御空の星の如 八洲の国の砂の如天の益人生み生みて 世を永久に永遠に雲に抜き出た高砂の 珍の島ケ根の尉と姥千歳の松の弥茂り 栄え尽きせぬ神の国限りも知れぬ青雲の 棚引く極み白雲の向伏す限りたてよこの 神の御稜威に治むべし神の御稜威に治むべし』 と歌ひ終らせ、伊邪那美大神はあをぎが原の神殿深く御姿を隠し給ふ。 木花姫命は満面に笑を湛へ、諸神の前に現はれ給ひて声音朗かに歌ひ給ふ。 木花姫命『豊葦原の中国に一輪清く芳ばしく 匂へる白き梅の花神世の昔廻り来て 国治立の大神が日に夜に心配らせし 常夜の国も晴れ渡り曲津軍も服従ひて 一度に開く木の花のうましき御代となりにけり 闇より暗き世の中を天津御神の神言もて 黄泉の島に天降り醜の国原言向けて 日の出神と現れし天と地との大道別の 神の命と勇ましく事戸を渡し琴平別の 厳の御魂の百引千引岩をも射ぬく誠心を 貫き徹す桑の弓弓張月の空高く 輝き渡る神々の功は清し天教山の 尾根に湧き出る言霊は湖の鏡に映るなり 移り替るは世の中の習ひと聞けど兄の花姫や 咲き匂ふなる春の日も瞬く間に紅の 色香も夏の若緑涼しき風に送られて 四方の山々錦織り紅葉も散りて木枯の 風吹き荒み雪霜のふる言の葉にかへり見て 心を配れ神々よ心を配れ神々よ 春の花咲く今日の日は吾胸さへも開くなり 吾胸さへもかをるなりかをりゆかしき神の道 一度に開く梅の花一度に開く梅の花 一度に開く梅の花』 日の出神は、神人らの総代として凱旋の歌を詠ませ給ひぬ。その歌、 日の出神『日の若宮に現れませる神伊邪那岐の大神は 妹伊邪那美の大神と天津御神の神言もて 天と地との中空に架け渡されし浮橋に 立たせ給ひて二柱撞の御柱大神と 天の瓊矛をさしおろし溢れ漲る泥海を こをろこをろにかきなして豊葦原の中津国 筑紫の日向のたちばなのをどのあをぎが原の辺に 天降りまし木の花姫の神の命と諸共に この世の泥を清めつつ珍の国生み島を生み 万の神人生みまして山川草木の神を任け 大宮柱太知りて鎮まり給ふ折からに 天足の彦や胞場姫の醜の魂より現れし 八岐大蛇や鬼狐荒ぶる神の訪に 万の災群れ起り常夜の暗となり果てし 世を照さむと貴の御子日の出神に事依さし 大道別と名乗らせて世界の枉をことごとに 言向け和せと詔り給ふ力も稜威もなき吾は 恵みの深き木の花姫の三十三相に身を変じ 助け給ひし御恵みに力添はりて四方の国 荒振る曲を言向けて黄泉の島の戦ひに 神の御稜威を顕はせしその功績は木の花姫の 神のみことの稜威ぞかし厳の御魂や瑞御魂 三五の月の御教に世界隈なく晴れ渡り 千尋の海の底深く竜の宮居も烏羽玉の 暗き根底の国までも天津日かげの永遠に 明し照さむ神の道富士と鳴門のこの経綸 富士と鳴門のこの経綸弥永遠に永遠に 神の大道を天地と共に開かむ、いざさらば 鎮まりませよ百の神鎮まりいませ百の神 桃上彦の貴の御子堅磐常磐の松代姫 心すぐなる竹野姫色香目出たき梅ケ香姫の 神の命の三柱は意富加牟豆美の桃の実と この世に現れ厳御魂瑞の御魂と何時までも 三五の月の御教を堅磐常磐に守り坐せ 堅磐常磐に守り坐せ』 この御歌に数多の神々は歓喜の声に満たされて、さしもに高き天教山も破るる許りの光景なりき。 木の花の鎮まり給ふこの峰は 不二の三山と世に鳴り渡る (大正一一・二・二五旧一・二九上西真澄録)
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霊界物語 13_子_フサの国・半ダース宣伝使 01 言霊開 第一章言霊開〔五二七〕 天の岩戸 故れ須佐之男の大神は清明無垢の吾御魂 現はれ出て手弱女を生みしは乃ち吾勝ちぬ 勝てり勝てりと勝ち荒びに神御営田の畔を放ち 溝埋め樋放ち頻蒔し大嘗殿に屎散りて 荒びに暴び給ひけり故れ然すれど皇神は 咎め給はず屎如すは那勢の命の酒の所為 屎には非で吐ける也田の畔を放ち溝埋は 地所惜らし思ふため那勢の命の罪ならじ 神心平に安らかに直日に見直し詔直し 言解き給へど荒び行未だ止まずに転てあり。 ○  若日女機屋に坐して神御衣織らしめ給ふ時 機屋の棟を取り毀ち天の班駒逆剥て 墜し入れば神衣織女驚き秀処を梭に突て 終に敢なく身亡せけりここに皇神見畏み 天の岩屋戸閉立てて隠りたまへば天の原 とよあし原の中津国常夜となりて皆暗く 黒白も判ぬ世と成りぬ曲津の神の音なひは 五月の蝿の沸く如く万の妖害みな起る。 ○  百千万のかみがみは安の河原に神集ひ ここに議会は開かれて議長に思兼の神 思ひ議りて常夜なる長鳴鶏を鳴かしめて 安の河原の石を採り天の香山の鉄を採り 鍛冶真浦を求き寄せて石凝姥のみことには 八咫の鏡を作らしめ玉の御祖の命には 八阪の曲玉造らしめ天の児屋根や太玉の 命を呼びて香具山の男鹿の肩を打抜きて 天の羽々迦を切採りて占へ真叶はしめ給ひ 天の真榊根掘して上枝に八阪の玉を懸け 八咫の鏡を中津枝に下枝に和帛を取垂て 祭祀の御式具備りぬ是れ顕斎の始めなり。 ○  故太玉のみことには太幣帛を採り持たし 天の児屋根の命には太祝詞ごと詔曰し 天の手力男のかみは窟戸のわきに隠り立ち あめの宇受売命には天の日蔭を手襁とし 天の真拆をかづらとし竹葉を手草に結占て 窟戸の前に槽伏せて踏轟かしかしこくも 神人感合の神懸り至玄至妙の幽斎を 行ひ給ひし尊さよ胸乳掻出で裳緒をば 番登に忍垂れ笑ひ鳧命の俳優に天地も 動りて神等勇み立つ皇神怪しと思召して 窟戸を細目に開きまし御戸の内より詔賜はく 吾いま岩窟戸に篭りなば高天原も皆暗く あし原の国暗けむと思ひ居たるに何故に 宇受売の命は楽びしぞ百千よろづの神等も 歌舞音楽に耽るやと怪しみ給へば智慧深き 宇受売命の答けらく皇大神にいや勝り 尊き神ぞ現れ坐り夫れゆゑ歓ぎ遊ぶなり。 ○  斯く宣る間に二柱八咫の鏡をさし出て 皇大神に奉るいよいよ怪しと思召て 御戸より出て臨み坐すその時戸わきに隠り立ち 天の手力男の神は御手持曳き出し奉り 斯れ太玉の命には尻久米縄を御後へに 引張渡し此処よりは内に勿還り入りましそ 言葉穏いに願ひけり大神御心平かに 御戸出でませば久方の高天原も葦原の 中津御国も自ら隈なく光り冴え渡り 万の神々いさみ立ち天晴れ地晴れ面白や あな尊しや佐夜計弘計目出度窟戸は開き鳧 是れ顕斎の御徳にてまた幽斎の賜ぞ。 ○  仰ぎ敬まへ神国に生を享けたる民草よ 天津御神の神勅以て直霊の御魂現はれて 至粋至純の神の美智顕斎幽斎鎮魂の 尊き神業を説明し地上億兆蒼生に 向ふ所を覚すなり神の御恵み君の恩 神国を思ふ正人は固く守れや神の道。 鎮魂 豊葦原の千五百あきみづほの国の神の苑 栄え久しき常磐木の松の御国に生れたる 七せん余万の同胞は日出るくにの国体の 外に優れて比類無き奇すしく尊き理由を 究め覚らで有るべきや万世変らぬ一すぢの 天津御祖のさだめてし皇大君の知ろしめす 国は日の本ばかりなり神代の昔那岐那美の 二尊あらはれ坐々て修理固成の大御神勅 実践ありて国を産み青人草や山川や 木草の神まで生給ひつひに天照大御神 また月夜見の大神や速須佐之男の大御神 現出坐し目出度さよ皇神甚くよろこばし 今迄御子を生みつれど是に勝りし児はなし 吁尊しや貴の御子生み得てけりと勇み立ち ただちに天に参上り皇産霊の神の太占に 卜ヘ賜ひて詔賜はくあが御児天照大神は 高天原をしろしめせまた月夜見の大神は 夜の食国を守りませ速須佐之男の大神は 大海原を知らせよと天津御祖の御言もて 各自々々におす国を持別依さし給ひけり。 ○  茲に大神おんくびにまかせる八阪曲玉の 五百津御魂美須麻琉の玉緒母由良に取揺し 高天原を知らさねと日の大神に賜ひけり 故その御頸珠の名を御倉棚のかみとなす これ其魂を取憑けて日の神国の主宰神 たらしめなむと神定め玉ひし畏き御術なり 是鎮魂のはじめにて治国の道の要なり。 ○  天照し坐すおほみかみその神業を受け賜ひ 二二岐の命に天の下統治の権を譲らるる 其みしるしと畏くも三種の神器を賜はりし この方世々の天皇は大御心をこころとし 即位の御制と為し給ふこれ鎮魂の御徳なり かくも尊き縁由ある御国に生ひし国民は 台湾千島の果てまでも尊奉崇敬おこたらず あさな夕なに奉体し神の稜威を仰ぐべし。 ○  そも鎮魂の神わざは天津御祖の定めてし 顕幽不二の御法にてかみは一天万乗の 畏き日嗣の天皇の祭政一致の大道より 下万民にいたるまで修身斉家の基本なり 然のみならず斯の道は無形無声の霊界を 闡明するの基礎ぞかし神の御国に住む人は 異しき卑しき蟹が行く横邪の道をうち捨てて 束のあひだも神術に心を清め身をゆだね 天にむかひて一向に幽冥に心を通はせて おのが霊魂の活動を伊豆の魂に神ならひ 身も棚知らに鍛へかしこの正道を踏みしめて 国家多端のこの際に神洲男子のやまと魂 地球の上に輝かし天にもかはる功績を 千代万代にたてよ人勇み進めやいざ進め 直霊の魂を経となし厳の魂を緯として 八洲の国に蟠まる曲津の軍の亡ぶまで 進めや進めふるひ立て醜の悪魔の失せる迄。 富士富士山は古来不尽山または不二山と書き、芙蓉の峰、福知ケ嶺と称し、天教山、扶桑山とも謂ひ、木花咲耶姫命の御神体とも云ひ、鳴沢ケ岳、二十山、秀穂山、山君ケ嶽とも別称され、この山の名義については、色々と古来の解説があれども何れも皆謬りなり。日本は古来言霊の幸はふ国と云ひ、只一つの小山にも山の活用を名に現はし居るなり。 フジのフは力なり。地球の中心より、金剛力を以て、火煙を噴出すをフと云ふ。ジは火脈の辻であり浸み出る言霊なり。 またフジの霊返しはヒなり。ヒは火なり、霊なり、日なり。故に富士の火山とも云ひ、霊峰とも称へ、日本国の代表とも成り居るなり。今は木花冬篭りの状態で休火山なれども、何時発動して元の活火山に復するかも知れざる神山なり。猶ほ細かく調ぶればフの言霊は天中の常也、世界一切の活用を司る也、生の常也、忽ち往き忽ち来り、忽ち昇り忽ち降り、忽ち出で忽ち入り、進退兼持ち火熱の合結となり、機臨の府となる也、八咫に照る也の大活用あるなり。 ジの言霊は強く守る也、打ち固める也、辻立つ也、予誓也の大活動なり。 ヒの言霊は明かに通徹する也、日の結也[※「総説」及び「第一章」はもともと『神霊界』大正10年(1921年)1月号p71-81に「八面六峰」と題して掲載されたものである。「日(ひ)の結(むすび)也」の該当箇所は、「八面六峰」(p81)では「日(ふい)の結(むすび)也」になっている。「ヒ」の活用として「日(ひ)の結び」では意味がおかしい。「ふい」の結びが「日(ひ)」である、と解した方が意味が通る(水茎文字ではフとア行イの結合がヒになる)。]、無不所照也[※「総説」及び「第一章」はもともと『神霊界』大正10年(1921年)1月号p71-81に「八面六峰」と題して掲載されたものである。「無不所照(むふしよせう)也」の該当箇所は、「八面六峰」(p81)では「無所不照(てらさざるところなき)也」になっている。漢文としては「無所不照」の方が意味が通る。また古来より使われている熟語である(中国語だと「无所不照」)。「無不所照」の場合、漢文の「無不」は「~しないものはない」という二重否定であり、「所照」は「照らすところ」なので、「照らす所がないことはない」と解すれば、「無所不照」と同じ意味になるか?]、日也、昼也、顕幽皆貫徹する也、大慈大悲の極也、⦿の形を照り顕はす也、悉皆帰伏而一致一和の意也。尊厳也、⦿の朝也、⦿の寿也、三世照明也、等の活用あるなり。 以上の言霊活用を思考する時は、大日本国の[※元々は「天津日嗣天皇の統御し給ふ大日本国の」だが、御校正本で「天津日嗣天皇の統御し給ふ」が削除されている。]表徴にして、神国と神民との最優最秀なる天職を発揮し、世界万国を教へ救ふ神国天賦の本能を顕はせる、神霊の活用する神峯と云ふ事になるなり。彼の有名なる白扇倒懸東海天の句を始め、富士山に関する詩歌は随分沢山ありて、詩にも歌にも、句にも此富士山位詠まれたものは無かるべし。契冲の歌にも 富士がねは山の君にて高御座空にかけたる雪の経笠 実に上品な歌にして、天皇の高御座の上に釣るす経笠の如くにて然も天空高く、白皚々たる、純白の雪を戴き、群峰の上に屹として、一番高く峙え立ち居る富士山は実に山の中の君主なりといふ意味なり。 心あてに見し白雪はふもとにて思はぬかたに霽るる富士ケ嶺 あの辺が頂上かしら、雲に包まれて見えぬのかと、あせりあせり見る中に、雲が晴れると、ヤア何だアンナエライ高い雲表にニヨツキリと頂が現はれて居ると云つて茫然自失、今更にその高さに驚かされ、且つ崇高の感に撃たれて居る真境を写し出したる歌なり。 元朝に見るものにせむ富士の山 これは宗祇の作句なり。正月も近い目出度い元旦の見ものとして富士の山に越したものは無く、尊しと云ふの意味なり。万葉集にも随分富士を賞めたる和歌が沢山載せられあるが、凡て此の富士山は日本国の崇高なる意義を代顕したる神峰なり。 東洋独立玉芙蓉万古千秋不改容 清嶽鮮山朝揖処五刕高聳此仙峰 以上の数篇は大正十年一月号の神霊界に所載したるものなり。其中神旗の由来、霊力体、天岩戸、鎮魂等の章は孰れも明治三十三年の王仁の旧作なるも、今また都合に依りここに再録するものなり。 (大正一一・三・一七旧二・一九王仁)
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霊界物語 13_子_フサの国・半ダース宣伝使 24 大活躍 第二四章大活躍〔五五〇〕 茲に六人の宣伝使は、田子の町に於けるお竹の宿の騒動を鎮定し、弥次彦、与太彦は宣伝使に扈従して、コーカス山に向ふ事となつた。六人は馬上に跨り、二人は徒歩のままテクテクとフサの都を指して進み行く。タカオ山脈に連続せる猿山峠の麓に着いた。 永き春日も早暮れ果てて、四辺は靄に包まれた。一行八人はとある林の中に蓑を敷き寝に就いた。何れも長途の旅に疲れ果て、前後も知らず寝入るのであつた。夜中に弥次彦は目を覚まし、あたりを見れば、朧の月は頭上に木の間を透して輝いて居る。六人の宣伝使のうち五人の姿は、何時の間にか消え失せて、附近に人の気配もない。 弥次彦『モシモシ宣伝使様、起きて下さい、人が紛失いたしました』 音彦『ナニ、人間が紛失した?、ソンナ事があるものか、お前夢でも見たのだらう』 弥次彦『イヤ決して決して夢ではありませぬ、マア目を開けてご覧なさい、馬も居りませず、宣伝使のお姿も何処かへ、蒙塵されたやうな塩梅ですワ』 音彦は目を擦りながら、附近を見まはし、 音彦『ヤアこれは殺生だ、到頭棄てられて了つた。エー仕方がない、何事も神直日大直日に見直し聞直しだ。吾々を鞭撻しようと思つて、鷹彦の宣伝使が、熟睡の隙を狙つて発足されたのだらう。夫れにしてもご苦労な事だ、自分は斯うして夜中の夢を見て居るのに、五人の宣伝使は、夜露を冒して夜中行軍、大抵の事であるまい。音彦は大変草臥れて居るから、マアゆつくりと休ましてやらうと言つて、一足先へお出でになつたのだらう。何れフサの都の手前で待つて居て下さるであらう』 弥次彦『モシモシ宣伝使様、ソンナ気楽な事を言つてる所ぢやありませぬで、あなたの馬も居ないぢやありませぬか、この辺には大変な大きい大蛇が、夜分に横行しますから、宣伝使も馬も一緒に呑んで了つて腹を膨らし、呑み満足をしよつて、吾々を呑残しにしたのかも分りませんよ』 音彦『マア心配なさるな、神の道を伝ふる宣伝使、神様がご守護遊ばすから、大蛇がどうして呑む事が出来よう。キット先へ行つて、吾々の来るのを待つて居て下さるだらうから』 弥次彦『オイ与太、起きぬか、ナンダ、大変事が勃発して居るのに、グウグウと寝て居る所か、サアサアこれから手配りをして、宣伝使の在処を探さねばならないぞ』 与太彦『ムニヤムニヤムニヤ、アーねむた、折角良い夢を見て居つたのに、起されて惜しい事をした、掌中の玉を奪はれたやうな気がするワイ』 弥次彦『惜しい夢つて、ドンナ夢だい、金でも拾つた夢を見たのだろう』 与太彦『どうしてどうして、ソンナ夢ぢやない、三日間は人に言ふなと云ふ事だ、夢を取られると困るから、ここ三日間は夢に対して無言の行だ』 弥次彦『大体が夢ぢやないか、たとへ実現するにした所で、お前と俺との仲だ、一つの物を二つに割つて食ひ合ふやうな、昵懇な仲で、夢を惜んで話さないと云ふ事があるか。お前の物は俺の物、俺の物はやつぱり俺の物だ』 与太彦『アハヽヽヽ、それだから言はれぬのだ、取込思案ばかりしよつて、抜目のない男だから』 弥次彦『貴様はよつぽど水臭い男だよ、綺麗さつぱりと白状して了へ。大方隣の嬶を何々する所で揺すり起されたのだらう、それだから俺に言はれないのだらう。百尺竿頭一歩を進めて露骨に云へば、俺の嬶に○○しようと思つた所を起されたのだらう』 与太彦『何を言ふのだ、あまり馬鹿にするない、腹が立つわ。これほど昵懇にして居るのに、俺の日頃の精神が、貴様は分らぬのか。エー残念な、腹立たしや、ソンナ事を言うと俺が死んだら化けて出てやるぞ』 弥次彦『腹が立つなら言はぬかい。俺と貴様の間柄ぢや、二人の仲に隔てや秘密があつては親友と云ふ事が出来ぬぢやないか、ナアもし宣伝使様、さうでせう、朋友といふものは互に相信じ、相助けるのが朋友の道でせう』 音彦『さやうぢや、互に打解けた間柄と云ふ者は気分の良いものですなア。与太サン、元来が夢だ、さう弥次サンの気を揉まさずに言つて上げなさい』 与太彦『アー仕方がない、宣伝使様のお言葉、首が千切れても、三日間は女房にだつて言はないのが夢の規則だけれど、天則を破つて一伍一什を展開いたしませう。……抑も夢の顛末といへば、古今に比類を絶したる大大吉祥瑞の大霊夢だ。一富士二鷹三茄子つて夢の中でも王さまだ。与太公が、何処だつたか、処は忘れたが、道を歩いて居ると立派な葬礼が通りました。葬礼の夢は何も彼も落着すると言つて、事が墓行に運ぶと云ふ事、それから芽出度い鷹の夢だ、ヤア立派な葬礼だなと見て居ると云うと、そこへパツパツパツと、飛行機の様にやつて来た結構なお方があるのだ。それは鷹が三匹与太公の前に下りて、与太公の顔を見ては一寸俯き、また上げては俯き、一生懸命にアヽ与太さまは立派な男だナアと言はぬ許りの顔をして見惚れて居ました。私も何だか気分が良いので、ジツとして鷹と睨みつくらをして居ると、どこからともなく一本の穂に五六升も実がなつた様な黍がそこヘバサと落ちて来た、一粒万倍と云つて数の殖える黍の夢だから、あの通り宝が殖えるのであらう。本当に気分の良い夢だらう、ナア弥次彦、コンナ夢は聖人君子でなければ、到底見る事は出来ないよ』 弥次彦『そら大変だ、貴様気を付けないといかぬぞ』 与太彦『大変だらう、本当に気を付けぬと、結構な夢の実現を、他人に横領されては、糠喜びになるからナ』 弥次彦『まだソンナ事を言つて居よる、葬礼に鷹三匹、黍といふぢやないか、その夢は大凶兆だ、災難の前提だ、獏に喰はせ獏に喰はせ』 与太彦『コンナ結構な夢を獏に喰はしてたまらうか、俺が食うのだ』 弥次彦『本当に大悪夢だよ、そうれ、三鷹、よい黍だ、アハヽヽ』 与太彦『エー言霊の悪い、詔り直せ詔り直せ』 音彦『ヤア、良いと言へば良い夢だ、悪いと言へば悪い夢だ。良い夢を見たと言つて、油断をすれば、吉変じて凶となり、悪い夢を見ても、心得やうに依つては、凶変じて吉となるものだ。マアマア油断大敵、得意の時には得てして禍の種を蒔くものだ。災厄に悩む時こそ却て喜悦の種を蒔く時だ。善悪不二、吉凶同根だ、ヤア各自に気を付けねばなりませぬワイ』 斯かる所へ人馬の物音ザワザワと、数十人の黒い影、三人の前に迫り来たる。 源五郎『ヤアそこに臥せり居る三人の者は三五教の宣伝使の一行であらう、我こそはウラル教の大目付役、鷹掴の源五郎だ。此処へ来せたは汝が運の尽、サア尋常に手を廻せ』 弥次彦『それ見たか与太彦、貴様の精神が悪いから、碌でもない夢を見よつて、瞬く間に実現して来たぢやないか、コンナ夢ならモウ分配して不用ぬワイ』 与太彦『エー夢どころの話かい、大変だ。モシモシ宣伝使様、コラ一体全体どうなるのでせう』 音彦『アハヽヽヽ、夢の浮世だ、ウラル教の大目付役もやつぱり人間だ、一つ善言美詞の言霊を以て言向和しませう、………高天原に神留ります………』 源五郎『ヤアまがふ方なき三五教の宣伝使、ヤアヤア家来の者共、抜かるな、一度に飛びかかつて、取つ締めて了へ』 弥次彦『エー仕方がない、血路を開いて一目散に韋駄天走りだ、与太公続けツ』 と言ひながら、群がる群集の中に向つて、鉄拳を打振りながら、一目散に駆出した。猛虎の如き凄じき勢に、ウラル教の捕手は、パツと左右に分れた。二人は一生懸命に駆け出す。音彦はその後に悠々として、宣伝歌を歌ひながら進み行く。 源五郎『ヤアヤア部下の奴共、何と云ふ腰抜だ、向うは僅に三人、五十人も居ながら、取り逃すとは不届きな奴だ、どうしてウラル彦の神様に申訳をするのだ、愚図々々いたさず、俺に続いてやつて来い、今度は生命を的に進撃するのだ』 捕手の一人『ヤア御大将、責任はあなたにありますで、あなたの策戦計画が宜しきを得ないから、折角の敵を取逃がしたのだ。吾々はその日限りの傭人足だけの事より出来ませぬワイ。お前さまは、沢山な手当を貰つて御座るのだ、吾々の五十人振もお手当を貰つて居りながら、あた強欲な、みなの頭を張つて、栄耀栄華に暮して居るものだから、たーれも真剣に、阿呆らしくて生命がけの仕事が出来るものか、丈は丈、丈の働きだ。お前さまも丈の働きをしなさい。………オイ皆の奴、馬鹿気とるぢやないか、アンナ奴を追ひかけてでも行かうものなら、それこそ俺ばつかりの難儀ぢやない、一家親類兄弟は申すに及ばず、女房子供までが、どれだけ嘆く事だらう。阿呆らしい、目腐れ金を貰つて、この日の永いのに、朝から晩まで酷使はれて、おまけに夜業まで強制されて堪るものか。ノー皆の奴……』 乙『オーさうださうだ、なにほど大将が威張つた所で、石亀の地団駄だ、おつつかないワ、………モシモシ源五郎の親方、是から往けなら往きますが、ヤツパリ丈は丈ぢや、丈出して下さらぬか』 源五郎『現金な奴だナア、早く往つて手柄を致せ、滅多に使ひボカシは致さぬぞ。ソンナ勘定は後にして、危急存亡の場合だ、早く進まぬか』 丙『ヤア前賃を貰はなくちや、働く勢がないワイ、モシモシ大将、幾許出しますか』 源五郎『エー煩雑い奴だな、愚図々々して居ると、遠く逃去つて了うワイ』 丙『走るのが幾ら、掴まへるのが幾らですか、少々高くつても、つかまへるのはお断りしたいものですな』 源五郎『走つたつて、ナニ役に立つか、捕まへるのが目的だ』 丙『私も捕まへるのが目的だ、早く捕まへさしなさい。ドツサリと………何時も大将は、また後から後からと月並式に仰有るけれど、後はケロリと瘧が落ちた様な顔して何度催促しても歯切れのせぬ御返辞、ヌラリクラリと鰻でも掴むやうに、掴まへ所のないお方ぢや、私も確乎と掴まへた上でなければ、捕まへる事はマア措きませうかい。この睡たいのに、生命懸の仕事をしたつて、お前さまが沢山な褒美を貰つて、吾々は骨折損の草疲儲け、罷り違へば一つよりない生命を棒に振らねばならぬのだからナア』 源五郎『エー分らぬ奴ぢや、急場の間に合はないぞ、早く進まぬか、宣伝使が逃げてから、何ほど走つたつて仕方がないぞ』 甲『こちらが一足走れば向うも一足走る、どこまで往つたつてお月さまを追かけて行くやうなものだ。マアそれほど大将、急ぐには及びませぬワイ、「急がずば濡れざらましを旅人の、あとより霽るる野路の夕立」……やがて雨も霽れませう、あまり慌てるものぢやない、急いては事を仕損ずる、急かねば事が間に合はぬ、アーア彼方立てれば此方が立たぬ、此方立てれば彼方が立たぬ、両方立てれば身が立たぬ、何だか知らぬが、気乗りがせぬので、一向心が引立たぬ』 乙『モウ今頃には、大分に敵は遠く往つたであらう』 丙『ナーニ、さう遠くは行つては居まい、「君はまだ遠くは行かじ吾袖の、袂の涙かわき果てねば」まだ走つて来た汗も碌に乾く暇が無いのだから、さう五里も十里も行つて居る気遣はないワ、併しこれ丈距離があれば、何ほど走つても追付く気遣がないから大丈夫だよ』 源五郎『エー頭が廻らな尾がまはらぬ………コラ馬の奴、頭をこちらへ向けぬかい、尾も一緒に廻すのだぞ……ハイハイ……「カツカツ」……ヤア皆の奴、源五に続け』 甲『ヘン偉相に大将面をしよつて、源五に続けツ……何を吐しよるのだ、表向こそ貴様の乗つて居る痩馬の馬士ぢやないが、へーへー、ハイハイ言つて居れば、よい気になりよつて、源五の野郎、言語に絶する様な横柄な言葉を使つて居やがらア。吾々は素より三代相恩の主でもなければ、身内でもない、露骨に言へばアカの他人だ。エー仕方がない、伴いて行つたろか、是もやつぱり銭儲けだから………』 乙『馬から落ちて腰でも折りよると良いのだけれどナ、彼奴が免職したら、その後釜は此方さまだ、とも角頭がつかへて、吾々の栄達の路を封鎖して居るものだから、良い加減に交迭しても宜かり相なものだ……オイオイ皆の奴、仕方がない進め進め』 源五郎は馬上より、後振り返り、 源五郎『ヤア皆の奴、何をグヅグヅして居るのか、足の弱い奴だな早く続かぬか』 丙『お前は四つ足、こちらは二本足だ、どう勘定しても半分より歩けないのは道理だ、こちらは一足そちらは二足だ、二足三文の腰抜大将、良い加減にスツテンコロリと引つくりかへつて落ちて了はぬかいナア』 源五郎は烈火の如く憤り、馬の頭を立直し大勢の中に引つ返し来り大音声、 源五郎『ヤア貴様達は、今日に限つて主人の吾々に対して無礼千万な暴言を吐く奴、今日ただ今より暇を遣はすから、さう心得よ』 甲乙丙『ヤアご立腹御尤も、何時もコンナ事は、言つた事も思つた事もございませぬが今日に限つて何だか、腹の中から勝手にアンナ事を喋舌りよるのです。決して決して八や、六や、七の言うた事ぢやございませぬ、腹の中の副守護神の囁きですから、悪からず、神直日大直日に見直し聞直し、馬から落ちたら、また痩馬になつと乗り直し下さいませ……』 源五郎『ハテ合点の行かぬ事だ、貴様は三五教のやうな事を云ふ奴だナ』 甲『三五教の眷属が、吾々の口を藉つてご託宣遊ばすのだ……コリヤコリヤ源五郎、その方は今日より免職を言ひ渡す、その馬に八チヤンを乗せて、その方は馬の口取を致せ』 源五郎『ハテ、けつたいな事になつて来たワイ、何奴も此奴も、両手を組んで身体を揺つて居よる……ハハア此奴あ、神懸りになりよつたな。こりや堪らぬ、如何な珍事が突発するやも計り難し、君子は危きに近寄らず、敵の中にも味方あり、味方の中に大敵ありだ』 と無性矢鱈に馬に鞭ち、一生懸命に駆出した。馬は何に驚いたか、俄に前足を浮かして直立し、勢あまつて仰向にドサンと転倒した。源五郎は馬の背に押へられ、蛙をぶつつけた様に手足をビリビリと震はし、二声三声ウンウンと言つたぎり縡切れにけり。 八公『ヤアまるで蛙見たいなものだ、フン延びて居るワ、再び生蛙と云ふ気遣ひはないワ、アーア人間も斯うなると脆いものだナ、万物の霊長だナンテ威張散らして居つても、四つ足の背中に押へられて、ウンと一声この世の別れ、厭な冥途へ死出の旅、憐れなりける次第なりだ。………ヤア馬が空いた、サア是から俺が大将だ、皆の奴、この八大将に続いて来れ』 六公『続いて行かぬ事もないがやつぱり丈は丈ぢや』 八公『また神懸りになりよつたな、エー仕方がない、人を使へば苦を使ふ、自分一人これから走つて、あの宣伝使を捕まへねばなるまい』 と馬を乗り棄て、裸足の儘、尻ひつからげて、峠を目がけて駆出したり。 話変つて音彦は弥次彦、与太彦と共に、爪先上りの坂路を避けて、右手に取り、原野の正中を韋駄天走りにトントンと、マラソン競争をやつて居た。ピタリと大河に行詰まつた。両岸は断巌絶壁に囲まれ、河幅の割には非常に深く、且急流にして、水音が囂々と轟いて居る。 音彦『アヽ此奴は大変だ、どこぞ橋がありさうなものだナア』 とキヨロキヨロと河の上流下流を眺めて見た。二三丁下手に当つて丸木橋が見える。 音彦『ヨー彼処に橋が架つて居るぞ』 と又もや三人はトントントンと走り出した。橋詰に来て見れば、一抱へもあらうと思ふ丸木橋が架々つて居る。三人は勢ひを立てて一散走りに無難に向ふ岸に渡り、敵の追跡を遮断するため、丸木橋を落して了つた。さうする間に、 『オーイオーイ』 と八公の一隊は遥の後方より呼んで居る。 弥次彦『アハヽヽ、モウ大丈夫だ、この橋さへ落しておけば、追つ付く気遣ひはない。マアゆつくりと、宣伝使様一服致しませうか』 音彦『宜からう、お前たちも足が草臥れただらう、三人此処でゆつくりと休息して、敵の襲来するのを見物しようかい』 与太彦『コリヤ面白い』 と三人は腰を芝草の上に、ドカリと下ろし、大船に乗つた様な心持になつて、身を横たへて居る。傍の雑草の茂みより、覆面した四五人の男ヌツト現はれ、 男『サア貴様は三五教の宣伝使、吾等が計略の罠にかかつたのは、汝等が運の尽き、サア尋常に手を廻せ』 弥次彦『宣伝使様、神言を言つて下さいナ』 音彦『コンナ四足人間に神言を言つた所で、盲蛇に怖ぢずだ、勿体ないことを知らぬ奴に何を言つたつて駄目だ、三十六計の奥の手だ』 と云ひ乍ら又もやトントントンと駆出した。黒頭巾の大男は、一丁許り遅れて追跡して来る。ピタツと行当つた一棟の可なり大きな館がある、三人は矢庭に門を潜つて、中よりピシヤリと戸を閉め錠をおろし、奥へ進んで行く。見れば、かなり大きな土間があつて、七八人の荒男手に手に血の滴る出刄を携へ、何だか料理をして居る。 男『ヤアいい所へ椋鳥が飛んで来よつた、サア三人足らぬと思つて居た所、有難いものだ、都合の宜い時はコンナもの、ドーレ早速料理をやらうかい』 その中の一人の男、一方の板戸に目を注ぎ、三人に向つて目配せした。音彦は合点だと板戸を押せば、苦もなくプリンと開いた。三人は矢庭に戸の内に駆込んだ。さうして中より鍵をかけて追跡を防ぎつつ、四辺を見れば、広き大道が通じて居る。 音彦『ヤア有難い、敵の中にも味方があるとはこの事だ、弥次サン、与太サン、私に続いてお出』 と一生懸命に駆出し、四五丁進めば、道の両側には、泥深き沼田が並んで居る。 音彦『ヤア此奴は一筋道だ、進め進め』 と七八丁も先に進んだ。弥次彦、与太彦はどうした機か沼田の中に落ち込み、着物も何にも泥まぶれになり、重たくて身動きが出来ぬ、已むを得ず二人は真裸となる。向ふの方より色の黒い背の高い、顔の尖つた男一人現はれ来り、三人の姿をジロジロと見まはして居る。 音彦『ヤアお前はウラル教の目付だらう、邪魔ひろぐと為にはならぬぞ』 男は厭らしき笑顔し乍ら、 男『モウ斯うなつては駄目だよ、観念したがよからう』 後を振返り見れば数十人の捕手、突棒、叉股、手鎗を提げ、一筋道を追ひかけ来る。この間の距離わづかに四五丁許りである。音彦は二人の裸と共に、目付の男を沼田の中に押込みながら、爪先上りの一間巾位の道をトントントンと駆出した。俄に嶮しい坂路になつて来た。一丁許り進んで息も切れむとする時、又もや三人の男現はれ来たり、 目付役『ヤア待つて居た良い所へ来た、俺はウラル教の目付役だぞ』 音彦『ナンダ、ウラル教の目付役とな、ゴテゴテ吐すと為にならぬぞ、スツコメスツコメ』 目付『此処はどこだと考へて居る、小鹿峠の四十八坂の一つだ。これから先へ行けば行く程、路は峻しくなつて来る、ウラル教の目付は数百人、手具脛ひいて貴様を待つて居るのだ、あれ見よ、後からは沢山の捕手があの通りやつて来る、先には沢山待構へて居る、グヅグヅ致すより、態よく俺に降参致して、吾等の手柄にさして呉れ、冥途の土産だ、キツト極楽へ陥落するだらう』 音彦『エー面倒だ、モウ斯うなつては善言美詞もあつたものぢやない、一つ大法螺を吹いて驚かしてやらう………この方こそは閻魔の庁より現はれ出でたる艮彦の大神だぞ、失敬千万な、三五教の宣伝使とは、何と云ふ見当違な事を申す、この方が一つ四股を踏めば、小鹿峠は瞬く間にガラガラガラ、左の足をドンと踏み鳴らせば、貴様の様な端下人足は千人万人一度に風に木の葉の散る如く、中天に舞上り、バラバラバラ、泥田の中にズツテンドウと真つ逆様だ』 弥次彦『天から降つた神の弥次彦さまだ、裸百貫と地上の奴は吐せども、俺の力は百万貫だ、二人合して二百万貫、サアどうぢや、右の足で四股を踏まうか、左の足で踏まうか踏んだが最後、小鹿峠は岩で卵を砕くやうにガラガラとも、メチヤメチヤとも言はず、ピシヤリと葱のやうに平茶張つて了うぞ、それでも貴様は合点か』 目付『ヤアヤア大変な豪傑が来よつたものだ、オイオイじつとしたじつとした、足を動かすな、歩くのなら、さし足だ、ぬき足だ』 弥次彦『一つ四股を踏だらうか』 音彦『ヤア待つた待つた、危ないぞ危ないぞ、後がないぞ後がないぞ、ハツケヨイヤ、ハー』 弥次彦『アハヽヽヽ、日の下開山蛇塚蛇五左衛門、横綱張つた摩利支天の再来だ、ア仕方がない、貴様を助けるためにソーツと歩いて行つてやらう、有難く思へ……』 と三人は態と、ノソリノソリと登つて行く。前方よりは数百の人数、手に手に柄物を携へ下つて来る。後方よりは又もや数十人の捕手刻々に近付いて来る。一方は屏風を立てた様な岩壁、一方は千仭の谷間、進退維れ谷まり、逃げるにも逃げられず、 三人『エー仕方がない、モウ斯うなる上は、破れ被れだ。サア来い勝負』 と三人一度に拳骨を固め、捕手の中に暴れ込んで当るを幸ひ擲り立てる。数多の捕手は群り来つて、今や三人を捕へむとする時、三人逃路を失ひ、一二三つの声諸共、決死の覚悟で谷間を目がけて飛込みたり…その途端に驚いて目を開けば、瑞月は高熊山の巌窟に横たはり居たり。二月十五日の太陽は煌々として中天に輝き渡りける。 (大正一一・三・二一旧二・二三松村真澄録)
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霊界物語 16_卯_丹波物語1 大江山/冠島沓島/丹波村 06 石槍の雨 第六章石槍の雨〔五九六〕 大空碧く澄み渡り山河清くさやかにて 静かに流るる和知の川枝も鳴らさぬ音無瀬の 川の流れは緩やかに幾千丈の青絹を 流すが如くゆらゆらと水瀬も深き由良の川 神代も廻り北の風真帆を膨らせ登り来る 深き恵を河守駅や河の中央に立ち岩の 関所を越えて漸うに足許早き長谷の川 水の落合右左左手に向ひ舵をとり 上る河路も長砂や幾多の村の瀬を越えて 此処は聖地と白瀬橋下を潜つて上り来る 臥竜の松の川水に枝を浸して魚躍り 月は梢に澄み渡る向方に見ゆるは稲山か 丹波の富士と聞えたる弥仙の山は雲表に 聳えて立てる雄々しさよ敵も無ければ味方郷 味方平に船留めて四方の国形眺むれば 青垣山を繞らせる下津岩根の竜宮館 此処は名におふ小亜細亜地上の高天と聞えたる 昔の聖地ヱルサレム橄欖山や由良の 景色に勝る聖地なり。 神素盞嗚大神、国武彦命其他三人は、桶伏山の蓮華台上に登らせ給ひ、天神地祇八百万の神を神集へに集へ給へば、命の清き言霊に先を争ひ寄り来る百の神等、処狭きまで集まりて、皇大神の出でましを、祝ひ寿ぐ有様は、蓮花の一時に、開き初めたる如くなり。 神素盞嗚大神は、国武彦命に何事か、密に依さし給ひ、ミロク神政の暁迄三十五万年の其後に再会を約し、忽ち来る丹頂の鶴にヒラリと跨り、中空高く東を指して飛び去り給ふ。国武彦命は亀彦を始め、英子姫、悦子姫に何事か囁き乍ら万司に向ひ厳格なる神示を与へ、茲に別れて只一柱、四王の峰の彼方に雄々しき姿を隠したまひける。 後に残されし一男二女の宣伝使は二神の依さしの神言を心の底に秘め置きて、又もや此処を立ち出でて、大江の山を目蒐けて、いそいそ進み行く。嗟此の山上の五柱は、如何なる神策を提議されしぞ。神界の秘密容易に窺知すべからず、月は盈つとも虧くるとも、仮令大地は沈むとも誠の力は世を救ふ、誠の神が出現し再びミロクの御代となり、世界悉く其堵に安むじて、天地の神の恵みを寿ぎ、喜び、勇む尊き神代の来るまで、云うてはならぬ神の道、言ふに言はれぬ此仕組、坊子頭か、禿頭、頭かくして尻尾の先を些し許り述べて置く。もとより物語する王仁も、筆執る人も聞く人も、何だか拍子の抜けたやうな心いぶせき物語、今は包みてかく言ふになむ。 秋山彦の門前に数多の魔人を引連れて、現はれ出でたる鬼彦は、第一着に秋山彦の口に石を捻込み、猿轡を箝ませ、高手小手に縛め置き、尚も進みて奥殿深く、神素盞嗚の大神を始め、国武彦、紅葉姫、英子姫、亀彦諸共、高手小手に踏ン縛り、勝鬨あげて悠々と大江山の本城を指して勇み帰り行く。 千歳の老松生茂れる山道を、網代の駕籠を舁つぎながら、川を飛び越え岩間を伝ひ、やつと出て来た魔窟ケ原、一同網代の駕籠を下ろし周囲の岩に腰打ち掛け、息を休めながら雑談に耽る。 甲(熊鷹)『オイ鬼虎、貴様は竜灯松の根本に於て、さしも強敵なる二人の女にちやつちや、もちやくにせられ、鬼雲彦の御大将に目から火の出るやうなお目玉を頂戴致して真青になり、縮上つて居よつたが、何うだい、今日は大きな顔をして帰れるだらう、帰つたら一つ奢らにやなるまいぞ』 鬼虎『オヽさうだ、熊鷹、貴様らも同じ事だ、あの時の態つたら見られたものぢやなかつたよ。何分此方様の御命令通り服従せないものだから、ハーモニイ的行動を欠いだ為めに思はぬ失敗を演じたのだ。それにしても慎むべきは酒ではないか、あの時に吾々は酒さへ飲みて居なかつたら、アンナ失敗は演じなかつたのだよ』 熊鷹『ナニ、決して失敗でもない、二人の女を取り逃がした為に却て素盞嗚尊の所在が分り、禍転じて幸となつたやうなものだ。何事も世の中は人間万事塞翁が馬の糞だ、併し今日は鬼彦の指揮宜しきを得たる為に、かういう効果を齎したのだ、何事も戦ひは上下一致ノーマル的の活動でなくては駄目だワイ、何程ジヤンジヤヒエールが沢山揃つて居たところで総ての行動に統一を欠いだならば失敗は目前だ。総て何事も大将の注意周到なる指揮命令と、吾々が大将に対する忠実至誠のベストを尽すにあるのだ、サテ鬼彦の御大将、今日の御成功お祝ひ申す、之で鬼雲彦の御大将も御安心貴方も安心皆の者も安心、共に吾々も御安心だ、アハヽヽヽ』 此時頭上の松の茂みよりポトリポトリと石の団子が雨の如く降り来り、鬼彦始め、鬼虎、熊鷹其他一同の体に向つて叩きつけるやうに落ち来たり。一同はアイタヽ、コイタヽ、イヽイタイと逃げようとすれども、石雨の槍襖に隔てられ、些しも身動きならず頭部面部に団瘤を幾つとなく拵へけり。石熊は頭上を仰ぐ途端に鼻柱にパチツと当つた拳骨大の石に鼻をへしやがれ、血をたらたらと流し、目をしかめ、ウンと其場に倒れたり。網代駕籠の中に囚はれたる神々は、金城鉄壁極めて安全無事、此光景を眺めて思はず一度に高笑ひ、アハヽヽヽ、オヽホヽヽヽ。 石の雨はピタリとやみぬ。神素盞嗚尊を始め、一同七人はヌツと此場に現はれたりと見れば猿轡も縛の縄も何時の間にか解かれ居たりける。 悦子姫『オー皆様気の毒な事が出来ましたナア。此峻嶮の難路を吾々を駕籠に乗せて、命辛々汗水垂らして送つて来て呉れました博愛無限な人足を、頭部面部の嫌ひなく、支店を開業して団子販売営業を盛に奨励致して居ります。何うか皆さま腹も減いたでせう、あの出店の団瘤を一つ宛買つてやつて下さい、アハヽヽヽ』 亀彦『吾々も大変腹が減きました。支店の売品では面白くない、一層の事本店の背から上の目鼻の附いた団瘤を捩ちぎつて頂戴致しませうか。アハヽヽヽ』 一同『ホヽヽヽヽ』 鬼虎は顔を顰めながら、 鬼虎『ヤイヤイ皆の奴確りせぬかい、石の雨が降つたつてさう屁古垂れるものぢやない。俺は除外例だが、貴様達は早く元気をつけて此奴を踏ン縛つて仕舞はねば、ドンナ事が出来致すも分らぬぞ。エイ、何奴も此奴も腰抜けばかりだナア、鬼掴の奴、敵と味方と感違ひを仕よつて、味方の頭上に石弾を降らしよつたのだ。敵の石弾に打たれたと云ふのならまだしもだが、味方の石弾に打たれてこの谷川の露と消えるかと思へば、俺ア死ンでも死なれぬ哩。アヽヽ何うやら息が切れさうだ、オイ貴様達、俺の女房を呼ンで来て呉れ、最後の際に唯一目会うて死にたい顔見たい、そればつかりが黄泉の迷ひだ。アンアンアン』 熊鷹『ヤイヤイ何奴も此奴も確りせぬかい、何ぢや、地獄から火を取りに来たやうな真青な顔をしよつて、ソンナ弱い事でこの役目が勤まらうか、確りせぬかい、アイタヽヽ、矢張り俺も苦しい哩、苦しい時の鬼頼みだ、南無鬼雲彦大明神様、吾等が精忠無比の真心を憐れみ給ひ、一時も早く痛みを止め、其反対に素盞嗚一派の奴の頭の上に鋼鉾の雨でも降らして滅ぼし給へ。それも矢張貴方の為ぢや、一挙両得自分が助かりや家来も助かる、コンナ好い事が何処にあるものか、エヽナンボ頼みても聞き分けのないバラモン教の大神様だワイ』 此時又もや鋭利なる切尖の付いた矢は雨の如く降り来り、鬼彦以下の魔神の身体に遠慮会釈もなく突き立ちにける。 熊鷹(か?)『アヽまたか、大神様は感違をなされたか、敵はあの通り無事、味方には激しき征矢の集注、好く間違へば間違ふものだなア、アイタヽヽヽ耐らぬ真実に此度は息が切れるぞ、仕方が無い死ンだら最後地獄の鬼となつて此奴共の来るのを待ち受け、返報がへしをしてこます、ヤイ素盞嗚尊、其他の奴等覚えて居れ、貴様が死ンだら目が潰れるやうに、口が利けぬやうに、びくとも動けぬやうにしてやるぞや』 亀彦『アハヽヽヽ、吐くな吐くな、目が潰れる口が利けぬ、体が動かぬやうにしてやらうとは好くも言へたものだワイ、天下一品の珍言妙語だ、モシモシ英子姫さま、悦子姫さま、舞でも舞うたらどうでせう、コンナ面白い光景は滅多に、大江山でなくては見られませぬよ』 英子姫、悦子姫『ホヽヽヽヽ』 秋山彦は両手を組み、声も涼しく一二三四と天の数歌を唱ふるや、一同の魔神の創所は忽ち拭ふが如くに癒え来たり、彼方にも此方にも喜びの声、充ち充ちにける。 『アヽ助かつた』 『妙だ』 『不思議だ』 『怪体の事があるものだワイ』 と囁き始めたり。秋山彦は一同に向ひ声も涼しく宣伝歌を謡ふ。 秋山彦『朝日は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも 鬼雲彦は強くとも大江の山は深くとも 数多の部下はあるとても虱の如き弱虫の 人の生血を朝夕に漁りて喰ふ奴ばかり 沢山絞つて蓄へた身体の中の生血をば 吐き出すための神の業頭を砕く石の雨 血を絞り出す征矢の先潮の如く流れ出でぬ 吾は此世を救ふてふ人子の司三五の 神の教のまめ人ぞ鬼や悪魔となり果てし 汝が身魂を谷川の清き流れに禊して 天津御神のたまひたるもとの身魂に立て直し 今迄犯せし罪咎を直日に見直し聞き直し 百千万の過ちを直日の御霊に宣り直す 神素盞嗚の大神の恵も深き御教 胆に銘じて忘れなよ石熊、熊鷹、鬼虎よ 心猛しき鬼彦も此処で心を取り直せ 如何なる敵も敵とせず救ひ助くる神の道 誠の力は身を救ふ救ひの神に従ふか 曲津の神に心服ふか善と悪との国境 栄え久しき天国の神の御魂となり変はり 誠一つの三五の教にかへれ百人よ 元は天地の分霊善もなければ悪もない 善悪邪正を超越し生れ赤子の気になりて 天地の法則に従へば鬼や大蛇の荒ぶなる 魔窟ケ原も忽ちにメソポタミヤの顕恩郷 栄えの花は永久に木の実は熟し味もよく 心を砕いて世の人を苦しめ悩め吾身亦 苦しむ事は要らぬものサア諸人よ諸人よ 心の底より改めて真の道に帰るなら 神は救の御手を延べ栄に充てる永久の 高天に救ひ玉ふべし応は如何にサア如何に 心を定めて返り言声も涼しく宣れよかし 神は汝の身に添ひて厚く守らせ給ふらむ あゝ惟神々々霊幸倍坐世よ』 と謡ひ終れば、鬼彦始め一同は大地にはたと身を伏せて、感謝の涙に咽びつつ山岳も揺ぐばかりに声を放つて泣き叫びける。 (大正一一・四・一四旧三・一八加藤明子録)