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(1750)
霊界物語 19_午_丹波物語4 玉照姫と玉照彦 17 言霊車 第一七章言霊車〔六六二〕 仰げば遠し其昔広大無辺の大宇宙 天地未だ定まらず陰陽未分の其時に 葦芽の如萠えあがり黄芽を含む一物は 忽ち化して神となるこれぞ天地の太元の 大国常立尊なり其御霊より別れたる 天地の祖と現れませる国治立の大神は 豊国主の姫神と力を協せ御心を 一つになして美はしき世界を造り玉ひつつ 七十五声の言霊をうみ出でまして千万の 身魂を造り国を生み青人草や山河を 𪫧怜に委曲に生み終へて神伊邪諾の大神や 神伊邪冊の大神に天の瓊矛を賜ひつつ 修理固成の大神業依さし給へる折柄に 現はれませる素盞嗚の神の尊は畏くも 大海原を治しめし国治立の大神や 豊国主の姫神の大御心を心とし 千々に御胸を砕かせつ千座の置戸を負ひ給ひ 八洲の国を治めむと心を配らせ給へども 天足の彦や胞場姫の醜の身魂に成り出でし 怪しき霊伊凝り居て八岐大蛇や醜狐 醜女探女や曲鬼の荒ぶる御代と成り果てて 体主霊従の雲蔽ひ世は常暗となり果てぬ 日の神国を治食しめす天照します大神は 此状態を畏みて岩屋戸深く差しこもり 戦き隠れ玉ひしゆ百の神たち驚きて 安の河原に神集ひ議り玉ひし其結果 神素盞嗚の大神を天地四方の神人の 百千万の罪科の贖罪主と定めまし 高天原を神追ひ追ひ玉へば素盞嗚の 神は是非なく久方の尊き位を振り棄てて 大海原に漂へる島の八十島百国の 山の尾の上の曲神を言向け和し麗しき 五六七の神代を始めむと百の悩みを忍びつつ 八洲の国を遠近と漂浪ひ給ふぞ尊けれ ○ 朝日は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも 仮令大地は転倒るとも天津神達国津神 百の神々百人を誠一つの言霊の 稜威の剣を抜き持ちて天地にさやる曲津神 八岐大蛇を言向けて此世の災禍払はむと 大和心の雄心を振起しつつ進み行く 神素盞嗚の大神はすべての罪を差し赦す 三五教を守りつつ心も広き神直日 大直日にと見直しつ肉の宮より現れませる 八の柱の姫御子に苦しき神命を下しつつ 斎苑の館に身を忍び日の出神や木の花の 姫の命と諸共に恵の露を天が下 四方の国々隈もなく注がせ玉ふ有難さ 埴安彦や埴安姫の神の命と現はれし 国治立や豊国の姫の命の分霊 黄金山下に現はれて暗き此世を照さむと 八千八声の時鳥血を吐く思ひの苦みを 永の年月重ねつつ五六七神政の礎を 常磐堅磐に固めまし豊葦原の瑞穂国 秋津の洲や筑紫島常世の国や高砂の 島にそれぞれ神司国魂神を定めつつ 天の岩戸もやうやうに開き初めて英子姫 教の花も悦子姫空に棚引く紫の 姫の命の現はれて自転倒島の中心地 錦の御機織りなせる四尾の峰の山麓に 幽玄微妙の神界の経と緯との経綸を うまらに委曲に固めつつ薫りゆかしき梅が香の 一度に開く御経綸松は千歳の色深く 心の色も丹波の綾の聖地に玉照彦の 神の命や玉照姫の神の命の二柱 時節を待ちて厳御霊瑞の御霊のいと清く 濁り果てたる天地の汚れを流す和知の川 並木の松の立並ぶ川辺に建てる松雲閣 奥の一間に横臥して五六七神政の神界の 尊き経緯を物語るアヽ惟神々々 御霊幸はひましませよ。 ○ 見渡す限り紺青のみ空に清く玉照彦の 神の命や玉照姫の神の命の現はれて 弥勒の御代に伊都能売の神の御霊の神業を 開始し玉ふ物語三五教を守ります 神素盞嗚の大神の仁慈無限の真心に 流石の曲霊も感銘し心の底より悔悟して ウラナイ教の神司本つ教に帰順せし 聞くも芽出度き高姫や高山彦や黒姫の 罪や穢れを贖ひし松の心の松姫が 高熊山の山麓に心の岩戸を開きつつ 最早悪魔も来勿止の神に魂をば鍛へられ 御稜威も高き高熊の岩窟の中に駆入りて 貴の御子をば奉迎し天が下をば平らけく いと安らけく治め行く神の仕組に参加せし 誠心は三千歳の花咲きいでて今茲に 五六七の神代の開け口松竹梅の宣伝使 月雪花を始めとし教を開く八島主 言依別の言霊に敵と味方の差別なく 誠一つの大本を世界に照す糸口を 手繰りて述ぶる物語筆執る人は松村氏松村 無尽意菩薩の山上氏頭も照す身も照す山上 月照彦の肉の宮言霊開く観自在 三十三相また四相妙音菩薩の神力を 愈現はす十九の巻永き春日に照されて 物語るこそ楽しけれ。 ○ 四方に塞がる雲霧を神の御水火に吹き払ひ 心も清く身も清く青き御空を五六七殿 本宮山の新緑は大本教の隆盛を 衣の色に現はして行手を祝ぐ如くなり 眼下に漂ふ金銀の波に浮べる大八洲 天の岩戸の其上に大宮柱太しりて 千木勝男木も弥高く朝日に輝く金光は 神の御稜威の十曜の紋冠島沓島や六合大の 常磐木茂る浮島は擬ふ方なき五大洲 言霊閣は雲表に黄金の冠戴きつ 聳えて下界を打まもる教御祖を斎りたる 甍輝く教祖殿金竜殿や教主殿 木々の梢も青々と春風そよぐ神の苑 水に浮べる錦水亭地水に輝く瑞月が 尽くる事なく物語る瑞の御霊の開け口 神の力も厳御霊五十鈴の滝の鼕々と 際涯も知らぬ神の代の奇しき尊き物語 高天原と鳴り亘る言霊閣のいや高に 声も涼しき神の風常磐堅磐に吹き送り 醜の草木を靡かせて世人の胸に塞がれる 雲を晴らして永久の花咲く春の神国に 導き救ふぞ雄々しけれアヽ惟神々々 御霊幸はひましませよ。 ○ 月日並びて治まれる聖の御代の二十余り 五つの年の睦の月寒風荒ぶ真夜中に 本宮新宮坪の内遠き神代の昔より 貴の聖地と聞えたる竜門館の神屋敷に 現はれ給ひし艮の皇大神は三千歳の こらへ忍びの松の花手折る人なき賤の家に 住まはせ玉ふ未亡人出口直子の肉宮に 電の如懸りまし宣らせ給へる言霊は 三千世界の梅の花一度に開く時来り 須弥仙山に腰をかけ曲津の猛ぶ世の中を 神の御水火に言向けてミロクの御代を開かむと 厳の雄健び踏みたけび厳のころびを起しつつ 神の出口の口開き大本教の礎を 固め給ひし雄々しさよ賤が伏家の賤の女は 神の御声に目をさまし黒白も分ぬ暗の夜を 光眩き旭子の日の出の神代に還さむと 朝な夕なに命毛の御筆を執りて神言を 心一つに記しつつ二十七年が其間 唯一日の如くにて仕へ玉ひし言の葉は 国常立の大神の貴の御声と尊みて 集まり来る諸人は遠き近きの隔てなく 貴賤老幼おしなべて聖地をさして寄り来る 神の御稜威の赫灼に日々に栄えて大本は 朝日の豊栄昇るごと四方の国々照らし行く 変性男子と現れて錦の機の経糸を 仕組みて茲に七年の月日を重ねて待ち給ふ 時しもあれや三十余り一つの年の秋の頃 変性女子の生御魂神の教を蒙りて 穴太の郷を後にして変性男子の住所をば 訪ねし事の縁となり愈茲に緯糸の 機織姫と現はれて襷十字に掛巻も 畏き神の御教を稜威の仕組の新聞紙に 写して開く神霊界金言玉詞の神勅を 心も狭き智慧浅きパリサイ人が誤解して あらぬ言挙げなしければ清けき神の御教も 漸く雲に包まれて高天原の空暗く 黒白も分かぬ人心瑞の御霊は悲しみて 此雲霧を払はむと心痛むる折柄に 忽ち轟く雷の雲の上より落ち来り 身動きならぬ籠の鳥忠と囀る群雀 漸く声をひそめける瑞の御霊の神言もて パリサイ人や世の人を尊き神の御教に 眼を覚まさせ助けむと心を定めて病労の 身もたなしらに述べ立つる尊き神の御心 筆に写して松の世の栄えの本の物語 臥竜如来と現はれて松雲閣に横たはり 落葉を探す佐賀伊佐男(佐賀伊佐男)垢を清むる温泉の 湯浅清高両人を(湯浅清高)金剛童子や勢多迦の 二人の役になぞらへて倒れかかりし神柱 立直さむと真心の限りを尽し身を尽し 世人の覚醒を松村や外山豊二氏加藤明子(外山豊二) 藤津久子の筆の補助神代の巻の前宇城(加藤明子) 口に任せて信五郎なみなみならぬ並松の(藤津久子) 流れも深き物語空吹く風の颯々と(宇城信五郎) 心いそいそ言霊の車に乗りて勇み行く あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ (大正一一・五・一〇旧四・一四松村真澄録)
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(1784)
霊界物語 21_申_高春山のアルプス教 11 鬼娘 第一一章鬼娘〔六八五〕 白雪皚々として四面の山野、白布の褥を被つた如く満目蕭然として一点の塵を留めず、道問ふ人もあら風に向つて進む竜国別の宣伝使は、刻々に降り積る雪を踏み分け、漸く谷と谷との細き十字路頭に出でたり。 太陽は雪雲にしきられて光を中空に包み、東西南北の方向さへも判らなくなつて来た。日は漸く雪雲の西天に没したと見えて、何とはなしに薄暗く寂し。されど雪の光に四面は月夜の如く朦朧と光つてゐる。竜国別は五尺有余の雪に鎖され進退谷まつて、最早凍死せむばかりに困しみつつ、言霊の続く限り天津祝詞を奏上し、夜の明くるを待つの止むなき破目とはなりぬ。 僅か一里許りの山路に一日を費やしたるを見れば、如何に通路の困難なりしかを察するに余りあり。真白の雪の中より白き影、むくむくと膨れ出し、一塊の白き立姿となつて竜国別が佇む前に現はれ来り、物をも言はず冷たき手を伸ばして、竜国別の手を執り進んで行く。 竜国別は心の中に怪しみ乍ら、最早如何ともすること能はず、怪物に手を引かれたる儘に不安の念に駆られて進み行く。怪物は小山の麓の荒屋の中に、竜国別を誘うた。 竜国別『如何なる方か存じませぬが、雪に鎖され身動きもならず、困難の処へお出で下さいまして、斯様な安全地帯へ御案内下さいましたのは、誠に有難う存じます』 怪物『汝は蜈蚣姫の部下か、但は言依別命の部下なるか、返答次第で吾々にも一つの考へがあるから、敵か、味方か聞かして欲しい』 竜国別『さう云ふ貴方は、何と云ふ御婦人でございますか』 怪物『貴方の返答を聞くまで申すまい。吾々の敵ならば今此処で、汝を征伐せなければならず、もし味方ならば何処迄も助ける覚悟だよ。サア、バラモン教か三五教か、二つに一つの返答を聞きませう』 竜国別『仮令バラモン教でも、三五教でも誠の道に変りはありませぬ。私は誠の道の宣伝使です。三五教、バラモン教、又アルプス教と云ふやうな区分した名称に、余り重きを置いては居りませぬ』 怪物『それは誰しも同じこと。併し今汝の属して居る教派は、何教だと尋ねてゐるのだ』 竜国別『何教でも好いぢやありませぬか。兎角天下国家の為に最善を尽くすのが、宣伝使の天職だと心得てゐます』 怪物『アハヽヽヽ、どうも卑怯千万な男だこと。三五教なら三五教だと、キツパリ云つたら如何ですか』 と最後の一言に力を籠め雷の如く呶鳴り立てた。見ればその怪物は拳のやうな目玉をクルクルと廻転させてゐる。 竜国別『先程より妙なことを尋ねる怪物だと思つて居たら、いよいよ怪しき奴だ。其方は古狸であらうがなア。雪に鎖され食料に苦しみ、吾々が腰の弁当が欲しさにやつて来たのだらう。貴様に与へるのは易いこと乍ら、聊か此方が迷惑を致す。マア気の毒乍ら、此処を早く立去つたがよからうぞ。そんな請求は駄目だから』 怪物『お前は人を救ふ宣伝使ぢやないか。わが身を捨てて人を救はねばならぬ職務にあり乍ら、現在飢ゑたる吾々を見殺しに致し、自分さへ腹が膨れたら、それで好いのか、それでも人を救ふ宣伝使と思うて居るか。此世を誑る偽物奴、吾々を化物と申すが、汝こそ真の化物だ。人間の皮を被つては居るものの、汝が身魂は四足同然ぢや』 竜国別『オイ狐か、狸か知らないが、人に食物をねだるのに、そんな驕慢な言葉があるかい』 怪物『誰が貴様のやうな穢れた人間の所持する食物をくれいと云つたか。吾々は失礼乍ら乞食の真似は致さぬ。唯一つ欲しいものがある。それを頂戴すれば好いのだ』 竜国別『お前の欲しいと云ふのは一体何だ』 怪物『外でも無い。其の高い鼻の先を削つて貰ひたいのだ』 竜国別『此鼻は親から預かつた一つの貴重品だ。こればかりは遣ることは出来ない』 怪物『そんなら一つ交換して欲しいものがある。大きな物と、小さい物と交換するのだから、どちらかと云へば俺の方が余程損がゆくやうなものだが、申込んだ方から実物の二倍三倍を提供すると云ふことは、現代人間の不文律だから、俺の物は大きいが交換をして貰ひたい』 竜国別『八畳敷と交換して堪るものかい。歩くのに妨害になつて仕方が無いワ』 怪物『アハヽヽヽ、人間と云ふものは汚いものだな。直にそんなとこへ気を廻しよる。俺の要望するのは、そんなものぢやない。貴様は余り目が小さいから、向ふ先が見えぬ盲目同様の化物だ。それで俺の目と貴様の目と交換して呉れと云ふのだ』 竜国別『その様な大きな目を俺の面に当てやうものなら、一つで一杯になつて了ふワ』 怪物『一つ目小僧と云ふ化物があるそうだ。お前は恰度それに魂が適合して居る。霊肉一致だから交換してくれ』 竜国別『一つの目は余るぢやないか』 怪物『残り一つは後頭部へ付けたらよからう。さうすれば前も後ろも、よくわかつて調法だぞ。サア強圧的に眼玉を抜いて付け替へてやらうか』 竜国別『俺は人間様だ。此目で十分に用を足して居るのだ。此の交換は御免蒙る』 怪物『一旦言ひ出した事は後へ退かぬ某だ。そんなら仕方がない。お前の腐つた魂を受取らう』 竜国別『馬鹿云ふな。俺の魂は水晶玉だ。何処が腐つて居るか。大きな目を剥きよつて、それが見えぬのか』 怪物『貴様は高城山の山麓、松姫の館に於て四足になつた代物ぢやないか。俺の素性が判らぬ筈はあるまい』 竜国別『ハテナー、一体貴様は何者だ。俺の事をよく知つてるぢやないか』 怪物『アハヽヽヽ』 と笑ひ乍ら、被物をツツと脱げばこは如何に、擬ふ方なき松姫であつた。 竜国別『ヤア貴女は松姫さま、随分悪戯をなさいますな。本当に肝玉が転宅しかけましたよ』 怪物『オホヽヽヽ、私が松姫に見えますかな。それだから其の眼の玉を交換しようと云つたのだよ』 竜国別『そんならお前は何者だ』 怪物『雪の精から現はれた雪姫と云ふものだよ』 竜国別『雪にでも霊があるのかなア』 雪姫(怪物)『お前の心の空に真如の太陽が輝き渡らぬ限り、此の雪姫の謎は解けないよ。曇り切つた今日の空のやうな身魂では、可愛相に目も碌に見えまい』 竜国別『毬のやうな目を剥いて現はれて来るものだから、的切り狸のお化と思つたのだ。雪姫はそんなに種々に変化出来るものかなア』 雪姫『ゆき詰つて、行くに行かれぬ橡麺棒を振つた時は、お前でも大きな目を剥き出して困るだらうがなア。さうだからデカイきつい目に遇うたと言ふのだ。モー一つ御望みなら大きな目を剥いて、御覧に入れようか』 竜国別『いやモー沢山だ。めい惑千万、これで御遠慮申して置かう』 雪姫は、 雪姫『これでもかア』 と言ひ乍ら、蛇の目の傘のやうな、大きな目を剥いて見せる。竜国別は驚いて後に倒れる途端に、雪姫は忽ち白狐となつて一目散に山道を駆出し逃げて行く。 竜国別『アヽ偉いビツクリさせよつた。奴狐の野郎、彼奴の正体がモウ斯う判つた以上は別に怖れることもない。跡追つかけて往生させねば宣伝使の役が勤まらぬ。併しこの大雪の中、四足は歩きよからうが、人間は一寸困るワイ』 と独語し乍ら四辺を見れば六尺有余もタマつたと思ふ雪は、僅か一寸許り、狐の足形がついて居る。 竜国別は手を組んでドツカと坐り、 竜国別『アヽ何の事だ、狐の奴、俺を魅み居つたなア。一日骨を折つて深い雪路を進んだ積りだつたが、矢張元の岩蔭だつたワイ。俺はどうかして居ると見える。サアこれから一つ天津祝詞を奏上し、大神の御神力を頂戴して前進することにしよう。思はぬ所で思はぬ夢を見たものだ。どうやら夜が明けたらしい。此の狐の足跡を踏むで行けば、道路が分るだらう』 と薄雪に印した足跡を頼りにドシドシ進み行く。 七八丁許り前進したと思ふ時、一頭の猪が現はれ前を横ぎる。 竜国別『ハテ不思議だ。狐の足跡があると思へば又猪だ。今度目は本当の狸の野郎に出会すのかも知れないぞ』 と佇む折しも、何処ともなく空を切つてヒユウと唸り乍ら、頭上を掠めて一本の流れ矢が猪の面部に発止と突立つ。 猪は狼狽へ騒いで転げ廻り、終に一つの禿山を越えて、向ふの谷に姿を隠したり。 竜国別『アヽ可愛相なことだ。鳥、獣でも助けるのが吾々の役だ。これや神様が吾々の気を惹いて御座るのかも知れない。之を見捨てて行つては大変だ。幸ひ薄雪に残つた足跡を索ねて、猪のお宿を探し、鎮魂を施して助けてやらねばならぬ。又彼の矢を抜いてやらねば到底助かるまい。何は兎もあれこれを救ふが第一だ』 と禿山をトントン登り進み行く。 此処は大谷山の山麓、岩ケ谷といふ芒の生ひ茂つた、人の行つたことのないやうな草原である。彼方此方に落ちたる血糊を索ねて進んで行くと、其処に一つの岩穴があり、以前の猪は既に縡切れてゐる。 竜国別『ハヽア此処が猪の棲処だつたなア。それでも途中で死なずに、自分の棲処まで帰つて倒れたのはまだしも、猪に取つては幸福だ。何処ぞ此処に厚く葬つてやらう』 と手頃の石を拾つて、土をカチカチ掘り初める。 岩穴の中より二十五六の女、角を生やして莞爾々々し乍ら出で来り、矢庭に猪の屍骸に取つき血を吸ひ初める。竜国別は黙つて此様子を眺めて居ると鬼娘は、美味さうにチウチウと音をさせて全身の血をスツカリと吸つて了ひ、腹を両手で撫で乍ら竜国別の立つて居るのに気がついたと見え、目を丸くし、口を尖らし、 女(お光)『ヤアお前は竜若ぢやないか』 と睨めつける物すごさに、竜国別は、 竜国別『オイ、お前はお光ぢやないか。お前の両親は行方が知れぬので毎日日日心配して居つたよ。ウラナイ教の高城山の館へも幾度か参拝して来たが、如何しても知れないので、出た日を命日と定めて立派な葬式を営まれたが、其の時に俺も祭官に列したことがある。サアサアお前は早く親の家へ帰れ。こんな処で鬼娘になつては堪らないぞ。高春山に俺は征伐に行くものだが、これから伴れて行つてやるのは易いけれど、女と同道は許されないから、これから早く家へ帰つたら如何だ』 お光『コレ竜若さん、私は祖母さんの眉毛を剃つて居ました時、誤つて顔を斬り、沢山の血が出たので、驚いて嘗めて見たところ、それから生血の味をおぼえて、人間や獣の血が吸ひたくなり、到頭こんなに頭に角が生えて鬼娘になつて了つたのだ。斯んな態して如何して我家へ帰れませう。お前さんも私の所在を知つた以上は、村に帰つて喋るであらう。さうすれば私は最早身の終りだから、自分の肉体保護の上から、気の毒乍らお前の生命を貰ふのだ。覚悟を為され』 竜国別『そんな無茶な事を云ふない。チツとはお前も恩義と云ふことを知つて居るだらう。此の小父さんが貴様の子供の時には、負うたり、抱いたり、小便をさしてやつたり、うんこの掃除まで世話をやいてやつたのを覚えて居るだらう。ちつとは其の義理ででも、俺を喰ふなんて云ふことが出来るものか。恩を知らぬものは、人間ぢやないぞ。烏に反哺の孝あり、犬は三日飼うて貰つた主人を、一生忘れぬと云ふぢやないか』 お光『そんな事が解つて居つて、如何して鬼娘になれますか。世の中の義理や、人情を構つて居つたら、鬼の修行は出来るものぢやない。サア小父さん、此処で逢うたがお前の運の尽きだ。アヽ美味さうな血の香がして居る。済まないけれどよばれませう』 竜国別『コラコラ俺は今迄の竜若とは違ふぞ。神力無限の三五教の宣伝使、言依別命様の御覚え芽出度き竜国別命ぢや。馬鹿な事を致すと地獄のどん底へ落されて、鬼の成敗に遇はねばならぬぞ。未来を怖れぬか』 お光『ホヽヽヽヽ、鬼娘が地獄の鬼が恐くて、如何なりませう。これでも地獄へ行つたら、立派な鬼娘が来たと云つて、持囃されるのだ。私は鬼になるのが願望だ。お前の生血を吸へば、もう一層立派な鬼娘になれる。猪の生血は最早呑み飽いたから』 竜国別『如何しても俺を喰ふと云ふのか。イヤ血を吸はうと申すのか』 お光『如何しても吸はねば私の身体が燃えて来る。私も苦しいから、義理、人情を省みる遑がない。併しあんまり御世話になつたのだから、何処とはなしに気の毒なやうな感じがする。ちつとばかり吸うてこらへて上げませう』 と手頃の石を以て、竜国別の額をカツカツと打つた。竜国別は気が遠くなり、其の場に倒れた。 お光『アヽ気の毒な小父さんだ。沢山呑むと生命が危いから、一二升許り呑んでこらへて上げよう』 と傷口に口を当て、チウチウと呑み始めた。 お光『アヽ如何したものか、此の血はエグイ。なかなか苦味がある。矢張身魂が曇つて居ると見えて、流れる血まで味が悪いのかなア。サアサア小父さん、モーこらへて上げよう。起きなさい』 と揺り起されて竜国別は吾に帰り、 竜国別『アヽなんだか気分がスイツとした。俄に身体が軽くなり、目までハツキリして来たやうだ』 お光『お前の血管を通つて居る悪霊を薩張吸うて上げたのだから、モーお前さんは結構な赤い誠の血計りになつて了つたのだよ。此上は最早私の手に合はぬ。お前さんは愈大和魂の生粋になつて了つた。併し此事を誰にも話してはなりませぬぞや。話すが最後千里向かふからでも私の耳は聞えるから、宙を駆つて行き、お前の素首を引抜くから、其の覚悟でゐて下さいや。此処で殺すのは易いけれど、お前に助けられたと云ふ弱味があるので、如何に悪党な鬼娘でも如何する事も出来ない。併し私と今約束して、それを破れば、初めてお前さんに破約の罪が出来たのだから、其時は堂々と生命を取りに行くから、其の覚悟で帰つて下さい。これで高春山の征伐も立派に出来るだらう。人間万事塞翁の馬だ。私に酷い目に遇はされて、其結果誠の手柄を現はす様になるので、謂はば私はお前さんの守護神のやうなものだ。感謝しなさい』 竜国別『妙な理屈もあるものだなア。頭をこつかれ、血を吸はれて感謝するとは、開闢以来聞いたことがない。何処で斯うも勘定が違つたのだらう』 お光『定つた事だ。処変れば品変る、お家が変れば風変る、郷に入つては郷に随へだ。世界には賭博のアラを取つて国の会計を助け、国民が安楽に暮して居る国さへもあるぢやないか。また一方の国では賭博を罪悪としてゐるやうなもので、社会が違へば善悪の標準も違ふのだ。併し何処へ行つても約束を破ると云ふ事は罪悪だぞえ。天照大神様と素盞嗚尊様が、天の安の河原を中に置いて誓約を遊ばしたではないか。世の中には現界、幽界、神界の区別なく、約束を守ると云ふことが最も大切なことだ。之を破るのは罪悪の骨頂だ。お前も私の所在を誰にも言はないと云ふことを誓約なされ。さうでなければ、今此処でお前の生命を奪つて了ふ』 竜国別『なに、お前達に生命を奪られるやうな俺では無いが、お前の生命を奪つた所で仕方がない。つまり俺が罪人になるだけだから、此処はうまく妥協して互に言はないと云ふ約束をしよう』 お光『そんなら助けて上げよう。トツトとお帰りなさい。屹度言ひませぬな』 竜国別『ウン、俺も男だ。屹度約束を守るから安心して呉れ』 お光『左様なら』 と云つた限り、岩窟の中深く影を没したり。 竜国別は額の傷を撫で乍ら、元来し路へ引返し、それより左に取つて枯草茂る小径を悄々と上り行く。 (大正一一・五・二〇旧四・二四外山豊二録)
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霊界物語 22_酉_鷹鳥山の鷹鳥姫 01 玉騒疑 第一章玉騒疑〔六九三〕 天と地との元津御祖、国治立大神は、醜の曲津の猛びに依りて是非なく豊国姫尊と共に、独身神となりまして御身を隠し給ひ、茲に大国治立尊の御子と坐します神伊弉諾大神、神伊弉冊大神の二柱、天津大神の御言を畏み、海月なす漂へる国を造り固め成さむとして、神勅を奉じ、天の浮橋に立ち、泥水漂ふ豊葦原の瑞穂国を、天の瓊矛を以て、シオコヲロ、コヲロに掻き鳴し給ひ、滴る矛の雫より成りしてふ自転倒島の天教山に下り立ち、天の御柱、国の御柱を搗き固め、撞の御柱を左右りより廻り会ひ再び豊葦原の中津国を、神代の本津国に復さむと、木花姫命、日の出神と言議り給ひて、心を協せ力を尽し、神国成就の為に竭し給ひしが、天足彦、胞場姫の霊より現はれ出でたる醜の曲津見、再び処を得て、縦横無尽に暴れ狂ひ、八百万の神人は又も心捩けて、あらぬ方にと赴きつ、復び世は常闇となりにけり。 茲に天照大御神、神素盞嗚大神は伊弉諾命の御子と現れまして天津神、国津神、八百万の神人に誠の道を説き諭し給ひしが、世は日に月に穢れ行きて、畔放ち溝埋め、樋放ち頻蒔き串差し、生剥ぎ逆剥ぎ、屎戸許々太久の罪、天地に充満し、生膚断、死膚断、白人胡久美、己が母犯せる罪、己が子犯せる罪、母と子と犯せる罪、子と母と犯せる罪、畜犯せる罪、昆虫の災、高津神の災、高津鳥の災、畜殪し蠱物せる罪、許々太久の罪出で来り、世は益々暗黒の雲に閉され黒白も分かずなり行きたれば、素盞嗚大神は葦原国を治め給ふ術もなく日夜に御心を砕かせ給ひ、泣き伊佐知給へば、茲に神伊弉諾命、天より降り給ひて、素盞嗚尊にその故由を問はせ給ひ、素盞嗚尊は地上の罪悪を一身に引受け、部下の神々又は八岐大蛇醜神の曲を隠し、我が一柱の言心行悪しき為なりと答へ給へば、伊弉諾大神は怒らせ給ひ、 伊弉諾大神『ここに汝は海原を知食すべき資格なければ、母の国に臻りませ』 と厳かに言宣り給へば、素盞嗚尊は姉の大神に事の由を委細に申し上げむと、高天原に上り給ふ。此時山川草木を守護せる神々驚きて動揺し、世はますます暗黒となりければ、姉大神は弟神に黒き心ありと言挙げし給ひ、茲に天の安河を中に置き、天の真奈井に御禊して、厳之御魂、瑞之御魂の証明し給ひ、姉大神は変性男子の御霊、弟神は変性女子の御霊なる事を宣り分け給ひぬ。 素盞嗚尊に従ひませる八十猛の神々は大に怒りて、 八十猛神『吾が仕へ奉る素盞嗚大神は清明無垢の瑞霊に坐しませり。然るに何を以て吾が大神に対し、黒き心ありと宣らせ給ひしか』 と怒り狂ひて、遂に姉大神をして天の岩戸に隠れ給ふの已むなきに到らしめたのは、実に素盞嗚尊の為に惜しむべき事である。 茲に素盞嗚大神はいよいよ千座の置戸を負ひ給ひ、吾が治せる国を姉大神に奉り、高天原を下りて、葦原の中津国に騒れる曲津神を言向け和し、八岐大蛇や醜狐、曲鬼、醜女、探女の霊を清め、誠の道に救ひ、完全無欠、至善至美なるミロクの神政を樹立せむとし、親ら漂浪の旅を続かせ給ふ事となつた。 大洪水以前はヱルサレムを中心として神業を開始し給ひしが、茲に国治立尊の分霊国武彦と現はれて、自転倒島に下りまし、神素盞嗚大神と共に五六七神政の基礎を築かせ給ふ事となつた。それより自転倒島は、いよいよ世界統一の神業地と定まつた。 顕国玉の精より現はれ出でたる如意宝珠を始め、黄金の玉、紫の玉は、神界における三種の神宝として、最も貴重なる物とせられて居る。此三つの玉を称して瑞の御霊と云ふ。此玉の納まる国は、豊葦原の瑞穂国を統一すべき神憲、惟神に備はつて居るのである。 茲に国治立命は天教山を出入口となし、豊国姫神は鳴門を出入口として、地上の経綸に任じ給ひ、永く世に隠れて、五六七神政成就の時機を待たせ給ひぬ。素盞嗚尊は其分霊言霊別命を地中に隠し、少彦名命として神業に参加せしめ給ひしが、今又言依別命と現はして、三種の神宝を保護せしめ給ふ事となつた。言依別命の神業に依りて、三種の神宝は錦の宮に納まり、いよいよ神政成就に着手し給はむとする時、国治立命と豊国姫命の命に依り、未だ時機尚早なれば、三千世界一度に開く梅の花の春を待ちて三箇の神宝を世に現はすべしとありければ、言依別命は私かに神命を奉じて、自転倒島の或地点に深く隠し給ひし御神業の由来を本巻に於て口述せむとす。有形にして無形、無形にして有形、無声にして有声、有声にして無声なる神変不可思議の神宝なれば、凡眼を以て見る事能はざるは固よりなり。 凩荒ぶ冬の夜の月の光を浴びながら 心にかかる黒雲の晴るる隙なき黒姫が 言依別命より言ひつけられて人知れず 納め置きたる黄金の玉の在処を調べむと 丑満時に起き出でて独りスゴスゴ四尾山 麓の一つ松が根に匿まひ置きし石櫃の そつと蓋をば開き見て思はずドツと打倒れ 吾責任も玉無しの藻脱の殻の悲しさに 如何はせむと起き直り思案に暮れて居たりしが 忽ち人の足音に気を取直し立ちあがり 木蔭を索めて帰り行く。 窺ひ寄つたる二人の男、松の根元に立寄りて、 甲(テーリスタン)『ヤア黒姫さまの様子が怪しいと思うて跟いて来たが、大方これは蜈蚣姫が占領して居つた黄金の玉を、言依別命から信任を得て、黒姫が隠して置きよつたのだなア』 乙(カーリンス)『併し黒姫さまは蓋を開けるが早いか吃驚して尻餅を搗いたぢやないか。大方紛失して居たのぢやあるまいかな。そんな事だつたら、黒姫もサツパリ駄目だがなア』 甲(テーリスタン)『あんまりの玉の光に驚いて、尻餅を搗いたのだらう、それに定つて居るよ。誰一人こんな所に隠して置いたつて、探知する者がないからな。肝腎の紫姫さまでさへも御存じない位だから………』 乙(カーリンス)『イヤどうも怪しい黒姫の姿、影が薄い様だ。一つそつと尋ねて見ようぢやないか。グヅグヅして居ると、姿が分らなくなつて了ふよ』 甲(テーリスタン)『サ、早く往かう。最早姿が見えなくなつたぢやないか』 とキヨロキヨロ其処らを見廻して居る。忽ち下手の溜池にバサリと人の飛び込む水音、二人は驚いて池の辺に駆けつけ見れば、何の影もなく、唯水面を波が円を描いて揺らいで居る。月の影さへも砕けて、串団子の様に長く重なり動いて居る。 甲(テーリスタン)『ヤア此処に履物が一足脱いである。こりやてつきり黒姫さまのだ。ヤア大変だ、カーリンス、貴様は早く帰つて言依別様に申し上げ、大勢の信者を引率して救援隊を繰出して呉れ。俺はそれ迄此処に保護して居る』 カーリンス『馬鹿言ふない。グヅグヅして居る間に縡れて了ふぢやないか』 と云ふより早く、カーリンスは、薄氷の張りかけた池に、赤裸となつて飛び込み、水を潜つて黒姫を引抱へ、漸くにして救ひあげた。黒姫は最早虫の息となつて居る。 カーリンス『オイ、テーリスタン、誰にも此奴ア、様子を聞く迄極秘にして置かなくては、黒姫さまの為にはよくなからうぞ。兎も角俺も寒くて体が凍てさうだ。そつと此処で火を焚いて黒姫様の体を温めて息を吹き返さすのが第一だ。オイ貴様早く、そつと帰つて二人の着物を……何でも良いから持つて来て呉れ』 テーリスタン『ヨシ合点だツ』 とテーリスタンは黒姫の館へ駆けつけ、そつと衣服を二人前、小脇に抱い込み帰つて来た。其間に黒姫は息を吹き返して居た。テーリスタンは息を喘ませながら、 テーリスタン『サア漸く持つて来た。早く着て呉れ。寒かつただらう』 カーリンス『アヽそれは御苦労だつた。サア黒姫さま、兎も角これを着て下さい』 黒姫『お前はテー、カーの両人ぢやないか。なぜ妾の折角の投身を邪魔なさるのだい。どこまでも妾を苦しめる心算かい』 カーリンス『コレ黒姫さま、チツと確りなさらぬか。お前さまは精神に異状を来して居るのだらう。生命を助けて貰つて不足を云ふ者が何処にありますか。なア、テーリスタン。御苦労だつた位云つても、あんまり損はいくまいに………こんな怪体な事を聞いたことはないのう』 テーリスタン『コレ黒姫さま、お前さまが覚悟で陥つたのか、過つて陥つたのか………そら知らぬが、吾々二人は生命を的に、此寒いのにお前さまの生命を助けたのだ。なぜそんな不足さうな事を言ふのだい』 黒姫『妾はどうしても生きて居られぬ理由があるのだよ。どうぞ死なしてお呉れ』 と又もや駆け出さむとするを、カーリンスは大手を拡げ、 カーリンス『待つた待つた、死んで花実が咲く例しがない。仮令どんな事があつても、死んで言訳が立つものか。却て神界に於て薄志弱行者として冥罰を受けねばなるまい』 黒姫『何と云つても死なねばならぬ理由がある。どうぞ助けてお呉れ』 カーリンス『助けて上げたぢやないか』 黒姫『助けると云ふのは、妾の自由に為して呉れと云ふのだよ』 カーリンス『自由にするとは、そりや又どうすると云ふのだい。一日でも生きよう生きようとするのが人間の本能だ。死ぬのを助かるとはチツと道理に合はない。そこまでお前さまも覚悟をした以上は、どんな活動でも出来るだらう。生命を的に神界の為に活動し今迄の罪を贖ひし上、神様のお召しに依つて国替するのが本当だよ』 テーリスタン『此位な道理の分らぬ貴女ぢやないが、何故又さう分らぬのだらうかナア』 黒姫『何も彼もサツパリ分らぬ様になつて来ましたよ』 テーリスタン『お前さま、言依別命様より保管を命ぜられた、黄金の玉を紛失したのだらう』 黒姫『何ツ、それが如何してお前に分つたのか』 テーリスタン『私は貴女がチヨコチヨコ夜分になると、宅を出て往くので、此奴ア不思議だと、二人が何時も気を付けて居つたのだ。さうすると、四尾山の一本松の麓へ行つて居らつしやる。今日も今日とて不思議で堪らず、来て見れば、お前さまは松の木の根元で、唐櫃を開いて腰を抜かしなさつただらう。てつきり黄金の玉を誰かに盗まれ、其責を負うて自殺しようとしたのだらうがナ』 黒姫『何ツ、お前は何時も妾の行動を考へて居たのか。油断のならぬ男だ。そんなら其玉の盗賊はお前達両人に間違なからう……サア有態に仰有れ』 テーリスタン『これはしたり、黒姫さま。それは何と云ふ無理を仰有るのだ。能う考へて御覧なさい。吾々両人が其玉を仮りに盗んだとすれば、どうしてお前さまを助けるものかい。池へ陥つたのを幸に、素知らぬ顔をして居るぢやないか』 黒姫『兎も角、あの松の木の下へは、お前達二人、何時も来ると云ふぢやないか。玉の在処を知つた者が盗らいで誰が盗らう。何と云つても嫌疑のかかるのは当然ぢや。妾もあの玉に就ては生命懸に保護をして居るのだから、お前の生命を奪つてでも白状させねば置かぬのだよ』 とカーリンスの胸倉をグツと握り、首を締め、 黒姫『サア、カーリンス、玉の在処を白状しなさい』 テーリスタン『コレコレ黒姫さま、何をなさいます。あんまりぢや御座いませぬか』 黒姫『エー喧しい。お前も同類だ。白状せぬと、カーリンスの様に揉み潰して了はうか。二人が共謀して居るのだから、見せしめに此奴の息の根を止め、次にお前の番だから、其処一寸も動くこたアならぬぞえ』 カーリンス『アヽ苦しい苦しい。オイ、テ、テ、テーリスタン、婆アさまを退けて呉れ、息がト、ト止まる』 と声も絶え絶えに叫んで居る。テーリスタンは已むを得ず、黒姫の腰帯をグツと握り、力に任せて後へ引いた。黒姫は夜叉の如く、声も荒らかに、 黒姫『モウ此上は破れかぶれだ。汝等両人白状すれば可し、白状致さねば冥途の道伴にしてやらう』 と死物狂ひに両人に向つて飛び付き来る其の凄じさ。二人は、 テーリスタン、カーリンス『黒姫さま、待つた待つた。私ぢやない。さう疑はれては大変な迷惑を致しますよ』 黒姫『ナニ、貴様は高春山で悪い事ばかりやつて居た奴だから、また病気が再発したのだ。改心したと見せかけ、鷹依姫と諜し合はして、此玉を盗り、尚其上如意宝珠の玉を持つて逃げる計画に違ない。アヽさうなると、妾も今死ぬのは早い。お前達の計画をスツカリと素破抜いて、根底から覆へさねばならないのだ。サア如何ぢや、何処へ隠した。早く言はぬかい』 テー、カー両人は泣声になつて、 テーリスタン、カーリンス『モシモシ黒姫さま、それはあまり残酷ぢやありませぬか』 黒姫『ナニ、どちらが残酷だ。妾に是れ丈の失敗をさせて置いて、白々しく、知らぬ存ぜぬの一点張で貫き通さうと思つても、此黒姫が黒い眼でチヤンと睨んだら間違はないのだよ。斯う云ふ所で愚図々々して居ると人に見付かつては大変だ。サア妾の館までそつと出て来なさい。ユツクリと話をして互に打解けて、玉の在処をアツサリ聞かして貰ひませう。さうすれば妾も結構なり、お前も言依別命様にとりなして幹部に入れてあげる。何時までも妾の宅に門番をして居つても詰らぬからナア……』 テ、カ(テーリスタン、カーリンス)『ハイ、そんなら御言葉に従ひ、お宅へ参りませう』 黒姫『ア、それでヤツと安心した。素直に在処を白状するのだよ』 テーリスタン、カーリンス『ハテ、困つた事だなア』 と二人は思案に暮れてゐる。 (大正一一・五・二四旧四・二八松村真澄録)
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(1815)
霊界物語 22_酉_鷹鳥山の鷹鳥姫 20 三の魂 第二〇章三の魂〔七一二〕 時置師神は、神の仕組の時津風、吹き渡る初夏の青葉の薫りを身に浴び乍ら窓外を眺め居る。時しも森の木蔭より玉能姫は初稚姫の手を携へ、二人の荒男と共に欣然として帰り来る。杢助は窓を引き開け拍手して之を迎へて居る。二三日前より此家に訪ね来りし高姫、国依別は、杢助と教理を闘はし乍ら此処に逗留して居た。 高姫『杢助さま、貴方は今東の窓から手を拍ちましたが、日天様は西の方へ廻つて居られますよ』 杢助『いや、今此処へ日天様や、月天様が御いでになりましたから』 国依別『国依別には日天月天の往かぬ事を仰有いますな』 と云ひながら窓を覗き、 国依別『ヤア、お帰りになりました。杢助さま、お目出度う、今迄御心配でしたらう』 杢助『ハイ、杢助も一寸心配して居りましたよ』 高姫は妙な顔しながら、 高姫『貴方は口では平気で言つて居らつしやるが、矢張り初稚姫様の事が気に懸ると見えますなア』 杢助『別に初稚姫様の事に就ては、神様がついて御座るから心配は致しませぬが、大切な御用を巧く勤めあげたか知らぬと思つて居つたので……然しあの顔色で見れば、巧く御用が出来たらしいですよ』 高姫『大切の御用とは………それや又どんな事で御座いますか。高姫にも聞かして下さいな』 杢助はニコニコ笑ひながら、 杢助『ハイ言依別命様から大切な秘密の御用を……玉能姫、初稚姫の御両人が承はりましたのですよ』 高姫『妾の様な日の出神の生宮を差措き、あの様な子供や若彦の女房に大切な御用を仰せ付けるとは……言依別も些と聞えませぬ。それだから人を使ふ目が無いと言ふのだ。困つたハイカラの教主だなア』 杢助は、 杢助『アハヽヽヽ』 と嬉しさうに笑ふ。国依別は門の戸を押し開き、丁寧に出迎へ、 国依別『皆さま、御苦労で御座いました。無事に納まりましたかな』 二人は顔に笑を湛へながら一言も発せず、丁寧に腰を屈め、二人の男と共に欣々と這入つて来た。杢助は見るより、 杢助『初稚姫様、玉能姫様、谷丸さま、滝公さま、御苦労で御座いました』 谷丸『私は言依別命様より佐田彦の宣伝使と名を賜はりました。滝公さまは波留彦の宣伝使と名を賜はりましたから、何卒今後は、其お心組で呼んで下さい。お節………いやいや玉能姫様、初稚姫様のお伴を致しまして神島………ではない、神様の御用に参つて来ました。いやもう大変な結構な事で御座いましたわ』 杢助『何は兎もあれ、神様に御礼を申し上げ、お祝の御神酒を頂戴する事に致しませう』 高姫『アヽ、それは結構で御座いますな。然し如何な御用で御出でになさつたのか、高姫にも様子を聞かして下さいませ。これ玉能姫さま』 玉能姫『此事ばかりは三十五万年の間、申し上げる事は出来ませぬ。何れ未来でお分りになるでせう』 高姫『何と……マア遠い……気の長い事だなア』 杢助『何処の地点に納めたと云ふ事は申し上げ難いが、実際は貴方の一旦呑んで居た金剛不壊の如意宝珠と紫の宝玉が三五教の教主の手に返り、其御用を仰せ付かつて或る霊地へ埋蔵の御用に行つたのですよ。黄金の玉は言依別の教主自ら何処かの霊地へ埋蔵されたさうだ。これで三つの御玉が揃ひまして……高姫さま、お喜びなさいませ』 高姫、怪訝な顔して舌を捲き目を剥き、 高姫『ヘエ、ケヽヽヽ結構ですなア』 と云つたきり、嬉しい様な、悲しい様な、不興くさい様な顔して俯向く。国依別、手を拍つて笑ひ、 国依別『ハヽヽヽヽ、日の出神の生宮も薩張り往生遊ばしたか、誠にお気の毒の至り。然し乍ら矢張り高姫さまも喜ばねばなりますまい。もう之で貴方の副守護神の断念が出来るでせう。是から一意専心、教主の意見に従つて、神界の御用をなさいませ』 高姫『ハイ、如何も神様は皮肉な事をなさいますな。寝ても醒めても玉の行方を探し、神政成就の御用を勤めあげむと、千騎一騎の活動を致して居る此高姫をアフンと致さして、思ひも寄らぬ人達に、肝腎な一厘の経綸を吩咐けるとは……妙な神様も……いや教主もあるものだ。教主のきやうは獣扁に王さまだらう、オホヽヽヽヽ』 佐田彦『是は聞き捨ならぬ高姫の言葉、その脱線振りは何事で御座るか。今迄の谷丸ならば黙つて居るが、最早教主より命ぜられたる宣伝使だ。宣り直しなさねば承知せぬ』 波留彦『佐田彦宣伝使の言はれた通り、速に宣り直しなさるが宜からうと、波留彦は思ひます』 高姫『高姫鉄道の終点、アフンの駅に着いたのだから、脱線の余地も無く、のり直し様もなく、乗り替へも何の駅もないぢやありませぬか。オホヽヽヽヽ』 ○ 因に言依別命は、一旦高熊山の霊地に神秘の経綸を遂行し、聖地に帰りて神業に参じ、錦の宮の神司玉照彦命、玉照姫命の神示を海外にまで弘布し、八岐大蛇の征服に従事する数多の神人を教養し、其名を天下に轟かした神代の英雄神である。また杢助は元の時置師神と現はれ、聖地の八尋殿に於て教主を助け、初稚姫と共に忠実に奉仕し、三五教の柱石と呼ばれる事となつた。玉能姫は生田の森に止り、或神命を帯びて稚桜姫命の神霊を祀り、五六七神政の魁を勤めた。 若彦は自転倒島全体を巡歴し、終に神界の命によりて玉能姫と共に神霊に奉仕する事となつた。国依別は兄の真浦が波斯の国へ出で行きしを以て、已むを得ず宇都山郷の武志の宮に仕へて神教を伝へ、父の松鷹彦に孝養を尽した。 高姫は聖地にあつて錦の宮に仕へつつありしが、黒姫のあとを追うて海外に渡り、真正の日の出神に出会し、初めて自己の守護神の素性を悟り、悔い改めて大車輪の活動を続けた。佐田彦、波留彦は言依別命の膝下にあつて、神業を輔佐することとなつた。 ○ 大正壬戌の年卯月の二十八日に 二十二人の生魂三つの御玉の隠し所 述べ終りたる今日の日は楽しき神世を五六七殿 日の神、月の大御神天照皇大神や 此世の祖神と現れませる国常立之大御神 豊国主の大御神大本教を守ります 百千万の神々の貴の御前に飛び降る 神の使の霊鷹は生田の森や再度山の 峰の尾の上の御仕組鷹鳥姫の改心の 瑞祥祝ふ其為めに三度舞ひ来る鷹津神 さしもに広き殿内を右や左と翔び交ひて 画竜の額に翼休め仮設劇場の梁に 悠々翼を休めたる今日の生日の足日こそ 瑞の御魂の生れたる生日に因みて七百と 十二の章も面白く松雲閣の奥の間に 今日は珍し身を起し神の教を敷島の 筆者を烟に巻き乍ら遠き神代の物語 今に写して眺むるも少しも変らぬ言の葉の 栄ゆる御代を松村氏天津御空も海原も 心真澄の玉鏡海の内外の隔てなく 諸越山も乗り越えて豊九二主の分霊 瑞の神徳天地に輝く時も北村の 空澄み渡り隆々と光り普き神の道 亜細亜、亜弗利加、欧羅巴亜米利加藤く高砂の 島の果まで説き明す近藤の霊界物語 道も貞か二成り行きて山の尾の上や野の末も 教の花の馥郁と薫も床しき佐賀の奥 神の伊佐男は遠近に秀妻の国を初めとし 自転倒島の中心地野山も青く茂りつつ 神代を祝ふ今日の空神世の秘密洩らさじと 御空を隠す雲の戸を開いて此処に松の雲 松雲閣の奥の室で初夏の風をばあびながら 二十二巻の物語目出たくここに述べをはる あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ (大正一一・五・二八旧五・二北村隆光録) (昭和一〇・六・五王仁校正)
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(1891)
霊界物語 26_丑_麻邇宝珠が錦の宮に奉納 06 大神宣 第六章大神宣〔七七一〕 素盞嗚尊は儼然として立上り、荘重なる口調を以て歌はせ給うた。 素尊『豊葦原の国中に八岐大蛇や醜狐 曲鬼共のはびこりて山の尾の上や川の瀬を 醜の魔風に汚しつつ天の下なる民草を 苦め悩ます此惨状を見るに見兼ねて瑞御魂 神素盞嗚と現はれて八十の猛の神司 八人乙女や貴の子を四方に遣はし三五の 神の教を宣べ伝へ山川草木鳥獣 虫族までも言霊の清き御水火に助けむと ウブスナ山の斎苑館後に残して八洲国 彷徨ふ折りしも自転倒の大和島根の中心地 綾の高天の聖域に此世の根元と現れませる 国治立大神の国武彦と世を忍び 隠れいますぞ尊けれ此世を救ふ厳御霊 瑞の御霊と相並び天地の神に三五の 教を開き天が下四方の木草に至る迄 安息と生命を永久に賜はむ為に朝夕を 心配らせ給ひつつ三つの御玉の神宝 高天原に永久に鎮まりまして又もはや 現はれ給ふ麻邇の玉五づの御玉と照り映えて 三五の月の影清く埴安彦や埴安姫の 神の命と現れませる神の御霊も今茲に いよいよ清く玉照彦の貴の命や玉照姫の 貴の命の御前に納まる世とはなりにけり 瑞の御霊と現れませる三五教の神司 言霊幸はふ言依別の神の命は皇神の 錦の機の経綸を心の底に秘めおきて 松の神世の来る迄浮きつ沈みつ世を忍び 深遠微妙の神策を堅磐常磐にたてませよ 神素盞嗚の我が身魂八洲の国に蟠まる 八岐大蛇を言向けて高天原を治しめす 天照します大神の御許に到り復命 仕へまつらむそれ迄は蠑螈蚯蚓と身を潜め 木の葉の下をかいくぐり花咲く春を待ちつつも 完全に委曲に松の世の尊き仕組を成し遂げむ 国武彦大神よ汝が命も今暫し 深山の奥の時鳥姿隠して長年の 憂目を忍びやがて来む松の神世の神政を 心静かに待たせまし竜宮城より現はれし 五つの麻邇の此玉は綾の聖地に永久に 鎮まりまして桶伏の山に匂へる蓮華台 天火水地と結びたる薫りも高き梅の花 木花姫の生御魂三十三相に身を現じ 世人洽く救はむと流す涙は和知の川 流れ流れて由良の海救ひの船に帆をあげて 尽す誠の一つ島秋山彦の真心や 言依別が犠牲の清き心を永久に 五六七の神世の礎と神の定めし厳御魂 実に尊さの限りなりあゝ惟神々々 御霊幸はへましまして国治立大神の 厳の御霊は今暫し四尾の山の奥深く 国武彦と現はれて草の片葉に身を隠し 錦の宮にあれませる玉照彦や姫神を 表に立てて言依別の神の命を司とし 深遠微妙の神界の仕組の業に仕へませ 朝日は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも 仮令大地は沈むとも厳と瑞との此仕組 千代も八千代も永久に変らざらまし天地の 初発し時ゆ定まりし万古不易の真理なり 万古不易の真理なり此世を造りし神直日 心も広き大直日只何事も神直日 大直日にと見直して天地百の神人を 救はむ為の我が聖苦思ひは同じ国治立の 神の尊の御心深くも察し奉る 深くも感謝し奉る』 と歌ひ終り、一同に微笑を与へて、奥の間に姿をかくさせ給うた。 国武彦命は神素盞嗚尊の御後姿を見送り、手を合せ感謝の意を表し、終つて一同の前に立ち、稍悲調を帯びた声音を張り上げ歌ひ給うた。 国武彦『天の下なる国土を汗と涙の滝水に 造り固めて清めたる豊葦原の国の祖 国治立の厳御霊御稜威も高き貴の宮 高天原に現はれて百の神等人草の 守らむ道を宣り伝へ神の祭を詳細に 布き拡めたる元津祖天足の彦や胞場姫の 捻け曲れる身魂より生れ出でたる曲身魂 八岐大蛇や醜狐醜女探女や曲鬼の 怪しの雲に包まれてさも美はしき国土も 汚れ果てたる泥水の溢れ漂ふ世となりぬ 醜の曲霊に憑かれたる常世の彦や常世姫 千五百万の神々の罪や穢を身に負ひて 木花姫の守ります天教山の火口より 身を躍らして荒金の地の底迄身を忍び 根底の国を隈もなくさ迷ひ巡り村肝の 心を尽し身を尽し造り固めて天教の 山の火口に再現し野立の彦と名を変へて 洽く国内を駆け巡り豊国姫の神御霊 野立の姫と現はれてヒマラヤ山を本拠とし 身を忍びつつ四方の国夫婦の水火を合せつつ 世界隈なく検めて再び来る松の世の 其礎を固めむと自転倒島の中心地 綾の高天と聞えたる桶伏山の片ほとり 此世を洗ふ瑞御霊四尾の山に身を忍び 五つの御霊の経綸を仕へまつらむ其為に 日の大神の神言もて天の石座相放れ 下津磐根に降り来て国武彦となりすまし 神素盞嗚大神の御供の神と現はれぬ 此世を思ふ真心の清き思ひは仇ならず 現幽神を照り透す金剛不壊の如意宝珠 黄金の玉や紫の貴の宝は逸早く 自転倒島に集まりて三千世界を統べ守る 其礎はいや固く国常立となりにけり 又もや嬉しき五つ御玉波に漂ふ竜宮の 一つ島なる秘密郷金波漂ふ諏訪の湖 底ひも深く秘めおきし五つの御霊と称へたる 青赤白黄紫の光眩ゆき麻邇の玉 梅子の姫や黄竜姫蜈蚣の姫や友彦や テールス姫の御使に持たせ給ひて遥々と 黄金翼の八咫烏天津御空を輝かし 雲路を別けて自転倒の松生ひ茂る神の島 綾の聖地に程近き恵も深き由良の海 其川口に聳り立つ秋山彦の神館 心の色は綾錦空照り渡る紅葉姫 夫婦の水火も相生の松葉茂れる庭先に 十曜の紋の十人連しづしづ帰り降り来る 其御姿の尊さよいよいよ茲に五つ御玉 国武彦も永久に隠れて此世を守り行く 玉依姫のおくりたる麻邇の宝珠は手に入りぬ あゝ惟神々々時は待たねばならぬもの 時程尊きものはなし此世を造り固めたる 元の誠の祖神も時を得ざれば世に落ちて 苦み深き丹波路の草葉の影に身を凌ぎ 雨の晨や雪の宵尾の上を渡る風にさへ 心を苦しめ身を痛め天地の為に吾力 尽さむ由も泣くばかり胸もはり裂く時鳥 八千八声の血を吐きて時の来るを待つ間に 今日は如何なる吉日ぞや神世の姿甲子の 九月八日の秋の庭御空は高く風は澄み 人の心も涼やかに日本晴れのわが思ひ 瑞と厳との睦び合ひ八洲の国を照らすてふ 三五の月の御教の元を固むる瑞祥は 此世の開けし初よりまだ新玉のあが心 あゝ惟神々々天津御空の若宮に 鎮まりいます日の神の御前に慎み畏みて 国治立の御分霊国武彦の隠れ神 遥に感謝し奉る千座の置戸を身に負ひて 此世を救ふ生神の瑞の御霊と現れませる 神素盞嗚大神の仁慈無限の御心を 喜び敬ひ奉り言依別の神司 此行先の神業に又もや千座の置戸負ひ あれの身魂と諸共に三柱揃ふ三つ身魂 濁り果てたる現世を洗ひ清むる神業に 仕へまつらせ天地の百の神たち人草の 救ひの為に真心を千々に砕きて筑紫潟 深き思ひは竜の海忍び忍びに神業を 仕へまつりて松の世の五六七の神の神政を 心を清め身を浄め指折り数へ待ち暮す あが三柱の神心完全に委曲に聞し召し 天津御空の若宮に堅磐常磐に現れませる 日の大神の御前に重ねて敬ひ願ぎまつる あゝ惟神々々御霊幸はへましませよ』 と歌ひ了り給ひ、一同に軽く目礼し、其儘御姿は白煙となりて其場に消えさせ給うた。一同はハツと驚き、直に拍手し天津祝詞を奏上し、御神慮の尊さを思ひ浮べて、感涙に咽ぶのであつた。 (大正一一・七・一八旧閏五・二四松村真澄録)
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(1920)
霊界物語 27_寅_麻邇宝珠の紛失/琉球物語 13 竜の解脱 第一三章竜の解脱〔七九五〕 大海中に浮びたる誉も高き琉球の 玉の潜みし神の島三千世界の梅の花 一度に開く時来り綾の聖地に宮柱 太敷立てて千木高く鎮まりゐます厳御霊 瑞の御霊の神勅を玉照神の二柱 完全に詳細に受け給ひ瑞の御霊の御裔なる 言依別に言依さし潮満玉や潮干の 珍の宝を索めんと教主自ら国依別の 教の司を引き率れて浪路を遥に乗り渡り 漸う此処に来て見れば我より前に紀の国の 若彦始め常楠が又もや神の御勅宣 正しく受けて逸早く来り居ませる尊さよ 天を封じて立ち並ぶ欅の楠の森林に 勝れて太き槻の幹天然自然の洞穴に 若彦、常楠両人は木俣の神と現はれて 島人等を大神の稜威に言向け和しつつ 時の来るを待つ間に言霊清き言依別の 瑞の命の大教主国依別と諸共に 来りましたる嬉しさに若彦、常楠勇み立ち ハーリス山の山奥に心も勇む膝栗毛 鞭撻ち進む谷の奥湖水の前に着きにける 四辺は闇に包まれて礫の雨は降りしきり 物凄じき折もあれ闇の帳を引き開けて 波上を歩み進み来る怪しの影を眺むれば 髭蓬々と胸に垂れ雪を欺く白髪は 長く背後に垂れ下り眼は鏡の如光り 朱を濺ぎし顔の色耳迄裂けた鰐口に 黄金の色の牙を剥き四五寸許り金色の 角を額に立て乍らガラガラ声を張りあげて 怪しき舌をニヨツと出し言依別の一行に 向つて叱言を言ひ掛ける叱言の条は竜神の 守ると聞えし太平柿国依別が畏くも 盗んで食つたが罪なりと執着心の鬼神が 力限りに罵倒して琉と球との宝玉を 渡さじものと縄を張る魔神の張りし鉄条網 手も無く切つて呉れんずと磊落不覊の神司 国依別が言霊の打ち出す誠の砲撃に 流石の魔神も辟易しおひおひ姿を縮小し 豆の如くになり果てて遂にあえなく消えにける。 『あゝ惟神々々御霊幸はひましまして 金剛不壊の如意宝珠国依別が丹田に 秘め隠したる言霊の力に刃向ふ楯はなし 我は正義の鉾とりて天地の神の大道を 高天原の神の国豊葦原の瑞穂国 大海原の底までも照らし渡さにや置くべきか 国依別の言霊は筑紫の日向の橘の 小戸の青木ケ原と鳴る神伊邪那岐大神が 珍の伊吹になりませる祓戸四柱大御神 瀬織津姫や伊吹戸主珍の大神始めとし 速秋津姫神速佐須良姫神 此処に四柱宣伝使此神等の生宮と なりて現はれ来りけり大竜別や大竜姫の 珍の命の竜神よ是の天地は言霊の 助くる国ぞ生ける国幸はひゐます国なるぞ 天の岩戸の開け放れ根底の国も明かに 澄み照り渡る今の世に潮満珠や潮干の 二つの珠を何時までも抱きて何の益かある 此世を救ふ瑞御霊神の任しの両人に 惜まず隠さず矗々と汝が姿を現はして はや献れ惟神神は我等と倶にあり 仮令千尋の水底に何時迄包み隠すとも 三五教の我々が此処に現はれ来し上は 只一時も一息も躊躇ひ給ふ事勿れ あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ 一、二、三、四、五、六七、八、九、十たらり 百、千、万の神人を浦安国の心安く 堅磐常磐に守らんと神の任しの此旅路 諾なひ給へ逸早く』早く早くと宣りつれば 今迄包みし黒雲は四辺隈なく晴れ渡り 浪を照らして一団の火光は徐々両人が 佇む前に近づきて忽ち変る二柱 尊き女神と相現じ満面笑を含みつつ 言依別や国依別の二人の前に手を束ね 地より湧き出る玉手箱各一個を両の手に 捧げて二人に献り綾羅の袖を翻し 忽ち起る紫の雲に乗じて久方の 大空高く天の原日の稚宮に登り行く 執着心の深かりし大竜別や大竜姫の 珍の命の両神も愈茲に三千年の 三寒三熱苦行を終へ神の恵みに救はれて 茲に尊き天津神皇大神の御右に 坐まして清き神国の常世の春に会ひ給ふ 実にも尊き物語語るも嬉し今日の宵 陰暦六月第二日松雲閣に横臥して 団扇片手に拍子とりさも諄々と述べて置く 筆執る人は北村氏神の稜威も隆光る 三五教の御教の栞となれば望外の 喜びなりと記し置くあゝ惟神々々 御霊幸はひましませよ。 国依別の言霊に竜若彦と称する怪物は忽ち雲散霧消し、再び現はれ来る大竜別、大竜姫は各手に琉、球の玉を納めたる玉手箱を、言依別、国依別の手に恭しく捧げ三千年の三寒三熱の苦行を茲に終了し、一切の執着を去つて、悠々として紫の雲に乗り、天津日の稚宮に上り、大神の右に座し、天の水分神となつて降雨を調節し給ふ大神と成らせ給うたのである。 清き正しき言霊は一名金剛不壊の如意宝珠とも言ふ。此天地は言霊の幸はひ助け、生き働く国である。宇宙間に於て最も貴重なる宝は声あつて形なく、無にして有、有にして無、活殺自由自在の活用ある七十五声の言霊のみである。之を霊的に称ふる時は即ち金剛不壊の如意宝珠となる。天照大御神の御神勅に「言向け和せ、宣り直せ」とあり、之は神典古事記に明かに示されてある。天の下四方の国を治め給ふは五百津美須麻琉の玉にして、此玉の活働く時は天ケ下に饑饉もなく、病災も無く戦争も無し又風難、水難、火難を始め、地異天変の虞なく、宇宙一切平安無事に治まるものである。 又、今此処に言依別、国依別の二柱の竜神より受取りたる琉、球の二宝は、風雨水火を調節し、一切の万有を摂受し或は折伏し、よく摂取不捨の神業を完成する神器である。 ここに言依別命を始め、一同は湖水に向つて天津祝詞を奏上し、天の数歌を歌ひ上げ宣伝歌を歌ひ乍ら、心地よげに元来し道を下りつつ、槻の洞穴に一先づ帰る事となつた。 言依別の一行は竜の湖水を後にして 千畳岩の碁列せる奇勝絶景縫ひ乍ら 足に任せて降り行く登りに引き替へ下り坂 思うたよりも速かに何時の間にかは竜神の 守り居たると伝へたる太平柿の辺まで 帰り来れば常楠はフト立ち留り一行を 顧み乍ら『教主さま国依別神さまが 大蛇の群に襲はれて太平柿の頂上より 身を躍らして青淵にザンブと許り飛び下り 仮死状態となり果てて渦に巻かれて流れたる 改心記念の霊場ぞ負ぬ気強い国依別の 神の司は反対に竜若彦に逆理屈 いとも立派に喰はして凹ませ給ひし健気さよ あゝ惟神々々斯うなる上は常楠も 神の心が分らない善悪正邪の標準を 如何して分けたら宜からうかお裁き頼む』と宣りつれば 言依別は打ち笑ひ『国依別の言霊は 天地の道理に適ひたり善に堕すれば悪となり 悪の極みは善となる善悪同体此真理 胸に手を当てつらつらと直日に見直し聞直し 人の小さき智慧もちて善悪正邪の標準が 分らう道理のあるべきや此世を造りし大神の 心に適ひし事ならば何れも自然の道となり 其御心に適はねば即ち悪の道となる 人の身として同胞を裁く権利は寸毫も 与へられない人の身は只何事も神の手に 任せ奉るに如くはない』いと細やかに説きつれば 国依別や若彦も常楠翁も勇み立ち 心欣々一行は黄昏過ぐる宵の口 楠と槻との森林に極めて広き天然の ホテルにこそは帰りけりあゝ惟神々々 御霊幸はひましませよ。 (大正一一・七・二五旧六・二北村隆光録)
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(1926)
霊界物語 27_寅_麻邇宝珠の紛失/琉球物語 余白歌 余白歌 言霊の真言の力知らぬ故に一切万事は行き詰るなり〈目次(三版)〉 常夜ゆく暗を晴らして神国の光照らすは言霊の徳〈目次(三版)〉 徳高き者はこの世におちぶれし人をあなどらず敬愛するなり〈第3章(三版)〉 理屈のみ今のものしり囀りて誠の道を知らぬ憐れさ〈第4章(初版)〉 へだてなき神の恵は天地の万のものに照り渡るなり〈第4章(初版)〉 八洲国しのぎを削る世の中に心ゆるすな神国の人〈第10章(初版)〉 乱れたる世を思ふ身は一日だに息長かれと祈りこそすれ〈第10章(初版)〉 何事も神の教にまかすこそ人の誠のこころなりけり〈第10章(初版)〉 国魂の神の神徳に人草の心の色も濃き薄きあり〈第11章(初版)〉 心のみ誠の道にかなふともおこなひせずば神は守らじ〈第11章(初版)〉 益良夫が言ひ交はしたる言の葉は幾世経ぬとも変らざらまし〈第11章(初版)〉 雷鳴も遠きに避けぬ言霊の天照る神の声の稜威に〈第12章(初版)〉 心をも身をも任せて祈りなば神のまことの力賜はむ〈第12章(初版)〉[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました]
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(1983)
霊界物語 30_巳_南米物語2 末子姫と言依別命の旅 04 懐旧の歌 第四章懐旧の歌〔八四六〕 末子姫は新にバラモン教の石熊の帰順を許し、捨子姫、カールの四人連れ、漸くにしてテル山峠の頂上に辿り着いた。 石熊『サア此処が有名なテル山峠の頂上で御座います。黄泉比良坂の大戦以前に、珍の都の正鹿山津見の神様の御娘、松竹梅の宣伝使が始めて宣伝の初陣に此処を、蚊々虎と云ふ天教山の木の花姫の神様の化神に導かれて、お通り遊ばし、松竹梅の宣伝使は遥々と珍の都を振返り、両親に訣別の歌を歌はれた所です[※第9巻第13章「訣別の歌」参照]。随分連山重畳として四方に拡がり、大西洋の波は霞の如く棚引き、何とも云へぬ絶景の地点で御座います。茲で一つ汗を入れて、ボツボツ降る事に致しませうか』 末子『何とも云へぬ涼しい風が御座いますなア。勿体ない事乍ら、此処で少時休息して参る事に致しませう。どうせ二日や三日歩いたつて珍の都へは容易に行けませぬから……』 捨子『つい目の下に見えて居るようですが、随分里程があると見えますなア』 カール『モシ、末子姫様、松竹梅の宣伝使がここで懐郷の念に駆られて訣別の歌をよまれた旧蹟ですから、貴女も一つテルの国を別れるに臨み、得意の御言霊を以てお歌ひ下さつては如何でせう』 末子『オホヽヽヽ、お恥かしい事ですが、左様な結構な宣伝使の御歌ひになつた由緒ある地点と聞けば、歌はずには居られますまい。……捨子姫さま、あなたも一つ御歌ひになつたら如何でせう』 捨子『先づ貴女から先にお口を切つて下さいませ。私も驥尾に附して蛇足を添へますから……』 末子姫は山上の涼しき風に吹かれつつ、声調ゆるやかに歌ひ始めたり。 末子姫『神の都のエルサレム天使の長と現れませる 桃上彦の大神は松竹梅の三柱の いたいけ盛の娘子を珍の館に残しおき 聖地の混乱後にして見るもいぶせき船に乗り 命からがら和田の原漕ぎ出で玉ふ折柄に 尊き神の御恵に一度は竜宮の金門守り 乙米姫に助けられ悲しき月日を送る折 天教山に現れませる神伊邪諾大神の 珍の御子と現れませる日の出神に助けられ 琴平別の亀に乗り淤縢山津見と諸共に 此高砂に安着し珍の都に出でまして 三五教を広めまし珍山峠を乗越えて 心の空もハルの国鷹取別の守りたる ハルの城下に出でまして数多の敵に取巻かれ 所構はず突き刺され沙漠の中に埋められ 命カラガラハルの国逃げ出でまして珍山の 谷間に湧き出る温泉に病を養ひゐます折 淤縢山津見や蚊々虎の神の司に巡り会ひ 駒山彦や五月姫一行五人は天雲の 山の尾の上を打渉り大蛇の船に乗せられて やうやうウヅの都まで帰らせ玉ひて五月姫 珍山彦の媒酌に鴛鴦の衾の契をば 結び玉ひし芽出たさよ五月五日の夕間暮 聖地を後に三人の松竹梅の愛娘 訪ね来りて親と子の嬉しき対面遊ばせし 珍の都は白雲の彼方に幽かに見えにけり 茲に三人の姉妹は神の教を伝へむと 草鞋脚絆に身をかため父の命や母命 二人に暇を告げ乍ら三人の司に伴はれ 此れの峠に登りまし父と母とに訣別の 名残を惜しみ玉ひたる心の色もテル山の 昔思へばなつかしや妾も同じ八乙女の か弱き身にて斎苑館鎮まりゐます父上の 膝元離れて遥々とメソポタミヤの顕恩郷 それより進んで波斯の国教を開く折柄に バラモン教の人々に捉まへられて和田の原 便り渚の捨小舟八人乙女はちりぢりに 神の仕組か白波の上漕ぎ渡る悲しさよ 神の恵の幸はひて汐の八百路も恙なく 魔神を払ふハラ港テルの国をばスタスタと 東を指して進み来るテル山峠の山麓に 三五教の神司罪もカールの神人に 思ひ掛けなく巡り合ひ乾の滝に立寄りて 其壮大を賞めゐたる時しもあれや滝の上に さも凄じき目を見はり大口開けて睨み居る 醜の大蛇に魅せられて巌の片方に石熊の 神の司が直立し苦み玉ふ憐れさよ 直日に見直し聞き直す神の御前に村肝の 心を捧げて願ぎ奉る吾言霊は天地に 忽ち通ひて石熊の神の宮居は自由自在 大蛇は直に解脱して雲を霞と消え失せぬ 心も固き石熊が赤き心を推し測り 神の大道を共々に伝へ行かむと宣伝歌 歌ひて漸く山頂に登りて後を眺むれば 山河草木麗しく神の恵の充ち足らひ 天国浄土の有様を隈なく現し玉ひける あゝ惟神々々神の恵の著じるく 教の花のいと清く吾等は茲にやすやすと 珍とテルとの国境四方を見おろす雲の上に 立ちしは神の御恵みぞさは去り乍ら吾父の 神の尊は今何処あが姉妹の五十子姫 愛子の姫を始めとし五人の姉は如何にして 此世を過ぐさせ玉ふらむ行方も知らぬ波の上 雲の彼方を打眺め朝な夕なにあが父や 姉の命の消息を思ひ煩ふあが心 いつしか晴れむ常暗の帳は開けて天津空 月日も清くテル山の山の尾の上の風清く 心楽き松の世の親子姉妹一時に 嬉しき顔を五六七の世神のまにまに高砂の 此神島に身を忍び神の教に仕へなむ あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ』 と述懐の歌を歌ひ、恰好な腰掛岩の上に身を托し、汗を拭ふ。捨子姫は風に面を吹かれつつ、さも愉快げに四方を見晴らし乍ら、体を東西南北に回転しつつ、歌ひ始めたり。 捨子姫『東や西や北南四方の国型眺むれば 大海原に浮びたる高砂島の名に恥ぢず 太平松や楠堅木槻の大木は青々と 見わたす限り山々に茂り合ひたる麗しさ 天国浄土も目のあたり眺めて暮す心地して 旅のうさをも打忘れ神素盞嗚大神の 珍の御子と現れませる姿優しき末子姫 主人の君と仰ぎつつ何れの里か白雲の 空を眺めて海の上やうやうここに渡り来て 月日も清くテル山の尾の上に登りて眺むれば 吹来る風も芳ばしく木々の梢は花盛り 味よき木実は限りなく枝もたわわに充ち足らひ 飢ゆる事なく吾々は喉も乾かず楽みて 常世の春に会ふ心地天地を造り玉ひたる 元つ御祖の大神の開き玉ひし三五の 教の司と任けられて何処を果てとも長の旅 進み来るぞ楽けれあゝ惟神々々 神の御霊の幸はひて世人の為に玉の緒の 生命を捨子の神司末子の姫の側近く 仕へ奉りて永久に太き功績を立てまつり 神の御子と生れたるあが天職をまつぶさに 尽させ玉へ天津神国津神たち八百万 殊に尊き国治立の厳の尊や豊国姫の 瑞の尊の御前に誠をこめて願ぎまつる あゝ惟神々々神の御霊の幸はひて 天教山に現れませる天照します大神の 珍の御前に逸早く八岐大蛇を言向けて 神素盞嗚大神が一日も早く功績を 高天原に参上ぼり大蛇の呑みたる村雲の 剣を手早く大神の御前に奉らせ玉へかし 瑞の御霊の大神の八人乙女の末の子と 現れ出でませる末子姫かしづき奉る捨子姫 新に仕へし石熊の神の司や三五の 道を歩めるカール迄厚く守らせ玉ひつつ 五六七の御世の神政に清く使はせ玉へかし 神は吾等と倶にます吾等は神の子神の宮 雲井の上に千木高く仕へまつりて宮柱 太しく立てて大神の御前に清く復り言 詳さに申させ玉へかし旭は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも高砂島は沈むとも 曲津は猛く攻め来とも神に仕へし吾身魂 五六七の御世の末迄も変らざらまし神の前 慎み誓ひ奉るさはさり乍らコーカスの 山にゐませし素盞嗚の神の尊は今何処 日の出別や言依別の神の命は如何にして 道に尽させ玉ふらむ五十子の姫や愛子姫 英子の姫は今何処別れて程経し吾々は 音づる由も波の上清く泛べる高砂の テル山峠の頂上に後振返り振返り 哀別離苦の感深しあゝ皇神よ皇神よ 御霊のふゆを幸はひて一日も早く大神に 吾等を会はせ玉へかし女心の一筋に 遥に拝み奉るあゝ惟神々々 御霊幸はひましせよ』 と歌ひ終り、これより末子姫を先頭に一行四人はテル山峠を東に降り行く。 (大正一一・八・一四旧六・二二松村真澄録) (昭和一〇・六・九王仁校正)
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(1989)
霊界物語 30_巳_南米物語2 末子姫と言依別命の旅 10 妖雲晴 第一〇章妖雲晴〔八五二〕 石熊は改めて姿勢を正し、再び水面に向つて、言霊を発射し始めた。此男は得意の時には無茶苦茶に威張るなり、少し弱り目になつて来ると、顔色迄真青にかへる、精神の未だ安定しない男であつた。末子姫に再び宣り直しを命ぜられ、且又カールの忠言を痛く気にして心を痛め乍ら、引くに引かれぬ因果腰を定めて又もや歌ひ始めた。されど何処ともなしにハーモニーを欠いた悲哀の情を遺憾なく現はして居た。其歌、 石熊『仰げば高し久方の高天原に現れませる 皇大神の御言もて豊葦原の瑞穂国 造り固め玉ひつつ世人の為に御心を 配らせ玉ひし国治立の神の命の御仕組 普く世人を助けむと三五教の御教を 野立の神と現れまして数多の神を呼びつどひ 開き玉ひし尊さよ天照します大神の 弟神と現れませる神素盞嗚大神は 仁慈無限の瑞御霊鬼や大蛇や曲神の 日々に悩める苦みを生言霊の幸はひに 清く見直し聞直し宣り直さむと八洲国 雨の晨や風の宵雪積む野辺も厭ひなく 遠き山河打わたり大海原を越えまして 森羅万象悉く助け玉へる有難さ 皇大神の珍の子と現はれませる末子姫 乾の滝に現れましてバラモン教の石熊が 大蛇の神に狙はれて命も危き折柄に 三五教の御心を完美に委曲に現はして 大蛇の神は云ふも更此石熊が身魂まで 合せて救ひ玉ひけり吾れは賤しき人の身の 天地に怖ぢず暗雲の高照山の聖域に 館を構へて世の人に神の使と誇りつつ 濁り汚れし言霊を打出し乱す四方の国 知らず知らずに悪神の醜の擒となりにける あゝ惟神々々御霊の幸を蒙りて 天地に充ちし罪穢れ末子の姫の言霊に 伊吹払はれ救はれて今は全く三五の 神の僕となりにけり巽の池の底深く 堅磐常磐に鎮まれる大蛇の神の御前に 吾れは謹み畏みて生言霊を宣りまつる 大蛇の神よ生神よ汝も天地の皇神の 御水火に生れし神の御子仮令姿は変る共 尊き神の御心に清き御目に照らしなば いかで差別のあるべきや汝も神の子神の宮 吾れも神の子神の宮互に睦び親しみて 天地の教を伝へたる三五教の神の道 開き玉ひし言霊の珍の力を味はひて 一日も早く村肝の心の岩戸を開きつつ 月日の影も美はしく汝が心に照らせかし 吾れは賤しき人の身よ汝は尊き神の御子 汝に向つて言霊を宣り伝ふべき力なし さは去り乍ら吾れも又尊き神の御守りに 珍の柱と選ばれて汝の霊を救はむと 遥々尋ねて来りけり大蛇の神よ生神よ 心平らに安らかに賤しき者の言霊を さげすみ玉はず御心を鎮めて深く聞き玉へ これの天地はいと広しいかに御池は広くとも いかに水底深くとも限りも知らぬ大空に 比べて見れば此池も物の数に這入らない 斯かる処に潜むより天地に充てる言霊の 力に心を清めまし大空高く翔登り 尊き神の右に座し雨をば降らせ風吹かせ 青人艸に霑ひを与へて神の経綸に 仕ふる神となりませよ幸ひ汝の身体は 時を得ずして池底に身を潜む共時津風 吹来る風は忽ちに天地の間に蟠まり 風雨電雷叱咤して神政成就守ります 素質のゐます生神ぞあゝ惟神々々 神の心を推し量り吾言霊を詳細に 聞し召しませ惟神大蛇の神の御前に 三五教に仕へたる神の僕の石熊が 謹み敬ひ八平手を拍ちて勧告仕る あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ』 今度は最も叮嚀に善言美詞的に言霊を宣り上げた。され共水面の光景は依然として元の如くであつた。 末子姫『今度のあなたの言霊は実に神に入り、妙に達したと云つても宜しい。併し乍ら、其効果の現はれないのは、あなた如何御考へなさいますか』 石熊『ハイ、何と云うても過去の罪が深いもので御座いますから、大蛇の神様も馬鹿にして、あの汚らはしい小僧奴、何を猪口才な、殊勝らし事を言ひよるのだ!……と云ふ様なお心持で聞いて下さらないのでせう。実にお恥かしう御座います』 末子『あゝさう御考へになりましたか、それは実に善き御考へで御座います。どうぞ其心を忘れない様にして下さい。さうしてあなたは別に三五教にお這入りにならなくても宜しい。又高照山とかの立派な館を三五教へ献るとか仰有つたように記憶して居りますが、決してそんな御心配は要りませぬ。神さまの誠の御教は左様な小さい区別されたものでは御座いませぬ。三五教だとか、バラモン教だとか、ウラル教だとか、いろいろ小さき雅号を拵へ、各自に其区劃の中に詰め込まれて蝸牛角上の争ひをして居る様なことでは、到底大慈大悲の大神の御神慮には叶ひませぬ。誠の道は古今に通じ、東西に亘り、単一無雑にして、悠久且つ宏大な物、決して教会とか霊場とか、左様な名に囚はれて居る様なことでは、誠の神の御心は分るものでは御座りませぬ。あなたも三五教の中に宜しい点があるとお認めになれば、そこを御用ゐになり、バラモン教で宜しいから、悪いと気のついた所は削り、又良いことがあれば、誰の言つた言葉でも少しも構ひませぬ。長を採り短を補ひ、完全無欠の神様の御教を何卒天下に拡充されむことを希望致します。妾も三五教の宣伝使なぞと言はれる度毎に、何だか狭苦しい箱の中へでも押込められる様な心持が致しまして、実に苦しう御座います。すべて神の教は自由自在に解放されて、一つの束縛もなく、惟神的でなくてはならないものですよ。どうぞ其お積りで今後は世界の為に、神様の御為に力一杯誠を御尽し下さいませ。これが此世を造り玉ひし元津御祖の大神、国治立命様其外の尊き神々様に対する三五の道の真相で御座いますから……』 石熊は涙をハラハラと流し、 石熊『如何にも公平無私にして、理義明白なる姫様の御教訓、いやモウ実に今日は結構な御神徳を頂きました。今後はキツと今迄の様な小さい心を持たず、努めて大神様の御心に叶ひまつるべく、努力する考へで御座います。何卒御見捨てなく、愚者の私、御指導の程幾重にも念じ上げ奉ります』 と合掌し、感謝の涙に声さへかすんでゐた。 末子『モシ捨子姫様!あなた御苦労ですが、大蛇の神様に言霊をお手向け下さいませぬか?石熊様があの通りの不結果に終られましたから、其補充として、貴女に御奮戦を御願致します』 捨子『左様なれば、仰せに従ひ、言霊を宣らして頂きませう』 と云ひ乍ら、山岳の如く、波立ちさわぐ水面に向つて、言葉涼しく清く言霊を宣り始めたり。 捨子姫『巽の池に永久に鎮まりゐます生神の いづの御前に捨子姫天と地との神々が 授け玉ひし言霊を茲に慎み宣りまつる あゝ惟神々々神の造りし神の国 神の守りし神の国成り出でませる人艸や 森羅万象悉く神と神との御恵を 受けざるものはあらざらむ大蛇の神よ生神よ 神より受けし其身魂時世時節と言ひ乍ら 底ひも知れぬ此池に忍びゐますは何故ぞ 天津御空もいや高く翔りて此世を守るべき 汝が身は実にも皇神の珍の御楯と選ばれし 尊き身魂にあらざるか森羅万象悉く 永遠無窮の生命を与へ助くる言霊の 神の御水火を諾ひて一日も早く片時も 御池の波を掻き分けて天津御空の生神と 返らせ玉へ三五の神の教に仕へたる 捨子の姫が真心をこめて偏に請ひまつる あゝ惟神々々神の御霊を受けまして 限も知れぬ大空の尊き神と現れませよ 神素盞嗚大神の珍の御子なる末子姫 其言霊を蒙りて汝が身に勧め奉る 汝が身に勧め奉るあゝ惟神々々 御霊幸はひましまして捨子の姫の言霊を 空吹く風や川の瀬の音と見逃し玉ふまじ 大蛇の神の御前に心をこめて宣べまつる 心の丈を明かしつる』 と歌ひ終つた。捨子姫の言霊は極めて、簡単なれ共、天授の精魂清らかにして、一点の汚点もなく、暗雲もなく、真如の月は心の海に鏡の如く照り輝き居たれば、其言霊の効用著しく現はれて、さしもに高かりし荒波は次第々々に静まり、四辺を包みし黒雲は忽ち晴れわたり、マバラの雨は俄に降りやみ、天津御空には金色の太陽晃々と輝き始め玉うた。あゝ惟神霊幸倍坐世。 (大正一一・八・一五旧六・二三松村真澄録)
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(2008)
霊界物語 31_午_南米物語3 国依別の旅 序歌 序歌 綾部の聖地を後にして(綾部)吾家を伊豆の温泉場 幽邃閑雅の山家村(山家)狩野の流れに臨みたる 湯ケ島温泉湯本館何に利く加和知らね共(和知) 一度は来たれと信徒が送る玉章細胡麻と(胡麻) 見るも嬉しき吾思ひ教主殿をば田ち出でて(殿田) 松村真澄、佐賀伊佐男園ほか一部の伊豆信者(園部) 杉山当一林弥生八木つく様な夏空を(八木) 静かに進む汽車の上寿も長き亀岡の(亀岡) 瑞祥祝ふこの旅行嵯峨しあてたる好避暑地(嵯峨) 言葉の花や教の園を(花園)二人の幹部と諸共に 只一と条に勇み行く(二条) ○ 丹波綾部に名も高き出口の神の御教を(丹波口) 京都、大阪、東京の(京都)三大都市を始めとし 山科里に至るまで(山科)皇大神の大道を 津多へ拡むる神司(大津)堅き心は石山の(石山) 月照り渡る如く也 ○ 青人草を津々がなく(草津)守りたまへと祈りつつ(守山) 山野を州々みて篠すすき(野州)露野が原も乗りこえて(篠原) いつかは日の出の神の代に近江の国や八幡宮(近江八幡) 厳の御前にぬかづきて浦安土の心やすく(安土) 守り玉へと太能里登宣る言霊は速川の(能登川) 水瀬の音と聞ゆ也 ○ 稲穂は栄枝て黄金の(稲枝)波漂はす河の瀬や(河瀬) 国の御祖の永遠に守り玉へる豊秋津 根別の国の八百米は高天原に天照らす(米原) 皇大神のみことのり天の下なる人草の 食ひて生くべきものなりとその神勅をひるも夜も 尊み眼も醒ケ井の(醒ケ井)神の恵みに近江路や 御代長かれと祝ふなる亀のよはひの亀岡に(近江長岡) 教の庭を開きつつ打つ柏手の音も清く 高天原と鳴り渡る(柏原)神と鬼との関ケ原(関ケ原) 恵の露も垂井駅(垂井) ○ 世の大本は青垣の(大垣)山をば四方に廻らして 神の鎮まる霊場と数多の人々我一に 先を争ひ木曽川や(木曽川)神の光に仰岐阜し(岐阜) 尾張に近き暗の世を救ひ玉へと真心を 一つに固めて本宮山(尾張一ノ宮)遠き山路も稲みなく いと沢々に寄り来る(稲沢)神の経綸ぞ畏けれ ○ 天の真奈井の枇杷の湖(枇杷島)竹生の島に顕れませる 神の猛びを名古めつつ(名古屋)屋間登御魂の神人が 熱き心を田向け行く(熱田)神徳大くいや高き(大高) 皇大神の生れまして清き神府と定めてし(大府) 世の大元は爰婆刈豊葦原の中国谷(刈谷) 安全地帯ぞ金城と(安城)尊み敬ひ許々太久の 岡せし罪を悔い乍ら御霊崎はへ坐しませと(岡崎) 赤き心のまめ人が幸願ぎ奉り田のむ也(幸田) ○ 蒲の乱れの郡集を(蒲郡)皇大神の御仁慈の 清き油を濺がれて(御油)豊に渡る神の橋(豊橋) 二川三河の水清く(二川)小雲の川や玉水に 身そぎ祓ひて神徳を信徒たちが鷲津神(鷲津) 旧きを捨てず新しく居所を定むる神の町(新居町) 心も勇みて弁天の(弁天島)女神の前に真心を つく島つりし音楽や舞曲も清くさはやかに(舞阪) 御代の阪えむ瑞祥を浜の松風音もなく(浜松) 世は平らけく天竜の勢強く川登り(天竜川) 心の中に霊泉の(中泉)甘露は尽きず湧き出でて 神代を祝ふぞ尊けれ ○ 袋井首に掛川の(袋井・掛川)貧しき人も神の道 悟りて欲を堀ノ内(堀ノ内)誠の教を守りなば 富貴も権威も金谷せぬ(金谷)神の御教を敷島の(島田) 大和心を田鶴ぬれば薫り目出度き白梅の 花藤答枝よ惟神(藤枝)醜の仇草焼鎌の(焼津) 敏がまや津留岐ぬき用て(用宗)宗打ち払ひ静々と 風雨雷電岡しつつ(静岡)誠の道江一散に 尻に帆かけて進み行く(江尻)あゝ惟神々々 御霊幸倍ましませよ ○ 昔の元の大神が現はれまして太元の 救ひの道を興し津々(興津)由比所の深き蒲生の原(由比・蒲原) 開きて根本霊場を岩秀の如く弥固く 淵なす深き経綸を(岩淵)富士の御山のいや高く(富士) 立てて天地の神人が生言霊の鳴り渡る 五十鈴の川の川水に(鈴川)原ひ清めて朝露の(原) 干沼の池に照る津岐の(沼津)影も涼しく神の世を 開き玉ふぞ尊けれ ○ 三月三日の桃の花五月五日の桃実に 比すべき霊界物語故郷の土産と瑞月が(桃郷) 心も清く住の江ノ浦安国の神宝と(江ノ浦) 語る出口野神の教(口野)天皇山に祭りたる(天皇山) 皇大神の御守りを嬉しみ尊み神勅を 北条南条畏みて(北条・南条)田舎男や京わらべ(田京) 遠き耳にも入り易く解き明かしたる神の書 迎への人の親切も酒の泉の吉田郷(吉田) 車を止めて杉原家殊更厚き待遇に 三伏の暑を打忘れ心も深き真清水の 湯槽に浸り汗水を流して西瓜の腹つづみ 誠の信徒も大仁や(大仁)瓜生野の里も打過ぎて(瓜生野) 堅と横との五十鈴川(横瀬)言霊車瀬を速み 国常立野大神が(立野・大平)平和の御世を松ケ瀬や(松ケ瀬) 青羽の根配りいや広く(青羽根)茂る稲田の富貴草 出口の王仁の一行は(出口)早くも伊豆に月ケ瀬や(月ケ瀬) 天津御空の神門野開け行くてふ玉の原(門野原) 天の八重雲掻き分けて救ひの神も嵯峨沢の(嵯峨沢) 今日の旅行ぞ楽しけれ木々に囀る蝉の声 市なす山の片ほとり(市山)東西南北風清く(西平) 平和の里と湯ケ島の(湯ケ島)狩野の流れに浴み乍ら 漸く安藤の宅につき(安藤)心よりなるもてなしに 歓び勇み湯浴してまたもや例の物語 口述如来の瑞月が安全椅子によりかかり 浄写菩薩の松村氏腕に撚かけスラスラと 『海洋万里』午の巻いよいよ爰に述べ写す あゝ惟神霊幸倍坐世 『海洋万里』卯の巻四日間、同辰の巻三日、同巳の巻三日、前後合せて十日間。述べつ写しつ、暑さに堪えし休養日を幸ひ、筆のすさびのいと永々と記しおく。 大正十一年八月十七日於湯ケ島温泉口述著者
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霊界物語 32_未_南米物語4 アマゾンの兎の都 05 琉球の光 第五章琉球の光〔八九六〕 カーリンスは三人の宣伝使の歌を聞き、吾も亦歌をうたひ、兎、鰐の一族に対し、巾を利かさねばなるまいと思つたか、直に立上り、妙な手附をして踊りながら、歌ひ始むる。 カーリンス『此処は名に負ふハルの国アマゾン河に沿ひて樹てる 大森林の時雨の森と人も言ふモールバンドやエルバンド 其外百の獣たち堅城鉄壁千代の棲処と 天日に怖ぢず地に憚らず月の光に恐れず 自由自在に咆哮怒号の魔窟ケ原 優勝劣敗弱肉強食の修羅の巷を 数百万年の昔より世界の秘密国として 汝が一族に与へられたる此森よ 森の主は兎の王と誇りし夢も何時しか消えて 今は悪魔の棲処と成り果てぬ 変れば変る現世の例に洩れぬ兎の身の上 鰐一族の淋しき生活広袤千里の森林に 十里四方の地点を選び要害堅固の鉄城と 頼みて暮す霊場も今は危くなりにけり 八岐の大蛇醜狐曲鬼共の霊の裔 激浪猛る奔流の深き河瀬に身を潜め 汝が一族悉く命の綱の餌食にし 根絶せむと附け狙ふモールバンドやエルバンド 斯かる仇敵のある中に虎狼や獅子に熊 大蛇禿鷲猿の群汝が一族狙ひつつ 眼を配る時もあれ国治立大神の 守り給へる三五の神の司鷹依姫を始めとし 竜国別の宣伝使テーリスタンやカーリンス 四人の貴の神の子が救ひの神と現はれて 此処まで降り来りしは枯木に花の咲きしが如く 大旱に雨を得たるが如くなるべし勇み喜べ兎よ鰐よ 吾等は是よりハルの国アマゾン河の森林を 神の御水火に言向け和し尚も進んで珍の国 旭のテルやヒルの国カルの国まで天降り 八岐大蛇の一族を言向け和し神の世の 畏き清き政事布き施すは目のあたり 仮令悪神アマゾンの河底深く潜むとも 猛き獣の徒に汝が群をば攻むるとも 吾等が此処に来りし限りビクともさせぬ神力を 固く信じて朝夕に喜び勇み神の前 瑞の御霊と現れませる月の御神の御前は 云ふも更なり国魂の神と現れます竜世の姫を 厚く祀れよ敬へよ吾も神の子亦汝も 同じく神の御子なれば何の隔てのあるべきや 神は万物一切に平等愛を垂れ給ふ あゝ惟神々々兎の都に現はれて 心も固き鰐の群集まり守る聖場に 三五教の神の国堅磐常磐に限りなく 基を建つる頼もしさあゝ惟神々々 神の恵を嬉しみて兎や鰐の群等よ 喜び勇め神の前森の谺の響くまで 歌へよ祈れ神の恩あゝ惟神々々 御霊幸はひましませよ』 是より鷹依姫外三人は数多の兎を使嗾し、兎の都の王となつて、殆ど一年の日子を此別世界に楽しく面白く送りたり。 或夜、月皎々と光りを湖面に投ぐる折しも、四方の丘の上より、一斉に『ウーウー』と咆哮怒号突喊の声、耳も引裂くるばかり聞え来りぬ。兎の王は驚きて鷹依姫の前に走り来り、 兎の王『鷹依姫様に申上げます。只今四方の山々を取囲み、虎、狼、獅子、大蛇、熊王、数多の一族を呼び集め、雲霞のごとく此霊地を占領し、吾等が部下を捉へむと勢猛く攻め寄せました。鰐の頭は数多の眷族を呼びあつめ、死力を尽して闘つて居るでは御座いませうが、何を云つても目に余る大軍、容易に撃退することは不可能なれば、何とか御神力を以て彼等寄せ来る魔軍を言向け和し給はむ事を、偏に一族に代り御願ひ申上げます』 と慌ただしく息を喘ませ頼み入る。鷹依姫はウツラウツラ眠りつつありしが、忽ち身を起し、月の大神を祀りたる最も高き地点に登り、四辺をキツと見詰むれば、四方を包みし青垣山の彼方此方に炬火の光煌々と輝き、咆哮怒号の声、万雷の一時に聞ゆる如く、物凄さ刻々に激烈となり来る。 鷹依姫は直に拍手しながら天津祝詞を奏上し、天地に向つて言霊を宣り上げたり。 鷹依姫『天津神等八百万国津神等八百万 国魂神を始めとし取分け此世を造らしし 国治立大御神豊国姫大御神 天照らします大御神神素盞嗚大神の 貴の御前に三五の神の司と任けられし 鷹依姫が真心をこめて祈りを捧げます あゝ大神よ大神よ高砂島のハルの国 アマゾン河の両岸に幾万年の星霜を 重ねて樹てる大森林中に尊き此霊地 千代の棲処と定めつつ身魂も清く美はしき 兎の群や鰐の群いや永久に棲居して 神の恵を喜びつ天伝ひます月の神 朝な夕なに伏し拝み天地の恵を感謝する 尊き心を憐みて寄せ来る魔神を大神の 稜威の御水火に吹き払ひ安全地帯となし給へ あゝ惟神々々神の恵に包まれし 兎の都の此聖地千代も八千代も永久に 曲津の神の一指だも触るる事なく恙なく 常世の春のいつまでも喜び勇みの花咲かせ これの聖地を元として時雨の森に棲ひたる 猛き獣や大蛇まで神の恵に漏るるなく 救はせ給へ惟神神の御前に願ぎ奉る 旭は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも 敵の勢猛くとも神より受けし言霊の 吾等四人が御稜威をば天津御空の日の如く 照らさせ給ひて功績を千代に八千代に永久に 建てさせ給へよ惟神神の御前にひれ伏して 言霊称へ奉る』 斯く歌ふ折しも、西南の隅に当つて、屏風山脈の最高地点、帽子ケ岳の方面より、二つの火光、サーチライトの如く輝き来り、四方を囲みし魔軍は光りに打たれて声を秘め、爪を隠し、牙を縮め、眼を塞ぎ、大地にカツパとひれ伏して、震ひ戦き居たりける。 竜国別は立上り、火光に向つて再拝し、拍手しながら歌ふ。 竜国別『青垣山を繞らせるこれの聖地に永久に 棲ひなれたる兎の子等が魔神の災遁れむと 朝な夕なに月の神斎きまつりて誠心の 限りを尽し仕へ居る其誠心に同情し 八尋の鰐は湖の辺に集まり来りて夜昼の 区別も知らず聖場を守り居るこそ畏けれ 時しもあれや三五の道を伝ふる神司 自転倒島を後にして現はれ来る吾々が 一行四人は恙なく神の仕組の経糸に 引かれて此処に来て見れば兎の都は永久に 八尋の鰐に守られて天国浄土を目のあたり 見るが如くに栄えけりあゝ惟神々々 神の恵と嬉しみて吾等はここに大神の 禽獣虫魚の端までも恵み給へる御心を 信仰ひまつりて王となり兎や鰐の一族に 神の恵を間配りつ守る折しも青垣の 山を踏み越え攻め来る虎狼や獅子熊や 大蛇の霊諸共にこれの霊地を蹂躙し 兎や鰐の一族を滅亡させむと迫り来る 其災害を遁れむと朝な夕なに言霊の 稜威の祝詞を奏上し漸く無事に来りけり 然るに又もや四方の山峰の尾の上に曲津神 雲霞の如く攻め来り此聖場を奪はむと 息まき来る物凄さ吾等四人は村肝の 心の限りを尽しつつ暗祈黙祷やや暫し 勤むる折しも西北の空を隔てし屏風山 帽子ケ岳の頂上より琉と球との霊光は 電火の如く輝きて魔神の咆哮一時に 跡形もなく止みにけりあゝ惟神々々 如何なる神の御救ひか如何なる人の救援か げに有難き今日の宵竜国別は謹みて 皇大神の御前に心を清め身を浄め 遥に感謝し奉るあゝ惟神々々 御霊幸はひましませよ』 斯く感謝の言霊を宣り上げ、再び月の大神の神前に向つて拍手を終り、兎の王に一先づ安堵すべき事を宣示した。兎の王は喜び勇んで此旨を部下に伝達せり。 鰐の頭此処に現はれ来り、大に勇みて、 鰐の頭『斯く天祐の現はれ来る限りは、吾等は湖辺に陣を取り、虎、狼、獅子、熊、大蛇の群、仮令幾百万襲ひ来るとも、これの湖水は一歩も渡らせじ、御安心あれ兎の王よ』 と勇み立ち、帽子ケ岳より輝き来る霊光に向つて感謝し、一同は歓声を挙げて天祐を祝し、其夜は無事に明かす事とはなりぬ。 (大正一一・八・二二旧六・三〇松村真澄録)
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霊界物語 33_申_玉の御用の完了/高姫と黒姫の過去 10 神歌 第一〇章神歌〔九二五〕 神素盞嗚大神が末子姫の婚姻を祝し玉ふ御歌。 神素盞嗚大神『八雲立つ出雲八重垣妻ごみに 八重垣造る其八重垣を 神代の昔高天原にて 日の大御神神伊邪諾尊 月の大御神神伊邪冊尊 自転倒島におり立ちて 天教山の中腹に 撞の御柱つき固め 左右りと巡り会ひ あなにやし好男 あなにやし好乙女よと 宣らせ玉ひて妹と背の 婚嫁の道を開き玉ひし 其古事に神傚ひ 三五教の神司 心も清き国依別命 瑞の御霊の末の子と 神の依さしの末子姫 今日の佳き日の吉き時に 妹背の契永久に 結び終へたる芽出たさよ 朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも 仮令天地は変るとも 国依別と末子姫 夫婦の契は永久に 変らざらまし高砂の 松の緑の色深く 鶴の齢の千代八千代 亀の齢の万世も 変らであれや惟神 皇大神の御前に 瑞の御霊の神柱 神素盞嗚尊 畏み畏み願ぎまつる あゝ惟神々々 御霊幸はひましまして 三五教の神司 言依別命を初めとし 松若彦や高姫や 鷹依姫や竜国別 其外百の神司 信徒達に至るまで 今日の佳き日の吉き時を 喜びまつり集ひ来る 其真心の麗しさ 心の色はまちまちに 高姫のごと変れども 神の大道と世の為に 尽す心は皆一つ 一つ心に睦びあひ 神の心を推し量り 堅磐常磐に神の代の 柱となれよ礎と なりて尽せよ惟神 神は汝と倶にあり 清き畏き真心に 鎮まりゐます月と日の 神の恵は目のあたり 立ちさやぎたる荒波の 早なぎ渡る和田の原 深き恵の底知れず 高き恵は天の原 限り知られぬ青雲の 広く高きは皇神の 大御心ぞ永遠に 変らず動かず真心を 捧げて祈れよく祈れ 大国治立大御神 高皇産霊大御神 神皇産霊大御神 天照します大御神 国治立大御神 豊国主大御神 其他百の神たちの 深き恵を畏みて 千代も八千代も永久に 大御前に能く仕へ 五六七の御世の末迄も 清き心を濁らすな あゝ惟神々々 神に誓ひて今日の日を 喜び敬ひ行先の 夫婦の幸を寿ぎつ 神の司や信徒や 国人達に惟神 神の心を誓ひおく あゝ惟神々々 御霊幸はひましませよ』 と歌ひ終り、欣然として其儘奥殿に神姿を隠し玉ひけり。 (大正一一・八・二七旧七・五松村真澄録)
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霊界物語 35_戌_黒姫のアフリカ物語2 01 言の架橋 第一章言の架橋〔九六五〕 広大無辺の大宇宙数ある中に霊力の 秀れて尊き我宇宙上には日月永久に 水火の光を放ちつつ下界の地球を照臨し 森羅万象悉く無限絶対無始無終の 霊力体の三元を備へてめぐる神の業 太陽大地太陰の無限の生命は御倉板挙 神の御言の恵なり抑も大地の根源は 国常立大御神豊国主大神の 経と緯との水火をもて生成化育の神業を 開き玉ひしものなるぞ無限絶対無始無終 至尊至貴なる大元霊天にまします御中主 皇大神の霊徳はすべての物に遍満し 高皇産霊の神をして霊系祖神となし玉ひ 神皇産霊の神をして体系祖神となし玉ふ あゝ惟神々々霊力体の三元は 幾億万の年を経ていよいよ宇宙を完成し 我等が宇宙の主宰神天にありては大日婁売 天照します大神と称へまつるぞ尊けれ 国常立大神は地上の主宰と現れまして 金勝要大御神神素盞嗚大神と 大地の霊力体となり地上に於ける万類を 昼と夜との区別なく恵の露をうるほはし 守らせ玉ふ葦原の神の御国ぞ尊けれ かかる尊き皇神の力に造り守ります 大海原の神国に生を享けたる人草は 広大無辺の御神徳朝な夕なに謹みて 仰ぎまつらであるべきや神は我等の霊の祖 体の祖と現れませば我等が五尺の肉体も 皆大神の借り物ぞ皇大神の永久に 守り玉ひて天地の大経綸を遂げ玉ふ 神の機関と生れたる尊き清きものならば 至粋至純の精魂に朝な夕なに磨き上げ 人と生れし天職を尽しまつれよ同胞よ あゝ惟神々々今より三十五万年 遠き神代に溯り国治立大神が 天が下なる神人の身魂を治めて美はしき 神代を造り固めむと根底の国に忍びまし いろいろ雑多と身を変じ百の神達現はして 三五教を立て玉ひ教を四方に伝へます 尊き清き三五の神の館をエルサレム 自転倒島の貴の宮西と東に霊くばり 神の心の其儘を四方に伝ふる宣伝使 任けさせ玉ふ有難さ神の司も数多く 坐します中に三五の道に仕ふる宣伝使 信心堅固の黒姫が神の御言を畏みて 四方の人草救はむと老いたる身をも顧みず 島の八十島八十の国筑紫の島の果までも 教を伝へて進み行く勇健無比の神人の 不惜身命の物語心を筑紫の不知火の 世人を救ひ助けむと高山彦の後を追ひ 自転倒島を立出でて孫公、芳公、房公の 三人の信徒と諸共に波に漂ふアフリカの 建日の港に安着し嶮しき坂を踏み越えて 火の国都に立向ひ高山彦の所在をば 索めて来る黒姫が執着心のどこやらに まだ晴れやらず気を焦ちいろいろ雑多と村肝の 心を尽す物語今日は九月の十五日 三五の巻の開け口瑞祥閣の奥の間で 安楽椅子によりかかり片手に団扇を持ち乍ら 膝を叩いて諄々と繰出す神代の物語 筆執る人は松村氏真澄の空に天津日の 晃々輝く午前九時誌し行くこそ楽しけれ あゝ惟神々々御霊幸はひましまして 神のまにまに説き出づるわが言の葉を永久に 世人に伝へて惟神神の賜ひし生身魂 照らさせ玉へ天津神国津神達八百万 産土神の御前に慎み敬ひ願ぎまつる 謹み畏み願ぎまつる。 現在の地理学上のアフリカの大陸は、太古の神代に於ては、筑紫の島と云つた。さうして此島は身一つにして面四つあり。火の国、豊の国、筑紫の国、熊襲の国と大山脈を以て区劃されてゐる。さうして島の過半は大沙漠を以て形作られてゐる。 現代の日本国の西海道九州も亦総称して筑紫の島と云ふ。国祖国常立之尊が大地を修理固成し玉ひし時アフリカ国の胞衣として造り玉ひし浮島である。又琉球を竜宮といふのも、オーストラリアの竜宮島の胞衣として造られた。されど大神は少しく思ふ所ましまして、これを葦舟に流し捨て玉ひ、新に一身四面の現在日本国なる四国の島を胞衣として作らせ玉うた。故に四国は神界にては竜宮の一つ島とも称へられてゐるのである。丹後の沖に浮べる冠島も亦竜宮島と、神界にては称へられるのである。 昔の聖地エルサレムの附近、現代の地中海が、大洪水以前にはモウ少しく東方に展開してゐた。さうしてシオン山といふ霊山を以て地中海を両分し、東を竜宮海といつたのである。今日の地理学上の地名より見れば、余程位置が変つてゐる。神代に於けるエルサレムは小亜細亜の土耳古の東方にあり、アーメニヤと南北相対してゐた。 又ヨルダン河はメソポタミヤの西南を流れ、今日の地理学上からはユウフラテス河と云ふのがそれであつた。新約聖書に表はれたるヨルダン河とは別物である。さうしてヨルダン河の注ぐ死海も亦別物たることは云ふ迄もない。今日の地理学上の波斯湾が古代の死海であつた。併し乍ら世界の大洪水、大震災に依つて、海が山となり、山が海となり、或は湖水の一部が決潰して入江となつた所も沢山あるから、神代の物語は今日の地図より見れば、多少変つた点があるのは止むを得ぬのである。 さて三五教の宣伝使黒姫が現代のアフリカ、筑紫の島の一部、熊襲の国の建日の港へ上陸し、それより建日別命の旧蹟地を探ね、筑紫ケ岳を三人の供人と共に踏越えて、火の国の都を指して進み行く物語は、前巻に於て大略述べておいた通りである。いよいよこれより黒姫が火の国都に立向ひ、高山彦の宣伝使と名乗る高国別命、神名は活津彦根命を自分の夫高山彦と思ひ詰め、夫の所在を探らむと進み行く波瀾重畳としたる面白き昔語である。さうして自分の若き時に或事情の為に捨児をした男の子が、成人して立派な宣伝使となり、同じ道に仕へて居るのをも母子共に気付かなかつたのが、或機会に親子の間柄たる事が知れ渡り、喜び勇んで自転倒島の聖地へ帰り、麻邇の宝珠の神業に奉仕する芽出度き事実を口述するのが本巻の主眼である。第三十三巻を参照すれば、此間の消息が分るであらう。あゝ惟神霊幸倍坐世。 (大正一一・九・一五旧七・二四松村真澄録)
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霊界物語 35_戌_黒姫のアフリカ物語2 22 当違 第二二章当違〔九八六〕 火の国都の高山彦の門前に現はれた二人の男、こは云はずと知れた房公、芳公の両人であつた。 房公『もしもし門番様、何卒通して下さいませ』 門番の軽公は門内より、 軽公『村肝の心の岩戸の締りたる 曲津の通る門口でなし。 心より神の大道を明らめよ 天ケ下には妨げもなし。 此門は心正しき人々の 大手拡げて通る門口。 わが胸の門を開けば忽ちに これの鉄門は自ら開く』 房公は外より、 房公『洒落た事言ふ門番が守り居る 困つたもんに突き当りける』 芳公は又歌ふ。 芳公『よし吾を卑しきものと見るとても かるく開けよ神の鉄門を。 よしもなき事に暇を潰すより 心の門を開き通せよ。 吾こそは自転倒島の神の子よ 神の通はぬ門口なき筈。 皇神の任しの儘に渡り来る 疎略にすな神様の御子を』 軽公は門内より、 軽公『軽々しくどうして鉄門が開かりよか 曲の猛びの強き世なれば。 曲神が誠の神となりすまし 人を誑かる闇の世なれば』 門の外より房公の声、 房公『躊躇ふな吾は頭てらす大御神 栄えの門を開く神なり』 軽公門内より、 軽公『いざさらば頭てらします大御神 進ませ給へこれの鉄門を』 と詠ひ乍ら、閂をガタリと外し、門を左右にパツと開けば、房公、芳公は軽く目礼し、足も軽げに奥へ奥へと進み入る。 玄関の受付には、五十恰好の、顔の少し細長い男が控へて居る。 房公『私は三五教の黒姫のお供をして此処迄参つた房公と申すもので御座いますが、黒姫さまは此方へお世話になつて居られますかな』 受付(玉公)『三五教の黒姫様と云へば、随分黄金の玉で名の知れた宣伝使だが、未だ此方へはお見えになつて居りませぬよ』 房公『当館の主人は、矢張高山彦と申すお方で御座いますか』 受付(玉公)『左様で御座います。御主人は高山彦、奥様は愛子姫と申す立派な神司で御座います』 房公『高山彦様は御在宅ですか。一寸お伺ひ致し度う御座いますが……』 と意味ありげに云ふ。 受付(玉公)『私は受付の玉公と申しますが、何でも高山彦の御主人は、今朝早々何処かへ修行にお越しになつたと聞いて居ります。乍併受付の吾々は詳しい事は存じませぬ』 房公『何卒すみませぬが、高山彦様がお留守ならば、一寸奥様に会はして下さる訳にはいけますまいか。いづれ後から高山彦様の前の奥さまが見えますから、それ以前に一寸お目に掛つて御伺ひして置けば、前以て円満解決の曙光を認め得るものと存じますから、何とか一つ取りもつて下さいな』 玉公『滅相もない。主人の御不在中に奥様が男の方に御対面は遊ばしませぬ。残念ながら何卒諦めて下さいませ。さうして御主人様の前の奥様とは、何と云ふお方で御座いますか』 房公は少しく胸を張り、切り口上にて、 房公『勿体なくも三五教の大宣伝使黒姫様で御座る。吾々は其黒姫様の股肱の臣で御座るから鄭重にお待遇なさるが宜からう。如何に愛子姫様だとて此事をお聞きになれば、お会ひにならぬと云ふ訳には参りますまい』 と肩肱怒らし禿頭に湯気を立て、章魚が裃着た様な恰好で、肩を四角に固くなつて居る。 玉公『ハヽヽヽヽ、そりや大変な大間違ひぢやありませぬか。御主人の高山彦様はまだお年がお若い屈強盛りです。さうして愛子姫様をお迎へ遊ばしたのが、女をお持ちになつた最初だと云ふ事ですから、そんな年をとつたお婆アさまを女房に持つて居られる筈はありませぬ。何かのお間違ひでせう』 房公『アハヽヽヽ、何とまア上から下までよう腹を合したものだなア。万里の波濤を越えて、遥々と夫の後を慕ひ探ねて御座つた貞淑な黒姫さまを袖にして、若い女を女房に持ち、面白可笑しく此世を渡らうとは狡い量見だ。高山彦さまも余程堕落をしたものだなア。六十の尻を作り乍らチツと心得たら好ささうなものだ。若い奥さまを貰つて若返り屈強盛りの壮年の様になつたのかなア。人間と云ふものは心の持ち様が肝腎だ。然し黒姫さまは何処に迷うて御座るだらうか。もしもこんな処へ御入来になつたらそれこそ大変だがなア』 此時一間を隔てて聞え来る一絃琴の声、歌の主人は此家の女主人愛子姫である。 愛子姫『千早振る遠き神世の昔より国治立大神は 天地四方の神人をいと平らけく安らけく 常世の春に救はむと心を千々に配らせつ 夜と昼との別ちなく遠き近きの隔てなく 高き卑しき押なべて恵の露をたれ給ひ 三五教の御教を島の八十島八十の国 諸越山の奥までも開かせ給ふ有難さ 吾背の君は天照皇大神の御任せる 五百津美須麻琉々々々々の玉の威徳に現れまして 活津彦根の神となり神素盞嗚大神の 御子と仕へて天ケ下四方の国々隈もなく 厳の教を宣べ給ふ高国別の宣伝使 天教山より降ります八島の別や敷妙姫の 神の命の後襲ひ高山彦と名を変へて 此世を忍び給ひつつ五六七の御代を待ち給ふ 神の御裔ぞ尊けれ妾も同じ瑞御霊 神素盞嗚大神の生せ給へる珍の御子 愛子の姫と名乗りつつ父大神の御言もて メソポタミヤの顕恩郷にバラモン教の館をば 建てて教を開くなる鬼雲彦の曲神が 御許に永く隠れつつ心用ふる折柄に 太玉彦の宣伝使現はれ来りて太玉の 御稜威を現はし給ひしゆ鬼雲彦は驚きて 雲を霞と逃げ去りぬ妾姉妹八人は 顕恩郷を立ち出でておのもおのもに身を窶し 三五教の御教を四方に伝ふる折柄に 魔神の為めに妹はなやまされつつ波の上 遠く流れる千万の艱みを凌ぎ大神の 大道を伝へ進み行くあゝ健気なる姉妹よ 今や何処の野に山にいとしき妹は逍遥ふか あゝ惟神々々神の御霊の幸はひて 一日も早く姉妹が無事なる顔を寄り合せ 楽しむ時を松の世を五六七の神の御前に 偏に願ひ奉る吾背の君は皇神の 大御詔を蒙りて桂の滝に出でましぬ あゝ惟神々々皇大神の御恵に 吾背の君が百日日の禊身をやすく済ませかし 愛子の姫は謹みて清き玉琴かき鳴らし すがすがしくも願ぎ奉るあゝ惟神々々 御霊幸はひましませよ』 と歌ふ声、二人の耳に透き通る様に聞え来る。 芳公『もしもし玉公さま、今のお声は愛子姫様ぢや御座いませぬか。あのお歌の様子では、吾々の御先生黒姫様の御探ね遊ばす、高山彦さまではない様な気が致しました。一体此方の御主人は何処から御入来になりましたか』 玉公『此神館は二三年前まで、天教山より降りましたる天使八島別命様御夫婦がお守りになつて居りましたが、天教山より日の出別神様お越し遊ばし、木花姫命様の御用が忙しいから、元の如く天教山に帰つて呉れよとの御神勅で、日の出別神様と共に、此都をお立ち退き遊ばされ、其後へ神素盞嗚大神様が天照大御神様の厳の御霊と生れませる活津彦根命様を、お連れ遊ばして御入来になり、素盞嗚尊様の総領息女の愛子姫様を妻となし、お帰り遊ばしたので御座います。他の宣伝使とは事変はり、随分御神徳の高い神司で、畢竟生神様で御座いますよ』 房公『ハテナア、何が何だかサツパリ訳が分らなくなつて来ました。オイ芳公、コリヤ一つ考へねばなるまいぞ』 芳公『まるで火の国峠の天狗に魅まれた様な話だなア。こりや斯うしては居られない、黒姫さまの所在を探した上で何とか思案をせにやなるまい……玉公さま、有難う御座いました。又お邪魔を致します。奥様にも宜しく……』 と云ひ捨て慌しく蓑笠をつけ金剛杖をつき乍ら表門指して出でて行く。 (大正一一・九・一七旧七・二六北村隆光録)
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霊界物語 35_戌_黒姫のアフリカ物語2 23 清交 第二三章清交〔九八七〕 火の国館の門前近く、宣伝歌を歌ひ乍ら入り来る一人の宣伝使は玉治別命なり。 玉治別『神が表に現はれて善神邪神を立別ける 恋に迷うた黒姫が自転倒島の聖場に 朝な夕なにまめやかに仕へつとむるハズバンド 高山彦の神司筑紫の島に渡りしと 心一つに思ひつめ百の悩みに堪へ乍ら 三五教の宣伝を兼ねつつ来る浪の上 筑紫ケ岳をふみ越えて岩の根木の根よけ乍ら 人跡稀なる谷の路向日峠や屋方村 後に眺めて荒井岳二人の御供を伴ひて 火の国一の急坂を登りつ下りつ進み来る あゝ惟神々々黒姫司が今ここに 現はれ来ることあらばさぞや驚き給ふべし 吾背の君と只管に思ひし高山彦神は 真の夫に非ずして思ひもよらぬ人の夫 天照します大神の御手の手巻にまかせたる 五百津美須麻琉々々々々の玉の精気にあれましし 活津彦根の神司高国別と聞くならば さすがに気丈の黒姫もさぞや驚き玉ふらむ 思へば思へばいぢらしい一日も早く片時も 黒姫さまの迷ひをば晴らし助けて自転倒の 神の集まる珍の島綾の高天につれ帰り 高山彦と諸共に睦び親しみ皇神の 誠の道に仕へまし麻邇の宝珠の神業に 清くも仕へさせ玉へあゝ惟神々々 神素盞嗚大神の御言を畏みフサの国 ウブスナ山の山頂に大宮柱太しりて そそり立ちたる斎苑館聖地を後にはるばると エデンの河を船に乗りフサの海原横断し 筑紫の島の熊襲国建日の港に上陸し 黒姫さまを助けむとここ迄進み来りけり あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ』 と歌ひ乍ら、門前近く現はれける。 門番の軽公は此宣伝歌に勇み立ち、威儀を正して門を開き、 軽公『玉治別神の命の出でましと 知るより心勇みけるかも。 高山彦の神の命の後追うて 黒姫司出でますと聞く。 黒姫の御供の人が今二人 力なくなく帰りましけり。 高国別神の命の神司 桂の滝に出でましにけり。 玉治別神の命よ速かに 鉄門をくぐり奥に入りませ。 惟神神の恵の深くして 今日は尊き神に会ふ哉。 有難や玉治別の出でましに 御空も清く晴れ渡りけり。 大空の星にも擬ふ玉治別の 神の身魂の美しき哉』 と口を極めて讃美し、歓迎してゐる。 玉治別『美しき火の国都の鉄門守る 軽の君こそ雄々しき男の子よ。 われこそは玉治別の神司 館の君に会はまくぞ思ふ。 高国別神の命は雄々しくも 桂の滝に出でますと聞く。 さり乍ら愛子の姫はおはすらむ われは代りて言問ひたくぞ思ふ』 門番の軽公は、 軽公『神館主の君はいまさねど 愛子の姫に会はせまつらむ。 玉治別神の命よわれは今 君の御為に導きまつらむ』 玉治別は、 玉治別『今こそは人の情の知られけり 鉄門を守る人の言葉に。 黒姫はやがては此処に来ますらむ 易く通せよ鉄門守る人』 軽公『黒姫を易く通さむ術なけど 君のことばに詮術もなし。 君ならで誰に開かむ此鉄門 主の君の許しなくして』 玉治別は、 玉治別『いざさらば珍の館へ進み申さむ 心も足も軽公の恵に』 かく応答し乍ら、いつの間にか玄関口につけり。軽公は受付の玉公に向ひ歌を詠む。 軽公『玉公よ今より表の鉄門守れ わはこれより受付とならむ』 玉公『いざさらば表に立ちていかめしく みことのままに鉄門守らむ』 と、つツと立つて元の門番をなすべく表に出て行く。 この軽公は、津軽命といふ館の主の股肱と頼む宣伝使である。津軽命は玉治別命に向ひ又詠ふ。 津軽命『いざ早く奥の一間に通りませ 愛子の姫は汝を待ちます』 玉治別『神館主の神はまさねども いろとの君にものや申さむ』 と、津軽命に導かれ、奥の間さして進み入る。愛子姫は玉治別命の入来と聞き、あわただしく衣紋をつくろひ髪をなで上げ、しづしづとして此方に向つて歩み来る。長き廊下に差かかる折、玉治別にパツタリ出会ひ、 愛子姫『世の人を導き救ふ愛子姫 汝迎へむと此処に来れり。 汝が命これの館に来ますぞと きくより日々に待ちあぐみたるよ。 うるはしき玉治別の神司 高き御名こそ世に響きけり。 あゝ清き神の姿を目のあたり 拝み仰ぐ今日ぞ嬉しき』 玉治別はこれに答へて、 玉治別『名は高き火の国都の神司 汝はいろとにおはすか天晴れ。 素盞嗚の神の尊の愛娘 姫の命を慕ひ来にけり。 うるはしき其御心の現はれて 御姿さへも輝き玉へる。 照りわたる天津御空の月の如 清き御姿今拝むかな』 と詠ひ乍ら、愛子姫、津軽命に前後を守られ、一間の内に悠々として進み入る。奥の一間に三人は鼎座して、互に打とけ嬉しげに語り合ふ。 愛子姫『玉治別の宣伝使様、ようマアはるばると訪ねて来て下さいました。夫高国別は折悪しく、今朝桂の滝へ御禊の為に、百日の心願をこめて参りました不在中で、誠に不都合なれども、ゆるゆる御休息の上、国々の御珍らしいお話を聞かせて下さいませ』 玉治別『ハイ有難う御座います』 と、愛子姫が妹の所在を一々物語り、且又其活動振を詳細に伝へけるに、愛子姫はえも云はれぬ愉快なる面色にて、 愛子姫『玉治別さま、随分あなたも御苦労なさいましたなア。神様の為世人の為、どうぞ御壮健にて御神務にお仕へ下さいますやう祈ります』 玉治別『ハイ有難う御座います。私も不運な身の上、父母に捨てられ、ホンの独身者で御座いますが、三五教に帰順いたしましてより、国依別さまの妹を女房に貰ひうけ、今は夫婦が力を協せて、神様の御用を一心に致して居ります。イヤもう苦労といつても、神さまと道伴れの苦労で御座いますから、何処の国へ参りましても、真に愉快でたまりませぬ』 愛子姫『あゝ左様で御座いますか。妾も何とかして妹の様に世界各国を巡教いたしたく存じまするが、何を云つても夫ある身の上、思ふやうには参りませぬ。身魂の因縁相応の御用より出来ないものと見えますなア』 玉治別『いかにも左様で御座いませう。時に三五教の黒姫さまは、高山彦といふ御主人が御座いますが、綾の聖地に於て、下らぬことから喧嘩をなされまして、高山彦さまは、筑紫の島へ行くと云ひ切つた儘、何処かへお隠れになりました。そこで黒姫さまが、高山彦さまは屹度筑紫島に御座ることと思召され、はるばると海山越えて此国へ来てゐられます。高国別さまの又の御名が高山彦さまと申すので、黒姫さまは吾夫とのみ思ひつめ、やがて此処へお越しになるでせうから、どうぞお願ひで御座います。奥へ御通し下さいまして、一応話をきいて上げて下さいませ。玉治別が御願ひで御座います』 愛子姫『それは又妙な事で厶いますなア。黒姫さまの御主人の御名もヤツパリ高山彦さまで厶いましたかなア。其高山彦さまの御所在はお分りになつて居りますか』 玉治別『高山彦さまはアフリカへ御渡りかと思ひきや、依然として聖地に現はれ、神さまに朝夕お仕へをして居られます。私はそれを見るにつけ、黒姫さまの御心根が可哀相になり、神素盞嗚大神さまのまします斎苑の館へ一旦参りまして、更めてここへ渡り、黒姫さまに巡り会つて、知らして上げたいと思ひ、宣伝を兼ねお迎へ旁参りましたので御座います』 愛子姫『それはマア御親切な事で御座います。黒姫さまがあなたの御心底をお聞きになられたら、さぞお喜びになることでせう』 玉治別『ハイ有難う、私の伺ひでは、このお館にて余り遠からぬ内、黒姫さまに御面会が出来るやうに存じます』 愛子姫『妾も左様に心得ます。どうぞ早くお越し下さると宜しいがなア』 かく話す折しも、門番の玉公はあわただしく入り来り、 玉公『三五教の黒姫と云ふ婆アさまが、五人の荒男を連れて、表門へ現はれ、此門を開け……と言つて居りまする。如何致しませうかなア』 津軽命は言下に、 津軽命『玉公御苦労だが、早く表門をひらき、黒姫さま一行を此処へ御案内申せ』 玉公は不審な面持ちにて、 玉公『へー、あんな悪い奴を沢山伴れた婆アでも、通して宜しいか。高山彦さまの女房だなんぞと言つてゐましたよ。モシもあんな婆アさまを引つぱり込まうものなら大変ですよ。第一愛子姫さまが御迷惑を遊ばすでせう』 津軽命『構はないから、早くお迎へ申して来い』 玉公『ハイ』 と答へて門番は表をさして走り行く。 (大正一一・九・一七旧七・二六松村真澄録)
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霊界物語 37_子_出口王仁三郎自叙伝1 序 霊界物語も凡百の艱難を排除し、漸く三十六巻、原稿用紙百字詰四万五千枚、着手日数百八十日にて完結を告げました。併し乍ら過去、現代、未来に於ける顕、神、幽三界の際限無き物語なれば、到底三輯や四輯にてその大要を述べ尽す事は最も至難事であります。神命に依れば、四万五千枚の原稿即ち四百五十万言の三十六巻を一集(実は三輯)としても、優に之を四十八集口述せなくては、徹底的に解く事は出来ないとの話であります。さうすれば三百六十字詰四百頁を一巻として一千七百二十八巻を要し、瑞月が記録破りの大速力を以て、一年に三輯づつ口述するも、今後四十八年を要する訳になります。実に某新聞紙の評する如く阿房陀羅に長い物語でありますから、神界へ御願致して可成十輯位にし百二十巻位にて神示の大要を口述して見たいと思ひます。就ては瑞月王仁が霊界に仕へたる経路をも予め述べて置く必要ありと認め、第四輯『舎身活躍』の初に於て、『霊主体従』第一巻(第一篇)に漏れたる穴太に於ける幽斎修行の状況や、綾部に来つて出口教祖に面会し神業に奉仕したる次第をも、略述べて読者の参考に供する事と致しました。又この『舎身活躍』は『海洋万里』の継続的物語で、神素盞嗚尊が数多の神人を教養し、之を宣伝使として、四方の国々嶋々に遣はし、八岐大蛇や邪神悪狐の霊魂を言向和し、終に出雲の日の側上に於て、村雲の剣を得て天照大御神に奉り、五六七神政の基礎を築き固め、天下万民の災害を除き救世の大道を樹立したまひし、長大なる物語であります。アヽ惟神霊幸倍坐世。 大正十一年十月十二日於五六七殿
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霊界物語 37_子_出口王仁三郎自叙伝1 01 富士山 第一章富士山〔一〇一三〕 ◎万葉集三の巻山部赤人望不尽山歌[※底本では「望」の直後に返り点の二点の記号が、「隙行く駒」に一点の記号が入る。]に 天地の分れし時ゆ神佐備て、高く貴き、駿河なる布士の高嶺を、天原、振放見れば度る日の、蔭も隠ろひ、照月の、光も見えず、白雲も伊去はばかり、時自久ぞ、雪は落ける、語つぎ、言継ゆかむ、不尽の高嶺は。 ◎反歌 田児の浦ゆ、打出で見れば真白にぞ、 不尽の高嶺に雪は零ける。 ◎万葉集、隆弁の歌に めに懸けて、いくかに成ぬ東道や、 三国をさかふ、ふじの芝山。 ◎夫木集、光俊朝臣の歌に こころ高き、かふひするがの中に出で、 四方に見えたる山は布士の根。[※鎌倉時代に成立した『夫木和歌抄』巻二十(雑二)に収録されている歌。「かふひ」は「甲斐」、「するが」は「駿河」のこと。/『国歌大系第21巻』(1930年)https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1884175/334「こゝら高きかふひ駿河の中に出でて四方にみえたる山はふじのね」/日文研DBhttps://lapis.nichibun.ac.jp/waka/waka_i070.html「ここらたかきかふひするかのなかにいててよもにみえたるやまはふしのね」] ◎よみ人知らず 布士の山一つある物と思ひしに かひにも有りてふ、駿河にもありてふ ◎ 天雲も伊去はばかり飛ぶ鳥も翔も上らず燎火を雪もて減、落雪を火もて消つつ言ひも得ず、名も知らに霊くも座神かも。 ◎源光行の歌に 富士の嶺の風に漂ふ白雲を 天つ少女の袖かとぞ見る ◎万葉十四の駿河歌に 佐奴良久波多麻乃緒婆可里、古布良久波 布自能多可禰乃、奈流佐波能其登[※万葉集14歌番号3358「さ寝らくは玉の緒ばかり恋(こ)ふらくは富士の高嶺の鳴沢のごと」〔ウィキソース〕] ◎ 麻可奈思美、奴良久波思家良久、奈良久波 伊豆能多可禰能、奈流佐波奈須与[※万葉集14歌番号3358S1「ま愛(かな)しみ寝(ぬ)らくはしけらくさ鳴(な)らくは伊豆の高嶺の鳴沢なすよ」〔ウィキソース〕「奈良久波」の「奈(こう)」は間違っている。] ◎続古今集、後鳥羽院の歌 けぶり立、思ひも下や氷るらむ、 ふじの鳴沢、音むせぶ也 ◎新拾遺集、慈円の歌、 さみだるる、ふじのなる沢、水越て 音や煙に立まがふらむ ◎同権中納言公雅の歌 飛螢思ひはふじと鳴沢に うつる影こそ、もえばもゆらむ ◎伊勢家集に 人しれず思ひするがの富士のねは 我がごとやかく絶えず燃ゆらむ ◎ はては身の富士の山とも成りぬるか 燃ゆるなげきの煙たえねば ◎古今集に 人知れず思ひを常にするがなる 富士の山こそわがみなりけれ ◎同集に 君と云へばみまれ見ずまれ富士のねの めづらしげなく燃ゆるわが恋 ◎同集に 富士のねのならぬ思ひにもえばもえ 神だにけたぬむなし煙を[※古今集1028紀全子(きのぜんし)の歌「富士の嶺のならぬ思ひに燃えば燃え神だに消(け)たぬ空(むな)し煙を」] ◎能宣集に 草深みまだきつけたる蚊遣火と 見ゆるは不尽の烟なりけり ◎重之の集に 焼く人も有らじと思ふ富士の山 雪の中より烟こそたて ◎拾遺集に 千早ぶる神も思ひの有ればこそ 年経てふじの山も燃ゆらめ ◎大和物語に ふじのねの絶えぬ思ひも有る物を くゆるはつらき心なりけり ◎ 誰が於に靡き果ててか富士の根の 煙の末の見えず成るらむ ◎ 朽果てし名柄の橋を造らばや 富士の煙の立たずなりなば ◎十六夜日記に 立別れ富士の煙を見ても尚 心ぼそさのいかにそひけむ ◎其返し かりそめに立ち別れても子を思ふ おもひを富士の烟とぞ見し ◎ 問きつる富士の煙は空に消えて 雲になごりの面蔭ぞ立つ ◎西行の歌 風に靡く富士の煙の空に消えて 行く方も知らぬ我が心かな ◎源頼朝卿の歌 道すがら富士の煙もわかざりき 晴るるまもなき空のけしきに ◎ 時知らぬ富士の煙も秋の夜の 月の為にや立たずなりけむ ◎ 北になし南になして今日いくか 富士の麓を巡りきぬらむ ◎ みせばやな語らば更に言のはも 及ばぬふじの高ね成りけり ◎ 富士のねの烟の末は絶えにしを ふりける雪や消えせざるらむ ◎ きさらぎや今宵の月の影ながら 富士も霞に雲隠れして ◎尋常小学国語読本にも ふじの山 あたまを雲の上に出し 四方の山を見おろして かみなりさまを下にきく ふじは日本一の山 青空高くそびえたち からだに雪の着物着て 霞のすそを遠くひく ふじは日本一の山 以上の如く我富士山は古来各種の歌人に依つて其崇高雄大にして、日本国土に冠絶し、日本一の名高山と称され、天神地祇八百万の神の集り玉ふ聖場となり、特に木花咲耶姫命の御神霊と崇敬されて居る。三国一の富士の山と称へ、日本、唐土、天竺の三ケ国に於ける第一位の名山となつて居た。併し乍ら其富士山と云ふは、十数万年以前の富士山とは其高さに於て、又広さに於ても、非常な相違がある。現在の富士山は皇典に所謂高千穂の峰が僅に残つてゐるのである。昔天教山と云ひ、又天橋山と云つた頃は、西は現代の滋賀県、福井県に長く其裾を垂れ、北は富山県、新潟県、東は栃木、茨城、千葉、南は神奈川、静岡、愛知、三重の諸県より、ズツと南方百四五十里も裾野が曳いて居た。大地震の為に南方は陥落し、今や太平洋の一部となつて居る。 此地点を高天原と称され、其土地に住める神人を、高天原人種又は天孫民族と称へられた。現在の富士山は古来の富士地帯の八合目以上が残つて居るのである。周囲殆ど一千三百里の富士地帯は青木ケ原と総称し、世界最大の高地であつて、五風十雨の順序よく、五穀豊穣し、果実稔り、真に世界の楽土と称へられて居た。其為め、生存競争の弊害もなく、神の選民として天与の恩恵を楽みつつあつたのである。 近江の琵琶湖は富士地帯の陥落せし時、其亀裂より生じたものである。そして古代の富士山地帯は殆ど三合目四辺に現代の富士の頂上の如き高さを保ち雲が取巻いて居た。故に天孫民族は四合目以上の地帯に安住して居た。外の国々より見れば、殆ど雲を隔てて其上に住居して居たのである。皇孫瓊々杵命が天の八重雲を伊都の千別に千別て葦原の中津国に天降り玉ひきといふ古言は、即ち此世界最高の富士地帯より、低地の国々へ降つて来られた事を云ふのである。決して太陽の世界とか、金星の世界から御降りになつたのでない事は勿論である。 顕国の御玉延長して金銀銅の救の橋の架けられし時も、最高の金橋は富士山上に高さを等しうしてゐた。又ヒマラヤ山は今日では世界最高の山と謂はれてゐるが、其時代は地教山と言ひ又銀橋山とも云つて、古代の富士の高さに比ぶれば、二分の一にも及ばなかつたのである。現代の富士山は一万三千尺なれ共、古代の富士は六万尺も高さがあつたのである。仏者の所謂須弥仙山も此天教山を指したものである。 現代の清水湾及遠州灘の一部の如きは、富士山の八合目に広く展開せる大湖水であつて、筑紫の湖と称へられてゐた。又同じ富士山地帯の信州諏訪の湖は須佐の湖と云つたのである。筑紫の湖には金竜数多棲息して、大神に仕へ、風雨雷電を守護してゐた。又玉の湖には白竜数多棲息して、葦原の瑞穂国(全世界)の気候を順調ならしむべく守護してゐたのである。そして素盞嗚尊の神霊がこれを保護し玉ひ、富士地帯の二合目あたりに位地を占めてゐた。太古の大地震に依つて、此地帯は中心点程多く陥没し、周囲は比較的陥没の度が少かつた。其為現代の如く、高千穂の峰たる現富士を除く外、海抜の程度が殆ど平均を保つ事になつたのである。現代の山城、丹波などは、どちらかと云へば地球の傾斜の影響に依つて少しく上つた位である。 丹波は元田場と書き、天照大御神が青人草の食いて活くべき稲種を作り玉うた所である。故に五穀を守ると云ふ豊受姫神は、丹波国丹波郡丹波村比沼の真名井に鎮座ましまし、雄略天皇の御代に至りて、伊勢国山田に御遷宮になつたのである。御即位式の時、由紀田、主基田をお選みになるのも、現今の琵琶湖以西が五穀を作られた神代の因縁に基くからである。由紀といふ言霊は安国の霊反しであり、主基といふ言霊は知ろし召す国の霊反しである。之を見ても丹波の国には神代より深き因縁のある事が分るのである。 又小亜細亜のアーメニヤ及びコーカス山、エルサレム、メソポタミヤ及びペルシヤ、印度の一部は、富士地帯の如く高く雲上に突出してゐた。印度の如きも天竺と称へられて、其地方での最高地点であつたが、富士山の陥没と同時に、此地も亦今の如く陥落したのである。アーメニヤといふ事は天の意味又は高天原の意味である。エルサレムといふ神代の意義はウズの都、天国楽土の意味がある。茲に国祖国治立尊は始めて出現され、大八洲彦命の敵軍に囲まれ玉ひし時、国治立尊が蓮華台上より神力を発揮して、悪魔の拠れる天保山を陥落せしむると同時に天教山を現出せしめ玉うたことは、霊界物語第一巻に述ぶる通りである。又エルサレムは現今のエルサレムではない。アーメニヤの南方に当るヱルセルムであつた。そしてヨルダン河も、現今のヨルダン河とは違つてゐることは勿論である。死海の位置もメソポタミヤの東西を挟んで流れ落つる現今の波斯湾がそれであつた。 又現今の地中海は此物語に於て、古代の名を用ゐ、瀬戸の海と称へられてゐる。此瀬戸の海はアーメニヤの附近迄展開してゐた。併し乍らこれも震災の為に瀬戸の海の東部は陸地となつて了つたのである。故に此物語は地球最初の地理に依つて口述するものであるから、今日の地理学の上から見れば、非常に位置又は名義が変つてゐることを予め承知して読んで貰ひたいのである。 『舎身活躍』の最初に当りて、此富士山(太古の天教山)を述べたのは瑞月が入道の最初、富士の天使松岡神に霊魂を導かれ、此太古の状況を見せて貰ひ、其肉体は高熊山の岩窟に守られて居つた因縁に依つて、物語の始めに、富士山の大略を口述するのが順序だと思ふからである。 『舎身活躍』は瑞月が明治卅一年の五月、再び高熊山に神勅を奉じて二週間の修業を試み、霊眼に映じさせて頂きし事や、過、現、未の現幽神の三界を探険して、神々の御活動を目撃したる大略を口述する考へである。 あゝ惟神霊幸倍坐世。 (大正一一・一〇・八旧八・一八松村真澄録)
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霊界物語 37_子_出口王仁三郎自叙伝1 19 逆襲 第一九章逆襲〔一〇三一〕 不図配達して来た日出新聞の広告欄を見ると、壮士俳優募集と云ふ立派な広告が出て居た。自分は一生懸命に其広告を見詰めて居ると、多田琴がポンと飛び上り神憑り[※初版・愛世版では「神憑り」、校定版では「神懸り」。]になつて、 多田『俺は男山の眷族小松林命であるぞ。今其広告にある通り、神界の仕組で正義団と云ふ壮士芝居の団体が募集されて居るのだ。お前はこれから、今迄苦労して覚えた霊術を応用して芝居の役者になれ。神が守護して如何な不思議な事でもさしてやるから、川上音次郎以上の名優にしてやらう。如何ぢや、神の申す事を承諾するか、但は否と申すか、直に返答をして呉れ』 とニコニコ笑ひ乍ら強制的に問ひかける。喜楽は此広告を見て、 『俺も一度壮士役者になつて見たいものだ』 と思ひつめて居た際であるから、一も二もなく喜んで、 喜楽『ハイ、神様さへお許し下されば壮士役者になります』 と速座に答へた。さうすると小松林と名乗る憑霊は、嬉しさうな顔して言葉まで柔しく、 小松林『流石はよく先の見える、先の分つた審神者だ。サア愚図々々してると応募者がつまれば駄目だから、今夜直様立つて行け。さうして金を十五六円ばかり積りをして行け』 と云ひ渡す。 ありもせぬ金を寄せ集めてヤツと十五円拵へ、保津の浜から、舟に乗つて谷間を下り嵯峨に着き、それから竹屋町富小路の宿屋に尋ねて行つた。正義団長と称する男、名は忘れたが直様二階へ案内して呉れ、入会料として十円を請求する。直様十円を放り出し種々と手続きを済まして、それから安い宿を探し、日々柔術の型を稽古したり、科白を覚えたり、十二三人の男がやつて居た。愚図々々して居ると五円の金が無くなつて了ふ。さうして臀部に大きな瘍が出来てビクとも出来ず、うづいて堪らない。 (喜楽)『こんな事では芝居どころの騒ぎぢやない。何とかして吾家へ帰りたいものだが歩いて去ぬ事は出来ず、俥賃はなし、一層の事、枳殻邸の附近に弟の政一が子に行つて居るから、其処迄俥で運んで貰ひ世話にならうかなア』 と考へ込んで居ると腹の中から又もや玉ごろが喉元へつめ上つて来た。さうして、 『アハヽヽヽ』 と可笑しさうに笑ひ出す。 喜楽『足の腫物が痛くて何どこでもないのに、可笑しさうに腹の中から笑ふ奴は何枉津ぢやい』 と呶鳴つて見た。腹の中からさも可笑しさうに小気味良さ相の声で、 『イヒヽヽヽ』 と連続的に十分間程笑ひつづける。さうして、 松岡『俺は松岡ぢや、貴様が新聞の広告を見て、役者になり度相にして居るから、一寸改心の為に嬲つて見たのだ。本当に日本一の大馬鹿だのう、オホヽヽヽ』 と笑ひ出す。進退維谷まつた喜楽は如何する事も出来ず、宿賃を三日分三円六十銭払ひ、丹波へ帰らうとして宿の門口を立つて出た。知らぬ間に臀部の大きな腫物は嘘をついた様に治つて居た。それきり壮士俳優になつて見度いと云ふ心は、スツカリ消え失せ、一心不乱に神界の御用に尽すと云ふ心になつたのである。 同じ穴太の斎藤某と云ふ紋屋の息子が、肺病で苦しみ医薬の効もなく困つて居るから、其処へ助けに行つたら如何だ……とおいよと云ふ婆サンが出て来て、頻りに勧めるので、喜楽も、 『彼処の息子の計サンの病を癒してやつたら、チツと村の者も気がつくだらう。信仰をするだらう』 と思ふたので、朝早くから其家に羽織袴で訪問して、 喜楽『計サンの病気平癒をさしてやりませうか』 と掛合ふて見た。此処の奥サンはお悦と云ひ、随分口の八釜しい女で、村の人から雲雀のお悦サンと仇名をとつて居た。お悦サンは喜楽の姿を見て目を円うし、 お悦『これこれ、飯綱使ひの喜三ヤン、何ぞ用かい、大方お前は、家の計の病気を拝んでやらうと云つて来たのだらう。アヽいやいやいや、神さまのかの字を聞いても腹が立つ、家の親類は天理サンに呆けて家も倉もサツパリとられて了つた。近はんは稲荷下げに呆けて相場して、家も屋敷も田地迄売つて了つた。此時節に神々吐す奴に碌な者はない。お前サンも人の処を一杯かけようと思ふて来たのんだらう。サア何卒帰つて下さい。然し喜楽サン、俺が斯う云ふとお前は腹を立てて、あたんに飯綱をつけて帰るかも知れぬが、憑けるなら憑けなされ。俺ん所は黒住さまを祀つてあるから、飯綱位に仇はしられませぬから大丈夫ぢや。黒住さまは天照皇大神宮さまぢや、天狗サンや四足とはてんからお顔の段が違ひますぞえ。サア早う去んで下され。其処等がウサウサして来た。又計の病気が重うなると困るから……サア去んでと云ふたら去んでおくれ。エー尻太い人ぢやなア、蛙切りの子は蛙切りさへして居れば宜いのに、どてらい山子を起して金も無い癖に、人の金で乳屋をしたり、其乳屋が又面白くない様になつたので、そろそろ商売替へをして飯綱使ひをするなんて、お前にも似合はぬ事をするぢやないか。昨日も次郎松サンが出て来て何も彼も云ふてをりましたぞえ。薩張り化けの皮が剥けて居るぢやないか。亀岡の紙屑屋へは如何でしたな』 と口を極めて罵詈嘲弄する。喜楽はむかついて堪らぬけれど、 『此処が一つ辛抱だ。こんな八釜しい女の誤解をといておかねば将来の為め面白くない』 と思ふたので、色々雑多と神様の道を説いて聞かせたが、てんで耳をふさいで聞かうとせぬ。お悦サンは半泣声を出して、 お悦『エーエー煩さい。何程落語家の喜楽サンが甘い事云つても、論より証拠、現在身内の次郎松サンが証拠人だから……エー穢はしい、早く去んで下さい。これお留、塩もつておいで……』 と下女の名迄呼びたてて人を塩でもかけてぶつ帰さうとして居る。仕方が無いのでトボトボと吾家を指して帰つて来た。 小幡橋の袂まで帰つて来ると、次郎松サンが真青な顔して出て来るのに出会つた。次郎松はついにない優しい顔をして、 次郎松『もしもし上田先生、一寸頼まれて下され。二三日前から家の阿栗(一人娘の名)に狐が憑いて囈言を云ふたり、雪隠へ行つて尻から出るものを手に掬ひ、コロコロ団子を拵へて仏壇に供へたり、妙な手付で躍つたり、跳ねたりした挙句は、布団をグツスリ被つて寝通しぢや。モウこれからお前には敵対はぬから何卒堪忍して呉れ。あんまり俺が反対するのでお前が怒つて、それ……あの……何々を憑けたのぢやらう。もうこれから屹度お前の云ふ通りにするから、何々を連れて行つて下され。ナア喜楽先生、何卒頼みますわ』 と橋の上で大きな声で云ふ。人に聞えては態が悪いと思ふては、キヨロキヨロ其処等を見廻して居ると、松サンは頓着なしに娘の病気の事を喋り立てる。仕方が無いので喜楽は、 喜楽『兎も角行つて見ませう』 と先に立つて次郎松の家へ行つた。おこの婆サンは喜楽の顔を見て、いきなり、 おこの『これ喜楽サン、お腹が立つたぢやらうが何卒怺へてお呉れ。昨夜から阿栗が喜楽サン喜楽サンと八釜しう云ふて仕様がない。あまり宅の松が神さまの悪口を云ふもんだから、お前が怒つて一寸……したのだらう。何と云ふても隠居母家の間柄、宅の難儀はお前の処の難儀だ、又お前の処の難儀は矢張俺の宅の難儀だ。悪い事せずに、早う飯綱を連れて去んでくれ。年寄の頼みぢやから……たつた一人の孫があんな態になつてるのを見て居る俺の心はいぢらしいわいなア、アンアンアン』 と泣き出す。喜楽はムツとして、 喜楽『これ、おこのサン、そんな無茶な事云ひなさんな、殺生ぢやないか。誰がそんな物を使ふものか、自分の宅に置いた奉公人でさへも仲々言ふ事を聞かぬぢやないか。仮令そんな狐があるにした処で人間の云ふ事を聞きさうな筈がない。あんまり見違ひをしておくれな、わしは腹が立つ。村中の者に飯綱使ひぢやと悪く云はれるのも、皆松サンが仕様もない事を触れて歩くから俺が迷惑をしてるのぢや。結構な神さまの名まで悪くして堪らぬぢやないか』 おこの『その腹立ちは尤もぢやが、外ぢやないから何卒機嫌を直して阿栗の病気を助けてやつてくれ。これ松、お前もチツと喜楽サンに頼まぬかいな』 奥の間で阿栗と云ふ娘は、ケラケラケラと他愛いもなく狐が憑いて笑ふて居る。助けてやつても悪く云はれる、助けてやらねば尚悪く云はれる、こんな男にかかつたら如何する事も出来ぬ。エー仕方がないと病人の前へ端坐して天津祝詞を奏上し、神言を静に唱へて一二三四……と天の数歌を四五回繰返した。病人はムクムクムクと立ち上がり、矢庭に跣足のまま庭に下り、門口の戸に頭を打つて『キヤツ』と云つたまま仰向けに倒れた。此時高畑の狐が退いたのである。それから娘の病気はスツカリ癒つて了つた。松サンは口を尖らして、 次郎松『これ、喜楽サン、お前は何と云ふ悪戯をする男だ。人の処の娘へ狐を憑けて長い事苦しめ、知らぬかと思ふて居つたが、宅の母者人[※「母者人」とは母親を親しみを込めていう言葉。]や、此松サンの黒い目でサツパリ看破られ、しやう事なしに憑けた狐をおひ出したのだらう。今度はこれで怺へてやるが、一人娘を又こんな目に遭はすと警察へつき出して了ふぞ。サア飯綱使ひ、早う去ね、何程仇をしようと思ふても、宅には金比羅さまのお札が此通り沢山にあるから、これから金比羅さまを祈つてお前の魔術が利かぬ様にしてやる。お前も、もういい加減に改心をして元の乳屋になり、年寄やお米はんに安心をさしたら如何ぢや。お前処が難儀をすると矢張黙つて見捨てておく訳には行かぬから、親切に気をつけるのだから悪う思ふ事はならぬぞ』 と娘を助けて貰うてお礼を云ふ処か、アベコベに不足のタラダラを並べ罵詈を逞しうし、お為めごかしの御意見を諄々と聞かして呉れた。松サンは其翌日から益々猛烈に反対をしだし、 次郎松『宅の娘に喜楽がド狐を憑けて苦しめよつた。到頭化けが現はれて俺に責め付けられ、仕様事なしに骨折つて憑けた狐をおひ出して連れて去によつた。俺は親類で居つて云ふのだから嘘ぢやない。みな用心しなされや』 と其処等中を触れ歩いた。喜楽こそ宜い面の皮である。 (大正一一・一〇・一〇旧八・二〇北村隆光録)
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霊界物語 38_丑_出口王仁三郎自叙伝2 01 道すがら 第一章道すがら〔一〇三八〕 『天帝一物を創造す。悉く力徳による。故に善悪相混じ美醜互に相交はる』 これ道の大原の初発に示されたる聖句である。つらつら考ふるに、蒼空を仰望しても海原を見ても、山川虫魚を見ても、悉く善悪美醜の区別が様々あつて、『此世界は至善至美の神様がお造りになつた以上は、悪といふ事は微塵もなく、至善至美の物ばかりであらねばならぬ』と云ふ人がありますが、決してさうはゆきませぬ。或人が、喜楽に向つて詰問して曰く、 『天帝果して全智全能にして、万物を造りかつ真善美を好むものならば、何故其全智全能の神徳によつて、美なるもの善なるもののみを拵へて、醜悪なるものを拵へぬ筈である。神の意志果して真善美を愛するならば、元より善ばかりを拵へて置けば、別に悪を造つておいて悪を改めしめむとて宣伝に努力するの必要は無いではないか。要するに天帝は自分から醜悪なるものを造り、其醜悪を嫌ふと云ふのは自家撞着も甚だしい矛盾である。吾等はここに至つて全智全能の神を疑はざるを得ず』 と云つた人が沢山にあつた。然し乍ら何人と雖も今日迄の諸々の宗教、倫理、道徳説が貧弱なる頭悩に浸み込んで居る人の考へから見れば、実に尤も至極の疑問である。喜楽等も少年の頃から此問題には大変に心を砕いて来たものである。時の古今を問はず、洋の東西を論ぜず、凡ての哲学者、宗教家も此問題については頻りに研究をして居た様である。世界皆善論を唱へるものもあれば、世界皆悪論を唱へるものも現はれて居る。又『此世は夢の浮世ぢや』と云つて厭離穢土と称し、『未来の天国浄土を楽しむのが人生の大目的だ』などと区々の説を立て、所説紛々として落着く所を知らず、宙に迷ふて居る姿である。古今の学者が一人として今日に至る迄、大宇宙の本体を捉え、人生の真目的を諒解したる者は無い様である。仏教にしても儒教にしても、現代我国の十三派の神道宗教にしても、其他種々雑多の宗教にしても、決して宇宙の真相を解決し得た者は無い。然し乍ら尊い事には、我国には皇祖皇宗の御遺訓なる古事記、日本書紀其他の古書が伝はり、言霊の明鏡が歴然として輝き、宇宙の真理を解決すべき宝典に乏しくはなけれども、闇黒なる今日の思想界に於ては、此真理を諒解する丈けの偉人も賢哲も学者も現はれて居ないと云ふ事は、国家社会の為めに実に慨嘆の至りである。 喜楽は幼時より我国体の淵源を極めむとし、且明治卅一年以後今日に至る迄、殆ど廿五年間、艱難辛苦を積み神界の真相の一端を極めた結果、宇宙真理の一部を『霊界物語』として発表する事となつたのである。道の大原の聖句にも、天地間の万物に善悪美醜の混交せるは、全く力徳の塩梅によるものと断定を下してあるのは、実に万古不易の真理である。 偖此力徳と云ふ事は、一朝一夕に説き明す訳には行かぬ。約言すれば、動、静、解、凝、引、弛、合、分の八力の活動の如何によつて、善悪美醜大小強弱が分れるのである。『人は天地の花、万物の霊長』と称へられて居るが、大本では一歩進んで、 『神は万物普遍の霊にして人は天地経綸の司宰者なり』 と断定を下して居るのである。これも出口教祖の廿七年間の筆先の大精神を通観して得た所の断案である。斯くの如く尊き天地経綸の司宰者たる人間にも、亦善悪美醜大小強弱の区別があつて、中には天地経綸の司宰者どころか、却て天地経綸の妨害をなす人間が沢山に出来て居る。斯くの如き人間が現はれて来るのは、要するに一つは教育の如何にもよるのは無論だが、真の原因は決してさうでは無い。肝賢の大原因は天賦の力徳の過不及による処の結果で、お筆先の所謂身魂の因縁性来によるものである。概して人間の肉体の善悪強弱は、凡て力徳の過不及により生ずる所の結果である。人の心の善悪智愚は元より教育によつて其一部分は左右せらるるものである。然し人は神様に次での尊きもので、世界を善に進め美に開くべき天職を天賦的に持つて居るものである。人間は小なる神として又神の生宮として此世に生れ出でたる以上は、終生神の御旨を奉戴し天地の御用を助け奉らねば、人と生れ出でたる本分が尽せないのである。人間は裸体で生れて来たのであるから、又裸体で死ねば宜いと云ふ様な棄鉢根性では、人生天賦の職責が遂げられぬのみならず、折角神界より選まれて神の生宮として世に生れさして頂いた、大神の御聖旨に背く罪人となるのである。 人生の本分としては、第一に天地神明の大業に奉仕し、政治をすすめ、産業を拓き、且真の宗教を宣伝し、道義心の発達を助けて世界の醜悪を駆追し、真善美の天地に進めて行かねばならぬのである。他人は如何でも構はぬ、自分のみ清く正しければ宜いのだと云つて、聖人気どりで済まして居る様な事では、人間としての天職を全くしたものと云ふ事は出来ないのである。喜楽は常に政教慣造の進歩発達を祈願し、且完成せしむるを以て人たるものの天職だと考へて居る。皇祖天照大神様が建国の御趣旨は、政教慣造の四大主義の実行であつて、 一、政は万世一系也 一、教は天授の真理也 一、慣は天人道の常也 一、造は適宜の事務也 即ち此四大主義を実践躬行するのが人生の本分であつて、特に我神国に生れたものは、一層責任の重且つ大なるものである事を忘れてはならぬ。吾人は何れも此主義に向つて、最も忠実に勤め奉らねばならぬのである。吾人は人生の重大なる責任を感じ、如何しても肉体の安楽のみを貪る事は出来ない。人生の本分を幾分なりとも遂行し得ざる内は、如何なる栄華も歓楽も自分の心を満たす事は出来ない。美衣美食財宝なども到底天授の心魂を喜ばすに足らぬ。只天下公共の為めに自分としての天職を尽し得る事が肝賢である。一寸先の見えない様な不完全なる、罪に穢れたる吾人の身を以て、到底重大なる天職を完ふする事は出来ずとも、其幾分にても奉仕し得たならば、これに過ぎたる人生の幸はないのである。 今日の瑞月としては、浅薄なる肉体上の観察から見るならば、実に安楽なものの様であるが自分としては実に一日も安んじては居ないのである。数多の役員や信者は親の様に崇め『先生々々』と云つて厚く遇して呉れて居る様であるが、自分の為めには、却てそれが苦痛の種となるのである。何故なれば役員信者の親切や好意は大に有難迷惑を感ずる事があるからである。自分の真の使命を諒解するのでもなく、只単に出口教祖のお筆先によつて、色々と私に対する空想を描いて居る人が多いからである。又如何なる立派な事を話しても説いてもそれは教祖の筆先に出てゐないから用ゐられないとか云つて、如何なる真理も無造作に葬つて了ふので、何程筆先の精神を縦横無尽に説いても、十分に感得せしむる事が出来ぬのが実に遺憾である。又自分の肉体に対し、役員信者が非常に気をつけて好意を表して呉れられるが、肝賢要の真実の精神を汲みとつて呉れるものが少いのは最大の苦痛である。今迄の役員信者は自分を妙な事に過信して、堅実な教理等は頭から耳に入れぬのみか、今に世界の救ひ主にでもなる様に、身魂も研かずに騒ぎ廻つて居るのは実に残念であります。自分に少しにても権謀術数的の精神があるならば、十年以前の大本は、役員信者等とも折合がうまくついて、極めて平和であつたでせう。役員や信者の迷信を利用して猫を被つて居やうものなら、物質的方面の事などは如何な事でも出来たでありませう。然し乍ら自分の天授の良心が如何しても、そんな事を許さない。今の世の中の様に神の道は方便や手段では行かぬ。方便や手段を以てした事は何時しか化の皮が剥げるものである。況んや至誠至直の神に仕ふる身分としては、夢にだにも良心の許さぬ事は出来ない。自分は天地と共に亡びざる大真理即ち神の大道より外の道を歩む事は出来ぬ。真理の為めには一身を献げて悔いないのである。今日の場合は如何にしても社会一般の誤解を正し、大本を正解させることが必要であると感じたから、茲に天下修斎のため真理の旗幟を翻し、神様に一身を献げて口を藉し、茲に愈此物語を発表する事となつたのである。混濁せる社会のため一身を捧げて五六七の御世に奉仕せむと云ふ誠の人は、一日も早く此物語の精神に目を醒まし天下万民の為めに誠を尽して頂き度いものである。 選まれし神の使の甲斐もなし 人を導く力なき身は (大正一一・一〇・一四旧八・二四北村隆光録)
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霊界物語 38_丑_出口王仁三郎自叙伝2 28 金明水 第二八章金明水〔一〇六五〕 明治三十四年旧五月十六日[※新暦だと1901年7月1日]、出口教祖始め、上田会長、出口澄子、四方平蔵、中村竹造、内藤半吾、野崎宗長、木下慶太郎、福林安之助、竹原房太郎、上田幸吉、杉浦万吉ら一行十五人は、皐月の曇つた空を目当に徒歩にて出雲の大社へ神明を奉じて参拝することとなつた。此参拝が無事に済めば、何もかも神界の因縁が判り、大望が成就するものだと、役員一同の考へであつたらしい。 先づ立原で一宿し、それから十里程歩いては泊りなどして、漸く但馬の八鹿へ着いた。さうすると道々役員連の空想的談話が始まつて来た。そこで喜楽は、 喜楽『そんな事思うて居るとあてが違ふ』 と一口云つたら大変に役員の機嫌を損じ、喜楽に対して余程冷淡な扱ひをするやうになり、『ナアニお前等がそんなことが分るものか、御筆先に出雲へいつたら因縁が分ると書いてある』……と威張りちらす。教祖は教祖で、出雲へさへいつてくれば皆の改心が出来る……とすましたものである。途中で四方春三の亡霊が役員にうつつて、澄子と会長との間を不和ならしめやうとかかり、両人は其亡霊の為に非常に悩まされ、途々議論を衝突させ乍ら、日を重ねて鳥取に着いた。それから千代川を汚い舟に乗つて加露ケ浜に出で、加露ケ浜から舟に乗つて三保の関に着かうと計画したのである。 恰度海が荒れて三日間船を出す事が出来ず、加露ケ浜の旅館で一行十五人が泊り込み海上の凪ぎ渡るのを待つこととした。其時恰も海軍中将伊東祐亨氏が山陰沿海視察の為にやつて来て同じ宿屋に泊つてゐた。教祖が筆先を一枚書いて、伊東中将に宿屋の亭主の手から渡され、よく査べてくれ……といはれたが、それきりで何の返答も聞かなかつた。 喜楽は夜中頃に妙な夢を見た。それは海潮が際限もなき原野に立つてゐると、東の方から大きな太陽とも月とも分らぬが、昇られてだんだんこちらへ近付き、澄子の懐へ這入られた夢を見て目がさめた。此月すでに澄子は妊娠してゐたのである。それから翌年の正月二十八日[※新暦3月7日]に女子が生れたので、朝野に立つてゐた夢を思ひ出し、朝野と名をつけた。これは在朝在野の人々を済度する子になるだろうといふ考へと二つをかねて命けたのであつた。さうすると朝野が四つになつた年、自分から……わしは朝野ぢやない直日ぢやと言ひ出したので、直日と呼ぶやうになつたのである。三日目の朝、又もや磯端を伝ひに十里許り西へ進んで一泊し翌朝船を仕立てて、三保の関に渡り神社に参拝し、中の海宍道湖を汽船に乗つて平田に上陸し、徒歩にて大社の千家男爵の門前の宮亀といふ旅館に一行十五人投宿した。 二三日逗留の上神火と御前井の清水、社の砂を戴き、二個の火縄に火をつけて帰途につき、稲佐の小浜から松江丸といふ汽船に乗つて境港につき、それから徒歩にて米子に至り、一日計り歩いて又もや今度は帆船に乗り、加露ケ浜の少し東、岩井の磯ばたにつき、行がけに泊つた駒屋の温泉場に再一泊し、又もや山坂を越えて旧六月の四日福知山まで、数百人の信者に迎へられ、漸く綾部へ帰つて来た。途中澄子は産婦に免がれがたきツワリで非常に苦み、石原から時田や其外の大男の背中に負はれて帰つて来た。 それから其火を百日間埋み火として役員二人が昼夜保存し、百日目に十五本の蝋燭に火を点じ、天照大御神さまへ捧げることとした。又砂を本宮山や竜宮館の周囲に撒布し三四ケ所の井戸に水を注ぎ、大島の井戸へ天の岩戸の産盥の水を一所にしてほり込み、金明水と名をつけたのである。其水を竹筒に入れ其年の旧六月の八日[※新暦だと7月23日]に教祖は会長、澄子其他四十人計りの信者と共に沓島へ渡り、其水を海に投じ、此の水が世界中を廻つた時分には日本と露国との戦争が起るから、どうぞ大難を小難に祭りかへて貰ふやうに、元伊勢の御水と出雲の御水と、竜宮館の御水と一所にして竜神さまにお供へするといつて祈願をこめて帰つて来られたが、それから丁度三年目に日露戦争が起つたのである。 出雲参拝後は教祖の態度がガラリと変り、会長に対し非常に峻烈になつて来た。そして反対的の筆先も沢山出るやうになつて来た。澄子が妊娠したので、最早会長は何程厳しく云つても帰る気遣はないと、思はれたからであらうと思ふ。それ迄は何事も言はず何時も役員が反対しても弁護の地位に立つて居られたのである、いよいよ明治卅四年の十月頃から、会長が変性男子に敵対うといつて、弥仙山へ岩戸がくれだといつて逃げて行つたりせられたので、役員の反抗心をますます高潮せしめ、非常に海潮、澄子は苦心をしたのであつた。それから大正五年の九月九日まで何かにつけて教祖は海潮の言行に対し、一々反抗的態度をとつてゐられたが、始めて播州の神島へ行つて神懸りになり、今迄の自分の考が間違つてゐたと仰せられ、例の御筆先まで書かれたのである。 今日迄の経路を述べ立つれば際限がなけれ共只霊界物語を口述するに当り、大本の大要を述べておくのも強ち無用ではないと信じ、ここに其一端を古き記憶より呼び出し、述ぶることとした。まだまだ口述したきことは沢山あれ共、紙面の都合に依つて本巻にて止めおくことにする。後日折を見て詳しく発表するかも知れぬ。 惟神霊幸倍坐世。 (大正一一・一〇・一九旧八・二九松村真澄録) (昭和一〇・六・一〇王仁校正)