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書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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霊界物語 | 53_辰_ビクの国1(ヒルナ姫とカルナ姫) | 12 鬼の恋 | 第一二章鬼の恋〔一三七五〕 鬼春別は厳然として姿勢を整へ、佩剣の柄を左手に握り、蠑螈が立上つたやうなスタイルで、 鬼春別『久米彦殿、陣中に女を引入れる事は、軍律の上から見ても許す可らざる所で厶る。何故斯の如き美人を陣中に引よせ、軍務を忘れ、狂態を演じらるるか』 久米彦『ハイ、拙者が軍律に反き、女を引入れたと云つてお咎めになるならば、是非は厶いませぬ。只今限り責任を帯びて辞職を仕ります』 鬼春別は久米彦将軍に今辞職されては大変だと心に驚き乍らも、平然として、 鬼春別『貴殿が辞職が望みとあらば、辞職を許してもやらう、併し乍ら今日は許す事は罷りなりませぬ。一時も早く此女を追出しめされ』 久米彦『此女を追出す位ならば、只今限りお暇を頂きませう』 カルナ姫は二人の中に葛藤を起さしめ、バラモン軍を根底から攪乱するは此時と、心中に画策を定め、 カルナ姫『これはこれは、勇壮な活溌な、凛々しき男らしき、最敬愛する、音に名高き英雄豪傑、其御威勢は日月の如き鬼春別将軍様、初めて御目にかかりまする。女の身として陣中に入り来る事は、軍律上不都合かは存じませぬが、妾は決して自ら望んで陣中を御訪問申したのでは厶いませぬ。ビクトル山の神王の森へ参拝せむと、一人のお友達と共に来る折しも、貴方の部下に出会ひ、路傍に蹴り倒され、目を眩かしてゐました。実に無残な武士もあるもので厶います。そこへエミシ、マルタの士官様が御通り遊ばし、妾を助けて此処へ送り届て下さいました。其御親切は決して忘れは致しませぬ。之も全く将軍様の日頃の御訓練と御統率の宜しきを得たるが為で厶いませう。妾が救はれましたのは、全く鬼春別将軍の御余光と感謝致して居ります。何卒々々仁慈の御心を以て、此陣営に静養さして下さいますれば、お肩も揉みまするし、御飯も焚かして貰ひます。如何に軍律厳しき陣中なればとて、三軍を指揮遊ばす将軍様に、女がなくては不都合で厶いませう。一兵卒ならばいざ知らず、苟も尊貴の身を以て、仮令軍中とはいへ独身生活とは恐れ入つた事で厶います』 鬼春別はカルナ姫の阿諛諂侫の言葉を真に受けて、俄に態度を一変し、閻魔顔は忽ち地蔵顔と変じて了つた。そして言葉やさしく、カルナに向ひ、 鬼春別『成程、其方の云はるる通りだ。久米彦将軍は辞職を致すと云ふなり、さすれば拙者は只一人、此軍隊を統率するには、最不便を感ずる次第だ。其方は察する所、高等教育を受けてる様だから、女だつて将軍が勤まらない筈はあるまい。只今より久米彦将軍の後を襲はしめ、女将軍として任ずるであらう。伊邪那岐大神は黄泉比良坂の戦ひに、松竹梅の女将軍を使はし、大勝利を得られた例しもある。女房としておくのは軍律に反くかは知らねども、将軍として相並び軍機に尽すは軍律違反でもない』 と勝手な理窟を捻り出し、カルナ姫を自分のものにせむと早くも野心を起し出した。 カルナ姫『ハイ、有難う厶います。妾は久米彦将軍様が、軍籍に将軍としてゐられるのが大変気に入りましたので、実の所は仮情約を締結致しましたなれど、女に心を奪はれ、千騎一騎の場合に、将軍職を辞するといふやうな腰の弱いハイカラ男子にはホトホト愛想が尽きまして厶います。何卒鬼春別将軍様、憐れな女で厶いますから何卒々々可愛がつて頂きたう厶います。其代り妾はあらむ限りのベストを尽し、其任務を恥しめない考へで厶います』 久米彦は慌てカルナ姫の口に手をあてる様な風で、 久米彦『イヤイヤ、カルナ殿、決して拙者は辞職は致さぬ。御安心なされ、鬼春別将軍が余り拙者の恋愛を干渉なさるものだから、つひ言ひ上りになつて、辞職を致すと申したのだよ。ここ迄捏ね上げた地位を、さうムザムザと捨てる馬鹿者があるか、よう考へてみよ。吾々の自由意志を束縛し、圧迫せむとする者あらば、仮令上官と雖も自己保護の為に切り捨ててみせる。マアマア安心を致すがよい、かう見えても拙者は沈勇だ。ハツハハハ』 カルナ姫『ああさうで厶いましたか、それを聞いてヤツと安心致しました、然らば貴方様と夫婦たることを予約致しませう。ねえ久米彦将軍様』 鬼春別はムツとした顔で又もや怒り出し、 鬼春別『いかに久米彦将軍が軍職に止まらむと致す共、総司令官たる某が承諾致さぬ限りは駄目だ。一旦武士の口から辞職を申出た以上は、ヨモヤ撤回することは出来まい、それでは男子とは申されぬ。覆水は盆に返らず、吐いた唾は呑めない道理、鬼春別は断然と久米彦が職を解き、カルナ姫を以て副将軍と致すに仍つて、久米彦殿、剣を投出し、軍服を着替へて、早々に此場を退却めされ』 久米彦『これは又理不尽な、何咎あつて、大黒主より任命されたる拙者の将軍職を褫奪せんとなさるるか、チツとは僣越で厶らうぞや。そんな乱暴な御命令には、久米彦断じて服従仕りませぬ』 と声を尖らし抗弁した。 鬼春別『何と云つても、上官の命令は大黒主の命令だ。グヅグヅ言はずに退却めされ。カルナ殿、如何で厶る。拙者の権威は此通り、仮令久米彦将軍たり共、只一言の下に左右する権能があるのだからなア、ワツハハハハ』 カルナ姫『成程貴方は本当に好もしい将軍様、私、貴方になれば命まで差上げます、本当に凛々しい威厳の備はつた、絶対無限の権力者で厶いますな』 久米彦は形勢益々不良と見て、焼糞になり鬼春別を睨つけ、刀の柄に手をかけて、只一打に斬り倒し、一層の事、自分が総指揮官とならむかと決心して、隙を狙つてゐる。鬼春別も久米彦の様子の只ならざるに心を許さず、寄らば斬らむと柄に手をかけ、互に阿吽の息を凝らして、山門の仁王の如くつつ立つてゐる。カルナは此態を見て、 カルナ姫『ホホホ、何とマア御両人様の凛々しいお姿、どちらを見ても、花あやめ、甲を取らうか、乙を取らうか、花と花、月と月、揃ひも揃うた立派なお方だ事、あああ体が二つあつたなら、一つは鬼春別将軍様に従ひ、一つは久米彦将軍様に仕へるのだに、儘ならぬ浮世だなア』 鬼春別、久米彦はカルナの美貌にゾツコン心を盪かしてゐた。カルナの精神を測りかね、仁王立になつた儘、眼計りキヨロつかせてゐる。そこへワイワイとどよめき乍ら一人の美人を舁いてやつて来たのは鬼春別の副官スパールであつた。 スパール『モシ鬼春別様、陣中に於て斯様な美人を手に入れました、どうか貴方の御用に立ちますればと存じ、ワザワザ伴れて帰りました。城内の戦ひは味方の大勝利、最早後顧の患は厶いませぬ。何卒此女をトツクリお調べ遊ばして、よきに御処分を願ひます』 と慇懃に述べた。鬼春別は此声にハツとして、女の面を見れば、カルナ姫に優る数等の美人である。そして何とはなしに気品高く、潤ひのある黒い目、如何なる男子も悩殺する程の魅力が備はつてゐた、鬼春別は久米彦との争ひをスツカリ忘れて了ひ、 鬼春別『スパール、其方は愛い奴だ、ここは久米彦の居間だ、此方の居間へ此女を通せ』 と言ひ乍ら先に立つて自分のテントに帰り、胡座をかいてニコニコして居る。スパールは美人を伴なひ、鬼春別の前に手を仕へ、 スパール『君の御命令に依り、城内を指て攻め行く折しも、吾部下のシヤム、某が計画通りよく遵奉して、刹帝利を始め左守司其他の勇将を生捕に致しました。最早戦ひは大勝利、御安心なさいませ。然るに、これなる女、ビクトル山の神王の宮へ参拝の途中、癪気を起し路上に倒れて居りました故、救ひ上げて御前へ伴ひ参りました。どうぞ可愛がつておやり下さいませ』 鬼春別はニコニコし乍ら、 鬼春別『ウーン、よく伴れて来た、褒美は後より遣はす。汝は之より陣営に向ひ、十分の注意を払つて、違算なき様に致すがよからう』 スパールは『ハイ』と答へて、後振返り振返り、出でて行く。 此女はヒルナ姫である。 ヒルナ姫『これはこれは将軍様、始めてお目にかかりまする。妾はスパール様の仰せの如く、神王の森へ参拝の途中癪気を起し、命危き所を助けられた者で厶います。バラモンの軍人といふものは実に仁慈深い方計りですなア。之も全く貴方様の御訓練宜しきの致す所と感謝致します。要するに妾の命を助けて下さつたのは貴方様で厶います。貴方様は妾の為には命の親さま、不束な者なれど、どうぞ何なりと御用をさして頂ければ有難う存じます』 鬼春別は満面に笑を湛へ、ニコニコし乍ら、 鬼春別『ウン、ヨシヨシ、汝は之から此方の側近く仕へて、某が顧問となり、内助の労を執つて下され』 ヒルナ姫は、 ヒルナ姫『将軍様有難う厶います』 と鬼春別の手をワザと固く握り、鬚武者の頬に、白き柔かき頬をピタリとあてた。 鬼春別はグデングデンになり、背筋の骨迄ぬかれたやうな調子で姫の膝を枕にし、ゴロンと横たはり、 鬼春別『鬼春別の将軍は神力無双の大勇士 神の御言を蒙りて音に名高きエルサレム 黄金山へと攻めのぼる其行がけの副事業 ビクトリヤ城をば占領して刹帝利始め其后妃 左守右守は云ふも更百の軍や司人 皆悉く斬りなびけ戦は予定の大勝利 帷幕の中に画策をめぐらしゐたる折もあれ 木花姫か棚機の姫の命にまがふなる 古今無双の美人の其方媚びを呈してやつて来る 仁義の軍に敵はない吾名声に憬れて やつて来たのはバラモンの神の命の御たまもの ホンに愉快な事だなア隣に陣取る久米彦は カルナの姫とか云ふナイス側に近付け脂さがり 現をぬかす不態さよ軍律厳しき中なれど 女に目のない久米彦はドン栗眼を細うして 此上なき者と慈み恥しげもなくデレてゐる カルナの姫に比ぶれば天と地との相違ある 古今無双のヒルナ姫どこの娘か知らね共 気品の高い此ナイス鬼春別が枕辺に 朝な夕なに侍らして久米彦将軍に見せたいものだ ああ面白い面白い男と生れた其甲斐にや こんなナイスを一夜でも宿の妻よと愛しつつ 楽しく嬉しく此世をば渡つて見たいものだなア アハハハハ、アハハハハコリヤコリヤ久米彦将軍よ 俺の腕前此通り女房の容貌を比べようか 霊相応といふ事はヤツパリこんな時に現はれる 烏は烏鷺は鷺権威の強い男には 格別綺麗な女房がつき添ふものだ神の教にウソはない ホンに愉快な事だなアヒルナの姫の膝枕 こんな所を久米彦が一目見たならさぞや嘸 妙な面してさがるだろイヒヒヒヒ、イヒヒヒヒ』 と止め度もなく涎を流し、ヒルナ姫の小袖を通して、柔かい太腿をぬらした。ヒルナ姫は、 ヒルナ姫『アレまあ、何だか温たかいと思つたら、将軍様の涎だわ、ホホホホ』 鬼春別『オイ、ヒルナ、貴様も一つ歌つたら何うだ。戦争も大方カタがついたなり、最早殺伐の空気も一掃されるに間もなからうから、其方と楽しく仮のホームを造つて、陣中の花と謡はれる気はないか』 ヒルナ姫『ハイ、御勿体ない其お言葉、不束な妾、どうぞ可愛がつてやつて下さいませ、左様ならば不調法乍ら歌はして頂きませう』 と鈴のやうな声で、隣の久米彦やカルナ姫に聞えよがしに、比較的透き通る声で歌ひ出した。 ヒルナ姫『私の生れはビクの国キールの里の豪農で 骨姓は賤しき首陀の家数多の下僕にかしづかれ 今日は花見よ明日は又月見の酒と四方八方の 山野に遊び贅沢の限りを尽しゐたりしが 妾の侍女のカルナ姫引伴れまして神王の 森に参拝せむものとスタスタ進み来る折 殺風景な軍人槍や剣を抜きかざし 雲霞の如く進み来る其権幕の恐しさ 身を逃れむといら立ちて侍女に別れてマチマチに 逍ひゐたる折もあれ俄に起る癪病 命たえむとする時に情も深きスパールさま 妾を助け親切に労はり乍ら将軍の 御前に送らせ玉ひけるああ惟神々々 盤古神王自在天神々様の御恵 惜き命を助けられ今又名望いや高き バラモン軍の総指揮官鬼春別の将軍が 尊き陣営に運ばれて思ひもよらぬ御寵愛 蒙る妾の身の冥加旭は照る共曇る共 月は盈つとも虧くるとも仮令天地はかへる共 月おち星は失するとも此大恩はいつの世か 忘れませうぞバラモンの軍の君よ妾をば いや永久に慈しみ汝が御側に朝夕に 使はせ玉へ惟神神かけ念じ奉る ああ惟神々々御霊幸倍ましませよ』 と歌ひ了はり、 ヒルナ姫『将軍様、何分無教育の妾、歌なんか詠めませぬ、何卒これでこらへて下さい』 鬼春別『アハハハハ、てもさても立派なものだ。久米彦が命の親と頼んでゐるカルナに比ぶれば、器量と云ひ、学識の程度と云ひ、犯す可らざる気品と云ひ、年頃と云ひ、着物の着こなしと云ひ、肌の艶、可愛らしい手足、瑪瑙のやうな爪の色、どこに点のうつ所のない、最奥天国の天人も跣で逃げるやうな天下無二のナイスだ、アハハハハ』 とワザと高声にて久米彦将軍にヘケラかしてやらうと呶鳴り立ててゐる。 ヒルナ姫『ホホホホ、妾のやうな醜女を、さうお賞め下さいますと何だかクスぐつたいやうな心持が致しますワ。将軍様、貴方は今妾をその様に寵愛して下さいますが、又外の美しき美人が現はれた時には、キツと妾をお捨て遊ばすので厶いませう。それを思ふと何だか恨めしうなつて参りましたワ』 鬼春別『ハハハハ、さすがは女だ。何でもない事に取越苦労を致すものでない、其方の為なら命でもやらうといふ決心だ』 ヒルナ姫『ホホホホ何とマア辞令のお上手なお方、もし妾が今命を下さいと言つたら、すぐに臂鉄をくはすクセに、貴方は男に似合ず愛嬌のよい事を仰有いますね。流石は敏腕なる外交家丈あつて、仰有ることが垢抜が致して居りますよ、ホホホホ』 鬼春別『アハハハハハ』 と悦に入つてゐる。そこへ久米彦はヌツと顔を出し、 久米彦『将軍殿、其狂態は何のザマで厶るか、軍紀を何と心得めさる。拙者の目にとまつた以上は、最早了簡は致しませぬぞや』 鬼春別『アハハハハ、オイ久米彦、何だ其スタイルは、肩まで四角にして、何を気張つてるのだ、陣中は相身互だ、チツと気を利かさぬかい』 久米彦『将軍に一寸談判があつて伺ひました。確り聞いて頂き度い』 鬼春別『アハハハハ、戦も大方済んだのだから、さう固くなるものだない。それより早く帰つて、カルナ姫に肩でも揉んで貰うたがよからうぞ』 ヒルナ姫は久米彦将軍の面体をツラツラ眺めて、笑を湛へ、 ヒルナ姫『貴方様はバラモン軍中に於て驍名かくれなき久米彦将軍様で厶いましたか、これはこれは失礼を致しました。妾の侍女が御世話になつた相で厶います。有難う、御懇情の程侍女に代つて、主人の妾が御礼を申上げます』 久米彦は自分の折角手に入れたカルナ姫が、ヒルナ姫に比して美人ではあるが、どこともなしに劣つてゐること、及第一癪に障るのは、鬼春別将軍が妻となさむとするヒルナ姫の侍女だといふ事を聞いたので、何だか自分の声望を傷つけられたやうな気分が仕出し、且鬼春別の妻の侍女を女房にしたとあつては、世間の聞えも面白くない、同じ事なら、何とか云つて理窟をつけ、とつ換へつこをしてやらうと、虫のよい考へでやつて来たのである。ヒルナ姫は明敏な頭脳に早くも、久米彦の心中を洞察した。何とかして両将軍の間に隙を生ぜしめ、バラモン軍を内部から破壊せむと思ふ心はカルナ姫同様である。ヒルナはワザと体をシヨナシヨナさせ乍ら、久米彦の側にツツと寄り、固い手を餅のやうな手でグツと握り、二三遍揺つて、妙な視線を向け乍ら、ワザとに頬を赤らめ、 ヒルナ姫『ああお恥しう厶います』 と意味ありげに顔をかくす。久米彦は益々悦に入り、顔の相好を崩して、 久米彦『エヘヘヘヘ、これはこれはヒルナ姫どの、貴女は鬼春別将軍様と、既に業に情約を締結なさつた事は、隣室に於て、御両所の御歌に仍つて確め得ました。どうぞ肚の悪い、おだてないやうにして下さいな』 ヒルナ姫『ホホホホ仰の如く、恥かし乍ら情約は結びましたが、まだ予定で厶います。其次は内定、次に確定と、順序が厶いますから、予定内定の間は何うとも融通のつくもので厶います。ラブは神聖で厶いますから、到底権力や美貌や、金銭や圧迫、又法律などで定めらるべきものでは厶いませぬ。さうでなくつてはコンヂーニアル・ラブが完全に成立ませぬからねえ。結婚問題は人生一代の大切な事で厶いますから、本当のディヴァイン・ラブでなければ、末が遂げられませぬから、夫を定むるのは互の自由で厶いますからねえ』 久米彦は既にヒルナ姫が自分に秋波をよせたものと早合点し、色男気取になつて面の紐迄解いてゐる、之に反して鬼春別は顔面忽ち緊張し、眉をつり上げ、顔に殺気を帯びて来た。 鬼春別『久米彦殿、ここは拙者の居間で厶る。貴方は自分の居間へ帰つて軍務に鞅掌なされ、不都合で厶るぞツ』 久米彦『ヘヘヘヘ、拙者が参りますと、定めて不都合で厶いませう。然らば吾居間へさがりませう。アイヤ、ヒルナ殿、拙者に跟いてお越し遊ばせ、貴女の侍女が待つて居りますよ』 ヒルナ姫『ホホホホ、妙な事を仰有いますね、侍女を主人から訪問するといふ道理がどこに厶いませう。カルナ姫の方から妾の御機嫌伺ひに来る筈だ厶いませぬか。どうぞカルナにさう仰有つて下さいませ』 久米彦『成程、姫様のお言葉には条理が立つて居ります。然らばカルナ姫を伺はせます、一寸待つてゐて下さい』 鬼春別『汚らはしい、カルナの如き女を拙者の居間へ伴れ来る事は罷り成らぬ……ヒルナ其方は何と思ふか』 ヒルナ姫『将軍様の仰の通り、斯様な尊きお居間へ、侍女などを侍らすは畏れ多う厶います』 鬼春別は顔色を和げ、稍得意となつて、 鬼春別『ああさうだらう、ヒルナの言ふ通りだ、流石は才媛だ。そして侍女と情約を締結する如き下劣な人格者は吾居間に来るべきものではない、トツトと帰つたがよからう久米彦、これに違背はあるまいな、アハハハハ』 久米彦『これは怪しからぬ。貴方のお説では公私混淆といふもの、貴方も将軍ならば拙者も将軍、軍務上の打ち合せも時々致さねばならず、又吾々は将軍としてお居間をお訪ね申したもの、決して一個人の資格だ厶らぬぞ』 鬼春別『其方は弁舌を以て、此場を糊塗せむと致せ共、左様な事に巻込まれるやうな迂愚者では厶らぬ。サ、速にお立ちめされ、拙者のラブの妨害になり申す』 久米彦は軍刀をヒラリと抜いて、矢庭に鬼春別に斬りつけた。鬼春別はヒラリと体をかはし傍の軍刀取るより早く又もやスラリと引抜き、カチヤカチヤと刃を合せ火花を散らし、数十合に及んだ。されど何れも手利きと手利き、竜虎の争ひ、何時果つべしとも見えなかつた。此物音に驚いて、カルナ姫はヒルナ姫の身の上を気づかひ、慌ただしく飛んで来た。ヒルナはカルナの顔を見るより、目を以て合図をし、……キツと仲に這入るな……といふ意味を牒した、そして二人の美人はワザと怖相に室の隅に机をかぶつて慄うてゐる、そして……何方か一人が……早くやられたら都合が好いがと、心の中に念じてゐた。 斯かる所へ、スパール、エミシの両人は帰り来り、此態を見て驚き、二人は中にわつて入り、 スパール『モシ鬼春別将軍様、少時お待ち下さいませ』 エミシ『久米彦将軍様暫く暫く』 と大手を拡げてつつ立つた。これ幸と両人は剣を鞘にをさめ、ハアハアと息を凝らし乍ら、俄作りの椅子に腰をおろした。 ヒルナ姫、カルナ姫はヤツと安心したものの如く、ワザと不安な面をし乍ら、ハアハアハアと息を喘ませ、胸を撫で下ろし居たりける。 (大正一二・二・一三旧一一・一二・二八於竜宮館松村真澄録) |
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霊界物語 | 54_巳_ビクの国の物語2(後継者問題) | 08 祝莚 | 第八章祝莚〔一三九四〕 ビクトリヤ城の客殿には刹帝利、ヒルナ姫を始め治国別の一行、及び内事司のタルマン、左守、右守を始めハルナ、カルナ姫、並びに数多の役員が列を正し、結婚式が行はれた。此事誰云ふとなく城下に拡がり、寄ると触るとレコード破りの結婚だと云つて、話の花が長屋の裏迄咲いてゐた。さうして政治大改革の象徴だと国民一同に期待されたのである。ここに治国別の媒介にて神前結婚の式も恙なく相済んだ。 それから刹帝利、ヒルナ姫は治国別に厚く礼を述べ吾居間に帰つた。後に新夫婦を始め一同の祝宴が開かれた。 治国別は祝歌を歌ふ。 治国別『神代の昔伊邪那岐の皇大神は伊邪那美の 神と諸共高天原にて天の御柱巡り会ひ 妹背の道を結びまし山川草木の神までも 完全に委曲に生み玉ひ此世を安く美はしく 造り給ひし雄々しさよその神術に習ひまし ビクトリヤ城の奥の間で時代に目覚めたアールさま 上下の障壁撤回し耕奴の家に生れます ハンナの姫と合衾の式を挙げさせ玉ひしは 之ぞ全く天地の尊き神の御心に かなひ奉りし吉例ぞ尊き卑しき差別をば 神の御子たる人草につけて待遇に差別をば 作ると云ふは皇神の心を知らぬ曲業ぞ 一陽来復時臻り至仁至愛の大神の 大御心のそのままに妹背の道を開きまし 国人等に其範を示させ玉ふ尊さよ かくなる上は国民は王をば誠の親となし 主と崇め師となして心の底より真心を 捧げて仕へまつるべし神が表に現はれて 善と悪とを立別ける此世を造りし神直日 心も広き大直日只何事も人の世は 直日に見直し聞直し世の過ちは宣り直す 皇大神の御前に今まで道に違ひたる 形式差別を撤回し上下心を一にし 御国のために国民が力を協せ心をば 一になして君の辺を弥永久に楽しみて 守り仕へむ惟神神は嘸々此式を 諾ひまして永久に妹背の道を守りまし ビクの国をば弥栄に栄え賑せ玉ふべし ああ惟神々々神の御前に誠心を 捧げて祝ひ奉る』 左守司は金扇を開き自ら踊り自ら謡ふ。 左守(謡曲)『ああ有難や尊やな、掛巻も綾に畏き天地の、皇大神の神勅もて、ビクの国に鎮まり居ます、刹帝利、ビクトリヤ王の、初めての御子と在れませる、王子アールの君に、耕奴の家に生れ玉ひし、心雄々しき才女と、鴛鵞の衾の永久に、睦み親しみ妹と背の、道を開き玉ひたる、これの御式の尊さよ。仮令首陀の家に生れたりとも、誠に明かき賢女を、娶らせ玉ふ若君は、天地開けし其時より、例もあらぬ珍の御子、賢しき御子に在しまして、上と下との隔を絶ち、下国民を憐みまし、美はしき政を開かせ玉ふ、端緒ぞと左守の司を始めとし、右守司は云ふも更、百の司に至るまで、今日の芽出度き御式をば、仰ぎ喜び拍手の声も賑しく、その喜びは天地に、響き渡りて大空の、雲をつきぬき和田の原、水底深く響き渡り、四方八方の国の内外隈もなく、此新しき妹と背の御契を、仰がぬものぞなかるべし。実にも芽出度き君が代の、千代万代も極みなく、鶴は御空に舞ひ遊び、亀は御池に浮びつつ、君が幾代を祝ぎて、仕へまつるぞ芽出度けれ。朝日は照るとも曇るとも、月は盈つとも虧くるとも、天は地となり地は天となるとも、君が誠は幾千代も、変らせ玉ふ事ぞあるべき。実にも尊き三五の、神の教に仕へます、御空も清く治国別の、珍の宣伝使、二人の仲に立たせ玉ひ、神代の例そのままに、婚嫁の道を新しく、始め玉ひし尊さよ、神の御稜威も高砂の、尾上の松の友白髪、積もる深雪の何処迄も、溶けずにあれや妹と背の道、ああ惟神々々、恩頼を喜び勇み願ぎ奉る』 と謡ひ終つて座についた。右守司は又謡ふ。 右守(謡曲)『天なるや乙棚機のうながせる、玉の御統瓊御統瓊に、あな玉はや、みたにふたわたらす、あぢしき高彦根の神の、その御神姿にも比ぶべき、珍の御子なるアールの君、神の恵みに抱かれて、ここに理想の妻と在れませる、ハンナの姫を娶らせ玉ひ、今宵芽出度く合衾を、完全に委曲に挙げさせ玉ひ、四海波風静にて、枝も鳴らさぬ君の代の、その礎と畏くも、婚嫁の道を行はせ玉ひ、天地の神に代らせ玉ひて、吾国民を心安く、治め玉はむ天の御柱、国の御柱とこれの館に並ばして、すみきり玉ふぞ尊けれ。吾は右守の神司、まだ新参の身なれども、君の御為国の為、誠の事と知るなれば、仮令生命は捨つるとも、仕へまつらむ若君の御前、ハンナの姫の御前に、ああ二柱の妹と背の君よ、左守司を始めとし、その外百の司等を、誠の家の奴と思召され、如何なる事も打明けて、吩ひ咐け玉へ宣らせ給へ、上下睦ぶ君が代の、瑞祥示す今宵の空、月の光もさやかにて、星さへ今日は何時もより、光りも強くきらめき渡り、世継の君の行末を、祝ぎ守らせ玉ふなり、荒き風もなく悪き雨もなく、五穀は豊に実のり、天下太平国土成就、天神地祇を崇め祀り、父と母との君によく仕へまし、下国民を憐れみて、美はしき清き政を、布かせ玉へ聖の君と謡はれて、神の賜ひしビクの国を、弥永久に守らせ玉へ、神に誓ひて右守の司、若君二柱の御前に、慎み敬ひ願ぎ奉る。朝日は照るとも曇るとも、月は盈つとも虧くるとも、星は空より墜つるとも、地は震ひ山は裂け、海はあせなむ世ありとも、君に対して二心、吾あらめやも、心の限り身の限り、身を犠牲に奉り、君の御為世の為に、清き尊き三五の、神を拝み仕へまつり、君の御言を畏みて、下万民に臨みまつらむ、二柱の若君心安くましませよ。右守の司が天地の、皇大神の御前に、誠心捧げ今日の慶事を、寿ぎ奉る、ああ惟神々々、御霊幸はひましませよ』 タルマンは又謡ふ。 タルマン『ビクトル山の山麓に大宮柱太知りて 皇大神を奉りつつ国の王と在れませる ビクの御国の刹帝利仁慈の君に仕へたる 内事司のタルマンが今日の慶事を心より 喜び勇み祝ぎ奉る三五教の神司 治国別の宣伝使松彦竜彦万公の 珍の御子をば伴ひて天降りましたるその時ゆ 此城内に塞がれる醜の雲霧あともなく 吹き払はれて千万の艱みは科戸の春風に 散り行くあとは青々と野辺の草木は茂り合ひ 四方の山辺はニコニコと笑ひ初めたる芽出度さよ かかる時しも刹帝利世継の君と在れませる アールの御子を始めとしその外五人の御子等は 恙もあらず大神の恵みに安く帰りまし 吾君始め司等喜び歓ぐ間もあらず 又もや今日は合衾の芽出度き式を挙げられて 千代の礎を築きますその瑞祥ぞ有難き 三千世界の梅の花一度に来る常磐木の 松の緑もシンシンと花咲き匂ふ君が御代 枝も茂りて鬱蒼と巣ぐへる鶴の声さへも いと勇ましく千代と呼ぶ雀雲雀も諸共に 今度の慶事を祝ふ如声勇ましく歌ひけり ああ惟神々々神の恵は目のあたり 今迄悩ませ玉ひたる君の心は春の日の 氷と解けて桜花一度に咲き出す如くなり 花と蝶とに譬ふべき妹背の君の御姿 仰ぐも畏し大空の八重の雲路を掻き別けて 下り玉ひし天人か天津乙女の降臨か 見るも芽出度き御姿喜び勇み御前に 真心こめて祝ぎ奉る朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも仮令大地は沈むとも 誠の力は世を救ふ誠一つを立て通し ビクの御国を何処迄も上下心を協せつつ 守らせ玉へ惟神若君様の御前に 慎み敬ひ願ぎ奉るああ惟神々々 御霊幸ひましませよ』 と歌ひ終つて座に着きにける。 (大正一二・二・二一旧一・六於竜宮館北村隆光録) |
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霊界物語 | 54_巳_ビクの国の物語2(後継者問題) | 09 花祝 | 第九章花祝〔一三九五〕 婚姻の当事者たる王子アールは金扇を披いて立ち上り自ら謡ひ自ら舞ふ。 アール(謡曲)『高天原に八百万神集ります、神伊邪那岐尊神伊邪那美尊、筑紫の日向の立花の青木ケ原に、あもりまして天の御柱国の御柱見立てたまひ、左右りの廻り合ひ、廻り廻りてあな愛乙女をと、宣らせたまひし古事の、今目の当り廻り来て、今日の喜び千秋万歳楽。首陀の家に生れたる、心やさしきハンナを娶り、妹と背の盃を取り交し、天と地との御息を合せ、ビクの御国は云ふも更なり、国主と現はれ出でしビクトリヤの王家を、千代万代に守らむと、授けたまひし妹の命、目出度茲に相生の、松の緑の色深く、栄え果てなき珍の御国、下国民も穏かに、聖の君の御代を仰ぎつつ、日々の生業歓ぎ楽しみ、山川は清くさやけく、野は穀物実のり、人の心は穏かに、澄みきりすみきる、今宵の空、恵の露を永久に、降らさせ給ふミロク神、月の顔せ、望の夜の、弥つぎつぎに変りなく、天の河原のいつ迄も、乾く事なく時あつて、甘露を地上に降らし給ひ、五穀木の実は云ふも更、総ての物に慈愛の露を、恵ませたまふ深き尊き御恵、戴く吾こそ楽しけれ、戴く吾こそ楽しけれ、日は照るとも曇るとも、月は盈つとも虧くるとも、仮令大地は沈むとも、誠をもつて盟ひたる、妹背の道は永久に、変らざらまし、動かざらまし、ああ惟神々々、今日の寿千秋万歳楽と、喜び祝ひ奉る。いざこれよりは父の御後を継ぎ奉り、アールの君と現はれて、ハンナの姫と諸共に、左守右守を力とし、柱となして神つ代より、伝はり来りしビクトリヤの家を、神を敬ひ拝み奉り、麻柱の清き教によりて、祖先の家を守り国民を撫で慈しみ、ミロクの御代の礎を、固めむための今日の御式、芽出度く祝ひ納むる、目出度く祝ひ納むる』 と謡ひ終り座についた。拍手の声は急霰の如く、広き殿中に響いた。ハンナ姫は中啓を披き、長袖淑かに自ら歌ひ自ら舞ふ。 ハンナ『嗚呼有難し有難しサアフの家に生れたる 吾は賤しきハンナ姫尊き神の引き合せ 雲井の空に輝き給ふビクの御国の国主の御子 アールの君に見出されパインの林の木下蔭 籠や熊手を携へて枯れて松葉の二人連れ 掻き集めたる数々を籠におしこみ居る折もあれ 天の八重雲掻きわけて降りましたる一人の珍の御子 一目見るより勿体なくも卑しき乙女の手を曳いて いと懇に労はりつ音に名高きビクトリヤ城に 還らせたまふ畏さよ妾は心も戦きて 如何になり行くものなるかと案じ煩ひ居たりしが 結ぶの神の引き合せ蠑螈は化して竜となり 九五の位にあれませる吾が背の君の妻となり 今日はいよいよ結婚の式を挙げさせ給ひけり ああ有難し有難し総て女と云ふものは 氏なくして玉の輿と里の翁に聞きし事も 佯ならず今ははや吾身の上に降りかかり 繊弱き女の身をもつて重き位にのぼせられ もしや冥加に尽きはせざるかと静けき心はなけれども 君の心の深き情に絆されて否みも得せず身の程も 弁へ知らぬ女よと世の人々の譏をも 心にかけず謹みて君が御旨に従ひ奉りぬ ああ吾君よ吾君よ足らはぬ妾をいつ迄も 愍みまして永久に御傍に仕へさしてたべ 左守の司よ右守さま内事司のタルマンの君 愚かなる身を憐れみたまひいや永久に足らはぬ事は気をつけて 家内の事は云ふも更国の祭の要をば 教へてたべや惟神神の御前に願ぎ奉る ことに尊き三五の教の道に仕へます 治国別の宣伝使松彦竜彦万公の 珍の司も諸共に吾背の君を導きて 国の祭を過たず神の教を背かずに 誠一つを経となし仁慈の教を緯として いや永久に国民を守らせ給へ惟神 神素盞嗚の大神の珍の御前に謹みて 畏み畏み願ぎ奉る朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも星は空より落つるとも ハンナの姫の赤心は仮令死すとも変らまじ 恵ませ給へ大御神父の命や母命 あが背の君よ諸共にいや永久に吾ために 教を垂れさせ給へかし偏に願ひ奉る 千秋万歳万々歳』 と歌ひ舞ひ納めた。ハルナは立ち上り自ら歌ひ自ら舞ふ。 ハルナ『神の造りて治めます神代は云ふも更なれど このビク国も神の国如何に上下の人々の 心は乱れ果つればとて誠の道にかはりのあるべきや 古き道徳打ち破り相思の男女が赤心を 捧げて盟ふ結婚は千代も八千代も永久に 変る事なき天国のその有様にさも似たり 天の下をばよく治め民の心を治めむと 祈り祈らせ給ふ聖の君はまづ第一に結婚の 道を改め上下の差別を取りて雲井の空も 八重葎茂り栄ゆる地の上も一つに治め世界桝かけひきならし 運否なき世の手本を示し給ふにつけて今宵の結婚 一つはお家のため一つは国のため 実にも目出たき次第なり此結婚を恙なく 結び給ひし上からは天が下には曲もなく 曇りも非ず国民は君の恵を悦びて 赤き心を捧げつつ誠を尽し君の社稷を永久に 守り仕へむ惟神神にかなひし吾君の 尊き御業ぞ有難き左守の家に生れたる ハルナの司謹みて今日の慶事を心より 喜び祝ぎ奉るアールの君よハンナの君よ いや永久にいつ迄も御国の柱となりまして 家の子達を恵みつつビクの御国に生茂る 天の益人一人も残さず恵の露を下しまし 黄金時代を現出し世界稀なる聖の君と 世に謳はれて王者の模範を示させ給へ 偏に願ひ奉るああ惟神々々 御霊幸倍ましませよ』 (大正一二・二・二一旧一・六於竜宮館加藤明子録) |
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霊界物語 | 54_巳_ビクの国の物語2(後継者問題) | 18 真信 | 第一八章真信〔一四〇四〕 緑葉滴る初夏の候山野の木々は自然のカブオットをなし 風は自然の和琴を弾ず見渡す限り原野には 首陀や耕奴の三々伍々列を正して 命の苗を植ゑつける其光景は天国を 地上に移せしごとくなりビクトル山の頂上より 瞳をはなてば麗はしき譬方なきフリイスの 棚引くごとく見えにけりミンシンガーは何と見る 天の描ける大画帖画中の人は何人か 牛を追ひゆくパストラルカンタビールナ歌うたひ 或は交るプレストの其対照の面白さ 百日百夜の丹精も漸く茲に現はれて ビクトル山の勝地をば卜して建てる御舎も いと荘厳な神まつり其の祝詞は天地に 響き渡りて霊国や天国界の天人が 奏でたまへるロンドの床しさ 走法又は軽快調クラブイコードを中空に 並べて奏づるアダヂオスメロデイー、モーティフ マヂヨワ、アビニシモフアンセット、トンブルノ 生言霊も順序よくフレーズの限りを尽し リズム正しく天地の神の心を慰むる 其光景を目の当り霊に目覚めし人の耳に いと涼やかに聞えくる治国別を祭主とし ビクの国王の刹帝利ヒルナの姫やアールの君 其外百の司達席を正して遷宮の 式に列せる勇ましさ開闢以来の盛況と 褒め称へぬはなかりけり。 ビクトル山の頂上に檜皮葺の立派な社殿が落成し大国常立尊を初め奉り、天照皇大御神、神伊邪那岐大神、神伊邪那美大神、神素盞嗚大神、豊国姫大神、稚桜姫大神、木花姫大神、日の出神を初め、盤古神王を別殿に祭り、荘厳なる祭典の式は無事終了された。刹帝利のビクトリヤ王は国家無事に治まり、王家安泰の曙光を認めかつ神殿の落成した事を感謝すべく、神殿に向つて恭しく祝歌を奏上した。 刹帝(謡曲調)『久方の天津御空に永久に 鎮まり居ます天地の元津御祖の神と現れませる 大国常立の大御神豊国主の大御神 天津日の御国を統べさせ給ふ 神伊邪那岐の大御神月の御国を統べたまふ 神伊邪那美の大御神厳の御霊と現れませる 国治立の大御神瑞の御霊と現れませる 神素盞嗚の大御神大地球の御魂と現れませる 金勝要の大御神海の底ひの限りなく 統べ守ります大海津見の神天教山に現れませる 木花姫の大御神日の出神を初めとし 三五教を守ります百の司の神柱 常世の国に現れませる盤古神王塩長彦の命 其外百の神達の大前に天地と共に限りなき 神の授けしビクの国国王に仕へまつりたる 御国を守る刹帝利ビクトリヤの神の僕 尊き清き大前に謹み敬い天地の 高き恵を悦びて海河山野種々の 美味しものをば奉り厚き恵の千重の一重にも 報い奉らむとして今日の御祭り仕へ奉る 天津神達八百万国津神等八百万 吾心根を憐みてビクの御国は云ふも更 吾等が命を永久に守らせ給へ国民の 一日も早く穏かに神の恵に浸りつつ 家富み栄え生業を歓ぎ楽しむ御代となし 月日と共に永久に茂り栄ゆべく 守らせ給へ惟神神の御前に願ぎまつる 朝日は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも 仮令此世は変るとも皇大神の御恵 治国別の宣伝使松彦竜彦神司 ビクの御国を救ひましし其勲功はいつの世か 忘れ奉らむ惟神神の御前に赤心を 謹み畏み誓ひおくビクの御国は今迄は ウラルの神の御教を柱となして世を治め 蒼生を慈み仕へまつりてありけるが ミロクの御代の魁と現はれませる素盞嗚の 尊き神の御教に目覚めし上はビクトリヤ城の 百の司を初めとし国民挙りて神恩を 慕ひ奉りて永久に珍の教を守るべし 治国別の神司御前に謹み再生の 御恩を感謝し奉るああ惟神々々 御霊幸倍ましませよ』 ヒルナ姫は白装束に紫色のスカートを穿ち銀扇を披らいて、アッコムパニメントを並ばせ乍ら翼琴を弾じさせ、自ら祝歌を歌ふ。 ヒルナ姫『ビクトル山に千木高く大宮柱太しりて 鎮まり居ます皇神の珍の御前に謹みて 感謝の言葉奉る抑々ビクの国柄は 遠き神代の昔より月日と共に伝はりて 君と臣との差別をば正しく守りし神の国 雲井の空も地の上も睦び親しみ親と子の 如くに治まり来りしが天津御空の日は流れ 月ゆき星は移ろひて醜の魔風は吹き荒び 四方の山辺の木々の枝冷たき風に叩かれて 羽衣脱ぎし如くなるいと浅猿しき国柄と 忽ち乱れ淋れけり御国の柱と現れませる 吾が背の君の刹帝利深く心を悩ませつ 常世の国に現れませし塩長彦の大神に 朝な夕なに祈りつつ天が下をば平けく いと安らけく治めむと祈り給ひし丹精も 水泡と消えて曲津神八岐大蛇や醜鬼の 荒びすさめる世となりぬライオン川は滔々と 水永久に流るれど絶えなむ許りの刹帝利家 既倒に之を挽回し救ひて君の神慮をば 慰め安んじ奉らむと女の繊弱き心より 悪逆無道の曲神にあらぬ秋波を送りつつ 吾身の血潮を濁したる其過を悔い奉り 御仁慈深き三五の神の御前に宣り直し 聞き直されて元のごと治まるアーチ・ダッチェス 実に有難き限りなりかくも尊き神恩に 報いまつらむ赤心の印とここに大宮を 刹帝利様に願ひ上げ治国別の神人に やつと許され珍の宮仕へ終りし嬉しさよ ああ惟神々々皇大神は永久に ビクの御国は云ふも更吾君様や百司 四方の国民恙なく此麗しき現世に 命を存らへ日々の身の生業を励みつつ 国の栄えを松の代の常磐堅磐の聖代と 進ませ給へ惟神御前に謹み願ぎまつる』 と歌ひ終つて座についた。 (大正一二・二・二三旧一・八於竜宮館加藤明子録) |
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霊界物語 | 54_巳_ビクの国の物語2(後継者問題) | 20 建替 | 第二〇章建替〔一四〇六〕 左守の司の長子ハルナの歌。 ハルナ『高天原の移写としてビクトル山の聖場に 大宮柱太知りて鎮まり居ます大神の 御前に祝ぎ奉る高天原の司神 厳の御霊と現れまして一二三つ四つ五つ六つ 七八つ九つ十百千万のものの元津祖 大国常立大御神高皇産霊の大御神 神皇産霊の大神の稜威を以て限り無く 万のものを造りまし天が下なる神人を うまし御国に永久にいと安らけく住ませむと 日月大地を造りまし各清き霊をば 授け玉ひて八百万尊き神を生み玉ひ 天地万有守ります広大無辺の御恵を 尊み敬ひ奉る豊葦原の瑞穂国 生言霊の幸はひて百の宝を下しまし 君の位は千代八千代動きもやらず変る無く 島の八十島八十の国天の壁立つ其極み 国の聳立つ其限り棚引く雲の果てまでも 伊照り透らす大御稜威これぞ全く日の守り 神の守りと悦びて朝な夕なに仕へなむ 常夜を照らす月読の神の光は夜の守り 蒼生を撫で玉ひ天勝国勝国の祖 国治立の大神は天地成出し其時ゆ 隠身ましてすみ玉ひ玉留魂の霊徳以て 海月の如く漂へる国土をば造り固めなし 大地の海陸別ちまし豊国主の大神は 足玉魂の御霊徳もて植物を生み出し守りまし 葦芽彦遅の大神は生玉魂の霊徳もて あらゆる動物愛で育て動く力は大戸地 静まる力は大戸辺解ける力は宇比地根神 凝まる力は須比地根の神引力守る生杙神 弛力を守る角杙神[※「生杙神」「角杙神」の「くひ」の字は、戦前の二版(p300)・校定版(p253)・愛世版(p249)いずれも「枠」。古事記では「杙」である。「枠」は「くい」ではなく「わく」であり、誤字だろうから、霊界物語ネットでは「杙」を使う。]合力守る面足神 分ける力は惶根の御稜威を以て世の中の すべての物に与へまし天と地との霊をば 神の大道に依らしめ玉ひ日の神国を治し召す 神伊邪那岐の大御神月の神国を治し召す 神伊邪那美の大神は天津御神の神勅もて 天の瓊矛をとりもたせ千五百の秋の瑞穂国 千足の国や浦安国と完全に委曲につくりなし 遠き近きの国々に国魂神を生み玉ひ 産土神を任けまして青人草を氏子とし 各も各もに持ち分けて親しく守らせ給ひける 大御恵を謹みて仰ぎ喜び奉る ああ惟神々々御霊幸はひましませよ 人は神の子神の宮とは云ふものの何時となく 曲津の神の曲事に相交こりて日に夜に 罪や穢に沈みつつ憂瀬に沈む憐れさを 愍み玉ひ厳御霊瑞の御霊の大神は 綾の聖地は云ふも更黄金山やウブスナの 珍の真秀良場云ふも更青垣山を周らせる 下津岩根の此山に現はれまして世の人を 教へ導き天の下四方の国々平けく いと安らけく治めます其御恵の万分一 報いむ由もなけれども能ふ限りの赤心を 尽して神と君の為生命の限り仕へなむ 愍れみ給へ惟神神の御前に平伏して 謹み敬ひ願ぎ奉る天地初発の其時ゆ 隠身玉ひし国の祖大国常立大神の 御前にハルナ謹みて畏み畏み願ぎ申す 清き尊き天が下四方の御国に生り出でし 青人草の霊等に授け玉ひし御分霊 直日の霊を照らしつつますます光り美はしき 伊都能売魂となさしめよもしたまさかに過ちて 醜の曲津に精霊を汚し破らる事も無く 四魂五情の全けき其働きによりまして 皇大神の天業をばいと安らけく平らけく 仕へ奉らせ玉へかし如何なる災禍来るとも よく耐え忍び人たるの尊き品位を保たせて 神の玉ひし玉の緒の生命も長く家の業 いやますますに富み栄えいと美はしき天地の 花と現はれ光となり天地の御子たる身の本能を 発き上げしめ玉へかし仰ぎ謹み願はくば 皇大神の御心に叶ひ奉りて現世の 霊に罪も穢なくいみじき過ちあらしめず 神の賜ひし精霊を守らせ玉へ惟神 すべての事業を営むも恩頼を幸はひて いと善き事や正行は破竹の勇みを振り起し 益々進み全きの域に到達せしめまし 朝な夕なに神たちを敬ひ奉りわが君を 尊み御言に違ふなく国の司や国民の 務めを全く遂げ完ふせ普く世人と親しみて 争ひ狂ふ事もなく身の過ちは詔直し 善言美詞を楯として神と人とを和めつつ 天地に代る勲功を堅磐に常磐に立てさせよ 愛も深き幸魂生とし生ける万物を 損ひ破る事も無く生成化育の大道を 畏み仕へ奇魂の光りによつて曲神の 教の真理に狂へるを完全に委曲に悟るべく 直日の霊幸はひて理非曲直を省みつ 誠一つの信仰を励ませ玉へ言霊の 助けに神の御心を覚りて心を練り鍛へ 吾が身に触るる許々多久の罪や穢も村肝の 心に思ふ迷ひをも祓ひ退はせ玉へかし ビクトル山の永久にビクとも動かぬ其如く ライオン河の其流れいや永久に清き如 動かず変らず息長くいと偉大しくあらしめ給へ 世の長人よ遠人と生命を保ち健全に 五倫五常を守りつつ公共のために美はしき 功績を万世に相伝へ天地の御子と生れたる 務めを尽させ玉へかしああ惟神々々 すべての感謝とわが祈り神世の昔高天にて 千座の置戸を負ひ玉ひ大和田原の一つ島 退はれ玉ひて天津罪国津罪咎許々多久の 穢を祓ひ玉ひたる現世幽世の守り神 国常立の大御神豊国主の大御神 厳の御霊の大御神瑞の御霊の大神の 御名に幸はひ聞し召し諾ひ玉ひ夜の守り 照る日の守りに幸はへませと神の御前に平伏して 頸ね突抜き願ぎ奉るああ惟神々々 御霊幸はひましませよ』 カルナ姫は又歌ふ。 カルナ姫『右守司の妹となりて生れしカルナ姫 今日のよき日のよき時にいとなみ玉ひし御祭り 謹み敬ひ祝ぎ奉る神の守りしビクの国 思ひがけなきバラモンの鬼春別や久米彦が 数多の軍勢引率れて短兵急に攻めよする 右守の司の吾が兄は卑怯未練に腰ぬかし 見す見す敵に本城を蹂躙されし悔しさよ 吾が背の君と諸共にヒルナの姫に従ひて 寄せ来る敵に打向かひ獅子奮迅の活動を 試みたれど如何にせむ雲霞の如き敵兵を 支ふる由も無きままに忽ち一計案出し 巡礼姿となり代りわざとに敵に担がれて 両将軍の陣営に送られたりし其時の 心を思ひ廻らせば剣を渡りし心地なり ああ惟神々々かかる危き離れ業 守らせ玉ひ抜群の勲功を立てさせ玉ひたる 皇大神ぞ尊けれ一旦敵は退却し ヤレ嬉しやと思ふ間もあらせず右守の叛軍は 三千余騎を従へて再び謀叛の旗を挙げ 旗鼓堂々と攻め来る一つ免れて又一つ 如何はせむと城内の守将は案じ煩ひつ わが背の君は全軍を指揮して防ぎ戦へど 勝に乗つたる叛軍は退く由さへも見えざりき かかる処へ久方の天の八重雲かきわけて 下らせ玉ふ三五の神の使の宣伝使 治国別の一行が生言霊の幸ひに 心汚き右守司ベルツを始めシエールまで 威勢に打たれて顛倒し身動きならぬあさましさ ヒルナの姫に従ひて駒に跨り猪倉の 峠を後にカツカツと蹄の音も急がしく 帰りて見れば城内は修羅の巷と成り果てぬ 表門には宣伝使裏門よりはヒルナ姫 妾と共に攻めよせて敵を残らず追ひ散らし 再び天下太平の曙光を仰ぎし有難さ 旭は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも 仮令天地は覆るとも誠の神の御恵み 幾千代迄も忘るまじヒルナの姫の願ひにて 此聖場に宮柱太しき立てて大神を 斎き奉りし嬉しさは天国浄土が目の当り 開き初めたる心地なりああ皇神よ皇神よ 恩頼を垂れ玉ひビクの御国の刹帝利 百の司は云ふも更万の民を平けく いと安らけく永久に守らせ玉へ惟神 御前に謹み願ぎ奉る』 竜彦『天地の皇大神の宮柱 太しく立ちし今日ぞ嬉しき。 天地の神も諾ひ玉ふらむ 百の司の誠心を。 古の神代の儘のビクの国 立直したる今日ぞ嬉しき』 万公『千代八千代万代迄と祈るかな ビクの御国の栄えまさむを。 治国別神の命に従ひて 今日の祭に会ふぞ嬉しき。 ビクの国治め玉へる刹帝利 君の誠は神もめでなむ。 君は今七十路の坂を越えませど 万代までと祈る万公。 万年の生命を保ちビクの国に 臨ませ玉へ刹帝利の君』 治国別『千早振る神の御稜威の高くして 仕へ奉りぬ玉の宮居を。 ヒルナ姫助け玉へるビクの国は 夜なき国と栄えますらむ。 暗の夜も治国別の神司 ビクの御国の万代祈る』 斯く各祝歌を奉り目出度く遷座の式を終り、次いでホーフスに於て大直会の宴を開かるる事となつた。 (大正一二・二・二三旧一・八於竜宮館外山豊二録) |
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霊界物語 | 54_巳_ビクの国の物語2(後継者問題) | 附録 神文 | 附録神文 是の幽斎場に神術を以て招請奉る、掛巻も畏き、独一真神天御中主大神、従ひ賜ふ千五百万の天使等、一柱も漏れ落る事無く、是の斎庭に神集ひに集ひ玉ひて、正しき人の御霊々々に、奇魂神懸らせ玉はむ事を乞祈奉る。天勝国勝奇魂千憑彦命と称へ奉る、曽富戸の神亦の御名は、久延毘古の神、是の幽斎場に仕へ奉れる、正しき信徒等に、御霊幸へまして、各自各自の御魂に、勝れたる神御魂懸らせ玉ひて、今日が日まで知らず知らずに犯せる、罪穢過ちを見直し聞直し、怠りあるを宥させ給はむことを、国の大御祖の大前に詔らせ玉へ。伊怯く劣在き吾等は、出口大教祖の御勲功に依り、神国の神典と、大神の御諭を、読み窺ひ奉りて、天地の御祖の神の御勲功を覚り、国祖大国常立尊が、伊邪那岐伊邪那美の二柱の天使に、是の漂流る地球を修理固成せと、天の瓊矛を事依さし賜ひしより、その沼矛を指し下ろし塩コヲロコヲロに掻き鳴し給ひて、淤能碁呂島を生み、之を胞衣となして、天の御柱国の御柱を見立て給ひ、八尋殿を化作たまひ、妹兄の二柱所就たまひて、大八島の国々島々を生み、青人草等の始祖等を生み万の物を生み、青人草を恵み撫で愛しみ給はむが為に、日月国土を生み給ひて、各自各自其の神業を別け依さし玉ひ、万の事を始め玉ひて、為しと為し勤しみ玉へる事毎に、天津御祖神、国津御祖神等の大御心を御心として、青人草を恵み玉ひ愛はしみ、弥益に蕃息栄ゆべく、功竟へ玉ひしを初め、天津御祖神其の御神業を受持ちて、天津国を知ろしめし、五穀物の種を御覧して、此のものは現しき青人草の食て活くべき物ぞと詔りて、四方の国に植ゑ生したまひ、天の下の荒振神達をば神払ひに払ひて、語問ひし岩根木根立草の片葉をも語止めて、幽り事は、神素盞嗚命の御子杵築の大神に言依さし治めしめ、皇御孫命を、天津日嗣の高御座に坐せ奉りて、万千秋の長五百秋に、大八嶋の国を安国と平けく治め玉へと、天降し依さし奉り顕明事、知ろしめさしめ玉へる時に、神漏岐、神漏美の命の御言依さしませる、天津祝詞の太祝詞に依りて、皇御孫命の御代々々、天津神社国津神社を斎ひ、神祭りを専らとして、天の下四方の国を治め、大御田族を恵み撫で給ふ事なも、天津御祖の神、国津御祖の神の伝へ玉へる道の大本にして、其の御任のまにまに、天津神国津神達受持ちて世の中の有りと有りの悉は、皇神の大御業に漏るる事なく遺る事無く、広く厚く恩頼を蒙りて、有る縁由を確に窺ひ得て、戴に尊み辱なみ、赤誠を以て仕へ奉るべきにこそ、青人草の勤めならめ。然るに中津御代より、邪さの教説ども伝はり来たり吾等が祖先たち世人諸共に、心は漸く邪神の風習に移ろひ、異しき卑しき蕃神を専らと斎き奉りて、高く尊き天地の御祖神等の、厳の御霊の幸ひに依りて、惟神の大道の中に生れ出で、食物衣服住む家等為しと為す事毎に大御恵を蒙りつつも、然は思ひ奉らず、神の道を粗略に思ひ居る人々どもも多く出で来り神に仕へ奉る事も追々に廃れて、天津神社国津神社も衰へ坐せるに依りて、皇神等は弥放りに放り坐し、神の稜威も隠ろひまし、邪神は所を得つつ、大神を潜めおきて世人を欺き美はしき神の御国を乱したるこそ憤うろしく慷慨く思ふの余り、大本皇大神の御教を能く説明して、世人に普く大神等の御恵みの辱き尊き、大本の由緒を説き諭す神の御柱となるべく、この幽斎場に在る信人、又其の守護神に聞しめさへと宣る。信人よ、守護神よ、此時この砌り、各自々々霊の柱立て固めて、厳の御霊瑞の御霊の教を以ちて、猶この行先も、如何なる異しき思想論説ども蔓り来るとも、相交らひ相口会ふこと勿れ。 辞別けて天地の大神等、三千歳の長き年月天地を清めて、安国と平けく知ろしめすべく、世に隠れて事計り給へりし、国の大御祖大国常立大神、亦教の柱なる惟神真道弥広大出口国直霊主命の、神随の御教のまにまに、幸へまし荒振神等御霊等は、皆御心を直し和めまして、善しき心を振り興しませ。中津御代より、人の心の随々何事も行はしめて、大神等も神習と宥め給ひて、用ひしめ玉へる蕃国々の事どもの、天地の神の大道に甚く違へる非事は神より糺し改めて退けしめ給へ。天地の大神等、神代の随の大稜威を振り起して、各自々々掌分たまふ功徳の任に任に、相宇豆那比相交こり相口会へ玉ひて、今迄に神の大道を知らず、惟神の大本を、弁へずして、過失犯せる雑々の罪怠り穢を祓ひ退け、神の子たる道に天の下の人草を導き給へ、亦人草の今も猶ほ日に夜に過失犯す事の在らむをば、神直日大直日に見直し聞直し宥め許して清めしめ給へ、神の神典は更なり大本の国之御祖の御神諭は、漏らす事無く過つ事無く、正語を正語と覚らしめ給へ、亦た教司等の説き誤りあらば、次々に思ひ得て、疾く改め直さしめ玉へ、足は歩まねども、天の下の事どもは悉に神の霊徳によりて知らしめ給へ、外国の教にもあれ、正語は正語としてひらひ得さしめたまへ、高天の神祖の神の産霊に造り給ひて、尊き神霊を分賦り与へ玉へる、神の宮居として神懸り玉ひて、神の大道を好む良き信人と為さしめ玉へ、二度目の天の岩戸を開かむ道に仕へて、御代の太き御柱の教に入れしめ玉へ、掛巻も畏けれども、吾々青人草の霊魂は乃ち神の分霊にしあれば、幽り事神事をも知らるる限りは知らしめ玉ひて、此世ながらに神にもまみえ奉り、亦生ける神とならしめ玉ひて、世の為め道の為に祈りと祷る事ども為しと為す術ども、悉に神術なす伊都速き験しあらしめ玉ひて普く天の下の乱れを治め、世人の災難を救ふ尊き人となさしめ玉ひて、所在邪神どもも形隠し敢へず恐ぢ怖れしめ給へ、吾無く一向に大神の道に仕へ奉る身は是れ奇魂千憑彦の命に等しければ天地の大神等、殊に大国常立大神、豊雲野大神たちを初め、諸々の正しき御霊等、青人草と生れ出し、之の幽斎場の人々の請願奉るまにまに、霊幸へ坐し神懸りまして、其の御威徳に似えしめ玉へと大神の大前に祈り奉る。幸に皇神等の御霊の御稜威に由りて、神の世界の尊き広き美はしき、状況を伺ひ得て、神と吾等と相親しみ、睦み、神の御子たる身魂に立復りて邪神の教の侫け曲れる徒の邪さ説は次々に問和し言向けて、惟神の大本の正道に趣かしめ、同じ心に神習はしめ玉へ、若し大神の教と御国の法に帰順ずして四方四隅より、荒び疎び来る妖鬼枉人は、速に追ひ退け罰めて、例のまにまに黄泉国に逐ひ下し、大神の御稜威と天皇の御光りを世に炳じるく知らしむべく神力を与へ給ひて、花々しく世の為人の為に、立働かしめ給へ。常世の暗を照し清むる大神の神諭を、普く広く滞る事なく美はしく、世に説き明かし、世人の悉正しき直き清き広き惟神の大本の教に復らしめ、吾等が神国に尽す麻柱の誠を、最高き雲の上にも、世を政りごちます公辺にも、伊吹挙げ吾等の御国を思ふ赤誠を、徒には捨てず採り用ゆべく思はしめ給へ、吾等信人が神世の由縁を畏み、大神の御神勅を仕へまつりて、本宮の山に宮柱太敷く立て、千木高く仕へ奉れる如く、古の神の政に建替へ立上げ、永遠無窮に親と子の中は弥睦びに親び栄えしめ給へ、此の功績を以て罪怠穢犯し有るをも宥め恕し玉ひて、大神等の御恩に報ひしめ玉ひ、立替立直しの神業に加はりて、人の勤めの功為し了へて、現世を罷れる後の魂の往く方は、神の定めのまにまに、産土の神の執持ち玉ひて、大本大神の御許に参り仕へ奉らしめ給へ、大神の御後に立ちて、高天原に復命曰さしめ玉へ、弥益々も正しき直き太き心を固めて動く事なく、天地の有らむ限りの後の世の次々も、現世に立たむ功績のまにまに、大神の教を世人に幸へしめ玉ひて、邪さの道を糺し弁へ、伊吹払ひ平げ退くる神業に仕へ奉る御霊と成らしめ玉ひ、又子孫の家の者とも朋友親族教子等の万の枉事罪穢を、払ひ清めて病しき事なく、煩はしき事なく睦び親しみ、諸々の義理に叶へる願事は幸へ助けて、大神の大道を説き弘むる身魂と生かし助け、天翔り国翔る仙人等御霊等を率ゐて、世を守る奇魂千憑彦の御魂と成らしめ賜はむ事を、高天原の大本の広庭に斎廻り清廻りて、天つ御祖の大神国の大神祖の大神、大本教の教御祖の御前に、慎み畏み請のみ奉る。惟神霊幸倍坐世(完) |
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霊界物語 | 55_午_ビクの国の物語3(玉木の里) | 09 三婚 | 第九章三婚〔一四一七〕 治国別、松彦、竜彦の祈願に依つて四人の負傷者は三日の後全快する事を得た。テームス夫婦は治国別一行の神徳を感謝し娘の本服祝をなさむと、治国別を始め番頭下女の端に至るまで祝宴に列せしめた。治国別は正座に坐り、左側の上座には松彦、竜彦、万公が座を占め、右側にはバラモン組の六人がズラリと列んだ。 道晴別、シーナ及びスミエル、スガールの病気全快組は、治国別と向ひ合つて下座に坐り、テームス夫婦及びアヅモス、アーシスと順序を作り、祝ひの宴を開く事となつた。 是より前治国別外一同は神前に感謝の祝詞を奏上し、鄭重なる祭典を行つた事は辞つて置く。テームスは治国別に向ひ、さも嬉しげに両手をついて、 テームス『治国別の宣伝使様、何から御礼を申上げて宜しきやら、余り有難くて言葉も出ませぬ』 治国『神様のお蔭によりまして、道晴別も救けて頂き、貴方方のお嬢さま、番頭さままで今日此処で御無事な顔を見せて頂く事になりましたのは、全く三五の教を守らせ給ふ大国常立大神を始め奉り、数多の神々様のお蔭で厶ります。決して吾々の力では厶りませぬ。御礼を言はれましては、吾々は神様の神徳を自己のものとする事になつて困ります。何卒礼なんか云はない様に願ひます』 テームス『ハイ、神様有難う厶いました。よくまア治国別様一行の体を通して、吾々一家に御神徳をお与へ下さいまして有難う御礼申上げます』 ベリシナ『三五教の先生方御一同、今主人が申上げた通り、実に感謝に堪へませぬ。二人の娘もコレにてヤツと安心致しました。道晴別様も御全快遊ばしまして、コンな嬉しい事は厶りませぬ』 と嬉し涙をハラハラと流す。 スミエル『三五教の先生様、悪神のために捕らへられ、九死一生の処を御助け下さいまして、御礼の申上様は厶いませぬ。是も全く治国別様御一同の御親切のいたす所で厶います』 スガール『暗い岩窟内に押こめられ、再び此世の明りを見る事は出来ないものと、決死の覚悟をいたして居りました所を、神様の御蔭で助けて頂きました。何卒御緩り御逗留遊ばしまして、結構な御話を御伝へ下さいます様偏に御願ひ申します。夫に就ても鬼春別様外御一同の方々に御苦労をかけました事を有難く御礼申します。何卒御一同様御緩りと、何も厶いませぬが御酒を召し上り下さいませ』 万公『何か御馳走を差上げたいと存じ、種々と致しましたが、御存じの通り山間僻地の事で厶いますから、御口に合ふ様な物は厶いませぬ。何卒緩り御召上りを願ひます。舅姑を始め、姉のスミエル、並にスガールに代つて、万公別謹んで御礼申上げます。惟神霊幸倍坐世、惟神霊幸倍坐世』 治国『これはこれは若主人様で厶いましたか。イヤモウ大層な御馳走を頂きまして有難う厶います』 テームスは不思議相な顔をして、ベリシナを見返り、小声になつて、 テームス『コレ、ベリシナ、私の知らぬ間にお前此宣伝使を婿に貰ふ約束をしたのかい。何故一口俺に云つて呉れぬのか。藁でつくねた様な男でも、矢張一軒の主人だから、何程結構な宣伝使でも主人の私に無断で決めるとは、些と越権ぢやないか』 ベリシナ『イエ私は何にも存じませぬ。大方貴方が御決めなさつただらうかと、今の今迄思つて居りました』 テームス『ハテナ、モシ治国別の先生様、コリヤ何うした訳で厶りませうかなア』 治国『イヤ私もテント存じませぬ。万公別の大宣伝使が何時の間に弟子の吾々にも無断で御養子になられましたかと怪しんで居つたのです』 万公『千早振る神の結びし縁なれば 人の知るべき事柄で無し。 霊幸はふ神の教に従ひて スガール姫の夫となりぬる』 テームス『いぶかしや神の言葉と云ひ乍ら 親の吾等が知らぬ間に』 ベリシナ『何事もイドムの神の計らひに 結び玉ひし縁なるらむ。 さり乍ら治国別の神司 此縁をば如何に思しめすか』 万公『何事も神の心に任すこそ 人の人たる道とこそ知れ。 吾とても心に染まぬ縁なれど 神の言葉は背かれもせず』 松彦『面白き例しもきかぬ此えにし 媒介も無き今日の驚き』 竜彦『今の世は男女の別ちなく 自由自在にえにしを結ぶ。 斯くの如乱れ果てたる世の様を イドムの神は如何に思すか』 万公『美はしき吾師の君は惟神 神にしませば許し玉はむ』 テームス『治国別神の司よ此えにし 如何になさむか教へたまはれ』 治国別『千早振る遠き神代の昔より 男女の嫁ぎの道を開き玉ひし神柱 神伊邪那岐の大神は筑紫の日向の立花の 小戸の青木ケ原にまし身の穢れを清めつつ 自転倒島に天降りまし夫婦の道を開きてゆ 海河山野百の神数多生みまし葦原の 千五百の秋の瑞穂国を完全に委曲に開き治めて 百人千人万人を此の地の上に生み殖し 珍の神事終へ給ふ其喜びの目の当り 憂ひに沈みし此館に現はれ来る目出度さよ 男女の嫁ぎの道は天にます神八百万 地にます神八百万の神のよさしの其儘に 定まるものと知るからは必ず心を煩はし玉ふ勿れ シーナの君は家の子と永く此家に仕へまし いとまめまめしくも朝夕に心を配り身を砕き 仕へ玉ひし信徒よ抑も此家の栄えをば 祈り玉はば第一に姉の御子とあれませる スミエル姫を娶合して水も洩らさぬ妹と背の 縁を結ばせ玉ふべし次に生れしスガール姫は 万公別の宣伝使生命の親にましませば これと妹背の契をば結ばせ玉へば天地の 神の心に叶ふらむ又アーシスの家の子は 容貌美はしきお民の方と妹背の契り永久に 結ばせ給ひて三五の珍の教を朝夕に 清く守りて大神の御前に仕へ玉ひなば 玉置の村のテームスが家門高く富み栄へ 生みの子の八十連き五十橿八桑枝の如 茂木栄に栄えまさむテームス、ベリシナ二柱 万公別やシーナさまアーシス司を始めとし スミエル姫や、スガール姫お民の御方も千早振る 神の教に従ひて此処に目出度妹と背の 縁を結ばせ玉ふべしああ惟神々々 尊き神の御前に斎苑の館に仕へたる 治国別の神司赤心籠めて勧め奉る 朝日は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも 仮令大地は沈むとも印度の海はあするとも これの縁の詳細に結び了へたる上からは 千代に八千代に変りなく玉の緒の生命も永く 何時迄も堅磐常磐に栄えかし ああ惟神々々神の御前に赤心を 照らして誓ひ奉る』 スミエルは嬉しさうな輝いた顔をしながら、 スミエル『三千世界の梅の花一度に開く常磐木の 松の神代が廻り来て常世の春となりにけり 玉置の村のテームスが家に生れしスミエルは 祖先の家を守るため家の子とますシーナさま わが背の君と定めつつ父の館を守りなば 家はますます富み栄え子孫はますます繁栄して テームス司の家の内は忽ち天国浄土をば 開かむものと思ひつめ朝な夕なに神様に 祈りし甲斐や現はれて三五教の神司 治国別の御媒介実に有難き今宵かな 頑固一途の父母も妾二人が生命をば 助け玉ひし恩人の言葉に如何で背くべき 治国別の御言葉は金勝要の大御神 イドムの神の勅心を鎮め慎みて 清き尊き御言葉に従ひ玉へ足乳根の いとも恋しき父母よ神の御前にスミエルが 頸根突抜き赤心をあかして願ひ奉る ああ惟神々々御霊幸はひましませよ』 テームス『三五の神の司の言の葉を いかで背かむ吾等夫婦は』 ベリシナ『有難し生命も魂も救ひます 教司の珍の御言葉』 スガールは又歌ふ、 スガール『治国別の宣伝使常磐の松の松彦や 清き教を竜彦の神の司の御媒介 諾ひ玉ひし足乳根の父と母との御光りは 吾等を照らす真寸鏡実に有難き限りなり 万公別の神司足らはぬ吾等を憐みて 千代に八千代に永久に妹背の道を結びまし 父のまします此館堅く守らせ給へかし 妾は女の身なれども心はかたき楠の幹 朝な夕なに大神を祈りて尊き父母に 赤心以てよく仕へ兄の君をば敬ひて 日々の勤めをいそしみつ僕の端に至るまで 心を尽してよく勤め神の許せし縁をば 喜び仕へ守るべしああ惟神々々 イドムの神の御前に謹み感謝し奉る』 万公『スガールの姫の命の赤心を 嬉しみ奉る万公別司。 今よりは父と母とを敬ひつ 汝が命を慈むべし。 治国別神の命の師の君に 報ふ術なき今日の嬉しさ』 (大正一二・三・三旧一・一六於竜宮館外山豊二録) |
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霊界物語 | 55_午_ビクの国の物語3(玉木の里) | 17 万巌 | 第一七章万巌〔一四二五〕 玉置の村のテームスは治国別の教を聞いて今迄の貪欲心や執着心を弊履を捨つるが如くに脱却し、広き邸を開放し村人の共有とし、且つ山林田畑を村内に提供して共有となし、茲に一団となつて新しき村を経営する事となつた。先づ大神の神殿を造営すべく村人は今迄テームスの持ち山たりし遠近の山に分け入つて木を切り板を挽き、日夜赤心を尽し、漸くにして一ケ月を経たる後仮宮を造営し、大神を鎮座する事となつた。治国別は村人に教を伝ふべく、又この神館の完成する迄神勅に依つて待つ事とした。数百人の老若男女は悦び勇みて社前に集まり、この盛大なる盛典に列した。治国別は祭主となり、神殿に向つて祝詞くづしの宣伝歌を奏上した。 治国別『久方の天津御空の高天原に、鎮まり居ます大国常立の大神、神伊邪那岐の大神伊邪那美の大神、厳の御霊の大神瑞の御霊の大神を初め奉り、天津神国津神八百万の神達の御前に、三五教の神司治国別の命、清き尊き珍の御前に慎み敬ひ、畏み畏みも申さく、高天原の月の御国を知し召す、瑞の御霊の大御神、日の神国を知し召す、厳の御霊の大神は、現身の世の曇り汚れ罪過を、科戸の風に吹き払ひ、速川の瀬に流し捨て、清き麗しきミロクの御代に立直さむと、神素盞嗚の大御神に、千座の置戸を負はせたまひ、産土山の聖場に、斎苑の館を立て給ひ、千代の住所と定めつつ、神の御言を畏みて、遠近の国々に珍の教を完全に、開かせ給ふ有難さ、百の司を初めとし、四方の国人達は、皇大御神の大御恵を、喜び仰ぎ奉り、早風の如く潮の打寄する事の如く、神の御前に伊寄り集ひて、神の賜ひし村肝の心を錬り鍛へ、百の罪汚れ過を、払ひ清めて天地の、神の柱と生れ出でたる人の身の務めを、完全に委曲に尽し終へむと、励しみ仕ふる勇ましさ、掛巻も畏き皇大神の領有ぎ給ふ、豊葦原の千五百秋の瑞穂の国は、生言霊の幸はふ御国、生言霊の助くる御国、生言霊の生ける御国にましませば、天の下に生きとし生ける民草は、日に夜に心を研き身を謹み、神の賜ひし珍の言霊を祝り上げ奉り、仮にも人を罵らず、譏らず嫉まず憎みなく、睦び親しみ兄弟の如く、現世に生永らへて、日々の生業を楽しみ仕へ奉り、神の依さしの大御業に、仕へ奉るべき者にしあれば、三五教の御教を、夢にも忘るる事なく、朝な夕なに省みて、神の御国の幸ひを、完全に委曲に受けさせ給へと、皇大神の大前に、謹み敬ひ願ぎ奉る、下つ岩根に千木高く、仕へまつりし此宮の、いとも広くいとも清けきが如く、いや永久に、いづの玉置の村人は、テームスの村司を親と崇め、各自の生業を、いそしみ勤めて大神の、御前に勲功を奉り、家内は睦び親しみて、恵良々々に歓ぎ賑ひ、茂り栄えしめ給へ、ああ惟神々々、御霊幸倍ましませよ』 斯かる所へ村の若い衆と見えて赤鉢巻を締め乍ら、鐘や太鼓を叩きつつ、千引の岩を車に載せ、神の御前に奉らむと、大綱を老若男女が握り乍ら汗をタラタラ流しつつ、歌を唄つて進み来る其勇ましさ。(以下()内はワキ) 『(エンヤラヤー、エンヤラヤア)三五教の神司 治国別の宣伝使(ヨーイヨーイ、エンヤラヤア) 天津御空の雲別けて玉置の村に下りまし (ヨーイトセー、ヨーイトセー)(エンヤラヤーのエンヤラヤー) 欲に抜目のない爺テームスさまを説きつけて (ヨーイヨーイエンヤラヤ)も一つそこらで(エンヤラヤア) (ヨーイヨーイヨーイトナ)皆さま揃うてモ一つぢや 昔の昔の先祖から欲をかはいて溜めおいた 山も田地もすつかりと(ヨーイヨーイ、エンヤラヤ) 玉置の村へ放り出して上下なしに安楽な 生活をせよと云はしやつた時節は待たねばならぬもの (ヨーイヨーイ、エンヤラヤア)皆さま揃うてモ一つぢや (ヨーイヨーイ、ヨーイトセ)広き邸を開放して 尊き神の宮を建て老若男女が睦び合ひ 今日は目出度い宮遷し(ヨーイヨーイエンヤラヤ) (ヨーイトセ、ヨーイトセ)皆さまそこらで一気張り (ヨーイヨーイヨーイヤナ)これから玉置の村人は 今度新にお出ました万公さまの若主人に 心の底から服従し上下揃うて神様の 御用を励み日々の野良の仕事や山仕事 喜び勇んで務めませう(ヨーイヨーイエンヤラヤ) (エンヤラヤーのエンヤラヤー)皆さまここらで一気張り 千引の岩は重くとも大勢が心を一つにし 力限りに曳くならば何程甚い阪だとて 神の守りに安々と苧殻を曳くよに上るだらう (ヨーイヨーイエンヤラヤ)(エンヤラヤーのエンヤラヤー) 抑々玉置の村人は昔の昔の神世から この神村を住所としウラルの神の御教を 守り来りし人ばかり(ヨーイヨーイエンヤラヤ) (エンヤラヤーのエンヤラヤー)ウラルの神さまどうしてか 幾何信心したとても些ともお蔭を下さらぬ テームスさまが唯一人お蔭を横取許りして 吾等一同の汗膏絞つて楽に日を暮し 栄耀栄華にやつて居た(ヨーイヨーイエンヤラヤ) (エンヤラヤーのエンヤラヤー)それをば黙つて見て厶る ウラルの彦の神さまは此頃盲になつたのか 但は聾になつたのか村の難儀を知らぬ顔 (ヨーイヨーイエンヤラヤ)(エンヤラヤーのエンヤラヤー) 皆さま揃うて一気張り(ヨーイヨーイエンヤラヤア) 此度救ひの神様が天の河原に棹さして 治国別と名を変へて玉置の村に下りまし 吾等一同を救はむと仁慈無限の御教を 宣らせ給ひし嬉しさよ(ヨーイヨーイエンヤラヤ) (エンヤラヤーのエンヤラヤア)これから玉置の村人は 飢に苦しむ人も無く凍えて死ぬる人もなし 上下運否のないやうにミロクの御代が築かれて 喜び勇んで暮すだらう(ヨーイヨーイエンヤラヤ) (エンヤラヤーのエンヤラヤー)此神殿に祭りたる 救ひの神は厳御霊瑞の御霊の神柱 柱も清く棟高く御殿も宏く風景は 勝れて絶佳の御場所よ(ヨーイヨーイエンヤラヤ) (エンヤラヤーのエンヤラヤー)捻鉢巻の若い衆よ 早階段に近付いたもう一気張り一気張り お声を揃へてヨーイヤナ(ヨーイヨーイエンヤラヤ) (エンヤラヤーのエンヤラヤー)』 と唄ひ乍ら方形の大岩石を社の傍に据ゑたり。これは村人が……此岩石の腐る迄は心を堅く変へませぬ、何処迄も御神の為に尽します……と云ふ赤心の供へ物である。 万公は村人と同じく捻鉢巻をし、運んで来た石を適当の場所に据ゑむとして二三人の部下と共に槌を振り上げ、大地をドンドンと固め、杭を打つて石のにえ込まないやうと勤めて居る。相方が交互に歌を唄ひ乍ら拍子をとつて居る。 万公『神と神との引き合せ(ドーン、ドーン、ドンドンドン) 玉置の村の里庄なるテームスさまの若主人 万公司も現はれて今日の目出度いお祭りを 力限りに祝ひませう(ドーンドーン、ドンドンドン) 打てよ打て打て確り打てよ地獄の釜の割れる迄 今打つ槌は神の槌槌が土うつ面白さ (ドーンドーン、ドンドンドン)玉置の村の皆さまが キールの谷から千引岩毛綱に括つて引き来り 尊きお宮の御前に信と真との光をば 現はし給うた目出度さよ(ドーンドーン、ドンドンドン) 大神様の御利益でテームス館は云ふも更 此村人は永久に尊き此世を楽しんで 堅磐常磐に玉の緒の命を保ち心安く 家も豊に栄えませう(ドーンドーン、ドンドンドン) これから村中心をば一つに合して田を作り 山には木苗を植付けて(ドーンドーン、ドンドンドン) 共有財産沢山と造つて子孫の末迄も (ドーンドーン、ドンドンドン)宝を残し身を治め 心を清めて神様の尊き教に心従し 此世を安く頼もしく(ドーンドーン、ドンドンドン) 千引の岩の御霊もて悪魔を払ひいつ迄も ビクとも動かぬ鉄石の信仰励もぢやないかいな (ドーンドーン、ドンドンドン)どうやら準備が出来たよだ 皆さまモ一つ頼むぞや(ヨーイヨーイエンヤラヤ) (エンヤラヤーのエンヤラヤア)力の強い若い衆は 挺をば四五本持つて来て千引の岩を此上に 何卒据ゑて下されよ万公別が頼みます (ヨーイヨーイエンヤラヤ)(エンヤラヤーのエンヤラヤア) 朝日は照るとも曇るとも轟き渡る滝の水 洗ひ晒した此身体神の御前に奉り 舎身供養を励みませうああ惟神々々 (ヨーイヨーイエンヤラヤ)(エンヤラヤーのエンヤラヤー) 神の御心畏みて村人心を一つにし 今日の祭を恙なく済ませた事の嬉しさよ 玉置の村は万世に玉置の宮と諸共に 栄え尽きせぬ事だらう喜び祝へ諸人よ (ヨーイヨーイエンヤラヤ)(エンヤラヤーのエンヤラヤア)』 (大正一二・三・四旧一・一七於竜宮館加藤明子録) |
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霊界物語 | 59_戌_イヅミの国2(キヨの港) | 11 黒白 | 第一一章黒白〔一五一一〕 ヘールは勢込んで初稚姫の籠もれる館の前迄やつて来たが、何だか敷居が高くて心が怖ぢつく。 ヘール『エー、又副守の卑怯者奴、正守護神の行動を防止せむと致すか。猪口才千万な、左様な事に躊躇逡巡するヘールさまではないぞ。全隊止まれ』 腹の中から副守一同に『ハーイ』。 ヘール『よしよし、暫らく沈黙を守るのだ。いや寝て居るが宜い。非常召集の喇叭が鳴つたら、その時こそ一度に立上るのだ。それ迄副守全隊に休息を命ずる。今の間に郷里にでも帰つて爺婆の乳でも飲むで来い。アハヽヽヽ、到頭副守の奴沈黙しやがつたな。然しまだ恐怖心の奴、喰付いてゐると見えるわい。これ恐怖心、お前も早く郷里に帰つて在郷軍人となり、農工商の業に従事せよ。一旦緩急あらば鋤を鉄砲に代へ、算盤を剣に代へ、鑿を槍に代へて義勇奉公の実を示すのだ。それ迄此ヘール体内国の現役兵を免ずる。有難く思へ。アハヽヽヽ、どうやらチツト許り恐怖心が退散したさうだ否帰郷したさうだ。エー一つ歌でも歌つて姫の精神を恍惚たらしめるのだな。俺も硬骨男子と云はれて居たが、女にかけたら何と云ふ軟骨だらう。此二〇三高地は一寸骨が折れるわい。口で法螺を吹き、尻で喇叭を吹いた位ぢや容易に効果が上らない。未来の聖人は礼楽を以て世を治めたと云ふ。射御書数は末の末だ。先づ礼を厚くし楽を奏し、微妙なる音声を出して名歌を歌ひ、姫の心を動かすに限る。歌は神明の心を和らげ又天地を動かすと云ふ。況んや、人間の心に於ておやだ。歌なる哉歌なる哉だ。 恋といふ字を分析すれば 糸し糸しと言ふ心[※恋の旧字体は「戀」]……か、 やア此奴ア古い。初稚姫位のナイスになつたら已に聞いてるだらう。俺の発明した歌だと思つて呉れれば宜いが黴の生えた様な受売歌だと思はれちや、却て男が下る。よし何とか考へて見よう。 糸し可愛と心に思や 糸しお方と先方が言ふ(戀) これでスツカリ新しくなつた。然し乍ら引繰返しの焼直しだから、矢張もとの方がどうも宜い様だ。はてな、今度は愛と云ふ字を分析して歌つてやらうかな。 可愛心が貫くなれば 君は必ず受けるだらう。 今度は至上主義の至上だ、ベストだ。エヘヽヽヽ、どうか巧くやり度いものだナ。 ラブのベストは一つで厶る 土の上には君ばかり。 初稚姫のナイスさま天の川原に船泛べ 黄金の棹をさし乍らキヨの海原乗り越えて これの館に天降りまし花の顔月の眉 星の衣をつけ玉ひ天女の姿その儘に これの館にビカビカと光らせ玉ふ尊さよ 朝日は照るとも光るとも月の姿は清くとも 初稚姫に比ぶれば側へもよれない惨めさよ 雪を欺く白い顔肌滑らかにツルツルと 水晶玉の如くなりそも天地の真相は 白きは色の始まりよ黒きは色の終なり 艮は即ち年増ぞや色は年増が艮めさす 白と黒とが寄り合ふてキチンとしたる碁盤の目 経と緯との仕組をば遊ばしました大御神 赤が重なりや黒うなる黒がかへれば白となる 初稚姫の白い肌ヘールの司の黒い顔 これぞ全く艮の厳の御霊の御再来 初稚姫は瑞御魂坤なる姫神の 皇大神の御再来厳と瑞との水火合せ 夫婦の契永久に天の御柱廻り合ひ 山川草木諸々の珍の御子を生みましし 神伊邪那岐の大神のその古事に神習ひ 此地の上に永遠の天国浄土を建設し 所在百の神人を救はむ為に皇神は お色の黒き尉殿とお色の白き姥殿を 目出度くここに下しけり初稚姫の神司 如何にヘールを嫌ふとも神のよさしの縁ぞや 省みたまへ惟神神の教に目覚めたる ヘールの身魂に明かに鏡の如く映りけり 此家の主チルテルは肝腎要の女房を 他所に見捨て遠近の仇し女に現をば 抜かして魂を腐らせつ夫婦喧嘩の絶えまなく 家財一切ガタガタと時々騒ぎ躍り舞ふ 化物屋敷に居る様だ青と白とをつき交ぜた 干瓢面を下げ乍らキヨの関守笠に着て キャプテン面を振廻し天から降つた初稚姫の 神の命の神女をば閨のお伽になさむとて チルナの姫に難癖をうまうまつけて縛り上げ 倉の中へと無慚にも押込めたるぞ憎らしき かかる残虐無道をば敢て恥ない鬼畜生 必ず迷はせ玉ふなよ涙もあれば血も通ふ 義勇一途のこのヘール昨晩の神の御告げに 其方は神世の昔から深い因縁ある身魂 初稚姫と其昔夫婦となつて道の為 尽しまつりし天人ぞ弥勒の神代が来るにつけ お前を変性女子となし初稚姫の神司 変性男子と現はれて神の御国を細に 造り固めよと厳かに宣らせ玉ひし尊さよ 初稚姫の神司必ず嘘ではない程に 神の言葉に二言ない胸に手をあて神勅を 正しく覚りヘールをば神の結びし夫とし 睦び親しみ神業に参加なされよ瑞御魂 変性女子が宣り伝ふ朝日は照るとも曇るとも 仮令大地は沈むとも夫婦の道は変らない 兎角浮世は人間の心の儘にはなりませぬ 互に欠点辛抱して採長補短睦じく 天地の水火を固むべし吾言霊の御耳に 安全に委曲に入るならばいと速けく返事 宣らせ玉へよ姫命誠に厚きヘール司 ここに慎み神勅を命の前に宣りまつる あゝ惟神々々恩頼を賜へかし』 初稚姫は中よりパツと戸を開いてヘールの姿を打見守り乍ら微笑して、 初稚姫『何人の言霊ぞやと怪しみて 窓を開けば面白の君。 種々と厳の言霊繰返す 君の心の悲しくぞある』 ヘール『吾とても男の子の中の男の子なれば 如何で女に心乱さむ。 さり乍ら神の言葉は背かれず 汝が命に宣り伝へける。 此恋は人恋ならず神の恋 ラブ・イズ・ベストの鑑なりけり』 初稚姫『訝かしや神の言葉と聞く上は 背かむ術もなきにあらねど』 ヘール『瞹眛な姫の言霊如何にして 解く由もなき吾思ひかな。 益良夫が思ひつめたる恋の矢は やがて岩をも射貫くなるらむ』 初稚姫『さは云へど妾は神の御使よ 夫持たすなと厳しき戒め。 戒めを固く守りて進む身は 醜の嵐の誘ふ術なし。 詐りのなき世なりせば斯くばかり 吾魂を痛めざらまし。 吾身には恋てふものは白雲の 空にまします月の大神』 ヘール『吾とてもこれの関所につきの神 テルモン山の雄々しき姿よ』 初稚姫『春は花夏は橘秋は菊 冬水仙の寂しき花よ。 手折るべき人なき吾を慈しむ 男の子は神に等しとぞ思ふ。 真心は吾魂に通へども 詮術もなし天人の身は。 現世の人は一所なりあはぬ しるし有れども吾はこれなし。 浮かれ男の吾身体を知らずして 迷はせ玉ふ事の果敢なさ』 ヘール『どうしても皇大神の御教を 守りて君を吾妻とせむ。 如何程に振らせ玉ふも撓みなく 従ひ行かむ海の底まで』 初稚姫『思ひきや思はぬ人の深情 汲む由もなき吾ぞ悲しき』 ヘール『柔かに珍の言霊生き車 押す君こそは天の於須神 ラブベスト那須野ケ原の若草は 踏まれ躙られ乍ら花咲く』 初稚姫『踏まれても又切られても花咲かず 見る影もなき無花果の樹は。 神の道只無花果に進む身は 春風吹くも咲く例なし。 花の無き妾の姿を見限りて 野に咲き匂ふ花を求めよ。 紫雲英花実に目覚ましく開くとも 床の飾りにならぬ吾なり』 ヘール『野辺に咲く紫雲英の花の花莚 敷きてやすやす寝ねむとぞ思ふ。 もどかしき君の言葉を早吾は 聞くも堪え難くなりにけらしな。 男心の大和心を振り起し 手籠めにしても手折らで止まじ』 と云ひ乍ら表戸をガラリと開け、ツカツカと初稚姫の前に進み猿臂を伸ばして、グツと其手を握らむとした。初稚姫は手早く其手を放し襟髪とつて窓の外に猫を提げた様な調子でフワリと投げ出した。ヘールはムクムクと起き上り再び座敷に性懲りもなく初稚姫の前に進み寄り、 ヘール『一旦男が云ひだした恋の意地、中途に屁古垂れる様な男では厶らぬ。もう此上は平和の手段では到底駄目だ。覚悟召され、美事靡かして見せよう』 と武者振りつくを初稚姫は手もなく、グツと押へつけ、 初稚姫『ホヽヽヽヘールさま、宜い加減に悪戯なさいませ。貴方はお酒に酔つて居らつしやるのでせう。少しく酔の醒めるまで、此処でお休みなさいませ』 ヘール『決して酔うては居りませぬ。酔うたと云ふのは貴方の容色に酔つたのです。之も全く貴女より起つた事、吾心を鎮めて下さるのは貴女より外にはありませぬ。決して私は初めから貴女にラブしようとは思つて居なかつたのです。それが俄かに貴女のお姿を見るにつけ、忽ち神懸となり、矢も楯もたまらず、神の命に従つて貴女にかけ合つたのです。決してヘールの考へではありませぬ』 初稚『ホヽヽヽよい年をして、ようまアそんな事を仰有いますな。ブリンギング・アップ・ファーザー(老年教育)を施さなくては到底貴方は駄目でせう。神さまの命令だなどと云つて妾を誤魔化さうと思召しても、外の女ならいざ知らず、妾に対しては寸功も現はれませぬから、どうか左様な詐言はお慎み下さいませ』 ヘール『何と仰有つても男の顔が立ちませぬ。何卒そこ放して下さい。左様な剛力で押へられましては息が絶れますわい』 初稚『息が絶えても構はぬぢやありませぬか。貴方は妾の為には海の底まで跟いて行くと仰有つたでせう、ホヽヽヽヽ』 と小さく笑ふ。そこへ足をチガチガさせ乍ら血相変へてやつて来たのは館の関守チルテルのキャプテンであつた。 (大正一二・四・二旧二・一七於皆生温泉浜屋北村隆光録) |
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霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 14 神言 | 第一四章神言〔一五三九〕 三五教の祝詞 天津祝詞 高天原に元津御祖皇大神数多の天使を集へて永遠に神留ります。 神漏岐神漏美の御言以ちて 神伊邪那岐尊九天の日向の立花の小戸の阿波岐ケ原に。御禊祓ひ玉ふ時に成り坐せる。 祓戸の大神等 諸々の曲事罪穢を。 祓ひ玉へ清め賜へと申す事の由を 天津神、国津神、八百万の神等共に 天の斑駒の耳振立て聞食せと 恐み恐みも白す。 神言 高天原に神留り坐す。元津御祖皇大神の命以て。八百万の神等を神集へに集へ賜ひ神議りに議り玉ひて。伊都の大神美都の大神は豊葦原の水穂の国を。安国と平けく所知食さむと天降り玉ひき。如此天降り玉ひし四方の国中に荒振神等をば。神問しに問し玉ひ神掃ひに掃ひ給ひて、語問し磐根樹立草之片葉をも語止て。天之磐座放ち天之八重雲を伊頭の千別に千別て天降り賜ひき。如此天降り賜ひし四方の国中を安国と定め奉りて下津磐根に宮柱太敷立。高天原に千木多加知りて皇大神の美頭の御舎仕奉りて。天の御蔭日の御蔭と隠り坐して。安国と平けく所知食さむ国中に成出む天の益人等が、過犯しけむ雑々の罪事は。天津罪とは。畔放ち溝埋め樋放ち頻蒔き串差し、生剥ぎ逆剥ぎ屎戸許々太久の罪を。天津罪と詔別て国津罪とは。生膚断、死膚断、白人胡久美。己が母犯せる罪、己が子犯せる罪。母と子と犯せる罪、子と母と犯せる罪。畜犯せる罪、昆虫の災。高津神の災、高津鳥の災。畜殪し蠱物せる罪、許々太久の罪出む。如此出ば天津宮言以て。天津金木を本打切末打断て。千座の置座に置足はして。天津菅曽を本刈絶末刈切て八針に取裂て。天津祝詞の太祝詞言を宣れ、如此宣らば。天津神は天の磐戸を推披きて。天の八重雲を伊頭の千別に千別て所聞食む。国津神は高山の末短山の末に上り坐て。高山の伊保理、短山の伊保理を掻分て所聞食む。如此所聞食ては罪と云ふ罪は不在と。科戸の風の天の八重雲を吹き放つ事の如く。朝の御霧夕の御霧を朝風夕風の吹掃ふ事の如く。大津辺に居る大船を舳解放ち艫解放ちて大海原に押放つ事の如く。彼方の繁木が本を焼鎌の敏鎌以て打掃ふ事の如く。遺る罪は不在と祓ひ賜ひ清め玉ふ事を。高山の末短山の末より佐久那太理に落。多岐つ速川の瀬に坐す瀬織津比売と云ふ神。大海原に持出なむ、如此持出往ば。荒塩の塩の八百道の八塩道の塩の八百会に坐す速秋津比売と云ふ神。持可々呑てむ、如此可々呑ては。気吹戸に坐す気吹戸主と云ふ神。根の国底の国に気吹放てむ、如此気吹放ては。根の国底の国に坐す速佐須良比売と云ふ神。持佐須良比失てむ如此失ては。現身の身にも心にも罪と云ふ罪は不在と。祓給へ清玉へと申事を所聞食と。恐み恐みも白す。 (附言)『天津祝詞神言の二章は古代の文なれば現今は使用せず』 |
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霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 16 祈言 | 第一六章祈言〔一五四一〕 感謝祈願詞 感謝 至大天球の主宰に在坐て。一霊四魂、八力、三元、世、出、燃、地成、弥、凝、足、諸、血、夜出の大元霊、天之御中主大神、霊系祖神高皇産霊大神。体系祖神神皇産霊大神の大稜威を以て、無限絶対無始無終に天地万有を創造賜ひ。神人をして斯る至真至美至善之神国に安住せ玉はむが為に、太陽太陰大地を造り、各自々々至粋至醇之魂力体を賦与玉ひ。亦八百万天使を生成給ひて万物を愛護給ふ、其広大無辺大恩恵を尊み敬ひ恐み恐みも白す。 掛巻も畏き大地上の国を知召します、言霊の天照国は。千代万代に動く事無く変る事無く。修理固成給ひし、皇大神の敷坐す島の八十島は。天の壁立極み国の退立限り。青雲の棚引極み、白雲の堕居向伏限り、伊照透らす大稜威は、日の大御守と嬉しみ尊み。常夜照る天伝ふ月夜見神の神光は、夜の守と青人草を恵み撫で愛しみ賜ひ。殊更に厳の御魂天勝国勝国之大祖国常立尊は、天地初発之時より独神成坐而隠身賜ひ。玉留魂の霊徳を以て、海月如す漂へる国土を修理固成て、大地球の水陸を分劃ち賜ひ。豊雲野尊は足魂の霊徳を以て植物を生出、葦芽彦遅尊は生魂の霊徳を以て動物を愛育て。大戸地、大戸辺、宇比地根、須比地根、生杙、角杙[※「生杙」「角杙」の「くひ」の字は、戦前の初版(p286)・校定版(p247)・愛世版(p232)いずれも「枠」。古事記では「杙」である。「枠」は「くい」ではなく「わく」であり、誤字だろうから、霊界物語ネットでは「杙」を使う。]、面足、惶根の全力を以て。万有一切に賦り与へ、天地の万霊をして、惟神の大道に依らしめ賜ひ。神伊邪那岐尊、神伊邪那美尊は。天津神の神勅を畏み、天の瓊矛を採持ち。豊葦原の千五百秋の水火国を。浦安国と、𪫧怜に完全具足に修理固成し賜ひて。遠近の国の悉々、国魂の神を生み、産土の神を任け賜ひて。青人草を親しく守り賜ふ。其大御恵を仰ぎ敬ひ喜び奉らくと白す。 現身の世の習慣として。枉津神の曲事に相交こり、日に夜に罪悪汚濁に沈みて。現界の制律に罪せられ。幽界にては神の政庁の御神制の随々、根の国底の国に堕行むとする蒼生の霊魂を憐み賜ひて。伊都の霊、美都の霊の大神は。綾に尊き豊葦原の瑞穂の国の真秀良場畳並る、青垣山籠れる下津岩根の高天原に、現世幽界の統治神として現れ給ひ。教親の命の手に依り口に依りて、惟神の大本を講き明し。天の下四方の国を平けく安けく、豊けく治め給はむとして。日毎夜毎に漏る事無く遺る事無く。最懇切に百姓万民を教へ諭し賜ふ。神直日、大直日の深き広き限り無き大御恵を。嬉しみ忝なみ、恐み恐みも称辞竟へ奉らくと白す。 祈願 天地初発之時より。隠身賜ひし国の太祖大国常立大神の御前に白さく。天の下四方の国に生出し青人草等の身魂に。天津神より授け給へる直霊魂をして。益々光華明彩至善至直伊都能売魂と成さしめ賜へ。邂逅に過ちて枉津神の為に汚し破らるる事なく。四魂五情の全き活動に由て、大御神の天業を仕へ奉るべく。忍耐勉強もつて尊き品位を保ち、玉の緒の生命長く。家門高く富栄えて、甘し天地の花と成り光と成り。大神の神子たる身の本能を発き揚しめ賜へ。仰ぎ願はくは大御神の大御心に叶ひ奉りて、身にも心にも罪悪汚穢過失在らしめず。天授之至霊を守らせ給へ、凡百の事業を為すにも。大御神の恩頼を幸へ給ひて、善事正行には荒魂の勇みを振起し、倍々向進発展完成の域に立到らしめ給へ。朝な夕な神祇を敬ひ。誠の道に違ふ事無く、天地の御魂たる義理責任を全うし。普く世の人と親しみ交こり、人欲の為に争ふ事を恥らひ。和魂の親みに由て人々を悪まず、改言改過悪言暴語無く、善言美詞の神嘉言を以て、神人を和め。天地に代るの勲功を堅磐に常磐に建て。幸魂の愛深く。天地の間に生とし生ける万物を損ひ破る事無く。生成化育の大道を畏み、奇魂の智に由て。異端邪説の真理に狂へる事を覚悟可く。直日の御霊に由て正邪理非直曲を省み。以て真誠の信仰を励み、言霊の助に依りて大神の御心を直覚り。鎮魂帰神の神術に由て村肝の心を練り鍛へしめ賜ひて。身に触る八十の汚穢も心に思ふ千々の迷も。祓ひに祓ひ、退ひに退ひ、須弥仙の神山の静けきが如く。五十鈴川の流の清きが如く。動く事無く変る事無く。息長く偉大く在らしめ賜ひ。世の長人、世の遠人と健全しく。親子夫婦同胞朋友相睦びつつ。天の下公共の為、美はしき人の鏡として。太じき功績を顕はし、天地の神子と生れ出たる其本分を尽さしめ賜へ。総の感謝と祈願は千座の置戸を負て、玉垣の内津御国の秀津間の国の海中の沓嶋神嶋の無人島に神退ひに退はれ。天津罪、国津罪、許々多久の罪科を祓ひ給ひし、現世幽界の守神なる、国の御太祖国常立大神、豊雲野大神。亦た伊都の御魂美都の御魂の御名に幸へ給ひて聞食し、相宇豆那比給ひ。夜の守日の守に守幸へ給へと。鹿児自物膝折伏せ宇自物頸根突抜て。恐み恐みも祈願奉らくと白す。 祖先拝詞 遠都御祖の御霊、代々の祖等、家族親族の霊。総て此祭屋に鎮祭る、御魂等の御前を慎み敬ひ。家にも身にも枉事有らせず、夜の守り日の守りに守幸へ宇豆那比玉ひ。弥孫の次々弥益々に令栄賜ひて。息内長く御祭善く仕奉らしめ給へと。畏み畏みも拝み奉る。 |
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霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 17 崇詞 | 第一七章崇詞〔一五四二〕 祖霊社朝夕日拝祝詞 是の祖霊殿に斎き奉り鎮まり坐す三五皇大御神の宇豆の大前に慎み敬ひ畏み畏み白さく、言巻も畏けれども、大神等の深き高き御徳を蒙りて、常も撫で給ひ愛給へる青人草等(何某家遠祖代々祖等)の神霊諸々を、此祖霊殿に斎ひ鎮めて惟神なる大道の随々恩頼を幸ひ給ふ事を、嬉み忝み畏みも称へ言竟奉らくと白す。 言別て此の霊舎に斎き奉り坐せ奉る諸々(何家遠祖代々祖等)の神霊の御前に白さく、人は皇御祖の奇に妙なる造化に依りて天津御魂を賜はり、伊邪那岐、伊邪那美二柱の大神の生成し給ひて、天照大御神の大御光の中に養育はるる者なれば、顕世の心の律法、身の行を惟神清く正しく務め励みせば、天津御国の神の廷に帰り坐して其程々に天津神の御愛顧を受て、永く久しく仕へ奉るべき神理を尊み、重みつつ、供へ奉る幣帛を(毎日の御饌を)平らけく安らけく聞食て、是の教の御廷に拝み仕奉る諸人等は、異き心悪き行ひ無く、病しき事なく、煩はしき事なく、家の業緩ぶ事なく怠る事なく、弥栄に栄しめ給ひ、夜の守り日の守りに守り幸ひ給へと、畏み畏みも白す。 祖霊遷座祭 何々家の遠津祖、世々の祖等の御霊の御前に慎み敬ひも白さく、此の御宮を祓清めて、今日より遷し奉り坐せ奉る事を、平らけく安らけく聞食相諾ひ給ひて、弥益々に家門高く子孫の八十続をも守幸へ給へと、種々の神饌物を捧げ奉りて、恐み恐みも白す。 一年祭祭文 此の霊殿に斎ひ奉り坐せ奉る、○○命故○○毘古の神霊の御前に白さく。汝命や現世を身退坐つるは、昨年の此月の今日と早くも一年廻れる御祭の日に成ぬ。故常も忘るる間なく、慕ひつつ花紅葉の美麗き色を見ては昔を思ひ、百鳥の囀る声を聞ては其世を恋ひ、種々に恋しみ偲び奉りて、此の家の守神と持斎、御前には夜となく昼となく仕奉中にも、今日は親族家族諸人等、弥集へに集へて広く厚く祭祀治め奉るが故に、礼代の幣帛と種々の神饌物を百取の机に横山の如く供へ奉りて、称言竟奉らくを、平けく、安らけく聞食て、弥遠永に世々の祖等と御心を一び御力を合せ給ひて、子孫の遠き世の守り、家の鎮と坐す御徳を現はし給ひ、家門高く立栄しめ給ひ家族親族和び睦び、浦安く転楽しく在しめ給へと畏み畏みも白す。 辞別て何々の家の遠津御祖、世々の祖等の御前に白さく、今日はしも○○毘古の神霊の一年の御祭仕奉るとして、供へ奉る美味物を相甞に聞食相諾ひ給へと、恐み恐みも白す。 五十日間新霊拝詞 ○○命、故○○の神霊や、汝命の御為には、善き事議り為さむと真心を尽して大神に乞祈奉り、善き事は褒め給ひ、過あらむには宥め給ひて其所を得しめ給ひ、其楽を極めしめ給へと祈白す事を聞食て、只管に大神を憑頼坐して。惑はず多由多はず平穏に鎮まり給へと白す。 家祭祝詞 畏きや、○○命の御前に白さく、汝命は百年千年の齢を重ねて、世の長人の名を負ひ坐む事をし、家族は更なり、諸人も常に多能母志美思ひつつ在経し間に、現身の人の慣と(病には得堪給ずて)現し世を離て幽冥に隠り坐し天津御国に昇り坐しぬれば惟神の御掟の任々事議りて、神葬の礼も既功竟ぬれば、瑞の殿の内外も清らかに祓ひ清めて種々の物供へ奉りて、御祭仕奉る状を平けく安らけく聞食て、大神の広き厚き御恵の蔭に隠ひ、浦安く、浦楽しく坐して、子孫の八十続き遠き世に此の家の守護神と鎮り坐して、時々の祭の礼をも、絶る事なく、懈る事なく、仕奉らむ事を相諾ひ給へと、恐み恐みも白す。 招魂祓詞 掛巻も畏き祓戸四柱の大神等の大前に謹み敬ひて白さく。此郷に住る、何某、此月○日に顕世を去りぬるに因りて、其霊魂の為に三五皇大神辞別て産土の大神に乞祈奉り霊代を造備へて、遠く永く此家に鎮め斎ひ奉らむとす。故供へ奉る神饌物は更なり祭員及家族親族諸人等が過犯けむ罪穢有らむには祓ひ賜へ清め給ひて、清々しく成幸へ給へと、恐み恐みも白す。 発葬祓詞 掛巻も恐き祓戸四柱の大神等の宇都の大前に祓主、何某、畏み畏みも白さく、去し○日に顕世を神避り坐しつる何某が葬儀の祭仕奉るとして供へ奉る神饌物は更なり、仕奉る祭員及家族親族参来集へる諸人等が過犯しけむ罪穢有らむをば、祓給ひ、清め給ひて行道をも枉神の枉事なく、清々しく発葬の式仕奉らしめ給へと、恐み恐みも白す。 五十日間及年祭奥都城祝詞 ○○命故○○毘古(子)の奥都城の御前に白さく、今日はしも○年(日)の御祭仕へ奉るべき日に廻り来ぬれば、家族親族諸人打集ひて、種々の美味物供へ拝み奉る状を平けく安らけく聞食して子孫の遠永に家をも身をも守り幸ひ給へと恐み恐みも白す。 幽家復祭奏上詞 掛巻も畏き三五皇大神の大前に慎み敬ひも白さく。何某(霊の名)の霊は御祭仕奉るべき神胤の無きが故に、今回惟神の御教の任に任に改め斎ひて、幽家に鎮め、大神の知食す幽冥の神事に仕奉らしめむとして、今日の生日の足日の良辰に御祭仕へ奉らむとす。故神酒御饌、海川山野の種々の物を供へ奉りて乞祈白す事の状を、平けく安らけく聞食相諾ひ給ひて、弥遠永に広く厚く恩頼を蒙らしめ給へと畏み畏みも称へ言竟へ奉らくと白す。 復祭合祀祝詞 此の日茂呂木に斎ひ奉り坐せ奉る、何某の霊の御前に慎み敬ひも白さく。汝命等は前の御祭に洩れ落ち給ひしに依りて、今日の吉日の吉辰に、何々家代々の祖等の鎮り坐す霊祠に合祀の御祭仕奉らむとして、御前には神酒、御饌、種々の物を取添へて仕奉らくを御心穏に聞食せと白す。抑現世の人の生ける間は言ふも更なり、死れる後の霊魂は専ら皇大神の広き厚き御心に愛み給ひ、恵み給ひて、神の列に入らしめ給ひ、歓び楽しみをも得しめ給ふ事を、丁寧に窺ひ覚りて、今も此の如く汝命等の御霊の御為に、大神の御寵愛を乞祈奉りて、惟神の大神国風に改め斎ひ奉らくを、汝命等の御心にも嬉しみ悦び平かに安かに聞食し給ひて、今日より以後は只管に大神に仕へ奉りて、高き御位に進み、弥広に弥益々に広所を得給ひ、何々家代々の祖等と御力を合せ、御心を一び給ひて春秋の遠永に、子孫の八十連に参出侍ひて、御祭美しく仕奉らしめ給へと、乞祈奉らくを聞食して、御心も平穏に鎮まり給へと畏み畏も白す。 祓戸昇降神詞 掛巻も綾に恐き 瀬織津比売之大神 速秋津比売之大神 伊吹戸主之大神 速佐須良比売之大神 総て祓戸四柱の大神等 是の日茂呂木に降居坐し坐せ。 此の日茂呂木に招ぎ奉り座せ奉る掛巻も綾に恐き 瀬織津比売之大神 速秋津比売之大神 伊吹戸主之大神 速佐須良比売之大神 総て祓戸四柱の大神等 本津御座に昇り坐し坐せ。 祖霊大祭祝詞 畏きや此の霊社に鎮め奉り斎き奉る神霊等の御前に持ち由まはり謹み敬ひも白さく。八十日日は有れども、今日を生日の足日と選み定めて、春(秋)の大御祭仕へ奉るとして、御前には奥山の五百枝真栄木を伊伐り来て、時の花をも折り添へて、御饌は高杯に盛足らはし、餅の鏡を八十平瓮に積み重ね、御酒は甕の戸高知り甕の腹満て並べて、海川山野の種々の美味物、御水堅塩に至る迄横山の如く置き足らはして、家族親族諸人をも弥集へに集へて、斎廷もとどろに饒び笑らぎ、掌もやららに打上げつつ称へ言竟へ奉らくを、汝命等は現世の事、成し竟へまして幽冥の神の列に入りましつれば、大神の大御心にも愛しみ給ひ撫で給ひて、弥高に高き位に進み給ひ、弥広に広所を得しめ給ひて、現身の世に坐しし間こそ飽かず口惜く思しし事も有けめ、今はしも万の事等御心のまにまに、足らひ調ひて、心安く転た楽しき事となも思ひ奉らくを愛で給ひ、美はしみ給ふ子孫等家族親族の悉、汝命等の創め給ひ伝へ給へる御功業を、樛木の次ぎ次ぎ弥弘めに弘め、言霊の清けく坐しし祖の名墜さず、勤め締りて有る状を聞食し、清き名をも高き功をも、今の世に立ちて後の世に伝へしめ給ひ、幽冥に入りなむ後の霊魂をも、あななひ給ひて、汝命等と共に歓び楽を得べく、守り幸へ給へと乞祈奉らくを、御心も和親に聞食して、子孫の八十続き、弥遠長に毎年の今日の御祭、美しく仕へ奉らしめ給へと、家族親族諸々氏子等が真心を取持ちて、称言竟へ奉らくと白す。 祖霊社大祭斎主祝詞 掛巻も畏き三五皇大御神の宇豆の大前に斎主某畏み畏みも白さく。 大神等の奇霊に玄妙なる天津御量りを以て、天地を鋊造堅め、万物を造化成し給ひし中にも、天下の大公民はしも、三五皇大御神の天津御霊を皇産霊に産霊成し給へるまにまに、諾冊二柱の御祖神の生み成し給ひ、日の大御神の養育ひ給へる物にして、元より清き明き神魂を給はりて、生れ出でたる事著ければ、惟神直き正しき道に神習ひ恪まむ人は、大御神等の広き厚き仁恩以て弥栄えに栄え往くべく守り給はむ事は、唯斯世のみに限らず、必ず後の世までも慈み育み守り給はむ事を、尊み辱みつつ八十日日は有れど、今日を生日の足日と斎ひ定めて、毎年の例のまにまに、大御祭仕へ奉るとして、奥山の五百枝真栄木に木綿取り垂て、御饌、御酒、海川山野の種々の美味物、御水堅塩に至るまで、百取の机代に置き高成して仕へ奉らくを、神慮も和かに聞食して皇大神の統治す大八洲国は堅磐に常磐に動く事なく揺ぐ事なく敷き坐す御祭政治は春の花の清く美しく、秋の果実の宇麻良に安らかに行はしめ給ひ、地の上に成出でむ天の益人、弥益々に繁殖て直き正しき大和心の真心を、一つ心に治めさせ給ひ、是の神殿に斎ひ鎮め奉る遠津御祖の神霊等、及世々の祖等諸々の御魂等は、弥広に広所を得しめ給ひ、高き位に進ましめ給ひ、参来集へる子孫の弥次々、男女の別なく、老も若も心正しく身健かに、命長く君臣、師弟、父子、夫婦の道を始めて、人の行ふべき業は遺る隅なく励み勤めて、生涯は神の教に違ふ事なく、世の人をも賛け導き、各も各も罷らむ後は、高天原に復命白さむまにまに、其行の分々に、永き世の幸福を授け給はむ縁由をも、説き明さしめ給ひ、太き雄々しき功績を立てしめ給ひ、顕世も幽冥も、弥遠永に守り恵み幸へ給へと各も各も玉串を持ち捧げ、乞祈奉る状を聞食せと畏み畏みも白す。 復祭鎮祭祝詞 此の日茂呂木に斎ひ鎮むる何某家遠津御祖世々の祖等の神霊の御前に、神裔何某に代りて、何某慎みて白さく、皇大神の御手風の万古に復し給へる太じき御典のまにまに今此月何日の朝日の豊阪登りを(夕日の降知を)(夜昼を)吉時と此の神祠に、汝命等の神霊を安置奉り斎ひ奉り、是の小床に鎮め奉りて真榊木差しはやし、木綿取り垂でて、礼代の幣帛と奠る豊御饌の大御饌、味し御酒の大御酒を、高杯平甕に満て並べて、海の物、野の物、山の物、種々の果実を取添へて仕へ奉らくを、御心穏に聞食し給ひて、家族親族は邪悪の道に惑ふ事なく、諸々過つ事なく、攘ひ給ひて、清き赤き直き正しき真心に、誘ひ導き給ひ、家の業をも弥奨めに奨め給ひ、子孫の八十連五十橿八桑枝の如く立栄えしめ給ひて息長く御祭美しく仕奉らしめ給へと、乞祈白す事をも、平かに安らかに聞召して夜の守り日の守りに守り、堅磐に常磐に恵み幸へ給へと畏み畏みも白す。 鎮祭日より年祭の祝詞(年月日不明の霊) 是の日茂呂木に斎ひ奉り移し奉る何某の命(等)の御前に斎主何某慎み敬ひも白さく、汝命(等)の御祭日詳かならねば、惟神の皇国風に改め奉りし日を、吉日の良辰と斎ひ定めて、其が神霊(等)を慰め仕へ奉らむとして、種々の御饌物を備へ奉りて、乞祈奉る状を相諾ひ給ひて、皇神等の任け給ひ依さし給はむ程々の御位に進み給ひて、枉津神の群に入り給はず、此の何々家が代々の栄を此上なき幸と心安く、心楽しく、時々の御祭を、御心も閑に享け聞食し給へと畏み畏みも白す。 霊社月次祭祝詞 掛巻も畏き三五皇大御神の宇豆の大前に斎主何某畏み畏みも白さく、八十日日は有れども、今日を生日の足日の良辰と選み定めて、毎月の例のまにまに月次の御祭典執行ひ仕へ奉らむとして御前には餅の鏡を積み重ね、大海原に住むものは鰭の広物鰭の狭物、奥津藻菜、辺津藻菜、野山に生ふる物は甘菜辛菜、及種々の果実、御水堅塩に至るまで横山の如く盛り高成して、平素に大神等の広き厚き威徳を仰ぎ奉り、尊み辱けなみつつ在り経るを畏み奉りて、言巻も畏けれど天皇命の大寿命を手長の大寿命と湯津石村の如く、堅磐に常磐に茂し御代の足御代と成し幸ひ給ひて、遠津御祖、世々の祖等、親族諸々の神霊等の御栄を乞祈白す状を聞食して、三五の御教は天地と共に変りなく、月日と共に動き傾く事なく、朝日の豊栄登りに咲み栄えしめ給ひ、三五信徒等は本末内外を過たず、大神等の深き高き慈愛を過つ事なく、違ふ事なく広め導かしめ給ひ、恩頼を蒙らしめ給へと、乞祈白す事を聞食し、相諾ひ給へと恐み恐みも白す。 辞別けて遠津御祖、世々の祖等、親族家族諸々の神霊等の御前に白さく、今日はしも月次の御祭仕へ奉り、御饌物供へ奉りて、日毎に恩頼を蒙りつつ、不意なくも過ち犯しけむ種々の罪穢在らむをば、見直し聞き直し坐して、親の名汚さず、子孫の弥次々、山松の弥高々に立栄えしめ給ひ、夜の守り日の守りに守り幸へ給へと、五十橿鉾の中取持ちて恐み恐みも白す。 新祭殿月次祭祭文 此の神殿に斎き奉り坐せ奉る、掛巻も畏き三五皇大御神の御前に恐み恐みも白さく、月毎の例のまにまに今日の生日の足日に、御祭仕へ奉るとして、奉る幣帛は御饌は高杯に盛足らはし、御酒は甕の戸高知り甕の腹満て並べて、大海原に住める物は鰭の広物鰭の狭物、山野に生る物は甘菜辛菜種々の果実、奥津藻菜、辺津藻菜、御水堅塩に至る迄、百取の机に横山の如く置足らはして称言竟へ奉らくを、平けく安らけく聞食して、此の霊殿に鎮ります家々の霊等をば、弥益に御霊幸ひ給ひて、弥高に高き位に進ましめ給ひ弥広に広所を得しめ給ひ、参出来む親族家族が家をも身をも守幸へ給ひ、子孫の八十続に至る迄五十橿八桑枝の如く茂久栄に立栄えしめ給ひ、忘るる事なく、堕る事なく、御祭仕へ奉らしめ給へと白す事を聞食し相諾ひ給へと鵜自物頸根突抜きて恐み恐みも白す。 辞別けて此の霊殿に鎮まり坐す諸々の家の御霊等の御前に白さく。今日はしも月次の御祭仕へ奉るとして、御前をも持斎き種々の多米津物を備へ奉らくを、相甞に聞食して、大神等の広き厚き大御恵を蒙り給ひて、弥広に広所を得しめ給ひ、永遠に安く穏に鎮まり坐して、春秋の歓び楽しみをも極め給ひて、断る事無く御祭仕へ奉らしめ給へと白す。 |
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霊界物語 | 61_子_讃美歌1 | 12 神徳 | 第一二章神徳〔一五六二〕 第一一二 一 うつし世に為せる業をら神の前に さらけ出さるる時は来にけり。 二 むら肝の心のそこに潜みたる 鬼も大蛇も今や怖ぢつつ。 三 よしあしも洩れなくさばく伊都御魂 世に現はれぬ謹み悔いよ。 四 人の身はいつ死るとも白露の 果敢なきものぞ神に頼れよ。 第一一三 一 聖霊よ吾身に宿らせたまひつつ 妙なるちからわかち玉はれ。 二 皇神の御教の書をおろかなる われにも正しく悟らせ玉へ。 三 いや広きめぐみの翼伸べ玉ひ 曇りし魂を守る伊都の神。 四 諸々の罪に曇りしたましひを 照させたまへ伊都の光に。 五 いや深き愛のながれの水底を はからせ玉へ伊都の光に。 六 古のモーゼエリヤにハリストス ヨハネの魂のみつの御柱。 七 御めぐみの光は豊にみつ御魂 暗を照して現れましにけり。 第一一四 一 曇り切りたる御魂を照しいさみ歓び溢るるいづみ 汲みて嬉しく思はず知らずたたへの御歌うたふ大前。 二 悲しき辛き思ひに沈む果敢なき身にも光をあたへ 守りたまへば思はず知らずよろこび歌ふ貴美の大前。 三 玉の殿にも伏屋の軒も仁慈の神は照りかがやきて のぞみ坐すこそいと尊けれ清き祈りを諾ひまして 罪もけがれも伊吹にはらひ千代の宮居と住まはせ玉へ。 四 皇神と倶にありせば陸奥の 荒野の末もなにか恐れむ。 五 鳥さへも通はぬ深き山奥も 神とありせば天津御国ぞ。 六 朝夕にあふるる恵を身にうけて 露の生命の玉はかがやく。 第一一五 一 瑞御魂吾魂に降りまして 神の御姿おがませ玉へ。 二 ねぎごとを御心平にやすらかに 聞こしたまひて守りませ岐美。 三 岐美といへどこの世を治むる君ならず 魂を治むる清めの神ぞや。 四 瑞御魂きみとふ名をば楯にとり 醜のたぶれの迫り来るかも。 五 現世の君より外にきみなしと おもふ人こそ愚なりけり。 六 伊邪那岐の岐の字と並び伊邪那美の 美の字合せて岐美とこそなれ。 七 神と云ひ岐美と称ふも一つなり 夢あやまつな神の御子たち。 八 聖霊よけがれし身をもめぐまひて 宮居となして宿らせたまへ。 九 叢雲を伊吹払ひて天津日の 魂の光を照しませ岐美。 一〇 春風の薫りて諸の花開く 長閑な御代となさしめ玉へ。 第一一六 一 暗夜を照す厳御魂世人を守る瑞御魂 定めなき世のたづきをも知らず浮世の旅をなす 人を導き天津日の神国に来よと宣り給ふ 珍の御声を具さにかけさせ玉へと願ぎまつる。 二 光つきせぬ厳御魂月より清き瑞御魂 栄光と希望の消え失せし常世の暗に踏み迷ひ 恐れ戦きする民を恵の御手をさしのべて 天津御空の神国に登り来れと宣り玉ふ 珍の御声を安らかに聞かしめ玉へと宣り奉る。 三 千座の置戸のあななひに只管頼り世の中の 百の務めを相果たし天津御空の故郷へ 勇みて上る佳き日をば喜び勇み松の御代 早く来れと玉の声かけさせ玉ふ瑞御魂 命の頼りを願ぎ奉るあゝ惟神々々 御霊幸ひましませよ。 第一一七 一 浮雲のかかる心を打開き 日の出の国に上らせ玉へ。 二 罪穢れ清めて生かす瑞御魂 常世の春に導き玉へ。 三 皇神の稜威の光に疑の 暗き雲霧はれ渡り行く。 四 限りなき又新しき命をば 賜ふ主こそ珍の母なる。 五 皇神の魂の光を身に受けて 愛の御園に進む嬉しさ。 第一一八 一 吾祈る誠を愛でて惟神 奇しき力を授け玉へよ。 二 暗の夜を稜威の光に照しつつ 命の道に進ませ玉へ。 三 厳御魂燃ゆる焔に現身の 穢れを焼きて吾を清めませ。 四 科戸辺の風の響に四方の国 神の訪れ宣べ伝へませ。 五 八咫烏愛の翼に吾魂を 乗せて神国へつれ行けよかし。 六 聖霊よ吾言霊を諾ひて 神の柱と使はせ玉へ。 第一一九 一 照り渡る清き御魂の御光に 照し玉はれ暗き心を。 二 百の罪に曇る心を研き上げ 妙なる力を下し玉はれ。 三 天津国の永遠の歓喜此身にも 充たし玉はれ神の御使。 四 村肝の心に住みて天使 治め玉へよ吾魂を。 第一二〇 一 鳩の如天降りましたる天使 吾魂を慰め玉へ。 二 村肝の心の思ひ為す業も いと清かれと守らせ玉へ。 三 明けき神の大道を歩むべく 厳の光を吾に与へよ。 四 皇神の御前を去らず謹みて 心の限り仕へしめ玉へ。 五 永久の命の主に従ひて 天津御国へ進む嬉しさ。 六 吾身魂清めて神の御舎に 進ませ玉へ導き玉へ。 第一二一 一 冷渡る吾身に愛の焔をば 燃やし玉へよ厳の大神。 二 さまよひて果敢なき影を追ひ慕ひ 露だに知らぬ身こそ悲しき。 三 力なき吾等の祈祷も称へ言も いと安らかに聞し食す主。 四 八千座を負ひし主をば思はずに 夢現にて暮す愚さ。 五 瑞御魂恵みの聖火を下しつつ 冷たき心を温め玉ふ。 (大正一二・五・五旧三・二〇北村隆光録) |
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霊界物語 | 63_寅_伊太彦の物語 | 01 玉の露 | 第一章玉の露〔一六〇八〕 天地万有悉く霊力体の三元を 与へて創造なし給ひ各其所を得せしめし 国の御祖の大御神国常立の大神は 大国治立大神の貴の御言を畏みて 大海原の中心地黄金山下にあれまして 天地百の生物をいと安らけく平けく 守らせ給ひ厳かに珍の掟を定めまし 神と人との踏みて行く道を立てさせ給ひしが 日は行き月たち星移り世はくれ竹のおひおひに 天足の彦や胞場姫の醜の身霊ゆなり出でし 八岐大蛇や醜神のいやなき業に畏くも 珍の聖地を後にして神の仕組と云ひ乍ら 大海中に浮びたる自転倒島にかくれまし 国武彦と名を変へて此世を忍び曙の 日の出の御代を待ち給ひ女神とあれし瑞御霊 豊国姫の大神は夫神の命のなやみをば 居ながら見るに忍びずと豊葦原の中津国 メソポタミヤの山奥に永く御身を忍びまし 五六七の御代を待ち給ふ大国常立大神は 厳の御霊と現はれて四方久方の天盛留向津媛 御稜威も殊に大日婁女貴女神となりて諾冊の 二神の間に生れまし豊国姫の大神は 神素盞嗚の大神と現はれ給ひ天地を おのもおのもに持ち分けて守らせ給ふ折もあれ 魔神の猛り強くして岩の根木根立百草の 片葉も言向ひ騒ぎ立て豊葦原の瑞穂国 再び常世の暗となり神素盞嗚の大神は この惨状を如何にして鎮めむものと村肝の 御心千々に砕かせつ朝な夕なに憂ひまし 山河草木枯れ果てて修羅の巷となりにけり 父とあれます伊邪那岐の皇大神は大空ゆ 下らせ給ひて素盞嗚の珍の御子に打向ひ 憂ひ歎かすその理由を尋ね給へば瑞御霊 完全に詳細に世の状を語らせ給ひ我は今 母のまします月の国罷らむものと思ひ立ち この世の名残に泣くなりと答へ給へば父の神 いたく怒らせ給ひつつ胸に涙を湛へまし 大海原を知食す権威なければ汝が尊 根底の国に至れよといと厳かに宣り給ふ 千万無量の悲しみを胸に湛へて父神は 日の若宮にかへりまし神素盞嗚の大神は 姉大神とあれませる厳の御霊の大日婁女 天照神の御前に此の世の名残を告げむとて 上らせ給へば山河は一度に動み地は揺り 八十の枉津の叫ぶ声天にまします大神の 御許に高く響きけり天照します大神は 此有様をみそなはし弟神の来ませるは 必ず汚き心もて吾神国を奪はむと 攻め寄せたるに間違ひなし備へせよやと八百万 神を集へて剣太刀弓矢を飾り堅庭に 弓腹振り立て雄猛びし待ち問ひ給へば素盞嗚の 瑞の御霊の大神は言葉静に答へらく 我は汚き心なし父大神の御言以て 母の御国に行かむとすいとも親しき我姉に 只一言の暇乞ひ告げむが為に上りしと 云はせも果てず姉神はいと厳かに宣らすやう 汝の心の清きこと今この場にて証せむ 云ひつつ弟素盞嗚の神の佩かせる御剣を 御手に執らせつ安河を中に隔てて誓約ます この神業に素盞嗚の神の尊は瑞御霊 清明無垢の御精神いと明かになりにけり 神素盞嗚の大神は姉のまかせる美須麻琉の 玉を御手に受取りて天の真名井に振り濺ぎ 奴那止母母由良に取由良し狭嚼みに咬て吹き棄つる 伊吹の狭霧に五御魂現はれませしぞ畏けれ 姉大神の御心は初めて疑ひ晴れぬれど 天津神等国津神容易に心治まらず 高天原は忽ちにいと騒がしくなりければ 姉大神は驚きて天の岩戸の奥深く 御姿かくし給ひけり六合忽ち暗黒と なりて悪神横行し大蛇曲霊のおとなひは 狭蠅の如く充ち沸きぬここに神々寄り集ひ 岩戸の前に音楽を奏でまつりて太祝詞 宣らせ給へば大神は再び此世にあれまして 六合ここに明け渡り栄光の御代となり初めぬ 斯くもかしこき騒ぎをば始めし神の罪科を 神素盞嗚の大神に千座の置戸を負はせつつ 高天原より神退ひ退ひ給ひし歎てさよ 天地一時は明けくいと穏かに治まりし 如く表面は見えつれど豊葦原の国々は 魔神の健び猛くして再び修羅の八巷と なり変りたる惨状を見るに忍びず瑞御霊 国武彦と相共に三五教を開きまし 深山の奥の時鳥八千八声の血を絞り この土の上に安らけき五六七の御代を建設し 八岐大蛇や醜神を生言霊に言向けて 姉の御神に奉り世の災を除かむと コーカス山やウブスナの山の尾の上に神館 見立て給ひて御教を開き給ひし尊さよ 八岐大蛇の分霊かかりて此世を乱し行く ハルナの都の悪神を先づ第一に言向けて 此世の枉を払はむと心も清き宣伝使 数多派遣し給ひしが瑞の御霊の御娘 五十子の姫の夫とます玉国別の音彦に 心の空も真純彦教を伝ふる三千彦や 伊太彦司を添へ玉ひハルナの都に遣はして 神の恵を人草の身魂に照らし給はむと 任け給ひしぞ尊けれ。 ○ 玉国別の宣伝使三人の司と諸共に 河鹿峠を打渡り懐谷の山猿に 苦しみ乍ら神力に守られ祠の神の森 とどまり病を養ひつ珍の宮居を建て終り 祝詞の声も勇ましく御前を立ちて山河を 渡り漸くテルモンの館に入りてデビス姫 親と妹との危難をば救ひて神の御名を挙げ デビスの姫を三千彦の妻と定めてテルモンの 湖水を渡り種々の珍の神業なし遂げて アヅモス山のバーチルが館に立ち寄りアヅモスの 山に隠れしタクシャカの竜王始め妻神の サーガラ竜王救ひつつ夜光の玉や如意宝珠 竜王の手より受取りて真澄の空の夏の道 草鞋に足をすり乍ら伊太彦デビス四柱の 御供と共にエルサレム聖地を指して進み行く 日も黄昏れて道の辺の祠の前に立寄れば 思ひも寄らぬ法螺の貝鬼春別の治道居士 比丘の司に廻り会ひここに一行六人は スダルマ山の山麓を右に眺めて辿りつつ 声も涼しき宣伝歌四辺の山河轟かし 空気を清めて進み行く。 (大正一二・五・一八旧四・三於竜宮館北村隆光録) |
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霊界物語 | 64_下_卯エルサレム物語2 | 12 開狂式 | 第一二章開狂式〔一八一八〕 守宮別、お花、ヤクの三人は、僧院ホテルの立派なる座敷を、三間ぶつ通しに借り切り、奥の間には、新ウラナイ教の御本尊、シオンの娘、木花咲耶姫を奉斎し、その生宮として、アヤメのお花は天晴教主となり済ますこととした。発起者は夫婦主従〆て三人、先づ祭典も無事に済み、直会の酒宴に移つた。守宮別は新宗教創立を祝する為め、酒に酔つ払つた怪しい口元から、祝歌を歌ふ。 守宮別『天も清浄地も清浄清浄無垢の御霊体 アヤメの君は今此処に三千世界の救世主 世界に名高き神の山シオンの娘木の花の 咲耶の姫と現れまして浮瀬に沈む民草を 愛と善との神徳に御霊を包み信真の 光を世界に輝かし天の岩戸を開かむと 現はれ玉ひし尊さよ扨ても世界の初まりは 神伊邪那岐の大御神神伊邪那美の大御神 夫婦の神が現れまして天の御柱国柱 見立て玉ひて汝は右へ廻らせ給へ吾は左 廻り合はむと宣り給ひ婚の業を初めまし 諸多の御子を生み生みて生みの果てには山川や 草木の神迄造りまし遂には光明赫々と 輝き渡る大日婁女天照る神を生み給ひ 広き世界に神国を立てさせ給ひし古事に 習ひまつりて吾々は那岐那美二尊にかたどつて アヤメの君と盃をいとり交しつ神の為め 世人の為めに聖場をこれの聖地につき堅め 百の人草草木迄救はむ為めのこの祭 あゝ惟神々々アヤメの君があればこそ ヤクの奴が居ればこそ守宮別の太柱 添ふて居りやこそ今日のよな誠に誠に結構な 新宗教の創立が完全無欠に出来たのだ もしもお寅が居つたなら一から百迄蕪から 菜種の屑に至るまでごてごてごてとさし出口 日の出の神の生宮を振り廻されて吾々は 一生頭が上らないこれを思へば此間の 喧嘩は却て吾々の大幸福となつたやうだ 昔の古い諺に人間万事塞翁の 馬の糞とはよく云つたわいがの烈しい女神さま 何程御神業と云つたとて鼻持ならず好物の 酒さへ味が悪くなるシオンの娘と現れませる アヤメのお花の教主さまわいがもとべらも有りはせぬ 頭に霜は見ゆれども却て雅趣を添へるよだ これも全く神さまの水も漏さぬ御仕組 守宮別も二三十年若返りたる心地する あゝ有難い有難い何より彼より第一に 命の水の酒呑みて昔の綺麗なナイスをば 座右に侍らし優姿梅花のやうな唇の 間からチヨイチヨイ現はれる象牙のやうな歯の光 瑪瑙のやうな爪の色梅花のやうな頬の艶 天地の幸福一身に独占したやうな気がしよる エヘヽヽヽヽエヘヽヽヽコンナ所をお寅奴が 一寸覗いた事ならば嘸や泣くだろ怒るだろ 二人の髻をひつ掴み金切声を張り上げて 近所合壁大騒動燗徳利は宙に舞ひ お膳や茶碗はがちやがちやと木端微塵に潰滅し 嵐の跡の花の山見る影も無き惨状を 現出するに違ひないあゝ惟神々々 御霊の恩頼を願ぎまつる』 お花『オホヽヽヽ、遉はこちの人、何とまア当意即妙の結構なお歌だ事。傍に聞いて居ても胸がすき、頭がせいせいとして来ますわ。なぜ又旦那さまはコンナ知恵を持つて居ながら、今迄隠して居たのですか。鼠とる猫は爪隠すとは能く云つたものだなア。アヤメのお花の一身に対しては、本当に旦那さまは好い掘り出しものだよ』 守宮別『これこれ肉宮さま、縁起の悪い、放出し者だなどと云つて貰ひますまいぞや。二つ目には気に入らぬと云ふて放り出されては耐らないからな』 お花『ホヽヽヽヽ。妾は決して放り出しませぬよ。旦那さまの方から放り出ないやうに頼みますわ』 守宮別『よし、そのだんは安心して呉れ。棚池の生洲の鼬がついたやうなものだ。命のない所迄離れつこは無いからな』 お花『あれ程大切にして居られたお寅さまでさへも、弊履を捨つるが如くに思ひ切つて素知らぬ顔をして厶るのだもの。第二のお寅さまにしられちや耐りませぬからね』 守宮別『そこ迄心配しては際限がない。俺がお前を愛する程度といふものは、丸切り砂糖の固りに蟻がついたやうなものだよ。も一つ違つたら、蛙を狙ふ蛇のやうなものだ、どこ迄も徹底的にくつついて行くのだからなア』 お花『ホヽヽヽ、砂糖に蟻がついたなぞと、余り有難くもありませぬわ』 守宮別『それでもお花、いや女房、生宮さま、有難いよ。甘いものはありがたがる、えぐいものや苦いものはありがたがらぬ、と云ふ事があらうがな』 お花『旦那さまは、妾を余程甘いと見縊びつて厶るのですな。砂糖に譬るとは余りですわ』 守宮別『それやお花は甘いよ、花と云ふ奴みな甘い蜜を持つて居るので、蜜蜂やドカ蜂がブンブンと喰ひつくぢやないか。俺だつてお花の蜜を吸ひたくなるのは当然だよ。お花は砂糖でもあり、砂糖よりまだ甘い佐渡の土を持つて居るから、尚ほ俺が好きなのだよ。エヘヽヽヽ』 お花『又しても又しても佐渡の土だナンテ、旧めかしい文句を云ふて下さいますな。ホヽヽヽヽ』 守宮別『これ肉宮さま。今日は創立の祝ひだから、肝腎の生宮さまから宣言歌を歌つて貰ひ度いものですな』 お花『なんだか衒れくさくて歌へませぬわ』 守宮別『ヘン、何を云ふのだい。矢張り結婚すると、娘のやうに恥かしさが分るのかいな。非が蛇でも、蟻が鯛でも、芋虫が鯨でも、山の芋が鰻になつても、笹の葉が鰌になつても、今日許りは宣言歌をお謡ひなさらにや駄目ですよ。その歌をつけとめて置いて印刷屋へ廻し、ビラを作つて自動車に乗り、市中へバラ撒かねばならぬからな』 お花『ナントまア。救世主にならうと思へば気の張る事だわい。ソンナラシオンの娘、木の花姫の生宮が宣言歌を謡ひませう。一言も漏れなくつけとめて下されや』 守宮別『エ、宜しい。承はりました。分つて居る。併し乍ら、ヤクさまの方が余程筆が達者だからなア。ヤク、お前が一つ筆記役になつて呉れないか』 ヤク『ハイ謹みて御用承はりませう』 守宮別『ウンよしよし、アこれで謡ひ役に、聞き役、書き役と、三拍子揃ふた。目出度い目出度い、サア生宮様、 歌ひなされやお歌ひなされ 歌ふて御器量は下りやせぬ あーコリヤコリヤ』 と謡ふて立ち上り踊り始める。アヤメのお花は日の丸の扇を両手に持ち、長い裾を引きずつて、すらすらとお手のものの踊を始め出したり。 お花『此処は世界の中心地点暗の世界もパレスチナの 珍の都のエルサレム三千世界の梅の花 一度に開く時は来て前代未聞の救世主 シオンの娘木花の咲耶の姫が再臨し アヤメのお花の肉体を自由自在に使用して お寅婆さまやブラバーサ訳の分らぬ宣伝使 瞬く間に打きつけ至粋至純の聖道を 開くも尊き今日の宵花も匂へよ蝶も舞へ 千歳の鶴も舞ひ込めよ亀も這ひ込んで万歳を 祝ぎまつれ神の家やがて独立宗教の 大看板を掲げつつ三千世界の民衆に 歓喜の雨を濺ぎかけ正真正銘の救世主 生神さまと謡はるる其暁も近づいた 竜宮海の乙姫も今日限り暇呉れて 三十二相又三相具備し給へる木の花の 姫の尊の肉の宮アヤメのお花が今茲に シオンの娘と現はれて三千世界の隅々も 漏さず落さず救ひ行く実にも目出度き今日の日は 天澄み渡り地の上は春の青草萠え出でて 開闢以来の救ひ主大降臨を待つ如し 思へば思へば有難や喜び祝へ百の人 慕ひまつれよ救世主アヤメのお花の肉宮を。 ホヽヽヽヽ、どうかこれ位で耐らへて頂戴な。何だか恥かしくて後が続きませぬもの』 守宮別『妙々。天晴々々。天下の救世主だなア。ヤク、お前も感心しただらう。お寅さまに比べて、どちらが立派だと思ふか』 ヤク『それやさうですな、本当にさうですよ』 守宮別『そりやさうですな、では分らぬぢやないか、どちらが優れて居るかと問ふて居るのだ』 ヤク『ヘエヘエ、それやもう、テンで段が違ひますわい、比べものになりませぬがな』 お花『これこれヤクさま、どちらが優れて居ると云ふのだい』 ヤク『ハイ、何と云つても、かんと云つても何ですな。それや矢張り、優れて居る方が優れて居ますなア』 お花『怪体な事云ふ男だな。ハツキリ云ひなさらぬかいな』 ヤク『御本人の前ですもの、大抵にして御推量下さいな』 お花は自分が褒められて居るのだと思ひ、満面に笑を湛へ、目を細め、横目でヤクの顔を一寸見ながら、 お花『ホヽヽヽ、遉はヤクさまは目が高いわい。それでこそ守宮別さまの添へ柱、確り頼みますぞや』 直会の式も漸く終了し、お花が郵便局から出して来た三千円の現金を懐中しながら、新宗教独立の運動をして来ると云ひ残し、守宮別は漂然としてホテルを立ち出で、タゴールの館へは行かず、駅前の青楼さして登り行く。 (大正一四・八・二〇旧七・一於由良秋田別荘加藤明子録) |
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霊界物語 | 65_辰_虎熊山と仙聖郷の物語/七福神 | 26 七福神 | 第二六章七福神〔一六八二〕 日の出別命の左右には道彦、安彦の両人が従ひ、初稚姫一行を導いて数百旒の五色の旗を風に翻し乍ら、百花爛漫たるゲッセマネの園にと進み入つた。玉国別一行が竜王の三個の玉を捧持して来りし其功績を賞する為め、特に埴安彦尊の命により歓迎宴が開かれた。ゲッセマネの園には種々の作物や、音楽や演劇が盛んに催されて居た。さうしてコウカス山よりは、言依別命が数多の神司を引き連れ、二三日前に早くも聖地に到着されて居た。 玉国別、真純彦は途中に於て初稚姫に『聖地は結構な所の恐ろしい所だ』と誡められ、筋肉迄緊張させ居たにも拘はらず、この大袈裟の歓迎に肝をつぶし、夢かと許り呆れてゐる。只見るもの、聞くもの意外の事許りで語る事も知らず、無言の儘初稚姫の後について進んで往く。日出別の神は俄作りの建物をさし示し、 日の出別『サア皆様、貴方方の御苦労を慰める為め、神様の思召によつて、種々の余興が催されて居ます。これから此建造物に於て、七福神宝の入船と云ふお芝居が初まりますから、悠悠気をゆるして御覧下さいませ』 玉国別は案に相違しながら、 玉国『いや、どうしてどうして、そんな気楽な事が出来ませうか。真純彦に持たせた此宝玉を、無事神様にお渡しする迄は、芝居所では厶いませぬ。是ばかりは平にお恕し下さいませ。うつかりして九分九厘で顛覆しては大変ですからなア』 と何処迄も警戒し体を固くして居る。 日の出別『決して決して御心配なさいますな。此通り貴方方の御到着を祝ふために宝の入船と云ふ神劇が催されて居るのです。貴方も宝を抱いてヨルダン河を船にて渡り、この聖地へお這りになつたのですから、宝の入船の主人公は貴方方ですよ』 玉国『ハイ。真純彦、お前はどう考へるか。どうも大教主のお言葉が私には些と許り解し兼ねるのだがなア』 真純『先生、これや神様から気を引かれて居るのかも知れませぬよ。兎も角お断りを申て、早く此玉を埴安彦の神様にお渡しして来うではありませぬか。さうでなくてはお芝居を見る気がしませぬわ』 初稚『決して御心配は要りませぬ。這入つて御覧なさいませ。いやいや貴方方が役者にならねばならぬのですよ。やがて治道居士、伊太彦、三千彦、デビス姫、ブラヷーダさまが見えることですから、七福神になつて貰ふ積りです。治道居士さまは布袋、玉国別さまが寿老人、真純彦さまが毘沙門天、伊太彦さまが大黒さま、三千彦さまが恵比寿さま、それから、デビス姫さまが弁財天、と云ふやうに、各自にちやんとお役が定つて居るのです。サアどうぞ楽屋へお這入り下さい。私等は見せて貰ふのです。実の所は貴方方に役者になつて貰ふのですから、是も御神業だと思つてお勤め下さいませ』 玉国『ハテナ、些とも合点が往きませぬわ。御命令とあれば俄俳優になつてもよろしいが、てんで台詞が分りませぬからねえ』 日の出別『台詞なんか要りませぬよ。其時神様が憑つて口を借りて仰有いますから、承諾なさればよいのです』 真純『モシ先生、イヤ寿老人さま、神様の命令だ、千両役者になりませうか』 玉国『何と云つても神様の御命令とあれば背く訳には行きますまい。勤めさして頂きませう。そして三千彦、伊太彦はもはや此方へ見えて居りますか。どうしても吾々とは二三日後れるやうに思ひますがなア』 言依別『時間空間を超越したる神の道、そんな御心配は要りませぬ。直に今此処へお出になりますよ。総て神様の御国は想念の世界ですから、想念の儘になるのです。此処が外の地点とは違つて尊い所以です。さうでなくてはエルサレムと云つて神様がお集まり遊ばす道理がありませぬから』 玉国『左様ならばお受け致します』 真純『私も先生と同様お受を致します』 と云ふや否や、二人の姿は忽ち七福神の中の一人となつて居た。いつの間にやら、治道居士、三千彦、伊太彦、デビス姫、ブラヷーダ姫其外の人々は集まり来りて、何れも七福神の姿となつて居る。愈茲に七福神宝の入船の奉祝神劇は演ぜられた。数多の神司や信者は、此広き建物の中に、立錐の余地なき迄に集まつて、愉快げに観覧し、其妙技を口を極めて賞揚した。神劇の次第は左記の通りであつた。 抑我日の下は神の御国なり天地ひらけ陰陽分れ 青人草を始めとし万物爰に発生して 天地人の三体備はりぬ天津御国の太元は 大国常立の大御神又の御名は天照皇大御神なり 地津神の太元は豊国主の大御神又の御名は神素盞嗚尊 豊葦原の瑞穂の国産土山の底津岩根に宮柱太敷立て 三五の神の都を奠め賜ひしより千代万代に動ぎなく 天下泰平国土安穏五穀成就万民鼓腹撃壤の楽みを享く 実に有難き神の国の草木も靡く君が御代 かくも目出度国の中に四海波風豊にて 雲井の空に寿ぎ舞ふ鶴や千年の松の緑の色深く 万歳の亀も楽しむ天教の山の高く澄みきる月のあたり たなびく霞の中よりも真帆をば風に孕ませつ 浮かれ入り来る宝の御船七五三の静波かきわけて 積み込む宝の数々やまばゆきばかりあたりを照らす うるはしさ 丁子や分銅の玉の袋に黄金の鍵もかくれ蓑 七宝壮厳の雨に濡れし小笠の露や玉の光と 打出の小槌七福神の銘々が 乗合舟の話こそ面白き。 中にも口まめな福禄寿長い天窓を振り立てて、 福禄『天下無双のナイスお弁さま、イナ弁財天女どの、貴女は新しい女と見えて、こんな変痴奇珍な男子計りの船の中へ、案内もせないのに、何と思つて同席の栄を賜はつたのかな』 弁天女は面恥ゆげに莞爾と笑み乍ら、 弁天『ホヽヽヽ、アノまあ福禄寿さまの御言葉とも覚えませぬ。好く考へて御覧、何程新しい女だとて、ナイスだとて、五百羅漢堂を覗いたやうなスタイルして居らつしやる醜男子の側に来られないと云ふ法律は発布されては居りますまい。五六七の御代が開ける魁として、今度エルサレムの宮に於て、玉照彦命、玉照姫命二柱の神様のお目出度い御婚礼があるので、御祝のため貴神等は、この宝舟に乗つて聖地エルサレムの竜宮城へ昇られるのでせう。何程福の神だと云つて、男子許りでは花も実もありますまい。昔から七福神は聞いて居るが、六福神は聞いた事が無い。夫れで妾が天津神様の御命令で、俄に貴神等の仲間に加はつたのですよ』 福禄『コレお弁さま、御心配下さるな。この福禄寿一神あつても下から読み上げて見ると十六福の神だよ。ヘン済みませぬナア。そこへ寿老人(十六神)を加へて三十二神ですよアハヽヽヽヽ。それよりも身の上話でも聞かして貰つた上、都合によつて加へて上げようかい』 弁天『三十二神の処へ妾が一神加はれば、三十三相の瑞の御魂ですよ。一神欠けても三十三魂にはなりますまい。女は社交上の花ですからねー。妾の素性を一通り聞かして上げますから、十六神さま謹聴なさいませホヽヽヽヽ』 六福『謹聴々々ヒヤヒヤ』 弁天『妾は神代の昔の或る歳、頃は弥生の己の巳日、二本竹の根節を揃へて、動ぎ出でたる嶋だと云ふので、竹生島と称へられる、裏の国の琵琶の湖に浮べる一つの嶋に、天降りました天女の中でも、最も勝れたナイスの乙女ですよ。自分から申しますと何んだか自慢するやうですが、神徳があまりあらたかなと言ふので、世人より妙音弁財天女と崇められ、妾の身体は引張り凧の様に日の下の国の四方に分霊を祭られて居ります。先づ東の国では江の島、西の国では宮嶋に、今一体は勿体なくも古、伊邪那岐尊、伊邪那美尊の二柱の神様が天の浮橋に渡らせたまひ、大海原に天降り、始めて開かれたる淤能碁呂嶋、その時、鶺鴒と云ふ小鳥に夫婦の道を教へられ、天照大神を生み給ふてより、又一名を日の出嶋と名付けられ、この国人に帰依せられ、福徳を授けしによつて、美人賢婦の標本として七福神の列に加はつた事は、十六福神さまも遠うの昔に御存知の筈。アナタも何時の間にやら福禄寿でなくて、モウロク(最う六)十三になりましたねー、ホヽヽヽヽ』 福禄『ヒドイなア』 六福『アハヽヽ。オホヽヽヽヽヽ』 顔色の黒いのを自慢の大黒天は、槌を持つた儘座に直り、 大黒『弁天ナイスの今の話を聞いた以上は拙者も男だ。一つ身の上話を初めて見よう。一同御迷惑ながら御聴聞なさいませ。 抑も拙者は、神素盞嗚大神の御子にて、八百米杵築の宮に鎮まりし、大国主命でござる。生れつきの慈悲心包むに由なく、貧しき者を見るに付け、不便さ忍び難く、一切の衆生に福徳を与へむとして心を砕き、チンチンチン一に米俵を踏まへて、二に賑はしう治めて、三に栄えの基となり、四ツ世の中悦んで、五ツいつも機嫌よく、六ツ無病息災で、七ツ難事もないやうに、八ツ屋敷を開ひて、九ツ花の倉を建て、十分満ればこぼるるぞ。コレ此槌は福を打出す槌ぢやない、お土を大切にして生命の種のお米を作れと知らすためぢや。モ一つには奢れる奴等の天窓をば打砕く槌ぢやわい。アハヽヽヽヽ』 福禄『アハヽヽヽヽ、コリヤ御尤もだ。オイ戎、コレサ聾どの、エベスどのエベスどのエベスどの貴神は、マア舳に出て釣許りして厶るは一体、こなたは何う云ふ福の神ぢやい。福の神にも色々あつて、雑巾を持つて縁板などをフクの神もあれば、尻をフクの紙もある。きつぱりと素性を明かして呉れないか』 戎『俺かい。おれはナ、何事も聞かざる、見ざる、言はざると云つて、庚申の眷属を気取り、三猿主義を固守し、只堪忍をのみ守つて居るのだ。徳は堪忍五万歳だ。抑も拙者は、蛭子の命と云つて、正月三日寅の一天に誕生した若蛭子だ。商売繁昌を祈るが故に欲の深い連中から商売の神と崇められて居るのだ。誠に目出度う候ひけるだ、アハヽヽヽヽ。十日戎の売物は、はぜ袋に、取鉢、銭がます、小判に金箱、立烏帽子、桝に財槌、束熨斗、お笹をかたげて千鳥足』 大黒『アヽコレコレさう踊り廻すと船の上は危険だ。モウ良いモウ良い御中止を願ひます』 大黒『エヽ時に寿老人殿、貴神は何時も何時も渋い面をして落付払つて厶るが、こんな芽出度い時には、チツと笑つて見せても可いぢやないか』 寿老『イヤ是は又迷惑千万、物価謄貴生活難の声喧しき、この辛い時節に、あまい顔をせよとは、粋にして且つ賢明なる方々にも似合ぬお言葉では厶らぬか。拙者は何時も苦い顔をして倹約を第一と守り、郵便貯金を沢山にして、他人に損をかけず、自分も損を致さねば、心労なき故、長命を仕るのぢや。長命に過ぎたる宝は厶らぬ。兎角、拙者の行り方を見習へば、たとへ福は授からなくとも、自然に福徳が保てますぞや』 福禄『ヘン、何程長命したとて、ソンナ苦い顔をして一生送るのなら、余り福徳でも在るまい。笑つて暮すのが、何より人生の幸福だ。高利貸の親父でも、たまには笑ふぢやないか。ナア、皆の福神連中さま』 寿老『イヤ恐れ入る。併し自分は是でも人の知らぬ心のよろこびに充ちて、楽しく日を送つて居るのだ。サテ、愚老許りお喋舌いたして皆様の交際を忘れて居た。余りの楽しさと、面白さと、今度の御婚礼の目出度さとに気を取られて、アハヽヽヽヽ。サア是からお交際申さう』 と傍にあり合ふ妻琴を引寄せ掻きならし、 (歌)『忍ぶ身や夜な夜なもゆる沢の螢火に夜更渡りぬる』 寿老『余り長いのは皆様のさはりになる。長い者を俗に長者と言ふさうぢや。ヤ、是はしたり、長い者とは福禄寿様へ差合ました。失礼々々』 布袋和尚は吹出して、 布袋『アハヽヽヽアハヽヽヽ、オホヽヽヽ、ハテ、コリヤ面白い面白い面白いハヽヽヽヽヽ奇妙々々』 毘沙門天は、むつとした顔しながら、 毘沙『ヤイ、そこな土仏坊主奴。何がそれ程可笑しいのだい。袋と腹とで乗合船の居所を狭めて居る癖に、チツと位遠慮召さつても可いだらう』 布袋『アヽ、コレコレ毘沙殿。さう腹立まいぞや、腹立まいぞや、立腹まいぞや。少々は乗合の邪魔にも成るだらうが、ソコは仲間の事だから、神直日大直日に見直し聞直してマアマア曰く因縁を聞き玉へ。夫れ一家一門附合、朋友、得意先、丸う無くては治まらないと云ふ道理は、拙者のこの天窓で判るだらう。眼まで丸い布袋和尚だ、ハヽヽヽヽ。まつた腹は大きくなければ、心がさもしいものだ。そこで愚僧が此大きい腹を突き出し、腹鼓を打つて一通りお話致すで厶らう。 「ソレ、この袋といつぱ」見たる事聞きたる事、よしあし共に忘れぬ様、中へ納めて斯の通り、もたれて居申すなり。又世に子宝と云へるが、稚き者ほど可愛者はあり申さぬ。その稚き者を団扇を持つて行司仕り居り候也。アヽ宜き楽みかな宜き楽みかな』 福禄『イヤ布袋どの、尤も尤も、尤も次手に笑はしやるのも尤も尤も。「笑ふ門へは福禄寿」サレバお咄し申しませう。夫れ天窓が長ければ背はズント低う厶る。低うなければ愛嬌を失ひます。先づ入口を這入るにも長いによつて余ります。天窓を下げて這入ります。それで愛嬌が厶るだらうがの、愛嬌ついでに皆さま、おはやし頼みます。 「越後の国の角兵衛獅子、国を出る時や、親子連れ、獅子をかぶりて、くるりと廻つて、首をふりまする、親父や、まじめで笛を吹く」 ヨー、ハヽヽヽヽ福禄寿さま、大当りだ大当りだ。アハヽヽヽヽ』 六福『併し獅子の頭が少々高過ぎるぢやないか。ハヽヽヽヽ』 福禄『ハテ、頭が高うもなければ納まらぬ事もある物だ。是もやつぱり世界の道具だからのう。ハヽヽヽヽ』 毘沙門天は居直りて、 毘沙『ムヽヽヽヽ、ハヽヽヽヽ面白し面白し、吾は異形の姿にて鉾携へし身乍らも、七福神の列に加はる其由来を物語らむ。そも不身持山の皆身(南)に当りて難渋ケ嶽の峰に住む、貧乏困神とて悪神あり、彼に徒党の奴原を悉く誠罰し諸人の患を救はむと、この日の国に天降り、日出る国信貴山に根城を構へ、追付悪神討亡ぼし、困窮の根をたやさむこと、此多聞天が方寸の内にあり、ハヽヽハヽヽハヽヽヽヽ、悦ばしや嬉しや』 と勇める顔色、威あつて尊く、実に有難き霊験なり。 皆一同にあふぎ立て、中に取分け弁財天。 弁天『何れに、おろかは無けれども、多聞天のおん物語、勇ましや。イザヤ発船、又の御げん』 とのたまふにぞ、さらばさらばと漕ぎよせて、竜宮館の水の面に、清き宝の入船や、七福神の霊験も、仁義釈教、恋無常、勧善懲悪聞明し、改過を作るその主は、近松ならで松の元、一とふし込し、竹本ならぬ国武彦の御助け、梅の香床しき一輪の、花の流れや汲み取る綾の、聖地の玉の井に、映る言霊影きよく、照り輝きし玉照姫や、暗をも照らす玉照彦二柱、九月八日の慶びを、筆にうつして末広く、伝へ栄ゆる神祝ぎの、尽きせぬ神代こそ芽出度けれ。 (大正一二・七・一八旧六・五北村隆光・加藤明子共録) (昭和一〇・六・一六王仁校正) |
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霊界物語 | 72_亥_スガの港(宗教問答所) | 19 旧場皈 | 第一九章旧場皈〔一八二八〕 千草の高姫、キユーバーの両人は意気衝天、猛火の燎原を焼くが如き荒つぽい鼻息で、玉清別以下、スガの宮の関係者一人も残らず叩き出し、天から降つて湧いたる儲ものに、嬉しさ余つて現三太郎となり、杢助が北町のウラナイ教本部に寝てゐる事も打忘れ、あまり虫は好かねども、言霊戦の大勝利を得せしめた原動力とも云ふべき天然坊のキユーバーを此上なきものと褒めそやし、聖場に立籠つて天下併呑の夢をむさぼつてゐた。 キユ『モシ、生宮様、キユーバーの働きはチツト許り腕が冴えてゐるでせう、決して生宮様御一人のお手柄ぢや御座りますまい』 高『そら、さうだとも、車も両輪なければ運転しない、人間も二本の脚がなけりや歩けない道理だからな』 キユ『そら、さうでせうとも、お飯食べる時でも片手ぢや駄目ですからな。箸だつて二本なくちや、香の物だつて、はさむ事は出来ませぬ。神代の昔那岐、那美二尊は天浮橋に立つて陰陽の息を合せていろいろの神様をお造り遊ばしたものですもの。どうです、ここで旧交を温めて拙僧は伊邪那岐命となり、生宮様は伊邪那美命となり、トルマン国を振出しに印度七千余国は申すも更なり、此地のあらむ限り鵬翼を伸さうぢやありませぬか。貴方もトルマン国の王妃となり遊ばした、腕利きだから、その位の事は、お考へでせうな』 高『そんなことア、キユーバーさま、云ふ丈け野暮だよ。三千世界の救世主、底津岩根の大弥勒ぢやないか、此生宮は天も構へば地も構ふ、五十六億七千万の小宇宙をも統一する天来の神柱だもの、このチツポケな地球位、統一したつて、広大無遍の宇宙に比ぶれば虱の眉毛に生いた虫の放つた糞に生いた虫の、その虫の糞に生いた虫の放つた糞位のものだよ』 キユ『何とマア大きな事を仰有るかと思へば小さい事迄御説法遊ばすのですな』 高『きまつた事だよ、至大無外、至小無内の弥勒の御神権を具備してゐる救世主ですもの』 キユ『生宮さまの広大無遍な抱負には、いかな此キユーバーも舌をまきましたよ。このキユーバーだつてハルナの都に権勢並びなき七千余国の大棟梁、大黒主様の片腕ですもの』 高『これこれキユーバーさま、大弥勒さまの前でそんな小つぽけな事はやめて下さい。此神は小さい事は嫌ひであるぞよ。大きな事を致す神であるぞよ、昔からまだ此世にない事を致す神であるぞよ』 キユ『三五教のお筆先そつくりぢやありませぬか、フツフヽヽヽ。時に生宮さま、あの杢助とか云ふ第二号をどうするつもりですか』 高『ア、あまり嬉しくつて、時置師の神様を念頭から遺失して居つた。ヤアこりやかうしては居られませぬ、キユーバーさま、お前さま、ここに待つて居つて下さい。此成功を夫に聞かして喜ばすため、一寸北町迄行つて来ますから』 キユ『モシモシ高姫さま、私の前で、あまりひどいぢやありませぬか、第一号をほつたらかしておいて、第二号に秋波を送るなんて、チツト許り聞えませぬな、何ぼ行かうと仰有つても、此キユーバーが放しませぬよ』 高『お前さま、自惚もいい加減にしておきなさい、一号処か、八号ですよ、要するに天保銭だからな』 キユ『此奴アひどい、二文足らぬと仰有るのですか、貴女の目には、それほど此キユーバーが馬鹿に見えますかい』 高『何、馬鹿処かいな、八文と云つたら大変立派な人だと云ふ事だよ、ダンダン筋の法被を着た仲仕や労働者や、旗持ちを一文奴と云ふだらう。一文奴で普通の人間だ。小説を作つたり、新聞の記事を書いたり、雑誌を著す学者を三文文士と云うだらう。三文文士にならうと思へば大学の門をくぐつて来にや、さう、安々とは、なれませぬからな。それから、ハルナの都のお役所にも諮問(四文)機関と云ふものがあるだらう、諮問機関に集まつて居る人は大黒主さまのお尋ねに一々答へると云ふ智者学者だ。それから、も一文上に顧問(五文)官と云ふのがある』 キユ『モシモシ高姫さま、顧問と五文とは違ひますぜ』 高『顧問でも五文でも、いいぢやないか、甲も乙も互に勝敗、優劣、高下のない相手同志を指して五文と五文と云ふぢやないか、さうだから五文の人間は最も立派なものだ。其上が六文だ、六文銭は、軍術の達人真田幸村の旗印だよ。真田と云ふ人物は後世迄名を轟かした大阪陣の参謀長だ。七文と云ふのはなア、昨日俺がヨリコ姫をこつぴどく問ひつめただらう、あれが七文だ』 キユ『そら、質問と違ひますか』 高『質問でも七文でもツとチとの違ひぢやないか、そんな七六つかしい質問はやめて下さい。その一文上が八文だ、八文が一番結構だよ。も一文ふやすと、苦悶と云つて苦み悶えねばならぬからな、も一文ふやすと、十文だ、銃文と云つたら鉄砲の穴だ、尻の穴もヤツパリ銃門の中だよ』 キユ『何とマアお前さまの口にかかつたら此キユーバーも盾つけませぬワ、然しこの八文をどうして下さるつもりですか。よもや八門遁甲の術を以て拙僧を、埒外へ放逐するやうな事はありますまいね』 高『マア心配しなさるな。今回の功労に免じてチヨイチヨイお尻位は、ふかして、あげますワ、大弥勒さまのお尻をふかうと思へば並や大抵の事では拭けませぬぞや。ヨリコ女帝のお前さまはお尻の掃除をやつて居つたさうだが、あのやうな、アタ汚いお尻の掃除をしてゐるより、大弥勒さまの神徳のこもつた御肥料さまの掃除をさして貰ふ方が何程光栄だか出世だか知れませぬよ、ホツホヽヽヽ』 キユ『エー、人をお前さまは馬鹿にしてゐるのだな』 かく話してゐる所へ杢助の妖幻坊は高姫の帰りが遅いので、スガ山のトロトロ阪をエチエチ上り乍ら館の前までやつて来た。 玄関口に佇んで様子を聞けば、境内はシンとして人影もなく、静まり返り、閑古鳥が鳴いてゐる。然し乍ら館の奥の方にコソコソと囁く声が聞ゆるやうにもあるので、ソツと館の裏へまはり、窓から中を覗いて見ると酒肴を真中におき、高姫、キユーバーが意茶ついたり揶揄つたり、面白さうに話し合つてゐる。妖幻坊は腹が立つて堪らず雷のやうな声を出して窓の外から、 『コラツ』 と一声叫ぶや否や、キユーバーは驚いて一間許りも飛び上り、天井裏で禿頭をカツンと打ち、再び板の間に蛙をぶつつけたやうになつて、手足をピリピリとふるはせ、ふんのびて了つた。流石、高姫はビクとも動かず静に窓の外を覗き、 『ホツホヽヽヽ何ですか杢チヤン、そんな大きな声を出したつて、聾はゐやしませぬよ。高姫の耳は蚯蚓の泣声でも聞えるのですからね、どうか騒がないでゐて下さい。今この坊主をうまくちよろまかして、三五教が百日百夜の丹精を凝らし、建て上げた此神館を、スツカリと証文つきで貰つたのですからね、マアお這入りなさい、人が見たら、見つともないから』 と平気な顔で構へてゐる。杢助は表にまはり玄関口より大手を振つて入り来り、 『一昨日の日の暮に、此坊主と出たぎり、今日になつても帰つて来ないものだから、チツト許り気がかりでならないので、スガの町々を尋ねまはり、もう尋ねる処がないものだから、此処へやつて来れやキユーバーの野郎をつかまへて、何だか妙な目つかひをやつてゐたぢやないか』 高『杢チヤン、そんな野暮な事を云ふのぢやありませぬよ。此間も貴方に云つた通り、此キユーバーと云ふ山子坊主は、一寸ばかり小利口な奴だから、うまくちよろまかして使ひ倒し、今日の成功を勝ち得たのですからね。まだまだ此奴を使はにやならぬ用がありますので、一寸いやな奴だけど色目を遣つて、つらくつてゐるのですよ。天下無双の英雄豪傑時置師の神さまのやうな立派な夫があるのに、どうしてこんな蛙の泣き損ねたやうな面した売僧坊主に、指一本でも支へさす気遣がありますか。そこは貴方の御判断に任せますから、マア御機嫌を直して一杯飲んで下さい。今日から此館は時置師の神さまの領有権が出来たのですからな、高姫の腕前も随分凄いものでせう。ホツホヽヽヽ』 杢『オイ、このキユーバーをこの儘にしておけば縡切れて了ふぞ、お前の得意な活とかを入れて、蘇生さしてやつたらどうだい』 高『杢チヤン、そんな心配要りませぬよ、田圃の蛙を掴んで大地で投げて御覧なさい。丁度此通り手足をのばしてビリビリとふるひ一時は目をまはかしますが、暫くすると目を開け古池の中へドンブリコと飛び入り、アナタガタアナタガタオレキオレキと泣くぢやありませぬか』 杢『キユーバーも蛙に例へられや、チツト許り可愛想だ。命に別条さへなけれや、いいやうなものの、あまり殺生ぢやないか』 高『何が殺生ですか、自分が勝手に飛び上つて勝手にフン伸たのですもの、チツトも吾々にかかり合はないのですからな。キユーバーが自由の権利を振つて空中舞上りの術を演じ吾々夫婦の酒の肴になつてゐるのですもの』 斯く話す折しも死真似をしてゐたキユーバーはムクムクと起き上り、ワザと空とぼけたやうな顔して、 キユ『アーア、飛行機に乗つて大空中を巡行してゐたと思へば、俄に雷鳴轟き暴風吹きまくり、飛行機諸共地上へ転落し、五体は滅茶々々になつたと思へばヤツパリ夢だつたかな。これも全く生宮様と時置師の神様の恩頼だ、南無生神大明神帰命頂礼謹請再拝謹請再拝』 杢『ウツフヽヽヽ何とマア、怪体な坊主だのう、一種異様の奇病があると見える。かう云ふ病気は親のある間に癒しておかぬと一生不治の難病になるかも知れないよ、ワツハヽヽヽ』 高『ホツホヽヽヽこれキユーバーさま、本当にお前さまは身の軽い方ですね。妾又、お神がかりかと思つて居りましたよ』 妖幻坊は膝を立直し、居直り気味になつて、 『オイ、天然坊のキユーバー、俺の女房を掴まへて何を云つて居たのだ、三文だの、五文だの、八文だのと、何の事だい。其方の出やうによつては俺にも一つの虫がある、サアきつぱりとこの杢助の前で白状せい』 キユ『メヽヽヽ滅相な、尊い尊い結構な結構な生宮さまに対し、私のやうな下劣な貧僧が恋の鮒のと、そんな大それた事が出来ますか、お言葉交すも恐れ多いと存じ忠実に勤めてゐますよ。何卒悪くはとらないやうにして下さいませ。何は兎もあれ、千草の高姫さまに、うまくたらし使にされてゐるのですからな。何れ行先はお払箱だと覚悟を定めて居ります』 妖『こりや、高姫、キユーバーの申すことに、間違ひなけりや今日は之で忘れて遣はす。然し乍ら此奴を此処に於てはチツト許り都合が悪い。幸ひ北町の本部が空く事になるから、あれをキユーバーに呉れてやつたらどうだ』 高『杢助さまさへ御承知なら、呉れてやりませう、此館を占領したのも其一部分はキユーバーさまの斡旋努力与つて功ありと云ふものですからな』 杢『オイ、キユーバー、お前の功労に免じて北町の神館を与へるから、直様帰つて休息したが宜からう。神殿も諸道具一切も附け与へるから有難く頂戴せい』 キユ『ハイ、有難う御座います、それでは頂戴致しませう。十分に念入に掃除をしておきますから、どうぞ、時折はお遊びにお出で下さいませ』 妖『いや、これ程立派な神館が手に入つた以上は最早必要を認めぬ、又行く必要もない、お前の勝手にしたが宜からう』 云へばキユーバーは喜んで頭ペコペコ下げ乍ら 『ウラナイ教の神館有難く頂戴致します 左様御座ればお二人さま後でゆるゆるお楽み』 等と言葉を残しつつ北町さしていそいそと 大手を振つて帰り行く。 (大正一五・七・一旧五・二二於天之橋立なかや旅館北村隆光録) |
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霊界物語 | 76_卯_世界の神話/朝香比女の神の物語 | 日本所伝の天地開闢説 | 日本所伝の天地開闢説 古へ天地未だ剖かれず、陰陽分れず、万物未だ成らざりし時の状は、譬へば、浮べる脂の大海原の面に漂うて、かかる所もない如く、渾沌として鶏子の黄白の散り乱れて混ざれるやうに、形状もなければ、また区別もつかず、溟涬にして牙を含むの状態であつた。 然る後に、軽く清める気は漸く昇りて清陽なるに及び、薄く靡きて天と成り、重く濁れるものは自ら沈んで濃く滞りて地となつた。 其はじめに成りたる天を高天原といひ、後に定まれる地を国といふ。天地の間に大虚ありて空しく懸る。 天地開闢のはじめ、国なほ稚く砂土浮き漂うて、海月の海水に泳げる如くに浮脂の水の上に漂へるが如く、未だ固まらざりし時に、葦牙の如き物、自らその中に成り出でて、その物は萌騰りて大虚の中に発りたるによりて、高天原に生り出で給へる最初の神を天譲日天狭霧国譲月国狭霧尊と申し奉る。天祖と称し奉るは即ち此の神である。 然る後に高天原に自ら化り出で玉へる神たちの中に、独りづづ化り出で玉へるを独化天神と申し、二柱倶に化り出で玉へるを倶生天神と申し、男神と女神と共に化り出で玉へるを耦生天神と申し奉る。また別に化り出で玉へる神たちを別天神と申し奉る。 神代七代 天地が開け初めた時に、高天原に化り出でし神は、 第一に天之御中主神 第二に高皇産霊神 第三に神皇産霊神 以上三柱神であつた。此の神々は皆配偶の無い独神であつて、其後御身を見えぬやうに隠し玉ふた。 国土未だ定かに成り整はずして恰も脂の浮ける如く、海月の海水に浮けるが如き状態であつた時、芦の芽の如うに萌え出でて成らせ給うた神は、 第四に宇麻志阿斯訶備比古遅神 第五に天之常立神 である。此二柱神も亦同じく独神で、其後も依然として御身を見えぬやう隠し玉うた。 以上五柱の神を別天神と申し上げる。 その次に成らせ給うた神は、 第一に国之常立神 第二に豊雲野神 で此の二柱の神も亦独神で御身を隠された。其の次に生れ坐せし神は、いづれも配偶の神々で、 第三に宇比地邇神女神は須比智邇神 第四は角杙神女神は活杙神[※「角杙神」「活杙神」の「くひ」の字は、戦前の初版(p5)・戦後の改装版(昭和56年発行)(p7)いずれも「杙」。古事記は「杙」である。他の文献では「枠」(わく)を使っている場合もあるが、誤字だと思われる。霊界物語ネットでは全て「杙」を使う。] 第五は意富斗能地神女神は意富斗能弁神 第六は淤母陀琉神女神は阿夜訶志古泥神 第七は伊邪那岐神女神は伊邪那美神 以上国之常立神より伊邪那美神までを神世七代と申すなり云々。(以下省略) |
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伊都能売神諭 | 神諭一覧 | 大正8年2月18日 | 大正八年二月一八日 大正八年二月十八日旧正月の十八日 艮の金神国常立之尊が世界の中心田庭の国の神屋敷、神宮本宮坪の内、竜宮やかたの地の高天原に現はれて、瑞の御魂の宿りて居る言霊幸彦命の手を借りて、世の根本からの大略の因縁を書いて置くぞよ。恋しくば尋ね来て見よ丹波の、山と山との畳並べる綾部の里の谷間の、世の大本に咲く花の薫る在所を。 二度目の世の立替改造は、天の在る限り地の在る極み、根底の国のドン底までも、説いて聞かせる綾部の大本であるぞよ。変性男子と変性女子の身魂が現はれて、世界の改造を致して居る事は、此の節分からは明白に成りて来て居ろうがな。明治二十五年から三十年で世の立替立直しを致すと申して、出口直の手と口とで知らした事の実地が、誰の眼にも付く如うになりて来て居るのに、肝心の大本へ這入りて永らく筆先を読みて居る人民に何も判らぬので、神界の経綸は世界から一日ましに実現するなり、膝下はアフンと致して結構な神徳を後の烏に奪つて帰られるからと、毎度気を付けてありたから、今に成りて元の役員は何程地団駄踏んで悔しがりても追付かぬから、素直に致して何なりと身に合ふた御用を、一生懸命に勤めて下されよ。今迄は元の役員は皆慢神いたして瑞の御魂の五六七の世の御用の邪魔計り致して居りたから、大変な神界の御気障り、世界改造の御用が十年も後れて居るから、明治二十五年に三十年の間に全部世界改造を遂功て、結構な神界に致そうと思ふた仕組を、元の役員が女子の御用の邪魔計り致して、十年余り後れさして居るから、余程御詫を致して、十分の活動を致さんと天地から御許しがないぞよ。毎時出口直の手で、変性女子は大化物であるから、取違いを致すなと申して知らしてあれど、余り慢神の強い、訳の分らぬ身魂で在るから、力一杯変性女子の御用の邪魔を致して置いて、大変な結構な御用を致して来た様に思ふて、今に大きな取違い計り致して居るぞよ。此の大本は元の役員が在りたならこそ、茲まで発達したのぢやと云ふやうな心で居るが、それがヱライ慢神取違いであるぞよ。元の役員が覇張らずに控えて居りたなら、モウ十年早く物事が運びて、世界の人民も早く助かり、神界もモチト早ふ満足して戴けるので在りたなれど、十二人の役員の慢神取違いが今に響ひて来て、世界の事が大変に後れて了ふて、神も迷惑を致して居るぞよ。早く大本の中の元からの役員の身魂の改正を致さねば、神界の経綸の邪魔に成る計りで在るから、今の中に改心が出来れば良し、堂しても改心が出来ねば、可愛想でも世界の万民と少しの人民とは代えられんから、小の虫を殺してでも大の虫を助けねば成らぬから、重ねて気を付けるぞよ。後から参りた役員も未だ時日が浅いから、判らぬのも無理はないから、余り八釜敷うは申さぬなれど、世界の物事が絶命の所まで迫りて居るから、神界も急ぐから、一日も早く身魂を研いて、誠の日本魂を発揮して下され。油断はチツトも出来ぬ世界の大本であるぞよ。 いよいよ三千年の神界の経綸の時節が来たぞよ。三千年と申しても、百を三十重ねた意味では無いぞよ。数十万年の永き神の世一代を指して申す事であるぞよ。古き神世の有様を早く世界の人民に解いて聞かさんと、日本の神国の人民が、天地を経綸する主宰者で在りながら、外国の人民と同じ如うに成りて了ふて居るから、第一番に日本の人民が我身魂の天職を覚りて、日本魂に立帰りて、神世からの尊い因縁を覚りた上、世界の人民を助けて与らねば成らぬ、天来の大責任者であるぞよ。世界に大混雑が起るのも、悪い病が流行るのも、日本の人民の上下の身魂が曇りて、天までも曇らして、日本魂の活動が出来ぬからの事で在るぞよ。世界の小言の絶えぬのも、日本国の責任であるから、斯の地の世界を守護いたす、日本の守護神と人民が一番に改心を致して、天地の間を清浄に致さねば、何時までも天下泰平には治まらんぞよ。日本の人民は尊とき天地の神の宮に拵らへてあるので在るから、神の生き宮を余程清浄に致さんと、神が生きた宮に住みて、天地経綸の御用を勤める事は出来んから一日も早く今までの汚ない心や、小さい物欲を速川の瀬に流し捨てて、身禊の行を致して居らんと、肝腎要めの世界改造の御用が勤め上がらんぞよ。此の時代に生れて来た日本の人民は、特別に神界の仕組に仕ふやうに生れさして在るのであるから、今の日本の人民は、天地の使命が中昔の世の人民とは一層重大いのであるぞよ。同じ地の世界でも日本の国ぐらい結構な国はないぞよ。其の結構な日本の神国に生を享けた神民は、猶更この上もなき仕合せもので在るから、世界万国に対する責任が、外国の人民よりは何十倍も重いので在るから、自己本意の精神では日本の人民とは申されんぞよ。斯の結構な神国の神民が、霊主体従の行り方を薩張り忘れて了ふて、外国の体主霊従の世の持ち方に八分も九分も成りて了ふて居るのも、昔の神代に露国で育ちた八尾八頭の大蛇の悪霊に欺し込まれて、泥の世界に浸み切つて居るから、艮の金神が神世一代の苦労を致して、五六七の大神様の御加勢で、水晶の神世に立直す経綸であれども、永らくの間泥に浸みた守護神人民であるから、何程言ひ聞かしても耳へ這入らず、泥の世界から暗の世界へ落ち行うと致す、一寸先きの見えぬ盲目同様の身魂に成りて、今では外国人よりも劣りた人民が沢山出来て居るから、神も中々骨が折れるぞよ。今が世界の大峠の坂に掛りた所で危機一髪の場合であるから、攻めて因縁ありて引き寄せられた大本の役員信者が、一日も早く改心いたして、我身の荷物を軽くいたして、千騎一騎の活動を致して、千載一遇の神業に参加いたして、末代の晴れの舞台を踏みて下されよ。神は信心の旧い新しいは申さんから、判りた人から我一と神国成就の為に活動いたして、天地の祖神様の御神慮を安んじ奉るように致して下され。小さい物質の欲位いに心を曳かれて居るやうな事では、到底此度の大神業は勤まりは致さんぞよ。神の方には役員信者の区別は致さん、身魂の研けた人民から神徳を渡すから誰に由らず身魂次第で、神界から黙りて居りて御用を其人の知らぬ間に致さして居るから、其の覚悟を致してをらねば大間違いが出来るぞよ。神界は誰彼の区別はないから、身魂の研けた人民から其れ其れの御用に使ふてをるから、未だ此の大本の名も在所も何も知らぬ人民でも結構な御用が命して在るぞよ。其れで此の大本は外にも沢山に経綸の御用が致さして在るから、油断は一寸も出来んと申して、いつも筆先で気を注けてありたのじやぞよ。是から未だ未だ神界の経綸の良く解る、結構な御用の出来る守護神人民を、地の高天原へ引き寄せるから、大本の神霊界を充分に骨折りて世界へ拡めて下され、神が守護を致すから、未だ未だ経綸の人民が世に隠れてをるぞよ。其人を一日も早く引き寄して、経綸の御用に使はねば、神界が後れる計りで、世界の人民の困難が永く成る計りで在るぞよ。神の警告した筆先を見いでも、少しでも身魂の光りた守護神人民で在りたら、此後の世界の成行きの様子が見当が付かねば成らぬやうに、世の中の様子が変りて来て居るのに、体主霊従の外国の身魂に染み切りて居るから、先きが見えぬどころか、我身の脚下へ火が焼えて来て、身体が半分火傷する所まで気が付かぬやうな、動物よりも劣りた穀潰しの人民が、幾千万人居りた所で、何の役にも立ちは致さん。米喰虫の蛆虫同然、国が立うが立つまいが、外国に奪られようが何うなろうが、我身さへ気楽に食えさえしたら良いと云ふ今の世界の有様、今に人が人を喰ふやうに成るから、其う成りたら一旦この世界を根本から元の○○に致して、改造さねば成らぬから、可成は此儘で世界の人民を改心さして、世を立てたいのが艮の金神の一心であるから、後で取返しは成らんから、同じ事をクドウ申して知らすので在るから、日本の人民神の生き宮ならチツトは神の心も推量して下されよ。 艮の金神大国常立之尊が、天照彦之命の御魂の宿りて居る、坤の金神の生き宮、言霊幸彦命の手を借りて天地の開けた時からの世の成立から、神々の各自の御活動を書いて知らすぞよ。田庭の国は世界の始り、游能碁呂島の正中で、天地を造り固めた世の音の世の元、言霊の最初に鳴り出でし、天地経綸の霊地であるぞよ。出口の守と申すのも言霊の活用の事であるぞよ。夫れで綾部の大本へ出て来ねば、天地を一声の下に震動させ、雨風を自由に使い、雷神を駆使すると云ふ事は出来ぬので在るぞよ。天地経綸の神力なる言霊アオウエイ五大母音[※「母音」は底本通り。]は綾の高天原の神屋敷が大本であるぞよ。人体を備へた五男三女の神は、近江の国が始り、其他の生物は八木が始まりで在るぞよ。この言霊の初り、丹波綾部、竜宮館の地の高天原、神宮本宮の神屋敷に、伊都の身魂、瑞能身魂の二柱が表はれて、元の神世へ世を捻じ直す時節が来たのであるぞよ。式三番叟の歌にも、今日の三番叟、天下泰平、国土成就、日は照るとも曇るとも、鳴るは五十鈴の滝の水々々々、千秋万歳、処も富貴繁昌、この色の白き尉どのが治め参らせ候事は何よりも易き事にて候。元の屋敷へ御直り候と申す事は、今度の二度目の世の立替の、変性男子と女子との活動の事やら、綾部に二柱の神の立帰りて、天下泰平に世を治めて、万古末代続かすと云ふ事の神示が、神界から作りて在りたのじやぞよ。三千世界の立替の三番叟も恙なく相済みて、弥々初段が世界に初りたから、皆一日も早く改心致さぬと後の祭りに成りて、肝心の晴の舞台に登場出来んぞよ。 ◎ 世界の人民は皆天地の神の分霊分体であり、亦た神々の宿にて世界を開発く生き宮であるぞよ。中にも日本は豊葦原の中津国と申して在るが、其中津国に生れた人民は殊更上級の神々の生宮で在るから、神国の神民は上御一人の現人神を真の親とし主となし師と致して上下心を一に固めて、天地の経綸を行ふ可き天職の有る事を悟り、一日も早く今迄の誤まりた精神を立直して、二度目の天の岩戸を開ひて、常世往く黒白も分かぬ暗黒界を光り輝やく神世に致さねば、天地の神々様に申訳が立たぬぞよ。此の大本の教が真実に腹に納まりて、其行いが出来る人民でありたら夫れが誠の差添の種で在るぞよ。是から本の種を現はして善と悪とを分けて見せるぞよ。此の神の経綸は何程悪の種でも今度の際に改心さえ致したなら、元の胤を表はさずに善と悪との真釣合はせを致して御用を致さすから、此の金神の慈悲心が心の底に浸徹りたら、如何な悪魔も改心せずには居れぬやうに成りて、心から発根と改心いたすやうに成るから、第一番にこの大本の内部から充分身魂を清らかに致さんと、世界の神と守護神人民に押しが利かんぞよ。今が大本の千騎一騎の改心の時で在るぞよ。一日でも後れる程世界が永く苦しむぞよ。 この地の世界の初りは世界一体に泥海で在つて、光りも温みも何ものもなかりたぞよ。丁度譬へて曰へば朧月夜の二三層倍も暗い冷たい世界で、山も河も草木も何一種なかつたので在るぞよ。其泥の世界に身の丈けは五百丈ばかり、身の太さは三百丈程も在る蛇体の荒神が住居して居られたのが、御精神の良い大神様の前身で、是が五六七の大神様と御成り遊ばしたので在るぞよ。誠に長閑やかな御神姿で、鱗は一枚もなし、角も一本もなし、体の色は青水晶のやうな立派な神様で、天地の元の祖神と成られたので在るぞよ。斯世を創造して、天地を開く事に非常に苦心遊ばしましたのが、此の大神様が第一番で、ミロクの大神ともツキの大神とも申上げる御神様であるぞよ。世界を造るに就て非常に独神で御心配を遊ばして御座る所へ、同じく似たやうな御神姿の大蛇神が現はれたが、此の神には十六本の頭に角が生えて、其角の先から大変な光りが現はれて居る神様に、五六七の大神様が世界創造の御相談をお掛けになつたので在るぞよ。扨て其時の六六六の大神様の御言葉には、何時まで斯うして泥の世界の暗い所に住居を致して居つても、何一つの楽みもなし、何の功能もなし、沢山の眷属も有る事なり。何とか致して立派な天地を造り上げ、万の眷属の楽しく暮すやうに致したいのが、我の大望で在るが、其方様は我の片腕となりて天地を立別け、美はしき地上の世界を造る御心は有りませぬかと御尋ね遊ばしたら、日の大神の前身なる頭に十六本の光る角を生やした大蛇神様が御答には、我身は女体の事なり、且つ又た斯んな業の深い見苦しき姿で在りますから、貴神様の如うな御精神の良い、立派な神様の片腕に成ると云ふ事は、恐れ入りて御言葉に従ふ事が出来ませぬと、大変に謙だつて御辞退遊ばしたなれど、六六六の大神様が強いて御頼みに成り我の片腕に成るのは其方様より外にない、我が見込んで居るからとの仰せに、日の大神様も左様なれば御本望の遂ぐるまで我身の力一杯活動いたして見ます、去る代りに天地が立派に出来上りましたら、我を末代貴神様の女房役と致して下され私は女房役となりて万古末代世界を照しますとの御約束が地の高天原の竜宮館で結ばれたので在りたぞよ。其所へ艮の金神の前身国常立尊の荒神が現はれて、世界を造り遊ばす御手伝を命して下されと御願申上げたので在りたぞよ。そこで六六六の大神様が早速に御承知被下て仰せ遊ばすには、其方は見掛に由らぬ誠忠無比の神であるから世界の一切を委すから、落度のなきやうに致すが良かろうと仰せられ、其上に国常立之命に思兼の神と申す御名を下され、八百万の神様を天の山河澄の川原に集めて一人の眷属も残さず相談の中間え入れて大集会を遊ばしたので地の在る限りに住居いたして居れる蛇体の神々様が集り合ふて御協議の上、六六六様の仰せの通りに国常立之命を総体の局に選み下さりたのであるぞよ。 そこで八百万の神々の意見を聞き取りて、其の由を五六七の大神様へ申上げたら、日の大神伊邪那岐之尊様と月の大神五六七様との御弐体の大神様が更に集会あそばして、国常立之尊を地の造り主と致すぞよとの御命令が下りたので、此の方が地の主宰となりて多陀与弊流地面を修理固成いたしたのであるぞよ。天も水(六)中界も水(六)下界も水(六)で世界中の天地中界三才が水(六)計りで在りた世に一番の大将神の御位で御出遊ばしたので六(水)を三つ合せてミロクの大神と申すのであるが、天の水の(六)の中からヽの一霊が地に下りて五(火)と天が固まり地の六(水)にヽの一霊が加はりて地は七(地成)となりたから、世の元から申せばミロクは六六六なり、今の世の立直しの御用から申せばミロクは五六七と成るのであるから、六百六十六の守護は今までのミロクで、是からのミロクの御働きは五六七と成るので在るぞよ。国常立之尊が世の元を修理固成るに就て、天地中界の区別もなく、世界は一団の泥土泥水で手の付け様がなかりたので、堅いお土の種をミロクの大神様に御願い申し上げたら、大神様が直ぐに御承知になりて一生懸命に息を吹き懸けなされて一凝りの堅いお土が出来たのを国常立之尊の此方に御授けに成りたので其一団の御土を種に致して土と水とを立別け、山、川、原、野、海を拵らえたのが地の先祖の大国常立之尊であるぞよ。艮の金神大国常立之尊の姿は今まで筆先にも現はした事はなかりたなれど、畏れ多きミロクの大神様、日の大神さまの御神姿まで筆先に出して知らしたから、何時までも発表を見合はす事が出来ぬから、実地の姿を書き誌すぞよ。 大国常立之尊の元の誠の姿は頭に八本角の生えた鬼神の姿で、皆の神々が余り恐ろしいと申して寄り付かぬやうに致した位いの姿で在るから、今の人民に元の真の姿を見せたら、震い上りて眼を廻すぞよ。 月の大神に御成遊ばした五六七の大神様と日の大神様と、御二体の大神が(水火)を合はして天を固めに御上り遊ばした霊場が今の綾部の神宮本宮の坪の内、竜宮館の地の高天原であるぞよ。日本は世界の中心であり、綾部は日本の中心で在るから、天地の神々が世の元から昇り降りを致されたり集会を遊ばし坐て、天地を造られる折に御相談なされた結構な霊地であるから、其時分にはたつ鳥も落ちる勢いの場所で言霊の世の元でありたぞよ。其後に艮の金神が八百万の邪神に艮へ押込められてから、一旦は悉皆影も形もなきやうに亡びて了ふたが、時節参りて煎豆にも花が咲きて再び国常立之尊の世に世が戻りて来たから、変性男子と女子との身魂を借りて、世の元からの因縁を説いて聞かせる世界一の大本と成りたので在るぞよ。天の固まりたのは御弐体の大神様が天へ上りて各自に水火を合はしてキリキリと左右に三遍御舞い成されて伊吹の狭霧を遊ばすと、夫れで天が完全に固成たので在るぞよ。次に亦た吹き出し玉ふ伊吹の狭霧に由りて天に幾億万の星が出現したので在るぞよ。其星の数だけ地の世界に生物が育ちたら夫れで一旦世の洗い替に成るので在るぞよ。天は判然と造れたなれど、未だ地の世界が充分に固まりて居らなんだ際に、頭に十本の角の生へた大蛇神が我は地の世界の修理固成の加勢よりも天へ上りて天上から働き度いと申されて天で○○○○○○と成られたのであるが、大変な御神力が強いので御惣領に為てあるなれど、今の世界の人民の思ふて居る様な事とは神界の様子は又た大変な違いであるぞよ。それで先づ天の方は固まりて動かぬ事に成りたなれど、国常立之尊の主宰する地の世界は未だ充分の所へは行て居らんから、此方が先途に立ちて地の在らん限り方々の神に申付けて持場持場を固めさしたのが国々の国魂神で在るぞよ。其折には何れの神も心一つに素直に活動なされて、地の世界も程なく固まりて眼鼻が付く様に結構に成つたのであるが、今の露国の方面に八頭八尾の大蛇神が住居いたして居りたか、其蛇神の目的は綾部の高天原を中心として置いて、自身が天へ上りて天から末代地の世界を守護いたし度いと云ふ思わくで在りたなれど、夫れより先に天を造りたいと思ふて夫れ夫れ苦労を遊ばしたミロク様なり、一番に相談に乗つて供々に活動なされた日の大神様なり、地の世界は国常立之尊なり、世の元の根本の始りに天地三体の神が八百万の神を集めて天地を創造いたした其後へ八頭八尾の巨蛇神が現はれて、何程天地を自由に致そうと思ふても誰も相手に致すものがなかつたのであるぞよ。其の八頭八尾の蛇神が地の世界を充分乱らして置いて、我の自由に致す考えで種々と甘い事を申して誠の神まで手に入れて、此の神国の世を持荒らし、終には地の先祖の此方まで押込めるやうに企みて悪の目的が今まではトントン拍子に面白い程来たなれど、今度は艮へ押込められて居りた此方が時節で世に出て地の世界の一切を主宰するやうに成りたから、改心いたせば供々に手を曳合ふて神界の御用に立てて与るなり、改心出来ねば弥々艮めを刺して往生さすぞよ。 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伊都能売神諭 | 神諭一覧 | 大正8年2月20日 | 大正八年二月二〇日 大正八年二月二十日旧正月二十日 艮の金神国常立之命の御魂が瑞の御魂の宿りて居る言霊幸彦之命の手を藉りて世界の根本の成立を書きおくぞよ。天は日の大神月の大神様は御両神が御固め遊ばしで結構で在れど、地の世界は八百万の荒神を使ふて所々の持場をそれぞれに凝めたなれど、山にも野にも草木一本もなく、全然炮烙を伏せた如うな有様で在つたから、国常立之尊が一旦天へ登りて御両方の大神様に地上繁栄の御指示を御願申上げたら、天の御二方様が仰せには、世界の大体を固めるには勇猛な神力が要るから、○○の姿でなければ活動が出来ぬなれど、斯の通山川海野が出来上りた上は山野に草木を生やさねば成らぬから、天にも夫婦が水火を合して活動したので在るから、地にも夫婦と云ふ事を拵らえて陰陽を揃えねば成らぬとの御神言で在つたから、艮役の金神が女房を御授け下されたいと御願申上げると、天に坐ます御二方様が頭に角の四本ある○○のヒツジ姫命[*底本では「ヒツジ」ではなく「ヒツシ」になっているが誤字と思われる。]を女房に御授け下さりたから、艮の金神は未姫の神と夫婦と成り両神が水火を合して山に向つて、ウーとアーの言霊を産み出し、一生懸命に気吹を致すと山の上に雌松が一本生えたのが木の世界に現はれた根元であるぞよ。 松が一本限りでは種が出来ぬから、今度はヒツジ姫が一神で気吹放ちを致すと、又た雄松が一本出来たので、二本の松の水火から松傘が実のり種を生みして今の様な世界の良き土地に限りて、松が繁り栄えるやうに成りたので在るぞよ。松を木の公と申すのは世界に一番先きに出来たからで在るぞよ。綾部の大本は天地の初発の神が現はれて世界の経綸を致す霊地であるから、松の大本とも申すので在るぞよ。 天に坐ます日の大神伊邪那岐之尊様が九天の日向のアオウエイ五大母音のカサタナハマヤラワで禊身し給ひ、祓戸四柱の神様を生み遊ばし、最後に右の御眼を洗ひて月球を造り、左の御眼を洗ひて日球を造り、御鼻を洗ひ給ひて素盞嗚之命を生み遊ばし、御自分は天の日能若宮に鎮まり遊ばし、月の大神様は月界の御守護を遊ばす事に成り、天照大御神様は天上の御主宰と成られたが、素盞嗚命は海原を知召す可しと仰せられたので、天より御降りに成り海原の守護と成られたので在るぞよ。海原の守護と申す事は全地上の主宰であるが、艮の金神坤の金神が既に大体を修理固成いたした所へ大地の主宰神が御降りに成つたので、天にも御両方の神様が御固め遊ばした所を天照皇太神宮様が総主権を御持ち遊ばしたので在るから、地の世界も天に従ふて主権を素盞嗚尊に御譲り申上げ艮の金神坤の金神は地の上の一切の世話を致して時節を待つ事に致して居りたぞよ。此大神様は神代の英雄で何事もハキハキと万事を片付ける器量の在る神様で在れど、余り行り方が激しかつたので、地の上の守護神が色々と苦情を申して終には大神の御命令を一柱の神も聞かぬ如うに立到つたので、大神様も地の世界が厭に成り、月の大神様の守護遊ばす夜見の国へ行くと云ふ覚悟を遊ばしたのであるが、夫れまでに天に坐ます姉神の天照皇太神宮に暇乞を成さんと仰せられ、大変な御勢いで天へ御登りに成つたから、山川も国土も一度に震動して大変な事変に成つたので在る。そこで天上に坐ます天照大御神様が非常に驚きなされて、彼の如うな勢いで天へ上り来るのは此の高天原を弟神素盞嗚尊が占領する心算で在ろうと思召して、大変な戦いの用意を為して御待受けになり、天の八洲河原に於て互に誓約を遊ばし、御両神様の御魂から五男三女の八柱の神が御生れ遊ばしたので在るが、是が神が人間の肉体に成りた初りで在るぞよ。口で申せば短いなれど、此の誓約を遊ばして八柱の神を御生みに成る間と云ふものは数十万年の永い月日[*ママ]が掛りて居るぞよ。其間に艮の金神と坤の金神が相談いたして天照皇太神宮様の御妹神若日女君命を天から下げて戴き、地の世界の主宰神と仰ぎ奉り、世界経綸の機を織りつつ世界を治めて居りたので在るぞよ。若姫君之尊は三男五女神の八柱神を養育して立派に神代の政治を遊ばして居れた処へ元の素盞嗚之命様が又た地の世界へ降りて非常に御立腹遊ばして若姫君の命の生命を取り天も地も一度に震動させ再び常夜の暗となり、万の妖神が荒れ出し何うにも斯うにも始末が付かぬ如うに成りたので天に坐ます天照大御神様は終に地球之洞穴へ御隠れ遊ばし、天も地も真の暗みと成つて了ふたので、八百万の神々が地の高天原の竜宮館に神集ひして、艮の金神は思兼神となりて色々と苦心の末に天之岩戸を開き天地は再び照明に成つたので在るぞよ。 そこで神々様の協議の結果、素盞嗚尊に重き罪を負はせて外国へ神退いに退はれたので、素盞嗚尊は神妙に罪を負ひ贖罪の為に世界中の邪神を平定遊ばし終には八岐の大蛇を退治して、叢雲の剣を得之を天照皇大神に奉られたので在るぞよ。其時に退治された八頭八尾の大蛇の霊が近江の国の伊吹山に止まり、日本武命に危害を加へて置いて元の露国の古巣へ迯げ帰り、色々として世界を魔の国に致す企みを致して今度の世界の大戦争を初めたので在るぞよ。日本を一旦は覗ふたなれど、余り神力の強い国土であるから、海を渡りて支那や、印土を乱だし、露国までも潰ぶし、モ一とつ向ふの強い国の王まで世に落し、まだ飽き足らいで今度は一番大きな国へ渡り日本の神国を破りて魔の国に致す仕組を致して居るから、日本の人民は日本魂を研き上げて、一天万乗の大君を守り大神を敬まい誠を貫かねば、今の人民の如うに民主主義に精神を奪られて居るやうな事では、今度は八岐の大蛇に自由自在に潰されて了ふから、日本神国の人民は一日も早く改心致して下されと、クドウ神が申すので在るぞよ。 素盞嗚命は外国へ御出遊ばして一旦は陣曳を遊ばしたので、地の世界に肝心の主宰神がなく成りたから、撞の大神様が元の地の世界を締固めた国常立之尊に改めて守護致すやうにとの御命令が下りたので、夫婦揃ふて一旦潰れて了ふた同様の世界を守護いたして居りたなれど、余り厳しい固苦しい世の治方であるから、八百万の神々が心を合はして天の大神様へ艮の金神根の国へ退去するやうの御願いを成されたので、天の大神様は兎も角も時節の来るまで差控へよとの厳命でありた故に、神教の通り素直に艮へ退去いたしたので在りたぞよ。其時から艮の金神は悪神と云ふ名を八百万の神から付けられて悔し残念を堪り詰て来た御蔭で、一旦斯世が泥海に成る所を受取りて世の立替の後の立直しの御用を勤めさして頂くやうに成りたので在るから、何事も時節を待てば、煎豆にも枯木にも花の咲く事があるから、時節の力くらい恐いものの結構なものはないから、人民も物事を急かずに時節さえ待ちたら何事も結構が出て来るから、辛抱が肝要であるぞよ。 艮の金神が世の初りに地の世界を造り固め、次に夫婦が呼吸を合して、種々の樹木や草を生み出した其間が数万年、夫れから蛇体の神計りでは世界の隅々まで細やかに開く事が出来ぬから、八百万の神の知らぬ間に人間を作る事を考がえ終に夫婦の人間を水と火と土とで造りたのが永い間掛りて苦労致したので在るぞよ。五男三女の八柱神は竜体から変じて生れられたので在れど、普通の人間は土の中で蒸し湧したので在るぞよ。今は暗りでも人民が安々と出来るやうに世が開けて人民が腹に児を孕むやうに容易い事になりて居れども、矢張り艮坤の両神が守護いたさぬ事には猫の子一疋産むと云ふ事は出来ぬので在れども、今の人民は男と女と寄りさへすれば何時でも勝手に児が生れるやうに取違いを致して居るから、神の恩と云ふ事を一つも思はぬから、我児が我の自由に言ふ事を聞かぬ様に成るので在るぞよ。我の体内を借りて生れるから、仮に我児と名を付けさして在れど、実際は神が天地経綸の為に道具に使ふやうに生まして在るのじやぞよ。 |