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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 25 金勝要大神 第二五章金勝要大神〔二七五〕 天津御神の造らしし豊葦原の瑞穂国 泥の世界と鳴戸灘天の瓊矛の一滴 言霊姫の鳴り鳴りて鳴りも合ざる海原の 穢れもここに真澄姫竜世の浪も収まりて 天地四方の神人は心平に安らかに この浮島に純世姫御稜威も高き高照姫の 神の命と諸共に神界、現界事完へて 根底の国を治めむと地教の山を出でたまひ 野立の姫の後を追ひ救ひの神と鳴戸灘 同じ心の姫神は根底の国へ五柱 千尋の深き海よりも業の深き罪咎を 清むるための塩をふみ浪路を開きて出でましぬ 無限無量の御恵みは現界、幽界、神の世の 救ひの神の御柱ぞ。 茲に五柱の女神は、地球の中軸なる火球の世界に到り給ひ、野立彦神、野立姫神の命を奉じ、洽く地中の地汐、地星の世界を遍歴し、再び天教山に登り来つて、大海原の守り神とならせ給ひける。 ここに天の御柱の神、国の御柱の神は、伊予の二名の島を生み、真澄姫神をして、これが国魂の神たらしめたまふ。之を愛媛といふ。一名竜宮島ともいひ、現今の濠洲大陸なり。而て我が四国は、その胞衣にぞありける。 つぎに純世姫神をして、筑紫の守り神となさしめ給ひぬ。これを多計依姫といふ。筑紫の島とは現代の亜弗利加大陸なり。わが九州はこの大陸の胞衣にぞありける。 つぎに言霊姫神をして、蝦夷の島の守り神たらしめ給ひぬ。これ現代の北米なり。而て我が北海道は、その大陸の胞衣にぞありける。 つぎに竜世姫神をして、高砂の島を守らしめ給ひぬ。ゆゑに又の名を高砂姫神といふ。高砂の島は南米大陸にして、台湾島はその胞衣にぞありける。 つぎに高照姫神をして、葦原の瑞穂国を守らしめ給ひぬ。これ欧亜の大陸にして、大和の国は、その胞衣にぞありける。 かくして五柱の女神は、その地の国魂として永遠に国土を守護さるる事となれり。但しこれは霊界における御守護にして、現界の守護ならざる事は勿論なり。是らの女神は、おのおのその国の神人の霊魂を主宰し、或は天国へ、或は地上へ、或は幽界に到るべき身魂の救済を各自分掌し給ふ事となりける。故にその国々島々の身魂は、総てこの五柱の指揮に従ひ、現、幽、神の三界に出現するものなり。 併し此の五柱の神の一旦幽界に入りて、再び天教山に現はれ、国魂神とならせ給ふ迄の時日は、数万年の長年月を要したまひける。その五柱を総称して、金勝要神といふ。 天は男系、地は女系と云ふは、霊界のこの消息を洩らせしものなり。神諭に、 『大地の金神、金勝要神』 とあるは、これの表示なり。また、 『この大神は、雪隠の中に落された神』 とあるは、総ての地上の罪悪を持ち佐須良比失ふ所の鳴戸の意味なり。 天教山は口に当り、鳴戸は地球の肛門に当るが故なり。神の出口、入口といふは、この富士と鳴戸の御経綸の意なり。大地の金神を金勝要神と称するは、大地の金気の大徳によりて固成され、この神の身魂に依りて凝縮保維されてゐるが故なり。 (大正一一・一・二一旧大正一〇・一二・二四外山豊二録) (第二三章~第二五章昭和一〇・二・一二於新宮市油屋旅館王仁校正)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 26 体五霊五 第二六章体五霊五〔二七六〕 天帝大六合治立命は一霊四魂三元八力を以て万物を造り、自ら直接に之を保護し給ふことなく、各自にその守り神を定めて、之を管掌せしめ給ふは、この物語に依りて考ふるも最早明かに判明する事と思ふ。 大神は太陽を造つて、これに霊魂、霊力、霊体を賦与し給ひ、大地を造りて又これに霊魂、霊力、霊体を賦与し、太陰を造り、列星を造りその他万物各自に霊魂、霊力、霊体を賦与し給ひしなり。今は唯其の一霊四魂について、大略を述べむとするなり。 大宇宙には、一霊四魂が原動力となりて、活機凛々乎として活動しつつあり。先づ小宇宙の一霊四魂に就て述ぶるならば、大空の中心に懸れる太陽は直霊にして、これを一霊ともいひ、大直日神ともいふなり。 而して太陽には、荒魂、和魂、幸魂、奇魂の四魂が完全に備はり、その四魂はまた一々直霊を具有し、また分れ、また四魂を為して居る。さうして是らの直霊を神直日神といふ。その四魂また分派して四魂をなし、各々直霊を備ふ。大空の諸星は、皆一霊四魂を各自に具有し居るものなり。 而して太陽の一霊四魂を厳の身魂と総称し、かつ霊主体従の身魂ともいふなり。故に大空は霊を主とし、体を従とす。大空中に懸れる太陽、太陰および列星は、皆幽体を以て形成られあるなり。ゆゑに太陽、列星の中に鉱物ありと雖も、大地のごとく堅からず、重からず、その重量に非常の差あるを知るべし。 大空中における一霊四魂の分布状態を、仮に図を以て示せば左図の如し。 [#図一霊四魂の分布状態] 大地は体を主とし、霊を従として形成られあり。故に木火土金水が凝結して生成化育を営みつつあるなり。太陽の霊魂を厳の身魂と称するに対し、地の霊を瑞の身魂といひ、体主霊従の身魂といふ。また大地球の直霊を大曲津日の神といひ、荒魂、和魂、幸魂、奇魂の四魂を備へ、その四魂は太陽のごとく分離してまた直霊を備ふ。その直霊を八十曲津日の神といふ。この四魂はまた更に分れ、際限無く大地一面に一霊四魂を分布されつつあるなり。 天地開闢の初めに当り、清く、軽き物は天となり、重く、濁れるものは地となりぬ。故に地上は幾万億年を経ると雖も、天空のごとく清明無垢なることは、到底できざるは自然の道理なり。故に、地上に棲息する限りは、体主霊従の身魂に制御さるるものなり。ここに於いてか体主霊従を調和し、霊体一致の美はしき身魂を造らざるべからざるなり。体主霊従とは、体六霊四の意に非ず、霊主体従とは霊六体四の意に非ず、体主霊従なるものは体五霊五の意味なり。 然るに動もすれば、地上の人類は体六或は体七、体八となり、霊四、霊三、霊二、霊一となり易きものなり。故に体主霊従と雖も、体五霊五は、即ち天の命ずる所にして、これに体超過すれば、いはゆる罪となるなり。体五霊五の天則を破りたる吾人の身魂を、大曲津神と云ひ、また吾人をして外面より悪に導く身魂を八十曲津神といふなり。 ゆゑに大曲津日の神、八十曲津日の神は、曲津の名ありと雖も、決して悪神に非ず、悪を制御する一種の直日神である。曲津日と曲津といふ神の区別を混同せざる様注意すべし。 大地の一霊四魂の分布は、即ち前記太陽の図に準じて知るべきなり。而て厳の身魂は、荒魂、和魂最も重きを占め、瑞の身魂は、奇魂、幸魂最も重きを占め居るなり。 つぎに伊都能売の身魂に就て略述すれば、この身魂は、一に月の霊魂ともいひ、五六七の身魂と称せらる。五六七の身魂は、厳の身魂に偏せず、瑞の身魂にも偏せず、厳、瑞の身魂を相調和したる完全無欠のものなり。 而して伊都能売の身魂は、最も反省力の強き活動を備へて、太陽のごとく常に同じ円形を保つことなく、地球のごとく常に同形を保ちて同所に固着すること無く、日夜天地の間を公行して、明となり、暗となり或は上弦の月となり、また下弦の月となり、半円となり、満月となり、時々刻々に省みるの実証を示しゐるなり。 斯くのごとく吾人の身魂の活用し得るを、伊都能売の身魂といふ。伊都能売の身魂の活動は、時として瑞の身魂と同一視され、或は変性女子の身魂と誤解さるる事あり。 伊都能売の身魂は、変性男子の身魂にも非ず、また変性女子の身魂にもあらず。完全無欠にして明暗、遠近、大小、賢愚、肖不肖、善悪等の自由自在の活動をなし得る至粋至純の神霊の活用なり。 かくのごとく自由自在の神人たることを得ば、初めて、五六七の活動をなし得べきなり。月にもまた一霊四魂あり、その四魂の各々にもまた一霊四魂の備はれることは、太陽地球と同一なり。而てこの月球を保持するは、前巻に述べたるごとく、北斗星、北極星、オレオン星および三角星の四大星体である。この四大星体は、月球の直接保護に任じ、瑞の身魂の活用を主としつつ大空、大地の中間を調理按配する重要なる職務を有するものなり。 (附言) 霊五体五(霊主体従)をひのもとの身魂といひ、体五霊五(体主霊従)を又ひのもとの身魂といふ。併し行動上の体主霊従は、之を悪の身魂または智慧の身魂といふなり。また霊主体従とは霊五体五の意味で、体主霊従とは体五霊五の意味なりといふ説明は、組織的の説明にして、行動上の説明にあらず。読者よくよく注意すべし。 (大正一一・一・二一旧大正一〇・一二・二四外山豊二録) (第二六章昭和一〇・二・一三於勝浦支部王仁校正)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 31 襤褸の錦 第三一章襤褸の錦〔二八一〕 彼のウラル山およびアーメニヤの野に神都を開き、体主霊従的神政を天下に流布し、つひには温順にして、かつ厳粛なる盤古神王を追放し、自ら偽盤古神王となり、大蛇の霊魂に使嗾されて、一時は暴威を揮ひたりし所謂盤古神王は、大神の大慈大悲の恩恵の笞を加へられ、アルタイ山に救はれて蟻虫の責苦に逢ひ、ここに翻然として前非を悔い、再びウラル山に立帰り、アーメニヤに神都を開きて、諸方の神人を、よく治め仁徳を施し、天地大変動後の救ひの神として、人々の尊敬もつとも深かりしが、年月を経るに随ひ、少しく夫婦二神は神政に倦み、色食の道に耽溺し、復び、 『呑めよ騒げよ一寸先は闇よ 闇の後には月が出る 人は呑め食へ寝て転べ』 と、又もや大蛇の霊魂に憑依されて、体主霊従的行動を始むるに致りける。 さしもに悪に強き大蛇の身魂も、金狐および鬼の身魂も、宇宙の大変動に対しては、蠑螈、蚯蚓と身を潜め、神威の赫灼たるに畏縮してその影を潜めてゐたが、やや世の泰平に馴れ神人の心に油断を生ずるに及んで、またもや悪鬼邪神は頭を擡げ跋扈跳梁するの惨状となりける。 神諭にも、 『この世界は、悪魔が隙を附け狙うて居るから、腹帯をゆるめぬやうに致されよ』 と示されたる如く、一寸の油断あれば悪神は風のごとく襲ひきたつて、その身魂を悪化せしめ根底の国に落し行かむとするものなり。 盤古神王[※校定版・八幡版ではここに「(ウラル彦の偽称)」という補足が挿入されている。]は、大蛇の霊魂に身魂を左右され、つひには一派の教を立てた。これを大中教といふ。この教の意味は、要するに極端なる個人主義の教理にして、己一人を中心とする主義である。大は一人である。一人を中心とするといふ意義は、盤古神王唯一人、この世界の神であり、王者であり、最大権威者である、此一人を中心として、総ての命令に服従せよと云ふ教の立て方であつた。然るに数多の宣伝使は、立教の意義を誤解し、大蛇や金狐の眷属の悪霊に左右されて遂には己れ一人を中心とするを以て、大中教の主義と誤解するに致つたのである。実に最も忌む可き利己主義の行り方と変りける。 この大中教は、葦原の瑞穂国(地球上)に洽く拡がり渡りて、大山杙神、小山杙神、野槌神、茅野姫神の跋扈跳梁となり、金山彦、金山姫、火焼速男神、迦具槌神、火迦々毘野神、大宜津姫神、天の磐樟船神、天の鳥船神などの体主霊従的荒振神々が、地上の各所に顕現するの大勢を馴致したりける。 ここに於て国の御柱神なる神伊弉冊命は、地上神人の統御に力尽き給ひて、黄泉国に神避りましたることは、既に述べたる通りなり。 アーメニヤの神都を南に距ること僅かに数十丁の田舎の村を、東西に流れてゐる可なり広き河あり、之をカイン河といふ。春の日の日向ぼつこりに、雑談に耽る四五の乞食の群あり。口々に何事か頻りに語らひ居りぬ。 甲『世の中の奴は、乞食三日すりや味が忘れられぬと云うてるさうだ。一体乞食と云ふものは一定の事業もなし、世界中をぶらついて人の余り物を、頭をペコペコと下げて、貰つては食ひ、名所旧蹟を勝手気儘に飛び歩き、鼻唄でも謡つて気楽にこの世を渡るものの様に考へてゐるらしい。なかなか乞食だつて辛いものだ。三日も乞食するや、万劫末代その辛さが忘れられぬと云ふことを、世の中の利己主義の人間は苦労知らずだから、そんな坊ちやま見たやうな囈語を吐くのだよ。同じ時代に生れ、横目立鼻の神様の愛児と生れて、一方には沢山な山や田地を持ち、家、倉を建て、妾、足懸けを沢山に囲うて綾錦に包まれ、毎日々々酒に喰ひ酔うて、「呑めよ騒げよ一寸先は暗よ、呑め食へ寝て転べ」なんて、盤古大尽を気取りやがつて、天下を吾が物顔してゐる餓鬼と、俺らのやうに毎日々々人の家の軒を拝借したり、樹の下に雨露を凌ぎ、若布の行列か、雑巾屋の看板のやうな誠にどうも御立派な襤褸錦を纏うてござる御方と比べたら何うだらう。お月さまに鼈か、天の雲に沼の泥か、本当に馬鹿々々しい。之を思へば俺はもう世の中が嫌になつてきた。一体盤古大神てな奴は、ありや八岐の大蛇の再来だよ』 乙『コラコラ、大きな声で言ふない。それまた向方へ変な奴がきをるぞ。あいつは山杙とか川杙とか云ふ悪神に使はれて居る奴役人だらう。この間も鈍刕が盤古神王の行り方をひそひそ話して居たら、山杙とかの狗が嗅ぎ出しやがつて、無理矢理に鈍刕を踏縛つて、ウラル山の山奥へ伴れて行つて嬲ものにしたと云ふことだ。恐い恐い、鬼の世の中だ。黙つて居れ居れ。言はぬは言ふにいや優るだ』 この時、黒い目をぎよろつかせた顔色の赭黒い目付役が、乞食の群の前に立ち止まり、 『ヤイ、貴様は今何を囁いてゐたのか』 甲『ハイ、結構なお日和さまで暖かいことでございますな。嬉しさうに四方の山々は笑ひ、鳥は花の木に歌つてゐます。実に結構な天国の春ですな。これも全く盤古神王様の御仁政の賜と思へば、嬉し涙がこぼれます。ハイハイ』 と他事をいふ。目付役はやや声を尖らして、 『馬鹿ツ、そんなことを言つて居るのぢや無い。今何を囁いてゐたかといふのだ』 甲は首を傾け、耳を手で囲ふやうな風して聾を装ひ、 『私は一寸耳が遠いので、しつかり貴方の御言葉は聞きとれませぬが、何でも囁くとかささを呑んでゐるとか、仰有るやうに聴きました。間違ひましたら真平御免なさい。イヤもうこの頃は、日は長し腹は減るなり、喉は渇くなり、甘いささの一杯でも呑ましてくれる人があれば、本当に結構ですが、今このカイン河の水をどつさり呑んで、ささやつとこせいと腹を叩きました。腹はよう鳴りますよ。私の聾でさへ聞えるくらゐですから、貴方がたが御聴きになつたら、本当に面白いでせうよ。尾も白狸の腹鼓、面白うなつておいでたな。ささやつとこせー、よーいやな。なんぼよういやなと云つたつて、水では尚且酔がまはらぬ。よいささ一杯ふれまつて下さい』 と屁に酔うたやうな答へに、目付も取つくしまも無く、面ふくらし踵を返して帰り行く。 (大正一一・一・二二旧大正一〇・一二・二五外山豊二録)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 33 五大教 第三三章五大教〔二八三〕 『可飲の流れは止まるともとめて止まらぬ色の道 酒と博奕は猶やまぬ飲めよ騒げよ一寸先や暗と 旨いこといふ宣伝使俺らは裸体で蓑蟲の 雨に曝され荒風に吹かれて深山の霜を踏み 常夜の露に曝されて飲み渡き酒もヱー飲まず 食ひたいものもヨー食はず人の屑やら余りもの 貰うて其日をひよろひよろと渡る浮世の丸木橋 吾身に襤褸は纏へども肝腎要の魂は 錦を飾る大丈夫ぞウラルの彦の邪曲に 虐げられて吾々は昨日は山に今日は又 野辺の嵐に晒されて臭い狗めに嗅出され 捕へられて何時の日かウラルの山に連れ行かれ 舌を捩られ眼を抜かれ手足を菱に縛られて 飲めよ騒げよ暢気なる歌を聞かされ木兎の 身の行く果を偲ぶればこの世は鬼か大蛇か暗の夜か 旦の露と消ゆる身の実にも果敢なき身の宿世 救ひの神は何時の世か天より降り来るらむ 助けの船は何時の日か海の底より浮び出む 憂ひに沈む吾々は何時の世にかは浮ばれむ 嗚呼味気なの闇の世や嗚呼あぢきなの闇の夜や』 と謡ひながら、エデン川の岸を降る漂浪神の一群があつた。このとき前方より、 『神が表に現はれて善と悪とを立て別ける 魂を研けよ立替へよ身の行ひも立て直せ 誠の力は世を守る』 と節面白く謡ひ来る宣伝使ありけり。是は黄金山の麓に、この混乱紛糾の世を救ふべく、埴安彦といふ大神現はれて、五大教といふ教を立てられ、その宣伝使なる東彦と云ふ神人なりき。一行はこの声を聞いて耳を傾けゐる。宣伝使は猶も、宣伝歌を謡ひながら此方に向つて進み来たる。 宣伝使は、蓑笠を纏ひ、草鞋脚絆の、身軽な扮装にて宣伝歌を高唱しながら、一行と行き違ひ進み行く。一同は互に顔を見合せ、 甲『今の歌は何だか、吾々の耳にはいり易すい様な気がして、何処ともなく面白いぢやないか』 乙『ウン、さう云へばさうだ。神様の御声のやうにも響いた』 丙『兎もかく呼び止めて、詳しい話を聞いたらどうだ』 丁『呼び止めたつて、吾々のような人間に、振り向いては呉れはしないだらう。恥をかくよりは、止したらどうだ』 丙『馬鹿云へ、人を助けるのが宣伝使だ。そりや、屹度呼び止めたら、待つてくれるよ』 一同『それがよからう。オーイオーイ』 と一同は声を揃へ、右手をあげてさし招いた。宣伝使はあと振返りつつ、こなたを見詰めてゐた。そこへ一人のみすぼらしい男が、一行の中から抜擢されて走つて行つた。そして宣伝使の前に手を突き、 『貴神の御歌を、吾々は承はりまして、何とも知れぬ心に力が着いた様に思ひます。どうぞ御面倒でもありませうが、吾々一同を救ふ為に、詳しい御話を聞かして戴けませぬか』 と真心を面に現はして頼み込んだ。宣伝使は、 東彦天使『吾は天下の混乱窮乏を救はむために、黄金山麓に現はれ玉ふ埴安彦命の教を奉じて、天下に宣伝するものであります。吾々の宣伝を御聞き下さるならば、喜んでこれに応じます』 といつた。そのうちに、一同は宣伝使の傍に集まり来り、一々鄭重に会釈をした。宣伝使もまた慇懃に礼を返し、傍の美はしき平たき岩の上に座を占め、一同はその周囲に坐して、問答を始めける。 甲『只今の御歌の中に、「神が表に現はれて、善と悪とを立て別ける」といふ御言葉がありましたが、実際にこの世に、吾々を守つて下さる尊い神が在るのでせうか。善悪を公明正大に審判いて下さる誠の神が現はれますのでせうか。吾々はこの事のみが日夜気にかかつてなりませぬ』 宣伝使は答へていふ。 東彦天使『この世界は誠の神様が、御造り遊ばしたのである。さうして人間は、御用を努める様に、神が御造りになつたのである。神は人間を生宮として是に降り、立派な世を開かうと日夜焦慮して居られます。あなた方一同の肉体もまた、尊き神様の霊魂と肉とを分け与へられて造られた人間である。さうして神様の生宮となつて、働くべき結構な万物の霊長である。然るに人間の本分を忘れて、ただただ飲食や、色の道ばかりに耽溺するのは、神様に対して、最も深き罪悪である。世の中には善の神もあれば、悪の神もある。さうして善の神一人に対し、悪の神は九百九十九人の割合に、今の世はなつてしまつてゐる。そこで神様は、この世界を清め、神の生宮たる人間の身魂を清めて、立派な神国を建むと思召し、宣伝使を四方に派遣され居るなり』 と、大略を物語りける。 甲『吾々はどうしても、合点の行かぬことが沢山あります。それで貴神に御尋ねをしたいと思つて、呼び止めました。一体今日の人間は、広い山や野を独占し、さうして吾々の働く処もなく、また働かしてもくれない。何ほど働くに追ひ付く貧乏なしと云つても、働く種がなければ、吾々は乞食でもするより、仕方がないではありませぬか。勿論吾々は、遊んで楽に飲んだり食つたり、贅沢をしようとは思ひませぬ。唯働いて、親子夫婦が、その日をどうなりと、暮すことが出来ればそれで満足するのであります。然るに吾々は、この広い天が下に、脚踏み立てる場所も持つて居りませぬ。皆強い者、大きな者に、独占されて、働くに処なく、親子兄弟は、ちりぢりばらばらになり、天が下を苦しみながら、漂浪ひつつわづかにその日を暮してをります。こんな世の中を立替へて御日様の御照しの様に、万遍なく、吾々にも天地の恵が身に潤ふ事ができるならば、こんな有難いことはなからうと思ひます。さうしてその結構な神様は何時御現はれになりませうか』 と首を傾け、宣伝使の顔を覗き込む。宣伝使は両眼に涙を湛へながら、 東彦天使『空翔つ鳥も、野辺に咲く花も、みな神様の厚き恵をうけて、完全に生活を続けてをります。况んや万物の霊長たり、神の生宮たる人間に於ておや。神様の御守りがどうして無いといふ事がありませうか。ただ何事も神様の御心に任せ、今日只今を、有難い有難いで暮して行けば、神様は花咲く春に会はして下さいます。世の中は暗夜ばかりではない、暗夜があつても何時かは夜が明ける。冷たい雪の降る冬があれば、また長閑な花咲き鳥唄ふ春が出て来る様に、きつと苦みの後には楽しみがあります。あなた方も働く場所がないからといつて、そこら中を漂浪ひなさるのも、無理はありませぬが、この世界は皆神様のものである。人間のものは、足の裏に附いて居る土埃一つだもありませぬ。今の人間は広大な山野を独占して、自分のもののやうに思つてゐるが、命数尽きて、幽界に至るときは、いかなる巨万の財宝も、妻子も、眷属も一切を捨てて、ただ独トボトボと行かねばならぬのである。唯自分の連れとなるものは深い罪の重荷ばかりである。あなた方も、神を信じ、誠一つの心を持つて、この広い天地の間に活動なさい。きつと神様が幸を与へて下さいます。この地の上の形ある宝は、亡ぶる宝であります。水に流れ火に焼かれ、虫に蝕はれ、錆朽ちる、果敢ない宝である。それよりも人間は、永遠無窮に朽ちず、壊れず、焼けず、亡びぬ誠といふ一つの宝を神の御国に積む事を努めねばなりませぬ』 と諄々として五大教の教理を説き勧めたるに、一同は呼吸を凝らして、熱心に宣伝使の教示を聞き入りぬ。この時またもや、声張り揚げて、 北光天使『この世を創造りし神直日御魂も広き大直日 ただ何事も人は皆直日に見直せ聞直せ 身の過は宣り直せ』 と謡ひつつ、此方に向つて進み来る宣伝使ありけり。 (大正一一・一・二二旧大正一〇・一二・二五藤原勇造録)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 48 鈿女命 第四八章鈿女命〔二九八〕 一旦逃げ散つたる群集は、再び十字街頭に潮のごとく集まつて来た。さうして互ひに争論をはじめ、つひには撲り合ひ、組打の修羅場となつた。敵味方の区別なく、手当り放題に、打つ、蹴る、撲る、たちまち阿鼻叫喚地獄の巷と化し去りにける。 例の仁王は依然として、十字街頭に硬くなり佇立しをる。 一方元照別の従者は、声をかぎりに制止した。されど争闘はますます激しくなりぬ。 このとき女の宣伝使は、群集の中に蓑笠を脱ぎ捨て、花顔柳腰あたりに眼を欹てながら、悠々として長袖を振り、みづから謡ひつつ舞ひはじめける。 『羅馬の都の十字街押し寄せきたる人の浪 心も暗く身も暗き常夜の暗のウラル彦 ウラルの姫の曲事に相交こりて村肝の 心も曇る元暗の別らぬ命の誕生日 飲めよ騒げの宣伝歌一寸先は真の暗 暗の夜には鬼が出る鬼より恐い仁王さま 十字街頭に待ち受けて元暗別の素首を 抜くか抜かぬかそりや知らぬ知らぬが仏の市人は 元暗別に欺されて眉毛を読まれて尻ぬかれ 尻の締りはこの通り渋紙さまが現はれて 渋い顔して拳骨を固めて御座る恐ろしさ 殿さま恐いと強飯をこはごは炊いて泣面で おん目出目出たい御目出たい目玉の出るよな苦面して 血を吐く思ひの時鳥ホツと一息する間もあらず 現はれ出たる荒男その振り上げた拳骨に 荒肝とられてあら恐い荒肝とられてあら恐い 恐い恐いと言ひながら何が恐いか知つてるか 何程威勢が強くとも心の暗い元暗別の 醜の霊や仁王さまそれより恐いは踵の皮 まだまだ恐いものがある天地を造り日月を 造つて此世を守られる神の律法は厳しいぞ 律法を破れば其日から根底の国へと落されて 焦熱地獄や水地獄地獄の釜の焦おこし それも知らずに今の奴盲目ばかりが寄り合うて 飲めよ騒げと何のざま一寸先は火の車 廻る因果の報いにて羅馬の都は眼の当り 焼けて亡びて真の暗栄華の後には月が出る 月は月ぢやが息尽きぢやきよろつきまごつき嘘つきの 嘘で固めた羅馬城天津神より賜ひたる 元の心を研き上げ元照別の神司となり 三五教の神の法耳を浚へて聴くがよい お前の耳は木耳か海月の如く漂うた この人浪を何うするぞ浪打ち噪ぐ胸の中 さぞや無念であろ程に慢心するにも程がある 羅馬の都を輿に乗り吾物顔に練り歩く 貴様は脚はどうしたか虎狼や豺の 様な心で世の中が治まる道理は荒浪の 浪に漂ふ民草をどうして救ふ元暗の 別の判らぬ盲目神か弱き女人の吾なれど 天津御空の雲別けて降り来れる出雲姫 出雲の烏が啼くやうにうかうか聞くなよ聾神 盲目聾の世の中はなにほど立派な神言も どれほど尊い神さまの声も聞けよまい御姿も 見えはしまいが神様に貰うた身魂を光らして 元照別の天使となり昔の心に立復り 撞の御柱大御神天の御柱大御神 国の御柱大神の御前に詫びよ伏し拝め 元は尊き大神の分けの御魂と生れたる 元照別にはあらざるか甲斐ない浮世に永らへて 吾物顔に世の中を振れ舞ふお方の気が知れぬ ヤツトコドツコイ、ドツコイシヨヨイトサー、ヨイトサ ヨイヨイヨイのヨイトサツサ』 と節面白く、手つき怪しく踊り狂うた。 木綿の洗濯物に固糊を付けた様に、街頭に鯱張つて居た岩彦も、大の男も、この歌にとろかされて、何時のまにか菎蒻のやうに、ぐにやぐにやになつて了つて居た。 広道別天使は女宣伝使にむかひ、 『貴方は噂に聞く、出雲姫におはせしか。存ぜぬこととて、無礼の段御許しくだされませ』 と慇懃に挨拶した。 出雲姫は丁寧に挨拶を返す折しも、礼服を着用したる四五の役人らしき者、前に現はれ丁寧に辞儀をしながら、 役人『私は羅馬の城に仕へまつる端下役であります。今城主の命令により参りました。どうかこの駕籠に乗つて羅馬城へ御出張を願ひたい』 と頼み入つた。 元照別天使の輿は何故か、後へ一目散に引返して了つた。 この群集の中から現はれ、十字街頭に拳を固め、口を開いたなり強直してゐた大の男は、いよいよ改心して宣伝使となり、天の岩戸の前において手力男命と相並び、岩戸を開いた岩戸別神の前身である。 手力男神の又の名を、豊岩窓神といひ、岩戸別神の又の名を、櫛岩窓神と云ふのである。さうして今現はれた出雲姫は、岩戸の前に俳優をなし、神々の顎を解いた滑稽洒落の天宇受売命の前身である。 (大正一一・一・二四旧大正一〇・一二・二七井上留五郎録)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 50 大戸惑 第五〇章大戸惑〔三〇〇〕 宣伝使の一行は役人の案内につれ、悠々として奥殿に導かれた。元照別は愴惶として出迎へ、畳に頭を擦りつけながら、 『曇り果てたる汚らはしい身魂の、吾々の願ひをよくも聞き届け下さいました。サアサアこれへ』 と自ら先に立つて見晴しのよい高楼に導きけり。宣伝使は二人の大男を伴ひ高楼に登りて見れば、山野河海の珍肴美酒は所狭きまでに並べられありき。而して元照別は二人の宣伝使を正座に導き、 『清き御教示は後刻ゆるゆる拝聴仕ります。まづ御食事を取らせられよ』 と誠実面に現はれて着坐を勧める。広道別天使は、 『然らば御免』 と設けの席につき、二人の大男も末座に着席したり。出雲姫はなまなまに設けの席につき、 『コレハコレハ、元照別殿、随分贅沢な御馳走でござる。妾は世界の青人草の憂瀬に沈み、木葉を喰ひ木の根を嘗めて、わづかにその日の生活を続けてゐる悲惨の状態を目撃いたして居りますれば、妾は斯くの如き珍味を長の年月見たこともありませぬ。大宜津姫神の世とは申しながら、実に呆れ果てた次第であります。しかし折角の思召なれば喜ンで頂戴いたします。かくのごとき御馳走は、吾々の口には勿体なくて頂くことが出来ませぬから、鳥獣にも魚にも分配をいたします』 といふより早く、高楼より眼下の深堀に向つて、自分に与へられたる膳部一切を、バラバラと投げ込んで了つた。元照別は顔赧らめ、物をも言はず、差俯き涙をホロホロと流すのみ。広道別天使はこの珍味を食ひもならず、又もや、吾も衆生に分配せむといひながら、眼下の堀を目がけて惜気もなく投げ捨てて、元照別にむかひ、 『かかる珍味を吾々が頂くよりも、一切の衆生に分配いたした方が、何ほど心地がよいか分りませぬ。甘い、美味い、味ないは、喉三寸通る間のこと、幸今日は貴下の御誕生日と承る。一国一城の城主の御身分として、一切の衆生に恩恵を施したまふは、民に主たるものの勤めらるべき大切なる御所行と察し参らす。吾々もお芽出度く、衆生も貴下の誕生を喜び祝する事でありませう』 と言ひ終つて元の座に復した。岩彦や熊彦はこの珍味を前に据ゑられて、喰ふには喰はれず、負けぬ気を出して自分も眼下の堀を目がけて投げ捨てむかと、とつ、おいつ思案はしたが、どうしても喉がゴロゴロ言ふて仕方がない、そこで岩彦は一同に向ひ、 『私も一切の衆生になりかはり、有難く頂戴いたします』 といふより早く、大口を開いて食ひ始めた。熊彦も、 『拙者も、ちよぼちよぼ』 と言ひながら、沢山の飲食をケロリと平げてしまつた。出雲姫は立つて歌を歌ひ、誕生を祝するためと舞ひ始めたり。 『世は常闇となり果てて御空をかける磐船や 天の鳥船舞ひ狂ひ月日は空に照妙の 美々しき衣に身を纏ひ山野海河隈もなく 漁り散らしてうましもの横山のごとく掻き集め 驕も深き大宜津の姫の命の世となりて 手繰になります金山の彦の命や金山の 姫の命の現はれて世人害なふ剣太刀 大砲小銃や簇まで造り足らはし遠近に 鎬を削る浅ましさ怪しき教はびこりて 世人の心迷はせつ元照別の司まで 大戸惑子の神となりこの世はますます曇り行く 曇る浮世を照らさむと雲路を出でて出雲姫 ここに現はれ神の道広く伝ふる広道別の 貴の命と諸共に縦と横との十字街 現はれ来る時もあれ群がりおこる叫び声 耳を澄して聞きをればウローウローの声ならで ほろふほろふと聞えけり滅びゆく世を悲しみて 九山八海の山に現れませる天の御柱大神は 世を平けく安らけく治めまさむと埴安彦の 貴の命や埴安姫の貴の命に事依さし 三五教を開かせて神の教の宣伝使を 四方の国々間配りつ大御心を痛めます 神の御恵み白雲の外に見做して大宜津姫の 神の捕虜となりおほせ下民草の苦しみも 知らぬが仏か鬼か蛇かあゝ元照別の城主どの あゝ元照姫のおかみさま今日の生日の足日より 身魂を立替へ立直し神を敬ひ民草を 妻子のごとく慈しみ天と地との大恩を 悟りて道を守れかし人を審判くは人の身の なすべき業に非ざらめ下を審判くな慈しめ 下がありての上もあり上がありての下もある 上と下とは打ち揃ひ力を合せ村肝の 心を一つに固めつつ世の曲事は宣直し 直日の御霊に省みて神の心に叶へかし 清き心を望の夜の月に誓ひていと円く 治めて茲にミロクの世神伊弉諾の大神の 御楯となりて真心を尽せよ尽せ二柱 尽せよ尽せ二柱』 と厳粛に荘重に謡つて舞ひ納め座につきぬ。 ここに元照別夫婦は、今までウラル彦の圧迫によりて、心ならずも体主霊従の行動を続けつつありしが、今この二柱の宣伝使の実地的訓戒によつて、自分の薄志弱行を恥ぢ、一大勇猛心を振興して神政を根本的に改革し、大御神の神示を遵奉し、伊弉諾の大神の神政に奉仕する事となりぬ。この二神の名は遠近誰いふとなく、大戸惑子神、大戸惑女神と称へられゐたりける。 広道別は出雲姫の涼しき声とその優美な舞曲に心を奪はれ、知らず識らず吾席を立ちて高楼の欄干に手をかけ見惚れゐたり。たちまち欄干はメキメキと音するよと見る間に、広道別天使の身体は眼下の深き堀の中にザンブと陥ち込みた。その寒さに震うて気がつけば、豈図らむや、王仁の身は高熊山の方形の岩の上に寒風に曝されゐたりけり。 (大正一一・一・二四旧大正一〇・一二・二七加藤明子録) (第四〇章~第五〇章昭和一〇・二・一七於奈良菊水旅館王仁校正) 道の栞 天帝は瑞の霊に限り無き直霊魂を賚ひて、暗き世を照らし、垢を去り、泥を清め、鬼を亡ぼさしめむ為に、深き御心ありて降し玉へり。天国に救はれむと欲する者は救はれ、瑞霊に叛く者は自ら亡びを招くべし。
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 余白歌 余白歌 八の鳥 こひは誰かをしへつるかもかりそめにほのみしかけの身にしみてうき〈序歌〉 岐美ケ代の千代の礎固めむと石の宮居を月の花明山〈松葉の塵〉 久方の天津御国の荘厳を地上にうつす綾の鶴山〈松葉の塵〉 流水の如くに清く美しき神の教の湧ける玉の井〈松葉の塵〉 隠身而形も見えず声もなきまことの神は御中主なり〈第1章〉 今までは世人の為に延したれど見赦しならぬ時とは成りぬ〈第5章〉 地は震ひ雷猛り火の雨のふる事記を能くも調べよ〈第5章〉 村肝の心を千々に砕くかな世を生かさむと思ふばかりに〈第6章〉 天地の神の気吹に退らはれて高嶺の雲は四方に散り行く〈第7章〉 神ごごろつくしのはても東路も西洋までも拡めゆくなり〈第9章〉 千早振神代の手振りまつぶさに説き明かしたる生ける書かも〈第14章〉 和妙の綾の高天に現はれて瑞霊昔の状を説くなり〈第14章〉 いつまでも筆と口とで知らせども人は残らず盲目聾者〈第14章〉 まのあたり世の立直しするまでにかへておきたし人の心を〈第14章〉 今までは人の心のままにせしをこの世の事は神のままなり〈第14章〉 高山の尾根に黒雲立ちこめて御空の月の影を包めり〈第15章〉 あし引の山も野末もよみがへり弥勒の御代を寿ぎ奉らむ〈第15章〉 立替の神が表へ出るなれば高嶺の雲は四方に散るらむ〈第16章〉 時は今科戸の風の渓間より吹き上げ吹き荒れ吹き捲くるなり〈第16章〉 天地の神の怒の強くしてたやすく解けぬ時となりぬる〈第16章〉 独神成而隠身居たる月日神は国常立と豊雲野の神〈第18章〉 許々多久の罪も穢も引受けて世人を救ふ二柱神〈第18章〉 この怒りとく神々は世の中にただ二柱坐すばかりなり〈第18章〉 神代より深き因縁のある土地に世の立替の経綸せし真神〈第21章〉 国魂の神を調査国々の身魂の審判始め給へり〈第21章〉 闇の世に月日を慕ふ人心早く日の出をまつばかりなり〈第22章〉 高山に月は隠れて渓底は黒白も分かぬ闇となりぬる〈第29章〉 人草の腸の底まで洗ひきる瑞の御魂の教はかむわざ〈第29章〉 九重の古き都に一枝の神の経綸の梅開くなり〈第30章〉 立替の天の御柱たてよこの月日は朝夕心砕きつ〈第30章〉 待ちかねて此の世へいづの大神は瑞の御魂ぞ力なりけり〈第30章〉 かかる神世を待兼山のほととぎす姿かくして啼き暮しつつ〈第30章〉 東の御空に狂ふ鳥船の行末は弥勒の海を越えたり〈第33章〉 本宮の神の経綸を助けむと生れ出にけり宮垣内より〈第34章〉 久方の天の目一箇神出でて曇りたる世の光とならせり〈第35章〉 澄切りし人の身魂に天地の誠の日月は宿を借るなり〈第38章〉 天地の神に代りて世を開く人は真の神にぞありける〈第38章〉 天津御祖神の御言をかしこみて下津岩根に道を開きし〈第41章〉 中空の曇りも深き今の世は下津岩根の神も解らず〈第41章〉 渓間より真の光現はれて雲井の空を照らし返さむ〈第42章〉 高光る神のみいづを白雲のよその教になびくしこ草〈第46章〉 葦原の中津御国はさやぎ居り救はせ給へ伊都能売の神〈第46章〉 村肝の心の塵を払はむと神の気吹きの現はれにける〈第47章〉 黒雲の天地を包む世の中を照らして守る三五の月〈第48章〉 月の精地上に下りうば玉の人の心を照らし給へり〈第48章〉[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました]
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 凡例 凡例 一、本巻は岩井温泉より帰綾後、節分祭までの四日間に完成し、その内容は、伊弉諾の大神の御子日の出神が、大台ケ原より濠洲すなはち竜宮島を経て、亜弗利加大陸すなはち筑紫の島へ渡り、神の道を宣伝し、世人を救済するとともに各国魂の守護職を任命さるる物語であります。 一、要するに本巻の総説にもあります通り、この霊界物語は人智を以て解説することは到底出来ませぬから、すべて文字の儘を拝読し、身魂相応に解釈すれば結構だと思ひます。 大正十一年瑞月祥日 王仁識
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 07 山火事 第七章山火事〔三〇七〕 このとき暗中に声あり、 『神が表に現はれて善と悪とを立別る 身魂を磨けよ立替へよ身の行状を立直せ この世を造りし神直日心も広き大直日 ただ何事も人の世は直日に見直せ聞直せ 身の過は宣り直せ』 と歌ひながら豆寅に構はず、ドシドシ進み行く。豆寅は、 『モシモシ日の出神様、大戸日別様、天吹男様、しばらく待つて下さいナ。腰が抜けました、頭を割られました。助けて助けて』 と呶鳴りゐる。 宣伝使の声はだんだん遠くなり行くのみなりき。 『豆寅奴が家を出て草香の姫は喜ンで 嬶が表に現はれて御膳を据ゑて玉彦に 目玉を剥いて立替へよ身の行ひはさつぱりと 善から悪に立替へたこの世を造つた肝心の 目玉も光る鬼神は夜でも光る豆寅の 頭をぴつしやりと打叩き日の出神はさつさつと 跡白浪と走り行くなにほど頭は光つても 心は暗の豆狸狐狸に魅まれて 巌窟の内へと引込まれ目から火の出神が出て 暗に倒れた腰抜けよ』 と歌ひ出したる者あり。豆寅はその声に何処ともなく聞き覚えがあるので、 『やい、暗がりに俺の頭をしばきよつて、目から火を出させよつて、びつくりさして腰を抜かさした奴は誰だい』 と呼べば、暗から、 『腰を抜かしたのは、豆寅ぢやないか』 と叫ぶ者あり。豆寅は大地にへたばりながら、 『何だか聞き覚えのある声の様だが、俺の嬶が、玉彦の奴に御膳を据ゑたとか云うたなあ』 『善は急げぢや、善因善果、悪が変じて善となり善が変じて悪となる。どちらも玉の磨き合ひの玉彦さまだぞ』 時彦『馬鹿ツ』 玉彦『馬鹿つて何ンだ。玉奪られ奴が』 時彦『玉取られとは貴様のことぢや、嬶取り奴が。貴様の嬶に密告しようか』 玉彦『まあ待て、同じ穴の狐、貴様も密告するぞ』 田依彦は火打袋より火打石火口を取出し、かちかちと打はじめ傍の木の葉枯枝を暗がりに掻き集めながら火を点けたれば、火は炎々として燃え上り一同の顔は始めて明るくなりし。折からの烈風に煽られて、見る見る火は四方に燃えひろがり、轟々と音を立てて忽ち四辺は昼のごとく明くなりぬ。火は次第に燃え拡がり、全山を殆ど焼き尽さむ勢となり来たりたれば、日の出神一行はにはかに四辺の明くなりしに驚き、後振返り見れば、全山ほとんど火の山と化しゐる。三柱は石土毘古、石巣比売の消息を気遣ひ、一目散に後に引返し、急いで山を登り来たりぬ。 このとき山上目がけて登りくる宣伝使ありき。此は黄金山の三五教を天下に宣伝する、国彦の三男梅ケ香彦なりき。全山ほとんど焼きつくして已に立岩の麓に燃え移らむとする時しも、梅ケ香彦は満身の力を籠め、伊吹戸主神に祈願を凝らし、燃え拡がる焔に向つて息吹かけたるに、風はたちまち方向を変じ、山上より暴風吹き来りて、瞬く間にぴつたりと消えうせにけり。 時しも夜は漸く明け放れ、山の八合目以下は全部灰の山と変りぬ。山麓にある神人の住家は全部焼け落ちければ、山麓の住民は何人の所為ぞと四方八方に手配りをなし、山の谷々を隈なく尋ね廻りゐたりける。豆寅、田依彦、時彦、芳彦、玉彦は余りの大火に胆を潰し腰を抜かし、一と所に首を鳩めて慄ひ戦きゐたり。住家を失ひし数多の人々はこの場に現はれ来り、口々に、 『この山を焼きよつたのは大方貴様らならむ。元の通りに建てて返さばよし、さなくば汝等を縛つて帰り、酋長の前にて火炙りの刑に処せむ』 と怒りの顔色物凄く呶鳴り立てたるに、豆寅は周章てて、 『わゝゝゝ、わしは、ちゝゝゝとゝゝゝしゝゝゝ』 大勢の中よりは、 『この瓢箪』 と云ひながら携へ持てる棒千切をもつてポンと叩けば、豆寅は声を揚げて泣き出し、右手の二の腕にて両眼を擦り乍ら、 『今日は如何なる悪日ぞ、折角日の出神に助けられ、早く帰つて恋しき妻の草香姫に取付き、互に抱いて泣かむものと思ふ間もなく、今此処で泣いて死ぬとは情ない。日の出神に助けられ、今度は火の出に殺されるか。草香姫いまはの際に唯一目、やさしい顔を見せて呉れ。死ぬるこの身は厭はぬが、後に残りし草香姫、これを聞いたら泣くであらう。思へば悲しい憐らしい』 群衆の中より、 『エイ、めそめそと吼面かわきよつて、そンな事は聞き度は無い。誰が火を出したのか、確かり返答せ』 四人は黙然として俯向き居るのみ。豆寅は、 『たゝゝゝ確かに田依彦が致しました』 と云はむとするや、田依彦は、 『こら馬鹿ツ』 と云ひながら、またもや豆寅の頭を棒千切を以てがんと叩く。このとき日の出神は山上より降り来りこの態を見て、 『やあ豆寅か、頭は如何した。何を泣いて居る』 豆寅は地獄で仏に逢うたる心地して、 『まあまあ、よう来て下さいました』 と立上り、 『やいこら田依彦、時彦、芳彦、玉彦、その外みなの奴らよつく聞け。この方は勿体なくも日の出神の一の御家来、そのまた家来のその家来、もうちつと下のその家来、豆寅彦さまだぞ、無礼をひろいだその罪容赦はならぬ』 と章魚の跳る様な姿になつて肩肱怒らしにはかに元気づく。衆人はこの見幕に或は恐れ或は噴き出し、無言のまま言ひ合した様に大地に平伏したり。これは日の出神をはじめ梅ケ香彦、大戸日別、天吹男の威厳に何ンとなく打たれたる故なりき。豆寅は自分に降伏したものと思ひ、ますます鼻息荒く、 『やい田依彦、貴様は最前何と云うた。玉彦が俺の留守中に、俺の嬶をちよろまかしたと吐かしただらう、本当か白状いたせ。貴様は嬶の兄弟ぢやと思うて、許してやりたいは山々なれど、神の道には親子兄弟他人の区別はない。やい玉彦返答はどうだ』 と威張りだす。日の出神は又もや宣伝歌を歌ひながらこの場を見捨てて行かむとす。豆寅は、 『もしもし家来を捨てて何処に御越し遊ばす。夫れはあんまり胴欲ぢや』 と袖に縋つて泣き付く。 日の出神は梅ケ香彦に、風木津別之忍男と名を与へてその功労を賞し、豆寅以下の四人を山麓の酋長なる大屋毘古の身許に預けて、焼け失せたる人々の住家を新に造らしめたり。豆寅はここに久々能智といふ名を与へられける。日の出神は山を下り海を渡り四柱ここに袖を分ちて、東西南北に何処ともなく、宣伝使として進み行きける。 (大正一一・一・三〇旧一・三高木鉄男録) (序~第七章昭和一〇・二・二一於島根県地恩郷王仁校正)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 22 竜宮の宝 第二二章竜宮の宝〔三二二〕 日の出神は飯依彦をして、竜宮島[※御校正本・愛世版では「竜宮城」だが、校定版・八幡版では「竜宮島」に直している。ストーリー上は「竜宮島」の方が適正なので、霊界物語ネットでも「竜宮島」に直した。]の国魂、真澄姫の御魂を宮柱太敷立て、鎮め祭らしめ、ここに祝姫、面那芸、天久比奢母智、国久比奢母智を伴ひ、順風に帆を揚げ西南を指して進み行く勇ましさ。飯依彦を始め久久司、久木司は埠頭に立つて、この船を名残惜し気に見送つた。飯依彦は白扇をひらいて歌ひながら此の一行を見送りぬ。 飯依彦『高天原に宮柱千木高知りて永久に 鎮まり居ます伊弉諾の神の命や木花姫の 貴の命の御教を造り固めて黄金の 山の麓に現れませる三五教の大神の 教を四方に敷島の心も清き宣伝使 世は常暗となるとても御稜威輝く大空の 日の出神や祝姫外三柱の神人が 常世の国へ鹿島立見送りまつる我心 風も凪げ凪げまた雨も降らずに波も平けく いと安らけく出でませよ神徳の波に照らされて 心の暗も晴れ渡り名さへ目出度き飯依彦の 命と貴き名を負ひて依さし玉ひし竜宮の 常磐堅磐の島守は心も真澄の姫神の 宮に仕へて三五の清き教を遠近に 心を尽し身を尽し仕へまつらせ日の出神 名残は尽きぬ波の上いと安らけく出でませよ うら安らけく渡りませ』 と挨拶にかへて歌ふ。今まで田依彦と云はれし時にはその身魂も下劣にして、一つの歌を歌ふにも野趣を帯び居たるが、ここに飯依彦と云ふ神名をたまひ、この島の守神たる御魂の真澄姫神の神徳に感じて、かくも優長なる歌を歌ふことを得たるは身魂の向上したる証拠なるべし。 久久司は又もや歌を歌ふ。 久久司『時は待たねばならぬもの時が来た来た時彦の 好な酒まで止める時時のお蔭で時彦も 天から下つた生神のお目に留まつて久久司 飯依彦に従うて真澄の姫によく仕へ きつとこの島守ります後に心は沖の船 馳せ行く帆柱打ち眺め隠るるまでも拝みます どうぞ御無事でお達者でこの海御渡り遊ばせよ また逢ふ時もありませう逢うたその時や百年目 二人の仲は芳彦の離れぬ私は釘鎹 必ず案じて下さるな尊き日の出神様よ その他の尊い宣伝使これでお別れ致します』 と扇をひらいて歌ひ、舞ひ、この船を見送りぬ。久木司は、 久木司『私は歌は出来ませぬ、踊つてお別れいたします』 と口の奥にて何か小声に囁きながら、大地を踏み轟かせ、汗をしぼつて手振足振面白く踊り狂ひぬ。船中の人々も見送る数多の神人も一度にどつと哄笑したり。船は容赦なく纜を解いて櫓の音ぎいぎいと響かせながら、追々岸を遠ざかり行く。船頭は舳に立ちて唄ふ。 船頭『ここは竜宮の大海原よ、可惜宝は海の底』 と海上の風に慣れたる声を張り上げて繰り返し繰り返し唄ふ。日の出神は、 日の出神『オイ船頭、今お前の唄つた歌は、あたら宝は海の底といつたなあ、それや又どういふ訳か聞かして呉れないか』 船頭『ハイ左様でございます。この頃のやうな春の海では判りませぬが、やがて秋が来ると海の底がハツキリと見えます。それはそれは綺麗な金や銀が海の底一面に山のやうになつて居ます。恰度この下辺りは最も多い処です』 日の出神『お前たちはその綺麗な宝をどうして採らぬのか』 船頭『エイ滅相もない。この海の底には結構な宝も沢山ありますが、恐いものも沢山ゐます。太い太い竜神さまが、金や銀の鱗をぴかぴかさして誰れも採らないやうに守つてゐらつしやる。この海の底に居るものは、鯛でも、蝦でも、蛸でも皆金や銀の色をしてゐます。蝦一匹でも釣つたが最後、竜宮様が怒つてそれはそれは豪いこと海が荒れます。それで誰も雑魚一匹この辺では捕りませぬ。大きな声で物いつても此処では竜宮様に怒られます。竜宮さまの好きなのは只歌ばかりです。歌ならどんな大きな声で唄つても構やせぬが、妙な話をしたり、欲な話でもしやうものなら、それはそれは恐ろしい目に遭はされます』 日の出神『さうかい。竜神といふ奴よほど歌の好な奴と見えるな』 船頭『もしもしそンな失礼な事をおつしやつたら竜神さまに怒られますよ。竜神様はよほど暢気な御神ぢやと云ひ直して下さいませ』 と云ひながら顔の色を変へて、ぶるぶる慄ひゐる。 日の出神『何心配するにや及ばぬ。俺がこれから竜神に一つ談判して、その宝を見せて貰はう。モシ竜神殿、乙姫の眷属殿、我は日の出神ぢや、宝を一遍見せて呉れよ』 と云ひも終らず、たちまち海面は四方八方にまン円き渦を巻ききたりぬ。船頭は驚いてますます慄ひ上りゐる。ブクツと音がすると共に大きな金塊が波の上に浮き出て、次で右にも左にも、前にも後にも数限りのなき金銀、真珠、瑪瑙、瑠璃、硨磲などの立派な宝玉は、水面に浮き上り、実に何とも知れぬ美観なりける。日の出神は、 日の出神『もうよろしい、乙姫殿に宜敷云うて下さい』 と言葉終ると共に浮き出たる諸々の宝は又もやぶくぶくと音をさせて海底に残らず潜みける。船客一同は手を拍つてその美観を褒めたり。船は悠々として西南に向つて進み行く。 (大正一一・一・三一旧一・四加藤明子録)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 26 アオウエイ 第二六章アオウエイ〔三二六〕 小島別は尚も進むで宣伝歌を歌ふ。数多の人々は息を凝し一言一句その歌に胸を刺さるる如く、苦しみ呻き冷汗淋漓として雨の如く、滝の如くに流し、焦暑さと宣伝歌に責められて、頭はますますガンガンと痛み出したり。小島別は大喝一声、 小島別『赦す』 と声をかくれば、諸人はその声を聞くと共に頭痛はぴたりと止まり、忽ち各自は大地に両手を突き、犬突這となりて謝罪の意を表したりける。 小島別は眼を擦りながら、諄々として三五教の教理を説きければ、いづれの人々も感に打たれて恐れ入り、宣伝使の顔を穴のあくほど眺め入りぬ。このとき巌窟の奥より何とも云へぬ呻き声聞こえきたる。人々は耳を聳立て眼を見張り、期せずして巌窟の方に向き直れば、奥深き暗き巌窟の中より茫然として白き怪しき影が、蚊帳を透して見るが如くぼんやりと現はれ、不思議な声にて、 声『アハヽヽハー。オホヽヽホー。ウフヽヽフー。エヘヽヽヘー。イヒヽヽヒー。腰ぬけ野郎、屁古垂野郎、ばばたれ野郎、ひよつとこ野郎、弱虫、糞虫、雪隠虫、吃驚虫ども、とつくりと聞け。ここは何と心得てゐるか。勿体なくも常世国に現はれ玉へる、国の御柱大御神伊弉冊命のその家来、常世神王の隠れ場所と造られし、一大秘密の天仙郷、この八つの巌窟は、八頭八尾の大蛇の隠れ場所ぞ。その眷属の貴様たちは、たつた一人の宣伝使小島別の盲どもの舌の先にちよろまかされ、木の葉に風の当りしごとく、びりびり致す腰抜け野郎、馬鹿ツ、馬鹿々々々々ツ』 と呶鳴り立てたれば、数多の黒坊はこの声に二度吃驚、 一同『ヒヤツ!こいつは耐らぬ』 と亦もや大地にべたりと倒れる。小島別は巌窟に向ひ両手を組み「惟神霊幸倍坐世」と唱へながら、 小島別『我々は、畏れ多くも天教山に現はれ給へる撞御柱大御神、天御柱大御神、木花姫の神教を開かせたまふ黄金山下の三五教の守神、埴安彦神の宣伝使小島別なるぞ。何者ならば断りもなく筑紫の島に打ち渡り、この巌窟に巣を構へ、悪逆無道の限りを尽し、天命つひに免れ難く、この巌窟に忍び入るこそ汝悪神の運の尽き。早く汝が素性を名乗り、悪を悔ひ善に立ちかへり、撞御柱大神に心の底より謝罪せよ。否むに於ては我に天授の宝剣あり。サア如何ぢや。抜いて見せうか抜かずに置かうか。醜の曲津見返答致せ』 巌窟の中より亦もや、 声『アハヽヽハー阿呆につける薬はないワイ、オホヽヽホー臆病者の空威張り奴、ウフヽヽフー迂濶者の世迷ひ言、エヘヽヽヘー得体の知れぬ宣伝使、イヒヽヽヒー行きつきばつたりの流浪人、吾は熊襲の大曲津神、曲つた事は大の好物、汝が頭のど天辺から塩でもつけて噛ぶつて喰はうか、股から引き裂いて炙つて喰はうか、八岐の大蛇の大棟梁、蛇々雲彦とは吾事なるぞ。返答聴かう、小島別の宣伝使』 と四辺に響く大音声に呶鳴りつけたれども、小島別は莞爾として、 小島別『アハヽヽアー熊襲の国の枉津神、味をやり居るワイ。正義に刃向ふ刃は無いぞ。善と悪とを立別る神の使の宣伝使だ。真澄の鏡に照されて、赤耻掻き頭を掻いて吠面かわくな。かく申す某は、天教山に名も高き神伊弉諾大神の遣はせ玉へる、心も膽も天下無雙の太柱、太い奴とは俺の事、喰ふなら見事喰つて見よ。古手な事をして泡を喰ふな』 巌窟の中より、 声『アハヽハー仇阿呆らしいワイ。オホヽホー脅喝文句のお目出度さ。ウフヽフー迂濶者の迂濶事、熱に浮かされてうさ事を吐くな。エヘヽヘー豪い元気だのう、閻魔も裸足で逃げやうかい。イヒヽヒー勢ばかり強うても心の弱味は見え透いた。イヒヽー憐愍いものだ。いま俺の手にかかつて寂滅為楽頓生菩提、一寸先の見えぬ盲ども、これを思へば憐愍うて涙が溢れる。アハヽハー悪の身魂の年の明きとは貴様の事、悪の栄える例はないぞ。イヒヽヒーいつまで身魂が磨けぬか。オホヽホー己の事は棚に上げ、人を悪い悪いと慢心いたして其権幕は何の事だい。ウフヽフー動きの取れぬ今日の首尾、迂濶出て来た偽宣伝使。エヘヽヘー枝の、末の、貧乏神、腰抜け野郎の分際で、常世の国に使ひして、言霊別に騙されて、竜宮城に帰つて何の態。イヒヽヒー何時まで経ても改心せぬか、心の岩戸は何時開く、一度に開く梅の花、善に見えても悪がある。悪に見えても善がある。善と慈悲との仮面を被り、吾物顔に天下を横行濶歩する小島別の偽宣伝使。この世の中の穀潰し、生て益なき娑婆塞ぎ、地獄の釜のどン底に落してやらうか小島別、常世姫に玉抜かれ、言霊別に力の限り根限り、邪魔をひろいだ盲者の張本、何の面提げて臆面もなく三五教の宣伝使。アハヽハー、ほンに世界は広いものだなあ、オホヽホー、ウフヽフー、エヘヽヘー、イヒヽヒー、』 と又も笑ひ出したり。 小島別は胸に鎹打たるる心地、ハツと胸を衝いて思案に暮れゐたりける。 (大正一一・二・一旧一・五加藤明子録) (第一九章~第二六章昭和一〇・二・二三於徳山市松政旅館王仁校正)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 28 不思議の窟 第二八章不思議の窟〔三二八〕 巌窟内の唸り声は刻々強烈となり、百千万の虎狼の一時に吼え猛るが如く、四辺の山々も木草も凡て一切のものを戦慄せしめたり。小島別は殆ど失神の状態にて、大地に仰向けに倒れたるまま、手足をビクビク慄はせ居たりける。日の出神は、 日の出神『オーイ、オーイ』 と合図をすれば、この声に応じて何処よりともなく祝姫の宣使と面那芸の宣使は現はれきたり、ここに三柱は小島別の倒れたる巌窟の前に立ち現はれ、日の出神は歌を歌ひ、面那芸の宣使は石と石とを両手に持ち拍子を取り、祝姫は日蔭葛を襷に掛け、常磐の松を左手に携へ右の手に白扇を広げ舞ひ始めたり。 祝姫の歌、 祝姫『天と地との火と水の呼吸を合せて国治立の 神の命の造らしし心筑紫の神の島 大海原を取囲み浦安国は豊の国 熊襲の国は神の園常磐堅磐に築立てし 天の岩戸は是なるか国治立の大神は 心の汚き八十神の曲神の企みの舌の根に 懸らせ玉ひて天津神日の大神の戒めを 受けさせ玉ひて根の国に退はれませど皇神は 何も岩戸の奥深く隠れ玉ひて世を忍び 天地四方の神人の身魂を永遠に守ります その勲功は千代八千代常磐の巌の弥堅く 穿ちの巌の弥深く忍ばせ玉ふこれの巌 忍ばせ玉ふこれの巌岩戸を開く久方の 天津日の出の神言を堅磐常磐に宣る神は 日の出神と祝姫面那芸彦の三柱ぞ 浮船伏せて雄々しくも踏み轟かす巌の前 神の小島の宣伝使建日の別と現はれて 天の三柱大神の任のまにまに上り来る されど心は常暗の未だ晴れやらぬ胸の闇 心の岩戸は締め切りて開かむよしも無きふしに 恵も深き国治立の神の命の分け魂 建日の別の大神は天の岩戸を開かむと 導きたまふ親心神の心を不知火の 小島の別の宣伝使千々の神言蒙りて 心に懸る千万の雲霧払ひ晴れ渡る 御空に清く茜さす日の大神の御恵みに 常世の暗も晴れぬべし赦させ玉へ建日別 熊襲の国の守り神人の心も清々と 誠の道に服従ひて心安らけく純世姫の 神の命の御魂をばこれの巌窟に三柱 千木高知りて斎かひつ天津祝詞の太祝詞 宣るも尊き巌の前日の出神の言霊を 建日の別も諾なひて御心和め玉へかし』 と涼しき声を張上げ調子よく歌ひながら、汗を流し帰神して舞ひ狂ひける。面那芸神は石と石とを打ち合せて面白く拍子をとりしが、さしも猛烈なりし巌窟の大音響は夢のごとくに止まりにける。小島別はムツクと立上がり細き目を開きながら三柱の神を眺めて驚き、夢か現か幻か、合点の行かぬこの場の光景と、自ら頬を抓めり指を噛み、 小島別『アヽ矢張り夢では無かつたかナア』 日の出神は、 日の出神『オー貴下は小島別の宣伝使、最前よりの貴下の様子、如何にも怪しく何事ならむと、木蔭に佇み聞きをれば此巌窟の唸り声、如何なせしやその顛末を詳細に語られよ』 と尋ねられ、小島別は三柱の宣伝使に黙礼しながら、 小島別『イヤモウ、大変でしたよ。私は神界に仕へてより、何一つ功名もいたさず、智慧暗き身の悲しさ、大慈大悲の大神の御心を誤解し普く天下を宣伝して、やうやうこの亜弗利加の嶋に参りましたのは一月以前のことであります。国人の話に依れば、此処には立派な巌窟ありて、時々唸りを立てるといふ事。私も一つ修業の為と思ひ、嶮しき山坂を越へ谷を渡りて、漸くこの巌窟に辿り着きし間もなく、色々の国人がこれこの通り参拝いたして、頻りに何事か祈つてをる。耳を澄して聞けば、常世神王の教を奉ずる人間計り、これでは成らぬと背水の陣を張りて、命を的に三五教の宣伝歌を歌ひ始めました。数多の人々は私の宣伝歌を非常に嫌つて四方八方より迫害せむとする。なに、吾々は天地の教を説く神の使の宣伝使だ。たとへ火の中水の底も、潜りて助けるは吾々の天職と、有らゆる勇気を出して漸く彼らを改心させ、ホツト一息吐く間もなく此巌窟の奥の方より異様の姿朦朧と現はれ、「アハヽヽハー、オホヽヽホー」と嘲弄はれ、あらむかぎりの吾々の弱点を並べ立てられ、イヤハヤモウ埒もなくきつく油を搾られました。吾々は未だ身魂が磨けて居りませぬ。いよいよ一つ決心をして、今までの取違を改めねばなりませぬ』 と大略を物語りける。日の出神は厳然として宣るやう、 日の出神『ここは尊き神様の御隠家、建日別とは仮りの御神名、やがて御本名を名乗り玉ふ時も来たるべし。貴下は此処へ永らく鎮まりて、この巌窟の前に宮を建て、純世姫命の御魂を祭り、熊襲の国の人民を守つて下さい、吾々はこの山を越えて肥の国に行かねばなりませぬから』 これを聞くより小島別は、 小島別『如何なる神の御引合せか、思ひ掛なき尊き日の出神様に御目に掛り、こンな嬉しきことはありませぬ。仰せに従ひ大神様の岩戸の神の御名を戴き、これより建日別と改め永遠に守護をいたします。どうぞ御安心下さいませ』 と答へける。日の出神は満足の色を現はし、この場を後に三柱の宣伝使を伴ひ、又もや宣伝歌を歌ひながら、この谷間をドンドン登り行く。 (大正一一・二・一旧一・五高木鉄男録)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 余白歌 余白歌 かくり世のことを細かにしるしたる書は霊魂の力なりけり〈総説〉 この書をおとぎ話と笑ふ人は瑞の御魂の足もとみへずも〈総説〉 昼夜の別ちも知らず神代よりの更生の道に心砕きつ〈第1章〉 霊幸ふ神の守りの強ければ病まず死なずの身魂となるべし〈第1章〉 如何ならむ事に逢ふとも真心を国に尽せよ神にある身は〈第4章〉 海陸の別ちも知らに伝へ行く誠の教は世の光なり〈第5章(三版)〉 奴婆玉の闇の光とかがやける世に伊都能売の教の尊とさ〈第5章(三版)〉 霊主体従と体主霊従とを分けて人皆を神の教に改めて見む〈第6章〉 国所家々のみか人草の心の内も立替ゆるなり〈第6章〉 月の光昔も今も変らねど遙の高峰にかかる黒雲〈第7章〉 高山の嵐は如何に強くとも渓間の木草倒されもせず〈第7章〉 世を救ふ神は渓間に現はれて深き心の経綸を遂げつつ〈第7章〉 今までの智慧や学びを頼らずに神に眼ざめよ亡ぶことなし〈第11章〉 千早振る遠き神代の昔より世人の為にこころ配り給ふ〈第11章〉 世の人に普く好かれ世の人にまたそねまれむ神の宮居は〈第12章〉 海津見の深きに潜む曲神も浮びて神代を讃美なすらむ〈第14章(校正)〉 久方の天津空より鳴き渡る鳥の叫びに眼を覚ますべし〈第17章(校正)〉 世の元の神の心は急ぐらむ立替の日も迫り来れば〈第17章〉 神は世に出る道つけて出でませり誰も此の道安く歩めよ〈第17章〉 立替の経綸の奥は沢あれど人に言はれぬ事の多かり〈第17章〉 身も魂も月日の神の与へたる賜物なればおろそかにすな〈第19章(三版)〉 この度のふかきしぐみは惟神ただ一息も人ごころなし〈第20章〉 天の時今や到りて諸々の罪に満ちたるものは亡びむ〈第20章(校正)〉 久方の天の鳥船かずの限り舞ひつ狂ひつ神代は到らむ〈第21章(校正)〉 あら鷲は爪研ぎ澄まし葦原の国の御空に世を窺がへり〈第21章(校正)〉 常磐木の弥栄えゆく足御代を神の心は松ばかりなり〈第23章〉 神人の夢にも知らぬ立替は生ける昔の神の勲功〈第23章〉 この度の世の改めは万世にただ一度の経綸なりけり〈第23章〉 常暗の世を照らさむと東の空より落つる火弾のかずかず〈第23章(校正)〉 驚きて逃げ惑ひつつ諸人は神知らざりし愚をかこつらむ〈第23章(校正)〉 霊幸ふ神の心を高山の雲霧分けて照らせたきもの〈第25章〉 天地の御祖の神の生れますも国の祖国なればなりけり〈第27章〉 葦原の瑞穂の国は世界なり中津御国は日の本の国〈第28章〉 天地の神の稜威は現はれて上下睦ぶ神代となるらむ〈第28章〉 日の本の国に幸はふ言霊の稜威に亡ぶ百の曲神〈第31章〉 国魂の神よ出でませ日の本の国の安危は日に迫りたり〈第32章(校正)〉 日の光四方に輝く常磐木の松の神代は静かなりけり〈第34章〉 押並べて高き低きの隔てなく世人を救ふ三五の道〈第41章〉 久方の天津御空に照る月は人の住む世の鏡なりけり〈第41章(三版)〉 故郷は何処なるらむ月と日の常久にまします天津御国か〈第41章(三版)〉 日本魂曇り果てたる今の世に国魂生かすは三五の神〈第42章(三版)〉 百八十の国のことごと大本の誠の道に救はれて生く〈第44章(三版)〉 大本の教を嫌ひし世の人も一度は必ず合掌するなり〈第44章(三版)〉 五大洲遺る隅なく麻柱の真言宣り行く大本神教〈第47章(三版)〉 いすくはし吾が三五の大道を開くは御代を守る為なり〈第47章(三版)〉 常世行く闇を晴らして月と日のかがやき渡る御代ぞ待たるる〈第47章(三版)〉 霊幸ふ神の出口の道開く直霊の魂の光り渡るかな〈第48章〉 本宮の竜宮館に神集ひ三十一文字に教へをくなり〈第48章〉 八十の国皆大本を信ひて弥勒の神代を謳ふ日待たるる〈第49章(三版)〉 月読の神は地上に天降りまして闇の世人を照らし玉へり〈第50章(三版)〉 国々の清き御魂の集まりて御国を開く大本の教〈巻末(三版)〉 素盞烏の神の守らす海原の国を助くる三五の道〈巻末(三版)〉 昔より神の大道はありながら真理を伝へし教祖なかりき〈巻末(三版)〉 昔より世に隠れたる真言を具さに覚す三五の美智〈巻末(三版)〉 (「校正」は昭和十年二月、王仁三郎が校正した時に挿入したもの。)[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました]
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霊界物語 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 03 身魂相応 第三章身魂相応〔三五三〕 猿世彦、駒山彦双方一度に、清彦に掴みかかりし手を放して、猿世彦は、 『清彦、貴様は矢張り宣伝使だ。脱線したことを上手にベラベラと饒舌りよる。たとへ間違うてをつても、それだけ弁が廻れば穴があつても、塞がつて了ふワ。法螺の通る名詮自称の三五教の宣伝使様だよ。よう大きな法螺を吹いたものだ。一つ退屈ざましに聞かして貰はうかい』 清彦『宣伝使にお訊ねするのに聞かして貰はうかいとは失敬な、懸河の弁舌、布留那の雄弁者とは此方のことだよ。身魂も清き清彦の聖き教を耳を清めてトツクリと聴け』 猿、駒『偉い権幕だなあ、宇宙万有一切のことを説き諭すといふ宣伝使様だ。なんでも御存じだらう』 清彦『勿論のことだ。三千世界のことなら、何でも問うてくれ。詳細なる解決を与へて遣はすとは申さぬワイ』 猿世彦『三千世界で思ひだした。三五教には三千世界一度に開く梅の花、開いて散りて実を結ぶとか、時鳥声は聞けども姿は見えぬ、とかいふ教があるねー。ありや一体何といふことだい……ドツコイ……何といふことですか、謹んで御教示を承はりませう』 駒山彦『ソナイに叮嚀に言うと損がいくよ』 猿世彦『黙つてをれ、只で言はすのだもの』 駒山彦『貴様は猿世彦の他人真似を、また他処でしやうと思ふて訊くのだらう』 猿世彦『モシモシ清彦の宣伝使様、最前の三千世界の話を聞かして下さいナ』 清彦『エヘン、オホン、アハン』 猿世彦『また五十韻か』 清彦『俺の癖だ、マアしつかり聞け。三千世界一度に開く梅の花といふことはナ、今日の世の中は米喰ふ虫が沢山殖えてきて、おまけに遊ぶ奴ばかりで、米が足らぬ。一方には一年中米の顔を見たことの無い、草や木を食つてをる人間もあるのだ。それで神様は誰も彼も苦楽を共にせよと仰有つて、世界中がお粥を食へと仰有るのだよ。それも一ぺんに五膳も、八膳も食うてはいかぬ。一ぺんに三膳より余計はいかぬ。そこで三膳にせー粥一度といふのだよ』 猿世彦『成程それも面白いが、開く梅の花といふのは如何だい』 清彦『大きな口を開いて、五郎八茶碗に粥を盛つて、お前たちのやうな鼻高が粥を啜ると鼻が粥に埋つてしまふのだ。それで開く埋めの鼻だ。開いて散りて実を結ぶといふことは天井裏に鼠の走る姿の映るやうな薄い粥でも吸うとると、ちつとは米粒の実をスウのだ。それで大きな口を開いて、ちつと実をもスウといふのだよ』 猿世彦『人を莫迦にしよる。清彦、真面目に説教をせぬかい、またブンなぐるぞ』 清彦『貴様たちにコンナ高遠無量なる神界の経綸を話して聞かしたつて、耳の三五教だもの真正の事が耳に這入る様になつてから聞かして遣らう。この三五教は身魂相応に取れる教だから、初めて三つ子に聖賢の教を説いたところで、石地蔵に説教するやうなものだ。まして鱪や、蚯蚓の干乾に、真正のことを言うて堪るかい。身魂を早く研け、研いたら身魂相応の説教をしてやるワイ』 駒山彦『莫迦にしよるなイ。しかし長い浪の上の旅だから、軽口を聞くと思えば、辛抱ができる。モツト聞かしてくれ』 清彦『貴様らにわかる範囲内の講釈をしてやらうかい』 猿世彦『時鳥声は聞けども姿は見えぬといふことは、一体どういふことですかいナ』 清彦『そりや貴様の身体に朝夕ついてゐるものだ。粥を食ふと糞が軟かくなつて、雪隠にゆくとポトポトと音がするだらう。さうして後から芋粥の妄念がスーと出る。それで糞がポトポト、屁がスーだ。糞は肥料になつて利くから、こゑはきけどもだ。スーとでた屁の形は見えぬだらう。それで、スーとでた屁の姿は見えぬと神様が仰有るのだよ』 猿世彦『馬鹿ツ』 と大喝する。船客一同はワツと一度に笑ひさざめく。 このとき船の一隅より容貌温順にして、寛仁大度の気に充ち、思慮高遠にして智徳勝れ、文武両道兼備せるごとき一大神人は起つて宣伝歌を歌ひ始めけり。 (日の出神)『波風荒きアラビヤの筑紫の島を後に見て 神の御稜威も高砂の智利の都に進みゆく 恵も広き和田の原御稜威も深き海洋の 底ひも知れぬ皇神の仕組の糸に操られ 心も和ぎし波の上鬼城の山を後に見て 慣れにし里を猿世彦焦せる心の駒山彦が 流れてここに清彦の神の命の宣伝使 右と左に詰寄つて蠑螺の拳を固めつつ 痛々しくも打かかる身魂も清き清彦が 堪へて忍ぶ真心は皇大神の御心に 叶ひ奉らむ天津日の堅磐常磐に智利の国 襤褸の錦は纏へども心の空は照妙の 綾の錦に包まれて千尋の底の海よりも 深き罪科贖ひて今は貴き宣伝使 三五教を開きゆく吾は暗夜を照らすてふ 日の出神の宣伝使端なく此処に教の舟 心を一つに托生の救ひの舟に帆を上げて 荒浪猛る海原や黒雲つつむ常世国 天の岩戸を押開けて日の出神の神国と 造り固めむ宣伝使造り固めむ宣伝使』 と爽かに歌ひ出したる神人あり。清彦はこの声に驚き合掌しながら、日の出神の英姿を伏拝み、落涙に咽せびける。 (大正一一・二・六旧一・一〇高橋常祥録)
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霊界物語 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 06 火の玉 第六章火の玉〔三五六〕 清彦は猿世彦、駒山彦の二人を、闇の谷間に置き去りにして、自分はコソコソと谷を降り、夜昼大道を濶歩しつつ、智利の都に肩臂怒らし脚を速めけるが、日も黄昏に近づき、疲労れ果てて、路傍の芝生に腰打ち掛けて独語。 『あゝあゝ、とうとう厄介者を撒いてやつた。この広い高砂島だ。滅多に出会すこともあるまい。彼奴ら二人が踵いて居ると、気がひけて仕方がない。日の出神になりすまして居る此方を、清彦と云ひよるものだから、せつかく信仰をした信者までが、愛想をつかす様な事があつては、百日の説法屁一つになつてしまふ。まあまあ、是で一と安心だ』 夜の帳は下されて、塒に帰る烏の声さへも、聞えなくなりて来たりぬ。このとき闇を縫うて怪しき声聞え来たる。清彦は耳を澄まして聞き入りぬ。 『偽の日の出神の宣伝使。俺ら二人を深山の奥へ、連れて行きよつて、闇に紛れて駆出したる、心の暗い、身魂の悪い、闇雲の宣伝使、もう是からは俺らは声の続く限り、仮令清彦が天を翔り、地を潜らうとも、一人と二人ぢや。二人が力を協して、清彦の欠点を剥いてやらう。オーイ智利の都の人たちよ、日の出神と云ふ奴が現はれて来ても相手にするなよ。彼奴は山師だ。偽物だ』 と呶鳴りながら、闇を破つて行き過ぎる。清彦は吐息を漏らし、 『あーあー、悪い虫がひつ着きよつたものだナア。鳥黐桶に足を突込んだとは、此事だな。今までの清彦なら、彼奴の声を目標に、後から往つて、あの禿頭を目がけ、ポカンとやつてやるのだが、三五教の教理は何処までも、忍ばねばならぬ。腹を立てて神慮に背き、大事を過る様な事があつては、それこそ日の出神様に申訳はない。俺がいま日の出神と云つて、この島へ渡つたのも、決して私の為ではない。日の出神様が、俺の霊魂が守護するから、俺の代りになつて往け、と仰有つたからだ。それだから自分が日の出神といつた所が何が悪からう。清彦といふ名は世界中に、悪い奴だと響いて居る。何んぼ神の道は、正直にしなくてはならなくつても、一つは方便を使はなくては、鬼の様に云はれた鬼城山の清彦では、相手になつて呉れる者もありやしない。それでは人を改心さすことも、神徳を拡むることも、絶対に不可能だ。俺の名を聞くと泣いた児も、泣き止むといふ位、世界に恐怖がられて居るのだから、何処までも日の出神で行かねばならぬ。それにつけても二人の奴、吾々の行く先々を、今の様なこと云つて、歩かれては耐つたものぢやない。アヽ思へば昔の傷が今に報うて来たのか。エヽ残念なことだ』 と思はず大声に叫びゐる。猿世彦は小声で、 『おい駒山彦、的様の声だぜ。何処か此処らに、闇に紛れて潜伏しとるらしいぞ、野郎だいぶ弱りよつたと見えるな。おいもう一つ大きな声で呶鳴つてやろかい』 このとき前方より闇を照して唸を立てながら、此方に向つて飛び来る火の玉あり、清彦の前に墜落するよと見るまに、清彦は闇中に光を現はして、立派なる日の出神と少しも違はぬ容貌と化したり。二人はあつと云つて口を開けたまま其場に倒れける。 (大正一一・二・六旧一・一〇土井靖都録)
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霊界物語 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 07 蛸入道 第七章蛸入道〔三五七〕 忽ち暗の中に光明赫灼たる神姿を現したる清彦は、絶対無限の神格備はり、仰ぎ見るに眼も眩むばかりに全身輝き渡りけり。 猿世彦、駒山彦は、此姿に慴伏して屢し息を凝らしゐたるに、清彦の姿は、パツタリ消えうせ、暗の中より耳を裂く如き大なる声聞え来たる。 『猿世彦、駒山彦、よく聞けよ。吾は汝の知る如く、今までは八頭八尾の大蛇の霊魂に誑かされ、曲事のあらむ限りを尽くしたることは、汝らの熟知する通りなり。然れど吾は三五教の大慈悲の神の教を聞きてより、今までの吾身の為し来りし事が恐ろしく且つ恥しくなり、日の出神の後を追ひ、真人間に成つて今までの悪に引かへ、善一筋の行ひをなさむ、悪も改心すれば此通りといふ模範を、天下に示すべく日夜、神に祈りゐたるに、神の恵みは目の当り、不思議にも名さへ目出度き朝日丸に乗り込み、日の出神様に廻り会ひ、結構な教訓を賜りてより、吾霊魂は、神直日大直日に見直し聞き直され、今は清き清彦が霊魂になつて世界の暗を照す日の出神の御名代、汝ら二人は吾改心を手本として、一時も早く片時も速かに悪を悔い、善に立帰り、世界の鏡と謳はれて、黄泉比良坂の神業に参加せよ。汝の改心次第によつて、吾は再会することあらむ。汝らが心の雲に隔てられ、遺憾ながら、吾姿を汝らの目に現はすことは出来なくなりしぞ。駒山彦、猿世彦、さらば』 と云ふより早く、又もや四辺を照す大火光となりて中空に舞上り、智利の都を指して中空をかすめ飛去りける。 猿世彦『オイ駒公、本当に清彦は日の出神となりよつたな。もうこれから清彦の悪口は止めにしようかい。吾々を山の奥へ連れて行きよつて、放とけ捨を喰はした腹立まぎれに心を鬼にして、何処までも邪魔をしてやらうと思つたが、たうてい悪は永続きはせないよ。お前と俺とが船の中で、あれだけ拳骨を喰はしてやつても、俺の体は鉄じやといひよつて、痛いのを辛抱して馬鹿口を叩いて笑ひに紛らして居たのは、一通りの忍耐力ではないよ。思へば馬鹿な事を吾々はしたものだナ。日の出神様はあの時に俺らの行ひを見て、何と端たない奴だ、訳の判らぬ馬鹿者だと心の中で思つて御座つたぢやらう。俺はソンナ事を思ひだすと情無くなつて消えたい様になつて来るわ』 駒山彦『それならこれから何うすると云ふのだイ』 猿世彦『まあ、改心より仕方が無いな。清彦のやうにああ云ふ立派な日の出神になれなくても、せめて曲りなりにでも宣伝使になつて、今までの罪を贖ひ、身魂を研いて、黄泉比良坂の神業に参加したいものだ。どうでトコトンの改心は出来はしないが、せめて悪口なと云はないやうにして、世界を助けに廻らうじやないか。而して一つの功が立たら又清彦の日の出神が会うてくれるだらう。その時には立派な宣伝使だ、天の御柱の神の片腕に成つて働かうと儘だよ。是から各自に一人宛宣伝する事にしようかい』 駒山彦『よからうよからう』 と二人は茲に袂を別ち、何処とも無く足に任せて宣伝歌を覚束無げに歌ひながら、進み行く。夜は仄々と白み初めぬ。猿世彦は南へ、駒山彦は北へ北へと進み行く。 猿世彦は光つた頭から湯気を立てながら、力一ぱい癇声を振搾つて海辺の村々を歌つて行く。ある漁夫町に着きけるに、四五人の漁夫は猿世彦の奇妙な姿を見て、 甲『オイ、此間からの風の塩梅で漁が無い無いと云つて、お前たちは悔みてゐるが、天道は人を殺さずだ。あれ見よ、大きな章魚が一疋歩いて来るわ。あれでも生捕つて料理をしたら何うだらうかナア』 乙『シーツ、高うは云はれぬ、聞いて居るぞ。聞えたら逃げるぞ逃げるぞ』 甲『章魚に聞えてたまるかい。なんぼ云ふても聞かぬ奴は、彼奴は耳が蛸になつたと云ふだろ、かまはぬかまはぬ大きな声で話せ話せ。オイ、そこへ来る蛸入道、俺はな、此村の漁夫だが、此間から漁が無くて困つて居たのだ。貴様の蛸のやうな頭を俺に呉れないかイ』 猿世彦『あゝあなた方は此処の漁夫さまですか。蛸は上げたいは山々ですが、一つよりかけがへの無いこの蛸頭、残念ながら御上げ申す訳には行きませぬ』 丙『なにをぐづぐづ云ふのだイ。聞かな聞かぬで好い、与れな与れぬで好い。皆寄つてたかつて、蛸を釣つてやるぞ』 猿世彦『それは結構です。各自に御釣りなさい。蛸が釣れるやうに祈つて上げますから』 甲『お前さまが祈る。これ丈とれぬ蛸が釣れますかい』 猿世彦『釣れいでか、そこが神さまだ。釣るのが邪魔臭ければ、お前さまも、わしの云ふやうに、声を合して宣伝歌を歌ひなさい。蛸はヌラヌラと海から勝手に這上つて、お前さまの持つて居る笊の中に這入つて呉れる。そこを蓋を閉て家へ持つて帰るのだ』 猿世彦は、口から出まかせに、コンナ事を云つてしまひける。 乙『おい、蛸の親方、本当にお前の云ふ通りにすれば、蛸は上つて来るかい』 甲『そら、きまつた事だよ。何分親分が云はつしやるのだもの、乾児が出て来ぬ事があるかい。夫れだから貴様達もこの親分の云ふ事を聞けと云ふのだ。俺が呼んでも来たり来なかつたり、貴様らは不心得な奴だぞ。もしもし蛸の親方、蛸を呼んで下さいな』 猿世彦は海面に向ひ、疳声を搾りながら、宣伝歌を歌ひ始めた。漁夫はその後について合唱した。海面には処々に丸い渦を描いて、蛸入道の頭がポコポコと顕はれて来た。猿世彦は、 『来れ来れ』 と蛸に向かつて麾いた。蛸はその声の終ると共に、笊の中に数限りなく飛び込みけり。このこと漁夫仲間の評判と成りて、猿世彦を日の出神と尊敬する事となりぬ。それより此漁村は、蛸取村と名付けられたり。 蛸取村より数十町西方に当つて、アリナの滝と云ふ大瀑布あり。猿世彦は其処に小さき庵を結び、この地方の人々に三五教の教理を宣伝する事となりける。 (大正一一・二・六旧一・一〇有田九皐録)
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霊界物語 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 08 改心祈願 第八章改心祈願〔三五八〕 漁夫は猿世彦の言霊に依つて、蛸の意外なる収獲を得、今迄軽侮の念を以て遇して居た猿世彦に対し、尊信畏敬の態度を以て望むことになり、アリナの滝に草庵を結び猿世彦の住家となし、尊敬の念を払ひ三五教の教理に悦服したり。されど俄宣伝使の猿世彦は未だ三五教の教理には徹底してをらず、只神を祈ることのみは一生懸命なりき。夫故平然として彼が説く所の教理は矛盾脱線に満ち居たれども、誠の神は彼が熱心に感じて神徳を授けられたるなり。 この村は無智朴訥なる漁夫のみなれば、余り高遠なる教理を説くの必要も無く、また漁夫どもは神を祈りて豊な漁を与へて貰ふ事のみを信仰の基礎として居たり。然し掃溜にも金玉あり、雀原にも鶴の降りて遊ぶが如く、此村の酋長に照彦と云ふ立派な男ありけり。彼は猿世彦の熱誠なる祈祷の効力に感じ、歌を作つて之を讃美したりける。 朝日眩ゆき智利の国御空の月も智利の国 猿世の頭も照の国昼は日照の神となり 夜は月照彦となり吾らを照らす宣伝使 かかる尊き救ひ宣使又とアリナの滝の如 其名は四方に響くなり其名は四方に響くなり。 と村人に歌はせたり。猿世彦は得意満面に溢れ、天晴れ宣伝使となりすまし、法外れの教理を説きゐたり。然れど朴訥なる村人は誠の神の尊き教と堅く信じ、涙を流して悦び、信仰を怠らざりける。 アリナの滝より数町奥に不思議なる巌窟あり。巌窟の中には直径一丈ばかりの円き池あり、清鮮の水を湛へ、村人は之を鏡の池と命名け居たり。猿世彦は村人をあまた随へ、この鏡の池に禊を成さむと進み行きぬ。まづ酋長の照彦に鏡の池の水を掬つて洗礼を施し、次々に之を手に掬ひ、老若男女に向ひ一々洗礼を施し、この巌窟の鏡の池に向つて祈願を籠めにける。 『嗚呼天地を御造り遊ばした国治立の大神様、太陽の如く月の如く鏡の如く、円く清らかなる此鏡の池の水晶の御水の如く、酋長を始めその他の老若男女の身魂を清く研かせ玉うて、此水の千代に万代に涸ざる如く、清き信仰を何処までも繋がせ玉ひて、神様の御膝下に救はれます様に、又この尊き、清き御水を鏡として、吾々はじめ各自のものが何時までも心を濁しませぬやうに、御守り下さいますやう御願ひ致します。私は今日まで鬼城山に立籠り、木常姫と共々に大神様の御神業を力限り、根限り妨害致しました其罪は、天よりも高く、千尋の海よりもまだ深いもので御座います。然るに貴方様は大慈大悲の大御心を以て、吾々の如き大罪人に対し満腔の涙を御注ぎ下さいまして、畏れ多くも天教山の猛火の中に御身を投じ玉うたことを承はりました。其事を聞きましてから私は、昔の悪事を思ひだし、起つても坐ても居れぬやうな心持になりました。嗚呼一日も早く改心したいと思ひますと、私の腹の中から悪魔が「馬鹿々々、何をソンナ弱い事を思ふか」と叱りますので、ついウロウロと魂が迷ひ、心ならぬ月日を送つて居りました。偶私は常世の国を逃出して、筑紫の島を彼方此方と彷徨ふ内、日の出神と云ふ立派な宣伝使が、智利の都へ御出で遊ばしたと聞いて、朝日丸に乗つて此処へ渡ります其船の中に、有難くも日の出神様が乗つて居られ、いろいろ結構な御話を聞かして下さいました。之も全く貴方様の御引合せと有難く感謝を致します。此の清き鏡の池の水は、円満なる大神様の大御心でありませう。この滾々として湧き出づる清き水は、大神様の吾らを憐れみ玉ふ涙の集まりでありませう。此水の清きは、大神様の血潮でありませう。願はくば永遠に吾らの魂を、此鏡の池の円満なるが如く、清麗なるが如く守らせ玉はむ事を、村人と共に御願ひ致します。惟神霊幸倍坐世、惟神霊幸倍坐世』 と真心を籠めて祈願したり。数多の人々も異口同音に、惟神霊幸倍坐世を唱へて神徳を讃美したりけり。 (大正一一・二・六旧一・一〇森良仁録)
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霊界物語 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 10 仮名手本 第一〇章仮名手本〔三六〇〕 鏡の池の唸り声は漸く静まりぬ。此度は荘重なる重みのある声にて、池の底より又もや大なる言葉、次ぎ次ぎに聞え来たる。 『猿の人真似を致す俄宣伝使の猿世彦、神の光も最と清く、智利の国へと渡り来て性に合はぬ三五教の宣伝使とは、よくもよくも吐いたなあ、汝の祈りは、実に立派なものだぞ。これからは大法螺を吹くなよ、知らぬことを知つた顔を致すと、今のやうな苦しき目に遇ふて、耻を曝さねばならぬぞ、何も理屈は云ふ事は要らぬ。ただ私は阿呆で御座います、神様にお祈りをする事より外には、いろはのいの字も存じませぬと謙遜つて宣伝を致すがよいぞよ。生兵法は大怪我の基だ。知らぬと云うても汝はあまり非道いぞ、ちつとは後学のために此方の申す事を聞いて置け。いろは四十八文字で開く神の道ぢや』 猿世彦『もしもし、池の底の神様、私は腰が立ちませぬ。腰を立たして下さいな』 池の底から、 『いヽヽ祈らぬか、祈らぬか、祈りは命の基ぢや。万劫末代生通しの命が欲しくば、いつもかも祈れ祈れ。 ろヽヽ碌でもない間抜けた理屈を捏ねるより、身の行を慎みて人の鏡となれ。 はヽヽ早い改心ほど結構は無いぞよ。裸で生れた人間は、生れ赤子の心になれよ。 にヽヽ俄の信心は間に合ぬ。信心は常から致せよと教へてやれ。 ほヽヽ仏作つて眼の入らぬ汝の宣伝、発根から改心致して、本当の神心になれよ。 へヽヽ下手な長談義は大禁物だ。屁理屈を云ふな、途中で屁太張るな、屁古垂れな。 とヽヽトコトンまでも誠を貫き通せ。神の守りは遠い近いの隔てはないぞ、徳をもつて人を治めよ。 ちヽヽ智慧、学を頼りに致すな。力となるは神と信仰の力ばかりだ。近欲に迷ふな、畜生の肉を喰ふな。 りヽヽ理屈に走るな、利欲に迷ふな。吾身の立身出世ばかりに魂を抜かれて、誠の道を踏み外すな。 ぬヽヽ盗むな、ぬかるな、抜身の中に立つて居るやうな精神で神の道を歩めよ、抜駆けの功名を思ふな。 るヽヽ留守の家にも神は居るぞ。留守と思うて悪い心を出すな。 をヽヽ恐ろしいものは汝の心だ。心の持ちやう一つで鬼も大蛇も狼も出て来るぞ。臆病になるな、お互に気をつけて此世を渡れ。 わヽヽ吾身を後にして人のことを先にせよ。悪い事は塵程もしてはならぬぞ。吾儘を止めよ、私をすな、悪い事をして笑はれるな』 猿世彦『わヽヽ分りました。分りました。貴神のお言葉を聞くと何ともなしに、 かヽヽ悲しうなりました。堪忍して下さいませ、叶はぬ叶はぬ。 よヽヽよく分りました。もうよしにして下さい、欲な事は致しませぬ。世の中の事ならドンナ事でも致します。 たヽヽ助けて下さい、頼みます。誰人だつてコンナに恐い目に遇つたら、起つても居ても坐た怺つたものぢやありませぬ。 れヽヽ連続して水の中から屁をこいたやうな六ケ敷い説教を聞かされても、 そヽヽそれは汲みとれませぬ。そつと小さい声で耳の傍で聞かして下さいな、ソンナ破鐘のやうな声を出したり、竹筒を吹いたやうな声を出して貰つては、一寸も合点が行きませぬ。 つヽヽつまらぬ、つまらぬ、月照彦の神様か何か知らぬが、もうそれだけ仰言つたら、仰有る事はつきてる筈だのに。 ねヽヽ根つから、葉つから合点が行かぬ。お姿を現はして下さいな』 池の底から、 『なヽヽ何を云ふか、泣き事言ふな、汝の如き弱き宣伝使は、もちつと苦労を致さねば、 らヽヽ楽にお道は開けぬぞ。 むヽヽ無理と思ふか、無理な事は神は申さぬぞ。 うヽヽ迂濶々々聞くな、美はしき神の心になつて、神の教を開く宣伝使になれ』 猿世彦『ゐヽヽ何時までもお説教は結構ですが、もう好い加減に止めて下さつたらどうですか、余りつらくて骨にびしびしこたへ、此の のヽヽ喉から血を吐くやうな思が致します』 池の底より、 『退引ならぬ釘鎹、 おヽヽ往生いたせ。よい加減に、 くヽヽ苦しい後には楽しい事があるぞよ。 やヽヽ矢釜敷う云うて聞かすのも、汝を可愛いと思ふからだ。 まヽヽ誠の神の言葉をよく聞け、神の言葉に二言は無いぞ。いま聞き外したら万古末代聞く事は出来ぬぞ。人民の暗い心で誠の神の経綸は、 けヽヽ見当は取れぬぞ、毛筋も違はぬ神の道、汚してはならぬぞ。 ふヽヽ深く考へ、魂を研いて御用に立てよ』 猿世彦『こヽヽこれで、もう結構で御座います。今日はまあ何と云ふ有難い、苦しい、結構なやうで結構に無いやうで、嬉しいやうで、嬉しう無いやうで』 池の中より、 『えヽヽまだ分らぬか、 てヽヽ天地の神の教を伝ふる宣伝使では無いか、 あゝヽ悪を働いて来た猿世彦、これから心を入れ替へて、 さヽヽさつぱり身魂の洗濯いたしてさらつの生れ赤子になり変り、 きヽヽ清き正しき直き誠の心をもつて世人を助け導け、 ゆヽヽ夢々神の申す事を忘れなよ。いつも心を引き締て気は張り弓、 めヽヽ罪障の深い汝の身魂、苦労をさして、 みヽヽ見せしめを致して罪を取つてやらねば、 しヽヽ死んでも高天原へ行けぬぞよ。信心は夢の間も忘るなよ、知らぬ事は知らぬと明瞭云へ、尻の掃除も清らかにいたせ、 ゑヽヽ偉さうに云うでないぞ、この世の閻魔が現はれ高い鼻をへし折るぞ、 ひヽヽ昼も夜も神に祈れよ、 もヽヽもうこれでよいと神が申すまで身魂を磨け。神の目に止まつた上はドンナ神徳でも渡してやるぞ、 せヽヽ狭い心を持つな、広き、温かき神心になつて世人を導け、 すヽヽ澄み渡る大空の月照彦の神の御魂の申す事、無寐にも忘れな猿世彦、吾こそは元は竜宮城の天使長大八洲彦命なるぞ。汝も随分威張つたものだが、これからすつかり心を改めて此国の司となり、狭依彦司となつて世界のために尽せよ。この高砂島は金勝要大神の分霊竜世姫神の御守護なるぞ、此鏡の池は根底の国に通ふ裏門、分らぬ事があらばまた尋ねに来よ』 うヽヽと一声呻ると共に、その声はパツタリ止みけり。狭依彦および一同の腰は始めて立ちぬ。一同は喜び勇みて神言を鏡の池に向つて奏上したりける。 (大正一一・二・六旧一・一〇加藤明子録)
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霊界物語 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 14 秘露の邂逅 第一四章秘露の邂逅〔三六四〕 折から表玄関よりツカツカと上り来る三人の宣伝使ありき。宣伝使は直に清彦、蚊々虎の直立せる前に進み寄り、 宣伝使(日の出神)『オー、清彦殿久し振りだなあ、オー、その方は蚊々虎か』 清彦『ハア、思ひがけなき処にてお目に懸りました。貴下は日の出神様、斯る混乱紛糾の状態をお目にかけ誠に汗顔の至りに堪へませぬ』 と詫入る。蚊々虎は醜国別の顔を熟視し、 蚊々虎『やあ、あなたは御主人様、根の国とやらにお出ましになつたと承はりしに、今如何して此処にお出になりましたか』 と頭をピヨコピヨコさせ手を揉み乍ら恐さうに挨拶する。清彦は桃上彦を見て驚き、 清彦『やあ、あなたは如何して日の出神様と御同行を何されましたか』 と不思議相に尋ねる。数多の人々はこの光景を見て善悪正邪の区別に迷ひ、各自に耳に口を寄せて種々と囁き始めたり。 醜国別は一同に向ひ、 淤縢山津見(醜国別)『満場の人々よ。我は大自在天大国彦の宰相なりしが重大なる罪を犯し、生命を奪はれ根底の国に陥ち行かむとする時、大慈大悲の国治立尊の御取計ひによつて竜宮城に救はれ、乙米姫命の守護らせ給ふ照妙城の金門の守護となり、今までの悪心を改め昼夜勤務を励む所へ、ゆくりなくも日の出神の御来場、茲に救はれて淤縢山津見司となり、桃上彦は正鹿山津見司となり、伊邪那美之大神のお供仕へ奉りて、夜無き秘露の国へ漸く着きたるなり。今清彦の身の上につき蚊々虎の証言は真実なれども、清彦もまた悪心を翻し日の出神の代理として秘露の都に現はれたるものなれば決して偽者に非ず。汝らは清彦を親と敬ひ、よく信じ以て三五教の教理を感得し、黄泉比良坂の大神業に参加されよ』 と宣り了り口を結び玉ふ。拍手の音はさしもに広き道場も揺がむ許りなり。 日の出神は群衆に向ひ宣伝歌を歌ひ始めたまへば、壇上の四柱もその声に合せて節面白く歌ひかつ踊り舞ひ狂ひける。 日の出神『黄金山に現れませる埴安彦や埴安姫の 貴の命の作られし厳と瑞との玉鉾の 道を広むる神司大道別の又の御名 黒雲四方に塞がれる暗世を照らす朝日子の 日の出神と現はれて善と悪とをそぐり別け 山の尾の上や河の瀬に猛り狂へる枉津見を 真澄の鏡に照しつつ恵みの剣ふり翳し 醜の身魂を照さむと山の尾渡り和田の原 海の底まで隈もなく清めて廻る宣伝使 駒山彦や猿世彦醜国別や桃上彦の 貴の命の宣伝使昔は昔今は今 時世時節に従ひて白梅薫る初春の 優雅心になり鳴りて吾言霊も清彦の 教に服へ百の人教に従へ諸人よ 世は紫陽花の七変り天地日月さかしまに 変り輝く世ありともこの世を造りし神直日 心も広き大直日天地四方をかねの神 珍の御言の麻柱に世は永久に開け行く 世は永遠に栄え行く誠をつくせ百の人 神の御言を畏みて身魂を磨け幾千代も ミロクの世までも変らざれミロクの世までも移らざれ 世は烏羽玉の暗くともやがて晴れ行く朝日子の 日の出国の神国となり響くらむ天と地 天地四方の神人よ天地四方の神人よ 海の内外の国人よ』 との歌につれて数多の群衆は、各自に手を拍ち踊り狂ひ、今迄の騒動は一場の夢と消え失せ、館の外には長閑な春風吹き渡りゐる。之より清彦は紅葉彦命[※御校正本・愛世版では「紅葉別命」だが、校定版・八幡版では「紅葉彦命」に直してある。紅葉別は別人であり、ヒルの国の清彦は「紅葉彦」だと後ろの方の巻に書いてある。たとえば第9巻第13章「秘露の国には紅葉彦の宣伝使が控へて居るから」。したがって霊界物語ネットでも「紅葉彦」に直した。]と名を賜り、秘露の国の守護職となりにける。 (大正一一・二・七旧一・一一北村隆光録)
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霊界物語 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 15 ブラジル峠 第一五章ブラジル峠〔三六五〕 春霞棚引渡る海原の浪掻き分けて立昇る 日の出神の宣伝使醜の曲津を払はむと 醜国別の体主霊従霊主体従と成り変り 禊祓ひし生魂心つくしのたちばなの 淤縢山津見と改めて従属の司も腰骨の 蚊々虎彦を伴ひつ教を巴留の国境 ブラジル山に差掛る。 春とはいへど赤道直下の酷熱地帯、木葉を身体一面に纏ひ暑熱を凌ぎ乍ら、腰の屈める蚊々虎彦に荷物を持たせ、ブラジル峠を登り行く。 蚊々虎『モシモシ一寸一服さして下さいな。汗は滝の如く、着物も何も夕立に逢うたやうにびしよ濡れになつて了つた。何処かに水でもあれば一杯飲みたいものですワ』 淤縢山津見『確かりせぬか蚊々虎、何だ、海の底に吾々は長らくの苦労艱難を嘗めて金門の番をして来たことを思へば、熱いの苦しいのと云つて居れるか。空気は十分に無し彼方此方を見ても水ばつかりで、碌に息も出来はしない。何ほど嶮しい坂だつて、汗が出ると云つても、涼しい風がちよいちよい来るじやないか。十分に汗を搾り足を疲らして、もう一歩も前進することが出来ないやうになつた所で、一服するのだ。その時の楽さと云ふものは、本当に楽の味が判るよ。竜宮の苦しい、息も碌に出来ない所から、陸へ揚げて貰つた嬉しさと云ふものは、たとへ足が棒になつても万分の一の苦労でも無いワ。貴様はまだ苦労が足りないからさう云ふ弱いことを云ふのだ。俺に随いて来い』 蚊々虎『それはあまり胴欲ぢやございませぬか。私は竜宮へ行つたことが無いから、貴下のお話は嘘か、本当か知りませぬが、水の中で苦しいのは分つて居ります。併し本当の水の中なら三分か、五分経ぬ間に息が断れて了うぢやありませぬか。それに長らく竜宮に貴下は居られたのぢやから、それを思へば貴下の御言葉は割引して聞かねばなりますまい。私はもう半時も休まずに、この山道を歩かされようものなら、身体の汁はさつぱり汗になつて出て了ひ、コンナ熱い山の中で木乃伊になつて了ひます。ソンナ殺生な事を云はずと貴下も改心なさつたぢやないか、ちつと位の情容赦は有りさうなものだナア』 と涙を溢す。 淤縢山津見『オイ蚊々虎、貴様はなんだい、男じやないか。この位なことで屁古垂れて涙を流すと云ふことがあるかい』 蚊々虎『私は決して泣きませぬ』 淤縢山津見『ソンナラ誰が泣くのだ』 蚊々虎『ハイハイ、私は立派な一人前の男です。苟くも男子たるもの如何なる艱難辛苦に逢うてもびくとも致しませぬ。私について居るお客さまが泣くのですよ』 淤縢山津見『お客さまて何だ、貴様の副守か、よう泣く奴だな。蚊々虎と云ふからには、蚊の守護神でも憑いて居るのぢやらう。今まで人の生血を吸ふやうな悪い事ばかり行つて来た報いだ。貴様の腰は何だい、くの字に曲つて了つとるぢやないか。今までの罪滅しだ。副守に構はず、本守護神の勇気を出して俺に随いて来ぬかい』 蚊々虎『貴下は今まで醜国別と云うて、随分善くないことをなさいましたなあ。私は貴下の御命令でこいつは悪いな、コンナことしたらきつと善い報いはないと思つたが、頭からがみつける様に云はれるものだから、今までは虎の威を借る狐のやうに、心にも無いことを行つてきました。言はば貴下が悪の張本人だ。私は唯機械に使はれたのみですワ』 淤縢山津見『ウン、何方にせよ使はれたのみか、使はれぬしらみか、人の生血を吸ふ蚊か、虎か、狼か、熊か、山狗かだよ』 蚊々虎『モシモシそれは余ぢやありませぬか。虎、狼とは貴下のことですよ。日の出神さまに助けて貰うて淤縢山津見とやらいふ立派な名を貰つて、偉さうにしてござるが、貴下は人を威す淤縢山津見だ。余りどつせ、ちつと昔のことも考へて見なさい。大きな口もあまり叩けますまい。此処には貴下と私とただ二人で傍に聞いてをるものも無いから遠慮なく申しますが、本当に醜の曲津と云つたら貴下のことですよ』 淤縢山津見『三五教は過ぎ越し苦労や、取越し苦労は大禁物だ。何事も神直日、大直日に見直し聞直し、宣り直す教だから、ソンナ死んだ児の年を数へるやうな、下らぬ事は止したがよからうよ。過ぎ去つたことはもう一つも云はぬがよいワ』 蚊々虎『ヘーイ、うまく仰有いますワイ。竜宮で門番をして苦かつたつて、仰有つたじやないか、それは過ぎ越し苦労ぢやないのですか』 淤縢山津見『よう理屈をいふ奴ぢやな。今までのことはさらりと川へ流すのだい。さうして心中に一点の黒雲も無く、清明無垢の精神になつて、神様の御用をするのだよ』 蚊々虎『また地金が出やしませぬかな。何ほど立派な黄金の玉でも、竹熊の持つて居るやうな鍍金玉では直に剥げると云ふことがありますよ。地金が石であれば何ほど金が塗つてあつても二つ三つ擦ると生地が現はれて来るものですからナア』 淤縢山津見『莫迦いへ、俺の身魂は中まで水晶だ。元は立派な分霊だ。雉もなかねば射たれまいといふことがある。もう生地の話しは止めて呉れ』 蚊々虎『ヘーン、うまいこと仰有りますワイ。口は重宝なものですな』 淤縢山津見『オー最早山頂に達した。オイ蚊々虎、話しをしとる間に何時の間にか、山の頂辺に来てしまつたよ。貴様が苦い苦い、もう一歩も歩けぬなどと屁古垂れよつて男らしくもない、副守か何か知らぬが、吠面かわいて見られた態ぢや無かつたぞ。もう此処まで来れば涼しい風が当つて、今までの苦労の仕忘れだ。お前の顔の黒くなつたのも、これも苦労の仕忘れになつて、白い顔になると重宝だが、これ丈は矢張り生地が鉄だから、金にはならぬよ。まあ、顔が黒いたつて心配するには及ばない。貴様の何時も得意な暗黒で、ちよいちよい何々するのには持つて来いだ。暗に烏が飛つたやうなもので、誰も見付けるものが無いからな。本当に苦労の苦労甲斐があるよ』 蚊々虎『暗黒に出るのは矢張り蚊ですもの、貴下の仰有ることが本当かも知れませぬ。間違つてゐるかも知れませぬ。しかし貴下の名はいま出世して淤縢山津見とか仰有つたが何と黒い名ですな。恐さうなおどおどとした暗の晩に烏の飛つたやうな暗ずみナンテ、あまり人のことは言はれますまい。日の出神さまも偉いワイ。それ相当な名を下さる。人を威したり、暗雲になつて訳も分らぬ明瞭せぬ墨のやうな屁理屈を列べる醜国別に淤縢山津見とは、よくも洒落たものだワイ、アハヽヽヽ』 淤縢山津見『オイ蚊々虎、主人に向つて何を言ふ。無礼であらうぞよ』 蚊々虎『ヘン、昔は昔、今は今と、日の出神が歌はれたことを貴下覚えてゐますか。昔は昔、今は今後は何だつたか忘れました。エヘン』 (大正一一・二・八旧一・一二外山豊二録)