| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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霊界物語 | 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 | 12 起死回生 | 第一二章起死回生〔二六二〕 久方の天と地との大道を、解き分け進む宣伝使、世は烏羽玉の闇の世を、洽ねく照らす日の出の守、深山の奥に分け入りて、神の御旨を伝へ来る、月日も長き長白の、山分け進む神司の、雄々しき姿今ここに、三つの身魂のめぐり逢ひ、深き縁の谷の底、底ひも知らぬ皇神の、恵みの舟に棹さして、大海原や川の瀬を、渡る浮世の神柱。 ゆくりなくも、ここに一男二女の宣伝使は邂逅したりける。春日姫は苦しき息の下よりも幽な声をふり絞り、 春日姫『貴下は大恩深き南天王の日の出の守にましますか。みじめなところを御目にかけ、御耻かしく存じます』 と言葉終ると共に、息も絶え絶えに又もや打伏しにける。日の出の守は両眼に涙をたたへ、黙然として春日姫を打ち眺めつつありしが、ツと立ち上り、傍の叢を彼方こなたと逍遥しながら、二種の草の葉を求めきたり、両手の掌に揉み潰し、雫のしたたる葉薬を春日姫の疵所にあて介抱したりける。 これは各地の高山によく発生する山薊と、山芹にして、起死回生の神薬は、これを以て作らるるといふ。日本では伊吹山に今に発生し居るものなり。 見るみる春日姫は、熱さめ痛みとまり腫れは退き、たちまちにして元の身体に復し、さも愉快気に笑顔の扉開きける。ここに三人は歓喜極まつて、神恩の厚きに落涙したり。 日の出の守はおもむろに春日姫に向ひ、 日の出の守『貴女は顕恩郷の南天王として夫婦睦じく住まはせ給ふならむと思ひきや、思ひがけなき宣伝使のこの姿。変り易きは浮世の習ひとは言ひながら、何ンとして斯かる深山にさまよひ給ふぞ。また鷹住別は如何はしけむ、その消息を聞かまほし』 と訝かしげに問ひけるに、春日姫は一別以来の身の消息を、こまごまと物語り、かつ世の終末に近づけるを坐視するに忍びず、身命を神に捧げて、歩みも馴れぬ宣伝使の苦しき旅路の詳細を物語りけるに、日の出の守は言葉を改めて、 日の出の守『至仁至愛の神心を奉戴し、世を救ふべく都を出でての艱難辛苦お察し申す。さりながら、女たるものは家を治むるをもつて第一の務めとなす。汝が夫鷹住別の宣伝使として浪路はるかに出でませし後のモスコーは、年老いたる両親の御心のほども察しやらねばなりますまい。貴女はすみやかにモスコーに帰り、父母に孝養を尽し、神を祈りて、夫の帰省を心静かに待たせたまへ』 と勧むるにぞ、春姫はその語に次いで、 春姫『隙間の風にもあてられぬ貴き女性の御身の上として、案内も知らぬ海山越えて、神のためとは言ひながら、御いたはしき姫の御姿、一日も早くモスコーに帰らせたまへ。妾は今よりモスコーに汝が命を送り届け参らせむ』 と真心面に表はして、涙と共に諫めけるにぞ、春日姫は首を左右に振り、 春日姫『二司の妾をかばひたまふその御心は、何時の世にかは忘れ申さむ。されど一旦思ひ定めた宣伝使、たとへ屍を山野に曝し、虎狼の餌食となるとも、初心を枉ぐる事のいとぞ苦しければ』 と二司の諫めを拒みて動く色見えざりければ、日の出の守も春姫も、巌を射抜く春日姫の固き決心に感歎し、三人の司は相携へて長白山を下り、東、西、南の三方に宣伝歌を謡ひつつ袂を別ちたりける。 (大正一一・一・一七旧大正一〇・一二・二〇嵯峨根民蔵録) (第一一章~一二章昭和一〇・一・二八於筑紫別院王仁校正) |
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霊界物語 | 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 | 35 北光開眼 | 第三五章北光開眼〔二八五〕 霊鷲山の宣伝神北光天使は泰然自若として、一心不乱に神教を説き進めつつあつた。一同の中より、 乙『宣伝使にお尋ねします。私は御存じのとほり、片目を抉られました。幸ひに片目は助かつたので、どうなりかうなり、この世の明りは見えますが、時々癪に触ります。貴下の御話を承り、かつ御忍耐の強きに感動しまして、私も貴下のやうに美しき心になつて、直日とやらに見直し聞き直さうと、覚悟は定めましたが、どうしたものか、腹の底に悪い蟲が潜んで居まして承知をして呉れませぬ。これでも神様の御意に叶ひませうか。どうやらすると、仇を討て、仇を討て、何をぐづぐづしてゐる。肝腎の眼球を刳られよつて、卑怯未練にもその敵を赦しておくやうな、弱い心を持つなと囁きます。どうしたら之が消えるでせうか。どうしたら之を思はぬやうに、綺麗に忘れる事ができませうか』 北光彦『御尤です、それが人間の浅ましさです。しかし、そこを忍耐せなくてはならないのです。何事も惟神に任せなさい。吾々がかうして一口話をする間も、死の悪魔は吾々の身辺を狙つて居るのです。また吾々の心の中には、常に鬼や悪魔が出入をします。それで人間は生れ付の直日の霊といふ立派な守護神と相談して、よく省みなくてはなりませぬ。笑つて暮すも泣いて暮すも、怒つて暮すも勇んで暮すも同じ一生です。兎にかく忘れるが宜しい。仇を討つべき理由があり、先方が悪ければ神様はきつと仇を討つて下さるでせう。人間は何よりも忍耐といふことが第一であります。人を呪はず、人を審判ず、ただ人間は神の御心に任して行けばこの世は安全です。何事も神様の御心であつて、人間は自分の運命を左右する事も、どうする事も出来ないものです。生くるも死するも、みな神様の御手の中に握られて居るのである。ただ人は己を正しうして人に善を施せば、それが神様の御心に叶ひ、幸福の身となるのです。人間としてこの世にある限り、どうしても神様のお目に止まるやうな善事をなすことはできませぬ。日に夜に罪悪を重ねてその罪の重みによつて種々と因縁が結ばれて来るのです。あなたが眼球を刳られたのも決して偶然ではありますまい。本守護神たる直日に見直し聞き直し、省みて御覧なさい。悪人だと思つても悪人でなく神様に使はれてをる人間もあり、善人だと見えてもまた悪魔に使はれてをる人間もあります。善悪正邪は到底人間として判断は出来ませぬ。ただ惟神に任せて、神の他力に頼つて安養浄土に救うて貰ふのが人生の本意であります。惟神霊幸倍坐世』 と合掌する。折しも甲は、 甲『ヤイ皆の奴、こんな恍けた教示を聞く馬鹿があるか。それこそ強い者勝の教だ。此奴はきつとウラル彦の間諜だぞ。俺のやうな弱い者を、舌の先で、ちよろまかしよるのだ。オイ金州、貴様は片目を刳られて、今朝まで仇を討つと吐かして力んでけつかつたが、今の態つたらどうだい。さつぱり宣伝使に盲にせられよつて、今に片方の目も取られてしまふのを知らぬか。オイ片目、所存の臍をかんち、否、固めてかからぬと馬鹿な目玉に遇はされるぞ。コラヤイ、何処から北光彦の宣伝使、貴様もえらい目に遇はしたらうか』 といふより早く、削竹を持つて宣伝使の右の眼をぐさと突いた。宣伝使は泰然としてその竹槍を抜き取り、片手に目を押さへながら、右の手に竹槍を持ち、押戴き天に祈り始めた。 甲『ヤイ腹が立つか。天道様に早く罰を与へて下さいなんて、竹槍を頭の上に戴きやがつてるのだらう。滅多に此方さまに罰が当つてたまるかい。悲しいか、痛いか、苦しいか、涙を雫しよつて。今まで太平楽の法螺ばかり垂れてその吠面は何だ。今迄の広言に似ず、何をメソメソ呟いてゐるのだイ』 と言を極めて嘲弄した。宣伝使は竹槍を頭に戴き、右手にて目を押さへながら、[※校定版・八幡版では「右手(めて)」ではなく「左手(ゆんで)」になっている。これは、前の方で「右の手に竹槍を持ち」と書いてあり、その竹槍を右手で持ったまま、同時に目を押さえるのではおかしいため、「左手」に変更したものと思われる] 北光天使『アヽ天地の大神様、私は貴神の深き広きその御恵と、尊き御稜威を世の中の迷へる人々に宣伝して神の国の福音を実現することを歓びと致します。殊に今日は広大無辺の御恩寵を頂きました。二つの眼を失つた人間さへあるに、私は如何なる幸か一つの眼を与へて下さいました。さうして一つのお取り上げになつた眼は、物質界は見ることは出来なくなりましたが、その代りに、心の眼は豁然として蓮の花の開くが如く明になり、三千世界に通達するの霊力を与へて下さいました。今日は如何なる有難い尊き日柄でありませう。天地の大神様に感謝を捧げます』 と鄭重に祈願を捧げ、天津祝詞を声朗かに奏上した。一同の人々は感涙に咽んでその場に平伏しうれし涙に袖絞る。甲は冷静にこの光景を見遣りながら、 甲『オイ腰抜け、弱虫、洟垂れ、小便垂れ、減らず口を叩くな。三文の獅子舞口ばかりぢや。それほど眼を突かれて嬉しけりやお慈悲に、も一つ突いてやらうか』 と又もや竹槍を持つて左の目を突かうとした。このとき東彦命はその竹槍を右手にグツと握つたとたんに右方へ押した。甲はよろよろとして倒れ、傍のエデン河の岸より真逆さまに顛落した。北光天使は驚いて真裸体となり河中に飛び入り、甲の足を掴み浅瀬に引いて之を救うた。 これよりさしも猛悪なりし乱暴者の甲も衷心よりその慈心に感じ、悔い改めて弟子となり宣伝に従事することとはなりぬ。宣伝使は之に清河彦と名を与へたり。因みに北光天使は天岩戸開きに就て偉勲を建てたる天の目一箇神の前身なりける。 (大正一一・一・二二旧大正一〇・一二・二五加藤明子録) |
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霊界物語 | 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 | 39 石仏の入水 | 第三九章石仏の入水〔二八九〕 天津御空は黒雲の、いや塞がりて降り続く、雨に水量増り行く、四恩の河の架橋は、押し流されて四恩郷、往来途絶えし苦しさに、この郷の酋長寅若は、数多の郷人を引き具して、晴れたる空の星のごと、数多の人夫を駆り集め、今や架橋の真最中なり。 青雲山より落ち注ぐ百谷千谷の一処に集まり来る水音は、百千万の獅子虎の、声を揃へて一時に、咆哮怒号せるにもいや勝り、その凄じさ譬ふるにものなかりける。 酋長の指揮に従つて、数多の人夫は真裸体となり、河中に飛び込み、彼処此処の山より数多の木を伐り運び来つて、架橋に余念なく従事し居たりき。 酋長は人夫の頭目に何事か命令を伝へ、吾家に帰り去りぬ。 人夫の中より優れて骨格の逞しい、身長の高い色の黒い、大兵肥満の男は立ち上り、 『オイ皆の者、一服しようではないか』 といふにぞ、何れもこの一言に先を争うて河の堤に寄り集まり、草の葉を煙草に代へながら、スパスパと紫の煙をたて雑談に耽る。 甲『一体全体この橋はよう落ちるぢやないか。一年に少くて二度、多くて五六度落橋すると云ふのだから、吾々四恩郷の人間はほんとに迷惑な、四恩河なンて恩も糞もあつたものぢやない。至難河だ』 乙『死なぬ河なら長命して善いぢやないか』 甲『貴様は訳の判らぬ奴だな。この橋見い、長命どころか二月か三月に一遍づつ死ぬぢやないか。四恩河なンてほんとうに善い面の河だ。神さまもチツと気を利かしさうなものだねー』 乙『変れば変る世の中といふぢやないか。今度の雨で、昨日や今日の飛鳥川、淵瀬と変る世の中に、変らぬものは恋の道』 甲『ソラー何吐かす。とぼけるない。歌々と歌どころの騒ぎぢやない。この橋を十日間に架けて了はなくつちや、吾妻彦命[※校正本では「吾妻別命」]から又どえらいお目玉だぞ』 丙『そんな無茶な事云つたつて仕方が無いぢやないか。この泥水に何うして斯んな長い橋が十日やそこらに架かつてたまるものか』 乙『たまつても、たまらいでも仕方がない。毎日掛つて居るのだい。吾々は雨の神とやらに橋を落されて、はしなくもこの苦労だ』 丙『洒落どころぢやないわい。今酋長が言つて居たよ。アーメニヤのウラル彦神[※校正本では「ウルル彦神」]が青雲山へお出になるのだて。それでそれ迄に架けて置かぬと、どえらいお目玉ぢやと聞いた。俺等は夜昼なしに、たとへ歪みなりにでもこの橋架けて了はなくちや、酋長に申し訳がないわい』 乙『なんと、アーメニヤがウラル彦つて、何んだい。毎日日にちアメニヤがふられ彦で橋まで落されて俺等の迷惑。アーメニヤがふられとか、ふるとかが橋を渡るなんて、一体訳が判らぬぢやないかい』 甲『判らぬ奴だ。黙つて居れ、貴様のやうな奴あ、雨でも噛んで死んだらよからう』 乙『死ねと云つたつて、貴様最前死なぬ河つて吐かしたらう。雨でも噛んで死ねなんて貴様こそ判らぬ事を云ふぢやないか』 丁『実際の事あ、こちら様がよく御存じぢや。お前達一同は謹聴して、吾々の御託宣を承れ』 乙『イヨー、大きく出やがつたぞ』 丁『大きいも小さいもあるかい。この毎日日にち雨の降るのは、青雲山の御宝の黄金の玉とやらをウラル彦神が持つて去ぬと云ふので、神様が嘆いて毎日涙をこぼさつしやるのだ。それで涙の雨が降るのだ。困つた事になつたものだ。昔神澄彦天使さまが御守護あつた時は天気も好かつたなり、何時も青雲山は青雲の中まで抜き出て立派な姿を現はし、山の頂からは玉の威徳によつて紫の雲が靉靆き、河の水は清く美しく、果物は実り、羊はよく育ち、ほんたうに天下泰平であつたが、アーメニヤのウラル彦神が、青雲山に手を付けてからと云ふものは、ろくにお天道さまも拝めた事はなく、毎日々々、ザアザアザアと雨が土砂降りに降るなり、羊は雨気の草を食うて病を起してころつ、ころつと息盡なり、五日の風十日の雨は昔の夢となり、こんな詰らぬ世の中は有りやしない。何を言つても肝腎の大将が、鬼掴とかいふ悪い奴にまゐつて了うたのだから、お天道さまも御機嫌が善くないのは当前だ。それ迄は二十年や三十年に橋が落つるの、家が流れるのと云ふ様な水が出た事が無いぢやないか。何でも国の御柱神様は、あまり悪神が覇張るので業を煮やして、黄泉の国とかへさつさと行つて了はれたと云ふことだ。後に天の御柱神様が独り残されて、何も彼も御指揮を遊ばすと云ふ事だが、一軒の内でもおなじ事、女房が無くては家の内は暗がりと同じ様に、世界も段々暗うなつて来るのだよ』 と悲し相にいふ。 戊『何うしたらこの世が治まるか。何うしたらこの橋架けられよか』 と唄ひながら立ち上つて踊り出した。 甲は『馬鹿』と云ひながら、戊の肩を力を籠めて押した途端に、戊は河の中に真倒様に落ち込んだ。 戊はやにはに橋杭に取り着き、又もや一同の方に向つて、 戊『何うしても私は流れませぬ。何うしたらこの橋架けられよか、何うしたら甲奴が倒されよか』 と杭に抱きつき不減口を叩いて唄つて居る。漸くにして戊は河土手に、濡れ鼠となつて這ひ上り、一生懸命に真裸体になつて衣類を搾つて居る。さうして又もや、 戊『どうしたら衣物が乾かうか、これだけ降つては仕様がない、どうしようぞいな、どうしようぞいな、スツテのことで土左衛門』 と気楽さうに踊り出す。 この男は河童の生れ変りで、水の中を何ンとも思つて居ない。寒い時に温泉にでも這入つた様な心持になる男なり。 戊は甲の傍にツカツカと寄り来たり、 『お蔭で泥水を沢山頂きました。なんとも御礼の申様がありませぬ』 と云ひながら、むんづと斗り甲の腰を引つ抱へ自分から体を躱して、共に河の中に飛んだ。甲は石仏を放り込んだ様にぶくぶくと泡を立て、河底へ沈むで了つた。大勢の人夫は驚いて、どうしよう、かうしようと狼狽まはりたり。戊は又もや橋杭に取りつき、 戊『何うしたら生命が助からう、ぶくぶく沈んだ石仏、どつこいしよのしよ』 と唄ひ居る。 大勢は腹を立てて有り合ふ石を手に握り、戊を目がけて打ちつける。 戊はたちまち水中に潜り込み、しばらくすると甲の体を両手に捧げて浮き上つた。石の礫は雨のごとく降つて来る。戊は甲の体にて雨と降る石礫を受け止めた。甲は、 『あ痛、あ痛』 と頭をかかへて渋面を造つて泣き出すを見兼て、戊は甲を浅瀬に救ひ上げ、巨大なる亀と化し、悠々として水上に浮び、再び姿を隠したり。この亀は果して何神の化身ならむか。 (大正一一・一・二三旧大正一〇・一二・二六井上留五郎録) (第三七章~第三九章昭和一〇・二・一七於木の花丸船中王仁校正) |
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霊界物語 | 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 | 42 途上の邂逅 | 第四二章途上の邂逅〔二九二〕 東や西に立つ雲の、雲路を分けて進みくる、三五教の宣伝使、黄金山を立ち出でて、久方彦のまたの御名、雲路別の天使は、夜を日に継いで遥々と、宣伝歌を謡ひながら、進み来たるは羅馬の都、心も清き元照別の守ります、伊太利亜さして進みける。 路傍の石に腰打ちかけ、空を眺めて行く雲の、変る姿を見るにつけ、変り果てたる吾身の姿、可憐しき妻子を振り捨てて、何処を宛とも長の旅、長き吐息を漏らす折柄に、 『この世を造りし神直日御魂も広き大直日 ただ何事も人の世は直日に見直せ聞直せ 身の過は宣り直せ』 と声も涼しく謡ひくる宣伝使ありけり。雲路別天使は耳を欹立て、その声を懐かしげに聞き入りぬ。 『天教山に現はれて撞の御柱廻り合ひ 天の御柱大御神国の御柱大御神 この世の闇を照らさむと思ひは胸に三つ栗の 中津御国を胞衣として国土造り神を生み 青人草や草や木や万の物に御恵みの 乳房を哺ませ永久に照らさせ給ふ三柱の 神の御稜威は天が下四方の国々三葉彦 神の御勅を畏みて三五教を開かむと 心筑紫の蓑笠や草鞋脚絆の扮装に 広道別と改めて神の教の道広く 塩の八百路の八塩路を渡り難みて白雲の 向伏す限り青雲の靉靆く極み雲路別 貴の御勅の宣伝使今は何処に漂らひの 旅を続かせ玉ふらむここは伊太利の国境 羅馬の都も近づけど元照別の神司 ウラルの神に服従うと聞きし日よりも村肝の 心の空は掻き曇る雨の繁しげ降る中を 広道別の今日の旅神と国との其ために 黄金山を立ち出でて歩みも慣れぬ長旅に 疲れ果てたる吾姿疲れ果てたる吾姿 空行く鳥を眺むれば各々家路に帰り行く 空飛ぶ鳥も繁りたる梢に宿を求めつつ 親子諸共睦び合ひ心も安く楽しまむ 頼み難きは人の世の明日をも知れぬ吾命 故郷に捨てし妻や子の心を思ひ廻らせば 進むも知らに退くも知られぬ国の暮の空 あゝさりながらさりながら神の恵に生ひ立てる 吾らは尊き神の御子神はわが父わが母ぞ 夕暮淋しき独身の旅にはあらで御恵の いとも厚けき大神の御魂と共に進むなる 尊き聖き宣伝使過ぎにしかたの罪咎を 直日に見直し聞き直し宣り直します埴安の 彦の命ぞ尊けれ彦の命ぞ尊けれ』 と謡ひながら黄昏の空を、とぼとぼと進みきたる。雲路別天使は広道別天使の姿を見て大に喜び、 『ヤア、広道別天使よ』 と声をかくれば、宣伝使は藪から棒のこの言葉に驚き、熟々眺むれば、雲路別の宣伝使なりき。二神司は茲に相携へて羅馬に入り、元照別天使を帰順せしめ、伊弉諾命の神政に奉仕せしめたりける。 広道別天使は、天照大御神、天の岩戸に隠れ給ひ、六合暗黒となりし時、岩戸の前に太玉串を捧げ、神慮を慰めたる太玉命の前身なり。 (大正一一・一・二三旧大正一〇・一二・二六加藤明子録) |
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霊界物語 | 07_午_日の出神のアフリカ物語 | 01 日出山上 | 第一章日出山上〔三〇一〕 千歳の老松杉林檜雑木苔蒸して 神さび立てる大森林麓を廻る中国一の大高山[※この「中国」とは「(豊葦原の)中津国」のこと、つまり日本のこと] 東南西に千波万波の押寄する大海原を控へたる 雲井に高く神徳も大台ケ原の中央に 雲つくばかりの大岩窟あり盤古神王自在天 自由自在に世の中を思ひのままに掻き乱し 万古不動の礎を建てむとしたる立岩の をぐらき窟の奥深く探り知られぬ其の企み 天津御神の勅以て豊葦原の中津国 淡路島なる聖域に天降りましたる伊弉諾の 神の光の四方の国暗夜を開く大道別命の分霊 日の出神は朝露を踏み分け登る宣伝使 漸う岩窟の前に辿り着く彼方此方に鳴き渡る 百鳥千鳥の鳴く声は岩戸の前に百神の 囁く如く聞ゆなり折から深き山奥より 天地も崩るるばかりなる大音響の物凄く 火焔の舌を吐きながら渓間を目がけ降りくる 八岐の大蛇を先頭に数限りもなき大蛇の群 巌窟を指して進みくるその光景の凄じさ 心震ひ魂縮まる許りなり日の出の神は黙然と 瞑目静坐不動の態。 忽然として現はれたる白髪異様の老神、右手に赤銅の太き杖をつき、左手に玉を捧げながら、日の出神に向ひ鏡の如き両眼を刮と見開き声をかけ、 『何者なればこの神山に断りも無く登り来るか。抑も当山は、盤古神王塩長彦命の御娘神、塩治姫神の永久に鎮まりたまふ神界所定の霊山なり。一刻も早くこの場を立ち去れ。早く早く』 とせき立てたり。 日の出神は、むつくとばかり立ち上り、 『実に心得ぬ汝が今の言、盤古神王とは彼れ何者ぞ。兇悪無道の常世彦命に擁立され諸越山に住所を構へ、畏れ多くも国祖国治立命をして窮地に陥れしめたる大逆無道の根元神、今は僅かにヱルサレムの聖地に割拠し、螢火のごとき微々たる光を照らし、漸くにしてその神威を保続し、神政を布くといへども、暴力飽くまで強き大国彦神の神威に圧迫され、部下の諸神司は日に夜に反覆離散し、神政の基礎はなはだ危し。さはさりながら、いま汝の述べ立つる盤古大神は、果してヱルサレムの城主塩長彦命の娘神塩治姫命には非ざるべし。察する所アーメニヤの野に神都を開く、偽盤古神王ウラル彦神の一味の邪神、この神山に身を遁れ諸神を偽り、時を待つて天教山を占領し、己れ代つて盤古神王たるに非ざるか。ヱルサレムに現はれ給ふ盤古神王は、真の塩長彦命なれども、現在は仔細あつて地教の山に隠れ給ひ、ヱルサレムに在す盤古神王は、勢力微々たる国治立命の従神紅葉別命、今は盤古神王と故あつて偽り、天下の形勢を観望しつつあり。汝が言ふところ事実に全く相反し信憑すべき事実毫末もなし。盤古神王をヱルサレムに迎へ奉り、かつまた地教山に遷し奉りしは斯く申す日の出神なり。この上尚ほ答弁あるか』 と刀の柄に手をかけ、返答次第によつては容赦はならぬと詰め寄れば、白髪異様の老神は、大口開けてカラカラと打笑ひ、 『われは大事忍男神なり。盤古大神が娘塩治姫命の御隠れ家と言挙げしたるは真赤な偽り。もはや是非なし。汝に看破されしこの上は、破れかぶれの我が活動、いまに吠面かわくな。汝いかに武勇絶倫にして、たとへ獅子王の勢あるとも、この嶮しき神山にただ一人分け入り、いかに千変万化の智勇を揮ふも、汝一人の力におよばむや。すみやかに兜を脱いで我が前に降参するか、ただしは汝が携へもてる錆刀を以て、潔く割腹するか、返答如何に』 と百雷の一時に轟くごとき怒りの声、天地も割るるばかりであつた。山中俄に騒がしく、峰の頂谷の底一度に高き鬨の声、大蛇や悪鬼を始めとし、異様の怪物雲霞のごとく一度に押寄せ、咆哮怒号するさま身の毛も竦立つ許りなりけり。 日の出神は、少しも屈せず立岩を脊に、刀の柄に手を掛けて、 『たとへ幾億万の強敵きたるとも、斬つて斬つて斬り捲り、やむを得ざれば屍の山に、血潮の河、全山ことごとく唐紅に染めなさむ、いざ来い勝負』 と身構へたり。 大事忍男神と自称する白髪異様の妖神は、この勢に辟易し巌窟めがけて一目散に逃げ入り、押寄せきたる悪鬼邪神の姿は煙のごとく消え失せて、後には渓間を流るる水の音、松吹く風の響、面を撫でる春の陽気も美はしかりける。 渓間に囀る百鳥の声は、たちまち天の原雲路を分けて降りくる。天女の奏づる音楽かと疑はるる許りなりける。 (大正一一・一・三〇旧一・三外山豊二録) |
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霊界物語 | 07_午_日の出神のアフリカ物語 | 25 建日別 | 第二五章建日別〔三二五〕 大海原を撫で渡る科戸の風の吹き廻し 常世の波の重波の寄せ来る儘に思ひきや 筑紫島なる亜弗利加の広き陸地に着きにけり 暗世を照らす天津日の光を浴びて照妙の 衣を捨てて蓑笠の身装も脚もいと軽く 崎嶇たる山を登り来るここに一条の急潭は 怪しき巌と相打ちて激怒突喊飛ぶ沫の 万斛の咳咤を注いで怪岩の面を打てば 巌はその奇しき醜き面を背けて水は狂奔する 奇絶壮絶勝景の谷間の小径に差懸る 春とはいへど蒸暑き日に亜弗利加の山の奥[※この山は第34巻第1章の黒姫のセリフの中で「筑紫峠」と呼ばれている。] 暫時木蔭に佇みてこの光景を三柱の 名さへ芽出度き宣伝使飛瀑の声と相俟つて 壮快極まる宣伝歌天地の塵を払拭し 山野を清むる如くなり。 三柱の宣伝使は、この谷川の奇勝を眺め、日の出神は、 日の出神『あゝ実に天下の絶景だ。吾々も宣伝使となつて、天下を横行濶歩して来たが、未だ嘗て見ざる壮快な景色である。山といひ、谷川といひ、実に吾々の心境を洗ふやうな心持がするね』 祝姫『左様でござります。長い間波の上の生活を続けて、少々勿体ないこと乍ら飽き気味になつてゐましたが、世界はよくしたものですな。かう云ふやうな天下の奇勝を見ることの出来るのも、全く神様の御引合はせ。旅は憂いもの、辛いものと申せども、宣伝使でなくては到底かう云ふ絶景を見ることは出来ない。吾々は神様に感謝を捧げねばなりますまい』 面那芸『あゝ時に何だか谷底に流れの音か、猛獣の呻き声か、人の叫び声か、はつきり分りませぬが妙な響がするではありませぬか』 日の出神は、衝と立つて耳を澄しながら、 日の出神『はー、如何にも何だか合点のゆかぬ唸鳴り声ですな。何は兎もあれ、私はその声を目標に調べて来ませう。貴使は此処に暫く待つてゐて下さい』 二柱は口を揃へて、 祝姫、面那芸『いや、吾々も御伴いたしませう』 日出神『然らば私が一歩先に参ります。貴下は見え隠れに跟いて来て下さい。万一の事があれば合図を致しますから、こちらが合図をするまで、出て来てはなりませぬぞ』 と云ひながら、日の出神は谷深く声を捜ねて進み行く。 行くこと二三町斗り、此処には見上ぐるばかりの大岩石が谷間に屹立し、五六尺もある大なる巌窟が、彼方にも此方にも、天然に穿たれあり。髪の毛の赤い、顔の炭ほど黒いやや赤銅色を帯びた数多の男が、幅の分厚い唇を鳥の嘴のやうに突出した奴数十人安座をかいて、一人の色の蒼白い少しく眼の悪い男を中に置いて何か頻に揶揄つてゐる。日の出神は、木蔭に身を忍ばせこの様子を聞き入つた。 甲『やい、貴様は三五教の宣伝使とか、何とか吐かしよつて、この島に案内も無く肩の凝るやうな歌を歌つて参り、俺らの一族を滅茶々々にしよるのか。此処を何と心得てをる。勿体なくも常世の国の常世神王様の御領分だぞ。それに貴様は大きな面を提よつて、この世が変るの、善と悪とを立別けるのと、大きな喇叭を吹きよつて何のことだい。もうこれ限り宣伝使を止めて、俺らの奴隷になればよし。ならなならぬで是から成敗をしてやる。返答せい』 一人の男は、少しも屈せず四辺に響く声を張上げて、 男(小島別)『神が表に現はれて善と悪とを立別る』 乙、丙『こら、しぶとい奴だ。未だ吐かすのか。おい、皆の奴、石塊を持つて来い。此奴の口を塞いでやらうぢやないか』 丁『おい、宣伝使、此処は畏れ多くも常世国に現はれました伊弉冊命様が、常世神王といふ偉い神様を御使ひになつて、その御家来の荒熊別といふ力の強い御威勢の高い神様が、御守り遊ばす結構な国だぞ。此処の人間は毎日々々、神様の御蔭で、一つも働かず無花果の実を食つたり、橘や、橙その他の結構なものを頂いて、梨の実の酒を醸つて「呑めよ騒げよ一寸先や暗よ、暗の後には月が出る」と日々勇ンで暮す天国だ。それに何ぞや、七六ケ敷い劫託を列べよつて、立替るも立別るもあつたものかい。さあ、これから皆寄つて此奴を荒料理して食つて了つてやらうかい』 甲『やい、そんな無茶をするない。此奴は剛情我慢の奴だが、併しあの細い目から恐ろしい光を出して居るぞ。何でも天から降つて来た神さまの化物かも知れやしない。うつかり手出をしたら、罰が当るぞよ』 乙『気の弱いことを言ふな。吾々は伊弉諾神様の立派な氏子だ。天から降つたか、地から湧いたか知らぬが、こンなものの一疋位にびくびくするない』 一人の男、声を張上げて、 小島別『神がこの世に現はれて善と悪とを立別ける 天地四方の国々や島の八十島八洲国 教を開く宣伝使神の恵みも大島や 小島の別の神司眼は少し悪けれど 汝の眼に映らない心の眼は日月の 光に擬ふ小島別わけも知らずに言さやぐ 醜の曲津の集まれる虎狼や鬼大蛇 熊襲の国の山の奥山路を別けて進み来る われは汝の助け神世は常暗の熊襲国 残る隈なく照らさむと綾の高天を立出でて 心のたけの建日別神の命と現はれて この国魂と天津日の神の命のよさしなり 神の命のよさしなり荒ぶる神よ醜人よ 善と悪とを立別る誠の神の神勅』 と歌ひ始むるや、一同は耳を塞ぎ、目を閉ぢ、 一同『やあ、こいつは堪らぬ』 と大地にかぶりつく。この時またもや、森林の中より宣伝歌が聞えきたりぬ。 (大正一一・二・一旧一・五外山豊二録) |
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霊界物語 | 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 | 42 言霊解四 | 第四二章言霊解四〔三九二〕 『其妹伊弉冊命吾に辱見せたまひつと言したまひて、即ち黄泉醜女を遣はして追はしめき』と云ふ事は、以上の如くに乱れ果てたる醜状を、神の光なる一つ火に照らされ、面の皮を曳剥られて侮辱されたと言つて、大本であれば心に当る醜悪なる教信徒が一生懸命に大本や教主に反抗すると云ふことであり、世界で言へば、益々立腹して大本を圧迫し、窮地に陥れむとする人物の出現すると云ふ事で在るから、誠の教を開くと云ふ事は、随分六ケ敷事業であります。今日のやうな無明闇黒の社会に容れられる様な教なら別に苦労艱難は要らぬ、四方八方から持て囃されるで在らうが、その様な教なら現代を覚醒し、人心を改造する事は出来ない。国家を泰山の安きに置き奉らむとするの志士仁人は凡ての迫害と戦ひ、総ての悪魔に打ち克ち、身を以て天下に当るの勇猛心を要するのであります。黄泉醜女は決して悪い魔女の事では無い。今日の人間は上下共に男も女も、八九分通りまで醜女であります。何処にも一点の男子らしき、勇壮なる果断なる意気を認むる事は出来ぬ。斯ういふやうな黄泉醜女らが、大本の一つ火の明光に照されて、夏の虫の如くに消しに来ては却つて自分が大怪我をするのであります。今日の大本は四方八方から攻め立てられ、人民を保護す可き職に在る人々までが、時には逆様に攻撃妨害を加へむとして居るのであります。是が大本を四方突醜目で見てをると云ふのであります。 然し至誠思国の吾々大本人は、所在総ての圧迫と、妨害に打ち克つ為に、一つの力を貯へねば成らぬ如く、世界に対しても我国は、充分の準備を整へねばならぬ。即ち神典に所謂黒御鬘を投げ打つて掛らねば成らぬのであります。 『爾伊弉諾命黒御鬘を取りて投げ棄て玉ひしかば、乃ち蒲子生りき』 之を今日の大本に譬へると、幽玄美はしき神の御教を、天下に宣伝する事を『投げ棄て玉ひき』といふのであります。『蒲子生りき』と云ふ事は、美はしき誠の新信者が出来たと云ふ事であります。黄泉神醜女は、また之に向つて一人々々に種々の圧迫妨害を加へると云ふ事が、『是を拾ひ食む』と云ふのであります。何れの教子にも悉く四方突軍が御蔭を堕さしに廻つて居る。その間に又一つの戦闘準備に着手する事を『逃げ出でますを』と云ふのであります。 『猶追ひしかば、亦其の右の御角髪に刺せる、湯津津間櫛を引闕て、投げ棄てたまひしかば乃ち笋生りき』 蒲子とも言ふべき信仰の若い信者を、片端から追詰め引落しにかけ乍ら、なほもそれに飽き足らずして、大々的妨害を加へむとの乱暴には、神も終に堪忍袋の緒が断れたので、右の御角髪にまかせる湯津津間櫛を引闕て、乃ち神界の一輪咲いた梅の花の経綸を表顕して、所在四方突醜女に向つて宣伝した所が、終に箏と云ふ、上流貴紳[※身分の高い人という意]の了解を得、至誠天に通じて、いよいよ大本の使命の純忠純良なる事を、天下に知らるるやうに成るのを箏生りきと云ふのであります。是は全地球上の出来事に対する御神書であれども、総ての信徒に了解の出来易いやうに、現今の大本と将来の大本の使命を引用して、説明を下したのであります。 『是を抜き食む間に逃行でましき』 又々邪神の頭株が、大本の折角の経綸を破壊せむと、百方苦心しつつ在る内に、いよいよ神国の危急を救ふ可き、諸々の準備を整へ、何時にても身命を国家に捧げ奉つて、君国を守るべき用意を整へて行くと云ふ事が、『是を抜き食む間に逃行でましき』と云ふ意義であります。 『旦後には其の八種の雷神に千五百の黄泉軍を副へて追はしめき』 之を大本に譬へて見ると、八種の雷(前に詳述)に加ふるに社会主義者または仏教家、基督教徒などの、数限りなき露骨なる運動を起して、力限り攻撃の矢を向け来る事であります。之を世界に対照する時は、前述の八種の悪魔の潜在する上に、千五百軍即ち或る国から、日本の霊主体従なる神国を攻めて来ると云ふ事になるのであります。黄泉軍と云ふことは、占領とか、侵略とか、利権獲得とか、良からぬ目的の為に戦ひを開く国の賊軍隊の謂ひであります。 『爾御佩せる十拳剣を抜きて、後手に揮きつつ逃げ来ませるを』 霊主体従の神軍は戦備を整へながら即ち十拳剣を抜きながら、充分に隠忍し敢て戦はず、なるべく世界人類平和の為め、治国安民の為に言向平和さむとする意味を指して『後手に揮きつつ逃げ来ませる』と云ふのであります。 『其の坂本なる桃の子を三個取りて待撃ちたまひしかば悉く逃げ帰りき』 ヒラサカのヒの言霊は明徹也、尊厳也、顕幽皆貫徹する也、照智也、光明遍照十方世界也、日の朝也、大慈大悲五六七の神徳也。ラの言霊は、高皇産霊神也、霊系の大本也、無量寿の大基也、本末一貫也。 サの言霊は⦿に事ある也、栄ゆ也、水の音也、水の精也。 カの言霊は、蒙せ覆ふ也、光り輝く也、懸け出し助くる也。 以上ヒラサカ四言霊の活用を約むる時は、尊厳無比にして六合を照し、世界を統一し以て仁慈を施し、霊系の大本神たる日の大神の本末一貫の徳と、万世一系の皇徳を備へ、⦿に変ある時は、水の精なる月光世に出で、皇国の栄えを守り、隠忍したる公憤を発して、駆け出し向ひ戦ひ、神威皇徳を世界に輝かすてふ、神軍の謂ひであります。 又坂本は神国の栄え行く大元といふ事であります。大本といふも坂本の意義である。桃は百の意義で、諸々の武士といふ事であります。霊主体従日本魂の種子が乃ち桃の実であります。『三箇取りて待ち討ちたまひし』とは日本男子の桃太郎が、智仁勇に譬へたる、猿犬雉を以て、戦ふと云ふ事であります。猿は智に配し、雉は仁に配し、犬は勇に配するのであります。亦三ツと云ふ事は、変性女子なる三女神の瑞霊の御魂であります。そこで三ツの御魂即ち十拳剣の精なる神の教に依て悠然として、待ち討ちたまうた時に、黄泉軍は悉く敗軍遁走して了つたと云ふ意義であります。 『爾に伊弉諾命桃子に告り曰はく。汝吾を助けし如、葦原の中つ国に、有らゆる現在人民の苦瀬に落ちて苦患む時に、助けてよと告りたまひて、意富加牟豆美命といふ名を賜ひき』 茲に於て日の大神様から、聖なる至誠の団体や、三つの御魂に向つて、能く忠誠を尽し、国難を救うて呉れたと、御賞めになり、なほ重ねて世界人民が戦争の為に、塗炭の苦みを受けるやうな事が、今後において万一にも出来したら、今度のやうに至誠報国の大活躍をして、天下の万民を救うて遣つて呉れよ。汝にはその代りに意富加牟豆美命と名を賜うと仰せになつたのであります。このオホカムツミの言霊を奉釈すると次の如くであります。 オの言霊は、霊治大道の意である。 ホの言霊は、透逸卓出の意である。 カの言霊は、神霊活気凛々の意である。 ムの言霊は、組織親睦国家の意である。 ツの言霊は、永遠無窮に連続の意である。 ミの言霊は、瑞の身魂善美の意である。 之を一言に約むる時は、霊徳発揚神威活躍平和統一高照祥光瑞霊神剣発動の神と言ふ事であります。即ち惟神の大道を天下に宣伝する至誠至忠の聖団にして、忠良なる柱石神なりとの御賞詞であります。アヽ現代の世態に対し、神の大命を奉じて日本神国のために身心を捧げ、麻柱の大道を実行する大神津見命は、今何処に活躍するぞ。天下の濁流を清め妖雲を一掃し、災禍を滅し、世界万有を安息せしむる神人は、今や何処に出現せむとする乎。実に現代は黄泉比良坂の、善悪正邪治乱興廃の別るる大峠の上り口であります。 (大正九・一一・一於五六七殿外山豊二録) (大正一一・二・一一旧一・一五谷村真友再録) |
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霊界物語 | 09_申_松竹梅の宣伝使の南米・中米の旅 | 21 志芸山祇 | 第二一章志芸山祇〔四一四〕 七日七夜の月日を浴びて、折からの南風は真帆にアタルの港に着き見れば、正に月照十三夜、海中に身を投げたる熊公、虎公の二人は埠頭に立ち、松代姫の一行を嬉しげに迎へて居る。船客は二人の顔を見て、 船客『ヤアヤア、ヨウヨウ』 と驚きの声を放つにぞ、虎公は船客一同に向ひ、 虎公『皆さま、私は罪の深い、この高砂島に鬼の虎公と綽名を取つた悪人でございます。天網恢々疎にして漏らさず、三笠丸の船中において今此処にまします三人の娘の下人を佯り沢山の金を騙り取つて逃げ去りました。この広い高砂の島は人も多く、再びこの方に会はうとは思ひませぬでしたのに、怖ろしや誑した人と同じアタル丸に乗り合せ、暗夜とて些しも心づかず、吾顔の見えぬを幸ひ、酒の微酔機嫌で知らず知らずに毒を吐かされました。時しも、麗しき松代姫様の御声として誡めの宣伝歌を聞かされた時は、穴にでも這入りたいやうな心地が致しました。十三夜のお月様は、雲間を分けて私の顔をお照し遊ばしたその時の怖ろしさ。忽ちわが友の熊公に大蛇彦とやらが神懸りし給ひ、皆様の知らるる通り、私の旧悪をすつかり摘発かれ、立つても居ても居られなくなつて、今まで犯せし罪の恐ろしさに、心密かに月の大神様に向つて懺悔を致し、堪り兼ねて千尋の海の藻屑となり、罪を贖はむと覚悟を決めて渦まく浪に飛び込みました。この時何処ともなく巨大な亀が現はれて、罪重き私を救うて呉れました。又もやざんぶと身投げの音、何人なるかと月の光にすかして見れば、豈図らむや、親しき友の熊公で、又もやこの亀に救はれたのです。さうして熊公は又もや神懸となり、亀の背にて日に夜に尊き教訓を与えて呉れました。吾々のやうな利己主義の人間が、どうして神の御心に叶ひませう。却つてこの世の汚れとなるから、どうぞ死なして下さいと、又もや海中に身を躍らして飛び込まむとする時、熊公は神懸のままに、私の首筋を掴んで亀の背中に捻伏せ「こら虎公、汝はすでに救はれた、汝の刹那の祈りは真剣だつた。天地神明に感応した。今の汝は今までの悪逆無道の虎公でない、この世を清むる明礬の様なものだ。百石の濁り水も、一握りの明礬を投ずれば清水となる。神の栄光に浴した汝は、これより悪魔の猛り狂ふ泥水の世を、塩となり明礬となつて清めよ、澄ませよ、すべての物に味を与へよ」と厳しく教訓されました末、忝なくも「汝はこれより志芸山津見命と名を賜ふ。カルの国に到つて宣伝使となれ」と、思ひがけなき有難きお言葉を頂き、夢かとばかり吾心で吾身を疑はざるを得なかつたのです。さうして何時の間にか、亀の背中に救はれた吾々二人は、アタル丸に先立つて、無事にこの港に到着して居ました。されど身体は石の如く、首より下はこの通り強直して、身体の自由を失つて居ります。どうか三人の宣伝使様、照彦様、この私の深き罪を許して下さいませ。また船の諸人たちよ、私の改心を鑑として真心に立ち帰り、心から神に祈りを捧げて下さい、幸ひ宣伝使がおいでなされば、神言を教はつて、朝な夕なに神を讃美し、誠の心に立ち帰つて祈願をなされませ』 と諄々として自分の来歴を述べ、かつ改心の尊き事を告げ終るや否や、虎公の身体は霊縛を解かれて再び自由の身となりぬ。数多の船客はこの話の終ると共に先を争うて上陸し、行くゆく神徳話に耽り居たり。 (大正一一・二・一五旧一・一九加藤明子録) |
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霊界物語 | 09_申_松竹梅の宣伝使の南米・中米の旅 | 22 晩夏の風 | 第二二章晩夏の風〔四一五〕 珍山彦や松代姫の一行は埠頭に立ち、群集に向つて宣伝歌を歌ふ。熊公、虎公も後に整列して共に歌ふ。六人の歌ふ声は、アタルの港を科戸の風の塵を払ふ如き光景なりき。 六人『天と地とを造らしし尊き神の貴の子と 生れ出でたる民草は百姓と讃へられ 天と地との神々のこの世を開く神業を 喜び仕へ奉るべき主宰と生れ出づるなり 嗚呼諸人よ諸人よ天と地とに漲れる 裏と表との息を吸ひ生ける御神と現はれし その尊さに顧みて清く身魂を研き上げ 村雲四方に塞がれる暗きこの世を照らし行く 光りとなれよ和田の原潮の八百路のいと広く 光りも清き潮となり世人を清め朽ち果てし 身魂の腐りを締め固めすべてのものの味はひと なりて尽せよ神の子よ神が表に現はれて 千尋の海を乗り越えて潮照りわたる天津日の 光の如く世を照らせこの世を造りし神直日 心も広き大直日神の御稜威に照らされて 身の罪科も消えて行く人の命は朝露の 消ゆるが如く哀れなる果敢なきものと言騒ぐ ウラルの神の宣伝歌飲めよ騒げよ明日の日は 雨か嵐か雷電か一寸先は暗の夜と 醜の教に村肝の心を曇らせ身を破り 根底の国へ落ちて行く遁れぬ罪の種播くな ただ何事も人の世は直日に見直し聞直す 尊き神の御前に祈れよ祈れただ禱れ 祈りの道は天津国栄の門戸を開くなる 神の誠の鍵なるぞ祈れよ祈れただ祈れ 五六七の神は御恵みの御手を伸ばして待ち給ふ 厳の御魂の御力瑞の御魂の御名により この世を造りし国治立の神の命に真心を 捧げて祈れ夜も昼も心一つに祈れよや 誠の神の御眼隠れし処をみそなはす 花の祈りは効果なし隠れて祈れ誠の身 神と人とは睦び合ひ親しみ合ひていと清く 神を敬ひ敬はれ天地の御子と生れたる その本分をば尽すべし尽せよ尽せ神の為め 世人の為めや身の為めに誠をこめて天地に 祈れや祈れよく祈れ祈る心は神心 神に等しき心ぞや神に通へる心ぞや』 珍山彦のくの字に曲つた腰は、何時しか純直になつて、容貌、声音共に若々しく見ゆるぞ不思議なれ。珍山彦の二つの眼は何となく麗しく輝き始めたり。一行はアタルの港を後にして夏木の茂る市中を通り抜け、宣伝歌を歌ひながら、緑樹滴る美はしき玉山の麓に辿り着き、青芝の上に腰打ち掛けて息を休めて居る。虎公、熊公の二人は恐る恐るこの場に現はれ、大地にひれ伏し以前の罪を泣き詫ぶるに、松代姫は気も軽々しく、満面に溢るるばかり笑を湛へて、 松代姫『アヽ虎公様とやら、ようまあ改心して下さいました。今日は妾が宣伝使の初陣、貴方の御改心が出来なかつたならば、妾は最早宣伝使にはなれなかつたのです。嗚呼有難や、野立彦命、野立姫命、木の花姫命、日の出神様』 と合掌し、且つ感謝の祝詞を奏上し嬉し泣きに泣く。 珍山彦『オー感心々々、虎公さま、貴方は最早悪人ではありませぬ。悔い改めと祈りによつて、勝れた尊き神の御柱です。貴方も斯くして神の御恵みに救はれた以上は、御神徳の取り込みは許しませぬ。これから宣伝使となつてあらゆる艱難辛苦と戦ひ、世の人を三五教の教に救ひ、黄泉比良坂の御神業に奉仕して下さい』 虎公『私は改心致してから未だ時日が経ちませぬ、さうして三五教の教理の蘊奥は存じて居りませぬ。宣伝使となれとのお言葉は、吾々の如きものに取つては実に無上の光栄ですが、かやうな事で何うして尊き三五教の宣伝が出来ませうか。せめて二月三月あなた方のお供を許して頂き、色々の教理を体得したその上にて、宣伝使にお使ひ下さいますやうお願ひいたします』 珍山彦『イヤ神の道は入り易く、歩み易く、平地を歩く様なものだ。ただ心から誠を祈り悔い改めるのみだ。今までの罪悪、日々の行為を人の前に悔い改めて、神の救ひを蒙つたその来歴を教ゆれば、どんな身魂の曇つた人間でも、忽ち神の尊き事を覚つて神の道に従ひ、それに引換へ自分の事を棚に上げ、自慢話を列べ立てたりして、人の罪を審いたり罵つたりしてはなりませぬ。神に仕へる身は羊の如くおとなしく柔かく、湯の如き温情を以て総ての人に臨むのが、即ち宣伝使の第一の任務である。腹を立てな、偽るな、飾るな、誠の心を以て日々の己が身魂を顧み、恥づる、悔ゆる、畏る、覚るの御規則を忘れぬやうにすれば、それが立派な神の道の宣伝使である。六ケ敷い小理屈は言ふに及ばぬ、ただ祈ればよいのである。貴方は是より吾らと袂を別ち、カルとヒルとの国境に聳え立つ高照山の谷間に到つて禊をなし、その上カルの国を宣伝なされ、吾らは是にて御別れ申す』 と珍山彦は三人の娘と共に宣伝歌を歌ひながら北へ北へと進み行く。虎公、熊公二人はその影の隠るるまで両手を合はせて伏し拝み、神恩の厚きに感じてや、わつとばかりにその場に泣き伏しにけり。 青葉を渡る晩夏の風は、口笛を吹きながら二人の頭上を撫でつつ通ふ。 (大正一一・二・一五旧一・一九大賀亀太郎録) |
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霊界物語 | 09_申_松竹梅の宣伝使の南米・中米の旅 | 26 巴の舞 | 第二六章巴の舞〔四一九〕 折から高照山より吹き下す嵐の音も、岩戸の大音響も、次第々々に鎮まりて、後には千丈の琴滝の落つる音、淙々と聞ゆるのみ。巌窟の中より又もや竹筒を吹いた様な声がして、 大蛇彦『鹿公よ、この大蛇彦の申す事を確り聴けよ。俄の改心は間に合はぬ。盗人捕へて縄を綯ふやうな事ではまさかの時の間に合はぬぞ。この神の申すこととつくりと腹に容れて、誠の人間に生れ変り、神の教をよく聴いて、世の中の為に力をつくせ。悪の企みは仇花だ。何時までも色は保たぬ。花は栄えぬ、実は結ばぬぞ。短い此世に生れ来て、永い霊魂の命を失ふな。枝葉も茂る常磐木の、何時も青々松心、賢しき心を取直し、穏かな心になつて神に親しみ、人に交はれ。神の教に仇花はない。耳を傾けて心を落付け、聴けば聴くほど神徳がつく。世界の為に誠の為に、苦労を致すは結構だ。決して決して今までのやうな体主霊従の心を出すな。心の底から掃除して、神直日、大直日の神の恵に助けられ、栄え久しき松の世の鑑となれよ。死んでも生きても神の懐に抱かれた人間の身、只神に任せよ。誠心を籠めて祈れよ。素直に改心いたして涼やかな行ひを致せ。世間の人に、鬼よ悪魔よといはれたるその悪名を雪げよ、祓へよ。神の教の誠の風に、高照山の谷の底で、力一杯膏を抜かれ、腸を洗はれ、胆を練られて、始めてこの世の中の悪魔を滅ぼす強い人間となれ。天地の神の深き御心を悟り、遠き近きの隔てなく、暗き明きの分ちなく、世界一目に見渡す神の眼に止まる様の、清き正しき行ひをして呉れ。何事によらず、神の心を心として、世界の為に誠心をつくし、弱き者を助け、神の威勢を世に出して、この琴滝のやうに清き名を四方に轟かせ』 鹿公『いやもう、何から何まで抜目のない、御念の入つた有難き仰せ、骨身にこたへました。果しなき欲心に迷ひ、日々に心を曇らせ、不埒な不都合な事ばかり致して来ました。どうぞ神様の広き厚き御心に宣り直し聞き直して、吾々の深い罪をお宥し下さいませ。アヽもう是でお暇を頂戴いたします』 巌窟の中より、 大蛇彦『マダマダ、マダマダ、帰つてはならぬ』 熊公『オイ、鹿公、もちつと辛抱せ』 鹿公『マアマアマア、未だまだ、アヽ未だまだと仰有るのだ。マアどうどうしたら可からう。イイ加減に幕を切り上げて下さつたら可かりさうなものだがなあ。神様の退引ならぬ言葉に、尾を巻き、舌を巻き、ヘコを巻いた熊公のやうな男が居るものだから、この鹿公までが巻添にあはされたのだ。サアこれから捻鉢巻でもして、世界のために尽さねばならぬワイ』 熊公『鹿の巻添ではなうて、鹿の捩鉢巻に巻舌では余り尊くもなからうかい』 巌窟の中より、 大蛇彦『ミヽヽ身の程を考へて、身分相応の行ひを致し、人に未熟といはれな。醜悪ないことをして見下げられな、蔑視られな。ムヽヽ六ケ敷い事をいふな。今までの様に世間の人に無理難題を吹きかけて、無闇に金を奪るな。悪の報いは恐ろしいぞ。罪障を積むな。盲目滅法に、前後構はずに、無駄の事をしてはならぬぞ。大和魂に立ち帰り何時も動かぬ松心で、雪より清く、花より麗しく、世の中の光となれ、塩となれ。乱暴狼藉致らざるなき、今までの汝の所業や利己主義を捨て、陋劣な手段を止めて吾身を省み、何時までも変らぬ美しい梅の花の様な心を以て神の道を能く守れ。麗しい三五の教を夢寐にも忘れず、日夜怠らず清き祈りを捧げよ。大蛇彦の神が気を付けて置くぞよ。オーオー』 と又もや巌窟の中より、大音響が聞え来る。 熊公、鹿公は巌窟の前に立つて歌ふ。 熊公、鹿公『神の御稜威も高照の山より落つる言霊の 滝の響は淙々と遠く近くに鳴り渡る 堅磐常磐の巌窟に神の使の大蛇彦 木の花姫の分霊此処に現はれましまして 日に夜につきぬ御教を天地四方の神人に 具さに宣らせ給ひつつ流れも清き言霊の 滝に心を洗ひ去り瑞の御霊と現れまして 草の片葉にいたるまで世は平けく安らけく 言問ひやめて神の世を堅磐常磐に治めむと 心を千々に砕かせつ滝津涙を注ぎまし 吾らを救ひ給ふなり嗚呼皇神よ皇神よ 人は尊き神の御子尊き神の生宮ぞ 世は烏羽玉の暗くして塵や芥に穢れたる 霊魂をこれの琴滝に禊ぎ祓ひてすくすくと 直日の神の玉となり暗き谷間を伊都能売の 神の功や高照の山より高く照らすべし 東と西の巌窟に現はれ給ふ皇神の 心は清き琴滝のみづの霊魂の姿かな あゝ願はくばこの水の清きが如く世の人の 霊魂を洗ひ清めませ吾らは人の子神の御子 神と人とは睦び合ひ天と地とは秩序よく 千代万代に変りなく動かぬ御代や松茂る 神世も清き高砂の松の栄えの久しかれ 松の栄えの久しかれ』 と節面白く調子を合せて歌ふ。この歌の面白さに、志芸山津見は釣り出されて、巌窟の中より、手をふり足を躍らせ、竹筒を吹きながら巌窟の前に現はれ来り、吾を忘れて三人三つ巴となりて踊りくるふ。 ここに志芸山津見、熊公、鹿公の三人は琴滝の水に日夜禊を修し、各手分をなして、三五教の教を四方に伝ふることとなりぬ。熊公は石拆の神の活動をなし、鹿公は根拆の神の活動をなして、黄泉比良坂の神業に参加し大功を立てたるなり。 (大正一一・二・一六旧一・二〇土井靖都録) |
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霊界物語 | 09_申_松竹梅の宣伝使の南米・中米の旅 | 31 七人の女 | 第三一章七人の女〔四二四〕 海の内外の分ちなく神の御稜威は照り渡る 常世の浪を隔てたる北と南の大陸の 荒ぶる浪も高砂や間の国の神の森 花咲き匂ふ春山の郷の司の春山彦 心の花も麗しく梅か桜か桃の花 野山も笑ふ春姫のあやどる野辺の若緑 栄えさかえて五月空暗も晴れ行く夏姫の 心の空に照る月は光眩く澄み渡り 秋月姫の真心は紅葉の錦織る如く 東の海を分け昇る月の姿も西の空 空つく山の頂に光も深雪のきらきらと 輝きわたる深雪姫冷酷無惨の世の中に 春の花咲き夏山の緑滴る夫婦が情 神の教もたちばなや非時薫る橘姫 親子五人の真心はいづの身魂の世を救ふ 神の心と知られけりミロクの御代を松代姫 常世の空を晴らさむと春夏秋の露霜を 凌ぐ心の竹笹や風に揉まるるなよ草の 撓むばかりの竹野姫霜の剣や雪の衣 冷たき風に揉まれつつ心の色の永久に 万の花に魁けて咲も匂へる梅ケ香姫の 真心こそは香ばしき花の蕾ぞ麗しき 神の守りの顕著く大江山に現はれし 鬼武彦の御従神神の御稜威も高倉や 空照り渡る白狐の旭月日も共に変身の その働きぞ健気なれ。 鬼武彦は立ち上り、座敷の中央にどつかと坐し、 鬼武彦『さしもに清き癸の、亥の月今日の十六夜の月は早西山に傾きたれば、四更を告ぐる鶏鳴に、東の空は陽気立ち、光もつよき旭狐の空高倉と昇るらむ。月日の駒の関もなく、大江山を出でしより、東や西や北南、世界隈なく世を照らす、日出神の御指揮、常世の国に渡り来て、千変万化に身を窶し、神の経綸に仕へたる、吾は卑しき白狐神、数多の眷属引き連れて、神の大道を守る折、心驕れる鷹取別の、曲の企みを覆へさむと、朝な夕なに心を砕き、旭、高倉、月日と共に、三五教を守護せし、鬼をも摧ぐ鬼武彦が、心を察したまはれかし。八岐の大蛇に呪はれし、大国彦の曲業は、比類まれなる悪逆無道、鷹取別や遠山別、中依別の三柱神は、姫の命を捕へむと、四方八方に眼を配り、醜女探女を数限りもなく配り備ふるその危さ、手段をもつて鷹取別が臣下となり、竹山彦と佯はつて甘く執り入り、常世神王の覚も目出度く、今日の務を仰せつけられしは、天の恵の普き兆、善を助け悪を亡す、誠の神の経綸、ハヽア嬉しやうれしや勿体なや。さはさりながら御一同の方々、必ず共に御油断あるな、一つ叶へばまた一つ、欲に限りなき、体主霊従の邪神の魂胆、隙行く駒のいつかまた、隙を狙つて、三人の月雪花の御娘御を、奪ひ帰るもはかられず、只何事も神直日、大直日の神の御恵みによつて、降り来る大難を、尊き神の神言にはらひ退け、朝な夕な神に心を任せたまへ、暁告ぐる鶏の声、時後れては一大事、吾はこれよりこの場を立去り、鷹取別の館に参らむ。いづれもさらば』 と云ふかと見れば姿は消えて、何処へ行きしか白煙、夢幻となりにけり。 合点の行かぬこの場の有様、春山彦を始めとし、花にも擬ふ七人は、茫然として暫し言葉もなかりしが、春山彦は立ち上り、天を拝し地を拝し、 春山彦『あゝ有難や尊やな、親子夫婦が真心を、神も照覧ましませしか』 と、涙と共に宣伝歌、いと淑やかに歌ひ始むる。七人の女も口を揃へて、 一同『神が表に現はれて善と悪とを立別る この世を造りし神直日心も広き大直日 ただ何事も人の世は直日に見直せ聞き直せ 世の曲事は宣り直せ朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるともたとへ大地は沈むとも 誠の神は世を救ふ誠の神は世を救ふ』 と歌ひながら拍手する声は天地も揺ぐばかりなり。松代姫は立ち上り、 松代姫『天と地とは睦び合ひ四方の民草神風に 靡き伏す世を松代姫ミロクの神の現はれて 親子五人のいつ御魂松竹梅のみつ御魂 三五の月も空高く輝き渡る麻柱の 神の教を伝へむと高砂島を後に見て 常世の国の空寒くカルの都に差しかかる 神の使の宣伝使冷たき風に曝されて 間の国にさしかかる雨か涙か松の露 露のこの身を神国に捧げて間の国境 来る折しも鷹取別の猛き力に小雀の かよわき女の一人旅尾羽打枯らす手弱女を 捕へ行かむとする時に空を焦して降り来る 唐紅の火柱に打たれて逃ぐる曲津見の 消え行く後に唯一人疲れしこの身を横たへて 心私かに宣伝歌歌ふ折しも春山彦の 神の命に救はれて堅磐常磐の巌窟に 来りて見れば懐かしき竹野の姫のすくすくと 笑顔に迎へし嬉しさよ世人の心冷え渡る 中にも目出度き夏姫の日に夜に厚き御仁慈 神の恵のいや深く神の御稜威はいや高く 輝く月雪花の御子春山彦や夏姫の 御恩はいつか忘るべき心はいつか忘るべき 嗚呼有難や麻柱の教を立てし皇神の 御稜威は千代に栄ゆべし功は四方に開くべし』 と感謝の歌を詠みて、元の座に復しける。 屋外には、天空を轟き渡る天の磐船、鳥船の音、天地を圧し、木枯の風は唸りを立てて雨戸を叩くぞ淋しけれ。 (大正一一・二・一七旧一・二一加藤明子録) |
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霊界物語 | 09_申_松竹梅の宣伝使の南米・中米の旅 | 余白歌 | 余白歌 久方の天の八重雲押し開き地に降ります三柱女神よ〈第1章(三版)〉 五月雨の空鳴き渡る郭公血もかれはてて四方にさまよふ〈第2章〉 言へば言へそしらばそしれ今はただ神の御心に任すばかりぞ〈第2章〉 桃の実は分れて三つの魂となり大海原の波に浮べり〈第3章(三版)〉 大空に雷鳥の声かしましく轟く春を山桜散る〈第4章(三版)〉 山桜今を盛りと咲きほこる庭面に立ちて御代を思へり〈第4章(三版)〉 天地の神に仕へて日の御子に赤き心を尽しまつらな〈第4章〉 乱れたる世を治めむと祈るこそわが大本の教なりけり〈第4章〉 待つ甲斐や有馬の山の松ケ枝に澄み渡りたる望の月影〈第4章〉 大神の道踏み分けて進む身にも醜の曲神時じく障りく〈第5章〉 浪狂ひ船は岩根に砕くとも愛善の神は守り給はむ〈第5章(三版)〉 比類なき神の大道を醜草の蔓延り塞ぐ忌はしの代や〈第7章〉 常世往く烏羽玉なせる暗き世の光とならむ吾願ひかな〈第7章(三版)〉 立替の日は迫りたり吾は今立直しすと静にはかりつ〈第7章(三版)〉 立替は手間いらねどもその後の立直しこそ大謨なりけり〈第7章(三版)〉 言ふてよき事は言はずに言はずともよきことを言ふ醜人あはれ〈第7章〉 大本の金門を破る醜の仇は筆と舌との剣なりけり〈第11章〉 宰相の徳なき人の立つ御代は怨嗟の声に閉されて居り〈第16章(三版)〉 外国の醜の教の本城も棟木に生ける白蟻の群〈第17章(三版)〉 日本の神の教を余所にしてからの教に迷ふたぶれよ〈第17章(三版)〉 春深み桜の花は匂ふ夜の月にとどろく鳥船の音〈第17章(三版)〉 松の葉の心になりて世を渡れ細くかたくて風に破れず〈第18章(再版)〉 伸び縮み心の船のままぞかし神の経綸は人にありせば〈第19章〉 春深み桜の花も匂ふ夜の月に轟く鳥船の音〈第19章〉 大神の教の妨げするがなる醜神つかさ助けたきもの〈第19章〉 葦原や悪木醜草蔓延りて誠の道を塞ぎけるかも〈第19章〉 三五の月の教はうば玉の暗路を照らす光なりけり〈第20章(再版)〉 村雲に包まれて啼く吐血鳥一度は聞け忍ぶ思ひを〈第21章〉 まことある神の誠のとりつぎをはやすけに来よ誠ある人〈第23章(三版)〉 富士といふ謎を覚らず高山の動くと見るは愚なりける〈第25章〉 温かき言葉の花は人皆の荒き心を和ぐるなり〈第26章〉 和田の原浮べる八十島八十の国は皆大神の御秀処なりけり〈第29章(三版)〉 常世往く闇の深きに日月の光包みて風荒るるなり〈第30章(三版)〉 いつ迄も誠心を望月の光りかがやく神の大道〈第30章〉 身も魂も神に捧げて進み行く松竹梅の心たふとき〈第30章〉 むすぼれし心の髪をときほどく奇しき教は神の御言葉〈第36章(再版)〉[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました] |
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霊界物語 | 10_酉_黄泉比良坂の戦い | 37 祝宴 | 第三七章祝宴〔四六七〕 鉄彦夫婦は最愛の一人娘清姫の大難を免がれ、かつ国中の禍の種を除かれたるは、全く神の御恵みと、天津祝詞を奏上し、宣伝歌を奉唱し、祝ひの宴を開き、村中数百の老若男女は、上下の区別なく祝ひの酒に酔ひ潰れ、喜んで泣く者、笑ふ者、法螺を吹く者など、沢山現はれ来り、其中より四五の若者は門番の時公を取り巻き、 甲『オイ時公、貴様は随分えらい勢で帰つて来て、途法途轍もない法螺を吹き居つたが、宣伝使様の御歌を聴けば、何だ、貴様は腰を抜かして、吠面かわいたぢやないか。何でソンナ空威張をするのだ』 時公『吠面かわくつて当然だ。ところで吠えぬ犬はないと言ふぢやないか。法螺を吹くのも吠面かわくのも、時公にとつての愛嬌だよ』 甲『また洒落よるナ。貴様ア、昔は時野川と言つて小角力をとつたと言つただらう。サア、俺と一つ、此座敷で角力をとつて見ようかい』 時公『措け措け、危ないぞ。葱の様なヒヨロヒヨロ腰で、鉄のやうな時さまに当るのは、自滅を招くやうなものだ。それよりもアルタイ山に行つた時の実地談を聴かしてやらうかい』 乙『オイ、皆の者、此奴の言ふ事は、いつも法螺ばかりだ。眉毛に唾を付けて聴いてやれ』 時公『ヨー、俺に敬意を表してツハモノと言ふのか。イザこれより時公がアルタイ山の曲神退治の梗概を物語るから確かり聴け。抑々アルタイ山は深山幽谷、これに進み行く者は、虎狼か山犬か、但しは熊か時公さまか……』 甲『オイオイ、初めから吹くなよ。吾々も唐櫃を舁いで、現に登つた連中ぢやないか』 時公『ヤア、縮尻つた。これからが真実の物語だ。そもそも汝ら村の弱虫等に、砦の前で別れてより、暗さは暗し、雨は車軸と降つて来る、風は唸りを立てて岩石も飛び散るばかりの凄じさ。それを物とも致さず時公さまは、三五教の宣伝使石凝姥を従へて、梅ケ香姫を舁ぎつつ巌窟を指して、天地も呑まむず勢に、七八尺も一足に跨げながら、巌戸の前にと立現はれ、ウン、ウーンとばかりに唸つて見せた。流石に剛き蛇掴の野郎も、吾言霊に縮み上つて大なる火の玉と変じ、小さき火玉と諸共に、天に舞ひ昇り、西南の空を指して、アーメニヤに逃げ去つたり、と思つたのは彼が計略、忽ち時公さまの身体に神憑りいたし「ヤア、吾こそはアルタイ山の主神蛇掴であるぞ」と呶鳴り立てた。流石の宣伝使も慄ひ上つて、モシモシどうぞ生命ばかりはお助け下され、コヽこの通り腰の骨が宿替へ致しました、とほざきよるのだ。そこでこの時公さまに憑つて来た蛇掴奴が「ヤア、この時公は赦す積りで居れども、副守護神の蛇掴が赦さない。頭から塩をつけてムシヤムシヤとかぶつて喰つてやらうか」と仰有るのだ。梅ケ香姫は白い手を合して「モシモシ時公さま、どうぞ石凝姥の宣伝使を助けて下さい」と可愛い顔して頼むものだから、時公さまも、副守護神も、俄に憐れを催して「今晩は喰ひ殺す処なれど、汝の優しい顔に免じて赦してやらう」と仰有つた。さうすると宣伝使が平蜘蛛になつて、喜ぶの喜ばないのつて、譬へるに物なき次第なりけりだ』 丙『オツト、時公、待つた。そりやお人が違やせぬか』 時公『人の一人ぐらゐ違つたつて何だ。一寸身代りになつて言つとるのだ』 乙『ハハー、さうすると時公が石凝姥の宣伝使で、その宣伝使が時公としたら真実だな』 時公『そんな種明かしをすると、酒の座が醒める。マア黙つて聴かうよ。それからこの時公が手頃の岩を拾つて、フツと息を吹きかけ、固いかたい石の槌を造つて、鬼の化石の首を片つ端からカツンカツンとやつた。その腕力は炮烙でも砕ぐやうに、首は中空に舞ひ上つて、どれもこれもアーメニヤに向つて飛んで行つてしまつたよ。アハヽヽヽ』 甲『オイ鰤公、チツト勇まぬか。この目出度い酒に、何をベソベソと吠えてゐるのだ』 鰤公は泣き声で、 鰤公『貴様達は嬉しからうが、俺は三年振りでヤツト故郷へ帰つたと思へば、俺の娘は今年の春、蛇掴の悪神に喰はれてしまつたと言ふ事だ。天にも地にも一人よりない娘の顔を見ようと思つて、今の今まで楽しんでゐたのが、噫夢となつたか。夢の浮世と云ひながら、さてもさても悲しい事だワイ。これが泣かずにゐられよか。アーンアーンアーン』 時公『ウアハヽヽヽヽヽ』 鰤公『ヤイヤイ、貴様は何が可笑しい。俺が大切な娘を喰はれて悲しんでゐるのに、笑ふと云ふ事があるものかい。ヤイ、アーンアーンアーン』 時公『ワハヽヽヽヽヽ』 鰤公は四辺かまはず、 鰤公『ウオーンウオーンウオーン』 と狼泣きをする。 甲『オイオイ鰤公、泣くな。貴様とこの娘は、そら、そこに来て居るぢやないか。最前から貴様が帰つたと言ふ事を聞いて、探しまはして居るのだけれど、あまり色が黒くなつたものだから、分らぬので迷つてゐるのだ。時公の奴、貴様を威かしてやらうと思つて、アンナ法螺を吹きよつたのだよ』 鰤公『ウオーンウオーンウオーン、娘、娘、居るか居るか、女房も居るか』 此声に女房も娘も走り来つて、鰤公に取り付き嬉し泣きに泣き立てる。 清姫は立上り、声も涼しく歌ひ始めた。 清姫『年てふ年は多けれど月てふ月は多けれど 日といふ日にちは多けれど世界晴した今日の日は 如何なる吉日の足日ぞや曲津の神に呪はれて 命も既になきところあな有難や三五の 神の教の宣伝使石凝姥の神司 梅ケ香姫の御恵み神の御稜威の輝きて 吾身はここにアルタイの山より高き父の恩 母の恩にも弥勝る神の恵の露に濡れ 湿り果てたる吾袖の涙も乾く今日の空 噫有難やありがたや吾が父母と諸共に 今より心を改めて天教山に現れませる 日の出神や木の花の厳の御魂の御教と 黄金山に現れませる埴安彦や埴安姫の 神の命の御教を麻柱ひまつり祝ぎまつり 地教の山に現れましし神伊邪那美の大神の 鎮まり給ふ月夜見の円き身魂を洗ひつつ この世の暗を照すべし朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるともたとへ天地は覆るとも 三五教を守ります誠の神は世を救ふ 救ひの舟に棹さして浮世の浪を漕ぎ渡り 大海原に棹さして高天原に漕ぎ行かむ 月の光も清姫の清き心の真寸鏡 隈なく光る今日の空光り輝く今日の空 あゝ諸人よ諸人よ返すがへすも三五の 教に魂を研けかし神に身魂を任せかし 祈れよ祈れよ真心を神に捧げて祷れかし 祈るは命の基なるぞ祈るは命の基なるぞ』 と歌ひ終り、賑かに此宴会は閉された。茲に鉄彦は、二人の宣伝使と共に宣伝歌を歌ひながら後事を妻の鉄姫に託し、アルタイ山を右に見て、西へ西へとクス野ケ原の曠野を進み行く。 (大正一一・二・二七旧二・一河津雄録) (全文昭和一〇・三・三〇王仁校正) |
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霊界物語 | 11_戌_コーカス山の大気津姫退治 | 13 転腹 | 第一三章転腹〔四八〇〕 松代姫が、妹の梅ケ香姫に面会したる嬉しさに歌を歌つて居る真最中、表門に現はれたる黒頭巾を被つて手に十手を持つた男、門内の様子を窺ひながら、 甲『オイ俺達もアーメニヤのウラル彦の盤古神王から命令を受けて此処に捕手に向つたのだが、どうも内の様子が怪しいぞ。ぐじやぐじや一人ぢやないらしい、何でも五六人の声がして居る。一人のぐじやぐじや姫でさへも、こんな荒男が五人も出て来な手に合はぬのに、五六人も居るとすれば一寸容易に手出しは出来ない、なんぼぐじやぐじや姫でも一寸ぐじやりとは仕居らぬかも知れぬ』 乙『貴様何を吐すのぢや、ぐじやぐじや姫ぢやと云ふ事があるか、くしやくしや姫だ』 丙『馬鹿云ふな、九尺姫と云ふのだ、貴様のとこの嬶も九尺二間の破れ家に、棟つづき小屋に暮して、九尺々々吐かして居るが、マアあンなものだらうかい』 丁『さあ、くしやくしやと悪口を云うと、今頃にや、貴様のところのお鍋が、くしやんくしやんと、くしやみ姫になつて居るかも知れないぞ』 戌『分らぬ奴だなあ、杓姫と云ふのだ、杓子のやうな顔をして居るから杓姫だよ、さてもさても汲み取りの悪い奴だ。貴様の様な奴に相手になつて居ると癪に触つて仕様がない、いづれ何処かの飯盛女でもやとつて来て嬶にしやがつたのか、誰やらの作つた川柳にも「飯盛りをしてるお鍋の杓子顔」と云ふ事がある、マアそんな代物だらう』 甲『馬鹿言へ、ぐじやぐじや姫は天下の美人だと云ふ事だ。其奴に睨まれたが最後、どんな奴でも、ぐじやぐじやになつて仕舞ふ。それで、ぐじやぐじや姫と云ふのだ。オイオイ一寸聞いて見ろ、三杯酢にするとか、茹でて喰ふとか、美味からうとか、言つて居やがるぞ。貴様愚図々々しとると、ぐじやぐじや姫の化女に喰はれて仕舞ふか分らぬぞ』 丙『オイ、臆病風に誘はれて、大事の使命を果せない様な事が出来たら、それこそ帰つて上役に何と言つて噛みつかれるか分りやせぬ』 丁『此方で噛みつかれるか、帰んで噛みつかれるか、どちらにしても助かりつこはない、前門の狼、後門の虎だ。一つ肝玉を出して乱入に及ぶとしようかい』 戌『オイ、乱入は結構だが、彼奴ぐにやぐにや姫だから、ニユーだぞ』 甲『何がニユーだい』 戌『それでもニユーはニユーだ。古狸の化入道だ。八畳敷の睾丸を投網をうつたやうにパーツと被せやがつたら、それこそたまつたものぢやない。直喰はれて仕舞つて白骨になつて曝されるのだ。それだからよく言ふ事だ。晨の睾丸夕の白骨だ』 乙『厚顔は貴様の事だ。本当に鉄面皮な奴だから、かういふ時にや貴様先導にや都合がよい。愚図々々せぬと、サアサア貴様から這入つたり這入つたり。オイ松公、梅公、何を愚図々々しやがるのだ。オヂオヂして居ると今度は竹さまが拳骨をお見舞申すぞ』 門内にて時公は此声を聞き、 時公『何だ、失敬な奴だ。松代姫さまを松公だの、梅ケ香姫さまを梅公だの、竹公だのと馬鹿にして居やがる。愚図々々吐かすと摘み潰してやるぞ』 梅ケ香姫『コレコレ時さま、お前さまはそれだから困る。二言目には摘み出すなぞと、そんな乱暴はやめて下さい。人が鼻摘みして厭がります』 時公『鼻摘みしたつてあんな事言はして置いて男甲斐もない、黙つて居るのが詮らぬぢやありませぬか。つまり、要するに、即ち、狐に魅まれたやうなものですな。兎も角一寸門口を覗いて来てやりませうか』 梅ケ香姫『覗いて来るのも宜敷いが、温順しくして相手にならぬやうにしなさいや。神様のやうに誠の道の方へ摘み上げてやるのは宜敷いが、鷲が雀を抓んだやうな乱暴な事をしてはいけませぬぜ』 時公『ハイハイ、承知致しました。摘み上げてやります、かみさまの方へ』 と云ひながら肩を揺つて門口に向つた。 時公『サア、梅ケ香様のお許しだ。摘み上げるなら、かみの方へだと云ふ事だ。俺の髪の上まで掴み上げてやらうかい。最前から腕が鳴つてりうりういつてた所だ。マアこれで溜飲が下がると言ふものだ』 と独語ながら門をガラリと開けた。五人の捕手は十手を握つた儘、不意の開門に鳩が豆鉄砲をくつたやうな面構へして、時公の巨大な姿を凝視めて居る。 時公『ヤイヤイ、古今独歩、天下無類、絶世の美人孔雀姫様が御門前に立つて、愚図々々吐かすは何奴なるぞ。その方はウラル教の捕手と見える。其十手は何だツ。此処へ持つて来い。そんな苧殻のやうな細い奴を持ちやがつて、百本でも千本でも一緒にかためてぽきぽきと折つて仕舞つて遣らうか。オイコラ、蛇掴みのやうに貴様も掴み上げてやらうか』 松公『ヤア、この方は貴様の云ふ通り、ウラル教の捕手の役人だ。尋常に手を廻せ』 時公『この方は、アルタイ山の蛇掴みの親分、大蛇掴みだ。サア尋常に目をまはせ。ヤア、言はんさきに目を眩しやがつて、倒れて居やがる。腰の弱い奴、いや目の弱い奴だ。改心致さぬとまさかの時にキリキリ舞を致して眩暈が来るぞよ』 かかる所へまたもや勝公がやつて来た。 勝公『オヤ、此奴ア面白い、黒ン坊、屁古垂れ、猪口才な、貴様は捕手の役人らしいが、早く捕へて帰らぬかい。愚図々々致すと神の道へ掴み上げるぞ。こんな弱い奴には、俺のやうな豪傑は喰ひ足らぬ。八公と鴨公に茹で上げさせて噛んで喰はしてやろかい。大分豪い寒じでさむがつて居るのだから、茹でて、天麩羅にして喰つたら、ちつとは暖まるかも知れぬなア。時さま、序に一人づつ摘み上げて、孔雀姫様にお目にかけたらどうだらう』 時公『それや面白い。俺は四人の奴を両の手で掴んで、かみの方へ掴み上げるから、貴様一人だけ摘み上げて来い』 と言ひながら、強力無双の時公は四人を一時に両手に握り、頭上高く捧げながら、 時公『ヤア、門が邪魔になる。困つたもんだ、小さい門だ、低い門だ、おまけに此奴は弱いもんだなア』 と言ひながら、ピシヤリと門を閉めた。閉めた拍子にガタリと枢はおりた。勝公は外から、 勝公『オイオイ、開けぬか開けぬか。此奴は中々手強い奴だ。オイオイ、助け船だ』 時公『オイオイ、八、鴨、勝公が外で泡を吹いて居る。お前も加勢に往つて来い』 八、鴨『よし来た』 と二人は枢を開けて表門に駆け出した。やつとの事で一人の捕手を担いで這入つて来た。 時公『サアサア、捕手のお方、躓く石も縁の端だ。マア一杯御神酒を頂戴なさい。決して毒は入つて居はしない、私が毒味をして見せる』 と言ひながら、神前の神酒をおろし、 時公『お先に失礼』 と云ひながら、自分が一杯ぐつとやり、 時公『サア、この通りだ。頂いた頂いた』 松公『これはこれは思ひがけない。殺されるかと思つたら、御神酒を頂くのか。何より好物だ』 竹公『夢に牡丹餅だ』 梅公『地獄で酒だ。サア春公、秋公、貴様も一杯頂戴せい』 松公『ヤア、これはこれは酌姫様』 鴨公『お生憎此処には酌姫は居ない、この鴨さまがついで上げませうかい。鴨の肴で一杯飲つて、後は宣伝歌の珍しい歌を聞かして貰ふのだ』 竹公『思ひがけない御馳走に預かり、命を助けて貰つて有難う御座います。ヤア、もう捕手の役人では気が利かない、今日からすつかり廃業しませう』 時公『捕手の役人はお前の天職だ。それをやめたら何をする積りだ』 竹公『私は元来の芸無し、これと云ふ仕事もありませぬ』 時公『さうだらう、此世の中に何もせず暮す奴は穀潰しだ、娑婆塞ぎだ。捕手の役人はお前の天職だからやめてはいかぬ。俺をアーメニヤ迄連れて帰つて、お前の手柄にせい』 松公『メヽ滅相な。貴方のやうなお方を連れて帰らうものなら、それこそ大騒動が起ります』 時公『ハヽヽヽヽ、何と弱い捕手だなア』 梅公『アヽ、何と仰有つても捕手の役は嫌になつた。何時命が無くなるか分つたものぢやない。仕事の多いのに人の厭がる捕手の役人になるとは、何たる因果の生れつきだ』 とそろそろ酒が廻つて泣き出す。 勝公『ウハヽヽ、面白い面白い。泣き上戸が現はれた』 時公『今お前は命が危いから、捕手の役を止めると云つたが、さう無茶苦茶に死ぬものではない。生くるも死ぬるも皆神様の思召だ。なんぼ死なうと思つても神様のお許しが無ければ死ぬ事は出来ぬ。死ぬまい死ぬまいと思つても神様が幽界へ連れて行くと仰有つたら酒を呑みながらでも死なねばならぬぞ。飯食ふ間もどうなるか分らぬ人の命だ。何事も神様にお任せして其日の勤めを神妙に勤めるがよからう』 茲に五人の捕手は意外の饗応に感じ、いづれも三五教の熱心なる信者となつた。 松代姫の一行は寒風に梳られながら、喜び勇んで雪の道を、ザクザクと進み行くのであつた。 (大正一一・三・一旧二・三加藤明子録) |
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霊界物語 | 11_戌_コーカス山の大気津姫退治 | 17 大気津姫の段(三) | 第一七章大気津姫の段(三)〔四八四〕 『故殺さえたまへる神の身に生れる物は、頭に蚕生り、二つの目に稲種生り、二つの耳に粟生り、鼻に小豆生り、陰に麦生り、尻に大豆生りき。故是に、神産巣日御祖命茲を取らしめて、種と成し賜ひき』 『殺さえたまへる』と云ふ事は、大神の御法則に違反せる、汚穢なる衣食住の方法を根本的に撤廃せられたと云ふ意義であります。 『神の身に生れる物は頭に蚕生り』と云ふ事は、頭は総て国民の上に立つ治者の謂である。蚕は言霊学上、 カは、蒙せ、覆ふ活用であつて衣服を意味する、また光輝き、晴れ明けく、気体透明の言義である。 イは身に従ひ成る也、身の足して動かす也。これも衣服の活用である。 コは天津誠の脳髄であり、子の活用である。故に万民の上に立つべき役員は、第一に蚕の如く其身を空しうし、犠牲となつて国家の為めに尽さねばならぬ。 天理人道を明かにし、神智神識を感受し、以て上は一天万乗の大君に純忠の至誠を捧げ、下は人民を愛撫し、以て天津誠の実行者たるの覚悟を持ち、政治は完全無欠、錦繍綾羅の神機を織出すてふ、天下経綸の大道に奉仕するに至る瑞祥の世態を称して、『頭に蚕生り』と謂ふのであります。 『二つの目に稲種生り』と云ふ事は、目は正中を司どるものである。世界の一切を見極め、善悪美醜を判明する神機である。二つの目とは左右両眼の意義で、左は上を代表し、右は下を代表する目である。万有一切皆この目の無いものはない。然るに上流社会は上流のみの事を知り、下流社会は下流のみの事より見ないとすれば、所謂片目である。現代は大抵皆片目の政治家や教育家計りであつて、二つの目の活用が足りないので、天下は益々無明、暗黒、常暗となつて来るのである。また顕幽両界を達観し得る人は、所謂二つの目が照るのであります。 稲種の イは成就る言霊で、大金剛力であり、基である。 ナは万物を兼ね統る言霊にして、能く行届く事である。 イナはまたイネと云ひ、五穀の主であり、眼である。イネの霊返しは餌となる、また米の返しはケとなる。大気津姫の気である。またよねとも云ふ。よねの返しもまた餌であり、糧の返しはケとなる。人の眼は夜分に寝るを以て夜寝[※校定版・八幡版ではここに括弧書きで(米)という文字を入れている。]と云ひ、寝るを以て、寝[※校定版・八幡版ではここに括弧書きで(稲)という文字を入れている。]ると云ふ。人の眼に似て形小なるが故に、小目(米)と云ふのも、言霊学上面白き解釈である。 凡て穀食を為す時は、心血自然に清まりて、明けく、敏く、顕幽を達観し、上下を洞察し、以て天下の趨勢を知悉し得るのである。故に万民の頭に立つべき治者は、心血を清め、神智を備へて、天下に臨まねばならぬのである。是の原理天則が、頭に立つ人々に判つて来て、汚穢の食を廃し皇国固有の正食に改め、以て善政良治を布くに致る事を、『二つの目に稲種生り』と謂ふのであります。 また宗教家なれば、第一に顕幽一本の真理を達観して、生死往来の神機を知悉し、万民を教化するに致りたるを『二つの目に稲種生り』と謂ふのであります。顕幽一致、上下合一、陰陽和合、君民和平、内外親睦、神人合一の境地に入れる真相を称して、また『二つの目に稲種生り』と謂ふ事が出来るのであります。 『二つの耳に粟生り』と云ふ事は、二つは前に述べた通り、左右の意義であり、左は上流、右は下流社会なる事は勿論である。耳の言霊の約りはミである。ミは農工商の三種であり、実業であり、形体具足の言義であり、身体である。要するに、一切の生産機関を総称して耳と云ふのである。故に左は資本家や、大地主を意味し、右の耳は労働者や、小作人を意味するのである。また耳は一方よりその活用を調ぶる時はキクと曰ふ事が主眼である。手が利く、耳が利く、目が利く、鼻が利く、口を利く、腹が利く、舌で酒を利く、腰が利く、これを八ツ耳と曰ふのである。また霊的方面に於ても同一に、神眼、神耳、天言等やはり八ツ耳である。斯の如く霊体共に完全無欠なる、幽顕十六耳の意義を取りて十六菊の御紋章を制定されたのは最も深遠なる御慮の御在します所である。神八井耳命、彦八井耳命、忍穂耳命、または聖徳太子を八ツ耳命と申すなぞは、みな前述の意義から、名付けられたものであります。 『粟生り』の アの言霊は大物主であります、地であり、顕体であり、大本である。 ハの言霊は、延び開く也、花実也、数多き也の活用である。 要するに『粟生りき』と云ふ意義は、物質、霊界共に円満に発達し、国利民福を招来し、鼓腹撃壤の聖代の、出現せし事であります。御神諭に、 『今の人民は盲と聾計りであるから、何程結構な誠を為て、眼の前に突出してやりても一つも見えず、一寸先は真の暗であるぞよ。神は世界を良く致して、上下揃へて人民を歓ばして安楽な神世に致して、花を咲かし、実を結ばして、松の世、五六七の神世に立直して与らうと思うて、明治二十五年から、色々と申して、呼ばはりて聞かしても、耳が蛸に成りてをるから、狂婆が何を吐すと申して、我身の足下に、火が燃えて来て居りても、少つとも耳に入れぬが、見て居じやれよ、今に盲が目が明き、聾が耳が聞える様に成りて来るが、さうなりてから、俄に周章て神の申す事を聞く気に成りても、モウ間に合ぬぞよ。聞くなら今の中に聞いて置かぬと、後の後悔間に合はぬぞよ、眼も鼻も開かぬ如うな、惨い事が今に出て来るが、神の申す誠の警告を聴く人民は、世界にないぞよ、困つたものであるなれど、是を説いて聞かして、耳へ入れさして置かねば、神の役が済まぬから、嫌になる所まで、クドウ気を付けるから耳の穴を能く掃除致しておくが良いぞよ』云々 とあるのは、耳に粟を生り出でしめむとの、神様の深き思召しであります。 『鼻に小豆生り』と云ふ事は華美なる衣服を改め、実務に適する制服を改定されると云ふ事である。大臣は大臣の服装、小臣は小臣、神職は神職、僧侶は僧侶、軍人は軍人、農工商は農工商の制服を定め、主人は主人、僕婢は僕婢の制服を一定し、一見してその官吏たり、宗教家たり、農夫たり、主人たり僕婢たり、労働者たる事の、弁別し易き服装を制定さるる事を『鼻に小豆生り』と曰ふのであります。現代の如く服制に厳格なる定規なく、神職や僧侶なぞが洋服を着用したり、僕婢が紋附羽織を着流し、絹の足袋を穿ち大道を憚らず濶歩するが如きは、実に不真面目の至りにして、亡国の因となるのである。アヅキのアは光り輝く事で、照妙、和妙なぞの、高貴なる織物であります。アは顕誉の地位に在る真人である。故に大臣とか、神官神職とかの、着用すべき衣服である、その他の臣民の着用すべきものでないのだ。絹物は着ぬもの也との滑稽語は、実際の戒めとして服膺すべき言葉である。アヅキのヅキは着キと云ふ事であつて、治者たる大臣高官および神官神職に限りて着用すべきものであると云ふ事を、決定されたのを『鼻に小豆生り』と曰ふのであります。鼻は人体に取つては呼吸の関門であつて、人民生息の主要点である。故に一国の安危を背負つて立てる国家の重臣を鼻と云ふのである。神諭にも、 『此の事成就致したら、艮の金神の鼻は、カラ天竺は愚、天まで鼻が届くぞよ』 と予告されてあるのも、世人が尊重畏服するとの神意である。世俗が一つの功名手柄を顕はしたる時に於て、鼻が高うなると謂ふのも人の上に卓絶したる意義である。今日のやうに国家の重臣や、清浄なる神明に奉仕する神官等が、小豆を着用せずして、獣畜の毛皮を以て作れる、衣服を着用するなぞは、実に天則違反の行為であります。 『陰に麦生り』と云ふ事は、西洋人は麦を常食とすると云ふ意義であります。日本及其他の東洋諸国は陽の位置にある国土であるから、陽性の食物たる米を常食とするのが、国土自然の道理である。西洋は陰の位置にある国土であるから陰性の食物たる麦を常食とするのが国土自然の道理である。故に西洋人は麦で作つたパンを食ひ、東洋人殊に日本人は米食をするのが天賦の本性である。然るに、今日の日本人は上流に成るほど西洋崇拝者が多く現はれ、文明人らしき顔付をして、自慢でパンに牛酪なぞを附けて無味ものを美味さうに、平気で喰つて居るが、麦は日本では、牛馬の喰ふべき物と決定つて居るのである。故に日本人は米を喰ひ、陰所たる西洋に生れた人種は、麦を喰ふことに成るのが『陰所に麦生り』と云ふのであります。 『尻に大豆生りき』と云ふ事は、同じ日本国でも北海道などは、日本国の尻である。大豆は脂肪に富んだ植物であるから、寒い国の人間は、如何しても大豆類を食する必要がある。大豆を喰つて居れば、寒い国でも健康を害すると曰ふ如うな事はない。併し是は大豆計り喰ふと曰ふ意味では無い。米と混じたり或は炙つたり、粉末にして喰へば良いのである。北海道に後志と云ふ国名のあるのも尻の意味であります。筑後の国をミチノシリと訓むのも、国の端と云ふ意味である。要するに、此の段の古事記御本文は、第一に各自の国土に応じたる食制を、神界より定め玉うたのであります。 『故、是に神産巣日御祖命、茲を取らしめて、種と成し賜ひき』高御産巣日御祖神は霊系の祖神であり、神産巣日御祖神は、物質界体系の祖神である。『茲を取らして』と云ふ事は、前記の御本文の御食制を、採用されてと云ふ事で、素盞嗚尊の食物に関する御定案を、直に御採用遊ばした事であります。『種と成し玉ひき』と云ふ事は、この食制を基として、天地改良の神策を樹立し玉うたと云ふ事であります。故に人間は此の天則に違反して、暴食する時は大切なる神の宮居たる身体を毀損するやうな事になつて、天寿を全うする事が出来ぬやうに成るのであるから、人間は日々の食物には、充分に注意を払ふ可きものであります。 (大正九・一・一七講演筆録谷村真友) |
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霊界物語 | 11_戌_コーカス山の大気津姫退治 | 23 保食神 | 第二三章保食神〔四九〇〕 黄泉比良坂の戦に、常世の国の総大将大国彦命、大国姫命その他の神々は残らず日の出神の神言に言向和され、悔い改めて神の御業に仕へ奉ることとなつた。其為め八岐の大蛇や、金毛九尾の悪狐、邪鬼、醜女、探女の曲神は暴威を逞しうする根拠地なるウラル山に駆け集まり、ウラル彦、ウラル姫を始め、部下に憑依して其心魂を益々悪化混濁せしめ体主霊従、我利一遍の行動を益々盛んに行はしめつつあつたのである。悪蛇、悪鬼、悪狐等の曲津神はウラル山、コーカス山、アーメニヤの三ケ所に本城を構へ、殊にコーカス山には荘厳美麗なる金殿玉楼を数多建て列べ、ウラル彦の幕下の神々は、茲に各根拠を造り、酒池肉林の快楽に耽り、贅沢の限りを尽し、天下を我物顔に振舞ふ我利々々亡者の隠処となつてしまつた。かかる衣食住に贅を尽す体主霊従人種を称して、大気津姫命と云ふなり。 大気津姫の一隊は、山中の最も風景佳き地点を選み、荘厳なる宮殿を建設する為め、数多の大工を集め、昼夜全力を尽して、宮殿の造営に掛り、漸く立派なる神殿を落成し、愈神霊を鎮祭する事となりぬ。流石のウラル彦夫婦も、天地の神明を恐れてや先づ第一に国魂の神として、大地の霊魂なる金勝要大神を始め、大地の霊力なる国治立命及び大地の霊体なる素盞嗚命の神霊を鎮祭する事となつたのである。数多の八王神は競うて稲、麦、豆、粟、黍を始め非時の木の実、其他の果物、毛の粗きもの、柔きもの、鰭広物、鰭狭物、沖津藻菜、辺津藻菜、甘菜、辛菜に至るまで、人を派して求めしめ、各自に大宮の前に供へ奉る事とした。此宮を顕国の宮と云ふ。此祭典は三日三夜に渉り力行された。数多の八王神、ヒツコス、クスの神達は、祝意を表する為め、酒に溺れ、或は歌ひ、或は踊り舞ひ狂ふ様、恰も狂人の集まりの如き状態なりき。 顕国の宮は祭典始まると共に、得も言はれぬ恐ろしき音響を立てて唸り始めたり。ウラル姫は全く神の御喜びとして勇み、酒宴に耽りつつあつた。八百有余の八王神を始め、幾千万のヒツコス、クスの神は、 『サアサアヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ酔うてもヨイヂヤナイカ 泣いてもヨイヂヤナイカ笑つてもヨイヂヤナイカ 怒つてもヨイヂヤナイカ死んでもヨイヂヤナイカ 倒けてもヨイヂヤナイカお宮が唸つてもヨイヂヤナイカ 天地が覆つてもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ山が割れてもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ 三五教でもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカウラル教でもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ 勝てもヨイヂヤナイカ負けてもヨイヂヤナイカ 何でもヨイヂヤナイカ三日のお祭り四日でも、五日でも 十日でもヨイヂヤナイカ人はどうでもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ 自分丈けよければヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカウラルの教が三千世界で 一番ヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカヨイヤサのヨイトサツサ 飲めよ騒げよ一寸先や暗よ暗の後には月が出る 月はつきぢやが運の尽き尽きてもヨイヂヤナイカ 亡んでもヨイヂヤナイカ倒せばヨイヂヤナイカ 三五教の宣伝使』 と無我夢中になつて、昼夜の別なく数多の八王神、ヒツコスやクスの神等に、数多の邪神が憑つて叫び廻る。八王神の綺麗な館も、数多のヒツコスに土足の儘踏みにじられて踊り狂はれ、襖は倒れ、障子は破れ、戸は壊れ、床は落され、敷物は泥まぶれ、着物は勝手気儘に取出され、着潰され、雪解の泥中に着た儘酔つて転げられ、食ひ物は食ひ荒され、宝は踏みにじられ、大乱痴気騒ぎが始まつた、されどもウラル姫を始め数多の八王神は、何れも悪魔に精神を左右せられて居るから、皆好い気になつてヒツコス、クスの神と共に手をつなぎ踊り狂ふ。顔も着物も泥まぶれになつて居る。顕国の宮は刻々に鳴動が激しくなつて来た。ウラル姫は泥まぶれの体躯に気が付かず、忽ち顕国の宮の前に進み、 ウラル姫『コーカス山に千木高く大宮柱太しりて 仕へ奉れる神の宮顕しき国の御霊たる 速須佐之男の大御神国治立の大御神 金勝要の大神の三魂の永遠に鎮まりて 神の稜威のアーメニヤコーカス山やウラル山 ウラルの彦の御教を天地四方に輝かし 我世を守れ何時迄も此世を守れ何時迄も 顕しの宮の唸り声定めし神の御心に 叶ひ給ひし御しるしか日々に弥増す唸り声 ウラルの姫の功績の天地に輝く祥兆や 嗚呼有難や有難や天教山や地教山 黄金山や万寿山是れに集へる曲神の 曲の身魂を平げてウラルの神の御教に 心の底よりまつろはせ天の下をば穏かに 守らせ給へ三柱の吾大神よ皇神よ 神の稜威の幸はひて遠き神世の昔より 例もあらぬコーカスの山に輝く珍の宮 神酒は甕高しりて甕の腹をば満て並べ 荒稲和稲麦に豆稗黍蕎麦や種々の 甘菜辛菜や無花果の木の実や百の果物や 猪や羊や山の鳥雉や鵯鳩雀 沖津百の菜辺津藻菜や種々供へし供へ物 心平らに安らかに赤丹の穂にと聞し召せ 神が表に現はれてウラルの神の御教を 堅磐常盤に守れかし善と悪とを立別て 此世を造りし国の祖国治立の大神の 神の御前に四方の国百の民草悉く コーカス山に参ゐ詣でウラルの神の御教に 潮の如く集ひ来て我世の幸を守れかし アヽ三柱の大神よアヽ三柱の皇神よ 心許りの御幣帛を捧げて祭るウラル彦 ウラルの姫の真心を良きに受けさせ賜へかし 良きに受けさせ賜へかし』 と一生懸命神前に拝跪して祈つて居る。此時数多の八王神、ヒツコス、クスの神は神殿に潮の如く集まり来り、又もや、 『ヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカお宮はどうでもヨイヂヤナイカ 酒さへ飲んだらヨイヂヤナイカ飲めよ飲め飲め一寸先や暗よ 後はどうでもヨイヂヤナイカ暗の後には月が出る 運の尽でもヨイヂヤナイカこの世の尽でもヨイヂヤナイカ ウラルの姫の泥まぶれ笑うて見るのもヨイヂヤナイカ 上でも下でもヨイヂヤナイカ八王でもビツコスでもヨイヂヤナイカ 三五教でもヨイヂヤナイカウラル教捨ててもヨイヂヤナイカ お宮が唸つてもヨイヂヤナイカ潰れた所でヨイヂヤナイカ お酒が一番ヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ』 と数千の群衆は口々に酔ひ潰れ、泥にまぶれ、上下の区別なく飛廻り跳狂ひ踊り騒いで居る。かかる所に神殿さして悠然と現はれ出でたる三五教の宣伝使、松竹梅を始めとし、石凝姥神、天之目一箇神、淤縢山津見神、時置師神、八彦神、鴨彦神は口を揃へて、 『神が表に現はれて善と悪とを立別ける 此世を造りし神直日心も広き大直日 只何事も人の世は直日に見直し聞直せ コーカス山に集まりしウラルの姫を始めとし 百の八王神、ヒツコスやクスの神まで皇神の 御水火に早く甦り醜の身魂を立替へて 大気津姫の曲業を直日に見直せ宣り直せ 神は我等と倶に在り醜の曲津の亡ぶ時 八十の醜女の亡ぶ時八岐大蛇や曲鬼や 醜の狐や千万の曲の身魂を皇神の 神の御前に追ひ出し眼を醒せ目を開け 顕しの国の大宮に鎮まり給ふ三柱の 神の怒りは目の当り天地に響く唸り声 酔を醒せや目を覚ませ胸の帳を押開けて 空に輝く朝日子の日の出神の真心に 復れよ帰れ諸人よウラルの彦よウラル姫 神は汝を救はむと千々に心を砕かせつ 我等を遣はし給ふなり我等は神の御使 三五教の宣伝使宣伝万歌の言霊に 霊の真柱立直し一時も早く立替へよ 身魂の立替へ立直し体主霊従の立直し 大気津姫の行ひを今日を限りに立直せ 天は震ひ地は揺ぐ山は火を噴き割るるとも 誠の神は誠ある汝が身魂を救ふらむ 一日も早く改めよ一日も早く詔り直せ』 と言葉爽かに歌ひ終つた。神殿の鳴動は此宣伝歌と共にピタリと止んだ。ウラル姫の神は忽ち鬼女と変じ、雲を呼び、風を起し、雨を降らし四辺を暗に包み、八王神、ヒツコス引連れて、天の磐船、鳥船に其身を任せ、アーメニヤ、ウラルの山を指して雲を霞と逃げ散りたり。松竹梅を始め宣伝使一同は、改めて神殿に祝詞を奏上し、神徳を感謝する折しも此場に現はれた五柱の神がある。見れば鬼武彦、勝彦、秋月姫、深雪姫、橘姫であつた。何れも皆鬼武彦が率ゐる白狐の化身である。流石奸智に長けたる金毛九尾の悪狐も、白狐の鬼武彦、旭、高倉、月日の神力には敵はず、ウラル姫と共に此場を捨てて逃げ去つてしまつたのである。 茲に石凝姥神、天之目一箇神、天之児屋根神は、高倉以下の白狐に向ひ顕国の宮に捧げ奉れる稲、麦、豆、黍、粟の穂を銜へしめ、世界の各地に播種せしめたり。 国治立命、神素盞嗚命、金勝要の三柱を祭り、顕国の宮を改めて飯成の宮と称へたり。宮の鳴動したる理由は、何れも体主霊従の穢れたる八王神の供物なれば、神は怒りて之を受けさせ給はざりし為めなり。 白狐は五穀の穂を四方に配り、世界に五穀の種子を播布したり。これより以前にも五穀は各地に稔れども、今此処に供へられたる五穀の種子は勝れて良き物なりし故なり。 今の世に至るまで白狐を稲荷の神と云ふは此理に基くものと知るべし。 (大正一一・三・三旧二・五谷村真友録) |
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霊界物語 | 11_戌_コーカス山の大気津姫退治 | 29 千秋楽 | 第二九章千秋楽〔四九六〕 顕国玉の宮の祭典は、恙なく神霊鎮座せられ、次で男女三組の結婚式は行はれた。石凝姥神は此祭典慶事を祝すべく立つて歌ひ始めたり。 石凝姥神『東雲の空別昇る朝日子の光眩ゆき神の道 西北南東彦石凝姥の宣伝使 黄金山を立出でて栗毛の駒にウチの河 鞭ち渡る膝栗毛クス野ケ原や明志湖 雪積む野辺を踏みさくみ言霊清き琵琶の湖 渡りて此処に梅ケ香の姫の命や説明可笑 神の命と諸共に雲に抜き出たコーカスの 山の砦に来て見れば大気津姫と現れませる 喰物着物住む家に奢り極めし此深山 ウラルの姫に服従ひし百の八王ヒツコスや 酒の神まで寄り集ひ顕の国の宮の前 三柱神を斎ひつつ饗宴の酒に酔痴れて 節も乱れし酒歌を唄ひ狂へる折柄に 松竹梅の宣伝使天之児屋根や太玉の 神の命を始めとし月雪花や目一箇の 神諸共に宮の前来りて詔れる言霊に ウラルの姫は雲霞後を暗ましアーメニヤ 大空高く逃げて行く此処に再び大宮の 庭を清めて厳かに三柱神の祭典 仕へ奉りて太祝詞称へ奉りて頼母しく 直会神酒に村肝の心を洗ひ清めつつ 歓び尽す折柄に神素盞嗚の大神の 許しの儘に松竹の姫の命の御慶事 天之児屋根や太玉や天之目一箇神司 永遠に結びし妹と背の珍の御儀式ぞ畏けれ アヽ三夫婦の神達よ神の恵みをコーカスの 山より高く琵琶明志湖の底より猶深く 授かりまして幾千代も色は褪せざれ万代も 色はさめざれ押並べて五六七の御代の楽しさを 三夫婦共に松代姫心も開く梅ケ香の 姫の命や世に猛き曲言向けし竹野姫 北光神や高彦の神の御稜威を天が下 四方に広道別の神此世を包む烏羽玉の 雲霧四方に掻分けて神の教を中津国 海の内外に弘めかし神が表に現はれて 須弥仙山に腰を掛け此世を守り給ふごと 心の駒の手綱執り神の御教を過たず 安の河原の永久に流れて清き玉の湖 海より深き父母の恵みに勝る神の恩 山より高き神の稜威コーカス山はまだ愚 天教地教の山よりも功績を高く現はして 神の御国の太柱千木高知りて仕へませ 日は照る光る月は盈つみづの身魂の三巴 甍も清く照る如く遠き近きの国原を 救うて通れ汝が命我れは石凝姥の神 堅磐常盤に村肝の心固めて皇神の 御稜威を広く増鏡鏡の面を見はるかし 三人夫婦の行末を守らせ給へ百の神 心尽しの有丈を傾け願ひ奉る 百代も千代も万代も松の操の色褪せず 枯れて松葉の二人連力をあはせ村肝の 心を神に任せつつ仮令山川どよむとも 天津国土揺ぐとも青山萎れ海河は 涸れ干す事のあるとても永遠に変るな妹と脊の 産霊の道の何時までも鴛鴦の契の何処までも 百年千年万歳万の花に魁けて 薫る梅ケ香姫の如色香ゆかしく語りませ 色香ゆかしく渡りませ恋しき妻に手を引かれ 黄金の橋を渡会の松竹梅の姉妹が 揃ひも揃ふ今日の宵宵に結し喜悦は 神の守護の弥深き千尋の海の底までも 届かざらめや何処迄も神の恵みの尊けれ 神の恵みの尊けれ』 と歌ひ終つて元の座に就きぬ。 時置師神と現れたる鉄谷村の時公[※後の杢助。第26巻第8章参照]は、又もや立つて祝ひの歌を詠み始めたり。その歌、 時公『三五教の宣伝使松竹梅の三柱は 花の春をば仇に越え夏の真中となりし身の 花は散れども遅桜山は青々葉桜の いよいよ開く返り咲三五教と聞いた時 縁の遅いは当然嫁ぎの道は何時迄も なさらぬ方と思て居た人は見かけに依らぬもの 色よき夫を松代姫永き月日の浮節に 待ちに待つたる縁の糸今日は愈結び昆布 摘み肴の切鯣名さへ粋なる梅ケ香の 姫の命の肝玉は此処に現はれ高彦の 神の命の妻となりいよいよ三人の姉妹は 神に貰うた雨に濡れ水も漏さぬ蒸衾 小夜具が下にたくづぬの白きただむき玉の手を 互に抱きさし巻きていをしましませ腿長に 豊の神酒をばきこし召しいよいよ今日から二柱 神の祝の餅搗いて子餅もたんと拵へて 天つ国土轟かし天に輝く星の如 浜の真砂の数多く青人草の種をまけ 三夫婦揃うた世の中に東雲別の東彦 石凝姥の宣伝使時公さまや八彦や 鴨彦さまの顔の色峠の下の小僧の様に 上り下りの客人の姿眺めて指噛むで 蜥蜴の様な面をして恨めし相に眺めいる ホンに芽出たいお目出度い心をかがみの時さまは 鏡餅ではなけれども滅多に妬きはせぬ程に 必ず案じて下さるな牛は牛連れ馬は馬 八公は八公鴨は鴨八つの足をばさし巻いて キウと吸いつく蛸坊主チンチン鴨の神楽舞 上を下へと戦して神に仕ふる時も来る アヽ三柱の夫婦神石凝姥の石の如 堅く誓ひて離れざれ時公八公鴨公の 真心籠めて神の前偏に祈り奉る 偏に祈り奉る』 と歌ひ終り、大口を開けて 時公『アツハヽヽヽヽ』 と笑ひ転ける。一同は時置師神の手つき身振の可笑しさに、天地も揺ぐ許り笑ひ崩れけり。秋月姫はスツクと立つて、長袖しとやかに祝歌を歌ひ舞ふ。 秋月姫『天と地とに三五の道を教ふる宣伝使 三五の月の澄み渡る秋月姫の空清く 今日の喜び幾千代も松竹梅の何時までも 心に掛けて忘れまじ松は千歳の色深く 竹の姿の末永く梅の莟の香しく 一度に開く神の舞鶴は千歳と舞納め 亀は万代歌ふなり千歳の鶴や万代の 亀の齢を保ちつつ天地と共に永久に 月日と共に限りなく此世の続く其限り 夫婦の中は睦じく心を協せ神国に 尽させ給へや三柱の神の命の夫婦連 秋月姫のいと円く家も治まり身も魂も 治まり清く照り渡り神の御水火を受継ぎて 御子沢々に生みなして神の柱を経緯の 錦の機の神の教宣るも涼しき神嘉言 三柱神の大前に君が千歳を寿ぎまつる 君が千とせを寿ぎまつる』 と歌つて元の座に就きぬ。深雪姫は又もや立上り長袖しとやかに歌ひ舞ふ。 深雪姫『三柱神の三つ身魂棟に輝く三つ巴 三夫婦揃ふ今日の宵見ても見飽かぬ妖艶姿 三葉の彦の又の御名天の太玉神司 青雲別の高彦が天之児屋根と現はれて 白雲別けて北光の天の目一箇神司 鴛鴦の契を今此処に結の莚深雪姫 夫婦の仲も睦じく互に心を相生の 松も深雪の友白髪尉と姥との末永く 高砂島にあらねども御稜威も高きコーカスの 山に鎮まる三柱の神の御前に妹と背の 契を結ぶ金の神神の恵みの幸はひて 撞の御柱右左巡り会ひつつ愛男 愛女よと宣らせつつ鶺鴒の教畏みて 学ばせ給ふゆかしさよ芽出度儀式を深雪姫 黄金世界銀世界月日は清く照り亘る 神の光を身に浴びて千代も八千代も栄えませ 幾千代までも松竹の色香も褪せず咲匂ふ 梅ケ香姫のあだ姿月の鏡に美はしく 尊き御子を望月の百千万に生みなして 神の御水火の神業に仕へましませ三柱の 妹背の仲は吉野川流れも清きみづ身魂 神素盞嗚の大神の恵みの露にうるほひて 色も褪せざれ変らざれたとへ天地は変るとも 夫婦の仲は何時迄も弥次々に栂の木の 孫子の世迄栄えませ孫子の世迄栄えませ 深雪の姫が真心を神の御前に捧げつつ 三柱神の行末を畏み畏み寿ぎまつる 畏み畏み祝ぎまつる』 と歌ひ終り元の座に就く。橘姫は又もや立上り、声も涼しく祝歌を歌ふ。其の歌、 橘姫『秋月姫の空晴れて深雪も積る銀世界 春山彦の珍の子と生れ出でたる姉妹は 恋しき父の館をば橘姫の姉妹が 三五教を開かむと神のまにまに進み来る 雪積む野辺を右左寒けき風に梳り 山河越えてコーカスの三柱神の御前に 橘姫の喜びは色も目出度き松代姫 薫ゆかしき梅ケ香姫の貴の命や竹野姫 神の詔勅を畏みて人目の関の隔てなく 妹背の契結びます芽出度き今日の新莚 神酒は甕の瓶高しりて饗宴の蓆賑しく 夜は更けわたる戌の刻亥の刻過て腿長に 各も各もの子の刻や丑寅神の御守護 嬉し嬉しの花も咲く心の卯さも辰の刻 巳ぢかき春の夢醒めて午く納まる此縁 瑞の身魂の未申互に盃取り交はし 悪魔もいぬや亥の時刻夜半の嵐も収まりて 宿世行末物語り睦ばせ給ふ間もあらず 青垣山に鳴く烏雉子は動よむ鶏は鳴く 雉子どよむな鶏鳴くな今朝は烏も唖となれ 鴛鴦の衾の楽し夜を遮る勿れ今日の朝 東の山に日は昇り昼より明かくなるとても 今日一日は烏羽玉の闇にてあれや暗となれ 暗の岩戸を押開き互に含笑む顔と顔 岩戸の前に橘の姫の命の太祝詞 聞ゆる迄は三柱の神も眠を覚まさまじ 明けて悔しき今日の日は竜の宮居の姫神の 御手より受し玉手箱アヽ恨めしや浦島の 年も取らずに何時までも若やぐ胸をすだ抱きて 夫婦の中は睦び合ひ真玉手玉手携へて 神の御業を務めよや結びの神と聞えたる 金勝要の大御神山河動よみ国土揺り 海は涸れ干す世ありとも夫婦の中は何時までも 月日と共に変らざれ月日と共に永久に 栄えましませ何時迄も橘姫が真心を こめて御前に鰭伏しつ畏れ慎み願ぎまつる 畏れかしこみ寿ぎまつる』 と歌つて元の座に就きぬ。 時公『サアサア、芽出度く婚姻の式も済み、三夫婦の濃艶なる宣詞も聞かして貰つた。加ふるに月雪花の三柱神の祝ひの詞、時さまも一寸仲間入りをさして貰つた。石凝姥神様の御祝歌は一寸感心した。サアサア八さま、鴨さま、神酒ばつかり頂いて居ても、芸無し猿では巾が利かない。何でも構はぬ、芽出たい事を歌つたり歌つたり』 八公『時さま、何でもええか』 時公『芽出度い事を歌つたがよかろう』 八公『笑うて呉れな、わしの歌は拙劣だから』 と云ひ乍ら、ヌツと立つて歌ひ始めた。 八公『今日は如何なる吉日か大気津姫は逃げて行く コーカス山の貴の宮三柱神のお祭に みんな揃うて酒に酔ひヨイヨイヨイと舞狂ふ 松竹梅の宣伝使月雪花の乙女達 北光神や高彦や心の太い太玉の 神の命がヒヨイと来て夢に牡丹餅食た様に 松竹梅の宣伝使女房に持つて嬉しかろ この八さまも嬉しいぞヤツトコドツコイ、ドツコイナ それに引替へ気の毒な石凝姥の宣伝使 身体の大きい時さまはほつとけぼりを喰はされて 見るも憐れな鰥鳥とりつく島もないじやくり 時さま許りか八さまも鴨さままでが指銜へ 青い顔して淋しそにこんな馬鹿気た事はない 大勢の前でてらされて茹蛸見たよな顔をして 妬きはせないが日に焦けた黒い顔してくすぶつて 勘定に合はぬ此仕末俺も男ぢや何時か又 綺麗な女房を持つてやる其ときや皆さま見てお呉れ 小野の小町か照手の姫か天津乙女か乙姫さまが 跣で逃げ出す素的な奴を貰ふか貰はぬかそら知らぬ 知らぬが仏神心何時かはカミの厄介に なつて喜ぶ時も来るオイ時公よ鴨公よ 俺の胸先トキトキと何ぢや知らぬが轟いた 足は知らぬに鴨々と震ひあがつて気に喰はぬ 淡白焼いた蛤の美味い汁吸ふ時は何時 何時か何時かと松代姫松かひあつて太玉の 神の命の妻となり角を隠した綿帽子 姿かくして鳴く鳥は山時鳥丈ぢやない 此処にも一人や三人は泣いて居るかも知れはせぬ 千秋万歳末永う松竹梅のお姫さま 夫婦仲良く暮しやんせ心の堅き宣伝使 夫を持つて忽ちに心緩みて神の道 必ず粗末にせぬがよいそれ丈わたしが頼み置く アヽ三柱の神さまへ此三人の夫婦仲 水も漏らさず末永う添はしてやつて下さンせ これが八公の願なりこれが八公の願なり』 時公は大口を開けて、 時公『アハヽヽヽヽ』と、又もや笑ひ転けて腹を抱へる。 八公『オイ時公、何で笑ふか、人をあまり馬鹿にしよまいぞ。お前は拙劣でもよいと云つただらう、拙な歌が却つて面白いのだ。併し乍らお前の歌もあまり立派な作ではなかつた。担うたら棒が折れる様なものだ』 時公『コラコラ、棒が折れるとは何だ。宣り直さぬか』 八公『それでも、是丈歌ふのには棒所か、随分骨が折れたのだよ。アハヽヽヽ』 時公『サア鴨公の番だ。どうせ碌な事は云やせまいが、貴様の偽らぬ心を歌つて見よ』 鴨公『ヨシヨシ、俺も男だ。気張つてフーフーと息継ぎ乍らやつて見る。良かつたら、メヨト喝采するのだぞ』 時公『ヨシヨシ、よしと云つても養子婿ぢやないぞ』 鴨公の歌、 鴨公『明志の湖から従いて来て雪の路をばザクザクと 黒野ケ原に行つて来た孔雀の姫が人喰うと 聞いてビツクリ会うて見りや十五の月の様な顔 案に相違の松代姫ウラルの教を振棄てて 三五教に寝返りを打つて又もや琵琶の湖 烈しき風に曝されて汐干の丸の潮を浴び 牛馬鹿虎四人の目附の神に送られて コーカス山に来て見れば思ひがけなき神祭 八王ヒツコス酒の神祝の酒に酔潰れ 何処も彼処も泥まぶれウラルの姫も泥の衣 心の泥を吐き出してうまい事づくめに神の前 ツベコベほざく其時に松竹梅を始めとし 鴨彦さまも共々に三五教の宣伝歌 歌つて見ればアラ不思議忽ち鬼女となり変り 黒雲起して逃げ去つた後に尊き神祭 祝の酒をグツと呑み酔がまはつた最中に 皇大神の神勅松竹梅の三柱に 婿を貰へと仰せられ開いたる口に牡丹餅を 詰めたる様に一口にウンと呑み込む男方 三人揃うて妹と背の芽出度い盃三々九度 何方も此方も歌を詠み品姿能く踊り舞ひ狂ふ 我れは素より芸無し猿何んにも知らぬヨウせぬと 断る訳には行かないで猿の人真似やつて見よう 猿が三疋飛ンで来て婚礼したのはサル昔 昔々の大昔その又昔の昔から 神の結ンだ因縁で夫婦になつたに違ない 夫婦は天地にたとへられ山と海とに比べられ 神生み国生み島生みの道を開きし伊弉諾の 神の命の初めてし美斗能麻具波比妹背の 今日の芽出度い此祝ひ此喜びはここよりは 外へはやらじやらざれと祈る真心神の前 金勝要の大御神国治立の大御神 神素盞嗚の大御神三夫婦揃うて縁結ぶ こんな芽出度い事はないどうぞわたしも一日も 早く結ンで下さンせ家をば治め国治め 心治まる夫婦中落ちて離れぬ枯松葉 二人の水火は相生の待ちに待つたる嫁貰ひ 貰ひ喜び貰ひ泣きないて明志や琵琶の湖 深き契を何時までも続かせられよ三柱の 聞くも芽出度い夫婦仲仲善く暮せ何時迄も 天に輝く星の如浜の真砂の数多く 御子を生め生め地の上に所狭き迄生みおとせ 落ちて松葉の二人連れ三人四人夫婦仲 三人四人鰥仲盈つれば虧くる世の慣ひ 御空の月の影を見よ何時も満月キラキラと 明るく暮せ夫婦連れ連添ふ妻を振棄てな 妻も夫に尻ふるな神の恵みの雨に濡れ 何時も青々稚翠若やぐ姿永久に 年は取るなよ皺よせな寄せては返す荒浪の 濤も凪げ凪げ春の海生み落したる子宝は 養み育て天地の神の御用に立てて呉れ くれぐれ頼む鴨公の是が一生の願ぞやと 願掛巻神の前神の恵みの幸はひて 夫婦の仲は睦じく八千代の春の玉椿 栄えに栄えよ松代姫梅ケ香姫よ竹野姫 天之目一箇太玉や天之児屋根の神司 神の御前に太祝詞称へ奉るぞ尊けれ 称へ奉るぞ畏けれ畏き神の御教を 夫婦力を協せ合ひ海の内外に隈もなく 輝き渡せ神の道輝き渡せ神の教』 と歌ひ終り座に着きぬ。コーカス山の神祭、瑞の身魂に因縁ある三柱神の婚姻は茲に芽出度く千秋楽を告げにける。 (大正一一・三・四旧二・六松村真澄録) (昭和一〇・二・一九王仁校正) |
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霊界物語 | 12_亥_天の岩戸開き | 02 直会宴 | 第二章直会宴〔四九八〕 千歳の老松雲表に聳えて高き万寿山 堅磐常盤の松の世を知す磐樟彦の神 花は紅葉は緑花の都の緑の流れ フサの国をば後にして聖地を越えて茲に兄弟三人は 住江の国を跋渉しイホの都ものり越えて 愈筑紫の島に着く心つくしの益良男が 純世の姫の鎮まりし其国魂を清めむと 神の教を白瀬川一二三四五つ六つの滝 水音高き宣伝歌歌ひ歌ひて進み行く。 高光彦、玉光彦、国光彦の三人は、イホの都に宣伝歌を歌ひながら進み行くのであつた。 日は黄昏れて長き春日の旅に疲れたる三人は、とある森林に蓑を敷き、露を凌ぎ、一夜を明かしけり。 此処には小さき国魂神の祠あり。三人は祠の後に身を横たへ眠つて居ると、夜半と覚しき頃大勢の人声聞え来たり。三人はこの声に目を醒まし、耳を傾け、其話を私かに聞き居る。群集の中より一人の男が選ばれたるが、祠の前に立ち現はれ灯火を献じ、神酒を捧げ何事か祈願を籠め終つて直会の宴に移りしと見え、人々の声は刻々に高くなり、歌ふもの、飲むもの、踊るもの、泣く、笑ふ、怒る、種々様々の活劇が演ぜられつつありける。 三人は祠の蔭より床しげに人々の話を、耳を澄まし、息を殺して窺ひ居る。 甲(春公)『ヨウ、酋長さま、御苦労さまでしたが神様は何と御告げがありましたか』 酋長『有つたでもなし、無かつたでもなし。マアマア皆の者が心を一つにして善と悪とを弁へ、善の方へ進むより仕方がないなア』 乙『膳飽と云つたつて、此頃の様に百日許り日天様の御顔もろくに見えず、お月様は曇り勝ちで夜は殆ンど真の闇、昼と云つた処が今までの朧月夜の様なものだ。これでは五穀も実らず果物は皆虫が入つて食へる様になるまでにバタリと地に落ちる。病気は彼方此方に起る。大勢の人間の食べる米はなし、果物はなし、どうして膳に飽く事が出来るものか』 甲(春公)『オイ、貴様は間違つてゐるよ。善と云へば正直な心を持つて神様を敬ひ、我身を捨てても人の為めになる事をするのだ。悪といへばそれの反対だよ』 乙『そんな事は三歳児でも知つてるワイ。善い事をすれば其時から気分が良くなる。悪い事をすれば何となしに気分が悪い。何物かに叱られる様な心持ちになつて来る。然し乍ら肝腎の生命の親の食物がなくて、可愛い女房や子が、骨と皮とに痩衰へ渇命に及ばうとして居るのに、これを見乍ら何うして人の事処か。どうしてもかうしても利己主義になるのは止むを得ぬぢやないか』 甲(春公)『そこを辛抱して、人を助けるのだ。それでなければ善と云ふ事が出来ぬよ』 乙『さう偉さうに理窟を云ふのなら、貴様の家の倉をあけて町中の者に其米を施してやつたらどうだい。言ふべくして行ふべからざる善は偽善だ。貴様は飢ゑた味を知らぬからそんな気楽な理窟や大平楽を並べるのだ。どうだ善と悪とが解つたか』 一同『賛成々々。初公の云ふ通りだ。神様のお言葉通り善悪を立別けて困つた者を助ける様に、春公さまの倉を開けて町中の者に善の鑑を出して貰はうかい』 春公『イヤ、俺も皆の者を助けてやりたいと思うて、三杯食ふ処は二杯にして貯めてあるのだ。然し乍らこれはまさかの時に助ける為めだ。未だ俺の処の米を出して町中へ分配する時期ではない。今出してやると、誰も彼も宜い気になつて毎日日日飲み食ひに耽り、終ひには喧嘩計りする様になつて、お天道様に冥加が悪いから、反つて善が悪になると俺も困るから、マアマア働ける丈けは働いて、愈世界が真暗がりになる様な事が出て来た其時こそ、世の中は相身互ぢや。お前達が勝手に倉をあけて食ふ様にする』 丙『それも一つの理窟だが持つとる奴は穢いものだ。何の彼のと理窟を付けて出し惜みをするものだ。末の百より今の五十と云ふ事もある。先になつて善をするより善は急げだ。今の内に倉を開け放して町中を助けたら、どれ丈け春公さまの光が輝くか知れまい。ナア春さま、悪い事は云はぬ、人気の立つた時にホツ放り出すのだぜ。それがお前の身の為めだよ』 春公『皆の人達、よう考へて見てくれ。斯う百日余りも日は照らず、闇の夜は続く。山の木は枯れる、毎日々々地響きはする、病人は沢山出来る、先が案じられて仕方がないぢやないか。今の間は、木の葉でも根でも、草でも噛んで生命を繋いで置くのだ。木の葉は枯れ、地の上に何一つ食ふ物がなくなつた時に初めて倉をあけて、米や麦や、粟、黍、稗などを搗いて各自が粥にでもして、世界の大峠を凌ぐ様にしなくては心細いからな』 丁『木を食への、草を食へのと余り人間を莫迦にして呉れるな。虫か牛馬か何ンぞの様に人間が木や草を食はれるものなら誰も働きはしない。ヘン、余り莫迦にするな』 春公『お前達は、難儀だ!困る!と口々に悔んで居るけれど、毎日酒を飲み、米が美味い、味ないと小言云つてる間は駄目だよ』 初公『そンな理窟は止めにして不言実行が大切だ。有る者は無い様な顔をするし、無い者は有る様な顔をしたい世の中だ。兎も角酋長さまに明瞭と神様に伺つて貰つて、春公の倉を開けたが宜いか開けぬがよいか判断して貰はう。モシモシ酋長さま、もう一度神様に右の事を伺つて下さいな』 酋長『神の言葉に二言はない。善悪をよく弁へて正直にするが一番だ』 乙『酋長様は三五教ですか、よう善とか悪とか仰有いますな』 酋長『さうだ、俺は三五教だ。此のイホの人間は八分までウラル教だから秘して居つたが、もう斯うなつては神様に対して畏れ多いから、明瞭と三五教だと言明して置く。お前達が毎日日日ウラル教に呆けて仕事もせずに酒計り飲んで、利己主義を行つて世の中を曇らすものだから、地の上は一面に邪気が発生し、山は枯れる河は干る、五穀は実らず果物は熟さず、日月の光も黒雲につつまれて皆見えぬ様な世の中になつて了ふたのだ。それでもまだ改心が出来ねば、どんな事が出て来るか分つたものぢやない。ちつとは俺の云ふ事も聞いて貰ひたい。お前達の為だ。酋長は床の置物だとか云つて、何時も俺を莫迦扱ひして聞いて呉れぬものだから、天地の神様が吾々を戒める為めにこんな常闇の世界を現はしなさつたのだ。もう今日限り今までの悪い精神を立替へて善に立帰りますと此神前で誓つてくれ』 初公『ヨシ分つた。酋長と春公とは腹を合せて神様を楯に、自分計り安楽に暮して、俺達の苦しむのを高見から見物すると云ふ悪い量見だナ。オイ皆の奴、酋長と春公の首ツ玉を抜くのだ。ヤイヤイ酒に喰ひ酔うて、吠たり笑つたりして居る場合ぢやないぞ。俺達の一身上に関する大問題だぞ』 と呶鳴り付ける。一同は初公の号令の下に立ち上り、酋長と春公を目がけて各自に棍棒を打ち振り乍ら、四方八方より酒の機嫌で打つて掛る。嗚呼この結果は如何に治まらむとするか。 (大正一一・三・六旧二・八藤津久子録) |
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霊界物語 | 12_亥_天の岩戸開き | 24 言霊の徳 | 第二四章言霊の徳〔五二〇〕 手力男神は正門に現れ、儼然として敵軍の襲来を心待に待つて居る。 天菩比命は数多の軍勢を引連れ、軍卒は手に手に松明を持ち、四辺に火をつけ焼き滅ぼしつつ進み来る。後よりは一隊の軍勢、血刀を振つて登り来る。その光景恰も地獄道の如く思はれけり。 菩比命は門前に現れ、手力男神に向ひて、 菩比命『オー、汝は何神なるか、速須佐之男の悪逆無道なる邪神に従ふ曲津神、我は天教山に在します撞の御柱神の神命を奉じ、汝等を征伐せむが為に立向うたり。最早この嶋は殆ど焼き尽し、汝等が部下の将卒は、大半刃の錆と消え失せたれば、最早抵抗するの余力もなかるべし。イザ尋常に此門を開き降伏せよ』 と馬上に跨つた儘、威丈高に呼はり居る。手力男神は莞爾として、門を左右にサツと開き、 手力男神『サアサア、門は斯の如く開放致しました。何卒御自由に御這入り下さいませ。数多の軍卒等に於ても、嘸お疲れで御座いませう。是丈の嶋に火を放つて焼きなさるのも並大抵の御苦労では御座いますまい。御蔭でこの嶋を荒す猛獣毒蛇も殆ンど全滅致しました。お腹が空いたでせう、喉がお乾きでせう。此処に沢山の握り飯、酒も用意がして御座います。何万人のお方が御上り下さつても恥を掻きませぬ。どうぞ緩りと御上り下さいませ。その様に恐い顔をして、肩臂怒らし、固くなつて居られては御肩が凝りませう。我々は善言美詞の言霊を以て、直日に見直し宣り直す、神須佐之男大神の御神慮を奉戴するもの、決して決して酒にも飯にも毒などは入れて居りませぬ、御緩りとお召し上り下さいます様に』 菩比命『ヤアー、汝は百計尽き、毒を以て、我等を全滅せむとの巧であらう。その手は食はぬぞ』 手力男神『是は是は、迷惑千万。然らば手力男が御毒見を致しませう』 と云ひ乍ら、酒樽に柄杓を突き込み、掬うては二三杯グツと飲み、握り飯を矢庭に五つ六つ頬張つて見せた。 菩比命『然らば暫く休息いたす。今の間に館内の者共、城明渡しの準備を致せ』 手力男神『マアマア、さう厳しく仰せられるに及びませぬ。同じ天地の神の水火より生れた人間同志、心一つの持様で敵もなければ味方もない、何れも神の水火より生れた我々、天下の喜びも天下の悲しみも皆一蓮托生で厶る』 菩比命『汝はこの場に望んで気楽千万な事を申す奴、何か深い秘密が包まれてあるに相違なからう。左様な事に欺かるる菩火ではないぞ』 手力男神『手力男の秘密と申せば七十五声の言霊、美言美詞の神嘉言の威徳に依つて、天地清明国土安穏、病無く争ひ無く、天下太平にこの世を治める、言霊の秘密より外には何物も御座いませむ』 高杉別はこの場に立現れ、 高杉別『オー、手力男殿、唯今奥殿に進み入り、深雪姫の御前に致つて、御神慮を伺ひ奉るに、瑞の御霊の御仰せ、言霊を以て荒ぶる神を言向け和せとの御戒め。イヤハヤ貴神の遣り方には高杉別も感服致した。大国別様も貴神と同様の御意見で御座る』 手力男神『左様で御座らう。オー、菩比命様、斯の如く当館は表は武器を以て飾り、勇敢決死の武士も数多養ひ居れども、御覧の如く、貴神が獅子奮迅の勢を以て、血染焼尽しの攻撃軍に向ひ、悠揚せまらず御覧の如く、剣は鞘に弓は袋に納まり返つた此場の光景、刃に血塗らずして敵を喜ばせ、敵を味方と見做して取扱ふは、仁慈の神の思召よくよく大神の御誠意を御認識の上、撞の御柱の大神に具さに言上あらむ事を望みます』 菩比命『案に相違の貴神らの振舞、今まで逸り切つたる勇気も、何処やらへ消え失せた様な心地で御座る。ヤアヤア部下の将卒共、菩比命が命令だ、直ちに甲冑を脱ぎ捨て、武器を放し、この場に一同集まつて休息を致せ』 此一言に、逸り切つたる数多の将卒は、武装を解き、この場に喜々として現れ来り、酒に酔ひ握り飯に腹を膨らせ、歓喜を尽して踊り舞ひ修羅は忽ち天国と化したり。 この時深雪姫命は大国別に導かれ、門内の広庭に、数多の軍卒及び部下将卒の他愛もなく酒酌み交し喜び戯るる前に現れ、声も涼しく歌ひ始め賜ふ。 深雪姫『コーカス山に現れませる瑞の御霊の御言もて 御山を遠くサルヂニヤこの神嶋に現れて 世の有様を深雪姫八十の曲津の猛びをば 鎮めむ為に言霊の珍の息吹を放てども 曇り切つたる曲津見の服らふ由もなきままに 神の御霊の現れませる十握の剣を数多く 造りそなへて世を守る神の心は徒らに 剣を以て世を治め弓矢を以て曲神を 言向け和す為ならず心の霊を固めむと 玉の剣を打たせつつ神世を開く神業を 天教山に現れませる撞の御柱大神は いよいよ怪しと思召し深くも厭はせ嫌ひまし 菩比命に言任けて此処に攻め寄せ玉ひしは 我等が心を白波の瀬戸の海よりいや深く 疑ひ玉ふ験なり七十五声の言霊に 世の悉は何事も直日に見直し聞直し 言向和し宣り直す誠一つの一つ島 天の真名井にふり滌ぎさ嚼に嚼みて吹き棄つる 気吹の狭霧に生れたる我は多紀理の毘売神 心平に安らかに神須佐之男大神の 赤き心を真具さに天に帰りて大神の 命の前に逸早く宣らせたまへや菩比の神 朝日は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも 君に対して村肝の穢き心あるべきか 天津御神も見そなはせ国津御神も知ろしめせ 空に輝く朝日子の日の出神の一つ火に 照して神が真心を高天原に細やかに 宣らせ玉へよ菩比の神善と悪とを立別ける 神が表に現れて疑ひ深き空蝉の 心の闇の岩屋戸を開かせ玉へスクスクに 唯何事も人の世は直日に見直し聞直し 宣り直しませ天津神御空も清く天照らす 皇大神の御前に謹み敬ひ畏こみて 猛く雄々しく現れし十握の剣は姫神の 神言の剣いと清く光り輝く神御霊 瑞の御霊を大神の御前に捧げ奉る』 と歌ひ了れば、菩比命は思ひ掛無きこの場の光景に力脱け、懺悔の念に堪へ兼て、さしもに猛き勇将も、涙に暮るる計りなりける。 忽ち天空を轟かし、この場に舞ひ降る巨大の火光、彼我両軍の頭上を、前後左右に音響をたてて廻転し始めたり。神々は一斉に天を仰ぎ、この光景を見詰めつつあつた。火光はたちまち変じて麗しき男神となり、空中に佇立して一同の頭上を瞰下し玉ひつつありき。 この神は伊弉諾命の珍の御子日の出神であつた。正邪善悪の証明の為に天教山より神勅を奉じて、降り玉うたのである。 忽ち白煙となつて中空に消え玉ひ、後は嚠喨たる音楽聞え、次第々々に音楽の音も遠くなり行きぬ。いよいよ菩比命の降臨によつて、須佐之男命の麗しき御心判明し、命は直に高天原に此由を復命さるる事とはなりける。 (大正一一・三・一一旧二・一三岩田久太郎録) |
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霊界物語 | 13_子_フサの国・半ダース宣伝使 | 06 逆転 | 第六章逆転〔五三二〕 日の出別『朝日は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも 曲津の神は荒ぶとも黄泉ムの島沈むとも 誠の神は世を救ふ神が表に現はれて 善と悪とを立別ける此世を造りし神直日 心も広き大直日唯何事も人の世は 直日に見直せ聞直せ世の過ちは宣り直せ 三五教の宣伝使日の出の別と現はれて ウラルの山に隠れたる魔神の砦を言向けて 神の教を伝へつつ又もや進むアーメニヤ 美山の彦や国照姫の醜の魔神の曲業を 誠一つの言霊に言向和はす神司 ペルシヤの海を乗り越えてタルの港に上陸し 駒に跨り静々と進みて来るシヅの森 森の木蔭に立寄りて疲れを休むる折もあれ 俄に聞ゆる人の声耳を済ませばこは如何に ウラルの神の御教を四方に伝ふる宣伝使 岩彦梅彦亀彦や駒彦音彦鷹彦の 訳も分らぬ同志打ち打ち寛ろぎて聞き居れば 狗に腐肉を見せし如言騒がしくさやぎつつ 打つ蹴る擲る泣くわめく名に負ふシヅの此の森も さやぎの森となりにけりウラルの神の宣伝使 汝も神の子神の宮此世を造りし大神は 唯一柱ゐますのみ本津御神を振り捨てて 枝葉の神を敬ひつ世を紊し行く曲神の 報いは忽ち目のあたり神素盞嗚の大神の 御稜威の風に払はれてウラルの山やアーメニヤ 堅磐常磐の住処ぞと仕へ奉りし鉄条網 木葉微塵となりはてて今は果敢なき夢の跡 美山の彦や国照姫の醜の魔神の細々と 苦節を守る憐れさよ高天原も国土も 曇り果てたる今の世はウラルの教も世の末ぞ 一日も早く片時も疾く速けく改めて 醜の曲言宣り直し栄え目出度き三五の 神の教に真心を捧げて祈れ六の人 世は紫陽花の七変り八洲の国は十重二十重 雲霧四方に塞がりてとく由も無き常夜国 汝が身に受けし村肝の心の魂を逸早く 天の真澄の御鏡と研き澄まして神直日 清き身魂に立替よわれは日の出の宣伝使 天津御空の日の神の御言畏み葦原の 瑞穂の国に降りたる神の依さしの厳身魂 瑞の身魂の現れませるコーカス山に進むなり 誠の神に刄向ひて栄えし例し昔より 今に至るもあら波の闇の海路を渡る如 その危さは限りなし限りも知らぬ大神の 深き恵みを悦びて仕へ奉れよ三五の 神の教の道芝に神の教の道芝に』 と歌ふ声に、一同は雷に打たれし如き心地して、大地にドツと平伏し、息を殺して控へゐる。 鷹彦『アヽ何れの方かと思へば、今日船中にてお目にかかつた日の出別の宣伝使様、われは元来は三五教の宣伝使鷹彦と申すもの、ウラル教の宣伝使となりすまし、彼等が悪計の秘密を探り、此処まで帰り来りしもの、今や五人の宣伝使に包囲攻撃を受け、前後左右に体を躱し、三五教の教理を聴聞させむと心胆を砕きし折、思ひがけ無き貴使の宣伝歌、アヽ有り難しありがたし。われも是より貴使のお供仕り、コーカス山にお送り申さむ。どうぞ此儀お許し下さいませ』 と声をしるべに物語るを、日の出別は、 日の出別『ホーその方は予て噂に聞きし鷹彦なりしか。よい所で逢ひけるよ。それにしてもこの五人の宣伝使を言向け和さねば、吾々の任務を果すことが出来ない』 鷹彦『イヤご心配はご無用です。三年ぶり此の男等と寝食を共にし、彼等が心理状態を確り承知致し居れば、余り心配せずとも帰順させることは容易の業だと思ひます。どうか此の五人は私にお任せ下さいませ』 日の出別は言外に承知の旨を面色にて示しゐる。 鷹彦『サア、岩彦、貴様一人は最も難物だ。貴様さへ改心をすれば他の連中は、最早九分九厘まで帰順してゐるやうなものだ。何うだ、三五教に帰順するか』 岩彦『アー仕方が無い。また神の道の逆転旅行だ。時あつて親子主従敵となり、味方となるも世の習ひ、是非に及ばず降伏いたさうかい』 鷹彦『そりや本当か』 岩彦『本刀でなうて何としよう、真剣だ、正宗の銘刀だ』 鷹彦『モウ少し早く改心すれば好いものを、トコトンまで頑張りよつて、ドン後で往生するとは余りみつとも良く無い。しかし乍ら改心せぬより優だ。軈てまた夜が明けるだらう、改心の褒美として、悠々安眠させてやらう。また明日は一生懸命てくつかねばならぬから』 岩彦『イヤもう寝るどころでも、何どころでもない。心の中の天変地妖だ。地震、雷、火の雨に逢うたよりも、きつい脅威だ』 鷹彦『アーさうだらう。其処を決心するのが誠の道を歩む宣伝使の態度だ』 斯く話す折しも十重二十重に包まれし月は、フサの海の彼方に影を顕はし、皎々たる光を此の森に斜に投げた。 又もや一同の顔は、ほのかに判別することが出来るやうになつて来た。これよりウラル教の宣伝使は、日の出別命の信者と急転し、夜明けを待つてフサの都に宣伝歌を歌ひ乍ら進み行く事となりける。 (大正一一・三・一六旧二・一八外山豊二録) |