| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
|---|
|
21 (2211) |
霊界物語 | 38_丑_出口王仁三郎自叙伝2 | 07 火事蚊 | 第七章火事蚊〔一〇四四〕 人盛なれば天に勝ち、天定まつて人を制すとかや、喜楽は一身一家を抛つて、審神者の奉仕に全力を尽すと雖も、何を云つても廿余名の、元より常識の欠けた人物の修行者が発動したこととて、どうにも斯うにも鎮定の方法がつかない。正邪理非の分別もなく、金光教会の旧信者計りで、迷信と盲信との凝結であるから、到底審神者の云ふ事は聞入れないのである。又神懸といふ者は妙なもので、金光教の信者が修行すれば金光教の神が憑つて来る。どれもこれも皆金神と称へる。天理教の信者が修行すれば、十柱の神の名を名告つて現はれる。妙霊教会の信者が修行すれば、又妙霊教会の奉斎神の名を名告つて現はれて来る。其外宗旨々々で奉斎主神の神や仏の名を名告つて、いろいろの霊が現はれ来るものである。上谷の修行場では金光教の信者計りであつたから、牛人の金神だとか、巽の金神、天地の金神、土戸の金神、射析の金神などと、何れも金神の名を名告るのであつた。又竜宮の乙姫だとか、其他の竜神の名を以て現はれる副守護神も沢山なものであつた。 今日の大本へ修行に来る人間は、大部分中等や高等の教育を受けた人が多いから、此時のやうな余り脱線的低級な霊は憑つて来ない。が大本の最初、即ち明治卅二年頃の神懸といつたら、実に乱雑極まつたもので、丸で癲狂院其儘の状態であつた。其上邪神の奸計で、審神者たる者は屡危険の地位に陥る事があつて、到底筆や口で尽せるやうな事ではなかつた。幽界の事情を少しも知らない人々が此物語を読んでも、到底信じられない様な事許りであるが、それでも事実は事実として現はして置かねば、今後の斯道研究者の参考にならぬから、有りし儘を包まず隠さず、何人にも遠慮会釈なく、口述する事にしました。 頃は明治卅二年、秋色漸く濃やかな時、金明会の広間では、例の福島、村上、四方春三、塩見、黒田を先頭に、日夜間断なき邪神界の襲来で、教祖のいろいろの御諭しも、喜楽の審神者も少しも聞き入れぬのみか、却て教祖や喜楽を忌避して、福島氏の如きは別派となり、広前の奥の間を占領し、四方、塩見、黒田三人の修行者と共に、奇妙な神懸を続行して居る。 『お父サン、久しぶりでお目にかかりました』 『ヤア吾子であつたか、会いたかつた……見たかつた……ヤア其方は吾妻か……』 『吾夫で御座んすか、艮の金神さまが世にお落ち遊ばした時に、私も一所に落されて、親子兄弟がチリヂリバラバラ、時節参りて、艮の金神さまのおかげで、久し振りで夫婦親子兄弟の対面を許して貰ひました。あゝ有難い勿体ない、オーイオーイオーイアンアンアン』 と愁歎場を演出してゐる。余りの狂態に、平素から忍耐の強い教祖も、已むを得ず箒を以て、福島の神懸を掃出し、 教祖『お前は金光教を守護する霊であらう。此大本をかき紊す為に、福島の肉体を借つて居る事は、初発から能う知つて居る。モウ斯うなつては許す事は出来ぬから、一時も早く退散せい』 と厳しく叱りつけられ、半分肉体の交つた神懸の福島は、大いに立腹し、 福島『此誠の艮の大金神さまのお憑り遊ばした福島寅之助を、能う見分けぬやうな教祖が何になる。勿体なくも艮の金神の生宮を、箒で掃出したぞよ。又上田も小松林のやうなガラクタ神が憑つてゐるから、此結構な大神を能う見分けぬとは困つたものであるぞよ。何の為の審神者ぢや、分らぬといふても程があるぞよ。サアサア皆の神懸共、これから丑の年に生れた寅之助の、艮大金神が神力が強いか、出口と上田の神力が強いか、白い黒いを分けて見せてやるぞよ。此方の御伴致して上谷へ来いよ。もし寅之助が負たら従うてやるが、此方が勝ちたら出口直も上田も、誠の艮の金神に従はして、家来に使うてやるぞよ。今日が天晴れ勝負の瀬戸際であるぞよ。皆の神懸よ、一時も早く上谷へ行けよ。出口と上田の改心が出来ぬから、今目をさまし改心の為に、神が出口の家を灰にして了うぞよ。それから町中も其通りぢやぞよ。噫誠に気の毒なものぢやぞよ。人民が家一軒建てるのにも、中々並大抵の事ではないが、神も気の毒でたまらぬぞよ。これも出口直が我が強うて、上田の改心が出来ぬからぢやぞよ』 と四辺に響く大音声にて呶鳴り散らす。喜楽は何程福島に神懸の正邪を説明しても、聞かばこそ……、自分は誠の艮の金神ぢや、上田の審神者が何を知るものか……と、肩を怒らし、肘をはり、威丈高になつて、神懸や役員一統を引連れ、韋駄天走りに一里余りの道を、上谷の修行場さして行つて了つた。 出口教祖と喜楽と澄子の三人を広前に残して、役員も神懸も悉皆、福島にうつつた邪神の妄言を固く信じて、上谷へ行つて了つた。喜楽は教祖の命に依りて、二三時間程経つてから、中村竹造[※霊界物語における中村竹造の名前に「竹造」と表記している場合と「竹蔵」と表記している場合があるが、霊界物語ネットでは「竹造」に統一した。詳しくはオニペディアの「霊界物語第38巻の諸本相違点」を見よ]の妻の中村菊子と只二人で、上谷の四方伊左衛門といふ人の家の修行場へ出張して見ると、役員も神懸も村の人達も、老若男女の分ちなく、悉皆福島について、高い不動山の上へ上つて了ひ、あとには黒田清子と野崎篤三郎とが修行場の留守をしてゐた。そして黒田には悪狐の霊が憑つて、喜楽の行つたのも知らずに、何事か一人でベラベラと喋り立てつつあつた。野崎は其傍に両手をついて、おとなしく高麗狗然として畏まつてゐた。喜楽の顔を見るなり、野崎は驚いて、黒田清子に耳打をすると、黒田は忽ちに仰向けになつて、 黒田『上田来たか、よく聞けよ。此方は勿体なくも素盞嗚尊であるぞよ。お前が改心出来ぬ為めに、気の毒乍ら綾部の金明会は灰にして了うぞよ。お前は何しに来たのぢや、一時も早う綾部へ帰つて、火事の消防にかからぬか。グヅグヅして居る時ではないぞよ、千騎一騎の此場合でないか』 とベラベラと際限もなく喋り立てる。喜楽はいきなり、 喜楽『コラ野狐、何を吐すか。そんな事があつてたまらうか。コリヤ野狐、正体をあらはせ!』 と後から手を組んで『ウン』と霊をかけると、清子は忽ち四つ這になつて、 『コーンコン』 と鳴き乍ら、家の裏山へ一目散に駆け出した。野崎はビツクリして、後追つかけ、漸く三町許りの谷間で引捉へ連れて帰つて見ると、清子は正気になつたやうに見せて、 黒田『あゝ上田先生、誠にすまぬ事を致しました。モウこれからは、福島大先生の事は聞きませぬ。私は余り慢心をしてゐましたので、不動山の狐がついてゐました。あゝ恥かしい残念な』 と顔を袂で押しかくす。喜楽は、 喜楽『そんな事にたばかられるものか、詐りを云ふな、其場逃れの言ひ訳だ。審神者の眼で睨んだら間違ひはあるまい。四つ堂の古狐奴!』 とにらみつくれば、又もや、 『コンコン』 と鳴き乍ら、一目散に不動山を指して逃げて行く。暫くすると、例の祐助爺イサンが、喜楽の前に走せ来り、 祐助『上田先生、あんたは又しても神懸サンを叱りなさつたさうだ。今黒田サンに素盞嗚尊さまがおうつりになつて、山へ登つて来て大変に怒つてゐやはりますで。大広前が御神罰で焼けるのも、つまり先生の我が強いからで御座います。爺イも一生懸命になつて、大難を小難にまつり代へて下さいと、お詫を致して、艮の金神さまや神懸さまに御願申して居りますのに、先生とした事が、お三体の大神さまのお懸り遊ばした結構な神懸サンを、野狐だなんて仰有るから、大神さまが以ての外の御立腹、どうしても今度は許しは致さぬと仰有ります。先生、爺イが一生の頼みで御座りますから、黒田サンの神さまにお詫を、今直にして下さりませ。綾部の御広前や町中の大難になつてはたまりませぬから……』 とブルブル震ひ乍ら、泣き声で拝んで居る。喜楽は、 喜楽『祐助サン、心配するな、決してそんな馬鹿な事があるものか。誠の神さまなら、そんな無茶な事はなさる筈がない。皆曲津神が出鱈目を言ふて居るのだ。万一綾部にそんな大変事があるものなら、自分が上谷へ来る筈がないぢやないか。ジツクリと物を考へて見よ』 と諭せば、爺イサンは少しは安心したと見え、始めて笑顔を見せた。喜楽は直に不動山へ登り、数多の神懸の狂態を演じて居るのを鎮定せむと、修行場を立出でた。爺イサン驚いて、喜楽の袖を控え、 祐助『先生、どうぞ山へ行くのはやめにして、これから直綾部へ帰つて下さい、案じられてなりませぬ。今先生が山へ登られたら、又々福島の神さまが、御立腹なさると大変で厶ります』 と無理に引止めようとする。喜楽は懇々と祐助をさとし、漸くの事で納得させ、中村菊子と同道にて、綾部へ立帰らしめ、喜楽は只一人雑木茂る叢をかきわけて不動山に登り、松の木蔭に隠れて、神懸[※初版・愛世版では「神懸」、校定版では「神憑り」。]連中の様子を覗つてゐた。 福島寅之助、四方平蔵、足立正信、其外一統の連中は、喜楽の間近に来てゐる事は夢にも知らず、一心不乱になつて、 『福島大先生さま、艮の大金神さま、一時も早く教祖さまの我が折れまして、上田が往生致しまして……綾部の戒めをお許し下さいませ、仮令私の命はなくなりましても、教祖さまが助かりなさりますように』 と一同が涙交りに頼んでゐる。四方春三の声で、 春三『皆の者よ、よく聞け。出口直は金光大神の反対役であるぞよ。上田のやうな悪い奴を引張り込んで、金光教会を潰したぞよ。あの御広間は元は金光の広間ぢやぞよ。それに出口と上田とがワヤに致したぞよ。誠の艮の金神が、今度は勘忍袋の緒が切れたから、上田の審神者を放り出さねば、何遍でも大広間は焼いて了ふぞよ。四方平蔵も又同類ぢや、出口直と相談を致して、上田をかくれて迎へに行きよつたぞよ。出口と上田と平蔵と三人が心を合して、金光の広間をつぶしたぞよ。今度は改心して、上田を穴太へ追ひかへせばよし、何時までも其儘に致してをるやうな事なら、此神が許さぬぞよ』 などと、もと金光教の信者計りが集まつて、神懸[※初版・愛世版では「神懸」、校定版では「神憑」。]の口で攻撃をやる。黒田きよ子が又口を切つて、 黒田『足立正信どの、其方は何と心得て居るのぞえ。金光教会の取次ではないか、今まで出口の神の側に二三年もついて居り乍ら、上田のやうなガラクタ審神者に、広間を占領しられて、金光どのへ何と申訳致すのか。上田の行状を見たかい。彼奴は、毎日々々朝寝は致す、昼前に起て来て、手水もつかはぬ、猫より劣つた奴ぢやぞよ。寝所の中から首丈出して飯を食つたり、茶を呑んだり、風呂へ這入つても顔一つ洗ふ事も知らず、あんな道楽な奴を、因縁の身魂ぢやから大切にしてやれ、と教祖が申すのは、チツと物が分らぬぞよ。教祖の目をさますのは、一番に上田を放り出すに限るぞよ。あとは金光教で足立正信殿が御用致せば立派に教が立つぞよ。あれあれ見やれよ、今綾部の金明会が焼けるぞよ。皆の者よ、あれを見やいのう』 と邪神が憑つて妄言を吐いてゐる。一同は目を遠く見はつて、綾部の方を覗く可笑しさ。折ふし綾部の上野に瓦屋があつて、窯に火を入れて居るのが、夕ぐれの暗を照して、チヨロチヨロと見え出した。さうすると、 黒田『サア大変ぢや大変ぢや、出口の神さまは誠に以てお気の毒ぢやぞよ。御心配をして御座るぞよ。今頃は上田の審神者が一生懸命になつて火傷をし乍ら火を消しにかかつて居るぞよ。大分にエライ火傷を致して居るから、今度こそは神罰で命を取られるぞよ。今出口の神が一生懸命に祈つてゐるぞよ、ぢやと申して此火は中々消えは致さぬぞよ。綾部の大火事となるぞよ。神の申す事は一分一厘違は致さぬぞよ。これが違うたら神は此世に居らぬぞよ。慢心は大怪我の元だぞよ。慢心致すと足許へ火がもえて来て……熱うなるまで気がつかぬぞよ。行けば行く程茨むろ、行きも戻りもならぬよになるぞよ。それそれあの火を見やいのう』 と三人の神懸[※校定版では「神がかり」]が口を切る。数多の村人も神懸[※初版・愛世版では「神懸」、校定版では「神憑」。]も泣き声になり、 『福島大先生様、中村大先生様、四方大先生さま、足立大先生さま、どうぞお詫をして下さいませ』 と手を合して拝んでゐる。時正に一の暗み、瓦屋の火も見えなくなつた。 四方平蔵『火事にしては火が小さ過る。余り消えるのが早かつた。これは福島大先生さま、どういふ訳で御座いませうか……』 と尋ねて居るのは四方平蔵氏であつた。福島は横柄にかまへ乍ら、 福島『ウン、神の御仕組で広前を一軒丈犠牲に焼いたぞよ。皆の者よ綾部へ帰つて、出口の我を折らして、上田を放り出して了へよ。其後へ誠生粋の艮の金神が、福島寅之助大明神と現はれて、三千世界の立替を致すから、天下太平に世が治まりて、大難を小難にまつり代へて許してやるぞよ。何程人民がエライと申しても神には勝てぬぞよ。疑を晴らせよ。誠の丑寅の金神の申す事は、毛筋の横巾程も間違ひはないぞよ。改心致さぬと足許から鳥が立ちて、ビツクリ致して目まひがくるぞよ。改心するのは今ぢやぞよ』 と呶鳴り散らしてゐる。暗の帳はますます深く下りて来た。鼻をつままれても分らぬやうに暗い。提灯もなければ、上谷まで帰る事も出来ぬ真の暗になつた。村中の者が家を空にして、残らず此処へ登つて了つて居つたが、山を下りるにも下りられず、途方に暮れて『惟神霊幸倍坐世』と合掌してゐる。其処へ暗がりの中から、喜楽の声として、 喜楽『汝等一統の者、余り慢心強き故に邪神にたぶらかされ、上田の審神者の言も用ひず、極力反対せし結果は、今汝等の云ふ如く、足許から鳥が立つても分るまい。喜楽は数時間以前から、此松の木蔭に休息して、汝等の暴言暴動を残らず目撃してゐた。汝等に憑つた邪神は、現在此処に居る喜楽を見とめる事も出来ない盲神だ。又綾部の広前は決して焼けてはゐないぞ。最前見えた火の光は、稍大にして火事の卵に似たれども、あれは火事ではない、上野の瓦屋が窯に火を入れたのだ。汝等は今此処で目を醒まし、悔ゐ改めねば、神罰忽ち下るであらう。現に此山上にさまようて、帰路暗黒、一寸も進む能はざるは神の懲戒である。汝等一同の者、よく冷静に考へ見よ。万一広前が焼けるものと思へば、何故大神の御霊の鎮座ある、広前につめきつて保護せないのか。なぜ面白さうに火事見物をし、村中が弁当や茶などを携帯して、安閑と見下ろそうとしてゐるその有様は何の事か、これでも誠の神の行ひか、チツとは胸に手を当て考へてみよ』 と呶鳴りつけた。サアさうすると……上田は綾部に居ると固く信じてゐた一同の者は、藪から棒をつき出したやうに、喜楽が現はれたのと、其説諭に面食つて、泣く者、詫びる者、頼む者が出来て来た。暗き山路を下りつつ、躓き倒れてカスリ傷をするやら、茨に引つかかつて泣き叫ぶやら、ヤツとの事で不動山から、命カラガラ上谷の伊左衛門方の修行場へ帰つたのはその夜の十二時前であつた。 何れの人を見ても、顔や手足に茨がきの負傷せぬ者は一人もなかつた。四方平蔵は、喜楽に手を引かれて下山したので、目の悪いにも拘はらず、かき傷一つして居なかつた。喜楽は一同の者が邪神の神告の全然虚言であつたので、各自に迷ふてゐた事を悟つたであらうと思ひ、急ぎ綾部へ只一人帰つて来た。其あとで又々相変らず邪神の神懸[※初版・愛世版では「神懸」、校定版では「神憑」。]を続行し、其結果一同鳩首会議を開き、其全権大使として足立氏と四方春三、中村竹造の三人が選まれた訳である。要するに甘く喜楽を追放するといふが大問題であつた。 審神者の役といふものは仲々骨の折れるもので、正神界の神は大変に審神者を愛されるが、之に反して邪神界の神は恐れて非常に忌み嫌ひ、陰に陽に審神者を排斥するものである。あゝ惟神霊幸倍坐世。 (大正一一・一〇・一五旧八・二五松村真澄録) |
|
22 (2298) |
霊界物語 | 41_辰_黄金姫&清照姫の入那の国の物語1 | 16 三番叟 | 第一六章三番叟〔一一二〇〕 北光の神は竹野姫、竜雲、テームス、リーダー等を引きつれ、気を利かして一間に引上げて了つた。後にセーラン王、ヤスダラ姫は暫し沈黙の幕をつづけてゐた。ヤスダラ姫は心臓の鼓動を金剛力を出して鎮静しながら、顔にパツと紅葉を散らし、覚束な口調にて、 ヤスダラ姫『セーラン王様、お久しう厶いました。御壮健なお顔を拝し嬉しう存じます』 と纔に言つたきり、恥しさうに俯むいて顔をかくす。セーラン王は目をしばたたきながら、 セーラン王『貴女も随分辛い思ひをしたでせうなア。私もテルマンの国の空を眺めて、渡り行く雁に思ひを送つたことは幾度か知れませぬ。私の真心は貴女の精霊に通じたでせうなア』 ヤスダラ姫『ハイ、一夜さも王様の御夢を見ないことはありませぬ。今日ここで貴方にお目にかかるのは夢の様に厶います。夢を両人が見て居るのではありますまいか。夢なら夢で、どこまでも醒めない様にあつて欲しいものですワ』 セーラン王『決して夢ではありますまい、現実でせう、併し乍ら二人の間は夢より果敢ないもので厶いました。今北光の神様からいろいろと御理解を承はり、今後どうしたらよからうかと思案にくれてゐる所です』 ヤスダラ姫『仮令天律を破つてもかまはぬぢやありませぬか。一分間でも自分の本能を満足させることが出来れば、死んでも朽ちても構ひませぬ。二人が根の国底の国へおとされようとも、貴方と手を引き合うてゆくのならば、構はぬぢやありませぬか』 とマサカの時になれば、大胆なは女である。ヤスダラ姫は最早神の教も何も忘れて了ひ、捨鉢気味になつて、王の決心を煽動したり促したりしてゐる。 セーラン王『成程、貴女の心としてはさう思はれるのも尤もです。私だつて貴女を思ふ心は決して劣りませぬ。併し乍ら、そこを耐へ忍ぶのが人間の務めだ。月に村雲花に嵐、思ふやうにゆかぬは浮世の常、如何なりゆくも神様の御摂理、かうして半時の間でも、一生会はれないと思つてゐた相思の男女が会うて、心のたけを語り合うのも、神様の深きお情、私はこれで最早一生会ふことが出来なくても、決して神様を恨んだり、世を歎いたりは致しますまい』 ヤスダラ姫『貴方の恋は実に淡白なものですなア。それで貴方は最早満足なされましたか。エヽ情ない、そんな御心とは夢にも知らず、何とかして貴方に巡り会ひ、海山の話を互に打明け、凡ゆる艱難や妨害に堪へ、仮令虎狼の吼え猛る深山の奥でも、夫婦となつて恋の本望を遂げねばおかぬと、矢竹心に励まされ、剣呑な荒野原をわたり、イルナの都に逃げ帰る途中、神様の御引合せにてここに助けられたので厶います。どうぞそんな気の弱いことを仰有らずに金剛不壊的の大度胸を出して、両人が目的の貫徹を計つて下さいませ。貴方にはサマリー姫様といふ最愛の奥様がお控へ遊ばして厶るのですから、無理も厶いますまい。イヤ妾も迷うて居りました。最早貴方の心は昔日の心では厶いますまい。誠にすまないことを申上げました。どうぞサマリー姫様と幾久しく偕老同穴をお契りなさいませ。妾は幽界とやらへ参つて、御夫婦のお身の上を守りませう』 と言ひ放ち、ワツとばかりに王の膝に泣き崩れる。王はハタと当惑し、今の泣声がもしや北光の神様のお耳に入つては居ないであらうかと、ツと立つて隔ての戸を押開き、あたりに人のあるか、なきかを査べむとするを、ヤスダラ姫は王の吾を見捨てて逃げ出し給ふならむと早合点し、力に任せて王の手をグツと後へ引いた。王は不意に姫に手をひかれた途端に、タヂタヂと二足三足後しざりし、姫の膝に躓き、パタリと其場に倒れ、岩壁に頭を打ち、ウンと一声、人事不省に陥つて了つた。ヤスダラ姫は此態を見るより、 ヤスダラ姫『あゝ如何しよう如何しよう』 と狂気の如く室内を駆け巡り、王の頭に手を当て、 ヤスダラ姫『モシ、王様、許して下さいませ。決して貴方をこかさうと思つたのぢや厶いませぬ。怪我で厶います。貴方ばかり決して殺しは致しませぬ。妾もキツトお後を慕ひます』 と言ひながら、スラリと懐剣の鞘を払ひ、つくづくと打眺め、 ヤスダラ姫『果敢なきは夢の浮世と知りながら かかるなげきは思はざりけり。 恋慕ふ君に会ひしと思ふ間も 泣く泣く此世の別れとなるか。 悲しさは小さき胸に充ちあふれ 泣く涙さへ出でぬ吾なり。 ゆるしませセーラン王の神司 やがてはわれも御供に仕へむ。 北光の神の命よヤスダラ姫の 心卑しとさげすみ給ふな』 と云ひながら、アワヤ吾喉につき立てむとするを、此時戸外に立つて様子を伺ひゐたるリーダーは慌しく飛込み来り、矢庭に姫の懐剣を奪ひ取り、声を励まし、 リーダー『ヤスダラ姫殿、狂気召されたか、かかる神聖なる霊場に於て、無理心中とは何のこと、天則違反の大罪となる事をお弁へなさらぬか。そんな御心とは知らず、貴女の御身を保護し、テルマン国を命カラガラ逃出し、猛獣の猛び狂ふ荒野原をやうやう越えて此処迄お供をしながら、勿体なや王様を殺し、貴女も亦ここで御自害をなさるとは何と云ふ情ないお心で厶いますか。八岐の大蛇か金毛九尾の悪狐に憑依され、そんな悪心をお出しなさつたのでせう。モウかうなる上は此リーダーが承知致しませぬ。王様の仇を討たねばおきませぬ』 と声を震はせ、叱りつける様に言ふ。王は「ウンウン」と呻きながら、頭をかかへて起上り、 セーラン王『あゝヤスダラ姫、そこに居たか、何を泣いてゐる。ヤア汝は何者だ、凶器を以て姫を脅迫せむとするか。不届き至極な痴者、許しは致さぬぞ。そこ動くな』 と声を尖らせ睨めつければ、リーダーは王の蘇生の嬉しさと誤解の恐ろしさに、狼狽へながら、 リーダー『メヽ滅相な、ここ迄お供して来た姫様を何しに殺しませう。そんな誤解をして貰つちや、此リーダーの立場が厶いませぬ。姫様が狂気遊ばして貴方様を殺し、自分も自害なさる覚悟だと思ひ飛込んで、たつた今姫様の短刀を奪ひ、お意見を申上げてゐた所で厶います』 ヤスダラ姫『王様、嬉しや気がつきましたか、此リーダーは決して悪人では厶いませぬ。どうぞ許してやつて下さいませ』 セーラン王『あゝさうであつたか、真にすまなかつた。リーダーとやら全く誤解だから許してくれ』 リーダー『ハイ有難う厶います、お分りになればこんな結構なことは厶いませぬ』 セーラン王『こんな騒ぎは北光の神様に知れたら大変だが、もしやお分りになつては居なからうかなア』 リーダー『ヘーヘー、スツカリと分つて居ります。北光の神様も竹野姫さまも竜雲さまも、次の間で貴方等二人のお話を耳をすましてお聞きになつてゐる……とは申しませぬ……だらうと考へます』 セーラン王『立聞きは不道徳の極みだ。あれ位の神人がどうしてそんなことを遊ばすものか。ヤスダラ姫、安心をしたがよからうよ』 ヤスダラ姫『北光の神様は天眼通力を得たる生神様、何程遠く隔たつて居りましても、手に取る如くに御覧になつて居ります。又吾々の言も得意の天耳通で一言も洩らさず、お聞きになつてをるでせう。あゝ恥しいことになつて来ました』 セーラン王『北光の神様の天耳通、天眼通が分つてゐるのなら、なぜ其方はあの様な大胆なことを言つたのだ』 ヤスダラ姫『妾が言はなくても、北光の神様は心のドン底まで見すかしてゐられますから、言つても云はいでも同じことですワ』 セーラン王『恥しいことだなア。イルナの国王も北光の神様の前へ出ては象に対する鼠のやうなものだ。いかにもこんなことでは、あの小さい国でさへも治まりさうなことがない。国王だと云つても僅かに五万や六万の人間の頭だから小さいものだ。北光の神様は諸王に超越し、天地の意志を代表なさる生神様だから大したものだ。モウ此上は恥も外聞もいつたものでない、何事も北光の神様の御指図に任さうではないか』 ヤスダラ姫『ハイ、さう致しませう、併し乍ら吾々二人を都合よく添はして下さるでせうか』 セーラン王『又そんな事を言つてはいけませぬ。リーダーが聞いてゐるぢやありませぬか』 リーダー『王様、此リーダーは血もあれば涙もあり、情も知つて居る円満具足な下僕で厶います。ヤスダラ姫様の事ならどんな事でも厭ひませぬ。何なと仰有いませ、只一言だつて御両人の秘密を洩らすやうな野呂馬では厶いませぬ。シヤールの主人に背き、姫様の御意志に賛成して、命がけの仕事をやつて来た位で厶いますから、大丈夫です。なア姫様、貴女は私の心をよく御存じで厶いませう』 ヤスダラ姫『ハア、能く分つてゐる。北光の神様の、お前は一つ都合を伺つて来てくれないか、之から御面会がしたいから……』 リーダー『ハイ承知致しました』 とニタリと笑ひ、此間を立出で、二三間ばかり行つた所で、一寸立ち止まり、 リーダー『何と甘くおまき遊ばしますワイ。久しぶりにお二人が対面遊ばし、余り仲がよすぎて死ぬの走るの暇をくれのと、恋仲にはありがちの痴話喧嘩を、面白半分にやつて厶つた真最中に、俺が気が利かないものだから、本当の喧嘩だと思つて飛込んだのが間違ひだ。甘く俺をまいて、意茶つきをやらうといふのだなア。ヨシ合点だ。そんなことの気の利かぬリーダーぢやない。そんな頭の悪い呑込みの悪い粗製濫造の頭脳とは違ひますワイ。イヒヽヽヽ、さぞ別れて久しき二人の逢瀬、泣いつ口説いつ、抱いたり、跳ねたり、つめつたり、叩いたり、思ふ存分久しぶりでイチヤつかして上げようかい。早く北光の神様に御都合伺つて来いなんて、甘い辞令で遠ざけようといふ賢明な行方だ。コリヤあわてて正直に行くと却つて御迷惑になるかも知れぬ、三足往つては二足戻り、二足往つては三足戻り、オツトヽヽそんな事して居ては、何時迄も同じ所に居らねばなるまい。併し乍ら、そこが粋といふものだ。さぞ楽しい嬉しいことだらうなア。俺も何だか嬉しうなつて来た。ウツフヽヽヽ』 と隧道に停立して、独り囁いてゐる。ヤスダラ姫は気が咎めたか、リーダーが立聞して居つては恥しいと気をまはし、戸をガラリとあけて外を覗けば、リーダーは二三間離れた所に停立して、頻りに首を縦にふり、横にふり、舌を出したり、眉毛を撫でたりやつてゐる。ヤスダラ姫は細い声で、 ヤスダラ姫『コレコレ、リーダー、何をしてゐるのだい。早くお使ひに行つて来て下さらぬか。困るぢやありませぬか、王様がお待兼ぢやのに』 リーダー『ハイ、承知致しました。急いては事を仕損ずる。急かねば事が間に合はぬ。あちら立てればこちらが立たぬ。両方立てれば身が立たぬといふ、誠と情との締木にかかり、稍思案にくれにけり……といふ為体で厶います。本当に急いで行つてもいいのですか、姫様、御迷惑になりは致しませぬか。正直も結構ですが、余り融通の利かぬ正直は却て迷惑をするものですからなア』 ヤスダラ姫『コレ、リーダー、そんな御親切はやめて下さい。お前等の下司の恋とは行方が違ひますぞや。阿呆らしい、仕方のない男だなア』 リーダー『ヘン仰有いますワイ。下司の恋だと……コヒが聞いて呆れますワイ。恋所か腰まで鮒々になつてゐるくせに、恋に上下の隔てなしといふぢやないか。上司の恋も下司の恋もあつたものか、恋はヤツパリ恋だ。リーダーはヤツパリ、リーダーだ』 ヤスダラ姫『コレコレ、早う行つて来て下さらぬか、何をブツブツ言つて居るのだい』 リーダー『ハイ、何分岩窟の中で水が切れて居るものですから、鯉も鮒も泳ぎにくうて早速游泳が出来ませぬワイ。恋の海に游泳術の上手な貴女ならば知らぬこと、何だか妙な怪体な気になつて、私の腰迄が……ドツコイ……シヨのドツコイシヨ、フナフナになつて、思ふ様に歩けませぬがなア』 ヤスダラ姫『エヽ勝手にしなさい、モウ宜しい、大方法界悋気でもしてゐるのであらう』 とピシヤツと岩戸を閉めて了つた。 リーダー『アハヽヽヽ、今頃は色の黒き尉どのと白き姥どのが、日は照るとも、曇るとも、鳴アるは滝の水滝の水、たアきを上りゆく恋のみち、恋に上下の隔てなし、法界悋気をするぢやないが、お前と私と二人の喜びは、ほうかいへはやらじ、おんはカタカタ、エンはカタカタと三番叟の最中だらう。エヘヽヽヽ、イヒヽヽヽ、ウフヽヽヽ』 と妙に腰をブカつかせながら、北光の神の居間をさして、チヨコチヨコ走りに進み行く。 (大正一一・一一・一二旧九・二四松村真澄録) |
|
23 (2596) |
霊界物語 | 53_辰_ビクの国1(ヒルナ姫とカルナ姫) | 19 刺客 | 第一九章刺客〔一三八二〕 ビクトリヤ王は敵の捕虜となり、生命の程も覚束なき破目になつて、非常に心を悩ませてゐたが、思ひもよらぬ助けに仍つて、再び元の館に帰り、且ヒルナ姫の無事なる顔を見て、胸を撫でおろす際、年来の希望たる兵馬の権を右守より奉還させ、又鬼春別、久米彦将軍は両女が操り居れば大丈夫と安心すると共に、気が緩みグツタリとして、寝に就いた。ハルナは右守司の様子のただならざるを気遣ひ、父の許しを受けて今晩は特に王の隣室に宿直を勤むることとなつた。 ハルナはカルナ姫の事を思ひ浮かべ……ああ実に立派な女性だ。ヒルナ姫様と彼とがなかつたならば、ビクの国は云ふも愚か、王家も左守家も忽ち破滅の悲運に陥るとこだつた。今となつて思へば、カルナ姫を自分がラブしたのは人事ではない、全く神様の御摂理だつたのだらうか。ああ有難し有難し……と暗祈黙祷しつつあつた。そこへ足音を忍ばせて、王の居間に向つて進み来る者がある。ハルナは耳をすませて様子を考へてゐると、ボンヤリとした行灯の側に現はれた黒い男の影、行灯の火に長刀をスラリと抜いて刃を打眺め乍ら、ニタツと笑つてゐる。寝台の上にはビクトリヤ王が吾身に危急の迫つたことも知らずに、安々と眠つてゐる。ハルナはスツと足音を忍ばせ、綱を以て男の後より首に引かけて、綱の端を肩に引かけ、トントントンと廊下を走り出した。腮を引かけられた男は抜身を持つたまま、ウンともスンとも言はず、廊下を引ずられて行く。 王は此物音に目を醒まし、よくよく見れば、刀の鞘が落ちてゐる。声を立てては一大事、何者かの刺客が来たに相違あるまいと、廊下をみれば、黒い影、王は矢庭に長押の槍を提げ、廊下に行てみれば、ハルナが一人の男の首を引掛けて引摺りまはし、男は気絶してゐる様子である。王は声を潜めて、 刹帝利『其方はハルナではないか、何事ぢや』 ハルナ『ハイ、怪しき者が参りまして、君の御寝室を窺ひ居りました故、後より窺ひよつて、首に綱をかけ、ここ迄引摺つて参りました』 刹帝利『ヤ、出かした出かした、一寸何者か、此奴の顔を調べて見よ』 ハルナは『ハイ』と答へて、首をしつかり締めておき、手燭を灯して、刺客の面を見れば、右守の家令シエールであつた。王もハルナもハツと驚き、少時主従は顔を見合せてゐた。 ハルナ『刹帝利様、此奴は右守の家令で厶います。之から察しますれば、右守は今日の兵権奉還を恨に思ひ、何か謀反を企んでゐると見えまする。之は騒ぎ立てを致せば却て敵の術中に陥るかも知れませぬ。ソツと、シエールを、仮令生き還つても動けないやうに手足を縛り、隠しておきませう』 刹帝利『ウン、ア、それが宜からう。実に右守といふ奴は、暴悪無道の曲者だのう』 ハルナ『御意に厶います。王様も十分に御注意をなさいませ』 と言ひ乍ら、シエールを高手小手にいましめ、押入の中に突つ込んで素知らぬ顔をなし一睡もせず、刹帝利の居間に、ハルナは付添ひ、厳しく守つてゐる。 ヒルナ姫、カルナ姫は、鬼春別、久米彦、スパール、エミシ、シヤム、マルタの賓客が他愛もなく酔ひ潰れてゐるので、席を外さうかと一度は考へたが、注意深き両人のこととて……イヤイヤ待て待て今が一大事の場合だ。刹帝利様に会うて、一度事情を詳しく申上げたいけれど、六人の中に一人や二人、熟睡を装ひ、もしや様子を考へてる者があれば大変だ。ああ会ひたいなア……と心は頻りに焦て共、大事をふんで、鬼春別将軍に膝枕させ、自分は何喰はぬ面にて、日が暮れてもジツと坐つてゐた。又カルナ姫は一時も早く恋しき夫のハルナに事の顛末を報告したいものだ、そして一言褒めて頂きたいものと思へ共、これ亦、六人の中に一人や二人は様子を考へてゐるものがあらうも知れぬと大事をふんで、ヒルナ姫同様に久米彦に膝枕させ、時々ヒルナ姫に目を以て、話をしてゐた。併し乍ら此六人は何れも真剣に酔ひ潰れ、前後も知らずになつてゐたのである。 夜の嵐は館の外を音を立てて吹いてゐる。風に煽られて雨戸はガタガタガタガタと慄ひ声を出してゐる。二女はウトリウトリと夢路に入つた。そこへ覆面頭巾の大男が大刀を引き抜き足音を忍ばせて入り来り、先づ久米彦将軍に向つて、一刀の下に斬りつけむとした。此時ハツと目を醒まし、矢庭にカルナ姫は曲者の腕の急所を叩いた。曲者はバラリと大刀を落した、姫は手早く後手に廻し、細紐を懐より出して縛り上げ、グツと頭を押へて動かせず、 カルナ姫『将軍様、ヒルナ様、皆様、起きて下さいませ、刺客が参りました』 と呼ばはる声に何れも目を醒まし、 『何だ何だ』 とカルナの側に寄つて来る。カルナは、 カルナ姫『モシ将軍様、曲者が参りました。貴方方を刺す積でやつて来ましたので、妾が今ふん縛つた所で厶います』 久米彦『ヤ、それはお手柄お手柄、某も危ない所で厶つた。して曲者は何者で厶るかな』 カルナ姫『何者だか黒頭巾を被つて居りますので分りませぬ、何卒灯火を此処へ持つて来て下さいませ』 ヒルナ姫は行灯を提げて近づき来り、黒頭巾をぬがせば、豈計らむや、右守のベルツであつた。ベルツは前にカルナに腕を短刀にて刺され、夫れが為に思ふ様に手が動かず、苦もなくカルナに縛られたのである。ヒルナもカルナもハツと驚いたが、素知らぬ面にて、 『アレまあ』 と空とぼけてゐる。カルナは心の中にて……人もあらうに、自分の兄を捕縛せねばならぬとは、何とした身の因果だらう。併し乍ら御国の為、王家の為ならば、仮令兄だとて見逃す訳に行かぬ……と直に心を取直した。 鬼春別『大方刹帝利の廻し者で厶らう。命を助けて貰ひ乍ら、酒宴に事よせ、吾々に油断を致させ、暗殺致さうなどとは、以ての外の不都合千万。ヨーシツ、これから拙者が刹帝利は申すに及ばず、何奴も此奴も一人も残らず、炮烙の刑に処してくれむ。や、スパール、エミシ、百人計りの兵士を、直様引率れ来れ』 ヒルナ姫は慌てて押止め、 ヒルナ姫『モシ将軍様、一寸お待ち下さいまし、決してこれは刹帝利様の謀だ厶いませぬ。此男は刹帝利に仕ふる右守司といふ悪逆無道の曲者で厶います。貴方様の御威勢を妬み、自分が兵馬の権を握らむと企て、夜中に忍び込んだものとみえます。何卒少時軍隊を引入れることはお待ち下さいませ』 久米彦『鬼春別殿、容易ならざる事変で厶る。仰せの如く、少くとも一百計りの兵士を此場へ引よせた方が御互の安全で宜しからう』 カルナ姫『吾夫、久米彦様、先づお待ちなさいませ。音に名高き英雄豪傑の将軍様、かかる腰抜男一人位に、兵を用ふるなどとは、将軍様の沽券に拘ります。何卒妾を愛し玉ふならば、左様なことをなさらずに、此処で処置をして下さいませ』 久米彦は最愛のカルナに止められ、且又カルナに危き命を救はれたのだから、之を否む勇気はなかつた。 久米彦『ウン、ヨシヨシ、然らば其方に一任する。鬼春別殿、てもさても弱虫共で厶るな。拙者が妻、カルナ姫の細腕に脆くも捕はれたる如き蠅虫、最早御安心なさいませ』 カルナ姫『モシ両将軍様、此男は如何なさいますか』 鬼春別『ウーン、久米彦の奥方にお預け致す。併し乍ら決して秋波を送つちやならないぞ』 カルナ姫『ホホホホホ、何御冗談仰有います。ササ曲者、こちらへ来れ……ヒルナさま、貴女と妾と此奴を庫の中へ突込んでやりませうね』 ヒルナ姫『左様で厶いますな。憎き奴共充分に懲らしめてやりませう。鬼春別将軍様、少時お暇を下さいませ、直に帰つて参ります。此曲者を、妾等紅裙隊が思ふ存分苦めねばなりませぬ、此様な者を生かしておけば、何時又貴方様の首を狙ふか知れませぬからね』 鬼春別『ウン、ヨシヨシ、突殺さうと、嬲殺しにしようと、焼いて食はうと、煮て食はうとお前の勝手だ。云はば紅裙隊の戦利品だ。早く何処へ伴れて行つて片付けたがよからう』 ヒルナ姫『左様なれば、此曲者を自由にさして頂きます。カルナさま、本当に愉快ですね。身体一面空地なく短刀でついてついて突きまくつてやりませうかね』 カルナ姫『さうですね、面白いでせう。併し男さまが見てゐられると恥しいワ。久米彦将軍様に残酷な女だと愛想つかされるのが厭ですもの……』 久米彦『タカが腰抜武者の一人、拙者の眼中にない、お前の目ざましに、自由自在にさいなんで来るがよからうよ』 二人は都合よく両将軍を誤魔化し、城の裏門に右守を連れ行き、声を潜めて、 ヒルナ姫『貴方はベルツさまだ厶いませぬか。何といふさもしい心をお出しなさつたのですか』 ベルツ『ウン、面目次第もないことだ。どうか許してくれ、……いやお姫様、許して下さいませ』 カルナ姫『貴方兄上だ厶いませぬか、妾が居らなかつたなれば、貴方の命は到底助かりませぬぞえ。ああして六人の男が寝たマネをしてゐるのは、決して本当に寝てゐるのぢや厶いませぬ。酔うた真似をして、スツカリ様子を考へてゐるのですよ。貴方は早く改心して下さらぬと、右守家はどうなるか知れませぬよ。早く兵馬の権を刹帝利様に奉還し、誠を現はしなさいませ』 ベルツ『実の所は、スツカリ奉還して了つたのだ。併し乍ら、それが残念さに、刺客となつて入り込んだのだ』 カルナ姫『姫様、何うで厶いませう。助けてやる訳には行きますまいかな』 ヒルナ姫『コレ右守さま、サ、此裏門から落のびなさいませ。貴方の陰謀が露見した上は到底命はありませぬ。之を路銀にして暗に紛れて、田舎の隅へでも身をお忍びなさいませ』 と懐から路銀を出してベルツに渡した。 ベルツは幾度も押し戴き、感謝の涙と共に裏門より何処ともなく落ちのびて了つた。二人の女は漸くにして元の座席に帰つて来た。 ヒルナ姫『将軍様、永らくお待たせ申しました。随分骨が折れましたよ。何と云つても女のチヨロイ腕で、所構はず切りさいなんだのですもの、私もあんな厭らしいことはゾツと致しますワ』 鬼春別『そらさうだらう、平和の女神様が、人を殺すのだもの』 ヒルナ姫『イエイエ私はホンの髪の毛丈切りそめてやりました。後はカルナさまがスツカリやつて了つたのです。本当にカルナさまは女丈夫ですワ』 久米彦『アハハハハ、流石はカルナだ。曲者を引捉へたのもカルナ、制敗したのもカルナだ。ヘヘヘヘ、久米彦将軍の意を得たりと云ふべしだ』 と得意になる。 刹帝利はハルナ、左守を伴ひ、此場に現はれ来り、一同の前に手をついて、 刹帝利『皆様、私の居間には大変なことが出来まして、お蔭により命だけは助かりました』 鬼春別『何事が出来致しましたかな』 刹帝利『ハイ、つい只今のこと、覆面頭巾の黒装束をした男が、拙者の寝息を伺ひ、大刀を提げ、アワヤ打おろさむとする時しも、宿直を勤めてる此ハルナがツと後から綱をかけて曲者を引き倒し、縛りつけ、今押入の中へ突込んでおいたとこで厶います。実に物騒千万なことで厶います』 カルナは、ハルナが功名手柄をしたといふことを聞いて何となく誇りを感じた。 鬼春別『其曲者は何者で厶るかな』 刹帝利『ハイ、実にお恥しいこと乍ら、右守の家令シエールといふ悪人で厶います』 鬼春別『成程、拙者の居間へもたつた今、右守のベルツといふ奴、忍び入り、暗殺せむと致した所、此カルナの腕に取押へられ、高手小手にいましめられ、今や、此二人のナイスに恨の刃を喰つて、寂滅致した所で厶る。アハハハハ』 刹帝利『何、右守が、左様なことを致しましたか、実に無礼な奴で厶います。併し乍ら悪人は貴方方の為に滅び、此様な嬉しいことは厶いませぬ。サ、之から悪魔払に、マ一度二次会でも開きませう』 鬼春別『ヤそれは痛み入る。アア併し乍ら、かやうな危険を遁れたのだから、遠慮なく頂きませう。そして其シエールといふ曲者を肴と致し、一杯頂けば尚々妙で厶らう。アハハハハ』 かくして再酒宴に移り、其夜を明し、翌日も昼の七つ時迄おつ続けに歌を歌ひ舞ひ狂ひ十二分の歓を尽すこととなつた。 (大正一二・二・一四旧一一・一二・二九於竜宮館松村真澄録) |
|
24 (2637) |
霊界物語 | 55_午_ビクの国の物語3(玉木の里) | 08 放棄 | 第八章放棄〔一四一六〕 アヅモスはフエルと共に炊事場に帰り、下女のお民を捉まへてそろそろ小言を云ひ初めた。 アヅモス『オイ、お民、貴様が確りしないものだから大変な恥を掻いたぢやないか。何の為に炊事の御用をして居るのだ。女と云ふものは飯焚きが肝腎だ。折角の珍客さまに灰まぶれの飯を食はさうとしたぢやないか、ちと心得ないと当家には置く事は出来ぬぞ』 お民『アヅモスの番頭さま、さう注文通に御飯が焚けるものぢやありませぬよ、今日の日天様でも照つたり曇つたり遊ばすぢやありませぬか、………… 朝夕の飯さへこわし柔かし 兎角ままにはならぬ世の中…… と云ふ歌さへあるぢやありませぬか。さう小言を仰有ると此方の方から尻をからげて「左様なら」と出かけませうか。此頃は彼方や此方に沢山の工場が出来て女は払底ですよ。こんな月給の安い下女になるものは滅多にありませぬよ。私が此家の下女に来て上げたのは、恩恵的に社会奉仕の一端だと思うて来て居るのですよ。万公別と云ひ、お前さまと云ひ全然女の腐つた様な男だな。女の事を構ふ腰抜けは目なつと噛んで死んだがよろしいわいなア、これでも家政学校を卒業したシヤンですからねえ、ヘン余り構うて貰ひますまいかい』 アヅモス『偉さうに云うて居るが、今朝の料理の仕方は一体何だ。あんな加減の悪いものが食へると思ふか、偉さうに云ふない』 お民『食へなけりや食はいでもよいぢやないか。お前達は料理法を知らないものだからゴテゴテ云ふのだらう、下司口だからなア。松魚節の煮汁か、昆布の煮汁か、雑魚の煮汁か、味の素を使つたか弁別のつかないやうな下司口が、料理の小言を云ふ資格がありますか』 アヅモス『偉さうに云ふない、何だその風は、のめのめと売女の出来損い見たやうな風をしやがつて、そんな事で立派な料理が出来ると思ふか。抑料理に取りかかるには襷をかけるか、エプロンを着けるかして身仕度をきちんとして髪の毛もバラバラせぬやうに、そして苔の生えたやうな手を、曹達ででも洗つて清潔にしなければ、折角の御馳走に黴菌が伝染るぢやないか。そして米を磨ぐにも砂を注意して取るのだ、クレクレと揺つて居ると砂は底にイサルから容易なものだ。今朝のやうに灰や砂の混つた飯は誰だつて食はれぬぢやないか。さうして洗ふにもお米を砕かないやうにして、水が澄みきり白水がないとこ迄洗ふのだぞ』 お民『エエ八釜しい番頭ぢやな。お前さまは何処でボーイでもやつて居たのかな、好うこせこせと釜の下までゴテづく吝嗇坊だなア』 アヅモス『別に構ひたい事は無いけれど、余り貴様が分らぬから、一応料理法を教へて置くのだ。総て小鳥や魚を串にさして焼く時は火を遠くし、そして強火にした方が、美味しう焼けるものだ。魚は身の方から、小鳥は皮の方から焼くのだよ。昔から魚身鳥皮といふからなア、充分焼いてから裏がへさないと不味なる。さうして網や串の焼けた後で肉を載せるのだ。それから煮る時には醤油や水を十分煮立たして置いて、其後に入れないと甘い汁が出て仕舞ふのだ。野菜は真青に茹るには湯に塩を少し入れて蓋をせずに茹ると其儘の色を保つて居る。さうして茹つたら直冷たい水に入れるのだ。牛蒡や、蕗や、筍や、百合根等の灰汁の強いものは一たん湯掻いてから煮くのだ。さうして使うた道具はいつも定つた場所へキチンと置いて置くのだ、清潔に磨いて元の所へちやんと戻して置かぬとまさかの時に間に合はぬぞ。棚の上に塵が溜つて居るか居らぬかそれも考へて網や串や、薄鍋を置いて置くのだ。そして余つた食物は蠅不入に入れるか、布巾をかけて置くのだぞ』 お民『エエ矢釜しい、お前さまは土方の飯焚きでも仕て居たのだらう。余り喋るとお里が見えますぞや』 アヅモス『これやお民、土方の飯焚きとは何だ。女と思うて容赦をすれば何を吐すか分つたものぢやない、不調法しておきやがつて何を口答へをするのぢや、これでも一家の総理大臣だぞ』 お民『ホホホホ。総理大臣なんて尻が呆れますわい。当家の総理大臣はシーナさまぢやありませぬか、お前さまは二の番頭だ。そこらの隅くたを掃除大臣だ。ごたごた云はずと箒なともつて次の間を掃いて来なさい。万公山が破裂して大変な灰が降つて居ますぞよ。箒を使つたらチヤンと釘にかけて置くのですよ。其処辺に立てて置くと箒の先がサツパリ薙刀のやうになつて仕舞ひますぞや。そしてハタキは手首を下げて、天井裏から障子の棧と上から下へパタパタとはたくのですよ。どうしても動かせない道具は被物をしておいて隅から掃いて来るのです。そして畳の目に逆らうと、塵埃が皆畳の目に滲んで仕舞ひますよ。箒の先を跳ねんやうにしてソツソツと掃くのですよ、それが済んだら椽側の掃除をしなさい。雑巾を緩う堅う絞つて、板の目なりに力を入れて拭くのだよ。角の所は雑巾を三角にして拭けば綺麗になりますわ。夫からニス、漆や、桧の柱は乾布巾で念入れに拭くのですよ。きつと濡れた雑巾で拭いてはなりませぬぞえ』 アヅモス『これお民、何だ下女の癖に番頭に指揮すると云ふ事があるか』 お民『ヘン私が下女なら、お前は下男ぢや、余り偉さうに云うて貰ひますまいか。これこれフエルさまお前が灰撒の発頭人だ。何をグヅグヅして居るのだ、早くアヅモスの下男と一緒に掃除をしなさらぬかいなア』 フエル『さう矢釜しゆ云ふない。俺だつて今朝迄庫の中へ罪人同様突込まれて居たのだから、些とは休養しなければやりきれぬぢやないか』 お民は、 お民『エエこの女郎男の腰抜奴』 と云ふより早く柄杓に水を汲んで二人にぶツかけた。アヅモス、フエルは真赤になつて、 アヅモス、フエル『これやお民、馬鹿にしやがるな、これを喰へ』 と双方から鉄拳を振つて一人の女を叩き付けて居る。お民は荒男二人に叩きつけられ、悲鳴を上げて『人殺ー人殺ー』と叫び出した。此声に驚いてアーシスは走り来り、いきなりアヅモスの首に手拭ひを後からパツと引つかけグツと引き倒した。フエルはこの権幕に驚いて裏口から細くなつて逃げ出しけり。 お民『アーシスさま好う来て下さいました。此奴偉さうに云やがつて仕方がないので水をかけてやりましたら、男らしうもない、女一人に二人の荒男が鉄拳を振つて喧嘩を買ひに来よつたのですよ』 アーシス『本当に無茶の事をする男ですね。オイ、アヅモス何だ、下女を捉まへて余り大人気ないぢやないか』 アヅモス『エーチヨツ、横合から飛んで来やがつてちよつかいを出しやがるものだから、折角の折檻がワヤになつて仕舞つた。コリヤ、アーシス、俺の喉を締めてどうするのだ、これ見よ、痕がついて居るぢやないか』 アーシス『喧嘩の結末がついたらそれでよいぢやないか。アー偉い畳中が灰だらけだ。ちと箒なと持つて其処辺中を掃除して来い。これだけお客さまで忙しいのに、女を相手にして居る所かい』 アヅモス『此奴もお民が感染したと見えて箒持て箒持てと吐しやがるな。箒に憚りさまだ』 アーシス『貴様は何時もほうきの守だといつて威張つて居たぢやないか。箒持つのは貴様の性に合うて居るわ。サア早く掃いたり掃いたり』 アヅモスは庭箒を取るより早く、アーシスの頭を目蒐けて、 アヅモス『コリヤ、伯耆の守さまが、貴様の頭を播磨の守さまだ』 と云ひ乍らピシヤピシヤと撲りつけ尻に帆をかけて此場を逃げ去つた。アーシスは怒つてアヅモスの後を追つ駆けようとするのを、お民はグツと抱き止め声を慄はして、 お民『もしもし貴方、一寸待つて下さいませ、これだけ沢山のお客さまでお取り込みでもあり、病人さまもあるのに、番頭同士が喧嘩なさつては家の親方に済みませぬ。又スガールさまやスミエルさまの病気に障るといけませぬからなア』 アーシス『さうだと云つて此儘にする訳には行かぬぢやないか、後の為にならぬからなア』 お民『まアまア今日は辛抱して下さいませ、親方や娘さまが心配なさいますからな』 アーシス『ウンそれもさうだ。そんならお前の意見に従つて今日は忘れる事にせう。併しお前も此家へ来たらチツと言葉を改めて呉れぬと困るよ。御主人様を親方と云つたり、お嬢様の名を呼んだりすると云ふ事があるか』 お民『そんなら何と云つたらよいのですか』 アーシス『お上の方をお呼びするには御主人様を旦那様と云ふのだ。奥様はお部屋様とか奥様とか云つてよい。さうして御老人は御隠居様とか、大旦那様とか申上るのだよ。男のお子様なれば坊様、女のお子はお嬢様、或は坊ちやま、お嬢さまなど云つたらよい。二人以上の時は大きな坊ちやま、小さいお嬢様と云ふのだ。そして自分の事は私と云ひ、ウチだとか、アテだとか、ワタシなどは見つともないから云はぬがいい。さうして受け答へはヘエなんと云つてはいけない、ハイと云ふのだよ。朝起きたらお上へ御挨拶をするのに「お早う厶います」と云ひ、晩は「お寝み遊ばせ」、外出の時には「行つて参ります」、自分の用事で外出する時は「一寸やつて頂きます」と云ふのだ。帰宅の時は「唯今帰りました」、御飯の時は「頂きます」とか、「頂戴致します」とか云ふのだ。そして旦那様の外出の時は「行つていらつしやいませ」、お帰りになつた時には「お帰り遊ばしませ」と、かう叮嚀に云ふのだよ。総て言葉使はハツキリと叮嚀にさうして柔しみのあるやうに注意するのだ。使に往つて来たら、必ず直様復命しなくてはならない。後から序に申上ますと云ふやうな懶惰事をやつて居ると何時の間にか肝腎の用を忘れて仕舞ふからなア』 お民『何とまア此処の内の男衆は俄旦那様を初め、誰人も彼れも女みたやうな事を云ふ人が集つたものだ、オホホホホ、これで私も大分に勉強を致しました』 アーシス『お民さま、お前はどこともなしに下女に似合はぬ垢抜がして居るが、実際は何処から来たのだ。一寸聞かして貰ひ度いものだな』 お民『私はビクの城下に生れた者で厶いますが、一寸様子があつて親の名を名乗る事が出来ないのですよ』 アーシス『ウンさうすると父なし子だな』 お民『まアそんなものでせう。併し父親なしに出来る子は広い世界に一人もありますまいから何処かにあるでせう』 アーシス『お前の父親と云ふのは一体誰だ』 お民『私は血沼の村の卓助と云ふ人に育てられた者ですが、私のお父さまは立派な方だと云ふ事です。私の母が奉公に行つて居つて腹が膨れ、奥様が八釜しいので父が金をつけて卓助の家にやつたのださうですが、養家の両親も既に亡くなつて仕舞ひ、只の一人ぼつちで仕方がないので其処辺中を奉公し歩き、二三日前に此処に雇はれたのです』 アーシス『実の事は俺もビクトリヤ城下の生れだが、そいつは妙だなア』 お民『ヘエ貴方もビクトリヤ城下ですか、さうしてお父さまは何と云ふ方です』 アーシス『これは秘密だから云はれないのだが、人に云はなければ知らしてやらう。俺も実はこの村へ、そつと里子にやられたのだ。俺の父といふのは左守の司のキユービツトと云ふお方だ。何でも下女との中に俺が生れたので、藁の上から此村の首陀の家へやつて仕舞つたと云ふ事だ。どうかして一遍遇ひたいのだけれど、名乗る訳にもゆかず困つたものだよ。さうして一体お前は誰の子だい』 お民『私のお母さまは皐月と云ひました。ビクトリヤ城内へ御奉公に上つて居る時、刹帝利様のお手が掛かつて腹が膨れ、それが為にそつと卓助の家へ下されたのださうです。こんな事云つて貰うと私の命が無くなりますから、どうぞ秘密に頼みますよ』 アーシス『成程道理でどこともなしに気品の高い所がある。ヤア恐れ入りました』 お民『斯う双方から何事も打ち合けた以上は、一層の事貴方と夫婦になつたらどうでせう、さうすれば互に秘密が守れますからなア』 アーシス『そりや有難いが何だか勿体無いやうな気がしてならないわ、世が世ならお前は立派な王女様だ。私は臣の身分だからなア』 お民『そんな斟酌が要りますか、サア手つ取り早く相談を定めやうぢやありませぬか』 斯く二人が話して居る次の間に何人とも知れず足音がスウスウと次第に細く消えてゆく。これはアヅモスが二人の話を立ち聞きして居たのである。 (大正一二・三・三旧一・一六於竜宮館加藤明子録) |
|
25 (2698) |
霊界物語 | 57_申_テルモン山の神館2 | 21 言触 | 第二一章言触〔一四七一〕 ワックスは驚き吾家に馳帰り見れば父のオールスチンは病益々重く、殆ど虫の息になつて居た。流石のワックスも驚いて父の病床に駆け寄り、涙の声を絞り乍ら、 ワックス『お父様、如何で厶います。お苦しう厶いますか』 とツヒになく優しく尋ねる。オールスチンはクワツと目を瞠き、ニタリと笑つた儘瞑目して了つた。 ワックス『アーア到頭大切の大切のお父さまはなくなつて了つた。アアどうしようかな。おい、オークス、ビルマ、も一度どうかして甦つて貰ふ道はあるまいかな。コラ看護婦、貴様達二人も附いて居つて何して居た。親爺が死ぬやうな看護を頼みはせぬぞ、病気が癒る為、高い金を出して雇うて居たのだ。俺の不在の間に何か悪い事したのだらう。トツトと出て行け』 とソロソロ地金を出しワヤな事を云ひ出した。看護婦は呆れて返す言葉もなく、面を膨らし乍ら自分の持物を取りまつべて逃げ帰らうとする。 ワックス『コリヤ一寸待て、その荷物を税関で調べてやらう。親爺の小判をソファーの下から引張り出して詰めて居るのだらう』 看護婦『ホホホそんな安い人間と思つて貰ひますと片腹痛う厶います。然し此トランクは私の物ですから指一本触へるなら触へて御覧なさい』 ワックス『ヨシ、みん事調べてやらう。大泥棒奴が』 と云ひ乍ら二人の看護婦のトランクを無理に捻開けた。忽ち白き煙シユーシユーと音を立てて立あがり、中よりデビス姫、ケリナ姫の二人がニコニコしながら立ち現はれた。ワックスはアツと驚き腰を抜かし『バ……化物』と呼んだきり、喉がつまり口をワナワナさせ慄うて居る。オークス、ビルマは其間にソファーを取り除け、畳をめくり、オールスチンの隠して置いた金銀の小玉を引張出し、看護婦のトランクに詰め込み、倒れて居るワックスの前に見せびらかし、 オークス『もし、ワックス様、これ丈の戦利品が厶いましたよ。後にはもう一つも残つて居りませぬ。ビルマと両人が有難く頂戴致します。お前さまはお化の姫様と仲良う暮しなさい。お前さまの腰は三日や四日にや立ちますまいから、これから両人が聖地を逐電致し、ハルナの都に行つて栄耀栄華に暮します、アバよ、ウツフフフフフフ』 と腮をしやくり嘲笑しながらスタスタと表へ駆け出す。二人の看護婦の姿は何処へ行つたか皆目見えなかつた。ワックスは無念をこらへ歯切りを噛んで逃げ行く二人の後を怨めしげに見送つて居た。狼狽者のエルはトランクの中から美人が出たのと、オールスチンの絶命れたのを見て逸早く飛び出し、再び十字街頭に立ち現はれ、大音声を張り上げて言触を始め出した。 エル『ドンドコドンドコドンドコドンヤア大変ぢやア大変ぢやア 天が地となり地が天となるドンドコドンドコドンドコドン ワックスさまの親爺さま神の館の家老職 オールスチンが命尽きて極楽参りを致したぞ ドンドコドンドコドンドコドン皆さま早う駆けつけて 葬式万端手伝うて野辺の送りをするが宜い 悪酔怪の会長さまワックスさまは腰抜かし アフンとばかり口開けてものをも言はず倒れてる ドンドコドンドコドンドコドンそれにまだまだ不思議なは 二人の看護婦忽ちに雲を霞と消え失せた 不思議と思ふ最中にワックスさまがパツと開けた トランクの中からシユーシユーと白い煙が立ち昇り ドンドコドンドコドンドコドンあらマア不思議摩訶不思議 神の館にあれませるデビスの姫やケリナ姫 ニコニコし乍ら現はれたドンドコドンドコドンドコドン これもヤツパリ三五の魔法使の仕業だと 思へば俄に怖くなり家令の死んだ報告や ワックスさまの腰抜かしお化女の出現を 報告がてらにやつて来たドンドコドンドコドンドコドン 今度は嘘では無い程に本真に本真に死んだのだ ソファーの下にドツサリと金と銀との小玉奴が 目玉を剥いて唸つてる手に入れるなら今だぞや 凡て此世の財産は人一代と云ふ事だ 親爺が悴に渡さずに残して死んだ宝なら 誰が拾うても同じ事これは天下の所有品 お金の欲しい代物は一時も早く飛んで出て 思ふ存分引掴み栄耀栄華に暮らさんせ ドンドコドンドコドンドコドン執念かかつた金銀を 俺は拾はうと思はないさはさり乍ら黄金が もの云ふ時節だ皆さまよドンドコドンドコドンドコドン 強欲爺の葬礼を表にかこつけドシドシと 遠慮会釈も要らぬ故押しかけ行きて宝をば 各自にせしめた方がよいワックスさまの腰抜けが もとへ戻らぬ其先に早く行つたら行き得ぢや 一歩先へ行く者がどうしてもお神徳が多いぞや ドンドコドンドコドンドコドンア、エーエエエエーエエエ 扨ても果敢ない人間の命欲の皮をば引張つて 小国別のお館の家令の勤めチヨコチヨコと 上前はねて貯め置いた罪と穢の凝固つた 金と銀とを沢山に残して死んだ気味の良さ 悪はどうしても長つづき致さぬものだと今更に 此エルさまは悟りましたオールスチンの親爺奴が 何時も偉さうに俺様をエルよエルよと呼び棄てに こき使ひやがつた其酬い今目のあたり面白や ドンドコドンドコドンドコドン人はどうしても生前に 善を行ひ施しをやつて置かねば詰らない 今度の家令が好い手本皆さま確りなさいませ ドンドコドンドコドンドコドンサアサア私が御案内 皆さま跟いて厶いませドンドコドンドコドンドコドン』 と豆太鼓を叩き乍ら駆け出した。欲に目の無い群衆は先づ第一に金銀の小玉を一つなりとも拾得し、其葬式に加はり、故人の霊を慰めむものと、蒸し暑い夏の日を欲の皮を引張つて、汗をタラタラ絞り乍ら走り行く。 (大正一二・三・二六旧二・一〇於皆生温泉浜屋北村隆光録) |
|
26 (2782) |
霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 21 三五神諭(その二) | 第二一章三五神諭その二〔一五四六〕 明治三十一年旧五月五日 今の世界の人民は、服装ばかりを立派に飾りて、上から見れば結構な人民で、神も叶はん様に見えるなれど、世の元を創造へた、誠の神の眼から見れば、全然悪神の守護と成りて居るから、頭に角が生えたり、尻に尾が出来たり、無暗に鼻ばかり高い化物の覇張る、暗黒の世に成りて居るぞよ。虎や狼は吾の食物さへありたら、誠に温順しいなれど、人民は虎狼よりも悪が強いから、欲に限りが無いから、何んぼ物が有りても、満足といふ事を致さん、惨酷い精神に成りて了ふて、鬼か大蛇の精神になりて、人の国を奪つたり、人の物を無理しても強奪くりたがる、悪道な世に成りて居るぞよ。是も皆悪神の霊の所行であるぞよ。モウ是からは改信を致さんと、艮金神が現はれると、厳しうなるから、今迄の様な悪のやりかたは、何時までもさしては置かんぞよ。善し悪しの懲戒は、覿面に致すぞよ。今迄好きすつ法、仕放題の、利己主義の人民は、辛くなるぞよ。速く改信致さんと、大地の上には置いて貰へん事に、変りて来るから、神が執念気を附けるなれど、知恵と学とで出来た、今の世の人民の耳には、這入かけが致さんぞよ。一度に岩戸開きを致せば、世界に大変が起るから、時日を延ばして、一人なりとも余計に改信さして、助けてやりたいと思へども、何の様に申しても、今の人民は聞入れんから、世界に何事が出来致しても、神はモウ高座から見物いたすから、神を恨めて下さるなよ。世界の神々様守護神殿、人民に気を附けるぞよ。無間の鐘を打鳴して、昔の神が世界の人民に知らせども、盲目と聾者との暗黒の世であるから、神の誠の教は耳へ這入らず、獣の真似を致して、牛馬の肉を喰ひ、一も金銀、二も金銀と申して、金銀で無けら世が治らん、人民は生命が保てん様に取違致したり、人の国であらうが、人の物であらうが、隙間さへありたら略取ことを考へたり、学さへ有りたら、世界は自由自在に成る様に思ふて、物質上の学に深はまり致したり、女と見れば何人でも手に懸け、妾や足懸を沢山に抱へて、開けた人民の行り方と考へたり、恥も畏れも知らぬ許りか、他人は何んな難儀を致して居りても、見て見ん振りをいたして、吾身さへ都合が善ければ宜いと申して、水晶魂を悪神へ引抜かれて了ふたり、徴兵を免れようとして、神や仏事に願をかける人民、多数に出来て、国の事共一つも思はず、国を奪られても、別に何とも思はず、心配も致さぬ人民ばかりで、此先は何うして世が立ちて行くと思ふて居るか、判らんと申しても余りであるぞよ。病神が其辺一面に覇を利かして、人民を残らず苦しめ様と企みて、人民のすきまをねらひ詰て居りても、神に縋りて助かる事も知らずに、毒には成つても薬には成らぬものに、沢山の金を出して、長命の出来る身体を、ワヤに為られて居りても、夢にも悟らん馬鹿な人民許りで、水晶魂の人民は、指で数へる程よりか無いとこまで、世が曇りて来て居りても、何うも此うも、能う致さん様に成りて居るくせに、弱肉強食の世の行り方をいたして、是より外に結構な世の治方は、無いと申して居るぞよ。今の世の上に立ちて居りて、今迄けつこうに暮して居りて、神の御恩といふ事を知らずに、口先ばかり立派に申して居りても、サア今といふ所になりたら、元来利己主義の守護神であるから、チリチリバラバラに、逃げて了ふもの許が出て来るぞよ。今の人民は、サツパリ悪魔の精神に化りて居るから、何程結構な事を申して知らしてやりても、今の今まで改信を能う致さんやうに、曇り切りて了ふたから神もモウ声を揚げて、手を切らな仕様が無いが、是丈神が気を附けるのに聞かずに置いて、後で不足は申して下さるなよ。神はモウ一限に致すぞよ。 今の人民は悪が強いから、心からの誠といふ事が無きやうになりて、人の国まで弱いと見たら、無理に取つて了ふて、取られた国の人民は、在るに在られん目に遭はされても、何も言ふ事は出来ず。同じ神の子で有りながら、余り非道い施政で、畜生よりもモ一つ惨いから、神が今度は出て、世界の苦しむ人民を助けて、世界中を桝掛け曳きならすのであるぞよ。今の人民は段々世が迫りて来て、食物に困る様になりたら人民を餌食に致してでも、徹底的行り抜くといふ深い仕組を致して、神の国を取らうと致して、永らくの仕組をして居るから、余程確りと腹帯を締めて居らんと、末代取戻しの成らん事が出来して、天地の神々様へ、申訳の無き事になるから、艮の金神が三千年余りて、世に落ちて居りて、蔭から世界を潰さんやうに、辛い行をいたして、経綸をいたしたので、モウ水も漏らさんやうに致して有るなれど、神は其儘では何も出来んから、因縁ある身魂を引きよせて、懸りて此世の守護をいたすのであるから、中々大事業であれど、時節参りて、変性男子と変性女子の身魂が、揃ふて守護が有り出したから、いろは四十八文字の霊魂を、世界の大本、綾部の竜宮館にボツボツと引き寄せて、神がそれぞれ御用を申し付けるから、素直に聞いて下さる人民が揃ふたら、三千年余りての仕組が、一度に実現て来て一度に開く梅の花、万古末代萎れぬ花が咲いて、三千世界は勇んで暮す神国になるぞよ。人民の天からの御用は、三千世界を治め、神の手足となりて、吾身を捨てて、神の御用を致さな成らぬのであるから悪には従はれぬ、尊い身魂であるのに、今の世界の人民は、皆大きな取違ひを致して居るぞよ。 ○ 明治三十二年…月…日 艮の金神が出口直の手を借りて、何彼の事を知らすぞよ。今迄は世の本の神を、北の隅へ押籠めておいて、北を悪いと世界の人民が申して居りたが、北は根の国、元の国であるから、北が一番に善くなるぞよ。力の有る世の本の真正の水火神は、今迄は北の極に落されて、神の光を隠して居りたから、此世は全然暗黒でありたから、世界の人民の思ふ事は、一つも成就いたさなんだので在るぞよ。是に気の付く神も、人民も、守護神も無かりたぞよ。人民は北が光ると申して、不思議がりて、種々と学や知識で考へて居りたが、誠の神々が一所に集りて、神力の光りを現はして居ると申す事を知らなんだぞよ。モウ是からは、世に落されて居りた活神の光りが出て、日の出の守護となるから、其処辺中が光り輝いて、眩うて目を明けて居れんやうに、明かな神世になるぞよ。今迄の夜の守護の世界は、明の烏と成りて来て、夜が明るから、それまでに改信を致して、身魂を研いて水晶魂に立帰りて居らんと、ヂリヂリ悶える事が出来致すから、今年で八年の間、神は気を附けたなれど、余り世界の人民の心の曇りがきつき故に、何を言ふて聞かしても、筆先に書いて見せても誠にいたさぬから、出口直は日々咽喉から血を吐くやうな思ひを致して、世界の為に苦労をいたして居るのを、見て居る艮の金神も辛いぞよ。胸に焼鉄あてる如く、一人苦みて居るぞよ。人民は万物の長とも申して、豪さうに致して居るでは無いか。鳥獣でも、三日先の事位は知りて居るのに、人民は一寸先が見えぬ所まで曇りて居るから、脚下へ火が燃えて来て居りても、未だ気が附かぬぞよ。能うも是だけ人民の霊魂も、曇りたものであるぞよ。障子一枚ままならぬ所まで精神を汚して置いて、何も判らぬ癖に神を下に見降して居る、人民の中の鼻高が、上へのぼりて、此世の守護をいたしても、一つも思ふやうに行きはいたさんぞよ。此世は、元の生神の守護が無かりたら、何程知識や学で考へても、何時までも世界は治まらんぞよ。一日も速く往生いたして、神の申す様に致さねば世界の人民が可哀想で、神が黙つて見て居れんから、今度は北から艮の金神が現はれて、世界を水晶の世にいたして、善と悪とを立別けて、善悪の懲戒を明白にいたして、世界の人民を改信させて、万古末代動きの取れん、善一筋の世の持方を致すから、是迄の世とは打つて変りての善き世といたして、神も仏も人民も、勇んで暮す松の世、神世といたして、天の大神様へ御目に掛るのであるぞよ。夫れまでに一つ大峠が在るから、人民は速く改信いたして、神心に立還りて下されよ。神は世界を助けたさの、永い間の苦労であるぞよ。昔の神世に立替へる時節が来たぞよ。今迄は日没が悪いと申したが、世が代ると日没が一番善く成るぞよ。日没に初めた事は、是から先の世は、何事も善き事なれば成就いたすぞよ。夫れも神をそつち除けにいたしたら、物事一つも成就いたさぬ世に変るから、何よりも改信致して、霊魂を研くが一等であるぞよ。時節が来たぞよ。モウ間が無いぞよ。 ○ 明治三十二年旧七月一日 竜門の宝を艮の金神がお預り申すぞよ。竜門には宝は何程でも貯へてあるぞよ。岩戸開きが済みて立直しの段になりたら間に合ふ宝であるぞよ。昔から此乱れた世が来るから、隠してありたのぢやぞよ。御安心なされ。艮金神大国常立尊が、神功皇后殿と出て参る時節が近よりて来たぞよ。此事が天晴表に現はれると、世界一度に動くぞよ。モウ水も漏さぬ経綸が致して有るぞよ。開いた口が塞がらぬ、牛糞が天下を取るぞよ。珍らしい事が出来るぞよ。アンナものがコンナものに成りたと、世界の人民に改信致させる仕組であるから、チト大事業で有れども、成就いたさして、天地の大神へ御目に掛けるから、艮の金神はカラ天竺までも鼻が届くぞよ。この仕組は永らく世に落ちて居りての、艮の金神の経綸であるから、神々にも御存知ない事があるから、人民は実地が出て来る迄はヨウ承知を致さんぞよ。是でも解けて見せてやるぞよ。今度の二度目の天の岩戸開は、因縁の在る身魂でないと、御用には使はんぞよ。神の御役に立るのは水晶魂の選抜ばかり、神が綱を掛けて御用を致さすのであるから、今迄世に出て居れた守護神は、思ひが大分違ふぞよ。是も時節であるぞよ。時節には何も敵はんぞよ。上下に復るぞよ。 艮金神大国常立尊の三千年の経綸は、根本の天の岩戸開で有るから、悪の霊魂を往生さして、万古末代善一つの世に致すのであるから、神の国に只の一輪咲いた誠の梅の花の仕組で、木花咲哉姫の霊魂の御加護で、彦火々出見尊とが、守護を遊ばす時節が参りたから、モウ大丈夫であるぞよ。梅で開いて松で治める、竹は邪神の守護であるぞよ。此経綸を間違はしたら、モウ此の先はどうしても、世が立ちては行かんから、神が執念う気を付けて置くぞよ。明治二十八年から、三体の大神が地へ降りて御守護遊ばすと、世界は一度に夜が明けるから、三人の霊魂を神が使ふて、三人世の元と致して、珍らしき事を致さすぞよ。いろは四十八文字で、世を新つに致すぞよ。此中に居る肝腎の人に、神の経綸が解りて来て改信が出来たら、世界に撒配りてある身魂を、此大本へ引寄せて、神の御用を致さすから、左程骨を折らいでも経綸は成就いたすから、何事も神の申す様にして居りて下されよ。今度の事は知識や学では到底可んから、神の申す事を素直に聞いて下さる身魂でないと、神界の御用には使はんぞよ。此の大本は外の教会のやうに、人を多勢寄せて、それで結構と申す様な所でないから、人を引張りには行つて下さるなよ。因縁ある身魂を神が引寄せて夫れ夫れに御用を申し附けるのであるぞよ。 大本の経綸は病気直しで無いぞよ。神から頂いた結構な身魂を、悪の霊魂に汚されて了ふて、肉体まで病魔の容器になりて、元の大神に大変な不孝を掛けて居る人民が病神に憑かれて居るのであるから素の水晶魂に捻じ直して、チツトでも霊魂が光り出したら、病神は恐がりて逃げて了ふぞよ。此の大本は医者や按摩の真似は為さんぞよ。取次ぎの中には、此の結構な三千世界の経綸を、取違ひ致して、病直しに無茶苦茶に骨を折りて肝腎の神の教を忘れて居る取次が多数在るが、今迄は神は見て見ん振を致して来たが、モウ天から何彼の時節が参りて来たから、今迄の様な事はさしては置かんから、各自に心得て下されよ。是程事解けて申す、神の言葉を反古に致したら、已むを得ず気の毒でも、天の規則に照して懲戒を致すぞよ。今の神の取次は、誠と云ふ事がチツトも無いから、吾の目的計り致して、神を松魚節に致して、却て神の名を汚して居る、天の罪人に成りて居るぞよ。大本の取次する人民は、其覚悟で居らんと世界から出て来だすから、恥かしくなりて、大本へは早速に寄せて貰へん事が出来いたすから、永らく神が出口に気を付けさしたぞよ。モウ改信の間が無いぞよ。神はチツトも困らねど、取次が可愛相なから。 艮金神が表になると、一番に悪所遊びを止めさすぞよ。賭博も打たさんぞよ。家の戸締りも為いでもよき様に致して、人民を穏かに致さして、喧嘩も無き結構な神世に致して、天地の神々様へ御目に掛けて、末代続かす松の世と致すぞよ。 ○ 明治三十四年旧三月七日 元伊勢のうぶだらひと、産釜の水晶の御水は、昔から傍へも行かれん尊い清き産水でありたなれど、今度の天の岩戸開に就いて、因縁のある霊魂に御用をさして、世を立直すには、昔の元の水晶の変らん水を汲りに遣らしてあるぞよ。艮金神の指図でないと、此水は滅多に汲りには行けんのであるぞよ。神が許可を出したら、何処からも指一本触る者もないぞよ。今度の元伊勢の御用は、世界を一つに致す経綸の御用であるぞよ。もう一度出雲へ行て下されたら、出雲の御用を出来さして、天も地も世界を平均すぞよ。此御用を済して下さらんと、今度の御用は分明かけが致さんぞよ。解りかけたらば速いぞよ。天の岩戸開きは水の守護と火の守護とで致すぞよ。岩戸開きを致すと申して居りても如何したら世が変ると云ふ事は、世に出て御出でる神様も御存知はないぞよ。肝腎の仕組は今の今迄申さぬと出口に申してあるぞよ。まだまだ在るぞよ。天の岩戸開と言ふ様な大望な事には、誰にも言はれん事があるのぢやが、其御用は出口でないと出来んぞよ。今度の御用をさす為に、昔から生代り死代り、苦労ばかりが為して在りた、変性男子の身魂であるぞよ。此の変性男子が現はれんと世界の事が出て来んぞよ。神柱会開きは人民が何時まで掛りても開けんと申してあるぞよ。神が開いて見せると申して、先に筆先に出してあらうがな。時節が近寄りたぞよ。 世界一度に開くぞよ。一度に開く梅の花、金神の世に致して早く岩戸開をいたさんと、悪く申すでなけれども、此世は此の先は如何成るかと言ふ事を御存知の無い神ばかりであるぞよ。 (大正一二・四・二五旧三・一〇北村隆光再録) |
|
27 (2784) |
霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 23 三五神諭(その四) | 第二三章三五神諭その四〔一五四八〕 明治三十八年旧四月十六日 艮金神国常立尊出口の守と現れて、二度目の天の岩戸開きを致すに就いては、昔の世の本から拵へてある因縁の身魂を引寄して、夫々に御用を申付けるぞよ。今度の御用は因縁無くては勉まらんぞよ。先になりたら金銀は降る如くに寄りて来るから、さうなりたら吾も私もと申して、金持つて御用さして下されと申して出て来るなれど、因縁なき身魂には何程結構に申しても一文も使ふ事は出来んぞよ。是から先になると金銀を積んで神の御用を致さして欲しいと、頼みに来るもの計りであれど、一々神に伺ひ致してからでないと、受取る事は成らんぞよ。金銀に目を掛る事は相成らんから、何程辛くても今の内は木の葉なりと、草なりと食べてでも凌ぎて御用を致して居りて下さりたら、神が性念を見届けた上では何事も思ふやうに、金の心配も致さいでも善きやうに守護が致してあるぞよ。今が金輪際の叶はん辛いとこであるから、茲を一つ堪りて誠を立抜きて下さりたら、神が是で善いと云ふやうに成りたら、楽に御用が出来るやうにチヤンと仕組てあるから、罪穢のある金は神の御用には立てられんぞよ。 いつも筆先で気を附けてあるが、大本は艮金神の筆先で世を開くところであるから、余り霊学ばかりに凝ると筆先が粗略になりて、誠が却て解らんやうに成りて、神の神慮に叶はんから、筆先を七分にして霊学を三分で開いて下されよ。帰神ばかりに凝ると、最初は人が珍らしがりて集りて来るなれど、余り碌な神は出て来んから、終には山子師、飯綱使、悪魔使と言はれて、一代思はくは立たんぞよ。思はくが建たんばかりか、神の経綸を取違ひ致す人民が出来て来て、此の誠の正味の教をワヤに致すから、永らく気を附けて知らしたなれど、今に霊学が結構ぢや、筆先ども何に成ると申して一寸も聞入れぬが、どうしても諾かな諾くやうにして、改信さして見せるぞよ。神の申す事を反いて何なりと行りて見よれ、足元から鳥が飛つやうな吃驚が出て来るぞよ。世間からは悪く申され、神には気障と成るから、何も成就いたさずに大きな気の毒が出来るのが見透いておるから、其れを見るのが可哀相なから、毎度出口の手で神が知らせば、肉体で出口直が書くのぢやと申して御座るが、茲暫く見て居りたら解りて来て、頭を逆様にして歩かんならん事が出来するぞよ。誰も皆帰神で開きたいのが病癖であるから、一番にこの病癖を癒して遣るぞよ。心から発根と癒せば宜いなれど、如何しても肯かねば激しき事をして見せて眼を開けさしてやるぞよ。狐狸野天狗などの霊魂に嘲弄にしられて、夫で神国の御用が出来ると思ふのか。夫でも神国の人民ぢやと思ふて居るのか。畜生の容器にしられて夫を結構と思ふのか、神界の大罪人と成りても満足なのか。訳が解らんと申しても余りであるぞよ。斯うは言ふものの是の霊魂は何時も申す通り、世界一切の事が写るのであるから、此大本へ立寄る人民は是の遣方を見て、世界は斯んな事に成りておるのかと改信を為るやうに、神からの身魂が拵へて在るのであるから、誤解をいたさぬやうに御庇を取りて下されよ。他人が悪い悪いと思ふて居ると、全部自己の事が鏡に映りておるのであるから、他人が悪く見えるのは、自己に悪い所や霊魂に雲が掛りて居るからであるから、鏡を見て自己の身魂から改信いたすやうに、此世の本から御用の霊魂が拵へてありての、今度の二度目の天の岩戸開きであるから、一寸やソツトには解る様な浅い経綸でないから改信いたして身魂を研くが一等であるぞよ。世の本の誠の生神は今迄は物は言はなんだぞよ。世の替り目に神が憑りて、世界の事を知らせねば成らぬから、出口直は因縁ある霊魂であるから、憑りて何事も知らせるぞよ。世が治まりたら神は何も申さんぞよ。狐狸や天狗ぐらゐは何時でも誰にでも憑るが、この金神は禰宜や巫子には憑らんぞよ。何程神憑に骨を折りたとて、真の神は肝腎の時でないと憑らんぞよ。何も解らん神が憑りて参りて、知つた顔を致して種々と口走りて、肝腎の仕組も解らずに、天の岩戸開の邪魔をいたすから、一寸の油断も出来んから、不調法の無いやうに気を附けてやるのを、野蛮神が何を吐す位により解りて呉れんから、誠の神も苦労をいたすぞよ。神懸で何も彼も世界中の事が解るやうに思ふて居ると全然量見が違ふぞよ。神の申す中に聞いて置かんと、世間へ顔出しが出来んやうな、恥かしき事が出来いたすぞよ。この神一言申したら何時になりても、一分一厘間違はないぞよ。髪の毛一本程でも間違ふやうな事では、三千年かかりて仕組んだ事が水の泡になるから、そんな下手な経綸は世の元から、元の生神は致して無いから、素直に神の申す事を肯いて下されよ。世界の神、仏事、人民を助けたさの永らくの神は苦労であるぞよ。誰に因らず慢心と誤解が大怪我の元と成るぞよ。 ○ 大正元年旧八月十九日 大国常立尊が天晴表面になりて守護にかかると、一旦は神の経綸通りに致すから、改信致して神心に成りて居らんと、これから、人気の悪い所は何処でも飛火がいたすから、今度は是迄の見苦しき心を全然捨てて了ふて、産の精神に成りたらば、安全な道が造り替へてあるから、霊魂を研いて善い道へ乗り替へるやうに仕組んであれども、霊魂に曇りが在りては善い道へ乗替へたとて、辛うて御用が出来んから、発根の改信、腹の底からの改信でないと、誠の御用は出来んぞよ。竜宮様を見て皆改信をいたされよ。昔から誠に欲な見苦しき御心で在りたなれど、今度の天の岩戸開には欲を捨てて了はねば、神界の御用が勤まらんといふ事が、一番に早く御合点が参りたから、竜門のお宝を残らず艮金神に御渡し遊ばして、活溌な御働きを神界で一生懸命になりて、力量も充分に有るなり、此の方の片腕に成つて、今度の天の岩戸開の御用を遊ばすから、他の守護神も竜宮様の御改信を見て、一日も早く自己の心の中を考へて改信なされよ。大国常立尊が今表になりた所で、神界の役に立てる霊魂は一つも無いが、能くも是だけ曇りたものであるぞよ。もう神は構はんから、何彼の事を急速にいたして後の立直しに掛らんと、世界中の大事であるから、解らぬ守護神に何時までもかかりて居りたら、世界の人民が皆難渋をいたして、往きも戻りも成らんやうに成りて、戦争も済みたでも無し、止めも刺さん事になりて、世界中の大難渋と成るから、是迄耳に蛸が出来る程注意てあるが、何彼の時節が迫りて来て、動きもにじりも出来ん事に世界中が成るから、諄う守護神人民に気を附けるぞよ。 神国の人民に元の神国魂が些とありたら、茲までの難渋は無いなれど、誠一つの御魂により明されず、肝腎の事を任して為せる事も出来ず、テンで経綸が解りて居らんから、神が使ふ身魂が無いぞよ。此の方が世界中の事をいたさなならんから、何彼の事が一度になりて忙しうなると申すことが、毎度筆先で知らしてあらうがな。艮に成りたら神霊活機臨々発揮日月と現はれて、三千世界の艮を刺すぞよ。其折りに間に合ふやうに、早うから有難がりて、大本へ来て辛い修行をして居りても、肝腎の処が能く解りて居らんと、善い御用は出来んぞよ。何うなりとして引着いて居りたら、善い御用が出来ると思ふて居ると、大間違であるぞよ。艮金神が初発から一言申した事は一分一厘違はんぞよ。途中から変るのは矢張り霊魂に因縁が無いのぢやぞよ。因縁のある身魂は截りても断れん、如何な辛い目をいたしても左程苦しい事は無いぞよ。因縁性来と申すものは、エライものであるぞよ。それで今度は因縁の在る身魂が集りて来て、辛い辛抱をいたして、天地の光を出して呉れんならん。変性男子と変性女子との身魂を、茲まで化して神の御役に立てるぞよ。変性男子と女子の身魂が誰も能う為ぬ辛抱をいたして、此世には神は無きものと、学で神力をないやうに仕て居りたのを、此世に神が有るか無いかと云ふ事を、三千世界へ天晴と天地の神力を表はせて見せて、此の先は神力の世に致すから、是からは学力で、何麼事を致しても、世の本の根本の生神の神力には敵はんから、今の中に悪神のエライ企みを砕いて了ふから、一日も早く往生いたすが得であるぞよ。 今度の戦争は人民同志の戦争ではないぞよ。国と国、神と邪神との大戦争であるから、悪神の策戦計画は人民では誰も能う為ん仕組であれど、世の本の生神には敵はんぞよ。充分戦ふた所で金の要るのは程知れず、人の減るのも程は判らんぞよ。けれども出かけた船ぢや。何方の船も後方へは退けんから、トコトンまで行くぞよ。今迄の悪の守護神よ、神の国を茲までに自由にいたしたら、是に不足はもう在ろまいから、充分に敵対うて御座れよ。神力と学力との力較べの大戦争であるから、負たら従うて遣るし、勝つたら従はして、末代手は出しませぬと申すとこまで、往生をさせてやるぞよ。何程学力がエラウても、神力には勝てんぞよ。大きな見誤ひを為て居りたと云ふ事が後で気が附いて、死物狂を致さうよりも、脚下の明い中に降伏致す方が宜いぞよ。永引く程国土はチリヂリと無く為りて了ふぞよ。邪神の企謀は何麼計略も為てゐるなれど、悪では此世は立ては行かんぞよ。神の経綸は善一つの誠実地の御道に造り代へてあるから、気の附いた守護神は、善の道へ立帰りて安心なされよ。悪の身魂は平げて了ふから、早う覚悟を致さんと、もう一日の日の間にも代るから、是迄のやうに思ふておると、みな量見が違ふぞよ。毎度出口直に兵糧をとつて置かねば成らんといふ事が、諄う申して在らうがな。米が有ると申して油断をいたすで無いぞよ。人民は悧巧なもので在るなれど、先のチツトモ解らんもので在るから、筆先で何も知らすから、此筆先を大切にいたさんと、粗末にいたしたら、其場で変るやうに厳しくなるぞよ。この筆先は世界の事を、気もない中から知らしてあるから、疑うておると後で取返しの出来ん事になるぞよ。後の後悔は間に合はんぞよ。 ○ 大正三年旧七月十一日 大国常立尊が表に現はれて日出の守護となるから、人民が各自に力一杯気張りて為て来た事が、皆天地の神から為せられて居りたと申す事が、世界の人民に了解る時節が参りて来たぞよ。日出の守護になると変性男子の霊魂が、天晴世界へ現はれて次に変性女子が現はれて、女島男島へ落ちて居りた昔からの生神ばかりが揃うて天晴世に現はれて、この泥海同様の世界へ水晶の本の生神が揃うて、三千世界の岩戸開を致すから、天地の岩戸が開けて松の世、神世と相成るぞよ。綾部の神宮坪の内の本の宮は出口の入口、竜門館が高天原と相定まりて、天の御三体の大神が天地へ降り昇りを為されて、この世の御守護遊ばすぞよ。この大本は地からは変性男子と変性女子との二つの身魂を現はして、男子には経糸、女子には緯糸の意匠をさして、錦の旗を織らしてあるから、織上りたら立派な模様が出来ておるぞよ。神界の意匠を知らぬ世界の人民は色々と申して疑へども、今度の大事業は人民の知りた事では無いぞよ。神界へ出てお出ます神にも御存知の無いやうな、深い仕組であるから往生いたして神心になりて神の申すやうに致すが一番悧巧であるぞよ。まだ此先でもトコトンのギリギリ迄反対いたして、変性女子を悪く申して、神の仕組を潰さうと掛かる守護神が、京、大阪にも出て来るなれど、もう微躯とも動かぬ仕組が致して神が附添うて御用を為すから、別条は無いぞよ。変性女子の霊魂は月と水との守護であるから、汚いものが参りたら直に濁るから、訳の解らぬ身魂の曇りた守護神は傍へは寄せんやうに、役員が気を附けて下されよ。昔から今度の天の岩戸開の御用致さす為に、坤に落してありた霊魂であるぞよ。此者と出口直との霊魂が揃ふて御用を致さねば、今度の大望は、何程悧巧な人民の考へでも物事出来は致さんぞよ。此大本は世界に在る事が皆映るから、大本に在りた事は大きな事も小さい事も、善き事も悪しき事も、皆世界に現はれて来るから、変性女子をねらふものが是からまだまだ出来て来るから、確りと致して居らんと此中は治まらんぞよ。大事の仕組の身魂であるから、悪の霊がねらひ詰めて居るから、何処へ行くにも一人で出す事は成らんぞよ。変性女子は人民からは赤ン坊なれど、神が憑りたら誰の手にも合はん身魂であるぞよ。昔の元から見届けてありての、今度の大望な御用がさして在るぞよ。人民は表面だけより見えんから、何時も大きな取違ひを致すが、是も尤もの事であるぞよ。永らく大本へ来て日々御用に使はれておるものでも、女子の事は取違ひ致して、未だに反対致しておる位であるから、何にも聞かぬ世界の人民が取違ひをいたすのは、無理も無いぞよ。斯う申すと亦訳の解らぬ守護神の宿りてゐる肉体の人民が、肉体心を出して、出口は変性女子に抱込まれて居ると申すであらうが、其様な事の解らぬ艮金神出口直でありたら、三千年余りての永らくの苦労が水の泡に成るから、滅多に見違ひはいたさんぞよ。人民の智慧や学や考へで判るやうな浅い仕組は致してないぞよ。何方の身魂が一つ欠けても、今度の経綸は成就いたさんのであるから、世の本の根本から仕組て、色々と化かしてをれば、自己の霊魂が汚いから、竪からも横からも汚う見えるのであるぞよ。変性男子の身魂も変性女子の身魂も、三千世界の大化物であるから、霊魂に曇りの有る人民には見当が取れんぞよ。此大化物を世界へ現はして見せたら、如何に悪に強い守護神も人民も、アフンとして吃驚いたして、早速には物も能う言はん事が出来するぞよ。昔の根本の世の本から末代の世まで、一度あつて二度ないと言ふやうな、大望な神界と現界の岩戸開きであるから、アンナものがコンナものに成りたと申す経綸であるから、人民では見当は取れん筈であれども、改信いたして神心に立復りた人民には、明白に能く判る仕組であるぞよ。世の変り目には変な処へ変な人が現れて、変な手柄をいたすぞよと、明治三十一年の七月に筆先に書いて知らしてありたぞよ。時節が近寄りたぞよ。 (大正一二・四・二六旧三・一一於竜宮館北村隆光再録) |
|
28 (2895) |
霊界物語 | 64_上_卯エルサレム物語1 | 19 祭誤 | 第一九章祭誤〔一六四八〕 高城山の峰つづき、小北山の松林を切り開いて沢山な小宮やチヤーチを建てたルートバハーの脱走教があつた。ここの主人を虎嶋久之助と云ひ、女房は虎嶋寅子と云ふ。生れつき自我心の強い女であつたが変性男子の系統と云ふのを奇貨としてユラリ教と云ふ変則的なる教団をたてユラリ彦命を祀つて、盛んにルートバハーの教主ウヅンバラチヤンダーに反抗的態度をとつてゐる。そして自分は底津岩根の大弥勒、日の出神と自称し、朝から晩まで皺枯声を出して濁つた言霊で四辺の空気を灰色に染て居る。ここへ集る信徒の中には随分色々な変り者があつて、中にも最も寅子の信任を得たのは、善も悪きも難波江の菖蒲のお花と云ふ、あまり色の白くない背の低い横太い年増婆アさまである。そして寅子の最も信任してゐるのは守宮別と云ふ海軍の士官上りの外国語をよく囀る男であつた。寅子は日の出神の生宮と自称し乍ら此守宮別と共に宅を外にして曲霊軍の襷を掛け、日の出島の東西南北を隈なく巡教し、軍艦布教までやつてヤンチヤ婆アさまの名を売つた、したたか者である。守宮別は日の出神と腹を合せ如何にしても変性女子のウヅンバラチヤンダーを社会の廃物となし、自分等がとつて代らむと苦心の結果、守宮別は四方八方に反対運動を開始し、終には六六六の獣を使つてウヅンバラチヤンダーの肉体の自由まで奪つた剛の者である。 目の上の瘤として居た人物を、うまく圧倒した上は、もはや天下に恐るべきものなしと、菖蒲のお花を筆頭に守宮別、曲彦、木戸口、お松等の連中と謀り小北山に拝殿を建て、一時も早く願望成就致しますやうと祈願をこらして居た。さうして地の高天原へ乗込んで一切の教権を握らむと聖地の古い役員をたらし込み、九分九厘と云ふ所へウヅンバラチヤンダーが帰つて来たので、肝をつぶしホウボウの態にて再び小北山へ逃げ帰り守宮別は海外に逃げ出し、後に寅子姫、お花、曲彦の三人は首を鳩めて第二の策戦計画にとりかかつた。先づ第一に日の出神の筆先を書いてルートバハーの信者を籠絡し、変性女子の勢力を失墜せむものと難波の里の高山某に軍用金を寄附させ、日出島全体の神社仏閣を巡回し、身魂調べと称し、口碑伝説を探つていろいろの因縁をつけ、筆先を作つて誠しやかに少数の信徒を誤魔かして居る。 今日は春季大祭の為五六十人の信徒が集つて来た。祭典は無事に済んで信者は各家に帰つた。あとには曲彦、寅子、菖蒲のお花、久之助、高山彦等が首を鳩めて協議を凝して居る。曲彦は先づ第一に口を開いて、 曲彦『皆さま、お神徳によりまして春季大祭も無事終了致し、さしもに広き霊場も立錐の余地なき迄に信者が集まらず、却て、込みあはずお神徳を頂きました。之も日頃熱心に御布教して下さる日の出神様を初め竜宮の乙姫様の御活動の結果と有難く感謝致します。就いては御存じの通り、吾々がかねて計画してゐた玉照彦、玉照姫の御結婚もたうとう此世を乱す悪神の憑つた瑞の霊の為に挙行されて了ひ、本当に苦辛した甲斐もなく誠にお目出度う御座いませぬわい。貴方はいつもいつも此結婚は変性女子には指一本さえさせぬ、此日の出神が許して天晴れ結婚をさし、ルートバハーの教を立直すと仰有いましたが、一体どうなつたので御座います』 寅子は、 虎嶋寅子『ソレハ神界の都合によつてお仕組を変へたのだよ。玉照彦、玉照姫もたうとう変性女子の悪霊に感染して了ひ、水晶魂が泥魂になりかけました。さあ之から吾々の正念場だ。グヅグヅしてゐては駄目ですよ。もはや期待してゐた玉照彦様、玉照姫様も駄目だから此日の出神の生宮が、もう一働きやらねば到底神政成就は出来ませぬぞや。神様は控えは何程でもあるぞよ、肝腎の事は系統にさしてあるぞよとお筆に出してゐられませうがな。その系統は誰の事だと思ひますか。金勝要神の身魂もサツパリ駄目だし、日の出神が居らなくては、もう此三千世界の立替立直しは出来ますまい。艮金神、坤金神、金勝要神、日の出神、四魂揃ふて御用を致さすぞよ、とお筆に出てゐるでせう。艮金神の御魂はもはや御昇天遊ばし、坤金神の生宮は悪霊にワヤにされて了ひ、金勝要神は我の強い神で役員達に祭り込まれて慢心致し、到底神政成就どころか、ルートバハーの維持も出来ませぬ。四魂の中、三魂迄役に立たねば、九分九厘の処で一厘の仕組でクレンと覆すとお筆に出てゐるでせう。それだから此の日の出神が一厘のところで掌をかへすのですよ。宜しいかな。取違ひを致しなさるなや』 曲彦『それほど変性女子の霊が曇つとるのなら、何故大祭毎に頼みさがして、変性女子に来て貰ふのですか。チツと矛盾ぢやありませぬか』 寅子『エー、分らぬ人ぢやな。変性女子さへ詣らしておけばルートバハーの信者が「ヤツパリ小北山の神殿は因縁があるに違ひない。あれだけ悪く云はれても変性女子が頭を下げに行くから、矢張偉い神様だ」と思はせる……一厘の仕組をしてるのだよ。神の仕組は人間に分りませぬよ。神謀鬼策の仕組を遊ばすのが日の出神の御神策だよ』 曲彦『ヤア、それで貴女の権謀術数、悪にかけたら抜目のない、やり方が分りましたよ。ヘン糞面白くもない』 とあとは小声で呟く。 寅子『ヘン、措いて下され、私が悪に見えますかな。神様のお仕組は悪に見えて善を遊ばすのだよ。何もかも昔からの根本の因縁を十万億土のドン底まで行つて調べて来た日の出神の生宮、何程お前さまは賢うても軍人上りぢやないか。軍人が神界の事が分りますかい。お前さまは早く女子の留守の中に拝殿を建て、事務所を建て、そして費用は何ぼでも出すと云ひ乍ら愈となれば、スツタモンダと云つて一円の金も出さぬぢやないか、そんな事でゴテゴテ云ふ資格がありますかい。スツ込んで居りなさい』 曲彦『ヤア、どうも日の出神様の御威勢には楯つく事は出来ませぬわい。何と云つても一寸先の見えぬ人民ですから、何と口答へする訳にも行かず、マア時節を待ちませう』 寅子『あ、それが宜いそれが宜い、何事も日の出神の生宮の申す通りに致さねば神界の仕組がおくれて仕方がない。これ久之助さま、お前さまも私のハズバンドなら、少しシツカリしなさらぬかい。菖蒲さまも何して御座る。曲彦にアンナ事を云はして黙つてる事がありますかいな』 菖蒲のお花『私も間がな隙がな、曲彦さまに御意見を申して居りますが、何と云つても若い人だから到底婆の云ふ事は聞いて下さいませぬ。然し乍ら寅子姫さま、私は一つ妙な事を聞きましたが、それが本当とすれば、かうしてグヅグヅしてゐる訳にも行きますまい』 寅子『お前さまの妙な事と云ふのは一体ドンナ事かいな。差支なくば云つて下さい。此方にも考へがありますから』 お花『それなら申しませうが、変性男子のお筆に西と東にお宮を建てて神がうつりて守護を致すぞよと出て居りませう。東と西のお宮とは、あなた一体どこの事だと思つて居りますか』 寅子『オツホヽヽヽヽ、お花さま、お前は何を恍けてゐるのだい。東のお宮といふのは小北山の神殿ぢやないか。人間の初り、五穀の初りは所謂此小北山ですよ。そして西のお宮と云ふのは聖地の桶伏山ぢやありませぬか。桶伏山の神殿はあの通り叩きつぶされましたが、東のお宮は旭日昇天の勢ひで誰一人指一本支へるものがないぢやありませぬか。これを見ても神徳があるかないか分るぢやありませぬか。ルートバハーの信者は馬鹿だから変性女子の為に騙され、壊された宮の跡へ集まつて、 壊たれる宮の為に 過ぎ去りし偉大のために 吾等は地に伏して泣く あゝ惟神霊幸倍坐世 なぞと、憐れつぽい声を出して毎日日日吠面かわいてゐるぢやありませぬか。それを見ても神様が居られるか、居られないか分るでせう。善の道の分るのはおそいと神は云はれますが、今は此小北山はルートバハーの信者からは馬鹿にされて居りますが、今に金色燦爛たるお宮が建つて桶伏山尻でも喰へと云ふ様になるのですよ。それだからお前さま等しつかりなされと云ふのですよ。イツヒヽヽヽヽ』 お花『寅子さま、西と東にお宮を建てると云ふのはチツと見当違ひぢやありませぬか。私は桶伏山の御神殿こそ東のお宮と思ひます。神様の御仕組はそんな小さいものぢやありますまい』 寅子『ホヽヽヽヽ、日輪様のおでましになるのが東、お隠れになる方を西と云ふ事が分つてるぢやありませぬか。小北山が西ぢやと思ひますか。貴女も分らぬ方だな。お前も桶伏山の山麓に蟄居してゐたので、女子の悪霊に憑られてソロソロ恍けかけましたね。ウツフヽヽヽヽ』 斯かる所へ洋服姿の守宮別が忙がしげに帰り来たるを見て一同は嬉しさうに、 一同『ヤア、守宮別さま、御苦労で御座いました。外国のお仕組はどうで御座りましたな。定めし日の出神様のお仕組も行渡つて居るでせうな』 守宮別『兎も角お酒を一杯出して下さい。お神酒を頂きもつて、守宮別がゆつくり物語りを致しませう』 (大正一二・七・一三旧五・三〇北村隆光録) |
|
29 (2899) |
霊界物語 | 64_上_卯エルサレム物語1 | 23 暗着 | 第二三章暗着〔一六五二〕 名利の欲に捉はれし男女四人の醜魂は うろたへ騒ぎ小北山後に見すてて汽車の窓 勢ひ込んで乗込めば轍の音も轟々と 大地をビリビリふるはせて何の当途も嵐山 花園二条京都駅西へ西へと向日町 上る山崎高槻や大阪駅も乗越えて 出でゆく先は広島や馬関の関に立向ひ 転覆丸に身を乗せて漸く釜山に上陸し 京城平壌鴨緑の橋を渡つて満洲の 広軌鉄道スクスクと夜を日についで進み行く 二十余日の汽車の上漸く聖地に安着し 音に名高きエルサレム市中をウロウロ迂路付きつ 一目散に橄欖の山を目がけて駆上り 四辺の景色を見まはして胸を躍らせ呆れゐる。 お寅はほつと息をつぎ、 お寅『アヽヤレヤレ、ヤツトの事で、八千哩の水陸を渡り、目的地点へ達しました。何とマア桶伏山によく似た所ですな。併し乍ら山の具合と云ひ木の具合と云ひ、どうも日の出島の桶伏山とはどこ共なしに物淋しいやうな気がするではありませぬか。又外国身魂を盛んに教育せうと思つて、大きな学校を建ててゐるだありませぬか。練瓦や石をたたんで、此結構な霊場をワヤにする奴は、何処の四つ足人種だらうかなア』 守宮別は迷惑顔にて、 守宮別『コレコレお寅さま、さう大きな声で云ふものぢやありませぬよ。あれはシオン大学と云つて、世界の学者を集めて、世界の思想界を改良しやうといふ所ですよ。つまり日の出守護にせうと云つて、ユダヤの学者や世界の博士等が寄つて経営してるのですよ。日の出島なら何を云つて居つても笑ひませぬが、言葉の通じない斯様な所へ来て仕様もない事を云つては困りますからな。あなたは外国語が分らぬのだから、何事も私の言ふやうにして下さい』 お寅『ヘン、外国語が、何夫程有難いのだい。変性男子さまは此世の中をイロハ四十八文字で何もかも治めると仰有つたのぢやありませぬか。之から外国人に改心さしてイロハ四十八文字の日の出島の言葉を覚えさしたら可いだありませぬか。それ丈の権威がなくて何うして三千世界の日の出神となれますか。お前さまも余程分らぬことを云ふぢやありませぬか。オホヽヽヽ』 守宮別『又はしやがれるのかなア。併し何ぼはしやいでも、外国人に日本語の分る人が少いからマア結構だ。サア是からシオン大学の建築工事でも見せて貰ひませうかい』 お寅『コレ守宮別さま、そんな気楽なことをいつてる時だありますまい。早く、桶伏山からソツと隠れて来てゐるといふブラバーサの所在を捜し、談判せねば思惑が立ちませぬぞや』 かく話す所へシオン大学の創立者たるスバール博士が、ステツキをつき乍らやつて来た。守宮別は得意の英語で何だかペラペラと話しかけた。博士も極めて愉快気に守宮別と握手し乍ら半時ばかり話してゐた。其要点は……守宮別が日の出島から救世主日の出神を送つて来たといふ大体の話であつた。スバール博士は真面目に聞いてゐたが、しまひには吹出してニタツと笑ひ袂を別つたのである。守宮別は此博士に認められなければ日の出神もダメだと思つたが、そ知らぬ面して平気を装ふてゐた。お寅はスバール博士の姿が見えなくなつたのを幸ひ、又もや喋り出したり。 お寅『コレ、守宮別さま、チーチク、パーパーと雀のよなことをいつてゐたが、一体何をいつてゐたのだい。日の出神の救世主が御降臨だといふことをお前さまは言はなかつたのかい』 守宮別『ソンナことに如才がありますか。その為にはるばる来たのではありませぬか。確に云ひましたよ。あの方はスバール博士といふて世界で有名な学者ですよ。あの人さへ分れば世界中の人間があなたを救世主と認めてくれますよ』 お寅『何とマア神様のお仕組と云ふものは偉いものだなア。ここへ着くが早いか、スバール博士に会ふて日の出神を認めて貰ふとは本当に神さまも偉いワイ。ヘン、ブラバーサなんて、抜がけの功名をせうと思つて先へ来乍ら、何処の隅に居るかとも云はれてゐないとみえて、橄欖山に姿も見えぬぢやないか。どつかへ消滅したと見える。オホヽヽヽあた気味の可い、だから日の出神に従へ……といふのだ。コレ曲彦さま、お花さま、御神力が分りましたかな』 曲彦『今来たばかりで根つから何も分りませぬ』 お寅『エヽ、何といふ盲だいな。お花さま、お前は分つただらうな』 お花『何を云ふても英語を知らないものだから不便で御座いますワイ』 お寅『そこが御神力でいくのだよ。イロハ四十八文字さへ使へば三千世界に通用するのだからな』 曲彦『曲彦が考へると、現に此処では日の出島の言葉が通用せぬぢやありませぬか。イロハ四十八文字も可い加減なものですな』 お寅『コレ、守宮別さま、二人の分らずやに、今の博士のことをトツクリと合点の行くやうに言ふて上げて下さい。さうするとチツとは、目がさめるでせうから、今あの博士が去んだから、やがて旗を立てて大勢で迎へに来るだらう。エヘヽヽヽ』 守宮別『コレお寅さま、ダメですよ。さう今から喜んで貰ふと困りますがな』 お寅『エヽ?何がダメだい。三千世界の救世主が現はれて来てるだないか。世界の学者ともあるものが、ソンナことが分らぬと云ふことがあるものか。お前はそんなこと云つていちやつかすのだらう、本当のこと云つて下さいな』 守宮別『本当の事云つたら、あなたビツクリしますよ。サア当山を下つて、どつかのホテルへ這入りませう』 お寅『そして博士は何と云つたのだい』 守宮別『モウ云ひますまい。偽予言者、偽救世主が沢山に来る世の中だから、お前さまも可い加減に目を醒ませと云ひました。何うもあの博士の云ふことには真理があるやうです。こんな所迄来て恥を掻きました。何しろ日の出神は偽救世主ですからなア』 お寅『エヽ馬鹿にしなさるな。お前さまの云ひ様が悪いからだ。チーパーチーパーと小鳥の鳴く様なこと云つて、何分るものか。なぜモツと分る様に仰有らぬのだい。本当に仕方のない人だなア』 守宮別『何つかでウヰスキーでも一杯やらぬと元気が出ませぬワ。一遍エルサレムの町迄行きませう、そこでゆつくり話しませう』 お寅『一寸待つて下さい、何処ぞ此処らにブラバーサが潜伏して居るか知れぬから、一遍彼奴に会うて面の皮をヒンむいてやらむことにや仕方がない。何でも彼奴がシオン大学の博士等に会うて邪魔をして居るに違ない。サアサア曲彦さま、お花さま、此山を小口から捜すのだよ』 守宮別『お寅さま、ブラバーサだつて、コンナ山ばかりに居り相なことはない。朝とか晩とかに一遍づつ参る位でせう。キツと何つかの宿に居るに違ありませぬワ』 お寅『折角此処迄来たのだから、ソンナラ此処で一つ日の出神さまを御祈願して、歌でも詠んで、それからエルサレム迄一先づ行くことにしませう』 曲彦『モシお寅さま、日の出神を拝めと云ひなさるが、日の出神は貴女とは違ひましたかいな』 お寅『エー合点の悪い、日の出神と云へば底津岩根の大弥勒さまを拝めと云ふことだがな。一を聞いたら十を悟るのが大和魂ですよ。何から何迄教へてやらねばならぬといふのは、困つた男を連れて来たものだなア』 曲彦『それでもお寅さまの選によつた水晶魂が来たのだもの、さう小言を云つて貰ひますまいか。アタ阿呆らしい、こんな遠い所迄ついて来て、いきなり小言を聞かうとは夢にも思ひませぬワイ、なアお花さま、本当にバカらしいぢやありませぬか。歌もロクによむ気になりませぬがな』 お花『コレ曲彦さま、ここへ来た上はモウ仕方がない、守宮別さまとお寅さまの仰有る通りにするのだよ。言葉も分らず、神徳の足らぬ者は何と云つたつてダメだらう……神力の高いお寅さまと外国語の分つた守宮別さまに絶対服従するより途がありませぬワイ』 守宮別『何と云つても此処へ来れば此守宮別さまの天下だ。お寅さまもチツと我を折つて私の云ふことを聞きなされ。イロハ四十八文字も此処へ来ては余り権威がありますまいがな。アハヽヽヽ』 お寅『これ丈立派な日の出神が日の出島から御降臨になつてゐるのに、分らぬ奴ばかりとみえて、一人も歓迎に来ぬぢやないか。コレ守宮さま、お前さまの談判が悪いからだ。モ一遍宣直して来なさい。それが厭ならブラバーサを捜して、彼奴を博士の前であやまらすが宜しい。さうすりや一遍に信用が回復しますぞや』 お寅『海山をはるばる越えて来て見れば 聞きしに違ふ橄欖の山』 お花『思ひきや長い鉄路を渡り来て 山の上にて小言聞くとは』 お寅『コレお花さま、何といふ不足らしい歌をいふのだい。宣り直しなさい』 お花『ハイハイ、宣直さうと云つたつて、乗車切符もなし、何うするのですかい』 お寅『エー合点の悪い、歌を言ひ直しなさいと云ふのだがなア』 お花『果てしなき海山越えてこがれたる 聖地にやうやうつきの空かな』 お寅『又ソンナことを言ひなさる、つきの空なぞと私は月は嫌ひだと何時も云ふぢやないか。丸くなつたり虧けたり、細くなつたり、出たり出なかつたりするやうな、変性女子的の月のことをいつて下さるな。何で日の出神を歌ひなさらぬか。コレ曲彦さま、お前一つ歌つて御覧……』 曲彦『日の出島あとに見すてて火の車 乗りて来たのは橄欖の山』 お寅『ソリヤ何ぢやいなア。ソンナ腰抜歌がありますか』 曲彦『それでも私は力一パイ、知恵を絞り出してよんだのだから、余り笑ふて貰ひますまいかい』 お寅『エー、下手でも上手でもよい。日の出神のことを歌ふのだよ』 曲彦は、 曲彦『日出づる国の御空を立出たる お寅婆さまは目から日の出の神となる』 お寅『何といふバカだらうかな。エーエー仕方がない、何事も人を力にするな、杖につくなと神様が仰有つた筈だ。ドレ私が自ら詠んでみませう…… 烏羽玉の暗をてらしてさし上る 日の出神の光尊し と、かういふのだよ』 曲彦『あなたのいふ日の出神さまは日天さまのこつちや御座いませぬか、チツと可笑しいぢや御座いませぬかい』 お寅『コラ曲彦、よく聞きなさい。此世界は元は一天さまがお造り遊ばしたのだ。そして一天様のお子様に日天月天とあるのだ。それを御三体の大神といふのだ。併し月天さまといふのは盈虧のあるお月様だないよ。月天が行きましたかな。次が鍾馗さまの霊、其次が東方朔の身魂、此五つを合せて此世を五苦楽といふのだ。大の字の端々に○をつけて御覧なさい、ヤツパリ五つになりませうがな』 曲彦『末代日の王天の大神さまやユラリ彦さま、ミロク成就の大神さまは何うなつたのですか。東方朔なことを仰有いますな。それでも正気で仰有るのですか。日天月天が行きませぬワイ。オツホヽヽヽ』 お寅『日の出島の言葉とは此処の言葉は違ふから名を変へたのだよ。英語を使ふ国へ来たら英語で言はなならぬからなア』 曲彦『ヘーエ、それでも英語ですかいな、曲彦には合点が承知しませぬワ』 お寅『エーエ、ゴテゴテいひなさるな、サア一つ守宮別さまも歌ひなさい』 守宮別『私は英語で一つ歌つてみませう。極簡単によく分るやうにいひますから、気をつけて聞いて下さいや…… ヂヤパニース、セウホクザンノ、ヤンチヤアバーサン、オー、トラワー、キンモーキウビニー、ダー、マサレテー、ウミヤマヲコエ、ココマデヤツテキタノワー、カワイ、ソー、ダゾヨー、オレモ、スバールハカセニアウテ、ニセモノトイフコトガワカリタノダゾヨ、ソレデアイソガツーキターダカラ、ハライセニサケデモノンデヤロート、オモツテイルノダー、アータ、アホラシ、バカニ、シラレ、タゾヨ、イヒ、イヒヽヽヽヽ、あゝ英語の歌も一寸六つかしいワイ』 お寅『コレ、守宮さま、人が知らぬかと思ふて何といふ悪口をいふのだい。ヘン、そんな英語位分つて居りますぞや。私だつてその位の英語は立派に使つてみせますぞや。お前さまはヤケになつて酒を呑むと云つただらう。呑むと云つたつて、お金がなければ呑めますまい。チヤンと私が懐にしめこみてゐるのだから、一合づつ呑まして上げやう。お前さまに酒を呑ますと、泥に酔ふた鮒の様になつてチツとも間に合はぬからなア…………エー気分が悪うなつて来た。兎も角エルサレムの何つかで宿をとることにせうかい………皆さま、ついて来なされや』 と肩や尻をプリンプリンとふり乍ら不機嫌な面して山を降り行く。 (大正一二・七・一三旧五・三〇松村真澄録) |
|
30 (2900) |
霊界物語 | 64_上_卯エルサレム物語1 | 24 妖蝕 | 第二四章妖蝕〔一六五三〕 お寅外三人は漸くにしてカトリックの僧院ホテルの二階に宿泊する事となつた。折柄チンチンと鈴の音、けたたましく配達して来た新聞を一枚買つて守宮別は読んで見た。 守宮別『ヤアお寅さま、えらい事が出て居ますよ。救世主の再臨に先立つて日の出島からブラバーサがやつて来たと云ふ記事が見えて居ますわい。随分もてたものですわい。こりやグヅグヅしてゐると吾々は駄目ですよ』 お寅『何?ブラバーサの事が出て居るのかい。大方女にでも相手になつて、しくじつた記事ででもなからうかな』 守宮別『何だか知りませぬが、伯爵の娘サロメと云ふ絶世の美人とアメリカンコロニーの牛耳を握つてるマリヤと云ふ女が橄欖山の上でブラバーサを引張凧にしてる記事ですわ』 お寅『一ぺん読んで下さいな』 守宮別『読んでも英語で書いてあるのだからお前さまには分りますまい。バカに褒めて書いてあるからな。エーもう措きませうかい』 お寅『分らいでもお前さまは、そこをうまく訳して、わし等の耳に分るやうに読むのだよ』 守宮別『エー、仕方がない。それでは訳して読みませう。面倒臭いな』 と云ひ乍ら新聞をお寅の前におき、 守宮別『エー、二号活字で見出しが「橄欖山上の聖劇」と書いてありますわい』 お寅『聖劇と云ふのは何の事ぢやい?それを細こう説いて下さい』 守宮別『聖劇といつたら聖劇ぢやありませぬか。一旦日本語に訳して又日本語に訳さねばならぬと大変手間がとれますからな』 お寅『ソンナ聖劇なんて……それは、英語でせう。日本言葉にソンナ言葉はない筈だ』 守宮別『エー、仕方がないな。お寅さま、聖劇と云ふのは結構な神さまのお芝居と云ふ事だよ』 お寅『成程、さうすると此日の出神の生宮が橄欖山上に降つて来たと云ふ事ぢやな』 守宮別『マア黙つて聞いて下さい。エー、○月○日の夜、十二時頃橄欖山上に於て前代未聞の聖劇が演ぜられた、その登場役者と云ふのは基督の再臨に先だつて日の出島より派遣されたる神力無双の神人、ブラバーサと云ふ紳士、ルートバハーの宣伝使として聖地エルサレムに数十日以前に到着され、今はシオン山の麓に草庵を結び聖業を朝夕修行せるもの、又一人の男は基督教の有名なる宣伝使、ヤコブと云ふ眉目清秀の青年である。女は某伯爵の令嬢サロメ姫の君にて、基督再臨を前知し、ヨルダン川の辺に建てるバハイ教のチヤーチに参詣し、バハーウラー聖師の教を受け居れる淑女である。又一人の女はアメリカンコロニーの牛耳を執れるマリヤと云ふサロメ姫に劣らぬ容色端麗なる美人である。此四人は日出島より救世主の降臨する事を前知し、深夜に期せずして、橄欖山(霊山会場の蓮華台)に現はれ、神政成就の大神業を修されたり。是等の二男二女は天下に先立つて基督の再臨を前知したる聖哲なれば、決してその言に詐りあるべしとも思はれず、品行極めて方正にして万人の模範となるべき人格者である。ブラバーサの云ふ所を綜合すれば基督の再臨も最早遠からずとの事なり、神縁深きエルサレムの市民は此四人の努力に感謝せざるべからず。実に稀代の神人と云ふべし。因に云ふ。ブラバーサは今やシオンの山麓に草庵を結び、神業に修行されつつあるは前記の如し。またサロメ姫はバハイ教のバハーウラーの別室に著述に耽りつつあり。ヤコブは今や僧院ホテルに滞在中なり。マリヤはアメリカンコロニーにあつて数多の信徒を教養しつつあり。基督再臨に就いて教を乞はむとするものは此四人の居所を訪ねらるべし』 と読み終り、 守宮別『お寅さま、何とブラバーサは偉い信用を受けたものぢやありませぬか。もう日の出神も斯うなつちや駄目ですよ』 お寅『何、それが御仕組だよ。これからそのサロメ、マリヤとやらを、うまく説き伏せ、ブラバーサの所在をつきとめて、ウーンと云ふ程往生さしておけば、ブラバーサが救世主は此お方ですと云へば、何もかも埒が明くのだよ。御神業と云ふものは凶を変じて吉となし、過を転じて福となし、敵を味方にするのが一厘の仕組だよ』 守宮別『さう、貴方の考へ通り、うまく行くでせうかな』 お寅『行かいでかな。「成せば成る、成さねばならぬ世の中にならぬと思ふ人の愚さ」と云ふ古歌があるだらう。さあこれから千騎一騎の活動だ。時おくれては一大事だ。何は兎もあれ、アメリカンコロニーとやらに行つて、そのマリヤに会ふて来やう。さうすればブラバーサの様子が大概分るだらう』 守宮別『日の出神さまなら、その位の事は尋ねなくても様子が分りさうなものですな』 お寅『エー、やかましいわいな。又しても小理窟を云ふのかいな。サーサ、行きませう。ブラバーサに先にしてやられちや駄目ですよ』 曲彦はそばより、 曲彦『これお寅さま、天からきまつた救世主なら、さう騒がなくても向かふから歓迎してくれますよ。此方から自家広告しても人が用ゐなければ駄目ですがな』 お寅『コリヤ曲彦、そりや何を云ふのだい。今の世の中は自家広告が肝腎だよ。自分の事は自分で現はさねば、自分の事は誰も認めて呉れませぬよ。死んでから千年も万年も経つて認めて呉れても駄目だからな。これ、お花さま、お前もシツカリして下さらぬと、ここは戦場ですよ』 かかる処へボーイが西洋料理を持つて来た。守宮別はボーイに「ビールを一打ばかり持つて来い」と命じた。暫くすると、沢山の皿やコツプや、ビールを先繰り持つて来る。守宮別は目を細うし乍ら、涎をくつてビールの喇叭飲みをやつて居る。お寅は今迄喰つた事のない西洋料理を見て顔をしかめ乍ら、先繰り先繰り喰つてしまひ、 お寅『あゝ、バタ臭い、コンナ聖地に牛の乳を飲ましたり、牛肉を喰はしたりするから駄目だわい。もう今日限り、皆さま西洋料理を喰はぬ様にして下されや。宜しいかな。何だか気分が悪くなつて来ましたよ。人間は人間の喰ふもの、馬は馬の喰ふもの、猫は猫の喰ふ物ときまつてゐるのだ。馬や猫の喰ふものを人間が喰ふのはチツと無理だわい。まして日の出神の生宮にはこんなものは喰はれませぬわい。コレ、守宮別さま、もつと清潔な食物を次から持つて来る様に云つて下さい。今度はこれで宜いが、もう、こんな汚いものは喰ひませぬからな』 守宮別『ソンナ事云つたつて、ここではこれより喰ふ物がないのですよ。辛抱しなさい』 お寅『あゝ仕方がない、ソンナラこれからサア皆さま、コロニーとかへ行きませう。さうして、ヤコブやマリヤに会ふて一つブラバーサの様子を聞きませう』 曲彦『ブラバーサはシオン山の麓にゐると書いてあるぢやありませぬか。ソンナ処に行かずに、直にブラバーサの処に行つては如何ですか』 お寅『ハーテ分らぬ曲だな。なぜ日の出神の云ふ通りになさらぬのかい。サーサ、小荷物をここに預けて出掛ませう。これ守宮別さま、いい加減に飲んでおきなさい。また酔ひつぶれては肝腎の通弁が出来ませぬぢやありませぬか』 守宮別『ママ待つて下さい。このうまいビールを飲まずには行けませぬ。折角遠い所から来たのですから、ユツクリして明日又訪ねる事にしませう』 お寅『エー仕方のない、ド倒しものだな。褌の川流れぢやないがくひにかかつたら、チツとも離れはせぬわ』 守宮別はお寅の言葉を耳にもかけず、グイグイと喇叭飲みを初め、十二本のビールをスツカリ飲んで了ひ、又手を拍つてボーイを呼んだ。ボーイは慌だしく、段梯子を上つて来た。 ボーイ『お客さま、何ぞ御用ですか』 守宮別は英語で、 守宮別『ビール、もう一打もつて来い、初めはおいしかつたが、後ほどまづい奴を持つて来て、太い奴だ。もつとうまい奴を持つて来い』 ボーイ『うまいのなら何程でもありますがチツと高価いですよ』 守宮別『高いと云つても知れたものだ。うまい奴を持つて来い。兵站部はお寅さまがついてゐるからな。滅多に逃げも隠れもせぬわい。あゝ酔うた酔うた早く持つて来い。おい曲彦、貴様もチツとやつたらどうだ。そんな貧相な顔してると誰も買手がなくて貧乏神と間違へられるぞ』 と酔ふてソロソロワヤ口をたたき初めける。 (大正一二・七・一三旧五・三〇北村隆光録) |
|
31 (2944) |
霊界物語 | 65_辰_虎熊山と仙聖郷の物語/七福神 | 13 隔世談 | 第一三章隔世談〔一六六九〕 伊太彦『神の教の伊太彦は初稚姫の訓戒に 恋しき妻に生き別れ一人トボトボ山道を いとど烈しき炎熱と戦ひ乍ら汗水に なりて山野を渉り行く心淋しき一人旅 神の恵みを力とし夜光の玉を杖として 吾師の君や妻の身を案じ煩ひハルセイの 沼の畔に来て見れば人を掠むる盗人の 二人の男に巡り合ひ神の教を説き諭し 大泥棒の立籠もる虎熊山の岩窟に 妻の命やデビス姫二人の身をば助けむと 登り行く折傍の林の中の呻き声 何者なるか知らねども見捨てかねたる義侠心 近付き見れば暴虐の限りを尽す大泥棒 ハールが頭に繃帯し虫の息にて呻きゐる 伊太彦忽ち三五の神の御名をば奉称し 天の数歌声高く歌へば不思議や忽ちに 厳の神徳現はれてハールはムツクと起き上り 救命謝恩の宣言に喜び勇む折もあれ エムとタツとの両人は伊太彦司に打向ひ ハールの罪悪一々に宣り伝ふれば伊太彦は 誠の道を説き諭しハールを岩窟の案内とし 息もせきせき登り行くさしも堅固な岩窟の その入口に来て見れば番人一人居らばこそ 藻抜けの殻の不思議さにドンドンドンと隧道を ハール、エム、タツに案内させ牢獄の前に来て見れば 豈計らむや治道居士デビスの姫やブラヷーダ 改心組の一同がセールの親分真中に 四五の小頭取囲み教を垂るる最中と 悟りし時の嬉しさよ案じ過ごした吾妻の 無事なる顔を一目見て抱きつき度くは思へども 初稚姫の御教あたりの人の手前をば 恥らひ苦しさ相忍びハールを連れて只二人 虎熊山を後にしてセルの山辺に来て見れば 神の恵みの百の花処狭き迄咲き匂ひ 蓮の花は殊更に白青黄色紫の 艶を競ひてザワザワと涼しき風に翻り 笑を湛へて迎へゐるあゝ惟神々々 吾は尊き大神の御稜威を受けて大野原 虎伏す山辺も恙なく神都をさして進み来る 心の中ぞ楽しけれ朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも月落ち星は消ゆるとも 印度の海はあするとも虎熊山は破裂して 熔岩四方に降らすともいかでか恐れむ惟神 神に任せし吾々は至る所に青山の 媚びを呈して待てるあり思へば思へば有難し 天国浄土の光景を今目の辺り眺めつつ 尊き聖き三五の教の道に進み行く あゝ惟神々々御霊のふゆを願ぎ奉る』 二抱へもあらうといふパインが、一方は山、一方は野辺の細道の傍に、月の傘を拡げたやうに只一本聳え立つてゐる。その松の木蔭に、四五人の男が首を鳩めて何事か、ヒソビソ話に耽つてゐた。 甲『オイ、そこら中の民家を漁つて、葡萄酒やいろいろの肴を掠奪して来たが、然し早く帰らないと、今夜の結婚の間に合はないかも知れぬぞ。さうすりや又親分から叱言を頂戴せなならぬからのう』 乙『どれ程急いだ所で、之丈の道程だ。到底今夜の間に合ひさうな事はないわ。一層の事、酒も肴もここにあるから、此松の木の下で、一杯やらうではないか』 甲『そんな事したら、それこそ大変だ。俺等は直破門されて了ふぞ。破門だけならいいが、他へ出て喋べると云つて手足をフン縛られ、噴火口に投げ入れられて見よ。あつたら命が台なしだ。貴様は酒を喰ふとワヤな事を云ふから駄目だ』 乙『何、構ふものかい。かうして五人居れば、一つの村でも団体でも作れるから、あんな高い山に行かずに、一つ新団体でも拵へて自由行動でも採つたらどうだ』 丙、丁、戊の三人は手を拍つて、 三人『イヤ、賛成、乙の言ふ通りだ。別にセールの大将を、さう恐がるに及ばぬぢやないか。あんな大将を頭に仰いでると、何時どんな目に会はされるか分りはせぬぞ。あの副親分を見い、あれ丈骨を折つて基礎を固めたが、遂に暗打にあつて頭を割つて了つたぢやないか。俺やハールの親分が気の毒で堪らぬわ。その時から岩窟を飛び出さう飛び出さうと思つて居つたのだが、今度大親分が婚礼の材料を集めて来いと出して呉れた時、再び岩窟に帰るまいと覚悟をきめた位だから、マア一杯ここでやつて相談をきめようぢやないか』 甲『トランスの相談をきめると云つても、別に立派な案も出まいぢやないか』 乙『喧しう云ふな。俺の云ふ通りにせい。俺はこう見えても餓鬼会社の社長をやつて居つたものだ。田舎の村ではあるけれど、それでも、ザツと五十軒ばかりの戸主から選まれて村会議員、否村会代議士に一度は当選した男だぞ。何と云つても尋常大学の出身者だからな』 丙『アハヽヽヽ、尋常大学が聞いて呆れるわい。村会代議士なんてまだ聞き初めだ。戸別巡礼をやつて、ヤツとの事で村会議員になつたのだらう』 丁『何、此奴村会議員どころか、此奴の奉公して居つた主人が村会議員になつて居つたのだ。その事を云つてるのだよ』 丙『アハヽヽヽ、大方、そんな事だらうと思つて居つた』 乙『馬鹿云ふない。主人がならうと、俺がならうと、同じ一軒の宅に住居してる以上は同じ事ぢやないか。エー、奥さまは村会代議士夫人と崇められてゐる以上は、俺だつて村会代議士家僕だ、主人の心は僕の心、僕の心は主人の心と云ふ事を知らぬかい。訳の分らぬ奴だな』 丙『どちらが訳が分らぬか、本当に分らぬわい。困つた唐変木だな。オイ村会代議士、そんなら一つ案を出して呉れ。その上で賛否の決を与へねばならぬからのう』 乙『ヨシ、かう云ふ事があらうと思つて、前から腹案を拵へて待つてゐたのだ。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ まア、こんなものだよ。どうだ賛成だらうな。アハヽヽヽ』 丙『いや、大方賛成だ。然し、宣伝使、比丘に対する条目だけは削除して欲しいものだな』 乙『そら又何故だ。怪しい事を云ふぢやないか』 丙『宣伝使や比丘は神仏に仕へるものだ。あんな者に向へば、忽ち罰が当り、身体が動けぬやうになるからな』 乙『アハヽヽヽ、気の弱いものだな。宣伝使が何が恐い。身に寸鉄を帯びるでなし、まるで箒で蜻蛉を押へるやうなものだ』 甲『そんな事云はずに早く帰らうぢやないか』 乙『矢釜しう云ふない。帰り度い奴はトツトと帰れ。そして親分が二人のナイスをおいて脂下つてゐる所を、ケナリさうな顔して指を喰へて見せて貰へ。それが貴様の性に合うてるわい。ウツフヽヽヽ。これ丈沢山の酒や肴を盗つて来乍ら、又人に取られるのも残念だ。此松の下で鱈腹喰つて、新団体を組織して活躍するのだ。どうだ丙、丁、戊、賛成だらう』 丙丁戊『賛成々々』 乙『これ丈け四人まで大多数の賛成があるのに、只一人異議を唱へるのは、俺等の計画を裏切るものだ。エー面倒臭い。一つバラしてやらうかい。之も泥棒の練習になり肝玉が据つていいぞ』 甲『オイ、コラコラそんな無茶な事を云ふない。俺が一口異見を唱へたと云つて、バラすの何のつて、余りぢやないか』 乙『あんまりも糞もあつたものかい。貴様は常平生から大将のお髯の塵許り払ひやがつて、俺等の悪口許り告げた奴だ。サア三人の兄弟、此奴をヤツつけて了へ』 ここに四人は甲一人を取りまいて、四辺の棒千切を拾ひ打ちかかつた。甲は矢庭に木片を拾ひ、力限りに防禦に力めてゐる。 かかる所へ四辺の木精を響かして聞えて来たのは宣伝歌の声であつた。五人は各自傷だらけになつたまま、その場に平太つて了つた。 ハールは伊太彦に従ひ、ここ迄やつて来て五人の男が倒れてゐるのに不審を起し、わざわざ松の木の根元に寄り道して調べて見ると、今迄使つて居た五人の部下であつた。ハールは大喝一声、目を剥き乍ら、 ハール『こらツ、者共、何を致して居るか』 甲『ハイ、親方、よう来て下さいました。今四人の奴め、貴方や大親分に対し、謀反の相談致しましたので、私が意見しました所、大変に腹を立て、殺してやらうと云つて斯んな目に会はせました。私も力一杯戦ひ、血みどろになつて居ります所へ、恐ろしい宣伝歌が聞えましたので、誰も尻餅をついて身動きが出来ぬやうになつたのです。何卒副親分様、私を助けて下さいませ』 ハール『ア、お前はオスだつたな。そして其処に倒れてゐる奴は、メスにキス、バツタにイナゴだな。こりやこりやメス、キス、バツタにイナゴ、その顔は何だ。ヤツパリ貴様は相変らず泥棒をやらうとするのか。もういい加減に改心したらどうだ。オス貴様も泥棒なんか、悪い事致すでないぞ』 オス『ヘイ、泥棒はもう出来ませぬか』 ハール『ウン、何も彼も新規蒔き直しだ。虎熊山の岩窟は最早亡びて了ふたのだ。それ故俺も館を焼かれ、居る所が無いので俄に改心して宣伝使のお伴をして、誠の道の旅をしてゐるのだ。貴様もいい加減に泥棒商売は止めたがよからうぞ』 メス『もしもし副親分さま、そりや本当ですか。私は今、貴方には済まないが、あまり親分が横暴な事をやるので、実は愛憎をつかし新団体を組織し、今ここで定款まで拵へ、発会式を終つた所で厶います。そした所、オスの奴、反対を称へるものだから、此様な時勢に合はぬ骨董品は片付けた方がよいと思ひ、打ちのめさうとした所で厶います。何卒、貴方、私等の団長となつて一旗挙げて下さいますまいかな』 ハール『馬鹿云ふな。泥棒はスツカリ廃業したのだ。ここに厶る宣伝使は神力無双の生神様だ。懐に夜光の玉を持つて厶るから、貴様等の心の底は手にとる如く御存じだぞ』 メス『ハイ、貴方が本当に廃業なさつたのなら仕方がありませぬ。私等が勝手に小団体を作つて商売繁昌のため大活動を致しますから』 ハール『オイ、やめたらどうだ。そんな事云ふと虎熊山が破裂したらどうする。破裂の前兆として、あの通り噴煙濛々と立上つてるぢやないか。あの鳴動を聞け。俺等仲間が霊山を汚したによつて、山の神様が立腹して厶るのだ。貴様もここで改心せなくちや虎熊山の熔岩に押潰されて了ふぞ』 メス『今更泥棒をやめた所で、之と云ふ商売も無し、仕方がありませぬわ。人間は意志の自由を有してゐますから、何卒私の意志迄は束縛して下さいますな。のう、キス、バツタ、イナゴ、さうぢやないか』 三人一度に、 『ウン、さうださうだ、泥棒三日したら味が忘れられぬと云ふから、今更やめいと云つても止められるものかい。俺等も初めから泥棒したくはなかつたが、セール、ハールの親方がすすめたから初めたのだ。折角乍らハール親分の提案には賛成する事が出来ませぬわい』 ハール『左様の事を申してゐると今に虎熊山が破裂し、貴様等は滅亡せなくてはならぬぞ』 メス『ハヽヽヽ、虎熊山は昔古来から噴火してゐますよ。唸るのも鳴動するのも今日に初まつた事ぢやありませぬわい。大きにお世話さまです。貴方のやうに泥棒心の俄に無くなるやうな腰抜けには、用はありませぬわ』 と身体が丈夫になつたのでソロソロ強くなり、又もや泥棒至上主義を盛んに述べ立てる。丙、丁、戊三人も川水の流るる如く泥棒の有益なる事をまくし立て、ハールを手古摺らしてゐる。雲にかすんだ虎熊山の鳴動は俄に猛烈となり、大地はビリビリビリと震ひ出して来た。流石の四人も真青になつて草に噛ぶり付いてゐる。轟然たる一発の響と共に、虎熊山は大爆発を来たし、黒煙天に漲り、熔岩は雨の如く、四方に散乱し数里を隔てた此地点迄降つて来た。一同は恐れ戦いて俄に心を翻し、改心の祈願をなし初めた。神の御恵か、雨の如く降り来つた巨大なる熔岩は一人も傷つけずにをさまつて了つた。これより一同は改心の尊き事を悟り、伊太彦の宣伝使に従ひお礼詣りと称して聖地エルサレムへ向ふ事となつた。 (大正一二・七・一六旧六・三於祥雲閣北村隆光録) |
|
32 (2978) |
霊界物語 | 66_巳_オーラ山の山賊 | 18 魔神の囁 | 第一八章魔神の囁〔一七〇〇〕 玄真坊はサンダー、スガコの幽閉してある岩窟の中にニコニコし乍ら入り来り、 玄真『オイ、サンダー、スガコ両人、大変待たして済まなかつた。腹が空つただらうのう。直様捻鉢巻で御馳走を拵へ、お前等を喜ばさうと思つた所、此山に働く大泥棒シーゴーの奴、突然ここへ帰りやがつて其御馳走に目をかけ、喉をゴロゴロさせ乍ら、「永い間宣伝に働いたから俺も大分疲れた。お頭分のヨリコ女帝の前でお前と三人御馳走を喰べやうぢやないか」と、誅求するものだから、折角お前と三人食ひ度いと思つた御馳走を、たうとう女帝の前に提出せざるを得なくなつたのだ。お前も永い間断食をし、嘸お腹も空いたらうと思ひ、俺は同情心が起り、気が気でないのだが、さう云ふ訳だから打割つて云ふ訳にもゆかず、第一線をシーゴーの親分に占領されて了つたのだ。それで再びお前達が可愛相になり御馳走を拵へて来たのだ。決して気を悪くして呉れな。仲々以て等閑に附した訳ぢやないからのう』 サンダー『どうも御親切に有難う厶います。然しながら今承はれば此山に働く親分のシーゴー様だとか、も一つ親分のヨリコだとか仰有つたが、妾は此処は天地の大神のお降り遊ばす聖場と思ひました所、泥棒の親分と御交際があるとは一向に合点が参りませぬ。何ほど恋ひ慕うた貴方でも泥棒に関係があると思へば三年の恋も一時に醒めるやうで厶ります。折角の御馳走だけど妾は頂きませぬ。なあスガコさま、貴女どう思ひますか』 スガコ『本当に恐ろしい方々ですね。此処は天地の生神様の御降臨遊ばす霊場だとか、玄真坊さまは天帝の化身だとか世界の救世主だとか、仰有いますが、つらつらその御行動を考へますと、妾は全く此世を詐る山賊の巣窟とより外思ひませぬ。ねー玄真坊様、それに間違は厶いますまいね』 玄真坊は驚いて、「ウツカリと秘密を喋つて了つた。こりや大変だ。到頭、内兜を見すかされたやうだ。何とか考へて捻を戻さねばなるまい」と冷汗を流し乍ら、ワザと高笑ひ、 玄真『アツハヽヽヽ、嘘だ嘘だ、一寸お前の肝玉を調べて見たのだ。こんな所に泥棒が居つてたまらうかい。泥棒の居るやうな山へ、どうして神様がお降り遊ばすものか。そんな恐ろしい処へ、あんな沢山の老若男女が詣つて来るものか、皆嘘だから安心したが宜からう。まアそんな小さい事に気をかけず、此御馳走を早く早くお食りなさい。私もお相伴するから、滅多に毒は入て居ないよ』 サンダー『何だか恐ろしくなつて来ました。師の君様の御顔迄も、どこともなしに泥棒めいたやうになつて来ましたのですもの。お腹は空いてゐるし、食べ度いのは山々だけど……渇しても盗泉の水は飲まず……と云ふ諺もあるし、泥棒の拵へた飲食は妾、どうしても食ふ気持は致しませぬの』 スガコ『あたいだつて、さうだわ。玄真坊様のお姿が何とはなしに、泥棒のやうに見えて仕方がないのだもの。もし玄真坊様、此山に泥棒がゐるのでせう。妾イよく聞いてゐますよ。シーゴー坊と云ふ白髪童顔の大泥棒が居るでせう。さうして天王の社の中に棚機姫と云ふ女神さまが居られるのでせう。あの方が貴方等の崇めなさる大親分でせう。妾、夢に聞きましたよ』 玄真『アハヽヽヽヽ、お前は神経興奮してゐるから、そんな、しやうもない夢を見るのだ。然しながら今日の世の中は皆泥棒だよ。よく考へて御覧。どこやらの国の王様だつて、もとは海賊上りだよ。満州王の張作霖だつて支那各地の督軍だつて、大抵皆馬賊上りだよ。××大臣や伴食××が何百万円、何千万円と云ふ財産を持つて居るでせう。終身総理××になつてゐた所で、さう何千万円の月給を貰へる筈もなし、皆泥棒して貯めたのだよ。自転倒島の富豪だつて難爵を貰つて威張つて居るが、あれでも、ヤツパリ贋札を拵へたり、今でも外国紙幣を盛に贋造してゐるぢやないか。さうだから泥棒を、ようせないやうな男子は、世の中に立つことの出来ないものだ。然しながらさう云ふ悪人に天地の大道を説いて聞かせ心改めしめるのが、救世主の天よりの使命だ。それで此玄真坊は泥棒の張本なる××大臣や伴食××を初め紳士紳商等云ふ獣を此処へ集めて、天地の大道を説き聞かせ地獄的精神を改善せしめ、永遠無窮の生命を保つて栄えと喜びに満ちた天国へ救つてやる為に救世主として現れてゐるのだから、馬賊の頭目だつて山賊だつて、自分の教を聞きに来るのは当然だ。あのシーゴーだつて、元は大変な大泥棒の頭目だつたが俺の説教を聞いて悔い改め、今では猫のやうに、おとなしくなつてゐるのだよ。さうして此玄真坊の唯一の弟子として神様にお仕へしてゐるのだ。又女帝様は女帝で、あれは女盗賊の大頭目だつたが俺の感化によつて、今はスツクリ悔い改め、天王の社の神司となつて仕へて居るのだよ。何程元は泥棒だつて改心すれば真人間だ。何も恐ろしい事はない。安心してここに居るがよい。お前も救世主の見出しに預り、妻となり妾となるのは無上の幸福だよ。どうだ分つたかな』 スガコ『女帝様もシーゴー様も貴方の御弟子ならば折角お拵へ遊ばした御馳走を強圧的に奪られる筈はないぢやありませぬか。それを考へますと、どうやら女帝やシーゴーの幕下になつてゐられるやうな心持が致しますがな』 玄真『アハヽヽヽヽ、そこが救世主の救世主たる処だ。光を和らげ塵に交はり衆生を済度するのだから、威張る奴は威張らしておくなり、観自在天様の働きをしてゐるのだ。観自在天様は泥棒を改心させようと思へば泥棒となり、賭博打ちを改心させようと思へば、自から賭博打ちとおなり遊ばし、或時は非人となり、或は病人となり、又或時は蠑螈となり蚯蚓ともなり、竜となり馬となり、獅子、虎、狼となり、宇宙一切をお救ひ遊ばすのだから、況して天帝の化身たる玄真坊に於てをやだ。そこが神の神たる処、救世主の救世主たる処だ。何と、神様のお慈悲と云ふものは勿体ないものだらうがなア。到底人心小智の窺知し得る処ではない。それで人間は救世主を信じて少しも疑はず怪しまず、維命維従ふと云ふ絶対服従心がなくてはならないよ』 サンダー『ハイ、重ね重ねの御教訓、有難う厶います。お蔭様で、根ツから、葉ツから、よく分りました。ホヽヽヽヽ』 玄真『これこれサンダー、根ツから、葉ツからよく分つた……とは、怪体な言ひ分ぢやないか、一体分つたのか、分らないのか』 サンダー『ハイ、分つたやうでもあり、分らぬやうでも厶います』 玄真『さうだろさうだろ、神の道は分らぬものだと云ふ事が分つたら、それが所謂分つたのだ。神様のお心が分つたと云ふものは、何も分つてゐないのだ。マアマアそれ位ならば上等の部だ。サアサア遠慮は要らぬ、二人とも、この飲食を頂戴するがよい。俺もこれからお交際に毒味旁お前の美しい顔を見乍らお招伴するからのう』 二人の美人は何分空腹に悩んでゐる事とて已むを得ず箸をとつた。玄真坊は之を見てニヤリと笑ひ乍ら、さも愉快気に、 玄真『ハヽヽヽどうだ、両人、美味いだらう』 サンダー『ハイ、誠にお加減が宜しう厶います』 玄真『スガコ、お前はどうだ』 スガコ『ハイ、何とも知れぬお加減のよいお料理で厶います』 玄真『ハヽヽヽヽ、そら、さうだろて、此玄真が魂をこめて拵へた馳走だもの。此料理の中には玄真の魂が這入つてゐるのだよ。』 サンダー『左様で厶いますか、何だか存じませぬが云ふに云はれぬ風味が厶いますわ』 玄真『飯一つ焚くにしても、釜の下に薪をくべたなり、外の仕事をしてゐるやうな事ぢや魂が入らない。甘い汁を外へ零さぬやう、釜の下を燻べないやうに、或時は火力を強め、或時は火の力を弱めたり一秒時間も御飯の出来る迄心を外してはいけない。そして途中に鍋蓋をとつては、味がぬけていけない。蓋をとつて見て、ボツボツと豆粒のやうな穴があいて居つたら、もはやお飯が加減よく出来た所だ。然しその蓋をとつちやいけない。蓋の上から、そのボツボツが見えるやうに魂が入らぬと、折角焚いた御飯がおいしくないのだ。其外の煮〆だつて魚だつてさうだ。一秒間だつて外に心を移すやうでは何だつて、おいしい料理は出来ないんだからなア。ここ迄気をつけてお前等両人に、おいしいものを食はしてやらうと云ふ親切、よもや、無には致すまいのう。どうだ、も一杯食はないか』 サンダー『ハイ、有難う厶います、もう之で充分頂きました』 スガコ『妾も沢山に頂きました、大きに御馳走様』 玄真『ウン、さうかさうか。皆甘さうに食つて呉れたので俺も骨折甲斐があつた。折角骨を折つて味ない顔して食はれると、根ツから骨折甲斐がないけど猫が鰹節を見たやうに飛びついて食つたのを見た時は、此玄真坊も本当に愉快だつたよ。サア、御膳が済んだら、之から俺の要求を聞いて貰ふのだ。否此玄真坊にお前等両人から御馳走を頂くのだ。人に招ばれたらキツト招び返すのは世間普通の礼儀だからのう』 サンダー『ハイ、何か御馳走を差上度う厶いますが、妾としては何も材料がありませぬから、御礼の返しやうが厶りませぬわ』 スガコ『妾だつて御礼を致さねば済まないのだけど、かやうの処へ閉ぢ込められてゐるのだから、何一つ所持品もなし、玄真様にお愛想の仕方がありませぬわ。どうか時節をお待ち下さいませ。キツトお礼を申しますから』 玄真『俺の馳走と云ふのは、そんな者ぢやない。稀代の珍味、しかも、其方が所持する畑で掘つた×だ。それを、この玄真坊に一口賞玩させて貰ひ度い。その代りに又秋山の名物、常磐の松の精から生れた××の御馳走を進ぜよう。あんまり悪くはあるまい、エヘヽヽヽ』 サンダー『オホヽヽヽ、御冗談許り仰有いまして、貴方は要するに妾に対し、オチコ、ウツトコ、ハテナを御要求なさるのでせう。貴方も余程オホノ、トルッテですね』 玄真『オイ、そんな蒙古語を使つても、ネツから分らぬぢやないか。サンスクリットで云はないか』 サンダー『妾エ、サンスクリット忘れたのよ。貴方のやうな事仰有いますと、ポホラのヌホが呆れますよ。ポホラからパサヌーですわ。鼬の最後屁、オンクス、アルテチウンヌルテですわ。ホヽヽヽヽ』 玄真『エー分らぬ事を云ふ女だな。言論よりも実行だ。オイ、スガコ、そこに待つて居らう。サンダーの方から御馳走をしてやらう』 と云ひ乍ら、アワヤ猥褻なる行為に出でむとした。二人は……こりや堪らぬと……一生懸命に、 『助けてくれ助けてくれ』 と叫んだ。折から戸の外を通り合したシーゴーが、妙な声がすると思ひ、パツト戸を開いて入り来り此態を見て、 シーゴー『玄真坊殿、この不仕鱈は何の事で厶る。万民の模範となり、神の福音を宣べ伝ふる身でゐ乍ら、可憐な女を一室に監禁し、強圧的に醜行を遂げむとなさるは、貴下にも不似合な事、おたしなみなさい』 玄真坊は頭をかき乍ら、 玄真『アイヤ、シーゴー殿、決して御心配下さるな。ツイ貴方と最前お酒を呑んで酔がまはり、酒の奴め、遂斯様なホテテンゴを致して厶る。酒と云ふ奴は本当に仕方のない悪魔で厶るわい』 シーゴー『これこれ二人のお女中、危ない事で厶つたな。ヤア其方はコマの村のサンダー姫ぢやないか』 サンダー『ハイ、貴方は妾の門前に於て、お目にかかつた修験者様で厶いましたか』 シーゴー『いかにも左様、よくお詣りなさつた。然し目的の捜索物は分りましたかな』 サンダー『ハイ、お蔭様で分つたでもなし、分らぬでもなし、此岩窟で玄真坊様の御慈悲により、永らく断食の行をさせて頂きました。玄真坊様は見かけによらぬ、シトラ(鬼)で厶いますな』 玄真『アハヽヽヽヽ、何でもかんでも、シツトルワイ。天地の間の事をシツトラいで、万民を導く事は出来ないからのう』 とサンダーに鬼と云はれし事を少しも知らず鼻高々と嘯いて居る。 斯くして夜はダンダンと更渡り、オーラ山の尾の上を渡る松風の音は颯々と聞え来る。 (大正一三・一二・一七旧一一・二一於祥雲閣北村隆光録) |
|
33 (2980) |
霊界物語 | 66_巳_オーラ山の山賊 | 20 真鬼姉妹 | 第二〇章真鬼姉妹〔一七〇二〕 サンダー、スガコの二人は玄真坊の強圧的恋の請求に手古摺つて居た処へ、又もや二人の男女が投込まれて来たのを見て、サンダーは思はず知らず『アツ』と叫んだ。女も亦サンダーやスガコの面を見て、『マアマア』と言つたきり、口を噤んだ。 梅公は洒蛙々々然として平気に笑ひ乍ら、 梅公『たうとう猿も木から落ちるの喩、オーラ山の大天狗も芝居のやり損ひをやつて、舞台から墜落し、名もない奴にふん縛られ、かやうな女護の島へ落込んで来た。何とマア不思議な事もあればあるものだ。人間万事塞翁の馬の糞とはよく云つたものだ。揃ひも揃うて絶世の美人、而し吾妻君は例外として……お二人の姫御前、貴方は何の理由あつて、かやうな所へ鎮座ましますのですかなア』 サンダー『ハイ私はコマの村のサンダーと申す者で厶います。この方は、タライの村のジャンクさまの娘でスガコ姫様で厶います。悪者に拐かされ、日々苦しい目に会はされてゐるのです。貴方は又何うしてこんな所へお越しになりましたか』 梅公はタライの村のサンヨに話を聞いて、花香を救はむとの決心を起した事や、ジャンクの家に泊つて、スガコ姫の行方不明になつた事、サンダーの失踪した事などを聞き、義勇軍に従ひ乍ら、どうしても此三人を救ひ出したいといふ真心から、師匠に別れて、私かにオーラ山へ向つて駒に鞭ち駆込む途中、花香の危難を救ひ、相伴うて当山に登り、大杉に攀ぢ、彼等が魔術の奥の手たる灯火を吹消し、天狗の声色を使ひ、化が現はれて、取つ捉へられた事などを、逐一話し聞かせた。サンダー、スガコの両人は此話を聞いて、感謝の涙に袖を搾り乍ら、 サンダー『見ず知らずの貴方様が、それ程まで吾々を助けようと思召し、御苦労下さいました事は、何とも御礼の申上げやうが厶いませぬ。実は私は、お聞及びでも厶いませうが、女に化けてゐますが、男で厶います。之なるスガコと夫婦となるべく、両親の許嫁で厶いますが、スガコの行方を尋ねむ為に当山へ参拝致し、今日迄玄真坊の為に閉ぢ込められて居つたので厶います。何卒御推量下さいませ』 と力なげに云ふ。 梅公『ヤ、それで何もかも判りました。ナアニ心配いりませぬ。こんな岩窟位、叩きわるかつて、朝飯前ですワ。モシモシスガコさまとやら、必ず心配なされますな。キツと私が救ひ出して上げますよ』 スガコ『ハイ有難う厶います。不運な身の上で厶いますから、貴方のお助けを頂かねば到底遁れる道は厶いませぬ』 花香『モシ、お嬢様、私はサンヨの娘花香で厶います。お嬢様が何者にか攫はれ、御行方が分らぬと云うて、村中の大騒動で厶いましたが、少時すると、バラモンの軍人が参りまして、私を掻つ攫へ、母に手疵を負はせ、ホラが丘の森林へ連れ込み、其所辺中を引きまはし、操を破らむと致しましたなれど、神様のお蔭によつて、漸く其難を免れ、最後に至つて今や辱られむとする所へ、此お方がお出下されましてお助け下さつたので厶います。因縁と申すものは妙なもので厶いますなア。私には一人の姉が厶いましたが、或夜のこと修験者と手に手を取つて、家を脱出し、最早三年にもなりますが、どうしてゐる事やら、皆目行方が分らぬのです。それに不思議な事には、あの玄真坊といふ男、何処かに見覚えがあるやうに思へてなりませぬ。暗がりでハツキリ分りませぬが、身体の格好といひ声といひ、どうも彼奴ぢやないかと思ふので厶います』 梅公『あーあ、話が理におちて気が欝いで仕方がない。どうです皆さま、二男二女がよつて此岩窟が割れるやうな声で歌でも唄つてやりませうか。私が……何なら歌ひますから手を拍つて囃して下さい』 サンダー『どうか御願ひ致します』 梅公はヤケクソになり、大声を出して唄ひ出した。 梅公『歌へよ歌へよく唄へ岩戸の唐戸の割れる迄 玄真坊は云ふも更シーゴーとかいふ親玉も 之に従ふ三千の泥棒の頭が割れる迄 歌へよ唄へよく唄へ歌うて器量は下りやせぬ 美人のまします岩の中ここは竜宮か天国か 丹花の唇月の眉月日に等しき目の光 こんなナイスと一夜さの宴をするのも面白い 酒はなけれど美人さへ前にゐませば満足だ 玄真坊奴が涎くり何だかんだと朝夕に 口説き立てたがザマを見よ肱鉄砲や後足の 砂の礫を浴びせられ口アングリと悄気返り 又もや天狗に肝潰し弱腰抜かした可笑しさよ ここの大将といふ奴は確にヨリコと云ひよつた もしや姉ではあるまいか花香の姉も又ヨリコ 同じ名前は世の中に沢山あれ共どこやらに 彼奴の声がよく似てるあゝ面白い面白い 神の仕組で此岩窟やつて来たのは天地の 神々様の御心だ早く此戸を開けてくれ 玄真坊よシーゴーよ一つの秘密を云うてやろ 何程心を砕きつつ天下を狙つて見たとこで お前の智慧では及ばない肝心要の救世主 此処に厶るを知らないか玄真坊やシーゴーの 腰抜身魂ぢや駄目だぞよ俺のいふ事分らねば 女帝のヨリコを招んで来い女帝であらうが何だろが 吾言霊の一節に言向和して見せてやろ 神は吾等と倶にあり吾等は神の子神の宮 いかなる曲の健びさへおめず恐れぬ神司 見違へするな早あけよスガコの姫や吾ワイフ 女に化けたサンダーさま揃ひも揃うて美しい 月雪花が待つてゐる俺は梅公宣伝使 どんな事でも聞いてやろ安全無事の神の教 こんな悪事が何時迄も続くと思つちや間違だ 早く改心するがよい女帝のヨリコを始めとし 何奴も此奴もやつて来て吾御前にひれ伏せよ 吾は救ひの神なるぞ天教山にあれませる 木花姫のみことのり神素盞嗚大神の 教を畏み月の国ハルナの都に出向ふ 尊き神の珍柱早くも迎へ奉れ 開けよ開けよ早開けよ開けるが厭ならブチ割ろか 吾言霊の神力にオーラの山も野つ原も 忽ちガタガタビシヤビシヤと顛覆させるは夢の間だ 俺の力が解つたら一時も早く開けに来い 最早夜明に近づいたあけて嬉しい玉手箱 竜宮海の乙姫が三人ここにまつて居る お面が拝みたうないのかい唐変木にも程がある あゝ惟神々々叶はぬからあけてくれ アツハヽヽヽヽオツホヽヽヽ』 と魔神の岩窟に閉ぢ込められたのを知らず面に笑つてゐる。 玄真坊は戸口にソツと耳を当て、様子を考へてゐたが……、 『梅公の歌の中に、どうやら今やつて来た女は女帝の妹らしい。コリヤうつかりしては居れない。又二人の女は女帝の妹が眤懇な奴と見える。あの天狗のマネをして失敗つた男は、妹の婿らしいぞ。何とかして大切に扱はねば、姉妹の対面が事実になつたならば、其時は俺もサツパリ、ワヤ苦茶だ。忠義を尽すは今の時だ。旗色のよい方へつく方が当世だ。シーゴーとは俺の方が、どうやら旗色が悪くなつたやうだ。今の内に勢力のある方へ加担するのが最善の行方だ……』 と独語乍ら吾居間へ帰り、酒や煙草や珍らしき果物などを持ち出し来り、面色を和らげて、 玄真『ハア、これはこれはお客様方、山奥の茅屋へ能くも御入来下さいました。何か差上げたいので厶いますけれど、御存じの通り不便の土地。これが私の力一杯の御馳走です。どうか精一杯おあがり下さいませ。私もヨリコ女帝様の御厄介になつてるツマらぬ男ですから、どうか、末永く可愛がつて頂きたう厶います』 梅公『ハイ有難う。思召しは受けますが、今はお肚が膨れて居りますから頂戴致しませぬ』 玄真『何かお腹立でも厶いませうかなれど、御機嫌を直して、私の心をおあがり下さいませ。メツタに天然の果物に毒などは入つて居りませぬから……』 梅公『それでも余り、気の毒だから、御遠慮致しませう』 玄真『滅相もない。気が毒になりましたら、箸で飯はくへませぬ。どうか、キの毒とか灰の毒だとか云はず、キ能うおあがり下さいませ。貴方方は水入らずの間柄と思ひますから』 梅公『水入らず…ではなくて、猫入らずかも知れませぬぞ、アハヽヽヽ。沢山な鼠賊が横行して居りますから。チツタ猫入らずも当家には買込んで厶いませうね』 花香『ア、お前さまは、三年前に吾家に泊り、姐さまを拐かしていんだ修験者ぢやありませぬか。マアマアマアマアよく似てる事……』 玄真『ハヽヽヽ、ヤ、実の所は其時にお前の内に泊つたのは私だ。何とマア大きくなつたね。どこともなくヨリコさまに似てるワイ。お母アさまも随分面立のよい人だつたが、お前さまも姉さまに劣らぬ美人だ。之も何かの因縁だらう。マア能う来て下さつた。お前さまが御姉妹と分つた以上、女帝さまに黙つてる訳にも行かぬ。之から一つ女帝様に申上げて来る。又何か御馳走をして下さるだらうから』 花香『一寸、玄真坊さまにお断へ致しておきますが、此凛々しい男らしい方は三五教の梅公別さまと云つて宣伝使ですよ。そして私の大事の大事の夫で厶いますから、大切に扱つて下さいや。私が姉さまの姉妹とあれば、ここの女帝さまの弟ですから、粗略な扱は出来ますまい、ホヽヽヽヽ』 と稍顔を赤くし、袖に隠す。 玄真坊は倉皇として女帝の居間に駆けつけ、声まであわただしく、 玄真『女帝様に申上げます。タヽ大変なお悦びが出来ました』 ヨリコ『大変なお悦びとは、どんな事が出来たのだえ』 玄真『ハイ、貴女のお妹御の花香さまが、お婿さまを連れてお出になつたのですよ。あの大杉の上から落ちて来た二人の男女が其方です。何と驚くぢやありませぬか』 ヨリコ『オホヽヽ、あのマア玄真坊殿の慌て方ワイの。妾は杉の木から落ちた時、已に妹だと看破してゐたのだ。仕様もない者がやつて来て、折角の仕組が破れはせぬかと心配してるのだ。而し妹と分つては手にかける訳にもいかず、同じ母の体内から出た、同じ血筋だから、何とかしてやらねばなるまい。そしてあの男は妹の婿らしいが、中々あれはシーゴーやお前のやうな弱虫ではない。グヅグヅしてゐると岩窟退治をやられるか知れませぬよ。併し打やつておく訳にも行くまいから、女帝自ら出馬して、姉妹の名乗をしてやりませう、ホヽヽヽヽ』 玄真『サ、お伴致しませう。エ、シーゴーの奴どこへ行きやがつたのだらう。右守司許り居つても、左守が居らなくちや、女帝様の権式が上らない。どつかへ潜伏してゐるだらう』 と呟いてゐる。シーゴーは次の間からヌーツと面を出し、 シーゴー『アハヽヽ、オイ玄真、何を慌てて居るのだ。もう斯うなりや、毒を以て毒を制する法を講じなくちや仕方がないよ。巧く宣伝使を抱込んで吾々の味方となし、女帝様の謀師と仰ぎ、俺達や一段下へさがつて、日頃の大望を成就することに努めねばなるまいぞ。女帝様に余り口を叩かしちや権威がおちるから、そこは能く心得てをるのだ。併し貴様は肝心の時になると、慌てるから、すぐに内兜を見透かされる。此談判の衝にはシーゴーが当るから、寧お前は沈黙を守つてる方が奥床しくてよからう。そしてサンダーといふお前の恋してゐた女は、コマの村の里庄の息子だ、一人は彼の許嫁のスガコ姫だ。主ある花を手折らうと思つたつて到底駄目だから今の中にスツパリ思ひ切つておくがよからう。妙な目遣ひをして貰うと俺達の面にかかる。第一女帝様の権威に係はる。エヽか、心得たか』 玄真坊はスツカリ恋の夢も醒め、豆狸が小便壺におちたやうな面をして膨れてゐる。此時一天を包みし黒雲は、折柄吹き来る山嵐に晴れ、大空は梨地色に星光燦爛として輝き初めて来た。吁惟神霊幸倍坐世。 (大正一三・一二・一七旧一一・二一松村真澄録) (昭和一〇・六・一七王仁校正) |
|
34 (3027) |
霊界物語 | 68_未_タラハン国の国政改革2 | 19 紅の川 | 第一九章紅の川〔一七四三〕 カーク、サーマンの二人はインデス河の河辺を膝栗毛に鞭うち一生懸命に走り行く。右手の草村より手招きして『オーイオーイ』と叫ぶ者がある。二人は聞覚のある声と立とまつて、息をついでゐた。そこへ萱草を分けて、のそりのそりとやつて来たのは右守司サクレンスが弟エールであつた。二人はエールの顔を見るより、地上に蹲まり、 カーク『これはこれは、エールの君様、思はぬ所でお目にかかりました。貴方は又斯様な所に何をしてゐらつしやるのですか』 エール『イヤ、一寸秘密の用向があつて』 カ『秘密の御用向と仰有るのは、アリナの行衛を捜してゐられるのでせう。貴き御身を以て供をも連れず、只一人なぜ斯やうな所にお出ばりになつてゐられるのですか』 エ『イヤ、アリナの行衛も捜索せなくてはならぬが、王女バンナ姫様のお行衛を尋ねて、此処迄やつて来たのだ。此少し先方に賤の岩屋と云つて岩窟がある。此処はカラピン王様の御先祖の奥津城の跡、それ故若や、バンナ姫様がお参りになつてゐるのではあるまいかと、只一人ワザとに捜しに来たのだ』 カ『姫様は、そしてゐられましたか』 エ『イヤ、お姿が見えないのだ。あゝ困つた事だワイ。併しお前は秋野ケ原の水車小屋の番を仰せつかつてゐた筈だが、どうして又帰つて来たのだ』 カ『之に付いては大変な珍事が突発致しました。それ故御報告がてら、帰つたので厶います』 エ『椿事とは何事だ。民衆救護団でもやつて来て、太子を奪取つたのではないか』 カ『ハイヽヽヽイエヽヽヽー、さうでも厶いませぬが、三五教の宣伝使がやつて参りまして、太子殿下及スバール姫を救ひ出し、たつた今駒に跨つて、ここを通るで厶いませう。太子が城内へ帰られたならば、先づ第一に右守司様の御迷惑、用意を遊ばさねばなるまいと、一生懸命に御注進に帰る途中で厶います』 エ『ヤ、其奴ア大変だ。オイ両人、事成就の上は汝を立派な役に使うてやるから、どうだ、此少し向方に、一方は河、一方は岩山、其処には古ぼけた宮が建つてゐる。之から其宮の後に三人忍び居り、太子の帰るのを待伏せ、太子の命を取つて了ふか、但しは激流へ投込むか、何とかして片付けねば成らぬ、どうだ、俺の命を聞くか』 カ『ハヽヽヽヽイ、貴方の御命令なれば、決して否は致しませぬが、三五の宣伝使といふ奴、到底一筋縄ではゆかぬ奴で厶いますから、用心をせなくちやなりませぬ』 エ『ナアニ、あの地点は攻むるに難く防ぐに易きタラハン国第一の険要の喉首だ。彼処にさへをれば、仮令千万人の敵が来ても大丈夫だよ』 カ『如何にも左様、成程御尤も。オイ、サーマン汝どうだ。御命令を奉ずるかな』 サ『そら……、俺だつて、出世のしたいのは同じ事だ。そんな安全な所なら、俺も御用を承はらうかい』 エ『ヤ、両人共、合点がいたなれば、早く岩山の森迄行かう。軈て太子の一行が帰つて来る時分だらう』 といひ乍ら岩山の森を指して走り行く。 一方アリナは体中、肉付のよいブクブクとした柔らかな背中に負はれ、何となく妙な気分がして来出した。そしてバランスも亦アリナのどこ共なく男らしく、凛々しい姿に、……此男ならば……といふ様な妙な気になつて居た。太子は声も涼しく、馬上豊かに月光を浴び乍ら行進歌を歌ふ。 『あゝ有難し有難し九死一生の苦みを 三五教の宣伝使梅公司に助けられ 妹背の縁も恙なく再びここに相生の 松の緑の色深く駿馬に跨り戞々と 峰の嵐に吹かれつつインデス河の河辺を 勇み進んで上る内心は頓に冴えわたり 神のまします天国の旅路を進む心地せり 月の光は波の上に瞬き初めて麗しく 飛沫の音はタラハンの国家復興を歌ふ如 耳をすまして聞え来るあゝ勇ましや勇ましや 神が表に現はれて善と悪とを立別けて 吾旧国を根底より改め給ひ民衆の 永き平和と幸福を与へ給ふぞ嬉しけれ 吾師の君に従ひて川辺の森に来てみれば 月夜に瞬く篝火の影に寄りそふ数十人 何をなすやと伺へば網にかかりし旅人の 死骸をあぶり肉体の命を救ひ助けむと 民衆団の団長が力限りに介抱し 心を砕く折もあれ吾師の君の言霊に 死人は漸く甦りよくよくみれば吾慕ふ 賢き友のアリナなりアリナは漸く元気づき バランス団長に負はれつつ河辺を伝ひスタスタと 吾等一行に加はりて此処迄無事に帰りけり あゝ惟神々々神の恵の尊さよ 向方に見ゆる岩山の神を祀りし森のかげ 吾等は其処迄駆けつけて一先づ息を休めつつ 神のまにまに城内へ轡を並べて帰るべし あゝ楽もしや楽もしや一陽来復春は来ぬ あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ』 斯く歌ひつつ、駒の足音に大地を響かせ乍ら、漸くにして岩山の森蔭、古き社の前に着いた。太子一行はバランスやアリナの身の疲れを休養さすべく、ワザと此処に駒を止めたのである。梅公別は早くも此古社の後に怪しき者ありと勘付いたが、まさかの時には言霊を以て霊縛せむものとタカをくくつて、何食はぬ顔し乍ら、一行五人一の字形になつて社前の敷石に腰打かけ、煙草を燻らして居た。社の後には三人の囁き声、 エ『オイ、カーク、来たぞ来たぞ。サア俺に忠義を尽すのは今だ。彼の正中に居る奴が太子だ、彼奴を矢庭に此刀を以て袈裟掛に切り捨てるのだ。それさへすれば外の奴アどうでもよいから、サア行け行け』 カ『ハイ、参ります。併し、旦那様、私に跟いて来て下さい。何と云つても向方は五人、そんな所へ私一人行つた所で駄目で厶いますからなア』 エ『エー、気の弱い奴だな、そんならサーマンと一緒に飛出して行け』 サ『ハイ行かぬこた厶いませぬが、何だか手足がワナワナ致しまして、怖くつて堪りませぬワ』 エ『チヨツ、エー口許りの代物だなア。サア俺に跟いて来い。そして俺の手ぎわを見るがよい』 と云ひ乍ら、バラバラと不意に立出で、木下蔭を力に太子を目がけて、暗に閃く白刃の雷、アワヤ太子は真二つと思ひきや、ヒラリと体をかはし、太子は、 『曲者、待てツ』 と大喝したり。バランスは之を見るよりエールの腕を強力に任して撲りつけたる其途端に腕はしびれ、白刃はガチヤリと大地に落ちた。バランスはエールの首筋を掴んで高く差上げ乍ら、川辺に持行き、月に曲者の面を照してみれば、擬ふ方なきエールなりける。 バラ『もしもし、宣伝使様、太子様、一寸御覧なさいませ。此面は右守の弟エールの様に思ひますが、お査べ下さいませぬか』 太子外四人はバラバラとバランスの側に駆けより、曲者の面を眺め、 太『ヤ、如何にも此奴はエールだ。怪しからぬ事を致す、悪党奴』 バラ『殿下の御証明がある以上は、此エール、此世に活かしておく代物では厶いませぬ。此奴の面には剣難の相が現はれてゐます。何れ遠からぬ内、漁業団員に命を取られる奴、エー邪魔臭い、太子様御許し』 といひ乍ら、激流目がけて、小石を投ぐるが如く、ドンブリと投込んだ。エールは投込まれた途端に、川中の突出た石に脳天を打割り川水を紅に染て、ドンドンと流れて了つた。此隙にカーク、サーマンの二人は一生懸命倒けつ転びつ、命あつての物種と右守の館を指して逃げてゆく。 (大正一四・一・七新一・三〇於月光閣松村真澄録) |
|
35 (3252) |
霊界物語 | 75_寅_太元顕津男の神の物語3 | 08 結の言霊 | 第八章結の言霊〔一九〇二〕 太元顕津男の神が国魂神を生み給ふ神業に就き、言霊応用の大要を示さむとす。即ち、 アオウエイは天位にして、 ワヲウヱヰは地の位なり、又、 ヤヨユエイは人位なり。 故にア、ワ、ヤの言霊の区別を正しくせざれば、天地人の真理を説き明かすこと最も不便なり。現代は言霊の応用乱れてアワヤ三行の音声の区別なく複雑極まれりと言ふべし。 又 アカサタナハマヤラワは、天位にして、天に座し、貴身の位置なり。 オコソトノホモヨロヲは、地の座にして、田身の位置なり。 ウクスツヌフムユルウは、結びの座にして、隠身の位置なり。 エケセテネヘメエレヱは、水の座にして、小身の位置なり。 イキシチニヒミイリヰは、火の座にして、大身の位置なり。 故に貴身は君、田身は民、隠身は神、小身は小臣、大身は大臣の意と知るべし。 アカサタナハマヤラワをア列といふ、其他は準じて知るべし。故に、 ア列は森羅万象の天位に居り、 オ列は森羅万象の地位に居り、 ウ列は森羅万象の結びに居り、 エ列は森羅万象の水位に居り、 イ列は森羅万象の火位に居るなり。 是を以て一切万有の名義の出づる根源を悟るべきなり。 今、生代比女の神が、国魂神を生ます時の迫りければ、顕津男の神は大前に額きて神嘉言を奏上し給ひ、『ウクスツヌフムユルウ』と声音朗かに言霊を奏上し給へば、他の神々は御後に従ひて、異口同音に『ウクスツヌフムユルウ』を繰返し繰返し宣らせ給ひしぞ畏けれ。 玉野比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『ウーウーウーウウ国魂神の生れまして[※a052からa089まで、言霊の活字の向きが異なるものがある。] 神国の柱と立たせ給はれ クークークークク太元顕津男の神御霊 生代の比女の御腹に宿らす スースースースス生代の大神の言霊に 宿らせ給ふ国魂の神よ ツーツーツーツツ月満ち足らひ日を重ね 今生れまさむ御子ぞ畏き ヌーヌーヌーヌヌ奴羽玉の世をまつぶさに 照させ給ふ御子生れませよ フーフーフーフフ振魂みそぎ清らかに 宿らす御子の光たふとし ムームームームム結びの神業の鳴り鳴りて 今生れまさむ国魂の神 ユーユーユーユユ白雪よりも清らけき 畏き御子の生れます今日はも ウーウーウーウウ美しの神瑞の御霊 御子生みの神業近づきにけり』 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『ウーウーウーウウ美しの岐美美しき 神の御子をば宿し給へり クークークークク国魂神を孕みつつ これの聖所にわが来つるかも スースースースス清し美し玉野宮に 祈りて国魂神を生まなむ ツーツーツーツツ月読の神の神御霊 宿らせ給ふ御腹かしこし ヌーヌーヌーヌヌ奴羽玉の世を伊照らすと 今生れまさむ瑞の御子はも ツーツーツーツツ真鶴国の国魂は 玉藻の山に生れまさむかも フーフーフーフフ応はしき御子生れませよ 千代を固めむ真鶴の国に ムームームームム蒸しつ蒸されつ瑞の子の 宿らせ給ひしわが身は重し ユーユーユーユユ雪霜よりも白く清しき御子なれや 瑞の御霊の御子にしあれば ウーウーウーウウ嬉しさの限りなりけり吾は今 国魂神を生む日足らひて』 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『美しき玉藻の山の頂上に 今日の吉日を迎へけるかも 国魂の神の生れます今日の日は 天地一度にひらく心地す 清しさの極みなるかも玉藻山の これの聖所に生れます瑞子は 月も日も今日の吉日を祝ひてや 雲を霽らして輝きつよし 奴羽玉の闇もいよいよ晴れ行かむ 瑞子の岐美の生れます今日より 吹き送る風の響のたしたしに 聞えて常磐の松はゆらげり 昔より例も知らぬ喜びに 吾遇ひにけり国魂生れます 夢うつつ幻なせる稚国土を 御子生れまして生かせ給はむ 浮雲の漂ふ国土も今日よりは うまらにかたらに栄えますらむ』 遠見男の神は御歌詠ませ給ふ。 『美しき楽しき今日の生日こそ 瑞子の生れます喜びの日なり 国魂の神のいよいよ生れませる 玉藻の山の今日ぞ目出度き 主の神の生言霊の御水火より 森羅万象は生れましにける 月も日も御空の雲霧押し分けて 光を地上になげさせ給ふ ぬえ草の女にしあれども生代比女 神は雄々しき御子生ませませよ 伏し拝む玉野宮居の大前に 今日の生日の心清しも 結び結び水火合ひまして瑞の子の 生れます今日の月日さやけし 行く先のことを思へば嬉しもよ 永久に栄えむ真鶴の国は 嬉しさの極みなるかも瑞の子の 国魂神と生れます今日なり』 宇礼志穂の神は御歌詠ませ給ふ。 『浮脂なす稚国土の真秀良場や うまらにかたらに定まる今日はも 国魂の神の生れます嬉しさに 身の置所知らずなりけり 主の神の神言畏みわが岐美は 真鶴国の魂を生ませり 月読の神の御霊の露うけて 生代の比女は輝き給ふ 緯となり経糸となり主の神は 国土生み神生み依さす尊さ 降る雨も瑞の御霊の功績と 思へば畏し真鶴の国に 結ぼれし糸の乱れも解けにけり 心にかかる雲霧なければ 行き行きて行きの果なき大野原 拓かす岐美の功かしこき 宇礼志穂の神の心は勇むなり 嬉し楽しも今日の吉日は』 美波志比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『美しき此の神国の世を拓く 神の御橋をかけまく思ふも 国土稚く草木は稚く神稚く 比女神稚き真鶴の国 主の神の高き功は目のあたり 玉藻の山の尾根に見るかも 鶴は舞ふ家鶏鳥は鳴く梅香る これの聖所に生れます御子はや 奴羽玉の闇をつぎつぎ明さむと 月日にまさる御子生れませよ 二つなき真鶴国の真秀良場に 生れます御子の生命は永久なり 燃ゆる火の火中に立つも厭はまじ 生代の比女の艱み思へば 斎庭に御魂清めて今日の日を 待つも嬉しき御子の生れまし 浮雲の漂ふ如き国原を 固めの神は生れまさむとするも』 産玉の神は御歌詠ませ給ふ。 『産玉の神と現れ真鶴の 国に来りて御子を守るも 国土は未だ稚くあれども瑞御霊 御水火に生れます御子は尊し 澄みきらふ天と地との中にして 生れます瑞子は世の宝かも 月読の神霊は月を足はして 真鶴国の魂を生ますも ぬるみたる玉の泉に魂線を 洗ひてわが身清しくなりぬ 吹く風も暖かなれど瑞の子の 生れます今日は清しすずしも むくむくと煙の如く立昇る 霧は神山をつつまひにけり 湯気立ちて生れます御子を守りつつ これの聖所は八重垣築けり 上も下も狭霧つつみて瑞の子の 生れやすかれと八重垣つくるも』 魂機張の神は御歌詠ませ給ふ。 『生の子の弥永久に生ひ立ちて この国原を守りますらむ 国魂の神と生れます瑞の子の 生命を永久に吾は守らむ 主の神の依さし給へる魂機張 生命守らむ朝な夕なに 月も日も霧に隠れて風もなし 真鶴の声響くのみなる ぬくもりを与へて御子を生まさむと 主の大神の八重垣畏し 吹く風もあたらせまじと八重霧を 起して守らす主の神畏し 蒸し蒸して生れます御子の水火なれや 天地四方は霧の幕なり 湯気立ちて天地四方はやはらかく 豊なりけり御子生れます今日は 生れ出づる御子を守りて天地を 包みし霧の深くもあるかな』 結比合の神は御歌詠ませ給ふ。 『ウの声に生れます御子の産声を 待ちに待ちつつ今日とはなりぬ 国土を生み国魂神を生ます岐美の 功は御世の柱なりけり 主の神の依さしの言葉畏みて 瑞の御霊の御子生れますも 剣太刀鏡の如く照り渡る みすまる玉の御子生れませよ 荒鉄の地にぬき足なしながら よき御子生れよと吾祈るなり 振魂の禊かしこし生代比女神の 御子はいよいよ生れまさむとすも 蒸し蒸して水火と水火とを凝らしつつ 生代の比女の月は足らへり 斎み清め玉の泉の滝津瀬に 洗ひし御魂の美しきかも 浮雲のいやつぎつぎに集ひ来て これの聖所を包まひにけり』 美味素の神は御歌詠ませ給ふ。 『うまし御子はや生れませと祈るかな われ美味素の神の心に 奇びなる水火と水火との活用に 国魂神は生れまさむとすも 澄みきらふ御空の月日を隠したる この深霧の心たふとき 月と日を霧に隠して御子生みの はぢらひつつむ八重ぶすまかも ぬえ草の未だ年若き生代比女の 御子生み守れ主の大御神 吹く風も今日は止まりて八重霧の ふすまに神山は包まれにけり 結び合ひて生れます御子の幸ひを 永久に守らむ美味素われは ゆるやかにいと静やかに安らかに 生れましませ国魂の神は 美しき真鶴国の国魂と 生れます御子を待つぞ久しき』 (昭和八・一一・一七旧九・三〇於水明閣森良仁謹録) |
|
36 (3255) |
霊界物語 | 75_寅_太元顕津男の神の物語3 | 11 魂反し | 第一一章魂反し〔一九〇五〕 太元顕津男の神は、如衣比女の神の御魂を招くとして、八種の神歌を歌ひ、鎮魂祭を行ひ玉ふその御歌。 (一) アチメオオオオアメツチニ キユラカスハサユラカスカミハカモ カミコソハキネキコウキユラカス (二) アチメオオオオイソノカミ フルノヤシロノタチモカト ネカフソノコニソノタテマツル (三) アチメオオオサツヲラガ モタキノマユミオクヤマニ ミカリスラシモユミノハスユミ (四) アチメオオオノボリマス トヨヒルメガミタマホス モトハカナホコスエハキホコ (五) アチメオオオミワヤマニ アリタテルチガサヲ イマサカエデハイツカサカエム (六) アチメオオオワキモコガ アナシノヤマノヤマヒトト ヒトモミルカニミヤマカツラセヨ (七) アチメオオオタマハコニ ユウトリシデテタマチトラセヨ ミタマカリタマカリマカリ マシシカミハイマゾキマセル (八) アチメオオオミタマカリ イニマシシカミハイマゾキマセル タマハコモチテサリタルミタマタマカヤシスヤナ 斯く招魂の神歌をうたひ給ふや、如衣比女の神の神霊忽ち感応来格して、春風到り芳香薫じ、常磐樹の松は前後左右に揺れ動きて、他神の目にも歴然と御姿を拝し得るに至れり。茲に顕津男の神は御歌詠ませ給はく。 『神去りし如衣比女神は大前に 珍し御姿を顕し給へり 我と倶に在りし其の日と比ぶれば 一入御姿たふとくおはすも 四柱の御子生みをへし今日の日を 祝ひて比女の御魂招きぬ 霊界によし坐しますともわが造る 紫微天界を守らせたまへ 如衣比女神の神去りましてより われは心を建て直したり 公の魂わが身辺を守りますか 今日まで事無く神業仕へし 朝夕に公を慕ひしわが霊も 神業せはしくかへりみざりき 漸くに真鶴の国の生りたれば 公の功をおもひてまねきし 在りし日の事思ひ出で比女の魂を わが真心に招ぎ奉りける』 如衣比女の神霊は、しとやかに御歌詠ませ給ふ。 『何事も主の大神の御心ぞ 御魂となりてわれ仕へゐるも 瑞御霊われを招かす真心に ほだされ此処に降りつるはや 八雲立つ出雲の雲の八重雲を かきわけ玉藻の山に降りし 身体は大蛇に呑まれ失するとも わが魂線の生命は永久なり 中津滝にわが魂線は洗はれて 罪穢れなき今日の身軽さ 幽界に吾生き生きて瑞御霊 大御神業を守りまつらむ 千代鶴姫命の生ひ先き朝夕に 岐美の御霊と思ひて守らむ 頼みなき顕世を吾のがれ出でて 永久の生命の天国に栄えつ 八十比女神御魂守りて主の神の よさしの神業あななひまつらむ いざさらば雲路を別けて帰るべし 主の神います天津高宮へ 恋ひなづむ心なけれど別れゆく このたまゆらの惜しまるるかな』 顕津男の神の御歌。 『果てしなき紫微天界の中にして 水火と水火とを合せたる公よ 天路はろか下り来まして今直ぐに 帰らす公を惜しくも思ふ 主の神のよさしの神業をへぬれば われも天界に昇らむと思ふ 久方の天津高宮主の神の 御前恋ふしくわれなりにけり 真鶴の国はやうやく生れたり この行く先きの悩みを如何にせむ さまざまの悩みにあひて国土造る われをたすけよ如衣比女の御魂』 如衣比女の神は軽き御姿を現しながら、御空の雲を押し別け神馬に跨り、いういうとして、天津高日の宮のあなたをさして帰らせ給ひぬ。 玉野比女の神は、そのやさしく神々しき御姿を拝しまつりて、御歌詠ませ給ふ。 『畏しや如衣の比女の神の御魂 紫微宮の状を具さに宣らせり 仰ぎみるさへも眩きばかりなる 如衣の比女の姿たふとき 生死の差別さへなき天界と 悟りてわれは神世を楽しむ 死りたる神も姿を現して 言霊宣らす神世ぞ畏し 朝夕を玉の泉に禊して 清まりし目にうつらす御姿 魂は幾万代の末までも 生きてはたらく由を悟りぬ 吾は今年さびぬれど魂線の 生命の若きを思へば楽しも 生替り死替りつつ神の世に 永久に仕へて国土を守らむ 中津滝の大蛇の腹に葬ふられし 如衣の比女は生きてゐませし 顕津男の神の悲しき御心を 思へば知らず涙こぼるる 鶏の尾の長の別れと思ひてし 如衣の比女に岐美はあひませり』 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『神去りし如衣の比女の御姿を いま目のあたり拝みて驚きぬ かねてよりかかる例のある事は 聞けども今更おどろきにけり 久方の天津高宮に仕へます 如衣比女神の御姿清しも 顕津男の神の御心推しはかり われは思はず涙にくれたり 生き生きて神の御殿に仕へます 如衣の比女の幸を思ふも 愛善の天界なれば⦿の神の 厚き心に護られにけむ 生死のなき天界に玉の緒の 生命を保つ身こそ幸なれ』 遠見男の神の御歌。 『玉藻山の上つ岩根の清庭に 天降りて御言宣り給ふ比女よ 隠り世に坐ませし神の瑞御霊の 生言霊によみがへり坐しぬ たまきはる生命を常永に天国に 保ちて神業に仕ふる比女神よ 愛善の光と徳に充たされし 神国の神人の姿やさしも 御子生みの神業をへて神国に のぼりし神人の姿生きたり 玉藻山の此の清庭に天降りたる 如衣比女神のいとしき心よ 瑞御霊の神の心の雄々しさよ すべての執着を打ち払ひつつ』 宇礼志穂の神の御歌。 『足引の山の尾の上に禊身して 死りし神人に逢ひし不思議さ 死りたる神人と思ひしを目のあたり 生ける御姿拝みけるかも 玉の緒の生きの命の果てしなきを 見つつ天界に生れしを嬉しむ 真鶴の国生れ出でし目出度さに 天降り坐しけむ如衣比女の神は 生代比女神は嘸かし嬉しからむ 国魂神の子やすく生まして 御子生れし玉藻の山の頂上に 玉の神の子生れし嬉しさ みまかりし神も御山に降りきて 御子生れますを寿ぎ玉へり』 美波志比古の神の御歌。 『久方の空にも御橋の架れるか 如衣比女神往来ましけり 久方の天の浮橋渡らひて 天津高宮に帰らす女神はも 真鶴の国やうやくに固まりて 死れる神もことほぎに来る 目出度さの限りなるかも真鶴の 国魂神は産声冴えにつ 瑞御霊御魂反しの宣り言に 如衣比女神天かけり来ませる 言霊の御稜威の力今更に 覚らひにけり魂反しの祝詞に 村肝の心正しき神司の 生言霊の神妙なるかも』 産玉の神の御歌。 『かくり世の神も来りて玉藻山 御子生れし日をことほぎ玉へり 神妙くもあるかな既に身死りし 神も天降りて国を祈らす 顕津男の神の苦しき御心を 偲びまつれば吾堪へ難きも 地稚き国土は次ぎ次ぎに固まりて 隠世の神さへ天降り坐しぬる』 魂機張の神の御歌。 『魂機張る神人の神言の尊さよ 生死一如に栄え果てなき 万有の主宰と現れし神人の身は とこしへまでも亡びざるべし 常遠の生命保ちて天界の 神業に仕ふる神人ぞ幸なる 鎮魂の八種の神言宣りまして 死れる神人を招ぎ給ひしはや 言霊の天照り助くる国なれば 斯かる例もあるべかりける 千代鶴姫命の生れますこの山に 鶴のうたへる声は澄めるも 幾千年万年まで姫命 しづまりいまして国土守りませ』 美味素の神の御歌。 『天国は尊き国よ甘美し国よ 常永に生死の境なければ 生き生きて生きの栄えの果てしなき 天津神国の住居たのしも 吾は今生死一如の真諦を 悟りて心勇み立つなり 久方の天津高宮ゆはろばろと 天降りし神の心愛はし 愛善の天津神国の真諦を いま目のあたり見つつ楽しも 玉の緒の生命は永久に亡びざるを 覚る今日こそ楽しき吾なり 地稚き玉藻の山の山の尾に 死りし神の御姿をがめり 瑞御霊の生言霊の味はひに 天降り給ひぬ如衣比女神は 愛の善信の真をも旨として 生れし天国は歓喜の園なり とこしへの生命を保つ天界に 生れし幸をたふとみ思ふも』 結比合の神の御歌。 『久方の御空は高しあらがねの 大地は広し生命はながしも 生死の別ちなき天界に生れあひて 楽しきものは言霊の幸なり』 国中比古の神の御歌。 『地稚き真鶴国の国中に 珍しき神事をろがみにけり アチメオオオオ魂反しの行に 如衣比女神天降りましけり』 (昭和八・一一・二六旧一〇・九於更生館出口王仁識) |
|
37 (3446) |
大本神諭 | 神諭一覧 | 明治31年旧5月5日 | 明治三十一年旧五月五日 今の世界の人民は、服装ばかりを立派に飾りて、上から見ば結構な人民で、神も叶はん様に見えるなれど、世の元を創造へた、誠の神の眼から見れば、全部四ツ足の守護と成りて居るから、頭に角が生へたり、尻に尾が出来たり、無暗に鼻斗り高い化物の覇張る、暗黒の世になりて居るぞよ。虎や狼は我の食物さえ在りたら、誠に温順しいなれど、人民は虎狼よりも悪が強いから、慾に限りが無いから、何んぼ物が在りても満足といふ事を致さん、惨酷い精神に成りて了ふて、鬼か大蛇の精神になりて、人の国を取ったり、人の物を無理しても強奪くりたがる、悪道な世になりて居るぞよ。是も皆露国へ上りて居る、悪神の霊の所行であるぞよ。モウ是からは改心を致さぬと、艮の金神が現はれると、厳しいなるから、今迄の様な畜生のやりかたは、何時までも為しては置かんぞよ。善し悪しの懲戒は、テキ面に致すぞよ。今迄好きすっ法、仕放題の、我善しの人民は、辛くなるぞよ。速く改心致さんと、地球の上には置いて貰えん事に、変りて来るから、神が執念気を付けるなれど、智慧と学とで出来た今の世の人民の耳には、這入かけが致さんぞよ。一度に立替を致せば、世界に大変な人減りが致すから、日時を延ばして、一人なりとも余計に改心さして、助けてやりたいと思へども、何の様に申しても、今の人民は聞入ないから、世界に何事が出来致しても、神はモウ高座から見物いたすから、神を恨めて下さるなよ。世界の神々様、守護神殿、人民に気を付るぞよ。無間の鐘を打鳴して、昔の神が世界の人民に知らせども、盲目と聾者との暗黒の世で在るから、神の誠の教は耳へ這入らず、外国の獣の真似を致して、牛馬の肉を喰たり、洋服を着て神の前を憚らずに迂路ついたり、一も金銀二も金銀と申して、金銀で無けら世が治らん。人民は生命が保てん様に、取違いたしたり、人の国で在ろうが、人の物で在ろうが、隙間さえありたら略取ことを考へたり、学さえ在りたら、世界は自由自在になる様に思ふて、畜生の国の学に深はまりいたしたり、女と見れば何人でも手に懸け、妾や足懸を沢山に抱えて、開けた人民の行り方と考へたり、耻も畏れも知らぬ斗りか、他人は何んな難儀をいたして居りても、見て見ん振りをいたして、我身さえ都合が善ければ宜いと申して、日本魂の種を、外国へ引抜れて了ふて、徴兵を免れやうとして、神や仏事に願をかける人民、多数に出来て、国の事共一つも思はず、外国に国を奪れても、別に何とも思はず、心配もいたさぬ腰抜人民や、蛆虫ばかりで、此先は何ふして世が立ちて行くと思ふて居るか、判らんと申しても余りであるぞよ。病神が其所等一面に覇を利かして、人民を残らず苦しめやうと企みて、人民のすきまをねらい詰て居りても、神に縋りて助かる事も知らずに、外国から渡りて来た悪神の教へた、毒には成っても、薬には成らぬヤクザものに、沢山の金を出して、長命の出来る身体を、ワヤに為られて居りても、夢にも悟らん馬鹿な人民斗りで、日本魂の人民は、指で数へる程よか無いとこまで、世が曇りて来て居りても、何うも此うも、能ういたさん様に成りて居るくせに、弱肉強食の世の行り方をいたして、是より外に結構な世の治方は無いと申して居るぞよ。日本の国の上に立て居りて、今迄けっこうに暮して居りて、天皇の御恩といふ事を知らずに、口先きばかり立派に申して居りても、サア今といふ所になりたら、元来利己主義の守護神であるから、チリヂリバラバラに、迯げて了ふもの斗りが出て来るぞよ。夫れで神が永らく苦労致して、一人なりと人民を改心さして、日本魂を拵らへて、世の立替の間に合したいのであれど、今の日本の人民は、サッパリ四ツ足の精神に化りて居るから、何程結構な事を申して知らしてやりても、今の今まで改心を能う致さんやうに曇り切りて了ふたから、神もモウ声を揚げて、手を切らな仕様は無いが、是丈け神が気を付けるのに、聞かずにをいて、跡で不足は申して下さるなよ。神はモウ一限に致すぞよ。 外国は獣の霊魂に為りて在るから、悪が強いから、心からの誠といふ事が無きやうになりて、人の国まで弱いと見たら、無理に取って了ふて、取られた国の人民は、在るに在られん目に遇はされても、何も言ふ事は出来ず。仝じ神の子で在り乍ら、余り非道い施政で、畜生よりもモ一つ惨いから、神が今度は出て、世界の苦しむ人民を助けて、世界中を桝掛曳きならすのであるぞよ。外国人は段々世が迫りて来て、食物に困るやうになりたら、日本の人民を餌食に致してでも、トコトン行り抜くといふ深い仕組を致して、日本の国を取うといたして、永らくの仕組をして居るから、日本の人民は、余程確りと腹帯を締めて居らんと、末代取戻しの成らん事が出来して、天地の神々様へ申訳の無き事になるから、艮の金神が三千年余りて、世に落ちて居りて、蔭から世界を潰さんやうに、辛い行をいたして、経綸をいたしたので、モウ水も漏さんやうに致してあるなれど、神は其儘では何も出来んから、因縁ある身魂を引きよして、懸りて此世の守護をいたすのであるから、中々大事業であれど、時節参りて、変性男子と変性女子との身魂が、揃ふて守護が在り出したから、いろは四十八文字の霊魂を、世界の大本、綾部の竜宮館にボツボツと引き寄して、神がそれぞれ御用を申し付けるから、素直に聞いて下さる人民が揃ふたら、三千年余りての仕組が一度に実現て来て、一同に開く梅の花、万古末代萎れぬ花が咲いて、三千世界は勇んで暮す神国になるぞよ。日本の人民の天からの御用は、三千世界を治め神の王の手足となりて、我身を捨てて、神皇の御用をいたさなならぬ国であるから、外国には従はれぬ、尊い国であるのに、今の日本の人民は、皆大きな取違いをいたして居るぞよ。 |
|
38 (3501) |
大本神諭 | 神諭一覧 | 明治33年閏8月1日 | 明治三十三年閏八月一日 艮の金神が出口の手を借りて、何事も前日前日に知らせ置くぞよ。是迄の世とは全部変るぞよ。明治二十五年から法律も変る、国会も人民の力で何時まで掛りて居りても、誠の国会は開けんと申して、筆先に出して在らうがな。皆出て来るぞよ。一度に開く梅の花、人民の身魂の改め致して在れど、立替いたさな成らんから、大望であるから、斯世の元を拵へた神が、正末で居りて蔭から加護うて居りたから、斯世が潰れずに在りたなれど、世の元の神が霊魂に成りて居りたら、今度の世の立替は出来んのじゃぞよ。綾部の元は今では分らねど、神が表面に現はれて守護いたす様になりたら、喧ましく成るぞよ。今申しても誰も誠に致さんから、筆先に書いておくから、先繰に出して見て下されよ。天○○○にも中々心配が出来るぞよ。それに付いては一旦は下々も悪く成るぞよ。金は引上げに成るぞよ。今迄の世は仏事の世でありたから、仏事の初りはモチト力が在りたなれど、神力とは又た違ふぞよ。方便で道を拡めても永うは続かんぞよ。真実の固まりたので無いと、万古末代は続かんぞよ。今度の事を致すのにも、余り世が乱れて居りて、人民どこか、神までが仕放題に致すやうに成りて居るから、世の立替に中々骨が折れるぞよ。斯神は此時節、暗やみの中で拵へたので在るから、水晶の取次は今では何程も無けれども、世の立替を致すに就て黒住、天輪王、妙霊いろいろと先走りに、金光殿も皆此方の経綸であるぞよ。見苦しき世の中であるから、無茶苦茶であるから、勝な人民から綱を懸けて、神界からの御仕組で、神は手分け致して、先走りに御苦労に成りたのであるから、世の立替は御存知なれど、艮の金神の経綸て居る事は、神界にも御存知なき神勝ちじゃぞよ。夫れで六ヶ敷のじゃぞよ。是から表に現はれて、全部神の取次から改め致すぞよ。今の人民に水晶の人民は無けれども、身魂の洗濯を致した上で、チト優なものから、それだけの御用に使ふぞよ。何事にも元が善くないと、何程洗濯いたしても、誠の水晶魂には成らねども、元の性来の良きものは、磨いたら良くなるから、今度の御用は身魂次第で、如何な神徳も貰えるぞよ。早く神の御用いたして下され。皆信心が間違うて居るぞよ。此の大望な事を致して居るのに、自己の目的を立る用意ばかり、誠が無いので苦労するものは苦労ばかり致さんならず、代りにと云ふ事も出来んぞよ。今度出て参る四人のものは変な人ばかり、今では何も解ろまいがな。今は此の広前はワヤで在ろうがな。是は神から態とにして見せて在るから、能く付留て置いて下され。世界は皆この通りであるぞよ。何んでも筆先に書したら皆でてくるぞよ。出口に実際を書すから、夫れを上田海潮が写して、細かう説いて聞かせる御役なり、此の筆先で昔からの事が解るので在るから、是を一字も直したら、合はんやうに成るぞよ。大変気付けを致すぞよ。元の筆先は返して下されよ。元のは与らんぞよ。筆先で手柄を致さうと思ふて、大変に隠して居るが、ソンナ精神では神は利益は与らんぞよ。筆先が結構じゃと申して持って居りたとて、筆先が一筋も分りては居ろまいがな。眼の着け所が違うて居るから、思わくも違うのじゃぞよ。心丈けの事より神は為さんぞよ。人を欺すと又欺されるし、心次第の事をさすぞよ。皆我身の心を考へて見るが良いぞよ。誠の人には誠の事ができる。良い御利益はチット遅いなれど、出口に申して在るが、誠の人程御蔭は遅いなれど、結構な事に成るぞよ。遠国から参りて来たとても、神を松魚節に致して、我身の目的を立てに来ても十分の事は無いぞよ。親が御蔭を貰ふておりたとて、子が良く成るに限らんぞよ。親に悪心が在りたとて、一人の其人の霊魂は皆違うから、神は能く調べて在るから、同じ兄弟姉妹でも一人一人違ふぞよ。霊魂の因縁に由って、夫れ夫れの事をさすぞよ。今度は昔から無き事じゃぞよ。今度の世の立替を致したら、万古末代続かす経綸がして在るのじゃぞよ。底の分らん仕組をしておるぞよ。此方の申す事を背いて致した事は、スコタンばかり。 |
|
39 (3607) |
大本神諭 | 神諭一覧 | 明治38年旧4月16日 | 明治三十八年旧四月十六日 艮金神国常立尊出口の守と現れて、二度目の天の岩戸開きを致すに就ては、昔の世の元から拵らへてある、因縁の身魂を此大本へ引寄して、夫々に御用を申付けるぞよ。今度の御用は因縁無くては勤まらんぞよ。先に成りたら金銀は降る如くに寄りて来るから、そうなりたら我も私もと申して金持って御用さして下されと申て出て来るなれど、因縁なき身魂には何程結構に申しても一文も使ふ事は出来んぞよ。是から先になると金銀を積んで、神の御用を致さして欲しいと、頼みに来るもの斗りで在れど、一々神に伺い致してからで無いと、受取る事は成らんぞよ。この大本は金銀に目を掛る事は相成らんから、何程辛くても今の内は木の葉なりと、草なりと食てでも、凌ぎて御用を致して居りて下さりたら、神が性念を見届た上では何事も思ふやうに、金の心配も致さいでも善きやうに守護が致してあるぞよ。今が金輪際の叶はん辛いとこで在るから、茲を一つ堪りて誠を立抜きて下さりたら、神が是で善いと云ふやうに成りたら、楽に御用が出来るやうにチャンと仕組てあるから、罪穢のある金は神の御用には立てられんぞよ。 いつも筆先で気を附けて在るが、此大本は艮金神の筆先で世を開く処であるから、余り霊学斗りに凝ると筆先が粗略になりて、誠が却って解らんやうに成りて、神の神慮に叶はんから、筆先を七分にして霊学を三分で開いて下されよ。帰神ばかりに固ると最初は人が珍らしがりて寄りて来るなれど、余り碌な神は出て来んから、終には山子師、飯綱使、悪魔使と言はれて、一代思はくは立んぞよ。思はくが立ん斗りか、神の経綸を取違い致す人民が出来て来て、此の誠の正味の教をワヤに致すから、永らく変生女子に気を附けて知らしたなれど、今に霊学が結構じゃ、筆先ども何に成ると申して一寸も聞入れぬが、どうしても聞かな聞くやうにして、改心さして見せるぞよ。神の申す事を叛いて何なりと行りて見よれ、足元から鳥が飛やうなビックリが出て来るぞよ。世間からは悪く申され、神には気障と成るから、何も成就いたさずに大きな気の毒が出来るのが、見え透いて居るから、其れを見るのが憐然なから、毎度出口の手で神が知らせば、肉体で出口直が書くのじゃと申して御座るが、茲しばらく見て居りたら解りて来て、頭を逆様にして歩行んならん事が出来するぞよ。変生女子は帰神で開きたいのが病気であるから、一番にこの病気を癒してやるぞよ。心から発根と癒せば宜いなれど、如何しても聞かねば激しき事をして見せて、眼を開けさしてやるぞよ。狐狸野天狗なぞの霊魂に弄びに仕られて、夫れで神国の御用が出来ると思ふのか。夫れでも神国の人民じゃと思ふて居るのか。畜生の容器にしられて夫れを結構と思ふのか。神界の大罪人と成りても満足なのか。訳が判らんと申しても余りであるぞよ。斯うは言ふものの、女子の霊魂は何時も申す通り、世界一切の事が写るのであるから、此大本へ立寄る人民は女子の行りかたを見て、世界は斯んな事に成りて居るのかと改心を為るやうに、神から女子の身魂が拵らへて在るのであるから、誤解をいたさぬやうに御蔭を取りて下されよ。他人が悪い悪いと思ふて居ると、全部自分の事が鏡に写りて居るのであるから、他人が悪く見えるのは、自己に悪い処や霊魂に雲が掛りて居るからであるから、鏡を見て自己の身魂から改心いたさす様に、此世の元から変生女子の霊魂がこしらへて在りての、今度の二度目の天の岩戸開きであるから、一寸やソットには解る様な浅い経綸で無いから、改心いたして身魂を研くが一等であるぞよ。世の元の誠の生神は、今迄は物は言はなんだぞよ。世の替り目に神が移りて、世界の事を知らせねば成らぬから、出口直は因縁ある霊魂であるから、憑りて何事も知らせるぞよ。世が治りたら神は何も申さんぞよ。狐狸や天狗ぐらいは何時でも誰[*底本では「誰」に「かまわず」とルビが振ってある。]にでも憑るが、この金神は禰宜や巫子には憑らんぞよ。何程神憑に骨を折りたとて、誠の神は肝腎の時でないと憑らんぞよ。何も解らん神が憑りて参りて、知った顔をいたして種々と口走りて、肝腎の仕組も解らずに世の立替の邪魔をいたすから、一寸の油断も出来んから、余程審神者が確固いたさんと大きな不首尾が出来するから、厭がられても世界中が大事であるから、不調法の無いやうに気を附けてやるのを、野蛮神が何を吐す位により取りて呉れんから、誠に神も出口直も苦労をいたすぞよ。神憑で何も彼も世界中の事が、解るやうに思ふて居ると、全然了見が違ふぞよ。神の申す中に聞いて置かんと、世間へ顔出しが出来んやうな、恥かしき事が出来いたすぞよ。この神一言申したら何時になりても、一分一厘間違いはないぞよ。髪の毛一本程でも間違ふやうな事では、三千年かかりて仕組んだ事が水の泡に成るから、そんな下手な経綸は世の元から、元の生神は致して無いから、素直に神の申す事を聞て下されよ。世界の神、仏事、人民を助けたさの永らくの神は苦労であるぞよ。誰に因らず慢神と誤解が大怪我の元と成るぞよ。 |
|
40 (3698) |
大本神諭 | 神諭一覧 | 大正6年旧11月23日 | 大正六年旧十一月二十三日 至仁至愛大神の御出現に成る時節が参りて、明治廿五年から変性男子の身魂に、手と口とで知らさしてありた事が、実地に出て来るぞよ。今迄良き事を致して来た身魂は良き事が出来て来るなり、悪い事を致した身魂は悪い報が出て来るなり、何も彼も一度に現はれるぞよ。モー世の立替の事は知らせる事が無いから、今迄知らして在りた事の実地が世界にあるぞよ。何も彼も世界中の事は帳面に附留てある同様に、天地の先祖は何一つ知らんと云ふ事は無いから、底の判らぬ経綸が致してあるぞよ。底の深いイロハからの仕組で在るから、チットは言はれぬ事も在るし、六ケ敷経綸であるぞよ。言ふてはならず、言はいでは邪魔の這入る事もあるなり、変性男子の役は是程辛いことは無いぞよ。貧乏動ぎも出来んと云ふのは男子の役であるぞよ。一寸でも気を緩めたら真似を為られるなり、真似を仕られたら何遍でも跡戻り斗り致さんならんなり、コンナ叶はん御用は世界に有りは致さんぞよ。御魂は世界に沢山ありても、代理を為せる身魂は一つも無いので在るぞよ。変生男子の身魂の御用は、イロハ四十八文字で世界を治める経綸の御用であるが、向ふの国の体主霊従の頭と其次席の身魂が、中々一通りの身魂の手に合はんと云ふ事が、初発から見抜いてありて、今に変性男子の身魂に憂い目を為して居るから、是から、日本の元の経綸を顕はして、今に悪い目的を立て居る守護神は、日本と外国との施政方針を混ぜ交ぜて行ろうと思ふて居るが、モー悪の世の終りと成りたから、悪の霊はチットも利かぬ如うに致すから、今までの格合ひには行かんぞよ。悪の世は九分九厘でモー済みたから、此先きは天のミロク様の、昔の始りの元の良き世へ世を戻して、何彼の事、末代の事を規定るのであるから、何に附けても大望な事ばかりであるから、人民では見当の取れん事であるぞよ。今までは悪神の支配の世でありたから、何事も見て見ぬ振を為て居りたなれど。全然時節が廻りて来て、延っ引きの成らん事になりて来たから、何時船が覆るやら解らんぞよ。天地の先祖はモー此上守護神人民には充分気が附けてあるから、何事が世界から出て来ても、モー神に不足は在るまい。一度に披いてバタバタと致さねば、何時までも同じ事に永う掛りて居りたら、世界中が泥海に成りて、人胤も無く成りて了ふから、神は日本の元の経綸どほりを始めるから、一旦は世界中の大混雑と成るぞよ。さう成りて来る迄に、神の申す事を信実に聞いて、身魂を研く如うに、筆先で日々知らして在りたが、今の上の守護神も人民も一つも判らんから、今の世界の困難であるが、今でさえ何うする事も能う致さずに、途方に呉れて居るが、マダマダ斯んな容易い事では無いが、其時は吃驚いたして腰を抜かして、頭を下にして走行やうに成るぞよ。そこに成りたら、四ツ足の守護神の正体が自づと現はれて来るが誠に気の毒なもので在るぞよ。茲へ成る迄に改心を致すやうと永らく知らしたなれど、盲目と聾の守護神人民は、実地が来る迄真実に致さんから、ヂリヂリ舞の狼狽舞を致す事が来ても仕様は無いぞよ。鬼とも蛇とも悪魔とも譬へ方の無い、イヤらしい外国の性来を、日本の守護神が見習ふて、外国の行方は良いと申して、上も下も真似斗り致して、今の日本の国の心配、外国の今の態、アレ丈け畜生の性来が現はれて来て居りても、未だ眼が覚めぬか。大将までが下タに成りたり、上に成って見たり、全然日本の神国を畜生の玩弄物に為られて了ふて、天地の先祖も堪忍袋が切れ掛けたぞよ。神の堪忍袋が切れたら、万古末代モー取返しが出来んから、奥山の紅葉の照る内に早く改心いたして、神の申す如うに致さんと、末代の世を持ちて行く事は到底六ケ敷から、どうしても改心が出来ねば、陣を引いて下たに降りて扣えて下され、一人と世界中とには代えられんから、一向気楽にさして神が構ふてやるから、ドウシテも神の国の行いが出来ねば、城明け渡しを為さるが良かろう。神も可成は昔の儘で続かして行かしたいのが、胸に一溢であれど、余り外国人に惚けて居りて、何時までも神の教が聞けぬなら、一つの道へ行くより仕様は在るまい。神は気を附けた上にも気を附けて在るぞよ。一の番頭からして日本魂が全然消えて了ふて居るから、畜生の国の尻に附いて頭から湯気を立て、頭を三角に成る所まで捻ぢ鉢巻で気張って居れど、肝腎の腸が抜けて、腰がフナフナで在るから、斯んな約らん事に成りて来たのを、天地の御先祖様へ何んと申して申訳が出来るか。日本は日本で立て、外国を助けて遣らねば成らぬ、誠一つを貫く神国の一の番頭が、何も解らんから、畜生の尻馬に乗りて、外国の守護神の真似斗り致して、終には外国の自由に為られると言ふ事が判らぬか。モー神は依然して居れん事になりたから、是から表に成りて働くから、構ひ立てには来て下さるなよ。時節が来たぞよ。時節と云ふものは結構なものの、恐いもので在るぞよ。何事も此方から顕はさいでも、我身の方から全然正体を顕はして、何処となく飛び歩行て、見るのも厭で在るなれど、全部顕はせに、我が我の姿を田舎まで見せに歩行のが、顕はれるので在るから、時節ほど結構な恐いものは無いと申すので在るぞよ。時節には何ものも叶はんから、茲へ成る迄に世に出て居れる方の守護神、皆に筆先で細々と能く解るやうに書いて知らせ、口で言はして在るぞよ。筆先に出した事は皆世界に在るが、慢神と誤解とがありたら、真実の御蔭は取れんぞよ。露国ヘ昔から上りて居りた悪神の頭が、露国の国を六茶九茶に乱らして了ふて、モ一つ向ふの国へ渡りて、外国の隅々までもワヤに致して、金の費るのは底知れず、人の命を取るのも底知れず、行きも戻りも出来んやうに致して、食物も無い所まで致して、終には日本の神国へ攻めて来て、世界を我の儘に致すドエライ悪い奸計を致して居るが、モー九分まで悪の目的は成就いたした成れど、日本の国の先祖の一厘の経綸で、手の掌を返して、天下泰平に世を治めて、跡は七福神の楽遊びと致して、世界の人民を助ける日本の元からの経綸であれども、今の世界の守護神人民の心では、三分も助ける身魂が無いぞよ。誠一つの天地の先祖は、違ふた事はチットも申さんぞよ。違ふた事を致したら、茲まで忍耐て来た事が水の泡に成るから、皆が揃ふて今度の二度目の世の立直しの御用を勤めて下されよ。今度の御用は何に附けても辛い事ばかりであるから、確りと胴を据えて居らねば約らんぞよ。大本の中も日の出の守護と成りて来ると、何彼の事が辛くなるぞよ。善し悪しが厳重に判りて来て、是迄の心を全然変えて了はんと、辛うて辛抱が出来んぞよ。口を閉えて、男も女も腹帯を緩まんやうに確りと締て居らんと、此先は是迄のやうな事には行かんぞよ。斯世の上へ上りて居る悪の守護神が、皆揃ふて体主霊従では行かんと云ふ事が、発根と判りて来て、霊主体従の道へ立復らんと、世が治まると云ふ事は致さんぞよ。向ふの国はチットも急きは致さんぞよ。我の代に奪れな児の代に奪る、児の代に奪れな孫の代に奪ると云ふ、気の永い経綸であるから、何時に成りても奪りさえしたら良いと申して、チットも急ぎも動きも致さんぞよ。日本の国はソンナ事を致して居りたら、国家が潰れて了ふから、日本の国には天地の元の生神が、一寸の秘密が致してあるぞよ。外の身魂では出来ん、能う為ん経綸が致して在るが、実地の仕組は今の今まで言いも為られも致さん、大事の一厘の秘密で在るから……………、今の世界の守護神人民が、外国の性来に成りて了ふて、日本の神国と申しても、外国魂に成り切りた中に、生れ育ちて居る子供までが、国家の害を致すハイカラの真似ばかりを為て歓こびて居る中へ、大事の経綸を知らしたら、良い金設けが出来ると申して、実地の世の立直しの大邪魔を致すから、日本の国の仕組は、智慧や学力では何程考えても判りはせんぞよ。チト深い仕組が致して在るぞよ。外国の仕組は浅いから、直ぐに人の眼に判るなれど、日本の経綸は外国魂では判らんぞよ。何彼の時節が参りて来たから、始りたら何も一度に開けて来るから、余程しっかりと覚悟を致させねば成らんから、今に続いて知らして居るぞよ。疑ひと我情と取違いとが第一恐いぞよ。口を閉へて素直に致すが何よりも結構であるぞよ。何事も一度にバタバタと埒良く致さぬと、永う掛りたら日本も叶はん事が出来るぞよ。外国の悪神の頭が日本へ攻て来る仕組を、昔から致して居りたが、モー攻て来るのが近寄りたなれど、日本は日本で元の生神が深い経綸を致して居るから、日本の人民がサッパリ日本魂に成りて居らんと、肝腎の時に狼狽て胴を失ふぞよ。口先では日本魂と申しても、腹の中に誠が無いものは大化物であるから、今度の立替には化け物は皆神が平げて了ふぞよ。今度の大戦いは人種同志の戦争で無いぞよ。神と神と、国と国との、末代に一度より無い大戦いであるぞよ。今度の日本と外国との戦いには、男も女も小供も一つの心に成りて、日本の国を奪られては成らんから、年寄り迄も日本魂に立復りて、神国を守らねば、日本の先祖の大神へ申訳が立んぞよ。今の如うな我れさえ良かりたら、人はドウでも構はんと云ふ如うな精神でありたら、日本の国もエライ事に成るぞよ。日本の霊主体従の結構な神国を、悪神の頭と四ツ足に茲まで自由にしられて、是が悔しく無いやうな腰抜けが沢山あるが、今に日本の頭の上にかぶさって来て居る大難を、何んと致して打ち払ふ心算であるか。先の見えん守護神人民には、神も往生致して居るぞよ。三千年余りての経綸を顕はして、昔の元の神の御血筋に速に代えて了ふて……………。二度目の世の立替は、現世が出来てから未だ無い大望な事であるぞよ。分けては言はれず、言はな判らず、言はれはせず、元の悪から速に改心を致して、上へ上りて居る血筋も改心致して、茲までに元の根本の天と地との先祖を世に落した事の、御詫を致さな成らん時節に近よりたぞよ。モウ此先は霊主体従の経綸通りに致して、早く立替を致して、後の立直しに掛らんと、何んでも無い事に国を潰して、脛腰の立つ、間に合ふ人民を、大根の葉房を切る如うな惨い事を致しても、向ふの国の何一つも効能の有る事は無いが、是も皆悪神の玩弄に成りて居るのであれど、世界に気の附いた人民は一人も無いとは、惨い事に成りたもので在るぞよ。初発からの筆先に、今度は世界が三分になると毎度申して知らしてあるが、世界は三分になるぞよ。何んと申した所で、日本の間に合ふ身魂が無いやうに成りて居るから、今迄に人民の思ふて居りた事が、大間違いになりて来るぞよ。外国の思いも大間違いで、大きな取違いを致して居るぞよ。中々一寸やそっとの取違いでは無いぞよ。日本の人民も外国の性霊に成り切て了ふて居るから、心の持ち方が天地に代りて居るので、茲までは向ふの国の……………。天と地との根本の大神の御血統だけに、誠と云ふ元の日本魂の性来は一厘ほか無いから、一輪の日本魂で元の昔へ世を捻直して、ミロク様の世に致す経綸であるから、何につけても大望な事ばかりであるぞよ。向ふの国の性来が皆体主霊従であるから、薩張り立分けてありたのが、世の末と成りて、斯んな見苦しき、混ぜ交ぜの世になりたのであるぞよ。初発の世界の泥海の折から、末代の巧みを為て居りた極悪神の身上は、日本の元の大神が良く知りて居られるから、日本にも初発から深い経綸が為てありての、今度の神と神との大戦であるぞよ。外国の悪の頭は、何うしてなりと日本へ上る巧みを為て居るなれど、日本の国へは上げられんから、露国の先祖と為てありたなれど、悪の強い奸賢い性来であるから、何の様に為てでも目的を立てねば、途中で邪魔を致すと云ふ邪神であるから、天地の根本の大神は茲まで悔しい残念を堪り詰て、悪神の仕組の九分九厘と成るまでの、永い間の堪忍を致して、悪神の頭の目的を立さしてをいたが、モー一つ目的を立て居るのを、日本の元の大神が能く知りて居るから、日本の神国には、外国の御魂の能う為ん事が仕組みてあるから、九分九厘迄はトントン拍子に出て来たなれど、モウ悪の経綸の輪止まりが来たから、フクロ鳥の宵企みと成りて、此の先では夜食に外れて、難しき顔を致さな成らん如うに、時節が参りたぞよ。 明治二十五年から知らして在ることが、皆その通り出て来るぞよ。寒さ暑さの容赦は無いと申して在ろうがな。是だけの寒じでも、斯の大望な事がはじまりたら、水の中でも火の中でも、熱い寒いは言ふて居れん、大望な大戦いであるぞよ。斯の世が出来てから未だ無い、末代に一度ほか為られん二度目の世の立替であるのに、何も判らぬ悪神の仕組は、我良しの強い者勝ちの行り方であるから、我の血筋と親族と眷属とさえが良かりたら、何時迄掛かりて居りても、奪れた折に奪りたら良いと云う悪神の仕組は、ラクな行り方であるぞよ。そんな仕組を致して居る方のいう如うに、相手になりて居りたら、此の世が泥海と成る事が見え透いて居るから、昔の元から日本の国には、悪神の方からは見えも判りも致さず、学力でも智慧でも、外の身魂では出来ん経綸が為てあるから、何うしても悪の身魂に改心が出来んなれば、国とは代えられんから、一輪の仕組通りに致して、爰迄は堪りたなれど、爰に成りておりても判らんやうな悪の頭なら、仕組みてある如うに致して、バタバタと処置を付けて、後の立直しの用意を致さんと、斯の世を茲迄に自由自在に致されて、天地の先祖の威光が解らんから、斯の世を創造て、末代の世を建てて行かねば成らん天と地との先祖が、今迄は堪忍て来たなれど、余りの事で、日本の霊主体従の一と申して二の無い国を、天竺や外国と同じ如うに致して、自由に為られるとは、時節とはいい乍ら、爰で改心を致せば又仕様も在るなれど、余りの事で、モウ堪忍袋が切れるぞよ。悪神に自由自在にして了われて、天の御三体様に何う申し訳が出来るか。艮の金神を無い神と致してから、恐いものが無いやうに成りたから、日本の神国を好きな如うに、我の一力で仕放題、好き寸法の悪力がありたら、上へ上がりて出世が出来て、ラクな行り方、我の一力で悪い事を為る守護神でありたら出世が出来たのが、頭が極悪でありたから、悪の登るのは早かりたので在るぞよ。上へ登りて、後も前も構わずに、頭と尾とで前後へ手が廻らずに、上さえ上がれたら良いと云ふ行方、九分九厘までは跡が何うなろうと先が何う成ろうと、行ける処まで胴体が無いから、八ツ頭八ツ尾で、肝腎の大事の真中が無いと、頭と尾とでは肝心の事が成就いたさんぞよ。日本は世界の中心で在るから、肝腎の要めの所に大事の経綸が為てあるから、モウ微躯とも致さねども、人民の方は何事も改心次第であるぞよ。日本の人民も大きな取違いを致して居ると、毎度筆先で書して知らして在るが、其大間違いの判る時節が参りて来たぞよ。余り一度に何彼の事が判りて来て、逆立ちに成ってヌタクラナ成らん如うになりて来たぞよ。神が一度申した事は何事に由らず皆世界から出て来るから、一日も早く改心を致すやうに、日々に続いて知らして遣りたなれど、今に誠に致さん故に、何彼の時節が九分九厘となりて来て、善悪の立分けを致さな成らんから、彼方にも此方にも足本にも、何から初まるやら人民には見当が取れん事になるぞよ。四ツ足の覇張りた事を天晴れと露はして、末代の記録に残すから、爰へ成る迄に身魂を磨いて置けと申して知らしたなれど、誠に致して聞く身魂が無いから、是からは罪穢の在る処には、罪過だけの借銭済を致さすので在るぞよ。何処も恨める所は無いぞよ。自分の身魂を恨めるより仕様は無いぞよ。今度の二度目の立替は国々処々、都会田舎村々家々に、身魂の借銭だけの事は天地の神から済さして了ふから、何処も恨む事は無いと申して、明治廿五年から今に続いて知らして在るぞよ。知らして在る事が良い事も厭な事も、みな一度に何も出て来るぞよ。そうなりた折には世界の人民は、矢張艮能金神は悪神であると未だ申すぞよと申して在るが、神から申して在る事は一分も違はずに皆出て来るから、艮の金神が悪い騒動をいたす如うに思ふで在らうなれど、天からの時節で何も出て来るのであるから、艮の金神も何う致す事も出来んので在るから、夫れ迄に一人なりとも改心さして助けたいと思ふて、今まで苦労艱難いたして知らしたので在るぞよ。新つの洗替の世になるのであるから、外国には厳しき事が在るぞよ。此事は明治廿七年の七月の差入りの筆先に書してあるぞよ。良い事も厭な事も一度出して在る事は、遅し速しは在るなれど、皆出て来るぞよ。悪の頭からトコトン発根の改心を致さんと、思ふて居る事に大間違が、我に皆出て来るぞよ。余り我好しの行方で大間違が顕はれて来て、腰が抜けて了ふて、腮が外れて言も云へず、足が上になりて頭が下たに成りて、手で其処ら傍りをヌタクラナ成らん様な事が出て来るぞよと、今年で二十七年目であるが、其間昼夜に知らして在るぞよ。天地の生神の先祖を要らんものじゃ、神は無くても良いものじゃと申して居りたが…………、悪と四ツ足とで此の世の政治が行れるかと云ふ事を、覚るやうに、充分に思わくを為して、大神が蔭から見て居れば、未だモ一つ悪を強くして、斯世を此儘で行りて行うとの精神であらうがな。日本の国を外国の悪と四ツ足とがモ一つ上へ上りて、王の王に成りて行うとの度豪い経綸を致して居らうがな。日本は神の国、神が守らな治まらぬ国であるのに、肝腎の一の番頭二の番頭から、薩張り外国魂に成切りて了ふて居るから、何時までも世はゴテゴテ致して、治りは致さんぞよ。人民力で斯結構な神国の政治が出来るなら、モチト立派に世が立ちては行けさうなものでないか。今の世の持方は丸切り畜生の行方で、強いものが弱いものの汗油を絞りて、其の汗と油で高い処へ上って、舌をペロリと出して見下ろして居るが、夫れが悪魔の世と申すぞよ。是だけ世界に上下懸隔が在りては、何時になりても斯世に口舌の絶ると云ふ事は無いぞよ。外国の真似斗り致して、是が開けた世の行方と申して居るが、何処が開けたのか。肝心の開くべき所は二重三重に閉いで了ふて、開いてはならぬ神国の宝を破乱かして了ふて、二進も三進も行かんやうになりて、途中の豪い鼻高が毎年一と処へ国々から集って来て、結構な御相談や争論を致して御座るが、下たの何も知らん人民は良い面の皮じゃぞよ。昔からの暦を潰したり、神の鎮まる先祖代々からの御宮を、金が無いからと申して潰したり、神を相借家へ投り込みて置いて、人民は昔の王も叶はんやうな家を建て、別荘を立て、金斗りを重宝がり、金さえ在りたら神も糞も要るものかと、エライ慢神と取違いを致して居るが、斯んな六茶な、天地を畏れぬ外国魂の畜生の行方は、神は何時までも許す事は出来んから、皆夫れ夫れに覚悟を為さるが良かろう。外国の四ツ足の真似を致して、結構な家の内で、牛や馬の肉を煮いて喰たり、首に畜生の皮を捲いたり、畜生の毛で織った物を肌に着たり、それが薩張り四ツ足の性来が顕はれて居るのであるぞよ。四ツ足の守護神が何程骨を折ても、万古末代の世を自由に致すと云ふ事は、到底出来は致さんから、素直に致して改心をして、神の申すやうの世の持方に致せば、此儘で神が構うて続かして、尾を隠くしてでも許して遣るなれど、余りしぶたう頑張りて居ると、三千世界の赤耻を掻く事が出来て来るぞよ。日本の国だけでも是だけ持て余して居りて、他の国の事ども構ひ立する暇は有りもせむのに、肝腎の足元は良い加減な事に致してをいて、終には共倒れに成ると云ふ事に、気の附かむ如うな明盲目であるから、○○の国は一日増しに押つまりて来て、食物は段々と欠乏になるなり、菜の葉一枚でも大切な事に今に成りて来るぞよ。何程金を貯て歓こんで居りても、正可の時には金銀では生命が継げんぞよ。百万円の金よりも一握りのお米[*ルビの「よね」は底本通り]の方が大切な世が廻りて来て、明治二十五年から毎度筆先で知らして在るやうに、田地に植込みて喜こびて居りた、桑迄も掘起さな成らん事に成りて来るが、人民と申す者は近慾で、近眼で、誠の神の申す事は判らんぞよ。誠に気の毒なもので在れども、人民の精神が薩張り曇り切りて居るから、何を為て見せても、何を聞かして遣りても、神の申す事を汲み取る人民が無いが、能うも茲まで曇りたものじゃ。無間の鐘まで掘上げて、今じゃ早じゃと知らせども、盲目と聾の今の世界の人民は、慾斗りに迷ふて一寸先きも見えず、是だけ天地に昼夜に鳴り渡る大神の声も聞えず、鳥獣にも劣りたもの斗り、世の立直しを致そうにも掛りかけが出来んぞよ。けれども、綾部の大本には神が綱を懸けて、昔の其儘の日本魂を引寄せる経綸が致して在るから大丈夫ではあれど、心はチットも許されん大望な所であるぞよ。外国の悪神が今に仲直りを致したら、今度は腹を合して一つになりて攻めて来るから、日本神国の人民は判りたものから用意を致して下されよ。末代に一度の世の立替立直しであるぞよ。 明治二十五年から出口直の手を借り、口を借りて知らしてありた事の、実地が出て来る世になりたぞよ。露国から始りて、日本と外国との大戦が在ると申したが時節が来たぞよ。外国は終には一腹になりて来ると申して知らして在ろうがな。この神一度申したら何時に成りても、毛筋の横巾ほども違いは致さんぞよ。これが違ふたら神は斯世に居らんぞよ。外国の悪神の頭が、露国を無茶苦茶に致して置いて、モ一つ向ふの国へ渡りて、人民の王を自由に使ふて、世界中の困難をも構はずに、自国さえ良けら他はドウデも良い、人は倒しても我さえ立ちたら満足じゃと申して、悪の頭が今に日本の神国へ攻めて来るぞよと申して知らしてあるぞよ。日本の人民にチットでも誠がありて、一の番頭、二の番頭の守護神に誠一つの日本魂さえ在りたら、何程外国の学力でも、人民が沢山在りても、金が何程ありてもビクとも致さねども、今の日本の持方は、守護神が薩張り外国よりもマダ一段身魂が劣悪て了ふて居るから、今にキリキリ舞を致さなならぬ事が出来てきて、往きも還りも出来ぬ様に成るのは、眼の前にチラ付て居るから、一日も早く改心致せよ身魂を研けよと、腹が立つ程クドウ申して気が付けてありたぞよ。この大本へ立寄る誠の人は、明治二十五年から昼夜に出口直に書してある筆先を調べて下されよ。一分一厘間違いは無いと申す事が、何程疑ひの強ひ人民でも判りて来るぞよ。それで改心の出来ぬやうな人民は、気の毒でも今度の二度目の世の立替には間曳かれて、万古末代根の国、底の国へ霊魂を落して了ふと云ふ、神界の規則であるぞよ。神は人民を助けたさの永い間の此苦労であるぞよ。兵隊を一旦日本へ引寄して、外国を地震、雷、火の雨降して絶滅さねば、世界は神国にならんから、余り何時迄も神の申す事を聞かねば、三千年の経綸通りに致すから、世界に何事ありても神と出口を恨めて呉れなよ。我身魂を恨めるより仕様は無いぞよと申してあろうがな。気の毒なものでもモウ神は一切りに致さねば、天の御先祖様へ艮の金神の申訳が立たんぞよ。明治二十五年から天の御先祖様の御命令を戴きて、世界の人民に何彼の事を知らせども、今の人民慾に惚けて、我身の用意斗り、国の事共おもふ人民は、上に立て居る守護神には薬にする程も無いから、世は段々と押詰りて来る斗り、今に皆の人民がキリキリ舞を致して、アフンと致す事が到来するぞよ。人民は神に次での霊であるから、チットは解りさうなものなれど、薩張り肝腎の霊魂が外国の悪神に自由自在にしられて、眉毛を読まれて尻の毛が一本も無い所までワヤに為られて居りても、マダ気が付かずに悪神の頭にだまされて、我と我手に苦しみ居るぞよ。吾妻の国は一時れの実の致さぬ薄野尾、実り致さな国は栄えぬ。吾妻の国へ遙々と都に致す心悲しき。唐土の鳥の渡らん先きに、神は還りて経綸を致せども、聴く人民無き故に、残念なれど唐土の鳥が今に日本へ渡りて来るぞよ。毒を空から降らして、日本の人民を絶やす経綸を、昔から致して居る事が、能く神には判りて居るから、永らく知らしたので在りたぞよ。早く改心致さぬと改心の間が無いぞよ。神は気を附けた上にも気が附けてあるぞよ。モウ何彼の事が一度に実現て来るから、斯んな事ならモ一つ気を附けて呉さうなものでありたと、未だ不足を申す守護神人民があるぞよ。何程不足を申しても、神が茲まで出口に苦労さして気を付けてあるからは、神にも宣教者にもヨモヤ落度はあろまい。不足があるなら我身の心を良く考えて見て不足申さんと、スコタンを喰ふぞよ。茲へ成る事が良く判りて居るから、今年で知らしかけてから二十七年目であるぞよ。今の人民も守護神も大きな誤解を致して居りて、今に成てから他へ問ひに行く所は無し、何う為様も無い事が近う成りて来たぞよ。是だけククメルやうに知らしてあるのに、未だ判らんとは惨い事に曇りたものであるぞよ。神はそれが出て来た折に何う為様も無い事が出来んやうに、噛みて口へ入れて、飲込みたら良いやうに致して、筆先で知らせ、言葉で知らせてあるが、モウ此上に知らせやうが無いぞよ。この悪の世を天と地との先祖の一つの誠の世へ立帰らすので在るから、茲までに申して聞したら、何程悪魔でもチットは合点が行かねば、神と名の付いて居る悪神も是からは気の毒な事になるぞよ。茲まで誠一つの天地の大神を、茲までに能うも苦しめたなア。ここ迄に致したら是に不足は有りは致すまい。極悪と申してもエライゑぐい身魂であるぞよ。モウ堪忍袋の緒が断れたぞよ。天地の先祖も茲までの辛抱を、水の泡には致しとも無いなれど…………茲迄は国を潰さぬ様にして、向うの国にモチトらしい身魂が在りたら、国と国とを立分けて、国の奪合と云ふやうな事を致さずに、皆手を引合ふて行きたいは神の一心なれど、余り向ふの国の身魂の性来では、国が治まると云ふ事の出来ぬ、悪い性来であるから、バタバタと埒を附けねば、世界は何時までも治まらぬぞよ。向ふの国へ上りて居りた外国の悪神の霊魂が、日本の国へ上りて来て、四ツ足や豆狸、蛆虫同様の悪るシブトウて、日本の国には使いやうが無いから、一旦は世界中を洗い替と致さねば、日本の国が外国の性来ばかりで、是ぞと曰ふ身魂が無いから、茲まではドウゾドウゾと思ひ過ごして気を揉みたなれど、到底助ける方法は今に無い所まで曇りて来て居るぞよ。モチットらしい身魂がありたら、セメテ二国程は残して遣りたいと思ふたなれど、余りエグイ身魂斗りであるから、昔からの天地の神の経綸どほりに致して、埒良く致さんと、悪が何時迄も絶えんぞよ。チット可成な身魂がありたらと思ふて延ばす程、向ふの国の極悪が猶ほ悪くなる斗りで、モ一とつ日本の国を下たに為どころか、日本の国を欺し討に致して奪取て了ふ、悪い巧みを致して居るから、霊主体従の経綸に神が致してやらんと、未だ未だ悪い事を仕組て居るぞよ。日本の人民は薩張皆揃ふて大和魂に成りて、胴を据えて、腹帯を占て掛らんと、是迄のやうな心で居りたら国が全然無いやうに成りて了ふぞよ。茲までに天地の御先祖様が御艱難を遊ばされた御苦労を、水の泡と成るやうな事は致さんぞよ。日本の人民が皆揃ふて御手伝いを致さんと、世界の立替の大峠となりて来たから、茲へ成りた折には、身体も霊魂も清やかになりて居らんと、日本の国の人民が、コンナ見苦しき国害を致す外国の身魂が、良いと申すやうな事になるのが、世の元から能く判りて居るから、天地の先祖は茲まで是だけに気張て、御血筋には充分の苦労、艱難、悔しき事を堪り詰て来て見て居れば、向ふの国の今の困難、あれ程の惨事がありても、何も気の付く守護神がチットも無いのが、人はドウデも構はぬと云ふ悪神の精神であるから、何も気が附かんのであるぞよ。向ふの身魂が日本へ皆渡りて来て居るから、日本も外国の身魂に化りて、日本の身魂が薬に致す程より無いのであるから、利己主義の行り方で、モ一とつ悪を強くして、日本の国を平げて、世界中を外国の世界に致して、王の王になりて、末代続かせる仕組をして居るのであるから、日本の国は男も女も誠一とつの日本魂の性来に成りて了ふて、女の一心巌でも突貫く精神で無いと、今度の二度目の世の立替の間には合はんぞよ。日本の国の人民も外国の人民も、今まで思ふて居りた事とは、エライ大きな間違いが出来るが、同じ如うな事に細々と、抜目の無い様に、取違いの無いやうに、変性男子の手で大国常立尊が、言葉と手とで知らしてある事は、一つも違はず皆実現来るぞよ。末代に一度より為られん大望な世の立替であるから、中々骨の折る事であれども、神が蔭から経綸致してありての事で在るから、モウ大丈夫であるぞよ。永らく知らした事を、今に成って居りても誠に致さず、疑ふて取違いを為て置て、悪い鏡に成ても、何処を恨める所は無いぞよ。外では判らん事の、誰も出来ん事で在るから、是だけ執念申して知らして居るのであるが、今の学で出来る機械が動く悪の力で、九分九厘までは行れるなれど、モ一厘と云ふ処になりたら手の掌が覆るぞよ。何うにも斯うにも仕様の無い、悪しぶとい悪力なら何程でも出すなれど、日本の国の昔からの秘密の神力を現はして、天地の先祖の経綸どほりに致して了はねば、外の身魂の手には合はむから、今度は神力で薩張り平げて了ふぞよ。そうなりた折には艮の金神は善の神じゃと申して居れど、矢張り悪神であると未だ人民は申すで在ろうなれど、誠の善といふ道は表面から見ては未だ悪に見えるから、取違いを致さぬ様に、身魂を一時も早く研くが結構であるぞよ。人民の眼に判らん誠の善でないと、是だけに曇りた世界を、善一つの道に立替る事は悪では能う致さんぞよ。誠の善は一旦は悪に見えるぞよと、筆先で毎度知らして在るから、一度知らした事は皆出て来るぞよ。一通りや二通の事では無いぞよ。今の日本の人民は男も女も外国の教の方が良いと申して、外国魂になりて居るから、一番に取損いを致して今の体裁、取返しの成らん事が出来て、日本の今の国会、何う仕様にも今の処では取戻しの成らん事であるぞよ。日本の霊主体従の身魂と、外国の体主霊従の身魂との、性来と云ふものが能く見えるのが、是が時節で在るなれど、大きな取違いを致したもので在るぞよ。小さい間違いで無いと云ふ事が、毎度申して在ろうがな。モウ取返しの出来ん事であるぞよ。向ふの国の身魂は、悪い事ならドンナ事でも致すエライもので在るぞよ。向ふの国と和合いたしたら、末代嬉しいと云ふやうな事は一日も無しに、乱世斗りが続くぞよ。悪の精神斗りで善と云ふ性来がチットも無いから、向ふの国の仕組ではヤレうれしいと申して、人民の気の休まると云ふ事の無い、何時になりても利己主義の、人は倒けやうが仆れやうが、起してやると云ふ様な優しい身魂は、何時になりても在りはせむから、全部と極悪の身魂の性来を直すのには、言い聞した位に聞くやうな、素直な身魂は有りはせんから、帰幽をさして充分の行を命せて、新つに致さん事には、エグイ性来の悪のカンカンであるから、そう致すより道は無いぞよ。今度の世を立直したら途中で又た変るといふ様な、ヤニコイ経綸で無いから、今助けるだけは助て遣らねば成らぬから、シカリたりタラシたり、何時まで掛りて居りたとて、到底今の人民の耳へは這入らんから、気の毒でも神も助け様が無いぞよ。日本の身魂が上から下まで、外国の悪の身魂に、団子廻はす如くに為られて了ふて、一寸も先の見えん所まで曇らせられて居るが、ヨウも爰までに為られたものじゃ。が、無理は無い。艮の金神を艮へ押籠る下地を拵らえた、悪賢い守護神であるから、体主霊従の道ならドンナ事でも致すなれど、至仁至愛神と地の先祖とが天晴れ表面に顕はれたら、ドンナ極悪でも、火に水を掛ける如く、蛭に塩を振りた如くであるから、爰までは自由自在に、我ほどのエライものは無いやうに思ふて、世の本を創造た天地の先祖を下たへ見降して、王は十善、神は九善と致して、日本の○○○○一段下に見て、大神を斯世において遣ると申して、人民の○より一段下へおろして、外国人を上へ上げて敬まうて、外国ほど結構な国は無いやうに思ふて、大きな取違いを致して居りたが今の様、この先は日本の霊主体従国を、斯んな見苦しき事に致して、天地の大神をドウ致すのか、ドウ云ふ事に仕組て居るか。日本の国は何国へも与る事はならむぞよ。日本の国は一と申て二の無い大事の神国であるから、外国へ与る事は致さんぞよ。今の日本の人民は、男子も女子も皆外国の方が良く見えるから、外国の真似ばかりを致して、開けた人間の様に有頂天になって迷ふて居るが、外国の仕組て居る悪い巧みは解ろまい。薩張畜生の国の性来に移りて了ふて、此先はドウ致す積りである乎。四ツ足に自由自在に、好き寸法に為れて居る事が気が附いて居るか。また斯世の本はドウして出来たと云ふ思遣のある守護神は在るまいがな。ドウ云ふ事で斯世が爰まで立ちて来たと云ふ事の解るものは、守護神にも人民にも有は致すまいがな。四ツ足の身魂を上に致して、実地の斯世の本の神を下たに致して居りて、ドウして斯世が立って行くと思ふか。大間違も程があるぞよ。外国の悪の頭の身魂が、此の乱れた悪の行り方で、モ一段上へ上る仕組をして居るが、日本の○に解りて居るか、中々に解りは致すまい。○と成ると眼で見ずとも、心で何彼の事が見え透いて居らぬと、是迄のやうな事では、○○立つ人が番頭に自由に仕られるやうな事では、何時までも治まらんから、此先は薩張り今迄のやり方を替えて了ふぞよ。○○が今迄のやうな嬢や坊では行かんから、行り方、法律を全然変えて了ふぞよ。○○が嬢や坊では、斯う云ふ世になりたら、ドウ仕様にも方法が無い事に成りて来るのは、世の元から見え透いて居るから、日本の霊主国には誰にも出来ぬ一寸の神秘が致して在るから、神界の秘密通りに致して埒良くいたさんと、斯んな約らん事は無いぞよ。向ふの国の仕組は能く解りて居るなれど、解るべき所へ解らんので、神も助けやうが無いぞよ。向ふの国の守護神にザラザラと、永う引張りて良い玩弄物に為られた上に、モ一とつエライ仕組をいたして居るぞよ。是迄の世は肝腎の大地の上の先祖を無い神として居りて、四ツ足の憑り切った日本の人民は、今では向ふの国の悪神の自由に、ドナイでもなるから、モ一つ十分にお玩弄にいたして置いて、モ一つ上へ上りて王の王になる経綸を致して居るぞよ。人は何うでも我さえ良けりゃ良いと云ふやうな、極悪の経綸は厭らしい仕組をして居るぞよ。向ふの国の性来は、言い聞かして開くやうな優しい身魂は無いから、○○○○茲へ成りて来る事は、世の本から能く解りて居るから、日本の国には昔から、天地の先祖が深い経綸を致して在るから、何事も今度は実現て来るぞよ。今に成りてから経綸を変えると云ふ事はならん、大本の経綸通りに、何事も一度に出て来るぞよ。今度の洗い替へは三千世界の大洗濯であるから、何程かいてありても書いて在るだけの事は致して了はねば、天地から何事も無しに済すと云ふことは、今度は借銭済をせずに堪忍事は出来んから、明治二十五年から同じ如うな事を、能く人民守護神に解るやうに書いて気が附けてあるぞよ。一度申した事は違はん筆先であるから、途中に変りは致さんぞよ。何事も昔から霊魂の所作柄を、一々帳面に付け留てある同様であるから、借銭を済して了はんと、赦して遣ると云ふ事は出来んので在るから、此世のエンマと申す活神であるから、血筋引方は尚ほ酷いぞよ。厭な事は引方にさせて在るぞよ。何事も大本の変性男子の筆先で、天地の大神が時節時節の事を先きに書して置きなさると、其通りが来るのであるから、善き事も悪き事も皆出て来るから、其覚悟を致さねば成らぬぞよ。支那から昔攻めて来た折には、夫れでも見せしめの為に三人だけは還してやりたなれど、今度外国が同腹になりて攻めて来た折には、只の一人も還してはやらんぞよ。日本へ外国の兵隊を一旦皆引寄して、其後で地震、雷、火の雨降らして、外国を往生いたさす経綸であるぞよ。日本も霊魂の悪い人気の良くない所には、何が在るとも判らんから、神の申す中に一時も早く改心を致さんと、取返しのならん事が出来いたして、ヂリヂリ舞を致さな成らんと申して、二十七年の間知らして在りたが、其知らした実地が出て来るのが近寄りて来たぞよ。 |