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霊界物語 02_丑_常世姫の陰謀/シオン山攻防戦 附録 第一回高熊山参拝紀行歌 附録第一回高熊山参拝紀行歌 王仁 高熊山参拝者名簿 (大正十年十二月三日) 千引の岩石打破る日本男子の大丈夫と(石破馨) 色香も馨る女丈夫が世界をま森国々の(森国幹造) 助けの幹を造らむと東や西や北南 日出る国のまめ人が善男善女を誘ひて(西出善竜) 竜宮城に参集ひ浦保国を永遠の 珍の住処と歓びて神の啓示を次々に(保住啓次郎) 宣べ伝へ行く言霊は円満晴朗澄の江の 天竜藤に登る如我日の本の権威なる(藤本十三郎) 一と二三四五つと六ゆ七八九つ十り三年 今よりきよく田なびかむ村雲四方にかき別けて(今きよ) 六合兼太る我国土真奈井の海の洋々と(田村兼太郎) 渡も静かに浦靖の国の栄えも九重の(土井靖都) 玉の都や小都会深山の奥も押並べて(小山貞之) 忠勇仁義孝貞之道明らけく治まれる 三十一年如月の梅ケ香匂ふ九日の 月をば西に高熊の神山に深くわけ井りて(高井寿三郎) 聖寿万歳祈らんと三ツ葉つつじの其上に 村肝清く端坐しつ言霊彦の神教を(上村清彦) 耳を澄ませてマツの下吹き来る風もいとひなく(同マツ) 岩窟の前に寛ぎつ心の中の村雲も(同寛) かすみと共に消え行きて稍清新の魂となり(中村新吉) 神の恵みに浴しける今日は如何なる吉日ぞ 吉や屍を原野に曝すとも国常立の大神や(吉原常三郎) 三ツの御魂の教ならなどや厭はむ鈴木野や(鈴木延吉) 深山に足を延ばすとも心持吉き岩清水(水戸富治) 戸閉さぬ国と賑はしく富みて治まる君ケ御代 五十鈴の流れ清くして大川口や小川口(大川ロトク) 水は溢れてトク川の泥にまみれし幕政も 茲に亡びて大小名名主庄司に至るまで(庄司キツ) なキツ倒れつ四方に散るその状実に憐れなり かかる例しも在原の丑寅金神太元に(在原丑太郎) 現はれまして前の世の神と田美との有様を(前田美千香) 説き教へたる三千年の一度に香ふ白梅の 花咲く春の山の根に菊太に目出度神言を(山根菊太郎) 天地の神に奏上し三千世界の改造を チカへ玉ひし雄々しさよ四尾と本宮の山の根に(山根チカヘ) 経と緯との神の機錦の糸の絹枝姫(同絹枝子) 神の助けの有が田や鶴九皐に高く鳴き(有田九皐) 岸に登りし緑毛の亀のよはひの長のとし(高岸としゑ) ゑびす大黒福の神真奈井の上に舞ひ遊ぶ(井上あや) あやに尊き神の苑海の内外別ちなく 山野河海の神々の介けの道も昭々と(外山介昭) 植ゑ拡め行く道芝の盛りの花も隆々と(植芝盛隆) 薫る常磐の神の森良きも悪しきも仁愛の(森良仁) 神の恵みは変りなく竹の御園の下斯芸琉(竹下斯芸琉) 御国の誉れ照妙の綾の高天に北東の(東尾吉雄) 神尾伊都吉て雄々しくも教は広瀬の仁義邦(広瀬義邦) 昇る旭は高橋のその勢ひも常永に(高橋常祥) 開き行く世ぞ祥たけれ誉れもたかき瑞祥の やかたに基いを固めつつ遠津御国も近村も(津村藤太郎) すさぶ曲津を藤太郎秋津島根の田広路に(島田頴) 千頴八百頴実のりゆく稲木の村の中心に(木村研一郎) 霊魂研きを第一と教へ導く白藤の(藤井健弘) 井や栄え行く健げさよ誠の教を遠近に 弘むる時や北の空村雲四方に掻き別けて(北村隆光) 隆々のぼる日の光本宮山や玉の井の(宮井懿子) 空に映え行く御懿徳に浴する魂ぞ浦山し(浦山専一) 霊魂修行を専一と深山の奥に分け入りて 佐とり了ふせし高熊のイワ屋の内も賑はしく(山佐イワ) 朝日夕日を笠として祝詞奏上や神の詩を(日笠吟三) 吟じて進む三ツ御魂藤の仙人芙蓉坊が 穴太の村に伊智はやく現はれ来たりて大神之(藤村伊之吉) 吉き音信を宣り伝へ石より固き信仰を(石井孝三郎) 井や益々も励みつつ忠孝敬神愛国の 三ツの綱領怠らず加たく御魂に納めつつ(加納録平) 心に録して平けくたとへ野山の奥の奥(山口佐太郎) 率土の浜も宣べ伝へ口佐賀あしき悪太郎が そしり嘲り山ぬ内布教伝道厭トイなく(山内トイ) 四方の国中大日本日高の村の佐男鹿の(中村鹿三) 妻呼ぶ如き有様に世人を思ふ三千年の 神の光りは西東村雲四方にかき理けて(西村理) 大海原も平けく波も鎮まる八洲国(海原平八) 神須佐之男の神魂沢田の姫が現はれて(佐沢広臣) 教を広く君臣の中を執持つ一条の(中条勝治郎) 至誠に勝るものはなし明治の廿五年より 佐藤りの開く大善の艮神の四郎し召す(佐藤善四郎) 梅花の開く神の世は老も若きもおしなべて 五六七の御世の活動を汗と油をしぼりつつ 山田の果ても伊藤ひなくくさきり耕やせ三伏の(伊藤耕三郎) 暑さも涼し高野原円く治まる太平の(高野円太) 風に黒雲吹き払ひ四方の沢ぎも静まりて(黒沢春松) さながら春の如くなり常磐の松や白梅の 枝にて造りし神の杖菅野小笠に身を包み(菅野義衛) 仁義の教衛らむと京都をさして谷波より(京谷朝太郎) 出口の教祖は朝まだき綾の太元立出でて 海潮純子諸共に昨日や京屋明日の旅(京屋フク) 風フク山路をすくすくと字司朗も見ずに足早に(同司朗) 飛田つ如く進まるる豊かなそのの梅香り(飛田豊子) 五六七の御代に逢坂のキミの恵みに報いむと(同香) 鞍馬をさして出でて行く出口の守の雄々しさは(逢坂キミ) 日本魂の鏡なり月に村雲花に風(村松タミ) 浮世の常と聞きつれど松の神世のタミ草の 心はいつも春の空深山の奥も仁愛の(山崎珉平) 花崎にほひ王民のなか平けく安らけく 上野おこなひ下ならひ国は豊かに足御代は(上野豊) 業務を伊藤ものも無く正しき男の子女子が(伊藤正男) 大内山の御栄えを春かに祝ひよろこびつ(大山春子) 君に捧ぐる真心の強きは波田野国人の(波田野菊次郎) 菊もまれなる次第なり澆季末法の世の瀬戸に(瀬戸幸次郎) 現はれ玉ひし艮の神の御幸は次々に いやちこまして国民は同じ心のきみが御よ(同きみよ) 四方の山々内外の風も静かに笹川の(山内静) 水にも神光煕り渡る雄々しき清き葦原の(笹川煕雄) 神の御国ぞたふとけれ日本御魂の大丈夫が 勇気も古井現し世の濁りを清め市村野(古井清市) 戸口も佐和に佐和佐和に五六七の御世を松の色(野口佐七) 本つ御魂も幸ひて長閑な春の政事(松本春政) 国常立の分御魂仁義の道を一と筋に(国分義一) 守るや洋の西東山の尾の上に出入る月(西山勝) 光り勝れし大御代に立て直さむと昔より 水野御魂の大御神貞めなき世を弌らんと(水野貞弌) 道も飯田の神の詔千代の松ケ枝澄み渡り(飯田千代松) 昇る月影高橋の夜の守りとありがたき(高橋守) 御代に太田の楽もしや神の御国に伝はりし(太田伝九郎) 九つ花の咲き匂ふ深山の奥の寒村も(奥村芳夫) 大和心の芳ばしき大丈夫須佐の大神を 斎ひ藤とみ惟神御霊幸ひて吉祥の(斎藤幸吉) 聖の御代ぞたふとけれ 道の蘊奥を塞ぎ居る村雲四方にかきわけて(奥村友夫) 心も清き友の夫が至誠を内外に長谷川の(長谷川清一) 清きながれも一と筋に久米ども尽きぬ川水に(米川太介) 濁世を洗ひ太介んと田庭綾辺の政雄等が(田辺政雄) 神の御声をいや高き雲井に告げよほととぎす(雲井恒右衛門) 恒の誠のおこなひはこの右衛門なき神の笑み その身の佐賀も康正の実にも鈴し木忠と孝(佐賀康正) 慈悲を三つ楯戸して田助澄まして国の祖(鈴木孝三郎) 古き昔の神代より高き神徳次ぎつぎに(戸田澄国) かくれて御世を守りつつ忍び玉ひし大神を(古高徳次郎) 斎きまつるぞ藤とけれ吉きもあしきも三吉野の(斎藤吉三) 花と散りしく大八嶋長き平和の夢さめて(大島長和) 西洋の国原見渡せば神を敬ふ人もなし(西原敬昌) 物質文明昌ふとも心の花は散りにけり 谷波の国にあらはれし出口の神の御教は(谷口清満) 清く天地に満ちぬらむ桧杉原かきわけて(杉原佐久) 梅佐久そのを杉の山見当てに進む日本一(杉山当一) 長閑けき風も福の井の大精神は平らかに(福井精平) 神の林に著二郎く鳴り渡るなり高倉の(林二郎) 高き厳に八重むぐら青き苔蒸し小田牧野(林八重子) 蔓さえ光る万世の亀の歓吉て岩の上(牧野亀吉) 鶴さへ巣ぐふ高倉の三ツ葉つつじ之御助に(上倉三之助) 小野が御田間を研きつつ生れ赤子と若がへり(小野田若次郎) 次第々々にたましひを石とかためて世を渡り(石渡たみ) 四方のたみ草同一に神の真道に進ましめ(同進) 御代の栄えを内外に照らすは神の大本ぞ 谷波の国は狭くとも広く賢こき神の道(谷広賢) 雲井の上も海原も神武と仁徳かがやきて(井上武仁) 神の守りの金城は所在神の守りにて(城所守息) 神々安息遂げたまふその聖世美馬ほしと(美馬邦二) 心の清き神人が御邦二つくす真心は 大小高下の差こそあれ林のナカの下木まで(小林ナカ) よろこび祝ふ細し矛千田琉の国の神の徳(細田徳治) 円く平穏に治まりて身椙の元も二三太郎(椙元二三太郎) 広き新道進むより神の大道踏める身は 笹原義登と悉後藤くいと康らか仁進み行く(笹原義登) 無事平安の神の道達るは神の温たかき(後藤康仁) あまき乳房にすがる児の太郎次郎の生命の(安達房次郎) 親の光りと松の御代上田の家に生れたる(松田文一郎) 三文奴の只一人神の御前にぬかづきて(前田茂寿) 世人を田すけ守らんと昼はひねもす夜茂寿がら 愛宕の山の片ほとりつづきが岡のふもとなる(片岡幸次郎) 小幡神社の幸ひに祈願の効もいち次郎く 大河口や小川口教を日々にトク人の(大河口トク) 心の丈けは庄司きにシウジウの苦辛を耐へつつ(庄司シウ) 安く達せん大神の心は清き白ユキの(安達ユキ) 黄金の世界銀世界真鯉の上る滝津瀬の(上滝美祐) さま美はしき神祐に心の垢を洗ひつつ 西山林谷の道作り治めて登り行く(西谷作治) 四十八個の宝座ある高倉山に崎にほふ(山崎耕作) 三ツ葉つつじの花の下耕し作る田男の 中にも邨で新しき由緒を知れる由松の(中邨新助) 道の手引に助けられ万寿神苑立出でて 詣づる信者二百人出口の海潮を先導に 田舎の村の小幡橋金神竜神一同に(村橋金一郎) 渡り田所は宮垣内鹿蔵住むなる松林(田所鹿蔵) 紅葉は散れど青々と茂る木の葉のうるはしき 豊かな冬の木の本に四方の景色を覚めつつも(豊本景介) 婦人子供に至るまで介々しくも谷川を(谷前貞義) 飛び越え前み貞勇き義近藤初めて修業場と(近藤貞二) 神の貞めに一同は第二霊地と感謝しつ 祝詞の声も晴やかに木魂に響く床しさよ 勝又五六七の神政に水野御魂があらはれて(勝又六郎) 久米ども尽きぬ真清水のかはく事なき吉祥の(水野久米吉) 命の親の神心仰ぐも高し田加倉の(高田権四郎) 神の権威は四ツの海珍の国土も井や広に(土井理平) 摂理は届く公平のうましき御世は北村の 人は勇みて神寿ぎの祭祀の道も庄太郎(北村庄太郎) 日本の国は松の国浦安国と日五郎より(松浦国五郎) 御三木清めし神の国善一と筋の世の元の(三木善建) 神の建てたる御国なり外国人に惑はされ 御国の精華も白石の五倫五常の道忘れ(白石倫城) 難攻不落の堅城と神の造りし無比の園(比村中) 心にかかる村雲を払ふて清め腹の中 神の授けし御魂をば汚さむ事を鴛海つつ(鴛海政彦) 国家の政り家政り彦と夜毎にいそしみて たとへ悪魔の襲ふとも少しも鎌はず田力男(鎌田徴) 日本心を微かに照して見せよ三日月の 敏鎌の光り鋤の跡稲田も茂る八百頴野(鎌田茂頴) 間田なき秋にアイの空瑞穂の国の中国の(野間田アイ子) 誉れを西洋までノブエ姫姫氏の国の豊の年(中西ノブヱ) 稔も吉田の花ぞサク清き水穂にフク風の(吉田サク子) 薫りは外に比類なき富貴の草香村肝の(清水フク子) 心の美佐尾芳ばしく続鎌ほしや曇りたる(比村美佐尾) 世を田貞か江て神の世になれば曲事かくろひて(鎌田貞江) 吉きこと斗り村幸の雲間を照らす神のトク(吉村トク) まコトを那須の神人は神にすがりツヤはらぎつ(同コト子) 吾身のことを打捨てて多田道のためクニのため(那須ツヤ子) つくしの果の人々も海河こえて田庭路の(多田クニ) 神の御親の膝元に直子の刀自の跡慕ひ(河田親直) 滋しげ通ふ楽もしさ小柴田間萩米躅躑(同滋子) 茂れる山路ふみ別けて同じ心の一隊は(柴田米子) 神の恵與と勇みつつ清水湧き出る宮垣内(同一與) 上田の家も市々に立出で田渡る野山路(内田市子) 心せきセキヨぢ登る新池馬場を一斉に(田渡セキヨ) 進めば砂止山の神祠の跡を右に見て(馬場斉) 谷の村杉潜りぬけ真の道の友垣は(谷村真友) 山奥見かけ村々と貞めの場所雄さして行く(奥村貞雄) 黄昏近く湯ふ浅の空に出口の王仁が(湯浅仁斎) 岩屋の神を斎ひつつ降雨も知らぬ森の中(雨森松吉) 松葉の露の一雫味はひ吉しと喜びて 呑みし昔の思ひ出に水の冥加を藤とみつ(加藤明子) 天地神明の洪徳を感謝しまつる此一行 折も吉野のときつ風吹かれて顔の湯煙りも(吉野とき子) 御空になびく浅曇り霊魂を研く三柱の(湯浅研三) 神の宝座の大前に東尾さして神吉詞(東尾吉三郎) 拍手三拝上々の坂えの声をきくの年(上坂きく) 山の尾の上を崎わけて昇る旭日のあけの空(山崎あけ子) 小男鹿妻恋ふ高熊の見るも勇まし一つ岩(小高一栄) 栄え久しき神国の牧の柱とまめ人の(牧慎平) 慎み仕え大前に低頭平身祈りつつ 松のお千葉もいと清く月も見五郎の十五日(千葉清五郎) 大山小山の中道をおのが寿美家へ雄々しくも(大山寿美雄) 松岡神使に誘はれて本の古巣へ帰りける(岡本尚市) 尚き教へを市早く上田の炉辺に宣ぶる時(田辺林三郎) 小松林の神憑り三ツの御魂が現はれて 近藤二度目の立替は御国を思兼の神(近藤兼堂) 現はれまして堂々と小畠の宮の山の跡(畠山彦久) 本宮神宮の聖邑に国武彦の大神は 世も久方の天津神月見の神や天照す(佐藤かめ) 皇大神の神言もて世人を佐藤し身をたかめ(平野千代子) 天下太平野千代の基佐藤りて三よしの花の春(佐藤よし) お土の井とく水の恩正しき御木の宮柱(土井とく) 千本高知りてきんぎんや珠玉を飾る三体の(正木きん) 神の御舎殿荘厳に大宮小宮建て並べ(小宮きゑ) 深きゑにしを説き諭す高天原の神の道(原竹蔵) 松のみさをは神の国竹蔵即ち外国に たとへて東尾日の本とさきはひ玉ふぞ尊とけれ(東尾さき) 板り尽せしあがなひの千倉の置戸を負ふ神の(板倉寛太郎) 寛仁太度の胸の内同じ教も寛々と(同寛文) 文化の魁け梅の花御空は清く山青く(青野都秀) 野村も都会も秀れたる神の大道に従ひて 日東帝国安らけく日五郎の信仰現はれて(東安五郎) 安全無事の世の中に到達せしめ聖哲の(安達哲也) 教は四方に響く也同じ天地に生ひ立ちし(同佐右衛門) 草木で佐右衛門色艶を増して歓こぶ君が御代 世は古川の水絶えず万寿の苑は亀岡の(古川亀市) 市中に高く聳えつつ曇れる社会を照らし行く 神の仕組の万寿苑瑞祥閣の芽出度けれ。 ○  教の花の桜井愛子中野祝子の太祝詞(桜井愛子) 同じく作郎青年も巌の上田に参ゐ詣で(中野祝子) 各自気分も由松の前駈し田るは十四夜の(同作郎) 稲田を照らす月の影風も清けき秋の末(上田由松) 此一行廿二人巻尾に記して証となす。(前田満稲) (以上)
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霊界物語 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 46 神示の宇宙その一 第四六章神示の宇宙その一〔一九六〕 我々の肉眼にて見得るところの天文学者の所謂太陽系天体を小宇宙といふ。 大宇宙には、斯くの如き小宇宙の数は、神示によれば、五十六億七千万宇宙ありといふ。宇宙全体を総称して大宇宙といふ。 我が小宇宙の高さは、縦に五十六億七千万里あり、横に同じく、五十六億七千万里あり、小宇宙の霊界を修理固成せし神を国常立命といひ、大宇宙を総括する神を大六合常立命といひ、また天之御中主大神と奉称す。 小宇宙を大空と大地とに二大別す。而して大空の厚さは、二十八億三千五百万里あり、大地の厚さも同じく二十八億三千五百万里ある。 大空には太陽および諸星が配置され、大空と大地の中間即ち中空には太陰及び北極星、北斗星、三ツ星等が配置され、大地には地球及び地汐[※オニペディア「霊界物語第4巻の諸本相違点」の「地月・地汐・汐球」参照。]、地星が、大空の星の数と同様に地底の各所に撒布されあり。大空にては之を火水といひ、大地にては之を水火といふ。大空の星は夫れ夫れ各自光を有するあり、光なき暗星ありて凡て球竿状をなしゐるなり。 大地氷山の最高部と大空の最濃厚部とは密着して、大空は清く軽く、大地は濁りて重し。今、図を以て示せば左の如し。 [#図第一図小宇宙縦断図] 大空の中心には太陽が結晶し、その大きさは大空の約百五十万分の一に当り、地球も亦大地の約百五十万分の一の容積を有せり。而して太陽の背後には太陽と殆ど同形の水球ありて球竿状をなし居れり。その水球より水気を適宜に湧出し、元来暗黒なる太陽体を助けて火を発せしめ、現に見る如き光輝を放射せしめ居るなり。故に太陽の光は火の如く赤くならず、白色を帯ぶるは此の水球の水気に原因するが故なり。 太陽は斯くの如くして、小宇宙の大空の中心に安定し、呼吸作用を起しつつあるなり。 [#図第二図大空の平面図] 又、地球(所謂地球は神示によれば円球ならずして寧ろ地平なれども、今説明の便利のため従来の如く仮りに地球と称しておく)は、四分の三まで水を以て覆はれあり。水は白色なり。この大地は其の中心に地球と殆ど同容積の火球ありて、地球に熱を与へ、且つ光輝を発射し、呼吸作用を営み居るなり。而て、太陽は呼吸作用により吸収放射の活用をなし、自働的傾斜運動を起しゐるなり。されど太陽の位置は大空の中心にありて、少しも固定的位置を変ずることは無し。 [#図第三図大地の図] 地球は大地表面の中心にありて、大地全体と共に自働的傾斜運動を行ひ、その傾斜の程度の如何によりて、昼夜をなし春夏秋冬の区別をなすものなり。自働的小傾斜は一日に行はれ、自働的大傾斜は四季に行はる。彼岸の中日には太陽と地球の大傾斜が一様に揃ふものなり。又六十年目毎にも約三百六十年目毎にも、夫々の大々傾斜が行はれ、大地および地球の大変動を来す時は即ち極大傾斜の行はるる時なり。 太陽は東より出でて西に入るが如く見ゆるも、それは地上の吾人より見たる現象にして、神の眼より見る時は、太陽、地球共に少しも位置を変ずることなく、前述の如く、単に自働的傾斜を行ひてゐるのみなり。 天に火星、水星、木星、金星、土星、天王星、海王星その他億兆無数の星体ある如く、大地にも亦同様に、同数同形の汐球が配列されありて、大空の諸星も、大地の諸汐球も、太陽に水球がある如く、地球に火球がある如く、凡て球竿状をなしゐるものにして、各それ自体の光を有しゐるなり。なほ、暗星の数は光星の百倍以上は確かにあるなり。 太陰は特に大空大地の中心即ち中空に、太陽と同じ容積を有して一定不変の軌道を運行し、天地の水気を調節し、太陽をして酷熱ならしめず、大地をして極寒極暑ならしめざるやう保護の任に当りゐるものなり。 而して太陰の形は円球をなし、半面は水にして透明体なり。而てそれ自体の光輝を有し、他の半面は全く火球となりゐるなり。今図を以て示せば次の如し。(第四図参照) [#図第四図太陰の図] 太陰は大空大地の中心を西より東に運行するに伴ひ、地汐をして或ひは水を地球に送らしめ、或は退かしむるが故に満潮干潮の現象自然に起るものなり。神諭に、 『月の大神様は此の世の御先祖様である』 と示しあるは、月が大空と大地の呼吸作用たる火水を調節するの謂なり。火球は呼気作用を司り、地汐は吸気作用を司る。 『富士と鳴門の仕組が致してある』 といふ神示は、火球の出口は富士山にして、地汐は鳴門を入口として水を地底に注吸しゐることを指示せるものなり。火球及び地汐よりは、なほ人体に幾多の血管神経の交錯せる如く、四方八方に相交錯したる脈絡を以て、地球の表面に通じゐるものなり。 (大正一〇・一二・一五旧一一・一七桜井重雄録)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 総説嵐の跡 総説嵐の跡 畏くも国祖国治立命は、逆神常世彦以下の不従を征するにも、天地の律法を厳守し、仁慈の矛を振ひて奇策神謀を用ひたまはず、後世湯王の桀を放ち、武王の紂を征誅するごとき殺伐の兵法をもつて、乱虐を鎮定することを好みたまはなかつた。 これに反し常世彦命らは、邪神に使役され、後世いはゆる八門遁甲の陣を張り、国祖をして弁疏するの余地なからしめ、つひに御隠退の止むなきに至らしめた。 狼獺の不仁なるも、また時としては神恩を感謝して獣魚を供へ、天神を祀り、雛鴉の悪食なるも猶ほ反哺の孝あり、しかるに永年国祖大神の仁慈に浴し、殊恩を蒙りたる諸神の神恩を捨て、邪神の六韜三略の奸計に乗せられ、旗色の可なる方にむかつて怒濤のごとく流れ従ひ、国祖をして所謂『独神而隠身也』の悲境に陥らしめた。 常世城の会議における森鷹彦に変装せる大江山の鬼武彦をはじめ、大道別、行成彦および高倉、旭の奇策を弄し、邪神の奸策を根底より覆へしたるごとき変現出没自在の活動は、決して国祖の関知したまふところに非ずして、聖地の神人の敵にたいする臨機応変的妙案奇策にして、よくその功を奏したりといへども、天地の律法には『欺く勿れ』の厳戒あり、神聖至厳なる神人の用ふべからざる行為なれば、その責はひいて国祖大神の御位置と神格を傷つけた。現に大道別、森鷹彦、鬼武彦らの神策鬼謀は、国祖の直命にあらず、国祖は至仁至直の言霊をもつて邪神らを悔い改めしめ、言向和さむとの御聖意より外なかつた。しかるに血気に逸り、忠義に厚き聖地の神々は、律法の如何を顧みるに遑なく、暴に対するに暴を以てし、逆に対するに逆を以てし、不知不識のあひだに各自の神格を損ひ、国祖の大御心を忖度し得なかつたためである。アヽされど国祖の仁愛無限にして責任観念の強大なる、部下諸神の罪悪を一身に引受け、一言半句の弁解がましきことをなし給はず、雄々しくも自ら顕要の地位を捨て、隠退せられたるは、実に尊さのかぎりである。吾人は国祖の大御心を平素奉戴して、ある人々の言行の不穏と誤解の結果、吾身の災厄に遭遇することしばしばである。されど、心は常に洋々として海のごとく、毅然として山のごとく、動かず騒がず、すべての罪責を一身に引受け、もつて本懐としてゐるのである。すべて人に将たるものは、よく人を知り、人を信じ、人に任じ、その正邪と賢愚を推知して各自その処を得せしめねばならぬのである。しかるに部下の選任を余儀なくして、誤らしめられたるは、自己の無知識と薄志弱行の欠点たるを省み、一言もつぶやかず、大神の仁慈の鞭として感謝する次第である。 アヽ尊きかな、千座の置戸を負ひ、十字架の贖罪的犠牲の行動に於てをや。吾人は常に惟神霊幸倍坐世を口唱す。無明暗黒の現代を救ふの愉快なる神業に於てをやである。天下に二難事あり、その一は天に昇ること、その二は人を求むることである。アヽ国祖大神の天国を地上に建設したまはむとして艱難辛苦をつくされ、神人を得むとして、その棟梁に最適任の神を得たまはざりしごとく、吾人またその例に洩れないのである。国祖大神は、聖地に清き高き美はしき宮殿を造り、至治太平の神政を樹立し、天下八百万の神人の安住する祥代をながめて、歓喜に充せたまうたのも僅に数百年、つひに善神も年と共に悪化して邪神の容器となり、国祖が最初の大目的を破滅せしめたるは、たとへば小高き山上に美はしき家をたて、その座敷から四方の風景を眺めて、その雄大にして雅趣に富めるを歓びつつありしを、家屋の周辺に樹木の尠く、風あたりの激しきを防がむために、種々の必要なる木を植付けたるに、一時は木も短くして、風景の眺望に少しも障害なかりしもの、年を経るにしたがひ、追々と成長して枝葉繁茂し、何時しか遠景の目に入らぬやうになつたのみならず、つひにはその大木に風をふくんで、その木は屋上に倒れ、家を壊し、主人までも傷つけたやうなものである。世の成功者といはるる人々にも、これに酷似した事実は沢山にあらうと思ふ。現に吾人は、家の周囲に植付けられた種々の樹木のために、遠望を妨げられ、暗黒につつまれ、つひにはその家もろともに倒されて重傷を負うたやうな夢を見たのである。されどふたたび悪夢は醒めて、さらに立派な家屋を平地に建て直す機会の到来することを確信するものである。国祖大神の時節を待つて再臨されしごとく、たとへ三度や五度失敗を重ぬるとも、機会を逸するとも、七転八起は、神または人たるものの通常わたるべき道程であるから、幾たび失敗したつて決して機会を逸したとは思はない。至誠神明に祈願し、天下国家のために最善の努力をつくすまでである。現代の人々は、吾身の失敗をことごとく棚の上に祭りこみ、惟神だとか、社会組織の欠陥そのものの然らしむる、自然の結果なりと思ふなぞの詭弁に依帰してしまつて、自己の責任については、少しも反省し自覚するものがない。宗教家の中には『御国を来らせたまへ」とか「神国成就五六七神政』とかいふことを、地上に立派な形体完備せる天国を立てることだとのみ考へてゐるものが多い。そして地上の天国は、各人がまづ自己の霊魂を研き、水晶の魂に建替るといふことを知らぬものが沢山にある。各自の霊魂中に天国を建て、[※御校正本・愛世版では「天国を建てるのは」だが、それでは前後の文脈がおかしくなる。霊界物語ネットでは校定版・八幡版と同様に「るのは」を外して「天国を建て」に直した。]天国の住民として愧かしからぬ清き、正しき、雄々しき人間ばかりとならねば、地上に立派な霊体一致の完全な天国は樹立せないのである。 アヽされど一方より考ふれば、これまた神界の御経綸の一端とも考へられる。暗黒もまた清明光輝に向ふの径路である。雛鳥に歌を教へるには、暗き箱の中に入れておき、外面より声の美はしき親鳥の歌ふ声を聞かしめると同様に、一時大本の経綸も、雛鳥を暗き箱に入れて、外より親鳥のうるはしき声を聞かしむる大神の御仕組かとも思はれぬこともないのである。ゆゑに吾人は大逆境に陥つて暗黒の中にある思ひをするとき、かならず前途の光明を認め得るのは、まつたく神の尊き御仁慈であると思ふ。いかなる苦痛も、困窮も、勇んで神明の聖慮仁恵の鞭として甘受するときは、神霊ここに活気凛々として吾にきたり、苦痛も困窮も、却て神の恩寵となつてしまふ。たとへば籠の中に入れられてゐる鳥でも、平気で歌つてゐる鳥は、最早とらはれてゐるのではない。暢気に天国楽園に春を迎へたやうなものである。これに反して、天地を自由に翺翔する百鳥も、日々の餌食に苦しみ、かつ敵の襲来にたいして寸時も油断することができないのは、籠の鳥の、人に飼はれて食を求むるの心労なく、敵の襲来に備ふる苦心なきは、苦中楽あり楽中苦ありてふ苦楽不二の真理である。牢獄の囚人の苦痛に比して、自由人の却て是に数倍せる苦痛あるも、みな執着心の強きに因るのである。名誉に、財産に、地位情欲等に執着して、修羅の争闘に日夜鎬をけづる人間の境遇も、神の公平なる眼より視たまへば、実に憐れなものである。 神諭にも、 『人は心の持ちやう一つで、その日からどんな苦しいことでも、喜び勇んで暮される』 と示されたのは、じつに至言であると思ふ。一点の心燈暗ければ、天地万有一切暗く、心天明けく真如の日月輝く時は、宇宙万有一切清明である。吾人は平素心天の光明に照らされ、行くとして歌あらざるはない。吾人の心魂神恩を謳ふとき、万物みな謳ひ、あたかも天国浄土の思ひに楽しむ。アヽ『天国は近づけり、悔い改めよ』の聖者の教示、今さらのごとく、さながら基督の肉身に接侍するがごとく、崇敬畏愛の念に堪へない。 アヽ末世澆季の今日、オレゴン星座より現はれきたるキリストは、今や何処に出現せむとするか。その再誕再臨の聖地は、はたして何処に定められしぞ。左右の掌指の節々に、釘の跡を印し、背部にオレゴン星座の移写的印点を有して降誕したる救世主の出現して、衆生に安息を与ふる日は、はたして何れの日ぞ。金剛石も汚穢の身体を有する蟇蛙の頭部より出づることあり、金銀いかに尊貴なりとて、糞尿の植物を肥すに及ばむや。高山の頂かならずしも良材なく、渓間低く暗きところ、かへつて良材を産するものである。平地軟土に成長したる大樹、またいかに合抱長直なりと雖も、少しの風に撓みやすく、折れやすし。宇宙間の万物一として苦闘に依らずして、尊貴の位置に進むものはない。しかるに、天地経綸の大司宰たる天職を天地に負へる人間にして、決して例外たることを得ない。アヽ人生における、すべての美はしきもの、尊きものは、千辛万苦、至善のために苦闘して得なくてはならぬと思ふ。 神諭に曰ふ、 『苦労の塊の花の咲く大本であるぞよ、苦労なしには真正の花は咲かぬから、苦労いたす程、尊いことはないぞよ云々』 吾人はこの神諭を拝する毎に、国祖が永年の御艱苦に省み、慙愧の情に堪へないのである。 ここに八王大神常世彦命は、多年の宿望成就して、天津神の命を受け、盤古大神塩長彦を奉じて、地上神界の総統神と仰ぎ、自らは八王大神として、地上の神人を指揮することになつた。しかるに聖地ヱルサレムは、新に自己の神政を布くについては、種々の困難なる事情あるを慮り、常世姫をして竜宮城の主管者として守らしめ、聖地を捨て、アーメニヤに神都を遷し、天下の諸神人を率ゐて世を治めむとした。一方常世城を守れる大鷹別は、大自在天大国彦を奉じて総統神となし、アーメニヤの神都にたいして反抗を試み、またもや地上の神界は混乱に混乱をかさね、邪神の横行はなはだしく、已むを得ず、諾冊二神の自転倒嶋に降りたまひて、海月如す漂へる国を修理固成せむとして、国生み、嶋生み、神生みの神業を始めたまひし神代の物語は、本巻によつて明らかになることと思ふ。 神ながら宇宙の外に身をおきて 日に夜に月ぬ物語する 王仁は、第一巻において天地剖判の章に致り、金や銀の棒が表現して云々と述べたるにたいし、人を馬鹿にすると言つて、コンナ馬鹿な説は聞くだけの価値なきものだと、一笑に附して顧みないのみならず、他人の研究までも中止せしめむとしてゐる立派な学者があるさうだ。 神諭にも、 『図抜けた学者でないと、途中の鼻高には、神の申す事はお気に入らぬぞよ云々』 と示されてある。宇宙間の森羅万象、一として形体を具ふるもの、金、銀、銅、鉄等の鉱物を包含せないものはない。人間を初め、動植物と雖ども、剛体すなはち玉留魂の守護によらぬはない。金銀等の金気の大徳によつて現出したる宇宙間の森羅万象は、悉皆、鉱物玉留魂の神力を保持してゐるのであるから、金の棒や銀の棒から天地万物が発生し凝固したと言つたとて、別に非科学的でも何でもない。神の言には俗人のごとき七面倒くさきことは仰せられぬ。すべて抽象的、表徴的で、一二言にて宇宙の真理を漏らされるものである。 それで神諭にも、 『一を聞いて十百を悟る身魂でないと、誠の神の御用は勤まらぬぞよ』 と示されてある。半可通的学者の鈍才浅智をもつて、無限絶対無始無終の神界の事柄にたいして喃々するは、竿を以て蒼空の星をがらち落さむとする様なものである。洪大無限の神の力に比べては、虱の眉毛に巣くふ虫、その虫のまた眉毛に巣くふ虫、そのまた虫の眉毛に巣くふ虫の放つた糞に生いた虫が、またその放つた糞に生いた虫の、またその虫の放つた糞に生いた虫の糞の中の虫よりも、小さいものである。 ソンナ比較にもならぬ虫の分際として、洪大無辺の神界の大経綸が判つて耐るものでない。それでも人間は万物の長であつて、天地経綸の司宰者だとは、どこで勘定が合ふであらうか。されど、神の容器たるべき活動力を有する万物の長たる人間が、宇宙間に絶無とは神は仰せられぬのは、いはゆる神界にては無形に視、無声に聴き、無算に数へたまふてふ、道の大原の聖句に由るのであらうと思ふ。 蚤虱蚊にもひとしき人の身の 神の為すわざ争ひ得めや 大正十一年一月三日旧十年十二月六日
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 26 艮坤の二霊 第二六章艮坤の二霊〔二二六〕 轟然たる大音響とともに突然爆発したる天教山の頂上より、天に向つて打ち上げられたる数多の星光は、世界の各地にそれぞれ落下した。 これは第四巻に示す地球の中軸なる大火球すなはち根底の国に落ちて、種々の艱難辛苦をなめたる各神の身魂の時を得て、野立彦命の神徳により地中の空洞(天の岩戸)を開き、天教山の噴火口に向つて爆発したのである。俗に地獄の釜の蓋が開くと云ふはこのことである。また『天の岩戸開き』と云ふのも、これらを指して云ふこともあるのである。 地上に散布せられたる星光は、多年の労苦に洗練されて天授の真霊魂に立替はり、ことに美はしき神人として地上に各自身魂相応の神徳を発揮することとなつた、これらの顛末を称して、 『三千世界一度に開く梅の花』 と謂ひ、また各身魂の美はしき神人と生れて、神業に参加するの状態を指して、 『開いて散りて実を結び、スの種子を養ふ』 といふのである。 かくして野立彦命は世の立替へ、立直しの先駆として、まづ世に落ちたる正しき神を一度に岩戸を開き、地獄の釜の蓋を開いて救ひたまひ、世界改造の神種と為し給うたる最も深遠なる御経綸である。 却説木花姫命は、月照彦神以下の諸神を随へ、天教山の中腹なる青木ケ原に下り着きたまうた。ここには彼の銀橋を渡りてきたれる神々の数多集ひて、山上を見上げながら、木花姫命を先頭にあまたの供神とともに下りきたるを見て、一斉に手を拍ち喊声をあげ、ウローウローと叫びつつ、踊り狂うて歓迎した。 神人は遥にこの光景を眺めて大に喜び、先を争うて青木ケ原に息せききつて上りきたり、上中下三段の身魂の神政成就の神柱の揃ひしことを喜び祝し、手に手に木の皮を以て造れる扇を開き、前後左右に手拍子、足拍子を揃へ、ウローウローと叫びながら踊り狂うた。その有様は、あたかも春の野に男蝶女蝶の翩翻として、菜の花に戯るごとくであつた。神々の一度に手を拍ち祝詞を奏上する声は、上は天を轟かし、下は地の万物を震動させた。 かくのごとく天教山にては、上中下の身魂の神柱は、各自部署を定めて地上の世界を救済のために宣伝者となつて巡回し、かつ先に地上に散布されたる身魂は、美はしき神人と出世して各地に現はれ、この宣伝者の教を聞いて随喜渇仰した。説く者と聞く者と意気合するときは、神の正しき教は身魂の奥に沁みわたるものである。あたかも磁石の鉄を吸ひよせるごとき密着の関係をつくることが出来る。これらを称して身魂の因縁といふ。 ゆゑにいかに尊き大神の慈言といへども、教理といへども、因縁なき身魂は、あたかも水と油のごとく反撥して、その効果は到底あがらない。後世印度に生れた釈迦の言に、 『縁なき衆生は度し難し』 と言つたのも、この理に拠るのである。ゆゑに大神に因縁あるものは、この浅深厚薄に拘はらず、どうしても一種微妙の神の縁の絲に繋がれて、その信仰を変ふることはできない。 神諭にも、 『綾部の大本は、昔から因縁ある身魂を引寄して、因縁相応の御用をさせるぞよ』 と神示されたのも、遠き神代の昔より、離るべからざる神縁の綱に縛られてをるからである。 『神が一旦綱をかけた因縁の身魂は、どうしても離さぬぞよ。神の申すことを背いて、何なりと致して見よれ。後戻りばかり致すぞよ』 との神示は、神の因縁の綱に繋がれてをるから、自由行動を取りつつ、一時は都合よく行くことあるも、九分九厘といふ所になつて、神よりその因縁の綱を引かるるときは、また元の大橋へ返らねばならぬやうになるものである。 これを神諭に、 『引つかけ戻しの仕組』 と示されてある。 さて木花姫命の宣示を奉じて、月照彦神、足真彦神、少彦名神、太田神、祝部神、弘子彦神その他の神々は、折から再び廻転しきたれる銀橋に打乗り、一旦中空を廻りながら、復び野立姫命の現はれたまへるヒマラヤ山に無事降下した。 ヒマラヤ山には、あまたの神人が夜を日についで、山の八合目以下の木を伐採し、大杭をあまた造り、頚槌を携へ地中にさかんに打込みつつあつた。月照彦神一行は、その何の意なるかを知らず、神人らに丁寧に一礼しながら、山上の野立姫命の神殿に向つて、隊伍粛々として参向したのである。 (大正一一・一・一〇旧大正一〇・一二・一三外山豊二録)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 40 琴平橋 第四〇章琴平橋〔二九〇〕 人馬の物音騒がしく、旗指物を押立てて、馬にまたがり数多の戦士引率れ乍ら、四恩河の袂に押し寄せきたる者あり。是は外でも無くアーメニヤの神都に勢望高きウラル彦を初め、鬼掴その他の猛将勇卒なりける。 たちまち橋梁の無きに驚き、大音声に架橋に従事する人夫に向つて、 『酋長を呼べ』 と厳命したるに、一同は驚き平伏したりしが、その中の一人は立上り、 『ハイハイ、只今酋長を呼ンで参ります』 と言つて、小走りに森林の中に姿を隠しける。 ウラル彦の一行は、ここに武装を解き、携へ来れる酒や兵糧を出して呑み喰ひ、つひには、 『呑めよ騒げよ一寸先は暗よ』 と唄ひ始めたるが、そこへ酋長の寅若が二三の部下を伴れ、揉手し乍ら出で来たり、ウラル彦の前に恐るおそる現はれ、 『何御用でございますか』 と跪いて、叮嚀に尋ぬる。 この時鬼掴は、居丈高になり酔の廻つた銅羅声を上げながら、 『勿体なくもアーメニヤの神都に、御威勢は日月のごとく輝き渡り、名声は雷のごとく轟き給ふウラル彦様の御通過あるは、前以て知らせ置いた筈である。然るに其方どもは、何を愚図々々いたして居るか。このざまは何だ。今日中にこの橋を架け渡さばよし、渡さぬにおいては、汝を初め四恩郷の奴らは、残らず八裂に裂き千切つて、この河に流してやるぞ。返答はどうだ』 と眼を怒らして怒鳴りつける。 酋長寅若は、猫の前の鼠のやうに縮み上りブルブルと慄うて一言も発し得ず、顔を蒼白にして俯向きゐる。 この時戊は、忽然として現はれ、 『オツと待つた。怒るな、焦るな、目を剥くな鬼掴。細工は流々仕上げを見てから小言を云うたり云うたり。夫れより美味い酒を呑んで踊れよ踊れ、踊らな損ぢや。 とかく浮世は色と酒酒はこの世の生命ぢやぞ 酒なくて何の己が桜かなだウラルの彦の司とやら 苦い顔して怒るよなそんな酒なら止すがよい 呑んで列べた瓢箪の蒼い顔して沈むより 四恩の河の水呑んで沈んだ方が面白い 浮けよ浮け浮け酒呑んで四恩の河へ落されて 浮けよ浮け浮けしまひにや沈め沈んで死んだら土左衛門 どんなお亀もひよつとこも女が死んだら皆美人 貴様が死んだら土左衛門どつこいしよのどつこいしよ どつこい滑つて河底へぶくぶく流れて青雲山の 黄金の宮をば眺めて泣いて玉は欲しいが生命も惜しい 生命知らずのアーメニヤウラルの神の浅猿しさ 浅い知慧をば絞り出し深い仕組を四恩の河の 蒼い淵へと身を投げにうかうか渡るな四恩橋 どつこいしよの、どつこいしよ』 と唄ひ、かつ踊り狂ふ。 鬼掴は初の間は、顔色烈火のごとく憤懣の色を表はし、鼻息荒く今にも掴み掛つて取り挫がむず勢であつたが、何うしたものか、俄に菎蒻か蛸のやうに軟らかくなつてしまひ、大口を開けて、 鬼掴『アハハハハハハ』 と笑ひ出し、へべれけに酔ひ潰れた数多の戦士は、参謀長の鬼掴の笑ふのを見て、何れも一斉にどつと声を上げて笑ひ狂ひ、前後も知らずに踊り出したり。 不思議や、何時の間にか四恩の河には、立派な広き新しき長き橋が架つてゐたれば、一同はいよいよ茲に戎衣を着し、青雲山に向つて前進する事となりける。 ウラル彦はたちまち機嫌を直し、酋長に向ひいろいろの褒美を与へ、隊伍を整へ堂々と橋を渡りはじめたり。先鋒隊が橋の先端に着いた頃は、その一隊は全部橋の上に乗りけるが、この時めきめきと怪しい音するよと見る間に、橋は落ち濁流漲る河中へ甲冑のまま、人馬共に一人も残らず落ちこんでしまひ、ウラル彦を初め一同は浮きつ沈みつ押し流されて行く。間もなく、又もや立派な橋が架けられたり。 前方よりは高彦天使を先頭に、吾妻彦[※校正本では「吾妻別」]、玉守彦、雲別は、数多の戦士を随がへ黄金の御輿を守り、黄金の玉を納めて之を担がせながら、悠々として進みきたり難なくこの橋を渡り了へ、後振り返り見れば、今渡りし橋は跡形も無く、巨大なる亀幾百ともなく、甲を列べて浮びゐたりける。 頓てその亀も水中に姿を隠しけるが、これぞ正しく琴平別神の化身にして、黄金の玉を守護するための活動なりしなり。 (大正一一・一・二三旧大正一〇・一二・二六外山豊二録)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 02 三神司邂逅 第二章三神司邂逅〔三〇二〕 山の頂より涼しき声聞えて、 康代彦、真鉄彦『世は常闇となり果てて黄泉国に出でましし 国の御柱大神の見立て給ひし八尋殿 真木の柱の朽果てて倒れかかりし神の世を 起し助くる康代彦心も堅き真鉄彦 天津御国に現はれて瑞の御魂と諸共に この世の元を固めむと天津誠の御教を 天と地とに隈もなく行き足らはして神の世を いと平けく安らけく親の位を保ちつつ 漂ふ国を弥堅に締め固めたる大事の 忍男神の現れまして神政成就成し遂ぐる 吾らは神の御使ぞ千代に八千代に日の本の 礎堅く搗固め神世の長と成り出でて 教を四方に敷島の吾は康代の司なるぞ 吾は真鉄の司なるぞいま汝が前に現はれて 大事忍男神と云はウラルの山に蟠る 八岐大蛇の化身にて今より十年のその昔 この神山に立籠り瑞穂の国の中国の 神の胞衣をば打破りこの世を乱す深企み これの深山に隠ろひて数多の邪神を狩集め 再挙を図る浅間しさ天の御柱大神は 魔神の企みを悉く覚らせ玉ひて現世を 千代に八千代に康代彦堅磐常磐に真鉄彦 造り固めて浦安の日出づる国の礎を 照らす日の出の大神ぞ仕組も深きこの山に 導き玉ふ雄々しさよ東南西に海原を 控へて聳てるこの山は難攻不落の鉄壁ぞ 汝が命はこの山に堅磐常磐に鎮まりて 天津日嗣の皇神の御位を守り奉れ 吾は左守の司となり大和嶋根の神国を 真鉄の彦の弥堅に弥常久に揺ぎなく 治めてここに立岩の深き企みを打破り 曲神の悉平げむ康代は右守の神となり 荒浪猛ける浮嶋を神の稜威に搗固め 康代の彦の神となり浦安国の心安く 千代に八千代に守るべし朝日の直刺す神の山 夕日の直刺す神の峰百山千谷のその中に 聳り立ちたる大台が原の御山と永久に 日の出神と現はれて天教地教の神々の 教を守る朝日子の日の出神と成りませよ』 と歌ひながら、巌窟の前に立てる日の出神の傍近く進み来る。 (大正一一・一・三〇旧一・三高木鉄男録)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 13 美代の浜 第一三章美代の浜〔三一三〕 烏羽玉の暗世を照らす宣伝使、日の出神の宣伝に、四方の曲津も祝姫、心も清き白雪郷、渋紙面の面那芸の、神と現れにし宣伝使、面那美姫を後にして、暗きこの世を照らさむと、別れに臨み門出を祝する酒宴は開かれたり。白雪郷の老若男女は、三柱の宣伝使の出発を見送るべく、酋長の家に一人も残らず集まり来り別れを惜む。 振舞の酒に舌鼓を打ち、感極まつて泣くもの、酔うて笑ふもの、中には悪酒の癖ある男はブツブツ怒り出したりける。 牛公『ヤイ皆の奴、一体酋長てな奴は、訳が判らぬぢやないか。ウラル彦の宣伝使が来をつて、酒を飲めと言ひよつたその酒は、とてつもない味の好い酒だつたが、それをば死ンでも飲まぬ、神様の信仰は止めぬと気張つてな、俺らにまでその甘い酒を飲まさずに、エライ目に逢はされたが、それに酒は飲まな飲まぬで判つて居るが、今日の振舞は一体何の事だい。飲めば神様の信仰にならぬと云つて居るくせに、今日は宣伝使になつてその門出の祝に、酒を飲ますとは一体全体訳が判らぬじやないかイ。これからこンな甘い酒の味を知つたら、もうよう忘れぬ。ウラル彦の宣伝使について飲ンで飲ンで飲倒してやろかい』 乙『貴様の云ふことはヒヤヒヤするワ。黙つて居れ、物には裏と表があるのだ。酋長さまは酒は飲ンだら悪いぞと、表で眼を剥ながら小さい声で「チツトは飲めよ」と仰有る謎ぢや。貴様のやうに物は堅うなるといけないよ』 牛公『何が堅うなつたのだい。しようもない酒を沢山飲ましよつて堅くなつた処か、骨も魂もグニヤグニヤになつてしまひ、足もろくに立ちやしない。ほんたうに人を馬鹿にするのも程があるぢやないか。エーン』 丙『コラコラ牛、貴様は、もつたいないことを吐かす奴ぢや、ババ罰が当るぞ』 と目を拭ふ。 牛公『貴様は泣いてけつかるな。泣く様な酒なら飲まぬが好いわ』 丙『よう思つて見よ。酋長さまは俺らを何時も可愛がつて下さつたが、今日は結構な身の上を捨て、色の白い奥さまを後に残して、千里万里の海を越え、常世の国とやらへお越し遊ばすと云ふじやないか。それも俺らを捨てて俺らはどうでもよいと云ふのじやない。世界の人間を助けたさの御出立。奥さまは奥さまで、アノ色の黒い目許の涼しい口許のキツと締つた立派な夫に別れ、留守番をして今迄のやうに俺らを庇つて下さるといふ仕組だ。さうでなければ恋しい夫婦、奥さまと手に手を取つて一緒に御出発なさる筈だが、それもせないで一人で、御出で遊ばす事を思へば、俺はモウ有難くて涙が溢れる』 と又メソメソと泣く。 面那美の神は立上り、この一行を送る可く歌を唱ひ始めたり。 『久方の天津御空は蒼々と山野は清く花笑ひ 鳥は梢に歌ひつつ神の御国を祝ふなる 白雪郷を立出でて光も強き日の出神 世の村雲を永遠に伊吹き祝の姫司や 恋しき夫の面那芸の神の命の三柱は 常世の闇を晴らさむと汐の八百路の八汐路の 汐掻き分けて渡ります嗚呼天地の大神よ 嗚呼海原の大神よこの三柱の宣伝使 恙も無しに送らせて太しき功績を後の世に 建てさせ給へ百の神吾れは女のただ一人 白雪郷に止まりて郷の諸人守りつつ 孱弱き女の一筋の髪に引行く千鈞の 重たき岩のその如く朽たる綱に荒獅子や 虎狼を繋ぐごと実にも危き吾務め 守らせ給へ百の神嗚呼三柱の宣伝使 また逢ふことも嵐吹く風の朝や雨の夜に 君に恙もあらせじと祈る面那美真心の 妾は留まり守るなり稜威は高し天の原 恵みは深し太平の海の底ひも白浪の 世人を救ふ宣伝使救ひの舟に棹さして 浮瀬に悩む人々を神の御国に渡せかし 神の御国に渡せかし』 と歌ひ終つて別れを告げたりければ、三柱は名残はつきずとここに改て神言を奏上し、集まる諸人に一場の訓戒を与へ、白雪郷を後に見て遂に美代の浜の埠頭に着きにける。 (大正一一・一・三一旧一・四谷村真友録)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 24 筑紫上陸 第二四章筑紫上陸〔三二四〕 日の出神は唄ひ玉ふ。 日の出神『天津御空も海原も真澄の姫の永遠に 鎮まりゐます冠島名さへ目出度き竜宮の 宝の島を後にして科戸の風の吹くままに 流れ流れて今ここに筑紫の島の島影を 幽かに眺め皇神の深き仕組も不知火の わが身の魂の愚さよ心つくしの益良雄が 深き仕組を駿河なる富士の御山に千木高く 鎮まりゐます木の花姫の神の御言を畏みて 塩の八百路を渡りつつ心の空も純世姫 神の命の永遠に鎮まりゐますこの島は 天津御神の造らしし宝の島と聞ゆなる 珍の島根を目のあたり越えて又もやこの島の 宝を探る楽さは黒白も分かぬ闇の世を 天津日の出の東天に現はれ給ひし如くなり 現はれ給ひし如くなり』 (船客の一人)甲『オイ、今の歌を聞いたか。この昼中に目の玉の闇だとか、暗がりだとか仰有つたじやらう。東の空から、お日さまが出るとか聞いたじやらう、一寸可笑しいじやないか。日天様は西の空に傾いてゐらつしやるのに、苟くも人を教へる宣伝使ともあるものが何であンな訳の分らぬ事を言ふのだらうね』 乙『貴様はそれだから困るのよ。何でもかでもチヨツピリと聞きはつりよつて、知らぬ者の半分も知らぬくせに、知つた者のやうにナゼそンな脱線した講釈をするのだ。貴様と一緒に連なつてゐると、俺アもう情ない。あまりわけが分らなさ過らア』 甲『分らぬ分らぬて、何が分らぬ。分らぬとは貴様のことじやないか。嬶アや子のあるざまをしよつて、五十の尻を作つて居り乍ら、貴様のとこのおさんの○○へ○○しよつて、嬶アに見つけられ、それがために嬶アは悋気の角を振ひ立てて、死ぬの生きるの暇をくれのと、毎日日日犬も食はぬ喧嘩をおつ始め、近所の大迷惑だつたよ。酋長の木兵衛さまが心配して、いろいろと道理を説き諭して噛ンで飲むやうにおつしやつても、貴様は死ンでも彼奴とは別れぬとか、分らぬとか吐かしたぢやないか。ソレに俺が分らぬもあつたものかい』 船頭『サアサア船が着きましたよ。お客さま、また此処で十日ばかり風を待たな、常世の国へは行けやしない。グヅグヅしとると、この船は何処へ行くか分りやしないぞ。早う立たぬかい』 甲『八釜しう言うない。立てらりやせぬわ』 乙『立てないつて貴様何して居るのだい』 甲『貴様ら先へ上れ、俺は後から上る』 乙『腹の悪い奴だナ。皆上つた後で何か忘れ物でもあつたら、猫ババでもキメ込まうと思ひよつてケツが呆れらア』 甲『そのケツだよ』 乙『貴様ケツて何だい。ははあ坐つたままで、糞を放れよつたのだな。ハヽーそれで読めた。じつとしてをれ。バタバタすると臭いぞ。臭い野郎だナ』 船頭は心せはし気に、 船頭『おい、早く立たぬか』 甲『はいはい、今立ちます』 船頭『そのババたれ腰は何だい』 甲『本当にタレたのだい』 船頭は真赤になりながら、 船頭『すつくり掃除せい。掃除せにや上がらせぬぞ。糞放奴が』 日の出神は二人の宣伝使と共に上陸し、又もや宣伝歌を歌ひながら、後をも見ずに奥深く進み行く。 (大正一一・一・三一旧一・四桜井重雄録)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 27 蓄音器 第二七章蓄音器〔三二七〕 小島別はこの巌窟の中より出る声に、合点ゆかぬといふ身振りをしながら、以前の元気に引かへて、虫のやうな声を搾り出し、 小島別『さう仰有る貴方様は果して何れの神に坐しますや、御名を名告らせ給へ』 巌窟の中より大声にて又も、 声『アハヽヽヽヽ、あかぬあかぬまだ改心はできぬ。オホヽヽヽヽ恐ろしい渋太奴ぢやな、ウフヽヽヽヽ浮か浮かするな、この世は悪魔の巣窟ぞ、エヘヽヽヽヽ豪さうに威張つて歩く宣伝使、頭の先から足許まで好く気をつけよ。イヒヽヽヽヽ威張散らして竜宮の小島別の宣伝使、カヽヽヽヽ必ず神を鰹節にいたすなよ、コヽヽヽヽ小島別の盲ども、クヽヽヽヽ腐つた魂の宣伝使、臭い物に蓋して歩く小島別、ケヽヽヽヽ見当の取れぬ神の仕組、好く味はうておくがよい、キヽヽヽヽ気違ひじみた小島別、真の神が気をつける内に改心いたすが好いぞ、サヽヽヽヽさらりと迷ひを覚ませ小島別、天の探女の仲間入をいたすな、ソヽヽヽヽ損と思へば手も出さぬ、我身の徳と思つたら牛の骨でも手を出す、欲心坊の小島別、スヽヽヽヽ好きぢや嫌ひと人に区別を立てる宣伝使。セヽヽヽヽ脊に腹は替へられぬと甘い言葉に遁を打つて薄志弱行の張本人、シヽヽヽヽ知らぬ事をば知つたやうに法螺吹き歩く宣伝使』 小島別は縮上り、 小島別『何れの神様か知りませぬが、もう改心いたします、これで許らえて下さいませ』 声『タヽヽヽヽ』 小島別『もう沢山です、どうぞ御免を蒙ります、骨身にこたへますワ』 穴の中より、 声『沢山でない、まだまだあるぞ、七十五声の有らむかぎり教へてやらねば目が覚めぬ、トヽヽヽヽ当惑顔の宣伝使栃麺棒の小島別、トツクリ思案をするが好い、トテも逃れぬ此場の仕儀、トコヨの国に遣つてしもうか、トテも改心は覚束ないぞ、ツヽヽヽヽ月夜に釜を抜かれた様につまらぬ面した小島別、掴まえ所の無いやうな道にはづれた宣伝使、テヽヽヽヽ手柄顔して世の中を廻つて歩く宣伝使、チヽヽヽヽ智慧も力もない癖に、チツトの手柄を笠に被て、力の自慢の宣伝使。ナヽヽヽヽ長い間の慢神でお道のために艱難苦労、救ひのためとは何の囈語、情ないぞよ、思へば思へば涙がこぼれる小島別、ノヽヽヽヽ喉から血を吐く神の胸、よう汲みとらぬ宣伝使、ヌヽヽヽヽぬかるな気をつけ小島別、ネヽヽヽヽ熱心らしく見せかけて此世を誑かる小島別、ニヽヽヽヽ日天様に叱られて、目さへ不自由な小島別』 小島別『何れの神様か存じませぬがもう沢山でございます、これで御赦しを願ひます』 岩窟の中より一層大きな声で、 声『ハヽヽヽヽ耻かしいか、腹が立つか、神の言葉に歯節はたつまい、ホヽヽヽヽほうけ面して常世の国より竜宮城へ、肩怒らして帰つて来た小島別の信天翁、フヽヽヽヽぶるぶる振ふ頭をかくしあやまり入つた宣伝使、ヘヽヽヽヽ屁つぴり腰の小島別、へなへな腰の宣伝使、ヒヽヽヽヽ日暮に企みた梟鳥、夜食にはづれて小難かしい面をさらした小島別』 小島別『もうもう沢山でございます、解りました、貴神はウヽヽヽウシトヽヽヽトラ』 岩窟の中より、 声『マヽヽヽヽ待て待て、まだあるまだあるまだあるぞ、曲津の正体ひきむいて呉れる、盲目の宣伝使、老碌爺の小島別、ムヽヽヽヽ無理と思ふか小島別、虫が好くまい此方の言葉、無理と思ふか無理ではないぞ、昔昔の其の昔し、古き神世の昔しより此世を守る無限絶対の生神、この方の姿は見えたか。メヽヽヽヽ盲の分際で神の姿は解るまい。ミヽヽヽヽ見えぬは道理目の帳、かき上げて神の光を身に宿せ、ヤヤヽヽヽ大和魂と申せども、汝の魂は曇り切りたるやまこ騙、知らず識らずの間に世人を迷はし騙すやまこの立派な宣伝使、ヨヽヽヽヽ世の中に鬼は居ないと申して歩く腰抜の宣伝使、鬼は在るぞよ、この鬼神の姿が見えぬか、ユヽヽヽヽ幽霊の如きフナフナ腰で神の大道を開くとは片腹痛い、エエヽヽヽ縁の糸に繋がれて、斯程に曇つた魂さへ、神から綱をかけられて助けてもらうた小島別、イヽヽヽヽ何時まで言うても同じ事、今日かぎり宣伝使の役をサツパり返上せよ、言分あるか、違背があるか、何れになりと返答聞かう』 小島別『ハイハイどうも仕方がありませぬ、平あやまりにあやまります、臍の緒切つてから、こんな薄い目に逢うた事はありませぬワ、どうなりと神様の思召しにして下さい』 声『ラヽヽヽヽ乱心賊子とは貴様のこと、これしきの小言に膽を潰し難を避け、易きにつかむといたす卑劣極まる宣伝使、リヽヽヽヽ理屈ばかり並べたて月日をくらす小島別、ルヽヽヽヽ累卵の危きこの世を振捨て、我身の安全を謀る卑怯未練の宣伝使、レヽヽヽヽ連木で腹を切る様なその場逃れの言訳いたす狡猾至極の小島別、ロヽヽヽヽ碌でもない囈言世界にひろむる小島別、ワヽヽヽヽ我身の目的ばかり日に夜に企む小島別』 小島別『モモヽ何ンぼ神様でもあまりでございます。神様は善言美詞を御使ひ遊ばす筈だのに、あなたは乱言暴語を仰有いますが……』 声『イヒヽヽヽヽ痛いか痛いか耳が痛からう、ウフヽヽヽヽうつかり聞いて後悔するな、浮世の暗に彷徨ふ汝、狼狽者の宣伝使、ヱヘヽヽヽヽ』 小島別『モモもうこらへて下さいませ』 巌窟の中より、 声『えぐいと思ふか俺の言葉、ヰヒヽヽヽヽ命が惜しいか小島別、忌々しいか、意見が合はぬか、鼬の最後屁、以後は必ず慎めよ。ガヽヽヽヽ我が折れねば餓鬼道に落してやるが、ギヽヽヽヽ義理も人情も弁へ知らぬ宣伝使なら止めて置け、グヽヽヽヽ愚にもつかない世迷言、愚図愚図いたすと日が暮るぞ、ゲヽヽヽヽ元気の無さそなその面附、ゴヽヽヽヽ劫託並べたその報い、ザヽヽヽヽ醜体さらされて耻をかく、ジヽヽヽヽ自業自得だ小島別、ズヽヽヽヽ図抜けた馬鹿の分際で、づうづうしくも天下を廻る宣伝使、ゼヽヽヽヽ善と悪とを弁へよ、善に見へても悪もあり、悪と見えても善がある、善と悪との真釣り合ひ、ゾヽヽヽヽ存外渋太い宣伝使、これでも改心いたさぬか』 小島別『モシモシもう改心いたします。あまりと言へば余りの雑言、御無礼ではございませぬか』 声『ダヽヽヽヽ黙つて聞いてをれ、神をだしに致したその報い、ヂヽヽヽヽ地震、雷、火の車、好くも駄法螺を吹きをつたナ。ヅヽヽヽヽ図抜けた間抜けの宣伝使。デヽヽヽヽデンデン虫の角生し、理屈を争ふ小癪面、ドヽヽヽヽ』 小島別『ドヽヽドウも恐れ入りました、どうも恐れ入ました。何卒これで御赦し下さいませ、どうもかうも頭が痛くて堪りませぬ』 巌窟の中より、 声『胴欲と思ふか、何処の何国へ行つたとて、度胸の据らぬ宣伝使、どうして道教が開けやうか、バヽヽヽヽ馬鹿を尽すも程がある、馬鹿に与ふる薬はないぞ、米搗きバツタの腰のやうに稚桜姫の目の前で腰をぺこぺこ何の態』 小島別『モシモシ、岩の神様、もう沢山でございます。昔の棚卸までなさいまして、大勢の前でございます、私の顔は丸潰れ、チツトは大慈大悲の御心に、この世を造りし神直日、心も広き大直日、ただ何事も人の世は、直霊に見直せ聞き直せ、身の過は宣り直せぢやございませぬか』 岩窟の中より、 声『ヂヽヽヽヽヂツクリ聞かぬか、ヂレツタイか、地震の孫め、ビヽヽヽヽ貧乏動ぎもさせぬぞよ、ブヽヽヽヽ仏頂面の宣伝使、武運の尽きた小島別、ベヽヽヽヽ便所の掃除が性に合ふ、尻の締りのつかぬ宣伝使、ボヽヽヽヽ呆た面してボロボロ涙、パヽヽヽヽパツパ一服するがよい』 小島別『ハイハイ有難う、やれやれアアもうこれで済みたか、長い岩のやうな堅い御説教を曲津か何が云ふのか知らぬが、ほンたうに豪い目に会はして、どつさり油を搾りよつた。しかし俺は夢でも見て居やせぬかな、一寸頬べたを捻つて見よう。アヽ矢張り痛いな、一体全体岩の前で何のことだい。岩ぬは言ふに弥まさるが、この岩はほンたうに怪体な巌窟だ、まるで天然の安い蓄音器見た様だワイ。オイ蓄音器先生、ヤイ俺は天下晴れての宣伝使だぞ、俺でもお前の言ふやうな事は何でも言へるわい。なンぼなと言へ』 声『ピヽヽヽヽ』 小島別『ヨー、なンだ鵯でも居るのかな、オイ鵯の谷渡り、いくらでもピヽと囀れ、天下晴れての宣伝使だぞ、俺が黙つて聞いてやつて居れば、調子に乗りよつて殆ど言霊の七十五声を並べよつた、仕舞に往生しよつて何の醜態だい、腹下りが雪隠に行つたやうにピヽヽヽヽそら何の態だ、穴が呆れて雪隠が躍るわ』 このとき巌窟は百雷の一時に轟く如き大音響を立てて唸り出したりければ、小島別は心砕け魂消ゆる許りに驚きて大地にぺたりと倒れける。 (大正一一・二・一旧一・五谷村真友録)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 29 山上の眺 第二九章山上の眺〔三二九〕 行けど行けど限り知られぬ足曳の、山路を辿る宣伝使、激潭飛瀑の谷川を、右に左に飛び越えて、夜を日に継いで進み行く。ここに三人の宣伝使、さしもに高き山の尾に、腰打かけて四方山の景色を眺めて雑談に耽りゐる。日の出神は、 日の出神『曲津神と云ふものは、何処から何処まで、よくも仕組をしたものだな。こンな未開の筑紫の嶋の山奥まで、眷族を遣はして、どこ迄も天下を席巻せむとする執念深き仕組には、吾々は実に感服の至りだ。悪が八分に善が二分の世の中、吾々もうかうかとしては居れない。ヤヤ、あの北の方に怪しい煙が立つではないか』 祝姫『如何にも妙な煙が立ちますな、紫の麗しい何ともいへぬ煙の色。あそこには何でも尊い神様が居らつしやるのでせう。斯うして高山の上から四方を見はらせば実に世界一目に見るやうな雄大な心地が致しまして、実に壮快ですな』 日出神『いかにも壮快だ、人間は山へ上るに限る。かうして展開された四方の山や海を眼下に見下す心地よさは、丁度天教山から自転倒嶋を見下すやうだね。ヤヽ、あの煙を見られよ、ますます麗しき五色の彩になつたぢやないか』 面那芸『彼処は肥の国でせうかな』 日出神『さうだらう、何でもこの熊襲山の山脈を境に肥の国があつて、そこには武日向別[※建日向別のことか?]が守つてゐる筈だ。しかしながら常世神王の毒牙に罹つて、彼国の神人は又もや悪化してゐるかも判らない。一つ行つて宣伝をやつて見やうかな』 面那芸『それも結構ですが、良い加減に帰りませぬと、常世の国へ船は出て了ひはしますまいかな。こンな嶋に置いとけぼりを喰つては堪りませぬぜ』 日出神『何、構ふことがあるものか、何事も惟神だ。船はあれ計りじやない、また次の船が来るよ。折角神様の御計らひで常世の国へ行く積りが、こンな処へ押し流されたのだから、何か深い神界の御都合があるのだらう。我々は翌日の事は心配しなくてもよい。今と云ふこの瞬間に善を思ひ、善を言ひ、善を行つたらよいのだ。我々はその刹那々々を清く正しく勤めて行けばよい。取越苦労も過越苦労も、何にもならない。一息後のこの世は、もはや過去となつて吾々のものではない。また一息先といへども、それは未来だ。人間の分際で取越苦労をしたり、過越苦労をしたつて何にもならない。マア何事も神様に任したがよからうよ』 祝姫『貴神の仰せの通り、何事も惟神に任せませう』 面那芸『如何にもさうです、然らばぼつぼつ参りませう』 三人の宣伝使は、又もや宣伝歌を歌ひながら、五色の雲の立昇る山を目当に疲れた足を進ませ嶮しき山を下りゆく。 山の尾を伝ひ、谷に下り、また山に上り谷に下りつ進み行く折しも、何処ともなく人声聞え来たるにぞ、三人は人里近しと立停まつてその声を聞き入りぬ。 谷間には、数十人の以前の如き黒い顔の人間が、何事か囁きながら谷間の奇石怪岩をいぢつて居る。 甲『おい、詰らぬじやないか。毎日日日こンな重たい石を担がされて、腹は空るなり、着物は破れるなり、掠り疵はするなり、掠り疵はまだ宜いが、鈍公の様に岩に圧へられて、身体が紙の様になつて死ンで了つちや、たまつたものぢやないぜ。皆気を付けぬと、何時石に圧へられて、また鈍公のやうな目に逢ふかも知れないぞ。気を付けよ』 乙『気を付けるも良いが、貴様らは神さまを知つてゐるかい。神さまさへ信神すれば、怪我なンかしやしないよ。あの鈍公の野郎はな、俺が三五教の宣伝使の教を聞いて、「貴様も神様を信仰しないと、今日はえらい怪我をするぞ、貴様の顔には不審しい曇りが現はれて居る」と気をつけてやつたのに、鈍公の野郎「なに、神さまだ、そンなものが何処にあるかい。神さまがあるなら俺に逢はしてくれ、一目でも神の姿を見せて呉れたら本当にする。屁でさへも、姿見えでも音なりとするだらう。それに音もせねば声もなし、姿も見えず、そンな便りないありもせぬ神が信神できるかい。俺のとこには、立派な、ものもおつしやる、手伝うても下さる結構な嬶大明神といふ現実の神様が鎮座ましますのだよ。それに何ぞや、屁でもない神さまを信神せなぞと、雲を掴むやうなことを云ひよつて、人を馬鹿にするない、俺の目は光つて居るぞ、節穴じやないぞ」と劫託を吐き散らして、鼻唄を唄ひよつて、石運に行きよつた。さうすると彼の大きな岩奴が、鈍公の方にごろりと転けたと思ふが最後、きやつと一声この世の別れ、忌やな冥土へ死出の旅、気の毒なりける次第なりだ。貴様も、ちつと神さまを信神せぬと、また鈍公の二の舞だぞ』 斯く囁く折しも、三柱の宣伝使は宣伝歌を歌ひながら谷間に向かつて下りきたる。 (大正一一・二・一旧一・五井上留五郎録)
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霊界物語 07_午_日の出神のアフリカ物語 40 三人奇遇 第四〇章三人奇遇〔三四〇〕 熊公に連れられて、四人の宣伝使は宏大なる構への館に導かれ、種々の馳走は堆高く並べられぬ。数多の侍女は盛装を凝らして果物の酒を取り出し、四人の宣伝使を饗応したり。而して一行は宣伝歌を盛に歌ひ始むる。数多の侍女は松の小枝を手に手に携へて、歌に連れて淑やかに舞ふ。日の出神一行は長途の疲れをここに慰め元気は頓に回復したりけり。 日出神『貴下は熊公と仰せになつたが、初めてお目にかかつた時より、凡人ならじと睨ンでおきましたが、果して我が推量に違はず此国の大酋長なりしか、重ね重ねのお心遣ひ感謝の至りに堪へませぬ。我々は神伊弉諾大神の落胤にして、日の出神と申すもの、世の大立替に際し撞の大神は天の浮橋に立ち、それより天教山に降り玉ひて八百万の国魂の神を生ませ玉ひ、我々をして国魂神を間配らせ玉ふのであります。この後はどうか私の指揮に従つて貰ひたい』 と厳かに云ひ渡したり。 熊公『承知いたしました。私は熊公とは仮の名、国治立命の落胤、高照彦と申すもの、大神の御退隠後は八十熊別と名を変へてこの亜弗利加の原野に都を造り、時を待ちつつあつたものであります。時節の到来か神の御引き合せにて貴き日の出神様との今日の対面』 と云ひながら嬉し涙をボロボロと流しける。日の出神はこの物語を聞いて感に打たれ独語、 日の出神『あゝ神様は何処までも注意周到なものだナア。水も漏さぬ神の御仕組、何処の果に如何なる尊き神様が隠してあるか、分つたものでない』 と俯むいて首を傾け、暫くは物をも云はず溜息を吐く。 日の出神は三人の宣伝使に向つて、 日の出神『皆の衆、今の命のお言葉を聞きましたか。世の中にはどンな偉い神様が落ちてござるか分りませぬ。皆さまも是からは、どンな落魄た神でも人間でも侮る事は出来ませぬよ。あゝ今日は何たる結構な日であるか、高照彦といふ立派な神様がこの世界に隠してあるといふ事は、天教山の木花姫より承はつて居りました。何とかしてその御方に一度お目に懸り度と忘れた暇とては無かつたのです。今日は嬉しくも、斯も貴き御方に出遇ひ、何とはなしに心強くなりました』 末座に控へたる豊日別は立上り、扇を披いて松葉を左手に持ちながら、席上に立つて自ら歌ひ且つ舞ひ始めたり。 豊日別『久方の天津空より天降ります神伊弉諾の大神の 珍のかくしの御子とます光も清き日本の 日出る神の宣伝使我は輝く肥の国の 守の神と現はれて虎転別と名告れども その源をたづぬれば神素盞嗚の大神の 隠し給ひし珍の御子豊国別の神なるぞ 豊国別の神なるぞ世の荒浪に隔てられ 醜の曲霊に取り憑かれ身を持ち崩し虎転別の 虎狼や獅子熊に劣らぬばかり荒れ果し 心の空の村曇り曇りを晴らす日の神の 御胤と現れし宣伝使日の出神に救はれて 豊の御国の主宰神任けのまにまに出で来る 心の空ぞ涼しけれ』 と歌によそへてわが素性を明しける。日の出神も高照彦神も此奇遇に神恩の深きを感謝し、直に神籬を立て国治立大神、豊国姫大神、伊弉諾大神、撞の御柱大神を鎮祭し、天津祝詞を奏上し、一同歓びを尽して宴会を閉ぢたりにける。 此より日の出神は澄世姫命[※筑紫島の国魂が「澄世姫」と書かれているのはここだけ。他の箇所ではみな「純世姫」になっている。]の神霊を国魂として鎮祭し、豊日別をして豊の国の守護職となし、日の出神、高照彦神、外二人の宣伝使は筑紫を指して足に任せて勇み進み行く。 この島は身一つに面四つあり、豊国、肥国、熊襲国、筑紫国と区別され居るなり。しかしてこの四つの国を総称して又筑紫の洲といふなり。 (大正一一・二・二旧一・六加藤明子録)
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霊界物語 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 03 身魂相応 第三章身魂相応〔三五三〕 猿世彦、駒山彦双方一度に、清彦に掴みかかりし手を放して、猿世彦は、 『清彦、貴様は矢張り宣伝使だ。脱線したことを上手にベラベラと饒舌りよる。たとへ間違うてをつても、それだけ弁が廻れば穴があつても、塞がつて了ふワ。法螺の通る名詮自称の三五教の宣伝使様だよ。よう大きな法螺を吹いたものだ。一つ退屈ざましに聞かして貰はうかい』 清彦『宣伝使にお訊ねするのに聞かして貰はうかいとは失敬な、懸河の弁舌、布留那の雄弁者とは此方のことだよ。身魂も清き清彦の聖き教を耳を清めてトツクリと聴け』 猿、駒『偉い権幕だなあ、宇宙万有一切のことを説き諭すといふ宣伝使様だ。なんでも御存じだらう』 清彦『勿論のことだ。三千世界のことなら、何でも問うてくれ。詳細なる解決を与へて遣はすとは申さぬワイ』 猿世彦『三千世界で思ひだした。三五教には三千世界一度に開く梅の花、開いて散りて実を結ぶとか、時鳥声は聞けども姿は見えぬ、とかいふ教があるねー。ありや一体何といふことだい……ドツコイ……何といふことですか、謹んで御教示を承はりませう』 駒山彦『ソナイに叮嚀に言うと損がいくよ』 猿世彦『黙つてをれ、只で言はすのだもの』 駒山彦『貴様は猿世彦の他人真似を、また他処でしやうと思ふて訊くのだらう』 猿世彦『モシモシ清彦の宣伝使様、最前の三千世界の話を聞かして下さいナ』 清彦『エヘン、オホン、アハン』 猿世彦『また五十韻か』 清彦『俺の癖だ、マアしつかり聞け。三千世界一度に開く梅の花といふことはナ、今日の世の中は米喰ふ虫が沢山殖えてきて、おまけに遊ぶ奴ばかりで、米が足らぬ。一方には一年中米の顔を見たことの無い、草や木を食つてをる人間もあるのだ。それで神様は誰も彼も苦楽を共にせよと仰有つて、世界中がお粥を食へと仰有るのだよ。それも一ぺんに五膳も、八膳も食うてはいかぬ。一ぺんに三膳より余計はいかぬ。そこで三膳にせー粥一度といふのだよ』 猿世彦『成程それも面白いが、開く梅の花といふのは如何だい』 清彦『大きな口を開いて、五郎八茶碗に粥を盛つて、お前たちのやうな鼻高が粥を啜ると鼻が粥に埋つてしまふのだ。それで開く埋めの鼻だ。開いて散りて実を結ぶといふことは天井裏に鼠の走る姿の映るやうな薄い粥でも吸うとると、ちつとは米粒の実をスウのだ。それで大きな口を開いて、ちつと実をもスウといふのだよ』 猿世彦『人を莫迦にしよる。清彦、真面目に説教をせぬかい、またブンなぐるぞ』 清彦『貴様たちにコンナ高遠無量なる神界の経綸を話して聞かしたつて、耳の三五教だもの真正の事が耳に這入る様になつてから聞かして遣らう。この三五教は身魂相応に取れる教だから、初めて三つ子に聖賢の教を説いたところで、石地蔵に説教するやうなものだ。まして鱪や、蚯蚓の干乾に、真正のことを言うて堪るかい。身魂を早く研け、研いたら身魂相応の説教をしてやるワイ』 駒山彦『莫迦にしよるなイ。しかし長い浪の上の旅だから、軽口を聞くと思えば、辛抱ができる。モツト聞かしてくれ』 清彦『貴様らにわかる範囲内の講釈をしてやらうかい』 猿世彦『時鳥声は聞けども姿は見えぬといふことは、一体どういふことですかいナ』 清彦『そりや貴様の身体に朝夕ついてゐるものだ。粥を食ふと糞が軟かくなつて、雪隠にゆくとポトポトと音がするだらう。さうして後から芋粥の妄念がスーと出る。それで糞がポトポト、屁がスーだ。糞は肥料になつて利くから、こゑはきけどもだ。スーとでた屁の形は見えぬだらう。それで、スーとでた屁の姿は見えぬと神様が仰有るのだよ』 猿世彦『馬鹿ツ』 と大喝する。船客一同はワツと一度に笑ひさざめく。 このとき船の一隅より容貌温順にして、寛仁大度の気に充ち、思慮高遠にして智徳勝れ、文武両道兼備せるごとき一大神人は起つて宣伝歌を歌ひ始めけり。 (日の出神)『波風荒きアラビヤの筑紫の島を後に見て 神の御稜威も高砂の智利の都に進みゆく 恵も広き和田の原御稜威も深き海洋の 底ひも知れぬ皇神の仕組の糸に操られ 心も和ぎし波の上鬼城の山を後に見て 慣れにし里を猿世彦焦せる心の駒山彦が 流れてここに清彦の神の命の宣伝使 右と左に詰寄つて蠑螺の拳を固めつつ 痛々しくも打かかる身魂も清き清彦が 堪へて忍ぶ真心は皇大神の御心に 叶ひ奉らむ天津日の堅磐常磐に智利の国 襤褸の錦は纏へども心の空は照妙の 綾の錦に包まれて千尋の底の海よりも 深き罪科贖ひて今は貴き宣伝使 三五教を開きゆく吾は暗夜を照らすてふ 日の出神の宣伝使端なく此処に教の舟 心を一つに托生の救ひの舟に帆を上げて 荒浪猛る海原や黒雲つつむ常世国 天の岩戸を押開けて日の出神の神国と 造り固めむ宣伝使造り固めむ宣伝使』 と爽かに歌ひ出したる神人あり。清彦はこの声に驚き合掌しながら、日の出神の英姿を伏拝み、落涙に咽せびける。 (大正一一・二・六旧一・一〇高橋常祥録)
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霊界物語 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 16 霊縛 第一六章霊縛〔三六六〕 一行はブラジル峠の山頂に四辺の風景を眺めながら、下らぬ話に耽り居たり。涼しき風は吹き捲り、次第に烈しく周囲の樹木も倒れむ許りなりけり。蚊々虎は側の樹の根にしつかとしがみ付き、 蚊々虎『モシモシ宣伝使様、どうしませう。散ります散ります』 淤縢山津見『それだから蚊と言ふのだ。これつ許りの風が吹いたと云つて、木の根にしがみ付いて散ります散りますもあつたものかい。まるで酒でも注いで貰ふ時の様なことを言ひよつて、弱虫奴が、これから巴留の国へ行つたら、これしきの風は毎日吹き通しだよ。大沙漠を駱駝の背に乗つて横断しなくてはならぬが、貴様の様な弱いことでは、駱駝の背から蚊のやうに吹き飛ばされて了ふかも知れぬ。あーあ旅は一人に限るナ。コンナ足手纏ひを連れて居ては、後髪を牽かれて、進むことも、何うする事も出来やしない嫌な事だワイ』 蚊々虎『モシモシ宣伝使様、偉さうに仰有るな、後髪を牽かるると云つても、髪の毛は一本もありやしないワ。俺の頭を見やつしやれ、棕梠のやうな立派な毛が沢山と、エヘン、アハン』 淤縢山津見『貴様のは髪ぢや無いよ。それは毛だ。誠の人間には髪が生えるし、獣には頭に毛が生えるのだ。俺の頭は髪だぞ。髪と云ふ事は、鏡を縮めたのだ。よう光つとらうがな』 蚊々虎『蚊が止まつても辷り落ちる様な頭をして、神様も何もあつたものか。蚊が止まつて噛様だ。アハヽヽヽヽ』 淤縢山津見『何を言ふ。俺は勿体なくも頭照す大御神様だ。頭照す大御神様の御神体は八咫の御鏡ぢやといふ事は知つて居るだらう』 蚊々虎『ヘン、甘いことを仰有いますな。流石は宣伝使様。大自在天の一の御家来、悪い事ばかり遊ばして、根の国底の国に追ひやられて、終には国処を売つて、世界中を迂路つき廻つて、負け惜みの強い体のよい乞食だ。宣伝使様と云へば立派な様だが、乞食の親分見た様なものだ。頭照す大御神様も有つたものか。国処立退の命だ』 淤縢山津見『貴様にはもう暇を遣はす。これから帰れ。何と云つても連れて行かぬ』 (義太夫調) 蚊々虎『私を何うしても連れないと言ふのですか。それはあんまり無情い、胴欲ぢや。思ひ廻せば廻すほど、俺ほど因果な者が世に有らうか。常世の国に顕れませる、大自在天の其の家来、醜国別と歌はれて、空行く鳥も撃ち落す、勲もしるき神さまの、家来となつた嬉しさに、有らう事かあるまい事か、勿体ない天地の神の鎮まり遊ばした、ヱルサレムの宮を穢し奉り、その天罰で腰痛み、腰はくの字に曲り果て、蚊々虎さまと綽名をつけられ、今は屈みて居るけれど、元を糺せば尊き神の御血筋、稚桜姫の神の御子の常世姫が内証の子と生れた常照彦。世が世であれば、コンナ判らぬ淤縢山津見のお供となつて、重い荷物を担がされ、ブラジル山をブラブラと、汗と涙で駆け登り一息する間もなく、もうよいこれで帰れとは、実につれない情ない、善と悪とを立別る、神がこの世に坐ますなら、淤縢山津見の醜国別、体主霊従の宣伝使、義理も情も知らぬ奴、矢張り悪は悪なりき。猫を冠つた虎猫の蚊々虎さえも舌を捲いて、泣くにも泣かれぬ今の仕儀、どうして恨を晴らさうか、今は淤縢山津見と、厳めしさうな名をつけて、肝腎要の魂は、醜の枉津の醜国別、その本性が表はれて、気の毒なりける次第なり。それよりまだまだ気の毒なは、この山奥で只一人、足の痛みし蚊々虎に、放とけぼりを喰はすとは、ホンに呆れた悪魂よ。玉の緒の命の続く限り、こいつの後に引添うて、昔の欠点をヒン剥いて、邪魔して遣らねば置くものか。ヤア、トンツンテンチンチンチンだ』 淤縢山津見『こらこら蚊々虎、馬鹿な事を云ふな。貴様そら本性か、心からさう思つてるのか』 蚊々虎『本性で無うて何んとせう』 と手を振り口を歪め、身振り可笑しく踊り出したり。 淤縢山津見『ハヽヽ貴様は気楽な奴だナ。コンナ処で狂言したつて、見る者も、聞く者も有りやせぬぞ。誰に見せる積りぢや』 蚊々虎『お前は天下の宣伝使、これ丈沢山の御守護神が隙間もなしに聞いて居るのが分らぬか。俺はお前に聞かすのぢや無い。其処らあたりの守護神に、お前の恥を振舞うて行く先き先きで神懸りさせて、お前の欠点をヒン剥かす俺の仕組を知らぬのか。それそれそこにも守護神、それそれあそこにも守護神、四つ足身魂も沢山に面白がつて聞いて居る。夫れが見えぬか見えないか。お気の毒ぢや、御気の毒では無いかいな』 このとき幾十万とも知れぬ叫び声が四辺を圧して、蚊の鳴く如くウワーンと響きぬ。稍あつて幾十万人の声として、ウワハヽヽヽとそこら中から、声のみが聞え来たる。淤縢山津見は両手を組み、顔の色を変へ、大地に胡坐をかき、思案に暮るるものの如くなりけり。 蚊々虎は俄に顔色火の如くなり、両手を組みしまま前後左右に飛び廻り、 蚊々虎(国照姫が憑依)『くヽヽくにくにくに てヽヽてるてる ひヽヽめヽヽ くにてるひめ』 と口を切りぬ。 淤縢山津見は、直に姿勢を正し両手を組み審神に着手したり。 淤縢山津見『一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、百、千、万』 と、唱ふる神文につれて蚊々虎は大地を踏み轟かし踊り出したり。 淤縢山津見『汝国照姫とは何れの神なるぞ』 蚊々虎(国照姫が憑依)『キヽ鬼城山に立籠り、美山彦と共に常世姫の命の命令を奉じ、地の高天原を占領せむと、昼夜苦労を致した木常姫の再来、国照姫であるぞよ。その方は醜国別、今は尊き淤縢山津見司となりて、日の出神の高弟、立派な宣伝使、妾は前非を悔い木花姫の神に見出され、アーメニヤの野に神都を開くウラル彦と共に、発根と改心を致して今は尊き誠の神と成り、アーメニヤの野に三五教を開き神政を樹立し、埴安彦命の教を天下に布くものである。これより巴留の国に宣伝の為に出で行かむとするが、暫く見合して後へ引き返し、この海を渡つてアーメニヤの都に立帰れ。巴留の国は神界の仕組変つて日の出神自ら御出張、ゆめゆめ疑ふな。国照姫に間違は無いぞよ』 淤縢山津見は、全身に力を籠めて神言を奏上し、ウンと一声蚊々虎の神懸りに向つて霊光を放射したるに、蚊々虎は大地に顛倒し、七転八倒泡を吹きだしたり。 淤縢山津見『其方は邪神であらう。今吾々の巴留の国に到る事を恐れて、この蚊々虎の肉体を使つて、天下の宣伝使を誑かさむとする枉津の張本、容赦は成らぬ。白状いたせ』 蚊々虎(国照姫が憑依)『畏れ多くも日の出神の御使、国照姫に向つて無礼千万。容赦はせぬぞ』 淤縢山津見『容赦するもせぬも有つたものか、この方から容赦いたさぬ』 と云ひながら、又もやウンと一声、右の食指を以て空中に円を画き霊縛を施しければ、 蚊々虎(国照姫が憑依)『イヽ痛い痛い、赦せ赦せハヽ白状する。妾はヤヽ八岐の大蛇の眷属、八衢彦である。この巴留の国は妾らが隠れ場処、いま汝に来られては吾々仲間の一大事だから、国照姫が改心したと詐つて、汝をこの嶋よりボツ返す企みであつた。斯の如く縛られては何うすることも出来ぬ。サアもうこれから吾々一族は、ロッキー山を指して逃げ行く程に、どうぞ吾身の霊縛を解いて下さい。タヽ頼む頼む』 淤縢山津見『巴留の国を立去つて海の外に出て行くならば赦してやらう。ロッキー山へは断じて行く事ならぬ。どうだ承知か』 蚊々虎の神懸りは、首を幾度とも無く無言のまま縦に振つてゐる。淤縢山津見は、ウンと一声霊縛を解けば、蚊々虎の身体は元の如くケロリとなほり、流るる汗を拭ひ乍ら、 蚊々虎『あゝ偉い事だつたワイ。何だか知らぬが俺の身体にぶら下りよつて、ウスイ目に逢うた。サアサア宣伝使様、もういい加減に行きませうかい。コンナ処に居つては碌なことは出来ませぬよ』 と正気に帰つた蚊々虎は先に立つてブラジル山を西へ下り行く。 (大正一一・二・八旧一・一二東尾吉雄録)
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霊界物語 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 32 朝の紅顔 第三二章朝の紅顔〔三八二〕 珍山峠の谷間には、神の仕組か、偶然か、此処に不意くも温泉の側に邂り合ひ、滾々として尽きざる神の恵の温かき温泉に、日七日夜七夜、心身を浄め、又もや一行五人は神言を奏上し、宣伝歌を歌ひながら、徐々とこの峠を登り行く。漸く一行は珍山の山頂に到達したり。 蚊々虎は、 蚊々虎『アヽアヽ、苦中楽あり、楽中苦あり、苦楽不二、善悪一如とは能く言うたものだ。汗をタラタラ流して苦しみてをれば、結構な温泉がチヤンと吾々に湯を湧かして「サア皆さま、永々御苦労であつた。嘸々お疲労でせう」とも何とも言はずに、不言実行の手本を見せて居る。又復この坂を汗みどろになつて登つてくれば、コンナ結構な平坦な土地があつて、涼しい風が吹いて来るワイ。極楽の余り風だ。本当に苦しまぬと、楽の味は判らぬワイ』 駒山彦も、 駒山彦『本当に結構だつた。○○[※御校正本・愛世版では「○○」と伏せ字になっているが、校定版・八幡版では「睾丸(きんたま)」という文字が入っている。]の皺伸ばしだつたよ。貴様の面も余程皺が取れたよ』 蚊々虎は、 蚊々虎『馬鹿を言ふない、俺は素から皺ナンテ有りやしないよ。貴様は何時も弱虫だから、一寸した事にでも顔を顰めよるから、自然に皺だらけだ。オイ勘定をして見よ、沢山な皺だぞ。四八三十二も寄つてるわ』 駒山彦『よく饒舌る奴だなあ、口が千年ほど先に生れたのだらう』 蚊々虎『山に千年、海に千年、口に千年といふ劫を経た兄さまだよ』 駒山彦『蟒みたいな奴だな。三千年経つて、初めて人間に生れると言ふのだが、貴様は何時人間に成るのだい』 蚊々虎『人間どころか、俺は神さまだよ』 駒山彦『さうだらう。蚊だとか蚤だとか、虎だとか、虫のやうな、四つ足のやうな名をつけよつて、それで神様か。人の頭に止まつて、頭をカミ様。人間を引き裂いて喰ふ神様だらう』 蚊々虎『ヤイ、駒、貴様却々口が達者に成りよつたな。何時の間にか俺のお株を奪りよつて』 駒山彦『決つた事だ、名からして駒さまだ。駒の如くに言霊がよく転ぶのだよ』 正鹿山津見は、立つて東南方を指さし、 正鹿山津見『淤縢山津見様、ズツと向ふに青々とした高山が見えませう、彼の国が珍の国ですよ。私は日の出神様に、「珍の国を守れよ」との厳命を受けました。然しながら、まだ外に尊い国がある様に思へて、何うしても気が落ちつかず、この峠をドンドンと登つて、夜を日に次いで巴留の都へ宣伝に行つたのです。さうした処が、今度は神様の戒めだと見えて、散々な目に逢ひ、お蔭で生命だけは助かりました。これを思へば、吾々は我を出すことは出来ませぬ。ただ長上の命令に従つて、神妙にお勤めするに限ると、ほとほと改心いたしました』 蚊々虎『アンナ細長い珍の国に、ウヅウヅして居るのも気が利かないと思つたのでせう。まだ外に結構な国が亜拉然丁と思つて、欲の熊鷹、股が裂けたと云ふ様なものですな、正鹿山津見さま』 淤縢山津見は、 淤縢山津見『コラコラ蚊々虎、貴様は直にそれだから困る。何故それほど言霊が汚いのか』 蚊々虎『これは怪しからぬ。貴方は私の発言権を妨害するのですか』 淤縢山津見『いや、さうではない。あまりお喋りが過ぎると声が草臥れて、まさかの時に言霊の力が弱ると困るから気をつけたのだよ。それよりも峠に上つた祝に、気楽な世間話でもして、悠くりと休まうかい』 蚊々虎『ドンナ話でも宜しいか、貴方は発言権を決して止めませぬな』 淤縢山津見『宜しい宜しい、何なと仰有れ。貴方の好きな話を、静に面白く願ひます』 蚊々虎『静に面白く話が出来ますか。貴方は無理を言ひますね。丁度、黙つてもの言へ、寝て走れ、睾玉喰はへて背伸びせよ、と云ふやうな御註文ですな。如何に雄弁家の蚊々虎でも、それ計りは御免だ』 淤縢山津見は、 淤縢山津見『さう気を廻して怒つては困る。何でもいい、一寸位大きな声でも構はぬ』 蚊々虎は、芝生の上に大胡座をかき、 蚊々虎『エヽ、人間もいい加減に片付く時には片付くものだ。ある処に祝姫と云ふ古今独歩、珍無類、奇妙奇天烈、何とも彼とも言うに言はれぬ、素適滅法界の美人があつた。そのお姫さまを、彼方からも此方からも、女房にくれ、夫にならうと矢の催促であつたが、祝姫は、自分の容色に自惚れて、私は天下絶世の美人だ、アンナ人の嫁になるのは嫌だ、アンナ男を婿に取るのは、提燈に釣鐘だ、孔雀の嫁に烏の婿だ、あまりこの美人を見損ひするな。私もこれから、天下の宣伝使になつて一つ功を建て、偉い者になつた暁は、世界中の立派な男の、権威のある婿を選り取りすると言つて、どれもこれも、こぐちから肱鉄砲を乱射して居た。さうする間に、桜の花は何時までも梢に止まらず、 花の色はうつりにけりな徒らにわがみ世にふるながめせしまに と何処やらの三五教とか、穴ない姫とかが言つた様に、段々と顔に小皺が寄つて昔の色香は、日に月に褪せて了つた。それでも、何処やらに残る姥桜の其色は、実に素適滅法界のものだつた。祝姫は、何これでも偉者となりさへすれば、世の中は一ホド、二キリヨウ、三カネだと言つて、高く止まつて居つたが、たうとう天罰が当つて、私によう似た名の付いた、蚊取別といふ天下一品の禿ちやまの瓢箪面のヘツピリ腰の禿だらけの男と夫婦になつて、宣伝使になつた実際の話があるよ。五月姫さまも、いい加減に覚悟をせぬと、朝の紅顔、夕べの白骨で、見返る者は無いやうに成つて、清少納言の様に門に立つて、妾の老骨を買はぬかと言つたつて、買手が無くなつて了ひますよ』 駒山彦は吹き出し、 駒山彦『アハヽヽヽ、うまいのう、イヤ感心だ。然し蚊々虎、心配するな。此間も貴様が天狗と喧嘩すると云つて駆出した後で、五月姫さまが、「蚊々虎さまは本当に色こそ黒いが、快活な人ですね。妾あの人と一緒に宣伝に行くのなら、一寸も苦い事はありませぬわ。面白くて旅の疲労も忘れて了ふ」と言つていらつしやつたよ、ねえ五月姫さま、さうでしたね』 と顔を覗き込む。 五月姫は、顔に袖をあてて愧かしげに伏向く。 蚊々虎『ヘン、天下の色男、俺の吸引力は豪いものだらう』 正鹿山津見『あゝ蚊々虎さまの弁舌といひ、勇気と云ひ、さう無くては天下の宣伝使には成れませぬ。吾々のやうに、巴留の都へ行つて、宣伝歌を歌つて居ると、後に目が無いから、駱駝隊にグサリと突かれて、芋刺と成り、沙漠の中へ放り込まれる様なことでは、宣伝使も何もあつたものではない。これから一つ、蚊々虎さまに傚つて、胆玉でも練りませうかい』 駒山彦は、 駒山彦『おい蚊々公、お目出度う』 蚊々虎『エー妬くない』 駒山彦『妬くないと云つたつて、天道様も焦つくほど俺らの頭を焼くではないか。焼くのは此頃の陽気だよ。あまり暑いので、貴様は一寸逆上せ上つたな。水でもあれば頭からブツかけてやるのだが、生憎山の頂辺で水も無し、幸福な奴だワイ』 淤縢山津見『サアサア皆さま汗も大分乾きました。これからぼつぼつ峠を下りませう』 と言ひつつ先に立つて、淤縢山津見は歩き出した。 蚊々虎『あゝあゝ、肝腎の正念場に気の利かぬことだワイ』 と蚊々虎は小声に呟き、振返り振返り、五月姫の顔を窃み目に眺めつつ坂を下る。 (大正一一・二・九旧一・一三東尾吉雄録)
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霊界物語 09_申_松竹梅の宣伝使の南米・中米の旅 05 海上の神姿 第五章海上の神姿〔三九八〕 数十艘の大船小船は真帆に風を孕んで、堂々と陣容を整へ進み来る。三笠丸は風に逆らひながら、櫂の音高く進み行く。向ふの大船には、気高き女神舷頭に立ちあらはれ、涼しき瞳滴るが如く、楚々たる容貌、窈窕たる姿、いづこともなく威厳に満ち東天を拝して何事か祈るものの如くなり。傍に眉秀で鼻筋通り、色飽くまで白く、筋骨たくましく、眼光炯々として人を射る大神人立ちゐたり。船中の人々は期せずして此の一神に眼を注ぐ。 (日の出神)『限りも知れぬ波の上救ひの船をひきつれて 黄泉の国におちいりし百の身魂を救ひ上げ 仰ぐも高き天教の山にまします木の花姫の 神の命の御教をあをみの原の底までも 宣べ伝へゆく宣伝使神伊邪那美の大神の 御許に仕へ奉る吾は日の出神司 醜のあつまる黄泉島黄泉軍を言向けて 世は太平の波の上皇大神に従ひて 救ひの神と顕現し善と悪とを立別る この世を造りし神直日心もひろき大直日 直日のみたまを楯となし厳のみたまや瑞みたま 並んで進む荒海の波をも怖ぢぬ荒魂 風も鎮まる和魂世人を救ふ幸魂 暗世を照す奇魂茲に揃うて伊都能売の 神の命の神業は山より高く八千尋の 海より深き仕組なり海より深き仕組なり』 と歌ふ声も風にさへぎられて、終には波の音のみ聞えけり。照彦はこの歌に耳をすませ、頭を傾け、 照彦『モシ松代姫様、今往きちがひました船の舷頭に立てる二人の神様は、恐れ多くも伊邪那美の大神様と、天下に名高き日の出神様でありませう。幽かに聞ゆる歌の心によつて、慥に頷かれます。伊邪那美の命様は、根の国、底の国へお出で遊ばし、最早や此の世に御姿を拝することの出来ないものと、私共は覚悟致してをりました。然るに思ひもかけぬ此の海原で、伊邪那美の神様にお目にかかるといふは、何とした有難い事でございませうか。あゝ実に、貴女様はお父上を探ねてお出で遊ばす船の上で、あの世へ一旦行つた神様が、再び此の世へ船に乗つて現はれ、何処かは知らぬが東を指してお出ましになつた事を思へば、お父上に御面会遊ばすのは決して絶望ではありませぬ。否お父上のみならず、母上も御無事でゐらつしやるかも分りませぬ。何と今日は目出度い事でございませう』 松代姫『あゝ、あの気高い御姿を妾は拝んだ時、何とも言へぬ崇高な感じがしました。又日の出神様とやらのお姿を拝した時は、何となくゆかしき感じがして、わが父上の所在を御存じの方のやうに思はれてなりませぬ。もしや父上は、あのお船にお乗り遊ばして御座るのではあるまいか。あゝ何となく恋しい船だ』 と少しく顔の色を曇らせながら物語る。竹野姫は、 竹野姫『お姉さま、お父さまに会はれた上に、又お母さまに会へるやうなことが御座いませうかな』 梅ケ香姫は静に、 梅ケ香姫『妾のいつもの夢に、お父さまには何時も会へますが、お母さまに会つても、何だか妙な霞に包まれてハツキリ致しませぬ。神様のお蔭で父上にはめぐり会ふ事は出来ませうが、お母さまに会ふといふ事は覚束ないでせう』 主従四人は斯くの如き話を船の片隅でひそひそとしてゐる。船中の無聊に堪へかねて、腰の瓢から酒をついで、互に盃を交す三人の若者あり。追々と酔がまはり、遂には巻舌となり、 甲『タヽヽヽヽ誰だい。この荒い海の中で、死んだお母さまに会ひたいの、会はれるのと言ひよつて、縁起の悪い。ここは何処だと思つてるのかい、太平洋の真中だぞ。三途の川でも血の池地獄でもないワ。死んだ者に、それ程会ひたきや、血の池へでも舟に乗つて渡らぬかい。クソ面白くもない。折角甘い酒がマヅくなつて了ふワ』 乙『貴様、酒飲むと、ようグツグツ管を巻きよる奴だな。何でも彼でも引つかかりをつけ人様の話を横取りしよつて、何をグツグツ喧嘩を買ひよるのだ。あのお方はな、貴様のやうな素性の卑しい雲助のやうな奴とは、テンからお顔の段が違ふのだ。なんだ、仕様もない雲助野郎が、訳の分らぬ事を言つて、寡婦の行水ぢやないが、独りゆうとるワイと心の中で笑つてゐらつしやるのかも知れぬぞ。それだから貴様と一緒に旅をするのは御免だといふのだ。酒癖の悪い奴だな。アフリカ峠を痩馬を追ふ様に、酒を飲まぬ時にはハイハイハイハイと吐かしよつて、屁ばかりたれて、本当に上げも下しもならぬ腰抜けのツマらぬ人間だが、酒を食ふと天下でも取つたやうな気になつて、何をほざくのだ、身の程知らず奴が。一体あのお方はどなたと思つてるのか。恐れ多くもヱルサレムの宮に天使長をお勤め遊ばした結構な神様の箱入娘さまだぞ』 甲『ナヽヽヽ何だ、箱入娘だ、箱入娘がものを言ふかい。馬鹿な事を吐かすな。箱入娘なら俺の所には沢山あるワ。娘ばかりか箱入息子も箱入爺さまでも箱入婆さまでも箱入牛まで、チヤーンととつといてあるのだ』 乙『それは貴様、間違つてケツかる、人形箱の事だらう』 甲『さうだ、人形だつたよ。人形がものを言うて堪るかい』 乙『やア、その人形で思ひだしたが、この海には頭が人間で体が魚で、人魚とかいふものが居るさうだぞ。そいつを漁つて料理して喰ふと、千年経つても万年経つても年が寄らぬといふことだ。一つ欲しいものだのう』 丙『やかましう言ふない。折角の酔が醒めて了ふぢやないか。人の眼の前に立ち塞がりよつてな、エーせめて俺の眼の邪魔なとすない。俺は最前からな、あの三人の三日月眉毛の花のやうな美しいお姿のお姫様のお顔を、チヨイチヨイと拝んで、それをソツと肴にして楽しんでをるのだ。そんな所に立つてガヤガヤ吐かすと、眼の邪魔になるワイ』 かく話す折しも、船底に怪しき物音聞え来る。一同は、 一同『ヤア何だ』 と驚いて一度に立上る。船頭は力なき声にて、 船頭『お客さま達、皆覚悟をおしなさい。もう駄目だから』 甲『ダヽヽヽダメだつて、ナヽヽヽ何がダメだい。ベヽヽヽ別嬪がダヽヽヽダメと言ふのかい』 船頭は大声で、 船頭『船が岩に打つかつたのだ。裸になつて飛び込め、沈没だ沈没だ』 船内一同は一時に阿鼻叫喚の声と化し去りぬ。あゝ松竹梅の手弱女一行の運命は如何。 (大正一一・二・一二旧一・一六桜井重雄録)
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霊界物語 09_申_松竹梅の宣伝使の南米・中米の旅 15 団子理屈 第一五章団子理屈〔四〇八〕 三五の月は昇れども、山と山との谷間は、黒白も分かぬ真の暗、空せまく地狭き谷底に、三人の宣伝使は端坐し、首ばかり動かし居る折柄、何処ともなく虎狼の唸るやうな声、木霊を響かせ聞え来る。 声『ウーオー』 駒山彦『イヤー虎か狼か、どえらい声が聞えて来た。淤縢山津見さま、神言でも上げませうか』 淤縢山津見『ヤー、仕方がない、神言を奏上しませう』 照彦『カヽヽ神を松魚節に致す宣伝使、かなはぬ時の神頼み、「神言でも」とは何だ。それでも宣伝使か、でも宣伝使。稜威輝くてるの国、珍はてるてるはる山曇る、オツトドツコイ淤縢山くもる、駒山彦は雨降らす、雨は雨だが涙の雨だ。かなしさうな其面つき、仮令からだは八つ裂になつても、神のためなら、チツトもかまはないと言ふ覚悟がなくて、誠の道が開けるか、カラ魂のさかしら魂、神の心も推量して呉れても宜からう。少しの艱難辛苦に遭うても、尻を捲つて雲をかすみと逃げ行く宣伝使、からすのやうな黒い魂で誠の神をかついで、勝手なねつを吹き歩くがとう虫奴が。かてて加へて蟹が行く横さの道を歩みながら、吾程誠の者はない、誠一つが世の宝、誠をつくせ、真心になれと、かたる計りの宣伝使。 からすのやうに喧ましい蚊々虎さまの素性も知らず、軽い男と侮つて、汗かき、耻かき、頭かき、かばちの高い、カラ威張りの上手な神の使ひ、カラと日本の戦があるとは、汝らが御魂の立替へ立直し、今までのカラ魂を、オツ放り出して、水晶の生粋の日本魂に立替へいと申すことだ。喧しいばかりが宣伝使でないぞ。改心いたせばよし、どこまでも分らねば、神はモウ一限りに致すぞよ。何程気の長い神でも、愛想が尽きて、欠伸が出るぞよ』 駒山彦『カヽヽ叶はぬ叶はぬ、勘忍して下さいな。是から改心致しますから、モウ吾々の事に構ひ立てはして下さるなよ。かいて走るやうな掴まへ処のない意見を聞かされて、アヽ好い面の皮だ』 照彦『キヽヽ貴様は余程しぶとい奴、此方の申すことが気に入らぬか。奇怪千万な駄法螺を吹き廻つて、良い気になつて気楽さうに、宣伝歌を歌ひ、気まぐれ半分に、天下を廻る狼狽者、気抜け面して、気が利かぬも程がある。鬼門の金神現はれて善と悪とを立別る。鬼畜のやうな、気違ひ魂の宣伝使は、世の切り替にキツパリと取払ひ、根から葉から切つて了ふぞよ。貴様の気に入らぬは尤もだ。ひどい気強い鬼神のやうな言葉と思ふであらうが、よく気を付けて味はうて見よ。きくらげのやうな耳では神の誠の言葉は聞き取れまい。気が気でならぬ神の胸、いつまでも諾かねば諾くやうに致して諾かして見せうぞよ。汚ない心をさつぱり放かして、誠の神心になり、万事に対して機転を利かし、心配り、気配りの出来ぬやうな事では、気の利いた御用は到底勤まらぬぞよ。きなきな思はず気に入らいでも、歯に衣を着せぬ神の言葉、是から気張つて気分を改め、気不性な心を立直し、気随気儘をさらりと放かし、神と君とに誠を尽し、気六ツかしさうな面をやはらげ、心を決めて荒胆を練り、キヤキヤ思はずキユウキユウ苦しまず、心を清め身を浄め、誠の神に従へば気楽に道が拡まるぞよ。キチリキチリと箱さした様に行くぞよ。神を笠に着るなよ。抜刀や刃物の中に立つて居る様な心持になつて、油断を致すな。窮まりもなき神の恩、万の罪咎も神の光りに消え失せて、身魂は穏かに改まり、さうした上で始めて三五教の宣伝使だ。どうだ、分つたか』 駒山彦『キヽヽ気が付きました。気張つて気張つて是から早く改心を致します。此気味の悪い谷底で、奇妙奇天烈な目に逢うて気を揉まされて、何たるマア気の利かぬ事だらう。神の気勘に叶うた積で、気張つて気張つて心配り気配りして、此処まで勤めて来たのに、思ひがけなき気遣ひをさされた。サア、もうキリキリと決りをつけて、来た道へ帰らうかい。淤縢山津見さまも何だ、一体気の小さい、おどおどとして顫うて居るぢやないか。ナント膽玉の弱い男だな。こんな所に長居をすると、猿の小便ぢやないが、先のことが気にかかるワ』 淤縢山津見『きまりの悪い、不気味な態でキツウ膏を搾られました。際どいとこまで素破抜かれて、アー俺も気が気ぢやないワ。ドウデ吾々は神様の気に入るやうな宣伝はできては居らぬからなア』 照彦『クヽヽ苦労なしの、心の暗い暗雲の宣伝使』 駒山彦『モシモシ、クヽ暗がりにそんな下らぬ事を、モヽモウ是位で止めて下さい』 照彦『苦しいか、苦面が悪いか、臭い物に蓋をしたやうに隠し立てしても、何程クスネようと思うても、四十八癖のあらむ限りは改めてやるぞ。下らぬ理屈を口から出放題、グヅグヅグデグデとクドイ理屈を捏並べ、一つ違へばクナクナ腰になつて、一寸した事でも苦にするなり、委しき事も知らずに、喰ひ違つた御託を並べ立て、九分九厘で覆るの覆らぬの、一厘の仕組をくまなく悟つたの、汲み取つたのと、そりや何の囈語、汲めども尽きぬ神の教、大空の雲を掴むやうな掴まへ所のない、駄法螺を吹いたその酬い、悔し残念をコバリコバリ、今までの取違ひを悔ひ改め、クヨクヨ思はずに神の光を顕はし、闇黒の世を照し、また来る春の梅の花、開く時を呉々も待つがよいぞよ。クレンと返る神の仕組、苦労の花の開く神の道、委しいことが知りたくば、悔い改めて神心になれ。噛んでくくめるやうに知らして置くぞよ』 駒山彦『クヽヽクドクドしいお説教、モヽ分りました分りました、結構で御座います。決して決してモウ此上は取違ひは致しませぬ。何卒これで止めて下さいませ、さうして吾々三人の身体を自由になるやうにして下さい』 照彦『ケヽヽ結構々々とは何が結構だ。毛筋の横巾も違はぬ神の教だ。決心が第一だ。道を汚してはならぬから、神が気もない中から気を付けるのだ。怪体な心を取直し、ケチケチ致さず、神心になつて居らぬと、獣の身魂に欺されて、尻の毛まで一本もないやうにしられるぞよ。嶮しき山を上り下りしながら、毛を吹いて疵を求めるやうな其行り方、従者を連れたり、女を伴れたり、そんな事で神の教が拡まるか、毛虫よりも劣つた宣伝使』 駒山彦『ケヽヽ怪体なことを言ふ神だな。淤縢山さま、如何しよう。耳が痛くつて、面白くもない、コンナ目に遇はされやうと思うたら、宣伝に廻つて来るぢやなかつたに、アヽ何と宣伝使は辛いものぢやなア。毛色の変つた照彦のやうな男が来るものだから、コンな怪体な谷底で、眉毛を読れ、鼻毛を抜かれ、尻の毛まで抜かれるやうな、怪しからぬ目に遇うて、谷底へ蹴落されて、けがしたよりも余程つまらぬ目に遇ふのか。お前さまは頭が坊主だから、けがなくてよからうが、駒山彦は二進も三進もならぬ目に遇うて、困り切つてゐるワイ』 照彦『コヽヽ駒山彦、何を言ふか、乞食芝居のやうに、男女七人連にてゴテゴテと、此処彼処ゴロツキ廻る宣伝使、神は勘忍袋が破れるぞよ。此世の鬼を往生さして、神、仏事、人民を悦ばす神の心、耐へ忍びのない心の定まらぬ、破れ宣伝使が何になるか。梢に来て鳴く鶯でも、春夏秋冬はよく知つて居るに、応へたか、此方の云ふ事が分つたか。コツコツと角張つたもの言ひをしたり、ゴテゴテと小理屈を捏ねたり、事に触れ物に接し、下らぬ理屈を捏ね廻し、人の好まぬ事を無理に勧め、怖がられて強い物には媚び諂ひ、後先真暗の神を困らす駒山彦の宣伝使、米喰ふ虫の製糞器、菰を被つた乞食のやうに、一寸の苦労に弱音を吹き、泣き声をしぼり、モウこいつあ叶はぬ、宣伝はコリコリだと弱気を出したり、怖い顔して威張つて歩く狼狽者の得手勝手なねつを吹くお取次ぎとは、おどましいぞよ。鬼も大蛇も狼も恐れて、尾を振つて跣足で逃げる、イヤ逃げぬ、心の小こい腰の弱い困り者の駒山彦の宣伝使』 駒山彦『サヽヽ囀るない、サツパリ分らぬ事を喋り散らしよつて、態が悪いワイ。逆捻に俺の方からちつと囀つてやらうか、余り喋ると逆トンボリを打たねばならぬぞよ。先にある事を世界に知らす、三五教の悟りのよい流石は宣伝使だ』 照彦『サヽヽ騒がしいワイ』 駒山彦『アヽヽ五月蝿いなア、サツパリ油を搾つて了ひよつた。さてもさても残念なことぢや』 照彦『サアサアサア是からだ。賽の河原で石を積む、積んでは崩す積んでは崩す気の毒な尻の結べぬ宣伝使。月は御空に冴え渡れども、心は暗き谷の底、足許は真暗がりで谷底へ逆トンボリを打たねばならぬぞよ。神の申すことを逆様に取るとはソリヤ何の事、先へ先へと知らす神の教、先の知れぬ宣伝使が、神を審神するといふ探女のやうな、御魂の暗い奴、酒と女に魂を腐らし、やうやう改心致して俄宣伝使になつたとて、サヽそれが何豪い。差添の種ぢやと威張つて居るが、何も彼も差出の神か、イヤ狸だ。流石の其方も神の申す今の言葉、指一本指す事は出来まい。早速開いた口は閉まろまいぞよ、沙汰の限りぢや。サタン悪魔の虜となつても、サツチもない事を触れ歩き、偖も偖も悟りの悪い二人の宣伝使、蚕のサナギのやうに、一寸の事にもプリンプリン尾を振り頭を振り、盲目滅法の審神を致し、本守護神だ、正副守護神だと騒ぎ廻り、日本御魂の両刃の剣はサツパリ錆刀。探り審神者の向ふ見ず、様々の曲津に欺かれ、えらい目にあはされながら、まだ目が醒めぬか。之でも未だ未だ我を張るか。偖もさもしい心だのう。塞ります黄泉彦神の曲の使を信じ、よくもよくも呆けたものだ。今からさらりと我を折りて、慢心心を洗ひ去り、各自に吾身を省みて、猿の尻笑ひを致すでないぞ。耻を曝されて頭を掻くより、褌でもしつかりとかけ。騒ぐな、囀るな、冴えた心の望の月、サアサア淤縢山津見、駒山彦、神の申す事がチツトは腹に入つたか』 駒山彦『シヽヽヽしぶいワイ。うかうか聞いてをれば面白くもない、こんな谷底でアイウエオ、カキクケコの言霊の練習をしよつて、余り馬鹿にするない。言霊なら俺も天下の宣伝使ぢや、負けはせぬぞ。言ふ事はどんな立派な事を言つても、行ひは照彦ぢやで、さう註文通りには行くものぢやない。スカ屁を放つた様な事を吐しよつて、せんぐりせんぐりと、ソヽヽそろそろと棚おろしをしやがつて、チヽちつとも応へぬのぢや。ツヽ詰らぬ事を、テヽヽ手柄さうに、トヽヽ呆けやがつて、ナヽヽ何を吐しやがるのだ。ニヽヽ憎つたらしい、ヌヽヽ抜けたやうな声で、ネヽヽ根も葉もないやうな事を、ノヽヽ述べ立て、ハヽヽ腹が承知せぬワイ。ヒヽヽ昼ならよいがコンナ暗の夜に、フヽヽ悪戯た事を、ヘヽヽ屁のやうに、ホヽヽ吐きよつて、マヽヽ曲津神奴が、ミヽヽみみず奴が、ムヽヽ虫ケラ奴が、メヽヽ盲目奴が、モヽヽ百舌の親方奴が、ヤヽヽ八ケ間しい、ややこしい、イヽヽ嫌な事をユヽヽ云ひよつて、エヽヽ得体の知れぬ、ヨヽヽ黄泉神奴が、ラヽヽ埒もない、リヽヽ理屈を捏ねよつて、ルヽヽ類を以て曲津を集めよつて、レヽヽ連発する、ロヽヽ碌でなしの世迷言、ワヽヽ分りもせぬ、イヽヽいやらしい、イケ好かない事を、ウヽヽ呻り立て、エヽヽエー、モー恐ろしい処か、をかしいワイ。お化の大蛇の神憑奴が』 照彦『シヽヽ』 駒山彦『またシーやつてけつかる。縛つてやらうか、虱の守護神奴が』 照彦『シヽヽ思案して見よ、虱の親方、人の血を吸ふ毛虫の駒山彦、執念深い宣伝使、修羅の巷に踏み迷ひ、後先見ずの困つた駒山彦。叱られる事が苦しいか、叱る神も随分苦しいぞ。シカと正念を据ゑてシツカリ聞け。敷島の大和の国の神の教に、シヽヽ如くものはないぞ。醜の曲津に誑らかされ、汝が仕態は何事ぞ。獅子、狼の様な心をもつて、世界の人間が助けられるか、至粋至純の水晶の心になれ。下の者を大切に致せよ。しち難かしい説教を致すな。シツカリと胸に手をあて考へて見よ。一度は死なねばならぬ人の身、死んでも生き通しの霊魂を研けよ。屡々神は諭せども、あまり分らぬから神も痺をきらして居るぞよ。しぶといと言うてもあんまりだ。終ひには往生致さねばならぬぞよ。シミジミと神の教を考へて見よ。腹帯をシツカリ締めて掛れよ。霜を踏み雪を分けて世人を救ふ宣伝使、知らぬ事を知つた顔して、白々しい嘘言を吐くな。尻から剥げるやうな法螺を吹くな。知ると言ふ事は神より外にないぞよ。天地の事は如何な事でも説き明すとは、何のシレ言、困つた代物ぢや。嗄れ声を振り立てて神言を奏上したとて、天地の神は感動致さぬぞよ。身魂を研けよ、身魂さへ研けたなら、円満清朗な声音が湧いて来るぞよ。強ひて嫌なものに勧めるな。因縁なきものは時節が来ねば耳へ入らぬ。修身斉家、治国平天下の大道だと偉さうに申して居れど、吾身一つが治まらぬ、仕様もない宣伝使、何が苦しうてシホシホと憔悴れて居るか。荒魂の勇みを振り起して、モツト勇気を出さぬかい』 駒山彦『シヽヽシツカリ致します。奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の、声聞く時は哀れなりけり、だ。えらい鹿に出会してしかられたものだい』 淤縢山津見『ヤア、拙者は脚が起つた、身体が自由になつた、大分に魂が研けたと見えるワイ。いやもう何れの神様か存じませぬが、よくもまあ結構な教訓を垂れさせられました。屹度之から心を入れ替へて、御神慮のある処を謹しんで遵奉致します』 駒山彦『ヤア淤縢山さま、脚が起ちましたか、アヽそれは結構だ。吾々はまだビクとも致しませぬ、胴が据つたものですな』 淤縢山津見『貴方は最前から聞いて居れば一々神様に口答へをなさる、貴方は発根からまだ改心は出来て居ない。改心さへ出来たならば吾々の様に、神様は脚を起たして下さいませう。何卒早く屁理屈を止めて改心して下さい』 駒山彦『カヽヽ改心と言つたて、照彦の様な奴さまに憑つて来る様な守護神の言ふ事が、如何して聞かれるものか、神霊は正邪賢愚に応じて憑依されるものだ。大抵此肉体を標準としたら、神の高下は分るでせう』 照彦『スヽヽ直様、淤縢山津見は脚が起つたをきりとして、カルの国に進んで行け。道伴れは決してならぬ』 淤縢山津見『仰せに従ひ改心の上、直様参ります。今まではえらい考へ違ひを致して居りました』 照彦『一時も早く、片時も速に此場を立去れ』 駒山彦『アヽ淤縢山さま、それはあまり得手勝手だ。自分は脚が起つてよからうが、吾々の様な脚の起たぬ者を見捨てて行つても、神の道に叶ひませうか。朋友の難儀を見捨てて何処へ行くのです。神の道は、親切が一等だと聞きました。それでは道が違ひませう』 照彦『駒山彦の小理屈は聞くに及ばぬ、早く起つて行け。駒山彦の改心が出来るまで、此方が膏を搾つてやらうかい』 淤縢山津見は徐々と此場を立ち去らむとする時、三五の明月は山頂に昇り、細き谷間を皎々と照せり。淤縢山津見は此月光に力を得、宣伝歌を歌ひながら谷道を伝ひて、もと来し道を下り行く。 (大正一一・二・一四旧一・一八森良仁録)
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霊界物語 09_申_松竹梅の宣伝使の南米・中米の旅 25 窟の宿替 第二五章窟の宿替〔四一八〕 神の御稜威も高照の山より落つる琴滝の 響に飛び散る玉川や水音清き渓流の 右と左に千引岩堅磐常磐の巌窟に 千代の言霊宣り伝ふ神の恵も大蛇彦 教は深き穴の奥浅き賤しき人の身の 如何でか知らむ志芸山祇の神の命や肝向ふ 心も迷ふ熊公が問ひつ答へつ烏羽玉の 暗夜をここに明しける暗夜をここに明しける 七十五声の音調に天地神人を清むる言霊の滝は、水晶の飛沫の玉を遺憾なく飛散し、水煙濛々と立ち昇つて深き谷間を包んでゐる。 志芸山津見、熊公の二人は、この巌窟の前に端坐し、言霊の問答に胸の帳は開かれて、天津日の影、空を茜に染めなしつ、豊栄昇りに輝き初めり。志芸山津見は何か口の中にて巌窟の神に向ひ問答を始めてゐる。その声極めて微にして、傍にある熊公の耳にさへも入らぬ程度である。 志芸山津見はつと巌窟の前に立つて、立ち昇る狭霧の中に姿をかくし、ひそかに谷川を渡りて西の巌窟の奥ふかく姿を隠し、滝壺の傍にある鉢と竹筒を左右の手に提げ、水鉢に水を盛つて巌窟の奥深く身を潜めたるを見て、熊公は、 熊公『オイ、志芸山津見、何処へ行くのだ。先づ待て、俺も一緒に行かう』 この時巌窟は又もや、 声(大蛇彦)『ウー、オー』 と山も崩るるばかりの大音響を発したるが、暫時にしてその音響止まると共に巌窟の中より、 声『熊公々々、その方は暫くこの場を動く事はならぬ。志芸山津見を杖につき力と頼むやうな事で、どうして宣伝が出来やうか。汝の身体には、志芸山津見に百千倍の神力を持つた神が守護をいたして居るぞ』 熊公『ソソそれは、誠に結構ですが、一体彼は何処へ参つたのでせうか』 巌窟の中より大蛇彦は、 大蛇彦『それを訊ねて何とする。汝が心の神に訊ねるがよい』 かかる所へ、昨日山口の芝生で会つた鹿公は、数多の村人と共にこの巌窟の前に現はれ来り、叩頭拍手し熊公の姿を見て、 鹿公『オヤ、お前は昨日会つた熊公ぢやないか、どうだつた。随分叱られただらう。さうして虎公はどうしたのだ』 熊公『オー、鹿公か、虎の奴、友達甲斐もない、俺をこんなとこへ置き去りにして何処か勝手に行つて仕舞つたのだ。俺も後を追つて行かうかと思つたが、何だか知らぬが、俄に胴が据つて動けぬのだ』 鹿公『そりや貴様、腰を抜かしよつたのだらう、弱い奴だなア。モシモシ、巌窟の中の神様、今日は沢山の村人を連れて参りました。どうぞ村の者に結構な教を聞かしてやつて下さいませ』 大蛇彦『ヤア鹿公か、よくも出て来た。この巌窟は昨日虎公がやつて来て汚しよつたによつて、唯今より西の巌窟に宿替を致す。熊公は霊縛を許したれば、足腰は自由に立つであらう。サア熊公に随いて、鹿その他の者共はこの谷川を越えて、西の巌窟の前に行け。誠の事を聞かしてやらう。ウー、オー』 と又もや大音響を発し、巌窟も破裂せむかと思ふばかりなり。 熊公を先頭に一同は滝の下の谷川を飛び越えて、西の巌窟の前に辿り着き頭を下げて、 熊公『ヨー今日は大蛇彦様の新しき御殿、ではない暗い巌窟のお座敷に御転宅遊ばされまして、誠にお目出度う存じます。お取込の際とて、嘸お忙しい事でございませう。私でお間に合ふ事ならば、どうぞ手伝はせて下さいませ』 巌窟の中より、 大蛇彦『ブー、ブー、ブル、ブル、ブル、ブル』 熊公『大蛇彦の神さまとやら、私がこれ程叮嚀に頭を下げて御挨拶を申上げて居るのに、只一言のお答もなく、ブー、ブー、ブル、ブル、ブル、ブルとは、何程神様でも些と失敬ぢやありませぬか。水桶に尻を捲つて、揚げたり浸けたりしながら、屁を放つてお尻で返事をなさるとは、それは本気でなさるのか、吾々を侮辱するのか』 鹿公『オイオイ、熊公、本気も何もあつたものかい、神様は平気なものだよ。貴様のやうな奴はこれで結構だ。水の中で屁をこいたやうな三五教とやらに恍けて居るから、神様が阿呆らしいと云つて、屁を御かまし遊ばしたのだ』 この時巌窟の中より、竹筒を吹くやうな声が聞え来る。 大蛇彦『ブウー、ブウー、ブル、ブル、ブル、ブル、ブル』 熊公『なんだ、阿呆くさい、また屁だ、屁の神様だ』 巌窟の中から、 大蛇彦『アヽヽヽ悪に強い鹿公の奴、朝から晩まで、神の使はしめの当山の猪を狩立て、兎を獲り、威張り散らして、玉山の麓の玉芝の上で、虎、熊の二人に向つてほざいた事覚えて居るか。イヽヽヽ否応なしに改心いたせばよし、違背に及べば、今この場において白羽の矢を持つて射殺して仕舞はうか』 鹿公『モヽヽもし、神様、それは、あまりぢやありませぬか。貴神様は、悪に強い者は善にも強い、悪をようせぬやうな者は、人間ぢやない、この神の氏子ぢやない、力一杯山河を駆けまはつて、イヽヽ生物の命を取つて、人の生血をしぼつて威勢よく暮せ、と仰有つたぢやないか。それに今日は全然掌をかへしたやうに妙な事を仰有います。大方貴神は悪魔でせう。東の穴の神さまとは違ふのだらう』 熊公『オイ鹿公、それでも貴様、これから西の巌窟へ宿替へすると仰有つたぢやないか』 鹿公『ウン、それも、さうぢやつたなあ』 熊公『貴様は、今日は叱られる番だ、確と耳を掃除して聞くがよからう。神に叱られ気は紅葉、踏み迷ひ鳴く鹿の、声聞く時は気の毒なりける次第なりけりだ』 鹿公『馬鹿にするない』 巌窟の中から、 大蛇彦『ウー、ウー疑ふか、鹿の奴、疑へばその方の素性を大勢の前で素破抜かうか。朝から晩まで、猪や兎の尻を追ひまくるのはまだしも、東の後家や西の後家、五十の尻を作つて、若い娘の後を追ひ廻し、肘弓に弾かれて、腹立紛れに酒を喰ひ、家へ帰つて女房に面当、その態は何の事だ』 鹿公『アヽもしもし、岩の神様、それはあまりです。どうぞ、そればかしは言はぬやうにして下さい。あまり気のよいものでは御座いませぬ』 巌窟の中より、 大蛇彦『エヘヽヽえらう困つたさうなその顔は、人を酷い目に遇はした報いで、今日はえらい恥を曝されるのも身から出た錆、まだ、まだ、まだ、まだあるぞ』 熊公『エヽヽ好い加減に往生せぬか、鹿の野郎』 鹿公『何を貴様まで、エヽヽなんて真似をしよつて、何をほざきよるのだ』 巌窟の中より、 大蛇彦『オヽヽ大蛇彦の眼は、隅から隅まで透き通る、鬼の眼に見落しはなし。大盗賊の張本人、大悪魔の容器、大馬鹿者の鹿の奴、この大穴の前で、大恥かいて大味噌つけて、怖ぢ怖ぢと尾を捲く可笑しさ、アハヽヽ』 鹿公『ヤア此奴、些とをかしいぞ。東の巌窟の声とは余程変だ。竹筒を吹いて、物を言ふやうな事を言ひよる。大方虎公の奴、俺を一杯かけやうと思つて、熊公と申合せて芝居を仕組みよつたのだらう。よし、よし、よし、これから、この鹿公が、虎穴に入らずむば虎児を得ずだ。一つ命を的に穴の中に探険と出かけやうカイ』 と云ひながら、むつくと立ち上り、鹿公が今や巌窟に立ち入らむとする時、天地も破るるばかりの大音響、 大蛇彦『ウー、オー』 鹿公は、 鹿公『イヨー此奴は矢張り本物だ。どうぞお赦し下さいませ』 と拍子抜けしたやうな声で、又もや巌窟の前に平伏する。 折から吹き来る烈風の梢を渡る音、滝の響きと相和して心砕け、魂消ゆる如き騒然たる光景を現出したり。 (大正一一・二・一六旧一・二〇加藤明子録)
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霊界物語 09_申_松竹梅の宣伝使の南米・中米の旅 27 月光照梅 第二七章月光照梅〔四二〇〕 夜を日についでひるの国虎伏す野辺や獅子大蛇 曲津の声に送られて大川小川を打渡り やつれ果てたる蓑笠の身装も軽きカルの国 花の蕾の梅ケ香姫の君の命はただ一人 女心の淋し気に神を力に誠を杖に 草鞋脚絆のいでたちは実に勇ましの限りなり 梅ケ香薫る春の日も何時しか過ぎて新緑の 滴る山野は冬の空嵐の風に吹かれつつ 秋の紅葉も散りはててふみも習はぬ常世国を 行き疲れたる雪の道太平洋の波高く 大西洋に包まれし高砂島と常世国 陸地と陸地、海と海つなぐはざまの地峡国 梅ケ香姫はやうやうにはざまの森に着きにけり。 木枯の風は雪さへ交へて、獅子の吼るやうに唸り立つてゐる。太平洋の波を照らして、十六夜の月は海面に姿を現はしたり。梅ケ香姫は只一人、浪を分けて昇る月影に向つて、 梅ケ香姫『あゝ今日は十六夜のお月さま、何時見ても美はしい御顔。妾も同じ十六歳の女の一人旅、変れば変る世の中ぢやなア。想ひ廻せば、時は弥生の三月三日、花の都と聞えたる聖地ヱルサレムを主従四人立出でて、踏みも習はぬ旅枕、千万の艱みを凌ぎしのぎて遠き海原を渡り、神の恵みの有難くも恋しき父に廻り会ひ、親子の対面、やれやれと喜ぶ間もなく妾姉妹は、神様のため、世人のために尊き宣伝使となつて、又もや山坂を越え荒海を渡り、あらゆる艱難と戦ひ、ここに力と頼む主従四人は、珍山彦の神の誡めに依つて東西南北に袂を別ち、四鳥の悲しみ、釣魚の涙、乾く間もなき五月の空、珍の都を後にして、便りも夏の荒野を渉り、秋も何時しか暮果てて、はやくも冬の初めとなつたるか。神のため、世のためとは言ひながら、さてもさても淋しいこと、神様を力に誠を杖に、やうやう此処まで来るは来たものの、もう一歩も進まれぬ。疲労れ果てたるこの身体、あゝ何とせむ』 と袖に涙を拭ふ折しも、前方より二三の老若この場に現はれ、 甲『オイオイあのはざまの森蔭を見よ、出たぞ出たぞ』 乙『何が出たのだ』 甲『出たの出んのつて、それ霊ぢや霊ぢや』 乙『霊とはなんだい』 甲『今夜のやうな風の吹く晩には、得てして出る奴ぢや。蒼白い痩せた面をして眼をギロツと剥いて、髪をさんばらに垂らしてお出る御方だ。霊は霊ぢやが、霊の上に幽がつくのだよ。それ見い、木枯がヒユウヒユウと呻つてゐる。オツツケ其処らからドロドロだ』 丙『何を威嚇しよるのだ。幽霊も何もあつたものか。何ぢや貴様達は、ビリビリ慄ひよつて、声まで怪しいぢやないか』 甲『慄ふとるのぢやないワイ。何だか身体が細かく動いとるのぢや』 丙『何は兎もあれ、何だか独語を言つてゐるやうだ。そつと行つて偵察をして見やうかい』 甲『貴様、先へ行け』 丙『ハハア恐いのだな。気の弱い奴ぢや、そんな事で吾々の探偵が勤まるか。鷹取別の神さまより、三五教の女宣伝使がはざまの国を渡つて常世の国へ行くと云ふことだから、女宣伝使を見つけたらふん縛つて連れて来いと云つて、吾々は結構なお手当を頂いて夜昼かうして廻つて居るのぢやないか。若も彼んな奴が、その中の一人ででもあつて見よ、吾々は結構な御褒美をドツサリ頂戴して、親子が一生遊んで暮さるるのだ。恐い処へ行かねば熟柿は食へぬぞ、虎穴に入らずむば虎児を獲ずだ。一つ肝玉を出して、貴様から先へ偵察をして来い』 甲『アヽそれもさうだが、何だか気味が悪いな。ヤーそれなら三人手を繋いで、一緒に行かうかい。宣伝使と云ふ事が判れば、別に恐い事も何ともありやしないワ。一人の女に三人の男だ。磐石を以て卵を破るよりも易い仕事だ。併しながら幽の字と霊の字であつたら貴様はどうするか』 乙『幽霊でも何でも三人居れば大丈夫だ。しつかり手を繋いで行つて見ようかい』 と甲乙丙は、梅ケ香姫の休息する森蔭に現はれ来り、 甲『ヤイ、その方は何者ぢや。生あるものか、生なきものか、ユヽヽヽ幽霊か、バヽヽ化物か』 乙『セヽヽヽ宣伝使か、宣伝使なれば鷹取別の神様に……』 丙『シツ、何を云ふのだ。馬鹿な奴だな。モシモシお女中、一寸物をお訊ね致します。貴女は吾々の信ずる尊き有難き三五教の宣伝使で御座いませう。何卒ハツキリと御名告り下さいませ』 木枯の風はヒユウヒユウと吹き捲つてゐる。浪の音はドンドンと響いて来た。梅ケ香姫は雪のやうな白き、細き手をぬつと前に出し、 梅ケ香姫『あゝ怨めしやな、妾は嶮しき山坂を越え……』 甲乙丙『ヤア、這奴はたまらぬ。矢張り霊ぢや霊ぢや、霊の上に幽の附く代物だよ。遁げろい遁げろい』 と尻をひつからげ雲を霞と遁げ去つたり。梅ケ香姫は、悄然として独言。 梅ケ香姫『水も洩らさぬ悪神の仕組、鷹取別は妾姉妹の行方を探ね苦しめむと企つると聞く。繊弱き女の一人旅、アヽせめて照彦でも居て呉れたならば、こんな時には力になつて呉れるであらうに、アー、イヤイヤ師匠を杖につくな、人を力にするな。神は汝と倶にありとの三五教の教、アヽ迷ひぬるか、女心のあさましさよ。たとへ如何なる強き敵の現はれ来るとも、誠一つの言霊の力に、百千万の曲津見を言向け和さねばならぬ神の使だ。アヽ神様許して下さいませ』 と大地に平伏し、木の間洩る月に向つて、声低に感謝の祝詞を奏上する折しも、最前現はれし三人の中の一人、丙は突然としてこの場に現はれ、 丙(春山彦)『ヤア貴女は三五教の宣伝使、昔はヱルサレムの天使長桃上彦命の御娘と承はつて居りました。ここは鷹取別の神の警戒激しく、貴女様三人の御姉妹を召捕るべく四方八方に探女を遣はし、蜘蛛の巣の如き警戒網を張つて居ります。私も実はその役人の一人、今三人連れで様子を窺へば、まさしく宣伝使の一人と悟つた故、二人の同役を威喝して、まき散らして私は忍んで参りました。私の家は実にむさ苦しい荒屋で御座いまするが、暫らく警戒の弛むまで、わが家にお忍び下さいますれば有難う御座います。この国はウラル彦の教の盛んな所で、三五教のアの字を言つても、酷い成敗に遇はねばならぬ危い所でございます。私も元はウラル教を信じて居りましたが、貴女様一行がてるの国からアタルの港へお渡りになるその船の中に於て、三五教の尊き教理を知り、心私かに信仰致して居りますもの、私の妻も熱心なる三五教の信者でございます。かういふ処に長居は恐れ、又もや探偵の眼にとまれば一大事、どうぞ一時も早く、私の家へ御越し下さいませぬか』 梅ケ香姫『アヽ世界に鬼はない、御親切は有難う御座います。併しながら何事も惟神に任したこの身、たとへ鷹取別の前に曳き出され、嬲殺しに遇はうとも、苟くも宣伝使たる身を以て、人の情にほだされて、たとへ三日でも五日でも空しく月日が過されませうか。神を力に誠を杖に、飽くまでも宣伝歌を唱へて行く処まで参ります。また貴方様に捕へられて、鷹取別の面前に曳出さるるとも、これも何かの神様のお仕組、御親切は有難うございますが、貴方の家へ忍び隠るることだけは許して下さいませ』 丙(春山彦)『イヤ如何にも感じ入りたるお言葉、理義明白なる仰せには、返す言葉もございませぬ。併しながら、袖振り合ふも多生の縁、これも何かの神様のお引合せでございませう。アヽ然らば私の家へ隠れ忍ぶと云ふ事はなさらずに、何卒一晩私の家へ御出で下さいまして、女房に尊き三五教の教を聴かしてやつて下さいますれば有難うございます』 梅ケ香姫『アヽ然らば不束ながら神様の教を伝へさして頂きませう』 丙(春山彦)『早速の御承知、有難う御座います』 と先に立つて行く。又もや後の方に当つて、騒がしき人声聞え来る。 見れば、鷹取別の紋の入つた提燈の光が木蔭に揺らぎつつ、足早に此方に向ひ来たる模様なり。 (大正一一・二・一六旧一・二〇外山豊二録)
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霊界物語 09_申_松竹梅の宣伝使の南米・中米の旅 37 凱歌 第三七章凱歌〔四三〇〕 朝日は空に照彦の、神の命の宣伝使、戸山津見と改めて、情も深き春山彦の、館に着くや、一息つく間もあらず、中依別の捕手の駕籠に乗せられて、怯めず臆せず、宣伝歌を歌ひながら、数多の人に送られつ、駕籠にぶらぶら揺られ行く。後に照彦は、窓の戸押し開き、大口開いて高笑ひ。 照彦『ワアハヽヽヽヽヽ、よくも化されよつたなア。それにつけても雄々しきは、鬼武彦が白狐の働き、アヽ面白し面白し。ヤアヤア駒山彦、松、竹、梅の宣伝使殿、春山彦御一家の方々、これへお越し遊ばされよ』 と声高々と呼ばはれば、心轟く駒山彦、千騎一騎の胸も春山彦夫婦、親子は一時にこの場に現はれ、松代姫は言葉しとやかに、 (駒山彦?)『ヤア、そなたは照彦殿、何うしてマア無事に免れましたか。斯う云ふ間にも心が急く。またもや鷹取別の手下の者共、そなたの所在を探ね、引返し来るも計り難し。早くこの場を落ち行けよ』 照彦『ワアハヽヽヽヽヽ、何さ何さ、たとへ鷹取別、鬼神を挫く勇ありとも、吾また神変不思議の神術を以て、幾百万の曲津見を、千変万化に駆け悩まし、言向和し麻柱の、神の教に帰順せしめむは案の内、必ず心配あらせられな。吾は今まで照彦となつて、ヱルサレムの桃上彦命が僕となり、日に夜に汝ら三人を守護り居たるは、天教山に現れませる木の花姫の御心にて神政成就の先駆をなし、黄泉比良坂の戦闘を治め、常世国に塞がれる八重棚雲を吹き払ひ、隈なく照らす月照彦の神の再来、照彦とは仮の名、今は尊き天の数歌、一、二、三、四、五、六、七、八、九、十。十の名に負ふ戸山津見の神、如何なる曲霊の来るとも、吾身のこの世に在らむ限りは、案じ煩ひ給ふ事勿れ』 と初めて明かす身の素性。春山彦を始めとし、松竹梅や雪月花、駒山彦や夏姫も、思はず顔を看守つて、何の辞もなかりける。またも聞ゆる人馬の物音、はて訝かしやと、窓押し開けて眺むれば、黄昏の暗を照して、こなたに向かつて進み来る高張提燈旗差物、遠山別が紋所、白地に葵の著く、風に揺られて瞬きゐる。 春山彦『あの旗印は擬ふ方なき遠山別、この場の秘密を窺ひ知つて、又もや捕手を向けたるならむ。ヤア、方々、片時も早く裏庭を越え、巌室に忍ばせ給へ。春山彦の神力に依て、如何なる敵をも引受け申さむ。早く早く』 と急き立つれば、 『アイ』 と答へて七人の女達、裏庭指して出でて行く。 照彦、駒山彦は突つ立ち上り、 照彦『ヤア、面白し面白し、曲津の張本遠山別、たとへ幾百万の軍勢を引連れ攻め来るとも、この照彦が言霊の、伊吹の狭霧に吹き散らし、言向和すは目のあたり。春山彦殿、必ず懸念ひなされますな』 春山彦『実に有難き戸山津見[※照彦のこと]の御仰せ。さりながら、吾らも間の郷の司神、女々しくも、助太刀を受け、敵を悩まし、卑怯未練と笑はれむより、吾は心を神に任せ奉り、生命の続く限り、吾言霊の有らむ限り言向和し、それも叶はぬその時は、この細腕の動く限り、剣の目釘の続くだけ、縦横無尽に斬り捲り、潔く討死仕らむ。貴神は暫く控へさせ給へ』 照彦『ヤア、勇ましし勇ましし、照彦は奥庭に身をしのび、貴神が働き見物仕らむ。羽山津見[※駒山彦のこと]来れ』 と徐々と裏口開けて出でて行く。門の戸打破り、乱れ入り来る遠山別、家来の面々引連れて、遠慮会釈もなく座敷に駆け上り、 遠山別『ヤア、春山彦、松竹梅の宣伝使を鷹取別に送られしは天晴あつぱれ、さりながら、汝には、月、雪、花の三人の娘ありと聞く。万々一替玉にあらずやとの鷹取別の御疑ひ、照山彦、竹山彦の証言もあれど、念のため、汝が娘三人を一度常世へ伴れ帰り、真偽を糺せよとの思召、君命拒むに由なく、遠山別、使者として罷り越したり、速かに三人の娘を渡されよ[※遠山別が偽常世神王(広国別)に、月雪花の三姉妹を捕まえて来いと命じられるシーンは第10巻第5章「狐々怪々」にある。]』 と言葉鋭く居丈高、肩臂怒らし睨み入る。春山彦は、ハツと胸を衝きながら、決心の色を浮べ、 春山彦『天にも地にも掛替なき三人の娘なれど、誰あらう鷹取別の御仰せ、否むに由なし、謹しんで御旨を奉戴し、娘をお渡し申さむ。暫く待たれよ』 と語る折しも、月雪花の三人は、美々しきみなりの扮装にてこの場に現はれ、三人一度に両手をつき、 月、雪、花『これはこれは遠山別様、この見苦しき荒屋へ、よくこそ入来せられました。妾は仰せに従ひ、唯今より参りますれば、何分宜敷く御願ひ申します。アヽ、父母様、妾は往つて参ります。人間は老少不定、これが長のお別れにならうも知れませぬ、随分無事で、夫婦仲よく暮して下されませ』 と、三人一度に声を曇らせ泣き沈む。 遠山別『ヤア、天晴々々、さても美しいものだ。春山彦殿、遠山別が良きに計らはむ。そなたは好い子を有たれたものだ。この娘を常世神王の小間使に奉らば、汝夫婦が身の出世、お祝ひ申す。アハヽヽヽ、ヤア、家来の者ども、この三人の娘を一時も早く駕籠にお乗せ申せ』 家来『ホーイ』 と答へて家来の大勢、三挺の駕籠を担ぎ来り、三人の娘を乗せて後白浪と帰り行く。[※遠山別が月雪花の宣伝使を連れて常世城に帰城するシーンは第10巻第8章「善悪不可解」にある。] 春山彦は娘の駕籠を、月に透かして打眺め打ながめ、青息吐息つく折しも、照彦を先頭に妻の夏姫、松竹梅の宣伝使、月雪花のわが娘、駒山彦も諸共に、一度にこの場に現はれ来るぞ不思議なる。 春山彦『ヤア、そなたは秋月姫、深雪姫、橘姫か、どうして此処へ帰り来りしぞ。警護厳しき駕籠の中、ハテ合点がいかぬ』 と両手を組み、頭を垂れて思案顔。 照彦『ヤア、春山彦殿、千変万化の白狐が働き、最早この上は大丈夫、心を落付けられよ』 と、言はれて驚く春山彦。 春山彦『アヽ、有難や、又もや鬼武彦の御身代り』 と、両手を合せ、神前に向つて手を拍ち声も静かに神言を宣る。神の仕組の引合せ、三男七女の水晶の御魂も揃ふ十曜の神紋、一、二、三、四、五、六、七、八、九、十と、天の数歌うたひながら、男女五人の宣伝使、親子五人は一斉に、心いそいそ宣伝歌を歌ふ。 一同『厳の御魂や瑞御魂十曜の紋の現はれて 常世の国はまだおろか高砂島や筑紫島 豊葦原の瑞穂国島の八十島八十国に 三五の月の御教を残る隈なく宣べ伝へ 天地の神の神業に仕へ奉らむ吾らの天職 あゝ面白し潔し間の国を立出でて 青葉も茂る目の国や常世の国の常世城 ロッキー山に蟠まる八岐大蛇や醜神を 言向和し千早振る神の御国に復し見む かへす常磐の松の世を五六七の神の現はれて 千代も八千代も万代も天津日嗣の動ぎなく 月日の如く明けく輝き渡る神の国 輝き渡る神の稜威厳の御魂の大御神 瑞の御魂の大御神月日を添へて十柱の 十曜の神旗勇ましく天津御風に靡かせつ 曲の砦に攻め寄せむこの世を造りし神直日 心も広き大直日直日に見直し聞き直し 七十五声の言霊に天地四方の民草を 靡かせ救ふ勇ましさ日は照る光る月は盈つ 三五の月は中空に輝き渡り天地を 支へ保てるその如く太き功を三ツ星や 北極星を基として数多の星の廻転るごと 百の御魂を言向け照しオリオン星座に現はれし 救ひの神に復命申さむためのこの首途 曲津の猛ぶ黄泉島黄泉軍を足曳の 山の尾の上に蹴り散らし河の瀬毎に吹き払ひ 払ひ清むる神の国千秋万歳万々歳 堅磐常磐の松の世の神の功ぞ尊けれ』 斯く歌ひ終り、宣伝使は月雪花の三人を伴ひ、春山彦夫婦に別れを告げて、声も涼しく宣伝歌を歌ひながら、メキシコ指して進み行く。 (大正一一・二・一七旧一・二一河津雄録) (昭和一〇・三・三〇王仁校正)
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霊界物語 10_酉_黄泉比良坂の戦い 13 蟹の将軍 第一三章蟹の将軍〔四四三〕 固虎は淤縢山津見神の案内者として、山道を攀ぢ、谷を渡り、間道を経てロッキー山の山麓に着きしが、数多の魔軍は武装を整へ、今や出陣せむとする真最中なり。淤縢山津見は偵察の為に固虎を遣はして、ロッキー山の城塞に向はしめ、城門に入らむとする時、ピタリと蟹彦に出会せり。 蟹彦『オー固虎、数多の軍勢を引率れて、『目』の国カリガネ半島へ宣伝使を捕縛すべく出陣したではないか。その後一向何の消息も聞かぬので、如何なつたことかと思つてゐたが、唯一人此処へ出て来たのは何か様子があらう。常世城へも帰らず、一体引率した軍隊は如何したのだい』 固虎『何うも斯うもあつたものか。戦ひは多く味方を損ぜざるを以て最上とする。何も知らぬ数多の戦士を傷つけるよりは、高の知れた宣伝使の三人や五人、計略を以て常世城へ誘き寄するに如かずと、取置きの智慧を出したのだ。マア見て居て呉れ、此方の働きを』 蟹彦『門番の成上り奴が、あまり偉さうに法螺を吹くない』 固虎『門番の成上りはお互ひだ。併し斯く騒々しく数多の戦士を集めて、日の出神は如何する積りだい』 蟹彦『そんな間の抜けた事を云つて居るから困るのだ。貴様は未だ知らぬのか。余程薄のろだな。常世の国の、眼とも鼻とも喉首とも譬へ方ない大事の黄泉島に、天教山より伊弉諾神が現はれ給うて、この醜けき汚き黄泉国を祓ひ清め、常世の国まで進み来らむと、智仁勇兼備の神将を数多引率して、黄泉比良坂に向つて攻めかけ来り給うたと云ふ事だ。さうなれば常世の国は片顎を取られたやうなもので、滅亡をするのは目のあたりだと云ふので、伊弉冊大神様、日の出神の御大将が此処に数多の戦士を集め、是より常世城の軍隊と合し、黄泉比良坂に進軍せむとさるる間際なのだ。貴様も早く軍隊を引率れて黄泉比良坂の戦に参加せなくては、千載一遇の好機を逸するぞ。愚図々々いたして悔を後世に胎すな。千騎一騎のこの場合、手柄をするなら今この時だ』 固虎『神様の夫婦喧嘩といふものは、大袈裟なものだな。犬も喰はない夫婦喧嘩に大勢のものが、馬鹿らしくつて往けるものか。若も戦に行つて生命でも取られて見よ。数万の戦士は、何奴も此奴も可愛い女房や子に別れねばならぬ。たつた一つの夫婦喧嘩に使はれて、大勢のものが後家にならねばならぬとは、合点の行かぬ世の中だ』 蟹彦『貴様は余程よい薄馬鹿だ。ロッキー山や、常世城の秘密は、うすうす判つて居りさうなものぢやないか。知らな云うてやらう。伊弉冊命と名乗つてござるのは、その実は大国姫命だ。そして日の出神と名乗つて居るのは、その夫神の大国彦命だよ。固虎もそれが判らぬ様ではダメだよ』 固虎『初めて聞いた。貴様の話は益々合点がゆかなくなつて来た。それなら常世神王は誰だい。蟹公知つてるだらう』 蟹彦『常世神王は広国別だよ。一旦死んだと云つて常世の国の一般のものを誑かし、自分が大国彦様と相談の結果、広国別が常世神王になつて居るのだ。これには深い仔細がある。その秘密の鍵を握つた蟹彦は、常世神王の内々の頼みに依つて、今まで故意と門番になつてゐたのだよ』 固虎『それなら貴様は、元は誰だい』 蟹彦『馬鹿だな、未だ分らぬか。俺はわざと身体を歪めて横に歩き、顔にいろいろの汁を塗つて化けてゐたのだが、もとを糺せば聖地ヱルサレムの家来であつた竹島彦命だよ。是から吾々は先頭に立つて、黄泉比良坂に向ふのだ。併し軍機の秘密は洩らされない、他言は無用だ。併し乍ら、ロッキー山の伊弉冊大神さまは全くの贋物だ。吾々も本物に使はれるのは、たとへ敵にもせよ気分がよいが、生地をかくした鍍金ものだと思ふと、何だかモー一つ力瘤が這入らぬやうな心持がするよ』 固虎『貴様、今度は誰が大将で往くのだ』 蟹彦『定つたことだ、これだよ』 と自分の鼻を押へて見せる。 固虎『弱い大将だな。今度の戦ひは馬ーの毛だ。何分大将が間抜けだから仕方がない』 蟹彦(竹島彦)『馬鹿を云ふな。大将は馬鹿がよいのだ。あまり智慧があつて、コセコセ致すと大局を誤る虞があるので、この薄のろの竹島彦が全軍統率の任に当つて居るのだ。これでも三軍の将だぞ。あまり馬鹿にしては貰ふまいかい。併し固虎、五人の宣伝使を何処に置いたのだ。松、竹、梅の三人の桃の実がなければこの戦ひは勝目がないと、伊弉冊命様の……ドツコイ大国姫命の御命令だ。早く三人を貴様の手にあるなら御目にかけて、抜群の功名をなし、手柄者と謳はれるがよからう』 固虎『よし、今見せてやらう』 蟹彦(竹島彦)『俺に見せる必要はないから、早く伊弉冊の贋の大神さまに御目にかけるのだよ。ヤア鳴雷、若雷、早く来れ』 と馬に跨り法螺貝を吹き立てながら、ブウブウと口角蟹のやうな泡を飛ばして進み行く。 固虎は蟹彦の偽らざる此の物語を聴いて胸を躍らせながら、淤縢山津見に一切を報告したるに、淤縢山津見は太き息を吐き、 淤縢山津見『アヽさうか。疑はれぬは神懸りだ。蚊々虎の神懸りを実の事を云へば、今まで疑つてゐたのは恥かしい。審神は容易に吾々の如き盲では出来るものではない。併し乍ら之を思へば、珍山彦の神変不思議の力には感嘆せざるを得ない。先づまづ暫らく身を潜めて、様子を窺ふことにしよう』 と、樹木茂れる森林の中に両人は姿を隠し時を待ちゐる。蟹彦の竹島彦が一隊を引率し、威風凛々として四辺を払ひ出陣した後に、又もや法螺貝の音、太鼓の響、ハテ訝かしやと木の間を透して打眺め、固虎は頓狂な声にて、 固虎『ヤア、また第二隊が出て行き居るぞ。第二隊の大将は誰だか知らむ』 淤縢山津見『御苦労だが、敵近く寄つて様子を査べ報告して呉れないか』 固虎『畏まりました』 といふより早く固虎は、猿が梢を伝ふが如く、しのびしのび敵前近く進み行く。美山別は陣頭に立ち采配を打揮ひながら、 美山別『進め進め』 と号令してゐる。左右の副将は土雷、伏雷の猛将である。花を欺く松、竹、梅の三人に扮したる国玉姫、田糸姫、杵築姫は馬上に跨りながら、桃の実隊として美々しき衣裳を太陽に照されながら、ピカリピカリと進んで来る。数多の軍勢は足音を揃へて、種々の武器を携へ繰出す仰々しさ。固虎は直様引返し、淤縢山津見に詳細の顛末を報告したり。 淤縢山津見『ヤア、御苦労ご苦労、ロッキー山の軍人はあれでしまひか』 固虎『ナニ、ほんの一部分です。必要に応じて未だ未だ出すかも知れませぬ』 淤縢山津見『ウン、油断のならぬ醜神の仕組、吾々も一つ考へねばならぬワイ』 このとき木霊に響く宣伝歌の声、二人は思はず其の声に聞耳澄ました。忽ち東南の風吹き荒んで音騒がしく、宣伝歌は風の音に包まれにける。 (大正一一・二・二二旧一・二六外山豊二録)