第二章三神司邂逅〔三〇二〕
山の頂より涼しき声聞えて、
康代彦、真鉄彦『世は常闇となり果てて黄泉国に出でましし
国の御柱大神の見立て給ひし八尋殿
真木の柱の朽果てて倒れかかりし神の世を
起し助くる康代彦心も堅き真鉄彦
天津御国に現はれて瑞の御魂と諸共に
この世の元を固めむと天津誠の御教を
天と地とに隈もなく行き足らはして神の世を
いと平けく安らけく親の位を保ちつつ
漂ふ国を弥堅に締め固めたる大事の
忍男神の現れまして神政成就成し遂ぐる
吾らは神の御使ぞ千代に八千代に日の本の
礎堅く搗固め神世の長と成り出でて
教を四方に敷島の吾は康代の司なるぞ
吾は真鉄の司なるぞいま汝が前に現はれて
大事忍男神と云はウラルの山に蟠る
八岐大蛇の化身にて今より十年のその昔
この神山に立籠り瑞穂の国の中国の
神の胞衣をば打破りこの世を乱す深企み
これの深山に隠ろひて数多の邪神を狩集め
再挙を図る浅間しさ天の御柱大神は
魔神の企みを悉く覚らせ玉ひて現世を
千代に八千代に康代彦堅磐常磐に真鉄彦
造り固めて浦安の日出づる国の礎を
照らす日の出の大神ぞ仕組も深きこの山に
導き玉ふ雄々しさよ東南西に海原を
控へて聳てるこの山は難攻不落の鉄壁ぞ
汝が命はこの山に堅磐常磐に鎮まりて
天津日嗣の皇神の御位を守り奉れ
吾は左守の司となり大和嶋根の神国を
真鉄の彦の弥堅に弥常久に揺ぎなく
治めてここに立岩の深き企みを打破り
曲神の悉平げむ康代は右守の神となり
荒浪猛ける浮嶋を神の稜威に搗固め
康代の彦の神となり浦安国の心安く
千代に八千代に守るべし朝日の直刺す神の山
夕日の直刺す神の峰百山千谷のその中に
聳り立ちたる大台が原の御山と永久に
日の出神と現はれて天教地教の神々の
教を守る朝日子の日の出神と成りませよ』
と歌ひながら、巌窟の前に立てる日の出神の傍近く進み来る。
(大正一一・一・三〇旧一・三高木鉄男録)
No.: 1327