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書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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霊界物語 | 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 | 35 一輪の秘密 | 第三五章一輪の秘密〔三五〕 厳の御魂の大神は、シナイ山の戦闘に魔軍を潰走せしめ、ひとまづ竜宮城へ凱旋されたのは前述のとほりである。 さて大八洲彦命は天山、崑崙山、天保山の敵を潰滅し、天教山に現はれ、三個の神宝を得て竜宮城に帰還し、つづいてエデンの園に集まれる竹熊の魔軍を破り、一時は神界も平和に治まつた。されど竹熊の魔軍は勢やむを得ずして影を潜めたるのみなれば、何どき謀計をもつて再挙を試みるやも計りがたき状況であつた。まづ第一に魔軍の恐るるものは三個の神宝である。ゆゑに魔軍は百方画策をめぐらし、或ひは探女を放ち、醜女を使ひ、この珠を吾が手に奪はむとの計画は一時も弛めなかつた。 茲に艮の金神国常立尊は、山脈十字形をなせる地球の中心蓮華台上に登られ、四方の国型を見そなはし、天に向つて神言を奏上し、頭上の冠を握り、これに神気をこめて海上に投げ遣りたまうた。その冠は海中に落ちて一孤島を形成した。これを冠島といふ。しかして冠の各処より稲を生じ、米もゆたかに穰るやうになつた。ゆゑにこの島を稲原の冠といひ、また茨の冠ともいふ。 つぎに大地に向つて神言を奏上したまひ、その穿せる沓を握り海中に抛げうちたまうた。沓は化して一孤島を形成した。ゆゑにこれを沓島といふ。冠島は一名竜宮島ともいひ、沓島は一名鬼門島ともいふ。 ここに国常立尊は厳の御魂、瑞の御魂および金勝要神に言依さしたまひて、この両島に三個の神宝を秘め置かせたまうた。 潮満の珠はまた厳の御魂といふ。いづとは泉のいづの意であつて、泉のごとく清鮮なる神水の無限に湧出する宝玉である。これをまたヨハネの御魂といふ。つぎに潮干の珠はこれを瑞の御魂といひ、またキリストの御魂といふ。みづの御魂はみいづの御魂の意である。みいづの御魂は無限に火の活動を万有に発射し、世界を清むるの活用である。要するに水の動くは火の御魂があるゆゑであり、また火の燃ゆるは水の精魂があるからである。しかして火は天にして水は地である。故に天は尊く地は卑し。ヨハネが水をもつて洗礼を施すといふは、体をさして言へる詞にして、尊き火の活動を隠されてをるのである。またキリストが霊(霊は火なり)をもつて洗礼を施すといふは、キリストの体をいへるものにして、その精魂たる水をいひしに非ず。 ここに稚姫君命、大八洲彦命、金勝要大神は、三個の神宝を各自に携帯して、目無堅間の船に乗り、小島別、杉山別、富彦、武熊別、鷹取の神司を引率して、まづこの竜宮ケ嶋に渡りたまうた。しかして竜宮ケ嶋には厳の御魂なる潮満の珠を、大宮柱太敷立て納めたまひ、また瑞の御魂なる潮干の珠とともに、この宮殿に納めたまうた。この潮満の珠の又の名を豊玉姫神といひ、潮干の珠の又の名を玉依姫神といふ。かくて潮満の珠は紅色を帯び、潮干の珠は純白色である。 国常立尊は冠島の国魂の神に命じて、この神宝を永遠に守護せしめたまうた。この島の国魂の御名を海原彦神といひ、又の御名を綿津見神といふ。つぎに沓島に渡りたまひて真澄の珠を永遠に納めたまひ、国の御柱神をして之を守護せしめられた。国の御柱神は鬼門ケ島の国魂の又の御名である。 いづれも世界の終末に際し、世界改造のため大神の御使用になる珍の御宝である。しかして之を使用さるる御神業がすなはち一輪の秘密である。 この両島はあまたの善神皆竜と変じ、鰐と化して四辺を守り、他神の近づくを許されないのである。 (大正一〇・一〇・二三旧九・二三外山豊二録) |
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霊界物語 | 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 | 36 一輪の仕組 | 第三六章一輪の仕組〔三六〕 国常立尊は邪神のために、三個の神宝を奪取せられむことを遠く慮りたまひ、周到なる注意のもとにこれを竜宮島および鬼門島に秘したまうた。そして尚も注意を加へられ大八洲彦命、金勝要神、海原彦神、国の御柱神、豊玉姫神、玉依姫神たちにも極秘にして、その三個の珠の体のみを両島に納めておき、肝腎の珠の精霊をシナイ山の山頂へ、何神にも知らしめずして秘し置かれた。これは大神の深甚なる水も洩らさぬ御経綸であつて、一厘の仕組とあるのはこのことを指したまへる神示である。 武熊別は元よりの邪神ではなかつたが、三つの神宝の秘し場所を知悉してより、にはかに心機一転して、これを奪取し、天地を吾ものにせむとの野望を抱くやうになつた。そこでこの玉を得むとして、日ごろ計画しつつありし竹熊と語らひ、竹熊の協力によつて、一挙に竜宮島および大鬼門島の宝玉を奪略せむことを申し込んだ。竹熊はこれを聞きて大いに喜び、ただちに賛成の意を表し、時を移さず杉若、桃作、田依彦、猿彦、足彦、寅熊、坂熊らの魔軍の部将に、数万の妖魅軍を加へ、数多の戦艦を造りて両島を占領せむとした。 これまで数多の戦ひに通力を失ひたる竹熊一派の部将らは、武熊別を先頭に立て、種々なる武器を船に満載し、夜陰に乗じて出発した。一方竜宮島の海原彦命も、鬼門島の国の御柱神も、かかる魔軍に計画あらむとは露だも知らず、八尋殿に枕を高く眠らせたまふ時しも、海上にどつとおこる鬨の声、群鳥の噪ぐ羽音に夢を破られ、竜燈を点じ手に高く振翳して海上はるかに見渡したまへば、魔軍の戦艦は幾百千とも限りなく軍容を整へ、舳艪相啣み攻めよせきたるその猛勢は、到底筆舌のよく尽すところではなかつた。 ここに海原彦命は諸竜神に令を発し、防禦軍、攻撃軍を組織し、対抗戦に着手したまうた。敵軍は破竹の勢をもつて進みきたり、既に竜宮嶋近く押寄せたるに、味方の竜神は旗色悪く、今や敵軍は一挙に島へ上陸せむず勢になつてきた。このとき海原彦命は百計尽きて、かの大神より預かりし潮満、潮干の珠を取りだし水火を起して、敵を殲滅せしめむと為し給ひ、まづかの潮満の珠を手にして神息をこめ、力かぎり伊吹放ちたまへども、如何になりしか、この珠の神力は少しも顕はれなかつた。それは肝腎の精霊が抜かされてあつたからである。次には潮干の珠を取りいだし、火をもつて敵艦を焼き尽くさむと、神力をこめ此の珠を伊吹したまへども、これまた精霊の引抜かれありしため、何らの効をも奏さなかつた。 鬼門ケ島にまします国の御柱神は、この戦況を見て味方の窮地に陥れることを憂慮し、ただちに神書を認めて信天翁の足に括りつけ、竜宮城にゐます大八洲彦命に救援を請はれた。 このとき地の高天原も、竜宮城も黒雲に包まれ咫尺を弁せず、荒振神どもの矢叫びは天地も震撼せむばかりであつた。 ここにおいて金勝要大神は秘蔵の玉手箱を開きて金幣を取りだし、天に向つて左右左と打ちふり給へば、一天たちまち拭ふがごとく晴れわたり、日光燦爛として輝きわたつた。金勝要神は更に金幣の一片を取欠きたまひて信天翁の背に堅く結びつけ、なほ返書を足に縛りて、天空に向つて放ちやられた。信天翁は見るみる中天に舞ひ上がり、東北の空高く飛び去つた。信天翁はたちまち金色の鵄と化し、竜宮島、鬼門島の空高く縦横無尽に飛びまはつた。今や竜宮島に攻め寄せ上陸せむとしつつありし敵軍の上には、火弾の雨しきりに降り注ぎ、かつ東北の天よりは一片の黒雲現はれ、見るみる満天墨を流せしごとく、雲間よりは幾百千とも限りなき高津神現はれきたりて旋風をおこし、山なす波浪を立たしめ敵艦を中天に捲きあげ、あるひは浪と浪との千仭の谷間に突き落し、敵船を翻弄すること風に木の葉の散るごとくであつた。このとき竹熊、杉若、桃作、田依彦の一部隊は、海底に沈没した。 国常立尊はこの戦況を目撃遊ばされ、敵ながらも不愍の至りと、大慈大悲の神心を発揮し、シナイ山にのぼりて神言を奏上したまへば、一天にはかに晴渡りて金色の雲あらはれ、風凪ぎ、浪静まり、一旦沈没せる敵の戦艦も海底より浮揚り、海面はあたかも畳を敷きつめたるごとく穏かになつてきた。 このとき両島の神々も、諸善竜神も竹熊の敵軍も、一斉に感謝の声をはなち、国常立大神の至仁至愛の恵徳に心服せずにはをられなかつた。広く神人を愛し、敵を敵とせず、宇宙一切の衆生にたいし至仁至愛の大御心を顕彰したまふこそ、実に尊き有難ききはみである。 (大正一〇・一〇・二三旧九・二三桜井重雄録) |
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霊界物語 | 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 | 附記 霊界物語について | 附記霊界物語について 瑞月出口王仁三郎 霊界物語は総計壱百二十巻をもつて完成する予定になつてをります。しかしながら是だけ浩瀚な著述を全部読了せなくては、神幽現の三界の経緯が判らないなどと思ふのは間違ひの甚だしきものです。経を訓むには、冒頭の一篇を充分に玩味して腹に畳み込めば、すべての精神が明瞭に解し得らるるものです。どんな人間といへども最初の一瞥によつて其の内容や心が読めるものです。刀剣は鯉口一寸の窓さへ開けて視れば、その名刀たり鈍刀たることが判り、蛇は三寸ばかり見ればモウそれで全体の見当がつくものである。詩経も最初の周南篇に自余の篇が包まれてあり、周南は『関々たる雎鳩は河の洲にあり』の首語に包まれてゐることが判るやうに、本書もまた第一巻の或る一点を読めば全巻の精神が判るはずである。本書の基本宣伝歌三章だけでも全部の大精神が判る。教祖の書き残された一万巻の筆先も初発に現はれた、 『三千世界一度に開く梅の花艮の金神の世になりたぞよ。須弥仙山に腰を懸け世の元の生神表に現はれて三千世界を守るぞよ。神が表になりて上下運否の無きやうに桝掛ひきならして、世界の神、仏、人民の身魂を改めて弥勒の世に立替立直して天地へお目に掛ける云々』 の神示で全部の御経綸や大神の意志が判るものであります。キリスト教の聖書だつて、『神世界を創造たまへり。又初めに道あり、道は神なり、神は道と倶にありき、万物これによつて造らる』の聖句さへ腹に畳み込めば聖書の全体の精神が判るのである。たとへば茶室の中に一輪の朝顔が床柱に掛けてあるのも、見やうに由つて茶室内は愚か天地全体が朝顔化するものである。凡て物は個体に由つて全体が摂取され得るものである。華厳経の一花百億国とは、一微塵に三千世界を包むといふの意義であります。こういふ見地に立つた時は、何ほど大部の本書もただ一章の註釈に過ぎないのであります。最奥天国の天人になると、智慧証覚が他界の天人に比して大変に勝つてゐるので、他界の天人が数百万言の書を読んでも、まだ充分に理解し得ないやうなことでも、簡単なる一二言に由つて良く深遠微妙なる大真理を悟るものである。要するに未だ第一天国天人の境域にその霊性の達してゐない人のために、神意に従ひ斯くのごとき長物語を著述したのであります。読者諸氏幸ひに御諒解あらむことを、茲に一言述べておきます。 |
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霊界物語 | 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 | 45 魂脱問答 | 第四五章魂脱問答〔二四五〕 誠の齢を保つ神国は、世も久方の天津空、寿ぎ合ふ真鶴の、東や西と飛び交ひて、世の瑞祥を謡ひつつ、緑の亀はうれしげに、天に向つて舞ひ上る、目出度き齢の万寿山、主の神と現はれし、この美はしき神国を、堅磐常磐に守るてふ、名さへ目出度き磐樟彦は八洲国、神の救ひの太祝詞、遠き近きの隔てなく、唐土山を踏越えて、雲に浮べるロッキーの、山の嵐に吹かれつつ、さも勇ましき宣伝歌、心も軽き簑笠や、草鞋脚絆に身を固め、何処を当と長の旅、愈々来る常世城、今は間近くなりにけり、磐樟彦の宣伝使、磐戸別の神司と、名も新玉の今朝の春、雪掻きわけて行詰り、塞がる道を開かむと、日も紅の被面布を、押別け来る紅葉の、赤き心ぞ尊けれ。盤古大神八王の、曲の暴威を振ひたる、堅磐常磐の常世城、名のみ残りて今はただ、常世の城は大国彦の、曲の醜夫のものとなり、時めき渡る自在天、常世神王と改めて、輝き渡るその稜威、隈なく光り照妙の、城に輝く金色の、十字の紋章をうち眺め、溜息吐息を吐きながら、風雨に窶れし宣伝使、今はなんにも磐樟の、神の果なる磐戸別、心の岩戸は開けども、未だ開けぬ常世国、常世の闇を開かむと、脚に鞭つ膝栗毛、さしもに広き大陸を、やうやく茲に横断し、浜辺に立ちて天の下、荒ぶる浪の立騒ぎ、ウラスの鳥や浜千鳥、騒げる百の神人を、神の救ひの方舟に、乗せて竜宮に渡らむと、草の枕も数かさね、今や港に着き給ふ。 磐戸別の神は常世の国の西岸なる紅の港に漸く着いた。ここには四五の船人が舟を繋いで、色々の雑談に耽つてゐた。 甲『オイ、このごろの天気はちつと変ぢやないかい、毎日毎夜引き続けに大雨が降つて、河は氾濫し、家は流れ、おまけに何とも知れぬ、ドンドンと地響きが間断なくしてをる。初めの間は、吾々は浪の音だと思つてゐたが、どうやら浪でもないらしい。地震の報らせかと思つて心配してゐたら、今日で三十日も降り続いて、いつかう地震らしいものもない。この間も宣伝使とやらがやつて来よつて、地震雷火の雨が降つて、終末には泥海になると云つて居つたが、或ひはソンナ事になるかも知れないよ』 と心配さうに首を傾けた。 乙『何、火の雨が降る、ソンナ馬鹿なことがあるかい。雨ちう奴は皆水が天へ昇つて、それが天で冷えて、また元の水になつて天降つて来るのだ、水の雨は昔からちよいちよい降るが、火の雨の降つた例はないぢやないか』 甲『それでもこの前に、エトナの火山が爆発した時は、火の雨が降つたぢやないか』 乙『馬鹿云へ、あれは火の岩が降つたのだい。万寿山とやらの宣伝使が、天から降つた様に偉さうに宣伝して居つたが、是もやつぱり天から降つた岩戸開けとか、岩戸閉めとか云ふぢやないか』 甲『火の雨が降らぬとも限らぬよ。この間も闇がり紛れに柱に行当つた途端に、火の雨が降つたよ、確に見たもの、降らぬとは言へぬ』 乙『そりや貴様、柱にぶつつかつて、眼玉から火を出しやがつたのだ。降つたのぢやない、打つたのだらう。地震雷と云ふ事あ、吾々神人は神様の裔だから、吾々自身そのものが神だ。それで自身神也といふのだ、さうして自身神也といふ貴様が、眼から火の雨を降らしたのだ。まあ世の中に、不思議と化物と誠のものはないといつてもゑい位だ』 丙『ソンナ話はどうでもよいが、この間海の向ふに大変な戦争があつたぢやないか』 丁『ウン、ソンナことを聞いたね。其時の音だらうよ、毎日々々ドンドン云ふのは』 丙『戦ひが終んでから、まだドンドン音が聞えるが、そりや何かの原因があるのだらう。竜宮島とやらには、天の真澄の珠とか潮満潮干の珠とかいふ宝が昔から隠してあるとかで、ウラル山のウラル彦の手下の奴らがその珠を奪らうとして、沢山の舟を拵へよつて、闇がり紛れに攻め付けよつたさうだ。さうすると沓島の大海原彦神とやらが、海原とか向腹とかを立ててその真澄の珠で敵を悩まさうとした。しかしその珠は何にもならず、たうとう敵に取られてしまつたさうだよ。そして冠島一名竜宮島には潮満潮干の珠が隠してあつたさうだ。それもまたウラル彦の手下の奴らが攻めかけて奪らうとした。ここの守護神さまは、敵の襲来を悩ます積りで、また潮満とか潮干とかいふ珠を出して防がうとした。これも亦薩張役に立たず、とうたう冠島も沓島も、敵に奪られて仕舞つたと云ふぢやないか。珠々というても、なにもならぬものだね』 丁『そりや定まつた話だよ、よう考へて見よ。真澄の珠と云ふぢやないか。マスミつたら、魔の住んで居る珠だ。それを沢山の魔神が寄つて来て奪らうとするのだもの、合うたり叶うたり、三ツ口に真子、四ツ口に拍子木、開いた口に牡丹餅、男と女と会うたやうなものだ。ナンボ海原とか向腹立とかを立てた海原彦神でも、内外から敵をうけて、内外から攻められて、お溜り零しがあつたものぢやない。また潮満とか潮干とかの珠も、役に立たなかつたと聞いたが、よう考えて見よ、塩は元来鹹いものだ、そして蜜は甘いものだ。鹹いものと甘いものと一緒にしたつて調和が取れないのは当然だ。また潮干の珠とか云ふ奴は、塩に蛭といふ事だ。ソンナ敵同士のものを寄せて潮満の珠とか、潮干の珠だとか一体わけがわからぬぢやないかい。負けるのは当然だよ。その珠の性根とやらを、どつと昔のその昔に厳の御霊とかいふどえらい神があつて、それをシナイ山とかいふ山の頂上に隠しておいた。それを竹熊とかいふ悪い奴がをつてふんだくらうとして、偉い目にあうたといふこと。しかしながら、聖地の神共は勿体ぶつて、一輪の秘密とか一輪の経綸とかいつて威張つてをつたが、とうとうその一輪の秘密がばれて、ウラル彦が嗅ぎつけ、第一番に竜宮島の珠をふんだくつて、直にその山の御性念を引張り出さうと一生懸命に攻めかかつた。その時シナイ山とやらを守つてゐた貴治別とかいふ司が、敵軍の頂辺から、その御性念の神徳を現はして岩石を降らした。ウラル彦の幕下はとうとうこれに屁古垂れよつて、何にもしないで、逃げ帰つたと言ふことだ。それで攻撃を一寸もシナイ山といふのだ』 甲『馬鹿にすな、人に落話を聞かせよつて、もうもう行かうかい。コンナ奴に相手になつてゐると、日が暮れてしまふワイ。それそれ、またど偉い声が聞えてきた。脚下の明るいうちに何処なと逃げようぢやないか』 乙『逃げようたつて、吾々の乗つてゐる大地が動いてをるのだもの、何処へ逃げたつて同じことぢやないか』 雨は益々激しく、地鳴りは刻々に強烈になつて来た。一同は真青な顔して、四方八方に眼を配り、忽ち不安の雲に包まるる折しも、林の茂みを別けて、簑笠脚絆の軽装をした宣伝使が涼しき声を張り上げて、 宣伝使『朝日は照るとも曇るとも千尋の海は干くとも 世界は泥に浸るとも誠の力は世を救ふ』 といふ宣伝歌が聞え始めたり。一同は耳を澄ましてその宣伝歌を聞き入りにける。 (大正一一・一・一四旧大正一〇・一二・一七藤原勇造録) |
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霊界物語 | 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 | 42 言霊解四 | 第四二章言霊解四〔三九二〕 『其妹伊弉冊命吾に辱見せたまひつと言したまひて、即ち黄泉醜女を遣はして追はしめき』と云ふ事は、以上の如くに乱れ果てたる醜状を、神の光なる一つ火に照らされ、面の皮を曳剥られて侮辱されたと言つて、大本であれば心に当る醜悪なる教信徒が一生懸命に大本や教主に反抗すると云ふことであり、世界で言へば、益々立腹して大本を圧迫し、窮地に陥れむとする人物の出現すると云ふ事で在るから、誠の教を開くと云ふ事は、随分六ケ敷事業であります。今日のやうな無明闇黒の社会に容れられる様な教なら別に苦労艱難は要らぬ、四方八方から持て囃されるで在らうが、その様な教なら現代を覚醒し、人心を改造する事は出来ない。国家を泰山の安きに置き奉らむとするの志士仁人は凡ての迫害と戦ひ、総ての悪魔に打ち克ち、身を以て天下に当るの勇猛心を要するのであります。黄泉醜女は決して悪い魔女の事では無い。今日の人間は上下共に男も女も、八九分通りまで醜女であります。何処にも一点の男子らしき、勇壮なる果断なる意気を認むる事は出来ぬ。斯ういふやうな黄泉醜女らが、大本の一つ火の明光に照されて、夏の虫の如くに消しに来ては却つて自分が大怪我をするのであります。今日の大本は四方八方から攻め立てられ、人民を保護す可き職に在る人々までが、時には逆様に攻撃妨害を加へむとして居るのであります。是が大本を四方突醜目で見てをると云ふのであります。 然し至誠思国の吾々大本人は、所在総ての圧迫と、妨害に打ち克つ為に、一つの力を貯へねば成らぬ如く、世界に対しても我国は、充分の準備を整へねばならぬ。即ち神典に所謂黒御鬘を投げ打つて掛らねば成らぬのであります。 『爾伊弉諾命黒御鬘を取りて投げ棄て玉ひしかば、乃ち蒲子生りき』 之を今日の大本に譬へると、幽玄美はしき神の御教を、天下に宣伝する事を『投げ棄て玉ひき』といふのであります。『蒲子生りき』と云ふ事は、美はしき誠の新信者が出来たと云ふ事であります。黄泉神醜女は、また之に向つて一人々々に種々の圧迫妨害を加へると云ふ事が、『是を拾ひ食む』と云ふのであります。何れの教子にも悉く四方突軍が御蔭を堕さしに廻つて居る。その間に又一つの戦闘準備に着手する事を『逃げ出でますを』と云ふのであります。 『猶追ひしかば、亦其の右の御角髪に刺せる、湯津津間櫛を引闕て、投げ棄てたまひしかば乃ち笋生りき』 蒲子とも言ふべき信仰の若い信者を、片端から追詰め引落しにかけ乍ら、なほもそれに飽き足らずして、大々的妨害を加へむとの乱暴には、神も終に堪忍袋の緒が断れたので、右の御角髪にまかせる湯津津間櫛を引闕て、乃ち神界の一輪咲いた梅の花の経綸を表顕して、所在四方突醜女に向つて宣伝した所が、終に箏と云ふ、上流貴紳[※身分の高い人という意]の了解を得、至誠天に通じて、いよいよ大本の使命の純忠純良なる事を、天下に知らるるやうに成るのを箏生りきと云ふのであります。是は全地球上の出来事に対する御神書であれども、総ての信徒に了解の出来易いやうに、現今の大本と将来の大本の使命を引用して、説明を下したのであります。 『是を抜き食む間に逃行でましき』 又々邪神の頭株が、大本の折角の経綸を破壊せむと、百方苦心しつつ在る内に、いよいよ神国の危急を救ふ可き、諸々の準備を整へ、何時にても身命を国家に捧げ奉つて、君国を守るべき用意を整へて行くと云ふ事が、『是を抜き食む間に逃行でましき』と云ふ意義であります。 『旦後には其の八種の雷神に千五百の黄泉軍を副へて追はしめき』 之を大本に譬へて見ると、八種の雷(前に詳述)に加ふるに社会主義者または仏教家、基督教徒などの、数限りなき露骨なる運動を起して、力限り攻撃の矢を向け来る事であります。之を世界に対照する時は、前述の八種の悪魔の潜在する上に、千五百軍即ち或る国から、日本の霊主体従なる神国を攻めて来ると云ふ事になるのであります。黄泉軍と云ふことは、占領とか、侵略とか、利権獲得とか、良からぬ目的の為に戦ひを開く国の賊軍隊の謂ひであります。 『爾御佩せる十拳剣を抜きて、後手に揮きつつ逃げ来ませるを』 霊主体従の神軍は戦備を整へながら即ち十拳剣を抜きながら、充分に隠忍し敢て戦はず、なるべく世界人類平和の為め、治国安民の為に言向平和さむとする意味を指して『後手に揮きつつ逃げ来ませる』と云ふのであります。 『其の坂本なる桃の子を三個取りて待撃ちたまひしかば悉く逃げ帰りき』 ヒラサカのヒの言霊は明徹也、尊厳也、顕幽皆貫徹する也、照智也、光明遍照十方世界也、日の朝也、大慈大悲五六七の神徳也。ラの言霊は、高皇産霊神也、霊系の大本也、無量寿の大基也、本末一貫也。 サの言霊は⦿に事ある也、栄ゆ也、水の音也、水の精也。 カの言霊は、蒙せ覆ふ也、光り輝く也、懸け出し助くる也。 以上ヒラサカ四言霊の活用を約むる時は、尊厳無比にして六合を照し、世界を統一し以て仁慈を施し、霊系の大本神たる日の大神の本末一貫の徳と、万世一系の皇徳を備へ、⦿に変ある時は、水の精なる月光世に出で、皇国の栄えを守り、隠忍したる公憤を発して、駆け出し向ひ戦ひ、神威皇徳を世界に輝かすてふ、神軍の謂ひであります。 又坂本は神国の栄え行く大元といふ事であります。大本といふも坂本の意義である。桃は百の意義で、諸々の武士といふ事であります。霊主体従日本魂の種子が乃ち桃の実であります。『三箇取りて待ち討ちたまひし』とは日本男子の桃太郎が、智仁勇に譬へたる、猿犬雉を以て、戦ふと云ふ事であります。猿は智に配し、雉は仁に配し、犬は勇に配するのであります。亦三ツと云ふ事は、変性女子なる三女神の瑞霊の御魂であります。そこで三ツの御魂即ち十拳剣の精なる神の教に依て悠然として、待ち討ちたまうた時に、黄泉軍は悉く敗軍遁走して了つたと云ふ意義であります。 『爾に伊弉諾命桃子に告り曰はく。汝吾を助けし如、葦原の中つ国に、有らゆる現在人民の苦瀬に落ちて苦患む時に、助けてよと告りたまひて、意富加牟豆美命といふ名を賜ひき』 茲に於て日の大神様から、聖なる至誠の団体や、三つの御魂に向つて、能く忠誠を尽し、国難を救うて呉れたと、御賞めになり、なほ重ねて世界人民が戦争の為に、塗炭の苦みを受けるやうな事が、今後において万一にも出来したら、今度のやうに至誠報国の大活躍をして、天下の万民を救うて遣つて呉れよ。汝にはその代りに意富加牟豆美命と名を賜うと仰せになつたのであります。このオホカムツミの言霊を奉釈すると次の如くであります。 オの言霊は、霊治大道の意である。 ホの言霊は、透逸卓出の意である。 カの言霊は、神霊活気凛々の意である。 ムの言霊は、組織親睦国家の意である。 ツの言霊は、永遠無窮に連続の意である。 ミの言霊は、瑞の身魂善美の意である。 之を一言に約むる時は、霊徳発揚神威活躍平和統一高照祥光瑞霊神剣発動の神と言ふ事であります。即ち惟神の大道を天下に宣伝する至誠至忠の聖団にして、忠良なる柱石神なりとの御賞詞であります。アヽ現代の世態に対し、神の大命を奉じて日本神国のために身心を捧げ、麻柱の大道を実行する大神津見命は、今何処に活躍するぞ。天下の濁流を清め妖雲を一掃し、災禍を滅し、世界万有を安息せしむる神人は、今や何処に出現せむとする乎。実に現代は黄泉比良坂の、善悪正邪治乱興廃の別るる大峠の上り口であります。 (大正九・一一・一於五六七殿外山豊二録) (大正一一・二・一一旧一・一五谷村真友再録) |
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霊界物語 | 09_申_松竹梅の宣伝使の南米・中米の旅 | 01 都落 | 第一章都落〔三九四〕 春霞靉靆き初めて山々の花は匂へど百鳥の 声は長閑に歌へども父と母とに別れたる その悲しさに掻雲る心の空も烏羽玉の 闇夜を辿る思ひなり世は紫陽花の七変り 昨日や今日と飛鳥川淵瀬とかはる人の身の 誰にかよらむヨルダンの水永久に流るれど 長き憂ひに沈みつつ此世の憂をみはしらの 姫の心ぞいぢらしき父と母との懐を 浮世の風に煽られていたいけ盛りの女子が 淋しき冬の心地して父に会ふ日を松代姫 松の緑のすくすくと栄えて春も呉竹の 直ぐなる心の竹野姫露に綻ぶ梅ケ香の 姫の命の唇を開いて語る言の葉は 降る春雨の湿り声恵も深き垂乳根の 母は此世を後にして黄泉路の旅に出でましぬ 娘心の淋しさに色も香もある桃上彦の 父の命の只一人国の八十国八十島の 何処の果てにいますとも恋しき父に廻り会ひ 探ねむものと三柱の皇大神を祀りたる 名残も惜しきヱルサレム都を後に旅衣 草鞋に足をくはれつつ山野を越えて遥々と 目あてもなつの空かけて進み行くこそ哀れなり 主人の君によく仕へ忠実なりし下男 心も清き照彦は姫の姿の何時となく 珍の館に消えしより心も騒ぎ吹く風に 桜の花の散る如く右や左や北南 探ね廻れど音沙汰もなくなく通ふ松風の 雨戸を叩くばかりなり月にも紛ふ顔の 常磐の松に宿りたる心も清き松代姫 雪に撓みしなよ竹の繊弱き姿の竹野姫 何処をあてとゆきの肌出でましぬるか照彦の 心の空も掻曇る浮世の暗に芳ばしき 只一輪の梅ケ香姫の行方を探し求めむと ホーホケキヨーの鶯の声に送られ山河を 徒歩々々渡る手弱女の杖や柱と頼みてし 頼みの綱も夢の間の夢か現か五月空 暗に紛れてわが父の行方は何処か白浪の 大海原を乗り越えて常世の国に出でますか 嗚呼いかにせむ雛鳥の尋ぬる由もなくばかり 昔はときめく天使長高天原の守護神 勢並ぶものもなく空行く雲もはばかりし 神の命の貴の子の蝶よ花よと育くまれ 隙間の風にもあてられぬ繊弱き娘の三人連れ 黄金山を後にして踏みも慣はぬ旅の空 何処の果てか白雲の靉靆き渡るウヅの国 父の命のましますと夢に夢みし梅ケ香姫 花をたづぬる鶯のほう法華経のくちびるを 初めて開く白梅の二八の春のやさ姿 二九十八の竹野姫よはたち昇る月影の 梢に澄める松代姫松のミロクの御代までも 恋しき父に淡路島つたひつたひて三柱の 姫の命の後を追ふ心の空ぞ哀れなり 心の色ぞ麗しき。 松、竹、梅の三人の娘は、やうやうエデンの渡場に辿りつきぬ。此処に五人の里人は、月雪花にも勝る手弱女の、此方に向つて徐々と歩み来る姿を眺めて囁き合へり。 甲『オイ、来たぞ来たぞ、お出でたぞ』 乙『何がお出でたのだ』 甲『此エデンの河は本当に妙な河だよ。昔は南天王様が、此河上から大きな亀に乗つてお出でになつたのだ。此河をどんどん上つて行くと天の川に連絡して居るのだ。南天王様は其後は日の出神さまとかになつて、吾々共を捨てて鬼武彦さまを後に置いて天に帰られたと云ふ事は貴様も聞いて居るだらう。その時にも八島姫、春日姫と云ふ、それはそれは綺麗な天女が降つて来たよ。世界の洪水があつてから、この顕恩郷のものは方舟に乗つて、誰も彼も地教の山に救はれた。其時だつて地教の山には高照姫、言霊姫、竜世姫、真澄姫、其他沢山の、それはそれは美しい雨後の海棠のやうな艶つぽい女神たちに会うた事がある。あれを見い、今其処へお出でになる三人の姫神様は、地教の山から、天の河原に棹さしてお降り遊ばした天女だらうよ。早く船の用意をして顕恩郷へ寄つて貰つたらどうだ』 丙『五人の男に三人の姫様とは、ちと勘定が合はぬじやないか。もう二人あると恰度都合がよいのだがなあ』 乙『また貴様デレて居よるなあ。貴様の顔は何だ。すつくり紐が解けて仕舞つて居るよ。嫌らしい目遣ひをしよつて、貴様のやうな蟹面に、アンナ立派な女神がどうして見かへつて呉れるものか。あまり高望みをするな。とぼけない、貴様、春の日永に夢でも見て居よるのだな』 丙『夢ぢやなからうかい。開闢以来アンナ美しい女神は見た事がないからなあ』 甲『決つた事だ。お前達には分らぬが、あの御方は棚機姫の神様だ。一年に一度夫に御面会をなさると云ふ事だが、其お婿さまの日の出神様が、あまりお気が多いので、此頃また、天の川を下つて世界中を宣伝歌とやらを歌つて廻られたと云ふ噂だから、大方この辺を探したら会へるかも知れないと思つてお出でになつたのだよ』 乙『日の出神さまも余程の、目カ一ゝゝの十(助平)だな。欲の深い、三人もあのやうな奥さまを持つてゐらつしやるのか。俺だつたら一人でも辛抱するがなあ』 かく雑談に耽る折しも、眉目清秀なる二十四五歳と覚しき男、浅黄の被布を纏ひ、襷を十字に綾取り、息急ききつて此方に向つて「オーイ、オーイ」と呼ばはりながら進み来る。 (大正一一・二・一二旧一・一六加藤明子録) |
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霊界物語 | 10_酉_黄泉比良坂の戦い | 25 木花開 | 第二五章木花開〔四五五〕 天雲も伊行きはばかる遠近の鮮岳清山抜き出でし 天教山の真秀良場や心もつくしの山の上 地底の国より吐き出す猛き火口に向ひたる 天津日向のあをぎ原穢き国に到りたる 醜のけがれを清めむと神伊邪那岐の大神は 日の出神と諸共に千五百軍を呼び集へ 浅間の海に下り立ちて御身の穢を払ひます 大神業ぞ勇ましき天の教を杖となし 進む衝立船戸神心の帯を固く締め 曲言向けし神ながら道之長乳歯彦の神 国治立の大神の御稜威の御裳になり出でし 道の蘊奥を時置師一度に開く木の花の 散りては結ぶ大御衣神の心も和豆良比能 宇斯能御神や御褌になります神は道俣神 心の空も飽咋の宇斯能御神と冠りに 戴き奉り左手の手纏に救ひの御手を曲神の 穢れの上に奥疎神四方の大海国原も 神の心に奥津那芸佐毘古奥津甲斐弁羅神 神世幽界辺疎神辺津那芸佐毘古 辺津甲斐辺羅神十二柱の神たちは 黄泉の島へ出でましてこの世の曲霊を照し給ふとき 穢に生れし神ぞかしアヽ麗しく尊さの 限り知られぬ神業よ限り知られぬ神業よ。 伊邪那美大神 伊邪那美大神『久方の天津御神の言霊の伊吹の狭霧に黄泉島 黄泉軍を言向けて暗よりくらき烏羽玉の 常夜の空も晴れ渡り天と地とに冴え渡る 日の出神の功績はこの世の光となりぬべし 三五の月に弥まさり御魂も清き月照彦の 神のみことの宣伝使尊き御代に大足彦の 神のみことの言霊別や嶮しき国は平けく 狭けき国は弘子の神の伊吹に払はれて 世の曲神も少彦名神の光の高照姫や 心も清き真澄姫八咫の鏡の純世姫 清き教も竜世姫地教の山に現はれし 神伊邪那美大神の御稜威輝く瑞御魂 世は望月の永遠に円く治まる五六七の世 天津御国も国原も堅磐常磐に常立と 開化くる御世ぞ楽しけれ天津御神の御教は 一度に開く木の花の咲き匂ふなる天教山の 嶺永遠に動揺なく天津日嗣の何時までも 変らざらまし神の御世豊葦原の瑞穂国 御稜威も高き厳御魂この世の泥をことごとく 洗ひ清むる瑞御魂厳と瑞との二神柱は 天に現はれ地に生れ清き神世を経緯の 錦の御旗織りなして天津御空の星の如 八洲の国の砂の如天の益人生み生みて 世を永久に永遠に雲に抜き出た高砂の 珍の島ケ根の尉と姥千歳の松の弥茂り 栄え尽きせぬ神の国限りも知れぬ青雲の 棚引く極み白雲の向伏す限りたてよこの 神の御稜威に治むべし神の御稜威に治むべし』 と歌ひ終らせ、伊邪那美大神はあをぎが原の神殿深く御姿を隠し給ふ。 木花姫命は満面に笑を湛へ、諸神の前に現はれ給ひて声音朗かに歌ひ給ふ。 木花姫命『豊葦原の中国に一輪清く芳ばしく 匂へる白き梅の花神世の昔廻り来て 国治立の大神が日に夜に心配らせし 常夜の国も晴れ渡り曲津軍も服従ひて 一度に開く木の花のうましき御代となりにけり 闇より暗き世の中を天津御神の神言もて 黄泉の島に天降り醜の国原言向けて 日の出神と現れし天と地との大道別の 神の命と勇ましく事戸を渡し琴平別の 厳の御魂の百引千引岩をも射ぬく誠心を 貫き徹す桑の弓弓張月の空高く 輝き渡る神々の功は清し天教山の 尾根に湧き出る言霊は湖の鏡に映るなり 移り替るは世の中の習ひと聞けど兄の花姫や 咲き匂ふなる春の日も瞬く間に紅の 色香も夏の若緑涼しき風に送られて 四方の山々錦織り紅葉も散りて木枯の 風吹き荒み雪霜のふる言の葉にかへり見て 心を配れ神々よ心を配れ神々よ 春の花咲く今日の日は吾胸さへも開くなり 吾胸さへもかをるなりかをりゆかしき神の道 一度に開く梅の花一度に開く梅の花 一度に開く梅の花』 日の出神は、神人らの総代として凱旋の歌を詠ませ給ひぬ。その歌、 日の出神『日の若宮に現れませる神伊邪那岐の大神は 妹伊邪那美の大神と天津御神の神言もて 天と地との中空に架け渡されし浮橋に 立たせ給ひて二柱撞の御柱大神と 天の瓊矛をさしおろし溢れ漲る泥海を こをろこをろにかきなして豊葦原の中津国 筑紫の日向のたちばなのをどのあをぎが原の辺に 天降りまし木の花姫の神の命と諸共に この世の泥を清めつつ珍の国生み島を生み 万の神人生みまして山川草木の神を任け 大宮柱太知りて鎮まり給ふ折からに 天足の彦や胞場姫の醜の魂より現れし 八岐大蛇や鬼狐荒ぶる神の訪に 万の災群れ起り常夜の暗となり果てし 世を照さむと貴の御子日の出神に事依さし 大道別と名乗らせて世界の枉をことごとに 言向け和せと詔り給ふ力も稜威もなき吾は 恵みの深き木の花姫の三十三相に身を変じ 助け給ひし御恵みに力添はりて四方の国 荒振る曲を言向けて黄泉の島の戦ひに 神の御稜威を顕はせしその功績は木の花姫の 神のみことの稜威ぞかし厳の御魂や瑞御魂 三五の月の御教に世界隈なく晴れ渡り 千尋の海の底深く竜の宮居も烏羽玉の 暗き根底の国までも天津日かげの永遠に 明し照さむ神の道富士と鳴門のこの経綸 富士と鳴門のこの経綸弥永遠に永遠に 神の大道を天地と共に開かむ、いざさらば 鎮まりませよ百の神鎮まりいませ百の神 桃上彦の貴の御子堅磐常磐の松代姫 心すぐなる竹野姫色香目出たき梅ケ香姫の 神の命の三柱は意富加牟豆美の桃の実と この世に現れ厳御魂瑞の御魂と何時までも 三五の月の御教を堅磐常磐に守り坐せ 堅磐常磐に守り坐せ』 この御歌に数多の神々は歓喜の声に満たされて、さしもに高き天教山も破るる許りの光景なりき。 木の花の鎮まり給ふこの峰は 不二の三山と世に鳴り渡る (大正一一・二・二五旧一・二九上西真澄録) |
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霊界物語 | 14_丑_小鹿峠(弥次彦・与太彦) | 14 一途川 | 第一四章一途川〔五六四〕 小鹿峠の四十八坂をば、一行四人はやつと打越え、見渡す限り茫々たる雑草茂る広野原、足にまかせて進み行く。ピタリと行当つた、水勢轟々として飛沫を飛ばし、渦まき流るる谷川の傍に辿り着いた。 弥『アヽ吾々はやうやうにして、小鹿峠の四十八坂を越え、此処の広野原を一行四人連れ、てくついて来たが、此処にピタリと行詰まつた、偉い川が横はつて居るワイ。これからフサの都へ渡り、コーカス山に行く迄は、随分長い道程だが、それまでには沢山の難所が在るだらう。それにしても絡繹として続く日々の老若男女の参詣者は、一体何処を通つて行くのだらう。この頃街道は雑沓だと云ふ事だのに、吾々の通過する処は人の子一匹居らぬぢやないか。ナンデも之れは小鹿峠の下り終ひから行手に踏み迷ひ、反対の方向に進んで来たのではあるまいかなア』 与『何だか、ご気分の冴えぬ天候と云ひ四辺の状況と云ひ、まるで幽界旅行の様だ。いつやら谷底に落ちて魂が宙に迷ひ、とうとう六道の辻まで行つて銅木像に逢つた時の様な按配式だぞ。どうやら此川も三途の川の兄弟分ぢやあるまいか、何だか変な風が吹いて来るぞ。アヽ此奴は不思議だ、今の今まで泰然自若乙に構へこみて居た山岳の奴、知らぬ間に何処かへ消えて仕舞ひよつた、まるで三途の川のやうな按配式だ、ナア弥次彦、貴様はどう思ふか』 弥『吾々の言霊の御神力に恐縮しよつて、山の奴雲を霞と逃げ散りよつたなア。随分三五教の吾々は豪勢なものだワイ』 勝『オイ此処は冥土を流るる三途の川ぢやなからうかな。何だか娑婆の川に比べて調子が違ふやうだ』 弥『調子が違つたつて御心配なさいますな、この弥次サンはドンドンながらポンポンながら、カンカンながら、前後〆めて弐回までも、幽界探険の実地経験を持つて居るお兄サン。最初与太公と遣つて来た時には、三途の川は実に綺麗な水だつた、それが第二回目に来た時には何とも知れぬ、臭気紛々たる川風が鼻を突くやう、小便大便黒血鼻啖の混合したやうな、汚くるしい物が流水代用の芸当を静かにやつて居た。その時三途の川の渡守兼脱衣婆奴が、世の中の奴が汚れた事をしをるから、この清い川がコンナに汚くなつたと云ひよつた。どうせコンナ汚い娑婆が、さう俄に清潔になるものぢやないから矢張冥土にある三途の川なら、依然として汚濁の水が永久に満ち流れて居る筈だ。之はまた素敵滅法界な清流だ、これを思へば三途の川とは、どうしても受取れないワ』 六『モシモシ皆サン、彼処の枝振の洒落た松の根許に小さい家が現はれて居るぢやありませぬか、あれやきつと三途の川の鬼婆の本宅かも知れませぬぜ』 弥『ナーニ、あれや瓦葺だ。婆の御館と云ふものは、それはそれは立派なものだ。どうしても比較にはならない黄金蔵の様だよ』 与『黄金蔵つて何だい、この前に貴様と旅行した時には見すぼらしい雪隠小屋の様な庵じやなかつたかい』 弥『アハヽヽヽ、頭の悪い奴だナ、雪隠小屋の様だから、当世流に黄金蔵と言霊を詔り直したのだよ』 与『何を吐しよるのだ、然しどうも臭いぞ。一つドンナ奴が居るか訪ふて見やうかい』 弥『マア待て一つ考へものだ。熟思黙考の余地は十二分に存する』 与『ヤア構はぬ当つて砕けだ。一つ善か悪か虚か実か爺か媼か、絶世の美人かおかめか、検非違使の別当与太衛門尉無手勝公が首実検に及ばうかい』 弥『アハヽヽ、又そろそろはつしやぎ出したなア、それほどはつしやぐと、日輪様が御出ましになつたら、貴様の細腕が燻ぼつてしもうぞ』 与『何を言ふのだ、燻つて来たら、この川にザンブと浸れば好いのだ。採長補短、水欠水補だ、ソンナ事に心配するな。自由自在の天地を跋渉する、三五教の宣伝使の候補者だ』 と云ひながら小屋の傍にツツと立寄り妙な腰付きをして、両手を蟷螂の様に構へたまま膝をくの字に曲げ、尻を振りながら、一軒屋の無双窓を覗き、 与太彦『モウシモウシお媼サン一夜の宿を願ひます それはお易い事ながらこれなる部屋を開けまいぞ それは誠に有難う今宵は此処にゆつくりと 足を伸ばして寝るであらうお婆は口を尖らして これなる居間を開けまいぞ言ひつつお婆は谷川に 手桶をさげて水汲みに後に与太彦只一人 今なるお婆の云ふたにはこれなる部屋を開けなとは てつきりおむすの添伏しか何は兎もあれ開けて見よ 左手に襖カラリ開けつらつら見ればこは如何に あちらの隅には手があるこちらの隅には足がある 今宵この家にとまりなば手足も骨もグダグダに 出刄で料理つて塩つけておほかたお婆が喰ふであろ これやたまらぬと泡を吹き裏口指して尻からげ スタコラヨイサノ、ドツコイシヨドツコイサノエツサツサノ、エンサノサ エツササノエササ、エササノサツサイ アハヽヽヽ』 弥『コラこの大馬鹿、何を洒落るのだ、此処はどうやら三途の川だぞ。まごまごして居ると本当に三途の川の鬼婆が、又着物をすつくり取り上げて、親譲りの洋服まで渡せと吐しよるぞ、君子危きに近づかずだ、早くこちらへ逃げてこぬかい』 与『エヽ今回も前回もあつたものかい、カイツクカイのカイカイカイだ。オーイ三途の川の鬼婆、先達来た与太公が又来たぞ。モウ何時ぢやと思ふて居るのだ、好い加減に起きぬかい』 家の中より、中婆の声として、 婆『誰れぢや誰れぢや、折角夜中の夢を見て居るのに、門口であた八釜しい吐す奴は何奴ぢやい』 与『誰でもないワイ、俺様ぢや』 婆『俺様と言つたつて名を言はな分るかい、貴様も智慧の足らぬ奴ぢやなア、目に見えぬ肝腎なものを落として来よつたと見えるワイ』 与『コラコラ三途の川の鬼婆奴、何を愚図々々と言つて居るのだい。早く手水をつかつて与太サンの一行に、渋茶でも汲まないかい』 婆『八釜しい言ふな、病人があるのに病気に障るワイ、ゲンの悪いことを言ふて呉れな、冥土か何ぞの様に三途の川ぢやのと、此処は一途の川ぢやぞ』 与『ヤア時節柄物価下落の影響を受けて、ドツと踏張りよつて二途を引き下げたな、サヽ投げ売り投げ売り、只より安い買ふたり買ふたり。このカリカリ糖は食べれやおいしい、食や美味い、ボロリボロリと歯脆うて歯につかぬ、湿る例しもなし、雨が降つてもカーリカリだ、アハヽヽヽ』 婆『エヽー、アタ八釜しい、お前は何処の奴乞食じや。ソンナ芸位いしたつて一文もやらせぬぞよ』 与『一門残らず討死と、聞く悲しさは嵯峨の奥、泣いてばつかり暮せしに、一途の川の乞食小屋とやらに、鬼婆がお坐しますと、一行四人は手に手を取つて、此処まで来たのがおみの仇、思へば思へばこの与太は、去年の秋の病気に、一層死んでしもうたら、斯うした歎きは在るまいもの、娑婆塞ぎになるとは知りながら、半時なりと生き長らへたいと思ふて来たのが吾身の仇、今の思ひに較ぶれば、なぜに三年も先にこの川へ、エーマ身を投げて死ななんだであらう、アヽヽヽチヤチヤチヤンチヤンチヤンチヤンチヤぢや』 弥『また演劇気分になつて居よるナ、門附芸者の様な、見つともない。洒落は止めたがよからうぞ』 婆『何処の奴乞食か知らぬが、表の戸をプリンと押して這入つて来なさい。田子の宿で飲んだ様な小便茶なと汲んで上げやうかい』 与『オイオイ弥次公、何を怕々して居るのだ、婆アサンが結構な茶をヨンデやらうと云ふて居るぞ。早う来て一杯グツと頂戴せぬかい』 弥『モシ宣伝使様、どうしませうかな』 勝『兎も角這入つて見ませうか』 三人は与太彦の後に随いて門口を跨げた。這入つて見れば外から見たよりは、比較的広き二間造りの座敷に、この家の主人と見え中年増の婆が横はつて居る。その傍に少し若さうな一人の婆が、何かと病人の世話をして居る。 勝『ヤア見れば当家には御病人が、おありなさると見える。是れは是れは御取込みの中に大勢のものが御邪魔を致しました』 婆『ハイハイ、ようマア立寄つて下さつた。此処は一途の川と云つて、お前サン等の身魂の洗濯をする処だ。二人の婆がかたみ代りに、往来の人の身魂の皮を脱がして洗濯をする処だ。サア此処へ来たが幸ひ、真裸にして親譲りの皮を脱がして上げやう。お前の顔は蕪の千枚漬ぢやないか、随分厚い皮だ。サア一枚々々隙がいつても仕様がない、年寄に苦労を掛けて困つた人だな、これもウラル彦の神様の御命令ぢやから仕方がないワ。お前等は三五教の宣伝使や信者であらう、アヽ三五教と云ふやつは、男子ぢやとか女子ぢやとか吐して、俺達の世の中を奪うとする奴ぢや。お前もその乾児だからエーイ出刄でも持つて来て、その厚い皮を剥いて遣らうかい。男子の方はまだしもだが女子と云ふ奴は瑞の御魂で、カメリオンの様な代物だ。アンナ奴の立てた教に呆けて、まだそこら中に開きに往くとは不都合千万、エーイ腰の痛い事だワイ』 と右手に出刄を持ち左手を握り、腰の辺を三つ四つポンポン打ちながら、 婆『アーエーイ、腰の痛いこつちや』 弥『オイ貴様はウラル教の悪神の乾児だな。道理で星の紋の付いた布団を着たり、羽織まで星の紋を着けてゐよるワイ、コラ婆アサン貴様こそ改心したらどうだい』 婆『エーイ八釜しいワイ、常世姫命様のお台サンが病気で寝て御座るのに、何をガアガアと騒ぐのだ。神妙にせぬと十万億土と云ふ処へ、送り届けて万劫末代この世へ上がれぬ様にして遣らうか』 与『何だ出刄を提げよつて、強圧的に矢張りウラル教はウラル式だ、奥州安達ケ原の鬼婆見た様な奴だなア。貴様はかうして此川辺に巣を構へよつて、三五教の宣伝使や信者の身魂を引抜く奴ぢやな。コレヤ、その手は喰はぬぞ、貴様の身魂をこなサンが引抜いてやらうか』 婆『何ほど八釜しく、じたばたしても恟とも動くものかい。俺は善の仮面を被つてヱルサレムの宮に、出入をして居つた常世姫命の一の家来の、木常姫の生れ替りだぞ、酢でも蒟蒻でも往く婆でないぞ』 弥『貴様は木常姫の生れ替りだな、木常姫と云ふ奴は仕方のない奴だ』 婆『仕方がなからう、小鹿峠の二十三峠の上で、この婆が貴様を苦しめた事を覚えて居るだらう、恐かつたか恐れ入つたか』 弥『エー何だか俺の背に虻がとまつたかと思つたら、貴様だつたなア。何をへらず口叩きよるのだ、愚図々々吐すと言霊の発射だぞ』 木『オホヽヽ、仰有るワイ仰有るワイ、あの時に日の出別と云ふ我楽多神が出て来よつて、いらぬチヨツカイを出しよるものだから、戦ひ利あらず、時非なりと断念して、茲に第二の作戦計画を立て、手具脛引いて待つて居たのだ。モウ斯うなつては此方のものだ、袋の鼠も同様、これや此出歯の言霊で霊なしにしてやらうか』 弥『アハヽヽヽヽ、婆の癖に剛情な奴だなア。貴様のやうな奴は屹度死んだら、三途の川の脱衣婆の後任者となつて、終身官に任ぜられる代物だナ』 婆『オホヽヽヽ、脱衣婆の役は俺の姉さまの役だよ、わしは其妹だ、酢でも蒟蒻でも梃でも棒でも、いつかないつかな恟ともせぬ、我の強い岩より堅いカンカンの鬼婆だ。如何に三五教の宣伝使でも此婆には敵ふまい。一遍に行かねば、二度でも三度でも、仮令十年百年千年かかつても、貴様の身魂を抜き取らな置くものかい』 弥『何と執念深い婆ぢやないか、早く修羅の妄執を晴らしよらぬかい。天国に往くのが好いか、地獄に行くのが好いか、此処は一つ思案の仕処ちやぞ』 婆『俺は天国は大嫌ひぢや。天国へ往かうとする奴を片つ端から、霊を抜いて地の底へ送るのが、俺の役だ。偽の変性男子だぞ。此処に寝て居る常世姫の懸る肉体は、偽の日の出神ぢや、竜宮の乙姫もタンマには憑つて来るぞ。三五教の奴は、日の出神を地に致して竜宮の乙姫殿のお活動で、この世を水晶に致すとぬかしよつて威張つてをるが、この世が水晶になつて耐るかい。日の出の世になつたら、俺達の居る処は無くなつてしまうワ、それだから貴様等のやうな馬鹿正直な頓痴気野郎や、腰抜け女を鼠が餅を引くやうに、チヨビリチヨビリと引張り込んで、日の出の神は此処ぢや、竜宮の乙姫も此処に現はれて居ると、三五教の奴を誑かして、女子の霊魂を困らしてやるのだ。アハヽヽヽ、気分の好い事ぢや、心地が好いワイ、イヒヽヽヽ』 勝『ヨウ貴様等は不届至極な婆達ぢや、最早貴様の口から自白致した以上は、弁解の辞はあるまい。曲津と云ふ奴は賢い様でも馬鹿だなア、蛙は口から吾と吾手に白状致し居つた。アハヽヽヽ』 婆『ドウセ貴様は只で帰す奴ぢやないから、俺達の企みを隠す必要もなし、因果腰を定めて、貴様の霊を一々手渡しせい。愚図々々吐すと俺が手づから、貴様の土手腹へ此奴をグサリと突つ込み、一抉りに抉つて取つてやるぞ』 弥『何を吐すのだ。顋太許り叩きよつて、脅したりすかしたり貴様の奥の手は好く分つて居るぞ』 婆『貴様達は三五の月の御教だと吐して居るが、その月は運の尽ぢや、片割月ぢや、ソンナ月が間に合ふか。 十五夜に片割月はなきものを 雲に隠れて此処に半分 と云ふ事を貴様は知つて居るか、本当の真如の月は、此処に半分どころか、丸で隠れて居るのだ、切れてばらばら扇の要だ。三五教は自在天と盤古大神の系統の神に、ばらばらに骨を抜かれよつたぢやないか、肝腎の要は此処に握つて居るのぢや。神の奥には奥があり、その又奥には奥がある、その又奥に奥がある、昔々去る昔、ま一つ昔の其昔、その又昔の大昔から、この世を自由に致さうと思うて、八頭八尾の大神様や、金毛九毛のお稲荷様、酒呑童子のお身魂様が、この一途の川の片傍に、仕組を致して居るのを知らぬか。好い加減に目を醒まして、魂をこちらへ潔く渡して、生れ赤子になつて悪神の眷族にならぬかい』 弥『アハヽヽ、コラ二人の婆、何を劫託ほざきよるのだ。勿体なくも五六七大神様が地の高天原に顕現なされた以上は、何程貴様等が火になり蛇になり猿になり狼になり狸になり、或は大蛇、狐、鬼になつて、黄糞をこいて藻掻いたつて駄目だぞ。一日も早く改心を致したがよからう』 婆『イヤイヤ、誰が何と言うても、仮令百遍や二百遍、生命がなくなつても、誠の道は嫌ひだ。誠の道と見せ掛けて悪を働くのが俺達の身魂の性来だ。金は何処までも金ぢや、瓦は何処迄も瓦ぢや。俺達は善の仮面を被つて、高い処へとまつて、熱さ寒さも知らず顔に、世界の奴を睨み下ろして居る鬼瓦ぢやぞ』 与『こりや鬼婆、イヤ鬼瓦、道理で冷酷な奴ぢやと思うて居つた』 婆『定つた事だ、俺達の眷属や系統のものが世界の奴の霊をスツクリ引抜いて、鬼瓦の霊と入替へをして置いたから、世の中の奴は皆冷酷無残な動物霊になつて、餓鬼修羅畜生の境遇になり、優勝劣敗、弱肉強食の体主霊従的非行を盛んに続けて居るのだ。最早三千世界は九分九厘まで、俺の心の儘に曇つて来居つたが、困るのはモウ一輪の所だ。変性男子の身魂はどうなつとして、チヨロマカして来たが、歯切れのせぬのは金勝要の神魂だ。そこへ我の強い変性女子の御魂や、木の花咲耶姫の御魂が出しやばりよつて、俺達の仕組の邪魔をさらすものだから、多勢の者の難儀と云ふたら、口で言ふやうなものでないワイ。貴様等も変性女子やら木の花姫の、霊主体従の教を開きに廻つて、俺等の邪魔をする奴ぢや。何と云つても貴様の霊を引抜かねば、常世姫命に対して申訳が立たず、第一盤古大神や自在天様に申訳がないワイ。婆アの一心岩をも突貫く、いい加減に因果腰を据ゑたが好からうぞ。イヒヽヽヽヽ』 勝『ヤアこの婆、貴様はよつぽど因縁の悪い奴だ。本当にこの世界がほしいか、執着心のきつい奴だ』 婆『ほしいワほしいワ、欲しい印に星の紋が附けてあるのも知らぬかい。星の紋は米の紋ぢやぞ。それが欲しいばつかりに夜昼なしにやきやきして居るのぢや、オーンオーンアーンアーン、何でもかでも欲しいワイ欲しいワイ。三五教はどうしてもやめてほしい、此方の方へ魂を渡して欲しい、是丈け梅干婆にほしいほしいが重なつて、目にまで星が這入つたワイ。蛙の干乾の様な痩た身体になつても、それでもまだ欲しいワイ。欲に呆けた為に俺の着物も梅雨が来て、アチラコチラに星が入つて来た、早う土用が来てほしいワイ、土用干でもせな星がとれぬワイ』 弥『コラ婆アサン、その星を取つたが好いのか、とらぬが好いか、どつちやか返答が一寸きかしてほしいワイ』 婆『着物の星は取つてほしいが、俺のほしいは取つてはならぬワイ』 与『イヤア此婆、五右衛門風呂の蓋のやうな事を吐きよるな、入るときに要らぬ、入らぬときに要る風呂の蓋だ。オイ風呂蓋婆、梅干婆、貴様も棺桶に片足突込んで居つて、好い加減に我を折つたらどうだい。ほしい、おしい、可愛い、憎い、欲に高慢、恨めしい、苦しい八つの埃と吐かす十九世紀の転理数のやうな奴だな』 婆『エーエー言はして置けば止め度なく、痢病患者のやうにビリビリとよう垂れる奴ぢや。くだらぬ理屈を管々しく垂れ流してエヽ汚苦しいワイ。何も彼も綺麗さつぱり御塵払ひをして、この婆に根こそげ奉納しよらぬかい。愚図々々して居ると、俺の方から行動を開始するぞ。コレコレ常世姫の神、もう起きてもよかろう、サア早く起きて下さい、二人寄つて此奴等四人を真裸にして、ソツと猫糞をキメやうかいな』 伏婆むくむくと起き上り、 婆(常世姫)『ヤア最前から病人と詐はり、様子を考へて居れば、ようマア理屈を垂れる娑婆亡者、此処は三五教の女子の系統の魂がほしさに、寝ても起きても一途の川の脱衣婆アサンぢや、車の両輪、飯食ふ箸、人間の二本のコンパス、両方からばばとばばが狹み打ちをしてやる、サアどうぢや』 四人一度に身構へをなし、 四人『ヤア何と吐いた、サア来い勝負』 と手に唾し、グツと睨み付けた。婆は手に手に出刄をひらめかし、突いて掛るを四人は汗みどろになつて、前後左右に身を躱し、奮戦格闘すること殆ど半時ばかり、勝彦は常世姫の出刄に、腰骨をグサリと突かれた途端に目を覚ませば、豈図らむや一行四人は二十五峠の麓の谷底に風に吹かれて落ちこみ居たりける。 (大正一一・三・二五旧二・二七谷村真友録) |
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9 (1808) |
霊界物語 | 22_酉_鷹鳥山の鷹鳥姫 | 13 寂光土 | 第一三章寂光土〔七〇五〕 嵐のたけぶ魔谷ケ岳バラモン教に立籠る 蜈蚣の姫を教主とし朝な夕なに真心を 捧げて尽す金助も心の駒を立直し 神の御稜威も鷹鳥の山の谷間に湧き出づる 流れも清き清泉魂を洗ひて忽ちに 心の園に一輪の花の薫りを認めてゆ 直に開く大御空高天原に日月の 光隈なく照り渡り娑婆即寂光浄土の真諦を 悟るや忽ち黄金の衣に包まれ煌々と 輝き渡る神御霊紫磨黄金の膚清く 身の丈三丈三尺の三十三魂と成り変り 鷹鳥山の山頂に宇宙万有睥睨し 茲に弥勒の霊体を現じて四方を照しける 折しもあれや玉能姫鷹鳥姫は山上の 光を求めて岩ケ根の庵を後にエチエチと 近づき見れば金像は五丈六尺七寸の 巨体と変じ給ひつつ左右の御手に鷹鳥の 神の司や玉能姫物をも言はず鷲掴み 中天高く投げやれば翼なき身の鷹鳥の 姫の司は忽ちに元の庵に恙なく 投げ返されて胸をつき心鎮めて三五の 道の蘊奥を細々と奥の奥まで探り入る 玉能の姫は中天に玉の如くに廻転し 再度山の山麓に落ちて生田の森の中 木々の若芽も春風に薫る稚姫君の神 鎮まりいます聖場へ端なく下り着きにけり 遠き神代の昔より皇大神の定めてし 五六七神政の経綸地時節を待つて伊都能売の 貴の御霊の姫神と仕へて茲に時置師 此世を忍ぶ杢助が妻のお杉の腹を藉り 生れ出でませし初稚の姫の命と諸共に 清く仕ふる三つ御霊三五の月の皎々と 四海を照らす神徳を暫し隠して岩躑躅 花咲く春の先駆を仕組ませ給ふ尊さよ あゝ惟神々々御霊幸はひましまして 鷹鳥山の頂に示現し給ひし弥勒神 深き経綸の蓋開けて輝き給ふ時待ちし 堅磐常磐の松の世の栄え目出度き神の苑 花は紅葉は緑天と地とは紫に 彩る神代の祥瑞に天津神等国津神 百の神々百人は雄島雌島の隔てなく 老木若木の差別なく栄ゆる御代に大八洲 樹てる小松のすくすくと天津御光月の水 受けて日に夜に伸ぶる如進む神代の物語 黄金閣の頂上に輝き渡る日地月 貴の瓢の永久に開くる御代の魁を 語るも嬉し神館月の桂を手折りつつ 言葉の花を翳しゆく醜の魔風の吹き荒び 朽ちよ果てよと迫り来る曲の嵐も何のその 松の操のどこまでも神の御業に仕へずば 固き心は山桜大和心のどこまでも ひきて返さぬ桑の弓言葉のツルを手繰りつつ 五六七の代まで伝へ行くミロ九の神代を松村が 心真澄のいと清く山の尾の上に馥郁と 咲き匂ひたる教の花太折りて語郎善美世は 開き始めて北村氏隆き御稜威も光りわたり 海の内外の山川も草木もなべて皇神の 豊の恵二浴しつつ神代を祝ふ神人の 稜威の身魂を照らさむと雪に撓める糸柳の いと軟らかに長々と二十二巻の小田巻の 錦の糸を繰返し心も加藤説き明す 鷹鳥山の高姫が娑婆即寂光浄土をば 心の底より正覚し国治立の神業に 仕へ奉りて素盞嗚の神の尊の神力を 悟り初めたる物語言の葉車欣々と 風のまにまに辷り行くあゝ惟神々々 御霊幸はひましませよ。 鷹鳥姫は玉能姫を伴ひ、山上の光を目標に登り行つた後に、若彦は金助、銀公の両人に対し、三五教の教理を説き諭す折しも、如何はしけむ、金助、銀公の二人はキヤツと一声叫ぶと共に其の場に倒れ、人事不省に陥つて了つた。若彦は驚いて谷水を汲み来り、両人の面部に伊吹の狭霧を吹き掛け、甦らさむと焦る折しも、風を切つて頭上より降り来る鷹鳥姫の姿に二度ビツクリ、近寄り見れば、鷹鳥姫は庭前の青苔の上に仰向けとなり大の字になつて、 鷹鳥姫『ウン』 と云つたきり、ピリピリと手足を蠢動させて居る。若彦は周章狼狽為す所を知らず、右へ左へ水桶を提げた儘駆けまはる途端に、鷹鳥姫の足に躓き、スツテンドウと其の上に手桶と共に打倒れた。手桶の水は一滴も残らず大地に吸収されて了つた。若彦は如何したものか、挙措度を失ひし結果、立上る事が出来なくなつて了つた。庭前の苔の上にやうやう身を起し、坐禅の姿勢を取り、双手を組んで溜息吐息、思案に暮れて居る。 若彦『嗟、金、銀の両人と云ひ、力と頼む鷹鳥姫様は此の通り、介抱しようにも腰は立たず、加ふるに妻の玉能姫の消息はどうなつたであらう。神徳高き鷹鳥姫様でさへ斯の如き悲惨な目に遇ひ給うた位だから、吾妻も亦どつかの谷間に投げ棄てられ、木端微塵になつたかも知れない。あゝ、神も仏もないものか』 と稍信仰の箍が緩まうとした。時しもあれや、バラモン教のスマートボール、カナンボールを先頭に、鉄、熊、蜂其他数十人の荒男、竹槍を翳しながら此方を指して進み来り、此態を見て何と思つたか近寄りも得せず、垣を作つて佇み居る。神殿に参拝し居りし七八人の老若男女の信徒は、此惨状と寄せ来る敵の猛勢に肝を潰し、裏口よりコソコソと遁れ出で、這々の態にて山を駆登り、何処ともなく消散して了つた。 山桜は折柄吹き来る山嵐に打叩かれて、繽紛として散り乱れ、無常迅速の味気なき世の有様を遺憾なく暴露して居る。若彦は漸く吾に返り独語。 若彦『あゝ兵は強ければ亡び、木硬ければ折れ、革固ければ裂く。歯は舌よりも堅くして是れに先立ちて破るとかや。吾々はミロクの大神の大御心を誤解し、勝に乗じて猛進を続け、進むを知つて退き、直日に見直し聞直し、宣直す事を怠つて居た。日夜見直せ宣直せの聖言も、機械的無意識に口より出づる様になつては、モウ駄目だ。あゝ過つたり誤つたり。 積む雪に撓めど折れぬ柳こそやはらかき枝の力なりけり とは言依別命様の御宣示であつた。慈愛深き大神様は吾々に恵の鞭を加へさせ給うたのか、殆ど荒廃せむとする身魂を、再び練り直し給ひしか、あゝ有難し辱なし、神様、お赦し下さいませ。神や仏は無きものかと、今の今まで恨みの言葉を申し上げました。柔能く剛を制すの真理を、何故今迄悟らなかつたか。口には常に称へながら有言不実行の罪を重ねて来た吾々、実に天地に対し恥かしくなつて来ました。鷹鳥姫様が斯様な目にお遇ひなさつたのも、玉能姫の消息の分らないのも、吾脛腰の立たなくなつたのも此若彦が誤解の罪、実に神様は公平無私である。敵味方の区別を立つるは吾々人間の煩悩の鬼の為す業、慈愛深き神の御目より見給ふ時は、一視同仁、敵味方などの障壁はない。あゝ神様、あゝ、此世を造り給ひし大神様、心も広き厚き限りなき神直日大直日の神様、何卒々々、至らぬ愚者の吾々が罪、神直日大直日に見直し聞直し下さいませ。今迄の曲事は唯今限り宣り直します』 と声を曇らせ、バラモン教の一味の前に在る事も打忘れ、浩歎の声を洩らして居る。スマートボールは声も荒々しく、 スマートボール『ヤイ三五教の青瓢箪、若彦の宣伝使、態ア見やがれ。金助、銀公の二人を貴様の宅に捕虜にして居やがるのだらう。其天罰でバラモン教の御本尊大国別命様に睨み付けられ、鷹鳥姫は其態、貴様は又脛腰も立たず何をベソベソと吠面かわくのだ。俺達はバラモンの教の為に魔道を拡むる汝等一味を征伐せむが為に実行団を組織し此場に立向うたのだ。これから此スマートボールが汝等一味の奴輩を、芋刺し、串刺し、田楽刺し、山椒味噌を塗りつけて炙つて食つて了ふのだ。オイ泣き味噌、貴様も肝腎要の所で、大変な味噌を付けたものだなア。コリヤ鬼味噌、何を殊勝らしく祈つて居やがるのだ。天道様もテント御聞き遊ばす道理がないぞ。サアこれから顛覆だ』 と槍の穂先を揃へて前後左右よりバラバラと攻め掛る。悔悟の涙に暮れたる若彦は、最早心中豁然として梅花の咲き匂ふが如く、既に今迄の若彦ではなかつた。傲慢無礼のスマートボールが罵詈雑言も侮辱も、今は妙音菩薩の音楽か、弥勒如来の来迎かと響くばかりになつて居る。 若彦『アヽ有難い。われも北光の神様になるのかなア。どうぞ早く目を突いて欲しい。慗に肉眼を所有して居るために、宇宙の光を認むることが出来ないのだ。アヽ惟神霊幸倍坐世惟神霊幸倍坐世』 と一生懸命に心中に暗祈黙祷を続けて居る。スマートボールは、 スマートボール『オイ、カナン、どうだ。これ丈勢込んでやつて来たのに、一つの応答もせず、又反抗的態度も行らない奴に向つて、攻撃するも馬鹿らしいぢやないか。如何したらよからう』 カナンボール『今こそ三五教を顛覆させるには千載一遇の好機だ、何躊躇逡巡する事があるか。一思ひにやつて了へよ、スマートボール』 スマートボール『併し乍ら、お前は屋内に駆入り、金、銀の在処を探して呉れよ。俺は是から此奴等に引導をわたさねばならぬ。……鷹鳥姫の婆、並びに若彦のヘボ宣伝使、よつく聞け。此世は大自在天大国別命の治しめす世の中だ。然るに何ぞ、天則違反の罪を負ひて、永遠無窮の根底の国に、神退ひに退はれた国治立命や、現在漂浪の旅を続けて居る素盞嗚尊の悪神を頭に戴き、猫を被つて、天下を混乱させむとは憎き奴共。天はバラモン教の蜈蚣姫が部下スマートボールの手を借りて汝を誅戮すべく此処に向はせ給うたのだ。サア此世の置土産、遺言あらば武士の情だ、聞いてやらう。娑婆に心を残さず、一時も早く幽界に旅立到せ。覚悟はよいか』 と部下に目配せしながら、竹槍をすごいてアワヤ一突にせむとする折しも、中空より急速力を以て降り来れる一塊の火弾、忽ち庭の敷石に衝突して爆発し、大音響と共に四面白煙に包まれ、咫尺を弁ぜざるに立到つた。中よりコンコンと白狐の鳴き声、谷の彼方此方に警鐘を乱打せし如く、頻りに聞えて来た。レコード破りの大音響に、失心して居た鷹鳥姫はハツと気が付き、頭を上げて眺むれば、四辺白煙に包まれ、身は空中にあるか地底にあるか、判別に苦しみつつ、独り頭を傾けて記憶の糸を手繰つて居る。金助、銀公両人もハツと気が付き、咫尺も弁ぜぬ白煙の中を腹這ひながら表に出で、若彦、鷹鳥姫の傍に知らず識らずに寄つて来た。忽ち空中より優美にして流暢な女神の声にて、 女神『三五教の宣伝使鷹鳥姫、若彦の両人、よつく聞かれよ。取別けて鷹鳥姫は執着の念未だ去らず、教主言依別命の示諭を軽視し、執拗にも汝が意地を立てむとし、神業繁多の身を以て聖地を離れ、此鷹鳥山に居を構へ、大神を斎り、汝が失ひし二個の宝玉を如何にもして再び取返さむと、千々に心を砕く汝の熱心、嘉すべきには似たれども、未だ自負心の暗雲汝が心天を去らず、常に悶々として至善至美なる現天国を悪魔の世界と観じ、飽くまでも初心を貫徹せむと、迷ひに迷ふ其果敢なさよ。地上に天国を建設せむとせば、先づ汝の心に天国を建てよ。迷ひの雲に包まれて、今や汝は地獄、餓鬼、修羅、畜生の天地を生み出し、汝自ら苦む其憐れさ。片時も早く本心に立復り、自我心を滅却し、我情の雲を払拭し、明皓々たる真如の日月を心天心海に輝かし奉れ』 と厳かに神示を宣らせ給ひ、御姿は見えねども、空中を帰り給ふ其気配、目に見る如くに感じられた。鷹鳥姫は夢の覚めたる如く心に打諾き、 鷹鳥姫『アヽ謬れり謬れり、今迄吾々は神界の為、天下万民の為に最善の努力を尽し、不惜身命の大活動を継続し、五六七神政の御用に奉仕せしものと思ひしは、わが心の驕なりしか。アヽわれ如何に心力を尽すと雖も、無限絶対、無始無終の大神の大御心に比ぶれば、九牛の一毛だにも及び難し。慢心取違の………われは標本人なりしか、吁浅ましや浅ましや。慈愛深き誠の神様、何卒々々鷹鳥姫が不明を憐れみ給ひ、神業の一端に奉仕せしめられむことを懇願致します。唯今より心を悔い改め、誠の神の召使として微力の限りを尽させ下さいませ。神慮宏遠にして、吾等凡夫の如何でか窺知し奉るを得む。今まで犯せし天津罪国津罪は申すも更なり、知らず識らずに作りし許々多久の罪穢を恵の風に吹払ひ、助け給へ。アヽ惟神霊幸倍坐世惟神霊幸倍坐世』 と両手を合せ、感謝の涙に咽びながら一心不乱に天地の神霊に謝罪と祈願を籠めて居る。四辺を包みし白煙は忽ち晴れて、四辺を見れば此は如何に、鷹鳥姫が庵の前の苔蒸す花園であつた。何処よりともなく三柱の美人、上枝姫、中枝姫、下枝姫は、玉の如き顔貌に、梅花の笑ふが如き装ひにて現はれ来り、鷹鳥姫、若彦、金助、銀公の手を取りて引起し、懐より幣を取出して四人が塵を打払ひ、労はり助けて庵の内に進み入る。スマートボール、カナンボール以下一同は如何はしけむ、身体強直し、立はだかつた儘此光景を不審げに目送して居る。谷の木霊に響く宣伝歌の声、雷の如く聞えて来た。 (大正一一・五・二七旧五・一松村真澄録) |
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霊界物語 | 45_申_小北山の宗教改革1 | 15 曲角狸止 | 第一五章曲角狸止〔一二〇五〕 五三公は観物三昧経説明のおかげで、四人の連中からたうとう先生といふ仇名をつけられて了つた。五三公も先生と言はれてよい気になり、ウンウンと返詞をすることになつて了つた。そしてアク公を中上先生と仇名し、万公を中下先生と称へ、タクは番外先生、テクはチヨボチヨボ先生と互に呼びなす様になつた。 タク『モシ先生、小北山の神の因縁に付いては最前お寅婆アさまの前でお歌ひになりましたが、如何して又こんなバカなことが出来たものでせうかな』 五三『之に就ては随分面白い秘密があるのだ。所謂一輪の秘密だ。常世の国から渡つて来た大変古い斑狐が白い狐を二匹、古狸を三疋、それから野狐を幾疋ともなく引率して、波斯の国北山村の本山に現はれ、バラモン教に一寸首を突出してゐた精神上に欠陥のあるヒポコンデル患者高姫といふ女に憑依して、此世を紊し、国治立の大神様を看板にして、自分の世界にせうと考へたのが起りだ。そした所、此高姫も若い時は随分情交が好きで、其斑狐サンが思ふ様に肉体を使ふことが出来なかつたものだから、やむを得ず、ネタ熊といふ若い男の体をかり、上谷といふ所で、謀反を企みかけたのだ。そした所、変性男子の御霊と、変性女子の御霊が現はれて審神を遊ばしたものだから、斑狐サンたまりかね、部下の狐狸共を引つれ、小北の山へ一目散に逃帰つて了つたのだ。さうすると、ネタ熊の肉体は小北山へ来なくなり、二三日逗留する内に、神罰を蒙つて国替をして了つた。それから今度は斑狐サン、又もや坂熊といふ男の肉体に巣ぐひ、金勝要神の肉宮を手に入れ、変性女子を却け、一芝居やらうと思うた所、又もや女子の御霊に看破され、ゐたたまらなくなつて、アーメニヤへ逃出し、ウラル教に沈没して了つた。そこで今度執念深い斑狐サンは、石高といふ男の肉体に巣をくみ、変性女子の向うを張り、日出神と名乗つて、三五教を蹂躙せむとした所、今度は変性男子、女子に看破され、これ又キツイ神罰で肉体が国替したので、今度はミソ久といふ山子男の肉体をかつた、そして又女子に大反対をやつてみたが、目的達せず、此奴もアーメニヤの方面へ逃失せて了つた。それから又種熊の肉体を使ひ、大奮闘をやつて女子を手古づらせ、たうとう此奴も神罰で国替をして了つた。それから今度憑つたのが蠑螈別さまだ、蠑螈別には斑狐サンが籠城遊ばし、左右のお脇立の白狐サンは、伴鬼世、角鬼世、味噌勘、石黒彦、坂虫、などに眷族をうつして、四方八方から三五教を打こわさむと、今や計画の真最中なのだ、併し乍ら悪神のすることはいつも尻が結べないから賽の河原で子供が石をつむ話の様なものだよ』 万公『さうすると此小北山は容易ならない所だ。根本的に改革して世界の災をたたねばダメだなア、先生』 五三『さうだから、松彦様がお出でになつたのだ。神様は偉いものだ、チヤンと松姫を先へ派遣しておかれたのだからなア、悪神といふ者は、自分より上の方は見る事が出来ないので、松姫さまの肚の中を知らず、本当に唯一の神柱が出来たと喜んで奉つてゐるのだよ』 万公『アハヽヽヽ、其奴ア面白い、さうすると、松姫さまを真から上義姫だと思つてゐるのだなア』 五三『松姫様は、上義姫様の誠生粋の肉の宮様と確信してるから面白いのだ、そして松彦さまをユラリ彦命だと確く信じてゐる所がこちらの附目だ、最早落城したも同様だよ』 万公『益々愉快でたまらなくなつた、なア中上先生、番外先生、チヨボチヨボ先生、怪体ぢやないか、エヽー』 アク『アク迄アクの根を断ち切り、万公末代五三々々せぬ様に誠の道を開拓し、テクテク歩を進めるとするのだなア、ハツハヽヽヽ』 五人はこんな話に現をぬかし、蠑螈別の居室の窓外に自分の立つてゐる事を忘れ大声で喋つて了つた。蠑螈別はお経をすませ、又もやグイグイと酒を呑み始めたらしい。ケチン、ケンケラケンと燗徳利や盃のかち合ふ音が聞えてゐる。お寅は五人の立話を一伍一什聞いて了つた。 お寅は蠑螈別に酒の用意をなし、何くはぬ顔で、 お寅『サア蠑螈別さま、ドツサリおあがりなさいませ。一寸私はお広前まで御礼にいつて参ります、コレお菊、教祖様のお酒の相手をするのだよ』 お菊『あたえ、厭だワ、お酒のお給仕はお母アさまの役だよ。あたえはお広間へ参つて来ますから、お母アさまは教祖さまのお給仕をして上げて下さいな、そして抓つたり鼻をねぢたりせぬ様にして下さい、あたえ心配でならないワ』 お寅『私がお給仕をしてゐると又あんなランチキ騒ぎが起つちや大変だから、それでお前にお給仕をしてくれと云つたのだよ』 お菊『さうだつて、あたえ、嫌なのよ。教祖さまは腋臭だから、お母アさまにねぢられなくても、私の鼻が独りでねぢ曲るのよ』 お寅『エヽ口の悪い娘だな、そんな失礼なことを云つちやすまないよ、蠑螈別さま、どうぞ子供の云ふことだから気にかけない様にして下さいよ』 蠑螈別は細い目をつり上げ、口を尖らして鼻と背比べさせ乍ら、 蠑螈『ウフヽヽヽ、これお菊、マア良いぢやないか、おれの腋臭でも喜ぶ人があるのだもの、そうムゲにこきおろすものだない』 お菊『さうよ、教祖さまの腋臭の好きな人は高姫さまかお母アさまだよ、オホヽヽヽ』 お寅『コレコレ何を言ふのだ。併し乍らお前の云ふ通り、蠑螈別さまは高姫さまの腋臭が好きなのだからねえ、私もどうかして腋臭になりたいのだけれど、不器用な生れつきだから、チツとも持合せがないのよ。ホツホヽヽヽ』 蠑螈『お寅さまは腋臭の代りにトベラだから、マアそれでバランスが取れるといふものだ』 お菊『ホヽヽヽヽ、腋臭にトベラ、何とマアいいコントラストだこと、神さまも随分皮肉だね、イヒヽヽヽ』 お寅『蠑螈別さま、一寸之から御神前へ参つて来ます、ぢきに帰りますから』 蠑螈『ウン、独酌の方が却て興味がある、トベラの匂ひが酒に混合すると余りうまくないからなア』 お寅『わいがの匂ひが混合するといいんだけれど、ヘン』 と云ひ乍ら、ツンとして立上り、畳を踵でポンと一つ威喝させ乍ら表へ飛出した。蠑螈別はお菊を相手にグヅグヅと口の奥で分らぬことを喋りつつお菊につがせては八百万の神にお供へしてゐる。 お菊『ホツホヽヽヽ、何とマア青白い顔だこと、丸で文助さまの何時も書いてゐらつしやる蕪に目鼻つけたよな顔だワ。それでも大根の様な形した白い燗徳利がお好きだからねえ。ホヽヽヽヽ、そして此朝顔型の盃は高姫さまの口元に似とるんだから面白いワ、教祖さま、サア、此盃で一つキツスなさいませ。随分よい味が致しますよ』 蠑螈『ヤア朝顔型の盃は、危険視されるから止めておこう』 お菊『さうですねえ、よう祟る盃ですなア。あたえも此盃みるとゾツとするワ、又つねられたり、鼻を捻られたり、息の根をとめられたりするよなことを突発させるのだから、本当に憎らしい猪口才な猪口ですねえ、此猪口のおかげでチヨコチヨコと腋臭とトベラの直接行動が始まるのだから、本当に此盃こそ過激思想を包蔵してゐるのだワ』 蠑螈『お前もお寅の娘丈あつて、随分口の良い女だ、困つた者だのう』 お菊『何も貴方が困る筈はないワ、犬もくはない喧嘩の煽動するのは此猪口だから、困るのは側に見てゐる此お菊だワ』 蠑螈『そんなら此処にある菊型の盃で一杯やつたら安全だろ、なアお菊』 お菊『イヤですよ、私の名に似た盃を口に当てて貰うこた、真平御免だ』 と云ひ乍ら、薄い平たい陶器の盃をグツとひん握り矢庭に袂へかくして了つた。 蠑螈別はソロソロ酔がまはり出した。 蠑螈別『高姫山から谷底見ればお寅の奴めがウロウロと お菊の小虎を引つれて犬も喰はない餅を焼く ホンに浮世はこしたものか思へば思へば自烈たい。 世界に女は沢山あれどトベラの女に比ぶれば 腋臭の強い高チヤンは蠑螈別の命の親だ。 好きは出て来ず厭は来るホンに浮世は儘ならぬ。 わしと高ちやんはお倉の米よいつか世に出てママとなる。 ままになるならトベラの婆さまどつかへ嫁入りさして見たい。 八木と云ふ字は米国の米よ日の出といふ字は日本の日の字 蠑螈別さまは日出神の光を身に受けママとなる。 デツカンシヨウデツカンシヨウ……だ。オイお菊、お前は随分口八釜しい女だから、お寅に直様密告するだらうなア』 お菊『今の内に十分悪口をついておきなさい。私や決して言ひませぬ。併し貴方がお酒に酔ふと後先見ずに、お母アさまの前でそんなこと仰有るからホンにオロオロするワ、末代日の王天の大神様がおこし遊ばしてるに、みつともない、イチヤ付喧嘩をおつぱじめるなんて、見くびつた人ですねえ』 蠑螈『お前さへ言はなきやそれで良い、俺も成るべく言はぬ積りだ。併しあのお寅といふ奴ア、お前のお母アだから、エヽこんなこといつたら悪からうが、顔にも似合はぬ助平だよ、おりやモウ、スーツカリと厭になつちやつたのだ。 いやで幸ひ好かれてなろか愛想づかしをまつわいな。 いやぢやいやぢやと口では言へど縁を切るとなりや又いやだ』 お菊『ホヽヽヽヽ、いいかげんに若後家をつかまへて、てらしておきなさい』 蠑螈『ハヽヽヽヽ、ちつと妬いてゐやがるなア、若後家だといの、男も持つた覚えもないのに、若後家とはふるつてる、さうするとお菊お前は純粋な処女ではないなア、誰にハナヅルを入れて貰つたのだ』 お菊『牛か何ぞの様に鼻づるなんて、バカにして下さいますな、油断のならぬは娘ですよ。かげ裏の豆もハヂける時が来れば、自然にハヂけますわ。ホツホヽヽヽ』 斯の如くお菊を相手に水色のうす汚れた昼夜着替なしの木綿着物を着たまま、クビリクビリと時の移るも知らず、盃の数を重ねて居る。一方お寅は門口に立つてゐる五人の男を認め、 お寅『コレ皆さま、そんな所に何してゐらつしやるの、何か立聞でもしてゐなさつたのだありませぬかい』 五三『ハイ立聞をさして頂きました。あの教祖様がお上げになつて居つたのは観物三昧経でしたね。声音といひ節まはしと言ひ、本当に調子がよく合つて、知らず知らず吾々の身体が躍動し、其言霊の徳に吸引されて、何時の間にやら窓の外まで引よせられて了つたのですよ、何とマア偉い先生ですね』 とうまく五三公はさばいた。お寅は怪訝の目を見はつて、聊か不機嫌の態であつたが、蠑螈別の声がよいとか、節が上手だとか言つて褒めた詞に嬉しさの余り、何もかも打忘れ、ニコニコし乍ら、 お寅『さう聞えましたかなア、本当によい声でせうがな、サアお広間へ参りませう』 万公『ハイ、有難う、お伴致しませう』 お寅は得意の鼻うごめかし乍ら、機嫌よげに先に立つ。アクは小声で、 アク『成程あの濁つた言霊でああやられちや、誠の神は嫌つて寄り付き玉はず、せうもないガラクタ神が密集するのは当然だ、言霊といふものは謹まねばならぬものだなア』 とウツカリ後の方を大きく云つて了つた。お寅は目を丸くし、後ふり返り、 お寅『エヽ何と仰有ります、蠑螈別さまの言霊が濁つてゐるのですか』 アク『イエイエ濁つた所もあり澄切つた所もあります、それだから偉いお方と云つたのですよ。大海は濁川を入れて其色を変ぜずとかいひましてなア、清濁合せ呑む蠑螈別様の度量には随分感服致しましたよ』 お寅は又機嫌を直して、 お寅『本当にさうですね』 テク『オイ、アク、否中上先生、清濁併せ呑むといふのは何か、清酒と濁酒と一所に蠑螈別さまはおあがりなさるかい』 アク『バカツ、スツ込んで居れ』 テク『へン、偉相に仰有るワイ、イヒヽヽヽだア』 お寅『サア、皆さま、一同揃うて御礼を致しませう』 と神殿の前に仔細らしくすわる。お寅は四拍手し乍ら声高らかに曲津祝詞を、 お寅『かかまの腹に餓鬼つまります。かん徳利燗ざましのみこともちて、雀の親方、かんたか姫の命、嘘をつくしの日の出の、高姫のおいどのクサギが原に、味噌すり払ひ玉ふ時に、泣きませる、金払戸の狼達、モサクサの間男、罪汚れを払ひ玉へ清め玉へと魔の申すことの由を、曲津神、クダケ神、山子万の狼虎共に、馬鹿の耳ふるひ立てて、おみききこしめせと、カチコメカチコメ申す。ウラナイの雀大御神、曲り玉へ逆らへ玉へ、ポンポン』 万公『アハヽヽヽ』 お寅『コレ何方か知らぬが、曲津祝詞を上げてる時に笑ふとは何事ですか、チツと謹んで下さい、ここは狼の前ですよ、狼さまにお寅が祝詞を上げて居るのだ』 万公『寅に狼、何とよい対照だなア、ここがウラナイ教のウラナイ教たる所以だ』 お寅は一生懸命に祈り出した。 お寅『嘘つきの狼様、ヤク日の狼様、曲津日の玉、イタチ天の狼様、落滝津速川の狼様、てん手古舞の狼さま、リントウ鉢巻ビテングの狼様、木曽義仲姫の狼様、上杉謙信姫の狼様、生羽ぬかれ彦神社の狼様、岩テコ姫の狼様、五六七成就お邪魔の狼様、夕日の豊栄下りの狼様、不義理天上内から火の出の狼様、軽業師玉のり姫の狼様、バカの大将軍様、蠑螈別のおね間を守り玉ふお床代姫の狼様、種物神社御夫婦様、悪魔の根本地の十六柱の狼様、堺の神政松の御神木様、何卒々々朝な夕なの御神徳を蒙りまして、蠑螈別がヨクの熊高姫を思ひ切りますやうに、そして此丑寅婆サン姫命を此上なきものとめでいつくしみくれます様に、其次にはお菊姫命、万公と因縁が厶りまするならば、どうぞ一時も早く添はしておやり下さいませ、ハン狐さんの、どこ迄も正体が現はれませぬ様、御注意下さいますやう、これが第一の御願で厶います。そして末代火の王天の大神様の肉宮、不情誼姫様の肉宮が、どこ迄も此小北山に鎮まり遊ばして、吾々の心性不浄自由の目的が達します様に、再び素盞嗚尊があばれ出しませぬ様に、天の岩戸が開けます様に、色の黒き尉殿と白き尉殿が、天の屋敷にお直り候ふやうに、誤醜護御願申上げます、ポンポンポンポン。 皆さま、御苦労で厶いました。サア之で今晩は御自由にお休み下さいませ。御広間に夜具を並べさせますから』 万公『イヤどうぞ心配して下さいますな、自分のことは自分にせなくてはなりませぬ。夜具の在処さへ聞かして貰へば、自分で床をのべて休まして貰ひます』 お寅『あゝそんなら此押入の襖をあけると、チツと痛いけれど、木の枕もある也、蒲団も沢山にあるから、万公、お前が皆さまに床を布いて寝て貰う様に世話をやいて下さい』 万公『ハイ何もかも呑み込みました。どうぞ早くお帰り下さいませ。教祖様が淋しがつてゐられますからなア』 お寅『ホヽヽヽヽ、何から何迄、よう気のつく男だこと。ヤア五三公さま、其外の御一同さま、どうぞ御ゆるりと明日の朝迄お休み下さいませ』 と云ひ乍ら、慌ただしく蠑螈別の居間を指して帰り行く。 (大正一一・一二・一三旧一〇・二五松村真澄録) |
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霊界物語 | 59_戌_イヅミの国2(キヨの港) | 10 変金 | 第一〇章変金〔一五一〇〕 キヨの関守キャプテンのチルテルと妻のチルナ姫との乱痴気騒ぎを広き庭園を隔てて一切万事吾不関焉といふ態度にて、心静かに一絃琴を手にし、細き美はしき声にて歌つてゐるのは初稚姫であつた。 初稚姫『花は紅葉は緑緑したたる黒髪は まだうら若き若草の妻の命のチルナ姫 夫の身の上気遣ひて朝な夕なに真心を 尽して神に祈りまし妻の務めを委細に 包むことなく遂げさせて心もキヨの関守の 関とめかねしチルテルが恋に狂ひし心の鬼を 追ひ払はむと村肝の心を砕かせ玉ふこそ 実にも憐れの次第なり妻の心も白浪の 寄せては返す磯の浪彼方此方と駆け巡り 容貌美はしき女子と見れば人妻人娘 老と若きの隔てなく心蕩かす狒々猿の 掻きまはすこそ歎てけれ妾も此処に来りしゆ 心に染まぬ事乍らこれの家内に立騒ぐ 荒き波をば鎮めむと神の救ひの船を漕ぎ 重き使命を負ひ乍ら見捨てかねたる義侠心 主人の心を言霊の厳の真水に隈もなく 洗ひ清めて惟神神の心に復さむと 人目を忍び只一人時を待つほの浦凪に 立騒ぐなる群千鳥早く和鳥になれかしと 皇大神の御前に心の限り祈るなり それに付けても三五の神の使の宣伝使 聖き心の玉国別や鏡も清き真純彦 思ひは胸に三千彦の妻とあれますデビス姫 伊太彦司の一行が月照りわたるキヨの湖 渡りて此処に来ますなる神の御言を受けてより 目無堅間の舟傭ひ波路を安く守りつつ 先へ廻つて此館神の司の危難をば 救ひて功績をそれぞれに挙げさせなむとの村肝の 心を砕く吾こそは初稚姫の神柱 三千年に一度咲く高天原の最奥の 神の御苑の桃林に匂ひ初めたる桃の花 只一輪の吾魂は如何に此場を治めむと 天津御神や国津神百八十柱のエンゼルと 朝な夕なに語らひて漸く神の御心を 現はす時となりにけりあゝ惟神々々 恩頼を謹みて厚く感謝し奉る 朝日は照る共曇る共月は盈つとも虧くる共 悪魔はいかに猛くとも誠一つの三五の 神に仕へし吾魂はいかで撓まむ梓弓 引きて返らぬ魂の巌を射抜く吾思ひ 遂げさせ玉へと願ぎまつるあゝ惟神々々 御霊幸はひましませよ』 斯かる所へ、ヘールはスタスタと現はれ来り、慌ただしくつつ立ち乍ら、体を前後左右に揺り、足をヂタヂタ踏んで、 ヘール『モシモシ、お姫さま、そんな陽気な事で厶いますか、あれ丈の乱痴気騒ぎが、貴女はお耳に這入りませぬか』 初稚『ハイ、何かモメ事が出来たので厶いますか。妾は一絃琴に魂を奪はれ、平和の夢を貪つて居りましたから、何にも存じませぬ。何だかお館の方に少し許り御夫婦がお酒の上でダンスでもやつて厶つたやうですなア。モウお休みになりましたか』 ヘール『エ、姫さま、そんな暢気な事ですかいな、大変な事が起つたのですよ。急性チルテル・ヘールニヤが勃発し、医者よ薬よと大騒ぎで厶います』 初稚『アヽ左様で厶いましたか。万金丹でもあげなさいましたら、御気分が良くなるでせう』 ヘール『肝心な万金丹をチルテルの大将、チルナ姫さまに、引張られたものですから、忽ちクルクルと白目を剥いて、ピリピリピリ、キヤー、ウーン、ドタンバタン、ガチヤガチヤガチヤ、ガラガラと人造地震が突発致しました。何奴も此奴も卑怯な奴許り、皆安全地帯へ避難したと見え、此ヘール一人が、縦横無尽に看護卒の役を勤め、右往左往に奔走して居ります。何卒病人の看護を手伝つて頂きたいものですなア。男の荒くたい手で看病するより、女の優しい柔かい手々で看護して貰ふ方が、何程病人の慰安になつて可いかも知れませぬ。サア何卒御願で厶います。早くお世話を願ひませう。貴方だつて、見ず知らずの家へ来て、かう鄭重にお世話になつて厶るのだから、チツとは義理人情もお弁へで厶いませう』 初稚『それはお気の毒な事で厶いますな。併し乍ら女といふものは嫉妬深いもので厶いますから、奥様の許しがなくては、旦那様丈の許しでは看病をさして頂く事は出来ませぬ。夫の病気は奥様が御看護なさるのが当然で厶います。何卒奥様のお許しがあれば看護さして頂きますから、一寸奥様に伺つて来て下さいませ』 ヘール『あの奥ですか、彼奴ア旦那様の睾丸狙つて、謀殺未遂犯人としてふん縛り、暗室へ監禁しておきました。あんな奴ア、死なうが何うならうが、チツとも構うこたア厶いませぬ。随分悋気の強い奥様で、お前さまもお困りでしたらうが、モウ御安心なさいませ。旦那さまと何れ丈おいちやつき遊ばさうが、ゴテゴテいふものは厶いませぬよ。早く斯ういふ時に親切を尽しておきなさると、後のお為で厶いますよ』 初稚『妾はその様な惨酷なお方は人間だとは思ひませぬワ。チルテル様には何か悪い者が憑依してゐるのでせう、さうでなければ神から許された夫婦の仲、そんな酷たらしい事をなさる筈がありますまい。正真正銘のチルテル様の御病気ならば、どこ迄も仁慈無限の神様の御心に倣らひ、身を粉にしても介抱さして頂きますが、悪魔の擒となり身も魂も獣化して厶る妖怪的な御主人には、平にお断りを申します。ヘールさま、貴方も確りなさいませ。妙な者が憑依して居りますよ』 ヘール『何と云つても、ウブな身魂ですから、私の肉体を目当に、イロイロの厄雑霊が先を争うてヘールかも知れませぬ。併し乍らフエル事もあり、又曲津のヘール事もあります。丁度キヨの湖の波を見てゐるやうなものです。高くなつたり低くなつたり、或時は荒むだり、或時は平静になつたり、これが所謂千変万化の勇士の本能、円転滑脱、あく迄融通の利く、神の生宮ですからなア。其御主人たるチルテル様は一層偉い者ですよ。さう貴女のやうに単純な御考へでは、到底英雄の心事は分りませぬ。旦那様がウツツの様になつて、姫様々々と連呼してゐらつしやいます。何は兎もあれ、一足お運び下さつたらどうですか。女といふ者はさう剛情を張るものぢやありませぬよ、従順と親切なのが女の美徳ですからなア』 初稚『さう、たつて仰せられますのなれば、兎も角も伺ひませう』 ヘール『ヤ、早速の御承知、旦那様も嘸お喜び遊ばす事で厶いませう。サア、お手々を執つて上げませう』 と毛だらけの黒い固い松の木の荒皮の様なガンザをニユツと突出した。初稚姫はゾツとし乍ら、 初稚『有難う、併し乍らお蔭で足は壮健で厶いますから、お後に跟いて参ります』 ヘール『イヤイヤ姫様、此屋敷の中は、彼方にも此方にも陥穽が拵へてありますから、私がお手を引いて上げませぬと危険です。それだからお手を引いて上げやうと申すのです』 初稚『貴方に手を握つて頂きますと、又チルテルさまと睾丸圧搾戦が勃発しますと、お互の迷惑ですワ。決して陥穽なんかはまるやうな事は致しませぬ。何卒お先へお出で下さいませ』 ヘール『ハイ、駄目ですかなア、どうも私の説を握手喝采して下さらぬと見えますワイ』 初稚『ホヽヽヽヽ、御冗談許り仰有いますな。旦那様が御苦みになつてゐられるぢやありませぬか』 ヘール『ヘー、お苦みはお苦みです。最早チルテル・ヘールニヤも殆んど全快して何ともないのでせうが、苦しいといふのは……ヘン、……どこやらの人に身も魂も奪はれ、煩悶苦悩病が起つて苦しいのですから、一寸お腹の辺りをマッサージでもやつて貰へば、忽ちケロリと本復疑なし、此病気を直すのは女神でなくては到底御利益は現はれませぬワイ、ウツフヽヽヽ』 初稚『あれまア、そんな事だと思つて居りました。それならモウ安心で厶います。何卒チルテル様に宜しう仰有つて下さいませ。そして妾の居間へお遊びにお出下さるやうお伝へ願います。左様なら』 と踵を返し元の居間へサツサと帰つて行く。ヘールは口をポカンとあけたまま、姫の後姿を見送り、 『あゝ何と可いスタイルだなア。牡丹か芍薬か蓮華の花か。あのなんぞりとした肩の具合から、頭の格好、首筋の様子、背のスウツとした所、おいどの小さい、足の歩き様から、お手々の振方、何とマア可いナイスだらう。チルテルさまが女房を叩き出して本妻に入れやうとなさつたのも、決して無理ではないワイ。あゝ何だか精神恍惚として夢路を辿るが如しだ。あゝ胸が苦しうなつて来た。何だか俺にも恋愛嫉妬病が勃発しさうだ。併し乍ら到底俺の力では側へもよりつくこたア出来やしないワ。キャプテンだつて、此奴ア駄目かも知れぬぞ。何とマア崇高い姿だらう。温和にして威厳あり、恰も天女の如し。あゝ男子現世に生を稟けて、斯の如き美人と婚すること能はずば、寧ろ首を吊つて其命を断たむのみだ。エヘヽヽヽ、何だか体中に波が打つて来よつたやうだ。俺の体を鋭利な刃物で一寸刻みにザクザクと何者かが刻み出したやうだ。ても扨ても苦しいものだなア。あゝあキャプテンに報告もならず、姫様の居間へ伺ふ訳にも行かず、ホンに困つた事だワイ。…… 鷺を烏と言うたが無理か 一羽の鳥も鶏だ 葵の花でも赤く咲く 雪といふ字を墨で書く。 ヤ、可い事を思ひ出した。何程俺がヒヨツトコでも、雪といふ字を墨で書く以上は、あのナイスをウンと言はせない道理があらうか。あんな青い幹や葉をした葵からも真赤な花が咲く例もある。碁を打つても、色の黒い奴と色の白い奴とが対抗するのだ。白い石同士は到底物にならぬ。ウンさうだ。おかめに美男、ヒヨツトコに美女といふ例もある。ヒヨツトしたら誂へ向かも知れぬぞ。あのキャプテンは面が青白い上に背がスラリと高くて、どこ共なしに気障な男だ。俺のやうな節くれだつた力瘤だらけの強者は、却て優しいナイスが好むものだ。ヨーシ、俺も恋の為にはユゥンケルの職を棒にふつても構はぬ、ユゥンケルが何だい。仮令リューチナントになつた所が知れたものだ。キャプテン、カーネル、ゼネラル、そんな物が何になる。ウンヨシ、之から恋の勇者となつて、天下の男子に其驍名を誇つてやらう。地獄の上の一足飛だ。人間は一生に一度は危ない綱も渡つてみなくちやならないワ。男は断の一字が肝心だと聞いてゐる。エーエやつつけやうかな。 吾恋は細谷川の丸木橋 渡るにやこはし渡らねば 好いたお方にや会はれない。………… とか何とか、誰かが仰有いましたかネだ。サア、ここで一つ駒を立直し、キャプテンに叛旗を掲げ、初稚砲台に向つて、獅子奮迅の勇気を以て、短兵急に攻めよせくれむ。国家の興亡此瞬間にあり、汝等兵員一同夫れ、奮励努力せよ。否副守護神一統、奮励努力せよ。超弩級艦一隻、正に此港口にあり、閉塞隊の用意あつて然るべし』 と独り喋ぎ乍ら、肩肱怒らし、一足々々力を入れ大手をふつて、芝居の光秀が花道から現はれて来た時のやうなスタイルで、ヂリリヂリリと進み行く。 (大正一二・四・二旧二・一七於皆生温泉浜屋松村真澄録) |
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霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 21 三五神諭(その二) | 第二一章三五神諭その二〔一五四六〕 明治三十一年旧五月五日 今の世界の人民は、服装ばかりを立派に飾りて、上から見れば結構な人民で、神も叶はん様に見えるなれど、世の元を創造へた、誠の神の眼から見れば、全然悪神の守護と成りて居るから、頭に角が生えたり、尻に尾が出来たり、無暗に鼻ばかり高い化物の覇張る、暗黒の世に成りて居るぞよ。虎や狼は吾の食物さへありたら、誠に温順しいなれど、人民は虎狼よりも悪が強いから、欲に限りが無いから、何んぼ物が有りても、満足といふ事を致さん、惨酷い精神に成りて了ふて、鬼か大蛇の精神になりて、人の国を奪つたり、人の物を無理しても強奪くりたがる、悪道な世に成りて居るぞよ。是も皆悪神の霊の所行であるぞよ。モウ是からは改信を致さんと、艮金神が現はれると、厳しうなるから、今迄の様な悪のやりかたは、何時までもさしては置かんぞよ。善し悪しの懲戒は、覿面に致すぞよ。今迄好きすつ法、仕放題の、利己主義の人民は、辛くなるぞよ。速く改信致さんと、大地の上には置いて貰へん事に、変りて来るから、神が執念気を附けるなれど、知恵と学とで出来た、今の世の人民の耳には、這入かけが致さんぞよ。一度に岩戸開きを致せば、世界に大変が起るから、時日を延ばして、一人なりとも余計に改信さして、助けてやりたいと思へども、何の様に申しても、今の人民は聞入れんから、世界に何事が出来致しても、神はモウ高座から見物いたすから、神を恨めて下さるなよ。世界の神々様守護神殿、人民に気を附けるぞよ。無間の鐘を打鳴して、昔の神が世界の人民に知らせども、盲目と聾者との暗黒の世であるから、神の誠の教は耳へ這入らず、獣の真似を致して、牛馬の肉を喰ひ、一も金銀、二も金銀と申して、金銀で無けら世が治らん、人民は生命が保てん様に取違致したり、人の国であらうが、人の物であらうが、隙間さへありたら略取ことを考へたり、学さへ有りたら、世界は自由自在に成る様に思ふて、物質上の学に深はまり致したり、女と見れば何人でも手に懸け、妾や足懸を沢山に抱へて、開けた人民の行り方と考へたり、恥も畏れも知らぬ許りか、他人は何んな難儀を致して居りても、見て見ん振りをいたして、吾身さへ都合が善ければ宜いと申して、水晶魂を悪神へ引抜かれて了ふたり、徴兵を免れようとして、神や仏事に願をかける人民、多数に出来て、国の事共一つも思はず、国を奪られても、別に何とも思はず、心配も致さぬ人民ばかりで、此先は何うして世が立ちて行くと思ふて居るか、判らんと申しても余りであるぞよ。病神が其辺一面に覇を利かして、人民を残らず苦しめ様と企みて、人民のすきまをねらひ詰て居りても、神に縋りて助かる事も知らずに、毒には成つても薬には成らぬものに、沢山の金を出して、長命の出来る身体を、ワヤに為られて居りても、夢にも悟らん馬鹿な人民許りで、水晶魂の人民は、指で数へる程よりか無いとこまで、世が曇りて来て居りても、何うも此うも、能う致さん様に成りて居るくせに、弱肉強食の世の行り方をいたして、是より外に結構な世の治方は、無いと申して居るぞよ。今の世の上に立ちて居りて、今迄けつこうに暮して居りて、神の御恩といふ事を知らずに、口先ばかり立派に申して居りても、サア今といふ所になりたら、元来利己主義の守護神であるから、チリチリバラバラに、逃げて了ふもの許が出て来るぞよ。今の人民は、サツパリ悪魔の精神に化りて居るから、何程結構な事を申して知らしてやりても、今の今まで改信を能う致さんやうに、曇り切りて了ふたから神もモウ声を揚げて、手を切らな仕様が無いが、是丈神が気を附けるのに聞かずに置いて、後で不足は申して下さるなよ。神はモウ一限に致すぞよ。 今の人民は悪が強いから、心からの誠といふ事が無きやうになりて、人の国まで弱いと見たら、無理に取つて了ふて、取られた国の人民は、在るに在られん目に遭はされても、何も言ふ事は出来ず。同じ神の子で有りながら、余り非道い施政で、畜生よりもモ一つ惨いから、神が今度は出て、世界の苦しむ人民を助けて、世界中を桝掛け曳きならすのであるぞよ。今の人民は段々世が迫りて来て、食物に困る様になりたら人民を餌食に致してでも、徹底的行り抜くといふ深い仕組を致して、神の国を取らうと致して、永らくの仕組をして居るから、余程確りと腹帯を締めて居らんと、末代取戻しの成らん事が出来して、天地の神々様へ、申訳の無き事になるから、艮の金神が三千年余りて、世に落ちて居りて、蔭から世界を潰さんやうに、辛い行をいたして、経綸をいたしたので、モウ水も漏らさんやうに致して有るなれど、神は其儘では何も出来んから、因縁ある身魂を引きよせて、懸りて此世の守護をいたすのであるから、中々大事業であれど、時節参りて、変性男子と変性女子の身魂が、揃ふて守護が有り出したから、いろは四十八文字の霊魂を、世界の大本、綾部の竜宮館にボツボツと引き寄せて、神がそれぞれ御用を申し付けるから、素直に聞いて下さる人民が揃ふたら、三千年余りての仕組が、一度に実現て来て一度に開く梅の花、万古末代萎れぬ花が咲いて、三千世界は勇んで暮す神国になるぞよ。人民の天からの御用は、三千世界を治め、神の手足となりて、吾身を捨てて、神の御用を致さな成らぬのであるから悪には従はれぬ、尊い身魂であるのに、今の世界の人民は、皆大きな取違ひを致して居るぞよ。 ○ 明治三十二年…月…日 艮の金神が出口直の手を借りて、何彼の事を知らすぞよ。今迄は世の本の神を、北の隅へ押籠めておいて、北を悪いと世界の人民が申して居りたが、北は根の国、元の国であるから、北が一番に善くなるぞよ。力の有る世の本の真正の水火神は、今迄は北の極に落されて、神の光を隠して居りたから、此世は全然暗黒でありたから、世界の人民の思ふ事は、一つも成就いたさなんだので在るぞよ。是に気の付く神も、人民も、守護神も無かりたぞよ。人民は北が光ると申して、不思議がりて、種々と学や知識で考へて居りたが、誠の神々が一所に集りて、神力の光りを現はして居ると申す事を知らなんだぞよ。モウ是からは、世に落されて居りた活神の光りが出て、日の出の守護となるから、其処辺中が光り輝いて、眩うて目を明けて居れんやうに、明かな神世になるぞよ。今迄の夜の守護の世界は、明の烏と成りて来て、夜が明るから、それまでに改信を致して、身魂を研いて水晶魂に立帰りて居らんと、ヂリヂリ悶える事が出来致すから、今年で八年の間、神は気を附けたなれど、余り世界の人民の心の曇りがきつき故に、何を言ふて聞かしても、筆先に書いて見せても誠にいたさぬから、出口直は日々咽喉から血を吐くやうな思ひを致して、世界の為に苦労をいたして居るのを、見て居る艮の金神も辛いぞよ。胸に焼鉄あてる如く、一人苦みて居るぞよ。人民は万物の長とも申して、豪さうに致して居るでは無いか。鳥獣でも、三日先の事位は知りて居るのに、人民は一寸先が見えぬ所まで曇りて居るから、脚下へ火が燃えて来て居りても、未だ気が附かぬぞよ。能うも是だけ人民の霊魂も、曇りたものであるぞよ。障子一枚ままならぬ所まで精神を汚して置いて、何も判らぬ癖に神を下に見降して居る、人民の中の鼻高が、上へのぼりて、此世の守護をいたしても、一つも思ふやうに行きはいたさんぞよ。此世は、元の生神の守護が無かりたら、何程知識や学で考へても、何時までも世界は治まらんぞよ。一日も速く往生いたして、神の申す様に致さねば世界の人民が可哀想で、神が黙つて見て居れんから、今度は北から艮の金神が現はれて、世界を水晶の世にいたして、善と悪とを立別けて、善悪の懲戒を明白にいたして、世界の人民を改信させて、万古末代動きの取れん、善一筋の世の持方を致すから、是迄の世とは打つて変りての善き世といたして、神も仏も人民も、勇んで暮す松の世、神世といたして、天の大神様へ御目に掛るのであるぞよ。夫れまでに一つ大峠が在るから、人民は速く改信いたして、神心に立還りて下されよ。神は世界を助けたさの、永い間の苦労であるぞよ。昔の神世に立替へる時節が来たぞよ。今迄は日没が悪いと申したが、世が代ると日没が一番善く成るぞよ。日没に初めた事は、是から先の世は、何事も善き事なれば成就いたすぞよ。夫れも神をそつち除けにいたしたら、物事一つも成就いたさぬ世に変るから、何よりも改信致して、霊魂を研くが一等であるぞよ。時節が来たぞよ。モウ間が無いぞよ。 ○ 明治三十二年旧七月一日 竜門の宝を艮の金神がお預り申すぞよ。竜門には宝は何程でも貯へてあるぞよ。岩戸開きが済みて立直しの段になりたら間に合ふ宝であるぞよ。昔から此乱れた世が来るから、隠してありたのぢやぞよ。御安心なされ。艮金神大国常立尊が、神功皇后殿と出て参る時節が近よりて来たぞよ。此事が天晴表に現はれると、世界一度に動くぞよ。モウ水も漏さぬ経綸が致して有るぞよ。開いた口が塞がらぬ、牛糞が天下を取るぞよ。珍らしい事が出来るぞよ。アンナものがコンナものに成りたと、世界の人民に改信致させる仕組であるから、チト大事業で有れども、成就いたさして、天地の大神へ御目に掛けるから、艮の金神はカラ天竺までも鼻が届くぞよ。この仕組は永らく世に落ちて居りての、艮の金神の経綸であるから、神々にも御存知ない事があるから、人民は実地が出て来る迄はヨウ承知を致さんぞよ。是でも解けて見せてやるぞよ。今度の二度目の天の岩戸開は、因縁の在る身魂でないと、御用には使はんぞよ。神の御役に立るのは水晶魂の選抜ばかり、神が綱を掛けて御用を致さすのであるから、今迄世に出て居れた守護神は、思ひが大分違ふぞよ。是も時節であるぞよ。時節には何も敵はんぞよ。上下に復るぞよ。 艮金神大国常立尊の三千年の経綸は、根本の天の岩戸開で有るから、悪の霊魂を往生さして、万古末代善一つの世に致すのであるから、神の国に只の一輪咲いた誠の梅の花の仕組で、木花咲哉姫の霊魂の御加護で、彦火々出見尊とが、守護を遊ばす時節が参りたから、モウ大丈夫であるぞよ。梅で開いて松で治める、竹は邪神の守護であるぞよ。此経綸を間違はしたら、モウ此の先はどうしても、世が立ちては行かんから、神が執念う気を付けて置くぞよ。明治二十八年から、三体の大神が地へ降りて御守護遊ばすと、世界は一度に夜が明けるから、三人の霊魂を神が使ふて、三人世の元と致して、珍らしき事を致さすぞよ。いろは四十八文字で、世を新つに致すぞよ。此中に居る肝腎の人に、神の経綸が解りて来て改信が出来たら、世界に撒配りてある身魂を、此大本へ引寄せて、神の御用を致さすから、左程骨を折らいでも経綸は成就いたすから、何事も神の申す様にして居りて下されよ。今度の事は知識や学では到底可んから、神の申す事を素直に聞いて下さる身魂でないと、神界の御用には使はんぞよ。此の大本は外の教会のやうに、人を多勢寄せて、それで結構と申す様な所でないから、人を引張りには行つて下さるなよ。因縁ある身魂を神が引寄せて夫れ夫れに御用を申し附けるのであるぞよ。 大本の経綸は病気直しで無いぞよ。神から頂いた結構な身魂を、悪の霊魂に汚されて了ふて、肉体まで病魔の容器になりて、元の大神に大変な不孝を掛けて居る人民が病神に憑かれて居るのであるから素の水晶魂に捻じ直して、チツトでも霊魂が光り出したら、病神は恐がりて逃げて了ふぞよ。此の大本は医者や按摩の真似は為さんぞよ。取次ぎの中には、此の結構な三千世界の経綸を、取違ひ致して、病直しに無茶苦茶に骨を折りて肝腎の神の教を忘れて居る取次が多数在るが、今迄は神は見て見ん振を致して来たが、モウ天から何彼の時節が参りて来たから、今迄の様な事はさしては置かんから、各自に心得て下されよ。是程事解けて申す、神の言葉を反古に致したら、已むを得ず気の毒でも、天の規則に照して懲戒を致すぞよ。今の神の取次は、誠と云ふ事がチツトも無いから、吾の目的計り致して、神を松魚節に致して、却て神の名を汚して居る、天の罪人に成りて居るぞよ。大本の取次する人民は、其覚悟で居らんと世界から出て来だすから、恥かしくなりて、大本へは早速に寄せて貰へん事が出来いたすから、永らく神が出口に気を付けさしたぞよ。モウ改信の間が無いぞよ。神はチツトも困らねど、取次が可愛相なから。 艮金神が表になると、一番に悪所遊びを止めさすぞよ。賭博も打たさんぞよ。家の戸締りも為いでもよき様に致して、人民を穏かに致さして、喧嘩も無き結構な神世に致して、天地の神々様へ御目に掛けて、末代続かす松の世と致すぞよ。 ○ 明治三十四年旧三月七日 元伊勢のうぶだらひと、産釜の水晶の御水は、昔から傍へも行かれん尊い清き産水でありたなれど、今度の天の岩戸開に就いて、因縁のある霊魂に御用をさして、世を立直すには、昔の元の水晶の変らん水を汲りに遣らしてあるぞよ。艮金神の指図でないと、此水は滅多に汲りには行けんのであるぞよ。神が許可を出したら、何処からも指一本触る者もないぞよ。今度の元伊勢の御用は、世界を一つに致す経綸の御用であるぞよ。もう一度出雲へ行て下されたら、出雲の御用を出来さして、天も地も世界を平均すぞよ。此御用を済して下さらんと、今度の御用は分明かけが致さんぞよ。解りかけたらば速いぞよ。天の岩戸開きは水の守護と火の守護とで致すぞよ。岩戸開きを致すと申して居りても如何したら世が変ると云ふ事は、世に出て御出でる神様も御存知はないぞよ。肝腎の仕組は今の今迄申さぬと出口に申してあるぞよ。まだまだ在るぞよ。天の岩戸開と言ふ様な大望な事には、誰にも言はれん事があるのぢやが、其御用は出口でないと出来んぞよ。今度の御用をさす為に、昔から生代り死代り、苦労ばかりが為して在りた、変性男子の身魂であるぞよ。此の変性男子が現はれんと世界の事が出て来んぞよ。神柱会開きは人民が何時まで掛りても開けんと申してあるぞよ。神が開いて見せると申して、先に筆先に出してあらうがな。時節が近寄りたぞよ。 世界一度に開くぞよ。一度に開く梅の花、金神の世に致して早く岩戸開をいたさんと、悪く申すでなけれども、此世は此の先は如何成るかと言ふ事を御存知の無い神ばかりであるぞよ。 (大正一二・四・二五旧三・一〇北村隆光再録) |
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霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 24 三五神諭(その五) | 第二四章三五神諭その五〔一五四九〕 大正四年旧十一月二十六日 大国常立尊が三千世界の、上中下と三段に分けてある霊魂を、それぞれに目鼻を付けて、皆を喜ぶやうに致すのは、根本の此世を創造へるよりも何程気骨の折れる事ぢや、人民では分らん事であるぞよ。初発の悪の霊魂は悪の事なら何んな事でも出来るから、茲まで世界中を悪で搦みて了ふて、善と云ふ道は通らぬやうに致して来た悪神の、頭を露はして、トコトン往生を為せて、又次に中の守護神を改信さして、下の守護神も続いて改信させねば神世には成らんぞよ。下の守護神が一番に何彼のことが解らんなれど、改信を致さねば、何うしても改信いたすやうに、喜ばして改信させねば、叱る計りでは改信の出来ぬ守護神も在るなり、何も解らん守護神の如何にも成らぬドウクヅは天地の規則通りに致して、埒宜く致さねば仕様はモウ無いぞよ。此の先で何時迄も改信の出来ぬ悪魔に永う掛りて居りて、岩戸開きの出来んやうな邪魔を致した守護神は、気の毒が今に出来致すぞよ。是丈け気を附けて知らして居るのに、改信の出来ん悪魔に成り切りて居る霊魂の宿りた肉体は、可哀想でも天地から定まりた規則通りの成敗に致すぞよ。もう何時までも解らんやうな守護神を助けて置いたら、世界が総損害に成りて、茲まで神が苦労いたした骨折が水の泡に成りて了ふぞよ。夫れでは永らく神が苦労いたした甲斐が無くなりて、天の大神様へ申訳が立たんなり、神は守護神人民を助けたいのは、胸に一杯であるから、もう一度気を附けて置くから、何事が出て来ても神に不足は申されまいぞよ。是からは悪神の守護神の好きな事も、悪き事も出来んやうに、天地から埒を附けるから、何処を恨む事も出来ず、自己の心を恨める事も出来んやうになるぞよ。天地の先祖の神は、善の守護神も悪の守護神も皆を喜ばしたいと思ふて、色々と永らく気を附けたなれど、ドウクヅの蛆虫同様の醜しき聞解の無いものは、一処へ集して固めて灰にして了ふから、悪いものに悩められて生命を取られるやうな肉体は、蛆虫同様、悪神の眷族と、も一つ下な豆狸といふやうな論にも杭にもかからんものに弄びに遇うて居るのは、肝腎の神の綱の切れて居る身魂であるぞよ。こんな守護神の宿りて居る肉体は取払ひに為て了ふて此世界の大掃除を初めるぞよ。 天地の先祖の苦労の解らん身魂は、蛆虫同様であるから、斯んな身魂は世の汚穢と成るから、神界の経綸通りに致して埒能く岩戸を開かな、後の立直しが中々大望であるから経綸通りにして見せるぞよ。さう致すと神は善一つなれど、何も解らん世界の人民が悪の守護神に引かされて、矢張り艮金神は悪神でありたと申すぞよ。細工は流々仕上が肝腎であるぞよ。天地の神の御恩も判らぬやうな、畜生より劣りた、名の附けやうの無いものは、末代の邪魔になるから、天地の規則通り規めるから、悪の守護神の中でも改信の出来たのは、今度の岩戸開きに焼払ひになる所を救けてやるぞよ。蛆虫の中からでも救かるべき身魂が在れば択出して善の方へ廻して遣るぞよ。 天の大神様が、いよいよ諸国の神に、命令を降しなされたら、艮金神国常立尊が総大将となりて、雨の神、風の神、岩の神、荒の神、地震の神、八百万の眷属を使ふと、一旦は激しいから、可成は鎮まりて世界の守護を為せるなれど、昔の生粋の神国魂の活神の守護と成りたら、此中へ来て居る身魂に申附けてある事を、皆覚えて居るであらうが、一度申した事は其様に致すから、神の申す事を一度で聞く身魂でないと、充分の事は無いぞよ。もう神からは此の上人民に知らせる事は無いから、大峠が出て来てから、如何様でも改信をしますで赦して下されと何程申しても、赦す事は出来んぞよ。是程大望な昔からの仕組を今になりて変へる様な事を致して居りたら、二度目の天の岩戸開きの大きな経綸が成就致さんぞよ。根本から大洗濯を致して、末代世界の口舌が無いやうに致して、神界の害をする霊魂が、学で此世を暗闇にして了ふて、正味のない教やら、やりかたは、世の大本からの教でないから、途中から出来たものは、末代の世の遣り方には用ゐんぞよ。 今の上に立ちて居る守護神は科学ほど結構なものは無いと申して、渡りて来られん霊魂が、神を抱込みて、好き寸法に致して、此先をモ一つ悪を強くして、悪で末代建てて行かうとのエライ目的でありたなれど、もう悪の霊や学の世の終りと成りたぞよ。本の神世へ戻りて、天と地との先祖が末代の世を持たねば、他の霊魂では此世は続かん、口舌の絶えると云ふ事は無いぞよ。 大国常立尊が変性男子の霊魂の宿りて居る肉体を借りて、末代の世を受取りて、世の本の生粋の誠の生神ばかりが表に現はれて、天地の先祖の御手伝ひで、数は尠いなれど神力は御一柱の生神の御手伝ひが在り出しても、霊魂の神が何程沢山でも、本の生神の力には敵はんから、同じ様な事を申して細々と今に続いて知らして居るなれど、途中に出来た枝の神やら、渡りて来て居る修業なしの利己主義の遣方の守護神では、肝腎の事は解りは致さんぞよ。誠の事の解る大本へ出て来て、いろはからの勉強を致さねば、学は金を入れた丈の力は出るなれど、天から貰うた霊魂に附いた生来の力でないから、物質の世の間は結構でありたなれど、もう物質の世の終りとなりたから、今迄の学では二度目の天の岩戸開きには些少も間に合はんぞよ。 ○ 大正四年旧十二月二日 大国常立尊変性男子の霊魂が現はれて、三千世界の三段に別けて在る御魂を、夫れ夫れに立替へ立別けて、目鼻を附けて、先づ是で楽ぢやと申すやうに成るのは、大事業であるぞよ。二度目の天の岩戸開は、戦争と天災とで済むやうに思ふて、今の人民はエライ取違ひを致して居るなれど、戦争と天災とで人の心が直るのなら、埒能う出来るなれど、今度の天の岩戸開は、其んな容易い事でないぞよ。昔からたてかへは在りたなれど、臭い物に蓋をした様な事ばかりが仕て有りたので、根本からの動きの取れんたてかへは、致して無いから、これ迄のやりかたは、身魂は尚悪くなりて、総曇りに成りて居るから、今度は一番に、霊魂界の岩戸開であるから、何に付けても大望であるぞよ。是程曇り切りて居る、三千世界の身魂を水晶の世に致して、モウ此の后は、曇りの懸らんやうに、万古末代、世を持ちて行かねば成らんから、中々骨の折れる事であるぞよ。 天地の大神の思ひと、人民の思ひとは、大きな違ひであるから、何に付けても、今度の仕組は、人民では汲み取れんぞよ。人民一人を改信させるのにも、中々に骨が折れようがな。今度の二度目の天の岩戸開は、昔の初まりから出来て居る、霊魂の立替立直しで在るから、悪い霊魂を絶滅して了ふてするなら、容易く出来るなれど、悪の霊魂を善へ立替へて、此世一切の事の行り方を替へて、神法をかへて、新つの世の純粋の元の水晶魂にして了ふのであるから、今の人民の思ふて居る事とは、天地の大違ひであるから、毎度筆先で気を附けてあるぞよ。 あやべの大本の中には、世界の人民の心の通りが、皆に仕て見せてあるぞよ。世界の鏡の出る所であるから、世界に在る実地正末が、皆にさして見せて在るから、色々と心配をいたして居るなれど、何んなかがみも仕て見せて在るから、世界が良くなる程、この大本は善くなるぞよ。今ではモチツト、何事も思ふやうに無いのであるぞよ。 世界の事が、皆大本に写るから、夫れで、此中から行状を善く致さんと、世界の大本となる、尊い所であるから、何事も筆先通りに為て行かねばならんぞよ。是までの世のやりかたは、神の国では用ゐられん、邪神の極悪のやり方に、変りて了ふて居るのを、盲者聾者のやうな世界の人民は、知らず知らずに、させられて居りたのであるから、分らんのは尤もの事であるぞよ。誠の神が抱込まれて、神の精神が狂ふて居るのであるから、人民が悪う成るのは当然であるぞよ。 モ一つ此の先を悪を強く致して、この現状で世を建てて行くどいらい仕組をして居るなれど、モウ悪の霊の利かん時節が循環てきて、悪神の降服いたす世になりて来たから、吾の口から吾が企みて居りた事を、全然白状いたす世になりたぞよ。 世界の御魂が、九分まで悪に化りて、今まで世を持ち荒して来た守護神に、改信の出来かけが、何の様にも出来んから、神も堪忍袋を切らして、一作に致せば八九分の霊魂が悪く成るし、改信致さす暇が、モウ無いし、是程この世に大望な事は、昔から未だ無い、困難な二度目の天の岩戸開であるのに、何も分らぬ厄雑神に使はれて居ると、何も判らんやうになるぞよ。 まことの行も致さずに、天地の先祖を無視して、悪のやりかたで世界の頭になりて、此先を悪をモ一つ強く致して、まぜこぜで行りて行ことの初発の目的通りに此所まではとんとん拍子に面白い程上り来たなれど、此神国には深い経綸が世の元から致して在りて、九分九厘まで来たぞよ。 悪神の仕組も、九分九厘までは来たなれど、モウ輪止りとなりて、前へ行く事も出来ず、後へ戻る事も出来んのが、現今の事であるぞよ。仕放題の利己主義の行方で、末代の世を悪で建てて行くことの目的が、今までは面白い程のぼれたなれど。 神の国には、チツト外の御魂には判らん経綸が為てあるから、人も善、吾も善、上下揃ふて行かねば、国の奪り合ひを為るやうな、見苦敷性来では、世は永久は続かんぞよと申して、筆先に出して、気を附けてあるぞよ。 斯世は善と悪とが有りて、何方でこの世が立つかと言ふことを末代続かせねば成らん世であるから、何事も天地から為してあるのであるぞよ。吾が為て居るのなら、何事も思ふたやうに行けんならんのに、何うしても行けんのが、神から皆為せられて居る証拠であるぞよ。善の道は、苦労が永いなれど、此の先は末代の世を続かすので中々念に念が入るぞよ。 善の行は永いなれど、善の方には、現界幽界に何一つ知らん事の無い様に、世の元から行が為してあるから、此先は、悪の仕放題に行無しに出て来た守護神が辛くなるぞよ。如何な事も為ておくと、何事も堪れるなれど、行無しの守護神に使はれて居ると、世の終ひの初まりの御用は勤まらんぞよ。 善と悪との変り目であるから、悪の守護神はヂリヂリ悶える様になるから、一日も早く改信致して、善の道に立帰らねば、モウこれからは貧乏動きも為さんぞよ。善の守護神は数は尠いなれど、何んな行も為してあるから、サア今と云ふ様に成りて来た折には、何程烈しきことの中でも、気楽に神界の御用が出来るから、一厘の御手伝で、神の本には、肝腎の時に間に合ふ守護神が拵へてありて、世界の止めを刺すのであるぞよ。神の国は小さうても、大きな国にも負は致さんぞよ。神国は世界から見れば、小さい国であれど、天と地との、神力の強い本の先祖の神が、三千世界へ天晴と現はれて、御加勢あるから、数は少うても、正味の御魂ばかりで、何んな事でも致すぞよ。何程人数が多くても、何の役にも立たぬ蛆虫計りで、善い事は一つも能う為ずに、邪魔計りを致すから、世界の物事が遅くなりて、世界中の困難であるが、未だ気の附く守護神が無い故に、何時までも筆先で知らすのであるぞよ。 天地の御恩も知らずに、利己主義で茲まで昇りつめて来た悪の守護神に、改信の為せかけが出来んので、何事も遅くなりて、総損害に、上から下までの難渋となるから、明治廿五年から、今ぢや早ぢやと申して、引掛戻しに致して、気附く様に知らしても、元からの思ひが大間違で在るから、世界の岩戸開の九分九厘と成りた所で、ジリジリ舞ふ事が見え透いて居るから、気を附けるぞよ。 天地の先祖の、思ひの判りて居る守護神と人民は、今に無いぞよ。是程暗がりの世の中へ、世の元の正真の水火神が揃ふて表はれても、恐い計りで、腰の抜けるものやら、顎が外れて早速に物も能う言はん様な守護神や、人民が沢山出来る許りで、神の目からは間に合ひさうに無いぞよ。 判りた御魂の宿りて居る肉体でありたら、何んな神徳でも授けるから、此神徳を受ける御魂に使はれて居りたら、一荷に持てん程、神徳を渡すから、其貰ふた神徳に光りを出して呉れる人民で無いと、持切りにしては天地へ申訳が無いぞよ。 ○ 大正五年旧十一月八日 あまり此世に大きな運否があるから、口舌が絶えんから、世界中を桝掛を引いて、世界の大本を創造た、天と地との先祖の誠で、万古末代善一つの道で世を治めて、口舌の無い様に致すぞよ。天は至仁至愛真神の神の王なり、地の世界は根本の国常立尊の守護で、神国の、万古末代動かぬ神の道で治めるぞよ。吾好しの行り方では、此世は何時までも立たんぞよ。この世界は一つの神で治めん事には、人民では治まりは致さんぞよ。悪神の仕組は世が段々と乱れる計りで、人民は日に増に、難渋を致すものが殖える許りで、誠の神からは目を明けて見て居られんから、天からは御三体の大神様なり、地は国常立尊の守護で、竜宮様の御加勢で、元の昔の神の経綸通りの松の世に立替致して、世界中を助けるのであるから、中々骨が折れるぞよ。モウ時節が近よりたぞよ。用意をなされよ。脚下から鳥が立つぞよ。天地の先祖の神々を粗略に致して、神は此世に無い同様にして東北へ押込めて置いて、世界の大将に成りて、悪の血統と眷属の何も知らぬ悪魔を使ふて末代世を立て様と思ふて、エライ経綸をして居れど、世の本からの天地を創らへた、其儘で肉体の続いてある、煮ても焼いても引裂いても、ビクともならん生神が、天からと地からと両鏡で、世界の事を帳面に附け止めてある同様に、判りて居るから、モウ神界には動かぬ仕組が致してあるから、世界の人民は一人なりと、一日も早く大本へ参りて、神の御用を致して、世界中を神国に致す差添へに成りて下されよ。上下揃ふて神国の世に世界中を平均すぞよ。 今の世界の人民は、現世に神は要らんものに致して、神を下に見降し、人民よりエライものは無き様に思ふて居るが見て御座れよ、岩戸開の真最中に成りて来ると、智慧でも学でも、金銀を何程積みて居りても、今度は神にすがりて、誠の神力でないと大峠が越せんぞよ。今度は神が此世に有るか無いかを、解けて見せて遣るから、悪に覆りて居る身魂でも善へ立ち返らな、神の造りた陸地の上には、居れん様になるから、改信を致して身魂を能く研いて居らんと、何彼の時節が迫りて来たから、万古末代取戻しの成らん事が出来致すから、今に続いてクドウ気を附けるのであるぞよ。是丈けに気を附けて居るのに聞かずして、吾と吾身を苦しめて最後で改信を致してもモウ遅いぞよ。厭な苦しい根の国底の国へ落されるから、さう成りてから地団太踏みてジリジリ悶えても、そんなら赦してやると云ふ事は出来んから、十分に落度の無いやうに、神がいやになりても、人民を助けたい一心であるから、何と云はれても今に気を附けるぞよ。 これからは筆先通りが、世界に現はれて来るから、心と口と行ひと三つ揃ふた誠でないと、今度神から持たす荷物は重いから、高天原から貰ふた荷が持てん様な事では、余所から人が沢山出て来だすから、其時に恥かしう無いやうに、腹帯を確り締めて居らんと、肝腎の宝を取外す事が出来るぞよ。今度は此大本に立寄る人民に、神からの重荷を持たすから、各々に身魂を十分に研いて置いて下されよ。ドンナ神徳でも渡して、世界の鑑に成る様に力を附けてやるぞよ。改信と申すのは何事に由らず、人間心を捨てて了ふて、知識や学を便りに致さず、神の申す事を一つも疑はずに生れ赤子の様になりて、神の教を守る事であるぞよ。霊魂を研くと申すのは、天から授けて貰ふた元の霊魂の命令に従ふて、肉体の心を捨て、本心に立返りて、神の申す事を何一つ背かん様に致すのであるぞよ。学や知識や金を力に致す内は、誠の霊魂は研けて居らんぞよ。 この天の岩戸開を致すには、学でも、悧巧でも、知識でも、金銀でも、法律でも、行かんぞよ。兵隊計りの力でも行かず、今の政治の行り方では、猶行かず、今迄の色々の宗教でも猶行かず、今の学校の教でも行かず、根本の天の岩戸開であるから、今の人民の思ふて居る事とは、天地の相違であるから、世界の人民が誠にいたさんから神は骨が折れるのであるぞよ。天地の間の只の一輪咲いた梅の花の経綸で、万古末代世を続かすのであるから、人民には判らんのも尤もの事であるぞよ。 九つ花が咲きかけたぞよ。九つ花が十曜に成りて咲く時は、万古末代しほれぬ神国の誠の花であるぞよ。心の善きもの、神の御役に立てて、末代神に祭りて此世の守護神といたすぞよ。此世初まりてから、前にも後にも末代に一度より無い、大謨な天の岩戸開であるから、一つなりとも神の御用を勤めたら、勤め徳であるぞよ。それも其人の心次第であるぞよ。神は無理に引張りは致さんぞよ。 是だけ蔓りた悪の世を治めて、善一つの神世に致すのであるから、此の変り目に辛い身魂が多人数あるから改信々々と一点張りに申して、知らしたのであるぞよ。早い改信は結構なれど、遅い改信は苦しみが永い許りで、何にも間に合はん事になるぞよ。艮金神で仕組致して、国常立尊と現はれて、善一つの道へ立替るのであるから、経綸通りが世界から出て来だすと、物事が早くなるから、身魂を磨いて居らんと、結構な事が出て来ても、錦の旗の模様が、判らんやうな事では成らんぞよ。今迄苦労いたした事が、水の泡になりてはつまらんから、大本の辛い行を勇んでいたす人民でありたら、神が何程でも神力を授けるから、ドウゾ取違ひをせぬやう慢心の出ぬ様に心得て居りて下されよ。世界の神、仏、耶、人民の為に、神が永らく苦労を致して居るぞよ。 (大正一二・四・二七旧三・一二於竜宮館北村隆光再録) |
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霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 25 三五神諭(その六) | 第二五章三五神諭その六〔一五五〇〕 大正六年旧二月九日 神の国には、世の根本の大昔から、天地の先祖が仕組が致してあるので、二度目の天の岩戸開は末代に一度より為られんのであるから、何に附けても大謨な事であるぞよ。肝腎の事は、あとへ廻はして何も知らぬ厭な方の神や、下劣の守護神が大事の仕組も知らずに、利己主義の経綸でここまでトントン拍子に出て来たなれど、九分九厘といふ所で往生致さなならん世になりたぞよ。 九分九厘の御魂が天地の御恩といふ事が判りて来たなれば、現世は斯んな惨い事に成りはせんなれど、盲目や聾と同じ事で、全然暗黒界であるぞよ。今の守護神と人民とは岩戸開の手伝致すどころか、大きな邪魔を致すぞよ。悪の方から見れば、誠の方が悪に見えて、悪の方が善く見えるので、何事も皆逆様ばかりより出来んのであるぞよ。 悪の守護神が大本の中へ這入りて来て、何彼の邪魔を致すから、気ゆるしは些とも出来んから、物事が遅くなりて、世界中の苦しみが永うなると申す事が毎度筆先に出して知らしてあるぞよ。大本には、世界の事が映るから、大本の中の様子を見て居りたら、世界の事の見当が、明白に判りて来るぞよ。筆先に一度出した事は、チト速し遅しは在るなれど、毛筋も違はん事許りであるから、皆出て来るぞよ。霊の本の国と申しても、惨い事に成りて居るのを、知りて居る守護神も、人民も、誠になさけ無いほど尠いから今の世界の困難であるぞよ。神国魂と申して威張りて居れど、神国魂の性来はチツトも無いやうに惨い事になりて居るぞよ。 世界を一つに丸めて、神国の世に致すには、此世を拵へた天と地との根本の真で治める時節が参りて来たから、明治二十五年から今に続いて知らしてあるぞよ。世界の今度の大戦争は世界中の人民の改信の為であるぞよ。まだまだ是では改信が出来ずに、神の国を取る考へを致して居るぞよ。神の国は神の誠の守護致してある国であるから、何程邪神に神力が沢山ありたとて、知識や学がありたとて、神国には到底も叶はん仕組が世の本から致してあるから、九分九厘で掌を返して、万古末代潰れぬ守護を致して三千世界を丸めて人民を安心させ、松の世、仁愛神の世、神世といたして、天地へ御目に掛ける時節が近うなりたぞよ。天地の間に一輪咲致梅の花、三千世界を一つに丸めて一つの王で治めるぞよ。悪神のしぐみは、今迄はトントン拍子に来たなれど、九分九厘でもう一足も先へも行けず、後へも戻れず、往きも帰りも成らんといふのが、今の事であるぞよ。茲へ成りた所で、悪神の頭が充分改信を致して、善へ立返りて、善の働きをいたさんと、世界中の何も知らん人民が、此先でエライ苦しみを致すぞよ。此の大本の中にも、悪の身魂の守護神が化けて来て居るが、もう化けを現はして、皆に見せてやるぞよ。 ○ 大正七年旧正月十二日 三千世界一度に開く梅の花、艮金神の守護の世になりたぞよ。明治二十五年から出口直の手を借り口を借りて知らした事の、実地が現はれる時節が近寄りて来たぞよ。今迄の世は悪神の覇張る世で何事も好き寸法、利己主義の行り方で、此世を乱して来たが、モウ是からは昔の元の生神が世に現はれて、三千世界を守護やうに時節が参りたから、思ひの違ふ守護神人民が大多数に出来て来るぞよ。今度の二度目の天の磐戸開きは、悪の身魂が毛筋の横巾でも混りてありたら成就いたさぬ大謨な末代に一度より為られん神界の経綸であるから、茲まで悪神の覇張りた暗黒の世を生粋の水晶の如うな明かな、何時までも変らぬ神世に致さねば成らぬから、神も中々骨の折れる事であるぞよ。 昔のミロク様の純粋の、何時になりても変らぬ其儘の秘密の経綸の凝結で、末代動かん巌に松の仕組、何神にも解らぬ様に為てある善一つの誠の道であるから、途中に精神の変るやうな身魂では出来も致さず、判りもせぬぞよ。此世の元を創造へて、世界中の一切の事、何一つ知らんといふ事のない身魂でないと、今度の二度目の天の岩戸開は、世界を創造へるよりも、何程骨が折れるか知れんぞよ。限り無しの潰されぬ末代の経綸、天の岩戸開といふことは、爰まで悪神が覇張りて、モ一つ奸賢しこう人民をいたして、未だ未だ悪神の力を強くして、善神の道は立てさせぬ如うに体主霊従主義で貫く、仕組を致して居るから、神国の人民は余程魂を研いて、水晶魂を元に研いて光を出して置かねば、万古末代邪神の自由に為られて了ふぞよ。 昔から露国へ上りて居りた悪神の頭目が、モ一つ向ふの国へ渡りて、人民の頭を自由自在に、吾の思惑どほりに悪を働き、世界中の大困難を構はず、何処までも暴れて暴れて暴れまはして世界を苦しめ、又露国を自由に致して吾の手下に附けて、今に神国へ出て来る経綸を致して居るが、そんな事にビクつく如うな守護神、人民でありたら到底続きは致さんぞよ。是から神が蔭から手伝ふて軍隊に神力を附けて与るから、今度は大丈夫であれども、国と国同士が戦争は到底叶はんと申して、可い加減な事で仲直りを致して、一腹になつて、今度は押詰めて来るから、守護神も人民も腹帯を締て掛らな、万古末代取返しの出来ん事になるぞよ申して、明治二十五年から出口直の手を藉り口を藉りて、知らして置いた事の実地が、迫りて来たぞよ。邪神は悪が強いから、ドコ迄も執念深う目的の立つ迄行り通すなれど、九分九厘と云ふ所まで来た折に、三千年の神が経綸の奥の手を出して、邪神を往生いたさすので在るから、大丈夫であれども、罪穢の深い所には罪穢の借銭済しが在るから今の中に改信を致さんと、神国にも酷しい懲罰が天地から在るぞよ。霊主体従主義の行り方で、末代の世が立つか、体主霊従の施政方針で世が末代続く乎、今度は善と悪との力量比べであるから、勝ちた方へ末代従うて来ねばならぬぞよ。それで神界は茲まで煉に煉たので在るぞよ。 この先に善一つの誠の道を立貫かねば、斯世に安住て貰へんやうに酷しく成るから、爰まで永らく言ひ聞かしたので在るぞよ。善と悪との境界の大峠であるから、爰まで充分に煉らねば、悪の性来には聞けんから、今の今まで煉りたのであるが、チツトは腹へ浸み切りて居る身魂が在るであらう。爰まで言ひ聞かしても判らん如うな身魂は、体能く覚悟をいたさんと、是迄のやうな心で居りたなら、又天地を汚して了ふから、善へ心底から従ふ身魂で無いと、今迄の如うな心の人民が在りたら総損害になりて、モ一つ遅れるから、艮金神も助けて遣る事も出来ず、天の御三体の大神様へ申訳が無いやうな事になりて来るから、止むを得ず気の毒でもモウ経綸どほりに致すぞよ。天の岩戸開が段々と近寄りたから、是までの如うな事には行かんから、一か八かと云ふ事を、悪の頭に書いて見せて置くが良いぞ。今の番頭のフナフナ腰では、兎ても恐がりて、コンナ事を書いて見せて遣るだけの度胸はありは致すまいなれど、神の申すやうに致したら間違は無いぞよ。一の番頭の守護神が改信が出来たら、肉体に胴が据わるなれど、到底六ケ敷いから、今に番頭が取替へられるぞよ。モウ悪の頭の年の明きであるから、悪い頭から取払ひに致すぞよ。何事も時節が一度に参りて来て、世界中の困難が到来すると云ふ事が、毎度申して知らした事が実地になりて、一度に開く梅の花、追々分らなんだ事が明白に判りて来て、キリキリ舞を致さな成らん、夜の目も眠られん如うな事に成ると申して置いたが、一度筆先に出した事は皆出て来るぞよ。能く念を押して置くぞよ。念に念を押して、クドイと云はれて復念を押してあるから、モウ是からは神界の事情も能く解る様に一度に成りて来るから、誠で無いと、此先は誠一つの善の道が拵へて在るから、一日も早く善の道へ立復りて、神国魂に捻ぢ直して下されよ。悪の世は齢が短いから、体主霊従の身魂が大変困む事が出来るから、明治二十五年から怒られる程申して在りたぞよ。人民は男も女も腹帯を確り締めて掛らんと、一旦は堪れん如うな混雑になるぞよ。 明治二十五年から煩いと申して怒られもつて、今に岩戸開の筆先を書かして居るぞよ。何時までも同じ事に間々に細々能く判る様に抜目の無い様に知らしたなれど、ソンナ事が在るものかと申して、今に疑うて居る人民許り、実地が出て来て青白い顔をして、腰が抜けて足も立たず、腮が外れて足が上に成り、頭が下に成りて、ソコラ中をヌタクラな成らん事が出て来るぞよと知らして在るが、モウ近うなりて来たぞよ。悪の昇るのは迅いなれど、降るのも亦速いぞよ。善の分るのは手間が要るなれど、善の道の開けたのは、万古末代の栄えであるから、爰まで悪開けに開けた世界を、根本からあらためて、今後は体主霊従主義といふ様な醜しき世は無い如うに致すのであるから、是ほど大望な事は末代に一度ほか為られんのであるから、神も中々骨が折れるぞよ。是程世界中が曇り切りて居る世の中を、水晶に致すのであるから、骨が折れるのも当然であるぞよ。斯の極悪の世の岩戸を開いて、末代口舌のないやうに、大神様の善一つの世に、立直しをいたさねば、世界の苦舌が絶えんから、人民の心が悪なる許り、何時になりても国の奪り合ひ計りで、治まりは致さんぞよ。 神の国は本が霊主体従であるから、誠に穏かにありたなれど、世が逆様に覆りて今の状態であるぞよ。薩張り上下へ世が覆りて了ふて、神国に悪神が渡りて来て、上から下まで醜しさと云ふものは、天地の誠の神からは、眼を開けて見る事が出来んぞよ。斯世を結構と申して大きな取違ひを為て居りて、良いと云ふ事も悪いと云ふ事も、可非の判らん見苦しき世が、一旦は出て来ると申す事は、地球を創造へる折から良く判りて居るので、外の身魂では能う為もせず解りも致さんぞよ。一輪の火水(言霊)の経綸がいたして在りて先が見え透いて居るから、爰まで辛い事も堪り詰めて来られたのであるぞよ。今度の二度目の岩戸開きは、知識でも学でも機械でも、世界中の大戦ひには、手柄は出来んぞよ。何程悪の頭でも到底是からの世は今迄の行方では行かんと云ふ事に気が附いて、綾部の大本へ今の内に願ひに来る守護神でありたら、善一つの道へ乗替へさして、末代の世を構はして、毛筋の横巾も悪の性来の混りの無い結構な神代に助けて遣るから、早く改信なされよ。何程我を張りて見ても時節には叶はんぞよ。 善一筋の純粋で末代の世を立てて行く結構な仕組の解る世が参りて来たから、爰までに知らしても未だ今に成つて疑うて居る守護神や人民許りで、可憐相なものなれど、モウ神からは人民に知らせ様が無いから、何時までも邪魔を致す極悪の頭から平げると云ふ事を、永らく筆先で知らしてある通りに、時節が迫りて来るぞよ。余り何時までも高上りをして居ると、時分の過ぎた色花の萎れる如く、今日の間にも手の掌が覆るぞよ。今の中に発根からの改信が一等であるぞよ。疑うて居りて何事が出来しても神はモウ知らんぞよ。 悪の霊を抽抜いて元の水晶の霊と入替へて遣ると申して、爰まで知らして在るなれど、余り世界の霊魂が悪渋とうて手に合はんから、皆の霊魂が悪シブトい性来に成り切りて居るから、言ひ聞かした位に聞く如うな優しい霊魂はありはせんぞよ。今の人民は悪のやり方が良く見えるのであるから、何程言ひ聞かしても聞きはせぬぞよ。困つたものであるぞよ。是ほど良い国は無いと心に錠を降して了ふて居るから、何程実地の事を言ひ聞かしても、逆様計りに取るから、助けてやり様が無いぞよ。是れもモチト先に成りたら、大きな取違ひを致して居りたと云ふ事が、上へあがりて覇の利いて居りた神に自然的に判りて来るぞよ。今迄の様に自分好しの目的は、トントン拍子には行かぬ如うになるぞよ。 世界の人民確り致さんと、今に大変な事になりて来るから、何れの国も危ないと申して、彼方此方へと狼狽へまはりて、行く所に迷ふぞよ。神道を守護致す誠の所は、綾部の大本より外には無いぞよ。綾部は三千年余りて、昔からの神の経綸の致してある結構な所であるから、大本の教を聞いて居る守護神は余程シツカリいたして居らんと、油断が在りたら肝腎の経綸を他国から取りに来るぞよ。何程奪らうと致しても神が奪らしは致さんなれど、物事が遅れるだけ世界の困難が永びくから、充分に覚悟をいたして正勝の時の御用を勤めて下されよ。三千世界の鏡の出る大本であるぞよ。今の人民は神がいつまで言ふて聞かしても、人を威す位にほか能う取らんから、一度にバタツイても間に合はんぞよ。俄の信心は役に立たぬから、常から信心いたせと申して爰まで気を附けてあるぞよ。善の行り方と悪の行り方とを末代書いて遺す綾部の大本であるから、変性男子の書いた筆先を、坤金神が変性女子と現はれて説いて聞かして、守護神人民に改信を致さす御役であるから、世界の人民よ、真の事が聞き度くば綾部の大本へ参りて来て、細々と聞かして貰ふたら、世界の事が心相応に解りて来て世界に何事ありても驚きは致さんやうになるぞよ。 昔からの極悪神の頭が神国の人民を一人も無いやうに致す仕組を為て居るなれど、神国にも根本から動かぬ経綸が致して在るから、国も小さいし、人民も尠いなれど、初発から一厘と九分九厘との大戦ひで在ると申して、何時までも同じやうな事を書かして在る通り、口で言はしてある事がドチラの国にもあるから、神力と学力との力比べの大戦ひであるから、負た方が従はねば成らんと申して、筆先に出してある通り、実地に実現て来るから、此先で神から不許と申す事を致したり、吾の一力で行らうと思ふても、世が薩張り変りて了ふから、是までの事はチツトも用ゐられんぞよと、度々気を附けてあるのに、聞かずに吾の我で行りたら、彼方へ外れ、此方へ外れて、一つも思ふ様には行かんぞよ。素直にさへ致せば何事も思ふやうに箱差した様に行くのが神代であるぞよ。今の人民は余り我が強いから、是迄は神の申す事も聞かずに、守護神の自由に一力で思惑に行けたのは、地の上に誠と申すものが無かりたから、世に出て居る方の守護神が、悪神の大将に気に入る様な悪る力がありたなら、何処までも上げて貰へる世と成りて居りたから、悪い事の仕放題、悪神の自由で在りたなれど、モウ時節が廻りて来たから、其時節の事を致さな世は立ちては行かんぞよ。今迄は物質の世でありたから、学が茲まで蔓りて、学力でドンナ事でも九分九厘までは成就いたしたなれど、モウ往生いたさなならん如うに成りて来たぞよ。茲に成るまでに悪の守護神を改信さして、助けて遣りたいと思ふて、明治廿五年から深い因縁のある出口直の身魂に知らさしたのであるなれど、吾程豪いものは無きやうに思ふて、チツトも改信の出来ん罪人ばかり、神も是には往生いたさな仕様がないぞよ。現世の鬼を平げて、世界のものに安心を致さすぞよと云ふ事が初発に筆先にかかしてあるが、世界の大洗濯を致して、元の水晶の身魂やら天地の大神の教どほりの世に致して、天に坐ます御三体の大神様に、御目に懸けねば成らぬ御役であるぞよ。来いで来いでと松の世を待ちて居りたら、松の世の始まりの時節が参りて来たなれど、肝腎の悪の性来の改信をいたして貰はんと、何時までも頑張るやうな事では、此世は水晶にならんから、ドウシテも聞かねば聞くやうに致すより仕様は無いぞよ。世界には代へられんから、此先の規則通りに制配を致さねば御三体の大神様へ申訳がないから、二度目の天の岩戸開をいたしたら、悪の性来は微塵も無い如うに洗ひ替をして、巌に松の動かぬ世にいたす世界の大橋と成る尊い所であるから、余り何時迄も疑ふて居ると、天地の大神様へ大きな御無礼になるから、今一度気を附けておくから素直に致すが徳であるぞよ。 (大正一二・四・二七旧三・一二北村隆光再録) (昭和一〇・六・一五王仁校正) |
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霊界物語 | 65_辰_虎熊山と仙聖郷の物語/七福神 | 26 七福神 | 第二六章七福神〔一六八二〕 日の出別命の左右には道彦、安彦の両人が従ひ、初稚姫一行を導いて数百旒の五色の旗を風に翻し乍ら、百花爛漫たるゲッセマネの園にと進み入つた。玉国別一行が竜王の三個の玉を捧持して来りし其功績を賞する為め、特に埴安彦尊の命により歓迎宴が開かれた。ゲッセマネの園には種々の作物や、音楽や演劇が盛んに催されて居た。さうしてコウカス山よりは、言依別命が数多の神司を引き連れ、二三日前に早くも聖地に到着されて居た。 玉国別、真純彦は途中に於て初稚姫に『聖地は結構な所の恐ろしい所だ』と誡められ、筋肉迄緊張させ居たにも拘はらず、この大袈裟の歓迎に肝をつぶし、夢かと許り呆れてゐる。只見るもの、聞くもの意外の事許りで語る事も知らず、無言の儘初稚姫の後について進んで往く。日出別の神は俄作りの建物をさし示し、 日の出別『サア皆様、貴方方の御苦労を慰める為め、神様の思召によつて、種々の余興が催されて居ます。これから此建造物に於て、七福神宝の入船と云ふお芝居が初まりますから、悠悠気をゆるして御覧下さいませ』 玉国別は案に相違しながら、 玉国『いや、どうしてどうして、そんな気楽な事が出来ませうか。真純彦に持たせた此宝玉を、無事神様にお渡しする迄は、芝居所では厶いませぬ。是ばかりは平にお恕し下さいませ。うつかりして九分九厘で顛覆しては大変ですからなア』 と何処迄も警戒し体を固くして居る。 日の出別『決して決して御心配なさいますな。此通り貴方方の御到着を祝ふために宝の入船と云ふ神劇が催されて居るのです。貴方も宝を抱いてヨルダン河を船にて渡り、この聖地へお這りになつたのですから、宝の入船の主人公は貴方方ですよ』 玉国『ハイ。真純彦、お前はどう考へるか。どうも大教主のお言葉が私には些と許り解し兼ねるのだがなア』 真純『先生、これや神様から気を引かれて居るのかも知れませぬよ。兎も角お断りを申て、早く此玉を埴安彦の神様にお渡しして来うではありませぬか。さうでなくてはお芝居を見る気がしませぬわ』 初稚『決して御心配は要りませぬ。這入つて御覧なさいませ。いやいや貴方方が役者にならねばならぬのですよ。やがて治道居士、伊太彦、三千彦、デビス姫、ブラヷーダさまが見えることですから、七福神になつて貰ふ積りです。治道居士さまは布袋、玉国別さまが寿老人、真純彦さまが毘沙門天、伊太彦さまが大黒さま、三千彦さまが恵比寿さま、それから、デビス姫さまが弁財天、と云ふやうに、各自にちやんとお役が定つて居るのです。サアどうぞ楽屋へお這入り下さい。私等は見せて貰ふのです。実の所は貴方方に役者になつて貰ふのですから、是も御神業だと思つてお勤め下さいませ』 玉国『ハテナ、些とも合点が往きませぬわ。御命令とあれば俄俳優になつてもよろしいが、てんで台詞が分りませぬからねえ』 日の出別『台詞なんか要りませぬよ。其時神様が憑つて口を借りて仰有いますから、承諾なさればよいのです』 真純『モシ先生、イヤ寿老人さま、神様の命令だ、千両役者になりませうか』 玉国『何と云つても神様の御命令とあれば背く訳には行きますまい。勤めさして頂きませう。そして三千彦、伊太彦はもはや此方へ見えて居りますか。どうしても吾々とは二三日後れるやうに思ひますがなア』 言依別『時間空間を超越したる神の道、そんな御心配は要りませぬ。直に今此処へお出になりますよ。総て神様の御国は想念の世界ですから、想念の儘になるのです。此処が外の地点とは違つて尊い所以です。さうでなくてはエルサレムと云つて神様がお集まり遊ばす道理がありませぬから』 玉国『左様ならばお受け致します』 真純『私も先生と同様お受を致します』 と云ふや否や、二人の姿は忽ち七福神の中の一人となつて居た。いつの間にやら、治道居士、三千彦、伊太彦、デビス姫、ブラヷーダ姫其外の人々は集まり来りて、何れも七福神の姿となつて居る。愈茲に七福神宝の入船の奉祝神劇は演ぜられた。数多の神司や信者は、此広き建物の中に、立錐の余地なき迄に集まつて、愉快げに観覧し、其妙技を口を極めて賞揚した。神劇の次第は左記の通りであつた。 抑我日の下は神の御国なり天地ひらけ陰陽分れ 青人草を始めとし万物爰に発生して 天地人の三体備はりぬ天津御国の太元は 大国常立の大御神又の御名は天照皇大御神なり 地津神の太元は豊国主の大御神又の御名は神素盞嗚尊 豊葦原の瑞穂の国産土山の底津岩根に宮柱太敷立て 三五の神の都を奠め賜ひしより千代万代に動ぎなく 天下泰平国土安穏五穀成就万民鼓腹撃壤の楽みを享く 実に有難き神の国の草木も靡く君が御代 かくも目出度国の中に四海波風豊にて 雲井の空に寿ぎ舞ふ鶴や千年の松の緑の色深く 万歳の亀も楽しむ天教の山の高く澄みきる月のあたり たなびく霞の中よりも真帆をば風に孕ませつ 浮かれ入り来る宝の御船七五三の静波かきわけて 積み込む宝の数々やまばゆきばかりあたりを照らす うるはしさ 丁子や分銅の玉の袋に黄金の鍵もかくれ蓑 七宝壮厳の雨に濡れし小笠の露や玉の光と 打出の小槌七福神の銘々が 乗合舟の話こそ面白き。 中にも口まめな福禄寿長い天窓を振り立てて、 福禄『天下無双のナイスお弁さま、イナ弁財天女どの、貴女は新しい女と見えて、こんな変痴奇珍な男子計りの船の中へ、案内もせないのに、何と思つて同席の栄を賜はつたのかな』 弁天女は面恥ゆげに莞爾と笑み乍ら、 弁天『ホヽヽヽ、アノまあ福禄寿さまの御言葉とも覚えませぬ。好く考へて御覧、何程新しい女だとて、ナイスだとて、五百羅漢堂を覗いたやうなスタイルして居らつしやる醜男子の側に来られないと云ふ法律は発布されては居りますまい。五六七の御代が開ける魁として、今度エルサレムの宮に於て、玉照彦命、玉照姫命二柱の神様のお目出度い御婚礼があるので、御祝のため貴神等は、この宝舟に乗つて聖地エルサレムの竜宮城へ昇られるのでせう。何程福の神だと云つて、男子許りでは花も実もありますまい。昔から七福神は聞いて居るが、六福神は聞いた事が無い。夫れで妾が天津神様の御命令で、俄に貴神等の仲間に加はつたのですよ』 福禄『コレお弁さま、御心配下さるな。この福禄寿一神あつても下から読み上げて見ると十六福の神だよ。ヘン済みませぬナア。そこへ寿老人(十六神)を加へて三十二神ですよアハヽヽヽヽ。それよりも身の上話でも聞かして貰つた上、都合によつて加へて上げようかい』 弁天『三十二神の処へ妾が一神加はれば、三十三相の瑞の御魂ですよ。一神欠けても三十三魂にはなりますまい。女は社交上の花ですからねー。妾の素性を一通り聞かして上げますから、十六神さま謹聴なさいませホヽヽヽヽ』 六福『謹聴々々ヒヤヒヤ』 弁天『妾は神代の昔の或る歳、頃は弥生の己の巳日、二本竹の根節を揃へて、動ぎ出でたる嶋だと云ふので、竹生島と称へられる、裏の国の琵琶の湖に浮べる一つの嶋に、天降りました天女の中でも、最も勝れたナイスの乙女ですよ。自分から申しますと何んだか自慢するやうですが、神徳があまりあらたかなと言ふので、世人より妙音弁財天女と崇められ、妾の身体は引張り凧の様に日の下の国の四方に分霊を祭られて居ります。先づ東の国では江の島、西の国では宮嶋に、今一体は勿体なくも古、伊邪那岐尊、伊邪那美尊の二柱の神様が天の浮橋に渡らせたまひ、大海原に天降り、始めて開かれたる淤能碁呂嶋、その時、鶺鴒と云ふ小鳥に夫婦の道を教へられ、天照大神を生み給ふてより、又一名を日の出嶋と名付けられ、この国人に帰依せられ、福徳を授けしによつて、美人賢婦の標本として七福神の列に加はつた事は、十六福神さまも遠うの昔に御存知の筈。アナタも何時の間にやら福禄寿でなくて、モウロク(最う六)十三になりましたねー、ホヽヽヽヽ』 福禄『ヒドイなア』 六福『アハヽヽ。オホヽヽヽヽヽ』 顔色の黒いのを自慢の大黒天は、槌を持つた儘座に直り、 大黒『弁天ナイスの今の話を聞いた以上は拙者も男だ。一つ身の上話を初めて見よう。一同御迷惑ながら御聴聞なさいませ。 抑も拙者は、神素盞嗚大神の御子にて、八百米杵築の宮に鎮まりし、大国主命でござる。生れつきの慈悲心包むに由なく、貧しき者を見るに付け、不便さ忍び難く、一切の衆生に福徳を与へむとして心を砕き、チンチンチン一に米俵を踏まへて、二に賑はしう治めて、三に栄えの基となり、四ツ世の中悦んで、五ツいつも機嫌よく、六ツ無病息災で、七ツ難事もないやうに、八ツ屋敷を開ひて、九ツ花の倉を建て、十分満ればこぼるるぞ。コレ此槌は福を打出す槌ぢやない、お土を大切にして生命の種のお米を作れと知らすためぢや。モ一つには奢れる奴等の天窓をば打砕く槌ぢやわい。アハヽヽヽヽ』 福禄『アハヽヽヽヽ、コリヤ御尤もだ。オイ戎、コレサ聾どの、エベスどのエベスどのエベスどの貴神は、マア舳に出て釣許りして厶るは一体、こなたは何う云ふ福の神ぢやい。福の神にも色々あつて、雑巾を持つて縁板などをフクの神もあれば、尻をフクの紙もある。きつぱりと素性を明かして呉れないか』 戎『俺かい。おれはナ、何事も聞かざる、見ざる、言はざると云つて、庚申の眷属を気取り、三猿主義を固守し、只堪忍をのみ守つて居るのだ。徳は堪忍五万歳だ。抑も拙者は、蛭子の命と云つて、正月三日寅の一天に誕生した若蛭子だ。商売繁昌を祈るが故に欲の深い連中から商売の神と崇められて居るのだ。誠に目出度う候ひけるだ、アハヽヽヽヽ。十日戎の売物は、はぜ袋に、取鉢、銭がます、小判に金箱、立烏帽子、桝に財槌、束熨斗、お笹をかたげて千鳥足』 大黒『アヽコレコレさう踊り廻すと船の上は危険だ。モウ良いモウ良い御中止を願ひます』 大黒『エヽ時に寿老人殿、貴神は何時も何時も渋い面をして落付払つて厶るが、こんな芽出度い時には、チツと笑つて見せても可いぢやないか』 寿老『イヤ是は又迷惑千万、物価謄貴生活難の声喧しき、この辛い時節に、あまい顔をせよとは、粋にして且つ賢明なる方々にも似合ぬお言葉では厶らぬか。拙者は何時も苦い顔をして倹約を第一と守り、郵便貯金を沢山にして、他人に損をかけず、自分も損を致さねば、心労なき故、長命を仕るのぢや。長命に過ぎたる宝は厶らぬ。兎角、拙者の行り方を見習へば、たとへ福は授からなくとも、自然に福徳が保てますぞや』 福禄『ヘン、何程長命したとて、ソンナ苦い顔をして一生送るのなら、余り福徳でも在るまい。笑つて暮すのが、何より人生の幸福だ。高利貸の親父でも、たまには笑ふぢやないか。ナア、皆の福神連中さま』 寿老『イヤ恐れ入る。併し自分は是でも人の知らぬ心のよろこびに充ちて、楽しく日を送つて居るのだ。サテ、愚老許りお喋舌いたして皆様の交際を忘れて居た。余りの楽しさと、面白さと、今度の御婚礼の目出度さとに気を取られて、アハヽヽヽヽ。サア是からお交際申さう』 と傍にあり合ふ妻琴を引寄せ掻きならし、 (歌)『忍ぶ身や夜な夜なもゆる沢の螢火に夜更渡りぬる』 寿老『余り長いのは皆様のさはりになる。長い者を俗に長者と言ふさうぢや。ヤ、是はしたり、長い者とは福禄寿様へ差合ました。失礼々々』 布袋和尚は吹出して、 布袋『アハヽヽヽアハヽヽヽ、オホヽヽヽ、ハテ、コリヤ面白い面白い面白いハヽヽヽヽヽ奇妙々々』 毘沙門天は、むつとした顔しながら、 毘沙『ヤイ、そこな土仏坊主奴。何がそれ程可笑しいのだい。袋と腹とで乗合船の居所を狭めて居る癖に、チツと位遠慮召さつても可いだらう』 布袋『アヽ、コレコレ毘沙殿。さう腹立まいぞや、腹立まいぞや、立腹まいぞや。少々は乗合の邪魔にも成るだらうが、ソコは仲間の事だから、神直日大直日に見直し聞直してマアマア曰く因縁を聞き玉へ。夫れ一家一門附合、朋友、得意先、丸う無くては治まらないと云ふ道理は、拙者のこの天窓で判るだらう。眼まで丸い布袋和尚だ、ハヽヽヽヽ。まつた腹は大きくなければ、心がさもしいものだ。そこで愚僧が此大きい腹を突き出し、腹鼓を打つて一通りお話致すで厶らう。 「ソレ、この袋といつぱ」見たる事聞きたる事、よしあし共に忘れぬ様、中へ納めて斯の通り、もたれて居申すなり。又世に子宝と云へるが、稚き者ほど可愛者はあり申さぬ。その稚き者を団扇を持つて行司仕り居り候也。アヽ宜き楽みかな宜き楽みかな』 福禄『イヤ布袋どの、尤も尤も、尤も次手に笑はしやるのも尤も尤も。「笑ふ門へは福禄寿」サレバお咄し申しませう。夫れ天窓が長ければ背はズント低う厶る。低うなければ愛嬌を失ひます。先づ入口を這入るにも長いによつて余ります。天窓を下げて這入ります。それで愛嬌が厶るだらうがの、愛嬌ついでに皆さま、おはやし頼みます。 「越後の国の角兵衛獅子、国を出る時や、親子連れ、獅子をかぶりて、くるりと廻つて、首をふりまする、親父や、まじめで笛を吹く」 ヨー、ハヽヽヽヽ福禄寿さま、大当りだ大当りだ。アハヽヽヽヽ』 六福『併し獅子の頭が少々高過ぎるぢやないか。ハヽヽヽヽ』 福禄『ハテ、頭が高うもなければ納まらぬ事もある物だ。是もやつぱり世界の道具だからのう。ハヽヽヽヽ』 毘沙門天は居直りて、 毘沙『ムヽヽヽヽ、ハヽヽヽヽ面白し面白し、吾は異形の姿にて鉾携へし身乍らも、七福神の列に加はる其由来を物語らむ。そも不身持山の皆身(南)に当りて難渋ケ嶽の峰に住む、貧乏困神とて悪神あり、彼に徒党の奴原を悉く誠罰し諸人の患を救はむと、この日の国に天降り、日出る国信貴山に根城を構へ、追付悪神討亡ぼし、困窮の根をたやさむこと、此多聞天が方寸の内にあり、ハヽヽハヽヽハヽヽヽヽ、悦ばしや嬉しや』 と勇める顔色、威あつて尊く、実に有難き霊験なり。 皆一同にあふぎ立て、中に取分け弁財天。 弁天『何れに、おろかは無けれども、多聞天のおん物語、勇ましや。イザヤ発船、又の御げん』 とのたまふにぞ、さらばさらばと漕ぎよせて、竜宮館の水の面に、清き宝の入船や、七福神の霊験も、仁義釈教、恋無常、勧善懲悪聞明し、改過を作るその主は、近松ならで松の元、一とふし込し、竹本ならぬ国武彦の御助け、梅の香床しき一輪の、花の流れや汲み取る綾の、聖地の玉の井に、映る言霊影きよく、照り輝きし玉照姫や、暗をも照らす玉照彦二柱、九月八日の慶びを、筆にうつして末広く、伝へ栄ゆる神祝ぎの、尽きせぬ神代こそ芽出度けれ。 (大正一二・七・一八旧六・五北村隆光・加藤明子共録) (昭和一〇・六・一六王仁校正) |
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霊界物語 | 66_巳_オーラ山の山賊 | 余白歌 | 余白歌 天地の元津祖なる神の他に世を審判くべき貴人はなし〈序言(初版)〉 黒雲に包まれたれど大空の月の光は褪することなし〈序言(初版)〉 五年の暗は容易く晴れにけりみろくの神のいづの伊吹に〈序言(初版)〉 植ゑて見よ花の開かぬ里はなし誠の道の開けざらめや〈第3章(初版)〉 常暗の世なりと人は悲しめど真人の眼には神世なりけり〈第3章(初版)〉 百千々の思ひは胸に三千年の神の昔に吾魂は飛ぶ〈第6章(初版)〉 玉の井の深き思ひを汲む人ぞ瑞の御魂の力なりけり〈第6章(初版)〉 木枯の吹き荒ぶなる冬の夜も天恩郷は法の花咲く〈第6章(初版)〉 神園に植ゑつけられしもも草はただ一輪のあだ花もなし〈第10章(初版)〉 花咲きて実るも待たで出でて行くわが心根を知る人はなし〈第11章(初版)〉 花開く春を迎へし神園は百鳥千鳥集ひて唄ふ〈第13章(初版)〉 深霧に閉込められし神園も春を迎へてもも花香る〈第13章(初版)〉 常暗の世なりと人は悲しめど真人の眼には神世なりけり〈第14章(初版)〉 世が変りなるいかづちも地に下りて都大路で車押すなり〈第14章(初版)〉 今迄のあだし教の衣ぬいで天津誠の神の道行け〈第15章(初版)〉 神島大神の神歌 世を救ふ神の御船はあづさ弓播磨の沖に浮きつ沈みつ〈第15章(初版)〉 三千年の塩浴みながら只ひとり世を牛島に潜みて守りぬ〈第15章(初版)〉 濁り江の深き流れに潜むより清き浅瀬に住みたくぞ思ふ〈第16章(初版)〉 風に乗り雲踏み別けて久方の高天に登る良き日待たるる〈第19章(初版)〉 笙の音は虚空を翔り笛の音は地上を走る神まつりかな〈第19章(初版)〉 苦しみて吐息つくづく思ふかな何故俗人に生れざりしと〈第20章(初版)〉 神の教伝ふ身魂の苦しさは人に知られぬ悩みなりけり〈第20章(初版)〉 これ程の苦しみありと知る人の無きにつけても世を思ふ哉〈第20章(初版)〉 朝まけて御空くもらひ小雨していよいよ梅雨気分に志たるも (昭和十年六月十七日)巻末(校正) (「校正」は王仁三郎が校正した時に挿入したもの。)[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました] |
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霊界物語 | 68_未_タラハン国の国政改革2 | 01 貞操論 | 第一章貞操論〔一七二五〕 樹々の緑も浅倉山の嫩芽、巻紙を拡げて一枚々々楕円の舌をはみ出し、晩春の風に揺られて無言の囁きをつづけて居る。 春の終りとは云へ、高地帯の山奥では都路に比して一ケ月ばかり木の芽の生立ちも遅れてゐる。 虎、狼、獅子、熊の哮り声、小鳥の百囀り、春風の木々の梢をもむ音、それより外に聞くものもなき此山奥に、其昔タラハン国の左守の司と仕へたるシャカンナは年老いたりと雖勇気は昔に衰へず、一朝、時を得れば潜竜の淵を出でて天に躍るが如く、天下国家の為に昔とつたる杵柄の逞しき両腕を国政の上に試みむとし、数百の部下を人跡稀なる山奥に集めて回天の神策に身心を傾けて居たがフトした事より、行く年波と共に天命を知り山寨に火を放ち、数多の部下を解散し、今年十五の春を迎へた最愛の一女スバール姫を老後の力となして一陽来復の時を待ちつつあつた。 恰も天から降つて湧いたる如く思ひがけなきタラハン国のスダルマン太子が吾政敵なる左守の悴、アリナと共に雨露を凌ぐに堪ゆべき茅屋の破れ戸を叩くに会ひ、仮寝の夢を破られ十年振りにて主従の対面をなしたる数奇極まる運命に、大旱になやんで萎れかかりし木の葉の雨露の恵みに遭ひて、生々と復活したるが如き心地し、日夜腕を扼してタラハン城の空を眺めて再生活躍の希望を漲らしつつあつた。 日頃淋しく感ずる猛獣の声も、悲哀に満ちた百鳥の囀りも此頃は何となく生気溌溂として己が出盧を促すものの如く、谷川のせせらぎの音にも梢を亘る風の音にも、希望の声が満ちて居るやうに感じられた。 俗臭紛々として罪悪に満ちたる暗黒の社会、人面獣心の化物共が白昼を横行濶歩する都大路の塵にも染まぬ天成の美人スバール姫が、浅倉山の山奥、玉の川の上流、清く流れて激潭飛沫をとばす岸の片辺、千畳の岩石を以て区劃された川の淵、淋しげに立てられた、掘り込み建ちの茅屋に鬼をも挫ぐ父のシャカンナと共に、無心の生命を保ち、千歳の苔に玉の肌を包まれて、今まで社会に落伍した人間の屑小盗人共に、女帝の如く、王女の如くもてはやされ、人生の春を過ごすこそ、せめてものスバール姫が心の誇り、もし此ままにして世に出でずば獣臭き山男の妻となるか、泥棒の妻となつて女盗賊の頭目として一生を終るか、但は見るべき花として時の力に散り失せ実を結ばず、木の根の肥料となるか、さもなくば可惜美人の生涯を真黒の毛脛に抱き通され、果敢なき一生を送るより外に道なき姫の運命、人間としては余りに艶麗に過ぎたる其容貌、諺に云ふ美人の薄命、結縁の神に憎まれて此山中に葬らるべき可惜もの。さりながら、父の権威と吾身の年若きに過ぎたるを幸ひ、悪性男の暴力に木の根を枕の犠牲にもならず、今日十五の春まで身を犯されず、霊を弄ばれず、春秋を送り迎へして来たのは、せめてもの彼の少女にとつては幸である。六才の春より父親の手に育てられ浅倉谷の清流、岩にせかるる谷の淵瀬の水鏡はあり乍ら、地を撫でる如き長き頭の黒髪を無雑作にクルクルとまきつけて結び、浮世の風の響さへ知らず、もし人あつて此美人を都大路の真中につき出さうものなら、万金を費しても見られぬ筈の玉を伸べたる如き腕も脛も露に惜気もなくタニグク颪に散り来る木の葉の屑に弄ばれ、一片の人工も施さず、天成そのままの玉の肌を此山奥に横たへ、暇ある時は、獅子、兎の安息所たる山林に別け入つて、薪を背負ひ、炊事万端まめまめしく父の労苦を助けて居た。紅白粉香油等の補助的粧飾品は生れて以来、見た事もなく、身につけた事もない、只惟神のままに生立つた。原野に咲き匂ふ花の粧を此山奥に人知れずさらすのは、宛然造化の技巧をこらして作り上げた天真の美貌、どこへ転がしても玉は玉、如何に粗末でも蘭麝は蘭麝の香を備ふる道理、どこともなく云ふに云はれぬ床し気がある。蔭裏の豆も時節が来れば花を開き果を結ぶ道理、今年十五の春を迎へたスバール姫も天極紫微宮より降らせ給ひしエンゼルにも等しきスダルマン太子の、どこともなく雄々しき男らしき床しき容貌と其謦咳に接してより、時ならぬ顔に紅葉を散らし、梅花一輪春陽に遭うて綻び初めし心地、子供心にも恋てふものの怪しき魔物に捕捉さるるに至つた。雨の朝、風の夕、少女は浅倉谷の清流に向つて両手を合せ、激湍飛沫の猛り狂ふ有様を見てはスダルマン太子の雄々しき御心と崇め、清き溪流を眺めては太子の御心の清き鏡と拝し、小鳥の声、梢を亘る風の音も太子の甘き言葉の如く思はれ、林に咲き匂ふ緑、紅、白、赤、黄色の花を眺めては太子の御顔を偲び、満天の星光を圧して昇る月影に対しては、あの円満なる月の顔は正しく太子の清き、やさしき御姿、吾生命の綱と憧がれ、物に接し、事に触れ、森羅万象悉く、一として太子の声ならざるはなく、太子の姿ならざるはなき、深くも恋の暗に滝津瀬のおちくる如く強度の勢を以て千尋の深き底に沈み行くのであつた。 シャカンナはスバール姫の此頃の様子の、如何にも腑に落ちぬに心を悩ませ、娘の親として、あらむ限りの思索を廻らし、時々溜息を吐く事さへあつた。或時シャカンナはスバール姫に向ひ、少しく声を潜め、姫の顔を覗くやうにして頬杖をつき乍ら、 シャカンナ『スバール姫よ、お前も今年は十五の春を迎へた年頃の娘、此親として自分もお前の身を見るにつけ、可惜名玉を此山奥に埋め度くはないのだ。俺は一旦左守の司の職掌を退き君側に蟠る奸邪侫人を打払ひタラハン国城下の安寧秩序を保ち、一は王家のため、一は国家万民のため時節を待つて一臂の力を揮つて見むと此山奥に山賊共を呼び集め、捲土重来の時期を待つて居た。待つ事殆んど十年、されど数多の部下は集まつて来ても一人として心の底を打明かし、大業遂行に対し片腕の力になるものも出て来ない。それがため父はホトホト世の中が嫌になり、お前も知る通り、タニグク谷の山寨に火を放つて、玄真坊の後を追つて居た部下の不在中、此浅倉谷の隠れ家に、お前と二人の佗住居、味気なき余生を送らむものと覚悟を定めて居たが、雄心勃々として脾肉の嘆に堪へず、一層のこと此世の思ひ出にタラハン城へ只一騎乗り込み、君側に蟠まる悪人輩を打亡ぼし、国家の災を除き、俺はその場で自殺をなして罪を謝せむかと、幾度かとつおいつ思案はして見たが、天にも地にも親一人、娘一人の其方を後に残して先立たむも、其方に対して不憫であり、大悪人の娘と、其方が世の人に後指さされるのも心苦しく、それ故、男らしき働きも得なさず、躊躇逡巡女々しくも今日迄、可惜光陰を空しく費して来たのだ。然るに天の恵みか、地の救ひか、ゆくりなくも先月の今日今頃、夢見る如きスダルマン太子が吾茅屋に踏み迷つて来られ、金枝玉葉の御身を以て、此茅屋に一夜を過ごされたのも何かの神の御引合せであらう。つらつら思ふに、神様は此シャカンナに一時も早く山を出で都に上つて、国家の危急を救へとの暗示のやうにも考へられる。それについては、其方は幸ひに世にも稀なる美人、万々一冥加に叶つて太子様のお心に召したならば、それこそ父の大望にとつても国家にとつても之位都合の良い事はない。然しながら何事も人間は運命に左右されるものだから、窮極する所は到底人間力ではいかないだらう。そして又男女の関係と云ふものは実に不可思議のもので、何程太子様がお前を寵愛遊ばしても、お前の心に太子を恋慕する心がなければ、無理に親の権威を以て結婚を強ひる訳にも行かず、父の眼より観察すれば、どうやら太子様は、其方に思召があるやうに感ぜられた。然し乍ら結婚は恋愛によつて成立するものだから、何程少女だと云つても、吾娘だと云つても、之許りは父の自由にはならない。お前の考へはどう思つてゐるか、遠慮会釈は要らぬ。切つても切れぬ親娘の仲だ。そして、お前の一生一代の大事件だ。予め、お前の心を此父に聞かしてくれ。お前の心を聞いた上、此父にも亦劃策する所があるから』 スバール姫は少女に似合はず、性質怜悧で山の奥に育ち乍ら、人情の機微に比較的通じてゐた。そして十二三才の頃より、恋愛と云ふ事に趣味を感じ、数百の部下の面貌を一々点検して、顔容や、性質や起居振舞等に注意し、男子に対する一種の批評眼を備へて居た。然し乍ら、どの男を見ても心性の下劣な、容貌の野卑な山猿的人間許りで、スバールが一生を任す夫として選むべき玉は一つも見当らなかつた。六才の時、タラハン城を後に、此山奥に父の手に育てられ、荒くれ男の奇怪な面貌をした小人輩許りを眺めて居た彼は……世の中の男と云ふものは凡て此様な獣めいたものだらうか。何れの人間を見ても左右の目が不揃ひであつたり上下になつてゐたり、鼻柱が右へ曲つたり左へ曲つたり、口の形から歯の生え具合、起居振舞迄見て、……実に男子てふものは情ないものだ。此世の中は何故、こんな化物許り棲んでゐるのだらう。あゝ情ない浮世だな……と、いつも落胆失望の淵に沈んでゐたが、フトした事からタラハン城の太子の君に巡り合ひ、其気高き姿に憧がれ、又左守の悴アリナの容貌も捨て難き所がある。之を思へば、……今迄十年間眺めて居たやうな屑男許りではあるまい、世の中には百人に一人や二人は人間らしい面をした男もあるだらう。太子様がお帰りの時、自分の手を固く握つて、『これ、スバール、屹度迎へに来るよ』と耳の側で囁き遊ばした時の嬉しさ。然し、かやうな山奥に育つた世間知らずの妾をば、どうして永遠に寵愛して下さる道理があらう。地位と云ひ容貌と云ひ、名望と云ひ、比稀なる若君なれば都大路には立派な女も沢山あるだらう。そして太子様の権威と富力によらば、いかなる天下の美人も、引寄せ給ふ事が出来るであらう。太子様は、どこ迄も恋しい。寝ても覚めても忘れられぬ。何だか此頃は吾心さへボンヤリとして来たやうだ。然し乍ら都大路に出て、幸ひに太子様の御寵愛を蒙つた所でさへ、夢の間の朝顔の花、朝の露が乾けば夕に萎るる道理、可惜罪を作るよりも一層の事、吾恋ふる心を太子様に奉り、一生の操を守つて父と共に此山奥に朽ちむか……と、雄々しくも恋の焔を自ら消してゐた。そこへ父のシャカンナが意味ありげな言葉を聞いて、スバール姫は何とはなしに前途有望のやうな感じがムラムラと湧き出で、俯向き乍ら、顔を紅に染め、恥かしげに云ふ。 『お父様、遠慮会釈なく思つてゐる事を云へと仰いましたから、今日は妾の一生の一大事、何もかも思つてゐる事を申上げます。どうか叱らないやうにして下さい』 シャ『何、叱るものか。どんな事でも思つた事を父の前で云つて見るがよい』 ス『そんなら申上げます。もうかうなつてはお隠し申すも及びませぬから、太子様がお帰りの時、妾の手を固く握り「スバール姫よ、暫く待つてゐよ。屹度迎へに来てやる」と仰有いました。自惚かは知りませぬが、太子様は……あの妾にラブしてゐらつしやるでせう。そして妾も……』 シャ『アツハヽヽヽ、さうだらうさうだらう、やつぱり父の睨んだ通りだ。そして太子様が迎へに来て下さつたら、お前は喜んで行くだらうな』 ス『ハイ、それは参らぬ事も厶いませぬが、何と云つてもラブは神聖なもので厶いますから、余程考へさして頂かねばなりませぬ』 シャ『ウン、それもさうだな。何と云つても一国の主権者におなり遊ばす御方、至尊至貴にして犯すべからざる王太子様の妃になるのはお前も女としては無上の出世だ。お前の為に此の父も枯木に花の咲く時節が来るのだから、どうか太子様の思召がお前をどこ迄も妃にすると云ふ考へが定つたならば、父の為にもなる事だから喜んで行つてくれるだらうな』 ス『父の為には孝養を尽すを以て子たるものの務めと致します。父の為と恋愛の為とは道が違ふぢやありませぬか。もし妾の恋愛が完全に成就したのならば、副産物としてお父様も幸運に向はれるでせう。お父さまの幸運はつまり此の恋愛が成就するからでせう。妾はお父様に対しては孝養を主とし、夫に対しては恋愛を主とするものです。それが至当の道理と考へてゐます』 シャ『アツハヽヽヽ、何時の間に、そんな理窟を覚えたのだ。夫が主で父が従とはチツとひどいぢやないか。それでは倫理学上由々しき大問題だ』 ス『そんならお父様の孝養を主として恋愛を一生葬りませう。その代り此山奥に一生朽ち果てる覚悟で厶いますから』 シャ『そんな、ならぬ事を云ふものぢやない。親の云ひ条について太子様のお妃になれば孝養も恋愛も完全に成就するぢやないか』 ス『孝養と恋愛が両方円満に成功すれば、こんな結構な喜びは厶いませぬ。然し乍ら世の中には、さう誂へ向に行かない事が沢山あるでせう。凡て恋愛なるものは愛情から来るものです。愛情はどこどこ迄も拡大すべきもの、又流動性を帯びてゐるものですから、倫理や道徳や知識を以て制縛し得るものではありませぬ。もし恋愛に理智が加はれば恋愛そのものは、千里の遠方に逃げ出してゐるぢやありませぬか。智性と意性即ち理智と愛情とは到底両立しないものでせう』 シャ『何時の間にか誰も教へないのに、こましやくれたものだな。ほんとに「油断のならぬは娘だ」と云ふが、此父もお前の話を聞いて荒肝を挫がれて了つたよ』 ス『お父さまは昔気質でお頭が少し古く出来てゐますから、恋愛問題等に容喙なさる資格はありますまいよ。どうか此問題は妾の意志に任して下さいませ。古い倫理や道徳説に囚はれて可惜女の一生を霊的に抹殺される事は堪へられませぬ。神聖な霊魂を男子に翻弄される事は女一人として堪へられない悲哀ですから、仮令太子様が妾を寵愛して下さるにした所で、妾が太子様以上に愛する男子が現はれたとすれば、その時はお父様はどう思ひますか』 シャ『これは怪しからぬ。「女は三界に家なし」と云つて、夫の家に嫁いだ時は、いかなる不幸も不満も堪へ忍ばねばならぬ。そして舅姑によく仕へ、親や夫の無理を平気で甘受せねばならぬものだ。それが女として最も尊い務めだ。その考へがなくちや到底女として立つ事は出来ないぞ。それが女の貞操だからのう』 ス『ホヽヽヽ、それだからお父さまは頭が古いと云ふのですよ。男女は同権ぢやありませぬか。男子が一個の人格者ならば、女だつてやつぱり一個の人格者でせう。人格と人格との結合によつて、初めて完全な恋愛が行はれ、結婚が成立するのでせう。恋愛は恋愛として、どこ迄も自由でなけれねば、結婚と云ふ関門を通過した女は殆ど奴隷的牢獄に投ぜられたやうなものです。男子は好きすつぽうに己が愛する女を幾人も翻弄し、女一人に貞操を守れと云ふのは不道理至極なやり方ぢやありませぬか。例へば太子様が妾をラブし、妾が太子様を此上なくラブしてる間は、互に貞操も保たれ、完全な結婚の目的も達するでせう。もし太子様に於て妾以上に愛する女が出来た時は、太子の恋愛は既に已に妾を去つて他の女に移つてるぢやありませぬか。それでも妾は恋の犠牲者として霊的死者の位置に甘んぜねばなりませぬか。そんな不合理な事が、どこに厶いませうぞ。之に反する場合即ち妾が太子様以上に恋愛する男子が現はれた時は、又其男子に恋愛を移すのは恋愛そのものにとり自然の成行でせう』 シャ『オイ、娘、何と云ふ馬鹿な事を云ふか。誰にそんな悪知恵をつけられたのだ』 ス『ハイ、妾の良心が、さう囁いてゐます。あのトンク[※霊界物語に「トンク」という名の人物は複数出るが、スバール姫の絡みで出るのは初めてである。山奥に一緒に住んでいてその後姿を消した「コルトン」の間違いか?]だつて、妾に始終そんな話を聞かして呉れましたよ』 シャ『エー、トンクの野郎、碌でもない事を魂の据はらない愛娘に吹き込みやがるものだから、娘の心に白蟻がついて瑕物にして了ひやがつた。表面からは天成の美人も、腹の中からは悪魔が已に棲ぐつてゐる。こんなものを畏れ多くも太子の妻に奉る事は出来ない。エー、困つた奴だな』 と腕を組み、太き吐息をつく。 ス『ホヽヽヽ、お父さま、何でもない問題ぢやありませぬか。よく考へて御覧なさい。女子ばかりに貞操を強要して男子に貞操を強要せないのは家庭紊乱の基となり、惹いては国家の破滅を来す源泉となるものですよ。女子に貞操が必要なれば男子にも貞操が必要でせう。もし夫たるもの其妻の他に妻に勝つて愛する女子が出来、私かに恋愛を味ははむとする場合、その妻は、その夫に対して叱言を云つたり、悋気をしてはいけませぬ。真に夫を愛するのならば夫の意志に任すのが妻たるものの雅量ぢやありませぬか。女房の恋を夫が強圧的におさへ「自分を無理に愛せよ」と迫り打擲したりして「自分を絶対的に愛せよ」と云ふのは決して理解ある男子とは云へませぬ。それ位の雅量がなくては、どこに男子の価値がありますか。又、妻も妻で、自分の愛する夫が、その妻よりも愛する女が出来た時、夫の愛する恋愛を遂げさしてこそ、真に夫を愛すると云ふ事になるのでせう。夫は女の目より隠れ忍んで僅に恋愛を味はひ、妻は妻で又ヒヤヒヤビクビクし乍ら他の男と恋愛を味はふやうな事で、どうして家庭が円満に行きませう』 シャ『馬鹿云ふな、そりや畜生のする事だ。爺は勝手に女房以外の女を持ち、女は夫以外の男をもち、そんな不仕鱈な事して家庭が円満に保たれるか。家庭円満が聞いて呆れるぢやないか』 ス『ホヽヽヽ、お父さまの没分暁漢には困つて了ふわ。夫が妻の恋愛を嫉妬したり妨害したり、妻が夫の恋愛を嫉妬したり妨害する等は、実に卑怯未練と云ふべきものです。人格を備へたもののなすべき事ぢやありませぬ。此タラハン国は国が小さいから人間の心迄が小さい。それで恋愛の冷却した女でさへ、自分の方に恋愛が残つて居れば無理に抑へつけ、一方の恋愛を犠牲にしようとするやうでは、家庭が円満に行きませぬよ。又恋愛は倫理や道徳の範囲で律する事は出来ませぬ。お父さまは倫理や道徳を加味した恋愛論ですから、云はば偽の恋愛論です。社会の秩序だとか、家庭の円満だとか云つて、煩悶し焦慮し、却て狭苦しい道徳をふりまはして、益々家庭を紊乱し、社会の秩序を乱すやうになるのですよ。男子も女子も社会一般の人が雅量と理解とをもたねば国家も家庭も円満に治まるものぢやありませぬわ。妻が夫に対する貞操は妻以外の夫の恋愛者に対し少しの妨害もせず嫉妬もせず、むしろ好意を以て夫の恋愛を遂げさするのは、つまり夫に対する妻の貞操ですよ。又之に反する場合も同様で、夫が妻に対する貞操は妻の恋愛を遂げさせ、夫が妻に同情を寄せるのが、真に妻を愛する事になるのです。一夫一婦の制度を以て国家存立の大本となす政体もあり、一妻多夫、多夫一妻を以て国本となす政体も世界にあるぢやありませぬか。男女が平均に生れる国では一夫一婦の制も結構でせうが、女が男より多く生れる国、又は男が女より多く生れる国では、到底一夫一婦の制は守れますまい。それこそ却て不道徳になるのではありませぬか。女の多い国では女の恋愛抹殺者が出来、男の多い国では男の恋愛抹殺者が出来るでせう。こんな悲惨な事が何処にあるでせう』 シャ『理窟はどうでもつくものだ。然し乍らタラハン国は一夫一婦が制度だ。之を破るものは道徳の破壊者だ。恋愛等末の末だ』 ス『今日の世の中に大人物の現はれないのは一夫一婦の制度が行はれてゐる弊害から来るのですよ。昔の神代の神様を御覧なさい。大国主の神様は打みる島の先々、垣見る磯のさきおちず賢女奇女を娶り、国魂の神を生み、大人物を沢山お造りなさつたぢやありませぬか。スダルマン太子のやうな賢明な君子的人格者は、妾のやうな賢女奇女を、沢山娶ひ遊ばし、そして大人物を四方に配り遊ばしたら、屹度世の中はよくなるでせう。あんな大人物こそ沢山な女があつても生殖の方から見て国家の宝を産み出す事になるでせう。之に反して愚夫愚婦と云へど矢張一夫一婦とすればガラクタ人間許り世に拡まり、益々世は堕落するのみでせう。要するに社会道徳の上から考へて、立派な人間は天の星の数程沢山な怜悧子を生み、野卑下劣な半獣的人間は、なるべく子を産まないやうにするのが、国家存立の上にも個人経済の上にも有利でせう。お父さま、之でも不道理と聞えますかな』 シャ『ハヽヽヽ、まるで太子様を、種馬と間違へてゐるぢやないか。不都合千万な事を云ふ奴ぢや』 ス『その種馬におなり遊ばすのが、国の君たる方の御天職でせう。太子様のみならず、国の立派な人は皆種馬として社会に子を沢山産み落さなくては、社会の根本的改造はどうしても駄目です』 シャ『さうするとお前は太子様が沢山な女をおもちになつた時はどうするつもりだ。理論と実際とは大に違ふものだから、その時になつて悋気の角を生やしたり、嫉妬の焔をもやしたり、その時に辛い目を味はつて見ねば解るまい。今こそ理論では立派な事云つてるが実地になれば、さうは行かないよ。屹度悋気するに定つてゐるわ』 ス『オホヽヽヽ、そんな雅量のないスバールぢや厶いませぬ。妾だつて太子様以上に愛する男子が出来た時、太子様が故障を云はれるやうな事があつた時は、妾の方から御免を蒙る丈けの事ですわ。一方の恋を圧迫し、どうして円満に行けますか。夫婦は家庭の重要品です。家庭と恋愛は別物ですよ。家庭は家庭として円満に行き、恋愛は恋愛として自由に行ふべきものです。太子様の上つ方から、こんな手本を出して貰はなくては、悋気とか姦通とか不道徳とかの、忌まわしい問題が絶滅せないのです。一夫多婦のモルモン宗を御覧なさい。決して沢山の妻の中に、悋気や嫉妬や、怨嗟等の声はありませぬよ。兎に角、旧来の陋習を打破せなくては、家庭も国家も治まりませぬ。妾はスダルマン太子様こそは恋愛に対しても理解を持ち、又社会道徳に対しても完全に改良する資質をもつた方と伺ひました。それで恋愛は兎も角、国家社会のため必要のためと欣慕のあまり遂に恋愛に転嫁したのですわ、ホヽヽヽ』 と十五才の娘にも似合はず、おひおひと心の生地を現はし、父のシャカンナを烟にまいて了つた。 シャカンナ『アヽア、十年経てば一昔、此山の奥迄も思想界の悪風は襲うて来たのかな』 (大正一四・一・五新一・二八於月光閣北村隆光録) |
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18 (3030) |
霊界物語 | 68_未_タラハン国の国政改革2 | 余白歌 | 余白歌 埋れ木の花も匂はむ白梅の南枝一輪魁そめたり〈総説(初版)〉 苦しみも楽しみも世になかりけり生死の境を脱け出でし身は〈総説(初版)〉 苦しみの無き身なりせば如何にして夢の浮世を楽しく渡らむ〈総説(初版)〉 楽しみに飽きたる身こそ苦しけれ浮世の塩の味を知らねば〈総説(初版)〉 霊と肉一致和合の神教は三五の道おいて他になし〈第2章(初版)〉 雨晴れて黄金閣の空高く日は照り映えて隼の舞ふ〈第4章(初版)〉 惟神世の大本の御教は月日と共に栄え久しき〈第9章(初版)〉 御手代を授けし人の増す毎にいそがしくなる吾が身魂かな〈第9章(初版)〉 天地の神の稜威の開け口貴の扉に障やる雲なし〈第10章(初版)〉 御扉を明け放ちたる大本は世界に輝く神の魁〈第10章(初版)〉 東天に月は昇りて万界の暗は忽ち晴れ渡りけり〈第11章(初版)〉 惟神道の奥処を覗き見れば雲晴れ渡り錦照り映ゆ〈第11章(初版)〉 芳はしき御教の花は長閑にて国の内外に匂ふ白梅〈第13章(初版)〉 隠れてし弥勒の神の臨む世は国のことごと賑はしきかな〈第13章(初版)〉 畏くも瑞の御霊は野に山に国土隈なく錦を照らせり〈第15章(初版)〉 かかる世に御栄えの神臨まずば国の内外は日夜に歎かむ〈第15章(初版)〉 神の国見れば心も長閑に苦も晴れゆきて賑はふ家かな〈第16章(初版)〉 赤心を尽して道を宣りて行く瑞の御光世を照らすなり〈第17章(初版)〉 曲神は月夜を恐れ臨みます弥勒の神を余所に見るかな〈第17章(初版)〉 円かれと月に誓ひて宣る舟の身もたましひも世を救はなむ〈第17章(初版)〉 まくらがり月かげの無き野空をば三つ星出でて夜を照らすかな〈第20章(初版)〉 まごころを貫き徹す乗合の御船豊かに夜の海渡らふ〈第21章(初版)〉 亀山に築きあげたる月の国をはるけき空よりたづね来るなり〈第21章(初版)〉 真寸鏡月の面の長閑なる身魂となりて世を救ふべし〈巻末(初版)〉 松ケ枝に鶴巣籠りてノアの舟水先安く世を渡すなり〈巻末(初版)〉 待ちわびし月山の端にのぼりけり三千歳ながき夜を照らして〈巻末(初版)〉[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました] |
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19 (3096) |
霊界物語 | 71_戌_玄真坊と千種の高姫 | 14 障路 | 第一四章障路〔一八〇三〕 玄真坊、コブライ、コオロの三人は左守の情けに仍つて、漸くに死罪を免れ、持てる丈の黄金を胴巻に押し込み、重たい腰をゆすり乍ら、人跡稀なる森林を探りて、一日一夜西へ西へと駆け出して行く。三人共身体縄の如くに疲れ果て、最早一歩も歩めなくなつて了つた。 コブライ『モシ玄真さま、何程黄金を沢山貰つても体が達者になるといふでもなし、腹が膨れると云ふでもなし、斯うなつて見ると黄金も何も役に立たないものですな。重たい許りでこんな事三日も続けやうものなら、到底命はありませぬワ』 玄真坊『馬鹿を云ふな、金さへ有れば、どんな甘い物でも食られるし、どんな別嬪でも買はふと儘だ。今日は黄金万能の世の中だからのう、着炭議員に成らうとしても五万や十万の金は要る。短命内閣の総理大臣に成らうて思つても、二千万両や三千万両の金が要るのだ』 コ『さうかも知れませぬが、斯う山林許し跋渉してゐては、別嬪も見付からず、甘いもの食はうにも、味無いもの食はうにも、テンで店屋も無いぢやありませぬか。一千万円の包より一升米が貴いやうに私は思ひますわ。アーア何とかして食料に有付き度いものだなア』 玄『そんな弱音を吹くな。もう一日許り走れば安全地帯がある。其処へ行けば女郎も居るし、どんな綺麗な着物でも売つてゐる。百味の飲食も待つてゐる。マ、其処迄辛抱したが可からう、腹が空つて仕方なければ拇指の爪なつと甜つて居れ。さうすりや些と許り飢を凌ぐ事が出来やうも知れぬ。彼の章魚を見い、章魚は食ふ物が無くなると、自分の足を皆食つて了ふものだ』 コ『人間を章魚に譬られちや堪りませぬがな。お前様こそタコ坊主だから足なつと甜つて居りなさい。コブライは痩ても枯れても一人前の人間様だ。タコの真似は出来ませぬ哩、喃うコオロ。最う一足も歩けぬぢやないか』 コオ『俺も苦しうて堪らぬが、何処で此お金を以て甘いものを買ひ、別嬪を抱いて寝ようと思へば、又元気が出て来て、些と許り歩ける様になるのだ。何と云つても人間は心次第だ。最う暫時だから玄真坊様の仰有る通り、辛抱して跟いて行かうぢやないか。こんな所で野垂死しても約らぬからの』 コ『エー、仕方がない。又コンパスに御苦労をかけやうかな』 と渋々乍ら一二丁許り進んで行くと、十手指叉を持つた十数人の捕手が身を没する許りの萱草の中から現はれ出で、三人を取まいて了つた。右の方は千仭の谷間、三方は捕手に囲まれ進退これ谷まり最早これ迄と、三人一度に青淵めがけて、九死に一生を僥倖せむものと、命の安売をやつてみた。捕手はアレヨアレヨと眺めて居れど、名に負ふ断岩絶壁近よることも出来ず、みすみす敵を見捨ててブツブツ小言を云ひ乍ら帰り行く。 ○ 渺茫として際限もなき大原野の真中を只一人の老人が蚊の鳴くやうな声で歌を唄ひ乍ら通つてゐる。 『川の流れと人の身の行末こそは不思議なれ タラハン城に仕へたる吾は左守の司なるぞ いつの間にかは知らね共限も知らぬ大野原 さまよひ来る訝かしさ道ゆく人も無きままに 言問ふ由もなく許りあゝいかにせむ千秋の 恨を野辺に残しつつあへなき最後を遂ぐるのか あゝ浅ましや浅ましやタラハン城の方面は 何処の空に当るやら百里夢中にさまよひし 吾身の上こそ悲しけれ原野に千草は生えぬれど 花も実もなき枯野原吹き来る風さへ音もなく 烏の声さへ聞え来ず寂光浄土か知らね共 天地一度に眠りたる如き此場の光景は 淋しさたとふる物もなしあゝ惟神々々 三五教の大御神導き玉へ永久の 棲処と定めしタラハンの城下に建ちし左守家へ 思へば思へば人の身の行末こそは果敢なけれ 此世を造りし神直日心も広き大直日 只何事も人の世は直日に見直し聞直し 身の過は宣直す三五教の御教は 梅公別の師の君ゆ完全に詳細に聞きつれど 見直す術も無きままに名さへ分らぬ荒野原 吾等は何の罪あつてかかる処へ落ちたのか 合点のゆかぬ世の中ぞ憐み玉へ大御神 導き玉へ吾宿へあゝ惟神々々 御霊幸ひましませよ旭は照る共曇る共 月は盈つ共虧くる共仮令大地は沈む共 誠の力は世を救ふ神が表に現はれて 善と悪とを立別ける此世を造りし神直日 心も広き大直日只何事も人の世は 直日に見直す道ぢやげな誠の力といふ事は 此世を造り玉ひたる真の神の力だろ 人間界に身をおいてどうして真が出るものか 真の力の神さまよ吾等の淋しき境遇を 何卒救ひ玉へかし偏に願ひ奉る 三千世界の梅の花一度に開く神の国 開いて散りて実を結ぶ月日と土の恩を知れ 此世を救ふ活神は高天原に神集ふ などと尊き宣伝歌肝に銘じて忘れねど 只一輪の梅さへも開いて居らぬ此野辺は 地獄の道の八丁目八衢街道の続だろ かかる淋しき大野原さまよひ来る吾身こそ 前世現界相共に無限の罪を重ね来て 神の懲戒うけ乍ら身魂を研いて居るのだろ 死んだ覚のない吾れは幽冥界とも思へない あゝ惟神々々神が此世にあるならば 何卒吾身を導いて恋しき吾家にかやせかし 偏に願ひ奉る』 斯く歌ひ乍ら、大野原に蚯蚓の這ふたやうについた細路を辿り行くと、土の中からムクムクと頭丈が動いてゐる。シヤカンナは此淋しい原野の正中に松露のやうな頭が動いてゐるのは合点が行かぬと、手に持つた杖で二つ三つこついてみると「アイタタアイタタ」と云ひ乍ら、月が山の端を昇るやうに、チクリチクリと土から抜け出で、肩まで現はして来た。よくよく見れば玄真坊の姿そつくりである。シヤカンナは驚いて、 『オイ、コラ、汝は玄真坊ぢやないか。こんな所に何をしてゐるのだ』 玄『ヤ、私はお前にお詫をせにやならぬ事があるのだ、確には覚えてをらぬが、お前の館へ行つて無理難題を吹きかけ、ドツサリ金をぼつたくつて帰つた天罰で、幽冥主宰の神から沢山な黄金を罰則として体に縛りつけられ、其重みで体が地の中へにえ込んで了ひ、今ヤツとの事で首丈地上へ現はした所だ。どうか「許す」と一言云つてくれ。さうすりや俺の罪も軽うなるだらうから……』 シヤ『何だか俺は足がヒヨロヒヨロするけれど、体が軽くて足が地上を離れ相で危険で堪らないが、お前は又体が重いとは不思議な事だのう。それぢやお前の首を千切つてやるから胴柄位土に托しておいたらどうだ。何れ遅かれ早かれ土の中へ這入る体だからのう』 玄『オイ兄貴、そんな無茶な事云ふてくれない。天一の手品師なら、首をチヨン切つても又つげるだらうが、俺のはさうはいけないよ。どうか兄貴、金剛力を出して俺の体をグツと引き上げて貰へまいかの』 シヤ『体を引き上げと云つたつて、首から下が埋つてゐるのだから、手をかける所もないぢやないか、それでも強つて引き上げと云ふのなら、両方の耳を掴んで試にやつてみようかな』 玄『どうでも可いから、兎も角一寸でも体を地上へ出してくれ、苦しくて堪らぬ、どうやら地の底の地獄へ引ぱり込まれ相だ』 「ヨーシ」と云ひ乍らシヤカンナは一生懸命に冷たい手で冷たい耳を掴んでみたが、磐石の如くビクとも動かない。さう斯うしてる所へ、又もや二人の男が、濡衣を纏ひ乍ら、力なげにトボトボとやつて来る。シヤカンナは後ふり向いて、 『ヤ、お前はコブライにコオロの両人、どして又こんな淋しい所へやつて来たのだい』 コブ『ヤ、親方で御座いますか、まづ御壮健でお芽出度う。実アはつきり覚えませぬが、お前さま所で金を貰つて帰る途中追手に出会ひ、谷川へ飛び込んだと思や、何時の間にか斯んな所へ来てゐます。併し飛び込んだ際に折角貰つた山吹色は皆谷底へ捨てて了ひ、今ぢや欠けたかんつも御座いませぬが、どうか親方、チツと許りお金を恵んで貰へますまいかな』 シヤ『俺だとて其通りだ。一文生中も身につけてゐないのだ。こんな所を旅行するのに家もなし店もなし、金が要るものかい。腹が減つたら草でも千切つて食つて行くより仕様がないぢやないか』 コブ『ヤ、其処にゐるのは玄真さまぢやないか、何ぢやい、首許り出しやがつて、……サ、起きたり起きたり』 玄真は目を無性矢鱈にジヤイロコンパスのやうに廻転し始め、口も目も鼻も一所に集中し顔面筋肉を頻に活動させ出した。 シヤ『ヤ、此奴アどうやら地獄落ちらしいぞ。まだ黄金に執着心を持つてるらしいぞ、オイ、玄真、すつぱりその金を思ひ切つて了へ。そすりや助かるだらう』 玄真『ヤア、何程金が欲しうても、かう苦しうては欲にも得にもかへられないワ、モウ金はコリコリだ。一文も要らない。オイ黄金の奴、今日から暇をやるから勝手に何処へ行つてくれ』 と云ふが否や、子供の玩具の猿が弓弾きに弾かれたやうな勢で、ポンと地上三間許りも飛び上り、ドスンと又元の所へ落ちて来た。 シヤ『オイ、玄真坊、欲といふ奴ア怖いものぢやのう』 玄『本当にさうだ、おらモウ金にはコリコリしたよ。併しお前は結構なタラハン城の館を捨てて、何故又こんな所へ来たのだ。チツと合点が行かぬぢやないか、……ハハー、大方俺の金が惜しうなつて、追駆て来たのだな。それで俺を器械仕掛で地の中へ電気ででも引張つてゐやがつたのだなア』 シヤ『馬鹿を云ふない。俺はモウ金なんか見るのも厭だ。併し俺は、今フツと思ひ出したがお前を逃がした跡で、確に神様の前で切腹をして果てた積だが、何故又こんな所へやつて来て生きてゐるのだろ。丸で狐につままれたやうで、現界か幽界かチツとも訳が分らないのだ。一体此処は何処だと思つてゐるか』 玄『サ、どうも不思議で堪らぬのだ。お前の話を聞くと、お前が俺より先死んだ者とすれば、先に此所へ来て居らにやならぬ筈だ。俺等三人は一日一夜山や谷を走つて谷川へ飛び込んだやうな気がする。それが先づ此処へ来てる筈がない。てもさても合点の行かぬ事だのう』 コブ『コリヤ何うしても、玄真さま、幽界旅行をやつてゐるのに違ありませぬよ。吾々はかうして生きてると思つてるが肉体はとうに死んで了ひ、精霊体許りが此所へ迷ふて来たのでせう。霊界には時間空間の区別も無く、遠い近いもない相だから、先へ死んだ者が後へなる共、後から死んだ者が先へなる共、そんなこた分りませぬワイ。マア死んだ者としておけや、後で驚かいで宜しかろ』 コオ『オイ、コブライ、どうやらこりや地獄街道の八丁目らしいぞ。困つた事になつたものぢやないか』 玄『さうだ、一寸面食つたな、然し乍らかうして四人の道伴れが出来た以上は、淋しさも稍薄らいで来たやうだ。兎も角、地獄でも何処でもかまはぬ、行ける所迄行かうぢやないか。俺達や元より極楽に行つて無聊に苦むよりも、地獄へ行つて車輪の活動をやるが望だからのう』 コブ『其お説はハル山峠の岩上で承はりましたね、サ、行きませう。余り淋しいから一つ行進歌でも唄はふぢやありませぬか』 玄『そら面白からう、先づ俺から歌ふてやる。 限も知らぬ大野原此所は地獄の八丁目 八衢街道か知らね共三人の家来を引きつれて 名さへ分らぬ荒野原進みゆくこそ勇ましき もしも此世に天国があるものとすりや行つてみよう 無ければ是非なく地獄道肩肱いからし進まうか 併し此世に地獄とか極楽などがあるものか どこ迄行つても此通り冷い風がピユーピユーと 草の葉末をなで乍ら遠慮もなしに通つてゐる これがヤツパリ地獄だろ何程地獄が怖く共 こんな事なら屁のお茶だドツコイドツコイドツコイシヨ コラコラ三人の家来共しつかり後からついて来よ 落伍をしても知らないぞアレアレ不思議アレ不思議 向方に妙な建物がチラチラ吾目につき出した 此奴ヤツパリ現界か現界ならば尚の事 一生懸命にはしやいで元気をつけて行かうかい タラハン城を占領し天晴国王と成すまし 羽振を利かそと思ふたにいつの間にかは知らね共 こんな所へ彷徨ふて東西南北方位さへ 分らぬ今日の不思議さよ向方に見ゆる建物は 鬼か悪魔の住処だろサアサア行かうサア行かう 何をビリビリしとるのだもしも地獄があるならば 地獄の鬼を引捉へ蝗のやうに竹串に 並べて刺して火に炙り片つ端から食てやろか あゝ面白い面白い地獄の王の御出立 鬼でも蛇でもやつて来いドツコイドツコイドツコイシヨ』 などと一生懸命に歌ひ乍ら、頭を前方に突出し、チヨコチヨコ走りに進んでゆく。三人は四五丁許り取り残され、ヨボヨボと細い声で行進歌を歌ひ乍らついて行く。 玄真坊は足許ばかり見詰めて突進した途端に四辻の立石に頭をぶつつけ、キヤア、ウーンと云つたきり、其場に蛙をぶつつけたやうにふん伸びて了つた。 (大正一五・一・三一旧一四・一二・一八於月光閣松村真澄録) |
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霊界物語 | 79_午_葭原の国土の竜神族の物語 | 13 鰐の背 | 第一三章鰐の背〔一九九四〕 艶男は燕子花と諜し合せ、夜陰にまぎれて竜宮島を立出で、父母のいます国に帰らむと、決心を固めてゐた。 大竜身彦の命に止められむ事をおそれ、麗子の弟姫神にも告げず、郊外の散歩にことよせ、月照り渡る真夜中頃、大楼門をくぐり第一門の方へと急ぎゆく。道の側の百草千草は夜露の玉に月光輝き、得も言はれぬ風情である。艶男はその自然をながめて、 『道の辺に咲く百草の花にさへ 月の御霊は宿らせ給へり 草の上に恋を歌へる虫の音も 今宵は清く月に冴えたり 渚辺に寄する波音聞きながら 月の夜路を二人ゆくかも しのびゆく元津御国の旅立は 虫の声にも驚かされける 二人ゆく空を照して月読は 吾を守らせ給ふがに見ゆ 心安く元津御国に還らせ給へ 御空に輝く月読の神』 燕子花は歌ふ。 『竜神の島に生ひ立ちし燕子花 吾は水上の山に栄えむ 月見れば竜の玉かと疑はる 吾は夜路を君と行くなり 草の葉に置く白露に月照りて 二人の袖はぬれにけらしな 恐ろしく又楽しくも思ふかな 君に引かれて離りゆく身は この島に今日を名残の別れぞと おもへば何か悲しかりけり 夜光る玉にもまさる君故に 吾は嬉しく従ひゆくも』 斯くして第一の門に着き、鉄門を中より易々と開き、渚辺に出で、躍り狂ふ波の秀をながめて艶男は、 『翼なき身は如何にせむ白波の 竜の島根を去る由もなし 打寄する波の白帆に照る月を 玉と仰ぎて帰らまく思ふ さりながら翼もなければ鰭もなし 鳥にも魚にもなれぬかなしさ 大空の月も憐れみ給ふらむ 汀に立てる二人の姿を ゆくりなく君が情の露あびて 又も汀の露にぬれぬる 天地の神よ吾等を憐れみて 水上の山へ渡らせ給へ 渡るにも御舟なければ如何にせむ 波の上に浮くこの島ケ根を』 斯く歌ふ折しも、波を分けてぬつと現はれ来る八尋鰐あり。水面に背を現し、之に乗らせ給へと言ひたげなり。二人は天の与へと鰐の背に飛び乗れば、鰐は何事も万事承知の上とばかり、荒波の湖を游ぎながら、南へ南へと走りゆく。鰐の背に乗れる二人は交々歌ふ。 艶男『鰐の背に救はれ水上の山もとに 帰る思へば楽しかりけり 大空も湖の底ひも月照りて その中原を行く身は清し 湖底に御空うつしてまたたける 星は真砂にさも似たるかな そよと吹く風に面をなでられて こひしき君と吾帰り行くも 果てしなきこの湖原も足早き 鰐の助けにとく帰るべし この鰐は神のたまひし賜ぞ 吾おろそかに如何で思はむ 鰐よ鰐吾を助けて元津国に とく帰らせよ波を分けつつ』 燕子花は歌ふ。 『有難き神の使ひの鰐の子に 救はれ君が御国に行くかも 吾も亦元の身体を持ち居らば 鰐の如くに送らむものを 斯くならば吾は人の身湖原を 渡らむ力失せにけらしな 惟神神の恵みか大空の 月は一入冴え渡りける 白波の立ちのまにまに月読は かげをおとして輝き給ふ 水底の魚族までも見えわたる 今宵の月のさやかなるかも 竜神の追及き来るも恐るまじ みあしの早き鰐に頼れば 湖原を飛び交ふ千鳥の音も冴えて 心清しき月の湖原 天地にかかる例はあらなみの 上分け走る今日の嬉しさ』 斯く歌ふ折しも、後方に当りて千万人の鬨の声、どつとばかりに聞え来るにぞ、艶男、燕子花の二人は後振り返り手を差上げ月光に透し見れば、こはそもいかに、両人が月夜を力に逃げ去りし事発覚し、大竜身彦の命は数多の竜神等に下知を降し、二人の後を追つかけよと厳命なしければ、竜神は吾も吾もと先を争ひ、波間を浮きつ沈みつ、一瀉千里の勢にて追ひしき追ひまくるにぞありけり。 こは一大事と燕子花は声を張り上げ、人身となりしを幸ひ、天の数歌を頻に奏上する、この声天地に響き湖も割るるばかりなり。 『一二三四五六七八九十百千万 千万の神守り給へ 竜神の切先を止めさせ給へ 鰐よ鰐よ力限りに走れよ走れよ 水上山は霞の奥にぼんやりと浮く 走れよ走れよ生命限りに』 斯く歌ふや、鬨の声はぴたりと止みて、鰐の足は一入速くなりける。 『有難し吾言霊に海津見の 神の功は現れにけり 諸々の竜神等の襲ひ来る 矢先き逃れて安けき湖原 大竜身彦の命の御功を とどめて安き夜の湖原』 艶男は歌ふ。 『一輪の月は御空に輝けり 吾は一つの鰐に乗り行く 八尋鰐足はやければ竜神は 最早や追付くおそれだもなし 老いませる吾垂乳根は吾行方 探ねて日夜を歎かせ給はむ 一時も早く御顔拝まむと 思へば心いらだちにけり 水火土の神に救はれ吾生命 蘇りたる湖原はこれ ほのぼのと水上山は見え初めぬ 月夜の空にぼんやりとして 千鳥啼くこの湖原を細女と 行くは夢路を辿るが如し 夢の世に夢を見ながら細女と 鰐の背に乗り湖原渡るも 竜宮の島もよけれど水上山 吾故郷は恋しかりけり いとこやの麗子姫に立ち別れ 今燕子花を伴ひ帰るも 燕子花よ汝は面勝神なれば 言向けやはせ国津神等を』 燕子花は歌ふ。 『尊かる君の言葉をうべなひて 言向けやはさむ国津神等を 離れ島の乙女なれども君と在れば 吾は恐れじ如何なる人にも 湖風は強くなりけり波の秀は いや高々と狂ひ出しぬ 風強み波おこるとも何かあらむ 神の恵に抱かるる身は 天地の神に抱かれ吾恋ふる 夫に抱かれ安き湖原 鰐の背に易々渡る湖原の 風も恐れじ波も恐れじ 白波のしぶきにあはれ吾袖は うるほひにけり湿らひにけり 抱き合ひて泣ける夕の涙にも いやまさりつつ濡るる吾袖』 斯く歌ふ折しも、波の奥より忽然として現れし一艘の舟、此方に向つて漕ぎ来る。近より見れば豈計らむや、水火土の神にましける。 水火土の神はにこにこしながら、 『久々に帰らす君を迎へむと 吾は御舟を持ちて来れり これよりは湖の瀬強し鰐の舟 返してこれに乗りうつらせよ 垂乳根の父と母とは汝が行方 歎かせ給ひ衰へ給へり 水上の山はほんのり見ゆれども 波路は遠し吾は送らむ』 艶男は之に答へて、 『ありがたし水火土の神の御心 生命死すとも忘れざらまし 竜宮の島に渡りて求めたる 花の蕾の燕子花はこれ 竜宮の島根ゆ移すこの花を 水上の山に植ゑたく思ふ 水火土の神よ吾妻諸共に 送らせ給へ水上の山へ』 と言ひながら、鰐の背より水火土の神の御舟に移り、鰐に向つて合掌しながら、 『浪猛る大湖原を安々と 送りし君に感謝を捧げむ 天津神の御使ならめや八尋鰐の 今日の功は永久に忘れじ いざさらば別れを告げむ八尋鰐よ 汝は吾身の生命なるぞや 水上山吾故郷に帰りなば 汝を守護の神と斎かむ』 斯く歌ふや、八尋鰐は静々その全身を水に没し、後白波となりにける。これより水火土の神は波の秀を分けながら、月照る湖原を南へ南へと漕ぎ行く。 (昭和九・七・一八旧六・七於関東別院南風閣谷前清子謹録) |