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ひふみ神示 1_上つ巻 第2帖 親と子であるから、臣民は可愛いから旅の苦をさしてあるのに、苦に負けてよくもここまでおちぶれて仕まうたな。鼠でも三日先のことを知るのに、臣民は一寸先さへ分らぬほどに、よう曇りなされたな、それでも神の国の臣民、天道人を殺さず、食べ物がなくなっても死にはせぬ、ほんのしばらくぞ。木の根でも食うて居れ。闇のあとには夜明け来る。神は見通しざから、心配するな。手柄は千倍万倍にして返すから、人に知れたら帳引きとなるから、人に知れんやうに、人のため国のため働けよ、それがまことの神の神民ぞ。酒と煙草も勝手に作って暮せる善き世になる、それまで我慢出来ない臣民沢山ある。早くの神の申す通りにせねば、世界を泥の海にせねばならぬから、早うモト心になりて呉れよ、神頼むぞよ。盲が盲の手を引いて何処へ行く積りやら、気のついた人から、まことの神の入れものになりて呉れよ、悪の楽しみは先に行くほど苦しくなる、神のやり方は先に行くほどだんだんよくなるから、初めは辛いなれど、さきを楽しみに辛抱して呉れよ。配給は配給、統制は統制のやり方、神のやり方は日の光、臣民ばかりでなく、草木も喜ぶやり方ぞ、日の光は神のこころ、稜威ぞ。人の知恵で一つでも善き事したか、何もかも出来損なひばかり、にっちもさっちもならんことにしてゐて、まだ気がつかん、盲には困る困る。救はねばならず、助かる臣民はなく、泥海にするは易いなれど、それでは元の神様にすまず、これだけにこと分けて知らしてあるに、きかねばまだまだ痛い目をみせねばならん。冬の先が春とは限らんぞ。 の国を八つに切って殺す悪の計画、の国にも外国の臣が居り、外国にも神の子がゐる。岩戸が明けたら一度に分かる。六月の十日、書は、ひつくの神。てんめ御苦労ぞ。
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(21)
ひふみ神示 1_上つ巻 第21帖 世の元の大神の仕組といふものは、神々にも分らん仕組であるぞ、この仕組分りてはならず分らねばならず、なかなかに六ヶ敷い仕組であるぞ、知らしてやりたいなれど、知らしてならん仕組ぞ。外国がいくら攻めて来るとも、世界の神々がいくら寄せて来るとも、ぎりぎりになりたら神の元の神の神力出して岩戸開いて一つの王で治める神のまことの世に致すのであるから、神は心配ないなれど、ついて来れる臣民少ないから、早う掃除して呉れと申すのぞ、掃除すれば何事も、ハッキリと映りて楽なことになるから、早う神の申すやうして呉れよ。今度はとことはに変らぬ世に致すのざから、世の元の大神でないと分らん仕組ざ。洗濯できた臣民から手柄立てさしてうれしうれしの世に致すから、神が臣民にお礼申すから、一切ごもく捨てて、早う神の申すこと聞いて呉れよ。因縁の身魂は何うしても改心せねばならんのざから、早う改心せよ、おそい改心なかなか六ヶ敷ぞ。神は帳面につける様に何事も見通しざから、神の帳面間違ひないから、神の申す通りに、分らんことも神の申す通りに従ひて呉れよ。初めつらいなれど だんだん分りて来るから、よく言うこと聞いて呉れよ、外国から攻めて来て日本の国丸つぶれといふところで、元の神の神力出して世を建てるから、臣民の心も同じぞ、江戸も昔のやうになるぞ、神の身体から息出来ぬ様にしてゐるが、今に元のままにせなならんことになるぞ。富士から三十里四里離れた所へ祀りて呉れよ、富士にも祀りて呉れよ、富士はいよいよ動くから、それが済むまでは三十里離れた所へ、仮に祀りて置いて呉れよ。富士は神の山ざ、いつ火を噴くか分らんぞ、神は噴かん積りでも、いよいよとなれば噴かなならんことがあるから、それまでは離れた所へ祀りて呉れよ、神はかまはねど、臣民の肉体大切なから、肉体もなくてはならんから、さうして祀りて呉れ。まつりまつり結構。六月の二十八日、ひつ九のか三。
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(26)
ひふみ神示 1_上つ巻 第26帖 「あ」の身魂とは天地のまことの一つの掛替ない身魂ぞ、「や」とはその左の身魂、「わ」とは右の身魂ぞ、「や」には替へ身魂あるぞ、「わ」には替へ身魂 あるぞ、「あ」も「や」も「わ」も も一つのものぞ。みたま引いた神かかる臣民を集めるから急いで呉れるなよ、今に分かるから、それまで見てゐて呉れよ。「い」と「う」はその介添の身魂、その魂と組みて「え」と「を」、「ゑ」と「お」が生まれるぞ、いづれは分ることざから、それまで待ちて呉れよ。言ってやりたいなれど、今言っては仕組成就せんから、邪魔はいるから、身魂掃除すれば分かるから、早う身魂洗濯して呉れよ。神祀るとはお祭りばかりでないぞ、神にまつらふことぞ、神にまつらふとは神にまつはりつくことぞ、神に従ふことぞ、神にまつはりつくとは、子が親にまつはることぞ、神に従ふことぞ、神にまつらふには洗濯せなならんぞ、洗濯すれば神かかるぞ、神かかれば何もかも見通しぞ、それで洗濯洗濯と、臣民耳にたこ出来るほど申してゐるのざ。七月の一日、ひつくのかみの道ひらけあるぞ。
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(39)
ひふみ神示 1_上つ巻 第39帖 地震かみなり火の雨降らして大洗濯するぞ。よほどシッカリせねば生きて行けんぞ。カミカカリが沢山出来て来て、わけの分らんことになるから、早く此の理をひらいて呉れよ。神界ではもう戦の見通しついてゐるなれど、今はまだ臣民には申されんのぞ。改心すれば分りて来るぞ、改心第一ぞ、早く改心第一ざ。ひつくのか三。
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(44)
ひふみ神示 2_下つ巻 第2帖 今度岩戸開く御用は、人の五倍も十倍も働く人でないとつとまらんぞ。岩戸開くと申しても、それぞれの岩戸あるぞ、大工は大工の岩戸、左官は左官の岩戸と、それぞれの岩戸あるから、それぞれ身魂相当の岩戸開いて呉れよ。慾が出ると分らんことに、盲になるから、神、気つけるぞ、神の御用と申して自分の仕事休むやうな心では神の御用にならんぞ、どんな苦しい仕事でも今の仕事十人分もして下されよ。神は見通しざから、つぎつぎによき様にしてやるから、慾出さず、素直に今の仕事致して居りて呉れよ、その上で神の御用して呉れよ。役員と申しても、それで食ふたり飲んだり暮らしてはならん、それぞれに臣民としての役目あるぞ、役員づらしたら、その日から代りの身魂出すぞ、鼻ポキンと折れるぞ、神で食うて行くことならんから、呉れ呉れも気をつけて置くぞ。七月の十三日、ひつ九のか三。みなの者御苦労であったぞ。
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(151)
ひふみ神示 5_地つ巻 第14帖 この道分りた人から一柱でも早う出てまゐりて神の御用なされよ。どこに居りても御用はいくらでもあるのざぞ。神の御用と申して稲荷下げや狐つきの真似はさせんぞよ。この道はきびしき行ざから楽な道なのぞ。上にも下にも花さく世になるのざぞ、後悔は要らぬのざぞ。カミは見通しでないとカミでないぞ、今のカミは見通しどころか目ふさいでゐるでないか。蛙いくら鳴いたとて夜あけんぞ。赤児になれよ、ごもく捨てよ、その日その時から顔まで変るのざぞ、神烈しく結構な世となりたぞ。九月二十三日、ひつくのか三。
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(187)
ひふみ神示 6_日月の巻 第14帖 世の元からの仕組であるから臣民に手柄立てさして上下揃った光の世にするのざから、臣民見当取れんから早よ掃除してくれと申してゐるのぞ。国中到る所花火仕掛けしてあるのぞ。人間の心の中にも花火が仕掛けてあるぞ。何時その花火が破裂するか、わからんであろがな。掃除すれば何もかも見通しざぞ。花火破裂する時近づいて来たぞ。動くこと出来ん様になるのぞ。蝋燭の火、明るいと思ふてゐるが、五六七の世の明るさはわからんであろが。十月の三十一日。ひつ九のかみ。
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(412)
ひふみ神示 19_まつりの巻 第8帖 旧九月八日で一切りぢゃ、これで一の御用は済みたぞ、八分通りは落第ぢゃぞ、次の御用改めて致さすから、今度は落第せん様心得なされよ。何も彼も神は見通しざぞ、神の仕組人民でおくれん様気付けて結構致し下されよ、二の仕組、御用は集団作りてよいぞ。大奥山はそのままにしておかなならんぞ、天明まだまだ神示の御用結構ぞ、アホ結構ぞ、リコウ出るとこわれるぞ。天明ばかりでないぞ、皆同様ぞ、皆リコウになったものぢゃナア、クドウ神にもの申さすでないぞ。八月十五日、一二
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(500)
ひふみ神示 23_海の巻 第8帖 折角神が与えたおかげも今の人民では荷が重いから途中で倒れん様に神示を杖として下されよ、イキ切れん様になされよ。一つでも半分でも神の御用つとめたらつとめ徳ざぞ、何と申しても神程たよりになるものはないと判らんのか、おかげ取り徳。破れるは内からぞ、外からはビクとも致さんぞ。天では月の大神様、ミ、ヤ、カ、ラ、ス、出て来るぞ、始末よくして下されよ、始末よく出来れば何事も楽になって来るぞ、火のタキ方から水の汲み方まで変るのであるぞ、大切なことであるぞ。うそはちっとも申されん、この神示通りに出て来るのぢゃ、先の先の先まで見通しつかん様な事では、こんなタンカは切れんのざぞ、おかげは其の心通りに与へてあるでないか。下の神が上の神の名をかたりて来ることあるぞ、それが見分けられん様では取違ひとなるぞ、十人位は神示がそらで云へる人をつくっておかねばならんぞ。八月二十三日、一二
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(561)
ひふみ神示 24_黄金の巻 第50帖 口で云ふことよくきけよ。肉体で云ふこと、神の申すこと、よく聞きわけ下されよ。霊媒通じてこの世に呼びかける霊の九分九分九厘は邪霊であるぞ。はげしくなるぞ。世界一平まだまだ出来さうで出来ない相談。奥の奥、見通して下され。うごきは必要であれど、皮むくぞ。次も駄目、次も駄目、その次の次がまことの一家ぢゃ。寒い所暖かく、暑い所涼しくなるぞ。仏には仏の世界はあれど、三千年でチョンぞと申してあらう。神示しめすに、順乱して来るぞ。慾出して下さるなよ。順乱れる所に神のはたらきないぞ。人民自由にせよと申して、悪自由してならん。十二月七日一二十
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(969)
ひふみ神示 39_月光の巻 第37帖 そなたのやることはいつも時が外れて御座るぞ。餅つくにはつく時あるぞと知らしてあろうが。時の神を忘れてはならんぞ。春には春のこと、夏は夏のことぢゃ。そなたは御神業ぢゃと申して、他に迷惑かけてゐるでないか。そこから改めねばならん。鼻つまみの御神業はないのであるぞ。そなたはお先まっくらぢゃと申してゐるが、夜明けの前はくらいものぞ。暗いやみの後に夜明けがくること判ってゐるであろうが、神はすべてを見通しであるから、すぐのおかげは小さいぞ。利子つけた大きなおかげを結構に頂いて下されよ。
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(1747)
霊界物語 19_午_丹波物語4 玉照姫と玉照彦 14 声の在所 第一四章声の在所〔六五九〕 谷丸、鬼丸、テルヂー、コロンボの四人は堺峠の天狗岩を後にし乍ら、山麓の老松の根元を越え、玉照彦の幼児の隠し場所に走り着いた。谷丸は、目を丸くして、此処彼処と探し廻し、三人は吾一の功名せむと、血眼になつて、谷丸の行く後に従ひ、捜索を始めた。忽ち聞ゆる赤児の泣き声、谷丸は立止まり、腕を組み、泣き声の何れより来るかを考へて居る。 谷丸『慥に此処に、お寝かせ申して置いた筈だ、それに形跡だに残つてゐないのみならず、御声は聞えて居るがトント方角が分らない。東に聞える様でもあるし、西の様でもあるし、西かと思へば南に聞えるし、南かと思へば、北に聞える様だし、ハテナ、こいつは、狐の奴、玉照彦様を啣へて、其処中を迂路ついて居やがるのだな、オイ俺は東を探すから、鬼丸、貴様は西の方を探して呉れ。そして、テルヂー、コロンボ二人は、南、北に手分けして捜索して下さい。其代り誰が見付けても共有だから其お積もりで願ひますよ』 テルヂー『其約束は間違ひありませぬなア。イヤ面白い。さあコロンボ、貴様は南に行け、俺は北の方を探して見る』 不思議にも、幼児の泣声は、谷丸の耳には東に最も高く聞えて来る。鬼丸には西の方に聞える。コロンボの耳には南に聞える。テルヂーの耳には慥に北の方から聞えて来る。 四人は東西南北に、慌しく、声を尋ねて駆け出した。四人の耳に聞ゆる猛烈な泣き声、各自前後左右より響いて来る。四人は其声に、耳を引張られる様に、体をキリキリ舞ひさせ、目を廻して四人共、バタリと倒れた。一時許り四人の呼ぶ声も、風の音も鎮まり閑寂の幕が下ろされた。夜はそろそろと明け放れ、東の空の雲押し分けて昇り給ふ天津日の御影に照され、各一度に目を醒せば、豈計らむや、四人は天狗岩の根元にヅブ濡れになつて眠りゐたりき。 谷丸『アヽ何だ、夢見て居たのか、矢張天狗岩の傍だから鼻高の奴、俺達を一寸チヨロマカしやがつたのだな。それにしても、肝腎の、玉照彦様は何処にお出でになつたのだらう。アヽ此処に御座つた、有難い有難い、玉照彦様どうぞ許して下さいませ。貴方お一人をこんな岩の上に、御寝かし申し、吾々は前後も知らず寝込んで了ひました』 と云ひつつ傍に寄り、抱き上げむとしたるに、玉照彦の全身は冷切つて氷の如くに冷たくなつて居る。 谷丸『オイ鬼丸、玉照彦様は冷たくなつて居らつしやる、こりやマア何うしたら宜からうかなア』 鬼丸『そりや夢の中に見た通り石ぢやありませぬか』 谷丸『ヤア如何にも、此奴は夢の通り矢張石だつた』 テルヂー、コロンボ一度に、 テ、コ『アハヽヽヽ、誠に誠に、御挨拶の仕様も御座いませぬ、もう斯うなつた以上は何程泣いても悔んでも石が物云ふ例は御座いませぬ、どうぞ鄭重に弔うて上げて下さい。さあコロンボ、夢の処へ行くのだ』 と駆出す。谷丸、鬼丸も続いて駆出したり。 坂の中程迄下り来る折しも、水の滴る如き一人の美人、玉照彦を抱いて上り来るに出会つた。 テルヂー『モシモシ、貴方は言照姫様では御座いませぬか』 美人『ハイ左様で御座います。今玉照彦の神様を保護して此処迄参りました』 テルヂー『変な事を申しますが、何卒ウラル教の神様として大切に致しますから、吾々に下さいますまいか』 言照姫『ハイ何誰かに貰つて貰はねばならないのですから、お望みとあれば、何うとも致しませう』 斯かる処へ、谷丸、鬼丸は追かけ来り、 谷、鬼『ヤア玉照彦様で御座いましたか、大変にお慕ひ申し探して居りました。サアサア何卒谷丸へお越し下さいませ。私が抱いて上げませう』 言照姫『お前は、谷丸さまぢやないか。私の不在中に、岩窟の中から盗み出し、大切にする事か、あのやうな茨室へ蓑を敷いて、捨子同様にして置きなさつたぢやないか。どうして貴方に、此尊い玉照彦様を安心してお預け申す事が出来ませうか』 谷丸『イヤ誠に済みませぬ。何を云つても、ウラル教のテルヂーが狙つて居るのですから、取られちや大変と、茨の中とは知らず、朧月夜の事とて間違ひ、お寝かせ申したのです。どうぞ私に下さいませ』 言照姫『斯う両方から懇望されては、一方を立てれば一方に済まず、処置に困ります。そんなら斯う致しませう。玉照彦様は御生れ遊ばしてからまだ百日にもなりませぬが、ちよいちよい物も仰有る、立歩みもなさいますから、ウラル教のテルヂーとバラモン教の谷丸とお二人で両方の手を握つて、玉照彦様を引張合ひして下さい。引張つて勝つ方に上げませう』 四人一度に、 四人『さう願へば公平で結構です』 言照姫は玉照彦を坂道の真中に下ろした。玉照彦は左右の手を両方に差し延ばし、 玉照彦『サア坊の手を引張つて下さい。勝つたお方の方へ参ります。然しソツと引いて下さいや』 谷丸、テルヂー『承知致しました』 と谷丸、テルヂーの二人は、左右に立ち現はれ、腰を跼めて、背の低い玉照彦の手をグツト握り力を極めて、 谷丸、テルヂー『サア玉照彦様、私の方へ来て下さい』 と、一生懸命、腕が抜ける程引張る。 玉照彦『アヽ痛い痛い、痛いわいなア』 と顔を顰め泣き出す。テルヂーは此声に驚いて、思はず手を離した。 谷丸『サア愈こちらの物ぢや。玉照彦様、御苦労乍ら、今日から、バラモン教の神様になつて下さい』 玉照彦、首を振り、 玉照彦『イヤイヤテルヂーの方に御世話になります』 谷丸『そりやあ約束が違ふぢやありませぬか』 玉照彦『貴方は、私が悲鳴を上げて痛がつて居るのに、構はずに引張つたぢやありませぬか、あの時にテルヂーが放して下さらなかつたら、私の体は二つに千切れて居るのです。愛情の深いテルヂーに御世話になります』 谷丸『小難かしい事を仰しやいますなア、チト位辛抱して下さつても宜いぢやありませぬか。モシモシ言照姫様、どうぞ生みの御母様の貴方からよく云つて下さいな』 と振り向き見れば、こは如何に、言照姫の姿は最早影も形もない。 玉照彦『私は最う斯うなる以上は、どちらへも参る事は止めませう。今ウラナイ教の松姫さまが、お迎へに来て下さるから、そちらへ行きます』 此時トボトボと坂を登つて来る一人の女がありしが、玉照彦は嬉しさうに、 玉照彦『ヤア、其方は松姫か、よう迎へに来て呉れた。サアサア連れて行つておくれ』 松姫『これはこれは玉照彦様、焦れ慕うて参りました。サア私が御負して進ぜませう』 と背中を突き出す。四人は目と目を見合せ乍ら、松姫を前後左右より取り巻き、鉄拳を以て擲きつけ、悲鳴を上げて倒れるのを見済まし、玉照彦を引攫へ、四人は林の茂みに姿を隠したり。 松姫は暴漢に乱打され忽ち気絶して坂道に倒れ居たりしが、其日の夕暮頃フト息を吹き返し、四辺を見れば、麗しき二柱の女神、儼然として其前に立ち給ふ。 女神一『汝は高城山の松姫であらう。サア、妾に従つて是より、高熊山の岩窟に参りませう』 松姫『何れの神様か存じませぬが、ようマア助けて下さいました。私は悪者に虐げられ気絶をして、遠い遠い彼の世の旅行をやつて居ました。処が二人の女神様が現はれて、コレ松姫、此処は何と心得て居る、幽界の入口であるぞや。汝はまだまだ幽界に出て来る時でない、サアサア妾が送つてやるから、と仰有つたと思へば気が付きました。見れば幽界で見た女神様と、寸分も間違ひのない御二方様、お蔭で命を助けて戴きました』 と手を合せ感謝の涙にくれて居る。 女神二『サア松姫どの、高熊山の玉照彦様をお迎へに行きませう』 松姫『あの玉照彦様はたつた今、悪者に攫はれて行かれました。最早、高熊山には居らつしやいますまい』 女神一『オホヽヽヽ、今朝ウラル教とバラモン教の宣伝使が来たでせう。彼等は貪欲心に絡まれ、眼暗み、石くれを玉照彦様と思ひ違へ、喜んで逃げ帰つたのです。サアこれから、貴女は気を取り直し、単身岩窟に進み、言照姫にお逢ひなされて、玉照彦様をお連れ申してお帰りなさい。妾は来勿止迄送つて上げませう。それから奥は貴女一人のお働きです。妾達二柱、お手伝ひ申すは易き事乍ら、それでは貴女の御手柄にはなりませぬから、心丈夫に以てお出でなさいませ』 松姫『何から何迄、有難う御座います。お言葉に甘へて来勿止迄送つて頂きませうか。さうして、貴女様の御神名は何と申します』 二人の女神はニコリと笑ひ、 二人の女神『何れ分る時節が参りませう。此処では一寸申し上げ兼ねます』 と先き立ち、足早に、山奥指して進み給ふ。松姫は、二女神の後に従ひ、心いそいそ歩み出したり。 二女神『もう二三丁先が、来勿止の関所で御座います。吾々は此処でお別れ致します。何れ改めてお目にかかる事が御座いませう。左様なら』 と云ふかと思へば二女神の姿は忽ちかき消す如く見えなくなりぬ。松姫は盲人が杖を失つた如く、暗夜に提灯取られた如き心地して、重き足を、希望の車に乗せられ、引摺つて行く。日は既に黄昏れ、十七夜の月はまだ昇り給はざる一の暗み時、来勿止の神の関所に着いた。此処は厳格な関門が築かれてある。 松姫『モシモシ私は霊山へ詣る者で御座います。何卒、此門お通し下さいませ』 門番の一人甲は、横門を押し開け出で来り、 甲(勝公)『何誰か知りませぬが、此一の暗に、此門あけいと云ふ者は碌な者ぢやありませぬ。何時も何時も狐や狸に誑られて、馬鹿を見通しだから、今日は何と云つても開けませぬ、否通過させませぬ。出直して明日の朝お出なさい』 松姫『左様では御座いませうが、決して怪しい者では御座いませぬ。どうぞ通して下さいませ。玉照彦様の御誕生地へ至急詣らねばなりませぬから』 乙此声を聞いて、 乙(竹公)『オイ勝公、此暗がりに、アタ厭らしい、そんな白い装束を着た女を相手に何を揶揄つて居るのか、早く這入らぬか、又例の奴に定つて居るぞ』 勝公『そうだと云つて此の方が是非玉照彦様に参拝したいから、通過させて呉れと、懇願なさるのだもの、無情に断る訳にもゆかぬぢやないか』 乙(竹公)『何だ、又貴様、日の暮れ紛れに、女を掴まへて、愚図々々云つて居やがるのだな、余程、勝手な奴だ。男が尋ねて来ると、何時も、慳もほろろに、木で鼻こすつた様な応待をするクセに、今日は言葉付迄、優しく出やがつて、貴様の面つたら、大方崩壊して居るのだらう。暗夜でマア仕合せだ。昼であつて見よ、好い化者だぞ』 勝公『俺の顔が化者なら、貴様の顔は何だい。鯰が沸茶を浴ぶせられた様な面をしやがつて、人さんの御面相迄、批評すると云ふ資格がどこに有るかい』 乙(竹公)『何と云つても貴様は女にかけては五月蠅い奴だ、俺が来なんだら、優しい声を出しやがつて何々を、何々する、何々だつたらう。エライ邪魔物が飛び出しまして済みませぬなア、アハヽヽヽ』 松姫『モシモシお二人様、今日は特別の御憐愍を以てお通し下さいませ。どうしても今晩の中に参拝致さねばなりませぬから』 乙(竹公)『大胆至極な、女の分際として此山奥に只一人踏み込み来り、此怖ろしい岩窟へ参詣し様なんて、そんな大野心を起しても駄目ですよ。屹度途中で、狼にバリバリとやられて了ふのは請合だ。此門潜るや否や、地獄の八丁目だから、悪い事は云はぬ。お前の身の為ぢや。いつ迄も絶対通さないとは申さぬから、明日来て下さい』 松姫『御注意は有難う御座いますが、私は神様に何事もお任せ申した身の上、命なんかどうなつても宜しいから、何卒心よう通して下さいませ』 乙(竹公)『イヤイヤ、命が惜しくない様な、ド転婆を通す事は愈以てなりませぬ哩、来勿止の神様に又どんなお小言を頂戴するか知れやしない。此頃は此門番も失策だらけで、薩張り鼻べちやで威勢が上らない。それと云ふのも、勝公が心の締りがないものだから、いつでも俺達が巻添へを食ふのだ。オイ勝公、サアこんな命知らずの強者を相手にせずと、トツトと奥へ這入つてそれから門を閉めて、警戒を厳重にせなくちやならぬぞ。サア這入らう這入らう』 勝公『それだと云つてこれ程熱心に、お頼みなさるのに、どうして刎ね付ける訳にゆくものか。貴様這入りたければ、勝手に這入つて勝手に閉めたが宜からう。俺は仕方がないから、日頃覚えた、ぬけ道を伝うて此御方を背中に背負つて上げるのだ』 乙(竹公)『とうとう尻尾を現はしやがつたな、アハヽヽヽ、随分女にかけては腰抜けなものだ』 勝公『エヽ竹公の唐変木奴、貴様に女が分つて堪るかい。女で苦労して来た者でないと女人心理は解らないぞ。さう毒々しく無情な事を云ふものぢやないワ。人間は堅い許りが能ぢやない。砕ける時は砕けて、世の中の人々の為に便利を計るのが人間の務めだ。况して此館に泊めて呉れと仰有るのでもなし、通してさへ上げれば宜いのぢやないか』 竹公『貴様が何と云つても、一旦男の口から、通さぬと云つたら通さぬのだ』 勝公『モシモシお女中、今お聞きの通り同僚役があの通りの頑固者ですから、無理にお通し申しても、後でどんな難題を吾々両人にふきかけるやら分りませぬ。さうすればお互の迷惑ですから、どうぞ貴方も折角此処迄お出でになつたのですから、お気の毒で堪りませぬが、今晩は一旦、引返して下さいませぬか』 松姫『どうぞ、方角だけなつと教へて下さいませ。送つて貰つては大変な、貴方の御迷惑になつては済みませぬから』 勝公『実の処は、これだけ厳しく門番も今迄は云はなかつたのですが、二三日前に、バラモン教の、谷とか鬼とか云ふ奴がやつて来て、来勿止神様を始め、吾々をチヨロまかし、トウトウ大切な、玉照彦様を盗んで帰つたものですから、其後と云ふものは大変に警戒が厳しくなつて、暮六つ下れば、老若男女にかかはらず、一切通してはならぬと云ふ、来勿止神様の厳しき御命令で御座います。それ故、今の男があんな無情な事を云うたのですが、然しあゝ見えても彼奴は極めて平常から親切な男ですよ。言葉つきこそ、穢ふ御座いますが、それはそれは心の美しい男ですよ。屹度腹の中では涙をこぼして居たに違ひありませぬ。どうぞ、竹公は無情な奴だと恨んでやつては下さいますな』 松姫『イエイエ決して決して何の恨みませう。お役目大切にお守りなさる処を、私が御無理を申しますのですから、何と仰有られても是非はありませぬ。併し今貴方のお言葉によれば、玉照彦様はバラモン教の方が盗んで帰つたと仰有いましたが、それは事実ですか』 勝公『盗んで帰つたのは事実ですが、併し乍ら御神徳高き高熊の霊山、不思議な事には盗まれたと思つた玉照彦様は、依然として御機嫌麗はしく、言照姫様に抱かれて居られます。本当に妙な事があつたものです』 松姫『それ聞いて安心致しました。私にも成程と諾かれる点が御座います』 斯く話す折しも石の本門はガラリと開いた。灯火をとぼし、現はれ来る、白髪異様の老人の姿が、松明に照されて、明瞭と松姫の目に映つた。 松姫は思はず、ハツと地に平伏した。 勝公『これはこれは来勿止神様、何処へお出ましになります』 来勿止神『ヤアお前は勝ぢやなア。此処へ一人の女が来る筈ぢや。未だ出て来ないかな』 勝公『ハイ、それは何と云ふ方ですか。松姫ぢや御座いませぬか』 来勿止神『アヽさうぢや、其松姫が来る筈だ。二時ばかり以前に、玉照彦様よりお使が見えて、此処へ松姫と云ふ女が一人来る筈だから、夜分でも構はぬ故、通してやつて呉れとの御命令であつた』 勝公『その方なら、今此処に居られます。サア松姫様、御心配なさいますな。今お聞きの通りですから』 松姫頭を上げ、 松姫『勝さまとやら、御親切有難う御座いました。して貴方が来勿止神様で御座いましたか。罪深き妾なれど、どうぞ此御門を通して下さいませ』 来勿止神『サアサア遠慮は要りませぬ、ズツとお通り下さいませ。貴女のお登りを、岩窟の大神様が大変に御待ち遊ばして居られます。サアサアこちらへ』 と松姫の手を把り門内に導き入れたり。 (大正一一・五・九旧四・一三藤津久子録)
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霊界物語 68_未_タラハン国の国政改革2 02 恋盗詞 第二章恋盗詞〔一七二六〕 政治学の研究や、新思想の探究に没頭し、タラハン国上下の現状を痛歎の余り心身疲労し、さしも明敏なりし頭脳も霞を隔てて山を見るが如く、朦朧として鮮明を欠ぎ外の見る目よりは、憂鬱病者かと疑はるる迄に煩悶苦悩の結果殿内深く閉ぢ籠もつて、父王の頑迷固陋なる骨董品的教訓を嫌ひ、又老臣共の時代後れの古風の頭より絞り出した、種々の忠告にも耳を借かず、左守の司の悴アリナを唯一の慰安者となし、己が思想の伴侶となし鬱陶しき日を送つて居たスダルマン太子は、偶々山野の遊びに山深く迷ひ込み、不思議にも、山奥に咲き匂ふ姫百合の花に恋の炎を燃やし、心を後に万斛の涙を心中深く湛え乍ら、アリナと共にタラハン城内へ帰つて来た。 女と云ふものに対しては初心の太子、恋愛と云ふものに対しても尚更初心の太子、美の神の権化とも見るべき清浄無垢の乙女が、人間界をかけ離れた、浅倉谷の山奥に包まれて居た其容姿に憧憬し、数年来の沈鬱性は一変して、危いかな尊貴の身を保ち乍ら、暗雲飛び乗りの離れ業を演ぜむとし、山霊水伯の精になつた美人の相を、自らが得意の絵筆に描いて床の間にかけ、朝な夕な画像に向つて生きたる人に云ふ如く、何事か独語するに至つた。この画像こそ人間の命取り、男殺しの大魔者である。太子の煩悶は以前に百倍し、立つても居ても居られないやうな様子となつて来た。太子の御心ならば、仮令地獄のドン底でも、一つよりない命でも無雑作におつぽり出すと云ふ忠臣にして、唯一の太子の伴侶たる左守の悴アリナは、夜窃に命を奉じ、山奥の名玉、月の顔容、花の姿、温かき雪の肌に包まれた、天津乙女の化身を山奥より引きずり出し、秘に太子の御心を慰めむものと草鞋脚絆に身を固め、服装も軽き蓑笠の夜露を浴びて、主を思ふ心の一筋途、一筋縄では行かぬ左守のシャカンナを、夏の炎天に地上万物を霑す夕立の雨のふるなの弁を振ひ、邪が非でも、縦でも横でも頑固爺を納得させ、肝腎の玉を抱いて帰らねばおかぬと雄健びしながら、タニグク山の山口、玉の川の下流、岩瀬の深森に着いた。夜はほんのりと明け放れむとする時、路傍の岩に腰打ちかけ、二つの黒い影が何だか囁き合つて居る。谷川の岩にせかるる水音に遮られつつ、しかと言葉の筋は解らない。アリナは、谷道に直立して、頭を傾け思ふやう、……もはや夜明に間もない暁の空に二人の男が囁き、合点のゆかぬ事だ哩、噂に聞く左守のシャカンナが一ケ月以前迄抱えて居た山賊の片割ではあるまいか。何は兎もあれ足音を忍ばせ、様子を伺ひ見む……と息を凝らして進みよつた。二つの影は傍に人の寄り添ひ居るとは知らず、盛んにメートルをあげて居る。 ハンナ『オイ君、此間天帝の化身とか云ふ山子坊主が連れて来たダリヤ姫とか云ふ美人のことを思ひ出すと、俺のやうな恋愛観念の濃厚な色男に取つては、実に感慨無量だ。君だつて平素の偽善的言辞も兜を脱いで俺の持論に賛意を表したく成るだらう』 タンヤ『堂々たる天下の男子が、女々しい恋愛だの、神聖だなぞと騒ぎ廻つて風俗壊乱の火の手を煽ふり、自分も又その火中へ喜んで飛び込んで行く悲惨の状態を見ると、実に世の中の奴の腰抜け加減に愛想が尽きて了ふわ。ヘン、泥坊稼ぎの身分でありながら、恋愛の、神聖のとは臍茶の至りだ。オイ、ハンナ、そんなハンナリせぬ腰抜論は聴きたくないから、俺の前ではもう言つて呉れな。気分が悪くなるからのう』 ハ『ヘン、泥坊だつて恋愛論が出来ない理由はあるまい。先づ聞き玉へ、俺の名論卓説を』 タ『今日は僕も死んだ女房の命日だから、供養の為に、君の迷論に対し充分なる攻撃を試みる心算だが、得心だらうねー』 ハ『面白い、僕の恋愛論に口を入れる余地があるならやつて見玉へ。しどろもどろの受太刀が折れて、屹度僕の軍門に降るは火を睹るよりも明かな事実だ。オホン、日進月歩文明の今日では、恋愛論に趣味を持たないものは、最早人外の境域に自ら堕落して居るものだ。この頃僕が大に感ずる事は、性欲とか恋愛と云ふ事に関する議論が、著しく抽象的に成つて居ることだ。然し凡ての議論が反芻的で一度呑み込んだものを、わざと抽象的にして出して居る様に僕には見えて成らぬ。ヤレ恋愛は神聖だとか偏的だとか、性の問題は斯くあるべきものだとか、そんな風に恋愛を自由なものに考へては不道徳だとか、離婚は絶対に不可いとか云つて、婦人会連中が首を鳩めて決議までやつたと聞いて、僕は不可思議な心持ちがするのだ。恋愛とか性欲とか云ふものは、そんなに簡単に無雑作に片付けらるるものだらうか。今の所謂文明人間の言ふが如く、一で無ければ二、二で無ければ三と云ふやうに、簡単に、学問的乃至知識的に片付けて了ふことの出来るものだらうか。僕は何うも左様な考へは持てないのだ』 タ『ヘン、国家危急の場合に当つた今日、恋愛問題なんか唱へる奴の野呂さ加減に呆れざるを得ないわ。そんな問題は極めて簡単に片付けて了ふ方が余程人間らしいぢや無いか。アタ阿呆らしい、学問上道徳上から見ても恋愛なんか口にする奴は、僕は人間の屑だと思つて居る』 ハ『オイ、タンヤ、君は無味乾燥な心理を持つて居る様だが、世の中は理窟で何程押し通したつて、学問や知識でいくら攻めて行つたつて、恋愛と云ふが如き人間生涯に関する大問題を、さう易々と片付ける訳には行かないよ。却てそれは空想だ、徒労だ。どうしても人間には信仰と恋愛が無くてはならないのだから、此問題は極めて慎重に研究すべき価値が充分にあるよ』 タ『恋愛と云ふものは人に由つて霊の方面から観察し、或は肉の方面から見たり、自然から見たり、又は単なる物質から見たりするのもあるが、要するに道徳の範囲内に於てでなければ、神聖な恋愛を論議する事は出来ぬ。万々一道徳を度外したる恋愛を唱ふるものありとすれば、夫れは人間以外の動物の心理状態と云ふべきものだ』 ハ『それは君の無味乾燥な頭脳から割り出した一面の見方であるが、到底完全なる恋愛、または性を捕捉したものとは言はれない。恋愛は元来自然と同様に端倪すべからざる性質のものだ。極端に言へば、恋愛なるものは余りに神聖過ぎて、彼此と論議する事さへも出来ない位のものだ。恋愛を論議された時には、モハヤ其本当のものは何処かに去つて了つて居ると言つても好い位だ。換言せば、恋愛は霊も肉も自然も物質も凡てを打つて一丸と為した処にのみ、恋愛の髣髴が認められるもので、何も彼もが凡て同時にあるのだ。霊肉一致とは好く言つたものだが、夫れでさへ充分で無い程流動的なものだ。だから恋愛を論ずるに当つては君の説の様に、普通の倫理学的論法で、斯うだから彼だとか、彼だから斯うだとか云ふ事は出来ない。普通一般的の事実なら、どんな事でも結果から押して考へて行けば、答へは可成正確に出て来るが、恋愛だけに限つて、さう簡単に片付かないよ。知識や倫理的に成つた時には、最早恋愛とか性とか言ふものの粕屑であつて、君の如き学者や、論客が何程鹿爪らしい議論や意見を立てて、自分こそは古来の恋愛論の上に新しい、そして的確な、正当な、一見地を加へたものと自惚れて居ても、徒に粕屑を握んで金剛石の様に思つて大騒ぎをして居るだけで、恋愛の本体は何時の間にやら千万里の遠方へ滑つて逃げて往つた後なのだ』 タ『君の説は全然道徳を無視し、社会の秩序が紊乱し、家族制度が破壊されても、恋愛さへ満足にやつて行けば、それで天下は泰平だと云つたやうな悪思想だ。人間は自由も恋愛も必要のものだらうが、社会や家庭の秩序を紊してでも恋愛を神聖視するのは、動物性を帯びて、外道の主張だ。僕は賛成する事は出来ないよ。三角問題や、離婚問題が頻々として社会に続出するのも、君の如き悪思想のものが覇張るからだ。恋愛といふものは、成程神聖なものでは有るが、少しは慎みと言ふ事、又は倫理の点を考慮して始めて神聖な恋愛とも云へるものだと思ふ。君の恋愛論は所謂風俗破壊論の変態だ』 ハ『君の様に、恋愛を道徳的問題視し過ぎては、その本体は既に蔭も形も無くなつて了ふ。いつの間にか指の股から滑り落ちて了つて居るのだ。夫れにも気が付かず、後に残つた恋愛の粕屑許りを捉へて、彼此と論議して居る様だ。僕等は、モウ少し夫れを活動的存在物として、刹那々々に深く触れて行く事を念とせなくては成らないだらうと思ふのだ』 タ『恋愛は一夫一婦の厳守に由つて始めて神聖たり得るのだ。そして人間たるものは飽くまでも一夫一婦の道を守つて行かねば人間としての品格が保てない。故に何処までも倫理的で無くては、恋愛は成立せないと思つて、僕は泥坊稼の傍永年努力して居るのだ』 ハ『他人の婦女を強姦し、財産を掠奪するを以てモツトーとする泥坊稼の身で居ながら、一夫一婦論や、道徳心を以て此問題に対し、永年の努力を惜まない君の精神と勇気には大に感服するが、実際其場に臨んで、君の堅固な主張が守れるか守れないかは、第二の問題として、兎に角も努力しようとする其心懸けは僕は愛する。現に僕なども三角状態の苦しい立場に立ち、恋愛の好い加減でない事を痛感し、人間の魂の玩弄すべからざることを痛切に知つた時には、「矢張一夫一婦の制度が結構だなア。さう云ふ風に出来て居るのだなア」と云ふ風に独語せずには居られなかつた事もある。故に僕も愛情の濃かな、一夫一婦の仲、お互に他に目を移す余裕のない、円満にして且つ濃厚な夫婦の仲を尊敬する一人だ。併しそれは原則としてではない。唯好い事だと云ふだけに止めたいのだ。何故ならば自然はそんなに簡単に言つて了ふ事の出来るものでは無いのだ。又一夫一婦が如何に理想的であるからと言つて、皆の人間が訳もなく行ふ事が出来る様では、又出来るやうに此自然が出来て居ては、それこそ人生は単調になつて了つて、微妙な美の波動もなければ、細微な感情の渦巻もなく、全く色彩のない荒涼たるものに成つて了ふ。否夫れだけならまだ我慢が出来るとしても、それでは結局この人生が成り立つて行かない。悪く型にはまつて了つた様になつて、少しの余裕もなく、終には破綻百出するに至るものだ。また単に生殖と云ふ点から見ても、そんな事ではとても人生は成立して行かないのは好く判る。そこで君の一夫一婦説も悪くはないが、皆の人間が夫れになつては困ると云ふ形になるのだ。恋愛はモツト自由で溌溂として、さうした人間の理智や意識で拵へた、希望とか理想とか、道義とか品行とか云ふ型の様なものなどは、幾何出来ても、手早く且つ容易に内部から打壊して了ふ強い力を持たなければ成らないと云ふことになるのだ』 タ『君の如き自由恋愛論者の性欲万能主義者には、僕も大に面喰つた。開いた口が閉がらないわ。何なりと御勝手に喋舌つたが好からうよ』 ハ『誤解しちや困るよ。僕だつて決して自由恋愛主義者ではない。又単に性欲の満足のみを求めて世を乱さうとするものでもない。かつては僕は自然主義の唱道者として、獣類に近い無残な性欲を恣にするものだと云ふやうに、世間から勝手に定められて了つたこともあつたが、決して僕は性欲万能宗の信者ではない。唯僕は恋愛といふものは、さういふ自由な奔放なものだといふ事を主張するのだ。単なる知識になつて了つては、約り前にも云つた通り、粕屑的論議になつて了つては、溌溂とした流動的存在としては、到底そんな風に定めて了ふ事は出来ないと云ふ事を言ひたいのだ』 タ『君の説の如きそんな無検束なことは許せない。君がさう言ふ風に恋愛なるものを見るなれば、それだけでモウ立派な正札附きの自由恋愛論者ではないか』 ハ『その様にも浅く考へたら取れるだろうが、その点は実に難いのだ。そこに非常に深い細かい、ともすれば見落して了ひさうなデリケートな、心理的境地が存在して居るのだ。それは一種の理解であるとも云はれるが、又一種の感激だと言ひ得る。更に言ひかへて人間乃至人生に対する、大きな自然に対する溜息が在るとも言へる。約まり何うにも成らないと云ふ心持に近いものだ。恋愛なるものは到底見通しする事の出来るものではない。単純であつて、併も深奥なものだから、取らうと思へば直そこに在るが、扨て何処までいつても端倪されないものだ。この心持が約まり恋愛の純な所なのだ』 タ『全然君の説は二十世紀頃に生きて居た小説家の田山花袋の様なことを言つてるぢやないか』 ハ『当然だよ。実は田山花袋の恋愛説に心酔して居るのだ、アハヽヽヽ』 タ『オイ、もう夜が明けるぢやないか。恋愛論も、よい加減に幕を卸し、弥々これから本業に取かかるとせうかい。此間天帝の化身と称する玄真坊が連れて来よつたダリヤ姫も頗る素的な美人だつたが、然し彼奴は、既に鼻の先が割れて居る。そんな古めかしいものよりも、どうだ、甘く親分の所在を突き止めて、有らむ限りの胡麻を擦り、元の如く乾児に使つて貰ひ、隙を考へて、スバール姫を奪ひ取り、タラハンの町へそつと連れ行き、金にかへやうものなら、一万両や二万両は受け合ひの西瓜だ。どうだ一つ二人が協力して甘く目的を達成し、其金を以て立派な商売を営み、天晴紳士となつて世を送らうぢやないか。恋愛論も恋愛論だが俺に云はせれば花より団子だ。華を去り実に就くのが最も安全なるやり方だよ』 ハ『俺もお前と約束して此処迄やつて来たのだが、あのスバール姫はどことはなしに優しみがあり、あれ程の美人を娼婦に売るのは何だか可愛さうな気がする。甘く目的を達したら、あの女をそんな泥水に落さず、どうだ俺の女房にスツパリと呉れる雅量はないか。俺だつて何時迄も金鎚の川流れぢやあるまい。きつと頭を上げる時がある。其時にはお前に百万両でもお礼をするからなア』 タ『ヘン、甘い事を仰有りますわい。お前のやうな猿面野郎がスバール姫を恋慕するなんで性に合はないわ。そんな空想を描くよりも、甘く姫を奪ひ取り、お金にした方が何程徳だか知れないよ。又かりに、貴様の女房にスバール姫が成つたとした所で、貴様のド甲斐性では姫を満足さす事も出来まいし、終の果には……ド甲斐性なしだ、腰抜け野郎だ、馬鹿野郎だ……と姫の方から愛想尽かされ、捨てられるのは今から見えて居る。万々一山奥に育つた未通娘だから、お前の意思に従ふにした所で俺をどうするのだ。貴様が出世した時俺に報酬をやると云うたが、貴様の力ではミロクの世迄待つた所で到底覚束ない話だ。それよりも甘く手に入つたら売り飛ばすに限るよ』 ハ『俺とスバール姫とが円満なホームを作り、そして姫は天成の美人だから、立派な美人を生むに相違ない。世の諺にも出藍の誉とか云つて、あんなものがこんなものを生んだかと云ふ事もある。雀が鷹を生む譬もある。然るに況んや孔雀にも比すべきスバール姫、出来た子はきつと鳳凰以上だらう。その鳳凰を今から貴様にやる事の約束して置かう。貴様が夫を女房にせうと何万円に売り飛ばさうと勝手だ。暫く時節を待つてくれ。時節さへ来れば煎豆にも花が咲くと云ふからのう』 タ『ヘン、馬鹿らしい、俺だつて矢張男だ。貴様がスバール姫に恋慕した如く、俺だつて矢張恋慕の心は同様だ。お前は恋愛々々と議論許りで立派に喋舌り立てるが、いつも見事に成功した事はあるまい。十人口説いて一人応ずれば一割に当るから、まんざら捨てたものではないとお前は何時も云つて居るが、百人千人口説いたつて、其御面相では半人だつて応ずるものはあるまい。今迄一人でも成功したものがあるなら云つて見よ』 ハ『ヘン、偉相に云ふない。俺だつて恋愛については、聊か自信をもつて居るのだ。まづ僕の女に対する恋愛の実際は、今日迄の経験上、いつでも半分丈けは必ず成就して居るのだ。要するに恋愛なるものは、男女二人の間に合意的に成立つものだから、其合意的の半分、即ち男の俺だけは確に成功するが、未だ嘗て、女の方に、実際の事を云へば出来た事が無い。それだから僕の恋愛は半分は間違なくきつと成就するのだ』 タ『ウフヽヽヽ、ヘン馬鹿らしい。貴様はよい馬鹿だなア。馬鹿者の典型とは貴様の事だよ。議論許り立派にベラベラ喋舌るが天成の鈍物だから、否馬鹿野郎だからお話にならないわ』 ハ『どこやらの教へにも「阿呆になつて居て下されよ。阿呆程結構なものはないぞよ。阿呆になつて居らねば物事成就致さぬぞよ」と云ふ事があるぢやないか。阿呆は所謂馬鹿野郎だ。俺は馬鹿野郎をもつて天下の誇りとして居るのだ。良う考へて見よ。彼奴は学者だ、智者だ、才子だ、策士だと世間から云はれて居る小賢しい人間よりも、世の中は馬鹿野郎の方が最後の勝利を占むるものだ。天下に油断のならぬものは、美人の鼻声と、阿呆と、暗の夜だと云ふぢやないか。況んや現代の如き神経過敏の病的の世の中では、馬鹿でなくては、世に立つ事は出来ないよ。如何に猛烈なバチルスにも犯されず、バクテリヤにも左右されず、俗物共の相手にもしられず、万事がボーとして無頓着でトボケたやうな、馬鹿気た処に処世上、無限の妙味があるのだ。馬鹿なるかな、馬鹿なるかなだ。サアこれからお前と俺と一致してこの大馬鹿を尽しに行かうぢやないか。シャカンナに取捉まえられて、死損ねになるもよし、スバール姫に肱鉄をかまされて馬鹿を見るもよし、兎も角人間は馬鹿に場数を踏まねば何事も成功しないものだ。一層の事思ひ切つて浅倉谷の方面へ馬鹿力を現はし強行軍と出かけようぢやないか。こんな所に鳶の糞を頭から浴びて石仏のやうに取越苦労をして居るのも馬鹿らしい。サア行かう』 タ『よし、もうかうなりや仕方がない、馬鹿序だ。全隊進めオ一二』 と谷間の細路を小足に刻み乍らチヨコチヨコ進み行く。アリナは万感交々胸にたたへつつ、二人の話を聞いて飽迄追跡し……父娘の危難を救はにやならぬ。いや却つて父娘両人を都へ引き出すには好い機会が出来たのかも知れない……といそいそしながら進み行く。併し乍ら平坦な都大路を車馬の便によつて歩んで居たアリナの足の運びは、到底山野に慣れた山賊の足跡を追撃するには余程の困難を感ぜられた。二人の小盗児の影はいつの間にか山の裾に遮ぎられて見えなくなつて仕舞つた。 (大正一四・一・五新一・二八於月光閣加藤明子録)
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大本神諭 神諭一覧 明治36年旧11月19日 明治三十六年旧十一月十九日 艮の金神稚姫岐美命、出口の神と顕はれるは、変性男子の身魂が顕はれて、出口の手で書かしてあるが、是からは、兵隊が一番御苦労であるから、神に縋りて居る人民は、一番に兵隊の願ひをわかりた人民から、してやりて下されよ。 兵隊は暑さ寒さの厭ひなく、縛られて居るのざぞよ。其の思ひを致して、余り好きすっ法に致すと冥加に尽るから、何事も天が見通し。今度はエンマがでて来て、もとからの身魂が、査べてありての、二度目の世の立替であるから、身魂の性来が良くあらためてあるので、動きの取れんことばかり。それじゃに由って、落ちぶれものをあなどることはならんぞよと申して、気がつけてあるぞよ。 世に落してある身魂が、今度の二度目の世の立替を致すには、間に合ふのであるから、量見の違ふことがあるから、日々気をつけて居るのざぞよ。今度取違ひ致したら、取り返しが出来んから、気の毒なから、わかる迄気をつけてやるのざぞよ。