| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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1 (699) |
ひふみ神示 | 27_春の巻 | 第42帖 | いくさは善にもあり、悪にもあり、右には右の、左には左の、上には上の、下には下の、中には中の、外には外のいくさあるぞ。新しき御代が到来してもいくさはなくならん。いくさも歩みぞ。弥栄ぞ。ぢゃと申して今のような外道のいくさでないぞ。人殺し、生命殺すようないくさは外道。やればやる程はげしくなるぞ。正道のいくさは人を生かすいくさ、やればやるほど進むのぢゃ。今の人民いくさと申せば、人の殺し合ひと早合点するが、それは外道のいくさ。天国へのいくさもあるぞ。幽界へのいくさもあるぞ。人民の云ふ今のいくさ、今の武器は、人殺す外道の道、それではならんのう。外道なくして下されよ。外道はないのであるから、外道抱き参らせて、正道に引き入れて下されよ。新しき霊界は神人共でつくり出されるのざ。それは大いなる喜びであるからぞ。神のみ旨であるからぞ。新しき世はあけてゐるぞ。夜明ければヤミはなくなるぞ。新しきカタはこの中からぞ。日本からぞ。日本よくならねば世界はよくならん。外道の武器すてよ。外道の武器生かして、活かして、いのちを生かす弥栄の武器とせよ。かへられるでないか。 |
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2 (700) |
ひふみ神示 | 27_春の巻 | 第43帖 | 与へよ、与へよ、与へよ、与へる政治と申してあろうが。戦争か平和かと人民申してゐるなれど、道はその二つでないぞ、三が道と、くどう申してあろう。水の外道の武器と火の外道の武器の他に、新しき武器気づかんのか。神示よく読めば示してあるのであるぞ。ほかに道ないときめてかかるから判らんのざ。生れ赤児になれば判るぞ。知らしてやりたいなれど、知らして判るのでは自分のものとならん。自分が体得し、自分から湧き出ねば自分のものでないぞ。つけ焼刃は危ない、危ない。気狂ひに刃物ぞ。平面的考え、平面生活から立体に入れと申してあろうがな。神人共にとけ合ふことぞ。外道でない善と悪ととけ合ふのぞ。善のみで善ならず。悪のみで悪ならず。外道は夜明けくれば消えて了ふぞ。夜明けの御用大切と申してあろうが。外道の悪殺すでないぞ。抱き参らすから消えるのであるぞ。 |
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3 (703) |
ひふみ神示 | 27_春の巻 | 第46帖 | 今の武器は幽界の裏打ちあるぞ。神界の裏打ちある武器でなくてはならん。まことの武器ぞ。ヒックリであるぞ。念からつくり出せよ。その念のもとをつくれば、神から力を与へるから、この世の力と現はれるぞ。念の凸凹から出た幽界を抱き参らさねばならんのざ。中々の御苦労であるなれど、幽界を神界の一部に、力にまで引きよせねばならん。 |
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4 (704) |
ひふみ神示 | 27_春の巻 | 第47帖 | 念が新しき武器であるぞ。それでは人民まわりくどいと申すであろうなれど。ものごとには順と時あるぞ。もとのキから改めて下されよ。尊き御役。 |
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5 (1021) |
霊界物語 | 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 | 24 神世開基と神息統合 | 第二四章神世開基と神息統合〔二四〕 神界においては国常立尊が厳の御魂と顕現され、神政発揚直の御魂変性男子を機関とし、豊雲野尊は神息統合の御魂を機関とし、地の高天原より三千世界を修理固成せむために竜宮館に現はれたまうた。 竜宮界においては、三千年の長き艱難苦労を嘗めた竜神の乙米姫命は、変性男子の系統の肉体の腹をかりて現はれ、二度目の世の立替の御神業に参加すべく、すべての珍宝を奉られた。この乙米姫命は、竜神中でも最も貪婪強欲な神であつて、自分の欲ばかりに心を用ひてゐる、きはめて利己主義の強い神であつた。それが現代の太平洋の海底深く潜んでゐたが、海底の各所より猛烈な噴火の出現するに逢ひ、身には日々三寒三熱の苦しみを受けるばかりでなく、その上に猛烈な毒熱を受けて身体を焼かれ、苦しみにたへずして従来の凡ゆる欲望を潔く打ち棄てて、国常立尊の修理固成の大業を感知し、第一番に帰順された神である。 かくて凡ての金銀、珠玉、財宝は、各種の眷族なる竜神によつて海底に持ち運ばれ、海底には宝の山が築かれてある。これは世界中もつとも深い海底であるが、ある時期において神業の発動により、陸上に表現さるるものである。要するに物質的の宝であつて、神業の補助材料とはなるが、本当の間にあふ宝とはならぬ。乙米姫命は大神に初めて帰順した時、その宝を持つて来られたなれど、大神はそれ以上の尊き誠の宝を持つてをられるので、人間の目に結構に見ゆるやうなものは、余り神界では重宝なものと見られない。しかしとに角生命よりも大切にしてゐた一切の宝を投げだした其の改心の真心に愛でて、従来の罪をお赦しになつた。この神人が改心して財宝をことごとく捨てて、本当の神の御神意を悟り、麻邇以上の宝を探りあて、はじめて崇高な神人の域に到達し、ここに日の出神の配偶神として顕現されたのである。 つぎに地底のもつとも暗黒い、もつとも汚れたところの地点に押込まれてをられた大地の金神、金勝要神が、国常立尊の出現とともに、天運循環して一切の苦を脱し、世界救済のため陸の竜宮館に顕現された。この神人は稚姫君命の第五女の神である。この金勝要神が地球中心界の全権を掌握して修理固成の大業を遂げ、国常立尊へ之を捧呈し、国常立大神は地の幽界を総攬さるる御経綸である。 瑞の御魂は、国常立尊の御神業の輔佐役となり、天地の神命により金勝要神と相並ばして、活動遊ばさるるといふことに定められた。これは、いまだ数千年の太古の神界における有様であつて、世界の国家が創立せざる、世界一体の時代のことであつた。 そこで盤古大神(塩長彦)の系統と、大自在天(大国彦)の系統の神が、大神の経綸を破壊し地の高天原を占領せむため、魔神を集めて一生懸命に押寄せてきた。しかしながら地の高天原へ攻め寄せるには、どうしてもヨルダンの大河を渡らねばならぬ。ヨルダン河には、前述のごとく、善悪正邪の真相が一目にわかる黄金の大橋がかかつてゐる。それで真先に、その大橋を破壊する必要がおこつてきた。ここに盤古大神の系統は武蔵彦を先頭に立てて進んできた。これは非常に大きな黒色の大蛇である。つぎに春子姫といふ悪狐の姿をした悪神が現はれ、次には足長彦といふ邪鬼が現はれ、そして其の黄金の大橋の破壊に全力を傾注した。 しかるに此の大橋は、金輪際の地底より湧きでた橋であるから、容易に破壊し得べくもない。思案に尽きたる悪神は、地底における大地の霊なる金勝要神を手に入れる必要を感じてきた。これがために百方手段をつくし奸計をめぐらして、瑞の御魂を舌の剣、筆の槍はまだ愚か凡ゆる武器を整へ、縦横無尽に攻め悩め、かつ、一方には種々姿を変じ善神の仮面を被りて、厳の御魂にたいして讒訴し、瑞の御魂の排斥運動を試みた。厳の御魂は稍しばし考慮を費し、つひにその悪神の心中謀計を看破され、直ちにその要求をはね付けられた。その時、足長彦の邪鬼、春子姫の悪狐、武蔵彦の大蛇の正体は神鏡に照されて奸計のこらず曝露し、雲霞となつて海山を越え一つは北の国へ、一つは西南の国へ、一つは遠く西の国へといちはやく逃げ帰つた。 ここにおいて第一戦の第一計画は、見事破られた。悪神は、ただちに第二の計画にうつることとなつた。 (附言) 神世開基と神息統合は世界の東北に再現さるべき運命にあるのは、太古よりの神界の御経綸である。 天に王星の顕はれ、地上の学者智者の驚歎する時こそ、天国の政治の地上に移され、仁愛神政の世に近づいた時なので、これがいはゆる三千世界の立替立直しの開始である。 ヨハネの御魂は仁愛神政の根本神であり、また地上創設の太元神であるから、キリストの御魂に勝ること天地の間隔がある。ヨハネがヨルダン河の上流の野に叫びし神声は、ヨハネの現人としての謙遜辞であつて、決して真の聖意ではない。国常立尊が自己を卑うし、他を尊ぶの謙譲的聖旨に出でられたまでである。 ヨハネは水をもつて洗礼を施し、キリストは火をもつて洗礼を施すとの神旨は、月の神の霊威を発揮して三界を救ふの意である。キリストは火をもつて洗礼を施すとあるは、物質文明の極点に達したる邪悪世界を焼尽し、改造するの天職である。 要するにヨハネは神界、幽界の修理固成の神業には、月の精なる水を以てせられ、キリストは世界の改造にあたり、火すなはち霊をもつて神業に参加したまふのである。故にキリストは、かへつてヨハネの下駄を直すにも足らぬものである。ヨハネは神界、幽界の改造のために聖苦を嘗められ、キリストは世界の人心改造のために身を犠牲に供し、万人に代つて千座の置戸を負ひて、聖苦を嘗めたまふ因縁が具はつてをられるのである。これは神界において自分が目撃したところの物語である。 そしてヨハネの厳の御魂は、三界を修理固成された暁において五六七大神と顕現され、キリストは、五六七神政の神業に奉仕さるるものである。故にキリストは世界の精神上の表面にたちて活動し、裏面においてヨハネはキリストの聖体を保護しつつ神世を招来したまふのである。 耳で見て目できき鼻でものくうて口で嗅がねば神は判らず 耳も目も口鼻もきき手足きき頭も腹もきくぞ八ツ耳 (大正一〇・一〇・二一旧九・二一桜井重雄録) |
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6 (1033) |
霊界物語 | 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 | 36 一輪の仕組 | 第三六章一輪の仕組〔三六〕 国常立尊は邪神のために、三個の神宝を奪取せられむことを遠く慮りたまひ、周到なる注意のもとにこれを竜宮島および鬼門島に秘したまうた。そして尚も注意を加へられ大八洲彦命、金勝要神、海原彦神、国の御柱神、豊玉姫神、玉依姫神たちにも極秘にして、その三個の珠の体のみを両島に納めておき、肝腎の珠の精霊をシナイ山の山頂へ、何神にも知らしめずして秘し置かれた。これは大神の深甚なる水も洩らさぬ御経綸であつて、一厘の仕組とあるのはこのことを指したまへる神示である。 武熊別は元よりの邪神ではなかつたが、三つの神宝の秘し場所を知悉してより、にはかに心機一転して、これを奪取し、天地を吾ものにせむとの野望を抱くやうになつた。そこでこの玉を得むとして、日ごろ計画しつつありし竹熊と語らひ、竹熊の協力によつて、一挙に竜宮島および大鬼門島の宝玉を奪略せむことを申し込んだ。竹熊はこれを聞きて大いに喜び、ただちに賛成の意を表し、時を移さず杉若、桃作、田依彦、猿彦、足彦、寅熊、坂熊らの魔軍の部将に、数万の妖魅軍を加へ、数多の戦艦を造りて両島を占領せむとした。 これまで数多の戦ひに通力を失ひたる竹熊一派の部将らは、武熊別を先頭に立て、種々なる武器を船に満載し、夜陰に乗じて出発した。一方竜宮島の海原彦命も、鬼門島の国の御柱神も、かかる魔軍に計画あらむとは露だも知らず、八尋殿に枕を高く眠らせたまふ時しも、海上にどつとおこる鬨の声、群鳥の噪ぐ羽音に夢を破られ、竜燈を点じ手に高く振翳して海上はるかに見渡したまへば、魔軍の戦艦は幾百千とも限りなく軍容を整へ、舳艪相啣み攻めよせきたるその猛勢は、到底筆舌のよく尽すところではなかつた。 ここに海原彦命は諸竜神に令を発し、防禦軍、攻撃軍を組織し、対抗戦に着手したまうた。敵軍は破竹の勢をもつて進みきたり、既に竜宮嶋近く押寄せたるに、味方の竜神は旗色悪く、今や敵軍は一挙に島へ上陸せむず勢になつてきた。このとき海原彦命は百計尽きて、かの大神より預かりし潮満、潮干の珠を取りだし水火を起して、敵を殲滅せしめむと為し給ひ、まづかの潮満の珠を手にして神息をこめ、力かぎり伊吹放ちたまへども、如何になりしか、この珠の神力は少しも顕はれなかつた。それは肝腎の精霊が抜かされてあつたからである。次には潮干の珠を取りいだし、火をもつて敵艦を焼き尽くさむと、神力をこめ此の珠を伊吹したまへども、これまた精霊の引抜かれありしため、何らの効をも奏さなかつた。 鬼門ケ島にまします国の御柱神は、この戦況を見て味方の窮地に陥れることを憂慮し、ただちに神書を認めて信天翁の足に括りつけ、竜宮城にゐます大八洲彦命に救援を請はれた。 このとき地の高天原も、竜宮城も黒雲に包まれ咫尺を弁せず、荒振神どもの矢叫びは天地も震撼せむばかりであつた。 ここにおいて金勝要大神は秘蔵の玉手箱を開きて金幣を取りだし、天に向つて左右左と打ちふり給へば、一天たちまち拭ふがごとく晴れわたり、日光燦爛として輝きわたつた。金勝要神は更に金幣の一片を取欠きたまひて信天翁の背に堅く結びつけ、なほ返書を足に縛りて、天空に向つて放ちやられた。信天翁は見るみる中天に舞ひ上がり、東北の空高く飛び去つた。信天翁はたちまち金色の鵄と化し、竜宮島、鬼門島の空高く縦横無尽に飛びまはつた。今や竜宮島に攻め寄せ上陸せむとしつつありし敵軍の上には、火弾の雨しきりに降り注ぎ、かつ東北の天よりは一片の黒雲現はれ、見るみる満天墨を流せしごとく、雲間よりは幾百千とも限りなき高津神現はれきたりて旋風をおこし、山なす波浪を立たしめ敵艦を中天に捲きあげ、あるひは浪と浪との千仭の谷間に突き落し、敵船を翻弄すること風に木の葉の散るごとくであつた。このとき竹熊、杉若、桃作、田依彦の一部隊は、海底に沈没した。 国常立尊はこの戦況を目撃遊ばされ、敵ながらも不愍の至りと、大慈大悲の神心を発揮し、シナイ山にのぼりて神言を奏上したまへば、一天にはかに晴渡りて金色の雲あらはれ、風凪ぎ、浪静まり、一旦沈没せる敵の戦艦も海底より浮揚り、海面はあたかも畳を敷きつめたるごとく穏かになつてきた。 このとき両島の神々も、諸善竜神も竹熊の敵軍も、一斉に感謝の声をはなち、国常立大神の至仁至愛の恵徳に心服せずにはをられなかつた。広く神人を愛し、敵を敵とせず、宇宙一切の衆生にたいし至仁至愛の大御心を顕彰したまふこそ、実に尊き有難ききはみである。 (大正一〇・一〇・二三旧九・二三桜井重雄録) |
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7 (1067) |
霊界物語 | 02_丑_常世姫の陰謀/シオン山攻防戦 | 15 山幸 | 第一五章山幸〔六五〕 言霊別命の弟に元照彦という放縦な神司があつた。この神司は、言霊別命が神業に従事して神界を思ふのあまり、親兄弟を顧みざるのを憤慨してゐた。 ふるさとの空打ちながめ思ふかな国にのこせし母はいかにと 元照彦は山幸を好み、天の香具山の鉄をもつて諸々の武器を作り、あまたの征矢を製して大台ケ原に立てこもり、大峡小峡にすむ熊、鹿、猪、兎などを打ちとり無上の快楽としてゐた。さうして伊吹彦といふ供神は常に元照彦に陪従し、山幸を助けてゐた。 ここに伊吹山に立てこもり時節を窺ひゐたる武熊別の部下、八十熊、足熊、熊江姫、その他多くの魔神も大台ケ原山にわけ入り、花々しく山幸を試むれども、終日奔走してただの一頭の獲物もなかつた。そのわけは元照彦が熟練せる経験により大小の鳥獣を一も残らず狩とつた後ばかりを進んだからである。八十熊以下は方向を転じて山を越え、再び山幸を試みた。そこには伊吹彦がゐて征矢をもつて盛んに山幸をしてゐた。八十熊以下の者は伊吹彦に種々の宝を与へて、しきりにその歓心を買ひ、つひに伊吹彦をして元照彦に背き、かつ征矢をもつて元照彦を殺さしめむと計つた。伊吹彦は八十熊らの欲に誘はれ、つひに八十熊の味方となつてしまつた。 元照彦は伊吹彦の変心せしことを知らず、常のごとく相伴なつて日の出ケ山に登り、群がる猪にむかつて征矢を射らしめた。伊吹彦はその猪にむかつて矢を射るがごとく装ひ、たちまち体を翻して元照彦目がけてしきりに射かけた。元照彦は驚いて八尋まはりの大杉の蔭にかくれ、征矢を防がむとした。この時、八十熊らの魔軍八方より現はれ来りて、さかんに征矢を射かけた。元照彦は進退これ谷まり、身に十数創を負ひその場に仆れた。 言霊別命は竜宮城にあり、弟の危難を知りて直ちに天の鳥船に乗り、大台ケ原に駆り進んだ。ただちに伊吹彦、八十熊以下の魔軍にむかひ種々の領巾を打ち振れば、魔軍は黒雲をおこし、武熊別の隠れたる伊吹山さして雲を霞と逃げ去つた。 元照彦は重傷を負ひ、つひに病の床に臥し、生命危篤の状態におちいつた。このとき母神の国世姫は、 『汝平素の放縦なる心を立替へ、深く神を信じ、兄弟と共に神業に参加せば、大神の恵によりて汝が病はたちどころに癒えむ』 と懇に涙とともに諭された。 ここにはじめて元照彦は敬神の至誠をおこし、数月の間、苦痛を忍びつつ天地の大神を祈り、つひに病床を離れ全く悔改めて、山幸の快楽を捨てて苦しき神業に参加し、言霊別命の蔭身に添ひて、神教を天の下四方の国々に宣伝し偉功をあらはした。 邪神伊吹彦は八十熊と共に一時は伊吹山に逃れ去り、やつと息継ぐ暇もなく、どこともなく飛びくる白羽の征矢に当り、山上より転落して終焉を告げ、伊吹山の邪鬼となつた。 (大正一〇・一〇・三〇旧九・三〇桜井重雄録) |
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8 (1166) |
霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 04 乱暴な提案 | 第四章乱暴な提案〔一五四〕 常世の国の首府たる常世城内の大広間には、世界における八王、八頭の神司をはじめ、数多の使者を集めたる大会議は開催されたり。大広間の中央に高座が設けられて八王八頭をはじめ諸神司は立つて議題を演述するの装置なりける。 常世彦は美山彦をしたがへ、この高座に現はれ、 『世界の平和を永遠に、無窮に保持して、神人をして国治立命の神政に随喜し天地の律法を厳守し、各山各地の神政を統一して根本的世界の大改造を断行すべく、そのため、諸神司の来集を求めたるに、神界および万有の平和安息を望まるる至誠至仁の諸神司は漏れなく、空前絶後のこの大会議に先を争ふて出席されたるは、主催者として実に感謝のいたりに耐へず。願はくば、諸神司は協心戮力もつて慎重に世界のため、天下神人のために最善をつくして審議されむことを懇請す。ただ恨むらくは万寿山における八王八頭の反抗的態度を固持して出席を拒絶せる頑迷不霊の行動を遺憾とするのみ。万々一この会議をして、不結果に終らしむる様のことあらば、本会議にたいする責任は万寿山の八王神司に帰すべきものと確信する。諸神司それ克く吾が誠意の存するところを洞察して、我が主催の大目的を達成せしめられむことを希望す』 と宣明せり。 諸神司は一度に拍手喝采し八王大神の宣示を大神の慈言のごとく、救世主の福音として口を極めて讃美したり。その声は常世の国の天地も崩るるばかりの勢なりける。ついで万寿山の不参加を口々に悪罵嘲笑して世界の大敵、平和の破壊者とまで極言するにいたりける。 諸神司の会するもの八王、八頭をはじめとし、諸山諸地の守護なる国魂および使臣を合して八百八十八柱の多数が綺羅星のごとく、中央の高座を円形に取まきたりしが、その光景は、大宇宙の中心にわが宇宙球ありて、無数の小宇宙球が包囲し居るごとく見えにけり。 ここに大国彦の重臣なる大鷹彦は八王大神の退場とともに中央の高座に現はれ、議席を一瞥し厭らしき笑をもらし、眉毛を上下に転動させながら百雷の一時にとどろくごとき大音声を発して、諸神司の荒胆を奪はむとしたりしより、諸神司はその声にのまれて摺伏せむばかりなりける。 因にいふ、この時代はいまだ神人の区別なく、現代のごとき厳格なる国境も定まらず、神人は単に高山を中心として、国魂神を祭り神政を行ひゐたりしなり。神人らは竜蛇、虎、狼、獅子、悪狐、鬼、白狐、鰐、熊、鷲、鷹、烏、鵄なぞを眷属として使役し、これらの眷属によつて各自に守らしめゐたりしなり。ちやうど現代の国防に任ずるところの陸海軍、空軍が各自に武装をこらしゐて敵にあたるごとく、角や、牙や、羽根や、甲のごときは太古の時代における神人の大切なる武器とせられける。 ここに大鷹彦、美山彦二人は立つて、 『神界の争乱を根絶し、真個平和の神政を布き、道義的に世界を統一せむとせば、各神の率ゆる眷属の有するその武器を脱却せしめざるべからず。かつ各山の主権者なる八王を廃し、上中下の神人の区別を撤回し、四海平等の神政を行ふをもつて第一の要件と思ふ。諸神司は如何、御意見あらば、遠慮なくこの高座に登りて、その正否を陳弁論議されたし』 と述べ立てたりしより、十一柱の八王は寝耳に水の驚きに打たれ、鳩が豆鉄砲を喰つたるごとく、唖然として互ひに顔を見合すばかりなり。ここに蛸間山の八頭なる国玉別はただちに登壇し、大鷹彦、美山彦二人の提出せる議案について口を極めて讃歎し、八王の廃止をもつて平和第一の要点なりと述べ、且つ、 『武備の全廃は平和のために欠くべからざる大名案なれば、一同の賛成を乞ふ』 と謂ひつつ壇をしづかに降り、自分の定席につきぬ。満場水を打ちたるごとく暫時のあひだは寂寥の気に充たされ、神人らは呆然として口を開いたまま閉づるものなかりける。大広間の外部には数万の猛虎嘯き、獅子吼え猛り、狼唸り、竜蛇荒れくるひ、鷲の羽ばたき凄まじく、大空には天の磐船幾百千ともかぎりなく飛びまはりて巨音をたて、一大示威運動が開始されつつありき。いづれも常世彦の指揮によるものなりけり。 八王、八頭の神司をはじめ諸神人は、いまに何事かの一大惨事の勃発せむやも計り難しと、煩悶の結果は、たちまち顔色土のごとく、蒼ざめたる唇を慄はせて、上下の歯に音をたてつつ一言も発せずして、扣へてゐたりける。示威的運動は時々刻々に激烈の度を加ふるのみ。八百八十八柱の神司らは、この光景に胆をうばはれ畏縮して、何の意見をも述べむとする者なかりけり。 この腑甲斐なき場面をながめて、聖地よりの使者行成彦は、恐るる色もなく立上り壇上目がけて悠々と登りゆく。神司らの視線はのこらず行成彦の一身に集注されたりける。アヽ行成彦は果していかなる意見を吐くならむか。 (大正一〇・一二・一六旧一一・一八出口瑞月) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 21 敵本主義 | 第二一章敵本主義〔一七一〕 八王大神常世彦の堂々として毫末も抜目なき、真綿で首を締め付るごとき手痛き雄弁に列座の諸神司、ことに直接の関係ある八王は、我身の境遇と、その責任に省みて、鷺を烏といひくるめたる巧妙なる言論にたいし、抗弁反駁の余地なく、たがひに顔を見あはせ当惑至極の体にて青息吐息、五色の息を一時にホツと吐き、さすが雄弁の行成彦も猿田姫、出雲姫、斎代彦その他の神司も悄気かへりて、 『八王大神め、よくも吐したり』 と心中に驚異しつつ形勢いかになり行かむかと、とつおいつ、諸行無常是生滅法の因果をつらつら思はざるを得ざりける。 連日の諸神司が至誠一貫全力を傾注して、神界のために舌端火花を散らして奮闘したるその熱誠と猛烈なる大々的攻撃も、沖の鴎の諸声と聞き流したる八王大神が、敵の武器をもつて敵を制するてふ甚深なる計略と、その表面的雅量とによりて、国祖の聖慮を云為し、敵の弱点を捕へ、鼠を袋に入れて堅く口を締めたるごとく、咽元に短刀を突付けたるがごとき、辛辣なる手腕に、いづれも敬服するの止むなきに至らしめ、満座の諸神人を小児のごとく、内心に見くびりさげしみながら、綽々として無限の余裕を示したるその威容は、常世城の大会議における檜舞台の千両役者としての価値、十分に備はりにける。 幸か不幸か、八王大神はいま一息にして、その目的を達せむとする折しも、突然として発病したれば、彼我の諸神人は周章狼狽し、懇切に介抱しつつありき。常世城の従臣、春日姫、八島姫は驚きながら、城中奥深く八王大神の病躯を扶けて、その艶姿を議場より没したりける。 この突然の出来事に、城内は上を下へと、大騒ぎの真最中、突然登壇したる神人は、大自在天の重臣たる大鷹別なりき。 『アヽ満場の諸神人よ、本会議の主管者たる八王大神は、御承知の通り急病のため退席の止むなきに立到られましたことは、相互に遺憾の至りであります。しかしながら、吾々はこの大切なる会議を、中止することは出来なからうと思ふのであります。吾々は八王大神のあまりに天下の平和について、造次にも顛沛にも忘れたまはざる、至誠の心魂ここに凝つて、つひに病を発したまふたのではあるまいかと、推察する次第でありますが、諸神人は如何の御感想を保持したまふや。思ふに吾々はじめお互ひに、八王大神の御熱誠なる訓戒的お宣示にたいして、一言の辞なきを思ひ、実に、汗顔の至りに耐へませぬ。直接の関係者たる八王各位においても、腹の底をたたけば何れも同じ穴の狐、疵もつ足の仲間と云はれても、答弁の辞はなからうと思ひます。いづれも神定の天職を全うされた神司らは、あまり沢山には、この席に列なる方々には、失敬ながら有るまいと断言して憚らないのであります。諸神司の間には斯のごとき重大なる会議は、国祖の御許容を得て、神定の聖地ヱルサレム城において、開催するが至当である、徒に常世城において会議を開くことをもつて、自由行動、天則違反の甚しきものと主張さるる神司らもありましたが、諸神人、胸に手をあてて、冷静に御熟考をして戴きたいのであります。万々一、前日来のごとき紛乱の議会を聖地において開いたとすれば、第一、大神の聖地を汚し神慮を悩ませたてまつり、吾々は天地の神明に対して謝するの辞がありますまい。賢明卓識の八王大神は、今日の結末を事前に感知して止むを得ず、この地において会議を開き、聖地を汚さざらしめむと、苦心されたる、その敬神の御心と天眼力は、吾々凡夫の企及すべからざる所であります。諸神人は八王大神の理義明白なる御主張に対し、すみやかに御賛成あらむことを希望いたします』 と述ぶるや、末席の方より、 『ヒヤヒヤ』 『ノウノウ』 の声湧き起り、中には、 『ヒヤヒヤ冷やかなノウノウの能弁者』 と叫ぶものもあり。 この時、緊急動議ありとて、登壇したるは例の斎代彦なり。斎代彦は、例のごとく右手をもつて鼻をこぢ上げ、両眼を撫で、洟を手の甲にて拭ひ、その手を右側の着衣にて拭ひながら、 『今日は、八王大神の御急病なればこれにて解散いたし、明日あらためて開会せばいかん、諸神人の御意見を承はりたし』 と大声に呼ばはりければ、満座の諸神人は、八九分まで手を拍つて賛成したり。 ここに、当日の会議もまた不得要領のうちに幕を閉ぢられたり。アヽ今後の八王大神の病気および、会議の結果は如何に展開するならむか。 (大正一〇・一二・二二旧一一・二四出口瑞月) (第二〇章~第二一章昭和一〇・一・二一於八代駅長室王仁校正) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 28 武器制限 | 第二八章武器制限〔一七八〕 神代における神人らの武装撤回は、現代の某会議のごとき、軍艦や潜航艇の噸数を制限する如き不徹底なるものではなく、神人らの肉体上に附着せる天授の武装を一部分、または全部除去することとなりける。太古の竜は厳めしき太刀肌を備へ、かつ鋭利なる利刃のごとき角を、幾本ともなく頭に戴き、敵にたいしてその暴威を揮ふとともに、一方にはこれを護身の要器となし、互ひに争闘を続けゐたりしなり。ゆゑに今回の常世会議に於て八王大神の提議したる、神人各自の武器の廃止は、神界のためにはもつとも尊重すべき大事業なりける。すなはち竜神はその鋭角を二本に定められ、他は残らず抜き取られ、その厳めしき太刀肌は容赦なく剥ぎ取られて、柔軟なる鱗皮と化せしめられたり。中には角まで全部抜き取られて、今日の蛇のごとく少しも防禦力の無きものになりたるもあり。 また猛虎や、獅子や、巨狼や、大熊のごときは鋭利なる爪牙を持てる上に、空中飛行自在の羽翼を有し、かつその毛は針のごとく固くして鋭く、実に攻撃防禦ともに極めて完全なりけるが、それをいよいよ一部分の撤回となりて、これらの猛獣の神卒はその針毛を抜かれ、空中飛行にもつとも便なる羽翼を無残にも断たれける。 また金毛九尾白面の悪狐、その他銀毛や、鉄毛の狐神などは、その鋭利なる固き針毛を全部脱却させられ、そのあとに軟弱なる毛を生ずるのみに止め、その代償として智慧の力を神人に勝劣なきほどまで与へられ、神界の眷属として、忠実に奉仕する役目と定められたり。しかし狐神にも善悪正邪の別ありて、善良なる狐神は白狐として神界の御用を勤め居るは、太古の世より今にいたるも変らざるなり。世には狐神を稲荷の大神と称へて居るもの沢山あれども、稲荷は飯成の意義にして、人間の衣食の元を司りたまふ神の御名なり。 豊受姫神、登由気神、御饌津神、宇迦之御魂神、保食神、大気津姫神は皆同神に坐しまして、天祖の神業を第一に輔佐したまひたる、もつとも尊き神にして、天の下の蒼生は一人として、この大神の御仁徳に浴せざるもの無し。 要するに狐神はこの大神の御使にして、五穀の種を口に銜へ世界に持ち運び、諸国の平野に蒔き拡げたる殊勲ある使者なり。世はおひおひに開けて、五穀の種も世界くまなく行きわたりたる以上は、狐神の職務も用なきにいたりければ、大神はこの狐に勝れたる智慧の力を与へて、白狐と命名され、すべての神人に世界の出来事を、精細に調査し進白せしめられにける。ゆゑに白狐とは、神人に世界一切の出来事を白し上げる狐の意味にして、決して毛色の白きゆゑにあらずと知るべし。野狐、悪狐等の風来狐でも、年さへ寄ればその毛色は漸次に白色に変ずるものにして、あたかも人間が貴賤の区別なく、老年になりて頭髪の白くなると同様なり。ゆゑに毛色は、たとへ茶でも、黒でも構はぬ、神界に仕へをる狐を白狐とはいふなり。 また空中を飛翔する猛鳥にして、立派なる羽翼を有するうへに咽喉の下に大なる毒嚢を持ちゐたるものありしが、これも今回の会議の結果取り除かれたりければ、地上の神人その他の動物は実に安心して日を送り得るに至りたるなり。また海中に棲める魚族や海蛇はいづれも鋭利なる針毛を鯱のごとくに、または針鼠のごとく全身に具備し攻防の用に供しゐたりしを、その針毛をまた除去され、鰭、鱗、牙のみ残されたるなりといふ。 かくして武装を除去されたる竜族は、漸次に進化して人間と生れ、あるひは神と生るるにいたるものなり。また獅子、虎、豹、熊、狼なぞは、世とともに進化して、人間と変じ、牛馬と生れ、犬猫などと生れ変りたるなり。その中に百獣の王たりし、獅子や虎豹なぞはその身魂の善進したるものは人間と変化したり。ゆゑに人間、ことに或る人種のごときはその容貌いまに獅子や虎、豹などの痕跡を止め居るなり。かかる人種の性質は、いまに太古の精神までも多少遺伝して、人情冷やかく、色食の欲にのみ耽り、体主霊従の行動を取り居るもの多し。 王仁がかくのごとき説をなす時は、人間を馬鹿にしたといつて怒る人士もあるべし。しかし王仁は元来無学で、人類学なぞ研究したることも無く、ただただ高熊山の神山に使神に導かれて、鎮魂帰神の修業の際、霊感者となり、神界探険の折、霊界にて見聞したる談なれば、その虚実の点については、如何とも答ふる由なきものなり。 (大正一〇・一二・二四旧一一・二六出口瑞月) |
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霊界物語 | 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 | 総説 | 総説 太古の神霊界における政治の大要を述べて見ようと思ふ。固より数百万年以前の事であつて、吾々人間としては、その真偽を的確に判別する事は到底不可能であります。然し王仁の述ぶるところは、臆説や想像ではない。また創作物でもない。高熊山における霊学修行中に、見聞したる有りのままを、覚束なき記憶より呼び出して、僅かにその片鱗を吐露したばかりであります。 現代文明の空気に触れたる、天文地文学者や国学者および宗教家、哲学者などの、深遠なる知識から、この物語を見るならば、実に欠点だらけで、中には抱腹絶倒、批判の価値なきものと、断定さるるでありませう。しかし王仁の物語は、寓意的の教訓でもなければ、また虚構でもない、有りのままの見聞談である。 総て霊界の話は現界とは異つて、率直で簡明であり、濃厚複雑等の説話は、神の最も忌み玉ふところ、女にも子供にも、どんな無知識階級にも、なるべく解り易く、平易簡単にして、明瞭なるを主眼とするが故である。 本巻は、いよいよ天津神の命により諾冊の二尊が、天照大御神の御魂の大御柱を中心に、天より降り、天の浮橋に立ちて、海月なす漂へる国を修理固成し玉ひ、現代の我日本国即ち豊葦原の瑞穂の中津国を胞衣となし、かつ神実として、地上のあらゆる世界を修理固成し玉うた神界経綸の大略を述べたものであります。それゆゑ舞台は、地球上一般の神人界に渉つた出来事であつて、区々たる極東我神国のみの神話を写したものでない事は勿論である。 ○ 総て太古の御神政は神祭を第一とし、次に神政を行ひ、国々に国魂神があり、国魂神は、その国々の神王、又は八王などと云つて八尋殿を建てられ、殿内の至聖処に祭壇を設け、造化三神を鎮祭し、神王および八王は、同殿同床にて神明に奉仕された。さうして神政は左守神又は右守神(或は八頭神とも云ふ)に神示を伝へ神政を司掌らしめ玉うたのであります。さうして国治立命御神政の時代は、[※御校正本・愛世版では「国治立命御隠退の時代」だが、天使長という聖職があったのは国祖隠退後ではなく、国祖神政中であり、意味がおかしくなる。そのため霊界物語ネットでは校定版・八幡版に準じて「隠退」を「神政」に直した]天使長と云ふ聖職があつて、国祖の神慮を奉じ、各地の国魂たる八王神を統轄せしめつつあつたのが、諾冊二尊の、淤能碁呂嶋へ御降臨ありし後は、伊弉諾の大神、八尋殿を造りて、これに造化の三神を祭り玉ひ、同殿同床の制を布き、伊弉冊尊を、国の御柱神として、地上神政の主管者たらしめ玉うたのであります。しかるに地上の世界は、日に月に、体主霊従の邪気漲り、物質的文明の進歩と共に、地上神人の精神は、その反比例に悪化し、大蛇、鬼、悪狐の邪霊は天地に充満して有らゆる災害をなし、収拾すべからざるに立ち致つた。そこで神界の神人の最も下層社会より、所謂糞に成り坐すてふ埴安彦神が現はれて、大神の神政を輔佐し奉るべく、天地の洪徳を汎く世界に説示するために教を立て、宣伝使を天下に派遣さるる事となつたのである。 また国祖国治立命は天教山に隠れ、世界の大峠を免るることを汎く地上の神人に告げ諭し、大難を免れしめむとして、宣伝使神を任命し、地上の世界に派遣せしめ玉うた。これが神代における、治教的宣伝の濫觴であつたのである。さうして宣伝使神の任にあたる神は多芸多能にして、礼、楽、射、御、書、数の六芸に通達してゐた神人ばかりである。さうして一身を神に捧げ、衆生救済の天職に喜びて従事されたのである。 それより後、埴安彦、埴安姫の二神司が地上に顕現して麻柱教を説き、宣伝使を任じて世界を覚醒し、神人の御魂の救済に尽さしめた。その宣伝使もまた、士、農、工、商の道に通達し、天則を守り忍耐を唯一の武器として労苦を惜まず、有らゆる迫害を甘受してその任務を尽したのである。現今の各教各宗の宣教師の、安逸遊惰なる生活に比すれば、実に天地霄壤の差があるのである。 総て神の福音を述べ伝ふる宣伝使の聖職に在るものは、神代の宣伝使神の心を以て心とし、克く堪え忍び以て神格を保持し、世人の模範とならねばならぬのである。 ○ 太古の人民の生活状態は、今日のごとく安全なる生活は到底望まれ得なかつた。家屋と云つても、木と木とを組み合せ、杭を地上に打ち、藤蔓の蔓を以てこれを縛り、茅や笹の葉や木の葉を以て屋根を覆ひ、纔に雨露を凌ぐものもあり、岩窟の中に住むもの、山腹に穴を穿ち、草を敷きて住むもの、巨岩を畳み、洞穴を造つてこれに住むものなどで、衣服のごときも、一般の人民は獣皮を身に纏ひ、或は木の葉を編み、草を編み、麻の衣を着るものは人民の中でも最も上等の部である。また絹布を纏へるは最も高貴なる神人のみであつた。 夫れでも古代の人間は天地の大恩を感謝し、生活を楽しみ、和気靄々として楽しくその日を暮して居つたのである。さうして村々には酋長の如きものがあつて、これを各自に統一してゐた。遂には地上に人間の数の殖えるに従つて、争奪をはじめ、生存競争の悪社会を馴致し、弱肉強食の修羅場と化するに至つた。その人心を善導すべく、神の大御心に依つて教なるものが興り、宣伝使の必要を招来するに至つたのであります。 大正十一年一月二十五日旧十年十二月二十八日 出口王仁三郎 |
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霊界物語 | 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 | 19 祓戸四柱 | 第一九章祓戸四柱〔二六九〕 日の神国を知食す神伊弉諾の大神は 撞の御柱大御神神伊弉冊の大神と 天と地との中空の黄金の橋に現はれて 天の瓊矛をさしおろし高皇産霊大御神 神皇産霊大神の神勅畏み泥海を 許袁呂許袁呂と掻き鳴して矛の先より滴れる 淤能碁呂島を胞衣となし神国を造り固めむと 二仁の妻に手を曳かれ黄金の橋を渡会の 天教山に下り立ちて木の花姫と語らひつ 常磐堅磐の松の世を千代万代に築かむと 月の世界を知食す神伊弉冊の大御神 日の神国の主宰なる撞の御神と諸共に 雪より清き玉柱見立て玉ひて目出度くも 月雪花の神祭り一度に開く木の花の 三十三相に身を変じ五十六億七千万 長き月日を松の世のミロクの御代を建てむとて まづ淡島を生み玉ひ伊予の二名や筑紫島 豊葦原の中津国雄島雌島や壱岐対馬 佐渡や淡路の島々に生みなしたまふ国魂や 山川木草の守り神各自各自に任け玉ひ 治まる御代を三柱の撞の御柱大御神 天の御柱大御神国の御柱大御神 この三柱の大神は国祖の神の宣り玉ふ 天に坐します御三柱実にも尊き有難き 古き神代の物語聞くぞ目出度き今日の春 百の草木に魁て匂ひ出でたる白梅の 雪より清き其の香り一度に開く常磐木の 常磐の松の茂りたる実にも尊き神の国 須弥仙山に腰をかけ守り玉ひし野立彦 野立の姫の二柱顕幽二界修理固成し 根底の国を固めむと天教山の噴火口 神の出口や入口と定めて茲に火の御国 岩より固き真心は猛火の中も何のその 火にも焼かれぬ水さへに溺れぬ身魂は鳴戸灘 根底の国に到りまし浮瀬に落ちて苦しめる 数多の身魂を救はむと無限地獄の苦しみを 我身一つに引き受けて三千年の昔より 耐へ耐へし溜め涙晴れて嬉しき神の世の その礎と現れませる神の出口の物語 鬼の来るてふ節分や四方の陽気も立つ春の 撒く煎豆に咲く花の来る時節ぞ尊けれ。 天地の大変動により、大地は南西に傾斜し、其のため大空の大気に変動を起し、数多の神人が、唯一の武器として使用したる天磐樟船、鳥船も、宇宙の震動のため何の効力もなさざりき。その時もつとも役立ちしは神示の方舟のみにして、金銀銅の三橋より垂下する救ひの綱と、琴平別が亀と化して、泥海を泳ぎ、正しき神人を高山に運びて救助したるのみなりける。 天上よりこの光景を眺めたる、大国治立命の左守神なる高皇産霊神、右守神なる神皇産霊神は、我が精霊たる撞の大御神、神伊弉諾の大神、神伊弉冊の大神に天の瓊矛を授け黄金橋なる天の浮橋に立たしめ玉ひて、海月の如く漂ひ騒ぐ滄溟を、潮許袁呂許袁呂に掻き鳴し玉ひ、日の大神の気吹によりて、宇宙に清鮮の息を起し、地上一切を乾燥し玉ひ、総ての汚穢塵埃を払ひ退けしめ玉ひぬ。この息よりなりませる神を伊吹戸主神と云ふ。 而して地上一面に泥に塗れたる草木の衣を脱がしめむため風を起し、風に雨を添へて清めたまひぬ。この水火より現はれたまへる神を速秋津比売神と云ふ。再び山々の間に河川を通じ、一切の汚物を神退ひに退ひ給ふ。この御息を瀬織津比売神と云ふ。瀬織津比売神は、地上の各地より大海原に、総ての汚れを持ち去り、之を地底の国に持佐須良比失ふ、この御息を速佐須良比売神と云ふ。以上四柱の神を祓戸神と称し、宇宙一切の新陳代謝の神界の大機関となしたまふ。この機関によつて、太陽、大地、太陰、列星、及び人類動植物に至るまで完全に呼吸し、且つ新陳代謝の機能全く完備して、各其の生活を完全ならしめ給へり。この神業を九山八海の火燃輝のアオウエイの、緒所(臍)の青木原に御禊祓ひたまふと云ふなり。 因に九山八海の火燃輝のアオウエイの御禊の神事については、言霊学上甚深微妙の意味あれども、これは後日閑を得て詳説する事となすべし。 (大正一一・一・二〇旧大正一〇・一二・二三加藤明子録) |
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霊界物語 | 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 | 28 身変定 | 第二八章身変定〔二七八〕 ここに二柱の大神は陰陽水火の呼吸を合して、七十五声を鳴り出し給ひ、スの言霊を以て之を統一し給ふ事となりぬ。 而してこの七十五声の父音を、立花の小戸と云ふ。祝詞に、 『筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に御禊ぎ祓ひ給ふ時に生坐る』 とあるは、このアオウエイの五大父音より、以下の七十声を生み出し、新陳代謝の機能たる祓戸四柱の神を生み成し給ひて、宇宙の修祓神と為し給ひたるなり。 而してこの五大父音を地名に充つれば、 『ア』は天にして『アジヤ』の言霊となり 『オ』は地にして『オーストラリヤ』の言霊となり 『ウ』は結びにして『アフリカ』の言霊となり 『エ』は水にして『エウロツパ』の言霊となり 『イ』は火にして『アメリカ』の言霊となる。 而して『アジヤ』は『ア』と返り、『オーストラリヤ』はまた『ア』に返り、『アフリカ』また『ア』に返り、『エウロツパ』又『ア』に返り、『アメリカ』又『ア』の父音に返る。 その他の七十声は何れも『アオウエイ』の五大父音に返り来るなり。 この理に依りて考ふるも、『アオウエイ』の大根源たる『アジヤ』に総てのものは統一さる可きは、言霊学上自然の結果なり。而て『ア』は君の位置にあるなり。 而て『ア』と『ウ』との大根源は、『ス』より始まるなり。『ス』声の凝結したる至粋至純の神国は、即ち皇御国なり。 二神は先づ天地を修理固成する為に、『アオウエイ』の五大父音立花の小戸の言霊に依りて、一切の万物を生み成し給ひ、而て『ス』の言霊の凝結せる神国の水火は最も円満清朗にして、大神其ままの正音を使用する事を得るなり。 その他の国々の言霊のやや不完全なるは、凡て『ア』とか『オ』とか『ウ』又は『エ』『イ』等の大父音に左右せらるるが故なり。 神の神力を発揮し給ふや、言霊の武器を以て第一となし玉ふ。古書に『ミカエル一度起つて天地に号令すれば、一切の万物之に従ふ』といふ意味の記されあるも、『ミカエル』の言霊の威力を示したるものなり。而てこの『ミカエル』の言霊を、最も完全に使用し得る神人は『ス』の言霊の凝れる皇御国より出現すべきは当然なり。 『ミカエル』とは天地人、現幽神の三大界即ち三を立替る神人の意味なり。詳しく云へば、現幽神三つの世界を根本的に立替る神人、といふ意味なり。 また男体にして女霊の活用を為し、女体にして男霊の活用を為す神人を称して『身変定』といふ。 ここに七十五声の言霊の活用、及び結声の方法に就き、言霊の釈歌を添付する事となしたり。 言霊学釈歌[※「言霊学釈歌」には文字に疑義がある箇所がいくつもある。詳しくは霊界物語ネット内「」を見よ] ○ 久方の天之御中主の神は五十鈴川の⦅ス⦆ごゑなりけり ○ あのこゑは我言霊の上よりは宇比地邇神、須比地邇神[※古事記では「須比地邇」が「地」ではなく「智」が使われている。] ○ おのこゑは我言霊の上よりは角杙神、活杙神[※「生杙神」「角杙神」の「くひ」の字は、御校正本(p183)では「枠」、校定版(p161)・愛世版(p160)では「杙」。古事記では「杙」である。「枠」は「くい」ではなく「わく」であり、誤字だろうから、霊界物語ネットでは「杙」を使う。] ○ うのこゑは我言霊に照らし見て大戸之道神、大戸之辺神 ○ えのこゑの其言霊を調ぶれば面足神、惶根神 ○ いのこゑは言霊学の助けより伊邪那岐神、伊邪那美神 ○ あのこゑの活動なすは須比地邇の神の保てる本能なりけり ○ おのこゑの活動するは活杙の神の表はす本能なりけり ○ うのこゑの活動保つは大戸之辺神の表はす本能なりけり ○ えのこゑに万の物の開くるは阿夜訶志古泥の神の御本能 ○ いのこゑの活動なすは伊邪那美の神の御言の本能なりけり ○ 喉頭、気管、肺臓なぞの活用は国常立の神言守れる ○ 口腔口唇、口蓋等の発音の根本機関は豊雲野神 ○ 日の本の国の語の源は只五声の竪端の父音 ○ 多陀用幣流国といふ意義はあおうえい五声父音の発作なりけり ○ 久方の天の沼矛と云ふ意義は言語の節を調ふ舌なり ○ 立花の小戸のあはぎが原に鳴るおこゑを天の浮橋といふ ○ 塩許袁呂、許袁呂邇画鳴す其意義はおとをの声の活用を云ふ ○ 数音を総称ふるを島といふ淤能碁呂島はをこゑなりけり ○ あおうえい素の五つの父声を天之御柱神と総称す ○ 宇宙に気体の揃ひ在る意義を我言霊に八尋殿といふ ○ 鳴々而鳴合はざるはあの声ぞ鳴余れるはうこゑなりけり ○ うあのこゑ正しく揃ひて結び合ひ変転するは美斗能麻具波比 ○ うあの声結びてわ声に変化くは阿那邇夜志愛上袁登古袁といふ ○ えあの声結びてや声に変化くは阿那邇夜志愛上袁登売袁といふ ○ 女人先言不良と言へる神文を調ぶれば以前の方法形式で 言霊発達せざるてふ意義の大要含むなり ○ 久美度邇興而子蛭子生むはわ声を母音とし あ行烏えいを父音としわ烏の二声を結び付け わ行のう声に変化為しわゑの二声を結び付け わ行のゑ声に変化為しわいの二声を結び付け わ行のゐ声に変化為し次にや声を母音とし あ行お烏えい父音とし結声変化す意義ぞかし やおの二声を結び付けや行のよ声に変化為し や烏の二声を結び付けや行のゆ声に変化なし やえの二声を結び付けや行の延声に変化為し やいの二声を結び付けや行のい声の変化為す この言霊の活用を久美度邇興而と称ふなり ○ 子蛭子生むとふ神文は鳴出る声音の等しき意義にして あ行お声とわ行のを声あわの行なる烏声とうの神声 あわやの行のゑ衣延といゐ以の声の異性にて 同声音の意義ぞかし是ぞ蛭子を産むといふ ○ 布斗麻邇爾卜相而詔といふ意義はあ行烏声の活用ぞかし ○ 淡道之穂之狭別島といふは烏うゆ⦅む声⦆と結ぶ言霊 伊予之国二名島といふ意義は母音む声にいを結び み声に変化しむゑ結びめ声に変化しむおを結び も声に変化しむあを結びまごゑに変化す此故に むごゑの父音みめもまの四声に変化を身一而 面四有と称ふなり ○ みのこゑの其言霊の活用を伊予国愛比売と謂すなり ○ めのこゑの其言霊の幸ひを讃岐飯依比古と謂ふ ○ ものこゑの其言霊の助けをば阿波国大宜津比売と謂ふ ○ まのこゑの其言霊の照る時ぞ土佐国健依別と謂ふ ○ 惟神其名の如く性能の等しく易るを国と謂ふなり ○ むのこゑにうゆを結びてふの声に変化を隠岐之三子嶋と謂ふ ○ ふのこゑに天之御柱結び付けはほふへ四声に変化をば 天之忍許呂別と謂ふ ○ 筑紫島生むと言ふ意義ははの行のふこゑ烏こゑと結声し ぷごゑに変化言霊也是のぷ声にいゑおあの 四声を漸次に結声しぴぺぽぱ四ごゑに変化なす ○ ひのこゑの意義の言霊調ぶれば筑紫の国の白日別と謂ふ ぺのこゑの意義の言霊調ぶれば豊国豊日別と謂ふなり ○ 建日向、日豊久士、比泥別と謂ふはほ声の言霊の意義なりけり ○ ぱのこゑの意義の言霊調ぶれば熊曽の国の建日別なり ○ 伊岐嶋、比登都柱と謂ふ意義はぷごゑに烏ごゑを結び成し ふごゑに変化しふのこゑに天の御柱あおうえい 是の素音を結声しはほへひ四声の言霊に 変化せしむる意義なり ○ 津嶋天之狭手依比売と謂ふはふごゑに烏ごゑを結び付け すごゑに変化しあおうえい是の素音を結声し さそすせ四ごゑに変化る意義 ○ 佐渡島を生てふ意義を調ぶればすごゑに烏ごゑを結声し すごゑに変化なさしめて之に素音を結声し さ行をざ行に変化する言霊上の意義なり ○ 大倭秋津嶋生むと謂ふはにりちの父音の言霊を 生み出したる意義にしてな行にごゑはじい二声 結声変化しりのこゑはしいが結声変化為し た行ちごゑはひい二声が結声変化を為す意義ぞ ○ 天御虚空豊秋津根別といふ意義はちりにの父音に久方の 天之御柱あおうえい素音を結声変化して たらな三行を結声し変化せしむる意義ぞかし ○ 意義深きわ行や行の言霊は先所生大八島国 ○ 吉備児島建日方別と謂ふ意義はちじの二声を結声し ちごゑに変化し久方の天の御柱あおうえい 素音を結ぶ言霊ぞかし ○ 小豆島大野手上比売と謂ふ意義はぢいの二声を結声し ぎこゑに変化し久方の天の御柱あおうえい 素音を結ぶ言霊ぞかし ○ 大嶋や大多上麻流別と謂ふ意義はぎいの二声を結び成し きごゑに変化し久方の天の御柱あおうえい 素音を結ぶ言霊ぞかし ○ 女嶋天一根と謂ふ意義はか行の音韻かこくけき 天地貫通の言霊ぞかし ○ 知訶嶋天之忍男と謂ふ意義はが行の音韻がごぐげぎ 天機活動を起す言霊 ○ 両児嶋天両屋の言霊はた行の音韻だどづでぢ 造化発作を起す意義なり ○ わ行をごゑの言霊の精神的の活用を大事忍男之神と謂ふ ○ わ行井ごゑの言霊の精神的の活用を石土毘古の神と謂ふ ○ や行ゐごゑの言霊の精神的の活用を石巣の比売の神といふ ○ わ行の言霊わをうゑゐ精神的の活用を大戸日別之神といふ ○ わ行うごゑの言霊の精神的の活用を天之吹男神といふ ○ や行の言霊やよゆえい精神的の活用を大屋毘古之神といふ ○ や行よごゑの言霊の精神的の活用は風木津別之忍男神なり ○ や行ゆごゑの言霊の精神的の活用を大綿津見の神と言ふ ○ わ行衣ごゑの言霊の精神的の活用を速秋津彦の神と謂ふなり や行延ごゑの言霊の精神的の活用を速秋津姫の神といふ (以上六十五首) 大事忍男神より以下速秋津姫神まで、十神十声の精神的作用は所謂大八嶋国の活用、即ち世界的経綸の活機を顕す本能を享有する言霊なり。 (第二七章~第二八章昭和一〇・二・一三於田辺分苑王仁校正) |
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霊界物語 | 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 | 29 泣沢女 | 第二九章泣沢女〔二七九〕 神伊邪那岐の大御神神伊邪那美の大神は 清き正しき天地の陽と陰との呼吸合せ スの言霊の幸ひに天の御柱国柱 生り出でまして山川や草木の神まで生み了ほせ 青人草や諸々の呼吸あるものを生み満たせ 栄ゆる神代を楽みて喜び玉ふ間もあらず 天津御空の星の如浜の真砂の数多く 青人草は生り成りて鳴りも合はざる言霊の 呼吸の穢れは天地や四方の国々拡ごりつ 清き正しき大御呼吸濁りに濁り村雲の 塞がる世とはなりにけり開け行く世の常として 天津御空に舞ひ狂ふ天の磐樟船の神 天の鳥船影暗く御空を蔽ひ隠しつつ 人の心は日に月に曇り穢れて常闇の 怪しき御代となり変り金山彦の神出でて 遠き近きの山奥に鋼鉄を取りて武器を 互に造り争ひつ体主霊従の呼吸満ちて 互に物を奪ひ合ふ大宜津姫の世となりぬ 野山に猛き獣の彼方此方に荒れ狂ひ 青人草の命をば取りて餌食と為しければ ここに火の神現はれて木草の繁る山や野を 一度にどつと焼速男世は迦々毘古となり変り 山は火を噴き地は震ひさも恐ろしき迦具槌の 荒振世とはなりにけり国の柱の大御神 此有様を見そなはし御魂の限りを尽しつつ 力を揮はせ玉へども猛き魔神の勢に 虐げられてやむを得ず黄泉御国に出でましぬ 糞に成ります埴安彦の神の命や埴安姫の 神の命のいたはしく世を治めむと為し玉ひ 尿に成ります和久産霊世を清め行く罔象女 神の命は朝夕に心を尽し身を尽し 遂に生れます貴の御子この世を救ふ豊受姫の 神の命の世となりぬ嗚呼奇なる神の業。 伊邪那岐命は、伊邪那美命の黄泉国、すなはち地中地汐の世界に、地上の世界の混乱せるに驚き玉ひて逃げ帰り玉ひしを、いたく嘆きてその御跡を追懐し、御歌を詠ませ玉ひぬ。 その歌、 『神の神祖とましませる高皇産霊の大御神 神皇産霊の大神の清き尊き命もて 女男二柱相並び天の瓊矛を取り持ちて 黄金の橋に立ち列び海月の如く漂へる 大海原の渦中をこおろこおろに掻き鳴らし 淤能碁呂島に降り立ちて島の八十島八十国や 山川草木の神を生み天の下をば平けく 神の御国を治めむと誓ひし事も荒塩の 塩の八百路の八塩路の塩路を渡り黄泉国 汝は独で出ましぬ振り残されし吾独 如何でこの国細かに神の御胸に適ふ如 造り治めむ吾は今熟々思ひめぐらせば 黄金の橋に立ちしより天教山に天降り 撞の御柱右左伊行き廻りて誓ひたる その言の葉の功も何とせむ方泣く泣くも 涙を絞る夜の袖汝の頭に御後辺に 匍匐ひ嘆く吾が胸を晴らさせ玉へうたかたの 定めなき世の泣き沢女定めなき世のなきさはめ』 と謡ひて別れを惜しみ、再び淤能碁呂島に、女神の帰り来まさむことを謡ひたまふ。是より神伊邪那岐の神は、女神に別れ一時は悄然として、力を落させ玉ひける。 されど、ここに神直日大直日に省み、荒魂の勇みを振り起し、天の香具山の鋼鉄を掘り、自ら十握の剣を数多造りて、荒振る神共をば、武力を以て討ち罰めむと計らせ玉ひける。 (大正一一・一・二一旧大正一〇・一二・二四藤原勇造録) (第二九章昭和一〇・二・一五於淡の輪黒崎館王仁校正) |
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霊界物語 | 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 | 30 罔象神 | 第三〇章罔象神〔二八〇〕 伊弉諾、伊弉冊二神は、撞の大御神を豊葦原の瑞穂国の大御柱となし、みづからは左守、右守の神となりて、漂へる大海原の国を修理固成し、各国魂の神を任じ山川草木の片葉に至るまで各その処を得せしめ、完全無欠の神国を茲に芽出度く樹立せられたのである。然るに好事魔多しとかや、葦原の瑞穂国には天の益人、日に月に生れ増して、つひには優勝劣敗弱肉強食の暗黒世界を再現し、国治立命の御神政に比して数十倍の混乱暗黒世界とはなりける。 茲に人間なるもの地上に星のごとく生れ出で、増加するによつて、自然に自己保護上体主霊従の悪風日に月に吹き荒み、山を独占する神現はれ、一小区劃を独占するものも出で来り、野も海も川も、大にしては国、洲などを独占せむとする神人や人間が現はれたのである。山を多く占領する神を大山杙の神と云ひ、また小区劃を独占する神を小山杙の神と云ふ。また原野田圃の大区劃を独占する人間を野槌の神と云ふ。小区域を独占する人間を茅野姫の神と云ふ。山杙の神や野槌の神や茅野姫の神は各処に現はれて互に争奪を試み、勢強きものは大をなし、力弱きものは遂に生存の自由さへ得られなくなつて来たのである。人間の心はますます荒み、いかにして自己の生活を安全にせむかと日夜色食の道にのみ孜々として身心を労し、遂には他を滅しその目的を達せむために人工をもつて天の磐船を造り、或は鳥船を造り敵を斃すために、各地の銅鉄の山を穿ちて種々の武器を製造し、働かずして物資を得むがために又もや山を掘り、金銀を掘り出して之を宝となし、物質との交換に便じ、或は火を利用して敵の山野家屋を焼き、暗夜の危険を恐れて燈火を点じ、種々の攻防の利器を製造して互に雌雄を争ふやうになつて来た。而て衣食住はますます贅沢に流れ、神典にいはゆる大宜津姫命の贅沢極まる社会を現出し、貧富の懸隔最も甚だしく、社会は実に修羅の現状を呈出するに至りたり。 茲に伊弉冊命は、女神として地上主宰のその任に堪へざるを慮り黄泉国に隠れ入ります事となつた。そこで益々世は混乱状態となり、天下の神々も一般の人間も、救世主の出現を希望する事となつて来た。時にもつとも虐げられたる人間の中より、埴安彦神、埴安姫神の二神が現はれ、吾久産霊なる仁慈の神々を多く率ゐて救ひの道を宣伝し、水波廼女なる正しき人間を多く救うた。されど、その数は千中の一つにも足らない位の比較である。これより伊弉諾、伊弉冊の大神は、各地の国魂に命じ、数多の曲津神を掃蕩せしめむとされた、この御神業を称して、御子迦具槌の神の御首を斬り玉ふといふなり。 (大正一一・一・二一旧大正一〇・一二・二四加藤明子録) |
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霊界物語 | 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 | 28 玉詩異 | 第二八章玉詩異〔三七八〕 一行は巴留の都の入口の、老木茂れる森林に駱駝を繋ぎ休息したりぬ。淤縢山津見は一同と車座になり、作戦計画を相談しゐたり。 淤縢山津見『此処は大自在天、今は常世神王の領分、鷹取別が管掌するところだから、よほど注意をせなくてはならぬ。大自在天の一派は、精鋭なる武器もあれば、権力も持つて居り知識もある。加ふるに天の磐船、鳥船など無数に準備して、併呑のみを唯一の主義として居る体主霊従、弱肉強食の政治だ。吾々はこの悪逆無道を懲さねばならぬのだ。さうして吾々の武器といつたら、唯一つの玉を持つて居るのみだ。その玉をもつて、言向和すのだから、大変に骨が折れる。先づこの戦に勝のは忍耐の外には無い。御一同の宣伝使、この重大なる使命が勤まりますか』 蚊々虎は、 蚊々虎『勿論の事、武器もなければ爆弾もない、唯天から貰つたこの玉一つだ』 と握拳を固め一同の前に突出し、肩を怒らしながら、 蚊々虎『吾は天下の宣伝使、腰に三尺の秋水は無けれども、鉄より固いこの拳骨、寄せ来る敵を片端から、打つて打つて打ちのめし、一泡吹かして呉れむ』 淤縢山津見『コラコラ、ソンナ乱暴な事をやつてよいものか。ミロクの教を致す吾々は、一切の武器を持つ事は出来ない。唯玉のみだ』 蚊々虎『その玉はこれだ』 と握拳を丸くして、ニユツと突出して見せる。 高彦『馬鹿だなあ、そりや握り玉だ。玉が違ふよ』 蚊々虎『ソンナラ俺は玉を二つ持つてゐる蚊々虎だ。何方を使はうかな。貴様らの持つて居るのとは余程大きい立派なものだよ。駱駝に乗つて走る時には邪魔になる。歩く時にも大変な邪魔物だ、一つ貴様に貸してやらうか。それはそれは立派な睾の玉だぞ』 高彦『洒落どころかい、千騎一騎の正念場だ。貴様の魂を以て敵に当れと云ふ事だよ』 蚊々虎『宣伝使がそれ位の事を知らぬで勤まるかい、一寸嬲つてやつたのだよ。敵地に臨んでも、綽々として余裕のある、蚊々虎さまの度胸を見せてやつたのだよ。高彦、これ見よ、だらりと垂下つて居る。度胸の無い奴は強敵の前に来ると縮み上ると云ふことだが、貴様の玉は二つとも臍下丹田天の岩戸の辺に鎮まつて居るのだらう。否舞ひ上つて居るのだらう』 五月姫は、 五月姫『ホヽヽ蚊々虎さまのお元気な事、妾は腸が撚れます』 と腹を抱へて忍び笑ひに笑ふ。 蚊々虎『コレコレ、姫御前のあられもない事、宣伝使の仰有る事を、若い女の分際として笑ふと云ふ事があつたものか。女らしうもない、ちとらしうしなさい』 駒山彦『淤縢山津見様、蚊々さまや、高さまのお話では一向要領を得ませぬ。一つ大方針を駒山彦に示して下さいな』 淤縢山津見は立つて歌を歌ふ。 淤縢山津見『宣伝将軍雷声有進神兵万里沙程 争知臨敵城下地大道勝驕却虚名』 蚊々虎『何と六ケ敷い歌だのう。宣伝使様、一遍審神をして上げませうか、蚊々虎が。妙な事を云ひますなあ、猿の寝言のやうにさつぱり訳が分らぬじやないか』 駒山彦『イヤ、駒山彦は分つてゐますよ』 蚊々虎『分つてゐるなら云うて呉れ、ヘボ審神者の誤託宣だ。どうで碌な事はあるまい。蚊々虎さまを大将とすれば、総ての計画はキタリキタリと箱指たやうに行くのだが、淤縢山津見は我があるから、サツパリ行かぬのだ。駒山彦よ、貴様も犬や猿の寝言みたやうな事を、知つとるの、知らぬのと云うて、貴様達が知つて怺るか。もう教へて貰はぬわ。脱線だらけの事を聞いたつて仕方がないからなあ』 斯く談合ふ所へ、長剣を提げ甲冑を身に纒うた荒武者数十名の駱駝隊現はれ来り、 荒武者『ヤア、その森林に駱駝を繋ぎ、休息せる一行のものは、三五教の宣伝使には非ざるか、潔く名乗を上げて吾らが槍の錆となれよ』 と呼ばはりたり。 蚊々虎『ヤアお出たなあ、日頃の力自慢の腕を試すは今この時だ。ヤア五月姫殿、この蚊々虎が武勇を御覧あれ。オイオイ三人の弱虫共、この方の武者振を見て膽を潰すな』 高彦は蚊々虎に向ひ、 高彦『貴様三五教の教理を忘れたか』 蚊々虎『危急存亡のこの場に当つて、三五教もあつたものか。機に臨み、変に応ずるはこれ即ち神謀鬼策。汝らの如き愚者小人の知るところで無い。邪魔ひろぐな』 と赭黒い腕を捲つて数十人の群に飛び入り仁王立となつて大音声、 蚊々虎『吾こそは、元を糺せば盤古神王の遺児、常照彦なり。今は蚊々虎と名を偽つて、巴留の都に天降り来りし、古今無双の英雄豪傑だぞ。この鉄拳を一つ揮へば百千万の敵は一度に雪崩を打つて、ガラガラガラ。足を一つ踏み轟かせば、巴留の都は一度にガラガラガラ滅茶々々々々。鬼門の金神国治立尊の再来、蓮華台上に四股踏鳴らせば、巴留の国の三つや四つ、百や二百は忽ち海中にぶるぶるぶる、見事対手になるなら、なつて見よー』 と眼を剥いて呶鳴りつけたり。 この権幕に恐れてか、数十騎の駱駝隊は、駱駝の頭を立て直すや否や、一目散にもと来た道へ走り去りぬ。蚊々虎は大手を振り一同の前に鼻ぴこつかせながら帰り来り、 蚊々虎『オイ、どうだい、俺の言霊は偉いものだらう。言霊の伊吹によつて雲霞の如き大軍も瞬く間に雲を霞と逃散つたり』 一同『ハヽヽヽヽ』 駒山彦『イヤもうどうも駒山彦は恐れ入つた。随分吹いたものだね』 蚊々虎『吹かいでか、二百十日だ。吹いて吹いて吹き捲つて巴留の都を、冬の都にして仕舞ふのだ』 高彦『油断は大敵だぜ、逃たのは深い計略があるのだよ。蚊々虎が勝に乗じて追ひかけて行くと、それこそどえらい陥穽でもあつて豪い目に遇はす積りだよ。それに違ひない、さすがは淤縢山津見様だ。最前も吟はつしやつたらう、 争知臨敵城下地大道勝驕却虚名 だ。オイ敵の散乱した間に何とか工夫をしようではないか』 五月姫『女の俄宣伝使の差出口、誠に畏れ多い事では御座いますが、此処で有り難い神言を奏上して宣伝歌を歌つたらどうでせう。蚊々虎さまの言霊よりも御神徳が現はれませう』 淤縢山津見はやや感心の体にて、 淤縢山津見『ヤア、これは好いところへ気がついた。ヤア一同の方々、神言を力一ぱい奏上いたしませう』 一同『御尤も御尤も』 と異口同音に答へながら、芝生の上に端坐して神言を奏上し、終つて五人の宣伝使は蚊々虎を真先に宣伝歌を歌ひながら、城下に向つて進み行く。 (大正一一・二・九[※校正本では「一・九」になっているが「二・九」が正しい]旧一・一三加藤明子録) |
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霊界物語 | 10_酉_黄泉比良坂の戦い | 11 狐火 | 第一一章狐火〔四四一〕 川田の町を離れたる常磐の森の岩の根に 心も堅き五柱珍山彦を始めとし 浪の響や吹く風の淤縢山津見の宣伝使 ミロクの御代を松代姫梅ケ香姫や竹野姫 ここに五人はいそいそとアナウの高原打ち越えて シラ山峠の東麓をこと問ひあはすコトド川 湯津石村にたばしれる血潮に染むる曲神の 苦しき悩みを洗はむと思ふ心もカリガネの たより渚のカリガネ湾東を指して浪の上 進み行くこそ雄々しけれ。 南北に帯の如く延長せるカリガネ半島に、五人の宣伝使は上陸した。宣伝使の影は細き竹の如く、長く地上に東に向つて倒れる。遉に長き春の日も、カリガネ湾の彼方に舂き始めた。立つて行く人、寝て進む人、十曜の紋の十人連、日没と共に惜しき別れを告げにける。 靄に包まれたる浪を分けて、十四夜の月は東天に輝き始めぬ。照りもせず曇りも果てぬ春の夜の朧月夜に、又もや微な五人の姿は西枕に現はれて来た。蚊々虎は、 蚊々虎(珍山彦)『ホー淤縢山さま、吾々は常磐の森から、斯うぶらぶらと、シラ山峠の麓を廻つて、音に響いたコトド川をやうやう渡り、草の褥の仮枕、沈んだ浮世をカリガネの、入江を渡つて十人連、アヽ世は日の暮るるとともに、親密な五人に分れ、ヤレ淋しやと思ふ間もなく、又もや五人のおつきあひが出来た。矢張り世の中は神歌ではないが、十でなければ治まらぬ。遠い遠い海山越えて、どうやらかうやら此地まで青息吐息の為体でやつて来た。心も荒き荒浪の、淤縢山津見の宣伝使、松吹く風の松代姫、ミロクさまがお上りになつた。サアサア、これから言霊姫の鎮まり給ふ常世国、常世の暗をとことんまで晴らして、常世神王に改心させねば吾々の役目がすまぬ。烏羽玉の夜も、月の光にシラ山山脈、サアサアこれから行きませう』 淤縢山津見『モシモシ珍山彦様、吾々は今まで五人連れで来た筈だ。それにあなたは十人連れと云ひましたねえ。いつも途方途轍もない法螺を吹いて吾々に栃麺棒を振らすのですか』 珍山彦(蚊々虎)『日の神様のお蔭で十人連れぢや、神のお蔭がなければ、矢張り男女五人だ。日の神のお蔭にはづれたと思へば、今度はミロク様のお蔭でまた元の十人連れ。情ない浮世と人は言へども、蛸さへ釣れる世の中だ。貴下も深山の谷底で、照彦神に蛸をつられたさうですなア』 淤縢山津見『その話は聞いて下さるな。一時も早くこのシラ山峠を向ふに渡つて、常世の国へ参りませう。実はアナウ高原を渡つて、テキサスの方から常世城の背面に出る考へでしたが、何だか俄に足が東に向つて、川田の町で不思議にも三人の姫に出会ひ、又もや常磐の森で貴下にお目にかかつたのも、何かの霊界からの御指揮でせう』 と話す折しも、前方より幾百とも知れぬ人馬の物音聞え来る。五人の宣伝使は又もや敵の襲来かと、腹帯を締め、直に月光に向つて手を合せ、神言を奏上し、声を揃へて宣伝歌をうたひける。 追ひおひ近づき来る群衆の中より、一人の棟梁らしきもの現はれ、 固虎『ヤアヤア、それに居る五人の者は三五教の宣伝使であらう。テツキリ松、竹、梅の三人の女に相違はあるまい。常世城を夜陰に乗じて逃げ出し、又もやこのカリガネ半島に来つて宣伝歌を歌ふ不届至極の奴。常世神王の命に依つて、腕力鉄より固き固虎が召捕に向うたり。サア尋常に縛に就くか。否と申さば、この槍のキツ尖にて貫かうか。返答如何に』 と馬を進ませ呶鳴りつつ迫り来る。 一行は何の応答もなく、黙然として佇立し居たるに、前後左右に忽ち起る鬨の声、追ひおひ身辺に近寄り来る。空には数十の天の鳥船天を覆ひて猛り狂ひ、威嚇運動が開始されて居る。固虎は、 固虎『ヤア、汝らは此方の威勢に恐れて、一言半句も言葉はなく、がたがた慄うて居るのか。今にこの固虎が合図を致さば、空の鳥船より下す投弾に、汝ら五人の身体は木端微塵。微塵となつて滅ぶるよりも、一寸延びれば尋とやら、一息の間も命が惜しからう。サア此方に四の五の吐さず随いて来い。六でもない事囀つても、この方はエエ七面倒くさい、頤を叩くと八り倒して九て仕舞ふのだ。十こよの国の固虎の旭日昇天の御威勢を知らぬか』 と空威張に威張り散らして呶鳴り居る。珍山彦は吹き出し、 珍山彦(蚊々虎)『ウワハヽヽヽ、ヤア固虎、ほざいたりなほざいたりな、ロッキー山に常世城に、巣を構へたる八岐の大蛇の尻尾の奴ども、此方を何と心得てをるか、世界に名高い三五教の蚊々虎さまとは俺の事だ。名を聞いて一同の奴、肝を潰すな。何程上から爆弾を投げたとて、それが何恐ろしいか。一時も早く合図を致して、爆弾を投げさせよ。此方は神変不可思議の神力備はる、いづのみたまの五人連れ。貴様の方は烏合の衆だ。うごうご致した密集部隊へ、爆弾投下は此方にもつて来いだ。敵の武器をもつて敵を滅ぼすとはこの事だ。サア、貴様の用ふる合図は此方がやつてやらう。自縄自縛、自滅の端を開く大馬鹿者』 と云ひながら、蚊々虎は懐より火打を取り出し、火口に火を移し、枯葉を集めて三箇所に火を焚き出せば、固虎は、 固虎『ヤア、そりや大変だ。此方の合図をどうして知つたか。味方の武器で味方が滅る。耐らぬ耐らぬ、ヤイヤイ、皆の者ども、一時も早くあの火を消せよ』 一同は焚火に向つて消しにかからうとする奴を、松、竹、梅の三人は、三ケ所の火の傍に突つ立ち上り、寄り来る奴を手玉に取つて、一々カリガネ湾に投げ込む。 忽ち轟然たる響聞えて、爆弾は密集部隊の頭上に破裂せしかば、泡を吹いて死傷算なく、命辛々逃げ行くもあり、その場に倒れて呻く声、此処彼処に聞え来る。珍山彦は大音声、 珍山彦(蚊々虎)『ヤアヤア、固虎の部下の者共、改心したか。肝を潰し、腰を抜かし、鼻を挫かれ、口は引き裂かれ、眼球は飛び出し、耳はちぎれ、腕は折れ、足はむしられ、実に気の毒千万なるよ。今この場に於て改心致さばよし、否と云ふなら、ま一度合図をしようか』 一同の中より、泣き声を絞りながら、 固虎の部下『蚊々虎様、三人の姫様、私は改心致します。どうぞ助けて下さいませ』 珍山彦(蚊々虎)『改心致した奴は、この場で罪を赦してやらう。改心致すほど世の中に結構はない。サア一同此方の後に随いて宣伝歌を歌へ』 一同『常世の国やロッキーの山に隠るる曲津神 八岐大蛇に狙はれて神の御国を乱さむと 鼻息高き鷹取別の醜の魔神の腰抜かし 鼻みしやがれたその家来肩で風切る固虎が 部下の者よ、よつく聞け旭は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも常世の国は沈むとも 曲津の砦は破るとも三五教は世を救ふ 口は引き裂け鼻曲り眼球は飛び出し耳ちぎれ 腕は折れて足はとれ子供の玩具の人形箱 ぶち開けたやうな今の態改心するのは此時ぞ 改心するのは此場合月日は空に蚊々虎の 宣る言霊に耳澄ませ口を清めて目を洗ひ 鼻を低くして天地の神を称ふる神言を 一度に宣れよ皆のもののれよのれのれ皇神の 救ひの船に皆乗れよロッキー山に現はれし 日の出神や伊弉冊の神と申すは世を乱す 大蛇や金狐の化身ぞや早や目を醒ませ目を醒ませ 心にかかる村雲を吾言霊に吹き払ひ 清めて救ふ神の道国てふ国は多けれど 神てふ神は多けれど常世の国は常久に 暗ではおけぬ神の胸ロッキー山の曲神の 醜の企みを此侭に捨ててはおかぬ神心 この世を造りし神直日心も広き大直日 唯何事も人の世は直日に見直し宣り直し 鬼や大蛇や曲神の醜の猛びを皇神の 救の舟に乗り直し心を直せよ諸人よ この世を渡す麻柱の神の造りし方船は どこにも一つ穴はないあな有難や尊やと 左右りの手を合せ祈れよ祈れカリガネの この島人や固虎の部下のものよ逸早く 神の光に目を醒ませ神の光に目を醒ませ 日は照る光る月は盈つ日の出神が現はれて 常夜の暗を照せども行方も知らぬ荒浪の 中に漂ふ醜船の舵を取られて人心 心の海に日月の光湛へて黄泉島 黄泉比良坂の戦に力を尽せ身を尽せ 神の守りは目のあたり神の恵みは此通り』 と歌ひ舞ふ。 固虎を始め部下の者共は思はず知らず、蚊々虎の言霊車に乗せられて、自分の事と知りながら、知らず知らずに歌ひ舞ひ踊り狂ふ。目も鼻も口も耳も手も足も、神の恵みに救はれ、元の通りの完全な肉体に還元して、負傷の痕さへ止めざるこそ不可思議なる。 これより固虎は、珍山彦の歌に感じ、翻然として悟り、道案内となつてロッキー山に進み行く。固虎は後に固山津見の神名を戴き、神界のために大活動を為すに至れり。 (大正一一・二・二二旧一・二六加藤明子録) |
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霊界物語 | 10_酉_黄泉比良坂の戦い | 13 蟹の将軍 | 第一三章蟹の将軍〔四四三〕 固虎は淤縢山津見神の案内者として、山道を攀ぢ、谷を渡り、間道を経てロッキー山の山麓に着きしが、数多の魔軍は武装を整へ、今や出陣せむとする真最中なり。淤縢山津見は偵察の為に固虎を遣はして、ロッキー山の城塞に向はしめ、城門に入らむとする時、ピタリと蟹彦に出会せり。 蟹彦『オー固虎、数多の軍勢を引率れて、『目』の国カリガネ半島へ宣伝使を捕縛すべく出陣したではないか。その後一向何の消息も聞かぬので、如何なつたことかと思つてゐたが、唯一人此処へ出て来たのは何か様子があらう。常世城へも帰らず、一体引率した軍隊は如何したのだい』 固虎『何うも斯うもあつたものか。戦ひは多く味方を損ぜざるを以て最上とする。何も知らぬ数多の戦士を傷つけるよりは、高の知れた宣伝使の三人や五人、計略を以て常世城へ誘き寄するに如かずと、取置きの智慧を出したのだ。マア見て居て呉れ、此方の働きを』 蟹彦『門番の成上り奴が、あまり偉さうに法螺を吹くない』 固虎『門番の成上りはお互ひだ。併し斯く騒々しく数多の戦士を集めて、日の出神は如何する積りだい』 蟹彦『そんな間の抜けた事を云つて居るから困るのだ。貴様は未だ知らぬのか。余程薄のろだな。常世の国の、眼とも鼻とも喉首とも譬へ方ない大事の黄泉島に、天教山より伊弉諾神が現はれ給うて、この醜けき汚き黄泉国を祓ひ清め、常世の国まで進み来らむと、智仁勇兼備の神将を数多引率して、黄泉比良坂に向つて攻めかけ来り給うたと云ふ事だ。さうなれば常世の国は片顎を取られたやうなもので、滅亡をするのは目のあたりだと云ふので、伊弉冊大神様、日の出神の御大将が此処に数多の戦士を集め、是より常世城の軍隊と合し、黄泉比良坂に進軍せむとさるる間際なのだ。貴様も早く軍隊を引率れて黄泉比良坂の戦に参加せなくては、千載一遇の好機を逸するぞ。愚図々々いたして悔を後世に胎すな。千騎一騎のこの場合、手柄をするなら今この時だ』 固虎『神様の夫婦喧嘩といふものは、大袈裟なものだな。犬も喰はない夫婦喧嘩に大勢のものが、馬鹿らしくつて往けるものか。若も戦に行つて生命でも取られて見よ。数万の戦士は、何奴も此奴も可愛い女房や子に別れねばならぬ。たつた一つの夫婦喧嘩に使はれて、大勢のものが後家にならねばならぬとは、合点の行かぬ世の中だ』 蟹彦『貴様は余程よい薄馬鹿だ。ロッキー山や、常世城の秘密は、うすうす判つて居りさうなものぢやないか。知らな云うてやらう。伊弉冊命と名乗つてござるのは、その実は大国姫命だ。そして日の出神と名乗つて居るのは、その夫神の大国彦命だよ。固虎もそれが判らぬ様ではダメだよ』 固虎『初めて聞いた。貴様の話は益々合点がゆかなくなつて来た。それなら常世神王は誰だい。蟹公知つてるだらう』 蟹彦『常世神王は広国別だよ。一旦死んだと云つて常世の国の一般のものを誑かし、自分が大国彦様と相談の結果、広国別が常世神王になつて居るのだ。これには深い仔細がある。その秘密の鍵を握つた蟹彦は、常世神王の内々の頼みに依つて、今まで故意と門番になつてゐたのだよ』 固虎『それなら貴様は、元は誰だい』 蟹彦『馬鹿だな、未だ分らぬか。俺はわざと身体を歪めて横に歩き、顔にいろいろの汁を塗つて化けてゐたのだが、もとを糺せば聖地ヱルサレムの家来であつた竹島彦命だよ。是から吾々は先頭に立つて、黄泉比良坂に向ふのだ。併し軍機の秘密は洩らされない、他言は無用だ。併し乍ら、ロッキー山の伊弉冊大神さまは全くの贋物だ。吾々も本物に使はれるのは、たとへ敵にもせよ気分がよいが、生地をかくした鍍金ものだと思ふと、何だかモー一つ力瘤が這入らぬやうな心持がするよ』 固虎『貴様、今度は誰が大将で往くのだ』 蟹彦『定つたことだ、これだよ』 と自分の鼻を押へて見せる。 固虎『弱い大将だな。今度の戦ひは馬ーの毛だ。何分大将が間抜けだから仕方がない』 蟹彦(竹島彦)『馬鹿を云ふな。大将は馬鹿がよいのだ。あまり智慧があつて、コセコセ致すと大局を誤る虞があるので、この薄のろの竹島彦が全軍統率の任に当つて居るのだ。これでも三軍の将だぞ。あまり馬鹿にしては貰ふまいかい。併し固虎、五人の宣伝使を何処に置いたのだ。松、竹、梅の三人の桃の実がなければこの戦ひは勝目がないと、伊弉冊命様の……ドツコイ大国姫命の御命令だ。早く三人を貴様の手にあるなら御目にかけて、抜群の功名をなし、手柄者と謳はれるがよからう』 固虎『よし、今見せてやらう』 蟹彦(竹島彦)『俺に見せる必要はないから、早く伊弉冊の贋の大神さまに御目にかけるのだよ。ヤア鳴雷、若雷、早く来れ』 と馬に跨り法螺貝を吹き立てながら、ブウブウと口角蟹のやうな泡を飛ばして進み行く。 固虎は蟹彦の偽らざる此の物語を聴いて胸を躍らせながら、淤縢山津見に一切を報告したるに、淤縢山津見は太き息を吐き、 淤縢山津見『アヽさうか。疑はれぬは神懸りだ。蚊々虎の神懸りを実の事を云へば、今まで疑つてゐたのは恥かしい。審神は容易に吾々の如き盲では出来るものではない。併し乍ら之を思へば、珍山彦の神変不思議の力には感嘆せざるを得ない。先づまづ暫らく身を潜めて、様子を窺ふことにしよう』 と、樹木茂れる森林の中に両人は姿を隠し時を待ちゐる。蟹彦の竹島彦が一隊を引率し、威風凛々として四辺を払ひ出陣した後に、又もや法螺貝の音、太鼓の響、ハテ訝かしやと木の間を透して打眺め、固虎は頓狂な声にて、 固虎『ヤア、また第二隊が出て行き居るぞ。第二隊の大将は誰だか知らむ』 淤縢山津見『御苦労だが、敵近く寄つて様子を査べ報告して呉れないか』 固虎『畏まりました』 といふより早く固虎は、猿が梢を伝ふが如く、しのびしのび敵前近く進み行く。美山別は陣頭に立ち采配を打揮ひながら、 美山別『進め進め』 と号令してゐる。左右の副将は土雷、伏雷の猛将である。花を欺く松、竹、梅の三人に扮したる国玉姫、田糸姫、杵築姫は馬上に跨りながら、桃の実隊として美々しき衣裳を太陽に照されながら、ピカリピカリと進んで来る。数多の軍勢は足音を揃へて、種々の武器を携へ繰出す仰々しさ。固虎は直様引返し、淤縢山津見に詳細の顛末を報告したり。 淤縢山津見『ヤア、御苦労ご苦労、ロッキー山の軍人はあれでしまひか』 固虎『ナニ、ほんの一部分です。必要に応じて未だ未だ出すかも知れませぬ』 淤縢山津見『ウン、油断のならぬ醜神の仕組、吾々も一つ考へねばならぬワイ』 このとき木霊に響く宣伝歌の声、二人は思はず其の声に聞耳澄ました。忽ち東南の風吹き荒んで音騒がしく、宣伝歌は風の音に包まれにける。 (大正一一・二・二二旧一・二六外山豊二録) |
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霊界物語 | 10_酉_黄泉比良坂の戦い | 21 桃の実 | 第二一章桃の実〔四五一〕 茲に日の出神は、神伊邪那諾神の神勅を奉じ、三軍に将として黄泉島に向つて花々しく進軍せり。 石拆神、根拆神、石筒之男神をして先陣を宰らしめ、甕速日神、樋速日神、建布都神をして本隊の部将とし、後陣には闇淤加美神、闇御津羽神を部将とし、旗鼓堂々として黄泉島の比良坂に向つて進軍せしめ、左翼の軍隊には正鹿山津見神、駒山彦[※駒山彦は第9巻第16章で羽山津見神と改名しているため、遊軍に羽山津見神の名があるのは矛盾している。誤記か?]、右翼には奥山津見神、志芸山津見神を部将とし、遊軍として闇山津見神、羽山津見神、原山津見神、戸山津見神の十六神将をして鶴翼の陣を張り、魚鱗の備へ勇ましく、天の鳥船、岩樟船に乗せて雲霞の如き大軍を送り、天地も震動ぐばかりの言霊を発射せしめたり。 茲に常世の国のロッキー城に現はれたる大国彦は、自ら日の出神と偽称し、美山別をして、大雷、黒雷、火雷、拆雷の勇将を遣はし、数多の魔軍を指揮せしめ、照山彦は伏雷、土雷の部将を率ゐて左翼となり、竹島彦は鳴雷、若雷の部将を率ゐて右翼となり、国玉姫、田糸姫、杵築姫をして醜女探女を引率せしめ、爆弾、弓矢、槍、剣などの兇器を以て山上に攻め登り、一挙に黄泉島を占領せむと猛虎の勢凄じく攻め来る。 天震ひ地動ぎ、得も言はれぬ激戦は茲に開始されける。桃の実に擬へたる国玉姫、田糸姫、杵築姫の婉麗並びなき姿も、霊主体従の神軍に対しては、その魔力を発揮するの術更になかりけり。 中空よりは、神軍として月照彦神、足真彦神、少彦名神、弘子彦神、雄姿を現はし神軍を指揮しつつあり。美山別の軍勢は、この神軍の応援に進み兼ね、稍躊躇の色ありしが、中空より聞ゆる森厳なる言霊の響に、頭は痛み胸は裂けむばかり苦しみ悶えて、止むを得ず坂の上より退却を始めたれば、日の出神の率ゆる神軍は、時を移さず比良坂を下りて、美山別の魔軍を追跡すること益々急なり。美山別の一隊は、八種の雷神に数万の魔軍を添へて生命限りに盛り返し来るを、日の出神は左翼部隊なる正鹿山津見、駒山彦の一隊を割いて、迂廻して魔軍の背面に向はしめたるに、魔軍は不意の言霊に再び胆を抜かれ、萎縮して思はず大地に俯伏する。月照彦、足真彦らの神軍の活動を称して蒲子生りきと云ひ、駒山彦、正鹿山津見の一隊の活動を称して、湯津津間櫛を引闕きて投棄て給へば乃ち笋生りきと云ふなり。 日の出神は、軽々しく進み敵の術中に陥らむ事を恐れ、此の機に乗じて元の本陣に大部隊の神軍を還し、宣伝歌を高唱して、敵の襲撃に備へつつありき。 美山別の一隊は、ここを先途と全力を尽し、魔軍の力を集中し、一団となつて驀地に日の出神の陣営に向つて進み来る。一進一退、容易に勝負も見えざりける。 美山別は勝に乗じ、あらゆる精巧なる武器を以て縦横無尽に攻め寄せ来るを、日の出神の神軍は、各自両刃の剣を携へをれども、素より折伏の剣にあらず、摂取不捨の利剣なれば、敵の鋒鋩に対しても容易にこれを用ゐず、ただ至誠至実の言霊を応用して、これに対抗するのみ。されども人盛なれば天に勝ち、悪は善を虐げ、暴は柔を苦しめ、時ならずして神軍の形勢は益々悲境に陥りぬ。 この時桃上彦の娘、松代姫、竹野姫、梅ケ香姫は月、雪、花の三人の女将を従へ、数多の美しき女人を率ゐて、宣伝歌を歌ひながら、敵の陣中を目がけて長袖淑に踊り舞ひ狂ふにぞ、遉の魔軍も、容色端麗にして天女の如き清楚なる姿に眼眩み、魂奪はれ、呆然として各武器を地に投げ見つめ居る。 松、竹、梅、月、雪、花の宣伝使は、魔軍の陣中を前後左右に飛び廻り、声も涼しく宣伝歌を歌へば、魔軍の将美山別を始めとし、八種の雷神に至るまで、女神の姿に恍惚として戦ひの場にある事を忘るるに至りぬ。此間に日の出神は、諸将を引率して黄泉比良坂の坂の上に退却し、ここに一時休養せり。魔軍は何れも戦ふの力なく平伏するを、松、竹、梅以下の女神は、悠々として日の出神の屯せる黄泉比良坂の坂の上に還り来り、戦況を具さに奏上せり。この時空中に声あり、 神伊邪那諾命『吾は神伊邪那諾命、日の出神をして黄泉軍を言向け和さしめたれども、魔軍の勢強くして容易にこれを帰順せしむ可からず。諸神将卒は戦ひに労れ艱みたる折しも、汝松、竹、梅の桃の実現れ来りて魔軍を言向け和し吾神軍を救ひたるは、この戦ひに於ける第一の功名なり。これより松、竹、梅の桃の実は、吾軍を助けたる如く、世人の悪魔に悩まされ、憂瀬に落ちて苦しまむ者あらば、汝が言霊を以てこれを救へよ。汝ら三柱に対して、意富加牟豆美神といふ御名を賜ふ』 と宣らせ給ひぬ。 (大正一一・二・二五旧一・二九東尾吉雄録) |
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霊界物語 | 10_酉_黄泉比良坂の戦い | 23 神の慈愛 | 第二三章神の慈愛〔四五三〕 大国姫命は、武虎別と共に、此場の怪しき光景に胆を奪はれ、呆然として何の辞もなく佇み居る折しも、日の出神と称する大自在天大国彦は、四五の従者と共に此の場に現はれ来り、 日の出神(に化けた大国彦)『ヤア、ロッキー城は大変な事が起つて来た。常世城常世神王、数多の軍勢を引連れ叛逆を企て、味方に於ては淤縢山津見、固虎彦を以て之に当らしめ居れども、始終の勝利は覚束なし。汝大国姫、今より秘かに黄泉島に渡り伊弉冊尊と称して出陣し、味方の士気を鼓舞し以て大勝利を博し、神軍を追払へよ。然らば如何に広国別勢猛く攻め来るとも、汝が武威に恐れて忽ち降服せむ。本城に立籠り、暗々広国別に滅ぼされむは策の得たるものに非ず。吾は是より本城に止りて、寄せ来る敵を待ち討たむ。汝は一時も早く黄泉島に向へ』 大国姫『委細承知仕りました。併しながら怪事多き此城中、十二分の御注意あれ』 と言ひ棄て、天の磐船に乗りて天空を轟かしながら、四五の従兵と共に、黄泉島に向つて急ぎ進み行く。 この時又もや門外騒がしく、淤縢山津見は、固山彦と共に周章しく入り来り、 淤縢山津見『日の出神に申上げます。ロッキー城は、最早刀折れ矢尽き、遂に敵の占領する所となりました』 日出神(に化けた大国彦)『エヽ腑甲斐なき奴輩奴。吾は是より広国別の軍に向ひ勝敗を決せむ。淤縢山津見、固虎、吾に続け』 と言ひながら、駿馬に跨り、威風凛々として少数の軍卒を率ゐ、ロッキー山城を後に見て、ロッキー城に向つて駆けつくる。 ロッキー城に致り見れば、表門は開放され、一人の敵軍もなければ味方の影もなし。贋日の出神は怪しみながら、将卒を率ゐて四方に心を配りつつ奥深く進み入る。見れば、狐の声四方八方より、 狐の声『狐々怪々』 寂として人影もなし。 日出神(に化けた大国彦)『合点の行かぬ今の鳴声。アイヤ、淤縢山津見、固虎彦、残る隅なく捜索せよ』 淤縢山津見『オー、吾こそは三五教の宣伝使、今まで汝が味方と云ひしは、汝の悪逆無道を懲さむ為なり。サア、斯くなる以上は尋常に降服するか』 日の出神(に化けた大国彦)『エヽ』 固山彦『汝は日の出神と名を偽り、ロッキー城に立籠り、神界の経綸を根底より破壊せむとせし悪鬼羅刹の張本、斯くなる以上は、隠るるとも逃ぐるとも、最早力及ばぬ。覚悟を致せ』 日出神(に化けた大国彦)『ヤー残念至極、大国姫は黄泉島に向つて進軍し、部下の勇将猛卒は、或は出陣し或は遁走し、今はわが身一つの、如何とも術なし。サア、汝等斬るなら斬れよ、殺すなら殺せよ』 淤縢山津見『アイヤ贋日の出神、よつく聴け。天地の神明は愛を以て心となし給ふ。吾々人間として如何ともなし難きは空気と水と死とである。死するも生くるも神の御心だ。徒に汝が如き命を奪ひて何の効かあらむ。仮令肉体は死するとも、汝の霊は再び悪鬼となりて天下に横行し、妖邪を行ふは目に見るが如し。吾は汝の生命を奪ひて以て事足れりとなすものでない。汝が霊魂中に割拠せる悪霊を悔い改めしめ、或は退去せしめ、改過遷善の実を挙げさせむと欲するのみ。三五教は汝らの主張の如き、武器を以て人を征服し、或は他国を略奪するものにあらず。至仁至愛の神の教、よつく耳を洗つて聴聞せよ』 日の出神(に化けた大国彦)『オー、小賢しき汝の言葉、聞く耳持たぬ。斯くなる以上は最早吾等の運の尽、鍛へに鍛へし都牟刈太刀を味はつて見よ』 と言ふより早く、太刀をズラリと引き抜いて、淤縢山津見、固山彦に斬つて掛かるその勢凄じく、恰も阿修羅王の荒れ狂ふが如し。淤縢山津見、固山彦は剣の下をくぐり、一目散に表門指して逃げ出す。 日出神(に化けた大国彦)『ヤア、卑怯未練な奴。ナゼ尋常に勝負を致さぬか』 固山彦『エヽ残念だ、淤縢山津見さま、如何に三五教の玉の教なればとて、斯の如き侮辱を受けながら、旗を捲き鋒を納めて、この場を逃ぐるは卑怯と見られませう。変事に際して剣の威徳を現はすは、神も許し給ふべし』 淤縢山津見『イヤイヤ、至仁至愛の神の心を以て吾は此場を逃ぐるなり。竜虎共に戦はば勢ひ互に全からず。彼を斬るか、斬らるるか、彼も神の子、吾も神の子、神の御子同士傷つけ合ふは、親神に対して申訳なし。暫く彼が鋭鋒を避けて、更めて時を窺ひ悔い改めしめむと思ふ』 固山彦『エヽ三五教は誠に以て行り難い教であるワイ』 と地団駄踏んで口惜しがる。日の出神は見え隠れに後をつけ来り、この話を聞いて大いに驚き、思はず、 日の出神(に化けた大国彦)『ワツ』 とばかり泣き伏しにける。 固山彦『ヤア、なんだか暗がりに泣声が致しますよ』 淤縢山津見『さうだなア、何だか妙な泣声だ、よく似た声だ。ヤア、暗中に泣き叫ぶは何人なるぞ』 暗中より、 日の出神(に化けた大国彦)『私は日の出神と名を偽つた大国彦であります。只今貴方の仁慈に富める御言葉を聞いて、感涙に咽び思はず泣きました。私は今迄の悪を翻然として悔い改めます。どうぞ御赦し下さいませ』 淤縢山津見『ホー、満足々々、斯くならば敵も味方もない、全く兄弟だ。兄弟を助けたさに、吾は宣伝使となつて苦労を致して居るのだ。貴方の知らるる如く、吾も旧は大逆無道の醜国別、神の仁慈の雨に浴し、悔い改めて宣伝使となりし者、かくなる上は貴下と共に是より常世城に進み、常世神王広国別を神の教に帰順せしめむ』 固山彦『ヤア、流石は淤縢山津見さま、本当に感心だ。実地の良い教訓を受けました。サアサア日の出神……ではない大国彦殿、これより常世城に向ひませう』 嚇し上手の淤縢山津見、固い一方の固山彦、目から火の出る日の出神の、意外な憂目に大国彦、今は全く悔い改めて、心の駒も勇み立ち、三人一同に連銭葦毛の駿馬に跨り、魔神の猛る常世の暗の常世城、群がる敵を物ともせず、神を力に信仰を杖に、生死の境を超越し、勇気を鼓して敵の群衆に向つて、馬の蹄の音勇ましく、ハイヨーハイヨと鞭を加へて進み行く。 竹山彦その他の部将は、この光景を見て、抵抗するかと思ひの外、馬上より、 竹山彦『ヤア、大国彦命、ウローウロー、目出度しめでたし、一時も早く奥殿に入らせられよ』 と案に相違の挨拶ぶり、大国彦は怪訝の念に駆られながら、淤縢山津見、固山彦と共に、馬上ゆたかに奥へ奥へと進み行く。今まで雲霞の如き大軍と見えしは、夢幻と消え失せて跡形もなく、奥殿には嚠喨たる音楽響き渡り爽快身に迫る。一同は奥の間に端坐し、天津祝詞を奏上し宣伝歌を唱ふ。 是よりロッキー城も常世の城も、十曜の神旗翻へり、神徳を讃美する声天地に響き、常世国は一時天国楽園と化したるぞ目出度けれ。 (大正一一・二・二五旧一・二九松村真澄録) |