| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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霊界物語 | 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 | 発端 | 発端 自分が明治三十一年旧二月九日、神使に伴なはれ丹波穴太の霊山高熊山に、一週間の霊的修業を了へてより天眼通、天耳通、自他神通、天言通、宿命通の大要を心得し、神明の教義をして今日あるに至らしめたるについては、千変万化の波瀾があり、縦横無限の曲折がある。旧役員の反抗、信者の離反、その筋の誤解、宗教家の迫害、親族、知友の総攻撃、新聞雑誌、単行本の熱罵嘲笑、実に筆紙口舌のよくするところのものでない。自分はただただ開教後廿四年間の経緯を、きわめて簡単に記憶より呼び起して、その一端を示すことにする。 竜宮館には変性男子の神系と、変性女子の神系との二大系統が、歴然として区別されてゐる。変性男子は神政出現の予言、警告を発し、千辛万苦、神示を伝達し、水をもつて身魂の洗礼を施し、救世主の再生、再臨を待つてをられた。ヨハネの初めてキリストに対面するまでには、ほとんど七年の間、野に叫びつつあつたのである。変性男子の肉宮は女体男霊にして、五十七才はじめてここに厳の御魂の神業に参加したまひ、明治二十五年の正月元旦より、同四十五年の正月元旦まで、前後満二十年間の水洗礼をもつて、現世の汚濁せる霊体両系一切に洗礼を施し、世界改造の神策を顕示したまうた。かの欧洲大戦乱のごときは、厳の御魂の神業発動の一端にして、三千世界の一大警告であつたと思ふ。 変性女子の肉宮は瑞の御魂の神業に参加奉仕し、火をもつて世界万民に洗礼を施すの神務である。明治三十一年の旧二月九日をもつて神業に参加し、大正七年二月九日をもつて前後満二十年間の霊的神業をほとんど完成した。物質万能主義、無神無霊魂説に、心酔累惑せる体主霊従の現代も、やや覚醒の域に達し、神霊の実在を認識するもの、日に月に多きを加へきたれるは、すなはち神霊の偉大なる神機発動の結果にして、決して人智人力の致すところではないと思ふ。 変性男子の肉宮は神政開祖の神業に入り、爾来二十有七年間神筆を揮ひ、もつて霊体両界の大改造を促進し、今や霊界に入りても、その神業を継続奉仕されつつあるのである。 つぎに変性女子は三十年間の神業に奉仕して、もつて五六七神政の成就を待ち、世界を善道にみちびき、もつて神明の徳沢に浴せしむるの神業である。神業奉仕以来、本年をもつて満二十三年、残る七ケ年こそ最も重大なる任務遂行の難関である。神諭に曰く、 『三十年で身魂の立替立直しをいたすぞよ』 と。変性男子の三十年の神業成就は、大正十一年の正月元旦である。変性女子の三十年の神業成就は、大正十七年二月九日である。神諭に、 『身魂の立替立直し』 とあるを、よく考へてみると、主として水洗礼の霊体両系の改造が三十年であつて、これはヨハネの奉仕すべき神業であり、体霊洗礼の霊魂的改造が前後三十年を要するといふ神示である。しかしながら三十年と神示されたのは、大要を示されたもので、決して確定的のものではない。伸縮遅速は、たうてい免れないと思ふ。要するに、神界の御方針は一定不変であつても、天地経綸の司宰たるべき奉仕者の身魂の研不研の結果によつて変更されるのは止むをえないのである。 神諭に、 『天地の元の先祖の神の心が真実に徹底了解たものが少しありたら、樹替樹直しは立派にできあがるなれど、神界の誠が解りた人民が無いから、神はいつまでも世に出ることができぬから、早く改心いたして下されよ。一人が判りたら皆の者が判つてくるなれど、肝心のものに判らぬといふのも、これには何か一つの原因が無けねばならぬぞよ。自然に気のつくまで待つてをれば、神業はだんだん遅れるばかりなり、心から発根の改心でなければ、教へてもらうてから合点する身魂では、到底この御用は務まらぬぞよ。云々』 実際の御経綸が分つてこなくては、空前絶後の大神業に完全に奉仕することはできるものではない。御神諭に身魂の樹替樹直しといふことがある。ミタマといへば、霊魂のみのことと思つてゐる人が沢山にあるらしい。身は身体、または物質界を指し、魂とは霊魂、心性、神界等を指したまうたのである。すべて宇宙は霊が本で、体が末となつてゐる。身の方面、物質的現界の改造を断行されるのは国祖大国常立神であり、精神界、神霊界の改造を断行したまふのは、豊国主神の神権である。ゆゑに宇宙一切は霊界が主であり、現界が従であるから、これを称して霊主体従といふのである。 霊主体従の身魂を霊の本の身魂といひ、体主霊従の身魂を自己愛智の身魂といふ。霊主体従の身魂は、一切天地の律法に適ひたる行動を好んで遂行せむとし、常に天下公共のために心身をささげ、犠牲的行動をもつて本懐となし、至真、至善、至美、至直の大精神を発揮する、救世の神業に奉仕する神や人の身魂である。体主霊従の身魂は私利私欲にふけり、天地の神明を畏れず、体欲を重んじ、衣食住にのみ心を煩はし、利によりて集まり、利によつて散じ、その行動は常に正鵠を欠き、利己主義を強調するのほか、一片の義務を弁へず、慈悲を知らず、心はあたかも豺狼のごとき不善の神や、人をいふのである。 天の大神は、最初に天足彦、胞場姫のふたりを造りて、人体の祖となしたまひ、霊主体従の神木に体主霊従の果実を実らせ、 『この果実を喰ふべからず』 と厳命し、その性質のいかんを試みたまうた。ふたりは体欲にかられて、つひにその厳命を犯し、神の怒りにふれた。 これより世界は体主霊従の妖気発生し、神人界に邪悪分子の萠芽を見るにいたつたのである。 かくいふ時は、人あるひは言はむ。 『神は全智全能にして智徳円満なり。なんぞ体主霊従の萌芽を刈りとり、さらに霊主体従の人体の祖を改造せざりしや。体主霊従の祖を何ゆゑに放任し、もつて邪悪の世界をつくり、みづからその処置に困むや。ここにいたりて吾人は神の存在と、神力とを疑はざるを得じ』 とは、実に巧妙にしてもつとも至極な議論である。 されど神明には、毫末の依怙なく、逆行的神業なし。一度手を降したる神業は昨日の今日たり難きがごとく、弓をはなれたる矢の中途に還りきたらざるごとく、ふたたび之を更改するは、天地自然の経緯に背反す。ゆゑに神代一代は、これを革正すること能はざるところに儼然たる神の権威をともなふのである。また一度出でたる神勅も、これを更改すべからず。神にしてしばしばその神勅を更改し給ふごときことありとせば、宇宙の秩序はここに全く紊乱し、つひには自由放漫の端を開くをもつてである。古の諺にも『武士の言葉に二言なし』といふ。いはんや、宇宙の大主宰たる、神明においてをやである。神諭にも、 『時節には神も叶はぬぞよ。時節を待てば煎豆にも花の咲く時節が参りて、世に落ちてをりた神も、世に出て働く時節が参りたぞよ。時節ほど恐いものの結構なものは無いぞよ、云々』 と示されたるがごとく、天地の神明も『時』の力のみは、いかんとも為したまふことはできないのである。 天地剖判の始めより、五十六億七千万年の星霜を経て、いよいよ弥勒出現の暁となり、弥勒の神下生して三界の大革正を成就し、松の世を顕現するため、ここに神柱をたて、苦・集・滅・道を説き、道・法・礼・節を開示し、善を勧め、悪を懲し、至仁至愛の教を布き、至治泰平の天則を啓示し、天意のままの善政を天地に拡充したまふ時期に近づいてきたのである。 吾人はかかる千万億歳にわたりて、ためしもなき聖世の過渡時代に生れ出で、神業に奉仕することを得ば、何の幸か之に如かむやである。神示にいふ。 『神は万物普遍の聖霊にして、人は天地経綸の司宰なり』 と。アゝ吾人はこの時をおいて何れの代にか、天地の神業に奉仕することを得む。 アゝ言霊の幸はふ国、言霊の天照る国、言霊の生ける国、言霊の助ける国、神の造りし国、神徳の充てる国に生を稟けたる神国の人においてをや。神の恩の高く、深きに感謝し、もつて国祖の大御心に報い奉らねばならぬ次第である。 |
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霊界物語 | 02_丑_常世姫の陰謀/シオン山攻防戦 | 総説 | 総説 神界における神々の御服装につき、大略を述べておく必要があらうと思ふ。一々神々の御服装に関して口述するのは大変に手間どるから、概括的に述ぶれば、国治立命のごとき高貴の神は、たいてい絹物にして、上衣は紫の無地で、下衣が純白で、中の衣服が紅の色の無地である。国大立命は青色の無地の上衣に、中衣は赤色、下衣は白色の無地。稚桜姫命は、上衣は水色に種々の美はしき模様があり、たいていは上中下とも松や梅の模様のついた十二単衣の御服装である。天使大八洲彦命、大足彦のごときは、上衣は黒色の無地に、中衣は赤色、下衣は白色の無地の絹の服である。その他の神将は位によつて、青、赤、緋、水色、白、黄、紺等、いづれも無地服で、絹、麻、木綿等に区別されてゐる。 冠もいろいろ形があつて纓の長短があり、八王八頭神以上の神々に用ゐられ、それ以下の神司は烏帽子を冠り、直衣、狩衣。婦神はたいてい明衣であつて、青、赤、黄、白、紫などの色を用ゐられ、袴も色々と五色に分れてゐる。また神将は闕腋に冠をつけ、残らず黒色の服である。神卒は一の字の笠を頭に戴き、裾を短くからげ、手首、足首には紫の紐をもつて結び、実に凛々しき姿をしてをらるるのである。委しく述ぶれば際限がないが、いま述べたのは国治立命が御隠退遊ばす以前の神々の御服装の大略である。 星移り、月換るにつれ、神界の御服装はおひおひ変化し来たり、現界の人々の礼装に酷似せる神服を纒はるる神司も沢山に現はれ、神使の最下たる八百万の金神天狗界にては、今日流行の種々の服装で活動さるるやうになつてをる。 また邪神界でもおのおの階級に応じて、大神と同一の服装を着用して化けてをるので、霊眼で見ても一見その正邪に迷ふことがある。 ただ至善の神々は、その御神体の包羅せる霊衣は非常に厚くして、かつ光沢強く眼を射るばかりなるに反し、邪神はその霊衣はなはだ薄くして、光沢なきをもつて正邪を判別するぐらゐである。しかるに八王大神とか、常世姫のごときは、正神界の神々のごとく、霊衣も比較的に厚く、また相当の光沢を有してをるので、一見してその判別に苦しむことがある。 また自分が幽界を探険した時にも、種々の色の服を着けてゐる精霊を目撃した。これは罪の軽重によつて、色が別れてゐるのである。しかし幽界にも亡者ばかりの霊魂がをるのではない。現界に立働いてゐる生きた人間の精霊も、やはり幽界に霊籍をおいてをるものがある。これらの人間は現界においても、幽界の苦痛が影響して、日夜悲惨な生活を続けてをるものである。これらの苦痛を免るる方法は、現体のある間に神を信仰し、善事を行ひ万民を助け、能ふかぎりの社会的奉仕を務めて、神の御恵を受け、その罪を洗ひ清めておかねばならぬ。 さて現界に生きてゐる人間の精霊を見ると、現人と同形の幽体を持つてゐるが、亡者の精霊に比べると、一見して生者と亡者の精霊の区別が、判然とついてくるものである。生者の幽体(精霊)は、円い霊衣を身体一面に被つてゐるが、亡者の幽体は頭部は山形に尖り、三角形の霊衣を纒うてをる。それも腰から上のみ霊衣を着し、腰以下には霊衣はない。幽霊には足がないと俗間にいふのも、この理に基づくものである。また徳高きものの精霊は、その霊衣きはめて厚く、大きく、光沢強くして人を射るごとく、かつ、よく人を統御する能力を持つてゐる。現代はかくの如き霊衣の立派な人間がすくないので、大人物といはるるものができない。現代の人間はおひおひと霊衣が薄くなり、光沢は放射することなく、あたかも邪神界の精霊の着てをる霊衣のごとく、少しの権威もないやうになつて破れてをる。大病人などを見ると、その霊衣は最も薄くなり、頭部の霊衣は、やや山形になりかけてをるのも、今まで沢山に見たことがある。いつも大病人を見舞ふたびに、その霊衣の厚薄と円角の程度によつて判断をくだすのであるが、百発百中である。なにほど名医が匙を投げた大病人でも、その霊衣を見て、厚くかつ光が存してをれば、その病人はかならず全快するのである。これに反して天下の名医や、博士が、生命は大丈夫だと断定した病人でも、その霊衣がやや三角形を呈したり、紙のごとく薄くなつてゐたら、その病人は必ず死んでしまふものである。 ゆゑに神徳ある人が鎮魂を拝授し、大神に謝罪し、天津祝詞の言霊を円満清朗に奏上したならば、たちまちその霊衣は厚さを増し、三角形は円形に立直り、死亡を免れるものである。かくして救はれたる人は、神の大恩を忘れたときにおいて、たちまち霊衣を神界より剥ぎとられ、ただちに幽界に送られるものである。 自分は数多の人に接してより、第一にこの霊衣の厚薄を調べてみるが、信仰の徳によつて漸次にその厚みを加へ、身体ますます強壮になつた人もあり、また神に反対したり、人の妨害をしたりなどして、天授の霊衣を薄くし、中には円相がやや山形に変化しつつある人も沢山実見した。自分はさういふ人にむかつて、色々と親切に信仰の道を説いた。されどそんな人にかぎつて神の道を疑ひ、かへつて親切に思つて忠告すると心をひがまし、逆にとつて大反対をするのが多いものである。これを思へばどうしても霊魂の因縁性来といふものは、如何ともすることが出来ないものとつくづく思ひます。 ○ 大国治立尊と申し上げるときは、大宇宙一切を御守護遊ばすときの御神名であり、単に国治立尊と申し上げるときは、大地球上の神霊界を守護さるるときの御神名である。自分の口述中に二種の名称があるのは、この神理に基づいたものである。 また神様が人間姿となつて御活動になつたその始は、国大立命、稚桜姫命が最初であり、稚桜姫命は日月の精を吸引し、国祖の神が気吹によつて生れたまひ、国大立命は月の精より生れ出でたまうた人間姿の神様である。それよりおひおひ神々の水火によりて生れたまひし神系と、また天足彦、胞場姫の人間の祖より生れいでたる人間との、二種に区別があり、神の直接の水火より生れたる直系の人間と、天足彦、胞場姫の系統より生れいでたる人間とは、その性質において大変な相違がある。そして神の直接の水火より生れ出たる人間は、その頭髪黒くして漆の如く、天足彦、胞場姫より生れたる人間の子孫は赤色の頭髪を有している。[※「そして神の直接の」から「頭髪を有して居る。」まで、校定版・八幡版では削除されている。]天足彦、胞場姫といへども、元は大神の直系より生れたのであれども、世の初発にあたり、神命に背きたるその体主霊従の罪によつて、人間に差別が自然にできたのである。 されども何れの人種も、今日は九分九厘まで、みな体主霊従、尊体卑心の身魂に堕落してゐるのであつて、今日のところ神界より見たまふときは、甲乙を判別なし難く、つひに人種平等の至当なるを叫ばるるに立いたつたのである。 ○ 盤古大神塩長彦は日の大神の直系にして、太陽界より降誕したる神人である。日の大神の伊邪那岐命の御油断によりて、手の俣より潜り出で、現今の支那の北方に降りたる温厚無比の正神である。 また大自在天神大国彦は、天王星より地上に降臨したる豪勇の神人である。いづれもみな善神界の尊き神人であつたが、地上に永住されて永き歳月を経過するにしたがひ、天足彦、胞場姫の天命に背反せる結果、体主霊従の妖気地上に充満し、つひにはその妖気邪霊の悪竜、悪狐、邪鬼のために、いつとなく憑依されたまひて、悪神の行動を自然に採りたまふこととなつた。それより地上の世界は混濁し、汚穢の気みなぎり、悪鬼羅刹の跋扈跳梁をたくましうする俗悪世界と化してしまつた。 八王大神常世彦は、盤古大神の水火より出生したる神にして、常世の国に霊魂を留め、常世姫は稚桜姫命の娘にして、八王大神の妃となり、八王大神の霊に感合し、つひには八王大神以上の悪辣なる手段を用ゐ、世界を我意のままに統轄せむとし、車輪の暴動を継続しつつ、その霊はなほ現代にいたるも常世の国にとどまつて、体主霊従的世界経綸の策を計画してをる。 ゆゑに常世姫の霊の憑依せる国の守護神は、今になほその意志を実行せむと企ててをる。八王大神常世彦には天足彦、胞場姫の霊より生れたる八頭八尾の大蛇が憑依してこれを守護し、常世姫には金毛九尾白面の悪狐憑依してこれを守護し、大自在天には、六面八臂の邪気憑依してこれを守護し、ここに艮の金神国治立命の神系と盤古大神の系統と、大自在天の系統とが、地上の霊界において三つ巴になつて大活劇を演ぜらるるといふ霊界の珍しき物語である。 自分はここまで口述したとき、何心なくかたはらに散乱せる大正日日新聞に眼をそそぐと、今日はあたかも大正十年陰暦十月十日午前十時であることに気がついた。霊界物語第二巻の口述ををはつた今日の吉日は、松雲閣において御三体の大神様を始めて新しき神床に鎮祭することとなつてゐた。これも何かの神界の御経綸の一端と思へば思へぬこともない。 ついでに第三巻には、盤古大神(塩長彦)、大自在天(大国彦)、艮能金神(国治立命)三神系の紛糾的経緯の大略を述べ、国祖の御隠退までの世界の状況、神々の驚天動地の大活動を略述する考へであります。読者諸氏の幸に御熟読あつて、それが霊界探求の一端ともならば、口述者の目的は達せらるる次第であります。 アゝ惟神霊幸倍坐世 大正十年旧十月十日午前十時十分 於松雲閣口述者識 (註)本巻において、国治立命、豊国姫命、国大立命、稚桜姫命、木花姫命とあるは、神界の命により仮称したものであります。しかし真の御神名は読んで見れば自然に判明することと思ひます。 |
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霊界物語 | 02_丑_常世姫の陰謀/シオン山攻防戦 | 47 天使の降臨 | 第四七章天使の降臨〔九七〕 ここに常世姫は、竜宮城に敗れ、金毛八尾の悪狐と変じ、常世城に逃げかへり、魔神八頭八尾の大蛇とともに、天下を席捲せむとし、ロッキー山、ウラル山、バイカル湖および死海にむかつて伝令をくだした。死海の水はにはかに沸騰し、天に冲するまもなく、原野を濁水に変じて悪鬼となつた。つひにウラル山はにはかに鳴動をはじめ、八頭八尾の悪竜と化し、あまたの悪竜蛇を吐きだした。 バイカル湖の水はにはかに赤色をおび、血なまぐさき雨となつて、四方八方に降りそそいだ。つぎに揚子江の上流なる西蔵、天竺の国境青雲山よりは、しきりに火焔を吐きだし、金毛九尾の悪狐となり、その口よりは数多の悪狐を吐き、各自四方に散乱した。 天足彦、胞場姫の霊より出生したる金毛九尾白面の悪狐は、ただちに天竺にくだり、ついでウラル山麓の原野に現はれた。ここに常磐城といふ魔軍の城がある。その王は八頭八尾の悪竜の一派にしてコンロン王といふ。青雲山より現はれたる金毛九尾の悪狐は、コンロン王の前に現はれ、たちまち婉麗ならびなき女性と化し、コンロン王に愛されつひにその妃となり、名をコンロン姫とつけられた。 コンロン姫はウラル山一帯を掌握せむとし、まづコンロン王を滅ぼさむとして仏頂山の魔王、鬼竜王に款を通じてゐた。コンロン王の従臣コルシカはコンロン姫の悪計を悟り、夜陰に乗じてこれを暗殺した。コンロン王は鬼竜王の悪計を知り、悪竜をして、近づき攻撃せしめた。鬼竜王は、死力をつくして戦ふた。このとき常世国ロッキー山より常世姫の魔軍は黒雲となり、風に送られて、仏頂山近く進んだ。空中よりは黒き雲塊雨のごとく地上に落下し、たちまち荒鷲と変じ、猛虎となり、獅子と化し、狼となつて諸方に散乱し、ここに驚天動地の大混乱が始まつたのである。敵味方の区別なく、世界は大混乱状態に陥り、味方の同志討は諸方に勃発した。 海上には黒竜火焔を吐きつつ互ひに相争ひ、勝敗定まらず、暴風吹き荒み、血雨滝のごとく降り、洪水おこりて山をも没せむとするにいたつた。天空には幾千万とも数かぎりなき怪鳥翼をならべて前後左右にかけめぐり、空中に衝突して、あるひは地上に、あるひは海上に落下し、火焔は濛々としてたちあがり、高き山はほとんど焼けうせ、水上は地震のために巨浪山をなし、天地もほとんど破壊せむばかりであつた。 このとき地の高天原に、国治立命現はれたまひ、大八洲彦命に命じて、天上の天則をもつて地上に宣伝せむとしたまうた。八百万の神司はこの旨を奉戴し、天の鳥船に乗り諸方に駆けめぐり、天則を芭蕉の葉に記し、世界各地に撒布せしめた。されど一柱とてこれを用ゐる者はなく、かへつてこれを嘲笑するばかりである。大八洲彦命はやむをえず、一まづ地の高天原に帰還された。 このとき天上より嚠喨たる音楽聞こえ、数多の従神をともなひ、いういうとして地の高天原めがけて降りきたる荘厳な女神があつた。女神は第一着に竜宮城に現はれ、城内にしばし光玉と化して休息し、ふたたび元の女神となり、従神とともに地の高天原なる、国治立命の宮殿に着かせたまひ、 『この度の地上の大混乱たちまち天上に影響し、天上の状態はあたかも乱麻のごとし。一時も早く大地を修理固成し、もつて天上の混乱を治められよ。吾は日の大神の神使、高照姫命なり』 と伝へられた。 国治立命は神意を畏み、すみやかに地上の混乱を治め、天界を安全ならしめ、もつて天津大神の御目にかけむと答へられた。高照姫命は大いに喜び、大神もさぞ御満足に思召すらむ。妾は急ぎ、貴神の答辞を復命したてまつらむ、と喜び勇んで天上に紫雲とともに帰りたまうた。 (大正一〇・一一・八旧一〇・九栗原七蔵録) |
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霊界物語 | 03_寅_十二の国魂/大道別/天使長の更迭 | 総説 | 総説 天地剖判して大地、日、月、星辰現はれ、地上には樹草、人類、獣、鳥、魚、虫を発生せしめ、各自分掌の神を定めてこれを守護せしめたまひける。 大神は人体の元祖神として天足彦、胞場姫を生みたまひ、天の益人の種と成したまひたり。しかるに天足彦は胞場姫のために神勅にそむきて霊主体従の本義を忘れ、つひに体主霊従の果実を食し、霊性たちまち悪化して子孫に悪念を遺したるのみならず、邪念はおのづから凝つて八頭八尾の大蛇と変じ、あるひは金毛九尾の悪狐と化し、六面八臂の魔鬼となり、世界を混乱紛擾せしめ、国治立大神、国直姫命、大八洲彦命以下の諸神を根の国に隠退せしめ、盤古大神(塩長彦)を奉じて国治立大神の聖職に代らしめ、塩長姫をして国直姫命の職をおそはしめ、八王大神(常世彦)をして大八洲彦命の職を司らしめ、常世姫をして豊国姫命にかはらしめ、和光同塵的神策を布き、一時を糊塗して、大国彦と結託し、世界を物質主義に悪化し、優勝劣敗、弱肉強食の端を開き、つひには収拾すべからざる悪逆無道の暗黒界と化せしめ、その惨状目もあてられぬ光景となりたれば、天の三体の大神も坐視するに忍びず、ここに末法濁世の代を短縮して再び国治立命の出現を命じたまひ、完全無欠の理想の神世の出現せむとする次第を略述せるものなれども、製本上の都合により本巻は、国大立命および金勝要神、大将軍沢田彦命の隠退さるるまでの霊界の消息を伝ふることとせり。ゆゑにこの霊界物語は、あたかも大海の一滴、九牛の一毛にもおよばず、無限絶対、無始無終の霊界の一部の物語なれば、これをもつて霊界の全況となすは誤りなり。願はくはこの書をもつて霊界一部の消息を探知し、霊主体従の身魂に立ちかへり、世界万国のために弥勒の神業に奉仕されむことを懇望する次第なり。数千年間の歴史上の事実のみ研究さるる現代の人士は、この物語を読みて或ひは怪乱狂暴取るにたらざる痴人の夢物語と嘲笑し、牽強附会の言となさむは、むしろ当然の理といふべし。神諭に曰く、 『世の元の誠の生神が、時節きたりてこの世に現はれ、因縁ある身魂にうつりて太古から言ひおきにも、書きおきにもなきことを、筆と口とで世界へ知らすのであるから、世界の人民が疑ふて真実にいたさぬのは、もつとものことであるぞよ云々』 と示されあり。また、 『この神の申すことは、因縁の身魂でないと、到底腹へは這入らぬぞよ』 と示されあり。ゆゑに神縁深き人士にあらざれば、断じて信じ難からむ。 要は、単に一片の小説と見なしたまふも不可なく、また痴人の夢物語として読まるるも可なり。ただ天地の大神たちの天地修理固成の容易ならざる御艱難と御苦心の径路を拝察したてまつり、かつ洪大無辺の神恩に報ひたてまつり、人生の本分を全ふしうる人士の一人にても出現するにいたらば、口述者にとりて、望外の欣幸とするところなり。惟神霊幸倍坐世 大正十一年一月王仁識 |
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霊界物語 | 03_寅_十二の国魂/大道別/天使長の更迭 | 01 神々の任命 | 第一章神々の任命〔一〇一〕 国治立命は、無限絶対の大神力を発揮し、まづ大地を創造したまひぬ。この時清き軽きものは日月星辰となり、重く濁れるものは大地と別れたり。しかしてここに陰陽二神の夫婦が生れたるが、男を天足彦といひ、婦を胞場姫といふ。 しかるに物には表裏あり、善悪あり、陰陽あり、火水ありて初めて万物を形成さるるは自然の理法なり。このとき宇宙間に存在する邪気凝つて妖魅を現出し、霊主体従の神木に、体主霊従の果実を結ぶにいたりけり。ここに神は、 『この果実を喰ふべからず』 と女神に命じたまひしを、女神は神命を奉ぜず、みづから採つてこれを食し、つぎに夫神にまでもすすめ食はしめたりける。これより地上の世界は体主霊従にかたむき、種々の罪悪は漸次発生し、邪悪の気凝つて八頭八尾の悪竜となり、金毛九尾の悪狐となり、六面八臂の邪神、妖気の霊怪天地のあひだに発生するにいたりける。これより天地の間には、罪悪さかんに行はれ、天地混沌として紛乱に紛乱をかさね、世は常闇となり、ほとンど拾収すべからざる状態となりにける。 ここに国治立命は、豊国姫命を補佐神とし、八百万の神とともに、千辛万苦をなめたまひ、つひに天道別命(モウゼ)とともに天地の律法を制定せられたり。その律法は前巻に述べたるごとく、内面的には、 省みる 恥る 悔ゆる 畏る 覚る の五ケ条であり、外面的には、 第一、夫婦の道を厳守し、一夫一婦たるべきこと 第二、神を敬ひ、長上を尊み、博く万物を愛すること 第三、たがひに嫉み、謗り、詐り、盗み、殺すなどの悪事を為すべからざること 右の大要を示され、その他百般の事物について、細密なる律法が設けられたりける。ここにおいて、まづこれを地上におこなひ、天上にもこれを行はむとし、三体の大神に認許を受け、これを天地に施行さるることとはなりける。 ここに三体の大神、国治立命は天地合体して世を治むべく、天地間を往来して、神命の戒律を天上地上に宣布すべく、管掌の神を定めたまひけり。 さて国治立命は、天上の三体の神の命により、太陽界に使神となり、日天使国治立命と称され、豊国姫命は月天使国大立命と名づけられ、日天使の神業を国直姫命に、月天使の神業を豊国姫命に委任され、天道別命は現界の諸神に律法を宣伝する聖職とならせたまひたり。 神は天地の律法を天上地上にあまねく拡充すべく、十六柱の神司を霊主体従の天使として重く任命せられたり。十六天使の名は、大八洲彦命、言霊別命、神国別命、大足彦、花森彦、磐樟彦、元照別、道貫彦、貴治彦、有国彦、真鉄彦、磐玉彦、斎代彦、吾妻別、神澄彦、高山彦にして大八洲彦命は天使の長となり、十六天使を指揮さるることとなりにけり。 以上の十六天使は、天上地上を往復し、天地の律法を宇宙間に宣伝したまひ、一時は天地ともに太平に治まり、大神の理想の世は完全に樹立されたりしが、たちまち地の各所より、邪神勃興して世はふたたび混乱の巷と悪化せむとぞしたりける。 ここに国治立命は、シオン山に鎮祭せる十二個の玉を大地の各所に配置し、これを国魂の神となし、八頭神を任命さるることとなりたり。 (大正一〇・一一・一三旧一〇・一四栗原七蔵録) |
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霊界物語 | 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 | 10 奇々怪々 | 第一〇章奇々怪々〔二一〇〕 八王大神常世彦は、この不思議な光景を見て、二人を伴ひ、奥殿に急ぎ入りて、心私かに国祖の神霊に祈願し、怪事続出の難を救はれむことを祈願した。 奥の一間よりサヤサヤと、衣摺の音聞えて現はれ出でたる巨大の神は、大八洲彦命であつた。常世彦は夢に夢見る心地して、物をも言はずジツとその顔を見上げた。大八洲彦命と見えしは、大江山の鬼武彦であつた。常世彦は二度驚愕して、狐に魅まれしごとき顔付しながら、又もやその顔を熟視した。見るみる神の額に角が現はれた。そしてその容貌身長は、わが子の常治彦に分厘の差なきまでに変つてしまつた。表の門前に当つては神人らの騒ぎの声ますます頻りに聞える。八王大神は五里霧中に彷徨ひながら、この場を棄てて表玄関に立現れた。 ここにも常治彦が神人らを相手に闘つてゐる。同時に三柱の常治彦が現はれて、角を以て牛の様に何れも四這になり、突き合を始めた。つひには常世彦を目がけて三方より突き迫つた。 このとき竜宮城の方にあたりて、一大爆発の声が聞ゆるとともに、黒烟濛々と立上り、大火災となつた。常世姫は、命カラガラ火中よりのがれ出で、ヱルサレムに走りきたりて、常世彦に救援を請はむとした。このとき常世彦は、牛のごとく変化したる三柱の神に三方より突き捲られ、逃路に迷ひ苦しむ最中であつた。 奥殿の方にあたりて、またもや大爆音が聞えた。見れば殿内は全部黒煙につつまれ、宮殿の四方より一時に火焔立昇り、瞬くうちに各種の建物は全部烏有に帰した。 竜宮城の三重の金殿は俄に鳴動し、天に向つて際限もなく延長し雲に達し、その尖端は左右に分れ、黄金色の太き柱は東西に際限もなく延長し、満天に黄金の橋を架け渡したかのごとくに変つてしまつた。あたかも三重の金殿は丁字形に変化してしまつた。その丁字形の黄金橋を天の浮橋といふ。この橋より俄に白雲濛々として顕現れ、満天を白くつつんだ。たちまち牡丹のごとき雪は、頻りに降りきたり、見るまに聖地は雪に包まれてしまつた。常世彦は火と雪とに攻められ、あまたの神人らと共に、辛うじてアーメニヤの野にむかつて遁走しはじめた。 一方エデンの宮殿は、轟然たる音響とともに、大地震動して巨城を滅茶々々に打倒し、樹木は根本より倒れ、火災は四方より起こり、黒煙に包まれ、咫尺を弁ぜざるの惨状に陥つた。時しも雪はにはかに降りきたり、道を塞ぎ、神人は自由に行動することができなくなつた。 盤古大神はいち早くエデンの大河に船を泛べ、南岸に渡り、雪を掻分けながら些少の従者とともに、期せずして、アーメニヤの野にむかつて命カラガラ遁走した。降雪ますます烈しく、つひに一行は雪に埋もれてしまつた。 このとき太陽はにはかに光熱を増し、四方山の積雪は一時に氷解し、地上はあたかも泥の海となつてしまつた。盤古大神はじめその他の神人らは、傍の木に辛うじて攀上つた。あまたの蛇その他の虫族は先を争うて木に上り難を避けた。前方の木の枝にあたつて泣き叫ぶ声が聞えた。見れば、竜宮城の司宰神なる常世姫が、木の上であまたの毒蛇に全身を巻かれて苦しむ声であつた。八王大神はその木の中腹にまたもやあまたの蛇に全身を巻付けられ、顔色蒼白となり、息も絶え絶えの光景である。 このとき東南の方より、天地六合も一度に崩壊せむばかりの大音響をたて、黒雲を起し、驀地に進みきたる大蛇があつた。これは天足彦、胞場姫の霊より現はれた八頭八尾の大蛇であつた。大蛇は巨大なる尾を前後左右に打振り打振り暴れ廻つた。この震動に水は追々と減じ、大地の表面を露はすやうになつた。すべての蛇は先を争うて樹上より落下し、各自土中にその影を潜めた。このため常世彦、常世姫をはじめ、塩長彦は漸くにして危難を免れ、神人らと共に、アーメニヤに無事到着することを得た。 塩長彦は、エデンの宮殿を棄てて遁走するとき、驚愕のあまり、妻の塩長姫を伴ふことを忘れてゐた。しかるに豈はからむや、アーメニヤの野には立派なる宮殿が建てられ、そのうちにわが妻の塩長姫および塩光彦は欣然として、あまたの神人らと共に、塩長彦一行を迎へたのは、奇中の奇とも言ふべきである。吁、かくの如く到るところに異変怪事の続発するは、大地の主宰神たる国祖を退隠せしめ、地上の重鎮を失ひたるがために、たとへ日月は天上に輝くといへども、霊界はあたかも常暗の惨状を誘起し、邪神悪鬼の跋扈跳梁に便ならしめたためである。これより地上の神界は、日に月に妖怪五月蠅のごとく群がり起り、収拾すべからざる常暗の世を現出した。 (大正一一・一・六旧大正一〇・一二・九松村仙造録) |
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霊界物語 | 10_酉_黄泉比良坂の戦い | 15 言霊別 | 第一五章言霊別〔四四五〕 国祖国治立命出現されし太初の世界は、風清く澄み、水清く、空青く、日月曇なく、星を満天に麗しく輝き、山青く、神人は何れも和楽と歓喜に満され、山野には諸々の木の実、蔓の実豊熟し、人草は之を自由自在に取りて食ひ、富めるもなく貧しきもなく、老もなく病もなく死を知らず、五風十雨の順序正しく、恰も黄金時代、天国楽園の天地なりき。然るに天足彦、胞場姫の体主霊従的邪念は、凝つて悪蛇となり、また悪鬼悪狐となり、その霊魂地上に横行濶歩して茲に妖邪の気満ち、貧富の懸隔を生じ、強者は弱者を虐げ、生存競争激烈となり、地上は遂に修羅の巷と化したるのみならず、神人多くその邪気に感染して利己主義を専らとし、遂には至仁至愛の大神の神政を壊滅せむとするに至りける。地上神人の邪気は、遂に世界の天変地妖を現出し、大洪水を起し、一旦地の世界は泥海と化し、数箇の高山の巓を残すのみ、惨状目も当てられぬ光景とはなりぬ。 この時、高皇産霊神、神皇産霊神、大国治立神は顕国玉の神力を活用し、天の浮橋を現はし給ひて地上の神人を戒め、且つ一柱も残さず神の綱に救ひ給ひ、諾冊二神を地の高天原なる天教山に降して、海月なす漂へる国を、天の沼矛を以て修理固成せしめ給ひ、国生み島生み神を生み、再び黄金世界を地上に樹立せむとし給ひぬ。然るに又もや幾多の年月を経て地の世界は悪鬼、悪蛇、悪狐その他の妖魅の跳梁跋扈する暗黒世界と化し、優勝劣敗、弱肉強食の社会を出現し、大山杙、野椎、萱野姫、天の狭土、国の狭土、天の狭霧、国の狭霧、天の闇戸、国の闇戸、大戸惑子、大戸惑女、鳥の石楠船(一名天の鳥船)、大宜都姫、火の焼速男(一名火の迦々彦、火の迦具土)、金山彦、金山姫等の諸神の荒び給ふ世を現出したりける。 一旦天地の大変動により新に建てられたる地上の世界は、又もや邪神の荒ぶる世となり、諸善神は天に帰り、或は地中に潜み、幽界に入りたまひて、陰の守護を遊ばさるる事となりしため、再び常世彦、常世姫の系統は、ウラル彦、ウラル姫と出現し、ウラル山を中心として割拠し、自ら盤古神王と偽称し、大国彦、大国姫の一派は邪神のためにその精魂を誑惑され、ロッキー山に立て籠り、自ら常世神王と称し、遂には伊弉冊命、日の出神と僣称し、天下の神政を私せむとする野望を懐くに至れり。 茲に伊弉冊命は、この惨状を見るに忍びず、自ら邪神の根源地たる黄泉の国に出でまして邪神を帰順せしめ、万一帰順せしむるを得ざるまでも、地上の世界に荒び疎び来らざるやう、牽制運動のために、黄泉国に出でまし、次で海中の竜宮城に現はれ、種々の神策を施し給ひしが、一切の幽政を国治立命、稚桜姫命に委任し、海中の竜宮を乙米姫命に委任し、自らロッキー山に至らむと言挙し給ひて、窃に天教山に帰らせ給ひ、又もや地教山に身を忍びて、修理固成の神業に就かせ給ひつつありたるなり。 天地の神人は、此周到なる御経綸を知らず、伊弉冊命は黄泉の国に下り給ひしものと固く信じ居たるに、伊弉冊命のロッキー山に現はれ給ふとの神勅を聞くや、得たり賢しとして元の大自在天にして後の常世神王となりし大国彦は、大国姫その他の部下と謀り、黄泉島を占領して、地上の権利を掌握せむとしたれば、大神は遂に前代未聞の黄泉比良坂の神戦鬼闘を開始さるるに致りたるなり。 この戦は、善悪正邪の諸神人の勝敗の分るる所にして、所謂世界の大峠是なり。 ○ この物語に就て附言して置きたい事は、諾冊二神が海月成す漂へる国を修理固成して、国生み、島生み、神生み、万の物に生命を与へ給ひし世界以前に於ける常世城と、以後の常世城の位置は非常に変つて居る。また鬼城山その他の神策地も多少の異動があり、国の形、島の形、河川湖水山容等にも余程の変化がある事を考へねばならぬ。一々詳説すれば際限がないから、この物語には煩を避けて省いた所が沢山ある。また第一巻、第二巻に現はれた天の浮橋以前の神が、第二の世界に現はれて、その時よりは若くなつたり、或は一旦帰幽した神人が神界に前の姿を現はして活動してをるのは、常識の上から判断すれば常に矛盾のやうである。また混乱無秩序、支離滅裂の物語と聞えるのは寧ろ当然である。しかし、この物語は総ての神人の霊を主とし、その肉体を閑却したる、いはゆる霊界物語であつて、霊主体従主義であるから、この神人は何時の世に帰幽し、また幾年後に肉体をもつて現はれ、何々の活動をなし、或は善を行ひしとか、悪を行ひしとか、何神の体に宿つて生れたりとか云ふやうな詳細の点は、際限がないから大部分省いてある。 総て地上の神人は、霊より肉へ、肉より霊へと、明暗生死、現幽を往来して神業に従事するものであるから、太古の神人が中古に現はれ、また現代に現はれ、未来に現はれ、若がへり若がへりして、永遠に霊即ち本守護神、即ち吾本体の生命を無限に持続するものなるが故に、その考へを頭脳に置いて此物語を読まねば、幾多の疑惑や矛盾が湧いて来るのは当然である。 数千里の山野河海を一ケ月或は二ケ月に跋渉したり、又は一日の間に跋渉する事がある。千変万化、明滅不測の物語も、総て霊界の時間空間を超越したる現幽一貫の霊的活動を物質化、具体化して述べたものである事をも承知して貰ひたい。また北極に夏の太陽が出たり、赤道直下に降雪を見たり、種々の奇怪な物語がある。口述者に於いても、今日の知識より考へて不可解である。されど永遠無窮に熱帯は熱帯、寒帯は寒帯の侭、何時までも一定不変たる事を得ない。此宇宙は死物ではない限り、気候に於て位置に於て変動するも、幾十億万年の間の事であるから、強ち否定する訳にも行くまいと思ふ。故に読者の本書を肯定するも、否定するも、口述者に於ては何の感じもしないのである。至大無外、至小無内、若無所在、若無不所在、無明暗、無大小、無広狭、無遠近、過去と現在、未来とを問はず時間空間を超越し、人界を脱出し、大宇宙の中心に立つて、神霊界の物語を口述したものである。されど口述者は、決して自己の臆測や推考力によつたものでない。幽斎修業の際、見聞したる其侭の物語であつて、要するに七日七夜の霊夢を並べたものである。併しながら私としては些しも疑うて居るのではない。また不確実の物語とも思うて居ない事を告白して置きます。 (大正一一・二・二三旧一・二七加藤明子録) |
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霊界物語 | 11_戌_コーカス山の大気津姫退治 | 24 顕国宮 | 第二四章顕国宮〔四九一〕 春霞棚引き初めてコーカスの、山の尾の上や百の谷、大峡小峡の樹々の枝、黄紅白紫色々と、咲き乱れたる顕国、霊の御舎雲表に、千木高知りて聳え立ち、黄金の甍三つ巴、輝く旭日に反射して、遠き近きに照り渡る、神須佐之男の大神は、宮の主と現れまして、堅磐常盤に鎮まりて、大海原に漂へる、秋津島根を心安の、美しき神世に開かむと、瑞の御霊の三葉彦、神の教を広道別[※御校正本・愛世版では「広国別」だが、校定版・八幡版では「広道別」に修正している。太玉命と名を変へたのは広道別であり、広国別は別人である。したがって霊界物語ネットでも広道別に修正した。]の、三五教の宣伝使、太玉の命と名を変へて、栄え芽出度き松代姫、妹背の道を結ばせつ、天津御神や国津神、八百万在す神等に、太玉串を奉る、卜部の神と任け給ひ、顕国玉の宮の司となし給ふ。青雲別の其御稜威、高彦神の宣伝使、天の児屋根と改めて、天津祝詞の神嘉言、詔る言霊の守護神、顕国玉大宮の、祝の神と任け給ひ、梅ケ香姫と妹と背の、契を結ばせ給ひけり。白雲別の宣伝使、教を開き北光の、神の司の又の御名、天の目一つ神司、竹野の姫を娶はして、アルプス山に遣はしつ、石凝姥と諸共に、鏡、剣を鍛はしめ、国の御柱樹て給ふ、神縁微妙の神業を、四方の神達人草の、夢にも知らぬ久方の彦の命の雲道別、名も大歳の神司、五穀の食を葦原の、四方の国々植ゑ拡め、神の恵みも高倉や、月日も清く朝日子の、白狐の神の此処彼処、生命の苗を配りて、青人草の日に夜に、食ひて生くべき水田種子、守り給ふぞ尊けれ。 コーカス山の山上にウラル彦、ウラル姫の贅を尽し美を竭して建造したる顕国の宮殿には大地の神霊たる金勝要神、大地の霊力たる国治立命及び大地の霊体の守護神神須佐之男大神を鎮め奉り、荘厳なる祭典を行ひ三柱の神の神力に依つて、天ケ下を統御せむと体主霊従の根本神たる天足彦、胞場姫の再来、八岐の大蛇や悪狐、其他の邪鬼妖魅に天授の精魂を誑惑されて、ウラル彦、ウラル姫以下の曲神は、最後の経綸場としてコーカス山を選み、宮殿を造り八王神を数多集へて、アーメニヤにも劣らざる神都を開きつつありける。 斯かる処へ石凝姥命、天之目一箇神、天之児屋根命、正鹿山津見神の娘大神津見と現はれたる松代姫、竹野姫、梅ケ香姫、時置師神、八彦、鴨彦等の神現はれて、天津誠の神言を奏上し宣伝歌を唱へたれば、流石のウラル姫も以下の神々も天津誠の言霊に胆をうたれ、胸を挫がれ、全力を集注して経営したる可惜コーカス山を見捨てて、生命からがらウラル山、アーメニヤの根拠地に向つて遁走し、コーカス山は今は全く三五教の管掌する処となりにける。 茲に神須佐之男命は地教の山を後にして顕国の宮に入らせ給ひ、天之目一箇神をして十握の剣を鍛へしめ顕国の宮の神実となし、天下の曲神を掃蕩すべく天之児屋根命、太玉命をして昼夜祭祀の道に鞅掌せしめ給ひぬ。神須佐之男大神は十握の剣を数多作り供へて、曲神の襲来に備へむため天之目一箇神をアルプス山に遣はし、鋼鉄を掘らしめ数多の武器を作る事を命じ給へり。アルプス山はウラル彦、ウラル姫の一派の武器製造の原料を需めつつありし重要の鉱山なりき。これより天之目一箇神は竹野姫と共にアルプス山に向ふ事となり、淤縢山津見神、正鹿山津見神、月雪花の宣伝使はアーメニヤの神都に向つて魔神を征服すべく、神須佐之男大神の命を奉じてアーメニヤに向ひける。又アルプス山には石凝姥神を添へて、天之目一箇神、竹野姫と共に銅鉄を需めしむべく出発せしめ給ひける。 此事忽ち天上に在す天照皇大神の御疑ひを懐かせ給ふ種となり、遂に須佐之男命は、姉神に嫌疑を受け神追ひに追はれ給ふ悲境に陥り給ひたるなり。 (大正一一・三・四旧二・六北村隆光録) |
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霊界物語 | 15_寅_顕恩郷/スサノオの経綸/高姫登場 | 09 薯蕷汁 | 第九章薯蕷汁〔五七六〕 千早振る遠き神代のその始め、神の教に背きたる、天足彦や胞場姫の、醜の身魂の凝結し、八岐大蛇や、金毛九尾白面の悪狐となつて、天地の水火を曇らせつ、常世の国に現はれし、常世彦や常世姫、盤古大神の体に宿りて世を乱し、一度は神の御教に、服ひ奉り真心に、立帰りしも束の間の、いや次々に伝はりて、ウラル彦やウラル姫の、又もや体に宿りつつ、天地を乱す曲業の、力も失せて常世国、島の八十島八十国の深山の奥に立籠り、人の身魂を宿として、バラモン教やウラナイの、教を樹てて北山の、鳥も通はぬ山奥に、数多の魔神を呼び集へ、ウラナイ教と銘打つて、又もや国を乱し行く、其の曲業ぞ由々しけれ。 館の主高姫は、安彦、国彦、道彦の宣伝使に危難を救はれ、感謝の意を表はし館に迎へ入れて、鄭重に饗応せむと強て一行を迎へ入れた。 一行五人は美はしき一室に招ぜられ、手足を伸ばし悠々として寛いでゐる。高姫は此の場に現はれ、 高姫『コレハコレハ三人の宣伝使様、能うマア危き所を御救け下さいました。これと云ふも全く妾が日頃信仰するウラナイ教の御本尊大自在天様の御引合せでございませう。神様は三五教の宣伝使に憑依つて、妾の危難を御救ひ下さつたのです。謂はば貴方等は神の御道具に御使はれなさつただけのもの、貴方の奥には大自在天様が御鎮まりでございます。誠に以て御道具御苦労でございました。何もございませぬが悠々と御あがり下さいませ』 と言ひ棄てて徐々と次の間に姿を隠した。 国彦『ナンダ、怪体な挨拶じやないか。われわれは三五教の教理に依つて、敵を敵と致さず生命を的に危険を冒して救つてやつたのだ。それに何ぞや、大自在天の御道具に使はれなさつたなぞと、減ず口を叩きよつて何うも宗旨根性と云ふものは、何処迄も抜けぬものとみえるワイ』 道彦『マアマア何うでも好いぢやないか。彼奴を片端から三五教に兜を脱がしさへすれば好いのだ。何でも好いから言はすだけ言はして置けば、腹の底が自然に解つて来る。さう言葉尻を捉へて、ゴテゴテ言ふものでは無い。洋々たる海の如き寛容心を以て衆生済度に掛らねば、彼れ位なことに目に角を立てて鼻息を喘ますやうなことでは、到底宣伝使どころか、信者たるの価値さへもないと云つても然りだよ』 斯く話す折しも以前の高姫は、縁の欠けたる丼鉢に麦飯を盛り、粘々したものをドロリとかけ、三人の小間使に持たせて入り来り、 高姫『コレハコレハ皆サン、ご苦労でございました。山家のこととて何か御構ひを致さねばなりませぬが、麦飯に薯蕷汁が出来ました。これなりとドツサリ御あがり下さい。俄の客来で沢山の鉢の中から探しましたが、縁の欠けたのは漸く三つよりございませぬ。二人の御供は最前ソツとあがれとも音はぬのに、喜三郎をなさいましたから、どうぞ辛抱して下さいませ。貴方等に出すやうな器は漸う三つ見つかりました。後は立派な完全無欠の器ばつかりでございます。この様に見えても痰なぞは滅多に混入してゐる気遣ひはございませぬ。どうぞタントタント御あがり下さいませ。オホヽヽヽヽ』 と厭らしき笑ひと共に、白い出歯をニユツと出し、のそりのそりと又もや元の居室に姿を隠しける。 国彦『われわれを飽く迄侮辱しよる怪しからぬ奴だ。恰で一途の川の二人婆のやうな面をしよつて、モー堪忍袋の緒が切れた』 と云ひ乍ら、丼鉢の麦飯とろろを座敷一面に投げつける。座敷はヌルヌルととろろの泥田のやうになつて了つた。 又もや二人分の丼鉢を次の室に投げ付け、次の室も亦とろろの泥田となつた。 国彦『さアこれで溜飲が下つた。婆の奴滑り倒けよると一層御愛嬌だがナア』 安彦『オイ国彦、貴様は乱暴な奴だナア。三五教の宣伝使が喧嘩を買うと云ふことがあるものか、如何なる強敵に向つても飽く迄無抵抗主義で、誠で勝つのだよ。ナント云ふ情無いことをして呉れるのだ。今日限り破門を致すから、さう心得ろ』 国彦『それだから三五教は腰抜け教だと云ふのだよ。貴様の方から破門する迄に、こちらの方から国交断絶だ』 と自暴糞になり、捻鉢巻となつてドンドンと四股を踏み鳴らし、荒れ狂ふ此の物音に驚いて、高姫を始め数人の男女此場に現はれ、 高姫『コレハコレハ三五教の宣伝使様、誠に御立派な御教理には感心致しました。口では立派なことを仰有るが、其の行ひは一層見上げたもの、人の座敷に泊り乍ら、吾々一同が心を籠めた御馳走を座敷一面に撒き散らし襖を蹴倒し、障子の骨を折り、イヤもう乱暴狼藉、実に立派な御教理には、ウラナイ教の吾々も、あまり感心の度が過ぎてアフンと致します。開いた口が閉まりませぬ。三五教の御教通り手も足も踏込む所がございませぬ。オホヽヽヽヽ。コレコレ皆の者ども、この宣伝使様の立派な御教をお前達は、能く腹へ入れて置くがよいぞや』 もう一人の婆は口を尖らし、 婆『コリヤお前達は三五教の宣伝使だと云つて偉さうに天下を股にかけて歩く代物だらう。大方三五教は斯んな行ひの悪い宗教だと思つて居つた。やつぱり人の風評は疑はれぬワイ。屹度変性女子の世の乱れたやり方を見倣うて、其処中をとろろドツコイ泥だらけに穢して歩く悪の御用だらう。素盞嗚命は天の岩戸を閉める役だと云ふことだが、悪も其処まで徹底すれば反つて面白い。このウラナイ教は斯う見えても立派なものだぞ。変性男子の生粋の教を守つとるのだぞ。三五教も初めは変性男子の教で立派なものだつたが、素盞嗚命の身魂の憑つた肉体が出て来て、人の苦労で徳を取らうとしよつて、変性男子を押込めて世の乱れた行り方の、女子の教が覇張るものだから三五教もコンナ悪の教になつて了つたのだ。三五教の奴は二つ目には、ウラル教が何うだのバラモン教が悪だのと、お題目のやうに仰有るけれど、今の宣伝使の行ひは何うぢやな。これでも善の立派な教と云ふのかい。この高姫も元は変性男子の御血筋の肉体だ、日の出神の生宮ぢや。竜宮の乙姫さまもチヨコチヨコ御出でになつて、体主霊従国の悪神の仕組を、すつかりと握つてござるのぢや。変性女子と云ふ奴は胴体無しの烏賊上り、三文の大神楽のやうに頤太ばつかり発達しよつて、鰐のやうな口を開けて、其方此方の有象無象を噛んだり、吐いたりする大化物だ。お前達は其の大化物を神様だと思つて戴いて居る小化物ならよいが、小馬鹿者の薄馬鹿者だよ。これからちつとウラナイ教の教を聴きなさい。身の行ひを換へて誠水晶のやり方に立替へねば何時まで経つても五六七の世は来はせぬぞえ』 国彦『エーエ、ツベコベと能う八釜敷く吐す婆だな。貴様は偉さうにツベコベと小理窟を並べよるが、人を招待するに欠けた穢い鉢を選んで出すと云ふことがあるかい。これが抑も貴様の方から俺を焚きつけにかかつてゐよるのだ。三五教だつて、いらはぬ蜂はささぬぞ、釣鐘も叩くものが無ければ音なしいものだ、春秋の筆法で言へば、貴様が丼鉢を投げたのだ。イヤ大自在天がやつたのだ。俺は大自在天の道具に使はれたのだ。此処の大将が最前さう云つたぢやないか。ナント大自在天と云ふ神は乱暴な神だなア。ウラナイ教はコンナ悪魔の乱暴な神を御本尊にして居るのか苟くも三五教の宣伝使は、至粋至純の身魂の持主だぞ』 高姫『オホヽヽヽ、至粋至純の身魂の持主の為さること哩のー。自分のした責任を、勿体無い、大自在天様に塗りつけて、それで自分は知らぬ顔の半兵衛をきめこんでゐるのか。都合の好い教理だなア』 国彦『われわれの魂は水晶魂だ。真澄の鏡も同様だ。それだからウラナイ教の悪がすつかり此方の鏡に映つて居るのだ。アーア水晶の身魂も辛いものだワイ。アハヽヽヽ』 黒姫『団子理窟をこねる日には際限が無い。兎も角行ひが一等だ。立派な御座敷の真ん中に主人の好意で出した麦飯とろろを打ち開けるとは沙汰の限り、やつぱり悪の性来は何うしても現はれるものぢや。ソンナ馬鹿な教の宣伝使になるよりも、一つ改心してウラナイ教になつたら如何だい。誠の変性男子の教は此の高姫さまと、黒姫がチヤント要を握つてゐるのだよ。昔の神代の根本の身魂の因縁から、人民の大先祖のことから又万劫末代のこと、根の国、底の国、なにも彼も知つて知つて知り抜いた世界で、たつた一人の日の出神の生宮ぢや。この黒姫は竜宮の乙姫の守護だぞ。艮の金神様も元は此処から現はれたのだ。本が大事ぢや。「本断れて末続くとは思ふなよ。本ありての枝もあれば、末もあるぞよ」と三五教は教へて居るぢやないか。その根本の本の本の大本は、此日の出神がグツト握つて居るのぢや。神の奥には奥があるぞ。三五教の宣伝使のやうに理窟ばかり言つてこの頃流行る学の力を以て、神の因縁を説かうと思つても、それは駄目ぢや。千年万年経つたとて誠の神の因縁が判つて堪るものか。誠の神の御用が致し度くば、ウラナイ教に改心して随うがよかろう』 国彦『婆アサン、大きに御心配かけました。この国彦は三五教でも無ければ、ウラル教でもない、ウラナイ教では尚更ないのだ。あまり三五教の悪いことばつかり仰有ると、ウラナイ教の化けの皮が現はれるぞえ。左様なら、モシモシ三五教の二人の宣伝使サン御悠くりと下らぬ説教でも聴かして貰つて、眉毛を読まれ、尻の毛が一本も無いとこ迄抜かれなさるがよろしからう。コラ二人の皺苦茶婆、用心せーよ。何処に何が破裂致さうやら判らぬぞよ』 と尻をクリツと捲つて裏門から、一発破裂させ乍ら何処とも無く姿を隠して了つた。 道彦『アハヽヽヽ』 安彦『アーア道彦サン、彼様乞食を伴れて来るものだから、薩張り三五教と混同されて偉い迷惑をした。これから迂濶と何でも無い者を連れて歩くものぢやない』 道彦『アヽ左様ですな、モシモシ高姫サン、黒姫サン、三五教には彼の様な宣伝使は、一人も居りませぬよ。彼の男は途中から道案内に伴れて来たのですから、好い気になつて宣伝使気取りでアンナことを言つたのですよ。アハヽヽヽ』 黒姫『神様の宣伝使は嘘は言はぬもの、誠一つの教を樹てるのは、此のウラナイ教。三五教は矢張り嘘をつきますなア。彼の男は元は与太彦と云うて、貴方等と一緒に宣伝に歩いて居つた人でせう。違ひますかな』 安彦、道彦『サア』 黒姫『サア返答は』 安彦、道彦『サアそれはマアマアマア彼奴は俄に気が違つたのですよ。それだからアンナ脱線した行ひをやるのですワ。アハヽヽヽ』 黒姫『能う嘘をつく人だナ。今お前サンは道案内に途中から雇うて来たと云つたぢやないか。それだから三五教は駄目、ウラナイ教が誠の教と云ふのだ』 安彦『一体此処の館には盲人ばつかり居りますな』 と話を態と横へ転じた。 黒姫『誠の教を聴かうと思へば、目が開いて居つては小理窟が多くつて仕様がないから、みな盲目や聾ばかり寄せてあるのだ。見ざる、聞かざると言うて、盲目聾程よいものは無い。此処へ来る奴は、みな此高姫サンと黒姫が耳の鼓膜を破り、眼の球を抜いて、世間の事がなにも解らぬやうに、神一筋になるやうにしてあるのだ。お前も怪体な目をウラナイ教に、すつくり御供へしなさい。さうしたら本当の安心が出来るぢやらう。昔竜宮城に仕へて居つた小島別は、盲目であつたお蔭で、結構な国魂の神となつて神の教を筑紫の島でやつて居るといふことだ。目の明いた奴に碌な奴が居るものかい。盲目千人に目明き一人の世の中に、十目の視る所十指の指さす所、大勢の盲目の方に附くのが誠だ。サア、これからウラナイ教に帰順さしてやらう』 と高姫、黒姫の二人は、出刃庖丁をひらめかし、安彦、道彦の眼球目蒐けて突いてかかる。二人は、 安彦、道彦『コリヤ大変』 と逃げ出す途端に、座敷一面のとろろ汁に足を、辷らして、スツテンドウと仰向けになつた。 二人の婆も、とろろに足を滑らし、仰向けにドツと倒れた。婆の持つた出刃庖丁は道彦の眼の四五寸側に光つてゐる。 道彦、安彦は一生懸命逃げ出さうとすれど、ヌルヌルと足が滑つて同じ所にジタバタやつてゐる。百舌彦、田加彦は一室から飛んで出て、 百舌彦、田加彦『コラコラ婆の癖に手荒いことを致すな。その出刃渡せ』 と矢庭に引捉へむとして、又もやズルリと滑り、二人は尻餅搗いた途端に、道彦の顔の上に臀をドツカと下ろした。その痛さに気が付けば王仁は、宮垣内の茅屋に法華坊主の数珠に頭をしばかれ居たりける。 (大正一一・四・二旧三・六外山豊二録) (昭和一〇・三・二〇於彰化支部王仁校正) |
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10 (1642) |
霊界物語 | 15_寅_顕恩郷/スサノオの経綸/高姫登場 | 10 神楽舞 | 第一〇章神楽舞〔五七七〕 神素盞嗚尊の治食す大海原の国々島々は、国治立尊、野立彦の神と現はれて、埴安彦命に神言依さし、黄金山下に現はれて三五教を開き給ひ、豊国姫尊は野立姫神と現はれ、神素盞嗚尊の水火を合して、埴安姫命となり、三五教を経緯より天下に宣伝し、神人皆其徳に悦服し、天が下四方の国は一時は無事泰平の神国と治まりけるが、天足彦、胞場姫の霊の邪気より現はれ出でたる、八頭八尾の大蛇を始め、金狐、悪鬼諸々の醜女、探女は油の浸潤するが如く、忍び忍びに天下に拡がり、邪悪充ち、荒ぶる神の訪ふ声は、山岳も揺ぐ許り、河海殆ど涸れなむとす。 神素盞嗚大神は、大海原の国を治めかね、熱き涙に咽ばせ給ふ折しも、御父神なる神伊邪諾大神、尊の前に現はれ給ひ、 神伊邪諾大神『爾は何故に吾が依させる国を守らず、且女々しくも泣きつるか』 と言葉鋭く問はせ給ひければ、神素盞嗚大神は、 神素盞嗚大神『われ、大神の勅を奉じ、昼夜孜々として神政に心力を尽すと雖も、地上の悪魔盛にして、容易に帰順せしむ可らず。到底吾等の非力を以て、大海原の国を治むべきにあらず、吾は是より根の堅洲国に至らむ』 と答へ給ひぬ。此時父伊邪諾大神は、 伊邪諾大神『然らば汝が心の儘にせよ、この国には住む勿れ』 と言葉厳しく詔らせ給ひぬ。茲に素盞嗚尊は已むを得ず、母の坐します根の堅洲国に至らむと思はし、天教山の高天原に坐ます姉の大神に暇乞ひをなし、根の堅洲国に至らむと、雲霧押分けて、天教山に上らせ給ふ。その勢当るべくもあらざる如く見えければ、御姉の大神は、いたく驚かせ給ひ、 天照大御神『吾が弟神の此処に上り来ませるは、必ず美はしき心ならざらめ、此高天原を奪はむとの汚き心を持たせ給ふならむ』 と部下の神々に命じ、軍備を整へ、防戦の用意に掛らせ給ひける。 神素盞嗚尊は、姉大神の斯くも深き猜疑心に包まれ給うとは夢にも知らず、コーカス山を立出でて、天磐船に乗り、天空を翔りて、天教山に下らせ給ふ時、姉の大神は伊都の竹鞆を取佩ばして、弓腹振立て、堅庭に現はれ給ひ、淡雪の如く、土石を蹶散らし、勢猛く弟神に向ひ、高天原を占領するの野心ある事を厳しく詰問されたりける。 茲に神素盞嗚尊は、案に相違の顔色にて答へ給ふよう、 神素盞嗚尊『吾れは、貴神の思さるるが如き汚き心は露だにもなし、父大神の御言もちて、吾泣く有様を言問はせ給ふが故に、応へ難くて、吾れは母の坐します根の堅洲国に行かむと思ふ、恋しさの余り泣くなりと答ふれば、父大神は、然らば汝が心の儘にせよと仰せあり。母の国に行かむとするに先だち、姉大神に一目遭ひまつらむと思ひてこそ上り来つれ、決して怪しき心なし。願はくば姉の大神よ、吾が心の清き事を悟り給へ』 と涙と共に答へ給ひぬ。 茲に姉大神は、 天照大御神『然らば汝が心の清き事、何を以て証明せむ』 と詰り給へば、弟神は、 神素盞嗚尊『吾が持てる十握の剣を姉の命に奉らむ、姉の命は御身にまかせる八尺の曲玉を吾にわたさせ給へ』 と請ひ給へば、姉大神も諾かせ給ひて、玉と剣の交換の神業を始め給ひ、天の安河を中に置き各も各も天の真名井に振り滌ぎ、佐賀美にかみて吹き棄ち給へば、素盞嗚尊の神実なる十握の剣より三柱の女神現はれ給ひ、姉大神の纒せる八尺の曲玉より五柱の男神現はれ給へば、ここに神素盞嗚大神の清く、若く、優しき御心現はれ玉へり。姉大神は始めて覚り、 天照大御神『此三柱の女神は、汝が霊より現れませるやさしき瑞の霊なり。また五柱の男神は、あが霊より生れませる雄々しき男神なり』 と了解け給ひぬ。 ここに姉大神の疑は全く晴れたれども、未だ晴れやらぬは、神素盞嗚大神に仕へまつれる八十猛の神々の御心なりき。吁、八十猛の神の無謀なる振舞に依りて、天照大御神は、天の岩戸の奥深く隠れ給ひ、再び六合暗黒となり、昼夜咫尺を弁ぜず、万妖悉く起り、草の片葉に至る迄、言問ひさやぐ悪魔の世を現出したりける。茲に高天原に坐します、思慮分別最も深き神と聞えたる、金勝要の大神の分霊思兼神は、八百万神を天の安の河原辺に、神集へに集へ、神議りに議りて、再び日の大神の御出現を請ひ奉る其神業を行はせ玉ひける。 三五教の道を伝へたりし数多の宣伝使は、天の安の河原に集まり来り、尚も進んで天教山の天の岩戸の前に現はれ給ひ、五伴男の神、八十伴男の神を始め八百万の神達、天津神籬を立て、真榊を囲らし、鏡、玉、剣を飾り、出雲姫命は天の鈿女命と現はれて、岩戸の前に桶伏せて、一二三四五六七八九十との天の数歌うたひ上げ、舞ひ狂ひ給ひし其可笑しさに、八百万の神は思はず吹き出し、常暗の世の苦しさも忘れて、笑ひ興じ給へば、天照大神も岩戸を細目に押開き給ふ折しも、手力男神は岩戸を開き御手を取りて引出しまつり、六合の内、再び清明に輝きわたる事を得たり。ここに八百万の神は此度の事変を以て神素盞嗚尊の罪に帰し、手足の爪まで抜き取りて、高天原を神退ひに退ひ給ひしなり。是より神素盞嗚大神は、今迄海原の主宰神たる顕要の地位を棄て、心も細き一人旅、国の八十国、島の八十島にわだかまり、世人を損ふ八岐大蛇の悪神や、金狐、悪鬼の征服に向はせ給ひける。嗚呼、今後の素盞嗚大神の御身は如何になり行くならむか。 (大正一一・四・二旧三・六松村真澄録) |
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11 (1796) |
霊界物語 | 22_酉_鷹鳥山の鷹鳥姫 | 01 玉騒疑 | 第一章玉騒疑〔六九三〕 天と地との元津御祖、国治立大神は、醜の曲津の猛びに依りて是非なく豊国姫尊と共に、独身神となりまして御身を隠し給ひ、茲に大国治立尊の御子と坐します神伊弉諾大神、神伊弉冊大神の二柱、天津大神の御言を畏み、海月なす漂へる国を造り固め成さむとして、神勅を奉じ、天の浮橋に立ち、泥水漂ふ豊葦原の瑞穂国を、天の瓊矛を以て、シオコヲロ、コヲロに掻き鳴し給ひ、滴る矛の雫より成りしてふ自転倒島の天教山に下り立ち、天の御柱、国の御柱を搗き固め、撞の御柱を左右りより廻り会ひ再び豊葦原の中津国を、神代の本津国に復さむと、木花姫命、日の出神と言議り給ひて、心を協せ力を尽し、神国成就の為に竭し給ひしが、天足彦、胞場姫の霊より現はれ出でたる醜の曲津見、再び処を得て、縦横無尽に暴れ狂ひ、八百万の神人は又も心捩けて、あらぬ方にと赴きつ、復び世は常闇となりにけり。 茲に天照大御神、神素盞嗚大神は伊弉諾命の御子と現れまして天津神、国津神、八百万の神人に誠の道を説き諭し給ひしが、世は日に月に穢れ行きて、畔放ち溝埋め、樋放ち頻蒔き串差し、生剥ぎ逆剥ぎ、屎戸許々太久の罪、天地に充満し、生膚断、死膚断、白人胡久美、己が母犯せる罪、己が子犯せる罪、母と子と犯せる罪、子と母と犯せる罪、畜犯せる罪、昆虫の災、高津神の災、高津鳥の災、畜殪し蠱物せる罪、許々太久の罪出で来り、世は益々暗黒の雲に閉され黒白も分かずなり行きたれば、素盞嗚大神は葦原国を治め給ふ術もなく日夜に御心を砕かせ給ひ、泣き伊佐知給へば、茲に神伊弉諾命、天より降り給ひて、素盞嗚尊にその故由を問はせ給ひ、素盞嗚尊は地上の罪悪を一身に引受け、部下の神々又は八岐大蛇醜神の曲を隠し、我が一柱の言心行悪しき為なりと答へ給へば、伊弉諾大神は怒らせ給ひ、 伊弉諾大神『ここに汝は海原を知食すべき資格なければ、母の国に臻りませ』 と厳かに言宣り給へば、素盞嗚尊は姉の大神に事の由を委細に申し上げむと、高天原に上り給ふ。此時山川草木を守護せる神々驚きて動揺し、世はますます暗黒となりければ、姉大神は弟神に黒き心ありと言挙げし給ひ、茲に天の安河を中に置き、天の真奈井に御禊して、厳之御魂、瑞之御魂の証明し給ひ、姉大神は変性男子の御霊、弟神は変性女子の御霊なる事を宣り分け給ひぬ。 素盞嗚尊に従ひませる八十猛の神々は大に怒りて、 八十猛神『吾が仕へ奉る素盞嗚大神は清明無垢の瑞霊に坐しませり。然るに何を以て吾が大神に対し、黒き心ありと宣らせ給ひしか』 と怒り狂ひて、遂に姉大神をして天の岩戸に隠れ給ふの已むなきに到らしめたのは、実に素盞嗚尊の為に惜しむべき事である。 茲に素盞嗚大神はいよいよ千座の置戸を負ひ給ひ、吾が治せる国を姉大神に奉り、高天原を下りて、葦原の中津国に騒れる曲津神を言向け和し、八岐大蛇や醜狐、曲鬼、醜女、探女の霊を清め、誠の道に救ひ、完全無欠、至善至美なるミロクの神政を樹立せむとし、親ら漂浪の旅を続かせ給ふ事となつた。 大洪水以前はヱルサレムを中心として神業を開始し給ひしが、茲に国治立尊の分霊国武彦と現はれて、自転倒島に下りまし、神素盞嗚大神と共に五六七神政の基礎を築かせ給ふ事となつた。それより自転倒島は、いよいよ世界統一の神業地と定まつた。 顕国玉の精より現はれ出でたる如意宝珠を始め、黄金の玉、紫の玉は、神界における三種の神宝として、最も貴重なる物とせられて居る。此三つの玉を称して瑞の御霊と云ふ。此玉の納まる国は、豊葦原の瑞穂国を統一すべき神憲、惟神に備はつて居るのである。 茲に国治立命は天教山を出入口となし、豊国姫神は鳴門を出入口として、地上の経綸に任じ給ひ、永く世に隠れて、五六七神政成就の時機を待たせ給ひぬ。素盞嗚尊は其分霊言霊別命を地中に隠し、少彦名命として神業に参加せしめ給ひしが、今又言依別命と現はして、三種の神宝を保護せしめ給ふ事となつた。言依別命の神業に依りて、三種の神宝は錦の宮に納まり、いよいよ神政成就に着手し給はむとする時、国治立命と豊国姫命の命に依り、未だ時機尚早なれば、三千世界一度に開く梅の花の春を待ちて三箇の神宝を世に現はすべしとありければ、言依別命は私かに神命を奉じて、自転倒島の或地点に深く隠し給ひし御神業の由来を本巻に於て口述せむとす。有形にして無形、無形にして有形、無声にして有声、有声にして無声なる神変不可思議の神宝なれば、凡眼を以て見る事能はざるは固よりなり。 凩荒ぶ冬の夜の月の光を浴びながら 心にかかる黒雲の晴るる隙なき黒姫が 言依別命より言ひつけられて人知れず 納め置きたる黄金の玉の在処を調べむと 丑満時に起き出でて独りスゴスゴ四尾山 麓の一つ松が根に匿まひ置きし石櫃の そつと蓋をば開き見て思はずドツと打倒れ 吾責任も玉無しの藻脱の殻の悲しさに 如何はせむと起き直り思案に暮れて居たりしが 忽ち人の足音に気を取直し立ちあがり 木蔭を索めて帰り行く。 窺ひ寄つたる二人の男、松の根元に立寄りて、 甲(テーリスタン)『ヤア黒姫さまの様子が怪しいと思うて跟いて来たが、大方これは蜈蚣姫が占領して居つた黄金の玉を、言依別命から信任を得て、黒姫が隠して置きよつたのだなア』 乙(カーリンス)『併し黒姫さまは蓋を開けるが早いか吃驚して尻餅を搗いたぢやないか。大方紛失して居たのぢやあるまいかな。そんな事だつたら、黒姫もサツパリ駄目だがなア』 甲(テーリスタン)『あんまりの玉の光に驚いて、尻餅を搗いたのだらう、それに定つて居るよ。誰一人こんな所に隠して置いたつて、探知する者がないからな。肝腎の紫姫さまでさへも御存じない位だから………』 乙(カーリンス)『イヤどうも怪しい黒姫の姿、影が薄い様だ。一つそつと尋ねて見ようぢやないか。グヅグヅして居ると、姿が分らなくなつて了ふよ』 甲(テーリスタン)『サ、早く往かう。最早姿が見えなくなつたぢやないか』 とキヨロキヨロ其処らを見廻して居る。忽ち下手の溜池にバサリと人の飛び込む水音、二人は驚いて池の辺に駆けつけ見れば、何の影もなく、唯水面を波が円を描いて揺らいで居る。月の影さへも砕けて、串団子の様に長く重なり動いて居る。 甲(テーリスタン)『ヤア此処に履物が一足脱いである。こりやてつきり黒姫さまのだ。ヤア大変だ、カーリンス、貴様は早く帰つて言依別様に申し上げ、大勢の信者を引率して救援隊を繰出して呉れ。俺はそれ迄此処に保護して居る』 カーリンス『馬鹿言ふない。グヅグヅして居る間に縡れて了ふぢやないか』 と云ふより早く、カーリンスは、薄氷の張りかけた池に、赤裸となつて飛び込み、水を潜つて黒姫を引抱へ、漸くにして救ひあげた。黒姫は最早虫の息となつて居る。 カーリンス『オイ、テーリスタン、誰にも此奴ア、様子を聞く迄極秘にして置かなくては、黒姫さまの為にはよくなからうぞ。兎も角俺も寒くて体が凍てさうだ。そつと此処で火を焚いて黒姫様の体を温めて息を吹き返さすのが第一だ。オイ貴様早く、そつと帰つて二人の着物を……何でも良いから持つて来て呉れ』 テーリスタン『ヨシ合点だツ』 とテーリスタンは黒姫の館へ駆けつけ、そつと衣服を二人前、小脇に抱い込み帰つて来た。其間に黒姫は息を吹き返して居た。テーリスタンは息を喘ませながら、 テーリスタン『サア漸く持つて来た。早く着て呉れ。寒かつただらう』 カーリンス『アヽそれは御苦労だつた。サア黒姫さま、兎も角これを着て下さい』 黒姫『お前はテー、カーの両人ぢやないか。なぜ妾の折角の投身を邪魔なさるのだい。どこまでも妾を苦しめる心算かい』 カーリンス『コレ黒姫さま、チツと確りなさらぬか。お前さまは精神に異状を来して居るのだらう。生命を助けて貰つて不足を云ふ者が何処にありますか。なア、テーリスタン。御苦労だつた位云つても、あんまり損はいくまいに………こんな怪体な事を聞いたことはないのう』 テーリスタン『コレ黒姫さま、お前さまが覚悟で陥つたのか、過つて陥つたのか………そら知らぬが、吾々二人は生命を的に、此寒いのにお前さまの生命を助けたのだ。なぜそんな不足さうな事を言ふのだい』 黒姫『妾はどうしても生きて居られぬ理由があるのだよ。どうぞ死なしてお呉れ』 と又もや駆け出さむとするを、カーリンスは大手を拡げ、 カーリンス『待つた待つた、死んで花実が咲く例しがない。仮令どんな事があつても、死んで言訳が立つものか。却て神界に於て薄志弱行者として冥罰を受けねばなるまい』 黒姫『何と云つても死なねばならぬ理由がある。どうぞ助けてお呉れ』 カーリンス『助けて上げたぢやないか』 黒姫『助けると云ふのは、妾の自由に為して呉れと云ふのだよ』 カーリンス『自由にするとは、そりや又どうすると云ふのだい。一日でも生きよう生きようとするのが人間の本能だ。死ぬのを助かるとはチツと道理に合はない。そこまでお前さまも覚悟をした以上は、どんな活動でも出来るだらう。生命を的に神界の為に活動し今迄の罪を贖ひし上、神様のお召しに依つて国替するのが本当だよ』 テーリスタン『此位な道理の分らぬ貴女ぢやないが、何故又さう分らぬのだらうかナア』 黒姫『何も彼もサツパリ分らぬ様になつて来ましたよ』 テーリスタン『お前さま、言依別命様より保管を命ぜられた、黄金の玉を紛失したのだらう』 黒姫『何ツ、それが如何してお前に分つたのか』 テーリスタン『私は貴女がチヨコチヨコ夜分になると、宅を出て往くので、此奴ア不思議だと、二人が何時も気を付けて居つたのだ。さうすると、四尾山の一本松の麓へ行つて居らつしやる。今日も今日とて不思議で堪らず、来て見れば、お前さまは松の木の根元で、唐櫃を開いて腰を抜かしなさつただらう。てつきり黄金の玉を誰かに盗まれ、其責を負うて自殺しようとしたのだらうがナ』 黒姫『何ツ、お前は何時も妾の行動を考へて居たのか。油断のならぬ男だ。そんなら其玉の盗賊はお前達両人に間違なからう……サア有態に仰有れ』 テーリスタン『これはしたり、黒姫さま。それは何と云ふ無理を仰有るのだ。能う考へて御覧なさい。吾々両人が其玉を仮りに盗んだとすれば、どうしてお前さまを助けるものかい。池へ陥つたのを幸に、素知らぬ顔をして居るぢやないか』 黒姫『兎も角、あの松の木の下へは、お前達二人、何時も来ると云ふぢやないか。玉の在処を知つた者が盗らいで誰が盗らう。何と云つても嫌疑のかかるのは当然ぢや。妾もあの玉に就ては生命懸に保護をして居るのだから、お前の生命を奪つてでも白状させねば置かぬのだよ』 とカーリンスの胸倉をグツと握り、首を締め、 黒姫『サア、カーリンス、玉の在処を白状しなさい』 テーリスタン『コレコレ黒姫さま、何をなさいます。あんまりぢや御座いませぬか』 黒姫『エー喧しい。お前も同類だ。白状せぬと、カーリンスの様に揉み潰して了はうか。二人が共謀して居るのだから、見せしめに此奴の息の根を止め、次にお前の番だから、其処一寸も動くこたアならぬぞえ』 カーリンス『アヽ苦しい苦しい。オイ、テ、テ、テーリスタン、婆アさまを退けて呉れ、息がト、ト止まる』 と声も絶え絶えに叫んで居る。テーリスタンは已むを得ず、黒姫の腰帯をグツと握り、力に任せて後へ引いた。黒姫は夜叉の如く、声も荒らかに、 黒姫『モウ此上は破れかぶれだ。汝等両人白状すれば可し、白状致さねば冥途の道伴にしてやらう』 と死物狂ひに両人に向つて飛び付き来る其の凄じさ。二人は、 テーリスタン、カーリンス『黒姫さま、待つた待つた。私ぢやない。さう疑はれては大変な迷惑を致しますよ』 黒姫『ナニ、貴様は高春山で悪い事ばかりやつて居た奴だから、また病気が再発したのだ。改心したと見せかけ、鷹依姫と諜し合はして、此玉を盗り、尚其上如意宝珠の玉を持つて逃げる計画に違ない。アヽさうなると、妾も今死ぬのは早い。お前達の計画をスツカリと素破抜いて、根底から覆へさねばならないのだ。サア如何ぢや、何処へ隠した。早く言はぬかい』 テー、カー両人は泣声になつて、 テーリスタン、カーリンス『モシモシ黒姫さま、それはあまり残酷ぢやありませぬか』 黒姫『ナニ、どちらが残酷だ。妾に是れ丈の失敗をさせて置いて、白々しく、知らぬ存ぜぬの一点張で貫き通さうと思つても、此黒姫が黒い眼でチヤンと睨んだら間違はないのだよ。斯う云ふ所で愚図々々して居ると人に見付かつては大変だ。サア妾の館までそつと出て来なさい。ユツクリと話をして互に打解けて、玉の在処をアツサリ聞かして貰ひませう。さうすれば妾も結構なり、お前も言依別命様にとりなして幹部に入れてあげる。何時までも妾の宅に門番をして居つても詰らぬからナア……』 テ、カ(テーリスタン、カーリンス)『ハイ、そんなら御言葉に従ひ、お宅へ参りませう』 黒姫『ア、それでヤツと安心した。素直に在処を白状するのだよ』 テーリスタン、カーリンス『ハテ、困つた事だなア』 と二人は思案に暮れてゐる。 (大正一一・五・二四旧四・二八松村真澄録) |
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12 (1971) |
霊界物語 | 29_辰_南米物語1 鷹依姫と高姫の旅 | 16 波の響 | 第一六章波の響〔八三八〕 常彦が祝を兼ねたる佯らざる告白歌に励まされ、ヨブは立上がり、入信の祝歌を歌つた。 ヨブ『高天原と定まりし貴の聖地のエルサレム 国治立大神は三千世界を救はむと 神の御言を畏みて教を開き玉ひつつ 天地の律法制定し世は平安に治まりて 神人和楽の瑞祥を楽み玉ふも束の間の 隙行く駒の曲神に天の御柱国柱 転覆されて葦原の瑞穂の国の守護権 常世の国に生れたる曲の頭に渡しつつ 天教山の火坑より根底の国におりまして 忍びて此世を守ります其功績ぞ尊けれ 斯かる尊き皇神のいかで此儘根の国や 底の御国にましまさむ時節を待つて天教の 再び山に現はれて野立の彦と名を変じ 埴安彦と現れまして迷へる四方の人草を 安きに救ひ助けむと仁慈無限の心より 三五教を建設し神の司を四方の国 間配り玉ひて川の瀬や山の尾の上に至る迄 尊き御教を布き玉ふあゝ惟神々々 神の心を白波の天足彦や胞場姫が 罪より現れし醜神の醜の叫びに化されて 世人の心日に月に曇り行くこそ忌々しけれ 厳の御霊の大神は国武彦と現れまして 四尾の山の神峰に此世を忍び玉ひつつ 五六七の御世の経綸を行ひ玉ひ素盞嗚の 神尊の瑞御霊コーカス山や産土の 斎苑の館に現れまして八洲の国にわだかまる 八岐の大蛇や醜狐曲鬼共を言向けて 天地にさやる村雲を神の伊吹に払はむと 心を配らせ玉ひつつ言依別を現はして 自転倒島の中心地綾の高天と聞えたる 錦の宮に神司清き神務を命じつつ 世人を救ひ玉ひけり。旭日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも仮令大地は沈むとも 高砂島は亡ぶ共誠の神の御教に いかでか反きまつらむや大和田中に浮びたる カーリン島の神の御子ヨブは今より高姫が 清き心を諾なひて仮令野の末山の奥 虎狼や獅子大蛇如何なる曲津の棲処をも おめず臆せず道の為心を尽し身を尽し 皇大神や世の中の青人草の其為に 仕へまつらむ惟神神の恵の幸はひて ヨブが身魂を研き上げ尊き貴の御柱と 依さし玉へよ天津神国津神達八百万 国魂神の御前に謹み敬ひ願ぎまつる あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ』 と歌ひ終つて座に着いた。春彦は又もや歌ひ出したり。 春彦『綾の聖地を後にして変性男子の御系統 高姫さまに従ひて瀬戸内海を打渡り 南洋諸島を駆けめぐり如意の宝珠を探ねつつ 高砂島の手前まで小舟を操り来る折 隠れた岩に突当り当惑したるをりもあれ 高島丸に助けられ漸くテルの港まで 到着するや高姫は数多の船客かきわけて 先頭一に上陸し吾等二人をふりまいて 暗間の山の松林姿を隠し玉ひしが 綾の聖地に現れませる杢助さまに高姫の 監督役を命ぜられ居乍らのめのめ見失ひ 如何して言訳立つものか急げ急げと一散に 尻ひつからげ大地をばドンドン威喝させ乍ら 暗間の山の麓迄来りて様子を窺へば 高姫さまの独言常彦、春彦両人の 半鐘泥棒や蜥蜴面間抜男を伴うて 高砂島の人々に軽蔑されてはたまらない 何とか立派な国人を甘く操り弟子となし 千変万化の一芝居打つて見ようと水臭い 吾等二人を放棄して甘い事のみ考へる 其蔭言を灌木の茂みに隠れて聞き終り 余りに腹の立つままにガサガサガサと飛出せば 高姫さまの曰くには油断のならぬ世の中ぢや 仮令獣といひ乍ら今の秘密を聞きよつた 神の霊を授かりし四つ足なれば一言も 聞かれちや都合がチト悪い天に口あり壁に耳 謹むべきは口なりと後悔遊ばす可笑しさよ 常彦、春彦両人は足音隠して二三丁 山の麓に忍び足それから足音高めつつ テル[※校定版・八幡版では「ヒル」。オニペディアの「霊界物語第29巻の諸本相違点」を見よ]の国王のお側役私はカナン[※御校正本・愛世版では「アンナ」。オニペディアの「霊界物語第29巻の諸本相違点」を見よ]と申す者 暗間の山に如意宝珠隠してあると聞いた故 私は捜しに行きましたされど遅れた其為に 後の祭りと春彦[※御校正本・愛世版では「常彦」。オニペディアの「霊界物語第29巻の諸本相違点」を見よ]が声高々と話する そこで私はヒル[※校定版・八幡版では「テル」。オニペディアの「霊界物語第29巻の諸本相違点」を見よ]の国国王様のお側役 アンナ[※御校正本・愛世版では「カナン」。オニペディアの「霊界物語第29巻の諸本相違点」を見よ]と申す男ぞと八百長話を始むれば 猫が松魚節見た如うに高姫さまが飛びついて もうしもうし旅の人暫くお待ちなされませ 変性男子の系統で日の出神の生宮と 世に謳はれた高姫ぢやお前も中々偉い人 私の話を聞きなされ昔の昔の根本の 尊き因縁聞かさうとお婆アの癖に小娘の やうな優しい作り声吹出すように思へども ここで笑うては一大事大事の前の小事ぢやと 脇のあたりでキユーキユーと笑ひの神をしめつけて 足音低く高くして遥向うから後戻り して来たように作りなしどこの何方か知らね共 私に向つて何御用早く聞かして下されと 吾から可笑しい作り声流石の高姫嗅ぎつけて お前はアンナと云ふけれど半鐘泥棒の常彦だ カナンと名乗る蜥蜴面春彦さまにきまつたり 余り人を馬鹿にすな声を尖らし怒り出す 暴風襲来低気圧二百十日の風害も 来らむとする其時に私がアンナと云うたのは お筆先にもある通り神の仕組はアンナ者 こんな者になつたかと世界の人がビツクリし アフンとさせるお仕組ぢやカナンと云うて名乗つたは 春彦さまの平常は赤子のやうな人なれど 神が憑つた其時は誰でもカナン身魂ぢやと 言はして人を大道に導くお役と逆理窟 一本かましてやつたれば高姫さまは腹を立て 私等二人を振すてて又も逃げよとする故に 高島丸の船中で国依別に面会し 金剛不壊の如意宝珠其他珍の御宝を 拝見さして貰うたとカマをかけたら高姫が 玉にかけたら夢うつつ忽ち機嫌を直し出し ホンにお前は偉い人気の利く男と思うてゐた さうして如意の宝玉は国依別が如何したか 知らしてお呉れと云ふ故に此春彦は知らねども 狐のやうに常彦が眉毛に唾をつけ乍ら 三千世界の神宝は高砂島にコツソリと 言依別や国依の神の司が出て参り 何々々に何々し絶対秘密ぢや云はれない 国依別のお言葉にお前を男と見込んでの 肝腎要の秘密をば明かした上は高姫に 決して云ふちやならないぞ私も常彦宣伝使 言はぬと云つたらどこ迄も首がとれても云はないと 約束したから如何しても高姫さまには済まないが これ許りは御免だとキ常彦口から出任せに からかひまはす可笑しさよとうとう喧嘩に花が咲き 常彦私の両人は高姫さまを振すてて 今度は二人が逃げ出した高姫さまは驚いて 吾等二人を引捉へ玉の所在を白状させ 綾の聖地に持帰り日の出神の生宮の 天眼通は此通り皆さまこれから吾々の 言葉に反いちやならないと法螺吹き立てる御算段 そんな事には乗るものか三十六計奥の手を 最極端に発揮して雲を霞と駆け出せば 高姫さまは道の上の高い小石に躓いて 大地にバタリと打倒れ額を打破り膝挫き 生血を流してアイタタと頭を撫でたり膝坊主 押へて顔をしかめゐる此時四五の若者は どこともなしに出で来り高姫さまを介抱して 抱き起して助くればいつも変らぬ減らず口 結構なおかげをお前等は頂きなさつた神様に 御礼なされよ私にも御礼を仰有れ神の綱 私がかけて上げましたなどと又もや世迷言 玉の所在を知ると云ふ一人の男に騙されて アと云つては金一両リと聞いては金一両 ナーと云つては金取られ滝と云つては二両取られ 鏡の池と六つの口又もや六両はぎ取られ 呑み込み顔で高姫が吾々二人が路端に 憩ふ所をドシドシと肩肱いからし高姫は 日の出神の御告げにて玉の所在を知つた故 これから独り行く程に間抜男は来るでない 神の仕組の邪魔になる必ず従いて来てくれな 言葉を残してドンドンとテル国街道を走せて行く 吾等二人は高姫が後を追ひつつ駆出して 牛のお尻に衝突しヤツサモツサと争ひつ 牛童丸に横笛で首が飛ぶ程横ツ面 やられた時の其痛さ常彦さまが行つた事 私は傍杖くわされてあんなつまらぬ事はない 牛童丸に牛貰うて常彦さまは牛の背 私は綱を曳き乍ら小川を伝うて杉林 十間許り遡り高姫さまが他愛なく 休んで厶る其前に牛引つれて往て見れば モウモウモウと唸り出す其大声に目を醒まし 高姫さまはうるさがり又も二人を振棄てて アリナの滝に只一人玉を占領せむものと 行かうとしたので吾々はお前はアリナの滝の上 鏡の池に行くのだろ吾等二人は牛に乗り お前さまより二三日先にアリナへ到着し 玉を手にして帰ります左様ならばと立出づる 高姫さまは又しても猫撫声と早変り コレコレ常公春公へ私の心を知らぬのか 海山越えてはるばるとこんな所迄やつて来て お前に別れて如何ならう一緒に行かうぢやないかいと 相談かけて呉れた故モウモウモーさん帰んでよと 牛に向つて言霊を発射致せばアラ不思議 煙となつて消えにける夫れより三人手を引いて テルの街道ドシドシと大西洋を眺めつつ アリナの滝のほとりなる鏡の池に来て見れば 数千年の沈黙を破りて池はブクブクと 泡を立てたりウンウンと厭らし声にて唸り出す 高姫さまは玉どこか肝腎要の魂抜かれ 焼糞気味になりまして月照彦神さまと いろはにほへとちりぬるの四十八文字の掛合に 奴肝を抜かれて失心し人事不覚となられける 懸橋御殿の神司現はれまして高姫を 助け玉へば高姫は相も変らぬ憎い事 百万ダラリと並べ立て側に控えた吾々も 余り憎うて横ツ面擲つてやりたいよに思うた 夫程分らぬ度し太い高姫さまもどうしてか 櫟ケ原の真中で天教山に現れませる 木の花姫の御化身日の出姫の訓戒に 心の底から改心し虎と思うた高姫が サツパリ猫と早変りそれから段々おとなしく もの言ひさへも改まり誠に可愛うなつて来た 玉の湖水の畔にて椰子樹の森に夜を明かし 鷹依姫や竜国別の神の司やテー、カーの 姿を刻んだ石地蔵眺めて高姫手を合し コレコレ四人のお方さま此高姫が悪かつた どうぞ勘忍しておくれ黒姫さまの過ちを お前さま等に無理云うて綾の聖地を放り出し 苦労をかけたは済みませぬ罪亡しに今日からは お前等四人の姿をば刻んだ重たい此石を 背中に負うて自転倒の島迄大事に連れ帰り 祠を建てて奉斎し朝晩お給仕致します どうぞ許して下されと心の底から善心に 立返られた健気さよ余り早い変りよで 私も一寸疑うたアルの港で船に乗り 高姫さまが偽らぬ其告白に感歎し ヨブさま迄が驚いて高姫さまの弟子となり 入信されたお目出度さあゝ惟神々々 神の恵は目のあたりこんな嬉しい事はない 高姫様の御改心入信なされたヨブさまの 前途益々健全に渡らせ玉ひて神徳を 世界に照らし玉ふ日を指折数へ待ちまする あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ』 最後に高姫は改心と入信の悦びの歌を唄ひけり。 高姫『あゝ惟神々々尊き神の御恵に 常夜の暗も晴れわたり真如の月は村肝の 心の空に輝きて金毛九尾の曲神に すぐはれ居たる吾身魂今は漸く夢醒めて 曲津の神の影もなく神の賜ひし伊都能売の 霊の光輝きて心の悩みも消え失せぬ 旭は照る共曇るとも月は盈つとも虧くるとも 仮令大地は沈むとも一旦改心した上は 身魂の此世にある限り天地に誓うて変らまじ 此高姫の改心が一日遅れて居つたなら 此船中でヨブさまに命取らるるとこだつた 変性男子の筆先に何よりかより改心が 一番結構と云うてある改心すれば其日から 敵もなければ苦労もない早く改心なされよと 幾度となく書いてあるあゝ改心か改心か 木の花姫の御言葉で始めて悟つた改心の 誠の味は此通り私を仇と狙うたる カーリン島のヨブさまが打つて変つて高姫を 師匠と仰いで入信し無事に此場の治まりし 其原因を尋ぬればヤツパリ私の改心ぢや 改心入信一時に善い事計りが降つて来た こんな嬉しい事はないさはさり乍ら海中に 陥り玉ひし四人連思へば思へばいぢらしい せめては霊を慰めて朝な夕なに奉斎し 叮嚀にお給仕致しませう鷹依姫や御一同 広き心に見直して私の罪を赦しませ あゝ惟神々々神の御前に慎みて 今日の慶び永久に感謝しまつり鷹依姫の 教の司や三人の冥福祈り奉る あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ』 斯く歌ひ了りて、莞爾として座に着いた。船は三日三夜さ海上を逸走し、漸くゼムの港に安着した。高姫一行四人はここに上陸し、ゼムの町を二三里許り隔てたる天祥山の大瀑布に御禊をなすべく、意気揚々として、宣伝歌を歌ひ乍ら山深く進み入りにける。あゝ惟神霊幸倍坐世。 (大正一一・八・一二旧六・二〇松村真澄録) |
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13 (1994) |
霊界物語 | 30_巳_南米物語2 末子姫と言依別命の旅 | 15 花に嵐 | 第一五章花に嵐〔八五七〕 言依別命、国依別の宣伝使の理解に依りて、此地方一帯の住民は殆ど全滅せむとしたるを、御倉魚を食することを許されてより、忽ち元気恢復し、且つ言依別命を始め国依別の宣伝使を神の如く尊敬し、直に救世済民の教は三五教に若くものなしと、数十万人の人々はウラル教を脱退して悉く三五教に入信して了つた。併し乍ら言依別命は早くも此地を去りたれば、跡に国依別只一人、御倉の社を中心として教勢忽ちに振ひ、猫も杓子も、三五教にあらざれば救はれ難し、又正しき人間には非ざるべしとまで崇拝するに到りける。 国依別は三五教の教理を諄々として説きさとし、且つ天津祝詞や神言を教へ、御倉の社に国治立命、豊国姫命其他の諸神霊を合祀し、崇敬の的と定めた。国依別は、又一種の宣伝歌を作り、国人に平素高唱すべく教へ導きける。 国依別『高天原に現れませる国の御祖の大御神 国治立大神は普く世人を救はむと 天の御柱つき固め国の御柱つきこらし 瑞の御霊と現れませる豊国姫大神と 力を合せ玉ひつつ神世を開かせ玉ひけり 天足彦や胞場姫の醜の霊に現れませる 八岐大蛇や醜狐曲鬼共がはびこりて 世は常暗となり果てぬ皇大神は是非もなく 千座の置戸を負ひ玉ひ天教山の火坑より 根底の国に落ち玉ひ豊国姫と諸共に 深く其身を忍ばせつ此世を守り玉ひけり。 ウラルの彦やウラル姫大国彦や大国の 姫の命の枝神は天地四方の国々を 醜の煙に包まむと曲の教を開きつつ 世を曇らせし忌々しさよ天津御空に現れませる 神伊弉諾大神は妹伊弉冊の大神と 大空高く渡したる天浮橋に立ち玉ひ 泥に沈みし海原をコオロコオロに掻き鳴らし 神生み国生み人を生み天教山にましませる 日の出神や木の花姫の貴の命に神業を 授け玉ひて葦原の瑞穂の国を開きけり あゝ惟神々々神の御稜威のいや高く 教の道のいや広く埴安彦や埴安姫の 神の命と身を変へて黄金山下に出現し 三五の月の御教を完美に委曲に説き玉ふ これぞ誠の三五の錦の機の御教ぞ あゝ諸人よ諸人よ尊き神の御光りに 一日も早く目を覚ませ朝日は照る共曇る共 月は盈つとも虧くるとも仮令大地は沈むとも 三五教の御教を夢にも忘るること勿れ 神を忘れし其時は身に苦しみの来る時 心の悩みの来る時ぞ如何なる事のありとても 神を忘れな三五の道の誠に離れなよ 神は汝と倶にあり神の御水火を受つぎし 人は神の子神の宮神に次での第一に 尊き者ぞ人の身は決して賤しき者ならず 曇り汚れし人の身と教へて諭す御教が ありと知るなら逸早く互に心を注ぎ合ひ 邪道に陥ること勿れ国魂神を斎りたる 御倉の山の竜世姫大地の主と現れませる 金勝要大神の珍の御霊の分霊 高砂島に永久に鎮まりゐまして国人の 幸を守らせ玉ふなり如何なる教の来る共 国魂神を余所にして心を曇らす事勿れ 竜世の姫を祀りたる御倉の山の社こそ 国治立大神に次で尊き神なるぞ あゝ惟神々々神の心に立返り すべての物を慈み互に争ふこと勿れ 神を尊び国の君敬ひまつり世の人に 神の恵を隈もなく輝き渡すは神の子と 生れ出でたる人草の朝な夕なに守るべき 誠一つの務めなり三五教の神司 国依別が此地をば去るに臨んで国人に 記念の歌を作りおくアヽ国人よ国人よ 暇ある毎に読み慣ひ歌に踊りに音楽に 合して心を慰めつ此世を守り玉ひます 皇大神の御心を和めまつれよ此歌に 歌は天地の神霊を感動さする神秘ぞや 世間話や無駄話云ふ暇あらば一時も 夢にも忘れず此歌を神の御前は云ふも更 山の上行くも又河へ浸る時しも村肝の 心長閑に歌へかしあゝ惟神々々 御霊幸はひましませよ此世を造りし神直日 心も広き大直日只何事も人の世は 直日に見直せ聞直せ過ちあれば宣り直す 三五教を呉々も忘れざらまし何時迄も 世人の為に残しおく』 斯く歌を作りて、最も熱心なる信者の中にて気の利いたるパークスと云ふ男に、足彦と云ふ名を与へ、宣伝使の列に加へ御倉の社を守りつつ、国人に三五の教理を説き諭すべく命じおき、国依別は又もやここを立出でて、ヒルの国の都を指して進み行く。 チルの里の荒しの森に差かかる時しもあれや、黄昏の暗に紛れて現はれ出でたる四五人の男、国依別の前に大手を拡げ、 甲『其方は三五教の宣伝使、よくも吾々に恥を見せよつたなア。かく申さば別に名乗らずとも、此方の名は分つて居る筈、サアどうぢや。如何に其方、弁舌巧なりとて、実行力には叶ふまい。尋常に手をまはすか、但はチルの渓谷に、吾々監視の下に身を投げて自滅いたすか、それも不服とあらば、吾々一同気の毒乍ら、剣の錆となし呉れむ。いかに汝勇猛なればとて、数百人の味方を以て、十重二十重に取巻あらば、いつかないつかな、身を逃るるの余地なかるべし。吾れは云はずと知れたウラル教の宣伝使、ブール、ユーズ、アナンの面々だ。御倉の谷間に於て神の禁じた神魚を食ひ、剰つさへ国人に残らず食はしめたる憎くき天則違反の張本人!ウラル教が数百年の努力を一朝にして水泡に帰せしめたる悪人輩、サア覚悟を致せ!』 と呼ばはる声に、自然に集まる数十人の人影、『ワーイワーイ』とどよめき来る騒々しさ。国依別大口あけて高笑ひ、 国依別『アツハヽヽ、卑怯未練な汝等が振舞、御倉山の谷あひに於て、猫に追はれし鼠の如くチウの声さへ得あげず、コソコソと逃げ帰りたる卑怯者、かかる為体にて、いかで神の御子たる人草を教化せむ事、思ひもよらず。汝等卑怯にも衆を恃んで、只一人の宣伝使を苦めむとする腰抜共、見事、相手になるならなつて見よ。吾言霊の神力に依つて一人も残さず誠の道に言向け和し、汝が奉ずるウラル教を根底より改革しくれむ。あゝ面白し面白し』 と又もやカラカラと打笑ふ。ブール、ユーズ、アナンの大将連は寄り来れる数十人の味方に何事か合図をなすや、一斉にバラバラと国依別に向つて武者ぶり付かむとする其可笑しさ。国依別は『ウン』と一声息をこめ、右手の示指を以て、彼等一同に速射砲的に左から右へ振りまはせば、球の玉の神力を身に納めたる国依別の霊光は一しほ光強く、何れも眼眩み這う這うの体にて逃げ去るもあり、其場に打倒れて苦悶するもあり、恰も嵐に花の散る如く、ムラムラパツと逃げ散る可笑しさ。国依別は此浅ましき敵の姿を見て、又もや大声に、 国依別『アツハヽヽ、面白い面白い』 (大正一一・八・一五旧六・二三松村真澄録) |
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14 (2053) |
霊界物語 | 32_未_南米物語4 アマゾンの兎の都 | 16 回顧の歌 | 第一六章回顧の歌〔九〇七〕 ウヅの神館の八尋殿に、末子姫の発起として大歓迎会は開かれ、言依別命は立つて、簡単なる祝歌を歌ひ給ふ。 言依別命『此世を造り固めたる 厳の御霊とあれませる 国治立の大神は 百八十国の神人を おいずまからず永久に 五六七の神世に救はむと 天地の律法制定し 清き教を立て給ひ 豊国姫の大神は 瑞の御霊と現はれて 錦の機を織らせつつ 天教地教の神の山 堅磐常磐に鎮まりて 貴の聖地と諸共に 教を開き給ひける 時しもあれや天足彦 胞場姫二人の霊より 生れ出でたる曲津神 八岐大蛇や醜狐 曲鬼共の現はれて 豊葦原の瑞穂国 隈なく荒び猛りつつ 神の依さしの八王神 八頭神まで籠絡し 追々勢力扶植して 塩長彦を謀主とし 国治立の大神が 此世を遂に退隠の 余儀なきまでに至らしめ 世は刈菰の乱れ行く あゝ惟神々々 神の主なる厳御霊 国治立の大神は 天教山の火口より 身を跳らして根の国に 一度は落ちさせ給へども 此世を思ふ真心の 凝り固まりて身を下し 野立の彦と現はれて 豊国姫の化身なる 野立の姫と諸共に 天教地教の両山に 現はれ給ひて三五の 教を開き給ひけり 再び厳の御霊を 分けさせ給ひて埴安彦の 厳の御霊や姫命 時節をまちてヱルサレム 黄金山下に現はれて 救ひの道を宣べ給ふ 其御心を畏みて 国大立の大神の 四魂の神とあれませる 御稜威も殊に大八洲彦 神の命や大足彦の 神の命の神司 神国別や言霊別の 瑞の御魂と現はれて 茲に再び三五の 清き教を四方の国 開き給ひし尊さよ 国大立の大神は 神素盞嗚の大神と 現はれまして許々多久の 罪や汚穢を一身に 負はせ給ひて天地の 百神等の罪科を 我身一つに引き受けて 八洲の国に蟠まる 八岐大蛇や醜神を 天津誠の大道に 言向け和して助けむと いそしみ給ふぞ尊けれ ウブスナ山の斎苑館 此処に暫く現れまして 日の出別の命をば 後に残して皇神は いろいろ雑多に身をやつし 島の八十島八十の国 大海原を打ちわたり 自転倒島に出でまして 貴の霊場と聞えたる 綾の聖地に上りまし 四尾の山に潜みます 国治立の御化身 国武彦の大神と 互に心を合せつつ 経と緯との糸筋を 整へ給ひて世を救ふ 錦の機を織り給ふ 錦の宮の神司 玉照彦や玉照姫の 貴の命にかしづきて 八尋の殿に三五の 神の教を開きつつ 教主の役を任けられて 教を開きゐたりしが 厳の御霊や瑞御霊 経と緯との大神の 御言畏み聖地をば 後に眺めて和田の原 渉りてここに来て見れば 思ひがけなき瑞御霊 神素盞嗚の珍の子と 生れ給ひし末子姫 桃上彦の鎮まりし 教の館に現はれて 神の教を楯となし 恵の露を民草の 頭に下し給ひつつ 五六七の神世の有様を 今目のあたり開きます 斯かる尊き霊場に 参り来りし楽しさよ 時しもあれや素盞嗚の 神の尊ははるばると これの館に出でまして 捨子の姫に神懸り[※初版・愛世版は「神懸り」、校定版は「帰神(かむがか)り」。] アマゾン河の曲神を 言向け和し救へよと 宣らせ給ひし言の葉を 謹み畏み屏風山 帽子ケ岳に立向ひ 国依別に巡り会ひ 琉と球との霊光に 数多の魔神を言向けて 目出度く凱歌を奏しつつ 十八柱の神の子は ウヅの館に安々と 帰りて見れば有難や 神素盞嗚の大御神 はるばる此処に出でまして 憩はせ給ふ嬉しさよ あゝ惟神々々 御霊幸はひましまして 高砂島は云ふも更 豊葦原の瑞穂国 百八十島の果て迄も 恵の露に潤ひて 世は泰平の花開き 梅の香りの五六七の世 松の操のいつ迄も 色も変らず永久に 栄えましませ惟神 神の御前に願ぎまつる 朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも 仮令大地は沈むとも 誠の力は世を救ふ 誠の神は今ここに 現はれ給ひし上からは 天地と共に永久に 神の言葉は失せざらむ 厳の御霊や瑞御霊 金勝要の大御神 日の出神や木の花の 咲耶の姫の神力は 竜宮海の底深く 天教山の空高く 千代に八千代に揺ぎなく 輝き渡り天地の 光となりて輝かむ あゝ惟神々々 神の尊き御恵を 謹み感謝し奉り 神の司を始めとし 四方の民草悉く 神の恵を嬉しみて 常磐の松のいつ迄も 変らざらまし高砂の 島根に生ふる青松の 梢に鶴のすごもりて 名さへ目出度き尉と姥 亀の齢のどこ迄も 大海原の波清く 吹く風さへも朗かに 静まりませと祝ぎまつる あゝ惟神々々 御霊幸はひましませよ』 と歌ひ了り、末子姫の後を逐ひて、神素盞嗚大神の休ませ給ふ奥殿指して進み入る。 国依別は立上り、金扇を開いて祝歌を歌ひ且つ舞ひ始めた。其歌、 国依別『錦の宮を立出でて言依別の大教主 高砂島に出でませる御供に仕へまつりつつ 波間に浮ぶ琉球の宝の島に上陸し 琉と球との玉を得て棚無し船に身を任せ 伊猛り狂ふ荒浪を乗り切り乗り切り高砂の 島の手前に来て見れば高姫一行暗礁に 船を乗上げ浪の上渡りて進む時もあれ 山なす浪に襲はれて命危く見えければ 高島丸の船長に命じて船に救はしめ テルの港に来て見れば先頭一に高姫は 常彦、春彦伴ひて姿を早く隠しける 言依別の神司われを伴ひ三座山[※御倉山のこと] 国魂神を祀りたる竜世の姫の神霊地 集まり来る国人の霊と肉とを救ひつつ 暫く此処に止りて誠の道を宣り伝へ それより進んでヒルの国楓の別の永久に 鎮まりいます神館に出で行く折しも天地は 震ひ動きて山は裂け河は溢れて人々の 住家は砕け諸人は水と炎に包まれて 苦み悶ゆる憐れさよ楓の別の妹なる 紅井姫の命をば艱みの中より救ひ出し ヒルの館に立向ひ稜威の言霊宣り上げて 天変地妖を鎮定し館を立ちてアラシカの 峠を越えて日暮しの館に教を開きたる ウラルの道の神司ブール其他の人々に 神の教を宣り伝へ紅井姫やエリナ姫 二人の女性を預けおき又もやここを立出でて 安彦、宗彦従へつブラジル峠に差しかかり 丸木の橋を危くも生命カラガラ打ちわたり シーズン川を乗越えて帽子ケ岳に立向ひ 別れて程経し神司言依別に巡り会ひ 手を握りたる楽しさよ琉と球との霊光に アマゾン河や森林の数多の魔神を言霊の 御水火に助けしづめつつ凱歌をあげて十八の 神の柱は潔くウヅの館に来て見れば 思ひ掛なき末子姫捨子の姫と諸共に 貴の教をひらきまし松の神代と栄えゆく 其目出度さは言の葉の尽す限りにあらじかし 心静かな国彦が御子の松若彦の神 主の君に能く仕へ治まるこれの神館 来りて見れば瑞御霊神素盞嗚大神は はるばるここに出でまして我等が言霊軍をば 遥に守り給ひつつ光り輝き給ふこそ 実に尊さの限りなれあゝ惟神々々 国依別の神司厳の御霊や瑞御霊 日の出神や木の花姫の貴の命の御前に 国魂神を通しつつ嬉しみ尊み祝ぎまつる 畏み尊み祝ぎまつる』 と歌ひ終り、欣然として奥殿に進み入る。 (大正一一・八・二三旧七・一松村真澄録) |
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霊界物語 | 39_寅_大黒主調伏相談会/言霊隊の出発 | 01 大黒主 | 第一章大黒主〔一〇六六〕 遠き神代の昔より天地の神の大道を 説きさとしゆく諸々の教は千ぐさ万種 数限りなき其中に天地を造り固めたる 元つ御祖の御教を誠の神の現はれて 説きさとすなる三五教天教山や地教山 貴の都のエルサルム黄金山下を初めとし 霊鷲山や万寿山自転倒島に渡りては 綾の聖地の四尾山其外百の国々に 教司を間配りて安く楽しき神の世を 立てて五六七の御教に世人を助け守らむと 百の司を任け玉ひ千々に心を配ります 三大教や五大教経と緯との水火合せ 固め玉ひし三五の教を損ひ破らむと 八岐の大蛇や醜狐曲鬼共の醜霊 天が下をば蹂躙し此世を曇らせ汚さむと 醜女探女を数多く四方に遣はし闇雲に 猛びめぐるぞうたてけり天足彦や胞場姫の 汚れし魂になり出でし曲神共は村肝の 心も清き神司塩長彦の体を藉り 或は大国彦の神其外百の神人と 世に現はれてウラル教バラモン教を開設し 三五教に対抗し神の光に照されて メソポタミヤを遁走し或はコーカス山館 見棄てて逃げ行くウラル姫性懲りもなくどこ迄も 千変万化の妖術を使ひて正道を紊さむと 狂ひ廻りし醜神の常住不断の物語 いよいよここに述べ初むるあゝ惟神々々 御霊幸はへましませよ。 常世の国の常世城にあつて三葉葵の旗を押立て、自ら常世神王と称して羽振を利かし居たる大国彦は、三五教の為に其悪虐無道を警められ、部下の広国別をして常世城を守らしめ、ロツキー山に日出神と偽称して大国姫をば伊弉冊命と偽称せしめ、黄泉比良坂の戦ひに、部下の軍卒は大敗北し、遂にはロツキー山の鬼となり、茲にバラモン教を開設することとなつた。 大国彦命の長子大国別はバラモン教の教主となり遠く海を渡つて、埃及のイホの都に現はれ、其教は四方に旭の豊栄昇るが如く輝き渡り、人心を惑乱して、正道将に亡びむとせし時、三五教の夏山彦、祝姫、行平別外三光の神司の為に、其勢力を失墜し、遂に葦原の中津国と称するメソポタミヤの顕恩郷に本拠を構へ、小亜細亜、波斯、印度等に神司を数多遣はして、バラモンの教を拡充しつつあつた。 神素盞嗚尊は天下の人心日に月に悪化し、世は益々暗黒ならむとするを憂ひ玉ひて、八人の珍の御子を犠牲的に顕恩城に忍び入らしめ、バラモン教を帰順せしめむとし玉ひたれ共、大国別命帰幽せしより、左守と仕へたる鬼雲彦は、忽ち野心を起し、自ら大棟梁と称して、バラモン教の大教主となり、大国別の正統なる国別彦を放逐し、暴威を揮ひ居たりしが、天の太玉の神現はれ来りて、神力無辺の言霊を発射し帰順を迫りたれども、素より暴悪無道の鬼雲彦は、一時顕恩郷を脱け出し、再び時機を待つて、捲土重来、三五の道を顛覆せしめむと、鬼雲姫、鬼熊別、蜈蚣姫其他百の司と共に黒雲を起し、邪神の本体を現はしつつ、顕恩城を立出で、それよりフサの国、月の国を横断し、磯輪垣の秀妻の国と名に負ひし安全地帯、自転倒島の中心大江山に立籠り、徐に天下を席巻すべく劃策をめぐらしつつあつた。 然るに又もや三五教の神司の言霊に辟易し、再び海を渡りてフサの国に向ひ、残党を集めて、バラモンの再興を謀りつつ、私かに月の国、ハルナの都にひそみ、逐次勢力をもり返し、今は容易に対抗す可らざる大勢力となり、月の国を胞衣として、再び天下を掌握せむとし、最早三五教もウラル教も眼中になきものの如くであつた。 此ハルナの都は月の国の西海岸に位し、現今にてはボンベーと称へられてゐる。 鬼雲彦は大国彦命の名を奪ひて、自ら大国彦又は大黒主神と称しつつ、本妻の鬼雲姫を退隠せしめ、妙齢の女石生能姫といふ美人を妻とし、数多の妾を蓄へて、バラモン教の大教主となり、ハルナの都に側近き兀山の中腹に大岩窟を穿ち、千代の住家となし、門口には厳重なる番人をおき、外教徒の侵入を許さなかつた。 ハルナの都には公然と大殿堂を建て、時々大教主として出場し数多の神司を支配しつつあつた。夜は身辺の安全を守る為、兀山の岩窟に隠れて居た。此兀山は大雲山と名づけられた。 鬼雲彦の大黒主命は自ら刹帝利の本種と称し、月の国の大元首たるべき者と揚言しつつあつた。 月の国の七千余ケ国の国王は、風を望むで大黒主に帰順し、媚を呈する状態となつて来た。神素盞嗚大神の主管し玉ふコーカス山、ウブスナ山の神館に集まる神司も、此月の国のみは何故か余り手を染めなかつたのである。それ故大黒主は無鳥郷の蝙蝠気取になつて、驕心益々増長し、今や全力を挙げて、三五教の本拠たる黄金山は云ふも更コーカス山、ウブスナ山の神館をも蹂躙せむと準備を整へつつあつた。而して西蔵と印度の境なる霊鷲山も其山続きなる万寿山も、大黒主の部下に襲撃さるること屡々であつた。 神素盞嗚大神は自転倒島を初め、フサの国、竜宮島、高砂島、筑紫島等は最早三五教の御教に大略信従したれ共、まだ月の国のみは思ふ所ありましてか、後廻しになしおかれたのである。それ故大黒主は思ふが儘に跋扈跳梁して、勢力を日に月に増殖し、遂に進んで三五教の本拠を突かむとするに立至つたのである。 茲に斎苑の館の八尋殿に大神は数多の神司を集めて、大黒主調伏の相談会を開始さるる事となつた。日出別神(吾勝命)、八島主神(熊野樟日命)、東野別命(東助)、時置師神(杢助)、玉治別、初稚姫、五十子姫、玉国別(音彦)、幾代姫、照国別(梅彦)、菊子姫、治国別(亀彦)、浅子姫、岩子姫、今子姫、悦子姫、黄竜姫、蜈蚣姫、コーカス山よりは梅子姫、東彦、高彦、北光神、高光彦、玉光彦、国光彦、鷹彦、秋彦等を初め数多の神司が集まつて鬼雲彦の大黒主神を言向和すべく協議をこらされた結果、梅彦の照国別、音彦の玉国別、亀彦の治国別並に黄竜姫、蜈蚣姫が直接に、ハルナの大黒主の館に立向ふ事となつたのである。 (大正一一・一〇・二一旧九・二松村真澄録) |
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霊界物語 | 41_辰_黄金姫&清照姫の入那の国の物語1 | 13 夜の駒 | 第一三章夜の駒〔一一一七〕 イルナの都、セーラン王の館の奥の間には、王を始め黄金姫、清照姫、テームス、レーブ、カルの六人、上下の列を正し、対坐しながら、ひそびそ話が始まつてゐる。 王『黄金姫様、遠方の所夜中にも拘らず、よくお越し下さいました。これで私も一安心致します。貴女は鬼熊別様の奥様蜈蚣姫様、小糸姫様で厶いますなア』 黄金姫『ハイ、恥しながら運命の綱にひかれて、とうとう夫と別れ、神様の為に三五教の宣伝使になりました。世の中は思ふ様にゆかないもので厶います』 セーラン王『左様で厶いますなア、私も夫婦の道に就いて、非常に悲惨な境遇に陥つて居ります。これでも何時か又神様の御恵に依つて、思ふ様に身魂の会うたもの同士添ふ事が出来ませうかなア。貴女様は最早鬼熊別様と仲よく元の夫婦となつて、神界にお仕へ遊ばすことが出来ませう。私は到底望みがありますまい』 黄金姫『親子夫婦が一緒に神界に仕へる位、結構な事はありませぬが、私の夫は御存じの通り、バラモン教の柱石、私始め娘は三五教の宣伝使、何程神様は一つだと申しても、むつかしい仲で厶います』 セーラン王『決して御心配なさいますな。鬼熊別様は、キツト貴女のお説に御賛成遊ばすで厶いませう。私の今日の身の上は実に言ふに言はれぬ境遇に陥つて居ります。許嫁のヤスダラ姫は奸臣の為に郤けられ、心に合はぬ妻を押付けられ、一日として楽しく暮した事はありませぬ。其上奸者侫人跋扈し、私の身辺は実に危急存亡の場合に陥つて居ります。就いては貴女様をお迎へ申上げ、此危急を救うて頂きたいと存じまして、北光の神様の夢のお告げに依つて、数日前より貴女様の此方へお出ましになるのをばお捜し申して居りました。よくマア来て下さいました。今後は貴女のお指図に従ひ身を処する考へですから、何分宜しく御願ひ致します』 黄金姫『貴方は三五の教を信じますか』 セーラン王『ハイ、別に信ずるといふ訳では厶いませぬが、大自在天様も世界の創造主、国治立尊様も矢張り世界の創造主、名は変れども元は同じ神様だと信じて居ります』 黄金姫『国治立尊様は本当の此世の御先祖様、盤古神王や自在天様は人類の祖先天足彦、胞場姫の身魂から発生した大蛇や悪狐悪鬼の邪霊の憑依した神様で、言はば其祖先を人間に出して居る方ですから、非常な相違があります。神から現はれた神と、人から現はれた神とは、そこに区別がなければなりませぬよ』 セーラン王『あゝさうで厶いますかなア。私は三五教の奉斎主神たる国治立大神様も、盤古神王様も、大自在天様も同じ神様で、名称が違ふだけだと聞いて居ります。私も固くそれを信じて居りましたが、さう承はれば一つ考へねばなりますまい。チヨツト貴女様母娘に見て頂きたいものが厶りますから、どうぞ私の籠り場所へお越し下さいませ。妻でも左守の司でも誰一人入れたことのない神聖な居間で厶います。テームスよ、レーブ、カルと共にここに暫く待つてゐてくれ』 テームスは、 テームス『ハイ畏まりました』 とさし俯むく。王は母娘を伴なひ、籠りの室へ進み行く。行つて見れば、可なり広い室が二間並んでゐる。そこには立派に斎壇が設けられ、いろいろの面白き骨董品などが、陳列されてあつた。床の間の簾を王はクリクリと捲上げ、手を拍ち、祝詞を奏上し始めた。母娘も同じく頭を下げ、小声に祝詞を奏上し、終つて斎壇をよくよく見れば、一幅の掛軸が床の間の正面にかけられ、神酒、御饌、御水等がキチンと供へられてある。これは常に王が潔斎して神慮を伺ふ秘密室であつた。 掛物の神号をよく見れば、天一神王国治立尊……と正面に大字にて記し、其真下に教主神素盞嗚尊と記し、中央の両側に盤古神王塩長彦命、常世神王大国彦命と王の直筆で記されてあつた。黄金姫母娘は此幅に目をとめ、何とも言へぬ爽快さと驚きの念にうたれ、呆然として其神号を眺めてゐる。 セーラン王『私の信仰は此通りで厶います。お分りになりましたか』 黄金姫『思ひもよらぬ御神徳を頂きました。これではイルナの城も大丈夫、御安心なさいませ。併し乍ら此世の御先祖様でも時世時節には対抗し難く、一度は常世彦、常世姫一派の為に、根底の国までお出でなさつた位だから、決して油断は出来ませぬ。貴方の信仰が大黒主の方へでも分らうものなら大変だから、今暫くは発表せないが宜しいぞや』 セーラン王『ハイ、左守の司にさへも此室は覗かせた事はありませぬ。誰も知る者はないのですから、大丈夫で厶います』 黄金姫『仮令此室を覗かぬとも、貴方の信仰が斯うだとすれば、何時とはなしに、貴方の声音に現はれ、皮膚に現はれ、遂にはかん付かれるものです。如何しても心の色は包む事は出来ませぬから』 セーラン王『貴女様が此処へお越し下さつた以上は、余り心配する事も要りますまい。一寸これを御覧下さいませ』 と次の間に二人を導く。見ればここにも一寸した床の間があつて、二幅の絵像が掲げられてあつた。黄金姫、清照姫はアツとばかり驚かざるを得なかつた。それは日頃心にかけてゐる夫鬼熊別の肖像と一幅は神素盞嗚尊の御肖像であつた。清照姫は思はず、 清照姫『あゝこれはお父様、大神様』 と言はうとするを、黄金姫は口に手を当て、 黄金姫『コレコレ清照姫殿、何を仰有る。これはキツト大黒主様と自在天様の絵姿だ。そんな大きな声を出すと、悪魔の耳に這入つては大変ですよ』 清照姫『父上によう似た御肖像で厶いますなア。ホヽヽ』 セーラン王『私は今までバラモン神を信仰して此国を治めて居りましたが、或夜の夢に神素盞嗚大神様、鬼熊別命様と二柱現はれ給ひ、いろいろ雑多の有難き教訓を垂れさせ下さいまして、それより神命に従ひ、私一人信仰を励み、時の到るを待つて居りました。私の夢に現はれたお姿を思ひ出して、自ら筆を執り、ソツとお給仕を致して居ります。鬼熊別様は神界にては神素盞嗚尊様のお脇立になつてゐられます。キツト其肉体も三五のお道へお入り遊ばすでせう。只時間の問題のみが残つてゐるのだと感じて居ります』 黄金姫母娘は物をも言はず感に打たれ、嬉し涙にかきくれてゐる。セーラン王は、 セーラン王『天地の神の恵を目のあたり 拝みし今日ぞ尊かりけり。 素盞嗚神の尊に服ひて 教を守る鬼熊別の神司よ。 鬼熊別神の命は今暫し ハルナの都に忍びますらむ。 時機来ればやがて表に現はれて 三五教の司となりまさむ。 あゝ嬉し黄金姫や清照姫 神の司に会ひし今宵は』 黄金『来て見れば思ひもよらぬ王の居間に わが背の君の姿拝みし。 バラモンの教の御子と思ひしに 摩訶不思議なる今宵なりけり』 清照『千早振る神の光の強ければ 父の命の心照りつつ 吾父は最早国治立神の 教の御子となりましにけむ。 セーランの王の命よ今暫し 時を待ちませ神のまにまに。 清照姫教の司も今宵こそ 積る思ひの晴れ渡りける』 黄金『北光の神の命のかくれます 高照山にとく進みませ。 高照の山は世人の恐ろしく 噂すれども貴の真秀良場。 百千々の狼の群従へて 北光の神は王を待ちつつ。 いざさらばテームス、レーブ、カル三人 後に従へとく出でませよ』 王『黄金姫神の御言に従ひて とく立出でむ高照山へ。 吾行きし後の館は汝命 暫し止まり守り給はれ』 清照『大神の稜威の光に照らされて 道も隈なく安く行きませ。 母と娘が心を協せ身を尽し 入那の城を暫し守らむ』 王『鬼熊別神の命の賜ひてし 生玉章を汝に奉らむ。 心して披き見給へ鬼熊別 神の命の真心の色を』 と言ひながら、鬼熊別より王に遣はしたる密書を黄金姫に恭しく手渡した。黄金姫は手早く封じ目を切り、押披いて読み下せば、左の文面であつた。 『鬼熊別よりセーラン王に密書を送る。 一、これの天地は天一神王大国治立尊の造り給ひし神国にして、決して大国彦、塩長彦の神等の創造せし天地にあらず。又大黒主はバラモン教の大棟梁として兵馬の権を握り、大教主の仮面を被り居らるれども、天は何時迄も斯かる虚偽を許し給はず、必ずや本然の誠に立ち返り、三五教を信従する時あるべし。それに付いては神素盞嗚大神の御摂理に依り、吾妻子近々の中に王が館に訪問すべければ、一切万事を打明け、国家の為に最善の努力をなさるべし。ハルナの都は今や軍隊の大部分は遠征の途に上り、守り最も少なくなり居れり。然るに王に仕ふる右守より王を廃立せむとの願書、大黒主の許に来り、大黒主は数千の騎士を近々差向くる事となりをれば、イルナ城は実に風前の灯火なるを以て、貴王は吾妻子と共に善後策を講じ、一時何れへか避難さるべし。鬼熊別はハルナの都に止まつて、大黒主を悔ひ改めしめ、其身魂をして天国浄土に救はむと朝夕努めつつあり。吾妻子に面会の日を期し、一刻の猶予もなく、安全地帯へ一時身をかくさるべく呉々も注意致します。あゝ惟神霊幸倍坐世』 と記されてあつた。黄金姫、清照姫は久しぶりに鬼熊別の肉筆の手紙を見て、夫に直接会ひし如く、父に面会せし如く、心勇み、感涙を落しながら、 黄金『あゝ之にて何もかも分りました。北光の神様が一時も早く貴方を狼の岩窟へ誘ひ来れとの御命令も、此手紙の文面にて氷解しました。あゝ、何と神様はどこまでも注意周到なお方だなア』 清照『お父様に直接お目にかかつた様な心持が致します。神様、有難う厶います』 と両手を合せ、神素盞嗚尊の聖像に向つて、感謝の詞を捧げた。 黄金『サアかうなる上は、一刻も早く高照山へ夜の明けない中にお越し遊ばせ。申上げたき事は山々あれど、今はさういふ余裕も厶いませぬ。サア早く早く』 とせき立つれば王は、 セーラン王『左様ならば、万事宜しく願ひます』 と先に立ち、テームス等が控へてゐる居間に姿を現はした。王は母娘と共に表の居間に立現はれ、テームスに打ち向ひ、 セーラン王『テームス、御苦労だが、早く駒の用意をしてくれ。これから高照山へレーブ、カルを伴ひ、出発致すから』 テームス『ハイ承知致しました。併し乍ら黄金姫様の御命令に依り、馬の用意はチヤンと整へておきました。何時なりともお供を致しませう』 セーラン王『あゝそれは有難い。それなら、黄金姫様、清照姫様、あとを宜しく御願ひ致します』 黄金『君ゆきて如何にけながくなるとても われは館を守りて待たむ。 うら安く進み出でませ高照の 山の岩窟に神は待たせり。 三五の教司の北光の神は 君のいでまし待たせ給はむ』 王『いざさらば黄金姫や清照姫 神の命よ惜しく別れむ』 と歌ひながら、慌しく表に出で、裏門口より駒引き出し、暗の道を辿りて、高照山の岩窟指して一行四人は雲を霞と駆り行く。 (大正一一・一一・一二旧九・二四松村真澄録) |
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霊界物語 | 65_辰_虎熊山と仙聖郷の物語/七福神 | 19 谿の途 | 第一九章谿の途〔一六七五〕 神の教の三千彦は行き疲れたる折柄に 白骨堂の大前に見知らぬ女に廻り遇ひ 悲しき女の境遇に同情し乍らスタスタと センセイ山の谷間を冷たき風に吹かれつつ 右に左に飛び越えて漸く広き田圃道 チヤムバカ(黄色花)バータラ(重生花)バールシカ(夏生花) ナワマリカー(雑蔓花)やスマナー(悦意花)の 所狭きまで匂ひたる野道をスタスタ進み往く。 三千彦『何と此辺は珍らしい花が咲き、馨しい香を放つて居るぢやありませぬか。まるで第一天国の原野を旅行して居るやうで厶いますなア』 スマナー『ハイ、此処は仙聖山の麓の仙聖郷と申まして、此世の楽土と称へられた秘密郷で厶いますが、今は薩張人間の心が悪化して了ひ、油断も隙もならない修羅道となつて仕舞ひました。此の道にいろいろの香ばしき花は艶を競ふて咲いて居りますが、村人の心の花はいつの間にか薊の花となり、刺だらけでうつかり手出しも出来ないので厶います。村の名は仙聖郷でも、人の心は修羅道ですから、其積りで居て下さい。油断も隙もならない所で厶いますからなア』 三千『物質万能主義の空気が、斯様な仙郷迄襲ふて来たと見えますな。世の中も是では終りで厶いますわい。大神様のお言葉には「神のつくつた結構な神国が指一本入れる所も、片足踏み込む所もない」と大国治立の神様のお歎きですが、いかにもすみずみ迄もよく汚れたもので厶いますなア』 スマナー『あまり村人の同情心が無いので、妾もこの仙郷が嫌になつたので、お恥かし乍ら夫の後を追ふて、冥途往きをせうと思ふたので厶います。私の従弟に、テーラと云ふ、それはそれは意地の悪い男が厶いまして、両親、夫の無くなつたのを幸ひ、朝から晩迄吾家に平太り込み、酒をつげ、肩をうて、足をもめ、○○○を○○○と無体の事を申ますので、夫れが嫌さに家を飛び出し、死を決したので厶います。何れ吾家へ帰ればテーラが主人顔をして頑張つて居りませうから、其お積りで来て下さいませや』 三千『ハイ承知致しました。これから宣伝使の武器と頼む、言霊の宣伝歌を謡ひ乍ら参りませう』 スマナー『どうかお願ひ申ます。歌と云ふものは何となく心の勇むもので厶いますからなア』 三千彦は声を張り上げて謡ひ出した。 三千彦『天地万有悉く霊力体の三元を もつて創造なし給ひ蒼生や山川の 御霊を守りたまはむと千々に心を砕きまし 海月の如く漂へる陸地を造り固めつつ 神人和楽の天国を地上に建設なしたまひ 教を開きたまふ折天足彦や胞場姫の 醜の身魂になり出し八岐大蛇や醜神の 曲の猛びに世の中は日に夜に月に曇り果て 常世の暗となりにけり荒ぶる神の訪なひは 五月蠅の如くわきみちて山の尾上や河の瀬に うらみ歎きの声許り醜神達は時を得て いとも尊き皇神を世の艮に逐ひ下し 吾物顔に世の中を乱し行くこそ憎らしし 音に名高き仙郷も醜の曲霊の醜魂に かき紊されて修羅道の現出したるか浅ましや 斎苑の館を立ち出でて曲の征討にたち向ふ 三千彦司此処にありいかなる曲の猛びをも 生言霊の神力に言向け和し仙郷の 御空を包む雲霧を伊吹払ひに払ひのけ 神代乍らの仙郷にねぢ直さむは案の中 確に胸にしるしあり喜びたまへスマナー姫 三千彦現はれ来る上は仮令テーラの三五人 万人一度に攻め来とも如何で恐れむ敷島の 神国魂打ち出して郷の空気を一洗し 小鳥は謡ひ花匂ふ昔の儘にかへすべし あゝ惟神々々神は吾等と共にあり 人は神の子神の宮大御心に叶ひなば 地獄畜生修羅道も天国浄土の心地にて やすやす浮世を渡り得む喜びたまへスマナー姫』 と謡ひ乍ら、稍広き原野を、家の棟の見ゆる所迄進んで来た。スマナーは後振り返り、 スマナー『もし宣伝使様、あの山の麓にバラバラと家棟が見えるで厶いませう。そして一番高い所の山のほでらに可なり大きな家が見えるで厶いませう。あれが妾の住家で厶います』 三千『成程黄昏の事とてハツキリは分りませぬが、余程大家と見えますな』 スマナー『イエイエお恥かしい、破屋で厶います。サアもう一息で厶いますが、貴方も随分お疲れのやうで厶いますから、此処で一休みして帰る事に致しませうか。何れ心の悪いテーラが頑張つて居りませうから、日が暮れてからの方が様子を考へるに都合がよいかも知れませぬからなア』 三千『成程なア、夫がいいでせう。都合によつては一つ面白い芝居が出来るかも知れませぬからなア』 茲に二人は半時許り雑談に耽り、黄昏の暗を幸ひ、村中で一番高い屋敷に建つた、スマナーの館をさし帰り往く。 (大正一二・七・一七旧六・四於祥雲閣加藤明子録) |
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霊界物語 | 65_辰_虎熊山と仙聖郷の物語/七福神 | 21 仙聖郷 | 第二一章仙聖郷〔一六七七〕 スマナー『花は紅葉は緑錦の山の尾めぐらせる 中国一のパラダイス仙聖郷は永久に 天国浄土の楽みを味はひゐたる郷なれど 天足彦や胞場姫の醜の魔神の血筋らが いつとはなしに窺ひて人の心は日に月に 荒び行くこそうたてけれ虎熊山の山砦に 巣を構へたる盗人の手下の奴等が襲来し 吾たらちねの父母をいとも無残に斬殺し あが背の君や兄弟の命を奪ひ有金を 掠めて帰りし悲しさに妾は跡に只独り 親と夫と兄弟の菩提を弔ひゐたりしに 人の悪事を剔抉し誣告を以て業とする テーラの曲が現はれて朝な夕なに口説き立て 耳の汚るる世迷言聞くに堪へかねスマナーは 此世の中が厭になり亡き父母や吾夫の 後を慕ひて天国に上らむものと胸定め 遺書を認め吾家を二日以前に立出でて 白骨堂に勤経しいよいよ茲に昇天の 覚悟を定むる折もあれ三五教の宣伝使 神力無双の三千彦が現はれましてスマナーが 迷ふ心の無分別うまらに委曲に諭しまし 神の教を宣らせしゆ俄に胸も晴れ渡り 真如の日月輝きて今は全き神の子と 生れ変りし嬉しさよ三千彦司に従ひて 吾家に来り眺むればいとど騒がし人の声 様子あらむと裏口ゆ一間に入りて窺へば 悪逆無道のテーラさま妾が家の財産を 占領せむと狂ひ立ちターク、インター其外の 青年隊の人々と争ひゐるこそ歎てけれ 最早妾は健在に命を保ちて帰りなば テーラさまの御心配必ず無用に遊ばせよ 捕手の役人キングレス其他百の人達に はるばる来り玉ひたる好意を感謝し奉る 神が表に現はれて善と悪とを立分ける 此世を造りし神直日心も広き大直日 只何事も人の世は直日に見直し聞直し 世の過ちは宣り直す神の教を聞きしより 妾はテーラの計画を決して決して憎まない 早く此場を立帰り身の潔白を示されよ 青年会長其外の清き身魂の人達は 少時後に残りませ妾が為に御心を 配らせ玉ひし慰安の御酒御饌仕へ奉り 妾が寸志を現はさむ暫く待たせ玉へかし 三千彦司と諸共に帰り来れる上からは いかに捕手の数多く吾家に迫り来る共 テーラが如何に騒ぐ共物の数にはあらざらめ あゝ有難し有難し天地に誠の神まして 吾家を守り吾身をば厚く恵ませ玉ひけり あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ 旭は照る共曇る共月は盈つ共虧くる共 仮令大地は沈む共誠一つは世を救ふ 誠の道に外れたるテーラの如き行ひは いかでか神の許すべき省み玉へテーラさま スマナー姫が赤心をこめて忠告仕る あゝ惟神々々御霊のふゆを賜へかし』 と歌ひ乍ら、三千彦の後に従ひ、しづしづと奥の方から現はれて来た。逃腰になつてゐたテーラは、「コリヤたまらぬ」と上り口より慌てて庭にひつくり返り、向ふ脛を打ち四這となつて裏口の闇に紛れて逃出して了つた。キングレス其他の面々は何れも真の捕手にあらず、テーラが虎熊山の盗人をワザとに変装させ、此狂言を描いたのであつた。そして二週間以前に躍り込み、家内を殆ど全滅の厄に会はせた泥棒も、又キングレスの部下の者であつた。キングレスはスマナー姫の言霊と三千彦の神力に圧倒され、五体俄に戦慄し、其場にドツと尻餅をつき、口許りポカンとあけて、慄うてゐる。捕手に化けてゐた十数人の小泥棒も同じく、其場に腰を抜かし、ふるひ戦いて居る。 三千彦は厳然として座敷の中央に座を構へ、青年隊並に泥棒組に向つて、宣伝歌を挨拶に代へて謡つた。 三千彦『人は神の子神の宮神に斉しき者ならば 天地を経綸すると云ふ尊き神の御使ぞ 小さき欲に捉はれて広き此世を自ら 身の置所もなき迄に狭め行くこそ歎てけれ 限りも知らぬ天地の清けく広き世の中に 安養浄土の楽しみを得させむ為にウブスナの 斎苑の館にあれませる此世の垢を洗ふてふ 瑞の御霊の神柱神素盞嗚の大神は 神の司を四方の国放ち玉ひて曲神の 虜となれる人々を安きに救ひ助けむと 計らせ玉ふ尊さよ吾れは三千彦宣伝使 神の力を身に受けてフサの国をば横断し 漸く茲に来て見れば音に名高き仙聖郷 高天原の楽園も怪しき雲霧立こめて 常夜の暗と成さがり悪鬼羅刹は縦横に 跳梁跋扈なしにける此惨状を一瞥し 神の使の身を以ていかでか看過すべけむや 吾宣る教は皇神の聖き尊き勅言ぞ 心を清め耳すませ謹み畏みきこしめせ 弱味につけ込む風の神寄るべ渚の未亡人 スマナー姫の留守宅へをどり込みたるテーラこそ げにも憐れな曲津身の醜の虜となり果て 重き罪をば知らずして犯したるこそうたてけれ キングレスや其外の捕手と称する人々よ 汝は真の捕吏ならずどこかの山に山砦を 構へて旅人をおびやかす大泥棒と覚えたり 誠捕手の役ならば繊弱き姫の言霊に いかでか打たれて倒るべき心に弱味のある者は 只一言の言霊もきつく恐るるものぞかし 許しがたなき奴なれど吾等も同じ神の子の 同胞なれば咎めずて誠の道にまつろはせ 救ひやらむと思ふこそ吾赤心の願ぞや 心を直し魂清め今迄尽せし罪科を 皇大神の大前に包まずかくさずさらけ出し 今後を戒め善道にいづれも揃うて立帰れ 吾れも汝も神の御子いかに曇れる魂も 研き上ぐれば元の如水晶魂となりぬべし あゝ惟神々々神に誓ひて宣り伝ふ 旭はてる共曇る共月は盈つ共虧くる共 仮令大地は沈む共誠の力は世を救ふ 誠にまさる力なし此世の主権を握る共 誠の道を欠くならばこれ風前の燈火ぞ 省み玉へ諸人よ神の教の三千彦が 一同に向ひ大神の神心審さに宣べ伝ふ あゝ惟神々々御霊幸ひましませよ』 と繰返し繰返し宣伝歌を以て一同に説き諭した。キングレスは涙をハラハラと流し、犬突這となつて三千彦に向ひ、 キング『三五教の宣伝使三千彦司の前に、私は一切の罪悪を打あけて白状を致します。モウ此上はあなたの御教に従ひ、善道に立帰りまするから、今迄の罪をお赦し下さいませ。私の如き悪人は又と世界に厶いますまい。実の所は虎熊山の山砦に立籠もり、十里四方の村々を劫やかし、旅人を苦め居りましたる所、バラモン教の軍人たりし、セール、ハールの両人、沢山の部下を引つれ、虎熊山に登り来り、私等の部下二十人と共に高手小手に縛られ、止むをえず降服致し、彼等の乾児となり、此方の方面へ働きに出て居る者で厶います。そして此郷のテーラといふ男は、吾々仲間と常に気脈を通じ、家尻切、庫破りの手引きをしてをつた者で厶いますが、二週間以前に当家を鏖殺し、此財産を横領せむと、彼れテーラの献策に仍り、抜刀を以て押入り、家族を全滅させむと計りました所、天罰忽ち酬い来て、只一人のスマナー姫さまを打漏らし、それが為に忽ち陰謀露顕致し、身動きもならぬ神罰にあてられ、懺悔の情に堪へませぬ。何卒々々赦しがたき吾々なれ共、今の宣伝歌のお詞の通り、心も広き大直日に見直し聞直し宣直し下さいまして、命丈はお助けを願ひます。たつて許さぬと仰有れば、是非も厶いませねば、私の命をお取り下され、部下十数人の命をお助け下さいまして、彼等に誠の教をお伝へ下さつた上、神様のお道に御救ひ下さいますやう』 と面に誠を現はして、心の底より謝罪する。 三千『人間界から云へば赦しがたない大罪人、お前達は今日の法律に依れば、強盗殺人罪として首のない代物だが、神様は大慈大悲にまします故、改心さへすればキツとお許し下さるだらう。併し此三千彦は人を審判く権利もなければ、許す権利もない。従つてお前達を苦しめる権能もない。どうか誠の道に立帰り、朝な夕なに神さまにお仕へして、神の御子たる誠の人間に立帰つて貰ひたい。それが神の御子たる三千彦の希望である。其処にゐるキングレスの部下の人達、拙者の云ふ事が心にはまつたならば、今茲で神様にお詫をなさるがよからう。又青年会の人達も此郷はウラル教の教を奉ずると聞いてゐるが、どうか神様の御心を誤解せぬ様、誠の道を歩んで下さい。真にウラル教の教が拡まつてゐるならば、此仙聖郷は昔の儘に、天下の安楽郷として、太平無事でなければならぬのだ。然るにかかる惨事の突発するといふのは、神の御心に反いた点があるのではあるまいかと、此三千彦は愚考致します。そしてスマナー姫様は親兄弟夫に別れ、心淋しく暮してゐられるのだから、青年の方々は陰に陽に、親切に守つて上げて下さい。そしてどこ迄も父母祖先の霊に対し孝養を尽し、亡き夫に、貞操を固く守られるやう、保護して下さる様、願つておきますよ』 タークは感涙に咽び乍ら、 ターク『有難し誠の神のあれまして 亡ぼし玉ひぬ醜の曲津を。 御詞を朝な夕なに能く守り 神の大道に仕へ進まむ』 インター『われも亦教司の言の葉を 肝に銘じて忘れざるらむ』 三千彦『みちのくの山の奥にも皇神の 守りありせば安くましませ。 古の仙聖郷に立直し 笑み栄えつつ永久にあれよ』 スマナー姫『三千彦の神の司に助けられ 今日は嬉しくゑみ栄えける。 おそひ来る醜の曲津の影もなく 亡びし今日ぞいとど嬉しき』 斯かる所へ村の中老、各自に得物を携へ、裏口表口より慌しく走り来る。又スマナー姫を捜しに行つた青年は、比較的遠路の為、一人も未だ帰つて来ない。裏口の水門壺の中にアブアブして苦しんでゐる男を見れば、逃げしなに過つて落込んだテーラであつた。俄に大地はビリビリと震動し、四辺の山岳は轟々と唸り出したとみるまに、轟前たる爆音、天地もわるる許りに響き来り、水門壺におちて居た、テーラは其震動にはね飛ばされて、二三間飛上り、どんと大地に投げ付けられ、苦しげに泡をふいてゐる。此音響は虎熊山の火山が一時に爆発した響であつた。 (大正一二・七・一七旧六・四於祥雲閣松村真澄録) |