| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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霊界物語 | 67_午_ハルの湖/タラハン国の国政改革1 | 04 笑の座 | 第四章笑の座〔一七〇六〕 湖神白馬の鬣を揮つて、激浪怒濤を起し、殆ど天をも呑まむとする勢なりし湖上の荒びも、癲癇が治まつたやうに、まるつきり嘘をついた様にケロリと静まつて、水面は恰も畳の目の如く、縮緬皺をよせてゐる。島影を漕出した波切丸は、欵乃豊かに舳を南方に向けていざり出した。 此地方の風習として、人々何れも閑散な時には無聊を慰むる為に、笑ひの座といふものが催される事がある。笑ひの座に参加する者は、何れも黒い布で面部を包み、何人か分らぬやうにしておいて、上は王公より下は下女下男の噂や国家の現状や人情の機微などを話し、面白く可笑しく、罵詈嘲笑を逞しうして、笑ひこけ、互に修身斉家の羅針盤とするのである。流石権力旺盛なる大黒主と雖も、此笑ひの座のみには一指を染むる事も出来なかつた。笑ひの座は庶民が国政に参与する事のない代りに、其不平や鬱憤を洩らし、或は政治の善悪正邪や、国家の利害得失迄も、怯めず臆せず何人の前にても喋々喃々と吐露することを、不文律的に許されてゐたのである。 日は麗かに、風暖かく、波は静に、舟の歩みもはかばかしからず、遥の湖面には陽炎が日光に瞬いてゐる。其有様は恰も湖面の縮緬皺が空中に反映したかのやうに思はれた。さも恐ろしかりし海賊の難や暴風怒濤の悩み、殆ど難破に瀕したる波切丸の暗礁の難を免れたる嬉しさに、何れも天地の神を礼拝し、感謝の辞を捧ぐる事半時許り、其あとは三々伍々デッキの上に円を描いて、笑ひの座が開かれた。 甲『諸君、何うです、此穏かな湖面を眺めて、旅情を慰むる為に、天下御免の笑ひの座を催したら何うでせう』 乙『イヤそりや面白いでせう。チツト許り、言論機関たる天の瓊矛を運用させても宜しからうかと考へてゐた所です。何か面白い話を聞きたいものですなア』 甲『皆さま、黒布をお被りなさい。之も此国の神世から定まつた不文律ですから。其代りに目の前にゐる貴方方の悪口雑言を云ふかも知れませぬが……笑ひの座の規則として御立腹のなき様に予め願つておきますよ、アハヽヽヽ』 乙『サアサア自分の顔のしみは見えないものだから、俺は偉い偉い、世間の奴は馬鹿だとか、間抜だとか、腰抜だとか思つてゐるものです。自分が自分を理解する様になれば、人間も一人前の人格者ですが、燈台下暗しとか云つて、自分の事は解らないものですからな。どうか忌憚なく、お気付になつた事は批評して下さい。それが私に取つて処世上の唯一の力となりますから』 甲『宜しい、倒徳利の詰が取れた以上は、味の悪い濁酒を吐出して、諸君を酔生夢死せしむる様な迷論濁説が際限もなく迸出するかも知れませぬよ』 乙『サアサア是非願ひませう。自分の頭や顔面が見え、又自分の首や背中が見える様な人間ならば、自己の欠点が判然と解るでせうが、不完全に造られた吾々人間は、到底暗黒面のあるのは、止むを得ないです。其暗黒面を親しき友から、破羅剔抉して注意を与へて貰ふ事は、無上の幸福でせう。併しお前さまの暗黒面も素破抜きますが、御承知でせうな』 甲『それは相身互です。そんなら私から発火しませう。……エー、貴方此頃大黒主様から大変な偉い職名を与へられたといふ事だが一体どんな御気分がしますか、竹寺官と云へば腰弁とは違つて、役所へ通ふのにも馬とか車とか相当な準備も要るでせう。随分愉快でせうな』 乙『実は某役所の執事に栄進したのです。然し乍ら赤門を出てから官海に遊泳すること殆んど十五年、どうやらかうやら執事まで昇つたのです。吾々の学友は大抵小名から大名、納言級に昇つた連中もありますが、私は阿諛諂佞とか追従とか低頭平身などの行為が嫌いなので、相当の実力を持ち乍ら漸く某役所の執事になつた位なものです。本当に十五年間も孜々兀々として役所の門を潜り、今に借家住居をして色々の雅号を頂いた所で一銭の金が月給の外に湧いて来るでもなし、一握の米が生れるでもなし、丸つきり高等ルンペンの様なものです。それでも公式の場所へは他の連中が嬉しさうに雅号のついたレツテルをぶらさげて行きよるものだから、私も心に染まないけれど、何だかひけを取るやうな気分がするので、嫌々乍らレツテルをはつて行くのですよ。アハヽヽヽヽ』 甲『嫌なものを張つて行くとは云はれましたが、然し貴方の本心としてはまつたく嫌で叶はないのぢやありますまい。嫌な嫌な毛虫が胸にくつついてゐたら誰しも之を払ひ落すでせう。そこが貴方の闇黒面で、所謂偽善と云ふものです。爵位何物ぞ、権勢何物ぞ、富貴何ものぞ、只吾々は天下の志士だと人に思はせたい為の飾り言葉でせう。虚礼虚飾を以つて唯一の処生法と為し、交際上の武器と信じてゐられるのでせう。さういふお方が上流に浮游してゐる間は、神様の神政成就も到底駄目でせう。私は米搗ばつたといふものを見る度に、何となく嫌忌の情が胸に湧いて来るのです。併し過言は御免を蒙つておきませう。何と云つても笑ひの座の席での言葉で厶いますからな』 乙『ヤ、貴方も中々の批評家ですね。実は私も米搗ばつたにはなり度くないのです。これを辞めれば忽ち妻子が路頭に迷ひ、生存難におびやかされるから長者に膝を屈し腰を曲げ、ばつたや蓄音機の悲境に沈淪しながらも陰忍自重して、あたら月日を送つてゐるのです。今日の米搗ぐらゐ卑劣な、暗愚な狭量な、そして高慢心の強い代物はありませぬわ。何か可い商売でもあつたら、男らしく辞職をしてみたいのです。そして辞表を長官の面前へ投げつけてやりたいと、切歯扼腕慷慨悲憤の涙にくれることは幾度だか知れませぬよ。卑劣な、暗愚な、おべつか主義の小人物はドシドシ執事にもなり、小名にもなり、大名にもなつて、時めき渡ることが出来ますが、私のやうな硬骨漢になると、上流の奴、彼奴ア頑迷だとか、剛腹だとか、融通が利かないとか、野心家だとか、過激主義だとか、反抗主義だとか、生意気だとか、猪口才だとか、何とかかんとか、種々の称号をつけて、頭を抑へるのみならず、グヅグヅしてゐると寒海から放り出されて了ふのですから、人生、米搗虫位惨めな者はありませぬよ。実に悲哀極まる者は官吏生活ですよ。ハヽヽヽ』 甲『全体、月の国の人間は、国は大きうても、小人物許りで、到底世界強国の班に列するの光栄を永続することは不可能でせう。外交はカラツキシなつてゐないし、強国の鼻息を伺ふこと計りに汲々乎とし、内政は人民の自由意志を圧迫し、少しく骨のある人間は、何とかカンとかいつては、牢獄へブチ込み、天人若斗りを登用して顕要の地位に就かしめ、己れに諛び諂らふ者のみ抜擢して、愚者、卑劣漢のみが高いところに蠢動してゐるのだから、到底国家の存立も覚束ないではありませぬか。今の時に当つて、本当に国家を思ふ英雄豪傑、又は愛善の徳にみちた大真人が現はれなくちや駄目でせうよ』 乙『さうですなア、私の考へでは、茲二三年の間には、月の国の大国難が襲来するだらうと思ひます。大番頭も、其他の納言も、どうも怪しい怪しいと何時も芝生に頭を鳩めて、青息吐息で相談をやつてゐますが、何れも策の施しやうがないと云つて居ります。何といつても今の世情は、宗教を邪魔物扱ひし、物質本能主義を極端に発揮し、何事も世の中は黄金さへあれば解決がつく様に誤解してゐたものですから、従つて国民教育も全部物質主義に傾き、国民信仰の基礎がぐらついて、殆ど精神的破産に瀕してゐるのですから、到底此頽勢を挽回する望みはありますまい。今に世界は七大強国となり、十数年の後には、世界は二大強国に分れると云ふ趨勢ですが、どうかして印度の国も、二大強国の一に入りたいものですが、今日の頭株の施政方針では、亡国より道はありませぬ。物価は高く、官吏は多く、比較的人民も多くして、生存難は日に日に至り、強盗殺人騒擾なども、無道的行為は到る処に瀕発し、仁義道徳地に堕ち、人心は虎狼の如く相荒び、親子兄弟の間も利害のためには仇敵も只ならざる人情、教育の力も宗教の力も、サツパリ零です。否宗教は益々悪人を養成し、経済学は国家民人を貧窮に陥れ、法律は善人を疎外し、智者を採用し、医学は人の生命を縮め、道徳は悪人が虚偽的生活の要具となり、商業は公然の詐偽師となり、一として国家を維持し国力を進展せしむるものは見当りませぬ。それだから私も一つ奮発して、国家の滅亡を未然に防ぎ度いと焦慮して居りますが、何分衣食住に追はれてゐるものですから手の出し様がありませぬ。米搗虫の地位を利用して賄賂でもどしどし取れば、又寒海を辞した時、社会に活動するの余祐も出来るでせうが、それは私には到底出来ない芸当です。とやせむかくやせむと国家の前途を思ひ、日夜肺肝を砕いてをりますが、心許り焦つて、其実行の緒につく事が出来ないのは遺憾千万で厶います』 甲『今貴方は、官を辞したら、衣食住に忽ち困るから、国家の大事を前途に控へ乍ら、活動することが出来ないといはれましたが、それは貴方の薄志弱行といふものです。徒らに切歯扼腕慷慨悲憤の涙にくれてゐた所で、社会に対して寸効も上らないでせう。納言になる丈の腕を持つた貴方なれば、民間に下つて何事業をせられても屹度相当の収益もあり、又成功もするでせう。人は断の一字が肝腎ですよ。空中を翔る鳥でさへも、何の貯へもして居りませぬが、天地の神は、彼等を安全に養つてゐるだありませぬか。窮屈な不快な寒吏生活を罷めて、正々堂々と自由自在に、何か事業をおやりなさつたら何うです。活動は屹度衣食住を生み出すものです。何を苦しんで官費に可惜貴重な生命を固持する必要がありますか』 乙『お説は一応御尤もですが、吾々は悲しいことには父母の膝をかぢつて、小学、中学、大学と一通りの学問の経路を越え、学窓生活のみに日を送り社会一般の事情に通ぜず、又苦労をしたこともなし、今となつては乗馬おろしの様なもので、寒海を離れたならば、何一つ社会に立つて働く仕事がありませぬ。新聞記者にでもなるか、或は三百代言の毛の生えた如うな者になるより行り場のない厄介者ですからな』 甲『凡て人民の風上に立つ役人たる者は、何から何迄、之が一つ出来ないといふ事のない所迄、経験を積まねばならず、又人情にも通じてゐなくてはならない筈だのに、今日の官吏なる者は、凡て社会と没交渉で、何一つの芸能もなく、無味乾燥な法律学のみに頭を固めてゐるのだから、風流とか温雅とか、思いやりとかの美徳が備つてゐない。そんな連中が世話の衝に当つてゐるのだから、民衆が号泣の声も塗炭の苦しみも目に入らず耳に聞えず、世は益々悪化する許り、之では一つ天地の神の大活動を待たねば、到底暗黒社会の黎明を期待することは難しいでせう。あゝ困つた世態になつたものだなア』 乙『仮に私が官を辞し、民間に降るとすれば、どうでせう、何職業を選むべきでせうか。どうか一つ智恵を貸して頂きたいものですな』 甲『貴方到底駄目でせう。人に智恵を借つてやるよなことでは、何事業だつて、成功するものだありませぬよ。自分が自分を了解してゐられないのだから、……先づ……斯ういふと失礼だが……貴方の適業と云へば山賊でせう』 乙『これは怪しからぬ。私がそれ程悪人に見えますか。私も印度男子です。腐つても鯛、苟も納言の地位に登つた紳士の身であり乍ら、山賊が適任とは、余り御過言ではありますまいか』 甲『ハヽヽ、納言となれば何れ数百人の小泥棒を監督してゐられたでせう。さうすれば貴方は今日迄、立派な役人と表面上見えて居つても、寒賊の親分だ、寒賊が山賊になるのは、適材を適所に用ふるといふものです。あのオーラ山のヨリコ姫、シーゴー、玄真坊などを御覧なさい。堂々と山寨に立籠り、三千の部下を指揮し、王者然と控へてゐたではありませぬか。表面納言などと、こけ威しの看板を掲げ、レツテルを吊らくつて人民の膏血を絞り、賄賂をとり、弱者を苦しめ、強者の鼻息を窺ひ、且つ上長の機嫌を取り、女性的卑劣極まる偽善的泥棒を行つて居るよりも、シーゴーの様に堂々と泥棒の看板を掲げてやつてる方が、余程男らしいだありませぬか。今日の世の中は上から下迄泥棒斗りです。況して泥棒をせない官吏は一人もないでせう。人権蹂躙の張本、圧迫の権化、鬼の再来、幽霊の再生、骸骨の躍動、女房の機嫌取り、寒商の番頭などをやつてゐるよりも、幾数倍か山賊の方が男性的でせう、ハヽヽヽヽ。イヤ失礼、天性の皮肉屋、悪口屋ですから、何うぞ大目にみて下さい……イヤ大耳に聞いて下さい』 シーゴーは二人の話を、背をそむけ乍ら、耳をすまして聞いてゐた。そして時々微笑したり、溜息をついたり、或時は肩をそびやかしたり、平手で額口を打つたり、両方の手で顔を拭ふたり、頭を掻いたりしてゐた。そして彼シーゴーは自分が今迄、オーラ山でヨリコ姫を謀師とし、山賊の大頭目として豺狼の如き悪人輩を使役してゐたのは、余り良心に恥づる行動でもなかつた、印度男子の典型は俺だ、如何にも寒狸といふ奴、卑怯未練な小泥棒だ、到底俺の敵ではない。ヤツパリ俺は偉いワイ、三五教の梅公さまの威徳に打れて、神の道に改悛帰順を表したものの、今となつて考へてみれば実に惜しいことをした。最早六日の菖蒲十日の菊だ。併乍ら俺が偉いのではない、ヨリコ姫女帝の縦横の智略、権謀術数的妙案奇策が与つて力あつたのだ。ヨリコさま女帝も此話は耳に入つただろ、どうか自分と同様に心を翻へして呉れないか知らん。大黒主だつて大泥棒だ、勝てば善神、負くれば悪神だ。善悪正邪は要するに優勝劣敗の称号だ。なまじひ、菩提心を起し、宗教なんかに溺没したのは一生の不覚だつた。今の話で聞くと、宗教家だつてヤツパリ一種の泥棒だ。世の中に顔だとか、恥だとかいつて気にかけてるよな小人物では、生存競争の激烈なる現代に立つて、生存するこた出来ない。あゝ何うしたら可からうかな。一旦男の口から神仏に誓つて悔い改めますと云つた以上、此宣誓を撤回する訳にもいかない。それでは男子たるの資格はゼロになつて了ふ……と吐息をついてゐる。ヨリコ姫は微笑を泛べ乍ら、シーゴーの前に進み来り、 『村肝の心の空に雲立ちて 月日は暗に包まれにける。 右やせむ左やせむとシーゴーが 動く心の浅ましきかな。 男子てふものの心の弱きをば 今目のあたり見るぞうたてき。 惟神神のまにまに進みゆけ 救ひの舟に乗りし身なれば』 シーゴー『煩悩の犬に追はれて吾は今 あはや地獄に堕ちなむとせり。 うるはしき汝が言霊聞くにつけ 胸の雲霧晴れわたりける』 ヨリコ『み救ひの神船に乗りし吾々は 神のまにまに世を渡りなむ』 ヨリコ姫はシーゴーの手を執り、船舷に立ち、東方に向つて折柄昇る旭を拝し、梅公に導かれて宣伝の旅に着きたる事を感謝し、且天地に向つて次の如き誓ひを立てた。 『一、愛善の徳と信真の光に充ち智慧証覚の源泉に坐す天地の太祖大国常立大神の御神格に帰依し奉り、天下の蒼生と共に無上惟神の大道を歩まむことを祈願し奉る。 二、大祖神の宣示し給ひし惟神の大道を遵奉し、愛善信真の諸光徳に住し、大海の如き智慧証覚の内流を拝し、天下の蒼生と共に斯の大道を遵奉し、三界を通じて神子たるの本分を完全に保持し、神の任さしの神業に奉仕せむ事を祈願し奉る。 三、天下の蒼生を愛撫し、神業を完成し、厳瑞二霊の大神格を一身に蒐め、神世復古万有愛の実行に就かせ給ふ伊都能売神柱の神格に帰依し、絶対的服従の至誠を以て神業に参加し、大神の聖慮に叶ひ奉り、一切無碍の神教を普く四海に宣伝し、斯道の大本を以て暗黒無明の現代を照暉し、神の御子たるの本分を竭し奉らむ事を誓ひ奉り、罪悪の身を清め免るし給ひて、神業の一端に使役されむことを祈願し奉る』 (大正一三・一二・二新一二・二七於祥雲閣松村真澄録) |
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霊界物語 | 68_未_タラハン国の国政改革2 | 12 妻狼の囁 | 第一二章妻狼の囁〔一七三六〕 若葉はそよぐ初夏の風山時鳥四方八方の 密樹の蔭にひそみつつ悲しき声を張上げて 神の造りしタラハンの国の行末歎つなり 李杏も梅の実も色づき初めて遠近の 田の面に数多の首陀たちが生命の苗を植つける 其有様を眺むれば降る五月雨に蓑笠を おのもおのもにつけ乍ら三々伍々と隊をなし 田の面に唄ふ勇ましさ一年三百五十日 たつた一度の植付の好シーズンのめぐり来て 人の心もせいぜいと希望に充てる折もあれ タラハン市街の大火災忽ち暴徒蜂起して 特権階級富有者共の大邸宅に火を放ち 婦女をば姦し金銭を不逞の首陀団掠奪し 諸種の主義者は一時に手に唾して立上り 吾等が日頃の鬱憤を晴らすは今や此時と 警戒厳しき警察を向方に廻して戦ひし 其勢は枯野をば燃えゆく焔の如くなり 茲に軍隊出動し漸く一時は暴徒も 鎮圧したれど何時か又大騒動が起らむと 期待されたるタラハンの城下の人心恟々と 安き心もなかりけり左守右守の神司 吾権勢の忽ちにおち行く虞ありとなし 所在手段をめぐらして軍隊警察召集し 水も洩らさぬ用心に流石不平の連中も 一時は影をひそめけりカラピン王は重病に 苦み玉ひて国政を見玉ふ術も更になく 太子の君は騒動に紛れて影を隠しまし 左守の司のガンヂーは心許りは焦て共 よる年波に力落ち勇気は頓に阻喪して 単に無用の長物と誹れ乍ら気がつかず 萎れ切つたる両腕をウンと叩いて雄健びし 敦圉く様は螳螂が斧を揮うて立てる如 其スタイルの可笑しさよ心汚きサクレンス 此有様を見るよりも国家の前途は風前の 灯火の如しと吾妻のサクラン姫と頭をば 傾け前後の策略をめぐらしゐるこそうたてけれ。 サクレンス『サクラン姫よ、世の中が追々と、斯う物騒になつて来ては、俺もウツカリはして居れない。今迄とは世の中が、何も彼も一変し、吾々如き特権階級や資本階級の滅亡する時期が迫つて来たやうだ。此儘に放任しておけば、タラハンの国家は言ふに及ばず、王家も吾々階級も遠からぬ内に地獄の憂目を見る様な事が出来はせまいかと案じて寝られないのだ。お前は一体、今日の世態を何う成行くと考へてるか』 サクラン『仰の通り、世はだんだんと行詰つて参りました。経済界、政治界、宗教界は申すに及ばず、実業方面に於ても一切万事行詰り、実に惨めな状態となりました。併し乍ら窮すれば通ずとか申しまして、禍の極端に達した時は、キツト幸の芽を吹くもので厶います。去る五日の大火災にも、城内の茶寮は焼け落ちて、所在国宝は全部灰燼に帰し、左守の邸宅迄、あんな惨めな事になりました。それにも拘らず、右守の邸宅は一部分暴徒に破壊された計りで此通り安全に残りましたのも右守家に、対し盤古神王様が、大なる使命のある事を暗示されたものと考へられます。斯様に混乱状態に陥つた社会では、弱いと見られたならば忽ち叩き潰され、亡ぼされて了ふものです。それ故此際は国家の為に満身の力を発揮し、空前絶後の大計画を遂行して、国民上下の胆を奪ひ、右守の威力を現はし、威圧と権威とを示して、国民の驕慢心を抑へ付けねばなりますまい』 サクレ『お前のいふ事も一応尤もの様だが、人心極端に悪化し、吾々の階級を殲滅せむと国民が殆んど一致して時期を待つて居ると云ふ時代に際し、なまじひに小刀細工を施してみた所が、却て万民の怒りを買ひ、滅亡を早める様なものだ。ぢやと云つて此難関を打ぬけ、民心を収攬し、太平無事に国家を復興する事は難事中の難事だ。如何なる聖人賢人と雖、此際かかる世態に対し、メスを揮ふ余地はあるまい。あゝ困つた事だワイ。大王殿下は御重病、何時お国替遊ばすやら計り知られぬ今日の有様、太子の君はお行衛は分らず、左守司は老齢激務に堪へず、又彼が悴のアリナは踪跡を晦まし、タラハン国はすべての重鎮を失はむとしてゐる。要のぬけた扇の如く到底収拾す可らざる内情となつてゐる。今後亦去る五日の如き騒乱が勃発せうものなら、夫こそ王家を始め貴族階級の断滅期だ。何とかして此頽勢を挽回する事は出来よまいかなア』 サクラ『私の意見としては此際思ひ切つて大鉈を揮ひ、大改革を断行せねば、到底駄目で厶いませう。老朽ちて将に倒れむとする老木も根元より幹を切り放たば、新しき芽を吹き、其為再び生命を持続する事が出来るものです。吾夫様、此際貴方は大勇猛心を発揮し、国体を根本的に改革遊ばす御所存は厶いませぬか』 サクレ『イヤ、俺にも考案はない事はないが、さりとて余りの叛逆だからなア』 サクラ『ホヽヽヽ、叛逆無道の世の中を立替立直すのが何故に叛逆で御座いますか、能く考へて御覧なさいませ。大王様はあの通り、太子殿下は御行衛分らず、左守の老衰、斯の如く国家の重鎮に大損傷を来した上は、最早タラハン国に於ける最大権力者は右守家を措いて外にはないぢやありませぬか。民心を新にする為、思ひ切つて王女バンナ姫様を表に立て、弟のエールを王位に就かせ、国民上下の人心を収攬し、貴方は国務総監となつて、無限絶大なる権威を揮ひ、政治の改革を断行なさるより外に、国家を救ふ道は厶いますまい』 サクレ『成程、俺も其事は今迄に幾度か考へてみた事もあるが余りの陰謀で、女房の其方にも言ひ兼ねてゐたのだ。お前が其心なら、俺は強力なる味方を得たも同然、思ひ切つて断行を試みやう。併し乍ら、ここ暫くは秘密を厳守せなくてはならうまい。万々一此計画が夫婦以外に洩れ散るやうな事があれば、それこそ右守家の一大事だ』 サクラ『凡て大業を成さむと思へば、秘密を守るのが肝心で厶います。暫く人心の治まつた潮時を考へ、公々然と天下に向つて国政改革を標榜し、エールを王位に上せ、バンナ姫を王妃と成す事を発表遊ばせば、茲に始めて維新改革の謀主として貴方を国民が欣慕憧憬する様になるで厶いませう。それより外に適当な方法手段は厶いますまい』 サクレ『それに就ては、第一気に懸るのは太子の君だ。折角エールとバンナ王女を立て、国家の改造を標榜してゐる最中へ、ヒヨツコリ太子が帰つて来て、異議を唱へ給ふやうな事が有れば、吾々の折角の計画も水泡に帰するのみならず、右守を叛逆者として大罪に問はるるかも知れぬ。夫故俺の思ふには、まづ太子の身の上から片付けて掛らねば成るまい』 サクラ『成程、それが先決問題で厶います。併し幸ひに太子様を巧く片付けた所で、左守の悴アリナが此の世に在る限りは、再び折角の計画を覆へさるる虞が御座います。之も序に何とか致さねばなりますまい』 サクレ『ウン、それもさうだ。併し乍ら此両人を処置するに付いては、石で臨むか、真綿で臨むか、何れかの方法を取らねば成るまい、どちらが能からうかなア』 サクラ『天下混乱の際、生温い方法手段では駄目で御座いますよ。疾風迅雷耳を掩ふに暇なき早業を以てキツパリと、幹を切り根を絶ち葉を枯らし、新生面を開かねば腐敗し切つたる現代を救ふ事は到底出来ますまい。但し其方法手段は……斯様々々』 とサクレンスの耳に口をよせ、奸侫邪智のサクラン姫は何事か右守に教唆した。サクレンスは幾度となくうなづき乍ら、 サクレ『ウンウン可からう。中々お前も隅にはおけぬ悪人だ。悪にかけては抜目のない逸物だ、ハヽヽヽ』 と小声に笑ふ。 サクランは目を怒らせ口を尖らせ乍ら、サクレンスの膝を叩いて小声になり、 サクラ『国家の大改革を断行し、国民塗炭の苦みを救ひ、国家万年の策を立つるのがそれ程悪で厶いますか。どうも腑におちぬ事を仰有るぢや厶いませぬか。勝てば官軍負くれば賊子、兎角世の中は勢力が最後の勝利を占めますよ。一切万事躊躇逡巡せず、ドンドンとやつて下さい。妾は貴方の為、いな国家の為に内々奮闘努力を致しませう』 サクレ『ヤ、頼母しい。お前は見かけによらぬ偉女夫だ。此夫にして此妻ありだ。俺も始めてお前の心の底が解り、安心をしたよ』 サクラ『二十年も夫婦となつてゐ乍ら、まだ妾の本心が解らなかつたのですか。お側に近く寝食を共にする妻の心が、二十年目に始めて解る様な事で、能くマア今日迄右守の職掌が勤まつて来たものですなア。本当に之こそ天下の奇蹟ですワ』 サクレ『オイ、サクラン姫、馬鹿にするない。政治家は政治家としての方法があるのだ。天下国家を憂慮する余り、小さい家庭などの事に気を付けてゐられうか』 サクラ『家庭も治まらず、二十年も添うた妻の心が解らぬやうな事で、何うして大政治家が勤まりませう。まして多数国民の心を収攬する事が出来ませうか』 サクレ『ヤ、さう追撃するものでない。今の大政治家を見よ。一家を治める事は知らいでも、堂々として政治の枢機に参与してゐるぢやないか。左守だつて、決して家庭は円満でない。又左守の心と彼が悴アリナの心とは正反対だ、犬と猿との間柄だ。それさへあるに国家の元老、最大権力者として左守は立派に今日迄地位を保つて来たではないか』 サクラ『自分の地位を保ち得たのみで大政治家とは云へませぬよ。今日の国家の不安状態に陥つたのは、輔弼の重臣たる左守様に本当の技倆が欠けてゐる為ではありませぬか。現代の政治家は何れも皆袞竜の袖に隠れて、僅かに其地位を保ち、国民を威圧して居るのです。虎の威を借る狐の輩です。貴方だつて、ヤツパリさうでしよう。真裸にして市井の巷へ放り出してみたならば、履物直しにもなれないぢやありませぬか』 サクレ『馬鹿云ふな、俺だつて曲人官位にはなれるよ』 サクラ『自惚も可い加減になさいませ。貴方は大王殿下のお引立てがなく裸一貫の男として、自分の運命を開拓遊ばす勇者とすれば、精々小学校のヘボ教員かポリス位が関の山で厶いませう。それだから国民が貴方を称して死人官だと云つてゐるのですよ』 サクレ『エー、モウそんな小言は聞たくない。主人を馬鹿にしてゐるぢやないか』 サクラ『ホヽヽヽ、馬鹿にしたくても、貴方は本当の馬鹿になれない方だから困りますワ。世の中の才子だとか智者だとか言はれる人は何時も失敗許りするものです。それに引替へ馬鹿とならば、何事にかけても無頓着で如何なる難関に出会つても、少しも恐れず又後悔する事もなく、物に慌てて事に驚き気をもんで、無駄骨折に損をせない。そして禍を化して自然に幸になす態の馬鹿になつて頂きたいものです』 サクレ『あゝあ、何が何だか訳が分らなくなつて来たワイ。さうすると俺もまだ馬鹿の修業が足らぬのかなア。オイ、何だか胸騒ぎがしてならない。一杯つけてくれ、熱燗でグツとやるから』 サクラ『お酒をおあがり遊ばすのも結構で厶いますが、大事の前の小時、茲少時はお窘みなさるが宜しからう。貴方はお酒をおあがり遊ばすと、精神錯乱して、どんな秘密でも人の前に喋り立てるといふ、つまらぬ癖がおありなさるから、此大望が成就する迄は盤古神王様の前にお酒を断つて下さい』 サクレ『ヤ、此奴ア耐らぬ。飯よりも女房よりも国家よりも大切な酒を断つて、おまけに暗雲飛乗りの危い芸当を此老人にやらさうとするのは、随分ひどいぢやないか』 サクラ『少時の御辛抱で厶います。夜も深更に及びました。サア寝みませう』 と手を取つて奥の一間に導き行く。二人は之より夜を徹して細々と寝物語の幕をつづけた。果して何の秘事が画策されたであらうか。 (大正一四・一・七新一・三〇於月光閣松村真澄録) |
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霊界物語 | 69_申_南米ウヅの国の国政改革 | 03 喬育 | 第三章喬育〔一七四八〕 国依別は元来磊落豪放にして、小事に齷齪せず、何事に対しても無頓着なる性質とて、珍の国の国司に封ぜられてより、一切の政務を重臣の松若彦に一任し、自分は只事実上虚器を擁してゐたに過ぎなかつた。それ故珍の国の大小の政治は、松若彦其他の閥族の手裡に握られてゐた。国依別は只朝夕皇大神の前に拝礼をするのみにて、花鳥風月を楽み、昔の宣伝使時分の気楽さを思ひ出しては、時々吐息をもらし、末子姫に酌をさせ、城中に伶人を招いて歌舞音楽に悶々の情を慰めてゐた。そして実子の国照別、春乃姫に対しても家庭教育などの七むつかしいことは強ひず、自然の成熟に任してゐた。故に親子の関係は兄弟の如く円満にして少しの差別もなく、和気藹々として春風の如き家庭を造つてゐた。国依別は球の玉の神徳に仍つて、凡ての世の中の成行を達観してゐた。それ故ワザとに時の来る迄は政治に干与せず、なまじひに小刀細工を施す共、時至らざれば殆んど徒労に帰することを知つてゐたからである。それ故当座の鼻塞ぎとして、実際の政治を永年間松若彦一派に委任してゐたのである。 奥の間の丸窓を開いて夏風を室内に入れ乍ら、脇息にもたれ、作歌に耽つてゐた。そこへ静々と襖を押開け入来たるは末子姫であつた。国依別は作歌に心を取られて末子姫の入来りしことに気がつかなかつた。末子姫は両手をついて、言葉もしとやかに、 『吾君様、御機嫌は如何で厶いますか……』 と四五回繰返した。国依別は色紙に目を注ぎ乍ら、 『黎明に向はむとして天地は 朝な夕なに震ひをののく。 大空に月は照れ共村雲の 深く包みて地上に見えず。 甲子の春をば待ちて開かむと 雪に堪へつつ匂ふ梅ケ香。 時は今天地暗し刈菰の みだれに紊る黎明の前に。 天地の神の恵の深ければ 世を守らむと地震至る』 と口吟んでゐる。末子姫は一層声を高めて、 『吾君様、御機嫌は如何で厶います』 と繰返した。国依別はハツと気がつき、 『あゝ末子姫か、何ぞ用かね』 末子『ハイ、至急御相談が厶いまして、御勉強の最中を御驚かせ致しました』 国依『ナアニ、勉強でも何でもない。三十一文字の腰折をひねくつてゐたのだ』 末子『立派なお歌が詠めたでせう。妾にも一度聞かして下さいませぬか』 国依『ナアニ、聞かせるやうな名歌ぢやない。余り気がムシヤクシヤしてゐるので、歌迄がムシヤついてゐる。今日は何時にない出来が悪いよ』 末子『貴方の歌は後になる程、良くなりますからね。お詠みになつた時は、失礼乍らこんな歌と思つてゐましても、後日になつて拝読しますと、お歌が皆予言録となつて現はれて居りますの。松若彦も吾君のお歌はウツカリ見逃すことは出来ぬ、残らず予言だと言つて居りましたよ』 国依『予言か五言か妖言か知らぬが、大したことはないよ。兎も角自身の為によんだ歌だからな、ハヽヽ』 末子『エ、何と仰有います。又謎を言つてゐらつしやるのでせう。近い内に地震があると仰有るのですか』 国依『ウン、地震、雷、火事、親爺、現代はモ一つ加へ物が出来た、それは所謂お媽だ、ハツハヽヽヽ』 末子『吾君様、上流の家庭に於て、お媽なんて、そんな下卑た言葉をお使ひなさいますな。悴や娘が聞きましては、又見習つて困りますからね』 国依『ナアニ奥様と云つても、後室と云つても、御令室と云つても、山の神と云つても、お媽と云つても、ヤツパリ女房だ。人間の附した名称位に拘泥する必要はないぢやないか』 末子『今貴方は地震、雷、火事、親爺……と仰有いましたが、それもキツト深遠な謎で厶いませう。どうも貴方のお言葉は滑稽洒脱の中に恐ろしい意味が含んでゐるのですから、容易に聞流しは出来ませぬワ』 国依『ハツハヽヽヽ、地震雷といふことは、国依別自身が神也といふ事だ。お前は自信力が神様のやうに強いから、ヤツパリお前も自信神也だ』 末子『ホツホヽヽヽ、能くしらばくれ遊ばすこと、そんな意味では厶いますまい。火事親爺といふことは何ういふ意味で厶いますか、それを聞かして下さいな』 国依『今警鐘乱打の声が聞えてゐただらう。松若彦、伊佐彦の親爺連が、薬鑵頭を陳列して、国政とか何とかの評議の最中へ火事がいつたものだから、親爺が驚いて高欄から転落し、腰を打つて、吾部屋へかつぎこまれ、媽アの世話になつたと云ふ謎だよ、ハツハヽヽヽ』 末子『あれマア、松若彦が高欄から転落したことを誰にお聞きになりましたか』 国依『そんなことは霊眼でチヤンと分つてるのだ。それだから国依別自身は神也と云つたのだ。火事に驚いて親爺が転落したから火事親爺だ』 末子『其松若彦で思い出したが、今お伺ひに参りましたのも松若彦に関しての事で厶います。幸ひ捨子姫が参勤してゐたので、直に自分の居間へ担ぎ込まれ、捨子姫の介抱を受けて居ります。妾も余り可哀相なので病床を見舞つてやりましたが、松若彦は大変に憤慨を致して居りますよ』 国依『それは廁え相に糞外してゐるのだらう。俺だつて日に一遍位は高野参りをして糞外するのだからな、ハツハヽヽヽ』 末子『冗談仰有るも時と場合に仍ります。一遍彼の言ふことも聞いてやつて頂かねばなりませぬ』 国依『そりや聞いてやらぬことはない。悴や娘に揶揄はれて、薬鑵から湯気を立て、火事に二度吃驚して負傷したと云ふのだらう。マア可いワイ、松若彦もモウ可い加減に引込んでも可い時分だからのう』 末子『何卒、今日は真剣で厶いますから、真面目に聞いて下さいませ。何時も瓢箪で鯰を抑へるやうに、ヌルリヌルリと言霊の切先をお外し遊ばす貴方のズルサ加減、いつも風を縄で縛るやうな掴まへ所のない、困つた吾君様だと、松若彦がこぼしてゐましたよ。無頓着も宜しいが、貴方は何の為に珍の国の国司にお成りなさつたのですか』 国依『何の為でもない、大神様や言依別様がお前の夫になつてやつて呉れと仰有つたものだから、厭で叶はぬ事のないお前の夫になつた許りだ。其時にお前も知つてるだらうが、大神様や言依別様にダメを押して置いたぢやないか。……私は若い時から家潰しの後家倒し、女たらしの野良苦良者、こんなガラクタ人間を末子姫様の婿になさつた所で駄目ですから……と云つて、お断り申上げたら、それが気に入つたと大神様が仰有つたぢやないか。之でも俺は十分に窮屈な目を忍んで、勃々たる勇気を抑へ神命を守つてゐるのだ。此上俺に追及するのは殺生だ。政治なんかは俗物のやることだ。老子経に云ふてあるぢやないか、太上下知在之……と云つて、国民が此国に国王が有ると云ふこと丈知つて居ればそれで可いのだ。なまじひに、チヨツカイを出し、拙劣な政治でもやつて見よ、国依別の名は忽ち失墜し、引いて大神様の御名迄汚すぢやないか』 末子『お説は御尤もで厶いますが、太上とは大昔のこと、人智未開の古なれば、国に王あることさへ知れば、それで民心は治まりましたが、今日の世態はさう云ふ訳には行きますまい』 国依『老子経には太上下知在之、次褒之、次畏之、次譏之、次侮之、……と出てゐるぢやないか。世の中が段々進むに連れ、徳がおちて来ると慈善だとか、救済だとか云つて、万衆の機嫌を取らねばならぬやうになつて来る。そこで万衆に施しをするから仁者だ、尭舜の御世だと云つて頭主をほめるのだ、次に之を畏るといふことはつまり斯うだ、余り頭主の仁慈に狎て、衆生が気儘になり、慢心した結果不正義をたくらんだり、強盗殺人放火等所在悪事を敢行し、世の中の秩序を紊す様になつて来る。そこで頭主は厳しい法規を設けて、善を賞し、悪を罰する様になつて来る。丁度八衢の白赤の守衛を勤める様なものだ。それならまだしも可いが、世が段々進むと、其次には之を侮ると云ふ事になつて来る。遂に衆生心汚濁して頭主大老豈種あらむやなど称ふる馬鹿者が出来て来る。要するに頭主たる名は神の代表者として、国の中心に立つてゐれば可いのだ。色々な小刀細工をする様なことでは最早駄目だ。だから此国依別は珍の国の衆生からは国司と仰がれてゐるが、自分としては国司でも何でもないヤハリ一個の国依別、元の宗彦だ。誰が……馬鹿らしい、大きな面をして表へ出られるものか……アーア』 と大欠伸をし、両手の握り拳を固めて頭上高く差上げた。 末子『モウ仕方がありませぬ。何時も貴方はそれだから愚昧な妾の言ふことは一口に茶化されて了ひますからね。併し乍ら吾君様、余り貴方は天然教育とか自然教育とか仰有つて、二人の子供を気儘に放任して置かれたものだから、松若彦、伊佐彦の老臣に向ひ、傍若無人の暴言を吐き、……お前のやうな骨董品は一時も早く引退した方が国家の利益だとか衆生の幸福だらう……とか言つたさうですよ。何程放任教育がよいと云つても、チツとは教誡を与へて下さらぬと困るぢやありませぬか』 国依『子供の教育は母にあるのだ。お前は世の所謂良妻賢母だから困るのだ。賢妻良母でなくては本当の教育は出来ないよ。国依別は教育家でもなければ子守でもなし、家庭教師でもないから、そんなことア畑違ひだよ。併しあの時代遅れの親爺連に、悴も娘も引退を迫つたといふのか、流石は俺の子だ、あゝ感心々々。此父にして此子あり、国依別知己を得たりと云ふべしだ、アツハヽヽヽ』 末子『あゝ困つたことになつたものだなア。丸で吾君様に向つては如何なる箴言も豆腐に鎹、糠に釘だワ。此儘にして放任して置かうものなら、悴も娘も新しがつて乗馬生活を捨て、両親を捨て、どこへ逐電するか分らないと気が揉めてならないのですワ。松若彦もそれが心配でならないと云つてゐましたよ』 国依『悴も娘も乗馬生活を嫌つて何れは出るだらう。何と云つても、俺の血を受けてる子供だからな。今こそ斯うして珍の国の国司の仮名に捉はれ、鍍金的権威を保つてすまし込んでゐるものの、元を糾せば、お勝と巡礼をして居つた宗彦の成れの果だ、其悴だもの当然だよ。親に似ぬ子は鬼子と云ふから、俺もヤツパリ誠の子を持つたと見えるワイ、アツハヽヽヽ。オイ末子姫、人間は教育が肝心だよ。教育の行方によつて、人物が大きくもなり小さくもなるのだからな』 末子『ホヽヽヽヽ、教育が聞いて呆れますワ。貴方の教育の教は獣扁に王の狂でせう』 国依『無論獣でも王になれば結構だが、併し俺の云ふ教育の教はそんなのではない。森林の中に雲を凌いで聳え立つ喬木の喬だ。現代の如うな教育の行方では、床の間に飾る盆栽は作れても、柱になる良材は出来ない。野生の杉檜松などは、少しも人工を加へず、惟神の儘に成育してゐるから、立派な柱となるのだ。今日の如うに児童の性能や天才を無視して、圧迫教育や詰込教育を施し、折角大木にならうとする若木に針金を巻いたり、心を摘んだり、つつぱりをかうたりして、小さい鉢に入れて了ふものだから、碌な人間は一つも出来やしない。惟神に任して、思ふままに子供を発達させ、智能を伸長させるのが真の教育だ。大魚は小池に棲まず、悴も余程人格を練り上げたと見えて、此狭い高砂城が窮屈になつたとみえる。それでこそ世界的人物だ、否崇敬すべき人格者だ、てもさても神様の御恵み有難う感謝致します』 と拍手し乍ら神殿に向つて拝礼する。末子姫は余りのことに呆れ果て、返す言葉も知らなかつた。 (大正一三・一・二二旧一二・一二・一七於伊予山口氏邸、松村真澄録) |
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霊界物語 | 70_酉_トルマン国の国政改革 | 02 折衝戦 | 第二章折衝戦〔一七六九〕 トルマン城の会議室には、王のガーデンを始め、王妃千草、左守司フーラン、右守司スマンヂーの首脳部が首を鳩めてヒソビソ重要会議を開いてゐる。 ガーデン『エー、左守、右守の両人、突然重大問題が勃発したので、汝等両人を急使を以て引寄せたのだが、其方の智慧を貸して貰ひたい。トルマン国にとつては国家興亡の一大事だから……』 左守右守は一度にハツと頭を下げ、畏まつて、王の第二の発言を待つてゐる。王は目をしばたたき乍ら、 『外でもないが、昨夜半頃頻りに門戸を叩く者あり。門番のタマ、タルの両人よりの急使に仍り、寝所を立出で、応接間に至り見れば、大足別将軍の使者と称し、此頃淫祠邪教を、吾国内に布教宣伝致し居るスコブツエン宗のキユーバーと申す妖僧、吾面前をも憚らず威丈高となり、……貴国は従来ウラル教を奉じ、国政の補助となし居らるる由、最早命脈の絶えたるウラル教を以て、人心を収めむとするは危険此上なかるべし。此度大足別将軍、大黒主の大命を奉じ、印度七千余国をスコブツエン宗に改宗せしむとの御上意、天下万民を塗炭の苦より救ひ、安養浄土に蘇生せしめむとの有難き御心なれば、謹んでお受けなされ。万一違背に及ばば、仁義の軍は忽ち虎狼の爪牙を現はし、トルマン城を屠り、王を始め、一般民衆の目をさまし呉れむ。王の御答弁如何に依つて、国家の安危の分るる所、速に返答召され……との強談、其暴状は言語に絶し、立腹の余り卒倒せむ許りに存じたが、いや待て少時、何とか斯とか此場の言葉を濁し、汝重臣共に親しく協議を遂げ、其上諾否を決せむと、キユーバーに向ひ、三日間の猶予を与ふべく申渡せし所、彼妖僧の勢、仲々猛烈にして、首を左右に振り、……只今返答承はらむ……との厳談、仮にも一国の主権者が、僅一人の妖僧に圧迫さるべき理由なし。さり乍ら、只一言の下に叱咤せむか、彼は時を移さず、大足別の軍を率ゐて当城を十重二十重に取囲まむず鼻息残念乍ら、千言万語を費し、一日の猶予を請ひ、返答すべき事に致しておいた。左守右守殿、如何致さば可からうかな』 左守『何事かと存じ、取る物も取り敢ず、登城致し、承はれば容易ならざる出来事で御座ります。仮にも一天万乗の国王殿下に対し、素性も分らぬ怪僧の暴言、聞捨なり申さぬ。最早此上は折衝も答弁も無用で御座ります。速に国内の兵を集め、大足別の軍勢を殲滅致し、国家の災を艾除致したく存じます』 王『成程、汝が言、余の意に叶へたり。サア、一刻も早く募兵の用意を致せ。城内の兵士にも厳命を下し、防備の用意に取かからしめよ』 左守『ハイ、殿下の御上意、謹んで御受け致します。右守殿、貴殿は一刻も早く国内に伝令使を派し、国家の危急を救ふべく軍隊をお集めなさい』 右守『これはこれは左守殿のお言葉とも覚えぬ。左様な無謀な戦を致して、天壤無窮のトルマン国を亡ぼす左守殿の拙策。最早かくなる上は、暫時キユーバーの意見に従ひ、王家を始め、国民一般、彼が唱ふる宗旨に帰順せば、天下は無事泰平、国民は塗炭の苦より免れ、仁君と仰がれ給ふで御座らう。万々一雲霞の如き大軍を向方へ廻し、全敗の憂目に会はば万劫末代取返しのつかざる大失敗で御座らう。殿下を始め左守殿、此所をトクとお考へ下され。王家の為、国家の為、右守身命を賭して諫言仕ります』 王『此場に及んで、卑怯未練な右守の言条、国帑を消費して、平素軍隊を養ひおきしは何の為だ。かかる国難に際し、挙国一致的活動をなし、外敵を防ぐべき用意の為ではないか。かかる卑怯未練な魂を以て、優勝劣敗の現代、殊に七千余国の国王は各軍備を整へ、虎視耽々として、国防に余念なき此際、祖先伝来のウラルの神の教を放擲する如きは神の威厳を損ひ破り、御無礼此上なく、却て国家の滅亡を早めるであらう。此トルマン国はウラルの神の厚き守護あり、何を苦んで、かかる妖教に腰を曲げむ。しつかりと性根を据えて、所存の臍を固めよ』 右『君の仰せでは御座いまするが、此際余程冷静にお考へを願はねばなりませぬ。取返しのつかぬ事で御座いますから』 王『然らば汝の意見は、何うせうと云ふのだ、腹蔵なく申して見よ』 右『ハイ、恐れ乍ら申上げます。敵は目に余る大軍、城下近く押寄せ来る此際、遅れ走せに軍隊を召集すればとて、何の役に立ちませうぞ。城内の守兵は僅に五百人、敵の総勢三千騎、国内全部の兵員を集めた所で、漸く二千五百人では御座らぬか。五百人の兵を以て三千人の精鋭に当るは、恰も蟷螂の斧を揮つて竜車に向ふがごときもので御座ります。国内の総動員を行ひ、いよいよ戦闘準備の整ふ迄には、何程早く共三日間の時日を要します。さすれば、既に既に戦争の済んだ後、六菖十菊の無駄な仕業と存じます。かかる見易き道理を無視し戦ふに於ては、国家の滅亡、風前の灯火よりも危う御座います。何卒此際右守の進言を御採用下さらば、国家の為、実に幸福と存じます』 千草姫『王様を始め左守右守殿の御意見を承はれば、何れも御尤も千万、併し乍ら妾は右守の説を以て、最も時宜に適した方法と考へまする。殿下何卒、右守の説を御採用あらむ事を御願ひ致しまする』 王『馬鹿を申せ、其方迄が夫の説を抹殺せむと致すか。其方の平素の挙動は腋に落ちぬと思つてゐた。国家滅亡の原因は女性にありといふ事だ。殷の紂王が国を失ふたのも矢張女性の横暴からだ。女童の知る事でない、下がり居らうツ』 と百雷の一時に落下したる如き怒声、千草姫は縮み上つて顔色蒼白となり、其場に慄ひつつ倒れて了つた。王は此有様を目にもかけず、尚も言葉を続けて、 『ヤ、左守、最早かうなる上は、余と汝と両人力を併せ、外敵を殲滅致さう。余は之より陣頭に立ち、三軍を指揮するであらう。サ、左守、其準備に取かかれよ』 左『年は寄つても、武術を以て鍛へた此腕つ節、仮令大足別の軍勢、百万騎を以て押寄せ来る共、何かあらむ、盤古神王の御神力を頭に頂き、八岐大蛇の悪魔の守る大足別が軍勢を、千変万化の秘術を以て駆け悩まし、奇兵を放つて殲滅し呉れむ。いざ右守殿、用意を召され』 右『これは心得ぬ、御両所のお言葉、薪に油を注ぎ、之を抱いて火中に投ずる如き危険極まる無謀の抗戦、いかでか功を奏せむ。先づ先づ思ひ止まらせ給へ』 王『左守、右守の如き逆臣を相手に致すな。千草姫は平素余が目をぬすみ、右守と……を結んでゐるといふ事は、某々等の注進によつて、一年以前より余は承知してゐる。かかる逆賊を城内に放養するは、恰も虎の子を養ふに等しからむ。一時も早く縛り上げよ』 千草『王様のお情ないお言葉、決して決して妾は左様な疑を受けやうとは夢にも存じませぬ。良薬は口に苦く、忠言は耳に逆ふとかや。右守殿は王家の為国家の為、命を捧げて居りまする。時代の推移を明知し、政治の大本を弁へ居る者は、右守をおいて外には御座いませぬ。今日の世の中は、余程変つて居りまする。徒に旧套を墨守し、国家を立てむとするは愚の骨頂で御座います。何者の誣言かは存じませぬが、妾に対して不義の行為あるが如く内奏致すとは、言語道断、不忠不義の曲者、かかる乱臣賊子の言に御耳を傾け給はず、妾が進言を冷静に御考へ下さいませ。最早かくなる上は周章狼狽も何の効果もありますまい。落ちついた上にも落ついて、国家百年の大計をめぐらさねばなりますまい』 王『汝こそ、金毛九尾の霊に魅せられたる亡国の張本人だ。綸言汗の如し、一度出でては再び復らず。汝が如き亡国の世迷言、聞く耳持たぬ』 と立上り、弓矢を執つて、左守と共に立出でむとする。斯かる所へ、スコブツエン宗の妖僧キユーバーは数十人の武装せる兵士に守られ乍ら、悠々と現はれ来り、 『スコブツエン宗の大棟梁キユーバー、大黒主の命により、大足別の軍を率ゐて向ふたり、速に返答致せツ』 と呼はつてゐる。千草姫、右守司は矢庭に玄関に走り出で、 千草『これはこれは、御神徳高き救世主様、よくこそお越し下さいました。仁慈無限の大黒主の思召、何条以て反きませう。祖先以来のウラル教を、放擲し、貴僧のお言葉に従ひ、スコブツエン宗に国内挙つてなりませう。どうか軍隊を以て向はせらるるは穏かならぬ御仕打、兵を引上げ下さいませ。妾が身命を賭して、御請合申上げます』 キユ『アハヽヽヽヽヽ、流石頑強なガーデン王も往生致したか、左守はどうだ。異存は無からうか、両人の確なる降服状を渡して貰ひたい。さもなくば大黒主様大足別に対しても、愚僧の言訳が立ち申さぬ。サ、早く屈服状を御渡し召され』 斯く話してゐる内に、ガーデン王、左守は兵営に走り行き、数多の将士に厳命を伝へ、敵を撃退すべく準備に取かかつてゐた。キユーバーは王を始め左守は奥殿に戦慄し、蚤の如く虱の如く寝所に忍んでゐるものとのみ慢心して気を許し、降服状を受取らむと応接の間にどつかと尻を卸し、椅子にかかり茶を啜りつつ、 『アハヽヽヽ、これこれ千草姫殿、右守殿、大黒主の御威勢は大したもので御座らうがな。其方の計らひ一つによつて、此トルマン城も無事に助かり、耄碌爺のガーデン王も、左守のフーランも先づ之で首がつなげると云ふもの、まづまづお目出たう存ずる』 千草姫は王や左守の主戦論者たる事を悟られては一大事、何とかして二人の我が折れる様と、心中深く祈りつつ、素知らぬ顔にて、 『キユーバー様、貴方はトルマン国に対し、救世の恩人、億万年の後迄も此御恩は決して忘れませぬ。これこれ右守殿、王様始め左守其他の重臣に、此由を御伝へ下さい。キユーバー様は妾が御接待申して居るから……』 右守は千草姫の心を推知し、此間に王及左守の心を和らげ、後は兎も角此場合キユーバーを欺いて、帰順した如くに見せかけ、徐に策をめぐらさむと、王の居間に入つて見れば藻脱けの殻、コラ大変と、軍務署へかけつけて見れば、既に城内の兵士は武装を整へ、王も亦甲冑をよろひ、槍を杖について、今や、一斉に総攻撃に出でむとする間際であつた。 右守『若し若し殿下、話は甘く纒まりました。どうか暫く御待ち下さいませ』 王『キユーバーが降服致したのか、如何纒まつたのだ』 右守『ハイ、キユーバーは数十の精兵を引連れ、厳然と控へて居りまする。それにも拘らず、大足別の大軍は今や返答次第によつて、本城を屠らむとして居りまする。一時敵を欺いて、油断させ、其間に国内の総動員を行ひ、城の内外より挟撃にするのが、軍術の奥の手と存じ、詐つてスコブツエン宗に降伏致しておきました。何卒々々武装を解き、左守殿と共にキユーバーにお会ひ下さいませ』 王はクワツと怒り、 『不忠不義の曲者右守奴、吾許しも無く勝手に左様な国辱的行動をなすとは、鬼畜に等しき其方、最早勘忍ならぬ、覚悟せよ』 と言ふより早く、槍をしごいて、右守の脇腹に骨も徹れとつつ込めば、何条以て堪るべき、右守は其場にドツと倒れ伏し、虚空を掴んで息絶えて了つた。 王『アハヽヽヽヽ、首途の血祭に国賊を誅したのは幸先よし。サ、之より千草姫、キユーバーの両人を血祭にせむ』 と云ひ乍ら、左守に軍隊を監督させおき、自ら数十名の精兵を従へ、応接間を指して勢猛く出でて行く。 千草姫は何となく、形勢不穏の気がしたので、キユーバーに対し、秋波を送り乍ら、密室に伴ひ、ドアの錠を中から卸し、声を忍ばせ乍ら、王始め左守の強硬なる意思を伝へ、キユーバーの身の危険なる事を告げた。千草姫は決して右守司と醜関係を結んでゐなかつた。只国家を思ふ一念より、時代を解する彼を厚く信じてゐたのみである。智慧深き千草姫は仮令一時キユーバーを亡ぼす共、後には大足別控へ居れば、最後の勝利は覚束なし。若かずキユーバーの歓心を買ひおき、国家の安泰を守らむには……と、自分が国内切つての絶世の美人たるを幸ひ、彼を薬籠中の者として了つたのである。暴悪無道のキユーバーも千草姫の一瞥に会ふて骨迄和らぎ、まんまと姫の術中に陥つたのは幸か不幸か、神の審判を以て処決さるるであらう。 (大正一四・八・二三旧七・四於丹後由良秋田別荘松村真澄録) |
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霊界物語 | 72_亥_スガの港(宗教問答所) | 07 鰹の網引 | 第七章鰹の網引〔一八一六〕 常磐丸の船中に於ける玄真坊、コブライ、コオロの直接行動的争ひも無事に済んで船端に皷の波を打たせ乍ら水上静かに辷り行く。 船中の無聊を慰むるため彼方此方に面白き国の俗謡が聞えて来た。中にも最も著しきは恵比須祭の欵乃である。船頭は舷頭に立ち乍ら海に馴れたる爽かな声で節面白く唄ひ出した。 『正月のー朔日二日の初夢に如月山の楠の木を 舟に造り今おろす白銀柱押し立てて 黄金の富を積ませつつ綾や錦を帆にかけて 宝の島へと乗り込んで数多の宝を積み込んで 追手の風に任せつつ思ふ港へ馳せ込んで これのお倉に納めおくヨーン、デー、ヤール 神の昔の二柱金輪際より揺ぎ出でたる此島を 自転倒島と云ふとかや山には常磐のいーろいろ 黄金白銀花咲いてお山おろしが吹くとても 散らぬ盛りに国々は浦々迄も豊かにて 五穀草木不足なく七珍万宝倉に満ち とざさぬ御代の恵みより長命無病と聞くからは 四方の国より船寄する綾や錦の下着より 縞に木綿の紅までも唐に大和を取りまぜて 商ふ店の賑やかさ猟、漁りの里々は 山に雉鴨鶴もある裏の港の磯つづき あけて恵比須の浪塩はヤンサ、目出度やお鉢水 ヨーン、デー、ヤール』 玄真坊は此歌を聞いて飛び上り、自分も一つ負けぬ気になり、貧弱な頭から、こぼれ出した欵乃は一寸変ちきちんなものである。 玄真坊『春の海面よく光る大島小島数々と 碁石のやうに並ぶ中海賊船が右左 彼方此方と横行し宝を積んだ船見れば 一目散にやつて来て否応云はさずぼつたくり ゴテゴテ言へば命まで貰つて帰る凄い船 こんな手合に出会つたらヨーン、デー、ヤール 金鎚さまの川流れ一生頭が上るまい 俺も昔は山賊の大頭目と手を組んで オーラの山に天降り杉の梢をからくりに 数多の火影を輝かし天から星が下りまし 天帝の御化身救世主玄真如来の説法を 聴聞なさると触れ込ませ彼方此方の村々ゆ 善男善女を誑かしもう一息と云ふ処へ 三五教の梅公別女房をつれて出で来り 二人の女と諸共に蛸の揚げ壺喰はされた 実にも甲斐なき蛸坊主今から思へば恐ろしや ヨウマア天地の神々はこの悪僧をいつ迄も 生かしておいて下さつたと思へば冥加がつきるやうだ ヨーン、デー、ヤール彼方此方とさまよひつ よからぬ事のみ企みて三百人の不良分子 彼方此方に振り向いて自分は一人タニグクの 山の岩窟にダリヤ姫せしめんものと連れ込めば 藻脱けの殻の馬鹿らしさそれから愈やけとなり 神谷村の里庄なる玉清別の館にと 忍び込みたるダリヤをば奪ひ返して吾妻に 無理往生にせむものと思ふた事も水の泡 まだまだ悪い事許りやつて来た事思ひ出しや 全身隈なく冷汗が夕立の如くに湧いて来る ヨーン、デー、ヤール今乗る船は常磐丸 斎苑の館の神様の御用を遊ばす宣伝使 照国別の師の君に危き所を助けられ 心の底から立直しお伴に仕へ侍り行く ヨーン、デー、ヤールサア之からは之からは 心の基礎をつき直し神に刃向かふ仇あれば 鬼でも蛇でも構はない命を的に飛び込んで 今まで悪を尽したるその補ひをせにやならぬ あゝ面白や面白や面白狸の腹皷 打つ波の上をスクスクと狸坊主の蛸坊主 人が笑はうが謗らうがそんな事には構はない これから世間に恥さらし自分の罪の償ひを 天地の神にせにやならぬ玄真坊も之からは 三五教の宣伝使神の司の僕とし 一生此世を送りませうダリヤの姫や其外の 美人の事は思ひきり一生懸命に神様の 誠の道を伝へませうヨーン、デー、ヤール あゝ惟神々々神は吾等と共にあり 人は神の子神の宮神に任せし此体 虎狼も何かあらむ上下揃うて世を円く 治る時をまつの世の弥勒菩薩の再来と 仕へまつらむ斎苑館神素盞嗚の大神の 御前に誓ひ願ぎ奉る御前に誓ひ願ぎ奉る ヨーン、デー、ヤール』 常磐丸は漸くにして翌日の真昼頃スガの港に安着した。この港には鰹の漁が盛にある。丁度常磐丸の着いた頃、網引きが初まつて居た。一行は旅の憂さを慰むるため漁師に頼んで引網の中に加はり、ともに面白可笑く歌を謡ふこととなつた。 幾艘の船は網の周囲に集つて音頭をとり乍ら陸上に向つて網を引き上げる。親船が先づ歌の節々の初めを謡うと他の船の漁師達は之に和して後をつぎ、以て力の緩急を等しくする、その調子は丁度木遣節のやうである。 『せめて此子が男の子なら 櫂を持たせて ホラ、ホーオ、サツサアヤツチンエエ イヤンホ、サツサーヤツチンエエ。 スガは照る照る太魔の島曇る あいの高山雨が降る。 大高お岩は二つに割れて 割れて世がよいヨヤハアサツサ。 引けよ若衆、きれいな加勢 十二船魂勇ませて。 旦那大黒内儀さま恵比須 中の小供がお船魂。 船の艫艪へ鶯とめて 明日は大漁と泣かせ度い。 船は新造でも艪は新木でも 船頭さまが無けれや走りやせぬ。 ホラ、ホーオ、サツサヤツチンエエサツサ ヤツチンエエヨイヤハアサツサ』 照国別『これ照公さま、何と面白い網引ぢやないか、沢山の船頭衆が黒いお尻を出し、真裸の真跣で黒い鉢巻を横ンチヨに絞めて大きな網を海上一面に張り廻し、言霊を一斉に揃へて鰹を上げる処は何とも云へぬ壮観の感に打たれるぢやないか』 照公別『如何にも師の君の仰せの通り、壮絶快絶の極ですな。吾々宣伝使も、あの引網に倣つて一遍に少くとも数万人の信者を引き寄せ、うまく宣伝をやつたら面白いでせうな。どうです先生、これからスガの町へ行つたら、大公会堂でも借り込んで数万の町民に一度に聴かせてやつたら、大神の神徳に浴する信者が沢山に出来るかも知れませぬ。労少くして効多き、最も文明式の方法ぢやありますまいか』 照国『イヤイヤさうではないよ、公会堂なんかは神の道の宣伝には絶対に適しない。公会堂は政治家や主義者の私淑する処だ、そんな処で神聖な神様の教をした処で、身魂に相応しないから、労多くして功無しだ』 照公『そんなら先生、劇場は如何でせうか』 照国『尚々不可ない、劇場は遊覧客の集まる処だ。歌舞伎や浄瑠璃や浪花節、手品師、活動写真等やる処で、仮令聴衆が幾何やつて来ても、遊山気分で出て来るからチツとも耳へ這入らない。却つて神の御名を傷つけるやうなものだ』 照公『成程、さう聞けば仕方がありませぬな、そんなら学校の講堂は如何でせうか』 照国『学校の講堂は学問の研究をする処だ、深遠微妙な形而上の真理や信仰は、到底学校の講堂で話した処で駄目だ。何人も研究心を基礎として聞くから、何人も真の信仰には入れないよ。青年会館だの倶楽部だの公会堂だの、民衆の集まる処は凡て駄目だ。夜足で捕つた魚や網で捕つた魚は、同じ魚でも味が悪い。一匹々々釣の先に餌つけて釣り上げた魚は味が良い如く、神の道の宣伝は一人対一人が相応の理に適うとるのだ。止むを得ないなら五六人は仕方がないとしても、それが却つて駄目になる』 照公『成程さうすると仲々宣伝と云ふものは、容易に拡まらないものですな』 照国『一人の誠の信者を神の道に引き入れた者は神界に於てはヒマラヤ山を千里の遠方へ一人して運んで行つたよりも、功名として褒めらるるのだからなア』 照公『さうすると先生は入信以来、どれ位誠の信者をお導きになりましたか』 照国『残念乍ら、未だ一人も誠の信者を、ようこしらへてゐないのだ』 照公『ヘーエ、さうすると、梅公別や吾々は宣伝使の試補となつて廻つてゐますが、まだ信者の数には入つては居ないのですか』 照国『マアそんなものだな』 照公『何と心細いものぢやありませぬか』 照国『さうだから心細いと何時も言ふのだ』 照公『此玄真坊さまはさうすると、未だ信者の門口にも行かないのでせうね』 照国『ヤア此玄真坊殿は随分悪い事も行つて来たが、お前に比べては余程信仰が進んで居るよ、已に天国へ一歩を踏入れて居る』 照公『それや又どうした訳ですか。吾々は未だ一度も大した嘘もつかず、泥棒もせず、嬶舎弟もやらず、正直一途に神のお道を歩んで来たぢやありませぬか。それに何ぞや大山子の張本、勿体なくも天帝の御名を騙る曲神の権化とも云ふべき行為を敢てした玄真坊殿が天国に足を踏込むとは一向に合点が行きませぬ』 照国『大なる悪事を為したる者は悔い改むる心も亦深い。真剣味がある。それ故身魂相応の理によつて直に掌をかへす如く地獄は化して天国となるのだ。沈香も焚かず庇も放らずと云ふ人間に限つて、自分は善人だ、決して悪い事はせないから天国に上れるだらう等と慢心して居ると、知らず識らずに魂が堕落して地獄に向ふものだ。悪い事をせないのは人間として当然の所業だ。人間は凡て天地経綸の主宰者だから此世に生れて来た以上は、何なりと天地の為に神に代る丈けの御用を勤め上げねばならない責任をもつてゐるのだ。その責任を果す事の出来ない人間は、仮令悪事をせなくとも、神の生宮として地上に産みおとされた職責が果されて居ない。それだから、身魂の故郷たる天国に帰ることが出来ないのだ』 照公『天国に吾魂在りと思ひしに 地獄に向へる事の歎てさ。 今よりは心の駒を立直し 神の任さしの神業励まむ』 玄真『身は仮令根底の国に沈むとも 神の恵みは忘れざるらむ』 照国『千早振る神の恵みは世の人の 夢にも知らぬ処にひそむ。 暗の夜を照り明さむと宣伝使 よさし玉ひぬ瑞の大神』 (大正一五・六・二九旧五・二〇於天之橋立なかや別館北村隆光録) |
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霊界物語 | 72_亥_スガの港(宗教問答所) | 21 大会合 | 第二一章大会合〔一八三〇〕 スガの港の百万長者と聞えたる薬種問屋の奥の室には、若主人のイルクを初め老父のアリスにダリヤ姫、ヨリコ姫、花香姫、門番のアル、エス及びスガの宮の神司たりし玉清別迄が首を鳩めて密談に耽つてゐる。 ヨリコ『アリス様、イルク様、其他皆さまに、妾はお詫を致さねばなりませぬ、折角大枚なお金を出して、立派なお宮を造つて頂き、道場の主と迄任けられまして、身に余る光栄に浴して居りましたが、ツイ妾の慢心より宗教問答所等と看板を掲げたのが災の因となり、妾を初め玉清別様、ダリヤ姫様、及び御一門に対し、非常の損害をおかけ致し其罪誠に万死に値致します。熟々考へますればオーラ山に立籠り泥棒の親分とまでなつて悪事悪行を敢行して来た罪深い体、どうして神様のお屋敷に勤める事が出来ませう。折角の聖地もウラナイ教の高姫さまに渡さねばならないやうな破目になりました。これ皆妾の至らぬ罪で御座いますから何卒々々思ふ存分の御成敗を願ひたう御座います』 アリス『ヨリコ姫様、左様なお心遣は御無用にして下さい。三万や五万の金を使つてお宮を建てた処で、別に私の宅の財産が傾くと云ふ訳でもなし、一旦、ウラナイ教に渡した以上は是非なしとして、再び以前に幾層倍増した立派な御神殿を造り上げ、ウラナイ教の向ふを張つて見せてやらうぢやありませぬか。なア悴、お前はどう思ふか、老いては子に従へと云ふ事もあるから、お前の意見に任しておく』 イルク『当家の財産は、もとより罪の固りで出来たのですから、何程立派なお宮を建てても、神様の御用に立たないのは必然の結果です。決して私は惜しいとは思ひませぬ。神様の御許しあれば、当家の財産全部を投げ出して立派なお宮を造り度う御座います』 アリ『成程、悴の云ふ通りだ、お前に何も彼も一任しておく。皆さま、悴とトツクリ相談して下さい、私は老年の身、失礼致しまして、離棟で休まして貰ひます』 と座敷杖をつき乍ら病み上りの体を引き摺つて離棟をさして出でて行く。 玉清『私も永年の間神谷村で苦労艱難を致し、何とかして三五の道を再興させ度いものと千辛万慮の結果、当家の発起によつて立派な宮が建て上り、大神様の神司となり、先祖も業をつむ事になつて大変に喜び勇んで奉仕して居りましたが、モウかうなれば、何とも致し方が御座いませぬ。私はこれより神谷村に立帰り、もとの如く里庄をつとめ、村民を安堵させてやりませう』 ダリヤ『モシ、玉清別様、あまりお気が短いぢやありませぬか。どうぞ暫く、何とか定る迄待つてゐて下さいませ。やがて間もなく、三五教の宣伝使がお出で遊ばすでせうから、その上トツクリ御相談遊ばしての上の事に願ひ度う御座います』 玉清『敗軍の将は兵を語らず、然らば少時お言葉に甘へ、逗留さして頂きませう』 アル『モシ若旦那さま、決して御心配要りませぬよ、キツトあの高姫と云ふ奴、今に尻尾を出しますからマア暫く待つてゐて下さい。私とエスとが一生懸命に彼奴の素性を探索してゐます。モウここ十日と経たない中に、キツト杢助夫婦を叩き出して御覧に入れます。キユーバーの野郎も臭い代物です。少時成行に任して見てゐたらどうでせう』 イルク『いかにも、彼奴ア、私も怪しい奴だと思つてゐる、キツト神様が善悪を裁いて下さるだらう。大国常立尊様、神素盞嗚尊様は、あのやうな悪人に聖場を任して、安閑と見て御座るやうな、ヘドロい神様ぢや御座いますまい』 斯く話してゐる処へドヤドヤと入り来るは三五教の宣伝使照国別、照公、玄真坊、コオロ、コブライの五人連れであつた。 照国『御免なさいませ、拙者は三五教の宣伝使照国別で御座います。梅公が何時やらは、いかいお世話に預つたさうで御座いますが、まだ彼は当家へは帰つて居りませぬか』 イル『ハイ、貴方が噂に高き照国別の宣伝使様で御座いましたか、私は当家の主、イルクと申します、いい処へ来て下さいました。サアサアどうか奥へお通り下さいませ』 照公『拙者は照国別様の弟子、照公と申します、何分宜しく』 玄真『拙者は玄真坊と申す修験者で御座います、何分よろしく御見知りおき下さいまして以後御懇意に願ひます』 コオ『奴輩はコオロと申す、あまり、善くもない、悪くもない三品野郎でげす。不思議にも照国別様一行に難船した処を救けられお伴になつて参りました。どうか門番にでも使つてやつて下さい』 コブ『奴輩はコブライと申しまして、チツト斗り名の売れたやうな、売れぬやうな侠客渡世を致しますもので御座います。何分よろしくお願申します』 イル『ヤア皆様、よくこそお出で下さいました。何は兎もあれ照国別宣伝使様と共に奥へお通り下さい、チツト許り当家には心配事が起りまして、相談の最中で御座います』 照公『いかなる御心配か知りませぬが、幸ひ先生もゐらつしやるし、及ばず乍らお力になりませう』 イル『ハイ、有難う御座います。何分よろしく』 と挨拶し、自ら茶を出し菓子を出し、力限りに饗応する。 照国『当家は非常な旧家と見えますな、庭石の苔むしたる趣と云ひ、石燈籠と云ひ、旅の疲れを慰むるには屈強のお座敷、イヤ、どうも立派なお座敷を汚して済みませぬ』 イル『何を仰有います。見る影もなき破家に駕を抂げられまして、一家一門の光栄之に過ぎたる事は御座いませぬ。子孫の代迄云ひ伝へて喜ぶで御座いませう』 玉清『私は神谷村の玉清別と申す三五教の信者で御座います。照国別様とやら、何卒々々お見知りおかれまして、今後共、よろしく御指導の程をお願申します』 照国『ヤア貴方は噂に承はつた玉清別様で御座いますか、これは珍しい処でお目にかかりました。何分よろしくお願致します。時にイルクさま、今一寸承はれば当家には何か取込事があつて御相談の最中だと聞きましたが、どうかお邪魔になれば席を外しますから』 イル『イヤ、決して御心配には及びませぬ、実の処はスガの宮の件に就きまして……』 と一伍一什を詳細に物語つた。 照国別は「ウーン」と云つたきり双手を組んで少時思案にくれて居たが、何か期するところあるものの如く膝をハタと打ち三つ四つ頷いて、 『ヤ、分りました、どうか私に任して下さい、この解決はキツトつけて上げませう』 イル『何分よろしく、お頼み申します』 ヨリ『照国別の宣伝使様、妾は貴方の御弟子梅公別さまに非常なお世話に預つたもので御座います。此処に居りまするのは花香と云つて妾の妹で御座いますが、不思議の縁で梅公別様の妻にして頂く事に内定してゐるもので御座います。何分よろしく御とりなしをお願申し上げます』 照国『ヤ、かねて梅公別からヨリコ姫様の事も花香姫様の事も聞いて居ります、何事も神様の思召次第ですからな』 花香『これはこれはお師匠様、初めてお目にかかります。妾は今姉の申しました通り、梅公別さまに大変な御贔屓に預つてゐる花香で御座います。何分よろしく……今後のお世話をお願申しまする』 斯く互に挨拶なせる折しも、梅公別の宣伝使は重たげに大きな葛籠を背負ひ、エチエチ入り来り、 梅公『ア、御免なさい、梅公別です、大変な御無沙汰を致しました』 番頭のアルは頭をピヨコピヨコ下げ乍ら、 『ヤア、よう来て下さいました、先生、若旦那様も、大旦那様も大変、先生のお越しをお待ちで御座いました。之から一寸奥へ申して来ますから』 梅公『イヤ、それには及びませぬ、照国別の宣伝使が見えてゐるでせう。……私の方から伺ひます』 と、大葛籠を玄関にソツと下し、案内もなく奥内さしてニコニコし乍ら進み入る。 梅公『ヤ、先生初め皆さま、御一同、お早う御座いましたね』 照国『ヤ、今当家へ伺つた所だ、実はお前が、あの暴風雨に小舟を出して浪の上に消えて了つたものだから、少し許り心配してゐたのだ。ヤ、無事で結構々々、花香姫も先づ先づ御安心だらう』 ヨリ『梅公別の先生様、お久しう御目にかかりませぬ、先づ先づ御無事でお目出度う御座います。花香も大変にお待申した様子で御座います、これ花香、早く御挨拶を申さないか』 花香姫は顔を赤らめ乍ら恥しさうに手をついて、 『アノ、旦那様、イーエ、梅公別の宣伝使様、お久しう御座います、妾、どれ程待つてゐたか知れませぬのよ』 梅公別は無雑作に愛想よく、 『ヤ、奥さま、イヤ奥さまと云つては済まないが、花香姫さま、先づ先づ御壮健でお目出度う、私だつてヤツパリ花香さまの事ア何時でも忘れてゐやしませぬよ』 花香『ハイ、有難う御座います。そのお言葉を聞いて得心致しました』 照公『オイ、梅公、馬鹿にすない、何かおごつて貰はうかい。俺の前で、おやすくない処を見せつけやがつて、あまりひどいぢやないか、アツハヽヽ』 ヨリ『梅公別さま、当然ですわね、これ花香さま、何もオヂオヂする事はありませぬよ、云ひ度い事あれば人さまの中でも構はない、ドシドシ云つたがよい、憚りながら姉さまがついて居りますからな』 照公『ヤ、これは堪らぬ、お面、お小手、お胴、お突と御座るワイ。ヤ、斯うなりやいよいよ敗北だ。照公砲台も沈黙せなくちやなるまい、ウツフヽヽヽ』 梅公『仇話は扨おいて海上からほのかにスガ山の聖地を見れば怪しい雲が立つてゐました。何か変つた事はありませぬかな』 イル『ハイ、お察しの通り、その事に就きまして今、相談会を開いて居つた処で御座います』 梅公『高姫、杢助、キユーバー等の悪人が聖地を占領せむとしてゐるのでせう』 イル『ハイ、已に占領されて了つたのです。最早今となつては、手の出しやうも御座いませぬので……』 梅公『決して心配なさるな、梅公別がキツト解決をつけませう、悪人輩を一言のもとに叩き出し、もとの聖地に回復せむは吾方寸に御座います。ヨリコさまもダリヤさまも、玉清別さまも安心して下さい、キツトもとの通りにしてお目にかけませう。大方、高姫と云ふ奴、ヨリコさまの素性を洗ひ、理窟づくめに放り出したのでせう』 ヨ『ハイ、お察しの通で御座います。何分汚れた魂で御座いますから聖場を守る等云ふ大それた事は出来ませぬ、妾の慢心から柄にも合はぬ宮仕を致しまして聖場を汚し、皆さまに対し申訳がないので、この通り悄れ返つてゐるので御座います』 梅公『昔は昔、今は今、仮令如何なる悪事があつても、悔い改めた以上は白無垢同然、一点の罪も汚れもあらう筈がありませぬ、左様な御心配は御無用になさいませ』 と慰めおき、照国別、イルク、玉清別を別室に招き、高姫追放の計画に密議をこらし悠然として再びもとの座に帰り来り、 梅公『大空に塞がる黒雲吹き払ひ 月日を照す科戸辺の神。 よしやよし醜の黒雲包むとも 科戸辺の神吹きや払はむ』 これより一同はスガ山回復の策戦計画の準備に各々手分けをして取かかり、明日を期して大挙スガ山に神軍を進むる事とした。あゝ惟神霊幸倍坐世。 (大正一五・七・一旧五・二二於天之橋立なかや旅館北村隆光録) |
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霊界物語 | 72_亥_スガの港(宗教問答所) | 筑紫潟 | 霊界物語特別篇筑紫潟 世は烏羽玉の闇となり山河草木ことごとく 言問ひさやぐ世の中を常磐堅磐の松の世に 治めむ為めと厳御魂天津御神の御言もて 豊葦原の瑞穂国綾の高天に天降りまし 至善至美なる御教を蒼生に説き諭し 朝は東夜は西南船北馬の難を越え 神の稜威も伊都能売の天津誠を宣べませど 悪に溺れし世の中は神の言葉に服はで 力かぎりに刃向ひつ沐雨櫛風の苦業さへ 水泡に帰せむとなせし折天津御神は畏くも 厳の御霊の杖柱珍の御教を助けむと 瑞の霊を下しまし瑞穂の国の中心に 高天原を築かせつ経と緯との機をおり 心も清き紅の錦の教を垂れたまふ 手段となして畏くも明治は二十五年より 天津御神の御心を筆に写して詳細に 蒼生に教へます其神文を一々に 清書せよと命ぜられ飛び立つ許り勇み立ち 止め度もなしに慢心の階段えちえち攀登り 神の見出しに預りし吾こそ真の信仰と 心の黒き黒姫が神書の心をとり違へ 瑞の霊の宣り言を残らず曲と貶しつつ 小北の山に巣ぐひたるウラナイ教の偽教主 鼻高姫と諸共に魔我彦誘ひ聖地をば 後に見捨てて出でてゆくいよいよ陰謀七八分 成功なさむとせし時に瑞の霊は厳かに 天の岩屋戸押し開き天地に塞がる叢雲を 伊吹払ひに払ひまし御空は忽ち五色の 祥雲棚曳き日月の清き光に曲神の 頭を忽ち射照せば黒姫身魂に巣食ひたる 常世の国の曲神は汚れし身体ぬけ出し 力も落ちて身体は忽ち神の冥罰を 被り百日百夜の修祓うけて敢へなくも 命の親と頼みたる高山彦を残し置き 黒白も分かぬ烏羽玉の暗き黄泉路に旅立ちて 八衢街道の四つ辻に鼻高姫の精霊と 出会し種々の物語り天国地獄の問答を いと諄々と初めける其の経緯を瑞霊 或夜の夢に八衢に精霊出でて聞き取りし 一伍一什の顛末を茲にあらあら述べ立つる 時は昭和の第二年新の十月十九日 神に心を筑紫潟肥前の国の島原の 南風楼の二階の間北極星を枕とし 加藤明子に筆とらせ口解きたる物語 述ぶるも楽し惟神神のまにまに初めゆく あゝ惟神々々御霊幸倍坐しませよ。 天地寂然として黒雲漲り、濃霧は四辺を包み、昼なほ暗き夜の如くにして咫尺を弁ぜず、蒸暑き嫌らしき悪臭を帯びたる空気身辺を襲ふ。八万地獄の草枕、旅に出で立つ黒姫の曲の精霊は、唯一人小声に呟きながら、猶現界に吾肉体のあるものと信じ、 黒姫『いよいよ世の終末は近づけり、日月天に輝けども、世道人心紊乱の極に達し中空に妖雲起りて下万民、飢渇に苦しむ。時は今なり時は今なり、妾こそは、厳の霊の恩命を拝し、此暗黒の世をして光明世界に転換すべき大責任を双肩に担へり。あゝ高山彦は、何を苦しみてか躊躇逡巡する、日の出の神の肉の宮、高姫司は何処にありや。神諭に云ふ世の終りの時至らば、至誠至実の神柱三人あれば可なりと聞く、その三人とは、竜宮の乙姫殿の肉の宮此黒姫の身魂を初め、日の出の神の肉宮とあれます小北山の高姫司、高山彦をおきて外に誠の神柱は世に非じ、あゝ思へば思へば吾が身魂の責任の重且つ大なる、古今其比を見ず、東西其例を聞かず。変性女子の身魂と自称せる彼贋神柱が末路を見よ、彼が光は螢火にも如かず、彼若し真の瑞霊なりせば此世の終末に際し、一大火光となりて、せめては地上の低空を飛翔往来し万民の目を醒ませ、神聖の神国を樹立すべきに非ずや。口先ばかりの瑞霊、其影の薄きこと、冬の夕日に如かず。あゝ至れり至れり、吾が願望の成就の時期、高姫来れ、高山彦、吾につづけ』 と呼ばはりながら、木枯荒ぶ茅野原を、神官扇を右手に持ち、左手にコーランを携へて、八衢街道の入口に、かかる折しも向ふより、脛も現はにいそいそと、金剛杖をつき乍ら、髪振り乱しだん尻を、ぷりんぷりんと右左、振舞ひながらやつて来る。女は云はずと知れた小北山、日の出の神と自称する高姫司の精霊ぞ。 高姫『マアマアマアマア、黒姫さまぢやないかいな。此処は何処ぢやと思つて居ますか。生前に日の出の神の云ふ事を、半信半疑の態度で聞いて居たものだから神罰は覿面、お前さまはこれから地獄の旅に向ふのぢやないか。生前には比較的豊満の霊衣もすつかりと剥脱され、形ばかりの三角形の霊衣を額に頂いて居るスタイルは、まるきり地獄の八丁目を歩いとる亡者ですよ。あゝもう今となつては此日の出神の生宮も、お前さまを助ける訳には行きませぬわ、マアマアマアえらい事になりましたなア』 と目を丸うし、口を尖らして名乗りかけた。 黒姫『どこの乞食婆がやつて来るのかと思へばお前さまは高姫さまぢやないか、此頃は天地暗澹として四辺暗く、空気が悪いのでまあまあ気の毒な、持ち前の病気が出て発狂しなさつたのだらう。些と確りして貰はぬと竜宮の乙姫の肉宮も困るぢやありませぬか、ホヽヽヽ。あのまあ小むつかしいスタイルだこと、こんな所を大将軍様にお目にかけたら千年の恋も一度にさめますぞや』 高姫『ほつといて下さい、黒姫さま、お前さまは聖地に於て慢心した結果、日出神の教に背き、神罰を蒙つて百日百夜の修祓を受け、筍笠のやうに骨と皮とになつてお国替へをなさつたのぢやないか。それでもまだ現界に生きて居る積りですか。何とまあ慢心した身魂の迷ふたのは可愛さうなものだなア。あゝ底津岩根の大ミロク様、此黒姫さまも一度は竜宮の乙姫の肉の宮迄勤めた神界の殊勲者ですから、如何なる罪がありませうとも、神直日大直日に見直し聞き直し、どうか地獄行きだけはお許し下さいまして、せめては第三天国の入口迄なと上てやつて下さいませ、惟神霊幸倍坐世』 と両眼より玉の涙を滴らせながら、天に向つて合掌する。 黒姫『高姫さま、確りして下さい。決してこの竜宮の乙姫は死んだ覚えは御座いませぬよ。お前さま余り慢心が強くて信仰に酔つ払つたものだから、これ程ピチピチして居る私を亡者と間違へてゐるのですよ、なる程百日百夜の修祓を受けたのは事実です。併しまだ死んだ覚えはありませぬ。かう常暗の世の中となつては、世界万民を助ける為めに、底津岩根の大ミロク様の神柱、日出神の生宮を兼たお前さまが確りして貰はなくちや、どうしてミロクの世が建設せられませう。お前さまは、あまり大将軍さまに現を抜かし、恋に眼が眩んで千騎一騎の此場合になつて呆けたのでせう。あゝ高姫さま、気の毒な方ぢやなア、伊都能売の大神様、天の大ミロク様、三千世界の人民が可愛さうと思し召すなら、どうぞこの高姫さまの狂人を本心に立ち直らして下さいませ、高姫さまさへ元の正気にお帰りなされば私の肉体はいつ国替しても構ひませぬ』 高姫『あーあ、仕方のないものぢやな。これ程云うても黒姫さまの精霊殿は判らぬのかいな。エヽぢれつたい、惟神霊幸倍坐世』 黒姫『あゝ高姫さまも判らぬやうになつたものぢやなア、長らく聖地を離れて小北山に陣どり、鰯の昆布巻になつて居るものだから、肝腎の時に、発狂して仕舞つたのだらう。生て居るか、死んで居るか、見分けのつかぬやうになつては、神柱も何もあつたものぢやない。あゝ気の毒だなア』 ○ 高山彦『朝日は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも たとへ大地は沈むとも曲津の神は荒ぶとも 誠の心にや叶はない小北の山より遥々と 高姫さまや黒姫が山川千里を越え乍ら 幾十回と限り無く足を運びし熱誠に つい動かされ老骨をひつさげ乍ら神界の 御用の端に仕へむと妻子を後に振捨て 浪花の里に流れ入り花柳の巷も厭ひなく 神の御為め道の為め烏のやうな黒姫を 老後の妻と定めつつ小北の山に往きかへり 贋の教と知らずして日の出神と自称する 高姫さまの筆先を一字も残らず読み尽し 其収穫は五里霧中荒野を彷徨ふ心地にて 三年四年と過ぎけるが皇大神の御心に 背きし為めか黒姫は百日百夜の苦みを 身に受け乍ら淋しげに吾を見捨てて神去りぬ さは去り乍ら人間は神代の昔の因縁を 持ちて生れしものなれば如何に汚き黒姫も 吾が女房と諦めつくだらぬ教を謹みて 聞き居たるこそ嘆てけれ今日は吾妹が昇天の 百日祭になりぬれば心の手向をなさむとて 霊の鎮まる奥津城に花供へむと進むなり 黒姫果して霊あらば吾に一言今迄の 誤解を謝せよ天地の神の御前に平れ伏して 神に背きし罪業を悔い改めて根の国や 底の国なる苦しみをよく助かれよ惟神 神は汝と共ならば必ず地獄の苦を逃れ 天津御国に安々と神の助けに昇るべし あゝ惟神々々頓生菩提黒姫よ 後に残りし吾が命あまり惜くはなけれ共 自殺をなせば天の罪自然に死して汝が後を 慕ひて行かむ其日迄身魂を研いて天国の 神の御苑に復活し半座を分けて吾待てよ 汝が昇天せし後は一人くよくよ老の身の 淋しさ勝る冬の夜衣は薄く歯はふるひ 足もわなわな行き艱むこの窮状を憐みて 国治立の大御神一日も早く黒姫が 御後を追はせ給へかしあゝ惟神々々 御霊の恩頼を願ぎまつる』 斯く歌ひ乍ら 高山彦の精霊は枯草茂る荒野原 杖を力にとぼとぼと八衢さして進み来る 黒姫見るより狂喜して 黒姫『お前は吾夫高さまか何処にどうして厶つたの 合点のゆかぬ事許り日の出神の生宮の 高姫さまが発狂して私を亡者と誤解する 百万言を尽せども心の狂ふた高姫は 私の言葉は糠に釘豆腐に鎹応へなく 如何はせむと思ふ折かすかに聞ゆる吾夫の 声を力に佇めばまがふ方なき吾夫と 知りたる時の嬉しさは百万人の味方をば 得たるが如く思ひます日の出神の生宮の 高姫さまよよつく聞け高山彦のハズバンド ここに現はれます上は私が亡者になつてるか あなたが発狂して居るかいと明白に分るだろう まさかの時の助け舟あゝ天道は人を殺さない あゝ有難し有難し吾夫さま』と縋りつく 高山彦は仰天し 高山彦『これやこれや黒姫迷ふなよお前は此世の人でない 百日百夜の病ひに天命つきて現界を 後に見捨てて行つた者誤解するな』とたしなめば 高姫鼻をつんとかみいとも急はしき口元で 高姫『高山彦がよい証拠お前は亡者に違ひない 早く神言奏上し地獄の関門突破して 天国浄土に行くがよい高山彦に執着を のこしちやならぬ黒姫さま左様ならば』と背を向けて 一目散に駆け出せば骨と皮との瘠腕を グツと伸ばして黒姫が鼻高姫の後髪 むんずと捉んで引き戻す高姫地上に転倒し 高姫『あゝいやらしやいやらしや亡者になつても此通り 執着心の深い婆々地獄に落つるは当然 日の出神は知りませぬこれから高山彦さまに とつつき散々愚知こぼし何んなら冥途の道づれに 伴れて行かんせ左様なら』 悪垂口を叩きつつ又逃げだすを黒姫は 頭に角を立て乍ら線香のやうな手を出して 襟髪グツと引き戻す高姫再び地の上に 転倒したる其刹那姿は煙と消えにけり 高山彦はゾツとして身慄ひしながら逃げ出せば 又もや黒姫後を追ひ 黒姫『悪性男のハズバンドこの黒姫の黒い目を ぬすんで日出の生宮と甘い約束したのだらう 許しはせない』と云ひ乍ら氷の如き冷やかな 拳を固めて打ちおろす全身汗にしたりつつ 高山彦は手を合せ 高山彦『黒姫暫く待つて呉れ三千世界にお前より 外に増す花持たぬぞや左はさり乍ら果敢なくも 散り行く花は是非もなし汝が後をば逐はむかと 天地の神に願ひても業因未だ尽きざるか 死ぬにも死なれぬ身の苦衷察してくれよ黒姫』と 両眼涙を湛へつつことわけすれど黒姫は 白髪頭を横にふり皺涸れ声を張りあげて 黒姫『悪性男のハズバンド黒姫愛想が尽きたぞや 鼻高姫の後を追て尻の世話でもするがよい 煩さい親爺』と云ひ乍ら悋気の角をふりたてて 夜叉の如くに駆出だすかかる折しも天空に 天津祝詞の声聞え梅の花片ちらちらと 四辺に落ちて香ばしくいと爽かな音楽に つれて紫雲をわけ乍ら気高きエンゼル悠々と 下り来るよと見る中に黒姫姿は後もなく 煙と消えて室内に眼くばれば高姫が 黒姫霊璽の前に座し片言交りの祝詞をば 奏上しながら涙ぐみぶつぶつ小言を云ひ居たり 高山彦は夢さめてホツと一息つきながら 鼻高姫の親切を心の底より感謝しつ 庭に出づれば大空に皎々輝く望の月 心も広く伏し拝み感謝の祝詞を奏上し 小北の山へと進み行くあゝ惟神々々 御霊の恩頼ぞ畏けれ。 (昭和二・一〇・一九長崎県島原町南風楼にて加藤明子録) |
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霊界物語 | □_特別編-入蒙記 | 15 公爺府入 | 第一五章公爺府入 日出雄と守高は平馬氏の宅に暴風を避け、真澄別以下五人は猪野敏夫氏の春山医院に陣取つていろいろの豪傑話に耽り、守高は柔術の実習や講演をやつて、大にメートルを上げてゐる。そして守高は摩利支天、名田彦は一億円、真澄別は泰然自若、岡崎は霞ケ関と云ふ仇名をつけられた。猪野は鄭家屯の日本坊主を殴つた話や、大川金作のローマンスの追懐談に花が咲いて居る。そして東三省一の美人と云ふ支那芸者が猪野に秋波を送つた事などを気楽さうに喋舌り立て、春の陽気を漂はしてゐる。朝から晩まで摩利支天に一億円、山田に王元祺等の豪傑連が柔道の練習をやつてゐたが、日出雄が行くと直ぐに中止して了つた。副官の秦宣はオチコの棒に吹出物が発生し、膿汁を拭いた手も洗はずに食器をいぢるので病毒が感染する等と云つて日本人側に嫌はれてゐた。 愈公爺府入りが定まり、順路の地図を、支那の某将校から借り来り、王府まで二百支里、最高山の北だなどと、頻りに地図に眼を注いだ。眼鬼将軍の岡崎は佐々木や大倉のやり方について大変な不平を洩らし、 岡崎『先生を中途まで送りとどけた上、一度奉天へ帰つて彼等二人のやり方を調査する積りだ。万一彼奴等がようやらぬのなら、自分は北京へ行つて呉佩孚や趙倜と会つて此大事業を成功させる……』 等と捨鉢を云つてゐる。時々風の吹廻しが悪いと変な事を云ふので日出雄も困つてゐた。 葛根廟には馬賊の根拠地があつて大集団をなしてゐるさうだ。近日の中に女の隊長が洮南に向つて襲来するとの急報に、支那の官憲や駐屯軍が驚いて、騒々しく動揺し初めた。 三月二十二日の午後四時頃、王天海は蒙古の隊長張貴林や公爺府の協理老印君と共に着洮した。そして愈奥地入りの準備にとりかかつた。張貴林は日出雄に向つて云ふ。 張貴林『此先には数千の馬賊団が横行してゐますが、何れも自分の部下許りだから、決して先生に害を与へませぬ。私は今回自治軍の旅団長に選まれましたから、安心して下さい。蒙古男子の一言は金鉄より堅う御座います。先生の為には一つよりない生命を擲うつてゐるのですから』 等と云つて勇ましく腕を撫してゐる。 暫らくすると佐々木、大倉の両人が日出雄の奥地入りを送るべく、遥々奉天からやつて来た。さうして岡崎と議論の衝突を来たし、岡崎の機嫌がグレツと一変し、 岡崎『俺はこれから奉天へ帰つて張作霖を叱りつけ、自由行動を採つて見せる……』 と頑張り、サツサと停車場を指して出て行つた。佐々木が驚いて停車場へ駆けつけ、危機一発の発車間隙に漸く岡崎を和め、連れて帰つて来たので一同は漸く安心した。 (日出雄)『乾坤一擲の大事業を策し乍ら、今から内輪揉めが出来ては到底駄目だ。満州浪人は大和魂が欠けてゐる。あゝ自転倒島では思慮浅きものの為に過られて身の置所なき破目に陥り、今又蒙古の野に来て日本人の為に過られ、千仭の功を一簣に欠くやうな形勢になつて来たのも、小人物の小胆と高慢心と自己本位の衝突からである。少し位の残念口惜しさが隠忍出来得ない様な事で、何うして此大事業が成功するか。真澄別もあまり泰然自若すぎはせぬか。此際両方の調停を計らねばなるまい……』 と日出雄は吾知らず呟いた。真澄別の仲裁によつて同志の間は、もとの平和に帰し、岡崎も再び駒の首を立直し、奉天帰りを思ひ切り蒙古の奥地へ侵入する事をやつと承諾したのである。 待ち佗びし吉き日は今や来りけりいざ起ち行かむ蒙古の奥へ 日出雄が洮南在留中沢山の詩歌を詠んだ。その中の数首を左に 十二日過ぎてゆ陽気一変し春立ち初めし心地しにけり 洮南は安全地帯と思ひきや馬賊の横行いとも烈しき 総司令一日も早く来れかし汝を待つ間の我ぞ淋しき 十四夜の月照る下の蒙古野に円を描いて小便をひる 国人に一目見せばや蒙古地を照らす御空の珍の月影 山も海も見えねど蒙古の大野原行く身は独り魂躍る 天か地か海かとばかり疑はる蒙古の広野にひとり月澄む 月見れば心の空も晴れ渡り天国にある心地こそすれ スバル星西に傾き初めてより早や地の上に霜は降りける ドンヨリと曇りし空に日は鈍し小鳥の声も頓に静まる 支那蒙古日本の人も我為に心砕きて守る嬉しさ 三月廿五日の早朝、支那旅宿義和粮棧から老印君、日出雄、岡崎、守高、王通訳は三台の轎車に分乗し洮南北門より馳走し、洮児河の橋を渡つて北へ北へと進み行く。寒風烈しく吹き来り轎車は顛覆しさうな危険を感じて来た。副官温長興は数名の兵士と共に騎馬にて前後を守り行く。途中守高の乗つてゐる轎車が路傍の溝の中へ顛覆し、守高、王通訳は溝の中へ投げ落され、馬夫と共に轎車を道路へ引き上げてゐる。其日の午前十一時に六十支里を経た三十戸村に着き、此処にて昼飯を為す事とした。ここには支那の警察もあり、兵営も建つてゐる。旅宿の家の柱には『莫談国政』と云ふ赤紙が貼りつけてある。之も専制政治の遺物だらう……。此処まで来る途上、轎車の中で日出雄はセスセーナ(放尿)を煙草の空罐になし、車外に捨てようとして、岡崎の支那服の上に零した。あまり寒気が酷しいので、忽ち膝の上で凍つて了つた。岡崎は小便の氷を手に掴んでゲラゲラ笑ひ乍ら道路に投げ捨てた。旅宿に着いて雲天井の大便所へ行くと、毛の荒い汚い豚の子が半ダース許りも集まつて来て肥取人足の役をつとめ、遂には尻まで嘗めあげる。その可笑しさに日出雄はゲラゲラ吹き出してゐる。午後十二時四十分再び乗車、何十間とも知れぬ広い幅の大道を愉快さうに進んで行くと、茫漠たる大荒原の前方に当つて黒ずんだ一の山が見えた。之は北清山と云ふ、さうして此辺には半坪か一坪許りの神仏の館が、彼方此方に建つてゐる。之は蒙古人が信仰の表徴となつてゐるのだと云ふ。 同日午後五時、七十戸村の催家店と云ふ牛馬宿に足を停めた。洮南からは百二十支里を離れてゐる。沢山の支那人の合客が泊つてゐて喋々喃々として賭博をやつて居る。翌三月二十六日朝五時出発の予定であつたが、二十支里ほど前方に当つて官兵と馬賊との戦ひがあり、連長が戦死した場所であるから、朝早く出立するのは極めて危険だとの宿の主人の注意に依つて、八時に此処を出発する事とした。 正午前八十支里を馳駆して王爺廟の張文海の宅に着いた。王爺廟の喇嘛僧は三百人許り居る。珍らしき日本の喇嘛僧来れりとて三百の喇嘛が、一人も残らず日出雄に挨拶に出て来る。そして里人や子供が珍らしげに集まつて来た。日出雄は携帯して来た飴を一粒づつ与へた。喇嘛も里人も地上に跪いて之を受けた。大喇嘛は部下に命じ洮児河の鯉を漁らせ、七八寸から一尺五六寸位のものを八尾許り持つて来て日出雄に進呈した。是れが本年に入つて初めての漁獲だと云ふ事である。 午後二時日出雄が王爺廟を出発せむと轎車に乗つてゐると、大喇嘛が牛乳の煎餅十枚許り持つて来て日出雄に贈つた。釈迦が出立の時、若い女に牛乳を貰つて飲んだ事を思ひ出し、日出雄は蒙古の奥地へ来て直ぐに喇嘛から牛乳の煎餅を貰つた事を非常に奇縁として喜んだ。此時日出雄の左の掌から釘の聖痕が現はれ、盛んに出血し淋漓として腕に滴つた。然し日出雄は少しの痛痒も感じなかつた。 洮児河の氷は処々解け初め、其の上を轎車が通過する危険さは実に名状すべからざるものがあつたが、何の故障もなく天佑の下に無事通過し、王爺廟の兵士や張桂林の馬隊に送られ且つ張文海の弟の部下に騎馬にて公爺府まで見送られた。王爺廟以東は赤旗を戸々に立て、以西は白旗を戸々に立ててゐる。公爺府は已に白旗区域である。ここは鎮国公、巴彦那木爾と云ふ王様が二百名の兵士を抱へて守つてゐる所である。日出雄一行が公爺府の近く迄行くと、公爺府の兵士が二十人許り捧げ銃の礼をして慇懃に迎へてゐた。日出雄一行は公爺府の傍なる老印君の館に午後六時頃無事に着いた。 (大正一四、八、筆録) |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治31年閏3月27日 | 明治三十一年閏三月二十七日 艮の金神が出口直に書かした筆先であるぞよ。綾部の広間は外の広間とはチト違ふから、難しいのであるぞよ。綾部の広間は異ふ行状を致さぬと、その行状で御話致しても、思ふ如うにはいかぬぞよ。それが判らぬか。判らぬならば先生とは言はさぬぞよ。敵対うならば何程なりと敵対うて来て下されよ。時節を待ちて御礼を申すぞよ。今辛き御方もう時節は参りて居れども、判らぬ御方がある故に、物事が遅くなりて、真実に気の毒であるぞよ。その行状でいくならば行りて見よれ。なかなかゆこまい。それが判らぬのが気の毒な事には慢心からであるぞよ。落ちて居るもの侮るなよ。良き御魂が落して在るぞよ。表面は今日でも変はるぞよ。霊魂は変らぬぞよ。身魂の審査めが致してあるから、人民の眼からは見えぬことであるぞよ。身魂の善悪が判かりて来るぞよ。開いた口が閉らぬ事変が出来ると気の毒なから、筆先に書き置くぞよ。筆先にあることは皆出て来るぞよ。神申す言は日にちはチト延ることもあれども、チットも違ひのなきこと許りじゃぞよ。 口で誠を申せども心に誠のある者が無いぞよ。それでは治まらぬぞよ。布教師、お世話係り、信者の人、皆一ツの心になりたならば、神は別け隔は致さぬから、各自に御神徳が取るのじゃぞよ。家内一統揃た家は御神徳速いぞよ。家内面揃はぬ家は神が遠慮になりて、思惑の御神徳が与れぬぞよ。布教師も其の通り遠慮ありて、思惑の願ひが出来ぬぞよ。和合致さぬことには真実の御神徳が貰へぬぞよ。綾部の広間は根元の仕組がいかぬから、一旦は火が消えぬと真実の広間にはならぬぞよ。まだまだ治らぬぞよ。判りて来たならば結構な広間であるぞよ。一旦洗替に致さぬと、ちと違ふことがあるから、難いのであるぞよ。 判る御方が判らぬから難しいのじゃぞよ。惜しいものであるぞよ。判て来たならば眩章の来る御方も大分出来るぞよ。時節待ちて御礼を申すぞよ。神は何処に居りても我身の心で御神徳は貰へるぞよ。艮の金神と申して下さりたならば、千里外地からでも御蔭は与る時節になりたぞよ。 艮の金神の取次は出口直であるぞよ。此の取次がありたならば、艮の金神は大丈夫であるぞよ。此処迄苦しみが御苦労でありたが、モウ是からは直は結構であるぞよ。苦労致したならば、それ丈けの御神徳は与るぞよ。此の世に種々鏡が出るぞよ。鏡を見て皆御神徳を貰うがよいぞよ。誠の道を踏みて居りても誠が無いから、神経綸致して居れども、物事が遅くなりて、真実に神は迷惑を致すぞよ。世を替へねば、此儘で置きたならば、共喰ひを致す如うになるぞよ。恐しい時節であるぞよ。けれども神には勝てぬぞよ。聞かねば聞く様に致すぞよ。 人民の力では此の世は行かぬ世であるぞよ。一力でやりて居ると思うて居るから、慮見が違がふのであるぞよ。此の世は神が構はな行けぬ世であるぞよ。 今迄は此の世が暗黒になりて居りたのを、新りて世の審判を致すのであるから、世界には大望がある故の神々の御苦労じゃぞよ。人民が知らぬことであれども、神々の御苦労になりて、此の世を審判いたして、良く致すのじゃぞよ。是程神は人民を助けたさの苦労致すのじゃぞよ。夫を知らずに疑ふとはチト慮見が違がふぞよ。神に近付けば、ちとなりとも速判るから、神に縋ると結構であるぞよ。 此の金神は速此の世を良く致したいので、何事も先に筆先で知すのじゃ。速知りた人は結構であるぞよ。何時迄も疑うて居る者は気の毒じゃぞよ。見て居じゃれよ。神に縋りて居りたらばこそと言ふて歓ぶことが出て来るぞよ。出口直は世界の真相、世界にある事変を知らす取次であるぞよ。金光殿の取次とはチト異がふ取次であるから、今解らぬので金光殿の方から色々と言はれるので、気苦労を致せども、もうちっとの間の所を、直胸の中が苦しいのは神が知りて居るから、もちっとの間の所を忍耐て下されば結構が解りて来るから、苦しいても今迄貫ぬいたのであるから、隠忍て下されよ。艮の金神に間違ひはないぞよ。艮の金神が頼むぞよ。直に言ひ聴かしてあることは、チットも違がひの無き神言であるから、御安心をいたして御用開いて下されよ。力になりて下さる御方が出来るから、直よ、御安心を致して仕事はもう出来ぬから、御用聞いて下されよ。艮の金神が頼むぞよ。大神業であるから、物事が遅くなるので、直が心配を致せども、寸分も違ぬ事であるぞよ。金光殿の自由と思ふて居るから、思う如うに行かぬのじゃぞよ。如何程焦慮たとても無効ぞよ。放任て置きて下されよ。神は何処に居りても誠の心で信心を致すものには、何処からでも御神徳激げしきぞよ。艮の金神は景場信心は嫌ふぞよ。誠の心で頼むなら、三言で御神徳は与るぞよ。艮の金神は世界の人民の心を直す神であるぞよ。心さへ改心が出来たならば御神徳は直に与るぞよ。疑ひを晴さぬと、各自に苦しみ永う致すから、可愛相なから、煩う申すのであるぞよ。 勇んで人が寄りて来る広間を、吾と我手に苦しむで、真実に気の毒なものじゃぞよ。是が判らぬのか、可哀相なぞよ。前途が見えぬと申してもあんまりであるぞよ。誰に由らず、慢神を致すと、ドウ船が顛覆やら判らぬから、慢心は出来ぬぞよ。 是で良いと思うと失敗ぞよ。何時になりても是で良いと云うことは無い御道であるぞよ。気許しは一寸も出来ぬぞよ。筆先に書かして気を付て置ぞよ。直は此役であるぞよ。何程なりとも疑う御方疑うて居りて下されよ。チットも苦にはならぬぞよ。気の毒なぞよ。誤心配が気の毒であるぞよ。干渉だてに来て下さるなよ。一力で行るぞよ。左様は申しても時節が参りたならば、皆手を引き合うて行ぞよ。判るまでは一力でやるぞよ。此方から別け隔ては致さぬぞよ。別け隔ては要らぬ御道であるぞよ。判りて来たなれば皆改心を致すコト許りであるぞよ。艮の金神が仕組を致して居る神業を世界へ判りて来たなれば、世界一列勇む世になるぞよ。世界のコトが今が二段であるから、三段になりたならば、漸々と改心を致す如うになるぞよ。中々大謨であるから、神の仕組は致してあれども、世界の事であるから、物事が遅くなりて居れども、毫厘も違ひの無き神言であるぞよ。 上の身魂の亀鑑を出すのであれども、世界に大神業はじまりて来んと、其の鏡は出ぬから、種々世界には見せ示ある依ってに、夫れ夫れの見せ示を見て改心を致されよ。此の神世界を良く致す神であるから、改心を致す迄申すぞよ。人民の心を直す神であるから、途中で挫折る神でないぞよ。究極まで改心を致さすぞよ。改心出来ねば、出来る様にして改心を致さすぞよ。 此の世の主宰を致して居るものから改心を致させぬと、下々の人民が本当に難渋を致すぞよ。世が逆様に成るぞよ。世界のコトであるから、見て居じゃれよ、世界から出来て来るぞよ。 出口直の願ひは明治二十五年の正月の願ひでありたぞよ。未だ直の願ひは、七年になりても叶へてないぞよ。もう神の事は出来が致したから、是からお直の願ひを叶えるぞよ。直に苦労さしたぞよ。最早世界から漸々と分りて来るぞよ。 日本丈けのコトで無いから、大望であるから、判るのが遅き故に直心配をいたせども、毫厘も違ひの無き神言であるから、御安心を致して下されよ。永がらくの経綸を致した神事の初まりであるから、中々判るが遅き故に、皆心配を致せども違はぬぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治31年旧11月5日 | 明治三十一年旧十一月五日 艮の金神の御用を聞かせるのは、老人でも行かず、我の有る位で無いと行かず、我が在りても神の道では行かず、御用に使ふ者が無いぞよ。口と心と行いと違はぬ者でないと、此の神の御用は聞けんぞよ。誠を貫らぬくもので無いと、神の御取次は出来んぞよ。我身が可愛い様な事では、此の取次は出来んぞよ。誠を貫ぬく御方が出来てこんと斯御道は拡まらぬぞよ。大勢無くても誠の者さえ在りたら、直ぐに拡まるぞよ。誠の在る者には神が力を附けるぞよ。誠の者は神が拵えてあるぞよ。グズグズして居ると後の烏が前に成りて、残念な事が出来るぞよ。万の神を皆御苦労に成りて居るから、物事が速く解るぞよ。今の綾部の取次が、アフンと致す事が在るぞよ。夫れでは金光殿へ気の毒な事が在るぞよ。神は気を附けた上にも気を附けるぞよ。是は慢神からじゃぞよ。気緩るしは少とも成らぬ御道であるぞよ。上の御神様下たへ降りて御守護を成さるから、何も物事が速いぞよ。天も地も世界が平均のであるから、今迄の行いを致して居ると、大失敗を喰ふぞよ。全部物事が変るぞよ。今迄覇張りて居りた御ん方、チト気の毒が在るぞよ。御用意を成さらんと、慮見が違ふ事が出来るぞよ。何に由らず物事代るから、斯世は誰に依らず、世を持ち切りには致させんぞよ。何時までも続くとは思ふなよ、世が代るぞよ。信心も同じ事、後の烏が前に成るぞよ。慢心いたすと誰に由らず、大怪我が出来るぞよ。神の道では慢心と慾とが一番気障りで在るぞよ。金神の世に成れば、慾を捨て神にもたれた成らば、何も不自由は致さねども、何程申しても聞かしても、誠の者が無き故に、チットも物事が思ふ如うに行かんのは、我身の心が悪いのじゃぞよ。我を出し慢心を致して、思ふやうに行かんと、神の業のやうに申して居るが、此の金神は一言申したならば、何に由らず違いは無い神で在るぞよ。神が申した事も、チット延びる事が在るなれど、延びるのも神界の都合のある事ぞよ。人民を一人なりと助けたさに延ばすのであるぞよ。世界の人民の改心が出来たなれば、早く良く成るし、改心出来ずば永く苦しむだけじゃぞよ。改心一つ、是からは世界の洗濯致して、良く致すのであるから、人民の心から直さぬと、神の心と同じ事に成らんから、神の心に成りたなら、斯世は思ふやうに成るぞよ。早く改心致されよ。何程言ひ聞かしても聞かねば、聞くやうに致すぞよ。茲まで開けた斯世界、何んでも此儘で人民を助けたいのが願いで在るから、助けたいと思へども○○○○○○○○○ 今の世界の人民は、神の申す事を誠に致さず、神を何時までも敵対うなら、天災で何の様な事が在りても、神を恨めなよ。神は明治廿五年から、毎日お直に言はして在るぞよ。是に落度は無かろうぞよ。是程に言ひ聞かしても聞かねば、世界には何事が在ろうやら判らんぞよ。何事も神を恨めなよ。今度斯世の立替であるから、世界の改めを致すぞよ。昔から斯世始りてから無き、世の立替で在るから、大望な世替じゃぞよ。人民の知らぬ事じゃぞよ。改心致せと申すのは、神は身魂の改めが致してあるから、改心が出来ぬと出直しを致さな成らぬ事があるから、金神がクドウ申すのじゃぞよ。現世で御役に立てる身魂と、国替さして使ふ霊魂と、又た神へ引取る霊魂と在るよって、改心致せば天地の大神様へ、御詫を致して遣れば御赦あるから、改心いたせと申すのじゃぞよ。今度の世の立替は、新つに致さねば成らぬから、慾は要らぬぞよ。慾を致して貯めて居りても、新つの世に成るので在るから、神気を附けるぞよ。心次第、改心次第で宜く成るぞよ。今の人民何にも知らずに居るから、神がクドウ申すのじゃぞよ。今迄は足立殿も酷い御疑いで在りたが、モウ解りて来るぞよ。直の身上も判りて来るぞよ。是から金神表になりて守護致すから、物事が速いぞよ。日本の国は結構な国で在るから、日本の人民よ改心致して誠の心を持てよ。日本の国は、誠を尽さな成らぬ国で在るから、誠を尽す人なれば、誠の花が咲く国で在れども遅くなるぞよ。誠の人は是からは、日本の国は鏡に出すぞよ。鏡を見て改心を致されよ。今では誠の者が無けれども見ておじゃれよ、世が変れば誠の人を拵えて、神の思わくを立て、世界を良くいたすぞよ。世界の人民よ一日も早く改心なされよ。それに附ては、日本の人民の改心が第一で在るぞよ。日本の人民さえ改心致せば、世界は良い世になるのじゃぞよ。綾部の九ツ花は、誠から咲く花で在るから、誠の人が集りて来んと開かんから、○○○綾部は燈台下暗しでは、此結構な花が咲くのに、誠が無き故に、余所から御神徳を取りに来るぞよ。此事が判りかけたなれば、我れも私しもと申して皆集りて来るが、今の内に気が附かぬと、誠のおかげは余所へ取られるぞよ。 この世話早う致したなれば結構で在れども、モチト解らぬので、誰も見合はして、手を出せば損のやうに今では思ふて居れども、今世話を致さねば誠の世話でないぞよ。是が判りて来たなれば、元の世話掛は、高見から見物いたして居りても、良いやうに成るので在れども、人民といふものは疑いが在るから、神が申しても、誠には能う致さねども、世界の政教の立替であるから、中々大望であるから、延びるのじゃぞよ。日本の国を大事に思ふから延ばすのじゃぞよ。日本の脚場を余程強固いたして置かんと、兵糧が尽きる如うな事が在りては成らんから、豊作を取らしてかかるぞよ。金神の世に成りたら世年は良く成るが、此の大望が治まりたならば、誠に都合に成るから○○○○○ 開いた口も閉まらぬ如うな事が出て来るぞよ。世が代るのであるから、是迄に無かりた事が出来るぞよ。日本の国は是位い尊とい国といふ事を、今度世を切替に致して、表に現はれて、三千世界の政教を立替て、金神が世に出るぞよ。此の誠は九つ花の元じゃぞよ。九つ花は誠から咲せる花で在るから、三千年経綸を致した、誠の花の本で在るから、誠の人の世話でないと、此の御世話は出来んぞよ。近慾な事では出来ぬぞよ。是でも神の経綸いたした事で在るから成就いたさすぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治31年旧12月26日 | 明治三十一年旧十二月廿六日 出口直に明治廿五年に申してある事、此の大望な経綸の致して在ることを、世界に一人知りて居ると、言ひ聞かして在ろうがな。此事が判りて来るぞよ。誠の人は拵らえて在るから、此の誠の人が出て来んと解らんぞよ。此の人が出て来たなれば、直ぐに解るぞよ。金光殿の取次豪さうに申して居りても、誠の御方が御出なさりたなれば、後へ寄りて頭を掻いて居る事が出来るぞよ。仕組が致して在る事であるから、金神は結構で在れども、気の毒なのは金光殿の取次であるぞよ。是程金神が気を附けても、慢心致して金光殿の御骨折りを無視に致して、何う申訳を致すのじゃ。金光殿へ気の毒であるぞよ。是は皆慢心から、慢心致せば間に合はんぞよ。今では艮の金神を別物の如うに申して、敵対うて御座るが、全然世の調査を致して、新たまりての世に致すので在るから、今迄の事を申して覇張りて居りても、何にも成らぬぞよ。神の道では教役者、皆頭目を致して居るものは、チト量見が違う事に成るぞよ。上へ下タへ覆るぞよ。気の毒な御方が出来るぞよ。余り慢心を致して、自分程のものは無き如うに思ふて居りても、世が変るから、金神が守護致して居るから、ゝゝゝ[*「ゝゝゝ」は底本通り]誠の者に憑りて、経綸が致して在るぞよ。是から力競べを致すぞよ。ゝゝゝゝ[*「ゝゝゝゝ」は底本通り]永らく経綸いたした事の初りで在るから、誠の人を西と東に立別けて、この金神が憑りて御用がさして在るぞよ。此事が判りて来るぞよ。此事解りて来たなれば、三千世界が一度に開くぞよ。三千世界一度に開く梅の花、金神の世に成るぞよと、出口直に初発に書して在ろうがな。時節が近よりたぞよ。永らくの仕組の致して在る事であるから、解りかけたら速いぞよ。今度は三千世界の身魂の審判で在るから、全然斯世が転覆へるぞよ。大分心配を為んならん御方も出来るぞよ。万古末代世は持切りには致させんぞよ。けれども綾部に九つ花が咲いたなれば、万古末代しほれぬ花で在るぞよ。九つ花の初りで在るから、中々判らねども、モウ判るが近うなりたぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治32年旧3月(日不明) | 明治三十二年旧三月 世の立替に付いて、日本の国には色々と天地から不思議を見せるから、又世界にも段々と不思議な事を為て見せるぞよ。是も皆人民を助けたさに、日本の人民への気附けで在るから、是を見て日本魂に改心致さんと、外国はまだまだ厳しき見示めを致すぞよ。世が変ると言ふ事は、何事も無しには世は変らぬから、神の大経綸が始まりたら、一旦はエライ混雑に成るなれど、整理的大神業が終結りたなら天下泰平に世を治めて、万劫末代苦舌のないやうに致して、世界の人民を安心させるぞよ。今度此の事業は、日本の国は小さうても是れ位な尊い、威権の有る国と言ふ事を世界中に見せて、末代外国を従はす御用で在るから、日本の人民余程の覚悟が無いと、日本も危ふい事が在るぞよ。また日本の身魂と外国の身魂とは、位も天職も違ふから、其の事も判明て見せるのじゃぞよ。此の因縁を判けて、世界の人民の心の洗濯を致させぬと、世は良く成らぬから、此処を聞き判けて、日本の人民よ早う身魂を日本魂に磨いて置いて下されよ。此の神の事を何ぞ悪い事でも致す様に思ふて居る人民よ、日本の国の威権が判かりて居りて悪く申すのか、本来の日本魂に立帰りて見よれ、悪く申す処は毛筋も無いので有れど、逆様により感得れんのは、身魂が暗りて居るから、外国の悪神の容器に成りて居るからで在るぞよ。夫れでは日本の国が天地の真相を開くと言ふ事は六ケ敷いぞよ。 ○ 出口直の胸の中は、晴天でも曇りたやうに見える、さえたる月夜も暗のやうな心で居るが、是れも大望の判りた人民が無い故、力に致す頼りが無いからで在れど、明けの鳥と成りて、世界中の夜が明けて来たら、変性男子、女子の気苦労で、世界の人民勇んで暮さすぞよ。夫れに付いては世の洗濯を致さねば成らんから、艮の金神現はれるに付いて、世界の人民に心丈けの神徳を授けるぞよ。今日好くても心悪しくば、先きで大きな難渋を致すぞよ。改心して信服て来た人民は、昨日の心配も今日は無くなりて、心も晴れ晴れと致すやうに仕て与るなれど、誰も欲の無い者は無いから、皆取違ひ致して、結構な御蔭を取り外すので在るぞよ。世界中の身魂の洗濯で在るから、良き身魂と悪しき身塊とを立別けて、世界の人民に改心させねば成らぬから、今迄長頭して威張りて居りたもの、審査致して見れば皆、世に落とさねば成らぬもの斗り、身魂が悪の守護で在るから、上へ行く程慢心が激烈くて、神の心が判らんからで在るなれど、中には心の良きものは御用に使ふぞよ。今迄は我れの一力で、力量さえ在りたらドンナ事でも人民の思わくに出来たなれど、モウ艮の金神の守護の世に世が変りたから、我の我では此の世は行けん事に成るから、何も皆元源へ服従うて来ねば成らん様に、規則が定まりたので在るから、今迄世に出て覇張りて居りた神は、皆我の強いもの斗り、今度此の方が身魂審判致すに付ては、我の強いものから戒めを致すから、夫れで上の守護神、下へ落ちねば成らんと申すので在るぞよ。我力で行くなら行りて見よれ、我れで無くては成らんと思ふて居りても、神の方は皆身魂が調査致して在るから、これからは我力では行けぬと、腹の底から改心致して、神国の教に服ふて来る人民は結構が出来るなれど、改心出来ん我の強い身魂はこれから、ドウ変るやら知れんぞよ。 ○ ドンナ学の在る人民が何程奮励りても、世界中の人民が集りて考へても、此の先きの世は、人民の細工では治まらんぞよ。人民の考へや利口では天地の世の持ち方が判らんから、太初から神が仕組致した此の大神業が済まねば、天下泰平には世が治まらんから、頑張らずと早う改心致して、神の申すやうに致せと申すので在るぞよ。改心さえ致して、世界の人民に此の方の威徳が判りて来たら、其処で世界は良く成るなれど、今迄の事を申して、人民の考がへや利口で行ろうと思ふても、世は段々と悪く成りて、人民が難渋を致す斗りで在るぞよ。チットも善と言ふ事が出来は致さんから、此の先きは神が表へ現はれて、世界中を神国の世に致すので在るから、中々大望な事で在るなれど、永らく仕組の致して在る事で在るから、何も皆仕組通が世界から出て来るぞよ。世界の事変は皆金神が仕組た事で在るぞよ。夫れで世界の事情は何も皆此の大本へ出て来ねば判りは致さんのじゃぞよ。善と悪との戦ひに付て、悪が九分九厘の処まで此世を持ち荒したゆえに、天地の王神様はナカナカ厳敷御気障が在るのじゃが、此の方が世界の人民を助けたさに、種々と苦労を致して、悪く言はれてもチットも気にも障へずに、天地の王神様へ御詫びを致して、十分の処を三分に許て御貰ひ申すので在るが、改心出来ずに何時迄も頑張りて居ると、此の方の堪忍袋が破れたら、ドンナ事変が在りても不足は申されまいぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治32年旧6月3日 | 明治三十二年旧六月三日 艮の金神の筆先で在るぞよ。明治三十二年の旧六月の三日に、書いたのであるぞよ。 艮の金神が御礼申すぞよ。永らくの経綸いたした事の、初発であるぞよ。上田喜三郎殿大望な御世話が能う出来たぞよ。御礼には御都合の事じゃぞよ。九曜の紋を一つ殖やしたのは、神界に都合の在る事じゃぞよ。今は言はれぬ、此事成就いたしたら、御礼に結構にいたすぞよ。綾部世の本金神の大本と致すのじゃぞよ。 艮の金神はチト経綸が大きなから、此の方で世話に成らねば開けんのじゃぞよ。足立殿宜い徳が戴けるぞよ。腹を合して拡めて下されよ。老母や子供二人の事は、心配は致さいでも宜いぞよ。改心なされよ。我を出したならば、直に気附け致すぞよ。誰に由らず、慢心と我を出さぬやうに致して下されよ。慢心いたすと怪我が出来るから、宜く成りても慢心を致すで無いぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治32年旧12月17日 | 明治三十二年旧十二月十七日 国武彦命の筆先で在るぞよ。出口の守に書すぞよ。明治三十二年の十月の二十九日に、出口の守と申すやうに成りたのは、艮の金神が永らくの苦労いたして、三千年の経綸の出来が致したので在るから、誠に結構であるぞよ。艮の金神も国武彦命と御名を戴きて、是で表に成りたぞよ。出口の守に書すのは、直が書くのでないぞよ。ゝゝゝゝゝゝ。谷口熊吉心を曳きて見れば、今から慢心いたす如うな事では、斯広前は兎ても勤まらんから、谷口は京都で何なりと働かすが好いぞよ。大本へ来たとて日々此の内部が治まらんぞよ。口と心の違ふものは、チットの間も置く事は、誰に由らずならんぞよ。今直が申すと気に支えて居れども、この直に申さした事は違はんぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治33年旧1月7日 | 明治三十三年旧正月七日 国武彦命の筆先であるぞよ。出口直にかかした此の筆先は毛筋も違いは無いぞよ。艮の金神は出口の体内を借りて何事も前つ前つに書すから皆が筆先どほりに行い致して下さらんと、我の我情で行りたならばビクリとも出来ぬ様に致すぞよ。是までとは世が変るから、今までの事を申して我で行ろうと思ふたとても神の筆先どほりに致さねば、斯の金明霊学会は行かんぞよ。今では零落た出口に命す事で在るから、我の強き者や、人民界で利巧なものは却って神は使ひ難いから、綱は沢山に掛けて在れども、是から各自の守護神人民の身魂を調査るのは金明霊学会へ引寄して、モウ一度審判を致さんと真実の霊性は判らんぞよ。世界の事であるから、天で調査をいたしたなれども、真実を致して是だけ苦労を致して居りても、人民の眼には判るまいがな。艮の金神国常立之尊と元え戻りて、何事も昔の神代へ返すぞよ。大本の霊学会は世界中を水晶に致して、天地え御眼に掛ける大本で在るから、余程心を立直して下さらんと、金光どのも結構なれども跡の布教師が段々と慢心いたして今の体裁。金光どのの取次よ是から神が改めを致すぞよ。そぐり立るぞよ。艮の金神の筆先を永らく写して居りて斯神の事が分らぬ様な事では間に逢はんぞよ。何事も斯大本へ出て来ねば、上の御魂と中の御魂と下の御魂と、三段に分けて在れども、金明霊学で無ければ誠の因縁は判らんぞよ。艮の金神は誠を貫きた守護神人民には何程でも神徳は渡すなれど、誠のなき者には日参いたしたとても景場信心では誠の御蔭はないぞよ。何事ありても各自の心からであるから、神と出口を恨めて下さるなよ。神は世界を良くいたし度いので永らくの合戦を致して居るぞよ。 金光殿は三十余ケ年の苦労を成されて地の恩といふ事を世界へ知らして下さりた誠の御方であるが、金光どのの跡の取次に誠さえ在りたら艮の金神も茲までの苦労は致さいでもモチト早うに物事が成就いたして、世界の人民の苦みが軽く成るので在るぞよ。誰一人も土壷には落しとも無いと思へども、絶命に成りた故に、止むを得ずの事変が在りたとても神を恨めて下さるなよ。人民は皆神の児で在るから、成るだけは助けたいと思ふから、神が永らくの苦労をいたして居るぞよ。是迄の布教師も何の教会も皆が神を松魚節に致して居るから、金明霊学で何の教会も審判いたして取次をソグリ立るぞよ。神の取次から改心を致さんと信者は改心出来んぞよ。此の曇りた世を水晶の世に致さねば成らんから中々に骨が折れるぞよ。神の心もチト推量いたして下されよ。次ぎには出口の気苦労を推量いたして与りて下されよ。此の神の取次は男子では爰までの事が勤まらんぞよ。出口の守と神界から命令を戴きて居りても、是ほど控へて居るぞよ。この出口直と上田どのの因縁もこれから半季先になりたらば明白に分けて見せるぞよ。モウ暫時の気苦労であるから堪忍て下されよ。此の因縁が判りて来たならば、斯の中が結構になるぞよ。帰神も世話掛も信者も改心さえ出来たなれば、皆好く致してやるのであれど、肝心の取次が一寸も解らんから、神も誠に困るぞよ。皆の人民を良くしてやりたいと思ふて神が憑りて申しても、身魂がくもりて了ふて居るから一つも疑ふて誠にいたさんゆへ、物事が喰ひ違ふて思わくが何時も外づれるのじゃぞよ。何事も神の申すやうに致せばキチリキチリと箱差したやうに行くものを、肝心の神を床下へ落してをいて吾が我で行ろうと致すから、斯世は何事もおもふ様には行かんのじゃぞよ。今までは思ふやうに行かんが浮世と申すが、神世になりて神の誠の道さへ歩めばドンナ事でも神が守護いたしてやるから、人民の思ふたよりも良く物事が行き出すぞよ。艮の金神の大本は金明霊学と申して、世界から皆の守護神人民が日増に集りて来るぞよ。茲へ出て来て身魂を研かねば何事も成就いたさんやうに成るぞよ。三千世界の大橋であるから、此の大橋を渡りて、神の教に従わねば何事も出来いたさんぞよ。此の出口直は明治二十五年から何事も一切の事が神から聞かしてあるぞよ。それで出口直が申した事は違はんから、何時になりても出てくるぞよ。此の大本へは諸国の落ぶれ者が皆寄りて来るから、世界の守護神が憑りて参るから、審神者が沢山要るぞよ。審神者が見別けて、皆それぞれに助けて与りて下されよ。日本と世界との戦いに皆お活動があるのぢゃぞよ。世に落ちて居れる神まだまだ出て来るぞよ。仏の方も従ふて来るぞよ。国武彦命が大国常立尊と表はれたならば、世に落ちてお出ます神様、仏事、人民、畜類、鳥類、餓鬼、昆虫までも助ける神であるから、何神が憑りて参りても、審判者が親切に取り扱ふて与りて下されよ。世に永らくの間落ちて居りた神斗りが寄りて来る世界の大本であるから、神の品位といふものが無いから、其つもりで審神者を致して、神界の御用をいたす如うに骨を折りて下されよ。審神者が悪いと劣等い守護神が現はれるから、サニハが一番大事であるぞよ。 綾部の大本には出口直の大気違いが表はれて、化かして御用が致してあるから、見当は取れんなれど、モウ一人の大化物を引寄して、神界の御用を致さすから、そこへ成る迄に今の取次世話掛り確りいたさんと、後へよりて、指をくわへて見て居らんならんやうに成るぞよ。此の大化物は東から出て参るぞよ。永い化物であるぞよ。この大化物が表はれて来んと何も判らんぞよ。此の化物があらはれたならば結構が解りて来て、金明霊学が一度に開けるぞよ。それ迄に今の取次役員は誠が浅いから、大方逃げて帰りて了ふぞよ。それでは早うから心仰いたした功能が無いから、クドウ気を附けて居るぞよ。金明霊学を元にいたして置いて神を表はさねば、余所から御蔭を取りに来て、肝心の元がアフンと致すやうな事が出来するぞよ。この綾部には太古から神界の経綸があるので在るから、大本は堂しても綾部に致さな成らんのじゃぞよ。それに就ては此の大本に据はろうと思ふと、今から出て歩行く様な事では先になりたら…………。今出口に言はすと出口が肉体で申すように、上田も思ふて居るが、出口の申すことをチット聞いておかんと、足立どののやうになると可愛想なから、神から出口に気を附けさすのであるぞよ。上田は大本に依然して居るのが神業ぢゃぞよ。何なりと斯神の布教師を致すのは、修行なしには御用は聞けんぞよ。仕放題に致して居りては斯神の御用は辛いぞよ。上田どのは今までは仕放題にさしてありたぞよ。是からはチト窮屈になるぞよ。人の頭を致すものは今の如うな為放題に致して居りては、児が役に立んぞよ。此の大本の内部が規まりたら左程の気苦労も致さねども、今が大事の所じゃぞよ。出て歩行くやうな少さい経綸で無いぞよ。チョカつく様な事では此の大本の御用は勤まらんぞよ。艮の金神の教が拡まるだけ、世界は騒ぎ出すぞよ。何も訳も知らずに方々の新聞が悪く申して、体主霊従の行り方で邪魔を致すやうに成るから、其覚悟で胴を据えて居らんと、一寸の事に心配いたすと云ふ様な人民で在りたら、肝心の御用がつとめ上らんから、此の大本は世間から悪るく言はれて後で良くなる神界の経綸であるぞよ。斯の曇りた世の中の体主霊従の行り方の人民から、善良の教であると言はれたら、夫れが悪であるから、艮の金神の誠が開ける程悪く申されるが、夫れが結構であるぞよ。艮の金神は永らくの間悪神崇神と申して、三千年押込められ、蔭から斯世を潰さぬ様に、苦労艱難、悔しき残念を堪り詰めて来て、今度は時節参りて、天の大神様の御命令で、元の御用をさして戴く世になりたから、因縁ある出口直の身魂を御苦労に預りて居れば、今の曇りた世の人民から又た悪く申されて、反対いたされて、大変に邪魔になるなれど、其んな事に微躯つく様な艮の金神出口直では無いぞよ。細工は流々仕上りた所を見ぬと、今の人民の濁りた身魂では見当は取れんぞよ。何程世界の人民が悪るく申しても、新聞が反対いたしても、夫れで仆れるやうなチョツイ仕組は致しては無いぞよ。此の内部の行状さへ神の申すやうに、誠を尽して居りたなれば、ドンナ悪魔が攻めて来ても大丈夫であるぞよ。何よりも元の行り方は一番大事であるぞよ。段々静かに大本が落付く程、世界は騒がしく成るぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治33年旧5月20日 | 明治三十三年旧五月二十日 艮の金神国武彦命が出口の筆を借りて、何も前ツに知らせ置くぞよ。毛筋も違はぬ筆先ざぞよ。もう疑がひの雲が晴れ行きて、出口の心もチトは安まる世になるぞよ。誰一人肉体分るもの無き故に、出口の気苦労、チトは判る世になるぞよ。永らくの気苦労さしたが、今では身体の筋肉も動鳴りて居れど、此の大望な御用であるから気苦労致せども、神が指命して居るのであるから、何も別条無いから、御安心致して下ざされよ。永がらく海の底に住居いなされた竜宮の乙姫様、出口に御苦労になりて御守護遊ばすぞよ。出口に明治二十五年に申したが、時節参りたぞよ。これから世界は大悶雑があるぞよ。皆筆先に示してあるぞよ。実現来るぞよ。外国だいぶ厳しき事変あるぞよ。是が来るに依って、出口の手を借り、口を借りて知らしてあるぞよ。 此の内の大将が今から出て歩く如うな事では、この大本内紛筈ざ、もチト胴据えて下されよ。出口に言はしてある神言、毛筋も違がはん出て来るぞよ。是から出口に功名さして、出口と日の出の神とを基本に致して、世界の亀鑑に致す御方、御世継出口の胸の内を推量してやって下されよ。澄は実の子でないか。御世継と筆先に出てをるでないか。我が子の行状悪き故、出口の気苦労、澄殿行状代えて下されよ。大神業が初まりたら、此の艮の金神の大本は漸次と激しくなるぞよ。是から竜宮の乙姫様が御守護なさるぞよ。此の乙姫様の御守護遊ばす世になりたらば、世界大分混雑になるぞよ。是から出口が乙姫様に御願ひ申せば、早速御聞済なさるぞよ。 今度の戦大戦ざぞよ。一旦顔が青なるぞよ。小さい欲を思うて居ると、谷底に投られるぞよ。永らく出口に言はしたが、今ざ疑うて皆居るが、可哀相なものざ。言て遣りても悪く感得て真実に致さんし、余り世が曇りて居るので、何を言い聴しても真の暗黒ざ。何が眼の前に居りたとて、何も判らんのであるから、神の眼から見ると、可哀相でならんから、煩う申してやるのざぞよ。 今に世界の大望、今は外国であれど、日本の今に心配になるが、人民は足下に火が燃えて来ねば判らんのざなう。可真相なものざが何した無残ものに堕落て居るざ。是が神の分身分霊と申して、大和魂と言はれるか。此の世に成れば薩張り改心致さねば、斯様曇りた世の中を水晶の世に致して、神界に御目に掛ねばならんのざが、艮の金神大望な役ざぞよ。 それに就て出口の気苦労、肉体で誰一人知りた人なき故、日々の気苦労致すぞよ。近側に居る上田今力になってやらねば、手柄出来んぞよ其方は気苦労無しの取次じゃに依って差細事が辛いのざぞよ。此の中辛い様な事では、此大本の神事は、土に噛り付いても貫りて行くと云ふ大和魂で無いと、苦労能う忍んエライ、辛棒能う耐んと云ふ如うな量見では、モチト胴が据らんと、此の出口が日々気苦労で、恩惑の神力が渡されんと、物事遅くなるぞよ。今度の神業は大謨ざ。陽気浮気では駄目ぞよ。上田度々筆先に出してあろうがな。出口は是程気張りてをりても、後釜に坐る御世継となる人が、未だ胴の据わらん如な状実では手頼無いから、嫌なら嫌と言ふて下されよ。先々日も出口に口で申してあろうがな。大将に成るがよいか、乞食に堕落がよいかと言うて出してあるが、大将に綾部に坐りたら、崇められて結構であるが、最早慢心致して居ざるが、慢心は大怪我の原因ざ。用心なされよ。気を付けて置くぞよ今から慢心致すやうな量見では、到底間に合はんぞよ。足立がよい手本ざ。此の神の経綸潰したもの、誰に由らず、是から竜宮の乙姫様に御苦労になりて、何事も覿面の懲罰致すぞよ。足立よき鏡、この手本を鑑て居りて失敗たら死も生も出来ん如うに致して、見せ示に世界に鏡に出すぞよ。神、世に落ちて三千年余りての仕組、今潰した罪人は、誰に由らず今初まりであるから、懲罪厳しきぞよ。夫れが承知なら御好な様になされよ。所用に籍口て何時迄なりと滞在て来なされ。此の神敵に致すもの誰に由らず乙姫様御力を見せなさるぞよ。此度大神業で御手柄なさるは一等ざ。今迄変化て守護致した艮の金神、今度世に顕した海潮でないか。跡から筆先送りて貰う如うなことでは価値ないぞよ。人が大切に致せば、良い気になりて永居すると、神の位が下落るぞよ。モーツ改心なされよ。是が腹立つ如うなことでは、到底ドモならんぞよ。面白無くば人の口車に乗る如うな心では、此の神の御用奉仕不能ぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治33年旧8月8日 | 明治三十三年旧八月八日 艮の金神国武彦命と顕現て、出口の手で書き置くぞよ。 此の経綸は石橋架けて、アチラへ飛びコチラへ飛び、又金鉄の橋架けて、十分是で落ちんと言う如うに致して、根本の橋から充分動揺ん橋であるから、此の艮の金神の大本は世界の大橋であるぞよ。チットの経綸で無いぞよ。それで誰にも判らんのじゃ。是から神に徐々と解けて聞して御用さすぞよ。改心出来た神から御用さすぞよ。 神単独では出来んから、誠の人に憑依て、御用さすのじゃぞよ。斯様な経綸は他の教会には無い、太古から無き神事じゃに依って、人民が疑ふのじゃぞよ。 疑ふのは道理じゃ。人から見れば飯綱を使ふて居る如うなから、疑うても腹立てるで無いぞよ。 時節待ちたら判りて来るぞよ。開いた口が閉まらん如うな神業が出来て来るぞよ。 そうなりたら、わしもわれもと皆出て来て、モチト大切にして置くじゃったにと言うて、地団太踏んだとて、後の後悔は間に合はんようになるぞよ。 世界に大望始まりて盛んになるのと、変性男子、女子の因縁判るのと、世界と揃うて判るぞよ。 是が判りて来たなれば結構であるから、今の気苦労耐忍りて下さりたら、其の上は結構が判るぞよ。 今迄は悪人の世でありたぞよ。世が替はりて、悪が善へ立返るぞよ。 艮の金神は悪神、崇り神と申したが、今度変性男子、女子の因縁が判りて来たら、悪神でありたか、善神でありたかといふ事が判りて来て、開いた口が閉まらん如うな事が出来るのじゃぞよ。 竜宮の乙姫様の御宝は、是はなかなか滅多に因縁無くては手に入らんぞよ。是は因縁の有る事じゃぞよ。 此の宝が手に入らんと、此の世は自由にはならんのじゃぞよ。是も仕組みてあるのじゃぞよ。 此の経綸致した神と、日の出の神の働きを見せて遣りたら、如何な悪人でも改心致すぞよ。 大化物が現はれたら結構になるぞよ。 苦労すると申せども、神が索き廻して居るから、兵糧にも水にも不自由はさせんぞよ。 可哀相なは兵隊じゃ。神の道を守りて居る人は、兵隊の働きを察して、神に祈願を掛けてやりて下されよ。 世界には未だ大神業ある依って、心得て居るが良いぞよ。 今では神床下に居る同様であるから、何にも判らんであらうなれども、神顕現たら厳しくなるぞよ。 今から心得て居らんと、其の時になりてから、俄かに神を頼みても、平常に誠実が届いて居らんと、神聞き済みは無いぞよ。 悪き精神を持ちて居りて、神取次を恨らめても、我が身の腹の中を能う掃除致さんと、他人を悪い悪いと申して居ると、此の経綸判りて来たら恥かしき事、誰に由らず出来るぞよ。 誰に由らず綾部は世界の大神業終了たら良く成るから、良く成りてから種々と不足申して来て下さるなよ。 チットは慮見の違ふ御方も出来るであろう。神布教師を恨めなよ。腹が立つ程筆先に出して気が付けてあるぞよ。此の上不足言うもの誰に由らず、燈台下暗いぞよ。 今の人民皆悪党なぞよ。 余り此の世に運否運がある故、零落て居る人民気の毒なぞよ。 今の人民と言うもの、零落て居るものには、物も心好く言わん時節じゃが、今に世が変るぞよ。 今口糊して居ると言うて、慢心致して居るが、世は持切りには致させんぞよ。 上下へ転倒ぞよ。 皆神の分神分霊じゃぞよ。善良き身魂を落してあるぞよ。今、逆様に本復ぞよ。 体主霊従は永続かんぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治33年旧8月10日 | 明治三十三年旧八月十日 艮の金神国武彦命と表はれて、出口の手で書きおくぞよ。艮の金神は経綸が大きいから、皆の者の取り様が違ふて居るぞよ。この結構な筆先を、隠してでも持ちて居りたら、手柄が出来る、大将でも出来るやうに思ふて居るから、皆の役員に気を附けておくが、斯の神の仕組は、身魂に因縁がないと大将は出来んぞよ。モウ誰が何をたくみても、微躯とも出来んやうに致してあるぞよ。綾部の大本は今では粗末な大本じゃが、是でも今に結構が判りて来て、奪合に段々と来だすぞよ。この大本には誰の自由にも出来んやうに固い経綸が致してあるぞよ。今の役員は神の世話をして呉るので無い、皆我れの目的を立に来るもの斗りじやぞよ。それでは、思わくが皆外れるぞよ。神は人民に御蔭を与りたいが心充満であれども、誠の心が無き故に種々の災難が出来るのじゃぞよ。神や親の業のやうに申すなれど、世界の事は皆自分の心に移りて、其心だけの事が出来るのじゃぞよ。それで良き心を持てと神が申すのであるぞよ。不調法を為ておいて、親神を恨めたり、悪き事を企みて置いて、思わくに行かんと申して、親神に不足を申して来ても、そんな人民は、神の方から綱を切らねば仕様が無いぞよ。今綾部の大本は最初の大事の所で在るから、神の申し付けた事も聞かぬ役員は、綾部の大本は構はさん事に致さねば、肝腎の神の経綸の邪魔になりて、物事が遅れるから、、神界へ申し訳の無い事が出来て来るぞよ。今の役員余り心が小さいから、斯大望な二度目の岩戸開きの御用には間に合はんから、一時も早く心を持替へて、モチト大きい心に為らねば、いつ迄も判らんと、神界の御目に余りて居るぞよ。何んでも改心さして今度の御用に立てやりたいと思ふて神が心を砕けども、何時までもソンナ事に掛りて居る暇がないから、今に神の堪忍袋が破れると、世界に何事が在ろうやら判らんぞよ。此方も昔の神代から世に落ちて居りて、苦労を致した故、斯世は我では行かんと云ふ事が心底から判りたからクドウ言ひ聞かすのじゃ、悪きことは申さんぞよ。世界自由に致す神でさえも我で縮尻たのであるから、誰に由らず我で行くものなら行りて見よ。智慧や学で行くと思ふなら行りて見るが良いぞよ。スコタン斗りじや。跡戻り斗りで物事は成就すると云ふ事は無いぞよ。今の世界の人民は余り鼻高斗りで神も閉口じゃ、エライ御方斗りじゃなあ。この落ちぶれた出口直に斯んな事を書かせると、利巧な人の鼻高が一つ行って嬲りて遣うかと申して来るものも在るなれど、斯落ちぶれものが手本なしに書き放題に書いた事が皆実現来るのじゃぞよ。珍らしき事を為て見せて与るぞよ。斯んな経綸を利巧やら智慧学では判らんぞよ。足立殿エラソウに申して敵対ふて御座るが、斯仕組が判りて居りて敵たうて来るのか。京都の杉田も大分敵対うて居るが、神もモチイト改心を致して一心に願へば聞き済みあれど二度とは聞き済みは無いぞよ。杉田も今は鬼か邪神の心に化りて居るぞよ。それでは神の布教師とは申さんぞよ。杉田の行状は神の気勘に叶はん行り方、今の神の道の布教師は神を松魚節に致して、自分の目的を立るもの計りであるが、是からは一日増しに神の経綸を別けて見せて、布教師いたして居るもの皆審判いたして陶汰たてるぞよ。金光殿は誠に気の毒なものじゃ。永らくの御苦労を後の布教師が無駄に致して、教旨は結構なれど皆取次が慢心いたして、金光殿の教を守りて居るものは無いゆへ、段々と神の道が変りて来て、寄りて集りて教えを拵へて、全然ヤシの行り方、誠に金光殿へ気の毒であるから。出口直の手で筆先を出して、金光殿の方へ気を附けたなれど、皆取次が自分良しの行り方で在るから、一寸も聞き入れず、却って誠の艮の金神を今に悪く申すもの計りであるぞよ。 この経綸は昔の元から永らく掛りた大望な仕組であるから、予備は何程でも拵えて在るから、油断いたさんやうに気緩しはならん御道じゃぞよ。金光殿の布教師は金光殿より上無きやうに思ふて居るから、今度のアノ体裁、金光殿は取次だけじゃ、日本だけの教をいたす教祖じゃ。出口、上田は三千世界を、世の立替への御役であるぞよ。是から筆先に書して説いて聞かせば解りかけるぞよ。世界の本の真理と申すものは綾部の大本へ出て来ねば何も解らんぞよ。ドンナ豪い智者でも学者でも、斯大本へ出て来ねば実地の事は判らんぞよ。今は落ちぶれものに大望な御用が命してあるので誰も誠には致さねど、細工は流々仕上げを御覧うじ、吃驚さして改心をさすぞよ。敵対て居る人早う大本へ来て下され、待ちて居るぞよ。チトぼつぼつと出て来て下さらんと、蔭で敵対うて居りても、物事が遅くなるぞよ。斯大本は変性男子と変性女子とに世界の事を知らせるぞよ。化ケ物やら狂人やら解けの分らんやうに致してをいて、世界にある事を知らして遣るぞよ。チット量見の違う人も出来るで在ろう。余り我慾斗りを思ふて居ると一旦天地へ引上げに致すぞよ。神が日々手伝ふて、是だけ苦労をいたして、人形使ふ如くにして居りても何も分からん人民ばかり、此事を変性男子、女子の因縁を説いて聞かせば昔からの事が判りて改心が出来るぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治33年旧8月20日 | 明治三十三年旧八月二十日 艮の金神国武彦命が明治三十三年の八月二十日の筆先であるぞよ。地場が出来たら、永く係りて致した仕組であれど、もう是からは速いぞよ。神の方は何時でも出来るが、余り皆の気が小さうて困るぞよ。胴据えて下されよ。こんな大きな経綸でも最早時節が参りたぞよ。此の大本に立寄れば恐い如うに思うて、今では立寄らなならん人が寄りて来んが、今御神徳落そと拾はうと、今が大切の所じゃぞよ。今悪き事でも致す如うに思うて御神徳を落すと、拾うのは又難いから気を付けて置くが、元の御世話係り、もチト今の内に筆先、霊学を充分見て置かんと、真実の経綸が判らんぞよ。仕事の邪魔にならん様に、夜間になりとチトお出でなされよ。又跡で不足言はんならん事があると悪いから、一寸出口の手で気を付けて置くぞよ。神は、是程人民に悪く言はれても、気を付けるぞよ。親が子に云ふのと同一事じゃ。可愛から申すのじゃぞよ。出口の手で書置きた神言、皆出て来るぞよ。今の筆先前途の神業先繰り順に見て下されよ。順に皆出て来るぞよ。前に書す筆先じゃぞよ。今では判らんのと、御神徳失して居る人と、初発で金銭が入要のと、何も彼も一緒に重りて、誠の人は心配を致せども、もう暫時の間を忍耐て下されよ。又此の内部の紛擾が世界に出来るぞよ。某日大本に如斯出来事がありたと云ふ事を、附け留めて置いて下されよ。世界の鏡になる大本であるから、世界に実現事、雛型を演て見せるぞよ。世界の中枢とも成る所が未だ斯様な所であるから、誰も真実に致さねど、筆先に出た神言、皆実現来るぞよ。余り無理に開かうとすると、耐へ難き心配出来るぞよ。綾部の大本は淋むしきなれど、是でも見て居りて下されよ。御神徳判る程人が寄りて来るぞよ。余り無理な開き様致すと、大元の神の名迄汚すぞよ。南部殿結構な開き方致して、此の綾部は何も判らんから、如何様にでも出来る如うに思うて、早速から慢心致して何の態じゃ。金光殿の取次とは又違うぞよ。今大切の所じゃ。初発によい手本じゃ。皆心得て下されよ。初発に鏡が出るぞよ。我が心の実地が出ようがな。此の神は心丈けの事、心に神が映るから、我が心丈けの事より出来んぞよ。鐘を見て皆心得なされ。南部殿此の大本見て帰りなされと申したじゃないか。神の許さん事を致して神の名を汚し、皆に是丈け心配掛て、綾部は淋しきなれど、誠を貫かねばならんから、誠は手間が要るぞよ。骨が折れるぞよ。喉から血の出る極点まで、人の事に関係て苦労致すぞよ。せめては綾部には是丈け心配を懸ん様に致して貰はんと、今大切の時じゃぞよ。此の布教師は毎日申すが、噂血鳥じゃ。喉から血の出る所迄苦労致すぞよ。見て居る此の神も辛いぞよ。神も出口も上田も、有るに有られん気苦労、口では言はねど心の辛さ見て居る金神皆の心を推量して下されよ。人を助けるのは、如斯苦労致さなならん、この綾部は格別苦労致すのじゃぞよ。亀鑑になる大本であるから辛いのじゃ。暗黒の真の暗を水晶に致す根本を、今一時には無理であれども、天地へ御目に掛ねばならんから大望な神事じゃぞよ。艮の金神の経綸は、未だ神界にも御存知無き神業であるから、難しいのじゃぞよ。出口に五十日筆先書したら、神界にも判りかけて、和合出来る様になるから、左様なりたら偉大な仕組でありたと、人民にも改心が出来かけるぞよ。共時来たら、皆集りて来るぞよ。仕組てあるコトじや。皆心配致さんと居りて下されよ。今如何様に云ふて聞したとても、疑ひが未だ有るから、誠の人でも判らんから、暫時見て居りて下されよ。口で申しても真実に致さんぞよ。人民と云ふものは良き事でも疑ひが強いから、悪くより感得んから、神や取り次が苦労致すのじゃ。今が瀬戸じゃぞよ。判りかけたら速いぞよ。斯様な神業に人民が何程心配致したとても、人間力ではいかんから、神に一任して置くが良いぞよ。 今では綾部の町近在には、山師でも興して居るか、飯綱でも使ふて居るかと思ふて、種々様々と悪く申して居るから、是から解決て見せて遣るぞよ。二度目の世の立替と云ふ如うな大望な神業を、何にも知らん出口、上田に命して居れば、何ぞ悪き事致して居る如うに思ふて、種々様々と悪く申し、真実の神人を拵へては、速く分けて見せ度いと思ふて、種々様々と気を引きて見ても、何も判らんから、物事が遅く延引て、永く気苦労致さすぞよ。真実の世話して下さる人、大勢は要んが、もチト誠の人が無いと、綾部に仕組致してあるのであるから、根元の経綸はビックリとも致さねども、油断すると他所へ御神徳を持って去に相な事があるから、綾部の世話係り、余程確然致して居らんと、此の結構な事を他所に取られたら、詰らん事が出来るぞよ。此の神は判らん経綸を致して居るから、人民では判らねども、チットは此の神業判かりかけんと、万物の長とは申されんぞよ。鳥、畜類の方が優しじゃぞよ。九年同じ事を知らして居りても、未だ疑うて居る人許り、燈台下暗しと云ふ譬へはあれど、無残ものじゃのう。是では矢張鬼村じゃ。悪党村じゃ。筆先に出してある神言皆出て来るぞよ。神宮坪の内と申すのは、因縁ある事じゃ。夫れ知りて居る人あるか。其の因縁は知れよまい。其の因縁を筆先に書て示せたら、何程悪党な鬼村でも往生致すぞよ。まだ外にもあるなれど、此の筆先には載せんぞよ。 この村人を往生さしたら、世界一度に、もう徐々と世界に実現事を初て、皆に改心さしてやるぞよ。改心出来ん人は気の毒乍ら出直しをして貰はなならんぞよ。夫れが気の毒なから、煩う申すのじゃ。最早地場が出来たから、初めたら物事が速いぞよ。如毎日申す通り、艮の金神の大本に実現た事は、世界に実現ぞよ。皆現演て見せてあるのじゃぞよ。一度申したら同じコトじや。今の人民は、一度申して遣りても、呆然と致してをるから、同じ神言を書いて見せねばならんから、もう疑ひ晴らさんと、根本になる村じゃ。余りでないか。此の村神宮坪の内と申すのは因縁あることじゃ。人民では判らん神業であれども、一寸は判らんと、後でモ少大切に為て置くじゃったにと申して、地団駄踏んだとて、後の後悔は間に合はんぞよ。如何に村でもチト良き心を持たんといふと、如何な事が出来が致そやら判らんぞよ。人は一代名は末代、今度の神業は、万古末代名の残る事であるぞよ。世界の大元とも云ふ村を、結構な万古末代残る如うな経綸を他所に取られては、残念事が出来するぞよ。如斯結構な神言が判りたら、此の大本は取り払ひに致すから、変化して御用命して居れば、皆が軽侮りて、未に疑うて、セセラ笑らひ致して居るが、是程気を付けて居いたら、後で不足を申して下さるなよ。今の人民は、我身の為に良き事でありたら、眼も鼻も明かんでないか。此の結構な神事が判ろまい。神の致す神業は判ろまいがな。後の後悔は間に合はんぞよ。チト良き事為るには、余程苦労致さんと、良き事は出来んぞよ。此の艮の金神は、此の地場を致すには、余程苦労致したぞよ。其の御神徳に依りて、最早大丈夫じゃぞよ出口と引き添ふて、昔から苦労致した御蔭に依って、もう誰の自由にも出来んように致してあるぞよ。もう大丈夫じゃ。此所迄の苦労は、因縁ある身魂で無いと、普通の身魂では、此の永き苦労は誰も敢而貫行不能ぞよ。因縁ありて時節が到来りたら、如何な事でも出来るぞよ。夫れも此の金神で無いと、此の世は自由には、他の神では出来んのじゃぞよ。 此の金神と云う神は、世界を自由に致すと申すのは、肉体ありて、中界も守護するし山河でも自由自在に致すなり、又中空守護る活神も、守護神に連れて居るから、竜宮でも自由に致すぞよ。世界自由に致す神、余り変化て居れば、エライ事判らんから、分て見せて御神徳を与らねばならんから如斯に催促のじゃぞよ斯様な筆先は別に致して置かんと、出口を引き裂きに参るぞよ。影響は無が其様思ふ人が沢山あるぞよ[※「其(その)様(い)」は底本通り。]。今悪く申して居れども、是でも実地の経綸が判りて来たら、復出て来る人が出来るぞよ。物を知るなら先に知らんと、真実の御神徳は無いぞよ。後で知りては十人並じゃ。功名は成らんぞよ。今度の神業は引っ掛け戻しの仕組であるから、難しきのじゃぞよ。此の仕組で無いと、万古末代は永続かんから、判らん経綸がしてあるぞよ。余程胴の据りた真人でないと良い御神徳は取れんぞよ。結構な神人もあるぞよ気の毒な人もあるぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治33年閏8月2日 | 明治三十三年閏八月二日 昔から世界の事が、是だけ細かく解る所は無りたが、時節参りて霊学と云ふて、帰神で見え透く如うに成りたのじゃぞよ。艮の金神が世に落ちて居りて仕組たことじゃぞよ。世界に在る事は何で在ろうと、皆元は此ほうの経綸た事じゃが、斯んな仕組を相談してする如うな事では、世の立替は成就いたさんぞよ。斯う申すとエラサウに申す神じゃと思ふで在ろうなれど、このほうは力が有り過ぎて縮尻た神で在るから、何んな事でも致すぞよ。何程力のある神でも、そねまれたら辛い目を致さんならんから、○○○、人民は利巧にあれど、神の真似は出来んから、色々と慢心の出ぬやうに気を付けるのじゃぞよ。今迄は神憑と云ふ事が廃りて居りたので、神が路頭に立ちたなれど、時節参りて神の思ふ事が、人民の口を籍りて申される世が参りて、誠に神は満足で在るが、それに就いての苦労いたすのは、神ばかり有りたとて、人民に改心さして、上下も揃へて元の神代へ立帰る、守護いたしての、此の苦労を致したり、さしたり、神は先きは斯うなる、彼いふ事になると承知はして居れど、人民は先きの見えんものであるから、申してやりても誠に致さんから、結構な御蔭を取外して、ヂリヂリ舞ふても叶はん事が出来て来るから、明治二十五年から種々と申して気を付けたなれど、誰一人誠に致さなんだなれど、仕組の致して在る上田を引寄して、チト解りかけたので在るから、上田が参りてから、此の結構が判りたなり、出口が永らくの苦労の固まりであれど、今度の世の立替の神の力の取次じゃぞよ。出口直は婦人に化して在れど男子じゃ。上田は男子で女子であるぞよ。この因縁が解るぞよ。何事も前に書して在るぞよ。今度参るのも気が付いては居ろまいがな。皆其のとほり、前に書いて見せて在ろうがな。筆先を出しても、誰も何んにも腹へ這入りて居ろまいがな。それで筆先を見んと、此の元は何も解らんと申して在れど、化して居れば侮りて誠にいたさねど、眼の舞ふ人やら、フン延る人も出来ると申して在ろうがな。皆出て来るぞよ。神はげしく成るぞよ。出口安心いたされよ。何も先に見せて置くぞよ。出口に申して在る事は違はんぞよ。九人の写真を腹に持ちておじゃれよ。今迄は斯世に無き苦労人で在りたなれど、世界にある事が解るほど、出口が良くなるぞよ。是から解りかけて来るぞよ。悪は千里も走るなれど、善の判るのは中々に骨が折れるぞよ。是だけ結構な事を致して居りて、是だけに悪るく言はれて居るのも、是も因縁なり都合の事じゃ、是から判りて来るぞよ。昨年の十月に申して在らうがな。十月になりたらエライ悪く申したが、打って変りて結構な事で在りたと、云ふ如うに成ると申してあろうがな。是から敵対うて悪く申して居りたもの、段々と目が醒めるやうに、そろそろと見せて遣るぞよ。目醒ましも悪るい事に限らんぞよ。良き眼醒ましもあるぞよ。世界に在る事は綾部の大本から為て見せるが、此広間の中の事や神の祭りやうから、一切の事解りて居るか、皆見せて在るぞよ。神の祭りやうから、布教師の行為から、何も彼も見せて在れど分かろまい。是を分ける人が出て来んと、誠の事が出て来んなれど、今度因縁の在る四人の身魂が御苦労に成りたら解るぞよ。結構が分るから往て下されよ。金銀では行けん処じゃが、人民は金が無くては、一寸も前へ行けよまいがな。此神は金無しに何処までも連れ行くぞよ。世界の加賀美に成るのは、人の能うせん事を致し、又昔から無き珍しき苦労を致さねば、世界の鏡には成れんぞよ。綾部から何も為て見せるぞよ。世の立替の世の元に成る処であるから、手間が要りたのじゃぞよ。モウ解るが速いぞよ。 |