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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 22 神示の方舟 第二二章神示の方舟〔二二二〕 大江神は、小天国の神王として神人らより畏敬尊信され、その命令は遺憾なく実行された。 ここに蟹若を擢んでて左守となし、橙園王を抜擢し、右守に任じ、この一小区劃は実に天国楽土の出現したるがごとくであつた。 大江神は橙園山に登り、部下の神人を使役して真金を掘り出し、鋸、斧その他の金道具を製作した。そして橙園郷の果実の実らざる杉、檜、樟等の大木を伐採し、数多の方舟を造ることを教へた。 神人らは何の意たるかを知らず、ただ命のまにまに汗水を垂らして方舟の製作や金道具の製作に嬉々として従事した。神人の中には方舟の何用に充つべきかを左守に向つて尋ねた。されど左守は、 『果して何の用を為すものか、吾は神王に一言半句も伺ひたることなし。ただ吾々は神王の命に服従すれば可なり。吾らの安全を計りたまうて天上より降りきたれる神王なれば、無益のことを命じたまふべき謂れなし。汝らもただ命のまにまに服従して一意専心に方舟の製作に従事せば可なり』 といひ渡した。 凡て神のなす業は人間の窺知し得べき所にあらず。 『神は今の今までは何事も申さぬぞよ、人民はただ神の申すやうにいたせば、ちつとも落度はないぞよ』 と神諭に示されたるごとく、ただ吾々は下らぬ屁理屈をやめて、ただただ神命のまにまに活動すべきものである。 然るに人々の中には、根から葉まで、蕪から菜種まで詮索しなくては、神は信ぜられないとか、御用は出来ないとかいつて、利巧ぶるものが沢山にある。いかに才能ありとて、学力ありとて、洪大無辺の神の意思経綸の判るべきものではない。また神よりこれを詳しく人間に伝へむとしたまふとも、貪瞋痴の三毒に中てられたる体主霊従の人間の、到底首肯し得べきものでない。ただただ神の言葉を信じて身魂を研き、命ぜらるるままに神業に従事せばよい。 顕恩郷の神人らは衣食住の憂ひなく、心魂ともに質朴にして少しの猜疑心もなく、天真爛漫にして現代人のごとく小賢しき智慧も持つてゐなかつた。そのために従順に神の命に服従することを得たのである。聖書にも、 『神は強き者、賢き者に現はさずして、弱き者、愚なる者に誠を現はし給ふを感謝す』 とあるごとく、小なる人間の不徹底なる知識才学ほど禍なるはない。 かくして神人らの昼夜の丹精によつて、三百三十三艘の立派なる方舟は造りあがつた。さうしてこの舟には残らず果物を積み、または家畜や草木の種を満載された。 今まで平穏なりし顕恩郷の東北隅の山間に立てる棒岩は、俄に唸りを立てて前後左右に廻転し初めた。さうして鬼武彦の石像は、漸次天に向つて延長しだした。之を天の逆鉾と称へる。 猿のごとき容貌を具へたる種族と、蟹面の種族は互に手を携へて相親しみ、この逆鉾の下にいたつて果物の酒を供へ、祝詞を奏し、かつ顕恩郷の永遠無窮に安全ならむことを祈願した。このとき天の逆鉾に声あり云ふ。 『月に叢雲花には嵐天には風雨雷霆の変あり 地には地震洪水火災の難あり神人にはまた病魔の変あり 朝の紅顔夕の白骨有為転変は世の習ひ 淵瀬と変る世の中の神人心を弛めなよ 常磐堅磐に逆鉾の堅き心を立て徹し 天地の艱みきたるとも神にまかして驚くな 昨日にかはる今日の空定めなき世と覚悟して 月日と土と神の恩夢にも忘るることなかれ 惟神霊幸倍坐世惟神霊幸倍坐世』 と鳴りわたつたまま、逆鉾は遂に沈黙してしまつた。 神人らは異口同音に覚束なき言葉にて、 『かんたま、かんたま』 と唱へた。 天地は震動して、ここに地上の世界は大洪水となりし時、この郷の神人らは一柱も残らず、この舟に搭乗してヒマラヤ山に難を避け、二度目の人間の祖となつた。ゆゑにある人種はこの郷の神人の血統を受け、その容貌を今に髣髴として存してをる人種がある。 現代の生物学者や人類学者が、人間は猿の進化したものなりと称ふるも無理なき次第である。また蟹面の神人の子孫もいまに世界の各所に残存し、頭部短く面部平たきいはゆる土蜘蛛人種にその血統を留めてゐる。 (大正一一・一・九旧大正一〇・一二・一二井上留五郎録)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 23 神の御綱 第二三章神の御綱〔二二三〕 聖地ヱルサレムは常世彦、常世姫らの暴政の結果、天地の神明を怒らしめ、怪異続出して変災しきりにいたり、終にアーメニヤに、八王大神は部下の神々とともに逐電し、エデン城もまた焼尽し、竜宮城もまた祝融子に見舞はれ烏有に帰し、橄欖山の神殿は鳴動し、三重の金殿は際限もなく中空にむかつて延長し、上端において東西に一直線に延長して丁字形の金橋をなし、黄金橋もまた地底より動揺して虹のごとく上空に昇り、漸次稀薄となり、大空に於て遂にその影を没して了つた。 丁字形の金橋は、東より南、西、北と緩やかに廻転し始めた。さうして金橋の各部よりは、美はしき細き金色の霊線を所々に発生し、地球の上面に垂下すること恰も糸柳の枝のごとくであつた。さうして其の金色の霊線の終点には、金銀銅鉄鉛等の鈎が一々附着されてある。これを『神の御綱』ともいひ、または『救いの鈎』ともいふ。 言触神は遠近の区別なく山野都鄙を跋渉し、櫛風沐雨、心身を惜しまず天教山の神示を諸方に宣伝しはじめた。さうしてその宣伝に随喜渇仰して、日月の殊恩を感謝し、正道に帰順する神人には、おのおのその頭に『神』の字の記号を附けておいた。されど附けられた者も、附けられない反抗者も、これに気付くものは一柱もなかつた。 中空に金橋廻転し、金色の霊線の各所より放射するを見て、地上の神人は最初は之を怪しみ、天地大変動の神の警告として、心中不安恐怖の念に駆られて、天に向ひ、何者かの救ひを求むるごとく、合掌跪拝しつつあつた。しかるに日を重ね、月を越ゆるにつれて、これを少しも異しむものなく、あたかも日々太陽の東より出でて西に入るもののごとく、ただ普通の現象として之を蔑視し漸く心魂弛み、復び神を無視するの傾向を生じてきた。 このとき天道別命、天真道彦神、月照彦神、磐戸別神、足真彦神、祝部神、太田神その他の諸神は、昼夜間断なく予言警告を天下に宣布しつつあつた。 されどウラル彦の体主霊従的宣伝歌に、あまたの神人らは誑惑され、かつ大にこの歌を歓迎し、致る所の神人は山野都鄙の区別なく、 『呑めよ騒げよ一寸先や暗よ 暗の後には月が出る 時鳥声は聞けども姿は見せぬ 姿見せぬは魔か鬼か』 と盛んに謡ひ、酒色と色情の欲に駆られ、暴飲暴食、淫靡の風は四方を吹捲つた。 言触神の苦心惨憺して教化の結果、得たる神人の頭部に『神』の字の記号を附着されたる神人は、大空の金橋より落下する金色の霊線の末端なる『救ひの鈎』にかけられ、中空に舞上るもの、引揚らるるもの、日の数十となく現はれてきた。八百万の神人の中において、日に幾十柱の神人の救はれしは、あたかも九牛の一毛に如かざる数である。 この鈎にかかりたる神人は、上中下の身魂の中において、最も純粋にして、神より選ばれたものである。同じ引揚げらるる神人のなかにも、直立して『上げ面』をなし、傲然として頭を擡げ、鼻高々と大地を歩み、又は肩にて風をきる神人は、耳、鼻、顎、首、腕などを其の鈎に掛けられ、引揚げらるる途中に非常の苦しみを感じつつあるのが見えた。また俯向いて事業に勉励し、一意専心に神を信じ、下に目のつく神は、腰の帯にその鈎が掛つて少しの苦しみもなく、金橋の上に捲き上げられるのであつた。その他身体の各所を、地上の神人の行動に依つて掛けられ金橋の上に救ひ上げらるるその有様は、千差万別である。中には苦しみに堪へかねて、折角もう一息といふところにて顎がはづれ、耳ちぎれ、眼眩み、腕をれ、鼻まがりなどして、ふたたび地上に落下し、神徳に外れる者も沢山に現はれた。その中にも頭を低くし、下を憐れみ、俯向きて他の神人の下座に就き、せつせと神業をはげむものは、完全に天上の金橋に救ひ上げられた。 このとき天橋には、第二の銀色の橋、金橋とおなじく左右に延長し、また其の各所よりは銀色の霊線を地上に垂下し、末端の鈎にて『中の身魂』の神人を、漸次前のごとくにして救ひ上げるのを見た。 次には同じく銅色の橋左右に発生して、前のごとく東西に延長し、銅橋の各所より又もや銅色の霊線を地上に垂下し、その末端の鉤にて選まれたる地上の神人を、天橋の上に引揚ぐること以前のごとく、完全に上り得るもあり、中途に落下するもあり、せつかく掛けられし其の綱、其の鉤をはづして地上より遁去するもあつた。 [#図救ひの鈎] 図をもつて示せば、前図のとほりである。 (大正一一・一・一〇旧大正一〇・一二・一三外山豊二録)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 24 天の浮橋 第二四章天の浮橋〔二二四〕 竜宮城の三重の金殿より顕国玉の神威発揚して、あたかも両刃の剣を立てたるごとき黄金の柱中空に延長し、その末端より発生したる黄金橋はこの柱を中心に東西に延長し、その少しく下方よりは左右に銀橋を発生し、そのまた下方部よりは銅橋を発生して東西に延長し、地球の上面を覆うたことは前述の通りである。 そして各橋より垂下する金銀銅の霊線の鉤に身体をかけられ、上中下三段の身魂が各自身魂の因縁によつて金銀銅の橋上に救ひ上げられ、或は中途に地上に落下する有様を、訝かしげに眺めつつ見惚れてゐた瑞月の前に、銀色の霊線が下りきたり、その末端の鉤は腹部の帯に引掛るよと見るまに、眼も眩むばかりの速力にて空中に引きあげられた。あまりの恐ろしさに、思はず眼を閉ぢ口を塞ぎ、両手をもつて耳を塞ぎつつあつた。俄に、 『眼を開けよ』 といふ声が、頭上の方にあたつて聞えた。その声に思はず眼を開けば、遥の中空に捲揚げられ、自分は銀橋の上に立たされてゐた。銀橋の上には、ところどころに神人が引き揚げられてゐるのを見た。いづれも恐ろしげに緊張しきつた態度で、地上を瞰下してゐるのであつた。このとき吾頭上にあたつて、 『吾は国姫神なり、汝に今より小松林命といふ神名を与へむ。この綱にすがりて再び地上に降り、汝が両親兄弟朋友知己らに面会して天上の光景を物語り、悔い改めしめ、迷へる神人をして神の道につかしむべし』 と言葉終るとともに頭上より金線は下つてきた。そして国姫神の姿は声のみにて、拝することは出来なかつたのである。下りくる金色の霊線を両手に握るよとみるまに、ガラガラと釣瓶の車をまはすごとき音して地上に釣瓶落しに卸されて了つた。 降れば身は何ともいへぬひろびろとした原野に立つてゐた。ここには吾親らしきものも兄弟知己らしき人間もなく、ただ虎、狼、山狗、狐狸の群がところどころに散在してゐるのであつた。不思議にも是らの猛獣は白壁造りの庫を建てて、或は立派な門構へをなし、美しき広き家に住まつてゐるのである。どう考へても猛獣狐狸の棲むべき住家とは思はれなかつた。これはどうしても人間の住むべき家である。しかるに何ゆゑ、此のごとき獣類のみ住みをるやと、訝かりつつあつた。 このとき国姫神の声として、 『天上より此黒布を与へむ』 と云はるるかと見るまに、黒き布は風にヒラヒラとして吾前に下り来つた。手早くこれを持つて面部を覆うた。黒布を透してその猛獣狐狸の群をながむれば、あにはからむや、いづれも皆立派なる人間ばかりである。中には自分の親しく交はつてゐた朋友も混つてをるには、驚かざるを得なかつた。 それよりこの黒布を一瞬の間も離すことをせなかつた。そのゆゑは、此眼の障害物を一枚除けば、前述のごとく猛虎や狐狸の姿に変つて了ひ、実に恐ろしくてたまらなかつたからである。 さうかうする間、又もや天上より吾前に金色の霊線が下つてきた。以前のごとく吾腹帯に鈎は引かかつた。今度はその黒布を手ばやく懐中に入れ、両手を以て確と金色の霊線を掴みながら、前のごとく一瀉千里の勢にて上空に引き揚げられて了つた。 やや久しうして、 『眼を開けよ』 と叫びたまふ神の声が聞えた。眼を開けば今度は最高点の黄金橋の上に引き揚げられてゐたのである。まづ安心とあたりを見れば、国姫神は莞爾として四五の従神とともに吾前に現れ、 『この橋は黄金の大橋といひ、また天の浮橋ともいひ、地球の中心火球より金気昇騰して顕国の玉となり、この玉の威徳によりて国の御柱は中空に高く延長し、その頂上は左右に分れ、左は男神の渡るべき橋にして、右は女神の渡る橋なり、この黄金橋は滑にして、少しの油断あらば滑りて再び地に顛落し、滅亡を招くの危険あり。汝は抜身の中に立つごとく心を戒め、一足たりとも油断なく、眼を配り、耳を澄ませ、息を詰め、あらゆる心を配りてこの橋を東方に向つて渡れ。また此橋は東南西北に空中を旋回す、その旋回の度ごとに橋体震動し、橋上の神人は動もすれば跳飛ばさるる恐れあり、また時には暴風吹ききたつて橋上の神人を吹き落すことあり。欄干もなく、足溜りもなく、橋とはいへど黄金の丸木橋、渡るに難し、渡らねば神の柱となることを得ず、実に難きは神柱たるものの勤めなり』 と言葉嚴かに云ひ渡された。 王仁は唯々諾々として其教訓を拝し、東方に向つて覚束なき足下にて、一歩々々跣足のまま歩を進めた。 忽ち黄金橋は東より南に廻転を初めた。じつに危険身に迫るを覚え、殆ど顔色をなくして了つた。このとき何神の御声とも知れず、 『勇猛なれ、果断なれ、毅然として神命を敢行せよ。神は汝の背後にあり、夢恐るるな』 といふ声が耳朶を打つた。 王仁はこの声を聞くとともに、恐怖心も何も全部払拭され、光風霽月、心天一点の暗翳も留めざる思ひがした。 金橋はますます廻転を速め、東より南に、南より西へ、西より北へと中空をいと迅速に旋回し、また元の東に戻つた。 黄金橋の東端は、ある一つの高山に触れた。見れば是は世界の名山天教山の頂きであつた。このとき木花姫命を初め数多の神人は、吾姿を見て、 『ウローウロー』 と両手を挙げて叫び、歓迎の意を表された。 いつの間にか王仁の身は天教山の山頂に、神々とともに停立してゐた。金橋は何時のまにか東南隅に方向を変じてゐた。 時しも山上を吹き捲くる吹雪の寒さに、頬も鼻も千切れるばかりの痛みを感ずるとともに、烈風に吹かれて山上に倒れし其の途端に前額部を打ち、両眼より火光が飛び出したと思ふ一刹那、王仁の身は高熊山の岩窟に静坐し、前額部を岩角に打つてゐた。 (大正一一・一・一〇旧大正一〇・一二・一三井上留五郎録)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 26 艮坤の二霊 第二六章艮坤の二霊〔二二六〕 轟然たる大音響とともに突然爆発したる天教山の頂上より、天に向つて打ち上げられたる数多の星光は、世界の各地にそれぞれ落下した。 これは第四巻に示す地球の中軸なる大火球すなはち根底の国に落ちて、種々の艱難辛苦をなめたる各神の身魂の時を得て、野立彦命の神徳により地中の空洞(天の岩戸)を開き、天教山の噴火口に向つて爆発したのである。俗に地獄の釜の蓋が開くと云ふはこのことである。また『天の岩戸開き』と云ふのも、これらを指して云ふこともあるのである。 地上に散布せられたる星光は、多年の労苦に洗練されて天授の真霊魂に立替はり、ことに美はしき神人として地上に各自身魂相応の神徳を発揮することとなつた、これらの顛末を称して、 『三千世界一度に開く梅の花』 と謂ひ、また各身魂の美はしき神人と生れて、神業に参加するの状態を指して、 『開いて散りて実を結び、スの種子を養ふ』 といふのである。 かくして野立彦命は世の立替へ、立直しの先駆として、まづ世に落ちたる正しき神を一度に岩戸を開き、地獄の釜の蓋を開いて救ひたまひ、世界改造の神種と為し給うたる最も深遠なる御経綸である。 却説木花姫命は、月照彦神以下の諸神を随へ、天教山の中腹なる青木ケ原に下り着きたまうた。ここには彼の銀橋を渡りてきたれる神々の数多集ひて、山上を見上げながら、木花姫命を先頭にあまたの供神とともに下りきたるを見て、一斉に手を拍ち喊声をあげ、ウローウローと叫びつつ、踊り狂うて歓迎した。 神人は遥にこの光景を眺めて大に喜び、先を争うて青木ケ原に息せききつて上りきたり、上中下三段の身魂の神政成就の神柱の揃ひしことを喜び祝し、手に手に木の皮を以て造れる扇を開き、前後左右に手拍子、足拍子を揃へ、ウローウローと叫びながら踊り狂うた。その有様は、あたかも春の野に男蝶女蝶の翩翻として、菜の花に戯るごとくであつた。神々の一度に手を拍ち祝詞を奏上する声は、上は天を轟かし、下は地の万物を震動させた。 かくのごとく天教山にては、上中下の身魂の神柱は、各自部署を定めて地上の世界を救済のために宣伝者となつて巡回し、かつ先に地上に散布されたる身魂は、美はしき神人と出世して各地に現はれ、この宣伝者の教を聞いて随喜渇仰した。説く者と聞く者と意気合するときは、神の正しき教は身魂の奥に沁みわたるものである。あたかも磁石の鉄を吸ひよせるごとき密着の関係をつくることが出来る。これらを称して身魂の因縁といふ。 ゆゑにいかに尊き大神の慈言といへども、教理といへども、因縁なき身魂は、あたかも水と油のごとく反撥して、その効果は到底あがらない。後世印度に生れた釈迦の言に、 『縁なき衆生は度し難し』 と言つたのも、この理に拠るのである。ゆゑに大神に因縁あるものは、この浅深厚薄に拘はらず、どうしても一種微妙の神の縁の絲に繋がれて、その信仰を変ふることはできない。 神諭にも、 『綾部の大本は、昔から因縁ある身魂を引寄して、因縁相応の御用をさせるぞよ』 と神示されたのも、遠き神代の昔より、離るべからざる神縁の綱に縛られてをるからである。 『神が一旦綱をかけた因縁の身魂は、どうしても離さぬぞよ。神の申すことを背いて、何なりと致して見よれ。後戻りばかり致すぞよ』 との神示は、神の因縁の綱に繋がれてをるから、自由行動を取りつつ、一時は都合よく行くことあるも、九分九厘といふ所になつて、神よりその因縁の綱を引かるるときは、また元の大橋へ返らねばならぬやうになるものである。 これを神諭に、 『引つかけ戻しの仕組』 と示されてある。 さて木花姫命の宣示を奉じて、月照彦神、足真彦神、少彦名神、太田神、祝部神、弘子彦神その他の神々は、折から再び廻転しきたれる銀橋に打乗り、一旦中空を廻りながら、復び野立姫命の現はれたまへるヒマラヤ山に無事降下した。 ヒマラヤ山には、あまたの神人が夜を日についで、山の八合目以下の木を伐採し、大杭をあまた造り、頚槌を携へ地中にさかんに打込みつつあつた。月照彦神一行は、その何の意なるかを知らず、神人らに丁寧に一礼しながら、山上の野立姫命の神殿に向つて、隊伍粛々として参向したのである。 (大正一一・一・一〇旧大正一〇・一二・一三外山豊二録)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 29 神慮洪遠 第二九章神慮洪遠〔二二九〕 天道別命、月照彦神以下の宣伝神選定され、各地に配置されてより、今まで天空を廻転しゐたる金銀銅の天橋の光は、忽然として虹のごとく消え失せ、再び元の蒼天に復し、銀河を中心に大小無数の星は燦然たる光輝を放射し出した。 時しも東北の天にあたつて十六個の光芒強き大星一所に輝き始めた。その光色はあたかも黄金のごとくであつた。又もや西南の天にあたつて十六個の星光が一所に現はれた。その光色は純銀のごとくであつた。地上の神人は、この変異に対して或は五六七聖政の瑞祥と祝し、あるひは大地震の兆候となして怖れ、あるひは凶年の表徴となし、その観察は区々にして一定の判断を与ふるものがなかつた。 忽ちにして蒼天墨を流せしごとく暗黒となり、また忽ちにして満天血を流せしごとく真紅の色と変じ、あるひは灰色の天と化し、黄色と化し、時々刻々に雲の色の変り行く様は、実に無常迅速の感を地上の神人に与へたのである。地は又たちまち暴風吹き荒み、樹木を倒し、岩石を飛ばし、神人を傷つけ、妖気地上を鎖すと見るまに、たちまち光熱強き太陽は東西南北に現出し、暑熱はなはだしく、地上の草木、神人その他の動物はほとんど枯死せむとするかと思へば、寒風俄に吹き来り、雹を降らし、雷鳴満天に轟き、轟然たる音響は各所に起り、遠近の火山は爆発し、地震、海嘯ついで起り、不安の念にかられざるものはなかつた。 「かなはぬ時の神頼み」とでも云ふのか、今まで神を無視し、天地の恩を忘却しゐたる地上の神人は、天を仰いで合掌し、地に伏して歎願し、その窮状は実に名状すべからざる有様であつた。烈風の吹き通ふ音は、あたかも猛獣の咆哮するがごとく、浪の音は万雷の一斉に轟くがごとく、何時天地は崩壊せむも計り難き光景となつて来たのである。 かくのごとき天地の変態は、七十五日を要した。このとき地上の神人は、神を畏れて救ひを求むるものあれば、妻子、眷属、財産を失ひて神を呪ふものも現はれた。中には自暴自棄となり、ウラル彦神の作成したる宣伝歌を高唱し、 『呑めよ騒げよ一寸先や暗よ 暗の後には月が出る 月には村雲花には嵐 嵐過ぐれば春が来る ヨイトサ、ヨイトサ、ヨイトサノサツサ』 と焼糞になつて踊り狂ふ神は大多数に現はれた。 そもそも七十五日間の天災地妖のありしは、野立彦神、野立姫神を始め、日の大神、月の大神の地上神人の身魂を試したまふ御経綸であつたのである。このとき真の月日の恩を知り、大地の徳を感得したる誠の神人は、千中の一にも如かざる形勢であつた。 大国治立尊は、この光景を見て大に悲歎の涙にくれたまうた。 『アヽわが数十億年の艱難辛苦の結果成れる地上の世界は、かくも汚れかつ曇りたるか。如何にして此の地上を修祓し、払拭し、最初のわが理想たりし神国浄土に改造せむや』 と一夜悲歎の涙にくれ給うた。大神の吐息を吐き給ふ時は、その息は暴風となつて天地を吹きまくり、森羅万象を倒壊せしむるのである。大神の悲歎にくれ落涙し給ふ時は、たちまち強雨となりて地上に降りそそぎ、各地に氾濫の災害を来す事になるのである。 大神はこの惨状を見給ひて、泣くにも泣かれず、涙を体内に流し、吐息を体内にもらして、地上の災害を少しにても軽減ならしめむと、隠忍し給ふこと幾十万年の久しきに亘つたのである。大国治立尊の堪忍袋は、もはや吐息と涙もて充され、何時破裂して体外に勃発せむも計りがたき状態となつた。 されど至仁至愛の大神は、宇宙万有を憐れみ給ふ至情より、身の苦しさを抑へ、よく堪へ、よく忍び、もつて地上神人の根本的に革正するの時機を待たせ給ふのである。されど御腹の内に充ち満ちたる神の涙と慨歎の吐息は、もはや包むに由なく、少しの感激にも一時に勃発破裂の危機に瀕しつつあつた。アヽ宇宙の天地間は、実に危機一髪の境に時々刻々に迫りつつある。 大神は多年の忍耐に忍耐を重ね給ひしより、その御煩慮の息は、鼻口よりかすかに洩れて大彗星となり、無限の大宇宙間に放出されたのである。一息ごとに一個の大彗星となつて現はれ、瞬くうちに宇宙間に数十万の彗星は、宇宙の各所に現はれ、漸次その光は稀薄となつて宇宙に消滅した。 されどその邪気なる瓦斯体は、宇宙間に飛散し、遂には鬱積して大宇宙に妖邪の空気を充満し、一切の生物はその健康を害し、生命を知らず識らずの間に短縮する事となつた。ゆゑに古来の神人は、短くとも数千年の天寿を保ち、長きは数十万年の寿命を保ちしもの、漸次短縮して今は天地経綸の司宰者たる最高動物の人間さへも、僅かに百年の寿命を保し難き惨状を来すことになつた。 アヽ無量寿を保ち、無限に至治泰平を楽しむ五六七出現の聖代は、何時の日か来るであらう。吾人は霊界における大神の御神慮と、その仁恵を洞察し奉る時は、実に万斛の涙のただよふを感ぜざるを得ない。 神諭に、 『恋し恋しと松世は来いで、末法の世が来て門に立つ』 と述懐されたる大国治立尊の御聖慮を深く考へねばならぬ。 (大正一一・一・一一旧大正一〇・一二・一四外山豊二録)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 34 水魚の情交 第三四章水魚の情交〔二三四〕 天にも地にも只一つ、風光明媚の一つ島、類稀なる瑞祥の、光を照らす神々の、心の空も晴れ渡り、和気靄々として心天清朗一点の隔てもなく、各自に得物を携へて、諸神人は手を揃へ足曳の、山の尾上の山口の、神に願ひを掛けまくも、畏き神の御許しを、忝なみて千仭の、谷間に下り檣に、匹敵したる杉の大木を伐り倒し、檣に代へ艫を新に造り、乗り来し船に艤装して、いよいよ音に名高き一つ島、一つの松に名残を惜しみ、真帆を上げつつ悠々と、油を流せし波の上、船の動揺に円き波紋を描きながら、心も身をも打解けし、救の船の一蓮托生、修羅も地獄も波の上、水に流してをちこちの、話にふける面白さ、実にも目出度き高砂の、尉と姥とが現はれて、心の空の雲霧を、伊吹の狭霧に吹き払ひ、心の底の塵埃、雁爪や箒に掻き払ひたる、年の始めの春心地、和気靄々として西南指して欸乃面白く出帆したりける。 空には鴎の幾千羽、前後左右に飛び交ひて、一行の船を祝し見送るかと思はるるばかりの心地よき光景なりき。祝部神は真先に口の扉を捻ぢ上げた。そして船中の神人らに向ひ、 『見渡すところ、貴下らはいづれも由緒ありげの神人らしく思はる。何の目的あつてこの海を渡り給ふや』 と問ひかけたるに、神人の中に最も秀でて骨格たくましき男は、膝を立直し、 『実は吾々は小郷の酋長でありますが、先つ頃よりの天変地妖に対し、吾郷の神人たちの不安は一方ならず、東北の天に当つて烟火のごとき火光天に冲するかと見れば、大空には金銀銅色の三重の橋東西に架り、南北に廻転し、暴風吹き荒み、強雨頻に臻り、五風十雨の順を破り、雷鳴地震非時鳴動し、火山は爆発し、地上の神人色を失ひ、未来を憂慮すること言辞の尽す限りではありませぬ。加ふるに東北の天に当つて、此頃又もや十六個の光星現はれ、日を逐うてその星は金線のごとく地上に向つて延長し、そのうへ西南の天に当り銀色の十六個の星同じく現はれて、地上に日々接近しつつ、吾々神人に向つて何事か天地の神の暗示さるるごとき心地がしてならないのであります。それ故吾々は其星の地上に垂下するに先だち、西南に向つてその真相を確め、郷の神人をして覚悟する所あらしめむと欲し、酋長の役目として、はるばる西南に向つて進むのであります』 と首を傾けながら、物憂しげに語り始めた。酋長の言葉終るや否や、次席にひかへたる一柱の神人は、直にその後をつけて、 『なほも吾々として訝しきは、宵の明星何時の間にか東天に現はれて非常の異光を放ち、その星の周囲には種々の斑紋現はれ、地上の吾々は何事かの変兆ならむと心も心ならず、郷の神人に選ばれて吾もまた西南指して進むのであります。果して何の象徴でありませうか』 と云つて祝部神の顔をちよつと覗いた。 祝部神は膝立直し、諄々として説き始めた。 『この天地は決して地上神人の力によつて造られたものでは無い。大宇宙に唯一柱まします無限絶対無始無終の霊力体の三徳を完全に具有し給ふ天主、大国治立尊と云ふ絶対無限力の神様が、この広大無辺の大宇宙を創造されたのである。そしてこの宇宙には其身魂を別けて国治立尊と命名け、わが大地及び大空を守護せしめ給うたのである。しかるに世は追々と妖邪の気充ち、地上の神人は神恩を忘却し、体主霊従の悪風は上下に吹き荒び、かつ私利私欲に耽り、至善至美の地上を汚し、そのうへ大蛇と金狐と邪鬼の悪霊に左右されて、上位に立つ神人らは、遂に大慈大悲の国祖国治立尊を根底の国に神退ひに退ひ、暴虐無道の限りを尽した。それ故この宇宙には真の統率神なく、神人日夜に悪化して、修羅、餓鬼、地獄、畜生の世界と堕して了つた。それがために地は震ひ天は乱れ、天変地妖頻に臻る。世の災は是にて足らず、一大災害の今将に来らむとする象徴あり。それ故、吾々は慈愛深き野立彦命、野立姫命の神勅を奉じ、地上の神人を悔い改めしめ、この災害を救ひ、大難をして小難に見直し、聞直し、宣直さむと、八王の聖位を捨て、かくも見すぼらしき凡夫の姿と変じ、山野河海を跋渉して、救の道の宣伝を為すのである。諺に云ふ、袖振り合ふも他生の縁、躓く石も縁のはしとやら、今や同じ一つの船に身を托し、天来の福音を伝ふる吾も、これを聴く汝ら神人らも決して偶然にあらず、必ず深き大神の恵の綱に共に結ばれたるものなれば、吾一言を夢々聴き落す勿れ』 と云つて手を伸べて海水を掬ひ、唇を潤しながら座を頽した。 並ゐる神人らはいづれも緊張し切つた面色にて、首を傾げながら一言も聴き洩らすまじと耳を澄まして聞き入りにける。 (大正一一・一・一一旧大正一〇・一二・一四井上留五郎録)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 37 片輪車 第三七章片輪車〔二三七〕 烈風吹荒む埃及の野に現はれたる宣伝使の一行は、ここに東西に袂を別つた。月照彦神は東方を指して膝栗毛の音高く、風に逆らひつつ長髪を振り乱し、つひに樹木の陰に姿を没した。祝部神は杉高彦、祝彦をともなひ、ヱルサレムをさして宣伝歌をうたひつつ道を急いだ。 さしもの烈風も強雨もカラリと晴れて、草のそよぎも止つた。遥の前方より尾羽うち枯らし痩せ衰へたる女人の一柱は、松の大木を輪切にしたる車を曳きつつ北方に向つて進み来たる。よくよく見れば車の上には足なへと見えて一柱の男子が乗つて居る。ちようど箱根山をいざり勝五郎を車に乗せて初花の曳いて来るやうな光景その侭であつた。 女人は細き声を絞りながら、何事か歌ひつつ重たげに車を徐々と曳いて来る。 『雨の降る夜も風の夜も顕恩郷を出でてより 水瀬激しきエデン河夫婦手に手を取り交し 渡るこの世の浮瀬をば浮きつ沈みつ南岸に 着くや間もなく橙園郷猿に似たる人々に 手負ひの身をば追はれつつ深山の奥に分け入りて 星をいただき月を踏み猿の千声百声に 心を痛め胸くだきやつと遁れた鬼の口 大蛇の棲処も後にして天の恵みか地の恩か 暗きわが身は白雲の他所の見る目も憐れなる 夫婦の者は山奥に飢と寒さに戦ひつ 昨日の栄華に引換へて今日は朽木の成れの果 進むも知らず退くも知らぬ深山の谷深く 落ち行くわが身を果敢なみて涙の袖を絞りつつ 夫婦互に抱き合ひ泣いて明かせし暗の夜の 草の枕も幾度ぞ石に躓き足破り 破れ被れの二人連れ夫の病は日に夜に 痛み苦しみ堪へ難き思ひに沈む春日姫 憶へば昔モスコーの八王神の最愛の 娘と生れし身の冥加山より高く八千尋の 海より深き父母の恩親を忘れて常世往く 恋路の闇に迷ひつつ鷹住別の後を追ひ 艱難辛苦の其の果は常世の国の八王神 常世の彦や常世姫夫婦の神の慈み 身に沁み渡り幾年も常世の暗にさまよひし その天罰は目のあたり一度は神の御恵みに 顕恩郷に救はれて南天王の妻となり 諸神人の崇敬一身に集めて栄華を誇りたる 月雪花の夫婦連れ天地の道を踏み外し 横さの道に迷ひたるその身の果は恐ろしや 歩みもならぬ足なへの夫の身をば助けむと 因果は巡る小車のめぐり車の埃及に はげしく野分と戦ひつ秋の木の葉の木枯に 散り行くわが身の浅ましさ霜の剣を幾度か かよわき身魂に受けながらしのぎしのぎて今ここに 着くは着けども尽きざるはわが身の因果と過去の罪 積み重ねたる罪悪の重き荷物は何時の世か 科戸の風に払はめやつらつら空をながむれば 月日は昔のそのままに天津御空に輝きて 四方の木草を照らせども照らぬはわが身の不仕合せ 元の古巣へ帰らむと心は千々に砕けども いとしき夫のこの病たとへ日の神西天に 昇りますとも竜宮の海の底ひは干くとも 行末ながく誓ひてし恋しき夫神を捨てらりよか 生きて甲斐なきわが生命いのちの瀬戸の荒海に 身を投げ島田振りかかるわが身の末ぞ恐ろしき あゝ天地に世を救ふ神はまさずや在さずや あゝ天地に世を救ふ神はまさずや在さずや』 と哀れげに謡ひつつ、こなたに向つて進みくる。 祝部神はこの女性の姿を見て、倒けむばかりに驚いた。祝部神はものをも言はず、この窶れたる女性の面影をつくづくながめ、首を傾け何事か思案に暮るるものの如くであつた。女人は堪へ兼ねたやうに祝部神の袖に縋りつき、頬やつれたる顔を腹の臍の辺りにぴつたり付けながら涙を滝のごとく流し、歔り泣きさへ聞ゆる。 祝部神は痛々しき面色にて、女人の背を幾度となく撫で擦つた。女人は漸く顔を上げ、 『耻かしき今のわが身のありさま、思はぬ所にて御目にかかり、申し上ぐる言葉もなし。妾は貴下の知らるるごとく常世城に仕へ、常世会議の席上にて八島姫と共に、月雪花と謳はれしモスコーの八王道貫彦の長女春日姫にて候。貴下は忘れもせぬ天山の八王斎代彦にましまさずや』 と問ひかけた。 漂浪神は四辺を憚りながら、春日姫の口に手をあてた。春日姫はその意を悟り、 『これは失礼なことを申し上げました。妾は長の旅の疲れに精神衰へ眼くらみ、思はぬ粗忽無礼の段許されたし』 と素知らぬ態を装うた。祝部神は改めて、 『何れの女人か知らねども、貴下の御様子を見れば、凡人ならぬ神人の御胤と見受け奉る。吾は天教山にまします木花姫命の命に依り、世界の立替へ立直しに先立ち、地上の神人に向つて、遍く救ひの福音を宣伝する枝神なり。貴下の言はるる如き尊き素性の者に非ず』 と、態ととぼけ顔をする。祝部神は車上の神人を見て、 『やあ、貴下は』 と頓狂な声を張りあげ、 『何ゆゑ車に召さるるや、合点ゆかぬ』 と眼を丸くし口を尖らせ、鼻をこすりながら問ひかけた。 車上の男子は、さめざめと涙を漂はし、両手をもつて眼を覆ひ頭を垂れた。 アヽこの結果は如何になるであらうか。 (大正一一・一・一二旧大正一〇・一二・一五外山豊二録)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 40 紅葉山 第四〇章紅葉山〔二四〇〕 露の弾霜の劔を幾たびか、受けて血潮に染むる紅葉の、丹き心を照らしつつ、錦の機のこの経綸、織りなす糸の小田巻や、真木の柱のいと高く、高天原の神国に、築き上げむと神人の、四方に心を配りつつ、苦しき悩みを物とせず、沐雨櫛風数かさね、草の枕の悲しげに、天津御空の月星を、褥に着つつ進みくる。心も丹き紅葉山の、紅葉の大樹のその下に、腰うち掛けて宣伝の、神の姿の殊勝にも、彼方こなたの山の色、日々に褪せ行く有様を、見る目も憂しと青息や、吐息を月の大神に、祈る心の真澄空、忽ち吹きくる木枯しの、風に薄衣の身体を、慄はせながら又もや起つて出でて行く。行くはいづくぞモスコーの、都をさしてさし上る、東の山の端出る月の、影も円かなその身魂、月照彦の宣伝使、春日の姫の生れたる、道貫彦の神館、息急き切つて進みける。 折から降りしく村雨に、草鞋脚袢に身をかため、菅の小笠や草の蓑、この世の末をはかなみて、涙の雨の古布子、袖ふりあうも多生の縁、つまづく石も縁のはし。 走つて馳け来る三柱の神人は、この宣伝使の謡ふ宣伝歌に引きつけられ、たちまち前に現はれて、大地に頭を下げながら、 『貴下は地中海の西南岸にて御目にかかりし月照彦神にましまさずや、吾らはそのとき天地の神の懲戒を受け、道踏み外す躄の、旅に徜徉ふ折からに、天地も動ぐ言霊の、三千世界の梅の花、一度に開くと言挙げし、東を指して御姿を、隠したまひし現し神、吾らは御後を伏し拝み、その再会を待つほどに、天の時節の到来か、思はずここに廻り会ひ尊顔を拝するは、盲亀の浮木、浮木はまだおろか、枯木に花の咲きしが如く感きはまりて言の葉の、散り布く紅葉顔あからめて、耻を忍びつつ出で迎へ申したり。わが父道貫彦は幸にして今に健全に月日を送り候へど、素より頑迷不霊にして、天教山に現はれし神の教をうはの空、空吹く風と聞き流し、塞がる耳は木耳の、気苦労おほき吾らが夫婦、いかに教示を諭すとも、ただ一言も聞かばこそ、日に夜に荒ぶ酒の魔の、擒となりし両親の、心浅まし常暗の、岩戸を開き救はむと、朝な夕なに身を尽くし、心を竭し諫むれど、馬耳東風の浅ましさ、鳥は歌へど花は咲けども吾心、父の心を直さむと、暗路を辿る憐れさを、推し測られて一言の、教示を頼み奉る』 と涙と共に嘆願したりける。 モスコーの奥殿には、道貫彦あまたの侍者と共に、八尋殿において大酒宴の真最中である。神人らは一統に声を揃へて、 『飲めよ騒げよ一寸先や暗よ 暗のあとには月が出る 暗のあとには月が出る』 とさうざうしく謡ひ狂ふ声は、殿外に遠く響き渡りける。 たちまち道貫彦は顔色蒼白と変じ、座上に卒倒した。数多の神人の酔は一時に醒め、上を下への大騒ぎとなつた。道貫姫は大いに驚き、鷹住別は何処ぞ?春日姫……と、狂気の如くに叫び狂ふ。 神人らは二神司の所在を探さむと、鵜の目鷹の目になつて、城内くまなく駆け廻つた。されど何の影もない。 このとき城門外にどやどやと数多の神人の囁く声が聞えた。そして三柱の怪しき宣伝使は、涼しき声を張りあげて、 『飲めよ騒げよ一寸先や暗よ暗のあとには月が出る 月が出るとは何事ぞ月は月ぢやがまごつきよ 息つきばつたり力つき今に命もつきの空 空行く雲を眺むれば東や西や北南 酔うた揚句は息つきの道貫彦の憐れなる 最後を見るは眼のあたり冥加につきし今日の月 曇る心は烏羽玉の暗路を照す月照彦の 神の命の宣伝使月は御空に鷹住別や 長閑な春の春日姫命の瀬戸を救はむと 心一つの一つ島神の鎮まる一つ松 堅磐常磐の神の法法を違へし天罰の 報いは忽ちモスコーの道貫彦の身の果か 果しなき世に永らへて果なき夢を結びつつ 心の糸の縺れ合ひ乱れに乱れし奇魂 照れよ照れてれ朝日の如く澄めよ澄めすめ月照彦の 神の教に目を覚まし再び息を吹き返し 救ひの司と現はれよ救ひの司と現はれよ』 と門前に佇み、数多の神人に囲まれて大音声に呼ばはつてゐる。 この声は胸を刺すが如く道貫姫の耳に入つた。姫は従臣に命じ、三柱の神司を招いて奥殿に進ましめた。 三柱の神司は簑笠のまま遠慮会釈もなく奥殿に進み入り、又もや三千世界の宣伝歌を謡ひ、手を拍つて踊り始めた。 息も絶えだえに卒倒しゐたる道貫彦は、俄然として起ち上り、両手を拍ち踊り始めた。神人はあまりの不思議さに、アフンとして開いた口も塞がらなかつた。 三柱の神司は目配せしながら、身に纏へる簑笠を脱ぎ捨て、宴席の中央に三つ巴となつて鼎立した。見れば大八洲彦命初め鷹住別、春日姫の三柱である。 是よりさしも頑迷なりし道貫彦も前非を悔い、月照彦神の教示に従ひ、顕要の地位を捨てて、月照彦神の従者となり、天下救済のために諸方を遍歴する事となりたり。 (大正一一・一・一三旧大正一〇・一二・一六井上留五郎録)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 46 油断大敵 第四六章油断大敵〔二四六〕 アーメニヤの野に神都を開きたるウラル彦は大蛇の身魂の猛威を借り、ウラル姫は金狐の悪霊の使嗾によつて天下の神人を帰従せしめ、一時衰退に帰したる神政は日に月に降盛の域に達した。 世の終りに近づきしこの際、かくも勢力頓に加はるのは、恰も燈火の滅せむとする時その光却て強く輝きわたるやうなものである。 アーメニヤを中心として集まり来る数多の神々は、孰れも体主霊従の行動を取り、自由を鼓吹し天地の神明を無視し、利己一遍に傾き、ここに天地の律法は全たく破壊されて了つた。 ウラル彦は勢を得て、遂に氷炭相容れざる盤古神王をウラル山上より駆逐せむとし、暗夜に乗じて八方より短兵急に攻め寄た。 然るに盤古神王は天地の大恩を悟り律法を遵守し、敵の襲来に対して天運と諦め、少しも抵抗しなかつた。 元来ウラル彦は盤古神王の肉身の子なる常世彦の子にして、云はば神王の孫に当るのである。されど大蛇の霊に左右せられたるウラル彦は五倫五常の大道を忘却し、心神常暗となつて、遂に天位の欲に絡まれ、かくの如き悪逆無道の行為に出でたのである。実に邪神位恐ろしきものは世にないのである。如何に善良なる神と雖も、その心身に空隙または油断あるときは、たちまち邪霊襲来して非行を遂行せしめ、大罪を犯さしむるものである。 傀儡師胸にかけたる人形箱 鬼を出したり仏出したり 善になるも悪に復るも皆精神の持方一つにあるを思へば、精神位恐ろしきものはない。 ここに盤古神王は覚悟を定め、ウラル彦の蹂躙に一任し、無抵抗主義をとることとなり、天を拝し地を拝し、一切の結果を大神の命に一任し奉つた。 奥殿に賓客として留まり居たる宣伝使日の出神は、盤古神王を励まし、塩長姫および塩治姫と共に夜陰に紛れてウラルの深林に隠れ、辛うじて聖地ヱルサレムに難を逃れ、荒れ果たる聖地に形ばかりの仮殿を造り、ここに天地神明を祀り、世界の混乱鎮定の祈願に余念なかつた。 天上の星は常規を逸して運行し、地は絶えず震動して轟々たる音響を立て、空行く諸鳥は残らず地に落下し、日月は光褪せ、雨頻りに降り来つて諸川氾濫し、地上の神人は日夜塗炭の苦しみを嘗むるに至りぬ。 (大正一一・一・一四旧大正一〇・一二・一七井上留五郎録)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 47 改言改過 第四七章改言改過〔二四七〕 ウラル彦、ウラル姫は、一時地上の神界を意の如くに掌握し、権勢並ぶものなく、遂に盤古神王を排斥して自らその地位になほり、茲に盤古神王と自称するに致つた。 盤古神王は再び常世城を回復せむとし、数多の勇猛なる神人を引率し、大海を渡つて常世の国に攻寄せ、常世神王に向つて帰順を迫つた。常世神王を初め大鷹別は、その真の盤古に非ざることを看破し、一言の下に要求を拒絶し、俄に戦備を整へ防戦の用意に取りかかつた。 ここに両軍の戦端は最も猛烈に開始された。天震ひ地動ぎ、暴風怒濤百雷の一時に轟く如き惨澹たる修羅場と化し去つた。地上の神将神卒は、或は常世神王に或は盤古神王に随従して極力火花を散らして、各地に戦闘は開始された。 時しも連日の雨は益々激しく、暴風凄まじく、遂には太平洋の巨浪は陸地を舐め、遂に常世城は水中に没せむとするに到つた。茲において盤古神王は一先づその魔軍を引返して、ウラル山に帰らむとした。されど海浪高く暴風吹き荒みて、一歩も前進することが出来なかつたのである。さすが兇悪なる大蛇の身魂も金狐の邪霊も、これに対しては如何ともするの途がなかつた。 凡て邪神は、平安無事の時においては、その暴威を逞しうすれども、一朝天地神明の怒りによりて発生せる天変地妖の災禍に対しては、少しの抵抗力もなく、恰も竜の時を失ひて蠑螈、蚯蚓となり、土中または水中に身を潜むるごとき悲惨な境遇に落下するものである。これに反して至誠至実の善神は一難来る毎にその勇気を増し、つひに神力潮の如くに加はり来つて、回天動地の大活動を為すものである。 天は鳴動し、地は動揺激しく海嘯しきりに迫つて、今や常世城は水中に没せむとした。常世神王は大に驚き、天地を拝し天津祝詞を奏上し、東北の空高く天教山の方面に向ひ、 『三千世界の梅の花一度に開く兄の花の この世を救ふ生神は天教山に坐しますか あゝ有難や、尊しやこの世を教ふる生神は 地教の山に坐しますか御稜威は高き高照の 姫の命の神徳を仰がせたまへ常世国 常世の城は沈むとも水に溺れて死するとも 神の授けしこの身魂みたまばかりは永遠に 助けたまへよ天地の元津御神よ皇神よ』 と讃美歌を唱へた。忽ち中空に例の天橋現はれ、銀線の鈎、常世神王始め大鷹別その他の目覚めたる神々の身体の各所に触るるよと見るまに、諸神の身体は中空に釣り上げられてしまつた。 ウラル彦の魔軍は大半水に溺れて生命を落し、その余は有ゆる船に身を托し、あるいは鳥船に乗じ、ウラルの山頂目蒐けて生命からがら遁走した。 (大正一一・一・一四旧大正一〇・一二・一七外山豊二録)
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霊界物語 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 余白歌 余白歌 天地の初発之時ゆ祖々の御魂の因縁現はせる神世〈総説〉 うつ蝉の世を立直す柱木はあめの御柱くにの御柱〈総説〉 二柱やうやく立ちて千万のその副柱今も尋ねつ〈総説〉 自発的一つの小長ある人は衣食に不足つぐることなし〈第2章〉 くよくよと物事悔む暇あれば大小となく行ひてみよ〈第2章〉 天の下は皆ことごとく無欲者の自由所得の世界なりけり〈第3章〉 公のために争ふ人々は神の御眼より罪とはならじ〈第3章〉 使ふべき人や遺つると谷具久の狭渡るきはみわれは尋ねつ〈第6章〉 物事は注意をすれば人の世は過ち防ぐ大価とぞなる〈第6章〉 梓弓ひきてかへらぬ雄心は神代ながらの日本魂〈第9章〉 この度の神の経綸の深ければただ一柱知る神もなし〈第12章〉 天地の神の造りし人の身は髪一筋もままにはならじ〈第12章〉 皇神の依さし給ひし布教者と化りて世人を欺く曲神〈第13章〉 このたびの神の気吹のなかりせば四方の雲霧誰かはらはむ〈第13章〉 百口のへつらひ言葉聞くよりもただ一言の誠うれしき〈第14章〉 黄昏れて西に落ちたる日も月もやがて東の空に輝るらむ〈第15章〉 蟹が行く横さの道にふみ迷ふ世人のために身を砕くなり〈第15章〉 大本の大橋渡りまだ先へ行き詰りては後戻りする〈第16章〉 聞きたくば尋ね来れよ説明す人の心の信念力あるだけ〈第16章〉 近寄りし世の立替に先立ちて身魂を洗へ四方の神子たち〈第17章〉 久方の天のはしだて踏みしめて綾の高天へ昇れ神子たち〈第17章〉 葦原の八十の曲津見はらはむと中津御国の経綸なしつつ〈第18章〉 攻めきたる外国魂を一いきに言向け和平す神国の道〈第18章〉 先の世と聞いて心を許すなよ明日の日柄も先の世なれば〈第19章〉 大方の人の夢にも知らぬ間に説き諭すなり先の世の事〈第19章〉 立替が始まり来れば眼も鼻も口さへあかぬことのあるらむ〈第22章〉 天地の神の怒りの雄たけびにすべての曲は亡び失すなり〈第22章〉 この事を早く世人に知らさむとはやれど更に聞くものはなし〈第22章〉 醜魂を洗ひすまして神国の日本御魂を研き清めむ〈第23章〉 曲人の時を得るてふ闇の世は正しき人を爪はじきする〈第23章〉 争ひは小事に快く負けて大事に勝つが成功の鍵なり〈第24章〉 時来れば外国までも連れ行かむ万代までも名をあぐる為に〈第24章〉 世の中の人はたちまち驚かむかぎり知られぬ神の力に〈第24章〉 この経綸遂げ終せたる暁は神人ともに歓喜に充たむ〈第24章〉 疑の雲晴れ行きて世の人の心の空に月日照るなり〈第25章〉 世の本の誠の神が現はれて世人の知らぬことを教へつ〈第26章〉 常夜行く天の岩戸を開かむと思ひは胸に三千歳の今日〈第28章〉 天地に神の有る無し明らかに現はれ出づる時は来にけり〈第28章〉 天津御祖神の御言をかしこみて下津岩根に道をひらきし〈第28章〉 おしなべて世を救はむと皇神の神言かしこみ吾は出でけり〈第28章〉 曇りなき心の空に天津日の輝き渡る人は神なり〈第29章〉 まだしばしその日早しと何事も山の小言と聞き流しつつ〈第29章〉 立替の大峠までに神の子は心入れ替へよ最早暇なし〈第29章〉 神の世は隅々までも澄みわたり曲津の潜む隈もなきまで〈第34章〉 変りゆく時代の潮に逆らふは身をほろぼすの基なりけり〈第35章〉 神々の神言かしこみ言霊のその活用は歌となりけり〈第38章〉 時は今天地ひらく神代かも神のみいづの鳴りわたる時〈第38章〉 天津御祖神の怒りの強ければもうこの上は力及ばず〈第38章〉 天地の洗ひ替へより真先に人の心の洗ひ替へせむ〈第43章〉 大本へ集り来る人の数々を教へ諭して御柱とせむ〈第46章〉 益良夫は神国の宝女子は家の宝ぞ大切にせよ〈第46章〉 霊幸はふ神の教の深ければ浅き心の人には解らず〈第49章〉 黙々として成し遂げし大業は真に完全無欠なるべし〈第49章〉 心身は自己の自由と言ひながら神に依らずば真の自由なし〈第50章〉 愚かなる児に財産を遺すより世のため神と道とに貢げよ〈第50章〉 村肝の心は動きやすければ神の御綱によりて繋げよ〈第50章〉 神の心は凡夫の心凡夫の心は神心〈第50章〉[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました]
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 07 旭光照波 第七章旭光照波〔二五七〕 鬼大蛇虎狼や曲霊の醜女探女の訪ひは 峰の嵐か鬼城山落ちゆく滝のナイヤガラ 水音高き雄健びの中に落ち合ふ四柱は 神の御国を立てむとて鬼の棲家を竜館 荒ぶる神の訪ひも松吹く風と変る世の 汚れを流す河水に禊ぐ身魂ぞ麗しき 花の顔月の眉焦眉の急を救はむと 神の教への弥深き谷に落ち合ふ宣伝使 右に左に名残を惜しみ別れの涙拭ひつつ 東と西に立雲の雲路を分けて月照彦の 神の司や足真彦春立ち初めし春日姫 木々の梢は青々と綻び初めし春姫の 長閑けき胸も夢の間の儚なき別れ暁の 鐘の響きに撞き出され歩みも慣れぬ旅の空 岩根に躓き転びつつ何処をあてとも長の旅 常世の国の常闇の荒野さまよふ痛ましさ ここに四人の宣伝使神の御言を畏みて 各も各もが独り旅折角遇ひし四柱の 厳の司の生き別れくつろぐ暇もナイヤガラ 滝のごとくに流れ行く淋しき山野を辿りつつ 心の駒ははやれども疲れはてたる膝栗毛 歩みに難む姫御前の心の空はかき曇り 浪風荒き現世の救ひの船と現はれて 雲か霞か春日姫花の姿を曝しつつ 春とはいへどまだ寒き霜の晨や雪の空 月を頂き星を踏み天涯万里の果しなき 心淋しき独り旅草を褥に木葉を屋根に やうやう浜辺に着きにけり。 ここに四人の宣伝使がゆくりなくも、鬼城山の虎穴に入りて目出度く対面を遂げたるは、全く大神の経綸の糸に操られたるなるべし。四人の神司は仁慈の鞭を揮ひ、美山彦一派の邪悪を言向け和し、意気揚々として谷間を下り、音に名高きナイヤガラの大瀑布に禊を修し、ホツと一息つく間もなくなく涙の袖の生別れ、我が天職を重ンじて、東西南北に袂を別ちたるなり。総て大神の宣伝に従事するものは飽迄も同行者あるべからず。他人を杖につくやうな事にては、到底宣伝者の資格は無きものなり。山野河海を跋渉し、寒さと戦ひ、飢を忍び、あらゆる艱難辛苦を嘗め、吾が身魂を錬磨し、浮世の困苦を自ら嘗め、或は蛇の室屋に、或は蜂の室屋に出入して、神明の依さしたまへる天職を喜ンで尽すべきものなり。宣伝使に下したまへる裏の神諭に云ふ。 『汝ら神の福音を宣べ伝ふ時、前途に当つて深き谷間あり。後より、虎、狼、獅子などの猛獣襲ひ来り、汝を呑まむとする事あるも、少しも恐るる事なかれ。神を力に誠を杖に、寄せ来る悪魔を言向けやはせ。一人の旅とて恐るる勿れ、誠の神は誠ある汝を守り、汝の背後に付き添ひて太き功を立てさせむ。厳霊を元帥に、瑞霊を指揮官に直日の御魂を楯となし、荒魂の勇みを揮ひ、和魂の親みをもつて、大砲小砲となし、奇魂の覚りと、幸魂の愛を、砲弾または銃丸となし、よく忍びよく戦へ。神は汝と共にあり』 神人茲に合一して、神と人との真釣合、神の勅を身に受けて、いよいよ高天原を伊都能売魂の神の命、荒磯の浪も鎮まる長閑さよ。春日姫は尊き神の守護の下に、夜に日をついて北東へ北東へと進みつつ、常世国の東岸に現はれける。 天青く山清く、浪静かに紺碧の海面は大小無数の島嶼を浮べ、眼界遠く見わたす東の海面に金色の一字形の光は横に長く靉き、雲か浪かと疑ふばかり、その麗しきこと言語の尽す限りにあらず。ややありて浮び出でたるごとく、金色の太陽は浪を破り、雲を排し分け悠々と清き姿を現はしたまひ、その光は静かな海面をサーチライトのごとく照破して、金色の漣は広き海面に漂ふ。此方を目がけて純白の真帆を揚げ静かに寄せくる一艘の船あり。見れば紫の被面布をかけたる宣伝使は船の舳に直立し、白扇を高くさしあげて、何事か謡ひつつ船は岸辺に刻々と近寄り来たりぬ。 (大正一一・一・一七旧大正一〇・一二・二〇加藤明子録)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 09 埠頭の名残 第九章埠頭の名残〔二五九〕 鷹住別は、船底に長の旅に疲れ果て夢路を辿りつつありぬ。見渡す限り浪平かな海面に、船は順風に真帆を上げつつ、東を指して進みつつありしが、漸くにして無事東岸に着きにける。 日は西海の波に今や沈まむとする時しも、忽然として其処に、モスコーに在りしわが妻の春日姫が現はれ、 春日姫『恋しきわが夫よ』 と固く右の手を伸べて、わが右手を握りしめ俯むいて懐かしげに泣き入りにける。春日姫は、夫の後を慕ひはるばる海山を越え、艱難苦労して窶れ果てたる姿のまま何一言もいはず、涙を両眼に湛へて居るにぞ、鷹住別は心動き、春日姫の手をとり、最早わが宣伝も一通り行渡りたれば、恋しき妻と共にモスコーに帰らむと、春日姫に向ひて、 鷹住別『わが使命も最早済みたり。汝は女性のか弱き身として宣伝使となるは、少しく汝が身にとりては荷重し。いざ共にモスコーに帰り楽しき夢を貪らむ』 といふ折しも、ガラガラと錨を下す音に驚き夢は破れける。 見れば船は常世の国の東岸に安着しゐたりぬ。 鷹住別は夢より覚め、太き息を吐きながら、とつおいつ故郷の空を振りかへり、呆然として空行く雲を仰ぎ視ながら、 鷹住別『アヽあの雲はわが故郷の空より流れきたるか。思へば思へば恋しき故郷の空よ』 と両手を組み、船底深く思ひに沈む。時しも何人の声とも知らず、 声『天に代りし宣伝使。心ゆるめな、錨を下すな。浮世の荒浪に向つて突進せよ』 といふ声雷のごとくに響きけるにぞ、鷹住別は直ちにわが身の薄志弱行を、天地にむかつて号泣し、かつ謝罪し、それより鷹住別は常世の国を足に任せて横断する事となりにける。 ○ 松風わたる森林の巌に腰打ちかけて、ヒソヒソ語る男女二人の宣伝使ありき。 女(春日姫)『貴下は噂に高き聖地ヱルサレムの天使神国別命にましまさずや。しかるに今日のみすぼらしき御姿は何事ぞ。浮世の常とは言ひながら、御心労察し参らす』 と涙片手に優しき唇を開きければ、 男神(弘子彦)『われは貴下の推量に違はず、歌にて申上げたるごとく、昔はヱルサレムの聖地において時めき渡る神国別命、国祖国治立の大神の御隠退に先だち、万寿山に世を隠び、遂には天教山に救はれ斯くも尊き宣伝使となり、名も弘子彦と改め、心も軽き身の扮装、萎るる花もまた逢ふ春の梅の花、一度に開く嬉しき神世を松の世の、五六七神政の宣伝使、われは却つて今日の境遇に満足するものなり』 と聞くより、女はやや耻し気に、 春日姫『アヽ実に尊き御志かな。妾が夫鷹住別も身魂も清き月照の神に救はれ、天地の道理を悟り、世の終末に近づける神人の悩みを救はむと、モスコーを後に、妾を残して何処をあてともなく宣伝に出掛け玉ひぬ。妾も女の身の夫の艱難辛苦を坐視するに忍びむやと、雲深き館を棄てて世の荒浪と戦ひつつ、此処まで来りしものの、何となく心淋しき一人旅、案じ煩ふ折柄に、アヽ勇ましき貴司の御姿を拝し、枯木に花の咲き出でしごとく悦びに堪へず。アヽわが夫鷹住別は、いづこの空にさまよひたまふか。女心の未練にも、雨の朝雪の夕、夫の身の上を思ひ出で、思はぬ袖に降る時雨、日蔭の姿のこの旅路、一目会ひたく思へども、この世を思ふ真心の、尊き墻に隔てられ、今に一目も淡雪の、春日に溶くる思ひ、果敢なき春日姫の成れの果て御覧あれ』 と流石優しき女性の、涙の雨の一雫、落つるを隠して、笑顔をつくる愛らしさ、他所の見る目も哀れなり。 弘子彦はたちまち、春日姫が朝な夕なに、夫を慕ふ真心にほだされて地教の山に隠れたる竜世姫の身の上を思ひ浮べ、又もや忍び涙に暮れにける。このとき船守は大声に、 船守『オーイ、オーイ、今船が出るぞ。早く乗らぬと乗り後れるぞ。吾妻の国への船出ぢや』 と呼はる。 この声聞くより男女二人は、何時まで話すも限りなし、名残はつきじと、われとわが心を励まし、スツクと立ち上り、春日姫は埠頭へ、弘子彦は西方指して姿を没しける。二人の宣伝使は互に見返り振かへり、尽きぬ涙の一時雨、憫れなりける次第なり。 (大正一一・一・一七旧大正一〇・一二・二〇外山豊二録)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 12 起死回生 第一二章起死回生〔二六二〕 久方の天と地との大道を、解き分け進む宣伝使、世は烏羽玉の闇の世を、洽ねく照らす日の出の守、深山の奥に分け入りて、神の御旨を伝へ来る、月日も長き長白の、山分け進む神司の、雄々しき姿今ここに、三つの身魂のめぐり逢ひ、深き縁の谷の底、底ひも知らぬ皇神の、恵みの舟に棹さして、大海原や川の瀬を、渡る浮世の神柱。 ゆくりなくも、ここに一男二女の宣伝使は邂逅したりける。春日姫は苦しき息の下よりも幽な声をふり絞り、 春日姫『貴下は大恩深き南天王の日の出の守にましますか。みじめなところを御目にかけ、御耻かしく存じます』 と言葉終ると共に、息も絶え絶えに又もや打伏しにける。日の出の守は両眼に涙をたたへ、黙然として春日姫を打ち眺めつつありしが、ツと立ち上り、傍の叢を彼方こなたと逍遥しながら、二種の草の葉を求めきたり、両手の掌に揉み潰し、雫のしたたる葉薬を春日姫の疵所にあて介抱したりける。 これは各地の高山によく発生する山薊と、山芹にして、起死回生の神薬は、これを以て作らるるといふ。日本では伊吹山に今に発生し居るものなり。 見るみる春日姫は、熱さめ痛みとまり腫れは退き、たちまちにして元の身体に復し、さも愉快気に笑顔の扉開きける。ここに三人は歓喜極まつて、神恩の厚きに落涙したり。 日の出の守はおもむろに春日姫に向ひ、 日の出の守『貴女は顕恩郷の南天王として夫婦睦じく住まはせ給ふならむと思ひきや、思ひがけなき宣伝使のこの姿。変り易きは浮世の習ひとは言ひながら、何ンとして斯かる深山にさまよひ給ふぞ。また鷹住別は如何はしけむ、その消息を聞かまほし』 と訝かしげに問ひけるに、春日姫は一別以来の身の消息を、こまごまと物語り、かつ世の終末に近づけるを坐視するに忍びず、身命を神に捧げて、歩みも馴れぬ宣伝使の苦しき旅路の詳細を物語りけるに、日の出の守は言葉を改めて、 日の出の守『至仁至愛の神心を奉戴し、世を救ふべく都を出でての艱難辛苦お察し申す。さりながら、女たるものは家を治むるをもつて第一の務めとなす。汝が夫鷹住別の宣伝使として浪路はるかに出でませし後のモスコーは、年老いたる両親の御心のほども察しやらねばなりますまい。貴女はすみやかにモスコーに帰り、父母に孝養を尽し、神を祈りて、夫の帰省を心静かに待たせたまへ』 と勧むるにぞ、春姫はその語に次いで、 春姫『隙間の風にもあてられぬ貴き女性の御身の上として、案内も知らぬ海山越えて、神のためとは言ひながら、御いたはしき姫の御姿、一日も早くモスコーに帰らせたまへ。妾は今よりモスコーに汝が命を送り届け参らせむ』 と真心面に表はして、涙と共に諫めけるにぞ、春日姫は首を左右に振り、 春日姫『二司の妾をかばひたまふその御心は、何時の世にかは忘れ申さむ。されど一旦思ひ定めた宣伝使、たとへ屍を山野に曝し、虎狼の餌食となるとも、初心を枉ぐる事のいとぞ苦しければ』 と二司の諫めを拒みて動く色見えざりければ、日の出の守も春姫も、巌を射抜く春日姫の固き決心に感歎し、三人の司は相携へて長白山を下り、東、西、南の三方に宣伝歌を謡ひつつ袂を別ちたりける。 (大正一一・一・一七旧大正一〇・一二・二〇嵯峨根民蔵録) (第一一章~一二章昭和一〇・一・二八於筑紫別院王仁校正)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 16 大洪水(二) 第一六章大洪水(二)〔二六六〕 世は焼劫に瀕せるか、酷熱の太陽数個一時に現はれて、地上に熱を放射し、大地の氷山を溶解したる水は大地中心の凹部なる地球に向つて流れ集まり、地球は冷水刻々に増加して、さしもに高き山の尾上も次第々々に影を没するに至りける。 このとき星はその位置を変じ、太陽は前後左右に動揺し、地は激動して形容し難き大音響に充されたりぬ。太陽は黒雲に包まれ、地上は暗黒と変じ、咫尺を弁ぜざる光景とはなりぬ。 彼の竜宮城に在りし三重の金殿は、中空に際限もなく延長して、金銀銅色の天橋を成し、各自天橋よりは金銀銅色の霊線を垂下し、その端の救ひの鉤をもつて、正しき神人を橋上に引き揚げ始めたり。 天橋の上には蟻の群がる如く、数多の神人が救ひ上げられ、天橋は再び回転を開始したり。東西に延長せる天橋は、南に西に北に東と中空を廻り、天教山、地教山その他数ケ所の高山の巓に、救はれたる神人を送り、またもや憂瀬に沈み苦しめる正しき神人を救ひの鈎を以て次第々々に天橋の上に引き揚げ玉ひける。 このとき天教山の宣伝使は、何時の間にか黄金橋の上に立ち、金色の霊線を泥海に投げ、漂流する正しき神人を引き揚げつつあり。而して天橋に神人の充満するを待ちて、またもや天橋は起重機のごとく東南西北に転回し、その身魂相当の高山に運ばれゆくなり。神諭に、 『誠の者は、さあ今と云ふ所になりたら、神が見届けてあるから、たとひ泥海の中でも摘み上げてやるぞよ』 と示されあるを、想ひ出さしめらるるなり。 救ひ上げられたる中にも、鬼の眼にも見落しとも云ふべきか、或は宣伝使の深き経綸ありての事か、さしも悪逆無道なりしウラル彦、ウラル姫も銅橋の上に救ひ上げられたり。而して常世神王始め盤古神王もまた金橋の上に救はれて居たりける。 ウラル彦はアルタイ山に運ばれ、その他の神人も多くここに下されたり。この山は大小無数の蟻、山頂に堆く積り居たりけるが、凡て蟻は洪水を前知し、山上に真先に避難したりしなり。 ウラル彦神は蟻の山に運ばれ、全身蟻に包まれ、身体の各所を鋭き針にて突き破られ、非常の苦悶に堪へかねて少しく山を下り、泥水の中に全身を浸し見たるに、蟻は一生懸命に喰ひ着きて、苦痛はますます激しく、またもや蟻の山へと這ひ上りゆけり。 蚊取別の禿頭も此処に居たるが、この時ばかりはその禿頭は全部毛が生えたるごとく見えたりき。全く蟻が集りたる結果なりける。 このアルタイ山に運ばれた神人は、極悪の神人ばかりにして、極善の神人は天教、地教両山に、極悪者はアルタイ山に救はれたりける。 平素利己主義を持し、甘い汁を吸うた悪者共は、全身残らず甘くなつてをると見えて、蟻が喜びて集るに反して、世界のために苦き経験を嘗めたる神人は、身体苦く、一匹も蟻は集り得ざるなり。裏の神諭に、 『甘いものには蟻がたかる(有難)。苦いものには蟻がたからぬ(不有難)』 と書いてあるのは、この物語の光景を洩らされしものなるべし。嗚呼地上の世界は今後何れに行くか心許なき次第なり。 (大正一一・一・一八旧大正一〇・一二・二一井上留五郎録)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 19 祓戸四柱 第一九章祓戸四柱〔二六九〕 日の神国を知食す神伊弉諾の大神は 撞の御柱大御神神伊弉冊の大神と 天と地との中空の黄金の橋に現はれて 天の瓊矛をさしおろし高皇産霊大御神 神皇産霊大神の神勅畏み泥海を 許袁呂許袁呂と掻き鳴して矛の先より滴れる 淤能碁呂島を胞衣となし神国を造り固めむと 二仁の妻に手を曳かれ黄金の橋を渡会の 天教山に下り立ちて木の花姫と語らひつ 常磐堅磐の松の世を千代万代に築かむと 月の世界を知食す神伊弉冊の大御神 日の神国の主宰なる撞の御神と諸共に 雪より清き玉柱見立て玉ひて目出度くも 月雪花の神祭り一度に開く木の花の 三十三相に身を変じ五十六億七千万 長き月日を松の世のミロクの御代を建てむとて まづ淡島を生み玉ひ伊予の二名や筑紫島 豊葦原の中津国雄島雌島や壱岐対馬 佐渡や淡路の島々に生みなしたまふ国魂や 山川木草の守り神各自各自に任け玉ひ 治まる御代を三柱の撞の御柱大御神 天の御柱大御神国の御柱大御神 この三柱の大神は国祖の神の宣り玉ふ 天に坐します御三柱実にも尊き有難き 古き神代の物語聞くぞ目出度き今日の春 百の草木に魁て匂ひ出でたる白梅の 雪より清き其の香り一度に開く常磐木の 常磐の松の茂りたる実にも尊き神の国 須弥仙山に腰をかけ守り玉ひし野立彦 野立の姫の二柱顕幽二界修理固成し 根底の国を固めむと天教山の噴火口 神の出口や入口と定めて茲に火の御国 岩より固き真心は猛火の中も何のその 火にも焼かれぬ水さへに溺れぬ身魂は鳴戸灘 根底の国に到りまし浮瀬に落ちて苦しめる 数多の身魂を救はむと無限地獄の苦しみを 我身一つに引き受けて三千年の昔より 耐へ耐へし溜め涙晴れて嬉しき神の世の その礎と現れませる神の出口の物語 鬼の来るてふ節分や四方の陽気も立つ春の 撒く煎豆に咲く花の来る時節ぞ尊けれ。 天地の大変動により、大地は南西に傾斜し、其のため大空の大気に変動を起し、数多の神人が、唯一の武器として使用したる天磐樟船、鳥船も、宇宙の震動のため何の効力もなさざりき。その時もつとも役立ちしは神示の方舟のみにして、金銀銅の三橋より垂下する救ひの綱と、琴平別が亀と化して、泥海を泳ぎ、正しき神人を高山に運びて救助したるのみなりける。 天上よりこの光景を眺めたる、大国治立命の左守神なる高皇産霊神、右守神なる神皇産霊神は、我が精霊たる撞の大御神、神伊弉諾の大神、神伊弉冊の大神に天の瓊矛を授け黄金橋なる天の浮橋に立たしめ玉ひて、海月の如く漂ひ騒ぐ滄溟を、潮許袁呂許袁呂に掻き鳴し玉ひ、日の大神の気吹によりて、宇宙に清鮮の息を起し、地上一切を乾燥し玉ひ、総ての汚穢塵埃を払ひ退けしめ玉ひぬ。この息よりなりませる神を伊吹戸主神と云ふ。 而して地上一面に泥に塗れたる草木の衣を脱がしめむため風を起し、風に雨を添へて清めたまひぬ。この水火より現はれたまへる神を速秋津比売神と云ふ。再び山々の間に河川を通じ、一切の汚物を神退ひに退ひ給ふ。この御息を瀬織津比売神と云ふ。瀬織津比売神は、地上の各地より大海原に、総ての汚れを持ち去り、之を地底の国に持佐須良比失ふ、この御息を速佐須良比売神と云ふ。以上四柱の神を祓戸神と称し、宇宙一切の新陳代謝の神界の大機関となしたまふ。この機関によつて、太陽、大地、太陰、列星、及び人類動植物に至るまで完全に呼吸し、且つ新陳代謝の機能全く完備して、各其の生活を完全ならしめ給へり。この神業を九山八海の火燃輝のアオウエイの、緒所(臍)の青木原に御禊祓ひたまふと云ふなり。 因に九山八海の火燃輝のアオウエイの御禊の神事については、言霊学上甚深微妙の意味あれども、これは後日閑を得て詳説する事となすべし。 (大正一一・一・二〇旧大正一〇・一二・二三加藤明子録)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 20 善悪不測 第二〇章善悪不測〔二七〇〕 国祖国治立命、豊国姫命の二柱は、千座の置戸を負ひて、根の国、底の国に御退隠遊ばす事となり、大慈大悲の御心は、神界、現界の当に来らむとする大惨害を座視するに忍びず、暫らく天教山および地教山に身を隠び、野立彦神、野立姫神と改名し、神、現二界の前途を見定め、 『ここに撞の御柱の神、天の御柱の神、国の御柱の神の降臨ありて、修理固成の神業も稍その緒に就きたれば、われは是より進みて幽界を修理固成し、万の身魂を天国に救はむ』 と、夫婦二神相携へて、さしも烈しき天教山の噴火口に身を投じ、大地中心の火球界なる根底の国に落行き給ひ、野立姫命は、これより別れて、その西南隅なる地汐の世界に入らせ給ひける。 至仁至愛至誠至実の身魂は、いかなる烈火の中も、その身魂を害ふこと無く、いかなる濁流に漂ふも、その身魂は汚れ溺るること無きは、全く『誠の力は世を救ふ』の宣伝歌の実証なり。その身魂の偉大にして無限の力あるときは、心中一切の混濁溟濛なる貪瞋痴の悪毒なければ、悪心ここに消滅して、烈火も亦清涼の風となるなり。 野立彦神、野立姫神は、さしも烈しき噴火口を、初秋の涼風に吹かるるがごとき心地して、悠々として根底の国に赴かせ給ひぬ。たとへば蚤や、蚊や、虱のごとき小虫は、『敷島』の煙草の吸殻にも、その全身を焼かれて、苦悶すと雖も、野良男は其の同じ煙草の吸殻を掌に載せて継ぎ替へながら、手の甲の熱さを少しも感ぜざるが如し。三歳の童子に五貫目の荷物を負はしむれば、非常に苦しむと雖も、壮年の男子は之を指先にて何の苦もなく取扱ふがごとく、すべての辛苦艱難なるものは、自己の身魂の強弱に因るものなり。罪深き人間の火中に投ずるや、限りなき苦しみに悶えながら、その身を毀り遂には焼かれて灰となるに至る。されど巨大なる動物ありて人を焼く可き其の火も片足の爪の端にて踏み消し、何の感じも無きがごとく、神格偉大にして、神徳無辺なる淤能碁呂島の御本体ともいふべき野立彦神、野立姫神においては、我が身の一端ともいふべき天教山の烈火の中に投じ給ふは、易々たるの業なるべし。 智慧暗く、力弱き人間は、どうしても偉大なる神の救ひを求めねば、到底自力を以て吾が身の犯せる身魂の罪を償ふことは不可能なり。故に人は唯、神を信じ、神に随ひ成可く善を行ひ、悪を退け以て天地経綸の司宰者たるべき本分を尽すべきなり。西哲の言にいふ、 『神は自ら助くるものを助く』 と。然り。されど蓋は有限的にして、人間たるもの到底絶対的に身魂の永遠的幸福を生み出すことは不可能なり。人は一つの善事を為さむとすれば、必ずやそれに倍するの悪事を不知不識為しつつあるなり。故に人生には絶対的の善も無ければ、また絶対的の悪も無し。善中悪あり、悪中善あり、水中火あり、火中水あり、陰中陽あり、陽中陰あり、陰陽善悪相混じ、美醜明暗相交はりて、宇宙の一切は完成するものなり。故に或一派の宗派の唱ふる如き善悪の真の区別は、人間は愚、神と雖も之を正確に判別し給ふことは出来ざるべし。 如何とならば神は万物を造り給ふに際し、霊力体の三大元を以て之を創造し給ふ。霊とは善にして、体とは悪なり。而して霊体より発生する力は、これ善悪混淆なり。之を宇宙の力といひ、又は神力と称し、神の威徳と云ふ。故に善悪不二にして、美醜一如たるは、宇宙の真相なり。 重く濁れるものは地となり、軽く清きものは天となる。然るに大空のみにては、一切の万物発育するの場所なく、また大地のみにては、正神の空気を吸収すること能はず、天地合体、陰陽相和して、宇宙一切は永遠に保持さるるなり。また善悪は時、所、位によりて善も悪となり、悪もまた善となることあり。実に善悪の標準は複雑にして、容易に人心小智の判知すべき限りにあらず。故に善悪の審判は、宇宙の大元霊たる大神のみ、其の権限を有し給ひ、吾人はすべての善悪を審判するの資格は絶対無きものなり。 妄に人を審判は、大神の職権を侵すものにして、僣越の限りと言ふべし。 唯々人は吾が身の悪を改め、善に遷ることのみを考へ、決して他人の審判を為す可き資格の無きものなることを考ふべきなり。 吾を愛するもの必ずしも善人に非ず、吾を苦しむるもの必ずしも悪人ならずとせば、唯々吾人は、善悪愛憎の外に超然として、惟神の道を遵奉するより外無しと知るべし。 アヽ惟神霊幸倍坐世。 録者いはく、『虚偽と虚飾の生活に囚はれたる現代人士は、此の一節に躓くの虞あれば特に熟読玩味することを要す』 (大正一一・一・二〇旧大正一〇・一二・二三外山豊二録) (第一三章~第二〇章昭和一〇・二・九於那智丸船中王仁校正)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 21 真木柱 第二一章真木柱〔二七一〕 伊弉諾大神の又の御名を、天の御柱の神といひ、伊弉冊大神の又の御名を、国の御柱の神といひ、天照大神の又の御名を、撞の御柱の神といふ。 この三柱の神は、天教山の青木ケ原に出でまして、撞の御柱の神を真木柱とし、八尋殿を見立て給ひて、天津神祖の大神を祭り、月照彦神を斎主とし、足真彦、少名彦[※校正本では「少彦」]、弘子彦、高照姫、真澄姫、言霊姫、竜世姫、祝部、岩戸別その他諸々の神人たちを集へて、天津祝詞の太祝詞を詔らせ給へば、久方の天津御空も、大海原に漂ふ葦原の瑞穂の国も、清く明く澄み渡りて、祓戸四柱の神の千々の身魂の活力に復び美はしき神の御国は建てられたるなり。 ここに伊弉諾神は撞の御柱を中に置き、左より此の御柱を行き廻り給ひ、伊弉冊神は右より廻り合ひ給ひて、ここに天地を造り固めなし給ひ、国生み、島生み、神生み、人生み、山河百の草木の神を生み成し給ふ善言美詞を謡はせ給ひける。その御歌、 伊弉諾神『限り無く果てしも知らぬ大空のその大空の本津空 天津御空の果てのはて九山八海の火燃輝のアオウエイの アオウエイの五柱カサタナハマヤラワ この九つの御柱の父と母との言霊に 鳴り出る息はキシチニヒミイリヰ クスツヌフムユルウケセテネヘメエレヱ コソトノホモヨロヲこれに続いて ガゴグゲギザゾズゼジ ダドヅデヂバボブベビ パポプペピ七十五声生みなして 果てしも知らぬ天地を造り給ひし大御祖 国治立の大神の左守の神と在れませる 其の霊主体従の霊高き高皇産霊の大御神 瑞の身魂の本津神神皇産霊の大神の 御息は凝りて天の原大海原を永遠に 搗き固めたる神の代と寄し給へる高天原の 神の祖の詔畏み仕へまつりつつ 常磐堅磐につき立てし撞の御柱左より い行きて廻りさむらへば照る日の影も明らかに 月の光もさやさやに輝き渡る青木原 大海原も諸共に清く治まる神の国 清く治まる神の国好哉えー神の国 あなにやしえー神の園』 と謡ひながら、撞の御柱を左より廻り始め給ひける。 このとき撞の御柱を右よりい行き廻りて、茲に二柱神は、双方より出会給ひ、国の御柱の神は、男神の美はしき、雄々しき御姿をながめ給ひて喜びに堪へず御歌を詠ませ給ひぬ。その御歌、 『久方の天津空より天降りまし黄金の橋のその上に 月と撞との二柱二神のつまに手をひかれ 天の浮橋度会の月雪花の神祭り 斎ひ治めて伊弉諾の神の命は畏くも 撞の御柱行き廻りめぐりめぐりて今ここに 嬉しき君に相生の千代万代も動きなく 松の神代の礎を築き固めたる宮柱 うつしき神代を五六七の世仁愛三会の鐘の音も 鳴り響きたる青木原御腹の胞衣は美はしく 生ひ立ち侍り天の下山川木草もろもろの 人を生みまし鳥獣昆虫魚に至るまで 天津御空の星の如生みふやします其の稜威 見れども飽かぬ御姿の清きは真澄の鏡かな 清きは真澄の鏡かも月日と光をあらそひて 月日の神と生れませる神の御霊やあなにやし 愛ー男や、愛ー男斯る芽出度き夫神の 天をば翔り地駆けり何処の果を求むとも 求め得ざらめあら尊天の御柱夫神の 雄々しき姿あなにやし愛ー男や、おとこやと 今日の祭りに嬉しくも善言美詞ほぎ奉る 七十五声鈴の音もすべて芽出度き天の原 皇御国と鳴り響く皇御国と鳴り響く 一二三四五六七八九十百千万の神嘉言 一二三四五六七八九十百千万の神嘉言 百代も千代も変らずに百代も千代も変らずに 汝と吾とは天地の鏡とならめ永遠に 神祖とならめ永遠に』 と祝し給ひて、淡島を生ませ給ひぬ。この淡島は少名彦神、国魂神として任けられたまひぬ。されどこの島は御子の数に入らず、少名彦神は野立彦神の御跡を慕ひて、幽界の探険に発足さるる事とはなりける。 (大正一一・一・二〇旧大正一〇・一二・二三外山豊二録) (第二一章昭和一〇・二・一〇於勝浦支部王仁校正)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 22 神業無辺 第二二章神業無辺〔二七二〕 爰に天の御柱の神は、女神の宣言を喜び給はず、いたく怒り給ひて、歌もて其の怒りを洩らさせ給ひぬ。其御歌、 『天津御神の御言もて天の柱となり出でし 吾は高天原を知らすべき神のよさしの神司 雲井に高き朝日子の光りも清き神御魂 汝は国土知らすべき豊葦原の神つかさ 天と地とはおのづから高き低きのけじめあり 重き軽きのちがひあり天は上なり地は下よ 男子は天よ女は地よ天は下りて地は上 此逆さまの神業は本津御神の御心に いたく違へるひが事ぞ天は上なり地は下 男子は上ぞ女は下ぞ天と地とを取違ひ 上と下とを誤りていかでか清き御子生まむ いかでか清き国生まむ再び元に立帰り 天津御神にさかしらのこの罪科を詫び了へて 再び神のみことのり祈願奉り御柱を 改め廻り言霊を宣りかへしなむいざさらば いざいざさらば汝が命』 と稍不満の態にて、男神は元の処に帰り給ひけるに、女神も其理義明白なる神言にたいし、返す言葉もなく再び元の処に、唯々諾々として復帰し給ひたり。 その時成り出でましたる嶋は、前述のごとく淡嶋なりき。淡嶋は現今の太平洋の中心に出現したる嶋なるが、此天地逆転の神業によつて、其根底は弛み、遂に漂流して南端に流れ、地理家の所謂南極の不毛の嶋となりにける。 而て此の淡嶋の国魂として、言霊別命の再来なる少名彦命は手足を下すに由なく、遂に蛭子の神となりて繊弱き葦舟に乗り、常世の国に永く留まり、その半分の身魂は根の国に落ち行き、幽界の救済に奉仕されたるなり。 この因縁によりて、後世猶太の国に救世主となりて現はれ、撞の御柱の廻り合ひの過ちの因縁によりて、十字架の惨苦を嘗め、万民の贖罪主となりにける。 ここに諾冊二尊は再び天津神の御許に舞上り、大神の神勅を請ひ給ひぬ。大神は男神の宣言のごとく、天地顛倒の言霊を改め、過ちを再びせざる様厳命されたり。 ここに二神は改言改過の実を表はし、再び撞の御柱を中に置き、男神は左より、女神は右より、い行き廻りて互ひに相逢ふ時、男神先づ御歌をよませ給ひける。其御歌、 『浮世の泥を清めむと天津御神の御言もて 高天原に架け渡す黄金の橋を打ち渡り おのころ嶋におり立ちて八尋の殿をいや堅に 上つ岩根につき固め底つ岩根につきならし うましき御世を三つ栗の中に立てたる御柱は つくしの日向の立花や音に名高き高天原の あはぎが原に聳え立つ天と地との真釣り合ひ 月雪花の神まつり済ませてここに二柱 汝は右へ吾は左左は夫右は妻 めぐりめぐりて今ここに清き御国を生みの親 神伊邪那美の大神の清き姿は白梅の 一度に開く如くなり嗚呼うるはしき姫神よ 嗚呼うるはしき顔容よ汝が命のましまさば たとひ朝日は西の空月は東の大空に 現はれ出づる世ありとも夫婦が心は相生の 栄え久しき松の世を常磐堅磐に立てむこと いと安らけし平けしいざいざさらばいざさらば 天津御神の御言もて国の安国生みならし 島の八十嶋つき固め百の神達草木まで 蓬莱の春のうまし世に開くも尊き木の花の 咲耶の姫の常永に鎮まり居ます富士の峰 空行く雲もはばかりて月日もかくす此の山に 稜威も高き宮柱撞の御柱右左 めぐる浮世の浮橋はこの世を渡す救け船 救けの船の汝が命見れども飽かぬ汝が姿 阿那邇夜志愛袁登女阿那邇夜志愛袁登女 夫婦手に手をとりかはし天と地との御柱の 主宰の神を生みなさむ主宰の神を生みなさむ 浦安国の心安くみたまも光る紫の 雲のとばりを押分けて輝きわたる日の光 月の輝きさやさやにいやさやさやに又さやに 治まる両刃の剣刃の天の瓊矛の尖よりも 滴り落つる淤能碁呂の嶋こそ実にも尊けれ 嶋こそ実にも尊けれ』 と讃美の歌を唱へられたりける。 (大正一一・一・二〇旧大正一〇・一二・二三井上留五郎録) (第二二章昭和一〇・二・一二於木の本支部王仁校正)
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霊界物語 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 23 諸教同根 第二三章諸教同根〔二七三〕 ここに伊弉冊命は返り歌詠まし給ひぬ。其の歌、 『天と地とはおのづから正しき清き秩序あり 汝が命の宣言月日のごとく明らかに 輝きわたり村肝の吾が心根もさやさやと 冴えわたりたる嬉しさよ天にも地にも只一つ 力と頼む汝が命杖ともたけとも柱とも たよるは汝が御魂一つ心の清き赤玉は 魂の緒清く冴えわたり吾の御霊は月雪の 色にも擬ふ白玉の天と地との真釣りあひ 尊き御代に相生の松の神世の基礎を 天より高く搗き固め地の底まで搗き凝らし 天と地とは睦び合ひ力を協せ村肝の 心一つに御子生まむみたま清めて国生まむ 世は紫陽花の七かはり如何に天地変るとも 汝と吾との其の仲は千代も八千代も変らまじ 栄えみろくの御代までも栄えみろくの御代までも 尽きせぬ縁は天伝ふ月に誓ひて大空の 星の如くに御子生まむ生めよ生め生め地の上に 仰げば高し久方の天津日影にいやまして 永久に栄ゆる汝がみたま阿那邇夜志愛袁登古 阿那邇夜志愛袁登古男女の睦びあひ 八尋の殿にさし籠り天津御祖の皇神の みたまを永久に斎くべし御魂を永久に斎くべし』 と声も涼しく歌ひ給ふ。 是より二神は撞の御柱を、左右より隈なく廻り給ひて、青木ケ原の真中に立てる八尋殿に立帰り、息を休め給ひける。 ここに月照彦神、足真彦、弘子彦、祝部、岩戸別の諸神人は、野立彦神、野立姫神の御跡を慕ひて神界現界の地上の神業を終へ、大地の中心地点たる火球の世界、即ち根の国底の国に出でまして、幽界の諸霊を安息せしめむため、天教山の噴火口に身を投じ給ひける。 神徳高く至仁至愛にして、至誠至直の神人は、神魂清涼の気に充たされ、さしもに激烈なる猛火の中に飛び入りて、少しの火傷も負はせ給はず、無事に幽界に到着し給ひぬ。 これらの諸神人は幽界を修理固成し、かつ各自身魂の帰着を定め、再び地上に出生して、月照彦神は印度の国浄飯王の太子と生れ、釈迦となつて衆生を済度し、仏教を弘布せしめたまひけり。ゆゑに釈迦の誕生したる印度を月氏国といひ、釈迦を月氏と称するなり。 また足真彦は、これまた月照彦神の後を逐ひて月氏国に出生し、達磨となつて禅道を弘布したり。 時により処によりて、神人の身魂は各自変現されたるなり。何れも豊国姫命の分霊にして、国治立命の分身なりける。 少名彦は幽界を遍歴し、天地に上下し、天津神の命をうけ猶太に降誕して、天国の福音を地上に宣伝したまふ。 天道別命は天教山の噴火口より地中の世界に到達し、これまた数十万年の神業を修し、清められて天上に上り、天地の律法を再び地上に弘布せり。之を後世「モーゼ」の司と云ふ。 天真道彦命も同じく天教山の噴火口に飛び入り、火の洗礼を受けて根底の国を探険し、地上に出生して人体と化し、エリヤの司と現はれてその福音を遍く地上に宣伝し、天下救済の神業に従事したり。 また高皇産霊神の御子たりし大道別は、日の出神となりて神界現界に救ひの道を宣伝し、此度の変によりて天教山に上り、それより天の浮橋を渡りて日の御国に到り、仏者の所謂大日如来となりにける。神界にてはやはり日出神と称へらるるなり。 また豊国姫命は地中の火球、汐球を守り、数多の罪ある身魂の無差別的救済に、神力を傾注したまへり。仏者の所謂地蔵尊は即ちこの神なり。 天教山は後にシナイ山とも称せらるるに至りぬ。併し第一巻に表はれたるシナイ山とは別のものたるを知るべし。 弘子彦司は一旦根底の国にいたりしとき、仏者の所謂閻羅王なる野立彦命の命により、幽界の探険を中止し、再たび現界に幾度となく出生し、現世の艱苦を積みて遂に現代の支那に出生し、孔子と生れ、治国安民の大道を天下に弘布したりける。 然るに孔子の教理は余り現世的にして、神界幽界の消息に達せざるを憂慮し給ひ、野立彦命は吾が身魂の一部を分けて、同じ支那国に出生せしめ給ひぬ。之老子なり。 (大正一一・一・二〇旧大正一〇・一二・二三井上留五郎録)