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霊界物語 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 03 瑞祥 第三章瑞祥〔一五二八〕 三千世界の梅の花蓮の花も一時に 開いて香る世となりぬ厳の霊の大御神 瑞の霊の大御神須弥仙山の頂に 現はれまして大宇宙一切万事を統べたまふ マイトレーヤ(弥勒)の世となりぬ抑須弥の頂は 梵語のメールクータなり妙高山と翻訳し 又もスメールと称ふなり其東方は黄金の 宝を蔵し南方は玻璃、西方は瑞御霊 白銀宝珠所成せり北方瑪瑙の宝成り 連山群峰圧しつつ大海中に突出し 雲を抜き出て其高さ三百三十六里あり 天地を造りたまひたる元津柱の大神の 常磐堅磐の御住所と天、人共に尊敬し 安明、妙光、金剛山好光山と称へらる 此をば翻訳する時は霊山会場の蓮華台 聖き丘陵の意味となるアヅモス山も三五の 尊き神を祭りてゆ須弥仙山と称へられ 百の神達勇みたち集ひたまへる霊場と 定まりたるぞ尊けれ神の恵に浴したる 此里人は村肝の心を清浄潔白に 濁り汚れの跡もなく霊耳を開きて天人が 現はれ来り舞遊ぶ三千世界の声を聞き 象馬牛車や鐘鈴の微妙の楽に耳澄ませ 琴瑟簫笛勇ましく清き涼しき歌の声 百人達の歓声は天地も揺るぐ許りなり 数多のエンゼル下り来て楽をば奏し玄妙の 唱歌の声は澄み渡る老若男女は云ふも更 海川山野谷々の空駆りゆく祥鳥は 迦陵頻伽か鳳凰孔雀鶴鷲鷹や鶯の 其啼声は天地に親和し来り天国を 地上に建てし如くなり地獄に起る大苦悶 阿鼻叫喚の声もなく餓鬼の飢渇の叫びなく 飲食求むる声もせず曲の阿修羅が大海の 傍に住みて自ら囁き呪ふ影も無し 皆一切に神の教喜び勇みて聴聞し 人と獣の分ちなく喜び勇むぞ尊けれ。 あゝ惟神々々真善美愛の神心 弥茲に顕現し天地に轟く音彦の 玉国別の神徳は三千世界の天使ぞと 仰がぬ者こそなかりけり朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも清浄無垢の御霊をば 照して渡る世の中に如何でか曲の襲はむや アヅモス山の聖場は須弥仙山の光景を 完全に委曲に現出し三千世界の鎮めぞと 八千万劫の末迄も照り輝くぞ目出度けれ あゝ惟神々々神の御言を蒙りて 須弥仙山に譬ふべき蓮華台上の存在地 綾の聖地を後にして神洲最初の鎮台と 言ひ伝へたる大山を救ひの船に乗りながら 眺めて茲に遠つ世の生物語述べて行く。 時しもあれや聖地より此世の泥を清むてふ 二代澄子と仁斎氏木花姫の御再来 御霊の守る肉の宮千代の固めの経綸に 遙々来る松林中に立ちたる温泉場 浜屋の二階に対坐して役員信徒諸々と 三月三日の瑞御霊五月五日の厳御霊 三五の月の光をばいと円満に照さむと 互に誠を語り合ひ誓ひを立てし目出度さよ 堅磐常磐に弥加藤いや明らけく日月の 恵を祝ふ神の書写すも尊き加藤明子 松の千年はまだ愚か万年筆も健かに 紫檀の机に打ち向かひ千秋万歳誌し置く あゝ惟神々々神の恵の尊さよ。 朝日は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも 仮令大地は沈むとも星は空より落つるとも 日本海は涸るるとも神の伝へし此聖書 千代も八千代も動かまじ厳の御霊の命令もて 空漕ぎ渡る方舟に心臓に鼓を打たせつつ 科戸の神や水分の神の弄のダンスをば 面白嬉しく眺めつつ心も清く平けく 神のまにまに進み行く。 ○ スメールの山の麓に二柱 並びて世をば開く今日かな。 世の人を皆生かすてふ温泉場 救ひの船に棹し進む。 天地の真純の彦の物語り 此世を澄子の司来れる。 マイトレーヤ御代早かれと松村の松村真澄 真澄の彦の笑み栄えつつ。 ミロクの世一日も早く北村の北村隆光 月日の隆き光待ちつつ。 いとた加き藤の御山の神霊加藤明子 明したまひぬ常闇の世を。 世を救ふ神の出口の瑞月が出口瑞月 真純の空に輝き渡る。 マハースターマブラーブタ(大勢至)マンヂュシュリ(文珠師利) アバローキテーシュヷラ(観世音)尊き。 スーラヤ(日天子)やチャンドラデーワブトラ(月天子)やサマンタガン 守らせ給へ瑞の御霊を。 ダルタラーストラ・マハーラーヂャ(東方持国天王)ヸルーダカ(南方増長天王) ヸルーバークサ(西方広目天王)ヷイスラワナ(北方多聞天王) 守らせ玉へこれの教を。 (大正一二・四・五旧二・二〇於皆生温泉浜屋加藤明子録) 附記 本日は暴風雨烈しく怒濤の声に妨げられ是にて口述中止せり。
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霊界物語 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 13 三美歌(その二) 第一三章三美歌その二〔一五三八〕 第二八(二三五) 一 やみぢにまよひし世の人よ神の めぐみのしたたるみをしへをきけや (折返) 涙の雨はたちまち晴れて つきせぬうれしみ日の出とかがやかむ。 二 浮世のます人苦しめる友よ 心を清めて瑞霊にまつろへ。 三 苦しみもだへてなげく罪人よ すくひの御舟を指をり待てかし。 四 大本御神になやみをはらはれ いさみてあそばむ吉き日はまぢかし。 第二九(二四二) 一 神の御国へのぼりゆくと 知れど親しきあとにのこし 肉のやかたを別るるとき なごり惜まぬ人やはある (折返) アヽみづみたま 御神にまさる御力なし。 二 とはの生命はみとむれども 逝きますあとに生けるものに なごりのうれひたえがたきを いかでなげかぬひとやはある。 三 うき世の富をねがはずとも うからやからはうゑにふるひ わが身なやみていえぬときは たれかくるしみかなしまざる。 四 まが神たけりまことよわく つみに曇れる世にし住めど 祝詞に由りて神力を得 かよわき魂もつひにかちなむ。 第三〇(二四三) 一 をしへのわが友ミロクの神は 千座のおき戸につみゆるします こころのなやみを皆うちあけて などかはおろさぬつみの重荷を。 二 をしへのわが友ミロクの神は われらのなやみをしりて憐れむ 諸のかなしみにしづめる時も 真言にこたへてすくはせ玉はむ。 三 をしへのわが友ミロクの神は ふかきいつくしみ千代にかはらず 世人のわが身を離るる時も 真言にこたへて恵ませたまはむ。 第三一(二四八) 一 わが身体わが霊魂わが生命の守神 朝なほめ夕べたたへ猶たらじとおもふ。 二 したひまつる瑞御魂いづれの御国に その御姿をあらはし守らせたまふぞ。 三 狼のさけぶ山路ふるひつつ辿り 行きなやみたる吾身をあだはあざみわらふ。 四 木の花姫のらせかし白梅のかをり 野に咲くか山に咲くかあい悟らまほし。 五 瑞御魂うるはしさに神人よろこび 言霊の御ちからこそ天地動げ。 六 いと優しき瑞御魂言の葉うれしき 清き生命のいづみはきみにこそあれや。 第三二(二四九) 一 あまつ御国のぼりなむみちしるべは 千座を負ふともなど かなしむべき救主のみ許にちかづかむ。 二 かをれる間に花ちり草のまくら しとねの夢にもなほ 神をあがめ救主のみもとにちかづかむ。 三 あまつつかひはみそらにわたす橋の うへより迎へたまふ たまをきよめ救主のみもとにちかづかむ。 四 目さめし吾み神のあとを追ひて み幸をいよよ切に 願ひつつぞ救主のみもとにちかづかむ。 五 あまつくににのぼりてさかえ行く日 みたまのきよきいのち ながくてりて救主の御顔をあふぎみむ。 第三三(二六四) 一 瑞の御魂よわが身を うづの宮となしたまへ けがれしこの身の魂を 月日なす照らしませよ (折返) わが御霊あらひて 雪よりも潔くせよな。 二 厳の神力によりて 醜の曲霊をおひそけ きよき御霊にたてかへ みまへに仕へしめてよ。 三 神よ千座のもとに ふしていのるわがみたま 抜かれたまひし血しほに 暗き身を照らしたまへ。 四 月の神のいさをしに 照らさるるこそうれしき 霊魂をあらたにきよめ あまつつかひとなしたまへ。 第三四(二七三) 一 聖き十曜の御旗こそ 御祖の神のさだめてし 現世神世の宝なり 御はた汚さずよくまもれ (折返) 守れよまもれよく守れ 十曜の御旗押し立てよ。 二 十曜の御旗をあさ風に ひるがへしつつすすみ行け 神は汝と倶にあり 神のまにまに身をささげ。 三 神の神軍むらきもの こころを清め身をきよめ 御教のままにすすみゆけ 厳の御霊の御楯とし。 四 大地は泥に沈むとも 月落ち星は降るとも まこと一つの麻柱の 神の言葉は動かまじ。 五 来たれやきたれ神の子よ いづのみたまやみづみたま あらはれませる神園に 神は汝等を待たせたまふ。 第三五(二七四) 一 神のいくさのきみのみむねを をしへつかさよよくまもれ ことたまきよめ霊あきらかに はやうちむかへまが神に。 二 仇よ矢玉をはなたばはなて われには厳の言葉あり あだよてだてをつくさばつくせ われにも神のたすけあり。 三 神のまにまにちからはまして まがのいくさはどよめきぬ いさめよいさめ救ひの瑞霊と かちどきあぐる時はきぬ。 第三六(二七五) 一 立てよふるへよ神のいくさ みずや御旗の十曜の紋を まがのみいくさ失せゆくまで 救主はさきだち進みたまはむ。 二 きけよふえの音救主の吹かす 声はいくさのかどでのしらせ 神にしたがふ身にしあれば よろづのあだもいかでおそれむ。 三 瑞の御魂のちからにより 厳のよろひをかたくまとひ 直霊のつるぎぬきかざして 神のまにまにいさみすすめ。 四 瑞のみいくさやがてをはり 厳のかちうたきよくうたひ つきひかざしのかむりをうけ みづの御神とともにいさまむ。 第三七(二八〇) 一 あらへよ霊魂こころかぎり ちからつくまでにいそぎすすげ みたまのひかりはくもにふれず あめつち四方八方照るたのしさ。 二 をしへのつかさはくものごとく むらがりかこみて殿に居れり わきめもふらずに神のさとし きよむるまごころうべなひたまふ。 三 みろくの御神のきよきこころ まなばせたまへと両手あはせ この世の御はしらつかへなむと 天授の霊魂を研きすます。 四 あまつ御使のみづの御霊 御言のまにまにすすむこの身 いかなるあくまのさはりあるも 神のみちからにうちも払はむ。 第三八(二八八) 一 いづの神ののらすみのり かしこみまつり世におそれず ひとにたよらでみちをまもり つよきをなだめてよわきをたすくる 人こそ実にうづのみこぞ。 二 かみのよさす御使誰ぞ あしきこころを夢いだかず いづのみのりをかしこみつつ あしたに夕べにたゆまずつかふる 人こそ実にうづの使。 三 みちをまもるまめひと誰ぞ 世にさきがけて御世をなげき 世人のさちをともにいはひ あめにもつちにも愧るを知らざる 身霊ぞ実に信徒なれ。 第三九(三〇三) 一 いかなるなげきも科戸の風に いきふき払ひて身もすこやかに 神のみをしへをたよりとなして うつしきこの世をうたひくらさむ。 二 浮世の苦しみいかがありなむ まことのよろこび瑞霊にこそあれや あく魔にあふとも救主ましまして 守らせたまへばいさまざらめや。 三 御神をあふげばこころのなやみ 日に夜にはらはれ雲霧はれぬ かきはに輝く瑞霊のひかり ながめしわれ等は勇まざらめや。 第四〇(三〇五) 一 罪に汚れしわがみなれども 瑞のみたまは千座を負ひて われ等をきよめ救ひ玉へり。 二 きよき御国の御民となして 神につかへて羊のごとく ただみち守り住まはせたまへ。 三 奇びにたふとき大御めぐみや いづのみひかりあふぎしわれは この世に怖づるもの無かりけり。 四 伊都の御神のみこころ知らで そむきまつりしまがこそは実に かみの御国の仇なりしかも。 第四一(三〇九) 一 あく魔はすさびて暗夜はふかし わが身はいかにとをののきわづらふ (折返) わが救主よこよひもこのみをまもり さみしき一と夜めぐまひ玉へ。 二 ちかく交こりし友みなゆきて つれなき憂世にふりのこされぬ。 三 わがみの霊衣はうすくなりけり 夜なき神国もちかづきしならむ。 四 をしへのまにまに逝かしめたまへ 生世のあしたによみがへるまで。 第四二(三一二) 一 霊魂のふるさとあふぎ見れば 歎きにかすめる目も晴れけり。 二 小暗きこの世の曲をきため とび来る矢玉もおそれずたたむ。 三 やだまは霰と降らばふれよ まがつは嵐と吹かばふけよ。 四 永久の住処なるもとつ家に かへりゆく身はいと安からむ。 五 さしもに長閑な神の国に やつれし霊魂をながく休めむ。 第四三(三一七) 一 月雪よ花よと愛でにし わがこののこしたる衣のそで ながめてなげく折御かみは やすくわが身霊をなぐさめたまふ (折返) めぐしき吾子よ神の辺に のぼりゆき祈りをともにせよや。 二 わかれゆくわが子をおくりぬ なみだの雨晴れて雲はちれり 花さき匂ひ充つるたびぢを いさみすすみ行けや月すむ夜半。 三 神にひとしかりしわが子よ 今ちちは年老い母はやみぬ 然れど汝が魂いさみて わが世を守りつつ神国へゆけ。 第四四(三二一) 一 山伐り払へばあたひは降り 川水かわけば舟もかよはず せむすべ無き身を誰にかたよらむ 瑞の御魂なす神の愛のみ。 二 いのちの清水はかきはに湧けり つれなきあらかぜ誘ひくるとも いかでか恐れむ神のますみくに めぐみの露にぞうるほひまつる。 三 伊都能売の神のふかき心は いかでか知り得む人の身をもて ふたつの御霊の月日のわざを つつしみうやまへたかきみいさを。 第四五(三二二) 一 救主のしもべのむつびあひて 神たちあがむるうるはしさよ。 二 御魂あひてことたまあひ みくにのおんため一つに祈る。 三 神につかふ貴の友は はなるること無しとこしなへに。 第四六(三二五) 一 ひとやの中にもよろこびあり 世人にかはりて血をながせる 瑞の神ばしら偲び見れば なげきはみづから消えてぞゆく。 二 わがみ憂きときにまなこさまし 瑞の御魂なる救主を見れば 千座の置戸を負はせぬれど ひるみたまはぬにこころいさむ。 三 苦しめる時にも楽しみあり きよきをしへにも曲しのべる 火をうごかす水またも水は 火のためにうごく奇しき世になむ。 第四七(三四二) 一 うつりかはるよにしあれど うごかぬはみくに あふぎうたはむ友よ来たれ とこしなへのうたを とこしなへのうたを あふぎうたはむ友よ来たれ とこしなへの御うた。 二 おきておもひふして夢み あまつ神のもとに 花咲きにほふすがた見ゆ かすみは日に月に かげもなく消えて 花のかをるすがたきよく かすみは日に晴れて。 三 あくに勝てるいくさびとの 言霊の風流 火口そろへ進みつつも 月かげを力とし よせきたる浪わけて たかまのはら昇りてゆく うづみのりみこあゆむ。 四 八雲小琴掻き鳴らして いづのうたうたひ いづの御霊みづ御魂 こころなぐさまひつつ きよきしらべささぐ 神ののりのまめひとらが いづの御前にふして。 第四八(三五六) 一 黄金白銀山なすとても いかで求めむさびゆく宝ぞ 霊魂の行衛天津御国 栄へ久しきうづの住居 かみわがたまあまつくにの いのちのそのにみちびきませ。 二 山とつみてしわが身のつみ はらひきよませ霊幸はひて よろこび充てる神の座へ あめ地ももの神のつかひ よさしのままわがみたまを めぐませたまへすくひの救主。 三 八雲の琴の珍の音色 ひびき渡れり神の庭に 草木も露の玉をかざし 神の御さかえ祝ひまつる 木の葉青く花はあかく 竜の宮居のうるはしさよ。 第四九(三九二) 一 国常立の神 わがたまを守り 御霊の糧もて いのちを永久に給べ (折返) みろくの御代の開くる日まで いづのまもりひろけくあれませよ。 二 やみ路を行く時も 魔神たける夜半も ゆくてを照らして とはにみちびきませ。 三 ゆくてを包みたる しこの雲霧も 科戸辺の風に 伊吹はらひすすむ。 四 みろくの神代まで わがたまを守り み翼のしたに かかへ守らせ瑞霊。 第五〇(四〇九) 一 暗の野路をひとりゆけど 神にまかせたる魂はやすし。 二 あらきはやて滝なすあめ いかでおそれむや神のをしへ子。 三 あきの水と魂はきよく 月日はかがやきむねはさえぬ。 四 浪はあらく風は激し この舟みなとにいつかつくらむ。 五 いづのみたまみづの御魂 われらを守りてあかしたまへ。 六 山はくづれかははさけて なやめるときこそ神はすくはむ。 第五一(四一八) 一 瑞の御魂は月にしあれば 暗夜も清くあかしたまへり (折返) いづみたまみづみたま いづのめのみたまきよし。 二 世人のためにてあしの爪を ぬかせたまひて千座につけり。 三 うづの御園をひらきてわれを またせたまへり月日の御神。 四 瑞のみたまよましみづたれて くらきこころをあらはせたまへ。 第五二(四二三) 一 伊都能売の神の天降ります日 すくはる信徒瑞の霊 (折返) 月日のごとくかがやきます まことの神の盾とならむ。 二 きたなきけがれにそまぬ魂を み神のたからにくはへられ。 三 みくににすすみて神をあがめ まがつに染まざる瑞の霊。 第五三(四二七) 一 山の尾の上野辺のはたけ 高田窪田狭田長田 いそしみまくいきのたねの 八束穂なす秋来たらむ (折返) 獲り入るる秋ちかし いさみてまてやつかのほ とりいるる秋ちかし いさみて待てやつかのほ。 二 みそらかすむのどけき日も 寒かぜ吹く冬の夜も いそしみ蒔くいきのたねの やつかほなす秋来たらむ。 三 うきを忍び身をつくして きよき教のたねを蒔け たわに実のるその足り穂を 神はめでてうけたまはむ。 第五四(四二八) 一 笹のつゆもすゑつひに 川とながれ海となる。 二 いとちひさきちりさへも つもればまた山となる。 三 あだに暮す息のまも たふとき身のいのちなり。 四 ありのあなもいつとなく つつみをさく種ぞかし。 五 あはのちさき一粒も 倉を充たすたまとなる。 第五五(四五一) 一 聞けやいづの御声見よや御姿 直霊にかへりみて勇みすすめよ 大御神言をばかしこみまつらひて 言霊のつるぎをかざしすすみゆけ (折返) 大国常立の尊の御声に まなこをよくさまし神の御楯となりて。 二 曲津霊にかこまれ鬼におそはれ 逃げまどふ友ありあはやあやふきを すくはでおくべきや言霊つるぎもて みなことむけやはしみちに生かすべし。 三 曲軍にげちる言たまきよし きよまれるつはもの勇みふるひぬ すめ神の御座にかちどきをあげよ。 第五六(四五六) 一 かなたの岸にみ船つけて きよきたふときみ許に行かむ 生日まちつつみ魂をきよめ うからやからやともらにあはむ (折返) やがてあはなむ (やがてたのしく会はなむ) うからやからと したしき友に。 二 めぐみの露のしげき国に 昇りてまたもえにし結ばむ かくれし月日星もかがやき 消えし望みも又生きかへる。 三 親子妹背のめぐり会ひに 手に手をとりて笑顔つくる 雲霧かすみあとなく消えて きよき姿をながめたのしむ。 第五七(四六二) 父神母神おほみまへに いやとこしなへにみさかえあれ。 (大正一二・五・一五加藤明子録)
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霊界物語 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 25 三五神諭(その六) 第二五章三五神諭その六〔一五五〇〕 大正六年旧二月九日 神の国には、世の根本の大昔から、天地の先祖が仕組が致してあるので、二度目の天の岩戸開は末代に一度より為られんのであるから、何に附けても大謨な事であるぞよ。肝腎の事は、あとへ廻はして何も知らぬ厭な方の神や、下劣の守護神が大事の仕組も知らずに、利己主義の経綸でここまでトントン拍子に出て来たなれど、九分九厘といふ所で往生致さなならん世になりたぞよ。 九分九厘の御魂が天地の御恩といふ事が判りて来たなれば、現世は斯んな惨い事に成りはせんなれど、盲目や聾と同じ事で、全然暗黒界であるぞよ。今の守護神と人民とは岩戸開の手伝致すどころか、大きな邪魔を致すぞよ。悪の方から見れば、誠の方が悪に見えて、悪の方が善く見えるので、何事も皆逆様ばかりより出来んのであるぞよ。 悪の守護神が大本の中へ這入りて来て、何彼の邪魔を致すから、気ゆるしは些とも出来んから、物事が遅くなりて、世界中の苦しみが永うなると申す事が毎度筆先に出して知らしてあるぞよ。大本には、世界の事が映るから、大本の中の様子を見て居りたら、世界の事の見当が、明白に判りて来るぞよ。筆先に一度出した事は、チト速し遅しは在るなれど、毛筋も違はん事許りであるから、皆出て来るぞよ。霊の本の国と申しても、惨い事に成りて居るのを、知りて居る守護神も、人民も、誠になさけ無いほど尠いから今の世界の困難であるぞよ。神国魂と申して威張りて居れど、神国魂の性来はチツトも無いやうに惨い事になりて居るぞよ。 世界を一つに丸めて、神国の世に致すには、此世を拵へた天と地との根本の真で治める時節が参りて来たから、明治二十五年から今に続いて知らしてあるぞよ。世界の今度の大戦争は世界中の人民の改信の為であるぞよ。まだまだ是では改信が出来ずに、神の国を取る考へを致して居るぞよ。神の国は神の誠の守護致してある国であるから、何程邪神に神力が沢山ありたとて、知識や学がありたとて、神国には到底も叶はん仕組が世の本から致してあるから、九分九厘で掌を返して、万古末代潰れぬ守護を致して三千世界を丸めて人民を安心させ、松の世、仁愛神の世、神世といたして、天地へ御目に掛ける時節が近うなりたぞよ。天地の間に一輪咲致梅の花、三千世界を一つに丸めて一つの王で治めるぞよ。悪神のしぐみは、今迄はトントン拍子に来たなれど、九分九厘でもう一足も先へも行けず、後へも戻れず、往きも帰りも成らんといふのが、今の事であるぞよ。茲へ成りた所で、悪神の頭が充分改信を致して、善へ立返りて、善の働きをいたさんと、世界中の何も知らん人民が、此先でエライ苦しみを致すぞよ。此の大本の中にも、悪の身魂の守護神が化けて来て居るが、もう化けを現はして、皆に見せてやるぞよ。 ○ 大正七年旧正月十二日 三千世界一度に開く梅の花、艮金神の守護の世になりたぞよ。明治二十五年から出口直の手を借り口を借りて知らした事の、実地が現はれる時節が近寄りて来たぞよ。今迄の世は悪神の覇張る世で何事も好き寸法、利己主義の行り方で、此世を乱して来たが、モウ是からは昔の元の生神が世に現はれて、三千世界を守護やうに時節が参りたから、思ひの違ふ守護神人民が大多数に出来て来るぞよ。今度の二度目の天の磐戸開きは、悪の身魂が毛筋の横巾でも混りてありたら成就いたさぬ大謨な末代に一度より為られん神界の経綸であるから、茲まで悪神の覇張りた暗黒の世を生粋の水晶の如うな明かな、何時までも変らぬ神世に致さねば成らぬから、神も中々骨の折れる事であるぞよ。 昔のミロク様の純粋の、何時になりても変らぬ其儘の秘密の経綸の凝結で、末代動かん巌に松の仕組、何神にも解らぬ様に為てある善一つの誠の道であるから、途中に精神の変るやうな身魂では出来も致さず、判りもせぬぞよ。此世の元を創造へて、世界中の一切の事、何一つ知らんといふ事のない身魂でないと、今度の二度目の天の岩戸開は、世界を創造へるよりも、何程骨が折れるか知れんぞよ。限り無しの潰されぬ末代の経綸、天の岩戸開といふことは、爰まで悪神が覇張りて、モ一つ奸賢しこう人民をいたして、未だ未だ悪神の力を強くして、善神の道は立てさせぬ如うに体主霊従主義で貫く、仕組を致して居るから、神国の人民は余程魂を研いて、水晶魂を元に研いて光を出して置かねば、万古末代邪神の自由に為られて了ふぞよ。 昔から露国へ上りて居りた悪神の頭目が、モ一つ向ふの国へ渡りて、人民の頭を自由自在に、吾の思惑どほりに悪を働き、世界中の大困難を構はず、何処までも暴れて暴れて暴れまはして世界を苦しめ、又露国を自由に致して吾の手下に附けて、今に神国へ出て来る経綸を致して居るが、そんな事にビクつく如うな守護神、人民でありたら到底続きは致さんぞよ。是から神が蔭から手伝ふて軍隊に神力を附けて与るから、今度は大丈夫であれども、国と国同士が戦争は到底叶はんと申して、可い加減な事で仲直りを致して、一腹になつて、今度は押詰めて来るから、守護神も人民も腹帯を締て掛らな、万古末代取返しの出来ん事になるぞよ申して、明治二十五年から出口直の手を藉り口を藉りて、知らして置いた事の実地が、迫りて来たぞよ。邪神は悪が強いから、ドコ迄も執念深う目的の立つ迄行り通すなれど、九分九厘と云ふ所まで来た折に、三千年の神が経綸の奥の手を出して、邪神を往生いたさすので在るから、大丈夫であれども、罪穢の深い所には罪穢の借銭済しが在るから今の中に改信を致さんと、神国にも酷しい懲罰が天地から在るぞよ。霊主体従主義の行り方で、末代の世が立つか、体主霊従の施政方針で世が末代続く乎、今度は善と悪との力量比べであるから、勝ちた方へ末代従うて来ねばならぬぞよ。それで神界は茲まで煉に煉たので在るぞよ。 この先に善一つの誠の道を立貫かねば、斯世に安住て貰へんやうに酷しく成るから、爰まで永らく言ひ聞かしたので在るぞよ。善と悪との境界の大峠であるから、爰まで充分に煉らねば、悪の性来には聞けんから、今の今まで煉りたのであるが、チツトは腹へ浸み切りて居る身魂が在るであらう。爰まで言ひ聞かしても判らん如うな身魂は、体能く覚悟をいたさんと、是迄のやうな心で居りたなら、又天地を汚して了ふから、善へ心底から従ふ身魂で無いと、今迄の如うな心の人民が在りたら総損害になりて、モ一つ遅れるから、艮金神も助けて遣る事も出来ず、天の御三体の大神様へ申訳が無いやうな事になりて来るから、止むを得ず気の毒でもモウ経綸どほりに致すぞよ。天の岩戸開が段々と近寄りたから、是までの如うな事には行かんから、一か八かと云ふ事を、悪の頭に書いて見せて置くが良いぞ。今の番頭のフナフナ腰では、兎ても恐がりて、コンナ事を書いて見せて遣るだけの度胸はありは致すまいなれど、神の申すやうに致したら間違は無いぞよ。一の番頭の守護神が改信が出来たら、肉体に胴が据わるなれど、到底六ケ敷いから、今に番頭が取替へられるぞよ。モウ悪の頭の年の明きであるから、悪い頭から取払ひに致すぞよ。何事も時節が一度に参りて来て、世界中の困難が到来すると云ふ事が、毎度申して知らした事が実地になりて、一度に開く梅の花、追々分らなんだ事が明白に判りて来て、キリキリ舞を致さな成らん、夜の目も眠られん如うな事に成ると申して置いたが、一度筆先に出した事は皆出て来るぞよ。能く念を押して置くぞよ。念に念を押して、クドイと云はれて復念を押してあるから、モウ是からは神界の事情も能く解る様に一度に成りて来るから、誠で無いと、此先は誠一つの善の道が拵へて在るから、一日も早く善の道へ立復りて、神国魂に捻ぢ直して下されよ。悪の世は齢が短いから、体主霊従の身魂が大変困む事が出来るから、明治二十五年から怒られる程申して在りたぞよ。人民は男も女も腹帯を確り締めて掛らんと、一旦は堪れん如うな混雑になるぞよ。 明治二十五年から煩いと申して怒られもつて、今に岩戸開の筆先を書かして居るぞよ。何時までも同じ事に間々に細々能く判る様に抜目の無い様に知らしたなれど、ソンナ事が在るものかと申して、今に疑うて居る人民許り、実地が出て来て青白い顔をして、腰が抜けて足も立たず、腮が外れて足が上に成り、頭が下に成りて、ソコラ中をヌタクラな成らん事が出て来るぞよと知らして在るが、モウ近うなりて来たぞよ。悪の昇るのは迅いなれど、降るのも亦速いぞよ。善の分るのは手間が要るなれど、善の道の開けたのは、万古末代の栄えであるから、爰まで悪開けに開けた世界を、根本からあらためて、今後は体主霊従主義といふ様な醜しき世は無い如うに致すのであるから、是ほど大望な事は末代に一度ほか為られんのであるから、神も中々骨が折れるぞよ。是程世界中が曇り切りて居る世の中を、水晶に致すのであるから、骨が折れるのも当然であるぞよ。斯の極悪の世の岩戸を開いて、末代口舌のないやうに、大神様の善一つの世に、立直しをいたさねば、世界の苦舌が絶えんから、人民の心が悪なる許り、何時になりても国の奪り合ひ計りで、治まりは致さんぞよ。 神の国は本が霊主体従であるから、誠に穏かにありたなれど、世が逆様に覆りて今の状態であるぞよ。薩張り上下へ世が覆りて了ふて、神国に悪神が渡りて来て、上から下まで醜しさと云ふものは、天地の誠の神からは、眼を開けて見る事が出来んぞよ。斯世を結構と申して大きな取違ひを為て居りて、良いと云ふ事も悪いと云ふ事も、可非の判らん見苦しき世が、一旦は出て来ると申す事は、地球を創造へる折から良く判りて居るので、外の身魂では能う為もせず解りも致さんぞよ。一輪の火水(言霊)の経綸がいたして在りて先が見え透いて居るから、爰まで辛い事も堪り詰めて来られたのであるぞよ。今度の二度目の岩戸開きは、知識でも学でも機械でも、世界中の大戦ひには、手柄は出来んぞよ。何程悪の頭でも到底是からの世は今迄の行方では行かんと云ふ事に気が附いて、綾部の大本へ今の内に願ひに来る守護神でありたら、善一つの道へ乗替へさして、末代の世を構はして、毛筋の横巾も悪の性来の混りの無い結構な神代に助けて遣るから、早く改信なされよ。何程我を張りて見ても時節には叶はんぞよ。 善一筋の純粋で末代の世を立てて行く結構な仕組の解る世が参りて来たから、爰までに知らしても未だ今に成つて疑うて居る守護神や人民許りで、可憐相なものなれど、モウ神からは人民に知らせ様が無いから、何時までも邪魔を致す極悪の頭から平げると云ふ事を、永らく筆先で知らしてある通りに、時節が迫りて来るぞよ。余り何時までも高上りをして居ると、時分の過ぎた色花の萎れる如く、今日の間にも手の掌が覆るぞよ。今の中に発根からの改信が一等であるぞよ。疑うて居りて何事が出来しても神はモウ知らんぞよ。 悪の霊を抽抜いて元の水晶の霊と入替へて遣ると申して、爰まで知らして在るなれど、余り世界の霊魂が悪渋とうて手に合はんから、皆の霊魂が悪シブトい性来に成り切りて居るから、言ひ聞かした位に聞く如うな優しい霊魂はありはせんぞよ。今の人民は悪のやり方が良く見えるのであるから、何程言ひ聞かしても聞きはせぬぞよ。困つたものであるぞよ。是ほど良い国は無いと心に錠を降して了ふて居るから、何程実地の事を言ひ聞かしても、逆様計りに取るから、助けてやり様が無いぞよ。是れもモチト先に成りたら、大きな取違ひを致して居りたと云ふ事が、上へあがりて覇の利いて居りた神に自然的に判りて来るぞよ。今迄の様に自分好しの目的は、トントン拍子には行かぬ如うになるぞよ。 世界の人民確り致さんと、今に大変な事になりて来るから、何れの国も危ないと申して、彼方此方へと狼狽へまはりて、行く所に迷ふぞよ。神道を守護致す誠の所は、綾部の大本より外には無いぞよ。綾部は三千年余りて、昔からの神の経綸の致してある結構な所であるから、大本の教を聞いて居る守護神は余程シツカリいたして居らんと、油断が在りたら肝腎の経綸を他国から取りに来るぞよ。何程奪らうと致しても神が奪らしは致さんなれど、物事が遅れるだけ世界の困難が永びくから、充分に覚悟をいたして正勝の時の御用を勤めて下されよ。三千世界の鏡の出る大本であるぞよ。今の人民は神がいつまで言ふて聞かしても、人を威す位にほか能う取らんから、一度にバタツイても間に合はんぞよ。俄の信心は役に立たぬから、常から信心いたせと申して爰まで気を附けてあるぞよ。善の行り方と悪の行り方とを末代書いて遺す綾部の大本であるから、変性男子の書いた筆先を、坤金神が変性女子と現はれて説いて聞かして、守護神人民に改信を致さす御役であるから、世界の人民よ、真の事が聞き度くば綾部の大本へ参りて来て、細々と聞かして貰ふたら、世界の事が心相応に解りて来て世界に何事ありても驚きは致さんやうになるぞよ。 昔からの極悪神の頭が神国の人民を一人も無いやうに致す仕組を為て居るなれど、神国にも根本から動かぬ経綸が致して在るから、国も小さいし、人民も尠いなれど、初発から一厘と九分九厘との大戦ひで在ると申して、何時までも同じやうな事を書かして在る通り、口で言はしてある事がドチラの国にもあるから、神力と学力との力比べの大戦ひであるから、負た方が従はねば成らんと申して、筆先に出してある通り、実地に実現て来るから、此先で神から不許と申す事を致したり、吾の一力で行らうと思ふても、世が薩張り変りて了ふから、是までの事はチツトも用ゐられんぞよと、度々気を附けてあるのに、聞かずに吾の我で行りたら、彼方へ外れ、此方へ外れて、一つも思ふ様には行かんぞよ。素直にさへ致せば何事も思ふやうに箱差した様に行くのが神代であるぞよ。今の人民は余り我が強いから、是迄は神の申す事も聞かずに、守護神の自由に一力で思惑に行けたのは、地の上に誠と申すものが無かりたから、世に出て居る方の守護神が、悪神の大将に気に入る様な悪る力がありたなら、何処までも上げて貰へる世と成りて居りたから、悪い事の仕放題、悪神の自由で在りたなれど、モウ時節が廻りて来たから、其時節の事を致さな世は立ちては行かんぞよ。今迄は物質の世でありたから、学が茲まで蔓りて、学力でドンナ事でも九分九厘までは成就いたしたなれど、モウ往生いたさなならん如うに成りて来たぞよ。茲に成るまでに悪の守護神を改信さして、助けて遣りたいと思ふて、明治廿五年から深い因縁のある出口直の身魂に知らさしたのであるなれど、吾程豪いものは無きやうに思ふて、チツトも改信の出来ん罪人ばかり、神も是には往生いたさな仕様がないぞよ。現世の鬼を平げて、世界のものに安心を致さすぞよと云ふ事が初発に筆先にかかしてあるが、世界の大洗濯を致して、元の水晶の身魂やら天地の大神の教どほりの世に致して、天に坐ます御三体の大神様に、御目に懸けねば成らぬ御役であるぞよ。来いで来いでと松の世を待ちて居りたら、松の世の始まりの時節が参りて来たなれど、肝腎の悪の性来の改信をいたして貰はんと、何時までも頑張るやうな事では、此世は水晶にならんから、ドウシテも聞かねば聞くやうに致すより仕様は無いぞよ。世界には代へられんから、此先の規則通りに制配を致さねば御三体の大神様へ申訳がないから、二度目の天の岩戸開をいたしたら、悪の性来は微塵も無い如うに洗ひ替をして、巌に松の動かぬ世にいたす世界の大橋と成る尊い所であるから、余り何時迄も疑ふて居ると、天地の大神様へ大きな御無礼になるから、今一度気を附けておくから素直に致すが徳であるぞよ。 (大正一二・四・二七旧三・一二北村隆光再録) (昭和一〇・六・一五王仁校正)
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霊界物語 61_子_讃美歌1 15 神前 第一五章神前〔一五六五〕 第一四二 一 皇大神の永久に鎮まり居ます天津国 大御座よりこぼれたる屑だに拾ふ価なき 吾身を如何に過ごさむやあはれみたまへ瑞御霊 厳の御霊の御前に赤心捧げて願ぎまつる。 二 諸の罪科悉く赦させたまふ大神の 広き誓ひをひたすらに身魂の綱と頼みつつ 厳のおめしに従ひて御許にゆくより道はなし あゝ惟神々々謹み敬ひ願ぎまつる。 三 瑞の御霊の笑顔をば胸の帳を引きあけて 拝みまつる其時は浪風猛る世の中も 何の苦もなく勇ましく再び生きて働かむ 神の恵は上もなく其功績は果てもなし。 四 罪を重ねし吾々の醜き身魂を科戸辺の 風に苦もなく吹き払ひ勇みて此世にながらへつ 雄々しく大道の真中を進ませたまへと願ぎまつる。 五 厳の御声の嬉しさに吾身を忘れて大前に 近づき清き信徒の集まる筵に連なりて 御稜威を讃めさせたまへかし。 六 今日の生日の御祭の限りも知らぬ喜びに 身も魂も包まれていや永久に饗応の 筵に加へたまへかしあゝ惟神々々 御前に感謝し奉る。 第一四三 一 夜なき国を永久に知召さむと御空より 下らせたまふ五六七神常世の春の来るまで 守る尊き神の法悟らせたまへと願ぎ奉る。 二 世人の為に赤心を尽す誠の無き人は 深遠微妙の神の法如何でか悟り得らるべき 心を鎮めて皇神の厳の御文を調ぶべし。 三 心の中に犯したる吾身の罪を悔ゆる事 知らざるものは如何にして神の教の悟れむや 改悟の涙なき人は如何でか知らむ皇神の 尽きせぬ恵の御心を瑞の御霊の苦しみを 心を潜めてよく悟り味はひかしこみ守りなば これの教は明かに手に取る如く悟り得む 千代に尽きせぬ命をば受けし吾等は生みの子の 弥つぎつぎに云ひ伝へ守り進まむ神の法。 第一四四 一 恵の主にうれしくも高天原の聖場に 親しく謁え奉り永遠に尽きせぬ幸を 身魂に受けし嬉しさよ。 二 命の神の降ります目出度き生日を頼もしく 思ひかへして現世の重荷を下し皇神の 珍の筵にうら安くつかせたまへと願ぎまつる。 三 神の恵のたれる時永遠の生命の充てる時 瑞の御霊と諸共に生日を祝ひて過ごすべし 瑞の御霊の贖罪にすべての霊は清まりぬ。 四 玉の御声を耳にして悩みは忽ち喜びと 変りゆくこそ尊けれ。 五 汚れも頓に清まりて厳の力は日に月に 加はり行くこそ畏けれ天津御国の喜びの 宴会の幸は如何ならむ現世さへも斯くばかり 楽しき清き喜びの宴会の蓆眺むれば 神国の姿ぞ偲ばるる。 第一四五 一 咲き匂ふ春の花野に遊べよと 珍の御声のかかる嬉しさ。 二 人足も絶えて淋しき陸奥の 荒野が原にも恵の花咲く。 三 親が子を恋ふる如くに大道に 迷ふ吾等をいたはりたまふ。 四 谷深み人も通はぬ山奥の 花にも神の恵ありけり。 五 瑞御霊其面影は見えずとも 珍の心を諭す神文。 六 瑞御霊いづくのはてに潜むとも 清めたまはむ安けき国へ。 第一四六 一 罪深き身を持ちながら貴美の前に 額づき得しぞ恵なるらむ。 二 信徒が共に手を曳き変りなく 相見る幸の如何に尊き。 三 現世の醜の戦ひ諸の罪 鎮まりて行く神の権威に。 四 許々多久の艱み憂ひも御心ぞ やがては深き喜びとならむ。 五 勇しく瑞の御霊に従ひて 千座を負はむ栄光の為めに。 六 滅び行く世を生かします瑞御霊 めぐみの露の清くしたたる。 第一四七 一 神の前よしや離れて行くとても 心はなすな清めの主に。 二 大神業清くつとめて村肝の 心一つに励め信徒。 三 日に月に神の御畑を耕せば 秋の垂穂は豊なるべし。 四 天津国神の御前に舞昇り 教の御子と共に楽しむ。 五 かくならば別れなやみも非ずして いや永久につきぬ親しみ。 第一四八 一 世の幸を来さむ為に瑞御霊 シオンの山にくだりますかも。 二 仇に勝ち世を知召す厳御霊 瑞の御霊の神ぞうるはし。 三 千早振る神の御代より待ち佗びし 命の主のくだる嬉しさ。 四 上つ代の聖もつひに知らざりし 光見る身の頼もしきかな。 五 丸山の台に起る神歌は 四方の国々響き渡れり。 六 四方の国もらさず落とさず生命の 教の道に入らしめ給へ。 第一四九 一 誰も彼も神の給ひし御恵を 受けざるはなし堅磐常磐に。 二 飢渇く人に真清水糧与へ 生かさせたまふ瑞の大神。 三 選まれし民の受けたる御恵を 広く分てよ四方の人等に。 四 つかれたる人には安息飢渇く まづしき者に糧を与ふる。 五 冬さむき薄衣に慄ふ民草も やがては開く花の春来む。 六 御恵を喜ぶ声は迦陵嚬伽の 鳴く音よりもなほ心地よきかな。 七 来る春の花咲き匂ふ楽しさは ミロクの御代の兆なりけり。 第一五〇 一 皇神に捧ぐるものは悉く 神より受けし御賜なり。 二 皇神に受けし宝をおとさずに 清く用ひよ道の信徒。 三 放たれて山路に迷ふ人もあり 神の恵に囚はるもあり。 四 冷わたり恵の花は打萎れ のぞみなき家は数限りなし。 五 曲道に迷ふ羊を皇神の 大路にかへし清むる神人。 六 皇神の厳の神業に神習ひ 捧ぐる誠受けさせたまふ。 第一五一 一 天地を作り固めし大神の いづの恵に酬ふ術なし。 二 春は花秋は紅葉と折々に 世人を笑ませ給ふ大神。 三 家族親族睦び親しみ家の業 富み栄ゆるも神の賜。 四 瑞御霊千座の置戸を負はせつつ 世人の犠牲と降りましけり。 五 瑞御霊天津空より降らせて 吾等が霊を生かせたまへり。 六 神国に昇る望みを与へます 皇大神に酬ふ術なし。 七 白銀も黄金も玉も悉く 錆腐り行く仮の宝ぞ。 八 皇神を称へまつりて備へ奉る 宝は神国の倉に納まる。 九 錆腐る仮の宝も神の国の 貢となして受けさせたまへ。 一〇 御恵の深きに酬い足らねども 身も魂も喜び捧げむ。 (大正一二・五・五旧三・二〇於教主殿加藤明子録)
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霊界物語 61_子_讃美歌1 17 神月 第一七章神月〔一五六七〕 第一六二 一 あな尊あな美はしき綾の里に 珍の光の照りそめにける。 二 常暗に迷ひ苦しむ民草も 此みしるしをことほぎ奉れ。 三 あな尊あな美はしき聖地の朝 心楽しき日は来りけり。 四 日の本の日の出の島も諸国も 今こそ神の幸を受けなむ。 五 山も野も花咲き匂ひ永久の 泉湧き出る神代来にけり。 六 ミロクの代喜び祝ふ声々は 山の尾上にも響き渡れり。 七 スメールの山より高く皇神の 御稜威を清く称へまつれよ。 八 三五の教の道の輝きて 遍く闇を照しゆくなり。 第一六三 一 秋の田の黄金の浪は益人の 齢をわたす御船とぞ知れ。 二 八束穂の足穂は色づき満ちにけり いざ苅り取れよ秋の最中に。 三 苅り入るる稲穂は多く苅る人は 少なし下僕いそしみ仕へよ。 四 東雲と共に起き出で八束穂を 苅らしめ給へ夕暮るるまで。 五 苅入れの終りし上は天津国の 御倉に納めて祝ひまつらむ。 第一六四 一 心傲れる国人達もいづの御神によく仕へ 瑞の御霊に頼り来るよき日を早く来らせたまへ。 二 栄えの夢に酔ひ果てし泡なすきみも村肝の 心おどろき馳せ来り命の主を世柱と 仰ぐ神代を速に来らせたまへ惟神 御前に平伏し願ぎまつる。 三 剣も太刀も大砲も軍の艦も武夫も 用なき御代にかへしまし平和と栄光と歓喜を 此世に来たす瑞御霊ミロクの神の大神に 心清めて願ぎまつる。 四 いとも尊き奇なる神の御業を畏みて 栄えつきせぬ大御名を国人各称へあげ 恵の教を完全に語り広めさせたまへかし。 第一六五 一 瑞の御霊の恵の雨の普く下界に降りそそぐ 清き御音を今ぞ聞く濺がせたまへ村肝の 心汚き吾身にも。 二 乾きし地も潤ひぬ瑞の御霊の御恵 命の雨の一滴下させたまへ吾身にも。 三 厳の御霊の御父よ瑞の御霊の母神よ 吾等を捨てさせたまふなく此地の上に永久に 留まりたまひて人草を守り恵まひたまへかし。 四 命の主の瑞御霊清き御名をば慕はしめ 御神と共に永久に尽きぬ生命を長らへて 希望と栄光と歓喜に弱き身魂を生かしませ 心静かに大前に謹み敬ひ願ぎまつる。 五 厳の御霊や瑞御霊月日の如き御光に 眩みし眼を押し開き神の御国の有様を 吾にも見させたまへかしあゝ惟神々々 神の稜威を仰ぐなり。 第一六六 一 瑞の御霊の御恵は堅磐常磐に湧き出でて 流れも清きヨルダンの水永久に現世を 潤し生かし衰へし世の民草に真清水を 与へて千代に栄えしめ其御勲を口々に 讃めつ称へつ謳はしめよ。 二 神の恵のなかりせば人は此世に如何にして 生きて栄ゆる事を得む瑞の御霊の命の主に まつろひ奉り仕へつつ弱き吾身に御力を 乞ひ願ぎまつる赤心を諾ひまして天津御国まで 導きたまへと願ぎまつる。 第一六七 一 瑞御霊世に賜ひたる皇神の 御稜威畏く仰ぎ見るかな。 二 皇神は栄光にみちて吾魂を 生かしたまはむ仰ぎ敬へ。 三 厳御霊降したまひし月神の 瑞の御霊の恵みかしこし。 四 天津火を豊葦原の民草に 燃やして希望を抱かせたまへ。 五 日の下に降らせたまふ生命の主は 日の出の島に輝きたまふ。 第一六八 一 瑞御霊厳の清めにもらさじと 導きたまへ安き神国へ。 二 朽ち果てし心の家をたてなほし 安く御国に住まはせたまへ。 三 大前に平伏し悔ゆる吾罪の 嘆きを赦し力をたまへ。 四 いと弱き吾身は神の御力に 生かさるるより外に道なし。 五 久方の天にも地にも一柱 吾等を生かす神はまします。 第一六九 一 厳の御声を天地に響かせたまへ角笛を 吹き立て世人に隈もなく平和と栄光と歓喜に 充てる神の代来ること知らしめたまへ惟神 畏み畏み願ぎまつる。 二 千座の置戸の贖罪に洗はれたりし諸人よ 神の大道に従ひて喜び勇みて久方の 天津国なる故郷へ疾く疾く急ぎ立ち帰れ 神は汝と倶にあり。 三 誠の道の信徒よいとも尊き皇神の 畏き罪の贖罪に死したる御霊は甦り 笑ひ栄へつ天津国喜び尽きぬ故郷に 帰りて神に仕ふべきよき日はもはや近づきぬ 仰ぎ敬へ諸人よ神は吾等の御親なり。 四 ミロクの御代は近づきぬ千座の置戸の麻柱に 清められたる人々よ喜び勇みて久方の 天津御国の故郷へ疾く疾く急ぎ立ち帰れ 神は汝と倶にあり 第一七〇 一 起てよ奮へよ勇めよ醒めよ神に受けたる吾等が精霊 罪も汚れも恐れも知らず此世の欲を打ち捨てて 夜なき厳の故郷へ帰らせたまへと願ぎまつれ 瑞の御霊は汝が為めに天津御神の御言もて 此世に下りたまひけり。 二 元津御祖の皇神の右にまします瑞御霊 世の罪人を神直日見直しまして吾名をも 生命の文に記しまし永久の栄光と御恵を 下したまふぞ尊けれ仰ぎゐやまへ諸人よ 神は汝と倶にあり。 三 誠一つの言霊に天津御神の御心は いとも穏にやはらぎて赦しの御声をかけたまふ 人は神の子神の宮父と母との皇神を 慕ひまつりて恐れずに近づき仕へまつるべし 神の御名は恵なり。 第一七一 一 何事も我に任せと宣りたまふ 瑞の御霊のこころ尊き。 二 罪深き吾身の幸も唯神の 御霊の中にあるぞ畏き。 三 黒鉄のたゆまぬ堅き心をも 砕く力は神にまします。 四 何一つ世に功績はなけれども 岐美の力に栄えゆくかな。 五 滅びたる吾魂も甦る 岐美の恵の露に霑ひて。 (大正一二・五・六旧三・二一於教主殿加藤明子録)
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霊界物語 61_子_讃美歌1 22 神日 第二二章神日〔一五七二〕 第二一二 一 功なき御霊を千座に贖ひて 洗ひたまひぬ天津御国に。 二 罪咎の汚れを洗ふ術なきを 清めたまひぬ瑞の御霊に。 三 疑ひの雲霧晴れて久方の 天にのぼらむ身こそ嬉しき。 四 病に悩める身をも癒します 瑞の御霊の御稜威畏し。 五 頼り来る人に清めと生命をば 誓はせ玉ふ三五の神。 六 罪深き吾身をかくまで憐れみて いつくしみます救主ぞ尊き。 第二一三 一 罪や汚を悉く清めの神に打ち任せ 清き御心その儘に恵の河に導かれ 御霊を清め汚点さへも残らず洗ひ清めつつ 神の御許に頼もしく進みゆくこそ有難き。 二 疲れ果てたる吾霊も恵に強き我貴美の 御手に抱かれ御心によりて誠の大道に 進みて往かむ惟神心長閑に人の世を 神のまにまに過ごすべし。 三 弥生の空の山桜のどかな風に吹かれつつ こぼるる薫り世に匂ふ命の神の珍の名を いと麗しく有難く讃めよ称へよ人の子よ。 四 心やさしく頼もしく愛に富みます瑞御魂 清き御性を得させませ天津使の宣り給ふ 御歌を学び朝夕に尊き御名を称ふべし。 第二一四 一 厳の御魂や瑞御魂現はれたまふ竜館 寄り来る人は現身のきぬ脱ぎ捨てて惟神 大道に進むものもあり又あやまちの根の国の 萱野ケ原を行くもあり。 二 罪も汚も皆洗ひ綾の高天の御力と 選ませたまへと朝夕に祈る誠の信徒は 夜も暁の星のごといと少きぞうたてけれ。 三 厚き恵のパラダイス高天の原に来ながらも 氷の如く冷きりし心をもちて大前に 進み来るこそうたてけれ厚き恵の御光に 照され胸に敬愛の炎をもやし惟神 神の心となれよかし。 四 此世の暗路に行き悩むあはれ果敢なき人草の 心を昼に立てかへて恵の光を照しませ 厳の御霊や瑞御霊。 五 黄泉路の風の吹き荒び死の河浪は高くとも いと安らけく平けく仁慈の御手に棹さして 天津御国の彼の岸につかせ玉へや瑞御霊。 第二一五 一 曲神の伊猛り狂ふ世の中に 希望抱へて神は居ませり。 二 荒浪に漂ひ迷ふ吾霊を 救ふは神の力なりけり。 三 風強く浪立つ夜半も皇神は 碇おろして守りたまひぬ。 四 世の終末せまり来りし際にさへ 神に祈れば生くる道あり。 五 幽界に移りし時に杖となり 力となるは御神のみなり。 第二一六 一 罪汚洗ひ清めて由良川の ほとりに居ます神に詣でよ。 二 皇神の掟にたへず泣き叫ぶ 声も罪をば拭ふ力なし。 三 瑞御魂幸ひなくば現世に 生きて栄ゆる術なかるべし。 四 現世も幽れし界をも知召す 神の恵に陰日向なし。 第二一七 一 高熊山の岩窟に神の御言を蒙りて 身も棚しらに仕へたる昔の業は知らねども 今目のあたり仕へます御業を眺めて皇神の 慈愛の心を悟りけり神は愛なり権力なり。 二 棚なし船に棹さして冠島沓島に立籠り 雨にさらされ風に浴び朝な夕なに神業に 仕へたまひし厳御霊罪に苦しむ人草を 清めむために命毛の御筆を揮ひやがて来る ミロクの教を宣べたまふ神は愛なり権力なり。 三 鞍馬の山に立向ひ世人の罪を清めむと 老の御足も健かに登らせたまふ雄々しさよ 昔の御業は見えねども残しおかれし神の文 珍の御声を聞く度に教祖の御心を いとも畏くうかがひぬ神は愛なり権力なり。 四 杵築の宮に参詣で十五の御弟子に語られし 生言霊の尊さよ火と水土の神業に 赤心籠めて仕へまし神の御術をいや広に いそしみたまひし我教祖仰ぐも尊き限りなり 神は愛なり権力なり。 五 弥仙の山に立籠り神の御言を畏みて 七日七夜の荒行に仕へたまひし厳御魂 今は御姿見えねどものこし玉ひし言の葉に 大御光は現はれて暗き心も澄わたる 神は愛なり権力なり。 第二一八 一 吾霊魂を永久に恵ませたまふ瑞御魂 風吹き荒み浪は立ち船は沈まむばかりなる 危き此身を守らせて彼方の岸にやすやすと 導きたまふぞ有難き神は愛なり生命なり。 二 吾往く先は天津国御園をのぞきて外に又 寄る隠所もあらざらむ吾霊魂を皇神に ゆだねまつりて仕ふれば瑞の御魂の御翼に 乗せて神国へやすやすと導きたまへ瑞御魂 神は愛なり生命なり。 三 日毎夜毎に吾霊魂は罪や汚れに染れども 清めの神は御恵と誠の栄光に充ちたまひ 霊と肉とを悉く元の如くに清めまし 疲れし御魂を慰めて御園に導きたまふべし 神は愛なり生命なり。 四 厳の御魂や瑞御魂生命の元にましませば 恵の露は永久に湧き出で胸に溢れつつ 吾等が霊魂をうるほして渇きと飢を止めまし いや永久に御栄光と平安を与へたまふべし 神は愛なり生命なり。 第二一九 一 千早振る神の恵に辿りつつ 定めなき世を安く渡らむ。 二 天地をたもたせ玉ふ主の御手は など人の子を守らざらめや。 三 皇神の御座の前に跪き 罪の重荷をおろしやすめよ。 四 神の稜威朝な夕なに謳ふ身は 厳の御国の民となりぬる。 第二二〇 一 風に乗り浪の上をば歩むとも 神の御業に如何でしかめや。 二 永久に朽ちぬ宝を秘め置きし 世継王の山を仰ぎ見るかな。 三 大空に醜の黒雲満ち渡る 中よりぞ神の恵照り来る。 四 皇神の御顔さへも押かくす 闇夜はことに短かりけり。 五 浮雲の晴れ行く空を待てしばし 朝日輝く東雲近し。 第二二一 一 世の中の栄えを如何で望まむや 夜なき国に救はせたまへ。 二 禍の降りかかりたる身の上も おぢぬ心を与へたまはれ。 三 現世の旅往く時も皇神の 聖き御あとを踏ましめたまへ。 四 我神は親しきおのが友垣と たよる心をもたせ玉はれ。 (大正一二・五・八旧三・二三加藤明子録)
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霊界物語 62_丑_讃美歌2 03 神力 第三章神力〔一五七八〕 第二七二 一 皇神の教のちからに霊魂を 強めて曲のとりでにせまれ。 二 曲神の世にある限り言霊の いくさは止まじ勇み進めよ。 三 皇神のいづのちからに頼りなば まがつ戦もなにか有らむや。 四 たたかひの長きを悔む事なかれ かちどき挙ぐる時は迫りぬ。 五 曲神の力加はり来る時 神の力はいや増り行く。 六 神国の厳のつはものいざ進め 生言霊の楯をかざして。 第二七三 一 浅き瀬は醜のあら浪高けれど 深き流れは水音も無し。 二 御救ひの舟に棹さし辷りゆく 大海原の波の静けさ。 三 たらちねの母のみどり子安らかに ねむらす如く治めますかも。 四 舟人の声も静かに聞ゆなり いざすすみゆけ救ひの船に。 五 みさかえの珍の港も近づきぬ 神のまにまに御船漕ぎゆく。 六 瑞御魂救ひの舟とあらはれて 浪に漂ふ世人を助くる。 第二七四 一 恐れずに進め言霊神軍よ 十曜の御旗高くひるがへる。 二 言霊の軍の声に戦きて 雲を霞と敵は逃げ往く。 三 神軍の勲を称ふ其声は 黄泉の礎揺り動かさむ。 四 言霊のみやび言葉を打ち出して 仇の砦に進み往かまし。 五 たとへ身は滅び失すとも皇神の みくには永久に滅ぶ事なし。 六 黄泉国醜の力も消えて往く 生言霊の勇ましきかな。 七 天使世人と共に皇神の 勲称ふる時は来にけり。 第二七五 一 皇神の御旨畏み進む身は 醜の曲霊も何か怖れむ。 二 言霊の太刀取佩きて寄せ来る 仇を言向け和せ神人。 三 醜の仇放たばはなて征矢のたま われにも神の楯はありけり。 四 仇浪の醜の企みも何かあらむ 神の守のしげき身なれば。 五 戦の其度毎にわが力 神の恵にいや勝り行く。 六 瑞御霊表に輝きたまひつつ 世を治めます日は近づきぬ。 第二七六 一 立てよ奮へよ三五の神のよさしの神軍よ 十曜の御旗翻し総ての仇を言向けて 神の御稜威を四方の国輝かすまで進み往け。 二 皇大神は神軍を数多率きつれ大空の 雲掻き別けて下ります醜の悪魔はいや猛く 押し寄せ来る事あるも何か怖れむ三五の 誠の道の宣伝使。 三 立てよ言霊神軍よ厳の御霊を経となし 瑞の御霊を緯となし錦の御旗を織りながら 仁慈の鎧を身にまとひ智慧の剣を打ちかざし 各自々々の職分と身も棚知らに進むべし。 四 神の御軍漸くに終りを告げて勝鬨の 声は天地に揺ぐなり永久の生命の冠をば 受けて栄えの神柱経と緯との経綸に 励しみまつれ信徒よ神は汝と倶にあり 人は神の子神の宮。 第二七七 一 曲津霊を言向け和す神軍の 錦の御旗に従ひ進め。 二 世のそしり醜の妨げ厭はずに 進むは神の御旨に叶へる。 三 千万のあざみ妨げ身にうけて 怯ぢず撓まず進め神人。 四 太刀剣火水の中も厭はざらむ 世のため神の御為なりせば。 五 男女老と若きの隔てなく 神の軍に行くは雄々しき。 六 黄泉の国払ひくだきて神国に 開かせたまふ瑞の大神。 七 皇神の使はせたまふ御軍の 尊き群に入るが嬉しき。 第二七八 一 言霊の軍の主は瑞御霊 醜の曲霊も清められ行く。 二 神軍の列に加はり血の海を いやさきがけて進み行かまし。 三 如何にしてわが身一人が花の園に 嬉しき夢を辿るべしやは。 四 目のあたり醜の仇神潮の如く 寄せ来る見れば心勇みぬ。 五 大御旗空にかざして戦はむ 生言霊になびかぬ仇なし。 六 弥栄に栄ゆる御代は近づきぬ 我日の御子の厳の光に。 第二七九 一 村肝の心をののき惑ふときも 勇ませたまふ厳の大神。 二 わが為に天津神国に祈ります 瑞の御霊の恵かしこし。 三 形ある宝に眼奪はれて 知らず知らずに黄泉に落ち往く。 四 素盞嗚の神の負ひます八千座は 世人の罪のあがなひと知れ。 五 遣瀬なき諸の悲しみ悩みをも 払はせたまふ厳の大神。 六 皇神の秘めたまへる慈愛 現はしたまふ世は近づきぬ。 七 現身の塵打ち払ひ御恵の 冠をたまふ三五の神。 八 許々多久の悩みに勝ちて永久の 春ばかりなる神国へ行かむ。 第二八〇 一 城高く堀深くとも仇人の 拠れる砦は恐るるに足らず。 二 弥高き城も軍も皇神の 伊吹の狭霧に水泡と消え往かむ。 三 怖るべき仇は世人の目に見えず 攻めも来らず囲みもなさず。 四 恐るべき誠の仇は心なり 鬼の潜みて時期を窺ふ。 五 わが胸に潜める仇は三五の 御霊の剣に刺し徹してむ。 六 生霊の珍の剣に怯ぢ怖れ 心の仇は滅び失せけり。 七 皇神は軍の主にましませば おそるることなく進み戦へ。 八 内外の仇悉く平らげて 更生主の御前に勝鬨あげよ。 第二八一 一 神の子よ神の御声に目を醒ませ 世の終るとき近づき来れり。 二 永久の生命の綱は御空より 神のまにまに降り来にけり。 三 諸人よ神の御声を謹みて 生言霊の御綱に縋れ。 四 早来よと綾の高天原に現はれて 招かせたまひぬ生命の神は。 五 皇神の栄え輝き現世に 又比ぶべきものなかるべし。 六 現世にときめき渡る人の名も 神の国にはいとど小さき。 七 瑞御霊招かせたまふ玉の声を しるべに走れ神の都へ。 八 ミロクの代開け初めたる暁は 神の力を称へぬはなし。 (大正一二・五・一〇旧三・二五於教主殿明子録)
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霊界物語 62_丑_讃美歌2 11 神勲 第一一章神勲〔一五八六〕 第三五二 一 善き友の打ち集ひつつ皇神の 勲たたふる声勇しも。 二 喜びて生命の主の御前に 伊寄り集へる神人の群。 三 疑はず心迷はずためらはず 神の大路にとく進めかし。 四 限りなき人の霊魂の楽しみは 神の御園に比ぶるものなし。 五 皇神の道によりての交はりは 親しみ長くうつる事なし。 六 生みの子のいやつぎつぎに相伝へ 神の大道を守りゆくべし。 第三五三 一 皇神と共永久に限りなき 珍の生命の栄え嬉しき。 二 賤の身も清き生命を永久に 与へたまひし尊き神はも。 三 荒野往く淋しき旅も夜毎に 近づきにけり元のわが家に。 四 霞の奥雲の彼方に皇神の 黄金の御門はえ初めにけり。 五 永久の珍の命をたまひてし 瑞の御霊の恵かしこし。 六 今ぞ知る厳の御霊の御勲 瑞の御霊の深き恵を。 第三五四 一 人の目に見えずかからず永久に 光り輝く神国ありけり。 二 憂き雲もあとなく晴れて苦しみの 雨さへ降らぬ皇神の園。 三 幸流れ喜び溢れ御栄の 尽きぬは神の御園なりけり。 四 瑞御霊黄金の枢引きあけて 待たせたまへど恐れて入らず。 五 天使疾く下り来てわが弱き 魂を導け神の御園へ。 六 大空に清く聞ゆる歌の声は 天津聖の称ふるなるらむ。 第三五五 一 世の塵をはき清めつつ選まれし 清けき民の群に入らばや。 二 心安く宴会の筵に招かれて 玉の御歌を聞くはうれしき。 三 綾錦ミロクの殿の直会に 遇ひし昔のなつかしきかな。 四 未だみぬ尽きぬ御幸のおぼろげに うつるも畏しミロクの殿は。 五 瑞御霊生命の主と仰ぎつつ 誠の御子は集まり来るも。 六 過ぎ去りし憂ひ悩みも今ははや よろこび事の種となりぬる。 七 瑞御霊其勲を高らかに 親しくほむる日こそ待たるる。 第三五六 一 老いゆきて夕日影なすわが命 失するも悔いじ神とありせば。 二 黄金なす翅にのりて故郷に 勇みて往かむ神の守りに。 三 ヨルダンの岸辺の露を踏みわけて 神国に昇る日は近づきぬ。 四 天使下り来ますか黄金なす 翅の音の聞え来にけり。 五 綾錦厳の都にあれませる 教主に遇ふ日を待ちわびにけり。 第三五七 一 錆腐り失せ往く宝何かあらむ 誠の宝を神国に積まばや。 二 何よりもわが求むるは天津国の 夜なき園の清所なりけり。 三 わが名をも記させたまへ天津国の 清き御文に輝くばかり。 四 天の星真砂の数の罪咎を 払はせたまへ瑞の大神。 五 八千座の置戸を負ひて世の人を 救ひやらむと誓ひしわが教主。 六 わが名をば生命の文に記されしと 天津たよりに聞く日嬉しき。 七 天津国に澄み渡りたる諸声は 清き御霊の謡ふなるらむ。 八 露ばかり乱れ滅びも無き国の 都に至ると思へばうれしき。 第三五八 一 打ち仰ぐ天津御空に輝ける 楽しき住所ありと知らずや。 二 わが魂は輝く神の御国にて 親しき友と共に語らむ。 三 諸々の嘆き苦しみ打ち忘れ 御民となりて神業に励しめ。 四 豊なる神の恵を永久に 歓ぎ楽しむ天津国人。 第三五九 一 嬉しさの涙かわきて頼もしく 悲しくありし身はくれてゆく。 二 現身の命の消ゆる其日まで 神は安けく守りましけり。 三 新しく天津御国に甦り 尽きぬ命をまたも賜はる。 四 汚れたる諸人達の罪を許し 御禊の業に救はせたまへ。 五 日に夜に諸の汚れを掃清め 長閑な春に遇ふ日嬉しき。 六 皇神の恵の中にやすらひて 天津使とともに仕へむ。 第三六〇 一 夢の間に月日はたちて年老いぬ ただ此の上は神のまにまに。 二 人の世の命は如何に長くとも 百年越ゆるものは稀なり。 三 振り返り歩みし道を眺むれば 罪と汚れの足跡のみなる。 四 悲しみし心は重荷となり果てて 行き難むほど年は暮れけり。 五 わが魂を清め澄して皇神の 姿をうつす鏡となせよ。 六 新しき晨を迎へて新なる 春の光りに遇はさせたまへ。 第三六一 一 とどめ得ぬ月日の歩み早ければ わが身の花はうつろひにけり。 二 行く秋の紅葉の色もはやあせて 冬も間近くなりにけるかな。 三 振り返り過ぎ来し方を眺むれば 雲に閃く電の如し。 四 行く水の面に浮ぶ水泡の わが身の果は影も止めず。 五 水泡の水玉と消えしわが魂は 夜なき国に甦りつつ。 六 永久に尽きぬ命を保ちながら 夢の浮世と云ひて夢見つ。 (大正一二・五・一二旧三・二七於教主殿明子録)
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霊界物語 62_丑_讃美歌2 25 神雲 第二五章神雲〔一六〇〇〕 第四九二 一 せまり来る神代も更に白河の 関の戸開く人の少き。 二 草枕旅に出でては思ふかな 綾の高天の大前如何にと。 三 白雲の遠く隔ちし国々ゆ 御稜威慕ひて来る神垣。 四 敷島の大和島根の神の庭は 千代に八千代に動かざらまし。 五 さざれ石の巌となれる姿見れば 神の都の御栄えを知る。 六 皇神の珍の教は万代に 弥広らかに栄えますらむ。 七 神垣の木々の緑は萌え出でて 神代の春を長閑に語れり。 八 杜鵑声涸れ果てて御恵の 露奥津城に忍び音になく。 第四九三 一 四尾山峰の諸木も緑して 迎へ待つらむミロクの御代を。 二 桶伏の山の聖地に杜鵑 夜な夜な来りてひた啼きになく。 三 三千年の長き月日を啼き明し 今なほ叫ぶ山杜鵑。 四 風の宵雨の晨は一入に 物悲しもよ桶伏の山。 五 人の目に壊たれたりと見ゆれども 珍の高殿永久に建てり。 六 本宮山若葉をふくむ山鳩の 影さへ見えぬ闇夜なるかも。 七 谷の戸を押しわけ歌ふ鶯の 声は常世の春の魁。 八 咲くとても手折る人なき松の花 葉末の露の恵知らねば。 第四九四 一 神垣の松の梢に御空飛ぶ 鶴舞ひ下り千歳を契る。 二 月なくて如何で木草の茂るべきや 天津光の影のみにして。 三 又しても月の面のみを讃め称へ 焦れ顔なる夕暮の空。 四 金竜の池の面に澄む月は 世の乱れをも知らず顔なる。 五 水鳥のいと安らけく浮ぶとも 足にひまなき月の御心。 六 神思ふ珍の心につながれて あこがれ出できぬ糸のまにまに。 七 君知るや高天原の神の園に 身はよそながらかかる心を。 八 神垣の月の光をながめつつ したたる雫に霑ひにけり。 九 神垣の松の落葉をかきよせて 常夜の暗の篝火とせむ。 一〇 大丈夫の中に淋しく只一人 交こるわが身も神国のため。 第四九五 一 千早振神の教にしたがひて 御国に尽す外なかりけり。 二 楠船ののり越す波のいや深く 真心ひとつに御国に尽さむ。 三 花の色は昔ながらに変らねど 移ろひにけり心の花は。 四 木下蔭に淋しげに咲きし兄の花も 天津光をうけて栄ゆる。 五 空蔽し醜の古木の倒れてゆ 白梅の花は世に出でにけり。 六 山深み日影もささぬ谷の底に 薫る桜も月の恵ぞ。 七 花は散り木の葉も落ちて杣人の 手斧の錆となる老木かな。 八 桶伏の御山の花は散らされて わが面影にのみぞ残れる。 第四九六 一 古の神の都に吹き捲る 嵐の浪の打ちかへしかも。 二 科戸辺の風吹きかへす朝ぼらけ 浪逆まきて仇船沈めむ。 三 来て見れば山の諸木は緑すれど 浦悲しけれ宮居の跡は。 四 三千年の醜荒浪に漂ひて 現れましし神の宮居こぼちぬ。 五 桶伏の山登り往く信徒の 心の空に時雨しにけり。 六 宮脇に潜める醜の曲神の 荒ぶがままに任したまひぬ。 七 皇神の心は広し和田の原 秘密の底は知るよしもなし。 八 桶伏の山に夜な夜な只一人 祈る真人のありと知らずや。 第四九七 一 白妙の衣の袖に梅薫る 綾の高天に詣で来しより。 二 家族親族うち連れ立ちて神園の 教の花に酔ふぞ楽しき。 三 和衣の綾部に薫る白梅は 心の花の眼さませり。 四 昔見し白梅の木は老いぬれど 花の色香はいとど目出度し。 五 足曳の深山の奥に潜むとも 花は咲くなり鳥歌ふなり。 六 青垣を四方に繞らす山里に 清き清水の流れけるかな。 七 都路の塵に汚れし御霊をば 来りて滌げ玉の井の水に。 八 山里に身は老いぬれど霊魂は 神の都の花と薫れる。 第四九八 一 神園の松に御霊を取りかけて 神去りましぬ教御祖は。 二 白梅の花に心を残しつつ 露奥津城に眠りたまひぬ。 三 木花の咲耶の姫の生れましし 黄金の峰は雲に聳えつ。 四 瑞御霊珍の教をうつそみの 世は木の花と永久に栄えむ。 五 西へ行く思ひは誰人もあるものを 見捨てて入るな大空の月。 六 憐れみの心は誰も広けれど 育くむ袖の狭きが憂れたき。 七 限りなき恵の御手を差し伸べて 救はせたまふ瑞の大神。 八 頂に霜降り添ひて白雪の 心の空は清くなりぬる。 第四九九 一 五月蠅なす声は激しくなりにけり 世の別れ路の近づきしより。 二 曲神の荒む闇世もすみがまの 黒き煙と消ゆる神代なり。 三 あゝ神と唱ふる声に夢醒めて 打ち出て見れば月は傾く。 四 厳御霊教の光なかりせば 如何でか月に心を懸けむや。 五 苗代の水は乾きぬ天の河 放ちてみづの御霊たまひぬ。 六 梅散りて御園の桃は咲きにけり 薫り目出度き神のまにまに。 七 春山に朝啼く雉子の声すなり 神の御教の若芽摘めとや。 八 月の夜に生育ちたる姫小松の 葉末の露は玉と照らへり。 第五〇〇 一 池水にうつりて咲ける梅の花を 手折るはみづの心なりけり。 二 吾行かむ後まで散らず待てよかし 薫り床しき神園の梅。 三 久方の御空に咲ける桃の花を 手折らむよしも泣き暮しつつ。 四 よしや身は山河遠く隔つとも 心に手折らむ神園の桃。 五 真清水も霜にこほればひた曇る 昔にかへれみづの御霊に。 六 山桜彼方此方に立ち交り 松の緑に眺望添へぬる。 七 嵐山花のまにまに緑なくば 錦の峰と誰か称へむ。 八 風に散る花の姿を眺むれば 人の浮世の憂たくもあるかな。 第五〇一 一 散りて又再び花の咲く春を 待つよしもなく滅び行くかな。 二 永久の花咲き匂ふ天津国の 春こそ永久の住家なりけり。 三 讃め称へ見上ぐる花の足許に 散りて踏まるる山桜かな。 四 九重に咲く山吹の果敢なけれ 散りたる後に実さへなければ。 五 世の中は往来の道も見えぬまで 闇の帳に包まれにけり。 六 闇の戸を押しわけ昇る朝日子の 日の出の神を待ちあぐみつつ。 七 東雲の空を眺めて神の子の 月松の代を焦れ慕ひつ。 八 露霜の置きて褪せたる白菊の 花はあやしく葉末に慄ふ。 (大正一二・五・一五旧三・三〇於教主殿明子録)
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霊界物語 62_丑_讃美歌2 29 神洲 第二九章神洲〔一六〇四〕 第五三二 一 宮柱太敷建てし其昔を 偲ぶは一人われのみならず。 二 円山の姿はとみに変れども 御空の月はいよよさやけし。 三 新聞の記者の囁き腐鶏の 暁またで鳴きたつるかな。 四 円山の宮は再び建ちぬべし 打ち砕きたる醜の哀れさ。 五 醜弓のひきて返らぬ過ちに 的射外せし鬼のはかなさ。 第五三三 一 桶伏の山に八重雲棚曳きて 紫の空に月はかがよふ。 二 紫の御空を広くしめながら かがやき渡る円山の月。 三 本宮山木の葉のさやぎ静まりて 洗ふが如き夏月照れり。 四 礎の跡を照らして夏の月 恵の露の雨を濺げり。 五 只さへに清けきものを円山の 月にかがやく礎の露。 第五三四 一 円山の底津岩根に厳かに 昔を語る珍の礎。 二 円山の月にあこがれ登り見れば 露を三年の涙あふるる。 三 月清し礎清し円山の 木々の梢はいとど清しも。 四 金竜の池に浮べる魚族も 醜の嵐を恐れざりけり。 五 西東南ゆ北と醜神の 襲ひし昔も夢となりぬる。 第五三五 一 梓弓春の円山緑して 梢の露に月を宿せり。 二 人の世は百度千度移るとも 月は昔の姿なりけり。 三 限りある人の命は草におく 露の干ぬ間の朝顔の花。 四 円山にかかりし雲のあと晴れて 今はさやけき月を見るかな。 五 みちのくの月を見むとて来て見れば 聖地に劣りて濁れる心地す。 第五三六 一 照る月の光に変りなけれども 人の心の空はいろいろ。 二 円山に啼き残したる杜鵑 心悲しげに仇し野になく。 三 何人も御空の月はめづるものを 花に心を取られ往くなり。 四 仇花の茂り合ひたる仇し野に 色香妙なる白梅はなし。 五 皇神の深き恵を白梅の 花手折らむと仇し野彷徨ふ。 第五三七 一 照る月の真下に住めばわが影の いとも小さく見ゆるものかな。 二 月影の傾く時はわが影の いと長々しく見ゆるものなり。 三 小夜衣かけはなれても赤心の 通ひし友はなつかしきかな。 四 有難さに落つる涙の玉の神諭は わが永久の生命なりけり。 五 空包む夜の帳もあきの空に 輝く月の影の恋しさ。 第五三八 一 木の花の神の命の永久に 鎮まり居ます富士の神山。 二 瑞御霊厳島姫永久に 竹生の島に鎮まりたまふ。 三 高熊の峰に現れます玉照彦の 光輝く時は来にけり。 四 黄金なす峰の麓に現れし 玉照姫の御世となりぬる。 五 桶伏の山にひそめる杜鵑 五月の空を待ちつつ経るも。 第五三九 一 一箸の運びの間にも死の影は 人のまはりをつけ狙ひ居る。 二 もてなしのいと懇な昼食こそ 味も殊更美しきかな。 三 花かざす乙女の玉手にくめる湯は いと香ばしき薫り漂ふ。 四 日に月に清き心のます鏡 のぞくも嬉し金竜のうみ。 五 起き伏しの草の露にも輝きぬ 瑞の御霊の月の御影は。 第五四〇 一 大前に天のさかてを只一人 うつの山鳩下り来にけり。 二 大前の榊にかけし十寸鏡は 清けき神の心なりけり。 三 曇りなき鏡の面を眺むれば わが心根の恥かしきかな。 四 円山に昇る月影いと清く ミロクの御代を守りますらむ。 五 神代より清く流れし和知川の 水瀬に澄める秋の夜の月。 第五四一 一 巌窟をあけし鏡をたづぬれば 御空に澄める月と答へむ。 二 御剣も鏡も玉も瑞御霊 岩戸を開く宝なりけり。 三 神つ代の世の有様をたづねむと 月にとへども月は答へず。 四 地に降り草葉の露に身を寄せて むかしを語る月の大神。 五 榊葉にたれたる瑞の白木綿は 神も心をかけてや見るらむ。 (大正一二・五・一六旧四・一於教主殿明子録)
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霊界物語 63_寅_伊太彦の物語 08 怪物 第八章怪物〔一六一五〕 紺青の浪を湛へたスーラヤの湖面を稍新しき船に真帆を孕ませ、晩夏の風を受けて、彼方に霞むスーラヤ山を目蒐けて徐々と進み行く。アスマガルダは艪を操りながら欵乃を謡ふ。 『テルはよい所南をうけて スーラヤ颪がそよそよと。 沖に浮べるスーラヤ嶋は 夜は千里の浪てらす。 昼は日輪夜は竜王の 玉の光で澄み渡る。 此海は月の国でも名高い湖よ 浪のまにまに月が浮く。 三五の神の司の伊太彦さまが 今日の門出のお目出度さ。 空高く風澄み渡る此湖面は 底ひ分らぬテルの湖』 伊太彦は謡ひ出した。一同は船端を叩いて拍子をとる。 伊太『三五教の神柱神素盞嗚の大神の 瑞の御言を畏みて玉国別の師の君と 山野を乗り越え海渡り千々に心を砕きつつ 神の依さしのメッセージ尽さむ為に遙々と テルの里まで来て見れば思ひがけなきブラヷーダ 姫の命の現れまして神の結びし赤縄をば 茲に悟らせたまひけり吾等は神の御言もて 大黒主の蟠まるハルナの都へ言霊の 軍に進む身にしあれば途中に於て妻を持ち 夫婦気取で征討に上るも如何と思へども 三千彦司もデビス姫妻に持たせる例あり 吾師の君も此度の赤縄をいなませ給ふまじ 只何事も人の身は神のまにまに進むより 外に道なし伊太彦は茲に夫婦の息合せ スーラヤ山に駆け登り竜の腮の宝玉を 神の助けに手に入れてミロク神政成就の 珍の神器と奉り神の御稜威を四方八方に 完全に委曲に照らすべしあゝ惟神々々 スーラヤ山は高くともナーガラシャーは猛くとも 神の恵を笠に着て誠の道を杖となし 進まむ身には何として醜の曲津の障らむや あゝ勇ましし勇ましし一度に開く木の花姫の 神の命の御守りブラヷーダ姫と諸共に 珍の神業に仕へむと進み行くこそ楽しけれ あゝ惟神々々御霊幸倍ましませよ』 ブラヷーダは又謡ふ。 『父と母とに育くまれ十六才の年月を 蝶よ花よと愛られつ送り来りし身の果報 思へば思へば有難しこれも全く三五の 皇大神の御恵と朝な夕なに感謝しつ 大御恵の万分一報はむものと朝夕に 祈りし甲斐やあら尊天津国より下らしし 御使人の伊太彦に嫁ぎの契結びつつ 言霊軍の門出に立つ白浪と諸共に 彼方に浮ぶスーラヤの御山に進む嬉しさよ ナーガラシャーは猛くともスーラヤ山は高くとも 神の恵に抱かれし吾等は如何で撓まむや 救世の船に身を任せ兄の命に送られて 千尋の湖を進み行く今日の旅路の勇ましさ あゝ惟神々々御霊幸倍ましまして 吾背の君の使命をば遂げさせたまへ大御神 珍の御前に願ぎまつる朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも星は空より墜つるとも スーラヤの湖は涸るるとも神に誓ひし赤心は いや永久に動かまじ吾背の君よ兄君よ カークス、ベース両人よ勇ませたまへ惟神 神は汝と共にあり神は吾等を守ります 神と神とに抱かれし人は神の子神の宮 天地の中に恐るべきものは微塵も非ざらむ 進めよ進め此御船吹けよふけふけ北の風 あゝ惟神々々御霊幸倍ましませよ』 今日は一入天気がよいので漁船の影は殊更多く、彼方此方に真帆片帆浪のまにまに浮んで、春野の花に蝶の狂ふが如く翅の様な帆が瞬いて居る。少しく浪は北風に煽られて高けれど、何とも云へぬ爽快な気分である。アスマガルダ、カークス、ベースが汗をたらたら流して漕ぎ往く船は其日の黄昏時に漸く、スーラヤ山の一角についた。磯端は白布を晒した如く、打ち寄する浪が立ち上つて岩にぶつつかり、砕けては散る其光景は可なり物凄じかつた。雪のやうな白い水煙の一丈許りも立つ中を船を漕ぎ寄せ、漸くにして陸地についた。さうして船を高く磯端に上げて繋いで了つた。日は漸くに暮れて来る。俄に暴風吹き荒び、湖面は荒浪立ち狂ひ、ザアザアと物騒がしき音が聞えて来出した。一行五人は上陸地点より一二町許り登つた所の大岩石の蔭に身を潜めて湖上の疲れを休める事とした。さうして明日の払暁を待つて登山する事と定めて仕舞つた。蓑を布き笠を顔の上に乗せて岩蔭に一同は横たはつた。夜はおひおひと更わたり暴風も止み、海の唸りも静まり、四辺は深閑として来た。十四日の月は雲を排して皎々と輝き初めた。伊太彦、ブラヷーダ、アスマガルダの三人は他愛もなく睡つて了つた。カークス、ベースの両人は何だか気が立つて寝られぬので、まぢまぢして居ると、子の正刻と覚しき頃、四辺の密林の枝をガサガサと揺つて怪しき物影が近よつて来る。カークスは慄ひ乍ら、盗むやうにして其姿の行方を見詰て居る。怪しの姿は五人の前に矗と立ち火のやうな赤い顔を晒し、青い舌を五六寸許り前に垂らして錫杖をついて居る。忽ち怪物は雷の如き声を張り上げ、 怪物『イーイーイー、伊太彦の神司とやら、其方はスーラヤ山に、ウバナンダ竜王の玉を取らむとして来た心憎き曲者、これより一足でも登れるなら登つて見よ』 と呶鳴りつけた。此声に伊太彦も兄妹も目を覚まし、きつと声する方を見れば以前の怪物が立つて居る。伊太彦は轟く胸をグツと押へ、「惟神霊幸倍坐世」を高唱し終り、 伊太『アハヽヽヽ。スーラヤ山に年古く棲む其方は古狸であらうがな。吾々を何と心得て居る。勿体なくも大神の使命をうけて大蛇退治に進む神の使だ。汝等が如きものの容喙し得べき限りのものでない。控へ居らう』 アスマガルダ兄妹を初め、カークス、ベースは一所に集まり、顔色まで真青にして慄つて居る。伊太彦は痩我慢を出して一人空気焔を吐いてゐる。怪物には此方から云ひ負たら敗北ると云ふ事を予て聞いて居たので、此方から負かしてやらうと思つて、矗と立ち上り怪物に向つて、 伊太『イーイーイー、斎苑の館の宣伝使、天下無双の勇士、伊太彦とは俺の事だ。種々な事を致して吾々の邪魔を致すと了見は致さぬぞ』 怪物『ロ、ロー、碌でもない女を連れて神聖無比なるスーラヤ山に登るとは何の事だ。汝は聖場を汚す痴漢、今此方が神力によつて其方の体をビクとも動かぬ様にして呉れる。覚悟を致せ。ワハヽヽヽ、ても扨ても可憐さうなものだわい』 伊太『ロヽヽヽ碌でもない、ど倒し者奴、ナヽ何を吐すのだ。妖怪変化の容喙すべき限りでない。早くすつ込み居らう。ぐづぐづすると言霊の発射と出かけようか』 怪物『ハヽヽヽヽ、腹が立つか、恥入つたか、薄志弱行の腰抜宣伝使奴、高が知れたウバナンダ竜王の玉を取るに加勢を頼み、女を連れて来るとは、実に見下げ果てたる腰抜野郎奴』 伊太『ハヽヽ張子の虎のやうに首ばかりふりやがつて何の態だ。サア早く退散致すか、正体を現はすか、何神の化身だと云ふ事を白状致すか、返答次第によつては此方にも考へがあるのだ』 怪物『ニヽヽ憎いか、いや憎らしいと思ふか、其苦い顔は何だ。 ホヽヽ呆け野郎奴、身の程知らずも程があるわい。 ヘヽヽヽ下手な事を致して、後でベースをカークスな。 トヽヽヽ途方途轍もない大それた欲望を起し、栃麺棒を振つてトンボ返りを致し、岩窟のドン底迄おとされて頓死すると云ふ災厄が目の前に近づいて来て居るのを知らないのか。イイ馬鹿だなア』 伊太『チヽヽちやァちやァ吐すな、些も貴様等のお世話に預ら無くてもよいのだ。智謀絶倫の伊太彦、 リヽヽ凛々たる勇気を鼓して、ウバナンダ竜王の館に進む神軍の勇士だ。 ヌヽヽぬかりのない此方、水も漏さぬ仕組を致して茲に、いづ御魂が登山探検と出かけたのだ。すつ込んでおらう。其方の出て来てゴテゴテ申す幕ぢやないのだ』 怪物『ルヽヽ累卵の危きを知らぬ痴呆者奴、類は友を呼ぶと云ふ馬鹿者の好く揃つたものだ。 オヽ大馬鹿者奴、大泥坊奴、大戯気者、神の道を歩きながら、鬼か大蛇のやうになつて竜神の玉を、ぼつたくらうとは此方もおとましうなつて来たわい。身の程知らずの横道者だな』 伊太『ワハヽヽヽ、笑はしやがるない。没分暁漢奴、吾輩のすることに容喙する権利がどこにあるか。悪い事は些しも致さぬ善一筋の宣伝使ぢや。分らぬ事を申さずに、己の住所にトツトと引込んだがよからうぞ』 怪物『カヽヽ構ふな構ふな、惟神だとか神の道だとか何とか、かとか申て、其処辺を騙り歩く我羅苦多宣伝使だらうがな。第一女をイヤ嬶を連れて登つて来るとは以ての外だ。当山の規則を破つた大罪人奴、サア覚悟を致せ、頭からこの大きな口で噛ぶつて食て仕舞つてやらう』 伊太『ヨヽヽ妖怪変化の分際として此方に指一本でも触へられるのなら触へて見よ。下らぬ世迷ひ事を申さずに、もはや夜明に間もあるまいから、気の利いた化物は足を洗うて疾に引込む時間だ。与太リスクを並べずに、よい加減に伏さつたらどうだ』 怪物『タヽヽ痴呆者奴、要らざる頬桁を叩くと叩きつぶしてやるぞ。高が知れた人間の三匹や五匹一口にも足らぬわい。欲の熊鷹股が裂けると云ふ事を貴様は知らぬのか痴呆者奴、 レヽヽ、恋愛至上主義を発揮して神聖なる当山に迄、初めて嬶をもつた嬉しさにトチ迷ひ登つて来ると云ふデレ助だから、吾々仲間のよい慰み者だ』 伊太『ソヽヽ、そうかいやい、そらさうだらう。羨りいなつたか。一寸位手を握らしてやり度いが、矢張それも止めて置こうかい、何だ、その六ケ敷い面つきは。貧相なものだのう』 怪物『ツヽヽ月が空から貴様の脱線振を見て笑つて厶るのも知らぬのか。心の盲、心の聾は仕方がないものだなア。捉まへ所のない屁理屈を並べて其処辺を遍歴致すと云ふ強者、おつとドツコイ、つまらぬ代物だからなア。 ネヽ猫撫声を出しやがつて、夫婦がいちやづいて此島に打渡り、グウースケ八兵衛と睡つて居るとは念の入つた痴呆者だ』 『ナヽヽ、何を吐しやがるんだい。情ない事を云ふて呉れない。何程羨ましうても貴様の女房にしてやる訳には行かず、あゝ難儀のものが出て来たものだ。俺も同情の涙に暮れぬ事もないのう怪物』 怪物『ラヽヽ、らつちも無い事を吐くもんぢやないわい。 ムヽヽ昔から誰一人目的を達した事のない竜王の玉を取らうとは無法にも程がある。ほんに命知らずの無鉄砲者だのう。こりや無茶彦、向つ腹が立つか、ムツとするか、虫が好かぬか、夫れや無理もない。併し乍ら玉が取りたけれや明朝とつとと登つたらよからう。此山の中腹には死線といつて人間の通れぬ所があるのだ。其処へ往くと邪気充満し、其方如きものが其毒にあたると心臓痳痺を起し、水脹れになつて死ぬるのだから、さうすれば俺達が寄つて集つて皆喰つて仕舞つてやるのだ。ても扨ても不愍ものだなア』 伊太『ウフヽヽヽ、五月蠅奴だなア、そんな事を申て俺達の荒肝を取らうと思ふても駄目だぞ。牛の丸焼でも二匹三匹一遍に平げる此伊太彦さまだ。ウゴウゴ致して居るともう堪忍袋の緒が切れるぞよ。 イヽヽ何時迄も何時迄も羨ましさうに夫婦の睦まじい姿を見て指を銜へて見て居るより、いい加減に幻滅致したらどうだい。悪戯も程があるぞよ』 怪物『ノヽヽ、野太い代物だなア。野に寝たり、山に寝たりして露命を繋いで来て、漸くテルの里で満足の家に泊めて貰つたと思つて得意になり、ブラヷーダを女房に持つたと思ふて其はしやぎ方は何だ。天下の馬鹿者、命知らずとは貴様の事だ。イタイタしい伊太彦の我羅苦多奴、イヒヽヽヽ』 伊太『オヽヽお構ひだ、俺のする事をゴテゴテ構ふて呉れない。 クヽヽ苦労の凝の花が咲いたのだ。貴様もこんなナイスが欲しけりや、ちつと誠の道に苦労を致せ』 怪物『ヤヽヽ矢釜敷いわい、夜分に山の中で露の宿を取る厄雑宣伝使奴、八岐大蛇の一の乾児の此方様に今命を取られるのを御存じがないのか。 マヽヽ、負惜みのつよい、真面目腐つた其面付で表面をかざつて居るが、貴様の心の中は地異天変大地震が揺つて居らうがな。どうだ恐れ入つたか』 伊太『ケヽヽ怪体の悪い怪しからぬ奴だ。怪我の無い中に早く帰れといつたら帰らぬか。 フヽヽ、不都合な、フザケた事を致すと、捕縛つて仕舞ふぞ。いや踏み潰してやらうか、何が不足で夜夜中、安眠妨害に出て来せたのだ。不都合な不届きな奴、 コヽヽ耐へ袋が切れるぞよ。こん畜生、八岐大蛇の眷族なぞは真赤な偽り、其方は数千年劫を経た、苔の生えた小狸であらうがな。 エヽヽ、邪魔臭ひ、この金剛杖をもつて叩きつけてやらう。最愛のブラヷーダが安眠の妨害になる』 怪物『テヽヽ、てんごうを致すな、此方の神力と貴様の力とは天地の相違だ。デンデン虫の角を振り立てて気張つて見たとて岩石に蚊が襲来するやうなものだ。 アヽヽ阿呆な限りを尽さずと、早く此処を立ち去れ。グヅグヅして居るとアフンと致して泡を吹くぞよ。それでも聞かねば、アンポンタンの黒焼にして食てやらうか、サヽヽサア、どうだ早速に口が開くまいがな。扨ても扨ても見下げ果てたる腰抜計りだな。 キヽヽ気に喰はぬ怪物だと思ふであらうが、この方を一体誰だと心得て居る。鬼神もひしぐ勇ある結構な五大力様だぞ。 ユヽヽ、夢々疑ふ事勿れ。只今幽界より其方の命を召し取りに来たのだ。ても扨ても愉快な事だなア。 メヽヽヽ迷惑さうな其面付、薩張面目玉を踏み潰され、折角貰ふた嬶には愛想尽かされ、メソメソ吠面かはくのが、可憐さうだわい。サア冥途の旅にやつてやらう』 伊太『ミヽヽ、見て居れ。此伊太彦の神力を、何程貴様が威張つた所が駄目だ。死線だらうが、五線だらうが神力をもつて突破し、一戦に勝鬨をあぐる三五教の宣伝使様だ。え体の知れぬ汝等如き怪物に辟易するやうで、どうしてハルナの都に進む事が出来ようか。タクシャカ竜王でさへも屁込ました此方だ』 怪物『ヒヽヽ仰有りますわい。日向にあてたらハシャぐやうな腕振りまはし、何程威張つて見た所で、 モヽヽもう駄目だ。耄碌宣伝使の伊太彦司、 セヽヽ雪隠で饅頭食ふやうな甘い事を考へても薩張駄目だ。終りの果には糞を垂れるぞよ』 伊太『スヽヽ、好かんたらしい屁理屈を垂れな。酢でも蒟蒻でもいかぬ妖怪だな。一二三四五六七八九十百千万 惟神霊幸倍坐世』 怪物『キヨキヨキヨ京疎い事を致す伊太彦司、また幽冥界でお目にかからう。エヘヽヽヽ』 と体を揺りながら何処ともなく消えて仕舞つた。 伊太『アハヽヽ、仕様の無い古狸がやつて来やがつて、嚇し文句を並べ立て面白い事だつた。アハヽヽヽ』 アスマガルダは漸く胸をなでおろし、四辺をキヨロキヨロ見廻し乍ら、 『アヽ先生随分偉い奴がやつて来たぢやありませぬか。どうなる事かと思つて大変心配しましたよ。併し貴方の我の強いのにも呆れましたよ』 伊太『アハヽヽヽ、実の所は私も一寸面喰つたのだが、こんな事に負てはならないと空元気を出して見た所、キヤツキヤツと云つて逃げた時のおかしさ、いや心地よさ。斎苑の館出立以来のよい経験だよ』 ブラヷーダ『神様の仰の通り妾の夫伊太彦さまは本当に勇壮活溌の神使です。妾はもうこんな強い方を夫にもつならば世に恐るべきものは厶いませぬわ』 カークス『アハヽヽヽ、豪いお惚けで厶いますこと。なあベース、お浦山吹の至りぢやないか』 ベース『ウフツ』 伊太『古狸吾枕辺に現はれて フルナの弁をふるふをかしさ。 ブルブルと慄ひ乍らに古さまの 世迷ひ言をば聞く人もあり』 カークス『恐ろしさカークスと思へど何となく 腹の底から慄ひけるかな』 ベース『恐ろしさにベースをカークス吾々は 地獄におちし心地なりけり』 其後は何事もなく夜はカラリと明けた。是より一行五人は死線を越へてウバナンダ竜王の匿るる岩窟の玉を取らむと進み往く事となつた。 (大正一二・五・二四旧四・九於教主殿加藤明子録)
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霊界物語 63_寅_伊太彦の物語 22 蚯蚓の声 第二二章蚯蚓の声〔一六二九〕 大き正しき癸の亥年卯月の十四日 新に建ちし天声社二階の一間に立て籠もり 口述台に横臥して遠き神世の物語 弥六十三巻の夢物語述べてゆく 御空は清く地青く垂柳は粛然と 戦ぎもしない夕間暮三五教の宣伝使 玉国別の一行が斎苑の館を立ち出て 諸の悩みに遇ひ乍らスーラヤ山に鎮まれる ナーガラシャーの瑞宝を教の御子の伊太彦に 受け取らせつつ海原を漸く越えてエル港 茲に一行恙なく無事な顔をば合せつつ 前途の光明楽しみて聖地に向うて出でむとす 神の司の初稚姫が木花姫の勅もて 百千万の宣言を宣らせたまへば三千彦も また伊太彦も謹みて妹の命と立ち別れ 各自々々に唯一人聖地を指して進み往く 道に起りし物語いと細々と述べてゆく。 ○ 豊葦原の中津国大日の下の聖場と 遠き神代の昔より定まり居ますエルサレム 珍の聖地に名も高き黄金山に現れませる 野立の彦や野立姫御霊の変化在して 埴安彦や埴安姫と世に現はれて三五の 珍の教を垂れたまふ其大御旨を畏みて 神素盞嗚の大神は島の八十島八十の国 由緒の深き霊場に教の園を開きまし 数多の司を教養し仁慈無限の御教を 開かせたまふ尊さよバラモン教を守護する 八岐大蛇や醜鬼の醜の御霊を言向けて 汚れ果てたる地の上を神の御国に立て直し 妬み嫉や恨みなき誠一つの神の代を 作らむために千万の艱みを恐れず遠近と 玉の御身を砕きつつ励ませたまふ尊さよ 旭は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも 仮令大地は沈むとも三五教の御教は 幾万劫の末迄も宇宙と共に変らまじ あゝ惟神々々神の御稜威の有難き。 ○ 若葉も戦ぐ神の園梅は梢に青々と 頭を並べて泰平のミロクの御代を謡ひつつ 池に泛べる魚族は恵の露を湛へたる 金竜池に悠々と曇りし世界を知らず気に いとたのもしく遊び居る月は御空に皎々と 輝きたまひ神苑を隈なく照らし給へども 木下の闇に潜むなる曲の猛びは未だ絶えず 神に体も魂も供へきつたる瑞月は 体の筋や骨までもメキメキメキと痛めつつ 闇に迷へる世の人を救はむ為に朝夕に 心を千々に砕けども知る人稀な今の世は 救はむよしも荒浪に漂ふ船の如くなり あゝ惟神々々御霊幸倍ましませよ。 ○ 朝な夕なに身を砕き教御祖の残されし 生ける教を委曲に説き諭さむと朝夕に 神の御前に太祝詞清き願を掛け巻も 畏き瑞の御心を知らぬ信徒多くして 夏の若葉の木下闇騒ぎ廻るぞうたてけれ。 ○ 和知の河水淙々と弥永久に御恵の 露を湛へて流るれど瑞の御霊にヨルダンの 清き清水を汲む人ぞいとも稀なる今の世は 清き尊き皇神の教を軽んじ疎みつつ 日頃の主張も打ち忘れいろいろ雑多と口実を 設けて逃げ出すうたてさよ皇大神の御教に 高天原の大本は三千世界を天国に 渡す世界の大橋と教へられたる言の葉を 空吹く風と聞き流し大橋越えてまだ先へ 行方も知らぬ醜霊の身の行先ぞ憐れなり 皇大神の試練に遇ひて漸く眼さめ 悔い改めてかへるとも白米に籾の混るごと 何とはなしに疎ましく初の如くなきままに 又もや醜の曲津霊は高天原の大本は 必要の時は大切に扱ひ旨く使ひつつ 一人歩みが出来だせば素知らぬ顔の半兵衛を 極めこむ所とそしりつつ泡吹き熱吹き末遂に あてども知らぬ法螺を吹き煙の如く消えて往く 誠の足らぬ偽信者神の教を現界の 皆法則にあて箝めて真理ぢや非真理ぢや不合理と 愚痴を唱ふる可笑しさよ何程知識の秀でたる 物識人も目に見えぬ神の世界の有様や 全智全能の大神の御心如何で解るべき 慢心するのも程がある唯何事も人の世は 皇大神の御心に任せて進めば怪我はなし あゝ惟神々々御霊の恩頼を願ぎまつる。 ○ 科学を基礎とせなくては神の存在経綸を 承認せないと鼻高が下らぬ屁理窟並べ立て 己が愚をも知らずして世界に於ける覚者ぞと 構へ居るこそをかしけれ学びの家に通ひつめ 机の上にて習ひたる畑水練生兵法 実地に間に合ふ筈がない口や筆には何事も いとあざやかに示すとも肝腎要の行ひが 出来ねば恰も水の泡夢か現か幻の 境遇に迷ふ亡者なり肉の眼は開けども 心の眼暗くして一も二もなく智慧学を 唯一の武器と飾りつつ進むみ霊ぞ憐れなり。 ○ 山河草木三つの巻弥々茲に述べ終る 又瑞月が出鱈目を吐くと蔭口叩くもの 彼方此方に出るであらう著述の苦労の味知らぬ 文盲学者や仇人の如何で悟らむ此苦労 如何に天地の神々が吾身を助けたまふとも 神より受けし魂の意志と想念光らねば 唯一言の口述も安くなし得るものでない 神の苦労も白浪の上に漂ふ浮草の 心定めぬ人々の囁きこそはうたてけれ 世界に著者は多くとも一日に数万の言の葉を 口述筆記するものは開闢以来例なし 作りし文の巧拙を云々するは未だしもと 許しもなるが一概にこの瑞月が物好に 下らぬ屁理窟並べ立て心に積りし欝憤を 神によそへて歌ふなぞ分らぬ事を云ふ人が 神の教の中にあるかかる汚き人々は 吾身の欲に絆されて表面に神を伏し拝み 棚から牡丹餅おち来る時節を待つよなやり方ぞ 世の立替や立直し今ぢや早ぢやと書くなれば 耳を聳て目を丸め口尖らして読むだらう そんな事のみ一心に待ち暮すのは曲津神 世の禍を待つものぞ大慈大悲の大神は 世界に何事無きやうと朝な夕なに御心を 配らせたまひ大本の教御祖は朝夕に 世界の難儀を救はむと赤心こめて祈りましぬ 其御心も知らずして世界の大望待ち暮す 人は大蛇か曲鬼か譬方なき者ぞかし あゝ惟神々々神の御前に平伏して 此聖場に寄り集ふ信徒達の魂に まことの光を与へつつ耳をば清め目を照らし 天の瓊鉾を爽かに研かせたまひて言霊の 御稜威を四方に輝すべく守らせたまへと朝夕に 体の骨を痛めつつ一心不乱に願ぎまつる あゝ惟神々々大国常立大御神 豊国姫の大御神天津御空に永久に 鎮まりたまふ日の御神月の御神の御前に 世の有様を歎きつつ密かに一人願ぎまつる あゝ惟神々々御霊幸倍ましませよ。 (大正一二・五・二九旧四・一四於天声社加藤明子録) (昭和一〇・六・一六王仁校正)
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霊界物語 64_上_卯エルサレム物語1 21 遍路 第二一章遍路〔一六五〇〕 お寅、お花の両人は溝傍に立つた長屋の窓をあけて額を集め、六ケしい顔をして何かブツブツ囁き居たる処へ、編笠を目深に被つた一人の男が訪ひ来たり、涼しい声で宣伝歌を歌ひ初めける。 男(竹彦)『いまも昔も変りなくろんより実は責がたし ははと妻とを兼ぬる身のによ子の教の第一は ほかには非ず淑徳ぞへい常父母を天として とつがば夫を天とせよちちと母とに引かへて りよう人舅姑に尽すべしぬい針洗濯怠らず る守は一層つつしみてをんなの務めを全うし わが儘気儘のことをせずかよわき女の腕ながら よの為め人のためとのみただ一筋に尽すべし れいを見倣ふ幼子のその行末の善悪は つひに育ての母になるねんには念を加へつつ なににつけても物事をらうを厭はず努むべし む益の驕を誡しめてうちの小者に目をかけよ ゐなか者とて侮るなのうある高ひめ爪かくす おもひの儘に言ふなかれくちは禍の門ぞかし やさしく素直に慎みてまげの操ぞいや高き けがれぬ身こそ尊けれふ徳の名をば世にたてず ここを吾縁とせし上はえんを二度とは求むなよ てい操かはらぬ姫小松あらしに雪に逢ふとても さかゆる色こそ目出たけれきん銀瑪瑙瑠璃しやこも ゆめと見るまの不義の富めをばかくまじ望むまじ みなその為に昔よりしにし貞女も数多し ゑ得せよかし女達ひとの鑑と仰がれて もも年千年の後迄もせ間に名をば知られよと すゑの末迄祈るべし』 此歌を聞いて、お寅は大変に御機嫌な顔をしながら、 お寅(虎嶋寅子)『これ、遍路さま、お前さまは乞食にも似ずホントに身魂の研けた人と見えますわい、ちやつと上つて一服して下さい。コレコレお花さま、今の歌を聞きましたか、「能ある高姫爪かくす」といつたでせう。私の守護神は高姫と云つて昔の神政成就には随分尽したものですからなア。今私がかう爪を隠して柔和しくして居るのは曰く因縁があることですよ。見違ひをしては困りますよ。今もお遍路さまの云ふやうに百年千年の後迄も世間に名をば知られると云つたでせう。お前はこの高姫の生れ変りの日の出の神の生宮お寅にむかつて、爪揚子の先で重箱の隅をほじくるやうに詰問をしなさるが、ちと了見が違ひはしませぬかい。お前さまも前世には、黒姫さまと云つて随分妾の為に活動した因縁によつて、又一緒に集つてかうして神政成就の活動をして居るのぢやありませぬか』 お花『ソンナ事は今更改めて聞かずとも耳が蛸になる程聞かして貰つて居ますワ。能ある高姫と云ふたのではなく能ある鷹は爪かくすと云つたのですよ。ねえ、遍路さま高姫ぢやありますまい』 お寅『ちつと位違つたつて構はぬぢやありませぬか。的きり妾の身魂の性来を歌つて下さつたのだから、高姫だと思つて居ればよいのですよ』 お花『今のお歌に嫁がば夫を天とせよと仰有いましたが、貴女は、夫に対してテンと貞操を尽して居ないぢやありませぬか。久之助さまがあれ丈矢釜しくお止めなさるのも聞かず、守宮別さまと年が年中そこら中を飛び廻つて居られたではありませぬか。貴女は自分に都合のよい所ばかりとつてゐらつしやるのですなア』 お寅『ヘン神界の御用と人間界と一所にして貰ふてたまりますかい。一家の婦人としてなれば兎に角、このお寅は三千世界の立替立直しの日の出神様の御用をする生宮ですよ。神の柱と人間と一所にしてたまりますか。お前さまも永らく日の出さまの教を聞きながら、何と云ふ分らぬ事を仰有るのです』 お花『ハイハイ、とても貴女のお口にはお花も叶ひませぬから、沈黙致しませう』 お寅『もう此後はお寅の事に就ては何も云つて下さるな。何程竜宮の乙姫様の生宮だと云つても、日の出神の生宮に比ぶれば主人と奴程違ふのですからなア。モシモシ遍路さま、這入つて一服して下さいませ』 門に立つた男は『ハイ有難う』と深編笠をぬぎ捨て、つかつかと入り来たり、よくよく見れば、どこともなしに見覚えのある顔なり。 男(竹彦)『ご免なさいませ、暫くお目にかかりませぬが、私は竹彦で御座いますよ』 お寅『成程竹さまかいな。それならそれで何故名乗つて這入らぬのだい。一年ばかりも顔を見せなさらぬと思へば、一体どこへ行つて居ましたか』 竹彦『ハイ、別に何処へも行つて居りませぬ。余り貴女方等の仰有る事がクレクレ変るので信仰を破り今は浪華の土地で大道会と云ふものを開き、パンフレツトを発行し、ルートバハーの別働隊として活動して居るのですよ。此頃守宮さまが外国から帰られたと云ふ事を一寸新聞で見ましたから、お出でになつて居りはすまいかと思つて一寸偵察に来たのです。まだ見えて居りませぬかな』 お花『竹さま、随分久し振ぢやありませぬか。お前もちつと日の出神の教を聞いたらどうです。守宮別さまも来て居られますよ』 お寅は慌てお花の口に手をあて、 お寅『これお花さま、何呆けた事を云ふのだい。守宮別さまはまだお出にならぬぢやないか。大方夢でも見たのでせう。夢の守宮別と云ふからなア』 お花『ソンナラ矢張夢にして置きませうかいなあ』 竹彦『ハヽヽヽヽ、さうすると矢張り御大は帰つて来てゐるのだな。そいつは面白い、一つ大道会の会員となつて、パンフレツトも書いて貰はうかなあ』 お寅『これこれ竹さま、それはなりませぬぞや。水晶身魂の守宮別さまにその様な物質的のパンフレツトの話しをして貰つて堪りますか。守宮別さまはパンよりもお酒が好きなのですよ。お前は日の出神の教を捨てお蔭をおとしたパンフレツトだよ。ちつと改心なされ』 竹彦『お寅さま、お前さまの云ふ事は何が何やらちつとも分らないぢやないか。パンフレツトと云ふ事は小冊子と云ふ事だよ。薄い雑誌を発行して変性女子の教を世界に拡めるのですよ』 お寅『エヽざつしもない何と云ふ馬鹿な真似をするのだい。お前さまはこれだけ曇つた三千世界をまだ此上に曇らさうとするのかい。ちと改心して貰はぬと世界の人民の苦しみが長くなるぢやありませぬか。これだから変性女子の教を聞くと碌な事が出けぬと云ふのだ。あゝどいつもこいつも誠の人は一人も無いわい。日の出さまも嘸骨の折れる事だらう。底津岩根の大ミロク様のお心がおいとしい哩のう』 と、豆絞の手拭で涙をふく。 かかる所へ守宮別は酔ひがさめ「アヽヽヽヽ」と大きな欠伸をしながらノコノコと出で来たる。竹彦は飛びつくやうな声で、 竹彦『よう、守宮別さまか、ヤア都合のよい所でお目にかかつた。これお寅さま、嘘は云へますまい。直この通り後から化が現はれますからなあ』 お花は小気味良ささうに、 お花『フヽヽヽヽ』 お寅はツンとし、 お寅『エヽさうかいなア、アタ矢釜しい』 と頤をしやくり居たりけり。 (大正一二・七・一三旧五・三〇加藤明子録)
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霊界物語 64_上_卯エルサレム物語1 22 妖行 第二二章妖行〔一六五一〕 守宮別は、竹彦の顔を見て嬉しさうに、 守宮別『ヤア竹彦さま、よう来て下さいました。相変らず日の出神崇拝をやつて居られますかな』 竹彦『ハイ、日の出神の崇拝は層一層熱烈にやつて居ます。併し日の出神にもいろいろありましてねえ、私は此頃真の日の出神を発見しましたので大道会と云ふのを開きパンフレツト宣伝をやつて居ます』 守宮別『成程そいつは今日の時代に適した適当のやり方でせう。些と売れますかな』 竹彦『ハイ、地黙社で毎号一千部ばかり印刷して居ますが、羽根が生えて飛んで行きますよ。お寅さまのお筆先とは余程効力があるやうですわ。アハヽヽヽ』 守宮別『どうか私も一つ使つて頂き度いものですなア。実の所はこんな古めかしい宣伝法はお寅さまの前だが嫌になつたのですよ。目先の見えぬ盲滅法のやり方では労して効なく時勢におくれるばかりで約りませぬもの』 お寅は面膨らし、かつかになつて声せわしく、 お寅『これ竹さま、横田はりもの奴、守宮別さまを喰へて往のうと思つても、いつかないつかな此お寅が離しませぬぞや。お前さまは精出して勝手にパンなと売りなさい。これ守宮別さま、取違してはいけませぬよ。悪神が、お蔭を落させやうと思つて、いろいろと化けて変性女子の系統が来て居るのですよ。グヅグヅして居ると、尻の毛迄ぬかれて了ひますよ。お前さまはそんなに移り気だから困るのだ』 守宮別『これお寅さま、何と云ふ開けない事を云ふのだい。お前さまも日の出神の生宮ぢやないか。世の中は日流れ月行き星移ると云ふぢやないか、天地惟神に移つて往くのが天地の教ぢやないか。守宮別の自由意志迄束縛して貰つちや困りますよ』 竹彦『お寅さまも守宮別さまがをられなくなつたので、些とは我が折れただらうと思つて居つたのに、矢張り、ちつとも動いて居りませぬなア。水でも余り一所に停滞して居るとぼうふらがわきますよ』 お寅『こりや横田はり者の竹公、何をつべこべと日の出神に向つて小言を吐くのだ。人民の知つた事かい。パン屋がこんな所へ来る所ぢやない。雑誌も無い事を云ふと御神業の邪魔になるからトツトと去んで下さい』 竹彦『私は守宮別さまに用があつて来たのだ。上海から手紙を貰つたので今か今かと待つて居たのだ。構うて下さるな。私は守宮別さまに会ひさへすればよいのだ』 お寅『これ守宮別さま、お前さまは横田はり者の竹公の所へ行く気か。これお花さま、お前も何とかして加勢をせぬかいな。竹公の奴、喰へて行かうとしよるだないか』 お花『横田、おつとどつこい竹彦さま、ちつと日の出神さまの仰有る事も聞いて置きなさるがよからうぞえ、後で後悔してもお花は知りませぬからなア』 竹彦『ヘン、構うて下さいますな。どうせ横役の先走りを勤めて居る横田はり者だから、お寅さまの気に入りさうな事はありませぬわい。又お寅さまの乾児になつた所で末の見込が無いから約りませぬでなア。それよりも守宮別さま、貴方は永らく世界漫遊をして居られたのだから、何か珍しい話を聞かして下さい。パンフレツトの材料にしたいのですからなア』 守宮別『ハイ、是非聞いて貰はなければならない事が御座いますよ』 と云はうとするのを、お寅は守宮別の口に手を当て、 お寅『これはしたり、さうズケズケとこんな奴に喋るぢやありませぬぞ。秘密はどこ迄も秘密です。これ竹公さま、守宮別さまをパンの材料にせうとは余り虫がよ過ぎるぢやありませぬか。お前さまが此処に居ると空気迄が汚れる。此処を何と思ふて御座る。誠生粋の水晶身魂の居る小北山の霊地で御座るぞ。四足身魂の来る所では御座いませぬぞや』 守宮別『アハヽヽヽ、此奴は面白い、ま一杯酒を飲んで、此活劇を見たら甘からうなア。時に竹彦さま、上海で新聞を見た所、小アジアのエルサレムにはキリストの再臨が近づいた。日出島から救世主が現はれるとか云つて、大変騒いで居るさうですよ。斯ういふ事をパンフレツトにお出しになれば、ずいぶん売れるでせう』 竹彦『ヤ、そいつはよい事を聞かして貰ひました。どうか詳しく原稿を書いて下さいな、酒手位は出しますから』 守宮別『承知致しました。二三日中に書いて郵送致しませう』 お寅は聞耳たてて、 お寅『何、救世主が聖地へ下るとな。そして日の出神が現はれるとな。そしてそれはどこの国から現はれると云つて居ましたか』 守宮別『何でも上海で見た、ロンドンタイムスの記事によると、日出島の桶伏山が東のお宮、パレスチナのエルサレムが西の宮だと云ふ事です。そして其西の宮に救世主が御降臨になると云つて大変騒いで居ます。ミロクの世も余程接近したと見えますわい』 お寅『そして其救世主の名は分つて居るのかい』 守宮別『分つて居ります。その先走りとして聖地からブラバーサが疾うの昔に往つて居るさうです。やがてウヅンバラチヤンダーさまが救世主として現はれるのでせう』 お寅『ヤアそれは大変だ。アンナ者が救世主にならうものなら世界は闇だ。肝腎要の救世主は底津岩根の大ミロク様日の出神より無いのだ。エヽ気が利かぬ人だなア。上海迄行つて居るのなら、モウ一歩だ。一歩先に行つて救世主は、小北山に現はれて居るとなぜ演説をして来なかつたのかい。酒ばかり喰つて女に呆けて居るからこんな事になるのだ。アヽ大事の事は矢張り人任せではいけない。サア是から、日の出神の生宮が救世主として現はれませう。お花さま、曲彦さま、守宮別さま、サア私に従いて来なさい。馬関から船に乗り朝鮮、支那を通りシベリヤを横断して早く参りませう。グヅグヅして居ると又横役にアフンとする様な目に遭はされますよ。エヽ気の揉める事だわい』 竹彦『どうか私も連れて往つて下さい』 守宮別『御同道を願へば結構ですな』 お寅『これ守宮別さま、コンナ奴を連れていつてどうなりますか。絶対にお伴はなりませぬ』 竹彦『ハヽヽヽ、済まんけれど吾々の兄弟分がチヤンと先に行つて居るのだから、別につれて往つて貰はなくてもよろしい。瑞の御霊のお供して堂々と乗り込みませうかい。お寅さま、エルサレム迄行つて赤恥を掻いて来なさい。我もそこ迄張ると徹底して面白い。滑稽味があつて面白い。ウフヽヽヽ』 お寅は夜叉の如くになり、 お寅『エヽ横田はり者の曲竹奴、汚らはしいわい』 と云ひ乍ら棕櫚箒で掃き出しプツプツと唾を吐きかける真似をする。竹彦は余りの事に開いた口もすぼまらず、クツクツ笑ひ乍ら深編笠を被つて聖地に参るべく小北山の停車場へと歩を急いだ。後にお寅は不用の衣類や道具や、世界の大門と誌した鋳物の大火鉢迄売飛ばし、兵站部を勤めて居る高山某から若干の旅費を受取り、漸く旅費を調へてお寅、お花、守宮別、曲彦の四人は小北山の停車場へと急ぎける。 (大正一二・七・一三旧五・三〇加藤明子録)
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霊界物語 64_上_卯エルサレム物語1 23 暗着 第二三章暗着〔一六五二〕 名利の欲に捉はれし男女四人の醜魂は うろたへ騒ぎ小北山後に見すてて汽車の窓 勢ひ込んで乗込めば轍の音も轟々と 大地をビリビリふるはせて何の当途も嵐山 花園二条京都駅西へ西へと向日町 上る山崎高槻や大阪駅も乗越えて 出でゆく先は広島や馬関の関に立向ひ 転覆丸に身を乗せて漸く釜山に上陸し 京城平壌鴨緑の橋を渡つて満洲の 広軌鉄道スクスクと夜を日についで進み行く 二十余日の汽車の上漸く聖地に安着し 音に名高きエルサレム市中をウロウロ迂路付きつ 一目散に橄欖の山を目がけて駆上り 四辺の景色を見まはして胸を躍らせ呆れゐる。 お寅はほつと息をつぎ、 お寅『アヽヤレヤレ、ヤツトの事で、八千哩の水陸を渡り、目的地点へ達しました。何とマア桶伏山によく似た所ですな。併し乍ら山の具合と云ひ木の具合と云ひ、どうも日の出島の桶伏山とはどこ共なしに物淋しいやうな気がするではありませぬか。又外国身魂を盛んに教育せうと思つて、大きな学校を建ててゐるだありませぬか。練瓦や石をたたんで、此結構な霊場をワヤにする奴は、何処の四つ足人種だらうかなア』 守宮別は迷惑顔にて、 守宮別『コレコレお寅さま、さう大きな声で云ふものぢやありませぬよ。あれはシオン大学と云つて、世界の学者を集めて、世界の思想界を改良しやうといふ所ですよ。つまり日の出守護にせうと云つて、ユダヤの学者や世界の博士等が寄つて経営してるのですよ。日の出島なら何を云つて居つても笑ひませぬが、言葉の通じない斯様な所へ来て仕様もない事を云つては困りますからな。あなたは外国語が分らぬのだから、何事も私の言ふやうにして下さい』 お寅『ヘン、外国語が、何夫程有難いのだい。変性男子さまは此世の中をイロハ四十八文字で何もかも治めると仰有つたのぢやありませぬか。之から外国人に改心さしてイロハ四十八文字の日の出島の言葉を覚えさしたら可いだありませぬか。それ丈の権威がなくて何うして三千世界の日の出神となれますか。お前さまも余程分らぬことを云ふぢやありませぬか。オホヽヽヽ』 守宮別『又はしやがれるのかなア。併し何ぼはしやいでも、外国人に日本語の分る人が少いからマア結構だ。サア是からシオン大学の建築工事でも見せて貰ひませうかい』 お寅『コレ守宮別さま、そんな気楽なことをいつてる時だありますまい。早く、桶伏山からソツと隠れて来てゐるといふブラバーサの所在を捜し、談判せねば思惑が立ちませぬぞや』 かく話す所へシオン大学の創立者たるスバール博士が、ステツキをつき乍らやつて来た。守宮別は得意の英語で何だかペラペラと話しかけた。博士も極めて愉快気に守宮別と握手し乍ら半時ばかり話してゐた。其要点は……守宮別が日の出島から救世主日の出神を送つて来たといふ大体の話であつた。スバール博士は真面目に聞いてゐたが、しまひには吹出してニタツと笑ひ袂を別つたのである。守宮別は此博士に認められなければ日の出神もダメだと思つたが、そ知らぬ面して平気を装ふてゐた。お寅はスバール博士の姿が見えなくなつたのを幸ひ、又もや喋り出したり。 お寅『コレ、守宮別さま、チーチク、パーパーと雀のよなことをいつてゐたが、一体何をいつてゐたのだい。日の出神の救世主が御降臨だといふことをお前さまは言はなかつたのかい』 守宮別『ソンナことに如才がありますか。その為にはるばる来たのではありませぬか。確に云ひましたよ。あの方はスバール博士といふて世界で有名な学者ですよ。あの人さへ分れば世界中の人間があなたを救世主と認めてくれますよ』 お寅『何とマア神様のお仕組と云ふものは偉いものだなア。ここへ着くが早いか、スバール博士に会ふて日の出神を認めて貰ふとは本当に神さまも偉いワイ。ヘン、ブラバーサなんて、抜がけの功名をせうと思つて先へ来乍ら、何処の隅に居るかとも云はれてゐないとみえて、橄欖山に姿も見えぬぢやないか。どつかへ消滅したと見える。オホヽヽヽあた気味の可い、だから日の出神に従へ……といふのだ。コレ曲彦さま、お花さま、御神力が分りましたかな』 曲彦『今来たばかりで根つから何も分りませぬ』 お寅『エヽ、何といふ盲だいな。お花さま、お前は分つただらうな』 お花『何を云ふても英語を知らないものだから不便で御座いますワイ』 お寅『そこが御神力でいくのだよ。イロハ四十八文字さへ使へば三千世界に通用するのだからな』 曲彦『曲彦が考へると、現に此処では日の出島の言葉が通用せぬぢやありませぬか。イロハ四十八文字も可い加減なものですな』 お寅『コレ、守宮別さま、二人の分らずやに、今の博士のことをトツクリと合点の行くやうに言ふて上げて下さい。さうするとチツとは、目がさめるでせうから、今あの博士が去んだから、やがて旗を立てて大勢で迎へに来るだらう。エヘヽヽヽ』 守宮別『コレお寅さま、ダメですよ。さう今から喜んで貰ふと困りますがな』 お寅『エヽ?何がダメだい。三千世界の救世主が現はれて来てるだないか。世界の学者ともあるものが、ソンナことが分らぬと云ふことがあるものか。お前はそんなこと云つていちやつかすのだらう、本当のこと云つて下さいな』 守宮別『本当の事云つたら、あなたビツクリしますよ。サア当山を下つて、どつかのホテルへ這入りませう』 お寅『そして博士は何と云つたのだい』 守宮別『モウ云ひますまい。偽予言者、偽救世主が沢山に来る世の中だから、お前さまも可い加減に目を醒ませと云ひました。何うもあの博士の云ふことには真理があるやうです。こんな所迄来て恥を掻きました。何しろ日の出神は偽救世主ですからなア』 お寅『エヽ馬鹿にしなさるな。お前さまの云ひ様が悪いからだ。チーパーチーパーと小鳥の鳴く様なこと云つて、何分るものか。なぜモツと分る様に仰有らぬのだい。本当に仕方のない人だなア』 守宮別『何つかでウヰスキーでも一杯やらぬと元気が出ませぬワ。一遍エルサレムの町迄行きませう、そこでゆつくり話しませう』 お寅『一寸待つて下さい、何処ぞ此処らにブラバーサが潜伏して居るか知れぬから、一遍彼奴に会うて面の皮をヒンむいてやらむことにや仕方がない。何でも彼奴がシオン大学の博士等に会うて邪魔をして居るに違ない。サアサア曲彦さま、お花さま、此山を小口から捜すのだよ』 守宮別『お寅さま、ブラバーサだつて、コンナ山ばかりに居り相なことはない。朝とか晩とかに一遍づつ参る位でせう。キツと何つかの宿に居るに違ありませぬワ』 お寅『折角此処迄来たのだから、ソンナラ此処で一つ日の出神さまを御祈願して、歌でも詠んで、それからエルサレム迄一先づ行くことにしませう』 曲彦『モシお寅さま、日の出神を拝めと云ひなさるが、日の出神は貴女とは違ひましたかいな』 お寅『エー合点の悪い、日の出神と云へば底津岩根の大弥勒さまを拝めと云ふことだがな。一を聞いたら十を悟るのが大和魂ですよ。何から何迄教へてやらねばならぬといふのは、困つた男を連れて来たものだなア』 曲彦『それでもお寅さまの選によつた水晶魂が来たのだもの、さう小言を云つて貰ひますまいか。アタ阿呆らしい、こんな遠い所迄ついて来て、いきなり小言を聞かうとは夢にも思ひませぬワイ、なアお花さま、本当にバカらしいぢやありませぬか。歌もロクによむ気になりませぬがな』 お花『コレ曲彦さま、ここへ来た上はモウ仕方がない、守宮別さまとお寅さまの仰有る通りにするのだよ。言葉も分らず、神徳の足らぬ者は何と云つたつてダメだらう……神力の高いお寅さまと外国語の分つた守宮別さまに絶対服従するより途がありませぬワイ』 守宮別『何と云つても此処へ来れば此守宮別さまの天下だ。お寅さまもチツと我を折つて私の云ふことを聞きなされ。イロハ四十八文字も此処へ来ては余り権威がありますまいがな。アハヽヽヽ』 お寅『これ丈立派な日の出神が日の出島から御降臨になつてゐるのに、分らぬ奴ばかりとみえて、一人も歓迎に来ぬぢやないか。コレ守宮さま、お前さまの談判が悪いからだ。モ一遍宣直して来なさい。それが厭ならブラバーサを捜して、彼奴を博士の前であやまらすが宜しい。さうすりや一遍に信用が回復しますぞや』 お寅『海山をはるばる越えて来て見れば 聞きしに違ふ橄欖の山』 お花『思ひきや長い鉄路を渡り来て 山の上にて小言聞くとは』 お寅『コレお花さま、何といふ不足らしい歌をいふのだい。宣り直しなさい』 お花『ハイハイ、宣直さうと云つたつて、乗車切符もなし、何うするのですかい』 お寅『エー合点の悪い、歌を言ひ直しなさいと云ふのだがなア』 お花『果てしなき海山越えてこがれたる 聖地にやうやうつきの空かな』 お寅『又ソンナことを言ひなさる、つきの空なぞと私は月は嫌ひだと何時も云ふぢやないか。丸くなつたり虧けたり、細くなつたり、出たり出なかつたりするやうな、変性女子的の月のことをいつて下さるな。何で日の出神を歌ひなさらぬか。コレ曲彦さま、お前一つ歌つて御覧……』 曲彦『日の出島あとに見すてて火の車 乗りて来たのは橄欖の山』 お寅『ソリヤ何ぢやいなア。ソンナ腰抜歌がありますか』 曲彦『それでも私は力一パイ、知恵を絞り出してよんだのだから、余り笑ふて貰ひますまいかい』 お寅『エー、下手でも上手でもよい。日の出神のことを歌ふのだよ』 曲彦は、 曲彦『日出づる国の御空を立出たる お寅婆さまは目から日の出の神となる』 お寅『何といふバカだらうかな。エーエー仕方がない、何事も人を力にするな、杖につくなと神様が仰有つた筈だ。ドレ私が自ら詠んでみませう…… 烏羽玉の暗をてらしてさし上る 日の出神の光尊し と、かういふのだよ』 曲彦『あなたのいふ日の出神さまは日天さまのこつちや御座いませぬか、チツと可笑しいぢや御座いませぬかい』 お寅『コラ曲彦、よく聞きなさい。此世界は元は一天さまがお造り遊ばしたのだ。そして一天様のお子様に日天月天とあるのだ。それを御三体の大神といふのだ。併し月天さまといふのは盈虧のあるお月様だないよ。月天が行きましたかな。次が鍾馗さまの霊、其次が東方朔の身魂、此五つを合せて此世を五苦楽といふのだ。大の字の端々に○をつけて御覧なさい、ヤツパリ五つになりませうがな』 曲彦『末代日の王天の大神さまやユラリ彦さま、ミロク成就の大神さまは何うなつたのですか。東方朔なことを仰有いますな。それでも正気で仰有るのですか。日天月天が行きませぬワイ。オツホヽヽヽ』 お寅『日の出島の言葉とは此処の言葉は違ふから名を変へたのだよ。英語を使ふ国へ来たら英語で言はなならぬからなア』 曲彦『ヘーエ、それでも英語ですかいな、曲彦には合点が承知しませぬワ』 お寅『エーエ、ゴテゴテいひなさるな、サア一つ守宮別さまも歌ひなさい』 守宮別『私は英語で一つ歌つてみませう。極簡単によく分るやうにいひますから、気をつけて聞いて下さいや…… ヂヤパニース、セウホクザンノ、ヤンチヤアバーサン、オー、トラワー、キンモーキウビニー、ダー、マサレテー、ウミヤマヲコエ、ココマデヤツテキタノワー、カワイ、ソー、ダゾヨー、オレモ、スバールハカセニアウテ、ニセモノトイフコトガワカリタノダゾヨ、ソレデアイソガツーキターダカラ、ハライセニサケデモノンデヤロート、オモツテイルノダー、アータ、アホラシ、バカニ、シラレ、タゾヨ、イヒ、イヒヽヽヽヽ、あゝ英語の歌も一寸六つかしいワイ』 お寅『コレ、守宮さま、人が知らぬかと思ふて何といふ悪口をいふのだい。ヘン、そんな英語位分つて居りますぞや。私だつてその位の英語は立派に使つてみせますぞや。お前さまはヤケになつて酒を呑むと云つただらう。呑むと云つたつて、お金がなければ呑めますまい。チヤンと私が懐にしめこみてゐるのだから、一合づつ呑まして上げやう。お前さまに酒を呑ますと、泥に酔ふた鮒の様になつてチツとも間に合はぬからなア…………エー気分が悪うなつて来た。兎も角エルサレムの何つかで宿をとることにせうかい………皆さま、ついて来なされや』 と肩や尻をプリンプリンとふり乍ら不機嫌な面して山を降り行く。 (大正一二・七・一三旧五・三〇松村真澄録)
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霊界物語 64_上_卯エルサレム物語1 27 再転 第二七章再転〔一六五六〕 シオン山の谷間のブラバーサが草庵に靴音高く訪ねて来た一人の紳士は、シカゴ大学の教授スバール博士であつた。博士は「御免なさいませ」と柴の戸を排して這入つて来た。ブラバーサは嬉しげに出で迎へ、狭い座敷の奥へ通しけり。 ブラバーサ『ヤアあなたは橄欖山上でお目にかかりました博士で御座いますか。かやうな草庵を能くマア訪ねて下さいました』 スバール博士『ハイ一寸お伺ひし度いことが御座いますので参りました。実の所は私もシカゴ大学の教授を致して居りますが、今度シオン大学の建設に就て委員に選まれ監督の為に茲二ケ月ばかり以前から参つて居るので御座います。付いては私は日の出島は隅から隅迄二三回も旅行を致し、神社仏閣を巡拝しお札博士と名を取つた男で厶いますよ。あなたは桶伏山の聖地から来たと仰せられましたが、私も一度ルートバハーの本山に参拝致し教主に直接お目にかかり、言霊閣に於てお世話になつた事が厶います。何だかルートバハーの宣伝使と承はりますればなつかしいやうな気が致しまして、一度お尋ね申したいお尋ね申したいと思うてゐましたが、忙しい為つい其機を得ませぬでした。然るに二三日以前の夕方、日の出島より守宮別と云ふ男が三人の男女を従へ参りまして、日の出神の救世主だとか、大ミロク様だとか何とか申し、そして貴方のことを偽宣伝使だなどと悪く云つてゐましたよ。そこで私がいろいろとあなたの為に弁解を致しておきましたが、何と云つても聞かないものですから、相手にならずに別れた次第ですが、ありや一体ドンナ人で厶いますか。一遍お尋ね致したいと思つてゐましたが、今日は幸ひ日曜日のことでもありお邪魔を致しました次第で厶います』 ブラバーサ『ハテナ、守宮別と云ふ男が来て居ましたか、ソリヤ大方お寅といふ五十格好の婆アさまと一所ぢや厶いませぬか』 スバール博士『何でもお寅さまにお花さま、曲彦とか言はれたやうに覚えて居ります。そして再臨のキリスト、ミロクの再生は此の婆アさまだと言つて、守宮別さまが固く固く主張して居りました。余程あの連中さまは変つて居りますなア』 ブラバーサ『大方私が此方へ来たことをかぎつけて邪魔しに来たのでせう。どこ迄も執念深い連中です。本当に困りますワ』 スバール博士『さぞお困りで厶いませう。併しあなたはキリストの再臨に就てお出になつたといふ先達のお話しでしたが、私は世界各国を廻りましたが、印度にも支那にも日本にも露国にも又南米、メキシコにも救世主が現はれてをりますよ。何れどつかの或地点に救世主がお集まりになつて国会開きをお始めにならなくては真の救世主が人間としては分らないと思ひます。あなたは何う思ひますか』 ブラバーサ『兎も角世界の救世主が一所へお集まりになり、其中で最も公平無私にして仁慈に富める御方が真の救世主と選ばれるでせう。イスラエルの十二の流れから一人づつ救世主が出るといふことですから、其中から大救世主が出現されることと思ひます』 スバール博士『成程それは公平なる見解です。そして御降臨の場所はどこだとお考へですか』 ブラバーサ『無論私はエルサレムだと思つて遥々茲へ参つたので厶います』 スバール博士『成程聖書の予言によりますればエルサレムでせうが、併し救世主は何処へお降りになるか分りますまい。私は決してエルサレムと限つたものとは思ひませぬ。或は日出島へ現はれ玉ふかも知れませぬ』 ブラバーサ『さうかも分りませぬなア』 かく話して居る所へスタスタやつて来たのはお寅、お花、曲彦の三人なりける。 お寅『あゝ、どうやらかうやら隠れ家を見つけた。これも矢張日の出神のお導き、ヤレ御免なされ、お前さまはブラバーサさまだな。日の出神の救世主が二三日以前から橄欖山に御降臨になつたのを御存じですかな。ヤ、そこに居る毛唐さまは此の間橄欖山上で守宮別とチーチーパーパー云ふて居た博士だ厶いませぬか。マアマア因縁といふものはエライものだな。又こんな所で会はうとは思ひもよりませなんだ。コレ毛唐さま、お前さま又此ブラバーサにだまされて来なさつたのかな。チト用心なさいませや』 スバールはうるさ相な顔をし乍ら、日出島の言葉を使つて、 スバール博士『ヤアお前さまはルートバハーの教をまぜ返しに廻つてる、あの有名な小北山のお寅婆アさまだな。そして一人は曲彦、それからお花といふ剛の者だらう、イヽかげんに落着きなさらぬと此の聖地には相手になる者がなくなりますよ』 お寅『何とマア流石に博士だワイ。イロハ四十八文字の言葉が使へるやうになりましたな。此間迄四足か鳥のやうにチーチーパーパー云ふて居つたのに、日の出神に一目会ふたお蔭に真人間の言葉が使へるやうになつたのかな。コレお花さま、曲やん、これでも日の出神の神力が分りましたらうがなア』 曲彦『何しろ夜抜食逃げの張本人だから偉いものですワイ』 お寅『コレ曲、ソリヤ何といふ事をいふのだえ』 曲彦『それだつて事実は事実ですもの、仕方がありませぬワ。もし、ブラバーサさま、どうぞ私をあなたの弟子にして下さいな。実の所はお寅さまがお金をおとし、吾々三人は無一物ですから、二進も三進も仕方がないのです』 ブラバーサはニタリと笑ひ乍ら、 ブラバーサ『日の出神様も、お金がないとヤツパリ、お困りですかな。私も淋しい懐だからお金を貸して上げる訳にも行きませぬが、マア暫く茲にをつて、味ないものでも喰べてお金の来る迄お待ちなさいませ。電報さへうてば二十日も立たん内に届きますからな』 スバール博士『ヤア大変御邪魔を致しました。何れ今度の日曜にはトツクリとお目にかかり御話をさして頂きませう。今日は用事もあり少し急ぎますから御免を蒙りませう』 ブラバーサ『折角お越し下さいまして、何の御愛想も致さず失礼を致しました。今度お足を運ばしてはすみませぬから、私の方からお訪ね致します』 博士は、 スバール博士『左様ならば後日お目にかかりませう。皆さま、御ゆつくりなさいませ』 と早くも此場をスタスタと立去つた。 お寅、お花、曲彦の三人は異郷の空に懐空しく何となく淋しくなり、知己と云ふて別になければ、反対で憎うてならぬブラバーサの寓居に世話にならうと覚悟をきわめワザとにおとなしく、ブラバーサの言に従ひ、何事もヘーヘーハイハイと猫をかぶつて、表面帰順した如く見せかけてゐた。其翌日の日の暮頃守宮別は二百五十円の金を懐にねぢ込んで茲へ訪ねて来た。 守宮別『御免なさいませ。ブラバーサ様のお宅はここで厶いますかな』 ブラバーサ『ハイどなたか知りませぬがお這入りなさいませ』 お寅『あの声は守宮別さまぢやないか、サアサア早うお這入りなさい』 守宮別『あゝ御免なさいませ、お寅さま、あなたはヒドイですな。本当に油断のならぬ悪性な人だ。オイ曲彦、お花さま、人を置去にして余り友情がなさすぎるだないか』 両人は一言もなくウツムク。 両人(曲彦、お花)『ヽヽヽヽヽ』 お寅『それだと云つて、二万四千両の金が何うして払へるものか。お前は又夜脱けをして来たのかな。よう出られたものだなア』 守宮別『お前さまが財布をおいといてくれたおかげで、スツカリ勘定をすまして帰つて来ましたよ。サア茲に二百五十両計り残つてるからお前さまに返します』 お寅『あのお金は何うして勘定したのだい』 守宮別『何分一ダースが六弗よりせないものだから、何もかもお前さまの分まで払うて二十五弗ですみましたよ』 お寅『あゝさうだつたかいな。何とした、あの奴さまは間違つた事を云つたのだらう。マア二百五十両あれば少時大丈夫だ。国許へ電報かけさへすれば送つてくれるからな。ヘン、今迄耳の痛い話を、御無理御尤もでブラバーサさまに聞いてゐたが、モウ誰が聞くものか。コレ、ブラバーサさま、救世主は瑞の御霊だといひましたが、あんな奴が救世主になつてたまりますかい。キユキユ世の中を苦める救世主のキウの字は貧窮の窮の字でせう。オホヽヽヽ』 とソロソロメートルを上げ出した。 ブラバーサ『何うなつと勝手になさいませ。事実が証明致しますからな』 お寅『サア三人の御連中、コンナ所に居らぬと早く聖地へ行きませう。そして最早エルサレムの町に誰憚る所ないのだから、私は之から橄欖山に登つて救世主になるから、お前たち三人は町中をふれて歩くのだよ。左様なら、何れ事実が証明しますからな。なア、ブラバーサさま』 とプリンプリンと大きな団尻をふり羽ばたきし乍ら帰り行く。 (大正一二・七・一三旧五・三〇松村真澄録) (昭和一〇・三・九於台湾航路吉野丸船室王仁校正)
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霊界物語 64_下_卯エルサレム物語2 03 草居谷底 第三章草居谷底〔一八〇九〕 トンク、テク、ツーロの三人は僧院ホテルの裏口から二人を担いだ儘、一生懸命に道路、田畑の嫌ひなくかけ出し、キドロンの谷深く川辺を伝ふて登り行き、雨露を凌ぐ許りの自分の借家へと持ち運び、手荒く二人を土の上に投げつけた。守宮別はこの間に殆ど酔も醒め、丸い目をギヨロづかせ、ウンと云つた限り、三人の顔を睨めつけて居る。お寅は勝気の女とて大地に投げつけられた際、腰骨をうち乍ら痛さを耐へて、 お寅『こりや、三人のアラブ共、三千世界の救世主、底津岩根の大ミロク、日の出の神の太柱お寅さまの肉体を、お神輿さまとして、此処迄つれて来るのはいいが、なぜ下ろす時にも些と気をつけないのか、お神輿が些と許り損傷だぞよ、行儀も作法も知らない馬鹿野郎だなア。サア私を此処まで連れて来た以上は、何か深い計画があつてのことだらう。きつぱりと白状したがよい。何者に頼まれたかその訳を聞かう。これこれ守宮別さま確りせぬかいなア。何の為めの強力だいな。それだから無茶苦茶に酒を呑みなさるなと云ふのぢや。お前さまはお前さまとした所で、竜宮の乙姫さまの生宮は何をして居るのだらう、ても扨ても気の利かない人足許りだなア。こりやアラブ、早く神の前に白状致さぬか、神罰が当つて脛腰が立たぬやうにしてもよいか』 トンクは、 トンク『ハヽヽヽヽ。気違ひ婆、それや何アに吐してけつかる。誰にも頼まれはせぬ。貴様の懐中にもつて居るお金が目的ぢや。地獄の沙汰も金次第ぢやからキリキリちやつと渡したらよからう。グヅグヅ致して居ると生命が無いぞよ。一方の野郎は酒に喰ひ酔つて脛腰は立たず。高が婆の一人位、捻り漬すのは宵の口ぢや。金を渡さにや渡さぬでよい。勝手に取つてやる。サア覚悟せい』 と猿臂をのばして、胸倉をグツと掴む。お寅はその刹那足を上げてトンクの睾丸を力一ぱい蹴つた。トンクはウーンと云つた切り、地上に大の字となつて了つた。テク、ツーロの二人は吃驚してトンクを呼び生けようとする。其隙を考へて守宮別はテクの足をグイと引張り俯向にドンと倒す。お寅はツーロの首筋を鷲掴みにしながら挙骨を固めて六つ七つ撲り打ちに打ち据ゑる。ツーロはフラフラと眼が暈うて又もやばたりと其処に倒れて仕舞つた。 お寅『サア、守宮別さま、其処の藤蔓をもつて動かないやうに、何奴も此奴も今の中に縛つておきなさい。これからこれ等三人を厳しく詰問してブラバーサの陰謀を白状さしてやらねばなりますまい。何と気味の善い事、遉は日の出の神の生宮だけあつて偉いものだらう。これ守宮別さま、日の出の神の生宮には感心したらうな、アラブの千匹万匹来るとも、このお寅が、フンと一つ鼻息するや否や、何奴も此奴もバタバタと東京のバラツクに二百十日の大風が吹いたやうにメチヤメチヤに倒れて了ふのだよ。日の出神様も聖地へ来てから、だんだん出世を遊ばし偉い御神徳の出来たものだ。もう此上は三千世界の救世主と名乗つても誰一人非難するものはあるまい、ヘヽヽヽ。てもさても愉快の事だわい。苦みの果には楽しみあり、万難を排して勝利の都に達するとかや。お前さまも些と酒をやめて心の底から私の云ふ事を聞くのだよ。僧院ホテルでお前さまは何と云ふ馬鹿気た演説をするのだえ。この私をブラバーサと同じやうに余り信じないと云つたぢやないか。肝腎要の参謀長がそんな考へをもつて居てどうしてこんな大望が成就しますか。些と心得なされ。余り云ふ事を聞かないと小北山のお寅さまぢやないが、鼻を捻ますぞや』 守宮別『イヤもう改心致しました。朝顔形の猪口がメチヤメチヤになつては耐りませぬからな、ウフヽヽヽ』 トンクはウンウンと唸き出した。お寅はトンクの髻をグツと握り、 お寅『これやトンク、恐れ入つたか。往生致したか。どうぢや、サア誰に頼まれた白状致せ』 トンク『ハイ、ハヽ白状致します。どうぞ其手を放して下さい髪が脱けます』 お寅『ぬけたつて何だ。お前の頭ぢやないか。肉と一緒にコポンと取つてやる積りだ。苦しきや白状なさい。魚心あれば水心だ。白状さへすれば今迄の罪は神直日大直日に見直し聞き直して許してやる。そして白状した褒美にお金をやるから、トツトと白状したがよからうぞや。かう見えてもこのお寅は、虎でもなければ狼でもない、三千世界の氏子を助ける生神様だからな。敵たうて来たものには鬼か大蛇になるお虎であるけれど、従つて来たものには結構な結構な大歓喜天の女神様ぢやぞえ』 トンク『ハイ、白状致します。その代りにテク、ツーロの縛を解いてやつて下さい。私だけ助かつた所で仕方がありませぬから』 お寅『これこれ守宮別さま、何んぢやいな、気楽さうに煙草ばかり呑みつづけて、ちつとお手伝ひをなさらぬか。気の利かねえ男だなア』 守宮別『到底神様のお手伝ひは人間として出来ませぬわい。マア悠りと見物でもさして貰ひませうかい。あた阿呆らしい。酒も無いのにこんな事を見て居られませうか、お寅さまも仲々気が荒いですなア』 お寅『それや荒いとも、アラブの荒男を三人迄、荒肝を取つて荒料理をせうと云ふのだもの。随分霊験な神様だよ。これアラブのトンク、大略でよいから早く誰に頼まれたと云ふ事を白状せぬか。命取られるのが好いか。お金を貰ふのがよいか、どうぢや』 トンク『実の所はお前さま所へ始終出入して居るヤクさまに頼まれました。ヤクさまが金を吾々三人に二十両宛下さいました。そしてお寅さまが剣呑になつて来た時は掻攫へて僧院の裏から何処かへ逃げて呉れと仰有つたのです』 お寅『ホヽヽヽヽ、甘い事、どこ迄も云ひ含めたものだなア。ブラバーサの奴、反間苦肉の策をつかひよつて、ヤクに頼まれたなぞと、熱心の信者とこのお寅と喧嘩させようと思つて居やがるのだな。どこどこ迄も油断のならぬど倒しものだ。これやトンク本当の事を云へ。ヤクさまぢやあるまいがな』 トンク『イエ滅相な有体の事を申します。御霊城の受付をして厶るヤクさまが、お前さまが僧院で演説をしられた時、聴衆の中へ入つて厶つて、あまり聴衆の人気が悪く殺気が立ち、お前さまを殺してやらうと迄ひそびそ相談して居たものが有つたので、ヤクさまが心配して、傍に居つた私等三人に大枚二十円宛をそつと懐中に入れ、どうかお寅さまと守宮別さまを担いで此場を逃げて呉れ。さうせぬとお二人の命が危いと囁きましたので、二十円のお金まうけにお二人さまを担ぎ出しました。さうするとお前さまの懐中に、ガチヤガチヤと余り沢山の金が入つて居さうなので、此処迄来てから二重儲けをせうと思つて、一寸ごろついて見たのですよ。何うか耐へて下さい。しかし吾々三人が無かつたらお前さまの生命が無かつたかも知れませぬよ。これが正直正銘一文の掛値のない所の白状で厶います』 お寅『フーン、さうかいな。ても扨てもブラバーサと云ふ奴は剣呑な奴だな。矢張り彼奴が此生宮を殺さうと思つて、聴衆の中に暴漢を匿まひ置きよつたのだなア。これトンクさま、お前さまはブラバーサをどう思ひますか』 トンク『さうですな、どうか頭を放して下さい痛くて仕方がありませぬわ。アイタヽヽヽヽ、痛いがな』 お寅『余り話に身が入つてお前の頭をブラバーサだと思ひ、力一杯痛めたのは悪かつた、まア耐へてお呉れ。これも時の災難だからな。これこれ守宮別さま、話が分つた以上は、テク、ツーロの縛を解いて上げて下さい。話を聴いて見ねば分らぬものだ、ほんに気の毒だつたな。とは云ふものの三人が三人乍ら、俄にこのお寅を脅迫した罪は許されないから、痛い目に遇つたからといつて怒る事は出来まい、これで帳消だ。サアこれから改めてお前達三人と篤と相談をしよう』 トンク『悪にかけたら抜目のない吾々三人、金になる事ならドンナ御相談にも乗ります。私だつてあのブラバーサには深い深い意恨が厶います。マリヤの奴を三人寄つて手籠になし、念仏講でもやり、楽しもうと思つて居た所へ彼のブラバーサが、仕様も無い歌を歌つて来たものだから、折角仕組だ芝居も肝腎の所でおジヤンになり、オチコウツトコ、ハテナの願望も遂げず、すごすごと吾家に帰つたものだから仲々伜のやつ承知をしませぬ、オチコ、コテノとなつて、マストを立てそれはそれは夜半大騒動五人組が駆け出すやら、泥水が出るやら、ヘヽヽヽヽン、いやもうラツチもない事でした、アハヽヽヽ』 守宮別『ウフヽヽヽ、ソンナ厚い唇で、真黒な顔して居つて色のこひの鮒のつて、些と食ひ過ぎて居るわい。併し乍らブラバーサとマリヤに対し、さう云ふ経緯があり意恨が残つて居るとすれば何うだ、反対派の吾々の仲間に入り、幾何でも金はやるからエルサレムの町に出て、ブラバーサ攻撃の大演説をやる気は無いか』 トンク『ハイそれは合ふたり叶ふたり、大にやります。のうテク、ツーロお前達も賛成だらう』 テク『ウン尤もだ、テクさまの恋の敵のブラバーサ、力一ぱい面皮を剥いてやり、此エルサレム町に居れないやうにしてやるのも痛快だ、腹癒せだ、溜飲が下るやうだ。ようし面白い面白い、面白狸の腹鼓だ。喃、ツーロ、何程辛うても、エルサレムの通路を縦横無尽にテクついてブラバーサの罪状をトンクと市民に分るやうに、布留那の弁を揮つて吹聴仕やうぢやないか』 トンク『ヤア面白い、大ミロクの生宮、日の出の神のお寅さまを大将軍と仰ぎ、守宮別様を参謀総長とし、エルサレムの町を三方四方から突撃と出かけようかい』 お寅『これこれトンクさま、決してヤクに頼まれたなどと云ふちやなりませぬよ。ブラバーサに頼まれて、あんな悪い事を致しましたが、日の出の神の御神力に怖れて罪亡ぼしに白状致しましたと大声に云ふのだよ。分つたかな』 トンク『ハイ、事実を曲げて云ふのは間違ひやすうて些と許りやり悪くて困りますが、マア成可く貴女の為になるやうブラバーサを攻撃致しませう』 お寅『ブラバーサ憎む心はなけれども 世人のために葬らむとぞ思う。 聖場を色で汚したマリヤ姫を 千里の外に逐やりて見む』 守宮『吾は唯薬師如来がましまさば 如何な悩みも苦しからまじ。 酒呑めばいつも心は春の山 笑ひ乍らに花は咲くなり。 お寅さまお花さまでは気が行かぬ 蒲萄酒ビール酒が好物。 キリストも釈迦も孔子も神さまも 酒に比べりやしやうもない奴』 お寅『又しても守宮別さまの罰当り 腸までが腐つて居るぞや』 守宮『くさつても酒と鯛とは味がよい 腐らぬ先に呑めばなほよし。 ドブ貝の腐つたやうな香ひより 酒の腐つた香がよろしい』 お寅『虫の喰た松茸股にぶらさげて 腐れ貝とは何を云ふぞや』 トンク『くさいやつ三人五人集まつて 臭い相談谷底でするも』 テク『お寅さま手管の糸を繰返し マリヤの腹を突かむとぞする』 ツーロ『つらうても彼の為めなら町に出て 嫌な演説せねばなるまい』 お寅は、 お寅『さア早く此場を立つて帰りませう お花が霊城に待つて居るだろ』 と云ひ乍ら、吾営所を指して一行五人帰り行く。 (大正一四・八・一九旧六・三〇於由良秋田別荘加藤明子録)
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霊界物語 64_下_卯エルサレム物語2 07 虎角 第七章虎角〔一八一三〕 守宮別お花の二人は奥の一間で、酒汲みかはし乍ら、意茶付き喧嘩をやつて居る所へ、トンク、テク両人は盗人猫が不在の家を覗くやうなスタイルで、ヌーツと顔をつき出した。お花は早くも二人の姿を見てとり、 お花『ヤ、お前は、お寅さまと一所に霊城へやつて来たトンク、テクの両人ぢやないかい、何ぞ御用があるのかな』 トンクは右の手で額を二つ三つ叩き乍ら、 トンク『イヤ、どうも、誠に済みませぬ。些と許り酒代が頂戴致したいので、……』 お花『お前はお寅さまの御家来ぢやないか、妾に些とも関係はありませぬよ、酒代が欲しけら、お寅さまに貰つて来なさい、ノコノコと失礼な、人の座敷へ入つて来て、盗猫のやうに、黒ん坊のクセに何んぢやいな』 トンク『お前さまに直接の関係はありますまいが、ここに厶る守宮別さまには深い深い関係があるのです。……これはこれは守宮別様、大変お楽みの所を、不粋な黒ん坊が二人もやつて来まして、嘸御迷惑でも厶いませうが、チツと許り口薬が頂戴致したいので厶いますよ』 お花『何、口薬が欲しいと云ふのかい、守宮別さまの暗い影でも掴んだといふのかい』 トンク『ハツハヽヽヽ、白々しい事を仰有いますな。大変なローマンスを見届けてあればこそ、かうして口薬を頂戴に参つたのです。ゴテゴテ云はずに、ザツと二十円、二人で〆て四十円、アツサリと下さいな、安いものでせう』 お花は之を聞いて、守宮別がお寅以外に女でも拵へて居るのではあるまいか。そこを此トンクに見つけられて、弱点を握られてるのだらう、何と気の多い男だなア。……と稍嫉妬心が起り出し、 お花『これ、守宮別さま、お前さまは又しても又しても箸まめな事をして厶るのだろ、サ、トンクさまとやら、あつさりと云ふて下さい、さうすりや、お金は二十円はさておいて、五十円でも百円でも上げます』 守宮別『コレお花、コンナ者に、さう金をやる必要がどこにある。相手にしなさるな』 お花『そらさうでせう、妾がトンクさまを相手にすると、チト、あなたの御都合が悪いでせう。コレコレ、トンクさま、遠慮はいりませぬ、とつとと守宮別さまのローマンスをスツパリと、此場でさらけ出して下さい』 トンク『ハイ有難う、屹度百円くれますな』 お花『併し二人に百円だよ。取違して貰ふと困るからな』 トンク『ハイ宜しあす、此守宮別さまは、お寅さまと何時も師匠と弟子のやうな顔をして、殊勝な事をいふてゐられますが、其実内証でくつついてゐるのですよ。私や、いつやらの晩、橄欖山の上り口で、怪体な所を見て置きました。なア守宮別さま、其時あなた、人に言つちや可けないよ……と云つて私に十円呉れましたね』 守宮別『ウン確かにやつた覚がある、併しそれをどうしたといふのだ。ソンナこた、お花さまの前で言つた所で三文の価値も無いぢやないか。お花さまだつて、今日迄の俺とお寅さまとの関係は御承知だからなア』 トンク『それでも、あなた、さういふ事を世間へ発表せうものなら、貴方もチツトは困るでせう』 お花『阿呆らしい、トンクさま、そんなことなら聞かして貰はいでも可いのだよ。此守宮別さまが、外の女と怪しい関係があつたか無かつたか、それが聞かしてほしかつたのだよ。確な証拠はなくても、どこの家で酒を呑んで居つたとか、意茶ついて居つたとか、夫れが分れば可いのだからな』 トンク『ヘ、五十円なら申上げます。エルサレムの横町のカフエーの奥で、お花さまと守宮別さまが一杯やり乍ら、夫婦約束をしたり、頬ぺたを抓つたり、肩にブラ下つたり、それはそれは見るに見られぬ醜体を演じてをられました、事を私許りぢやなく、ここの女中が証人ですよ。それも今月今日、サ五十円、二人でシメて百円、如何です安いものでせうがな』 守宮別『フツフヽヽヽ、此奴ア面白い。マ一杯やつたらどうだ』 とコツプをつき出す、お花は眉を逆立て、声を尖らし乍ら、 お花『ヘン、あほらしい、業々し相に、何のこつちやいな。五十両もお前さま等にやるやうな、金があつたら、ヨルダン川へでも放かしますわいな』 トンク『宜しい、お前さまが其了見なら、直様お寅さまへ注進致しますよ』 お花『どうぞ注進して下さい。そして守宮別さまと此お花との交情のこまやかな所を、お寅さまにつぶさに報告し、忠勤振を発揮なさいませ。最早此お花はお寅さまと手を切り、守宮別さまとは天下晴れて、切つても切れぬ夫婦ですよ。どうか、お寅さまに守宮別さま夫婦が宜しう伝へたと仰有つて下さい。そしてエルサレムの市中へ、妾達夫婦の結婚式を挙げた事を、駄賃をよう出しませぬが、披露をして下さい』 トンク『エー、クソ面白くもない。ようし、これから、一つお寅にたきつけてやらう』 とテクと共に千鳥足し乍ら、カフエーを立出で、お寅の霊城へと注進の為忍び行く。 お寅は守宮別、お花の打つて変つた愛想づかしと無情な仕打に、憤慨の余り逆上し、暫庭の土の上に倒れてゐたが、漸く気がつき、辺りを見れば、箱火鉢は腹を破つて木端微塵となり、そこらは灰神楽で、一分許りの畳の目もみえぬ程黒くなつてゐる。ブツブツ小言を云ひ乍ら、穂先の薙刀になつた箒でヤツトの事、灰を掃清め、ドスンと団尻を下ろした所へ、ヒヨロヒヨロになつて、一杯気嫌の鼻唄諸共、トンク、テクの両人が入り来たり、トンクは開口一番に、 トンク『これはこれは、生宮様、お一人で嘸お淋しいこつて厶いませう。ヤクの後を追つかけて、生宮様がお駆出しになつたものですから、人馬の行通ふ雑踏の巷、貴女のお身の上が険呑だと思ひ、三人が手分を致しまして、そこら中を捜しました所、お行方が分らず、一層の事ヤクを取つ捉まへてお目にかけたいと思ひ、エルサレムの裏長屋迄捜して見ましたが、たうとう幸か不幸か、姿を見失ひました。それから横町のカフエーに立寄り、ブドー酒をテクと二人引つかけてゐますと、それはそれは天地転倒と云はふか、地震ゴロゴロ雷ピカピカ、いやもう、ドテライ、貴女のお身の上に取つて、大事件が突発して居りましたので、取る物も取敢ず、お弟子になつた御奉公の初手柄として御報告に参りました』 お寅『それはどうも有難う、お前ならこそ報告に来て呉れたのだ、大方ブラバーサが暴力団でも使つて、此お寅を国へ追返さうとでも企んでゐるのぢやないか』 トンク『イエ、滅相な、ソンナ小さい事ですかいな。貴女のお身の上にとつて、天変地異これ位大きな災は厶いますまい、なあテク、側から見て居つても、ムカつくぢやないか』 テク『本当にテクも、腹が立つて、歯がギチギチ云ひよるわ、あのザマつたら、論にも杭にも掛らぬわい。お寅さまが本当にお気の毒だ』 お寅『コレ、序文許り並べて居らずに、短刀直入的に実地問題にかかつて下さい。一体大事件とは何事だいな』 トンクは、 トンク『ヘー、これ程大事な事を申上げるのですから、貴女はお喜びでせうが、一方の為には大変な不利益です。さうすれば、貴女に喜ばれて、一方の方からは非常な怨恨を買ひ、暗の晩にでもなれば、うつかり外は歩けませぬわ。それだから、ヘヽヽヽ一寸は容易に申上げたうても申上げられませぬ。なあテク、地獄の沙汰も○○だからなア』 お寅『エー辛気臭い、お金が欲しいのだらう。お金ならお金と何故あつさり言はぬのだいな』 トンク『ハイ、仰に従ひ、あつさりと申上げます。どうか前金として、二十円程頂戴致したう厶います』 お寅『ヨシヨシ、サ、あらためて取つてお呉れ』 と其場に投出せば、二人はガキの様に引つつかみ、ヤニハにポケツトへ捻込んで了ひ、 トンク『ヤ、有難う、流石はウラナイ教のお寅さま、底津岩根の大ミロクの生宮、日出神のお寅さま、ウラナイ教の大教主、誠に感じ入りました』 お寅『コレコレ、ソンナ事聞かうと思つて、お金を出したのでない。大事件の秘密を早く聞かして下さい』 トンク『ハイ、これからが正念場です。どうか吃驚せないやうに、胴をすゑて居つて下さいや。エー、実の所は横町のカフエー迄一杯呑みに行きました所、裏の離れに男女が喋々喃々と、甘つたるい口で囁いたり、頬べたを抓つたり、金切声を出して、意茶ついてる者があるぢやありませぬか』 お寅『成程、そら大方ブラバーサとマリヤの風俗壊乱組だらうがな。そんな事がナニ妾に対して大事件だろ、併し乍らヨウ報告して下さつた。之から彼方等を力一杯攻撃して、再び世に立てない様、社会的に葬つてやる積だから、そら可い材料だ』 と話も聞かぬ内から早呑込みしてゐる。トンクは言句に詰り、 トンク『もし、お寅さま、さう早取して貰ふと、二の句がつげませぬがな。オイ、テク、お前之から性念場を些と許り申上げて呉れ。お前廿両貰ふた冥加もあるからの』 テク『お寅さま、ソンナ気楽な事ですかいな、お前さまの寝ても醒めても忘れない、最愛のレコとあやめのお花さまとが、それはそれは目だるい事をやつていましたよ。私が貴女だつたら、あの儘にはして置きませぬがな。生首を引抜いて烏にこつかしてやらねば虫が癒えませぬがな』 之を聞くより、お寅は電気にでも打たれた如く打驚き、暫しは口を尖らし、目を剥いて言葉も出なかつたが、稍暫時して、 お寅『テヽテクさま、トヽトンクさま、そら本当かいな。本当とあれば、ジツとしては居られない、お花の奴、本当にバカにしてる』 と早くも捻鉢巻をなし、赤襷をかけようとする。 トンク『そら、マヽ待つて下さい、さう慌てても、話が分かりませぬ、たうとう二人は夫婦約束を致しました。そして祝言の盃もやり直したといふことですよ』 お寅『ナヽナアニ、シユシユ祝言の盃、そして又ドヽ何処の内で、ソヽそんな事を、ヤヽやつてゐるのだい』 トンク『横町のカフエーの奥座敷ですがな、併し乍らトンクが言つたとは、云つて貰へませんで、あとが恐ろしう厶いますからな』 お寅『コリヤ、トンク、テク、お前も妾の家来に成つたのぢやないか、妾の為には何でも聞くだろ、妾が踏込んで生首引抜くのも易い事だが、そんな乱暴な事すると、日出神の沽券にかかはる。妾はここで辛抱するから、お前代りにお花の生首引抜いてヨルダン川へ投込みて下さい。さうすりや、何ぼでもお金は上げるからな』 トンク『何程お金に成りましても、ソンナこたア私に出来ませぬワ。暴力団取締令が出て居りますので、二人寄つても、直にスパイが後を追つかける時節ですもの。そんなこたア、御本人直接に決行されたが可いでせう。刑務所へ放り込まれて臭い飯くはされても約まりませぬからな、それとも一万両下さらばやつてみても宜しい』 お寅『エーエー腑甲斐のない、何奴も此奴もガラクタ許りだな。守宮別さまは決してそんな無情な人ぢやない。酒に酔ふと、いろいろの事を仰有るが、正直な親切な、誠生粋な大広木正宗さまの生宮だ、スレツカラシのお花の奴、たうとう地金を放り出し、男を喰はへて、ヌツケリコと夫婦気取で、そんな所へ行て酒をくらうて居やがるのだらう。エーまどろしい、暴力団取締が何だ。日の出神の生宮がお花位に敗北を取つてどうなるものか』 と眉毛は逆立ち目は血走り鉢巻したまま、襷をかけたまま、後先の考へも無く腹立紛れに飛出した。トンク、テクの両人は、『コラ一大事』とお寅の後を見え隠れに付いて行くと、十字街頭を微酔機嫌で守宮別がお花の手を引いてヒヨロリヒヨロリとやつて来るのに出会した。お寅はアツと言つたきり、其場に悶絶して了つた。守宮別、お花は掛り合になつては一大事と、素知らぬ顔し乍ら、橄欖山目がけて逃げてゆく。 (大正一四・八・一九旧六・三〇於由良秋田別荘松村真澄録) (昭和一〇・三・一〇於台湾草山別院王仁校正)
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霊界物語 64_下_卯エルサレム物語2 09 狂怪戦 第九章狂怪戦〔一八一五〕 お花『有為転変は世の習ひ天が地となり地は天と 変る浮世の有様はお花と貴方の事だらう 寝ても醒めても夢現日の出の神の生宮に 頭の先から爪の端身も魂も打ちこみて 惚れて厶つたお前さまどうした風の吹廻しか 私とコンナ仲となり二世を契つた夫婦連れ 此聖場の神様も嘸や御嘉納なさるだらう 何程神ぢや仏ぢやと高尚な事を云つたとて 人は肉体ある限り湧いて出て来る性の欲 満たす事をば知らずして可惜月日を送るのは 天の与へた快楽を蹂躪すると云ふものだ ラブ・イズ・ベストをふり廻し自由自在に性の欲 遂げた処で神様の干渉すべき理由はない あゝ面白やたのもしやコンナ尊き歓楽を お寅婆アさまにだまされて竜宮海の乙姫の 身魂ぢや改心せにやならぬもしも男に触つたら 八万劫の罪咎が一度に現はれ日に三度 極寒極暑の苦しみを受けると甘く騙かして 私を十年釣つて呉れたほんに思へば思ふ程 妾は何と云ふ馬鹿だらう恋に目醒めた此お花 もはや弓でも鉄砲でもびくとも動かぬ磐石心 固めた上はお前さま浮気心を払拭し どこどこ迄も偕老の契を結んで下されや 命も宝もなげ捨ててお前に任した此身体 焼いて喰はふと煮て喰はふと決して不足は云ひませぬ さはさりながら旦那さま貴方は本当に水くさい 二世を契つた女房のある身で居ながらうかうかと 義侠心をば放り出してトロッキーさまの身替りに 警察署の門戸をば潜つてやらうと仰有つた 義侠も仁侠もよいけれどソンナ無益な犠牲をば 払つて居つては世の中に生て行く事ア出来ませぬ これ許りは旦那さま私が可愛と思ふなら 思ひとまつて下されや人気の悪い世の中は 何時騒動が起るやら分つたものではありませぬ 其度毎に犠牲者となつて行かれちや此お花 どうして立つ瀬がありませう軍人さまを夫にもち 喜び勇む間も非ずコンナ苦しい思ひをば させられやうとは知らナンだ大和魂か知らねども 今後は止めて下されや可愛女房が手を合せ 涙流して頼みますあゝ惟神々々 ウラナイ教の大御神千変万化に移動する 夫の心を喰ひ止めて私の身魂にピツタリと 釘鎹を打つたやうに離れないやう願ひます これが一生のお願ひだ縁と云ふもの妙なもの 海外万里の此国で何とも思ふて居なかつた 守宮別さまが恋しうなり足許さへも見えぬ迄 恋の暗路に迷ひました私は心が狂ふたのか 吾と吾身が怪しうなり合点行かぬよになりました ホンに女と云ふものは男にかけたら脆いもの 男の一嚬一笑が胸に五寸釘打つやうに 苦しい思ひがして来ます頭に霜をちらちらと 戴く身ながら村肝の心は元の二八空 胸はどきどき息つまり恥も外聞も何のその コンナ心になつたのも罪なお前がある故だ 広い天地の其間にたつた一人のお前さま 私の命ぞ力ぞやもしもお前が死んだなら さつぱり此世は地獄ぞや地獄の底の底迄も 好きな貴方と諸共に落ちて行くなら厭やせぬ これ程思ふて居る私をすげなう見捨てて下さるな 見捨てられたる其時は地震雷火の雨も まだまだおろか鬼となり大蛇となりて素首を 引きぬきますよ旦那さま先に気をつけおきまする あゝ頼もしや頼もしや処は世界の中心地 貴き神のあれませる橄欖山の聖城で 三四十年も若返り嶮しき御山を手を曳いて 詣る心は天国の花咲き匂ふ楽園を 百のエンゼルに導かれ登つて行くやうな心地ぞや あゝあゝ長生きすればこそ年を取つてから恋愛の 本当の本当の味ひが分つて来たのだ有難い 日の出の神や大ミロク生宮さまの前だとて コンナ楽しい潔い思を今迄せなかつた ホンに貴方は救世主天津御国のエンゼルよ あゝ惟神々々御霊幸倍ましませよ。 ホヽヽヽヽヽ、これ守宮別の旦那さま、私の思ひを汲み取つて下さつたら、余り憎ふは厶いますまい。どうかイターナルに愛を注いで下さいな。道草を喰つたり横を向ひたりしちや嫌ひですよ。私と云ふ立派な奥さまがあるのに元が軍人気質だから要らざる義侠心を出し、暴悪無頼のトロッキーなどの身替りにアタ阿呆らしい警察へ縛られ行くナンテ、そんな事は止めて下されや。何程世の中を救と云つたとてキリストさまのやうに磔刑になつちやたまりませぬよ』 守宮別『お前と一緒に磔刑になつたらよいぢやないか、万劫末代名が残るぞよ。お前とお寅さまと口癖のやうに、世界の万民を助けたら万劫末代結構な名が残るといつて居たぢやないか。昔キリストが十字架にかかつて万民の罪を贖つたと云ふこのエルサレムで世界の犠牲者となり末代の名を残すのも人間としては痛快事だよ。なアお花さま』 お花『嫌ですよ、お花さまなんて他人らしいソンナ言葉おいて下さい、何程名が残ると云つたつて命が無くなつて了へば肉体的歓楽を味はふ事が出来ぬぢやありませぬか』 守宮別『死んで未来で仲よく添ふたら好いぢやないか、さうすれやお前もお寅さまに取りかへされる心配も要らず、宇宙第一の安全地帯だよ。俺だつてトロッキーなどの身替りになるやうな馬鹿ぢやないが、一寸お前に実の処は……義侠心の強い男だなア……とこのやうに思はし度いので芝居をやつて見たのだ。其上沢山の農民団体や労働団体が傍にごろついて居たものだから、日の出島の守宮別と云ふ男は義侠心に富んだ男だ、彼れこそ真当の救世主だと世界中に名を広めやうと思つた私の策略だよ。兎角人間は広く名を知られないと仕事が出来ないからなア。あのウズンバラ・チヤンダーだつて実際に交際あつて見ればコンマ以下の人間だ。俺から見れば小指の端にも足らないやうな小人物だ。そいつがふとした事から事件を捲き起し世界中に名が響いたものだから、世界の阿呆共がキリストの再来だ、ミロクの出現だ、メシヤだ、などと担ぐやうになつたのだ。売名策には労働者の中に入つて一寸味をやるのが一番奥の手だよ、ハヽヽヽ』 お花『ホヽヽヽヽ、何とまア抜け目の無いお方だ事。それ丈の知恵がある癖に今迄どうしてお寅さまのやうな、没分暁漢に食ひついて入らつしやつたのですか』 守宮別『お寅さまは変性男子の系統ぢやないか、脱線だらけの分らない事を喋べり立てて居ても、何と云ふても系統だから、三五教の没分暁漢連がコソコソとひつつきに来よる。そいつを利用して、つまり要するに三五教の転覆を企て、変性女子の地位に取つて代らうと云ふ大野心を持つて居たからだ』 お花『何とまア人は見かけによらぬものだ事、夢か現の守宮別さまと播陽さまでさへ云つて居られた位だから、酒さへ呑ましておけばいい男だと思つて居たに、聞けば聞く程頼もしい何と云ふ立派な男だらう。併しそれも無理もない、世界の事にかけたら酸も甘いも辛いも悟りきつた蹴爪の生えた、コケコツコウか、尾が二つに分れた山猫のやうなアヤメのお花を蕩かすと云ふ腕があるのだもの、ホヽヽヽヽ。油断も隙もならない主人だわ。一つ守宮別さま、否旦那さま貴方の得意な鈴虫のやうな声で詩吟でもやつて下さいな。私ばつかりに歌はしてあまり平衡が取れませぬわ』 守宮別『よしよしお望みとあれば詩吟でも何でもやらう』 と銅羅声を張り上げ大口をあけ、 守宮別『月落ち烏啼いて霜天に満つ 暁に見る千兵の大河を擁するを……ゼスト……』 お花『これ旦那さま、ソンナ旧めかしい詩吟ならもう止めて下さい。どうか私の事を謡つて貰ひたいのですがなア』 守宮別『よしよし、それぢや新派で一つやつて見やう。歯の浮くやうな艶つぽい歌だよ、オホン。 天を背景となし 地を舞台となし 雲の袖をふるつて 大宇宙に活躍す あゝ吾人と生れて人に非ず さりとて獣にも非ず 又神でもなければ仏にも非ず 広い宇宙に只一点の肉塊として 忽然として住めるのみ あゝ天の時今や到りて 世界の中心地点 日の出の島の又中心 浪花の遊里に初声をあげたまひし あやめの君と懇親を結ぶ 吾現世に生誕して初めての歓喜を知る 医者と南瓜はヒネたのがよい 色は年増が艮め刺す あゝ何たる幸福ぞや お寅の如きは物の数ならず 其面貌はアトラスの如く 其臀肉は搗臼の如し アヤメの君とお寅婆を比較すれば 天空に輝く月光菩薩と 地中に潜む泥亀の如し 加ふるにお寅の懐中には 僅かに千金を剰すのみ 黄金万能の現世に於て 万金を懐中する アヤメの君こそは 富においても最大優者なり この夫人にしてこの金あり この夫人にしてこの夫あり 俗に所謂鬼に金棒とは 這般の消息を物語るものか あゝ愉快なりカンランの山 夫となり妻となつて此艶姿を天地の万物に観覧せしむ 宇宙の幸福を吾と汝と独占して 生乍ら幸福の神となり 万劫末代生通しの仙術を学び 天地と共に悠久に生むとす あゝたのもしきかなたのもしきかな カンランの神山の夕 月は皎々として五色の雲の階段を昇り 星は燦爛として金銀の光を放つ 天清く地又清し 吾清く汝又清し 半日の清遊実に心胆を洗ふの思ひあり 喝。』 お花『あゝ吃驚しましたよ、狸のやうな口あけて、喝なんて何ですか。喰ひつかれるかと思ひましたよ』 守宮別『あまりお前が可愛ので頭から噛ぶつてやらうと思つたのだ、アハヽヽ』 お花『オホヽヽヽ、あのまア旦那様のほどのよい事哩のう。その声で蜥蜴喰ふか杜鵑式だから一寸も油断は出来ないわ』 守宮別『おいお花、もう黙つて行かう、どうやら、あの木蔭に人が居るやうだ、些と許り見つともないからなア。お前は二三間離れてついて来て呉れ。さうして人の居る所で旦那さまなぞと云つて貰つちや困るよ』 お花『ハイ、旦那さまつて今日限り申ませぬ。よう気の変るお方ですな』 と早や悋気の角を生して居る。 守宮別は小声で、 守宮別『あゝ女子と小人は養ひ難しとは能くいつたものだな。柔しく云つたら自惚る、強く云へば吠える、殺せば化けて出ると云ふ魔物だからなア、アーア』 お花は小声でハツキリわからねどアーアの声を聞き、こいつは又例の心境変化の境界線ではないかと心配のあまりサツト顔色変り蟇蛙の鳴き損ねたやうな面をさらし居る。 路傍の五六間先の木の下から瓦をぶちやけたやうな笑ひ声が聞え来りける。 (大正一四・八・二〇旧七・一於由良加藤明子録) (昭和一〇・三・一〇於台湾別院蓬莱殿王仁校正)
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霊界物語 64_下_卯エルサレム物語2 15 騒淫ホテル 第一五章騒淫ホテル〔一八二一〕 守宮別はお花の形勢如何と、息を殺して考へて居たが、余り低気圧の襲来もないので、安心して翌日の十時過まで潰れるやうに寝て了つた。お花はどこやら一つ腑に落ちぬ所があるので、一目も睡らず角膜を血ばしらして、朝間早くから、ヤクをたたき起し、次の間に座をしめて、稍小声になり、 お花『これ、ヤクさま、昨夕お前は綾子と云ふ娘があると云ひましたねえ』 ヤクは……ウツカリ吾子の事を喋り、若し守宮別との関係があらうものなら、板挟みになつて此家に居る事が出来ない。これや呆けるに限る……と腹をきめ、 ヤク『ハイ云ひました。併しありや嘘ですよ。つい座興にアンナ事云つて見たのですよ。ナアニ、私の様な者に半分でも娘があつて耐るものですか。娘さへ有りや、コンナ難儀はしませぬからな』 お花は長煙管で火鉢の縁を叩き乍ら、頭を左右に振り、 お花『イエイエ駄目ですよ。お花の目で一目睨みたら、何程隠しても駄目ですよ。サアちやつと云ふて下さい。好い子だからなア』 ヤク『何程好い児だと仰有つても独身ものの私、好い子も悪い子も、嬶も女房もカカンツも、媽村屋も何もありませぬわい』 お花『何と云つても、お前の顔は、一寸渋皮のむけた姫殺しだよ。縦から見ても横から見ても、女にちやほやされるスタイルだ。柳の眉毛にキリリとした目許、黒ぐろしい目の玉、鼻の恰好と云ひ口許と云ひ、お前のやうな美男子を、捨てる女があるものかいなア。随分女殺をやつたやうな顔だよ。サアサアほんとに云つて下さい。決して守宮別さまに不足は云はない、お前の迷惑になるやうな事はせぬから。守宮別さまのひいきばかりせずに、お花のひいきも些とはして下さつては如何ぢやいな』 ヤク『アーアー煩い事だな。お前さまの気に入れば旦那さまの気に入らず、旦那様の為を思へばお前さまに責められるなり、私も立つ瀬がありませぬわ』 お花『ホヽヽヽ、夫れ御覧なさい。蛙は口から、たうとう白状なさつたぢやありませぬか。綾子と云ふ芸者は一体何処に置いてあるのだい』 ヤク『ハイ、もう仕方がありませぬから申ますわ。併し私が云つた為めに、夫婦喧嘩でもやられちや、此処を飛び出すより外はありませぬ。さうすりや、主人を失つた野良犬同様、ルンペンするより外ありませぬ。さうすれや可愛い娘の恥にもなりますし、まさかの時の保証をして貰はにや云ふ事は出来ませぬ』 お花『ホヽヽヽ、何と如才の無い男だこと。併しお前の立場とすりや無理もない事だ。それなら、どつとはり込みて百円札一枚上げるから何も彼も云ふのだよ』 と云ひ乍ら、ヤクの懐へ蟇口から百円札を一枚取り出してそつと捻込む。 ヤク『ハ、遉はお花さま、三千世界の救世主、シオンの娘、木花咲耶姫の生宮、アヤメのお花様、有難く頂戴致します。帰命頂礼謹請再拝謹請再拝』 お花『これこれ辛気臭い、ソンナ事どうでもよいぢやないか。早く事実を云つて下さいな。グヅグヅしとると守宮別さまが起きて来るぢやないか』 ヤク『ハイ、それなら申します。確に綾子と云ふ娘が厶います。サアこれで許へて下さい』 お花『それ御覧、娘があるだらう。妾の目は違ふまいがな』 ヤク『いや誠にはや、恐れ入りまして厶います。生宮様の御明察、到底匹夫下郎のわれわれには、御心底を測知する事は出来ませぬワイ、エヘヽヽヽ』 お花『その綾子は一たい何処に居るのだい』 ヤク『ヘエ、居所迄申上ると約束はして厶いませぬがな』 お花『この広い世の中、確に娘があると云つた所で、居所が分らぬやうな事で何になりますか。さう意茶つかさずと、とつとと云つて下さいな』 ヤク『ソンナラドツとはり込んで、神秘の扉を開きませう。実はその何です。或所に勤め奉公をやつて居ますよ。それはそれは別嬪ですよ。親の口より云ふのは何ですが失礼乍らお花さまのやうな別嬪でも到底傍へは寄れませぬな』 お花『何、別嬪だと、そりや大変だ。その別嬪が何処に居ると云ふのだい』 ヤク『或所に確に居りますがな』 お花『或所と云つたつて、地名を云はにや分らぬぢやないか』 ヤク『有る所に居るに定つてゐますがな。無い所に居りさうな筈は厶いませぬもの』 お花『どこの国の何処の町に居ると云ふ事を云つて下さい』 ヤク『成程、併しコンナ事を云ひますと、旦那様におつ放り出されますわ。其時の用意にモウ百両下さいな』 お花『エヽ欲の深い男だな、それ百円』 と又放り出す。 ヤク『エヘヽヽヽヽ、確に頂戴致しました。三千世界の救世主、大ミロクの生宮』 お花『これこれヤク。ソンナ長たらしい事はどうでもよい。サ早く簡単に所在を云ふて下さいな。助けて貰つたお礼にも行かねばならぬからな』 ヤク『ハイ、パレスチナの国に居ります』 お花『成程、さうだろさうだろ、処はどこだい』 ヤク『所ですかいな。所がお前さま、所をすつかり忘れて了つたのですよ』 お花『これヤク、百円返してお呉れ。もうお前のやうな頼りない方とは掛合つても駄目だ。これから警察署へ行つて探して貰う。名さへ分ればよいのだから、其百円をお返し』 とグツと胸倉をつかむ。 ヤク『メヽヽヽ滅相な、これや私の金です。たとへ天が地になつてもこの金は渡しませぬ』 お花『それならもつと詳しく云はないかいな』 ヤク『それならもう百円下さいな。詳しく云ひますから』 お花『エヽ仕方がない、これで三百円だよ』 ヤク『実は、かう云ふて千円許りせしめようと思ひましたが、俄に良心の奴弱音を吹いて、肉体を気の毒がらしますから、三百円で辛抱しておきませう。実はステーション街道の有明家の綾子と云つたら、界隈切つての美人ですよ。サアもう此処迄いつたら耐へて下さい。もう此上は材料が厶いませぬからな』 お花『いや、よう云ふて下さつた。お前ならこそ、三百円は安いものだよ。サアこれから三百円がとこ守宮別をとつ締めてやらねばなるまい』 と云ひ乍ら他愛もなく寝て居る守宮別のポケットに手を入れて探つて見ると小さい名刺が現はれた。お花はそつと吾居間に帰り老眼鏡をかけてよく見れば、六号活字で、『有明家綾子』と記してある、さうして横の方に小さい写真がついてゐる。お花は俄に頭へ血がのぼり、卒倒せむ許りに打ち驚いたが遉の豪傑女、グツと気を取り直し、手を振はせ乍ら名刺の裏を返して見ると、薄い鉛筆文字で何かクシヤクシヤと記してある。お花は目が眩み、この文字を読む事が出来ず、たうとう其場に卒倒して仕舞つた。其処へボーイの案内につれて十七八の花を欺く美人が現はれ来り、 綾子『漆別さまのお部屋は此方で厶いますか。有明家の綾子が一寸お目にかかり度いとお伝へ下さいませ』 ヤクは一目見るより吃驚し、 ヤク『ヤ、お前は綾子ぢやないか。オイ、コンナ所へ来て呉れては大変だ。どうか帰つて呉れ大変だからな』 綾子『イエ、妾は漆別さまに用があつて来たのですもの。何程親だとて、娘の恋愛迄圧迫する権利は厶いますまい』 ヤク『これ娘、親の云ふ事をなぜ聞かぬのか』 綾子『ヘン、偉さうに親顔して下さいますなや。お母さまが亡くなつてから後妻を貰つて妾をいぢめさせ、沢山の財産を皆無くして仕舞つて、一人の娘に高等教育も受けさせず、十一やそこらで茶屋へ売飛ばすと云ふやうな無情冷酷な親が何処にありますか、何と仰有つても妾は漆別さまに会はねばなりませぬ』 ヤク『漆別さまなぞと、ソンナお方は居られないよ。アタ見つともない、女が男を尋ねると云ふ事が有るか、早く帰つて呉れ。のう、私を助けると思つて』 綾子『漆別さまが居なくても構ひませぬ。第一号室のお客さまに遇ひさへすればいいのですもの』 ヤク『第一号室は、三千世界の生神、シオンの娘、木花咲耶姫の尊様が祭つてあるのだ。人間なぞは居ないから、サアサア、とつとと帰つて呉れ』 綾子『一号室が差支れや二号室でも三号室でも構ひませぬワ』 ヤク『あゝ困つたな、お花さまが今卒倒しとるので好やうなものの、コンナ事になつて来たら、何事が起るか知れやしないわ。アヽ一層面倒の起らぬ中に逃げ出さうかな』 綾子『逃げ出さうと逃げ出すまいと、貴方の勝手になさいませ。私は夫婦約束迄した漆別さまに遇ひさへすれば好いのですもの』 ヤク『何、夫婦約束迄したと、ヤ、こいつは困つたな。蔭裏の豆も時節が来れば花が咲く油断のならぬは娘とはよく云つたものだわい』 綾子『定つた事ですよ。朝から晩迄色餓鬼の巷へ、お父さまが打ち込んだのですもの、修学院の雀は蒙求を囀り、門前の小僧は学ばずに経を読む道理、妾だつて十三の年から恋愛は悟つて居りますわ。ホヽヽ、エヽコンナ没分暁漢のデモお父さまに掛合つても駄目だ。二世を契つた漆別さまに遇へばよいのだよ』 と矢庭にヤクの手を振り放ち三号室に侵入した。見れば、白粉をベツタリことつけた五十余りの婆アさまが仰向けに倒れて居る。 綾子『何だ、怪体な所だな』 と云ひ乍ら、第二号室のドアを開けて這入つて見ると、グウグウと夜半の夢を見て恋しい男が睡つて居るので、綾子は傍により、 綾子『これ申し漆別様、綾子で厶います。どうか起て下さい。もう何時だと思ふていらつしやるの』 守宮別は綾子の艶しい声が耳に入つたと見えてムクムクと起き上り、 守宮別『ヤ、お前は綾子だつたか、怖い夢を見た。一寸俺はホテル迄帰つて来るわ』 綾子『ホヽヽヽ、これ旦那さま、何を寝呆けて入らつしやるの。此処はカトリック僧院ホテルの第二号室ですよ』 守宮別『成程さうだつたな。お前又どうして尋ねて来たのだい』 綾子『女房が夫の所へ尋ねて来るのが悪う厶いますか、貴方も余り妾を馬鹿にして下さいますなや。どうも貴方の挙動が怪しいと思つて考へて来て見れば、次の間に怪物のやうな女が寝かしてあるのでせう。あれや大方貴方のレコでせう。エー悔しや残念やな』 と守宮別の顔面目蒐けて所構はず掻きむしる。守宮別の顔には長い爪創が雨の脚の様に額口から咽喉にかけて蚯蚓膨れが出来て了つた。 守宮別『あゝ許せ許せ、さう掻きむしられちや、痛くて耐らないぢやないか』 綾子『エヽ、年が若い未通娘だと思つて、妾を馬鹿にしよつたな。サアもう死物狂ひだ。喉首に喰ひついて、命を取らねばおきませぬぞや』 ヤクはドアの外から様子を考へて居たが、何とはなしに形勢不穏なので、開けて入らうとすれど、内部より錠が卸してあるので、一歩も進む事が出来ず、ドアの外で地団駄踏んで居る。内部では守宮別綾子の両人がチンチン喧嘩の真最中、守宮別は種茄子を力限り締めつけられ、……勘忍々々人殺……と喚きつつ、やつとの事で錠を外し第三号室迄命辛々逃げ出した。此物音に卒倒して居たお花は気がつき見れば守宮別が若い女と組んづほぐれつ、掴みあつて居る。お花は、かつと怒り、 お花『コラすべた女奴、人の男を取りよつて、覚悟せい。此お花も死物狂ひだ』 と綾子の髻を掴んで引づり廻す。綾子は守宮別とお花の両方から苛嘖まれ、 綾子『人殺々々、お父さま助けてお呉れ』 と泣き叫ぶ。遉のヤクも吾子の危難を見るに忍びず、 ヤク『この淫乱婆々奴』 と拳を固めお花の頭と顔の区別なく、丁々発矢と打ち据ゑる。キヤーキヤーガタガタバタンバタン、ドタンドタンと時ならぬ異様の響きに僧院ホテルのボーイ連も、吾先にと階段を登り来り、此奴も亦入り乱れて撲り撲られ、いつ果つるとも知れざれば、ヤクは一層の事、警察へ訴へ出て応援を請はむと、階段を駆け下りる折、過つて転落し、血を吐いて蛙をぶつつけたやうにフンノビて仕舞ひける。 此騒動も、ホテルの支配人が中に入つて、やつと治まり、綾子は有明家へ渡され、お花は暫し負傷の癒る迄、エルサレムの病院に収容される事となりにける。 (大正一四・八・二〇旧七・一於由良秋田別荘加藤明子録)