| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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霊界物語 | 58_酉_イヅミの国1(猩々島) | 16 聖歌 | 第一六章聖歌〔一四九一〕 初稚丸に帆をあげて潮のまにまに辷り行く 玉国別の一行は前途に当る島陰を 眺めて何か心中に朧げ乍ら望みをば 抱きていそいそ湖風に吹かれて進む波の上 月は漸く中天に昇らせ玉ひ清涼の 空気はおひおひ身に迫る何とも云へぬ心持 思はず知らず苫の屋根立出で来り舷頭に 遠くに霞む島陰を打仰ぎつつ独言 玉国別『際限もなき湖原の彼方に見ゆる浮島は 如何なる人の住みけるか但しは人無き孤島か 猩々島の片割れか波に呑まれて船を割り バーチルさまの二の舞を演じて漸う漂着し 猩々の姫を妻に持ち浮世離れし別世界 其日を暮す人あらば又もや悲しき生き別れ 救ふも辛し救はねば神に対して相済まず 何は兎もあれ波の間に進みて実地を探り見む ああ惟神々々御霊幸ひましまして 神の賜ひし此御船波路も安く渡らせよ 国治立の大御神豊国主の大御神 斎苑の館に在れませる瑞の御霊の御前に 三五教の宣伝使玉国別を初めとし 神の稜威も三千彦やその外百の神司 遠き海路を恙なく進ませ玉へと願ぎ奉る 初稚姫の神司此荒波を乗り切りて 猛犬スマートに跨りて波のまにまに出で玉ふ その扮装の勇ましさもしも彼方の島陰に 休らひ玉ふ事あれば実に嬉しき限りなり 初稚姫の逸早く船を見棄てて犬に乗り 出で行き玉ひし心根は何かは知らねど重大の 使命の在すと覚えたり吾等一同の行先に 又もや曲の現はれて如何なる仇をなさむやも 図られ知らぬキヨの湖只何事も惟神 大御心に任せつつ天津祝詞を奏上し 天の数歌歌ひ上げ一同声を相揃へ 神の御名を称ふべしああ惟神々々 御霊幸ひましませよ』 と歌ひ了り、一同と共に型の如く恭しく祝詞を奏上し、数歌を歌ひ終つて宣伝歌を節面白く称へ初めた。 玉国別『地水火風空の大本を造り玉ひし神御祖 大国常立大御神宇宙の外に在しまして 天地日月星辰を完全に委曲に造り終へ 青人草や鳥獣虫族初め草や木の 片葉の露に至るまで厳の恵みを垂れ玉ひ 此美はしき世の中を守らせ玉ふ有難さ 先づ第一に日の御神高皇産霊の大御神 月の御神と現れませる神皇産霊の大御神 水火の業を受持ちて天地万有按配し 各その所を得せしめて無限の歓喜を与へつつ 弥勒の聖代を細に築かせ玉ふ尊さよ 先づ第一に人を生み天足の彦や胞場姫を 青人草の祖先としエデンの園に下しまし 神の形に造られし人の子数多生み終はせ 此世の中を開かむとかからせ玉ふ時もあれ 天足の彦や胞場姫が皇大神の御心に 反き奉りし邪心より天地に妖邪の空気充ち 八岐大蛇や醜狐曲鬼などの生れ来て 益々此世を乱し行く高皇産霊の大神の 厳の御霊と在れませる国治立の大神は 天津御神の御言もて遥々天より降りまし 此地の上の万有をいと安らけく平けく 治めむものと千万の掟を定め神々を 生みなし玉ひて三界を救はむ為めに種々に 心を悩ませ玉ひけり神皇産霊の大神の 瑞の御霊と在れませる豊国姫の大神は 厳の御霊の神業を助け玉ひて遠近の 山野海河悉く心を配り守りまし 八岐大蛇の憑りたる常世の彦や常世姫 金毛九尾曲鬼の醜の魅魂に霊魂を 攪乱されて大神の大神業を妨害し 遂には枉の集まりて天津御国に在しませる 元津御祖の大神に厳と瑞との二柱 神の掟を悪しざまに申上げたる枉業に 皇大神は止むを得ず熱き涙を湛へまし 弥勒の聖代の来る迄国治立の大神を 地上の世界の艮に長く浮べる自転倒の 根別けの島に押込めて時節を待たせ玉ひつつ 豊国姫の大神はメソポタミヤの瑞穂国 境を限りて今暫し弥勒の聖代の来るまで 時節を待てと厳かに宣らせ玉ひし悲しさに 厳と瑞との大神は涙を呑んで潔く 各自々々の隠遁所にその身を忍ばせ玉ひしが 一度に開く蓮葉の開いて薫御代となり 神素盞嗚の大神は千座の置戸を負ひ乍ら 斎苑の館やコーカスの山に姿を隠しまし 島の八十島八十の国隈なく教を垂れ玉ひ 世人を教へ曲神を言向和し天地を 清めて元の神国に立直さむと宣伝使 数多養ひ育てつつ彼方此方に派遣して 曇りきつたる世の中を照らさせ玉ふぞ有難き 神の使の数多く在します中にいと勝れ 神徳強き神柱初稚姫は只一人 魔神の猛ぶ荒野原山川海を乗り越えて 猛犬スマートと諸共に神変不思議の神力を 現はし玉ふ畏さよ朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも仮令大地は沈むとも 誠の力は世を救ふ誠の道の御教を 教へられたる吾々は皇大神の御為に あらゆる艱難を凌ぎつつ道の御為世の為に 尽さにやならぬ宣伝使ああ有難し有難し 斎苑の館を出でしより種々雑多と大神の 恵みの試しに遭ひ乍らその度毎に神力を いと爽かに与へられ所々に功勲を 現はしまつり今此処に清めの湖に浮びつつ 仁慈無限の大神の教の御船に棹さして 進み行くこそ楽しけれ真純の彦よ三千彦よ デビスの姫よ伊太彦よいざ之よりは腹帯を 下津岩根に締め直し上津岩根に締め固め バラモン教やウラル教神の館に蟠まる 醜の曲津に打向ひ善言美詞の言霊や 堪へ忍びの剣もて吾身を厭はず進むべし 神は吾等と倶にあり人は神の子神の宮 如何なる敵の攻め来とも恐るる事のあるべきぞ ハルナの都に蟠まる八岐大蛇や醜神を 神の賜ひし言霊に言向和し斎苑館 皇大神の御前に勝鬨あげて帰る迄 心を弛さぬ此旅路守らせ玉へ惟神 皇大神の御前に玉国別が一行を ここに代表仕り畏み畏み願ぎ奉る ああ惟神々々御霊幸ひましませよ』 船頭のイールは、櫓を操り乍ら又もや歌ひ出した。 イール『(喇叭節)風はそよそよ吹き渡る 清めの湖には百鳥が 彼方此方と翻る 天国浄土も目のあたり。 向ふに見えるは猩々の島か 猩々島ならもう行かぬ 波に浮べるあの島陰は 吾をまつ風フクの島。 (琉球節)フクの島には真水が厶る 真水許りか洞がある。 洞の中には大蛇が棲むと 云ふて恐れる一つ島。 いやが応でも此潮流は フクの島へと船流す。 もしも大蛇が出て来たなれば 厳の言霊頼みます。 厳の言霊打ち出すなれば 鬼も大蛇も丸跣足。 私はイヅミのスマ里生れ 若い時から船の上』 と唄ひ乍ら一生懸命に櫓を操つて居る。 (大正一二・三・二九旧二・一三於皆生温泉浜屋北村隆光録) |
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霊界物語 | 59_戌_イヅミの国2(キヨの港) | 02 歌垣 | 第二章歌垣〔一五〇二〕 キヨの港の関所の総取締チルテル・キャプテンの留守宅にキャプテンの妻チルナ姫は、リュウチナント[※英語でLieutenant(ルーテナント)、中尉のこと。]のカンナと、ユゥンケル[※ドイツ語でJunker(ユンカー)、士官候補生のこと。]のヘール三人が密々首を鳩めて何事か小声で囁き居たり。 チルナ『これ、カンナさま、ヘールさま、此頃の旦那様の様子は、チツと変だとは思ひませぬか』 カンナ『さうですな、奥様の前だから申上げ難う厶いますが、此頃は余程旦那様も怪しうなられた様ですわ。のうヘール』 ヘール『ウン、さうだな。併し乍ら吾々卑しき者が上官の行動に就いて云々する権利はないからのう』 チルナ『これ、ヘールさま、公務上の事は兎も角も、今日は私事に関して打解けて話をして居るのだから旦那様の事だつて、矢張り、よくないと思つたら妾に忠告して呉れるのがお前の役ぢやないか。お前から云ふ事が出来なければ妾が又機嫌の可い時を見てお話するから、気の付いた事があれば遠慮は要らぬ、トツトと云ふて下さい。如何なる英雄豪傑でも女房が確りして居らねば成功するものぢやありませぬよ』 カンナ『如何にも、奥様の仰有る通り、どんな難問題でも裏口からソツと這入つて奥様の御機嫌さへ取つて置けば、直に解決がつくものだ。表の玄関口から這入つて来る奴は官海游泳術を知らぬものだ。一寸裏口からソツと奥様の気に入りさうな反物や宝石等を持ち込みて置くと、屹度出世の出来るものだ。何と云つても裏に女性がついて居らなくては、世の中で成功する事は出来ないからな。アハヽヽヽ』 チルナ『これ、そんな事は如何でも宜い。お前等、奥の別室に一絃琴を朝から晩まで弾じて居る、彼の女を何と思ひますか』 カンナ『さうですな。第一私は、それが不思議で堪らないのですよ。朝から晩まで座敷を締めきつて、琴ばつかり弾じて居る美しい女は、まだ吾々にも一言の挨拶もした事もなし、旦那様とニタニタ笑ひ乍らコソコソ話をやつて居るのです。そして肝腎の奥様にも挨拶せないのだから、怪ツ体なものだと思ひますワ』 ヘール『ウン、あれかい。ありや旦那様に聞いて見たら、「あの方は天上からお降り遊ばしたアバローキテー・シュヷラ様だ。バラモン教を守護の為にお降り下さつた天人様だ」と仰有つて居られました。奥様、必ず御心配なさいますな、失礼乍ら、よもや嫉妬をなさる様な卑屈な事は厶いますまいな。嫉妬は婦徳を汚す最も恐るべき悪魔で厶いますからな。あの方はトライロー・キャボクラーの救世主だと云ふ事ですから、うつかり穢れた身魂のものが側に寄つては大変です』 チルナ『何程、観自在天様か知らぬが、矢張先方が美しい女の肉体を以て、自分の主人と喋々喃々と甘つたるい口で話してゐるのを聞くと、余り宜い気分がしないぢやないか』 ヘール『成程、奥様の立場とすれば、そんな気分にお成り遊ばすのも無理も厶いますまい。併し乍らそこが辛抱と云ふものです。まアまア暫らく様子を考へて御覧なさい。あの品行方正な旦那様が立派な奥様があるのに女を引張り込むだり、なさる様な筈が厶いませぬワ』 カンナ『おい、ヘール、さう楽観は出来ないよ。男と云ふものは女に掛けたら目も鼻も無い者だ。況して天下無双の美人、年も若し、肌は紫磨黄金色、愛嬌たつぷり、何処から見ても三十二相揃ふた、欠点のない女菩薩だから、如何なる強骨男子もあの一瞥にかかつたら忽ち章魚の様に骨も何もなくなつて了ふからな。頭の先から足の先までスヴァラナやルーブヤや、ブラヷーザ、バヅマラーカ、マニラツナ、ムサラガルワ、アスマガルタと云ふ様な七宝を鏤め一目見てもマクマクする様な、あのお姿、木石ならぬ人間として、どうして心を動かさぬものがあらうかい。実に奥様、御注意なさらぬと険難で厶いますよ。うつかりして居ると、「チルナ姫は夫に愛がないから、今日限り暇をやる」なぞと何処から低気圧が襲来するやら、地震、雷、火の雨の大騒動が勃発するやら分りませぬぞえ』 チルナ『如何にもカンナさまの御観察は違ひますまい。何とか二人さま、よい考へは浮むで来ないかな。実はあの女が此館へ来てから神経が興奮して一目も眠られないのよ』 カンナ『成程、奥さまのお目が血走つて居ますわ。用心せないとヒステリックになりますよ』 チルナ『そらさうだとも、何時自分の不幸の種となるかも知れない美人だから、妾だつて安心が出来さうな事がないぢやないか。あの方は決して観自在天でも文珠師利菩薩でもありませぬ。矢張り普通の人間だ。旦那様がそんな巧い事云つてお前等を誤魔化して厶るのだ。何卒今の間にお前等の考へで、あの女をどうか口説き落し、旦那様の鼻を明かして、思ひ切らして下さる訳には行きますまいかな』 カンナ『ヘー、そりや願ふてもなき御命令、直ちにお受け致し度いは山々で厶いますが、そんな事をして旦那様の御機嫌を損ねやうものなら、それこそ足袋屋の看板で足上り、忽ち風来者になつて了ふぢやありませぬか』 チルナ『ホヽヽヽヽ、何とまア、お前さまの魂も時代遅れだな。リュチナントの職名を剥がれるのが、それ程恐ろしいのかい。よう考へて御覧、あの様なナイスをお前さまの女房にしようものなら、それこそ天下に名が揚り、ゼネラルよりも尊敬されるやうになりますよ。あの体に着いて居る宝石を一つ金にしても一代安楽に暮されるぢやないか。あんな美人を見す見す見逃す位なら男を廃業なさつたが宜からう。男は決断力が肝腎ですよ』 カンナ『成程、さう聞けば食指大いに動いて来ました。併し、私も、もう十年許り辛抱して、せめてカーネルの地位に上り、郷里に錦を飾り代議士の候補者にでもなつて巧く当選し、議事壇上で花々しく言霊戦を開始し、天晴政治家と褒められ様と思つたのですが、ここは一つ思案の仕所ですな』 チルナ『議場雑沓議員や、矛盾議員、着炭議員、事故議員、陣笠議員、墓標議員、等と国民から冷評を浴びせかけられ、痺れケ原の糞蛙と云はれるよりも、あんなナイスを女房に持ち総理大臣の裏口からソツと出入させてお髯の塵を払はせ、伴食大臣にでもなる方が余程出世の近道だよ。陣笠になつた所で到底知事にもなるこたア出来やしない。先づ出世をしようと思へば、あの位の美人を女房に持つのだな』 ヘール『もし奥様、此ヘールは予算外で厶いますか。カンナが、あの美人を女房に持つのならば私も持ち度う厶います。一人の女に二人の男、どうも平衡がとれぬぢやありませぬか』 チルナ『そこはお前さま等が選挙競争でもやつて、うまく当選するのだな。負た処で運動が足らないのだから諦めるより仕方がない。又次期の総選挙を待つて、やり直せば可いのだから』 ヘール『もし、その運動方法は如何すれば可いのですか。何と云つても先方は天下無双の美人、そして宝は何程でも持つてゐるのだから、黄白を以て歓心を得る事は出来ないし、男前でゆかうと思へば零なり、弁舌は巧くなし、到底寄りつけないぢやありませぬか』 チルナ『さア、そこが選挙は水物と云ふのだ。縁は異なもの、乙なものと云つて、女は妙な所に惚れるものだから、一つ憖に知恵を出して内兜を見透かされるよりも、力一杯滑稽を演じて女の腮を解き、「何とまア調子の宜い人だな、余程チヨカ助だ、斯んな男と添ふて居つたら嘸面白からう。妾一人でこんな所でコードを弾じて居つても面白くない。久振りで腮の紐も解けた。何とまア好いオツチヨコチヨイだ」と思はせるのが一番近道だよ』 ヘール『ヘー、生れつき無粋な私、滑稽なぞは到底出来ませぬわ』 カンナ『や、好い事を教へて下さつた。滑稽諧謔、口をついて出ると云ふチーチャーのカンナさまだから勝利疑ひなし、さア之から一つ逐鹿場裡に立つて烏鷺を争ひませう。エヘヽヽヽヽ、もし、当選したら奥さま、何を奢つて下さいますかナ』 チルナ『当選した方から奢つて貰はなくちやならぬぢやないか。そして落選した方には妾が慰安料として一生食へる丈けのお金を上げませう。さア之から二人寄つて精一杯ベストを尽して下さい。早くやらなければ旦那様が帰つては駄目になりますよ。アヅモス山にでも引張り出して、巧く要領を得るのだな。勝てば結構、負ても結構、こんな甘い選挙競争がありますか。さア勇むでやつて下さい』 カンナ『はい、然らば仰せに従ひ捨身的活動を御覧に入れませう。おいヘール、貴様も俺の暫らく艶敵となつて逐鹿場裡に立つのだ。時遅れては一大事だ。さア行かう』 と二人は庭園の樹木の間を縫うて美人の居間に胸を躍らせ乍ら近づいた。何だか心がドギマギして、戸を開けて這入る事が出来ない。二人はモジモジし乍ら庭の木立に立つてコソコソと囁いて居る。 カンナ『おい、此処迄来るは来たものの、何だか恥しくて頬が赤くなつて、あの戸一枚開ける勇気が出なくなつたぢやないか。男も斯うなると弱いものだな』 ヘール『さうだ、到底正面攻撃は駄目だよ。ここで一つ二人が歌でも唄つて、品よう踊らうぢやないか。そしたらナイスが窓を開けて、あの涼しい目付で覗いて呉れるかも知れない。さうなりや、此方のものだ。其時ヤ一生懸命にラブ・イズ・ベストを唄ふのだ。屹度先方だつて血が通ふて居る水の垂る様なボトボトとした盛りの肉塊だから、屹度動くに違ひない。それより良い方法は無からうぢやないか。オツト失敗つた。こんな妙案奇策を政敵のお前に聞かすぢやなかつたに』 と云ひ乍らヘールは窓の外にて黒い尻を捲り妙な手付で唄ひ踊り狂ふ。 ヘール『俺は印度のハルナの育ち こんなナイスは未だ知らぬ ヨイトサヨイトサ、ヨイトサのサツサ。 夏の暑いのに一間に籠もる さぞや暑からう淋しからう ヨイトサーヨイトサー。 人は如何しても一人ぢや暮れぬ 女ばかりぢや夜が明けぬ。 男持つならヘールさまを持ちやれ 顔に面痤がこの通り ア、ヨイトサーヨイトサー』 カンナ『男持つならカンナさまを持ちやれ リュウチナントの軍人よ ヘールは偉さうに威張つて見ても ユウンケルでは仕様が無い。 ここに厶るのは天女か又は 三十三相の観音さまか 一度お顔が拝み度い。 吹けよ夏風上れよ簾 中のナイスの顔見たい ア、ヨイトサーヨイトサー。 女旱もない世の中に 惚れて出て来る粋な男。 此男色が黒うても浅漬茄子 噛めば噛む程味が出る ア、ヨイトサーヨイトサー。 これ丈けに二人男が心を尽し 踊り狂ふのを知らぬ姫。 一絃の、琴の音色に俺や憧憬れて ピンピンシヤンシヤン撥ね廻る ア、ヨイトセーヨイトセー。 ヘールさま一つお前が皺嗄れ声で 姫の腮をば解いて呉れ。 勝つも負るも時世と時節 負た所で金になる』 ヘール『カンナさまもう此上は惟神 神のまにまに任しませう。 三五の神の教に照らされて バラモン教が嫌になつた。 こう云へば屹度ナイスが窓開けて 俺の黒い顔見るであらう。 ア、ヨイトサーヨイトサー。 これ程に唄ひ踊れど此ナイス 耳が無いのかぢれつたい。 月はテラテラテルモン山の 峰を掠めて昇り行く。 星の顔より綺麗なナイス 月の様なる光出す ア、ヨイトサーヨイトサー。 宝石を体一面ピカピカと 誰も欲しがる着けたがる。 月にや村雲花には嵐 カンナ、ヘールの雲が出る。 紫の雲の中より現はれた 二人男の此踊り。 棚機も年に一度の逢う瀬はあるに 何故に渡れぬ恋の橋』 カンナ『惟神神のまにまに唄歌ふ 開けて嬉しい姫の顔。 窓開けて庭の面を見やしやんせ 罪な男が二人居る。 チルナ姫、角を生してブツブツ叱言 云ふに云はれぬ訳がある。 トントンと叩く妻戸を開けて呉れ 棄てた男ぢや無い程に』 二人の歌の声を聞いて一絃琴の手を止め、美人は耳を傾けて暫らく様子を考へて居た。 カンナ『一絃の琴の音色がピツタリ止んだ 思案投首窓の中』 ヘール『さア〆めた閉めた障子をサラリと開けて 観音菩薩が今覗く。 その時は互に顔の整理して 男比べをせにやならぬ ア、ヨイトサーヨイトサー』 美人は連子窓の障子をサツと開けて庭の面を見渡せば、チュウリック姿の両人が臀部を現はし、滑稽踊をやつて居る。 美人『庭の面を見れば怪しき人の影 胸は躍りぬ人も踊りぬ。 何人か知らず妾の窓前に 踊り狂へる姿可笑しき。 面白き唄を唄ひて面黒き 人が手を拍ち舞ひ狂ひけり』 カンナ『村肝の心のかぎり真心を 尽して君を慕ひ来にけり』 ヘール『今更に驚かれける汝が面 月の顔花の姿に』 美人『如何にせむ天津乙女の妾なれば 人の恋をば入るる術なき』 カンナ『いぶかしや人の体を持ち乍ら 天津乙女と免れ給ふか。 吾も亦高天原の天人の 霊魂を受けし益良夫ぞかし』 ヘール『此男人の頭を削る奴 それ故名をばカンナとぞ云ふ』 カンナ『此男酒ばかり飲みて財産が 日向に氷ヘール馬鹿者』 美人『兎も角も珍の益良夫吾居間へ 進ませ玉へ勧め参らす』 カンナ『惟神姫の言葉に従ひて 進み入らむか君の御前に』 ヘール『今こそはラブ・イズ・ベストを振翳し 登竜門を安々潜らむ』 美人『兎も角も優しき二人の益良夫よ 吾前に来よ心安けく』 カンナ『思ふたよりいと安々と門の戸を 打開け玉ひし姫ぞ畏き』 と詠ひ乍ら表門をガラリと開け、何となく手足を微動させつつ、美人の前に恥しげに座を占た。 (大正一二・四・一旧二・一六於皆生温泉浜屋北村隆光録) |
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霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 20 三五神諭(その一) | 第二〇章三五神諭その一〔一五四五〕 明治二十五年旧正月…日 三ぜん世界一度に開く梅の花、艮の金神の世に成りたぞよ。梅で開いて松で治める、神国の世になりたぞよ。この世は神が構はな行けぬ世であるぞよ。今日は獣類の世、強いもの勝ちの、悪魔ばかりの世であるぞよ。世界は獣の世になりて居るぞよ。邪神にばかされて、尻の毛まで抜かれて居りても、未だ眼が覚めん暗がりの世になりて居るぞよ。是では、世は立ちては行かんから、神が表に現はれて、三千世界の天之岩戸開きを致すぞよ。用意を成されよ。この世は全然、新つに致して了ふぞよ。三千世界の大洗濯、大掃除を致して、天下泰平に世を治めて、万古末代続く神国の世に致すぞよ。神の申した事は、一分一厘違はんぞよ。毛筋の横巾ほども間違ひは無いぞよ。これが違ふたら、神は此の世に居らんぞよ。 何れの教会も先走り、とどめに艮の金神が現はれて、天の岩戸を開くぞよ。岩戸開きのあるといふ事は、何の神柱にも判りて居れど、何うしたら開明になるといふ事は、判りて居らんぞよ。九分九厘までは知らしてあるが、モウ一厘の肝心の事は、判りて居らんぞよ。三千世界の事は、何一つ判らん事の無い神であるから、淋しく成りたら、綾部の大本へ出て参りて、お話を聞かして頂けば、何も彼も世界一目に見える神徳を授けるぞよ。 神となれば、スミスミまでも、気を附けるが神の役、かみばかり好くても行けぬ、かみしも揃はねば世は治まらんぞよ。不公平では治まらん、かみしも揃へて人民を安心させて、末代潰れぬ神国の世に致すぞよ。用意を為されよ、脚下から鳥がたつぞよ。 天地までも自由に致して、神は残念なぞよ。今の人民、盲者聾者ばかり、神が見て居れば、井戸の端に茶碗を置いた如く、危ふて見て居れんぞよ。サタンよ。今に艮の金神が返報返しを致すぞよ。 根に葉の出るは虎耳草、上も下も花咲かねば、此世は治まらぬ。上ばかり好くても行けぬ世。下ばかり宜くても此世は治まらぬぞよ。 天使は綾部に出現されてあるぞよ。至治太平の世を開いて、元の昔に返すぞよ。神柱会開きは人民が何時までかかりても開けんぞよ。神が開かな、開けんぞよ。開いて見せうぞよ。世界をこの儘おいたなら暗黒に成るぞよ。永久は続かんぞよ。今に気の附く人民ないぞよ。神は急けるぞよ。此世の鬼を往生さして、邪神を慈神神也慈悲の雨降らして、戒めねば、世界は神国にならんから、昔の大本からの神の仕組が、成就致す時節が廻りて来たから、苦労はあれど、バタバタと埒を付けるぞよ。判りた守護神は一柱なりと早く大本へ出て参りて、神界の御用を致して下されよ。さる代りに勤め上りたら、万古末代の大事業完成者であるから、神から結構に御礼申すぞよ。世界中の事で在るから、何程知恵や学がありても、人民では判らん事であるぞよ。此の仕組判りては成らず、判らねば成らず、判らぬので、改信が出来ず、岩戸開きの、末代に一度の仕組であるから、全然、学や知恵を捨てて了ふて、生れ赤児の心に立返らんと、見当が取れん、六ケ敷仕組であるぞよ。今迄の腹の中の、垢塵をさつぱり、放り出して了はんと、今度の実地まことは、分りかけが致さん、大望な仕組であるぞよ。 氏神様の庭の白藤、梅と桜は、出口直の御礼の庭木に、植さしたのであるぞよ。白藤が栄えば、綾部宜くなりて末で都と致すぞよ。福知山舞鶴は外囲ひ、十里四方は宮垣内、綾部はまん中になりて、黄金世界に世が治まるぞよ。綾部は結構な所、昔から神が隠して置いた、真誠の仕組の地場であるぞよ。 世界国々所々に、岩戸開きを知らす神柱は沢山現はれるぞよ。皆艮之金神国常立尊の仕組で、世界へ知らして在るぞよ。大方行き渡りた時分に、高天原へ諸国の神、守護神を集めて、それぞれの御用を申付ける、尊い世の根の世の本の、竜門館の神屋敷地上の高天原であるから、何を致しても大本の教を守らねば、九分九厘で転覆るぞよ。皆神の仕組であるから、吾が吾がと思ふて致して居るが、皆艮の金神が化して使ふて居るのであるぞよ。此の神は、独り手柄をして喜ぶやうな神でないぞよ。仕組の判る守護神でありたら、互に手を曳き合ふて、世の本の御用を致さすから、是までの心を入替へて、大本へ来て肝腎の事を聞いて、御用を勤めて下されよ。三千世界の神々様、守護神殿に気を附けるぞよ。谷々の小川の水も大川へ、末で一つに成る仕組。此処は世の本。誠の神の住ひどころ。 神と悪魔との戦ひがあるぞよ。此いくさは勝ち軍、神が蔭から、仕組が致してあるぞよ。神が表に現はれて、善へ手柄致さすぞよ。邪神の国から始まりて、モウ一と戦があるぞよ。あとは世界の大たたかひで、是から段々判りて来るぞよ。この世は神国、世界を一つに丸めるぞよ。そこへ成る迄には、中々骨が折れるなれど、三千年余りての仕組であるから、うへに立ちて居れる守護神に、チツト判りかけたら、神が力を附けるから、大丈夫であるぞよ。世界の大峠を越すのは、神の申す様に、素直に致して、何んな苦労も致す人民でないと、世界の物事は成就いたさんぞよ。神はくどう気を附けるぞよ。此事判ける身魂は、東から出て来るぞよ。此御方が御出になりたら全然日の出の守護と成るから、世界中に神徳が光り輝く神世になるぞよ。中々大事業であれども、昔からの生神の仕組であるから別条は無いぞよ。 一旦たたかひ治まりても、後の悶着は中々治まらんぞよ。神が表に現はれて、神と学との力競べを致すぞよ。学の世はモウ済みたぞよ。神には勝てんぞよ。 ○ 明治二十六年…月…日 お照しは一体、世界一つに治める経綸が致してあるぞよ。この世は神の国であるから、汚食なぞは成らぬ国を、余り汚して、神は此の世に居れんやうに成りたぞよ。世界の人民よ、改信致されよ。元の昔に戻すぞよ。ビツクリ箱が明くぞよ。神国の世に成りたから、信心強きものは神の御役に立てるぞよ。今迄は内と外とが立別れて在りたが、神が表に現はれて、カラも天竺も一つに丸めて、万古末代続く神国に致すぞよ。艮の金神は此世の閻魔と現はれるぞよ。 世界に大きな事や変りた事が出て来るのは、皆此の金神の渡る橋であるから、世界の出来事を考へたら、神の仕組が判りて来て、誠の改信が出来るぞよ。世界には誠の者を神が借りて居るから、漸々結構が判りて来るぞよ。善き目醒しも有るぞよ。亦悪しき目醒しも有るから、世界の事を見て改信致されよ。新たまりての世になるぞよ。今迄宜かりた所はチト悪くなり、悪かりた所は善くなるぞよ。上へお土が上る所もあるぞよ。お土が下りて海となる所もあるぞよ。是も時節であるから、ドウも致しやうが無いなれど、一人なりと改信を為して、世界を助けたいと思ふて、天地の元の大神様へ、艮の金神が昼夜に御詫を致して居るぞよ。 この神が天晴表面に成りたら、世界を水晶の世に致すのであるから、改信を致したものから早く宜く致すぞよ。水晶の神代に成れば、何事も世の中は思ふ様になるぞよ。水晶の霊魂を調査めて神が御用に使ふぞよ。身魂の審判を致して、神が綱を掛けるぞよ。綱掛けたら神は離さぬぞよ。元は神の直系の分霊が授けてあるぞよ。 是から世界中神国と神民とに致して、世界の神も仏も人民も、勇んで暮さすぞよ。神、仏事、人民なぞの世界中の洗濯致して、此世を直すぞよ。信心強き者は助けるぞよ。信心なきものは気の毒ながら御出直しで御座るぞよ。神は気を附けた上にも気を附けるぞよ。モ一ツ世界の大洗濯を致して、根本から世を立直すから、世界が一度に動くぞよ。世界には何でなり共、見せしめがあるぞよ。天地の神々のお宮を建てて、三千世界を守るぞよ。世界がウナルぞよ。世界は上下に覆るぞよ。此世は神国の世であるから、善き心を持たねば、悪では永うは続かんぞよ。金神の世になれば何んな事でも致すぞよ。珍らしき事が出来るぞよ。 ○ 明治二十七年旧正月三日 燈台下は真暗黒。遠国から判りて来てアフンと致す事が出来るぞよ。綾部は世の本の太古から、神の経綸の致してある結構な所であるから、誠の者には流行病は封じてあるぞよ。此事知りた人民は今に一人も無いぞよ。余り改信を致さんと世が治まりたら、万古末代悪の鏡と致すぞよ。出口を引き裂きに来るものも出来るぞよ。本宮坪の内出口竹造、お直の屋敷には金の茶釜と黄金の玉が埋けてあるぞよ。是を掘出して三千世界の宝と致すぞよ。黄金の璽が光出したら、世界中が日の出の守護となりて、神の神力は何程でも出るぞよ。開いた口が閉まらぬぞよ。牛の糞が天下を取ると申すのは、今度の事の譬であるぞよ。昔から未だ斯世が始まりてから無き珍らしき事であるぞよ。大地の金神様を金勝要の神様と申すぞよ。今度艮の金神が表に成るに就いて、此神様を陸地表面へお上げ申して、結構に御祭り申さな斯世は治まらんぞよ。昔から結構な霊魂の高い神様ほど、世に落ちて御座るぞよ。時節参りて煎豆にも花が咲きて上下にかへりて、万古末代続く世に成りて、神は厳しく人民は穏かになるぞよ。是を誠の神世と申すぞよ。神世になれば人民の寿命も長くなるぞよ。世界中勇んで暮す様に成るぞよ。今の人民は斯んな結構な世は無いと申して居れど、神から見れば、是位悪い世は斯世の元から無いのであるぞよ。人民と申すものは目の前の事より何も判らんから無理も無いぞよ。 ○ 明治二十九年旧十二月二日 昔の初りと申すものは、誠に難渋な世でありたぞよ。木の葉を衣類に致し、草や笹の葉を食物に致して、刃物一つ在るでなし、土に穴を掘りて住居を致したもので有りたが、天地の神々の御恵で段々と住家も立派になり、衣類も食物も結構に授けて戴く様になりたのは、皆此世を創造た、元の活神の守護で人民が結構になりたのであるぞよ。人民は世が開けて余り結構になると、元の昔の活神の苦労を忘れて、勝手気儘に成りて、全然世が頂上へ登りつめて、誠の神の思ひを知りた人民は漸々に無くなりて、利己主義の行方ばかり致して、此世を強い者勝ちの畜生原にして了ふて、神の居る所も無い様に致したから、モウ此儘にして置いては、世界が潰れて、餓鬼と鬼との世に成るから、岩戸を開かな成らん事に、世が迫りて来たのであるぞよ。邪神が覇張りて神の国を汚して了ふて、此世は真暗闇であるぞよ。神が表に現はれて、神力を現はして、三千世界を日の出の守護と致して、世界を守るぞよ。この世は一旦泥海に成る所であれども、金神が天の大神様へ御詫を申して、助けて戴かねば、世界の人民が可哀相であるから、何んでも人民を助けたさに神が永らく艱難苦労を致して居れども、知りた人民は読む程より無いので、神の経綸は延る許りであるから、此大本へ立寄りて神の御話を聞かして貰ふた人民だけなりと、改信[※三五神諭には約70ヶ所で「改信」が使われているが、校定版・愛世版では第20章a343と第22章a311の2ヶ所だけ「改心」になっている。初版では全て「改信」であり「改心」は使われていない。したがって誤字と判断し、霊界物語ネットでは「改信」に修正した。]を致して、元の水晶魂に立復りて下されよ。世が迫りて来たから、モウ何時始まるか知れんから、後でヂリヂリ悶え致しても、モウ仕様が無いから、何時迄も気を附けたが、モウ気の附け様が無いぞよ。解りた人民から改信をして下さらんと、世界の人民三分になるぞよ。 (大正一二・四・二五旧三・一〇北村隆光再録) |
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霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 21 三五神諭(その二) | 第二一章三五神諭その二〔一五四六〕 明治三十一年旧五月五日 今の世界の人民は、服装ばかりを立派に飾りて、上から見れば結構な人民で、神も叶はん様に見えるなれど、世の元を創造へた、誠の神の眼から見れば、全然悪神の守護と成りて居るから、頭に角が生えたり、尻に尾が出来たり、無暗に鼻ばかり高い化物の覇張る、暗黒の世に成りて居るぞよ。虎や狼は吾の食物さへありたら、誠に温順しいなれど、人民は虎狼よりも悪が強いから、欲に限りが無いから、何んぼ物が有りても、満足といふ事を致さん、惨酷い精神に成りて了ふて、鬼か大蛇の精神になりて、人の国を奪つたり、人の物を無理しても強奪くりたがる、悪道な世に成りて居るぞよ。是も皆悪神の霊の所行であるぞよ。モウ是からは改信を致さんと、艮金神が現はれると、厳しうなるから、今迄の様な悪のやりかたは、何時までもさしては置かんぞよ。善し悪しの懲戒は、覿面に致すぞよ。今迄好きすつ法、仕放題の、利己主義の人民は、辛くなるぞよ。速く改信致さんと、大地の上には置いて貰へん事に、変りて来るから、神が執念気を附けるなれど、知恵と学とで出来た、今の世の人民の耳には、這入かけが致さんぞよ。一度に岩戸開きを致せば、世界に大変が起るから、時日を延ばして、一人なりとも余計に改信さして、助けてやりたいと思へども、何の様に申しても、今の人民は聞入れんから、世界に何事が出来致しても、神はモウ高座から見物いたすから、神を恨めて下さるなよ。世界の神々様守護神殿、人民に気を附けるぞよ。無間の鐘を打鳴して、昔の神が世界の人民に知らせども、盲目と聾者との暗黒の世であるから、神の誠の教は耳へ這入らず、獣の真似を致して、牛馬の肉を喰ひ、一も金銀、二も金銀と申して、金銀で無けら世が治らん、人民は生命が保てん様に取違致したり、人の国であらうが、人の物であらうが、隙間さへありたら略取ことを考へたり、学さへ有りたら、世界は自由自在に成る様に思ふて、物質上の学に深はまり致したり、女と見れば何人でも手に懸け、妾や足懸を沢山に抱へて、開けた人民の行り方と考へたり、恥も畏れも知らぬ許りか、他人は何んな難儀を致して居りても、見て見ん振りをいたして、吾身さへ都合が善ければ宜いと申して、水晶魂を悪神へ引抜かれて了ふたり、徴兵を免れようとして、神や仏事に願をかける人民、多数に出来て、国の事共一つも思はず、国を奪られても、別に何とも思はず、心配も致さぬ人民ばかりで、此先は何うして世が立ちて行くと思ふて居るか、判らんと申しても余りであるぞよ。病神が其辺一面に覇を利かして、人民を残らず苦しめ様と企みて、人民のすきまをねらひ詰て居りても、神に縋りて助かる事も知らずに、毒には成つても薬には成らぬものに、沢山の金を出して、長命の出来る身体を、ワヤに為られて居りても、夢にも悟らん馬鹿な人民許りで、水晶魂の人民は、指で数へる程よりか無いとこまで、世が曇りて来て居りても、何うも此うも、能う致さん様に成りて居るくせに、弱肉強食の世の行り方をいたして、是より外に結構な世の治方は、無いと申して居るぞよ。今の世の上に立ちて居りて、今迄けつこうに暮して居りて、神の御恩といふ事を知らずに、口先ばかり立派に申して居りても、サア今といふ所になりたら、元来利己主義の守護神であるから、チリチリバラバラに、逃げて了ふもの許が出て来るぞよ。今の人民は、サツパリ悪魔の精神に化りて居るから、何程結構な事を申して知らしてやりても、今の今まで改信を能う致さんやうに、曇り切りて了ふたから神もモウ声を揚げて、手を切らな仕様が無いが、是丈神が気を附けるのに聞かずに置いて、後で不足は申して下さるなよ。神はモウ一限に致すぞよ。 今の人民は悪が強いから、心からの誠といふ事が無きやうになりて、人の国まで弱いと見たら、無理に取つて了ふて、取られた国の人民は、在るに在られん目に遭はされても、何も言ふ事は出来ず。同じ神の子で有りながら、余り非道い施政で、畜生よりもモ一つ惨いから、神が今度は出て、世界の苦しむ人民を助けて、世界中を桝掛け曳きならすのであるぞよ。今の人民は段々世が迫りて来て、食物に困る様になりたら人民を餌食に致してでも、徹底的行り抜くといふ深い仕組を致して、神の国を取らうと致して、永らくの仕組をして居るから、余程確りと腹帯を締めて居らんと、末代取戻しの成らん事が出来して、天地の神々様へ、申訳の無き事になるから、艮の金神が三千年余りて、世に落ちて居りて、蔭から世界を潰さんやうに、辛い行をいたして、経綸をいたしたので、モウ水も漏らさんやうに致して有るなれど、神は其儘では何も出来んから、因縁ある身魂を引きよせて、懸りて此世の守護をいたすのであるから、中々大事業であれど、時節参りて、変性男子と変性女子の身魂が、揃ふて守護が有り出したから、いろは四十八文字の霊魂を、世界の大本、綾部の竜宮館にボツボツと引き寄せて、神がそれぞれ御用を申し付けるから、素直に聞いて下さる人民が揃ふたら、三千年余りての仕組が、一度に実現て来て一度に開く梅の花、万古末代萎れぬ花が咲いて、三千世界は勇んで暮す神国になるぞよ。人民の天からの御用は、三千世界を治め、神の手足となりて、吾身を捨てて、神の御用を致さな成らぬのであるから悪には従はれぬ、尊い身魂であるのに、今の世界の人民は、皆大きな取違ひを致して居るぞよ。 ○ 明治三十二年…月…日 艮の金神が出口直の手を借りて、何彼の事を知らすぞよ。今迄は世の本の神を、北の隅へ押籠めておいて、北を悪いと世界の人民が申して居りたが、北は根の国、元の国であるから、北が一番に善くなるぞよ。力の有る世の本の真正の水火神は、今迄は北の極に落されて、神の光を隠して居りたから、此世は全然暗黒でありたから、世界の人民の思ふ事は、一つも成就いたさなんだので在るぞよ。是に気の付く神も、人民も、守護神も無かりたぞよ。人民は北が光ると申して、不思議がりて、種々と学や知識で考へて居りたが、誠の神々が一所に集りて、神力の光りを現はして居ると申す事を知らなんだぞよ。モウ是からは、世に落されて居りた活神の光りが出て、日の出の守護となるから、其処辺中が光り輝いて、眩うて目を明けて居れんやうに、明かな神世になるぞよ。今迄の夜の守護の世界は、明の烏と成りて来て、夜が明るから、それまでに改信を致して、身魂を研いて水晶魂に立帰りて居らんと、ヂリヂリ悶える事が出来致すから、今年で八年の間、神は気を附けたなれど、余り世界の人民の心の曇りがきつき故に、何を言ふて聞かしても、筆先に書いて見せても誠にいたさぬから、出口直は日々咽喉から血を吐くやうな思ひを致して、世界の為に苦労をいたして居るのを、見て居る艮の金神も辛いぞよ。胸に焼鉄あてる如く、一人苦みて居るぞよ。人民は万物の長とも申して、豪さうに致して居るでは無いか。鳥獣でも、三日先の事位は知りて居るのに、人民は一寸先が見えぬ所まで曇りて居るから、脚下へ火が燃えて来て居りても、未だ気が附かぬぞよ。能うも是だけ人民の霊魂も、曇りたものであるぞよ。障子一枚ままならぬ所まで精神を汚して置いて、何も判らぬ癖に神を下に見降して居る、人民の中の鼻高が、上へのぼりて、此世の守護をいたしても、一つも思ふやうに行きはいたさんぞよ。此世は、元の生神の守護が無かりたら、何程知識や学で考へても、何時までも世界は治まらんぞよ。一日も速く往生いたして、神の申す様に致さねば世界の人民が可哀想で、神が黙つて見て居れんから、今度は北から艮の金神が現はれて、世界を水晶の世にいたして、善と悪とを立別けて、善悪の懲戒を明白にいたして、世界の人民を改信させて、万古末代動きの取れん、善一筋の世の持方を致すから、是迄の世とは打つて変りての善き世といたして、神も仏も人民も、勇んで暮す松の世、神世といたして、天の大神様へ御目に掛るのであるぞよ。夫れまでに一つ大峠が在るから、人民は速く改信いたして、神心に立還りて下されよ。神は世界を助けたさの、永い間の苦労であるぞよ。昔の神世に立替へる時節が来たぞよ。今迄は日没が悪いと申したが、世が代ると日没が一番善く成るぞよ。日没に初めた事は、是から先の世は、何事も善き事なれば成就いたすぞよ。夫れも神をそつち除けにいたしたら、物事一つも成就いたさぬ世に変るから、何よりも改信致して、霊魂を研くが一等であるぞよ。時節が来たぞよ。モウ間が無いぞよ。 ○ 明治三十二年旧七月一日 竜門の宝を艮の金神がお預り申すぞよ。竜門には宝は何程でも貯へてあるぞよ。岩戸開きが済みて立直しの段になりたら間に合ふ宝であるぞよ。昔から此乱れた世が来るから、隠してありたのぢやぞよ。御安心なされ。艮金神大国常立尊が、神功皇后殿と出て参る時節が近よりて来たぞよ。此事が天晴表に現はれると、世界一度に動くぞよ。モウ水も漏さぬ経綸が致して有るぞよ。開いた口が塞がらぬ、牛糞が天下を取るぞよ。珍らしい事が出来るぞよ。アンナものがコンナものに成りたと、世界の人民に改信致させる仕組であるから、チト大事業で有れども、成就いたさして、天地の大神へ御目に掛けるから、艮の金神はカラ天竺までも鼻が届くぞよ。この仕組は永らく世に落ちて居りての、艮の金神の経綸であるから、神々にも御存知ない事があるから、人民は実地が出て来る迄はヨウ承知を致さんぞよ。是でも解けて見せてやるぞよ。今度の二度目の天の岩戸開は、因縁の在る身魂でないと、御用には使はんぞよ。神の御役に立るのは水晶魂の選抜ばかり、神が綱を掛けて御用を致さすのであるから、今迄世に出て居れた守護神は、思ひが大分違ふぞよ。是も時節であるぞよ。時節には何も敵はんぞよ。上下に復るぞよ。 艮金神大国常立尊の三千年の経綸は、根本の天の岩戸開で有るから、悪の霊魂を往生さして、万古末代善一つの世に致すのであるから、神の国に只の一輪咲いた誠の梅の花の仕組で、木花咲哉姫の霊魂の御加護で、彦火々出見尊とが、守護を遊ばす時節が参りたから、モウ大丈夫であるぞよ。梅で開いて松で治める、竹は邪神の守護であるぞよ。此経綸を間違はしたら、モウ此の先はどうしても、世が立ちては行かんから、神が執念う気を付けて置くぞよ。明治二十八年から、三体の大神が地へ降りて御守護遊ばすと、世界は一度に夜が明けるから、三人の霊魂を神が使ふて、三人世の元と致して、珍らしき事を致さすぞよ。いろは四十八文字で、世を新つに致すぞよ。此中に居る肝腎の人に、神の経綸が解りて来て改信が出来たら、世界に撒配りてある身魂を、此大本へ引寄せて、神の御用を致さすから、左程骨を折らいでも経綸は成就いたすから、何事も神の申す様にして居りて下されよ。今度の事は知識や学では到底可んから、神の申す事を素直に聞いて下さる身魂でないと、神界の御用には使はんぞよ。此の大本は外の教会のやうに、人を多勢寄せて、それで結構と申す様な所でないから、人を引張りには行つて下さるなよ。因縁ある身魂を神が引寄せて夫れ夫れに御用を申し附けるのであるぞよ。 大本の経綸は病気直しで無いぞよ。神から頂いた結構な身魂を、悪の霊魂に汚されて了ふて、肉体まで病魔の容器になりて、元の大神に大変な不孝を掛けて居る人民が病神に憑かれて居るのであるから素の水晶魂に捻じ直して、チツトでも霊魂が光り出したら、病神は恐がりて逃げて了ふぞよ。此の大本は医者や按摩の真似は為さんぞよ。取次ぎの中には、此の結構な三千世界の経綸を、取違ひ致して、病直しに無茶苦茶に骨を折りて肝腎の神の教を忘れて居る取次が多数在るが、今迄は神は見て見ん振を致して来たが、モウ天から何彼の時節が参りて来たから、今迄の様な事はさしては置かんから、各自に心得て下されよ。是程事解けて申す、神の言葉を反古に致したら、已むを得ず気の毒でも、天の規則に照して懲戒を致すぞよ。今の神の取次は、誠と云ふ事がチツトも無いから、吾の目的計り致して、神を松魚節に致して、却て神の名を汚して居る、天の罪人に成りて居るぞよ。大本の取次する人民は、其覚悟で居らんと世界から出て来だすから、恥かしくなりて、大本へは早速に寄せて貰へん事が出来いたすから、永らく神が出口に気を付けさしたぞよ。モウ改信の間が無いぞよ。神はチツトも困らねど、取次が可愛相なから。 艮金神が表になると、一番に悪所遊びを止めさすぞよ。賭博も打たさんぞよ。家の戸締りも為いでもよき様に致して、人民を穏かに致さして、喧嘩も無き結構な神世に致して、天地の神々様へ御目に掛けて、末代続かす松の世と致すぞよ。 ○ 明治三十四年旧三月七日 元伊勢のうぶだらひと、産釜の水晶の御水は、昔から傍へも行かれん尊い清き産水でありたなれど、今度の天の岩戸開に就いて、因縁のある霊魂に御用をさして、世を立直すには、昔の元の水晶の変らん水を汲りに遣らしてあるぞよ。艮金神の指図でないと、此水は滅多に汲りには行けんのであるぞよ。神が許可を出したら、何処からも指一本触る者もないぞよ。今度の元伊勢の御用は、世界を一つに致す経綸の御用であるぞよ。もう一度出雲へ行て下されたら、出雲の御用を出来さして、天も地も世界を平均すぞよ。此御用を済して下さらんと、今度の御用は分明かけが致さんぞよ。解りかけたらば速いぞよ。天の岩戸開きは水の守護と火の守護とで致すぞよ。岩戸開きを致すと申して居りても如何したら世が変ると云ふ事は、世に出て御出でる神様も御存知はないぞよ。肝腎の仕組は今の今迄申さぬと出口に申してあるぞよ。まだまだ在るぞよ。天の岩戸開と言ふ様な大望な事には、誰にも言はれん事があるのぢやが、其御用は出口でないと出来んぞよ。今度の御用をさす為に、昔から生代り死代り、苦労ばかりが為して在りた、変性男子の身魂であるぞよ。此の変性男子が現はれんと世界の事が出て来んぞよ。神柱会開きは人民が何時まで掛りても開けんと申してあるぞよ。神が開いて見せると申して、先に筆先に出してあらうがな。時節が近寄りたぞよ。 世界一度に開くぞよ。一度に開く梅の花、金神の世に致して早く岩戸開をいたさんと、悪く申すでなけれども、此世は此の先は如何成るかと言ふ事を御存知の無い神ばかりであるぞよ。 (大正一二・四・二五旧三・一〇北村隆光再録) |
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霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 22 三五神諭(その三) | 第二二章三五神諭その三〔一五四七〕 明治三十四年旧六月三日 斯世の行く先の解るのは、綾部の大本の竜門館でないと、何んぼ知識で考へても何程学がありたとて、学があるほど利口が出て、解りは致さんぞよ。永くかかりて仕組んだ此の大望、解りかけたら速いから、改信が一等であるぞよ。変性男子の因縁の解る世が参りて来たから、世界にある事を先繰に、前途の事を知らせる御役であるぞよ。今度は世に落ちておいでる神々を皆世に上げねばならん御役であるから、順に御上りに成るぞよ。それに就いては世に出て御いでます万の神様に、明治二十五年から申付けてあるが、是迄のやうな世の持方では行けんから、岩戸を開くに就いては、高処から見物では可けませんぞえと申して置いたが、時節が参りたから、一旦は世界に言ふに言はれん事が出来いたすぞよ。 ○ 明治三十五年旧七月十一日 永らく筆先に出して知らしてやりても、今の人民は疑強き故に真に致さぬから、此中に実地を為て見せてあるから、能く見て置かんと肝腎の折に何も咄しが無いぞよ。霊魂の調査いたして、因縁ある身魂を引寄して御用に使ふと申して、筆先に出してあらうがな。今度の二度目の天の岩戸開と申すのは、天の岩戸を閉める役と、開く役とが出来るのであるが、神の差添の種は、自己が充分苦労をして人を助ける心でないと、天地の岩戸は却々開けんぞよ。差添の種に成るのは、二十五年からの筆先を腹へ締込みて置いたら宜いのであるぞよ。此中の結構な経綸が判りて来かける程、世界から鼻高が出て来るから、筆先で何麼弁解も出来るやうに書してあるから、調戯心で参りて赤恥かいて帰るものも出来るし、又誠で出て来るものもあるぞよ。目的を立てようと思ふて出て来るものもあるし、世間に解る程忙しくなるから、此寂しく致して誠を細かう判るやうに書してあるから、他の教会とは精神が違ふと申すのぢやぞよ。世界の鏡の出る所であるから、是迄に何程云ふて聞かしたとて、余り出口を世に墜して御用が為してありたから、疑ふ者計りで、此中の行ひがチツトも出来んゆゑ、誠の教も未だ今にさして無きやうな事であるから、此の闇の世に夜の明ける教を致しても、誰も真に致さねど、もう夜の明けるに近うなりたぞよ。夜が明けると神の教通りに世界から何事も出て来るから、世界は一旦は悪なるから、喜ぶものと悲しむものとが出来るから、大本さへ信神致して居りたら善き事が出来るやうに思ふて、薩張り嘘ぢやつたと申してゐるなれど、出口の日々の願で、大難を小難にまつり替へた所で、何なりと神国の中にも夫々の見せしめは在るぞよ。是から先になりたら、斯様な事が在るのに何故知らせなんだと小言を申すなり、知らせねば不足を申すであらうし、亦知らせて遣れば色々と疑うて悪く申すし、人民の心が薩張り覆つてゐるから、善き事は悪く見えるし、悪きこと致すものは却つて今の時節は善く見えるが、全然世が逆さまであるぞよ。今の世界に立つ人は、一つも誠の善の事は致して居らんぞよ。艮金神が表に現はれて世界の洗ひ替をいたすから、是からは何事も神から露見れて来るぞよ。今の世界の落ちてゐる人民は、高い処へ土持計り致して、年が年中苦しみてゐるなり。上に立ちてゐる神は悪の守護であるから、気儘放題好き寸法。強い者勝の世の中でありたなれど見て御座れよ、是から従来の行方を根本から改正さして了ふて、刷新の世の行方に致すから、今迄に上に立ちて居りた神は大分辛う成りて来るから、初発から出口直の手と口とを藉りて、色々と世界の霊魂に申聞したら、近所の者が驚いて、出口を警察へ連れ参りた折に、警察で三千世界の大気違ひであると申してあるぞよ。それでも気違ひが何を申す位により取りては居らんぞよ。何でもない手に合ふ者ほか能う吟味を致さんのか、モチト大きな者を吟味いたして世の潰れんやうに致さねば、此儘で置いたら、警察の云ふ事共聞く者が無きやうになるぞよ。艮金神が現はれて守護をしてやらねば、神の国は此状態で置いたら、全部悪神に略取れて了ふぞよ。斯様な時節が参りてゐるに、上に立ちておる守護神が先が解らんから、岩戸を開いて先の判る世に致すから、自己の心から発根と改信を為るやうに成るぞよ。艮金神が表になると物事速いぞよ。 ○ 明治三十六年旧七月十三日 悪神の国から始まりて、大戦争が在ると申してあるが、彼方には深い大きな計画をいたして居るなれど、表面からは一寸も見えん、艮金神は日の下に経綸が致して在るぞよ。日の下は神国で結構な国ぢやと云ふ事は、判りて居れど、何を申しても国が小さいので、一呑に為ておるから、今の精神では、戦争が始まりたら神国魂が些とも無いから、狼狽て了ふぞよ。是から段々と世が迫りて来て、世界中の大戦争となりて、窮極まで行くと、悪魔が一つになりて、皆攻めて来た折には、兎ても敵はんといふ人民が、神から見ると九分まであるが、日の下はモウ敵はんと申す所で、神国魂の生神の本の性来を、出して見せて遣ると、神国魂は胸に詰りて呑めぬから悪神の守護神が、元の霊魂の力はエライものぢや、誠ほど恐いものは無いと申して、往生する所まで神国の人民は堪忍な、今度悪神が強いと見たら、皆それへ属いて了ふから、ソコデ此の本に仕組てある事を、神国の人民が能く腹へ入れて、御用を致さす身魂が二三分出来たら、其処で昔からの経綸の神が現はれて、世界を誠一つの神力で往生致さして、世界中の安心が出来るやうに致して、昔の元の神代に復すぞよ。邪神の侵略主義はモウ世が終結ぞよ。何程人民に智慧学力が在りても、兵隊が何程沢山ありても今度は人民同志の戦争でありたら、到底敵はんなれど、三千年余りての経綸の時節が来たので在るから、世界中から攻めて来ても、誠には敵はん仕組が為てあるなれど、艮金神、竜宮乙姫どの、日出の神が表はれんと、其処までの神力は見せんから、此の大本には揃ふて神力を積ておかんと如何為様にも激烈うて、傍へは寄附かれん様な事が出来てくるから、身魂を能く磨いておけと申すのであるぞよ。身欲信仰して居る人民、そこへ成りてから助けて呉れと申ても其様な人民は醜しいから、傍へは寄せ附けんぞよ。能く神の心を汲取らんと、大本は天地の誠一つの先祖の神の経綸の尊い場所で在るから、迂濶に出て来ても、チト異う所であるから、其処にならんと眼が覚めんから、眼醒しの在るまでに、腹の中の埃を出して置かんと、地部下に成るから、執念言ふて気を附るぞよ。 ○ 明治三十七年旧正月十日 艮金神稚日女岐美命が、出口の守と現はれて、変性男子の身魂が全部現れて、斯世を構ふと余り速に見透いて、出口の傍へは寄れん様に成ると申して在るが、何彼の時節が参りたから気遣ひに成るぞよ。水晶の身魂でありたら、岩戸開きの折にも安心で何も無いなれど、一寸でも身魂に曇りがありたり、違うた遣方いたしたり、混りがありたり致したら、直ぐその場で陶汰られて、ザマを晒されるぞよ。人民からは左程にないが、神の眼からは見苦しきぞよ。変性男子は大望な御役であるから、今度の御用をさす為に、神代一代の苦労がさしてありての事であるから何程でも此筆先は湧いて来るぞよ。岩戸開きの筆先と立直しの筆先とを、世が治まる迄書かすなり、斯世一切の事を皆書かせるから、何麼事も皆解りて来るから、誰も恥かしうなるから、改信いたせ、身魂の洗濯いたせよと、出口直の手で知らしてあるのを、疑うて居りた人民気の毒が出来て来るぞよ。斯世が末に成りて、一寸も前へ行けんやうになりて、変性男子と女子とが現はれて、二度目の天の岩戸を開く大望な御役であるぞよ。今迄の教は魔法の遣方で金輪際の悪き世の終りであるぞよ。 ○ 明治三十七年旧七月十二日 今の役員信者は、今度の戦争で世が根本から立替るやうに信じて、周章てゐるなれど、世界中の修斎であるから、さう着々とは行かんぞよ。今度の戦争は門口であるから、其覚悟で居らんと、後で小言を申したり、神に不足を申して、折角の神徳を取外す事が出来いたすぞよ。変性女子の筆先は信用せぬと申して、肝腎の役員が反対いたして、書いたものを残らず一所へ寄せて灰に致したり、悪魔の守護神ぢやと申して京、伏見、丹波、丹後などを言触に廻りて神の邪魔を致したり、悪神ぢやと申して力一杯反対いたして、四方から苦しめてゐるが、全然自己の眼の玉が眩んでゐるのであるから、自己の事を人の事と思うて、恥とも知らずに、狂人の真似をしたり、馬鹿の真似を致して一廉改信が出来たと申してゐるが、気の毒であるから、何時も女子に気を附けさすと、悪神奴が大本の中へ来て何を吐すのぢや、吾々は悪魔を平げるのが第一の役ぢやと申して、女子を獣類扱ひに致して、箒で叩いたり、塩を振掛けたり、啖唾を吐きかけたり、種々として無礼を致しておるぞよ。是でも神は、何も知らぬ盲聾の人民を改信さして、助けたい一杯であるから、温順しく致して誠を説いて聞かしてやるのを逆様に聞いて居れど、信者の者に言ひ聞かして邪魔を致すので、何時までも神の思惑成就いたさんから、是から皆の役員の目の醒める様に、変性女子の御魂の肉体を、神から大本を出して経綸を致すから、其覚悟で居るがよいぞよ。女子が出たら後は火の消えた如く、一人も立寄る人民無くなるぞよ。さうして見せんと此の中は思ふ様に行かんぞよ。明治四十二年までは神が外へ連れ参りて、経綸の橋掛をいたすから、後に恥かしくないやうに、今一度気を附けて置くぞよ。この大本の中の者が残らず改信いたして、女子の身上が解りて来たら、物事は箱差したやうに進むなれど、今のやうな慢心や誤解ばかりいたしておるもの許りでは、片輪車であるから、一寸も動きが取れん、骨折損の草臥儲けに成るより仕様は無いから、皆の役員の往生いたすまでは神が連出して、外で経綸をいたして見せるから、其時には又出て御出で成されよ、手を引き合ふて神界の御用をいたさすぞよ。今度の戦争で何も彼も埒が付いて、二三年の後には天下泰平に世が治まる様に申して、エライ力味やうであるが、其麼心易い事で天の岩戸開は出来いたさんぞよ。今の大本の中に唯の一人でも、神世に成りた折に間に合ふものがあるか。誤解するも自惚にも程があるぞよ。まだまだ世界は是から段々と迫りて来て、一寸も動きの取れんやうな事が出来するのであるから、其覚悟で居らんと、後でアフンとする事が今から見透いて居るぞよ。今一度変性女子の身魂を連出す土産に、前の事を概略書き残さして置くから、大切にいたして保存して置くが宜いぞよ。一分一厘違ひは無いぞよ。明治五十年を真中として前後十年の間が岩戸開きの正念場であるぞよ。それまでに神の経綸が急けるから、何と申しても今度は止めては下さるなよ。明治五十五年の三月三日五月五日は誠に結構な日であるから、それ迄はこの大本の中は辛いぞよ。明治四十二年になりたら、変性女子がボツボツと因縁の身魂を大本へ引寄して、神の仕組を始めるから、気の小さい役員は吃驚いたして、逃出すものが出来て来るぞよ。さうなりたら世界の善悪の鏡が出る大本で在るから、色々の守護神が肉体を連れ参りて、目的を立てやうといたして、又女子の身魂に反対いたすものが現はれて来るなれど、悪の企謀は九分九厘で掌が覆りて、赤恥かいて帰るものも沢山あるぞよ。今の役員は皆抱込まれて了ふて、又女子に反対をいたすやうになるなれど、到底敵はんから往生いたして改信[※三五神諭には約70ヶ所で「改信」が使われているが、校定版・愛世版では第20章a343と第22章a311の2ヶ所だけ「改心」になっている。初版では全て「改信」であり「改心」は使われていない。したがって誤字と判断し、霊界物語ネットでは「改信」に修正した。]いたしますから、御庭の掃除になりと使うて下されと、泣いて頼むやうになるぞよ。腹の底に誠意が無いと欲に迷ふて大きな取違をいたして、ヂリヂリ悶えをいたさな成らんから、今の内に胸に手を当てて考へて見るが宜いぞよ。もう是限り何も申さんから、此筆先も今度は焼捨てぬやうに後の証拠にするが宜いぞよ。何方が取違であつたか判るやうに書かして置くぞよ。盲目聾が目が明いた積り、心の聾が耳が聞える積りで居るのであるから、薩張り始末が附かんぞよ。力一杯神界の御用をいたした積りで、力一杯邪魔をいたしておるのであるから、何うも彼うも手の出し様が無いから、止むを得ず、余所へ暫くは連参りて、経綸をいたすぞよ。今の役員チリヂリバラバラに成るぞよ。 ○ 明治三十七年旧八月十日 天も地も世界中一つに丸め、桝掛ひいた如く、誰一人つづぼには落さぬぞよ。種蒔きて苗が立ちたら出て行くぞよ。苅込になりたら、手柄をさして元へ戻すぞよ。元の種、吟味致すは今度の事ぞよ。種が宜ければ、何んな事でも出来るぞよ。 (大正一二・四・二六旧三・一一於竜宮館北村隆光再録) |
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霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 23 三五神諭(その四) | 第二三章三五神諭その四〔一五四八〕 明治三十八年旧四月十六日 艮金神国常立尊出口の守と現れて、二度目の天の岩戸開きを致すに就いては、昔の世の本から拵へてある因縁の身魂を引寄して、夫々に御用を申付けるぞよ。今度の御用は因縁無くては勉まらんぞよ。先になりたら金銀は降る如くに寄りて来るから、さうなりたら吾も私もと申して、金持つて御用さして下されと申して出て来るなれど、因縁なき身魂には何程結構に申しても一文も使ふ事は出来んぞよ。是から先になると金銀を積んで神の御用を致さして欲しいと、頼みに来るもの計りであれど、一々神に伺ひ致してからでないと、受取る事は成らんぞよ。金銀に目を掛る事は相成らんから、何程辛くても今の内は木の葉なりと、草なりと食べてでも凌ぎて御用を致して居りて下さりたら、神が性念を見届けた上では何事も思ふやうに、金の心配も致さいでも善きやうに守護が致してあるぞよ。今が金輪際の叶はん辛いとこであるから、茲を一つ堪りて誠を立抜きて下さりたら、神が是で善いと云ふやうに成りたら、楽に御用が出来るやうにチヤンと仕組てあるから、罪穢のある金は神の御用には立てられんぞよ。 いつも筆先で気を附けてあるが、大本は艮金神の筆先で世を開くところであるから、余り霊学ばかりに凝ると筆先が粗略になりて、誠が却て解らんやうに成りて、神の神慮に叶はんから、筆先を七分にして霊学を三分で開いて下されよ。帰神ばかりに凝ると、最初は人が珍らしがりて集りて来るなれど、余り碌な神は出て来んから、終には山子師、飯綱使、悪魔使と言はれて、一代思はくは立たんぞよ。思はくが建たんばかりか、神の経綸を取違ひ致す人民が出来て来て、此の誠の正味の教をワヤに致すから、永らく気を附けて知らしたなれど、今に霊学が結構ぢや、筆先ども何に成ると申して一寸も聞入れぬが、どうしても諾かな諾くやうにして、改信さして見せるぞよ。神の申す事を反いて何なりと行りて見よれ、足元から鳥が飛つやうな吃驚が出て来るぞよ。世間からは悪く申され、神には気障と成るから、何も成就いたさずに大きな気の毒が出来るのが見透いておるから、其れを見るのが可哀相なから、毎度出口の手で神が知らせば、肉体で出口直が書くのぢやと申して御座るが、茲暫く見て居りたら解りて来て、頭を逆様にして歩かんならん事が出来するぞよ。誰も皆帰神で開きたいのが病癖であるから、一番にこの病癖を癒して遣るぞよ。心から発根と癒せば宜いなれど、如何しても肯かねば激しき事をして見せて眼を開けさしてやるぞよ。狐狸野天狗などの霊魂に嘲弄にしられて、夫で神国の御用が出来ると思ふのか。夫でも神国の人民ぢやと思ふて居るのか。畜生の容器にしられて夫を結構と思ふのか、神界の大罪人と成りても満足なのか。訳が解らんと申しても余りであるぞよ。斯うは言ふものの是の霊魂は何時も申す通り、世界一切の事が写るのであるから、此大本へ立寄る人民は是の遣方を見て、世界は斯んな事に成りておるのかと改信を為るやうに、神からの身魂が拵へて在るのであるから、誤解をいたさぬやうに御庇を取りて下されよ。他人が悪い悪いと思ふて居ると、全部自己の事が鏡に映りておるのであるから、他人が悪く見えるのは、自己に悪い所や霊魂に雲が掛りて居るからであるから、鏡を見て自己の身魂から改信いたすやうに、此世の本から御用の霊魂が拵へてありての、今度の二度目の天の岩戸開きであるから、一寸やソツトには解る様な浅い経綸でないから改信いたして身魂を研くが一等であるぞよ。世の本の誠の生神は今迄は物は言はなんだぞよ。世の替り目に神が憑りて、世界の事を知らせねば成らぬから、出口直は因縁ある霊魂であるから、憑りて何事も知らせるぞよ。世が治まりたら神は何も申さんぞよ。狐狸や天狗ぐらゐは何時でも誰にでも憑るが、この金神は禰宜や巫子には憑らんぞよ。何程神憑に骨を折りたとて、真の神は肝腎の時でないと憑らんぞよ。何も解らん神が憑りて参りて、知つた顔を致して種々と口走りて、肝腎の仕組も解らずに、天の岩戸開の邪魔をいたすから、一寸の油断も出来んから、不調法の無いやうに気を附けてやるのを、野蛮神が何を吐す位により解りて呉れんから、誠の神も苦労をいたすぞよ。神懸で何も彼も世界中の事が解るやうに思ふて居ると全然量見が違ふぞよ。神の申す中に聞いて置かんと、世間へ顔出しが出来んやうな、恥かしき事が出来いたすぞよ。この神一言申したら何時になりても、一分一厘間違はないぞよ。髪の毛一本程でも間違ふやうな事では、三千年かかりて仕組んだ事が水の泡になるから、そんな下手な経綸は世の元から、元の生神は致して無いから、素直に神の申す事を肯いて下されよ。世界の神、仏事、人民を助けたさの永らくの神は苦労であるぞよ。誰に因らず慢心と誤解が大怪我の元と成るぞよ。 ○ 大正元年旧八月十九日 大国常立尊が天晴表面になりて守護にかかると、一旦は神の経綸通りに致すから、改信致して神心に成りて居らんと、これから、人気の悪い所は何処でも飛火がいたすから、今度は是迄の見苦しき心を全然捨てて了ふて、産の精神に成りたらば、安全な道が造り替へてあるから、霊魂を研いて善い道へ乗り替へるやうに仕組んであれども、霊魂に曇りが在りては善い道へ乗替へたとて、辛うて御用が出来んから、発根の改信、腹の底からの改信でないと、誠の御用は出来んぞよ。竜宮様を見て皆改信をいたされよ。昔から誠に欲な見苦しき御心で在りたなれど、今度の天の岩戸開には欲を捨てて了はねば、神界の御用が勤まらんといふ事が、一番に早く御合点が参りたから、竜門のお宝を残らず艮金神に御渡し遊ばして、活溌な御働きを神界で一生懸命になりて、力量も充分に有るなり、此の方の片腕に成つて、今度の天の岩戸開の御用を遊ばすから、他の守護神も竜宮様の御改信を見て、一日も早く自己の心の中を考へて改信なされよ。大国常立尊が今表になりた所で、神界の役に立てる霊魂は一つも無いが、能くも是だけ曇りたものであるぞよ。もう神は構はんから、何彼の事を急速にいたして後の立直しに掛らんと、世界中の大事であるから、解らぬ守護神に何時までもかかりて居りたら、世界の人民が皆難渋をいたして、往きも戻りも成らんやうに成りて、戦争も済みたでも無し、止めも刺さん事になりて、世界中の大難渋と成るから、是迄耳に蛸が出来る程注意てあるが、何彼の時節が迫りて来て、動きもにじりも出来ん事に世界中が成るから、諄う守護神人民に気を附けるぞよ。 神国の人民に元の神国魂が些とありたら、茲までの難渋は無いなれど、誠一つの御魂により明されず、肝腎の事を任して為せる事も出来ず、テンで経綸が解りて居らんから、神が使ふ身魂が無いぞよ。此の方が世界中の事をいたさなならんから、何彼の事が一度になりて忙しうなると申すことが、毎度筆先で知らしてあらうがな。艮に成りたら神霊活機臨々発揮日月と現はれて、三千世界の艮を刺すぞよ。其折りに間に合ふやうに、早うから有難がりて、大本へ来て辛い修行をして居りても、肝腎の処が能く解りて居らんと、善い御用は出来んぞよ。何うなりとして引着いて居りたら、善い御用が出来ると思ふて居ると、大間違であるぞよ。艮金神が初発から一言申した事は一分一厘違はんぞよ。途中から変るのは矢張り霊魂に因縁が無いのぢやぞよ。因縁のある身魂は截りても断れん、如何な辛い目をいたしても左程苦しい事は無いぞよ。因縁性来と申すものは、エライものであるぞよ。それで今度は因縁の在る身魂が集りて来て、辛い辛抱をいたして、天地の光を出して呉れんならん。変性男子と変性女子との身魂を、茲まで化して神の御役に立てるぞよ。変性男子と女子の身魂が誰も能う為ぬ辛抱をいたして、此世には神は無きものと、学で神力をないやうに仕て居りたのを、此世に神が有るか無いかと云ふ事を、三千世界へ天晴と天地の神力を表はせて見せて、此の先は神力の世に致すから、是からは学力で、何麼事を致しても、世の本の根本の生神の神力には敵はんから、今の中に悪神のエライ企みを砕いて了ふから、一日も早く往生いたすが得であるぞよ。 今度の戦争は人民同志の戦争ではないぞよ。国と国、神と邪神との大戦争であるから、悪神の策戦計画は人民では誰も能う為ん仕組であれど、世の本の生神には敵はんぞよ。充分戦ふた所で金の要るのは程知れず、人の減るのも程は判らんぞよ。けれども出かけた船ぢや。何方の船も後方へは退けんから、トコトンまで行くぞよ。今迄の悪の守護神よ、神の国を茲までに自由にいたしたら、是に不足はもう在ろまいから、充分に敵対うて御座れよ。神力と学力との力較べの大戦争であるから、負たら従うて遣るし、勝つたら従はして、末代手は出しませぬと申すとこまで、往生をさせてやるぞよ。何程学力がエラウても、神力には勝てんぞよ。大きな見誤ひを為て居りたと云ふ事が後で気が附いて、死物狂を致さうよりも、脚下の明い中に降伏致す方が宜いぞよ。永引く程国土はチリヂリと無く為りて了ふぞよ。邪神の企謀は何麼計略も為てゐるなれど、悪では此世は立ては行かんぞよ。神の経綸は善一つの誠実地の御道に造り代へてあるから、気の附いた守護神は、善の道へ立帰りて安心なされよ。悪の身魂は平げて了ふから、早う覚悟を致さんと、もう一日の日の間にも代るから、是迄のやうに思ふておると、みな量見が違ふぞよ。毎度出口直に兵糧をとつて置かねば成らんといふ事が、諄う申して在らうがな。米が有ると申して油断をいたすで無いぞよ。人民は悧巧なもので在るなれど、先のチツトモ解らんもので在るから、筆先で何も知らすから、此筆先を大切にいたさんと、粗末にいたしたら、其場で変るやうに厳しくなるぞよ。この筆先は世界の事を、気もない中から知らしてあるから、疑うておると後で取返しの出来ん事になるぞよ。後の後悔は間に合はんぞよ。 ○ 大正三年旧七月十一日 大国常立尊が表に現はれて日出の守護となるから、人民が各自に力一杯気張りて為て来た事が、皆天地の神から為せられて居りたと申す事が、世界の人民に了解る時節が参りて来たぞよ。日出の守護になると変性男子の霊魂が、天晴世界へ現はれて次に変性女子が現はれて、女島男島へ落ちて居りた昔からの生神ばかりが揃うて天晴世に現はれて、この泥海同様の世界へ水晶の本の生神が揃うて、三千世界の岩戸開を致すから、天地の岩戸が開けて松の世、神世と相成るぞよ。綾部の神宮坪の内の本の宮は出口の入口、竜門館が高天原と相定まりて、天の御三体の大神が天地へ降り昇りを為されて、この世の御守護遊ばすぞよ。この大本は地からは変性男子と変性女子との二つの身魂を現はして、男子には経糸、女子には緯糸の意匠をさして、錦の旗を織らしてあるから、織上りたら立派な模様が出来ておるぞよ。神界の意匠を知らぬ世界の人民は色々と申して疑へども、今度の大事業は人民の知りた事では無いぞよ。神界へ出てお出ます神にも御存知の無いやうな、深い仕組であるから往生いたして神心になりて神の申すやうに致すが一番悧巧であるぞよ。まだ此先でもトコトンのギリギリ迄反対いたして、変性女子を悪く申して、神の仕組を潰さうと掛かる守護神が、京、大阪にも出て来るなれど、もう微躯とも動かぬ仕組が致して神が附添うて御用を為すから、別条は無いぞよ。変性女子の霊魂は月と水との守護であるから、汚いものが参りたら直に濁るから、訳の解らぬ身魂の曇りた守護神は傍へは寄せんやうに、役員が気を附けて下されよ。昔から今度の天の岩戸開の御用致さす為に、坤に落してありた霊魂であるぞよ。此者と出口直との霊魂が揃ふて御用を致さねば、今度の大望は、何程悧巧な人民の考へでも物事出来は致さんぞよ。此大本は世界に在る事が皆映るから、大本に在りた事は大きな事も小さい事も、善き事も悪しき事も、皆世界に現はれて来るから、変性女子をねらふものが是からまだまだ出来て来るから、確りと致して居らんと此中は治まらんぞよ。大事の仕組の身魂であるから、悪の霊がねらひ詰めて居るから、何処へ行くにも一人で出す事は成らんぞよ。変性女子は人民からは赤ン坊なれど、神が憑りたら誰の手にも合はん身魂であるぞよ。昔の元から見届けてありての、今度の大望な御用がさして在るぞよ。人民は表面だけより見えんから、何時も大きな取違ひを致すが、是も尤もの事であるぞよ。永らく大本へ来て日々御用に使はれておるものでも、女子の事は取違ひ致して、未だに反対致しておる位であるから、何にも聞かぬ世界の人民が取違ひをいたすのは、無理も無いぞよ。斯う申すと亦訳の解らぬ守護神の宿りてゐる肉体の人民が、肉体心を出して、出口は変性女子に抱込まれて居ると申すであらうが、其様な事の解らぬ艮金神出口直でありたら、三千年余りての永らくの苦労が水の泡に成るから、滅多に見違ひはいたさんぞよ。人民の智慧や学や考へで判るやうな浅い仕組は致してないぞよ。何方の身魂が一つ欠けても、今度の経綸は成就いたさんのであるから、世の本の根本から仕組て、色々と化かしてをれば、自己の霊魂が汚いから、竪からも横からも汚う見えるのであるぞよ。変性男子の身魂も変性女子の身魂も、三千世界の大化物であるから、霊魂に曇りの有る人民には見当が取れんぞよ。此大化物を世界へ現はして見せたら、如何に悪に強い守護神も人民も、アフンとして吃驚いたして、早速には物も能う言はん事が出来するぞよ。昔の根本の世の本から末代の世まで、一度あつて二度ないと言ふやうな、大望な神界と現界の岩戸開きであるから、アンナものがコンナものに成りたと申す経綸であるから、人民では見当は取れん筈であれども、改信いたして神心に立復りた人民には、明白に能く判る仕組であるぞよ。世の変り目には変な処へ変な人が現れて、変な手柄をいたすぞよと、明治三十一年の七月に筆先に書いて知らしてありたぞよ。時節が近寄りたぞよ。 (大正一二・四・二六旧三・一一於竜宮館北村隆光再録) |
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霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 24 三五神諭(その五) | 第二四章三五神諭その五〔一五四九〕 大正四年旧十一月二十六日 大国常立尊が三千世界の、上中下と三段に分けてある霊魂を、それぞれに目鼻を付けて、皆を喜ぶやうに致すのは、根本の此世を創造へるよりも何程気骨の折れる事ぢや、人民では分らん事であるぞよ。初発の悪の霊魂は悪の事なら何んな事でも出来るから、茲まで世界中を悪で搦みて了ふて、善と云ふ道は通らぬやうに致して来た悪神の、頭を露はして、トコトン往生を為せて、又次に中の守護神を改信さして、下の守護神も続いて改信させねば神世には成らんぞよ。下の守護神が一番に何彼のことが解らんなれど、改信を致さねば、何うしても改信いたすやうに、喜ばして改信させねば、叱る計りでは改信の出来ぬ守護神も在るなり、何も解らん守護神の如何にも成らぬドウクヅは天地の規則通りに致して、埒宜く致さねば仕様はモウ無いぞよ。此の先で何時迄も改信の出来ぬ悪魔に永う掛りて居りて、岩戸開きの出来んやうな邪魔を致した守護神は、気の毒が今に出来致すぞよ。是丈け気を附けて知らして居るのに、改信の出来ん悪魔に成り切りて居る霊魂の宿りた肉体は、可哀想でも天地から定まりた規則通りの成敗に致すぞよ。もう何時までも解らんやうな守護神を助けて置いたら、世界が総損害に成りて、茲まで神が苦労いたした骨折が水の泡に成りて了ふぞよ。夫れでは永らく神が苦労いたした甲斐が無くなりて、天の大神様へ申訳が立たんなり、神は守護神人民を助けたいのは、胸に一杯であるから、もう一度気を附けて置くから、何事が出て来ても神に不足は申されまいぞよ。是からは悪神の守護神の好きな事も、悪き事も出来んやうに、天地から埒を附けるから、何処を恨む事も出来ず、自己の心を恨める事も出来んやうになるぞよ。天地の先祖の神は、善の守護神も悪の守護神も皆を喜ばしたいと思ふて、色々と永らく気を附けたなれど、ドウクヅの蛆虫同様の醜しき聞解の無いものは、一処へ集して固めて灰にして了ふから、悪いものに悩められて生命を取られるやうな肉体は、蛆虫同様、悪神の眷族と、も一つ下な豆狸といふやうな論にも杭にもかからんものに弄びに遇うて居るのは、肝腎の神の綱の切れて居る身魂であるぞよ。こんな守護神の宿りて居る肉体は取払ひに為て了ふて此世界の大掃除を初めるぞよ。 天地の先祖の苦労の解らん身魂は、蛆虫同様であるから、斯んな身魂は世の汚穢と成るから、神界の経綸通りに致して埒能く岩戸を開かな、後の立直しが中々大望であるから経綸通りにして見せるぞよ。さう致すと神は善一つなれど、何も解らん世界の人民が悪の守護神に引かされて、矢張り艮金神は悪神でありたと申すぞよ。細工は流々仕上が肝腎であるぞよ。天地の神の御恩も判らぬやうな、畜生より劣りた、名の附けやうの無いものは、末代の邪魔になるから、天地の規則通り規めるから、悪の守護神の中でも改信の出来たのは、今度の岩戸開きに焼払ひになる所を救けてやるぞよ。蛆虫の中からでも救かるべき身魂が在れば択出して善の方へ廻して遣るぞよ。 天の大神様が、いよいよ諸国の神に、命令を降しなされたら、艮金神国常立尊が総大将となりて、雨の神、風の神、岩の神、荒の神、地震の神、八百万の眷属を使ふと、一旦は激しいから、可成は鎮まりて世界の守護を為せるなれど、昔の生粋の神国魂の活神の守護と成りたら、此中へ来て居る身魂に申附けてある事を、皆覚えて居るであらうが、一度申した事は其様に致すから、神の申す事を一度で聞く身魂でないと、充分の事は無いぞよ。もう神からは此の上人民に知らせる事は無いから、大峠が出て来てから、如何様でも改信をしますで赦して下されと何程申しても、赦す事は出来んぞよ。是程大望な昔からの仕組を今になりて変へる様な事を致して居りたら、二度目の天の岩戸開きの大きな経綸が成就致さんぞよ。根本から大洗濯を致して、末代世界の口舌が無いやうに致して、神界の害をする霊魂が、学で此世を暗闇にして了ふて、正味のない教やら、やりかたは、世の大本からの教でないから、途中から出来たものは、末代の世の遣り方には用ゐんぞよ。 今の上に立ちて居る守護神は科学ほど結構なものは無いと申して、渡りて来られん霊魂が、神を抱込みて、好き寸法に致して、此先をモ一つ悪を強くして、悪で末代建てて行かうとのエライ目的でありたなれど、もう悪の霊や学の世の終りと成りたぞよ。本の神世へ戻りて、天と地との先祖が末代の世を持たねば、他の霊魂では此世は続かん、口舌の絶えると云ふ事は無いぞよ。 大国常立尊が変性男子の霊魂の宿りて居る肉体を借りて、末代の世を受取りて、世の本の生粋の誠の生神ばかりが表に現はれて、天地の先祖の御手伝ひで、数は尠いなれど神力は御一柱の生神の御手伝ひが在り出しても、霊魂の神が何程沢山でも、本の生神の力には敵はんから、同じ様な事を申して細々と今に続いて知らして居るなれど、途中に出来た枝の神やら、渡りて来て居る修業なしの利己主義の遣方の守護神では、肝腎の事は解りは致さんぞよ。誠の事の解る大本へ出て来て、いろはからの勉強を致さねば、学は金を入れた丈の力は出るなれど、天から貰うた霊魂に附いた生来の力でないから、物質の世の間は結構でありたなれど、もう物質の世の終りとなりたから、今迄の学では二度目の天の岩戸開きには些少も間に合はんぞよ。 ○ 大正四年旧十二月二日 大国常立尊変性男子の霊魂が現はれて、三千世界の三段に別けて在る御魂を、夫れ夫れに立替へ立別けて、目鼻を附けて、先づ是で楽ぢやと申すやうに成るのは、大事業であるぞよ。二度目の天の岩戸開は、戦争と天災とで済むやうに思ふて、今の人民はエライ取違ひを致して居るなれど、戦争と天災とで人の心が直るのなら、埒能う出来るなれど、今度の天の岩戸開は、其んな容易い事でないぞよ。昔からたてかへは在りたなれど、臭い物に蓋をした様な事ばかりが仕て有りたので、根本からの動きの取れんたてかへは、致して無いから、これ迄のやりかたは、身魂は尚悪くなりて、総曇りに成りて居るから、今度は一番に、霊魂界の岩戸開であるから、何に付けても大望であるぞよ。是程曇り切りて居る、三千世界の身魂を水晶の世に致して、モウ此の后は、曇りの懸らんやうに、万古末代、世を持ちて行かねば成らんから、中々骨の折れる事であるぞよ。 天地の大神の思ひと、人民の思ひとは、大きな違ひであるから、何に付けても、今度の仕組は、人民では汲み取れんぞよ。人民一人を改信させるのにも、中々に骨が折れようがな。今度の二度目の天の岩戸開は、昔の初まりから出来て居る、霊魂の立替立直しで在るから、悪い霊魂を絶滅して了ふてするなら、容易く出来るなれど、悪の霊魂を善へ立替へて、此世一切の事の行り方を替へて、神法をかへて、新つの世の純粋の元の水晶魂にして了ふのであるから、今の人民の思ふて居る事とは、天地の大違ひであるから、毎度筆先で気を附けてあるぞよ。 あやべの大本の中には、世界の人民の心の通りが、皆に仕て見せてあるぞよ。世界の鏡の出る所であるから、世界に在る実地正末が、皆にさして見せて在るから、色々と心配をいたして居るなれど、何んなかがみも仕て見せて在るから、世界が良くなる程、この大本は善くなるぞよ。今ではモチツト、何事も思ふやうに無いのであるぞよ。 世界の事が、皆大本に写るから、夫れで、此中から行状を善く致さんと、世界の大本となる、尊い所であるから、何事も筆先通りに為て行かねばならんぞよ。是までの世のやりかたは、神の国では用ゐられん、邪神の極悪のやり方に、変りて了ふて居るのを、盲者聾者のやうな世界の人民は、知らず知らずに、させられて居りたのであるから、分らんのは尤もの事であるぞよ。誠の神が抱込まれて、神の精神が狂ふて居るのであるから、人民が悪う成るのは当然であるぞよ。 モ一つ此の先を悪を強く致して、この現状で世を建てて行くどいらい仕組をして居るなれど、モウ悪の霊の利かん時節が循環てきて、悪神の降服いたす世になりて来たから、吾の口から吾が企みて居りた事を、全然白状いたす世になりたぞよ。 世界の御魂が、九分まで悪に化りて、今まで世を持ち荒して来た守護神に、改信の出来かけが、何の様にも出来んから、神も堪忍袋を切らして、一作に致せば八九分の霊魂が悪く成るし、改信致さす暇が、モウ無いし、是程この世に大望な事は、昔から未だ無い、困難な二度目の天の岩戸開であるのに、何も分らぬ厄雑神に使はれて居ると、何も判らんやうになるぞよ。 まことの行も致さずに、天地の先祖を無視して、悪のやりかたで世界の頭になりて、此先を悪をモ一つ強く致して、まぜこぜで行りて行ことの初発の目的通りに此所まではとんとん拍子に面白い程上り来たなれど、此神国には深い経綸が世の元から致して在りて、九分九厘まで来たぞよ。 悪神の仕組も、九分九厘までは来たなれど、モウ輪止りとなりて、前へ行く事も出来ず、後へ戻る事も出来んのが、現今の事であるぞよ。仕放題の利己主義の行方で、末代の世を悪で建てて行くことの目的が、今までは面白い程のぼれたなれど。 神の国には、チツト外の御魂には判らん経綸が為てあるから、人も善、吾も善、上下揃ふて行かねば、国の奪り合ひを為るやうな、見苦敷性来では、世は永久は続かんぞよと申して、筆先に出して、気を附けてあるぞよ。 斯世は善と悪とが有りて、何方でこの世が立つかと言ふことを末代続かせねば成らん世であるから、何事も天地から為してあるのであるぞよ。吾が為て居るのなら、何事も思ふたやうに行けんならんのに、何うしても行けんのが、神から皆為せられて居る証拠であるぞよ。善の道は、苦労が永いなれど、此の先は末代の世を続かすので中々念に念が入るぞよ。 善の行は永いなれど、善の方には、現界幽界に何一つ知らん事の無い様に、世の元から行が為してあるから、此先は、悪の仕放題に行無しに出て来た守護神が辛くなるぞよ。如何な事も為ておくと、何事も堪れるなれど、行無しの守護神に使はれて居ると、世の終ひの初まりの御用は勤まらんぞよ。 善と悪との変り目であるから、悪の守護神はヂリヂリ悶える様になるから、一日も早く改信致して、善の道に立帰らねば、モウこれからは貧乏動きも為さんぞよ。善の守護神は数は尠いなれど、何んな行も為してあるから、サア今と云ふ様に成りて来た折には、何程烈しきことの中でも、気楽に神界の御用が出来るから、一厘の御手伝で、神の本には、肝腎の時に間に合ふ守護神が拵へてありて、世界の止めを刺すのであるぞよ。神の国は小さうても、大きな国にも負は致さんぞよ。神国は世界から見れば、小さい国であれど、天と地との、神力の強い本の先祖の神が、三千世界へ天晴と現はれて、御加勢あるから、数は少うても、正味の御魂ばかりで、何んな事でも致すぞよ。何程人数が多くても、何の役にも立たぬ蛆虫計りで、善い事は一つも能う為ずに、邪魔計りを致すから、世界の物事が遅くなりて、世界中の困難であるが、未だ気の附く守護神が無い故に、何時までも筆先で知らすのであるぞよ。 天地の御恩も知らずに、利己主義で茲まで昇りつめて来た悪の守護神に、改信の為せかけが出来んので、何事も遅くなりて、総損害に、上から下までの難渋となるから、明治廿五年から、今ぢや早ぢやと申して、引掛戻しに致して、気附く様に知らしても、元からの思ひが大間違で在るから、世界の岩戸開の九分九厘と成りた所で、ジリジリ舞ふ事が見え透いて居るから、気を附けるぞよ。 天地の先祖の、思ひの判りて居る守護神と人民は、今に無いぞよ。是程暗がりの世の中へ、世の元の正真の水火神が揃ふて表はれても、恐い計りで、腰の抜けるものやら、顎が外れて早速に物も能う言はん様な守護神や、人民が沢山出来る許りで、神の目からは間に合ひさうに無いぞよ。 判りた御魂の宿りて居る肉体でありたら、何んな神徳でも授けるから、此神徳を受ける御魂に使はれて居りたら、一荷に持てん程、神徳を渡すから、其貰ふた神徳に光りを出して呉れる人民で無いと、持切りにしては天地へ申訳が無いぞよ。 ○ 大正五年旧十一月八日 あまり此世に大きな運否があるから、口舌が絶えんから、世界中を桝掛を引いて、世界の大本を創造た、天と地との先祖の誠で、万古末代善一つの道で世を治めて、口舌の無い様に致すぞよ。天は至仁至愛真神の神の王なり、地の世界は根本の国常立尊の守護で、神国の、万古末代動かぬ神の道で治めるぞよ。吾好しの行り方では、此世は何時までも立たんぞよ。この世界は一つの神で治めん事には、人民では治まりは致さんぞよ。悪神の仕組は世が段々と乱れる計りで、人民は日に増に、難渋を致すものが殖える許りで、誠の神からは目を明けて見て居られんから、天からは御三体の大神様なり、地は国常立尊の守護で、竜宮様の御加勢で、元の昔の神の経綸通りの松の世に立替致して、世界中を助けるのであるから、中々骨が折れるぞよ。モウ時節が近よりたぞよ。用意をなされよ。脚下から鳥が立つぞよ。天地の先祖の神々を粗略に致して、神は此世に無い同様にして東北へ押込めて置いて、世界の大将に成りて、悪の血統と眷属の何も知らぬ悪魔を使ふて末代世を立て様と思ふて、エライ経綸をして居れど、世の本からの天地を創らへた、其儘で肉体の続いてある、煮ても焼いても引裂いても、ビクともならん生神が、天からと地からと両鏡で、世界の事を帳面に附け止めてある同様に、判りて居るから、モウ神界には動かぬ仕組が致してあるから、世界の人民は一人なりと、一日も早く大本へ参りて、神の御用を致して、世界中を神国に致す差添へに成りて下されよ。上下揃ふて神国の世に世界中を平均すぞよ。 今の世界の人民は、現世に神は要らんものに致して、神を下に見降し、人民よりエライものは無き様に思ふて居るが見て御座れよ、岩戸開の真最中に成りて来ると、智慧でも学でも、金銀を何程積みて居りても、今度は神にすがりて、誠の神力でないと大峠が越せんぞよ。今度は神が此世に有るか無いかを、解けて見せて遣るから、悪に覆りて居る身魂でも善へ立ち返らな、神の造りた陸地の上には、居れん様になるから、改信を致して身魂を能く研いて居らんと、何彼の時節が迫りて来たから、万古末代取戻しの成らん事が出来致すから、今に続いてクドウ気を附けるのであるぞよ。是丈けに気を附けて居るのに聞かずして、吾と吾身を苦しめて最後で改信を致してもモウ遅いぞよ。厭な苦しい根の国底の国へ落されるから、さう成りてから地団太踏みてジリジリ悶えても、そんなら赦してやると云ふ事は出来んから、十分に落度の無いやうに、神がいやになりても、人民を助けたい一心であるから、何と云はれても今に気を附けるぞよ。 これからは筆先通りが、世界に現はれて来るから、心と口と行ひと三つ揃ふた誠でないと、今度神から持たす荷物は重いから、高天原から貰ふた荷が持てん様な事では、余所から人が沢山出て来だすから、其時に恥かしう無いやうに、腹帯を確り締めて居らんと、肝腎の宝を取外す事が出来るぞよ。今度は此大本に立寄る人民に、神からの重荷を持たすから、各々に身魂を十分に研いて置いて下されよ。ドンナ神徳でも渡して、世界の鑑に成る様に力を附けてやるぞよ。改信と申すのは何事に由らず、人間心を捨てて了ふて、知識や学を便りに致さず、神の申す事を一つも疑はずに生れ赤子の様になりて、神の教を守る事であるぞよ。霊魂を研くと申すのは、天から授けて貰ふた元の霊魂の命令に従ふて、肉体の心を捨て、本心に立返りて、神の申す事を何一つ背かん様に致すのであるぞよ。学や知識や金を力に致す内は、誠の霊魂は研けて居らんぞよ。 この天の岩戸開を致すには、学でも、悧巧でも、知識でも、金銀でも、法律でも、行かんぞよ。兵隊計りの力でも行かず、今の政治の行り方では、猶行かず、今迄の色々の宗教でも猶行かず、今の学校の教でも行かず、根本の天の岩戸開であるから、今の人民の思ふて居る事とは、天地の相違であるから、世界の人民が誠にいたさんから神は骨が折れるのであるぞよ。天地の間の只の一輪咲いた梅の花の経綸で、万古末代世を続かすのであるから、人民には判らんのも尤もの事であるぞよ。 九つ花が咲きかけたぞよ。九つ花が十曜に成りて咲く時は、万古末代しほれぬ神国の誠の花であるぞよ。心の善きもの、神の御役に立てて、末代神に祭りて此世の守護神といたすぞよ。此世初まりてから、前にも後にも末代に一度より無い、大謨な天の岩戸開であるから、一つなりとも神の御用を勤めたら、勤め徳であるぞよ。それも其人の心次第であるぞよ。神は無理に引張りは致さんぞよ。 是だけ蔓りた悪の世を治めて、善一つの神世に致すのであるから、此の変り目に辛い身魂が多人数あるから改信々々と一点張りに申して、知らしたのであるぞよ。早い改信は結構なれど、遅い改信は苦しみが永い許りで、何にも間に合はん事になるぞよ。艮金神で仕組致して、国常立尊と現はれて、善一つの道へ立替るのであるから、経綸通りが世界から出て来だすと、物事が早くなるから、身魂を磨いて居らんと、結構な事が出て来ても、錦の旗の模様が、判らんやうな事では成らんぞよ。今迄苦労いたした事が、水の泡になりてはつまらんから、大本の辛い行を勇んでいたす人民でありたら、神が何程でも神力を授けるから、ドウゾ取違ひをせぬやう慢心の出ぬ様に心得て居りて下されよ。世界の神、仏、耶、人民の為に、神が永らく苦労を致して居るぞよ。 (大正一二・四・二七旧三・一二於竜宮館北村隆光再録) |
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霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 25 三五神諭(その六) | 第二五章三五神諭その六〔一五五〇〕 大正六年旧二月九日 神の国には、世の根本の大昔から、天地の先祖が仕組が致してあるので、二度目の天の岩戸開は末代に一度より為られんのであるから、何に附けても大謨な事であるぞよ。肝腎の事は、あとへ廻はして何も知らぬ厭な方の神や、下劣の守護神が大事の仕組も知らずに、利己主義の経綸でここまでトントン拍子に出て来たなれど、九分九厘といふ所で往生致さなならん世になりたぞよ。 九分九厘の御魂が天地の御恩といふ事が判りて来たなれば、現世は斯んな惨い事に成りはせんなれど、盲目や聾と同じ事で、全然暗黒界であるぞよ。今の守護神と人民とは岩戸開の手伝致すどころか、大きな邪魔を致すぞよ。悪の方から見れば、誠の方が悪に見えて、悪の方が善く見えるので、何事も皆逆様ばかりより出来んのであるぞよ。 悪の守護神が大本の中へ這入りて来て、何彼の邪魔を致すから、気ゆるしは些とも出来んから、物事が遅くなりて、世界中の苦しみが永うなると申す事が毎度筆先に出して知らしてあるぞよ。大本には、世界の事が映るから、大本の中の様子を見て居りたら、世界の事の見当が、明白に判りて来るぞよ。筆先に一度出した事は、チト速し遅しは在るなれど、毛筋も違はん事許りであるから、皆出て来るぞよ。霊の本の国と申しても、惨い事に成りて居るのを、知りて居る守護神も、人民も、誠になさけ無いほど尠いから今の世界の困難であるぞよ。神国魂と申して威張りて居れど、神国魂の性来はチツトも無いやうに惨い事になりて居るぞよ。 世界を一つに丸めて、神国の世に致すには、此世を拵へた天と地との根本の真で治める時節が参りて来たから、明治二十五年から今に続いて知らしてあるぞよ。世界の今度の大戦争は世界中の人民の改信の為であるぞよ。まだまだ是では改信が出来ずに、神の国を取る考へを致して居るぞよ。神の国は神の誠の守護致してある国であるから、何程邪神に神力が沢山ありたとて、知識や学がありたとて、神国には到底も叶はん仕組が世の本から致してあるから、九分九厘で掌を返して、万古末代潰れぬ守護を致して三千世界を丸めて人民を安心させ、松の世、仁愛神の世、神世といたして、天地へ御目に掛ける時節が近うなりたぞよ。天地の間に一輪咲致梅の花、三千世界を一つに丸めて一つの王で治めるぞよ。悪神のしぐみは、今迄はトントン拍子に来たなれど、九分九厘でもう一足も先へも行けず、後へも戻れず、往きも帰りも成らんといふのが、今の事であるぞよ。茲へ成りた所で、悪神の頭が充分改信を致して、善へ立返りて、善の働きをいたさんと、世界中の何も知らん人民が、此先でエライ苦しみを致すぞよ。此の大本の中にも、悪の身魂の守護神が化けて来て居るが、もう化けを現はして、皆に見せてやるぞよ。 ○ 大正七年旧正月十二日 三千世界一度に開く梅の花、艮金神の守護の世になりたぞよ。明治二十五年から出口直の手を借り口を借りて知らした事の、実地が現はれる時節が近寄りて来たぞよ。今迄の世は悪神の覇張る世で何事も好き寸法、利己主義の行り方で、此世を乱して来たが、モウ是からは昔の元の生神が世に現はれて、三千世界を守護やうに時節が参りたから、思ひの違ふ守護神人民が大多数に出来て来るぞよ。今度の二度目の天の磐戸開きは、悪の身魂が毛筋の横巾でも混りてありたら成就いたさぬ大謨な末代に一度より為られん神界の経綸であるから、茲まで悪神の覇張りた暗黒の世を生粋の水晶の如うな明かな、何時までも変らぬ神世に致さねば成らぬから、神も中々骨の折れる事であるぞよ。 昔のミロク様の純粋の、何時になりても変らぬ其儘の秘密の経綸の凝結で、末代動かん巌に松の仕組、何神にも解らぬ様に為てある善一つの誠の道であるから、途中に精神の変るやうな身魂では出来も致さず、判りもせぬぞよ。此世の元を創造へて、世界中の一切の事、何一つ知らんといふ事のない身魂でないと、今度の二度目の天の岩戸開は、世界を創造へるよりも、何程骨が折れるか知れんぞよ。限り無しの潰されぬ末代の経綸、天の岩戸開といふことは、爰まで悪神が覇張りて、モ一つ奸賢しこう人民をいたして、未だ未だ悪神の力を強くして、善神の道は立てさせぬ如うに体主霊従主義で貫く、仕組を致して居るから、神国の人民は余程魂を研いて、水晶魂を元に研いて光を出して置かねば、万古末代邪神の自由に為られて了ふぞよ。 昔から露国へ上りて居りた悪神の頭目が、モ一つ向ふの国へ渡りて、人民の頭を自由自在に、吾の思惑どほりに悪を働き、世界中の大困難を構はず、何処までも暴れて暴れて暴れまはして世界を苦しめ、又露国を自由に致して吾の手下に附けて、今に神国へ出て来る経綸を致して居るが、そんな事にビクつく如うな守護神、人民でありたら到底続きは致さんぞよ。是から神が蔭から手伝ふて軍隊に神力を附けて与るから、今度は大丈夫であれども、国と国同士が戦争は到底叶はんと申して、可い加減な事で仲直りを致して、一腹になつて、今度は押詰めて来るから、守護神も人民も腹帯を締て掛らな、万古末代取返しの出来ん事になるぞよ申して、明治二十五年から出口直の手を藉り口を藉りて、知らして置いた事の実地が、迫りて来たぞよ。邪神は悪が強いから、ドコ迄も執念深う目的の立つ迄行り通すなれど、九分九厘と云ふ所まで来た折に、三千年の神が経綸の奥の手を出して、邪神を往生いたさすので在るから、大丈夫であれども、罪穢の深い所には罪穢の借銭済しが在るから今の中に改信を致さんと、神国にも酷しい懲罰が天地から在るぞよ。霊主体従主義の行り方で、末代の世が立つか、体主霊従の施政方針で世が末代続く乎、今度は善と悪との力量比べであるから、勝ちた方へ末代従うて来ねばならぬぞよ。それで神界は茲まで煉に煉たので在るぞよ。 この先に善一つの誠の道を立貫かねば、斯世に安住て貰へんやうに酷しく成るから、爰まで永らく言ひ聞かしたので在るぞよ。善と悪との境界の大峠であるから、爰まで充分に煉らねば、悪の性来には聞けんから、今の今まで煉りたのであるが、チツトは腹へ浸み切りて居る身魂が在るであらう。爰まで言ひ聞かしても判らん如うな身魂は、体能く覚悟をいたさんと、是迄のやうな心で居りたなら、又天地を汚して了ふから、善へ心底から従ふ身魂で無いと、今迄の如うな心の人民が在りたら総損害になりて、モ一つ遅れるから、艮金神も助けて遣る事も出来ず、天の御三体の大神様へ申訳が無いやうな事になりて来るから、止むを得ず気の毒でもモウ経綸どほりに致すぞよ。天の岩戸開が段々と近寄りたから、是までの如うな事には行かんから、一か八かと云ふ事を、悪の頭に書いて見せて置くが良いぞ。今の番頭のフナフナ腰では、兎ても恐がりて、コンナ事を書いて見せて遣るだけの度胸はありは致すまいなれど、神の申すやうに致したら間違は無いぞよ。一の番頭の守護神が改信が出来たら、肉体に胴が据わるなれど、到底六ケ敷いから、今に番頭が取替へられるぞよ。モウ悪の頭の年の明きであるから、悪い頭から取払ひに致すぞよ。何事も時節が一度に参りて来て、世界中の困難が到来すると云ふ事が、毎度申して知らした事が実地になりて、一度に開く梅の花、追々分らなんだ事が明白に判りて来て、キリキリ舞を致さな成らん、夜の目も眠られん如うな事に成ると申して置いたが、一度筆先に出した事は皆出て来るぞよ。能く念を押して置くぞよ。念に念を押して、クドイと云はれて復念を押してあるから、モウ是からは神界の事情も能く解る様に一度に成りて来るから、誠で無いと、此先は誠一つの善の道が拵へて在るから、一日も早く善の道へ立復りて、神国魂に捻ぢ直して下されよ。悪の世は齢が短いから、体主霊従の身魂が大変困む事が出来るから、明治二十五年から怒られる程申して在りたぞよ。人民は男も女も腹帯を確り締めて掛らんと、一旦は堪れん如うな混雑になるぞよ。 明治二十五年から煩いと申して怒られもつて、今に岩戸開の筆先を書かして居るぞよ。何時までも同じ事に間々に細々能く判る様に抜目の無い様に知らしたなれど、ソンナ事が在るものかと申して、今に疑うて居る人民許り、実地が出て来て青白い顔をして、腰が抜けて足も立たず、腮が外れて足が上に成り、頭が下に成りて、ソコラ中をヌタクラな成らん事が出て来るぞよと知らして在るが、モウ近うなりて来たぞよ。悪の昇るのは迅いなれど、降るのも亦速いぞよ。善の分るのは手間が要るなれど、善の道の開けたのは、万古末代の栄えであるから、爰まで悪開けに開けた世界を、根本からあらためて、今後は体主霊従主義といふ様な醜しき世は無い如うに致すのであるから、是ほど大望な事は末代に一度ほか為られんのであるから、神も中々骨が折れるぞよ。是程世界中が曇り切りて居る世の中を、水晶に致すのであるから、骨が折れるのも当然であるぞよ。斯の極悪の世の岩戸を開いて、末代口舌のないやうに、大神様の善一つの世に、立直しをいたさねば、世界の苦舌が絶えんから、人民の心が悪なる許り、何時になりても国の奪り合ひ計りで、治まりは致さんぞよ。 神の国は本が霊主体従であるから、誠に穏かにありたなれど、世が逆様に覆りて今の状態であるぞよ。薩張り上下へ世が覆りて了ふて、神国に悪神が渡りて来て、上から下まで醜しさと云ふものは、天地の誠の神からは、眼を開けて見る事が出来んぞよ。斯世を結構と申して大きな取違ひを為て居りて、良いと云ふ事も悪いと云ふ事も、可非の判らん見苦しき世が、一旦は出て来ると申す事は、地球を創造へる折から良く判りて居るので、外の身魂では能う為もせず解りも致さんぞよ。一輪の火水(言霊)の経綸がいたして在りて先が見え透いて居るから、爰まで辛い事も堪り詰めて来られたのであるぞよ。今度の二度目の岩戸開きは、知識でも学でも機械でも、世界中の大戦ひには、手柄は出来んぞよ。何程悪の頭でも到底是からの世は今迄の行方では行かんと云ふ事に気が附いて、綾部の大本へ今の内に願ひに来る守護神でありたら、善一つの道へ乗替へさして、末代の世を構はして、毛筋の横巾も悪の性来の混りの無い結構な神代に助けて遣るから、早く改信なされよ。何程我を張りて見ても時節には叶はんぞよ。 善一筋の純粋で末代の世を立てて行く結構な仕組の解る世が参りて来たから、爰までに知らしても未だ今に成つて疑うて居る守護神や人民許りで、可憐相なものなれど、モウ神からは人民に知らせ様が無いから、何時までも邪魔を致す極悪の頭から平げると云ふ事を、永らく筆先で知らしてある通りに、時節が迫りて来るぞよ。余り何時までも高上りをして居ると、時分の過ぎた色花の萎れる如く、今日の間にも手の掌が覆るぞよ。今の中に発根からの改信が一等であるぞよ。疑うて居りて何事が出来しても神はモウ知らんぞよ。 悪の霊を抽抜いて元の水晶の霊と入替へて遣ると申して、爰まで知らして在るなれど、余り世界の霊魂が悪渋とうて手に合はんから、皆の霊魂が悪シブトい性来に成り切りて居るから、言ひ聞かした位に聞く如うな優しい霊魂はありはせんぞよ。今の人民は悪のやり方が良く見えるのであるから、何程言ひ聞かしても聞きはせぬぞよ。困つたものであるぞよ。是ほど良い国は無いと心に錠を降して了ふて居るから、何程実地の事を言ひ聞かしても、逆様計りに取るから、助けてやり様が無いぞよ。是れもモチト先に成りたら、大きな取違ひを致して居りたと云ふ事が、上へあがりて覇の利いて居りた神に自然的に判りて来るぞよ。今迄の様に自分好しの目的は、トントン拍子には行かぬ如うになるぞよ。 世界の人民確り致さんと、今に大変な事になりて来るから、何れの国も危ないと申して、彼方此方へと狼狽へまはりて、行く所に迷ふぞよ。神道を守護致す誠の所は、綾部の大本より外には無いぞよ。綾部は三千年余りて、昔からの神の経綸の致してある結構な所であるから、大本の教を聞いて居る守護神は余程シツカリいたして居らんと、油断が在りたら肝腎の経綸を他国から取りに来るぞよ。何程奪らうと致しても神が奪らしは致さんなれど、物事が遅れるだけ世界の困難が永びくから、充分に覚悟をいたして正勝の時の御用を勤めて下されよ。三千世界の鏡の出る大本であるぞよ。今の人民は神がいつまで言ふて聞かしても、人を威す位にほか能う取らんから、一度にバタツイても間に合はんぞよ。俄の信心は役に立たぬから、常から信心いたせと申して爰まで気を附けてあるぞよ。善の行り方と悪の行り方とを末代書いて遺す綾部の大本であるから、変性男子の書いた筆先を、坤金神が変性女子と現はれて説いて聞かして、守護神人民に改信を致さす御役であるから、世界の人民よ、真の事が聞き度くば綾部の大本へ参りて来て、細々と聞かして貰ふたら、世界の事が心相応に解りて来て世界に何事ありても驚きは致さんやうになるぞよ。 昔からの極悪神の頭が神国の人民を一人も無いやうに致す仕組を為て居るなれど、神国にも根本から動かぬ経綸が致して在るから、国も小さいし、人民も尠いなれど、初発から一厘と九分九厘との大戦ひで在ると申して、何時までも同じやうな事を書かして在る通り、口で言はしてある事がドチラの国にもあるから、神力と学力との力比べの大戦ひであるから、負た方が従はねば成らんと申して、筆先に出してある通り、実地に実現て来るから、此先で神から不許と申す事を致したり、吾の一力で行らうと思ふても、世が薩張り変りて了ふから、是までの事はチツトも用ゐられんぞよと、度々気を附けてあるのに、聞かずに吾の我で行りたら、彼方へ外れ、此方へ外れて、一つも思ふ様には行かんぞよ。素直にさへ致せば何事も思ふやうに箱差した様に行くのが神代であるぞよ。今の人民は余り我が強いから、是迄は神の申す事も聞かずに、守護神の自由に一力で思惑に行けたのは、地の上に誠と申すものが無かりたから、世に出て居る方の守護神が、悪神の大将に気に入る様な悪る力がありたなら、何処までも上げて貰へる世と成りて居りたから、悪い事の仕放題、悪神の自由で在りたなれど、モウ時節が廻りて来たから、其時節の事を致さな世は立ちては行かんぞよ。今迄は物質の世でありたから、学が茲まで蔓りて、学力でドンナ事でも九分九厘までは成就いたしたなれど、モウ往生いたさなならん如うに成りて来たぞよ。茲に成るまでに悪の守護神を改信さして、助けて遣りたいと思ふて、明治廿五年から深い因縁のある出口直の身魂に知らさしたのであるなれど、吾程豪いものは無きやうに思ふて、チツトも改信の出来ん罪人ばかり、神も是には往生いたさな仕様がないぞよ。現世の鬼を平げて、世界のものに安心を致さすぞよと云ふ事が初発に筆先にかかしてあるが、世界の大洗濯を致して、元の水晶の身魂やら天地の大神の教どほりの世に致して、天に坐ます御三体の大神様に、御目に懸けねば成らぬ御役であるぞよ。来いで来いでと松の世を待ちて居りたら、松の世の始まりの時節が参りて来たなれど、肝腎の悪の性来の改信をいたして貰はんと、何時までも頑張るやうな事では、此世は水晶にならんから、ドウシテも聞かねば聞くやうに致すより仕様は無いぞよ。世界には代へられんから、此先の規則通りに制配を致さねば御三体の大神様へ申訳がないから、二度目の天の岩戸開をいたしたら、悪の性来は微塵も無い如うに洗ひ替をして、巌に松の動かぬ世にいたす世界の大橋と成る尊い所であるから、余り何時迄も疑ふて居ると、天地の大神様へ大きな御無礼になるから、今一度気を附けておくから素直に致すが徳であるぞよ。 (大正一二・四・二七旧三・一二北村隆光再録) (昭和一〇・六・一五王仁校正) |
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霊界物語 | 63_寅_伊太彦の物語 | 02 妙法山 | 第二章妙法山〔一六〇九〕 夏樹生茂り緑したたるスダルマ山の山道の入口に甲乙二人の男が腰打ちかけて、杣の手を休めて雑談に耽つてゐた。 甲『オイ兄貴、吾々もせめて人並の生活が為たいものだなア。朝から晩まで山深く分け入つて、杣ばかりやつて居つても汗を搾る許りで何時も金槌の川流れ同様、天窓の上りやうが無いぢや無いか。今日の人間は文化生活を以て最上の処世法としてゐるが、吾々も自然とやらを征服する文化生活に入つて安楽な生涯を送りたいものだなア』 乙『吾々は文化生活といふものを転用して人格問題に当てたいと思ふのだ。バラモン教徒は煩悩即菩提だなどと気楽さうな事を言つてゐるが、夫は悟道の境地に立至つた上根の人間の言ふことで普通の人間はソンナ軽々しい訳には行かぬ。迚も人格を磨いて向上する事は不可能事だよ。絶えず内観自省して、肉的本能を征服しておかねばならない。霊体共に自然であることは無論だがこの両者を並行さす事は困難だ。瑞の御霊の聖言には、「体欲に富める者は神の御国に入ること難し。富貴の人の神の国に入るよりは蛤を以て大海を替へ干す方却て易かるべし。人は二人の主人に仕ふること能はず、故に人も神と体欲とに兼仕ふることを得ず」と教へられてある。実に深遠なる教訓ではあるまいかなア』 甲『神さまもチト判らぬぢや無いかエーン。よく考へて見よ。吾々の様な貧乏人は聖典を研究いな研究と言つては勿体ないかも知らぬ、拝誦して心魂を磨く余裕がないが、富者となれば日々遊んで暮す暇が在るのだから、自由自在に聖典を拝誦したり、又その密意を極め得るの便宜があるから、神の国に入るものは、富者であることは当然の帰結ではないか』 乙『ソウ言へばさうだが人間と言ふものは吾々の考へ通りにゆくものではない。得意時代の人間は到底そんな殊勝な考への浮ぶものでは無いよ。「家貧しうして親を思ふ」とか謂つて、吾々の様なものこそ、精神上の慰安を求め、向上もし神に縋らむとするものだが、容易に得意時代には貧乏人の吾々だとて、そんな好い考へは起るものではないよ。勿論瑞の御魂様だとて、絶対的に富そのものを無視された訳では無からうが、斯んな教訓を与へなくては成らない所以は、人間の弱点といふものは凡て物質の奴隷となり易いからだ。同じ富を求むるにしても、我欲心を満足さすために求むるものと、神の大道を行はむがために行ふものとは、其内容に於てもその精神に於ても、天地霄壤の相違があるだらう。苟くも人間としての生活に、物質が不必用なる道理は絶対にない。何処までも経済観念を放擲することは所詮不可能だ。然るに凡ての神教の宣伝使が、口を揃へて禁欲主義や寡欲主義を高潮して居る所を見ると、其処に何等かの深意を発見せなくてはなるまいと思ふのだ』 甲『君の説にも一理あるやうだ。然し吾々は何とか努力して人並みの生活だけは為なくてはならないが、「倉廩充ちて礼節を知り、衣食足りて道を歩む」とか言ふから、肉的生活のみでは肉体を具へた人間としては実に腑甲斐ない話だ。吾に「先づパンを与へよ、然して後に大道を歩まむ」だからなア』 乙『「人はパンのみにて生くるものではないと共に霊のみにて生くるものにあらず」と吾々も言ひたくなつて来るのだ。併しそこは人間としての自覚が必要だ』 甲『自覚も必要だが、現代の人間の自覚なるものは果して人並以上に立脚して居るだらうか。霊的自覚に立つて居るだらうか。それが僕には杞憂されて成らないのだ。今日の人間の唱ふる自覚といふ奴は月並式の自覚様だからなア』 乙『君の云ふ通り有名無実の自覚、月並の自覚だとすれば、忽ち自覚と自覚とが互に相衝突を来して、平和を攪乱することになるだらう。現代のやうに各方面に始終闘争の絶え間がないのは自覚の不徹底といふことに帰因してゐるのだらう。併し凡ての物には順序があり階段があるからして、自覚の当初は何れにしても幾何かの動揺と闘争とは免れないと云ふ点もあるだらう』 甲『さうだから僕は現代の自覚様には物足らなくて拝跪渇仰する事が出来ないのだ。人格の平等だとか個性の尊重だとか八釜敷く騒ぎ廻る割合に、事実としての態度が実際に醜うて鼻持がならないのだ。然し中には一人や二人位は立派な態度の人間もあるだらうが、概括して見ると、賛成の出来ない人間ばかりだからなア』 乙『ウンそれもソウだねー。現代人の唱ふる人格の平等と言ふものは、実に怪しいものだ。僕もその事は克く認めてゐる一人だ。人格の平等と言へば高位の人間を低い所へ引下ろして、「お前と俺とが同格だ、同じ神の分霊だ分身だ」と言つたり、甚だしいのは、上流者や官吏の前に尻を捲つて、威張ることだと考へたりする奴が多いのだ。その癖に自分より下位の人間から夫れと同じ様な事をしられると、「人を馬鹿にするな侮辱を加へた」と言つて立腹する奴ばかりだ。自由と言へば厭な夫を振捨てて好きな男と出奔したり法律も道徳も義理も人情も踏蹂ることだと思つて居る奴ばかりだ。而も夫れほど自由を要求したり又主張したりするのなら、他人に対した場合でも自由を与へるかと言ふと、事実は全然その反対のことを行るもの許りだ。 アナーキズムを叫ぶ位なら、自分の家に泥坊が這入つても歓待して行りさうなものだのに、真先に警察署に訴へに行く奴許りだ。「経済組織は、コンミュニズムに為なくては可けない」と言つて、八釜しく主張して居るから、「それなら先づ君の財産から放り出せ」と言ふと、『それは真平御免』と言ふやうな面付きで素知らぬ顔をして、他人に出させて共産にしようと言ふ奴計りだ。ある二人の青年ソシアリズム崇拝者が鶏肉のすき焼を食ひにいつて其割前を支払ふ時に相手の一人が「金が足りないから、君の金を出して支払つて済ませて呉れ」と言つたら、「ソンナ事は出来ない」と断つたので相手の一人が、「夫れは君の平素の主張に悖るでないか」と突込むと、「いや夫れと是とは別問題だ」と言つて逃げて仕舞つたといふ話だ。兎角人間といふ奴は人に対しては種々の要求を起すが、その要求を自分にされたら何うだらう。果して応ずるだけの覚悟を以て居るだらうか。自分の立場が無産階級にあるからと言つて共産主義を叫ぶのでは本当のもので無い。筆や舌の尖では何んな事でも立派に言はれるが、事実その事件が自分の身に降りかかつた時に実行することが出来るだらうか。十中の十まで有言不実行で、日頃の主張を撤廃せなくてはならぬやうになるのは、可なり沢山な事実だからなア』 甲『本当に虚偽虚飾の人獣ばかりの世の中だ。真の人間らしいものは、かう考へて見ると一人も世界に無いと言つても好い位だ。文壇の名士カットデルは、世間に知られた自由思想家だつたが、自分がアーメニヤとかへ旅行したその不在中に、女房のコール夫人にウユルスと言ふ若い美しい愛人が出来て、頻りに手紙を往復して居たのをカットデルが見附けて、その真相を尋ねた所、コール婦人は平気な顔で、「あなたに対する愛が無くなつたから、日頃の自由思想を実践躬行して愛人の下へ行く心算です」と、ハツキリと答へて済まし込んで居たので、カットデル氏も色々と話合つた上、二人の恋愛を許してやつたが、さて愈コール婦人が家内に居らなくなると、子供のためや其他の事が思はれて到頭日頃主義とする自由思想を捨て、人道的立場から愛妻コール婦人に反省を求めて、再び戻つて貰ふ事を頼んだといふぢやないか。人間位、勝手な奴はあつたものぢや無い、アハヽヽヽ』 乙『オイ君、向ふの方から宣伝歌の声が聞えて来たぢやないか。一寸聞き玉へ、「神が表に現はれて善と悪とを立分ける」とか何とか言つてゐるやうだ』 甲『ウン如何にも宣伝歌の声だ。併もあれは三五教の歌だ。吾々ウラル教徒も三五教の宣伝歌を聞くと、何ンだか心持が好い。一つここに待ちうけて、何ンとか人生問題に就て解決を与へて貰はふぢやないか』 乙『何程三五教の宣伝使だつて駄目だらう。無い袖は振る訳に行かぬからなア。夫れよりも神力によつて、スーラヤ山の大蛇の岩窟にある宝玉を、手に入れる様にせうではないか。何程大蛇が沢山居ると言つても、神力には叶ふまいからなア』 甲『別に三五教に頼まなくても吾々が平素信仰するウラル彦の大神様にお願すれば好いだらう』 乙『朝夕ウラル教の大神を念じて見たが、此頃のウラル彦様は貧乏されたと見えて、根ツから福を与へて呉れない、財産を沢山にウラル(得らる)教だと思つて信仰したのに、信仰以来ウラねば成らぬウラメシ教になつて了つて社会の地平線下に墜落し斯う杣人とまで成り下つたのだから、僕は最早ウラル教は止めたのだ。併しスーラヤ山の珍宝を手に入れさして呉れたら信仰を続けても好いのだ。自分が富者の位地に立つてからソロソロコンミュニズムの主張でもやつて、人間並の生活をやつて見たいのだ』 甲『そんな危険なことは止めて、マア暫時今日の境遇に安んじ時節を待つたら何うだ。何程珍宝が手に入つても生命が無くつちや仕方が無からうよ』 斯く談す所へ玉国別一行が宣伝歌の声に足並揃へて近よつて来た。 玉国別、真純彦、三千彦、デビス姫、伊太彦、治道居士の一行六人は漸くにして、スダルマ山の登り口までさしかかつて来た。例の伊太彦は先頭に立つて声も高らかに宣伝歌を謡つて居る。山の登り口の木陰に二人の男が腰打ちかけて何事か囁いて居る。伊太彦は目敏く之を見て、後振り返り、 伊太『先生、夜前は祠の前でコソ泥に出遇ひましたが、あれ御覧なさい。彼処にも亦ざつと二匹、コソ泥が出現致しましたよ。昨日の奴と違つて、どこともなしに気の利いた顔をして居ますわ』 玉国『ウン、如何にも立派な方が二人休んで居られるやうだ。あの方は決して泥坊ではあるまいよ』 伊太『夫でもバラモン教の云ひ草ぢやないが「人を見たら泥坊だと思へ」との誡めがあるぢやありませぬか』 玉国『昨夜の泥坊に肝を潰し、精神錯乱して、目に触るるもの一切が泥坊と見えるのだらう。滅多な事を云ふものぢやない。人を見れば皆神様だと思ふて居れば好いのだ。仮令万々一泥坊にした所で、吾々の身霊を研ひて下さるお師匠様だと善意に解するのだ』 伊太『夫れだと云つて、よく見て御覧なさい。ピカピカと光つた凶器を持つて居るぢやありませぬか。彼奴は持凶器強盗かも知れませぬよ。一つ勇気を出して泥坊と見当が付けば蹴散らして進むのですな。精神の麻痺した人獣には到底姑息な治療法では駄目ですよ。モルヒネ注射か或は大外科手術を施すに限ります』 玉国『伊太彦、あれをよく見よ。お前の凶器と見たのは鉞ぢやないか、あれは屹度杣人だ。天下の良民様だ』 伊太『鉞、否マサカさうでもありますまい。杣人に化けて夜前の泥的の親分が待つて居るに違ひありませぬわ』 玉国『どうも此男は俄に精神に異状を来たしたと見える。これや困つた事ぢやな。伊太彦、まア安心したがよいわ』 伊太『何と仰有つても私には確信があります』 玉国『乱暴な事をすると、宣伝使の帳を切り、根底の国へ落して仕舞ふが、それでもお前は構はぬ気か』 『エヽ仕方がありませぬ。男子が一旦歯から外へ出した以上は後へは引きませぬ。何と云つても、あの猛悪なタクシャカ竜王を言向け和した伊太彦司ですからなア。孟子の言に「下となつて乱るれば刑せられ、上となつて乱るれば免かる」と云ふ身勝手な世の中ですから、万々一天則違反によつて根底の国へ落されても構ひませぬ。私はお師匠様の為に天則違反になつた所で得心です。現在自分の師匠に危害を加へむとする悪人に対し看過する事が出来ませうか。「君憂ふれば臣労し、上危ければ下死す」と云ふぢやありませぬか。先生の危難を救ふて自分の身が滅亡しても夫は少しも恨みませぬ』 玉国『お前は私を疑つて居るのか、玉国別だつて泥坊か泥坊でないか位は一目見たら分つて居るのだ。聖人の言葉にも「臣は主に逆らはず」と云ふぢやないか』 伊太『「臣となりては必ず臣たれ、併し君となりては必ず君たれ」と云ひますから、貴方も弟子の私が赤心を、師匠として承認して下さりさうなものですな』 玉国『「臣能く主の命を承はるをもつて信となす……」、ちつとは私の云ふ事も聞いたらどうだ』 伊太『何だか私は貴師が仰有る事が頼りないやうな気がしてなりませぬわ。どうぞ暫く此方の云ふ通りにさして下さいませぬか』 三千『オイ伊太彦、些とはお師匠様の御命令も聞かねばなるまい。折角の功名手柄が水の泡になつたら惜しいぢやないか』 伊太『ヘン、御親切は有難う。デビス姫を奥様に貰ひ、おまけに先生に御親任をうけて真純彦と二人が、夜光の玉や如意宝珠を懐に捧持し、得意の頂天に達した君達とはちつと違ふのだ。俺はこれから人を虐げる悪人や、驕慢な奴は、片ツ端から、もう言霊も使ひ飽いたから、此鉄腕を揮うて打ち懲らしてやる積りだ、構つて呉れな』 と云ひながら、五人を後に残し二人の怪しい男の前に走り寄り、大喝一声、 伊太『これや泥坊、吾輩を誰様と心得て居るか。勿体なくも三五教の宣伝使、神力無双の玉国別の御家来の伊太彦さまだ。こんな所に出しやばつて、夜前の蒸し返しをせうと思つても駄目だ。この腕を見い。此の腕には特別上等の骨があるぞよ』 と威猛高になつて睨めつけた。二人はこの権幕に肝を潰し、中の一人が、 甲『私等は、此近辺に居住して居る杣人でカークス、ベースと云ふ者で厶います。朝から晩迄木樵が商売で厶いますが、あまり体が疲れたので、この広い木蔭で息をやすめて世間話に耽つて居た所です。泥坊でも何でもありませぬ。貴方は三五教の宣伝使の家来だとか弟子だとか仰有いましたが、どうか私の人格を調べて下さい。無暗に人間を捉まへて泥坊呼はりをなさるのは、ちつと貴方のお職掌にも似合はぬぢやありませぬか』 伊太『ウン、エ、成程、これは誠に相済まなかつた。歩きもつて夢を見て居たものだから、つい考へ違ひを致しました。兎も角魂が脱けたと見えますわい。余り玉が欲しいと思つて居たものだから、タマタマこんな失敗をやらかしたのですよ』 カークス『貴方も矢張り玉が欲しいのですか。実の所は私もその玉が欲しいので相談して居たのです。そこへ三五教の宣伝歌が聞えて来たものですから御神力を貸して頂いて、これからスーラヤ山の珍宝を手に入れ、せめて人並の生活を支度いものだと思つて居た所です。どうか一つ其玉が手に入るやうに貴方のお師匠さまに御神力を与へて下さるやうに頼んで下さらぬか』 伊太『ヤア其奴は面白い。俺の先生は、ソレ今彼方に見えるが、玉国別と云ふのだから、玉を取る事にかけ、少しもクニせずワケなく取らして下さるだろう。現に俺の持つて居た玉を取り、否取違ひ遊ばした……のでも何でもない。屹度聞いて下さるだらうよ。マア安心せい』 ベース『ヤ有難う、これで安心しました。のうカークス、もう斯うなる以上はカークスには及ばぬ、スーラヤ山の珍宝の所在を申上げて、せめて一つ宛吾々の手に入るやうにして貰はふぢやないか』 カークス『どうかさう願ひたいものだなア』 伊太『其スーラヤ山と云ふのは何処にあるのだ』 カークス『此のスダルマ山を向ふへ渡りますと、スーラヤの湖といつて、可なり広い水鏡が照つて居ます。其中に漂ふて居る岩山がスーラヤ山と云ひます。其山には岩窟があつて、ウバナンダと云ふナーガラシャー(竜王)が沢山の玉を蓄へ夜になると玉の光で全山が昼の如く輝いて居ます。其玉を一つ手に入れさへすれば、人間の一代二代は結構に暮されると云ふ高価なものですが、多勢の人間が其玉を得むとして、行つては竜王に喰はれて仕舞ふのです。だから余程神力が無いと其玉を手に入れる事は出来ませぬからなア』 伊太『アハヽヽヽ。お安い事だ。此伊太彦はアヅモス山に於て八大竜王の中でも最も凶悪なる、大身視毒竜王と云ふ豪い奴を往生させ、玉をボツ奪つたと云ふ勇者だから、ウバナンダ竜王位を言向和すは、朝飯前の仕事だ。エヘヽヽヽ』 と三人が一生懸命になつて玉取の話に霊を抜かれて居る。早くも玉国別一行は三人の前に近づき来り、此話を残らず聞いて仕舞つた。玉国別は伊太彦の背をポンポンと叩いた。 伊太『アヽ玉さま否玉国別様で厶いますか。どうぞ今度計りは改心を致しますから、今迄の御無礼をお許し下さいまして、ウバナンダ・ナーガラシャーの玉を占領さして下さい。さうすれば私が捧持してエルサレムに参る荷物が出来ますからな』 玉国別は道端の草の上にどつかと腰を卸し無言の儘考へて居る。 (大正一二・五・一八旧四・三於教主殿加藤明子録) |
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霊界物語 | 63_寅_伊太彦の物語 | 13 蚊燻 | 第一三章蚊燻〔一六二〇〕 人(精霊)の内面的情態に居る時は自有の意志その儘を思索するが故にその想念は元来の情動即ち愛そのものより来るものです。そして其時に於て想念と意志とは一致する。この一致によつて人の内面的なる精霊は自ら思惟するを覚えずただ意志するとのみ思ふものです。又言説する時も之に似たるものがありますが只相違せる点は、その言説はその意志に属する想念そのままを赤裸々的に露出することを憚るの情が籠つてゐるものです。その故は人(精霊)が現界に在つた時に俗を逐ふて其生を営みたる習慣がその意志に附属するに至るからであります。 精霊が内面の情態に居る時は、その精霊(人)が如何なる人格を所有して居たかと云ふことを明かに現はすものです。この時の精霊は自我に由つてのみ行動するからであります。現界に在つた時に内面的に善に居つた精霊は茲に於て其行動の理性と証覚とにかなふこと益々深きものあるを認め得られるものです。今や肉体との関連を断ち、雲霧の如く心霊を昏迷せしめ、且つ執着せる物質的事物を全部脱却したからであります。之に反し精霊の内面が悪に居つたものは、今や外面的情態を脱れて了ひ、その行動は痴呆の如く狂人の如く、現世に在つた時よりも層一層の癲狂状態を暴露し、醜悪なる面貌を表はすものであります。彼精霊の内面悪なりしものは今や自由を得て表面を飾る外面情態の繋縛を離れたからです。現世にあつて外面上善美と健全の相を装ひ理性的人物に擬せむとして焦慮して居たものが、全く外面の皮相を取り除かれたので、その狂質は遺憾なく暴露するに至つたのであります。外面上善人を装ひ学者識者を以て擬して居た人間は馬糞を包んだ錦絵の重の内の様なもので、外面より見れば実に美麗なる光沢を放ち人をして羨望の念に堪へざらしむるものですが、その蔽葢を取り除けて内面を見る時は始めて汚物の伏在せるを見て驚くやうなものです。心霊学者だとか、哲学者だとか、宗教家だとか、種々の立派な人間も外面の蔽葢を取り去つて見れば、実に痴呆癲狂の汚物が内面に堆積され、地獄界の現状が暴露されるものであります。 現世に在つた時神格を認め神真を愛し内面の良心に従つて行動を為せしものは、霊界に入り来る時は直に内面の情態に導き入れられて永き眠りより醒めたる如く、又暗黒より光明に進み入りしものの如きものであります。その思索もまた高天原の光明に基き内面的証覚より発し来るが故に、凡ての行動は善より起り、内面的情動より溢れ出づるものです。かくて高天原は想念と情動との中に流れ入り歓喜と幸福とを以て其内面を充満せしめ、未だかつて知らざる幸福を味はふものです。最早かくなりし上は高天原の天人との交通が開けて居るので、主の神を礼拝し真心を尽して奉仕し、自主の心を発揮し、外的聖行を離れて、内面的聖行に入るものです。かくの如きは三五教の教示に由りて、内面的善真の生涯を送りしものの将に享くる所の情態であります。併し三五教以外の教団に信入したものと雖も、神真を愛し内面的善に住し神格を認めて奉仕したるものの精霊も亦同様であります。 之に反し現世にあつて偽善に住し神を捨て悪に住し、良心を滅し神格を否定し、或は神の名を称ふる事を恥ぢて、種々の名目にかくれ霊的の研究に没頭し、凶霊を招致して霊界を探り現世の人間を欺瞞し、又は一旦三五の教を信じ乍ら心機一転して弊履の如く之を捨て去り、或は誹謗し、世間の人心を狂惑したるものの精霊界に於ける内面的情態は全然之と正反対であります。 又内心に神格を認めず、或は軽視し何事も科学に立脚して神の在否を究めむとし、且つ自己の学識にほこるものは、皆悪の霊性であります。たとへ外面的想念に於いては神を否定せず、之を是認し少しは敬神的態度に出づるものと雖も、其内面的精神は決して然らざるものは依然悪であります。何故なれば神格を是認することと悪に住することとは互に相容れないからであります。又「吾々は単に神を信じ宗教を学ぶ位なれば、決して学者の地位を捨てたり、役目を棒に振つて入信はしないのだ。只吾々は神諭のある文句を信じたからだ。万万一その神諭が一年でも世界に現はるる事が遅れたり間違ふ様なことがあつたならば、自分が率先して教壇を打き潰して了ふ」と揚言し、到頭意の如く神の聖団を形体的にも精神的にもたたき毀し、沢山な債務を後に塗り付け、谷底へ神柱を突き落し頭上から煮茶を浴びせかけ、尻に帆を掛けてエルサレムを後に又々種々の企てを始めて居る守護神の如きは、実に内面の凶悪なる精霊であります。然し乍ら斯る精霊は表面に善の仮面を被り、天人の如き善と真との言説を弄するが故に、容易に現界に於ては其内面の醜悪を暴露せないものであります。かくの如き精霊が霊界に来り内面的情態に入つて其言説する所を聞き、其行動する所を見る時は恰も前後の区別も知らず、発狂者の如く見ゆるものであります。彼等精霊の凶欲心は爰に爆裂して、一切憎悪の相を現はしたり、他を侮蔑して到らざる無く所在悪の実相を示し、悪行を敢てし殆んど人間の所作なるかと疑はしむる許りであります。 現世にあつた時には、外的事物のために制圧せられ沮滞しつつあつたけれ共、今や其覊絆を脱し彼等の意志よりする想念に任せて放縦自在に振舞ふ事を得るからです。彼等が又生前に於て所有した理性力は皆外面に住し、内面に住して居なかつたから、斯の如き悪相を現ずるに到るのであります。而も彼等は他人に優りて内面的に証覚あるものと自信して居たものであります。今日の学者や識者と謂はるる人の精霊は、概して外面的情態のみ開け、内面は却て悪霊の住所となつて居るものが大多数を占めて居るやうであります。 ○ 高姫『これ、お前さま等、何が可笑しうてさう笑ふのだい。千騎一騎の此場合、笑ふ所ぢや厶るまい。変性男子様の教にも「座敷を閉めきりてジツとして居らぬと、笑つて居るやうな事では物事成就致さぬ」とありますぞや。五人が五人とも揃うて笑ふとは何の事ぢやい。此日出神を馬鹿にしてるのぢやあるまいかな』 カークス『何、馬鹿にする所か、私達五人は高姫さまに馬鹿にされて馬鹿になつて、此道端でお話を聞かうと思つてるのです。なあベース、さうだらう。これも旅の慰みだからな。立派な先生があり乍ら三五教の謀反人ウラナイ教の高姫さまに説教を聞く者がありますか。あんまり名高い高姫さまだから、一つ話を聞いてやるのですよ』 高姫『オツホヽヽヽ、盲蛇に怖ぢずとやら、困つたものだわい。斯う云ふ代物も神様は済度遊ばすのだから、並や大抵の事ぢやないわい。日出神や大神様のお心を察しましておいとしう厶りますわいな。オーンオーンオーン。日出神様、斯くの如く憐れな身魂ですから、何卒虫族だと思つて腹を立てずに、神直日大直日に見直して助けてやつて下さい。どうして又世の中は斯うも曇つたものだらう。俺もここで足掛け二年も大弥勒さまの教を伝へて居るのに、唯一人聞く者がいないとは、如何に暗がりの世の中とは云へ、困つたものだな』 カークス『お前さま、えらさうに善人らしく、智者らしく、神さまらしく仰有るが、肝腎要の内面的状態は地獄的精神でせうがな。此カークスは斯う見えても精神の内面状態は……ヘン……第一天国に感応して居るのだから、お前さまの云ふ事が、何だか幼稚で馬鹿に見えて仕方がありませぬわ。ウツフヽヽヽ』 高姫『オツホヽヽヽ何とまあ没分暁漢だこと。現在目の前に底津岩根の身魂が現はれて居るのも分らず、第一霊国の天人、珍の神柱高姫が言葉を幼稚だとか、馬鹿に見えるとか云ふて居るが、ほんに困つたものだな。丹波の筍ぢやないが、煮ても焚いても喰はれない代物だ。それでも人間の味がして居るのかな。伊太彦さま、お前も大抵ぢやなからうな。仮令千年万年かかつても、誠の道に帰順させる事は難かしいよ。如何な此大弥勒の御用する高姫でも、此代物には一寸、手古摺らざるを得ないからな』 カークス『ヘン、そこつ岩根の大弥勒さまだけあつて随分粗忽な事を仰有るわい。霊国の天人ぢやと仰有つたが、いかにも無情冷酷の天人イヤ癲狂人と見える。神の道には好き嫌ひは無い筈、それに結構な神様の生宮を捉まへて這入ると家が穢れるの、なんのつて仰有るから恐れ入るわいウツフヽヽヽ』 高姫『お前のやうなコンマ以下に相手になつて居つたら日が暮れる。さア伊太彦さま、お前は一寸利口さうな顔をして居るが、高姫の云ふ事は耳に入るだらうな』 伊太『もとより愚鈍な私、賢明な貴女の仰有る事、どうせ耳に入りますまいよ。平易簡単に仰有つて下さい。どうぞお願ひ致します』 高姫『あ、よしよし、お前の方から、さう出れば文句はないのだ。然し乍ら此大弥勒さまに教へてやらうと云ふやうな態度に出たら大間違が出来ますぞ。それこそアフンとして尻がすぼまりませぬぞや。結構な結構な大神様の一厘の仕組、之が分つたら俺も私もと高姫の足許に寄つて来るなれど、あまり身魂が曇つておるから何も申されぬが、兎角改心が一等ぞや。これ伊丹彦さま、傷み入つて改心するなら今ぢやぞえ。後の後悔間に合はぬ。毛筋の横巾でも間違ひはないぞや。大弥勒の神に間違ひはないぞえ。高姫が申しても高姫が申すのではない。口借るばかりぢやから慎んでお聞きなさい。分つたかな。分つたら分つたと、あつさり云ひなさい。これ丈け説教したら分る筈だから……』 伊太『根つから分りませぬがな。もつと詳しく簡単明瞭に仰有つて下さいな』 高姫『何と頭の悪い、これ丈け細かう云ふてもまだ分らぬのかな。何程簡単に言つても肝胆相照さない伊丹彦さまにはイタイタしいぞや』 カークス『何だ、訳の分らぬ能書ばかりを吹聴して、肝腎の事は一つも云はぬぢやないか』 高姫『エー、黙つて居なさい。お前等の下司身魂に分るものか。此高姫は底津岩根の大弥勒と分れば宜いのだ』 伊太『そりや分つて居ります。その大弥勒が又どうして斯様な処でお一人お鎮まりになつてるのでせうかな』 高姫『「竜は時を得て天地に蟠り、時を得ざれば蚯蚓蠑螈と身を潜む」と云ふ事がある。何程天地の大先祖の大先祖の、も一つ大先祖の底津岩根の大弥勒さまでも時節が来ねば身を落して衆生済度をなさるのぢやぞえ。此高姫を見て改心なされ。此世の鑑に出してあるのだよ。別にエルサレムとか斎苑館とかコーカス山とか甘粕大尉山とかへ行かなくても此高姫の云ふ事を腹に締め込みて置いたら世界が見えすきますぞや』 伊太『どうもハツキリ分りませぬがな。余程甲粕御魂と見えますわい。アハヽヽヽ』 高姫『これ程細かく云つても未だ分らぬのかいな。さうするとお前は一寸落して来て居るのだわい。一体誰のお弟子になつてゐたのだな』 伊太『玉国別の先生に教養を受けて居りました』 高姫『何だ。あの玉かいな。彼奴は音彦と云つてフサの国の本山にも、俺の宅の門掃をして居つた奴だ。彼奴は謀叛者でな。自転倒島の魔窟ケ原でも後足で砂をかけて逃げて行つた不人情者だ。あんな者が天理人道が分つて堪るものかい。五十子姫と云ふ阿婆摺れ女郎を貰つて玉国別だ等と云ふ名で其処辺りを歩き廻つて居るのだから、臍茶の至りだ。オツホヽヽヽ、何とまア三五教も人物払底だな。之では瑞の御霊が何程シヤチになつても駄目だわい。それだから底津岩根の大弥勒さまの肝腎の事が分らぬと申すのだ。さア伊太彦さま、ここが宜い見切り時だ。天国に上るが宜いか、地獄に落ちるが宜いか、一つ思案をしなされや。チツと許り耳が伊太彦でも辛抱して聞いて見なさい、利益になりますよ』 伊太『高姫さま、もうお暇致します。私は玉国別様が大切なお師匠様、そのお師匠様の悪口を云はれて、どうして黙つて居られませう。さア皆さま、帰りませう』 カークス『万歳々々、始終臭ひの婆々万歳』 ベース『退却々々本当に誠に退屈々々』 高姫『これお前は三五教の宣伝使ぢやないか。怒る勿れと云ふ掟を知つてをるか。さう二つ目には腹を立てて帰るとは何の事だい。それで宣伝使と云はれますか。お前のやうな無腸漢が居るから三五教の名が日に月に落ちるのだ。よい加減に馬鹿を尽して置きなさい』 ブラヷーダ『思ひきや高姫様に廻り会ひ 醜の教を授からむとは』 高姫『思ひきや三五教の神司 闇と枉とに包まれしとは』 伊太彦『思ひきや斯程に自我の強烈な ウラナイ教の高姫婆さまとは』 アスマガルダ『思ひきや斯んな処にウラナイの 醜の婆々アが構へゐるとは』 ベース『思ひきやウラナイ教の高姫の 減らず口でも之程迄とは』 カークス『とはとはと問はず語りに高姫が 囀る言葉ここで聞くとは』 伊太『高姫さま、お邪魔を致しました。さア之でお暇を致します。どうかトワに御鎮座遊ばしませ』 カークス『まアゆつくりと此破れ家で一人居りなさい。よく宣伝が出来る事でせう。イツヒヽヽヽ』 高姫『こりやカークス、何と云ふ無礼な事を申すのだ。貴様の骨を叩き割つてカークスにしてやらうか』 カークス『そんならカークスベース(蚊燻べ)にして貰はうかい。たかと云ふ蚊が居るのだから面白からうよ。ヒヽヽヽヽメヽヽヽヽ』 高姫『伊太彦の鼬見た様な奴についてる者は碌な奴はありやせないわ。ブラヷーダだのアスマガルダだのと、曲つた腰付でブラブラと迂路付きやがつて鼬に屁をかまされた様な顔付してイツヒヽヽヽ、あゝ衆生済度も並大抵ぢやないわい』 アスマガルダ『高姫さま、お前さまは何時の間に、スーラヤの死線を越へて此岩窟に来たのだい』 高姫『オツホヽヽヽ馬鹿だな。一つ手洗を使ふて来なさい。ここは岩窟の中ぢやありませぬよ。フサの国テルモン山の麓、高姫高原の神館だ。夜中の夢を見て世の中をぶらついて居るのだな。妹の婿の尻を追ふて歩く代物だから、どうせ碌な奴ぢやないと思つたが、矢張日出神が一目見たら違はんわい。何と云ふても金挺聾だから何にも分らぬ、困つた人足だな』 アスマガルダ『何、言はして置けば際限もなき雑言無礼、かう見えても俺はスーラヤの海で鍛へた腕だ。覚悟せい』 と鉄拳を揮つて殴りつけむとする。伊太彦は早くも其腕を掴んで、 伊太『待つた待つた、三五教は無抵抗主義だ。さう乱暴な事をしちやいけませぬ』 アスマガルダ『それだと云つて余りぢやありませぬか』 伊太『そこを辛抱するのが誠の道です。堪忍五万歳と云つて堪忍は無事長久の基ですからな』 アスマガルダ『そんなら伊太彦さまの命令に従ひませう。エー残念な……』 高姫は腮をしやくり乍ら、 高姫『イツヒヽヽヽ無抵抗主義の三五教、お気の毒様』 と大きな尻をプリンプリンと振り乍ら、裏の柴山を獅子の如くに駆け上り、何処ともなく姿を隠して了つた。五人は又もや宣伝歌を謡ひ乍ら露おく野辺を悠々と進み行く。 (大正一二・五・二四旧四・九於竜宮館北村隆光録) |
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霊界物語 | 63_寅_伊太彦の物語 | 14 嬉し涙 | 第一四章嬉し涙〔一六二一〕 黒雲濛々として天地四方を包み、夜とも昼とも見別のつかぬやうな光景となつて来た。吹き来る風は何となく腥く、且つ湿つぽく、表面は冷たく、どこやらに熱気を含み、体から沾つた汗の滲む空気である。伊太彦一行は足に任せて、方向も定めず、膝栗毛の続く限り進んで行くと、相当に高い岩骨の山の麓に行き当つた。相当に高い山らしいが、五合目あたりから、灰色の雲が包んで巓を見る事が出来なかつた。一行は此山を登るより道がない。針のやうな草や、荊の間を種々と苦心して右へ避け左へ避け、板壁のやうな嶮しい所を登つて往く。四方八方から、何とも知れぬ悲しいやうな嫌らしいやうな泣声が聞えて来る。猿の声でもなければ秋の夕の虫の音でもない。実に絶望の淵に沈んだ時のやうな嘆声である。一行は天津祝詞を奏上せむとしたが、どうしても唇が強直して声を発する事が出来なかつた。灰色の雲の中へ身を没するやうになると、スーラヤ山の死線を越えた時のやうな再び不快の気分に襲はれた。一同は不言不語運を天に任し、伊太彦の後に従ひ登つて往くと、山の巓は、蠣殻を打ちあけたやうな小石が一面に被さつて居て恰も剣の山を登るが如くであつた。伊太彦は頂上のバラの花のやうな形した岩の上にソツと腰を下した。後れ馳せながら四人はヘトヘトになり、顔色蒼白め、唇を紫色に染め、さも絶望の淵に沈んだやうな面貌で辿りつき、気息奄々として夏犬のやうに舌を垂らし、胸に浪をうたせながら蠣殻のやうな小石の上に倒れて仕舞つた。 其処へ下の方からスタスタ偉ひ勢で登つて来た一人の婆がある。一同の屁古垂れた姿を見て婆は大口を開いて、 婆『オホヽヽヽ。これや伊太に阿魔女に三人のガラクタ共、往生致したか。もう此処迄来た以上は往も戻りもならず、此処で露の命を捨てて八万地獄へ落ちるのだが、夫でもお詫を致して助けて貰ふ気はないか。三五教の宣伝使だなどと申て、よくもよくも世界を股にかけて歩きよるな。俺を誰だと思ふて居るか。高姫の守護を致して居る銀毛八尾のお稲荷様だぞ。これや開いた口が窄まるまい。一口でも喋るなら喋つて見い。アスマガルダの馬鹿者が、此方の肉の宮を打擲せむと致し嚇かしやがつた為めに、此方の生宮は、とうとう吾家を飛び出し行衛不明となつて仕舞つたのだ。恨を晴らさうと思ひ此方の計略によつて、此山に踏み迷はしてやつたのだ。サア、心を改めてウラナイ教に帰順致すか、どうだ、きつぱりと返答致せ。いやいや返答は出来まい。耳は聾、口は開かず、言葉も出ぬものだから、併し耳は少し聞えるだらう。此方の申すやうに致すなら首を縦にふれ。ても扨てもいげつないものだなア、ても扨ても小気味よい事だなア、オツホヽヽヽ』 伊太彦は発言機関の止まつた悲しさに、一言も発する事を得ず、頻に首を横に振つて居る。外四人も伊太彦に做らつて機械人形のやうに首を横に振る。 婆『ても扨ても、ど渋太い奴だなア。絶対絶命の場合になつても、まだ俺の云ふ事が分らぬのか。銅屑の霊と云ふものは因果なものだなア。これや伊太彦』 と茨の笞をふり上げて、伊太彦の頭を続け打ちに十二三打ち続けた。頭部からは、花火の薄のやうに血がボトボトと線を劃して流れ出づる其痛ましさ。伊太彦は目をつぶつたまま、仮令死んでも三五教の教は捨てぬ。如何な責苦にあつても、ウラナイ教に帰順するものかと益々首を横に振る。婆は又々鞭を加へる。此体を見たベースは驚いて、そろそろ首を縦に振り出した。妖婆はさも嬉しさうに、忌やらしい笑を泛べて、 婆『オホヽヽヽ。お前はベースだな。よしよし偉いものだ。本当に水晶玉だ。五人の中でお前一人。「改心すれば其日から楽になるぞよ」と仰有るのだから、みせしめのため此処で一つお前に天国の楽みを与へてやらう』 と云ひ乍ら、懐から、小さい玉のやうなものを取り出しブーブーと口に当て吹くと、フワリとした綾錦の座布団が七八枚、其処に現れた。 婆『ホヽヽヽ、これやどうだ、銀毛八尾様のお働きはこんなものだよ、さあベース、さぞ足が痛からう。此上に坐りなされ。さあチヤツと坐りなされ。そして、腹が空いただらう。此玉を吹きさへすればお前の望み通りの美味の物が出て来るのだ』 と云ひ乍ら、ベースの体を鷲掴みにして七八枚重ねた柔かい布団の上に坐らした。ベースは四人の者に気兼し乍ら坐つた。婆はいろんな果物や、葡萄酒などを玉を吹ひては拵へ、ベースに与へて居る。アスマガルダも、ブラヷーダも、カークスも伊太彦同様で依然として首を横に振つて居る。妖婆は之を見て、さも慨歎したやうに、 婆『ても扨ても因縁の悪いみ魂だなア。此やうに結構にして助けてやらうと思ふのに、こんな責苦に遇ふてもまだ我を立て通しよる。何奴も此奴も首を横に振りやがつて、エヽ俺が善悪の鏡を出して見せてやらう。皆がベースのやうにすればよいのだ。俺だつて何も此様なひどい事をしたくはないが、八岐大蛇様からの御命令だから仕方なしにやるのだ』 と云ひ乍ら、又もや茨の笞で三人を打ち据ゑる。流血淋漓として目も当てられぬ無残さ、四人は運を天に任して心の中に神を念じて居た。何処とも無く山岳を崩るる許りの犬の声、 『ウーワウワウワウ』 此声を聞くより妖婆は忽ち銀毛八尾の正体を現はし、倒けつ輾びつ雲を霞と逃げて行く。伊太彦、ブラヷーダ、アスマガルダ、カークスの四人は此声の耳に入るや俄に元気回復し言霊を自由に発する事を得た。さうして今迄滴つて居た血潮は痕跡も留めず、元の如く元気よき面貌となり矗と立ち上り、天津祝詞を奏上した。ベースはと見れば猿取荊の中に突つ込まれてウンウンと唸つて居る。 伊太『あゝ惟神霊幸倍坐世』 三人も一度に、 『惟神霊幸倍坐世』 カークス『もし伊太彦の宣伝使様、怪体の事があるものぢやありませぬか。高姫の守護神奴がこんな所迄やつて来まして、吾々を試みようと致しましたが、犬の声が聞えると忽ち正体を現はして逃げて仕舞つたぢや厶いませぬか。矢張神様は信仰せねばなりませぬなア』 伊太彦は有難涙を流し乍ら、 伊太『アヽ、何とも有難くて言葉も出ませぬわい。時にベースは何処へ行つたのでせうな』 アスマガルダ『ここの猿取荊の中に真裸体にせられ血塗になつて苦しんで居ます。何とかして助けてやりたいものですなア』 伊太『吾々一同が神様にお願ひして救ふて頂くより仕方がないなア。サアお願ひせう』 と茲に四人は一同に天津祝詞を奏上し、ベースの取違をお詫し、稍暫し汗みどろになつて祈願を凝らした。ベースはウンウンと唸つて居る許りである。其処へ忽然として猛犬スマートを引き連れて現はれたのは初稚姫の精霊であつた。四人は姫の姿を見るより喜びと驚きとにうたれ暫時、言葉もなく、姫の端麗なる顔を見詰めて居る。 初稚『伊太彦さま、貴方は試験に及第致しました。サアこれからウバナンダ竜王の玉を受取つて聖地にお出なさいませ。妾は貴方がスーラヤ山にお登りになつたと聞き、スマートと共に船を雇うて当山に登り貴方の身の安全を守護して居りました。最早安心なさいませ』 と云ひながら迦陵嚬伽のやうな麗しい声を出して天津祝詞を奏上したまふた。ハツと気がついて見れば伊太彦以下四人は竜王の岩窟に、邪気に打たれて倒れて居たのである。 伊太『あゝ矢張り此処は竜王の岩窟で厶いましたかなア。大変な所へ往つて居りました。よくまアお助け下さいました、有難う厶います』 外四人は嬉し涙を垂らしながら、両手を合せ、初稚姫を伏し拝んで居る。斯る所へ岩窟の奥の方より、鏡の如く光る大火団現れ来り、一同の前に爆発するよと見る間に、得も云はれぬ優美高尚なる美人が、十二人の侍女を従へ現はれ来り、初稚姫に向ひ手を仕へ、 竜女『妾は神代の昔より大八洲彦命様に改心の為め此岩窟に閉ぢ込められ、今迄修業を致して居りましたウバナンダ竜王で厶います。此度神政成就について如何なる悪神もお赦し下さる時節が参りましたので、誰かお助けに来て下さるだらうと、今日迄この宝玉を大切に保護して待つて居りました。所が伊太彦の宣伝使様が四人の伴を連れて、お出でになりましたが、斯う申すと何で厶いますが、もう些し御神力が奥さまに引かされて薄らいで居ますので、私が解脱する事も出来ませず、困つて居りました。すると伊太彦様外御一同は竜神の毒気に打たれ、精霊が脱け出され死人同様になられ困つた事だと思つて居ました所、神力無限の貴女様がお出になりまして言霊を聞かして下さつたので、昔の罪障も解け、執着心も取れて今迄の醜しかつた姿も消え、こんな天女となりました。併しこの玉は伊太彦さまにお授け致しますから、エルサレムに行き此玉を献じお手柄をなさつて下さい。妾は十二人の侍女と共に天に登り、ハルナの都の言向け和しに影乍らお助けを申ます』 と云ひながら、夜光の玉を伊太彦に渡した。伊太彦は手足を慄はせ乍ら押し戴き、叮嚀に布を以て包み懐に入れた。 初稚『竜王殿お目出度う厶います。嘸神様も御満足遊ばす事で厶いませう』 竜王『ハイ、お蔭で助けて頂きました。此御恩は決して忘れは致しませぬ』 竜王『久方の天津国より天降りませし 姫の命に救はれにけり。 いざさらば天津御国にまひのぼり 月の御神に仕へまつらむ』 初稚姫『古ゆ、暗きにかくれたまひたる 汝が命を救ひし嬉しさ。 久方の月の御国に登りまさば 吾神業を伝へたまはれ』 竜王『有難し此有様を委曲に 申上なむ月の御神に』 伊太彦『タクシャカのナーガラシャーを言向けて 心傲りし吾ぞうたてき』 ブラヷーダ『背の君の厳の力を包みたる 妾は醜の曲津神なりし。 さりながら心改め今よりは 神の大道に専ら仕へむ』 初稚姫『皇神をまづ第一と崇めつつ 伊太彦司をいつくしみませ』 ブラヷーダ『有難し姫の命の御教は 胸に刻みて忘れざらまし』 アスマガルダ『伊太彦やわが妹に従ひて 思はぬ恵に逢ひにけるかな』 カークス『もろもろの神の試に遇ひながら 今は嬉しき光見るかな』 ベース『曲神にたぶらかされて思はずも 道に背きし吾ぞ悲しき。 暗国の山の尾上に登りつめ 心を変へし身の恥かしさよ。 御恵の限知られぬ皇神は 此罪人も赦したまひぬ』 初稚姫『いざさらばウバナンダ竜王永久の 住家を捨てて御国に入りませ』 竜王『ありがたし姫の命の御言葉に 天翔りつつ神国に往かむ』 かく互に歌を取り交し竜王に別れを告げた。竜王は十二人の侍女と共に岩窟より雲を起し空中に舞ひ上り、忽ち姿は煙の如く消えて仕舞つた。初稚姫は岩窟の細き穴を伝ふて磯端に出た。此処は平素波荒く巨巌屹立し船の近づく事の出来ぬ難所である。さうして外に出れば底ひも知れぬ水の深さに、船を置く場所もなく、スーラヤの湖の大難所と称へられ、船人の恐れて近寄らなかつた所である。初稚姫、スマートの後に従ひ五人は細い穴を潜つて出て見ると其処には玉国別、治道居士の一行が船を横付けにして待つて居る。伊太彦は飛び立つばかり喜んで船に飛び乗り、玉国別に獅噛みつき嬉し泣きに泣いて居る。玉国別も唯、嬉し涙に咽んで落涙する計りであつた。あゝ惟神霊幸倍坐世。 (大正一二・五・二五旧四・一〇於教主殿加藤明子録) |
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霊界物語 | 63_寅_伊太彦の物語 | 22 蚯蚓の声 | 第二二章蚯蚓の声〔一六二九〕 大き正しき癸の亥年卯月の十四日 新に建ちし天声社二階の一間に立て籠もり 口述台に横臥して遠き神世の物語 弥六十三巻の夢物語述べてゆく 御空は清く地青く垂柳は粛然と 戦ぎもしない夕間暮三五教の宣伝使 玉国別の一行が斎苑の館を立ち出て 諸の悩みに遇ひ乍らスーラヤ山に鎮まれる ナーガラシャーの瑞宝を教の御子の伊太彦に 受け取らせつつ海原を漸く越えてエル港 茲に一行恙なく無事な顔をば合せつつ 前途の光明楽しみて聖地に向うて出でむとす 神の司の初稚姫が木花姫の勅もて 百千万の宣言を宣らせたまへば三千彦も また伊太彦も謹みて妹の命と立ち別れ 各自々々に唯一人聖地を指して進み往く 道に起りし物語いと細々と述べてゆく。 ○ 豊葦原の中津国大日の下の聖場と 遠き神代の昔より定まり居ますエルサレム 珍の聖地に名も高き黄金山に現れませる 野立の彦や野立姫御霊の変化在して 埴安彦や埴安姫と世に現はれて三五の 珍の教を垂れたまふ其大御旨を畏みて 神素盞嗚の大神は島の八十島八十の国 由緒の深き霊場に教の園を開きまし 数多の司を教養し仁慈無限の御教を 開かせたまふ尊さよバラモン教を守護する 八岐大蛇や醜鬼の醜の御霊を言向けて 汚れ果てたる地の上を神の御国に立て直し 妬み嫉や恨みなき誠一つの神の代を 作らむために千万の艱みを恐れず遠近と 玉の御身を砕きつつ励ませたまふ尊さよ 旭は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも 仮令大地は沈むとも三五教の御教は 幾万劫の末迄も宇宙と共に変らまじ あゝ惟神々々神の御稜威の有難き。 ○ 若葉も戦ぐ神の園梅は梢に青々と 頭を並べて泰平のミロクの御代を謡ひつつ 池に泛べる魚族は恵の露を湛へたる 金竜池に悠々と曇りし世界を知らず気に いとたのもしく遊び居る月は御空に皎々と 輝きたまひ神苑を隈なく照らし給へども 木下の闇に潜むなる曲の猛びは未だ絶えず 神に体も魂も供へきつたる瑞月は 体の筋や骨までもメキメキメキと痛めつつ 闇に迷へる世の人を救はむ為に朝夕に 心を千々に砕けども知る人稀な今の世は 救はむよしも荒浪に漂ふ船の如くなり あゝ惟神々々御霊幸倍ましませよ。 ○ 朝な夕なに身を砕き教御祖の残されし 生ける教を委曲に説き諭さむと朝夕に 神の御前に太祝詞清き願を掛け巻も 畏き瑞の御心を知らぬ信徒多くして 夏の若葉の木下闇騒ぎ廻るぞうたてけれ。 ○ 和知の河水淙々と弥永久に御恵の 露を湛へて流るれど瑞の御霊にヨルダンの 清き清水を汲む人ぞいとも稀なる今の世は 清き尊き皇神の教を軽んじ疎みつつ 日頃の主張も打ち忘れいろいろ雑多と口実を 設けて逃げ出すうたてさよ皇大神の御教に 高天原の大本は三千世界を天国に 渡す世界の大橋と教へられたる言の葉を 空吹く風と聞き流し大橋越えてまだ先へ 行方も知らぬ醜霊の身の行先ぞ憐れなり 皇大神の試練に遇ひて漸く眼さめ 悔い改めてかへるとも白米に籾の混るごと 何とはなしに疎ましく初の如くなきままに 又もや醜の曲津霊は高天原の大本は 必要の時は大切に扱ひ旨く使ひつつ 一人歩みが出来だせば素知らぬ顔の半兵衛を 極めこむ所とそしりつつ泡吹き熱吹き末遂に あてども知らぬ法螺を吹き煙の如く消えて往く 誠の足らぬ偽信者神の教を現界の 皆法則にあて箝めて真理ぢや非真理ぢや不合理と 愚痴を唱ふる可笑しさよ何程知識の秀でたる 物識人も目に見えぬ神の世界の有様や 全智全能の大神の御心如何で解るべき 慢心するのも程がある唯何事も人の世は 皇大神の御心に任せて進めば怪我はなし あゝ惟神々々御霊の恩頼を願ぎまつる。 ○ 科学を基礎とせなくては神の存在経綸を 承認せないと鼻高が下らぬ屁理窟並べ立て 己が愚をも知らずして世界に於ける覚者ぞと 構へ居るこそをかしけれ学びの家に通ひつめ 机の上にて習ひたる畑水練生兵法 実地に間に合ふ筈がない口や筆には何事も いとあざやかに示すとも肝腎要の行ひが 出来ねば恰も水の泡夢か現か幻の 境遇に迷ふ亡者なり肉の眼は開けども 心の眼暗くして一も二もなく智慧学を 唯一の武器と飾りつつ進むみ霊ぞ憐れなり。 ○ 山河草木三つの巻弥々茲に述べ終る 又瑞月が出鱈目を吐くと蔭口叩くもの 彼方此方に出るであらう著述の苦労の味知らぬ 文盲学者や仇人の如何で悟らむ此苦労 如何に天地の神々が吾身を助けたまふとも 神より受けし魂の意志と想念光らねば 唯一言の口述も安くなし得るものでない 神の苦労も白浪の上に漂ふ浮草の 心定めぬ人々の囁きこそはうたてけれ 世界に著者は多くとも一日に数万の言の葉を 口述筆記するものは開闢以来例なし 作りし文の巧拙を云々するは未だしもと 許しもなるが一概にこの瑞月が物好に 下らぬ屁理窟並べ立て心に積りし欝憤を 神によそへて歌ふなぞ分らぬ事を云ふ人が 神の教の中にあるかかる汚き人々は 吾身の欲に絆されて表面に神を伏し拝み 棚から牡丹餅おち来る時節を待つよなやり方ぞ 世の立替や立直し今ぢや早ぢやと書くなれば 耳を聳て目を丸め口尖らして読むだらう そんな事のみ一心に待ち暮すのは曲津神 世の禍を待つものぞ大慈大悲の大神は 世界に何事無きやうと朝な夕なに御心を 配らせたまひ大本の教御祖は朝夕に 世界の難儀を救はむと赤心こめて祈りましぬ 其御心も知らずして世界の大望待ち暮す 人は大蛇か曲鬼か譬方なき者ぞかし あゝ惟神々々神の御前に平伏して 此聖場に寄り集ふ信徒達の魂に まことの光を与へつつ耳をば清め目を照らし 天の瓊鉾を爽かに研かせたまひて言霊の 御稜威を四方に輝すべく守らせたまへと朝夕に 体の骨を痛めつつ一心不乱に願ぎまつる あゝ惟神々々大国常立大御神 豊国姫の大御神天津御空に永久に 鎮まりたまふ日の御神月の御神の御前に 世の有様を歎きつつ密かに一人願ぎまつる あゝ惟神々々御霊幸倍ましませよ。 (大正一二・五・二九旧四・一四於天声社加藤明子録) (昭和一〇・六・一六王仁校正) |
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霊界物語 | 64_上_卯エルサレム物語1 | 03 聖地夜 | 第三章聖地夜〔一六三二〕 ブラバーサはエルサレムの停車場でバハーウラーに袂別し、プラツトホームを出で、稍広き街道を散歩し初めた。既に黄昏近くなつた近辺の山々の背景を、美しい夕日が五色の雲の線を曳いて色彩つて居る。併し何となく寂し気な印象が刻まれて来る。シオンの城を正面に控へながら、路の両側の畑丘に映えて居る落付いた緑色の葉が、痛々しげに塵埃のために灰白色に化つて居る橄欖の木を懐かしみながら、車馬の往来繁き大通をエルサレムの市街へと進む。 後の方から『モシモシ』と呼ぶ婦人の声が聞える。ブラバーサは後振り返り、立止まつてその婦人の近づくのを待つとはなしに待つて居た。見れば曼陀羅模様のある厚いブエールで顔全部を覆ふて居るユダヤの婦人で、死の国からでも逃げて来た様な気味の悪い姿であつた。ブラバーサは月光の下に、初めて此市中に於て声を掛られたユダヤの婦人の姿を見て、ギヨツとしながら例の丸い眼を嫌らしく光らした。 マリヤ『見ず知らずの賤しき婦女の身として、尊き聖師様を御呼び止め致しまして済まないことで御座いますが、妾はアメリカンコロニーの婦女で、マグダラのマリヤと申す基督信者で御座います。神様の御摂理に由つて貴師の爰に御降り遊ばす事を前知し、急いで聖地の御案内を兼ね、尊き御教を承はり度く罷出でました者で御座います。決して決して怪しき婦女では御座いませぬから、何うぞ妾に聖地の案内を命せて下さいませぬか』 と真心を面に現はして頼む様に云ふ。 ブラバーサは土地不案内のこの市中で、思はぬ親切な婦人の言葉を聞いて打喜びながら、 ブラバーサ『ハイ有難う御座います。私は高砂島より遥々と神命に由つて、聖地へ参向のために来たものですが、何分初めての事ですから土地も一向不案内の処へ、貴婦が案内をして遣らふと仰有るのは、全く神様の御引合はせで御座いませう。併し最早今日は夜分になりましたから、何処かのホテルへ一泊致し、明朝緩くりと橄欖登山致し度きもので御座いますが、適当なホテルを御示し下さいますまいか』 マリヤ『貴師も定めて御疲労で御座いませうから、今晩はホテルに御一泊なさるが宜しいでせう。聖地巡礼者のために設けられた大仕掛なホスビース・ノートルダム・ド・フランスと云ふ加持力の僧院が御座いまして、其設備は一切ホテルと少しも変りなく、且つ大変親切で宿料も一宿が一ポンド内外ですから、それへ御案内致しませうか』 ブラバーサ『カトリックの僧院ですか。夫れは願ふても無き結構な所、どうか其処へ案内を願ひませう』 マリヤ『ハア左様なさいませ。妾も貴師と今晩は同宿して、種々の珍らしい高砂島の御話を承はりたう御座います』 と先導に立ち、カトリックの僧院ホテルへと案内され、今宵は爰に一宿する事となつた。両人は二階の一室に案内され、夕餉を済ませ、窓外を遠く見やると、折しも十六夜の満月が皎々として下界を隈なく照らして居る。大きな僧院にも似ず宿泊者は僅かに四五人で、何れも各宗の僧侶であつた。マリヤはブラバーサに向かひ、 マリヤ『聖師様、今晩の月は亦格別美はしき空に澄み切つて聖師の御来着を祝して居るやうですなア。斯様な良い月の夜を室内に明かす事は、少し計り勿体ないぢや有りませぬか。何うでせう、一つ月明かりに散歩でもして御寝みになりましたら、妾もこの月を見ては室内計りに蟄居する気になりませぬわ』 ブラバーサ『成る程良い月です。高砂島で見た月も今この聖地で見る月も、余り変りはありませぬが、何だか月が懐かしくなつて参りました。無為に一夜を明かすのも神界へ対して済まない様な心地がします。何うか案内を願ひませうかなア』 マリヤ『ハイ宜しう御座います』 と早くもマリヤは二階の階段を下りかけた。ブラバーサもマリヤの後からホテルを忍ぶ様にして門外に出た。両人は市街の外側を西の城壁に添ふてダマスカスの門を目当に歩を運ぶ。上部が凹凸になつた厳めしいこの城壁や門は、皆中世に造られたものだが、何となく古い市街には応はしい感覚を与へる。この門からダマスカスへの道路が通じて居る。両人は月光を浴びながら、門を潜つて市街の北部を横断し、聖ステフアンの門へと出た。荒い敷石の道路は、所々に低いトンネル様のアルカードで覆はれて居て、月光の輝く下では内部の深い深い暗黒面が殊更寂しく物すごく感じられた。道路の両側の所々に、赤いトルコ帽を被つたアラブが小さい茶碗で濃いコーヒーを呑んだり、フラスコ様の大仕掛な装置で水を通過させて長いゴム管で吸入する強い煙草をのん気さうに呑み乍ら、両人の方へ迂散な奴が来よつたなアと云つた様な顔付きで睨んで居た。 ブラバーサ『彼の男は吾々の姿を見て、異様の眼を光らして居ましたが、何かの信仰を以て来て居るのですか』 マリヤ『彼の人等は極端なアセイズムを主唱する人々で、妾が聖地を巡拝するのを見て、ボリセイズムだと云つて嘲つて居るのですよ。物質文明にかぶれてアセイズム者と成つて居るのですから、容易に信仰に導くことは出来難い人達ですわ』 ブラバーサ『斯る聖地にも依然アセイズム者が入込んで居るのですか』 マリヤ『アセイズム者は愚か、ソシアリストもコンミユニストもアナーキストもニヒリストも沢山に入込んで来て居ります。そして此聖地に詣で来る信徒に対して種々の嘲罵を浴びせます。妾も何とかして神様の尊き御道に救ひたいと思つて、毎日毎夜エルサレムの市街に立つて、声をからして演説をいたしましたが、彼等は神の力の声を聞いても立腹いたします。そして大変な強迫的態度に出で、遂には鉄拳の雨を降らすのです。印度の釈尊も縁なき衆生は度し難しと仰有つた相ですが、現界から既に已に身魂の籍を地獄に置いて居る人達には、如何なる神の福音も到底耳には入りませぬ。夫れ故妾の団体アメリカンコロニーの人々は、迷信者扱ひを受け、人間らしく附合つて呉れないのです。モウ此上は聖メシヤの再臨を待つより仕方がありませぬわ』 ブラバーサ『高砂島でも、依然今の貴女の御話と同様に、吾々の信奉するルートバハーの教やその信者を迷信者扱ひをなし、あらゆる圧迫と妨害を加へ、大聖主までも邪神扱ひに致して、上下の民衆が挙つて反抗的態度に出ると云ふ有様です。然し是も時節の力で解決が付くものと私は堅く信じて居ります。メシヤが聖地へ雲に乗つて御降りになる暁は、如何なる智者学者も悪人も太陽の前の星の如く影を隠し、屹度メシヤの膝下に跪付くやうになるでせう。今暫らくの辛抱ですよ』 マリヤ『一時も早くメシヤの降臨を仰ぎ度きもので御座います。真正のメシヤは何時の頃になつたら出現されるでせうか』 ブラバーサ『既に已にメシヤは、或る聖地に降誕されて諸種の準備を整へて居られますから余り長い間でもありますまい。併しメシヤは只今の処では十字架の責苦に逢つて、万民の為めに苦しみて居られますが、軈て電の東天より西天に閃く如く現はれたまふでせう。私はメシヤ再臨の先駆として参つたものです』 マリヤ『それは何より耳寄りの御話し緩りと橄欖山上に於て承り度いものですなア』 ブラバーサ『是非聞いて戴かねばなりませぬ』 マリヤ『聖師様、是が有名な聖ステフアンの門で御座いますよ』 ブラバーサ『聖者が曳き出され石で打ち殺されたといふ、伝説のある聖ステフアンの門ですか。ヘエー』 と首を傾けて少時憂愁に沈む。 マリヤ『妾は此門を通過する毎に、聖者の熱烈なる信仰力を追想して、益々信仰の熱度を加へたので御座います』 と稍傾首て涙ぐむ。 ブラバーサ『アヽ惟神霊幸倍坐世。信仰力弱きこのブラバーサをして、無限の力を御与へ下さいませ。一イ二ウ三イ四、五ツ六ユ七八九十百千万』 と天の数歌を奏上し、暫し感歎止まなかつた。 ○ 聖ステフアンの門を潜ると、少しく下り坂になつて居る。マリヤの後に従いてゲツセマネの有名な園に近づいた。橄欖山は呼べば答ふる様に近くなつて来た。分の厚い丈けの高い、石造の垣で厳重に囲まれて居るのがゲツセマネの園である。処々にサイブレスの木が頭を出して居るのが見えるばかりで、一見して外側からは墓地のやうな感じを与へる。夜の事とて門扉が固く鎖され、内部は見ることが出来ない。そこから団子石のゴロ付いて居る峻しい坂路を攀て、目的の橄欖山へ登るのである。反対側の山の頂に王座して居る月光に由つて装れたエルサレムの市街、美しい気高いシオンの娘の姿は眼前に横たはつて居る。その美しさは現実に存在して居るのか、夫れともキリストに伴ふ聯想が幻影を造り出したのかと、ブラバーサの想像は瞬間に世界歴史の全体を通つて走る。丁度、高砂島の聖地桶伏山の蓮華台上の廃墟の前に立つた時と同様に、然しその二つの感想は、ブラバーサに取つては名状しがたきコントラストであつた。キリスト教とヘレニズムの葛藤、夫れは過去二千年間の人類の歴史を解くための悲哀なる鍵となるのであつた。 そして此マリア婦人を始め、コロニーの人達や、純真なる数多の奉道者が今に至るまで神を求め、真善を極め美に焦がるる純な心を痛めて来た事を思ひ浮かべては、そぞろに涙の溢るるのも覚えなくなつて了つた。アヽこの悲哀なる不調和は一時も早く取り除きたいものだ。キリスト教は何処までも現世界を灰色に染なければ止まないであらうか。アクロポリスに踵を向ける事なしにエルサレムに巡礼する事には成らぬのであらうか。何故神様は、此の世をモウ少し調和的に造り玉はなかつたのであらうかと、今更の如く愚痴と歎息を漏らさざるを得なかつた。 ブラバーサは黙然として追懐久うして居る。 マリヤ『聖師様、何か頻りに考へ込んで居らつしやる様ですが、妾の行動に就いて御気に召さない事が御座いますか。遠慮なく仰有つて下さいませ。如何様にも悪き点は改めますから』 ブラバーサ『イエイエ、決して決して貴女に対して気に合はない道理が御座いませうか。只々私はこの聖地の状況を見るに付け、古の歴史が胸に浮かびて参りまして、感慨無量の涙に暮れて居たのです』 マリヤは軽く、 マリヤ『そりやさうでせう共、妾だつて幾度聖地に来てから、古の歴史を追懐して泣いたか分りませぬわ。然し今晩は夜も更けましたから、ホテルへ一先づ引返し、又明日はゆるゆる案内さして頂きませう』 と先に立つていそいそと歩み出した。爰にブラバーサ、マリヤの二人は月光の下をキドロンの谷をエルサレムの側へ渡り、市街の東南隅の城壁に添ふて、ダング・ゲート(汚物の門)へ進んで来た。 ダング・ゲートは昔此門から汚物を運び去つた所と伝へられて居る。シロアムの村が眼下に展開して居る。その門を這入つてユダヤ人街とマホメツト教徒街との間を通過し、ジヤツフアの門へと出た。 現今のエルサレムの市街はアラブ、ユダヤ人、アルメニヤ人の住みて居る三ツの区域によつて仕切られて居る。 神殿の跡に近い暗いアルカードの傍に、二三人のアラブが立つて居て、手真似で訳の分らない言葉で両人を呼び止めた。両人は気味悪る相に聞かぬ風を装ひスタスタと足を早めた。 ダマスカス、聖ステフアン、ゲツセマネと斯う云ふ名は熱烈な信仰者の胸に深刻な感動を与へるものである。ブラバーサは傾首きながら一足一足指の尖に力を入れ、ウンウンと独り心に囁きながら、マリヤの後について行く。 然し現代の多数の基督教徒、それ等に対して宗教は無意味な形式、死し去つた伝統に過ぎない。呑気な基督教徒中に真にダマスカスの道にある使徒パウロの心を自身に体験し、キリストのゲツセマネの園における救世主の御悩みの一端だに汲み得る信徒が幾人あるであらうか、と慨歎の涙に暮れて知らず識らずにマリヤに半町ばかりも遅れてしまつた。 (大正一二・七・一〇旧五・二七北村隆光録) |
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霊界物語 | 64_上_卯エルサレム物語1 | 04 訪問客 | 第四章訪問客〔一六三三〕 ブラバーサは、マリヤの姿を見失ひしより止むを得ず、只一人にてカトリックの僧院に帰つて見れば、四辺は寂として静まりかへり、只耳に入るものは自分の行歩に疲れた苦しげな鼻息と、その足音のみなりき。幸ひ表の門が開け放しになつて居たので、与へられた二階の居間に帰り、ソフアの上に横たはりて前後も知らず夢幻の国へと突進したりける。 ガンガンと響く僧院の梵鐘の声に夢を破られ、ツト身を起して見れば四辺はカラリと明け放れ、午前八時の時計が階下に響いて居た。ブラバーサは時計の音を指を折つて数へつつ、 ブラバーサ『アヽもう八時だ。克くもマア寝込んだものだ。それにしても昨夜のマリヤさまは此ホテルには来て居ないだらうか。何処とはなしに神経質な感傷的な婦女だつたが、帰神の婦女によく在る習ひ、俄に神の命とか言つて心機一転してアメリカンコロニーへ還つて了つたのだらうか。余り気持の良い婦女では無かつたが、その熱烈な信念と親切な態度には実に感謝の至りだ』 と独語つつ洗面所に入り用を足して再び自分の居間に帰り来たり。 見れば食卓の上には二人前の膳部が並んで居て、ボーイらしき者も居ない。ブラバーサは此態を見て、 ブラバーサ『ボーイは其処等に見当らないが、二人前の膳部が吾居間に運ばれて在ることを思へば、どうやらマリヤさまも外の居間に寝て居たのかも知れない。ハテ不思議だなア』 と首を頻りに振つて居る。 そこへ徐々として這入つて来たのは年の若い美しいボーイであつた。ブラバーサは、 ブラバーサ『ボーイさま、夜前の相客たる一人の婦人は何処に居られますかな』 ボーイ『ハイ、昨夜は貴下と御一緒に此の室で御休みになつた事だと思つてお二人の膳部を運んで来たので御座います。別に外には居られませぬ』 ブラバーサ『ハテナ、合点の行かぬ事だ。併し何は兎もあれ朝飯を済まさむ』 と食卓に就いて、半時ばかりの間に掻き込む様にして朝の食事を済ませて了つた。ボーイは是非なくマリヤの膳部をブツブツ小言を云ひながら片付けて了ひ、ブラバーサの手から応分のポチを受取り、嬉々として次の室に姿を隠した。 ブラバーサは椅子に依りかかつて、二階の窓からエルサレムの市街を心床しげに瞰下し無限の情想を漲らし居たり。 そこへ『御免下さい』と静に声をかけて扉をたたいたのは、猶太人らしき品格の高い人好きのしさうな老紳士なりける。 ブラバーサ『何れの方かは存じませぬが、先づ御這入下さいませ』 と自ら立つて快く扉を開いて吾室へと迎へ入れる。 老紳士はさも満足気にブラバーサの手を握つて、その顔を熟々ながめ、早くも両眼から涙さへ流し居たり。 ブラバーサ『貴師は何れの方で御座いますか。何となく懐かしくなつて参りました』 スバッフォード『ハイ、私はアメリカンコロニーの執事でスバツフオードと申す瘠浪人で御座います。昨夜はマリヤさまが、大変な失礼をしたので再び御顔を拝する訳には行かないから、私に一度この僧院の二階の第九番に御逗留だから謝罪に行つて下さるまいかと大変に心配して居られますので、私はその御無礼の御詫を兼ねて尊い貴師に拝顔の栄を得たいと存じ、朝早くから御邪魔を致しました』 ブラバーサ『アヽ貴師がマリヤ様と御一緒にコロニーを司宰遊ばすスバツフオード様で御座いましたか。良くマア御尋ね下さいました。サア何うか此方へ』 と椅子を進める。老紳士は、 スバッフォード『ハイ有難う』 と与へられた椅子に腰打かけ、香りの強い煙草を燻らし初めたり。 ブラバーサ『マリヤ様は親切に聖地の案内をして下さいましたので、大変な便宜を得ましたのです。私の方から御礼に参らねばならないのですが、夜前突然御姿を見失つたものですから、ツイ失礼を致して居りましたが、コロニーへ御帰りに成つて居らるると承はり、それで私もヤツと胸が落着きました』 スバッフォード『何分マリヤさまは霊感者ですから、時々脱線的行動を初められ、後になつて毎時も自分で心配をされるのです。コンナ事は今日に初まつた事ではありませぬ。私はマリヤさまの弁解と詫役とにいつも使はれて居るのです。アハヽヽヽ』 ブラバーサ『マリヤ様は途中に於て何物かを霊視されたのでせうか』 スバッフォード『話によれば、貴師の眉間より最も強烈なる光輝が放出し、神威に打たれて同行する事が出来なくなり、思はず知らず恐怖心に追はれて尊き貴師を見捨て逃げ帰つたと申して居られました。私はコリヤきつと邪神の憑依だらうと思つて審神を行つて見た所、案に違はず山田颪の悪霊が憑依して居りまして、貴師の聖地へ来られた事を大層恐れ且つ嫌つて居るのです。悪霊の退散した後のマリヤ様は立派な方ですが、余り貴師にすまないからと言つて心を痛め、私に謝罪に行つて来よとの事で御座いました』 ブラバーサ『ハア決して左様な御心配は要りませぬから何うか宜敷く仰有つて下さいませ』 スバッフォード『ハイそのお言葉を伝へますれば、マリヤさまも大に喜ばれませう。昨夜貴師の御案内を為すべく夫れも神示によつてコロニーを立つて行かれたのです。どうか聖師様、一度コロニーまで玉歩を枉げて戴けますまいか』 ブラバーサ『ハイ有難う御座います。是非是非御世話にあづかりたう御座います。時にスバツフオード様、イスラエル民族たる猶太人も三千年の艱苦を忍びて漸く故国を取り還しましたねー。時節の力と云ふものは実に恐ろしいものですなア』 スバッフォード『ハイ有難う。私等も依然イスラエル民族で御座いますが、漸くにして自分の公然たる国が小さいながら立つ様になりました。世界の三大強国が何れも必死の勢ひでこのパレスチナを手に入れやうとして、終には御承知の世界戦争までおつ初めたのですもの。夫れが放浪の民たる吾々民族のものに還つて来たと云ふのは全く天祐と申すより外はありませぬ。要するにメシヤ再臨の準備として、神様が吾々に国を持たして下さつたのだと思ひます』 ブラバーサ『地球の中心即ちシオンの国ですから、独英米なぞの強国は欲しがるのも無理はありますまい』 スバッフォード『独逸の造つたバクダツト鉄道や、英国の拵へたアフリカ鉄道、アメリカが拵へかけて居るサイベリヤ経由の大鉄道も皆このパレスチナを目標として居るのですが、斯うなる以上は是等の大鉄道も又イスラエル民族たる吾々の為に利用さるることと成つて了ひました。此の鉄道さへ利用すればユダヤ民族が世界を統一し得ることは明白な事実であります。然し今日の猶太人は物質欲が強きため、肝心の神様を忘れて居る者が多いので困ります。人間の智慧や力量では九分九厘までは何事でも成功いたしますが、最後の艮めは何うしても神様の力でなくては成りませぬ、夫れ故吾々は大神の表現神たるメシヤの再臨を待つて居るので御座います。昔パレスチナが神の選民と称へられたイスラエル人の手に与へられた当時は、蜜滴り乳流るると言はるるカナンの国でサフラン薫じ橄欖匂ふ聖場と詩人に謳はれた麗しい景色の好い所でありましたが、今日となつては其面影も無く荒れ果てて了つたのですが、其パレスチナが再びユダヤ人の手に戻つて昔の橄欖山の美しい景色が段々と出て来るやうになつて来ました。天に坐します神様はメシヤの再臨に先だち、パレスチナを御自分の選みたまひました所のユダヤ人に御任せにならむが為に、数千年前から此美はしい使命を与へて選民たるの資格を備へしめむとして四十年間三百万の人間を苦しめ給ふたのです。三百万の者が飲むに水無く、食ふに食物の出来ない所で、或は親が死に子が死に、何代も続いて四十年間苦行を嘗めさせ玉ふたのも、イスラエル帝国の国民性を養はむが為の御経綸であつたのだと考へらるるのです』 ブラバーサ『猶太人はキリストを殺した為に、他民族から排斥され、種々の困難を嘗めて来たのでは在りますまいか。さうすれば若しも有力なる猶太人が現はれて世界を統一した時に於て、凡ての異教国の人民に対して復仇的態度に出づる様なことは有りますまいかなア』 スバッフォード『多くの同胞の中には左様な考へを持つて居る者があるかも知れませぬが、イスラエル人は比較的善良な民族ですから、一時は仮令過激な行動に出づるやも知れませぬが、何と言つても神に従ふ心が深いのですから、誠のメシヤが判りて来ましたら、屹度其命に従ふものだと吾々は国民性の上から判断を致しまして、メシヤの再臨を待ち望んで居るので御座います。そして猶太人は世界を統一してシオン帝国を建設する事があつても、自ら帝王に成らうなぞとは夢想だも為て居りませぬ。只聖書の予言を確信し、メシヤは東の空より雲に乗りて降臨すべきもの、又吾等の永遠に奉仕すべき帝王は日出の嶋より現はれ玉ふべきものたる事を確信して居りますよ。イスラエル民族は此信仰の下に数千年間の艱苦や迫害を忍んで来たのですからなア』 ブラバーサ『私はそのメシヤも帝王も皆高砂島にチヤンと準備され、数千年の昔から今日の世のために保存されて在るといふことを信じて居ります。一天一地一君の治め玉ふ仁慈の神代は既に已に近づきつつあるやうに思ひます。併しそれ迄には如何しても一つの大峠が世界に出現するだらうと思ひます』 スバッフォード『なる程、吾々も貴師と同意見です、天の神様がいよいよ地上に現はれて善悪正邪を立別け立直し玉ふは聖言の示したまふ所です。一日も早く身魂を研いて神心になり世の終りの準備にかからねば成りませぬ。そして高砂島からメシヤと帝王が現はれたまふと云ふ貴師の御説には私は少しも疑ませぬ。サア長らくお手を止めまして済みませなんだ。如何です、一度アメリカンコロニーまで御足労を願はれますまいか』 ブラバーサ『ハイ有難う御座います。然らば御言葉に従ひ御供を致しませう』 と僧院の監督に其旨を明かし置き、老紳士の跡に従つてコロニーへと進み行く。 (大正一二・七・一〇旧五・二七加藤明子録) |
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霊界物語 | 64_上_卯エルサレム物語1 | 06 偶像都 | 第六章偶像都〔一六三五〕 ブラバーサ、マリヤの二人は又もやエルサレムの市街を巡覧し始め、市内で一番重要なモニユーメントになつて居る聖セバルクル寺院を見るべく寺門を潜りぬ。 マリヤ『聖師様、此お寺は聖キリスト様を磔刑に処した場所で、ゴルゴタの地の上に建てられてあるのだと伝へられて居りますが、併し聖書に由つて考へてみると、ゴルゴタは市の外部に存在して居なければ成らぬ筈です。若しも現在の城壁が当時のものよりも拡張して居るものとすれば、問題にも成り得るでせうが、同一の場所にありとすれば、ダマスカスの門の外にある一見頭骸骨状の目下墓地になつて居る岩丘を以て、ゴルゴタの地と認めなければ成らないと思ひますわ』 ブラバーサ『吾々人間としては到底真偽は判りませぬ。大聖主が御降臨の上御定めなさることでせう。時に、この寺院の由来を聞かして頂き度いものですな』 マリヤ『このお寺の由来を申せば、コンスタンチン帝の命令に由つて発掘された結果、キリスト様の埋葬され遊ばした洞窟が発見せられましたので、帝の母上なる聖ヘレナ様がエルサレムに巡礼して来られ、爰でキリストの十字架を発見しられたので、弥この地をゴルゴタの聖蹟と認めて、紀元三百三十六年初めてここに寺院を建立されたと云ふことですが、それを又六百十四年に波斯人のために焼亡ぼされた為、直に改築をされましたと云ふことです。その後に於ても幾度となく破壊改築修繕等相次ぎ今日に至つたのだと聞いて居ります。一度お寺の内部を拝観なさいませぬか。妾が御案内いたしますから』 ブラバーサ『ハイ有難う』 とマリヤの後より寺内へ深く進み入る。 寺院内へ這入つて見ると、迷宮の様な構造で随分複雑して居て、加ふるに太陽の光線が十分徹らない薄暗闇で、何んとなく寂しい感じがする。それぞれ手に蝋燭を携帯せなければ成らなくなつて居る。寺内の空気は重くしめり勝で余り気分の良い所ではない。敷石は全部湿気で濡れて居るため、ウカウカして居ると脚下が辷つて転倒せむとすること屡である。平和にして清潔なるものは寺院だと思つて居た高砂島の明るい生活に馴れたブラバーサの心に取つては意外の感じに襲はれ、危険がチクチクと身に迫る様に何となく不安の雲に包まれにける。 外のユダヤ人街から来るのか、内部から発したのか知らぬが、一種異様の厭な臭気が襲つて来る。そして内部は凡てキリストの磔刑に関するあらゆる由緒ある場所に由つて充されて居て、何となく物悲しい寂しい感じを与へる。精霊が八衢を越えて地獄の入口に達した時の様な気分になつて来る。 マリヤはブラバーサを顧みながら初めて口を開き、さも愁た気に、 マリヤ『聖師様、この長方形の石はニコデモがキリスト様の体に油の布を以て捲くために御身体をのせたと伝へられるもので御座います。これがヨセフの墓で此方がアリマヂエの墓で、その少し向ふにあるのはニコデモの墓で御座いますよ。そして彼所がキリストの復活された後母の眼に現はれたまふたといふ聖所ですよ』 キリストを刺した鎗、キリストを投入した牢獄、兵卒がキリストの衣をわかつた場所なぞ一々叮嚀に指し示すのであつた。 ブラバーサ『天下万民のために犠牲とお成り下さつた救世主の御遺跡を拝観いたしまして、何とも言ひ得ない程私は御神徳を頂きました。何時の世にも善人は俗悪世界の人間から迫害されると云ふ事は古今一徹ですな。ルート・バハーの大聖主も肉体こそ保存されて在りますが、精神的に牢獄に投げ込まれ銃剣にて突き刺され、あらゆる社会の侮辱と嘲罵とを浴びせられ、且つ大悪人の如く扱はれて居られますが、何うか一日も早く天晴れ世界の人類が真の救世主を認める様になつて欲しいもので御座いますよ。ツルク大聖主の墓は官憲の手に暴破れ聖壇は破壊され数多の聖教徒は圧迫に堪へ兼ねて四方に離散し、今は純信な神に生命を捧げたものばかりが殉教的精神を以てウヅンバラ・チヤンダー聖主夫妻を唯一の力と頼んで、天下万民のために熱烈なる信仰を続けて居るのです。アヽ惟神霊幸倍坐世』 マリヤは涙に暮れながら、聖師の先に立つてキリストの十字架を建てた正確な地点や、聖母のマリヤが十字架から降ろされたキリストの亡骸を受取つた場所を案内するのであつた。是等の地点には、それぞれそれに因んだ名を附したチヤペル(礼拝堂)が設けられありぬ。 マリヤ『是がアダムの墓で御座いますが、一番に聖地でも不思議と呼ばれて居ります。そしてキリストの聖き御血が岩の裂れ目からその頭に浸み込むや否や、この原人アダムは忽ち蘇生したと言ひ伝へられて居るのですよ』 と少しく怪し気に笑つて居る。 ブラバーサは感慨無量の思ひに充ちて一言も発せず、マリヤの後から心臓の動悸を高め乍ら従いて行く。寺院の東の端の方には聖ヘレナの礼拝堂が建つて居る。北の神壇はキリストと共に十字架に釘付けられた一人の悔改めたる盗人のために捧げられたものだと伝へて居る。主なる神壇は皇后聖ヘレナのために捧げられたものと伝へられて居る。その側面を地下へ十三段下つた処に、又十字架発見のチヤペルが建てられて居る。茲に聖ヘレナが夢の啓示に由つて三つの十字架を発見したと云ふ。 ブラバーサ『聖ヘレナ様が夢の啓示に由つて三つの十字架を発見されまして、爰にチヤペルをお建てになつたのですが、その発見された三つの内でも何れがキリストの架けられた十字架だか分らなかつたので、そこで一つ一つ大病人に触れさせて試みた所、その中の一つが病人を癒したのでそれをキリストのものとして保存されてあると云ふ事で御座います。そしてキリストの縛り付けられなさつた円柱が在るのですが、併しそれは神壇の壁の奥に深く隠れて居るので容易に拝することは出来ないのです。所がその壁には丸い穴があいて居て、信心の深い礼拝者はそこにおいてある摺子木様の棒をその穴に差し込み、その円柱にふれて棒に接吻するのです。サア是からキリスト様の御墓を御案内申し上げませう』 とマリアは前導に立ちて奥へ奥へと進み入る。 寺の中央に独立した長方形の大理石で造られたキリストの墓の前についた。両人は恭敬礼拝稍久しふして救世主を追慕する念に打たれ、思はず知らず落涙して居る。沢山な古風を帯た燭灯に由つて照され、十八本の柱から成つた円形の建築の中に置かれてある。そこに一人の番僧が居て、 マリヤ『良くこそ御参拝に成りました。どうかキリスト様の御墓へ御賽銭をお上げ成さいませ。後生のため現世の幸福のためで御座います』 と抜目なき言葉でお賽銭を強要して居る。 ブラバーサは心の内にて、 ブラバーサ『アヽ聖キリスト様もお気の毒だ。賤しき番僧等の糊口の種に使はれたまふか。世は実に澆季末法だなア』 と歎息しながら懐中を探つて少しばかりの賽銭を墓の前に捧げた。番僧は餓虎の如く其場で賽銭を拾ひ上げ、懐中へ隠して了つた。 マリヤ『この寺院内の各種のチヤペルや墓や、神壇や其他寺内の各部分、又は聖き墓を照して居るランプに至るまで、ギリシヤ・オルソドツクス及びローマ・カトリックや其他アルメニヤ派の間にそれぞれ所有がきまつて居るのです。それは此お寺ばかりでは無く、エルサレムの内外に散在して居る宗教上の由緒ある場所に付いても同様です。実に皮肉なアイロニーぢやありませぬか。そしてこのお寺が彼の有名な十字軍の戦争の目的物であつたのです。「聖墓を記憶せよ」との声は、第二回十字軍の出征に際して欧羅巴諸国の町々や村落を通じての叫びだつたので御座います』 ブラバーサ『欧州の国々が聖墓を慕つて十字軍まで起した時代は、その信仰も至つて熱烈なものだつた様ですが、今日では最早信仰も堕落して了つて物質的観念のみ盛んになつて来ました為に、斯る聖地の聖蹟も余り世人に顧みられない様ですなア。時節には神も叶はぬとルート・バハーの教にも示されて在りますが、一時も早く聖キリストの再臨されて聖地をして太古の隆盛に復活させ、世界万民を安養浄土の悦落に浴せしめ、キリストの恩恵を悟らせ度きものですなア』 マリヤ『左様で御座います。妾の加入して居ます聖団は只々キリスト・メシヤの再臨のみを待つて居るのです。一時も早く高砂島とやらに再誕されたメシヤの此地に再臨して下さる事が待ち遠しく成つて参りましたわ』 是より両人は寺門を出て市街を歩行し初めた。肉屋や野菜物店や、其他土地にふさはしい物を売つて居る雑貨店等が、みつしりと軒を並べて居る狭いオリエルタルな通りを過ぎて所謂「苦痛の路」へ出た。 マリヤ『聖師様、ここは苦痛の路と謂つてキリスト様がピラトの宮殿からゴルゴタの地即ち今の聖セバルクル迄歩ませられたと伝ふる旧蹟で御座います。そして此路の上には十四の地点が指定されてあります。サア是から一々御案内申しませう』 と前に立ちて進む。 ブラバーサは「成る程成る程」とうなづき、趣味深く味はひながらついて行く。 マリヤ『爰がキリスト様が磔刑の宣告を受けたまふた悲しい場所で御座います。その次が十字架を負はせ奉つた場所です。この東側のチヤペルを拝して御覧なさいませ。其時の光景がチヤンと浮彫で以て現はしてあります』 と話しながらズンズンと歩みを進め、 マリヤ『爰がキリスト様が母上様に会見遊ばした所で、熱烈な信徒の立止まつて動かない地点で御座います。彼所に「此人を見よ」のアーチが御座いませう。あれはピラトの訊問を受けた後にキリスト様がユダヤ人の群集の前に引出され種々の迫害と嘲罵とを受けたまふた所です』 と涙ぐまし気にそろそろと歩みながら、後ふり返つてはブラバーサの顔を見詰めて、 マリヤ『イエス荊の冕を被ぶり紫の袍を着て外に出づ。ピラト彼等に曰ひけるは「見よ是人の子也」と馬太伝に誌されてある事実で、キリスト様が二度目に倒れたまふた地点は爰だと云ふ事です。そしてキリスト様に従つて来たと話された地点は爰ですわ。このチヤペルにチヤンと彫込んであります』 と叮嚀親切に案内したりける。 ○ キリスト教の偶像を以て飾られたる聖地エルサレムは、異教徒の場合よりも勝つてブラバーサの心を痛めしめたのは、後世の僧侶輩が聖書に録されたる一々の場所や由緒なぞを捏造して、巡礼者の財布をねらつて居ることである。一寸見ると単純なる信仰の発露だらうと、神直日大直日に見直し聞直し宣り直すことも吾々に採つては出来得ない事も無いが、一般の信仰なき民衆やデモ基督教徒の眼には却つて不快に感ずるものたる事を恐れたのである。又後世の僧侶や信者がその内部的知識に空なるがため、外部に徴を求めむとして居る事の嘆ずべき一つの証拠では有るまいか。アヽ後世まで唯一の遺宝たる福音書の中に彼れ自身の姿を認め、それから霊泉を汲み得ることの出来ない信徒等の心の淋しさより、斯様な偶像を作り出してせめてもの慰安の料にして居るのでは有るまいか、なぞと又もや心の内にて長大嘆息をして居る。 マリヤ『聖師様、沢山の偶像的事物を御覧になつて非常に嘆息されて居る様で御座いますが、何時の世にも聖キリスト様は正しくは信仰され、又理解されなかつた様で御座います。キリスト様が迫害されなさつた当時と、今日とを問はず、世間から誤解されて居られます。そして普く世界から崇敬され玉ふ様になつた後の世は真のキリスト様では無くて人間が勝手にキリスト様に似せて作つた偶像を崇め、キリスト教そのものを信ずる代りに、それから流れ出づる美しい果実のみを夫と誤認して了ひ、終にキリスト教は肝心の精神を失ひ神の国の教である代りにそれは良き意味に於てではありますが、地上の幸福をもたらす手段と堕落して了つたので御座います。夫れゆゑ妾も此の聖地が偶像のみにて充たされ飾られ、真のキリスト様を認識し得ない事の矛盾を悲しむので御座います』 と悔やみながらマリヤは猶も市中を歩み続ける。 (大正一二・七・一一旧五・二八加藤明子録) |
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霊界物語 | 64_上_卯エルサレム物語1 | 11 公憤私憤 | 第一一章公憤私憤〔一六四〇〕 夏風に青葉のそよぐ橄欖山の頂上に三人のアラブが立つて雑談に耽つてゐる。キドロンの谷からは白い煙のやうな雲がしづしづと橄欖山上目がけて襲うて来る。ユダヤ人の計画したシオン大学の基礎工事は殆ど落成に近付き、樵夫や大工や手伝が幾十人となく忙しげに活動を為し居たり。 アラブはテク、トンク、ツーロと云ふ三人である。 テク『オイ、吾々は回々教のピユリタンとして朝夕忠実に神に仕へ、そして僅の賃金を貰つて異教徒の頤使に甘んじ、駱駝のやうにこき使はれてゐるのも、余り気が利かぬぢやないか。たうとうユダヤ人奴、パレスチナの本国を取返し、此聖地を吾物顔に振舞ひ、おれ達の仲間を見ると、丸で奴隷の様に虐待するだないか、朝から晩迄同じ様に働いて、ユダヤ人は一弗の俸給を貰ひ、おれ達は半弗よりくれやがらぬのだから……本当に亡国の民になりたくないものだなア』 ツーロ『何と云つても仕方がないサ。強い者の強い弱い者の弱い時節だからなア。ユダヤ人だつて、二千六百年が間、亡国の民として今迄苦んで来たのだから仕方がないよ。チツとは威張らしてやつてもよかろ。なア、トンク』 トンク『彼奴ア、世界統一を夢みてゐやがつたのだが、到頭時節が到来して神の選まれたパレスチナの本国を吾手に入れたのだから、何といつても世界の覇者だ。長い物に巻かれ……と云ふのだから、おれ達の身の安全を計らうと思へばマア辛抱するのだな。半分でも月給くれるのはまだしも得だよ、贅沢さへしなけりや、生活を続けて行けるのだからなア。さう不平を云ふものだないワ、何事も有難い有難いで暮さへすれば世の中は無事泰平だ。神様の為に働くと思へば何程月給が安くても待遇に差別があつても構はぬぢやないか。それを忍ぶのが回々教のピユリタンたる務めだからなア』 テク『何と云つても、おれは不平でたまらないワ。おれは自分一人の生活が何うだのかうだのと云つて、ソンナケチなことをボヤクのだない、アラブ一党の為に此差別的待遇を憤慨するのだ。不平にも色々の色合があつて、公憤と私憤がある。おれたちのは決して私憤ではない天下の公憤だよ』 ツーロ『何程公憤だと云つても、蚯蚓が土中でないてるよなもので、何の影響も及ぼすまい、おれ達だつてテクの言位には興奮し、大にアラブの為に気焔を吐く所迄は行かない。何事も時節だからなア』 テク『貴様はそれだから、何時迄もラクダの尻叩き計りして居らねばならぬのだ。公憤のないやうな人間は最早人間の資格がないのだ』 ツーロ『ヘン、汝のは余り公憤でもあるまいぢやないか。大体の問題が僅半弗の喰違ひから起つたのだらう、そんな所へ公憤を使つて貰つちや、公憤が落涙するだらう。抑も公憤とは社会とか団体とか、国家とか云ふ大問題に対して、自分の主張を充たすに到らない場合に起す意気の発動であつて、極めて愉快な面白い男性的気分を有したものでなくてはなるまい。自己の欲望を満たすに足りないと云つて、発動する所の感情の動作といふものは所謂私憤だ。そんな女性的気分に充たされたことを云ふと、ユダヤ人が聞いたら馬鹿にするぞ。国家社会を憂慮する念最も強しと雖も、時代は其意志を容れてくれず、感慨措く能はずして切腹する如き、或は社会を思ふの情急激にして刻苦勉励能く其用をなし、社会に尽す如き、時に自分が他人に冷笑されて大に憤慨する所あり、日夜自分の向上に勉励して、以て能く社会的立場を作る如き、此等は皆公憤に属するもので男らしい面白い不平だ。天の配剤其妙を得ず嬶の待遇其当を得ざるに憤激し、吾家を飛出し、青楼に上つて、酒と女で其不平を忘れむとする如き、又夕食の膳部がお粗末だといつて、膳を投げたり、茶碗を破壊する如き、或は自分のズボラを棚に上げ他人の賃金の多きに反感を抱き不平を起す如き、又は主人の乱倫に不平を起し、妻君が役者狂をする如き、又妻君の乱行に主人が自暴自棄となり、芸者買をなすが如き、或は世人に冷笑嘲罵されて不平のやり所なく、自宅へ帰つて、嬶の頭や窓硝子を叩きわるが如きは、皆私憤に属するものだ。それよりも怒るなら、ドツトはり込んで天地の怒りを発したら何うだ。汝のやうにホイト坊主が貰ひ酒をこぼしたやうに、あはれつぽい声を出して涙交りにボヤいてをるやうなことでどうならうかい。卑屈極まる行動だ。それだからおれ達は時勢を見るの明があるから、ここ暫くは隠忍してゐるのだ。何れ日出島から救世主が降臨になれば、上下運否のなき様桝かけ引ならして、おれ達迄も安心さして下さるのだからなア』 テク『実際そんな事があるだらうか。おれ達はキリストの再臨を、聖書に仍つて先祖代々から待ちあぐみ、到頭此聖地で年をよらして了つたのだが、これ丈の不公平の世の中を神様がなぜ公憤を起して、早く平等な愛の世界にして下さらぬのだらう……と私かに公憤をもらして居つたのだ』 トンク『アハヽヽヽ』 ツーロ『私かの公憤が聞いて呆れるワイ。併し乍ら天道様の不平といふのは、暴風を起し、豪雨を降らして大洪水とし、地の不平は地震を起して、山川草木を転覆させ、悪人を亡ぼし、大掃除をなさるのが、天地の公憤だ、汝の公憤とは大分違うだろ。窓硝子の一枚位壊いでみた所で、余り世界の改造も出来ぬぢやないか』 テク『一体此シオン大学とか云ふのは何をするのだらうな。又してもユダヤ人が頭をもちやげて、おれ達を圧迫する機関だあるまいか。それだとすれば、世界人類の為におれ達は節義を重んじ、仮令半日でも人足に使はれる訳には行かぬだないか、鷹は飢ても穂をつまぬといふからなア』 ツーロ『世界の所在哲学者を集めて神政成就の基礎を固めるのだ。此シオンの国は太陽の天に冲した真下に当る霊国だから、云はば時計の竜頭のやうなものだ。茲に於て世界を支配するのは最も天地の経綸上適当の場所だから、さう心配するには及ばないよ、おれ達だつて、やつぱり其恩恵に浴する時が来るのだから、辛抱せい、回々教だとか基督教だとか猶太教だとか、自分の心の中に障壁を設けてひがむから妙な不平が起るのだ。誠の神様は唯一柱よりないのだ。人間を相手にする必要はない。何事も皆神様の御経綸だからなア』 テク『それでも余りユダヤ人がイバリちらすだないか。それが俺は気にくはないのだ。チツタ不平も起らうかい』 ツーロ『ユダヤ人にも種々あつて、ポンポンぬかす奴ア、カスピンのコンマ以下の代物だよ。丁度おれ達と同じ様な境遇にゐる劣等人種が威張るのだ。あんな者を数に入れて不平をもらすやうな馬鹿があるかい。キリスト再臨の近付いた今日、そんな偏狭な心はスツカリ放擲して天空海濶日月と心を斉しうする襟度にならぬか。アラブの為にいい面汚しだぞ。所は世界の中心地、エルサレムの橄欖山上に身をおき乍ら不平を云ふ奴がどこにあるかい。のうトンク』 トンク『ウン、そらさうだ。人は何事も思ひ様が肝腎だ。おれ達のやうな労働者は労働者らしくして居つたらいいのだ、紳士の真似をせうたつて、到底出来ないからな、あの紳士だつて、元は俺達と同様労働者だつたのだ、精神的労働をやるか、肉体的労働をやるか丈の違ひだ。仮令アラブでも紳士紳商となればユダヤ人を頤で使ふことが出来るからなア』 テク『俺は紳士なんか大嫌ひだ。本物の紳士は今日の世の中には一人もない。皆我利々々紳士ばかりだよ。虚偽的生活に甘んじて紳士なんて云つてる奴の面を見るとなぐり度くなつてくるワ、先づ今日紳士といふ奴は第一、美装をなすこと、第二、大建造物に住居すること、第三、一箇所以上の別荘を有すること、第四、妾宅を設くる事、第五、物見遊山のしげきこと、第六、一切の労働を禁じ、茶一つ自分の手より汲まぬこと、第七、一日に何回となく宴会に列して、妖婦を枕頭に侍らし、妖婦の膝を枕に痛飲馬食して、其胃袋に差支へなき程度のものたること……此位のものだ。どこに紳士の本領があるかい』 ツーロ『そりや汝の云ふ紳士と、俺の云ふ紳士とは大に趣が違ふ。俺の云ふ紳士は……第一、人格の最も高きこと、第二、慈悲心に富めること、第三、礼儀を守ること、第四、政治欲を断ち社会の為に私財を擲つて貢献すること、第五、一夫一婦の制を遵奉すること、第六、沢山な住宅を有ち無料にて他人に自由に使用せしむること、第七、神を信じ、家内睦じく感謝の生活を送ること……マアこんなものだ。これを称して紳士といふのだ』 トンク『そんな紳士が今日の世の中に一人でも半分でもあるだらうかな』 ツーロ『ないから尊いのだ。ダイヤモンドだつて金だつて、ヨルダン河の砂礫のやうにそこらにごろついてあつてみよ、誰だつて貴重品扱ひはしてくれないよ。無いから尊いよ、太陽だつて一つだから皆が拝むのだよ。あの星みい、誰も一つホシイといふ奴がないだないか』 テク『オイ、ツーロ、ソンナツーロくせぬことをいふない。それよりも現代の紳士を標準として考へるのが適確だ、其紳士といふ奴を、俺達が労働総同盟でも起して、警告を与へ改良さしてやるのだなア。今日の紳士の資格を考へてみると、妾宅の数如何に仍つて、紳士仲間の等級に差別を生じ、宴会の度数と妖婦相識の数如何は人気に大なる関係を及ぼすのだ。これが今日の所謂紳士規定だ。何と不道理な見解だないか。今日の彼等が健康状態は日夜刻々に害されつつあるのだ。殊に性欲の随時随所でみたさるるその半面を考へて見よ。幾多の忌はしい病毒の為に睾丸内に発生する精虫は追々と減殺され、子孫は漸次減少するに至るの種を蒔いてゐるのだ。彼奴等の乱淫乱行は益々民力を減殺せしむるのみならず、家庭の妻女は其反動で、狂気的に異性の男子を求め、性欲の満足と反感の慰安に家を外にして飛出し、役者部屋へ這ひ込むのだ。紳士の家庭の妻女といふものに婦徳や貞節は薬にしたくも無い位だ。そして冷い深窓に、男も女も呻吟してゐるのだ。体質の貧弱なる彼奴等の子孫は世の中に立つて何事もなすの力なく、遂には子孫が滅亡するより途は無い。だと云つて之も自業自得だから仕方があるまい。今の内に彼奴等が目をさまし、共同の友や同族の友と共に働くの妙味を見出し、貧民と共に今迄の態度を改めて社会に活動する様にならなくちや、彼奴等も最早世の終りだ。いつ迄も世は持切りにはさせぬと、どこやらの神さまが仰有つたからなア』 トンク『オイ、俺達はまだ時間が来てゐないのに、此木の小蔭でさぼつてゐるのだから、ユダヤ人と同じよに月給をくれないといつて不平を云ふ訳に行かない。ユダヤ人は勤勉だから、仕事の能率が倍以上になるのだから、汝たちのやうに俸給の額のみで不平を云つたつて駄目だ。サア、チツト働かう。土木監督に見付つたら大変だぞ』 テク『エヽ仕方がないなア、食はぬが悲しさかい』 とスコツプを手に提げ乍ら、作事場の方へ厭相に進んで行く。日は漸く暮れ果て、労働終結のラツパが橄欖山の峰に轟いて来た。三人はスコツプをかたげた儘逸早く団子石のゴロゴロした坂路を嬉しさうに下つて行く。 数多の大工や手伝人足は、単縦陣を張つて黒蟻のやうに各家路を指して帰り行く。此等の連中は皆エルサレムの街に寄宿してゐる。ユダヤ人が大多数を占めてゐた。そこへ金剛杖をついて上つて来る一人の男があつた。これは日出島から遥々聖地へ、キリスト再臨の先駆としてやつて来た、ルートバハーの宣伝使ブラバーサであつた。ブラバーサは山上の最も見はらしよき地点に停立し、居柄輝く八日の月を眺め、 ブラバーサ『仰ぎ見れば、月は真空を稍過ぎて あたり輝く星のかずかず たまさかの月の夜なればこもりゐの たへ難くして登り来りぬ』 かく歌ひて、月の光にエルサレムの街を見おろし乍ら懐郷の念に駆られてゐる。そこへ慌だしく上り来たる一つの影がある。果して何人ならむか。 (大正一二・七・一二旧五・二九松村真澄録) |
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霊界物語 | 64_上_卯エルサレム物語1 | 14 荒武事 | 第一四章荒武事〔一六四三〕 アメリカンコロニーの奥の一室には、スバツフオードとマリヤが煙草盆を中において、ヒソビソ話に耽つてゐる。 スバッフォード『マリヤさま、あなた此頃は何となしにソハソハしてゐるぢやありませぬか。沈着な貴女に似ず、此頃の様子と云つたら、丸で恋に狂ふた野良犬のやうだと、団体員が言つてゐましたよ。チと心得て貰はないと、コロニーの統一が出来ないだありませぬか。私はかうして老人であるし、何時昇天するか知れませぬ。さうするとあなたが一人でコロニーを背負つて立たねばなりませぬ。噂に聞けば貴女は日出島から来てる聖師に大変恋慕してゐられるさうだが、あの方はお国に妻子があるといふことだ。妻子のある方に恋慕したつて、目的は達しませぬよ。今迄何程よい縁があつても、神政成就迄は夫は持たない、男に目はくれないと、独身生活を主張した貴女に似合はず、変だと皆の者がヒソビソ話してゐますよ。何程強いことを言ふてもヤハリ女といふ者は弱い者ですな。狐独の淋しみに堪へられないと見えますワイ。モウ少時の所だから、チツと辛抱をして貰はねばなりますまい。キツと貴女のお気に入る適当な夫が現はれて来るでせう。神様は最後迄忍ぶ者は救はるべし……と仰有るだありませぬか』 マリヤ『ハイ、妾は最後迄忍んで来たのですよ。モウ此上忍ぶ事は生命に関しますもの……そんなこと仰有るのは、チト残酷ですワ。妾は神様の御摂理によつて夫を定めましたから、どうぞ御承諾を願ひたう御座います』 スバッフォード『さうすると、人の噂といふものはバカにならぬものだなア。そして其夫といふのはどこの何と云ふ方だなア、ヨモヤ、妻子のある日出島の聖師ではあろまいなア』 マリヤ『あの……妾は……聖師……否々生死を共にせうと約したお方が御座います。併し乍らネームを告げる丈は少時猶予を願ひたう御座います』 スバッフォード『心機一転も甚だしいぢやありませぬか。お前さまはブラバーサ様に恋してゐるのだらう。何と云つても其顔に現はれてゐる、年寄の目で睨んだら、メツタに間違ひはありますまい。左様なことをなさつては、アメリカンコロニーも破滅に陥らねばなるまい。あゝ何とした悪魔が魅入れたものだらうなア』 マリヤ『ソリヤ何を仰有います。女が夫をもてないと云ふ道理が何処に御座いませう。妾も最早三十、いい加減に夫を有たなくちや御子生みの御神業が勤まらぬぢやありませぬか、グヅグヅしてゐると、歳月は妾をすてて省みず、年がよつてから、何程夫をあさつてみた所で、乞食だつて来てくれは致しませぬワ。花も半開の中が値打があるのです。妾の花は最早満開、一つ風が吹いても散らうとしてる所です。散らない中に夫を持たなくちや人生の本分を、何うして尽すことが出来ませう』 スバッフォード『モウ永いことぢやない。やがてキリストの再臨があるのだから、そこ迄待つても余りおそくはあらうまい。あのサロメさまを御覧なさい。貴族の家に生れ、どんな夫と添はうとママな身を持ち乍ら、キリストの再臨を待ちかね、独身生活をつづけてゐられるだありませぬか』 マリヤ『あの方は再臨のキリストを理想の夫として空想を画いてをるのですから、別物ですよ。妾は左様な野心は御座いませぬから、相当の夫を有たうと思ふので御座います。そんな開けないことを言はずに、コロニーの連中に、あなたから一口、神界の都合に依つて、斯う斯うだと発表して下さいませ。さうすれば、団体員は仏が法とも小言を云ふ者は御座いますまい』 スバッフォード『コレ、マリヤさま、お前さまも天の選民たるユダヤ人の女だないか。なぜ今となつて、モウ一息といふ所の辛抱が出来ないのですか』 マリヤ『ハイ、之から七十日が間辛抱致します。七十日経ちさへすれば、仮令貴師が何と仰有らうとも、大神様がお姿を現はしてお叱り遊ばさう共、最早私の意志の自由に致す考へで御座います。どうぞ広き心に見直して御承諾を願ひたいもので御座いますワ』 スバッフォード『七十日?ソレヤ又何うしてさう云ふ日限を切つたのだなア、人の噂も七十五日と聞いてゐるが、七十日とは何か意味があり相だ。コレ、マリヤさま、七十日の因縁を聞かして下さい』 マリヤ『百日の行の上りに夫婦になつてやらうと仰有いました。それで七十日と云つたので御座います』 スバッフォード『ハヽヽヽヽ、てつきり、日出島の聖師と約束をしたのだなア。いかにも聖師は百日の行をすると仰有つたが已に三十日を経過した。併し乍ら聖師ともあらう者が、そんなことを約束さるる道理が……ないがなア、コレ、マリヤさま、お前だまされてゐるのだなからうな』 マリヤ『決して決して、大磐石ですよ。妾も女のはしくれ、男に欺かれるやうなヘマは致しませぬ』 スバッフォード『ハーテナ、合点の行かぬことを云ふぢやないか。貴女は何うかしてゐますね』 マリヤ『何程同化し難きユダヤ人でも、女と男ですもの、同化もしませうかい。どうぞ此結婚問題ばかりは本人の自由意志に任して下さいませ。貴師のやうに年が老つて血も情も乾き切つた、聖きお方と、青春の血に燃ゆる若い女とは、同日に語る訳には行きませぬからねえ』 スバッフォード『アハヽヽヽ、こなひだから余り陽気が悪うて、空気の流通が悪く、蒸すので、年老の私も頭がポカポカとして来た。大方お前は精神に異状を来して居るのだあるまいかな。さうで無ければ鬼の霊にでも憑依されたのだらう。此頃ゲツセマネの園の近辺に悪い狐がウロつくといふことだが、其奴の霊にでも憑依されたのであるまいかな。これマリヤさまチツと用心なさいよ。キツと狐の霊ですよ。コンコンさまにつままれたのですよ』 マリヤ『ホヽヽヽヽ、信心堅固な妾、何うしてさやうな者につままれませうか。ケツでもコンでも構ひませぬ、妾はケツコンさへすれば可いのですもの、ホヽヽヽヽ』 スバッフォード『アヽ、何となく怪体な風が吹いて来たぞ。あゝ一つ窓でも開けて気を晴らさうかな』 マリヤ『ホヽヽヽヽ、あのスバツフオードさまの仰有ることワイノ。窓を開けたつて、ついてゐない狐はメツタに飛出す気遣はありませぬよ』 スバッフォード『丸で春情期の犬の様だなア』 と小声に呟く。マリヤはスバツフオードに向ひ、 マリヤ『モシ老師様、妾は之から聖地の巡拝に行つて参ります。どうぞお留守を願ひますよ。前以て申しておきますが、妾も女です。七十日の間メツタにブラバーサ様のホテルを訪ねるやうなことは致しませぬから、御安心下さいませ』 と予防線を張り早くも門口に飛出した。 橄欖山の中腹、橄欖樹の下に腰打ちかけて雑談に耽つてゐる三人のアラブがあつた。各手にスコツプを持ち乍ら、木の株に腰打かけ、 テク『オイ、此頃、アメリカンコロニーのマリヤといふ女、チツと様子が変だないか、目も何も釣上つてゐるやうだなア』 ツーロ『彼奴ア有名な独身生活の女だが、ヤツパリ性欲は押へ切れないとみえて、橄欖山へ参拝を標榜し、男をあさつてゐるのかも知れないよ。何うだ一つ彼奴を甘く抱き込んで、俺達の者にしたら面白からうぞ。アラブアラブとユダヤの奴に軽蔑されてゐるのだから、ユダヤ人のカンカンを甘くおとさうものなら、それこそアラブ全体の面目を輝かすといふものだ。やがて来る時分だから、何とか一つ工夫をせうだないか』 トンク『ソリヤ面白からう、併し乍ら三人の男に一人の女、此奴ア紛擾の種をまくやうなものだから、先づ此計画は中止した方が安全かも知れないよ。ラマ教ならば多夫一妻でよからうが、吾々はそんなことしたら天則違反で神様から罰せられるからなア』 テク『さう心配するな、俺達のやうな色の黒い、唇の厚い醜男人種が、何程あせつたつて、一瞥も投げてくれないのは当然だ。先づ相手にならぬ方が安全かも知れないよ』 ツーロ『気の弱いことを云ふな、断じて行へば鬼神も之をさく。躊躇逡巡するは男子の執らざる所だ。今にもやつて来よつたら、大勇猛心を発揮して獅子奮迅の活動をやるのだ。一人は足をさらへ、一人は猿轡をはませ、一人はかついでキドロンの谷底へでもつれて行き、厭応云はせず此方のものにするのだ』 テク『オイ、汝は酒の気のある時ばかり、そんな強いことを言ひやがるが、酔のさめた時何うだい、其元気をどこ迄も持続することが出来れば、おれだつて汝と同盟して決行せないことはないが、何分弱味噌だから、先が案じられて、する気にもなれないワ。のうトンク、さうだないか』 トンク『ナアニ成敗は時の運だ。一つ肝玉をおつぽり出して決行と出かけやう。ゴテゴテいつたらこの聖地を立去り、アラビヤの本国へ帰れば可いだないか。聖地に居らなくても救はれる者は救はれるのだからなア、俺達がマリヤを何々せうといふのは決して肉欲の為だない。大にアラブの気前を見せる為だ。言はば四千万のアラブ人を代表してのアラブ仕事だから、大したものだぞ。親譲りのハンドルが利かぬとこ迄こき使はれて、僅に半弗より貰はれぬのだからバカげて仕方がないワ。婦人国有の議論さへ、独逸では起つたでないか。何、かまふものかい、三人同盟でマリヤを国有にせうぢやないか、サア斯うきまつた以上は、速に決行と出かけやう』 テク『どこへ出かけやうと云ふのだい。コロニーには百人ばかりの団体がゐるだないか』 トンク『そんな所へ行かなくても、キツと此処へやつて来るのだ』 と云つてゐる。そこへソンナこととは夢にも知らぬマリヤは細い杖を力に、九十九折の坂をソロソロと登つて来た。三人は互に目くばせし、物をも言はず、マリヤの体に喰ひつき、担ぎ出した。マリヤは悲鳴を上げて、「人殺し人殺し」と叫ぶ。斯かる折しもあたりの木魂を響かして宣伝歌の声聞え来たりぬ。 ブラバーサ『神が表に現はれて善と悪とを立分ける 時世時節は近づきぬオレゴン星座を立はなれ ウヅの聖地に雲に乗り降らせ玉ふキリストの 御声は近く聞えけり日出の島に日の神の 現はれまして中天に光り輝き進むごと 暗夜も漸く開け近く夜の守護は忽ちに 光明世界と進み行くあゝ惟神々々 神は吾等と共にあり自転倒島を立出でて 万里の波濤を打渡り音に名高きエルサレム 神の定めし聖場に下り来りし吾こそは 救ひの神の先走り名さへ目出度きブラバーサ いかなる神の経綸かユダヤの女に恋慕され 進退維に谷まりて首もまはらぬ破目となり 朝な夕なに橄欖の山に詣でて禍を 除かむ為に登り行く国治立大御神 神素盞嗚大御神何卒吾身の災を 厳と瑞との御光に救はせ玉へ惟神 神の御前に願ぎまつる朝日は照る共曇るとも 月は盈つとも虧くる共仮令大地は沈むとも 神に任せし此体仮令野の末山の奥 屍をさらす苦みも何か厭はむ道の為 国に残せし妻や子はいかに此世を送るらむ 聖地にいます師の君のあらはれませる日は何時ぞ 神の集まるエルサレム聖き都と聞き乍ら 何とはなしに村肝の心淋しくなりにけり 思へば思へば人の身の果敢なき弱き有様を 今目のあたり悟りけり恵ませ玉へ三五の 皇大神の御前に畏み畏み願ぎまつる』 此声に驚いて三人はマリヤを其場に投棄て、雲を霞と逃げ去りにけり。 マリヤは余りの驚きと大地に投げられたはずみに気絶して了ひ、坂路に大の字となつてふん伸びてゐる。ブラバーサは魔法瓶から清水を出し、倒れたる女の顔に注ぎかけた。よくよく見れば自分を恋ひ慕ふてゐるマリヤであつた。ブラバーサはマリヤの気のついたのを幸ひ、顔をかくして一生懸命にかけ出す。マリヤは後姿を見て、それと悟つたか、苦痛を忘れ、尻端折つて夜叉の如く後を追つかけ進み行く。ブラバーサは林の繁みに身をかくしマリヤの通り過ぎたあとで、ホツと息をつぎ、両手を合せ、 ブラバーサ『あゝ惟神霊幸倍坐世』 (大正一二・七・一二旧五・二九松村真澄録) |
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霊界物語 | 64_上_卯エルサレム物語1 | 19 祭誤 | 第一九章祭誤〔一六四八〕 高城山の峰つづき、小北山の松林を切り開いて沢山な小宮やチヤーチを建てたルートバハーの脱走教があつた。ここの主人を虎嶋久之助と云ひ、女房は虎嶋寅子と云ふ。生れつき自我心の強い女であつたが変性男子の系統と云ふのを奇貨としてユラリ教と云ふ変則的なる教団をたてユラリ彦命を祀つて、盛んにルートバハーの教主ウヅンバラチヤンダーに反抗的態度をとつてゐる。そして自分は底津岩根の大弥勒、日の出神と自称し、朝から晩まで皺枯声を出して濁つた言霊で四辺の空気を灰色に染て居る。ここへ集る信徒の中には随分色々な変り者があつて、中にも最も寅子の信任を得たのは、善も悪きも難波江の菖蒲のお花と云ふ、あまり色の白くない背の低い横太い年増婆アさまである。そして寅子の最も信任してゐるのは守宮別と云ふ海軍の士官上りの外国語をよく囀る男であつた。寅子は日の出神の生宮と自称し乍ら此守宮別と共に宅を外にして曲霊軍の襷を掛け、日の出島の東西南北を隈なく巡教し、軍艦布教までやつてヤンチヤ婆アさまの名を売つた、したたか者である。守宮別は日の出神と腹を合せ如何にしても変性女子のウヅンバラチヤンダーを社会の廃物となし、自分等がとつて代らむと苦心の結果、守宮別は四方八方に反対運動を開始し、終には六六六の獣を使つてウヅンバラチヤンダーの肉体の自由まで奪つた剛の者である。 目の上の瘤として居た人物を、うまく圧倒した上は、もはや天下に恐るべきものなしと、菖蒲のお花を筆頭に守宮別、曲彦、木戸口、お松等の連中と謀り小北山に拝殿を建て、一時も早く願望成就致しますやうと祈願をこらして居た。さうして地の高天原へ乗込んで一切の教権を握らむと聖地の古い役員をたらし込み、九分九厘と云ふ所へウヅンバラチヤンダーが帰つて来たので、肝をつぶしホウボウの態にて再び小北山へ逃げ帰り守宮別は海外に逃げ出し、後に寅子姫、お花、曲彦の三人は首を鳩めて第二の策戦計画にとりかかつた。先づ第一に日の出神の筆先を書いてルートバハーの信者を籠絡し、変性女子の勢力を失墜せむものと難波の里の高山某に軍用金を寄附させ、日出島全体の神社仏閣を巡回し、身魂調べと称し、口碑伝説を探つていろいろの因縁をつけ、筆先を作つて誠しやかに少数の信徒を誤魔かして居る。 今日は春季大祭の為五六十人の信徒が集つて来た。祭典は無事に済んで信者は各家に帰つた。あとには曲彦、寅子、菖蒲のお花、久之助、高山彦等が首を鳩めて協議を凝して居る。曲彦は先づ第一に口を開いて、 曲彦『皆さま、お神徳によりまして春季大祭も無事終了致し、さしもに広き霊場も立錐の余地なき迄に信者が集まらず、却て、込みあはずお神徳を頂きました。之も日頃熱心に御布教して下さる日の出神様を初め竜宮の乙姫様の御活動の結果と有難く感謝致します。就いては御存じの通り、吾々がかねて計画してゐた玉照彦、玉照姫の御結婚もたうとう此世を乱す悪神の憑つた瑞の霊の為に挙行されて了ひ、本当に苦辛した甲斐もなく誠にお目出度う御座いませぬわい。貴方はいつもいつも此結婚は変性女子には指一本さえさせぬ、此日の出神が許して天晴れ結婚をさし、ルートバハーの教を立直すと仰有いましたが、一体どうなつたので御座います』 寅子は、 虎嶋寅子『ソレハ神界の都合によつてお仕組を変へたのだよ。玉照彦、玉照姫もたうとう変性女子の悪霊に感染して了ひ、水晶魂が泥魂になりかけました。さあ之から吾々の正念場だ。グヅグヅしてゐては駄目ですよ。もはや期待してゐた玉照彦様、玉照姫様も駄目だから此日の出神の生宮が、もう一働きやらねば到底神政成就は出来ませぬぞや。神様は控えは何程でもあるぞよ、肝腎の事は系統にさしてあるぞよとお筆に出してゐられませうがな。その系統は誰の事だと思ひますか。金勝要神の身魂もサツパリ駄目だし、日の出神が居らなくては、もう此三千世界の立替立直しは出来ますまい。艮金神、坤金神、金勝要神、日の出神、四魂揃ふて御用を致さすぞよ、とお筆に出てゐるでせう。艮金神の御魂はもはや御昇天遊ばし、坤金神の生宮は悪霊にワヤにされて了ひ、金勝要神は我の強い神で役員達に祭り込まれて慢心致し、到底神政成就どころか、ルートバハーの維持も出来ませぬ。四魂の中、三魂迄役に立たねば、九分九厘の処で一厘の仕組でクレンと覆すとお筆に出てゐるでせう。それだから此の日の出神が一厘のところで掌をかへすのですよ。宜しいかな。取違ひを致しなさるなや』 曲彦『それほど変性女子の霊が曇つとるのなら、何故大祭毎に頼みさがして、変性女子に来て貰ふのですか。チツと矛盾ぢやありませぬか』 寅子『エー、分らぬ人ぢやな。変性女子さへ詣らしておけばルートバハーの信者が「ヤツパリ小北山の神殿は因縁があるに違ひない。あれだけ悪く云はれても変性女子が頭を下げに行くから、矢張偉い神様だ」と思はせる……一厘の仕組をしてるのだよ。神の仕組は人間に分りませぬよ。神謀鬼策の仕組を遊ばすのが日の出神の御神策だよ』 曲彦『ヤア、それで貴女の権謀術数、悪にかけたら抜目のない、やり方が分りましたよ。ヘン糞面白くもない』 とあとは小声で呟く。 寅子『ヘン、措いて下され、私が悪に見えますかな。神様のお仕組は悪に見えて善を遊ばすのだよ。何もかも昔からの根本の因縁を十万億土のドン底まで行つて調べて来た日の出神の生宮、何程お前さまは賢うても軍人上りぢやないか。軍人が神界の事が分りますかい。お前さまは早く女子の留守の中に拝殿を建て、事務所を建て、そして費用は何ぼでも出すと云ひ乍ら愈となれば、スツタモンダと云つて一円の金も出さぬぢやないか、そんな事でゴテゴテ云ふ資格がありますかい。スツ込んで居りなさい』 曲彦『ヤア、どうも日の出神様の御威勢には楯つく事は出来ませぬわい。何と云つても一寸先の見えぬ人民ですから、何と口答へする訳にも行かず、マア時節を待ちませう』 寅子『あ、それが宜いそれが宜い、何事も日の出神の生宮の申す通りに致さねば神界の仕組がおくれて仕方がない。これ久之助さま、お前さまも私のハズバンドなら、少しシツカリしなさらぬかい。菖蒲さまも何して御座る。曲彦にアンナ事を云はして黙つてる事がありますかいな』 菖蒲のお花『私も間がな隙がな、曲彦さまに御意見を申して居りますが、何と云つても若い人だから到底婆の云ふ事は聞いて下さいませぬ。然し乍ら寅子姫さま、私は一つ妙な事を聞きましたが、それが本当とすれば、かうしてグヅグヅしてゐる訳にも行きますまい』 寅子『お前さまの妙な事と云ふのは一体ドンナ事かいな。差支なくば云つて下さい。此方にも考へがありますから』 お花『それなら申しませうが、変性男子のお筆に西と東にお宮を建てて神がうつりて守護を致すぞよと出て居りませう。東と西のお宮とは、あなた一体どこの事だと思つて居りますか』 寅子『オツホヽヽヽヽ、お花さま、お前は何を恍けてゐるのだい。東のお宮といふのは小北山の神殿ぢやないか。人間の初り、五穀の初りは所謂此小北山ですよ。そして西のお宮と云ふのは聖地の桶伏山ぢやありませぬか。桶伏山の神殿はあの通り叩きつぶされましたが、東のお宮は旭日昇天の勢ひで誰一人指一本支へるものがないぢやありませぬか。これを見ても神徳があるかないか分るぢやありませぬか。ルートバハーの信者は馬鹿だから変性女子の為に騙され、壊された宮の跡へ集まつて、 壊たれる宮の為に 過ぎ去りし偉大のために 吾等は地に伏して泣く あゝ惟神霊幸倍坐世 なぞと、憐れつぽい声を出して毎日日日吠面かわいてゐるぢやありませぬか。それを見ても神様が居られるか、居られないか分るでせう。善の道の分るのはおそいと神は云はれますが、今は此小北山はルートバハーの信者からは馬鹿にされて居りますが、今に金色燦爛たるお宮が建つて桶伏山尻でも喰へと云ふ様になるのですよ。それだからお前さま等しつかりなされと云ふのですよ。イツヒヽヽヽヽ』 お花『寅子さま、西と東にお宮を建てると云ふのはチツと見当違ひぢやありませぬか。私は桶伏山の御神殿こそ東のお宮と思ひます。神様の御仕組はそんな小さいものぢやありますまい』 寅子『ホヽヽヽヽ、日輪様のおでましになるのが東、お隠れになる方を西と云ふ事が分つてるぢやありませぬか。小北山が西ぢやと思ひますか。貴女も分らぬ方だな。お前も桶伏山の山麓に蟄居してゐたので、女子の悪霊に憑られてソロソロ恍けかけましたね。ウツフヽヽヽヽ』 斯かる所へ洋服姿の守宮別が忙がしげに帰り来たるを見て一同は嬉しさうに、 一同『ヤア、守宮別さま、御苦労で御座いました。外国のお仕組はどうで御座りましたな。定めし日の出神様のお仕組も行渡つて居るでせうな』 守宮別『兎も角お酒を一杯出して下さい。お神酒を頂きもつて、守宮別がゆつくり物語りを致しませう』 (大正一二・七・一三旧五・三〇北村隆光録) |
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霊界物語 | 64_下_卯エルサレム物語2 | 05 横恋慕 | 第五章横恋慕〔一八一一〕 ヤクの後をおつかけて夜叉の如くにお寅は霊城をとび出して終つた。トンク、テク、ツーロの三人はお寅の後をおひ、捜索がてらに三人三方へ手分けをして市中の大路小路をかけ廻ることとなつた。後にはお花、守宮別の両人が丸い卓を囲んで籐椅子に尻をかけ乍ら、ヤヽ縛し無言の儘、顔を見合して居た。 守宮別は大欠伸をし乍ら、 守宮別『お花さま』 と云ふ。 お花『何ぞ御用ですか』 守宮別『アーアン、お花さま』 お花『何ですか』 守宮別『アーアン、お花さまツたら……』 お花『何ですいな、アタ辛気臭い。御用があるなら云つて下さいな』 守宮別『アーアン、大概分りさうなものだな、ホントニホントニ』 お花『生宮さまが居られないので淋しいのですか、嘸御退屈でせう』 守宮別『アーアン、これお花さま、分りませぬかい』 お花『分りませぬな』 守宮別『ヘー、私がアーアンと云へば大抵きまつてるでせう』 お花『いつも守宮別さまが、アーアンと云つて空むいて欠伸をされたが最後、クレリと気が変つて今迄やつて居た仕事も打ちやり、漂然として何処かへ行つて了ひ、いつもお寅さまの気をもますが、お花では一向気をもみませぬで仕方がありませぬね』 守宮別『アーア、サ……ケ……』 お花『ホヽヽヽヽ酒が欲しいと仰有るのか、お安い御用。然し乍ら、お寅さまの留守中にお酒でも、飲まさうものなら、どれ丈怒られるか知れませぬ。それでなくても、アンナに私に毒ついて行かれたのですからマア暫く辛抱しなさい。やがて帰られるでせうから』 守宮別『イヤ、もうお寅さまの自我心の強いこと、無茶理窟をこねる事、疑惑心の深い事には愛憎が尽きました。もうお寅さまは今日限り見限るつもりです』 お花『ヘヽン、うまい事仰有いますわい。寝ては夢、起きては現、一秒間も忘れた事がない癖に、よう、ソンナ白々しい事が、仰有られますわい。守宮別さまも余程の苦労人だな。○○の道にかけては千軍万馬の劫を経た、このお花も三舎を避けて降服致しますわ』 守宮別『いや、全く、いやになりました。あのアーンの欠伸を境界線として、お寅さまの事はフツツリと思ひ切りました。それよりも純真な、正直な都育ちの婦人が欲しいものですわ。チト位年はとつてゐても第一、膚が違ひますからな』 お花『これ守宮別さま、そんな冗談を云はれますと、お寅さまに又鼻を捻られますよ』 守宮別『もうお寅さまだつて縁をきつた以上は赤の他人だ。鼻でも捻やうものなら、ダマツて居ませぬ。私も男ですもの、直様エルサレム署へ訴へてやりますからね』 お花『本当に守宮別さま、いやになつたのですか、嘘でせう』 守宮別『何、真剣ですよ。乙姫さまの前ですもの、どうして嘘が云へませうか』 お花『貴方の仰有る事が本当なら私の腹も打明けますが、此お花も今日と云ふ今日は、お寅さまにスツカリ愛憎が尽きたのですよ。これから国許に帰らうかと思案してゐますの。が然し、長途の旅、一人帰る訳にも行かず、外国人との話も出来ず困つてゐますの。貴方のやうな英語の出来る方があれば、一緒にお伴さして貰へば結構ですが、世の中は思ふやうにはならぬものでしてな』 守宮別『お花さま、帰らうと云つたつて、旅費が要りますが一体いくら許り持つてゐますか』 お花『ハイ、娘が家を抵当に入れて金を拵へたと云つて、一万両許り送つて来ましたので、当地の郵便局に預けて置きましたから旅費には困りますまい』 守宮別は、お花が一万両持つてゐるのを聞いて、猫のやうに喉をならし、目を細うし…… 守宮別『ヤ、此奴は豪気だ。二千両もあれば旅費には沢山だ。何とかしてその他の金を酒の飲み代にすれば一年や二年は大丈夫だ。先づお花の歓心を得るのが上分別だ、お寅に丁度毒づかれて居る処だから、ここでお寅との師弟関係を絶たせ、自分が世話になつたり世話したりする方が、よつぽどぼろい』 とニタリと笑ひ乍ら、 守宮別『お花さま、一万両の金があれば今かへるのは惜いぢやありませぬか、どうです、その金で一旗上げようぢやありませぬか。何程お寅さまを大将に仰いで、シヤチになつた処であの脱線振と云ひ、かう人気が悪うなつちや、駄目でせう。竜宮の乙姫さまは今迄欲なお方で宝を貯へてゐられたさうだが、時節参りて艮の金神さまが三千世界の太柱とおなり遊ばすについて、第一に宝を投げ出し、改心の標本をお見せになつたお方でせう。お道のため一万両のお金をオツ放り出す考へはありませぬかな。何程お寅さまに肩入れした処で、塩を淵に投入れるやうなものですよ。何程お金を費しても無駄に使つては何にもなりませぬからな』 お花『さうだと云つて確な保証を握つておかねば、此大切なお金を貴方のお間に合わせる訳には行きませぬ。お寅さまとは又特別な御関係がおありなさるのだもの』 守宮別『いや、もう愛憎がつきました。あのアーアの欠伸を境界線としてプツツリ思ひ切つたのですよ。お寅さまがお花さまだつたらなアと、このやうに思つた事は幾度あつたか知れませぬわい』 お花『ホヽヽヽ、あの守宮別さまのお上手なこと、流石の女殺、うまい事仰有いますわい、うつかり、のらうものなら、それこそ谷底へおとされて、身の破滅に会ふかも知れませぬよ。 「きれたきれたは世間の噂 水に浮草根は切れぬ」 「きれて終へば他人ぢやけれど 人が悪う云や腹が立つ」 とか云ふ歌の通り、何程うまい事仰有つても、そんな、あまい口には乗ること、出来ませぬわい、ホヽヽヽヽ』 守宮別『何、お花さま、本真剣ですよ。私は、かうして十年許りもお寅さまに辛抱してついて来ましたが、到底やりきれませぬから、もう思ひ切りました。これが違ひましたら一つよりない首を十でも二十でも上げますわ』 お花『ホヽヽヽヽ、お前さまの首を貰つたつて、首祭する訳にも行かず、莨入の根付には大きすぎるし、枕には堅すぎるし、何にもなりませぬわい。それよりお前さまの誠の魂を頂き度いものですな』 守宮別『いかにも、魂あげませう。サア、どこからなりと、ゑぐつて、とつて下さい』 と胸をつき出す、 お花『嘘ぢや厶いませぬか』 守宮別『嘘と思はれるなら此短刀で私の胸を切り裂いて生肝をとつて下さい。それが第一証拠ですわい。男子の一言は金鉄より堅いですよ』 お花『いや分りました、心底見届けました。いかにも御立派な御精神、ソンナラ……あの……それ……どこ迄も私と○○を締結して下さるでせうね』 守宮別『頭の先から爪の先までお花さまに献げました、焚いて食ふなと焼いて喰ふなと御勝手に御使用下さいませ。この守宮別は唯々諾々として乙姫さまには維命これ従ふ迄です。絶対服従を誓ひます。その代り酒丈は飲まして下さるでせうな』 お花『そらさうですとも、お互さまですわ、私だつて、貴方に要求すべき事があるのですもの』 守宮別『とかく浮世は色と酒……何程雪隠の水つきだ、糞浮きだと世間の人が云はうとも、惚た私の目から見れば十七八のお花さまですわ。私は肉体に惚れたのぢやありませぬ。お花さまの精霊が第一天国の天人として、華やかな姿でゐらつしやるのを、霊眼を通して見て心から惚れたのですもの。アヽお花さまの事を思ふて心臓の鼓動が烈しくなり、息がつまる様になつて来た。何と恋と云ふものは曲物だな。何で、こんな変な気になるのだらう』 お花『恋は神聖だと云ふぢやありませぬか。世の中は凡て理智許りでは行きませぬ、情がなければ此世の中は殺風景なものですよ』 守宮別『貴方、随分恋愛問題には徹底してゐますね、私感服しましたよ』 お花『そら、さうですとも。数十年間、恋の巷に育ち、数多の男女を操つて来た経験がありますから、恋愛問題にかけては本家本元ですわ。親が子を慕ひ、子が親に会ひたいとあこがれるのが恋です。又一切のものを可愛がるのが愛です。恋愛と云ふものは一人対一人の関係で、云はば極めて狭隘な集中的なものですわ。どうか守宮別さま、恋と愛とをかねて私に集中して下さい。さうすれば私も貴方に対し愛と恋とを集中します。ここに於て初めて恋愛の神聖が保たれるのですからな。かりにもお寅さまの事を思つたら、恋愛の集中点が狂ひ恋愛が千里先に遁走しますよ』 守宮別『成程、徹底したものだ、お花さまのお話を聞けば聞く程、益々集中的となつて来ますよ。仮令岩石が流れて空気球が沈んでも貴女の事は忘れませぬわ』 お花『くどいやうですが、お寅さまの事は忘れるでせうな』 守宮別『勿論です。今後は顔会はしても物も云ひませぬから安心して下さい』 お花『間違ひありませぬな。もし違つたら貴方の喉首を喰ひ切りますが御承知ですか』 守宮別『恋愛を味はふと思へば生命がけだな。イヤ心得ました、承知しました』 お花『ここ迄話がまとまつた以上は、善は急げですから一寸心祝に媒介人はないけど、竜宮の乙姫さまと大広木正宗さまを仲介人にし、守宮別さまお花さまの肉体の結婚式を挙げようぢやありませぬか』 守宮別『宜しい、早速準備して下さい』 お花は目を細くし乍ら、 お花『ハイ』 と一言襷をかけ、酒の燗にとりかかつた。日の出の掛軸の前でキチンと坐り祝言の盃をやつてゐると、そこへ足音荒々しくお寅が帰り来たり、 お寅『マアーマアーマアー、お二人さま、お楽しみ、お羨山吹さま。これ、お花さま、その態は何ぢやいな。人の留守中に人の男をとらまへて酒を飲むとはあまりぢやないか。ここには禁酒禁煙の制札がかけてあるのを何と心得てゐますか。内らから規則破りをしてもいいのですか』 お花は平然として落つき払ひ、 お花『お寅さま、お構ひ御無用です。私は竜宮の乙姫でもなければ貴女のお弟子でもありませぬ。貴女の方からキツパリとお暇を下さつたのだから、もはや貴女とは路傍相会ふ人と同じく赤の他人です。それ故お前さまの意見を聞く必要もなければ遠慮する必要も厶いませぬ。ラブ・イズ・ベストを実行して、只今守宮別さまと二世三世は愚、億万歳の後までも夫婦約束の祝言の盃をした所で厶いますよ。チツト許りお気がもめるか知れませぬが御免下さいませ、ホヽヽヽヽ』 お寅は満面朱をそそぎ半狂乱の如くなつて、 お寅『これ守宮別さま、お前は、私との約束を反古になさるのかい、サア約束通り命を貰ひませう』 守宮別『ハツハヽヽヽ、お寅さま以上に愛する女が出来たものだから、愛の深い方へ鞍替したのですよ。それが恋愛の精神ですからな。どうか今迄の悪縁と諦めて下さい。酒を一杯のんでもゴテゴテ云はれるやうな不親切な女房では、やりきれませぬからな』 お寅『こりやお花のド倒しもの、人の男を寝とりよつて思ひ知つたがよからうぞ』 と云ふより早く、そこにあつた角火鉢を頭上高く振り上げ、お花と守宮別との真中を目がけて投げつけた。灰は濛々と立上り咫尺暗澹となつた。お寅はあまりの腹立しさに気も狂乱しドツと尻餅をついたまま、息がつまり口をアングリ、鮒が泥に酔ふたやうに上唇、下唇をパクパクかち合せてゐる、その隙に乗じ守宮別はお花と共に永居は恐れと、細い路地を潜つて橄欖山の方面さして逃げて行く。 (大正一四・八・一九旧六・三〇於由良北村隆光録) |
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霊界物語 | 64_下_卯エルサレム物語2 | 07 虎角 | 第七章虎角〔一八一三〕 守宮別お花の二人は奥の一間で、酒汲みかはし乍ら、意茶付き喧嘩をやつて居る所へ、トンク、テク両人は盗人猫が不在の家を覗くやうなスタイルで、ヌーツと顔をつき出した。お花は早くも二人の姿を見てとり、 お花『ヤ、お前は、お寅さまと一所に霊城へやつて来たトンク、テクの両人ぢやないかい、何ぞ御用があるのかな』 トンクは右の手で額を二つ三つ叩き乍ら、 トンク『イヤ、どうも、誠に済みませぬ。些と許り酒代が頂戴致したいので、……』 お花『お前はお寅さまの御家来ぢやないか、妾に些とも関係はありませぬよ、酒代が欲しけら、お寅さまに貰つて来なさい、ノコノコと失礼な、人の座敷へ入つて来て、盗猫のやうに、黒ん坊のクセに何んぢやいな』 トンク『お前さまに直接の関係はありますまいが、ここに厶る守宮別さまには深い深い関係があるのです。……これはこれは守宮別様、大変お楽みの所を、不粋な黒ん坊が二人もやつて来まして、嘸御迷惑でも厶いませうが、チツと許り口薬が頂戴致したいので厶いますよ』 お花『何、口薬が欲しいと云ふのかい、守宮別さまの暗い影でも掴んだといふのかい』 トンク『ハツハヽヽヽ、白々しい事を仰有いますな。大変なローマンスを見届けてあればこそ、かうして口薬を頂戴に参つたのです。ゴテゴテ云はずに、ザツと二十円、二人で〆て四十円、アツサリと下さいな、安いものでせう』 お花は之を聞いて、守宮別がお寅以外に女でも拵へて居るのではあるまいか。そこを此トンクに見つけられて、弱点を握られてるのだらう、何と気の多い男だなア。……と稍嫉妬心が起り出し、 お花『これ、守宮別さま、お前さまは又しても又しても箸まめな事をして厶るのだろ、サ、トンクさまとやら、あつさりと云ふて下さい、さうすりや、お金は二十円はさておいて、五十円でも百円でも上げます』 守宮別『コレお花、コンナ者に、さう金をやる必要がどこにある。相手にしなさるな』 お花『そらさうでせう、妾がトンクさまを相手にすると、チト、あなたの御都合が悪いでせう。コレコレ、トンクさま、遠慮はいりませぬ、とつとと守宮別さまのローマンスをスツパリと、此場でさらけ出して下さい』 トンク『ハイ有難う、屹度百円くれますな』 お花『併し二人に百円だよ。取違して貰ふと困るからな』 トンク『ハイ宜しあす、此守宮別さまは、お寅さまと何時も師匠と弟子のやうな顔をして、殊勝な事をいふてゐられますが、其実内証でくつついてゐるのですよ。私や、いつやらの晩、橄欖山の上り口で、怪体な所を見て置きました。なア守宮別さま、其時あなた、人に言つちや可けないよ……と云つて私に十円呉れましたね』 守宮別『ウン確かにやつた覚がある、併しそれをどうしたといふのだ。ソンナこた、お花さまの前で言つた所で三文の価値も無いぢやないか。お花さまだつて、今日迄の俺とお寅さまとの関係は御承知だからなア』 トンク『それでも、あなた、さういふ事を世間へ発表せうものなら、貴方もチツトは困るでせう』 お花『阿呆らしい、トンクさま、そんなことなら聞かして貰はいでも可いのだよ。此守宮別さまが、外の女と怪しい関係があつたか無かつたか、それが聞かしてほしかつたのだよ。確な証拠はなくても、どこの家で酒を呑んで居つたとか、意茶ついて居つたとか、夫れが分れば可いのだからな』 トンク『ヘ、五十円なら申上げます。エルサレムの横町のカフエーの奥で、お花さまと守宮別さまが一杯やり乍ら、夫婦約束をしたり、頬ぺたを抓つたり、肩にブラ下つたり、それはそれは見るに見られぬ醜体を演じてをられました、事を私許りぢやなく、ここの女中が証人ですよ。それも今月今日、サ五十円、二人でシメて百円、如何です安いものでせうがな』 守宮別『フツフヽヽヽ、此奴ア面白い。マ一杯やつたらどうだ』 とコツプをつき出す、お花は眉を逆立て、声を尖らし乍ら、 お花『ヘン、あほらしい、業々し相に、何のこつちやいな。五十両もお前さま等にやるやうな、金があつたら、ヨルダン川へでも放かしますわいな』 トンク『宜しい、お前さまが其了見なら、直様お寅さまへ注進致しますよ』 お花『どうぞ注進して下さい。そして守宮別さまと此お花との交情のこまやかな所を、お寅さまにつぶさに報告し、忠勤振を発揮なさいませ。最早此お花はお寅さまと手を切り、守宮別さまとは天下晴れて、切つても切れぬ夫婦ですよ。どうか、お寅さまに守宮別さま夫婦が宜しう伝へたと仰有つて下さい。そしてエルサレムの市中へ、妾達夫婦の結婚式を挙げた事を、駄賃をよう出しませぬが、披露をして下さい』 トンク『エー、クソ面白くもない。ようし、これから、一つお寅にたきつけてやらう』 とテクと共に千鳥足し乍ら、カフエーを立出で、お寅の霊城へと注進の為忍び行く。 お寅は守宮別、お花の打つて変つた愛想づかしと無情な仕打に、憤慨の余り逆上し、暫庭の土の上に倒れてゐたが、漸く気がつき、辺りを見れば、箱火鉢は腹を破つて木端微塵となり、そこらは灰神楽で、一分許りの畳の目もみえぬ程黒くなつてゐる。ブツブツ小言を云ひ乍ら、穂先の薙刀になつた箒でヤツトの事、灰を掃清め、ドスンと団尻を下ろした所へ、ヒヨロヒヨロになつて、一杯気嫌の鼻唄諸共、トンク、テクの両人が入り来たり、トンクは開口一番に、 トンク『これはこれは、生宮様、お一人で嘸お淋しいこつて厶いませう。ヤクの後を追つかけて、生宮様がお駆出しになつたものですから、人馬の行通ふ雑踏の巷、貴女のお身の上が険呑だと思ひ、三人が手分を致しまして、そこら中を捜しました所、お行方が分らず、一層の事ヤクを取つ捉まへてお目にかけたいと思ひ、エルサレムの裏長屋迄捜して見ましたが、たうとう幸か不幸か、姿を見失ひました。それから横町のカフエーに立寄り、ブドー酒をテクと二人引つかけてゐますと、それはそれは天地転倒と云はふか、地震ゴロゴロ雷ピカピカ、いやもう、ドテライ、貴女のお身の上に取つて、大事件が突発して居りましたので、取る物も取敢ず、お弟子になつた御奉公の初手柄として御報告に参りました』 お寅『それはどうも有難う、お前ならこそ報告に来て呉れたのだ、大方ブラバーサが暴力団でも使つて、此お寅を国へ追返さうとでも企んでゐるのぢやないか』 トンク『イエ、滅相な、ソンナ小さい事ですかいな。貴女のお身の上にとつて、天変地異これ位大きな災は厶いますまい、なあテク、側から見て居つても、ムカつくぢやないか』 テク『本当にテクも、腹が立つて、歯がギチギチ云ひよるわ、あのザマつたら、論にも杭にも掛らぬわい。お寅さまが本当にお気の毒だ』 お寅『コレ、序文許り並べて居らずに、短刀直入的に実地問題にかかつて下さい。一体大事件とは何事だいな』 トンクは、 トンク『ヘー、これ程大事な事を申上げるのですから、貴女はお喜びでせうが、一方の為には大変な不利益です。さうすれば、貴女に喜ばれて、一方の方からは非常な怨恨を買ひ、暗の晩にでもなれば、うつかり外は歩けませぬわ。それだから、ヘヽヽヽ一寸は容易に申上げたうても申上げられませぬ。なあテク、地獄の沙汰も○○だからなア』 お寅『エー辛気臭い、お金が欲しいのだらう。お金ならお金と何故あつさり言はぬのだいな』 トンク『ハイ、仰に従ひ、あつさりと申上げます。どうか前金として、二十円程頂戴致したう厶います』 お寅『ヨシヨシ、サ、あらためて取つてお呉れ』 と其場に投出せば、二人はガキの様に引つつかみ、ヤニハにポケツトへ捻込んで了ひ、 トンク『ヤ、有難う、流石はウラナイ教のお寅さま、底津岩根の大ミロクの生宮、日出神のお寅さま、ウラナイ教の大教主、誠に感じ入りました』 お寅『コレコレ、ソンナ事聞かうと思つて、お金を出したのでない。大事件の秘密を早く聞かして下さい』 トンク『ハイ、これからが正念場です。どうか吃驚せないやうに、胴をすゑて居つて下さいや。エー、実の所は横町のカフエー迄一杯呑みに行きました所、裏の離れに男女が喋々喃々と、甘つたるい口で囁いたり、頬べたを抓つたり、金切声を出して、意茶ついてる者があるぢやありませぬか』 お寅『成程、そら大方ブラバーサとマリヤの風俗壊乱組だらうがな。そんな事がナニ妾に対して大事件だろ、併し乍らヨウ報告して下さつた。之から彼方等を力一杯攻撃して、再び世に立てない様、社会的に葬つてやる積だから、そら可い材料だ』 と話も聞かぬ内から早呑込みしてゐる。トンクは言句に詰り、 トンク『もし、お寅さま、さう早取して貰ふと、二の句がつげませぬがな。オイ、テク、お前之から性念場を些と許り申上げて呉れ。お前廿両貰ふた冥加もあるからの』 テク『お寅さま、ソンナ気楽な事ですかいな、お前さまの寝ても醒めても忘れない、最愛のレコとあやめのお花さまとが、それはそれは目だるい事をやつていましたよ。私が貴女だつたら、あの儘にはして置きませぬがな。生首を引抜いて烏にこつかしてやらねば虫が癒えませぬがな』 之を聞くより、お寅は電気にでも打たれた如く打驚き、暫しは口を尖らし、目を剥いて言葉も出なかつたが、稍暫時して、 お寅『テヽテクさま、トヽトンクさま、そら本当かいな。本当とあれば、ジツとしては居られない、お花の奴、本当にバカにしてる』 と早くも捻鉢巻をなし、赤襷をかけようとする。 トンク『そら、マヽ待つて下さい、さう慌てても、話が分かりませぬ、たうとう二人は夫婦約束を致しました。そして祝言の盃もやり直したといふことですよ』 お寅『ナヽナアニ、シユシユ祝言の盃、そして又ドヽ何処の内で、ソヽそんな事を、ヤヽやつてゐるのだい』 トンク『横町のカフエーの奥座敷ですがな、併し乍らトンクが言つたとは、云つて貰へませんで、あとが恐ろしう厶いますからな』 お寅『コリヤ、トンク、テク、お前も妾の家来に成つたのぢやないか、妾の為には何でも聞くだろ、妾が踏込んで生首引抜くのも易い事だが、そんな乱暴な事すると、日出神の沽券にかかはる。妾はここで辛抱するから、お前代りにお花の生首引抜いてヨルダン川へ投込みて下さい。さうすりや、何ぼでもお金は上げるからな』 トンク『何程お金に成りましても、ソンナこたア私に出来ませぬワ。暴力団取締令が出て居りますので、二人寄つても、直にスパイが後を追つかける時節ですもの。そんなこたア、御本人直接に決行されたが可いでせう。刑務所へ放り込まれて臭い飯くはされても約まりませぬからな、それとも一万両下さらばやつてみても宜しい』 お寅『エーエー腑甲斐のない、何奴も此奴もガラクタ許りだな。守宮別さまは決してそんな無情な人ぢやない。酒に酔ふと、いろいろの事を仰有るが、正直な親切な、誠生粋な大広木正宗さまの生宮だ、スレツカラシのお花の奴、たうとう地金を放り出し、男を喰はへて、ヌツケリコと夫婦気取で、そんな所へ行て酒をくらうて居やがるのだらう。エーまどろしい、暴力団取締が何だ。日の出神の生宮がお花位に敗北を取つてどうなるものか』 と眉毛は逆立ち目は血走り鉢巻したまま、襷をかけたまま、後先の考へも無く腹立紛れに飛出した。トンク、テクの両人は、『コラ一大事』とお寅の後を見え隠れに付いて行くと、十字街頭を微酔機嫌で守宮別がお花の手を引いてヒヨロリヒヨロリとやつて来るのに出会した。お寅はアツと言つたきり、其場に悶絶して了つた。守宮別、お花は掛り合になつては一大事と、素知らぬ顔し乍ら、橄欖山目がけて逃げてゆく。 (大正一四・八・一九旧六・三〇於由良秋田別荘松村真澄録) (昭和一〇・三・一〇於台湾草山別院王仁校正) |