| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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霊界物語 | 74_丑_太元顕津男の神の物語2 | 23 意想の外 | 第二三章意想の外〔一八九一〕 玉野比女の神に導かれて、顕津男の神は本津真言の神と共に、主の大神の御出現までの時を待たせつつ、御歌詠ませ給ふ。 玉野比女の神『主の神の貴の神教を畏みて これの聖所に宮造りましぬ この宮は主の大神のたまの水火に 生り出でし松の柱なりけり 国の柱太しく立てて玉野丘に 仕へし宮居を玉の宮といふ 只一人時を待ちつつ主の神の 神霊祀りて仕へ来しはや 終日を松の梢に鶴鳴きて 岐美を待つ間の久しき吾なりし 白梅はこれの聖所に咲きみちて 主の大神の霊をうつせり 敷きつめし真砂の月の露置きて 真玉とかがよふ清しき宮なり 白梅の梢に来つる鶯の 鳴く音は永久の春を歌へる 春夏の風は吹けども秋の風 冬の嵐のなき清庭よ 瑞御霊天降ります日を待ち佗びて この清庭に年ふりにけり 年さびし吾にありせば御子生まむ すべなみ岐美と国土生みなさむか 常磐樹の松の老樹に苔むして ふりゆく年を吾に見るかな 年さびし岐美にしあれど若々し さすがは瑞の御霊なるかも 主の神の依さし給ひし神業に 後れし吾は惟神ならし 千万の思はあれど岐美に会ひて 語らふ術も消えうせにけり ほほゑます岐美の面の清しさに わが魂線はよみがへるなり 万代の末の末まで岐美思ふ わが魂線はくもらざるべし 玉野丘のこれの聖所につきにけり 御水火合せて国土生まむかも 待ち佗びし吉日は来つれど如何にせむ わがからたまの年さびぬれば』 顕津男の神はこれに答へて、御歌詠ませ給ふ。 『主の神の依さし給ひし神業を 怠たりし我をくやむ今日かな 国土稚き玉野の森に進み来つ 公が心を悲しみにけり 雄々しくも待たせ給ひし公許に 感謝の言葉も口ごもるなり 弥広き紫微天界の中にして この真秀良場や公の御舎 この国土にかかる聖所のおはすとは 我は夢にも知らざりにけり こんもりとふくれ上りしこの丘に 清しく建てる宮は高しも この宮に公とい向ひ永久の 国土拓かばや水火を合せて 主の神の出でましある迄神苑に ひかへ奉りて語りあはむか 遠見男の神はいづくぞ百神の 姿は見えずこの清丘に 何となくわが魂線はふるふなり おごそかにます玉の宮居よ』 本津真言の神は御歌詠ませ給ふ。 『幾億の星の霊線つなぎ合せ 本まつことに国土をささへつ 月も日もこの天界も言霊の まことにつなぐ星のかずかず 月も日も言霊の水火につながれて おなじ所を行き通ふなり 幾万の星はあれどもほしいままに 動き給はぬぞ畏かりける 月も日も星も軌道を定めつつ 紫微天界を守りますかも 我こそは主の大神の神言もて この天界を支へゐるかも 言霊の本つまことの水火をもて 堅磐常磐に神代を守らむ 村肝の心ゆるめしたまゆらに この天地は亡びこそすれ わが心張りきりつめきり澄みきりて そのたまゆらもゆるぶことなし この宮に主の大神の天降りまして 宣らせ給はむ国土生みの要を 我は今御供の神と身を変じ 玉野の比女を守りゐたりき 玉野比女神の神言の真心を うべなひ給へ顕津男の神よ』 顕津男の神は、驚きて下座に下り合掌しながら、御歌詠ませ給ふ。 『思ひきやかかる尊き大神の これの聖所に天降りますとは 本津真言の神の御名をし聞きしより わが霊線はひきしまりける 主の神の生言霊に生り出でし 本津真言の神のたふとき 玉野比女の御魂を朝夕守りつつ 永久にいませし大神天晴れ』 玉野比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『はしたなき浅き心の吾なれば かかる尊き神とは知らざりき この上はわが魂線を磨き清め 本津真言の神に仕へむ 主の神の御手代となりて現れませし 神とは知らにあやまてりけり 恥づかしやもつたいなやと今更に 悔ゆるもせむなしつたなき吾は』 本津真言の神は儼然として、御歌詠ませ給ふ。 『久方の天津高宮ゆ降り来て 主の大神の御手代と仕へし 玉野比女国土生みの業守らむと 我は久しく止まりしはや 主の神の御尾前に仕へてこの森を 我は直ちに帰らむと思ふ 瑞御霊ここに現れます今日よりは 我止まらむすべもなきかな 待ちわびし瑞の御霊の出でましに わがまけられし神業は終へたり』 この御歌によりて、顕津男の神、玉野比女の神は、主の大神の御内命によりて、国土生みの神業を助くべくこの玉野丘に降り給ひたる大神なるを悟り、恐懼措く処を知らず、真砂の清庭に下り平伏嗚咽涕泣し乍ら、身を慄はせ給へるぞ畏けれ。 かかる所へ生代比女の神を導き乍ら、待合比古の神、力充男の神は静々と現れ来り、女男二柱の神の庭上に平伏し給ふ御姿を見て、驚きの余り、待合比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『いぶかしもこの清庭に二柱 ぬかづき慄ひ泣かせ給へる 主の神の貴の御稜威にうたれつつ かしこみますか二柱神は』 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『二柱神の真言に助けられ この清庭に詣で来にけり 瑞御霊玉野の比女の御姿を をろがみ奉りて悲しくなりぬ 罪穢払ひ清めてわが来つる この聖所おごそかに思ふ』 力充男の神は御歌詠ませ給ふ。 『主の神の御手代とます本津真言の 神の功に驚きましけむ 主の神の御手代として生れませる 尊き神を百神知らざりき 吾は只尊き神と朝夕に 敬ひ奉り仕へ居しはや』 茲に本津真言の神は、一同の神々に向ひて、御歌もて教へ給ふ。 『顕津男の神よ玉野の比女神よ 心安かれ惟神なるよ この国土の主となりし岐美なれば 心安かれ我にかまはず 生代比女御子は孕めど玉野比女の まことの御子と育み奉らへ 待合の神は正しく清しくも 玉野の比女に朝夕仕へし 待合神の誠は主の神も よみし給へりいやつとめよや 我霊の真言を永久にさとりたる 力充男の神ぞたふとし この国に力充男の神あれば いや永久に安く栄えむ いざさらば主の大神の御前に 我は詣でむしばし待たせよ』 斯く歌もて宣示しながら、本津真言の神は悠々として鉄門を押し開き、奥殿深く進ませ給ひ、主の大神の御神慮を請はせ給ひぬ。 (昭和八・一〇・二九旧九・一一於水明閣谷前清子謹録) |
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霊界物語 | 76_卯_世界の神話/朝香比女の神の物語 | 06 報告祭 | 第六章報告祭〔一九二三〕 春の陽気は漂ひて、桜花爛漫と咲き乱れ、庭の面に一弁二弁と静に桜の花弁の散りこぼれたる真昼頃、高地秀の宮居の清庭に駒の轡を並べて、高野比女の神一行は御面輝かせ、目出度く此所に帰り給ひければ、胎別男の神は比女神の姿を見るより打喜び、恭しく出で迎へて長途の旅の労を犒ふべく、別殿に歓迎の馳走の準備に忙しく諸神を督して、忠実々々しく立ち働き給ひける。 茲に高野比女の神一行は、大宮居の大前に禊祓ひを終り、感謝の祭典を行ひ太祝詞を宣らせ給ふ。 海河山野の種々の美味物を八足の机代に置き足はし、十柱の神は式場に列座し其他の神々は末座に拝跪して、今日の目出度き祭典に列し給ひつつ、天を拝し地を拝し歓ばせ給ふ。 高野比女の神は御前に拍手して、 『掛巻も畏き紫微天界の真秀良場なる高地秀山の下津岩根に、宮柱太敷立て高天原に千木高知りて、堅磐常磐に鎮まりいます主の大神の大前に、御樋代の神高野比女等、慎み敬ひ畏み畏みも白さく。抑此の天界は主の大神の広き厚き大御恵と、赤き直き正しき生言霊の御稜威に依りて、鳴り出で給ひし国土にしあれば、海と陸との別ちなく山と河との差別なく、広き厚き恩頼を蒙りて、弥遠永に立栄ゆるものにしあれば、一日片時も主の大神の御恵に離れては、世に立つべからざる事の由を、深く悟り広く究めて、弥益々に其畏さに戦慄き恐れ敬ひ奉らむとして、過ぎつる吉月の吉日を選み、万里の道を遥々と駒の背に跨り、岩根木根踏み佐久美て天津高宮に、草枕旅の宿りを重ねつつ詣で奉り、大御神の御口自から清き赤き貴き大神宣を承り、唯一言も洩らさじ忘れじと心の駒の手綱引締め、頸に受けて束の間も忘るる事なく、村肝の心に抱き胸に秘め、大御恵を忝けなみつつありしが、畏れ多くも主の大御神より高地秀の宮居の宮司として、此度新に鋭敏鳴出の神、其添柱として天津女雄の神を授け給ひぬ。天晴れ天晴れ今日よりは高地秀の宮居は弥生の花の咲き満つるが如く、秋の楓の紅に染むるが如く、弥美はしく弥清しく栄えまさむ事を、思ひ量りて嬉しみに堪へず、各自の御樋代神等は玉の泉に禊を修め、感謝言の神嘉言を宣り終へて、再び駒に跨りつ十柱の神等は果しも知らぬ大野原の駒の嘶き勇ましく、夜を日に次ぎて帰らむ道に、さやりたる八十曲津見の曲業も、主の大御神の深き厚き御守りに、喪なく事なく今日の吉日の吉時に、主の大御神を祭りたる此の宮居に帰りける、其嬉しさの千重の一重だも報い奉らむとして、海河山野の種々の美味物を百取の机代に横山の如く置き足はして奉る状を、𪫧怜に委曲に聞食相諾ひ給ひて、此の宮居に仕へ奉る司神等は大御心に違ひ奉らず逆ひ奉らず、大御神の授け給ひし真言の光を照らし仕へ、罪穢過なく𪫧怜に委曲に仕へしめ給へと畏み畏みも願ぎ奉る。 言別けて白さく、高地秀の宮居を真中として、四方を廻れる稚国土原の、国津神等は各自に日々の業務を励しみ勤めて緩ぶ事なく、怠る事なく、此の天界を弥益に拓かせ栄えしめ給ひて、紫微天界の真秀良場たる貴き御名を落さじと、励み励み活動かしめ給へと、鹿児自物膝折伏せ、宇自物頸根突貫きて畏み畏みも願ぎ奉らくと白す。惟神霊幸倍坐世惟神霊幸倍坐世』 高野比女の神は大前の祝詞を終り、しづしづと御前を下り諸神と共に、直会の席に着かせ給ひ、合掌久しうしつつ御歌詠ませ給ふ。 『足引の山鳥の尾の長旅も 神の恵にやすくをはれり 遥々と筑紫の宮居に駒並べて 詣で来つるも惟神われ等は 主の神の厚き恵しなかりせば 此の旅立ちは難かりしものを 広々と果しも知らぬ地稚き 国原を行く危き旅なりし 曲津神は到る処にさやらむと 手組脛引きて待構へたりき 斯の如危き旅も恙なく 今日を御前に帰り来しはや 十柱の賑はしき旅も斯の如 苦しきものをと背の岐美を思ふ 背の岐美の旅の艱みを今更に 悟りけるかな愚かしき吾も 何事も神の心の儘にして 生るべきものと悟らひにけり 主の神は宮居の司と鋭敏鳴出の 神を聖所に降したまひぬ 鋭敏鳴出の神の司の添柱と 降り来ませる天津女雄の神 高地秀の峰に春の気漂ひて 今をさかりと桜咲くなり 桜木の梢にうたふ鶯の 声長閑なる東の宮居はも 草枕長の旅より帰り見れば この清庭に春はふかめり 御木も草も瑞気立ちつつ若やぎて 天界の春を言祝ぎ顔なる』 鋭敏鳴出の神は御歌詠ませ給ふ。 『御樋代神御供に仕へ漸くに 此の聖所にわれ来つるかも 東の宮居に仕へて思ふかな これの聖所はまた世になしと 高地秀の山は隈なく桜木の 花咲き満ちて長閑なりけり 此処に来て始めて知りぬ天界の 春の景色のさわやかなるを 西の宮居の松の神苑に比ぶれば 華美なるも東の宮居は 西の宮居は心静かに落付けど 東の宮居は心ときめく ときめける心抱きて高地秀の 宮居に仕へつ国土固めばや 御樋代の比女神等の心にも 似て晴れ晴れし桜の盛りは 非時に花は散らざれ萎れざれ 生きたる神の庭に咲く花は』 折もあれ桜の花弁は、ひらひらと直会の席に列なり給ふ朝香比女の神の持たせる御盃の上に、一弁落ち来り浮びたれば、朝香比女の神はほほ笑みつつ御歌詠ませ給ふ。 『背の岐美の清き心の一弁か わが盃に浮ける桜は 背の岐美の心と思へば捨てられじ 花もろともにいただかむかな』 斯く歌ひながら花弁の浮ける神酒をぐつと飲み下し給ひ、 『背の岐美の深き心の花弁と 神酒諸共に飲み干しにけり 御樋代の神と選まれ背の岐美の 水火と思ひて飲みし花酒よ 斯くならば吾は御樋代神として 岐美の在所をたづね行くべし』 梅咲比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『梅の花ははや散り果てて桜花 また散り初めぬ神の御前に 移り行く世の有様をまつぶさに 梅と桜の花に見しはや 白梅のつぼめる朝を立ち出でて 桜花散る春を帰れり 今日よりは心改めて大宮居に 朝な夕なを真言捧げむ 言霊に森羅万象は生るてふ 由を悟りし吾は畏し 終日を神の御前に太祝詞 言霊捧げて仕へまつらな 朝夕の祝詞は愚か夜も昼も かたみに宣るべき祝詞なりけり 言霊の稜威に栄ゆる森羅万象は 又言霊ぞ力なりける』 香具比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『非時の香具の木の実も言霊の 尊き水火に生り出でしはや 吾も亦香具の木の実ゆ生れたる 神にしあらば言霊たふとし 言霊の声を聞かずば片時も 苦しさ覚ゆる吾体なりけり 言霊の水火に空気を造り出し 百の生命を生み出だすなり 正しかる神魂の水火は天界を拓き 曇れる水火は天界を傷ふ 村肝の心曇りて濁りたる 言霊の水火は鳴り出づるなり 主の神を常磐に祀りし高地秀の 宮居は清しも言霊澄めば 吹き渡る梢の風も爽かに 言霊清く鳴り響くなり 庭の面を流るる瀬見の川水も 澄みきり澄みきり透き徹りつつ 常磐木の松の木の間に咲き満つる 桜の眺めは殊更目出度き』 寿々子比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『はろばろと遠の旅路を重ね来て 目出度く今日は感謝言宣る 言霊の水火に生り出でし天界に 澄める言霊の吾生命かも 言霊の活用なくば束の間も 生きて栄えぬ天界なりけり わがもてる意志想念も悉く 生言霊の光なるらむ 正しかる生言霊の光る天界は 言葉のはしも慎むべきなり 顕津男の神の拓きし高地秀の 山の姿は生き通しなり 高地秀の山を朝夕眺めつつ 吾背の岐美と仕へ奉るも 長旅に見え得ざりし高地秀の 山の一しほ恋しき吾なり 此の宮居は吾背の岐美の築きたる 貴の宮居ぞ殊更うるはし 朝夕にこれの神山を力とし 吾背の岐美となして生くるも 草枕旅を重ねて背の岐美の 艱みを深く悟りつつ泣くも』 宇都子比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『今日よりは鋭敏鳴出の神現れまして 宮居の司と仕へますかも 天津女雄の神も出でまして大宮居の 日々の仕へも革まるべし 御樋代神旅なるあとは胎別男の 神の司の依さしなりけり 胎別男の神よ今日より鋭敏鳴出の 神の司の神業補けよ 御樋代の八柱神は聖殿に 終日集ひて言霊宣るべし 言霊の水火止まれば天界の 森羅万象は枯れ萎むなり 御樋代の神は御子生みのみならず 生言霊の樋代なりしよ 顕津男の神の御樋代と任けられしも 生言霊を補くるためなりき 樋代とは生代の意ぞ国魂の 神生むのみの司にあらずも 今日までは吾勤めさへ知らずして 岐美をのみ恋ひしことの恥かしき』 狭別比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『宇都子比女神の言霊聞くにつけ 吾も悟りぬ御樋代の司を 雲霧を別けて昇らす天津日も 主の言霊ゆ生り出でましける 月も日も星も悉言霊の 水火と思へば尊きろかも 草も木も鳥も獣も言霊の 水火に育つる天界なりけり 桜花咲くも散らすも吹く風も 皆言霊の水火なりにけり 吾身又生言霊の幸はひに 生れて言霊に仕へ奉る身よ 言霊の水火の幸はひ無かりせば この天界は直に亡びむ 遥々と旅を重ねて曲もなく 帰りしわれも言霊の幸なり 斯の如尊き稜威の言霊を 忘れて祝詞を怠るべしやは 気魂の濁らば心濁るべし 心濁らば言霊汚れむ 身を清め心清めて仕へなば 生言霊は自と光るべし 神々の要の勤は朝夕の 禊の神事にまさるものなし 主なき宮居は頓に淋しけれ 生言霊の祝詞なければ 胎別男の神の宣らする言霊の 祝詞は弱くうすら濁りぬ 御樋代神いまさぬ宮居の淋しさは 主の神坐さぬ如くなりけり』 花子比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『高地秀山今を盛りと咲き匂ふ 桜もしばしの命なるかも 惜しめども花は梢に止まらず そよ吹く風にも散り初めにつつ 夜嵐の花散らすかと吾はただ 生言霊に支へて居るも 束の間も花散らざれと支へつる 吾言霊も怪しくなりぬ 夜嵐は吹かねど梢の桜花 時の来つればこぼれ落ちつつ 落ち散りし庭の花弁眺めつつ 踏むさへ惜しく思はるるかも 移り行く世の有様を高地秀の 宮居の桜に悟らひしはや 花は散れど梢に若葉もえ立ちて 眼あたらしく夏をさかえむ 桜花散りたる庭に紅く白く 匂へる牡丹のあでやかなるも さりながら又夏更けて丹牡丹の 花は一弁々々くづれむ 丹牡丹の蕾ほぐれて咲き初めし 日より三日経て又散る世なるも 清庭の白梅の花散り果てて 跡に青々つぶら実生れり 白梅は開きて散りて実を結び 移り行く世の態を教ゆも』 小夜子比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『はろばろと遠の旅路を重ねつつ 今大前に復命せり 今日よりは神魂を清むと朝夕の 禊の神事怠らざるべし 禊して吉き言霊に天界を 照らすは御樋代神の勤めよ 朝夕は言ふも更なり暇あらば 禊て貴の言霊宣らばや 言霊の天照り助け生くる国土に 怠るべしやは生言霊を 言霊の水火澄みきらひて天地は 弥遠永に栄えますべし 月も日も生言霊に照り渡る 曇るは曲津の水火にこそあれ』 斯の如く十柱の神々は、下向の報告祭を大宮に奏上し終りて、直会の式に列し給ひ、此度の旅行にて学び得たる言霊の真理を告白しながら、各自の居間に就かせ安々と今日の一日を休らはせ給ひける。折しもあれ、ぼやぼやと吹き来る春風に満庭の桜は雪の如く夕立の如く、算を乱して清庭の面に散り敷きければ、庭は一面の花筵となりて、名残惜しげに数多の胡蝶来りて、低く舞ひ遊び戯れ居たりける。 (昭和八・一二・六旧一〇・一九於水明閣森良仁謹録) |
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霊界物語 | 76_卯_世界の神話/朝香比女の神の物語 | 15 御舟巌 | 第一五章御舟巌〔一九三二〕 八十曲津見は朝香比女の神の行手を遮らむとして、広大なる沼と体を変じ、女神を悩まし奉らむとして待ち構へ居たりしが、女神の生言霊に固められて、忽ち真の沼となり、永久に大野ケ原の真中に横はる事となりにける。又巨巌は八十曲津見の本体なりけるを、言霊の幸はひによりて水上に浮ぶ磐楠舟となり、比女神を彼岸に渡す御用に逆しまに使はれ、再び汀辺に万世不動の御舟巌と固められければ、八十曲津見は如何とも詮すべなく、その率ゐたる百の曲津見は、いづれも沼底の貝と変じて、わづかに生命を保つ事を許されにける。 朝香比女の神は、この態を見て御歌詠ませ給ふ。 『面白し八十曲津見は大野原の 中に動かぬ沼となりしよ 曲津見の沼となりける水の上を 磐楠舟に乗りて渡りし 今日よりは弥永久に沼となりて 所を変へな世の終るまで もろもろの曲津神等は沼底の 貝となりつつ生命をたもて 貝は皆吾乗り来りし楠舟の 形となりて沼にひそめよ 天津日は真賀の湖水の面照し 狭霧もやもや立ち昇りつつ わが為に謀らひたりし醜の沼は またわが為に謀らはれける 水底に青くうつろふ山影は 栄城の山か波にさゆれつ 月読の光を浮べしこの沼は 曲津の化身と思はれざりしよ 何事も善意に解せばもの皆は わが為によきものとなるかも 曲津神も愛と善には勝ち難く 大地に伏して沼と溢れつ 国津神の日毎々々の餌を生みて 魚貝を育てよ真賀の湖 沼水はいやつぎつぎに澄みきりて 深き湖水となりにけらしな 御舟巌の側に集まる魚族は いや永久に生命たもたむ 御舟巌は吾を助けし神なれば 幾千代までも滅びざるべし 巌ケ根に住み魚族も諸貝も われを助けし功に生きむ いざさらば吾は進まむ湖よ 国津神等を永久に養へ』 斯く歌ひ給ひつつ駒にひらりと跨り、東南方の野辺をさして進み給へば、程近き野辺の真中に余り高からぬ丘陵ありて、国津神等の住家幾十となく建ち並び居たりければ、朝香比女の神は国津神の住へる村を訪はむとして進ませ給ふ。 国津神の長たる狭野比古は、比女神の御前に跪きながら満面に笑をたたへて、 『汝こそは高天原ゆ降ります 女神にますか面かがやける この郷に国津神等守りつつ 住へる吾は狭野比古にこそ 願はくばこの村里に止まりて 国津神等を救はせたまへ 国津神は日毎の餌に苦しみつ 飢ゑ渇きたり安きをたまへ 気魂をたしに保てる国津神は 餌なく飢に渇きゐるなり』 朝香比女の神は狭野比古に答へて、 『国津神の日々の糧をば与ふべし 真賀の湖水の魚族とらせよ』 狭野比古は答へて、 『ありがたし忝なしと思へども 木の実に生くる国津神なるよ 魚族をくひて生くべき生命なれば 吾等は飢にせまらざるべし』 朝香比女の神は、 『木の実また生命の為によけれども 魚族喰へば生命ながけむ われは今国津神等に魚族を 焼きて喰ふべき真火を与へむ』 斯く宣らせ給ひて朝香比女の神は、この村里の小川に満てる魚貝等を漁らせ給ひ、燧により火を切り出して、木草に燃えつかせ、魚貝をその中にほりくべ、加減よく焙り給へば、芳ばしき香り四辺に満ちぬる。 国津神等は、この香りにそそられて、先を争ひ、貪る如くに喰ひ始めたり。狭野比古は喜びて、 『比女神の恵畏し魚族の よき味はひを教へ給ひぬ 今日よりはこの村里の国津神 飢に歎かむ恐れはあらじ 比女神のきり出で給ひし真火こそは 神の御霊か光りかがよふ この真火を吾に賜はば永久に 国津神等は滅びざるべし』 朝香比女の神は懐中より控への燧を取り出で、狭野比古に与へ給へば、狭野比古は感謝措く能はず、カチリカチリと火を切り出でながら、喜びの余り俗謡を歌ひて、国津神等と共に月の輪を造りて踊り舞ひ狂ひける。 『天津比女神この郷に 降りましまし永久の 光りを与へ給ひけり 吾等は今迄木の実のみ 喰ひて生きたる国津神 夏と秋とはよけれども 冬さり春の来むかへば 飢にくるしみ悩みたり 今日は如何なる吉き日ぞや 湖水池水川底に ところせきまで満ち足らふ 魚族喰ひて永久に 生命保つと教へまし 燧を吾に与へまし 焼きて喰ふべく教へます 大御恵のありがたや 今日より吾等国津神は 生命の糧を得たりけり ああたのもしやたのもしや 天より降りし比女神の 恵は千代に忘れまじ ああありがたやありがたや 祝へよ祝へよ国津神 踊れよ舞へよ国津神 御空は碧く地広く 月日は清く輝きて 吹き来る風もおだやかに 天津神国はまのあたり 生れ出でたり惟神 神の御前に感謝言 白さむ言葉もあら尊と 千代も八千代も永久に 女神の恵は忘れまじ 祝へよ祝へよ踊れよ踊れよ 大地の底のぬけるまで 竜宮の釜の割るるまで』 狭野比古の音頭につれて、国津神等は次ぎ次ぎに集り来り、天地を震動させながら、踊り狂ひ給ひける。朝香比女の神は、諸神に向ひ御歌もて宣らせ給ふ。 『曲津見の醜のすさびを退はむと われは燧を汝等に与へし 今日よりは真賀の湖に棲む魚族を 汝等がかてに与へおくべし 御舟巌のまはりに棲める魚族は いやとこしへに漁るなゆめ 御舟巌は吾を助けし神なれば 近くの魚族は助け置くべし 過ちて巌根に棲まむ魚貝喰はば 忽ち汝等が生命は失せむ いや広き湖なれば到るところ 汝等が喰ふべき魚貝は満てり 魚族は火にて焙りて喰ふべし 生きたるままにて必ず喰すな』 狭野比古は御歌もて喜び答ふ。 『久方の天より降りし比女神の 神言かしこみ千代に守らむ 今日よりは国津神等安らかに 喜びいさみ恵みに浸らむ 魚族は数限りなし年普く 湖に満てれば飢ゆる事なし 願はくば吾等に水を与へかし 小川に流るるこの真清水を 国津神真清水飲みて腹痛め 生命をおとす憂ひありせば』 ここに朝香の比女神は、真土を水にて練り、瓶を造り、暫くの間を天津日の光に干し乾かせ、土をもて窯を築き、火をおこして瓶を焼き、𪫧怜にかたらに造り上げ、之に水を満して窯を造り火をもて焼かせ給へば、忽ち瓶の水は沸騰して美はしき白湯となりにける。比女神はこの白湯を国津神等に与へ、飲む事を教へ給ひければ、国津神は喜び勇みて之より白湯を飲む事となしければ、生水の如く腹を痛むることなく、各々その天寿を保ちけるこそ目出度けれ。之より火食の道始まりにける。 狭野比古は喜びの余り感謝の歌を詠む。 『比女神の恵の露にうるほひて 吾等は白湯の味はひ悟りぬ 火に焼きし魚族の味芳ばしく 吾等が生命もよみがへるなり 土を練りて瓶を造らせその瓶を 又火に焼かす神業尊し 焼き上げし瓶に真清水盛り満し 薪燃せば白湯は沸くかも 火の力始めて悟りし吾々は 今日より飢に泣く事なからむ 永久の生命保ちてこの郷に われは栄えむ国津神等と 曲津見の襲ひ来らば真火もちて 放り退はむ力おぼえし 比女神の神言畏み御舟巌の あたりの魚族永久にとらさじ 空は晴れ地上は夏の風吹きて 心清しも比女の出でまし 比女神の教へたまひし御恵を 四方の神等に分ちよろこばむ この国土は葦原の国と昔より たたへ来りし常闇なりけり 常闇のこの葦原も今日よりは 真火の力によみがへるべし 火と水を与へ給ひし比女神の 恵は永久に忘れざるべし 比女神の恵を永久に忘れじと 宮居を造り斎ひまつらむ』 斯く宣り終へて、狭野比古は数多の国津神を率ゐて、真賀の湖辺に新しき清しき宮居を造り、朝香比女の神の幸を祈るべく、主の神の神霊を祀り、相殿に朝香比女の神の神魂を合せ祀りて、朝な夕な国津神は交る交る奉仕する事となりぬ。 朝香比女の神は再び駒に跨り、この部落を立ち出でむとして御歌詠ませ給ふ。 『いざさらば狭野の小郷に住み給ふ 国津神等に暇を告げむ これよりは吾西方の稚国土を さして進まむすこやかにあれよ』 狭野比古は別れを惜しみて歌を宣る。 『比女神の功たふとしせめて今 一日をここに止まり給はれ 国津神の生命の糧をたまひたる 女神に別ると思へばかなし 国津神諸々ここに集まりて 公の旅立ち惜しみて泣くも 狭野の郷の救ひの神と現れましし 比女神の旅を止めたく思ふ とこしへに主の大神と諸共に 公が神魂をいつきまつらむ』 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『国津神の心は悟らぬにあらねども 御子生みのため止まるべしやは 気魂をもたせる汝等国津神よ いたづきもなくまめやかにあれ 吾こそは主の大神の御水火より 生れし神ぞ身にさはりなし いざさらば愛ぐしき国津神等よ われは進まむ永久に栄えよ』 狭野比古は別れ惜しさに又歌ふ。 『かくならば止めむ術もなかりけり 国津神等と神霊に仕へむ 願はくば御供を許し給へかし この行先の曲津しげければ 玉の緒の生きの生命をすつるとも 比女のためには惜しからざるべし 今日よりは御供の神と仕へつつ 比女神のために従ひ行かむ』 朝香比女の神は微笑みながら、 『やさしかる狭野比古の心うべなひて 今日よりわれの供を許さむ』 狭野比古は喜びに堪へず、 『比女神の許しありけり国津神よ 神の宮居に清く仕へませ いざさらば御供仕へむ朝香比女の 神よ御馬に鞭うたせませ』 朝香比女の神はここに狭野比古を従へ、晴れたる大野ケ原を、駒を並べて勇ましく進ませ給ひける。 (昭和八・一二・八旧一〇・二一於水明閣谷前清子謹録) |
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霊界物語 | 78_巳_朝香比女の神の物語(葦原新国) | 01 浜辺の訣別 | 第一章浜辺の訣別〔一九五七〕 万里の大海原に浮びたる万里の島ケ根は、その面積約八千方里にして、豊葦原の瑞穂の国の発祥地なりければ、土地殊に肥え、春夏秋冬の四季の順序正しく、万物の発育又極めて良好なりければ、味よき果物や美しき花に害虫の好んで簇生するが如く、八十曲津見は千代の棲処と此処に暴威を振ひ居たりけるが、八十柱の御樋代神の一柱とまします田族比女の神は、主の大神の神宣を畏み給ひ、十柱の女男の神将を率ゐて此島ケ根に降臨し、生言霊の剣を抜き持ちて、荒ぶる神等を山の尾ごとに追伏せ河の瀬ごとに追攘ひて打ち譴責め給ひ、心安く心楽しき神国と定め給ひける。折しもあれ高地秀の宮居に親しく仕へ給ひし八柱御樋代神の中にても最も美はしく最も面勝神と射向ふ神なる朝香比女の神が、女男四柱の神を従へ、しばし此土に御跡をとどめ給ひしより俄に国形新まり、其威光を日に月に加へ給ひけるこそ目出度けれ。加ふるに曲神の最も忌み恐るる真火を切り出づるべき燧石を、此国土の御宝として朝香比女の神御手づから授け給ひしより、日日に国土治まり、総ての国津神等は其恩恵に浴し、火食の道を盛んに行ひにける。主の大神の生み給ひし八十国八十島の中にて、最も早く火食の道を始めたるは狭野の里なれども、国内一般に火食の道を開きたるは、この万里の島をもつて濫觴となす。故に一名火の国とも称へける。 是より程経て朝香比女の神の勧めにより、太元顕津男の神は西方の国土を治め、朝香比女の神に国魂神の養育を任せおき、照男の神をして西方の国土を守らしめ置き、潮の八百路を渡りて万里ケ島に天降り給ひ、茲に田族比女の神に御水火を合せ給ひ、左右りの大神業を終へて国魂神を生ませ給ひ、国土の基礎定まるを見すまして再び高照山北面の稚国原を修理固成すべく進ませ給ひしなり。本巻に於て其経緯を略序せむと欲す。 朝香比女の神及び女男四柱の神々が、万里ケ島を立ち去らむとし給ふや、田族比女の神は十柱の神々を率ゐて御来矢の浜辺まで馬上豊に見送らせ給ひ、訣別の御歌を互に交し給ひける。 茲に朝香比女の神は御舟に乗らせ給はむとして駒を下り、田族比女の神に対して御歌詠ませ給ふ。 『新しき国土の栄えを祈りつつ 別れてゆかむ西方の国土へ 田族比女御樋代神は平けく 安らけくませ国魂生ますと 四方八方の雲霧晴れて月日稚き 国土の栄の思はるるかな 顕津男の神にしあへば汝が神の 功を審さに語り伝へむ 美はしく雄々しくいます田族比女の 神の真心伝へまつらな 短かけれどこの新国土に留まりて 吾が魂線は足らひけるかな 御樋代神手づからたまひし宝石を 清き御魂と朝夕仰ぐも 曲津神荒び狂はむ事あらば 真火の力に追ひそけたまへ 海原の雲霧晴れて浪の秀は 天津日光にかがやき渡るも 別れゆく今日の名残は惜しめども 留まるよしなき吾なりにけり』 田族比女の神は酬の御歌詠ませ給ふ。 『雄々しくて優しくいます朝香比女の 神に別ると思へば悲しも 顕津男の神に吾事まつぶさに 宣らすと言ひし公に感謝す 此国土の千代の固めの宝なる 燧石をたまひし嬉しさに泣く 何よりの貴の宝よ燧石もて 治まる国土に曲神はなし 公が御行天津日光も祝ぎまして 大海原を晴らさせたまへり 朝宵に公の御幸を祈りつつ 神の御前に仕へまつらむ 万里ケ丘に公が記念と美はしき 宮居造りて仕へまつるも 八柱の御樋代神の天降りましし 此の島ケ根は特に尊し 万世に伝へ伝へて朝香比女の 御魂を祀り守り神とせむ 火の神と御名を称へて朝香比女の 大宮柱太しく仕へむ 永久に公が御魂を止めおきて この新国土を守らせたまへよ 千早振る神世も聞かず朝香比女の 八柱神のいでまし尊し 今日よりは御空の月日も光清く 照り渡るらむ公の御稜威に』 霊山比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『御来矢の浜辺に公を見送りて 名残惜しさに涙こぼるる 如何にしても止めむよしなき朝香比女の 神のいでたち惜しまるるかな 永久にこの新国土に御魂を 止めて吾等を守らせたまへ 新しき国土の宝を賜ひつつ 旅に立たすよ光の神は いざさらば潮の八百路も恙なく 進ませたまへ面勝の神』 輪守比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『天晴れ天晴れ光の神は帰りますかと 思へば惜しき今日の別れよ 田族比女神に賜ひし燧石は 公の光と千代を照らさむ 天地に又なき宝を賜ひつつ 出で立たす公を送る淋しさ 曲神は如何に伊猛り狂ふとも 光賜ひし国土はやすけむ 曲津見の伊猛り狂ふ暁は 焼き滅さむ山に火をかけて 百万の曲の猛びも何かあらむ ただ一点の真火の光りに』 若春比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『国土稚く春の陽気の漂へる 国土に仕ふる若春の神 若春の神も悲しくなりにけり 朝香の比女の旅立ち送りて 瑞御霊一日も早く天降りませと 伝へたまはれ面勝の神よ かくのごと雄々しく優しく美はしき 女神に別ると思へば悲しも 惟神また時あらば此の島に 天降らせたまへ光の女神よ』 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『天地の一度に晴れし思ひせし 公帰らすと思へば淋し 田族比女神に賜ひし御宝に 吾は仕へむ公と仰ぎて 万里の島の生の命の燧石こそ 千代万代の宝なりけり 国向の鋒にもまして尊きは 公の賜ひし燧石なりける』 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『久方の御空はさやかに晴るれども 吾魂線は曇らひにけり 幾千代も万里の島根におはしませと 祈りし心も夢となりしか 尊かる八柱神の天降りましし 万里の国原は輝きにけり 此の島の森羅万象おしなべて 今日の別れを惜しみつつなく 許しあればせめて西方の国境まで 御樋代神を送りたきかな 田族比女神の功は尊けれど 一入貴き公が御光 万世の記念と公が賜はりし 燧石は国土の光なるかも』 田族比女の神は朝香比女の神に向ひて御歌詠ませ給ふ。 『朝香比女神の神言よ直道比古の 願ひをつばらに許させたまへ 直道比古神の御供に仕ふるは 吾御手代と思し召しまして』 朝香比女の神は酬の御歌詠ませ給ふ。 『雄々しかる直道比古の真心を 吾嘉すれど許すすべなし 惟神神の定めし十柱の 万里の島根の柱ならずや 束の間も十柱神の欠くるあらば 万里の島根は又も動かむ 四柱の神を従へ出でてゆく 吾には何の艱みなければ 十柱の神を手足と朝夕を 国土生みの神業に使はせ給へ 御樋代神の御言葉否むにあらねども 万里の新国土思ふが故なり』 田族比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『明らけき公の言葉に照らされて 答の言葉吾なかりけり 御教を畏みまつり十柱の 神と諸共国土を拓かむ 直道比古の神よ心を落ち付けて 公の御教に従ひまつれよ』 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『二柱の女神の神言畏みて 高鳴る胸の火を鎮めなむ 万里の海は到る処に曲津棲めば 心し行きませ朝香比女の御神』 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『浪の音はいやさやさやに響かへど 心の海に浪たち騒ぐも 公が御舟かくるるまでも佇みて 見送る外にすべなかるべし 浪の上潮の八百路も安かれと 吾真心に祈るのみなる 果しなき広き稚国土万里ケ島の 記念と賜ひし燧石はも 田族比女神の御言葉をかしこみて 公が宮居を仕へまつらむ』 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『顕津男の神に会はすと出でたたす 公が旅路の遥けくもあるか 八潮路の潮の八百路も恙なく 進ませたまへ朝香比女の神 四柱の御供の神等おはしませば 心やすけく御舟を送るも をりをりは思ひ出して万里ケ島に 清き御魂を通はせたまはれ』 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『田族比女神の神言の真心に 別れの涙止めあへぬも 朝香比女神の神言の御尾前を 守り進まむ御心安かれ いろいろと生言霊のもてなしに わが魂線はよみがへりつつ なつかしき万里の島ケ根を後にして 潮の八百路を進みてゆかむ 此島は紫微天界の真秀良場と 千代に八千代に栄えますらむ 朝香比女の神に仕へて美はしき 万里ケ島根の国形見しはや いざさらば名残は尽きじ吾公の 御尾前守りて神国に別れむ』 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『幾年もこの島ケ根に村肝の 心清けく住ままく思ひし 吾公の御供なれば村肝の 心に任せぬ吾なりにけり 牛頭ケ峰白馬ケ岳に立つ雲を 遠行く舟に仰ぎて偲ばむ 霊幸はふ神世の初めの田族国と 吾は思ひぬ万里の島根を 雲霧を吹き払ひたる万里ケ島は 光にみつる貴の国原よ 吾は今光の国土を後にして 光の公と海原進まむ 田族比女神は光の神とまして 万里の新国土を照らさせたまへ』 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『新しき国土の光を見ながらに 吾は御供に仕へて行くも 鳥獣草木の端に至るまで なつかしく思ふ万里の島根は 森羅万象皆吾友と親しみし この新国土に別れむとすも 主の神の許しありせば吾も亦 この新国土に再び来らむ 田族比女神の神言の顔を いや永久に若く守らむ この島の別れにのぞみ田族比女の 神の優しさ若さを守らむ 十柱の神の御姿永久に いや若かれと吾は祈るも』 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『田族比女の神十柱の神いざさらば 名残を惜しみて今や別れむ 心若く永久にましませ万里ケ島の 守りの神と光らせたまひつ』 かく互に歌もて訣別の辞を述べたまひ、朝香比女の神初め四柱の神は駒諸共に磐楠舟にひらりと移らせたまへば、春とも初夏とも知れぬ陽気にみてる清しき風は忽ち吹き来り、艪櫂を用ひたまはぬに御舟は波上静に動き出でにける。 (昭和八・一二・二〇旧一一・四於大阪分院蒼雲閣加藤明子謹録) |
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霊界物語 | 78_巳_朝香比女の神の物語(葦原新国) | 02 波上の追懐 | 第二章波上の追懐〔一九五八〕 朝香比女の神の乗らせる磐楠舟は、薄霞棚引く初夏の海原を悠々として辿り行くを、御影の隠るるまで、田族比女の神の一行は名残惜しみつつ見送らせ給ひ、御歌詠ませ給ふ。 『天晴れ天晴れ光の神は出でましぬ 浪の秀隈なく照らし給ひつ 懐かしき光の神に永久に 訣別ると思へば悲しき吾かも 美はしき優しき雄々しき比女神の 御舟を送る悲しき吾なり 手をあげて訣別を惜しみ給ひつる 比女の優しき心ばせかも 顕津男の神の天降らせ給ひてし 思ひするかな比女の出でましは 顕津男の神に訣別るる身のつらさ 思ひ浮べて悲しき吾なり 此広き神国の親と選まれて 吾は悲しき今日に逢ひける 今よりは心の駒を立直し 比女の心に報ひ奉らむ 八潮路の潮の八百路の八潮路を 踏み分け出でます功尊き 永久に此島ケ根に宮居建てて 比女の御心安んじ奉らむ 片時も早く御舎仕へ奉り 比女の御魂を斎き奉らな 御姿はよし見えずとも神社に 御魂祀りて御功偲ばむ 刻々に遠ざかり行く御舟の 御影は吾を泣かしめにけり 万斛の涙湛へて御来矢の 浜辺に御舟を送り奉るも 主の神の定めと思へど今一度 会はまくほしき公なりにけり 八潮路の浪の秀の旅安かれと 神言宣りて御神に祈らむ』 輪守比古の神は海原を打見やりつつ御歌詠ませ給ふ。 『天晴れ天晴れ御舟は遠くなりにけり 吾は悲しさ弥まさりつつ 幾千代も公の御姿わが胸に 輝きまして忘れざるべし 今日の日は浪平かに天津日は うららに照れり御舟幸あれ 振返り振返りつつ出でませる 神の姿の優しくもあるか 高地秀の峰より天降りし神なれば 一入尊く御在ましける 御姿に再び見えむ術なしと 思へば今日の訣別惜しまる 果しなき大海原の浪別けて 進ます公の幸かれと思ふ』 霊山比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『御訣別余り惜しさに悲しさに われ言霊を参らせざりける 万里の島の光を賜ひし比女神の 出でまし送りて何か淋しき 朝香比女神の珍しき出でましに 稚国原はよみがへりたり 浪路遥かに御舟小さくなりにつつ 吾眼界を離れむとすも』 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『白馬ケ岳清き姿は弥永に 公の御行を送りまつらむ 吾眼小さくあれば公が行く 御舟は早くも見えずなりけり 白馬ケ岳の峰羨ましも比女神の 御行を永久に送りまつれば 御来矢の浜辺に立ちて送り奉る 御舟は早くも目路を離りぬ 永久に留まりたまへと祈りてし 光の公は帰りましける 此上は御樋代神に真心を 尽して国土に仕へまつらむ 此国土の宝と比女の賜ひたる 燧石の光に世をまもらばや』 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『此国土に光となりて天降りましし 神は情なく帰りましける 会ふ事の嬉しきものを今日はしも 悲しき訣別に御舟送るも 永久に忘れぬ公となりにけり 此稚国土に光を賜へば 朝夕に火の若宮に仕へつつ 公の功を讃へ奉らむ 心清く優しくまして雄々しかる 比女は真言の神なりにけり』 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『舷に打寄す浪の響さへ いや次々に遠ざかりける 輝ける白き優しき御面は 浪の秀高く隠れましけり 天津日の浪に沈ます思ひかな 光の神は目路を離れり 永遠に仕へ奉ると思ひてし 朝香の比女は此国土になし 田族比女神の神言に畏みて 吾は朝夕仕へまつらむ 白馬ケ岳の醜の曲津も比女神の 功に驚き逃げ失せにけむ 牛頭ケ峰白馬ケ岳の頂を 振返りつつ御覧すらむ 白馬ケ岳の麓に小さき吾ありと 偲ばせ給へ朝香比女の神』 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『今となりて惜しみ奉るも詮なけれ 只真心を捧げ御魂に仕へむ 御舟の影さへ見えず歎かひの 涙しげしげまさり行くかも 此島の森羅万象おしなべて 公に名残を惜しみつつ泣かむ 百草の花も萎れて今日の日の 浜辺の訣別惜しむがに見ゆ 御空行く陽光も薄ら曇らひつ 今日の訣別を惜しませ給へる』 山跡比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『天も地も照らして隈なき比女神の 御姿今は見えずなりける せめてもの記念と賜ひし燧石は 万里の神国の光なるかも 宝石の光は如何に貴くとも 国土を救はむ代にはならず 奉るものもなければ止むを得ず 卑しき宝を奉りける 心よく受けさせ給ひし比女神の 優しき心を忝なみ思ふ 如何にせむ光の神は帰りましぬ 万里の海原の浪踏み別けて 永久に公の功を畏みて 火の若宮に仕へまつらむ』 千貝比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『国土稚き万里の島根に吾ありて 今日の悲しき訣別に遇ふも 懐かしく優しく雄々しき比女神に 吾魂線はいつかひにけり 吾魂は公の御身にいつかひて 海原遠く守り行くらむ 御功の尊くませば比女神の 霊衣は広く四方を照らせり 真心の尊さ始めて覚りけり 御身に溢るる貴の光に 天も地も公の宣らする言霊に 従ひまつると思へば畏し』 湯結比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『今日よりは比女の賜ひし燧石の 功に清き湯をむすぶべし 朝夕に火の若宮に仕ふべく 御湯をむすびて禊せむかな みはるかす大海原は広らかに 御舟の影も見えずなりける いざさらば田族比女の神の吾公よ 万里の聖所に帰りまさずや いつまでも浪の秀見つつ偲ぶとも 詮なきものを早や帰りませ』 茲に田族比女の神一行は、目路を離りし御舟に諦めの心を定め、雄々しくも駿馬の背に跨り蹄の音も勇ましく、其日の黄昏るる頃、無事万里の丘の聖所に帰り着き給ひ、時を移さず夜を日に継いで火の若宮の工事にかからせ給ひけるが、旬日ならずして神の幸ひ弥厚く、荘厳なる若宮は築かれにける。 茲に湯結比女の神は朝夕火の若宮に仕へまし、主の神を始め火の神と称へまつりし朝香比女の神の生魂に白湯を沸かして笹葉に浸し、左右左に打振り朝々の身魂を清め御湯を御前に奉りて忠実に仕へ給ひける。是より今の世に到るまで何れの神社にも御巫なるものありて、御湯を沸かせ、神明に奉る事とはなりたるなり。 朝香比女の神は御来矢の浜を立出で給ひ、御舟の中より田族比女の神の一行に訣別を惜しみつつ、振返り振返り御手を挙げさせ給ひ御歌詠ませ給ふ。 『天晴れ天晴れ御樋代神の現れませる 万里の島根に訣別れむとすも 神々の優しき心に絆されて 思はず月日を重ねけるかも 永久に住みたく思へど主の神の 依さしに背く術なき吾なり 雄心の大和心を振り起し 惜しき訣別を告げにけるかな いつまでも訣別るる機会のなかるらむ 雄々しき健き心持たずば 神々の心知らぬにあらねども 神業思ひて吾は訣別れし 神々は浜辺に立ちて吾舟を 心優しく見送り給へる 万世の末の末まで忘れまじ 真言輝く神々の心は 百年の親しき友に会へる如 隔てなかりし神々を思ふ 吾舟は浪路遥けくなりにける 島の神々安くましませ 真鶴の声も悲しく聞えけり 万里の新国土去らむと思へば』 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『二柱比女神等の神宣 聞くにつけても涙ぐまるる 斯の如優しき清き神々の 生言霊を聞かざりにけり 比女神は斯くあるべきを大方の 心は嫉み妬みに満つるも 御樋代の神と神との言問ひの 其優しさに涙ぐまれつ 御来矢の浜辺にはろばろ見送りし 神の優しき心ばせを思ふ 地稚き国土を拓かす苦しさを 思へば吾は心畏む 真心の限りを尽し愛善の 道に進ます百神天晴れ 吾舟は浪の秀遠く離りつつ 浜辺に立たす神見えまさず 次々に舟遠ざかり行く海原に 益々近く親しき神々よ 神々の御姿見えなくなりにけり 白馬ケ岳の峰は光りつ 白馬ケ岳聳立つ国土におはします 神々等の御姿なつかし』 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『広き稚き国土は吾目路離りつつ 白馬ケ岳の峰のみ光れる 万里の海に浮べる万里の生島は 永遠に栄えよ天地と共に 刻々に遠ざかり行く島ケ根を 懐かしみつつ吾は行くなり 果しなき此海原の中にして 万里の島根は恋しき国土なり』 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『御樋代の神に仕へて万里ケ島の 聖所に清く吾は遊びぬ 草も木も百鳥千鳥も稚国土の 春をうたひて長閑なりけり 雲霧も隈なく晴れて天津日の 御影清しき万里の国土はや 御樋代の神御自ら御来矢の 浜辺に公を見送りたまひし 吾舟は浪の鼓を打ちながら 比女に訣別を告げにけらしな 比女神の優しき姿目に浮きて 忘れぬ君となりにけらしな 顕津男の神に見合ひす其日まで 若く優しくいませと祈るも』 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『天も地も晴れ渡りたる海原を 公に訣別れて行くは淋しも 比女神を始め十柱神等の 優しき心仰がるるかな 優しくて雄々しくいます神々は 醜の曲神を退ひ給ひし 漸くに御来矢の浜も遠くなりて 白馬ケ岳はひとりかがよふ 吾舟は太平の浪を辿りつつ 公を守りていや進むなり 海原を包みし霧も晴れ渡り 楽しき今日の舟の旅かも』 (昭和八・一二・二〇旧一一・四於大阪分院蒼雲閣森良仁謹録) |
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霊界物語 | 78_巳_朝香比女の神の物語(葦原新国) | 19 春野の御行 | 第一九章春野の御行〔一九七五〕 茲に鋭敏鳴出の神は建国祭の祭典を終りたるより、再び光となりて数多の従神を伴ひ、紫の雲に乗りて宇宙をウーウーウーと生言霊も爽かに響かせながら天の一方に御姿を隠し給ひける。其雄々しき厳しき御有様を打仰ぎつつ感激の余り、葦原比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『天晴れ天晴れ光となりて鋭敏鳴出の 神は御空に帰りましける 朝夕に葦原の国土を守らすと 宣らせし言霊尊くもあるか 鋭敏鳴出の神のいみじき言霊に 醜の曲津は姿を隠せり 鋭敏鳴出の神の功と朝香比女の 神の光に生れし国土はも 久方の空行く月も光冴えて 葦原の国土に恵の露垂る 天津日の光に森羅万象生ひ育ち 月読の露に生命を養ふ 月も日も星もさやけき葦原の 国土の御空の高くもあるかな 今日よりは天津神等国津神 司率ゐて国土を固めむ 鋭敏鳴出の神の御魂と朝香比女の 神の御魂を宮居に斎かむ 主の神の御殿の右に鋭敏鳴出の 生言霊を祀り仕へむ 大殿の左の清き聖所に 朝香の比女の御魂斎かむ 三柱の神の御魂を永久に 斎きて国土の守りと崇めむ 朝香比女の御魂を斎く神社に 国土の宝の燧石ををさめむ 葦原の国土の礎固まりて 三柱の神の御魂光るも 永年を吾艱みたる醜神も 姿失せにつつ楽しき今日なり 吾力及ばざるため醜神の 醜の荒びに任せけるはや 今日よりは三柱神を斎かひて 生言霊の光照らさむ 神々は力を合せ心ばせを 一つになして神世に尽せよ 新しき常磐ケ丘の大宮に 吾鎮まりて国土拓かばや 惟神神の功の貴ければ 葦原の国土は常世なるべし 弥永久世弥永と拓け行かむ 三柱神の貴の守りに 大宮に十曜の神旗翻り 神世の栄えを照らし居るかも』 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『神々の功によりて葦原の 国土生れたる今日ぞ目出度き 鋭敏鳴出の神は御空に帰りましぬ いざ吾立たむ国土生みの旅に 葦原の国土の栄えも見えければ 吾は是より公に別れむ 葦原比女神の神言よ永遠に 恙あらせず栄えさせ給へ 天も地も晴渡りたる今日の日を 旅立つ吾の心は勇むも 別れ行く今日の名残の惜しけれど 国土生みの旅は留まる由なき 今よりは又も曲津の荒ぶなる 万里の海原浪分け進まむ』 葦原比女の神は再び御歌詠ませ給ふ。 『願はくは公の出立ちを浜辺まで 送らせ給へ許したまはれ 亡び行く国土を生かせし神故に 一入吾は別れ惜しまる 雄々しくて優しく清しくおはします 公に別るる今日の悲しさ』 茲に朝香比女の神一行の御供として、葦原比女の神は十柱の天津神国津神等を率ゐて、朝香比女の神の御舟を繋ぎし常磐の浜まで御見送り申すべく続かせ給ひける。 初頭比古の神は先頭に立ちて、生言霊を宣り上げ給ひつつ御歌詠ませ給ふ。 『万里の海原渡り来て グロスの島に上陸し 天地に塞がる悪神の 醜の黒雲吹き払ひ 沼底深く潜みたる グロノス、ゴロスを追ひ散らし 茲にグロスの新島は 月日も清く輝きて 常世の春は生れたり 百花千花は咲き匂ひ 小鳥は歌ひ蝶は舞ひ 桜ケ丘の聖所は 梅桃桜一時に 咲き匂ひつつ天国の 光景を忽ち現したり 朝香の比女神諸共に 桜ケ丘に花を愛で 三日三夜を逗留し 忍ケ丘に引返し 茲にいよいよ葦原の 稚き国原生れけり 此島ケ根に永遠に 住ませ給へる神々は 国土の生れを言祝ぎて 彼方此方ゆ寄り集ひ 歓呼の声は天に満ち 地上を流れて果もなし いよいよ国形定まりて 吾等は公を守りつつ 再び万里の海原を 雲霧分けて進まむと 今日の生日の出立ちを 送り奉ると宣り給ひ 葦原比女の神司 諸神等を従へて 公の御行を送ります 其真心は天地に 響き渡りて天津日は うららに照らひ昼月の 光は清しく冴えにつつ 大野を渡る春風は 真綿の如く軟かに 百鳥千鳥虫の音も 弥新しく冴えにつつ 常世の春をうたふなり ああ惟神々々 今日の御行に光あれ 今日の御行に幸あれよ。 朝香比女神の御尾前に仕へつつ 葦原の国土を別れむとすも 珍しき春の眺めにひたされし 葦原の国土はなつかしきかも 御樋代神の優しき心に包まれて 思はず知らず日を経りにけり 空高く地亦広き新国土の 山野に別るる惜しき今日なり』 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『果しなき大野ケ原に駒並めて 進むも楽し常磐の浜辺に 野の奥に陽炎燃えてそよそよと 面吹く風は春をひびかふ 梓弓春の弥生の大野原を 吾は霞とともに立つなり 雲の奥霞の果も葦原比女の 神の知らさむ食国天晴れ』 葦原比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『尊しや朝香比女神の御後辺に 従ひて行く今日の嬉しさ 朝香比女神の後姿仰ぎ見れば 御身隈なく光にませるも 御姿は光となりて葦原の 国土の天地を照らし給ひつ 朝香比女神の光に比ぶれば 吾は小さき螢火なるも 螢火の吾に賜ひし燧石こそ 吾に光を賜ひたるなり 賜ひてし燧石の功に吾魂は 光放ちて国土を治めむ 乱れたる吾世を清く生かしたる 公は惜しくも帰らむとすも 朝香比女神の恵を忘れじと 神社建てて永遠に斎かむ』 野槌比古の神は馬上豊かに御歌詠ませ給ふ。 『御樋代の葦原比女に仕へつつ 光の公を送る嬉しさ 御樋代の神は神国に止まらで 遠く行かすか名残惜しきも 大野原吹き来る風もなごやかに 光の公を静かに送るも 百鳥も公の出でまし惜しむにや 木々の梢に鳴き叫ぶなり 草の根に潜みて鳴ける虫の音も 今日は淋しく聞え来るかも 天も地も森羅万象もおしなべて 公の旅立を惜しみ歎ける』 高比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『駒並めて帰り行きます御光の 神を送りつ悲しき吾なり 御光の神現れしより葦原の 国土新しく生れ出でしよ 高比古は光の神の恵にて 御側に仕ふる神となりけり 御光の神の恵は永遠に 天地失するも忘れざるべし 天は裂け地は沈むとも御光の 神の恵は如何で忘れむ 諸々の国津神等も御光の 神の功に蘇りつつ 此島に生きとし生ける悉は 神の恵に霑はぬはなし』 照比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『雲霧も隈なく晴れて照比古の 吾は御側の神となりける 御光の神を送りて駒の上に 名残の涙せきあへぬかも 御光の神天降りしゆグロスの島は 弥新しく蘇りたる 道遠み駒の脚並早くとも 浜辺に着かば日は黄昏れむ 彼方此方と大野ケ原にそそり立つ 常磐の松の光新し』 清比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『天も地も澄みきらひたる大野原を 公を送ると駒に鞭うつ 葦原比女神に親しく仕へつつ 光の神を送る楽しさ 紺青の底ひも知らぬ空の海を 昼月の舟は冴え渡るなり 天津日は御空に清く輝きて 光の神の御行守れり 足引の鷹巣の山の空晴れて 公の御行を遥かに拝む 陽炎の燃ゆる春野を進み行く 駒の蹄の音の清きも』 晴比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『雲霧も光の神の功績に 隈なく晴れし葦原清しも 葦原の国土の柱と任けられて 光の神を今日送るかも 神業の沢におはせる御光の 神を留むる由なき吾なり 朝香比女神を送りて春の野を 駒に進めば陽炎燃ゆるも 有難き神世は漸く生れたり 朝香の比女の現れませしより』 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『主の神の経綸の糸に操られ 新しき国土の国形見たりき 鋭敏鳴出の神の功と吾公の 貴の光に驚きしはや 吾魂は蘇りたる心地して 今日の御行の御供仕ふる 葦原の国土の天地は清まりて 御空に冴ゆる昼月の光 天津日の光は清し葦原の 国土を隈なく照り渡しつつ』 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『梅桜桃の花咲く稚国土に 吾楽もしく蘇りけり 非時に梅も匂へよ桃も咲け 桜も散らで神国を祝へ 名残惜しき神々等に別れ行く 今日の広野の旅は淋しも グロノスやゴロスの曲の亡びたる 鏡の沼を思へば恐ろし 醜草を焼き払ひたる島ケ根を 旅行く駒は安かりにけり』 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『天晴れ天晴れ澄みきらひたる稚国土の 野辺を渉りて帰り路につくも 鋭敏鳴出の神の守らす吾公の 功思へばひたに尊き 吾公と共にしあれば曲津見の 伊猛る国土も恐るることなし 磐石の上に佇む心地して 吾は朝夕御供に仕へつ』 真以彦は歌ふ。 『真以彦吾も後方に従ひて 光の神を送り奉るも 地に降り国津神等と倶に住む 吾心安くなりにけらしな 雲の上にありし吾身も荒金の 地に降りて覚る楽しさ 卑しかる吾身なれども御光の 神の御行を送る畏さ』 成山彦は歌ふ。 『成山彦吾は神言を畏みて 卑しき身ながら公を送るも 荒金の地に親しむ身となりて 吾魂線の安きを楽しむ 二柱御樋代神の後辺に 仕へて道行く今日の嬉しさ 国津神の卑しき司も捨てまさず 御供に召さす神の尊さ 天も地も睦び親しみ葦原の 国土拓けとの御心なるかも』 霊生彦は歌ふ。 『村肝の心曇りし吾にして 御供に仕ふる畏さ思ふ 国津神の司となりし吾にして 今日の御行を送る嬉しさ』 栄春姫は歌ふ。 『北の国土の神の司の吾ながら 忝なくも御供に仕ふる 葦原比女神の恵は永久に 忘れざるべし真心尽して 国津神の司となりて村肝の 心はややに落付きにけり』 八栄姫は歌ふ。 『忍ケ丘を廻れる近き国土の長と 吾任けられて嬉しさに叫ぶ 何事も神の依さしの儘なれば 吾は嬉しく仕へ奉らむ 二柱御樋代神を守りつつ 御供に仕ふる嬉しさに泣く』 斯く天津神国津神等は各自御歌詠ませ給ひつつ、其日の黄昏るる頃、漸くにして常磐の浜辺に近づき楠の森に着かせ給ひ、茲に一夜の露の宿を定め給ひける。 (昭和八・一二・二三旧一一・七於大阪分院蒼雲閣森良仁謹録) |
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霊界物語 | 78_巳_朝香比女の神の物語(葦原新国) | 25 歓の島根 | 第二五章歓の島根〔一九八一〕 国津神夫婦は始めて真火の燃え立つ状を見たる事とて、忽ち風に吹かれて燃え拡ごる猛火に驚嘆の余り卒倒し、暫し息も絶え絶えに見えけるより、初頭比古の神は側近く寄りそひ、天の数歌を数回繰り返し歌ひけるにぞ、夫婦はやつと気を取り直し、頭を擡げ驚きの涙を絞りながら、 『斯の如はげしき神に在すとは さとらざりけり許させ給へ 国津神はみな穴住居真火に焼ける おそれなけれど恐ろしと思ふ』 初頭比古の神はこれに答へて御歌詠ませ給ふ。 『国津神の驚き宜よこの真火は 歎の島の初光なる みるみるに大野ケ原の雑草は 燃えつくされて塵も留めず 曲津見は真火の焔に焼かれつつ あるひは亡びあるひは逃げむ この国土に真火の恵を与へむと わが公は燧石を持たせ給へり』 島彦は喜びて歌ふ。 『ありがたき天津御神の神宣に われは命の安きを得たり 今日よりはこの島ケ根の国津神の 生きの命は永く栄えむ 国津神の住む丘の辺は濠深く めぐらせ水を湛へてゐるも 火の力如何に激しく燃ゆるとも わが住む家は恙なからむ 朝夕に八十の曲津見は襲ひ来て 吾等が命を脅かしつつ 千頭の神を一日に呑みつくす 大蛇の荒びはおそろしかりけり 国津神は歎きかなしみ天地を 祈れど神にとどかざりしよ わが前に真言の天津神の光 伏し拝みつつ蘇りけり 今日よりは日々の業をば喜びて 働き暮さむ国津神等は』 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『朝夕に主の大神を斎きつつ すべなき神に願ぎごとするな 天地の中には善神邪神あり 邪神を祀りて禍まねくな 朝夕に生言霊を宣りあげて 禊の神事を怠るなゆめ 神言と禊の神事は国津神の 永久の命の鍵なりにけり 何事をなすにも天津主の神の 御許しを得て事に当れよ この島は邪神を祀りて曲津見の 禍時じく受け居たるなり この島の真秀良場選りて主の神の 貴の御舎仕へ奉れよ 何よりも先づ第一に主の神を 麻柱ひ奉りて世に栄えし わが賜ふこれの燧石は曲津見の ひそむ荒野を焼き放るなり 国津神の日々の食物にことごとく 味はひ与ふる真火なりにけり 国民の日々の食物は悉く 真火にあぶりて食ふべきなり』 島姫は喜びて歌ふ。 『天晴れ天晴れ島の命を賜ひけり 真言の神を斎けと宣らしつ 曲津見と知らずに今まで斎きたる わが愚さを今更悔ゆるも 国津神も今日より真言の主の神を 斎かせ申さむ教へ導きて 曲津見の荒びを退へと燧石 手づから賜ひし神の尊さ この島の宝となして斎くべし 光の神の御魂と共に 食物をあぶりて食へと宣らします 神の尊き神宣かも 三千方里の広きに住める国津神も 真火の恵に浴して栄えむ』 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『放ちたる真火は次ぎ次ぎひろごりて 大野を遠く舐め尽しけり 曲津見はのたうち廻り忽ちに 雲を起して逃げ去りにけり この島に曲津見のかげの失するまで 生言霊のつとめ忘れな 神言の力は総ての曲津見を 払ひて国土を生む力あり』 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『この島に光の公の現れまして 森羅万象は蘇りたり 恐ろしき歎の島も今日よりは 千代に歓の島と生れむ 御樋代の尊き神の御影を 忘れず斎け国津神等 わが公はまたもや海路を打ち渡り 旅に立たせば御魂を斎けよ』 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『一夜をこの島ケ根に宿りして 国津神等を照らしけるかも 御光の神にしあれば歎かひの 島根も今日より照り渡るなり 月清く日は明らけく永遠に 照らふ光の神国と栄えむ』 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『歎かひの島の生きたるさまを見て 光の神の功をおもふ』 斯く神々は国津神夫婦に種々の教訓を施し、燧石を与へて松の樹蔭より再び浜辺に引き返し磐楠舟に駒諸共に乗り込み給ひ、万里の海原に浮びつつ、曲津見の伊猛る西方の国土をさして進ませ給ひける。 (昭和八・一二・二五旧一一・九於大阪分院蒼雲閣内崎照代謹録) |
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霊界物語 | 80_未_予讃の国の水奔鬼の物語 | 18 大挙出発 | 第一八章大挙出発〔二〇二二〕 水上山の神館の執政を勤むる巌ケ根は、高光山以西の国形を視察せしむべく、第四男の冬男を一人遣はしけるが、数多の月を閲して何の消息もなきままに、稍不安の念を起し、水音、瀬音の重臣と共に、鳩首謀議の結果、第三男の秋男に、松、竹、梅、桜の四柱の従者を従へ、冬男の在処と国形の視察を兼ねて出発を命じたりしが、これまた弓弦を離れし矢の如く、行つたまま何の消息もなく、再び水上山の神館は憂ひに沈み、三度御子を派して調査せしめむと事議る折しもあれ、東南の方に当つて、夜は火光百里の地上を照したる火炎山は、轟然として爆発したる其物音に、水上山の館まで地鳴震動甚だしく、人心兢々たりける。 茲に巌ケ根を初め重臣等は、二人の御子の安否を憂ひ、大挙して其消息を探るべく、春男、夏男を初め、水音、瀬音其他の供人を数多引き連れ、第三回目の調査に向ふべく決定したり。 出発に臨み、巌ケ根は斎主となり、其他は後に従ひて、天津神を祀りたる神殿に額づき、種々の美味物を奉り太祝詞言を宣りける。その祝詞に言ふ。 『掛巻も綾に畏き、高日の宮に鎮まりいます主の大御神、高鉾の神、神鉾の神の三柱の大御前に、水上山の館の執政巌ケ根は、ここに謹しみ敬ひ、恐み恐みも願ぎ白さく。 抑も此の葭原の神国は、御樋代の神朝霧比女の神の永久に鎮まりまして治め給ふ神国にして、賤しき吾等も高光山を限りとして、予讃の国原を治むべく、御樋代神の神言かかぶりて、日に夜に国安かれと心を尽し身を尽し、国の政治に仕へ奉りける。 予讃の国土は地未だ稚く、種々の物全く調はず浮脂の如くあれば、国形視せしめむと第四の御子冬男を遣はしけるに、数多の月を閲すと雖も未だ復命白さず、若しや若し大御神の御心に叶はずて、道の隈手にさやる曲津神有りて損ひたるにやと、心も心ならず各自の司等と事議り、神前に願ぎ白して、第三男の秋男に、松、竹、梅、桜の四柱を添へ、再び国形を視極め、冬男の在処を明らめむと、過ぐる日此館を立ち出でけるに、今におきて何の復命もなさず、司等は心を悩め奉る折もあれ、予讃の国の真秀良場に峙てる火炎山は、天地をどよもして、頂より麓まで打ち破れけるにや、朝な夕なに望みてし其影も見えず、光も消え失せければ、尋常ならじと思ひ奉るが故に、三度茲に事議りて、二人の御子が在処を探し求め、国形視るべく、春男、夏男に水音、瀬音の司を従へさせ、百神たちを率ゐて、今日の吉日の吉時に、神国の為に旅行かむとす。 仰ぎ願はくば、主の大御神、𪫧怜に委曲に聞食し給ひて、今日の出立ちは道の隈手も恙なく、喪なく事なく、最速かに復命白させ給へと、海川山野の種々の御幣帛を百取の机に横山の如く置足はして献るさまを、平けく安らけく聞食せと、鹿児自物膝折伏せ、宇自物頸根突貫きて、恐み恐みも願ぎ奉らくと白す。惟神霊幸倍坐世、惟神霊幸倍坐世』 斯く奏上終り、恭しく礼拝し、神殿を降り、再び一同は執政殿に集り、首途を祝し且事議りける。 巌ケ根は歌ふ。 『二柱御子は帰らずなりにけり 神の御旨に叶はざりしか。 老の身の力と頼む二人の子の 行方思へば心さわぐも。 音に聞く水奔草は行く道に 茂りて人を損ふとかや。 水奔草に当りて亡せし水奔鬼の 禍なすと聞くぞ忌々しき。 一年を過ぐれど冬男は帰り来ず 心もとなきわが思ひかな。 過ぐる秋再び秋男に言依さし 国形視るべく旅立たせけり。 冬近み木枯吹けどわが御子の 便りのなきは憂れたかりけり。 松、竹、梅、桜の四柱添ひながら 今に便りのなきはいぶかし。 火炎山爆発したるか天地は どよみて山の影は失せたり。 火炎山変動見るより一入に わが魂はなやましきかな。 かくならば春男、夏男を始めとし 水音、瀬音も行きて調べよ』 水音は歌ふ。 『宜ようべ巌根の君の御言葉に 如何で背かむ急ぎ旅行かむ。 再びの使は復命あらず 心もとなきこれの館よ。 水奔鬼の為に生命を果敢なくも 亡せ給ひしか心もとなし。 葭草に混りて茂る水奔草の 禍多しと吾も聞きつる。 湿り地に茂れる葭草醜草の 隙間に棲めるイヂチの害虫。 草枕旅行く人の足噛みて 倒すイヂチの多しとぞ聞く。 兎も角もかくてあるべき時ならず 急ぎ進まむ御後たづねて』 瀬音は歌ふ。 『執政の君よ暫しを待たせ給へ 国形視つつ御後調べむ。 何かしら心落ちゐぬ今日の日を 神に祈りて旅立ちせむかな。 葭原の彼方此方の丘の辺に 水奔鬼棲むと伝へ聞き居り。 如何ならむ艱み来るも此度は 神の恵に打ち破り行かむ。 わが行かば淋しかるべし巌ケ根よ 神に祈りて安く坐しませ』 春男は歌ふ。 『父上の御言畏み出で行かむ 百の司をわれ伴ひて。 火炎山跡形もなく消え失せぬ 予讃の国原さやぎてあらむ。 兎に角に予讃の国原治むべき 勤めを持てる水上の館よ。 御樋代の神の神言に報ふべく 如何なる悩みも凌ぎ進まむ。 弟は水奔鬼または曲鬼に 生命を奪はれたるにあらずや。 よしやよし弟の生命あらずとも 吾は進まむ高光の山まで。 高光の山に進みて此状を 御樋代神に具に伝へむ』 夏男は歌ふ。 『木枯の吹き荒ぶ野を分けて行く 吾等が旅に幸あれと祈る。 父君に別れを告げて出でて行く われも神国の為なればなり。 葭原の国形視つつ弟の 行方を探す今日の旅かな。 水上山尾の上の尾花靡きつつ わが旅立ちを惜しむがに見ゆ。 山萩も桔梗も散りて淋しげに 尾花は風に靡きけるかも。 虫の音もかすかになりて野路を吹く 風は漸く冷え渡りけり。 いざさらば神の恵に守られて 立ち出で行かむこれの館を』 巌ケ根は両眼に涙を浮べながら歌ふ。 『勇ましや春男、夏男の旅立ちを 国土の固めと思へば嬉しき。 水音や瀬音の司春、夏の 二人を守り安く行きませ。 木枯の風の冷たき冬空を 分けて進ます君ぞ雄々しき。 水上の館に心かけずして 進ませ給へ司々等』 水音は声を曇らせながら、 『いざさらば君に別れむ国の為 曲津の荒ぶ荒野をさして』 瀬音は歌ふ。 『村肝の心なやまし給ふまじ 大丈夫吾等が行手幸ならむ。 御樋代の神の神言に報いむと 出で行く道に曲津のあるべき』 と歌ひ終り、一行四人は数多の供人と共に、木枯吹き荒ぶ野路を、東南に進路をとり勇み進んで出で行きぬ。 春男は木枯荒ぶ葭原を、右に左に分けながら、折々水上山の館を振りかへり振りかへり行進歌を歌ふ。 『秋も漸く暮れ果てて 冬の初めとなりにけり 水上山は屹然と 吾行く後に輝けり 恋しき父は如何にして いますか知らず吾々の 行く手を案じわづらひつ 天津御神の御前に 祈らせ給ふか尊しや 秋は漸くつきはてぬ 木枯寒き冬の日を 迎へて進む淋しさよ 秋男、冬男の身の上を 思へばなほも淋しけれ 天に聳えて輝きし 火炎の山は影もなく 夜半を照せし大火光 今は全く消えはてぬ 葭草醜草生ひ茂る 野路行くわれは露をだも 厭ふ心地し出でて行く ああ惟神々々 わが旅立ちに幸あれや わが行く道に光あれ 如何に悪魔は猛るとも 毒虫しげくさやるとも 神の光を力とし 弛まず屈せず進むべし 父の御言をかがふりて 国形視むと出でて行く 高光山は嶮しくも 葭原国は広くとも 月日重ねて進みなば いと安からむ惟神 神のまにまに進むべし 吾等は神の子神の宮 如何に恐れむ大丈夫の 弥猛心の一筋に 初心を貫き大前に 復命せむ此旅路 守らせ給へ天津神 国津御神の御前に 畏み畏み願ぎ奉る』 夏男は歌ふ。 『秋男、冬男は今何処 一年余りを経たる今日 何の便りもなくばかり 探ね行く手はぼんやりと 所定めぬ淋しさよ 冬は漸く来向ひて 百の木草は紅葉なし 虫の音さへも細りけり 葭の枯葉は暗きまで 大地を包み毒草の 水奔草は枯れはてて 根元に潜む毒虫は 次第々々に殖えて行く 冬の旅こそ淋しけれ 神の恵のあらざれば 如何で一歩も進めむや 守らせ給へ天地の 神よ御樋代神様よ 神国の為に進み行く われ等が道に隈もなく 喪なく進ませ給へかし ああ惟神々々 恩頼を願ぎ奉る』 水音は歌ふ。 『冬さり来れば山川の 水音さへも声潜め 辺り淋しく木の葉散り 裸木諸所に震ふなり 御空の月も白々と 凍るが如き冬の夜の 霜踏み分けて進み行く 枯野ケ原は物凄き 火炎の山は消え失せて あやめも分かぬ夜の道 最早一歩も進み得ず 幸ひこれの森かげに 一夜の露の宿りして 豊栄のぼる天津日の 光りを力に進むべし 猛獣毒蛇のはびこれる これの原野は殊更に 危ふからむを方々よ 御心如何にすくすくと 応へを宣らせ給へかし ああ惟神々々 神の御前に願ぎ奉る』 瀬音は歌ふ。 『水上の山を立ち出で冬の野の 繁樹の森にたそがれにけり。 火炎山光りなければ止むを得じ 此森かげに一夜を明さむ。 何となくうら騒がしき夕なり 如何なる曲津の襲ひ来るにや。 二柱御子を探ねて進み行く 今日は悲しき旅なりにけり。 木枯の吹き渡り行く音聞けば 冬の心の淋しかりけり。 月舟は御空にふるひ虫の音は 草の根に鳴く冬の夕暮。 淋しきは冬の夕の旅衣 袖に降り来る涙の雨なり』 茲に一行は茂みの森蔭に立ち寄り、淋しき木枯に吹かれながら身を一所に集め、明日の旅立ちの事など心の中に思ひ悩みながら、漸く寝に就きける。 此辺りは火炎山の陥落により、猛獣毒蛇の傷つけるもの数多集り来れる場所なりければ、夜もすがら嫌らしき呻吟声と、異様の不快なる空気は漂ひにける。 (昭和九・七・三〇旧六・一九於関東別院南風閣白石恵子謹録) |
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伊都能売神諭 | 神諭一覧 | (年月日不明) | (年月日不明) 艮の金神国常立尊が、天の御三体の大神様の御命令を戴きて、三千世界を立直し致すに就ては、ミロクの大神様の御加護を戴かねば物事成就いたさんから、因縁のある身魂変性女子を表はして、大正五年辰の年旧三月三日に、大和国畝火の山を踏〆さして、世界立直しの守護が致してあるぞよ。畝火の山は出口に因縁の深き神山であるから、昔から土米が竜神の守護で生出して在りたなれど、神界の都合に依りて変性女子に守護を命して、肝川の深山八大竜神に土米の御用を仰せ付けたので在るぞよ。沢山の土米が出来ると申して一粒でも粗末に致されぬぞよ。大本の許し無きことには、一粒でも勝手に拾ふ事は成らんから、我を張りて拾ふなら拾ふて見やれ、神界の仕組の土米であるから、是からは厳しき戒めを致すぞよ。昔から元伊勢、丹後の比沼真奈為の宮に生出してありたなれど、明治四十五年の三月八日に出口直が、伊勢の内宮、外宮、加良洲の宮へ御神霊を御迎い致してから、丹後には今迄のやうには生出ぬやうに成りたぞよ。チツト斗り種は遺してあれど、土米の神力はモウ無くなりて居るぞよ。是も深い神界の仕組であるから、人間界では解る事で無いぞよ。 大正五年の旧五月五日には、変性女子の身魂に、昔から永らく世に隠れて守護を致して居りた、坤の金神の住居を致した播州の神島が開かしてあるが、人民からは左程にも無い御用の如うにあれども、神界では大変な神業でありたぞよ。朝日の直刺す夕日の日照す高砂沖の一島一つ松、松の根本に三千世界の宝いけおくと、昔から言伝へさして在りたが、今度は瑞の御魂の肉体を使ふて、三千世界の宝を掘上げさしたぞよ。その宝と申すのは、斯世を水晶の松の代、神世として治め遊ばすミロクの大神様の事で在りたぞよ。その年の九月九日に艮の金神国常立尊が、変性男子の身魂出口直に懸りて、二代三代を引連れ艮めを刺して参りたのも、深い経綸のある事ぞよ。斯の因縁もモウ少し致したら分けて見せるぞよ。大正五年辰の年五月午の月の八日に、変性女子が全部と現はれて、女神の姿になりて、大本へ参りた折、出口直は変性男子国常立尊と表はれ、海潮は変性女子豊雲野尊と現はれて、昔の神代から沓島と神島へ別れて落ちて居りた夫婦の神が、竜宮館の高天原で再会の祝に盃がさして在らうがな。其日から変性女子の身魂には、坤の金神と豊雲野尊が守護致したから、段々と緯の御用が表はれて、ボツボツと神界の経綸が出来かけて来たので在るぞよ。此の大本は明治二十五年から申してある如うに、男子と女子の経緯が揃はねば何事も成就いたさぬのであるぞよ。坤の金神の身魂には、変性男子と女子との御用を勤めて貰はな成らんから、是からは今迄とは海潮は忙がしうなりて、苦労が段々殖へて来るから今迄の身魂では能う忍耐んから七十五日の神から修行をさしたのであるぞよ。この先きは変性女子の教祖と致して、男子の直系の二代三代の後見を致さすのであるから、坤の金神の女子は一代の役であるから、此の次第を取違ひ無きやうに気を付けておくぞよ。今が艮めの肝腎要めの大事の場合であるぞよ。艮の金神は誰にも憑ると云ふ事は出来ぬなれど、天から守護いたして海潮に筆先をかかして置くぞよ。同じ筆先の書き様であるから、今までの男子の筆先も矢張り変性女子が書いて、男子の筆先にいたして、居りたじやろと、疑ふ人民が沢山に出来るなれど、夫んな事に気を掛けて居りたら、物事が成就いたさんから、ドシドシと女子に筆先を書して、三千世界を開くぞよ。出口直の八人の御児と、今までの筆先に出して在るのは、八柱の金神大将軍の事でありたぞよ。この八人の御児が今度は二度目の天之岩戸開きの御用に手柄いたさして、末代名を残さして、結構な神に祀りて貰ふのであるぞよ。八人の御子の働きは是からボツボツと現はれて来るぞよ。人民の思ひとは大変な違いであるぞよ。此の世の立替には、艮の金神が九万九億の眷属を使ふて、天地を一度に開く梅の花の経綸が昔の神代から致してありての事であるぞよ。世に出て居れる神様にも、守護神にも、人民にも、見当の取れん仕組がいたしてあるから、今の今まで判りは致さんぞよ。人より早う手柄を致さうと思ふて、焦慮りて縮尻る守護神人民が是からは出来て来るから、大本の役員は余程しつかり筆先を腹へ入れておかんと、経綸の邪魔になりて立直しが遅くなるから、念に念を押して気を付けて置くぞよ。大本の経綸で神の宮を建てるのは、沓島と神島と嵯峨の奥と三ケ所より外には成らんぞよ。肝川は八大竜神の守護があるから、大本の分社と致してあるので在るから、肝川には奇しびな神業が見せてあろうがな。世の立直しが済みたら、国々所々に大本の御宮を立て、夫れ夫れの守護神を鎮めて御用を致さすから、それ迄には御宮形も建てられんぞよ。広間も大本の経綸が成就いたして、天下泰平に世が治まる迄は、新たらしう建てる事は出来ぬぞよ。今迄に鏡が出して在ろうがな。京都で新に広間を立て神から潰され、伏見に建てまたその通り、肝川に建てても役に立つまいがな。大本の根本の極まらぬ中に、守護神人民が勝手に致した事は、九分九厘で覆りて了ふぞよと、何時も筆先で気が付けてありたなれど、神の申す事を背いて致した事は、何遍でも跡戻り斗り致すぞよ。大本を次に致して、園部で広間を建ようと致して、材木を寄せてサア是から建前と言ふやうに成りた所で、俄の大雨で材木が影も形も無いやうに流れた事があらうがな。皆神界から善悪の鏡が出して、大本の中に実地が見せてあるぞよ。明治廿五年から、幹退けて末続くとは思ふなよ、幹ありての枝もあれば末もあるぞよ。幹退きたら末は枯れるぞよと申して、出口直の手で毎度気が付けてあるぞよ。 明治二十五年から申した事は、何時になりても毛筋の横巾も違はん事ばかりであるぞよ。 |