| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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21 (1940) |
霊界物語 | 28_卯_台湾物語(日楯と月鉾) | 12 サワラの都 | 第一二章サワラの都〔八一二〕 玉藻の山の聖場に遠き神代の昔より 三五教を開きたる真道の彦の末流と 世に聞えたる真道彦泰安城の急変を 救はむ為に三五の神の司や信徒を 集めて神軍組織なし泰安城に現はれて 寄せ来る敵を打払ひ遂には奇禍を蒙りて カールス王に疑はれ暗き牢獄に投げ込まれ 逃るる由も泣く許りヤーチン姫も諸共に 聞くもいまはし寃罪にかかりて暗に呻吟し 苦しき月日を送ります其惨状を救はむと 父を思ふの真心に日楯、月鉾両人は 聖地を後にユリコ姫夜に紛れて蓑笠の 軽き姿に身を装ひアーリス山の頂きに 息もせきせき辿り着き月の光を浴び乍ら 片方の岩に腰をかけ息を休むる折柄に 泰嶺山の聖地より神の司の月鉾が 後を尋ねて追ひ来るテーリン姫の執拗な 恋の縺れの糸をとき言葉を尽して聖場に 帰らしめむと思へども恋に曇りしテーリンは とけば説く程もつれ来る時しもあれや木かげより 現はれ出でし人影に一同驚き見廻せば 思ひ掛けなきマリヤス姫の珍の命の出現に 漸く急場を逃れ出で日楯、月鉾、ユリコ姫 三人の司はやうやうにヤツと蘇生の心地して アーリス山の峰を越え須安の山脈打渡り 夜を日についで漸々にテルナの里に辿りつき 谷間にまたたく一つ火を目あてに進む折柄に 喉は渇き腹は飢ゑ根気も尽きて三人は とある木蔭に休らひつ幽かに漏れ来る人声を 耳をすまして聞き居れば俄に吹き来る谷の風 三人の頭に何物か触ると見れば木茄子の 香りゆかしき果物に飛びつく計り喜びて 忽ち三人は木茄子を一個も残らずむしり取り 腹をふくらせ横はりいつしか眠りにつきにける。 折も折とてバラモンの神の祭典の真最中 四五の土人は木茄子を神の御前に供へむと 冠装束いかめしく幣振り乍ら進み来る 素より三人は白河の夜船を操る真最中 土人は忽ち木茄子の一個も残らず何者にか 盗まれたるに肝潰し明りに照して眺むれば 雷のやうなる鼾声驚き直に此由を テルナの里の酋長に報告すればゼームスは 時を移さず駆来り三人の男女に打向ひ 団栗眼を怒らせて『テルナの里の人々が 生命に代へて守り居る神に捧ぐる木茄子を 取りて食ひし横道者汝三人の生命を 奪ひて神の贄に奉らむ』と居丈高 罵りちらせばユリコ姫酋長の前に手をついて 『長途の旅に疲れ果て喉は渇き腹は飢ゑ かかる尊き果物と知らずに取つて食ひました 何卒深き此罪を広き心に見直して 吾等を赦し給へかし』願へば酋長はユリコ姫の 顔打眺め笑ひ顔『汝は吾れの要求を 容れて女房となるならば汝の罪を赦すべし 二人の男は如何しても命を取つて神前の 尊き犠牲に供さねば神の怒りを如何にせむ 覚悟せよや』と睨めつけるユリコの姫はいろいろと 詞を尽し身を尽し口説き立つれば酋長は 漸く心和らぎて苦しき荒行いろいろと 二人の男に言ひ付けて漸く此場は鳧がつき 大祭壇の傍に三人の男女を伴ひて ユリコの姫には美はしき衣服を与へ二人には 『猛火の中をくぐれよ』と言葉厳しく下知すれば 日楯、月鉾両人は天津祝詞を奏上し 天の数歌ひそびそと小声になりて唱へつつ 猛火の中を幾度もいと易々と潜りぬけ 大祭壇の其前に火傷もせずに帰り来る 並みゐる人々両人が其神力に驚きて 互に顔を見合せつ舌巻き居たる折柄に 何処ともなく大火光此場に忽ち落下して 酋長ゼームス果敢なくも身は中空に飛びあがり 行方も知らずなりにける。並み居る数多の里人は 此爆発に驚きて雲を霞と逃げて行く 逃げ遅れたる人々は胆をば潰し腰抜かし 呻吟き苦む折柄にユリコの姫は酋長に 与へられたる衣を脱ぎ直に火中に投ずれば 日楯、月鉾両人はユリコの姫の右左 立現はれて宣伝歌声も涼しく宣りつれば 醜の曲霊は何時しかに消え失せたるか風清く 何とはなしに心地よく神の恵を三人が 喜ぶ折しもゼームスは衣紋を整へ供人を 数多引連れ珍しき木の実を器に盛り乍ら 三人が前に手をついて以前の無礼を心より 詫入る姿の殊勝さよ茲に三人は三五の 神の教を細々とゼームス始め里人に 伝へて直ちに三五の教の柱をつき固め 酋長始め数十の里人達に送られて 夜を日に継いで高砂の北の端なるキールンの 漸く浜辺に着きにけりあゝ惟神々々 御霊幸はひましませよ。 ○ 常世の波も竜世姫高砂島の胞衣として 神の造りし台湾島木の実も豊に水清く 禽獣虫魚も生ひたちて天与の楽土と聞えたる 台湾島の中心地玉藻の山の聖場を 三人は後に立出でて艱難辛苦を嘗め乍ら テルナの里の酋長に長き道程を守られて キールの港に安着し船を傭ひて三人は 波のまにまに漕ぎ出しぬ折柄吹き来る北風に 山なす浪は容赦なく三人の船に衝き当る ユリコの姫は船頭に立ちて波をば静めつつ 神のまにまに琉球の八重山島を指して行く やうやう茲に三人はエルの港に安着し 岸辺に船をつなぎおき声名轟く照彦の 千代の住家と聞えたるサワラの都を指して行く。 サワラの都に、三人は漸く辿りついた。ここは際限もなき広原の中央に築かれたる新都会にして、白楊樹の森四辺を包み、芭蕉の林は所々に点綴してゐる。国人は大抵、芭蕉実、苺、林檎、木茄子、柿などを常食とし、或は山の芋、淡水魚などを副食物として生活を続けてゐる。 サワラの都には、広大なる堀を以て四方を囲らしてゐる。其巾殆ど一丁計りの広さである。東西南北に堅固なる橋梁を渡し、稍北方にサワラの高峰、雲表に聳え、四神相応の聖地と称せられてゐる。城内には数百の人家立並び、今より三十万年前の都会としては、最も大なるものと称されて居た。サワラの城は殆ど其中心に宏大なる地域を構へ、石造の館高く老樹の上にぬき出て居る。城内には畑もあれば、川もあり、沼もあり、何一つ不自由なき様に作られてゐた。 三人は東の門より橋を渡つて、門内に進み入つた。黄紅白紫紺いろいろの花は木の枝に、草の先に、爛漫と咲き乱れてゐる。又道の両側には百日紅や日和花の類密生し、白き砂は日光に輝き、台湾島の日月潭に比して、幾層倍とも知れぬ気分のよき土地である。 三人は何となく恥しき様な、おめる様な心持にて、小声に宣伝歌を歌ひ乍ら、照彦が千代の住家と定めたる城門の前に漸くにして歩を運んだ。四五の門番は頬杖をつき乍ら、何れも睡魔に襲はれて、コクリコクリと居睡つてゐる其長閑さ、天国の門番も斯くやと思ふ計りの気楽さを現はし居る。日楯は門番の前に進み寄り、 日楯『頼みます頼みます』 と声をかけた。門番の一、ねむた目をこすり乍ら、 門番ノ一『アヽ此真夜中に誰か知らぬが、人を起しやがつて、ねむたいワイ。此門は暮六つから明け六つ迄は開ける事は出来ぬ。夜が明けたら、誰か知らぬが行つて来い。キツと開けて通してやる、ムニヤムニヤムニヤ……』 と云ひ乍ら又ゴロンと横になる。 月鉾『モシモシ門番様、まだ日中で御座います。暮六つ迄には余程間も御座いますから、どうぞ目を醒まして、此門をお開け下さいませ』 門番ノ二『お前は夜が明けとるか知らぬが、俺の目ではそこら中が真暗がりだ。暗い時は夜分にきまつて居る。アタねむたい、喧しう言はずにトツトと出直して来い』 月鉾『アハヽヽヽ、あなた目をおあけなさい。さう目蓋を固く密着させてゐては、昼でもヤツパリ暗く見えますぞ』 門番ノ二『喧しう言ふない。暗くも何もあつたものかい。苦楽一如だ。世の中に寝る程楽はなきものを、起てガヤガヤ騒ぐ馬鹿のたわけ。おれはまだ夜中の夢を見て居るのだ。おれの目の引明けに出て来い。そしたら、あけてやらぬ事もないワイ』 とダル相な声でブツブツ云ひ乍ら、又横にゴロンとなる。三人はもどかしがり、稍思案に暮れて佇んで居る時しも、表門はサラリと左右に開かれ、中より立派なる男女幾十人となく行列を作り、三人の前に恭しく手をつき乍ら大将らしき一人は、 一人の男(セル)『エヽあなたは台湾島の玉藻山の霊場にまします、真道彦命様の御子息様では御座いませぬか』 日楯丁寧に礼を返し、 日楯『ハイ御察しの通り、吾等は真道彦命の伜、日楯、月鉾と申す者、これなる女は私の妻ユリコ姫と申します。竜世姫様の御神勅に依り、当国の城主照彦様、照子姫様に御願の筋ありて、大海原を渡り、漸くこれへ参つた者で御座います』 一人の男(セル)『私はセルと申して、照彦王の御側近く仕ふる者で御座います。二三日以前より、照子姫様に高砂島の竜世姫命様御神懸り遊ばし、あなた方御三人様がここへ御越しになるから、出迎ひに出よとのお告で御座いました。それ故今日はお越しの日と早朝よりいろいろと、あなた方の歓迎の用意を致し、照彦様、照子姫様、奥にお待で御座います。サア御案内致しますから、早くお這入り下さいませ』 三人は一度に頭を下げ、 三人『有難う』 と言ひ乍らセルの後に従ひ、奥深く進み入る。門番は漸く目を醒し、 甲『オイ、ベース、チヤール、起きぬか起きぬか、大変な事が出来て来たぞ。お側役のセル様が沢山の御近侍の方々と共に三人のお客さまをお迎へ遊ばして、奥へお這入りになつた。貴様達はなまくらを構へて、寝真似をし、糟に酔うた様な事をぬかしてをつたが、たつた今ドテライお目玉だぞ。サア早く何とか、言訳を拵へて、セル様へお断りに行かねば、足袋屋の看板だ。サツパリ足あがりになつて了ふぞよ』 エル『バカを言ふな、俺達が寝真似をして居つたのを知つてゐた以上は、貴様もチヨボチヨボだ。俺が足があがる位なら、貴様は頭だから、キツト首が飛ぶぞよ。貴様は俺達の組頭だからお詫に往つて来るがよからう。俺や、こんな門番なんか、何時足があがつても構やしないのだ。常世城の門番を見い、失敗して王様のお側附になつたぢやないか。何時迄も門番を厳重に勤めて居つたら、彼奴は門番に適当な奴だと、セルの大将に見込まれたが最後、金槌の川流れ、一生頭の上る事はないぞよ。それより日中にグウグウと寝てる方が、何時栄達の途が開けるか知れないぞ。大体こんな智者学者を門番にさしておくのが見当違ひだ。マア見て居れ、明日になつたら、貴様達は門番に不適当だから、奥勤めに使つてやらうとの御命令が下るに違ない。余り取越苦労をするものでない。マア刹那心を楽むのだなア。待てば海路の風が吹くとやら、何事も運は天にありだ。そんな事に心配するよりも、酒でも呑み、一生懸命に騒ぎ、ステテコでも踊つて、今度のお客様のお慰みに供したら、照彦王様も面白い奴だと云つて、……苦しうない、門番近く参れ……とか何とか仰有つて、お手づから盃を下され、結構な御褒美に預るやらも知れたものだない。サアサア、酒だ酒だ、酒なくて何のおのれが門番かなだ。アハヽヽヽヽ』 と他愛もなき無駄事を囀り乍ら、バナナで作つた強烈い酒を、五人の門番が胡坐座になつてガブリガブリと呑み始め、ヘベレケになつて、妙な手つきをし乍ら、踊りつ舞ひつ、奥殿指して転げ込んだ。 (大正一一・八・八旧六・一六松村真澄録) |
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22 (1961) |
霊界物語 | 29_辰_南米物語1 鷹依姫と高姫の旅 | 06 玉の行衛 | 第六章玉の行衛〔八二八〕 高姫は言葉を軟らげ、 高姫『コレコレ常彦さま、ヤツパリお前は私が三五教の宣伝使の中でも、一番気の利いた立派な方だと思うて連れて来たが、……ヤツパリ此高姫の目は違ひませぬワイ。ようマア目敏くも、言依別や、国依別の船に乗つてるのが気がつきましたなア』 常彦『蛇の道は蛇ですからなア。どうも言依別や国依別の臭が船に乗つた時から、鼻について仕方がないものですから、一寸考へてゐましたが、いよいよ此奴ア変だと思うてかぎつけました』 春彦『まるで犬の様な鼻の利く男だなア。蛇の道は蛇でなくて、猪の道は犬ぢやないか。さうして本当に言依別さまや国依別が立派な玉を持つて御座つたのか』 常彦『貴様が海へ踊つて落込んだ時に、綱を投げて呉れた船客が国依別だつたのだ。つまりお前は国依別さまに生命を助けて貰うたのだよ』 春彦『アヽさうか、それは有難い。一つ御礼を言うぢやつたに、お前が云つて呉れぬものだから、つい御無礼をした。ヤツパリ国依別さまは親切だなア。二つ目には足手纏ひになるの、エヽ加減にまいて了はぬと、あんなヒヨツトコは邪魔になるとか仰有る生神もあるなり、世は種々だ。そして立派な玉をお前は拝見したのか』 常彦『天機洩らす可からずだ。大きな声で云ふない。そこに高姫さまが聞いて御座るぢやないか。高姫さまの御座らぬ所で、トツクリとお前丈に一厘の秘密を知らしてやるワ。オツと了うた、余り大きな声でウツカリ喋つて了つた。……モシ高姫さま、今私が何を言うたか聞えましたか。余りハツキリとは聞えては居やせぬだらうな。聞えたら大変ぢやからなア。アヽ桑原々々、慎むべきは言葉なりけりぢや、アハヽヽヽ』 高姫『コレ常彦さま、お前、そんなにイチヤつかすものぢやありませぬぞえ。トツトと有体に仰有い。そしたら此高姫は云ふに及ばず、錦の宮の教主となり、お前を総務にして立派な神業に使つて上げます。五六七の世でも出て来て見なさい。それはそれはあんな者がこんな者になつたと云ふ御仕組ですから、それで神には叶はぬと仰有るのぢやぞえ』 常彦『ハヽア、さうすると最前アンナ、カナンに化けたのも、強ち徒労ではありませぬな。私がアンナ、春彦はカナン、私はアンナ者がコンナ者になり、春彦は立派な人間になつて、高姫さまでも何人でも、到底カナンと云ふ立派な人間になると云ふ前兆ですか、ハツハヽヽヽ。これと云ふのも国依別さまが御親切に、玉の所在を決して他言はならぬと固く戒めて仰有つて下さつたのは、本当に有難い。よく私の魂を悟つて下さつた。士は己を知る者の為に死すとか云つて、自分の真心を見ぬいてくれた人位、有難く思ふものはない。私も男と見込まれて、大事の秘密の玉の所在を知らされ、実物迄拝見さして頂いたのだから、此首が仮令千切れても、国依別さまが云つてもよいと仰有る迄申されませぬワイ。アヽ云はな分らず、云うてはならず、六かしい仕組であるぞよ……とお筆先に神様が仰有つてゐるのは、大方こんな事だらう。お筆先の文句がキタリキタリと出て来て、身に滲みわたる様で御座いますワイ』 高姫『お前は言はねばならぬ人には隠して云はぬなり、言うて悪い人には言はうとするから、国依別さまが厳しく口止めをしたのだよ。よう考へて御覧なさい。私の供になつて来て居るお前に秘密を明かすと云ふ事は、つまり高姫に知らせよと云ふ謎ですよ。此事を詳しう高姫に伝へてくれと云つたら、却て心易う思ひ、忘れて了ふだらうから、言ふな……と云つておけば、大事な事と思ひ、お前が念頭にかけ、コッソリとお前が私に云うだらうと、先の先まで気をまはし、お前に言うたのだよ。国依別も中々偉いワイ。よう理窟を云ふ男だが、どこともなく香ばしい所のある男だと思うた。……コレコレ常彦、言ひなさい、キット後は私が引受けますから……』 常彦『メッサウな、そんな事言うてなりますかいな。お前さまは私を、甘くたらして云はさうと思ひ、巧言令色の限りを尽して、うまく誘導訊問をなさるが、マア止めておきませうかい。こんな所でお前さまに言はうものなら、あとは尻喰ひ観音、そこに居るかとも仰有らせないだらう。マア言はずにおけば常彦の御機嫌を損はぬ様に親切に目をかけてくれるに違ひない。言ひさへせなきや、桜花爛漫と常彦の身辺に咲き匂ふといふものだ。言うたが最後、明日ありと思ふ心の仇桜、夜半に嵐の吹かぬものかは……と忽ち高姫颪に吹きおろされ、ザックバランな目に遇はされるに定つてる。花は半開にして、長く梢に咲き匂ふ位な所で止めておきませうかい。イッヒヽヽヽ。アヽこんな愉快な事が又と再び三千世界にあらうかいな。三千世界一度に開く梅の花、開く時節が来たら秘密の倉を開けて見せて上げませう。それも一寸でも私の御機嫌を損ねたが最後駄目ですよ』 高姫『コレ常彦、情ない事を云うておくれな。なんぼ私だつてさう現金な女ぢやありませぬぞえ。今の人間は思惑さへ立ちや、後は見向きもせぬのが多いが、苟くも、善一筋の誠生粋の大和魂の根本の性来の、而も日の出神の生宮、変性男子の系統、これ丈何もかも資格の揃うた高姫がそんな人間臭い心を持ち、行ひを致さうものなら、第一神様のお道が潰れるぢやありませぬか。変性男子の身魂に対しても、お顔に泥を塗るやうなものなり、日の出神さまに対しても申訳がありませぬ。さうだから大丈夫ですよ。先で云ふも今云ふも同じことだ。さう出し惜みをせずと、お前の腹の痛む事ぢやなし、一口、かうだとお前の口に出して呉れたら良いぢやないか。サア常彦、ホンにお前は気の良い人だ。そんなにピンとすねずにチヤツと仰有つて下さいナ』 常彦『猫があれ程好な鼠を生捕にしても中々さうムシヤムシヤと食ひはしますまい。くはへては放り上げ、くはへては放り上げ、追ひかけたり押へたり、何遍も何遍もイチヤつかして、終局には嬲殺にして、楽んで食ふように、此話もさう直々に申上げると、大事件だから値打がなくなる。マア楽しんで私に従いて来なさい。其代りに或時期が来たら知らして上げますから、一つ約束をしておかねばなりませぬ。高姫さま、物を教へて貰ふ者が弟子で、教へる者が先生ですなア』 高姫『きまつた事だよ。教へる者が先生だ。さうだからお前達は私の弟子になつて居るぢやないか』 常彦『あゝそれで分りました。其御考へなれば、行く行くは玉の所在を教へて上げませう。其代り今日から私が先生でお前さまは弟子だよ。サア荷物を持つて従いて来なさい』 高姫『コレ常彦、おまへは何と云ふ事を云ふのだい。天地顛倒も甚しいぢやないか。誰がお前の弟子になる者があるものか。苟も日の出神の生宮ですよ。余り馬鹿にしなさるな』 常彦『これはこれは失礼な事を申し上げました。そんならどうぞ何もかも教へて下さいませ。私は教へる資格がありませぬから、モウ此れ限り何も申上げませぬ。教へて上げやうと云へばお目玉を頂戴するなり、其方が宜しい。モウ此れ限り、夜前あなたの仰有つた様に此国の人を弟子にして、半鐘泥棒や蜥蜴面の吾々に離れて活動して下さい。……なア春彦、半鐘泥棒や蜥蜴面が従いて居ると高姫さまのお邪魔になるから、これでお別れせうかい』 春彦『何が何だか、俺やモウサツパリ訳が分らぬ様になつて来たワイ。……オイ常彦、そんな意地の悪い事言はずに、男らしう薩張と高姫さまに申し上げたら如何だ』 高姫『コレコレ春彦、流石はお前は見上げたものだ。さうなくては宣伝使とは言へませぬワイ。……コレ常彦、言はな言はぬで宜しい。お前の行く所へ従いて行きさへすればキット分るのだから……』 常彦『ソラ分りませう。併し乍ら私は出直してくる共、お前さまの従いて厶る限りは、玉の在る方面へは決して足は向けませぬワ。そしたら如何なさる。オホヽヽヽ』 高姫『エヽ気色の悪い、しぶとい奴だなア。ヨシヨシ今に神界に奏上して、口も何も利けぬ様に金縛りをかけてやるから、それでも宜しいか』 常彦『どうぞ早うかけて下さい。お前さまに玉の所在を言へ言へと云うて迫られるのが、辛うてたまらぬから、物が言へぬようにして下されば、それで私の責任が逃れると云ふものだ。どうぞ早うかけて下さいな。不動の金縛りを……』 と云ひ乍ら、舌を一寸上下の唇の間に挟んで高姫の前に頤をしやくり、突き出して見せる。 高姫『エヽどうもかうも仕方のない、上げも下ろしもならぬ動物ぢやなア』 常彦『オイ春彦、駆足々々。高姫さまをまくのだよ』 と尻引まくり、一生懸命に地響きさせ乍ら、降り坂を駆出した。高姫は後より一生懸命に二人の姿を見失はじと追つかけて行く。 高姫は高い石に躓きパタリと大地に倒れ、額をしたたか打ち、血をタラタラ流し、且つ膝頭を打つて、頭を撫で足を撫で、身を藻掻いてゐる。二人は高姫が必ず追つかけ来るものと信じて、一生懸命に南へ南へと走り行く。 ここを通りかかつた四五人の男、高姫の疵を見て気の毒がり、傍の交り気のない土を水に溶かし、額と足とに塗りつける。高姫は、 高姫『何方か知りませぬが、ようマア助けて下さいました。これも全く日の出神さまのお神徳で厶います。貴方方も結構なお神徳を頂きなさつたな。高姫と云ふお方は、誠に結構な身魂であるから、此身魂に水一杯でも、茶一滴でも供養した者は、大神様のお喜びによつて、家は代々富貴繁昌、子孫長久、五穀豊饒、病気平癒、千客万来の瑞祥が出て参ります。皆さま、結構な御用をさして貰ひなさつた。サア、是から、三五教の神様に御礼をなさい。私も一緒に御礼をしてあげます』 甲『何と妙な事を言ふ婆アぢやのう。人に世話になつておいて、反対にお礼をせい、御礼をして上げるのと、訳が分らぬぢやないか。大方これはキ印かも知れぬぞ。うつかり相手にならうものなら大変だ。イヽ加減にして行かうぢやないか』 高姫『コレコレ若い衆、キ印ですよ。三千世界の大狂者の大化物の変性男子の系統の生神様ぢや』 乙『それ程エライ生神さまが、何で又道に倒れて怪我をなさるのだらう。此点が一寸合点が行かぬぢやないか』 高姫『そこが神様の御仕組だ。縁なき衆生は度し難しと云ふ事がある。日の出神様が、一寸此肉体を道に倒してみせて、ワザとお前等に世話をさせて、手柄をさして、因縁の綱を掛け、結構にして助けてやらうと遊ばすのだ。分りましたかなア』 乙『根つから分りませぬワイ。……オイ皆の連中、早く玉を御供へに往かうぢやないか。結構の玉を供へたら、結構にしてやらうと云ふ神があるから、早く何々迄急がうぢやないか』 丙『随分沢山にお参りだから、ヤツと玉もいろいろと寄つて居るだらうなア』 乙『ソリヤお前、一遍俺も参つて来たが、それはそれは立派な玉が山の如くに神さまの前に積んであつたよ。金剛不壊の如意宝珠に黄金の玉、竜宮の麻邇宝珠の玉とか云つて、紫、青、白、赤、黄、立派な玉が目醒しい程供へてあつたよ』 高姫『コレコレお前、其玉はどこに供へてあるのだ。一寸云つて下さらぬか』 乙『其玉の所在ですかいな。ソリヤ一寸何々して貰はぬと、何々に何々が納まつて居ると云ふ事は云はれませぬなア』 高姫『そんならお金を上げるから仰有つて下さい』 乙『私も実は貧乏で困つてをるのだ。金儲けになる事なら云つてあげようかな。ここに五人も居るけれど、玉の場所を知つた者は俺丈だから儲け放題だ。一口にナンボ金を出しますか』 高姫『一口に一両づつ上げよう。成る可く二口位に詳しう云つて下さいや』 乙『中々一口や二口には云ひませぬで、一口云うたら一両づつ引替に致しませう。それも先銭ですよ』 高姫『サア一両』 と突き出す。 乙『ア……』 高姫『後を言はぬかいな』 乙『モウ一両だけ、一口がとこ云つたぢやないか。モ一両下さい。其次を云うて上げよう』 高姫『あゝ仕方がない、……それ一両』 と又突き出す。 乙『リ……』 と云ひ乍ら、又一両を呉れと手を突き出す。 高姫『何と高い案内料ぢやなア。モチト長く言うてお呉れぬかいな』 乙『元からの約束だ、ア……と云へば一口かかる。リ……といへば又一口ぢやないか』 高姫『エヽ欲な男ぢや。……それ一両、今度はチト長く言うて呉れ』 乙は又一両懐にねぢ込み、 乙『今度は長く言ひますよ。……ナーー……』 かう云ふ調子に『アリナの滝の水上、鏡の池の前に沢山の宝玉が供へてある』と云ふ事を教へられ、高姫は勢込んでテルの国のアリナの滝を指して、一生懸命に駆けり行く。 道傍の木蔭に休んで居た常彦、春彦は、高姫の血相変へて行く姿を眺め、 常彦、春彦『オイオイ高姫さま、一寸待つて下さいなア』 と呼びかけた。高姫は後を一寸振向き、上下の歯を密着させ、ニユツと口から現はし、頤を二三遍しやくつて、 高姫『イヽヽ、大きに憚りさま。玉の所在は日の出神さまから知らして貰ひました。必ず従いて来て下さるなや』 と一生懸命に走り行く。常彦は、 常彦『本当に玉が此国に隠してあるのかな。こりや一つ高姫さまの後から従いて行つて、白玉でも黄玉でも、一つ拾はぬと、はるばる出て来た甲斐がないワ。……オイ春彦、急げ』 と尻ひつからげ大股にドンドン、髪振り乱し砂煙を立て乍ら、高姫の通つた後を一目散に走り行く。 (大正一一・八・一一旧六・一九松村真澄録) |
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霊界物語 | 31_午_南米物語3 国依別の旅 | 21 白毫の光 | 第二一章白毫の光〔八八七〕 二台の火の車は婆アの小屋の前で停車し、中より青赤の運転手、技手、鶏冠の様な、キザのある腮をしやくり乍ら、金銀色の角をニヨツと表はし、車より下りて、ツカツカと二人の前に立塞がり、 青鬼『其方は秋山別、モリスの両人であらう。サア冥府よりの迎へだ。グヅグヅして居ると時間が切れる。早く此火の車に乗れ』 と巨眼をひらき睨めつけ呶鳴り立てる。秋山別は焼糞になり、 秋山別『オウ、俺も男だ。火の車が何恐ろしいか。俺達は娑婆に於て、日々会計不如意の為に家には火が降り、尻には火がつき、火の車を日々運転して来た火宅の勇者だ。乗るのは少しも厭はぬが、併しマアよく聞け。貴様の面は何だい。海辺の銅葺の屋根の様な洒つ面をしよつて、斯様な赤い車に乗り、何をオドオドとして青ざめてゐるのだ。チツとしつかり致さぬか。コリヤ一匹の奴、貴様の面は何ぢや。仏像の前に罷り出でて、婆、嬶の目糞、鼻汁をぬりつけられ、鼻つ柱も何もすりむかれてゐやがる賓頭盧の様な真赤な面をして何の事だい。昼日中酒を喰つて酔つ払つて居るのだらう。そンな事でお役目が勤まるか。俺の顔を見て、ビリビリ震ひ、真青な顔する奴や、弁慶の様に酒に喰ひ酔うて真赤になつて居る様な運転手や車掌の乗つて居る火の車には、危険で乗れたものぢやない。マア出直して来い。明日ゆつくりと乗つてやるワ』 モリスはおどおどし乍ら、 モリス『オイ、秋公、そンな非道い事を言うない。モウ斯うなつては仕方がない。神妙にしてゐるのが得だよ。……モシモシ青さま、赤さま、秋山別の只今の御無礼は何卒許してやつて下さいませ』 青鬼『そりや許さぬ事はないが、ここは地獄の八丁目だ。お前達が娑婆に居る時から言つて来ただらう。それ、地獄の沙汰も○○○と云ふ事を……』 秋山別『ハヽヽヽヽ、矢張金次第と吐すのかな。それもさうだらう。この秋様も娑婆に居つた時汽車に乗るのに、普通の人間より二倍がけ出すと、それは都合の好い二等室に乗せてくれよつた。三倍がけ出すと、一層具合のよい一等室へ白切符を持つて乗せよつた。切符でさへも、青、赤、白と三段に区別がついて居る。お前の顔は青切符だな。ヨシヨシお前は赤切符か、さうすると、赤切符の方からきめてかからぬと、青さまに呉れてやる標準がつかないワ。此火の車は一哩幾程だイ』 青鬼『火の車の運賃は請求せない。是は冥府から差廻された特別上等の火の車だよ。さうして俺達は相当の手当を頂いて居るのだが、そこはそれ、最前云ふた通りだ』 秋山別『ヨシ、分つた。そンな事の粋の利かぬ秋様ぢやないワイ。ここでは何と言ふか知らぬが、娑婆では袖下と云ふ物だらう。お前の様な洋服では袖もなし、どこへ入れたら宜いのだ。見当がつかぬぢやないか』 青鬼『袖がなくても、ポケツトが洋服の随所に拵へてあるワイ。其ポケツトの重い、軽いに依つて、焦熱地獄のドン底へ連れて行くか、但はモツトモツト楽な神界の入口へ送つてやるか、ソリヤ分らぬ。○次第だからな』 秋山別『それならモリ公のと俺のと一緒にやるから、二人共同じ所へ助けるのだぞ。就いてはお前達、二台の火の車に四人だから、百両づつやつても四百両。此婆アさまに篏口料を渡しておかねばなるまい。さうすると五百両、一寸懐中が揉めるのだが、エヽ仕方がない。思ひ切つてエヽ二人で五百両、よく撿めて受取つたがよからう』 青鬼『コリヤコリヤ其方は怪しからぬ事を致す奴だ。賄賂を以て此方を買収せうと致す不届きな奴。之を受取るのは易いけれ共、俺も又収賄の罪に問はれ、貴様は又贈賄罪として益々罪が重くなるから、以後は心得たがよからう。但今日に限り忘れておく程に……』 秋山別『以後は謹めと仰有らなくても、最早之丈出して了へば、無一物で御座る。そンならすつかり忘れて了ふが、互に結構尻の穴だ』 青鬼『ヨシヨシ忘れて遣はす。サア早く乗れ。少しは熱いぞ。其代り窓を明け放しておいてやらう』 秋、モリの二人は脱皮婆アに向ひ、 秋山別、モリス『お婆アさま、大きに御世話になりました。お蔭で天国へ旅行致します。左様なら……』 と五人に百両づつを投渡し、二台の火の車に分乗し、ブウブウブウと音を立て、臭い屁を放り乍ら、砂煙を濠々と立たせ、一目散に北へ北へと駆けり行く。 火の車は何時の間にか驀地に逸走し、鉄の壁を以て高く囲まれたる赤き焦熱地獄の門の前に横付けとなつた。 青鬼『サア、此処が焦熱地獄だ。オイ赤、白、黒共、早く此奴等二人を引摺り落し、門内へ投込め。俺の命令だ』 秋山別『モシモシ青さま、ソリヤ約束が違うぢやありませぬか。地獄の沙汰も金次第と云ふ事をお忘れになりましたか』 青鬼『定まつた事だよ。其方がどうぞ只今限り忘れてくれと云つたぢやないか。何もかも忘れた此方、規則通り打込めば宜いのだよ』 秋山別『ソリヤ違ひませう。そンな事を仰有ると、閻魔さまに会つた時、一伍一什を申上げますぞや。さうすればお前さまも忽ち、首が飛ンで、吾々と同様に焦熱地獄へ落されますよ』 青鬼『ハヽヽヽヽヽ、馬鹿正直な奴だなア。鬼には鬼の閥があるから、外から指一本触へる事が出来るものかい。野暮な事を申すな。山猟師は熊、鹿を獲り、海漁師は魚を取り、猫は鼠を捕り、猿は蚤を取り、吾々は亡者を取るのが商売だ。仮令善からうが悪からうが、そンな事に頓着はない。何でもかでも、一人でも余計引張込みて来れば、俺達の収入が良くなるのだから、愚痴つぽい事を言はずに、いい加減に諦めたが宜からうぞ。閻魔さまに言ふなら言うてみよ、吾々と同じ穴の狐だ。キツト貴様達がお目玉を貰ふにきまつてゐるワ』 モリス『何とマア善を褒め悪を懲す、神聖な所だとモリスも思つて居たのに、丸でこんな事なら、世の中は暗がりだ。天地晦冥暗澹として咫尺を弁ぜず、天の岩戸隠れの世の中だないか』 青鬼『きまつた事だよ。それだから此処を冥府と云ふのだ。せうもない三五教なぞと、そこらを明かくし、誠とか云つて、古い道徳を振まはし、俺達役人……厄鬼共の領分を侵害致すから、何でも一寸かかりがあつたら、引張込まうと、手具脛引いて待つてゐた所だ。よくもマア引掛つて来よつた。馬鹿者だなア。サア早くキリキリと立てい』 と青赤白の鬼共は二人を引捉へ、無理に鉄門の中へ押込まうとしてゐる。押込まれては一大事と、一生懸命になつて『惟神霊幸倍坐世』を奏上する折しも、忽ち前方より一団の火光あたりを照らし、矢を射る如く、此場に現はれて大音響と共に爆発した。火の車も四つの鬼共もどこへ消え失せたか、影も形もなくなつて了つた。忽然として現はれた眉間の白毫よりダイヤモンドの如き光輝を発する神人一人、二人の脇立を連れ、二人が前に近寄り、頭を撫で、背を撫で、水を与へ、 神人(国依別)『ヤアお前は秋山別か、お前はモリスか、まだここへ来るのは早い。現界に於て働かねばならぬ寿命が残つてゐるぞ。しつかり致せ』 と拳を固めて、背中を二つ三つウンと云ふ程打据ゑられ、二人はハツと驚き、正気に復し、そこらキヨロキヨロ見まはせば、豈計らむや、シーズン河の河辺りに、三人の男に救ひ上げられ介抱されてゐた。此三人は国依別命、安彦、宗彦の一行である。 秋山別は驚いて、 秋山別『ヤアこれはこれは国依別の宣伝使様、私のような悪人を能くマアお見捨もなく御救ひ下さいました。実に有難う御座います。モウ少しの事で焦熱地獄へ落される所で御座いました』 モリス『誠に以て御無礼計り致しました。モリスの様な悪人を能くマア助けて下さいました』 国依別『決して御礼を仰有るには及びませぬ。大神様が私に此御用を仰せつけられたので御座います。どうぞ大神様へ厚く御礼を申上げて下さいませ』 二人は『ハイ有難う』と河原に行儀よく端坐し、拍手を打ち、天津祝詞を奏上し、神恩を感謝する。 是より秋山別、モリスの二人は心の底より悔ゐ改め、且つ国依別を神の如くに敬ひ、更めて弟子となり、ハルの国の大原野を渉り或は高山を踏み越え、アマゾン河の両岸にある大森林の魔神を征服すべく、宣伝歌を唄ひ乍ら、意気揚々として進み行く。あゝ惟神霊幸倍坐世。 (大正一一・八・二〇旧六・二八松村真澄録) |
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霊界物語 | 40_卯_照国別と黄金姫&清照姫母子 | 03 落橋 | 第三章落橋〔一〇八七〕 空一面にドンヨリとかき曇り、あたり陰鬱として風もなく蒸暑き秋の夕べ、内地の秋とは事変はり、初秋の今日此頃は松虫鈴虫の声もなく、梢にとまつて千切れ千切れに鳴く蝉の声、轡虫等喧しく騒ぎ鳴きたつる有様は、月の都のハルナ城の内外に穏かならぬ事の勃発する前兆にはあらずやと思はるるばかりであつた。館の主鬼熊別は大雲山の岩窟に於ける会議を終へて、悄然として吾家に帰り、奥の一間に座をしめて、双手をくみ、青息吐息の体であつた。 斯かる所へ家老職を勤めてゐた熊彦は襖を押しあけ入り来り、叮嚀に会釈しながら、 熊彦『モシ旦那様、承はりますれば、貴方様に大変な嫌疑がかかり、大黒主様が近侍の誰彼を遣はして、夜陰に紛れ、旦那様の命を取りに来るとの急報を自分の親友よりソツと聞きました。どうぞ御用心下さいませ。今にも刺客が参るかも知れませぬから……』 鬼熊別は平然として打笑ひ、 鬼熊別『アハヽヽヽ風声鶴唳に驚いてはならぬ。真心を以て真心の神に仕ふる鬼熊別に如何して不義の刃が当てられようか。決して心配は致すものではない。かやうな騒々しい時にはいろいろの噂の立つものだから、お前も冷静に物を考へ、決して騒いではならないぞ』 熊彦『私も大抵の事ならば騒ぐ男では厶いませぬが確な証拠が厶います。大黒主様の近侍に仕へてゐる友行といふ男、実は私の義理の兄弟で厶いますが、彼がソツと私まで耳うちをしてくれました。グヅグヅしては居られませぬ。キツと今夜攻寄せて来るに間違ひはないので厶います。これが違うたら、此熊彦は二度とあなたのお目にはかかりませぬ』 鬼熊別『現に俺は今、大雲山の岩窟に集会に参り、大黒主様の面前に於て議論を戦はし、種々雑多の疑惑を解き、漸く氷解されて、遂には石生能姫の推薦に依り、元の如く左守に任ぜられ帰つて来た所だ。決して左様な事はあるまい。大方何らかの間違ひだらう』 熊彦『イヤ其事は友行から能く聞いて居ります。併しそれが今晩の大事変を起した原因です。大黒主は嫉妬の深い人物、そこへ寝ても醒めても忘れられぬ惚れ切つた石生能姫さまが、旦那さまの肩を持ち、大黒主の最も嫌ひ給ふ旦那さまを左守に任じ、城内一切の教務及び国務を総括せしめむとされたので、大黒主は気が気でならず、ぢやと云つて最愛の女房石生能姫の言を打消す訳にもゆかず、イヤイヤながら承諾したので厶います。それより大黒主は一時も早く旦那さまを亡き者に致さねば大変だと考へ、石生能姫さまに極内々で今夜の内に鬼熊別をやつつけて了へと、数多の近侍に命じて今宵御館へ襲来することになつたので厶います。其中の一人なる友行がソツと密書を以て私迄知らしてくれたので厶いますから、メツタに間違ひは厶いますまい。サア旦那さま、さう安閑としてゐる時ぢや厶いませぬ。一時も早く防戦の用意を致されるか、但は今の内に此館を逐電なさらねば、呑噬の悔を残すとも及びませぬ。及ばぬながらも熊彦がどこ迄もお供を致し、苦労艱難を共々に嘗めても、旦那様の御身辺を守らねばなりませぬ。サア早く御決心を……』 と促せば、鬼熊別は高笑ひ、 鬼熊別『アハヽヽヽ何とマア世の中は面白いものだなア。昨日の敵は今日の味方、今日の味方は明日の敵、昨日に変る大空の雲、千変万化は世のならひ、どうなり行くも宿世の因縁だ。騒ぐな、あはてな。只何事も此世を造り給ひし梵天帝釈自在天の御心に任すより外に取るべき手段はない』 熊彦『それはさうでも厶いませうが、ミスミス敵に襲撃されるのを前知しながら傍観してゐるのは余り気が利かぬぢやありませぬか。何とかそれに対する方法手段を講ぜねば、如何してあなたの善が世の中に分りませう。今宵やみやみと彼等に亡ぼされなば、何時の世にかあなた様の恨が晴れませう……否疑ひがとけませう』 鬼熊別『吾々は人も恨まない、又敵も憎まない。妻子には離れ、何程結構な身の上になつたとて、一寸先は分らぬ人の身の上、ただ何事も神に任すより手段がない。神さまが吾々を殺さうと思へば、人の手をかつてお殺し遊ばすだらうし、まだ娑婆に必要があると思召したら、殺さずにおかれるだらう。一寸先は人間の目からは暗だ。只刹那の心を楽しみ、神司としての最善のベストを尽せばいいのだ』 熊彦『エヽこれ程申上げても、旦那さまはお聞き下さりませぬか。最早是非には及びませぬ。誠にすまぬ事ながら、旦那さまのお痛はしい姿を見ぬ間にお暇を賜はり、ここにて切腹仕ります。左様ならば旦那様』 と涙を夕立の如くパラパラとこぼしながら、早くも懐剣を引抜き、腹十文字に掻切らむとするを、鬼熊別はグツと其手を握り、 鬼熊別『アハヽヽヽ、何と気の早い男だなア。暇をくれと云つても暇はやらぬ、死なしてくれと申しても決して死なしはせぬぞ。主従の間柄といふものは左様な水臭いものではない。お前が死にたければ、俺の先途を見届けて其後に死んだがよからう。主人より先に勝手気儘に自殺するとは不心得千万だ』 ときめつけられて、熊彦は気を取り直し、 熊彦『これはこれは若気の至り、血気にはやり、誠にすまない事を致しました。主人の意志に従ふのは下僕の役、モウ此上は何事も申しませぬ。どうぞ主従の縁切ること丈は赦して下さいませ。決して旦那さまより先へは早まつた事は致しませぬ。同じ死ぬのならば、寄せ来る敵と渡り合ひ、旦那さまの馬前に於て、斬死を致します』 鬼熊別『コリヤコリヤ斬死などとは不穏当きはまる。如何なる敵が来るとも、彼がなすままに任しておけ、神さまがよきやうにして下さるだらうから……』 熊彦は、 熊彦『ハイ』 と答へてさし俯むき、左右の肩を上げ下げしながら、声を忍ばせ、しやくり泣きつつあつた。 ○ 大黒主の側近く仕へたる侍従の面々は、丑満の刻限を伺ひ、裏門よりソツと脱け出し、檳榔樹の林に包まれたる鬼熊別が館を指して、黒装束に身をかため、草鞋脚絆を穿ちながら手槍を提げ進み行く。如何はしけむ、如時の間にやら横幅五間ばかりの深溝の橋梁が苦もなく墜落して居た。一同は立止まり、 甲『ヤアこりや大変だ。鬼熊別の奴、早くも俺達の行くのを天眼通力にて前知したと見え、橋を落して了ひよつた。下手の橋へまはれば、これより一里半ばかり、さうかうしてる間に夜が明けて了ふ。困つたことが出来たワイ』 と呟いてゐる。これは熊彦がひそかに部下数人に命じ、主人の危難を救ふべく落させておいたのであつた。 乙『オイ、橋を落して用意をして居るくらいなれば、先方にも準備をして居るだらう。何程鬼熊別に部下がないと云つても館の中に抱へてある部下の者は七八十人は確に居る。何奴も此奴も皆命知らずの強者ばかりだ。到底吾々の力では及ぶまい。騙討ならば彼奴等の眠つてゐる内に、奥の間へふみ込んで仕止められぬ事もないが、モウ斯うなつては公然の戦ひだ。オイ今晩はモウ中止したら如何だ。そして敵に油断をさせ、二三日経つた所で、ソツと夜襲を試みることにしようかい』 甲『それだと云つて、御主人様が俺達を御信任遊ばし、是非お前達の手をからねばならぬと、涙を流して仰有つたでないか。沢山な強者もあるに、俺達のやうな奥勤めをする者に御命令が下つたのは、実に光栄といはねばらぬ。御信任が厚ければこそ、こんな秘密の御用に立たして下さつたのだ。其御信任に対してもノメノメと引返す訳には行くまいぞ』 乙『何程御命令だと言つても、橋は落され、敵は数倍の勢力、到底駄目だ。何とか口実を設けて、今晩はゴミを濁しておかうぢやないか』 甲『怪しからぬことをいふな。家来の分際として、旦那様を詐るといふことがあるか。仮令命はなくなつても、此使命を果すのが吾々の勤めだ。事の成否はさておき、如何しても良心が承知をせぬ。何とかして此橋を向方へ渡り、吾良心に満足を与へ、精忠無比の奴と褒められねばならないではないか』 乙『ハヽヽヽヽ、良心や精忠無比が聞いて呆れるワイ。とは云ふものの、俺も主人の為、身を粉にしてでも此目的を達したいのだが、翼なき身を如何にせむ、此橋を渡ることが出来ねば何と云つても駄目だ。見よ、大雲山より流れ来る此激流、もし過つて水中に陥りなば、それこそ一もとらず二もとらず、犬に咬まれたやうなものだ』 甲『イヤ実の所、俺もかうはいふものの、俺の良心も良心だ。チツとは怪しくなつて来たよ。不精忠無比の副守護神が、ソロソロ頭をもたげて来さうで……ないワイ。斯うしてゐる内に夜も明方に近くなる。さうすりや、却て俺達の言訳が立つ、あの橋が落ちてゐた為に、架橋工事に暇取り、とうとう夜があけて了つたから、又出直して夜襲に参りませうと、甘い口実が出来たぢやないか。これ全く大自在天様が吾々を愛し給ふ慈悲の大御心、あゝ有難し勿体なし、願はくは自在天様、此橋はいつ迄もかからずに居ります様に……とは申しませぬ。それは鬼熊別の申す言葉、どうぞ一時も早く完全な橋が架り、旦那様の恨みの敵が亡びますやう、御守護を偏に希ひ上げ奉ります』 乙『ウフヽヽヽ』 一同『イヒヽヽヽ』 (大正一一・一一・一旧九・一三松村真澄録) |
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霊界物語 | 41_辰_黄金姫&清照姫の入那の国の物語1 | 03 偽恋 | 第三章偽恋〔一一〇七〕 セーラン王の一喝にあひ、悄然として早々城内を逃げ帰り、自宅の奥の間に手を組んで思案に暮れて居るのは、当時城内にては飛ぶ鳥も落すやうな勢力盛なる右守の司カールチンの家老職ユーフテスである。そこへ番頭のコールが、慌しく馳せ来り、 コール『もしもし旦那様、門前に素敵滅法界な美人が現はれまして、此手紙を旦那様に渡して呉れと申しました。さうして直様御返事が頂きたいとの事で厶います。随分旦那様も固くるしいお方のやうで厶いますが、○○の道は又格別と見えますなア。本当に油断がなりませぬわい』 とニヤリと笑ひ、一通の手紙をユーフテスに渡す。ユーフテスは、 ユーフテス『コール、何と云ふ失礼な事を申すか、ちと心得たがよからうぞよ』 コール『ハイ、承知致しました。コールからキツト心得ます、イヒヽヽヽ』 と小さく笑ひながら、踞つて控へて居る。ユーフテスは手早く其信書を押し展き検め見れば、 私は貴方様に幾度も御親切なお手紙を頂きましたセーリス姫で厶ります。早速お返事を申上げたいのは山々で厶いましたが、何を云うても人目の関に隔てられ、燃ゆる思ひを押し隠し、今日迄耐へ忍んで参りましたが、もはや恋の炎に身を焼かれ立つても居てもゐられなくなつて来ました。それ故女の身をもつて御迷惑とは存じながら人目を忍びお慕ひ申して参つたので厶います。何卒御迷惑で厶いませうが、一目逢はして下さいませぬか。妾はお返事のある迄表門にお待ち申して居ります。一時も早く色よきお返事をお待ち申します。穴賢 セーリスより ユーフテス様へ と記しあるを見るより、ユーフテスは俄に苦り切つた顔の紐を無雑作に緩め、牡丹餅を砂原に打ちつけたやうな崩れた相好で、右手の甲で流れ落つる口辺の唾涎の始末をつけながら、目迄細くして猫撫声となり、 ユーフテス『オー、コール、よう使に来て呉れた。旦那様が、御多用中なれども万障繰合せ、暫くの間面会すると仰有るから早くお出でなさいと案内をして来るのだぞ』 コールは少し耳が遠いので、右の手で耳を拘へながら、ユーフテスの言葉を聞き噛り怪訝な顔して、 コール『エヽ何と仰有います。多忙中だから面会が出来ない、又出直して来て下さいと申上げるのですか。折角あんな天女が天降つて来たのに素気なう追ひ帰すと云ふ事がありますかい。三五教ぢやないが、些と見直し聞直し宣り直しをなさつて、一目逢つておやりなさつたらどうでせう』 ユーフテス『エヽ聾と云ふ奴は仕方のないものだなア。又聞き損ひをして折角来た恋人を追ひ出してしまはれては大変だ。手紙を書いてやるが一番間違ひがなくて宜からう』 とユーフテスは、文箱より料紙を取り出し筆に墨を滲ませ、筆の穂を一寸かんでプツプと黒い唾を二つ三つ吐きながら、すらすらと何事か書き流し厳封した上、 ユーフテス『オイ、コール、貴様は耳が遠いから間違ひがあつては困るによつて、其女に此手紙を渡すのだ。サア早くこれをもつて往けや』 と声を高め耳のはた近く寄つて云ひつける。コールは忽ち呑み込み顔、 コール『ハイ承知致しました』 と肩を怒らし一足々々四股踏みながら表門さして走り出で、 コール『コレ、ナイス、お前も余り気が利かねえぢやないか。こんな白昼に、そんな白首がのそのそとやつて来るものだから、旦那様が大変な嫌な顔をなさつて御迷惑をして居なさる。サア早く帰つたがよからうぞ。多忙で万障繰り合つて居るから、断り状をお書き遊ばしたから之を読んで諦めて帰つたがよからう。本当に気が利かねえ女だなア。そんな不味いやり方で、ユーフテス様を擒にしようと思つたつて、手管に乗せようと思つたつて駄目だぞ、アハヽヽヽ』 セーリス姫『何、ユーフテス様が帰つてくれと仰有つたのかい。そんな筈はありますまいが』 コール『さてさて強太い女だなア。何よりも其断り状が証拠だ。早く封押し切つて読んで見なさい。さうしたらこなさんの仰有る事が嘘でないと云ふ事が一目瞭然となるであらう。あゝ惜しいものだなア。旦那様も逢ひたい事であらうが、矢張俺達に昼だと思つて気兼をしてゐらつしやると見える。ヤイ女、今晩裏口からやつて来い。此コールが気を利かしてソツと逢はしてやるから、イヒヽヽヽ』 セーリス姫は慌しく封じ目を切り、ソツと読み下せば美事な筆跡で艶めかしい文字が列ねてある。姫はニツコリと打ち笑ひながら静々と門の閾を跨げて奥に入らうとする。コールは頻りに首を傾け、 コール『何とまア、押尻の強い女だなア。それだから今時の女は奴転婆と云ふのだよ。百鬼昼行とは此事だ。こんな厳粛なお館へ昼の日中に白首が往来するやうになつては、最早世も末だ』 と云ひながら、セーリス姫の袖をグツと握り、 コール『これこれ、何処のナイスか知らぬが厚顔しい、断り言はれた家へ入ると云ふ事があるか。早く帰つたり早く帰つたり』 とグツと力にまかして引き戻さうとするのをセーリス姫は、 セーリス姫『エヽ面倒』 と一つ肱を振つた途端に、コールは二三間ばかり跳飛ばされドスンと大地に尻餅をつき、アイタヽヽと面を顰めて姫の姿を見送つて居る。姫はコールに頓着なく、奥庭さして進み入る。 ユーフテスは、セーリス姫の入り来るを今や遅しと待つ間の長き鶴の首、石亀のやうに手足を急しく動かしながら、座敷中を願望成就の時節到来とステテコ踊りをやつて居る、そこへサラサラと衣摺れの音聞えて入り来る人の跫音は、どうやらセーリス姫らしいので、俄に眉毛を撫でたり目脂が溜つて居ないかといぢつてみたり、鼻糞を掃除したり唾涎を拭つたり襟を直したり、態とに躍る胸を撫でながら控へて居る。どことはなしに顔はパツと紅葉を散らし心落ちつかぬ様子である。其処へ襖をソツと押し開けて一瞥、城を覆へすやうな絶世の美人、イルナ城の花と謳はれたセーリス姫が立居もいと淑やかに満面に笑を湛へ入り来る姿は、牡丹か芍薬か百合の花か、又も違うたら白蓮華、桔梗の花の雨露に霑ふ優姿、淑やかに白き細き柔かき鼈甲のやうな皮膚の細かい手をつきながら、態とに声を震はせ恥かし気に、 セーリス姫『ユーフテス様、お懐かしう厶います』 と云つたきり畳に首を打ちつけて態とに肩で息をして見せる。ユーフテスはニコニコしながら嬉しさうな顔をして、女に馬鹿にしられてはならぬ、此処が一つ男の売り所だと云はむばかりに儼然として、 ユーフテス『セーリス姫殿、此白昼に女の身として人目も繁きに拘らず、お訪ね下さるとは些と不注意では厶らぬか。左様な気の利かない貴女とは思はなかつた。今迄吾々も姫の容色に迷ひ、幾度となく艶書を差上げたなれど、決して自分の本心では厶らぬ事はない。何用あつて今頃吾宅をお訪ねなさつたか、女の分際として些と不届きでは厶らぬかナ』 と空威張りして見せて居る。 セーリス姫『ホヽヽヽヽお情ないそのお言葉、それ程妾がお気に入りませぬなら只今限りお暇を致します。不束な女が参りましてお腹を立てさせまして誠に申訳が厶いませぬ。妾も女のはしくれ、今迄貴方に操られて居たかと思へば腹が立ちます』 と立ち上り、クルリと後を向け帰らうとするのをユーフテスはあわてて引き止め、 ユーフテス『マヽヽマお待ちなさいませ。短気は損気、姫様のやうにさう早取りをしられては困ります。貴女は貴い刹帝利の家筋、私は卑しい首陀の成り上りもの、到底階級が違ひますから、貴女のお傍へも寄れない身分で厶いますが、恋には上下の隔てなしとか、つい失礼な事を申上げました。どうぞ許して下さいませ』 セーリス姫『ホヽヽヽそりや何を仰有いますか。若き血潮の湧き満ちた佳人と佳人、誰に遠慮が厶いませう。現界の階級は階級と致しましても、恋愛と云ふ神聖な道には上下の区別は厶いますまい。妾は左様な階級的制度は気に入りませぬ。何とかして時代に目醒めたる婦人を集め恋愛神聖論を天下に高調したいと内々活動中で厶いますよ、ホヽヽヽ』 ユーフテス『思ひの外開けた姫様だナア。それだから此ユーフテスが好きで耐らないと申しまするのだ。いやもうズツと気に入りました。斯うして姫様の御心中を承はつた以上は何も彼も打ち明けて、一つ天下の為めに大活動を致さうぢやありませぬか』 セーリス姫『左様で厶います。恋愛は恋愛として置きまして、一つ此世に生れて来た以上は、貴方と妾と夫婦となり、息を合して纒まつた大事業を起したらどうでせうかなア』 ユーフテス『ホー、そいつは面白い。それだからどうしてもお前さまの事が思ひ切れないと云ふのだ。エヘヽヽヽ』 セーリス姫『オホヽヽヽ、貴方も仲々隅に置けない悪人ですなア』 ユーフテス『そりやさうでせうかい、右守さまのお気に入りになつて居る位だから。エヽ併し姫様は左守さまの御息女、表面は左守右守として日々お勤めになつて親密さうにして厶るが、心の中は犬と猿、丁度仇同士のやうなもので厶いますなア。こいつを何とかして都合よく纒めたいものです。さうでなければ、私と貴女との恋はいつ迄も完全に維持することは出来ますまい』 セーリス姫『何と不思議の事を承はります。左守、右守の両役はセーラン王様の両腕、鳥で云はば左右の翼、どうしてそんな暗闘が厶いませうぞ。それは何かのお考へ違ひでは厶いますまいかなア』 ユーフテスは首を左右に振り、 ユーフテス『イエイエどうしてどうして、大変な暗闘で厶いますよ。暗闘の中はまだ宜しいが、今日の所は既に表向の戦ひになりかけて居りますよ』 セーリス姫は態と驚いたやうな顔付きで、一寸口を尖らし目を丸くし、ユーフテスの顔を打ち眺めながら、 セーリス姫『それは大変な事を承はりました。果してそんな事があつたら妾はどう致しませうか。貴方との恋も従つて駄目になりませう。それが残念で厶います』 と空涙を零して俯向く。 ユーフテス『訳を申さねば分りますまいが、貴女のお姉様のヤスダラ姫様が、セーラン王様の御許婚であつた事は御存じの通りです。さうした処が、セーラン王様は余り剛直一方のお方で、世上の交際がまづいため、当時勢並ぶものなき大黒主様に御意見を申上げたり、又鬼熊別様に同情をしたり遊ばすものだから、大棟梁様の御気勘に触り、既にイルナの国王を召し上げらるる所であつたのを、右守のカールチン様が種々と弁解を遊ばし、一時は無事に治まつたので厶います。其代りにヤスダラ姫様をテルマン国のシヤールといふ毘舎の家に降し、カールチン様のお息女サマリー姫様を妃に入れて漸う其場のゴミを濁し、イルナの国を今日迄維持してお出でになつたのは、隠れたる忠臣カールチン様で厶います。貴女の父上クーリンス様は左守の職にありながら、社交術が不味いためにイルナの国を既に棒に振らうとなさいました。此間の消息を知つて居るものは、此ユーフテスしかありませぬよ。定めてセーラン王様もカールチンは不忠な奴、自分の娘を妃となし、ヤスダラ姫を退け、遂にはイルナの国を占領しようとするものと早合点してゐらつしやるさうですが、如何に隠れたる忠臣たるカールチン様だとて、サマリー姫様を王様が虐待なされ、それがため御離縁になるやうな事があればそれこそ大変です。大黒主様に対してでも、カールチン様は反旗を翻し、涙を呑んでセーラン王を国家のために放逐せなければならぬやうになつて居ります』 セーリス姫『何とマア右守様は、そのやうな立派なお方で厶いますかなア。最前貴方は大悪人の右守の部下だからと仰有つたでは厶いませぬか』 ユーフテス『そりや悪人と云へば悪人でせう。一つ虫の居所が悪くなつたら、どんな事をなさるか計り難い権幕ですから「君君たらずんば臣臣たるべからず」と常々仰有つて居ましたから、今度サマリー姫様が王様と争をしてお帰りになつたを機に、ハルナの都に早馬使を立てられましたから、キツト王様の為に好い事はありますまい。併しながらこのユーフテスは、カールチン様の秘密の鍵を握つた男、私の首の振りやう一つで大抵の事は結末がつきますから、貴女と斯うなつた以上は、秘密さへ守つて下さるなら、何も彼も相談し合つて、貴女のお願ひとならばセーラン王様をお助けしないものでもありませぬ。又クーリンス様をお助けするもしないも、皆此ユーフテスの手に握つて居る絶対権利でありますからなア』 と稍傲慢気に述べ立てるを、セーリス姫は態と心配気な顔をして、 セーリス姫『実を申せば、妾だつて王様に対しあまり深い恩顧を受けたと云ふでもなし、貴方とかうして気楽に暮さるれば、これに越したる喜びは厶いませぬワ』 ユーフテス『姫がさういふお心なら、私は何も彼も包まずに云ひませう。実は大黒主の大棟梁より、幾度も密使が参り、カールチン様に入那の国の国王となれとの御命令、それについては鬼熊別の妻子が三五教の宣伝使となり、バラモン教の根底を攪乱すべく斎苑館の本拠を立ち出でて此方に来るとの事で、彼を一日も早く引き捕へよとの御厳命、それさへ早く手に入れば、カールチン様は忽ちイルナの国王とおなり遊ばし、ユーフテスは直に左守に抜擢される事に極つて居ります。これは大の秘密ですから誰にも言つてはなりませぬぞや』 セーリス姫『それは嬉しい事で厶います。仮令どうならうと貴方の御出世さへ出来れば、妾は貴方の女房、麻につれ添う蓬とやら、一緒に権力がのび行くのですから、どうぞ御成功を望みます』 ユーフテス『イヤ、それ聞いて私も安心を致しました。それならセーリス姫殿、キツト私の妻ですなア。必ず変心して下さるなや』 セーリス姫『女の一心岩でも射貫く、妾は決して変りませぬ。貴方こそ左守とおなり遊ばしたら妾をお捨てなさるのでせう。それが心配でなりませぬわ』 ユーフテス『決して決して、左様な心配はして下さるな。二世三世は愚か五百世まで誠の夫婦で厶る』 セーリス姫『それを承はつてヤツと安心を致しました。併しながら人目の関も厶りますれば、今日はこれでお暇を致します。どうぞ女が度々参りましては目的の妨げになりますから、城内でお目にかかりませう』 ユーフテス『あゝ惜しい別れだが二人の将来の為めだ。それならここで別れませう』 セーリス姫『明日御登城になりましたら、どうぞ妾の居間をお訪ね下さいませ。併し人目もありますから、態とに素気なう致して居りますから、必ずお気に触へて下さいますなや』 ユーフテス『口で悪云うて心でほめて蔭の惚気が聞かしたい……と云ふ筆法ですな、アハヽヽヽ』 セーリス姫『オホヽヽヽ左様ならばお暇致します』 と両人は立ち上り堅く手を握り合ひ、目と目を見合はし、残り惜しげに左右に袂を分てり。 (大正一一・一一・一〇旧九・二二加藤明子録) |
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霊界物語 | 41_辰_黄金姫&清照姫の入那の国の物語1 | 余白歌 | 余白歌 蒙古入に際して 天地の神の任さしの瑞御魂いかでか捨てむ弥勒の愛は〈序文(初版)〉 吾が往かば官も世人も信徒もさぞさわぐらむ暫し待てかし〈序文(初版)〉 行く先の国人たちに守られて五六七の神業遂ぐる嬉しさ〈序文(初版)〉 蒙古入に際して 海山を遠く隔てて住むとても誠の人に近き吾なり〈総説(初版)〉 不知火の筑紫の果に到るとも心は近く信徒守らむ〈総説(初版)〉 もろこしの野辺にも月はいさぎよく照るいさをしは変らざりけり〈総説(初版)〉 たとへ身は野山の奥に朽つるともわが大君の御代を忘れじ〈二章(初版)〉 ぬれ衣の干るよしもなき悲しさにきりしま山の火こそ恋しき〈二章(初版)〉 故郷の空打ち眺め思ふかな数多の御子の心いかにと〈三章(初版)〉 西へ行く月日の影はいと清し吾も月日に習はむとぞ思ふ〈四章(初版)〉 ローマ字やエスペラントの花咲きて緑の星の影さやかなり〈五章(初版)〉 エスペラント数多のアミーコ集りてゑらぎ楽しむ聖地の初冬〈五章(初版)〉 身はたとへ千里の外に置くとてもいかで忘れむ君の真心〈六章(初版)〉 百年の齢保ちて現世にさかえますべく吾は祈らむ〈六章(初版)〉 自我心の魔にさやられて自身から神の宮居と語る愚かさ〈七章(初版)〉 自己愛のはげしき人に皇神の誠の愛のわかるべきかは〈七章(初版)〉 毀たれし宮の廃墟の前に立ちて神の御心を一入思ふ〈八章(初版)〉 大神の清き宮居を建てながら毀たれにけり偽信者の為に〈八章(初版)〉 入蒙について 足乳根の老いたる母を偲びつつ出で行く吾は涙溢るる〈十章(初版)〉 教へ子の驚き如何に深からむと思ふにつけても涙の雨降る〈十章(初版)〉 君こそはわが命ぞと思ひしにしばし別れむ事の惜しさよ〈十二章(初版)〉 わが魂は神素盞嗚の生御魂瑞の神格に充されてあり〈十二章(初版)〉 或時は言霊別の神となり神国別となる事もあり〈十二章(初版)〉 大八洲彦の命や大足彦の神の御魂も吾と倶にあり〈十二章(初版)〉 今しばし別れの辛さ忍べかし花笑む春に逢坂の関〈十三章(初版)〉 骸骨となりし亡者が幾度も出直して来る暗世なりけり〈十四章(初版)〉 精霊の歓び勇む神の世は地上に花の匂ふ時なり〈十四章(初版)〉 もろこしの蛸間の山に嵐して花も果実も跡なく散り行く〈十五章(初版)〉 神無しの蛸間の山を眺むれば醜の小草の生い茂るかな〈十五章(初版)〉 虫喰ひの柱かついで餓鬼連が高山昇る影の憐れさ〈十六章(初版)〉 この春は百鳥千鳥万花今にヨメ(嫁)無いカカ(嬶)無いの吾れ〈十七章(初版)〉 ポンドンの節の破るる恐しさ声しきりなり竹商の火災〈十七章(初版)〉 ほの暗き電燈の下にて乙女子が涙してゐる又も笑つてる〈十八章(初版)〉 肉眼にしかと見えねど大空にはや彗星のさまよひ初めぬ〈十九章(初版)〉 かんばしき肉の匂ひを虎猫がかぎつけ窺ふ鶏の囮の辺〈二十章(初版)〉 航行空中飛行船体が時の気流に遭ひて墜落〈二十章(初版)〉 地下深く潜みて弥勒の経綸を為せる真人の早く出よかし〈巻末(初版)〉 騒がしきエトナの山の醜嵐いよいよ益々激しくなりぬ〈巻末(初版)〉[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました] |
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霊界物語 | 51_寅_浮木の森の曲輪城 | 05 教唆 | 第五章教唆〔一三二〇〕 妖幻坊、高姫は、イチヤイチヤ云ひながら酒を汲み交はし、ヘベレケになつた妖幻坊の無理をなだめながら、初公、徳公の両人が返答如何にと心待ちに待つて居た。そこへスタスタと青い顔して帰つて来たのは、初公、徳公の両人であつた。高姫は目敏く之を見て、 高姫『オイ両人、えらい暇が要つたぢやないか、どうだつたな。松姫はウンと云つただらう』 初『へい、イヤもう何で厶いました。それはそれは偉いものですなア、本当に一寸手に合ひませぬわ』 高姫『手に合はぬとは、松姫が義理天上の申す事を聞かないと云ふのかえ』 初『オイ徳、貴様は高姫さまの代理ぢやないか、お前代つて報告して呉れ』 徳『エエ高姫さま、貴女の御命令によつて種々と申しました所、松姫の奴、金毛九尾がのり憑つて居るのか、それはそれは偉い勢で、到底吾々の云つた位ではかてつけませぬがな』 高姫『かてつかぬとはどうしたと云ふのだえ。つまり高姫の云ふ事は聞かないと云ふのかえ』 徳『ハイ、聞かないとも申しませぬが、お前さまにはいろいろのものが雑居してゐるさうですよ。さうして杢助さまは大雲山の妖幻坊と云ふ妖怪だといつて居ましたよ。何とかして追つぽり出す積りだと意気込んで居りましたよ』 高姫『何と、杢助さまを妖幻坊だと、いよいよもつて怪しからぬ。松姫の奴、グヅグヅして居るとどんな事を申すか分つたものぢやない。これ杢助さま、起きなさらぬかいな。お前さまを本当の杢助ぢやない、化州だと云つて居るさうですよ』 妖幻『ハハハハハ、化物と云つたか、さうであらう。変性女子の瑞の御霊でさへも大化物と云はれて居るのだから、俺も化物と云はれるやうになれば光栄だ。高姫喜べ、これでもつて俺の人物の偉大崇高なる事が分るだらう、アハハハハ』 初『それでも化物と松姫の云つたのは、そんな意味ではありますまいぜ、貴方は何でも大雲山の妖幻坊だとか云つて居ましたよ』 妖幻坊の杢助『怪しからぬ奴だ、さう云ふ事を云はして置いては、吾々の目的の邪魔になる。こりや何とか致さねばなるまい。俺が行つて取り挫いでやるのは容易い事だが、それでは余り大人気ない。オイ初、徳、俺の最前言つたやうに思ひ切つてやつつけろ。お前達も俺の両腕となつた以上は、今が手柄の仕所だ』 初『ヘエ、エエやつつけますが、それがそれ中々の強かものでげして、実はその、エー何でげす』 と頭をガシガシ掻いて居る。 高姫『コレみつともない。松姫にやられて来たのだな。時に杢助さま、やつつけろと仰有つたが、滅多に手荒い事をなさるのぢやありますまいな。松姫は私の弟子ですよ。何程反対致しても、私は彼奴を構うてやらねばなりませぬ』 妖幻『何と高姫さま、貴女は慈善家ぢやなア。ヤ、感心々々、それなら何故、珍彦に毒酸を盛つたり、虬の血を盛つた盃を与へたのだ。やつぱり奥には奥があるのかなア、アハハハハ』 高姫『これ初さま、徳さま、きつと手荒い事をしてはなりませぬよ。併し正当防衛は此限りにあらずだから、どうか杢助さまのお言葉に従つて一働きして下さいな』 初『ヘエ私は何でも致しますが、この徳の奴が臆病ですから、気を取られて思ふやうに働けませぬわ』 妖幻『それならお前一人行つてやつて来たらどうだ。多寡が女の一匹ぢやないか。それ位の事が出来なくて、大望な御用が出来るか』 初『私一人では、どうも都合が悪いぢやありませぬか、よう考へて御覧なさい。貴方の両腕ぢやありませぬか、片腕では飯喰ふ事も、針仕事一つする事も出来ませぬだらう。それだから、どうしても徳を邪魔になつても連れて行かなくちや都合が悪いですな』 徳『馬鹿を云ふな、貴様が一番がけに霊縛にかかつてふん伸びたぢやないか』 初『ふん伸びたのは貴様も同然だ、偉さうに云ふない』 徳『それでも第一着に貴様がふん伸びたのだ。俺はおつき合にふん伸びて居たのだ。余程松姫が怖ろしいと見えるのう。そんな事で俺の上役にはなれぬぞ。サアどうだ、茲で彼奴を倒した方が上役にして頂くと云ふ事を御両人様の前で願はうぢやないか』 妖幻『アハハハハ、そりやさうだ、手柄があつた方が上役になるのは当然だよ、ちやんと草鞋でもはいて足装束をし、身動きのし易いやうにして行くのだ』 初、徳『ハイ畏まりました』 と両人は、慌しく納屋に入り、喧嘩装束に身を固め、樫の棍棒を携へて松姫館に進むべく準備に取り掛つた。妖幻坊、高姫は以前の如く、ひそひそ何事か囁きながら飲酒に耽つて居る。 お千代はスマートと共に躑躅の花などをちぎり戯れながら、向ふの谷の森林に何時とはなしに進み入つた。スマートは何とはなしに俄に体を慄はせ、遂にはお千代の袖を銜へて引つ張り出した。お千代は驚いて、 お千代『これスマートや、何をするのだい。ちつと温順しうおしんか』 とぴしやつと横面をはる。其処へ慌しく走つて来たのはお菊であつた。お菊はハアハアと息を喘ませ、お千代の此処に居るのを見てやつと安心したらしく、 お菊『お千代さま、貴女此処に居たの、私此処まで逃げて来たのよ。あの杢助と云ふ奴化物だわ。さうして此館を横領しようと考へて居る太い奴だから、すつかり素破抜いてやつて、此処まで逃げて来たの。きつと怒つて追駆けて来るに違ひないと思つたからねえ、本当に困つた奴が来たものだわ。そしてその犬は何処から来たの』 お千代『これはスマートと云つて、初稚姫さまの愛犬だと云ふ事よ。どこともなしに賢い犬よ』 お菊『こりやスマートさま、よう来て下さつたねえ。何さうお前は騒ぐの、些と静にしなさらぬか』 と頭を撫でる。スマートは益々落付かぬ風情をする。 千代『どうも不思議だわ、大方お母さまの身の上に何か変つた事が出来たのぢやあるまいか。俄に胸騒ぎがして来ましたわよ』 お菊『あの化物奴、お母さまを噛ひに行きよつたのか知れませぬ。それでスマートが、こんなに騒ぐのでせう、お千代さま、其綱を解いておやり』 お千代は、 お千代『さうねえ』 と云ひながら松の株に繋いだ綱を解いた。スマートは一目散に、細くなつて谷を越え姿を隠した。 千代『何とまア早い犬だ事、もう姿が見えなくなつて仕舞つたわ。お菊さま、私気に掛るから一寸帰つて見ますわ。お前さまもそこまで来て下さいな』 お菊『ハイお供致しませう。若しも化物が暴れて居つたら何うしませうかねえ』 お千代『サア、神様をお願ひして助けて貰ふより仕方がありませぬわ』 とこんな事を話し合ひながら、覚束ない足許で小柴を分け、松姫館をさして帰り行く。 さて松姫は唯一人戸を閉め切つて神殿に向ひ、いろいろと取るべき目下の方針について神示を伺つて居た。其処へ裏と表の戸を一度に押し破り入つて来たのは初、徳の両人であつた。松姫は驚いて、 松姫『ヤアお前は初公、徳公、血相変へて何しに来たのだ』 初『そんな事問ふだけ野暮だ。吾々は杢助さまの命令によつて、頑固なお前をやつつけに来たのだ。最前は馬鹿な事をしやがつて大きに憚りさま。今度は杢助さまから神変不思議の魔法を授かり出直して来たのだから、ジタバタしても駄目だ、覚悟せい』 と両人は樫の棍棒をもつて打つてかかる。松姫は已むを得ず、其処にあつた机を取るより早く二人の打ち込む棒を右へ左へうけ流し、暫く防戦につとめて居た。そして心の中に厳の御霊大神、瑞の御霊大神、守らせ給へ、救はせ給へと念じつつ、命限りに二人の荒男の激しき棒先を受けて居る。 松姫は数十合戦つて見たが、最早体力尽き、二人の鋭き棒に打ち殺されむとする一刹那、宙を飛んで駆け来りたる猛犬スマートは、矢庭に初公の足を銜へて引き倒した。続いて徳公の足を又もや銜へて其場に引き倒し、ウウーウウーと眼を怒らし睨みつけて居る。されど霊犬スマートは二人の体に些しも傷を負はせなかつた。二人は起き上り這々の体にて杢助、高姫の酒宴の席へ、バラバラツと命辛々かけ込んだ。二人の逃げ行く姿をお千代、お菊の両人は、十間許り間隔をおいた地点より打ち眺め、手を拍つてワアワアと心地よげに嘲笑ひして居る。妖幻坊、高姫は二人の様子に不審を起し、 妖幻『こりや両人、其態は何だ、些と確りせぬかい』 初『イヤもう大変で厶います。命辛々逃げて参りました』 妖幻坊の杢助『何が出たと云ふのだ。松姫にとつて放られたのか。エー、何と弱味噌だな』 初『ヘエ松姫も中々の豪傑ですが、松姫所か、どてらい奴が出て来て、イヤもう散々の目に遇つて来ました』 高姫『エエ間に合はぬ奴だな、これ徳、一体何が出たと云ふのだえ』 徳は慄へながら、 徳『ハイ、松姫と渡り合つて居りました所へ、俄に小北山の狼が飛び出し、吾等二人を銜へて倒しました。それ故俄に怖ろしくて、髪の毛が縮み上り手足が慄ひ戦き、たうとう此処まで命辛々逃げ延びました。何程出世さして貰つても、こんな怖い事は孫子に伝へてお断りです。出世などはもうしたくはありませぬ』 妖幻『何とまア弱虫だな、狼位が何怖ろしいのだ。狼なんかは友人だ……おつとどつこい、友人も同様だ、アハハハハハ』 初『もし杢助さま、貴方は狼が怖くないのですか』 妖幻坊の杢助『狼が怖くて此世の中に居られるか。今の人間は、何奴も此奴も美しい顔をして人間の仮面を被つて居るが皆狼だ。ちつと下れば狐、狸、蛇、鼬、蟇のやうな代物だ。貴様も矢張四つ足の霊と見えて、たうとう尻尾を出しやがつたな。口程にもない代物だ、アハハハハ』 高姫『どうも口ばかりで、間に合ふ霊はないものだ。これ杢助さま、中途半にして置く訳には参りますまい。お前さまがこれから行つて始末をつけて下さい。若し松姫が此処を逃げ出し斎苑の館にでも行かうものなら、忽ち露顕して困るぢやありませぬか。何れは分る事ですが、仕組をするまでは、やつぱり三五教に化けて居なくちや、完全に目的が達せられないぢやありませぬか。ウラナイ教の再興を企てるのだから、今が肝腎要の時ですよ』 妖幻坊の杢助『俺が行けば何でもないのだが、併し茲は一つ工夫をして、下から出て松姫を懐柔し、樽爼折衝の間に都合よく談判を済ませる方が無難でよからう。其代りに初公、徳公は乱暴を働いた奴だから、松姫の前に連れて行つて尻を引きめくり、三百の笞を加へてやれば、それで松姫も安心して此方の云ふ事を聞くだらう』 高姫『成程、刃に血塗らずして敵を降すと云ふ御方針、遉は杢助さまだワイ。私もそれなら賛成致します』 初『アアもしもし杢助さま、高姫さま、吾々両人は貴方の御命令で荒仕事に行つたのです。それに何ぞや、松姫さまの前で尻を捲つて、三百も笞打たれて耐りますか、なア徳、本当につまらぬぢやないか』 徳『こんな事なら、云ふ事を聞くぢやなかつたになア。杢助さまは、さうすりや矢張悪神かも知れぬぞ』 妖幻『もう斯うなつた以上は、貴様等両人、逃げようと思つたつて逃がすものか。曲輪の魔法によつて其方等両人を巻いてあるから逃げられるものか、カナリヤが鳥籠に入れられたやうなものだ』 初『のう徳、余りぢやないか、命がけの仕事をさされて、其上尻の三百も叩かれて耐るものかなア』 徳『アンアンアン、えらい事になつて来たわい、これと云ふのも余り欲に呆けたから罰が当つたのだ。アンアンアン、三五の大神様、えらい取違ひを致しました。何卒お許し下さいませ、惟神霊幸倍坐世』 と涙ながらに手を合す。 高姫『ホホホホ、正直の男だな、態と芝居をするのだから、お前の尻を叩くやうに見せて地べたを叩くのだから、些とも痛い事はない。そして甘く松姫を得心させ、無事事務の引継をさして了ふのだ。さうすればお前も立派なお役人になれるのだからなア』 徳『ヤアそれでやつと安心しました。オイ初、矢張高姫さまや杢助さまの智慧は偉いものだ。もう安心だ、尻を叩いて貰はうか』 初『ウン、そんな尻の叩きやうなら、百でも千でも、ビクとも致さぬ豪傑だ。何卒、高姫さま、杢助様、尻の千切れる所までお叩き下さりませ。之位の御用は屁のお茶で厶います』 妖幻『アハハハハ、それなら是から愈第二の作戦計画にかからうかなア』 高姫『オホホホホ、何とまア、腰抜の英雄、有名無実の豪傑だこと』 両人『ウエエエエー、ウエーハハハハハ』 (大正一二・一・二五旧一一・一二・九加藤明子録) |
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霊界物語 | 57_申_テルモン山の神館2 | 16 犬労 | 第一六章犬労〔一四六六〕 三千彦はテルモン山の中腹をケリナ姫を背に負ひ、スマートに道案内をさせ乍ら草茫々たる歩き難き道を辿り辿つて、デビス姫を押込めた岩窟の前に漸く着いた。 デビス姫はワックスの話によつて、如意宝珠の帰り来れる事及び父の存命なる事、並びに妹の安全なる事を略覚り、胸を撫で下し、稍心も弛みグツタリと岩に凭れて眠に就いた。漸くにして三千彦は岩窟の入口に着いた。 三千彦『もし、デビス姫様、私は三五教の神司三千彦で厶います』 ケリナ姫『お姉様、ケリナで厶います』 と二人が代る代る名を呼べども少しも答がない。ケリナ姫は、……姉は最早何者にか攫はれ玉ひしか……と心も心ならず、 ケリナ姫『三千彦様、どう致しませう。姉上様は何者にか攫はれ遊ばしたと見えまする。これ程呼んでもお答がないのは不思議では厶いませぬか』 三千彦『決して御心配なさいますな。鼾の声が聞えて居ます。屹度お眠みになつて居るのでせう』 スマートは四辺の空気を震動させ、『ウワツウワツ』と叫んだ。此声に驚いてデビス姫は夢を破られ窓口を見て、……何か人声がする様だ……と戸口に躙寄り、隙間より透かし見れば星月夜の事とて明瞭姿は分らねど、どうやら妹のスタイルによく似て居るので、 デビス姫『花の色はうつりにけりな姫の姿 窶れ玉ひしことの苦しさ。 吾命助け玉ひし犬彦の 黒き姿の慕はしきかな』 ケリナは此声に打悦び、 ケリナ姫『三千彦の情の御手に助けられ 汝を救はむと尋ね来りぬ』 三千彦『神館珍の御子とあれませる デビスの姫よ安く出でませ。 いざさらば此れの鉄門を打破り 救ひまつらむ神のまにまに』 デビス姫『嬉しさは乙女の胸に三千彦の 神の司を伏し仰ぐかな』 三千彦は強力に任せて錠前を捻切り、窟内に入つてデビス姫の手を執り、引抱へ救ひ出した。ケリナは見るよりデビスに抱きつき、 ケリナ姫『姉上様』 と云つたきり後は一言も発し得ず、悲しさと嬉しさに咽返つて居る。デビス姫も同じ思ひの懐しさに、妹の体を抱きしめ熱涙を流し、言葉さへ得出さず、嬉し泣きに泣きしやくつて居る。 三千彦『お二人様、斯様な処に長居は恐れで厶います。一時も早く求道居士やヘルを救ひ出さねばなりますまい。サア参りませう』 デビス姫『ハイ、御親切に有難う厶います。どうも妾は斯様な処に押込められて立ちもならず、坐りもならず居りましたので歩く事が出来ませぬ。如何したら宜しう厶いませうかな』 三千彦『ア、さうでせうとも、お察し申します。失礼ながらお二人さま、私の背に負さつて下さい。どうなり、かうなりお館迄お届けしませう。再び出直してスマートに案内させて居士を救ひ出しに参りませう』 デビス姫『危急の場合で厶いますからお言葉に甘へて、さう願ひませうかな。本当に済まない事で厶います』 三千彦『決して御心配は要りませぬ。サア』 と云ひ乍ら少し蹲んで背を突き出す。二人は三千彦の背に負ぶさつた儘、星月夜の山坂をトボトボと下つて神館へ密かに帰り行く。スマートは後前を警護し乍ら人影なき所を案内し、夜明け前、ヤツトの事で館に着いた。 館の玄関口にはエルが依然として高鼾をかいて当直を勤めて居る。受付の寝て居るのを幸ひ勝手覚えし家の中、小国別の病室をさして二人の娘を背負つた儘進み入つた。小国別は今や断末魔の息を引き取らむとする所であつた。小国姫は最早や、これ迄と夫の側に附添ひ、首頸垂れて憂ひに沈んでゐる。それ故三千彦の帰つて来たのに気がつかなかつた。三千彦は言葉静かに、 三千彦『奥様、お嬢さまをお伴して帰りました。御安心なさいませ』 と云ふ声に小国姫はフと此方を向いた。見れば三千彦が二人の娘を背に負うて立つて居る。小国姫は夢か、現か、幻かと嬉しさ余つてものをも得云はず、口を開け、目を瞠つた儘、石像の如く突つ立つて居る。三千彦は二人の娘を労り、ソツと居間に下ろした。二人の乙女は身体綿の如く疲れ果て一人で歩む事が出来なくなつてゐた。 デビス姫『お父様、お母様、漸く此方に助けられ帰つて参りました。誠に御心配かけて済まぬ事で厶いました』 ケリナ姫『御両親様、つひ悪魔に誘はれて家出を致し、種々と御心配を掛けましてお詫の申し様も厶いませぬ。何卒御許し下さいませ』 と涙と共に詫入る。 小国姫『ア、夢かと思つたら夢ではなかつたかな。三千彦様、有難う厶います。旦那様が貴方の事を云うて今の今迄待ち兼ねて居られた様子でしたが最早絶命れた様です。アーア何とかして貴方のお顔や娘の顔を、も一度見せ度いものですが、とても此世では叶ひますまいな』 とワツと泣き倒れる。二人の娘は父の枕辺にすり寄つて、 『お父様お父様』 と泣き叫ぶ。三千彦は此惨状を見るに忍びず、 『国治立大神様、豊国主大神様、神素盞嗚大神様、何卒々々、も一度病人の魂返しをお許し下さいまして親娘の対面さして下さい』 と汗をタラタラ流し乍ら祈願を凝らし、天の数歌を唱へ出した。昏睡状態に陥つた小国別はパツと目を開き、二人の娘が枕許に居るのを見て打驚き、 小国別『ア、其方はデビス姫、ケリナ姫であつたか。臨終の際に一目会ひたかつた。ようマア宜い処へ帰つて下さつた。嘸苦労をしたであらうな』 と男泣きに泣く。二人の姉妹は声を揃へて、 『お父様、お懐しう厶います。何卒確りして下さいませ。三千彦様が居らつしやいますから大丈夫で厶います。さうお気の弱い事を云はずに長生して下さいませ』 小国別『ア、娘、よう云うて呉れた。その言葉を聞くからは、父はもう、何時死んでも心残りはない』 小国姫は漸うに顔をあげ、 『旦那様、嘸御満足で厶いませうな。妾も斯んな有難い事は厶いませぬ』 小国別は「ウン」と云つたきり、又もやスヤスヤ昏睡状態に入つた。三千彦は小国姫に向ひ、 『ケリナ姫様、デビス姫様をお助け下さつた求道居士が、悪漢の為に岩窟内に押込められて居りますから、私は之から救うて参ります。さうして姫様がお帰りになつた事は私が帰る迄内密に願ひます。何卒、別の座敷に移してお忍ばせを願ひます』 と裏口よりスマートと共に飛び出した。 受付のエルは奥の様子が何となく騒がしいのでフと目を覚まし、四這になつて足音を忍ばせ乍ら親娘対面の様子を聞いて居た。今三千彦が飛び出したので自分も裏口から真跣足の儘、飛び出し、見え隠れにトントントンと後を追うて行く。三千彦は一生懸命にスマートの後に従ひ、求道居士を救ふべく道を急いだ。岩窟の一町ばかり手前迄来て見ると数多の荒男がワイワイと何事か喚いて居る。 三千彦は暫らく様子を窺はむと草の中に身を隠し、考へて居た。エルは道を転じて草を分け大勢の前へ走り寄つて、 エル『今三五教の魔法使三千彦と云ふ奴、二人の姫様を連れ帰り、今又求道居士を救ひ出すべくやつて来て、其処の草原に隠れて居る』 と報告したので数十人の荒くれ男は二つに分れ、三十人許りは三千彦を召捕らむとエルが案内の下に詰めかけて来た。スマートは忽ち毛を逆立て縦横無尽に駆け廻り、足を啣へて将棊倒しにバタバタと倒して了つた。此勢ひに辟易し、何れも四這となつて雑草の中に身を隠し慄うて居る。三千彦は、 三千彦『アハハハハハ』 と高笑ひし乍ら岩窟に近付けば、求道居士、ヘルの両人を雁字搦みにして数十人の男が棒片を以て叩きつけて居る。 求道居士、ヘルの両人は半死半生の態にて顔面血潮を漲らし倒れて居た。三千彦は其場に現はれ、 三千彦『罪なき修験者を打擲するとは何事ぞ。理由を承はり度い』 と云はせも果てず、 群衆『其方は三五教の魔法使、サアよい所に来た。貴様も血祭にして呉れむ』 と棍棒、竹槍を持つて勢よく迫り来る。三千彦は右に左に体をすかし、一方求道居士を庇ひながら、敵の刀をひつたくり、仁王立ちとなつて、寄らば斬らむと身構へして居る。空を切つて駆け来るスマートは、又もや縦横無尽に駆け廻り足を啣へ手を噛み一人も残さず草原の中へ投倒した。悪酔怪員の面々は何れも不意を喰ひ、肝を潰し四這となつて草野を潜り乍ら各思ひ思ひに逃げて行く。 求道居士及ヘルは余りの負傷に気も遠くなり、呆けた様になつて首ばかり振つて居る。三千彦は声を励まし、 三千彦『求道居士殿、ヘル殿、確りなさいませ。私は三五教の宣伝使三千彦で厶いますぞ』 と耳許にて呼はつた。求道居士はハツと気を取り直し、四辺をキヨロキヨロ見廻し乍らヤツと安心の態にて、 求道居士『ア、危い所へよく助けに来て下さいました。二三日以前から此岩窟に投げ込まれ、夜中頃引張り出されて種々と打擲に合ひ、到底助かるまいと思ひましたが貴方がおいでなさつて私の命をお助け下さつて、有難う厶います。そしてデビス様、ケリナ様は無事で厶いませうか。どうも、それが気にかかりましてなりませぬ』 三千彦『御心配なさいますな。姫様はお二人とも私が救ひ出し今お館へ送り届けました。そして親娘の対面をなさいました。兎も角貴方の事が気にかかりお救ひに参りまして厶います』 求道居士『ハイ、有難う厶います。併し乍ら如何したものか私は足が立たない様で厶います』 三千彦『私は御存じの通り独活の大木と云はれた位ですから、お二人さまとも私の背に負さつて下さい。兎も角お館までお届け致します』 求道居士『実に腑甲斐ない事で厶いますが、そんなら助けて頂きませう。ヘルさま、貴方は如何ですか』 ヘル『ハイ、私はどうなりと歩けるだらうと思ひます』 三千彦『もし歩けなかつたら、スマートさまの首にでも喰いついてお帰りなさい』 ヘル『ハイ、有難う厶います、命の親様』 と感謝の涙を流し乍らエチエチと神館を指して帰り行く。 三五教の魔法使、並に狂犬が現はれたと云ふので、悪酔怪員や宮町の老若男女は戦々恟々として魔法使及び狂犬撲殺の相談会を彼方此方に開いて居た。 惟神神のまにまに述べて行く テルモン館にありし次第を。 (大正一二・三・二五旧二・九於皆生温泉浜屋北村隆光録) |
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霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 20 三五神諭(その一) | 第二〇章三五神諭その一〔一五四五〕 明治二十五年旧正月…日 三ぜん世界一度に開く梅の花、艮の金神の世に成りたぞよ。梅で開いて松で治める、神国の世になりたぞよ。この世は神が構はな行けぬ世であるぞよ。今日は獣類の世、強いもの勝ちの、悪魔ばかりの世であるぞよ。世界は獣の世になりて居るぞよ。邪神にばかされて、尻の毛まで抜かれて居りても、未だ眼が覚めん暗がりの世になりて居るぞよ。是では、世は立ちては行かんから、神が表に現はれて、三千世界の天之岩戸開きを致すぞよ。用意を成されよ。この世は全然、新つに致して了ふぞよ。三千世界の大洗濯、大掃除を致して、天下泰平に世を治めて、万古末代続く神国の世に致すぞよ。神の申した事は、一分一厘違はんぞよ。毛筋の横巾ほども間違ひは無いぞよ。これが違ふたら、神は此の世に居らんぞよ。 何れの教会も先走り、とどめに艮の金神が現はれて、天の岩戸を開くぞよ。岩戸開きのあるといふ事は、何の神柱にも判りて居れど、何うしたら開明になるといふ事は、判りて居らんぞよ。九分九厘までは知らしてあるが、モウ一厘の肝心の事は、判りて居らんぞよ。三千世界の事は、何一つ判らん事の無い神であるから、淋しく成りたら、綾部の大本へ出て参りて、お話を聞かして頂けば、何も彼も世界一目に見える神徳を授けるぞよ。 神となれば、スミスミまでも、気を附けるが神の役、かみばかり好くても行けぬ、かみしも揃はねば世は治まらんぞよ。不公平では治まらん、かみしも揃へて人民を安心させて、末代潰れぬ神国の世に致すぞよ。用意を為されよ、脚下から鳥がたつぞよ。 天地までも自由に致して、神は残念なぞよ。今の人民、盲者聾者ばかり、神が見て居れば、井戸の端に茶碗を置いた如く、危ふて見て居れんぞよ。サタンよ。今に艮の金神が返報返しを致すぞよ。 根に葉の出るは虎耳草、上も下も花咲かねば、此世は治まらぬ。上ばかり好くても行けぬ世。下ばかり宜くても此世は治まらぬぞよ。 天使は綾部に出現されてあるぞよ。至治太平の世を開いて、元の昔に返すぞよ。神柱会開きは人民が何時までかかりても開けんぞよ。神が開かな、開けんぞよ。開いて見せうぞよ。世界をこの儘おいたなら暗黒に成るぞよ。永久は続かんぞよ。今に気の附く人民ないぞよ。神は急けるぞよ。此世の鬼を往生さして、邪神を慈神神也慈悲の雨降らして、戒めねば、世界は神国にならんから、昔の大本からの神の仕組が、成就致す時節が廻りて来たから、苦労はあれど、バタバタと埒を付けるぞよ。判りた守護神は一柱なりと早く大本へ出て参りて、神界の御用を致して下されよ。さる代りに勤め上りたら、万古末代の大事業完成者であるから、神から結構に御礼申すぞよ。世界中の事で在るから、何程知恵や学がありても、人民では判らん事であるぞよ。此の仕組判りては成らず、判らねば成らず、判らぬので、改信が出来ず、岩戸開きの、末代に一度の仕組であるから、全然、学や知恵を捨てて了ふて、生れ赤児の心に立返らんと、見当が取れん、六ケ敷仕組であるぞよ。今迄の腹の中の、垢塵をさつぱり、放り出して了はんと、今度の実地まことは、分りかけが致さん、大望な仕組であるぞよ。 氏神様の庭の白藤、梅と桜は、出口直の御礼の庭木に、植さしたのであるぞよ。白藤が栄えば、綾部宜くなりて末で都と致すぞよ。福知山舞鶴は外囲ひ、十里四方は宮垣内、綾部はまん中になりて、黄金世界に世が治まるぞよ。綾部は結構な所、昔から神が隠して置いた、真誠の仕組の地場であるぞよ。 世界国々所々に、岩戸開きを知らす神柱は沢山現はれるぞよ。皆艮之金神国常立尊の仕組で、世界へ知らして在るぞよ。大方行き渡りた時分に、高天原へ諸国の神、守護神を集めて、それぞれの御用を申付ける、尊い世の根の世の本の、竜門館の神屋敷地上の高天原であるから、何を致しても大本の教を守らねば、九分九厘で転覆るぞよ。皆神の仕組であるから、吾が吾がと思ふて致して居るが、皆艮の金神が化して使ふて居るのであるぞよ。此の神は、独り手柄をして喜ぶやうな神でないぞよ。仕組の判る守護神でありたら、互に手を曳き合ふて、世の本の御用を致さすから、是までの心を入替へて、大本へ来て肝腎の事を聞いて、御用を勤めて下されよ。三千世界の神々様、守護神殿に気を附けるぞよ。谷々の小川の水も大川へ、末で一つに成る仕組。此処は世の本。誠の神の住ひどころ。 神と悪魔との戦ひがあるぞよ。此いくさは勝ち軍、神が蔭から、仕組が致してあるぞよ。神が表に現はれて、善へ手柄致さすぞよ。邪神の国から始まりて、モウ一と戦があるぞよ。あとは世界の大たたかひで、是から段々判りて来るぞよ。この世は神国、世界を一つに丸めるぞよ。そこへ成る迄には、中々骨が折れるなれど、三千年余りての仕組であるから、うへに立ちて居れる守護神に、チツト判りかけたら、神が力を附けるから、大丈夫であるぞよ。世界の大峠を越すのは、神の申す様に、素直に致して、何んな苦労も致す人民でないと、世界の物事は成就いたさんぞよ。神はくどう気を附けるぞよ。此事判ける身魂は、東から出て来るぞよ。此御方が御出になりたら全然日の出の守護と成るから、世界中に神徳が光り輝く神世になるぞよ。中々大事業であれども、昔からの生神の仕組であるから別条は無いぞよ。 一旦たたかひ治まりても、後の悶着は中々治まらんぞよ。神が表に現はれて、神と学との力競べを致すぞよ。学の世はモウ済みたぞよ。神には勝てんぞよ。 ○ 明治二十六年…月…日 お照しは一体、世界一つに治める経綸が致してあるぞよ。この世は神の国であるから、汚食なぞは成らぬ国を、余り汚して、神は此の世に居れんやうに成りたぞよ。世界の人民よ、改信致されよ。元の昔に戻すぞよ。ビツクリ箱が明くぞよ。神国の世に成りたから、信心強きものは神の御役に立てるぞよ。今迄は内と外とが立別れて在りたが、神が表に現はれて、カラも天竺も一つに丸めて、万古末代続く神国に致すぞよ。艮の金神は此世の閻魔と現はれるぞよ。 世界に大きな事や変りた事が出て来るのは、皆此の金神の渡る橋であるから、世界の出来事を考へたら、神の仕組が判りて来て、誠の改信が出来るぞよ。世界には誠の者を神が借りて居るから、漸々結構が判りて来るぞよ。善き目醒しも有るぞよ。亦悪しき目醒しも有るから、世界の事を見て改信致されよ。新たまりての世になるぞよ。今迄宜かりた所はチト悪くなり、悪かりた所は善くなるぞよ。上へお土が上る所もあるぞよ。お土が下りて海となる所もあるぞよ。是も時節であるから、ドウも致しやうが無いなれど、一人なりと改信を為して、世界を助けたいと思ふて、天地の元の大神様へ、艮の金神が昼夜に御詫を致して居るぞよ。 この神が天晴表面に成りたら、世界を水晶の世に致すのであるから、改信を致したものから早く宜く致すぞよ。水晶の神代に成れば、何事も世の中は思ふ様になるぞよ。水晶の霊魂を調査めて神が御用に使ふぞよ。身魂の審判を致して、神が綱を掛けるぞよ。綱掛けたら神は離さぬぞよ。元は神の直系の分霊が授けてあるぞよ。 是から世界中神国と神民とに致して、世界の神も仏も人民も、勇んで暮さすぞよ。神、仏事、人民なぞの世界中の洗濯致して、此世を直すぞよ。信心強き者は助けるぞよ。信心なきものは気の毒ながら御出直しで御座るぞよ。神は気を附けた上にも気を附けるぞよ。モ一ツ世界の大洗濯を致して、根本から世を立直すから、世界が一度に動くぞよ。世界には何でなり共、見せしめがあるぞよ。天地の神々のお宮を建てて、三千世界を守るぞよ。世界がウナルぞよ。世界は上下に覆るぞよ。此世は神国の世であるから、善き心を持たねば、悪では永うは続かんぞよ。金神の世になれば何んな事でも致すぞよ。珍らしき事が出来るぞよ。 ○ 明治二十七年旧正月三日 燈台下は真暗黒。遠国から判りて来てアフンと致す事が出来るぞよ。綾部は世の本の太古から、神の経綸の致してある結構な所であるから、誠の者には流行病は封じてあるぞよ。此事知りた人民は今に一人も無いぞよ。余り改信を致さんと世が治まりたら、万古末代悪の鏡と致すぞよ。出口を引き裂きに来るものも出来るぞよ。本宮坪の内出口竹造、お直の屋敷には金の茶釜と黄金の玉が埋けてあるぞよ。是を掘出して三千世界の宝と致すぞよ。黄金の璽が光出したら、世界中が日の出の守護となりて、神の神力は何程でも出るぞよ。開いた口が閉まらぬぞよ。牛の糞が天下を取ると申すのは、今度の事の譬であるぞよ。昔から未だ斯世が始まりてから無き珍らしき事であるぞよ。大地の金神様を金勝要の神様と申すぞよ。今度艮の金神が表に成るに就いて、此神様を陸地表面へお上げ申して、結構に御祭り申さな斯世は治まらんぞよ。昔から結構な霊魂の高い神様ほど、世に落ちて御座るぞよ。時節参りて煎豆にも花が咲きて上下にかへりて、万古末代続く世に成りて、神は厳しく人民は穏かになるぞよ。是を誠の神世と申すぞよ。神世になれば人民の寿命も長くなるぞよ。世界中勇んで暮す様に成るぞよ。今の人民は斯んな結構な世は無いと申して居れど、神から見れば、是位悪い世は斯世の元から無いのであるぞよ。人民と申すものは目の前の事より何も判らんから無理も無いぞよ。 ○ 明治二十九年旧十二月二日 昔の初りと申すものは、誠に難渋な世でありたぞよ。木の葉を衣類に致し、草や笹の葉を食物に致して、刃物一つ在るでなし、土に穴を掘りて住居を致したもので有りたが、天地の神々の御恵で段々と住家も立派になり、衣類も食物も結構に授けて戴く様になりたのは、皆此世を創造た、元の活神の守護で人民が結構になりたのであるぞよ。人民は世が開けて余り結構になると、元の昔の活神の苦労を忘れて、勝手気儘に成りて、全然世が頂上へ登りつめて、誠の神の思ひを知りた人民は漸々に無くなりて、利己主義の行方ばかり致して、此世を強い者勝ちの畜生原にして了ふて、神の居る所も無い様に致したから、モウ此儘にして置いては、世界が潰れて、餓鬼と鬼との世に成るから、岩戸を開かな成らん事に、世が迫りて来たのであるぞよ。邪神が覇張りて神の国を汚して了ふて、此世は真暗闇であるぞよ。神が表に現はれて、神力を現はして、三千世界を日の出の守護と致して、世界を守るぞよ。この世は一旦泥海に成る所であれども、金神が天の大神様へ御詫を申して、助けて戴かねば、世界の人民が可哀相であるから、何んでも人民を助けたさに神が永らく艱難苦労を致して居れども、知りた人民は読む程より無いので、神の経綸は延る許りであるから、此大本へ立寄りて神の御話を聞かして貰ふた人民だけなりと、改信[※三五神諭には約70ヶ所で「改信」が使われているが、校定版・愛世版では第20章a343と第22章a311の2ヶ所だけ「改心」になっている。初版では全て「改信」であり「改心」は使われていない。したがって誤字と判断し、霊界物語ネットでは「改信」に修正した。]を致して、元の水晶魂に立復りて下されよ。世が迫りて来たから、モウ何時始まるか知れんから、後でヂリヂリ悶え致しても、モウ仕様が無いから、何時迄も気を附けたが、モウ気の附け様が無いぞよ。解りた人民から改信をして下さらんと、世界の人民三分になるぞよ。 (大正一二・四・二五旧三・一〇北村隆光再録) |
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霊界物語 | 64_下_卯エルサレム物語2 | 22 帰国と鬼哭 | 第二二章帰国と鬼哭〔一八二八〕 ブラバーサはスバツフオードの厚意により、アメリカンコロニーを根拠として、マリヤと共に三五教の大宣伝をなし、其名を遠近に轟かし、数多の信者を集めて居た。然るに日の出島における救世主の名声は、地球上隈なく知れ渡り、旭日昇天の勢で、エルサレムに来た各国人は、何れも競ふてブラバーサの話を聞かむと、このコロニーへ日一日と数多く集まつて来た。スバツフオードも非常に乗り気になり、アメリカンコロニーを三五教の出張所となし、自ら陣頭に立つて遠近の布教に出かけて居た。之に反してお寅婆アの日夜の活躍も寸効なく、一人の信者も出来ず、唯徒に狂人婆アの評判を売つたのみ、市民の笑ひを買つたのみが収穫であつた。加ふるに守宮別、お寅、お花との三角関係が祟つて、遂には其筋の耳に入り退去命令を受くる事になり、三日の後には聖地を後に本国へ帰る事になつたので、ブラバーサは俄に気をいらち、あんな狂人が国へ帰らうものなら、どんな噂を撒くかも知れない。自分は止むを得ずマリヤと関係した欠点もある。放つておけば自分の信用迄メチャメチャにせらるるは火を睹るよりも明かだ。これやかうしては居られない。一度聖師にも会つて見たいし、又妻子にも安心させ度いから、彼等に先だち急いで帰国仕度いものだと、スバツフオードに相談して見た。スバツフオードは一々諾づいて、 スバッフォード『成程一度お帰りになつた方がよいかも知れませぬな。肝腎の根拠地を蹂躙せらるる恐れが有りますから。併しマリヤさまをどうなされますか』 ブラバーサ『ハイ、マリヤさまには夜前篤と事情を打ち明けました処、快く承知して下さいました。遉は信仰生活に生きて居らるる丈あつて、変つた方ですわい。これこの通り私の為めに離縁状を書いて下さつたから安心を願ひます』 スバッフォード『一寸拝読さして頂いても宜敷う厶いますか』 ブラバーサ『ハイ、宜敷う厶います。マリヤさまの誠意がお分りになつて、互の便宜で厶いませうから』 スバツフオード聖師は徐に読み初めた、 一、私事、神様の御縁に依りまして、心にもなき御無礼を致し、今日迄貴方様の第二夫人として仕へて参りましたが、併しこれも貴方様に悪魔の憑依しない様、神様からの御命令を遵奉して来たものです。最早御帰国に際しましては、私の使命もいよいよ果されたと考へますから、後日の証拠として此書を書いて貴方にお渡し致しておきます。本国へお帰りになり、お寅さまや、守宮別さまや、魔我彦さまやお花さまなどが私と貴方の関係について、いろいろと悪く吹聴せらるるかも知れませぬ。万一左様な場合が厶いましたら、この書面を聖師様にお見せなさいませ、貴方と私との間は何の雲霧もなく、清浄潔白の間柄で厶います。互に愛し愛され抱擁キッスなどは致しましたが、未だ肉交を行つた事は厶いませぬ。これは大神様がよく御存じですから、別に弁解する必要もなからうかと存じます。 年月日 アメリカンコロニーのマリヤより 恋しき恋しきブラバーサ様 スバッフォード『なる程立派な御両人のお志し、ヤ、私もこれ程潔白な間柄とは存じて居りませ何だ。矢張私の心が汚なかつたのでせう、ハヽヽヽ。サアサアこれからマリヤさまに来て貰つて、私と三人送別会を開きませう。さうして、コロニーの信者へもお神酒を一杯披露の為振れ舞ふ事に致しませう』 ブラバーサ『長らく御厄介に預かりまして何から何迄御親切に有難う厶います。何れ又近い中に上つて参ります。其時は日の出島の再臨のキリストの現はれたまふ時かと存じます。どこ迄も幾久しく御厚情を願ひませう。随分お壮健で御神業に奉仕して下さいませ』 スバッフォード『三五教の信者はマリヤさまが担任致しますから、御安心下さいませ』 ブラバーサ『ハイ、有難う厶います』 と挨拶して居る所へマリヤは衣紋を繕ひ、出で来り、恭しく両手をつき、 マリヤ『聖師様浅からぬ御神縁によりまして、いたらぬ妾、長らくお世話に預かりました。貴方が御帰国遊ばしましても、御教の御趣旨は私が代つて飽迄宣伝致します。又信者に対しても、貴方から教はつた教理を懇々と説き諭し、神政成就の為め尽しますから、どうぞ御心配なくお帰り下さいませ』 ブラバーサ『ヤ、実に長らく見ず不知の土地へ参りまして、お世話に預かりました。何れ又出直して参りますから、どうぞお身体を大切に御用を勤めて居て下さいませ。明後日のトルコ丸でお寅さま一行は帰国されるさうですから、私は一足先に今晩の汽船アラビヤ丸に乗つて帰らうと存じます。どうか御一同様へ宜しくお伝へ下さいませ。序にマリヤさまにお願ひしておきたいので厶いますが、駅前の有明家の綾子と云ふ芸者は、一旦守宮別と妙な関係が結ばれたと云ふ事で厶います。守宮別が帰国の事となれば、嘸悲観の淵に沈み、女の小さい心から、無分別の事をするかも知れませぬ。万一そんな事があつては、日の出島から参りました、吾々宣伝使の責任が済みませぬから、何卒貴女から一度訪問して慰めて上げて下さい。きつとあの方は貴女のお弟子になるだらうと思ひます』 マリヤ『ハイ、畏まりました。御心配下さいますな』 スバッフォード『どうやら出帆時刻迄に、一時間より厶いませぬから、今自動車を雇ふておきました。どうか早く乗つて下さい、私も船場迄送りますから』 『ハイ、有難う』とブラバーサは自分の古い着物や手道具其他の日用品を、コロニーの人々に分与すべく頼みおき、三人自動車に乗つて渡船場へと急ぎ行く。あゝ惟神霊幸倍坐世。 (大正一四・八・二一旧七・二於由良海岸秋田別荘加藤明子録) (昭和九・五・二七王仁訂正) (昭和一〇・三・一〇於台湾草山別院王仁校正) |
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霊界物語 | 66_巳_オーラ山の山賊 | 06 神軍義兵 | 第六章神軍義兵〔一六八八〕 玄関口に立ちはだかり『頼まう、頼まう』と呼ばはつて居る白髪異様の老人は、さも横柄に、此家の下女に向ひ、 老人『オイ、お下女どの、当家の主人はどう致して居るか。吾はオーラ山の修験者、シーゴーと申す者だ。当家の主人に申上げたい事あれば、面倒乍ら案内をして呉れやれ』 下女『ハイ、何方か知りませぬが、旦那様は俄の御出陣で上を下への大騒動、どうか又出直して来て下さい。何分御多忙でいらつしやいますから』 老人『アハヽヽヽヽ当家に係はる大難を救はむが為、遙々オーラ山より救世主の使として現はれ来りし修験者だ。何は兎もあれ、主人に面会致したい』 斯くいふ所へ、武装をつけた主人のジャンクは現はれ来り、老翁に向ひ、 ジャンク『いづれの方かは知りませぬが、今は国家の一大事、館は番頭共に任せおき、今早朝より出陣せなくてはなりませぬ。何御用か存じませぬが、もはや一身一家の事にかかはる場合ではありませぬ。どうかお帰り下さいませ』 シーゴー『アハヽヽヽヽ。拙僧がオーラ山を立ち出で、草茫々たる夜途を露に濡れ乍ら夜も明けぬ中尋ねて来たのは、大神の御命令、国家を救ふも一家を救ふも、神ならでは叶はぬ事、其方も国家を救はむとして、義勇の軍に出陣なさるならば、拙者の一言をお聞きなされ。唯一回位耳を借した所で、余り損にはなりますまい』 ジャンク『国家を救ふ方法がありとすれば何より結構、既に出陣の間際なれども、聞き逃す訳にはゆきますまい。此処は玄関口、サアサア奥へお進み下さい。篤とお話を承はりませう』 シーゴー『然らば御免、まかり通るであらう』 と錫杖をつき乍ら、横柄な面をして離れの別殿に伴はれ往き、丸き机を中に置き、主客向ひ合せとなつて談話が初まつた。 ジャンク『貴方は神のお使、修験者と承はりましたが、国家を救ふ要道をお示し下さるとの事、実に感謝に堪へませぬ。何卒御指導を願ひます』 シーゴー『拙僧はオーラ山の生神、玄真坊の高弟シーゴー坊と申すもの、此度吾師の君玄真坊におかせられては、トルマン国の危急を救ひ、民の苦を免れしめ、且小にしては一家一人の危難を免れしめむと、連日連夜の修業を遊ばし、一切の苦難を救ひたまふ、其霊験の著しき事、古今絶無で厶る。天地の神明も吾師の高徳を慕ひ、教を受けむとし、毎夜オーラ山の大杉の樹に、天より棚機姫の星体下らせたまひ、深遠微妙なる教理を聞かせたまふと云ふ御威勢、如何にバラモン軍が跋扈跳梁するとも、吾師の君の祈祷によりて、煙散霧消するは火を睹るよりも明かである。就いては当家の娘御は行衛不明との事、必ずやバラモン軍の間諜者に捉へられ給ひしに相違なし、貴方は吾師の君に依頼して、最愛の娘御を、救つて貰ふ御精神は厶らぬか』 ジャンクは怪しみ乍ら、頭を垂れ、稍思案に暮れて居た。 ジャンク『シーゴー様とやら、遠路の所御親切に有難う厶います。然し乍ら今日の場合、娘の事などに心を悩ます場合では厶いませぬ。国家の一大事を救ふ御道あらばお示しに預かりたい』 シーゴー『アハヽヽヽ、貴方も偽善者の一人で厶るな。何程国家の為だと云つても、天にも地にも掛け替のない娘が危難を救はれたいと云ふ精神は、十分にお持ちでせう。吾子を愛せない親は、人君として、或は里庄としての資格は厶いますまい』 ジャンク『いや、貴方の御明察、恐れ入りました。天が下に子を思はぬ親が何処に厶いませう。併し乍ら今日の場合は、小なる愛を捨て、国家国王と云ふものに向つて、大なる愛を注ぐべきで厶います。国家も国王様のお身の上も、既に焦頭爛額の危機に瀕して居りますれば、仮令最愛の娘を犠牲と致しても、大なる愛の為に心力を傾注したい考へで厶います』 シーゴー『貴方は大切な娘御を犠牲としてでも、国家を助けたいと云ふ思召、実に感心致しました。もし国家、国王、並に貴方の愛児がお助かりになるのなら、当家の財産に執着は厶いますまいなア』 ジャンク『勿論の事です。吾娘は行方知れず、生死もさだかならず、加ふるに老躯を引提げて、剣光閃く戦場に進む此身、元より死は覚悟して居ます。吾死したる後は、巨万の財産も何の必要が厶いませう』 シーゴー『成る程立派なお志感じ入りました。然らば一つ御相談を申上たいが、国王、国家、及びお娘御を救ふ為め、此財産をオーラ山の師の君玄真坊に奉るお気は厶いませぬか。山も川も、草木も天の星迄其徳を慕ひ寄り来ると言ふ古今無双の生神様に、お上げなさつたならば、第一は祖先の為め、国家の為最善の功徳と考へますがな』 斯かる所へ受付のセールは慌ただしく入り来り、 セール『旦那様、村中の用意が調ひました。早く御出陣をと、村人が武装の儘お願に参りました。お馬の用意も出来ましたから……』 ジャンク『アヽさうか、直に往くからと申て呉れ』 セール『ハイ畏まりました』 と、慌ただしく立ち去つた。 シーゴー『如何で厶いますか、御決心は……』 ジャンク『国家の為め、国王様の為めならば、吾財産を全部玄真坊様に差上げませう』 シーゴー『いや流石は明察の里庄殿、天晴天晴、然らば後日の為め、貴方のお手より、一切の財産を差上るとの証文を認めて下さい』 ジャンク『男子の一言は鉄石の如し、面倒臭い証文などは要りますまい。これが人と人との交渉なら兎も角も、善知識の活神様に差上るのだから、却つて証文など差上るのは失礼で厶いませう』 シーゴー『成る程、御尤もの話だ。現に拙者が生証文で厶る。梵天帝釈自在天様も御照覧あれ、決して二言は厶いますまいなア』 ジャンク『エ、執拗厶る。苟くも義勇軍の総司令、武士の言葉に二言は厶らぬ』 シーゴー『然らば今日只今より、此財産は吾師玄真坊の所有に帰しました。御承知であらうなア』 ジャンク『吾財産を善用し、国家の為め、国王様の為め、娘の為め、神様を鄭重に祭り、祈願を籠めて下さい。時刻も切迫致しますれば拙者はこれよりお別れ申す』 シーゴー『ヤ拙僧も此吉報を吾師の君に申上げ、早速祈願に取りかかりませう』 と云ひ乍ら、揚々として帰り往く。梅公は二人の問答を訝かり乍ら、密に立聞して居た。 ジャンクは照国別の居間に入り来り、 ジャンク『いやどうもお待たせ致しました、サア是から出陣を致しませう』 梅公は次の間より慌ただしく入り来り、 梅公『もしもしジャンク様、御用心なさいませ、彼の修験者と云ふ老人は曲者で厶います。彼の人相には剣難の相が漂ひ、悪相が顔面に満ちて居ます。貴方は此財産を玄真坊とやらに全部提供なさつたやうですが、今の中にお取消しなさつたがよからう、一寸御忠告申上ます』 ジャンク『イヤ、有難う。私も怪しい事だとは思つたが、何と云うても国王様や国家を助けると云ふのだから、此言葉に免じ怪しいとは思ひ乍ら財産全部を提供しました。最早男子の口に出した以上は撤回は出来ませぬ。是が撤回出来るやうなら地上に吐いた痰唾を再び呑むやうなものです。もう私も覚悟を定めました。サアサア御苦労乍ら出陣致しませう』 梅公『チヨツ、曲津神の奴、偉い事をしやがつたな。こいつは屹度何かの秘密があるに相違ない。あんな事を吐して、自分が当家の娘を何処かに隠して居るのだらう。こんな事を聞いては見逃す事は出来ない。吾師の君が何と云はれても、オーラ山とやらに踏み込んで正体を調べてやらう、オウ、さうぢやさうぢや』 と独語し乍ら、照国別に従ひジャンクと共に三角旗を風に翻し、数百の義勇軍と共に旗鼓堂々とバルガン城を指して、法螺の声も勇ましく『ブウブウ』と四辺の邪気を清めながら隊伍を調へ進み行く。 数百人の騎兵隊は、手に手に槍長刀などを携へ、果しもなき広原を進み行く。風は幸ひ追風にて進軍に最も便利であつた。ジャンクは馬上乍ら進軍歌を謡ふ。 ジャンク『神代の昔皇神の開きたまひし神の国 トルマン国の若者よ国と君とに尽すべき よき日は今や来りけり勇めよ勇めよ神軍よ 進めよ進め百軍敵は幾万ありとても 如何でか恐れむ敷島のトルマン男子の魂は 金鉄よりも猶堅し国に仇なす曲津神 払へよ払へよおつ払へ骨身は積みて山をなし 血潮は流れて河となり屍を野辺に曝すとも 神の御為め君の為め御国の為に進むなる 吾等は貴の神軍ぞ撓まず屈せず進み行け ジャンクの率ゆる義勇軍後れを取るなひるむなよ 神の守りのある上は汝の前途は坦々と 蓮華の華の開くごと真楽園が開かれむ 進めよ進めよ快男子進めよ進めよ神軍よ 神は汝と倶にあり吾等は神の選みたる 御国を守る神軍ぞ吾神軍の往く道に 塞らむ曲のあるべきぞあゝ勇ましし勇ましし 国を救ひの此軍民の守りの神軍ぞ あゝ惟神々々梵天帝釈自在天 大国彦の大稜威吾身の上に輝きて 忠義一途に固まりし軍を守りたまへかし 勝利の都は近づきぬ勇めよ勇めよ快男子 進めよ進めよ神軍よ』 照国別は又謡ふ。 照国別『吾は神軍照国の別の命の宣伝使 三五教の御教を四方の国々伝へむと 進み来れる折もあれタライの村のジャンクさまが 館に立ち入り此度の軍の話を聞きしより 吾も義軍に加はりて厳の言霊尽くる迄 或は防ぎ戦ひつ神の建てたる神の国 御空に塞る黒雲を伊吹払ひに払ふべし 勇めよ勇めよ神軍よ神は汝と倶にあり 人は神の子神の宮神に敵する曲はなし 梵天帝釈自在天大国彦の神様を 敬ひまつり三五の教を守りたまふなる 神素盞嗚の大神の御稜威を力と頼みつつ 生死の境に超越し神の御為国の為 国王と民を救ふため身もたなしらに進むべし あゝ惟神々々神の御稜威の尊さよ 進めよ進めよ神軍士勇めよ勇めよ軍人 あゝ惟神々々御霊幸はひましませよ 御霊幸はひましませよ』 梅公は又謡ふ。 梅公『吾師の君に従ひて風吹き荒ぶ河鹿山 やうやく越えて千万の曲の難を払ひつつ 葵の沼に来て見れば月照り渡る水の面 空に輝く清照の姫の命や黄金の 姫の命の宣伝使右と左に袂をば 別ちてタライの村の口進み来れる折もあれ バラモン軍の暴状を耳にせしより腕は鳴り 血は躍りつつどこ迄も世人の難を救はむと 思ひきはめし雄心の大和心のやりばなく 如何はせむと思ふ折ジャンクの率ゆる義勇軍 従軍せよとの師の君の言葉に否み兼ねつつも 皇大神の御心と仰ぎまつりて進み往く さはさりながらスガコ姫難に遇ひしと聞くよりも 是が見捨てて置かれようか戦の場に立ちながら 心にかかるは姫の事一旦救ひ助けむと 思ひ定めし吾胸はいつか晴れなむ大空を 包みし雲の如くなりあゝ惟神々々 御霊幸倍ましませよ吹き来る風は強くとも 敵の勢猛くとも神にある身はどこ迄も 如何でか恐れためらはむあゝ面白し面白し 敵を千里に退けてトルマン国を永久に 神の教に守るべく進まむ身こそ楽しけれ 進めよ進めよ神軍よ勇めよ勇めよ諸人よ あゝ惟神々々御霊の恩頼を願ぎまつる 御霊の恩頼を願ぎまつる』 照公は又謡ふ。 照公『風よ吹け吹け科戸の風よ砂よ立て立て天迄立てよ 吾は神軍照公の神の司よ乗る駒の 蹄の音も戛々と如何なる山路も恐れなく 神のまにまに進むべしデカタン国の高原に 駒に鞭つ吾々は三千世界の救世主 鳥獣や草木迄救ひ助けむ職掌ぞ 大足別の曲軍バルガン城を十重廿重 取り囲むとも何かあらむ神のよさしの言霊を 力限りに射放ちて敵と味方の隔てなく 言向け和すは案の中刃に血をば塗らずして 軍をおさむる神の徳あゝ勇ましし勇ましし 前途に光明輝きぬ恐るる勿れ神軍士 進めよ進めよ皆共に天国浄土を地の上に 完全無欠に開く迄あゝ惟神々々 御霊幸倍ましませよ』 と声勇ましく謡ひながら、千里の広野を駒の蹄に砂塵を捲き上げながら、途々参加する兵士を合し、数千人の団隊となつてバルガン城を目がけ、勢猛く進み行く。 (大正一三・一二・一五旧一一・一九於祥雲閣加藤明子録) |
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霊界物語 | 70_酉_トルマン国の国政改革 | 16 天降里 | 第一六章天降里〔一七八三〕 シグレ町の貧民窟の九尺二間にはレール、マークの両人が俄にテイラ、ハリス、チウイン、チンレイの新しい四人の珍客を迎へ、どことはなく大活気が漲つて来た。新来の珍客は何れも古ぼけた労働服を身に纏ひ、之が太子か、貴婦人かと見まがふ許り、服装を落して了つた。それ故七軒長屋の隣りの婆嬶連も、夢にも太子や王女の変装とは知る由もなかつた。 朝も早うから女議員が、カバンの代りに手桶をさげて、井戸端会議を燕の親方よろしく開催してゐる。 甲『これ、お梅さま、レールさま処へ此頃妙な、落ちづれものが、やつて来てゐるぢやないか。あら、大方、乗馬下しの貴婦人かも知れんが、長屋の規則を守つて、饂飩一杯づつ配りさうなものだのに、まだ挨拶にも出て来ぬぢやないかい』 乙『お竹さま、饂飩か蕎麦の一杯貰ふやうな事があつたら、それこそ大変ですよ。あとが煩さいからな』 竹『それでも、私が去年の暮に此長屋へ流れ込んで来た時、お前さま等が率先して、何かと世話をして下さつた際に、長屋の規則だから、饂飩か蕎麦を一杯づつ向ふ三軒両隣りへ配れと云ひなしたものだから、親爺のハツピを質において饂飩を一杯づつ配りましたよ』 梅『そら、さうですとも、普通の人間なら、互に仲ようして、お交際をして貰はなくちやなりませぬが、あのレールさま、ま一人のマークさまの二人はラマ本山のブラツクリストとか云ふものについて居る人物で、いつも番僧さまが如意棒をブラ下げて調べに来るぢやないか。あの人は向上会員とか、黒い主義者とか云ふぢやないか。そんな人と交際でもしようものなら、番僧さまにつけねらはれ、誰もいやがつて日傭者にも雇うて呉れませぬワ。さうすりや忽ち親子の腮が乾上つて了ふぢやありませぬか。親爺さまは毎日土方をやり、私等はマツチの箱貼をして会計を助けては居るものの、雨が三日も降りや忽ち土方も出来ず、親子が飢ゑ死せねばならぬと云ふ境遇だもの、番僧さまなんかに睨まれちや堪りませぬわな』 お竹『何とマア怖ろしい人が此路地へ這入つて来たものぢやないか。此頃はあんな人がうろつくので寺庵異持法だとか、国士団、………法とか、難かしい法律が発布され、三人寄つて話をして居つても、直に引張られるさうだから、かう五人も六人も一緒に水汲みをやるのは剣呑ですぜ』 お梅『タカが女ぢやありませぬか。本来裏長屋の嬶連が、何人寄つて雀会議をやつた処で何一つ出来やしないわ。何程盲の番僧さまだつて、女まで引張つて帰るやうな無茶な事はしますまいよ』 お竹『何、女でも仲々手に合はぬ連中さまがありますよ。今時の女性は皆、高等淫売教育とか、云ふものを受けてゐる人だから、女権拡張とか女子参政論だとか、いろいろのオキャンや、チャンピオンが現はれて、ラマ本山の頭を痛めるものだから、此頃は女でも容赦なく、番僧さま、一寸怪しいと見たら直に引張つて行くさうだよ。あの向上会員さまの中にも、どうやら高等淫売らしい、綺麗な女が三人まで、やつて来てゐるのだもの、何時番僧さまがやつて来るか知れないわ。蕎麦の御馳走所か、此方が側杖を喰はされちや堪りませぬな。サアサア帰りませう』 と五六人の婆嬶が手桶をヒツ下げて各自小さい破れ戸をくぐつて姿を隠して了つた。 チウインは共同井戸の側にある穢しい共同便所に這入つて居つたが、此女連の話を一伍一什聞き終り、そしらぬ顔をして帰り来り、 チウ『オイ、レールの兄貴、僕は妙な事を聞いて来たよ。イヤ、もう大に社会教育を得た。人間と云ふものはホンに生活上に大変な懸隔があるものだな』 レ『長屋の雀や燕が云ふ事ア大抵極つてゐますよ。私を向上会員だと云つて、いつも口を極めて悪口を云ひ、テンで怖がつて交際をせないのです。随分、悪垂れ口を叩いたでせう』 チウ『ハヽヽヽ仲々面白いわ、イヤ然し面白いと云うては済まぬ。此トルマン国には一人も貧民のないやうに、何とかして骨を折らねばなるまい』 レ『タラハン国のスダルマン太子は、アリナ、バランスと云ふ賢明な棟梁の臣下を得て、教政の改革を断行されたと云ふ話ですが、屹度よく治まるでせう。まだ今々の事ですから、その結果は分りませぬが、今日の場合あゝするより外に道は御座りますまい。トルマン国も今は改革の時期だと思ひます。どうか太子様の英断を以て一日も早く教政の改革を断行し、国民の信望をつなぎ、天下の名君と仰がれ玉ふやう、吾々は努力したいと思ひます』 チウ『ヤ、実は僕もスダルマン太子のやり口には感服してゐる。どうしても思ひきつて決行せなくちや駄目だ。兎も角、やれる丈けやりたいものだな』 レ『今度の宰相は余程分つてゐるやうですが、浄行の古手や首陀の大将や毘沙頭の古手が、いくら頭を悩まし、教政内局を組織した処で、その寿命は長くて一年半、短い奴は三月位で倒れて了ふのだから、吾々教徒はいい面の皮ですよ。今日は最早、人文発達して人民が皆自覚して居りますから、古疵物は信用しませぬ。兎も角、清浄無垢の民間から出たものでないと、大衆の信望をつなぐ事はむつかしいですな』 チウ『そらさうだ。会衆の古手や首陀頭や浄行や金持会衆が、何遍出直した所で、まるで子供が飯事をしてゐるやうなものだ。亡宗政治、骸骨政治、幽霊政治、日暮し政治、軟骨政治、章魚政治、圧搾宗政ばつかりやられて居つちや、大衆は到底息をつく事は出来まい。僕もどうかして此際、かくれたる智者仁者を探し求め、善政を布いて見たいと思ふのだ。然し乍ら、まだ自分は部屋住の事でもあり、両親の頭が古くつて時代の趨勢が分らないものだから、実は困つてゐるのだ。何とか一つ大きな目覚しが来るといいのだけれどな』 レ『太子様、必ず心配して下さるな。吾々は王室中心向上主義ですが、現代の大衆は何時でも一撃の梵鐘の響と共に起つやうになつて居ります。テイラさまや、ハリスさまの前で、こんな事を云ふのはチツト許り云ひにくいけれど、今度の戦争がなかつたなら、吾々は已に已に左守、右守の両人を斃し、宗政の改革を太子様にお願ひする処だつたのです。既に既に矢は弓の弦につがへられて居つたのです。左守、右守の浄行も戦争の為に斃れたのだから、御本人にとつては非常に光栄だつたのでせう。さうでなくつても今日まで二つの首はつながれて居ない筈ですから』 テイラ、ハリスの両人は平気な顔して笑つてゐる。 レ『もしテイラさま、ハリスさま、貴女はお父さまの事を云はれても、何ともないのですか』 テイ『ハイ、子として父の死を悲しまぬものはありませぬ。然し乍ら大衆の怨府となり、非業の最後を遂げられやうなものなら、それこそ子として堪りませぬが、危機一髪の場合になつて、王家のため国教のために戦つて死んだのですもの、全くウラルの神さまの御恵だと思つて有難う感じて居りますわ。ネー、ハリスさま、貴女だつてさうお考へでせう』 ハリ『何事も皆、因縁事ですもの、仕方がありませぬわね』 レ『イヤお二人とも、立派なお心掛、向上会の私も今日の上流に、こんな考への人があるかと思へば聊か心強くなつて来ました。オイ、マーク、トルマンの国家も心配は要らないよ、喜び給へ、此若君を頂き、此賢明な左守右守のお嬢さまが上にある以上は、国家は大磐石だ。俺等も今迄十年の間、国事と改宗に奔走した曙光が現はれたやうなものだ』 マ『本当にさうだ。僕も何だか、死から甦つたやうな晴々した爽快な気分になつて来たよ。何と云つても年若き貴婦人の身として、駒に鞭韃ち砲煙弾雨の間を、三軍を指揮して奔走された女丈夫だもの。僕等の如き痩男は姫さまの前ではサツパリ顔色なしだ、ハツハヽヽヽ』 かく話してゐる所へ如意棒の音がガラガラと聞えて来た。 レ『ヤ、又番僧がやつて来よつたな。チウインさま、どうか本名を云つちや、いけませぬよ。皆さま、そのつもりでゐて下さい。屹度人員調査にやつて来たのでせうから』 チウ『よしよし、心配するな』 番僧『レールさま、一寸戸を開けて下さい』 レールは入口の破れ戸をガラリと押開けニコニコし乍ら、 『ヤア、これはこれは、朝も早うから御苦労で御座ります。何の御用か知りませぬが、トツトと御這入り下さい。拙宅も此頃はお客が殖えまして大変賑かう御座ります。俄に六人家内となつたものですから、懐の寒いレールにとつては聊か困つて居りますわい。貴方も此頃は物価騰貴で、さぞお困りでせうな』 番『君の云ふ通り僕も大変生活難に襲はれてゐるのだ。女房の内職で、どうなりかうなり、ひだるい目はせずに暮してゐるが、随分辛いものだよ。君はこれと云ふ仕事もしてゐないやうだが、随分裕福な暮しをしてゐるらしいね。鶏が叩いてあるぢやないか。然し此四人の方は何処から来られたのだ。実は此長屋の嬶が本山へ密告して来たものだから、職務上調べぬ訳にも行かず、又君に苦い面をしられるのを知り乍ら、之も職務上やむを得ないのだから、一応取調べに来たのだ。どうか悪く思はないやうにして下さい』 レ『久し振りで郷里の友人や、私の女房や、マークの女房が尋ねて来てくれたのですよ。明日はどうして喰はうかと兵糧がつきたので頭痛鉢巻をやつてゐた所、郷里からこの通り鶏と米と酒を持つて来たものだから、久し振りで御馳走にありつかうと思つて、朝から立働いてゐた所ですよ』 番『成程、どうも田舎の人らしいね。然し乍ら田舎にしては、云ふと済まぬが、垢抜けのした方許りだな』 レ『此友人はバクシーと云つて、チツト許り財産を持つて居ります。吾々二人は国士として国家の為、身命を賭して活動してゐるものだから、妻子を養ふ事が出来ないので、此バクシーさまの家へお世話になり、下女奉公に使つて貰つて居つた所、女房が一度夫の顔が見たい顔が見たいとせがむものだから、遙々と女房を連れて、バクシー夫婦が昨日来てくれたのです。マアお前さま久し振りだ、一杯やつたらどうですか。別に貴方の職掌にも影響するやうな事はありますまい』 番『イヤ、有難う。それでは一杯頂戴しようかな。僕だつて同じトルマン国の人民だ。如意棒をブラ下げて居る丈けの違ひだ。一つ上司の機嫌を損じたが最後、忽ち丸腰になつて労働者の仲間へ入れて貰はなくちやならないのだから、今の間に君等と懇親を結んでおかなくては、忽ち自分の前途が案じられて仕方がないからな。どうかレールさま、よろしく頼みますよ』 レ『今の高級僧侶等は、何奴も此奴も皆賄賂をとつたり、御用商人と結託して、甘い汁をしこたま吸ふてゐやがる餓鬼許りだ。役僧の中でも比較的潔白なのは君等番僧仲間だ。それでも小ラマ位になると随分予算外の収入があると云ふ事だ。君等も労働者の前で如意棒を見せて威張り散らす位が役得では詰らぬぢやないか。普選が間もなく実行される世の中だ。君も吾々仲間に這入つて向上運動の牛耳をとり、会衆にでも選出されて、国政と宗政の大改革を断行し玉へ。月給の安い番僧なんかやつて居つた処で、つまらぬぢやないか。何程出世したと云つた処で、番僧の出世は小ラマが関の山だ。それも三十年位勤続せなくちや、そこ迄漕ぎつける訳にや行かないからな、ハヽヽヽ』 番『ウン、そらさうだな。会衆にでも出て、うまく立働けば伴食浄行位はなれるかもしれない。悪くした所で首陀頭の椅子位には有りつけるかも知れぬ。生活の保証さへしてくれる者があつたら、僕は今日からでも辞職して君等と一緒に活動するつもりだがな』 レ『そりや面白い、番僧の中でも、君はどつか違つた所があると向上会員の仲間からも云はれてゐるのだ。思ひきつて番僧なんか棒にふり玉へ。君の生活は、このバクシーさまが屹度保証して下さるよ。さうしてバクシーさまに附てさへ居れば、最早大磐石だ。寺庵異持法、国士団、…………法も、何も、へつたくれも、あつたものぢやない』 チウ『こいツア面白い番僧さまだ。オイ君、僕は実の所、打割つて云ふがチウイン太子だ。教政を改革せむために向上会員の仲間へ偵察に変装して来てゐるのだよ。君もどうぢや、今日限り番僧をやめて向上運動に没頭する気はないか。浄行位にや屹度僕がしてやるよ』 番『本当ですか、腹の悪い、人を嬲るのでせう。恐れ多くも太子様が、かやうな処へおいでなさる道理はありますまい』 チウ『因習に囚はれた現代人は、太子と云へばどつか特種の権威でもあるやうに誤解してゐるが、太子だつて神柱だつて白い米を食つて黄い糞を垂れる代物だ、ハツハヽヽヽ』 番『イヤ分りました、間違ひ御座りますまい。何だかどこともなしに気品の高い人と思つてゐましたが、さうすると此御婦人達は何れも雲の上に生活を遊ばす貴婦人でせう。私はテルマンと申す小本山の番僧で御座ります。どうか宜しう今後は御指導を願ひます。如何なる御用でも犬馬の労を惜みませぬ』 チウ『ハ、よしよし、これで新人物を一人見つけた。早速の穫物があつた、ハヽヽヽ』 戸の隙間から太陽の光線が五条六条黒ずんだ畳の上に落ち、煙のやうな埃がモヤモヤと輪廓を描いて浮游してゐる。豆腐屋のリンが微に聞えて来る。新聞配達のリンが一入高く響く。 (大正一四・八・二五旧七・六於由良海岸秋田別荘北村隆光録) |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治26年(月日不明) | 明治二十六年月日(月日不明) お照しは一体、七王も八王も王が世界に在れば、此世に口舌が絶えんから、日本の神国の一つの王で治める経綸が致してあるぞよ。外国は獣の○であるから○○に致すぞよ。この日本は神国の世であるから、肉食なぞは成らぬ国を、余り汚して、神は此の世に居れんやうに成りたぞよ。世界の人民よ改心致されよ。元の昔に戻すぞよ。ビックリ箱が明くぞよ。神国の世になりたから、信心強きものは神の御役に立てるぞよ。今迄はカラと日本が立別れて在りたが、神が表に現はれて、カラも天竺も一つに丸めて、万古末代続く神国の世に致すぞよ。艮の金神は此世のエンマと現はれるぞよ。 世界に大きな事や変りた事が出て来るのは、皆この金神の渡る橋で在るから、世界の出来事を考へたら神の仕組が判りて来て、誠の改心が出来るぞよ。世界には誠の者を神が借りて居るから、漸々結構が判りて来るぞよ。善き目醒しも在るぞよ。又た悪しき目醒しもあるから、世界の事を見て改心を致されよ。新たまりて世を替へるぞよ。今迄宜かりた所はチト悪くなり、悪かりた所は善くなるぞよ。日本は上へお土が上るぞよ。外国はお土が下りて海となるぞよ。是も時節であるからドウも致しやうが無いなれど、一人なりと改心を為して世界を助けたいと思ふて、天地の元の大神様へ艮の金神が、昼夜に御詫を致して居るぞよ。 この神が天晴表面に成りたら、世界を水晶の世に致すので在るから、改心を致したものから早く宜く致すぞよ。水晶の神世に成れば、此世は思ふやうになるぞよ。水晶の霊魂を調査て神が御用に使ふぞよ。身魂の審判を致して、神が綱を掛けるぞよ。ツナ掛けたら神は離さぬぞよ。此日本は結構な国であるぞよ。元は神の直系の分霊が授けてあるから、一段も二段も上の身魂であるぞよ。言葉もその通りであるぞよ。夫れに今の日本の有様は、全然外国と同じ事に曇りて了ふて、神国の名ばかりに成りて居るから、元の先祖の神は悔しいぞよ。是から世界中神国に致して、世界の神も仏も人民も、勇んで暮さすぞよ。神、仏事、人民なぞの世界中の洗濯致して、此世を返すぞよ。信心強きものは助けるぞよ。信心無きものは気の毒ながら、御出直しで御座る。神は気を付た上にも気を付るぞよ。モ一ツ世界の大洗濯を致して、根本から世を立直すから、世界が一度に動くぞよ。東京へ攻めかけるぞよ。○○○は綾部に守護が致してあるぞよ。あとは宜くなりて、綾部を都と致すぞよ。世界には何でなり共見せしめがあるぞよ。綾部に天地の神々のお宮を建て、三千世界を守るぞよ。世界がウナルぞよ。世界は上下に覆るぞよ。此世は神国の世であるから、善き心を持たねば、悪では永くは続かんぞよ。金神の世になれば何んな事でも致すぞよ。珍らしき事が出来るぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治31年旧11月5日 | 明治三十一年旧十一月五日 艮の金神の御用を聞かせるのは、老人でも行かず、我の有る位で無いと行かず、我が在りても神の道では行かず、御用に使ふ者が無いぞよ。口と心と行いと違はぬ者でないと、此の神の御用は聞けんぞよ。誠を貫らぬくもので無いと、神の御取次は出来んぞよ。我身が可愛い様な事では、此の取次は出来んぞよ。誠を貫ぬく御方が出来てこんと斯御道は拡まらぬぞよ。大勢無くても誠の者さえ在りたら、直ぐに拡まるぞよ。誠の在る者には神が力を附けるぞよ。誠の者は神が拵えてあるぞよ。グズグズして居ると後の烏が前に成りて、残念な事が出来るぞよ。万の神を皆御苦労に成りて居るから、物事が速く解るぞよ。今の綾部の取次が、アフンと致す事が在るぞよ。夫れでは金光殿へ気の毒な事が在るぞよ。神は気を附けた上にも気を附けるぞよ。是は慢神からじゃぞよ。気緩るしは少とも成らぬ御道であるぞよ。上の御神様下たへ降りて御守護を成さるから、何も物事が速いぞよ。天も地も世界が平均のであるから、今迄の行いを致して居ると、大失敗を喰ふぞよ。全部物事が変るぞよ。今迄覇張りて居りた御ん方、チト気の毒が在るぞよ。御用意を成さらんと、慮見が違ふ事が出来るぞよ。何に由らず物事代るから、斯世は誰に依らず、世を持ち切りには致させんぞよ。何時までも続くとは思ふなよ、世が代るぞよ。信心も同じ事、後の烏が前に成るぞよ。慢心いたすと誰に由らず、大怪我が出来るぞよ。神の道では慢心と慾とが一番気障りで在るぞよ。金神の世に成れば、慾を捨て神にもたれた成らば、何も不自由は致さねども、何程申しても聞かしても、誠の者が無き故に、チットも物事が思ふ如うに行かんのは、我身の心が悪いのじゃぞよ。我を出し慢心を致して、思ふやうに行かんと、神の業のやうに申して居るが、此の金神は一言申したならば、何に由らず違いは無い神で在るぞよ。神が申した事も、チット延びる事が在るなれど、延びるのも神界の都合のある事ぞよ。人民を一人なりと助けたさに延ばすのであるぞよ。世界の人民の改心が出来たなれば、早く良く成るし、改心出来ずば永く苦しむだけじゃぞよ。改心一つ、是からは世界の洗濯致して、良く致すのであるから、人民の心から直さぬと、神の心と同じ事に成らんから、神の心に成りたなら、斯世は思ふやうに成るぞよ。早く改心致されよ。何程言ひ聞かしても聞かねば、聞くやうに致すぞよ。茲まで開けた斯世界、何んでも此儘で人民を助けたいのが願いで在るから、助けたいと思へども○○○○○○○○○ 今の世界の人民は、神の申す事を誠に致さず、神を何時までも敵対うなら、天災で何の様な事が在りても、神を恨めなよ。神は明治廿五年から、毎日お直に言はして在るぞよ。是に落度は無かろうぞよ。是程に言ひ聞かしても聞かねば、世界には何事が在ろうやら判らんぞよ。何事も神を恨めなよ。今度斯世の立替であるから、世界の改めを致すぞよ。昔から斯世始りてから無き、世の立替で在るから、大望な世替じゃぞよ。人民の知らぬ事じゃぞよ。改心致せと申すのは、神は身魂の改めが致してあるから、改心が出来ぬと出直しを致さな成らぬ事があるから、金神がクドウ申すのじゃぞよ。現世で御役に立てる身魂と、国替さして使ふ霊魂と、又た神へ引取る霊魂と在るよって、改心致せば天地の大神様へ、御詫を致して遣れば御赦あるから、改心いたせと申すのじゃぞよ。今度の世の立替は、新つに致さねば成らぬから、慾は要らぬぞよ。慾を致して貯めて居りても、新つの世に成るので在るから、神気を附けるぞよ。心次第、改心次第で宜く成るぞよ。今の人民何にも知らずに居るから、神がクドウ申すのじゃぞよ。今迄は足立殿も酷い御疑いで在りたが、モウ解りて来るぞよ。直の身上も判りて来るぞよ。是から金神表になりて守護致すから、物事が速いぞよ。日本の国は結構な国で在るから、日本の人民よ改心致して誠の心を持てよ。日本の国は、誠を尽さな成らぬ国で在るから、誠を尽す人なれば、誠の花が咲く国で在れども遅くなるぞよ。誠の人は是からは、日本の国は鏡に出すぞよ。鏡を見て改心を致されよ。今では誠の者が無けれども見ておじゃれよ、世が変れば誠の人を拵えて、神の思わくを立て、世界を良くいたすぞよ。世界の人民よ一日も早く改心なされよ。それに附ては、日本の人民の改心が第一で在るぞよ。日本の人民さえ改心致せば、世界は良い世になるのじゃぞよ。綾部の九ツ花は、誠から咲く花で在るから、誠の人が集りて来んと開かんから、○○○綾部は燈台下暗しでは、此結構な花が咲くのに、誠が無き故に、余所から御神徳を取りに来るぞよ。此事が判りかけたなれば、我れも私しもと申して皆集りて来るが、今の内に気が附かぬと、誠のおかげは余所へ取られるぞよ。 この世話早う致したなれば結構で在れども、モチト解らぬので、誰も見合はして、手を出せば損のやうに今では思ふて居れども、今世話を致さねば誠の世話でないぞよ。是が判りて来たなれば、元の世話掛は、高見から見物いたして居りても、良いやうに成るので在れども、人民といふものは疑いが在るから、神が申しても、誠には能う致さねども、世界の政教の立替であるから、中々大望であるから、延びるのじゃぞよ。日本の国を大事に思ふから延ばすのじゃぞよ。日本の脚場を余程強固いたして置かんと、兵糧が尽きる如うな事が在りては成らんから、豊作を取らしてかかるぞよ。金神の世に成りたら世年は良く成るが、此の大望が治まりたならば、誠に都合に成るから○○○○○ 開いた口も閉まらぬ如うな事が出て来るぞよ。世が代るのであるから、是迄に無かりた事が出来るぞよ。日本の国は是位い尊とい国といふ事を、今度世を切替に致して、表に現はれて、三千世界の政教を立替て、金神が世に出るぞよ。此の誠は九つ花の元じゃぞよ。九つ花は誠から咲せる花で在るから、三千年経綸を致した、誠の花の本で在るから、誠の人の世話でないと、此の御世話は出来んぞよ。近慾な事では出来ぬぞよ。是でも神の経綸いたした事で在るから成就いたさすぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治33年旧8月20日 | 明治三十三年旧八月二十日 艮の金神国武彦命が明治三十三年の八月二十日の筆先であるぞよ。地場が出来たら、永く係りて致した仕組であれど、もう是からは速いぞよ。神の方は何時でも出来るが、余り皆の気が小さうて困るぞよ。胴据えて下されよ。こんな大きな経綸でも最早時節が参りたぞよ。此の大本に立寄れば恐い如うに思うて、今では立寄らなならん人が寄りて来んが、今御神徳落そと拾はうと、今が大切の所じゃぞよ。今悪き事でも致す如うに思うて御神徳を落すと、拾うのは又難いから気を付けて置くが、元の御世話係り、もチト今の内に筆先、霊学を充分見て置かんと、真実の経綸が判らんぞよ。仕事の邪魔にならん様に、夜間になりとチトお出でなされよ。又跡で不足言はんならん事があると悪いから、一寸出口の手で気を付けて置くぞよ。神は、是程人民に悪く言はれても、気を付けるぞよ。親が子に云ふのと同一事じゃ。可愛から申すのじゃぞよ。出口の手で書置きた神言、皆出て来るぞよ。今の筆先前途の神業先繰り順に見て下されよ。順に皆出て来るぞよ。前に書す筆先じゃぞよ。今では判らんのと、御神徳失して居る人と、初発で金銭が入要のと、何も彼も一緒に重りて、誠の人は心配を致せども、もう暫時の間を忍耐て下されよ。又此の内部の紛擾が世界に出来るぞよ。某日大本に如斯出来事がありたと云ふ事を、附け留めて置いて下されよ。世界の鏡になる大本であるから、世界に実現事、雛型を演て見せるぞよ。世界の中枢とも成る所が未だ斯様な所であるから、誰も真実に致さねど、筆先に出た神言、皆実現来るぞよ。余り無理に開かうとすると、耐へ難き心配出来るぞよ。綾部の大本は淋むしきなれど、是でも見て居りて下されよ。御神徳判る程人が寄りて来るぞよ。余り無理な開き様致すと、大元の神の名迄汚すぞよ。南部殿結構な開き方致して、此の綾部は何も判らんから、如何様にでも出来る如うに思うて、早速から慢心致して何の態じゃ。金光殿の取次とは又違うぞよ。今大切の所じゃ。初発によい手本じゃ。皆心得て下されよ。初発に鏡が出るぞよ。我が心の実地が出ようがな。此の神は心丈けの事、心に神が映るから、我が心丈けの事より出来んぞよ。鐘を見て皆心得なされ。南部殿此の大本見て帰りなされと申したじゃないか。神の許さん事を致して神の名を汚し、皆に是丈け心配掛て、綾部は淋しきなれど、誠を貫かねばならんから、誠は手間が要るぞよ。骨が折れるぞよ。喉から血の出る極点まで、人の事に関係て苦労致すぞよ。せめては綾部には是丈け心配を懸ん様に致して貰はんと、今大切の時じゃぞよ。此の布教師は毎日申すが、噂血鳥じゃ。喉から血の出る所迄苦労致すぞよ。見て居る此の神も辛いぞよ。神も出口も上田も、有るに有られん気苦労、口では言はねど心の辛さ見て居る金神皆の心を推量して下されよ。人を助けるのは、如斯苦労致さなならん、この綾部は格別苦労致すのじゃぞよ。亀鑑になる大本であるから辛いのじゃ。暗黒の真の暗を水晶に致す根本を、今一時には無理であれども、天地へ御目に掛ねばならんから大望な神事じゃぞよ。艮の金神の経綸は、未だ神界にも御存知無き神業であるから、難しいのじゃぞよ。出口に五十日筆先書したら、神界にも判りかけて、和合出来る様になるから、左様なりたら偉大な仕組でありたと、人民にも改心が出来かけるぞよ。共時来たら、皆集りて来るぞよ。仕組てあるコトじや。皆心配致さんと居りて下されよ。今如何様に云ふて聞したとても、疑ひが未だ有るから、誠の人でも判らんから、暫時見て居りて下されよ。口で申しても真実に致さんぞよ。人民と云ふものは良き事でも疑ひが強いから、悪くより感得んから、神や取り次が苦労致すのじゃ。今が瀬戸じゃぞよ。判りかけたら速いぞよ。斯様な神業に人民が何程心配致したとても、人間力ではいかんから、神に一任して置くが良いぞよ。 今では綾部の町近在には、山師でも興して居るか、飯綱でも使ふて居るかと思ふて、種々様々と悪く申して居るから、是から解決て見せて遣るぞよ。二度目の世の立替と云ふ如うな大望な神業を、何にも知らん出口、上田に命して居れば、何ぞ悪き事致して居る如うに思ふて、種々様々と悪く申し、真実の神人を拵へては、速く分けて見せ度いと思ふて、種々様々と気を引きて見ても、何も判らんから、物事が遅く延引て、永く気苦労致さすぞよ。真実の世話して下さる人、大勢は要んが、もチト誠の人が無いと、綾部に仕組致してあるのであるから、根元の経綸はビックリとも致さねども、油断すると他所へ御神徳を持って去に相な事があるから、綾部の世話係り、余程確然致して居らんと、此の結構な事を他所に取られたら、詰らん事が出来るぞよ。此の神は判らん経綸を致して居るから、人民では判らねども、チットは此の神業判かりかけんと、万物の長とは申されんぞよ。鳥、畜類の方が優しじゃぞよ。九年同じ事を知らして居りても、未だ疑うて居る人許り、燈台下暗しと云ふ譬へはあれど、無残ものじゃのう。是では矢張鬼村じゃ。悪党村じゃ。筆先に出してある神言皆出て来るぞよ。神宮坪の内と申すのは、因縁ある事じゃ。夫れ知りて居る人あるか。其の因縁は知れよまい。其の因縁を筆先に書て示せたら、何程悪党な鬼村でも往生致すぞよ。まだ外にもあるなれど、此の筆先には載せんぞよ。 この村人を往生さしたら、世界一度に、もう徐々と世界に実現事を初て、皆に改心さしてやるぞよ。改心出来ん人は気の毒乍ら出直しをして貰はなならんぞよ。夫れが気の毒なから、煩う申すのじゃ。最早地場が出来たから、初めたら物事が速いぞよ。如毎日申す通り、艮の金神の大本に実現た事は、世界に実現ぞよ。皆現演て見せてあるのじゃぞよ。一度申したら同じコトじや。今の人民は、一度申して遣りても、呆然と致してをるから、同じ神言を書いて見せねばならんから、もう疑ひ晴らさんと、根本になる村じゃ。余りでないか。此の村神宮坪の内と申すのは因縁あることじゃ。人民では判らん神業であれども、一寸は判らんと、後でモ少大切に為て置くじゃったにと申して、地団駄踏んだとて、後の後悔は間に合はんぞよ。如何に村でもチト良き心を持たんといふと、如何な事が出来が致そやら判らんぞよ。人は一代名は末代、今度の神業は、万古末代名の残る事であるぞよ。世界の大元とも云ふ村を、結構な万古末代残る如うな経綸を他所に取られては、残念事が出来するぞよ。如斯結構な神言が判りたら、此の大本は取り払ひに致すから、変化して御用命して居れば、皆が軽侮りて、未に疑うて、セセラ笑らひ致して居るが、是程気を付けて居いたら、後で不足を申して下さるなよ。今の人民は、我身の為に良き事でありたら、眼も鼻も明かんでないか。此の結構な神事が判ろまい。神の致す神業は判ろまいがな。後の後悔は間に合はんぞよ。チト良き事為るには、余程苦労致さんと、良き事は出来んぞよ。此の艮の金神は、此の地場を致すには、余程苦労致したぞよ。其の御神徳に依りて、最早大丈夫じゃぞよ出口と引き添ふて、昔から苦労致した御蔭に依って、もう誰の自由にも出来んように致してあるぞよ。もう大丈夫じゃ。此所迄の苦労は、因縁ある身魂で無いと、普通の身魂では、此の永き苦労は誰も敢而貫行不能ぞよ。因縁ありて時節が到来りたら、如何な事でも出来るぞよ。夫れも此の金神で無いと、此の世は自由には、他の神では出来んのじゃぞよ。 此の金神と云う神は、世界を自由に致すと申すのは、肉体ありて、中界も守護するし山河でも自由自在に致すなり、又中空守護る活神も、守護神に連れて居るから、竜宮でも自由に致すぞよ。世界自由に致す神、余り変化て居れば、エライ事判らんから、分て見せて御神徳を与らねばならんから如斯に催促のじゃぞよ斯様な筆先は別に致して置かんと、出口を引き裂きに参るぞよ。影響は無が其様思ふ人が沢山あるぞよ[※「其(その)様(い)」は底本通り。]。今悪く申して居れども、是でも実地の経綸が判りて来たら、復出て来る人が出来るぞよ。物を知るなら先に知らんと、真実の御神徳は無いぞよ。後で知りては十人並じゃ。功名は成らんぞよ。今度の神業は引っ掛け戻しの仕組であるから、難しきのじゃぞよ。此の仕組で無いと、万古末代は永続かんから、判らん経綸がしてあるぞよ。余程胴の据りた真人でないと良い御神徳は取れんぞよ。結構な神人もあるぞよ気の毒な人もあるぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 大正元年旧3月8日 | 大正元年旧三月八日 大国常立尊変性男子の御魂が出口の大神と現はれて申して在る通り世界の実地を致して身魂の善し悪しを分けて見せて与らんと改心は出来んから、其処まで致すのは可愛想に思うて知らすなれど知らして与りて何時まで同じ事を致して居りてもチットも反響が無いから実地の生神が実地を始めて、此の世はどういふ事で茲までの事が出来たのじゃと言ふ事を判けて見せて与るぞよ。皆元の先祖の骨折りで茲までの事が成りて来たので在るのに、此の世を建造へた元を無いやうに為て、他の苦労で出来た此の世を、我が物にしてまた悪を強く致して人の精神をモウ一つ男も女も子供も悪賢う致して行りて行かうとの世界中の目的で在らうがな。今までは賊の世で在りたから、天地の神は見て見ん振りを致して居りたなれど、モウ程なく神力を現はして悪の陰謀は天地から許さんぞよ。此の世は悪では一寸も行けんといふ事を実地を仕て見せて与るぞよ。永い間の仕組が開けるので在るから、ソウ着々とには行かねども、申して在る通り何れは世界中が成りて来るぞよ。此の世が来るから明治二十五年から出口直の身魂は因縁ある身魂であるから、初発から激い行業を命せて、他から見ると純狂者で有りたのは誰一人見判ける人民が無い故に大きな声で呼号らすから、皆が怖がりて大分騒動を為せたなれど、此の狂者に云はした事も書かした事も皆天地の先祖が使うて致させたので在るからチットも違ひは無いぞよ。腹の中の塵芥を薩張り出して了うても是れで良いと言ふ事はないから、充分改心を致して居りて下されよ。世界の事が何も一度に開く梅の花と成ると言ふ事が毎度申して知らして在らうがな。外国には余り王が沢山で今の体裁、司配者が沢山在ると世界には口舌が絶えんぞよ。王と言ふものは彼方にも此方にも在ると苦説の基で在る、昔から我れが王に成らうと致して此の世が治まろまいがな。王といふものはソンナ容易簡便ものでは無いぞよ。我れには苦労無しに、他の苦労で盗みた世を持ちて見ても、今のやうなもので在るぞよ。此の世の王は日本の元からの王より外にはさう安廉と世の元から任命ては無いぞよ。今度二度目の世の立替を致さねば、末代の世の事は外国の王ではナカナカ整頓完備がつきは致さんぞよ。余り大望な事で取違ひも在る筈なれど、大きな取り違ひが有るから、暗黒の世の中に出来て居りて、神は此世に無いもの、無くとも良いといふやうな精神の人民斗りで、改心の仕掛けが出来さうな事が無いが、今の人民には皆世に出て居れる方の守護神で在るから、言うて与ると、何ぞ山師でも致して糊口に致すやうに思うて本真に聞くものが無い非道いもので在るぞよ。 天の御先祖様が世の始まりの御水の御守護遊ばしなされたミロク様が天の御先祖様で、つきの大神様で在りて、三宝金神として、へつい金神と、お竃の上に小さいお厨子で祭りて在る家も在りたなれど、無い勝ちで在りたぞよ。又此の火を御守護遊ばすのが天の御三体の日の大神様で在るぞよ。慈親金神と申して泉庭に祭るのには金神と申して形が祭りて在る家斗りは無りたぞよ。地震金神と申して在りたのが、世界中の御土を固めしめた地の先祖が大国常立尊で在るぞよ。此の三体の神が昼夜の守護致さん事には、此の世の息あるものが、一寸の間も此の世に生活安存が出来んので在るが、其処までの事の判りた守護神が無い故に、元の御先祖様が充分の苦労艱難、口惜し残念を隠忍りて居いで遊ばしても何とも思へんので在るぞよ。世の元の根本からの天地の実地の因縁が是迄には判らずに在りたから、神は要らんものじゃと言ふやうな悪で、何処までも登れるやうに成りて、守護神が悪賢うて悪い事を謀策たら強悪非道に上へ上りて出世が出来て、我れ良しの強者万能の末法の世に成りて居ったので在るぞよ。元の神力の光りの出る時節が迫りて来て、悪の霊は好きな事も悪い事も出来んやうに天地から平らげて了うて是迄の行り方法律をスックリ変更へて了うて洗ひ更への新つの善一つの世で末代の世を立てるぞよ。今迄は逆様に天地の経綸が覆りて居りて、人民の仕て居る事が逆様斗りで在りたから、本様に世を立替致すので在るぞよ。元の神世に世を復元すと、是迄の事は上から下まで何事も薩張り切り変へに新つのいの字から致して、ミロク様の教示通りの世の持ち方に改めるぞよ。天地の先祖の神王を外国の王と同じ事に致して居るが、此れが此の世の悪の始まりで在るぞよ。天地の経綸が違ふから何も逆様斗りより出来んので在るぞよ。天地の王の先祖が此先きの世を松の世と致して、末代善一つの天地の王で治めるので在るぞよ。天地の大神が此の世を建造たので在るから、此の世のものは何も一切天地の王神の物で在るから、其他の身魂には天地を自由には為せる身魂は、一方も無いぞよ。万の神に目論まれて押込められて独り身に成りてドンナ行業も為せて貰うた御蔭で、此の先きの世を松の代に構ふ時節が参りて来たので在るぞよ。末代の世を持ちて行く身魂に成ると、一と通りの行業では勤まらん事で有るぞよ。此の世は末代潰す事は成らんから、誰もよう為ん事の、他の守護神では出来ん事のやう隠忍ん事を身を落して門に立つとこまでの行業を仕て来んと、一通りの身魂では出来ん大望な事斗りで在るぞよ。 世の立替と申すのは身魂の事で在るぞよ。身魂が総ぐもりに成りて了うて暗黒の世の中を、夫れ夫れに身魂を目鼻を着けて、此の先きではモウ世の立替といふ事は無いやうに致さな成らんから、今度の事はコンナ大望な事はモウ無いぞよ。是れ丈けの大望な事を知りた守護神が他の神に無いと言ふやうな酷い事に経綸が乱れて了うて、斯う成る事は皆世の元から見え透いて居りた故に、根本からの事が仕組が仕て有るから、何処から何を問ひに来てもドンナ弁解でも出来る世界の大本で有るから、此の大本に永く這入りて居りて何も判らいでは世界へ耻かしき事が遠からん中に出来るぞよ。心に誠といふ一心の在る身魂で無いと綾部の大本は一寸には判らん所で在ぞよ。 余り尊う過ぎて、皆思いが違ふて居るから、実地の事を。実地正真の生神が、一厘の経綸で、誰もやう為ん事を致して、九分九厘の終いと成りた所で、手の掌を覆して見せんと、未だ今に誠に致さんから、結構なお蔭をやう取らんのは、腹の中に誠といふ一心が無いからで在るぞよ。 言ふても判らず、お蔭の取らせやうが無いなれど、実地の生神が世界中へ一厘の経綸を判けて見せたら、一度に判りて、其処へ成りたら、ドンナ悪い身魂でも、改心が出来るなれど、其の経綸を申したら、此のくもりた世の中の悪い身魂斗りが出て来て、昔からの天の御先祖様の永くの御艱難を、水の泡に仕て了ふやうな守護神が出て来て、無茶に致すから、此の大本の誠の、初発の御用の出来る身塊は無いと申して在ろうがな。 綾部の大本は、今ではまだ実地の事が判らんから、まだ守護神が頑張りて居るなれど、実地の元の誠斗かりを貫行いて来た、天と地との先祖で在るから、是迄の様な嘘偽で固くねた世とは違ふから、一言申した事も実地の事斗り、嘘といふやうな事は、毛筋の横巾も申して無いぞよ。 誠一つの凝りで開く大本で在るから、此の中に置いて貰ふて居りて、嘘と言ふやうな事を申す霊魂に使はれて居る肉体は、よく精神が見届けて在るから、良い御用が出来んぞよ。 此の方は不動して居りて、人の腹の中まで能く見る神で在るから、此の神に嘘を申すやうな何も判らん守護霊の容人は、神が嫌ふから、充分の神恵は無いぞよ。 世の元からの正真の、日本魂の守護神を使役ふて、何も一度に判然るやうに埒良く致さねば、人民ではやう開らかんぞよ。 他の教会のやうな小さい事で無いから、小規模的て布教に出た位には、此の大望な神業の実地をやう判けるやうな身魂が無いし、ながたらしふ掛りて居りたら、薩張り上から下まで総損ひとなりて、両方の国も建ちて行かんやうに、難渋な事に成りては成らんから、早く実地を世界中へ出現はせて、一度の改心を致させやうより、モウ仕様が無いとこまで差迫りて居るぞよ。 二度目の世の立替を致さな成らんといふ事は、此の世の元から熟く判りて居りたから、世に落されたのも、何も皆都合の事で在るぞよ。此れ位な事を致して置かんと、二度目の世の立替の折には、チト違ふた行業を仕て置かんと、立替致したら後は良い世に成るなれど、変り目に陽気や気楽な事を致して置いたら、後が良く成らんから、自由放逸な行り方で行りて来た守護神は、此の転換期の辛棒が辛て、忍れん守護神が沢山在るから、此の大峠が凌げるやうの神徳を貰ふて、行業を致すが結構で在るぞよ。 知らして与りても聞き入れの無い守護神は、止むを得ずの事が在りても、何処も恨む所は無いぞよ。 其処に成りてからの改心は、急速の改心で在るから、一度の改心は実地の間に合はんから、気も無い中から知らすなれど、改心どころか大きな思い違いの守護神人民斗り、埒やう立替を始めんと、後の立つ様に致さな成らんから、罪障の非道い所から始めると申して在るぞよ。 今迄の世が余り贅沢過ぎて、薩張り絶頂りて了ふて、抜け道の無いやうに詰りて了ふて居るから、延すほど悪く成りて、モウ一寸も延すことが出来んから、神を恨めなよ。 知らして在るやうに成りて来るのじゃから、何にも無しに立替は出来んから、改心の出来ん身魂は、肉体在っては到底も魂性の磨けることは出来んから、言ふ事を聞かん御魂の肉体は、出直しに致さねば、神界の革新は成らんから、どうぞ改心を為せて、其の儘で置いて、何なりと出来る事を為せてと思うても、神の心を汲みとるやうな、日本の御魂の性来が、一寸も無いやうに成りて居るから、何れ始めると非道いぞよ。 霊魂を早く良く致して、光華明彩の世に致さねば、此の世が悪く成る斗りで在るから、此の世に置いて欲しいなら、改心さえ致せば善の世へ立ち帰らして、其の場から嬉悦満円なりて、善の霊を入れ換え致して与りて、末代善い名を残すやうに成るなれど、是程日々申しても、改心の出来る身魂が無いから、出来な為るやうにして、霊魂を整備するぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 大正2年旧9月11日 | 大正二年旧九月十一日 ……二度目の世の立替の来るのを、待ち兼ねたぞよ。末代に一度の大望な世の立替は、何彼の事に大変骨が折れるから、世の元の天と地との根本の、大神の仕組通りに何事も成りて来て、最う一度に致さなならんなり。世界には大きな事も小さい事も、何も一度に成りて来て、世界の人民はトチメンボーを振るぞよ。大本の役員胴を据えて居らんと、綾部の大本は、病気直しの神でないぞよと、毎度筆先に書いて知らしてあらうがナ。病気などは、自己の心を水晶に致したら、病魔は躰躯の内へハ、怖うて能う這入らんぞよ。今の世は外国のみぐるしきカラの身魂になりて居るから、亡霊やら、根底国の極悪神の眷属やらが、皆悪事を企みて、神国の世を汚して居るから、日本の国には邪神の霊が殖るばかりで、斯ンな醜しき国になりて了ふて、真の神から眼を開けては見られんぞよ。汚うて、世の洗濯を致さねば、何時迄も人民に言ふてきかしたとて、些ッとも効能が無いから、効験の無い事に、永く懸かりて居りたら、何ちらの国も亡くなりて了ふぞよ。日本の国の人民も醜しいが、外国の人民ハ尚ほ尚ほ神の眼からは醜しいぞよ。大本の分支会合所の布教師の中には、信者を大本へ詣らしたら、大本へ奪られると申して、邪魔を致して居る守護神が出来て居るが、誠意が無いと申しても、余ンまりであるぞよ。天と地との元の大神は、見て見ぬ振りを致して居りたが、最早これからは、厳しく審査致すぞよ。気のついた守護神は、一時も早く改心致されよ。真正の事は、大本へ詣りて、変生男子の筆先と、変生女子の実の行動を見て、我の心に照らして見んと、何も判らず、却てお蔭を取り外す事が到来致すぞよ。斯ンな判らぬ布教師に手引きしられて居る信者は、可哀想なものであるぞよ。斯ンな布教師は、全然四足の魅いた守護人であるぞよ。早く改心致さんと、最う赦さん事になりたぞよ。日本の遣り方、今ではさッぱり邪神界の守護となりて了ふて、男子迄が頭に油を塗り、顔に白粉を付けて歩るく時節になりて、さッぱり化物の世になりて、大和魂の人民は、薬にしやうにも無いやうに成りて居るが、これでも日本の神国の人民と申されやうか。腰抜ばかりで、世が何時までも続いて行く道理が無いぞよ。能うもこれ丈乱れて来たものであるぞよ。神の眼から見れば、今の日本の神国には、人間らしい人間は何程も無いぞよ。これでは日本も、世が続かんのであるぞよ。又婦女も、身たしなみは肝腎なれど、今の婦女は、紅、白粉、油を無茶苦茶に塗りつけて、服装を凝らして、表面から見れバ立派なやうであるが、それ丈精神は反対に汚れて居るぞよ。今後世の立替と成るから、男子も女子も、今迄のやり方を全然かへて居らんと、神世になれば、今迄のやうな遣り方は、神から赦さん事になるぞよ。今迄の世は表皮ばかりの世でありたから、心の中は腐りて居りても構はぬ、暗がりの世でありたが、最う斯ンな醜しき世は、終末になりたぞよ。明治二十五年に、出口直の手と口とで、三千世界一度に開く梅の花、艮の金神の世になりたぞよと知らしてあるが、最う一度に開く時節が参りたから、外国の国の七頭も八頭もある八岐大蛇を平げて、日本の天と地との大神の仕組で、この世を治めるぞよ。一度筆先に出したことは相違は無いぞよ。綾部の大本は、此広い世界に、外では判らん事の判る、世界の大本に成る、尊い霊地であるから、ちッと違ふた行の出来て居る守護神に使はれて居る肉体でないと、此方の御用はさせんぞよ。三千世界の事を、さッぱり変へて了ふのであるから、一番に夫婦の事から変へて了ふぞよ。此世に夫婦といふものは、因縁の深いものであるぞよ。御魂の因縁性来を調査めて、この霊魂と彼の霊魂が夫婦といふ事に、縁を結びて、又児に成る霊魂を授けて、児の身魂を親に世話させるのも因縁の深い事であるぞよ。夫婦の道は何につけても、世の基本であるから、一番大切であるぞよ。世の紊れるのも、夫婦の道から大方ハ出来て居るぞよ。此世を末代続かすには、水晶魂に致して、一人も悪神の守護神の無きやうに致して了ふてから、みぐるしき身魂は、一人も日本国に置かんやうに厳しく致すぞよ。曇りた御魂の肉体は、最う出直しで、ゑらい根底国へやられるぞよ。きびしく成るぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 大正6年閏2月22日 | 大正六年閏二月二十二日 永い経綸の現はれる時節が参りて来たから、世に出て居れる方の守護神、揃ふて改心を致したら、早う世界が良くなるなり、何も判らずに天地の御恩を知らずと、俺は偉いと慢神気味で、綾部の大本へ意見を為て与ろうと思うて、今の行り方の守護神が、肉体を連れて意見心で出て来ても、赤い顔をして、逃げて帰らな成らん所じゃと云ふ事が、毎度御筆先で知らして在るぞよ。慢心と取違が、大怪我の元と成るから、申して在る様に皆成りて来るから、日本の国は日本の行り方で行かねば成らんのに、洋服、靴を穿いて、日本の○がうろうろと飛び歩く様な事では、国が治まりそうな事が無いぞよ。悪の頭の目的はモウ一つ上へ上りて、王の王に成うとのエライ目的で在りたなれど、日本の国の経綸通りに致すから、申す様に致されよ。天地の先祖の命令を背いて何を致しても、性来が現はれて面目無い事に成るから、往生際の悪い守護神は、気の毒な事に成るから、余り悪い事を顕はせずに、余程鎮めて成る御用を為せてと、茲までに気を附けても、取り損いを為て居ると、大きな間違いが出来て、大きな声でものも言へん事が出来るから、夫れでも聞かずとモウ一つ思わくを立てやうとするなら、与りて見よれ。其の守護神も肉体も、一旦出直しと成るぞよ。是からは改心せな為る様に致して、此の先きは水晶の身魂に為て、末代此の世には苦説の無い様に、善一つの誠の道に立替るので在るぞよ。永い間日本の霊の本の一と申して二の無い、結構な世の元の国を、茲までに汚して、盲目聾と同じ事に、やうも是れ丈け汚したな。茲までになりて居るのに、一方も気を附ける神が無いとは酷い事で在るぞよ。元を棄てて枝で思わくを末代立てやうと致しても、智慧学では出来ん事、昔の根本の初まりの先祖で無いと、末代の世を持つと云ふ事は出来んぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 大正6年旧9月5日 | 大正六年旧九月五日 『日本は別として』王、天下は永うは続かんと云ふ事が、是迄の筆先に書いて知らして在ろうがな、何彼の時節が参りて、何事も一度に出て来るぞよ。善い事も悪い事も皆一度に現れて、外国には惨酷ことが頻々在ると申して知らした事が、実地に成りて来るぞよ。外国は余り精神が悪いから、良い事は一寸も出来んぞよ。天竺が彼の通りエライ見せしめに遇い、その次ぎが外国であると申て知らしてありたが、一つも違いは致さんぞよ。日本の国にも人気の悪い処には、在ると知らして在るぞよ。日本も余り外国の真似を致して、全部外国の性来に成りて了ふて居るので、上の守護神と人民に、一日も早く改心致せと申しても、改心致すやうな優しい守護神が無いから、モウ神は一切りに致すより仕様が無いぞよ。外国の性来は前後構はずに、行り放第の行り方で在るから、トンと行き当りた所で、何う仕様方法もない、無茶九茶の暗雲で在るぞよ。悪が強いと一寸先きが目が届かむぞよ。外国の守護神がエライ経綸は為て居るが、悪の世は九分九厘行った所で、世が無くなると申して、明治二十五年から茲まで知らした事の、実地の現はれる時節が来たから、此の先きで是までのやうに思ふて居ると、大間違いが出来るぞよ。大きな誤解や慢心致して居りた守護神が、キリキリ舞を致して苦しむ事が、先繰り出て来るから、其苦しむのを見るのが厭であるから、変性男子は辛い役であるぞよ。変性男子が一度申した事は、何時になりても皆出て来るから、神の申した言を反いて致したら、取返しの成らん心配が出来て来て、ヂリヂリ舞いを致さな成らんやうに成るぞよ。三千世界の大立替であるから、今迄の一切の事を、根本から変えて了ふので在るから、今迄の事申して、エラソウに覇張りて居ると、肝腎の神に見放されて、矢張り仏の方が結構じゃと申して、悪魔の容器にしられて、斯世の中の役に立たぬ、蛆虫に成りて了ふぞよ。慢心ほど恐いものは無いぞよ。今までは、心の中に何程悪が在りても、学さえありて上に立ちて居りたら、立派に人民からは見えたなれど、世の立替に就いて、昔の生神が現はれて、審神者を致すから、我と我手に身魂の性来が現はれて来て、耻かしうて世間へ顔出しが出来んやうに成るから、何時までもクドウ気を附けるなれど、根本から外国御魂に成り変りて居るから、神が可愛想でも助けやうが無いぞよ。奥山の紅葉の在る中にと思へども、それは心で取るが良いぞよと申して、今迄の筆先に書して在ろうがな。改心出来ねばモウ何事が在りても、神と出口を恨める所は無いぞよ。表面ばかり立派な事を申して居りても、心の中に塵埃ありては、神国の御用には使はむぞよ。悪神が守護致すと自分がエラウ見えて、誠の人が阿房に見えたり、悪魔により見えは致さんから、取返しの附かぬ大間違が出来るので在るぞよ。気の毒なものじゃぞよ。外国の悪の仕組は、九分九厘で世が無くなると申して、明治廿五年から続いて知らしたが、チトは耳へ這入る守護神が在りても、悪の方の味方が多いから、心の弱い守護神人民は、直ぐに悪魔に頭を押えられて腰を折るから、何時までも世の立替が後れるから、世界の難渋が日に増しに激しく成る斗りで在るぞよ。日本は神国、霊主肉従の尊い国であるから、チトは日本魂の研けた人民が在りさうなものなれど、今の日本の国は、上から下まで外国の魂に化けて了ふて、我れさえ良くば、元の根本を無いやうに致して、我が苦労も致さずに他の苦労で行ろうと為ても、末代の世は続きは致さんぞよ。天地の大神も良し、守護神も人民も良しといふ様に成らねば、誠の日本魂とは申さんぞよ。世に落ちて居りた元の神が、神国の世に立帰りて、善一つの世に致すので在るから、是までの心を全部入れ替を致して、心を持ち直せば、神国の世に成れば誠に結構であるぞよ。玉水の龍宮館へ、御上りに成りて御出ます、乙姫様の御心を、今度は皆揃ふて上へ上りて居れる守護神が、茲で速かに是までの心の入れ代が出来んと、誠に此先きで気の毒が出来るから、今が一か八かの処であるぞよ。上の守護神に気が附いて来たら、世界中が善く成るなり、上に気が附かな、此先きは世界中の大きな難渋と成るが、モウ此先は悪では世が立ては行かんぞよ。斯の暗黒の世に、何んな事を為て見せても、書いて見せても、言ひ聞しても、気の附く守護神人民が無いが、悪の仕組ではジリジリと身魂が減って了ふから、向ふの国の云ふやうに為て居りたなら、モウ遠からん内に、日本との大戦争に成りて来るが、日本の国も外国と同じ事になりて、屈強盛りの人民が無く成る斗り、金の費るのは程が知れんぞよ。段々人が減る斗りで、何程人民がありたとて、人民力では到底行きは致さんぞよ。上から下まで、余り大きな誤解を致して居るから、悪の頭の仕組はモウ一足も、日本の国の御地の上では出来ん仕組が、日本の国には今に知った事で無いぞよ。茲へ成りて来ることは、天の大神様と、地の先祖の大国常立尊とは、元から日本の国に、一輪の経綸が為てありたのじゃぞよ。日本の人民が、日本魂の本の性来に成りて来んと、向ふの国には科学で、エライ仕組を致して居るから、何方へ附て良いと云ふ事が解らんやうな人民が、沢山に出て来るぞよ………。大きな取違いを致して居りたと云ふ事が、日本の上の守護神や、下たの人民に解りて来るのは、何れは向ふの国から攻めて来るから、昔の世の本から、日本の国には、斯んな大望な経綸が為て在りた事が、何方の国にも解りて来て、世界の人民がアフンと致して、手も足も能う出さずに、途方に呉れる事が出来するぞよ。斯の状態で神が構はずに見て居りたら、何方の国も後へ引くと云ふ事は致さんから、此処へ為りて来るから、明治廿五年から筆先で、何彼の事が知らしてありた通りの、時節が廻りて来て居るのに、人民といふものは実地の正末が出て来んと、誠に致さんから、俄かにヂリヂリ舞な成らん事に成るのじゃぞよ。人民は少とも先の見えんもので在るから、常に何彼の心得を致して置んと、マサカの時に狼狽へるぞよ。信心は常に在るぞよ。日々神に縋りて、身魂を綺麗に研いて居る人民と、斯世に神は無きものと申して居る人民とは立分るから、夫れで常から信神を致せと申すので在るぞよ。俄信神は間に合はんぞよ。何彼の事が迫りて、色々と是だけ大本の内と、御屋敷には真正の御神様が、彼方此方に御守護があるのに、厭な事を目の前に為て見せて遣らんと、承知が行かん浅間敷もので在るから、俄かにヂリヂリ舞はな成らん事が出て来るぞよ。そう成りてから走り込んで来て、何卒助けて呉れと申しても、ソンナ事には掛りて居れんやうに忙しくなりて、何んところで無いぞよ………。龍宮の乙姫殿が御守護あり出たら、世界はモ一つ何彼の事が騒がしく成るぞよ。向ふの国には悪の経綸で、何処までも行り抜こうとの企みであるなれど、日本の国にも神が蔭から動かん仕組が致して在るから、何方の行り方で末代の世が続いて行くものじゃ、善の道で続くか、悪の道で続くか、善と悪との力比べの大戦であるから、勝ちた方の道で、此の先の末代の世を、持ちて行くやうに成るので在るぞよ。今の日本の上に立ちて居る守護神は、九分九厘までは外国の行り方を、結構なやうに思ふて居るが、今に大きな了見違いで在りたと申す事が判りて来て、頭を掻いてヂリヂリ悶えを致すぞよと申して、明治廿五年から変性男子の手で書して在りたが、一分一厘の違いも無いぞよ。旧九月五日の朝の間に、出口直が神に御礼拝を致して居りた折に、明日から乙姫殿の御守護になると申して知らしたが、猶ほ筆でも知らしてあるぞよ。今迄に申して在る通りに、何も成りて来るぞよ。九分九厘に成ると手の掌が覆りて、綾部の此村と、綾部の町を動かして遣ると申して在ろうがな。世界と一同に動かすと申して、筆先に出して在ろうがな、皆出て来るぞよ。大きな目醒しが天地から在るぞよ。世界の事は何も彼も、筆先通りに成りて来るぞよ。十分に知らして在るから、チトは遅く成る事も在るなれど、人民の改心さえ出来たなら、余りイヤな事の無いやうに、良い方へ立替て、夫れ夫れの御用の命令を下げて、良い霊を入れ替て与ると、皆が勇みて良い御用が出来るから、一日の日の間にでも手の平を覆して、良く為て興るなれど、外国の悪い性来が移りて居るから、日本の国の守護神が、矢張り外国に化りて了ふて居るから、今の心では霊魂にして、国替でもさして洗濯を致さねば、到底言い聞かした位で聞くやうな、優しい身魂が無いぞよ。世に出て居れる方の守護神が、気が附いて来たら、元は日本で湧いたので在るから、日本の中にをいて守護さして与りたいなれど、外国に化りて了ふて居るから、八九分の身魂を出直しに致さねば、斯処へ成りてからは、モウ日の間が無いから、早く日本の身魂に立帰れば、此の先きは大国常立尊の、斯世は自由であるから、善の心に立帰りたら、善の身魂に致して、此の先は良く致してやりて、上へ上りて、日本の国を茲までに外国の性来に為て了ふた、其悪の名を表はさずに許して与るぞよ。 是からは善一つの、天と地との御先祖様の教に立代えて、悪と云ふやうな見苦しい、イヤな血統は無い様に致して、昔の御先祖様の御血統の生粋の世に、日本の国を致しておいて、今度の二度目の世の立替を致さねば、斯世はこの儘では立ちて行かんから、此大本の変性男子と変性女子との人民には、見当の取れん御用が、神の経綸でさして在るから、何程人民が智慧、学で考えても、解りは致さんぞよ。是が人民に解りたら、三千年余りての大望な経綸が、成就いたさんから、一輪の仕組は今の今まで申さんぞよ。三段に分けて在る霊魂を、目鼻を付けねば成らんなり、何の様にも目鼻が一寸には附かんから、血筋が混ぜこぜの無茶苦茶に成りて了ふて、是迄の筆先に、大略は判りて居りても、肝腎の事が未だ出して無いから、是が中々大望と申すので在るぞよ。大望と口で申しても本真に致さんぞよ。大事の性念場と成りて、動きの取れん事に成らんと気が附かんが、其所で気が附いても世間並で、何にも仕様が無いから、因縁ある身魂をこの大本へ、神が綱を掛けて引き寄して、知らして居れど、余り慢心がヒドイので、改心の出来る身魂が何程も無いから、物事が遅れて神の迷惑どころか、世界の何も知らぬ人民が、永う苦しむのが可愛想で、神が目を明けて見て居れんから、大本へ立寄る人は、因縁の深い身魂斗りであるから、大本の中から一番に、改心いたして下されよ。 日本の国には神から大望な仕組が為て在る、向ふの国も大きな仕組を致して居るが、戦争と天災とが初りたら、人民が三分に減ると、初発の筆先に書いてあるなれど、茲に成ると世界に残る人民が、二分位より無いぞよ。日本の国には誠の者が二分残る仕組で在れど、向ふの国はまだ約らん仕組をダラダラと致して、キマリの無い行り方で、行ける所まで行く、後前構はずで、何時まで掛りても頓着は致さず、自分の代に奪略な子の代に奪る、子の代に奪れな孫の代に取ると云ふ、気長な仕組を仕て居るから、日本の人民は男子は当然なり、女子も小供も、霊主肉従の日本魂の性来に成りて了はねば、今の如うなハイカラの心は、外国の身魂に成り限て居るから………、外国の仕組は先の約らん、行ける所まで行きて、行けんやうに成りた所に、モ一つと云ふ経綸がして無いから、外国の云ふやうに、今日本の守護神人民が致して居りたら、世界の身魂がヂリヂリ減りに無くなりて、元の泥海に成るぞよ。是ほど天地の神が茲まで苦労艱難、悔しき事を耐り約めて来た事が、水の泡には出来んから、成可は人民を減らさんやうに致したいと思ふて、変生男子の身魂が、余り苦労致して来たから、人の苦労が身に泌みて、心が沈みて、門へ出るのも厭がりて居るが………、是迄の人民の心では、如何しても何方の国も人が減る、一度の改心は人が減るから、是までの心を入れ替て、新つの世に致すので在るから、どうぞ一時も早く改心を致して下されよ。 |
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伊都能売神諭 | 神諭一覧 | 大正7年12月22日 | 大正七年一二月二二日 艮の金神国常立の尊の御魂が、竜宮館の高天原に現はれて、世の立替立直しの筆先を書きおくぞよ。三千世界の立替の御用致さす為に、変性男子の身魂大出口直に永らく苦労をさしてあるぞよ。天保七年十二月十六日、天照皇太神宮殿の御誕生日に斯世へ出してから二十七年の間、直は結構に気楽に暮さしてあるぞよ。さう申しても世間並の気楽さでは無いぞよ。中々いろいろと肉体に就て人に変りた事がさしてありたぞよ。二十八歳の冬から五十七歳まで三十年の間、人民界では誰も能う堪らん艱難苦労をさして、現世の衣を脱がして御用に立てたぞよ。五十七歳の正月元日から、艮の金神が体内へ這入りて、今年で二十七年の間神界の経綸で筆先を書かせ、口で世の立替を知らしたぞよ。何時も三十年で世の立替と致すと申して知らした事が、モウ一分になりて、跡三年残りたなれど、水も漏らさぬ仕組であるから、三年の間は変性女子の手を借りて立替立直しの御用を致すから、是からは一日ましに世界から判りて来るから、何程の鼻高でも成程と往生をいたすやうになりて了ふぞよ。変性女子は神界の経綸で明治四年の七月の十二日に斯世へ出して、二十七年の間は是も普通の人民では出来ぬ苦労を致させ、二十八歳の二月九日から、神が高熊山へ連れ参りて、身魂を研かして、世の立直しの御用の経綸が致してあるぞよ。二十八の歳から此の大本へ引寄して、有るにあられん気苦労を致さして、いよいよ身魂が研きかけたから、三十九歳からボツボツと大本の経綸にかからしてあるが、此の先まだ十年の気苦労を致さすから、其積りで居りて下されよ。三年さきになりたら余程気を付けて下さらぬと、ドエライ悪魔が魅を入れるぞよ。辛の酉の年は、変性女子に取りては、後にも前にも無いやうな変りた事が出来て来るから、前に気を付けて置くぞよ。外国から今に六ケ敷難題が持かけて来るが、今の番頭の弱腰では到底能う貫ぬかんぞよ。是も時節であるから、何程智慧学がありても今度は一文の価値も無いから、日本の人民が揃ふて改心いたせば良し、到底改心が出来ぬなら止むを得ず気の毒が出来いたすぞよ。世界の九分九厘が近よりて来たぞよ。一厘の仕組で三千世界を立直すのは、綾部の大本より外には無いぞよ。今この仕組が日本の人民に判りたら、三千年の神界の仕組が成就いたさんから、今の今までは誠の元の一厘の所は申さんから、疑ふ人民は未だ未だ有るぞよ。 富士と鳴戸の昔からの経綸が判りて来たら、世界は激しく成りて、外国が薩張り帰順いたして日本へ末代従ふやうに成るぞよ。東京の経綸はミノヲハリ、尾張の経綸は世の終り、伊勢は丹波に丹波は神都、みやこの経綸は万古末代つづくぞよ。続く血筋は世の本の天と地との直系の日の大神と地の神、天地揃ふて水晶の誠一とつの末永き結構な神代に致すぞよ。神代に成りたら人民の身魂にも御光が刺すぞよ。暑さ凌いで秋吹く風を待てど、世界は淋しくなるぞよと、今迄出口直の筆先に知らして置いたが、今が其時節であるぞよ。未だ未だ世界は安心な所へは行かぬぞよ。是からが彦火々出見の初りであるぞよ。目無堅間の神船はこれから出て来るぞよ。水火地の大名は何処に現れて居るか、これを知りた人民今に一人も無いが、燈台元暗の誓えの通りの世であるぞよ。 艮の金神が明治二十五年に、竜宮館に出口の守と現はれた折の初発に、竜宮の乙姫殿が御越なされて、今日の御祝儀お目出度存じますると仰しやつて、今まで海の底に溜めて置かれた御宝を、陸の竜宮館の高天原へ持運びて、艮の金神様にお渡し申すと仰せになりたが、海の中には金は幾何程でもあるから、竜宮様の御改心で今度はいよいよ受取りて、新つの金を吹く時節が参りたぞよ。斯世一切の事は皆神の自由であるから、何程人民が智慧や学で考えても、神の許し無き事には、肝腎の艮めを差すといふ事は、何時になりても出来は致さんぞよ。竜宮の乙姫殿は誠に欲の深い御神様で在りたなれど、今度の二度目の世の立替のある事を、世の初発から能く御存知であるから、第一番に御改心が出来て、艮の金神の片腕となりて御働き遊ばすから、是からはこの大本の内部も、世界を日増に大変りを致すぞよ。三千世界の宝は皆国常立尊の拵らえたもの斗りで在るから、世が元へ戻りて、何も彼も艮の金神が自由に致す時節が参りたから、今迄の事を思ふて頑張りて居るとスコタンを喰ふ事になりたぞよ。人民の力で行れるなら我を出して何なりと行りて見よれ、初めはチト良きやうに在るが、先へ行く程つまりて途が無くなりて、行きも帰りも成らぬやうに致されるぞよ。是が今迄の世とは違ふと申すのであるぞよ。珍らしき事を致して、三千世界の善の鏡と悪の鏡とを出す世界の大本は、何彼の事が厳しくなるぞよと申してあろうがな。キカねばキクやうにして改心さすと申してあるが、今が大事の性念場であるから、心に当る人民は一日も早く我の欲を捨て、神界の御用第一に致すか結構であるぞよ。神は困まらねど其人が可愛さうなから、神がクドウ気を付けておくぞよ。今の人民は永らく体主霊従の中に染り切りて居りたから、容易一寸には改心が出来にくいなれど、モウ時節が来たから、改心さす間が無いから、今までの学や智慧を横へ遣りておいて、只一心に神の申すやうに致されよ。考へたり研究いたしたりするやうな気楽な時では無いぞよ。モウ二進も三進も成らぬ所まで世が差迫りて来て居るぞよ。何程道の為じや御国の為じやと申しても、誠生粋の道思ひ国思ひの人民は尠ないから、人民の申す事は嘘が多いから、神も中々油断が出来ぬやうに成りて来たぞよ。今の人民の盲目聾の欲に抜目の無いのには、神も閉口いたして居るぞよ。利己主義の行り方ばかり致して居ると、夫れが世が代りて居るから、自滅自亡の種になる二度目の世の立替であるぞよ。此の大本の行り方と世界とを比べて見たら善と悪との鏡が出して在るから、改心せずには居れぬ事に仕てあるぞよ。世の立替が初りたら、世界は上り下りで騒がしくなると申してありたが、外国の王の今の有様、まだまだ斯んなチヨロコイ事ではないぞよ。何処へ飛火が致さうも知れんぞよ。夫れで永らくの間艮の金神が出口直の身魂を使ふて、脚下へ火が燃えるぞよ。鳥がたつぞよ気を付けよと申して知らしたが、日本の人民は上から下まで欲斗りで目が眩みて了ふて居るから、今に判りて居る人民が何程も無いが、今に成りてからバタ付ても、モウ守護神人民の力では到底叶はんから、艮の金神の申すやうに、今迄のやうな利己主義の精神を立直して、水晶の生れ赤子の心に成つて、今度の肝腎の御用を勤めたなら、末代名の残る結構な事が出来るなり、今までの心で行りて行くなら、十人並のお出直し誠に気の毒な事が出来いたすぞよ。神の申す事毛筋も間違は無ぞよ。 東京で経綸をするが身の終りと申して知らしてありたが、キモがアノ通りの失敗をいたし、次にイヤが真似してアノ通り、カカが金を掘り出すと申して失敗り、マサがまた思はく立たず、是だけ鏡を出して見せても未だキカねばキクやうに為て改心させるなれど、其処へ成りての改心はモウ遅いから、一日も早く今の内に行方を薩張り替えて下され、取返しのならん事が出来いたして、世間へ顔出しのならん事に成るぞよ。今大本の教えを拡め行くと申して、ソハのそはそはしひ遣り方、斯んな弱ひ誠の無い精神で、三千世界の大神の御用が勤まると思ふて居るか。大慢神も大間違いも程があるぞよ。トモもモウ少し筆先を調べて下さらぬと、抜きも差しも出来ぬやうな事になるぞよ。大本の役員信者一同に気を付けるが、今が何より肝腎要めの性念場であるぞよ。早く眼を覚して下されよ。外国の体主霊従金銀為本之政策で、何時までも世が続くやうに思ふて、一生懸命に四脚の守護神が操掻いで御座るが、モウ世が済みたから、何程骨を折りて見た所で、百日の説法屁一つにも成らぬぞよ。猿も狐も狗も蛙も皆奥山に隠れて了ふて、今の体主霊従の経綸の真最中であるが、気の毒ながら日本の神国の行方は四脚の手には合はぬから、要らぬ御心配は止めて下されよ。武蔵野に今は狸の腹鼓たたいて鳴らして、八畳敷まで拡げた○○の跡の始末は何ふする積りか。人民では斯終局は就くまいぞよ。日本の神国を茲まで四脚が曇らして置いて、未だ飽き足らひで今日の世の持方、神はモウ肝忍袋の緒が切れたぞよ。日本の上に立ちて外国の下を働らく四足の守護神よ、気の毒ながら、神の申す間に聞かぬと、昔からの経綸通りに気の毒でも致さねば、神界の永らくの大神業の邪魔に成るから、其仕組の蓋を開けるから、跡から神に不足は申して下さるなよ。神は気を付けた上にも気を注けて在るぞよ。 斯大本の役員も余程確り致さぬと、未だ肝腎の仕組が解りて居らんから、俄にバタ付かねば成らん事になるが、夫れで大本の役員と申しても世界へ申訳の無い事が出来いたすぞよ。出口直が上天いたしてからは、斯大本は一段に厳しく成るから、其覚悟で居らぬと、トチメンボウを振らねばならぬ事になるぞよ。筆先を充分腹へ入れて能く消化して居らぬと、筆先が間に合はぬから、モ一度念を押して置くぞよ。 艮の金神は是から暫時の間は、大出口直の代りに変性女子の身魂を籍りて、色々と化かして御用致さすから、余程気を付けて居らぬと大きな取違いを致して、跡で愧かしき事が出来いたすぞよ。三千世界の大化物じやと申して、是までの大出口直の筆先に毎度出さして在ろうがな。此の大化物が全部世界へ現はれる時節が近ふなりて来たぞよ。神が一度筆先に出したら何時になりても違ひは致さぬぞよ。斯の大化物は三千世界の晒し物であるから、今の普通の人民では見当が取れんやうに致して在るが、今に何も彼も皆判りて来て、日本の人民がアフンと致して、眼舞いが来る者が沢山に現はれて来るぞよ。珍らしき事の判る世界の大本で在るぞよ。世は持切りには致させんと申すのは、今度明白に判りて来るぞよ。外国の八尾八頭の守護神が、渡りて来られん筈の日本の神国へ渡りて来て、日本の女を自由に致して、今では機械同様、神は誠に残念なぞよ。是でも見て居ざれよ、今に善悪の身魂の審判が始まるぞよ。天王台の神庭会議が始りたら、何如な守護神でも薩張尾を出して、化けの皮を表はすやうに成るぞよ。そうなりては可愛想なから、其所に成るまでに改心をさして、化けを表はさずに此儘で続いて行らしたいと思へども、余りの事で改心の為せやうが無いぞよ。思ひの違ふ人民斗りが現はれて、世界は開いた口が塞がらぬ事斗り出来するぞよ、是の判りた人民今に無いぞよ。 艮の金神国常立之尊が三千年の経綸いたして、待ちに待ち兼た松の代五六七の神代が廻りて来たから、今年からは何彼の経綸の蓋が開いて、何も知らぬ世界の人民がアフンと致すやうな大事業が完成て来るぞよ。一番に斯大本へ世界の宝を竜宮殿の御手伝で世に上げて、三千世界を鳴らすぞよ。松の老木に鶴が巣を組む時節が来たぞよ。鶴と亀とが此の大本へ舞ひ下るぞよ。人民には今では判らねども、跡に成りたら判りて来るぞよ。十二の卵を産み並べ、名も高砂の尉と姥、夫婦揃ふて大地の掃除を致したら、跡は結構な云ふに言はれぬ楽もしき世となるぞよ。アとスとの御用は誠に結構であるぞよ。夫れに就けてはキの御用御苦労であるぞよ。神の経綸の開く初発の肝腎の五六七の御用であるぞよ。この大本は因縁の身魂でないと、何事も肝腎の御用は致させんぞよ。二十七年も此の大本へ立寄りて居るテハの身魂は、昔から悪に強い身魂の性来で、元の生神を艮へ押込めた身魂であるから、元からの性来は一寸やソツトには直らぬから、今に成りても陰になり陽になり、大本へ這入りて邪魔斗り致す事を考へて居るが、是も神から鏡に出してあるのであるから、改心いたせば助けて遣るなれど、何時までも改心出来ねば、天地の規則通りに致して了ふぞよ。気の毒でも身魂に改心が出来ねば、天地の規則はナンボ神でも変えると云ふ事は出来んから、助け様が無いから、神が気苦労致せども、守護神と其人の心とは世の元の神の心と正反対であるから、何う致す事も出来ぬぞよ。 暑さ凌いで秋吹く風を待てど、世界は淋しく成るぞよと申して、毎度警告して置いたが、世界の大戦争が一寸片付いて、是から世界の人民は安神に暮せると思ふて居れど、是から先きは段々と約りて来て世界は淋しく、一旦は火の消えたやうになるとの神言でありたぞよ。戦争は是で済みたのでは無いぞよ。戦争と申しても殺合ひの喧嘩斗りでないぞよ。何に就けても大戦争であるぞよ。少しでも食物の用意を致さねば、後で地団太蹈んでも追付かぬ事になるぞよ。四足の餌の奪り合ひが始まりて来るぞよ。未と申とが腹を減らして惨たらしい酉やいが初まるぞよ。今迄世界の人民の苦しむ大戦争を喜こんで、結構な事に成りて金銀を積んで高振つて居りた人民は気の毒ながら、真逆様に地獄のドン底に落ちて苦しむぞよ。我欲本意の行方では永うは続かんと知らして在りた事の実地を神から為て見せてやるぞよ。是を見て世界の人民は一時も早く改心を致されよ。我の所有は天地の間に木の葉一枚も無いぞよ。頭の毛一筋でも下駄の裏に付いた砂一つでも、神が造りたもので在るぞよ。今の人民は余り結構すぎて冥加と云ふ事を知らぬから、世の立替の折には、天地からの戒めに逢ふて驚愕いたして、頭を下に致して歩行かねば成らぬやうに今に成りて来るから、艮の金神は夫れを見る眼が辛いから、明治廿五年から大出口直の体内を借りて色々と苦労をさして、世界の守護神と人民とに気を付けたので在りたぞよ、今この大本へ色々と世界の心になりて居りた体主霊従の守護神を、神から引寄せて居るから、大本の役員は御苦労であれども昔の事から後の世の事まで説き聞かして改心さして、神世の柱を研かねばならぬから、第一に役員から水晶に成りて下さらんと、一寸でも濁りが在りたら、世界から出て来る守護神人民を改心さして、神の柱に用ふ事が出来んから、片時の間も早く誠を覚りて下されよ。判りたと思ふても未だ未だ中々誠の事は解りては居らんぞよ。茲で役員が誤解を致すと、三千年の永らくの経綸が遅れて来て、世界は遅れた丈けは永らく苦しまねばならぬぞよ。斯大本は世界へも移り世界からも移りて来るから、大本の中からキチンと立替立直しを致して、アレでならこそ世界の立直の大本じやと、世間の人民が申すやうに成る所まで、各自に身魂を研ひて下されよ。モウ時節が迫りて来て、改心の間がないぞよ。大地の上は邪神の眷属やら四ツ足の守護神に脚一本置く所も無いまで汚されて了ふて、昔の天地の元の生神の居る所も無いやうになりたから、綾部の大本は昔から神の経綸で隠して在りた結構な所であるから天地の神が昇降を致して今度の二度目の天の岩戸を開く地場であるから、塵一本でも無いやうに清らかに致して下され。今までは誠の元の生神は、丹后の男島女島と播磨の神島とに隠れて、三千世界の守護いたして居りたぞよ。時節参りて天の大神様の御命令を頂きて、竜宮館の高天原に現はれて、水晶の世の御用を致すのであるから、人民は猶更この大本へ引寄せて貰ふた人民は、余程心を清らかに持ちて、善の道へ立帰らぬとウカウカ大本へ参りて致して居りたら、御神徳いただく所で無い恐い事が出来て来るぞよ。是からは神は日増に烈敷くなるぞよ。人民も改心せずには居られんやうに成るぞよ。この大本は誠に結構な所の恐ろしい所であるぞよ。大化物が隠くして在るぞよ。この化け物は普通の化け物でないから、現はれたら心の悪るき守護神人民は腰が抜けて了ふて、四ツ這ひに成つて苦しむぞよ。 この大本には三千世界の大気違いやら大化物が表はれて、世の立替立直しの神界の御用を致して居るから、普通の人民の眼からは見当は一寸取れ難いなれど、世界の大本に現はれた気違いが申した事は、一分一厘間違いのない、チト実のある気違いであるぞよ。神から見れば今の日本の人民は真正の狂人斗りで、言ふ事も為る事も皆間違ひだらけであるぞょ。それで今の人民の致す事はチツトも尻が結べて居らぬから、何時も縮尻るので在るぞよ。毎日毎夜嘘つく事ばかり勉強いたして、是が文明開化世の行方と申して居るが、今の人民の致した事は、政治に因らず教育に由らず、何一つも碌な事は出来ては居ろまいがな。夫れで日本神国の人民と申されやうか、判らぬと申しても盲目と申しても余りであるぞよ。外国人に自由自在に致され、眉毛の数まで読まれて居りても、未だ気が付かず、ケツのケまでも抜かれて了ふて居り乍ら、未だ眼尻を下げて歓こんで居ると云ふ、今の日本の○○○○の体裁、開いた口が塞がらぬと申すのは、此所の事であるぞよ。今に脚下から唐土の烏がたつが判ろまいがな。○○の○○と申しても余りで無いか。一日も早く○○いたして下されよ。梅で開いて松で治める、竹は外国の守護と致して、万古末代世界中を泰平に治める経綸の致してある、神国の○○と人民が何も判らむとは、惨い事に曇り切りたものであるぞよ。是から三千年の経綸、竜宮館の玉手箱を明けのカラスと致して、日の出の守護に掛るから、日本の守護神の内にも大分慮見の違ふ御方が出来るぞよ。明治二十五年から艮の金神が無間の鐘を掘り出して、地の高天原で変性男子と女子の身魂が力限り根かぎり打ち鳴らして、世界の守護神人民に警告せ共、聾か生倉か一人も誠の者が無りたなれど、大正五年の五月に、五六七の大神様が大本へ御降臨あそばしてから、余程判る人民が大本へボツボツ参りて来るやうになりて、今では世界の大本と申しても、余り耻かしう無い様なれど、神から見れば未だ未だいろはのいの片方までも判りては居らんぞよ。この節分を堺といたして、ソロソロと経綸の玉手箱を開けるから、浦島太郎の日本男子よ、腹帯を確りと〆て御座れよ。今迄一生懸命に成りて善と思ふて歓こんで致して来た事が、薩張煙と成つて消えて了ふから、了見の違ふ守護神人民が大多数出現ぞよ。今の人民の精神の持方では、余程改心致さんと、日本男子の桃太郎殿も、何程かしこい猿智慧でも、何程強い犬を使ふても、雉子長泣女の先導でも、鬼が島の征伐が六ケ敷いぞよ。正反対に鬼に征服れるやうな事になるぞよ。変性男子と変性女子の尉と姥の申す事が、耳へ這入らぬやうな事では、日本の神国は到底も立ちては行かぬから、神は昔から斯世が来るのが能く判りて居りての、三千年の永い経綸であるから、攻めては大本の教を一口なりと聞いた守護神は、其覚悟を致して、神界の御助けを致して下され。神は取りもぎには致さんぞよ。今度日本が潰れたら世界中が暗黒となりて、悪神の自由になるから、斯の暗き世を、天照す皇大御神の神の子が、日本の国の光を現はして世界を照さねば、天地の祖神様へ申訳が立たぬ事になるぞよ。日本の人民は天の大神様の分霊なり。肉体は国常立之尊の守護であるから、人民は神と同じ事であるぞよ。この結構な神の御宮の玉を追出して、薩張り悪神やら四足の住宅に致されて居るのであるから、今の人民の所作柄と申す者は、サツパリ鬼か蛇か畜生にも劣りて居るぞよ。夫れで今の人民の致す事は、逆様斗りより出来は致さんので在るぞよ。それで今度は天と地とを拵らえた元の生神が、綾部本宮の世の本の地場に現はれて、今度の世界を構ふて遣らねば、何時までも天下泰平には成らんから、経と緯との機織の仕組が世の元から致してありたのじやぞよ。 機の初り丹波の綾部、あやの神戸にあるわいなと、昔から歌が遺してありたのは今度の世界の立替立直しに就ての譬であるぞよ。経糸はモウ出来上りて天へ上りたから、是から先は変性女子が御苦労なれど、緯糸をかけて棚機姫殿の御用を致さすのであるぞよ。珍らしき機の仕組であるぞよ。 二十七年に渡りて、艮の金神が出口直の手と口とで知らして置いた事の実地が今年から判りて来るから、此の大本は何彼の事が忙はしく成りて、目の廻る如くに成るから、モチト役員しつかり致して、神界の忙がしいやうに、人間界も急いで御用いたして下されよ。一日が愚かでないぞよ。片時も早く人間界で出来る丈けの仕組にかかりて下されよ。今の大本の立廻りの人民余り気楽過ぎるぞよ。斯んな事で神界の御用には成らんぞよ。我一と骨を折りて勤め上げねば今の立廻り心が緩みて居るぞよ。怠惰な人民が一人でも居ると何彼の一切の邪魔になるから、可愛相でも暫らく成就する迄控えさして下されよ。大本の上の枝に頼むぞよ。今の大本には外国の御魂は寄せられんぞよ。十日も大本に居りて、未だ神の事が解らいで疑ふやうな人民は帰らすがよいぞよ。却て神界の仕組の邪魔に成るぞよ。一寸でも邪魔が這入りた丈は、神界の経綸世の立直しが遅れるから、一日でも遅れただけは世界が苦しまねば成らぬから、大本の上の枝になりた役員は遠慮は要らぬから、ビシビシと筆先通りに致して下され。今が一大事の時であるぞよ。出口直の神影は金銀取りては下げられんぞよ。神界に伺ふて許可を請けてからで無いと、売物に致したら厳しき戒があるから、一寸気を付けて置くぞよ。出口直の神影には人民の名を出す事は相成らんぞよ。是は変性女子の御用であるから、神影は神が憑りて書すなれど、女子の身魂は日増に忙がしう成るから、因縁の在る身魂に御手伝いを許すぞよ。神の姿は何程大事の役員でも妄りに筆を執られんぞよ。能く心得て居りて下され。教監役員に気を付けて置くぞよ。 大正七年十二月二十二日、旧十一月の二十日、竜宮館に女子の体内を借りて国常立尊が書きおくぞよ。 |