| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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21 (552) |
ひふみ神示 | 24_黄金の巻 | 第41帖 | このほうの許へ引寄せた人民、八九分通りは皆一度や二度は死ぬる生命を神が助けて、めぐり取って御用さしてゐるのぞ。奉仕せよ。どんな御用も勇んで勉めよ。肚に手あてて考へて見よ。成程なあと思ひあたるであらうが。喉元すぎて忘れて居らうが。かのととり。ひつ九十 |
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22 (612) |
ひふみ神示 | 25_白金の巻 | 第1帖 | 天地のことわり書き知らすぞ。この巻しろかねの巻。
天国ぢゃ、霊国ぢゃ、地獄ぢゃ、浄土ぢゃ、穢土ぢゃと申してゐるが、そんな分けへだてはないのであるぞ。時、所、位に応じて色々に説き聞かせてあるのぢゃが、時節到来したので、まことの天地のことわりを書き知らすぞ。三千の世界の中の一つがそなた達の世界であるぞ。この世も亦三千に分れ、更に五千に分れてゐるぞ。このほう五千の山にまつれと申してあろう。今の人民の知り得る世界はその中の八つであるぞ。人民のタネによっては七つしか分らんのであるぞ。日の光を七つと思うてゐるが、八であり、九であり、十であるぞ。人民では六つか七つにしか分けられまいが。イワトがひらけると更に九、十となるぞ。かくしてある一厘の仕組、九十の経綸、成就した暁には何も彼も判ると申してあらうが。八つの世界とは、 |
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23 (715) |
ひふみ神示 | 27_春の巻 | 第58帖 | 心の洗濯早ういたして太 |
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24 (822) |
ひふみ神示 | 32_碧玉之巻 | 第19帖 | 百は九十九によって用き、五十は四十九によって、二十は十九によって用くのであるぞ、この場合、百も五十も二十も、天であり、始めであるぞ、用きは地の現れ方であるぞ、フトマニとは二十の珠であり、十九は常立であるぞ、根本の宮は二十年毎に新しく致さねばならん、十九年過ぎて二十年目であるぞ。地上的考へ方で二十年を一まわりと考へてゐるが、十九年で一廻りするのであるぞ、いろは(母)の姿見よ。 |
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25 (833) |
ひふみ神示 | 33_星座の巻 | 第11帖 | 自由も共産も共倒れ、岩戸がひらけたのであるから元の元の元のキの道でなくては、タマ(玉)の道でなくては立ちては行かん、動かん二二(普字、富士)の仕組、ひらけて渦巻く鳴門-七 |
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26 (888) |
ひふみ神示 | 36_至恩之巻 | 第2帖 | フトマニとは大宇宙の法則であり秩序であるぞ、神示では012345678910と示し、その裏に109876543210があるぞ、 |
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27 (890) |
ひふみ神示 | 36_至恩之巻 | 第4帖 | この時代には一二三四五六七八九十の数と言葉で、死者も甦る程の力があったのであるなれど段々と曇りが出て来て、これだけでは役にたたんことになって来たのぞ。岩戸開きの鍵であったが、今度の岩戸ひらきには役にたたんようになったのであるぞ。始めに |
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28 (919) |
ひふみ神示 | 38_紫金之巻 | 第1帖 | 高天原、おのころに神祇つまります、すめむつカムロギ、カムロミのミコトもちて、千万の神祇たちを神集へに集へ給ひ、神はかりにはかり給ひて、下津岩根に真理柱二十敷建て高天原に千木高知りて、伊都の神宝の大御心のまにまに千座の置座におき足らはして、天地祝詞の二十祝詞言をのれ、かくのらば神祇はおのもおのもの岩戸を押しひらきて伊頭の千別きに千別き給ひて聞し召さむ、かく聞し召してば、天の国うつし国共につみと云ふつみはあらじと科戸の風の吹き放つことの如く、朝風夕風の吹きはらふ如く、大つ辺に居る大船を舳ときはなち艫とき放ちて大海原に押しはなつ事の如く、のこる罪も穢もあらじと祓へ給へ清め給ふことを、よしはらへ、あしはらへ給ひて弥栄の御代とこそ幸はへ給へ幸はへ給へ。〇一二三四五六七八九十百千万歳万歳。 |
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29 (921) |
ひふみ神示 | 38_紫金之巻 | 第3帖 | 伊豆幣帛を 都幣帛に結び岩戸ひらきてし。 ウヨウヨしてゐる霊かかりにまだ、だまされて御座る人民多いのう、何と申したら判るのであるか、奇跡を求めたり、われよしのおかげを求めたり、下級な動物のイレモノとなってゐるから、囚われてゐるから、だまされるのぢゃ、霊媒の行ひをよく見ればすぐ判るでないか。早うめさめよ、因縁とは申しながら、かあいそうなからくどう申して聞かせてゐるのであるぞ、マコトの道にかへれよ、マコトとは〇一二三四五六七八九十と申してあろう、そのうらは十九八七六五四三二一〇で、合せて二十二であるぞ、二二が真理と知らしてあろう、二二が富士してあろうが、まだ判らんか。 |
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30 (930) |
ひふみ神示 | 38_紫金之巻 | 第12帖 | ヨコの十の動きがクラゲナスタダヨヘルであり、タテの十の動きがウマシアシカビヒコジであるぞ、十と十と交わり和して百となり九十九と動くのぞ。過去も未来も霊界にはない、今があるのみ、これを中今と申すぞよ。竜宮の乙姫殿、日の出の神殿、岩の神殿、荒の神殿、風の神殿、雨の神殿、暗剣殿、地震の神殿、金神殿の九柱なり、総大将は国常立大神なり、このこと判りて下されよ、教はなくなるぞ、元の道が光り輝くぞ、これを惟神の道と申すぞ。 |
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31 (1051) |
霊界物語 | 02_丑_常世姫の陰謀/シオン山攻防戦 | 凡例 | 凡例 一、第一巻より第四巻までは、まだ伊那那岐尊、伊邪那美尊二神の御降臨まします以前の物語であります。第四巻にいたつて始めて国祖の御隠退遊ばされるところになり、第六巻において、諾冊二尊が葦原中津国へ御降臨遊ばすところになるのであります。それゆゑ、あまりに小さく現在の大本といふものにとらわれてはならないのであります。たとへば『聖地エルサレム』とあるごときも、決して綾部を指されたものではありません。これは、瑞月大先生より特に御注意がありましたから、読者諸氏のお含みおきを願つておきます。要するに『生れ赤児』の心になつて拝読することが、もつとも必要であらうと思ひます。 一、しかしながら、歴史は繰返すといふごとく、これは今から六七千万年前の物語で、いかにも吾々とは縁が遠いもののやうに油断をしてゐると、脚下から鳥が立つやうなことが出来して、にはかに狼狽へ騒がねばならぬとも限らないのであります。 一、本書第一巻の発表とともに、かれこれ種々な批評も出てゐるやうですが、単に第一巻や第二巻を読んだだけでは、たうてい分らないのであります。何にしても批評は後廻しにして、本書の全部刊行されるまで待つていただきたい。神諭にも『細工は流々仕上げを見て下されよ』と示されてゐます。ただ一端を覗いただけで、批評がましき言を弄するのは、いかにも軽率であるばかりでなく、御神業にたいして大なる妨害を与へるやうな結果になりはしないかと思ひます。 一、第二巻以下には処々に神様の歌が出てきますが、これはすべて神代語で歌はれたものださうですが、そのままでは今の吾々には理解出来ませぬので、特に現代語に翻訳されたものであります。例へば、本書の第二十三章『竜世姫の奇智』の中に、竜世姫が滑稽諧謔な歌を唄はれるところがあります。その歌の神代語と現代語を大先生の御教示のまま、一例として対照しておきます。 歌 言霊別の神さんは(コトトモオコヨカムソモホ) こしの常世へ使ひして(コスヨトコヨイツコイステ) 道に倒れて腰を折り(ミツイトホレテコスヨオイ) 輿に乗せられ腰痛む(コスイノソロレコスイトム) こしの国でも腰抜かし(コスヨクシデモコスヌコス) 腰抜け神と笑はれる(コスヌクカムヨワロヲレル) 他のことなら何ともない(フトヨコトノロノムトヨノイ) こしやかまやせんこしやかまやせんこしやかまやせんこしやかまやせん(コスカモヨセヌコスカモヨセヌコスカモヨセヌコスカモヨセヌ) 一、神代語の数字一二三四五六七八九十百千万は、㍉㌔㌢㍍㌘㌧㌃㌶㍑㍗㌍㌦(略して㌣)㌫といふ風に表はすさうであります。 一、最近一つの神秘的な話を聞きましたから、読者諸氏の御参考のためにここに御紹介しておきます。 昔、南都東大寺五重塔丸柱の虫喰ひ跡に次のやうな文字が表れたことがあります。 九九五一合二十四西より上る四日月 一五一一合八洲の神地となる ○五○六合十一神世の初 一三一一合六合となる 二一六一合十即ち神となる 一一一一合四魂となる 三一六一合十一即ち土の神となる 一○一一合三体の大神となる ○○○合三ツの御魂となる (数字の下の「合云々」の文字は瑞月大先生がつけ加へられたものです) しかし、誰一人これを読むことも出来なければ、その意味も分るものはありませんでしたが、当時の高僧弘法大師は之を斯う読みました。 月九中岸 閑居一一 露五幽苔 獨身一一 法一不一 一一一一 道一不一 時節一一[※普及版のフリガナを参考にすると、次のように読む──月、中岸に九(かかって)、閑居(かんきょ)して一(たれをか)一(まつ)。露(つゆ)幽苔(ゆうたい)に五(しお)れて、独身、一(ひとり)一(さびし)。法、一(はじめ)に、一(はびこら)ず、一(たたくに)一(したがって)一(ひかり)を一(ます)。道、一(ひとり)一(ひろまら)ず。時節、一(ひと)を一(まつ)。] 瑞月大先生にこの事を伺ひましたら、ただちにその意味を御教示下さいました。その五重塔の丸柱に現はれた不可思議な文字は全体を数へると七十七の数になります。そして七十七は上からも下からも七十七となります。上下そろふ訳であります。七十七数は㍊の代詞で七は『成』の意であり、十は『神』の意であり、七はまた『国』の意であり、つまり『成神国』の意味になるさうであります。その数字の中の○三つは三ツの三玉の意であります。つまり瑞の御魂が隠されてゐるといふことになるのであります。弘法大師はこの事を知つてゐたのだけれども、故意とかくしてゐたといふことであります。 大先生は斯う読まれました。 月懸中岸 閑居誰待 露萎幽苔 獨身孤寂 法初不蔓 隨鼓増光 道獨不擴 時節待人 いかにも月光が万界の暗を照破し、神政成就の機運の到達することを暗示せる神秘的な面白い話であるやうに思はれます。 大正十一年一月六日於竜宮館編者識す 酸いも甘いも皆尻の穴、おならの如くにぬけて行く、間抜けた顔の鼻高が、尻毛を抜かれ眉毛をよまれ、狐狸のうさ言と、相手にせねばせぬで良い。雪隠で饅頭喰ひつ武士、武士の言葉に二言はないと、こいた誤託の鼻の糞、ひねつて聞いて馬鹿にして、一度は読んで暮の空、きよろ月、まご月、嘘月の、空言ならぬ瑞月霊界物語穴かしこ穴かしこ。 |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 40 照魔鏡 | 第四〇章照魔鏡〔一九〇〕 高月彦が父母二神司をはじめ、八百万の神人の眼力をもつて看破し得ざりし八頭八尾の大蛇の化身を、諸神人満座の中に善言美詞の神言を奏し、その正体を暴露せしめた天眼通力は、あたかも真澄の鏡の六合を照徹するがごとしと、讃嘆せしめたりける。いかに善言美詞の神言なりといへども、これを奏上する神人にして、心中一片の暗雲あり、執着ある時はたちまちその言霊は曇り、かつ、かへつて天地の邪気を発生するものなることは、第一篇に述べたるところなり。 ここに高月彦は神人らの絶対の信望を負ひて父の後を襲ひ天使長となり、天使長親任の祝宴は聖地城内の大広前において行はれ、まづ荘厳なる祭壇は新に設けられ、山野河海の種々の美味物を八足の机代に横山のごとく置き足らはし、御酒は甕戸高知り、甕腹充てならべて賑々しく供進されたりける。神人らは一斉に天地の神明にむかつて天津祝詞を奏上し終り、ただちに直会の宴に移りたり。 このとき竜宮城の主宰者として常世姫は、春日姫、八島姫を従へ礼装を凝らして臨席し、この目出度き盛宴を祝しける。 常世姫は夫と別れ、涙のいまだ乾かざるに、吾が長子は天使長の顕職につきたるを喜び、神明に謝し感涙に咽びつつ、悲喜こもごもいたり夏冬の一度に来りしがごとき面色なりけり。ここに長女初花姫、五月姫も常世姫の左右に座を占めにける。常世姫は夫の昇天されしのちは、みづから竜宮城の主宰たることを辞し、夫の冥福を祈らむと決心し、その後任を初花姫に譲らむとし、さいはひ諸神司集合の式場にその意見をもちだし、諸神人の賛否を求めたるに、諸神人はその心情を察し、一柱も拒止するものなく異口同音に初花姫をして、竜宮城の主宰者たらしむることを協賛決定したりけり。善は急げの諺のごとく、ここに常世姫の後任者として初花姫就任の披露をなし、ふたたび厳粛なる祭典を執行されたれば、聖地は凶事と吉事の弔祝の集合にて非常なる雑踏を極めけり。祭典は無事にすみ、初花姫は就任の挨拶をなさむとし中央の小高き壇上に現はれたるに、同じく五月姫も登壇したり。しかしてその容貌といひ、背格好といひ、分厘の差もなく瓜を二つに割りたる如くなりき。初花姫が一言諸神人に向つて挨拶すれば、五月姫も同時に口を開いて同じことをいふ。初花姫が右手を挙ぐれば五月姫も右手を挙げ、くさめをすれば同時にくさめをなし、あたかも影の形に従ふがごとく、あまたの神人らはこの不思議なる場面に二度びつくりしたり。さきに二柱の高月彦の怪に驚き、漸くその正邪を判別し、ほつと一息吐きしまもなく、またもや姉妹二人の判別に苦しまさるる不思議の現象を見せつけられ、いづれも目と目を見合せ、またもや常世城における野天泥田会議の二の舞にあらずやと眉に唾し、頬を抓めりなどして煩悶しゐたりける。二女性は互に姉妹を争ひぬ。されど現在生み落したる母の常世姫さへ、盛装を凝らしたる姉妹を判別することを得ざりける。 ここに高月彦はふたたび「惟神霊幸倍坐世」の神言を奏上したれど何の効果もなく、依然として二女は互ひに姉の位置を争ふのみ。ここに宮比彦は座をたち諸神人にむかつて、 『我はこれより国祖大神の宮殿に参向し、大神の審判を乞ひ奉らむと思ふ。諸神人の御意見如何』 と満座に問ひけるに、諸神司は一斉に賛成し、宮比彦をして大神の神慮をうかがひ正邪の審判を乞ひ奉らしめけり。 大宮殿には大八洲彦命、高照姫命一派の神人がまめまめしく国祖大神に奉侍し、神務に奉仕し居たり。宮比彦はただちに奥殿に入り、神務長大八洲彦命にむかひ、国祖大神に伝奏されむことを願ふにぞ、大八洲彦命は大いに笑ひ、 『汝は常に神明に奉仕する聖職にありながら、かくのごとき妖怪変化をも看破し能はざるや。我はかかる小さきことを国祖に進言するは畏れおほければ謝絶す』 と断乎として撥ねつけたれば、宮比彦は大いに恥ぢ、神務長の言に顧み直ちに天の真名井に走りゆき、真裸体となりて御禊を修し、祈祷を凝らしけるに、果然宮比彦は国祖大神の奇魂の懸らせたまふこととなりぬ。ここに宮比彦は急ぎ大広間に現はれ、壇上に立ち両手を組み姉妹の女性にむかつて鎮魂の神業を修したるに、命の組みたる左右の人指指より光明赫灼たる霊気発射して二女の面を照らしければ、たちまち五月姫はその霊威光明に照らされて、金毛九尾白面の悪狐の正体を現はし、城内を黒雲にて包み、雲に隠れて何処ともなく逃げ去りにける。宮比彦は中空に向つて鎮魂をはじめ、 『一二三四五六七八九十百千万』 の天の数歌を再び繰返し奏上し終るとともに、大広間の黒雲は後形もなく消え去せ、神人らの面色はいづれも驚異と感激の色ただよひにける。 常世姫は現在我が生みの子五月姫の悪狐の我が胎内を借りて生れ出たりしものなるかと、驚きあきれ茫然として怪しみの雲につつまれけり。これより常世姫は病を得、つひに夫の後を追ひて昇天したりしより、いよいよ竜宮城は初花姫代りて主宰者となりぬ。金毛九尾白面の悪狐の邪霊現はるるとともに、初花姫は精神容貌俄に一変し、さしも温和なりしその面色は次第に険峻の色を現はしけるに、満座の神人らは初花姫の面貌の俄に険峻となりしは、今までの気楽なる生活に引き替へ、竜宮城の主宰者たるの重職を負ひしより、心魂緊張をきたしたる結果ならむと誤信し居たりける。ああ初花姫の身魂は、何者ならむか。 (大正一〇・一二・二八旧一一・三〇加藤明子録) |
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33 (1248) |
霊界物語 | 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 | 31 万波洋々 | 第三一章万波洋々〔二三一〕 阿修羅王のごとく閻羅王のごとき形相凄じき神は、巨眼を開き、船中の神人らを睨めつけながら、 牛雲別『神人らよ、余が宣示を耳をさらへてよく承はれよ』 と頭上より浴びせかけるやうに呶鳴りつけた。[※校定版・八幡版ではここに「これは牛雲別である」という文言が挿入されている。直前の「神人らよ~」が誰のセリフなのか書いておらず、直後の祝部神のセリフと混同してしまうため、その文言を挿入したのではないかと思われる。もっと後ろの方になって、それが牛雲別のセリフだと判明する] 此方の宣伝使は例の祝部神である。彼は無雑作に打ち笑ひながら、 祝部神『一二三四五六七八九十百千万百の千種も万のものも 天地の神の御恵に洩れたるものは塵程もなし 海の底にも光あり山の尾上も河の瀬も 光りに光る今の世を何と思ふか盲神 盲の杖を失うた苦しき報いは目のあたり あたるは罰と河豚の肉辺り構はず吠え猛る 四足神の哀れさよ角の生えたる牛雲別の 身の果こそは哀れなり身の果こそは哀れなり』 と又もや手を振り足踏み鳴らして、四辺構はず傍若無神の挙動の大胆さに、何れも呆れて祝部神の全身に目を注いだ。 牛雲別は、アーメニヤの野に、螢火のごとき光を現はすウラル彦の命により、宣伝使として此処に現はれた。彼は強烈なる酒を大口開いてがぶがぶと牛飲しながら、あまたの神人らに見せつけ、 牛雲別『酒は百薬の長と云う命の水を飲まざるか 飲めば心は面白い寿命長久千秋万歳楽のこの薬 飲まぬは天下の大馬鹿者よたはけた面してぶるぶると ふるひ苦しむ青瓢箪酒を飲んだら顔の色 朝日の豊栄昇るごと輝き渡る血色清し 空に輝く月の夜に心爽か気はさらり さらりさらりと物事は酒でなければ運ばない 酒は命の親神ぞ親を知らない子があろか 親を知らぬは鬼子ぞや鬼を殺すはこの酒ぞ 酒の肴は祝部の神の舌をば引き抜いて 作りなますにして喰へ暗い暗いと吐かす奴 酒を飲んで見よ赤くなる赤い心は神心 赤い心は神心暗い心の祝部が 真赤な虚言を月読の月夜に釜をぬかれたる あきれ顔して目のあたり吠面かわくが面白い これを肴に皆の奴おれが今出すこの酒を 遠慮会釈も梨地の盃に盛つて飲め飲め飲んだら酔へよ 酔うたら管まけ管まきや機が織れるか織れぬかおりや知らぬ 知らぬが仏ほつとけ捨てとけ一寸さきは暗よ 暗の後には月が出るあまり無聊に時鳥 声はすれども姿は見せぬ見せぬ姿は鬼か魔か 鬼の念仏わしや鬼来きらひな奴に目も呉れな 好きなお酒に酔ひつぶれ宵に企んだ梟 袋の底を叩いて見たら誰の心も同じ事 酒の嫌ひな神なかろ済まし顔して負け惜しみ 豪そな面して力むより些しは顔の紐ほどけ 仏に地獄で会うたよなこの甘酒の味を知れ 酔うて酔うて酔ひつぶれ酔うたらよいぢやないか よいよいよいのよいのさつさ 酒酒、酒酒』 と頻りに祝部神の宣示にたいして防禦線を張り、座席の傍より二樽の強き酒を出し、数多の盃を船中にふり撒いた。 神人らは猫に鼠を見せたごとく喉をごろごろ鳴らし、唇に唾をため、羨ましげに酒樽に目を注いだ。中には狐が油揚を見せつけられたやうな心地となつて、牛雲別の樽の鏡を開くを待たず、飢虎のごとく樽を目がけて飛びつく上戸の神人も現はれた。俄に船中は春めき渡り、酔の廻るにつれて、神人らは平手をもちて舷を叩き、拍子をとり舞ひ始めた。 神人ら『来るか来るかと浜へ出て見れば浜の松風音もせぬ 音に聞えた竜宮海の乙姫さまでも呼んで来て 酌をさしたら面白からう癪に触るは祝部神よ 癪にさはるは祝部神よ杓で頭を砕いてやろか』 ポンポンポンと舷をたたき、遂には両手で自分の額を無性矢鱈に叩いて踊り狂うた。 祝部神は元来酒が好きである。喉から手の出るやうにその盃が取りたくなつた。喉の辺りに腹の虫が込み上つて、ぐうぐうと吐かすのである。祝部神はこれこそ神の試みとわれとわが心を制し、思はず知らず指を喰へ、遂には激昂してわれとわが指を喰ひ切り、始めて気がつき、又もや声張り上げて、「三千世界一度に開く云々」の歌をうたひ始めた。 (大正一一・一・一一旧大正一〇・一二・一四加藤明子録) |
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霊界物語 | 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 | 32 波瀾重畳 | 第三二章波瀾重畳〔二三二〕 神人らは強き酒にへべれけに酔ひつぶれ、ほとんど船中の客たる事を忘るる位であつた。このとき祝部神の「三千世界云々」の歌に神人らは何ゆゑか、頭を鉄槌にて打ち砕かれ、胸は引き裂かるるがごとき苦痛に襲はれた。 夜は深々と更け渡り、万物寂として声なき丑満頃となつた。聞ゆるものはただ神人らの酒に酔ひ潰れて呻く苦悶の声のみである。折しも東北の空に当つて一団の黒雲が現はるるよと見る間に、前後左右に電光石火の速力をもつて押し拡がり、満天墨を流したるがごとく、海上また咫尺を弁ぜざるに至つた。忽ち颶風吹き起り、さしも平和の海面は、ここに虎嘯き竜躍り、海馬は白き浪の鬣を振うて船体に噛みつき始めた。船は木葉のごとく中天に捲き上げらるるやと見る間に、又もや浪と浪との千仭の谷間に突き落され、檣折れ、舵はむしられ、艫は中心より折れて進退の自由を失ひ、ただ風と浪との翻弄するに任すより外は無かつた。 神人らは一度に酔も醒め、顔は真青となつて、地獄より火を貰ひに来た餓鬼の相好の其侭となつて仕舞つた。鼻つままれても分らぬ真暗な海上に潮を浴び、全身濡れ鼠となつて震ひ戦くその光景は、死線を越えて処の騒ぎでは無かつた。 忽ち前方に当つて一道の光明が赫灼と放射するのを見た。これは高杉別の従者杉高の瑠璃光の玉の光であつた。船戸神は船体をその光の方に向けむとしたが、舵は千切られ、艫は折れ、檣は挫け、帆はむしられて如何ともするよしなく、ただ天を仰ぎ救助を乞ふのみであつた。酒のために空元気を装うてゐた数多の神人らは、恐怖心にかられ、青菜に塩か、蛭に塩、しほしほとして辛い目に遇ふ事よと溜息を吐き、中には卑怯にも泣声をしぼる者さへ現はれた。祝部神は此処ぞと言はぬばかり暗中声を励まし、荒れ狂ふ怒濤の浪音を圧するばかりの大音声で、 『三千世界一度に開く梅の花朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも牛雲別は浪に浚はれ死ぬるとも 酒を喰らうた神々は海の藻屑となるとても 何と鳴戸や瀬戸の海命の瀬戸のいまはの際に 神の恵も白波の馬鹿者どもよ 命惜しくば天地に詫びよ詫が叶へば許してやるぞ 一二三四五六七八九十百千万万の罪咎さらりと海に 流してしまへ涙ばかりを流すぢやないぞ 心の垢も身の罪も流して泣かせて腹の中 泣かぬ日はなき時鳥八千八声の血を吐いて へどまで吐いて今のざま苦しいときの神頼み それでも頼まにや助からぬよいとさ、よいとさ 暗に鉄砲数打ちやあたる何でも構はぬ神様祈れ よいとさのよいとさ生きるか死ぬかの瀬戸際ぞ 一つの命を瀬戸の海一つの島なる一つ松 一つの玉の御光に心を照して改めよ 荒浪如何に高くとも荒風如何に強くとも 現はれ出でたる神島の神の光に村肝の 心の空も凪ぎわたり浪路も凪ぎて珍の島 よいさよいとさ宵から喰うた酒の酔 一度に醒ませよ心の迷ひ迷ひの果ては悟りの船よ 覚りは救ひの船と知れ』 と止め度もなく、口から出まかせに歌つた。祝部神の容貌は暗夜のため確と見ることは出来なかつた。されどその謡ひ振りによつて、その相貌や手足の振り方など、歴然白昼を見るが如き感がした。忽ち船底がガラガラと音がした。見れば一つの島にうち上げられてゐた。あゝ惟神霊幸倍坐世。 (大正一一・一・一一旧大正一〇・一二・一四加藤明子録) |
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霊界物語 | 05_辰_顕恩郷/天の浮橋/言触神 | 33 暗夜の光明 | 第三三章暗夜の光明〔二三三〕 一行は先を争うて暗中摸索、島に駈上つた。山頂には一道の光明暗を縫うてサーチライトのごとく、細く長く海面を照らしてゐる。この島は地中海の一孤島にして牛島といひ、また神島、炮烙島と称へられた。現今にてはサルヂニア島と云ふ。またこの海を一名瀬戸の海と云ふ。 かつて黄金水の霊より現はれ出でたる十二個の玉のうち、十個までは邪神竹熊一派のために、反間苦肉の策に乗ぜられ、竜宮城の神人が、その持玉を各自争奪されたる時、注意深き高杉別は、従者の杉高に命じ、その一個たる瑠璃光色の玉を、窃にこの島の頂上なる岩石を打ち破り、深くこれを秘蔵せしめ、その上に標示の松を植ゑ、杉高をして固くこれを守らしめつつあつた。 しかるに天教山の爆発に際し、天空より光を放つて十一個の美はしき光輝を発せる宝玉、この瀬戸の海に落下し、あまたの海神は海底深くこれを探り求めて杉高に奉り、今やこの一つ島には十二個の宝玉が揃うたのである。かかる不思議の現象は、全く杉高がこの孤島に苦節を守り、天地の神命を遵守し、雨の朝、雪の夕にも目を離さず、心を弛めず、厳格に保護せしその誠敬の心に、国祖大神は感じ給ひて、ここに十一個の玉を下し、都合十二個の宝玉を揃へさせ、もつて高杉別および杉高の至誠を憫れませ給うたからである。これより杉高は高杉別と共に、この玉を捧持して天地改造の大神業に奉仕し、芳名を万代に伝へた。この事実は後日詳しく述ぶることにする。 咫尺を弁ぜざる暗黒の夜に、辛うじてこの島に打上げられたる神人らは、あたかも地獄にて仏に会ひしごとく、盲亀の浮木に取着きしがごとく、死者の冥府より甦りたるがごとく、枯木に花の開きしがごとく、三千年の西王母が園の桃花の咲きしごとき嬉しさと感謝の念に駆られ、祝部神が暗中に立ちて、 『三千世界云々』 の歌を謡ふ声を蛇蝎のごとく忌み嫌ひし神人も、ここに本守護神の霊威発動して、天女の音楽とも聞え、慈母の愛の声とも響いた。神人らは一斉に声を揃へて、祝部神の後をつけ、 『三千世界一度に開く梅の花云々』 と唱へ出した。 祝部神は、これに力を得て、又もや面白き歌を謡ひ始めた。 『世は烏羽玉の暗深く罪さへ深き現世の 神の不覚をとりどりに深くも思ひめぐらせば 海底深く棲む鱶の餌食となすも食ひ足らず 邪曲を助くる神心深く悟りて感謝せよ 海より深き神の恩恩になれては又もとの 深き泥溝にと投げ込まれ奈落の底の底深く 不覚をとるな百の神神の恵は目の当り 辺り輝く瑠璃光の光は神の姿ぞや 光は神の姿ぞや牛雲別も角を折り 心の雲を吹き払ひ心の岩戸を押別けて 神の光を称へかし牛雲別を始めとし 百の神人諸共に心の暗を照らせよや 心の暗の戸開けなば朝日眩ゆき日の光 汝が頭上を照らすべし朝日の直刺す一つ島 夕日の輝く一つ松常磐の松のその根本 千代も動かぬ巌の根に秘め置かれたる瑠璃光の 玉の光にあやかりて心の玉を磨くべし 三千世界の珍宝この神島に集まりて 十二の卵を産み並べ松も千歳の色深く 枝葉は繁り幹太り空に伸び行く杉高の 功績をひらく目のあたり高杉別の誠忠も 共に現はれ北の島蓬莱山も啻ならず この神島は昔より神の隠せし宝島 宝の島に救はれて跣裸で帰るなよ 神より朽ちぬ御宝を腕もたわわに賜はりて 叢雲繁き現世の万のものを救ふべし われと思はむ神等はわれに続けよ、いざ続け 言触神の楽しさは体主霊従の小欲に 比べて見れば眼の埃埃の欲に囚はれて 眼も眩み村肝の心曇らせ暗の夜に 暗路を迷ふ海の上心の波をなぎ立てて この世を造り始めたる神の御息の風を吸ひ 酸いも甘いも弁へてこの世を救ふ神となれ 神の力は目のあたり辺り輝く瑠璃光の 光は神の姿ぞや光は神の姿ぞや 東雲近き暗の空やがて開くる常磐樹の 松の根本に神集ひ千代万代も動ぎなき 堅磐常磐の松心この松心神心 神の心に皆復れ神の心に皆復れ かへれよ復れ村肝の心に潜む曲津神 大蛇や金狐悪鬼共国治立の大神の 御息の気吹に吹払ひ払ひ清めて神の世を 待つぞ目出度き一つ松心一つの一つ島 心一つの一つ島一二三四五六七八九十 百千万の神人よ百千万の神人よ それ今昇る東の空見よ空には真円き 鏡のやうな日が昇る心の鏡明かに 照らして耻づること勿れああ惟神々々 みたま幸はひましませよ三千世界の梅の花 一度に開く松の世の松に千歳の鶴巣喰ひ 緑の亀は此島に泳ぎ集ひて神の代を 祝ふも目出度き今日の空千秋万歳万々歳 千秋万歳万々歳 ヨイトサ、ヨーイトサ、ヨイヨイヨイトサツサツサ』 と祝部神の歌終ると共に、東天紅を潮して天の岩戸の開けし如く、日の大神は東の山の上に温顔を現はし、一つ島の神人らをして莞爾として覗かせ給うた。 ここに牛雲別は、危機一髪の神の試練に逢ひ、翻然としてその非を悟り、断然酒を廃し、かつ三千世界の宣伝歌を親のごとくに欣仰し、寸時も口を絶たなかつた。牛雲別は祝部神に帰順し、祝彦と名を賜はり、杉高はまた杉高彦と改名し、ここに三柱は相携へて、大神の宣伝使となつた。 しかして、この十二個の宝玉は、天の磐船に乗せ、玉若彦の神司をしてこれを守らしめ、地教山の高照姫命の御許に送り届けられた。惟神霊幸倍坐世。 (大正一一・一・一一旧大正一〇・一二・一四外山豊二録) |
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霊界物語 | 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 | 21 真木柱 | 第二一章真木柱〔二七一〕 伊弉諾大神の又の御名を、天の御柱の神といひ、伊弉冊大神の又の御名を、国の御柱の神といひ、天照大神の又の御名を、撞の御柱の神といふ。 この三柱の神は、天教山の青木ケ原に出でまして、撞の御柱の神を真木柱とし、八尋殿を見立て給ひて、天津神祖の大神を祭り、月照彦神を斎主とし、足真彦、少名彦[※校正本では「少彦」]、弘子彦、高照姫、真澄姫、言霊姫、竜世姫、祝部、岩戸別その他諸々の神人たちを集へて、天津祝詞の太祝詞を詔らせ給へば、久方の天津御空も、大海原に漂ふ葦原の瑞穂の国も、清く明く澄み渡りて、祓戸四柱の神の千々の身魂の活力に復び美はしき神の御国は建てられたるなり。 ここに伊弉諾神は撞の御柱を中に置き、左より此の御柱を行き廻り給ひ、伊弉冊神は右より廻り合ひ給ひて、ここに天地を造り固めなし給ひ、国生み、島生み、神生み、人生み、山河百の草木の神を生み成し給ふ善言美詞を謡はせ給ひける。その御歌、 伊弉諾神『限り無く果てしも知らぬ大空のその大空の本津空 天津御空の果てのはて九山八海の火燃輝のアオウエイの アオウエイの五柱カサタナハマヤラワ この九つの御柱の父と母との言霊に 鳴り出る息はキシチニヒミイリヰ クスツヌフムユルウケセテネヘメエレヱ コソトノホモヨロヲこれに続いて ガゴグゲギザゾズゼジ ダドヅデヂバボブベビ パポプペピ七十五声生みなして 果てしも知らぬ天地を造り給ひし大御祖 国治立の大神の左守の神と在れませる 其の霊主体従の霊高き高皇産霊の大御神 瑞の身魂の本津神神皇産霊の大神の 御息は凝りて天の原大海原を永遠に 搗き固めたる神の代と寄し給へる高天原の 神の祖の詔畏み仕へまつりつつ 常磐堅磐につき立てし撞の御柱左より い行きて廻りさむらへば照る日の影も明らかに 月の光もさやさやに輝き渡る青木原 大海原も諸共に清く治まる神の国 清く治まる神の国好哉えー神の国 あなにやしえー神の園』 と謡ひながら、撞の御柱を左より廻り始め給ひける。 このとき撞の御柱を右よりい行き廻りて、茲に二柱神は、双方より出会給ひ、国の御柱の神は、男神の美はしき、雄々しき御姿をながめ給ひて喜びに堪へず御歌を詠ませ給ひぬ。その御歌、 『久方の天津空より天降りまし黄金の橋のその上に 月と撞との二柱二神のつまに手をひかれ 天の浮橋度会の月雪花の神祭り 斎ひ治めて伊弉諾の神の命は畏くも 撞の御柱行き廻りめぐりめぐりて今ここに 嬉しき君に相生の千代万代も動きなく 松の神代の礎を築き固めたる宮柱 うつしき神代を五六七の世仁愛三会の鐘の音も 鳴り響きたる青木原御腹の胞衣は美はしく 生ひ立ち侍り天の下山川木草もろもろの 人を生みまし鳥獣昆虫魚に至るまで 天津御空の星の如生みふやします其の稜威 見れども飽かぬ御姿の清きは真澄の鏡かな 清きは真澄の鏡かも月日と光をあらそひて 月日の神と生れませる神の御霊やあなにやし 愛ー男や、愛ー男斯る芽出度き夫神の 天をば翔り地駆けり何処の果を求むとも 求め得ざらめあら尊天の御柱夫神の 雄々しき姿あなにやし愛ー男や、おとこやと 今日の祭りに嬉しくも善言美詞ほぎ奉る 七十五声鈴の音もすべて芽出度き天の原 皇御国と鳴り響く皇御国と鳴り響く 一二三四五六七八九十百千万の神嘉言 一二三四五六七八九十百千万の神嘉言 百代も千代も変らずに百代も千代も変らずに 汝と吾とは天地の鏡とならめ永遠に 神祖とならめ永遠に』 と祝し給ひて、淡島を生ませ給ひぬ。この淡島は少名彦神、国魂神として任けられたまひぬ。されどこの島は御子の数に入らず、少名彦神は野立彦神の御跡を慕ひて、幽界の探険に発足さるる事とはなりける。 (大正一一・一・二〇旧大正一〇・一二・二三外山豊二録) (第二一章昭和一〇・二・一〇於勝浦支部王仁校正) |
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霊界物語 | 06_巳_大洪水/国生み神生み/三五教の誕生 | 33 五大教 | 第三三章五大教〔二八三〕 『可飲の流れは止まるともとめて止まらぬ色の道 酒と博奕は猶やまぬ飲めよ騒げよ一寸先や暗と 旨いこといふ宣伝使俺らは裸体で蓑蟲の 雨に曝され荒風に吹かれて深山の霜を踏み 常夜の露に曝されて飲み渡き酒もヱー飲まず 食ひたいものもヨー食はず人の屑やら余りもの 貰うて其日をひよろひよろと渡る浮世の丸木橋 吾身に襤褸は纏へども肝腎要の魂は 錦を飾る大丈夫ぞウラルの彦の邪曲に 虐げられて吾々は昨日は山に今日は又 野辺の嵐に晒されて臭い狗めに嗅出され 捕へられて何時の日かウラルの山に連れ行かれ 舌を捩られ眼を抜かれ手足を菱に縛られて 飲めよ騒げよ暢気なる歌を聞かされ木兎の 身の行く果を偲ぶればこの世は鬼か大蛇か暗の夜か 旦の露と消ゆる身の実にも果敢なき身の宿世 救ひの神は何時の世か天より降り来るらむ 助けの船は何時の日か海の底より浮び出む 憂ひに沈む吾々は何時の世にかは浮ばれむ 嗚呼味気なの闇の世や嗚呼あぢきなの闇の夜や』 と謡ひながら、エデン川の岸を降る漂浪神の一群があつた。このとき前方より、 『神が表に現はれて善と悪とを立て別ける 魂を研けよ立替へよ身の行ひも立て直せ 誠の力は世を守る』 と節面白く謡ひ来る宣伝使ありけり。是は黄金山の麓に、この混乱紛糾の世を救ふべく、埴安彦といふ大神現はれて、五大教といふ教を立てられ、その宣伝使なる東彦と云ふ神人なりき。一行はこの声を聞いて耳を傾けゐる。宣伝使は猶も、宣伝歌を謡ひながら此方に向つて進み来たる。 宣伝使は、蓑笠を纏ひ、草鞋脚絆の、身軽な扮装にて宣伝歌を高唱しながら、一行と行き違ひ進み行く。一同は互に顔を見合せ、 甲『今の歌は何だか、吾々の耳にはいり易すい様な気がして、何処ともなく面白いぢやないか』 乙『ウン、さう云へばさうだ。神様の御声のやうにも響いた』 丙『兎もかく呼び止めて、詳しい話を聞いたらどうだ』 丁『呼び止めたつて、吾々のような人間に、振り向いては呉れはしないだらう。恥をかくよりは、止したらどうだ』 丙『馬鹿云へ、人を助けるのが宣伝使だ。そりや、屹度呼び止めたら、待つてくれるよ』 一同『それがよからう。オーイオーイ』 と一同は声を揃へ、右手をあげてさし招いた。宣伝使はあと振返りつつ、こなたを見詰めてゐた。そこへ一人のみすぼらしい男が、一行の中から抜擢されて走つて行つた。そして宣伝使の前に手を突き、 『貴神の御歌を、吾々は承はりまして、何とも知れぬ心に力が着いた様に思ひます。どうぞ御面倒でもありませうが、吾々一同を救ふ為に、詳しい御話を聞かして戴けませぬか』 と真心を面に現はして頼み込んだ。宣伝使は、 東彦天使『吾は天下の混乱窮乏を救はむために、黄金山麓に現はれ玉ふ埴安彦命の教を奉じて、天下に宣伝するものであります。吾々の宣伝を御聞き下さるならば、喜んでこれに応じます』 といつた。そのうちに、一同は宣伝使の傍に集まり来り、一々鄭重に会釈をした。宣伝使もまた慇懃に礼を返し、傍の美はしき平たき岩の上に座を占め、一同はその周囲に坐して、問答を始めける。 甲『只今の御歌の中に、「神が表に現はれて、善と悪とを立て別ける」といふ御言葉がありましたが、実際にこの世に、吾々を守つて下さる尊い神が在るのでせうか。善悪を公明正大に審判いて下さる誠の神が現はれますのでせうか。吾々はこの事のみが日夜気にかかつてなりませぬ』 宣伝使は答へていふ。 東彦天使『この世界は誠の神様が、御造り遊ばしたのである。さうして人間は、御用を努める様に、神が御造りになつたのである。神は人間を生宮として是に降り、立派な世を開かうと日夜焦慮して居られます。あなた方一同の肉体もまた、尊き神様の霊魂と肉とを分け与へられて造られた人間である。さうして神様の生宮となつて、働くべき結構な万物の霊長である。然るに人間の本分を忘れて、ただただ飲食や、色の道ばかりに耽溺するのは、神様に対して、最も深き罪悪である。世の中には善の神もあれば、悪の神もある。さうして善の神一人に対し、悪の神は九百九十九人の割合に、今の世はなつてしまつてゐる。そこで神様は、この世界を清め、神の生宮たる人間の身魂を清めて、立派な神国を建むと思召し、宣伝使を四方に派遣され居るなり』 と、大略を物語りける。 甲『吾々はどうしても、合点の行かぬことが沢山あります。それで貴神に御尋ねをしたいと思つて、呼び止めました。一体今日の人間は、広い山や野を独占し、さうして吾々の働く処もなく、また働かしてもくれない。何ほど働くに追ひ付く貧乏なしと云つても、働く種がなければ、吾々は乞食でもするより、仕方がないではありませぬか。勿論吾々は、遊んで楽に飲んだり食つたり、贅沢をしようとは思ひませぬ。唯働いて、親子夫婦が、その日をどうなりと、暮すことが出来ればそれで満足するのであります。然るに吾々は、この広い天が下に、脚踏み立てる場所も持つて居りませぬ。皆強い者、大きな者に、独占されて、働くに処なく、親子兄弟は、ちりぢりばらばらになり、天が下を苦しみながら、漂浪ひつつわづかにその日を暮してをります。こんな世の中を立替へて御日様の御照しの様に、万遍なく、吾々にも天地の恵が身に潤ふ事ができるならば、こんな有難いことはなからうと思ひます。さうしてその結構な神様は何時御現はれになりませうか』 と首を傾け、宣伝使の顔を覗き込む。宣伝使は両眼に涙を湛へながら、 東彦天使『空翔つ鳥も、野辺に咲く花も、みな神様の厚き恵をうけて、完全に生活を続けてをります。况んや万物の霊長たり、神の生宮たる人間に於ておや。神様の御守りがどうして無いといふ事がありませうか。ただ何事も神様の御心に任せ、今日只今を、有難い有難いで暮して行けば、神様は花咲く春に会はして下さいます。世の中は暗夜ばかりではない、暗夜があつても何時かは夜が明ける。冷たい雪の降る冬があれば、また長閑な花咲き鳥唄ふ春が出て来る様に、きつと苦みの後には楽しみがあります。あなた方も働く場所がないからといつて、そこら中を漂浪ひなさるのも、無理はありませぬが、この世界は皆神様のものである。人間のものは、足の裏に附いて居る土埃一つだもありませぬ。今の人間は広大な山野を独占して、自分のもののやうに思つてゐるが、命数尽きて、幽界に至るときは、いかなる巨万の財宝も、妻子も、眷属も一切を捨てて、ただ独トボトボと行かねばならぬのである。唯自分の連れとなるものは深い罪の重荷ばかりである。あなた方も、神を信じ、誠一つの心を持つて、この広い天地の間に活動なさい。きつと神様が幸を与へて下さいます。この地の上の形ある宝は、亡ぶる宝であります。水に流れ火に焼かれ、虫に蝕はれ、錆朽ちる、果敢ない宝である。それよりも人間は、永遠無窮に朽ちず、壊れず、焼けず、亡びぬ誠といふ一つの宝を神の御国に積む事を努めねばなりませぬ』 と諄々として五大教の教理を説き勧めたるに、一同は呼吸を凝らして、熱心に宣伝使の教示を聞き入りぬ。この時またもや、声張り揚げて、 北光天使『この世を創造りし神直日御魂も広き大直日 ただ何事も人は皆直日に見直せ聞直せ 身の過は宣り直せ』 と謡ひつつ、此方に向つて進み来る宣伝使ありけり。 (大正一一・一・二二旧大正一〇・一二・二五藤原勇造録) |
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霊界物語 | 07_午_日の出神のアフリカ物語 | 35 木像に説教 | 第三五章木像に説教〔三三五〕 日の出神は一同に向ひ、 日の出神『何れもこの場にあつまり給へ。今某がこの木像の眼を刳り抜いてお目にかけむ』 との一言を聞くより、木像はますます烈しく眼玉を廻転し初めたり。木像の前には、八島別、春姫、夏姫、秋姫を始め、日の出神、面那芸、祝姫その他十数人の佳人がズラリと列びけり。 日の出神は木像に向ひ、 日の出神『えゝ皆の方々、これより此の木像に一つお嫌ひな祝詞を唱へて進ぜませう。序に木像さまのお嫌ひな宣伝歌を歌ひませう。皆さま、私について合唱して下さい』 と言ひながら、天津祝詞を奏上し、宣伝歌を各々口を揃へて歌ひ終れば、五体の木像は両眼より涙を滝の如く流し居たり。 ここに日の出神は、木像様のお経だと言ひつつ歌を歌ひ、祝姫を始め春姫、夏姫、秋姫をして歌につれて踊らしめける。 日出神『虎狼の吼え猛る熊襲の国の国境 肥の国都に名も高き虎転別の神さまは 力が余つて瘤だらけお酒が好きで酔ひ潰れ 酔うた揚句は鉢を破り戸を蹴破つて荒れ狂ひ 乱暴極まるお振舞ふるまひ酒を飲み過ぎて 体は木像となりかはり眼玉ばかりをギヨロギヨロと 剥いて御座るがいぢらしや好きなお酒をどつさりと 上つた報いは忽ちに虎転さまの何よりも 嫌ひな嫌ひな宣伝歌ま一つ嫌ひな太祝詞 手向けて上げたら眼に涙滝と流して泣いたあと きつと嬉しいことがある虎転別の神さまよ 荒い心を立替へて神の心になりかはり 肥の国人を懇ろに治めてやれよ虎転別よ 三五教の吾々はお前を憎いと思はない 元をただせば皆神の御子と生れた兄弟よ 天にも地にも世の中に他人があつて堪らうか 善と悪とを立別る神が表に現はれた 只何事も人の世は直日に見直し聞き直す 神の教の宣伝使少しは心を柔げよ 片意地張るとこの通り体は石のやうになり 二進も三進も動けまい神の教を聞き分けて 誠の心に立ち帰れ虎転別の神さまよ それに従ふ供人よ』 と歌ひたまへば、木像はますます涙を零し出しける。 日の出神は涼しき声を張りあげて、 日の出神『一二三四五六七八九十百千万』 と神文を唱へたるに、虎転別の木像は俄にグニヤグニヤとなつて旧の自由の身体に復したり。忽ち虎転別は日の出神に向つて飛び附いたまま、又もや拳骨を振り上げてポカンと打ちかかる刹那、再び身体は強直してまた木像の如くなりにける。 日出神『あなたの家には、妙な木像がありますな。時々暴れますのか、よう腕を振り上げる木像ですな』 八島別『ハイハイ、最前も最前とて、よく振り上げましたよ。実に面白い人形ですワ』 日の出神は又もや一二三四の神歌を歌ふ。木像はまた旧の通り身体自由に復したり。 虎転別『いや、どうも恐れ入りました。何卒許して下さい。今日限り改心をいたします』 と男泣きに泣き立てける。 一同は顔見合はせてニヤリと笑ふ。虎転別の今後は如何なるならむか。 (大正一一・二・一旧一・五桜井重雄録) |
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霊界物語 | 07_午_日の出神のアフリカ物語 | 36 豊日別 | 第三六章豊日別〔三三六〕 日の出神、八島別宣使は、虎転別の心よりの改心を喜び、神前に御饌御酒種々の物を供へ足はし、祝詞を奏上し互に心を打明けて兄弟の如く睦び合ひける。虎転別は、日の出神に向ひ、 虎転別『お蔭を以て我が身に憑依せる八岐の大蛇の悪霊は、貴下の神力に依つて残らず脱出しました。今となつては何となく精神清々しく身も軽き心地が致します。今まで私は悪神の虜となり、数多の国人を唆かし、畏れ多くも神の教を宣べ伝ふ宣伝使を責め悩めむとしたる重々深き我身の罪、何卒見直し宣り直して下さいませ』 と涙と共に詫入るにぞ、日の出神は憐れを催ほして、 日の出神『人間は総て神様の分霊であります。生れつき悪人は一人も無い。唯心の弛みより種々の悪魔に左右されて、悪行を為すのであつて、決して肉体の所作ではない。肉体は皆その悪神に使はれるのであるから、そこで神様は直日に見直し、聞き直し、宣り直し給ふのである。又その悪魔と雖も、心を改むればきつと御許しになるのである。况して神の分霊たる人間の貴方、必ず御心配あるな』 と懇に教理を説き諭せば、虎転別は且つ喜び且つ覚り、 虎転別『あゝ辱なき御言葉、私は斯うしては居られませぬ。数多の群衆に向つて、今までの曲事を宣り直さねばなりませぬ。斯う申す間も心が急ぐ。暫時御許し下されよ』 と云ひながら、韋駄天走りに門を立ち出で、十重二十重に群がる群衆に向つて、声を張上げ、 虎転別『神が表に現はれて善と悪とを立別る この世を造りし神直日心も広き大直日 ただ何事も人の世は直日に見直せ聞き直せ 身の過ちは宣り直せ虎転別の曲事は 今宣り直す神直日今宣り直す大直日 これに群がる人々よわれに做つて宣り直し 悪しき心を立替へよ荒らき言葉を立直せ 一二三四五六七八九十百千万』 と歌へば、群衆は口々に藪から棒の虎転別の言霊に、アフンとして口を開き、 一同『ヤヽヤイ何だい。一体薩張こンだ。テンツクテンだ、テンテラテンだ、テンプクだ、天狗だ、天界だ、回天だ。てンと訳が分らぬぢやないか』 虎転別は、なほも言葉を継いで、 虎転別『悪の中にも善がある善と思ふても悪がある 俺は今まで悪だつた八島別宣使さまや 日の出神の御教に悪が復つて善となり 今は心も清々し善に復れよ皆の者 悪を放せよ皆の者』 と大音声に呼ばはりければ、今まで猛り切つて此館を攻め囲んでゐた群衆は、この言葉に拍子抜けがし口々に呟きながら、各々家路に帰り行く。ここに八島別は、純世姫命の神霊を祀り、肥の国の守護神となり、建日向別[※御校正本・愛世版では「建日別」になっているが、校定版・八幡版では「建日向別」に直されている。ストーリー上は「建日向別」が正しい。第35巻第8章では、八島別は火の国に降り「建日向別」になったと記されている。「建日別」は熊襲の国の守護職である(第7巻第25章、第28章を参照)。]となり、また虎転別は心を改めて、豊の国の守護職となり、豊日別となりにける。 (大正一一・二・一旧一・五外山豊二録) |
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霊界物語 | 08_未_日の出神の弟子たちの南米物語 | 19 刹那心 | 第一九章刹那心〔三六九〕 淤縢山津見の宣伝使は大地に伏したる荒熊に向ひ、 淤縢山津見『高彦殿、貴下は今まで大胆不敵の強者なりしに今斯く卑怯未練の精神になられたのは、察するに貴下の身体には、邪神悪鬼が憑依して、天授の身魂を弱らせ臆病者と堕落せしめたるならむ。凡て人は心に悪ある時は物を恐れ、心に誠ある時は物を恐れず、吾は是より貴下の魂を入れ替へせむ。暫くここに瞑目静坐されよ』 と厳命したるに、荒熊は唯々諾々として、命のまにまに両手を組み、路上に瞑目静坐したり。 宣伝使は双手を組み、一二三四五六七八九十百千万の神嘉言を奏上し終つて、左右の手を組みたるまま食指の指頭より霊光を発しつつ、荒熊の全身を照したり。荒熊は忽ち身体動揺し始め前後左右に荒れ狂ひ、キヤツと一声大地に倒れたるその刹那、今まで憑依せる悪霊は、拭ふが如く彼が身体より脱出したり。宣伝使は『赦す』と一声呼ばはると共に荒熊は元の身体に復し、心中英気に満ち顔の色さへ俄に華やかに成り来たりぬ。 荒熊は突立上り大地を踏み轟かし、 荒熊(高彦)『吾こそは元を糺せば、大自在天の宰相醜国別の御片腕、一時の失敗より心魂阻喪し、千思万慮の結果度を失ひて、八岐大蛇に憑依され、風の音、雨の響きにも心を痛め茅の穂にも戦き恐れ、折角神より受けたる吾が御魂も、殆ど潰え果て、弱り切りたるその所へ、如何なる神の引き合せか、昔仕へし醜国別の宣伝使に、人跡稀なるこの山奥に廻り合ひ、危難を救はれ、日頃吾身を冒しゐたる悪鬼邪神を取払はれ、心は晴れて大空の月の如く輝き渡り、澄みきりたり。最早かくなる上は幾百万の敵軍も、億兆無数の曲神も、真澄の鏡振りはへて、誠の剣抜き持たし、縦横無尽に切りまくり天地に轟く言霊の力に、巴留の都に蟠まる、鷹取別を言向けて功績を立てむ。嗚呼嬉しし嬉しし悦ばし』 と腕を叩いて雄叫びしたり。 宣伝使は満面に笑を湛へ、 淤縢山津見『あゝ勇ましし勇ましし。高彦殿これより巴留の都に向はむ、案内されよ』 と、先に立ちて行かむとするを、高彦は袖を扣へて、 高彦(荒熊)『暫くお待ち下さいませ。この先には数万の群衆、日の出神の当国に押し寄せ来ると聞き軍勢を整へ、伏兵を設けて待ち居れば、如何に神徳高くとも軽々しく進むべからず、一と先づ我は様子を窺ひ報告仕らむ。暫く此所に待たせ給へ』 と、雲を霞と駆け出したり。 蚊々虎は肘を張り、右の手の拳を固めて左の利き腕を打ち敲きながら、 蚊々虎『たとへ悪魔の軍勢幾百万押し寄せ来る共、この蚊々虎が腕に任せ、寄せ来る敵を縦横無尽に打ち伏せ張り倒し、一泡吹かせて呉れむ。ヤー面白し面白し、吾一生の腕試し、腕が折れるか千切れるか、蚊々虎の隠し力の現れ時、サアサア出て来い、やつて来い。役にも立たぬ蠅虫奴ら、この蚊々虎の鼻息に百や二百の木端武者、吹いて吹いて吹捲り……』 淤縢山津見『その広言は後の事だ、さう今から力むとまさかの時に力が抜けて了ふぞ、蚊々虎』 蚊々虎『宣伝使様、オー此処な四人の守護神、人間様、心配するなよ。俺の力をお前達は知らぬから取越苦労をするが、神の道に取越苦労は大禁物ぢや。今と云ふこの刹那が勝敗の分るる所、最初から敵を恐れてどうならうか、戦はぬ内から蚊々虎は敵を呑んで居るのだ。臆病風に誘はれては成らないぞ。この蚊々虎さまがブラジル峠を登つて来る時に、道の両方に雲霞の如き、数限りも知れぬ沢山の敵が、俺等を待ち伏せて居た。その時この宣伝使を傍の木の蔭に忍ばせ置き、数万の敵に向つて大音声。ヤーイ皆の奴木端武者共、俺を何と心得てゐる。この方は広い世界に二人とない智勇兼備の天下の豪傑蚊々虎さまとは吾事なるぞ。相手になつて後悔するな。サー来い勝負と大手を拡げた。数多の敵は言はして置けば要らざる広言、目に物見せてくれむと、四方八方より、タツタ一人の蚊々虎さまを目蒐けて攻め寄せたり。強力無双の蚊々虎さまは、寄せ来る敵を箸で蚕を撮む如うに、右から来る奴を左へポイトコセ、左から来る奴を右へポイトコセ、終にはエヽ面倒と、首筋を一寸撮んで空を目がけてプリンプリンプリン、また来る奴を一寸撮んでプリンプリンプリン、上から降りて来る奴、下から上へ放られる奴、空中で頭の鉢合せをして、アイタヽヽヽピカピカと目から火を出し、放り上げられた奴と、宙から落ちて来る奴と、途中で貴方お上りですか、私は降りです、下へ降りなしたら蚊々虎さまに宜敷……』 淤縢山津見『コラコラ法螺を吹くにも程がある。黙らぬかい。言はして置けば調子に乗つて……ここを何と心得をる。数万の強敵を前に扣へて置いて、ソンナ気楽なことを言うて居る所で無いぞ』 蚊々虎『ヤー、ヤツパリ淤縢山津見ぢやなあ、数万の敵にオドオドして、向ふは真暗がり、暗墨の如うに、一寸先は真黒黒助だ。エヘン豪さうに口ばつかり、取越苦労はするな過越苦労は禁物ぢやのと、口先で立派なことを仰有るが、この蚊々虎さまはかう見えても刹那心、たとへ半時先に嬲殺しに逢はされやうが、ソンナ事は神様の御心に任して居るのだ。モシ宣伝使さま、さうぢや有りますまいかな。釈迦に説法か、負うた子に教へられて浅瀬を渡ると言ふのか、いやもうトンとこの辺が合点の虫が、承知しませぬワイ。まさかの時になつて来ると、宣伝使さまの覚悟も誠に怪しい頼り無いものだワイ』 と、目を剥き舌を少し出して、宣伝使の顔をチヨツと見上げる。 宣伝使は顔を少しくそむけながら、 淤縢山津見『さうだなア。さう言へば、マアソンナものかい』 蚊々虎『ソンナものかいも有つたものかい。甲斐性無し奴が、ちと改心したか、エーン』 淤縢山津見『蚊々虎、無礼で有らうぞよ』 斯かる所へ以前の荒熊は、呼吸を喘ませながら、坂道を上り来たりぬ。 蚊々虎は頓狂な声で、 蚊々虎『ヤー帰つたか様子は何んと、仔細は如何に、細に、言上仕れ』 淤縢山津見『また貴様出しやばるな』 蚊々虎『出しや張るツて、刹那心ですよ。気が何だか急くから急いで問うたのですよ。決して取越苦労ではありませぬよ』 荒熊が、 荒熊(高彦)『申し上げます、不思議なことには何時の間にか人影も無くなつて居ります。之には何か深い計略の有る事と思ひますが、軽々しく進む訳には行きますまい。一つこれは考へものですな』 蚊々虎『ナーニ刹那心だ。行く所まで行かな分るものかい。進め進め』 と蚊々虎は、先に立つて進み行く。 後に六人は路傍の岩に腰打ち掛け、何かヒソヒソと頭を鳩めて囁きゐたり。 蚊々虎は只一人、ドンドン腕を振りながら一目散に坂道を下り行く。 (大正一一・二・八旧一・一二森良仁録) |