| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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1 (305) |
ひふみ神示 | 11_松の巻 | 第14帖 | 裏切る者沢山出てくるぞ、富士と鳴門の仕組、諏訪マアカタの仕組。ハルナ、カイの御用なされよ。悪の総大将よ、早よ改心なされ、悪の神々よ、早よ改心結構であるぞ。いくら焦りてあがいても神国の仕組は判りはせんぞ。悪とは申せ大将になる身魂、改心すれば、今度は何時迄も結構になるのぞ。日本の臣民人民皆思ひ違ふと、くどう知らしてあろが。まだ我捨てぬが、水でも掃除するぞ。六月二十九日、あめのひつぐのかみ神示。 |
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2 (453) |
ひふみ神示 | 20_梅の巻 | 第26帖 | 金では治まらん、悪神の悪では治まらん、ここまで申してもまだ判らんか、金では治まらん、悪の総大将も其の事知って居て、金で、きんで世をつぶす計画ざぞ、判ってゐる守護神殿早う改心結構ぞ、元の大神様に御無礼してゐるから病神に魅入られてゐるのぢゃぞ、洗濯すれば治るぞ、病神は恐くて這入って来られんのぢゃぞ、家も国も同様ざぞ。神示幾らでも説けるなれど誠一つで説いて行って下されよ、口で説くばかりではどうにもならん、魂なくなってはならん。十二月十四日、ひつ九のかミ。 |
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3 (632) |
ひふみ神示 | 26_黒金の巻 | 第14帖 | 悪の総大将は奥にかくれて御座るのぞ。一の大将と二の大将とが大喧嘩すると見せかけて、世界をワヤにする仕組、もう九分通り出来てゐるのぢゃ。真の理解に入ると宗教に囚はれなくなるぞ。形式に囚はれなくなるぞ。真の理解に入らねば、真の善も、真の信も、真の悪も、真の偽りも判らんのぢゃ。今にイワトひらいてあきらかになったら、宗教いらんぞ。政治いらんぞ。喜びの歌高らかにナルトの仕組、二二にうつるぞ。一月二十二日 |
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4 (930) |
ひふみ神示 | 38_紫金之巻 | 第12帖 | ヨコの十の動きがクラゲナスタダヨヘルであり、タテの十の動きがウマシアシカビヒコジであるぞ、十と十と交わり和して百となり九十九と動くのぞ。過去も未来も霊界にはない、今があるのみ、これを中今と申すぞよ。竜宮の乙姫殿、日の出の神殿、岩の神殿、荒の神殿、風の神殿、雨の神殿、暗剣殿、地震の神殿、金神殿の九柱なり、総大将は国常立大神なり、このこと判りて下されよ、教はなくなるぞ、元の道が光り輝くぞ、これを惟神の道と申すぞ。 |
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5 (1092) |
霊界物語 | 02_丑_常世姫の陰謀/シオン山攻防戦 | 40 山上の神示 | 第四〇章山上の神示〔九〇〕 ここに大八洲彦命は、稚桜姫命の神命を奉じ、シオンの霊山にのぼり地鎮祭をおこなひ、かの顕国の御玉の母岩の現はれたる聖跡を中心として、十六社の白木の宮を造り、鵜の羽をもつて屋根を覆ひ、金銀珠玉種々の珍宝をちりばめ、荘厳優美たとふるにものなく、旭に照り夕陽に輝き、その状は目も眩きばかりであつた。 一つの宮に一つの玉を神体として祭り、十二社と称へた。他の四個の宮には、鶴野姫、大森別、生代姫命および姫古曽の神を鎮祭し、荘厳なる祭祀は挙行された。 その他、楼門、広間等大小三十二棟を造り、いづれも白木造りにして桧皮をもつて屋根を覆ひ、千木、堅魚木等実に崇高の極みであつた。この十六の宮とともに四十八棟となり、あまたの重臣はこれに住みて神明に日夜奉仕した。 ここに宮比彦を斎主とし、一切の神務を主宰せしめられた。シオン山はもとより荘厳なる霊山である。しかるに今や四十八棟の瀟洒たる社殿幄舎は建て並べられ、荘厳の上になほ荘厳を加へた。 このとき常世姫の部下たる美山彦、国照姫は杵築姫を部将とし、鬼雲彦、清熊ら数多の魔軍を率ゐて鬼城山を立ちいで、東西両方面より、シオン山を占領せむと計画しつつあつた。また南方よりは別働隊として主将武熊別は、荒熊、駒山彦を率ゐ、シオン山を奪取せむとし、ここに東西南三方よりこれを占領するの計画を定めた。 このこと忽ち天使大八洲彦命の知るところとなり、東の山麓には吾妻別を主将とし、香川彦、広足彦を部将として防衛の陣を張り、西の山麓には磐樟彦を主将とし、上倉彦、花照彦を部将とし、あまたの神軍をもつてこれを守らしめた。南方の山麓には大足彦を主将とし、奥山彦、安世彦を部将とし、あまたの神軍と共にこれを守らしめ、北方の山麓には真鉄彦少しの神軍と共に万一に備へることとなつた。また山上の本営には大八洲彦命を総大将として真道彦命、花森彦、谷川彦、谷山彦が固く守ることとなつた。 三方より押寄せたる敵軍は、難攻不落の霊山を攻撃せむとするは容易の業に非ず、遠くこれを囲みて睨み合ひ、互ひに火蓋を切らざること長きに渉つた。ここに南軍の将武熊別は探女を放つて一挙にこれを討ち破らむとした。南軍の神将大足彦の陣営を夜ひそかに足音を忍ばせ、横切る女性があつた。数多の神卒は怪しみ、四方よりこの女性を囲み捕へて大足彦の陣中に送つた。女性の衣をことごとく剥ぎあらため見るに、一通の信書があつた。これは東軍の敵将美山彦にあて、武熊別より送るところの密書のやうである。 その文意は、 『常世姫すでに竜宮城を陥れむとす。されど敵は克く防ぎ、克く戦ひ容易に抜くべからず。大国彦の援軍を乞ひ、大勢をもり返したれば、味方の士気頓に加はり来り、竜宮城の陥落は旦夕に迫る。汝らは吾らを顧慮するところなく、全力を尽してシオン山を攻め滅せ。時を移さず竜宮城を屠り、地の高天原の諸神将を討伐し、その機に乗じて応援に向はむとの、常世姫の密書来れり。これを貴下に報告す』 と記してあつた。 大足彦は南軍の指揮を安世彦に一任し、ひそかに遁れて竜宮城の警衛に尽力してゐた。安世彦はこの密書を探女の手より奪ひ大いに驚き、吾妻別、真鉄彦、磐樟彦を山上の陣営に集めて密議をこらした。諸将はおほいに驚き、シオン山は難攻不落にして、一卒これに当れば万卒進むあたはざるの要害なり。軍の半を割き速やかに一方の血路を開き、竜宮城に応援せむことを決議され、その決議の結果は大八洲彦命の前にいたされた。大八洲彦命はしばし思案に暮れゐたりしが、直ちにその決議を排し諸将にむかひ、 『竜宮城には大足彦警衛のために帰還しをれば、深く案ずるに足らず。加ふるに真澄姫、言霊別命、神国別命ら智勇兼備の神将の固く守りあれば、いかなる邪神もこれを抜くあたはざるべし。これ必ず敵の奸策ならむ』 と事もなげに刎ねつけられた。このとき安世彦色をなしていふ。 『貴神は稚桜姫命の御上を憂慮したまはざるや。万一この密書にして偽りなれば重畳なり。されど油断は大敵、当山は寡兵をもつて克く衆を防ぐに足る。しかるに竜宮城陥りなば、地の高天原もまた危からむ。是非に応援軍を出し、もつて竜宮城の危急を救ひたまへ』 と決心の色を表はし、容易に意志を枉ぐべき形勢は見えなかつた。 真鉄彦、磐樟彦、吾妻別も、安世彦の提案に賛成した。部下の神卒はこの風評を耳にし、大部分は竜宮城の危険を信じ、一時も早く帰城せむことを唱ふるにいたつた。 大八洲彦命は断乎としてその衆議を排し、決心の色を表はし、 『しからば諸神司は吾が指揮を用ゐざるや。今は詮なし、たとへわれ一柱になるとも、当山は誓つて退却せじ、また一卒をもわれは帰城応援せしむるの意志なし』 と主張した。ここに宮比彦は恭しく神前に出で神勅を奏請したるに、たちまち神示あり、 『探女をわが前に伴ひきたれ』 とあつた。宮比彦は神示を大八洲彦命に恭しく伝へた。大八洲彦命は安世彦に命じ、神示のごとく探女を神前に曳き来らしめ、庭石の上に引据ゑた。たちまち探女の身体は上下左右に震動し、かつ自ら口を切つて、 『武熊別の密使にして、実際は竜宮城の陥落近きにありといふは虚偽なり。貴軍の士気を沮喪せしめ、かつ陣容を紊し、その虚に乗じ一挙にシオン山を攻略せんずの攻軍の奸計なり』 と白状するや、たちまち大地に倒れた。 ここに諸神将は神明の威力と、大八洲彦命の明察力に感嘆し、今後は命の命令には一切背かずと誓つた。 探女は大八洲彦命の仁慈によつて、神卒に守られ、武熊別の陣営近く護送せられたのである。 (大正一〇・一一・六旧一〇・七外山豊二録) |
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6 (1096) |
霊界物語 | 02_丑_常世姫の陰謀/シオン山攻防戦 | 44 魔風恋風 | 第四四章魔風恋風〔九四〕 言霊別命は思はざる濡衣を着せられ、如何にもしてこの疑を晴らし、身の潔白を示さむと焦慮し、かつ常世姫を悔い改めしめむとした。されど狐独の身となりし命はいかんとも策の施すべき道がなかつた。そこでいよいよ意を決し、万寿山に落ち延びた。 言霊別命の境遇に同情したる数多の神司は、命の後をおふて万寿山に馳集まつた。 重なる神将は、吾妻別、鷹松別、河原林、玉照彦、有国彦、森鷹彦らの諸神将であつた。勇猛なる神軍は期せずして日に月に集まりきたつた。このこと常世姫の耳に雷のごとく響いてきた。常世姫はおほいに驚き、八王大神常世彦をして万寿山を攻撃せしめむとした。時しも竜宮城は常世姫のために陥落し、稚桜姫命は神国別命以下の神将とともに、言霊別命の駐屯せる万寿山に逃れたまうた。 ここに言霊別命は、礼をつくしてこれを迎へ奉り、竜宮城を回復せむとし、かつ言霊別命以下の清廉潔白にして、至誠至実の神たることが初めて悟られた。 稚桜姫命の来臨とともに万寿山はますます開拓され、つひには堅城を造り、鉄壁をめぐらし、実に難攻不落の城塞となつた。 この時、智勇兼備の勇将にして、紅葉別といふ軍神があつた。この神司あまたの神軍を率ゐて来り、言霊別命に面謁せむことを申込んだ。言霊別命はまづ吾妻別に面会せしめ、その来意を尋ねさせた。紅葉別は常世姫の奸策を聞き義憤をおこし、自ら進んで万寿山に参加し、彼を亡ぼし天下を太平に治めむと欲し、協心戮力もつてミロク神政の神業に参加せむと、殊勝にも誠意を表にあらはして参加せむ事を申込んだ。吾妻別はおほいに喜び、これを言霊別命に委細進言した。紅葉別は戦闘に妙をえたる武神である。言霊別命は稚桜姫命とはかり、紅葉別をして万寿山の主将たらしめむとした。このとき竜宮城はすでに常世姫の占領するところとなり、ついで地の高天原も、橄欖山も敵手に落ちてゐた。シオン山の総大将大八洲彦命は、逃れきたれる大足彦の国の真澄の鏡をもつて、敵軍を山上より射照した。たちまち山頂より幾十万とも知れぬ巨巌湧出して中空に飛び、美山彦、国照姫、武熊別の魔軍の集団めがけて雨のごとく落下し、一方鏡に射照されてその正体を露はし、たちまち悪鬼、大蛇、悪狐の姿と変じ、鬼城山めがけて逃げ散つた。 ここに大八洲彦命は宮比彦を祭祀の長とし、安世彦を主将とし、一部の神軍をもつてこれを守らしめ、ただちにその勢をもつて竜宮城に攻め寄せ回復戦を試みた。真鉄彦は地の高天原にむかひ、磐樟彦は橄欖山にむかひ、吾妻別、大足彦は竜宮城にむかひ、国の真澄の鏡を取り出し、敵軍を照し、かつ大八洲彦命の神言を奏上するや、たちまち暴風吹きおこり、浪は山の如く立荒び、城はほとんど水中に没した。常世姫の身体よりは異様の光現はれ、金毛八尾の悪狐と化し、黒雲を巻きおこし、常世城めがけて遁走し、部下の魔軍は諸方に散乱して、竜宮城も地の高天原も再び神軍の手に帰つた。ここに稚桜姫命は、言霊別命、吾妻別らを率ゐてふたたび竜宮城に帰還したまうた。万寿山は鷹松別、有国別らの諸神将をしてこれを守備せしむることとなつた。 話かはつて天稚彦は、唐子姫に心を奪はれ、壇山を捨ててなほも山奥深くわけいり、 『お前と一緒に暮すなら、たとへ野の末山の奥、虎狼の住家にて、竹の柱に茅の屋根、手鍋提げてもかまやせぬ』 といふやうな状態にて、わづかの庵を結び夫婦きどりで暫く暮してゐた。 ある時天稚彦は近辺の山に分け入りて、兎を狩つて帰つてきた。唐子姫は夫の留守に気を許し、辺りに響く鼾声を発し、よく寝入つてゐた。天稚彦はひそかに外より覗いて見た。唐子姫の姿はどこへ行つたか影もなく、寝間には銀毛八尾白面の悪狐が睡つてゐる。天稚彦はおほいに驚き、かつ怒り、 『この邪神奴、わが不在を窺ひ、最愛の唐子姫を喰ひ殺し腹膨らせ、安閑と仮眠りをるとは心憎し。妻の敵、思ひ知れよ』 と弓に矢をつがひ、悪狐をめがけて発止と射かけた。この時遅く、かの時速く、悪狐はたちまち白煙となつて消え失せた。いづこともなく唐子姫の声として、 『われは常世姫の部下の魔神なり。竜宮城を占領せむために花森彦を誘き出し、今また汝をこの山奥に誘ひ、その通力を失はしめたり。吾はこれより常世の国に馳帰り賞賜に預からむ。汝はすみやかに竜宮城に還り、この失敗を包み隠さず物語り、唐子姫に眉毛をよまれ、尻の毛も一本も残らず引抜かれたり。悔し残念を耐りこばりてここまで還りきました。今までの罪はお許し下さいと、女房の稚桜姫命に頭を下げて、三拝九拝せよ』 と言葉途切るとともに、カラカラと嘲笑ひの声次第に遠くなりゆくのであつた。命は大いに怒り、声する方を中空目がけて矢を射つた。矢は危くも命の肩先をすれずれにうなりを立てて落ちきたり、実に危機一髪の間であつた。天稚彦はこれより諸方を流浪し、種々の艱苦を嘗めつつすごすごと竜宮城に帰ることとなつた。 (大正一〇・一一・八旧一〇・九加藤明子録) |
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7 (1494) |
霊界物語 | 10_酉_黄泉比良坂の戦い | 24 言向和 | 第二四章言向和〔四五四〕 善と悪とを立別る遠き神代の大峠 黄泉の島の戦ひに弱りきつたる美山別 国玉姫の部下たちは朝日輝く日の出神の 味方の軍に艱まされ天地に轟く言霊の 貴の力に這々の体悶え苦しむ折からに 黒雲塞がる大空を轟かしつつ舞ひ降る 磐樟船の刻々に地上に向つて降り来る 大国姫を神伊邪那美大神と敵や味方を偽りて 日頃企みし枉業を遂げむとするぞ浅ましき。 神軍の言霊に魂を抜かし、胆を挫かれ、腰を抜かした醜女探女の悪神等は、泥に酔うたる鮒の如く、毒酒に酔うた猩々の如く、骨も筋も菎蒻然と悶え苦しむ其処へ、常世の国の総大将、神伊邪那美神の御出陣と聞いて、再び元気を盛り返し、八種の雷神を始めとし、百千万の魔軍は一度にどつと鬨をつくつて、黄泉比良坂指して破竹の如くに攻め登る。 「ウロー、ウロー」の叫び声、天地も震撼するばかりにて、天津御空は黒雲益々濃厚となり、雷霆鳴り轟き、大地は震動し、海嘯は山の中央までも襲ひ来り、黄泉の国か、根の国か、底の判らぬ無残の光景に、美山別、国玉姫は、 美山別、国玉姫『常世の国の興亡此一挙にあり』 と、部下の魔軍を励まして、 美山別、国玉姫『進め進め』 と下知すれば、命知らずの魔軍は、醜女探女を先頭に、心の闇に迷ひつつ、力限りに戦ひける。 爆弾の響き、砲の音、矢の通ふ音は、暴風の声と相和して益々凄じくなり来る。 此の時日の出神は比良坂の坂の上に立ちて、攻め登り来る数万の魔軍に向ひ、 日の出神『神伊邪那岐大神、神伊邪那美大神、守らせ給へ。常世の国より疎び荒び来る黄泉神、大国姫の伊邪那美命に一泡吹かせ、心の曲を払ひ去り、皇大神の神嘉言の声に邪の心を照させ給へ。一二三四五六七八九十百千万の神等よ、日の出神の一つ炬を、天地に照すは今この時ぞ。許させ給へ』 と云ふより早く、姿は消えて巨大なる大火球と変じ、魔軍の頭上に向つて唸りを立て、前後左右に飛び廻るにぞ、数多の魔軍は、神光に照されて眼眩み、炬の唸りに頭痛み、耳痺れ、身体忽ち強直して化石の如く、幾万の立像は大地の砂の数の如くに現はれける。 正鹿山津見は涼しき声を張りあげて、 正鹿山津見『神が表に現はれて善と悪とを立別る 此世を造りし神直日心も広き大直日 只何事も人の世は直日に見直せ聞き直せ 身の過失は宣り直せ黄泉の島は善悪の 道を隔つる大峠言問ひわたす神々の 誠の道を千代八千代定むる世界の大峠 鬼も大蛇も曲津見も言問ひ和す言問岩 此坂の上に塞りたる千引の岩は神の世と 邪曲世を隔つる八重の垣出雲八重垣妻ごみに 八重垣造る神の国ソモ伊邪那美の大神と 詐り来る曲神の大国姫よ国姫よ 汝が命は幽界の黄泉醜女を悉く 言向け和せ現世をあとに見捨てて帰り行く 百の霊魂を守れかし黄泉の国に出でまして 一日に千人八千人の落ち行く魂を和めつつ 現の国に来らじと黄泉の鉄門をよく守れ 神伊邪那岐の大神の生成化育の御徳に 日の出神と現はれて一日に千五百の人草や 万民草を大空の星の如くに生み殖やし 神の御国を開くべし那岐と那美との二柱 互に呼吸を合せまし国の八十国八十の嶋 青人草や諸々の活ける物らを生みなして 堅磐常磐に神の世を樹てさせ給へ常世国 ロッキー山をふり捨てて心をしづめ幽界の 黄泉の神と現れませよ黄泉の神と現れませよ』 大国姫はこの歌に感じてや、千引の岩の前に現はれて、 大国姫『吾は常世の神司神伊邪那美の大神と 百の神人詐りて日に夜に枉を行ひつ 心を曇らせ悩ませてあらぬ月日を送りしが 神の御稜威も明けき日の出神や諸神の 清き心に照されて胸に一つ炬輝きぬ 輝きわたる村肝の心の空は美はしき 誠の月日現れましぬ嗚呼天地を固めたる 神伊邪那美の大神の吾は黄泉に身をひそめ 醜の枉霊の醜みたま醜女探女を悉く 神の御教に導きて霊魂を洗ひ清めさせ 再び生きて現世の神の柱と生れしめむ 美し神世に住みながら曲業たくむ醜神を 一日に千人迎へ取り根底の国に連れ行きて 百の責苦を与へつつきたなき魂を清むべし あゝ皇神よ皇神よ常世の暗の黄泉国 暗を照して日月の底ひも知れぬ根の国や 底の国まで隅もなく照させ給へ朝日照る 夕日輝く一つ炬の日の出神よいざさらば 百の神等いざさらば』 と歌つて改心の誠を現はし、黄泉の大神となつて幽政を支配する事を誓ひ給ひたるぞ畏けれ。ここに伊邪那岐神の神言以ちて、日の出神その他の諸神将卒は、刃に衂らず、言霊の威力によつて、黄泉軍を言向け和し、神の守護の下に天教山に向つて凱旋されたり。 数多の曲津神は悔い改めて、生きながら善道に立帰るもあり、霊魂となりて悔い改むるもあり、或は根底の国に落ち行きて黄泉大神の戒めを受け、長年月の間苦しみて、その心を改め霊魂を清め、現界に向つて生れ来り、神業に参加する神々も少からずとの神言なりけり。 (大正一一・二・二五旧一・二九井上留五郎録) |
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霊界物語 | 11_戌_コーカス山の大気津姫退治 | 23 保食神 | 第二三章保食神〔四九〇〕 黄泉比良坂の戦に、常世の国の総大将大国彦命、大国姫命その他の神々は残らず日の出神の神言に言向和され、悔い改めて神の御業に仕へ奉ることとなつた。其為め八岐の大蛇や、金毛九尾の悪狐、邪鬼、醜女、探女の曲神は暴威を逞しうする根拠地なるウラル山に駆け集まり、ウラル彦、ウラル姫を始め、部下に憑依して其心魂を益々悪化混濁せしめ体主霊従、我利一遍の行動を益々盛んに行はしめつつあつたのである。悪蛇、悪鬼、悪狐等の曲津神はウラル山、コーカス山、アーメニヤの三ケ所に本城を構へ、殊にコーカス山には荘厳美麗なる金殿玉楼を数多建て列べ、ウラル彦の幕下の神々は、茲に各根拠を造り、酒池肉林の快楽に耽り、贅沢の限りを尽し、天下を我物顔に振舞ふ我利々々亡者の隠処となつてしまつた。かかる衣食住に贅を尽す体主霊従人種を称して、大気津姫命と云ふなり。 大気津姫の一隊は、山中の最も風景佳き地点を選み、荘厳なる宮殿を建設する為め、数多の大工を集め、昼夜全力を尽して、宮殿の造営に掛り、漸く立派なる神殿を落成し、愈神霊を鎮祭する事となりぬ。流石のウラル彦夫婦も、天地の神明を恐れてや先づ第一に国魂の神として、大地の霊魂なる金勝要大神を始め、大地の霊力なる国治立命及び大地の霊体なる素盞嗚命の神霊を鎮祭する事となつたのである。数多の八王神は競うて稲、麦、豆、粟、黍を始め非時の木の実、其他の果物、毛の粗きもの、柔きもの、鰭広物、鰭狭物、沖津藻菜、辺津藻菜、甘菜、辛菜に至るまで、人を派して求めしめ、各自に大宮の前に供へ奉る事とした。此宮を顕国の宮と云ふ。此祭典は三日三夜に渉り力行された。数多の八王神、ヒツコス、クスの神達は、祝意を表する為め、酒に溺れ、或は歌ひ、或は踊り舞ひ狂ふ様、恰も狂人の集まりの如き状態なりき。 顕国の宮は祭典始まると共に、得も言はれぬ恐ろしき音響を立てて唸り始めたり。ウラル姫は全く神の御喜びとして勇み、酒宴に耽りつつあつた。八百有余の八王神を始め、幾千万のヒツコス、クスの神は、 『サアサアヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ酔うてもヨイヂヤナイカ 泣いてもヨイヂヤナイカ笑つてもヨイヂヤナイカ 怒つてもヨイヂヤナイカ死んでもヨイヂヤナイカ 倒けてもヨイヂヤナイカお宮が唸つてもヨイヂヤナイカ 天地が覆つてもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ山が割れてもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ 三五教でもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカウラル教でもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ 勝てもヨイヂヤナイカ負けてもヨイヂヤナイカ 何でもヨイヂヤナイカ三日のお祭り四日でも、五日でも 十日でもヨイヂヤナイカ人はどうでもヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ 自分丈けよければヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカウラルの教が三千世界で 一番ヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカヨイヤサのヨイトサツサ 飲めよ騒げよ一寸先や暗よ暗の後には月が出る 月はつきぢやが運の尽き尽きてもヨイヂヤナイカ 亡んでもヨイヂヤナイカ倒せばヨイヂヤナイカ 三五教の宣伝使』 と無我夢中になつて、昼夜の別なく数多の八王神、ヒツコスやクスの神等に、数多の邪神が憑つて叫び廻る。八王神の綺麗な館も、数多のヒツコスに土足の儘踏みにじられて踊り狂はれ、襖は倒れ、障子は破れ、戸は壊れ、床は落され、敷物は泥まぶれ、着物は勝手気儘に取出され、着潰され、雪解の泥中に着た儘酔つて転げられ、食ひ物は食ひ荒され、宝は踏みにじられ、大乱痴気騒ぎが始まつた、されどもウラル姫を始め数多の八王神は、何れも悪魔に精神を左右せられて居るから、皆好い気になつてヒツコス、クスの神と共に手をつなぎ踊り狂ふ。顔も着物も泥まぶれになつて居る。顕国の宮は刻々に鳴動が激しくなつて来た。ウラル姫は泥まぶれの体躯に気が付かず、忽ち顕国の宮の前に進み、 ウラル姫『コーカス山に千木高く大宮柱太しりて 仕へ奉れる神の宮顕しき国の御霊たる 速須佐之男の大御神国治立の大御神 金勝要の大神の三魂の永遠に鎮まりて 神の稜威のアーメニヤコーカス山やウラル山 ウラルの彦の御教を天地四方に輝かし 我世を守れ何時迄も此世を守れ何時迄も 顕しの宮の唸り声定めし神の御心に 叶ひ給ひし御しるしか日々に弥増す唸り声 ウラルの姫の功績の天地に輝く祥兆や 嗚呼有難や有難や天教山や地教山 黄金山や万寿山是れに集へる曲神の 曲の身魂を平げてウラルの神の御教に 心の底よりまつろはせ天の下をば穏かに 守らせ給へ三柱の吾大神よ皇神よ 神の稜威の幸はひて遠き神世の昔より 例もあらぬコーカスの山に輝く珍の宮 神酒は甕高しりて甕の腹をば満て並べ 荒稲和稲麦に豆稗黍蕎麦や種々の 甘菜辛菜や無花果の木の実や百の果物や 猪や羊や山の鳥雉や鵯鳩雀 沖津百の菜辺津藻菜や種々供へし供へ物 心平らに安らかに赤丹の穂にと聞し召せ 神が表に現はれてウラルの神の御教を 堅磐常盤に守れかし善と悪とを立別て 此世を造りし国の祖国治立の大神の 神の御前に四方の国百の民草悉く コーカス山に参ゐ詣でウラルの神の御教に 潮の如く集ひ来て我世の幸を守れかし アヽ三柱の大神よアヽ三柱の皇神よ 心許りの御幣帛を捧げて祭るウラル彦 ウラルの姫の真心を良きに受けさせ賜へかし 良きに受けさせ賜へかし』 と一生懸命神前に拝跪して祈つて居る。此時数多の八王神、ヒツコス、クスの神は神殿に潮の如く集まり来り、又もや、 『ヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカお宮はどうでもヨイヂヤナイカ 酒さへ飲んだらヨイヂヤナイカ飲めよ飲め飲め一寸先や暗よ 後はどうでもヨイヂヤナイカ暗の後には月が出る 運の尽でもヨイヂヤナイカこの世の尽でもヨイヂヤナイカ ウラルの姫の泥まぶれ笑うて見るのもヨイヂヤナイカ 上でも下でもヨイヂヤナイカ八王でもビツコスでもヨイヂヤナイカ 三五教でもヨイヂヤナイカウラル教捨ててもヨイヂヤナイカ お宮が唸つてもヨイヂヤナイカ潰れた所でヨイヂヤナイカ お酒が一番ヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカヨイヂヤナイカ』 と数千の群衆は口々に酔ひ潰れ、泥にまぶれ、上下の区別なく飛廻り跳狂ひ踊り騒いで居る。かかる所に神殿さして悠然と現はれ出でたる三五教の宣伝使、松竹梅を始めとし、石凝姥神、天之目一箇神、淤縢山津見神、時置師神、八彦神、鴨彦神は口を揃へて、 『神が表に現はれて善と悪とを立別ける 此世を造りし神直日心も広き大直日 只何事も人の世は直日に見直し聞直せ コーカス山に集まりしウラルの姫を始めとし 百の八王神、ヒツコスやクスの神まで皇神の 御水火に早く甦り醜の身魂を立替へて 大気津姫の曲業を直日に見直せ宣り直せ 神は我等と倶に在り醜の曲津の亡ぶ時 八十の醜女の亡ぶ時八岐大蛇や曲鬼や 醜の狐や千万の曲の身魂を皇神の 神の御前に追ひ出し眼を醒せ目を開け 顕しの国の大宮に鎮まり給ふ三柱の 神の怒りは目の当り天地に響く唸り声 酔を醒せや目を覚ませ胸の帳を押開けて 空に輝く朝日子の日の出神の真心に 復れよ帰れ諸人よウラルの彦よウラル姫 神は汝を救はむと千々に心を砕かせつ 我等を遣はし給ふなり我等は神の御使 三五教の宣伝使宣伝万歌の言霊に 霊の真柱立直し一時も早く立替へよ 身魂の立替へ立直し体主霊従の立直し 大気津姫の行ひを今日を限りに立直せ 天は震ひ地は揺ぐ山は火を噴き割るるとも 誠の神は誠ある汝が身魂を救ふらむ 一日も早く改めよ一日も早く詔り直せ』 と言葉爽かに歌ひ終つた。神殿の鳴動は此宣伝歌と共にピタリと止んだ。ウラル姫の神は忽ち鬼女と変じ、雲を呼び、風を起し、雨を降らし四辺を暗に包み、八王神、ヒツコス引連れて、天の磐船、鳥船に其身を任せ、アーメニヤ、ウラルの山を指して雲を霞と逃げ散りたり。松竹梅を始め宣伝使一同は、改めて神殿に祝詞を奏上し、神徳を感謝する折しも此場に現はれた五柱の神がある。見れば鬼武彦、勝彦、秋月姫、深雪姫、橘姫であつた。何れも皆鬼武彦が率ゐる白狐の化身である。流石奸智に長けたる金毛九尾の悪狐も、白狐の鬼武彦、旭、高倉、月日の神力には敵はず、ウラル姫と共に此場を捨てて逃げ去つてしまつたのである。 茲に石凝姥神、天之目一箇神、天之児屋根神は、高倉以下の白狐に向ひ顕国の宮に捧げ奉れる稲、麦、豆、黍、粟の穂を銜へしめ、世界の各地に播種せしめたり。 国治立命、神素盞嗚命、金勝要の三柱を祭り、顕国の宮を改めて飯成の宮と称へたり。宮の鳴動したる理由は、何れも体主霊従の穢れたる八王神の供物なれば、神は怒りて之を受けさせ給はざりし為めなり。 白狐は五穀の穂を四方に配り、世界に五穀の種子を播布したり。これより以前にも五穀は各地に稔れども、今此処に供へられたる五穀の種子は勝れて良き物なりし故なり。 今の世に至るまで白狐を稲荷の神と云ふは此理に基くものと知るべし。 (大正一一・三・三旧二・五谷村真友録) |
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霊界物語 | 17_辰_丹波物語2 丹波村/鬼ケ城山 | 15 敵味方 | 第一五章敵味方〔六二六〕 二月十五日の月光を浴びて、三嶽山の頂上の平地に、一蓮托生、蓑を敷き、肱を枕に華胥の国に入る。馬公鹿公は峰吹く嵐の音に夢を破られ、一度にムツクと起上り、 鹿公『アー恐ろしい事だつた。折角紫姫様のお情に依りて、岩窟の難を免れたと思へば荒鷹、鬼鷹の両人、鬼ケ城より帰り来り、俺達二人をフン縛つて、又もや岩窟に捻込みやがつたと思へば、夢だつた。アー恐ろしい恐ろしい、夢に見ても、アンナ悪人はゾツとする』 馬公『ヤアお前も夢を見たか。俺も同様の夢を見た。何だか此処は寝心が悪い。チツト月夜でもあり、そこらをブラついて見ようかい』 鹿公『さうだなア、是れ丈の同勢があれば、まさかの時には大丈夫だ。一丁や二丁離れたつて、気遣ひはあるまい。万一荒鷹や、鬼鷹が出て来やがつた所で「オイ助けて呉れい」と一言云へば、すぐ加米彦さまが、言霊の発射とやらで助けて下さるは請合ぢや。サア行かう行かう。皆さまはマア、よう寝ンで居らつしやること。吾々の様に罪が深い者は、恐怖心に駆られて、安眠も碌に出来ないワ。起きて居れば怖い目に遭はされる、寝れば眠るで怖い夢を見る、寝ても醒めても、責られ通しだ………結構なお月様の光をたよりに、チツと其処辺を、保養がてら、ウロつかうぢやないか』 馬公『宜からう』 と、フツと立ち、二人は手をつなぎ、ブラブラと山の頂きを逍遥して居る。 馬公、鹿公『アヽ何と、佳い景色だ。山の上で風は良い加減に冷たいが、木の葉に露が溜り一々月が宿つて居る、此光景はまるで、水晶の世界に居る様だ。アーア俺達の様な不仕合せ者でも、亦コンナ愉快な光景を見る事が出来る。人間は長生したいものだなア』 と鼻唄を唄ひ、あちらこちらとウロついて居る。 加米彦は中途に目を醒まし、 加米彦『アーア皆さま打揃うて、よく寝て居らつしやるワイ。悦子姫さまの白い顔、桃色の頬べた、紫姫さまの花のやうな麗しきお姿、一方は花の顔容、一方は雪の肌、空には三五の明月、お月さまも余程気に入つたと見えて、二人のナイスの顔を、特別待遇でお照しなさると見える、いやが上にも綺麗なお顔だ事。………アヽ音彦の顔か、随分力をオト彦テなスタイルだ。片腕をくの字に曲げ、無作法に口を開けて寝て御座るワイ。今頃は五十子姫の夢でも見て居るのだらう。可愛い女房をバラモン教の奴に攫はれ、今に行衛不明、思へば思へば心中を察してやる。それでも此永の間一緒に歩いて居るが、五十子姫のイの字も口に出しよらぬ所を見ると、余程確りして居るワイ……人間の寝顔を見れば、大抵其人の精神が分るものだ。どれどれ青瓢箪彦の首実検と出かけよう………ヤア此奴は嬉しさうにホヤホヤと笑うて居る。何でも丹波村とかのお節の夢でも見て居るのだらう。ヤア益々笑ひよるぞ。幽霊と仮称せられる様な奴だから、どうで笑ひにも何処ともなしに厭味たつぷりの所がある。コンナ所を一つお節に見せてやりたいものだなア、アハヽヽヽ。ヤア此奴は丹州かな、一寸好い顔をして居やがるぞ。何でも豊国姫の神様の御命令だと云つて居たが、何処ともなしに威厳が備はつて居る。ハヽア顔の真中に妙な光が現はれて居るぞ。木の花姫の化身か、妙音菩薩の再来か、此奴ア、ウツカリ軽蔑する訳には行かぬワイ。我々一行中での大人格者と見える。……ヤア良い審神をした。明日になつたら音彦の大将に一泡吹かしてやらう。……ウン此奴は黒姫仕込みの、腰曲りの夏彦と云ふ奴だ。なんと情ない鯱つ面だなア。ヤア此奴ア批評の価値がないワイ。此処に一寸こましい面の持主がある。此奴が、何でも狐とか狸とか云ふ奴だ。ウンさうさう常彦々々、今寝て居る間に、髪と髪とを括つといてやらうかなア』 加米彦は二人の長髪をソツと掴み、端と端とで地獄結に括つて了ひ、 加米彦『サア此奴が目が覚めたら、随分滑稽だらう。これからが、音彦さまと青彦の番だ。併しあまり距離が遠いので……髪と髪とが届かぬらしい。待て待て……エー此処に綱がある。此奴で括つて置かう』 と手早く括り合し、 加米彦『ハヽヽヽ、これで紛失の憂ひなしだ。此次が悦子姫さま、紫姫さまか………ヤア此奴ア、惜いぞ。紫姫と丹州とを継ぎ合せ、最後に悦子姫と加米彦の大神さまとの継ぎ合せだ。これで二四ケ八人、二八十六本の手と足。ヤア面白い、面白い』 と手探りに、紫姫の髪をソツと掴みかかつた。紫姫はムツクと起き上りさま、加米彦の腕首掴ンで、ドツカと投げたるその勢あまつて加米彦は、傍の谷を目がけてドスーン。 加米彦『アイタヽヽヽ』 と叫び居る。 紫姫『ヤア皆さま、起きて下さいませ。又もや鬼熊別の部下の者共が現はれました。サア御用意々々』 此声に驚いて一同は撥ね起き、常彦は、 常彦『アイタヽヽヽ』 夏彦『エヽヽエタイワイエタイワイ、誰だ誰だ、人の髪の毛を引つぱりよつて……放さぬかい』 常彦『オイ夏、貴様だらう』 夏彦『馬鹿云ふな、貴様が俺の髪を引つぱつとるのだ』 青彦『ヤア俺の頭を曳く奴がある。………ヤア何だ、寝て居る間に、髪と髪とを継ぎ合しよつたな、コンナ悪戯をする奴は、大方加米公だらう。……オイ加米彦、何処へ行つた。早く出て来て、ほどかないか』 加米彦『オーイ、オイ、俺はエライ所に、後手に括られて、困つて居るワイ。誰か出て来てほどいて呉れ』 青彦『ヤア加米彦も括られよつたのかな、是れだから、油断は大敵と云ふのだ。敵地に臨みて気を許し、寝てるのが此方の不覚だ、併し人間が紛失せなくてまだしもだ』 加米彦『オーイ、青彦、皆さま、御心配下さいますな、私のは自縄自縛、自縄自解、依然として元の通り』 青彦『ナアーンだ、人を脅嚇かしよつて……どこを括られて居つたのだ』 加米彦『マアどうでも良い、一体お前達はナアンだ。頭に長い尾を附けよつて……』 丹州『加米彦さま、あなた随分悪戯をしましたネー。私が知らぬ顔をして見て居りましたよ。紫姫さまに取つて放られなさつたときの面白さ、アツハヽヽヽ』 加米彦『ヤア失敗つた。皆さま、飛ンだ失礼を演じまして、……どうぞ神直日、大直日に見直し聞直して下さいませ』 音彦『戯談にも程がある。宣伝使の神聖を害する行動だ。今日限り、素盞嗚大神の代りとなつて、汝に対し、宣伝使の職を解く。有難う思へ』 加米彦『此奴ア一寸迷惑だ。モシモシ音彦さま、鬼ケ城の征伐が済む迄、執行猶予をして下さいな』 音彦『イヤなりませぬ』 加米彦『モシモシ悦子姫さま、どうぞ仲裁して下さいませ』 悦子姫『コレ音彦さま、今後、コンナ悪戯をなさらぬ様に、能く戒めて、今度は赦して上げて下さいナ』 音彦『赦し難き其方なれど、悦子姫様のお言葉に従ひ、今度は忘れて遣はす』 加米彦『アツハヽヽヽ、何に吐しよるのだい。遣はす………が聞いて呆れるワイ、アハヽヽヽ、あまり可笑しくて、腹が痛くなつた。真面目くさつた面構へをしよつて何だい。………チツと捌けぬかい。何程五十子姫の事を思つて心配したつて、竜宮の一つ島に漂着して居る女房に遇へるでもなし、刹那心を出して、モウちつと砕けぬかい。何だか、ソンナむつかしい顔した奴が混つて居ると、道中が面白くないワ』 音彦『ナニツ、五十子姫は竜宮の一つ島に漂着して居るのか、それやお前、何時、誰に聞いたのぢや』 加米彦『ソンナ事が分らぬ様な事で、宣伝使が勤まるかい。加米彦さまの天眼通で、チヤーンと調べてあるのだ。梅子姫さまと侍女の今子姫、宇豆姫の四人連れで、今竜宮島でバラモン教と激戦の最中だ。併し心配は致すな、神様が護いて御座る』 音彦『ヤアさうだつたか、五十子姫は、ウラナイ教に、若しや擒になつて居るのではなからうかと種々と工夫をして、黒姫の荷持となり、様子を考へて居たが、どうもウラナイ教には居りさうもないので、若しや大江山の鬼雲彦が為に捕はれの身となつて居るのではなからうかと思つて居たのだ。鬼ケ城へ是から行つて、モシや五十子姫が居つたら助けてやらねばなるまい、と、此処まで勇みて来たのだ。さうすれば鬼ケ城には、五十子姫は居ないかなア』 加米彦『ハヽヽヽ、お気の毒様、明日は鬼ケ城を征服し、可愛い女房の五十子姫さまに芽出度く対面遊ばす御心中であつたのに、エライ悪い事を申しました。……お力落しさま』 悦子姫、紫姫『ホヽヽヽヽ』 音彦『何事も運命だ。人間がどれ程煩悶したつて、成る様にほか成りはせぬ。今晩はゆつくりと此処でモウ一寝入りして、明日は花々しく言霊戦を開始する事にしやう。サア皆さま休みませう。加米彦、お前は御苦労だが、今夜は不寝番だ』 加米彦、ワザと叮嚀に、大地に頭を摺つけ、両手を突き乍ら、 加米彦『これはこれは音彦の君の御仰せ、確に承知仕つて御座いまする』 一同『アハヽヽヽ、オホヽヽヽ』 又もや思ひ思ひに寝に就く。月の景色に浮かされて、鹿公、馬公の二人は思はず知らず、七八丁ばかり、一行の休息場より南に離れて了つた。此時四五人の荒男、突然木蔭より現はれ来り、バラバラと二人の周囲を取り巻き、棍棒を携へ、 男『ヤア其方は、紫姫の僕、鹿、馬の両人ではないか、どうして此処へ脱け出して来た』 鹿公『コレハコレハ荒鷹、鬼鷹の親分様、誠にお気の毒で御座いますが、岩窟を叩き破つてやうやう此処まで出て参りました』 荒鷹『貴様はどうして、あの堅固な岩窟を破つたのか』 鹿公『私は御存じの通り、身に寸鉄も持たない、どうする事も出来ませぬが、神変不思議の言霊に依りて、自然に岩戸は左右にパツと開き、平和の女神に誘はれて、此処までやつて来ましたよ』 鬼鷹『ナニ、平和の女神とは誰の事だ。紫姫の事ではないか』 馬公『紫姫も結構だが、見目も貌も悦子姫と云ふ絶世のナイスが、突然現はれ給ひ、馬さま、鹿さまの御手をとり、救ひ出させ給うたのだ。モウ斯うなる上は千人力だ、荒鷹、鬼鷹、其他の小童武者共、千疋、万疋一度に掛らうと、ビクとも致さぬ某だ、アハヽヽヽ』 荒鷹『オイ鬼鷹の大将、此奴アちつと変ぢやないか。毎日日日ベソベソと吠面かわいて慄うて居つた両人が、今日は心底から気楽さうに、大言を吐いて居る、どうしたものだらう』 鬼鷹『此奴ア、発狂したのだらう。さうでなくては、アンナ事が言へたものぢやない』 荒鷹『それにしても、肝腎の目的物たる紫姫は、どうなつただらう。鬼熊別の御大将に御約束をして来たのだ。若し紛失でもして居たら大変だがなア』 鹿公『アツハヽヽヽ、タヽヽ大変だ大変だ。大変が通り越して、天変地変だ、地震雷火の車、鬼の岩窟は忽ち明日をも待たず、木端微塵、憐れ果敢なき次第なり、ワツハヽヽヽ』 鬼鷹『ヤア益々怪しいぞ、………オイ鹿、馬の奴、紫姫の所在を有態に申せ』 鹿公『アハヽヽヽ、あの心配さうな面付、蟻か、蚯蚓か、鼬か知らぬが、貴様等の翫弄物にはお成り遊ばす紫姫ぢや御座らぬワイ。鬼熊別の大将に奉つて、御褒美に与らうと云ふ目的であらうが、細引の褌、あちらへ外れ、こちらへ外れ、お気の毒乍ら目的は成就致さぬワイ。あまり呆れて腮が外れぬ様に御注意なされませや』 鬼鷹『ヤア益々合点のゆかぬ事を申す奴だ。コラ馬、鹿、貴様は荒鷹、鬼鷹御両人様の御威勢を恐れぬか』 鹿公『コレヤ荒鷹、鬼鷹、貴様は鹿公さま馬公さま御両人の御威勢を何と思ふか、恐れ入らぬか、アツハヽヽヽ』 荒鷹『益々可怪しい奴だ。何でも此奴ア、強力な尻押しが出来たに違ない。オイ鹿、貴様の後に誰か尻を押す奴が出来たのだらう。逐一白状致せ』 鹿公『きまつた事だよ、此方には大江山の鬼雲彦を始めとし、其他数万の天下の豪傑、雲霞の如く吾々両人を救援に向ひ、三嶽の山の岩窟を滅茶苦茶に叩き潰し、五六人の留守番の奴等は谷底へ吹き散らし、是れより進みて鬼ケ城の敵に向つて攻撃の準備中だ。東方よりは又もや数多の軍勢、亀彦、英子姫のヒーロー豪傑を先頭に、数十万とも限りなく、日ならず攻め寄せる計画整うたり。モウ斯うなる上は、鬼ケ城もガタガタの滅茶々々、一時も早く引返し、此由を鬼熊別の腰抜大将に注進致すが宜からうぞ』 荒鷹『ナニツ、言はしておけば際限なき雑言無礼、首途の血祭、汝等二人の身体は、此棍棒の先に粉砕し呉れむ……ヤアヤア者共、二人に向つて打つて掛れ』 一同は二人を目あてに、棍棒打振り打つてかかるを、鹿、馬の両人は一生懸命、韋駄天走りに、悦子姫が休息場に向つて逃げ帰る。 荒鷹『ヤア卑怯未練な馬、鹿の両人、口程にもない代物、……ヤアヤア者共、汝ら四五人にて結構だ。早く追つかけ両人を生捕に致して来い』 男『畏まりました』 と五六人の男は、二人の後を追つて北へ北へと走り行く。 加米彦『ヤア騒々しき足音が聞えて来た。青彦、常彦、夏彦、起きたり起きたり』 斯く云ふ内、鹿公、馬公は此場に走り来り、 鹿公、馬公『宣伝使に申し上げます。只今荒鷹、鬼鷹の両人、四五人の乾児を引きつれ、棍棒を打振り、此場に進みて参ります。防戦の御用意なされませ』 加米彦『ヤア最早やつて来よつたか。序に鬼ケ城の鬼熊別全軍を率ゐて来て呉れれば、埒が明いて良いがなア。五人や十人邪魔臭い』 鹿公『もうし加米彦さま、随分力一杯、馬公と二人で吹いて吹いて吹き捲つてやりました。是であなたの二代目が勤まりませうなア』 加米彦『ヤア此場へ敵がやつて来ては、悦子姫さま其他の安眠妨害だ。それよりも此方から向つて、一つ奮戦だ。鹿公、馬公、サア来い来れ……』 と云ふより早く加米彦は、南を指して走り行く。忽ち南方より息せき切つて走り来る四五の物影、三人は傍の木の茂みに身を忍ばせ、様子を窺つて居る。 甲『オイ貴様さつきへ往かぬかい』 乙『先も後もあつたものかい。先へ行た者が険呑だとも、安全だとも分るものぢやない。何事も運命の儘に進めば良いのだ。ソンナ臆病風を出して、悪の御用が勤まるかい』 甲『ナニ誰が悪の御用だ。吾々は是位最善の道はないと思つて、一生懸命に活動して居るのだ。鬼熊別の大将は何時も仰有るぢやないか。世界は悪魔の世の中だ。優勝劣敗だ。さうだから世界の人間が可哀相だ、強い者を苛め、弱い者を助けてやるのが人間だ……と、何時も仰有るぢやないか。俺は鬼熊別の大将が毛筋程でも悪だと思つたら、コンナ夜夜中に山坂を駆巡り、辛い働きはせないよ。何でも、三五教とやらの、強い者勝の悪神が出て来よつて、世界の弱い人民を虐げると云ふ事だから、俺も天下の為悪人を滅亡すのが唯一の目的だ』 乙『アハヽヽヽ、貴様は割りとは馬鹿正直な奴だなア、鬼熊別はアヽ見えても、悪が七分に善が三分だ、それが貴様分らぬのか。……アーアもう一歩も前進する事が出来なくなつて了つた』 丙『さうだなア、此処まで来ると、足がピタリと止まつた。何でも最前逃げて行きよつた二人の奴、魔法を使つて俺達の足止めをしよつたのかも知れぬぞ』 木の茂みの中より、 (鹿公または馬公)『加米彦さま、世界に絶対の悪人はありませぬなア、今彼等の話を聞けば、鬼の乾児にもヤツパリ善人が混つて居るぢやありませぬか』 加米彦『そうだ、如何に悪人と云つても、元はみな神様の結構な霊が血管の中を流れて居るのだから、悪になるのは皆誤解からだ。併し悪と知りつつ悪を行る奴は滅多にないものだ。吾々も斯うして善を尽した積りでも、智徳円満豊美なる神様の御心から御覧になれば、知らず識らずの間に罪を重ねて居るか知れないよ。そうだから人間は何事も惟神に任し、己を責め、謙遜り省みなくてはならないのだ』 鹿公『ヘン……殊勝らしい事を仰有います事、あなたは随分謙遜る所か、高慢心の強いお方ぢや、法螺ばつかり吹いて吹いて吹き倒し、人を煙に巻いて、鼻を高うして得意がつてるお方ぢや有りませぬか。あなたも、よつぽど耄碌しましたなア』 加米彦『アハヽヽヽ、それだから困ると云ふのだ。お前達は表面ばつかり見て、吾々の魂を見て呉れないから困るナア』 甲『ヤア何だ、林の中から声が聞えるぢやないか』 乙『そうだ、最前から怪体な声がすると思うて居た。……オイオイ今の声の主人公は何処に居るのだ。敵でも味方でも良いワ、みな神様の目から見れば世界兄弟だ。ソンナ所に怖相に引込みて、ヒソビソ話をするよりも、公然と此場に現れて、一つ懇談会でもやつたらどうだい』 加米彦『此奴ア面白い、お前達は鬼ケ城に割拠する鬼熊別の部下の者だらう。俺は三五教の加米彦と云ふ立派な宣伝使だ。一つ宣伝歌を聞かしてやらうか』 甲『ハイハイ良い所で……ドツコイ不思議な所でお目にかかりました。どうぞ生命許りはお助け下さいませ』 乙『オイオイ何を謝罪るのだ。結構な歌を聴かしてやると仰有るのだよ』 甲『アヽさうか、おれや又、煎じて食てやらうと聞えたので、ビツクリしたのだよ』 乙『アハヽヽヽ、モシモシ宣伝使とやら云ふお方、あなたの言霊は、どうも明瞭して居ります。吾々に対し一寸も敵意を含みて居ない。ヤアもう安心致しました、どうぞ聞かして下さいませ』 鹿公『オイ鬼の部下共、俺達は鹿公ぢやぞ。あまり安心を早うすると、後で後悔をせにやならぬぞ』 乙『ナニ、お前は今逃げた鹿公ぢやなア、此処へ出て来ぬかい、一つ力比べをして、負たら従うてやる、勝つたら従はすぞよ』 鹿公『アハヽヽヽ、三五教のお筆先の様な事を云つて居やがる。勝つも負けるも時の運だ。併し乍ら勝負は最早ついて居るぢやないか。サツパリ加米彦の宣伝使の言霊に零敗して了つた。アツハヽヽヽ』 斯かる所へ荒鷹、鬼鷹の両人、ノソリノソリと現れ来り、 荒鷹、鬼鷹『オイ貴様達、コンナ所で何をして居るのだ、吾々の命令に服従せないのか』 甲『ハイ俄に強くなつて、腹の底から、何だかムクムクと動き出し、阿呆らしくなつて、あなた方の命令に服従する事が出来なくなつて来ました』 荒鷹『ソラ何を言ふのだ、貴様、臆病風に誘はれて腰を抜かし、逆上せやがつたな』 乙『モシモシ荒鷹、鬼鷹の両人さま、モウ駄目ですよ、あなたの威張るのも今日唯今限り、私もどうやら腹の底から、本守護神とやらがムクムクと頭を抬げ「ナーニ鬼鷹荒鷹の木端武者、今此場で改心致せば良し、致さぬに於ては、腕を捩折り、股から引裂いて喰つて了へ」と囁いて御座る、アツハヽヽヽ』 丙『ヤア鬼鷹、荒鷹、どうぢや、降参致したか』 丁『改心するか』 戊『往生致すか、三五教に従ふか、悪を改め善に立帰るか、返答はどうぢや。宣伝歌を聴かしてやらうか』 荒鷹『アイタヽヽヽ、此奴ア変だ、頭が鑿でカチ割られる様に痛くなつて来よつた、鬼鷹、お前はどうだ』 鬼鷹『アイタヽヽヽ、俺も何だか、痛くなつて来たやうだ。ハテ合点の行かぬ事だワイ』 林の中より、加米彦の声、 加米彦『朝日は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも 仮令大地は沈むとも曲津の神は多くとも 三五教の神の道善と悪とを立別けて 鬼も大蛇も曲津見も誠の道に皆救ふ 世の荒風に揉まれつつ神の御子なる諸人は 右や左や前後ろ彷徨ひ惑ふ其間に 善にも進み又悪に知らず識らずに陥りて 神より受けし生御魂或は汚し又破り 破れかぶれの其果は心の鬼に責められて あらぬ方へと傾きつ誠の道を踏み外し 邪の道に勇ましく知らず識らずに進み行く 元は天帝の分霊善も無ければ悪も無い 善と悪とは人の世の其折々の捨言葉 アテにはならぬ物ぞかしあゝ荒鷹よ鬼鷹よ 汝も神の子人の子よ尊き神の子と生れ 何苦しさに鬼ケ城鬼熊別の部下となり 世人を苦しめ虐ぐる身魂を直せ今直せ 三嶽の山の頂きで吾に逢うたは神々の 篤き恵の引合せ心一つの持方で 悪ともなれば善となる善悪正邪の分水嶺 覚悟は如何にサア如何に此世を造りし神直日 心も広き大直日唯何事も人の世を 直日に見直し宣り直す神の樹てたる三五教 復れよ帰れ真心に磨けよみがけ天地の 神より受けし生魂あゝ惟神々々 御霊幸はひましまして荒鷹鬼鷹其外の 魔神の身魂を清めませ偏に願ひ奉る 偏に祈願申します』 と声も涼しく歌ひ終るや、荒鷹、鬼鷹其他一同は大地に平伏し、涙をハラハラと流し唯、 一同『有難う有難う』 と僅に感謝の意を表して居る。 斯かる所へ、悦子姫の一行は現はれ来り、 音彦『ヤア加米彦、御手柄々々、荒鷹、鬼鷹の大将も、どうやら救はれた様な塩梅ですなア』 荒鷹、鬼鷹一度に、 荒鷹、鬼鷹『これはこれは三五教の宣伝使様、私は今日、只今、神の御霊に照されて、発根と心の岩戸が開けました。最早吾々は悪より救はれました。どうぞ今日限り、あなたのお道に入れて下さいまして、お伴に御使ひ下されば有難う御座います』 音彦『ホーそれは何より重畳だ。もうし悦子姫様、如何致しませう。斯う早く改心せられては鬼ケ城の言霊戦も、何だか張合が抜けた様です、何卒あなたの指揮を願ひます』 悦子姫、儼然として立上り、 悦子姫『イヤ荒鷹、鬼鷹の両人、そなたは一先づ鬼ケ城に立帰り、妾の一行と花々しく言霊の戦を開始し、其上にて双方より和睦をする事に致しませう』 荒鷹『ナント仰せられます、最早私共はあなた方に向つて戦ふ勇気はありませぬ。ナア鬼鷹、お前もさうだらう』 鬼鷹『吾々は絶対に三五教に帰順致しました。勿体ない、どうしてあなた方に刃向ふ事ができませうか』 悦子姫『分りました。併し乍ら鬼熊別の帰順する迄は、あなたは、三五教に入信の許可を保留して置きます。今迄首領と仰いだ鬼熊別に対し親切が通りませぬ。成る事ならばあなた方より鬼熊別を、改心さして頂きたい。併し乍ら俄にあなた方の仰有る事を、大将として聞けますまいから、茲に一つの神策を案じ、一旦あなた方と立別れて、花々しく言霊戦を開始し、其結果和睦開城と云ふ段取となるのが、穏健な行方でせう。就ては今迄三岳の岩窟に捕はれて居た紫姫さま、鹿さま、馬さまを始め、丹州さまは荒鷹さま、鬼鷹さまと共に、一先ず鬼ケ城へ御帰り下さい。さうして妾の神軍に向つて言霊戦を開始なされませ。あなたの方は防禦軍、妾の方は攻撃軍で御座います。攻撃軍には、悦子姫、音彦、加米彦、青彦、夏彦、常彦を以て之に当てます、………サアサア一時も早く鬼ケ城へ御帰り遊ばせ。時を移さず妾は神軍を引率し、大攻撃に着手致します』 丹州『ヤア六韜三略の姫様の御神策、心得ました。サアサア紫姫様、鹿公、馬公、是から鬼ケ城へ乗り込み、悦子姫さまの攻撃に向つて、極力防戦を致しませう。………悦子姫様、戦場にて、改めてお目に掛りませう。此丹州が言霊の威力をお目にかける、必ずオメオメと敗走なされますな。あゝ面白し面白し、吾等は是より鬼ケ城の本城に立帰り、鬼熊別を総大将と仰ぎ、寄せ来る三五教の神軍に向つて、あらゆる神変不思議の言霊の秘術を尽し、千変万化にかけ悩まし、木端微塵に平げ呉れむ、さらば悦子姫殿』 悦子姫『さらば丹州殿、改めて戦場にてお目に掛りませう』 (大正一一・四・二三旧三・二七松村真澄録) |
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霊界物語 | 19_午_丹波物語4 玉照姫と玉照彦 | 09 身魂の浄化 | 第九章身魂の浄化〔六五四〕 心の暗の空晴れて、世界に鬼は梨の木の、峠の巌に腰打掛け、雪雲の空を眺めて、雑談に耽る二人の男あり。 荒鷹『アヽ思ひまはせば今年の春の初、鬼熊別の部下となつて、三岳山の岩窟に数多の手下を引連れ、善からぬ事計りを得意になつて、自己保存は人生の本領だと思ひ詰め、利己主義の行動を以て金科玉条として居たが、まだ天道様は吾々を捨て給はざりしか、音彦、加米彦、悦子姫様の一行に救はれ、飜然と悟り、三五教に入信さして頂き、鬼熊別の本城に逆襲し、言向和さむと心力を尽して見たが、まだ鬼熊別の大将は、神の救ひのお綱が掛つて居なかつたと見え、吾々の熱誠なる言霊の忠告を馬耳東風と聞き流し、終には鬼雲彦の後を追うて何処ともなく遁走して了つた。仮令三日でも同じ鍋はだの飯を食つた間柄だから、我々としては何処までも、誠の道に救はねばならないのだが、何処へお出でになつたか行衛は知れず、三五教へ這入つてから、此れと云ふ様な神様に御奉仕も出来ず、困つたものだ。竹生島へ行つて見れば、英子姫様は神業を完成遊ばして、素盞嗚大神様と共に、フサの国斎苑の御住居へお帰り遊ばした後なり、三五教の方々には、散り散りバラになつて別れて了ひ、殆ど方向に迷ふ今日の有様、せめては高城山の松姫でも言向和して、一つ功を立てねばなるまい………ナア鬼鷹』 鬼鷹『オーそうだ。此処も所は違ふが、ヤツパリ大枝山だ。あの向うに見えるは確かに高城山だ。何時も悪神の邪気に依つて黒雲が山の頂を包んで居たが、今日は又どうしたものだ。何時にない立派な雲が棚引いて居るではないか。何でも三五教の誰かが征服して、結構な神様を祀り、神徳が現はれて居るのではなからうかな。万一さうであるとすれば、結構は結構だが、吾々はモウ此自転倒島に於いて活動する所が無くなつた様なものだ。兎も角高城山を一度踏査して実否を探り、万々一三五教に帰順して居たとすれば、モウ仕方がない。どつと張り込んで此海を渡り、竜宮の一つ島へでも往つて、一働きしようぢやないか』 荒鷹『オウそれが上分別だ。併し第一着手として、高城山の探険と出かけやうぢやないか』 鬼鷹『高城山に立派な雲が棚引いて居るが、あれ見よ、真西に当つて又もや弥仙山の麓の様に紫の雲が靉靆いて居るぢやないか。玉照姫様に匹敵した男神様が御出現遊ばしたのではあるまいかなア。併し何は兎も角高城山へ打向ひ、其次に紫の雲の出処を調べる事としようかい。サアサア行かう』 と板を立てた様な坂道を下り、西へ西へと駆出した。満目蕭然として地は一面の薄雪の白布を被つて居る。仁王の様な足型を印し乍ら、高城山の山麓、千代川の郷、鳴石の傍までやつて来た。 荒鷹『一方は樹木鬱蒼とした箱庭式の小山に、卯の花の咲いた様に、白雪が梢に止まり、時ならぬ花を咲かせ、前は何とも知れぬ綺麓な水の流れた大堰川、こんな佳い景色は大枝の坂を越えてこのかた、見た事も無い。一つ此辺で休息した上、ボツボツと高城山に向ふ事にしようかい』 鬼鷹『何だか妙な声がし出したぢやないか。別に人間らしい者も居らず、獣とても居ないやうだ。狐や狸の足型は薄雪の上に残つて居るが、併し狐の声でもなし、人間の声でもなし、合点のいかぬ響きがするぢやないか。兎も角此処に大きな岩がある。どこもかも薄雪だらけだが、此岩に限つて一片の雪もたまつて居ない、さうして又カラカラに乾いて居る。幸ひ此岩の上で、楊柳観音ぢやないが、一つ瞑目静坐し心胆を錬つて見たらどうだ』 荒鷹は打首肯き乍ら、平坦な巌の上にドツカと坐つた。 荒鷹『オイ兄弟、大変此岩は温かいぞ。お前も一寸此処に坐つて見よ』 鬼鷹『ヤア本当に温かい岩だなア。地上一面冷たい雪が降り、冷酷な世界の人情は此通りと、天地から鑑を出して、俺達に示して御座るのに、こりや又どうしたものだ。僅か一坪ばかりの此岩の上許りは、冷酷な雪もたまらず、春の様な暖かみを帯びて居る。是れを見ても、どつかに暖かい人間も、チツとは残つて居ると云ふ神様の暗示だらうよ』 忽ち膝下の平面岩は鳴動を始め、刻々に音響強大猛烈の度を加へて来た。二人は驚いて足早に飛び下り、七八間此方に引き返し、岩石を見詰めて居た。忽ち岩石は白煙を吐き出した。続いて紫の雲細く長く、白煙の中に棹を立てた様に天に冲し、蕨が握り拳を固めたやうな恰好になつては、二三十間中空に消え、又同じく現はれては消え、幾回となく紫の円柱が立昇り、生々滅々して居る。二人は『ヤアヤア』と声を張り上げ驚くばかりであつた。猛烈なる大爆音は次第々々に低声となり、遂にピタリと止まつた。白煙は依然として盛に立昇つて居る。此時金の冠を戴き、種々の宝玉を以て造られたる瓔珞を身体一面に着飾り、白き薄衣を着したる、白面豊頬の女神、眉目の位置と謂ひ、鼻の附具合と云ひ、唇の色紅を呈し、雪の如き歯を少しく見せ、ニヤリと笑ひ乍ら現はれ給うた。 荒鷹『ヤア音に名高い川堰の鳴石であつたか。それとは知らずに御無礼千万にも、吾々の汚れた体で踏みにじり、誠に申訳のない事を致したワイ。キツと鳴石の霊が現はれて、何か吾々に対して厳しい御託宣を下されるのであらう。何はともあれお詫をするより仕方がない』 と荒鷹は薄雪の積もる大地にペタリと平太張つて、謝罪の意を表した。鬼鷹も同じく大地に鰭伏し慄うて居る。忽ち虚空に音楽聞え、蓮の葉の様な大花弁がパラパラと降つて来た。四辺はえも云はれぬ芳香に包まれた。荒鷹は頭を地に附け乍ら、少しく首を曲げ、一方の目にて恐る恐る岩上の女神を眺めた。女神は二人の美しき稚児を左右に侍らせ、例の白烟の中に莞爾として立現はれ、白に稍桃色を帯びたる繊手を差し延べて、此方の両人に向ひ手招きして居る。 荒鷹『オイ鬼鷹、ソウツと頭を上げてあの女神を拝んで見よ。何だか吾々両人に対して御用が有りそうだぞ』 此声に鬼鷹はコワゴワ乍ら、女神の方に眼を注いだ刹那、鬼鷹は『アツ』と叫んで、又もや大地に頭を摺付けた。何時の間にやら両人の体は何者にか引きずらるる様な心地し、以前の平岩の前に安着して居た。女神は淑やかに、 女神『荒鷹どの、鬼鷹どの、しばらくで御座つたなア』 此声に両人は一度に頭を擡げ、熟々と女神の姿を打眺め、腑に落ちぬ面色にて頭を掻いて居る。女神は二人の稚児に、懐より麗しき玉を持たせ、何事か目配せした。二人の稚児は両人の前に進みより、小さき紫の玉を両人の額に当て、コンコンと打ち込んだ。二人は『アイタタ』と云ふ間もなく、痛みは止まつた。二人の稚児は忽ち女神の両脇に復帰し、さも愉快げに笑つて居る。此時より荒鷹、鬼鷹の二人は何となく心穏かに春の様な気分が漂うた。 女神は静に、 女神『唯今より荒鷹、鬼鷹では有りませぬ。隆靖彦、隆光彦と名を与へます。どうぞ今後は誠の神人となつて、神業に参加して下さい。妾の顔を覚えて居ますか』 荒鷹はやつと安堵の態、 荒鷹『隆靖彦の名を賜はり、有難き、身に取つての光栄で御座います』 隆光彦『私の如き曇り切つた身魂に対し、隆光彦と御名を下さいましたのは、何ともお礼の申様が御座いませぬ。失礼乍ら貴神様は吾々と共に三岳山の岩窟にお住居遊ばした丹州様では御座いませぬか』 女神は莞爾として首肯く。 隆靖彦『アヽ是れで世界晴れが致しました。モウ此上は高城山の松姫を言向け和し、瑞の御霊の大神様の御神業に奉仕し、天地に蟠まる八岐の大蛇を言向け和す御神力は、十分に与へられた様な心持になりました。有難う御座います』 隆光彦も無言の儘、頭を下げ感謝の意を表示する。 隆靖彦『あなた様は今まで丹州と身を変じ、吾々の身魂を研く為に、種々雑多と御苦労を遊ばした神様、どうぞ御名を現はし下さいませ』 女神『今は我名を現はすべき時にあらず。自然に貴方等の身魂に感得し得る所まで磨いて下さい。妾の素性が明瞭お分りになつた其時は、貴方等の身魂は天晴れの神人となられた時です。それまでは、あなた方の為に懸案として暫く留保して置きませう』 と云ふかと見れば、三柱の姿は煙となつて消えて了つた。鳴石は依然として小さき唸りを立てて居る。 隆靖彦『なんと不思議な事が有つたもんですなア。吾々に不思議な女神さまが現はれて、隆靖彦だとか、隆光彦だとか、身分不相応の神名を下さつたが、実際に於て責任を尽す事が出来るであらうかと、又一つ心配が殖えて来たやうだ』 隆光彦『そうだ、私も同感だ。併しあの女神様は何処となく丹州さまにソツくりだつた。お前もさう思つただらう』 隆靖彦『ヤア私はあまり勿体なくて、とつくりと顔を、ヨウ拝まなんだよ。何とはなしに目がマクマクして、面を向ける事が出来なかつた。そうして何だか心の底から恥しくつて、自分の今迄の罪悪を照される様な気がして、随分苦しかつた。是れはヒヨツとしたら夢ぢや有るまいかなア』 隆光彦『ナニ、夢所か本当に顕はれ給うたのだ。斯うなつた以上は、層一層言行を慎んで立派な宣伝使にならなくちや、今の女神様に対して申訳が無からう。併し乍ら此の鳴石は依然として唸つて居るぢやないか。又々どんな神様が出現遊ばすか分らないよ。モウ暫く此処に祝詞を奏上して待つて居たらどうだらう』 隆靖彦『ヤア此上立派な神様に出られてたまるものかい。モウ此れで結構だ。恥かしくつて仕方がない。サアサア早く高城山へ行かう』 二人は鳴石に恭しく礼拝し、足早に大川の堤を伝つて上り行く。忽ちドンと突き当つた二人の男、驚いて、 二人『ヤアこれはこれは誠に無調法致しました。あまり俯むいて道を急いで居ましたので、女神様の御通りとも知らず、衝突を致しまして、申訳が御座いませぬ。どうぞお許し下さいませ』 隆靖彦『ヤアお前は、馬公に鹿公ぢやないか。エライ勢ひで何処へ行く積りぢや』 馬公『ハイ吾々の大将、紫姫、青彦の両人さま、大失敗を演じ、聖地にも居れないと云ふ立場になつて苦んで居られます。私等両人はあまりお気の毒で、見て居る訳にも行かず、そつと館を飛び出し、江州の竹生島へ参つて、英子姫様にお目にかかり、お情を以て、素盞嗚大神様に両人のお詫をして頂かうと思ひ、取る物も取敢ず参りました。どうぞ丹州さま、何とか、あなたもお力添をして下さいませぬか、お頼み申します』 隆靖彦『私は丹州さまぢやない。お前さんと一緒に、鬼ケ城の言霊戦に向つた大悪人たりし、荒鷹で御座いますよ』 馬公『モシモシ丹州さま、ソラ何を仰有います。眉目清秀、厳として冒す可らざるあなたの御容貌、女神の姿に化けて居らつしやるが、適切りあなたは擬ふ方なき丹州様、そんな意地の悪い事を仰有らずに、気を許して、打解けて下さいな』 鹿公『ヤア不思議だ。此処にも丹州さまそつくりの方が又現はれた。一目見た時から変つたお方ぢやと思つて居たが、ヤツパリ神様の化身で御座いましたか。どうぞ唯今申した通りの始末ですから、宜しく御神力を以てお助け下さいませ』 隆光彦『イエイエ決して決して、私は丹州さまでは御座いませぬ。荒鷹の兄弟分鬼鷹と云ふ、三岳山の岩窟に於て、悪ばかり働いて居つた男で御座いますよ』 馬、鹿『なんと仰有つても、鬼鷹、荒鷹の様な粗雑な容貌ぢや有りませぬワ。彼奴ア、一旦改心はしよつたが、又地金を出して、どつかへ迂路つき、此頃は鬼雲彦や鬼熊別の後を追うて、悪の道へ逆転旅行をやつて居るだらうと、吾々仲間の評定に上つて居る位な男です。そんな善悪不可解の筒井式の男の名を騙つたりなさらずに、本当の事を言つて下さい。私達は千騎一騎の場合で御座います』 隆靖彦『世間の眼識は違はぬものだなア。何程改心してもヤツパリどつかに、副守が割拠して居つたと見えて、三五教の御連中からは、今、馬公、鹿公の言つた様に見られて居つたのだなア。アーア仕方のないものだ。どうぞしてあの時の姿になつて、此両人の疑を晴らしたいものだ。斯うなると、麗しき容貌になつたのが、却て有難迷惑だ。ナア鬼鷹否々、隆光彦さま…』 隆光彦『アヽさうですなア。併し、馬公さま、鹿公さまにまで疑はれる程、霊魂が向上し、体の相貌までが変つて来たと云ふ事は、実に尊いものだ。ヤツパリ人間は霊魂が第一だ。……モシモシ馬さま鹿さま、決して嘘は申しませぬ。たつた今、何とも知れぬ立派な女神様から、玉を頂いたが最後、斯んなに変化して了つたのだ。名も隆靖彦、隆光彦と頂いたのだが、つい今の先まで依然として、荒鷹、鬼鷹の姿で居つたのだ。どうぞ疑を晴らして下さい』 馬、鹿の二人は疑団の雲に包まれ、両人の姿を頭の上から足の爪先まで、念入りに見詰めて居る。 隆靖彦(荒鷹)・隆光彦(鬼鷹)『バラモン教の総大将鬼雲彦の部下となり 三岳の山の岩窟に心も荒き荒鷹や 生血を絞る鬼鷹と現はれ出でて四方八方の 老若男女を拐はかし無慈悲の限りを尽したる 鬼熊別と諸共に大江の山や鬼ケ城 三岳の山に山砦を構へて住まへる折もあれ 天津御空の雲別けて降りましたか地を掘りて 現はれましたか知らねども何とはなしに威厳ある 丹州さまがやつて来て俺の乾児にして呉れと 頭を下げて頼まれる二人は素より神ならぬ 身の悲しさに丹州を奴隷の如く酷き使ひ 紫姫の主従をウマウマ岩窟に騙し込み 馬公、鹿公二人をば地獄に等しき岩穴へ 情容赦も荒縄に縛つてヤツと放り込みし 天地容れざる大悪の罪をも憎まず三五の 神の教の宣伝使音彦、加米彦現はれて 悦子の姫を守りつつ深き罪をば差し赦し 神の教に導きて忽ち変る神心 人を悩める鬼ケ城悪魔の砦に立向ひ 聞くも芽出たき言霊の清き戦に参加して 神の尊き事を知り三五教の神の道 四方の国々弘めむと心を配る折柄に 弥仙の山の山麓に神の知らせか紫の 雲立昇る麗しさ吾々二人は何となく 雲に引かるる心地して木の花姫の斎りたる 御山の麓に来て見れば豈計らむや丹州の 威厳備はる御姿に再び驚き畏みて 踵を返し須知山の峠の上に来て見れば 常彦さまや滝、板の二人の姿に驚きつ 一言二言云ひかはし丹州さまの仰せをば 畏み仕へ東路を指して山坂打渉り 荒波猛る琵琶の湖英子の姫の隠れます 竹生の島に往て見れば藻抜けの殻の果敢なさに 駒の首を立て直し彼方此方と彷徨ひつ 吾信仰も堅木原足並揃へて沓掛の 郷を踏み越え懺悔坂漸く登り梨の木の 峠に立ちて眺むれば遥に見ゆる西の空 高城山の頂きに五色の雲の棚引きし 其光景に憧憬れつ薄雪踏み締め来て見れば 風の音高く鳴石の上より昇る白煙 また立昇る紫の雲に心を奪はれつ 両手を合せ拝む内煙の中より現はれし 荘厳無比の女神さま二人の稚児を伴ひて 吾れにうつしき宝玉を授け給うと見る間に 鬼をも欺く醜体の二人は忽ち此通り 白衣の袖に包まれて容貌忽ち一変し 隆靖彦や隆光彦の教の司と名付けられ やうやう此処に来て見れば顔見覚えた馬公や 鹿公二人に巡り会ひ俄に変る吾姿 如何程言葉を尽すとも諾なひまさぬは道理なれ アヽ然り乍ら然り乍ら吾れはヤツパリ荒鷹に 鬼鷹二人の向上身どうぞ疑晴らしませ 人は心が第一よ霊魂研けば忽ちに 鬼も変じて神となり心一つの持方で 神も忽ち鬼となるさは然り乍ら人の身の 如何に霊魂を研くとも神の力に依らざれば 徹底的に魂は清まるものに有らざらむ 自力信仰もよけれども唯何事も人の世は 他力の神に身を任せ心を任せ皇神の 救ひを得るより途はない人の賢しき利巧もて 誠の道を究めむと思うた事の誤りを 今漸くに悟りけり吁馬公よ鹿公よ 人間心を振棄てて唯何事も惟神 神の他力に打任せ誠の信仰積むがよい 吾れは是れより高城の山の麓に現はれし ウラナイ教の宣伝使松姫さまを言向けて 誠の道に救はむと思ひ定めて進み行く 紫姫や若彦の二人の心は察すれど 人間心の如何にして救ふ手段がありませうか 魂を研いて今は唯花咲く春を待てばよい 神素盞嗚大神の無量無限のお慈悲心 如何でか見捨て給はむやアヽ惟神々々 御霊幸はひましまして紫姫や若彦に 如何なる罪の有りとても心平らに安らかに 直日に見直し聞直し宣り直しませ素盞嗚の 大神様に祈ぎ奉る朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも仮令大地は沈むとも 誠一つの麻柱の道を貫く吾々は 神の救ひは目の前必ずともに二人共 心を痛め給ふまじ女神の姿と現はれし 吾々二人は先頭に高城山に向ひ行く 馬公、鹿公両人よ執着心を振り棄てて 吾等と共に言霊の清き戦に加はりて 太しき功績を立て給へいざいざさらば、いざさらば 一時も早く片時も疾く速けく参りませう 神は汝と倶にあり神の恵は海よりも 深しと聞けば高城の山は如何程嶮しとも 悪魔の勢強くとも神の光を身に受けて 常世の暗を照し行く三五教の吾々が 身の上こそは楽しけれアヽ惟神々々 御霊幸はひ坐しませよ』 と宣伝歌を歌ひつつ、一行四人は一歩々々、ウラナイ教の松姫が館を指して近付きぬ。 馬公『モシモシ最前のお歌に依つて、私達もスツカリと信仰の妙味と効果が、心底から諒解出来ました。併し乍ら吾々両人は、紫姫様のお供を致し、比沼の真奈井の貴の宝座へ参拝の途中、あなた方に拐はかされ、其お蔭にて尊き三五教の信者となり、御主人の紫姫様は、世にも尊き宣伝使とまでお成り遊ばし、吾々両人は昼夜感涙に咽び……アーア吾々主従は何とした果報者だ……と喜んで居りましたが、計らずも紫姫様は若彦さまと共に、大神様の御不興を蒙り、少しの取違より、今は三五教を除名され、神様に対しては申訳なく、其罪万死に値すると言つて、日夜紫姫様のお歎き、家来の吾々両人、これがどうして見て居られませう。そこで吾々は紫姫様にお暇を願ひ、一つの功名を立て、大神様に誠を現はし、其功に依りて御主人の罪を赦して戴かうと思ひ、それとはなしにお願致しましたが、どうしても紫姫様は吾々に暇を下さらないので、血を吐くやうな思ひをして、心にも有らぬ主人に対し罵詈雑言を逞しうし、ヤツと勘当されて此処までやつて来ました。モウ斯うなる上は、仮令失敗を致さうとも、御主人の御身には何の関係も及ぼさないなり、万々一吾々が功名手柄を現はした時には御主人様に帰参をお願致し、さうして紫姫様の名誉を回復したいばつかりで、両人申合せ、何とか良い御用をして見たいと思つて、此処まで参りました。併し乍らあなたは既に高城山を言向け和さむと御決心なされた以上は、吾々はお供の身の上、仮令成功を致しましても、それが御主人様のお詫の材料にはなりませぬ。あなたは既に其れだけの御神徳をお頂きになつたのだから、此言霊戦はどうぞ、私に譲つて下さいますまいか』 鹿公『いま馬公の申した通りの事情で御座います。どうぞ、吾々の切なる胸中をお察し下さいまして、今回は吾々にお任せ下さいませ。万々一失敗を致しました時は、第二軍として、あなた方御両人が、弔戦をやつて下さいませぬか』 と涙をハラハラと流し、真心を面に現はして頼みゐる。 隆靖彦『吾々も入信以来、一つの功労もなく、せめては頑強なる松姫を言向け和し、神様にお目にかけたいと思つてやつて来たが、武士は相身互だ。それだけの事情を聞いた以上は、強つて断る訳にも行かぬ。ナア隆光彦さま、此言霊戦は馬公、鹿公に手柄を譲りませうか。己の欲する所は人に施せとの御神勅を思ひ出せば、無情に撥ねつける訳にもゆきますまい』 隆光彦『あなたの仰有る通りです。馬公、鹿公、御苦労乍ら華々しくやつて見て下さい。私は彼の川縁の景色の佳い所で、あなたの武者振を拝見致します』 馬、鹿『それは早速の御承諾、有難う御座います。何分身魂の磨けぬ吾々の言霊戦、蔭乍ら御保護を御願ひ致します』 隆靖彦『天晴れ功名手柄を現はして下さい』 隆光彦『大勝利を祈ります』 馬、鹿の両人は『有難う』と感謝の意を表し、二人に別れ、松姫の館を指してイソイソ進み行く。 (大正一一・五・八旧四・一二松村真澄録) |
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霊界物語 | 30_巳_南米物語2 末子姫と言依別命の旅 | 21 神王の祠 | 第二一章神王の祠〔八六三〕 国依別一行は足に任せて、旭を浴び乍ら、東南に向ひ前方に突当つたアラシカ山の大峠をソロソロと登り始めた。此地点は最早今年の旱魃にも遭ず、極めて安全にして、山々の草木は色美はしく、旭に照り輝き、活々として居る。一行は心も勇み、何となく愉快げに此急坂を知らず知らずの間に半日を費やして、峠の頂上に達した。 東北を眺むれば、ヒルの都は細く長く帯の如く人家が並んで居る。戸数に於て殆ど二三千計りの、此時代に取つては大都会である。又西南を瞰下すれば、ウラル教のブールが立籠りたる日暮シ山は手に取る如く、青々と緑の衣を被り、八合目以上は雲に包まれてゐる。 キジは国依別に向ひ、 キジ『モシ、宣伝使様、あの未申の方向に当つて白雲の帽子を着てゐる高山が、例の日暮シ山で御座いますよ。随分景勝の地点を選んだものですなア。三方山に囲まれ、一方に日暮シ河の清流を控え、四神相応の地点だと云つて、ウラル教の連中が非常に誇つて居る所で御座いますよ。ヒルの都はあの通り、茫々たる原野の中に築かれてありますから、大変に便利は宜しいが、要害の点に於ては、日暮シ山に比ぶれば、非常に劣つて居る様ですなア』 国依『成程ウラル教も恰好な地点を見付け出したものだなア。併し此頃の様に肝心の日暮シ河があの通り涸切つて了つては、交通の点に於て最も不便であらう。何事も一利あれば一害ある世の中だから、吾々なれば矢張ヒルの都の方が余程気に入るよ』 マチ『気に入ると云つたら、此涼風、暑い坂を汗タラダラと流して登り詰め、山上に息を休めて四方の景色を見晴らし、浩然の気を養ふ吾々は、実に天国へ登りつめた様な心持になつて来ました。何と云つても人は高山に登り下界を見下すに限りますなア。コセコセと狭い谷間に潜んで、日々何とかかとか云つて騒いで居るよりも、時々は山登りも又愉快なものです』 国依別は、 国依別『サア皆さま、参りませうか』 とスタスタと坂路を降り行く。二人は『モウ少し休みたいなア……』と小声に囁き乍ら、已むを得ず後に従ひ、急坂を下りて行く。 見れば坂路の傍に一つの祠が建つて居る。樟の大木は二三本天を封じ此祠に対し、雨傘の役を勤めて居る。ふと見れば、面やつれのした妙齢の女、社前に跪き何事か切りに祈願をこめてゐる。マチ、キジの両人は早くも之を認め、 マチ、キジ『ヤア宣伝使様、アレ御覧なさいませ。あすこには常世神王を祀つた祠が御座います。さうして何だか一人の女が荐りに祈願して居るやうですが、一つ立寄つて様子を聞いて見ませう。此淋しい山路、若い女の身として、此祠へ参つて来るのは何か深い曰く因縁が無けねばなりますまい』 国依『アヽ成程、古い社が立つてゐるなア。実に立派な楠が栄えて居る。これ位な大木にならうと思へば数千年の星霜を経て居るであらう。吾々の様に二百歳や三百歳で死んで了う弱い人間と違つて、数千年の寿命を保ち、尚青々として枝葉を繁茂させ、所在暴風雨に対し依然として少しも騒がず、此高山に生活を続けて居る楠は、実に偉いものだ。これを思へば植物位偉いものはない様な気がするネ。樟の木に霊あり、且言語を発するならば、遠き神代の有様を聞かして貰ふのだけれど、併しそれも仕方がない』 マチ『モシモシそれはさうと、あの女を御覧なさい。随分痩衰へて居るぢやありませぬか?兎に角祠の前へ立寄つて調べて見たら如何でせう』 国依『兎も角神様に参詣した序に尋ねて見るもよからうよ』 と云ひ乍らツカツカと祠の前に進みよる。三人は祠の前に跪き拍手再拝、天津祝詞を清く涼しく奏上し終り、傍の長き石に腰打掛息を休めた。 キジは祠前に跪き何事か切りに、落涙と共に祈つて居る女の側近く寄り、いたいたしげに脊を撫でさすり乍ら、 キジ『モシモシ、何処の御方か知りませぬが、大変な御信仰で御座いますな。此お社は、常世神王様の御神霊が御祀り申してあると云ふことで御座いますれば、貴女がここへ御参りになつてることを思へば、大方ウラル教の御方でせうネ。かよわき女の只一人、此高山の祠に詣でて御祈りをなさるのは、何か深き御様子のある事と御察し申します。吾々の力に及ぶ事なれば、何とかして御相談に乗つてあげたいと思ひますが、どうか御差支なくば、大略丈なりとお話下さいませ。及ばず乍ら御力になりませう』 此同情のこもつたキジの言葉に、女は漸く顔をあげ、 女(エリナ)『ハイ、私はアラシカ山の山麓に住居いたすエリナと申す者で御座います。私の父は、ウラル教の宣伝使でエスと申しますが、一ケ月以前に三五教の宣伝使様が御立寄りになり、いろいろと尊きお話を父と共に、夜中遊ばした結果、父も非常に喜びまして、四五日の間其宣伝使を吾家に止めおき、ウラル教の信者にも三五教の美点を説き聞かせ、神様の御神徳を受けて、大変に喜び勇んで居りました。所が此事忽ち日暮シ山の岩窟に聖場を立ててウラル教をお開き遊ばす、云はばヒルの国に於けるウラル教の総大将、ブールの教主の耳に入り、至急吾父のエスに参れとの御使、父は喜び勇んで、其霊地へ参りましたが、其後は何の音沙汰もなく非常に母と共に心配を致して居りましたが、四五日前にウラル教の宣伝使が尋ねて来られ、エスさまは三五教の宣伝使を自宅に宿泊させ其上ウラル教の信者に対して三五教を説き勧めたと云つて、日暮シ山の岩窟内の暗き水牢に投げ込まれ、大変な苦しみを受けて居られる、お前達も妻子たる廉を以て、何時召捕りに来るかも知れないから、気を付けよと、秘密に知らして呉れた親切な方がありました。母はそれを聞くより忽ち癪気を起し、重き病の床に臥し、日に日に体は弱り果て、見る影もなく痩衰へ、一滴の水も食物も喉を越さず、此まま死を待つより外に途なき悲運に陥つて居ります。それ故私はウラル教の教祖常世神王様の祠に日々詣でまして、父の危難を救ひ、母の病気を助け玉へと、祈つて居るので御座います』 と涙片手に包まずかくさず事情を物語る。 キジ『それはそれは、承はれば実にお気の毒です。私も今迄ウラル教の信者で日暮シ山の霊場へは、二度計り参拝した事もある位で御座いますが、実にウラル教は、今となつて考へて見れば残虐な教ですよ。人の死ぬ事を何とも思はず、天国へ救はれるのだから、無上の光栄だなんて、訳の分らぬ事を教へるのですからたまりませぬワ。併し乍らあなたの御父上が三五教の宣伝使を四五日も御泊めになつたと云ふのは、ウラル教に愛想をつかし、三五教の美しい所をお悟りになつた結果でせう。コリヤ、キツと因縁があるに違ひない。こんな所でこんな御話を聞くのも、神様のお引合せに違ない。必ず必ず御心配なさいますな。キツと吾々が御父上や御母アさまを助けて上げませう』 エリナ『どこの御方か知りませぬが、初て会うた此私に、御親切によく云つて下さいます。何分にも憐な私の今日の境遇、どうぞ御助け下さいませ』 と手を合せて、涙乍らに頼む憐れさ。 国依『モシ、エリナさまとやら、必ず御心配なさいますな。吾々一同がキツとお父さまを、如何な水牢の中からでも、日ならずお助け申して、あなたの宅へ送り届けませう』 エリナ『ハイハイ、有難う御座います。何分宜しう御願致します。……あなたは、さうしてウラル教の宣伝使様で御座いますか』 国依『イエイエ、吾々は三五教の宣伝使国依別と申す者、今此処に居る両人は、チルの国の方で、キジ、マチと云ふ非常な豪傑ですよ。キツと助けて上げますから、機嫌を直して早く家路に帰り、お母アさまにも安心させて上げなさい』 エリナ『ハイ、有難う御座います』 と嬉し涙にくれ、地に伏して泣いて居る。 国依『キジ、マチの両人、御苦労だが、モ一度ウラル教の霊場へ引返し、モウ一戦を始め、エスさまを救ひ出して来ようぢやないか?』 キジ『ハイ、それは大変に面白いでせう。併し乍ら、たかの知れたブールやユーズにアナンの如き木端武者が大将株をして居る様なウラル教へ、宣伝使にワザワザ往つて貰ふのは実に畏れ多いぢやありませぬか。あんな者は吾々一人にて余つて居ります。どうぞ私一人を日暮シ山に差向けて下さい。さうしてマチはエリナさまに従いて行き、お母アさまの病気を鎮魂して直して上げる役となり、宣伝使様は之よりヒルの都へお越しになり、吾々が芽出たく凱旋して帰る迄、待つてゐて下さいませぬか?』 国依『随分偉い元気だが、必ず油断は出来ないぞ。夜前大勝利を得たからと云つて、何時迄も勝つ計りにきまつたものぢやない。随分気を付けて、両人共一時も早くエスさまを救ひ出す様に御苦労にならうかな。エリナさまは私がヒルの都へ行く途中だから、お宅迄送り届け、お母アさまの大病を治しておいて、ヒルの都へ行くことと致しませう』 キジはニタリと笑ひ乍ら、 キジ『宣伝使様、中々抜目がありませぬなア』 と心ありげに笑ふ。 マチ『きまつた事だ。神様のお道に一分一厘、毛筋の横巾も抜目があつて堪るかい。お前こそ今度は抜目なく、気を付けて行かないと、思はぬ失敗を演ずるぞよ』 国依『マチさまも是非同道を願ひますよ。どうもキジさま一人では心許ないからなア』 キジ『宣伝使様、余りひどいですな。高が知れたウラル教の霊場、私一人にて喰ひ足らぬ様な気分が致して居ります。マチの様な男、連れて行くのは何だか足手纏ひの様な気が致しますけれど、あなたの御命令とあらば伴れて行きます。……コレ、マチ、貴様は余程果報者だ。征夷大将軍キジ公の副将となつて行くのだから、さぞ光栄に思つてゐるだらうなア』 マチ『アハヽヽヽ何を吐かすのだ。余り調子に乗つて失敗をせぬ様にせよ。……そんなら宣伝使様、キジ公の後に従ひ、これより日暮シ山に立向ひ、ウラル教の大将ブール其他の奴原を片つ端から言向け和し、エスの宣伝使を救ひ出し、日ならず凱旋の上、ヒルの都の楓別命が御館に於て御面会申しませう。……サア、キジ公の大将、早く出立遊ばせよ』 と、からかひ乍ら、早くも此場を後に、先に立つて元来し坂路を帰り行く。 キジ『オイオイ大将を後にして、先へ行くと云ふ事があるものか。待つた待つた』 と呼はり乍ら、 キジ『宣伝使様、エリナ様、左様なら、後日お目にかかりませう』 と言葉を残し、マチの後を追つかけ行く。 これより国依別はエリナと共にアラシカ山の山麓エスの宅に至り、エリナの母テールの病を癒やさむと祈願し、数日逗留の後ヒルの都を指して進み行く。 (大正一一・八・一六旧六・二四松村真澄録) |
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霊界物語 | 39_寅_大黒主調伏相談会/言霊隊の出発 | 附録 大祓祝詞解 | 附録大祓祝詞解 (一) 大祓祝詞は中臣の祓とも称へ、毎年六月と十二月の晦日を以て大祓執行に際し、中臣が奏上する祭文で延喜式に載録されてある。 従来此祝詞の解説は無数に出て居るが、全部文章辞義の解釈のみに拘泥し、其中に籠れる深奥の真意義には殆ど一端にさへ触れて居ない。甚だしきは本文の中から『己が母犯せる罪、己が子犯せる罪、母と子と犯せる罪、子と母と犯せる罪、畜犯せる罪』の件を削除するなどの愚劣を演じて居る。自己の浅薄卑近なる頭脳を標準としての軽挙妄動であるから、神界でも笑つて黙許に附せられて居るのであらうが、実は言語道断の所為と云はねばならぬ。大祓祝詞の真意義は古事記と同様に、大本言霊学の鍵で開かねば開き得られない。さもなければ古事記が一の幼稚なる神話としか見えぬと同様に、大祓祝詞も下らぬ罪悪の列挙、形容詞沢山の長文句位にしか見えない。所が一旦言霊の活用を以て其秘奥を開いて見ると、偉大と云はうか、深遠といはうか、ただただ驚嘆の外はないのである。我国体の精華が之によりて発揮せらるるは勿論のこと、天地の経綸、宇宙の神秘は精しきが上にも精しく説かれ、明かなる上にも明かに教へられて居る。之を要するに皇道の真髄は大祓祝詞一篇の裡に結晶して居るので、長短粗密の差異こそあれ、古事記、及び大本神諭と其内容は全然符節を合するものである。 言霊の活用が殆ど無尽蔵である如く、大祓祝詞の解釈法も無尽蔵に近く、主要なる解釈法丈でも十二通りあるが、成るべく平易簡単に、現時に適切と感ぜらるる解釈の一個をこれから試みやうと思ふ。時運は益々進展し、人としての資格の有無を問はるべき大審判の日は目前に迫つて居るから、心ある読者諸子は、これを読んで、真の理解と覚醒の途に就いて戴きたい。 (二) 『高天原に神つまります、皇親神漏岐、神漏美の命もちて、八百万の神等を神集へに集へ賜ひ神議りに議り玉ひて、我皇孫命は豊葦原の水穂の国を、安国と平けく所知食と事依し奉りき』 △高天原に『タカアマハラ』と読むべし、従来『タカマガハラ』又は『タカマノハラ』と読めるは誤りである。古事記巻頭の註に『訓高下天云阿麻』[※高(たか)の下の天(てん)の訓(くん)は「あま」と云う]と明白に指示されて居り乍ら従来何れの学者も之を無視して居たのは、殆ど不思議な程である。一音づつの意義を調ぶれば、タは対照力也、進む左也、火也、東北より鳴る声也、父也。又カは輝く也、退く右也、水也、西南より鳴る声也、母也。父を『タタ』といひ、母を『カカ』と唱ふるのもこれから出るのである。又アは現はれ出る言霊、マは球の言霊、ハは開く言霊、ラは螺旋の言霊。即ち『タカアマハラ』の全意義は全大宇宙の事である。尤も場合によりては全大宇宙の大中心地点をも高天原と云ふ。所謂宇宙に向つて号令する神界の中府所在地の意義で『地の高天原』と称するなどがそれである。この義を拡張して小高天原は沢山ある訳である。一家の小高天原は神床であり、一身の小高天原は、臍下丹田であらねばならぬ。ここでは後の意義ではなく、全大宇宙其物の意義である。之を従来は、地名であるかの如く想像して、地理的穿鑿を試みて居たのである。 △神つまりますかみは日月、陰陽、水火、霊体等の義也。陰陽、水火の二元相合して神となる。皇典に所謂産霊とは此正反対の二元の結合を指す。日月地星辰、神人其他宇宙万有一切の発生顕現は悉くこの神秘なる産霊の結果でないものはない。又つまりとは充実の義で、鎮坐の義ではない。ますはましますと同じ。 △皇親皇(スメラ)は澄すの義、全世界、全宇宙を清澄することを指す。親(ムツ)は『ムスビツラナル』の義で、即ち連綿として継承さるべき万世一系の御先祖の事である。 △神漏岐、神漏美神漏岐は霊系の祖神にして天に属し、神漏美は体系の祖神にして地に属す。即ち天地、陰陽二系の神々の義である。 △命もちて命(ミコト)は神言也、神命也。即ち水火の結合より成る所の五十音を指す。元来声音は「心の柄」の義にて、心の活用の生ずる限り、之を運用する声音が無ければならぬ。心(即ち霊魂)の活用を分類すれば、奇魂、荒魂、和魂、幸魂の四魂と之を統括する所の全霊に分ち得る。所謂一霊四魂であるが、此根源の一霊四魂を代表する声音はアオウエイの五大父音[※『神霊界』大正7年9月1日号(名義は「浅野和邇三郎」)では「アイウエオの五大母音」。初版では「アイウエオの五大父音」。校定版・愛世版では「アオウエイの五大父音」。霊界物語ネットでも「アオウエイの五大父音」に直した。次の箇所も同じ。]である。宇宙根本の造化作用は要するに至祖神の一霊四魂の運用の結果であるから、至祖神の御活動につれて必然的にアオウエイの五大父音が先づ全大宇宙間に発生し、そして其声音は今日といへども依然として虚空に充ち満ちて居るのだが、余りに大なる声音なので、余りに微細なる声音と同様に、普通人間の肉耳には感じないまでである。併し余り大ならざる中間音は間断なく吾人の耳朶に触れ、天音地籟一として五大父音に帰着せぬは無い。鎮魂して吾人の霊耳を開けば、聴こゆる範囲は更に更に拡大する。扨前にも述ぶるが如く、声音は心の柄、心の運用機関であるから天神の一霊四魂の活用が複雑に赴けば赴く丈け、声音の数も複雑に赴き停止する所はない。其中に在りて宇宙間に発生した清音のみを拾ひ集むれば四十五音(父母音を合せて)濁音、半濁音を合すれば七十五音である。これは声音研究者の熟知する所である。拗音、促音、鼻音等を合併すれば更に多数に上るが、要するに皆七十五音の変形で、あらゆる音声、あらゆる言語は根本の七十五声音の運用と結合との結果に外ならぬ。されば宇宙の森羅万象一切は是等無量無辺の音声即ち言霊の活用の結果と見て差支ない。これは人間の上に照して見ても其通りである事がよく分る。人間の心の活用のある限り、之を表現する言霊がある。『進め』と思ふ瞬間には其言霊は吾人の身体の中府から湧き、『退け』と思ふ瞬間にも、『寝よう』と思ふ瞬間にも、『行らう』と思ふ瞬間にも、其他如何なる場合にも、常に其言霊は吾人の中心から湧出する。即ち人間の一挙一動悉く言霊の力で左右されるというても宜しい。従つて言霊の活用の清純で、豊富な人程其の使命天職も高潔偉大でなければならぬ。 △八百万の神等八百のヤは人、ホは選良の義、万は沢山、多数の義である。 △神集へに云々神の集会で神廷会議を催すことである。 △我皇御孫之命五十音の中でアは天系に属し、ワは地系に属す。故に至上人に冠する時に我はワガと言はずしてアガといふ也。皇(スメ)は澄し治め、一切を見通す事、御(ミ)は充つる、円満具足の義、孫(マ)はマコトの子、直系を受けたる至貴の玉体。命は体異体別の義、即ち独立せる人格の義にして、前に出でたる命(神言)から発足せる第二義である。全体は単に『御子』といふ事である。元来霊も体も其根本に溯れば、皆祖神の賜、天地の賜である。故に皇典では常に敬称を附するを以て礼となし、人間に自他の区別は設けられてないのである。 △豊葦原の水穂国全世界即ち五大洲の事である。之を極東の或国の事とせるが従来の学者の謬見であつた。日本を指す時には、豊葦原の中津国、又は根別国などと立派に古事記にも区別して書いてある。 △所知食は衣食住の業を安全に示し教ふる事を云ふ。地球は祖神の御体であるから、人間としては土地の領有権は絶対に無い。例へば人体の表面に寄生する極微生物に人体占領の権能がないのと同様である。人間は神様から土地を預り、神様に代りて之を公平無私に使用する迄である。うしはぐ(領有)ものは天地の神で主治者は飽迄知ろしめすであらねばならぬ。国土の占領地所の独占等は、根本から天則違反行為である。神政成就の暁には独占は無くなつて了ふ。 (大意)全大宇宙間には陰陽二系の御神霊が実相充塞しそれは即ち一切万有の父であり又母である。陰陽二神の神秘的産霊の結果は先づ一切の原動力とも云ふべき言霊の発生となつた。所謂八百万の天津神の御出現であり、御完成である。天界主宰の大神は云ふまでもなく天照皇大神様であらせらるるが、其次ぎに起る問題は地の世界の統治権の確定である。是に於て神廷会議の開催となり其結果は天照大神様の御霊統を受けさせられた御方が全世界の救治に当らるる事に確定し、治国平天下の大道を執行監督さるべき天の使命を帯びさせらるる事になつたのである。無論人間の肉体は世に生死往来するを免れないが、其霊魂は昔も今も変ることなく千万世に亘りて無限の寿を保ちて活動さるるのである。 (三) かく依さし奉りし国中に荒振神等をば、神問はしに問はし玉ひ、神掃ひに掃ひ給ひて、語問ひし磐根樹根立草の片葉をも語止めて、天之磐座放ち、天之八重雲を伊頭の千別に千別て、天降し依さし奉りき。 △荒振神天界の御命令にまつろはぬ神、反抗神の意である。 △神問はしに云々神の御会議。罪あるものは神に向ひて百万遍祝詞を奏上すればとて、叩頭を続くればとてそれで何の効能があるのではない。況ンや身欲信心に至つては、言語道断である。神様に御厄介を懸けるばかり、碌な仕事もせぬ癖に、いざ大審判の開始されむとする今日、綾部を避難地でもあるが如くに考ふるやうな穿き違ひの偽信仰は、それ自身に於て大罪悪である。神は先づ其様な手合から問はせらるるに相違ない。 △神掃ひに云々掃ひ清むること、神諭の所謂大掃除大洗濯である。 △語問し諸々の罪の糾弾である。 △磐根樹立草の枕詞、即ち磐の根に立てる樹木の、その又根に立てる草の義。 △草の片葉草は青人草、人のこと、又片葉は下賤の人草の意である。 △語止めて議論なしに改悟せしむるの意である。 △天之磐座放ち磐座は高御座也、いはもくらも共に巌石の義。放ちは離ち也。古事記には、『離天之石位』とあり。 △八重雲弥が上にも重なりたる雲。 △伊頭の千別に云々伊頭は稜威也。即ち鋭き勢を以て道を別けに別けの義。 △天降し依さし奉りき『天降し……の件を依さし奉りき』の義にて中間に神秘あり。天降しは天孫をして降臨せしむる事、換言すれば天祖の御分霊を地に降し、八百万の国津神達の主宰として神胤が御発生ある事である。 (大意)既に地の神界の統治者は確定したが、何しろ宇宙の間は尚未製品時代に属するので、自由行動を執り、割拠争奪を事とする兇徒界が多い。これは最も露骨に大本開祖の御神諭に示されて居る所で、決して過去の事のみではない。小規模の救世主降臨は過去にあつたが、大規模の真の救世主降臨は現在である。『七王も八王も王が世界にあれば、此世に口舌が絶えぬから、神の王で治める経綸が致してあるぞよ』とあるなどは即ち之を喝破されたものである。其結果是等悪鬼邪神の大審判、大掃除、大洗濯が開始され所謂世の大立替の大渦中に突入する。さうなると批評も議論も疑義も反抗も全部中止となり稜威赫々として宇内を統治し玉ふ神の御子の世となるのである。 (四) 如此依さし奉りし四方の国中と大日本日高見之国を安国と定め奉りて、下津磐根に宮柱太敷立、高天原に千木多加知りて、皇御孫命の美頭の御舎仕へ奉りて、天の御蔭日の御蔭と隠り坐して、安国と平けく所知食む国中に成出でむ天の益人等が過ち犯しけむ雑々の罪事は。 △四方の国中宇宙の大中心。 △大日本日高見之国四方真秀、天津日の隈なく照り亘る国土を称へていふ。但宇宙の大修祓が済んでから初めて理想的になるのである。 △下津磐根地質が一大磐石の地で即ち神明の降臨ある霊域を指す。 『福知山、舞鶴は外囲ひ、十里四方は宮の内』とあるも亦下津磐根である。 △宮柱太敷立宮居の柱を立派に建てる事。 △千木多加知屋根の千木を虚空(高天原)に高く敷きの義。千木は垂木也。タリを約めてチといふ。 △美頭麗しき瑞々しき意。 △仕へ奉り御造営の義。 △天の御蔭云々天津神の御蔭、日の大神様の御蔭と自分の徳を隠したまふ義。神政成就、神人合一の時代に於ては人は悉く神の容器である。世界統一を実行すとて、其功績は之は天地の御恩に帰し奉るが道の真随で、忠孝仁義の大道は根源をここから発する。坐ながらにして其御威徳は宇内に光被し、世は自然と平けく安らけく治まるのである。 △天の益人天は敬称である。益人は世界の全人類を指す。マスラヲといふ時は男子のみを指す。マは完全、スは統治の義。又ヒは霊、トは留まる義。 △罪事ツミは積み也、又包み也。金銭、財宝、糧食等を山積私有するは個人本位、利己本位の行為で、天則に背反して居る。又物品を包み隠したり、邪心を包蔵したり、利用厚生の道の開発を怠つたりする事も堕落腐敗の源泉である。かく罪の語源から調べてかかれば罪の一語に含まるる範囲のいかに広いかが分る。法律臭い思想では其真意義はとても解し難い。 (大意)天祖の御依託によりて救世主が御降臨遊ばさるるに就きては、宇宙の中心、世界の中心たる国土を以て宇内経綸、世界統一の中府と定め給ひ、天地創造の際から特別製に造り上げてある神定の霊域に、崇厳無比の神殿を御造営遊ばされ、惟神の大道によりて天下を知ろしめされる事になる。神諭の所謂『神国の行ひを世界へ手本に出して万古末代動かぬ神の世で三千世界の陸地の上を守護』さるるのである。それに就きては直接天津神の手足となり、股肱となりて活動せねばならぬ責任が重い。いかなる事を為ねばならぬか、又如何なる事を為てはならぬか、明確なる観念を所有せねばならぬ。次節に列挙せらるる雑々の罪事といふのは悉く人として日夕服膺せねばならぬ重要事項のみである。 (五) 天津罪とは、畔放ち溝埋め、樋放ち頻蒔き串差し、生剥逆剥尿戸許々太久の罪を、天津罪と詔別けて、国津罪とは、生膚断、死膚断、白人胡久美、己が母犯せる罪、己が子犯せる罪、母と子と犯せる罪、子と母と犯せる罪、畜犯せる罪、昆虫の災、高津神の災、高津鳥の災、畜殪し蠱物せる罪、許々太久の罪出む。 △天津罪天然自然に賦与せられたる水力、火力、電磁力、地物、砿物、山物、動植物等の利用開発を怠る罪をいふ。前にも言へる如く、所謂積んで置く罪、包んで置く罪也。宝の持腐れをやる罪也。従来は文明だの進歩だのと云つた所が、全然穿き違の文明進歩で一ツ調子が狂へば忽ち饑餓に苦しむやうなやり方、現在世界各国の四苦八苦の有様を見ても、人間が如何に天津罪を犯して居るかが解る。神諭に『結構な田地に木苗を植たり、色々の花の苗を作りたり、大切な土地を要らぬ事に使ふたり致し人民の肝腎の生命の親の米、豆、粟を何とも思はず、米や豆や麦は何程でも外国から買へると申して居るが、何時までもさう行かぬ事があるから猫の居る場にも五穀を植付けねばならぬやうになりて来るぞよ。皆物質本位の教であるから、神の国には神国の世の行方に致さして、モーぼつぼつと木苗も掘り起させるぞよ』とあるなどは実に痛切骨に徹する御訓戒である。現在の神国人とても欧米人と同じく決して天津罪人の数には漏れぬ人間ばかりである。採鉱事業などになると今の人間は余程進歩して居る所存で居るが、試掘と分析位で地底に埋没せる金銀宝玉等が出るものではない。之に比べると、幾分霊覚を加味した佐藤信淵[※佐藤信淵は江戸後期の思想家、医師。]の金気観測法などの方が何れ丈か進歩して居る。神霊の御命令と御指示がなくんば、金銀其他は決して出ない。大本神諭に『五六七大神の御出ましにお成なさるるにつき、国常立尊が現はれるなり、国常立尊が現はれると、乙姫殿は次ぎに結構な大望な御用が出来て乙姫殿の御宝を上げて新規の金銀を綾部の大本に………。二度目の立替を致して、何も新規に成るのであるから、乙姫殿の御財宝を綾部の大本へ持運びて、新規の金銀を吹く準備を致さな成らぬから云々』とあるなどは時節到来と共に実現して、物質万能機械一点張りの連中を瞠若たらしむ事柄なのである。又現在人士は電力、火力、水力、其他の利用にかけて余程発達進歩を遂げた心算で居るが、一歩高所から達観すると、利用どころか悪用ばかり間接又は直接に人類の破滅、天然の破壊に使用されぬものが幾何かある。是等の点にかけて現在の人士は、所謂知識階級、学者階級ほど血迷ひ切つて居る、天津罪の犯罪者である。 △畔放ち天然力、自然力の開発利用の事。畔(ア)は当字にてアメを約めたもの也。田の畔を開つなどは単に表面の字義に囚はれたる卑近の解釈である。 △溝埋め水力の利用を指す。埋めには補足の義と生育の義とを包む。湯に水をうめる、根を土中にうめる、種子を地にうめる、孔をうめる、鶏が卵をうむなど参考すべし。 △樋放ち樋は火也。電気、磁気、蒸気、光力等天然の火力の開発利用を指す。 △頻蒔き山の奥までも耕作し不毛の地所などを作らぬ事。頻(シキ)は、敷地のシキ也、地所也。蒔きは捲き也、捲き収める也、席巻也、遊ばせて置かぬ也、遊猟地や、クリケツト、グラウンドなどに広大なる地所を遊ばせて、貴族風を吹かせて、傲然たりし某国の現状は果して如何。彼等が世界の土地を横領せる事の大なりし丈、彼等が頻蒔の天則を無視せる罪悪も蓋し世界随一であらう。併し其覚醒の時もモー接近した、これではならぬと衷心から覚る時はモー目前にある。イヤ半分はモー其時期が到着して居る。併しこれは程度の差違丈で、其罪は各国とも皆犯して居る。 △串差しカクシサガシの約にて、前人未発の秘奥を発見する事。 △生剥ぎ一般の生物の天職を開発利用する事。生物といふ生物は悉く相当の本務のあるもので、軽重大小の差異こそあれそれぞれ役目がある。鼠でも天井に棲みて人間に害を与ふる恙虫などを殺すので、絶対的有害無効の動物ではない。剥ぎは開く義、発揮せしむる義也。蚕をはぐなどの語を参考すべし。 △逆剥逆(サカ)は、栄えのサカ也。酒なども此栄えの意義から発生した語である。剥(ハギ)は生剥の剥と同じく開発の義。即ち全体の義は栄え開く事で、廃物をも利用し荒蕪の地を開墾し、豊満美麗の楽天地を現出せしむる事を指す。 △尿戸宇宙一切を整頓し、開発する義。クは組織経綸、ソは揃へる事、整頓する事、へは開発する事。 △許々太久其他種々雑多の義。 △天津罪と詔別て以上列挙せる天然力、自然物の利用開発を怠る事を、天津罪と教へ給ふ義也。 △国津罪天賦の国の徳、人の徳を傷つくる罪を指す。 △生膚断天賦の徳性を保ち居る活物の皮膚を切ること也。必要も無きに動物を害傷し、竹木を濫伐する事等は矢張罪悪である。霊気充満せる肉体に外科手術を施さずとも、立派に治癒する天賦の性能を有して居る。人工的に切断したり切開したりするのは天則違反で、徒に人体毀損の罪を積ぬる訳になる。 △死膚断刃物を以て生物一切を殺す罪。 △白人胡久美白昼姦淫の事。白日床組といふ醜穢文字を避け、態と当字を用ひたのである。淫欲は獣肉嗜好人種に随伴せる特徴で、支那、欧米の人士は概して此方面の弊害が多い。日本人も明治に入つてから大分其影響を受けて居るが、元来は此点に於ては世界中で最も淡白な人種である。淫欲の結果は肺病となり、又癩病となる故に白人胡久美を第二義に解釈すれば白人は肺病患者、又は白癩疾者を指し、胡久美は黒癩疾者を指す。 △己が母犯せる罪母の一字は、父、祖先、祖神等をも包含し、極めて広義を有するのである。大体に於て親といふ如し。犯すとは其本来の権能を無視する義也。換言すれば親、祖先、祖神に対して不孝の罪を重ぬる事である。 △己が子犯せる罪自己の子孫の権能を無視し、非道の虐待酷使を敢てする事。元来自分の子も、実は神からの預かり物で、人間が勝手に之を取扱ふ事は出来ない。それに矢鱈に親風を吹かせ、娘や伜などを自己の食ひ物にして顧みぬなどは甚だしき罪悪といふべきである。 △母と子と犯せる罪、子と母と云々上の二句『己が母犯せる罪、己が子犯せる罪』を更に畳句として繰返せる迄で別に意義はない。 △畜犯せる罪獣類の天賦の徳性を無視し、酷待したり、殺生したりする事。 △昆虫の災天則違反の罪をいふ。蝮、ムカデなどに刺されるのは皆偶然にあらず、犯せる罪があるにより天罰として刺されるのである。故にかかる場合には直に反省し、悔悟し、謹慎して、神様にお詫を申し上ぐべきである。 △高津神の災天災、地変、気候、風力等の不順は皆これ高津神の業にして罪過の甚い所に起るのである。災は業はひ也、所為也。鬼神から主観的に観れば一の所為であるが、人間から客観的に観れば災難である。今度の国祖の大立替に、雨の神、風の神、岩の神、荒の神、地震の神、其他八百万の眷属を使はるるのも祝詞の所謂高津神の災である。皆世界の守護神、人民の堕落が招ける神罰である。 △高津鳥の災鳥が穀物を荒す事などを指すので矢張り神罰である。 △畜殪し他家の牛馬鶏豚等を斃死せしむる事。一種のマジナヒ也。 △蠱物呪咀也、マジナヒ物也。丑の時参りだの、生木に釘を打つだのは皆罪悪である。 (大意)人間は神の容器として宇内経綸の天職がある。殊に日本人の使命は重大を極め世界の安否、時運の興廃、悉く其責任は日本人に係るのである。神諭に『日本は神の初発に修理へた国、元の祖国であるから、世界中を守護する役目であるぞよ。日本神国の人民なら、チトは神の心も推量致して、身魂を磨いて世界の御用に立ちて下されよ』とある通り、天賦の霊魂を磨き、天下独特の霊智霊覚によりて、天然造化力の利用開発に努めると同時に、他方に於ては天賦の国の徳、人の徳を発揮することに努め、そして立派な模範を世界中に示さねばならぬのである。然るに実際は大に之に反し、徒に物質文明の糟粕を嘗め、罪の上に罪を重ねて現在見るが如き世界の大擾乱となつて来た。無論日本人は此責任を免るる事は出来ない。併しこれは天地創造の際からの約束で、進化の道程として、蓋し免れ難き事柄には相違ない。されば此祝詞の中に『許々太久の罪出む』とあり、又国祖の神諭にも『斯うなるのは世の元から分つて居る』と仰せられて居る。要するに過去の事は今更悔むには及ばぬ。吾々は現在及び将来に向つて、いかなる態度を執り、いかなる処置を講ずれば宜いかを考究すべきである。次節に其要道を示されて居る。 (六) 如此出でば、天津宮言以て、天津金木を本打切末打断て、千座の置座に置足はして、天津菅曾を本苅絶末苅切て、八針に取裂きて天津祝詞の太祝詞言を宣れ、如此宣らば、天津神は天の磐戸を推披来て、天の八重雲を伊頭の千別に千別て所聞召む。国津神は高山の末短山の末に登り坐て、高山の伊保理短山の伊保理を掻分けて所聞召む。 △天津宮言宮言は『ミヤビノコトバ』の義也。正しき言霊也。宇宙の経綸は言霊の力によりて行はるる事は、前にも述べた。我天孫民族は世界の経綸を行ひ、天下を太平に治むべき、重大なる使命を帯びて居る。然るに現在は肝腎の日本人が、霊主体従の天則を誤り天津罪、国津罪、数々の罪を重ねて、其結果世界の大擾乱を来して居る。之を修祓し、整理するの途は、言霊を正し、大宇宙と同化するが根本である。換言すれば、肚の内部から芥塵を一掃し、心身共に浄化して、常に善言美詞のみを発するやうにせねばならぬ。悪声を放ち蔭口をきき又は追従軽薄を並べるやうな人間はそれ丈で其人格の下劣邪悪な事が分る。世界の経綸どころか人として次ぎの新理想時代に生存すべき資格の有無さへ疑問である。日夕祝詞を奏上しても、斯んな肝要至極の点が、さつぱり実行が出来ぬでは仕方がない。お互に反省の上にも反省を加へねばならぬ事と思ふ。 △天津金木則神算木也。周易の算木に相当するものであるが、より以上に神聖で正確である。本来は長さ二尺の四寸角の檜材なのであるが、運用の便宜上、長さ二寸の四分角に縮製さる。其数三十二本を並べて、十六結を作製し、其象を観て、天地の経綸、人道政事一切の得失興廃等を察するのである。それは宇内統治の主が大事に際して運用すべきもので、普通人民が矢鱈に吉凶禍福などを卜するに使用すべきものではない。無意無心の器物を用ゐて神勅を受くるのであるから、ややもすれば肉体心の加味し勝ちな普通の神憑りよりも、一倍正確な事は云ふ迄もない。 △本打切末打断神算木を直方形に作製する仕方を述べたまでである。 △千座の置座云々無数の神算木台に後からズンズン置き並べる事。 △天津菅曾周易の筮竹に相当するが其数は七十五本である。これは七十五声を代表するのである。長さは一尺乃至一尺二寸、菅曾は俗称『ミソハギ』と称する灌木、茎細長にして三四尺に達す。之を本と末とを切り揃へて使用する也。 △八針に取裂て天津菅曾の運用法は先づ総数七十五本を二分し、それから八本づつ取り減らし其残数によりて神算木を配列するのである。 △天津祝詞の太祝詞即ち御禊祓の祝詞の事で、正式に奏上する場合には爰で天津祝詞を奏上するのである。大体に於て述べると、あの祝詞は天地間一切の大修祓を、天神地祇に向つて命ぜらるる重大な祝詞である。太(フト)は美称で、繰返して、天津祝詞を称へた迄である。 △宣れ神に向つて願事を奏上するの義也。 △天の磐戸天津神のまします宮門から御出動の義にて、人格的に写し出せるのである。 △伊頭の千別き云々前に出たから略す。 △国津神地の神界に属する神々、及び霊魂の神を以て成立し、各自の霊的階級に応じて大小高下、それぞれの分担権限を有す。 △高山の末云々末は頂上の義。 △伊保理隠棲也、隠れたる也。伊保理の伊保も、いぶかしのいぶも、烟などのいぶるも、皆通音で同意義である。 (大意)天津罪、国津罪の続発は悲しむべき不祥事ではあるが、出来た上は致方がない。よく治乱興廃、得失存亡の理を明かにし、そして整理修祓の法を講ぜねばならぬ。世界主宰の大君としては、天津金木を運用して宇内の現勢を察知し、そして正しき言霊を活用して天津祝詞を天津神と国津神とに宣り伝へて、其活動を促すべきである。これが根本の祭事であると同時に、又根本の政事であつて、祭と政とは決して別途に出るものではない。さうすると、天津神も国津神もよく之に応じて威力を発揮せられる。神諭の所謂『罪穢の甚い所には、それぞれの懲罰がある』又は『地震、雷、火の雨降らして体主霊従をつぶす』といふやうな神力の発動ともなるのである。 (七) 如此所聞食ては、罪といふ罪は不在と、科戸の風の天の八重雲を吹放つ事の如く、朝の御霧夕の御霧を、朝風夕風の吹掃ふ事の如く、大津辺に居大船を、舳解放ち艫解放ちて大海原に押放つ事の如く、彼方の繁木が本を、焼鎌の敏鎌以て打掃ふ事の如く、遺る罪は不在と、祓賜ひ清め玉ふ事を。 △かく所食てはきこしめすの意義は、単に耳に聴くといふよりも遥に広く深い。きくは利く也。腕が利く、鼻がきく、眼がきく、酒をきく、(酒の品位を飲み分けること)などのきくにて一般に活用を発揮し、威力を利用する義である。天津神、国津神達が整理修祓の命に応じて活動を開始する事を指していふ。 △罪といふ罪は不在と罪といふ限りの罪は一つも残さずの意。 △科戸の風の云々以下四聯句は修祓の形容で、要するに『遺る罪は不在と祓賜ひ清め賜ふ』事を麗しき文字で比喩的に描いたものである。科戸は風の枕詞、古事記に此神の名は志那都比古と出て居る。シは暴風(アラシ)のシと同じく風の事である。ナはノに同じく、トは処の義。 △朝の御霧云々御霧は深き霧の義。 △朝風夕風云々朝風は前の『朝の御霧』に掛り、夕風は『夕の御霧』に掛る。 △大津辺に居る云々地球に於て、肉体を具備されたる神の御出生ありしは、琵琶湖の竹生島からは、多紀理毘売命、市寸島比売命、狭依毘売命の三姫神、又蒲生からは天之菩卑能命、天津彦根命、天之忍穂耳命、活津日子根命、熊野久須毘命の五彦神が御出生に成つた。これが世界に於ける人類の始祖である。かく琵琶湖は神代史と密接の関係あるが故に、沿岸附近の地名が大祓祝詞中に数箇所出て居る。大津の地名も斯くして読み込まれたものである。 △舳解放云々泊居る時に舳艪を繋いで置くが、それを解き放つ意。 △大海原海洋也。 △繁木が下繁茂せる木の下。 △焼鎌の敏鎌焼鎌とは、鎌で焼きて造る故にいふ。敏鎌は利き鎌の義。 △遺る罪は不在と前に『罪といふ罪は不在』とあるのに、更に重ねてかく述ぶるは、徹底的に大修祓を行ふ事を力強く言ひなしたのであらう。 (大意)八百万の天津神と国津神との御活動開始となると、罪といふ罪、穢といふ穢は一つも残らず根本から一掃されて仕舞ふ。大は宇宙の修祓、国土の修祓から、小は一身一家の修祓に至るまで、神力の御発動が無ければ、到底出来るものではない。殊に現代の如く堕落し切つた世の中が、何うしても姑息的人為的の処分位で埒が附くものでない。清潔法執行の声は高くても、益々疾病は流行蔓延し、社会改良の工夫は種々に凝らされても、動揺不穏の空気はいよいよ瀰蔓するではないか。艮之金神国常立尊が御出動に相成り、世の立替立直しを断行さるるのも誠に万止むを得ざる話である。されば大祓祝詞は、無論何れの時代を通じても必要で、神人一致、罪と穢の累積を祓清むる様に努力せねばならぬのだが、殊に現在に於ては、それが痛切に必要である。自己の身体からも、家庭からも、国土からも、更に進んで全地球、全宇宙から一時も迅速に邪気妖気を掃蕩してうれしうれしの神代に為ねば、神に対して実に相済まぬ儀ではないか。 大修祓に際して、神の御活動は大別して四方面に分れる。所謂祓戸四柱の神々の御働きである。祓戸の神といふ修祓専門の神様が別に存在するのではない、正神界の神々が修祓を行ふ時には、此四方面に分れて御活動ある事を指すのである。以下末段迄は各方面の御分担を明記してある。 (八) 高山の末短山の末より、作久那太理に落、多岐つ速川の瀬に坐す瀬織津比売と云ふ神、大海原に持出なむ、如此持出往ば、荒塩の塩の八百道の八塩道の塩の八百会に坐す速秋津比売といふ神、持可々呑てむ。如此可々呑ては、気吹戸に坐す気吹戸主といふ神、根の国底の国に気吹放ちてむ。如此気吹放ちては、根の国底の国に坐す速佐須良比売といふ神、持佐須良比失ひてむ。如此失ひては、現身の身にも心にも罪と云ふ罪は不在と、祓給へ、清め給へと申す事を所聞食と恐み恐みも白す。 △高山の末云々高き山の頂、低き山の頂からの義。 △作久那太理に佐久は谷也、峡也。那太理はなだれ落つる義、山から水が急転直下し来る事の形容。 △落多岐つ逆巻き、湧き上りつつ落つる事。滝(タキ)、沸(タギル)等皆同一語源から出づ。 △速川急流也。 △瀬織津比売云々古事記の伊邪那岐命御禊の段に、『於是詔之上瀬者瀬速。下瀬者瀬弱而。初於中瀬降迦豆伎而。滌時。所成坐神名八十禍津日神、次大禍津日神。此二神者所到其穢繁国之時因汚垢而。所成之神者也』[※この漢文は御校正本ではフリガナはなく、返り点が付いている。霊界物語ネットでは戦後の版を参考にしてフリガナをつけた。また返り点は削除した。]と出て居るが、瀬織津の織は借字にて瀬下津の義、即ち於中瀬降迦豆伎たまふとある意の御名である。此神は即ち禍津日神である。世人は大概禍津日神と禍津神とを混同して居るが、実は大変な間違である。禍津神は邪神であるが、禍津日神は正神界の刑罰係である。現界で言へば判検事、警察官、又は軍人なぞの部類に属す。罪穢が発生した場合には、常に此修祓係、刑罰係たる禍津日神の活動を必要とする。修祓には大中小の区別がある。大は天上地上の潔斎、中は人道政事の潔斎、小は一身一家の潔斎である。若し地球に瀬織津比売の働きが無くんば、万の汚穢は地上に堆積して新陳代謝の働きが閉塞する。所が地の水分が間断なく蒸発して、それが雲となり、雨となり、其結果谷々の小川の水が流れ出て末は一つに成りて大海原に持出して呉れるから、天然自然に地の清潔が保たれるのである。現在は地の表面が極度に腐敗し切り、汚染し切り、邪霊小人時を得顔に跋扈して居る。神諭に『今の世界は服装ばかり立派に飾りて上から見れば結構な人民で、神も叶はぬやうに見えるなれど誠の神の眼から見れば、全部四つ足の守護に成りて居るから、頭に角が生えたり、尻に尾が出来たり、無暗に鼻計り高い化物の覇張る、闇雲の世に成りて居るぞよ』『余り穢うて眼を開けて見られぬぞよ』『能うも爰まで汚したものぢや。足片足踏み込む所もない』等と戒められて居る通りである。此際是非とも必要なるは、世界の大洗濯、大清潔法の施行であらねばならぬ。爰に於てか先づ瀬織津姫の大活動と成りて現はれる。七十五日も降りつづく大猛雨なぞは此神の分担に属する。到底お手柔な事では現世界の大汚穢の洗濯は出来さうも無いやうだ。神諭にも『罪穢の甚大い所には何があるやら知れぬぞよ』と繰返し繰返し警告されて居る。世界の表面を見れば、そろそろ瀬織津比売の御活動は始まりつつあるやうだ。足下に始まらなくては気が附かぬやうでは困つたものだ。 △荒塩の塩の八百道の云々全体は荒き潮の弥が上に数多寄り合ふ所の義。八は弥の意、八百道は多くの潮道の事、八塩道は上の塩の八百道を受け重ねていへる丈である。八百会は沢山の塩道の集まり合ふ所。 △速秋津比売古事記に『水戸神、名速秋津日子神。次妹秋津比売命』とあるが如く河海の要所を受持ちて働く神也。 △持可々呑てむ声立ててガブガブ呑むの義也。汚れたる世界の表面を洗滌する為には既に瀬織津比売の働きが起りて大雨などが降りしきるが、河海の水門々々に本拠を有する秋津比売が、次ぎに相呼応して活動を開始する。大洪水、大海嘯、大怒濤、此神にガブ呑みされては田園も山野も、町村も耐つたものではない。所謂桑田変じて碧海と成るのである。 △気吹戸近江の伊吹山は気象学上極めて重要な場所である。伊吹は息を吹く所の義で、地球上に伊吹戸は無数あるが、伊吹戸中の伊吹戸とも云ふべきは近江の伊吹山である。最近伊吹山に気象観測所が公設されたのは、新聞紙の伝ふる所であるが、大本では十年も二十年も以前から予知の事実である。 △気吹戸主大雨、洪水、海嘯等の活動に続いては、気象上の大活動が伴うて妖気邪気の掃蕩を行はねばならぬ。元寇の役に吹き起つた神風の如きも、無論この伊吹戸主の神の御活動の一端である。 △根の国底の国地球表面に於ては北極である。神諭に『今迄は世の元の神を、北へ北へ押籠めて置いて、北を悪いと世界の人民が申て居りたが、北は根の根、元の国であるから、北が一番善く成るぞよ………。人民は北が光ると申して不思議がりて、いろいろと学や智慧で考へて居りたが、誠の神が一処に集りて、神力の光を現はして居る事を知らなんだぞよ』とあるが、真に人間の智慧や学問では解釈の出来ない神秘は北に隠されて居る。北光、磁力は申すに及ばず、気流や、気象なども北極とは密接の関係がある。即ち地球の罪穢邪気は、悉く一旦北極に吹き放たれ、爰で遠大なる神力により処分されるのである。序に一言して置くが、罪を犯した者が根の国、底の国に落ちるのは、詰まり神罰で、これも一つの修祓法執行の意義である。別に根の国底の国といふ地獄めきたる国土が存在するのではない。何処に居ても神罰執行中は其処が根の国底の国である。 △速佐須良比売佐須良は摩擦(サスル)也、揉むこと也、空にありては雷、地にありては地震、皆これ佐須良比売の活動である。要するに全世界の大修祓法は、大雨で流し、洪水海嘯等で掃ひ、大風で吹き飛ばし、最後に地震雷で揺つて揺つて揺り滅すのである。それが即ち神諭の世界の大洗濯、大掃除、第二次の大立替である。『天の大神様がいよいよ諸国の神に、命令を降しなされたら、艮金神国常立尊が総大将となりて雨の神、風の神、岩の神、荒の神、地震の神、八百万の眷族を使ふと一旦は激しい』とあるのは、祓戸四柱の神々の活動を指すのである。詳しく言へば雨、荒、風、地震の神々がそれぞれ瀬織津比売、秋津比売、気吹戸主、佐須良比売の神々の働きをされるので、岩の神が統治の位置に立つのである。学問の末に囚はれた現代人士は、是等の自然力を科学の領分内に入れて解釈しようと試みて居るがそれは駄目だ。実は皆一定の規律と方針の下に行はるる所の神力の大発動である。その事は、今年よりは来年、来年よりは来々年といふ具合に、段々世界の人士が承服する事に成るであらう。 △所聞食と八百万の神達に宣り上ぐる言葉である。神々に向つて活動開始、威力発揮を祈願する言葉である。即ち天地の神々様も、此宣詞をしつかり腹に入れ、四方面に分れて、大修祓の為に活力を発揮し玉へと云ふ事である。我惟神の大道がいかに拝み信心、縋り信心と天地の相違あるかは、此辺の呼吸を観ても分るであらう。末段祓戸四柱神の解釈説明を下すに当り、自分は全体の統一を慮り、又大本神諭との一致を失はぬやう、主として地球全体世界全体経綸の見地から筆を下した。併しこれは、より大きくも、又より小さくも解釈が出来る事は前にも述べた通りである。宇宙の神人、万有一切の事は皆同一理法に支配せられ、宇宙に真なる事は地球にも真、地球に真なる事は一身一家にも又真である。参考の為めに爰に簡単に他の一二の解釈法を附記して置かう。個人潔斎の上から述べると瀬織津比売の働きは行水、沐浴等の事、秋津比売は合嗽の事、伊吹戸主は深呼吸などの事、佐須良比売は冷水摩擦、按摩等の事である。人身生理の上から述べると、瀬織津比売は口中にて食物咀嚼の機能、秋津比売は食道から胃腸に食物を運ぶ機能、気吹戸主は咀嚼して出た乳汁を肺臓に持ち出す機能、佐須良比売は肺臓にて空気に触れ、それから心臓に帰り、そして全身へ脈管で分布せらるる機能を指すのである。かくの如く大祓祝詞は大小に拘はらず、ありとあらゆる有機組織全部に必要なる新陳代謝の自然法を述べたものである。 (大意)さて地球の表面の清潔法施行のためには、先づ大小の河川を司どる瀬織津姫が御出動になり、いよいよとなれば、大雨を降らして苛くも汚れたものは家庫たると、人畜たるの区別なく大海へ一掃して了ふ。之に応じて速秋津姫の活動が起り、必要あれば逆に陸地までも押し寄せ、あらゆる物を鵜呑みにする。邪気妖気掃除の目的には気吹戸主神が控へて居り、最後の大仕上げには佐須良姫が待ち構へて、揉みに揉み砕き、揺りに揺り潰す。これでは如何に山積せる罪穢も此の世から一掃されて品切れになる。従来は大祓の祝詞は世に存在しても其意義すら分らず、従つて其実行が少しも出来て居なかつた。其大実行着手が国祖国常立尊の御出動である。神国人の責務は重いが上にも重い。天地の神々の御奮発と御加勢とを以て首尾克く此大経綸の衝に当り神業に奉仕するといふのが、これが大祓奏上者の覚悟であらねばならぬ。(完) |
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霊界物語 | 53_辰_ビクの国1(ヒルナ姫とカルナ姫) | 22 天祐 | 第二二章天祐〔一三八五〕 ハルナは刹帝利より全軍の総指揮権を委任され八百の兵士を城内に集め各門戸を固く守らしめ武備を十分に整へて敵の襲来を待つてゐた。ベルツ総指揮のもとに、シエール一隊を指揮し元帥旗を初夏の風に靡かせ乍ら、鬨を作つて城の東西南北より驀地に攻め来る。然し乍ら今度はバラモン軍の如く民家に火を放つ様な事はない。一千の騎士を初め俄づくりの二千の農兵は各自に柄物を携へ、悪魔の牙城を亡ぼし国民の塗炭の苦を救ふは今や此時とベルツの侫言に謬られ、農業をそつち除けにして迫り来る其勢、破竹の如くであつた。ベルツは先づ騎馬にて表門に向ひ大音声に呼ばはつて云ふ、 ベルツ『民軍の総大将ベルツ将軍、五万の兵を率ゐて進み来れり。如何に刹帝利の権威を以てするも、よもやこれには敵すまじ。速に門を開いて降服するか、さもなくば此城は四方八方より味方の軍勢をもつて十重二十重に囲みあれば、瞬く間に粉砕するは必定也。返答承はらん』 と呼はつた。然し城内の衛兵は森として一人の答ふるものもなく、寄らば斬らむと手具脛引いて息を凝らして待つてゐる。流石のベルツも城門固く容易に進み入れず、又あまりの敵の静けさに如何なる計略のあるやも図り知られずと稍躊躇の色を現はし、兎も角城の周囲を囲み持久戦をなさば忽ち城内は兵糧つき白旗を掲げて降服せむ。然らば味方の一兵卒も損せずして大勝利を得べしと、虫のよい考へを起し、時々『ワーイワーイ』と喊声を作つて城内の守兵を威喝させ乍ら、持久戦をとる事となつた。又裏門より向ひしシエールは俄将軍となつた嬉しさ、吾力を現はすは今此時と云はぬばかりに裏門を打叩き進み入らむとする時しも、雨の如く降り来る矢に辟易して遠く遁れ一丁ばかりの間隙を隔てて遠巻に巻いて居た。夜は篝火の光、晃々と燃え上り城内より見れば得も云はれぬ美観であつた。総指揮官のハルナは城内を彼方此方と駆け巡り指揮をなしつつ何れも櫓大鼓の鳴る迄は戦ふべからずと厳命し、八百の猛卒は息をこらして治まりきつてゐた。四方を囲みし三千の敵軍は一丁許り間隔を保ち、押し寄せようともせず対陣殆ど一ケ月に及んだ。朝から晩まで用もなきに城を眺めて命令の下るを待つてゐる位、苦しいものはない。中にはそろそろ喧嘩でも初めて無聊を慰めむと角力をとる奴、酒に酔うて鉄拳を揮ふ奴、陣中は漸く規律乱れて、中にはソツと夜陰に乗じ暗に紛れて逃げ行くものさへ出来て来た。前に寄せた三千の兵は滞陣一ケ月の間に其大半を減じ、今や約一千五百の手兵となつた。城内にては刹帝利、左守、右守司、タルマン等は高殿に登り敵の陣形を見下し或は神を念じ或は酒酌み交し援兵の来るを待つてゐる。話変つて鬼春別、久米彦両将軍に引きずられ馬に跨り遠くビクトリヤの都を立去つたるヒルナ姫、カルナ姫は将軍と共にシメジ峠の麓に着いた。此間の距離殆ど五十里に及んでゐる。此シメジ峠は猪倉山の峰続きにて最も難所である。到底騎馬にて通ふ事は出来ない。両将軍は真先にここ迄逃げのび青草の上に胡床をかき、「ここ迄逃げて来たなら、先づ一安心」とヒルナ、カルナの二人の美人を前に侍らせ携へ持つたる瓢の酒をチビリチビリと惜さうに舌嘗めずりして飲み乍ら後よりおひおひ逃げ来る味方の全軍をここに集めて隊伍を整へ、再び猪倉山の岩窟に立籠らむとの協議を凝らした。もとより黄金山へ攻め上る勇気は少しもない。然し乍ら士気を沮喪せしむる事を虞れて、黄金山征服を標榜してゐたのである。適当の場所あれば全軍を率ゐ、小国を併呑し猪倉山に城砦を構へて一大王国を建設せむとの企みであつた。生命からがら、逃げて来たので両将軍は非常に空腹になつてゐた。そこへ矢庭に酒をあほつた事とて酒の量に比して非常に酩酊をし出した。 鬼春別『ヒルナの女王さま、よくまア途中で落馬もせず跟いて来ましたね、お手柄お手柄、軍人の妻たるものは、これ位の事が出来なくては駄目だ。お前は鬼春別将軍の奥様として十分の資格が備はつてゐるよ』 ヒルナ姫『ホホホホホ、大変お褒め下さいますこと、妾は初めて馬の背に乗つたものですから、腿の辺りが痛くなり、お尻が擦り剥けまして到底此上動く事は出来ませぬ。アイタタタタ』 と故意とに顔を顰める。 鬼春別『あ、これからは馬に乗る事は出来ない。ここを三里ばかり馬の轡をとつて急坂を登り、猪倉山に行つて暫く滞陣するのだ。もう一足だから……こんな処に屁古垂れちや困るよ、何と云つても将軍の奥様だからな』 ヒルナ姫『だと云つて、もう一足も歩けないのだもの。カルナさま、貴女如何で厶いますか』 カルナ姫『妾も腿が擦れお尻が剥け、痛くて堪りませぬわ。もう此上一足だつて動けませぬわね』 久米彦『斯様の処で弱音を吹いて貰つちや困るぢやないか。猪倉山に行けば、もはや金城鉄壁も同じだ。こんな処にマゴマゴして居れば三五教の治国別に……いやいや、ウーン』 と行きつまる。 カルナ姫『もし将軍様、三五教の治国別に追はれるのが怖さに、ここ迄逃げて来たのですか。貴方は之からエルサレムの宮を襲撃し、黄金山を占領するのだ、と仰有つたぢやありませぬか。一時も早く行かなければ時機がおくれては大変だと両将軍様とも仰せになつたでせう、何故猪倉山等に滞陣をなさるのです。妾は、それがチツとも腑に落ちませぬわ』 久米彦『ウーン、エー、凡て兵法には千変万化の秘術があるものだ。時と場合によつては軍略上、如何なる事を致すかも知れない。マアマア黙つて吾々のお手際を見てゐるが宜いわ』 カルナ姫『ヘー、妙ですな』 ヒルナ姫『もし鬼春別様、本当に足が痛くて仕方がありませぬの。如何致しませうかな』 鬼春別『拙者の手で撫でてやつたら屹度直るよ』 ヒルナ姫『擦り剥けたお尻や腿を、そんな毛の生えた硬い手で撫でられちや堪りませぬわ、何卒それ丈けは御免下さいませ』 鬼春別『アハハハハ、いきなり肱鉄を喰はされたな。何と女と云ふものは得なものだな』 ヒルナ姫『そら、さうですとも。女なればこそ、将軍様の髯をむしつたり頬辺を叩いたり鼻を捻つても喜んでゐらつしやるのだもの。そこが女ですわね』 数多の兵士は漸く足揃ひが出来た。両将軍は、 両将軍『さア、之から此急坂を一きばりだ』 と云ひ乍ら立上り、 両将軍『さア姫、陣中だ。仕方がない。チツと痛くても辛抱するのだな』 ヒルナ姫『貴方徒歩でおいでなさいませ。妾は馬でなけりやチツとも動けませぬわ。ねえカルナさま、貴女だつてさうでせう』 カルナ姫『さうですとも。馬に乗せて頂きたいものですわ』 久米彦『斯様な急坂を馬に乗らうものなら、それこそ命を捨てる様なものだ。何とかして歩いたら如何だ。こんなきつい坂は空馬でさへも容易に行けないのだからな』 カルナ姫『妾は貴方に命まで差上げてラブしてるのですもの、貴方の馬に乗つて落ちて死んだら得心ですわ。ねえヒルナさま、さうでせう』 ヒルナ姫『さうですとも、死んだつて将軍様に献げた生命、何にも恨は残りませぬわね』 鬼春別『エーエ、無理云ふ女王さまだな。そんなら仕方がない。馬の口をとつて、行ける所迄上げて上げませう』 と云ひ乍ら、ヒルナ姫を抱へて馬にヒラリと乗せた。久米彦も亦カルナを馬に乗せてやつた。二人の姫は足が痛い、尻が痛いと駄々を捏たのは馬に乗つて逃げる為であつた。 二人は馬に乗るや否や馬首をクレリと東に向け、一鞭あて一目散に疾風迅雷の如く駆け出した。両将軍は声を嗄らして、 両将軍『やアやア部下の者共、彼を追つ付いて引捕らへよ』 と下知する。此急坂にかかつたので何れの騎士も全部馬を下り、鞍には拍車のついた靴を括りつけ登坂の用意をして了つた際とて、俄に馬に乗る訳にも行かず靴を解き足に穿ち、グヅグヅしてゐる間に、二人は早くも目の届かぬ所まで逃げてゐる。忽ち幾百とも知れぬ獅子を引連れた三五教の杢助に扮した摩利支天は、巨大なる獅子に跨り『ウー』と四辺の山岳を響かせ、軍隊の中を縦横無尽に駆け廻つた。将軍初め全軍は思はぬ獅子の襲来に肝を潰し、腰をぬかす者、真裸足で逃げるもの、泣き叫ぶ者、其外種々雑多に思ひ思ひに逃走し、残るものは腰を抜かした弱虫ばかりであつた。馬は獅子の声に驚いて思ひ思ひに逃げ散つて了つた。獅子の群は一所に集まり、一斉に声を揃へて『ウー』と百雷の轟く如く唸り立て威喝を試みた上、ヒルナ、カルナの後を追うて、摩利支天指揮のもとに雲を霞と追うて行く。 ベルツは一ケ月余の滞陣に、士気漸く乱れ、夜陰に乗じて脱隊するもの相次いて踵を接するため一戦して士気を鼓舞せねばならぬと覚悟をきめ、シエールは裏門よりベルツは表門より獅子奮迅の勢にて、猪武者を先頭に、さしも堅固の大門を打破り城内に乱れ入つた。ハルナは八百の手兵を指揮し、兵を八方に分つて防ぎ戦うた。されど潮の如く押寄せた敵軍は、刻々に其数を増し、一旦逃げ散りし雑兵迄帰り来つて『ワーイワーイ』と喚き立ち乍ら、又もとの如く三千の兵士は城内に残らず進入し、手当り次第に暴れ出した。忽ちハルナは捕虜となり刹帝利、左守司、タルマンの身辺も今や危しと見る間に、表門に当つて宣伝歌の声が聞えて来た。之は治国別が松彦、竜公、万公の部下を率ゐて救援に向うたのである。 治国別『神が表に現はれて善と悪とを立別ける 音に名高きビクの国東にライオン川を負ひ 西にビクトル山控へ要害堅固の鉄城を ここに築きて永久に百の国民治めます ビクトリヤ王の御居城八岐大蛇や醜神に 誑惑されし右守の司ベルツの司は軍隊を 率ゐて不羈を図らむと攻め寄せ来る浅ましさ 天地を造り玉ひたる誠の神は善を褒め 悪を懲して地の上に天国浄土を建設し 上は王者を初めとし下国民の端迄も 守らせ玉ふ尊さよ三五教の宣伝使 治国別の一行が現はれ来る上からは 幾十万の強敵が一度に襲ひ攻め来とも 如何でか恐れむビクの国刹帝利王よ心安く 思召されよ天地の神の賜ひし言霊を 完全に委曲に打出し救ひまつらむ惟神 神に誓ひて宣りまつるああ惟神々々 御霊幸はひましませよ朝日は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも仮令大地は沈むとも 誠一つは世を救ふ誠に刃向ふ仇はなし 勇めよ勇め刹帝利従ひ玉ふ諸々の 誠の司よ悪神の此襲撃を恐れずに 神に心を任せつつ祈らせ玉へ惟神 神に代りて宣り伝ふ』 此言霊を聞くよりベルツは俄に慄ひ出し、駒に跨り裏門より驀地に駆け出す。此時シエールは庭石に躓き倒れた途端に、足を折り悲鳴を挙げて救ひを求めてゐる。怖気ついたる軍勢は、現在目の前に倒れた大将を見向きもやらず、土足のまま踏み越え踏み越え、シエールの身体一面泥まぶれにし乍ら、先を争うてバラバラバラと逃げ出す可笑しさ。ベルツの後に従つて大多数の軍隊は西へ西へと駆けり行く。此時向ふの方より駒に跨り驀地に馳帰つたのはヒルナ、カルナの両女であつた。続いて杢助に扮した摩利支天は、巨大な獅子に跨り数百の獅子を引連れ、ベルツが逃げ路を扼し、声を揃へて『ウーウー』と百雷の轟く如く唸り出した。ベルツは此声に驚いて馬上より真逆様に転落し、路傍にふんのびてゐる。其他の軍卒は獅子の呻り声に戦き恐れ、身体竦み大地に噛ぶりついて慄ひ戦いてゐた。ヒルナはベルツの倒れた姿を目敏くも見つけて馬の背に引括り、敵の乗り棄てた馬を見つけて、又もやヒラリと飛び乗り、カルナと共に王の一大事と驀地に戛々と裏門より勢よく帰り来たりぬ。 (大正一二・二・一四旧一一・一二・二九於竜宮館北村隆光録) |
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霊界物語 | 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 | 24 三五神諭(その五) | 第二四章三五神諭その五〔一五四九〕 大正四年旧十一月二十六日 大国常立尊が三千世界の、上中下と三段に分けてある霊魂を、それぞれに目鼻を付けて、皆を喜ぶやうに致すのは、根本の此世を創造へるよりも何程気骨の折れる事ぢや、人民では分らん事であるぞよ。初発の悪の霊魂は悪の事なら何んな事でも出来るから、茲まで世界中を悪で搦みて了ふて、善と云ふ道は通らぬやうに致して来た悪神の、頭を露はして、トコトン往生を為せて、又次に中の守護神を改信さして、下の守護神も続いて改信させねば神世には成らんぞよ。下の守護神が一番に何彼のことが解らんなれど、改信を致さねば、何うしても改信いたすやうに、喜ばして改信させねば、叱る計りでは改信の出来ぬ守護神も在るなり、何も解らん守護神の如何にも成らぬドウクヅは天地の規則通りに致して、埒宜く致さねば仕様はモウ無いぞよ。此の先で何時迄も改信の出来ぬ悪魔に永う掛りて居りて、岩戸開きの出来んやうな邪魔を致した守護神は、気の毒が今に出来致すぞよ。是丈け気を附けて知らして居るのに、改信の出来ん悪魔に成り切りて居る霊魂の宿りた肉体は、可哀想でも天地から定まりた規則通りの成敗に致すぞよ。もう何時までも解らんやうな守護神を助けて置いたら、世界が総損害に成りて、茲まで神が苦労いたした骨折が水の泡に成りて了ふぞよ。夫れでは永らく神が苦労いたした甲斐が無くなりて、天の大神様へ申訳が立たんなり、神は守護神人民を助けたいのは、胸に一杯であるから、もう一度気を附けて置くから、何事が出て来ても神に不足は申されまいぞよ。是からは悪神の守護神の好きな事も、悪き事も出来んやうに、天地から埒を附けるから、何処を恨む事も出来ず、自己の心を恨める事も出来んやうになるぞよ。天地の先祖の神は、善の守護神も悪の守護神も皆を喜ばしたいと思ふて、色々と永らく気を附けたなれど、ドウクヅの蛆虫同様の醜しき聞解の無いものは、一処へ集して固めて灰にして了ふから、悪いものに悩められて生命を取られるやうな肉体は、蛆虫同様、悪神の眷族と、も一つ下な豆狸といふやうな論にも杭にもかからんものに弄びに遇うて居るのは、肝腎の神の綱の切れて居る身魂であるぞよ。こんな守護神の宿りて居る肉体は取払ひに為て了ふて此世界の大掃除を初めるぞよ。 天地の先祖の苦労の解らん身魂は、蛆虫同様であるから、斯んな身魂は世の汚穢と成るから、神界の経綸通りに致して埒能く岩戸を開かな、後の立直しが中々大望であるから経綸通りにして見せるぞよ。さう致すと神は善一つなれど、何も解らん世界の人民が悪の守護神に引かされて、矢張り艮金神は悪神でありたと申すぞよ。細工は流々仕上が肝腎であるぞよ。天地の神の御恩も判らぬやうな、畜生より劣りた、名の附けやうの無いものは、末代の邪魔になるから、天地の規則通り規めるから、悪の守護神の中でも改信の出来たのは、今度の岩戸開きに焼払ひになる所を救けてやるぞよ。蛆虫の中からでも救かるべき身魂が在れば択出して善の方へ廻して遣るぞよ。 天の大神様が、いよいよ諸国の神に、命令を降しなされたら、艮金神国常立尊が総大将となりて、雨の神、風の神、岩の神、荒の神、地震の神、八百万の眷属を使ふと、一旦は激しいから、可成は鎮まりて世界の守護を為せるなれど、昔の生粋の神国魂の活神の守護と成りたら、此中へ来て居る身魂に申附けてある事を、皆覚えて居るであらうが、一度申した事は其様に致すから、神の申す事を一度で聞く身魂でないと、充分の事は無いぞよ。もう神からは此の上人民に知らせる事は無いから、大峠が出て来てから、如何様でも改信をしますで赦して下されと何程申しても、赦す事は出来んぞよ。是程大望な昔からの仕組を今になりて変へる様な事を致して居りたら、二度目の天の岩戸開きの大きな経綸が成就致さんぞよ。根本から大洗濯を致して、末代世界の口舌が無いやうに致して、神界の害をする霊魂が、学で此世を暗闇にして了ふて、正味のない教やら、やりかたは、世の大本からの教でないから、途中から出来たものは、末代の世の遣り方には用ゐんぞよ。 今の上に立ちて居る守護神は科学ほど結構なものは無いと申して、渡りて来られん霊魂が、神を抱込みて、好き寸法に致して、此先をモ一つ悪を強くして、悪で末代建てて行かうとのエライ目的でありたなれど、もう悪の霊や学の世の終りと成りたぞよ。本の神世へ戻りて、天と地との先祖が末代の世を持たねば、他の霊魂では此世は続かん、口舌の絶えると云ふ事は無いぞよ。 大国常立尊が変性男子の霊魂の宿りて居る肉体を借りて、末代の世を受取りて、世の本の生粋の誠の生神ばかりが表に現はれて、天地の先祖の御手伝ひで、数は尠いなれど神力は御一柱の生神の御手伝ひが在り出しても、霊魂の神が何程沢山でも、本の生神の力には敵はんから、同じ様な事を申して細々と今に続いて知らして居るなれど、途中に出来た枝の神やら、渡りて来て居る修業なしの利己主義の遣方の守護神では、肝腎の事は解りは致さんぞよ。誠の事の解る大本へ出て来て、いろはからの勉強を致さねば、学は金を入れた丈の力は出るなれど、天から貰うた霊魂に附いた生来の力でないから、物質の世の間は結構でありたなれど、もう物質の世の終りとなりたから、今迄の学では二度目の天の岩戸開きには些少も間に合はんぞよ。 ○ 大正四年旧十二月二日 大国常立尊変性男子の霊魂が現はれて、三千世界の三段に別けて在る御魂を、夫れ夫れに立替へ立別けて、目鼻を附けて、先づ是で楽ぢやと申すやうに成るのは、大事業であるぞよ。二度目の天の岩戸開は、戦争と天災とで済むやうに思ふて、今の人民はエライ取違ひを致して居るなれど、戦争と天災とで人の心が直るのなら、埒能う出来るなれど、今度の天の岩戸開は、其んな容易い事でないぞよ。昔からたてかへは在りたなれど、臭い物に蓋をした様な事ばかりが仕て有りたので、根本からの動きの取れんたてかへは、致して無いから、これ迄のやりかたは、身魂は尚悪くなりて、総曇りに成りて居るから、今度は一番に、霊魂界の岩戸開であるから、何に付けても大望であるぞよ。是程曇り切りて居る、三千世界の身魂を水晶の世に致して、モウ此の后は、曇りの懸らんやうに、万古末代、世を持ちて行かねば成らんから、中々骨の折れる事であるぞよ。 天地の大神の思ひと、人民の思ひとは、大きな違ひであるから、何に付けても、今度の仕組は、人民では汲み取れんぞよ。人民一人を改信させるのにも、中々に骨が折れようがな。今度の二度目の天の岩戸開は、昔の初まりから出来て居る、霊魂の立替立直しで在るから、悪い霊魂を絶滅して了ふてするなら、容易く出来るなれど、悪の霊魂を善へ立替へて、此世一切の事の行り方を替へて、神法をかへて、新つの世の純粋の元の水晶魂にして了ふのであるから、今の人民の思ふて居る事とは、天地の大違ひであるから、毎度筆先で気を附けてあるぞよ。 あやべの大本の中には、世界の人民の心の通りが、皆に仕て見せてあるぞよ。世界の鏡の出る所であるから、世界に在る実地正末が、皆にさして見せて在るから、色々と心配をいたして居るなれど、何んなかがみも仕て見せて在るから、世界が良くなる程、この大本は善くなるぞよ。今ではモチツト、何事も思ふやうに無いのであるぞよ。 世界の事が、皆大本に写るから、夫れで、此中から行状を善く致さんと、世界の大本となる、尊い所であるから、何事も筆先通りに為て行かねばならんぞよ。是までの世のやりかたは、神の国では用ゐられん、邪神の極悪のやり方に、変りて了ふて居るのを、盲者聾者のやうな世界の人民は、知らず知らずに、させられて居りたのであるから、分らんのは尤もの事であるぞよ。誠の神が抱込まれて、神の精神が狂ふて居るのであるから、人民が悪う成るのは当然であるぞよ。 モ一つ此の先を悪を強く致して、この現状で世を建てて行くどいらい仕組をして居るなれど、モウ悪の霊の利かん時節が循環てきて、悪神の降服いたす世になりて来たから、吾の口から吾が企みて居りた事を、全然白状いたす世になりたぞよ。 世界の御魂が、九分まで悪に化りて、今まで世を持ち荒して来た守護神に、改信の出来かけが、何の様にも出来んから、神も堪忍袋を切らして、一作に致せば八九分の霊魂が悪く成るし、改信致さす暇が、モウ無いし、是程この世に大望な事は、昔から未だ無い、困難な二度目の天の岩戸開であるのに、何も分らぬ厄雑神に使はれて居ると、何も判らんやうになるぞよ。 まことの行も致さずに、天地の先祖を無視して、悪のやりかたで世界の頭になりて、此先を悪をモ一つ強く致して、まぜこぜで行りて行ことの初発の目的通りに此所まではとんとん拍子に面白い程上り来たなれど、此神国には深い経綸が世の元から致して在りて、九分九厘まで来たぞよ。 悪神の仕組も、九分九厘までは来たなれど、モウ輪止りとなりて、前へ行く事も出来ず、後へ戻る事も出来んのが、現今の事であるぞよ。仕放題の利己主義の行方で、末代の世を悪で建てて行くことの目的が、今までは面白い程のぼれたなれど。 神の国には、チツト外の御魂には判らん経綸が為てあるから、人も善、吾も善、上下揃ふて行かねば、国の奪り合ひを為るやうな、見苦敷性来では、世は永久は続かんぞよと申して、筆先に出して、気を附けてあるぞよ。 斯世は善と悪とが有りて、何方でこの世が立つかと言ふことを末代続かせねば成らん世であるから、何事も天地から為してあるのであるぞよ。吾が為て居るのなら、何事も思ふたやうに行けんならんのに、何うしても行けんのが、神から皆為せられて居る証拠であるぞよ。善の道は、苦労が永いなれど、此の先は末代の世を続かすので中々念に念が入るぞよ。 善の行は永いなれど、善の方には、現界幽界に何一つ知らん事の無い様に、世の元から行が為してあるから、此先は、悪の仕放題に行無しに出て来た守護神が辛くなるぞよ。如何な事も為ておくと、何事も堪れるなれど、行無しの守護神に使はれて居ると、世の終ひの初まりの御用は勤まらんぞよ。 善と悪との変り目であるから、悪の守護神はヂリヂリ悶える様になるから、一日も早く改信致して、善の道に立帰らねば、モウこれからは貧乏動きも為さんぞよ。善の守護神は数は尠いなれど、何んな行も為してあるから、サア今と云ふ様に成りて来た折には、何程烈しきことの中でも、気楽に神界の御用が出来るから、一厘の御手伝で、神の本には、肝腎の時に間に合ふ守護神が拵へてありて、世界の止めを刺すのであるぞよ。神の国は小さうても、大きな国にも負は致さんぞよ。神国は世界から見れば、小さい国であれど、天と地との、神力の強い本の先祖の神が、三千世界へ天晴と現はれて、御加勢あるから、数は少うても、正味の御魂ばかりで、何んな事でも致すぞよ。何程人数が多くても、何の役にも立たぬ蛆虫計りで、善い事は一つも能う為ずに、邪魔計りを致すから、世界の物事が遅くなりて、世界中の困難であるが、未だ気の附く守護神が無い故に、何時までも筆先で知らすのであるぞよ。 天地の御恩も知らずに、利己主義で茲まで昇りつめて来た悪の守護神に、改信の為せかけが出来んので、何事も遅くなりて、総損害に、上から下までの難渋となるから、明治廿五年から、今ぢや早ぢやと申して、引掛戻しに致して、気附く様に知らしても、元からの思ひが大間違で在るから、世界の岩戸開の九分九厘と成りた所で、ジリジリ舞ふ事が見え透いて居るから、気を附けるぞよ。 天地の先祖の、思ひの判りて居る守護神と人民は、今に無いぞよ。是程暗がりの世の中へ、世の元の正真の水火神が揃ふて表はれても、恐い計りで、腰の抜けるものやら、顎が外れて早速に物も能う言はん様な守護神や、人民が沢山出来る許りで、神の目からは間に合ひさうに無いぞよ。 判りた御魂の宿りて居る肉体でありたら、何んな神徳でも授けるから、此神徳を受ける御魂に使はれて居りたら、一荷に持てん程、神徳を渡すから、其貰ふた神徳に光りを出して呉れる人民で無いと、持切りにしては天地へ申訳が無いぞよ。 ○ 大正五年旧十一月八日 あまり此世に大きな運否があるから、口舌が絶えんから、世界中を桝掛を引いて、世界の大本を創造た、天と地との先祖の誠で、万古末代善一つの道で世を治めて、口舌の無い様に致すぞよ。天は至仁至愛真神の神の王なり、地の世界は根本の国常立尊の守護で、神国の、万古末代動かぬ神の道で治めるぞよ。吾好しの行り方では、此世は何時までも立たんぞよ。この世界は一つの神で治めん事には、人民では治まりは致さんぞよ。悪神の仕組は世が段々と乱れる計りで、人民は日に増に、難渋を致すものが殖える許りで、誠の神からは目を明けて見て居られんから、天からは御三体の大神様なり、地は国常立尊の守護で、竜宮様の御加勢で、元の昔の神の経綸通りの松の世に立替致して、世界中を助けるのであるから、中々骨が折れるぞよ。モウ時節が近よりたぞよ。用意をなされよ。脚下から鳥が立つぞよ。天地の先祖の神々を粗略に致して、神は此世に無い同様にして東北へ押込めて置いて、世界の大将に成りて、悪の血統と眷属の何も知らぬ悪魔を使ふて末代世を立て様と思ふて、エライ経綸をして居れど、世の本からの天地を創らへた、其儘で肉体の続いてある、煮ても焼いても引裂いても、ビクともならん生神が、天からと地からと両鏡で、世界の事を帳面に附け止めてある同様に、判りて居るから、モウ神界には動かぬ仕組が致してあるから、世界の人民は一人なりと、一日も早く大本へ参りて、神の御用を致して、世界中を神国に致す差添へに成りて下されよ。上下揃ふて神国の世に世界中を平均すぞよ。 今の世界の人民は、現世に神は要らんものに致して、神を下に見降し、人民よりエライものは無き様に思ふて居るが見て御座れよ、岩戸開の真最中に成りて来ると、智慧でも学でも、金銀を何程積みて居りても、今度は神にすがりて、誠の神力でないと大峠が越せんぞよ。今度は神が此世に有るか無いかを、解けて見せて遣るから、悪に覆りて居る身魂でも善へ立ち返らな、神の造りた陸地の上には、居れん様になるから、改信を致して身魂を能く研いて居らんと、何彼の時節が迫りて来たから、万古末代取戻しの成らん事が出来致すから、今に続いてクドウ気を附けるのであるぞよ。是丈けに気を附けて居るのに聞かずして、吾と吾身を苦しめて最後で改信を致してもモウ遅いぞよ。厭な苦しい根の国底の国へ落されるから、さう成りてから地団太踏みてジリジリ悶えても、そんなら赦してやると云ふ事は出来んから、十分に落度の無いやうに、神がいやになりても、人民を助けたい一心であるから、何と云はれても今に気を附けるぞよ。 これからは筆先通りが、世界に現はれて来るから、心と口と行ひと三つ揃ふた誠でないと、今度神から持たす荷物は重いから、高天原から貰ふた荷が持てん様な事では、余所から人が沢山出て来だすから、其時に恥かしう無いやうに、腹帯を確り締めて居らんと、肝腎の宝を取外す事が出来るぞよ。今度は此大本に立寄る人民に、神からの重荷を持たすから、各々に身魂を十分に研いて置いて下されよ。ドンナ神徳でも渡して、世界の鑑に成る様に力を附けてやるぞよ。改信と申すのは何事に由らず、人間心を捨てて了ふて、知識や学を便りに致さず、神の申す事を一つも疑はずに生れ赤子の様になりて、神の教を守る事であるぞよ。霊魂を研くと申すのは、天から授けて貰ふた元の霊魂の命令に従ふて、肉体の心を捨て、本心に立返りて、神の申す事を何一つ背かん様に致すのであるぞよ。学や知識や金を力に致す内は、誠の霊魂は研けて居らんぞよ。 この天の岩戸開を致すには、学でも、悧巧でも、知識でも、金銀でも、法律でも、行かんぞよ。兵隊計りの力でも行かず、今の政治の行り方では、猶行かず、今迄の色々の宗教でも猶行かず、今の学校の教でも行かず、根本の天の岩戸開であるから、今の人民の思ふて居る事とは、天地の相違であるから、世界の人民が誠にいたさんから神は骨が折れるのであるぞよ。天地の間の只の一輪咲いた梅の花の経綸で、万古末代世を続かすのであるから、人民には判らんのも尤もの事であるぞよ。 九つ花が咲きかけたぞよ。九つ花が十曜に成りて咲く時は、万古末代しほれぬ神国の誠の花であるぞよ。心の善きもの、神の御役に立てて、末代神に祭りて此世の守護神といたすぞよ。此世初まりてから、前にも後にも末代に一度より無い、大謨な天の岩戸開であるから、一つなりとも神の御用を勤めたら、勤め徳であるぞよ。それも其人の心次第であるぞよ。神は無理に引張りは致さんぞよ。 是だけ蔓りた悪の世を治めて、善一つの神世に致すのであるから、此の変り目に辛い身魂が多人数あるから改信々々と一点張りに申して、知らしたのであるぞよ。早い改信は結構なれど、遅い改信は苦しみが永い許りで、何にも間に合はん事になるぞよ。艮金神で仕組致して、国常立尊と現はれて、善一つの道へ立替るのであるから、経綸通りが世界から出て来だすと、物事が早くなるから、身魂を磨いて居らんと、結構な事が出て来ても、錦の旗の模様が、判らんやうな事では成らんぞよ。今迄苦労いたした事が、水の泡になりてはつまらんから、大本の辛い行を勇んでいたす人民でありたら、神が何程でも神力を授けるから、ドウゾ取違ひをせぬやう慢心の出ぬ様に心得て居りて下されよ。世界の神、仏、耶、人民の為に、神が永らく苦労を致して居るぞよ。 (大正一二・四・二七旧三・一二於竜宮館北村隆光再録) |
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霊界物語 | 70_酉_トルマン国の国政改革 | 04 共倒れ | 第四章共倒れ〔一七七一〕 太子のチウインは妹のチンレイ及び、右守の娘ハリスと共に初めてキユーバーが談判に来た時、ソツと物蔭より様子を聞き、容易ならざる大事件となし、ガーデン王や左守には内密にて、妹のチンレイ及び右守の娘ハリスと夜中諜し合せ、王命と佯り全国の兵員を召集すべく、腹心の部下に命を下した。 一方ガーデン王、左守は城内五百の兵に武装をさせ乍ら、敵軍押し寄せ来らば、唯一戦に粉砕し呉れむと部下を督励して、士気の皷舞に全力を注いで居た。大足別将軍は三千の兵を率ゐて、城下迄押し寄せて来たが、キユーバーを守りたる数十騎の注進により、殿内深くキユーバーの入り込みし事を知り、徒に戦端を開き、キユーバーの生命を失つては大変だ、大黒主に如何なるお目玉を頂戴するかも知れない。古今無双の英雄豪傑キユーバーには、何か深い策略があつて、唯一人城内に入り込み、樽爼折衝の間に円満解決の曙光を認むべく活動して居るのだらう。先づキユーバーの命令の来る迄、総攻撃をしてはならぬ、……と部下を厳重に戒め、キユーバー警護の意味にて三日三夜滞陣して居た。ガーデン王、左守は、千草姫の姿が見え無くなつたのは、右守の最後を聞き、禍の身に及ばむ事を恐れて逃げ出したのだらう……位に考へ、軍備の方に全心を集注し、千草姫が秘術を尽しての善戦善闘も気がつかなかつた。扨てキユーバーは半時許りして息を吹き返し、団栗眼をぎろつかせ千草姫の顔を見て、 『ヤア、お前は千草姫ぢやないか。かよわい腕をしながら俺の脈処を折悪く掴みよつて、ど甚い目に会したぢやないか。俺は暫くの間、幽冥旅行をやつて居たよ。掴むと云つても余りひどいぢやないか』 千草姫『ハイ、妾どんなに心配したか知れませぬわ。貴方の御命令を遵奉し、力一杯握りましたら、貴方はウンといつた切り、何と云つても返事して下さらないのですもの。大変怒つて返事して下さらないと思ひ、早速バラモンの神様に水垢離取つて御祈願した処、やつと物云つて下さつたのですもの。幽冥旅行したのなんのと本当に腹の悪いお方よ。半時許りも妾に怒つて物を云ふて下さらないのですもの』 キユ『いや、本当に気絶して居たに違ひない。決して嘘は云はない。これから手を握るのなら指の先を握つてくれ。脈処を握られると困るからな』 千草『世界の救世主様が妾の細腕に握られて気絶なさると云ふやうな道理がどこに御座います。嘘許り仰有います。ホヽヽヽヽヽ』 キユ『本当にそれやさうぢや。実は気絶したのぢやないよ。お前の心底を考へる為にあんな真似をして居たのぢや。何を云つても三千世界の救世主だ。そんなへどろい事でどうならう』 千草『ホヽヽヽヽヽ、ほんとに甚いお方、人の気を揉ましてひどいわ』 と又手首を握らうとする。 キユーバーは吃驚して手を引き、 『ヤ、もう手は一度握つたらよいものだ。それよりも今度は俺が握つてやらう、サア手を出したり手を出したり』 千草『どうか息が切れる処迄握つて頂戴な。一ぺん八衢の状況を見て来る処迄……。さうして冥官に会ひ貴方と妾と永久に暮すべき蓮座を教へて貰つて来たう御座いますわ。天国の満員にならない中に、特等席を予約して置きたう御座いますから』 キユ『ハヽヽヽヽヽ、おい姫さま、このキユーバーの手がお前の手に触るな否や本当に気絶して了ふよ。それでもよいか』 千草『よろしう御座いますとも、仮令殺されても私の体ぢや御座いませぬ。貴方に捧げたもので御座いますもの、貴方の命も同様ですわ』 キユーバーは心の中にて……この女仲々手がよく利いて居る。柔術の極意に達して居るらしい。俺も力一杯握つて気絶させ、八衢を覗いて来る処迄やつておかねば、将来威張られちや耐らない。夫の権式がさつぱりゼロになつて了ふ。よし、また力一杯急所を握り俺の腕前を見せておかねば将来嬶天下になり、褌の紐で縛られるやうになるかも知れない。ここが千騎一騎の恋のかけひきだ……と、毛だらけの手をぬつと突出し、姫の真白のなま竹のやうな手を骨も砕けとヒン握つた。千草姫はキユーバーの心の底迄直覚して居るので、何程キユーバーが力をこめて握つても痛くも何ともない、真綿が触つたやうな気がして居る、見かけによらぬ剛の者であつた。併しわざと気絶した体を装ひ握られた刹那、ウーンと顔を顰めて其場に倒れて了つた。 キユーバー『ハヽヽヽヽヽ、遉は女だな。たうとう屁古垂れて了ひよつた。かうして半時許り幽冥界を覗かしておけば、気がついてから俺の神力に感服し、ぞつこん惚れ込むだらう。エヘヽヽヽヽヽ、これだけ俺に惚れ込んで居るのだから、大足別の軍勢に一時この城を屠らせ、ガーデン王や、左守、右守を征伐し、太子や其他の重臣を重刑に処し、このキユーバーが取つて代つてトルマン国の浄行兼刹帝利となり、天下無双の姫を女房となし、数千万の財産を横奪して天晴城主となり、大黒主の向ふを張つて、七千余国の覇者となつてやらう。あゝ面白い面白い、開運の時節到来、智謀絶倫にして其胆力は神の如く、鬼の如しとは俺の事だわい、エヘヽヽヽヽヽ。ヤ何だ大変な物音ぢや、どうれ一つ外へ出て様子を考へよう』 と、ドアを外さむとしたが、秘密の錠が卸してあるので、千草姫でなければ開ける事が出来ない。遉のキユーバーも当惑して居る。外には暫く城内と城外との小糶合ひがあつたが、用心深い大足別はキユーバーが城内に潜入し居る事を聞き、戦を中止して、キユーバーの様子を偵察せむと焦慮して居た。それ故戦は半時足らずに止んで了つた。大足別は三千の軍隊を以てトルマン城を十重二十重に取りまいて居る。ガーデン王もこの敵の大兵を遠く眺めて、打つて出づる勇気もなく援兵の来る迄差控へむと矛を磨いて警戒して居た。此の時チウイン太子の近侍が、王の傍に来たり、恭しく敬礼し乍ら、 『太子様より殿下に奉れよとの御命令にて、お預り申して居りました此御書面、お受取り下さいませ』 と差出す。 王『何、太子がこの書面を余に渡せたと云つたか。余り周章狼狽の結果、太子の事を忘れて居た』 と云ひ乍ら慌しく封押し切りながむれば、左の如き文面が墨痕淋漓として認めてあつた。 一つ今夕、父を訪問致したるキユーバーなるものは、大足別将軍と諜し合せ、本城を占領し、吾王家を覆へさむと謀るものに候へば、此際一刻の猶予も相成らず候。小子は父及び左守に協議致すも、到底六ケ敷かしからむと存じ、妹チンレイ、及び右守の娘ハリスと諜し合せ、国内の総動員をなすべく、吾が臣下を諸方に派遣し、小子も亦出城して大足別の軍を後方より攻撃致すべく準備に取かかり申し候。故に小子が総司令官となつて軍隊を編成し、城下に帰り候迄、決して敵と戦端を開き給ふべからず。一時たりとも時間を延ばし、吾軍の至るを待たせ給ふやう、偏に懇願仕り候。 国難救援軍総大将トルマン国太子チウイン 御父ガーデン王様、左守、右守殿 と記してあつた。 ガーデン王は、此書面を読み終るや、さも満足の色を現はし、左守に向ひ、言葉も勇ましく、 『アイヤ左守殿、喜んで呉れ。太子は已に兵を召集し、近く帰つて来る様子だ。それ迄は戦ひを開くなとの事。遉は俺の悴だけあつて、軍略にかけたら旨いものだらうがな』 左守『成程允文允武に渡らせらるる太子様、老臣も恐れ入つて御座います。太子様の神軍が城下に近づくを待ち、城内より一斉に打ち出し、大足別を挟撃いたせば勝利を得る事磐石をもつて、卵を砕くに等しからむと存じます。あゝ勇ましや勇ましや』 と老臣の左守は王の手を執つて雄健びし、部下又此様子を見て士気俄に振ふ。斯かる所へ千草姫の侍女は一通の封書を携へ、王の前に恭しく捧げた。此密書は千草姫、キユーバーの手を握り気絶させおき、其間に認めたものである。王は訝かり乍ら、 『何、千草姫の手紙とな、彼は既に右守の難を聞き城内を脱出せしものと思ひしに、ハテ不思議』 と手早く封押し切つて見れば、左の如き文面が水茎の跡麗しく記されてあつた。 重大なる御疑を受けし千草姫より一大事を申上げます。何卒々々心を落着けてお読み下さいませ。スコブツエンのキユーバーなる者、一ケ月前より本城を屠らむと大足別と諜し合せ、種々劃策を廻らして居りました事は、右守のスマンヂー軍事探偵の報告により之を前知し、太子チウイン、王女チンレイ、右守の娘ハリスと共に千草姫も加はり、応戦の準備に取かかるべく国内の調査を密々始めて居りました処、兵役に立ち得べきものは漸く二千五百名。万一の時の用意にと国内一般に王の命と称し、軍隊教育を施し置きました処、弥々戦はねばならなくなつて参りました。併し乍ら大足別の大軍は既に城下に迫り居りますれば、今日彼と戦ふは不利の最も甚だしきものと存じ、大黒主の信任最も厚く、大足別の謀主と仰ぐキユーバーを或手段を以て捕へおきました。やがて太子は全軍を率ゐて城下に迫る事と存じます。それ迄キユーバーを私にお任せおき下さいませ。大足別が未だ砲火を開かざるも、要するにキユーバーの消息を案じての事で御座いますれば、彼さへ吾城内に閉ぢ込みおけば、短兵急に攻寄せて来る憂ひはありますまい。この所賢明なる王様、左守殿よくお考へ下さるやう偏に懇願し奉ります。 軍務所に於てトルマン国王妃千草姫 ガーデン王様 御机下 王『ヤ、左守殿、右守は可哀さうな事をしたわい。可惜忠臣を自ら殺すとは残念至極だ。千草姫も矢張天下国家を思ふ純良なる妻であつた。ヤ、疑つて済まなかつた。ヤ、千草姫許して呉れい』 と落涙し差俯向く。 左守『全く老臣が不明の致す処、千草姫様に対し申訳が御座いませぬ。又右守に対しても気の毒で御座います』 と流涕しつつ恐れ入る。何となく城内の士気は大に揮ひ、既に大足別を打ち滅ぼしたるが如き戦勝気分が漂ふて居た。 ◎ 話は元へ復る。千草姫はキユーバーの独語をすつかり聞き終り、ウンと一声蘇つたやうな顔をして息苦しさうに、 『ヤ貴方は恋しき恋しきキユーバー様で御座いましたか。私は妙な所を旅行して居るやうな夢を見て居りました。併し乍ら貴方と二人が手を引いて愉快に愉快に天国の旅をしたやうに思ひます。百花爛漫と咲き乱れ馥郁たる香気は四辺に満ち、何処も彼処も透き通り、何とも彼とも云へぬ麗しさで御座いましたよ』 キユーバー『ハヽヽヽヽヽ。それやお前、俺の手で手首を握られ、気絶してお前の精霊が霊界へ飛び出して居たのだ。ほんの一寸許り触つたやうに思つたが、何分俺の腕に力が剰つて居るものだから、お前を気絶さして了ひ、大変心配致したが、バラモン自在天の御加護によつて、やつと息吹き返したのだ。もうこれからは握手だけはやらない事にせうかい』 千草姫は可笑しくて耐らず、吹き出す許り思はるるを耐へ忍んで、態とに吃驚した様な顔をし乍ら、 千草『まあまあ嫌だわ、キユーバーさまとした事が、私を活かしたり、殺したり丸切手品師の様な事をなさるのだもの。本当に甚いわ。何程命を上げますと云つたつて、一夜の枕も交さぬ先に葬られて仕舞つては耐りませぬからね。本当に貴方は憎らしい人だわ。もう是から握手の交換は止めて呉れなんて、そんな事は嫌ですよ。気絶しない程度にそつと握手させて下さいな』 キユ『よし、そんならお前は俺の左の手を握れ。俺もお前の左の手を握つてやらう』 と云ひ乍ら両方から一度にグツと握り締めた。キユーバーは姫に厳しく左の手首を握られ、目が眩ひさうになつたので死物狂になつて、姫の手をグツと握つた。途端双方共一時に気絶し其場に倒れて仕舞つた。 デカタン高原の名物風は四辺の樹木の梢を叩いて何となく物騒がしい。 (大正一四・八・二三旧七・四於由良海岸秋田別荘加藤明子録) |
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霊界物語 | □_特別編-入蒙記 | 09 司令公館 | 第九章司令公館 蒙古の英雄盧中将の公館には源日出雄、守高、支那語の通訳王元祺の三名が日夜立籠り、盧の副官温長興、何全英、秦宣、盧重廷の幹部連が日出雄の接待役として盧の命に依つて懇切なる忠勤振りを発揮してゐた。真澄別や其他の満州浪人連は、水也商会其他を策源地として種々の協議をこらし、張作霖の諒解を求むる事に奔走してゐた。日出雄は日々訪ね来る支那の軍人に対し、通訳を介して神の道を説き、難病に苦しめる人等を救うてゐた。注意深い盧占魁は稍迷信に深い傾きがあり、日々三回計り一厘銭を六枚掌にのせて素人流の易占をやつて、其吉凶によりて自分の行動を決定するのだから、何事にも緩慢たるを免れなかつた。日本側の同志が首を鳩めて定めておいた事でも、易占が面白くないと彼盧占魁は、一も二もなく否認して採用しない。之には一同も大変に迷惑を感じてゐた。最後の解決は日出雄の断定によるより道はなかつた。 日出雄は支那人の近侍者や、日本側に一々支那服を調べて之を着用せしめ、姓名も支那風に変へて了つた。日出雄は王文祥、真澄別は王文真、守高は王守高、名田彦は趙徹、岡崎は侯成勲、大倉は石大良、萩原は王敏明、唐国別は王天海、佐々木は王昌輝等と改名し、支那人に化け済まして蒙古入を決行する準備に取掛つた。盧占魁は日出雄が支那服を誂へた時、ソツと被服商の主人に云ひ含め、支那にて有名なる観相学者を呼んで来て古来伝説にある救世主の資格の有無を調べむため、日出雄の骨格や容貌や、目、口、鼻、耳等の形から胸のまはり、手足の長短等から、指の節々、指紋等に至る迄を仔細に調べさせた結果、所謂三十三相を具備した天来の救世主だと云つた観相家の説に、随喜の涙をこぼし、愈々蒙古王国建設の真柱と仰ぐに至つたのである。かかる注意の下に盧占魁が日出雄の身体を調べてゐるに拘らず、日出雄は索倫山の本営に行つて盧占魁が自白するまで、そんな事とは気が付かなかつたのである。観相者は特に日出雄の掌中の四天紋と指頭の皆流紋を見て左の如き断定を下した。 掌中四天紋=乾為天[※乾為天(けんいてん)は易の六十四卦の一つ。] 大哉乾元万物資始乃統天雲行雨施品物流形大明終始六位時成時、時乗六竜以御天乾道変化各正性命保合太和乃利貞出庶物万国咸寧。[※これは易経の「乾為天」の解説文。読み下し文の一例を次に記す。──大いなる哉、乾元(けんげん)、万物(ばんぶつ)資(と)りて始(はじ)む。乃ち天を統ぶ。雲(くも)行き雨(あめ)施して、品(ひん)物(ぶつ)形(かたち)を流(し)く。大いに終始を明らかにせば、六位(りくい)時(とき)に成る(底本(全集)では最後に「時」があるがこれは一字多い)。時に六竜(りくりゅう)に乗りて、以て天を御(ぎょ)す。乾道(けんどう)変化して、各(おのおの)性命(せいめい)を正し、大和(だいわ)を保合(ほごう)す(底本(全集)では「大」ではなく「太」になっている)。乃ち利貞(りてい)なり。首(しゅ)として庶物(しょぶつ)に出でて、万国咸(ことごと)く寧(やす)し(底本(全集)では「首」が抜けている)。──参考文献:高島嘉右衛門『高島周易講釈』41頁、大正3年、https://dl.ndl.go.jp/pid/918144/1/33/近藤正則「「蘇氏易解」における朱子の蘇軾批判のモチ-フをめぐって」『東洋研究』1996年12月号、41~43頁、https://dl.ndl.go.jp/pid/7912866/1/22] 指紋皆流=坤為地[※坤為地(こんいち)は易の六十四卦の一つ。] 至哉坤元万物資生乃順承天、坤厚載物徳合旡彊、含弘光大品物亨牡馬地類行地旡彊柔順利貞君子攸行、光迷失道、後順得常西南得明乃与類行東北喪明乃終有慶安貞之吉応地旡彊。[※これは易経の「坤為地」の解説文。読み下し文の一例を次に記す。──至れる哉、坤元(こんげん)、万物(ばんぶつ)資(と)りて生ず。乃ち順にして天を承(う)く。坤(こん)厚うして物(もの)を載す。徳(とく)旡彊(むきょう)に合う。含弘光(がんこうこう)大にして、品物(ひんぶつ)咸(ことごと)く亨(とお)る(底本(全集)では「咸」が抜けている)。牡馬(ひんば)は地の類(るい)。地を行くこと彊旡(かぎりな)し。柔順(じゅうじゅん)利貞(りてい)は君子(くんし)の行う攸(ところ)なり。先んずれば迷いて道を失い(底本(全集)では「先」ではなく「光」になっている)、後(おく)るれば順(したが)うて常(つね)を得(う)。西南(せいなん)には朋(とも)を得(え)(底本(全集)では「朋」ではなく「明」になっている)、乃ち類(るい)と行く。東北には朋(とも)を喪(うしな)う(底本(全集)では「朋」ではなく「明」になっている)。乃ち終(つい)に慶び有り。安貞(あんてい)の吉(きつ)は地の旡彊(むきょう)に応ず。──参考文献:前掲『高島周易講釈』46~47頁/『易経 天の巻』190~191頁、1965年、ジャーナル社、https://dl.ndl.go.jp/pid/2994748/1/145] 盧占魁は更に日出雄の掌中に現はれたるキリストが十字架上に於ける釘の聖痕や、背に印せるオリオン星座の形をなせる黒子等を見て非常に驚喜した。そして此次第を哥老会の耆宿揚成業や蒙古王の貝勒、貝子鎮国公を初め、張彦三、張桂林、鄒秀明、何全孝、劉陞三、大英子児、賈孟卿等の馬賊の頭目や、張作霖部下の将校連にも之を示し、天来の救世主だ、此救世主を頭に戴いて内外蒙古に活躍すれば成功疑ひなしと、確信してゐたのである。それ故日出雄は蒙古に入つても凡ての上下の人々より、非常な尊敬と信用とを受けたのである。 ○ ここに日出雄と盧占魁と張作霖との関係について少し述べる必要がある。張作霖は最近の奉直戦によつて、自分の兵力の足らない事を非常に憂慮してゐた。万々一再び奉直戦が始まらうものなら、軍備の整はない東三省は忽ち敗北の運命に陥り、満州王として東三省に君臨する事の不可能なるを知つてゐた。そこで張作霖は何とかして、自分の勢力を内外蒙古に張つて北京を背面から圧迫し、脅威し、奉直戦の勃発を防がうと内々思つてゐたのである。そこで彼は盧占魁を利用して、内外蒙古に進出せしめ、アワよくば内外蒙古を完全に吾手に入れて見たいと思ふ野心を持つてゐた。今回盧が日出雄と提携して蒙古に大本王国を建設するについても、宗教心の尠い馬賊上りの張作霖は日出雄に対しては、あまり尊敬を払はなかつた。只うまく盧を介して自分の目的のために利用しようと思つたのみである。さうして狡猾な張作霖は盧占魁自身の金にて武器を調達せよと云つて、自分は手ぬらさずに内外蒙古を手に入れようとしたのである。盧占魁も張作霖の遣り方に対しては、内心非常に憤慨し、応援をしてくれた日出雄に対し、張作霖に対する尊敬と帰依とを移して傾注する事となつた。そして日出雄に向つて盧は一切万事その指揮に服従する事を誓つたのである。奉天管内に於ては西北自治軍と云ふ名称を旗印となし、愈索倫山に行つて陣営が整つた上は、内外蒙古救援軍と改称し、日出雄を総大将として大経綸を行ふ計画を以て、索倫に進出する事を企てたのである。 日出雄は盧の公館に滞在中、又もや数百の詩歌を詠んだ。其一部 路遠蜻蛉洲企回天鴻業 同志僅数名頭戴大神教 ○ 部下十万兵皆是決死士 志節簡直強神命奉頭進[※読み下し文の一例。──路(みち)遠く蜻蛉(せいれい)の洲(くに)、回天の鴻業(こうぎょう)を企つ。同志わずか数名、頭に大神教を戴く。部下、十万の兵、皆これ決死の士なり。志節、簡直(かんちょく)で強し、神命を頭に奉じて進む。] ○ 国のため世人のために我は今海外万里の旅にたつかな 言葉の通はぬ国に渡り来て生れもつかぬ唖となりぬる 聖地にて見たる月影奉天に眺むる空は殊にさやけし 大空に澄み渡りつつ高光る奉天の月殊にさやけし 小夜更けて月のみ独り大空に澄み渡りつつ霜に宿かる 澄みきりし月の鏡を眺めつつ心うつして暫し佇む 我友は自転倒島にあり乍ら仰ぎ見るらむ瑞月の空 月見れば益々心勇み立つ清き姿のたぐひなければ 東天の空に輝く満月は我行末の光とぞ思ふ 天の原打仰ぎつつ眺むれば日本に同じ月のかかれる 東天の大空高く澄む月は我魂の鏡なるらむ 澄み渡る今宵の月のさやけさに我魂のささやきを聞く 明らけき清けき今宵の月影を我恋ふ人の姿とや見む 我恋ふる人の姿の映れかしと月の鏡を打仰ぎ見る 我思ふ人の姿のうつれるかと月の中なる黒点を見る (大正一四、八、筆録) |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 大正4年旧11月26日 | 大正四年旧十一月二十六日 大国常立尊が三千世界の、上中下と三段に分けてある霊魂を、夫れ夫れに目鼻を附けて、皆を喜ぶやうに致すのは、根本の此世を創造るよりも何程気骨の折る事じゃ、人民では分らん事であるぞよ。初発の悪の霊魂は、悪の事なら何んな事でも出来るから、茲まで世界中を悪で搦みて了ふて、善といふ道は通らぬやうに致して来た、悪神の頭を露はして、トコトン往生を為せて、亦次に中の守護神を改心さして、下の守護神も続いて改心させねば、神世には成らんぞよ。下の守護神が一番に何彼の事が解らんなれど、改心を致さねば何うしても改心いたすやうに喜こばして改心させねば、叱る斗りでは改心の出来ぬ守護神も在るなり、何も解らん四つ足の守護神の如何にも成らぬドウクズは、天の規則通りに致して、埒宜く致さねば仕様はモウ無いぞよ。此の先で何時迄も改心の出来ぬ、悪魔に永う掛りて居りて、世の立替出来んやうな邪魔を致した守護神は、気の毒が今に出来致すぞよ。是丈け気を付けて知らして居るのに、改心の出来ん悪魔に成り切りて居る、霊魂の宿りて居る肉体は、可愛想でも、天地から定まりた規則通りの制配に致すぞよ。モウ何時までも解らんやうな守護神を助けて置いたら、世界が総損害に成りて、茲まで神が苦労いたした骨折が水の泡に成りて了ふぞよ。夫れでは永らく神が苦労いたした甲斐が無くなりて、天の大神様へ申訳が立んなり、神は守護神人民を助けたいのは、胸に充満であるから、モウ一度気を付けて置くから、何事が出て来ても神に不足は申されまいぞよ。是からは悪神の守護神の好きな事も、悪るき事も出来んやうに、天地から埒を附るから、何処を恨む事も出来ず、自己の心を恨める事も出来んやうになるぞよ。天地の先祖の神は善の守護神も悪の守護神も、皆を喜ばしたいと思ふて、色々と永らく気を附たなれど、ドウクヅの蛆虫同様の、醜しき聞解の無いものは、一と処へ寄して固めて灰にして了ふから、悪いものに悩められて、生命を取られるやうな肉体には蛆虫同様、海外の悪い脊属と、モ一つ下たな豆狸といふやうに、論にも杭にもかからんものに弄びに合ふて居るのは、肝腎の神の綱を切れて居る身魂であるぞよ。こんな守護神の宿りて居る肉体は、取払ひに為て了ふて此世界の大掃除を始めるぞよ。 天地の先祖の苦労の解らん身魂は、蛆虫同様であるから、斯んな身魂を此世に置いたら、世の汚れと成るから、神界の経綸通りに致して埒能く建替を致して、後の建直しが中々大望であるから、経綸通りに致して見せるぞよ。そう致すと神は善一つなれど、何も分らん世界の人民が、悪の守護神に引かされて、矢張り艮の金神は悪神で在りたと申すぞよ。細工は流々仕上げが肝心であるぞよ。天地の神の御恩も判らぬやうな、畜生より劣りた名の附けやうの無いものは、末代の邪魔になるから、天地の規則どうりに規めるから、悪の守護神の中でも改心の出来たのは、今度の立替に焼払ひになる所を助けてやるぞよ。蛆虫の中からでも助かるべき身魂が在れば、撰り出して善の方へ廻してやるぞよ。 天の大神様がいよいよ諸国の加美に、立替の命令を降しなされたら、艮金神国常立尊が、総大将となりて、雨の神、風の神、岩の神、荒の神、地震の神、八百万の眷属を使ふと、一旦は激しいから、可成は静まりて世界の守護を為せるなれど、昔の純粋の日本魂の活神の守護と成りたら、此中へ来て居る身魂に申附てある事を、みな覚えて居るであろうが、一度申した事は其様に致すから、神の申すことを一度で聞く身魂で無いと、十分の事は無いぞよ。モウ神からは此上人民に知らせる事はモウ無いから、大峠が出て来てから、如何様でも改心をしますで赦して下されと何程申しても、赦すことは出来んぞよ。是程大望な昔からの仕組を、今になりて変るやうな事を致して居りたら、二度目の世の立替の、大きな経綸が成就致さんぞよ。根本から大洗濯を致して、末代世界の苦舌が無いやうに致して、外国の害をする霊魂が、学で此世を暗黒にして了ふて、正味のないカラの教やら仏のやりかたは、世の大元からの教でない、途中から出来たものは末代の世の行り方には用いんぞよ。 今の日本の上に立て居る守護神は、外国の学ほど結構なものは無いと申して、日本へ渡りて来られん霊魂が、日本の神の御血筋を抱き込みて、好き寸法に致して、此先をモ一つ悪を強くして、悪で末代立て行うとの、エライ目的でありたなれど、モウ悪の霊や仏霊の世の終りと成りたぞよ。本の日本へ世が戻りて、天と地との先祖が末代の世を持たねば、外の霊魂では此世は続かん、口舌の絶えるといふ事は無いぞよ。外国の霊魂の守護神では、途中から世が乱れて、往きも還りも成らんのが、現今の事であるぞよ。大国常立尊が変生男子の霊魂の宿りて居る肉体を借りて、末代の世を受取りて、世の元の清浄の誠の生神ばかりが表に現はれて、天地の先祖の御手伝で、数は尠いなれど、神力は御一柱の生神の御手伝が在り出しても、霊魂の神が何程沢山でも、元の誠の生神の力には叶はんから、同じ様な事を申して、細々と今に続いて知らして居るなれど、途中に出来た枝の神やら、外国から渡りて来て居る、修行なしの利己主義の行り方の守護神では、日本の肝心の事は解りは致さんぞよ。誠の事の解る綾部の大本へ出て来て、いろはからの勉強を致さねば、学は金を入れた丈けの力は出るなれど、天から貰ふた霊魂に附いた、生れ付きの力でないから、仏事の世の間は結構で在りたなれど、モウ仏事の世の終りとなりたから、今迄の学では二度目の世の立替にはチットも間に合はんぞよ。 |
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伊都能売神諭 | 神諭一覧 | 大正8年2月6日 | 大正八年一月二七日 大正八年一月二十七日旧十二月二十六日 艮の金神変性男子の御魂が、地の高天原の竜宮館に現はれて、世界の事を誌しおくぞよ。五六七の神が御出ましに成りたから、世が押釣りて天の鳥船や鳥の磐樟船の神が、空中を自由自在に荒れ廻はし、世界中に火の雨を降らして地の世界を苦しめ、神国を外国に致す悪神の企みが、九分九厘に成りて来たなれど、日本の国は神国であるから、四ツ足が何程上空へ昇りて、悪を働かうと致しても、四ツ足身魂の眼に付かぬ金神の鳥船が、中界を守護いたして居るから大丈夫であるぞよ。火の神も羽張り出すぞよ。火の輝日子や迦倶槌や、火の焼速男の神はエライ勢いで、明治三十年代から荒れ廻りて来たが、今度はモ一とつ烈しき活動をいたすから、人民も油断はいたされんぞよ。青山は枯山となり、海川は残らず泣き干す時節が近よりたぞよ。金山彦や金山姫を多具理上げる時節が参りて、今の成金の体主霊従の身魂が、頭を土に着けて苦しむ時節が今に来るぞよ。クハラの跡は草原となり、ススキの跡は薄原、イハサキの跡は茨咲き、フジタの末は不事多となるぞよ。三ツの泉の水も涸れ、ツルの池水は濁りに濁りて、鮒や鯰が泥に困しみ悶える時節が来るぞよ。鶴の宝は雀が拾ひ、亀の宝は小魚が喰ふ。山は変りて淵と成り、海の中にも山が湧く、是が体主霊従の身魂の年の空であるぞよ。秋風待てど罪悪の、日に夜にフユの霜先に葉も実も散りて丸裸、夜寒の凌ぎも何んと詮方なつ虫の、飛んで火に入る憐れさを、見せまいものと朝夕に、神の出口の手を借りて、助け与らんと艮の、神の心は五月暗み、泣く郭公血も涸れて、救ひの術も泣く斗り、神の心配酌み取りて、早く改心頼むぞよ。 艮の金神変性男子の身魂が、天地の間を守護致して、三千世界の大掃除を致すに付ては、ミロクの大神様は金竜に跨がり、大直日主命は銀竜に、若日女君の命は金剛に打乗り、天と中界と地の上を守護致して居るから、是からは経綸が一日増に良く解りて来るから、大本の内と外との誠の役員信者は、確りと胴を据へて下さらぬと今迄のやうな気楽な事では、肝心の御用が後れて了ふぞよ。宇宙の塵埃曇り汚れを掃き祓ふ、神の経綸の箒星、不意に出現する時は、天津大空澄み渡り、神の威勢の強くして、空に懸れる群星は、天の河原に集りて、言問ひ議り議り問ひ、終には思案も手術も泣き暗し、地上一つの神光を、尋ねて各自に降り来る、大木の蔭や神館、綾に畏き地上の高天原、神の助けを請ひ奉り、身魂清めて苅こもの、乱れ果てたる世の中を、元の神代に立直す善と悪との戦いに、大本直日大神を、総大将と戴きて、曲つ軍を打罰ため、言向和はす空前絶後の大神業は、いろはの産の神御魂、誉れを千代に遺す経綸の、奥の手の只一輪の白梅の、花咲き実のる常磐木の、松の神代こそ尊とけれ。金竜銀竜金剛剱破四ツの神馬のいななきは、天地に響く言霊の、神の力と神人の日本魂の活動に四方の国々依り来り、天津日嗣も永遠に、治まる神代の瑞相は、七堂伽ランの神界の、世界鎮めの基礎と成り渡るぞよ。 |