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(25)
ひふみ神示 1_上つ巻 第25帖 一日に十万、人死にだしたら神の世がいよいよ近づいたのざから、よく世界のことを見て皆に知らして呉れよ。この神は世界中のみか天地のことを委されてゐる神の一柱ざから、小さいこと言ふのではないぞ、小さいことも何でもせなならんが、小さい事と臣民思うてゐると間違ひが起るから、臣民はそれぞれ小さい事もせなならんお役もあるが、よく気をつけて呉れよ。北から来るぞ。神は気もない時から知らして置くから、よくこの神示、心にしめて居れよ。一日一握りの米に泣く時あるぞ、着る物も泣くことあるぞ、いくら買溜めしても神のゆるさんもの一つも身には附かんぞ、着ても着ても、食うても食うても何もならん餓鬼の世ざ。早う神心にかへりて呉れよ。この岩戸開くのは難儀の分らん人には越せんぞ、踏みつけられ踏みつけられている臣民のちからはお手柄さして、とことはに名の残る様になるぞ。元の世に一度戻さなならんから、何もかも元の世に一度は戻すのざから、その積りで居れよ。欲張っていろいろ買溜めしてゐる人、気の毒が出来るぞ、神よく気をつけて置くぞ。この道に縁ある人には、神からそれぞれの神を守りにつけるから、天地の元の・の大神、くにの大神と共に、よく祀りて呉れよ。六月の三十日、ひつくのか三。
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(96)
ひふみ神示 3_富士の巻 第16帖 あらしの中の 捨小舟 ぞ、 どこへ行くやら 行かすやら、 船頭さんにも 分かるまい、 メリカ、キリスは 花道で、 味方と思うた 国々も、 一つになりて 攻めて来る、 梶も櫂さへ 折れた舟、 何うすることも なくなくに、 苦しい時の 神頼み、 それでは神も 手が出せぬ、 腐りたものは 腐らして 肥料になりと 思へども、 肥料にさへも ならぬもの、 沢山出来て 居らうがな、 北から攻めて 来るときが、 この世の終り 始めなり、 天にお日様一つでないぞ、 二つ三つ四つ 出て来たら、 この世の終りと 思へかし、 この世の終りは 神国の 始めと思へ 臣民よ、 神々様にも 知らすぞよ、 神はいつでも かかれるぞ、 人の用意を いそぐぞよ。 八月二十四日、の一二か三。
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(796)
ひふみ神示 31_扶桑の巻 第8帖 平坂の 岩戸[言答]ひらけむ 音のきこゆる。 神に怒りはないのであるぞ、天変地異を神の怒りと取違ひ致してはならん。太神は愛にましまし、真にましまし、善にましまし、美にましまし、数にましますぞ。また総てが喜びにましますが故に怒りはないのであるぞ、若し怒りが出た時は、神の座から外れて了ふのであるぞ。救ひの手は東よりさしのべられると知らしてあろが、その東とは、東西南北の東ではないぞ、このことよく判りて下されよ。今の方向では東北から救ひの手がさしのべられるのぢゃ、ウシトラとは東北であるぞ、ウシトラコンジンとは国常立尊で御座るぞ、地-千、智-の元の、天地の元の元の元の神ぞ、始めの始め、終りの終りぞ、弥栄の弥栄ぞ、イシヅヱぞ。
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(1018)
霊界物語 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 21 大地の修理固成 第二一章大地の修理固成〔二一〕 大国常立尊はそこで、きはめて荘厳な、厳格な犯すことのできない、すばらしく偉大な御姿を顕はし給ひて、地の世界最高の山巓にお登り遊ばされて四方を見渡したまへば、もはや天に日月星辰完全に顕現せられ、地に山川草木は発生したとはいへ、樹草の類はほとんど葱のやうに繊弱く、葦のやうに柔かなものであつた。そこで国祖は、その御口より息吹を放つて風を吹きおこし給うた。その息吹によつて十二の神々が御出現遊ばされた。 ここに十二の神々は、おのおの分担を定めて、風を吹き起したまうたが、その風の力によつて松、竹、梅をはじめ、一切の樹草はベタベタに、その根本より吹倒されてしまうた。大国常立尊はこの有様を眺めたまうて、御自身の胸の骨をば一本抜きとり、自ら歯をもつてコナゴナに咬みくだき、四方に撒布したまうた。 すべての軟かき動植物は、その骨の粉末を吸収して、その質非常に堅くなり、倒れてゐた樹草は直立し、海鼠のやうに柔軟匍匐してゐた人間その他の諸動物も、この時はじめて骨が具はり、敏活に動作することが出来るやうになつた。五穀が実るやうになり、葱のやうに一様に柔かくして、区別さへ殆どつかなかつた一切の植物は、はつきりと、おのおの特有の形体をとるやうになつたのも此の時である。骨の粉末の固まり着いた所には岩石ができ、諸々の鉱物が発生した。これを称して岩の神と申し上げる。 しかるに太陽は依然として強烈なる光熱を放射し、月は大地の水の吸収を続けてゐるから、地上の樹草は次第に日に照りつけられて殆ど枯死せむとし、動物も亦この旱天つづきに非常に困つてゐた。しかし月からは、まだ水を吸引することを止めなかつた。このままで放任しておくならば、全世界は干鰈を焦したやうに燻つてしまふかも知れないと、大国常立尊は山上に昇つて、まだ人体化してをらぬ諸々の竜神に命じて、海水を口に銜んで持ちきたらしめ給うた。 諸々の竜神は命を奉じて、海水を国祖の許に持ちきたつた。国祖はその水を手に受けて、やがてそれを口に呑み、天に向つて息吹をフーと吹き放たれた。すると天上には色の濃い雲や淡い雲や、その他種々雑多の雲が起つてきた。たちまち雲からサツと地上に雨が降りはじめた。この使神であつた竜神は無数にあつたが、国祖はこれを総称して雨の神と名付けたまうた。 ところが雨が降すぎても却て困るといふので、これを調和するために、大国常立尊は御身体一杯に暑いほど太陽の熱をお吸ひになつた。さうして御自分の御身体の各部より熱を放射したまうた。その放射された熱はたちまち無数の竜体と変じて、天に向つて昇騰していつた。国祖はこれに火竜神といふ名称をお付けになつた。(筆に書いては短いが大国常立尊がここまで天地をお造りになるのに数十億年の歳月を要してゐる) 尊はかくの如くにして人類を始め、動物、植物等をお創造り遊ばされて、人間には日の大神と、月の大神の霊魂を賦与せられて、肉体は国常立尊の主宰として、神の御意志を実行する機関となし給うた。これが人生の目的である。神示に『神は万物普遍の霊にして人は天地経綸の大司宰なり』とあるも、この理に由るのである。 しかるに星移り年をかさぬるにしたがつて、人智は乱れ、情は拗け、意は曲りて、人間は次第に私欲を擅にするやうになり、ここに弱肉強食、生存競争の端はひらかれ、せつかく神が御苦心の結果、創造遊ばされた善美のこの地上も亦、もとの泥海に復さねばならぬやうな傾向ができた。 しかるに地の一方では、天地間に残滓のやうに残つてゐた邪気は、凝つて悪竜、悪蛇、悪狐を発生し、或ひは邪鬼となり、妖魅となつて、我侭放肆な人間の身魂に憑依し、世の中を悪化して、邪霊の世界とせむことを企てた。そこで大国常立大神は非常に憤りたまうて、深い吐息をおはきになつた。その太息から八種の雷神や、荒の神がお生れ遊ばしたのである。 それで荒の神の御発動があるのは、大神が地上の人類に警戒を与へたまふ時である。かうしてしばしば大神は荒の神の御発動によつて、地上の人類を警戒せられたが、人類の大多数は依然として覚醒しない。そこで大神は大いにもどかしがりたまひ伊都の雄猛びをせられて、大地に四股を踏んで憤り給うた。そのとき大神の口、鼻、また眼より数多の竜神がお現はれになつた。この竜神を地震の神と申し上げる。国祖の大神の極端に憤りたまうた時に地震の神の御発動があるのである。大神の怒りは私の怒りではなくして、世の中を善美に立替へ立直したいための、大慈悲心の御発現に外ならぬのである。 大国常立尊が天地を修理固成したまうてより、ほとんど十万年の期間は、別に今日のやうに区劃された国家はなかつた。ただ地方地方を限つて、八王といふ国魂の神が配置され、八頭といふ宰相の神が八王神の下にそれぞれ配置されてゐた。 しかるに世の中はだんだん悪化して、大神の御神慮に叶はぬことばかりが始まり、怨恨、嫉妬、悲哀、呪咀の声は、天地に一杯に充ちわたることになつた。そこで大国常立大神は再び地上の修理固成を企劃なしたまうて、ある高い山の頂上にお立ちになつて大声を発したまうた。その声は万雷の一時に轟くごとくであつた。大神はなほも足を踏みとどろかして地蹈鞴をお踏みになつた。そのため大地は揺れゆれて、地震の神、荒の神が挙つて御発動になり、地球は一大変態を来して、山河はくづれ埋まり、草木は倒れ伏し、地上の蒼生はほとんど全く淪亡るまでに立ちいたつた。その時の雄健びによつて、大地の一部が陥落して、現今の阿弗利加の一部と、南北亜米利加の大陸が現出した。それと同時に太平洋もでき上り、その真中に竜形の島が形造られた。これが現代の日本の地である。それまでは今の日本海はなく支那も朝鮮も、日本に陸地で連続してゐた。この時まで現代の日本の南方、太平洋面にはまだ数百里の大陸がつづいてゐたが、この地球の大変動によつて、その中心の最も地盤の鞏固なる部分が、竜の形をして取り残されたのである。 この日本国土の形状をなしてゐる竜の形は、元の大国常立尊が、竜体を現じて地上の泥海を造り固めてゐられた時のお姿同様であつて、その長さも、幅も、寸法において何ら変りはない。それゆゑ日本国は、地球の艮に位置して神聖犯すべからざる土地なのである。もと黄金の円柱が、宇宙の真中に立つてゐた位置も日本国であつたが、それが、東北から、西南に向けて倒れた。この島を自転倒嶋といふのは、自ら転げてできた島といふ意味である。 この島が四方に海を環らしたのは、神聖なる神の御息み所とするためなのである。さうしてこの日本の土地全体は、すべて大神の御肉体である。ここにおいて自転倒嶋と、他の国土とを区別し、立別けておかれた。 それから大神は天の太陽、太陰と向はせられ、陽気と陰気とを吸ひこみたまうて、息吹の狭霧を吐きだしたまうた。この狭霧より現はれたまへる神が稚姫君命である。 このたびの地変によつて、地上の蒼生はほとんど全滅して、そのさまあたかもノアの洪水当時に彷彿たるものであつた。そこで大神は、諸々の神々および人間をお生みになる必要を生じたまひ、まづ稚姫君命は、天稚彦といふ夫神をおもちになり、真道知彦、青森知木彦、天地要彦、常世姫、黄金竜姫、合陀琉姫、要耶麻姫、言解姫の三男五女の神人をお生みになつた。この天稚彦といふのは、古事記にある天若彦とは全然別の神である。かくのごとく地上に地変を起さねばならぬやうになつたのは、要するに天において天上の政治が乱れ、それと同じ形に、地上に紛乱状態が現はれ来つたからである。天にある事はかならず地に映り、天が乱れると地も乱れ、地が乱れると、天も同様に乱れてくるものである。そこで大神は天上を修理固成すべく稚姫君命を生みたまうて天にお昇せになり、地は御自身に幽界を主宰し、現界の主宰を須佐之男命に御委任になつた。 (大正一〇・一〇・二〇旧九・二〇谷口正治録)
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(2460)
霊界物語 48_亥_治国別の天国巡覧2 07 六道の辻 第七章六道の辻〔一二六一〕 精霊界は善霊悪霊の集合する天界地獄の中間的境域にして、之を天の八衢といふ事は既に述べた所である。さて八衢は仏教者の云ふ六道の辻の様なものである。又人の死後此八衢の中心なる関所に来るには、いろいろの道を辿るものである。東西南北乾坤巽艮と、各精霊は八方より此関所を中間として集まり来るものである。東から来る者は大抵は精霊の中でも良い方の部分であり、さうして三途の川が流れてゐる。どうしても此関所を通らなければならないのである。又西から来る者は稍魂の曇つたものが出て来る所であつて、針を立てたやうな、所謂剣の山を渉つて来る者である。ここを渉るのは僅に足を容るるだけの細い道がまばらに足型丈残つて居つて、一寸油断をすればすぐに足を破り、躓いてこけでもしようものなら、体一面に、針に刺されて苦しむのである。又北から来る者は冷たい氷の橋を渡つて来る。少しく油断をすれば幾千丈とも知れぬ深い泥水の流れへ落ち込み、そして其橋の下には何とも云へぬ厭らしい怪物が、鰐の様な口をあけて、落ちくる人を呑まむと待つてゐる。そして其上骨を刻む如き寒い風が吹きまくり、手足が凍えて、殆ど生死の程も分らぬやうな苦しい思ひに充されるのである。又南の方から来る精霊は、山一面に火の燃えてゐる中を、焔と煙をくぐつて来なくてはならない。之も少しく油断をすれば煙にまかれ、衣類を焼かれ、大火傷をなして苦しまなくてはならぬ。併しながら十分に注意をすれば、火傷の難を免れて八衢の中心地へ来る事を得るのである。又東北方より来る者は寒氷道と云つて、雪は身を没するばかり寒い冷たい所を、野分に吹かれながら、こけつまろびつ、死物狂ひになつて数十里の長い道を渉り、漸くにして八衢の中心地へつくのである。又東南より来る精霊は、満目蕭然たる枯野ケ原を只一人トボトボとやつて来る。そして泥田やシクシク原や怪しき虫の居る中を、辛うじて中心地へ向ふのである。又西南より来る精霊は、崎嶇たる山坂や岩の上をあちらへ飛び此方へ飛び、種々の怪物に時々襲はれながら、手足を傷つけ、飛んだり転げたりしながらに、漸く八衢の中心地に出て来るものである。又西北より来る精霊は、赤跣足になり、尖つた小石の路を足を痛めながら、漸くにして命カラガラ八衢へ来るものである。併しながら斯の如き苦しみを経て各方面より之に集まり来る精霊は、何れも地獄へ行くべき暗黒なる副守護神の精霊ばかりである。而して各方面が違ひ苦痛の度が違ふのは、其精霊の悪と虚偽との度合の如何に依るものである。又善霊即ち正守護神の精霊は、何れの方面より来るも、余り苦しからず、恰も春秋の野を心地よげに旅行する様なものである。これは生前に尽した愛善の徳と信真の徳によつて、精霊界を易々と跋渉する事を得るのである。善の精霊が八衢へ指して行く時は、殆ど風景よき現世界の原野を行く如く、或は美はしき川を渡り、海辺を伝ひ、若くは美はしき花咲く山を越え、或は大河を舟にて易々と渡り、又は風景よき谷道を登りなどして漸く八衢に着くものである。正守護神の通過する此八衢街道は、殆ど最下層天国の状態に相似してゐるのである。而して八衢の関所は正守護神も副守護神も、凡てのものの会合する所であつて、此処にて善悪真偽を査べられ、且修練をさせられ、いよいよ悪の改善をする見込のなきものは、或一定の期間を経て地獄界に落ち、善霊は其徳の度に応じて、各段の天国へそれぞれ昇り得るものである。 針の山を越えて漸く此処に息も絶え絶えにやつて来たのは、バラモン教の先鋒隊片彦将軍であつた。片彦は赤門の前に意気揚々と、ヤレ楽だといふやうな気になつてやつて来ると、赤白の守衛は、 赤白の守衛『暫く待てツ』 と呼びとめた。片彦は物見櫓の上から谷底へ真逆様に投げ込まれ、肉体の死んだことは少しも気がつかず、依然として現界に居るものの如く信じてゐた。それ故守衛の一喝に会ひ、少しも騒がず、 片彦『拙者は大自在天大国彦神の教を奉じ、且つ数多の軍勢を率ゐて斎苑の館へ進軍の途中、浮木ケ原へ陣営をかまへて、戦備をととのへゐる、宣伝使兼征討将軍片彦で厶る。某は酩酊の余り、道にふみ迷ひ、実に烈しき針の如き草木の茂れる霜の山を通り、漸く此処までやつて来たもので厶る。此処は何といふ所で厶るか、少時休息を致すによつて、腹も余程減つたなり、体も疲れたから、酒でもふれまつてくれまいか、あつい茶があれば、一杯戴きたいものだ』 赤の守衛は目をギロリと剥き、 赤の守衛『当関所は霊界の八衢にて、伊吹戸主神の御関所だ。其方は浮木の森の陣営に於て、ランチ将軍の副官に後手に縛られ、谷川へほり込まれ、絶命致して此処へ迷うて来た精霊だ。精霊の中でも最も憎むべき、汝は悪霊だ。サア此処に於て、其方の罪の軽重を査べてやらう』 片彦『ヘヽー、何を吐しよるのだ。馬鹿にするな。俺は酒にこそチツとばかり酔うたが、死んだ覚はない。一体ここは何処だ。本当の事を申さぬと、此儘にはすまさないぞ。大方其方は往来の路人をかすめる泥棒だらう』 赤の守衛『馬鹿だなア、確り致さぬか、そこらの光景を見よ。これでも気がつかないか』 片彦『別にどこも変つた所がないぢやないか、世間並に樹木もあれば、道路もある。小さい池もあれば川も流れてゐる。人間も道々沢山に出会つて来た。左様な事を申して、吾々を脅迫しようと致しても、いつかないつかな誑されるやうな片彦将軍ではないぞ。左様な不都合な事を申すと、ふん縛つて陣営につれ帰り、火炙りの刑に処してやらうか、エエーン』 赤は片彦の手をグツと後へ廻し、鉄の紐にてクルクルとまきつけ、伊吹戸主の審判廷へ引き立てた。 片彦『ヤア此処は何だか妙な処だ。俺をかやうな所へ、縛つてつれて来るとは何事だ』 赤の守衛『先づ待つてゐろ、これから地獄行の言渡しがあるから……』 と云ひすて、青色の守衛に片彦を任せおき、慌しく表へ駆け出した。少時あつて、青赤の衣類をつけたる、いかめしき守衛や獄卒の如き者ドカドカと入り来り、片彦の身辺を取巻き、どこへもやらじと厳重に警戒してゐる。片彦は金剛力を出して、鉄の綱を引きちぎり、片方の腰掛をグツと手に取るより早く、前後左右にふりまはし、館の戸を無理に押開け、八衢の赤門前へ驀地に走り来り、門の敷居に躓きパタリと倒れ、暫しは人事不省に陥つて了つた。 暫くするとランチ将軍及びガリヤ、ケースの三人は、東の方からスタスタと足早に走り来り、 ランチ『オイ両人、此処はどこだ、そこに門番が居る。一寸尋ねて来い』 ガリヤ『ハイ、承知しました。何だか、四辺の情況が怪しう厶います。どうぞ、貴方はケースと共に少時ここにお待ちを願ひます』 と云ひ棄て、門口近く進み寄つた。見れば一人の男が倒れてゐる。何人ならむと近寄つて顔をのぞき見れば、豈計らむや片彦将軍であつた。ガリヤは驚いて、ツカツカと元来し道へ引返し、 ガリヤ『モシ、将軍様、不思議な事があるものです。物見台から谷底へ投込んで殺してやつた片彦将軍が、あの門の中べらに倒れて居ります。片彦将軍はいつの間にこんな所へ逃げて来たのでせうか』 ランチ『成程、ここから見ても、よく似てゐる様だ。ハヽー、誰かに助けられ、此処まで逃げて来よつたのだなア。大方酒にでも酔うてゐるのだらう。何はともあれ、近づいて査べてみよう』 といひながらランチは進みよつた。そしてよくよく見れば、疑もなき片彦将軍である。ランチは肩を切りにゆすり、 ランチ『オイオイ片彦、貴様は命冥加のある奴だ。早く起きぬかい、かやうな所でイビキをかいて寝て居るといふ事があるか』 片彦は此声にハツと気がつき、ムクムクと起き上り、 片彦『ヤア、其方はランチ将軍、ガリヤ、ケースの三人だなア。ヤア良い所で会うた。此方を高殿から突落しよつたのを覚えて居るか。斯くなる上は最早了簡相成らぬ。サア尋常に勝負致せ』 ランチ『アハヽヽヽヽ、蟷螂の斧をふるつて竜車に向ふとは其方の事だ。こちらは武勇絶倫の勇士三人、如何に汝鬼神をひしぐ勇ありとも、到底汝一人の力に及ばむや、左様な無謀な戦ひを挑むよりも、体よく吾軍門に降つたら何うだ』 片彦『馬鹿を申せ、此方を谷底へ投込んだのみならず、最愛の清照姫、初稚姫まで横奪した恋の仇、モウ斯うなる上は片彦が死物狂、命をすてた此方、サア、かかるならかかつてみよ』 ランチ『ヤ、片彦、あの美人は妖怪で厶つたぞや。拙者もあの美人が虎とも狐とも狼とも譬方ない形相をして、拙者を睨みつけた時は、本当に肝をつぶし、ヨロヨロとヨロめいた途端に、高殿の欄干に三人一時にぶつ倒れ、其はづみに高欄はメキメキとこはれ、泡立つ淵に向つて三人は急転落下の厄に遇ひ、已に溺死せんとする所、命冥加があつたと見え、吾々三人は岸に泳ぎつき、無我無夢になつて此処まで走り来て見れば、門の傍に一人の行倒れ、救ひやらむと、ガリヤを遣はし調べて見れば片彦将軍と聞き、取るものも取敢ず救助に向つたのだ。最早彼の女が妖怪であり、又拙者が貴殿と同様、高殿より水中におち、双方無事に命を保ち得たのは、全く大自在天様の御守護の致す所だ。モウ斯うなる上は、今迄の恨をスツパリと水に流し、旧交を温めようぢやないか』 片彦『さうだ、拙者も斯うして命の繋げた限りは、貴殿と別に赤目つり合うて争ふにも及ぶまい。何分宜しく御頼み申す。併しランチ殿、此処は不思議な所で厶る。この門内に高大なる館があり、数多の番卒共が立籠り、拙者を軍法会議に附せむと致しよつた。そこで拙者は後手に縛られた鉄の綱を剛力に任せて切断し、門の戸を押破り逃来る途中、門の閾に躓き顛倒して、暫く目をまはしてゐたのでござる。そこを貴殿がお助け下さつたのだから、命の御恩人、最早怨みは少しも御座らぬ、サ是より浮木の森の方角を尋ね、一時も早く陣営へ帰らうでは厶らぬか、さぞ軍卒共が心配を致して居りませう』 斯かる所へ、ヒヨロリヒヨロリとやつて来たのはお民であつた。 片彦『ヤア其方はお民どのぢや厶らぬか、ようマア拙者の後を尋ねて来て下さつた。ヤア感謝致す』 お民『ハイ、ここは何処で厶いますか』 片彦『サア地名がサツパリ分らないのだ。最前も赤い面した奴が一人やつて来よつて、八衢だとか関所だとか威かしよつたが、俺の勢に辟易して、何処ともなく消え失せて了ひよつた。アツハヽヽヽヽ、併しお民、俺を慕ふ心が何処までも離れぬと見えて、こんな名も知れない所まで、よくついて来てくれた。イヤ本当に優しい女だ』 お民『あの片彦様の自惚様わいのう。私には蠑螈別さまといふ立派な夫が厶いますよ。あなたは人の上に立つ将軍の身でゐながら、主ある女に恋慕するとは余りぢやありませぬか、チツと心得なされませ』 片彦『言はしておけば、女の分際として、聞くに堪へざる雑言無礼、いよいよ軍法会議にまはし、其方を重き刑罰に処してやるから、覚悟を致したがよからう』 お民『ホヽヽヽヽ、あなたも余程常識のない方ですね。軍人でもないもの、而も軍隊に何一つ関係のない此女一人をつかまへて、軍法会議にまはすなんて、余り常識がなさ過ぎるぢやありませぬか、ねえランチ将軍様、まるで片彦将軍は八衢人足みたやうな方ですねえ。ホツホヽヽヽ』 ランチ『サア、どうかなア』 片彦『コリヤお民、何といふ無礼な事を申すか、八衢人足とは何だ。畏くも大自在天様の御恩寵を受けた、万民を天国に救ひ、且つ世界の動乱をしづめる宣伝将軍様だぞ。八衢にさまよふ奴は、其方や蠑螈別の如き人足だ』 お民『ホツホヽヽヽヽ、私が八衢人足なら、あなた方皆さうですワ。現に八衢の関所へ迷つて来てゐるぢや厶いませぬか。あれ御覧なさい、あすこに館が厶いませう。あこが閻魔さまのお館で厶いますよ。何れここで、私もあなた方も取調べられるにきまつてゐます。其時になれば私が天国へ行くか、あなた方が地獄へお落ち遊ばすか、ハツキリと分りませうから、マア楽んでお待ちなさいませ』 片彦『コリヤお民、其方は狂気致したか、死んでるのぢやないぞ。今から亡者気取りになつて何とする。コレコレランチ殿、お民に気つけを呑ましたいと思ひますが、生憎途中にて肝腎の薬を遺失致しました。少しばかり貴方の分を与へてやつて下さい』 ランチ『拙者も川へ落込んだ刹那、肝腎の霊薬を川へ落したと見えます、仕方がありませぬワ』 お民『ホヽヽヽヽ、私の方から気付を上げたい位だが、私も生憎持合せがないので、仕方がありませぬ。併しながら今赤鬼さまがお調べ下さるでせうから、其時になつてビツクリなさいますなや、本当にお気の毒さまですワ。あなたの霊衣は浮木の森の陣営に厶つた時とは大変に薄くなつてゐますよ。気の毒な運命が、あなた方の頭上にふりかかつて来てるやうに思へてなりませぬワ』 片彦『気の違つた女といふものは、どうも仕方がないものだなア』 斯く話す所へ、今度は十人ばかりの赤面の守衛が突棒、刺股などを携へ、いかめしき装束をして、バラバラと五人の周囲を取巻いた。 ランチ『拙者はバラモンの先鋒軍、ランチ将軍で厶る。其方は何者なるや知らねども、其いかめしき形相は何事ぞ。それがしを護衛の為か、但は召捕る考へか、直様返答を致せ』 守衛の一『ここは霊界の八衢だ、其方等は已に肉体を離れ、ここに生前の業の酬いによつて、今や審判を受けねばならぬ身の上となつてゐるのだ。サア神妙に冥土の御規則に従ひ、此衡の上に一人々々乗つたがよからう、罪の軽重大小によつて、其方の行くべき所を定めねばならぬ。サ、キリキリと此衡にかかれ』 ランチは双手を組み、 ランチ『ハーテナア』 (大正一二・一・一二旧一一・一一・二六松村真澄録)
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霊界物語 59_戌_イヅミの国2(キヨの港) 01 逆艪 第一章逆艪〔一五〇一〕 広袤千里のキヨの湖俄に天候一変し 逆巻浪に船体を上下左右に奔弄され 悪虐無道のワックスも肝腎要の機関手を 逆巻波に攫はれて進みもならず退きも ならぬ海路の苦しさに気を取直し立上り 無性矢鱈に櫓を漕いで何れの岸にか辿らむと 心あせれど生れつきテルモン山の片隅に 鳥なき里の蝙蝠を気取つて威張りちらしたる 其天罰は忽ちに報ゐ来りて湖の上に 心焦れば焦る程老朽船はキリキリと 浪の面で目を眩すワックス初め三人は 舟諸共に目を眩し方角さへも見失ひ 逆巻波と闘ひて運をば天に任しつつ ワックス『梵天帝釈自在天大国彦の大御神 守らせ玉へ吾々はこの海上の暴風に会ひ 神の試練と畏みていよいよ改心仕り サットヷ(衆生)済度のそのために此長髪を剃りおとし 此世を捨てて比丘となりニテヨーデユクタ(常精進)を励みつつ 至仁至愛の大神の誠の教に仕ふべし あゝ皇神よ皇神よ吾等四人の改心を 憫れみ玉ひて此颶風をとめさせ玉へ惟神 赤心籠めて願ぎ奉る悪魔は如何に強く共 憑き物如何に多くとも仮令スマートが来る共 誠一つのバラモンの教の道は世を救ふ テルモン山の山颪早く治まり吾々の 行手の幸を守りませ偏に願ひ奉る テルモン山の聖地をば痛い苔を加へられ 追放された吾々は最早詮なし月の国 ハルナの都に立出でて心の底より改良し 命を惜まず魂を大黒主に奉り 一心不乱に神の旨を四方に開かむ吾が覚悟 此海無事にキヨ港の花咲く岸に安々と 進ませ玉へ惟神神かけ念じ奉る』 と一生懸命に歌ひ乍ら櫓を操てゐる。バラモンの大神がワックスの願ひを聴許遊ばしたのか、或は三五教の大本大神がお許し遊ばしたのか、不思議にも颶風はピタリと止まり、見るも恐ろしき激浪怒濤は漸く凪いで鏡面の如く鎮まり、浪キラキラと日光に輝き初めた。テルモン山は前方に当つて、雲表に高く其雄姿を現はし、中腹に雲の帯を締めて、泰然として此湖面を眺めてゐる。ワックスは大旱の水田に喜雨を得たるが如く、俄に元気恢復し、叶はぬ時の神頼み、慄ひ戦いてゐた魂はどこへやら、ソロソロ減らず口を叩き始めたり。 『オイ、エキス、ヘルマンの恐喝先生、六百円の強奪者、並びに睾丸潰しのエルの奴、何をグヅグヅしてゐやがるのだい。いいかげんに頭を上げぬかい。仕方のない代物だなア。流石の颶風も怒濤も、此ワックスさまの御祈願に仍つて、之れ見ろ。言下に静まり、ケロリカンとして、夢をみたやうな面をさらしてゐるぢやないか。本当にワックスさまの御威勢といふものは偉大なものだらう』 エキス『ヘン、仰有いますわい。恐怖心に襲はれ、ガタガタ慄ひの大将奴、憫れつぽい声を出して、哀求歎願と出かけた時の、汝の御面相つたら、絵にもかけないやうだつたよ。ああ云ふ時に泰然自若、動かざること山岳の如し、態の、吾々は態度を以て、運命を天に任してゐたのだ。汝は生の執着が人一倍濃厚だから、こんな時になつて、醜体を演ずるのだ。何だ、男らしうもない。限ある狭い舟の上を右往左往に転げ廻りよつて、其みつともなさ、本当に吾々男子の面汚しだよ』 ワックス『コリヤ、汝何と云ふことをほざくのだ。又罰が当つて、今度こそ舟が転覆して了ふぞ。其時になつて吠面かわいても、ワックスの救主は知らぬぞよ。早く改心したが其方の得だぞよ。改心致さねば、目に物みせてやらうぞよ……と大自在天様の御諭しにあるのを、汝知つてゐるだらうなア』 エキス『そんなことは、とうの昔に御存じの此方さまだ。オイ、ワックス、肝腎要の魔法使を取逃がし、どうする積だい』 ワックス『どうせ、俺達も此海原を渡らねばならぬのだから、又途中で追ひついて、十分油を絞り、往生さしてやれば可いのだ』 エキス『ヘン、往生させられるのだらう、何と云つても、弱きを挫き、強きに従ふといふ悪酔会前会長だからな』 ワックス『汝等可いかげんに起きて此櫓を操縦せないか。放つておいたら、どんな所へ漂着するか知れぬぢやないか』 エキス『漂着を待つてゐるのだ。一時も早く陸地へ着いて、そこからテクつた方が何程安心だか分らぬワ。メツタに山で溺死する気遣はないからのう』 ワックス『先方は舟で一直線に走つて行きよるなり、こつちや山を越え谷を越え、難路を辿つて居らうものなら、何時キヨの港迄つくか分らないワ。何とかして此水路を進むことにしたら如何だ』 エキス『何としても法がつかぬぢやないか、何奴も此奴も舟を操縦する事に妙を得て居ない阿呆人種計りだからのう』 エル『オイ、其アホを此北風にかけて、一直線に駆けて進んだら可いぢやないか、さうすりや骨を折つて櫓を操る必要もなし、風の神が自然に先方へ渡してくれるワ』 ワックス『成程、よい考へがついた』 とガラガラと綱を引張上げ、茶色になつた帆を巻上げた。忽ち帆は弓の如く風を孕むでサアサアサアサアと音を立て乍ら、勢よく辷り出した。エルは櫓を手に握り覚束なげに、舟の舵をとり乍ら、欵乃を唄い出した。 エル『(追分)虎は千里の藪さへ越すに これの湖水がなぜ越えられぬ。 (安来節調)神の館の宝珠の玉を 盗みそこねた人がある。 月は御空にテルモン館 デビスの姿は花か雪。 花の香りを慕うて来たる 蝶かあらぬか蛆虫か。 劫をワックス家令の悴 今は湖上で泣いてゐる。 泣いて明志のテルモン館 これが此世の見をさめか。 (琉球節調)風は北からみ舟を送る 送る風こそケリナの息よ。 薬鑵爺に先づ生き別れ デビスのお姫さまにや泣き別れ』 ワックス『コラコラエルの奴、何を吐すのだ、せうもない。汝、チツと休むだらよからう。俺がこれから、櫓を握つて一つ唄つてやるのだ』 エル『(琉球節調)素破ぬかれたワックスさまは 肚が立つなり波が立つ』 と唄ひ乍ら櫓をパツと放した。ワックスは手早く櫓を握り、 ワックス『コラ、スツテのことで櫓を波に取られるとこだつた。チツと気をつけぬかい。此奴を取られた以上、思ふ所へ舟が向けられぬぢやないか。馬鹿だなア』 エル『ヘン、マア馬鹿になつておかうかい、悧口の者や賢い者や器用な者になると、皆阿呆共の道具に使はれるからなア。少し書でも甘いと、あのエルさまに看板を書いて貰はうとか、橋の名を書いて貰はうとか、大福帳の表紙を認めて貰はうとかぬかしよつて、阿呆共の弄物にしられるのだ。学者や智者になるものぢやないワ。ワックスさま、宜しく頼みます。随分お前さまが櫓を握つた時は立派なものだ。足の爪先迄力が入つてるやうだ。最前の船頭のやうに、自分の握つた櫓の柄に撥ね飛ばされぬやうになさいませや』 と鼻の頭を三つ四つかき乍ら、船底にゴロリと横はる。ワックスは櫓を握り、広き湖面を眺めて、 ワックス『旭輝く鏡の湖に 悪の鏡を乗せて行く。 清き真水の漂ふ湖を 悪酔カイが舟を漕ぐ。 悪に強けりや善にも強い 善と悪との海を行く。 波は立つ共心は立たぬ 腰のぬけたる阿呆舟。 舟は舟だが白河夜舟 夢か現で世を送る。 牛に睾丸踏まれた奴は とても乗られぬ玉の舟。 死なぬ前からあわてた奴が 十字街頭に踏み迷ふ。 迷うた亡者の睾丸潰し 阿呆の帆(呆)かけ此湖渡る。 傷はヅキヅキ膿ボトボトと 涙流して波の上。 上にや青雲下には藻草 中を乗り行く阿呆のエル。 アハヽヽヽ、面白い面白い、生れてから始めて舟に乗つたが、何と愉快なものだな。デビスの暗がり船に乗りたい乗りたいと思つて、今迄どれ丈マストを立てたり、白帆をあげて、きばつたか知れないが、今となつて考へてみると、本当に馬鹿臭い様だ。矢張、人間は広い所へ出て来ねば駄目だな』 エキス『オイ、ワックス先生、チツと一服したら何うだ。俺も一つ練習の為に、此静かな湖で、櫓の稽古をやつておかぬと、マサカの時に栃麺棒を振るからのう』 ワックス『長い海路だから、俺も今から精力を消耗さしてはつまらぬから、汝に櫓権を暫く掌握させてやらう。サア早く握つたり握つたり』 エキス『ヤ、有難い、それなら、新内閣の総理大臣だ。官海游泳術に慣れた此方だから、マア見てゐ玉へ、随分素晴しい技能を発揮してお目にかけるから……』 ワックス『ヘン、官海なんて、馬鹿にするない、汝は渡海否盗界の覇者だ。盗界節でも唄うて、追手の目を韜晦する方が余程性に合うてるだらうよ』 エキス『どうどうと握る天下の大権よりも 櫓櫂つかんだ面白さ。 面白い悪と悪との身魂を乗せて キヨの海をば汚し行く。 犬に乗りたる以前のナイス 今は何処の波の上。 三百の金は何時しか吾懐を 辷り出でたる海の上。 金が仇の浮世と聞けど 金が無ければ渡れない。 さり乍ら海を渡るにや金ではゆかぬ 舟が命の守神。 神の館を放逐されて 尻の据場に困る奴。 金盥尻に当られカンカンと 照らす夏日の其暑さ。 面の皮あつい許りか尻迄が あつい男とほめられた。 ワックスは色と欲との二つに離れ 泣いて彷徨ふ海の上。 エキスさま甘いエキスふ新し男 蛸のお化けと人が云ふ。 吸いついて鼠泣きせうと夢みた男 猫に逐はれて逃げ出した。 猫かぶり薬鑵爺の機嫌をとりて 居つた甲斐なく馬鹿にされ。 肝腎の金は他人にぼつたくられて 尻にお金の叩き払ひ。 天葬式泣いて笑うて悔んで踊る 義理泣き女のホクソ笑』 ワックス『コラ、エキス、湖上で死ぬだの死なぬのと、ナニ不吉なことをほざくのだ。又、颶風が襲来するぞ。チツと言霊を慎まぬか』 エキス『手がだるい、腹が立つ、極道息子と湖上を越せば あちら此方に信天翁。 信天翁、運上取らうとワックス目がけ バタバタ翼を打つてゐる。 ゆすられて、泣き泣き放り出す惜しい金 首をつなぐと泣く涙』 ワックス『オイ、ヘルマン、エキスの奴、仕方がないから、汝一つ目出度い唄を唄つて宣り直してくれないか』 ヘルマン『さうだなア、のり直さうと云つたつて、外に空舟もなし、矢張乗続けるより仕方がないぢやないか。玉国別は甘く乗直して、サツサとお先へやつて行きよつたが、俺達は一体行末が案じられて仕方がないワ。最前から、実は前途を案じ、チツと許り憂愁の涙に沈みてゐた所だ。あーあ。仕方がない、……寄辺渚の捨小舟、どこへ取つく島もなしか……ぢやと云つて、湖水に投身して魚腹に葬られるのも、何だか気が利かないやうだし、あゝ何うしたら可からうかなア。俺やモウ世の中が厭になつたのだ。何とかして三五教のムニヤムニヤムニヤ』 ワックス『ヤ、何と申す、汝は三五教の弟子になりたいといふのだな』 ヘルマン『ナアニ、三五教の向うを張つて一つ男を立てねば世間に顔出しが出来ないといふのだ。玉国別一行には俺達があこ迄仕組みて、既に仇を報ゐむと、九分九厘迄行つた所へ、マンヂューシリ菩薩か、アバローキテー・シュヷラのやうな女神様が立派な船を以て迎へに来たり、自分は犬に乗つて海上を渡つて行くといふ様な離れ業が出来るのだからなア。何と云つても敵乍ら大したものだよ』 ワックス『サア、そこが魔法使の魔法使たる所以だ。正法に不思議なし、君子は怪力乱神を語らずといふぢやないか。キツと邪法だよ』 ヘルマン『それでもお前の様に微力乱心に比べてみたら、余程マシぢやないか。俺は何だか、あの三五教とやらが、俄に好に……なつて……は来ぬのだ。本当に三五教の神様とバラモン教の神様とは、正邪善悪の差別が非常についてゐる様に思はれてならないのだ』 ワックス『どちらが正でどちらが邪といふのだ』 ヘルマン『邪と申して、俄に判断がつかないワ。マア行く所迄行かねば分らない。併し乍ら安心してくれ、俺は素よりバラモン教徒だから、メツタに外道の教に溺没するやうな無腸漢ぢやないからのう。併し乍らよく考へてみよ、俺達四人はバラモン教のピュリタンぢやないか。それにも拘らず、バラモン館を大勢の前で笞刑をうけて放逐されたのだから、神様から見放されたのかも知れないよ。さすれば捨てる神もあれば拾ふ神もありといふから、実際捨てられたとすれば、人は無宗教で此世に立つてゆけないから、何とか考へねばなるまい』 ワックス『ナニ、心配するな。キヨの港へついたら最後、どこもかも皆バラモン教の勢力範囲だから、三五教の魔法使を巧く捕縛するか、もしも力に及ばねば関所へ密告して手柄を現はしさへすれば、又立派なバラモン教のピュリタンとして、安全無事に関所の切手を貰ひ、ハルナの都へ安全に行かうとままだ。何とマア舟の早いことだのう。これも全くバラモンの神様のお蔭だよ。サア、エル、そこどけ、俺が一つ櫓を操つてやらう』 と言ひ乍ら、代る代る櫓を握り、順風に助けられて都合好くキヨの港へ三日目の夕方安着したりける。 (大正一二・四・一旧二・一六於皆生温泉浜屋松村真澄録)
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霊界物語 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 21 三五神諭(その二) 第二一章三五神諭その二〔一五四六〕 明治三十一年旧五月五日 今の世界の人民は、服装ばかりを立派に飾りて、上から見れば結構な人民で、神も叶はん様に見えるなれど、世の元を創造へた、誠の神の眼から見れば、全然悪神の守護と成りて居るから、頭に角が生えたり、尻に尾が出来たり、無暗に鼻ばかり高い化物の覇張る、暗黒の世に成りて居るぞよ。虎や狼は吾の食物さへありたら、誠に温順しいなれど、人民は虎狼よりも悪が強いから、欲に限りが無いから、何んぼ物が有りても、満足といふ事を致さん、惨酷い精神に成りて了ふて、鬼か大蛇の精神になりて、人の国を奪つたり、人の物を無理しても強奪くりたがる、悪道な世に成りて居るぞよ。是も皆悪神の霊の所行であるぞよ。モウ是からは改信を致さんと、艮金神が現はれると、厳しうなるから、今迄の様な悪のやりかたは、何時までもさしては置かんぞよ。善し悪しの懲戒は、覿面に致すぞよ。今迄好きすつ法、仕放題の、利己主義の人民は、辛くなるぞよ。速く改信致さんと、大地の上には置いて貰へん事に、変りて来るから、神が執念気を附けるなれど、知恵と学とで出来た、今の世の人民の耳には、這入かけが致さんぞよ。一度に岩戸開きを致せば、世界に大変が起るから、時日を延ばして、一人なりとも余計に改信さして、助けてやりたいと思へども、何の様に申しても、今の人民は聞入れんから、世界に何事が出来致しても、神はモウ高座から見物いたすから、神を恨めて下さるなよ。世界の神々様守護神殿、人民に気を附けるぞよ。無間の鐘を打鳴して、昔の神が世界の人民に知らせども、盲目と聾者との暗黒の世であるから、神の誠の教は耳へ這入らず、獣の真似を致して、牛馬の肉を喰ひ、一も金銀、二も金銀と申して、金銀で無けら世が治らん、人民は生命が保てん様に取違致したり、人の国であらうが、人の物であらうが、隙間さへありたら略取ことを考へたり、学さへ有りたら、世界は自由自在に成る様に思ふて、物質上の学に深はまり致したり、女と見れば何人でも手に懸け、妾や足懸を沢山に抱へて、開けた人民の行り方と考へたり、恥も畏れも知らぬ許りか、他人は何んな難儀を致して居りても、見て見ん振りをいたして、吾身さへ都合が善ければ宜いと申して、水晶魂を悪神へ引抜かれて了ふたり、徴兵を免れようとして、神や仏事に願をかける人民、多数に出来て、国の事共一つも思はず、国を奪られても、別に何とも思はず、心配も致さぬ人民ばかりで、此先は何うして世が立ちて行くと思ふて居るか、判らんと申しても余りであるぞよ。病神が其辺一面に覇を利かして、人民を残らず苦しめ様と企みて、人民のすきまをねらひ詰て居りても、神に縋りて助かる事も知らずに、毒には成つても薬には成らぬものに、沢山の金を出して、長命の出来る身体を、ワヤに為られて居りても、夢にも悟らん馬鹿な人民許りで、水晶魂の人民は、指で数へる程よりか無いとこまで、世が曇りて来て居りても、何うも此うも、能う致さん様に成りて居るくせに、弱肉強食の世の行り方をいたして、是より外に結構な世の治方は、無いと申して居るぞよ。今の世の上に立ちて居りて、今迄けつこうに暮して居りて、神の御恩といふ事を知らずに、口先ばかり立派に申して居りても、サア今といふ所になりたら、元来利己主義の守護神であるから、チリチリバラバラに、逃げて了ふもの許が出て来るぞよ。今の人民は、サツパリ悪魔の精神に化りて居るから、何程結構な事を申して知らしてやりても、今の今まで改信を能う致さんやうに、曇り切りて了ふたから神もモウ声を揚げて、手を切らな仕様が無いが、是丈神が気を附けるのに聞かずに置いて、後で不足は申して下さるなよ。神はモウ一限に致すぞよ。 今の人民は悪が強いから、心からの誠といふ事が無きやうになりて、人の国まで弱いと見たら、無理に取つて了ふて、取られた国の人民は、在るに在られん目に遭はされても、何も言ふ事は出来ず。同じ神の子で有りながら、余り非道い施政で、畜生よりもモ一つ惨いから、神が今度は出て、世界の苦しむ人民を助けて、世界中を桝掛け曳きならすのであるぞよ。今の人民は段々世が迫りて来て、食物に困る様になりたら人民を餌食に致してでも、徹底的行り抜くといふ深い仕組を致して、神の国を取らうと致して、永らくの仕組をして居るから、余程確りと腹帯を締めて居らんと、末代取戻しの成らん事が出来して、天地の神々様へ、申訳の無き事になるから、艮の金神が三千年余りて、世に落ちて居りて、蔭から世界を潰さんやうに、辛い行をいたして、経綸をいたしたので、モウ水も漏らさんやうに致して有るなれど、神は其儘では何も出来んから、因縁ある身魂を引きよせて、懸りて此世の守護をいたすのであるから、中々大事業であれど、時節参りて、変性男子と変性女子の身魂が、揃ふて守護が有り出したから、いろは四十八文字の霊魂を、世界の大本、綾部の竜宮館にボツボツと引き寄せて、神がそれぞれ御用を申し付けるから、素直に聞いて下さる人民が揃ふたら、三千年余りての仕組が、一度に実現て来て一度に開く梅の花、万古末代萎れぬ花が咲いて、三千世界は勇んで暮す神国になるぞよ。人民の天からの御用は、三千世界を治め、神の手足となりて、吾身を捨てて、神の御用を致さな成らぬのであるから悪には従はれぬ、尊い身魂であるのに、今の世界の人民は、皆大きな取違ひを致して居るぞよ。 ○ 明治三十二年…月…日 艮の金神が出口直の手を借りて、何彼の事を知らすぞよ。今迄は世の本の神を、北の隅へ押籠めておいて、北を悪いと世界の人民が申して居りたが、北は根の国、元の国であるから、北が一番に善くなるぞよ。力の有る世の本の真正の水火神は、今迄は北の極に落されて、神の光を隠して居りたから、此世は全然暗黒でありたから、世界の人民の思ふ事は、一つも成就いたさなんだので在るぞよ。是に気の付く神も、人民も、守護神も無かりたぞよ。人民は北が光ると申して、不思議がりて、種々と学や知識で考へて居りたが、誠の神々が一所に集りて、神力の光りを現はして居ると申す事を知らなんだぞよ。モウ是からは、世に落されて居りた活神の光りが出て、日の出の守護となるから、其処辺中が光り輝いて、眩うて目を明けて居れんやうに、明かな神世になるぞよ。今迄の夜の守護の世界は、明の烏と成りて来て、夜が明るから、それまでに改信を致して、身魂を研いて水晶魂に立帰りて居らんと、ヂリヂリ悶える事が出来致すから、今年で八年の間、神は気を附けたなれど、余り世界の人民の心の曇りがきつき故に、何を言ふて聞かしても、筆先に書いて見せても誠にいたさぬから、出口直は日々咽喉から血を吐くやうな思ひを致して、世界の為に苦労をいたして居るのを、見て居る艮の金神も辛いぞよ。胸に焼鉄あてる如く、一人苦みて居るぞよ。人民は万物の長とも申して、豪さうに致して居るでは無いか。鳥獣でも、三日先の事位は知りて居るのに、人民は一寸先が見えぬ所まで曇りて居るから、脚下へ火が燃えて来て居りても、未だ気が附かぬぞよ。能うも是だけ人民の霊魂も、曇りたものであるぞよ。障子一枚ままならぬ所まで精神を汚して置いて、何も判らぬ癖に神を下に見降して居る、人民の中の鼻高が、上へのぼりて、此世の守護をいたしても、一つも思ふやうに行きはいたさんぞよ。此世は、元の生神の守護が無かりたら、何程知識や学で考へても、何時までも世界は治まらんぞよ。一日も速く往生いたして、神の申す様に致さねば世界の人民が可哀想で、神が黙つて見て居れんから、今度は北から艮の金神が現はれて、世界を水晶の世にいたして、善と悪とを立別けて、善悪の懲戒を明白にいたして、世界の人民を改信させて、万古末代動きの取れん、善一筋の世の持方を致すから、是迄の世とは打つて変りての善き世といたして、神も仏も人民も、勇んで暮す松の世、神世といたして、天の大神様へ御目に掛るのであるぞよ。夫れまでに一つ大峠が在るから、人民は速く改信いたして、神心に立還りて下されよ。神は世界を助けたさの、永い間の苦労であるぞよ。昔の神世に立替へる時節が来たぞよ。今迄は日没が悪いと申したが、世が代ると日没が一番善く成るぞよ。日没に初めた事は、是から先の世は、何事も善き事なれば成就いたすぞよ。夫れも神をそつち除けにいたしたら、物事一つも成就いたさぬ世に変るから、何よりも改信致して、霊魂を研くが一等であるぞよ。時節が来たぞよ。モウ間が無いぞよ。 ○ 明治三十二年旧七月一日 竜門の宝を艮の金神がお預り申すぞよ。竜門には宝は何程でも貯へてあるぞよ。岩戸開きが済みて立直しの段になりたら間に合ふ宝であるぞよ。昔から此乱れた世が来るから、隠してありたのぢやぞよ。御安心なされ。艮金神大国常立尊が、神功皇后殿と出て参る時節が近よりて来たぞよ。此事が天晴表に現はれると、世界一度に動くぞよ。モウ水も漏さぬ経綸が致して有るぞよ。開いた口が塞がらぬ、牛糞が天下を取るぞよ。珍らしい事が出来るぞよ。アンナものがコンナものに成りたと、世界の人民に改信致させる仕組であるから、チト大事業で有れども、成就いたさして、天地の大神へ御目に掛けるから、艮の金神はカラ天竺までも鼻が届くぞよ。この仕組は永らく世に落ちて居りての、艮の金神の経綸であるから、神々にも御存知ない事があるから、人民は実地が出て来る迄はヨウ承知を致さんぞよ。是でも解けて見せてやるぞよ。今度の二度目の天の岩戸開は、因縁の在る身魂でないと、御用には使はんぞよ。神の御役に立るのは水晶魂の選抜ばかり、神が綱を掛けて御用を致さすのであるから、今迄世に出て居れた守護神は、思ひが大分違ふぞよ。是も時節であるぞよ。時節には何も敵はんぞよ。上下に復るぞよ。 艮金神大国常立尊の三千年の経綸は、根本の天の岩戸開で有るから、悪の霊魂を往生さして、万古末代善一つの世に致すのであるから、神の国に只の一輪咲いた誠の梅の花の仕組で、木花咲哉姫の霊魂の御加護で、彦火々出見尊とが、守護を遊ばす時節が参りたから、モウ大丈夫であるぞよ。梅で開いて松で治める、竹は邪神の守護であるぞよ。此経綸を間違はしたら、モウ此の先はどうしても、世が立ちては行かんから、神が執念う気を付けて置くぞよ。明治二十八年から、三体の大神が地へ降りて御守護遊ばすと、世界は一度に夜が明けるから、三人の霊魂を神が使ふて、三人世の元と致して、珍らしき事を致さすぞよ。いろは四十八文字で、世を新つに致すぞよ。此中に居る肝腎の人に、神の経綸が解りて来て改信が出来たら、世界に撒配りてある身魂を、此大本へ引寄せて、神の御用を致さすから、左程骨を折らいでも経綸は成就いたすから、何事も神の申す様にして居りて下されよ。今度の事は知識や学では到底可んから、神の申す事を素直に聞いて下さる身魂でないと、神界の御用には使はんぞよ。此の大本は外の教会のやうに、人を多勢寄せて、それで結構と申す様な所でないから、人を引張りには行つて下さるなよ。因縁ある身魂を神が引寄せて夫れ夫れに御用を申し附けるのであるぞよ。 大本の経綸は病気直しで無いぞよ。神から頂いた結構な身魂を、悪の霊魂に汚されて了ふて、肉体まで病魔の容器になりて、元の大神に大変な不孝を掛けて居る人民が病神に憑かれて居るのであるから素の水晶魂に捻じ直して、チツトでも霊魂が光り出したら、病神は恐がりて逃げて了ふぞよ。此の大本は医者や按摩の真似は為さんぞよ。取次ぎの中には、此の結構な三千世界の経綸を、取違ひ致して、病直しに無茶苦茶に骨を折りて肝腎の神の教を忘れて居る取次が多数在るが、今迄は神は見て見ん振を致して来たが、モウ天から何彼の時節が参りて来たから、今迄の様な事はさしては置かんから、各自に心得て下されよ。是程事解けて申す、神の言葉を反古に致したら、已むを得ず気の毒でも、天の規則に照して懲戒を致すぞよ。今の神の取次は、誠と云ふ事がチツトも無いから、吾の目的計り致して、神を松魚節に致して、却て神の名を汚して居る、天の罪人に成りて居るぞよ。大本の取次する人民は、其覚悟で居らんと世界から出て来だすから、恥かしくなりて、大本へは早速に寄せて貰へん事が出来いたすから、永らく神が出口に気を付けさしたぞよ。モウ改信の間が無いぞよ。神はチツトも困らねど、取次が可愛相なから。 艮金神が表になると、一番に悪所遊びを止めさすぞよ。賭博も打たさんぞよ。家の戸締りも為いでもよき様に致して、人民を穏かに致さして、喧嘩も無き結構な神世に致して、天地の神々様へ御目に掛けて、末代続かす松の世と致すぞよ。 ○ 明治三十四年旧三月七日 元伊勢のうぶだらひと、産釜の水晶の御水は、昔から傍へも行かれん尊い清き産水でありたなれど、今度の天の岩戸開に就いて、因縁のある霊魂に御用をさして、世を立直すには、昔の元の水晶の変らん水を汲りに遣らしてあるぞよ。艮金神の指図でないと、此水は滅多に汲りには行けんのであるぞよ。神が許可を出したら、何処からも指一本触る者もないぞよ。今度の元伊勢の御用は、世界を一つに致す経綸の御用であるぞよ。もう一度出雲へ行て下されたら、出雲の御用を出来さして、天も地も世界を平均すぞよ。此御用を済して下さらんと、今度の御用は分明かけが致さんぞよ。解りかけたらば速いぞよ。天の岩戸開きは水の守護と火の守護とで致すぞよ。岩戸開きを致すと申して居りても如何したら世が変ると云ふ事は、世に出て御出でる神様も御存知はないぞよ。肝腎の仕組は今の今迄申さぬと出口に申してあるぞよ。まだまだ在るぞよ。天の岩戸開と言ふ様な大望な事には、誰にも言はれん事があるのぢやが、其御用は出口でないと出来んぞよ。今度の御用をさす為に、昔から生代り死代り、苦労ばかりが為して在りた、変性男子の身魂であるぞよ。此の変性男子が現はれんと世界の事が出て来んぞよ。神柱会開きは人民が何時まで掛りても開けんと申してあるぞよ。神が開いて見せると申して、先に筆先に出してあらうがな。時節が近寄りたぞよ。 世界一度に開くぞよ。一度に開く梅の花、金神の世に致して早く岩戸開をいたさんと、悪く申すでなけれども、此世は此の先は如何成るかと言ふ事を御存知の無い神ばかりであるぞよ。 (大正一二・四・二五旧三・一〇北村隆光再録)
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霊界物語 66_巳_オーラ山の山賊 01 暁の空 第一章暁の空〔一六八三〕 三千世界の救世主泥にまみれし現世を 洗ひ清むる瑞御霊神素盞嗚の大神の 堅磐常磐に鎮まれるウブスナ山の大霊場 斎苑の館の神柱八島の主の命を受け 此世の運命月の国ハルナの都に蟠まる 醜の曲津を三五の誠の道に言向けて 世界の平和と幸福を来さむ為の宣伝使 常夜の暗も照国の別命は国公や 梅公、照公伴ひて荒風すさぶ河鹿山 霜にふるへる冬木立神の使命を畏みて スタスタ登り下りつつ数多の敵の屯せる 難所を漸く突破して水底までも澄み渡る 葵の沼の月影も清照姫や黄金姫の 教司に廻り合ひ茲に袂を別ちつつ 神の依さしの宣伝歌声も涼しく唄ひつつ 東南を指して行く月日重ねて漸くに デカタン国の高原地タライの村の棒鼻の 茶屋の表に着きにけり。 梅公『先生、葵の沼も随分広いものですな。清照姫様、黄金姫様にお別れしてから、一瀉千里の勢で、人造テクシーに乗つて、随分駆け出した積ですが、たうとう夜が明けたぢやありませぬか。速力といひ、時間から考へて見れば、先づ二十里は確に突破したでせう。其間は一方は湖面の月、一方は茫々たる原野、人家も無く、時々怪獣の逃出す音に驚かされ、やツと此処で人家を見つけ、休息しようとすれば、どの家も此家も戸を締めて静まり返つてゐるぢやありませぬか』 照国『ウン、旭のガンガンとお照り遊ばすのに、気楽な所と見える哩。茫漠たる原野に人口稀薄と来てゐるのだから、生存競争だとか、生活難だとかいふ忌まはしい騒ぎも起らず、太平の夢を貪つてゐる此国人は、実に羨ましいぢやないか』 梅公『併し先生、私の考へでは各戸戸締めをして静まり返つてゐるのは、貴方の仰有る太平の夢ぢやありますまい。コレ御覧なさい、此処には血汐が流れて居ります。此血は決して犬や豚の血ぢやありますまい。大足別の部下が人民を殺害したり、いろいろの凶悪な事を行つた記念ではありますまいか。私の考へでは、人民が恐れて戸をしめて、息を殺してゐるのだらうと思ひますがな』 照国『大足別将軍がどうやら此処を通過したらしいから、或は掠奪、強盗、強姦、殺戮など、所在悪業をやりよつたかも知れないなア。実にバラモン軍といふ奴は乱暴な代物だ、兎も角此家を叩き起して様子を聞いてみようぢやないか』 梅公『何だか私は体内の憤怒といふ怪物が頭を擡げ出し、胸中聊か不穏になつて来ました。ヒヨツとしたら、此家の中にはバラモンの頭株が潜伏してるのではありますまいか。里人は已に已に家を捨てて逃去り、其後へバラモンの奴、ぬつけりこと住み込んで、吾々を騙討する計画かも知れませぬぜ』 照国『とも角、戸を叩いて呼起し、内部の秘密を調査してみようぢやないか』 梅公『オイ、照さま、君は何をふさぎ込んでゐるのだ。こんな所でへこたれて何うするのだい。これからが千騎一騎の性念場だぞ。神軍の勇士が、其青ざめた面は何だい』 照公『別に欝ぎ込んでゐるのぢやない』 梅公『そんなら何だ。心の戸締めをやつて、此家の主人の如く、家の隅くたで慄うてゐるのだらう。何時も偉相に云つてゐる刹那心はどこで紛失して了つたのだ』 照公『先づ此家を開けて見給へ、誰も居ないだらう。人間の住んでゐる家は屋根の棟を見ても活々してゐる。ここはキツト空家だよ』 梅公『馬鹿云ふな、何程不景気でも家賃が高くつても、かう五軒も六軒も空家が並ぶ道理がない。又空家なれば、はすかいピシヤンがあり相なものだ。斜かい紙の貼つてないとこを見れば人がゐるに定つてゐるワ』 照公『斜かひピシヤンつて何の事だい』 梅公『ハヽヽヽヽ世情に通じない坊んさまだなア。斜かいピシヤンといふことは、白い紙に貸家と書いて、戸をピシヤンと締め、それを斜交ひに貼ることだ。それのしてない所はキツと人がゐるのだ。兎も角戸を叩いてやらうかい。三千世界の救世主、其救世主のお使が門に立つてゐるのに、心の盲、心の聾は門を開いて迎へ入れ奉り平和と幸福とを味はふことを知らないものだ』 と云ひ乍ら、ドンドンドンと拳を固めて、メツタ矢鱈に、戸の破れる程叩きつけた。幾ら打つても叩いても、鼠の声一つ聞えて来ない。 梅公『どうも不思議だなア。不在の中へ無理に這入れば空巣狙ひと誤解されるなり、又仮令人が居つてもお入りなさいと云はない限りは、家宅侵入罪となるなり、コリヤ断念して、どつか外の家へ行つて休息することにしよう。先生、さう願つたら何うでせうか』 照国『ウン、お前の云ふのも一応尤もだが、思ひ切つて戸を叩き破つてでも這入らうぢやないか』 梅公『先生の御命令とあればやつつけませう』 と無理に戸を引開け、屋内に三人は進み入つた。見れば余り広からぬ座敷の隅に、雁字がらめに縛られ、額口から血を出して、虫の息になつた老婆が一人横たはつてゐる。 梅公『先生、ヤツパリ空家ではありませぬワ。可哀相にこんな老人が、しかも眉間に傷をうけ、雁字搦めにくくられて居るではありませぬか。此婆さまを助けて、事情を聞きませうか』 照国『あゝ兎も角神様に御願しよう。サアお前達も私と一緒に神言を奏上しよう』 『ハイ畏まりました』と梅、照の両人は音吐朗々として神言を奏上し、天の数歌を数回繰返した。老婆は初めて気のついたかの如く、秋の虫の霜に悩みし如き細き声を張上て、 老婆(サンヨ)『何れの方かは知りませぬが、よくマアお助け下さいました。どうぞ、お慈悲に此縄を解いて下さいませ』 梅公『お前が頼まなくても助けに来たのだ』 と言ひ乍ら、短刀を取出し縄目をプツと切つて、 梅公『サアサアお婆さま、安心なさい。モウ吾々が現はれた以上は、虎でも狼でも獅子でも恐るるに足らない。ここにゐられる先生は照国別といつて、神力無双の勇士だよ。これには何か深い理由があるだらう。一度話て下さらぬか』 老婆(サンヨ)『ハイ有難う厶います。喉が渇いてをりますから、恐れながら水一杯戴けますまいか』 梅公『ヨシヨシ水は無代だ。お前が青息吐息をついてる九死一生の場合を、葵の沼で無料で購入して来た水筒の水、サアサア遠慮はいらぬ、幾らなつと呑みなさい。一杯で足りなけりや、若い者の足だ、幾らでも汲んで来てやらう』 と水筒を老婆の口にあてた。老婆は飢え渇いた餓鬼の如く、クツクツと喉を鳴らし、瞬く間に水筒を空にして了つた。 梅公『これが所謂命の清水だ、瑞の霊の御利益だ。婆さましつかりしなさいや』 老婆(サンヨ)『ハイ有難う厶います。貴方に頂いた此清水、五臓六腑に浸み渡り、体中が活々として参りました。そして俄に温かくなつて参りました。有難う厶います』 照公『時に梅公、此御婆さまの額口にはエライ傷が出来てるぢやないか。此傷をば直してやらなくちやならうまい』 梅公『オイ照さま、お土だお土だ』 照公は『成程』とうなづき乍ら、表へ駆出し、一握りの黄色い真土を取つて来て、婆さまの疵口に塗り、繃帯で鉢巻をさせ、二三回数歌を奏上し、 照公『サアお婆さま、これですぐ平癒するよ』 老婆(サンヨ)『ハイ、おかげ様で最早痛みがとまりました。人を悩める神もあれば、人を助ける神もあるとは、よく云つたことで厶います。貴方は本当に救世主で厶います。此御恩は決して忘れは致しませぬ。私はサンヨと申す者で若い時から夫に離れ、二人の娘と細い煙を立てて暮して居りましたが、姉の方は性質が悪く、十八の春私の宅に泊つた修験者に拐かされ、行衛は知れず、あとに残つた一人の妹を力として、余命をつないで居りました所、バラモン軍の大足別将軍の部下がやつて参りまして、私の娘を掠奪しようと致しますので命に代へても渡されないと拒みました所、何と云つても老人の非力、一方は血気盛りの命知らずの軍人、五六人の奴に、貴方の御覧の通り、手足を雁字り巻に縛られ、刀のむねで額を打たれ、致死期の際に、貴方に助けられたので厶いますが、何うか貴方等の御神力によりまして、誠につけ上りのした願なれど、モ一度娘に合はせて下さることは出来ますまいかなア』 と老の涙に膝をぬらしてゐる。照国別は気の毒さに堪へず『ウン』と云つた切り、両眼を塞いで、何事か祈願をこらしてゐる。照公も両眼に涙を浮かべ、老婆の痩こけた哀れな面を見つめてゐた。老婆は一行の面を打仰ぎ乍ら、宣伝使の返答いかにと待ち佗面である。少時は沈黙の幕が四人の間におりた。 梅公『婆アさま、其さらはれた娘といふのは年頃は幾つだな』 サンヨ『数へ年十八歳で厶います』 梅公『年は二八か二九からぬ、花の莟の真娘、人もあらうに、バラモン軍にさらはれるとは因果な母娘だなア。ヨーシ、私も人を救ふ宣伝使の卵だ。男子が一旦こんなことを聞いた以上、何うして見逃すことが出来よう。義侠心とかいふ奴、私の肚の中でソロソロ動員令を発布しさうだ。婆さま安心なさい。キツト私が取返してみよう、男子の言葉に二言はありませぬぞや』 サンヨ『有難う厶います。枯木に花の咲いたやうな気分になりました。私の生命は何うなつても惜みませぬから、どうかあの娘をお救ひ下さいませ。そして私は最早老齢、此世に少しも未練は厶いませぬが、姉といひ妹といひ、行衛が知れないので厶います。どうぞ貴方がどちらかにお会ひ下さらば、娘の身の上をお任せ致します』 梅公『お婆さま、お前の娘とあらば随分別嬪だらうな。お前の面立ちも一しほ気品が高く、昔は花にウソつく美人であつたらう。其俤がまだ残つてゐるよ』 サンヨ『ホヽヽヽ御冗談斗り仰有いまして……私は此通り皺苦茶だらけの狸婆で厶いますが、親の口から申すと何だか自慢のやうに厶いませうが、此里きつての美人だと、娘は言はれて居りました』 梅公『さうだらう、美人と聞けば猶更憐れを一層増すやうだ。お婆さま、心配なさいますな。キツト此梅公が助けて見せませう』 サンヨ『何分宜しう願ひます』 照公『オイ梅公、美人と聞いて、俄に貴様の顔色がよくなつたぢやないか、ハツハヽヽ』 梅公『一度に開く梅公の花嫁だ。キツと俺のムニヤムニヤムニヤ』 照公『ハヽヽヽヽ、たうとうあとをボカして了ひよつたな。併し先生、梅公が軽率にも、美人と聞いて安請合に請合ましたが、何うでせう、ここの娘も気の毒だが、大足別の部下が行く先々で所在悪虐無道をやつてゐると思へば、ここの娘の一人に全力を尽す訳にも行きますまい。あなたと私は一時も早く此場を立去り、ここの娘の一件は梅公に一任しておこうぢやありませぬか』 照国『いや、心配はいらぬ。何事も吾々の耳に入つた以上は、キツト神様の御引合せだから、娘さまの所在も分るだらう。又お婆さまも益々壮健になり、千歳の命を保つであらう。兎も角三人が肚を合せ、御神業の為に進まうぢやないか。コレコレお婆さま、照国別が呑み込んだ、キツト二人の娘を助けて上げませう』 サンヨ『ハイ有難う厶います。何分宜しくお慈悲を願ひます』 と、とめどもなく涙にひたつてゐる。 かかる所へ門口のあいたのを幸、二人の男が慌ただしく入り来り、 甲(エルソン)『オイ婆さま、お前の宅は別状ないかなア』 乙(タクソン)『実ア、婆さま一人、娘一人、バラモン軍の襲来で困つて居るだらうから、助けに来たいと思うたが、何分俺の女房迄取さらへられて取返すことの出来ないやうな場合で、残念だつた。どうぢや、花香さまは、御無事だつたかなア』 サンヨ『あゝお前は、タクソン、エルソンのお二人さまか、ようマア親切に来て下さつた。残念乍ら娘の花香はバラモン軍にかつさらはれました。オンオンオン』 と村人の親切な言葉を聞いて恥も外聞も忘れて泣き倒れる。 タクソン『お婆さま、心配するな。キツト、バラモンの神様の御守護で、時節をまつてをれば、親子の対面をさして下さるだらう。私だつて女房を取られ、財産をボツたくられ、実に悲しい目に会うたけれど、日頃信仰のおかげで何事も神様に任せ、慰めてゐるのだ。あーあ』 と吐息をつく。 サンヨ『私は娘を取られ、吾身は雁字搦みにしばられ、剣のむねにて眉間を打たれ、虫の息になつてゐた所を、此先生方が御親切にお尋ね下さつて、いろいろと介抱なし下さつたおかげで、甦つたのだよ。どうか、此方々に御礼を申して下さい』 タクソン『ヤ、余りあわててゐるので、三人のお方に御挨拶も忘れてゐた。……コレハコレハお三人さま、誠に失礼を致しました。そして貴師はバラモンの宣伝使で厶いますか』 梅公『イヤ、吾々はバラモンではない。斎苑の館の瑞の御霊大神の神勅を奉じ、天下を救済に廻つてゐる三五教の宣伝使だ』 タクソン、エルソンの二人は『ハツ』と驚き両手をついて、落涙し乍ら感謝の意を表してゐる。高原を吹渡る名物の大風は窓の戸をガタつかせ乍ら、ヒユーヒユーと怪しき声を立てて北から南へ渡つて行く。 (大正一三・一二・一五旧一一・一九於祥雲閣松村真澄録)
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霊界物語 □_特別編-入蒙記 13 トウ南旅館 第一三章洮南旅館 日出雄はやうやくにして三月八日(陰暦二月三日)午後九時三十分、洮南駅に無事安着し、乞食のやうな支那兵に送られ、ガタ馬車二台に分乗して洮南旅館に入る。真澄別、大倉、名田彦の三人は鶴首して待つて居た。さうして洮南府は日本官憲の勢力なく、領事館員と雖も護照が無ければ入洮を許さないので、日本人が停車場に迎へに出るのは最も危険だから失礼をしましたと、三人は弁解して居た。王元祺の睾丸炎は益々激痛を感じ、病床に入つたまま起きず、飯も食はず弱りきつて居る。 明くれば三月九日、奉天の同志へ安着の電報を発した。此洮南旅館は満鉄の御用旅館と云ふ名義で、辛うじて支那官憲の許可を受けて居るのである。一時は洮南府内に百七八十人の日本人が滞留して居たが、支那官憲の圧迫により、何れも退去を命ぜられ、特殊の関係あるもののみ二十五人在留して居るだけである。そうして、日本人の女と云へば僅かに五人と云ふことで、一行七人は此旅館に宿泊して種々の計画に着手して居た。平馬氏宅から猪野、大川の二人が来訪して蒙古入りの壮挙を聞き、我が国家前途の為に慶賀に堪へないと云うて賛意を表して居る。次に満鉄関係者の三井貫之助氏が来訪した。併し乍ら日出雄や真澄別は一室に閉ぢ籠り、岡崎、大倉の両人が接見する事となつた。大倉は三井と共に城内の支那料理店へ出かけ、種々の運動を開始した。夜分になると東西南北から銃砲の音が頻りに聞えて来る。之は洮南府の周囲に散在して居る十数団の馬賊二千余名が、何時洮南府を襲ふかも知れないので、夜になると兵士が馬賊威喝の為に発砲するのだと云ふ事である。実に官憲の威力も及ばず、物騒千万の土地である。 此洮南府は鄭家屯を北に去る鉄路百四十哩の地点にあつて、東蒙古に於ける唯一の大市街である。支那人が蒙古に発展した根拠地は即ち此の地である。四方は土の城壁をもつて囲み、東西南北に六個の通行門があつて、住民は此処から出入する。門の入口には支那の官兵や巡警が控へて居て、一々護照の検査を為し、携帯品や出入の荷物に対しては、幾何かの税金を現場で徴収する。洮南の市街は南北五支里、東西五支里の正方形の面積を有し、此城壁内には官公署や各商店が軒を並べて居る。純然たる蒙古の土地でありながら、其勢力も、政治関係も全く支那の主権に属し、奉天省が管轄して居る。二十年以前、初めて支那人が此地に市街を築いた時は、僅かに三四十戸に過ぎなかつたが、其時から道尹衙門を設置して土地の発展に努めて居る。其後洮南の道尹衙門は鄭家屯に引き移り、現在の官公署、県公署、第二十九師司令部や、監獄や、警察署、審判庁、捐務局、兵営、郵政局、電報局、学校等がある。国民小学校が三ケ所、国民女学校が二ケ所と県立高等小学校が一ケ所ある。当地の支那官憲は総ての日本人に対して極力圧迫を加へ、排日思想の最も盛んな所である。それ故、鄭家屯の日本領事館から館員が視察に来ても、護照がなければ通さないと云つて、入城を拒むと云ふ有様である。 かういふ状況に在る洮南府へ日出雄一行は入り込んだから中々晏如たる訳には行かないのである。 洮南へ日出雄が着いた三日目に、秦宣及び山田文治郎の両人が佐々木の手紙を持つてやつて来た。それは帰化城方面の支那人哥老会の耆宿揚成業が、一万数千の兵を率ゐて参加すると云ふ事であつた。此時関東庁の陸軍三等主計正なる日本人某が洮南視察にやつて来て一夜宿泊した上、翌朝八時の汽車で帰つて行つた。 夜分になると、鉦や太鼓や笛などの楽器で賑々しく葬式の行列が街道を通過する音が聞えるかと思へば、今度は又嫁入の行列が同じやうな鳴物で通つて行く。さうして爆竹の音が四方から聞えて来る。室内で音ばかり聞いて居ると葬式も嫁入も同じやうに聞える。有名な論評家の黒頭巾横山健堂が日出雄と入れ違ひに此のホテルを辞し帰つて行つた。此処で健堂の揮毫した立派な書をホテルの支配人から示され、且つ揮毫を依頼されたので、日出雄は之に応じ日本人に書画を描き与へた。 三月十一日の未明から機関銃や小銃の音が頻りに聞え、何となく不穏の空気が漂うて居る。洮南府一個旅団約四千人の常備兵があつて、東三省の北門を守つて居るのだが、ホテルの支配人に聞くと、馬賊の一隊が襲来したので応戦して居る者だとの事であつた。 明くれば三月十二日、鄭家屯の日本領事館書記生某、洮南視察の為に入り来り、ホテルに宿泊し、満鉄関係の三井氏が調査した書類を書き写し、四五日間滞在して帰つて行く。日本官吏の調査はすべてこんな具合に行はれて居るのだ。此日城内の春山医院猪野敏夫氏宅、及び平馬慎太郎氏宅に日本人全部移転することとなつた。岡崎は大変な不気嫌で傍人に八つ当りの態である。それは名田彦が──僕は柔術の達人だとか、米国の理髪学士だとか、刀一本あれば数十人の相手を瞬く間に斬りなびけて見せるとか──大法螺を吹いて威張り散らすのが癪に触つたのである。支那では理髪師と云へば下職とみなされて居るのに、名田彦が得々として理髪の妙技を誇つたり、又ノコノコと城内の理髪店に出かけて行つて、剃刀の使ひ方がどうだの、かうだのと理窟を云ひ、支那の理髪師に教へてやり、いらざるお節介をやつたと云ふのである。 おまけに日本人が洮南府に居ると云ふ事を秘密にしておかねばならぬのに『自分は三五信者中の全体から選ばれて来た神の寵児だ』とか『日出雄先生の一番の弟子だ』とか法螺を吹くので、岡崎が憤慨したのである。そこへ秦宣と山田とが佐々木の手紙をもつて使ひに来たので、岡崎の機嫌は益々悪い。 岡崎『佐々木、大倉の奴、乞食のやうな人足を使ひに寄こしよつた。あんなものが何になるか、大倉の奴、何も彼も自分一人で出来るやうに吐かしよつて……何だ俺が居なければ此危険な洮南府へ来て今日のやうな事があつたらどうするか、マサカ三井の小つぽけな借家へ八人も日本人が宿る訳には行くまい。それだから俺が、平馬君を手に入れておいたのだ。何と云つても佐々木や大倉では駄目だ。趙倜や憑占元の方から日出雄先生を引張りに来て居つたのに、佐々木の奴盧占魁と一緒に頼みやがるものだから先生を御依頼して盧占魁の方の援助をして貰つたのだ。本当に彼奴は馬鹿だからなア。岡崎の腹中が分らぬのだから』 と大気焔と大憤慨の呼吸で室内を包むで仕舞つた。 名田彦は猪野、大川の在留日本人に向つて滔々と自慢話を吹きかけて居る。 名田彦『自分は沢山の信者の中から選抜せられて居る純信者だが、今回の先生のお供にぬけ駆けしてやつて来たのも、今年は何でも神勅に依つて一億円の財産を拵へるつもりだからだ。蒙古には金銀銅鉄の鉱山が沢山にあると云ふ事だから、此の通り検鉱器迄持つて来て居るのだ。此器械さへあれば一目に金か、鉄か、銅か、又含有量が幾何あるかと云ふ事が即座に分る。此の検鉱器は独逸製で、日本の鉱山師は誰も持つて居ない貴重品だ。それに先生の話に聞くと大庫倫迄神軍を進めると云ふお話だが、大庫倫迄は八千支里もあると云ふのじやないか。こんな事なら来るのぢやなかつたに、チエツ……もう帰つてやらうか』 なぞと不機嫌な顔つきをして呟やく。かと思へば又顔色を変へて、大本の信者の中でも此度のお供をするやうな精神の研けた人間は、一万人の中に一人もあるまい。それを思へば此度のお供は不足ぢやない。神様の御命令だと思へば実に私は幸福なものだ。などと一人免許で喜んで居る。其処へ日出雄が何気なくやつて来て名田彦の法螺を聞き、 日出雄『大本の信者は千人が千人乍ら皆僕について来る者ばかりぢや。さう自惚するものぢやないよ』 と云つたので名田彦は変な顔して黙言込んで仕舞つた。 (大正一四、八、筆録)
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大本神諭 神諭一覧 明治32年(月日不明) 明治三十二年月日 艮の金神が出口直の手を借りて、何彼の事を知らすぞよ。今迄は世の本の神を、北へ北へ押籠ておいて、北を悪いと世界の人民が申して居りたが、北は根の国、元の国であるから、北が一番に善くなるぞよ。力の有る世の本の真正の水火神は、今迄は北の極に落されて、神の光を隠して居りたから、此世は全部暗黒でありたから、世界の人民の思ふ事は、一つも成就いたさなんだので在るぞよ。是に気の付く神も、人民も、守護神も無りたぞよ。人民は北が光ると申して、不思議がりて、種々と学や智恵で考へて居りたが、誠の神々が一処に集りて、神力の光りを現はして居ると申す事を知らなんだぞよ。モウ是からは、世に落されて居りた生神の光りが出て、日の出の守護となるから、其処ら中が光り輝いて、眩うて目を明けて居れんやうに、明かな神世になるぞよ。今迄の夜の守護の世界は、明ケの烏と成りて来て、夜が明るから、それまでに改心をいたして、霊魂を研いて、日本魂に立帰りて居らんと、ヂリヂリ悶える事が出来いたすから、年で八年の間、神は気を付たなれど、余り世界の人民の心の曇りがきつき故に、何を言ふて聞しても、筆先に書いて見せても、誠にいたさぬから、出口直は日々咽喉から血を吐くやうな思いを致して、世界の為に苦労をいたして居るのを、見て居る艮の金神も辛いぞよ。胸に焼鉄あてる如く、一人苦みて居るぞよ。人民は万物の長とも申して、豪さうに致して居るでは無いか。鳥獣でも三日前の事位は知りて居るのに、人民は一寸前が見えぬ所まで曇りて居るから、脚下へ火が燃て来て居りても、未だ気が付かぬぞよ。能うも是だけ人民の霊魂も、曇りたものであるぞよ。障子一枚ままならぬ所まで、精神を汚して置いて、何も判らぬ癖に神を下に見降して居る、人民の中の鼻高が、上へ上りて、此世の政治をいたしても、一つも思ふやうに行きはいたさんぞよ。此世は、元の生神の守護が無りたら、何程智慧や学で考へても、何時までも世界は治まらんぞよ。一日も速く往生いたして、神の申す様に致さねば、世界の人民が可愛想で、神が黙って見て居んから、今度は北から艮の金神が現はれて、世界を水晶の世にいたして、善と悪とを立別て、善悪の懲戒を明白にいたして、世界の人民を改心させて、万古末代動きの取れん、善一筋の世の持方を致すから、是迄の世とは打て変りての善き世といたして、神も仏も人民も、勇んで暮す松の世、神世といたして、天の大神様へ御目に掛るのであるぞよ。夫れまでに一つ大峠が在るから、人民は速く改心いたして、神心に立還りて下されよ。神は世界を助けたさの、永い間の苦労であるぞよ。昔の神代に立替る時節がきたぞよ。北が此世の始りであるぞよ。神の誠の光りは北に在るぞよ。北が結構に是からは成るぞよ。今迄は日没が悪いと申したが、世が代ると日没が一番善く成るぞよ。日没に初めた事は、是から先の世は、何事も善き事なれば上十いたすぞよ。夫れも神をそっち除けにいたしたら、物事一つも上十いたさぬ世に変るから、何よりも改心いたして、霊魂を研くが一等であるぞよ。時節が来たぞよ。モウ間が無いぞよ。
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大本神諭 神諭一覧 明治33年閏8月4日 明治三十三年閏八月四日 艮の金神国武彦命と現はれて、出口の手で一寸形を書すぞよ。艮の金神の大本の様子、日々付留て置いて下されよ。神の祭り方から皆の行動、みな為て見せて在るなれど、其れ解りてはおろまいがな。世界が此通りに成りておるから、此内部を能く見て置いて下されと申すのじゃ。神界も此通りに乱れて了ふて、神の神力も無くなりて、大将が何れで在るか、弟子が先生か、神憑が先生か、神がチット気を曳きて見れば、皆先生ばかりじゃ。夫れで、世界も同じ事にモメルのじゃ。皆見せて在れども分るまい。斯うして筆先にだして説いて聞せな解らんから、此の肝腎の筆先は、女島男島へ往て来ねば書れんから。出口直、王仁三郎、澄子、福島、四方平蔵二人の御供で、女島開きを致したぞよ。是から変な事が出来るぞよ。今度の御用大望で在れども、結構な御用じゃぞよ。モウ一つの経綸が。人間界に居りては出来ん事で在るから、四人の人に御苦労に成らんと、モ一つといふ事が肝腎であるから、昨年に出口を気を引きて見たれば、モ一つで物事出来いたさんことなら、生命までも差上げると申して下さりて、誠に神は満足であるぞよ。生命を取りたら今度の御用は間に合んから、二人の苦労は別の苦労がさして在るのじゃ、是が元に成るのじゃぞよ。今度正末の処へ連れ参るから、皆行状を改へて下されよ。改へさすぞよ。跡の留守番今度は是迄とは変るぞよ。木下慶太郎今では粗末に在れど、是も因縁ある身魂、児の行いを為て下されよ。房次郎改心の為に、留守二人は要らねども留守番さすが、慶太郎は御給仕結界は一切構ふて下されよ。房次郎書き物いたすと申して、エラソウに申すでないぞよ。今度の留守番結構であるぞよ。皆改心なされよ。世の立直し致すのじゃ。四人の取次ぎ世界に無き事を致すぞよ。昔から世を広めた何の教祖にも、斯んな事はさして無いぞよ。艮の金神世の元で、世の終で、今度が金輪際で世を立替て、神代の元に成るのじゃぞよ。金輪王で世を治めて、万古末代続く天○天○、大○士○拵らへて、元の昔に戻すのじゃぞよ。筆先に出したら違いは無いなれど、人民と云ふものは、善き事を申して知らせると、直ぐに来るやうに思ふて、善き事斗りを待ちて居るから、チト暇が入ると、又た筆先が嘘で在りたと申して、悪く申すなれど、神の申す事は違はんぞよ。けれども斯んな大望な事を、直きに来ると思ふて居ると、待遠うなるぞよ。未だ顔が蒼く成る事が、是から出て来るのじゃぞよ。顔が青く成る折に、神に縋りて身魂を研いて居りたら、選り分けて見せてやるぞよ。其折に地団駄を踏んで、俄信神いたしたとても、神は聞済ないぞよ。何んな悪るき身魂でも、改心致せば助ける神じゃ。敵でも助ける神じゃぞよ。度々申して在ろうがな。今迄は北を悪いと申したが、世の立替を致して、斯世は北が初りで在るから、北が一番良くなるぞよ。皆判るぞよ。日の暮を悪るいと申したが、日の暮に致した事は一番良くなるぞよ。日の暮と日が入れて在ろうがな。日の出の神が先に譬えて在るぞよ。日の出の神が東京から台湾へ戦いに立ちたのは、日の暮で在りたぞよ。今の経綸で無いぞよ。昔に仕組が致して在るのじゃ。綾部世の本、北から現はれるぞよ。斯んな事で敵対う人民は、慾なもので在るから、○○○良き事が出て来たら、又た寄りて来な成らん事があるから、其折りには、小さい顔して来んならん事が出来ると、神は見るのが気の毒なり可愛相なから、気を付けてやりたなれど、未だ新宮坪の内、綾部の町近在が、今に悪き事でも致して居る如うに思ふておるから、筆先を読んで聞かせるやうに書きおくぞよ。綾部に是だけの大望が出来るのに、人民といふものは利巧な者であれど、先の見えん事にはムゴイものじゃぞよ。世界の人民が改心いたして神心に成りたら、天下泰平に世が治まるぞよ。改心出来んと早く事に致さんと、神の鎮まる所が無いから、始めたらば速いぞよ。