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霊界物語 43_午_玉国別と治国別1(玉国別の失明) 06 祠前 第六章祠前〔一一五七〕 山猿どものつどひたる懐谷を後にして 片目を取られし神司玉国別の一行は 岩石崎嶇たる急坂を一足一足力入れ 南をさして下り行く又もや吹き来る烈風に 笠をむしられ裳裾をば捲くられながらしとしとと 眼を据ゑてアブト式にどんどんどんと膝栗毛 吾物顔に下りゆく御供に仕へし伊太公は 皺枯声を張り上げて一足一足拍子取り 汗をタラタラ流しつつ冷たき風を苦にもせず 伊太公『「ウントコドツコイドツコイシヨ」玉国別に従ひて 斎苑の館を出立し意気揚々と膝栗毛 上りつ下りつ進み来る今吹く風よりひどいやつ どつと許りにやつて来て俺等の体を中天に 遠慮会釈も荒風奴吹き散らさむとした故に 用心深い宣伝使吾師の君は吾々を 労はりたまひ道端の木の根に確としがみつき 「ウントコドツコイ危ないぞ」又もや風が吹いて来た うつかりしてると散らされるこれこれ二人の供の者 確り木の根に喰ひつき風の通るを待つがよい などとドツコイ仰有つたこれ幸ひと三人は 轟く胸を撫でながら慄ひ戦き夜を明かし 又もや吹き来る荒風に吾身大事と一散に 懐谷に駆けつけて避難なしける折柄に 「アイタヽヽタツタコン畜生」高い石めに躓いた 猿公の奴めがやつて来て畜生だてら吾々に 揶揄ひやがる「ウントコシヨ」それ見る度に「ウントコシヨ」 癪に触つて耐らない遠慮会釈も知らぬ奴 とうとう側へやつて来た伊太公さまは「ウントコシヨ」 腕に力を籠めながらお猿を一匹突き倒す キヤツキヤツキヤツキヤツと吠乍ら縦横無尽に「ウントコシヨ」 群がり掛る恐ろしさ大猿の奴めが飛んで来て 吾師の君の両眼をキヤツとも何とも吐かずに 背中の方から掻きむしりドテライ羽目に落しよつた 俺は谷川へ水汲みにいつた所が「ドツコイシヨ」 肝腎要の水筒を小柴の中へ「ヤツトコシヨ」 落した時の阿呆らしさ道公さまにクドクドと お小言計り頂戴し俺の立つ瀬はあるものか アタ阿呆らしい「ドツコイシヨ」純公さまの手を引いて 水筒の所在を尋ねむと下つて往けば草の上 平気の平左で水筒奴が素知らぬ顔して寝て居よる 確りせぬかと尻たたき純公さまがひん握り 深き谷間に下りたつて突つ込む水筒ブルブルブル 屁のよな泡を吹き乍ら腹一杯に飲みよつた 今度は落しちやならないとグツと素首ひん握り 吾師の君の御前に持ち帰り来て両眼を 洗へば「ドツコイドツコイシヨ」俄に止まる眼の痛み 瑞の御霊の御神徳あゝ有難や尊やと 両手を合せ拝む折脚下に聞ゆる宣伝歌 こいつはテツキリ三五の神の司に相違ない これより後を追つかけて「ウントコドツコイ」鎮魂を 願つて眼病の全快を祈つて貰はふと願うたら 律儀一方の宣伝使なかなか縦に首ふらぬ 吾は天下の宣伝使心の油断につけ込まれ 畜生原に目をとられ何の顔色あるものぞ 頼むでないと「ウントコシヨ」「ヤツトコドツコイ」危ないぞ なかなか許して下さらぬ俺も因果の腰を据ゑ もう此上は神様にお願ひするより道はない 枯草の上にどつと坐し両手を合せ惟神 御霊幸はへましませと祈りし甲斐もありありと パツと開いた左の目あゝ惟神々々 神の恵は目のあたり「ウントコドツコイドツコイシヨ」 これから先はだんだんと坂がはげしくなるやうだ 純公気をつけ道公さまお前の足許危ないぞ 俺もなんだか膝坊子キヨクリキヨクリと吐しよる ほんに困つた坂だなアアイタヽヽヽつまづいた 躓く石も縁のはし一樹の影の雨宿り 一河の流れを汲むさへも深き縁と聞く上は 「ウントコドツコイ躓いた」憎い石でも「ドツコイシヨ」 余り捨てたものぢやないあゝ惟神々々 御霊幸倍ましまして一日も早く月の国 ハルナの都へドウドウと進ませ給へ三五の 皇大神の御前に慎み敬ひ願ぎまつる 「アイタタツタ又倒けた」』 純公は又唄ふ。 純公『河鹿峠の山の尾を吹く木枯に木々の葉は 敢なく散りて羽衣を脱いで捨てたる枯木原 冬野の如くなりにけり秋の山野を飾りたる 黄金姫の紅葉も夕日に清照姫の木も 今は全く「ドツコイシヨ」憐れ果かなくなりにけり 小猿の奴に目の玉を「ウントコドツコイ」引抜かれ 吾師の君は嘸やさぞ残念だらう無念だらう 「ヤツトコドツコイドツコイシヨ」足許用心するがよい 高い石奴が並んで居る小面の憎い猿の奴 天と地との経綸者万の物の霊長と 生れ出でたる人間を馬鹿にしやがる「ドツコイシヨ」 どうしてこれが世の人に話がならうか恥かしや 三人の供がありながら肝腎要のお師匠を 「ウントコドツコイ」むごい目に遇はして何と申し訳 神素盞嗚大神の御前に申し上げられよか 思へば思へば腑甲斐ない話にならぬ御供達 これから何れも気をつけて吾師の君の身辺を 守らにやならぬ道公よ伊太公も確りするがよい アイタヽタツタ躓いた厄介至極の坂道だ うかうかしとれば玉の緒の命も取られて仕舞ふぞよ こんなところで斃ばつてどうして天地の神様へ 何と云ひ訳立つものか「ウントコドツコイコレワイナ」 又々きつい風が吹く頭の先から爪の先 腰の廻りに気をつけて一歩々々力籠め 「ウントコドツコイ」此坂をエンヤラヤツと下らうか 黄金姫や清照姫の貴の司は此坂を どうして下つて往かれたかその御艱難こそ思ひやる 照国別の宣伝使三人の供と諸共に 此所を通らせたまうたに違ひあるまい「ウントコシヨ」 キツト功名お手柄を七千余国の国々で お立てなさるで厶らうぞ何程大将が偉うても 附き添ふ奴が悪ければ力一ぱい動けない 純公さまの云ふ事がお前のお気に触つたら 直日に見直せ聞直せ決して決して悪い事は 「ウントコドツコイ」云はぬぞよ』 斯く歌ひ乍ら、八分許り毀れた祠の前に下りついた。 玉国別『お蔭で目の痛みも余程軽減したが何だか些し許り頭がメキメキして来た。幸ひ此処に広場があり、毀れた祠が立つて居る、何神様がお祭りしてあるか知らぬが、此処で一息して往かうぢやないか』 道公『ハイ、それが宜敷う厶いませう、貴方は御病症の御身の上、無理をなさつてはいけませぬ。今日計りでない明日も明後日もあるのですから、緩りと御休息なさいませ。道公も大変疲れましたからおつきあひを致しませう』 玉国別は諾き乍ら蓑を大地にパツと敷いて其上にドツカと腰を下し、古祠の前に両手を合せ、天津祝詞を奏上し初めた。三人も同じく祝詞を奏上する。 玉国別『何神を祭りし祠かしらねども いたいたしくもなりましにける。 よし宮は毀れたりとも神実は 常磐堅磐に鎮まりまさむ。 国治立神の命も時を得ず 根底の国に隠れましぬる。 あゝ吾は神の御恵蒙りて 此地の上に勇み居るかな。 神様の国に生れて神様を 斎かぬ奴ぞ醜の曲津見。 この社見るにつけても思ふかな 天の日澄みの宮は如何にと。 エルサレム昔の姿消え果てて 今は淋しき凩の吹く。 惟神神が表に現れまして 世を治めます時ぞ待たるる。 吾思ふ心の儘になるならば 千木高知れる宮居を建てむ。 たてとほす誠の道の強ければ 珍の宮居もやがて建つべし。 伏し拝む祠の前に涙して 我大神の行方しのばゆ。 世をしのび人草を救ふ素盞嗚の 神の命ぞ尊かりけり。 自凝の島にまします国武彦の 神の命の慕はしきかな。 玉照彦貴の命や玉照姫 如何まさむと空を仰ぎつ』 道公『神の道朝な夕なに進む身は やがて届かむ勝利の都へ。 瑞御魂厳の御魂と諸共に 三五教を築きましけり。 三五の道に仕へし吾なれば 醜の曲津の如何で襲はむ。 惟神神より外に何もなし 親も子もなき吾身なりせば』 伊太公『吾は今神の司に従ひて 神の大路の坂歩むなり。 此祠如何なる神のましますか 知らずながらも祈りたくなりぬ。 いろいろと神の御名はかはれども 国治立のみすゑなるらむ。 皇神よ行先幸く守りませ 吾師の君の御身はことさら。 行く先に如何なる曲のさやるとも 神の息吹に払はせたまへ』 純公『村肝の心の月の清ければ 如何なる曲もさやらざらまし。 三五の月の教を守りつつ 月の御国へ吾進むなり。 月の国ハルナの都に蟠る 八岐大蛇を如何に救はむ。 曲神も皆皇神の御子ならば 吾等は如何で憎むべしやは』 玉国別『玉国別神の司は今日よりは 神のまにまに進み往くべし。 斎苑館神の御言を蒙りて 吾等四人は大道ゆくなり。 河鹿山峰の嵐は強くとも 如何で恐れむ神の兵士。 吹く風に煽られながら進み行く 神の司ぞ雄々しかりけり。 バラモンの軍の司行く先に 攻め来るとも刃向ふなゆめ。 さり乍ら千騎一騎の時来れば 神のゆるしを受けて動かむ。 動きなき玉の御柱撞固め 愛善の道伝へ行くなり』 道公『皇神の道にさやりし曲神を 言向け進む身の幸楽しも。 此森の千歳の松に言とはむ 国治立の神の昔を。 此森の千歳の松の物言はば 神代の昔聞かましものを。 過ぎ去りし昔の夢を辿りつつ 夢の浮世に長らへてゆく。 現世も又幽世も神の世も すべ守ります国の祖神。 三五の道を立てたる神柱 神素盞嗚の尊畏き。 素盞嗚の瑞の御魂にかなひなば 如何なる曲も背かざるらむ。 吾は今神の恵に守られて 師の君に従ひ宣伝の旅行く。 ゆく先は空照り渡る月の国 ハルナの都と聞くは勇まし』 伊太公『暫くは嵐吹けどもやがて又 花咲く春に遇はむと楽しむ。 山々の諸木の末に至るまで 冬ごもりして時をまつなり。 田鶴巣ふ此の松ケ枝は夏冬の わかちも知らに栄えけるかも。 鶯の谷の戸あけて出る春を まつも嬉しき宣伝の旅。 杜鵑八千八声を鳴き涸らし 黄金花咲く秋をまちぬる。 冬来ぬと目にはさやかに見えねども 空吹く風にそれと偲ばる。 此森に常磐堅磐に在す神 吾等を永久に守らせ給へ』 純公『澄み渡る秋の大空眺むれば 忽ち起る醜の黒雲。 時雨して晴れ往く後に初冬の 月は御空に輝きにけり。 日は既に西山の端に舂きて うら淋しくもなりにけらしな。 さりながら神の心にかへりなば 夜昼しらに賑しと思ふ。 いざさらば吾師の君よ立ち給へ やがては広き道に出でまさむ』 玉国別『有難し眼の痛み今は早 うち忘れたり神の恵みに。 いざさらば三人の供よ神の前に 祝詞捧げて立ち出で往かむ。 有り難し尊き神の御前に 息やすめたる恵を嬉しむ。 御恵の露は木の葉の末までも きらめき渡る月の夜半なり。 望の夜の月は御空に出でましぬ 山蔭あかくなりしと思へば』 斯く歌ひ終り祠の神に別れを告げ、立ち出でむとする時しもあれ、前方より駒の蹄の音騒々しく聞え数百騎の兵士時々刻々此方をさして進み来る。玉国別外三人は此物音に耳をすませ何者ならむと双手を組み思案に暮れて居た。今の物音は大黒主の部下鬼春別将軍の先鋒隊が斎苑の館に向つて進軍し来るのである。あゝ玉国別一行の運命は如何に成り行くならむか。 (大正一一・一一・二六旧一〇・八加藤明子録)
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霊界物語 54_巳_ビクの国の物語2(後継者問題) 19 流調 第一九章流調〔一四〇五〕 治国別は謡ふ。 治国別(謡曲調)『久方の天の八重雲掻きわけて名さへ目出度きフサの国 ビクトル山の頂上の上つ岩根を搗きこらし 下つ岩根に搗固め礎固く敷き並べ 金銀瑪瑙瑠璃硨磲琥珀や玻璃に擬ふべき ライオン川の清き真砂を上つ岩根に敷き詰めて 大峡小峡の幹を切り本と末とは山口の 皇大神に献り置きて神の御稜威も三つ栗の 中つ幹を忌斧忌鋤もて心を籠めて削りたて 飛弾の工の業もあざやかに御代の光を現はす真木柱 つきたて木組も細やかに 天の御蔭日の御蔭と大屋根をしつらへ 桧の皮のいと厚く葺きつめ給ひしこの社 高天原の天国の皇大神の御舎を 天津風時津風吹き捲るまにまに茲に現世の 国の守りと定めつつ霊国にありては月の大神と現はれまし 天国にありては日の大神と現れませる大国常立の大神の 珍の御舎つかへまつり国王の君を初めとし后の宮や 世継の御子左守右守の宮司をはじめ 百の司も悦びて今日の御祭祝ぎ奉り 天津御空の極みなく底つ岩根の果てもなく 澄み渡りたる大空や紫の浪漂ふ大海原の如くいや高く いや深き大御恵を喜びて治国別を初めとし 三五教の神司今日の喜び永久に 神の賜ひし村肝の心に銘じ忘れまじ ああ斯る目出度き聖代に扇の御代の末広く 国の要と現れませる神に等しき聖の君 五風十雨の序よく山河は清くさやけく 百の種物はよく実り万民鼓腹撃壤の 至幸至楽の境涯を全く神と国王の御徳と 仰ぎ奉らむ今日の御典の尊さよ朝日は照るとも曇るとも 大空渡る月影は或は盈ち或は虧くるとも 金砂銀砂を布きつめし天の河原の星の数 浜の真砂の数多き蒼生の身の上を 恵ませ給へ皇大神ミロクの御代を来たさむと 朝な夕なに仕へたる闇夜も清く治国別の 神の使常磐の松の松彦や 世は永久に竜彦の司の悦びは云ふも更 亀の齢の万公が今日の盛典を心より 歓ぎ喜び祝ぎ奉るああ惟神々々 御霊の恩頼を祈り奉る御霊の恩頼を祈り奉る』 と謡ひ終り元の座についた。タルマンは前ウラル教の宣伝使たりしが、此度治国別の弟子となり、三五教の御教や儀式を教へられ、宮司となつて長く仕へ、王家を初め国家の安泰を祈るべき職掌となつた。タルマンは宮司として祝意を表すべく立ち上り謡ひ始めた。 タルマン(謡曲調)『赤玉は緒冴へ光れど白玉の君がよそひし尊くもあるかな 抑もビクの国は天地開闢の初めより ビクトリヤ家の遠つ御祖国の国王と現はれまして 上は神を崇め奉り下万民を慈み 五日の風や十日の雨もほどほどに与へられ 御国は栄え民はとみ天国浄土の有様を いや永久に伝へたる珍の御国も時ありて 曲の醜風吹き荒び千代の住所と定めたる ビクトリヤの城も既に傾かむとする所へ 天の八重雲掻きわけて天降りましたる神司 此世の闇をすくすくに治国別の神人を 初め三人の神司下り給ひし尊さよ タルマン司は云ふも更国王の君も后の宮も 左守右守の宮司も迷ひの雲を吹き払ひ 御空に輝く日月の光に擬ふ三五の 教の道に照らされて誠の道をよく悟り 愛善の徳に住し信真の光を浴び ビクトル山の下つ岩根に大宮柱太しき建てて 皇大神を斎ひまつり天下泰平国土成就 万民安堵の祈願を凝らし賤しき身をも顧みず 吾師の君や国王の君の任けのまにまに おほけなくも此玉の宮の神司と仕へ奉り 朝な夕なに身を清め汚れを避けて只管に 誠を尽すタルマンが心を諾ひ給へかし 天津御空の日影は或は照り或は雲り 月は盈ち或は虧くる夜ありとも誠一つの三五の 神の教を力としライオン川の水永久に 絶ゆる事なく涸るる事なき赤心のあらむ限りは 骨を砕き身を粉にし神の御為君の為め 御国の為に尽すべしああ畏くも此世をば 統べ守り給ふ大国常立の大神を初め奉り 天地八百万の大神従ひ給ふ百神達の御前に 謹み敬ひ願ぎ奉るああ惟神々々 御霊幸倍ましませよ御霊幸倍ましませよ』 松彦は又歌ふ。 松彦『千代万代も色かへぬ常磐の松の松彦が いや永久のビクの国いや永久にいつ迄も 栄えませよと大神の御前にひれ伏し朝夕に 赤心籠めて祈りしが皇大神は速に 吾等が願を聞召し百日百夜の其中に かく麗しき御舎を造らせ給ひし嬉しさよ 抑ビクの神国は神の守りのいや厚く 恵み給ひし国なればビクトル山の岩のごと いや永久に動くまじ斯かる目出度き神国の 国王の君は三五の教を悟り給ひてゆ いよいよ国は盤石の礎清く固まりて 松の緑の青々と果てしも知らず栄ゆべし 抑此国は四方の山見渡す限り松林 木々の木の間にちらちらと見ゆるは樫の大木か 但しは樟の霊木か千代に八千代にかたらかに 命も長く朽もせず枯るるためしもなき霊樹 これに因みてビクの国ビクとも動かぬ瑞祥と 遥に四方を打ちながめ心に浮かみし其儘を 茲に写して惟神神の宮居の御祭りを 祝ぎつかへ奉るああ惟神々々 御霊幸倍ましませよ』 左守は老躯を起して嬉しげに歌ふ。 左守『ああ有難し有難し神の恵は目の当り 傾きかけしビクの城立直します神の息 三五教を守ります厳の御霊や瑞御霊 皇大神は云ふも更斎苑の館を後にして 天降りましたる神司治国別の一行が 鳩の如くに下りまし吾大君を初めとし 百の司や国人の難みを救ひ給ひたる 大御恵はいつの世かいかで忘れむ大空の 限りも知らぬ星のかげ忽ちおつる事あるも 浜の真砂の尽くるとも誠の神の御恵は いや永久に忘れまじ抑国を治むるは まづ第一に天地の尊き神を寿ぎ奉り 神の教に従ひて下国民に相臨み 国の司と現れませる模範を示し詳細に 民の心をやはらげて世を永久に治むべき 誠の道を悟りけり左守の司も今迄は 霊の光暗くして心を政治に焦ちつつ 現世に心傾けて元つ御祖の神様を 次になしたる愚さよ知らず知らずに神の前 幾多の罪を重ねたる吾をも懲めたまはずに 広き心に見直して許させ給ふのみならず 左守の司の職掌を元の如くにおほせられ いと重大な任務をば任けさせ給ひし有難さ お礼の言葉は尽されずいざこれよりはキユービツトも 心を研き身を清め先づ第一に大神を 祈り奉りて君の為めいと麗しき政治 助けまつらむ吾心諾ひ給へ惟神 御前に謹み願ぎまつる』 と歌ひ座についた。右守のエクスは又歌ふ。 エクス『ビクの御国の刹帝利ビクトリヤ王の重臣と 仕へまつりし右守司エクスは茲に謹みて 皇大神の御高恩治国別の御恵 畏み畏み赤心を捧げて感謝し奉る 此世を造りし神直日心も広き大直日 ただ何事も人の世は直日に見直せ聞直せ 身の過ちは宣り直せかくも尊き御教を 授けられたる上からは孫子の代に至るまで 畏れ慎み三五の誠の教を遵奉し 右守の司の職掌を一心不乱に相守り 神と君との御為に心の限り尽すべし ああ惟神々々一度は醜の魔軍の バラモン軍に囲まれて社稷危く見えけるが 仁慈無限の大神は仁徳高き吾君の 其窮状を憐みて救はせ給ひし有難さ 唯何事も世の中は神の御旨に従ひて 如何なる小さき事とても決して我意を主張せず 神のまにまに行へばキタリキタリと恙なく 箱さすやうに行くものと初めて覚りし神の道 ああ惟神々々皇大神よ永久に 此聖代を守りまし御国を栄え給へかし ああ惟神々々神の御前に願ぎまつる』 と歌ひ終り悠然として座についた。 (大正一二・二・二三旧一・八於竜宮館加藤明子録)
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霊界物語 57_申_テルモン山の神館2 06 強印 第六章強印〔一四五六〕 テルモン山の館より十七八丁奥の谷間に大蛇の岩窟と云ふ深い穴がある。そこには三千彦を無理無体に押し込め、二人の門番が厳重にワックスの命令によつて守つて居た。 甲『オイ、何でも此中に突込んである魔法使は大それた事をしやがつたさうだな。如意宝珠の玉を盗み出し、そしてワックス様が匿して居つた等と讒言をし、デビス姫様の夫となり、此館を占領しようとしたドテライ悪人だと云ふ事だが魔法使だから何時此鉄の門を破つて出るか分らぬ。出たが最後、どんな目に会はすか知れないぞ。何程日当を沢山貰つても斯んな剣呑な商売は御免被りたいものだな』 乙『何、心配するな。魔法使と云ふものは或程度迄は法が利くだらうが、もう種が無くなつて皆に捉まへられ、斯んな処へ突込まれよつたのだから、もう大丈夫だ。滅多に出る気遣ひはないわ。斯うして十日も二十日も番して居れば饑ゑて死んで了ふ、さうすりや大丈夫だよ。俺等は日給さへ貰へば宜いのだからな』 甲『然し、此奴が死んで化けて出やがつたら、それこそ大変だぞ。何とかして断り云ふ訳には行くまいかな』 乙『そんな事、いくものかい。何時もワックスの旦那に難儀な時に無心を云つて助けて貰つてるのだから、斯んな時に御恩報じをするのだ。宮町中の難儀になる処を、ワックスさまのお蔭で此奴の盗んで居つた如意宝珠の玉も分り、俺等の生命まで助けて貰つたのだから、此奴が斃る所迄俺等は根比べをやらねばならぬのだ。余り心配するな。心配すると頭の毛が白うなるぞ』 斯く話して居る処へ遥か上の方の森林から頭の割れるやうな宣伝歌が聞えて来た。 三千彦『神が表に現はれて善と悪とを立別ける 三五教の宣伝使三千彦司が現はれて 三九坊に魅せられし家令の悴ワックスが 神の館の重宝を密かに匿し置き乍ら 三千彦司に看破され吾身危くなりしより 正反対に如意宝珠匿せしものは三千彦と 宮町一般触れ歩き何にも知らぬ人々を 誑りおほせし憎らしさ如何にワックス奸智をば 振ひて一時は世の中を欺き渡る事あるも 天地を造り玉ひたる此世の主と現ませる 誠の神は何時迄も曲の猛びを許さむや 吾は三千彦神司岩窟の中に押込まれ 暫し思案に暮るる折月照彦の大神の 遣はし玉ふエンゼルが現はれ玉ひ忽ちに 真鋼の鎚を打揮ひ此岩窟に穴穿ち 容易く救ひ玉ひけり初稚姫の遣はせし 神の変化のスマートが今や吾身に附添ひて 守らせ給ふ上からは仮令ワックス幾万の 軍を率ゐ攻め来とも如何でか恐れむ惟神 神の息吹の言霊に一人残さず吹き散らし 愛と善との聖徳を此土の上に輝かし 信と真との光明を天地の間に照らしつつ これの館の禍を払はにやおかぬ神の道 アア面白や面白や神の力は目のあたり 現はれ来る神館汝等二人の番卒よ 悔い改めて吾前に来りて罪を謝すならば 根底の国の苦みを神に祈りて救ひやり 永遠無窮の楽みを味はひ暮す天国へ 導きやらむ惟神神に誓ひて宣り伝ふ』 と歌ひ乍ら猛犬を引連れ悠々と岩窟の上面を下り来る。二人の番卒は此姿を見るより大地に頭をすりつけ、尻をつつ立てて一言も発し得ず、謝罪の意を表し乍ら慄うてゐる。太陽は漸く西山に没し、四辺はおひおひと暗くなつて来た。三千彦は二人に案内させ密かに抜け道より館を指して帰り行く。 ワックス、オークス、ビルマ、エルの四人は体を水にて洗ひ、会議室に入つてコソコソと、昼の間から日の暮れるのも知らず野心会の打合せをやつて居た。スマートは室内の怪しき臭に鼻をぴこつかせ、小声で『ウーウー』と唸り乍ら、三千彦に四人の悪者が密談に耽つてゐる事を知らした。三千彦は二人の番卒を霊縛したまま裏口よりソツと小国姫の居間に進み入つた。小国姫は悲痛の涙にくれ、今後如何になり行くならむと青息吐息をつきゐたり。 小国姫『如何にせむ今日の悩みを切り抜けむ 三千彦司の偲ばるるかな。 三千彦の道の司は三五の 誠の神の使なるらむ。 下男僕は数多あり乍ら 心汚きものばかりなり。 吾身のみ愛する輩集まりて 主人を思ふ人ぞなきかな。 泣き干して涙の種もつきにけり 救はせ玉へ三五の神。 如何ならむ悩みに会ふも神館 守らむ為めには吾身を惜しまじ。 如意宝珠貴の宝は帰りぬれど 吾子宝は如何になりしぞ。 背の君の病益々重なりて 早縡糸の断れむとぞする。 世の中に憂に悩める人々は ありとし聞けど吾に如かめや。 如何ならむ昔の罪の廻り来て かかる苦しき日を送るらむ。 待て暫し神の恵みの深ければ やがて三千彦帰り玉はむ。 三五の教司と仕へます 誠一つの君は益良夫』 と悲しげに述懐を宣べて居る。そこへ三千彦は忍び足にて帰り来たり。 『奥様奥様』 と小声に呼ぶ。小国姫は此声を微に聞いて夢かと許り打驚き乍ら、微暗き行燈の光に透かして見れば擬ふ方なき三千彦司であつた。 小国姫『ア、貴方は三千彦様、よう、マア帰つて来て下さいました。何処へお出でになつて居りましたか』 三千彦『ハイ、これには長いお話が厶います。然しこれ等両人が聞いて居りますれば、暫く霊縛を加へて置きます』 と云ひ乍ら耳と口とに霊縛を加へ、次の間に忍ばせ置きスマートをして警護せしめた。スマートは二人の番卒の一挙一動にも眼を配り、二人が一寸でも動かうとすれば目を怒らし、噛みつかむとする勢に恐れをなして、慄ひ慄ひ次の間に控へて居た。 三千彦『サアもう、これで大丈夫、然し乍ら旦那様は如何で厶いますか』 小国姫『ハイ、お蔭様で、まだ続いて居ります。一時も早く娘に会うて死にたいと申して居りますが、まだ娘の行衛は分りませぬので、今も今とて貴方の事を思ひ出し、泣いて居つた処で厶います』 三千彦『どうしてもお嬢さま二人とも、修験者に送られ、已に此館へお帰りになつて居らねばならぬ筈で厶います。之には何か悪人輩の企みがあるので厶いませう。今あの会議室でワックス以下四人の連中が密々と相談を致して居りますれば、私が此館へ帰つた事を覚れば彼等は如何なる事を致すか分りませぬ。何卒誰も来る事の出来ない居間へ案内して頂き度いもので厶います。そこでトツクリとお話を申上げませう』 小国姫『チツト窮屈で厶いますが吾夫の病室の上に暗い居間が厶います。そこは誰も上る事は出来ませぬから、そこへお越しを願うて、何かの事を承はり度う厶います』 三千彦『それは好都合です。サア早く参りませう。何時悪者がやつて来るか知れませぬから』 と云ひ乍ら小国姫に導かれて二階の暗き一間に微な火を点じ、身を隠し密々話に耽つた。 三千彦『実の所は二人のお嬢様は私の察する所、テルモン山の岩窟に隠して居るやうに考へます。ワックスと云ふ奴、デビス姫様に恋着し、肱鉄砲を喰はされたのを、性懲りもなく、飽迄恋の欲望を遂げむとし、如意宝珠を隠してお館を困らせた上、往生づくめで押掛け婿にならうと企んで居た所へ、拙者が参つたものですから陰謀露顕を恐れ、反対に拙者を魔法使と触れ廻り、如意宝珠を隠したのも拙者だと主張致し何も知らぬ町民は彼が言葉を真に受け、又修験者が送つて来た御両人様を化物だと吹聴し、岩窟に匿しおき、往生づくめに姫様に得心させた上、御主人の御死去後正々堂々と乗り込まうと云ふ悪い企みで厶いませう。併し乍らお嬢様は確りした女丈夫ですから、決して彼が毒手におかかり遊ばす案じは要りませぬ。又決して彼等に身を任せ、操を破らるる事はありませぬから御安心下さいませ。併し乍ら今直に如何すると云ふ事も出来ませぬ。町内の人の心が鎮まつた上、徐にワックスの陰謀が現はれた処へ拙者が首を出し、姫様をお助けする事に致しませう。ここ二三日は落着いて居らねばなりませぬ。又御主人の御病気に、さしひきがあつても此四五日は何ともありませぬから御安心下さいませ』 小国姫『それを承はりまして一寸安心致しました。娘は無事で居りませうかな。主人が聞きましたら何程喜ぶ事でせう。これを冥土の土産として潔く帰幽する事で厶いませう。アア惟神霊幸倍坐世。然しワックスと云ふ奴は親にも似ぬ悪党で厶いますな。さうしてマンの悪い時には悪い事が重なるもので、家令のオールスチンは大怪我を致し吾主人よりも先に死ぬかも知れぬ様な重態で厶います。あれを助けてやる訳には行きますまいかな』 三千彦『とても助かりますまい。肋骨を二本迄折つて居ますから』 小国姫『さても困つた事で厶います。これも何かの因縁で厶いませう。あまり悴が悪党を致しますので子の罪が親に酬うたのでは厶いますまいか』 三千彦『決して決して、子の罪が親に酬ふ等といふ道理が厶いませぬ。神様は公平無私にゐらつしやいますから決して人を罰め、苦める様な事をなさる筈が厶いませぬ。况して罪なき本人に子の罪迄おきせ遊ばす不合理な事がありませうか。只此上はオールスチン様の冥福を祈つてやるより外に道はありますまい。そして一時も早く国替をなさつて病気のお苦みをお助かり遊ばす様、祈るより外に道は厶いませぬ』 斯く密々話をして居る処へ、ワックス、オークス、ビルマ、エルの四人は酒を矢鱈にあふり乍ら、ドヤドヤと病室に入り来り、 ワックス『これはこれは、小国別の御主人様、御病気は如何で厶います。お訪ね致さねば済まないのですが、何分私の父が大怪我を致しましたので、一人よりない親、見逃す訳にもゆかず、夜の目も寝ず、孝行第一に看病致して居りました。だと申して大切な御主人様お訪ね致さぬも不忠の至りと、気が気でならず、宅に居つても心は御主人様の身の上に通つて居ります。アア忠ならむと欲すれば孝ならず、孝ならむと欲すれば忠ならず、どうも世の中は思ふやうには行きませぬ。どつちや……いえ、どつち道、私の爺は肋骨を折られて居ますから、死なねばならぬ運命で厶います。それで早く死んで呉れますれば、御主人様のお世話が出来ます事と、心は焦りますれど、病気計りは人間がどうする事も出来ませぬので、ツヒ失礼を致して居りました。何卒御無礼の罪お赦し下さいませ。モシ御主人様、家令の父が亡くなりましても此ワックスがビチビチして後に控へて居りますれば、決して御心配下さいますな。そしてデビス姫様とケリナ姫様とは間近い内にお帰りになりませうから、及ばず乍ら私がお世話をさして頂きます。これも御安心下さいませ。予めワックスに娘二人を宜しく頼むと只一言仰有つて下さいますれば、獅子奮迅の活動を致し、姫様を御目にかけるで厶いませう。ここに貴方の遺言状を代書して来ましたから、一寸拇印を捺して下さいますまいか。何もワックス一人の為では厶いませぬ。お館、町内一同の為は申す迄もなく、テルモン国一国の為で厶いますから』 小国別はソファーの上にヤツと起き上り凹んだ目をクワツと瞠き、力なき声にて、 『お前はワックスだつたか、何とか云つてる様だが病気のせいか、耳がワンワンして何も聞えない。女房が其処辺に居るだらうから話があるならトツクリと女房として呉れ。私はもう体が弱つて耳さえ聞えなくなつたから』 と故意と小国別は煩さを排除せむと耳に事寄せて取り合はぬ。 ワックス『モシ、御主人様、チト確りして下さいませ。此館には三千彦と云ふ魔法使が来ましてから怪事百出、貴方の御病気も彼奴の魔法の為で厶いますよ。その三千彦をテルモン山の牢獄へ押込め、お館の禍を除いたのは此ワックスで厶いますから、御安心下さいませ』 小国別『何、あの三千彦様を岩窟へ打ち込んだとは、そりや大変な事をして呉れた。あのお方は生神様だ。左様な事を致したらお前等に神罰が当るぞ。早くお助け申して吾前に送つて参れ。怪しからぬ事を致すでないか』 と怒気を帯びて力無き声に呶鳴りつけた。 ワックス『ハハハハハ、貴方の聾は嘘で厶いましたか。何と都合の好い耳で厶いますな。御主人様、よく考へて御覧なさいませ。今日か明日か知れぬ身を以て、さう頑張るものぢやありませぬ。此お館は此ワックスが居らねば駄目で厶います。バラモン教の聖場へ三五教の宣伝使を引張込む等とは重大なる罪で厶いませう。こんな事が大黒主の耳に這入つたら如何致します。お道の為には此ワックスは御主人様でも、何でも厶いませぬ』 と呶鳴り立てた。 小国姫、三千彦は頭の上の二階にワックスの声を聞いて居たが下りる訳にもゆかず、……マンの悪い処へ悪い奴が出て来たものだ……と顔を顰め、一時も早く帰りますやうにと、一生懸命に三千彦は大神に祈願を凝らして居た。 ワックスは益々大きな声で主人より拇印をとらむと迫つて居る。看護婦のセールは見るに見かねて、 セール『もし、ワックス様、旦那様は御大病のお身の上、お体に障りますから何卒お控へ下さいませ。奥様がお帰りになつた上、とつくりと御相談遊ばしたが宜しからう』 ワックス『エー、看護婦の分際として、家令の悴ワックスに向ひ、無礼の申し様、すつ込んで居れ。汝等如き卑女の容喙する処でない。モシ御主人様、是非ともこれに拇印を願ひます』 とつきつける。小国別は止むを得ず、 『アア私は目も眩み、耳も遠くなつて何にも分らないが、どんな事が書いてあるのか大きな声で読んで呉れ。そしてワックスが読んだのでは当にならぬ。セール、私に代つて、その遺言状を読んで呉れ』 セール『ハイ、承知致しました。ワックス様、サア此方へお渡し下さい。妾が旦那様の代りに読まして貰ひますから』 ワックス『モシ、御主人様、読んだ以上は拇印を捺して下さいますか。捺して貰はなくては読んで貰つても何にもなりませぬからな。それから前に定めて置かねば読む訳には行きませぬ』 小国別『読んだ上で拇印を捺してやらう』 ワックス『イヤ有難い。おい、セール、そこは……それ……腹で読むのだ。妙な読みやうを致すと家令の悴ワックスが承知致さぬぞ』 と睨みつける。セールは委細頓着なく病人の耳許に口を寄せて声高らかに読み初めた。 遺言状の事 一、吾れ帰幽せし後はテルモン山の館の事務一切を家令の悴ワックスに一任すること。 一、小国姫は別に館を建て、比丘尼として一生を安楽に送らすこと。 一、デビス姫、ケリナ姫はワックスに一切身を任すこと。 一、ワックスを当館の養子となし、デビス姫を女房とすること。 一、ケリナ姫はワックスの意志により第二夫人となすもよし、都合によれば他家へ縁づかすもワックスの自由たるべきこと。 右の遺言状は小国別重病のため筆写する事能はざるを以て、ワックスに代筆せしめ後日のため拇印押捺するもの也。 年月日小国別神司 セール『ホホホホホ何とマア虫のよい遺言状で厶いますこと、モシ、旦那様、こんな事御承知遊ばしますか』 小国別『以ての外の事だ。左様な遺言状には拇印は決して捺さない。引裂いて了へ』 と怒りの声諸共にワックスを睨めつけた。ワックスは手早くセールの手より遺言状を奪ひ取り、主人の指に印肉をつけ、無理に捺させ様とした。老衰の小国別は抵抗する力もなく進退維谷まつた処へ、宙を飛んで馳来る一頭の猛犬、ウーウーウー、ワツワツと叫び乍らワックスに跳びかかり腰の帯をグツと銜へて、猫が鼠を銜へた様な調子で館の外へ運び行く。オークス、ビルマ、エルの三人は顔色をサツと変へ、スゴスゴと受付の間に走り込み、青い顔して慄うて居る。小国姫はヤツと胸撫で下し四辺を窺ひ乍ら病床に下つて来た。 (大正一二・三・二四旧二・八於伯耆皆生温泉浜屋北村隆光録)
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霊界物語 61_子_讃美歌1 19 神恵 第一九章神恵〔一五六九〕 第一八二 一 久方の天津御国にまごころの 宝積むより越ゆる幸なし。 二 言の葉のあらむ限りをつくす共 称へつくせじ神のめぐみは。 三 瑞御魂命の主の幸ひに こころうれしき身とはなりけり。 四 わざはひの限り知られずおこる世に いと安らけく栄ゆるまめひと。 五 よろこびを朝な夕なにうたひつつ 神のめぐみに安世をわたらふ。 六 皇神の命の言霊世に広く 宣べ伝へゆく神の宣教師。 第一八三 一 生れてゆしらずしらずにおかしたる わが重き罪赦します貴美。 二 現世のなぎさ放れて進みゆく 命の御舟のいさましきかな。 三 ときの間に彼方の岸に進むなり 恵の風を受けし白帆は。 四 永久の天津御国の花園も 早ちかづきしここちこそすれ。 五 和田の原漕ぎゆく舟を弄ぶ 荒き浪風和ぎし御言葉。 六 浪風を只一言にしづめたる 瑞の御魂のいさをたふとき。 七 瑞御魂弘誓の船に棹さして 諸の罪人御国へおくる。 八 村肝のこころ静にうたひつつ 天津御国へ昇るうれしさ。 第一八四 一 淵の如深きけがれに沈みたる 魂清めむと漕ぎ来る神船。 二 雨の日も風吹く夜半も皇神の 弘誓の御船いとど安けし。 三 一人だも滅の淵に沈めじと 命の船を見立てたまひつ。 四 皇神の道にさかひし人の子を なだめすかして大道を示さす。 五 伊都御魂のぞみ豊に人の子の 昇り来たるを待ちたまひつつ。 六 世の憂きになやみ苦しむ涙より 猶更ふかくなげかせたまふ。 七 世のなさけ夢にも知らぬ醜人の こころにさへも宿らせたまふ。 八 母とます瑞の御魂のおもかげを ながむるたびに涙こぼるる。 第一八五 一 常暗の世に住む人も皇神の 光にこころ照され栄ゆる。 二 偽りの浮世の夢も今さめて 楽しき身魂と復活りたり。 三 御恵の露おき足らし世を生かす 神の息より吹く天津風。 四 天津風に心の塵もはらはれて 清き身魂とよみがへるなり。 五 皇神の造り玉ひし大道を 知らずに邪さの道を行くあり。 六 目醒めたる朝の空に照りわたる 日影はいとも麗しく見ゆ。 第一八六 一 めぐみも深き五十鈴川溢るる泉に許々多久の 罪やけがれをよく清め皇大神の大前に 誠一つに祈りなば歓喜の雨露は忽ちに おのが身魂に降るべし。 二 罪やけがれを根底より洗ひ清むる五十鈴川 流れに身魂ひたしつつ天津御国の神国に 昇らせ玉へとひたすらにいづの清めを願ぎまつれ 仁慈に充てる大神はかならずゆるし賜ふべし。 三 万の国の人々の身魂の清め済むまでは 絶ゆる事なき五十鈴川生きたる人も死人も 皆押並べて限りなき恵を受けむ神の国。 第一八七 一 わが罪を悔ゆる心は皇神の 依さし玉ひし御賜なり。 二 ふるさとの天津御国は永久に おのが霊魂の住処なりけり。 三 人々の暗に犯せし罪とがを 悟る御神の大前にのれ。 四 皇神のいづの御前にぬかづきて 犯せし罪を宣れよ洩れなく。 五 瑞御魂鎮まりゐます神の園に すすみておのが身魂を清めよ。 六 罪の子を憐みたまふ御涙の ながれて由良の川となりけむ。 七 まごころに一日も早く復活り 神と君との御楯とぞなれ。 八 三五の神の大道は現世と かくり世悉照す御燈明。 第一八八 一 神は門の戸打叩き外面に立ちて開けよと 声も涼しく宣り玉ふ罪に曇りし人々は 珍の御声を畏みて悪魔の如く忌み嫌ひ ますます門の戸堅く締め拒みまつるぞ嘆てけれ。 二 広き尊き皇神の大御恵ははかられず 愛の涙をたたへつつ日毎夜毎に人々の 門戸を訪ひ玉へども道に背きし醜魂は 畏れて閉す門の口益々闇に沈み行く 身の果てこそは憐れなれ。 三 命の神の訪ひを力限りに相拒む 生命知らずの愚もの生命の主は朝夕に 門の戸開けと宣り玉ふ心を清めて一時も 早く迎へ入れ奉れ永遠の生命の基なる 此世を生かす神の御子よ。 第一八九 一 定めなき浮世の風に誘はれて 世を去る時の神は力ぞ。 二 或は散り或は残り現世の 嵐を忍ぶ人の身の上。 三 世にありて犯せし罪の捨て所 底なき亡びの淵とこそ知れ 四 吾魂も罪諸共に亡び行く 酬いの淵ぞ恐ろしきかな。 五 山風の明日をも待たず吹くならば 吾魂も如何になるらむ。 六 うかれ行く吾魂を導きて 生かさせ玉へ瑞の大神。 七 散りもせず萎みもやらで咲き匂ふ 常世の春に会ふぞ嬉しき。 八 咲き匂ふ御園の花を尋ねむと 真心尽せ人の御子達。 第一九〇 一 高天原は開けたり命の光は輝きぬ。 二 高天原の御光は世人の為めに開かれぬ 青垣山を繞らせる下津岩根の霊場に。 三 人の悉望むがままに高天原の花苑に 喜び迎へ入れ玉ふ瑞の御魂の御恵 慎み敬ひ奉れ高天原の聖場が 下津岩根に開かれて御光四方に輝けば 群がる仇も恐れなく誠一つに進むべし。 四 八十の曲霊の魔軍に向つて打出す言霊の 光に言向け和しつつ勝鬨あげて御前に 功績たつる目出度さよ厳の御魂や瑞御魂 その功績を愛で玉ひ栄光と平安と歓喜に 充てる黄金の冠を必ず与へ玉ふべし あゝ惟神々々恩頼ぞ畏けれ。 第一九一 一 永久に消えぬ光は瑞の神 千座の上の輝なりけり。 二 偲ぶだにいとも畏き主の恵 など人の子の来り受けざる。 三 類なき主の恵は永久に 月日墜つとも変らざらまし。 四 いと高き主の恵は大空の 神の宝座の栄えなりけり。 五 千早振る神は更なり御代知らす 我日の御子の恵忘れそ。 (大正一二・五・八旧三・二三北村隆光録)
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霊界物語 78_巳_朝香比女の神の物語(葦原新国) 08 鏡の沼 第八章鏡の沼〔一九六四〕 初頭比古の神の一行は、際限もなき焼野ケ原の中央に、天津日に輝くグロスの沼を目あてに駒を速めて進ませ給ひける。折しもあれ、血にまみれたる老媼の一人路傍に横はり、息も絶え絶えに四柱神に向つて両手を合せ、救ひを乞ふ事頻なりければ、初頭比古の神は駒を止め、馬上より老媼に向ひ、声も涼しく宣らせ給ふ。 『曲津見の征途に進む道の辺に 何を悩むかこれの老媼は よく見れば汝が面は無惨しく 血のただれあり理由聞かむ 言霊の水火の力に汝が悩み ただに救はむ名をなのれかし』 老媼は息も絶え絶えに歌もて答ふ。 『吾こそは荒野の奥に潜み住む 名もなき小さき国津神ぞや グロス沼に棲まへる大蛇はかくのごと 吾を傷つけ逃げ去りにけり この病癒させたまへ天津神 大蛇の言向け取り止めたまひて 天津神進ませたまふも詮なけれ 曲神の去りしあとの沼辺は 吾こそは焼野の雉子と言へるもの 夫も子も皆殺されにけり 沼底にひそみし曲津は天津神の 出でましと聞きて逃げ失せしはや この先は醜の曲神の罠多し 進ませたまふな危かりせば』 初頭比古の神は儼然として御歌宣らせ給ふ。 『汝こそはゴロスの化身よ惟神 吾さとき目を濁さむとするか グロノスの曲の言葉を畏みて 吾を止めむ心なるべし グロノスもゴロスも神の言霊に 射向ふ力あらざるべきを 汝は今雉子老媼と身を変じ 吾神軍を止めむとすも。 一二三四五六七八九十 百千万千万の 神の言霊幸はひて これの曲神の化身なる 雉子の老媼の正体を 現はせたまへ惟神 真言の水火の言霊を 清く打ち出で願ぎまつる ああ惟神々々 生言霊に光あれ 吾言霊に生命あれ』 かく歌ひたまふや、雉子と言へる老媼は忽ち三角三頭の長蛇と変じ、三箇の口より火焔を吐き黒煙を吐き、前後左右にのたうち廻り、グロス沼の方をさして一目散に雲を霞と逃げ去りにける。 起立比古の神は驚きながら御歌詠ませ給ふ。 『巧なる大蛇の化身も汝が神の 生言霊に逃げ失せにけり 曲津見はいろいろさまざまに身をやつし 吾行く道を遮らむとすも 神軍の出立ち恐れ曲津見は かくも姿を変じたりけむ 傷つきし彼の面は燃えさかる 野火に焼かれしあとなりにけむ グロノスもゴロスも野火にやかれつつ 水底に潜みて苦しみ居るらむ かくなれば醜の曲神の雄猛びも 憐れ催し躊躇心わく さりながら吾雄心に躊躇の わくも曲神の経綸なるべし 御樋代の神の依さしを飽くまでも 仕へまつらで帰るべきやは 数々の罠のありとは偽りか ゴロスの化身の言の葉怪し』 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『面白き今日の首途よ曲津見は 吾等を道に伊迎へまつりぬ 天日の下にゴロスは身を変じ 吾等を迎ふることの雄々しさ 何事の奸計あるかは知らねども 神と倶なる吾等は恐れじ 恐るべきものは心にわきたてる 躊躇心の曇なりける いざさらば公の神言を畏みて ただ一筋の道進むのみ』 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『天清く大地は広く遠の野に 陽炎立ちて春風渡れり 春風に吹かれて進む駒の背の 吾気魂の心地よきかも 春の野を行く心地して曲津見の 罰めの戦の首途と思へじ 綽々として余裕ある此戦 曲の滅びは夢のごとけむ 張り切りし心も俄にゆるみけり ゴロスの曲津の姿見しより 種々に心しゆかばや曲津見は 身を変じつつ現はれ来らむ 遠の野をふりさけ見れば彼方此方に 曲神の息か黒雲立ちたつ 陽炎のもえ立つ春野の奥にして 黒雲立つは怪しかりけり 見の限り焼野は広し醜雲の 影は見ゆれどかたまりもせず いざさらばグロスの沼に進むべし 吾駿馬も勇み出でつつ』 茲に四柱の神々はグロスの沼をさして急がせ給ひ、汀に立ちて眺め給へば、殆んど東西十里南北二十里に余る大沼なりければ、四柱の神は沼の周囲を四分し、東西南北に一柱づつ陣どり一斉に天津祝詞を奏上し、七十五声の言霊を宣りあげ、 『一二三四五六七八九十、百千万千万の神、この言霊軍に加はりたまへ、援けたまへ、守らせたまへ』 と一生懸命に宣り上げ給ふにぞ、遉にグロノス、ゴロスの曲神も言霊の力に敵し兼ね、苦しみ悶えながら沼底より大噴火の如き水泡を吹き出し、六角六頭の巨大なる悪竜となり、グロノスは水面高く立ち昇り、ゴロスは三角三頭の長大なる蛇身と還元し、水面をのたうち廻り、遂には黒雲を起し中天高く立ちのぼり、鷹巣の山の方面さして雷鳴のとどろく如き音響を立てて馳け出し逃げ失せける。其為に沼の水は大半雲となりて御空に舞ひ昇り、再び雨となつて地に下る勢は、高照山の中津滝を数百千集めたるが如く、広く激しく、到底晏然として起立し得ざる凄まじき光景とはなりにける。斯の如く大蛇の脆くも逃げ失せたるは、朝香比女の神を蔭ながら守らせたまふ鋭敏鳴出の神のウ声の力なりけるぞ畏けれ。 四柱の神は各自駒を速めて元来し道を駈りつつ傘松の蔭にやうやくにして集はせ給ひ、勇ましく凄まじかりし戦況を互に語り合ひつつ哄笑の幕をつづかせ給ひける。 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『千早振る神世も聞かず例なき 曲津の軍に向ひぬるかな 四柱の神の言霊の幸はひに 曲津見の神は稍おとろへぬ さりながら大蛇の神の執拗さ 生言霊に容易に亡びず 百雷の一度に轟く如くなる ウ声の言霊にひるむ曲津見 御樋代の神を守らす鋭敏鳴出の 神の言霊に逃げ失せにけり 名にし負ふグロスの沼の曲神も 今日を限りと逃げ失せにけり 曲神は野火に焼かれて傷つきしか その面見れば糜爛れゐたりぬ 恐ろしき六角六頭の巨大なる 悪竜水の面にのたうち廻りし 三頭三角の長蛇となりて曲津見の ゴロスは腹を真白く見せたり 大き小さき数限りなき竜蛇神の 狂へるさまは見物なりけり 初めての曲津の征途に向ひつつ 如何になるかと危ぶみしはや』 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。 『山岳の如き荒浪立てながら 狂ひ立ちたる曲津見あはれ 水柱天に冲して噴水の 吐き出す如き曲津のすさびよ 曲神の苦しき息より迸る 水は御空に高くのぼりぬ かくのごと勇ましき軍は見ざりけり 生言霊の比なき力に』 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『女神吾もいかがなるよと束の間は 危ぶみにけり曲津の荒びに 曲神の逃げ去りしより沼の面は 鏡の如く光りかがやけり この沼を鏡の沼と改めて この食国のしめりとなさばや 莽々と生え繁りたる醜草も 焼き払はれて沼のみ照れる 御樋代神の持たせる真火のなかりせば この曲津見は亡びざりけむ 葦原比女の御樋代神の御艱み 今日の戦にはじめて覚りぬ 手も足も出す隙もなき此島に 御樋代神のおはす雄々しさ』 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。 『曲津見は黒雲に乗りて逃げゆきし あとの御空は晴れ渡りけり 言霊の軍の功詳細に わが公許に復命せむ 吾公の功尊し曲神の 罰めの軍に光をたまへり 神光は忍ケ丘の御空より いや輝きて曲津亡びけり 葦原比女神のまします聖場は またもや曲津に襲はれにけむ 中野河の広き流れにささへられ 野火はここにて止まりにけむ 曲津見は中野河原の空渡り 鷹巣の山に棲処定めむ 兎も角も忍ケ丘に急ぎつつ 公が御前に復命申さむ』 かく歌ひ給へば、初頭比古の神は、 『天晴比女神の言霊諾ひて いざや帰らむ忍ケ丘に』 茲に四柱の神は轡を並べて、忍ケ丘の朝香比女の神の本営に凱旋し給ひけるこそ、目出度けれ。 (昭和八・一二・二一旧一一・五於大阪分院蒼雲閣加藤明子謹録)