| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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霊界物語 | 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 | 序 | 序 この『霊界物語』は、天地剖判の初めより天の岩戸開き後、神素盞嗚命が地球上に跋扈跳梁せる八岐大蛇を寸断し、つひに叢雲宝剣をえて天祖に奉り、至誠を天地に表はし五六七神政の成就、松の世を建設し、国祖を地上霊界の主宰神たらしめたまひし太古の神代の物語および霊界探険の大要を略述し、苦・集・滅・道を説き、道・法・礼・節を開示せしものにして、決して現界の事象にたいし、偶意的に編述せしものにあらず。されど神界幽界の出来事は、古今東西の区別なく、現界に現はれ来ることも、あながち否み難きは事実にして、単に神幽両界の事のみと解し等閑に附せず、これによりて心魂を清め言行を改め、霊主体従の本旨を実行されむことを希望す。 読者諸子のうちには、諸神の御活動にたいし、一字か二字、神名のわが姓名に似たる文字ありとして、ただちに自己の過去における霊的活動なりと、速解される傾向ありと聞く。実に誤れるの甚だしきものといふべし。切に注意を乞ふ次第なり。 大正十年十月廿日午後一時 於松雲閣瑞月出口王仁三郎誌 |
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霊界物語 | 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 | 発端 | 発端 自分が明治三十一年旧二月九日、神使に伴なはれ丹波穴太の霊山高熊山に、一週間の霊的修業を了へてより天眼通、天耳通、自他神通、天言通、宿命通の大要を心得し、神明の教義をして今日あるに至らしめたるについては、千変万化の波瀾があり、縦横無限の曲折がある。旧役員の反抗、信者の離反、その筋の誤解、宗教家の迫害、親族、知友の総攻撃、新聞雑誌、単行本の熱罵嘲笑、実に筆紙口舌のよくするところのものでない。自分はただただ開教後廿四年間の経緯を、きわめて簡単に記憶より呼び起して、その一端を示すことにする。 竜宮館には変性男子の神系と、変性女子の神系との二大系統が、歴然として区別されてゐる。変性男子は神政出現の予言、警告を発し、千辛万苦、神示を伝達し、水をもつて身魂の洗礼を施し、救世主の再生、再臨を待つてをられた。ヨハネの初めてキリストに対面するまでには、ほとんど七年の間、野に叫びつつあつたのである。変性男子の肉宮は女体男霊にして、五十七才はじめてここに厳の御魂の神業に参加したまひ、明治二十五年の正月元旦より、同四十五年の正月元旦まで、前後満二十年間の水洗礼をもつて、現世の汚濁せる霊体両系一切に洗礼を施し、世界改造の神策を顕示したまうた。かの欧洲大戦乱のごときは、厳の御魂の神業発動の一端にして、三千世界の一大警告であつたと思ふ。 変性女子の肉宮は瑞の御魂の神業に参加奉仕し、火をもつて世界万民に洗礼を施すの神務である。明治三十一年の旧二月九日をもつて神業に参加し、大正七年二月九日をもつて前後満二十年間の霊的神業をほとんど完成した。物質万能主義、無神無霊魂説に、心酔累惑せる体主霊従の現代も、やや覚醒の域に達し、神霊の実在を認識するもの、日に月に多きを加へきたれるは、すなはち神霊の偉大なる神機発動の結果にして、決して人智人力の致すところではないと思ふ。 変性男子の肉宮は神政開祖の神業に入り、爾来二十有七年間神筆を揮ひ、もつて霊体両界の大改造を促進し、今や霊界に入りても、その神業を継続奉仕されつつあるのである。 つぎに変性女子は三十年間の神業に奉仕して、もつて五六七神政の成就を待ち、世界を善道にみちびき、もつて神明の徳沢に浴せしむるの神業である。神業奉仕以来、本年をもつて満二十三年、残る七ケ年こそ最も重大なる任務遂行の難関である。神諭に曰く、 『三十年で身魂の立替立直しをいたすぞよ』 と。変性男子の三十年の神業成就は、大正十一年の正月元旦である。変性女子の三十年の神業成就は、大正十七年二月九日である。神諭に、 『身魂の立替立直し』 とあるを、よく考へてみると、主として水洗礼の霊体両系の改造が三十年であつて、これはヨハネの奉仕すべき神業であり、体霊洗礼の霊魂的改造が前後三十年を要するといふ神示である。しかしながら三十年と神示されたのは、大要を示されたもので、決して確定的のものではない。伸縮遅速は、たうてい免れないと思ふ。要するに、神界の御方針は一定不変であつても、天地経綸の司宰たるべき奉仕者の身魂の研不研の結果によつて変更されるのは止むをえないのである。 神諭に、 『天地の元の先祖の神の心が真実に徹底了解たものが少しありたら、樹替樹直しは立派にできあがるなれど、神界の誠が解りた人民が無いから、神はいつまでも世に出ることができぬから、早く改心いたして下されよ。一人が判りたら皆の者が判つてくるなれど、肝心のものに判らぬといふのも、これには何か一つの原因が無けねばならぬぞよ。自然に気のつくまで待つてをれば、神業はだんだん遅れるばかりなり、心から発根の改心でなければ、教へてもらうてから合点する身魂では、到底この御用は務まらぬぞよ。云々』 実際の御経綸が分つてこなくては、空前絶後の大神業に完全に奉仕することはできるものではない。御神諭に身魂の樹替樹直しといふことがある。ミタマといへば、霊魂のみのことと思つてゐる人が沢山にあるらしい。身は身体、または物質界を指し、魂とは霊魂、心性、神界等を指したまうたのである。すべて宇宙は霊が本で、体が末となつてゐる。身の方面、物質的現界の改造を断行されるのは国祖大国常立神であり、精神界、神霊界の改造を断行したまふのは、豊国主神の神権である。ゆゑに宇宙一切は霊界が主であり、現界が従であるから、これを称して霊主体従といふのである。 霊主体従の身魂を霊の本の身魂といひ、体主霊従の身魂を自己愛智の身魂といふ。霊主体従の身魂は、一切天地の律法に適ひたる行動を好んで遂行せむとし、常に天下公共のために心身をささげ、犠牲的行動をもつて本懐となし、至真、至善、至美、至直の大精神を発揮する、救世の神業に奉仕する神や人の身魂である。体主霊従の身魂は私利私欲にふけり、天地の神明を畏れず、体欲を重んじ、衣食住にのみ心を煩はし、利によりて集まり、利によつて散じ、その行動は常に正鵠を欠き、利己主義を強調するのほか、一片の義務を弁へず、慈悲を知らず、心はあたかも豺狼のごとき不善の神や、人をいふのである。 天の大神は、最初に天足彦、胞場姫のふたりを造りて、人体の祖となしたまひ、霊主体従の神木に体主霊従の果実を実らせ、 『この果実を喰ふべからず』 と厳命し、その性質のいかんを試みたまうた。ふたりは体欲にかられて、つひにその厳命を犯し、神の怒りにふれた。 これより世界は体主霊従の妖気発生し、神人界に邪悪分子の萠芽を見るにいたつたのである。 かくいふ時は、人あるひは言はむ。 『神は全智全能にして智徳円満なり。なんぞ体主霊従の萌芽を刈りとり、さらに霊主体従の人体の祖を改造せざりしや。体主霊従の祖を何ゆゑに放任し、もつて邪悪の世界をつくり、みづからその処置に困むや。ここにいたりて吾人は神の存在と、神力とを疑はざるを得じ』 とは、実に巧妙にしてもつとも至極な議論である。 されど神明には、毫末の依怙なく、逆行的神業なし。一度手を降したる神業は昨日の今日たり難きがごとく、弓をはなれたる矢の中途に還りきたらざるごとく、ふたたび之を更改するは、天地自然の経緯に背反す。ゆゑに神代一代は、これを革正すること能はざるところに儼然たる神の権威をともなふのである。また一度出でたる神勅も、これを更改すべからず。神にしてしばしばその神勅を更改し給ふごときことありとせば、宇宙の秩序はここに全く紊乱し、つひには自由放漫の端を開くをもつてである。古の諺にも『武士の言葉に二言なし』といふ。いはんや、宇宙の大主宰たる、神明においてをやである。神諭にも、 『時節には神も叶はぬぞよ。時節を待てば煎豆にも花の咲く時節が参りて、世に落ちてをりた神も、世に出て働く時節が参りたぞよ。時節ほど恐いものの結構なものは無いぞよ、云々』 と示されたるがごとく、天地の神明も『時』の力のみは、いかんとも為したまふことはできないのである。 天地剖判の始めより、五十六億七千万年の星霜を経て、いよいよ弥勒出現の暁となり、弥勒の神下生して三界の大革正を成就し、松の世を顕現するため、ここに神柱をたて、苦・集・滅・道を説き、道・法・礼・節を開示し、善を勧め、悪を懲し、至仁至愛の教を布き、至治泰平の天則を啓示し、天意のままの善政を天地に拡充したまふ時期に近づいてきたのである。 吾人はかかる千万億歳にわたりて、ためしもなき聖世の過渡時代に生れ出で、神業に奉仕することを得ば、何の幸か之に如かむやである。神示にいふ。 『神は万物普遍の聖霊にして、人は天地経綸の司宰なり』 と。アゝ吾人はこの時をおいて何れの代にか、天地の神業に奉仕することを得む。 アゝ言霊の幸はふ国、言霊の天照る国、言霊の生ける国、言霊の助ける国、神の造りし国、神徳の充てる国に生を稟けたる神国の人においてをや。神の恩の高く、深きに感謝し、もつて国祖の大御心に報い奉らねばならぬ次第である。 |
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霊界物語 | 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 | 18 霊界の情勢 | 第一八章霊界の情勢〔一八〕 ここで自分は、神界幽界の現界にたいする関係を一寸述べておかうと思ふ。 神界と幽界とは時間空間を超越して、少しも時間的の観念はない。それゆゑ霊界において目撃したことが、二三日後に現界に現はれることもあれば、十年後に現はれることもあり、数百年後に現はれることもある。また数百年数千年前の太古を見せられることもある。その見ゆる有様は過去、現在、未来が一度に鏡にかけたごとく見ゆるものであつて、あたかも過去、現在、未来の区別なきが如くにして、しかもその区別がそれと歴然推断され得るのである。 霊界より観れば、時空、明暗、上下、大小、広狭等すべて区別なく、皆一様平列的に霊眼に映じてくる。 ここに自分が述べつつあることは、霊界において見た順序のままに来るとはかぎらない。霊界において一層早く会ふた身魂が、現界では一層晩く会ふこともあり、霊界にて一層後に見た身魂を、現界にて一層早く見ることもある。今回の三千世界の大神劇に際して、檜舞台に立つところの霊界の役者たちの霊肉一致の行動は、自分が霊界において観たところとは、時間において非常に差異がある。 されど自分は、一度霊界で目撃したことは、神劇として必ず現界に再現してくることを信ずるものである。 さて天界は、天照大御神の御支配であつて、これは後述することにするが、今は地上の神界の紛乱状態を明らかにしたいと思ふ。今までは地上神界の主宰者たる国常立尊は、「表の神諭」に示されたるごとくに、やむを得ざる事情によつて、引退され給うてゐられた。 それに代つて、太古において衆望を担うて、国常立尊の後を襲ひたまうた神様は、現在は支那といふ名で区劃されてゐる地域に、発生せられたる身魂であつて、盤古大神といふ神である。この神はきはめて柔順なる神にましまして、決して悪神ではなかつた。ゆゑに衆神より多大の望みを嘱されてゐたまうた神である。今でこそ日本といひ、支那といひ露西亜といひ、種々に国境が区劃されてゐるが、国常立尊御神政時代は、日本とか外国とかいふやうな差別は全くなかつた。 ところが天孫降臨以来、国家といふ形式ができあがり、いはゆる日本国が建てられた。従つて水火沫の凝りてなれるてふ海外の地にも国家が建設されたのである。さて、いはゆる日本国が創建され、諸々の国々が分れ出でたるとき、支那に生まれたまうた盤古大神は、葦原中津国に来たりたまひて国祖の後を襲ひたまふた上、八王大神といふ直属の番頭神を御使ひになつて、地の世界の諸国を統轄せしめられた。一方いはゆる外国には、国々の国魂の神および番頭神として、国々に八王八頭といふ神を配置された。丁度それは日本の国に盤古大神があり、その下に八王大神がおかれてあつたやうなものである。日本本土における八王大神は、諸外国の八王八頭を統轄し、その上を盤古大神が総攬したまひましたが、八王八頭は決して悪神ではない。天から命ぜられて各国の国魂となつたのは八王であり、八頭は宰相の位置の役である。こういふ風なのが、今日、国常立尊御復権までの神界の有様である。 さうかうするうちに、露国のあたりに天地の邪気が凝りかたまつて悪霊が発生した。これがすなはち素盞嗚命の言向和された、かの醜い形の八頭八尾の大蛇の姿をしてゐたのである。この八頭八尾の大蛇の霊が霊を分けて、国々の国魂神および番頭神なる八王八頭の身魂を冒し、次第に神界を悪化させるやうに努力しながら現在にいたつたのである。しかるに一方印度においては、極陰性の邪気が凝りかたまつて金毛九尾白面の悪狐が発生した。この霊はおのおのまた霊を分けて、国々の八王八頭の相手方の女の霊にのり憑つた。 しかして、また一つの邪気が凝り固まつて鬼の姿をして発生したのは、猶太の土地であつた。この邪鬼は、すべての神界並びに現界の組織を打ち毀して、自分が盟主となつて、全世界を妖魅界にしやうと目論みてゐる。しかしながら日本国は特殊なる神国であつて、この三種の悪神の侵害を免れ、地上に儼然として、万古不動に卓立してをることができた。この悪霊の三つ巴のはたらきによつて、諸国の国魂の神の統制力はなくなり、地上の世界は憤怒と、憎悪と、嫉妬と、羨望と、争闘などの諸罪悪に充ち満ちて、つひに収拾すべからざる三界の紛乱状態を醸したのである。 ここにおいて、天上にまします至仁至愛の大神は、このままにては神界、現界、幽界も、共に破滅淪亡の外はないと観察したまひ、ふたたび国常立尊をお召出し遊ばされ、神界および現界の建替を委任し給ふことになつた。さうして坤之金神をはじめ、金勝要神、竜宮乙姫、日出神が、この大神業を輔佐し奉ることになり、残らずの金神すなはち天狗たちは、おのおの分担に従つて御活動申し上げ、白狐は下郎の役として、それぞれ神務に参加することになつた。ここにおいて天津神の嫡流におかせられても、木花咲耶姫命と彦火々出見命は、事態容易ならずと見たまひ、国常立尊の神業を御手伝ひ遊ばすこととなり、正神界の御経綸は着々その歩を進め給ひつつあるのである。それと共にそれぞれ因縁ある身魂は、すべて地の高天原に集まり、神界の修行に参加し、御経綸の端なりとも奉仕さるることになつてをるのである。 そもそも太古、葦原瑞穂中津国は大国主命が武力をもつて、天下をお治めになつてゐた。天孫降臨に先だち、天祖は第三回まで天使をお遣しになり、つひには武力をもつて大国主命の権力を制し給うた。大国主神も力尽きたまひ、現界の御政権をば天命のままに天孫に奉還し、大国主御自身は、青芝垣にかくれて御子事代主と共に、幽世を統治したまふことになつた。 この時代の天孫の御降臨は、現在の日本なる地上の小区劃を御支配なし給ふためではなく、実に全地球の現界を知食すための御降臨であり給うた。しかしながら未完成なる世界には、憎悪、憤怒、怨恨、嫉妬、争闘等あらゆる邪悪が充満してゐるために、天の大神様の御大望は完成するにいたらず、従つて弱肉強食の修羅の巷と化し去り地上の神界、現界は、ほとんど全く崩壊淪亡しやうとする場合に立ちいたつたのである。 かかる情勢を見給ひし天津神様は、命令を下したまひて、盤古大神は地上一切の幽政の御権利を、艮金神国常立尊に、ふたたび御奉還になるのやむなき次第となつた。ここに盤古大神も既に時節のきたれるを知り、従順に大神様の御命令を奉戴遵守したまうた。しかるに八王大神以下の国魂は、邪神のためにその精霊を全く汚されきつてゐるので、まだまだ改心することができず、いろいろと悪策をめぐらしてゐたのである。なかには改心の兆の幾分見えた神もあつた。 かくの如くにして国常立尊が、完全に地上の神界を御統一なしたまふべき時節は、既に已に近づいてゐる。神界の有様は現界にうつりきたり、神界平定後は天津日嗣命が現界を治め給ひ、国常立尊は幽政を総纜したまひ、大国主命は日本の幽政をお司りになるはずである。しかし現在ではまだ、八頭八尾の大蛇、金毛九尾の悪狐および鬼の霊は、盤古大神を擁立して、幽界および現界を支配しやうと、諸々の悪計をめぐらしつつあるのである。 しかしながら従順な盤古大神は、神界に対するかかる反逆に賛同されないので、邪鬼の霊はみづから頭目となり、赤色旗を押立てていろいろの身魂をその眷族に使ひつつ、高天原乗取策を講じてゐる。 そこで天よりは事態容易ならずとして、御三体の大神が地上に降臨ましまして、国常立尊の御経綸を加勢なしたまふことになり、国常立尊は仮の御息所を蓮華台上に建設して、御三体の大神様を奉迎し給ふこととなるのである。 したがつて、御三体の大神様の御息所ができたならば、神界の御経綸が一層進んだ証拠だと拝察することができる。 (大正一〇・一〇・二〇旧九・二〇谷口正治録) |
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霊界物語 | 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 | 20 日地月の発生 | 第二〇章日地月の発生〔二〇〕 盲目の神使に迎へられて、自分は地の高天原へたどりついたが、自分の眼の前には、何時のまにか、大地の主宰神にまします国常立大神と、稚姫君命が出御遊ばしたまうた。自分は仰せのまにまにこの両神より、貴重なる天眼鏡を賜はり、いよいよ神界を探険すべき大命を拝受したのである。 忽ち眼前の光景は見るみる変じて、すばらしい高い山が、雲表に聳えたつてゐる。その山には索線車のやうなものが架つてゐた。自分は登らうかと思つて、一歩麓の山路に足を踏みこむと、不思議や、五体は何者かに引上げらるるやうな心持に、直立したままスウと昇騰してゆく。 これこそ仏者のいはゆる須弥仙山で、宇宙の中心に無辺の高さをもつて屹立してゐる。それは決して、肉眼にて見うる種類の、現実的の山ではなくして、全く霊界の山であるから、自分とても霊で上つたので、決して現体で上つたのではない。 自分は須弥仙山の頂上に立つて、大神より賜はつた天眼鏡を取り出して、八方を眺めはじめた。すると茫々たる宇宙の渾沌たる中に、どこともなしに一つの球い凝塊ができるのが見える。 それは丁度毬のやうな形で、周辺には一杯に泥水が漂うてゐる。見るまにその球い凝塊は膨大して、宇宙全体に拡がるかと思はれた。やがて眼もとどかぬ拡がりに到達したが、球形の真中には、鮮かな金色をした一つの円柱が立つてゐた。 円柱はしばらくすると、自然に左旋運動をはじめる。周辺に漂ふ泥は、円柱の回転につれて渦巻を描いてゐた。その渦巻は次第に外周へ向けて、大きな輪が拡がつていつた。はじめは緩やかに直立して回転してゐた円柱は、その速度を加へきたるにつれ、次第に傾斜の度を増しながら、視角に触れぬやうな速さで、回転しはじめた。 すると、大きな円い球の中より、暗黒色の小塊体が振り放たるるやうにポツポツと飛びだして、宇宙全体に散乱する。観ればそれが無数の光のない黒い星辰と化つて、或ひは近く、或ひは遠く位置を占めて左旋するやうに見える。後方に太陽が輝きはじめるとともに、それらの諸星は皆一斉に輝きだした。 その金の円柱は、たちまち竜体と変化して、その球い大地の上を東西南北に馳せめぐりはじめた。さうしてその竜体の腹から、口から、また全身からも、大小無数の竜体が生れいでた。 金色の竜体と、それから生れいでた種々の色彩をもつた大小無数の竜体は、地上の各所を泳ぎはじめた。もつとも大きな竜体の泳ぐ波動で、泥の部分は次第に固くなりはじめ、水の部分は稀薄となり、しかして水蒸気は昇騰する。そのとき竜体が尾を振り廻すごとに、その泥に波の形ができる。もつとも大きな竜体の通つた所は大山脈が形造られ、中小種々の竜体の通つた所は、またそれ相応の山脈が形造られた。低き所には水が集り、かくして海もまた自然にできることになつた。この最も大いなる御竜体を、大国常立命と称へ奉ることを自分は知つた。 宇宙はその時、朧月夜の少し暗い加減のやうな状態であつたが、海原の真中と思はるる所に、忽然として銀色の柱が突出してきた。その高さは非常に高い。それが忽ち右旋りに回転をはじめた。その旋回につれて柱の各所から種々の種物が飛び散るやうに現はれて、山野河海一切のところに撒き散らされた。しかしまだその時は人類は勿論、草木、禽獣、虫魚の類は何物も発生してはゐなかつた。 たちまち銀の柱が横様に倒れたと見るまに、銀色の大きな竜体に変じてゐる。その竜体は海上を西から東へと、泳いで進みだした。この銀色の竜神が坤金神と申すのである。 また東からは国祖大国常立命が、金色の大きな竜体を現じて、固まりかけた地上を馳せてこられる。両つの御竜体は、雙方より顔を向き合はして、何ごとかを諜しあはされたやうな様子である。しばらくの後金色の竜体は左へ旋回しはじめ、銀色の竜体はまた右へ旋回し始められた。そのため地上は恐ろしい音響を発して震動し、大地はその震動によつて、非常な光輝を発射してきた。 このとき金色の竜体の口からは、大なる赤き色の玉が大音響と共に飛びだして、まもなく天へ騰つて太陽となつた。銀色の竜体はと見れば、口から霧のやうな清水を噴きだし、間もなく水は天地の間にわたした虹の橋のやうな形になつて、その上を白色の球体が騰つてゆく。このとき白色の球体は太陰となり、虹のやうな尾を垂れて、地上の水を吸ひあげる。地上の水は見るまに、次第にその容量を減じてくる。 金竜は天に向つて息吹を放つ。その形もまた虹の橋をかけたやうに見えてゐる。すると太陽はにはかに光を強くし、熱を地上に放射しはじめた。 水は漸く減いてきたが、山野は搗たての団子か餅のやうに柔かいものであつた。それも次第に固まつてくると、前に播かれた種は、そろそろ芽を出しはじめる。一番に山には松が生え、原野には竹が生え、また彼方こなたに梅が生えだした。 次いで杉、桧、槙などいふ木が、山や原野のところどころに生じた。つぎに一切の種物は芽を吹き、今までまるで土塊で作つた炮烙をふせたやうな山が、にはかに青々として、美しい景色を呈してくる。 地上が青々と樹木が生え始めるとともに、今まで濁つて赤褐色であつた天は、青く藍色に澄みわたつてきた。さうして濁りを帯びて黄ずんでゐた海原の水は、天の色を映すかのやうに青くなつてきた。 地上がかうして造られてしまふと、元祖の神様も、もう御竜体をお有ちになる必要がなくなられたわけである。それで金の竜体から発生せられた、大きな剣膚の厳めしい角の多い一種の竜神は、人体化して、荘厳尊貴にして立派な人間の姿に変化せられた。これはまだ本当の現体の人間姿ではなくして、霊体の人間姿であつた。 このとき、太陽の世界にては、伊邪那岐命がまた霊体の人体姿と現ぜられて、その神をさし招かれる。そこで荘厳尊貴なる、かの立派な大神は、天に上つて撞の大神とおなり遊ばし、天上の主宰神となりたまうた。 白色の竜体から発生された一番力ある竜神は、また人格化して男神と現はれたまうた。この神は非常に容貌美はしく、色白くして大英雄の素質を備へてをられた。その黒い頭髪は、地上に引くほど長く垂れ、髯は腹まで伸びてゐる。この男神を素盞嗚大神と申し上げる。 自分はその男神の神々しい容姿に打たれて眺めてゐると、その御身体から真白の光が現はれて、天に冲して月界へお上りになつてしまつた。これを月界の主宰神で月夜見尊と申し上げるのである。そこで大国常立命は、太陽、太陰の主宰神が決つたので、御自身は地上の神界を御主宰したまふことになり、須佐之男大神は、地上物質界の主宰となり給うたのである。 (大正一〇・一〇・二〇旧九・二〇谷口正治録) |
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霊界物語 | 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 | 21 大地の修理固成 | 第二一章大地の修理固成〔二一〕 大国常立尊はそこで、きはめて荘厳な、厳格な犯すことのできない、すばらしく偉大な御姿を顕はし給ひて、地の世界最高の山巓にお登り遊ばされて四方を見渡したまへば、もはや天に日月星辰完全に顕現せられ、地に山川草木は発生したとはいへ、樹草の類はほとんど葱のやうに繊弱く、葦のやうに柔かなものであつた。そこで国祖は、その御口より息吹を放つて風を吹きおこし給うた。その息吹によつて十二の神々が御出現遊ばされた。 ここに十二の神々は、おのおの分担を定めて、風を吹き起したまうたが、その風の力によつて松、竹、梅をはじめ、一切の樹草はベタベタに、その根本より吹倒されてしまうた。大国常立尊はこの有様を眺めたまうて、御自身の胸の骨をば一本抜きとり、自ら歯をもつてコナゴナに咬みくだき、四方に撒布したまうた。 すべての軟かき動植物は、その骨の粉末を吸収して、その質非常に堅くなり、倒れてゐた樹草は直立し、海鼠のやうに柔軟匍匐してゐた人間その他の諸動物も、この時はじめて骨が具はり、敏活に動作することが出来るやうになつた。五穀が実るやうになり、葱のやうに一様に柔かくして、区別さへ殆どつかなかつた一切の植物は、はつきりと、おのおの特有の形体をとるやうになつたのも此の時である。骨の粉末の固まり着いた所には岩石ができ、諸々の鉱物が発生した。これを称して岩の神と申し上げる。 しかるに太陽は依然として強烈なる光熱を放射し、月は大地の水の吸収を続けてゐるから、地上の樹草は次第に日に照りつけられて殆ど枯死せむとし、動物も亦この旱天つづきに非常に困つてゐた。しかし月からは、まだ水を吸引することを止めなかつた。このままで放任しておくならば、全世界は干鰈を焦したやうに燻つてしまふかも知れないと、大国常立尊は山上に昇つて、まだ人体化してをらぬ諸々の竜神に命じて、海水を口に銜んで持ちきたらしめ給うた。 諸々の竜神は命を奉じて、海水を国祖の許に持ちきたつた。国祖はその水を手に受けて、やがてそれを口に呑み、天に向つて息吹をフーと吹き放たれた。すると天上には色の濃い雲や淡い雲や、その他種々雑多の雲が起つてきた。たちまち雲からサツと地上に雨が降りはじめた。この使神であつた竜神は無数にあつたが、国祖はこれを総称して雨の神と名付けたまうた。 ところが雨が降すぎても却て困るといふので、これを調和するために、大国常立尊は御身体一杯に暑いほど太陽の熱をお吸ひになつた。さうして御自分の御身体の各部より熱を放射したまうた。その放射された熱はたちまち無数の竜体と変じて、天に向つて昇騰していつた。国祖はこれに火竜神といふ名称をお付けになつた。(筆に書いては短いが大国常立尊がここまで天地をお造りになるのに数十億年の歳月を要してゐる) 尊はかくの如くにして人類を始め、動物、植物等をお創造り遊ばされて、人間には日の大神と、月の大神の霊魂を賦与せられて、肉体は国常立尊の主宰として、神の御意志を実行する機関となし給うた。これが人生の目的である。神示に『神は万物普遍の霊にして人は天地経綸の大司宰なり』とあるも、この理に由るのである。 しかるに星移り年をかさぬるにしたがつて、人智は乱れ、情は拗け、意は曲りて、人間は次第に私欲を擅にするやうになり、ここに弱肉強食、生存競争の端はひらかれ、せつかく神が御苦心の結果、創造遊ばされた善美のこの地上も亦、もとの泥海に復さねばならぬやうな傾向ができた。 しかるに地の一方では、天地間に残滓のやうに残つてゐた邪気は、凝つて悪竜、悪蛇、悪狐を発生し、或ひは邪鬼となり、妖魅となつて、我侭放肆な人間の身魂に憑依し、世の中を悪化して、邪霊の世界とせむことを企てた。そこで大国常立大神は非常に憤りたまうて、深い吐息をおはきになつた。その太息から八種の雷神や、荒の神がお生れ遊ばしたのである。 それで荒の神の御発動があるのは、大神が地上の人類に警戒を与へたまふ時である。かうしてしばしば大神は荒の神の御発動によつて、地上の人類を警戒せられたが、人類の大多数は依然として覚醒しない。そこで大神は大いにもどかしがりたまひ伊都の雄猛びをせられて、大地に四股を踏んで憤り給うた。そのとき大神の口、鼻、また眼より数多の竜神がお現はれになつた。この竜神を地震の神と申し上げる。国祖の大神の極端に憤りたまうた時に地震の神の御発動があるのである。大神の怒りは私の怒りではなくして、世の中を善美に立替へ立直したいための、大慈悲心の御発現に外ならぬのである。 大国常立尊が天地を修理固成したまうてより、ほとんど十万年の期間は、別に今日のやうに区劃された国家はなかつた。ただ地方地方を限つて、八王といふ国魂の神が配置され、八頭といふ宰相の神が八王神の下にそれぞれ配置されてゐた。 しかるに世の中はだんだん悪化して、大神の御神慮に叶はぬことばかりが始まり、怨恨、嫉妬、悲哀、呪咀の声は、天地に一杯に充ちわたることになつた。そこで大国常立大神は再び地上の修理固成を企劃なしたまうて、ある高い山の頂上にお立ちになつて大声を発したまうた。その声は万雷の一時に轟くごとくであつた。大神はなほも足を踏みとどろかして地蹈鞴をお踏みになつた。そのため大地は揺れゆれて、地震の神、荒の神が挙つて御発動になり、地球は一大変態を来して、山河はくづれ埋まり、草木は倒れ伏し、地上の蒼生はほとんど全く淪亡るまでに立ちいたつた。その時の雄健びによつて、大地の一部が陥落して、現今の阿弗利加の一部と、南北亜米利加の大陸が現出した。それと同時に太平洋もでき上り、その真中に竜形の島が形造られた。これが現代の日本の地である。それまでは今の日本海はなく支那も朝鮮も、日本に陸地で連続してゐた。この時まで現代の日本の南方、太平洋面にはまだ数百里の大陸がつづいてゐたが、この地球の大変動によつて、その中心の最も地盤の鞏固なる部分が、竜の形をして取り残されたのである。 この日本国土の形状をなしてゐる竜の形は、元の大国常立尊が、竜体を現じて地上の泥海を造り固めてゐられた時のお姿同様であつて、その長さも、幅も、寸法において何ら変りはない。それゆゑ日本国は、地球の艮に位置して神聖犯すべからざる土地なのである。もと黄金の円柱が、宇宙の真中に立つてゐた位置も日本国であつたが、それが、東北から、西南に向けて倒れた。この島を自転倒嶋といふのは、自ら転げてできた島といふ意味である。 この島が四方に海を環らしたのは、神聖なる神の御息み所とするためなのである。さうしてこの日本の土地全体は、すべて大神の御肉体である。ここにおいて自転倒嶋と、他の国土とを区別し、立別けておかれた。 それから大神は天の太陽、太陰と向はせられ、陽気と陰気とを吸ひこみたまうて、息吹の狭霧を吐きだしたまうた。この狭霧より現はれたまへる神が稚姫君命である。 このたびの地変によつて、地上の蒼生はほとんど全滅して、そのさまあたかもノアの洪水当時に彷彿たるものであつた。そこで大神は、諸々の神々および人間をお生みになる必要を生じたまひ、まづ稚姫君命は、天稚彦といふ夫神をおもちになり、真道知彦、青森知木彦、天地要彦、常世姫、黄金竜姫、合陀琉姫、要耶麻姫、言解姫の三男五女の神人をお生みになつた。この天稚彦といふのは、古事記にある天若彦とは全然別の神である。かくのごとく地上に地変を起さねばならぬやうになつたのは、要するに天において天上の政治が乱れ、それと同じ形に、地上に紛乱状態が現はれ来つたからである。天にある事はかならず地に映り、天が乱れると地も乱れ、地が乱れると、天も同様に乱れてくるものである。そこで大神は天上を修理固成すべく稚姫君命を生みたまうて天にお昇せになり、地は御自身に幽界を主宰し、現界の主宰を須佐之男命に御委任になつた。 (大正一〇・一〇・二〇旧九・二〇谷口正治録) |
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霊界物語 | 01_子_霊界探検/玉の争奪戦 | 22 国祖御隠退の御因縁 | 第二二章国祖御隠退の御因縁〔二二〕 大国常立尊の御神力によりて、天地はここに剖判し、太陽、太陰、大地の分担神が定まつたことは、前述したとほりである。しかして太陽の霊界は伊邪那岐命これを司りたまひ、その現界は、天照大御神これを主宰したまふのである。次に太陰の霊界は、伊邪那美命これを司りたまひ、その現界は、月夜見之命これを主宰したまふ。大地の霊界は前述のごとくに大国常立命之を司りたまひ、その大海原は日之大神の命によりて須佐之男命これを主宰したまふ神定めとなつた。 しかるに太陽界と、大地球界とは鏡を合したやうに、同一状態に混乱紛糾の状態を現出した。太陰の世界のみは、現幽両界ともに元のままに、平和に治まつてゐる。ひとり太陰に限つて、なぜ今でも平和に治まつてゐるかと言へば、この理は月の形を地上から観測しても明らかである如く、光はあれども酷烈ならず、水気はあつても極寒ではない。実に寒暑の中庸を得たる至善至美の世界であるからである。これに反して太陽の世界は、非常に凡てのものが峻烈で光は鮮かであり、六合に照徹する神力はあれども、それだけまた暗黒なる陰影が多い。しかしてまた大地は、もとより混濁せる分子の凝り固まつてできたものであるから、勢として不浄分子が多い。したがつてまた邪神の発生するのも、やむを得ない次第である。 そこで稚姫君命は、天稚彦と共に神命を奉じて天に上り、天界の神政を司らうとしたまうたが、御昇天の途上において、地上からつき従うた邪神どもにあやまられ、天地経綸の機織の仕組を仕損じたまひ、つひに地上に降りたまひて国常立命と共に地底に潜ませられ、あらゆる艱難苦労を忍びたまふの已むを得ざるに立ちいたつた。稚姫君命の御失敗の因縁については、後日詳しく述べることにする。 さて、大国常立命は天地間の混乱状態邪悪分子をば掃蕩して、最初の神界の御目的どほりの幽政を布かうと遊ばしたまうた。これについて国祖は、まづ坤金神を内助の役として種々の神策を企図したまひ、また、大八洲彦命を天使長兼宰相の地位に立たして、非常に厳格な規則正しき政を行ひ、天の律法を制定して、寸毫といへども天則に干犯するものは、罰するといふことに定めたまうた。そのために地上の年数にして数百年の間は非常に立派に神政が治まつてゐたが、世が次第に開けゆくにつれて、神界、幽界、現界ともに邪悪分子が殖えてきた。すなはち八百万の神人は、日増に大神の御幽政に対する不服を訴ふるやうになり、山川草木にいたるまで言問ひあげつらふ世になつた。 そこでやむを得ず宰相大八洲彦命は、国常立尊の御意志に背くと知りつつも、和光同塵の神策をほどこし、言問ひ、論争ふ八百万の神々を鎮定慰撫しつつ、ともかくも世を治めてゆかれたのである。 しかるにこのとき霊界は、ほとんど四分五裂の勢となり、一方には、盤古大神(又の御名塩長彦)を擁立して、幽政を主宰せしめむとする一派を生じ、他方には、大自在天神大国彦を押し立てて神政を支配し、地の高天原を占領せむとする神人の集団が出現し、その他諸々の神々の小集団は、或ひは盤古大神派に、或ひは大自在天神派に付随せむとし、また中には、この両派に属せずして中立しながら、国常立尊の神政に反対する神々も生じてきた。 そこで国常立尊はやむを得ず天に向つて救援をお請ひになつた。天では天照大御神、日の大神(伊邪那岐尊)、月の大神(伊邪那美尊)、この三体の大神が、地の高天原に御降臨あそばし給ひ、国常立尊の神政および幽政のお手伝ひを遊ばされることになつた。国常立尊は畏れ謹み、瑞の御舎を仕へまつりて、三体の大神を奉迎したまうた。然るところ、地上は国常立尊の御系統は非常に減少して勢力を失ひ、盤古大神および大自在天神の勢力はなはだ侮り難く、つひには国常立尊に対して、御退位をお迫り申すやうになつた。天の御三体の大神は、地上の暴悪なる神々にむかつて、あるひは宥め、或ひは訓し、天則に従ふべきことを懇に説きたまうた。されど、時節は悪神に有利にして、いはゆる……悪盛んにして天に勝つ……といふ状態に立ちいたつた。 ここに国常立尊は神議りに議られ、髪を抜きとり、手を切りとり、骨を断ち、筋を千切り、手足所を異にするやうな惨酷な処刑を甘んじて受けたまうた。されど尊は実に宇宙の大原霊神にましませば、一旦肉体は四分五裂するとも、直ちにもとの肉体に復りたまひ、決して滅びたまふといふことはない。 暴悪なる神々は盤古大神と大自在天神とを押し立て、遮二無二におのが要求を貫徹せむとし、つひには天の御三体の大神様の御舎まで汚し奉るといふことになり、国常立尊に退隠の御命令を下し給はむことを要請した。さて天の御三体の大神様は、国常立尊は臣系となつてゐらるるが、元来は大国常立尊は元の祖神であらせたまひ、御三体の大神様といへども、元来は国常立尊の生みたまうた御関係が坐します故、天の大神様も御真情としては、国常立尊を退隠せしむるに忍びずと考へたまうたなれど、ここに時節の已むなきを覚りたまひ、涙を流しつつ勇猛心を振起したまひ、すべての骨肉の情をすて、しばらく八百万の神々の進言を、御採用あらせらるることになつた。そのとき天の大神様は、国祖に対して後日の再起を以心伝心的に言ひ含みたまひて、国常立尊に御退隠をお命じになり、天に御帰還遊ばされた。 その後、盤古大神を擁立する一派と、大自在天神を押立つる一派とは、烈しく覇権を争ひ、つひに盤古大神の党派が勝ち幽政の全権を握ることになつた。一方国常立尊は自分の妻神坤金神と、大地の主宰神金勝要神および宰相神大八洲彦命その他の有力なる神人と共に、わびしく配所に退去し給うた。 地上の神界の主宰たる大神さへ、かくのごとく御隠退になるといふ有様であるから、地上の主宰たる須佐之男命も亦、八百万の神々に、神退ひに退はるるの已むなきにいたりたまひ、自転倒嶋を立去りて、世界のはしばしに漂泊の旅をつづけられることになつた。しかし須佐之男命は、現界において八岐大蛇を平げ地上を清め、天照大御神にお目にかけ給うたと同じやうに、神界においても、すべての悪神を掃蕩して地上を天下泰平に治め、御三体の大神様にお目にかけ、地上の主宰の大神となり給ふといふのである。 さて、自分はこれから国常立尊随従の八百万の神人の中でも、主なる神司の御経歴御活動を述べ、また盤古大神および大自在天神を擁立せる一派の八百万の神々の経歴および暴動振りを、神界にて目撃せるままを述べておかふと思ふ。 (大正一〇・一〇・二〇旧九・二〇谷口正治録) |
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霊界物語 | 02_丑_常世姫の陰謀/シオン山攻防戦 | 序 | 序 本書は王仁が明治三十一年旧如月九日より、同月十五日にいたる前後一週間の荒行を神界より命ぜられ、帰宅後また一週間床縛りの修業を命ぜられ、その間に王仁の霊魂は霊界に遊び、種々幽界神界の消息を実見せしめられたる物語であります。すべて霊界にては時間空間を超越し、遠近大小明暗の区別なく、古今東西の霊界の出来事はいづれも平面的に霊眼に映じますので、その糸口を見付け、なるべく読者の了解し易からむことを主眼として口述いたしました。 霊界の消息に通ぜざる人士は、私の『霊界物語』を読んで、子供だましのおとぎ話と笑はれるでせう。ドンキホーテ式の滑稽な物語と嘲る方もありませう。中には一篇の夢物語として顧みない方もあるでせう。また偶意的教訓談と思ふ方もありませう。しかし私は何と批判されてもよろしい。要は一度でも読んでいただきまして、霊界の一部の消息を窺ひ、神々の活動を幾分なりと了解して下されば、それで私の口述の目的は達するのであります。 本書の述ぶるところは概してシオン山攻撃の神戦であつて、国祖の大神が天地の律法を制定したまひ、第一に稚桜姫命の天則違反の罪を犯し幽界に神退ひに退はれたまへる、経緯を述べたのであります。本書を信用されない方は、一つのおとぎ話か拙い小説として読んで下さい。これを読んで幾分なりとも、精神上の立替立直しのできる方々があれば、王仁としては望外の幸であります。 『三千世界一度に開く梅の花。艮の金神の世になりたぞよ。須弥仙山に腰を掛け、鬼門の金神、守るぞよ』との神示は、神世開基の身魂ともいふべき教祖に帰神された最初の艮の金神様が、救世のための一大獅子吼であつた。アゝ何たる雄大にして、荘厳なる神言でありませうか。『三千世界一度に開く』とは、宇宙万有一切の物に活生命を与へ、世界のあらゆる生物に、安心立命の神鍵を授けたまへる一大慈言でありますまいか。 口述者はいつも此の神言を読む度ごとに、無限絶対、無始無終の大原因神の洪大なる御経綸と、その抱負の雄偉にして、なんとなく吾人が心の海面に、真如の月の光り輝き、慈悲の太陽の宇内を一斉に公平に照臨したまひ、万界の暗を晴らしたまふやうな心持になるのであります。 そして、『三千世界一度に開く』と宇宙の経綸を竪に、しかと完全に言ひ表はし、句の終りにいたつて『梅の花』とつづめたるところ、あたかも白扇を拡げて涼風を起し、梅の花の小さき要をもつて之を統一したる、至大無外、至小無内の神権発動の真相を説明したまひしところ、到底智者、学者などの企て及ぶべきところではない。 またその次に『須弥仙山に腰をかけ、艮の金神守るぞよ』との神示がある。アゝこれまたなんたる偉大なる神格の表現であらうか。なんたる大名文であらうか。到底人心小智の企及すべきところではない。そのほか、大神の帰神の産物としては、三千世界いはゆる神界、幽界、現界にたいし、神祇はさらなり、諸仏、各人類にいたるまで大慈の神心をもつて警告を与へ、将来を顕示して、懇切いたらざるはなく、実に古今にその類例を絶つてゐる。 かかる尊き大神の神示は、俗人の容易に解し難きはむしろ当然の理にして、したがつて誤解を生じ易きところ、口述者は常にこれを患ひ、おほけなくも神諭の一端をも解釈をほどこし、大神の大御心の、那辺に存するやを明らかに示したく、思ひ煩ふことほとんど前後二十三年間の久しきにわたつた。されど神界にては、その発表を許したまはざりしため、今日まで御神諭の文章の意義については、一言半句も説明したことは無かつたのであります。 しかるに本年の旧九月八日にいたつて、突然神命は口述者の身魂に降り、いよいよ明治三十一年の如月に、『神より開示しおきたる霊界の消息を発表せよ』との神教に接しましたので、二十四年間わが胸中に蓄蔵せる霊界の物語を発表する決心を定めました。しかるに口述者は、本春以来眼を病み、頭脳を痛めてより、執筆の自由を有せず、かつ強て執筆せむとすれば、たちまち眼と頭部に痛苦を覚え如何ともすること能はず、殆んどその取扱ひについて非常に心神を悩めてゐたのであります。その神教降下ありて後、十日を過ぎし十八日の朝にいたり、神教ありて『汝は執筆するを要せず、神は汝の口を藉りて口述すべければ、外山豊二、加藤明子、桜井重雄、谷口正治の四人を招き、汝の口より出づるところの神言を筆録せしめよ』とのことでありました。 そこで自分はいよいよ意を決し、並松の松雲閣に隠棲して霊媒者となり、神示を口伝へすることになつたのであります。二十四年間心に秘めたる霊界の消息も、いよいよ開く時津風、三千世界の梅の花、薫る常磐の松の代の、神の経綸の開け口、開いた口が閉まらぬやうな、不思議な物語り、夢かうつつか幻か、神のしらせか、白瀬川、下は音無瀬由良の川、和知川、上林川の清流静かに流れ、その中央の小雲川、並木の老松川の辺に影を浸して立ならぶ、流れも清く、風清く、本宮山の麓なる、並松に、新に建ちし松雲閣書斎の間にて五人連れ、口から語る、筆を執る、五人が活気凛々として、神示のままを口述発表することとなつたのであります。 大正十年十一月旧十月九日 於松雲閣瑞月出口王仁三郎誌 |
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霊界物語 | 02_丑_常世姫の陰謀/シオン山攻防戦 | 凡例 | 凡例 一、第一巻より第四巻までは、まだ伊那那岐尊、伊邪那美尊二神の御降臨まします以前の物語であります。第四巻にいたつて始めて国祖の御隠退遊ばされるところになり、第六巻において、諾冊二尊が葦原中津国へ御降臨遊ばすところになるのであります。それゆゑ、あまりに小さく現在の大本といふものにとらわれてはならないのであります。たとへば『聖地エルサレム』とあるごときも、決して綾部を指されたものではありません。これは、瑞月大先生より特に御注意がありましたから、読者諸氏のお含みおきを願つておきます。要するに『生れ赤児』の心になつて拝読することが、もつとも必要であらうと思ひます。 一、しかしながら、歴史は繰返すといふごとく、これは今から六七千万年前の物語で、いかにも吾々とは縁が遠いもののやうに油断をしてゐると、脚下から鳥が立つやうなことが出来して、にはかに狼狽へ騒がねばならぬとも限らないのであります。 一、本書第一巻の発表とともに、かれこれ種々な批評も出てゐるやうですが、単に第一巻や第二巻を読んだだけでは、たうてい分らないのであります。何にしても批評は後廻しにして、本書の全部刊行されるまで待つていただきたい。神諭にも『細工は流々仕上げを見て下されよ』と示されてゐます。ただ一端を覗いただけで、批評がましき言を弄するのは、いかにも軽率であるばかりでなく、御神業にたいして大なる妨害を与へるやうな結果になりはしないかと思ひます。 一、第二巻以下には処々に神様の歌が出てきますが、これはすべて神代語で歌はれたものださうですが、そのままでは今の吾々には理解出来ませぬので、特に現代語に翻訳されたものであります。例へば、本書の第二十三章『竜世姫の奇智』の中に、竜世姫が滑稽諧謔な歌を唄はれるところがあります。その歌の神代語と現代語を大先生の御教示のまま、一例として対照しておきます。 歌 言霊別の神さんは(コトトモオコヨカムソモホ) こしの常世へ使ひして(コスヨトコヨイツコイステ) 道に倒れて腰を折り(ミツイトホレテコスヨオイ) 輿に乗せられ腰痛む(コスイノソロレコスイトム) こしの国でも腰抜かし(コスヨクシデモコスヌコス) 腰抜け神と笑はれる(コスヌクカムヨワロヲレル) 他のことなら何ともない(フトヨコトノロノムトヨノイ) こしやかまやせんこしやかまやせんこしやかまやせんこしやかまやせん(コスカモヨセヌコスカモヨセヌコスカモヨセヌコスカモヨセヌ) 一、神代語の数字一二三四五六七八九十百千万は、㍉㌔㌢㍍㌘㌧㌃㌶㍑㍗㌍㌦(略して㌣)㌫といふ風に表はすさうであります。 一、最近一つの神秘的な話を聞きましたから、読者諸氏の御参考のためにここに御紹介しておきます。 昔、南都東大寺五重塔丸柱の虫喰ひ跡に次のやうな文字が表れたことがあります。 九九五一合二十四西より上る四日月 一五一一合八洲の神地となる ○五○六合十一神世の初 一三一一合六合となる 二一六一合十即ち神となる 一一一一合四魂となる 三一六一合十一即ち土の神となる 一○一一合三体の大神となる ○○○合三ツの御魂となる (数字の下の「合云々」の文字は瑞月大先生がつけ加へられたものです) しかし、誰一人これを読むことも出来なければ、その意味も分るものはありませんでしたが、当時の高僧弘法大師は之を斯う読みました。 月九中岸 閑居一一 露五幽苔 獨身一一 法一不一 一一一一 道一不一 時節一一[※普及版のフリガナを参考にすると、次のように読む──月、中岸に九(かかって)、閑居(かんきょ)して一(たれをか)一(まつ)。露(つゆ)幽苔(ゆうたい)に五(しお)れて、独身、一(ひとり)一(さびし)。法、一(はじめ)に、一(はびこら)ず、一(たたくに)一(したがって)一(ひかり)を一(ます)。道、一(ひとり)一(ひろまら)ず。時節、一(ひと)を一(まつ)。] 瑞月大先生にこの事を伺ひましたら、ただちにその意味を御教示下さいました。その五重塔の丸柱に現はれた不可思議な文字は全体を数へると七十七の数になります。そして七十七は上からも下からも七十七となります。上下そろふ訳であります。七十七数は㍊の代詞で七は『成』の意であり、十は『神』の意であり、七はまた『国』の意であり、つまり『成神国』の意味になるさうであります。その数字の中の○三つは三ツの三玉の意であります。つまり瑞の御魂が隠されてゐるといふことになるのであります。弘法大師はこの事を知つてゐたのだけれども、故意とかくしてゐたといふことであります。 大先生は斯う読まれました。 月懸中岸 閑居誰待 露萎幽苔 獨身孤寂 法初不蔓 隨鼓増光 道獨不擴 時節待人 いかにも月光が万界の暗を照破し、神政成就の機運の到達することを暗示せる神秘的な面白い話であるやうに思はれます。 大正十一年一月六日於竜宮館編者識す 酸いも甘いも皆尻の穴、おならの如くにぬけて行く、間抜けた顔の鼻高が、尻毛を抜かれ眉毛をよまれ、狐狸のうさ言と、相手にせねばせぬで良い。雪隠で饅頭喰ひつ武士、武士の言葉に二言はないと、こいた誤託の鼻の糞、ひねつて聞いて馬鹿にして、一度は読んで暮の空、きよろ月、まご月、嘘月の、空言ならぬ瑞月霊界物語穴かしこ穴かしこ。 |
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霊界物語 | 02_丑_常世姫の陰謀/シオン山攻防戦 | 総説 | 総説 神界における神々の御服装につき、大略を述べておく必要があらうと思ふ。一々神々の御服装に関して口述するのは大変に手間どるから、概括的に述ぶれば、国治立命のごとき高貴の神は、たいてい絹物にして、上衣は紫の無地で、下衣が純白で、中の衣服が紅の色の無地である。国大立命は青色の無地の上衣に、中衣は赤色、下衣は白色の無地。稚桜姫命は、上衣は水色に種々の美はしき模様があり、たいていは上中下とも松や梅の模様のついた十二単衣の御服装である。天使大八洲彦命、大足彦のごときは、上衣は黒色の無地に、中衣は赤色、下衣は白色の無地の絹の服である。その他の神将は位によつて、青、赤、緋、水色、白、黄、紺等、いづれも無地服で、絹、麻、木綿等に区別されてゐる。 冠もいろいろ形があつて纓の長短があり、八王八頭神以上の神々に用ゐられ、それ以下の神司は烏帽子を冠り、直衣、狩衣。婦神はたいてい明衣であつて、青、赤、黄、白、紫などの色を用ゐられ、袴も色々と五色に分れてゐる。また神将は闕腋に冠をつけ、残らず黒色の服である。神卒は一の字の笠を頭に戴き、裾を短くからげ、手首、足首には紫の紐をもつて結び、実に凛々しき姿をしてをらるるのである。委しく述ぶれば際限がないが、いま述べたのは国治立命が御隠退遊ばす以前の神々の御服装の大略である。 星移り、月換るにつれ、神界の御服装はおひおひ変化し来たり、現界の人々の礼装に酷似せる神服を纒はるる神司も沢山に現はれ、神使の最下たる八百万の金神天狗界にては、今日流行の種々の服装で活動さるるやうになつてをる。 また邪神界でもおのおの階級に応じて、大神と同一の服装を着用して化けてをるので、霊眼で見ても一見その正邪に迷ふことがある。 ただ至善の神々は、その御神体の包羅せる霊衣は非常に厚くして、かつ光沢強く眼を射るばかりなるに反し、邪神はその霊衣はなはだ薄くして、光沢なきをもつて正邪を判別するぐらゐである。しかるに八王大神とか、常世姫のごときは、正神界の神々のごとく、霊衣も比較的に厚く、また相当の光沢を有してをるので、一見してその判別に苦しむことがある。 また自分が幽界を探険した時にも、種々の色の服を着けてゐる精霊を目撃した。これは罪の軽重によつて、色が別れてゐるのである。しかし幽界にも亡者ばかりの霊魂がをるのではない。現界に立働いてゐる生きた人間の精霊も、やはり幽界に霊籍をおいてをるものがある。これらの人間は現界においても、幽界の苦痛が影響して、日夜悲惨な生活を続けてをるものである。これらの苦痛を免るる方法は、現体のある間に神を信仰し、善事を行ひ万民を助け、能ふかぎりの社会的奉仕を務めて、神の御恵を受け、その罪を洗ひ清めておかねばならぬ。 さて現界に生きてゐる人間の精霊を見ると、現人と同形の幽体を持つてゐるが、亡者の精霊に比べると、一見して生者と亡者の精霊の区別が、判然とついてくるものである。生者の幽体(精霊)は、円い霊衣を身体一面に被つてゐるが、亡者の幽体は頭部は山形に尖り、三角形の霊衣を纒うてをる。それも腰から上のみ霊衣を着し、腰以下には霊衣はない。幽霊には足がないと俗間にいふのも、この理に基づくものである。また徳高きものの精霊は、その霊衣きはめて厚く、大きく、光沢強くして人を射るごとく、かつ、よく人を統御する能力を持つてゐる。現代はかくの如き霊衣の立派な人間がすくないので、大人物といはるるものができない。現代の人間はおひおひと霊衣が薄くなり、光沢は放射することなく、あたかも邪神界の精霊の着てをる霊衣のごとく、少しの権威もないやうになつて破れてをる。大病人などを見ると、その霊衣は最も薄くなり、頭部の霊衣は、やや山形になりかけてをるのも、今まで沢山に見たことがある。いつも大病人を見舞ふたびに、その霊衣の厚薄と円角の程度によつて判断をくだすのであるが、百発百中である。なにほど名医が匙を投げた大病人でも、その霊衣を見て、厚くかつ光が存してをれば、その病人はかならず全快するのである。これに反して天下の名医や、博士が、生命は大丈夫だと断定した病人でも、その霊衣がやや三角形を呈したり、紙のごとく薄くなつてゐたら、その病人は必ず死んでしまふものである。 ゆゑに神徳ある人が鎮魂を拝授し、大神に謝罪し、天津祝詞の言霊を円満清朗に奏上したならば、たちまちその霊衣は厚さを増し、三角形は円形に立直り、死亡を免れるものである。かくして救はれたる人は、神の大恩を忘れたときにおいて、たちまち霊衣を神界より剥ぎとられ、ただちに幽界に送られるものである。 自分は数多の人に接してより、第一にこの霊衣の厚薄を調べてみるが、信仰の徳によつて漸次にその厚みを加へ、身体ますます強壮になつた人もあり、また神に反対したり、人の妨害をしたりなどして、天授の霊衣を薄くし、中には円相がやや山形に変化しつつある人も沢山実見した。自分はさういふ人にむかつて、色々と親切に信仰の道を説いた。されどそんな人にかぎつて神の道を疑ひ、かへつて親切に思つて忠告すると心をひがまし、逆にとつて大反対をするのが多いものである。これを思へばどうしても霊魂の因縁性来といふものは、如何ともすることが出来ないものとつくづく思ひます。 ○ 大国治立尊と申し上げるときは、大宇宙一切を御守護遊ばすときの御神名であり、単に国治立尊と申し上げるときは、大地球上の神霊界を守護さるるときの御神名である。自分の口述中に二種の名称があるのは、この神理に基づいたものである。 また神様が人間姿となつて御活動になつたその始は、国大立命、稚桜姫命が最初であり、稚桜姫命は日月の精を吸引し、国祖の神が気吹によつて生れたまひ、国大立命は月の精より生れ出でたまうた人間姿の神様である。それよりおひおひ神々の水火によりて生れたまひし神系と、また天足彦、胞場姫の人間の祖より生れいでたる人間との、二種に区別があり、神の直接の水火より生れたる直系の人間と、天足彦、胞場姫の系統より生れいでたる人間とは、その性質において大変な相違がある。そして神の直接の水火より生れ出たる人間は、その頭髪黒くして漆の如く、天足彦、胞場姫より生れたる人間の子孫は赤色の頭髪を有している。[※「そして神の直接の」から「頭髪を有して居る。」まで、校定版・八幡版では削除されている。]天足彦、胞場姫といへども、元は大神の直系より生れたのであれども、世の初発にあたり、神命に背きたるその体主霊従の罪によつて、人間に差別が自然にできたのである。 されども何れの人種も、今日は九分九厘まで、みな体主霊従、尊体卑心の身魂に堕落してゐるのであつて、今日のところ神界より見たまふときは、甲乙を判別なし難く、つひに人種平等の至当なるを叫ばるるに立いたつたのである。 ○ 盤古大神塩長彦は日の大神の直系にして、太陽界より降誕したる神人である。日の大神の伊邪那岐命の御油断によりて、手の俣より潜り出で、現今の支那の北方に降りたる温厚無比の正神である。 また大自在天神大国彦は、天王星より地上に降臨したる豪勇の神人である。いづれもみな善神界の尊き神人であつたが、地上に永住されて永き歳月を経過するにしたがひ、天足彦、胞場姫の天命に背反せる結果、体主霊従の妖気地上に充満し、つひにはその妖気邪霊の悪竜、悪狐、邪鬼のために、いつとなく憑依されたまひて、悪神の行動を自然に採りたまふこととなつた。それより地上の世界は混濁し、汚穢の気みなぎり、悪鬼羅刹の跋扈跳梁をたくましうする俗悪世界と化してしまつた。 八王大神常世彦は、盤古大神の水火より出生したる神にして、常世の国に霊魂を留め、常世姫は稚桜姫命の娘にして、八王大神の妃となり、八王大神の霊に感合し、つひには八王大神以上の悪辣なる手段を用ゐ、世界を我意のままに統轄せむとし、車輪の暴動を継続しつつ、その霊はなほ現代にいたるも常世の国にとどまつて、体主霊従的世界経綸の策を計画してをる。 ゆゑに常世姫の霊の憑依せる国の守護神は、今になほその意志を実行せむと企ててをる。八王大神常世彦には天足彦、胞場姫の霊より生れたる八頭八尾の大蛇が憑依してこれを守護し、常世姫には金毛九尾白面の悪狐憑依してこれを守護し、大自在天には、六面八臂の邪気憑依してこれを守護し、ここに艮の金神国治立命の神系と盤古大神の系統と、大自在天の系統とが、地上の霊界において三つ巴になつて大活劇を演ぜらるるといふ霊界の珍しき物語である。 自分はここまで口述したとき、何心なくかたはらに散乱せる大正日日新聞に眼をそそぐと、今日はあたかも大正十年陰暦十月十日午前十時であることに気がついた。霊界物語第二巻の口述ををはつた今日の吉日は、松雲閣において御三体の大神様を始めて新しき神床に鎮祭することとなつてゐた。これも何かの神界の御経綸の一端と思へば思へぬこともない。 ついでに第三巻には、盤古大神(塩長彦)、大自在天(大国彦)、艮能金神(国治立命)三神系の紛糾的経緯の大略を述べ、国祖の御隠退までの世界の状況、神々の驚天動地の大活動を略述する考へであります。読者諸氏の幸に御熟読あつて、それが霊界探求の一端ともならば、口述者の目的は達せらるる次第であります。 アゝ惟神霊幸倍坐世 大正十年旧十月十日午前十時十分 於松雲閣口述者識 (註)本巻において、国治立命、豊国姫命、国大立命、稚桜姫命、木花姫命とあるは、神界の命により仮称したものであります。しかし真の御神名は読んで見れば自然に判明することと思ひます。 |
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霊界物語 | 03_寅_十二の国魂/大道別/天使長の更迭 | 24 蛸間山の黒雲 | 第二四章蛸間山の黒雲〔一二四〕 蛸間山には銅色の国玉を鎮祭し、吾妻別を八王神に任じ神務を主管せしめ、妻には吾妻姫を娶はし内面的輔佐を命じ、国玉別を八頭神に任じ国玉姫を妻として神政を輔助せしめられ、駒世彦を宮司となし駒世姫をして祭事に従事せしめられたりしなり。しかるにこの蛸間山には、かねて地の高天原より、言霊別命神命を奉じて国魂の神を鎮祭し、荘厳なる宮殿まで建立しあれば[※第2巻第9章「タコマ山の祭典その一」参照]、つまり二個の国魂を並べ、祭祀さるることとなりぬ。ここに二つの国魂の霊現はれて互ひに主権を争ひたまへば、蛸間山は常に風雲たちこめ、時に暴風吹きおこり強雨降りそそぎ樹木を倒し、河川の堤防を破壊し、濁水地上に氾濫して神人その堵に安ンずること能はず、神人の嫉視反目は日に月に激烈の度を加へ、東天より西天にむかつて真黒の雲橋かかりて天地は為に暗黒となり咫尺を弁ぜず。ここをもつて常夜ゆく万の妖ことごとく起り、国土間断なく震動し、草の片葉にいたるまで言問ふ無道の社会を現出し、所々に大火あり大洪水あり疫病蔓延して神人まさに滅亡せむとし、また銅能宮は日夜震動して妖気を吐き、国魂の宮また同時に大音響を発して百雷の一時に轟くかと疑はるるばかり凶兆しきりにいたり、神人ともに心安からず、戦々兢々として纔に日を送る状態を馴致したりける。 国魂の神よりしてすでに斯くのごとく互ひに主権を争ひ、ほとンど寧日なきの有様なりければ、その霊精また一は八王神に憑依し、一は八頭神に憑りてつねに狂暴の行為多く、ことに八頭神には前の国魂神憑依して、八王神の命令に一々反抗し、たがひに権利を主張して相譲らず、犬猿もただならず氷炭相容れず、混乱紛糾ますます甚だしく、神人塗炭の厄に苦しみ、荒ぶる神人の言騒ぐその声は、五月蠅のごとく群がりおこりて修羅道を現出し、動乱止むことなく饑饉相次ぎ、虎狼、豺狼、毒蛇、悪鬼、妖怪なぞの邪霊は地上に充ち満ちたり。このことただちに国祖の御耳に入り、国直姫命の口をかりて、大八洲彦命に神教を伝へしめたまひける。 国祖の御神教の大要は、 『天に二日なく地に二王なきは天地の神則なり。汝らさきに蛸間山に国魂の神を鎮祭しおきながら、国魂神には何の通告もなさず、新に同じ神山に二個の国玉を奉斎せるは、おのづから秩序を紊乱し争乱の種をまくものなり。彼ら八王神八頭神は名利にふけりて争ひ憎み、たがひに怒りて天下を騒擾せしむるの罪軽からずといへども、要するに一所の霊山に二体の国魂を鎮めたる失敗の結果にして、ただちに二神を懲戒すべきに非ず、このたびの出来事はすべて汝らの一大責任なるぞ。神は神直日大直日に見直し詔り直し、もつて今回はその罪を問はざるべし。一日も早く改言改過の実をあげ、蛸間山を境として国土を南北に両分し、その持場を決定し、騒乱を鎮定し国祖の大神に復命せよ』 とおごそかに宣りたまひける。 大八洲彦命は恐懼措くところを知らず、みづからの不明不徳を謝し、大足彦とともに蛸間山に向つて出発したまひけり。 大八洲彦命は八王神に、大足彦は八頭神にむかつて神示を説き諭し神恩の忝なく尊きことを慇懃に宣り伝へける。八王神はただちに天使長の懇篤なる説示を承り、翻然として前非を悟り、かつ国魂の神のもつとも恐るべき威力に感じ、正心誠意をもつて神業に厚く奉仕し、かつ如何なる神勅なりとも、今日かぎり断じて違背せじと、心底より誓約をなしたりにける。 これに引替へ、大足彦は八頭神なる国玉別にむかひ順逆の道を説き、神の威徳をさとし言辞を竭して説示したるが、国玉別は天使の教示を聞くやたちまち顔色獰猛の相をあらはし、口をきはめて反抗し容易に屈伏せず、ほとンど捨鉢となりて天使大足彦の面上に噛みつかむとせるを、大足彦は、心得たりと両手の指を交叉し鎮魂の姿勢をとり、ウーと一声発くその言霊に、国玉別は地上に仰天し倒れ伏し、口中よりは多量の泡沫を吐きだし悶え苦しみけり。天使はなほも一声言霊の矢を放つや、八頭神の体内よりは、にはかに黒煙立ちのぼるよと見るまに、金毛八尾の悪狐の姿現はれ、雲をかすみと西の空めがけて逃失せにけり。 国魂神の嫉妬的発動の狂態を洞察したる常世国の邪神は、貪・瞋・痴の迷につけ入り、たちまち憑依の目的を達し、進ンで八王神を倒し、八頭神を失墜せしめ、蛸間山を攪乱せむとしゐたりしが、八頭神は始めて覚醒し、天使にむかつて以前の無礼を謝し、我が精神空弱にして意志強からず、つひに邪神の容器となり、神を無視し長上を侮蔑し、天地の律法を破りたる大罪を悔い、低頭平身罪に処せられむことを願ひけり。大足彦は、 『国魂の神ある上に重ねて再び、国魂の神を斎りたるは天使長以下の経綸を誤りたる結果なれば、その責任は吾らも同様なり。されど仁慈ふかき大神は、この度の事件に関しては寛大なる大御心をもつて、神直日大直日に見直し聞き直し詔り直したまひて、吾らがたがひの大罪を忘れさせたまひたり。心安く思召されよ』 と満面笑をうかべて宣り聞かせたるに、国玉別は神恩の尊く忝なさに涙を滝のごとく流し、衷心より改悛の情をあらはし、八王神に忠実に仕へける。それより天地和順し上下よく治まりて、松の神代の常永に時津風枝も鳴らさぬ聖代を招来したりける。 今まで天空に橋状をなして横たはりし黒雲は、次第に散乱して拭ふがごとく、天明らけく地清く、神人和楽の極楽浄土を現出したるぞ目出度けれ。これより二個の国魂を南北に分ち祭られ、国土を二分して、北方は八王神吾妻別これを主管し、南方は八頭神国玉別これを主管することとなりぬ。君主的神政の神界の経綸も、ここにいよいよ民主的神政の端を啓かれたるぞ是非なけれ。 (大正一〇・一一・二〇旧一〇・二一午後八時東の天より西の天に向つて一条の怪しき黒雲横たはり、天を南北に区劃し、天地暗澹たる時、竜宮館において、加藤明子録) |
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霊界物語 | 03_寅_十二の国魂/大道別/天使長の更迭 | 32 破軍の剣 | 第三二章破軍の剣〔一三二〕 大石別、守高彦は、大道別の言葉の実否を試さむと、急ぎ天道山の大瀑布に諸神卒とともに駆つけ見れば、春日姫は容姿がらりと変じ、にこやかに微笑しながら二人にむかひ遠路のところ御迎ひ大儀と、実にすましゐたりける。平玉彦は得意らしく鼻をぴこつかせ、右の手の甲にて上下の唇を左から右へ斜にこすりながら、 『大石別、守高彦』 と言葉鋭く呼びかければ、二人はその態度に憤然として面をふくらせ、 『銀毛八尾の悪狐にしたがふ平玉彦の盲目どもよ、平玉蜘蛛となりて、吾が前に正体をあらはせ』 と叫ぶや、平玉彦は怒りて、汝無礼ものと言ひながら大石別に打つてかからむとしたり。されど、仁王のごとき強力無双の守高彦の両手に拳骨を握りをるその形相のすさまじさに、やや躊躇の色ありき。 春日姫は言葉優しく、 『大石別、守高彦、妾はすでに病気全快なしたれば、最早ここに長居するの必要なし。わが本復の祝ひにかへ、平玉彦を許せよ』 と言葉を添へけるを、大石別は守高彦と目と目に何事か物言はせながら、この場を無事に引返すこととなり、春日姫は神司らに送られて賑々しく帰城したりける。 道貫彦は、春日姫の無事帰城せることをよろこび、春日姫の頼みを容れて烏羽玉の宮の宮司に任じける。平玉彦、大石別以下の神司は、これを見て欣喜のあまり落涙しながら、大道別の前にすすみいで、 『貴下は、畏れおほくも八王神の御娘春日姫を、銀毛八尾の悪狐といひ、かつ御足の裏に狐の斑紋ありといはれたり。されどかくのごとく病気全快したまひ、神聖なる烏羽玉の宮の司とならせたまひ、精神ここに一変して至善至美なる神司とならせたまひしに非ずや。貴下は八王神にたいし速やかに切腹せらるべし。卑怯未練に躊躇せば、われ天にかはつて貴下を誅戮せむ』 と息まきながら詰めよりにける。 時しも道貫彦の御召なりとて、春姫は言葉おごそかに大道別を差招きければ、大道別は春姫とともに奥殿に進み入りしに、奥殿には道貫彦、春日姫が正座にひかへ、言葉も荒く、 『汝は春日姫にたいする無礼の罪により、天地の律法に照らし自殺を申しつくる』 と厳かに言渡しける。大道別は驚くかと思ひのほか、大口あけて打笑ひその場に倒れ伏しぬ。しばしの後、 『あゝ暗い、暗い』 と呟きながら、腰の一刀を抜くより早く電光石火春日姫の首は、胴を離れける。 このとき道貫彦は、大声に大道別を引捕へよと怒号すれば、この声に驚いて平玉彦、大石別、畠照彦、竹友別その他の神司は奥殿目がけて走りいり、前後左右より大道別を取り押さへ、高手小手にしばり上げたり。大道別は心中に天の破軍星を祈り、国治立命の救助を祈りければ、たちまち百雷の一時にとどろく如き音響とともに、破軍星の精魂たる武満彦命降りきたり、破軍の剣をもつて空中を切り捲りたまふにぞ、今まで春日姫と思ひし女性は、銀毛八尾の悪狐と化し、そこに斃死しゐたりける。ここに全く大道別の無辜は晴れ、かつ道貫彦は非常に口をきはめて大道別の天眼力を感賞したり。しかるに大道別は春日姫の悪狐の首を斬り捨てたるさい、そのほとばしる血の一滴を口に呑み、その血は身体一面にひろがり、さしも明察にして勇猛なりし大道別も精神に異状をきたし、発狂者となりにける。 これよりモスコーの城は、常世姫の駆使せる金毛九尾の悪狐のために蹂躙され、道貫彦、夕日別の夫妻は、つひに城を捨てて万寿山に難を避くることとはなりぬ。 大道別はそれより世界の各地を漂浪し、ある不可思議の出来事より、病気まつたく癒えたれども[※第三三章参照]、命は依然として発狂者をよそほひ、かつ聾者となり、馬鹿者となりて敵状を視察し、最後に神政成就の神業にたいして偉勲を立てたるなり。神機発揚の神司として五六七神政の基礎となり、国祖再出現にさいし、とつぜん地の高天原に顕現する神人なり。大道別の正体ははたして如何。ただ今後に徴せむのみ。 (大正一〇・一一・二九旧一一・一外山豊二録) |
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霊界物語 | 03_寅_十二の国魂/大道別/天使長の更迭 | 43 配所の月 | 第四三章配所の月〔一四三〕 八王大神常世彦は十王、十頭の神司を操縦し、あまたの魔軍とともに数百千の磐船に乗り、天空をかすめて黄金橋の上空を襲ひ、数百千万とも数限りなき火弾を投下し、かつ進ンで竜宮城およびエルサレムの上に進撃しきたり、ここにも多数の火弾毒弾などを、雨霰のごとくに投げつけたり。大八洲彦命、神国別命、大足彦、八島別は城内の神将神卒を指揮しつつ盛ンに防戦に努めける。竜宮城よりも数多の磐樟船を飛ばして大いに敵軍を悩ませたるが、しかも一勝一敗を繰返しつつ戦ひ久しきにわたり、竜宮城の神軍は日夜にその数を減じ、ほとんど孤城落日無援の窮地に陥りにけり。 大八洲彦命は、もはや如何に神明の加護と神智を揮ひ神算鬼謀の秘術を尽すといへども、到底勝算なきを看破し、百計ここにつきて、つひに国祖の御前に拝跪し、天の真澄の鏡をもつて敵軍を防がむことを奏請したりけるに、国祖はおほいに怒りたまひ、 『汝らは天地の律法をもつて何ゆゑに敵を言向和し悔改めしめざるや、進退これ谷まりたりとて、いやしくも天地の律法を制定され、世界を至善の道をもつて教化すべき天使の職掌を拝しながら、敵の暴力に酬ゆるに暴力をもつて対抗せむとするは、天使長より神聖なる律法を破るものにして、これに過ぎたる罪科は非ざるなり。あくまでも忍耐に忍耐を重ねて、至誠一貫もつて極悪無道の人物を心底より悔改めしめ、天則の犯すべからざるを自覚せしむべし。これ善一筋の誠の教なれば、たとへ如何なる難局に立つとも断じて真澄の玉は使用すべからず。かつ、その玉は稚桜姫命幽界に持ちゆきたる浄玻璃の神鏡となりたれば、これを戦闘のために使用すべきものに非ず。汝らは神の力を信じ、至誠を天地に一貫し、もつて天津神の御照覧にあづかるをもつて主旨とし、暴悪無道の敵軍に暴力をもつて戦ふを止めよ。真の神の心は宇宙万有一切を平等に愛護す。ゆゑに大神の眼よりは一視同仁にして、いたづらに争闘を事とするは神慮に背反するものなり。断じて武力に訴へなどして解決を急ぐなかれ。何事も天命の然らしむるところにして、惟神の摂理なり。ただただ汝らは、天使たるの聖職に省みて広く万物を愛し、敵を憎まず、彼らの為すがままに放任せよ』 との厳命なりける。 天使長大八洲彦命は、各天使を地の高天原にあつめて神勅を報告し、かつ最高会議は開かれたり。天空には敵の磐船雲霞の如く襲来し、頭上に火弾を雨下し、会議の席上にも火弾飛びきたりて神人を傷つけ、暗雲天地をこめて咫尺を弁ぜざるにいたる。されど国祖の神勅は大地よりも重く、その命は儼乎として動かすべからず。さりとて神命を奉ぜむか、味方の敗亡は火をみるよりも明白なる事実なり。万一神命に背反せむか、天則破壊の罪科を犯さむ。アヽ善の道ほど辛きものはなし、と諸神司は思案にくれ、溜息吐息の態なりける。 竜宮城内よりは美山彦、国照姫、杵築姫、竜山別らの一派は、平素の目的を達するは今この時と、内外相応じて八王大神の魔軍に応援し、味方は四分五裂の状勢におちいり収拾すべからず、進退いよいよ谷まりたる天使長大八洲彦命以下の天使神将は、やむをえず大神の禁を破つて破軍の剣を抜き放ち、寄せくる空中の敵軍目がけて打ち振るやいなや、剣の尖より不思議の神光あらはれ、天地四方に雷鳴電光おこり、疾風吹き荒び雨の降るがごとく、数百千の磐船は一隻も残らず地上に墜落し、敵軍の大半はほとんど滅亡したりける。 さしも猛烈なる敵の魔軍も、大八洲彦命以下の神司らの犠牲的英断と破軍の剣の威徳をもつて、もろくも潰滅したりける。敵の逃げ去りたる跡の地の高天原および竜宮城は、あたかも大洪水の引きたる跡のごとく、大火の跡のごとき惨澹たる光景なりき。折しも大風吹きすさび強雨降りそそぎて、すべての汚穢物は惟神的に吹き散らされ、大雨洪水となりて大海に流れ去り、ふたたび清浄なる聖地聖城とはなりにける。 ここに美山彦、国照姫の一派は、国治立命の御前にすすみいでて、 『このたびの大八洲彦命以下の天使神将は、厳格なる大神の神勅を無視し、厳禁を犯して破軍の剣を採り出し、寄せきたる数多の敵軍をさんざんに攻めくるしめ、暴力のあらむ限りをつくし、優勝劣敗弱肉強食の戦法を使用し、広く万物を愛し敵を憎まず、善一筋の誠をもつて言向和さず、かつ「殺す勿れ」の律法を無視したる悪逆無道の罪、断じて宥すべからず。希はくば、かれ天使長以下の職を解き、地の高天原を追放し、厳格なる天地の律法を犯されざるやう、何分の御処置を下されむことを願ひたてまつる』 と頭をそろへ律法を楯に、うやうやしく奏上したりける。 地上霊界の主権者に坐します国祖の大神も、律法を守り天地の綱紀を保持するの必要上、いかにやむを得ざる情実のためとはいへ、天地の神の定めたる禁を犯したる以上は、これを不問に附することあたはざる破目に陥りたまひ、呑剣断腸の思ひを心中に秘め、涙を隠して断然意を決したまひ、大八洲彦命、言霊別命、神国別命、大足彦の四天使を召して儼然たる態度のもとに、地の高天原と竜宮城を退去すべく宣示し給ひける。この四天使らは、稚桜姫命の到りませる幽庁の神と左遷さるる規定なりけるが、貞操なる真澄姫、言霊姫、竜世姫らの歎願哀訴により、大神はその情をくみ給ひて、その罪を赦し、万寿山の城に蟄居を命ぜられ、四神将はここに配所の月をながめて、いくばくかの星霜を送りたまひける。 この四神将は元来国大立之命、天神の命を奉じて大海原の国を知食すべく、その精霊魂を分ちて神界の守護に当らせたまひしものにして、 大八洲彦命は和魂であり 言霊別命は幸魂であり また、 大足彦命は荒魂であり 神国別命は奇魂である。 アヽ天使長以下三天使の重なる神司の退却されし後の地の高天原および竜宮城の形勢は、いかにして治まり行くならむ乎。 (大正一〇・一二・八旧一一・一〇近藤貞二録) (第三七章~第四三章昭和一〇・一・一八宮崎市神田橋旅館王仁校正) |
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霊界物語 | 03_寅_十二の国魂/大道別/天使長の更迭 | 44 可賀天下 | 第四四章可賀天下〔一四四〕 大八洲彦命以下天使の聖地退去ののちは、国治立命の奏請により、天上より高照姫命を降したまひて、これを地の高天原の宰相神に任じ、天使長の聖職に就かしめ、真澄姫、言霊姫、竜世姫をして天使の聖職につかしめたまひぬ。ここに女神司四柱相並びて神務と神政に奉仕することとなり、神々の心気を新にすることを得たりけり。 一たん常世彦の威力に圧せられ、八王聯盟に加はりゐたる諸天使は、八頭神を引連れ八王大神に背きてふたたび高照姫命の幕下となり、前非を悔い、ここに目出度く帰順することとなり、聖地の神政はまつたく復活することを得たりき。天使長高照姫命は国治立命の神命を奉じ、八王八頭を率ゐて、天地の律法をあまねく地上の世界に宣伝し、一時は飛ぶ鳥もおとすばかりの大勢力にして、世界の各山各所には天津祝詞の声充満し、神人動植物はことごとくその堵に安んじ、実に天下は泰平に治まり、邪神はおのおの影をひそめ国土安穏にして、天日いよいよ照り輝き、月光澄みわたり蒼空一点の妖気なく、実に完全無欠の神世を現出せしめたれば、世界の神人こぞつて可賀天下と賞揚するの聖代とはなりける。 竜宮城に雲をしのぎて聳立せる、三重の金殿より顕国の御玉の神霊発動して、唸りを発し、ときどき不可思議なる光輝を発射して邪悪神の面を照らしたまへば、地の高天原の聖地も竜宮城の聖城も、日ましに神威霊徳くははり、金色の鴉、銀色の神鳩嬉々として中空に舞ひ遊び、天男天女はつねに四辺を囲繞して太平の音楽を奏し、五風十雨順をたがへず、禾穀豊穣して神人その業を楽しみ、神界理想の黄金世界を現出するにいたり、遠近の邪神も静謐帰順をよそほひ、野心を深く包みて現実的暴動を慎み、天下一点の妖雲を見ざる瑞祥の世とはなりにける。これは万寿山に退去されし前天使長以下の日夜の専念的祈念の力によりて、その精霊体に活動をおこし、聖地聖域の霊徳を発輝したまひしが故なり。されど天使長高照姫命以下の三天使をはじめ神将神卒にいたるまで、須佐之男大神の昼夜の御守護の賜たることを少しも覚らず、天運の循環と、新天使以下の神務と神政の完全無欠にして、天地神明の神慮にかなひ奉れる結果ならむと、心おごりて、顕国の御玉の守護と、大八洲彦命以下の専心祈念の賜たることを忘却し、つひには女神司のあさはかにも驕慢心増長し、その結果は天地の律法まで軽視するにいたり、神徳日々に衰へ各所に不平不満の声おこり、漸次日を追ひ月を重ぬるとともに、可賀天下の神政を呪ふ神々勃発するの形勢を馴致したりける。 ここに一旦鉾をおさめ帰順をよそほひゐたる八王大神常世彦は、常世姫と再挙をくはだて、大国彦と計り、世界各所の八王八頭に、八頭八尾の大蛇の霊魂を憑依せしめ、その女神司には金毛九尾の悪狐の霊を憑依せしめ、部下の神司には六面八臂の邪鬼や眷属を憑依せしめて、俄に反逆心を発せしめたり。世界の神人はまたもや一時に起つて、地の高天原の神政に反抗的態度をあらはし、あまたの神人魔軍と変じて、八王大神指揮のもとに、まづ諸山の神軍を降し、勝に乗じて聖地にむかひ、天の磐船を数百千とも限りなく建造して天空を翔り、群をなして攻めよせ来りぬ。天使長高照姫命は周章狼狽の結果、神勅を請ふのいとまなく、ただちに数百隻の天の鳥船を造り、橄欖山より敵にむかつて攻入り、蒼空高く一大激戦を開始し、一勝一敗たがひに雌雄を争ひ、ふたたび聖地は紛乱の巷と化し去りにける。空中の戦ひは夜を日につぎほとンど一年有余を費やしたり。国祖国治立命はまたもや神勅を降し、 『天地の律法を遵奉し決して暴力をもつて戦ふべからず。大慈大悲の親心をもつて敵を言向和はせ、善一つの大道に教へ導くべし』 と厳命されたれども、高照姫命、真澄姫、言霊姫、竜世姫は、 『今日の場合かかる緩漫なる方法をもつて敵を改心せしめむとするは、実に無謀迂遠の策にして到底寸効なかるべし。いたづらに宋襄の仁を施しかへつて敵に乗ぜられ、噬臍の悔を後日にのこさむよりは、強暴にたいするに強暴をもつてし、我らの実力を示して敵を全滅せしめ、後難を絶つに如かず。いかに国祖の神命なればとて、危急存亡の場合、実力なき天地の律法をふりかざして、なんの効をか為さむや。神勅は、われらは努めて遵奉せざるべからずといへども、それは時と位置とに関して行ふべきものなり。急場の用に立つべきものにあらず』 と四柱の天使はきはめて強硬なる態度を持し、神勅を鼻の先にてあしらひゐたりけり。 時しも敵はますます進ンで聖地の上空に雲霞のごとく飛びきたり、天の三柱宮の上に火弾を無数に投げつけたれば、たちまち黒煙濛々として立ちのぼり、さしも荘厳を極めたるエルサレムの大神殿もたちまち烏有に帰したり。時しも火焔の中より巨大なる神将あらはれ、味方の鳥船にうち乗り敵の神将醜原別にむかつて衝突を試みたりければ、醜原別はもろくも打ち落され、火焔の中につつまれ苦悶の結果つひに焼死したりける。味方の神将神卒は手を打ちてよろこび、快哉を叫びしが、その声天地も動ぐばかりなり。言霊姫は又もや破軍の剣を抜放ち、敵の魔軍にむかつて前後左右に空中目がけて打ち振りしにぞ、宝剣の威徳ただちに現はれたまひて、敵の将卒は雨のごとく地上に落下し、あるひは火焔の中に墜落して黒焦となり滅亡したり。敵軍の将卒は不意を打たれて一敗地にまみれ、命からがら西天をかすめて遠く姿を没しける。東北の強風突如として吹きおこり聖地聖城を倒潰し、動植物の被害は目もあてられぬ悲惨なる光景となりければ、真澄姫、竜世姫はおほいに驚き、 『妾ら神勅違反の行動を執りたるを大神の赫怒したまひて、かくのごとく災害の頻発するならむ』 と、天地に拝跪して謝罪し天津祝詞を一生懸命に奏上したれども、東北の風はますます強烈となり、洪水氾濫してつひには竜宮城も水中に没せむとするに到れり。聖地聖城の神将神卒は、今さらのごとく一斉に天地に拝跪して救助を祈り神言を奏上したれども、天地の怒りは容易に解けず、祝詞を奏上すればするほど風勢は刻々に猛烈の度をくはへ、雨はいよいよ繁く降りきたり、雷鳴は天柱くじけ、地維裂くるかと疑ふばかりの大音響すさまじく轟きわたり、電光ひらめきわたりて眼を開くあたはず、神人らの面色は土色と変じ、息をこらして地上に平伏するのみなりける。 (大正一〇・一二・八旧一一・一〇栗原七蔵録) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 序 | 序 本巻は主として、常世会議の結末および国祖御退隠の大略を述べたるものなり。神典に国常立之命、豊雲野命は独神成坐て隠身也とあるは、言葉簡単なれども、実に無限の意味の含まれあるなり。第五巻には盤古大神の神政より天の三柱の大神、地上に降臨して、先づ淤能碁呂島より神業をはじめ、国魂神を生みたまひたる、その経緯を神示のまま述べむとする也。故に本書第四巻の終りまでは、我が日の本を中心とする霊界の物語にあらざることを知りたまふべし。 大正十年十二月十五日王仁識 |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 凡例 | 凡例 一、本巻は現代の海軍制限案討議の華府会議[※大正10年(1921年)11月~翌年2月にワシントンで開かれた国際軍縮会議のこと。]にも匹敵す可き、神代に於ける武備撤廃の常世会議を其の巻頭に掲げ、次に最も悲歎愁傷の念に堪へざる国祖の御隠退及び天文地文学に大立替を促進す可き神示の宇宙観が巻尾に輯録されてあります。元来神示の宇宙は国祖大神を始め奉り、諸正神の御隠退遊ばされし箇所を示さむために口述されたものであります。想へば吾々は木の葉一枚造られぬ身でありますから、洪大無辺の神示に対して云為する資格無きものであります。憖に先入主に執着して居ては雁も鳩も立つた後に後悔し、又耻かしいことがあると思はれますから、素直に神示を肯定する方が上乗であらうと考へます。 一、第一巻より第三巻までに得たるものは、唯執着の二字を心底より取り去らねばならぬと言ふことでありました。然らざれば或は大切な玉即ち日本魂を此の上にも引抜かれることは請合だと思ひます。総ての先入主に執着せずして神に任すといふことが、何より大切だと考へます。誠を以て赤子の心で本巻を味はひ得る人は、国祖大神の御隠退と御仁慈の御心に対し、万斛の涙を注ぐと共に黙つて改心さるることと信じます。 一、本巻第二一章迄と、第二五、二八章及び第四三章より第四五章までは、瑞月聖師自ら執筆されたものであります。 聖師が一度執筆さるるや些の渋滞もなく、淀みもなく、すらすらと書き誌され、しかも一字一句訂正を要せらるることは無いのであります。故に一日に二百頁も原稿を綴らるるので、其の実况を熟視した人々は迚も人間業とは思へぬといふのであります。 一、各章の末尾に筆録者の署名をしてあるのは、其の全文に對して責任を有たねばならぬことに定めてあるのです。兎に角編輯印刷を急ぎますので、種々の点に於て不満に思はれるでありませうが、読者幸に諒せられむことを希望します。 大正十一年二月十九日於瑞祥閣編者識す |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 02 聖地の会議 | 第二章聖地の会議〔一五二〕 地の高天原の神政は沢田彦命の還天以来、ますます混乱紛糾して収拾すべからざるの惨状を呈するにいたりぬ。されど広宗彦は、母事足姫、猿田姫、出雲姫らとともに鋭意神政の完成に努力したまひしかば、一たん混乱状態におちいりたる地の高天原も、この四柱の奮闘的至誠の力によりてやうやく瓦解を免れゐたりける。 然るにここに突然として常世の国より地上神界一般の国魂の神人の大集会を開催するにつき、地の高天原より使者を派遣すべきことを通告しきたりぬ。重ねて常世彦は、竜山別を使者として天の鳥舟に乗り数多の従者とともに地の高天原へ遣はしたりける。その信書の主意によれば、 『今や地上の世界は八王神、八頭神、たがひに嫉視反目してその権力を争ひ優勝劣敗、弱肉強食の惨状目もあてられぬ次第にして、国治立命の御聖旨に背反すること最もはなはだし。天地は現在のままに放任せむか、つひには地上はたちまち修羅道となり、餓鬼地獄の暗黒界と化すべきは火をみるよりも明白なる事実なれば、八王大神常世彦はここに大いに覚るところありて、大国彦と相謀り、八王八頭その他諸山の国魂を常世城に集合せしめ神界平和のため一大会議を開催せむとす。ついては第一着手として地の高天原の主宰者国治立命の天使長広宗彦以下の御出席を懇請す』 といふにありける。 広宗彦は、弟行成彦ならびに猿田姫、出雲姫その他の諸神司を集めて会議を開き、出席の賛否を慎重に審議したり。広宗彦はほとんど土崩瓦解の有様を呈したる地の高天原を修理固成し、地上の世界を平和に統一せむと日夜焦慮しつつありし際なれば、常世彦の信書をみて大いによろこび、欣喜雀躍の体なりき。地の高天原にては即刻大広前に諸神司を集めて大祭典を執行し、つぎに各神司は設けの座に着き神前会議を開きける。この会議に参ずる神司は八百八柱の大多数に達し、地の高天原神政開始以来の大集会なりけり。 ここに事足姫は議席にあらはれ、今回の大会議に出席の不可なることを極力主張したりける。その説によれば、 『極悪無道の常世彦ならびに常世姫以下の邪神は、あらゆる奸策を弄して天使長大八洲彦命を退隠せしめ、つぎに国直姫命をして還天の余儀なきにいたらしめ、なほも高照姫命以下の天使長および天使を失脚せしめて、その後の聖職を奪はむと千計万略日も足らざる彼れ邪神の悪行邪心、たうてい改心すべき筈のものにあらず、かならず深き計略のもとに行はるるペテン会議に相違なからむ。加ふるに常世姫は美山彦、国照姫、魔我彦、田依彦らをたくみに籠絡頤使して不断に地の高天原をはじめ竜宮城に仮面を被りて出入せしめ、機会のいたるを待ちつつあるを知らざるか。万々一広宗彦その他の神司にして、かれ常世彦の奸策におちいり、遠く衆を率ゐて出席せば、混乱の極に達したる地の高天原はこれを統轄する神人の数を減じ、ますます無勢力となるべし。その虚に乗じて彼らの一派たる美山彦以下の邪神は一時に反旗をあげ、聖地聖場を蹂躙するは目の前にあり、断じて油断あるべからず。万々一常世彦にして地上の世界を統一し、国祖国治立命の聖旨に奉答せむとするの真実誠意あらば、彼らはまづ国祖の大神の鎮まりたまふこのヱルサレムの聖地に参ゐのぼりて国祖の神の許可をうけたる上、天神地祇の神集ひに集ひて神議りすべき神定の聖地、地の高天原において大会議を開かざるべからず。苟くも地上一般の国魂神を集めて世界の大事を決定するに、常世国をもつて中心たるもののごとく、聖地のごとく振れ舞はむとするは、はじめより天地の神定に背反せる破律的悪行為にして、却つて天地を混乱せしむるものなり。よろしく今回の大会議はヱルサレムにおいて開催すべく常世彦に勧告せよ』 と宣示したまひける。このとき常世の国より第二の使者として広若なる者諸々の従者を率ゐて来り、一日も早く広宗彦以下の重職の出席を促しやまず。聖地の会議は事足姫の大反対のため連日連夜の会議を重ねて、未だその解決にまでいたらざりし時なりき。第一の使者たる竜山別、第二の使者広若はしきりにその回答を迫つて止まざりける。ここに広宗彦は衆議の如何にかかはらず、行成彦をして常世の会議に列せしめむと決心の色を面にあらはし、すみやかに決定すべきことを主張したり。母の事足姫は前述の不賛成説を固持して少しも譲るの色なく、広宗彦以下の神人は進退これ谷まり、青息吐息の体なりける。 かかる時しも常世彦の間者にして美山彦の幕下なる清熊は進み出で、さも横柄に諸神人を見廻し梟のごとき眼を開きながら、 『諸神人は如何に思はるるか知らざれども、現今の聖地、ヱルサレムの勢力は極めて微弱にして、その運命また風前の燈火に等し。いかに神定の聖地なればとて、かかる微力なる神人の集団をもつて、かの強大なる常世国の勢力に対抗せむとするは実に無謀の極にあらずや。万々一常世彦の怒りに触れむか、巌石をもつて卵を打ち砕くよりも脆きは、現今聖地の真相ならずや。諺にも長きものには巻かれよ、といふことあり。立寄れば大樹の蔭とかや。しかるに神定とか、聖地とかの、ほとんど有名無実の旧習や、形式にとらはれて時代の趨勢を弁へず、天下の同情を失墜し、つひには自滅を招くよりも、今日のごとき千載一遇の好機をとらへ、すみやかに出席を諾し、おほいに神政の基礎を固め、もつて災禍を未萠に防ぐこそ、策の上々たるものなるべし』 と、言辞を尽して述べたてにけり。 広宗彦は板挟みの姿となり、兎やせむ角や決せむと焦慮さるる折しも、大道別の密使として鷹依別は霊鷹と変じ、常世の国より飛びきたりて密書を口にくはへ、これを広宗彦に渡し、ただちに天空さして姿をかくしたりける。広宗彦はこの信書を見るや顔色俄に変じ、急病と称してこの議席を退出したり。アヽこの結末はいかに展開するならむか。 (大正一〇・一二・一五旧一一・一七出口瑞月) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 07 涼風凄風 | 第七章涼風凄風〔一五七〕 第一回の常世城の大会議は前述のごとく、大混乱のあひだに日没とともに幕は閉ぢられ、翌れば八百八十八柱の神司鶏鳴を合図にさきを争ふて大広間に参集したり。合図の磬盤の響きとともに神司らは各自設けの席に着きにける。 八王大神の妻常世姫は春日姫、八島姫とともに中央の高座に登壇したり。春日姫の艶麗なる容姿は、満座の神司らをして驚歎の眼を見はらしめたり。あたかも五百羅漢を陳列せしごとき不恰好の顔のみなる神司らの間には、一層衆目を惹きたるも自然の道理なりける。つぎに八島姫の容貌、また春日姫に劣らぬ美はしさ、衆の視線は期せずして二人の姿に集注せり。常世姫は色あくまで白く、光沢鮮麗にして白雪の旭日に照らされたるごとき容姿にして、この三人の女性は月雪花を一度に眺めしごとき、何ともいへぬ立派なる神品を遺憾なく壇上に発揮したりけり。昨日の殺風景なる議場に引きかへ、今日は打つて変りし女性の出場で、春の長閑な空気漂ひ居たりける。すべて相談事は女性の姿現はれざれば、何事もゴツゴツとしてうまくゆかぬものなり。第一回の会議の紛糾混乱に手を焼きたる常世彦は、方針を一変し、平和の女性として月雪花に擬ふ嬋娟窈窕たる三女性をこの議場に出席せしめ、集議の大目的を達成せむとしたるなり。 一旦モスコーに破れ、八頭夕日別とともに万寿山に避難し居たる八王道貫彦[※御校正本・愛世版では「万寿山の八頭夕日別と共に避難し居たる八王道貫彦は」になっているが、校定版・八幡版では「八頭夕日別とともに万寿山に避難しゐたる八王道貫彦は」になっている。ストーリー上は後者が正しいので、霊界物語ネットでも後者を採用した。]は、春日姫の、いまや常世姫の侍女としてこの壇上に現はれたるを見て、不審に堪へず、首をやや左方に傾け、彼はわが最愛の娘春日姫には非ずやと、わき眼もふらず見守りゐたりけるが、道貫彦心のうちに思ふやう、花の唇月の眉、加ふるに左頬のゑくぼといひ、背恰好といひ、寸分違はぬその容姿、もしや我娘の春日姫にあらざるかと、溜息をつき思案に暮れゐたりける。 また南高山の八王大島別は、八島姫の姿を遠く自席よりながめ、日常心を砕きて恋慕ふ吾が娘八島姫の容貌に酷似せるは如何なる理由ぞ、世には似たるものもあるものかな。吾が居城にある八島姫と見比べて瓜を二つに割りたるごとし。アヽなつかしさの限りなりと飛び立つごとき思ひにて、つくづくと八島姫の面色を穴のあくほど見つめてゐたり。 このとき常世姫は満座の神人らを見渡し、慇懃に遠来の労苦を謝し、顔色をやはらげ、温順を装ひて挨拶を述べけり。 『神界永遠の平和のため、諸神司の和衷協同して本会議の目的を完全に達成せしめられむ事を希望の至りに堪へず』 と滔々として布留那の雄弁をふるひ諸神司をして酔はしめたりぬ。今日は旭光ことのほか鮮麗なりしが、正午に至りてますます光輝を増し、大広間は何ンとも云ひ様なき明るき気分と輝きがただよひ、神司らの顔色も何となく勇ましげに見えにける。 ここに春日姫は満座にむかひ、叮嚀に一礼していふ、 『妾はモスコーの城主八王道貫彦の娘にして、春日姫と申すものなり。妾は邪神のために魅せられ、不覚の過ちより生命すでに危きところ、慈愛に富める常世姫のために一命を救はれしのみならず、肉身の父母にもおよばぬ無限の愛をほどこされ、いまは常世彦御夫婦の侍女として、日夜誠心誠意のあらむ限りをつくし奉仕せり。妾も最初は御夫婦の心事と行動をうたがひ、平素審神の道を怠らざりしが、案に相違の八王大神の仁慈博愛に富める大御心は天のごとく高く、海洋のごとく深く、広きを心底より透察して、はじめの妾が疑ひたてまつりたる邪心を愧ぢ、天にも地にも身の置きどころなきまでに懺悔の念に打たれたり。諺にも疑心暗鬼を生ずとかや、神司らはよろしく反省して、清く、赤く、直く、正しき至誠の心をもつて、その大御心とその行為を拝察されなば、平素の疑団はまつたく氷解せむ。現今のごとき草の片葉にいたるまで言問ひあげつらふ世界は、到底以前のごとき神政経綸の神策にては修斎の道思ひもよらず、天下の神人をして至安至楽の世に安住せしめむとの八王大神の大慈大悲の神心よりいでたる大会議なれば、諸神司は時代の趨勢を慮りて小異を捨て大同に合し、大慈大悲の神心を発揮し、区々たる一切の感情を捨て世界統一の大業を翼賛するため、その第一着手として諸山各地に割拠守護する八王の聖座を自発的に撤廃し、天下共同のもとに八王大神の幕下となり、一切の聖職を挙げて八王大神の管理に委任し、その指揮を仰ぐにいたらば、政令一途に出て、現今のごとき天下の紛乱を根本より払拭し、国祖国治立命の大神業に至誠忠実に奉仕することを得む。諸神司の御決心や如何』 と、あたかも梅花の露にほころぶごとき優美なる口より、流暢なる懸河の能弁をふるひ、莞爾として、降壇せむとするや、神人らの拍手の声は雨霰のごとく四辺より響ききたりぬ。常世姫はなにゆゑか春日姫の降壇せむとするを引留め依然として壇上に立たしめたり。このとき議席の左側八王の座席より突と身を起したる神司ありき。これ春日姫の父にして、モスコーの城主八王の道貫彦なりける。八王は常世姫にむかひて登壇を許可せられむ事をと、心ありげに請求しければ、常世姫はニヤリと笑ひて、快く登壇の請求を快諾したりける。 (大正一〇・一二・一七旧一一・一九出口瑞月) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 08 不意の邂逅 | 第八章不意の邂逅〔一五八〕 道貫彦は常世姫の快諾を得て、中央の高座にのぼり満場の諸神司にむかひ一礼していふ。 『我はモスコーを管轄する八王道貫彦なり。今日はじめて常世彦の至仁至愛にして毫末の野心もなく、真個世界平和を欲求したまふ至誠のあまり今回の大会議を開催されたることと確信す。諸神司試みに現今地の高天原の状勢を見られよ。天地の律法は有つて無きがごとく、綱紀は弛緩し、邪神は至善至美至仁の仮面をかぶりて聖地に出入し、天使真心彦は糸竹管絃に心を奪はれ花顔柳腰に心魂をとろかし、つひには自決するのやむなきに立ちいたれり。天使の行動にして斯のごとしとせば、その他の神人の悪行非為や知るべきのみ。第一、天使長たりし沢田彦命は神命を軽ンじ、律法の尊厳を無視し、薄志弱行の心性を暴露し、聖地の紛糾混乱を余所に見て還天したるごとき無責任極まる行動を敢てし、ために聖地の秩序をみづから破りたるにあらずや。その片割たる真心彦の後嗣広宗彦は、やや反省するところあるもののごとく、神政経綸のため最善の努力を竭しつつありといへども、元来無責任にして放埒きはまる真心彦の血統を享けたる者なれば、言、心、行、常に一致せず、ために聖地の神人が日に月に聖地をはなれ、各地に居住を定め、邑に君となり、村に長となり、たがひに権勢を争ひ戦乱止むなき常暗の現代を招来したり。いかに智仁勇兼備の神将と称へらるる広宗彦といへども、今日のごとく敗亡の域に瀕せる聖地ヱルサレムの神政を恢興し、回天の大神業を遂行すること思ひもよらず、かつ聖地の勢力は至つて微弱にして、いつ顛覆の運命に遭遇するやも計りがたく、嵐の前の朽樹のごとき状態なり。このさい常世城の八王大神にして聖地の神政を根底より破壊し、おのれ取つて代り神政を管掌せむと計りたまはば、じつに焼鎌の敏鎌をもつて葱を刈り取るごとく易々たる業のみ。しかるに至仁至愛にして、世界の万有にたいし、恵みの乳房を抱かしめむとして苦心焦慮したまふ、常世彦のごとき至誠至実の神司は、はたして何処にか之を求めて得るものぞ。我々は八王大神御夫婦の万有に対したまふ平等なる大慈愛の大御心に対し奉りて感歎措くところを知らず、じつに八王大神は天来の救世主にして、国祖国治立命の股肱たるべき真正の義神なれば、我らは世界永遠の平和のために率先して、八王神の聖職を退き一切の権能を八王大神に奉り、一天四海の平和のさきがけを為さむ。諸神司はいかが思召したまふや、現にわが肉身の娘春日姫は永く大神の近側に奉仕し無類の慈愛に浴し、至善至愛の神司にゐませることを証言したるに見るも、一点八王大神を疑ひたてまつるの余地、寸毫も発見することあたはず。行成彦の主張のごときは、ほとんど歯牙にかくるに足らざる、短見的愚論にして耳をかすの価値なきものなり。諸神司にして吾が言ふところをもつて是としたまはば、直ちに起立をもつて賛成の意を表したまへ』 と陳べたて悠然として降壇したりける。常世姫以下二女は依然として壇上に立ち、その艶麗国色の誉れを輝かしゐたり。八王八頭その他の国魂をはじめ、諸々の神人は何の言葉もなく、黙然として呆気に取られ、眼球を白黒に転回させ、口をへの字に結び何人かの答辞を待ちゐたりける。 このとき場の何処よりともなく、 『満場の神人たち、常世彦の奸策に陥るな、注意せよ。悪魔は善の仮面をかぶりて世を惑はすぞ』 と大声に呶鳴りしものあり。常世姫をはじめ列座の神人は、何神の声なるかと四隅を見渡したるが何の影もなかりき。常世姫は声を震はせ息をはづませながら、諸神司にむかつていふ。 『諸神司、よろしく心魂を臍下丹田に鎮めよ。好事魔多し、寸善尺魔とはただ今のことなり。天下を混乱せむとする邪神妖鬼の言に迷はさるること勿れ。良果には虫害多く善神と善人には病魔常につけねらふ。神界をして永遠無窮に至治太平ならしめむとするこの神聖無比の議会を根底より破壊せむとして、数万の悪鬼羅刹は場の内外に充満せり。寸毫といへども油断あるべからず。すみやかに諸神司は八王の撤廃に賛成されむことを望む』 と容色を柔げ笑を満面に湛へて述べ立てたり。諸神司は何ゆゑか口舌をしばられたるごとく一言をも発すること能はず、かつ全身麻痺して微躯とも動くを得ざりしがため起立して賛意を表すること能はず、ただおのおの目を円くしてギロギロと異様の光を放つのみなりけり。 このとき壇上の八島姫は口をひらき、 『妾は南高山の八王大島別の娘なりしが、ある一時の心得ちがひより父母を捨てて城内をひそかに脱出し、それより世界の各地を漂浪し、零落して四方を彷徨せし折しも、至仁至愛なる常世彦の部下に救はれ、言舌につくしがたき手厚き恩恵に浴しその洪恩譬ふるにものなく、日夜感謝の涙に暮れゐたりしに、思ひきや、勢力徳望天下に冠絶せる八王大神夫婦の殊寵を忝なうし、今やかくのごとく畏れおほくも姫命の侍女として、春日姫と相ならび一日の不平不満もなく近侍し、二神司の神徳の非凡にして大慈大悲の救世主にましますことを覚り、洪恩の万一にも報いたてまつらむと寸時も忘るることなし。諸神司は妾のこの証言を信じて、一刻も早く原案に賛成され、もつて永遠平和の神と後世まで謳はれたまはむことを、天地の大神に誓ひて勧告したてまつる』 と述べ立つる。このとき会場の一方より常世姫に登壇の許可を請求せる八王あらはれにける。さて、この結末は如何になり行くならむか。 (大正一〇・一二・一七旧一一・一九出口瑞月) (第六章~第八章昭和一〇・一・一九於錦江支部王仁校正) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 10 雲の天井 | 第一〇章雲の天井〔一六〇〕 南高山より八島姫来場せりとの急報は、諸神人の耳朶に、晴天の霹靂のごとくに轟きわたりけり。八島姫は盛装を凝らして、諸神人列座の前をはづかしげに一礼して通りぬけ、ただちに壇上に登りたり。ここに毫末の差異なき八島姫は二柱あらはれたるなり。このとき又もや、 『八島姫ここにあり』 と場の一隅よりまたもや同じ八島姫が現はれ壇上に登りける。衣服の色といひ、頭髪の艶といひ、面貌といひ、背の高さといひ、分厘の差もなきこの光景を見やりたる神人は、夢かうつつか、はた幻かと、互に眼をこすり頬をつめれども夢でもうつつでも幻でもなかりける。この時、 『モスコーの城主八王神道貫彦の娘春日姫来城あり』 との急報あり。諸神人はまたもや不審の眉をひそめゐる際、悠然として入りきたる絶世の美人あり。美人は列座の神人に叮嚀に一礼し、ただちに中央の壇上に登りたれば、春日姫はまたもや二人ならびたり。いづれを見ても花菖蒲、正非の区別つかざりにける。 この時、 『竜宮城に久しく出たまひし八王大神の妻常世姫御帰城あり』 と報告する使神あり。 常世姫は顔色を変じていふ、 『常世姫は妾なり、何ぞ妾のほかに常世姫あらむや』 と絶叫する。このとき絹ずれの音しとやかに入りきたる女性は、常世姫そのままなりき。女性は列座の神人に一礼して直ちに壇上に登る。またもや二人の常世姫が現はれたるなり。大広間の中央の高座は月雪花にも擬ふ二常世姫、二春日姫、三八島姫の美人立ならび、じつに立派なるものなりき。これを七柱の女神と誰いふとなく言ひふらす者ありける。 以前より現はれゐたる常世姫は柳眉を逆立て、 『汝いづれの邪神にや、かかる神聖なる議場に突然入りきたりて、妾と同様の姿と変じ、この聖場を汚さむとするや。いでや汝が化の皮をぬぎ、正体を現はしてくれむ』 といふより早く、後の常世姫にむかつて組付けば、後の女神は声を張りあげ、 『汝こそは真の妖怪変化なり、今にその正体を露はし、神人の目を醒しくれむ』 といふより早く、細き白き腕を捲りて丁々発止と打ちすゑたり。 八王大神は従者道彦の急報におどろき愴惶として議場に走りきたり、常世姫以下女性のあまた並立せるに呆れはて、いづれをそれと分別しかねて眼を光らせ、直立不動の体に七柱の女神の様子を凝視しゐたり。常世姫は八王大神の姿を見るや、飛びかかつて泣きはじめたるに、またもや一人の常世姫は八王大神に飛びかかり泣きつく。春日姫は二人一度に八王大神にむかつて、 『妾こそは真正の春日姫なり』 『いな彼は偽神なり。真正の春日姫は妾なり、かならず見過まりたまふな』 と泣いて抱つかむとするや、一方の八島姫は、 『妾こそ真正の八島姫なり、他は偽神なり』 『いな妾こそ真の八島姫なり』 『いな妾なり』 と同じ姿の三柱の姫は、四方八方より八王大神を取りまき、一寸も動かさず。八王大神は五里霧中に彷徨するの思ひにて、真偽の判別に苦しむ折しも、 『八王大神これにあり、偽神の八王大神に面会せむ』 と大音声に呼ばはりながら悠々として入りきたり、中央の高座に登れば、八王大神は烈火のごとく憤り、 『汝何神なれば我が名を偽りて、この神聖なる議場を攪乱せむとするや、目に物見せてくれむ』 と、後来の八王大神にむかつて打つてかかり、八王大神と八王大神は互に鎬を削りて壇上に挑みあひ、終には入り乱れて前後の八王大神の判別を失ふに致りける。列座の神人は狐に魅まれたるごとき顔して見入るばかりなりけり。たちまち中空に声あり、 『常暗の夜の常世の国の常世彦、その妻の常世姫、それに従ふ八島姫、こンな不審の三柱の、女神の心は暗の夜に、鼻をつままれ鼻折られ、春日の姫のかすかにも、光さへ見ぬ常世国、列座の神の胸の内、みな常暗となりにけり、みな常暗となりにけり。アハヽヽハのアハヽヽヽ』 と声高らかに笑ふ。諸神は一斉に声する方の空をながむれば、天井の堅く張りつめられたる常世城の大広間の上には、数万の星が明滅し、天の川原は明らかに見えきたりける。このとき行成彦は大に笑つていふ、 『常暗の夜の神人たちよ、国祖国治立命の神勅律法を無視したる天罰は覿面なり。諸神はよろしく各自の脚下を熟視されよ』 と怒号したりければ、八王大神はじめ列座の神人は、ふと気がつき四辺を見れば、足下のじるき泥田のなかに、泥まぶれになりて坐りゐたること明白となりきたりぬ。常世城の大広間は巍然として遥の遠方に聳えゐたり。常世彦、常世姫の背後には、あまたの邪鬼、妖狐のつねに憑依して悪業を勧めつつありしが、正義の神人には勝つべからず。この時のみはさすがの悪竜も金毛九尾の悪狐も、その魔術を行ふに由なく、だます狐が正義の白狐にすつかりだまされて、拭ふべからざる末代の愧を天地にさらしたるなり。 ここに目覚めたる八王大神以下満座の神人は、第一に国祖国治立命の認許を得ざれば、何事も成就せざることを心底より悟了し、第三回の会議よりは、天地の大神にたいして祝詞を奏上し供物を献じ、神界の許しを得て、その後に何事にも着手すべきものなることを、深く感得したりける。 (大正一〇・一二・一七旧一一・一九出口瑞月) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 11 敬神の自覚 | 第一一章敬神の自覚〔一六一〕 常世彦をはじめ八百八十八柱の神司は、天地の大神の神慮に反し、律法を軽視し、この大会議を開催し又は参列し、大神の神慮を怒らせたてまつり、意外の失敗を招きたるに悔悟の心を起し、ここに諸神司は大会議の開催に先だち、まづ天地の大元霊たる天之御中主の大神一名大国治立尊を奉祀し、山野河海の珍し物を献じ、大神の守護のもとに至誠至実の神聖なる大会議を開催せむことを期せずして感得し、天地の大神の畏るべきを自覚したり。天地の律法には、 『省みよ。耻ぢよ。畏れよ。悔い改めよ。克く覚れよ』 との五ケ条の内面的戒律あり、これを的確に遵守せざるべからざることを自覚したり。これぞまつたく大慈大悲の大神の、甚深微妙なる恩恵の鞭なりにける。 諸神人はここに翻然として前非を悔い改め、わが心胸に手をあてて反省し、各自の思慮の浅薄にして無智なりしを耻ぢ、天地主宰の大神の威厳の犯すべからざるを畏み、邪は正に敵しがたき大真理をおのづから覚り得たりけり。 八王大神は、ここに地の高天原なるヱルサレムの聖地を蹂躙し、あはよくば漸進的に国祖の大神までも退去せしめ、みづから国治立命の職権を奪はむとする方法手段として、盤古大神を擁立して時を待つて盤古大神を押しこめ万古不易的に八王大神の神政を樹立せむことを企ててゐたるに、今回の失敗に八王大神常世彦は本心に立復り、常世姫もまた夫とともに『悔い改め』の心をおこしける。ここに八王大神は、国祖の地位を奪はむとするの大陰謀のみは断念したれども、国祖を奉じてみづから聖地の宰相神たらむとするの目的のみは夢寐にも忘れざりける。 第二回の議席に現はれ、侃々諤々の雄弁を振ひ、満座の神人をして舌を捲かしめたる春日姫と八島姫の二女性は、その実は白狐の高倉と旭なりき。二女に化したる白狐は、大道別の周到なる妙策に出でたるものにして、いはば邪神の野望を破壊せむための反間苦肉の神策にして、敵本主義の謀略に出でたるものなりき。この白狐の今後の行動こそ実に面白き見ものなるべし。 いよいよ第三回の会議を開かむと、まづ第一に常世城の大広間に荘厳なる祭壇は設けられ、海川山野の種々の神饌を供進せむと衆議の結果、宮比彦を斎主とし美山彦その他は斎官として神事に奉仕し、目出度く祭典は執行されたるが、このとき天空澄み渡りて一点の雲片もなく、微風おもむろに吹ききたつて温かに、鳥は艶声をあげて樹木の枝にうたひ、得も言はれぬ芳香四辺をつつみ、常世の春の長閑な景色はさながら、五六七の神政を地上に移写されたるかと疑はるるばかりなり。 南瓜に目鼻をつけたるごとき、不景気な神人の顔も、蕪や、瓢箪や、茄子、長瓜、田芋などに目鼻をつけたるごとき、醜悪なる八百八十八柱の神人の面色も、この時のみは、実に勇気と希望に充ち、華やかなりけり。神々は心の奥底より、無限の愉快と喜悦とを感得したりける。大本神諭に、 『心の持ちやう一つによりて顔の相好までが変るから、心の持ちやうが一番大切であるぞよ』 と喝破されたるは実に至言といふべし。 いよいよ第三回目の会議は、諸神人喜悦歓呼の間にもつとも荘厳に静粛に開かれける。諸神人は各自設けの席に着きぬ。この度は前回のごとき野天泥田の会議にあらずして、真の常世城内の大広間なり。神人らのうちには、前日の泥田に懲りてか、足をもつて座席を念いりに踏みてみるもの、手を伸ばして議席を撫でまはし、議場の真偽を試しみるものありき。中には吾と吾身をつめりて痛さを感じ、やつと安心の胸を撫でおろすもあり。どうやら今度は、真正の会議場であるらしいと自語するもありぬ。羹に懲りて鱠を吹くといふ譬へは、かかる時のことを指したるものなるべし。神諭に、 『国会開きは人民が何時まで掛りても開けは致さむぞよ。神が開かな開けぬぞよ。神が開いて見せうぞよ。改心なされ』 とあるは実に千古不易の至言なり。太古の神人さへも、国祖の御許しなくしては、かくのごとき失敗を演出するものを、况ンや罪悪の淵に沈みたる、体主霊従の人間の開く会議においておや。猶更の事なりと云ふべし。 常世彦は、まづ神前に進み、恭しく拝跪して神言を奏上し、静かに中央の高座に登り謹厳の態度にて諸神人席に眼を配りていふ。 『吾らは成功を急ぐのあまり、神に祈願したてまつり、神助の下に神聖なる議案を討究することを忘却したるがために大神の神怒に触れ、議場はたちまち混乱に混乱の惨状を現出し四離滅裂の苦き経験を嘗めたり。いまより吾らは諸神人とともに、悔悟して世界平和のため誠心誠意をもつて終始せざる可らず。今日までの二回の会議は怪事頻々として湧起り、一つも決定にいたらずして幕を閉ぢたり。これ全く神慮に叶はざるがための結果に外ならざれば、今より改めて神聖なる会議を神助の下に開かむ』 と宣示し、諸神人は拍手して八王大神の宣示を迎へたり。 このとき、天井には微妙の音楽聞え、天男天女は天の羽衣を春風に靡びかせながら、舞ひ遊び、以前のすさまじき猛虎、悪狐、獅子の咆哮、怒号の悪声や、天の鳥船の轟き渡る示威的光景に比ぶれば、天地霄壤の差あることを覚えしめける。 (大正一〇・一二・一七旧一一・一九出口瑞月) |