| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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霊界物語 | 03_寅_十二の国魂/大道別/天使長の更迭 | 44 可賀天下 | 第四四章可賀天下〔一四四〕 大八洲彦命以下天使の聖地退去ののちは、国治立命の奏請により、天上より高照姫命を降したまひて、これを地の高天原の宰相神に任じ、天使長の聖職に就かしめ、真澄姫、言霊姫、竜世姫をして天使の聖職につかしめたまひぬ。ここに女神司四柱相並びて神務と神政に奉仕することとなり、神々の心気を新にすることを得たりけり。 一たん常世彦の威力に圧せられ、八王聯盟に加はりゐたる諸天使は、八頭神を引連れ八王大神に背きてふたたび高照姫命の幕下となり、前非を悔い、ここに目出度く帰順することとなり、聖地の神政はまつたく復活することを得たりき。天使長高照姫命は国治立命の神命を奉じ、八王八頭を率ゐて、天地の律法をあまねく地上の世界に宣伝し、一時は飛ぶ鳥もおとすばかりの大勢力にして、世界の各山各所には天津祝詞の声充満し、神人動植物はことごとくその堵に安んじ、実に天下は泰平に治まり、邪神はおのおの影をひそめ国土安穏にして、天日いよいよ照り輝き、月光澄みわたり蒼空一点の妖気なく、実に完全無欠の神世を現出せしめたれば、世界の神人こぞつて可賀天下と賞揚するの聖代とはなりける。 竜宮城に雲をしのぎて聳立せる、三重の金殿より顕国の御玉の神霊発動して、唸りを発し、ときどき不可思議なる光輝を発射して邪悪神の面を照らしたまへば、地の高天原の聖地も竜宮城の聖城も、日ましに神威霊徳くははり、金色の鴉、銀色の神鳩嬉々として中空に舞ひ遊び、天男天女はつねに四辺を囲繞して太平の音楽を奏し、五風十雨順をたがへず、禾穀豊穣して神人その業を楽しみ、神界理想の黄金世界を現出するにいたり、遠近の邪神も静謐帰順をよそほひ、野心を深く包みて現実的暴動を慎み、天下一点の妖雲を見ざる瑞祥の世とはなりにける。これは万寿山に退去されし前天使長以下の日夜の専念的祈念の力によりて、その精霊体に活動をおこし、聖地聖域の霊徳を発輝したまひしが故なり。されど天使長高照姫命以下の三天使をはじめ神将神卒にいたるまで、須佐之男大神の昼夜の御守護の賜たることを少しも覚らず、天運の循環と、新天使以下の神務と神政の完全無欠にして、天地神明の神慮にかなひ奉れる結果ならむと、心おごりて、顕国の御玉の守護と、大八洲彦命以下の専心祈念の賜たることを忘却し、つひには女神司のあさはかにも驕慢心増長し、その結果は天地の律法まで軽視するにいたり、神徳日々に衰へ各所に不平不満の声おこり、漸次日を追ひ月を重ぬるとともに、可賀天下の神政を呪ふ神々勃発するの形勢を馴致したりける。 ここに一旦鉾をおさめ帰順をよそほひゐたる八王大神常世彦は、常世姫と再挙をくはだて、大国彦と計り、世界各所の八王八頭に、八頭八尾の大蛇の霊魂を憑依せしめ、その女神司には金毛九尾の悪狐の霊を憑依せしめ、部下の神司には六面八臂の邪鬼や眷属を憑依せしめて、俄に反逆心を発せしめたり。世界の神人はまたもや一時に起つて、地の高天原の神政に反抗的態度をあらはし、あまたの神人魔軍と変じて、八王大神指揮のもとに、まづ諸山の神軍を降し、勝に乗じて聖地にむかひ、天の磐船を数百千とも限りなく建造して天空を翔り、群をなして攻めよせ来りぬ。天使長高照姫命は周章狼狽の結果、神勅を請ふのいとまなく、ただちに数百隻の天の鳥船を造り、橄欖山より敵にむかつて攻入り、蒼空高く一大激戦を開始し、一勝一敗たがひに雌雄を争ひ、ふたたび聖地は紛乱の巷と化し去りにける。空中の戦ひは夜を日につぎほとンど一年有余を費やしたり。国祖国治立命はまたもや神勅を降し、 『天地の律法を遵奉し決して暴力をもつて戦ふべからず。大慈大悲の親心をもつて敵を言向和はせ、善一つの大道に教へ導くべし』 と厳命されたれども、高照姫命、真澄姫、言霊姫、竜世姫は、 『今日の場合かかる緩漫なる方法をもつて敵を改心せしめむとするは、実に無謀迂遠の策にして到底寸効なかるべし。いたづらに宋襄の仁を施しかへつて敵に乗ぜられ、噬臍の悔を後日にのこさむよりは、強暴にたいするに強暴をもつてし、我らの実力を示して敵を全滅せしめ、後難を絶つに如かず。いかに国祖の神命なればとて、危急存亡の場合、実力なき天地の律法をふりかざして、なんの効をか為さむや。神勅は、われらは努めて遵奉せざるべからずといへども、それは時と位置とに関して行ふべきものなり。急場の用に立つべきものにあらず』 と四柱の天使はきはめて強硬なる態度を持し、神勅を鼻の先にてあしらひゐたりけり。 時しも敵はますます進ンで聖地の上空に雲霞のごとく飛びきたり、天の三柱宮の上に火弾を無数に投げつけたれば、たちまち黒煙濛々として立ちのぼり、さしも荘厳を極めたるエルサレムの大神殿もたちまち烏有に帰したり。時しも火焔の中より巨大なる神将あらはれ、味方の鳥船にうち乗り敵の神将醜原別にむかつて衝突を試みたりければ、醜原別はもろくも打ち落され、火焔の中につつまれ苦悶の結果つひに焼死したりける。味方の神将神卒は手を打ちてよろこび、快哉を叫びしが、その声天地も動ぐばかりなり。言霊姫は又もや破軍の剣を抜放ち、敵の魔軍にむかつて前後左右に空中目がけて打ち振りしにぞ、宝剣の威徳ただちに現はれたまひて、敵の将卒は雨のごとく地上に落下し、あるひは火焔の中に墜落して黒焦となり滅亡したり。敵軍の将卒は不意を打たれて一敗地にまみれ、命からがら西天をかすめて遠く姿を没しける。東北の強風突如として吹きおこり聖地聖城を倒潰し、動植物の被害は目もあてられぬ悲惨なる光景となりければ、真澄姫、竜世姫はおほいに驚き、 『妾ら神勅違反の行動を執りたるを大神の赫怒したまひて、かくのごとく災害の頻発するならむ』 と、天地に拝跪して謝罪し天津祝詞を一生懸命に奏上したれども、東北の風はますます強烈となり、洪水氾濫してつひには竜宮城も水中に没せむとするに到れり。聖地聖城の神将神卒は、今さらのごとく一斉に天地に拝跪して救助を祈り神言を奏上したれども、天地の怒りは容易に解けず、祝詞を奏上すればするほど風勢は刻々に猛烈の度をくはへ、雨はいよいよ繁く降りきたり、雷鳴は天柱くじけ、地維裂くるかと疑ふばかりの大音響すさまじく轟きわたり、電光ひらめきわたりて眼を開くあたはず、神人らの面色は土色と変じ、息をこらして地上に平伏するのみなりける。 (大正一〇・一二・八旧一一・一〇栗原七蔵録) |
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霊界物語 | 03_寅_十二の国魂/大道別/天使長の更迭 | 46 探湯の神事 | 第四六章探湯の神事〔一四六〕 百照彦は黙然として春子姫の面色を打見やりつつありしが、たちまち膝を前めて、 『汝の愉快にみちしその容貌、たしかに妙案あらむ、はやく吾がためにその妙案を物語れよ』 と顔色に光をあらはし勢よく問ひければ、春子姫はこたへていふ、 『妾は元来芸無し猿の不束者なれども、ここに一つの隠れたる芸能あり。そは天人の舞曲にして、天上において諸神の讃歎やまざりし、妾が独特の芸能なり。妾もし夫の許しを得ば、夫とともに真心彦の御前において一曲を演じまつらば、かならず歓ばせたまはむ』 と得意満面にあふれて勇ましげに言ふ。百照彦はおほいに驚きて、 『アヽ汝は何時のまにか、かかる芸能を覚えたるか』 と尋ぬれば、春子姫は、 『妾は貴下のもとに娶らるるまで、高天原の神殿に奉仕し、日夜舞曲を奏し、神歌をうたひ、大神の神慮を慰め奉る聖職に奉仕せしが、その技はつひに神に入り、妙に達して、天上における第一位の芸能者として、もてはやされしが、このたび地の高天原の改革につき、貴下は真心彦とともに赴任さるるに際し、大神の命によりて貴下の妻と定められたり。されど、貴下は大神の御心のあるところを毫も知りたまはず、ただ単に自ら選びて妾を妻に娶りしごとく思召したまへども、夫婦の縁は決して独自の意志のごとくになるべきものに非ず。いづれも大神の御許しありての上の神議りのことなれば、夫婦の道は決して軽忽に附すべきものにあらず。いづれも皆夫婦たるべき霊魂の因縁ありて、神界より授けらるるものなり』 と天地の因果を説き示し、夫婦の道は神聖にして犯すべからざる理由を諄々として説き立たり。 百照彦は初めて妻の素性を知り、かつ神律の重ンずべきを深く感得したりしが、百照彦はさらに妻にむかひ、 『汝はさほどの芸能を有しながら、現在夫たる吾に今日まで何故に告げざりしや』 と怪しみ問ふを、春子姫はこたへて、 『妾は貴下の妻となりし上は、妻たるの務めを全うせば足る。いたづらに芸能に驕り慢心に長じ、つひには夫を眼下に見下すごときことありては、天地の律法を破る大罪なれば、夢にも芸能を鼻にかけ不貞の妻と笑はるるなかれとの、父母の固き教訓なれば、今日まで何事もつつしみて、一度も口外せざりし次第なれども、今日夫の辛労を傍観するに忍びず、この時こそは妾が得意の芸能を輝かし、夫を輔佐し奉らむと決意したる次第なり。諺にも芸は身を助くるとかや、妾の身は何れになるも問ふところにあらざれども、現在の大切なる夫の神業を助け、なほ殊恩ある主の御神慮を慰め奉ることを得ば、妾が鍛錬したる芸能の功も、はじめて光を発するものなれば、女性の差出口、夫にたいして僣越至極の所為とは存じながら、夫を思ふ一念にかられて、はづかしながら妾の隠し芸を知れることをふと申上げたるなり』 と夫の前に両手をつき、敬虔の態度をあらはし物語りたり。 ここに百照彦は妻を伴なひ、主真心彦の館に参向し、春子姫の芸能のすぐれたることを進言したりけるに、命はたちまち顔色をやはらげ、さも愉快気に、 『天地神明の神慮を慰め、万物を歓ばしむるの道は歌舞音楽に如くものはなし。幸ひにも春子姫芸術に妙をえたるは何よりの重宝なり。一度吾がために一曲を演ぜよ』 と言葉もいそいそと所望したりける。 百照彦は主の愉快さうなる顔色を見て、やつと安堵せしものの如く胸をなでて笑声を作りける。 春子姫は、会心の笑みをもらしながら、舞衣に着替へ長袖しとやかに舞ひはじめしが、実に春子姫の言へるごとく、その技、妙に達し神に入り、天地神明の嘉賞したまふも当然なるべしと、真心彦をはじめ百照彦もただ感にうたれて恍惚たる有様なりける。その妙技の非凡なるを伝へ聞きて、大将軍沢田彦命まで臨席せられ、真心彦にむかひて、 『貴下は実に良き従臣を持たせらる。吾は羨望の念にたへず』 と言ひながら、その妙技に首を傾けて観覧したまひける。百照彦、春子姫はおほいに面目を施し、主の賞詞をうれしく拝受して厚く礼を述べ、吾が館に帰りただちに神前に神酒を奉献して、感謝の祝詞を奏上したりける。 それより天使真心彦は、春子姫の舞曲の優雅なると、その神格の高尚なるとに心をとろかし、一にも春子姫の舞曲、二にも姫の音調と、事あるごとに二人を招き酒宴をもよほし、つひには神務を捨てて絲竹管絃の道にのみ耽溺し、真心彦と春子姫の間に面白からぬ風評さへ立つにいたりける。 真心彦は元来仁慈の念ふかく、かつ多情多感の神司なりけり。それゆゑ外部の風評を耳にするや、春子姫にたいする同情の念は日をおうて昂まり、悪しき風評はますます油の浸潤するがごとき勢にて内外に拡まりにけり。 このことたちまち国治立命の耳に入りたるより、命はただちに真心彦を召しだして厳しく不義の行為の有無を詰問されたりしが、真心彦は首を左右にふり、 『吾いやしくも聖地の重神司として、天使の職を忝なうし、天地の律法を宣伝すべき聖職にあり。いかでか斯かる忌はしき行為を敢てせむや。天津神国津神も、吾が心身の潔白を照鑑ありて、わが着せられし濡衣を干させたまへ』 と一心不乱に祈願を凝らしたり。そのとき春子姫は突然身体激動して憑神状態となりぬ。これは稚桜姫命の降臨なりける。命は教へ諭していはく、 『よろしく探湯の神事をおこなひ、その虚実を試みよ。神界にてはこの正邪と虚実は判明せり。されど地上の諸神人は、疑惑の念深くして心魂濁りをれば、容易に疑ひを晴らすの道なし。ゆゑに探湯の神事を行なひ、もつて身の疑ひをはらすべし。正しきものは、神徳を与へてこれを保護すべければ、いかなる熱湯の中に手を投ずるとも、少しの火傷をもなさざるべし。これに反して、汚れたる行為ありし時は、たちまちにして手に大火傷をなし、汝の手はただちに破れただれて大苦痛を覚ゆべし』 と宣示されたり。 真心彦は、喜びて頓首したまひ、ただちに探湯の神事に取かかりけり。八百万の神人はその虚実を試すべく探湯の斎場に垣をつくり片唾をのンで見ゐたりしが、沸きかへる熱湯の中に、怖ぢず臆せず、真心彦は天津神国津神にむかつて祈願し、泰然自若として手を浸し入れたり。つづいて春子姫も同じく手を浸し、久しきにわたるといへども、二人ともに何の火傷もなく、ここに二人の疑ひはまつたく払拭されにける。二人は天地にむかいて神恩の有難きを謝し、慟哭やや久しうしぬ。八百万の神人は一斉に手をうつて、二人の潔白を賞讃したりける。国治立命は、二人の清浄無垢の心性を賞し、かつ種々のありがたき言葉を賜ひ、かつ今後は神祭のほか断じて舞曲に耽溺し、絲竹管絃にのみ心を奪はれ、神務を忘却するごとき不心得あるべからず、と厳しく教へ諭したまひ、悠然として奥殿に入らせたまひける。 真心彦は大いに愧ぢ、 『我は大いに過てり。我が悪しき風評の高まりたるは、わが不徳の致すところなり。聖地の重臣として、いかで他人に臨み得むや』 と直ちに国治立命の御前にいたり、天使の聖職を弊履を捨つるがごとく辞したりにけり。 (大正一〇・一二・九旧一一・一一外山豊二録) |
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霊界物語 | 03_寅_十二の国魂/大道別/天使長の更迭 | 余白歌 | 余白歌 愛善の花咲き充つる神の代は人の心も華やかなるらむ〈序〉 我国は徳主法従神国なれば理屈ばかりで治まらぬ国〈序〉 大日本の国は更なり地の上の凡てに道を明かす斯道〈序〉 善きにつけ悪しきにつけてうれしきは神に任せし心なりけり〈総説(初版)〉 天も地も清め澄して大本の神の教を布かむとぞ思ふ〈総説(初版)〉 我魂汚なき物と思ふかな研けば光ることを忘れて〈総説(初版)〉 今日の日は暮果てたれど今更に業怠りし事をしぞくゆ〈総説(初版)〉 量り無き教の玉と成なんと朝夕心研きこそすれ〈総説(初版)〉 真寸鏡見むと思へば外国の醜の教の塵をはらへよ〈第1章〉 何事も神の御教に任すこそ罪を清むる便りなりけれ〈第2章〉 ヒマラヤの山より高き神教は高天原に昇るかけはし〈第2章〉 刈ごもの乱れたる世を治めむと本つ教を説きひろめたり〈第3章〉 親々の立てたる教をひと筋に守るはおのが願ひなりけり〈第3章〉 日も月も天津御神の造られし物と思へばわが物は無し〈第4章〉 親しきは常のことなり皇神の直なる御法曲ぐるべしやは〈第6章〉 世の人の口の車に乗せられな悪魔は人の口を借るなり〈第6章〉 踏て行く神の正道広けれど心せざればつまづきぞする〈第6章〉 五十鈴川澄み渡りたるひと筋の清き流れは世を洗ふなり〈第7章〉 神といへば皆かしこくや思ふらむ鬼をろちあり曲津霊もあり〈第8章〉 我こそは神の教の御柱と誇りたかぶる醜のとりつぎ〈第8章〉 勇ましく事はなすとも恥づること知らずば遂に争とならむ〈第9章〉 真心をこめて御教をとく舌の剣に亡ぶ曲津霊の神〈第9章〉 選まれて教の柱と生れたるひとの言霊世を活かすなり〈第12章〉 大方の世人の眠りさましたる人は現世の木鐸なりけり〈第12章〉 神つ代の神の御典を明めて本津大道に世人を導け〈第13章〉 二世契る夫婦の間も踏みて行く道し違へば憎み争ふ〈第14章〉 博愛の神の教を聞かずして身を亡ぼすは己が為す罪〈第14章〉 神言を正しく説きたるひとつ火の光は闇世の灯台なりけり〈第14章〉 君のため御国のために尽したる人をなやむる暗世忌々しき〈第14章〉 奇魂曽富戸の神と生れたる人は現世の導師なりけり〈第14章〉 蹴落され踏みにじられて世のためにつくせしひとは真の神なる〈第16章〉 斯の道の蘊奥を深く究めたる人のひらきし三五の教〈第17章〉 逆しまの世に悩みたる人草を生かさむとして天降りし神子はも〈第17章〉 天津空ゆ地上のために降りたるひとの子独り世を偲び泣く〈第17章〉 神殿に神は在ねど人々の斎かむたびに天降ますかも〈第18章〉 皇神の恩頼に報いむと直心かけて拝む斎庭〈第18章〉 国々の神の政を知食す生国魂の御勲功著きも〈第19章〉 敷島の道開きたるひとの声は天地四方に鳴り渡るなり〈第21章〉 皇国のために誠を尽したる人の子攻むる世こそ歎てき〈第21章〉 背に腹を替へて斯の世に降りたる人の子攻むる世こそ歎てき〈第22章〉 形ある宝に眼くらみなば罪に汚れし身となりぬべし〈第22章〉 人を愛で慈しむとも天地におそるるなくば道にさからふ〈第22章〉 味気なき舌の剣や大砲は万のあだを招き集むる〈第22章〉 久方の天津御神の御心は人の魂の基なりけり〈第23章〉 肝向ふ人の心は天地の神のまにまに動きこそすれ〈第23章〉 軒ゆがみ壁の落ちたる人の家に産声あげし瑞御魂かも〈第24章〉 反きたる人も吾が子の如くして神は恵みに活かせたまはむ〈第26章〉 高天原紫微の宮より降りたるひとつの魂ぞ世の光なれ〈第27章〉 千早振神の任さしに天降りたる人の御魂は顕幽に照る〈第27章〉 苦しみて数多の人に使はれて始めて人を使ふの道知る〈第29章〉 命まで道に捧ぐる心あらば如何なる事も叶はざらめや〈第29章〉 天津神依さし給ひし真心も省みせずば曲津霊とならむ〈第31章〉 年若き時より神と呼ばれたる人の世に立つ五六七の神代かな〈第32章〉 何もかも知りつくしたる人の子の出づる五六七の御代ぞ待たるる〈第32章〉 和妙の綾の聖地に召されたる人は伊都能売みたまなりけり〈第33章〉 奴婆玉の闇に御魂を汚したるひとを清むと伊都能売の神〈第33章〉 根底までおちたる人を救はむとミカエルとなり現れし伊都能売〈第34章〉 腹借りて賎ケ伏家に産声をあげたるひとの神の子珍らし〈第36章〉 王仁といふ韓の物識皇国にそぐはぬ教を伝へけるかな〈第37章〉 同じ名の出口の王仁は日の本の本つ教を開き初めけり〈第37章〉 足曳の山路を夜半にたどる身は月の神こそ力なりけり〈第39章〉 石の上古事記は神つ代の神のいさをのしるべなりけり〈第39章〉 素盞嗚の神の命の作らしし三十一文字は言霊の本よ〈第39章〉 敷島の歌の調べは知らねども世人のために作りそめけり〈第39章〉 知らずして知り顔なすは曲霊の神に魅れし人にぞありける〈第40章〉 吾こそは神の霊の宮居ぞと世人を欺く曲津霊の神〈第40章〉 越国の雪より清き大道も世は白妙のとく人もなし〈第41章〉 千早振神の教をかしこみて駒立てなほす元の住処へ〈第42章〉 言霊の幸ふ国に生れきて神の御声を聞かぬ人あり〈第43章〉 千早振神ぞあらはれきたのそらの綾の高天に教伝へますも〈第43章〉 烏羽玉の世を晴さむとあらがねの地の御祖は現れましにけり〈第43章〉 言霊の天照る国の尊とさは神の御声を居ながらに聞く〈第45章〉 恥かしく無きまで心洗へかし身魂の審判はじめかくれば〈第46章〉 何事がありとも世びと心せよ罪ある限り祓ひ清むる〈第46章〉 久方の天津空より降りたるひとつの御魂は神の楯なる〈第48章〉 不思議なる赤縄の糸のからみたる人の子つひに世に勝てるなり〈第48章〉 現し世の総ての人に幽世の様教へむと神現れましぬ〈第49章〉 隔たりし天と地との結びより生れ出でたる人の子神の子〈第49章〉 幽世の事はなほ更現し世の事さへ知らぬ神の子うたてき〈第49章〉 如何にして知らさむ由もなきじやくり神の心は山時鳥〈第49章〉 霊交活力体因出燃地成弥疑足諸血夜出の神の功績〈第50章〉 隠身而形も見えず声もなきまことの神は御中主なり〈第50章〉 元の神人の初まりつばらかに知りたる者は神の外無し〈第50章〉[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました] |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 01 常世会議 | 第一章常世会議〔一五一〕 太古の神界経綸の神業は、最初稚桜姫命の天則違反によりて瓦解し、つぎに国直姫命の神政となり、これまた姫命の地上を見捨て天上へ帰還されしため、大八洲彦命の神政に移りける。いづれも国治立命の統轄のもとに、神政の経綸に奉仕したまひけり。つぎには天上より高照姫命、地の高天原にくだりて神政経綸の神業に奉仕し、またもや瓦解の運命におちいり、ついで沢田彦命天より降りて国治立命のもとに神政経綸の神業に奉仕し、大破壊を馴致して、またもや地上を捨て天上に還りたまひたるなり。 国治立命は幾度主任の神を代ふるも失敗に帰し、あたかも蟹の手足をもぎ取られたるごとくに途方に暮れたまひける。されど性来の剛直端正なる国治立命は、天地の律法を厳守して、いかなる難局に会するも毫も屈せず、部下の諸神人にむかつて律法の寸毫も干犯すべからざることを厳格に命じたまひしがために地の高天原の主任者は、しばしば更迭したりける。 常世の国の八王大神は機逸すべからずとして、世界各山各地の八王八頭を常世城に召集し謀議を凝らさむと、天の鳥舟を四方に馳せ神の正邪の論なく、智愚に関せず一所に集めて、八王八頭の聯合を図りたり。また一方には自在天大国彦と内々協議を遂げおき、世界神人の国魂会議を開かむとせり。 すなはち八王大神側よりは美山彦、国照姫、魔我彦、魔我姫、清熊、竜山別、蠑螈別、八十枉彦、朝触、夕触、日触、山嵐、広若、舟木姫、田糸姫、鬼若、猿姫、広依別らの諸神人の出席することとなりにける。 大自在天大国彦側よりは、大鷹彦、中依別、牛雲別、蚊取別、蟹雲別、藤高別、鷹取別、遠山別、醜国別、倉波、蚊々虎、荒虎別、国弘別、出雲別、高彦らの神人、堂々として出席したり。 また十二の八王八頭の神司は、万寿山の磐樟彦、瑞穂別を除くほかは、全部出席することとなりけり。しかるに常世の国の八王大神より、ぜひ出席すべく数多の鳥舟を率ゐ、蠑螈別をして万寿山に急使を遣はしていふ、 『神界統一のため、平和のための会議に出席なき時は、一大団結力をもつて貴下を神界現界一般の破壊者とみなし、これを討伐するのやむを得ざるに至らむ』 と脅喝的信書をもつて来たらしめたりけるに、万寿山城にては大八洲彦命、磐樟彦以下の神人らは俄の会議を開かれにける。 磐樟彦は強剛なる態度を持していふ、 『たとへ世界の神人らが一束となつて万寿山へ押寄せくるとも、我は霊鷲山の神の力によりて引受け、数百千万の敵軍をただ一息の伊吹に吹払ひ退け、天地律法の精神によりて天下の千妖万魔を言向け和合し、国治立命の神慮に叶ひたてまつれる大神世を樹立せむ。生ける誠の神の神力には、如何なる邪神も、悪魔も敵し得べきものにあらず。今回の常世の会議は常世彦、大国彦が大陰謀の発露なればかかる会議に相交はり、相口合ふは巨石を抱きて海に投ずるよりも危険なれば、当山の神司は一柱といへども出席すべからず』 と主張したりければ、大八洲彦命は第一に八王神磐樟彦の説に賛成の意を表し、断じて出席すべからずと主張したまへり。 ここに瑞穂別は立ち上り、 『大八洲彦命、磐樟彦の御説示は、実にもつとも千万の次第なれども、時世時節の力には抗すべからず。よろしく時代の趨勢に順応するをもつて、神政経綸の必要事と思ふ。すみやかに当山より何れかの神司を遣はして、今回の大会議に列せしめたまへ。万々一にも出席を望まざる神司数多ありとせば、願はくば我を使者として派遣せしめたまへ。いかに霊鷲山の神人らの威徳は強くとも、国治立命の制定せられし律法の一端に触るることありとも、今回の神集ひに出席せざらむか、世界の神人らに万寿山の神司らは、世界の平和を破壊する邪神司として一斉に攻撃さるるも、答弁の辞なかるべし。今や当山は実に危急存亡の秋なり。吾らは神界現界平和のために強て出席の議を決定されむことを希望の至りに耐へず』 と主張したりければ、神司らはこの場の光景を見ていかになりゆくかと、各自固唾を呑みてひかへゐる。このとき神国別命は立つて、瑞穂別の出席説に大々的反対を唱へける。 瑞穂別はおほいに怒りて、 『貴下らは天地の律法を破り、国治立命より当山に御預け、否な食客となりし神司なれば、八頭神たる我々の所説に容喙すべき資格なし。退場あれ』 と声を慄はせながら顔色火のごとくなりて怒鳴りつけたり。 ここに大八洲彦命、神国別命、言霊別命、大足彦は席を蹴つて退場したりけり。 あとに瑞穂別は肩をいからせ、肱を張り、居丈け高になりて、八王神の磐樟彦に出席の正当なる理由を千言万語理をつくし理義を明して説き迫りけり。城内の諸神司の賛否は相半し、いづれとも決断付かざりにける。磐樟彦は立つて、 『最早この上は神示に従ふのほかに道なし。汝瑞穂別は神殿に拝跪し、自ら神勅を乞ひ、神示によりて出否を決せよ』 と一言を遺して退席したり。ここに瑞穂別は直に月宮殿に参拝し、今回の事件にたいする神示を恭しく奉伺したるに、たちまち瑞穂別の身体は、麻痺して微動だもできずなりぬ。従ひきたれる瑞穂姫は俄然帰神となり、身体上下左右に震動しはじめ、早くも口が切りし憑神はいふ、 『我は国治立命の荒魂、奇魂なり。今回の神集ひは常世彦、大国彦ら一派の周到なる陰謀に出づるものなれば、当山の神司は一柱といへども出席すべからず。今後いかなる難関に逢ふことありとも、よく忍ぶべし。第二の神界経綸の聖場なれば、当城のみは決して敵に蹂躙さるるがごときことなし。真正の力ある神司神人をして、五六七出現の世までは固く守護せしめむ。夢疑ふことなかれ』 と宣言して、姫の体内より出で去りたまひぬ。それと同時に姫の身体はもとに復しける。この神勅と様子を見聞しゐたる瑞穂別は、おほいに前非を悔悟し、心中にて大神に謝罪すると同時に瑞穂別命の身体また旧に復し自由自在となりぬ。固りて直ちに大神に感謝し、荘厳なる報本反始の祭典を挙行し、八王大神および大八洲彦命以下の神司らに陳謝し、万寿山の神人は一柱も出席せざる由を常世の国の使者にむかつて、断乎として宣示したりける。常世の使者、蠑螈別は拍子ぬけしたる顔色にて、一同の神人をさもいやらしき眼にて睨みつけ、 『勝手にされよ。後日に悔いをのこされな』 と捨台詞をのこして天の鳥舟に乗り、あまたの従者とともに常世の国へ還りける。 (大正一〇・一二・一五旧一一・一七出口瑞月) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 05 議場の混乱 | 第五章議場の混乱〔一五五〕 行成彦は満場にむかつて慇懃に挨拶を述べ且つ、 『今回の大会議は世界永遠の平和を企図さるるため、八王大神および大自在天の発起されしものにして、じつに現今の世界の状況よりみて、まことに吾々は感謝に耐へないのである。これ全く二神が天下蒼生を愛したまふ大慈大悲心の発露にして大神の慈言に等し。我々は誠心誠意をもつて相終始しこの平和会議をして名実相伴ひ、真個世界の永遠平和の基礎たらしめざるべからず。この点においては、諸神司におかせられても吾々と同感なるべきことを信じて疑はない次第である。各自の武備を撤廃し、四海同胞和親の曙光に接するは実に同慶の至りである。ゆゑに我々は武備の撤廃については双手をあげて賛成するものである。されど吾々は八王廃止[※御校正本・愛世版では「八王大神廃止」だが、校定版・八幡版では「八王の廃止」になっている。ストーリー上は後者が正しいので、霊界物語ネットでは「八王廃止」とした。]の件については、おほいに考ふべき余地の幾多存することと思ふ。そのゆゑは、かの八王なるものは、天地の大神の定められたる規定にして、それぞれに国魂を配置し、もつて神界現界御経綸の守護となしおかれ、八王は天地の律法をあまねく神人に宣伝し、かつ国魂を通じて国治立命に仕事するの聖職である。かかる聖職を神界大神の御神慮をも伺はず、軽々しくこれを提唱するごときは、第一天地の神明を無視したる反逆的行為なれば、吾らはこの議案にたいしては大々的反対である。各山各地の八王を撤廃するは、恰も扇子の要を抜きとりたると同様にして却つて、世界の四分五裂を招き、これより地上は一層の混乱、無明の天地と悪化せむ。吾々は世界の前途を思ふのあまり、一時も早くかくのごとき愚案は撤回されむことを望まざるべからず。いかに徳望高く、勢力旺盛にして旭日昇天の威望ある八王大神の提案なりとはいへ、かくのごとき天意に反したる議案には他人はいざ知らず、吾々は断じて盲従すること能はず』 とやや声を荒らげ、憤然として降壇した。 ここに八王大神は烈火の如く憤りながら、強力の神道彦を従へ、ふたたび壇上に登り一座を瞰下し、恐ろしき眼を見はりつつ、視線を行成彦の方にむけたる時の容貌は実に六面八臂の邪鬼の面相そのままなりける。諸神司は固唾をのんで雨か、風か、はた洪水か、雷鳴か、地震かと、おそるおそる八王大神の顔色をのぞくやうにして、見上げてゐたり。 このとき八王大神声を励まし雷鳴のごとくに怒号咆哮し、列座の諸神司をして恐怖の念に駆られしめたり。しかして行成彦をハツタとにらみ、 『汝は若年の身として小賢しくも屁理屈を百万陀羅述べ立るといへども、口角いまだ乳臭を脱せず。汝は律法を楯にとりて吾らの大慈旨を抹消せむとは片腹痛し。時世の大勢に透徹せざる迂遠狂愚の論議を、かかる尊き会議の席において蝶々喃々し、議席の神聖を汚し、天下の神人万有を安住せしめ、真個の天国を地上に顕出せむとする大自在天大国彦および吾らの神策の実行を妨害せむとする、その心事の陋劣にして悪逆無道なる実に汝の言辞といひ、精神といひ見下げ果てたるその振舞ひ、汝のごとき邪心を包蔵する愚者は、この席に列するの資格なし、一時もはやく退場せよ』 と厳命し、かつ諸神司の方に眼を転じていふ、 『諸神司は彼行成彦の言をもつて、天地経綸の神策を破壊するものと見做さざるや。諸神司にして我が説に賛成ならば、手をあげて以て誠意を示されたし』 と傍若無人の暴言をはき、場の四隅を見渡しける。諸神司はその権幕の猛烈さに、ますます気をのまれ、猫に出あひし鼠のごとく、戦々兢々として縮みあがり片言隻句も発し得ざるの卑怯さを遺憾なく発露したりける。 行成彦は憤然として立ち上り、何事か自席より発言せむとするや、八王大神大に怒り、 『汝は神聖なる議場を汚す曲人なり。意見あらば何ンぞ場内の規律を守り登壇してこれをなさざるや』 と叱咤したるにぞ、行成彦は、 『然らば御免あれ』 といひつつ自席をはなれ登壇せむとするや、八王大神は、 『この愚昧者』 といふより早く、壇上より蹴り落さむとする際、従者なる道彦は暫時の御猶予と言ひながら、八王大神の片腕を掴みける。八王大神は強力の道彦に利腕を固く握られ、全身麻痺してその場に顔をしかめて打ち倒れたり。この態を見たる大鷹彦、美山彦は矢庭に壇上に立ち上がり、道彦を蹴り落したり。蹴落されたるは道彦と思ひきや、行成彦なりき。しかして道彦の姿は煙と消えて跡形もなくなりぬ。八王大神は痛さをこらへ、やうやくにして立上り、道彦を叱咤せむとし四辺を見れば、道彦の姿は見えず、行成彦が壇下に倒れて七転八倒し居たりける。八王大神は心地よげに打ながめ、 『汝は若年の分際として、老練なる神政者の我にむかつて抗弁せり。天地の大神は汝の暴逆を悪みたまひて、その高き鼻梁をうち砕きたまふ。今より汝は良心に立かへり、我主張に賛成せば汝のいまの無礼を許し与へむ』 と欣然として降壇する際、八王大神は吾が足をもつて行成彦の倒れたる身体をはね退けむとする刹那、行成彦の身体より数個の玉現はれ満場を照して天上へ上ると見るまに玉はその姿をかくしたりける。 行成彦は、依然として最前より自分の議席に静まりゐたるなり。また道彦は八王大神の館の正門を離れず厳守しゐたりける。アヽこれ何物の所為なりしならむか。 (大正一〇・一二・一六旧一一・一八出口瑞月) (序~第五章昭和一〇・一・一九於鹿児島市錦江支部王仁校正) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 07 涼風凄風 | 第七章涼風凄風〔一五七〕 第一回の常世城の大会議は前述のごとく、大混乱のあひだに日没とともに幕は閉ぢられ、翌れば八百八十八柱の神司鶏鳴を合図にさきを争ふて大広間に参集したり。合図の磬盤の響きとともに神司らは各自設けの席に着きにける。 八王大神の妻常世姫は春日姫、八島姫とともに中央の高座に登壇したり。春日姫の艶麗なる容姿は、満座の神司らをして驚歎の眼を見はらしめたり。あたかも五百羅漢を陳列せしごとき不恰好の顔のみなる神司らの間には、一層衆目を惹きたるも自然の道理なりける。つぎに八島姫の容貌、また春日姫に劣らぬ美はしさ、衆の視線は期せずして二人の姿に集注せり。常世姫は色あくまで白く、光沢鮮麗にして白雪の旭日に照らされたるごとき容姿にして、この三人の女性は月雪花を一度に眺めしごとき、何ともいへぬ立派なる神品を遺憾なく壇上に発揮したりけり。昨日の殺風景なる議場に引きかへ、今日は打つて変りし女性の出場で、春の長閑な空気漂ひ居たりける。すべて相談事は女性の姿現はれざれば、何事もゴツゴツとしてうまくゆかぬものなり。第一回の会議の紛糾混乱に手を焼きたる常世彦は、方針を一変し、平和の女性として月雪花に擬ふ嬋娟窈窕たる三女性をこの議場に出席せしめ、集議の大目的を達成せむとしたるなり。 一旦モスコーに破れ、八頭夕日別とともに万寿山に避難し居たる八王道貫彦[※御校正本・愛世版では「万寿山の八頭夕日別と共に避難し居たる八王道貫彦は」になっているが、校定版・八幡版では「八頭夕日別とともに万寿山に避難しゐたる八王道貫彦は」になっている。ストーリー上は後者が正しいので、霊界物語ネットでも後者を採用した。]は、春日姫の、いまや常世姫の侍女としてこの壇上に現はれたるを見て、不審に堪へず、首をやや左方に傾け、彼はわが最愛の娘春日姫には非ずやと、わき眼もふらず見守りゐたりけるが、道貫彦心のうちに思ふやう、花の唇月の眉、加ふるに左頬のゑくぼといひ、背恰好といひ、寸分違はぬその容姿、もしや我娘の春日姫にあらざるかと、溜息をつき思案に暮れゐたりける。 また南高山の八王大島別は、八島姫の姿を遠く自席よりながめ、日常心を砕きて恋慕ふ吾が娘八島姫の容貌に酷似せるは如何なる理由ぞ、世には似たるものもあるものかな。吾が居城にある八島姫と見比べて瓜を二つに割りたるごとし。アヽなつかしさの限りなりと飛び立つごとき思ひにて、つくづくと八島姫の面色を穴のあくほど見つめてゐたり。 このとき常世姫は満座の神人らを見渡し、慇懃に遠来の労苦を謝し、顔色をやはらげ、温順を装ひて挨拶を述べけり。 『神界永遠の平和のため、諸神司の和衷協同して本会議の目的を完全に達成せしめられむ事を希望の至りに堪へず』 と滔々として布留那の雄弁をふるひ諸神司をして酔はしめたりぬ。今日は旭光ことのほか鮮麗なりしが、正午に至りてますます光輝を増し、大広間は何ンとも云ひ様なき明るき気分と輝きがただよひ、神司らの顔色も何となく勇ましげに見えにける。 ここに春日姫は満座にむかひ、叮嚀に一礼していふ、 『妾はモスコーの城主八王道貫彦の娘にして、春日姫と申すものなり。妾は邪神のために魅せられ、不覚の過ちより生命すでに危きところ、慈愛に富める常世姫のために一命を救はれしのみならず、肉身の父母にもおよばぬ無限の愛をほどこされ、いまは常世彦御夫婦の侍女として、日夜誠心誠意のあらむ限りをつくし奉仕せり。妾も最初は御夫婦の心事と行動をうたがひ、平素審神の道を怠らざりしが、案に相違の八王大神の仁慈博愛に富める大御心は天のごとく高く、海洋のごとく深く、広きを心底より透察して、はじめの妾が疑ひたてまつりたる邪心を愧ぢ、天にも地にも身の置きどころなきまでに懺悔の念に打たれたり。諺にも疑心暗鬼を生ずとかや、神司らはよろしく反省して、清く、赤く、直く、正しき至誠の心をもつて、その大御心とその行為を拝察されなば、平素の疑団はまつたく氷解せむ。現今のごとき草の片葉にいたるまで言問ひあげつらふ世界は、到底以前のごとき神政経綸の神策にては修斎の道思ひもよらず、天下の神人をして至安至楽の世に安住せしめむとの八王大神の大慈大悲の神心よりいでたる大会議なれば、諸神司は時代の趨勢を慮りて小異を捨て大同に合し、大慈大悲の神心を発揮し、区々たる一切の感情を捨て世界統一の大業を翼賛するため、その第一着手として諸山各地に割拠守護する八王の聖座を自発的に撤廃し、天下共同のもとに八王大神の幕下となり、一切の聖職を挙げて八王大神の管理に委任し、その指揮を仰ぐにいたらば、政令一途に出て、現今のごとき天下の紛乱を根本より払拭し、国祖国治立命の大神業に至誠忠実に奉仕することを得む。諸神司の御決心や如何』 と、あたかも梅花の露にほころぶごとき優美なる口より、流暢なる懸河の能弁をふるひ、莞爾として、降壇せむとするや、神人らの拍手の声は雨霰のごとく四辺より響ききたりぬ。常世姫はなにゆゑか春日姫の降壇せむとするを引留め依然として壇上に立たしめたり。このとき議席の左側八王の座席より突と身を起したる神司ありき。これ春日姫の父にして、モスコーの城主八王の道貫彦なりける。八王は常世姫にむかひて登壇を許可せられむ事をと、心ありげに請求しければ、常世姫はニヤリと笑ひて、快く登壇の請求を快諾したりける。 (大正一〇・一二・一七旧一一・一九出口瑞月) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 08 不意の邂逅 | 第八章不意の邂逅〔一五八〕 道貫彦は常世姫の快諾を得て、中央の高座にのぼり満場の諸神司にむかひ一礼していふ。 『我はモスコーを管轄する八王道貫彦なり。今日はじめて常世彦の至仁至愛にして毫末の野心もなく、真個世界平和を欲求したまふ至誠のあまり今回の大会議を開催されたることと確信す。諸神司試みに現今地の高天原の状勢を見られよ。天地の律法は有つて無きがごとく、綱紀は弛緩し、邪神は至善至美至仁の仮面をかぶりて聖地に出入し、天使真心彦は糸竹管絃に心を奪はれ花顔柳腰に心魂をとろかし、つひには自決するのやむなきに立ちいたれり。天使の行動にして斯のごとしとせば、その他の神人の悪行非為や知るべきのみ。第一、天使長たりし沢田彦命は神命を軽ンじ、律法の尊厳を無視し、薄志弱行の心性を暴露し、聖地の紛糾混乱を余所に見て還天したるごとき無責任極まる行動を敢てし、ために聖地の秩序をみづから破りたるにあらずや。その片割たる真心彦の後嗣広宗彦は、やや反省するところあるもののごとく、神政経綸のため最善の努力を竭しつつありといへども、元来無責任にして放埒きはまる真心彦の血統を享けたる者なれば、言、心、行、常に一致せず、ために聖地の神人が日に月に聖地をはなれ、各地に居住を定め、邑に君となり、村に長となり、たがひに権勢を争ひ戦乱止むなき常暗の現代を招来したり。いかに智仁勇兼備の神将と称へらるる広宗彦といへども、今日のごとく敗亡の域に瀕せる聖地ヱルサレムの神政を恢興し、回天の大神業を遂行すること思ひもよらず、かつ聖地の勢力は至つて微弱にして、いつ顛覆の運命に遭遇するやも計りがたく、嵐の前の朽樹のごとき状態なり。このさい常世城の八王大神にして聖地の神政を根底より破壊し、おのれ取つて代り神政を管掌せむと計りたまはば、じつに焼鎌の敏鎌をもつて葱を刈り取るごとく易々たる業のみ。しかるに至仁至愛にして、世界の万有にたいし、恵みの乳房を抱かしめむとして苦心焦慮したまふ、常世彦のごとき至誠至実の神司は、はたして何処にか之を求めて得るものぞ。我々は八王大神御夫婦の万有に対したまふ平等なる大慈愛の大御心に対し奉りて感歎措くところを知らず、じつに八王大神は天来の救世主にして、国祖国治立命の股肱たるべき真正の義神なれば、我らは世界永遠の平和のために率先して、八王神の聖職を退き一切の権能を八王大神に奉り、一天四海の平和のさきがけを為さむ。諸神司はいかが思召したまふや、現にわが肉身の娘春日姫は永く大神の近側に奉仕し無類の慈愛に浴し、至善至愛の神司にゐませることを証言したるに見るも、一点八王大神を疑ひたてまつるの余地、寸毫も発見することあたはず。行成彦の主張のごときは、ほとんど歯牙にかくるに足らざる、短見的愚論にして耳をかすの価値なきものなり。諸神司にして吾が言ふところをもつて是としたまはば、直ちに起立をもつて賛成の意を表したまへ』 と陳べたて悠然として降壇したりける。常世姫以下二女は依然として壇上に立ち、その艶麗国色の誉れを輝かしゐたり。八王八頭その他の国魂をはじめ、諸々の神人は何の言葉もなく、黙然として呆気に取られ、眼球を白黒に転回させ、口をへの字に結び何人かの答辞を待ちゐたりける。 このとき場の何処よりともなく、 『満場の神人たち、常世彦の奸策に陥るな、注意せよ。悪魔は善の仮面をかぶりて世を惑はすぞ』 と大声に呶鳴りしものあり。常世姫をはじめ列座の神人は、何神の声なるかと四隅を見渡したるが何の影もなかりき。常世姫は声を震はせ息をはづませながら、諸神司にむかつていふ。 『諸神司、よろしく心魂を臍下丹田に鎮めよ。好事魔多し、寸善尺魔とはただ今のことなり。天下を混乱せむとする邪神妖鬼の言に迷はさるること勿れ。良果には虫害多く善神と善人には病魔常につけねらふ。神界をして永遠無窮に至治太平ならしめむとするこの神聖無比の議会を根底より破壊せむとして、数万の悪鬼羅刹は場の内外に充満せり。寸毫といへども油断あるべからず。すみやかに諸神司は八王の撤廃に賛成されむことを望む』 と容色を柔げ笑を満面に湛へて述べ立てたり。諸神司は何ゆゑか口舌をしばられたるごとく一言をも発すること能はず、かつ全身麻痺して微躯とも動くを得ざりしがため起立して賛意を表すること能はず、ただおのおの目を円くしてギロギロと異様の光を放つのみなりけり。 このとき壇上の八島姫は口をひらき、 『妾は南高山の八王大島別の娘なりしが、ある一時の心得ちがひより父母を捨てて城内をひそかに脱出し、それより世界の各地を漂浪し、零落して四方を彷徨せし折しも、至仁至愛なる常世彦の部下に救はれ、言舌につくしがたき手厚き恩恵に浴しその洪恩譬ふるにものなく、日夜感謝の涙に暮れゐたりしに、思ひきや、勢力徳望天下に冠絶せる八王大神夫婦の殊寵を忝なうし、今やかくのごとく畏れおほくも姫命の侍女として、春日姫と相ならび一日の不平不満もなく近侍し、二神司の神徳の非凡にして大慈大悲の救世主にましますことを覚り、洪恩の万一にも報いたてまつらむと寸時も忘るることなし。諸神司は妾のこの証言を信じて、一刻も早く原案に賛成され、もつて永遠平和の神と後世まで謳はれたまはむことを、天地の大神に誓ひて勧告したてまつる』 と述べ立つる。このとき会場の一方より常世姫に登壇の許可を請求せる八王あらはれにける。さて、この結末は如何になり行くならむか。 (大正一〇・一二・一七旧一一・一九出口瑞月) (第六章~第八章昭和一〇・一・一九於錦江支部王仁校正) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 09 大の字の斑紋 | 第九章大の字の斑紋〔一五九〕 常世姫の快諾を得て今や中央の高座に現はれたる神司は、南高山を主管する八王の大島別なりき。命は登壇するや否や、八島姫の全身に眼をつけ、頭上より足の爪先まで異様の顔色すさまじく熟視し、ややしばらく無言のまま壇上に突つ立ち瞑目をつづけ、思案に暮るるものの如くなり。満場の諸神人は大島別の態度の尋常ならざるに怪訝の念を湧起し、たがひに眼と眼を見合せゐる。場内はあたかも水を打つたるごとき静寂の空気漂ふ。 大島別はやうやく口を開いていふ、 『満場の神人よ、活目張耳して今回の会議を熟慮されよ。昨日の議場の怪といひ、種々合点のゆかざることのみ多かりしに、今日またもやその怪はますます怪ならずや先刻道貫彦の賛成説を吐露するや、たちまち中空に怪声あり、…常世彦の奸策に陥るな、悪魔は常に善の仮面を被るものぞ、諸人注意せよ…と呼ばはりしその声は、果して何神の発声なりしぞ。おそらくは現場に出席したまふ神司らの声には非ざるべし。我は之をもつて全く天津神の御注意の御声なりと断言して憚らざるものなり。現に見よ、いまこの壇上に立てる八島姫はいかにも我娘の八島姫に酷似して、その真偽を判別せむとするは、現在の父たる吾においても、これに困しまざるを得ざるまでに克くも化けたり。これをもつて察するときは常世姫はじめ春日姫、八島姫の三女は、けつして正しきものにあらず。かならず妖怪邪鬼の変化なるべし。現に吾が娘八島姫は一度ある事情のために、城内を脱出し、諸方に彷徨せしことあるは事実なれども、忠実なる従者玉純彦の苦辛惨憺の結果、スペリオル湖の南岸において姫に邂逅し、ただちに姫を南高山にともなひ還りたれば、我は南高山にありて姫の孝養を受け日夜傍を放れしことなし。しかるに一応合点のゆかぬは、いま眼のあたり八島姫の堂々としてこの壇上に現はれ、小賢しき駄弁を振ひをることなり、吾は二柱の八島姫を産みし覚えなし。思ふに、この八島姫なるものは、妖怪変化の作用に相違なし。吾いまその正体を曝露し、諸神人の眼を醒し参らせむ』 と言ふより早く長刀を抜きはなち、電光石火の迅業に八島姫の首は壇上に落ちたるかと思ひきや、八島姫はヒラリと体をかはし、悠然として直立し、微笑をたたへながら、 『父上よ心をしづめて妾が言葉を聞きたまへ。大事の前の小事、早まつて噬臍の悔を後日に貽したまふな』 と、泰然自若すこしの恐れげもなく述べたてけり。 大島別は八島姫の少しも動ぜざる、その態度にあきれ、やや躊躇の色見えたる折しも、玉純彦はまつしぐらに壇上に登り八島姫の前に立ちふさがり、言葉を荒らげ肩をそびやかし、眼を怒らせながら、 『汝は必定常世の国の邪神の変化なること一点疑ふの余地なし。汝いかに巧みに変化して神人を誑惑せむとするも、吾一人のみは欺き得ざるべし。八島姫には他神人の知らざる特徴あり吾は常に姫に奉侍してその一部身体の特徴を知悉す、第一には額に巴形の斑紋なかるべからず、第二には左の肩のあたりに大の字形の紋あり、汝果して八島姫ならばその斑紋を明らかに吾が前に示して證明せよ』と言葉鋭く詰め寄れば、八島姫はカラカラとうち笑ひ、 『愚なるかな玉純彦、汝かくまで妾を疑ふならば、今その證拠を顕はさむ』 と額に塗りつけたる白粉を、両手をもつて擦りおとし、 『玉純彦これを見よ』 と額を突出し見せたるに、擬ふ方なき巴形の斑紋は歴然として表はれたり。玉純彦は眉毛に唾し眼をこすり、吾と吾が頬を爪もてつまみ、不審の眉をひそめて、八島姫を深く見つめてゐたり。八島姫はまたもや笑つて、 『いかに玉純彦よ、妾の妖怪変化に非ざることを悟りしや』 と言ひながらクルリと背を玉純彦の方に向けたり。玉純彦はその後姿を首筋から足の下まで打ちながめ、長き舌をまき太き息を吐きながら、 『この畜生奴、よくも完全に化けをつたなあ』 と思はず叫ぶ。八島姫はやや声をとがらせ、 『汝は主の姫女にむかつて無礼の雑言畜生奴とは何事ぞ』 と向きなほり柳眉を逆立て叱りつけたるに、玉純彦はその真偽の判断に苦しみける。玉純彦は半信半疑の雲につつまれ壇上に諸神人とともに、無言のまま暫時突立ち居たり。八島姫は、 『汝はこれでも疑ひを晴らさざるか』 と言ひつつ片肌を脱ぎ、左肩の大の字の斑紋を示したるより、玉純彦はその場に平伏し無礼の罪を陳謝したり。 大島別は、初めて疑ひ晴れたれど、南高山にある、八島姫の身上についてふたたび疑問を喚び起さざるを得ざりけり。第一の不審は、城内の八島姫には巴形の斑紋の有無に気づかざりし故なり。玉純彦もまた巴形の斑紋の消え失せたるものと考へゐたるが、いま目のあたり確固不動の証拠を見て、南高山の八島姫を疑ふこととなり、大会議の壇上に我身の立てることさへも気づかずありける。このとき南高山より大島別の後を追いつつ八島姫きたれりとの報告あり。アヽこの判別は如何。 (大正一〇・一二・一七旧一一・一九出口瑞月) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 11 敬神の自覚 | 第一一章敬神の自覚〔一六一〕 常世彦をはじめ八百八十八柱の神司は、天地の大神の神慮に反し、律法を軽視し、この大会議を開催し又は参列し、大神の神慮を怒らせたてまつり、意外の失敗を招きたるに悔悟の心を起し、ここに諸神司は大会議の開催に先だち、まづ天地の大元霊たる天之御中主の大神一名大国治立尊を奉祀し、山野河海の珍し物を献じ、大神の守護のもとに至誠至実の神聖なる大会議を開催せむことを期せずして感得し、天地の大神の畏るべきを自覚したり。天地の律法には、 『省みよ。耻ぢよ。畏れよ。悔い改めよ。克く覚れよ』 との五ケ条の内面的戒律あり、これを的確に遵守せざるべからざることを自覚したり。これぞまつたく大慈大悲の大神の、甚深微妙なる恩恵の鞭なりにける。 諸神人はここに翻然として前非を悔い改め、わが心胸に手をあてて反省し、各自の思慮の浅薄にして無智なりしを耻ぢ、天地主宰の大神の威厳の犯すべからざるを畏み、邪は正に敵しがたき大真理をおのづから覚り得たりけり。 八王大神は、ここに地の高天原なるヱルサレムの聖地を蹂躙し、あはよくば漸進的に国祖の大神までも退去せしめ、みづから国治立命の職権を奪はむとする方法手段として、盤古大神を擁立して時を待つて盤古大神を押しこめ万古不易的に八王大神の神政を樹立せむことを企ててゐたるに、今回の失敗に八王大神常世彦は本心に立復り、常世姫もまた夫とともに『悔い改め』の心をおこしける。ここに八王大神は、国祖の地位を奪はむとするの大陰謀のみは断念したれども、国祖を奉じてみづから聖地の宰相神たらむとするの目的のみは夢寐にも忘れざりける。 第二回の議席に現はれ、侃々諤々の雄弁を振ひ、満座の神人をして舌を捲かしめたる春日姫と八島姫の二女性は、その実は白狐の高倉と旭なりき。二女に化したる白狐は、大道別の周到なる妙策に出でたるものにして、いはば邪神の野望を破壊せむための反間苦肉の神策にして、敵本主義の謀略に出でたるものなりき。この白狐の今後の行動こそ実に面白き見ものなるべし。 いよいよ第三回の会議を開かむと、まづ第一に常世城の大広間に荘厳なる祭壇は設けられ、海川山野の種々の神饌を供進せむと衆議の結果、宮比彦を斎主とし美山彦その他は斎官として神事に奉仕し、目出度く祭典は執行されたるが、このとき天空澄み渡りて一点の雲片もなく、微風おもむろに吹ききたつて温かに、鳥は艶声をあげて樹木の枝にうたひ、得も言はれぬ芳香四辺をつつみ、常世の春の長閑な景色はさながら、五六七の神政を地上に移写されたるかと疑はるるばかりなり。 南瓜に目鼻をつけたるごとき、不景気な神人の顔も、蕪や、瓢箪や、茄子、長瓜、田芋などに目鼻をつけたるごとき、醜悪なる八百八十八柱の神人の面色も、この時のみは、実に勇気と希望に充ち、華やかなりけり。神々は心の奥底より、無限の愉快と喜悦とを感得したりける。大本神諭に、 『心の持ちやう一つによりて顔の相好までが変るから、心の持ちやうが一番大切であるぞよ』 と喝破されたるは実に至言といふべし。 いよいよ第三回目の会議は、諸神人喜悦歓呼の間にもつとも荘厳に静粛に開かれける。諸神人は各自設けの席に着きぬ。この度は前回のごとき野天泥田の会議にあらずして、真の常世城内の大広間なり。神人らのうちには、前日の泥田に懲りてか、足をもつて座席を念いりに踏みてみるもの、手を伸ばして議席を撫でまはし、議場の真偽を試しみるものありき。中には吾と吾身をつめりて痛さを感じ、やつと安心の胸を撫でおろすもあり。どうやら今度は、真正の会議場であるらしいと自語するもありぬ。羹に懲りて鱠を吹くといふ譬へは、かかる時のことを指したるものなるべし。神諭に、 『国会開きは人民が何時まで掛りても開けは致さむぞよ。神が開かな開けぬぞよ。神が開いて見せうぞよ。改心なされ』 とあるは実に千古不易の至言なり。太古の神人さへも、国祖の御許しなくしては、かくのごとき失敗を演出するものを、况ンや罪悪の淵に沈みたる、体主霊従の人間の開く会議においておや。猶更の事なりと云ふべし。 常世彦は、まづ神前に進み、恭しく拝跪して神言を奏上し、静かに中央の高座に登り謹厳の態度にて諸神人席に眼を配りていふ。 『吾らは成功を急ぐのあまり、神に祈願したてまつり、神助の下に神聖なる議案を討究することを忘却したるがために大神の神怒に触れ、議場はたちまち混乱に混乱の惨状を現出し四離滅裂の苦き経験を嘗めたり。いまより吾らは諸神人とともに、悔悟して世界平和のため誠心誠意をもつて終始せざる可らず。今日までの二回の会議は怪事頻々として湧起り、一つも決定にいたらずして幕を閉ぢたり。これ全く神慮に叶はざるがための結果に外ならざれば、今より改めて神聖なる会議を神助の下に開かむ』 と宣示し、諸神人は拍手して八王大神の宣示を迎へたり。 このとき、天井には微妙の音楽聞え、天男天女は天の羽衣を春風に靡びかせながら、舞ひ遊び、以前のすさまじき猛虎、悪狐、獅子の咆哮、怒号の悪声や、天の鳥船の轟き渡る示威的光景に比ぶれば、天地霄壤の差あることを覚えしめける。 (大正一〇・一二・一七旧一一・一九出口瑞月) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 12 横紙破り | 第一二章横紙破り〔一六二〕 常世城の大広間の中央の高座には、八王大神常世彦泰然として現はれ、ふたたび神界永遠の平和確立のため、八王神の聖職を撤廃し、神人各自の武装を除却すべきことを提案したり。 大自在天大国彦の重臣なる大鷹別[※これ以前は「大鷹彦」と呼ばれていたが、ここ以降は「大鷹別」という名前で呼ばれている。]は、登壇するや否や満場の諸神司に向つて、八王大神の提案にたいし、縷々数万言を費やしてその提案を称讃し、かつ、 『かくのごとき事理明白なる天来の福音にたいして、異議をはさむ神司ありとせば、我らは神界平和の攪乱者としてこれを排斥せざる可らず。諸神司はいづれも公明正大にして、天下の平和を心底より好愛さるる仁義の方々なれば、八王大神の大慈眼の発露ともいふべき今回の提案に対しては、満場一致もつて本会議の大目的を達成すべく努力されむは必定なりと、吾々は堅く信じて疑はざる次第なり。願はくば賢明なる諸神司の一致的賛成を世界平和のために熱望して止まざる次第なり』 と頭上より大風呂敷をかぶせ有無を言はせず、一瀉千里の勢を以てこの議案を疾風迅雷耳を覆ふに暇なく通過せしめむとしたり。 列座の諸神司はまたもや乱暴極まる議案の提出と、大鷹別の強要的弁舌に不快の念をおこし満場寂として、一柱の立つて応答弁駁するものなく、いづれもその突飛なる提案に呆れ果て面上にも、形容しがたき不安と公憤の色ただよひぬ。中には隣席の神司と眼と眼を見合せ、その横暴に舌をまくものもありける。常世彦をはじめ、大国彦は苦虫を噛み潰したる如き六ケしき面構へを高座に曝して、形勢いかんと固唾を呑み手に汗を握りて、何人かの発言を、もどかしげに待ちゐたり。 このとき天山の八王斎代彦は八王大神にむかひ、発言権を求めながら両腕を振りつつ登壇したれば、諸神司の視線は期せずしてその一身に集注したり。 斎代彦は壇上に現はれ咳一咳し、右の手の掌をもつて鼻先を左より右に擦りあげ、そのまま右の眼瞼から眼尻にかけてツルリと撫で次で、洟を右の手の甲にてかみ、ただちに右の乳の下あたりの着衣に無造作に拭きとり、上唇を山形に人中の下に押し上げ配列不整なる赤黒き歯を剥きだし、平素得意の能弁を活用するはいまこの時なり、との誇りを面に遺憾なく表白したりける。元来斎代彦は磊落不覊の勇者なり。八王大神の大勢力も大自在天の権勢力も彼にとつては放屁の一つとも思ひをらず。またもや鼻をこすり上げ眼を撫で洟をかみ、その手を乳の方で拭ひながら、雷声を発していふ。 『元来八王大神かれ何ものぞ、大自在天とは彼れ果して何ものぞ。そもそも狐ン怪の屁和怪疑なるものは、天地神明の大御心に出でたるものに非ずして、神にあらざる神の発企に成れるものなれば、我らをはじめ諸神司は、互にその蘊蓄をかたむけて各自の意見を吐露し正邪理非の根本を討覈し、和衷協同して、もつて世界永遠平和の基礎を確立せざるべからず。しかるに何ンぞや、八王大神の強要的宣示といひ、大自在天の部下なる大鷹別の傍若無人の強圧的暴言といひ、殆ンど巨石を以て頭上を打ち砕くに等しき、その言辞論説の横暴無道なる、どこに和親協同の精神がある。平和を懇望するの至誠果していづれにあるや。諸神司よ柔順と隠忍と盲従とは決して平和を招来するものに非ず、諸神司は本会議に対しては、無限絶対的の権能あり、しかるに何を苦しみてか諸神司らは斯かる大問題に対して沈黙を守らるるや。諺にいふ、出る杭は打たれ、喬木は風にもまる、如かず退いて我身の安全を守らむ、とするに如かずと卑怯の精神に抑圧されたまふに非ずや、左もなくば八王大神ごとき神司の勢力に恐怖されしに非ずや。八王大神も神司なれば、諸神司もまた同様なり、大自在天の権威にして、いかに強大不可犯の趣きあるごとく見ゆるとも、宇宙の大元霊たる大国治立命の、無限絶対の神威と慈心に比ぶれば、象にたいする蚤の比較にも如かず。我らは大神の厳命にしたがひ、天山の八王として神明の示教を奉戴し、普く神人を教化し扶掖す。これにたいして虱にも比べがたき微々たる八王大神、または大自在天を恐るるの理由あらむや。我らの王は生ける真正の独一神なり。諸神司よ、宇宙はいかに広大にして無辺なりといへども、畏るべく、信ずべく、親しむべく、愛すべきものは真誠の活ける神ただ一柱あるのみ、何ンぞ八王大神らの頤使に盲従し、以て真正の神の聖慮に背かむや。諸神司よろしく自己の天授的聖職の神聖不可犯なる理由を反省され、神にあらざる神の圧制的宣示に盲従すること勿れ。大宇宙にはただ独一の真神なる大国治立命ゐますのみ。しかるに常世彦はみづから称して、王の王たらむとし、八王大神と称す、真正の神ならぬ身として八王大神とは僣上至極、天地容れざるの大逆罪なり。我は今より八王大神に尊称を奉らむ、即ち八王のおは八頭八尾の大蛇の尾にして、大神を台陣と敬称せむ、諸神司の賛否いかん』 と弁舌水の流るるごとく説き去り説き来つて、平然として一座を見渡したり。満座の神司らは斎代彦の痛快なる演説に溜飲を下げ、元気は頓に加はり、各自肩のそびゆるを覚えざる程なりき。八王大神の部下の邪神は喧々囂々として嘲罵し咆哮し、この演説を極力妨害せむとせしに、斎代彦はそれらの妨害も嘲笑も馬耳東風と聞きながし、滔々として所信を述べ了り、右手をもつて鼻と目をこすり、最後に着衣の袖にて洟の手を拭ひながら悠々として降壇し自席に着きにける。 (大正一〇・一二・一八旧一一・二〇出口瑞月) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 20 長者の態度 | 第二〇章長者の態度〔一七〇〕 森鷹彦の峻烈なる攻撃演説と、猿田姫の流暢なる水も漏さぬ歌意とによつて、並居る満場の諸神司はややその本心に立復り神威の畏るべく、神律の儼として犯すべからざるを今さらの如く自覚し、神人らは以心伝心的に八王大神らの今回の言動の信憑すべからざるを固く知了したるごとき形勢は、会場の各所に漂ひける。この形勢を目敏くも見てとりし八王大神は、ヤオラ身を起して演壇の前に立ち現はれたり。 さて八王大神常世彦は頭髪長く背後に垂れ、身躯長大にして色白く、眼清く、眉正しく鼻は高からず低からず、骨格逞しうして神格あり、何処となく長者たり頭領たるの権威自然に備はり、諸神人の猛烈なる攻撃も嘲罵も、少しも意に介せざるがごとく、如何なる強敵の襲来も、たとへば鋼鉄艦に蝶々の襲撃したるごとき態度にて悠々せまらず、光風霽月の暢気さを惟神に発揮しゐたりけり。かくのごとき神格者の八王大神も、少しく心中に欲望の念萠さむか、たちまち体主霊従的行動を敢行して憚らぬまで神格一変したりしなり。心に一点の欲望おこるや、宇宙間に充満せる邪神は、その虚に乗じて体内に侵入し、ただちにその神格をして変化せしめ、悪心欲望をますます増長せしめむとするものなり。ゆゑに八王大神も常世姫も、天授の精魂体内を完全に支配するときは、じつに智仁勇兼備し且つ至聖至直の神格者となり得る人物なり。邪神の憑依せしときの二人は、俄然狂暴となり、時に由つては意外の卑怯者と変ずることあり。如何に善良なる神人といへども、その心中に空虚あり、執着あり、欲望あるときは直様邪神の容器となる。実に恐るべきは心の持方なりける。これに反し、至誠一貫わづかの執着心も欲望もなき神人は、いかなる場合にも恐怖し嗟嘆し失望することなく、行成彦のごとく、敵城にありながら少しも恐れず滔々として所信を述べ、その目的の達成に努力を吝まず、その使命を完全に遂行することを得るものなり。 常世彦は悠々せまらず静かに壇上に行儀正しく佇立し、温顔に溢るるばかりの笑を湛へて両手を揃へて卓上におき、ややうつむき気味になりて、諸神人の面上を見るごとく見ざるごとく、諄々として口演を始めたり。 『あゝ満場の諸神司ら、吾が最も敬愛するところの八王をはじめ、慈愛と正義の権化とも称ふべき神人らの前に、謹ンで吾が胸中に深く永年納めおきたる赤心を吐露し、もつてその同情ある御了解を得て、這般の大会議の目的を世界平和のために達成せむことを、天地の神明に誓ひ、至誠をもつて貫徹せむことを希望する次第であります。そもそも、宇宙の大元霊たる大国治立命の大宇宙を創造し、太陽、太陰、大地および、列星を生み成し洪大無辺の神業を樹て給ひしは、万有一切の生物をして、至安至楽の世に永遠無窮に栄え住はしめ、かつ宇宙の大意志を完全に遂行せしめたまはむが為であります。大神は太陽を造り、これに附するにその霊魂と、霊力と霊体をもつてし、太陽の世界にその守護神を任じたまひ、太陰にも同じくその霊魂と霊力と霊体とを附与して、各自の守護神を定めて、太陽界と太陰界の永遠無窮の保護神として、それぞれの尊き神をして守護せしめたまふ如く、我地上にも大国治立命の分霊をして、これを守護せしめたまふたのであります。これぞ、吾々の日夜尊敬して止まざる大地の主宰たる国治立命であります。賢明にわたらせらるる諸神司の方々は、吾々のごとき愚者の言は、耳を傾くるの価値なきものとして一笑に付して顧みられざるは、当然であらうと思ひます。しかしながら、宇宙一切のものには凡て本末がありますから、幼稚極まる論説でありますが、今日は天地開闢にも比すべき神聖祥徴の大会議でありますから、賢明なる諸神司の特に御承知のこととは存じながら、神の御恩徳を讃美したてまつるために、謹ンで天地根本の大道より説きはじめた次第であります。そもそも我地上の大主宰にまします、国祖の国治立命は、鋭意世界の平和と、進歩発達の聖業を完成せむと、不断の努力を続けさせたまふは、諸神司の熟知さるるところと堅く信じて疑はざる次第であります。国祖は大慈大悲の大御親心を発揮し、神人その他の生物をして各自そのところを得せしめむと、大御心を日夜に砕かせたまふは、吾々は実に何ンとも申上げやうのなき有難きことであつて、その洪恩に報いたてまつり、大神の御子と生れ出でたる地上の万有も、大神の御心を心として、吾々はそれぞれ神のために、最善の努力と奉仕を励まねばならぬのであります。国祖の神は、その御理想を地上に完全に遂行せむがために、ここに国魂の神を祭り、八王、八頭を配置し、もつて神政の完成を企図したまひしことは、諸神司も御承知のことと思ふのであります。しかるに、現今世界の状況をつらつら思考するに、賢明なる八王、八頭の方々の鋭意心力を尽して治めらるる各山各地は、いづれも星移り月代りて、次第に綱紀は緩み最早収拾すべからざるに立到つたことは、直接その任に当りたまふ、諸神司らの熟知さるるところでありませう。かくのごとき世界の混乱を放任して、これを修斎せざるは、果して国祖の御聖慮に叶ふものでありませうか、いづれの神司らも、我々としては実に申上げがたき言葉でありますが、これでも、立派に国祖の大御心を奉体されてをらるるのでありませうか。国祖は現代の世界の状況を見て、いかに思召したまふでありませうか。吾々は、深夜ひそかに国祖の神の大御心を推察したてまつるときは、熱涙滂沱として腮辺に伝ふるを覚えざる次第であります。仁慈に富ませたまふ、国祖の神の御聖慮はいかに残念に思召さるるでありませう。一旦神命を下したまひて八王と定めたまひし以上は、その不都合なる神政をおこなふ神司が、万々一ありとしても、神司らの体面を重ンじ、容易にその御意思を表白したまはず、神司らの本心に立復り、神意の神政をおこなふを鶴首して待たせたまふは、必定であらうと思はれます。アヽ国祖は今日の八王らの、優柔不断の行動を見て、日暮ンとして途遠しの御感想をいだき、内心御落涙の悲惨を嘗めたまはぬでありませうか。吾々神人の身をもつて、国祖の大御心を拝察したてまつるは畏れ多きことではありますが、大神は必ずや、各山各地の八王の退隠を、自発的に敢行するのを希望されつつ、心を痛めさせたまはぬでありませうか。諸神司はここにおいて、一つ御熟考を願はねばなりませぬ』 と自発的八王の退隠を慫慂したりける。並ゐる八王、八頭は、国祖を笠にきての堂々たる八王大神の論旨にたいして、一言半句も返す辞なく、羞恥の念にかられて太き息を吐くのみなりける。この時いかがはしけむ、八王大神の顔色俄に蒼白となり、アツ、と叫ンで壇上に打倒れたり。アヽこの結末は如何に治まるならむか。 (大正一〇・一二・二一旧一一・二三出口瑞月) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 23 思ひ奇やその一 | 第二三章思ひ奇やその一〔一七三〕 道彦は神人の推薦によりて、八王大神の衣冠束帯を着用し、ここに偽常世彦となりすましたり。常世姫の意見によりて、立派なる別殿を与へられ、殿中に数多の従者をしたがへて収まりかへりゐたり。奸黠なる常世姫は、思ふところありて八王、八頭にたいし八王大神に面会することを許したり。 春日姫、八島姫は、玄関の間に盛装をこらして、八王の病気伺ひにたいし、応接の役にあたりゐたりしが、ここにモスコーの城主道貫彦は病気を見舞ふべく別殿を訪ひたるに、玄関には娘の春日姫が、花のごとき姿を現はしあふるるばかりの愛嬌をたたへて控へをるにぞ、道貫彦は思はず知らず大声を発し、 『また出よつたなア』 と叫びながら、春日姫の顔を穴のあくほど見つめゐたり。春日姫は言葉静かに、 『父上様、おなつかしう存じます』 と叮嚀に頭を下げたるが、その顔には悲喜交々まじり、両眼からは涙さへ滲み出ゐたり。姫は立ちてその手をとり、奥殿に案内せむとするや、道貫彦は驚いてその手を振りはなち、眼を刮と見ひらき、 『油断のならぬ大化物、その手は喰はぬぞ』 と一喝したるに、春日姫は強てその手をとり、親切に奥へ導かむとするを、右手に持てる杖にて春日姫の面上を力かぎりに打据ゑたり。姫は悲鳴をあげてその場に打仆れける。 道貫彦は杖の先にて姫の全身を衝いたり、叩いたりしながら、 『コン畜生、何時までも馬鹿にしてやがる』 と怒り狂ひつつ姫には目もくれず、悠々として杖を曳きながら、奥殿に進み入りぬ。奥殿には八王大神端然として神々に取りまかれ控へゐたり。 道貫彦は叮嚀に敬礼しながら、ふと見上げるとたんに、八王大神の下顎の裏の黒子に気がつき、合点ゆかじと目を円くして見つめてゐたるが、道貫彦は思はず、 『汝は八王大神とは真赤な偽り、先年吾に仕へたる大道別に非ずや。汝不届にもこの常世の国に渡り、神変不思議の魔術をつかひ、畏れ多くも稚桜姫命の第三女常世姫を籠絡し、八王大神と僣越にも自称して、反逆無道の欲望を貫徹せむとし、世界の八王をはじめ、有力なる国魂をここに参集せしめたる、その伎倆や感ずるにあまりあり。されど邪は正に敵しがたく、開会以来の議場の怪を見よ。これ全く国祖大神の御神慮に反し、神明の罰をうけ汝が目的の大望も九分九厘にて幾回ともなく打ち覆され、つひには諸神環視の壇上にて急病を発し、大失態を演じたるに非ずや。かくのごとく覿面なる神罰を蒙むりながら、なほ未だ目ざめず、あくまで反逆心を貫徹せむとし、ふたたび議場に現はれむとするか。われは開会の当日より汝の面体を熟視して疑団晴れざりしが、いま汝に接近してその化けの皮を感知せり。あらそはれぬ証拠は汝が下顎下の黒子を見よ。他神人はいざ知らず、われは汝を宰相として永く使用したれば、如何に隠すとも隠されまじ。また春日姫なるものは汝が魔術によつて現はれたる悪狐の化身なり。われいま玄関口において彼女を打仆しおきたり。さぞ今ごろは彼女が正体を現はし、身体一面に毛を生じ仆れをるならむ。汝もまた或ひはその狐なるやも計りがたし、化の皮を現はしてくれむ』 といふより早く、携へたる杖にて面上目がけて打据ゑむとするや、この時数多の従臣は、 『乱暴者』 と云ひながら、前後左右よりとりまき、その杖をもぎとりにけり。八王大神は目をもつて、神司らに何か合図をなしければ、常世姫はじめ従者は一柱も残らず席を避けたり。 あとには八王大神と道貫彦とただ二柱のみ。ここに八王大神は座を立つて下座に降り、一別以来の挨拶を声低に述べをはり、かつ常世城の一切の秘密および春日姫が、命の真の娘なることを打明け、固く口外せざることを約しける。道貫彦は始めて実の娘なることを悟り、心も心ならず、急ぎこの場を立つて玄関に出たり。 春日姫は少しく面部に負傷しながら、依然として玄関に控へゐる。道貫彦は真の吾が娘なることを覚り、飛びつきて抱へたき心持したれど、大事の前の小事と動く心をみづから制し、目に物言はせながら素知らぬ顔に、この場を立去りにける。 (大正一〇・一二・二三旧一一・二五外山豊二録) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 24 思ひ奇やその二 | 第二四章思ひ奇やその二〔一七四〕 南高山の八王大島別は、八王大神に拝顔せむと玉純彦を従へ、玄関口に現はれたるに、ここには、春日姫、八島姫の二女性が受付兼応接の役にあたりゐたりければ、大島別は二女の姿を見て、呆然として立ちとまり、みづから我が頬をつねり眉毛に唾をつけ、玄関の階段めがけて、 『またもや白狐には非ざるか』 としきりに杖の先にて突き試みけり。玉純彦は声を荒らげ、 『八島の古狐またもや八島姫と身を変じ、吾を誑かさむとするか。ここは立派なる玄関口と見せかけをるも、擬ふかたなき泥田の中、吾が天眼力にてこれを看破せり。速に正体を露はし、尻尾を曲げ降伏するか。さなくば汝春日姫、八島姫と称する悪狐、目に物見せてくれむ』 と言ふより早く、腰の一刀を引きぬき、頭上より梨割りに斬りつけむとしたるに、二女は驚きて体をかはし、そのまま奥殿に走りいり、道彦の前に致つて救ひを乞ひぬ。大島別、玉純彦は二女の後を追ひ杖を打ち揮ひ、長刀を閃かしながら乱入する。 このとき常世姫以下数多の神司は、大いに驚き、各自得物をとつて、前後左右より大島別および玉純彦に打つてかかりぬ。大島別は老身のこととて、たちまち取り押へられ縛されたり。玉純彦はこれを見てますます怒り、獅子奮迅の勢を以て、当るを幸ひ前後左右に斬りまくる。その勢に辟易したる常世姫以下は、倉皇として蜘蛛の子を散らすごとく逃げ散り、姿をかくしたり。後には八王大神高座に八重畳を敷き悠然として、この光景を見守りゐたり。 玉純彦は八王大神にむかひ、 『常世の国の邪神の変化思ひ知れや』 と、またもや打つてかかれば、八王大神は少しも騒がず、玉純彦の利き腕をぐつと握りしめたり。玉純彦は強力の大神につかまれて、その場に顔をしかめて平伏したりけり。八王大神はただちに立つて、大島別の縛を解き、慇懃にその背をなでさすり、四辺をはばかりながら小声になりて、常世城における一切の秘密を物語り、かつ真正の八王大神は急病のため今は九死一生、命旦夕に迫る旨を耳うちし、自分は一旦聾唖痴呆となりゐたる大道別にして春日姫は真の八王道貫彦の娘なること、および八島姫は真の大島別の娘にして、南高山にある八島姫は白狐旭の化身なることを詳細に物語り、かつ今後の議場におけるすべての計画を打合せたり。 大島別、玉純彦は、はじめて疑ひ晴れ、かつ大道別の智謀絶倫なるを感嘆し、二神司は喜び勇みて、その場を退場せむとする時、物蔭より現はれ出でたる八十枉彦は、 『聞く神なしと思ふは、汝ら愚者の不覚、この由、常世姫に報告せむ』 と足早に走り出むとするを、玉純彦はうしろより飛びかかり、長刀を抜き、背部よりただ一刀のもとに斬り付けたれば、八十枉彦は七転八倒、手をもがき足を動かせ、虚空をつかんで脆くも絶命したりける。 ここに八島姫、春日姫は赤き布をもつて八十枉彦の遺骸をつつみ、その上をふたたび白布をもつておほひ、玉純彦の背にしつかとくくりつけたり。 玉純彦は素知らぬ顔にヤツコス気取りにて、大島別の後にしたがひ、六方を踏みながら足音高く城内を面白き歌を唄ひつつ退出したりける。 玉純彦は背の荷物を夜陰にまぎれて、草原の野井戸にひそかに投げ込み、素知らぬ風を装ひゐたり。このことは常世城の何人も知る者なかりしといふ。 (大正一〇・一二・二三旧一一・二五桜井重雄録) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 25 燕返し | 第二五章燕返し〔一七五〕 八王大神は病気まつたく恢復し、ふたたび会議を続行すべきことを八百八十八柱の神司に、常世姫より一々叮嚀に通知したれば、諸神司は先を争ひて大広間に参集し、例のごとく八王大神はじめ常世姫、春日姫、八島姫、その他の常世城の神司らは、中央の高座に、花を飾りたるごとく立派なる姿をあらはしたり。この時行成彦はたちまち登壇して八王大神の急病まつたく癒え、ふたたびこの大切なる会議に出席されたることを、口を極めて慶賀し、諸神司とともに万歳を唱へ、かつ猿田姫、出雲姫、春日姫、八島姫をして祝意を表するため、壇上に、優美にして高尚なる舞曲を演ぜしめたり。四女性の艶麗優美なる姿は、あたかも柳の枝に桜の花を咲かせ、白梅の薫りを添へたるごとくなりけり。頭には金色の烏帽子を戴き、衣服は揃ひの桃色、緋の袴を長くひきずりながら、四女は一度に手拍子、足拍子をそろへて、春の野の草花に蝶の戯むれ飛び交ひ遊ぶごとくなりける。諸神司は、この長閑なる光景に心魂を奪はれ、吾を忘れて眺めゐたり。 行成彦は壇上に立ち、優雅な声調にて謳ひはじめたるが、鶯の春陽に逢ひ谷の戸開いて、白梅の梢に春を謳ひ、鈴虫の秋の野の夕に、涼しき声にて鳴くにも似たる床しき声調に、四辺の空気をたちまち清鮮ならしめたり。 その歌、 『千早振る神の御心かしこみてチーバブリカンヨミコモトカスクミテ 天地四方の国魂やアメツツヨシノコキシタマ 八王の司や八頭ヤツコスヨツカスヨヤツカムロ ももの神たち八百万モモロカムタチヤモヨロヅ 常世の国に神集ひトコヨヨクシイカムツトヒ 虎狼や獅子大蛇トツオオカムヨシスオロミ 鬼も探女も曲津見もオヌモサヨメヨマトツミヨ 伊寄り集ひて村肝のイヨキクルミテムロイコヨ 心の雲を吹き払ひコモトヨコモヨフチハロチ 払ひ清めて神の世のハロチコソメテカムホヨヨ 目出度き光照妙のメロトチフカリテロトオヨ 綾と錦の大御機アヨヨヌスコヨオオムホト 織りて神世のまつりごとオリテカムヨヨマツイコヨ 堅磐常磐にたてよこのカコハトコハイタトヨコヨ 神の任さしの神みたまカムヨヨサイヨカムミトモ 世に出でまして美はしきヨニウテモステウロホスク 栄えみろくの大神のサコエミロクヨオオカムヨ 安けき国を守らむとヨソケシコモヨモモロムト 心めでたき常世国コモトメテトキトコヨクシ うしはぎ坐すとこよひこオソフクイモストコヨホコ とこよの姫の世をなげきトコヨヨホメヨヨヨノゲク ももの千草のあら風にモモヨツクソヨアロコセイ 倒れ苦しむわざはひをトヨレコロスムワロワイヨ 救はむためのもよほしはスクホムトメイモヨホスヨ この天地の開けてゆコヨアメツツヨフロケトヨ ためしあらしのしづまりてトモスアロスヨスヅモリテ 常世の春の常永にトコヨヨホロヨトコスヱイ 千代万世も動きなくトヨヨロヅヨヨヨロギノク 高天原も賑はしくタコオモホロヨヌグホスク 千歳の松の色あせずトツセヨマツヨウロアセズ 枝葉も繁るくはし世にエロホヨスゲリクホスヨイ 立直さむと身を忘れトチノヨソムヨムヨワスリ 家を忘れて朝夕にウヘヨワスレテアソヨベイ 心を尽し身を尽しコモトヨツクイモヨツクイ 四方の雲霧吹払ひヨモヨコモクリホキホロヒ 国治立の大神のクシホロトチヨオオカムヨ いかしき御世を守らむとウカスキムヨヨモモラムト 開きたまひしこの集ひフロキトモイスコヨツドイ 集ひ来たりし行成彦もツドヒコモステユキノリホコモ もろてをあげてこのたびのモロテヨアゲテコヨトヒヨ 常世の彦の御こころにトコヨヨホコヨミコモトイ まつろひまつり常暗のマツロイマツイトコヨミヨ 世をとこしへに照しなむヨヨトコシエイテラスノム 百の神たちみともたちモモヨカムトチミトモトチ 一日も早くかた時もヒツカモホヨクカトトキヨ いと速やかにかたりあひイトスムヨコイカトリアイ けふのつどひをうれしみてケフヨツドイヨウロスミテ むなしく過すことなかれムノスクスゴスコトノコレ 国治立の神のまへクシホロトチヨカムヨミエ 常世の神のうるはしきトコヨヨカムヨウロホスキ 赤き心をうべなひてアコキコモトヨウベノイテ 四方の神人草や木のヨモヨカムフトクサヨコヨ さやぎの声を静めかしサヨギヨコエヨスズメカス 救ひの神とあれませるスクイヨカムヨアレモセル 国治立の神ごころクシホロトチヨカムコモト ただに受けます常世彦トドイウケモストコヨホコ とこよの姫のひらきてしトコヨヨホメヨホロキテス これのもよほしいときよしコレヨモヨホスイトキヨス きよきこころの百の神キヨキコモトヨモモヨカム 八王の神やつはもののヤツコスカムヨツホモヨヨ 猛きうつはをとりのぞきトケキウツホヨトリヨゾキ その根底よりあらためてソヨネトコヨイアロトメテ はやとりのぞき大神にホヨトリヨゾキオオカムイ 叶ひまつれよ松の世のカノイモツリテマツヨヨヨ 神のこころの神ぞ目出度くカムヨコモトヨカムゾメデトキ 松の心の神ぞ目出度けれマツヨコモトヨカムゾメデトケレ』 行成彦は、以前の極力反対的の態度に打つて変り、八王大神賛成の歌を作り、その豹変的態度に諸神司を驚異せしめたり。八王大神は欣然として、無言のまま行成彦の讃美の歌を、耳を澄まして聞き入りぬ。 常世姫は、行成彦の行動に合点ゆかず、首をしきりにかたむけ、思案に暮るるもののごとくなりける。 行成彦の豹変的態度をとりたるは、八王大神の偽物たることを、よく知悉しゐたるが故なり。四柱の女性は満座に一礼し、得もいはれぬ愛嬌を振りまきながら静々と降壇したり。このとき末席より発言権を請求して登壇する神司あり。 これは長白山の八王有国彦にして、その神格は温和にして至誠一貫の神司なり。やや頭の頂に禿を現はし、背丈はスラリと高く、どこともなく威徳具はりて見へけり。いまや行成彦の豹変的歌を聞きて、平素の温柔なる性質にも似合ず、猛然として立上り登壇したるなり。諸神司は彼の顔色のただならざるを見て、その発言のいかんを気遣ひける。彼は口を開いて、 『満座の諸神司よ、吾々は今回の大会議については、許多の疑問胸中に山積せり。第一に泥田の中の失態といひ、同じ姿の女性の続出せる怪といひ、八王大神の急病といひ、森鷹彦の異変といひ、数へきたれば限りなき怪事の続出すること、あたかも妖怪変化の巣窟ともいふべき有様ならずや。しかのみならず聖地ヱルサレムの天使長広宗彦の代理たる行成彦の軟化豹変、燕返しの曲芸的行動の不審千万にして逆睹すべからざるに非ずや。思ふに行成彦も、連日の疲労の結果精神に異状をきたせしにはあらざるか。ただしは前日来議場を攪乱しつつありし邪神悪鬼に憑依され、誑惑されて、その大切なる使命を忘却し、かかる変説改論の醜を演じたるには非ざるか。熟考すればするにつけ腑に落ちぬことのみ、如何にしても、吾らは何処までも疑はざるを得ぬ。要するに、今回の会議は怪より始まりて怪に終るにあらざるか。吾々は国祖国治立命の聖慮に背き、神界の御制定になれる八王神の聖座を撤廃し、野武士的神政を樹立せむとする悪平等主義の、反逆的目的を根底より破壊せむとの、国祖大神の御心に出づる諸神人への厳しき懲戒の鞭を加へさせたまひしものと断ぜざるを得ず。ゆゑに吾々は失礼ながら今日かぎり本会議を脱退せむ。諸神司よろしく吾々の行動をもつて本会議を乱すものとなす勿れ』 と声に力をこめて述べをはり、降壇せむとするや、 『暫く、しばらく』 と大声に呼ばはる神司ありける。 (大正一〇・一二・二三旧一一・二五出口瑞月) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 27 阿鼻叫喚 | 第二七章阿鼻叫喚〔一七七〕 行成彦は、ふたたび立つて壇上に現はれ、さも快活なる面色にて諸神人にむかひ、 『ただ今、高山彦の周密精細なる主張と、賢明仁慈なる常世姫の演説について、諸神人は全会一致をもつて賛成せられたることを、吾々は聖地ヱルサレムの天使長広宗彦の代理として本心より歓迎するものであります。これまつたく諸神人が誠心誠意国祖大神の聖慮を奉戴し、神界の平和を熱望さるる結果と信じて疑ひませぬ。ついてはただ今常世姫は各神人の武装撤廃については、その必要なきを詳論されましたが、私はこの際武装の撤廃を断行したいと思ひます。諸神人の御感想を承はりたし。賛成の諸神人はすみやかに起立を願ひます』 この提案に対して、満座の神司らは六分まで起立して賛意を表しける。行成彦はこれを見て、 『御承知のごとく、過半数の賛成を得ました。ついては速やかに実行にかかられむことを希望します。武装の撤廃の方法については、竜神はその玉を取り、獅子、虎、熊、狼などの眷属はその羽翼を全廃し、鰐、鯨および海竜はその針毛を撤廃し、白狐は堅き金毛銀毛および鉄毛を撤廃し、中空を翔る鳥族はその咽下の毒嚢を排除せざれば、真正の平和を永遠に維持することはできないと考へます。この件については、まづ第一に常世城の神司らより模範を示されむことを希望します』 と述べ終り、悠々として降壇し、自席につきぬ。常世姫の顔色は、にはかに失望落胆の影浮び出でぬ。八王大神は莞爾として高座に控へ、操り人形のやうに首を上下に振り、賛成の意を形容に表しゐたりける。 この様子を見たる常世姫、大鷹別一派の神司らは歯噛みをなして口惜しがりたれど、議場内の形勢は如何ともするに由なかりける。 このとき、森鷹彦は両肱を張り、拳固を固め勢よく登壇し、満座の壇上にてその正体を露はし、巨大なる獅子となり、矢庭に右の手をもつて左の羽翼をメリメリとむしりとり、壇下の神人の前に投げ捨てたり。今度は左手を背中にまはして、右の羽翼を顔をしかめながら又もやメリメリとむしりとり、その羽翼を口にくはへ、壇下を目がけて山岳も崩るるばかりの唸り声を立て巨眼を光らせ、雄叫びしぬ。神人らの顔色はサツと変りぬ。 このとき、春日姫とともに常世城に逃れゐたる鷹住別は、立つて壇上にのぼり、 『アヽ諸神人よ、言説よりも実行をもつて第一とす。神人は言心行一致をもつて精神とす。貴下らは国祖大神より神人の神格を賜ふ。この場に臨みて女々しく躊躇逡巡するは決して名誉ある神人の度量に非ざるべし。まづ常世城より実行されむことを希望す。常世城の神人にしてモスコーの従臣森鷹彦に倣はずば、吾々は進ンで諸神人の武装を排除し奉らむ。八王大神においては御異存ありや』 と向き直りて問ひつめたり。 八王大神はさも愉快さうなる面色にて首を上下にしきりに振り、大賛成の意を表したり。常世姫は憂ひ悲しみ、内心狼狽の色面に表はれたり。行成彦は満座の諸神人にむかひ、 『諸神人よ、一斉に本城の神人らの屯所に出張し、武装撤回を監督されよ』 と、さも得意気に命令的に述べ立てたり。 血気にはやる神人はまづ自分の羽翼を除り、あるひは牙を抜き、その場に投棄し、猛然として神人らの駐屯所に侵入したり。しばらくあつて、叫喚の声、咆吼怒号の雷声は城内に響き渡りける。八王大神はこの声に驚き、病躯を提げ壇上に馳せ上り、武装撤回中止を厳命したり。森鷹彦は巨大なる獅子に還元したるまま眼を怒らせ、牙を立て八王大神目がけて飛びかからむとする猛勢を示し、ときどき雷のごとく咆吼し、八王大神を威喝しつつありける。神人らは自席より口々に、 『偽八王大神を引ずり落せ。今となつて、卑怯未練に諸神人の決議を無視するは、吾々を侮辱するの甚だしきものなり。現に常世城の城主八王大神の黙許を得たり。何れの痴漢ぞ、速やかに退去せよ』 と口をそろへて呶鳴り立てたり。 森鷹彦の獅子はまたもや後来の八王大神に向つて唸り立てたれば、場内はあたかも戦場のごとく修羅道のごとき光景とたちまち変じたりける。このとき三猿主義をとつて壇上に控へたる聾唖痴呆と思ひし道彦の偽八王大神は、猛然として立ち上り、満座を一瞥し、 『ただ今これに控へたるは八王大神と称すれども、彼は容貌吾に似たりといへども、その実はモスコーの八王に仕へたる道彦といふ発狂者なり。諸神人はかかる発狂者の言に耳をかたむけず、すみやかに武装撤回を断行されよ』 と言ひければ、真正の八王大神は歯噛みをなして口惜しがれど、身から出た錆の如何ともするに由なく、主客顛倒したるこの大勢を挽回することは到底不可能なりける。このとき八王大神は猫に出会ひし鼠のごとく、萎縮して何処ともなく姿をかくしたり。常世姫の影は忽然として消え失せたり。神人らの叫喚の声は実に物凄く、寂寥身に迫り、聞く者をして肌に粟を生ぜしむるにいたりける。 たちまち天の一方より峻烈骨を裂くごとき寒風吹ききたるよと見る間に、王仁の身は高所より深き谷間に顛落したりけるより、目を開けば、身は高熊山の岩窟に寒風にさらされて横様に倒れゐたりける。 (大正一〇・一二・二四旧一一・二六桜井重雄録) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 35 頭上の冷水 | 第三五章頭上の冷水〔一八五〕 聖地ヱルサレムは桃上彦命の失政により、ふたたび混乱紛糾をかさね、日向に氷の解くるがごとく、日に月に衰滅に傾ききたり。国祖大神はあたかも手足をもぎとられし蟹のごとく、進退きはまり如何ともなしたまふ術なかりける。各山各地の八王はふたたび常世城に集まり、聖地の回復を首をあつめて凝議するの止むなきに至りける。 このとき聖地より常世姫の使臣として広若、鬼若の二人は、天の鳥船に乗りて下り来りけるに、八王神常世彦は、ただちに使臣を一室にみちびき来意をたづねたり。二人は聖地の惨状目も当てられず、このままに放任せむか、聖地は滅亡するの外なきことを詳細に述べたてたり。 天授の本心に立帰り、本守護神の活動全く、至善至美の善神と改まりゐたる常世彦も、このとき一種の不安を感じ、天を仰いで嗟嘆の声を漏らしける。この虚を狙ひゐたる八頭八尾の大蛇の霊は、頭上よりカラカラと打ち笑ひ、 『小心者よ卑怯者よ、汝のごとき弱虫にては常世城はおろか、聖地の救援を焦慮するも何の力量かあらむ。汝すみやかに本心に立帰り、荒魂の勇を振りおこし、奇魂の覚を開き、くだらぬことに煩慮するよりも男らしく何ゆゑに勇猛心を発揮せざるか、自信と断行力なき者は蛆虫も同様なり。すみやかに大勇猛心を振りおこし、快刀乱麻を断るの壮烈なる神業を敢行せよ。吾こそは日の稚宮に坐す日の大神の神使なり、夢々疑ふなかれ』 といふかと見れば、その声はバタリと止まりにける。八王神は青息吐息の体にて両手を組み、奥殿に安坐してその処置につき千思万慮を費しゐる折しも、ふたたび天空に声あり、 『吾は大国治立命なり。国治立命は今や窮地におちいり、非常なる苦境にあり。汝は神業に奉仕する神聖なる職を奉じながら、かかる危急存亡の場合何を苦しみて躊躇逡巡するや。有名無実とは汝がことなり。すみやかに奮ひ起て、世の中に恐るるものは神より外になし。一つも憂慮することなく各地の八王神と語らひ、すみやかに聖地ヱルサレムに馳せつけよ。神は汝に添ひて守らむ』 と声高らかに呼び終り、またもや鬼の声はバツタリと止まりぬ。 常世彦は五里霧中に彷徨しながら、大慈大悲の国祖大神の窮状を耳にして之を坐視するに忍びず、断然意を決して神人の集へる大会議場に出席し、大国治立命および外一神の宣示を諸神人に告げ決心を促したりける。しかしてこの大国治立命と称するは全く偽神にして、大自在天を守護する六面八臂の鬼なりにける。 数多の八王は常世彦の言を聞きて、聖地を思ふのあまり、前後の分別もなく、またその声の正神の言なるや、邪神の言なるやを考慮する暇もなく、異口同音に常世彦の言に賛成したり。ここにおいて常世彦は誠心誠意聖地を救ふべく、八王とともに天の磐樟船に乗りて天空を轟かしつつ聖地ヱルサレムに安着したりける。 桃上彦命は八王の翼を連ねて下りきたれるその光景に胆をつぶし、 『常世彦またもや悪心を起し、この聖地を占領し、みづから代りて国祖の地位までも占領せむとする反逆の行為にきはまつたり。聖地の神人らはただちに武装を整へ、彼ら反逆者を殲滅せよ』 と声を涸らして号令したれど聖地の神人らはその勢力の優勢なるに胆を潰し或は腰を抜かし、猫に逐はれし鼠の如く各自身の安全を計りて逃げ出すもあり、隠るるもあり、一柱として桃上彦命の命令に服従するもの無かりけり。桃上彦命は周章狼狽して大宮殿に進みいり、国祖大神に謁し、 『常世彦反逆を企て、数多の八王その他の神人を率ゐて短兵急に攻め寄せたり、いかに取計らはむや』 と進言したるに、国祖大神は奮然として立ちあがり、 『事ここにいたりし原因は汝が律法を破壊し、放縦不軌の行動を執りし報いなれば、一時も早く天に向つて罪を謝し、ただちに職を退き至誠を表白せよ』 と厳重に言ひわたし、そのまま奥殿深く入らせたまひぬ。桃上彦命は何とせむ方なく、涙にくれ悄然として宮殿を立ち出で吾が居館に帰らむとする時、常世姫は春日姫、八島姫とともに礼装を凝らして入りきたり、 『八王大神聖地の混乱を坐視するに忍びず、あまたの神人とともに聖地を救はむがために参向したり。天使長はすみやかにこの次第を国祖大神に進言されたし』 と言葉も淑やかに述べ立つるにぞ、桃上彦命はふたたび宮殿に参向し襖の外より国祖大神にこの次第を進言せむとし悲痛なる声を絞りながら一言奏上せむとするや、大神は中よりただ一言、 『神の言葉に二言なし、速に天地にむかつて汝が罪を謝せ、再び吾が前に来る勿れ』 と厳格なる御言葉をもつて宣はせたまひければ、桃上彦命は是非なく宮殿を下り、面に憂鬱の色をうかべながら再び吾が居館に帰りける。 (大正一〇・一二・二五旧一一・二七加藤明子録) (第三一章~三五章昭和一〇・一・二二於久留米市布屋旅館王仁校正) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 39 常世の暗 | 第三九章常世の暗〔一八九〕 聖地ヱルサレムの天使長常世彦命には、高月彦誕生して追々と成長し、父を輔けて、その勲功もつとも多く、かつ天使長の声望天下に雷のごとく轟き、その善政を謳歌せざるもの無く、一時は実に天下泰平の祥代となりける。 しかるに油断は大敵すこしにても間隙あらむか、宇宙に充満せる邪神の霊はたちまち襲ひきたりて、或は心魂に或は身体にたいして禍害を加へ、またはその良心を汚し曇らせ、つひにはそのものの身体および霊魂を容器として、悪心をおこし悪行を遂行せしめむと付け狙ふに至るものなり。 大本神諭にも、 『悪魔は絶えず人の身魂を付け狙ひ居るものなれば、抜刀の中に居る心持にて居らざる時は、いつ悪魔にその身魂を自由自在に玩弄物にせらるるや知れず。ゆゑに人は神の心に立帰りて神を信仰し、すこしも油断あるべからず』 常世彦命は神界の太平にやや安心して、あまたの侍臣とともに竜宮海に舟遊びの宴をもよほすとき、竜宮海の底深く潜みて時を待ちつつありし八頭八尾の大蛇の邪霊は、この時こそと言はむばかりに、その本体を諸神人の前に顕はし、態と神人らの前にて高月彦と変化し、常世彦命の居館に入りこみ神人らを悩めたるなり。 常世彦命はじめ聖地の神人らは、二人の高月彦のうち一人は邪神の変化なることを何れも知悉すれども、その何れを真否と認むること能はざりしために、止むを得ず、同じ姿の二人を居館に住まはせたりける。真の高月彦は、 『我こそは真の高月彦なり、彼は邪神の変化なり』 と證明せむとすれば、邪神の高月彦もまた同じく、 『我こそは真の高月彦なり、彼は邪神の変化なり』 と主張し、その真偽判明せず、やむを得ず二人を立てゐたりける。 この怪しき事実は誰いふともなく神界一般に拡まり伝はり、八王八頭の耳に入り、神人らは聖地の神政に対して、不安と疑念を抱くに至りける。 常世彦命はこのことのみ日夜煩悶し、つひには発病するに立ちいたりぬ。命は妻を枕頭に招き、苦しき病の息をつきながら、 『吾は少しの心の欲望より終に邪神に魅せられて常世国に城塞を構へ、畏くも国祖大神をはじめ歴代の天使長以下の神人らを苦しめ悩ませたるにも拘はらず、仁慈深き国祖は吾らの改心を賞でたまひて、もつたいなき聖地の執権者に任じたまひたれば、吾らは再生の大恩に報いたてまつらむと誠心誠意律法を厳守し、神政に励みて国祖の大神に奉仕せしに、心の何時となく緩みしためか、竜宮海に船を浮べて遊楽せし折しも、海底より邪神現はれて愛児の姿となり、堂々として我館に住み込み、その真偽を判別する能はず、それより吾は如何にもしてその真偽を知らむと、日夜天津大神および国祖大神に祈願を凝らせども、一たん犯せる罪の報いきたりて、心魂暗み天眼通力を失ひ、かつ、それより我身体の各所に痛みを覚え、今やかくのごとく重態に陥りたるも深き罪障の報いなれば、汝らは吾が身の悲惨なる果を見て一日も早く悔い改め、寸毫といへども悪心非行を発起すべからず』 と遺言して眠るがごとく帰幽したりける。鳥の将に死なむとするや其の声悲し、人の将に死せむとする時その言や善しと。宜なるかな、さしも一旦暴威をふるひたる常世彦命も本心より省み、その邪心を恥ぢ、非行を悔い神憲の儼として犯すべからざるを畏れ、天地の大道たる死生、往来、因果の理法を覚りて身魂まつたく清まり、神助のもとに安々と眠るがごとく帰幽したりける。アヽ畏るべきは心の持ちかた一つなりける。 常世彦命の昇天せしより、聖地の神人らは急使を四方に派して、各山各地の八王をはじめ一般の守護職にたいして報告を発したれば、万寿山をはじめ八百万の神人は、この凶報に驚き我一と先を争ひて聖地に蝟集しその昇天を悲しみつつ、後任者の一日も早く確定せむことを熱望し、ここにヱルサレム城の大広間に会したり。常世彦命の長子高月彦を天使長に選定し、国祖大神の認許を奏請せむとするや、天下に喧伝されしごとく、二人の高月彦あらはれ来たりぬ。 諸神司はその真偽について判別に苦しみ、七日七夜大広間に会議をつづけたれど、いかにしても前後と正邪の区別つかざるところまで克く変化しゐたるにぞ、真偽二人の天使長を戴くことを得ず、神人らは五里霧中に彷徨しつつ、その怪事実に悩まされけり。 高月彦は大広間に現はれ竜宮海に潜める邪神大蛇の変より、父の昇天までの種々聖地の怪を述べ且つ、 『吾身に蔭のごとく附随せるは、かの大蛇の変化なることを證明すべきことあり。諸神人はこれにて真偽を悟られたし。吾には父より賜はりし守袋あり、これを見られよ』 と満座の前に差出し、偽高月彦の邪神にむかひ、 『汝が果して真なれば、父より守袋を授けられし筈なり、今ここにその守袋を取出して、その偽神にあらざることを證明せられよ』 と詰め寄れば、邪神はたちまち色を変じ、何の返答もなく物をもいはず、真の高月彦に噛付かむとする一刹那、たちまち「惟神霊幸倍坐世」の神言が自然に口より迸出したるにぞ、偽神はたちまちその神言の威徳に正体を現はし、 『アヽ残念至極口惜さよ。我は永年この聖地を根底より顛覆せむと、海底に沈みて時を待ち、つひに高月彦と変化し、聖地の攪乱に全力を尽したりしに、高月彦の神言によりてその化けの皮を脱がれたれば、いまは是非なし、ふたたび時節を待つてこの怨みを報ぜむ』 と言ふよと見るまに、見るも恐ろしき八頭八尾の大蛇と現はれ叢雲をよびおこし天空をかけりて、遠くその怪姿を西天に没したりけり。高月彦は忽然として立ちあがり、 『諸神司はただいまの邪神の様子を実見して、その真偽を悟りたまひしならむ、吾こそは天使長常世彦命の長子高月彦なり。今後聖地の神政については、諸神司の協力一致して御輔翼あらむことを希望す』 と慇懃に挨拶を述べ終るや否や、たちまち悪寒震慄、顔色急に青ざめ、腹をかかへて苦悶の声を放ちければ、諸神司は驚きて命を扶けその居館に送り、侍者をして叮嚀に看護せしめたり。 この守袋は妹五月姫の計らひにて、俄に思ひつきたるカラクリにして、邪神の正体を現はすための窮策に出たるものなりける。かくのごとき権謀術数を弄するは、神人としてもつとも慎まざるべからざることなり。 また高月彦の急病を発したるは、真正の病気ではなく、命の安心とややその神徳にほこる心の隙に乗じて、西天に姿を隠したる八頭八尾の大蛇の邪霊が、間髪を容るるの暇なきまで速く、その肉体に憑依したる結果なりける。 (大正一〇・一二・二七旧一一・二九外山豊二録) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 43 勧告使 | 第四三章勧告使〔一九三〕 常世彦は我が目的とする、八王大神の称号を国祖大神に迫つて、これを獲得し、旭日昇天の勢をもつて天下の諸神人に臨み、盤古大神を首長と仰ぎ、これをもつて国祖の位置に就かしめむと、内々準備を整へ、諸神人をふたたび常世城に集めて神界改造の相談会を開催したり。大自在天大国彦は、八王大神を極力讃美して、この際一日もはやく国祖の退隠を迫り、塩長彦をして神政神務の総統者に推戴するをもつて、世界救済の一大要点なりと主張したり。 ここに美山彦、国照姫は立つて、大国彦の主張に対しあらゆる讃辞を呈し、かつ、 『国祖大神をして、かくのごとく頑強固陋の神となさしめたるは、前天使長大八洲彦命、言霊別命、神国別命、大足彦および万寿山の頑老、磐樟彦以下の聖地の神人および女性側としては、前天使長高照姫命、真澄姫、言霊姫、竜世姫ら聖地の神司らの一大責任なれば、国祖の退隠に先だち、右の諸神人を聖地より追放し、根底の国に神退ふべきものなり』 と息をはづませ、肩を揺りながら述べ立てたり。 一旦聖地において全く悔い改め、本心に立帰りゐたる至善の神人も、いまは少しの油断のために、邪神の容器となり、いづれも挙つて国祖にたいし反抗の態度を執るにいたりたるは、果して時節の力か、ただしは因縁か、測度しがたきは神界の経緯なり。 神諭に曰く、 『時節には神も叶はぬぞよ』 と、全大宇宙の大主神たる大六合治立尊の御分身にして、宇宙の大主権神たる、国祖国治立命も、時節の力は如何ともすること出来得ざりしなり。至正、至直、至厳の行動は、かへつて多数の神人より蛇蝎のごとく忌嫌はれて、つひには悪神と貶せられ、祟り神と強ひられ、悪鬼の巨頭艮の金神と名称を附して、大地の北東に居所を極限さるるにいたりたまへるも、神界経綸上止むを得ざる次第ならむか。 このたびの常世城の会議は、前回のごとく少しも騒擾紛糾の光景を現出せず、和光同塵、体主霊従的神政を謳歌せる神人(邪霊の憑依せる)のみの集会なりしゆゑ、全会一致をもつて、まづ国治立命をして、大八洲彦命、高照姫命以下の神人を根の国底の国に追放せしめ、その後において、国祖の自発的退隠を迫ることに一決したりける。ついてはその衝にあたるべき神司の選挙をなさざるべからざれば、ふたたび自決勧告使たるべき神人を物色したりしが、この時大国彦の重臣大鷹別は進ンで、この大切なる使命は吾々ごとき小人の能く耐ふるところにあらずとし、智徳兼備の八王大神および大自在天の御尽力を乞ふのほかなきを主張したれど、八王大神は何か心に期するところあるもののごとく、首を縦に振らざりけり。その場に威儀儼然としてひかへたる大国彦も、無言のまま首を横に振りゐたりける。美山彦、国照姫は立上がり、 『今回の勧告使は、畏れながら小神に任じられたし』 と切り出しけるに、常世彦も、大国彦も言ひ合はしたるごとく頓首きて、承諾の意を表示したり。 美山彦、国照姫は諸神人の一致的賛成のもとに、意気揚々として勧告使となり、聖地ヱルサレムの宮殿に参向し、国祖に対面せむと、数多の神人を引率して聖地に向け帰途に就きける。 常世彦命はまたもや八王大神の資格をもつて聖地に帰還せむとするに先だち、盤古大神の輔佐として、大国彦の従臣大鷹別をして常世城の主管者に任じ、かつ部下の神人をして、各自に神政を分掌せしめ、八百万の神司を引率して、ヱルサレムを指して旗鼓堂々天地も震撼せむばかりの勢にて、上り来たりぬ。先に勧告使として帰還したる美山彦、国照姫の使命は果して完全に成功せしや疑はしき限りなり。 (大正一〇・一二・二九旧一二・一出口瑞月) (第三六章~第四三章昭和一〇・一・二二於佐賀市松本忠左氏邸王仁校正) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 47 神示の宇宙その二 | 第四七章神示の宇宙その二〔一九七〕 前節に述べたるところを補ふために、更に少しく断片的に説明を加へ置くべし。併し自分の宇宙観は凡て神示の儘なれば、現代の天文学と如何なる交渉を有するや否やは全然自分の関知するところにあらず。 自分は神示に接してより二十四年間、殆ど全く世界の出版物その物から絶縁し居たり。随つて現在の天文学が如何なる程度にまで進歩発達しゐるかは無論知らざるなり。故に自分の述ぶる宇宙観に対して、直ちに現代の天文学的知識を以て臨むとも、俄に首肯し難き点少なからざるべし。 前節に引続き太陽のことより順次述ぶる事とせり。 太陽は暗体にして、太陽の色が白色を加へたる如き赤色に見ゆるは、水が光り居るが故なり。暗夜に赤布と白布とを比較して見れば白布の方がハツキリ見ゆるものなり。これに依りて見るも水の光りゐることが判じ得るなり。 大宇宙間の各小宇宙は互に牽引してゐるものにして、それと同じく太陽がその位置を支持するは諸星の牽引力によるものなり。故に天主は太陽を支持する為に先づ諸星辰を造りたり。(第一篇天地剖判の章参照) 太陽と我が地球との距離は、小宇宙の直径五十六億七千万里の八分の一に当り、而て大空の諸星は皆それ自体の光を放ちつつ太陽の高さ以上の位置を占めゐるなり。太陽の光は、決して大空に向つては放射されず、恰も懐中電燈の如く、凡て大地に向つてのみ放射さるるなり。 普通我々は太陽の昇る方角を東としてゐるが、本来宇宙それ自体より言へば、東西南北の別なし。仏説に、 『本来無東西何処有南北』 とあるも、この理に由る。今、東西南北の区別を立つれば、大地の中心たる地球が北極に当る。北とは気垂、水火垂、呼吸垂、の意なり。南とは皆見えるといふ意味の言霊なり。 地球は前述の如く、世の学者らの信ずる如き円球にあらずして地平なり。我々の所謂地球は、大地の中心なる極めて一小部分にて、大地は第一図に示す如く、悉く氷山なり。而て其の氷山は所謂地球を相距る程愈嶮峻になり行く。普通氷山の解けるといふことは、地球の中央に接近せる氷山の解けるのみにして、大部分の氷山は決して解くることはなきものなり。 地球説の一つの証拠として、人が海岸に立ちて沖へ行く舟を眺める場合に、船が段々沖へ行くに従つて、最初は船体を没し、次第に檣を没して行くといふ事実を挙げられるやうだが、それは我々の眼球がすでに円球に造られてあるが故である。望遠鏡は凹鏡であるから、人間の瞳との関係で、遠方が見えるのである。故に地球説を固執する人々は先づ人間の眼球そのものの研究より始めねばなるまい。 地球は又一種の光輝を有し、暗体ではない。 宇宙全体の上に最も重大なる役目を有するのは、太陰即ち月である。太陽の恩恵によつて万物の生成化育し行くことは誰でも知つてゐるが、蔽はれたる月の洪大無辺なる恩恵を知る者は殆ど全く無い。 宇宙の万物は、この月の運行に、微妙にして且つ重大なる関係を有つてゐる。月は二十九日余即ち普通の一月で、中空を一周する。但し、自転的運行をするのではなく、単に同一の姿勢を保つて運行するに過ぎない。大空に於ける月の位置が、たとへば月の三日には甲天に、四日には乙天と順次に変つて行くのは、月が静止してゐるのでなくして西より東に向つて運行してゐる證拠である。 月が我々の眼に見えるのは、第一図の上線を月が運行してゐる場合で、下線を通過してゐる時は全然我々には見えない。月が上線を運行する時は、月読命の活動であり、下線を運行する時は素盞嗚尊の活動である。 次に月を眺めて第一に起る疑問は、あの月面の模様である。昔から猿と兎が餅を搗いてゐるといはれるあの模様は、我々の所謂五大洲の影が月面に映つてゐるのである。それ故、何時も同じ模様が見えてゐる。蝕けた月の半面に朧げな影が見えるのは、月それ自体の影である。つまり月の半面たる火球の部分が見えてゐるからである。 月蝕の起るは、月が背後から太陽に直射された場合である。日蝕は、月が太陽と地球との中間に入つて、太陽を遮ぎつた場合である。 銀河は、太陽の光が大地の氷山に放射され、それが又大空に反射して、大空に在る無数の暗星が其の反射の光によつて我々の眼に見えるのである。銀河の外椽に凸凹あるは氷山の高低に凸凹あるが為めである。 又彗星は大虚空を運行し時に大地より眺められる。大虚空とは此の小宇宙の圏外を称するので、青色を呈してゐる。大空の色は緑色である。併し、我々は大空の色のみならず、青色の大虚空をも共に通して見るが故に、碧色に見えるのである。 此の小宇宙を外より見れば、大空は大地よりはずつと薄き紫、赤、青等各色の霊衣を以て覆はれ、大地は黄、浅黄、白等各色の厚き霊衣を以て包まれてゐる。そしてこの宇宙を全体として見る時は紫色を呈してゐる。これを顕国の御玉といふ。 わが小宇宙はこれを中心として他の諸宇宙と、夫れ夫れ霊線を以て蜘蛛の巣の如く四方八方に連絡し相通じてゐるのであつて、それらの宇宙にも、殆ど我々の地球上の人間や動植物と同じ様なものが生息してゐない。但此の我が小宇宙に於ける、地球以外の星には神々は坐ませども、地球上に棲息する如き生物は断じてゐない。この小宇宙と他の宇宙との関係を図によりて示せば、第五図の如くである。 [#図第五図大宇宙の図] (大正一〇・一二・一五旧一一・一七桜井重雄録) |
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霊界物語 | 04_卯_常世会議/国祖隠退/神示の宇宙 | 48 神示の宇宙その三 | 第四八章神示の宇宙その三〔一九八〕 王仁は前席に於て、太陽は暗体であつて、其の実質は少しも光輝を有せぬと言ひ、また地球は光体であると言つた事に就き、早速疑問が続出しましたから、念のために茲に改めて火と水との関係を解説しておきます。されど元来の無学者で、草深き山奥の生活を続け、且つ神界よりの厳命で、明治以後の新学問を研究する事を禁じられ、恰も里の仙人の境遇に二十四年間を費したものでありますから、今日の学界の研究が何の点まで進ンで居るかと云ふ事は、私には全然見当が付かない。日進月歩の世の中に於て、二十四年間読書界と絶縁して居たものの口から吐き出すのですから、時世に遅れるのは誰が考へても至当の事であります。昔話にある、浦島子が龍宮から帰つて来た時の様に世の中の学界の進歩は急速であつて、私が今日新なる天文、地文、その他の学問を見ましたならば、嘸驚異の念にからるるで在らうと思ひます。併し私としては今日の科学の圏外に立ち、神示のままの実験的物語をする迄です。 『神ながら虚空の外に身をおきて日に夜に月ぬものがたりする』現代文明の空気に触れた学者の耳には到底這入らないのみならず、一種の誇大妄想狂と見らるるかも知れませぬ、然れど『神は賢きもの、強きものにあらはさずして、愚なるもの、弱きものに誠をあらはし玉ふ』と言へる聖キリストの言を信じ、愚弱なる私に真の神は、宇宙の真理を開示されたのでは無からうかとも思はれるのであります。 凡て水は白いものであつて、光の元素である。水の中心には、一つのゝがあつて、水を自由に流動させる。若しこのゝが水の中心から脱出した時は固く凝つて氷となり、少しも流動せない。故に水からゝの脱出したのを、氷と云ひ、又は、氷と云ふ。火もまたその中心に水なき時は、火は燃え、且つ光る事は出来ぬ。要するに水を動かすものは火であり、火を動かすものは水である。故に、一片の水気も含まぬ物体は、どうしても燃えない。 太陽もその中心に、水球より水を適度に注入して、天空に燃えて光を放射し、大地はまた、氷山や水の自然の光を地中の火球より調節して、その自体の光を適度に発射して居る。 次に諸星の運行に、大変な遅速のある様に地上から見えるのは、地上より見て星の位置に、遠近、高低の差あるより、一方には急速に運行する如く見え、一方には遅く運行する様に見えるのである。が、概して大地に近く、低き星は速く見え、遠く高き星はその運行が遅い様に見える。 例へば、汽車の進行中、車窓を開いて遠近の山を眺めると、近い処にある山は、急速度に汽車と反対の方向に走る如く見え、遠方にある山は、依然として動かない様に見え又その反対の方向に走つても、極めて遅く見ゆると同一の理である。 前述の如く、太陰(月)は、太陽と大地の中間に、一定の軌道を採つて公行し、三角星、三ツ星、スバル星、北斗星の牽引力に由つて、中空にその位置を保つて公行して居る。月と是等の星の間には、月を中心として、恰も交感神経系統の如うに、一種の微妙なる霊線を以て、維持されてある。 太陽と、大空の諸星との関係も亦同様に太陽を中心として、交感神経系統の如うに一種微妙の霊線を以て保維され、動、静、解、凝、引、弛、合、分の八大神力の、適度の調節に由つて、同位置に安定しながら、小自動傾斜と、大自動傾斜を永遠に続けて、太陽自体の呼吸作用を営ンで居る。 大地も亦その中心の地球をして、諸汐球との連絡を保ち、火水の調節によつて呼吸作用を営み居る事は、太陽と同様である。地球を中心として、地中の諸汐球は、交感神経系統の如く微妙なる霊線を通じて、地球の安定を保維して居る。 また地球面を大地の北極と云ふ意味は、キタとは、前述の如く、火水垂ると云ふことであつて、第六図の如く、(挿図参照)太陽の水火と、大地の中心の水火と、大地上の四方の氷山の水火と、太陰の水火の垂下したる中心の意味である。 [#図第六図地球の平面図] 人間が地球の陸地に出生して活動するのを、水火定と云ふ。故に地球は生物の安住所であり、活動経綸場である。また水火即ち霊体分離して所謂死亡するのを、身枯留、水枯定と云ふのは、火水の調節の破れた時の意であります。されど霊魂上より見る時は生なく、死なく、老幼の区別なく、万劫末代生通しであつて、霊魂即ち吾人の本守護神から見れば、単にその容器を代へるまでであります。 (大正一〇・一二・二七旧一一・二九加藤明子録) |