| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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41 (3008) |
霊界物語 | 68_未_タラハン国の国政改革2 | 総説 | 総説 本巻は前巻の後をうけて、印度タラハン王国の太子スダルマンを中心とせる、同国の祭政一致の維新に至る波乱重畳たる経路を口述せられたるものにして、太子及旧左守の娘スバール姫の燃ゆるが如き初恋の描写より、太子唯一の寵臣アリナの活躍に依つて、深山の名花はタラハン市の片ほとり、茶の湯の宗匠タルチンが離れ座敷に移植されて、満足せられたる両人の恋の焔は、益々暴威を揮ひて、太子の変装脱出、アリナの身代り太子などの苦肉策は却て滑稽味を帯び、アリナも亦魔の女信夫の毒手に危く翻弄せられむとする折柄、予て特権階級資本家などの横暴に反抗して立てる謎の女バランスの率ゆる民衆団の爆発暴動となり、民衆怨嗟の炎は城下の過半を焼尽し、タラハン城下は阿鼻叫喚の地獄道と急変し、太子はスバール姫と駆落して右守の魔手に捉はれ、大王は城下内外変乱を焦慮して病重態に陥り、アリナの脱走より、右守司サクレンスの大陰謀は此機に其効果を収めむとする時しも、三五教の宣伝使梅公司の出現に仍つて善悪は立別けられ、正邪は各其処を得、大王の国替、太子の即位並に結婚披露、旧左守シャカンナの復活、アリナ、バランスの登庸、大宮山の神殿造営などを主たる問題として、滅亡の淵に瀕せしタラハン王国は、階級打破上下無差別、祭政一致の理想的地上天国と蘇生したる綱領を、恋愛問題、貞操論乃至奇想天外的の滑稽諧謔を以て潤飾せられたる教訓、情味津々として尽きざる神示の物語であります。神意の存する処は何時も乍ら、読者の各自各様に会得せられる事と思ひます。惟神霊幸倍坐世。 大正十四年正月七日新一月三十日於月光閣 |
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42 (3015) |
霊界物語 | 68_未_タラハン国の国政改革2 | 07 茶火酌 | 第七章茶火酌〔一七三一〕 向日の森の片辺に住む茶湯の宗匠タルチンは、思はぬ福の神の御来臨と笑壺に入り、茶室は太子とスバールの自由歓楽場となし、スバール姫に茶の湯を教へると云ふのはホンの表向、実は両人の恋を完成せむ為アリナに頼まれて沢山の心付を貰ひ、ホクホクもので天下太平を謳つてゐる。彼は中庭を隔てた古ぼけた母屋の一室に胡坐をかき乍ら、大布袋然たる女房の「ふくろ」と共に酒汲み交し舌鼓を打ち乍ら、 タルチン『オイ、袋、人間の運と云ふものは不思議なものぢやないか。俺等も親の代から茶湯の宗匠として彼方此方の大家に御贔屓になり、僅に家名を継いで来たが、世の不景気につれ大家の盆正月の下されものも段々と少くなり、頭は禿山となり髭には霜がおき、懐は寒く財布は凩が吹き荒び、爐の炭さへも碌に買へないやうになつてゐたのに、あの弁才天が山奥から御出現遊ばしてより御霊験あらたかになり、畏れ多くもスダルマン太子様までお忍びでお越しになるやうになつたのは何たる幸運の事だらう。まだ運命の神は吾々をお見捨遊ばさぬと見えるわい。のう袋、お前はいつも奴甲斐性なし奴甲斐性なしと俺を罵詈嘲笑なし、お暇を下さいとチヨコチヨコ駄々を捏ねよつたが、どうだお暇をやらうかの』 袋『ヘーヘー、何ですか、たまたまお金が這入つたとて、さうメートルを上げるものぢやありませぬよ。お前さまは仔細らしく茶の湯の宗匠などと云つてすまし込んで厶るが、女房の私から見れば余り立派な人間様ぢやありませぬよ。浮世を三分四厘、四分五裂、五分々々五厘々々に茶化して通る鈍物坊主の夜這星だから、あまり気の利いたらしい事を云はないがよろしい。太子様だつてお忍びの身、何時化が現はれて城内から呼び戻されなさるか知れませぬよ。さうしてお歴々の御家来衆が太子の外出を防がうものなら、再び甘い汁を吸ふ事は出来ぬぢやありませぬか』 タル『何心配するな、太子様が、よしんば家来共に妨げられ、お出ましになる事が出来ないにした所で、左守の息子さまのアリナさまが控へて厶る。アリナさまは自由の利く身だから、どんな便宜でも取計つて下さるよ』 袋『さう楽観は出来はすまい。アリナさまだつて外出差止めとなられたら、それこそ取つく島がないぢやありませぬか。その上山奥の美人を囲つて太子様に合引させ、堕落させたと云つて重い罪にでも問はれたら、それこそ笠の台が飛ぶぢやありませぬか。お前さまは大体利口に出来てゐないから、女房の心配は一通りぢやない。チツト気をつけて下さいや、お金がよつた時、さうムチヤに費つては、マサカの時にどうしますか。お前さまはヒネ南瓜だから何時国替してもよろしいが、此年の若い女房をどうして下さるつもりですか。今日はお銚子は二本でおいて下さい。お前さまが酒に酔うと梯子酒ぢやからヒヨロヒヨロと宅を飛び出し、裏町辺の待合にでも惚気込んで、ありもせぬ金を費はれちや、宅の会計がやりきれませぬからな』 タル『エー、酒が理におちて甘くないわ。今日は機嫌よく飲ましてくれ。しやうもない世帯の話を聞かしてくれては流石茶人の俺も、いささか閉口だ。さう石に根つぎするやうに心配するものぢやない。俺の宅は御先祖さまの余慶で、之から一陽来復の気分に向ふのだ。よう考へて見よ。山奥から生捕つて厶つた、あのスバール姫さまは弁才天様。さうして太子様は毘沙門天様だ。お前は云ふに及ばず布袋和尚なり、俺は頭が長いから福禄寿だ。そこへ恵比須や大黒のついた金札が此通り懐に納まつて厶るなり、チヤンと六福神は揃つてゐるのだ。も一つの事で七福神となるのだから心配するな。言霊の幸はふ国だから、こんな時は目出度い事云つて祝ふに限るよ。チヤンと六福神が揃つてる所へ、お前の名が袋だから丁度揃つて七福神だ。芽出度い芽出度い酒喰はずんばあるべからずだ。飯飲まずんばあるべからずだ、エツヘヽヽヽ』 袋『何とまア気楽な事をいい年して居つて云へたものですな。お前さまの宅に後妻に入つてから已に三年にもなるぢやありませぬか。着換の一枚も買つてくれた事もなし、足袋一足買つてくれた事もないのに、いつも亭主面さげて、偉相に何ですか。その金こつちにお渡しなさい、私が預つておきます。お前さまにお金を持たしておくと剣呑だ。チツト許り渋皮のむけた女を見ると直グニヤグニヤになつて家も女房も忘れて了うと云ふ奴倒しものだからな。ほんとにいけすかない薬鑵爺だよ』 タル『こらこら何を云ふか。貧乏はして居つても俺はタラハン城に歴仕する茶の湯の宗匠さまだよ。俺の女房にならうと思へば、余程茶の湯、生花、歌、俳諧等の諸芸は一渡り嗜んでおかねばならず、言葉使も高尚につかはねばならぬぢやないか。お前のやうに大きな図体をして蛙のやうな声を出し、ひびきの入つた釣鐘のやうにガアガア云つて貰ふと、名門の恥辱だ、エーン。此夫にして此妻ありと云ふ事があるから、俺の女房ならチツト女房らしう、品行を謹んで貰はねば困るぢやないか。何時だつて女の癖に囲爐裏の側に胡坐かき、煙草ばかりをパクつかせ、飯を焚かすれば焦げつかす、タマタマ焦なかつたと思へば半焚きの心のある飯を喰はせやがるし、何時だつて飯らしい飯を喰わした事があるか。アーア、俺も、せう事なしにこんな女房を持つたのだが、かう懐が暖かになつて来ると、もつとした…………』 袋は胸倉をグツととり、 『こりや薬鑵爺、もつとの後を聞かせ、俺を追出すつもりか。お前の方から追ひ出されるよりも私の方から追ひ出てやるのだ。今迄も幾度か見込みが立たないから、飛び出さう飛び出さうと思つたが先立つものは金だ。此薬鑵奴、之でもいつか懐をふくらしやがる事があるだらう。その時こそは懐の金をスツカリ奪ひとつてドロンと消えてやるつもりだつた。こんな険呑な暗雲飛び乗りの芸当をやるものについて居つては袋の生命が険呑だ』 と云ひ乍ら懐の札束をむしりとり、強力に任して老爺の尻を二つ三つ蹴り乍ら、腮をしやくり、 袋『お蔭さまで一千両のお金にありつきました。永らくお世話になりました。タルチンさま、三年に一千円は安いものでせう。精出しておまうけなさいませ。貯つた時は、又頂きに出ますよ。アバよ』 と牛のやうな尻をクレツと引捲り、 『薬鑵爺尻でも喰らへ』 と云ひ乍ら一目散に逃出したり。 タルチンは無念の歯がみをなし、後追つかけむとすれども、大女の力強に力一杯尻こぶたを蹴られた為、大腿骨に痛みを感じ、顔をしかめて逃げ行く女房の後を怨めしげに見送つてゐる。 『アー、袋の奴、馬鹿にしやがる。折角マンマとせしめた千両の金を自分一人で占領して、おまけに手厳しく毒つき乍ら帰つて行きやがつた。アヽ、又俺は元の木阿弥だ。文なしの素寒貧だ。よくよく金に縁のない男と見えるわい。然し俺も一つ考へねばなるまい。万々一、太子様をかくまつて逢引さしてゐる事がお歴々の耳にでも這入らうものなら、お出入差止めは申すに及ばず、お袋の云つたやうに俺の笠の台が飛ぶかも知れない。又幸に命だけは助かつたとした所で、太子様のお出入もなくなり、アリナさま迄も来られないやうな破目になつたら、此茶坊主はどうしたらよいかな。どうも心配になつて来た。家宝伝来の名物道具よりも大切にしてゐる此頃の珍客、金剛不壊の如意宝珠を、もしも老臣共に見つけ出され、吾館から連れ帰られるやうな事があつたとしたら、それこそ俺も身の破滅だ。地獄と極楽へ往復する茶柄杓の中折れ。今日迄の湯加減も、俄に足茶釜の底ぬけ騒ぎをやらねばなるまい。アーア、何とかいい工夫はあるまいかな。干からびた頭脳から何程絞り出しても、よい智慧は出て来ず、どうしてマサカの時の準備をしようかな』 と腕を組み、胡坐をかいて、燗徳利を前に転がしたまま思案にくれてゐる。 暫らくしてタルチンはニツコと笑ひ、 『イヤ、流石は茶湯の宗匠だ。いい智慧が浮かんで来たぞ。万々一不幸にして太子さまがお出入遊ばさぬやうになつても構はぬ。よもやノメノメとあのスバール姫を殿中へ、連れて帰られる筈はない。さうすればキツト此タルチンが、どつかへお隠し申さねばなるまい。太子もキツト、さうして呉れと仰有るに定まつてる。何程考へても、それより外に方法手段はないもの。太子さまだつて、アリナさまだつて、実の所は内所でやつて厶る事だから弱味がある。そこを甘くつけ入つて、あの名玉を処分するのは処世上の奥の手だ。捨売にしても二万や三万の価値はある玉だ。僅に千円や二千円のつまみ金を貰つてヒヤヒヤとして暮してゐるよりも、さうなりや二三万円にでも売り飛ばしトルマン国にでも逃げ出し、立派な女房でも貰つて此世を栄耀栄華に気楽に暮すが一等だ。俺には何とした幸運が見舞うて来たのだらう、エツヘヽヽヽ』 と一人笑壺に入つて居る。折から聞ゆる、警鐘乱打の声、タルチンは足をひきずり乍ら窓の戸をあけて外を眺むれば、タラハン城下に当つて、火災を起し炎の舌は高く大空を舐て居る。 タル『ヤア、此奴ア大変だ。御得意先が火事にでも会ふやうな事があれば、俺等の懐に大影響を来す所だ。そして日頃お出入の情誼として火事見舞に行かねばなるまい。どうやらあの勢では容易に火事もおさまりさうにはないわい。太子様には済まないが一つ留守を頼んで火事見舞に出かけようかな』 と太い杖をつき大女の袋に蹴られて痛んだ足をチガチガさせ乍ら、離室の茶室に入り来り、 『もしもしお二人様、タラハン城下は大変な火災が起つて居ります。ここは町を余程離れてゐますから、メツタに飛火もしませぬから、安心で厶いますが、私は一寸お出入先へ見舞に行つて参りますから、どうぞ火事を見物し乍ら留守をしてゐて下さいませ』 太子『成程、大変な大火事と見えるな。此調子では、どうやら城内も危険が迫る恐れがある。然し乍ら余はここに神妙にスバールと留守をして居るから、余に構はず行つて来るがいいわ』 タル『ハイ、宜しうお願ひ申します。そんなら之から急ぎ見舞に行つて参ります』 と云ひ乍ら漿酸提灯をぶらつかせ、片手に杖をつき、チガチガと泥濘に満ちた悪道を尻きれになつた下駄を穿ち出て行く。 太子『これ、スバール、随分壮観ぢやないか。余はまだあんな大きな火事を生れてから見た事はない。火事と云ふものは本当に勇ましいものだな』 ス『仰せの如く実に火事は人気のいいものです。此通り地上に蟻の這うてゐるのさへもハツキリ見えます。然し乍ら火災にあうた人は可愛さうぢやありませぬか。どうか人命に関するやうな事がなければよう厶いますがな』 太子『ウン、さうだな。どうか無事にをさまればいいが。あれあれだんだん火が燃え拡がつて来た。あのスツと高く白く光つてゐる壁は城内の隅櫓だ。火は隅櫓を舐出したぢやないか、こいつア大変だ。さうして大変な鬨の声が聞えて来る。余が城内に帰つて居つたならば、又何とか工夫したらうに城内へ飛火がしたりするやうな事あれば、忽ち俺の所在を老臣共が尋ねまはるに違ひない。アリナが甘くやつてくれればいいが、アヽそれ許りが気にかかる』 と、うなだれる。 ス『太子様貴方はお心が弱いぢやありませぬか。夜前何と仰有いました、「お前の側に居るならば、仮令天は落ち、地はくだけタラハン城は焼けおちても敢て意に介せない。お前と俺との恋愛さへ、完全に維持されたら何よりの幸だ。余は王位も富も城も捨てた」と仰有つたぢやありませぬか。チツとお落ち付きなさい。見つともないぢやありませぬか』 と大胆不敵の事を云ふ。太子はスバールの言葉に肝を冷し乍ら、さあらぬ体にて、 『アツハヽヽヽ如何にも尤も千万、火災なんか意に介するに足らないよ。サア夜分を幸ひ、お前と二人手をひいて郊外の散歩に出かけ火事の見物をしようではないか』 警鐘乱打の声は四方八方より聞え、民衆の叫ぶ鬨の声は鯨波の如く聞え来りぬ。 (大正一四・一・六新一・二九北村隆光録) |
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43 (3016) |
霊界物語 | 68_未_タラハン国の国政改革2 | 08 帰鬼逸迫 | 第八章帰鬼逸迫〔一七三二〕 タラハン市の大火災は市の過半を焼き払ひ、遂には城内迄飛火して茶寮一棟を烏有に帰した。城の内外は阿鼻叫喚の地獄と化し、不逞首陀団や主義者団が一致協力して、強盗、強姦、殺人等の悪業を逞しふし目も当てられぬ惨状を演じた。消防隊全部、並に目付侍迄も繰出して、漸くに火を消し止め暴徒の乱業を喰ひ留むる事を得た。左守は吾邸宅を焼かれ、命辛々部下を指揮して騒擾鎮撫に努めて居たが、やうやく騒動が治まつたので蒼皇として大王の居間に伺候し見れば、大王は老病にて臥床中城下の大変を耳にし、驚きの余り発熱甚しく遂に人事不省に陥つて了つた。かかる混雑の際とて、医者も思ふやうに駆けつけず、重臣は困り切つて大王が病室に首を鳩め前後策を講じて居る。左守は最早此上は太子の君に拝謁して指揮を仰がむものと、禿頭をテカテカ照らし乍ら、太子殿に奉伺したのである。 左守は例の如く二拍手しながら、垂簾の前に低頭平身し、稍慄ひを帯たる声にて、 『太子殿下に申上げます。本日は微臣の不注意より城下に大火災起り、不逞首陀団や主義者団其他の暴徒、暴威を逞ふし火を放つて都の大半を烏有に帰し、尚飽き足らず、強盗、強姦、殺人など、所在暴逆を逞ふし、タラハン市は蚊の鳴くが如き憐れな有様で厶います。大王様も御心配のあまり俄に病気新まり、いつ御昇天遊ばすやも計られない悲惨事が湧出致しました。かかる惨状を招来致しましたのも、全く小臣等が輔弼の任を全ふせざりし罪で厶いますれば、天下万民に代り闕下に伏して罪を謝し、今日限り骸骨を乞ひ奉りますれば、何卒、時代に目醒めたる新人物をば登庸遊ばされ、国事の大改革を断行されむ事を希望いたします。左守が職を辞するに当りまして、太子殿下にお願ひ致して置きたい事は、悴の身の上で厶います。微臣も老齢加はり、殿中に入内致しますにも、かくの如く杖を持たねばならぬやうな廃物で厶いますから、大王殿下の後を追うて何時国替をするやらも分りませぬ。何卒悴の身の上をよろしくお願ひ申上げます』 アリナはわざと荘重な声にて、 『ヤ左守殿、大変な事であつたのう。嘸人民が困つて居るであらう。汝は国家危急の此場合に当つて、骸骨を乞ふなどとは不心得千万にも程がある。日頃高禄を与へておいたのは斯様の際に尽させむ為めの父大王の思召ではないか。併し乍ら、不能をもつて能を強ふるは君たるものの道ではない。汝は幸ひに時代に目醒め余が意思をよく悟りをる賢明なる悴あれば、彼アリナを汝と思ひ重く用ふるであらう。必ず心配いたすな。さうして汝の家は無難であつたかのう』 左『ハイ御親切によくお尋ね下さいます。仁慈のお言葉、何時の世にかは忘却致しませうや。吾邸宅は不逞首陀団の為に包囲され、第一着に焼きつくされて了ひました。併し乍ら、ウラルの神様の御加護によりて生命は助けて頂きました。それよりも恐れ多いは、大王様がいつも愛玩してお出になりました、古今の珍器を集めた茶寮の一棟、惜くも焼き失せました。大王家歴代の重宝は此茶寮に納めてありました。実に此一事にても微臣は責任を帯びて骸骨を乞はねばなりませぬ。何卒、おゆるしを願ひ奉ります』 ア『や、左守其方の申す言葉も一応道理があるやうだ。汝は是より此処を引取り、他の重臣共と相談の上復興院を創立して、再び元のタラハン市に復帰すべく勉めて呉れ。太子、汝左守の職掌を父に代つて免除する。臣間の事業として復興院の総裁となれ』 左『殿下の御台命誠にもつて有難く感謝に耐へませぬが、世に後れたる禿頭をもつてどうして、今日の世の中の人心を治め復興の目的を達成する事が出来ませうか。此儀は何卒お許し下さいませ。実の所は玉の原の別荘に安臥中、火事と聞いて驚き石段より転げ落ち、大変な負傷を仕りました。これがつけ入りとなつて、微臣も遠からぬ中帰幽いたさねばなりますまい』 ア『ヤアそれは思ひも寄らぬ気の毒な事を致した。アリナが居れば其方の介抱をさせたいのだが、火災が起ると共に殿内を飛び出し、未だ何の消息も無いのだから、どうする事も出来ぬ。余も斯る際には泰然自若として軽挙妄動を謹み、万一の時には父王殿下の後を継がねばならぬ。どうか其方より右守其外一同によきに伝へて呉れ』 左『ハイ、重ね重ね御親切なお言葉有難う厶います。そして悴のアリナは未だ帰らないと承はりましたが、もしやあの騒動に紛れ人手にかかつたのでは有りますまいか。但しは火に囲まれて焼死でも致したのでは厶いますまいか』 と涙声になる。 ア『父上、いやいや父王殿下の御大病とあれば余は茲に謹慎を守つて居る。アリナも可愛さうだが、彼の事だから滅多に命を捨つるやうな事はあるまい。安心したがよからう』 左『ハイ、有難う厶います。失礼な事をお尋ね致しますが、殿下には此頃お声の色がお違ひ遊ばすやうで厶いますが、お風でもお召し遊ばしたのでは厶いますまいか。尊貴の御身の上、何卒お大切にお願ひ致します。人間は衛生が第一で厶いますから』 アリナは此言葉にギヨツとし乍ら飽迄図々しく空呆け、 ア『イヤ、別に病気でも何でもない。実は青春の時期だから声変りが致したのだ。そして余も昨夜の大火事に些しばかり気を揉んだものだから、声が少しく変つたのだらうよ。必ず必ず心配して呉れるな。又汝の悴アリナも屹度無事で居るだらう』 左『ハイ、有難う厶います。どうか衛生に御注意下さいませ。偏にお願ひ申上げます』 ア『爺、否左守心配致すな。人間の生涯を衛生の二字に威喝されて、自分から半病人になるやうな事は致さない。人間は気の持ちやう一つで病気なんか起るものではない。其方も気を確に持つて長生をしたがよからうぞ』 左『何彼とお取込みの中、いつ迄お邪魔を致しても済みませぬから、微臣は引き下りませう。此際御自愛あらむ事を懇願致します』 と云ひ捨て、恭しく敬意を表はし乍ら杖を力に下り行く。左守は道々思ふやう、 『どうも殿下のお声変り、これは何かの原因が有るだらう。どこともなしに今迄とは荘重を欠き、さうして今日は懸河の弁舌、ハテ合点の行かぬ事だなア。あの口調は悴のアリナにそつくりだ。然し何時もアリナが悪智慧をかうものだから、言葉づき迄が殿下に感染したのだらう。恐れ多い事だわい』 と独語ちつつ帰り行く。 アリナはほつと一息し乍ら、 『アヽ危ない事だつた。又しても爺に訪問され肝玉がでんぐり返つて仕舞つた。幸ひ爺は胡麻かしたが、やがて右守がやつて来るだらう。こいつは困つたものだなア』 と腕を組んで思案の折柄、足早に簾を上げて入り来るは夜前情約締結を終へたシノブであつた。 シノブ『殿下、御心配なさいますな。あの調子なれば大丈夫で厶いますよ。現在の父上でさへも化の皮を剥ぐ事が出来ず、スダルマン太子と信じ切つて帰られた位ですから右守位は何でもありませぬ。そして右守は名代の近眼で厶いますから御心配なさいますな』 アリナ『いや誰かと思へば、汝は女中頭のシノブぢやないか。今日の場合陽気な事は云つて居れない。居間に下つて来客の接待でも致したが好からうぞ』 シ『ホヽヽヽ、殿下よう白々しいそんな事が仰せられますなア。妾はどこ迄も殿下のお傍は離れませぬ。殿下の挙措動作は一々次の間から調べて居りますから』 ア『大変な警戒線を張つたものだなア、まるきり監視附のやうなものだわい。アヽ太子の役も窮屈なものだなア』 シ『一国の王者にならうと思へば少々位の窮屈は忍ばなければなりますまい。茲二三日は特別訪問者が多う厶いませうから、確りして居て下さいませ』 ア『アヽ、スダルマン太子は何だつて帰つて厶らぬのだらう。「半日でよいから代つて貰ひたい」と仰有つたが、こんな所へ右守や重臣がどしどしやつて来ら終ひには化けの皮が現はれて了ふがなア』 シ『これだけの騒動、如何に呑気の太子様だとて悠々スバール姫に現を抜かしてお出になる筈はありませぬ。もう帰つてお出になるでせうから、もう暫く辛抱して下さいませ。天下分目の関ケ原、王者になるか、平民に下るかの分水嶺ですから』 ア『それもさうだ。誰が来るか分らないから、其方は早く簾の外へ罷り下つたがよからう。余は心配でならないわ』 シ『ホヽヽヽ、「余は心配でならないわ」などと、たうとう本当の太子に言葉つきだけはなつて仕舞はれましたなア。左様なれば邪魔者は罷り下るで厶いませう』 と、つんと立ち、ぷりんとして畳をぽんぽんと二つ三つ蹴つて一間の内に姿をかくした。それと入れ違ひに慌ただしくやつて来たのは右守であつた。右守は型の如く二拍手し、頭を床に下げ乍ら、 『恐れ乍ら右守の司、太子殿下に申上げます。昨夜以来城下大混乱の状況は左守の司より上申致したで厶いませうから、私は重ねて申上ませぬ。殿下におかせられても御壮健の御顔を拝し右守身に取つて恐悦至極に存じ奉ります。就きましては大王様の御容態俄に新まり、幽の息の下より「殿下を呼べ」と仰せられます。どうか一時も早く大王のお居間迄御賁臨を願ひ奉ります』 アリナは一つ脱れて又一つ、 『アヽ偽太子もつらいものだ。大王殿下の傍には沢山の看病人も居るだらう、重臣共も居るだらう。そんな所へ往かうものなら忽ち秘密が露見して、フン縛られて了ふかも知れない』 と心に非常な驚きを感じたが、横着者の事とてわざと素知らぬ顔をして、 『何と申す、父王殿下が御危篤と云ふのか。それでは早速参上致さねばなるまい、余は是より衣服を着替へ神様に拝礼致し父王殿下の平癒を祈り直ちに参上いたすによつて其由を父王に伝へて呉れ』 右守『殿下のお言葉で厶いますが、錦衣のお着替へも結構、神様へのお祈りも結構で厶いますが、最早御臨終で厶いますから、直ちにお越し下さいませ。私がお供を致します。早く親子の御対面を遊ばしませ。後で如何程お悔やみ遊ばしても返らぬ事で厶いますから』 アリナ『余は直に参る。サ早く其方は余に構はず父のお側に行つて呉れ。余はどうしても神に祈らねば気が済まぬ。早くこの場を立ちのき父王の傍に行かぬか』 と声に力を籠めて呶鳴りつけたり。右守は鶴の一声に止むなく立つて帰り行く。後にアリナは、 『アヽ困つた事が出来たものだ。やつぱり左守の悴のアリナで居る方がよい。アヽどうしてこの難関を切り抜けようか』 と項垂れて居る。そこへ女中頭のシノブが走り来り、 『もし、アリナ様、殿下が帰られました。サアサア早く衣裳をお着替へなさいませ』 『何殿下がお帰りか、それや結構だ。や、助け船が帰つたやうなものだ。何処に居られるか』 シノブ『労働服を着た儘裏口に立つて居られます』 アリナは急いで裏口に走り出で、 『ヤ殿下、よう帰つて下さいました。今や私の化の皮の現はれむとする所、父王殿下には今や御臨終で厶います。サア早くお会ひ下さいませ。さうして私は錦衣を脱ぎ捨て元のアリナに帰つて了ひます。今が危機一髪の正念場、サ早く錦衣にお着替へ下さいませ。何時重臣共が来るかも分りませぬ』 太子は父の臨終と聞き着物を着替へる事を忘れ、又アリナも狼狽の余り、太子に錦衣を着せる事を忘れて了つた。太子はそのまま駆けつけ火鉢の前に坐つて見た。 太『ヤ、これや大変だ。労働服の儘だ。何とかして早く錦衣と着かへねばなるまい。オイ、アリナその錦衣を早く持つて来い』 と呼べど叫べどアリナは狼狽の余り錦衣を女中部屋に投げ捨て、トランクの中より有合せの寝衣を取り出して着替へ、便所の中に潜んで慄つて居た。一方太子は如何はせむと焦慮して居る。其所へ慌ただしく右守の司がやつて来て、簾の外より泣声を絞り乍ら、 『殿下早くお出下さいませ。御臨終で厶います』 この声に太子は父の臨終と聞いて何も彼も打ち忘れ、汚い労働服の儘、右守の後に跟いて大王の病床に駆けつけたり。右守は近眼の事なり余り慌てて居るので、太子の労働服が目につかざりけり。 (大正一四・一・六新一・二九於月光閣加藤明子録) |
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霊界物語 | 68_未_タラハン国の国政改革2 | 12 妻狼の囁 | 第一二章妻狼の囁〔一七三六〕 若葉はそよぐ初夏の風山時鳥四方八方の 密樹の蔭にひそみつつ悲しき声を張上げて 神の造りしタラハンの国の行末歎つなり 李杏も梅の実も色づき初めて遠近の 田の面に数多の首陀たちが生命の苗を植つける 其有様を眺むれば降る五月雨に蓑笠を おのもおのもにつけ乍ら三々伍々と隊をなし 田の面に唄ふ勇ましさ一年三百五十日 たつた一度の植付の好シーズンのめぐり来て 人の心もせいぜいと希望に充てる折もあれ タラハン市街の大火災忽ち暴徒蜂起して 特権階級富有者共の大邸宅に火を放ち 婦女をば姦し金銭を不逞の首陀団掠奪し 諸種の主義者は一時に手に唾して立上り 吾等が日頃の鬱憤を晴らすは今や此時と 警戒厳しき警察を向方に廻して戦ひし 其勢は枯野をば燃えゆく焔の如くなり 茲に軍隊出動し漸く一時は暴徒も 鎮圧したれど何時か又大騒動が起らむと 期待されたるタラハンの城下の人心恟々と 安き心もなかりけり左守右守の神司 吾権勢の忽ちにおち行く虞ありとなし 所在手段をめぐらして軍隊警察召集し 水も洩らさぬ用心に流石不平の連中も 一時は影をひそめけりカラピン王は重病に 苦み玉ひて国政を見玉ふ術も更になく 太子の君は騒動に紛れて影を隠しまし 左守の司のガンヂーは心許りは焦て共 よる年波に力落ち勇気は頓に阻喪して 単に無用の長物と誹れ乍ら気がつかず 萎れ切つたる両腕をウンと叩いて雄健びし 敦圉く様は螳螂が斧を揮うて立てる如 其スタイルの可笑しさよ心汚きサクレンス 此有様を見るよりも国家の前途は風前の 灯火の如しと吾妻のサクラン姫と頭をば 傾け前後の策略をめぐらしゐるこそうたてけれ。 サクレンス『サクラン姫よ、世の中が追々と、斯う物騒になつて来ては、俺もウツカリはして居れない。今迄とは世の中が、何も彼も一変し、吾々如き特権階級や資本階級の滅亡する時期が迫つて来たやうだ。此儘に放任しておけば、タラハンの国家は言ふに及ばず、王家も吾々階級も遠からぬ内に地獄の憂目を見る様な事が出来はせまいかと案じて寝られないのだ。お前は一体、今日の世態を何う成行くと考へてるか』 サクラン『仰の通り、世はだんだんと行詰つて参りました。経済界、政治界、宗教界は申すに及ばず、実業方面に於ても一切万事行詰り、実に惨めな状態となりました。併し乍ら窮すれば通ずとか申しまして、禍の極端に達した時は、キツト幸の芽を吹くもので厶います。去る五日の大火災にも、城内の茶寮は焼け落ちて、所在国宝は全部灰燼に帰し、左守の邸宅迄、あんな惨めな事になりました。それにも拘らず、右守の邸宅は一部分暴徒に破壊された計りで此通り安全に残りましたのも右守家に、対し盤古神王様が、大なる使命のある事を暗示されたものと考へられます。斯様に混乱状態に陥つた社会では、弱いと見られたならば忽ち叩き潰され、亡ぼされて了ふものです。それ故此際は国家の為に満身の力を発揮し、空前絶後の大計画を遂行して、国民上下の胆を奪ひ、右守の威力を現はし、威圧と権威とを示して、国民の驕慢心を抑へ付けねばなりますまい』 サクレ『お前のいふ事も一応尤もの様だが、人心極端に悪化し、吾々の階級を殲滅せむと国民が殆んど一致して時期を待つて居ると云ふ時代に際し、なまじひに小刀細工を施してみた所が、却て万民の怒りを買ひ、滅亡を早める様なものだ。ぢやと云つて此難関を打ぬけ、民心を収攬し、太平無事に国家を復興する事は難事中の難事だ。如何なる聖人賢人と雖、此際かかる世態に対し、メスを揮ふ余地はあるまい。あゝ困つた事だワイ。大王殿下は御重病、何時お国替遊ばすやら計り知られぬ今日の有様、太子の君はお行衛は分らず、左守司は老齢激務に堪へず、又彼が悴のアリナは踪跡を晦まし、タラハン国はすべての重鎮を失はむとしてゐる。要のぬけた扇の如く到底収拾す可らざる内情となつてゐる。今後亦去る五日の如き騒乱が勃発せうものなら、夫こそ王家を始め貴族階級の断滅期だ。何とかして此頽勢を挽回する事は出来よまいかなア』 サクラ『私の意見としては此際思ひ切つて大鉈を揮ひ、大改革を断行せねば、到底駄目で厶いませう。老朽ちて将に倒れむとする老木も根元より幹を切り放たば、新しき芽を吹き、其為再び生命を持続する事が出来るものです。吾夫様、此際貴方は大勇猛心を発揮し、国体を根本的に改革遊ばす御所存は厶いませぬか』 サクレ『イヤ、俺にも考案はない事はないが、さりとて余りの叛逆だからなア』 サクラ『ホヽヽヽ、叛逆無道の世の中を立替立直すのが何故に叛逆で御座いますか、能く考へて御覧なさいませ。大王様はあの通り、太子殿下は御行衛分らず、左守の老衰、斯の如く国家の重鎮に大損傷を来した上は、最早タラハン国に於ける最大権力者は右守家を措いて外にはないぢやありませぬか。民心を新にする為、思ひ切つて王女バンナ姫様を表に立て、弟のエールを王位に就かせ、国民上下の人心を収攬し、貴方は国務総監となつて、無限絶大なる権威を揮ひ、政治の改革を断行なさるより外に、国家を救ふ道は厶いますまい』 サクレ『成程、俺も其事は今迄に幾度か考へてみた事もあるが余りの陰謀で、女房の其方にも言ひ兼ねてゐたのだ。お前が其心なら、俺は強力なる味方を得たも同然、思ひ切つて断行を試みやう。併し乍ら、ここ暫くは秘密を厳守せなくてはならうまい。万々一此計画が夫婦以外に洩れ散るやうな事があれば、それこそ右守家の一大事だ』 サクラ『凡て大業を成さむと思へば、秘密を守るのが肝心で厶います。暫く人心の治まつた潮時を考へ、公々然と天下に向つて国政改革を標榜し、エールを王位に上せ、バンナ姫を王妃と成す事を発表遊ばせば、茲に始めて維新改革の謀主として貴方を国民が欣慕憧憬する様になるで厶いませう。それより外に適当な方法手段は厶いますまい』 サクレ『それに就ては、第一気に懸るのは太子の君だ。折角エールとバンナ王女を立て、国家の改造を標榜してゐる最中へ、ヒヨツコリ太子が帰つて来て、異議を唱へ給ふやうな事が有れば、吾々の折角の計画も水泡に帰するのみならず、右守を叛逆者として大罪に問はるるかも知れぬ。夫故俺の思ふには、まづ太子の身の上から片付けて掛らねば成るまい』 サクラ『成程、それが先決問題で厶います。併し幸ひに太子様を巧く片付けた所で、左守の悴アリナが此の世に在る限りは、再び折角の計画を覆へさるる虞が御座います。之も序に何とか致さねばなりますまい』 サクレ『ウン、それもさうだ。併し乍ら此両人を処置するに付いては、石で臨むか、真綿で臨むか、何れかの方法を取らねば成るまい、どちらが能からうかなア』 サクラ『天下混乱の際、生温い方法手段では駄目で御座いますよ。疾風迅雷耳を掩ふに暇なき早業を以てキツパリと、幹を切り根を絶ち葉を枯らし、新生面を開かねば腐敗し切つたる現代を救ふ事は到底出来ますまい。但し其方法手段は……斯様々々』 とサクレンスの耳に口をよせ、奸侫邪智のサクラン姫は何事か右守に教唆した。サクレンスは幾度となくうなづき乍ら、 サクレ『ウンウン可からう。中々お前も隅にはおけぬ悪人だ。悪にかけては抜目のない逸物だ、ハヽヽヽ』 と小声に笑ふ。 サクランは目を怒らせ口を尖らせ乍ら、サクレンスの膝を叩いて小声になり、 サクラ『国家の大改革を断行し、国民塗炭の苦みを救ひ、国家万年の策を立つるのがそれ程悪で厶いますか。どうも腑におちぬ事を仰有るぢや厶いませぬか。勝てば官軍負くれば賊子、兎角世の中は勢力が最後の勝利を占めますよ。一切万事躊躇逡巡せず、ドンドンとやつて下さい。妾は貴方の為、いな国家の為に内々奮闘努力を致しませう』 サクレ『ヤ、頼母しい。お前は見かけによらぬ偉女夫だ。此夫にして此妻ありだ。俺も始めてお前の心の底が解り、安心をしたよ』 サクラ『二十年も夫婦となつてゐ乍ら、まだ妾の本心が解らなかつたのですか。お側に近く寝食を共にする妻の心が、二十年目に始めて解る様な事で、能くマア今日迄右守の職掌が勤まつて来たものですなア。本当に之こそ天下の奇蹟ですワ』 サクレ『オイ、サクラン姫、馬鹿にするない。政治家は政治家としての方法があるのだ。天下国家を憂慮する余り、小さい家庭などの事に気を付けてゐられうか』 サクラ『家庭も治まらず、二十年も添うた妻の心が解らぬやうな事で、何うして大政治家が勤まりませう。まして多数国民の心を収攬する事が出来ませうか』 サクレ『ヤ、さう追撃するものでない。今の大政治家を見よ。一家を治める事は知らいでも、堂々として政治の枢機に参与してゐるぢやないか。左守だつて、決して家庭は円満でない。又左守の心と彼が悴アリナの心とは正反対だ、犬と猿との間柄だ。それさへあるに国家の元老、最大権力者として左守は立派に今日迄地位を保つて来たではないか』 サクラ『自分の地位を保ち得たのみで大政治家とは云へませぬよ。今日の国家の不安状態に陥つたのは、輔弼の重臣たる左守様に本当の技倆が欠けてゐる為ではありませぬか。現代の政治家は何れも皆袞竜の袖に隠れて、僅かに其地位を保ち、国民を威圧して居るのです。虎の威を借る狐の輩です。貴方だつて、ヤツパリさうでしよう。真裸にして市井の巷へ放り出してみたならば、履物直しにもなれないぢやありませぬか』 サクレ『馬鹿云ふな、俺だつて曲人官位にはなれるよ』 サクラ『自惚も可い加減になさいませ。貴方は大王殿下のお引立てがなく裸一貫の男として、自分の運命を開拓遊ばす勇者とすれば、精々小学校のヘボ教員かポリス位が関の山で厶いませう。それだから国民が貴方を称して死人官だと云つてゐるのですよ』 サクレ『エー、モウそんな小言は聞たくない。主人を馬鹿にしてゐるぢやないか』 サクラ『ホヽヽヽ、馬鹿にしたくても、貴方は本当の馬鹿になれない方だから困りますワ。世の中の才子だとか智者だとか言はれる人は何時も失敗許りするものです。それに引替へ馬鹿とならば、何事にかけても無頓着で如何なる難関に出会つても、少しも恐れず又後悔する事もなく、物に慌てて事に驚き気をもんで、無駄骨折に損をせない。そして禍を化して自然に幸になす態の馬鹿になつて頂きたいものです』 サクレ『あゝあ、何が何だか訳が分らなくなつて来たワイ。さうすると俺もまだ馬鹿の修業が足らぬのかなア。オイ、何だか胸騒ぎがしてならない。一杯つけてくれ、熱燗でグツとやるから』 サクラ『お酒をおあがり遊ばすのも結構で厶いますが、大事の前の小時、茲少時はお窘みなさるが宜しからう。貴方はお酒をおあがり遊ばすと、精神錯乱して、どんな秘密でも人の前に喋り立てるといふ、つまらぬ癖がおありなさるから、此大望が成就する迄は盤古神王様の前にお酒を断つて下さい』 サクレ『ヤ、此奴ア耐らぬ。飯よりも女房よりも国家よりも大切な酒を断つて、おまけに暗雲飛乗りの危い芸当を此老人にやらさうとするのは、随分ひどいぢやないか』 サクラ『少時の御辛抱で厶います。夜も深更に及びました。サア寝みませう』 と手を取つて奥の一間に導き行く。二人は之より夜を徹して細々と寝物語の幕をつづけた。果して何の秘事が画策されたであらうか。 (大正一四・一・七新一・三〇於月光閣松村真澄録) |
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霊界物語 | 68_未_タラハン国の国政改革2 | 20 破滅 | 第二〇章破滅〔一七四四〕 蓄財と名望欲と政治欲、其外自己愛の道にかけては抜け目のない右守の司サクレンスは、日頃の願望成就の時到れりとなし、妻のサクラン姫と共に、都下大騒擾の跡仕末もつけず、民衆怨嗟の声も空吹く風と聞き流し、珍味佳肴に酒くみ交はし得意となつて心の埃芥を平気の平左で吐き散らしてゐる。得意の時、図に乗るは小人の常とは云ひ乍ら、あまりに智慧の足らぬ男である。人心恟々として物騒至極の今日此頃、而も玄関口に現はれ訪問客を相手にし乍ら、已に国務総監になりすましたやうな気で盛にメートルを上げ、いきりきつて居る。 右守は女房の酌でヘトヘトになり、凹んだ目をボツとさせ乍ら眼鏡越しに女房の蜥蜴面を打眺め、出来損ねた今戸焼の狸の人形のやうな不可解千万の面をさらし舌皷を打ち乍ら、 右守『オイ、奥さま否、女房、嬶んつ殿、何と俺の劃策は水も洩らさぬ注意の届いたものだらう、エーン』 サク(サクラン)『旦那様、何ですか、車夫か馬丁か何ぞのやうに嬶だの、嬶んつだの嬶村屋だのと、こんな玄関口で見つともないぢやありませぬか。警固の兵士が若しもこんな事を聞きましたらキツト馬鹿にしますよ。何卒之から妾を呼ぶには奥とか、後室とか云つて下さい。お願ですから』 右(右守サクレンス)『イヤ、之は失敬千万、恐れ入谷の鬼子母神殿、釜の下の燃杭左衛門、閻魔大王之介、嬶左衛門尉挽臼殿、サクレンスが酒の上の暴言、真平々々御免候へ、何分奥さまのお名前がサクラン姫だから、チツト許り此右守も精神がサクラン致し、何となくボツと致したやうだ。サクラン……ではない、サフランでも煎じて一服飲まして貰ひたいものだな。サフランが無ければ朝鮮人参でも結構だ。然し乍ら諺にも云ふ通り……人参買うて首を吊る……と云ふ事もある。右守の貧乏世帯では到底左様な高価な医薬品は挺には合ひ申さぬ。それよりも奥方殿の御麗しきおん顔を拝し奉り、恐悦至極に存じ奉つておいた方が、何程愉快だか知れないわ、アツハヽヽヽ』 サク(サクラン)『旦那様、いい加減に妻を嘲弄しておきなさいませ。口に関所がないと云つても、あまりぢや厶いませぬか。時に旦那様、太子殿下やスバール姫は大丈夫で厶いませうかな』 サクレ(右守サクレンス)『ウンウン、大丈夫大丈夫、不要緊不要緊。あゝしておけば自然に餓死を為るだらう、さうすりやこつちの幸福だ。何程辛抱が可いと云つても、十日も二十日も飲食を絶たれたならば、到底生命は保て無い、寂滅為楽とおいで遊ばすは、決まりきつたる天地の道理だ。エー、俺に子供があればバンナ姫に娶して、うまく国政を自由自在に操るのだが、惜い事にはお前が石女だから、惜い乍らも他人にやるよりマシだと思つて、父違ひの弟に顕要の地位を譲り、弟はやがて大王殿下となり、肝心の兄貴は臣下となつて、アタ阿呆らしい、神妙に仕へねばならぬのだ。然し乍ら弟は只単に看板に立てておくのみだ。その実権はヤツパリ此サクレンスの手に握つておくのだから、先づ芝居だと思へば辛抱も出来やうかい、エツヘヽヽヽ。ても扨も愉快な事だわい』 サクラ(サクラン)『旦那様、そしてあのアリナはシノブの云つた通り大宮山の神殿に居つたでせうか』 サクレ(右守サクレンス)『イヤ、彼奴は到頭風を喰つて逃失せ、比丘の姿となつて法螺貝を吹き、そこら中を深網笠で廻つて居ると云ふ報告が来たので千円の懸賞付で今捜索してる処だ。彼奴を捉へたら、否応云はさず秋野ケ原の水車小屋の地底の牢獄に投げ込み、人知れず干し殺してやる計画がチヤンと整つてゐるのだ。あんな奴の事は、さう意に介するに足らないよ。何と云つても肝腎要の太子を、あゝ仕て置いて○○して了へば最早俺の天下だ。エツヘヽヽヽ、何と妙案奇策だらう』 サクラ(サクラン)『そりや本当に心地のよい事で厶いますな。流石は右守様、いや大名総監様、天晴々々。貴方が御出世なされたならば、麻につれる蓬も同然、妾の地位も高まる道理。然し女中頭のシノブが聞いたら、さぞ失望落胆する事でせうね』 サクレ(右守サクレンス)『どうで彼奴は、ドテンバの淫乱の両屏風と来てゐるのだからいい気味だ。いつもいつも大王様のお側近く侍りよつて耳嗅ぎ許り得意にしてゐる曲者だから、あんな奴ア臍でも噛んで死んだ方が、何程国家の為になるか知れないわ、エツヘヽヽヽ』 サクラ(サクラン)『然し乍ら旦那様、謀は密なるを要すとか申しまして、どこ迄も注意に注意を加へねばなりませぬ。ヒヨツとすればあの女は右守家にとつて爆裂弾かも知れませぬから、そこは、うまく云つて、操つておいて下されや』 サクレ(右守サクレンス)『エー、そんな事に抜目のあるサクレンスと思つてゐるか、云ふ丈け野暮だよ。サア一杯ゆかう。今日は土堤を切らして充分酔うて呉れ。目的成就の前祝だからのう』 斯かる処へ玄関の障子の外からかん走つた女の声、 シノブ『右守様、妾はシノブで厶います。這入りましてもお差支は厶いませぬかな』 右守はギヨツとし乍ら顔色をサツと変へ、女房と狸と蜥蜴の面合せをし乍ら、唇で舌を噛み三つ四つ腮をしやくり、二人一時に、 右守サクレンス、妻サクラン『ハイ、差支は厶いませぬ。サアサアお這入り下さい』 シノブ『左様なれば御免を蒙ります。臍でも噛んで死ねばいいのに、憎まれ子世に覇張ると申しまして、此通りピンピンしてゐます。決して爆裂弾ではありませぬから御安心なさいませ。何と云つても太子様を水車小屋の地底の岩窟に入れて、干殺さうと為さる凄い御腕前、実に感心致しましたよ。もしもし御夫婦様、別に青い顔して、お慄ひ遊ばすには、当らぬぢやありませぬか。アリナさま迄引捕らまへて地底の牢獄に投げ込み、干殺さうとして厶るのですもの、本当に呆れて了ひますわ。如何で厶います。梟の宵企み、うまく計劃が成就致す見込が厶いますかな』 右(右守サクレンス)『これはこれは思ひがけなきシノブ殿のお言葉、どうして、さやうな無道な事が出来るものですか。人間として、恐れ多くも太子様を干殺さうなんて、人間の面を被つたものがする事ぢや厶いませぬ。実は酒に酔うたまぎれに、嬶左ヱ門に向つて揶揄つてゐたのですよ。もとより根なし草の戯れ言、気にかけて下さつては困ります』 シ(シノブ)『人間として出来ないやうな、大それた畏れ多い事を平気でおやり遊ばす右守様だもの、到底妾の如き耳嗅のお転婆女では側へも寄れませぬわ。どうか爪の垢でも頂いて煎じて飲みたいもので厶いますわ』 右(右守サクレンス)『こりや怪しからぬ、さう疑つて貰つちや、右守も一切事情を逐一弁明せなくちやなりますまい。マアゆつくりと気を落付けて、忠臣義士たる拙者の言葉をお聞き下さい』 シ(シノブ)『貴方はもうお忘れになりましたか。先日妾がお直使に化けて参りました時、太子様を○○せうとお約束なさつたぢや厶りませぬか。そしてアリナさまを王位に上らせ、妾を王妃にしてやらうと、うまく誤魔化しましたね。貴方の腹の中はエールさまを王位に上らせ、王女のバンナさまを王妃とし、勝手気儘に国政を料理せうと云ふ、大した陰謀を劃策してゐらしたのでせう。何もかも一伍一什、只今、玄関先にて承はりました。然し妾が、かう云つたと申して驚きには及びませぬ。物も相談ですがどうです。一層の事妾を女帝にして下さつては。若しゴテゴテ仰有るなら何もかも上は大王様へ、下は国民一般へ、貴方の陰謀の次第を吹聴致しますが、それでも貴方にとつてお差支は厶いますまいか。若しそんな事は出来ないと仰有るなら、サア此場でキツパリと言明して下さい。一寸の虫も五分の魂とやら、妾にも考へが厶いますからな』 夫婦はシノブの言葉に一つ一つ錐で胸先を、揉まるる如き苦みを感じ乍ら、 右(右守サクレンス)『イヤ、恐れ入りました。明日とも言はず今日只今より貴女を主君と崇め奉り女帝様と申上げますから、何卒さう腹を立てず落付いて下さいませ』 サクラ(サクラン)『夫の申上げました通り妾も女帝殿下と尊敬し、今日只今より臣下の礼を以て仕へませう』 シノブ『ホヽヽヽヽうまい事仰有いますな。そんな事を云つて妾を安心させ、暗打でも遊ばす御計画でせう。今日迄の貴方等のやり方から推定しても、その位の事は、貴方にとつては宵の口ですからね』 かかる処へカーク、サーマンの二人は慌しく帰り来て、 カーク、サーマン『右守様に申上げます。タヽヽ大変な事が突発致しました』 右守は此言葉に二度ビツクリし乍ら、俄に酒の酔も醒め、片膝を立直して、 右守サクレンス『何、大変が起つたとは、何処にだ。サア早く言はないか』 カ(カーク)『ハイ申上げるつもりで吾々両人がスタスタと慌てて帰つて参つたのです。申上げなくて何と致しませう。太子殿下を初めスバール姫は、三五教の宣伝使に助けられ、駒に跨つて堂々と城内にお帰り遊ばす事になりました。そしてエールの君様は岩山の神の森に於て、大女のバランスに、首筋をつまんでインデス川へ投げ込まれ、川中の岩石に頭を打割られ、川水を紅に染めて、ブカンブカンと流れて了はれました。グヅグヅしとる時ぢや厶いますまい。右守様、貴方のお首が危う厶いますよ』 サクレ(右守サクレンス)『嘘ぢやないか、そんな事のあらう筈がない』 サ(サーマン)『決して決して、誰が嘘なんか申しませうぞ。正真正銘、ありのままの事実の注進で厶います』 サクラ(サクラン)『それだから、いつも貴方に気をつけなさいませと御意見を申したではありませぬか。一体貴方の頭脳は、余り粗末過ぎますから、こんな失敗が出来るのですよ、エー口惜い、どうしたら宜しいのかな』 シ(シノブ)『イツヒヽヽヽヽ右守さま、もう斯うなりや妾の女帝も、貴方の大名総監もサツパリ駄目です。男らしく覚悟なさいませ。否自決遊ばせ。実の所は王女のバンナ姫様も妾が、うまくちよろまかして、城内からおびき出し、インデス川の辺で首を締め、川中へ投げ込んでおきましたから、エールさまと一緒に同じインデス川で水盃でもしてゐらつしやるでせうよ。もう斯うなつた以上は気の毒乍ら、貴方のお家は断絶、罪が軽うて切腹、まさか違へば逆磔刑ですよ。妾だつて、最早安閑としては居られませぬ。サア右守さま、介錯をして上げますから腹をお切りなさいませ。そして奥様は首でも吊るか、溜池にでも身を投げて、早くその製糞器を片付けなさいませ。グヅグヅしてゐると死後迄も恥をさらされますよ。私も冥土のお伴を致します。已に既に懐剣は用意して参りました。この鋭利な短刀で喉笛を切るが最後、結構な結構な天国へ国替と云ふ段取ですわ』 かく互に身の終りの相談をやつてゐる所へ門前俄に騒がしく、目付頭は数百の部下を従へ、右守の館を十重二十重に取巻き、頭役自ら数名の目付と共に入り来り、 目付頭『サクレンス、サクラン、シノブ三人とも御用だ。神妙に手を廻せ』 と呶鳴り乍ら懐より捕縄を出し無雑作に三人を厳しく固く縛り上げてしまつた。 (大正一四・一・七新一・三〇於月光閣北村隆光録) |
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霊界物語 | 69_申_南米ウヅの国の国政改革 | 01 大評定 | 第一章大評定〔一七四六〕 太平大西両洋に跨り、常世の波をせきとめて、割つた屠牛の片脚の如うにブラ下つてゐる南米大陸は、春夏はあつても秋冬の気候を知らぬ理想的の天国である。太洋より絶えず吹き来る清風は、塩分を含んで土地を益々豊饒ならしめ、人頭大の果実は随所に豊熟し、吾人が坐して尚余りある如き数多の花は四方に咲きみだれ、数万種の薬草は至る所の山野に芳香を放つて繁茂し、アマゾン河におち込む数千の支流には数十万種の魚族が棲息し、山には金銀銅鉄石炭等の鉱物を豊富に包蔵し、特に石炭の産額は全世界に其比を見ざる所である。乍併現今は未だ充分に採掘の方法が備はつてゐないので、可惜宝庫を地に委してゐる次第である。 アンデス山脈は高く雲表に聳え、海抜一万四五千尺より三万尺の高地がある。そして山の頂きには狭くて十里、広きは数十里に亘る高原が展開してゐる。樹木の数も我国より見れば仲々多い。又ブラジル国を流るるアマゾン河の川幅は、日本全国を縦に河中に放り込んでも、まだ余る様な世界一の大河である。特にペルウ、ブラジル、アルゼンチン等の原野には、日本の柿の木の如うな綿の木が所々に天然に繁茂し、青、黄、赤、紫、白等自然の色を保つた綿が年中梢にブラ下つてゐる。又竹の如きも日本内地のすすき株の様にかたまつて生え、太さは横に切つて、棺桶や手桶が造れる位である。蕗の如きは一枚の葉の下に十人位集まつて雨を凌ぐことが出来るやうなのがある。牛馬羊豚などは際限もなき原野に飼放しにされてゐるが、それでも持主はめいめい定まつてゐる。味の良き苺やバナナ、無花果などは少し低地になると厭になる程沢山に出来てゐる。そして猿に鹿、野猪などは白昼公然と人家近くよつて来て平気で遊んでゐる。鷹のやうな蝶や蝙蝠、又蜂のやうな蟆子、雀のやうな蜂、拳のやうな蠅が風のまにまに群をなしてやつて来ることもある。すべてが大陸的で日本人の目から見れば実に肝を冷すやうなこと計りである。乍併瑞月は伊予の国道後温泉のホテルの三階に横臥したまま目に映じたことを述べたに過ぎないから、或は間違つてゐるかも知れない。南米の事情に詳しき人が此物語を読んだならば、始めて其虚実が分るであらう。只霊眼に映じた儘を述べたに過ぎない。 三五教の宣伝使国依別命が、神素盞嗚大神、言依別命の命に依り、瑞の御霊の大神が八人乙女の末女末子姫に娶ひて、アルゼンチンの珍の都の国司となりしより、天下泰平国土成就して四民和楽し、珍の天国を永久に築き上げ、国民は国司の仁徳を慕ふて、天来の主師親と仰ぎ仕へまつることとなつてゐた。然るに常世の国よりウラル教の思想何時とはなく、交通の発達と共に輸入し来り、日を追ひ月を重ねて、漸く国内には妖蔽の兆を呈して来た。到る所に清家無用論や、乗馬階級撤廃論が勃発し、互に党を作り派を争ひ、さしもに平和なりしアルゼンチンは、漸く乱麻の如き世態を醸成するに至つたのである。国依別は漸く年老ひ、城内の歩行にも杖を用ゐるに至り頭に霜を戴き、前頭部は殆んど電燈の如くに光り出した。末子姫も漸く年老ひ、中婆さまとなつて了つた。国依別末子姫二人の中に国照別、春乃姫といふ一男一女があつた。国照別は父国依別の洒脱にして豪放な気分を受け、幼少より仁侠を以て処世の方針としてゐた。そして清家生活を非常に忌み嫌ひ、隙間があれば、城内をぬけ出し簡易なる平民生活をなさむと考へてゐたのである。 国司を補佐して忠実につとめてゐた松若彦、捨子姫も漸く年老ひ、松依別、常盤姫の二子をあげてゐた。そして松若彦の部下に伊佐彦、岩治別の左右の重職があつて、松若彦の政務を補佐しつつあつた。 神素盞嗚の大神が皇大神の経綸を 遂行せむと斎苑館後に眺めてはるばると 天の岩樟船に乗りアルゼンチンの珍の国 珍の都に天降りまし八人乙女の末子姫 国の司と定めつつ国依別の神司 夫と定めて合衾の式を挙げさせ勇み立ち 再びフサの産土の厳の館に帰りしゆ 三十三年の星霜を経にける今日の都路は 薨も高く立並び数十倍の人の家 建てひろがりて南米に並ぶ者無き大都会 交通機関は完成し数多の役所は立並び 大商店は櫛比して昔のおもかげ何処へやら うつて変りし繁栄に驚かざるはなかりけり 国依別と末子姫二人の中に生れたる 国照別や春乃姫容色衆にぬきんでて 珍の都の月花と南米諸国に鳴りわたり 若き男女の情緒をばそそりて血をばわかせたる 遠き神代の物語褥の上に横たはり 言霊車ころぶまに面白可笑しく述べて行く あゝ惟神々々御霊幸ひましませよ。 珍の都の高砂城内評定所の別室には、大老松若彦を始め、伊佐彦、岩治別の老中株が首を鳩めて秘密会議を開いてゐた。空はドンヨリとして何となく蒸暑く、一種異様の不快な零囲気が室内を包んでゐる。松若彦は二人の老中株に打向ひ、水ばなをすすり乍ら、骨と皮との赤黒い腕を前へニユツと出し、招猫宜しくの体で歯のぬけた口から、慄ひ慄ひ先づ火葢を切つた。 『御両所殿、今日は御多忙の処早朝より能く御来城下さつた。今日御招き申したのは、折入つて御両所に相談したきことがあつて、自分の決心を忌憚なく吐露し、御両所の御援助を得たいと思ふのだ』 と云ひ乍ら、コーヒーを一口グツと飲んで、顎鬚にしたたる露を、分の厚いタオルでクリクリと二三遍拭ふた。 伊佐『御老体の身を以て、何時も国家の重職に身命を捧げ下さる段、誠に感謝に堪へませぬ。そして今日吾々をお招きになつた御用件は如何なる事か存じませぬが、吾々の力の及ぶ事ならば、国司の為、珍の国の為、あらむ限りの努力を払ふで厶いませう』 松若『イヤ、それを聞いて松若彦安心を致した。岩治別殿、貴殿も亦伊佐彦殿と御同感で厶らうなア』 岩治『いかにも、左様、吾々は元より身命を君国の為に捧ぐる者、閣下の御言葉に対し一言半句たり共、違背致す道理は厶いませぬ。乍併今日の世は大に改まつて居ります。革新の気分が漲つて参りました。それ故慨世憂国の吾々、閣下の御言葉に依つては或は国家の将来を慮るについて背かねばならないかも分りませぬ。そこは予め御承知を願つておきます』 松若『成程貴殿の云はるる通り、今日の社会は昔日の社会ではない。日進月歩殆んど止まる所を知らない世の中の情勢で厶る。就ては松若彦が御両所に御相談と申すのは、御承知の通り老齢職に堪へず、大老の職を辞し、新進気鋭の御両所に吾が職を譲り、退隠の身となり、光風霽月を楽しみ、閑地につきたいと欲するからで厶る。何と御両所に於て吾が希望を容れ、後任者たる事を承諾しては下さるまいか』 伊佐『これは怪しからぬ閣下の仰せかな。閣下は珍一国の柱石では厶らぬか。上下の一致を欠き、清家と衆生との争闘烈しき今日、国家の重鎮たる閣下が今日の場合、万々一退隠さるる様の事あつては、それこそ乱れに紊れし国家はいやが上にも争乱を勃発し、社稷を危うするの端を開くのは最も明かなる道理で厶る。何卒此儀許りは思ひ止まつて頂きたう存じます』 松若『貴殿の勧告は一応尤も乍ら、老齢職に堪へざる身を以て国家重要の職に居り、後進者の進路を壅塞し、国内の零囲気をして益々腐乱せしむるは、拙者に於て忍びざる所、何卒々々吾希望を容れ、御両所の中に於て大老の職を預かつて貰ひたい』 岩治『成程、松若彦様のお言葉の通り、齢幾何もなき老人が国政を執るは国家の進運を妨ぐること最も甚しく、且惟神の大道に違反するものならば、お望みの通り御退隠なさいませ。拙者は実の所は数年前より只今のお言葉を期待して居りました。実に賢明なる閣下の御心事、イヤ早感激の至りに堪へませぬ』 伊佐彦は憤然として言葉をあららげ、 『コレハコレハ御両所共、以ての外のお言葉、左様な意志薄弱なる事では民を治むる事は出来ますまい。飽く迄も国家の為に犠牲的精神を発揮遊ばすのが大老の御聖職では厶らぬか。岩治別殿は松若彦様に対し、御諌言申上ぐることを忘れ、自ら其後釜に坐り、畏れ多くも、国司様の代理権を執行せむとする其心底野望の程、歴然と現はれて居りますぞ。左様な野心を有する役人が上にあつては、下益々乱れ遂には収拾す可らざる乱世となるでせう。拙者はあく迄も松若彦様の御留任を希望して止みませぬ』 岩治『これは怪しからぬ伊佐彦の言葉、拙者は決して野心なんか毛頭持つてゐませぬ。よく考へて御覧なさい。松若彦様は已に御頽齢、かやうな時には、新進気鋭の若者でなくては国家を支持し、民心をつなぐ事は出来ますまい。さすが賢明なる松若彦様、此間の消息を御推知遊ばされ、進んで自決の途に出でられたのは天晴国家の柱石と称讃申上ぐる外はありますまい。及ばずながら御心配下さるな。みごと拙者が松若彦の後任者となつて、上は国司に対し、下国民に対して、至真至粋至美至愛の善政を布き、珍の天地を神素盞嗚大神が降らせ玉ひし、昔の天国浄土に立直して御覧に入れませう』 伊佐『おだまりなされ。貴殿は老中の地位に在りと雖、無能無策、到底国家の重任に堪へざるは、上下一般の認むる所で厶る。常に大言壮語を吐き、私立大学を創立して不良青年を収容し、国家顛覆の根源を培ふ悪魔の張本、到底城中の政治を左右する人格者では厶らぬ。それだと云つて外に適任者はなし、御苦労乍ら松若彦様に今一度の御奮発を願はなくては、忽ち貴殿の如き非国家主義者が政権を掌握さるる事となつて了ふ。之れ国家の為に最も恐るべき大事変で厶る。貴殿にして一片報国の至誠あらば体よく老中の地位を去り、爵位を奉還し、野に下つて、民情をトクと視察し其上更めて意見を進言なされ。此伊佐彦のある限り、どこ迄も貴殿の欲望は遂げさせませぬぞ』 松若彦は心の中にて……到底今日の世の中、今迄通りではやつて行けないことは、百も千も承知してゐた。されど投槍思想を帯びた岩治別に政権を渡せば、忽ち国家の根底を覆すであらうし、真に国家を思ふ伊佐彦に政権を渡せば、時勢おくれの保守主義を振りまはし、益々民心離反の端を開くであらう、ハテ困つた事だなア、退くには退かれず進むにも進まれず、国内一般の民情を見れば、上げもおろしも、自分の力ではならなくなつて来た。到底清家政治や閥族政治のいつ迄も続くべき道理がない…否斯の如く乗馬階級の政治的権力は最早最後に瀕してゐる。何とかして国内の空気を一新し、人心の倦怠を救ひ、思想の悪化を緩和し、上下一致の新政を布きたいものだ。あゝ何うしたら可からうかな、……と水ばなをすすり、腕をくみて両眼よりは涙さへ滴らしてゐる。三人は何れも口を噤んで互に顔を見守つてゐる。 そこへ浴衣の上へ無雑作に三尺帯をグルグル巻にして鼻唄を唄ひながらやつて来たのは国照別であつた。 国照『ヨー、デクさまの御集会かな、到底、干からびた古い頭では、碌な相談もまとまりはしまい、…ヤアー松若彦、お前は泣いてゐるのか、お前もヤツパリ年が老つた加減か、余程涙つぽくなつただないか、……ヤア保守老中の伊佐彦に投槍老中の岩治別だな、…ヤ面白からう、一つ大議論をやつて退屈ざましに僕に聞かしてくれないか。僕も実の所は清家生活がイヤになつて、どつかへ飛出さうと思つてゐるのだが、何をいつても籠の鳥同様、近侍だとか、衛士だとか旧時代の遺物が僕の身辺にぶらついてゐるものだから、何うすることも出来やしない。之も要するに頭の古い大老の指図だらう。僕の親爺は、決してこんな窮屈なことは、好まない筈だ。オイ酒でも呑んで、いさぎようせぬかい。高砂城内で涙は禁物だからのう』 松若彦は手持無沙汰に涙をかくし乍ら二三間許り座をしざり、畳に頭をすりつけ乍ら、 『コレハコレハ、若君様で厶いますか、エライ御無礼を致しました。何卒々々神直日大直日に見直し聞直し、無作法をお赦し下さいませ』 国照『オイ、爺、ソリヤ何をするのだ。左様な虚礼虚式的な事は、僕は大嫌ひだ。モウちつと活溌に直立不動の姿勢を執つて、簡単に挙手の礼をやつたら何うだ、余りまどろしいぢやないか』 松若『恐れ入りました。併し乍ら城内には城内の規則が厶いますから、有職故実を破る訳には参りませぬ。礼なくんば治まらずと申しまして、国家を治むるには礼儀が第一で厶いますから、之計りは何程お気に入らなくても許して頂かねばなりませぬ。之は珍の国の国粋とも申すべき重要なる政治の大本で厶います。礼儀なければ国家は直にみだれ、長幼の序は破れ、君臣父子夫婦の道は亡びて了ひます』 国照『ウンさうか、それも結構だが、お前が若しも国替をして、居らなくなつても、有職故実は保存されると思うてゐるのか、今日の人間の心はそんなまどろしい事は好まないよ。何事も手つ取早く埒をつける事が流行する世の中だ。昔の様に歌をよんだり、長袖を着てブラブラと遊んで居つた時代とは世の中が変つてゐる。昔の百倍も千倍も事務が煩雑になつてゐるのだから、そんな辛気臭い事は到底、永続すまいよ』 岩治『実に痛み入つたる若君様のお言葉、岩治別、実に感激に堪へませぬ。斯の如き若君様を得てこそ、珍の国家は万代不易、国家の隆昌を期する事が出来るでせう。親君様は最早御老齢、何時御上天遊ばすかも知れぬ此場合、賢明なる若君様の御心を承はり、岩治別、イヤもう、大変な喜びに打たれ、勇気が勃々として湧いて参りました。此若君にして此臣あり、老中の仲間に加へられたる吾々なれど、未だ心まで老耄はして居りませぬ。何卒若君様、微臣を御心にかけさせられ、重要事務は微臣に直接御命令下さいませ。松若彦殿は老齢職に堪へずとして、只今吾々の前に辞意をもらされました』 国照『ウンさうか、松若彦もモウ退いても可いだらう。伊佐彦も随分古い頭だから、此奴も駄目だし、岩治別は少し許り今日の時代に進みすぎてるやうでもあり、又遅れてるやうな所もあり、到底完全な政治はお前たちの腕では出来相もない。僕が親爺に勧告して退職をさせ、簡易なる平民生活に入れてやり、安楽な余生を送らせたいと思つてゐるのだから、一層のこと、お前たちも大老や老中なんか廃して、安逸な田園生活でもやつたら何うだ。僕も大に覚悟してゐるのだからな』 三人は国照別の顔を無言のまま、盗む様にして打守つてゐる。国照別は無雑作に、 『高砂城の床の置物、無神経質の骨董品殿、三人よれば文珠の智慧だ。トツクリと衆生の平和と幸福とを擁護し、人民の思想を善導すべく神算鬼謀を巡らしたが可からう。あゝ六かしい皺苦茶面を見て肩が凝つて来た。ドーラ、馬にでも乗つて馬場でもかけ廻つて来うかな』 と云ひすて、足音高く奥殿さして進み入る。後見送つて松若彦は又も涙を垂らし乍ら、 『肝心要の後継者たる若君様が、あのやうなお考へでは最早珍の国家は滅亡するより仕方ない。あゝ困つた事になつたものだ、なア伊佐彦殿』 伊佐彦は真青な顔して、唇をビリビリふるはせ乍ら禿げた頭をツルリと撫で、 『閣下の云はるる通り、困つた事で厶る。どうして珍の衆生を安穏ならしめ、お家を永遠に栄ゆべき方法を講じたら宜しう厶いませうか。深夜枕を擡げて国家の前途を思ひみれば、実に不安の情に堪へませぬ』 岩治『アツハヽヽ、此行詰つた現代を流通させ、衆生が皷腹撃壤の天国的歓楽に酔ひ、各業を楽む善政を布くは何でもない事で厶る。御両所等は斯う申すと憚り多いが、頑迷固陋にして時代を解し玉はざる為で厶いませう。時代の潮流を善導してさへ行けば、珍の衆生は国司の徳を慕ひ、忽ち天国の社会が展開されるは明かな事実で厶いますぞ。兎も角退隠遊ばすが国家の進展上第一の手段だと考へます。徒に旧套を墨守して衆生の心を抑へ、社会の進歩を妨ぐるに於ては何時如何なる大事が脚下から勃発するかも知れませぬぞ。拙者は決して自己の権利を得むが為、又は政権を壟断せむが為に論議するのではありませぬ。国家を救ふのは拙者の考ふる所を以て最善の方法と思ふからです。御両所に於かせられても、速に色眼鏡を撤回して拙者の真心を御透察下さらば、自らお疑が解けるでせう』 松若『侫弁を以て己が野心を遂行せむとする貴殿の内心、いつかないつかな、其手に乗る松若彦では厶らぬ。及ばず乍ら拙者は珍の国の柱石、かくなる上は最早御心配下さるな。拙者は命のあらむ限り、君国の為に、老齢乍ら奮闘努力致して見よう。就いては伊佐彦殿、今日只今より岩治別に対し、老中の職を解くから、貴殿もさう考へなされ。そして今後は何事も拙者と御相談な仕らう』 伊佐彦は喜色満面に泛べ乍ら、「ヤレ邪魔者が排斥された」……と云はぬ許りの態度にて、 『閣下の仰、御尤も千万、国家の為、謹んで祝し奉ります。岩治別殿、大老よりのお言葉、ヨモヤ違背は厶るまい。サア速に此場を退出召され』 と居丈高になつて罵つた。 岩治『これは怪しからぬ両所のお言葉、拙者は貴殿等より任命された者では厶らぬ。永年国務に鞅掌致した功労を思召され、国司より老中の列に加へられたる者、然るを大老の身を以て吾々に免職を言ひつくるとは、実に不届き千万では厶らぬか。貴殿等は神権を無視し、国政を私するものと言はれても遁るる言葉は厶りますまい。乱臣賊子とは貴殿等のことで厶る』 と居丈高になり声荒らげて睨めつけた。 松若彦、伊佐彦は目配せし乍ら、ソツと此場を立つて国依別国司の御殿に進み入る。 後に岩治別は双手を組み、越方行末のことなど思ひ浮かべて、慨世憂国の涙にくれてゐた。そこへ若君の国照別はあわただしく只一人入来り、 『オイ、岩治別殿、一時も早く裏門より逃れ出でよ。汝を捉へて獄に投ぜむと、二人の老耄爺が大目付を呼び出し手配りさしてゐる。サア、時遅れては取返しがつかぬ、早く早く』 とせき立てた。岩治別は挙手の礼を施し乍ら『ダンコン』と只一言を残し、夕暗を幸ひ、姿を変じて裏門より何処ともなく消えて了つた。 三五の月は東の山の端を照して、高砂城内の騒ぎを知らぬ顔にニコニコと眺めてゐる。 (大正一三・一・二二旧一二・一七於伊予山口氏邸、松村真澄録) |
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霊界物語 | 70_酉_トルマン国の国政改革 | 08 大勝 | 第八章大勝〔一七七五〕 トルマン国の太子チウインは王女チンレイ、及びハリスの女将軍を別将となし、武勇のほまれ高きジヤンクを第一軍の司令官と仰ぎ、三五教の宣伝使照国別及照公司を殿となし、鉦皷をうちならし、旗差物賑々しく、二千五百騎を従へ、吾居城を攻囲む大足別の大軍を殲滅すべく軍歌を唄ひ乍ら、夜を日に次いで帰り来る。山河草木威風になびき、禽獣虫魚に至る迄、其威徳を讃美せざるはなかつた。チウイン太子は馬上豊に進軍歌を唄ふ。 『トルマン国は昔より尊き神の造らしし 地上に於ける天国ぞ吾王室の祖先等は 民の心を心とし神の教を万民に 伝へ諭して世の中をいと平けく安らけく 治め給ひし尊さよ中つ御代よりバラモンの 悪き教のまじろひて愛国心は日に月に 春の氷と消えてゆく父ガーデンもいつしかに 時代の風にもまれましウラルの神の御教を 軽んじ玉ふ世となりて政治は益々紊れゆき 民の悲鳴はかまびすく千鳥の如く聞え来る アヽ吾々は如何にせむ倦みつかれたる人心を 雄々しき清き雄心に復活せしめ吾国を いと平けく安らけく昔の神代の其儘に ねぢ直さむと真心を尽して神を祈る折 バラモン教の別派なるスコブツエン宗が渡り来て 吾が国民の魂を狂ひ惑はせ邪教をば 植つけたるぞ忌々しけれ大黒主の勢力を 大看板と押立てて吾王室に迫り来る 心汚きキユーバーを打ち懲しつつバラモンの 大足別が軍勢を神の威徳に打破り 凱歌を挙げて本城を安全無事に治む迄 死す共動かぬ吾心勇めよ勇め振ひ起て 三千余騎の吾兵士吾れには神の助けあり 産土山の斎苑館輝き給ふ素盞嗚の 神の尊の御使照国別の宣伝使 照公司と諸共に吾等が軍を助けまし 天下無敵の言霊を打出し給へば敵軍は 風に木の葉の散る如く敗走せむは目のあたり 進めよ進めいざ進め大足別の亡ぶ迄 妖僧キユーバーの倒る迄』 と声も涼しく鉦皷法螺貝の音に和して、鶴翼の陣をはり乍ら、目も届かぬ大原野をチクリチクリと引網の如く、トルマン城を中心に押寄せ来る。 照国別は殿を勤め乍ら、数百の兵を引連れ、別に一隊を造り、進軍歌を歌ひつつ進み寄る。 『三五教の宣伝使吾は照国別司 人の命を奪ひ合ふ戦に臨むは本意ならず さはさり乍ら今になりトルマン国の窮状を 見すてて通るも大神の道に仕ふる吾として 心苦しき此場合止むを得ざれば御軍に 加はり乍ら後陣を仕へまつりて進み行く あゝ惟神々々神は吾等と共にあり 吾等は神の子神の宮素より刃に血汐ぬり 敵を斃さむ心なし只惟神々々 神の恵の露の玉清き心の大砲に つめ込み敵に相向ひ仁慈の鞭を下すのみ 進めよ進め吾兵士トルマン城は近づきぬ ガーデン王や左守司今や防ぐに全心を 傾注しつつ吾軍の至るを待たせ玉ふらむ チウイン太子の前軍は何れも神命に従ひて 左右の指の其如く自由自在に活動し 容易に敵を国外に放逐せむは目のあたり 必ず驚く事勿れ勇めよ勇め皆勇め 勝利の都は近づきぬ進めよ進めいざ進め 大足別が神軍に白旗を掲げ真心の あらむ限りを現はして正しき神の御教に 心の底より服ひて前非を悔ゆるそれ迄は 汝等一歩も退くな神国成就の先がけぞ 七千余国の月の国奪ひ取らむとバラモンの 大黒主は企めども吾神軍のある限り いかで一指をそめ得むやあゝ勇ましし勇ましし 吹き来る風はあらくともトルマン川は深くとも 神の守りのある上は一騎半騎も過たず 無事安泰に敵軍の後を首尾よく突くを得む 進めよ進めいざ進め敵の姿もみえかけた 一斉射撃も目のあたりあゝ惟神々々 三五教を守ります国治立の大御神 神素盞嗚の大神の御前に照国別司 畏み畏み願まつる』 かく歌ひ乍ら、士卒を励まし、前後に心を配り、チクリチクリと前進する。大足別は物見台より此体を見て大に驚き、 『あれは確に援軍ならむ、最早斯くなりし上は、キユーバー一人の為に時期をおくらせ、敵の術中に陥らむ事最も心苦し、一時も早く本城を乗り取り、援軍の来らば城廓を盾に一人も残らず鏖殺しくれむ、攻撃するは今なり』 と俄に部下に厳令を下し、一斉に筒先揃へて、トルマン城さして潮の如く押寄せた。 俄に聞ゆる鬨の声、大砲小銃の音、待ち構へたるガーデン王、左守司は五百の城兵を指揮し、力限りに挑み戦ふ。左守は頭に霜を頂き乍ら、城門をかけ出し、三百の手兵を以て、敵の陣中に打入り、奪戦苦闘の結果武運つきて、馬上より転落し、敵の為に七十年を一期として、帰らぬ旅路に就いた。大足別は勝に乗じて表門に押寄せ、今や殆ど落城せむとする時しも、千草姫、キユーバーの二人は薙刀を引抱へ、表門に躍り出で、大足別を見るよりキユーバーは声を励まし、 『大足別、暫くまたれよ、キユーバー司茲に在り。千草姫の応援あらば急ぎ玉ふな、本城は已に吾手に入れり』 と馬上より大声叱咤すれば、大足別は身をかわし城門を背にして、攻め来る応援軍を相手に防ぎ戦ふ。城内よりはガーデン王の兵数百人、砲を揃へて一斉に射撃を開始し、大足別は前後左右に敵を受け、四方八方に馬をすて、武器をすて、命からがら散乱した。此戦に仍つて、死する者バラモン軍に十八人、城内には二人の死者を出したのみであつた。チウイン太子は敵の脆くも逃行く体を見て、此際敵兵を追撃し、一人も残らず屠りくれむと息まくを、照国別の忠告によつて之を中止し、凱歌を奏して正々堂々、トルマン城に凱旋することとなりぬ。ガーデン王は物見櫓に打登り、城内の強者を指揮してゐたが、敵の無残な敗走と、チウイン太子の雄々しき活動振に勇み立ち、軍扇を開いて櫓の上にて自ら歌ひ乍ら、凱旋の祝気分で舞ふてゐる。 王『トルマン国を包みたる醜の黒雲今晴れて 天津日嗣は空高く輝き玉ふ目出度さよ 地上遥に見わたせば都のまはりに敵影の 一人も無きぞ目出度けれ之も全く皇神の 御国を守り玉はむと助け玉ひしものならむ いざ之よりは天地の神を敬ひ国民の 模範となりて浦安の昔の神代を建設し 大黒主の心胆を脅かしつつ又しても 吾神国に相対し敵対行為を断念すべく 守らせ玉へウラル教開き玉ひし大神の 御前に祈り奉る』 斯くする折しも、大足別は道々市街に火を放ちたりと見え、夕暮の空、朱を濺ぐ迄、炎各所にあがり、遠近より悲惨の声聞え来る。此時恰も照国別は門内にありしが、之を見るよりまつしぐらに物見櫓にかけ上り、照公と共に天の数歌を奏上し、天津祝詞を奏上するや、四方に起りし火災は忽ち水を打ちし如く治まり、再び聞ゆる歓喜の声に、ガーデン王も太子も王女もハリスも手を打つて感喜した。王は部下に令を下し、左守右守の遺骸を王室の墓所に特別を以て葬り、国家の守護神として祠を建て、永遠に祭祀する事とした。又チウイン太子の奏上に依り、照国別、照公司の仁義の応援と、大神の神徳とを聞き、感謝の余り、三五の大神を鎮祭せむ事を誓ふに至つた。王は戦塵治まり、一先づ大神に感謝し乍ら、後の始末をチウイン太子及ジヤンク其他の重臣に命じおき、休養せむと千草姫の居間に帰り見れば、千草姫はキユーバーと共に、莞爾として相向ひ祝の盃をくみかはして居る。王は見るよりクワツと怒り、 『不義者見つけた、そこ動くな』 と手槍を以て立向へば千草姫は王の手に取付き、 『王様、少時お待ち下さいませ。此神柱は決して国に仇する悪人では御座いませぬ。大足別に脅迫され、心にあらぬ詐りを申し立て、此城内に忍び込み、妾に事情を打明し、救ひを求めて居る者で御座います。今此キユーバーをして、神主となし大神に国家安泰の祈願をし、凱旋の御礼を申上げ、直会の神酒を頂かせて居つた処で御座います。必ず必ず誤解のなき様御願ひ申し上げます』 と落涙し乍ら言葉さかしく弁解する。ガーデン王も忠実なる姫の言葉を疑ふに由なく、其儘差許す事となり、己が居間へと帰りゆく。高姫の霊と憑り変つた千草姫はキユーバーに向ひ、 『コレ、キユーバーさま、貴方は本当に危ない事で御座いましたよ。妾も王様のお出になつた時は何うなる事やらと、大変に心をもみました』 キユーバーは慄ひ乍ら、 『全くだ、お前の為に大切な命が助かつたのだ。併し乍らどうだらう、大足別将軍は脆くも敗走した様子だし、遠からず私は当城を追出さるるに違ひない。さうなれば恋しいお前と添ふ事が出来ぬ。何とかして夜陰に乗じ、此城内を脱け出す心はないか』 千草『ホヽヽヽヽ、キユーバー様の気の弱い事、そんな御心配がいりませうか。王様は私の美貌にゾツコン惚込んでゐられますよ。貴方は何処までも救世主と名乗つて、神さまいぢりをしてゐて下さいませ。何程王様が御立腹遊ばさうが、重臣が何と申さうが、千草姫此世にあらむ限りは、貴方様に指一本さえさせませぬ。暫くは両人共猫をかぶり、時期の至るを待つて此王城を奪ひ、七千余国の覇者とならうでは御座いませぬか』 キユ『成る程、其奴ア面白からう。そんなら姫の仰せに任せ、此城内に永久に止まる事としよう』 千草『ハ、さうなさいませ』 斯く話す時しもチウイン太子は軍功を誇り顔に、王女チンレイ及右守の娘ハリスと共にドアを開いて入来り、 『母上様、御無事で御目出たう御座います。おかげを以て敵軍を撃退致しました。どうかお喜び下さいませ』 千草『ヤ、其方は太子、天晴れお手柄お手柄。其方こそトルマン国の柱石、ガーデン王の嗣子として恥しからぬ偉丈夫だ。サア草臥ただらう、ゆつくり休んで下さい。其方はチンレイ、ハリス、能くマア女の身を以て凛々しい武者振、母も感じ入りました』 太子は妖僧キユーバーを見て目を丸くし乍ら、 『母上様、此処にゐる坊主はスコブツエン宗の邪教を開き、大足別の軍勢を導いたる悪僧では御座いませぬか。かかる魔者を何故御居間に侍らせ、優待遊ばすのですか。チウイン、其意を得ませぬ』 千草『如何にも此方はキユーバー様に違ひない。併し乍ら、大足別が手先となり当城へ談判にお越になつたのも、止むを得ぬ事情あつての事、此母がとつくとキユーバー様の心底を調べ、大足別の秘密を探り、キユーバー様の応援によりて無事に敵を撃退する事を得たのだ。此母が保証するから、必ず必ず疑うてはなりませぬぞ。チンレイもハリスも必ず誤解しちやなりませぬ。母が証拠だから……』 ハリス『ハイ、畏れ入りまして御座います。太子様、王女様は申すに及ばず、妾の如き孱弱き女の身として戦陣に立ち、勝利を得たのも神様の御蔭、キユーバー様の御尽力の致すところで御座いませう。併し乍ら吾父右守は如何なりまして御座りまするか』 千草『右守殿は国家の為犠牲者となつて国替遊ばしたよ。キツト神様に導かれ、天国にお出になつてゐるだらう。必ず必ず心配致されな。千草姫が其女の身は引うけて世話を致すから……』 ハリスは『ハイ』と言つたきり、父の死を聞いて驚愕し、其場に気絶して了つた。チウイン太子は水よ薬よと種々手を尽し、漸くにして息ふき返さしめ、吾居間をさしてチンレイと共に伴れ帰り行く。 (大正一四・八・二三旧七・四於丹後由良秋田別荘松村真澄録) |
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霊界物語 | 72_亥_スガの港(宗教問答所) | 筑紫潟 | 霊界物語特別篇筑紫潟 世は烏羽玉の闇となり山河草木ことごとく 言問ひさやぐ世の中を常磐堅磐の松の世に 治めむ為めと厳御魂天津御神の御言もて 豊葦原の瑞穂国綾の高天に天降りまし 至善至美なる御教を蒼生に説き諭し 朝は東夜は西南船北馬の難を越え 神の稜威も伊都能売の天津誠を宣べませど 悪に溺れし世の中は神の言葉に服はで 力かぎりに刃向ひつ沐雨櫛風の苦業さへ 水泡に帰せむとなせし折天津御神は畏くも 厳の御霊の杖柱珍の御教を助けむと 瑞の霊を下しまし瑞穂の国の中心に 高天原を築かせつ経と緯との機をおり 心も清き紅の錦の教を垂れたまふ 手段となして畏くも明治は二十五年より 天津御神の御心を筆に写して詳細に 蒼生に教へます其神文を一々に 清書せよと命ぜられ飛び立つ許り勇み立ち 止め度もなしに慢心の階段えちえち攀登り 神の見出しに預りし吾こそ真の信仰と 心の黒き黒姫が神書の心をとり違へ 瑞の霊の宣り言を残らず曲と貶しつつ 小北の山に巣ぐひたるウラナイ教の偽教主 鼻高姫と諸共に魔我彦誘ひ聖地をば 後に見捨てて出でてゆくいよいよ陰謀七八分 成功なさむとせし時に瑞の霊は厳かに 天の岩屋戸押し開き天地に塞がる叢雲を 伊吹払ひに払ひまし御空は忽ち五色の 祥雲棚曳き日月の清き光に曲神の 頭を忽ち射照せば黒姫身魂に巣食ひたる 常世の国の曲神は汚れし身体ぬけ出し 力も落ちて身体は忽ち神の冥罰を 被り百日百夜の修祓うけて敢へなくも 命の親と頼みたる高山彦を残し置き 黒白も分かぬ烏羽玉の暗き黄泉路に旅立ちて 八衢街道の四つ辻に鼻高姫の精霊と 出会し種々の物語り天国地獄の問答を いと諄々と初めける其の経緯を瑞霊 或夜の夢に八衢に精霊出でて聞き取りし 一伍一什の顛末を茲にあらあら述べ立つる 時は昭和の第二年新の十月十九日 神に心を筑紫潟肥前の国の島原の 南風楼の二階の間北極星を枕とし 加藤明子に筆とらせ口解きたる物語 述ぶるも楽し惟神神のまにまに初めゆく あゝ惟神々々御霊幸倍坐しませよ。 天地寂然として黒雲漲り、濃霧は四辺を包み、昼なほ暗き夜の如くにして咫尺を弁ぜず、蒸暑き嫌らしき悪臭を帯びたる空気身辺を襲ふ。八万地獄の草枕、旅に出で立つ黒姫の曲の精霊は、唯一人小声に呟きながら、猶現界に吾肉体のあるものと信じ、 黒姫『いよいよ世の終末は近づけり、日月天に輝けども、世道人心紊乱の極に達し中空に妖雲起りて下万民、飢渇に苦しむ。時は今なり時は今なり、妾こそは、厳の霊の恩命を拝し、此暗黒の世をして光明世界に転換すべき大責任を双肩に担へり。あゝ高山彦は、何を苦しみてか躊躇逡巡する、日の出の神の肉の宮、高姫司は何処にありや。神諭に云ふ世の終りの時至らば、至誠至実の神柱三人あれば可なりと聞く、その三人とは、竜宮の乙姫殿の肉の宮此黒姫の身魂を初め、日の出の神の肉宮とあれます小北山の高姫司、高山彦をおきて外に誠の神柱は世に非じ、あゝ思へば思へば吾が身魂の責任の重且つ大なる、古今其比を見ず、東西其例を聞かず。変性女子の身魂と自称せる彼贋神柱が末路を見よ、彼が光は螢火にも如かず、彼若し真の瑞霊なりせば此世の終末に際し、一大火光となりて、せめては地上の低空を飛翔往来し万民の目を醒ませ、神聖の神国を樹立すべきに非ずや。口先ばかりの瑞霊、其影の薄きこと、冬の夕日に如かず。あゝ至れり至れり、吾が願望の成就の時期、高姫来れ、高山彦、吾につづけ』 と呼ばはりながら、木枯荒ぶ茅野原を、神官扇を右手に持ち、左手にコーランを携へて、八衢街道の入口に、かかる折しも向ふより、脛も現はにいそいそと、金剛杖をつき乍ら、髪振り乱しだん尻を、ぷりんぷりんと右左、振舞ひながらやつて来る。女は云はずと知れた小北山、日の出の神と自称する高姫司の精霊ぞ。 高姫『マアマアマアマア、黒姫さまぢやないかいな。此処は何処ぢやと思つて居ますか。生前に日の出の神の云ふ事を、半信半疑の態度で聞いて居たものだから神罰は覿面、お前さまはこれから地獄の旅に向ふのぢやないか。生前には比較的豊満の霊衣もすつかりと剥脱され、形ばかりの三角形の霊衣を額に頂いて居るスタイルは、まるきり地獄の八丁目を歩いとる亡者ですよ。あゝもう今となつては此日の出神の生宮も、お前さまを助ける訳には行きませぬわ、マアマアマアえらい事になりましたなア』 と目を丸うし、口を尖らして名乗りかけた。 黒姫『どこの乞食婆がやつて来るのかと思へばお前さまは高姫さまぢやないか、此頃は天地暗澹として四辺暗く、空気が悪いのでまあまあ気の毒な、持ち前の病気が出て発狂しなさつたのだらう。些と確りして貰はぬと竜宮の乙姫の肉宮も困るぢやありませぬか、ホヽヽヽ。あのまあ小むつかしいスタイルだこと、こんな所を大将軍様にお目にかけたら千年の恋も一度にさめますぞや』 高姫『ほつといて下さい、黒姫さま、お前さまは聖地に於て慢心した結果、日出神の教に背き、神罰を蒙つて百日百夜の修祓を受け、筍笠のやうに骨と皮とになつてお国替へをなさつたのぢやないか。それでもまだ現界に生きて居る積りですか。何とまあ慢心した身魂の迷ふたのは可愛さうなものだなア。あゝ底津岩根の大ミロク様、此黒姫さまも一度は竜宮の乙姫の肉の宮迄勤めた神界の殊勲者ですから、如何なる罪がありませうとも、神直日大直日に見直し聞き直し、どうか地獄行きだけはお許し下さいまして、せめては第三天国の入口迄なと上てやつて下さいませ、惟神霊幸倍坐世』 と両眼より玉の涙を滴らせながら、天に向つて合掌する。 黒姫『高姫さま、確りして下さい。決してこの竜宮の乙姫は死んだ覚えは御座いませぬよ。お前さま余り慢心が強くて信仰に酔つ払つたものだから、これ程ピチピチして居る私を亡者と間違へてゐるのですよ、なる程百日百夜の修祓を受けたのは事実です。併しまだ死んだ覚えはありませぬ。かう常暗の世の中となつては、世界万民を助ける為めに、底津岩根の大ミロク様の神柱、日出神の生宮を兼たお前さまが確りして貰はなくちや、どうしてミロクの世が建設せられませう。お前さまは、あまり大将軍さまに現を抜かし、恋に眼が眩んで千騎一騎の此場合になつて呆けたのでせう。あゝ高姫さま、気の毒な方ぢやなア、伊都能売の大神様、天の大ミロク様、三千世界の人民が可愛さうと思し召すなら、どうぞこの高姫さまの狂人を本心に立ち直らして下さいませ、高姫さまさへ元の正気にお帰りなされば私の肉体はいつ国替しても構ひませぬ』 高姫『あーあ、仕方のないものぢやな。これ程云うても黒姫さまの精霊殿は判らぬのかいな。エヽぢれつたい、惟神霊幸倍坐世』 黒姫『あゝ高姫さまも判らぬやうになつたものぢやなア、長らく聖地を離れて小北山に陣どり、鰯の昆布巻になつて居るものだから、肝腎の時に、発狂して仕舞つたのだらう。生て居るか、死んで居るか、見分けのつかぬやうになつては、神柱も何もあつたものぢやない。あゝ気の毒だなア』 ○ 高山彦『朝日は照るとも曇るとも月は盈つとも虧くるとも たとへ大地は沈むとも曲津の神は荒ぶとも 誠の心にや叶はない小北の山より遥々と 高姫さまや黒姫が山川千里を越え乍ら 幾十回と限り無く足を運びし熱誠に つい動かされ老骨をひつさげ乍ら神界の 御用の端に仕へむと妻子を後に振捨て 浪花の里に流れ入り花柳の巷も厭ひなく 神の御為め道の為め烏のやうな黒姫を 老後の妻と定めつつ小北の山に往きかへり 贋の教と知らずして日の出神と自称する 高姫さまの筆先を一字も残らず読み尽し 其収穫は五里霧中荒野を彷徨ふ心地にて 三年四年と過ぎけるが皇大神の御心に 背きし為めか黒姫は百日百夜の苦みを 身に受け乍ら淋しげに吾を見捨てて神去りぬ さは去り乍ら人間は神代の昔の因縁を 持ちて生れしものなれば如何に汚き黒姫も 吾が女房と諦めつくだらぬ教を謹みて 聞き居たるこそ嘆てけれ今日は吾妹が昇天の 百日祭になりぬれば心の手向をなさむとて 霊の鎮まる奥津城に花供へむと進むなり 黒姫果して霊あらば吾に一言今迄の 誤解を謝せよ天地の神の御前に平れ伏して 神に背きし罪業を悔い改めて根の国や 底の国なる苦しみをよく助かれよ惟神 神は汝と共ならば必ず地獄の苦を逃れ 天津御国に安々と神の助けに昇るべし あゝ惟神々々頓生菩提黒姫よ 後に残りし吾が命あまり惜くはなけれ共 自殺をなせば天の罪自然に死して汝が後を 慕ひて行かむ其日迄身魂を研いて天国の 神の御苑に復活し半座を分けて吾待てよ 汝が昇天せし後は一人くよくよ老の身の 淋しさ勝る冬の夜衣は薄く歯はふるひ 足もわなわな行き艱むこの窮状を憐みて 国治立の大御神一日も早く黒姫が 御後を追はせ給へかしあゝ惟神々々 御霊の恩頼を願ぎまつる』 斯く歌ひ乍ら 高山彦の精霊は枯草茂る荒野原 杖を力にとぼとぼと八衢さして進み来る 黒姫見るより狂喜して 黒姫『お前は吾夫高さまか何処にどうして厶つたの 合点のゆかぬ事許り日の出神の生宮の 高姫さまが発狂して私を亡者と誤解する 百万言を尽せども心の狂ふた高姫は 私の言葉は糠に釘豆腐に鎹応へなく 如何はせむと思ふ折かすかに聞ゆる吾夫の 声を力に佇めばまがふ方なき吾夫と 知りたる時の嬉しさは百万人の味方をば 得たるが如く思ひます日の出神の生宮の 高姫さまよよつく聞け高山彦のハズバンド ここに現はれます上は私が亡者になつてるか あなたが発狂して居るかいと明白に分るだろう まさかの時の助け舟あゝ天道は人を殺さない あゝ有難し有難し吾夫さま』と縋りつく 高山彦は仰天し 高山彦『これやこれや黒姫迷ふなよお前は此世の人でない 百日百夜の病ひに天命つきて現界を 後に見捨てて行つた者誤解するな』とたしなめば 高姫鼻をつんとかみいとも急はしき口元で 高姫『高山彦がよい証拠お前は亡者に違ひない 早く神言奏上し地獄の関門突破して 天国浄土に行くがよい高山彦に執着を のこしちやならぬ黒姫さま左様ならば』と背を向けて 一目散に駆け出せば骨と皮との瘠腕を グツと伸ばして黒姫が鼻高姫の後髪 むんずと捉んで引き戻す高姫地上に転倒し 高姫『あゝいやらしやいやらしや亡者になつても此通り 執着心の深い婆々地獄に落つるは当然 日の出神は知りませぬこれから高山彦さまに とつつき散々愚知こぼし何んなら冥途の道づれに 伴れて行かんせ左様なら』 悪垂口を叩きつつ又逃げだすを黒姫は 頭に角を立て乍ら線香のやうな手を出して 襟髪グツと引き戻す高姫再び地の上に 転倒したる其刹那姿は煙と消えにけり 高山彦はゾツとして身慄ひしながら逃げ出せば 又もや黒姫後を追ひ 黒姫『悪性男のハズバンドこの黒姫の黒い目を ぬすんで日出の生宮と甘い約束したのだらう 許しはせない』と云ひ乍ら氷の如き冷やかな 拳を固めて打ちおろす全身汗にしたりつつ 高山彦は手を合せ 高山彦『黒姫暫く待つて呉れ三千世界にお前より 外に増す花持たぬぞや左はさり乍ら果敢なくも 散り行く花は是非もなし汝が後をば逐はむかと 天地の神に願ひても業因未だ尽きざるか 死ぬにも死なれぬ身の苦衷察してくれよ黒姫』と 両眼涙を湛へつつことわけすれど黒姫は 白髪頭を横にふり皺涸れ声を張りあげて 黒姫『悪性男のハズバンド黒姫愛想が尽きたぞや 鼻高姫の後を追て尻の世話でもするがよい 煩さい親爺』と云ひ乍ら悋気の角をふりたてて 夜叉の如くに駆出だすかかる折しも天空に 天津祝詞の声聞え梅の花片ちらちらと 四辺に落ちて香ばしくいと爽かな音楽に つれて紫雲をわけ乍ら気高きエンゼル悠々と 下り来るよと見る中に黒姫姿は後もなく 煙と消えて室内に眼くばれば高姫が 黒姫霊璽の前に座し片言交りの祝詞をば 奏上しながら涙ぐみぶつぶつ小言を云ひ居たり 高山彦は夢さめてホツと一息つきながら 鼻高姫の親切を心の底より感謝しつ 庭に出づれば大空に皎々輝く望の月 心も広く伏し拝み感謝の祝詞を奏上し 小北の山へと進み行くあゝ惟神々々 御霊の恩頼ぞ畏けれ。 (昭和二・一〇・一九長崎県島原町南風楼にて加藤明子録) |
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霊界物語 | □_特別編-入蒙記 | 18 蒙古気質 | 第一八章蒙古気質 蒙古の宗教は皆喇嘛教で戸毎に仏壇を鄭重に祀つてゐる。そして喇嘛寺は凡て西蔵式に建てられ、矮小な貧弱な蒙古人に似ず、巍然として雲に聳へ、遠方より凝視すれば恰も立派な洋館が立並んだやうに見える。さうして一つの喇嘛廟には、最も少いのが三百人、多いのになると七八万人の喇嘛が廟を中心として、普通民家とは変つた立派な居宅を構へて大市街をなしてゐる。先年支那政府に背いて独立を宣言し、蒙古皇帝となつた大庫倫の活仏が住んで居る喇嘛廟の如きは、三十万の喇嘛僧が沢山な住宅を並べて住んでゐる。現今では皇帝の位も大活仏の権威も全然有名無実になつて了ひ、露西亜の赤軍が自由自在に我儘を振舞つてゐる。さうして大庫倫には一百七八十万の人口があつて、日本人も数名住つてゐると云ふ事である。それから英、米、仏、露の人間が二万許り住居し、ヤソ教の教会堂も建つて居るが、蒙古人の信者は一人もないと云ふ事である。喇嘛教と云ふのは俗称であつて、喇嘛は蒙古語の僧侶といふ意味で、その実は仏陀教と云ふのが正当である。蒙古では各地の王様よりも活仏の方が上位に居り、国民の信用も尊敬も王様に比して非常に高い。蒙古は喇嘛の国と云はれる程あつて、総人口の四分の一以上は喇嘛である。何れも暗愚な無学な売主坊主計りであつて、蒙古人の尊敬の的となつてゐる活仏でさへも、自分の地位を利用し、沢山な女を姦し、梅毒に悩んで、病毒の伝播を行つて居るのが多い。 一般の蒙古人は貞操の念強く、有夫姦等の忌はしい醜行は微塵も無い。さうして一夫多妻であり乍ら、狭い一つの家に沢山の女房が一所に暮して居て、少しも悋気喧嘩が起らないのである。気候の故と淡白な食物の影響であらうが、蒙古人は余り色情等には趣味を有たぬ人間らしい。 それに引替へ衆生済度の地位にある高僧連は盛んに醜行をなし、風俗壊乱の首魁者となつてゐる。然し乍ら蒙古人は活仏の醜行に対しては少しも咎めない。活仏のお手が掛つた娘は仏縁に依つて立派な夫に嫁しづく事が出来ると云つて寧ろ歓迎してゐる風である。 日出雄は数千里を隔てた蒙古の奥へ来て、其人民からは神の如くに尊敬され、心限りの待遇を受けて、全く大神様のおかげだと喜んで居た。日出雄の神徳は赫々として旭日昇天の如く、遠近の蒙古人に取囲まれて面白き月日を送つてゐた。一時老印君等の支那政府に憚つて稍冷遇をされた傾きがあつたが、之は老印君其外公爺府に仕へて居る二三の役員のみに限つたので、一般人からは少しも冷遇は受けなかつた。又内地人や支那人の狡猾なるに比べて蒙古人は真に天真爛漫、その性情は子供の如く、神代の人の如くである。現代の如き悪化した世の中に、こんな天国があるかと思へば、まだ世の中に活きた生命のある事を楽しく思はれるのである。 さて四月十四日、西北自治軍総司令上将として盧占魁は二百人の手兵を引率し、轎車に乗つて無事公爺府に到着した。盧は直ぐ様仮司令部に入り、其足で日出雄の宿舎を訪ねて来た。日出雄は盧が来たと云ふので門口に出迎へると、盧占魁は大勢の兵士の前で日出雄に抱きついて嬉し泣きに泣いた。日出雄の目にも感慨無量の涙が浮んでゐた。それから盧占魁は鎮国公から送られた純白の乗馬を日出雄に送り、且つ沢山の菓子や果物をすすめて旅情を慰めた。 其後は真澄別が代つて凡ての事務を盧と協議する事となつた、日出雄は歌を詠んだり、詩を作つたり、日記を書いたり、喇嘛や村人に覚束ない蒙古語で神の教を説き諭してゐた。 公爺府の傍に小やかな家があつて、そこの主人は丑他阿里太と云ひ二人の妻君を持つてゐる。さうして一男二女があり、長女を丑他倶喇と云ひ、日出雄が門前を通ると主人が、 丑他阿里太『モンドユー、イホエミト、ポロハナ、イルジーイルジー』 と頻りに招くので白凌閣と共に小さい蒙古包の中へ這入ると、 丑他阿里太『今日は喇嘛僧を二十人許り呼んで、御馳走をするのですから、ナラヌオロスのポロハナに先に食つて頂き度い』 と云つて、メリケン粉の団子に羊の肉を餡とし、爐の上で牛糞の火で茹でた団子を食へとすすめる。日出雄は妙な臭のする団子を勧められ迷惑したが、蒙古人の好意を否む訳にも行かず、感謝して二つ三つ頬張つた。其の家の妻は頻りに茶を汲んだり、団子を持つて来て勧める。日出雄は、 日出雄『此の上団子は腹が大きくて食へない』 と云つて体よく断り、茶と煙草を頻りに乾燥した口の中へ放り込んでゐた。此処の娘の丑他倶喇は当年十四歳で珍らしい美人であり、年に似合はぬ大柄であつた。 ウツタグラと云ふ名義は東洋一の美人と云ふ意味である。どこともなく威厳が備はり、色が白くて目元が涼しく、丁度観世音菩薩の様な姿である。日出雄は此少女に向つて、 日出雄『チンニセーナホンモン(汝、美人)』 と称揚すると、その父親が直ぐに日出雄に向つて、 丑他阿里太『ピーシヤ、ムツトルテ、チンニン、ウツタグラ、シヤルトゲヤ』 と云つた。此意味は、 『貴下は立派な人である。私の娘ウツタグラを貴下にあげませう』 と云ふのである。そこで日出雄は何とも答へず笑つて帰つて来た。さうすると其翌日から少女がボロボロの着物を立派な衣服に着換へて、日出雄の側へやつて来て、茶を汲んだり、ハンケチを湯に絞つたりして、身を忘れて世話をした。よくよく聞いて見ると『日本の活仏だから決して妻子は無いであらう。此娘を上げたならば、屹度自分の子として相当の処へ嫁けてくれるだらう』と親心から思つたのだと云ふ。蒙古人は日本人を見ると『自分の子をやらうやらう』と云ふ癖がある。一行の日本人も、あちらや、こちらで『子をやらうか』と云はれて有難迷惑を感じてゐた。 ○ 或日ウツタナストの隣家に三十人許りの喇嘛が集つて朝の六時頃から夕方まで陀々仏陀々々々々とのべつ幕なしに経文を挙げてゐるので日出雄は怪しんで其の家に這入り覗いて見ると、一人の大病人を真中に置いて喇嘛が一生懸命の祈願をやつて居た。病人はダンダンと苦しむ許りで少しも快方に向はない。喇嘛の云ふのには、 喇嘛『一日も早く国替さして天国に救ひ、病気の苦を救ふ為に臨終の早くなる様に祈願してゐるのだ』 と云つてゐる。そこで日出雄は家の主人に向ひ、 日出雄『即座に此病気をなほしてやらうか』 と云つたら主人は低頭平身して祈祷を頼むだ。日出雄は直に数多の喇嘛に会釈し、病人の額に軽く手をのせ『悪魔よ、去れツ』と一喝した。忽ち大熱は醒め、其場で病人がムクムクと起上り、嬉しさうにゲラゲラ笑ひ出した。 余りの奇瑞に喇嘛僧は驚いて益々日出雄を大活仏として尊敬するやうになつた。守高と名田彦とが柔術の自慢を朝から晩まで引つきりなしにやるので、岡崎や王元祺が立腹してゐる処へ、名田彦が岡崎の手を握つて自慢げに『柔術はこんなものだ』と云つた所、岡崎はカツと怒つて小便のしてあつた金盥を名田彦の顔にぶつつけた。名田彦は非常に口惜がつたが、岡崎の権幕に恐れ、且つ日出雄になだめられて歯切しりし乍らヤツと胸ををさめた。それから日本人側は白凌閣が日出雄と真澄別に対してはいろいろの用を聴くが、他の者の云ふ事を聴かないと云ふので大変に白凌閣を憎み、猪野敏夫等は木片を以つて白凌閣の横ツ面を厳しく殴りつけた。忽ち顔面脹れ上り、血が滲み出た。白凌閣は顔を抱へて蹲まり、涙を流して気張つてゐた。白凌閣の父は同じ公爺府の近い所にゐるけれども、白は此乱暴な日本人の仕打を父に告げ様ともせず一歩も動かずに泣いてゐた。日出雄は見兼ねて白の顔に焼酎を吹きかけてやり、且鎮魂を施した処、三十分間程の間に脹は直り、顔も元に復して了つた。日出雄は白を裏山に散歩を名として連れて行き、覚束ない蒙古語で、 日出雄『お前は猪野君にあんなひどい目に会はされても、自分の親に知らしに行かなかつたのは感心だ』 と云つて褒めた処、白は喜んで言ふやう、 白凌閣『私は大先生の家来になつたのですから、最早や父に頼る事は出来ませぬ。さうして私は先生のお弟子となり喇嘛になる積りですから、先生の代理たる真澄別さまの命令は聴きますが、其他の日本人の命令に服従する義務はありませぬ。仮令日本人が怒つて殺すとも道ならぬ人の命令は諾きませぬ。そんな事をしますと蒙古男子の恥になります』 と云つた。日出雄は感心して白を褒めてやり、さうして日本の風俗や習慣を語り聞かせ、 日出雄『お前の云ふのも蒙古人としては尤もだらうが、日本人にはそんな理窟は通らないから、間のある時は他の日本人の言ふ事も聴き、世話もして貰ひたい』 と語つた所、白は諾いて其後は誰彼の区別なく言ふ事を諾く様になつた。白の父白厘九がやつて来て、 白厘九『此の伜は一人息子ですから、あまり遠い所へはやり度くありませぬ。そして白凌閣には隣村から嫁を貰ふ事に決まつて居りますから、何とかして体をあけて貰ふ事は出来ますまいか』 と丁寧に依頼して来た。日出雄は父の言を聞いて気の毒に思ひ、白凌閣に、 日出雄『お前は一人息子でもあり、お前の父は老年でもあるから大庫倫迄従軍することは親に不孝になるかも知れぬ。そして親と妻君を残して遠征に上つても、お前も気が気であるまいから、父の言葉に従へ』 と云つた所、白は首を左右に振つて、 白凌閣『イエイエ一旦蒙古男子が誓つた言葉は金鉄です。父や妻は神様に任せておけば宜しい。私は大先生の行かるる所は何処迄もお供致します』 と云つて聞かないので、父も観念したと見え、 白厘九『アハヽヽヽヽ』と大きく笑つて、 白厘九『どうか伜を宜しく頼みます』 と挨拶して帰つたきり、日出雄が公爺府を出立する朝迄、その父は訪ねて来なかつた。之を見ても蒙古人の男性的気性が知れるのである。 彼白はかう云ふ心掛を有つて居たから神の保護を受けたものか、六月二十一日の白音太拉の遭難の時も支那兵に捕へられ、銃殺の場に立たされた一刹那、参謀長が出て来て、 参謀長『こんな子供を殺した所が仕方が無い』 と云つて白を逃がしてやつた。それより白は色々と艱難辛苦して無一物で公爺府へ無事帰る事を得たのである。 (大正一四、八、筆録) |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 明治31年旧11月5日 | 明治三十一年旧十一月五日 艮の金神の御用を聞かせるのは、老人でも行かず、我の有る位で無いと行かず、我が在りても神の道では行かず、御用に使ふ者が無いぞよ。口と心と行いと違はぬ者でないと、此の神の御用は聞けんぞよ。誠を貫らぬくもので無いと、神の御取次は出来んぞよ。我身が可愛い様な事では、此の取次は出来んぞよ。誠を貫ぬく御方が出来てこんと斯御道は拡まらぬぞよ。大勢無くても誠の者さえ在りたら、直ぐに拡まるぞよ。誠の在る者には神が力を附けるぞよ。誠の者は神が拵えてあるぞよ。グズグズして居ると後の烏が前に成りて、残念な事が出来るぞよ。万の神を皆御苦労に成りて居るから、物事が速く解るぞよ。今の綾部の取次が、アフンと致す事が在るぞよ。夫れでは金光殿へ気の毒な事が在るぞよ。神は気を附けた上にも気を附けるぞよ。是は慢神からじゃぞよ。気緩るしは少とも成らぬ御道であるぞよ。上の御神様下たへ降りて御守護を成さるから、何も物事が速いぞよ。天も地も世界が平均のであるから、今迄の行いを致して居ると、大失敗を喰ふぞよ。全部物事が変るぞよ。今迄覇張りて居りた御ん方、チト気の毒が在るぞよ。御用意を成さらんと、慮見が違ふ事が出来るぞよ。何に由らず物事代るから、斯世は誰に依らず、世を持ち切りには致させんぞよ。何時までも続くとは思ふなよ、世が代るぞよ。信心も同じ事、後の烏が前に成るぞよ。慢心いたすと誰に由らず、大怪我が出来るぞよ。神の道では慢心と慾とが一番気障りで在るぞよ。金神の世に成れば、慾を捨て神にもたれた成らば、何も不自由は致さねども、何程申しても聞かしても、誠の者が無き故に、チットも物事が思ふ如うに行かんのは、我身の心が悪いのじゃぞよ。我を出し慢心を致して、思ふやうに行かんと、神の業のやうに申して居るが、此の金神は一言申したならば、何に由らず違いは無い神で在るぞよ。神が申した事も、チット延びる事が在るなれど、延びるのも神界の都合のある事ぞよ。人民を一人なりと助けたさに延ばすのであるぞよ。世界の人民の改心が出来たなれば、早く良く成るし、改心出来ずば永く苦しむだけじゃぞよ。改心一つ、是からは世界の洗濯致して、良く致すのであるから、人民の心から直さぬと、神の心と同じ事に成らんから、神の心に成りたなら、斯世は思ふやうに成るぞよ。早く改心致されよ。何程言ひ聞かしても聞かねば、聞くやうに致すぞよ。茲まで開けた斯世界、何んでも此儘で人民を助けたいのが願いで在るから、助けたいと思へども○○○○○○○○○ 今の世界の人民は、神の申す事を誠に致さず、神を何時までも敵対うなら、天災で何の様な事が在りても、神を恨めなよ。神は明治廿五年から、毎日お直に言はして在るぞよ。是に落度は無かろうぞよ。是程に言ひ聞かしても聞かねば、世界には何事が在ろうやら判らんぞよ。何事も神を恨めなよ。今度斯世の立替であるから、世界の改めを致すぞよ。昔から斯世始りてから無き、世の立替で在るから、大望な世替じゃぞよ。人民の知らぬ事じゃぞよ。改心致せと申すのは、神は身魂の改めが致してあるから、改心が出来ぬと出直しを致さな成らぬ事があるから、金神がクドウ申すのじゃぞよ。現世で御役に立てる身魂と、国替さして使ふ霊魂と、又た神へ引取る霊魂と在るよって、改心致せば天地の大神様へ、御詫を致して遣れば御赦あるから、改心いたせと申すのじゃぞよ。今度の世の立替は、新つに致さねば成らぬから、慾は要らぬぞよ。慾を致して貯めて居りても、新つの世に成るので在るから、神気を附けるぞよ。心次第、改心次第で宜く成るぞよ。今の人民何にも知らずに居るから、神がクドウ申すのじゃぞよ。今迄は足立殿も酷い御疑いで在りたが、モウ解りて来るぞよ。直の身上も判りて来るぞよ。是から金神表になりて守護致すから、物事が速いぞよ。日本の国は結構な国で在るから、日本の人民よ改心致して誠の心を持てよ。日本の国は、誠を尽さな成らぬ国で在るから、誠を尽す人なれば、誠の花が咲く国で在れども遅くなるぞよ。誠の人は是からは、日本の国は鏡に出すぞよ。鏡を見て改心を致されよ。今では誠の者が無けれども見ておじゃれよ、世が変れば誠の人を拵えて、神の思わくを立て、世界を良くいたすぞよ。世界の人民よ一日も早く改心なされよ。それに附ては、日本の人民の改心が第一で在るぞよ。日本の人民さえ改心致せば、世界は良い世になるのじゃぞよ。綾部の九ツ花は、誠から咲く花で在るから、誠の人が集りて来んと開かんから、○○○綾部は燈台下暗しでは、此結構な花が咲くのに、誠が無き故に、余所から御神徳を取りに来るぞよ。此事が判りかけたなれば、我れも私しもと申して皆集りて来るが、今の内に気が附かぬと、誠のおかげは余所へ取られるぞよ。 この世話早う致したなれば結構で在れども、モチト解らぬので、誰も見合はして、手を出せば損のやうに今では思ふて居れども、今世話を致さねば誠の世話でないぞよ。是が判りて来たなれば、元の世話掛は、高見から見物いたして居りても、良いやうに成るので在れども、人民といふものは疑いが在るから、神が申しても、誠には能う致さねども、世界の政教の立替であるから、中々大望であるから、延びるのじゃぞよ。日本の国を大事に思ふから延ばすのじゃぞよ。日本の脚場を余程強固いたして置かんと、兵糧が尽きる如うな事が在りては成らんから、豊作を取らしてかかるぞよ。金神の世に成りたら世年は良く成るが、此の大望が治まりたならば、誠に都合に成るから○○○○○ 開いた口も閉まらぬ如うな事が出て来るぞよ。世が代るのであるから、是迄に無かりた事が出来るぞよ。日本の国は是位い尊とい国といふ事を、今度世を切替に致して、表に現はれて、三千世界の政教を立替て、金神が世に出るぞよ。此の誠は九つ花の元じゃぞよ。九つ花は誠から咲せる花で在るから、三千年経綸を致した、誠の花の本で在るから、誠の人の世話でないと、此の御世話は出来んぞよ。近慾な事では出来ぬぞよ。是でも神の経綸いたした事で在るから成就いたさすぞよ。 |
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大本神諭 | 神諭一覧 | 大正6年旧9月5日 | 大正六年旧九月五日 『日本は別として』王、天下は永うは続かんと云ふ事が、是迄の筆先に書いて知らして在ろうがな、何彼の時節が参りて、何事も一度に出て来るぞよ。善い事も悪い事も皆一度に現れて、外国には惨酷ことが頻々在ると申して知らした事が、実地に成りて来るぞよ。外国は余り精神が悪いから、良い事は一寸も出来んぞよ。天竺が彼の通りエライ見せしめに遇い、その次ぎが外国であると申て知らしてありたが、一つも違いは致さんぞよ。日本の国にも人気の悪い処には、在ると知らして在るぞよ。日本も余り外国の真似を致して、全部外国の性来に成りて了ふて居るので、上の守護神と人民に、一日も早く改心致せと申しても、改心致すやうな優しい守護神が無いから、モウ神は一切りに致すより仕様が無いぞよ。外国の性来は前後構はずに、行り放第の行り方で在るから、トンと行き当りた所で、何う仕様方法もない、無茶九茶の暗雲で在るぞよ。悪が強いと一寸先きが目が届かむぞよ。外国の守護神がエライ経綸は為て居るが、悪の世は九分九厘行った所で、世が無くなると申して、明治二十五年から茲まで知らした事の、実地の現はれる時節が来たから、此の先きで是までのやうに思ふて居ると、大間違いが出来るぞよ。大きな誤解や慢心致して居りた守護神が、キリキリ舞を致して苦しむ事が、先繰り出て来るから、其苦しむのを見るのが厭であるから、変性男子は辛い役であるぞよ。変性男子が一度申した事は、何時になりても皆出て来るから、神の申した言を反いて致したら、取返しの成らん心配が出来て来て、ヂリヂリ舞いを致さな成らんやうに成るぞよ。三千世界の大立替であるから、今迄の一切の事を、根本から変えて了ふので在るから、今迄の事申して、エラソウに覇張りて居ると、肝腎の神に見放されて、矢張り仏の方が結構じゃと申して、悪魔の容器にしられて、斯世の中の役に立たぬ、蛆虫に成りて了ふぞよ。慢心ほど恐いものは無いぞよ。今までは、心の中に何程悪が在りても、学さえありて上に立ちて居りたら、立派に人民からは見えたなれど、世の立替に就いて、昔の生神が現はれて、審神者を致すから、我と我手に身魂の性来が現はれて来て、耻かしうて世間へ顔出しが出来んやうに成るから、何時までもクドウ気を附けるなれど、根本から外国御魂に成り変りて居るから、神が可愛想でも助けやうが無いぞよ。奥山の紅葉の在る中にと思へども、それは心で取るが良いぞよと申して、今迄の筆先に書して在ろうがな。改心出来ねばモウ何事が在りても、神と出口を恨める所は無いぞよ。表面ばかり立派な事を申して居りても、心の中に塵埃ありては、神国の御用には使はむぞよ。悪神が守護致すと自分がエラウ見えて、誠の人が阿房に見えたり、悪魔により見えは致さんから、取返しの附かぬ大間違が出来るので在るぞよ。気の毒なものじゃぞよ。外国の悪の仕組は、九分九厘で世が無くなると申して、明治廿五年から続いて知らしたが、チトは耳へ這入る守護神が在りても、悪の方の味方が多いから、心の弱い守護神人民は、直ぐに悪魔に頭を押えられて腰を折るから、何時までも世の立替が後れるから、世界の難渋が日に増しに激しく成る斗りで在るぞよ。日本は神国、霊主肉従の尊い国であるから、チトは日本魂の研けた人民が在りさうなものなれど、今の日本の国は、上から下まで外国の魂に化けて了ふて、我れさえ良くば、元の根本を無いやうに致して、我が苦労も致さずに他の苦労で行ろうと為ても、末代の世は続きは致さんぞよ。天地の大神も良し、守護神も人民も良しといふ様に成らねば、誠の日本魂とは申さんぞよ。世に落ちて居りた元の神が、神国の世に立帰りて、善一つの世に致すので在るから、是までの心を全部入れ替を致して、心を持ち直せば、神国の世に成れば誠に結構であるぞよ。玉水の龍宮館へ、御上りに成りて御出ます、乙姫様の御心を、今度は皆揃ふて上へ上りて居れる守護神が、茲で速かに是までの心の入れ代が出来んと、誠に此先きで気の毒が出来るから、今が一か八かの処であるぞよ。上の守護神に気が附いて来たら、世界中が善く成るなり、上に気が附かな、此先きは世界中の大きな難渋と成るが、モウ此先は悪では世が立ては行かんぞよ。斯の暗黒の世に、何んな事を為て見せても、書いて見せても、言ひ聞しても、気の附く守護神人民が無いが、悪の仕組ではジリジリと身魂が減って了ふから、向ふの国の云ふやうに為て居りたなら、モウ遠からん内に、日本との大戦争に成りて来るが、日本の国も外国と同じ事になりて、屈強盛りの人民が無く成る斗り、金の費るのは程が知れんぞよ。段々人が減る斗りで、何程人民がありたとて、人民力では到底行きは致さんぞよ。上から下まで、余り大きな誤解を致して居るから、悪の頭の仕組はモウ一足も、日本の国の御地の上では出来ん仕組が、日本の国には今に知った事で無いぞよ。茲へ成りて来ることは、天の大神様と、地の先祖の大国常立尊とは、元から日本の国に、一輪の経綸が為てありたのじゃぞよ。日本の人民が、日本魂の本の性来に成りて来んと、向ふの国には科学で、エライ仕組を致して居るから、何方へ附て良いと云ふ事が解らんやうな人民が、沢山に出て来るぞよ………。大きな取違いを致して居りたと云ふ事が、日本の上の守護神や、下たの人民に解りて来るのは、何れは向ふの国から攻めて来るから、昔の世の本から、日本の国には、斯んな大望な経綸が為て在りた事が、何方の国にも解りて来て、世界の人民がアフンと致して、手も足も能う出さずに、途方に呉れる事が出来するぞよ。斯の状態で神が構はずに見て居りたら、何方の国も後へ引くと云ふ事は致さんから、此処へ為りて来るから、明治廿五年から筆先で、何彼の事が知らしてありた通りの、時節が廻りて来て居るのに、人民といふものは実地の正末が出て来んと、誠に致さんから、俄かにヂリヂリ舞な成らん事に成るのじゃぞよ。人民は少とも先の見えんもので在るから、常に何彼の心得を致して置んと、マサカの時に狼狽へるぞよ。信心は常に在るぞよ。日々神に縋りて、身魂を綺麗に研いて居る人民と、斯世に神は無きものと申して居る人民とは立分るから、夫れで常から信神を致せと申すので在るぞよ。俄信神は間に合はんぞよ。何彼の事が迫りて、色々と是だけ大本の内と、御屋敷には真正の御神様が、彼方此方に御守護があるのに、厭な事を目の前に為て見せて遣らんと、承知が行かん浅間敷もので在るから、俄かにヂリヂリ舞はな成らん事が出て来るぞよ。そう成りてから走り込んで来て、何卒助けて呉れと申しても、ソンナ事には掛りて居れんやうに忙しくなりて、何んところで無いぞよ………。龍宮の乙姫殿が御守護あり出たら、世界はモ一つ何彼の事が騒がしく成るぞよ。向ふの国には悪の経綸で、何処までも行り抜こうとの企みであるなれど、日本の国にも神が蔭から動かん仕組が致して在るから、何方の行り方で末代の世が続いて行くものじゃ、善の道で続くか、悪の道で続くか、善と悪との力比べの大戦であるから、勝ちた方の道で、此の先の末代の世を、持ちて行くやうに成るので在るぞよ。今の日本の上に立ちて居る守護神は、九分九厘までは外国の行り方を、結構なやうに思ふて居るが、今に大きな了見違いで在りたと申す事が判りて来て、頭を掻いてヂリヂリ悶えを致すぞよと申して、明治廿五年から変性男子の手で書して在りたが、一分一厘の違いも無いぞよ。旧九月五日の朝の間に、出口直が神に御礼拝を致して居りた折に、明日から乙姫殿の御守護になると申して知らしたが、猶ほ筆でも知らしてあるぞよ。今迄に申して在る通りに、何も成りて来るぞよ。九分九厘に成ると手の掌が覆りて、綾部の此村と、綾部の町を動かして遣ると申して在ろうがな。世界と一同に動かすと申して、筆先に出して在ろうがな、皆出て来るぞよ。大きな目醒しが天地から在るぞよ。世界の事は何も彼も、筆先通りに成りて来るぞよ。十分に知らして在るから、チトは遅く成る事も在るなれど、人民の改心さえ出来たなら、余りイヤな事の無いやうに、良い方へ立替て、夫れ夫れの御用の命令を下げて、良い霊を入れ替て与ると、皆が勇みて良い御用が出来るから、一日の日の間にでも手の平を覆して、良く為て興るなれど、外国の悪い性来が移りて居るから、日本の国の守護神が、矢張り外国に化りて了ふて居るから、今の心では霊魂にして、国替でもさして洗濯を致さねば、到底言い聞かした位で聞くやうな、優しい身魂が無いぞよ。世に出て居れる方の守護神が、気が附いて来たら、元は日本で湧いたので在るから、日本の中にをいて守護さして与りたいなれど、外国に化りて了ふて居るから、八九分の身魂を出直しに致さねば、斯処へ成りてからは、モウ日の間が無いから、早く日本の身魂に立帰れば、此の先きは大国常立尊の、斯世は自由であるから、善の心に立帰りたら、善の身魂に致して、此の先は良く致してやりて、上へ上りて、日本の国を茲までに外国の性来に為て了ふた、其悪の名を表はさずに許して与るぞよ。 是からは善一つの、天と地との御先祖様の教に立代えて、悪と云ふやうな見苦しい、イヤな血統は無い様に致して、昔の御先祖様の御血統の生粋の世に、日本の国を致しておいて、今度の二度目の世の立替を致さねば、斯世はこの儘では立ちて行かんから、此大本の変性男子と変性女子との人民には、見当の取れん御用が、神の経綸でさして在るから、何程人民が智慧、学で考えても、解りは致さんぞよ。是が人民に解りたら、三千年余りての大望な経綸が、成就いたさんから、一輪の仕組は今の今まで申さんぞよ。三段に分けて在る霊魂を、目鼻を付けねば成らんなり、何の様にも目鼻が一寸には附かんから、血筋が混ぜこぜの無茶苦茶に成りて了ふて、是迄の筆先に、大略は判りて居りても、肝腎の事が未だ出して無いから、是が中々大望と申すので在るぞよ。大望と口で申しても本真に致さんぞよ。大事の性念場と成りて、動きの取れん事に成らんと気が附かんが、其所で気が附いても世間並で、何にも仕様が無いから、因縁ある身魂をこの大本へ、神が綱を掛けて引き寄して、知らして居れど、余り慢心がヒドイので、改心の出来る身魂が何程も無いから、物事が遅れて神の迷惑どころか、世界の何も知らぬ人民が、永う苦しむのが可愛想で、神が目を明けて見て居れんから、大本へ立寄る人は、因縁の深い身魂斗りであるから、大本の中から一番に、改心いたして下されよ。 日本の国には神から大望な仕組が為て在る、向ふの国も大きな仕組を致して居るが、戦争と天災とが初りたら、人民が三分に減ると、初発の筆先に書いてあるなれど、茲に成ると世界に残る人民が、二分位より無いぞよ。日本の国には誠の者が二分残る仕組で在れど、向ふの国はまだ約らん仕組をダラダラと致して、キマリの無い行り方で、行ける所まで行く、後前構はずで、何時まで掛りても頓着は致さず、自分の代に奪略な子の代に奪る、子の代に奪れな孫の代に取ると云ふ、気長な仕組を仕て居るから、日本の人民は男子は当然なり、女子も小供も、霊主肉従の日本魂の性来に成りて了はねば、今の如うなハイカラの心は、外国の身魂に成り限て居るから………、外国の仕組は先の約らん、行ける所まで行きて、行けんやうに成りた所に、モ一つと云ふ経綸がして無いから、外国の云ふやうに、今日本の守護神人民が致して居りたら、世界の身魂がヂリヂリ減りに無くなりて、元の泥海に成るぞよ。是ほど天地の神が茲まで苦労艱難、悔しき事を耐り約めて来た事が、水の泡には出来んから、成可は人民を減らさんやうに致したいと思ふて、変生男子の身魂が、余り苦労致して来たから、人の苦労が身に泌みて、心が沈みて、門へ出るのも厭がりて居るが………、是迄の人民の心では、如何しても何方の国も人が減る、一度の改心は人が減るから、是までの心を入れ替て、新つの世に致すので在るから、どうぞ一時も早く改心を致して下されよ。 |
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伊都能売神諭 | 神諭一覧 | 大正7年12月23日 | 大正七年一二月二五日 艮の金神元の国常立之尊変性男子の御魂が、下津岩根の高天原に現はれて、世界の事を書き知らすぞよ。東の国は一晴れの実のりの致さぬ薄の○○、実のり致さな国は栄えぬぞよと申して、今までの筆先に毎度繰返し繰返し知らして在りた事の、実地が近うなりて来たぞよ。○○の天津御空には黒雲塞がり、地には泥水溢れて、人民の憂瀬に沈み苦しむ者は数知れず、餓鬼畜生の今の世の有様、誠の神なら之を依然として高見から見物いたしては居れん筈なれど、今の世に出て居れる方の守護神にも、誠の日本魂の臭ひも無いから、其日暮しの今の世の持方、是でも日本神国の神と申されようか。力量が無いと申しても無経綸と申しても余りでないか。一日前の世界の出来事も判らんやうな暗い御魂では、世界どころ乎、小さい日本の国だけでも治める事は出来ぬでは無いか。何も彼も一切万事が行き詰りて了ふて、進も退りも成らぬ様になりて居りても、未だ心が賤しいから、大事に抱へて能う放さん厄介な守護神斗りであるが、外国に彼れだけの見せ示がしてありても未だ気が付かぬか。岩を抱いて海へ這入る様な事斗りいたして居るが、神界の誠の生神の目からは危険うて見て居れんぞよ。日本の国の上の守護神よ、確かり致さんとハラが今に破れて、三千世界の耻晒しにならねば成らぬ様な事が、内と外から持ち上るぞよ。根本から曇り切つた鏡には神の申す誠の姿は写るまいなれど、何処までも神は人民を助けたさにクドウ知らして与るぞよ。是で聞かねばモウ此の先に何事が突発て来ても知らんから、神と出口に後で不足は申して下さるなよ。モウ何も知らんぞよ。ナヅナ七草の用意を早く致して置かぬと、今に唐土の鳥が渡りて来るぞよ。唐土の鳥が羽が強ふて口嘴が長く鋭いぞよ。脚も長いし数も沢山にあるぞよ。日本の鳥は余程しつかりと神力が無いと、天空から蹴り落される様な事が出来いたすぞよ。鵲の橋が落ちかけるから、神が守護は致して居れど、日本の守護神の改心が遅れたら、一旦は何う成ろうやら知れんから、神が心を苦しみて、日夜の守護を致して居れど、日本の神にも守護神にも今ではチツトも気が付かんぞよ。五十鈴の滝が濁つて来たぞよ。川下の人民が是からは可愛相であるぞよ。時節参りて綾部の大本竜宮館の高天原から水の御魂が現はれて、濁り水を澄まして、水晶の流れに付け代えて、世界の人民を泥から助けて、誠の神の身魂に清めて助けるぞよ。じやと申して心の直らぬ人民は、助けると云ふ事は出来んぞよ。世界の難儀を幸ひに致して、彭れた袋鳥は袋が破れ、腹が引裂け、夜食に外づれてアフンと致して開いた口は閉さがらず、六ケ敷貌を致して泡を吹くのは、今目の前に出て来るぞよ。欲に迷ふて慢心いたすと其通り、誠に気の毒なれど、各自の心からで在るから仕様はないぞよ。今に折角造りた立派な巣を潰すやうに成るぞよ。上から下まで大きな間違いが出来てくるぞよ。天が地に成り地が天となるぞよ。天災地妖が続いて起るぞよ。目も鼻も口も開かぬ様な事が来るぞよ。餓鬼が段々殖えるぞよ。思はぬ国替を致す人民も沢山あるぞよ。段々人気が悪るなる斗りであるぞよ。医者と坊主と葬式屋の豊年は続くぞよ。米は段々欠乏する斗りで何程金銀出しても手に入らぬ事になるぞよ。用意が肝心であるぞよ。日本の上の守護神に気を付けておくぞよ。大きなものは一時にバタバタと潰れて了ふぞよ。広い城の馬塲で俄の天狗風が吹き出すと、合羽干の爺さんもハラをもむなれど、到底人民力では治まらんぞよ。狼狽え騷いだ其上ケ句の果が、堀へ落込み土左衛門と成るのが定まつた道筋、何処に一つも重い押えが無いから、ドウにも斯うにも始末が付かんやうに成りて来るぞよ。神が構ふて与らねば治りは付きは致さんぞよ。比日谷ケ原へ何程糞蛙の盲目虫が集まつて喧ましう鳴き立てても、斯の天狗風は妨げんぞよ。目の無い千鳥、彼方へヒヨロヒヨロ此方らへヒヨロヒヨロ、兵糧尽まわつてトコトンの果は、手の鳴る方へ頼らねば成らん事になるぞよ。手の鳴る方は神の大前ぞよ。神は天地を拵らえた肉体の今に其儘生きて居る元の生神、国常立之尊であるぞよ。 大正七年十二月二十五日冬至の日、変性女子の手を借りてしるす。 |
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伊都能売神諭 | 神諭一覧 | 大正7年12月27日 | 大正七年一二月二七日 艮の金神の筆先で大本内部の役員に気を付けるぞよ。明治二十五年から変性男子大出口の守の身魂に苦労を致さして、二十七年の間神界の御用をいたさして在りたなれど、出口直が天地の冥加が畏ろしいと申して、何程厳しき冬の寒空にも、日に三度五度の水行を致して、其上に神の御用を勤めて下されたなれど、何程寒うても火鉢一つ使ふた事も手を暖ためて筆先を書いた事も無く、誠に慎みの良い身魂であるから、永らくの間大本の中の役員信者に鏡にして見せてありたが、今迄の大本の役員は直が申す事や行状を能く呑込みて、ミロクの行り方を致して下されて、神の経綸も段々と出来て来たなれど、誰も楽な方へ行き易いもので在るから、今の大本の中の役員の行り方は、薩張り精神が緩みて了ふた、世間並の行り方に逆戻り致して居るぞよ。出口直は八十三歳になりても火鉢一とつ抱えた事は無かりたぞよ。出口直を鏡に出して世の立直しの行り方が致して見せて在りたなれど、今の大本の行り方と申すものは、若い者が火鉢を持たな何一とつ能う致さず、金竜殿へ修行に参る守護神人民は沢山に火鉢を並べて贅沢な今の行り方、ソンナ事で斯の世の立直しの大本の修行は到底出来は致さんから、冬の修行は火が無ければ出来んような弱い人民は、修行を止めて一日も早く各自の国元へ立帰らして下され。折角永らくの間大出口直に苦労さして、今まで築き上げたる教の土台が転覆いたしかけて居るから、神は誠に困りて居るなれど、今の人民さんは鼻高が多いから、知らず知らずに慢神が出て、神の教に背くやうな事が出来いたすのであるから、余程大本の役員は隅から隅まで気を付けて下されよ。世界から参りて来る守護神人民は可成は外に宿めて下されよ。大本の内部に宿まれる様になるのは、余程の研けた身魂でないと、誰でも是からは構はずに止める事は出来ぬから、堅う心得て下され。神界から一度筆先に出して気を付けた事は、早速に聞いて貰はんと、大変な邪魔になりて後悔いたす事が出来て来るぞよ。神界の都合が在るから、此の節分からは修行者は一人も宿められんから、其覚悟を致して下され。役員信者の家で止めて下さるのは誠に結構であるぞよ。是から斯大本は神界の御用は段々と激しく成るから、国々から出て参る修行人を内部に止めて居るやうな事で在りたら、肝腎の神界の大事の経綸を、未だ訳の判りて居らん守護神が生聞きいたして、却て仕組の邪魔を致すから、神の集会する事も出来ぬ故、神の経綸が遅れて来る斗りで在るぞよ。此の大本は地の高天原の竜宮館、神宮坪の内と申して、天地の元の生神の天地へ昇降いたす神聖な地面で在るから、御地を踏む丈けでも恐れが多い所であるのに、何も判らぬ守護神人民を神の座より上の二階に寝さしたり、広前に休ましたり、何時までもそんな事致して居りたら神聖な場所が汚れて了ふから、神が集まる事が出来ぬから、其心得に此の中の役員から改めて下され。大出口直の身魂は国替いたしたなれど、肉体の時よりは一層酷しく成るから、今のやうな行り方は到底赦されんから、節分限り大本に宿める事は止めて下されよ。此の大本の立廻り役は止むを得んから、今の内は大本で寝起きを為せて修行なり御用をさせるぞよ。 大正七年十二月二十七日旧の同年十一月二十五日 |
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伊都能売神諭 | 神諭一覧 | 大正8年3月8日 | 大正八年三月八日 大正八年三月八日旧二月七日 天に坐ます日の大神様は、天地初発の時から、世界万物を造りて之を愛護し給ひ、永遠無窮に光りを与え、地の世界を照らして御守護遊ばすなり、五六七の大神様は人民よりも下たに降りて、地の在らむ限り、遺る隈なく、隠れて御守護下され、何一とつ自由と云ふ事も成さらずに、万物を養育遊ばして御座るなり。地の固成主なる国常立尊は、坤の根神[*「根神」は底本通り]豊雲野尊と水火を合はして、夫れ夫れの守護神に御苦労に成りて地を固め締め、一旦は地の世界の主宰者と成りたなれど、八百万の神の為に永らくの間神の世一代艮へ押込められて、隠から斯世を守護いたして居りた事の、誠の精神と行状が天地の大神様の御眼に留まりて、再び地の世界の神界を守護いたすやうになりたのは、誠に神は満足であれども、是だけに乱れた世の中を、善一とつの神代の神政に改造すのは、中々大業で在るから、昔の神代に艮の金神と共に世に落された神々を、今度の天之岩戸開きの御用いたさす為に、世に上げて神政成就の御用に使ふから、其神々の名を上から上から表はして置くぞよ。国常立尊の侍従長を勤めたのは、右が猿田彦命と猿田姫命の夫婦なり、右の侍従が八雲立命と出雲姫命の夫婦なり、左の侍従長が真心彦命と事足姫命の夫婦なり、左の侍従が国彦命と国比女命の夫婦の神でありたぞよ。其他に沢山の付々や眷属は在りたなれど、時節に応じ、手柄に由りて、次々に名を表はすぞよ。天の規則が破れた始りは、真心彦命の最も愛して居りた百照彦命に春子姫命と申す妻がありたが、真心彦命は愛情深き神で在つたが、終には百照彦の命の妻の春子姫に手が掛り、不調法が出来たので、天の大神様から役目を御取上げに成つたのであるぞよ。真心彦命は事足姫命と申す妻神が在りて、広心彦命、行成彦命と云ふ二柱の神子が出来てあるにも関はらず、情けに耽れて春子姫との間に怪しき行為が結ばれたので、天の大神様から天の規則破りの罪として、国常立尊の侍従長を退職されたので、真心彦命は自分の失態を愧ぢて終に国替を致されたので在るぞよ。そこで八百万の神々も其心事を気之毒に思召されて、種々と持てなしを成されて、長男の広心彦命が父神の後を継ぎて、左の侍従長と成り、仁愛を以て下を治め、一時は天下泰平に世が治まりて、国常立尊の威勢も揚りたので在りたぞよ。然る所に未亡神なる事足姫命は、夫神の御心情も察せずに、春永彦命と云ふ後の夫を持ちて、桃上彦命を生み、夫婦の神が仲良く暮して居りたが、是が大変に天の規則に照して面白く無き行為で在るぞよ。 桃上彦命は非常に下を憐む、精神の善き神でありたから、種違いの兄神の広心彦命も大変に安神いたして、自分の副神に任じて、神界の御用の祐けを為せて居りたが、桃上彦命は月日の経つに連れて、始めの善良なる精神が狂ひ出し、上の神の命令も聞かず、外神の難義も顧みず、終には慢神益々増長して、兄神の権利と地位を占領し、只管下斗りの機嫌を取る事に而巳心を碎きたるが故に、下の神々は恩に馴れて安楽な道ばかりに傾き誠の天則を守る神の教に反対いたし出し、神界の政治は上げも下ろしも成らぬ如うに成り果て、終には重立たる侍従神もチリチリ破乱々々に世に押込められて了ふて、国常立尊は枝葉を断られた大樹の如うに致されて了ふたので在るぞよ。是が此世に体主霊従と申す事の初りであるぞよ。 ◎ 真心彦命の未亡神なる事足姫命は、貞操を破りて春永彦命と云ふ後の夫神を持ち、其間に生れた桃上彦命で在るから、初めの間は大変に円満な神で在つたなれども、母の規則破り、不貞操の水火が伝はりて居るから、終には勝手気儘な精神が現はれて、野心を起し、天地の経綸を破りたので在るから、神は猶更、人民は神に次での結構な身魂であるから、夫婦の道を大切に守り、一夫一婦の規定を守らぬと、終には身を亡ぼし、家を破り国家に害毒を流して、天地の規則破りの大罪人に落ちて苦しまねば成らぬ事が出来いたすぞよ。事足姫命の不貞操な行状が元に成りて、神界が一旦乱れて了ひ、次に人民の世界が今の如うに乱れて来たので在るから、悪と云ふ行為は毛筋も今度は無きやうに、水晶の神世に立直すので在るから、皆の人民は互に気を注け合ふて心得て下されよ。取返しの成らん事が出来いたすぞよ。斯の天則を破りた二柱神の子の桃上彦命が、大野心を起して、下々の神に対し贔屓を取らんとして、八方美人主義を非常に発揮したる為、下は之に馴れて上の命令を一も聞かぬやうに成りたので、他の善神から大禍津美命と名を付けられたので在るぞよ。この桃上彦命は八十猛彦と百武留彦を殊の外寵愛し、両神を頤使て益々自己の野心を遂行いたし、自由自在に斯世を持荒らしたが為に、今に世界が体主霊従の身魂斗りに成りたので在るぞよ。それから国常立尊の左の侍従を勤めて居りた、国比古之命は侍従長の真心彦命の国替に由り、首長の無くなつたのに気を赦るし、自由自在に自己主義の行り方を致して世に現はれ、大権力を振り舞はし、終に世界を乱して了ふたので在るぞよ。国比古之命と国比女命夫婦の間に三柱の神子が生れて、長子を真道知彦命、次子を青森行成彦命、三子を梅ケ香彦命と申す名が付けてありたぞよ。此の三神の兄弟は、父母の神に似ぬ厳格にして、智仁勇兼備の善良な神で在るから、父母両神に度々兄弟が交る交る意見を致したなれど、少しも聞入れなき故に、何れも時節を待つて父母の改心を促がさんと、古き神代の昔より、堪え堪えて貯えし、誠の花の咲く世に成りたから、今度の二度目の天之岩戸開きに就て、国常立尊の大神業を輔け、父母の大罪を償はんと、一生懸命に兄弟の神が力を合はして活動いたして居れるぞよ。 ◎ 広心彦命と行成彦命は、真心彦命と事足姫命と夫婦の間の神子であるぞよ。桃上彦命は未亡神事足姫命と、後添の夫神春永彦命の間の神子であるぞよ。 ◎ 広心彦命は桃上彦命の為に、非常なる困難の地位に落ち、筆紙に尽されぬ程の艱難辛苦を致した神であるぞよ。其原因は父神の真心彦命が大罪を犯して天則を破り、侍従長重職を退き、且つ神去ましたので、忠孝仁義に厚き広心彦命は、昔から貯えた善の神力で、天地の神の稜威を輝やかし、天地万有を安きに救ひ、且つ父母両神の大罪を償はんと思召しての、御艱難を為て居れるぞよ。此神は至善至愛の身魂であれど、其温順なる身魂の性来として厳しき事を申すのが嫌で在つた為に、異父弟の桃上彦命の乱政を戒め、改めしめる事が出来なんだのが、此神の一生の失敗でありたぞよ。それで此の大本の教は、天の規則に外づれた事は、容赦なく厳しく申して戒める御道であるから、情義にからまれて天の規則を外す事は出来ぬぞよ。桃上彦命の行り方が天則に外づれて居りた斗りに、下々が段々と増長して、君、大臣、小臣、民の四階級を破壊して了ふたので、八百万の真の神々が忍び兼て各自に退職を致されたので、神界の政治は如何ともする事が出来ぬやうに成りたので在るぞよ。そこで広心彦命は弟神の行成彦命と力を合はせ、心を一にして天則を厳守し、回天の事業を起し、完全に神代を改造せんと焦慮せられたなれど、安逸なる放縱神政に馴れたる神々は一柱も賛成なく、天地は益々暗黒界と成り、上げも下ろしも出来ず、万妖億邪一度に突発したので、国常立尊の侍従の役を勤めた、猿田彦命の妻神なる猿田姫命と、八雲立命の妻神なる出雲姫命が、非常に心を配り身を竭し、神政改造の為に在るに在られん数十万年の永い間の御艱難を成されて、今に神界で大変な御活動に成つて居られるが、今に苦労の花の咲くやうに成りて来たから、今度は苦労の凝りで、万劫末代萎れぬ結構な生花が開くから、世界の人民は是を見て一日も早く改心致して、君国の為に出来るだけの苦労を勇んで致して、日本魂に立帰り、神国成就の為に真心を尽して下されよ。後にも先にも無き結構な天地の岩戸が開くのであるから、日本の人民は一人なりとも余計に改心して、岩戸開きの御用に身魂を捧げて下されよ。末代名の残る事であるぞよ。 猿田彦命と猿田姫命の間に三柱の神子が生れて、長女が杵築姫命、次女が朝子姫命、三女が猿子姫命と申すぞよ。天の規則が破れて、神政が潰滅た際に、猿田彦命は妻神の意見を聞かず、却つて大に立腹せられ、三柱の姫神を引連れて天上に昇りて了ふた、神政に冷淡なる神であるぞよ。茲に猿田姫命は思ひ掛けも無く夫神と三柱の大切な姫神とに生き別れの辛酸を甞められた、気の毒な神であるぞよ。猿田姫命は悲歎行る方なく、天を仰ぎ地に伏して、猿田彦命に天より降り玉ひて、此の乱れた神代を改造し給へと、一生懸命に歎願致されたなれど、一徹短慮の猿田彦命は妻神の言に耳を藉さず、三柱の姫神までも地へ降されなんだのであるぞよ。茲に広心彦命は猿田姫命の窮状を察し、一方の力に成らんと、弟神の行成彦命と相談の上、猿田姫命に向ひて申さるるには、斯の騒動は吾々にも大責任あり傍観する時に非ず、貴神の国土の為に心を碎きなさるのを御助け申上げたいからと、兄弟の神が心を一つに致して漸く苦心の結果、猿田姫命の一時の困難を助けた誠に至善なる神でありたぞよ。 ◎ 茲に猿田彦命は天上に昇りて、自由に神政の経綸を為さんとすれど、元より妻神を見捨られし位の気儘な神で在るから、真の日本魂が欠けて居る為に、事志と相違し、中界の魔神とまで成り果てたのであるが、高天原の岩戸が開けて後、皇孫二二岐命が豊葦原の水穂国に、天照皇大神の神勅を奉じて地上に降臨あらせらるるに際し、猿田彦大将軍と成りて、中界の魔軍を数多召び集へ、天の八衢[*底本は「八街(やまた)」]に出でで、皇孫降臨の途を塞がんと為したるを、神代の女傑神天宇受売命の為に矛を返して皇孫に帰順し、悪心を翻がへして忽ち善良の神となり、皇孫の御先導となりて、筑紫の国の櫛振の峰に送り仕え奉られたのであるぞよ。此の天宇受売命は元来は出雲姫命の変化の神でありたが、天の規則が破れた折に、何なりとも善を尽し義を立てて、神国の麻柱の道を立てんと焦心せられたなれど、何分にも肝腎の大本元が破壊されて在るのであるから、真実の神業は成功する事に至らずして、大正の御代の今日まで忍耐をいたして居れたが、此の神の誠の活動が成就するのは今後であるぞよ。広心彦命も非常に苦心致され、天の下を平けく安らけく治め玉ふ現人神の、隠から御守護を致して居れど、今に誠の事は成功致さず、小さい国の一つ位いでは未だ十分の満足が出来ぬので、科学の力を借りて三千世界を開かうと思召し、○○を用ゐる程益々体主霊従が盛んになりて来て、世界が段々と乱れる斗りで、上げも下ろしも成らぬやうに成りたなれど、昔の神代の時代から絶えずに国土を思ひ、神君を大切に思はれた誠の在る神であるから、今度の二度目の世の元の生き神が、揃ふて艮の金神の配下で艮の御用を致さるるに就て、神代からの順次を明白に立別けて御用に掛りて居れるぞよ。世界の人民の昔からの因縁の判る時節に成りたから、誰に由らず改心が一等ぞよ。 |
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伊都能売神諭 | 神諭一覧 | 大正8年4月13日 | 大正八年四月一三日 大正八年四月十三日 艮の金神大国常立尊が竜宮館の地の高天原に現はれて、世界の事を書きおくぞよ。変性男子の御魂の宿りて居る出口直の手を借り口を借りて明治二十五年から大正七年まで二十七年かかりて知らして置いた言葉の実地が出て来たぞよ。由良川の水上の渭水の辺りに流れも清き和知川十二の支流を寄せ集め、三千世界の隅々へ。澄める教を伝えむと探き思は神の胸。広しと雖三千歳の。経綸も茲にアオウエイ。五大父音の音無瀬や、科戸の風の福知山。空吹く東風や北風の。塵も埃も外の国。皆舞鶴の入海に、流し清めて惟神。火水の稜威も荒磯の、砕くる日影月の影月日も仲良く治まりて、神教の奥は大正の、一二御代に厳々し。伊都の御魂の表はれて、燃の斯世を開きつつ、地成の春夏秋の空。峰の頂き四ツ尾の、木々のそよぎて畏こくも、高天原に登ります。最も尊とき惟神、真道弥広大出口、国地王霊主の神魂、国稚姫の久良芸如す、漂ふ神国を、造り初め。経と緯とに織る機は、綾の錦の棚機や、千々に心を配らせつ、鬼も大蛇も瑞の霊、光りさやけく美はしく、天の岩戸を開かむと、二代三代澄直霊、三千世界の梅の花、開く常盤の松みどり、竹の園生の弥栄に、栄えを松の神代かな。弥々ひらく大正の、八ツの御年の春よりぞ。花の香清く実を結び、世界の花と鳴り渡り、東も西も南北も、神の都と称へつつ、凝り固まれる九年、十年の春や秋の空、高く清けき神の国、世の大本と美はしき、名を酉年の芽出度けれ。 ◎ 今の世界の人民は余り学や智慧が有り過ぎて神徳は言ふに及ばず、人徳と云ふものが、一つも無いから、今の世界の此の有様を何とも思はずに、我身さえ好けりや他人は死のうが倒れうがチツトも構はぬ自己本位の人民が九分九厘まで湧いて居るから、何時までも神国成就の経綸が出来上らむから、今度は昔の元の天地の先祖が現はれて三千世界の改造を致すために天の大神様の御命令を戴きて、地の先祖の国常立尊が神代一代世に落ちて仕組いたした誠の道の玉手箱、開けても暮れても一筋の天津日継の弥高く四方に輝やき渡す時節が参りたぞよ。綾部の大本は神界の経綸で、変性男子の大気違いを現はして天地の神々や守護神人民に警告て在りたなれど、斯の大気違は最早天に帰りて天からの守護となりたから、是からは弥々変性女子の大化物を現はして、三千年の経綸の艮めを差して世界を水晶の神世に造り代えて了ふぞよ。それに就ては大本の金竜殿の説教や演説の行り方から立直さぬと天地の先祖の神慮に叶はんぞよ。今は世の堺の金輪際の千騎一騎の性念場であるから、因縁の御魂を日々遠近から引寄して明治二十五年からの筆先と此の大本の中に在りた実地の談さえ致して、天地の先祖の苦労やら変性男子が鏡に出した其の行状の有様やら、女子の心の底にある炬火を世に現はして充分に立寄る人民の腹の底へ浸み込むやうに平たう説いて聞かせる世界の大本で在るのに学者が聞いても容易に判りかけの致さん言霊学やら哲学の如な話を仕て居りては物事が段々遅れる斗りで、神界は却つて迷惑を致して居るぞよ。此の大本は改心改心と一点張りに申す所で在るが、其改心は堂したら良いかと申せば、生れ赤子の何も知らぬ天真爛漫の心に立帰りて大馬鹿に成ると云ふ事であるぞよ。今の金竜殿の先生は智者学者の集り合ひで在るから、知ず知ずに自分の腹の中の智利や誤目が飛んで出て神と人とを酔はして土を耳や目や鼻に入れるから溜つたもので無いぞよ。今の鼻高さんには神も感心致して居るぞよ。神が一度申したら其通りに致さねば斯の大本は神が因縁の身魂を引寄して致す神策地であるから、賢こい御方の結構な考えとは薩張大反対であるぞよ。世界の日々の説法を見て改心いたして今迄の行り方を根本から立替て下さらぬと神界の邪魔に成るぞよ。神の為君の為国の為に一身一家を捧げて居乍ら知らず知らずに神慮に背く如うな事で在りたら折角の役員の苦心が水の泡と成つては其人も気の毒なり神が第一に迷惑いたすなり、引寄せられた因縁の御魂も苦しむから、一日も早く何彼の行方を改正て下されよ。一時後れても神界では大変であるぞよ。筆先一方で開くと迄申して在る位の大本であるから、入れ言やら混りの教は神は大変にいやで在るぞよ。斯の大本は世界中の人民を阿房に致す神の大本で在るから、変性女子の大化物の大馬鹿が申す事と行動行り方を気を付けて居りて下されたら何も判るので在るぞよ。 是までに変性男子が一度極めて置た役目は例之変性女子の教主と雖ども猥りに立替る事は成らぬ神の深い経綸であるから、大本の役員の勝手に致す事は成らぬぞよ。我を出して行るなら一寸やつて見よ直に手の掌が覆りて後戻り斗りに成りて苦しむだけの事じやぞよ。神界の仕組はまだ外にも色々と致して在るから、変性女子の胸の内は誠に辛いぞよ。神界の誠の一方の助けに成りて呉れる役員が大本に在りたら女子も御用が致し良いなれど、肝心の女子の心は解らぬから無理は無いぞよ。今の大本の役員は赤誠一図で一生懸命の御用を致して居れる国家の大忠臣斯世の加賀美で在れども、余り正直すぎて融通の利かぬ人民も在るから、神の目放しが一つも出来んぞよ。今の役員信者は結構な立派な御方ばかりで人間界では申分は無けれども、水晶の世に致す神の眼から見ると丁度狭い山路を自転車に乗つて馳りて行くやうに在りて神が横目を振る間も無い馬車馬式の御方斗りで仕末に困るぞよ。けれ共斯の始末に了えぬ人民で無いと今度の御用には間に合はず、六ケ敷神界の経綸であるぞよ。 ◎ 変性男子の御魂若姫君の命は天に上りて五六七大神様の差添を遊ばすなり、坤の金神豊雲野命は地へ降りて大国常立尊の女房役となりて働くなり、天にも地にも夫婦揃ふて守護いたす時節が参りたから、是からは世界の物事は急転直下の勢いで天地の岩戸が開けるぞよ。天では撞の大神様が一の主なり、五六七の神と若姫君命の夫婦が御側役の御用なり、地では禁闕要乃大神様が一の主なり、国常立尊と豊国主尊が夫婦揃ふて御側役をいたすなり、木花咲耶姫命の御魂は日出乃神と現はれて立派な神代を建る御役なり、彦火々出見命は木花咲耶姫命に引添ふて日出の神の御手伝を成さるので在るぞよ。出口直は(イ)の御役を地の上で済して天へ上り、出口の王仁は(ロ)の役を地で致すなり、(ハ)の御役は二代澄子の御役であるから、是から后は一番御苦労であるぞよ。次に日出乃神の御用は(ニ)の御用を致すのであるぞよ。今の大本は(イ)の御用だけ片付きて、(ロ)の御用の初発であるから、混沌時代で四方八方からイロイロと噂さを致すなれど、是がロの守護であるから神界の経綸通りで在るから、皆安心して御用を勤めて下されよ。是から二代の御用は筆先を読んで修行に参る人民に説き聞かす御役であるぞよ。遠国から参りた人民は是非一回に一度や二度は面会いたさせねば因縁が明白に解らんから、大本の役員は是が一番の大事であるから、取違いの無きやうに致して下されよ。 ◎ 三千世界一度に開く梅の花開ひて散りて若日女の再び天に高く咲く、地は豊国主の良き果実を結ぶ、夫れ迄に世界は未だ未だ大きい稲荷の御礼が湧いて来るぞよ。大きな馬の四ツ足と蚤とが動き出すぞよ。木に日が懸り小里の者がさはき出し日月雲に掩はれて常夜の暗やサルの年、トリ越苦労致すより早く身魂を研くが一等ぞよ。 ◎ 銀貨銅貨が凝まりて大きな一箇の丸となり、金貨の山へ攻め寄せて来るなれど、元から貴き光りの在る金は容積少なくも終には一の宝と勝ちほこるぞよ。 ◎ 若日女君命は昔の神代に天の規則が破れた折、イとロの機の経綸の最中に素盞嗚命の天斑駒の為に御国替遊ばして地の底へ埋もりて居られたなれど、二度目の天の岩戸が開く時節が参りて来て、我子の禁闕要の大神に地の主宰権を譲りて今度は天へ還りて五六七大神様と力を協せ心を一にして天の御守護を遊ばすなり、地の神界は国常立尊豊雲野尊が左右の御脇立となりて地の上に高天原を建て三千世界を守護遊ばして天津日継の御尾前を幸へ助け心安の元の神代に捻ぢ直し給ふぞ尊とき金勝要の大神の純きり坐ます梅と松との世界の神の大本ぞ。 |
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伊都能売神諭 | 神諭一覧 | 大正8年4月23日 | 大正八年四月二三日 大正八年四月二十三日 艮の金神国常立の命の筆先であるぞよ。明治二十五年から、変性男子の御魂の宿りて居る、出口直の手を借り口を借りて警告た事実の実地が参りたぞよ。邪神界は一腹に成りて来ると申して在りたが、神が一度申した事はイツに成りても毛筋の横巾も間違いの無いのが、変性男子の一々万々確固不易経言であるぞよ。日本は神国で在るから、太古の神世からの固有の教を守りて御用を致せば何一つ邪神界の自由には出来ぬ神国であるなれど、今の日本の守護神人民は、肝腎の脚下にある結構な神宝を、我と我手に踏み付けて少しも顧みず、遠き遠き西の大空斗り眺めて、浮雲の天に御魂を取られて了ふて、日本の国の今の困難、跡にも先にも此世始りてから未だ無き事変が日増しに出て来て、国の大難が差迫つて来て居るのに、其日暮の今の守護神人民の行り方、何程智慧や学の力でも今度は到底間に合んから、神国は神国の行り方に一日も早く立替て、日輪様を背に負ひて、何彼の経綸を致さむと、今の行り方は日輪に向うて知らず知らずに戦かうて居るので在るから、邪神界に薩張り馬鹿に知られて、尻の毛まで一本も無き所まで曳抜かれて了ふて居るので在るから、今に成りて何程立派な事を申しても致しても四つ足の耳へは這入りは致さんぞよ。日本は結構な神国であり、天子は天照皇大神様の直系の生神様であるから、是位ひ立派な神国は、此の広い世界に外にモ一つは無いなれど、日本の国の守護神人民は全然四つ足の精神と日本魂とを摺替られて了ふて、今の人民の行状、是では到底神国の責任が果せぬから、永らく出口の手で充分に気を付けたので在るぞよ。 日本の国体を学理的に闡明して、世界の人文の発達に於ける、日本独特の使命を発揮すると申して、一生懸命に国家の為に骨を折つて居る大学者が在るが、日本の国体と申すものは、世界に類例の無い神の建てたる立派な国体であるから、今日の如うな不完全な幼稚な学理で解決の出来るやうな、ソンナ国体では無いから、今の体主霊従の精神を根本から立直して掛らぬと、到底見当は取れは致さんぞよ。敬神尊皇愛国の精神が、日本の天賦の日本魂で在れども、今の日本の学者は、神の建てた神国と言ふことを忘れてをるから、何程立派な尊王愛国論を唱導致しても、肝腎の皇祖の神が判らぬから、御魂が無いから、何程骨を折ても駄目であるぞよ。斯う云ふことを申すと又今の鼻高は、綾部の大本は世界の大勢に逆行する、危険な頑迷思想であると申して、力一杯反対いたすものが出て来るなれど、何程反対いたしても、ソンなことに往生いたす如うな神でありたら、三千年の永がい間の苦労をいたして、世の改造は仕組は致さむぞよ。一日も一刻も速に改心いたして、神国の行り方にいたさんと、今に上げも下ろしも成らん事が出来いたすから、日本の守護神人民に神から気を付けるぞよ。神は毫末も嘘は申さむから、日本の人民は早く改心致して、世界神国成就の準備に掛りて、日本の国民の天職を全う致して下されよ。神が今度は現はれて、天と地から守護いたすから、一旦は何が在ろうとも艮は刺すから、安神いたして早く身魂を研ひて下されよ。モウ愚図々々致してをる間が無いから、跡のカラスに追越されんやうに致して下されよ。大正七年の十一月に宿替いたした悪神の大将が、今化けの皮を現はしかけて来てをるが、中々日本の人民は油断が出来ぬぞよ。是れから艮の金神が悪神の正体を表はして、世界の人民に見せて与るから、九分九厘までは日本も心配いたす事がまだまだ湧いて来るなれど、人民の改心さえ出来たなれば、昔の神世の経綸通りに致すから、一厘の仕組で艮を刺して、三千世界を泰平に治めて、万劫末代動かぬ松の神代に建替えて了ふて、天地の神々の大宮を地の高天原に建て、世界一列勇んで暮すミロクの大神の美代と致すぞよ。 ◎ 艮の金神国常立尊が永らく世に落て、三千年の経綸致した事の実地が参りて、明治二十五年から変性男子の体内を借りて、三千年の現界の守護で、松の代五六七の神代に致して、天下泰平に世を治めて、国会開きを致す経綸でありたなれど、余り日本の人民の曇りが思ふたよりも激いので、国会開きの仕組が十年斗り延びたなれど世の立替は早く致さねば、日本も立たず世界も潰れるより仕様は無いから、脚下から始まるから、日本の人民は元の日本魂に立帰りて、艮めの折りの用意に御魂を研ひて、神国の為に一身を献げる覚悟を致さぬと、今迄のやうな気楽な考えを以てをりたら、国中がアフンと致さなならぬことが出来いたすぞよ。スとフとヨとの大戦ひは是からであるぞよ。一旦はフとヨの天下と成る所まで行くなれど、ナの御魂とノの御魂の和合一致が出来て、スの御魂が統一することに成るぞよ。それに就ては通力自在の大真人が底津巌根に埋めてあるから、此者を一日も早く世に挙げて御用に使はねば、ミロクの神代は成立たんのであるぞよ。此者は三千世界の大化物であるから、現はれたら此の地の上には、是迄の如うな惨酷な戦争も根を絶ち、悪るい病魔も消え失せ、世界に大きい困難も無く、盗人も出来ず、天災も地変も末代起らず、誠に結構な平穏な神代に成るので在るぞよ。禁闕金乃神と申す勝金木神が世界の艮に表はれて、三千世界の艮めを刺すのは、モウ暫くの間であるから、誠の真人は一日も早く身魂を研ひて、スの御用の輔けに成る如うに致されよ。万劫末代名の残る結構な御用であるぞよ。今の世界の有様を見てをりては、真の人民なればヂツトしてはをれよまいぞよ。是から段々と半日の間にも世界の様子が変りて来るぞよ。 ◎ 地の高天原、陸の竜宮館に八ツの社を建て、夫れ夫れに神力の在る生神を御祭り申して、今度の二度目の岩戸開きの御用を致させる経綸であれども、肝腎の御三体の御宮が出来上らぬので、経綸が後れるので在るから、一日も早く因縁の御魂が竜宮の乙姫殿の心に立帰りて下さらぬと、後れた丈けは世界のことが後れて、人民が永く苦しむから、今までの小さい心を早く改めて下されよ。神の言に二言は無いから、一言で聞く守護神人民でないと、今度の誠の御用に外れるぞよ。五六七の神代になるまでに、綾部の大本から、日本の内の大社大社へ、神の命令で参拜いたすことが在るが、此御用に立つ人民は身魂の研けたものから選り抜いて神が御用を申付けるぞよ。今ではモチト身魂が研けておらぬから御用が定まらんなれど、夫れが定まるやうになりたら、綾部の大本が世界へ天晴れ表はれて来て世界の人民が口を揃へて大本の教は昔から未だ聞たことの無い結構な教でありたと感心いたすやうになるから、夫れまでは此の大本の役員信者は御苦労であるぞよ。就ては変性女子の身魂と金勝兼の神の身魂に一層ヱライ気苦労があるから女子が何事を致しても神の経綸であるから、黙りて見ておりて下されよ。細工は流々あるから仕上げを見んと、何も判りは致さんぞよ。普腎菩薩の身魂が美濃の国に表はれて八咫鏡を説きをいて国替いたされたなれど、今では肉体が無くなりて居るから、跡を継ぐものも無し、其流れを汲むものが尾張にもあるなれど、肝腎の五六七の出現地が判り居らんから、世界の艮は刺せんから、色々の所へ首を突込むと終には何も解らぬ如うになりて跡で地団太踏んでヂリヂリ舞を致しても行かむ事になるぞよ。斯の大本の教は艮の教であるから大本の大橋を一旦渡りたものが外へ参りて何程結構な事を聞いても行けば行く程道が無くなりて跡戻り斗りになるから神が気を付けてやるぞよ。今は何処の教も表面は立派であれども誠の生神の守護が無くなりて人民の智慧や学で考へた事であるから、肝心の艮めは刺せんぞよ。誰に由らず此大本の筆先に背いて研究に行て見よれ、跡戻り斗りで一つも思ひは立たんぞよ。三千世界の艮を刺すのは艮の金神の大本より外には世界中探しても一所も無いぞよ。心の狹い腹の小さい誠の無いものは迯げて去ぬぞよと毎度申して筆先に出して在ろうがな。肝心の時になりて迯げ帰りて結構な神徳を落すものが沢山に出て来るぞよ。瑞の御魂は物事に移り易いと今に申して神諭を取違い致して居るものが在るが、何程瑞の御魂はうつり易いと申しても神界の経綸に就ては毛筋ほども違はさんから、其んな考で居ると一も取らず二も取らず、御蔭の段になりた折には指を喰はへてアフンと致さなならぬ事になりて来るぞよ。明治二十五年からの変性男子の筆先と大正元年からの女子の申した事や書いた筆先を熟と考えて見よれ、皆その通りに成りて来ておるぞよ。まだ斯後で実地が来る事も沢山にあるぞよ。日本の国は今が大峠に掛りた所であるから、守護神も人民も充分に腹帯を〆ておりて天地の神々を敬まひ大君を心の底から主、師、親と仰ぎ奉り、愛国心を養ふて置かぬと、天地の御先祖へ申訳の立たぬ事が出来いたすぞよ。 ◎ 鶏津鳥かけ鳴き騒ぎ立上り米の餌をば食飽きて、東の空に立向ふ、吾妻の空は茜刺す日の大神の守りまし常世の暗を照り返し、一度は晴るる葦原の中津御国の功績も、ヱベス大国現はれて、大土小土ふり廻はし猛ひ狂ひつ日に月に進み来るぞ恐ろしき。然れども霊主体従火水の国。三つ巴が表はれて、四つ尾の峰の弥高き稜威の御魂の神力に六の此世を平穏に治むる地成の年よりも、天に登りて稚日女の神の神言の弥尊く、九つ花の咲き匂ふ高天原の神屋敷。十方世界の艮めを刺して塵や埃をサルの年、万代朽ちぬ美はしき、高き与れをトリ年の、世の根の神は丑艮に光りかがやく目出度さよ。二十二人の生御魂、天地の神の宮殿の幹の柱[※ルビ「あしら」は底本通り]と鳴戸海、渦卷き来る国津神。国の礎千代八千代、動かぬ神代ぞ楽もしき。 ◎ 二つの入の入りかけた此品物を方々から、我の自由にせむものと、神の敏き目も顧みず、ヱベス大国大盗梁、仏さんまで捻鉢卷の大車輪、九分にイタりて迯げ出せば、西の御寺の和尚まで此場を引くとの権幕に、コリヤ惨酷じや堂しようと、ヱベスと仏が一思案、一時和尚の言前を立てやろかい又た跡は跡の考え合点か合点々々と額体合ひチント談は済んだなれど葉マキの煙草の一服休み、舞台換はれば大平の、夢を醒した海若の、その驚ろきや如何ばかり、トントン拍子の悪神も、鯨に鯱の戦いに果敢なき最后を酉の年、猛悪無道の獅子王も身中の小さき虫に仆さるる、昔のたとゑも目のあたり、日出の神の国の柱[※ルビ「あしら」は底本通り]は永遠に、四方の国々言向けて、名も高砂の千代の松、松の緑りの色深く神の恵を仰ぐなり。 |