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(2451)
霊界物語 47_戌_治国別の天国巡覧1 余白歌 余白歌 三年の後の世界を見渡せば鬼や大蛇の狂ふ世なるよ〈総説(初版)〉 五つ年の後の世界は何国も皆神柱の降来を待たむ〈総説(初版)〉 愛し児をあとにのこして出でて行く足の運びも力無きわれ〈第4章(初版)〉 行詰り行詰りたる凡百の事業は神を知らざる罪より来たる〈第6章(三版)〉 あらがねの地上ことごと汚れたり神の禊を待つぞ久しき〈第6章(三版)〉 みろくの世はや迫り来て一切の秘密は白日の下に曝さる〈第6章(三版)〉 古の聖も未だ説かざりし弥勒胎蔵の吾は道説く〈第7章(三版)〉 我が国の貴きいはれを知らさむと三十余年皇道を説きたり〈第7章(三版)〉 一千九百三十六年を控へたる日本は容易ならぬ時なり〈第7章(三版)〉 真言を宣れど叫べど耳なしの国人たちの心を如何にせむ〈第10章(三版)〉 一日の身魂休むる暇もなく吾は御国のために叫びぬ〈第10章(三版)〉 須世理姫の神の生魂神格を充たして臨む二代の教主よ〈第11章(初版)〉 乱れたる世を見捨てずと大神はこの地の上に神使を下せり〈第11章(三版)〉 国民は言ふも更なり世界中の人の驚く時は来らむ〈第11章(三版)〉 赤門を潜れば大半魂は赤く染まりて世を乱すなり〈第11章(三版)〉 雁首を幾度代ふるも神国は神知らぬ人の知る国にあらず〈第11章(三版)〉 日の本の一大使命を中外に声明すべき時は迫れり〈第11章(三版)〉 それぞれに御魂相応の神格を与へて世人を照らし給はむ〈第15章(初版)〉 もろこしの蛤間の山に嵐して花も果実もあとなく散り行く〈第15章(三版)〉 宗教は数多あれども日の本の力とならむ団体はなし〈第18章(三版)〉 大空を隈なく照す月影を包む村雲しげき世なるも〈巻末(初版)〉 もろこしの北と南に旗雲立ちてそら恐ろしき世とはなりけり〈巻末(初版)〉[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました]
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(2474)
霊界物語 48_亥_治国別の天国巡覧2 余白歌 余白歌 第一に日本の国の官公吏はその霊魂の改築をせよ〈第1章(三版)〉 甲子の九八の空を待ち佗びし[※「甲子の九八」とは大正13年(1924年)(甲子の年)の10月6日(旧9月8日)のことか?この日、王仁三郎は五六七殿の太鼓の打ち方を七五三から五六七に改めるよう命じた。]胸にみろくの鼓うつなり〈第2章(初版)〉 三千年の岩戸の七五三も解けにけりみろく三会の神音の響に(大正甲子、旧九、四)〈第2章(初版)〉 西東南や北の大空に八雲立ちたつ御代は淋しき〈第2章(三版)〉 浪速江のよしとあしとをかき分けて遠き神代の物語する〈第3章(三版)〉 未決監にて 籠城の馬も肥えたり秋高し〈第4章(初版、三版)〉 三十あまり六年の間皇神の道を宣りつつ飽かざる吾なり〈第5章(三版)〉 大阪未決監にて 日照りして米の価も安くなり 唐土の野に蟷螂の斧を振り 蟷螂の亡びしあとに米実り 秋の日は光あれども温みなし 秋津日の光に米はたわむなり (大正一三・九・二七)〈第6章(初版、三版)〉 不合理なる思想を四方に伝播して世界を亡ぼす曲津見の好計〈第7章(三版)〉 内外の国のことごとマツソンの毒牙にかかりて苦しみ艱める〈第7章(三版)〉 我が国の前途に横たふ黒雲を気吹きはらふと雄叫びす吾は〈第7章(三版)〉 苦験録誌(九言六句詩) 瑞月 三五経綸維宇宙意志教主開祥三十有余年 神光発八荒甲子春秋旺哉大本海外宣伝部 舎身活躍諸士如火水幽閉陰魂亦有蘇生思 (大正一三、九、三〇)〈第8章(初版)〉 大阪未決監にて 教子の心を砕く有様を聞く度毎に地に俯して泣く 天を仰ぎ地に俯し泣きて教子の上安かれと根底で祈るも 胸は裂け膓は燃えなむ苦しみも世のため道のためと忍びつ (大正一三・一〇・七)〈第9章(初版)、第14章(三版)〉 我思ふ一つを汲み取る人あらばかほどに胸を痛めざらまし(大正十三、一〇、九)〈第10章(初版)〉 瑞月(甲子二月) 来てみれば神の経綸の人々は吾待ち佗びて歓び迎えぬ〈第12章(初版)〉 天地の神の御業に仕へむと思ふのあまり皆忘れたり〈第12章(初版)〉 満洲の寒さ気つひし我身には合点の行かぬ事斗りなる〈第14章(初版)〉 唐衣身にまとふとも惟神神の恵みは忘れざるべし〈第15章(初版)〉 刻々に曲津神たち迫り来て風吹かむとす地ゆらむとす〈第15章(三版)〉 和光同塵忍びて時を待ちゐたる世は迫り来ぬ神のまにまに〈第15章(三版)〉 宣伝使国の内外に配りおきて世を清めむと祈る朝夕〈第15章(三版)〉 言霊はたとへ通はずとも人々の面の色に意志を通ずる〈第17章(初版)〉 三ツ御玉 如意宝珠瑞の御霊の言霊は天と地とを結ぶ神宝 天火水地結ぶ紫色の宝玉は弥勒神示の霊界物語なり 黄金の玉は教典内外に金言伝ふ機関なりけり (大正十三年十月十一日)〈巻末(初版)〉 五ツ御玉 紫のマニの宝珠は厳御魂世を治めます筆先の霊 赤色のマニの宝珠は日の本の国に具はる言語なりけり 白色のマニの宝珠は地の上に広く渡れる英語なりけり 青色のマニの宝珠は万国に共通したるエスペラント語 黄色のマニの宝珠は黄竜旗風になびかす支那語なりけり〈巻末(初版)〉[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました]
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(2497)
霊界物語 49_子_祠の森の物語1(高姫と妖幻坊) 余白歌 余白歌 みろく四十七文字 みろくなる。いつ。あらはれて。よをまもり。 ときわのふゆ。おさめぬすえ。ほかへそ。 せゐしね。やちこゑに。うたひ。けむ。(大正十三年十月十三日)〈総説(初版)〉 霊界物語 天地の神の御旨を明らかに悟るは是の神書なりけり 天国や中有界や地獄道詳細に覚る神の書かな 日と月を重ねて見れば此書のまことの心明らかとなる(大正十三年十月十四日)〈総説(初版)〉 根の国の高天原に在る我はこの物語生命なりけり〈第2章(初版)〉 物語読む度ごとに根の国も高天原の心地するなり〈第2章(初版)〉 この神書もし無かりせば地の上に弥勒の神世は開けざらまし〈第2章(初版)〉 いたつきの身を横たへて述べおきしこの物語は月の血の露〈第3章(初版)〉 天国天人 最奥の霊天国に住む人は無垢清浄の真裸体なり〈第3章(初版)〉 十二支読込み 丑寅は未申かみ籠りいぬたつねさとりしうゐのうまし道〈第5章(初版)〉 天の下四方の国々果てもなく生言霊のみいづ輝く〈第5章(初版)〉 白雲の海の彼方の国までも真言を伝ふ人ぞ雄々しき〈第5章(初版)〉 愛の善信の真をば真向にかざして進め海の外まで〈第6章(初版)〉 万有愛真の教をどこまでも開かにや止まぬ命限りは〈第6章(初版)〉 大神の依さしに酬ゆる時は来ぬエス語に英語支那語宣伝〈第7章(初版)〉 歎かひの中より亦もほほゑみぬ海外宣伝思ひ浮べて〈第7章(初版)〉 三千年の桃の花と果ひと時に開いて実る春は来にけり〈第7章(初版)〉 未決檻にて 若草の妻子に逢ひし時こそは根底の淵を浮ぶ心地せり〈第10章(初版)〉 岩屋戸の開くを待つ間長月の三五の空に微光だもなし〈第10章(初版)〉 惟神思ひ直してまた笑みぬ霊に生くてふ吾をかへりみ〈第12章(初版)〉 空顕録(九言六句) 人類愛是天人所主愛世間愛自愛即地獄愛 凡人多日博愛慈善道神眼視之必非真愛善 要愛善天上愛悪地国可猛省内外両分相違(大正十三年九月十九日)〈第14章(初版)〉 功験録 艮坤二神現厳瑞威霊創開全大宇宙大経綸 不断説愛善真信之道天明漸来出生稚姫霊 並素尊精霊錦綾聖地三五月光広照弥勒世(大正十三年九月二十一日)〈第15章(初版)〉 苦顕録 瑞月生此土既五十四永年如一日刻苦精励 奉仕五六七神制鴻業吁不思遭邪強之暴逆 在身体不自由之境涯雖然吾神魂活躍乾坤(大正十三年十月二十日)〈第20章(初版)〉 小唄 一、 自然界より吾観る時は実に苦しき籠の鳥 神霊界より見る時は鳳凰天に翼を打つ。 二、 月さへ見えぬ窓の内自然界には闇なれど 神霊界に在る吾は胸に日月照り渡る。 三、 愛と信との光と熱に身は包まれた籠の鳥 何時か心の苦しさを忘れて月日を送るなり。 (大正十三年十月十四日)〈第20章(初版)〉[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました]
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(2498)
霊界物語 50_丑_祠の森の物語2 序文 序文 顧みれば、大正十年十月十八日、松雲閣に於て霊界物語と題し口述筆記を始めしより、十六ケ月目、漸く五十巻を編纂せり。此間種々の故障の為、着手日数は二百日内外の口述にて本巻に到達せり。而して本日は、大正十二年一月二十三日、此数字を合算すれば三十六となり、みろくに因む。又旧暦にては大正十一年十二月七日、此数字を合算すれば三十となり、三ツの御魂に因みたる吉日なり、又以て一奇と謂ふべし。霊界物語第一巻より第十二巻までを第一輯とし改めて「霊主体従」と題し、第十三巻より第廿四巻迄を「如意宝珠」と題し、第廿五巻より第卅六巻までを第三輯とし「海洋万里」と題し、第卅七巻より第四十八巻迄を第四輯とし「舎身活躍」と題し、第五輯に当る「真善美愛」と題せる物語を漸く茲に第二巻迄口述編纂を了りたり。何れも一題目毎に三百六十頁十二冊、計四千三百二十頁と相成る次第なり。アア瑞月は精神上及び肉体上の大なる束縛を受けたる身ながらも、大神の恩寵と筆録者諸弟の熱烈なる努力とによつて、茲に五十巻の大峠を越えたるは実に人間事とはどうしても思はれないのであります。希はくば大本の信者はいふも更なり、大方具眼の士はこの熱血より迸り出でたる作物を愛読あつて、宇宙の大精神を了知し、人として世に処すべき指針となし給はむことを。謹言。 大正十二年一月廿三日旧大正十一年十二月七日 於伊豆湯ケ島仮教主館王仁識
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(2521)
霊界物語 50_丑_祠の森の物語2 余白歌 余白歌 みろくの世間近くなりて甲子の秋のみまつり遙かに拝むも〈第2章(初版)〉 神の国霊界聖談など読みて秋の長夜を天国に遊ぶ〈第4章(初版)〉 湧き出づる思想の泉汲みておく術さへもなき今日のわれかな〈第4章(初版)〉 神々の御宣を伝へ示さむとおもふ甲斐なき今日の吾なり〈第4章(初版)〉 久験録 瑞月 甲子旧五月二十三朝富士山上現三個太陽 中央白光左右円像赤次自七月十一至十三 晴空月面有薄蝕天変古聖相伝曰国家凶兆 (大正一一、一〇、二二)〈第8章(初版)〉 赤心のあらむ限りを尽しつつ天にとどかむ時待つ久しさ〈第9章(初版)〉 ままならぬ身を横たへて待ち佗びぬ晴れて輝く月日の空を〈第14章(初版)〉 かねてより斯くと知りつつ夜な夜なに世の行く末を今更なげくも〈第14章(初版)〉 言問はむ人さへもなきわが身には窓下の読書頼りなりけり〈第14章(初版)〉 ひむがしの空を眺めて思ふかな生日足日の吉き日あれよと〈第14章(初版)〉 わが思ふ心の一つ通ひなば九十九の峯も安く越ゆべし〈第15章(初版)〉 偉大なる神の光りを力としいつの御年の春を待つなり〈第16章(初版)〉 甲子の空をみとせの艮は世に例しなき雲のゆきかひ〈第17章(初版)〉 三五の月さへ面を曇らしてなげき給はむ巡り来る世を〈第17章(初版)〉 大小の三の災起るともみままにならば確に救はむ〈第17章(初版)〉 唐土の蛸間の山に嵐して野辺の百草寒さに慄ふも〈第18章(初版)〉 事しあらば志古の岩窟押し開き瑞の御魂の世の守り得よ〈第18章(初版)〉 天地は変らざれども曲津見の荒ぶ暗世は亡び失すらむ〈第20章(初版)〉 東の空まだ明けず暁の光の底に吾は雄健ぶ〈第20章(初版)〉 皇道の真意を知らぬ政乱家の得意顔なる御代は淋しき〈第20章(三版)〉 三五の玉〔その二〕 三ツの玉 竜館桶伏山の聖場は金剛不壊の如意宝珠なり 紫の珍の神宝は万寿苑永劫不滅の霊地なりけり 黄金の玉の台は高熊の四十八なす宝座なりけり〈巻末(初版)〉 五ツの玉 紫の麻邇の宝珠は厳御魂瑞の御魂の経綸なりけり 赤色のマニの宝珠は信徒の神国を守る大和魂 白色のマニの宝珠は水晶に研き上げたる御魂なりけり 青色のマニの宝珠は愛信の誠あらはす力なりけり 黄なる色のマニの宝珠は遠近の信徒の持つ誠なりけり〈巻末(初版)〉[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました]
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(2574)
霊界物語 52_卯_小北山の文助の改心物語 27 胎蔵 第二七章胎蔵〔一三六三〕 時置師神杢助は、ライオンを守衛に預けおき、八衢の審判神伊吹戸主の館へ進み入り、奥の一間に於て伊吹戸主と二人対談をやつてゐる。 伊吹戸主『ああ時置師神様、随分宣伝はお骨の折れる事でせうなア、御苦心お察し申します』 時置師『ドーモ曇り切つた世の中で、吾々の如き人間は神様の御思召の万分一も働く事が出来ませぬので、実に慙愧の至りで厶います。つきましては今度お訪ね致しましたのは、神素盞嗚大神様の御命令に依つてで厶います。三五教に居りました高姫と云ふ女、彼の行状に就ては実に困つたもので厶います。兇党界の精霊、妖幻坊なる妖怪に誑惑され、それをば私と思ひ込み、彼方此方で時置師や杢助をふり廻すので世の中の人間が非常に迷ひます。それ故今度霊界へ参つたのを幸ひ、暫くの間現界へ帰さないやうに取計らつて貰ひたいものです』 伊吹戸主『成程、大神様の御言葉、何とか致さねばなりますまい。併しながら彼高姫は、未だ生死簿を見れば二十八年が間寿命が残つて居ります。霊界に止め置くのは御易い事で厶いますが、どうしても彼は現界へ還さねばならぬもの、余り長く止め置けば、其肉体が役に立たないやうになつて了ひます。其肉体を換へても差支なくば、何とか取計らひませう』 時置師『どうか二三年の間此処に御止めを願ひ、三年先になつて霊界へ来るべき女の肉体に高姫の精霊を宿し下さいますれば、大変都合が好いでせう』 伊吹戸主神は暫く目を閉ぢ、思案をしてゐたが、やがて打肯いて、 伊吹戸主『イヤ宜しう厶います。適当な肉体が三年後に霊界へ来るのが厶いますから、その肉体に高姫の精霊を宿し、二十八年間現界へ生かす事に取計らひませう』 時置師『イヤ、それは実に有難う厶います。左様なれば御免を蒙りませう』 伊吹戸主『時置師神様、エー今此処へ大原敬助と片山狂介、高田悪次郎などの大悪党が出て参りましたが、今審判が開けますから、一寸傍聴なさつては如何ですか。高姫も是から審判が始まります』 時置師『イヤもう、高姫が居るとすれば折角ながら止めませう、ハハハハハ』 伊吹戸主『たつて御勧めはいたしませぬ。左様ならば大神様へ宜敷く仰有つて下さいませ。私はこれより審判に参ります』 とツイと立つて廊下を伝ひ審判廷に行く。杢助は守衛を呼んでライオンを曳き来らしめ、ヒラリと背に跨り、ウーツとライオンの一声辺りを轟かせながら、一目散にウブスナ山の方面指して中空を駆り帰つて行く。 中有界の八衢に伊吹戸主が永久に 鎮まりまして迷ひ来る数多の精霊一々に 衡にかけて取調べ清浄無垢の霊魂は 各所主の愛に依り高天原の霊国や 三階段の天国へ霊相応に送りやり 極悪無道の精霊は直ちに地獄に追ひ下し 善ともつかず又悪に強からざりし精霊は 一定の期間中有の世界に広く放ちやり いよいよ霊清まりて高天原に上るべく 愛と善との徳を積み信と真との智を研き 覚り得たりし精霊を皆天国に上しやり 悔い改めず何時迄も悪心強き精霊は 涙を払ひ暗黒の地獄へ落し給ふなり 今現はれし敬助や片山狂介、悪次郎 右三人の兇悪はいと厳格な審判を 下され直ちに暗黒の地獄の底へ落されて 無限の永苦を嘗むるべく両手を前にぶら下げて 意気消沈の為体顔青ざめてブルブルと 慄ひ戦く相好は忽ち変る妖怪の 見るも浅まし姿なり後に来りし呆助や おつやの二人は姦通の大罪悪を審かれて 色欲界の地獄道右と左に立別れ さも悲しげに進み行く続いて高姫神司 伊吹戸主にさばかれて此処三年の其間 中有界に放り出され荒野を彷徨ひいろいろと 艱難辛苦を味はひつ我情我慢の雲も晴れ 漸く誠の人となり又現界に現はれて 三五教の御為に誠を尽し居たりしが 再び情念勃発し妖幻坊に欺されて 印度の国のカルマタのとある丘陵に身を潜め 妖幻坊と諸共に悪事の限りを尽すこそ 実にもうたてき次第なり斯く述べ来る霊界の 誠を写す物語五十二年の時津風 みろく胎蔵の鍵を持ち苦集滅道明かに 説き諭し行くみろく神小松林の精霊に 清きみたまを満たせつつ此世を導く予言者に 来りて道を伝達し世人を普く天国に 導き給ふ御厚恩無下には捨てな諸人よ 三五教の大本に参来集へる信徒や 百の司は村肝の心を鎮め胸に手を 当ててよくよく悟るべしああ惟神々々 御霊幸はひましませよ旭は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも仮令大地は沈むとも 海はあせなむ世ありとも神のよさしの言霊は 幾万劫の末迄も尽きせぬものと覚悟して これの教をよく信じ愛と善との徳に居り 信と真との光をば世に輝かし惟神 智慧証覚を摂受して此身此儘天人の 列に加はり人生の清き本務を尽すべし 神は吾等と倶にあり神は汝と倶にます 人は神の子神の宮神より外に杖となり 柱となりて身を救ふ尊きものはあらざらめ 仰ぎ敬へ諸人よ神の御水火に生れ来て 神の造りし国に住み神の与へし粟を食み 神の誠の教をば心に深く植込みて 束の間も忘るなよ人の人たる其故は 皇大神の神格を其身にうけて神界の 御用に仕ふる為ぞかしああ惟神々々 神の御前に赤心を捧げて感謝し奉る。 惟神神の御言を畏みて 五十二巻を述べ終りける。 教へ子に筆とらせつつ床の上の 寝物語に物せし此書。 いろいろと醜の妨げありけれど 神の守りに編み終りけり。 (大正一二・二・一〇旧一一・一二・二五外山豊二録)
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霊界物語 55_午_ビクの国の物語3(玉木の里) 18 音頭 第一八章音頭〔一四二六〕 アヅモスは赤手拭ひで鉢巻をし乍ら、群衆に交はつて手を拍ちつつ円を画いて宮の前の広庭に音頭を取り踊り始めたり。 (音頭口調)『ハーヤー夕陽も傾きて(エンヤツトコセー) 無常を告ぐる鐘の音も(コラシヨ) みろく三会の暁の 目醒めの声と聞ゆなりー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセー) 社前を照らす銀燭の 光映ゆき照り渡りー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 治国別の神司 救ひの神と現れまして(コラシヨ) 三五教の御教を 完全に委曲に説き玉ひイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 玉木の村の里庄が家に(コラシヨ) 止まり玉ふ尊さよオー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 猪倉山の巌窟に(コラシヨ) 巣を構へたるバラモンの 鬼春別や久米彦もオー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセー) 神の力に敵し得ず 兜を脱いで降参し(コラシヨ) 髪切り落し比丘となりイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 金剛杖に墨衣(コラシヨ) 身に纒ひつつ四人連れ 此家を後に出でて行くウー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 後に残りし治国別は(コラシヨ) 御供の神の松彦さま(ドツコイ) 道晴別や竜彦のオー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 珍の司と諸共に 玉置の村の守り神(コラシヨ) テームス館に宮柱 太しき立てて大神をオー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセー) 鎮め玉ひし尊さよ 殊に目出度き万公別 此家の主人となり玉ひ(コラシヨ) スガール姫を娶らせてエー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセー) 鴛鴦の契の幾千代も 万公末代変りなく(コラシヨ) 暮らさせ玉へ惟神(コラシヨ) 神の御前に願ぎ奉るウー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセー) それにまだまだ目出度きは(コラシヨ) スミエル姫にシーナさま(ドツコイ) 三国一の婿となりイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 万公さまと相列び(コラシヨ) 里庄の家を継ぎ玉ひイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 此村人を何時迄も(コラシヨ) 恵助けて三五の 教の道を立て玉ふオー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 目出度い事が重なれば(コラシヨ) これほど重なるものかいなアー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 番頭さまのアーシスさまは(コラシヨ) 雲井に近き御方の 珍の御胤と聞えたる お民の方を妻に持ちイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 玉木の村にましまして(コラシヨ) 治国別の神様の 教を守り此宮の(コラシヨ) 神の司となり玉ふオー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 其の瑞祥を悦びて 老若男女の別ち無く 之の館に相集ひ 歓喜の涙にむせ返るウー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) ああ惟神々々 神の御前に謹みて(コラシヨ) 深き恵を感謝しつ 手拍子揃え足並揃え 拍手うちて踊りつつ 悦び祝ひ奉るウーウ(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) まだまだ先はあるけれど あまり長いのは御退屈 私はこれで休みます 次の御先生に御頼み申すヤーア(ア、ヨーイセー、ヤツトコセー)』 道晴別は祭服を脱ぎ捨て、踊り子の中に飛び込み、音頭をとつて踊り始めける。 道晴別『(アアチヨイチヨイチヨイ) 私は道晴別司(ア、チヨイトコセーチヨイトコセー) 三五教の神様に 御仕へ申して十四年(ア、チヨイトコセーチヨイトコセー) 斎苑の館やエルサレム 黄金山や霊鷲山 コーカス山へも参拝し(ア、チヨイトコセーチヨイトコセー) 誠に尊い御神徳 身に稟けまして治国別の 珍の司の宣伝使 御供に仕へ奉りつつ(ア、チヨイトコセーチヨイトコセー) 斎苑の館を立出でて 河鹿峠を打渉り(ア、チヨイトコセーチヨイトコセー) 曲の棲処と聞えたる 山口森に立寄つて 一夜を明す折もあれ(ア、チヨイトコセーチヨイトコセー) 忽ち光る鬼火を眺め 胸轟かし居たる折(ア、チヨイトコセーチヨイトコセー) 頭に三徳頂いて 蝋燭三本立列べ 鏡や鋏を胸に吊り チヤンチヤンチヤンチヤンビカビカと 怪しの姿がやつて来る(ア、チヨイトコセーチヨイトコセー、ア、ヨイトサーヨイトサー) 不思議な奴だと怪しんで 胸轟かす真最中 アこれから先が面白い(ア、チヨイトコセーチヨイトコセー、ヨイトサーヨイトサー) まだまだ先はあるけれど 後の御方に御気の毒 これにて御免を蒙りませう(ア、チヨイトコセーチヨイトコセー、ヨイトサーヨイトサー、ハーレヤーレコレワノサヨーイヨーイヨーイトサ) 次の御先生に御渡し申す(ア、チヨイトコセチヨイトコセ、ヨーイトサーヨーイトサー)』 ○ 音頭『イヤ、ヤツトコシヨ 踊『コリヤドシタイヤイ 音頭『イヤま一つヂヤ 踊『イヤまだかいヤイ 竜彦『後見送りて宣伝使(エンヤツトコセー) 暫し言葉も無かりしがアーアー(ア、ヨイトセー、ヤツトコセー) 女房松姫尻目にかけ(コラシヨ) コリヤ女房(ドツコイ) 其方は神の使と云ひ乍ら 其天職を忘れたかアーアー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセー) 此松彦は神様の(コラシヨ) 尊き使命を蒙りて(コラシヨ) 治国別の弟子となりイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセー) 悪魔の征討に上り行く(コラシヨ) 其首途を見ながらに(コラシヨ) 待てと申すは何の事オー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 聞きわけないと突放す 松姫顔を赤らめてエー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) イヤのう、モーシ松彦さま(ドツコイ) 女乍らも宣伝使 夫の後を追つかけて どうして御用が出来ませうかアーアー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセー) 女房の心も察してたべ(ドツコイ) 悲しいわいなと泣き、伏してエー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセー) 輪廻に迷ふ浅間しさ 松彦涙を打払ひイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 今の別れは辛けれど(コラシヨ) 暫く忍べ道芝の 露さへ乾く例ありイーイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセー) 治国別の師の君が(コラシヨ) 後を慕うて進み行き(コラシヨ) 浮木の森で追ついてエーエー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 功名手柄を世に照らし(ドツコイ) 尚も進んで月の国 ハルナの都に立向ひイーイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 斎苑の館へ復り言 申さにや置かぬと出でて行く(コラシヨ) 後見送りて松姫はアーアー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 常磐の松の下かげに(コラシヨ) いよりかかつて声を上げエーエー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) モーシモーシ吾夫さま(ドツコイ) 一日も早く神界の 御用をすませ玉はりて(コラシヨ) 無事なお顔を見せてたべエーエー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 頼むワイなと声限り 便りを松姫小夜姫がアー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 領巾振山のオーオー悲しみもーーー わが身の上を歎きつつ 別れを惜む可憐さアーアー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 流石勇気の松彦も(コラシヨ) 妻の愛惜子故の暗(ドツコイ) 怺へかねてかハラハラハラ(ドツコイ) 涙は落ちてエーエーエー河鹿川ーーー 堤も崩るるばかりなりイーイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 其松彦は長駆して 治国別の師の君に(コラシヨ) 浮木の森に巡り会ひイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 茲に師弟は手を曳いて ライオン河を打渡りイーイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) ビクトル山の麓なる(コラシヨ) 珍の都の刹帝利 左守の司の危難をば(コラシヨ) 救ひ助けし健気さよオーオー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 治国別の師の君の 大神力は云ふも更 国治立の大神様(コラシヨ) 神素盞嗚の神様の(コラシヨ) 深き守りによるものぞオーオー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 此竜彦も相共に(コラシヨ) 神の御道を歩みつつ ビクの国をば立出でてエーエー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 漸く此処に来て見れば 玉置の村のテームスがア娘 二人は魔神に捕らへられ 行方、知れぬと聞きしよりイーイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 三五教の宣伝使 松彦、竜彦、万公さま(コラシヨ) 三人の伴を引連れて(コラシヨ) 神のまにまに夜の道 上らせ玉ひし勇ましさアーアー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセー) 神徳忽ち現はれて バラモン教のゼネラルや カーネル始め百軍(コラシヨ) 一人も残らず言向けてエーエー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 玉置の村に帰りまし(コラシヨ) 清き教の数々を 里庄の夫婦に教へつつ 天国浄土を地の上に(コラシヨ) 築かせ玉ひし尊さよオーオー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 神の恵みも赫灼に 現はれ玉ひ今此処に(コラシヨ) 瑞の御舎建て玉ひ 皇大神を永久に コラシヨー(ドツコイシヨ) 斎き奉りし嬉しさよオーオー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) ああ村人よ村人よ(コラシヨ) 尊き神の御前に 心を清め身を浄め(コラシヨ) 朝な夕なに参詣で 霊の恩頼を頂けよオーオー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 此竜彦は師の君に(コラシヨ) 従ひ奉り明日よりは(コラシヨ) ハルナの都へ立向ひイーイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 神の依さしの神業を(コラシヨ) 仕へ奉りてウブスナの 山にまします大神の 御前に復命致すべしイーイー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) いざこれよりは皆様に(コラシヨ) 御苦労になりし御礼を(コラシヨ) かねて御暇仕まつるウーウー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセ) 次の先生にお渡し申すヤーヤー(ア、ヨーイセー、ヤツトコセー)』 と音頭取りと踊り子が遷座式の神酒に酔ひ、歓喜に浮かされて円を造り、夜の更くる迄踊り狂ひ賑々しく祭典の式を納めた。是より治国別、道晴別、松彦、竜彦の四人は、テームス一家に暇を告げ、一先づエルサレムを指して足を速めて出でて行く。ああ惟神霊幸倍坐世。 (大正一二・三・四旧一・一七於竜宮館外山豊二録)
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霊界物語 56_未_テルモン山の神館1 12 照門颪 第一二章照門颪〔一四四二〕 求道居士はケリナ姫を伴ひ乍ら、テルモン山の小国別の館を指して送り行く途々歌ひ出したり。 求道『有為転変は世の習ひとは云ふものの人の身の 行末こそは不思議なれ三国一の月の国 ハルナの都に程近き大国彦の現れませる 大雲山に立籠りバラモン教の御教を 朝な夕なに信仰し抜擢されてバラモンの 教司と任けられつ追々功績を現はして 大黒主の御見出しにあづかり遂にカーネルの 尊き職を授けられ神素盞嗚の現れませる 斎苑の館を屠らむと大黒主の命を受け 鬼春別や久米彦の両将軍に扈従して 旗鼓堂々と月の国後に眺めて進み行く 万里の山野を跋渉し蹄の音も勇ましく 浮木の森迄進軍し片彦、久米彦将軍と 隊伍を整へ河鹿山進む折しも三五の 治国別の言霊に打破られて敗走し 浮木の陣屋へ引返し又もや茲に全軍を 二つに分けてライオンの広き流れを相渡り ビクトル山の袂にて仮の陣屋を造りつつ ビクトリヤ城を脅かし味方の軍勢に驚いて ゼネラル様と諸共に総隊崩れ逃げ出す 戦の庭に出で乍ら薄の穂にも怖ぢ恐れ 慄ひ慄ひて広野原漸く渡りシメヂ坂 壁立つ如き坂道を漸く下り猪倉の 難攻不落の山寨に永久的の陣営を 構へて時を待つ内に又も聞ゆる宣伝歌 三五教に名も高き神将軍と聞えたる 治国別の一行に又も攻められゼネラルは 脆くも茲に兜脱ぎバラモン教の軍職を 捨て忽ち三五の教の道のピユリタンと 変らせ玉ふ果敢なさよ吾等も共に進退を 同じうせむとカーネルの職をば止めて修験者 名も求道と改めてビクの御国の清滝に 霊を洗ひビクトルの下津岩根に宮柱 太しく立てて永久に鎮まり居ます大神の 御前に日毎詣でつつ治道、道貫、素道居士 三人の許しを受け乍らフサの国をば横断し 猛獣毒蛇の荒ぶ野を神の光を杖となし 夜路の露をば浴び乍らエルシナ川の麓まで 来る折しも大空の月は漸く薄らぎて 忽ち聞ゆる鳥の声川の水瀬のはやる音 たよりに伝ひ下る折淵に浮かんだ四人の姿 見逃がしならずと衣を脱ぎ法螺を口に喰へつつ ザンブと許り飛込んで四人の男女を空砂の 上に救ひて耳元に大法螺貝を吹立つる 神の恵は忽ちにシヤール一人を除く外 三人は息を吹き返しやつと胸をば撫で下し 三人の男女に皇神の御教を完全に諭しつつ 大岩谷の麓まで来りて息を休めつつ 十字の秘法や数歌の功力を伝へゐたる折 悪逆無道のベルの奴わが懐に金子ありと 早くも悟り悪心を起して奪らむと攻め来る ヘルとベルとは初めよりわが懐を狙ひつつ 八百長喧嘩を徐々と真面目にやり出し ベルの司は逸早く此場を後に逃げて行く さはさり乍らヘルの奴色と欲とに心をば 曇らせ吾等の後を追ひケリナの姫を送らむと 草野を別けて進み来る日も黄昏になりぬれば ポプラの蔭に立寄りて息を休むる折もあれ 又もや来る黒い影これぞ正しくベルの奴 ヘルと二人が言ひ合せ吾が懐を狙はむと 来りしものと悟りしゆいろいろ雑多と真道を 説き諭せども如何にせむ地獄の境に堕ち果てし 二人の霊は飽く迄も悪の企みを遂げなむと 忽ち棍棒振り翳し吾が脳天を打すゑぬ 何かは以て耐るべき忽ちウンと昏倒し 夢路を辿る折もあれ高天原の霊国を 領有ぎ玉ふエンゼルが鳩の如くに下りまし 吾等二人の危難をば救ひ玉ひし有難さ ああ惟神々々神の恵を目の当り 受けたる吾々両人は仮令如何なる悩みにも 撓まず屈せず道の為世人の為めに真心の 有らむ限りを尽しつつ進まにやならぬ両人を 守らせ玉へ惟神皇大神の御前に 畏み畏み願ぎ奉る旭は照るとも曇るとも 月は盈つとも虧くるとも星は天より落つるとも 印度の海はあするとも此大恩は何時の世か 報い奉らで置くべきぞ思へば思へば有難き 恵の露の天地に充ち足ひたる神の世は 草野の末に置く露も一々月の御光を 宿し玉ひて瑠璃光の如く光らせ玉ふなり ああ天国か楽園か際限もなき広野原 進み行く身ぞ楽しけれ』 ケリナ『わが足乳根の父母は月の都に現れませる バラモン教の太柱大黒主の部下となり 仁慈無限の御教をテルモン山の山腹に 大宮柱太知りて鎮まりゐます皇神に 朝な夕なに仕へつつ四方の国人悉く 神の教に靡かせつ教を開き玉ひしが ウラルの教の神司数多の手下を引率れて 得物を携さへ堂々と勢猛く迫り来る 其勢に辟易し吾が足乳根は逸早く 館を捨ててテルモンの高嶺を渡り森林に 暫し難をば避け玉ふ此時信者と現れませる 鎌彦司が現はれて神変不思議の神力を 現はし玉ひ攻め来るウラルの教の司等を 一人も残らず退けて難をば救ひ玉ひしゆ 吾が足乳根は漸くに元の館に帰りまし 神の教を詳細に開かせ玉ふ折もあれ 館の難を救ひたる鎌彦司は妾をば ラブし給ひて朝夕に言ひよりたまひし果敢さよ 妾は素より鎌彦に少しも心はなけれ共 度重なれば何時となく男の情けを慕ひ出し 遂には割なき仲となり父と母との目を忍び 月夜を恨み暗の夜を指折り数へ待ち暮す 怪しき仲とはなりにけりさはさり乍ら足乳根の 吾が両親は頭をば左右にふりて両人が 恋を許させ玉ふ可き気色なければ止むを得ず 夜陰に紛れて両人は手に手をとつて逃げ出し エリシナ谷の山奥に形ばかりの草庵を 結びて暮す折もあれ吾が背の君の鎌彦は 俄に駱駝を引つれて妾を家に残しつつ 何処ともなく出でましぬ深山の奥に只一人 果実を喰ひ芋を掘り漸く餓を凌ぎつつ 悲しき月日を送ること早一年に及べども 夫の便りは泣く許り袖をば濡らす草の露 衣は破れ肉は痩せ見る影も無き状となり 淋しき浮世を果敢みて冥途の旅を為さむかと 庵を後に夜の道エルシナ川の川岸に 佇み胸を押へつつ少時思案に暮れけるが 何処ともなく吾が耳に死ねよ死ねよと教へ来る 醜の曲津か知らね共切迫詰つた此場合 死ぬより外に途無しと心を定めて飛び込めば 千尋の底の青い淵息も苦しくなりければ 再び娑婆が恋しうなりま一度生命を保たむと 焦れど詮なし女の身弊衣に水を含みしゆ 身も儘ならず悶え居る時しもあれや何物か 吾が身に触るる物ありと矢庭にしかと抱き付き 浮つ沈みつ争へば何時しか息は絶え果てて 前後不覚となりにけり斯かる処へヘル司 現はれ来り両人を救ひ助けて森林の 中に伴ひ労りつ種々雑多の介抱に 再び正気に復しける悪逆非道の一人は 妾の姿見るよりもあやしき眼を光らせて 耳も汚るる口説言三人の男は吾が身をば 妻になさむと争ひつパインの蔭に組みついて 組んづ転んづ又元の青淵目蒐けて落ち込みぬ 妾を救けし恩人の生命を助けにやなるまいと 吾が身を忘れて飛び込めば又もや溺れて人心 無き身とこそはなりにけりこれより一行四人連れ 青野ケ原を打渡り当途もなしに進み行く 忽ち関所に突き当り容子を聞けば霊界の 八衢関所と聞きしより吾等が一行驚いて 再び元の道をとり帰らむとする折もあれ 酒に酔ふたる六造が又もや途中に塞がりて 何ぢやかんぢやと口説出すこりや怺らんと思ふ折 向ふの方より足早に走り来れる婆々あり 一行五人は怪しみて道の側への草原に 身を隠したる時もあれ婆々はツツと立止り 不思議な手つきで招きつつ日出神の義理天上 底津岩根の太柱みろくの神の生宮だ これからお前等一同に天国浄土の真相を 諭してやるから跟いて来いなぞと言葉も滑らかに いと熱心に説きつける何は兎もあれ行き見むと 婆々の後に従ひて川を隔てて岩山の 賤が伏屋に跟いて行くウラナイ教の旗頭 高姫さまが住家ぞと聞いて驚く胸の内 さあらぬ顔を装ひて様子を伺ひ居たりしが 忽ち聞ゆる法螺の声三五教の修験者 求道居士が現はれて吾等一同の危難をば 救はせ玉ふと見る内に俄に聞ゆる水の音 小鳥の声も爽かに耳に入るよと見るうちに 再び息を吹返し又もや救ひ上げられて 漸う此処迄帰りけりああ惟神々々 尊き神の御恵に守らせ玉ひて道の上 包む隈なく足乳根の居ますわが家へ速に 帰させ玉へ惟神神の御前に願ぎ奉る』 と歌ひつつ求道居士の後に従つて、夜道を辿るのは、ケリナ姫であつた。 忽ち聞ゆる猛獣の唸り声、前後左右より一斉に山彦を轟かして聞え来る。求道居士は天の数歌を歌ひ上げ、 求道居士『真観清浄観広大智慧観 悲観及慈観常願常瞻仰 無垢清浄光慧日破諸闇 能伏災風火普明照世間 悲体戒雷震慈意妙大雲 澍甘露法雨滅除煩悩炎 諍訟経官処怖畏軍陣中 念彼観音力衆怨悉退散 妙音観世音梵音海潮音 勝彼世間音是故須常念 念々勿生疑観世音浄聖 於苦悩死厄能為作依怙 具一切功徳慈眼視衆生 福聚海無量是故応頂礼』 と念じ乍ら、負ず劣らず、力一杯法螺貝を吹き立てた。法螺貝の声は山野の邪気を払ふものである。ケリナ姫は猛獣の声に戦慄し、求道居士の腰に喰ひつき、泣き声になつて居士に従ひ経文を誦唱して居る。暫くにしてさしも激しき猛獣の唸り声はピタリと止まつた。天を封じて居た雲は俄に散つて夏の月は洗ひ出した様に、中天低く輝き始めた。是よりケリナ姫は何となく求道居士を尊信愛慕するの念益々深くなり、ハートに折々波を打たせ胸を焦がすに至りたり。 (大正一二・三・一六旧一・二九於竜宮館二階外山豊二録)
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霊界物語 57_申_テルモン山の神館2 余白歌 余白歌 竹藪を切り払ひてゆ小雀の声さえもなき長閑な城趾〈序文(初版)〉 土堤に立ちて亀岡城趾眺むれば巨石たたみの最中なりけり〈序文(初版)〉 会心の友なき吾はただ一人事業を友とし春を楽しむ〈序文(初版)〉 夜もすがら蚤に攻められ眠り得ず都にゐます君ぞ偲ばゆ〈序文(初版)〉 酔どれが千鳥足にて歩み行く千鳥の渕辺いとも危ふく〈序文(初版)〉 大本教スタイルゑいぞとぞめかれて川の上を降る舟のまばゆさ〈序文(初版)〉 円山や空に金柱みろく塔 五六七塔片側濡らす春の雨 光照殿地均し工事雨三日〈総説歌(初版)〉 石垣の高さに見ゆる経綸かな 諸々の人寄り来たる万寿苑 瑞霊の恵みも高し天恩郷 丸窓に弥生の満月影おぼろ 雨やみて頬白の声いと清し〈総説歌(初版)〉 夕焼けの空を眺めて翌日を祝ぎ 初雷も交りて花のあらし山 火喰い(低い)鳥金光の空に高く舞ひ 普選通過猫も杓子も腕まくり 鉄筆を振つて鉄外彫刻詩〈第1章(初版)〉 夕日落ちて潜客晩来猫の家 灯燈を股につるして夜這かな 臘燭が立てば灯燈皺が伸び 法城を築いて王仁は安息し 春の夕野渡る風の微笑かな〈第2章(初版)〉 川の辺に小鳥の影も流る春 物をいふ他の花香に花見かな 渓流もいと清瀧の舟あそび〈第3章(初版)〉 花よりも団子と皆が食道楽 汽笛をばきいてかけ出す駅の前〈第4章(初版)〉 かけ付けて見れば馬鹿らし上り汽車 華を去りて実に就かんと団子食ひ 汽車を待つプラツトホームや風さむし 花園のあたり走るか汽車の音 お土産の団子で客を花むけし〈第6章(初版)〉 人の子の吾を神のごと崇め立て仕へむとする人ぞ歎てき〈第7章(初版)〉 吾がために鞭を加ふる人もがなと朝な夕なに祈る淋しさ〈第7章(初版)〉 我思ふ一つ汲み取る人あらばかほどに胸をば傷めざらまし〈第8章(初版)〉 形ある宝はよしや失するとも愛と信との宝おとさじ〈第8章(初版)〉 霊場はたとへ毀たれ了るともいよいよ光を添ふる大本〈第8章(初版)〉 今はただ誠一つの限りをば尽して神の裁き待つのみ〈第8章(初版)〉 艮のわが大神の教ませる道にすすまむ顕幽ともに〈第8章(初版)〉 身はたとへ根底の国に沈むとも愛と信との道に魂生く〈第11章(初版)〉 吾は今浮世の風に散らされて空しからんとすももの功も〈第12章(初版)〉 空しきは形の上の功なり神に尽くせし功は朽ちず〈第13章(初版)〉 もろこしの空を包みしむら雲ゆ降るあめりかを防ぐ傘なし〈第13章(初版)〉 燃えさかる胸のほのほを消さんとて水の御魂に朝夕祈る〈第13章(初版)〉 身はたとへ障りありとも愛信の熱と光に心は勇む〈第14章(初版)〉 うき事の限りをなめて吾は今ただただ神の道に息する〈第15章(初版)〉 まがつみの魂の猛びは強くとも吾は命の限りを忍ばむ〈第15章(初版)〉 三五の月日かがやくうまし代は四方の山野も笑ひ栄えむ〈第16章(初版)〉 二三年さきに来ること狼狽て今日蓮が言挙げをする〈第16章(初版)〉 弥勒神顕はれ初めて満三年過ぎし綾部の秋の大空〈第16章(初版)〉 三御玉五ツの御玉の麻邇宝珠神の用ゆる時は来にけり〈第17章(初版)〉 弥勒の世早や来よかしと祈りつつ岩戸開きの瑞祥待つかな〈第17章(初版)〉 夢の世と夢にも知らず飛び出して蒙古の空に夢を見しかな〈第18章(初版)〉 新玉の年の始めのよろこびは不二の高嶺の夢にぞありける〈第20章(初版)〉 心にもかけずうとみし夢枕なほざりにせぬ新年の朝〈第23章(初版)〉 ある時は死なまくおもひ或時は活きむとおもふ人心かな〈第24章(初版)〉 今日もまたあたら一日を消しにけり神仕ひすべき忙しき身を〈第24章(初版)〉 天人の座に進みて地の上に神の食す国建てむとぞ思ふ〈第25章(初版)〉[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました]
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霊界物語 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 12 三美歌(その一) 第一二章三美歌その一〔一五三七〕 大本三美歌 君が代は千代にましませ 八千代にましませ さざれ石のいはほとなりて 苔のむすまでましませ 第一(三八〇)(この番号は讃美歌の譜なり) 一 とつぎおこなふけふの日は あまつそらよりえにしをば あたへむとしてすせりの姫は くだらせたまひほぎたまふ。 二 いづの御前にたちならび むすぶいもせのかむわざは 千代のかためとなりてさかえむ まもらせたまへ八千代まで。 三 いもせの柱つきかため あいなるむな木いや太く いづのみたまのきよきこころを まもるめをとにさかえあれ。 四 かしこきけふのまじはりは よろこびつきずくるしみを かたみにわかちむつびにむつび いさみてすすめおほ道に。 第二(三八二) 一 なぎなみの神はいもせのみちを ひらきたまひしゆいまもつたはる。 二 むすびの御神ものぞませたまひ いはひのむしろを賑せたまはむ。 三 いざなぎいざなみ二人の君を くだししごとくにえにしゆるせよ。 四 えにしをむすぶのすめ大神よ わがわざたすくるつまをあたへよ。 五 瑞のにひ妻をまもるみたまよ。 いもとせふたりをことほぎたまへ。 六 めぐみの御神よふたりをまもり よろづ代のすゑも栄光をたまへ。 第三(一) 一 わが魂さめじあしたのひかりに 神の御国をばさとりてすすめよ。 二 あだにすごしたる時をつぐのひて まだ来ぬ良き日を足らはしておくれ。 三 神のよさします御宝ささげて のちの代のそなへつぶさにつかへよ。 四 神の御目は光る暗きをはなれて 月日のかぶとをつけて戦へよ。 五 御霊魂もさかえて吾神をあがめ みいづかしこみぬ天使と倶に。 第四(二) 一 あした夕べに月日とともに いづのひかりを御魂にうけて きよきめぐみを日に夜にさとる。 二 あした夕べに魂をきよむる めぐみのつゆは御空ゆくだり 神の幸をぞ日に夜にさとる。 三 あした夕べに言行心を 清めすましてたてまつりなば まつりし宝益さしめたまはむ。 四 あした夕べに為す身のつとめ 人をめぐみてわが身にかたば 神にすすまむ御階とぞなれ。 五 あした夕べに救ひを祈る あしもただしく大道すすみ 天津みくにへ昇らせたまへ。 第五(一二) 一 八雲の小琴のしらべにまかせ うたはせたまへみろくの神よ。 二 つばさをやすらふ夕べにあれば 神にぞゆだねむけふ為せしわざを。 三 すべてのもののいろもすがたも かくれてぞゆく夜は来にけり。 四 つねに勤むるわが良きわざも 世には知らさずかくしたまひぬ。 五 日かげは西に田人は家に かへるゆふべこそ心しづかなれ。 六 神のよさしのわざをはりなば あまつみくににいこはせたまへ。 第六(二三) 一 宇都のめぐみ瑞霊の慈愛 ゆたかにみつ神宮の あつきめぐみしたたる愛 なやみは失せうきもきえむ この神庭にみな来れ 永久にたまふおんめぐみ。 二 あめの宮居しづが伏屋 なべておなじうきためし ひとはみづのあわにひとし たちてはまた消えて失せむ 永久のさちぞある この宮居に慕ひ来よ。 三 瑞霊のすくひ世にあまねし とく来りてくいよつみ なやみもきえたまきよまる うづのおもてゑみたまはむ たのしみはつねにみち うれひきゆるこの宮居。 第七(五三) 一 伊都の御ひかりは吾身のなやむ 暗路を守れり神は愛なり (折返) われらも愛せむ伊都の御神を。 二 村雲つつめど月日の笑は きよけくてり出づ神は愛なり。 三 悲しき折にもめぐみを与へ 勇ませ玉へり神は仁なり。 四 世は曇り行けど御神の稜威 とこしへにぞ照る神は善なり。 第八(五八) 一 御祖はあれまし道を説けり なやみにすむ人求ぎて来れ 智慧の御柱世に降れり よわき人々よ来りまなべ。 二 伊都の大神は世に降れり よろづのひとびと来りたのめ 身霊を清むる神の清水 汚されし人は来りすすげ。 三 五六七の大神世に出でます なやめるひとびと来りたのめ 生命の御親は世に降れり つみに染みし人求ぎて生きよ。 四 美都の御柱世にうまれぬ うへした諸共来り斎け 天地のはしら御代に降る すべての物皆勇みうたへ。 第九(六八) 一 大地にあまねき万の草木は 神の御力を現はし居れども 救ひのたよりと人皆のあふぐ 力は一つの瑞の神御霊。 二 常夜の暗の海風吹きすさびて 木の葉のごとくに波間にただよひ あはやと許りに煩ひしときぞ 望みとなりしはオレゴン座の星。 三 嵐を吹き分け暗夜を追ひ退け 旅路つつがなく都に来にけり 今より夜な夜な御空を仰ぎて みいづを称へむオレゴン座の星。 第一〇(八三) 一 世は日々に曇りぬ坪の内のそのに とらはれ御祖はひとり祈りたまふ。 二 血を吐くおもひに御代をなげきます 救ひの主の胸しらぬ御弟子。 三 世の罪を負ひてとらはれし救主を 元津御祖神まもらせたまひぬ。 四 天津御使は雲のごと降り 救主をかこみつつまもらせたまひぬ。 第一一(一一〇) 一 美都御霊いつと知らず降らせたまはむ 燈火を手に捧げまつものは誰ぞ (折返) 美都御霊とく来ませそなへは成りぬ 美都みたまとく来ませそなへは調なひぬ。 二 任さしたまひし御霊返しまつる時 きよき光ほまれを得るものは誰ぞ 三 人の義務をはたしちからをつくし 聖けき御魂なりといふものは誰ぞ。 四 夢のごとくに来ます救主を迎へて いや高き御栄光にいるものは誰ぞ。 第一二(一二二) 一 聖霊よ天降りて神世のごとく 奇しき神業をあらはし玉へ (折返) 世々に坐します聖き霊よ 己が身霊にも足らはせ玉へ。 二 聖霊よ天降りて仁愛の露に かわけるたましひをうるほしませよ。 三 聖霊よ天降りて貧しきものを いづの御ちからに富ましめたまへ。 四 聖霊よ天降りて曲津を清め たのしき御国に進ませたまへ。 第一三(一三四) 一 斯の世は魔の世とうつらば移れ 月日のまもりのもとにしあれば やすけし御神の都城は。 二 愛づらし友垣こころは移り 親の慈愛さへ冷ゆることあれ うつらじ月日の愛は。 三 身をやくばかりのためしの御火も 霊魂に常磐のひかりをそへて 失せまじ御神のたみは。 第一四(一三七) 一 尊き瑞霊よつみの身は さかし旅路にまよひしを 清けく照らす御仁愛の ひかりを拝むうれしさよ。 二 みづの御神にすくはれし 身霊いまよりただ救主の 御心のままにうちまかせ 神国の道に進み行かむ。 三 悪のからまる身は死にて 瑞霊の稜威によみがへり きよき神使のかずにいる その誓がひの鎮魂帰神。 四 汚れなき身の幸ひは これに比ぶるものぞなき 身もたましひもみなささげ 救主を慕ひて月日おくる。 第一五(一六六) 一 美都御魂世に給ひし 伊都の神をあがめまし (折返) ふたたび身霊を活したまふ 救ひの御神にさかえあれ。 二 伊都のかみ降させたまふ 美都御魂をあがめまし。 三 世の岐美を示させたまふ きよき聖霊あがめまし。 四 伊都の火をきよき民に 燃やしたまへいまの今。 第一六(一六七) 一 メシヤよメシヤよかみくにに われらをすてずにいれたまへ (折返) 聖霊よききたまへ やぶれしこころのねぎごとを。 二 みまへに泣き伏し身をくゆる こころのねがひをゆるしませ。 三 救主のひかりにぞ照らされむ 暗けきこの身を救ひませ。 四 すくひの親なる救主おきて あめにもつちにもたすけなし。 第一七(一七一) 一 かみのみちをひらきませば 集への御こゑをわれはきけり (折返) 大御前いさみ行く 伊都の力にきよめたまへ。 二 かよわきみもましみづを得 身霊のけがれをみなすすがれむ。 三 まごころもてきよく祈る 身霊にみつるは神のめぐみ。 四 ほめよたたへ御神のあい アヽほめよたたへ瑞霊のあい。 第一八(一七六) 一 おのがみたまのしたひまつる みづ御魂うるはしさよ 宇都の月か松のみどり 梅の花の清きがごと ながめもあかぬみのたのしさ なやめる日のわがとも 瑞霊は貴の月松のみどり うつし世にたぐひあらじ。 二 身の苦しさも世のうれひも われとともにわかちつつ いざなふものの暗きたくみ やぶりたまふありがたき ひとは捨つとも瑞霊はすてず みめぐみはいやまさらむ 瑞霊は貴の月松の美どり 現し世にたぐひも無し。 三 まごころを以て集まりなば 常世に契はたえじ 水にも火にも恐れあらず 瑞霊こそかたき城なれ あなわが神のなつかしさよ 天降の日ぞ待たるる 瑞霊は貴の月松のみどり うつし世にたぐひもなし。 第一九(一八三) 一 つみの谷に落入りて亡び行く人々に すくひの御手をのべたまふ あらしの日も暗き夜も (折返) かみのみこのほろぶるは みむねならじすくへよ。 二 つねにそむき去りし子を しのび泣く母のごと 神われらをまちたまふ つみ悔いてかへれよと。 三 あを人草のみたまをば いつくしみます救主は あさ夕なげかせたまひて をしへをばつたへたまふ。 四 いづと瑞とふたはしら つみの身もすくふなり 母のおもひ父のあい くめどもつきぬめぐみを。 第二〇(一八六) 一 つみにまよふものよ神にかへり あまつ神国のさまをみよや つみをかへりみるみたまこそは 国の常立のたまものなれ。 二 つみに迷ふものよ神にかへり 国の常立の厳のまへに まことの言霊宣りなほせよ 人は知らずとも神は知れり。 三 つみに迷ふものよ神にかへり メシヤの御許にとくひれ伏せ 父は見直して御手をのばし ながるる涙をぬぐひ玉はむ。 四 つみに汚れしものよ神にかへり 千座を負はせる母を見よや 手足の爪なき御手をひろげ 生きよ栄えよとまねき玉ふ。 第二一(一八八) 一 あだ浪たける世のなかは 老も若きもさだめなき かぜにおそはれ船かへり あるは彼岸に渡りゆく。 二 あとより往くもさきだつも 千代の住処はうへもなき 神の御国か底しらぬ ほろびの地獄かほかぞなき。 三 浮かれ出でゆく精霊よ 汝があくがるる花の香を 散らし往くべきしこ嵐 一息待たで吹かぬかは。 四 人は神の子神の宮 かきはときはに生きとほし ほろびも知らず栄えゆく みたまのふゆをたのしめよ。 第二二(二〇〇) 一 神のみたまのさちはひて あめつち四方をまもります いづの御霊のかむばしら あやのたかまに現れましぬ。 二 たかあま原の神のくに あまつつかひのあらはれて 青人草とりけもの すくはせ玉ふありがたき。 三 草の片葉におく露も 月のめぐみを身にうけて ゑみさかえ行く神のその いさみて進め人の子よ。 第二三(二〇八) 一 くもり果てしこの身の罪を なげく涙は雨とふるとも いかですすがむ (折返) わが罪のため千座を負ひし 神よりほかにすくひはなし。 二 くもりはてしこの身のつみを まごころ籠めていそしむわざも いかですすがむ。 三 すくふすべなきこの身のつみを 神のをしへをさとるのみにて いかですすがむ。 第二四(二一七) 一 人の身霊を守らす救主よ やみは襲ひ来あくまは迫り 死なむ許りのこの身をすくひ 天津神都へみちびきたまへ。 二 たよるすべなきわがたましひを 瑞のすくひの御神にまかせ 慕ひまつればうへなき愛の 御船のなかに乗らせたまひぬ。 三 わが身体は汚れに染めど 瑞の御霊はいと清く坐し 霊魂身体ことごと洗ひ さびにし魂を研かせ玉はむ。 四 生命の清水いやとこしへに たえず湧き出で身霊にあふれ われをうるほしかわきをとどめ みろくのよまでやすきをたまへ。 第二五(二二三) 一 仁慈の御神のみあとをしたひて かみよの旅路を進むぞうれしき (折返) 月のおほかみの御伴と仕へて 御蔭あゆみつつ天にのぼりゆかむ。 二 深山のはてにも人すむ里にも 瑞霊倶にましてわが霊導く。 三 けはしき坂路も暗けき谷間も 大御手にすがり進みて行かなむ。 四 世のこと終へなばよみぢの河をも 懼なく渡らむ瑞の御たすけ。 第二六(二三二) 一 長閑な野辺の小径を すぎゆく時にも いとも峻き山路を のぼり行くをりにも (折返) 心やすし神ならひて安し。 二 黄泉しこめはたけりて 追ひしき攻むれど 八十の曲津見あらびて のぞみを破るとも。 三 たふとや千座のうへに 身のつみ失せにき 苦しみもだえにし身も やよひの春のごと。 四 大空の月日落ち 地はしづむとき つみびとらは騒ぐとも 神によるわれらは。 第二七(二三三) 一 瑞の御魂守りたまへ きよきうづの御魂あふがむ 大蛇さぐめ追しくとも 御言葉もてことむけなむ。 二 みたま清め身をあらひて わがちからとちゑをすてて ただ御神の言葉のまま こころかぎり進みゆかなむ。 三 法のままにわれすすまむ 魔は猛りて道を汚し わざはひやみせまり来とも いかで怖ぢむ神の御子われ。 四 すべてのものけがれを去り 神のためにまごころもて あさなゆふなつかへまつる 人の身たま実にたふとき。 (大正一二・五・一五加藤明子録)
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霊界物語 60_亥_イヅミの国3/三美歌/祝詞/神諭 13 三美歌(その二) 第一三章三美歌その二〔一五三八〕 第二八(二三五) 一 やみぢにまよひし世の人よ神の めぐみのしたたるみをしへをきけや (折返) 涙の雨はたちまち晴れて つきせぬうれしみ日の出とかがやかむ。 二 浮世のます人苦しめる友よ 心を清めて瑞霊にまつろへ。 三 苦しみもだへてなげく罪人よ すくひの御舟を指をり待てかし。 四 大本御神になやみをはらはれ いさみてあそばむ吉き日はまぢかし。 第二九(二四二) 一 神の御国へのぼりゆくと 知れど親しきあとにのこし 肉のやかたを別るるとき なごり惜まぬ人やはある (折返) アヽみづみたま 御神にまさる御力なし。 二 とはの生命はみとむれども 逝きますあとに生けるものに なごりのうれひたえがたきを いかでなげかぬひとやはある。 三 うき世の富をねがはずとも うからやからはうゑにふるひ わが身なやみていえぬときは たれかくるしみかなしまざる。 四 まが神たけりまことよわく つみに曇れる世にし住めど 祝詞に由りて神力を得 かよわき魂もつひにかちなむ。 第三〇(二四三) 一 をしへのわが友ミロクの神は 千座のおき戸につみゆるします こころのなやみを皆うちあけて などかはおろさぬつみの重荷を。 二 をしへのわが友ミロクの神は われらのなやみをしりて憐れむ 諸のかなしみにしづめる時も 真言にこたへてすくはせ玉はむ。 三 をしへのわが友ミロクの神は ふかきいつくしみ千代にかはらず 世人のわが身を離るる時も 真言にこたへて恵ませたまはむ。 第三一(二四八) 一 わが身体わが霊魂わが生命の守神 朝なほめ夕べたたへ猶たらじとおもふ。 二 したひまつる瑞御魂いづれの御国に その御姿をあらはし守らせたまふぞ。 三 狼のさけぶ山路ふるひつつ辿り 行きなやみたる吾身をあだはあざみわらふ。 四 木の花姫のらせかし白梅のかをり 野に咲くか山に咲くかあい悟らまほし。 五 瑞御魂うるはしさに神人よろこび 言霊の御ちからこそ天地動げ。 六 いと優しき瑞御魂言の葉うれしき 清き生命のいづみはきみにこそあれや。 第三二(二四九) 一 あまつ御国のぼりなむみちしるべは 千座を負ふともなど かなしむべき救主のみ許にちかづかむ。 二 かをれる間に花ちり草のまくら しとねの夢にもなほ 神をあがめ救主のみもとにちかづかむ。 三 あまつつかひはみそらにわたす橋の うへより迎へたまふ たまをきよめ救主のみもとにちかづかむ。 四 目さめし吾み神のあとを追ひて み幸をいよよ切に 願ひつつぞ救主のみもとにちかづかむ。 五 あまつくににのぼりてさかえ行く日 みたまのきよきいのち ながくてりて救主の御顔をあふぎみむ。 第三三(二六四) 一 瑞の御魂よわが身を うづの宮となしたまへ けがれしこの身の魂を 月日なす照らしませよ (折返) わが御霊あらひて 雪よりも潔くせよな。 二 厳の神力によりて 醜の曲霊をおひそけ きよき御霊にたてかへ みまへに仕へしめてよ。 三 神よ千座のもとに ふしていのるわがみたま 抜かれたまひし血しほに 暗き身を照らしたまへ。 四 月の神のいさをしに 照らさるるこそうれしき 霊魂をあらたにきよめ あまつつかひとなしたまへ。 第三四(二七三) 一 聖き十曜の御旗こそ 御祖の神のさだめてし 現世神世の宝なり 御はた汚さずよくまもれ (折返) 守れよまもれよく守れ 十曜の御旗押し立てよ。 二 十曜の御旗をあさ風に ひるがへしつつすすみ行け 神は汝と倶にあり 神のまにまに身をささげ。 三 神の神軍むらきもの こころを清め身をきよめ 御教のままにすすみゆけ 厳の御霊の御楯とし。 四 大地は泥に沈むとも 月落ち星は降るとも まこと一つの麻柱の 神の言葉は動かまじ。 五 来たれやきたれ神の子よ いづのみたまやみづみたま あらはれませる神園に 神は汝等を待たせたまふ。 第三五(二七四) 一 神のいくさのきみのみむねを をしへつかさよよくまもれ ことたまきよめ霊あきらかに はやうちむかへまが神に。 二 仇よ矢玉をはなたばはなて われには厳の言葉あり あだよてだてをつくさばつくせ われにも神のたすけあり。 三 神のまにまにちからはまして まがのいくさはどよめきぬ いさめよいさめ救ひの瑞霊と かちどきあぐる時はきぬ。 第三六(二七五) 一 立てよふるへよ神のいくさ みずや御旗の十曜の紋を まがのみいくさ失せゆくまで 救主はさきだち進みたまはむ。 二 きけよふえの音救主の吹かす 声はいくさのかどでのしらせ 神にしたがふ身にしあれば よろづのあだもいかでおそれむ。 三 瑞の御魂のちからにより 厳のよろひをかたくまとひ 直霊のつるぎぬきかざして 神のまにまにいさみすすめ。 四 瑞のみいくさやがてをはり 厳のかちうたきよくうたひ つきひかざしのかむりをうけ みづの御神とともにいさまむ。 第三七(二八〇) 一 あらへよ霊魂こころかぎり ちからつくまでにいそぎすすげ みたまのひかりはくもにふれず あめつち四方八方照るたのしさ。 二 をしへのつかさはくものごとく むらがりかこみて殿に居れり わきめもふらずに神のさとし きよむるまごころうべなひたまふ。 三 みろくの御神のきよきこころ まなばせたまへと両手あはせ この世の御はしらつかへなむと 天授の霊魂を研きすます。 四 あまつ御使のみづの御霊 御言のまにまにすすむこの身 いかなるあくまのさはりあるも 神のみちからにうちも払はむ。 第三八(二八八) 一 いづの神ののらすみのり かしこみまつり世におそれず ひとにたよらでみちをまもり つよきをなだめてよわきをたすくる 人こそ実にうづのみこぞ。 二 かみのよさす御使誰ぞ あしきこころを夢いだかず いづのみのりをかしこみつつ あしたに夕べにたゆまずつかふる 人こそ実にうづの使。 三 みちをまもるまめひと誰ぞ 世にさきがけて御世をなげき 世人のさちをともにいはひ あめにもつちにも愧るを知らざる 身霊ぞ実に信徒なれ。 第三九(三〇三) 一 いかなるなげきも科戸の風に いきふき払ひて身もすこやかに 神のみをしへをたよりとなして うつしきこの世をうたひくらさむ。 二 浮世の苦しみいかがありなむ まことのよろこび瑞霊にこそあれや あく魔にあふとも救主ましまして 守らせたまへばいさまざらめや。 三 御神をあふげばこころのなやみ 日に夜にはらはれ雲霧はれぬ かきはに輝く瑞霊のひかり ながめしわれ等は勇まざらめや。 第四〇(三〇五) 一 罪に汚れしわがみなれども 瑞のみたまは千座を負ひて われ等をきよめ救ひ玉へり。 二 きよき御国の御民となして 神につかへて羊のごとく ただみち守り住まはせたまへ。 三 奇びにたふとき大御めぐみや いづのみひかりあふぎしわれは この世に怖づるもの無かりけり。 四 伊都の御神のみこころ知らで そむきまつりしまがこそは実に かみの御国の仇なりしかも。 第四一(三〇九) 一 あく魔はすさびて暗夜はふかし わが身はいかにとをののきわづらふ (折返) わが救主よこよひもこのみをまもり さみしき一と夜めぐまひ玉へ。 二 ちかく交こりし友みなゆきて つれなき憂世にふりのこされぬ。 三 わがみの霊衣はうすくなりけり 夜なき神国もちかづきしならむ。 四 をしへのまにまに逝かしめたまへ 生世のあしたによみがへるまで。 第四二(三一二) 一 霊魂のふるさとあふぎ見れば 歎きにかすめる目も晴れけり。 二 小暗きこの世の曲をきため とび来る矢玉もおそれずたたむ。 三 やだまは霰と降らばふれよ まがつは嵐と吹かばふけよ。 四 永久の住処なるもとつ家に かへりゆく身はいと安からむ。 五 さしもに長閑な神の国に やつれし霊魂をながく休めむ。 第四三(三一七) 一 月雪よ花よと愛でにし わがこののこしたる衣のそで ながめてなげく折御かみは やすくわが身霊をなぐさめたまふ (折返) めぐしき吾子よ神の辺に のぼりゆき祈りをともにせよや。 二 わかれゆくわが子をおくりぬ なみだの雨晴れて雲はちれり 花さき匂ひ充つるたびぢを いさみすすみ行けや月すむ夜半。 三 神にひとしかりしわが子よ 今ちちは年老い母はやみぬ 然れど汝が魂いさみて わが世を守りつつ神国へゆけ。 第四四(三二一) 一 山伐り払へばあたひは降り 川水かわけば舟もかよはず せむすべ無き身を誰にかたよらむ 瑞の御魂なす神の愛のみ。 二 いのちの清水はかきはに湧けり つれなきあらかぜ誘ひくるとも いかでか恐れむ神のますみくに めぐみの露にぞうるほひまつる。 三 伊都能売の神のふかき心は いかでか知り得む人の身をもて ふたつの御霊の月日のわざを つつしみうやまへたかきみいさを。 第四五(三二二) 一 救主のしもべのむつびあひて 神たちあがむるうるはしさよ。 二 御魂あひてことたまあひ みくにのおんため一つに祈る。 三 神につかふ貴の友は はなるること無しとこしなへに。 第四六(三二五) 一 ひとやの中にもよろこびあり 世人にかはりて血をながせる 瑞の神ばしら偲び見れば なげきはみづから消えてぞゆく。 二 わがみ憂きときにまなこさまし 瑞の御魂なる救主を見れば 千座の置戸を負はせぬれど ひるみたまはぬにこころいさむ。 三 苦しめる時にも楽しみあり きよきをしへにも曲しのべる 火をうごかす水またも水は 火のためにうごく奇しき世になむ。 第四七(三四二) 一 うつりかはるよにしあれど うごかぬはみくに あふぎうたはむ友よ来たれ とこしなへのうたを とこしなへのうたを あふぎうたはむ友よ来たれ とこしなへの御うた。 二 おきておもひふして夢み あまつ神のもとに 花咲きにほふすがた見ゆ かすみは日に月に かげもなく消えて 花のかをるすがたきよく かすみは日に晴れて。 三 あくに勝てるいくさびとの 言霊の風流 火口そろへ進みつつも 月かげを力とし よせきたる浪わけて たかまのはら昇りてゆく うづみのりみこあゆむ。 四 八雲小琴掻き鳴らして いづのうたうたひ いづの御霊みづ御魂 こころなぐさまひつつ きよきしらべささぐ 神ののりのまめひとらが いづの御前にふして。 第四八(三五六) 一 黄金白銀山なすとても いかで求めむさびゆく宝ぞ 霊魂の行衛天津御国 栄へ久しきうづの住居 かみわがたまあまつくにの いのちのそのにみちびきませ。 二 山とつみてしわが身のつみ はらひきよませ霊幸はひて よろこび充てる神の座へ あめ地ももの神のつかひ よさしのままわがみたまを めぐませたまへすくひの救主。 三 八雲の琴の珍の音色 ひびき渡れり神の庭に 草木も露の玉をかざし 神の御さかえ祝ひまつる 木の葉青く花はあかく 竜の宮居のうるはしさよ。 第四九(三九二) 一 国常立の神 わがたまを守り 御霊の糧もて いのちを永久に給べ (折返) みろくの御代の開くる日まで いづのまもりひろけくあれませよ。 二 やみ路を行く時も 魔神たける夜半も ゆくてを照らして とはにみちびきませ。 三 ゆくてを包みたる しこの雲霧も 科戸辺の風に 伊吹はらひすすむ。 四 みろくの神代まで わがたまを守り み翼のしたに かかへ守らせ瑞霊。 第五〇(四〇九) 一 暗の野路をひとりゆけど 神にまかせたる魂はやすし。 二 あらきはやて滝なすあめ いかでおそれむや神のをしへ子。 三 あきの水と魂はきよく 月日はかがやきむねはさえぬ。 四 浪はあらく風は激し この舟みなとにいつかつくらむ。 五 いづのみたまみづの御魂 われらを守りてあかしたまへ。 六 山はくづれかははさけて なやめるときこそ神はすくはむ。 第五一(四一八) 一 瑞の御魂は月にしあれば 暗夜も清くあかしたまへり (折返) いづみたまみづみたま いづのめのみたまきよし。 二 世人のためにてあしの爪を ぬかせたまひて千座につけり。 三 うづの御園をひらきてわれを またせたまへり月日の御神。 四 瑞のみたまよましみづたれて くらきこころをあらはせたまへ。 第五二(四二三) 一 伊都能売の神の天降ります日 すくはる信徒瑞の霊 (折返) 月日のごとくかがやきます まことの神の盾とならむ。 二 きたなきけがれにそまぬ魂を み神のたからにくはへられ。 三 みくににすすみて神をあがめ まがつに染まざる瑞の霊。 第五三(四二七) 一 山の尾の上野辺のはたけ 高田窪田狭田長田 いそしみまくいきのたねの 八束穂なす秋来たらむ (折返) 獲り入るる秋ちかし いさみてまてやつかのほ とりいるる秋ちかし いさみて待てやつかのほ。 二 みそらかすむのどけき日も 寒かぜ吹く冬の夜も いそしみ蒔くいきのたねの やつかほなす秋来たらむ。 三 うきを忍び身をつくして きよき教のたねを蒔け たわに実のるその足り穂を 神はめでてうけたまはむ。 第五四(四二八) 一 笹のつゆもすゑつひに 川とながれ海となる。 二 いとちひさきちりさへも つもればまた山となる。 三 あだに暮す息のまも たふとき身のいのちなり。 四 ありのあなもいつとなく つつみをさく種ぞかし。 五 あはのちさき一粒も 倉を充たすたまとなる。 第五五(四五一) 一 聞けやいづの御声見よや御姿 直霊にかへりみて勇みすすめよ 大御神言をばかしこみまつらひて 言霊のつるぎをかざしすすみゆけ (折返) 大国常立の尊の御声に まなこをよくさまし神の御楯となりて。 二 曲津霊にかこまれ鬼におそはれ 逃げまどふ友ありあはやあやふきを すくはでおくべきや言霊つるぎもて みなことむけやはしみちに生かすべし。 三 曲軍にげちる言たまきよし きよまれるつはもの勇みふるひぬ すめ神の御座にかちどきをあげよ。 第五六(四五六) 一 かなたの岸にみ船つけて きよきたふときみ許に行かむ 生日まちつつみ魂をきよめ うからやからやともらにあはむ (折返) やがてあはなむ (やがてたのしく会はなむ) うからやからと したしき友に。 二 めぐみの露のしげき国に 昇りてまたもえにし結ばむ かくれし月日星もかがやき 消えし望みも又生きかへる。 三 親子妹背のめぐり会ひに 手に手をとりて笑顔つくる 雲霧かすみあとなく消えて きよき姿をながめたのしむ。 第五七(四六二) 父神母神おほみまへに いやとこしなへにみさかえあれ。 (大正一二・五・一五加藤明子録)
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霊界物語 64_下_卯エルサレム物語2 16 誤辛折 第一六章誤辛折〔一八二二〕 トルコ亭の細い路地の衝き当りに、お寅が設立しておいた五六七の霊城には、トンク、テクの両人が、お寅と共に、三人首を鳩めて、ヒソビソと話に耽つて居る。 お寅『コレ、トンクさま、一体あの守宮別さまとあやめのお花は、どこへ行つたのか、お前どうしても分らぬのかい』 トンク『ハイ、丸で煙のやうな、魔者のやうなお方ですもの、サーッパリ、見当がつきませぬがな。併し噂に聞けば、お花さまは守宮別さまと、夫婦約束をしられたとかいふ話ですよ。一昨日の晩或人から十字街頭で其話を聞きましたので、早速報告しようと思ひましたが、生宮様の御病中、お気をもませましては……と実は控えてをりました』 お寅は顔色を変へ、 お寅『ナニ、二人が結婚した。ソラ本当かいな、ヨモヤ本当ぢやあるまい』 トンク『イエイエ、実際の事云やア、貴方が、何でせう。二人よつて、何でせう。守宮別とお花さまと手を曳いてやつて来る所を、ペツタリ出会し、肚立紛れに卒倒なさつたのぢやありませぬか。噂で聞いたと云ふのは実はお正月言葉で、実際、私も睦まじ相にして歩いてる所を目撃したのですもの。なア、テク、さうだつたな』 テク『ウンさうともさうとも、あの時生宮さまがクワアッと逆上して、暈を遊ばし、大地に転倒されたぢやないか、警察医がやつて来る、群集は山の如くに出てくるし、もうエライ乱痴気騒ぎで、やつとの事生宮さまの気がつき、三台の俥で、生宮さまの警護をし乍ら、此処へ帰つて来たのですワ』 お寅『なる程、さう聞くと、夢のやうにボーッと記憶に浮んで来るやうだ。ハテナ、コンナ大問題を今迄スツカリ忘れて居たのかいな』 トンク『そらさうです共、エライ発熱でしたよ。昨日迄ウサ言計り仰有つて、吾々二人はどれ丈介抱したか知れやしませぬワ』 お寅『いかにも、憎い憎いあやめのお花奴、十年が間、懇篤な教育をうけ乍ら、師匠の私に揚壺をくはし、おまけに人の男を横領して出て行くとは、犬畜生にも劣つた代物だ。これが此儘見逃しておけるものか。仮令両人天を駆けり地をくぐる共、此生宮が命のあらむ限り、岩をわつても捜し出し、生首かかねがおくものか……』 と面色朱をそそぎ、握り拳を固めて、二つ三つ自分の胸をうち乍ら、又もやパタリと倒れ伏しけり。 トンク『オイ、テク何うせうかな。しまひにや気違ひになつて了やしまいかな』 テク『サ、さうだから、守宮別、お花の事はいふないふなと俺が注意するのに、トンク汝が軽はずみな事を言ふから、コンナ事になつたのだよ。男の口の軽いのも困るぢやないか』 トンク『それだと言つて、いつ迄もかくしてゐる訳にも行かず、モウ余程精神が安定したとみたものだから、一寸云つてみたのだよ。俺だつて、コンナになると思や、うつかり喋るのぢやなかつたけれどなア』 テク『兎も角、冷水でも汲んで、頭を冷してやらうぢやないか。コンナ所で死なれて見よ、俺達が殺した様に警察から睨まれたらつまらぬからな』 トンク『一層の事、今の内にトンクトンクテクテクと逃出したら何うだ、到底駄目だらうよ』 テク『馬鹿云ふな。ソンナ事をせうものなら、益々疑はれて了ふよ。一樹の蔭の雨宿り一河の流れを汲んでさへ、深い因縁があるといふぢやないか。仮令三日でも養つて貰つたお寅さまを見捨てて帰れるものか。そんな不義理な事をすると、アラブ一党の面汚しになるぢやないか。絶対服従を以て主義とする回教のピュリタンを以て任ずる吾々が、ソンナ事がどうして出来ようかい。お天道さまが御許し遊ばさないからの』 トンク『そらーあ、さうだ。天道様の御弔ひだ、空葬だ、大いに悪かつた。ヨシ、之からお前と俺と両人が力を併せ心を一にして、此生宮さまの命を助け、天晴全快して貰つて、此霊城を立派に開かうぢやないか。俺ア之から橄欖山へお寅さまの病気祈願の為参つて来るから、お前気をつけて介抱してあげてくれ』 テク『そら、可い所へ気がついた。サ、早く参つて来て呉れ。後は俺が引受けるからな』 トンク『ヨーシ、ソンナラ之からお参りして来うよ』 と云ひ乍ら、夕日を浴びて、橄欖山へと登り行く。山上の祠の前に来て見れば、ブラバーサが一生懸命に何事か祈願をこめてゐる。トンクは傍により、 トンク『もしもし貴方は三五教の宣伝使様ぢや厶いませぬか』 ブラバーサ『ハイ、左様で厶います。貴方はトンクさまぢやありませぬか。何時やらはエライ失礼を致しました』 トンク『イヤもう、御挨拶痛み入ります。全く私が悪かつたので厶いますから、どうぞモウソンナこたア云はないでおいて下さいませ』 ブラバーサ『時にお寅さまは御壮健にゐらつしやいますかな』 トンク『ハイ有難う厶います。実の所は、お寅さまと、お花さま守宮別さまが大喧嘩をせられまして、終局の果にや、守宮別さまはお花さまと一緒に結婚とか何とか云つて、手に手を取つて、面当に霊城を飛び出して了はれたものですから、生宮さまの御立腹と云つたら、夫れは夫れは言語に絶する有様で厶いました。そこへ受付にをつたヤクの奴、生宮さまの気のもめてる最中へ毒舌を揮つたものですから、生宮様がクワツとなり、ヤクを叩きつけようと遊ばした其刹那、ヤクの奴、庭箒をひつかたげて飛出し、途中で生宮さまの御面体を泥箒で擲りつけたり、いろいろ雑多の侮辱を加へたものですから、疳の強い生宮様はたうとう逆上して了ひ、それが元となつて、今では発熱し、ウサ言許り云つてゐられます。こんな塩梅では、生命もどうやら覚束なからうと存じ、テクに介抱させておき、私は此祠へ御祈願に参つた所で厶います。いやモウエライ心配で困りますワイ』 ブラバーサ『話を承れば、実にお気の毒な次第です。コンナ事を聞いて聞逃す訳にも行きませぬから、平常は平常として、私は霊城へ参りませう。そして一時も早く御全快なさる様に御祈願をさして貰ひませう』 トンク『ハイ、そら御親切有難う厶いますが、常平生から、貴方を敵の様に罵つてゐられますから、貴方がお出になつたのをみて、益々逆上し、上も下しもならないやうになつちや却て御親切が無になりますから、何ならお断りが致したいので厶いますワイ』 ブラバーサ『ハヽヽヽ非常な御警戒ですな。併し人間といふ者はさうしたものぢや厶いませぬよ。災難の来た時にや互に助け合ふのが人間の義務ですからな。何程我の強いお寅さまだつて、滅多に私の親切を無になさる道理はありますまい。キツと喜んで下さるでせう。そして之を機会にお寅さまの心を和らげ、同じ日出島から来た人間です。和合の曙光を認めたいと思ひますから、たつて御訪問を致します』 トンク『ヘーエ、誠に以て、お志は有難う厶いますが。併し乍ら私は知りませぬで、どうか生宮さまに、私から病気の次第を聞いた、なんて云つて貰つちや困りますからな。貴方が勝手に御越しになつた事にしておいて頂かねば、後の祟りが面倒ですから』 ブラバーサ『エ、それなら、私は之から霊城を訪問致しますから、トンクさま、貴方はゆつくり御祈願をなし、エヽ加減に時間を見計らつて何くはぬ顔で御帰りなさい。そすりやお寅さまだつて、貴方に小言はありますまいからな』 トンク『あ、さう願へば私も安心です。どうか宜しう頼みませぬワ』 ブラバーサは急いで山を降り、何くはぬ顔して、トルコ亭の細い路地を伝ひ、霊城へ来てみると、テクが甲斐々々しく頭を冷してゐる。 ブラバーサ『ヤ、これはこれは、テクさまで厶いますか。生宮さまは御不例にゐらつしやるのですかな』 テク『ハイ、左様です。そして又お前さまは何の御用で御出になりました。お前さまの顔見ると生宮さまの御機嫌が益々悪くなり、病気が又重くなりますから、トツトと帰つて下され』 ブラバーサ『帰らうと思へば、さう追立てられなくても返りますよ。併し乍ら同国人の病気と聞いて、宣伝使たる私、見逃す訳に行きませぬから…』 と云ひ乍ら、枕許にツカツカとより、熱誠籠めて天の数歌を三唱し、大国常立尊、神素盞嗚尊助け玉へ、許し玉へ…と祈願するや、今迄火の如き発熱に苦しみてゐたお寅は嘘ついた様に熱は去り、忽ち起き上り座布団の上にキチンと行儀よく両手をのせ、 お寅『ハ、これはこれは、何方かと思へば、ブラバーサさまで厶いましたか。ようマ御親切に来て下さいましたね。私も此間からチツと許り風邪の気で臥せつてをりましたが、夜前あたりからスツパリと全快致し、モウ寝てゐるのも何だか辛気臭くて堪らないのですが、日の出さまの御忠告に仍つて、養生の為、ねて居りました。決してお前さまの算盤の声で直つたのぢや厶いませぬから、ヘン、どうか恩に着せて下さいますなや。併し乍ら此霊城へお前さまが御参りさして頂いたのも、ヤツパリ神さまのおかげだよ。此お寅が病気だといふ噂をパーッと立たせておき、お前さまの心を引く為に、此生宮をチツと許り苦しめ遊ばしたのだから、必ず必ず仇に思つちやなりませぬよ。結構な結構な御霊城さまへお前さまが大きな顔で参拝出来たのも此お寅がチツと許り悪かつたおかげだ。神様の御仕組といふものは偉いものだな。サ、之からブラバーサさま、チツと我を折つて日出神の生宮を認めて下さい。いつ迄もいつ迄も変性女子のガラクタ身魂にトチ呆けて居つちやダメですよ。神政成就に近よつた此時節に、何の事ですいな。早く改心して、日の出神の片腕となつて、ウラナイ教を開き、天下万民を塗炭の苦より救つて下さいや』 ブラバーサ『ハイ、又考へておきませう。先づ先づ御病気の御本復と聞いて安心致しました。私一寸用が厶いますので、之から御暇を致します』 お寅『ホヽヽヽ、ヤツパリ心に曇りがあると、此霊城が苦しうて、ゐたたまらぬと見えますワイ。第一霊国の天人のお住居、どうして八衢人足がヌツケリコと居れるものかい、ウツフヽヽヽ』 ブラバーサ『お寅さま、余りぢやありませぬか。どこ迄も貴方は私を敵にする考へですか』 お寅『きまつた事ですよ、三千世界の救世主、底津岩根の大弥勒の生身魂、日出神の生宮を認めない様な妄昧頑固の身魂を何うして愛する事が出来ませうぞ。日の出様が一生懸命に艱難辛苦を遊ばして、立派な立派な、結構な、心易い、暮しよい、みろくの大御代を建てようと遊ばしてるのに、悪魂の変性女子にとぼけて、此世を乱さうと憂身をやつしてゐるお前さまだもの、之位な大きな敵は世界にありませぬぞや。此神は従うて来れば誠に結構な愛のある神なれど、敵対うて来る身魂には鬼か大蛇のやうになる神ざぞえ。お前さまの心一つで楽に立派に御用致さうと、苦しみてもがいて地獄落の悪魔の用を致さうと、心次第で何うでもなるですよ。コンナ事が分らぬやうで、ヘン、宣伝使などと、能う言はれたものですワイ。改心なされ、足元から鳥が立ちますぞや』 ブラバーサ『ハイ、有難う厶います。又後して伺ひますから左様なら』 お寅『ホヽヽヽたうとう、八衢人足奴、生宮さまの御威光に打たれて、ドブにはまつた鼠のやうに、シヨンボリとした、みすぼらしい姿で、尾を股へはさみて逃げよつたぞ。ホヽヽヽ、コラ、テク、ブラバーサなんて偉相に云つてるが、私にかかつたら三文の値打もなからうがな。丸で箒で押へられた蝶々の様に命カラガラ逃げていつたぢやないか、イツヒヽヽヽ』 テク『モシ生宮さま、ヒドイですな、テクも呆れましたよ』 お寅『ひどからうがな。いかなお前でも呆れただらう。耄碌魂のヒョロ小便使めが、あの逃げて行くザマつたらないぢやないか。それだから此生宮の神力を信じなさいといふのだよ』 テク『生宮さま、そら違やしませぬか。今の今迄人事不省に陥つて御座つたのを、ブラバーサさまがお出になり、指頭から五色の霊光を発射して、お前さまの病気を助けて下さつたぢやありませぬか。それに貴方は、昨夜から病気が直つてたナンテ、ようマア嘘が言へたものですな。私は其我慢心の強いお前さまの遣口に呆れた、といふのですよ』 お寅『お黙りなさい。アラブの黒ン坊のクセに神界の御経綸が分つてたまるかいな。ソンナ事いつて、此生宮に敵たふやうな人はトツトと帰つて貰ひませう。アタ気分の悪い。エーエーそこら中がウソウソとして来た。これ、テク、塩をもつてお出で、お前の体に悪魔が憑いてる、之からスツパリと払つて上げるからな』 テク『イヤもう結構です』 といつてる所へ、トンクはドンドンと露路口の細路を威嚇させ乍ら帰り来り、 トンク『ヤア、これはこれは、生宮様、いつの間にさう快くおなりなさいましたか。私は心配致しまして、テクに貴女の介抱を命じおき、エルサレムの宮へ御病気祈願の為に御参拝して来たのです。何と御神徳といふものは、アラ高いものですな』 お寅『それは大きに御親切有難う……とかういつたらお前さまはお気に入るだらうが、ヘン誰がそんな事お前さまに頼みました。大弥勒様の生宮、三千世界の救世主、日出神の生宮さまの肉体の、病気を直すやうな神様がどこにありますか、可い加減に呆けておきなさいや』 トンク『オイ、テク、チツと可怪しいぢやないか、病み呆けて厶るのだらうよ』 テク『マアマア喧しう言ふな、何時迄言つたつて限りがないからな。何と云つても三千世界の救世主様だから、維命、維従うてゐさへすりや可いのだ』 と云ひ乍ら、余り相手になるなといふ意味を目で知らした。お寅は布団を頭からひつかぶり、スヤスヤと眠に就きぬ。 (大正一四・八・二〇旧七・一於丹後由良秋田別荘松村真澄録)
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霊界物語 66_巳_オーラ山の山賊 余白歌 余白歌 天地の元津祖なる神の他に世を審判くべき貴人はなし〈序言(初版)〉 黒雲に包まれたれど大空の月の光は褪することなし〈序言(初版)〉 五年の暗は容易く晴れにけりみろくの神のいづの伊吹に〈序言(初版)〉 植ゑて見よ花の開かぬ里はなし誠の道の開けざらめや〈第3章(初版)〉 常暗の世なりと人は悲しめど真人の眼には神世なりけり〈第3章(初版)〉 百千々の思ひは胸に三千年の神の昔に吾魂は飛ぶ〈第6章(初版)〉 玉の井の深き思ひを汲む人ぞ瑞の御魂の力なりけり〈第6章(初版)〉 木枯の吹き荒ぶなる冬の夜も天恩郷は法の花咲く〈第6章(初版)〉 神園に植ゑつけられしもも草はただ一輪のあだ花もなし〈第10章(初版)〉 花咲きて実るも待たで出でて行くわが心根を知る人はなし〈第11章(初版)〉 花開く春を迎へし神園は百鳥千鳥集ひて唄ふ〈第13章(初版)〉 深霧に閉込められし神園も春を迎へてもも花香る〈第13章(初版)〉 常暗の世なりと人は悲しめど真人の眼には神世なりけり〈第14章(初版)〉 世が変りなるいかづちも地に下りて都大路で車押すなり〈第14章(初版)〉 今迄のあだし教の衣ぬいで天津誠の神の道行け〈第15章(初版)〉 神島大神の神歌 世を救ふ神の御船はあづさ弓播磨の沖に浮きつ沈みつ〈第15章(初版)〉 三千年の塩浴みながら只ひとり世を牛島に潜みて守りぬ〈第15章(初版)〉 濁り江の深き流れに潜むより清き浅瀬に住みたくぞ思ふ〈第16章(初版)〉 風に乗り雲踏み別けて久方の高天に登る良き日待たるる〈第19章(初版)〉 笙の音は虚空を翔り笛の音は地上を走る神まつりかな〈第19章(初版)〉 苦しみて吐息つくづく思ふかな何故俗人に生れざりしと〈第20章(初版)〉 神の教伝ふ身魂の苦しさは人に知られぬ悩みなりけり〈第20章(初版)〉 これ程の苦しみありと知る人の無きにつけても世を思ふ哉〈第20章(初版)〉 朝まけて御空くもらひ小雨していよいよ梅雨気分に志たるも (昭和十年六月十七日)巻末(校正) (「校正」は王仁三郎が校正した時に挿入したもの。)[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました]
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霊界物語 70_酉_トルマン国の国政改革 06 鬼遊婆 第六章鬼遊婆〔一七七三〕 黄昏時に頭から壺をかぶつたやうな空の色、何とも知れぬ血腥さい、腸の抉れる如うな風がピユーピユーと吹いてゐる。痩こけた烏が二三羽、羽衣を脱いだ柿の木の枝に梢諸共空腹を抱へて慄ふてゐる。 地上は枯草が一面に生ひ立ち、処まんだら赤い生地を現はしてゐる。何とも知れぬ、いやらしい虫が枯草を一面に取りかこみ、人の香がすると一斉に集まり来り、人間の体を吸はうとして待ちかまへてゐる。そこへ現はれて来たのは、三年間中有界にとめおかれ、修業を命ぜられたウラナイ教の高姫であつた。 高姫は新規の亡者を一人伴ひ乍ら、自分はヤツパリ現界に立働いてゐるつもりで、野分に吹かれ乍ら、東海道五十三次のやうな弊衣を身に纒ひ、新弟子のトンボと一緒に道行く人を引張込まむと待構へて居た。 トンボ『もし生宮様、もういい加減に帰らうぢやありませぬか。何だか此街道は淋しくて淋しくて犬の子一匹通らぬぢやありませぬか。何時まで蜘蛛が巣をかけて蝉がとまるのを待つやうにして居つても、蝉が来なくちや駄目でせう』 高姫『これ、トンボ、お前は何と云ふ気の弱い事を云ふのだい。仮令人間が通らなくても、此生宮が此処に出張して居れば、沢山の霊が通つて大弥勒の生宮の御神徳に触れ、御光に照され、百人が百人乍ら、お蔭を頂いて天国へ上るのだぞえ。それだから肉体人が来なくても、霊界人が来さへすればいいのだ。お前の俗眼では一人も人間が来ないやうに見えるだらうが、此生宮の目には、今朝から八万人許り来たのだよ。それはそれは忙しい事だよ。お前も肉体が曇つてゐるので、あれ丈けの亡者が一人も目につかぬのは無理もない。然し乍ら今朝から通つた八万人の亡者が、お前の顔を見て羨ましさうにしてゐたよ』 ト『何故又私のやうな不幸者を羨ましさうにして通るのでせうか。サツパリ合点が行きませぬがな』 高『それだからお前は盲と云ふのだ。目が見えぬと黄金の台に坐つて居つても、泥の中に突込まれて居るやうな気がするものだよ。結構な結構な三千世界の救世主、底津岩根の大弥勒、日の出神の直々の御用をさして頂き乍ら、何と云ふ勿体ないお前は量見だえ。お前のやうな結構な御用をさして貰ふものは、何処にあるものか。それだから八万人の精霊が羨ましさうにして通つたのだよ』 ト『ヘーン、妙ですな』 高『これ、トンボ、トンボーもない事を云ひなさるな。「ヘーン、妙ですな」とは何だい。この生宮さまをお前さまは馬鹿にして居るのだな。そんな量見で生宮の御用をして居ると神罰が立所に当つて、頭を下にし、足を上にしてトンボ返りをせねばならぬぞや。チツト心得なされ』 ト『私やこの間から、余り辛いのと馬鹿らしいので実の所は生宮様の隙を窺ひ、うまくトンボ(遁亡)しようかと考へて居りましたが、私を羨むやうな人物が八万人も一日に通るかと思へば、何処に行つても同じ事だ。生宮様のお側にマアしばらく御用をさして頂きませう』 高『これ、トンボ、そら何を云ふぢやいな。暫く御用をさして頂くとは罰当り奴、そんな量見で居るやうなガラクタなら、今日から暇をやる。サア、トツトと帰つておくれ。お前が居らなくても肉体は女だから炊事万端お手のものだよ。無用の長物、ウドの大木、体見倒しの頓馬野郎だな。之からトンボと云ふ名を改名して、トンマ野郎と云ふてやらう。それがお前の性に合うてるだろ』 ト『生宮様トンマ野郎とは、ひどいぢや御座いませぬか』 高『ヘン、三千世界の救世主、底津岩根の大弥勒、第一霊国の天人、日の出神の生宮のお側に御用さして頂いて居るのぢやないか、何程賢い立派な人間でも、此生宮の目から見れば、何奴も此奴も皆トンマ野郎だよ。大学の博士だつてトンマ野郎だ。総理大臣や衆議院議員になるやうな奴は尚々トンマ野郎の腰抜野郎だ。お前も総理大臣や博士と同じ称号を生宮から与へられたのだから、有難く感謝しなさい』 ト『生宮さま、それでもあまりぢや御座りませぬか。どうか元の通りトンボと仰有つて下さいな』 高『さうだ。そんならお前はドン臭い男だから、ドンボと呼んで上げよう。トンマ野郎とは少しマシだからな。底津岩根の大弥勒様、第一霊国の天人、日の出神の生宮ぢやぞえ』 ト『もしもし生宮さま、もうその長たらしいお名前は聞きたんのう致しました。どうぞ簡単に云つて下さいな。法性寺入道と間違ひますがな』 高『こりや、トンマ野郎、そらナーン吐かしてけつかるのだ。トンマ野郎が嫌なら、ドンマ野郎にして上げよう。ああア、何奴も此奴も碌な奴は一匹も居やアしないわ。アゝゝゝゝ呆れた。開いた口が早速には塞がりませぬわい、イヽヽヽヽ何時迄経つても何時迄経つても生宮の申すことが分らず、改心が出来ず、イケ好かない野郎だな。ウヽヽヽヽ煩さい程、口が酸くなる程、毎日日々烏の啼かぬ日があつてもコケコーが歌はぬ朝があるとも、撓まず屈せず御説教してやるのに、エヽヽヽヽ会得が行かぬとは何と云ふオヽヽヽヽおそろしう大馬鹿だろ。カヽヽヽヽ噛んでくくめるやうに、日夜の生宮の説教も、馬の耳に風吹く如く、キヽヽヽヽ聞いては呉れず、キマリの悪い面付をして、クヽヽヽヽ喰ひ物許り目をつけ、苦労許り人にかけやがつて、ケヽヽヽヽ怪しからぬ怪体な獣だよ。コヽヽヽヽこんな事でどうして此法城が保てると思ふかい。サヽヽヽヽ扨も扨も困つた、シヽヽヽヽしぶとい代物だな。死損ひの腰抜けと云ふのはお前の事だぞえ。スヽヽヽヽ少しは生宮の心も推量し、進んで神国成就の為に大活動をしたらどうだい。セヽヽヽヽ雪隠で饅頭喰たやうな面して此生宮の脛を噛り、トンマ野郎が気に喰はぬなどと何を云ふのだ。ソヽヽヽヽそんな奴根性を持つてゐる粗末の代物を、高い米を喰はして養ふてゐる此生宮も、並大抵の事ぢやないぞえ。タヽヽヽヽ誰がこんなトンマ野郎を、仮令三日でも世話するものが御座りませうかい』 ト『チヽヽヽヽチツト無理ぢや御座りませぬか、畜生か何ぞのやうに、トンマ野郎だのドンマだのと、あまりひどいです。ツヽヽヽヽ月に一ぺん位、蛙の附焼位頂いて、どうして荒男の体が保てませう。テヽヽヽヽ手も足も此通り筋張つて来ました。丸ツきり扇の骨に濡れ紙を張つたやうな手の甲になつて了つたぢや御座りませぬか。トヽヽヽヽトンボだつて、どうして貴女と共に、活動が出来ませうぞ。チツとは私の身の上も憐れんで下さい。貴女計り美味い物を喰て、いつも私には芋の皮や大根の鬚や水菜の赤葉許り、当てがつて居るぢやありませぬか』 高『ナヽヽヽヽ何を云ふのぢやいな。勿体ない、その心では罰が当るぞや、ニヽヽヽヽ西も東も南も北も此通り曇り切つた世の中、お土の上に、何を蒔いても此通り、菜葉一つ満足に出来ない暗がりの世ぢやないか。赤ツ葉の一つも頂いたら結構ぢやと思つて喜びなさい。こんな寒い風の吹く世の中に、夜分はヌヽヽヽヽぬつくりと温い茶を呑んで、煎餅布団の中へ、潜り込んで居れるぢやないか。ネヽヽヽヽ年が年中何一つ、これと云ふ働きもせず、ノヽヽヽヽノラクラと野良仕事さしても烏の威しのやうに、立つて許り居るなり、ラヽヽヽヽ埒もない皺枯声を出して頭の痛むやうな歌を唄ひ、リヽヽヽヽ悧巧さうにトンマ野郎と云うて呉れな等とはお尻が呆れますぞや。ルヽヽヽヽ流浪して行く処がないから使つて下さい、と泣いて頼んだぢやないか、レヽヽヽヽ礼を云ふ事を忘れて、不足許り申すとはホントにホントによい罰当りだよ。お前は神様の警めで、ロヽヽヽヽ牢獄へ突込まれてゐるのだ。然し乍らお前の肉体は此生宮が構ふてゐるが、その魂は、喰ひ度い喰ひ度い遊び度い遊び度いと云ふ、大牢に這入つてゐるのだよ、フツフヽヽヽヽ』 ト『ワヽヽヽヽ笑うて下さるな。私はお前さまの云ふやうな勘の悪い人間ぢや御座りませぬぞや。これでも一時はバラモン軍のリユーチナント迄勤めて来た武士ですよ。ヰヽヽヽヽ何時までもお前さまの側へ居らうとは思ひませぬから、ウヽヽヽヽ煩さうても、売口がある迄辛抱してやつてゐるのですよ。ヱヽヽヽヽえぐたらしい事を朝から晩まで聞かされて、なんぼ軍人だつてお尻が呆れますよ。私はもう貴女のお供は之でヲヽヽヽヽをしまひですよ』 と逃げ出さうとする。高姫は後から痩こけた手をグツと出し、襟首を掴み二足三足後に引き乍ら、 高『こりや灸箸、麻幹人足、逃げるなら逃げて見い。燈心の幽霊見たやうな腕をしやがつて、線香の様な足をして、かれいのやうな薄つぺたい体をして、生宮様に口答へするとは以ての外だ。サア動くなら動いて見よれ』 ト『イヤもう、えらい灸を据ゑられました。どうぞかれいこれ云はずに許して下さい。許して下さらなもう仕方が無い。あの谷川へとうしん(投身)と出掛けます』 高『エーしやれ処かい』 とパツと手を放した途端にヒヨロヒヨロヒヨロと餓鬼の如くヒヨロつき、枯れた萱草の中にパタリと倒けて了つた。 高『ホヽヽヽヽ生宮様にかかつたら、バラモンのリユーチナントも脆いものだな。サアサア之から館へ帰り、夕御飯の用意でも致しませう』 とダン尻を中空にたわつかせ乍ら帰らむとする。時しもあれ、珍らしくも歌の声が聞えて来た。高姫は此声を聞くや否や、操り人形の如くクレリと体を交し、 『ヤア来た来た、これから私の正念場だ』 と大地に二三回も石搗きを始めて勇んでゐる。 『梵天帝釈自在天大国彦の大神は 三千世界の救世主神や仏は云ふも更 青人草や草木まで恵の露を垂れ給ひ 救はせ給ふ尊さよ大黒主の大棟梁 清き教を受け給ひ七千余国の月の国 一つに丸めて治めむとバラモン教を遠近に 開き給へど如何にせむ三五教やウラル教 勢ひ仲々強くして誠の神の御教を 蹂躙するこそ是非なけれ未だ時節の到らぬか これ程尊い御教も数多の人に仰がれず 誹毀讒謗の的となり日に夜に教は淋れ行く 大黒主の権力に押されて表面バラモンの 信者に化けて居るなれど心の中はウラル教 三五教の奴許りこんな事ではならないと 大黒主の御心配強圧的に軍隊を 用ゐて信徒を召集し否が応でもバラモンの 教に靡かせくれんづと大足別の将軍に 三千余騎の兵士を引率させてデカタンの 大高原に進軍しトルマン国を屠らむと 吾にスコブツエン宗を開かせ給へどその実は 異名同宗バラモンの教に少しも変らない 只々相違の一点はバラモン教より劇烈な 信徒に修行を強ゆるのみこんな事でもしておかにや 虎狼に等しい人心を緩和し御国を保つこと 容易に出来るものでないかてて加へて此頃は 思想日に夜に混乱しアナアキズムやソシヤリズムが 到る処に出没し大黒主の此天下 愈危くなつて来た吾は此間に教線を 七千余国に拡張し大黒主の失脚を 見届け済まして月の国いや永遠に統治なし 神力無双の英雄と世に謳はれむ面白や 神は吾等と共にあり吾こそ神の化身ぞや 神に刃向かふ奴輩は何奴も此奴も容赦なく 亡ぼし呉れむ吾宗旨アヽ面白や面白や いかなる神の教をも言向和し大野原 風に草木の靡く如振舞ひ呉れむ吾力 吾等は神の化身なり吾等は力の根元ぞ 来れよ来れ四方の国鳥獣の分ちなく キユーバーが配下としてやらうイツヒヽヽヽイツヒヽヽヽ 実に面白くなつて来た天は曇りて光なく 地上は冷えて草木さへ皆枯れ萎む世の中に スコブツエン宗只独り旭日の天に昇るごと 日々毎日栄え行くウツフヽヽヽヽウツフヽヽヽヽ』 と大法螺を吹き立て乍ら四辻迄やつて来た。高姫はキユーバーの姿を見るより、カン走つた声にて、 『これこれ遍路さま、一寸待つて下さい。お前は一寸見ても、物の分りさうな立派な男らしい。私は三千世界の救世主、大みろくの太柱、第一霊国の天人、日の出神の生宮ぢやぞえ。サア一寸、私の館迄来て下さい。結構な結構なお話を聞かして上げませうぞや』 キユーバー『何、お前が救世主と云ふのか、フヽヽヽフーン、はてな』 高『これ、遍路さま、何がフヽヽヽフンだい。はてな……処か、これから世の初まり、弥勒出現、神代の樹立、世の終ひの世の始まりぢやぞえ』 キユ『ハヽヽヽヽヽ何と面白い婆さまだな。幸ひ日の暮の事でもあり、そこらに宿もなし、一つ宿めて頂かうかな』 高『サアサア宿つて下さい。結構な結構なお話をして上げますぞや、ホヽヽヽヽヽ。トンボの奴到頭草の中へ埋もつて了ひよつた。あんな奴アどうならふと構ふ事はない。生宮様に対して理窟許り吐くのだもの。何と世の中は妙なものだな。一人の奴が愛想づかして逃げたと思へば、チヤーンと神様は代りを拵へて下さる。この遍路は、どうやら生宮の片腕になるかも知れぬぞ。ホヽヽヽヽヽ』 トンボは最前から草の中に身を隠して高姫の様子を考へてゐたが、……こんな奴に来られちや自分はもう足上りだ。然し乍ら高姫の奴、あんな男を引張り込んで、どんな相談をしとるか知れぬ。今晩は兎も角、館の外から二人の話を聞いてやらねばなるまい…………と思案を定め、両人が岩山の麓の破れ家へ帰つて行く後から、闇を幸ひ足音を忍ばせついて行く。 (大正一四・八・二三旧七・四於由良秋田別荘北村隆光録)
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霊界物語 70_酉_トルマン国の国政改革 12 大魅勒 第一二章大魅勒〔一七七九〕 ハリマの森の木蔭に覆面頭巾の大男が二人、ロハ台に腰をかけ、ヒソビソと何事か諜し合はしてゐる。 レール『オイ、マーク、スコブツエン宗のキユーバーの奴、チウイン太子さまの英断に仍つて、小気味よくも、あゝして牢獄へ投込まれよつたが、併し吾々は之を聞いて安心するこた出来ぬぢやないか。噂に聞けば、彼奴はラスプチンの如うな代物で、千草姫の歓心を買ひ、何でも怪しからぬ事をやつてゐやがるといふ事だ。何うしても斯うしても牡鶏のコケコーを唄ふ時節だから、刹帝利の権威も、賢明なる太子の権威も蹂躙して、屹度千草姫が彼奴を救ひ出すに違ひない。さうなつたが最後、益々資本主義の制度を布き、吾々下層階級に対し、圧迫と搾取を以て臨み、世に立てない様な悪政を布くに違ひない。さうだから吾々は向上運動の代表者たる立場から、一時も早く彼奴を何とかしなくちや、枕を高くして寝ることが出来ぬぢやないか。かうして覆面頭巾の扮装でお前をすすめて出て来たが、決して強盗をやる考へぢやない。彼れラスプチンを今の内に屠つておかうとの考へから、お前をボロイ銭儲があると云つて、甘くここ迄おびき出したのだ』 マーク『なアんだい、俺ヤ又二進も三進も生活難に追はれて立行かないものだから、たうとう汝が生地を現はし、今晩泥棒の初旅に出ようと思ひ、俺に応援を頼みに来よつたのだと早合点してゐたのだ。俺だつて怖い目をして、人家に忍び入り、或は行人を掠めて、思つた丈の金が取レールか、取れぬか分らないが、生死を共にしようと約した友人の言葉でもあり、断る訳にも行かず、今日からいよいよ太う短う此世を暮す泥棒様になるのかなア……と因果腰を定めてやつて来たのだ。併しお前の肚を聞いて俺も安心した。国家の毒虫を駆除するは正に国士たる者の任務だ。ベツトの行はれない世の中は改革も善政もあつたものぢやない。どうか一つラスプチンを血祭にしてブル宗教の心胆を寒からしめ、偽宗教家の腸綿をデングリ返してやらなけりや駄目だよ。俺達や別に乱暴な事をせなくても、ラマ階級の奴等に乱暴者として、怖がられてゐるのだから、何時どんな計画を以て其穴へ陥れられ、宰相ベツト未遂の嫌疑者として○○本山へ拘引されるか知れたものぢやない。同じ事なら今の内に彼奴を屠つておかねば、彼奴が擡頭した時や、俺達を向上会撲滅令とか、暴力団取締令とか、何とか彼とか下らぬ法律を発布して、益々俺達仲間を苦しめ殺さうとするに違ひない。本当に彼奴が投獄されてゐるのを幸ひ、今晩は何とかして彼奴を奪ひ取り、暗がりでシヤモを絞める様にやつつけ様ぢやないか』 レ『ヤ、面白い面白い、サアもう牢番の寝静まる時分だ。サア、行かう』 と二人は木蔭の暗を伝ふて、トルマン城外の牢獄の裏門へと進んだ。 レ『オイ、仲々此奴ア、ちよつと、壁が高うて飛越える訳にも行かず、困つたなア』 マ『どつかの軒下で梯子でも探して来て、入らうでないか。そして中へ入つたら最後、先づ第一に門の閂を外し、何時でも逃出せるようにしとくのだぞ。之から俺がそこらの町家の軒を捜して梯子を盗んで来るから、お前はキユーバーの在所を考へといて呉れ。彼奴は魔法使ひだから、何時も青い火を空中に燃やす事を得意としてる奴だ。其魔術を以て布教の手段としてゐるのだ。又彼奴ア、屹度其魔法を使ひ、牢番共を驚かし、……此奴ア矢張り生神さまだ……といふ評判を立てさして、一日も早く出獄の手段を廻らしてゐるのに違ひないからのう』 レ『ウンそらさうだ。能く考へて置かう』 斯くしてマークは暗をぬふて暫く姿を隠した。レールは後に独言、 『あーあ、本当に約らないワ。俺達は向上会の代表者となつてラマ階級を打亡ぼし、本当に平和な世界を造らうと、今年で十年の間、一日の如く寝食を忘れ、妻子は寒さと飢とに泣いてるに拘らず、昼夜孜々として活動して来たが、何と云つても強い者の強い、弱い者の弱い世の中だ。三人寄つて話をしても直様番僧に取捉まれ、牢獄に打込まれるやうな険難な世の中だから、手も足も出せないワ。それにも拘らず、大黒主の廻し者たるキユーバーの奴、此トルマン国へ出てうしやがつて、トルマン王家も国民も土芥の如くこき卸し、大黒主の神徳を賞揚し、邪教を開いて益々吾々を苦しめようとしてゐやがつたが、賢明なるチウイン太子の英断によつて、国民環視の前でふん縛られやがつた時の愉快さ痛快さ。彼奴を縛つた時や、決して彼奴一人ぢやない。彼奴に買収されてる番僧、ラマ僧などは頭上に鉄槌を下されたやうなものだ。それにも拘らず、彼れ妖僧を大奥方が寵愛してると聞いちや、吾々は最早黙過する訳には行かぬ。国家の為に此逆賊を今夜の中に誅伐しなくちや取返しがつかぬ。又国難勃発し、吾々国民を苦しめるに違ひない。あーあマークの奴、どうしたのだらう。早く来ないかな。何となく、気がせいて仕方ない。愚図々々してると牢番が目を覚まし、あべこべに自分達が牢獄に打込まれるやうな事になつちや大変だがな』 と呟いてゐる。チウイン太子はジヤンクの進言に仍つて、明早朝キユーバーは放免されば再び城内へ帰り来り、又もや母の心胆をとろかし、城内を攪乱するに相違ない。彼奴を今夜の中に引張り出し、荒井ケ嶽の岩窟に牢番をつけて閉ぢ込め置かむものと微行し来り、沙羅双樹の木蔭に身を潜めて考へてゐたが、覆面頭巾の曲者が二人居るので、千草姫の廻し者ではないかと耳を欹て、いよいよさうでない事が分つたので、稍安心の胸を撫で木蔭をツと立出で、言葉静に、 チウイン『お前は何人ぢや。最前からの話を聞けば実に可い志、余も大賛成だ。お前は向上会員と見えるが、到底一人や二人で彼キユーバーを奪ひ出す訳にはゆくまい。余はチウイン太子だが、之から門番を叩き起し、余の権威を以て門を開かせ、キユーバーを引ずり出す考へだからお前も手伝つてくれ』 レ『ハイ、私はレールと申しまして、向上運動の代表者で御座いますが、今太子様のお言葉を聞いて、実に万民の為欣喜に堪へませぬ。如何なる御用なり共御申し付け下さいませ』 斯く話す所へ、マークは長い梯子を担げて、ハアハアと息はづませ乍らやつて来た。 マ『オイ、レール、到頭梯子一本盗んで来た、サ、早く早く』 レ『ヤ、そりや御苦労だつた。併しな、ここにチウイン太子様が御みえになつてゐるのだ』 マ『エ、エー』 と云つた切り、吃驚して地上に尻餅をつく。 チウ『ハヽヽヽヽ、ヤ、お前も向上会員か、決して心配要らぬ。今此男と相談の上、キユーバーを奪ひ取るべく考へてゐる所だ、安心せ』 マ『ヤ、賢明なる太子様、有難う御座います』 レ『もし太子様、斯様に梯子が参りました以上は門番を叩き起すにも及びますまい。左様な事をなさいますと、貴方がキユーバーを取逃がし遊ばした事が、千草姫様の耳に入るは当然、後の御迷惑が思ひ遣られますから、どうぞ太子様は此処に待つてゐて下さりませ。吾々両人、牢番が万一抵抗すれば擲り倒しておいてでも、彼れ悪魔を引ずり出して参ります』 太子『成程それも一策だ、一つ骨を折つて見てくれ。其代りに此事が成功したら、屹度お前に褒美をやる』 レ『イヤ、滅相な、万民の為に命を捨ててる私、褒美が欲しさにこんな危い事が出来ませうか。それよりも万民の叫声を、心をとめてお聞き下さいませ』 太『イヤ、余も平素から民の声を聞かむとし、いろいろと変装して市井の巷に出入し、お前等の活動振もよく知つてゐるのだ。精々活動してくれ。今は非常に妨害が強うて困るであらうが、軈て勝利の都も近づくだらう』 二人は梯子を伝うて猿の如く塀を乗越え、中より門の戸をソツと開けおき、どの牢獄にキユーバーがゐるかとよくよく伺へば、パツパツと青い火の玉の如きものが窓口から、消えたりとぼつたりしてゐる……ヤ、的切りここ……と近より見れば、二人の牢番が高鼾をかいて椅子にもたれてゐる。二人は牢番の腰に下げてゐる鍵をソツと取り、錠を外し、一人は中に入り、一人は牢番を監視し乍ら、キユーバーを引出し来り、ソツと門外に首尾よく伴れ出した。牢番はフツと目を覚せば、牢の戸は開いてゐる。自分の腰の鍵は盗まれて跡かたもない。俄に『牢破り牢破り』と呶鳴り出した。此声を聞付けて、牢屋の番人は一斉に目を覚まし、提灯や松火をさげて前後左右にかけ廻る。チウイン太子は二人に篤と言ひ聞かせ、荒井ケ嶽の岩窟にキユーバーを放り込み、レール、マークの両人に沢山の金を与へて、或時機まで之を警護せしむる事とした。二人は太子の旨を奉じ、秘密を守り、吾妻子にも之を打明けなかつた。 夜中を過ぐれば翌日である……と云ふので、ジヤンクは四五の役人に命じキユーバーを放免すべく遣はし見れば、破獄の大騒動、是非共王及千草姫に報告せねばなるまいと、王の居間を訪れ見れば、既にチウイン太子は王と共に何事か首を鳩めて囁いてゐる。 ジヤンク『申し上げます。昨日御許を被りまして、彼のキユーバーを放免せむと、小役人を遣はし調べ見れば、何人かに盗み去られ、牢屋の番人共は周章狼狽致して居りまする。万一彼れ、ハルナの都へ逃帰り、大黒主の前に出で、数万の兵士を拝借し、再び捲土重来致せば忌々しき大事で御座いますれば、人を今の中八方に派し、彼の在所を捜索致し度く存じます』 王及び太子は平然として別に驚きもせず、 王『ナニ、キユーバーが破獄逃走したと云ふのか。捨てとけ捨てとけ、別に心配するには及ぶまい』 ジヤ『仰せでは御座いまするが、今の中彼の在処を突止め、ハルナの都へ逃げ帰らないやうの手段を廻らさねばなりますまい。どうか此儀を老臣にお命じ下さいます様……』 太『ヤ、ジヤンク殿、必ず御心配なさるな。余に心当りがある。決して決してハルナの都へ逃げ帰るやうな事はさせぬ。兎も角余を信じてくれ』 ジヤ『外ならぬ太子様のお言葉、万々抜目は御座いますまい。然らば老臣は之にて下りませう』 千草姫は気が立つて一目も眠られず、且又聴覚が非常に鋭敏と為り、蚊の囁きでさへも、耳に入るやうになつてゐた。ドアを排して王の室に入り来り、 『コレ悴チウイン、今其方の言葉を聞けば、キユーバーの身の上につき、何か確信あるものの如く云つて居つたぢやないか。サ、母の権威を以て飽く迄も詮索する。何処へ隠したのだ。有体に白状しなさい』 太『母上様、私がそんな事を知らう道理が御座いますか。今ジヤンクの注進に仍つてキユーバーの姿が見えなくなつた事を知り、大変に心配をしてゐた所で御座いますよ』 千草『いやいやさうは云はせませぬぞや。お前の言葉の端にチヤンと現はれてゐる。キユーバーを隠した張本人はお前だらうがな』 太『此は怪しからぬ。苟くも太子の身を以て夜夜中、牢獄などへ参れますか』 千草『ホヽヽヽヽヽ参れないお方がお出で遊ばすのだから妙だよ。其方は太子の身を有ち乍ら、何時も王様の目を忍び、市井の巷に出没し、下層階級と交際をしたり、賤しい女に戯れてると云ふ噂だから、牢獄などへ行くのは朝飯前だよ。そんな事を云つて、此千草姫、大みろくの生宮を胡麻化さうとしても駄目で御座んすぞえ』 太『母上様、貴女妙な事を仰せられますな。今迄一度も聞いた事のない、大みろくの生宮とは、誰に左様な事をお聞きなさいました』 千草『ヘン、お前等の青二才が分つて堪りますかい。此母はな、神様から聞いたのだよ。此肉体は今日より改めて、下津岩根の大みろく様、三千世界の救世主、日の出神の生宮で御座んすぞや。チツポけなトルマン国の王妃だなんて思つて貰つちや、此神柱もチツと許り困りますよ。ホヽヽヽヽヽあのマア、王様と云ひ、ジヤンクと云ひ、太子と云ひ、約らなさ相なお面わいの。それ程此千草姫が、俄に神柱になつたのが不思議で御座いますか。三千世界一度に見えすく日の出神の生宮で御座いますぞや』 太『あ、左様で御座いますか。ソラ誠に結構、照国別様が当城へ御越下さいました其神徳に仍つて、母上様も俄に御神懸におなり遊ばし、日の出神様と云ふやうな、立派なエンゼルの肉宮に御出世遊ばしたので御座いませう。就いては屹度キユーバーの在処位はお分りになるで御座いませうな』 千草『きまつた事だよ。第一霊国の天人、底津岩根の大みろくの太柱、三千世界の救世主、日の出神の肉宮だもの』 太『成程、それは結構な神様で御座います。然らばどうかキユーバーの在所をお知らせ下さいませ。それさへお分りになりますれば、母上を日の出神の生宮と奉り、父上様も喜んで、政治万端をお任せになるで御座いませう』 千草『ホヽヽヽヽヽ、小賢しい、コレ悴、お前は母をやり込める積だな。未だ此母を疑つてゐらつしやるのか、日の出神に間違ひは御座らぬぞや。神は決して嘘は申さぬぞや。底津岩根の大みろく様の太柱に対し、易見か何ぞのやうにキユーバーの在所が分つたら、日の出神の生宮と信じます……などと、ヘン馬鹿にして下さるな。相応の理によつて、此千草姫は第一霊国に感応し、根の国底の国に比すべき牢獄などは決して覗きませぬぞや。左様な所へ天眼通を使はふものなら、折角の智慧証覚は鈍り、悪魔の巣窟とならねばなりませぬ。大それた第一霊国の天人の霊に、牢獄に投じてあつた者の在所を知らせ……などとは、物の道理を知らぬのにも程があるぢやないか、ホヽヽヽヽヽ。何程賢いと云つても、現界の事は兎も角、霊界の消息は到底分りますまいがな。サア之から此トルマン国は底津岩根の大みろくの太柱が現はれ、国政を握り、三千世界を五六七の世に致す根源地と定めるから、左様お心得なされ。肉体の上からは、王様は千草姫の夫なれど、神から云へば奴も同然、天地霄壤の差異が御座いますぞや。之からの政治は神が致します。善悪邪正は此生宮が審かねば駄目ですよ。昨日も照国別の宣伝使が謡つてゐたぢやありませぬか。神が表に現はれて善悪邪正を立分ける……と。いよいよ千草姫の肉体を機関とし、第一霊国の天人の霊に大みろく様の精霊を宿し、日の出神となつて現はれ給うた、三千世界の救世主だぞえ。ホツホヽヽヽヽあのマア刹帝利殿の六かしい面わいの、チウインの情なさ相な面付、ウツフヽヽヽヽヽ』 と笑ひこけて了つた。 (大正一四・八・二四旧七・五於丹後由良秋田別荘松村真澄録)
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霊界物語 70_酉_トルマン国の国政改革 13 喃悶題 第一三章喃悶題〔一七八〇〕 千草姫は左守司の妻モクレン同じく娘テイラ姫、右守の娘ハリスを膝下近く呼び寄せ、薬籠中のものとなしおかむと、あらゆる歓待を尽してゐる。モクレン、テイラ、ハリスの三人は恐る恐る千草姫の御殿に卓を囲んで千草姫が心からの馳走を頂いてゐた。千草姫は一同に向ひ、 『これ、モクレンさま、其方は国家の為に一命を捨てた左守様の奥様だから、女とは云へトルマン国にとつては国家の柱石、誰よりも彼よりも大切にせなくてはならない方だから、今後も国家のため妾と共に十分の力を尽して下さいや』 モクレン『ハイ、有り難き姫様のお言葉では御座りまするが、お見かけ通り、最早老齢、何の用にも立ちませぬのでお恥しう御座ります』 千草『これこれそりや何を又、気の弱い事を云ふのだい。お前さまもトルマン国に於て第一人者たる左守司の未亡人ぢやないか。夫が討死された以上は、賢母良妻の実を挙げ、夫にまさる活動をせなくちや済みますまい。これから此千草姫が其方に対し、無限の神徳を与へるから力一杯千草姫の為活動して下さい。それが、つまり王様の為ともなり、又トルマン国一般のためともなるのだからなア』 モク『ハイ、有り難う御座ります。妾のやうな年をとつた老耄、何の用にも立ちますまいが、姫様の御用とあれば否む訳には行きませぬ。何なりと御用仰付け下さいますれば力のあらむ限り、屹度おつとめ致しませう』 千草『イヤ、満足々々、それでこそ左守の妻モクレン殿、この千草姫は今迄の千草とは聊か変つてゐますから、その考へでゐて下さいや。決して此千草姫は発狂はして居りませぬ。愈今日より三千世界の救世主、底津岩根の大みろくの霊体、第一霊国の天人、日の出神の生宮で御座るぞや。今日迄はトルマン国ガーデン王の王妃として内政に干与致して居つたが、最早左様な小さい事は出来ませぬ。天の根本の根本の大みろくの霊体として、此地上に現はれた以上は、七千余国の月の国は申すに及ばず、三千世界を立替立直し遊ばす日の出神の活動。其方も余程しつかりして下さらぬと、此世の大望、立替立直しがおそくなりますからな』 千草姫の此意外の言にモクレンも、テイラも、ハリスも呆れはて、互に顔を見合せて舌を捲き、目を瞠つた。 千草『これ、ハリス、お前は今舌を捲いてゐたぢやないか。妾の云ふ事が、それほど可笑しいのか。なぜ真面目に神の申す事をお聞きなさらぬのだい』 ハリス『ハイ、誠に畏れ入りまして御座ります。王妃様と許り今の今迄存じましたのに、途方もない大きい大みろく様の御霊体とやら、心小さき吾々には真偽に迷ひ、茫然と致しました』 千草『オツホヽヽヽ、そらさうだろう。三千世界の救世主と、トルマン国の右守司の娘とを比較すれば、象と黴菌とよりまだ懸隔があるのだから、分らぬのも無理はない。然し乍ら此千草姫を何と思ひますか、よもや狂人とは思はないでせうな』 ハリ『勿体ない姫様を、どうして狂人と見られませう』 千草『そんなら、其方此肉宮を、どう考へるか』 と矢つぎ早やに問ひつめられ、 ハリ『ハイ、到底黴菌の分際として宇宙大の神様のこと、御神徳高き王妃様の御身の上が分つて堪りませうか。只有難し勿体なしと申すより外に言葉は御座りませぬ』 千草『なるほどなるほど、そら、さうだ。お前の云ふ通り、神の事は人間の分際で分りさうな事はないからな。この千草姫をみろくの太柱、日の出神の生宮と信じた以上は、何事でも絶対服従を誓ふでせうな』 ハリ『ハイ、絶対服従を誓ひます。生宮様のお言葉ならば、仮令山を逆様に登れと仰有つても登つて見せませう』 千草『ホヽヽヽ流石は右守の忘れ形見だけあつて偉いものだな。これから此生宮が三千世界の救世主と現はれるについて、其方を立派な三千世界に又とない結構なお方とし、万古末代名の残る御用を仰付ける程に……』 ハリ『ハイ、有難う御座ります。何分よろしくお願ひ申しまする』 千草『ウン、よしよし、大みろくの太柱、確に承知致したぞや。次には左守の娘テイラ殿は此生宮を何と心得て御座るか、御意見を承はり度いものだな』 テイラ『ハイ、妾は、どう致しましても、ガーデン王の王妃様とより思ふ事が出来ませぬ。日の出神とか底津岩根のみろくとか仰有りましたが、今日迄一度も承はつた事が御座りませぬので、心の中にて真偽の判別に迷うて居ります』 千草『人間の分際として畏れ多くも神に対し、真偽の判別に迷ふとは、何たる不遜の言葉ぞや。一寸先も分らぬ人間が三千世界を一目に見通す日の出神の生宮を審神致す等とは以ての外の悪行、左様な不心得な量見では、左守の娘とは云はせませぬぞや』 テイ『ハイ、畏れ入りました。あまり俄の事で吃驚致しまして、ツヒ粗相を申しました。どうぞ広き御心に見直し聞直しを願ひ上げまする』 千草『ウンさう柔順く事が分ればそれでよい。この生宮の正体が分らぬのが本当だ。何と云つても三千世界を救ふ為に、いろいろ雑多とヘグレてヘグレて来た此方、それぢやによつてヘグレのヘグレのヘグレ武者、ヘグレ神社の大神と、神界では申すのぢやぞえ』 テイ『ハイ、有難う御座ります』 千草『何が有難いのだ。妾の言葉が承知が行つたのか。只王妃様だから何事も御無理御尤も、ヘイヘイハイハイと、面従してさへ居ればいいと云ふやうなズルイ考へは駄目ですよ。人民の心のドン底まで見えすく生神だから』 テイ『左様で御座ります。妾は決して疑ひは致しませぬ。只神様の御心のまにまに御用に仕へ奉る丈けで御座ります』 千草『なるほど、流石は左守の忘れ形見だけあつて、よく物が分るわい。屹度此千草姫の肉宮に対して一言たりとも反きは致しますまいな。絶対服従を誓ふでせうな』 テイ『ハイ、何事も主人の申し付け、絶対服従を致しませう』 千草『これこれそれや何を云ふのぢやいな。この生宮を人間としての御挨拶は痛み入る。主人の命令等とは怪しからぬ、生宮様の御命令だと何故申さないのか』 テイ『ハイ、粗相申しました。生宮様の御命令ならば、如何なる御用でも厭ひませぬ。仮令火の中、水の底でも、喜んで御用を承はりませう』 千草『ホヽヽヽヤレヤレ嬉しや嬉しや、日の出神の生宮満足致したぞや。命令とあれば山を逆様に歩くハリス姫、火の中、水の底へでも喜んで飛込むと云ふテイラ殿、これ丈けの決死隊が出来た上は、此日の出神の生宮も大磐石。それに就いてはモクレン殿は如何の御量見か、キツパリ、それが承はり度い』 モク『仰せ迄もなく絶対服従を誓ひます』 千草『絶対服従では、余り答弁がボツとしてゐるぢやないか。火の中を潜るとか水の底を潜るとか山を逆様に登るとか何とか的確な返答がありさうなものぢやなア』 モク『ハイ、左様ならば、妾は御命令とあらば神の贄となつて暖かい血潮を奉りませう』 千草『ウン、よしよし、其方こそ秀逸だ。流石は左守司の未亡人、千草姫、否々日の出神の生宮、感じ入りましたぞや。サア早速、かう話が纏まれば、今この生宮がテイラ、ハリスの両人に御用を申付ける』 テイラ、ハリス両人は一度に『ハツ』と頭を下げ、 『如何なる御命令なりとも謹んで御受け仕ります』 千草『ホヽヽ流石は賢女だ。然らば早速御用を申し付ける。其方も聞いてゐる通り、スコブツエン宗の名僧キユーバー殿の行衛を、テイラ殿は探して来て下さい』 テイ『何れへ参りましたら宜しう御座りますか。どうか神様、お指図を下さりませ』 千草『探しに行くやうなものに、方角が分る道理があらうか。どちらに行けばよいか分らぬから、捜索に出ようと申すのだ』 テイ『ハイ、畏まりました。然らば、これから直様、御所在を尋ねて参りませう。どうか王様にも太子様にも、宜しく御承諾を願つて下さいませよ』 千草『これ、テイラ、何と云ふ分らぬ事を申すのだえ。王様は僅かなトルマン国の主権者、三十万人の父上ぢやぞえ。太子は又、その後継、今は何の権威もない部屋住ぢやぞや。五十六億七千万人の霊を救ふ三千世界の生宮の言葉を何と心得なさる』 テイ『ハイ、畏れ入りました』 と此場を匆々に立ち、 『皆様、左様ならば』 と挨拶を残し出て行かむとする。母モクレンは、 『これテイラ姫、生宮様の御命令とは云ひ乍ら、其方も矢張ガーデン王に仕へ奉る左守の娘なれば、一応王様に御挨拶申し上げた上、キユーバー殿の捜索においでなさるがよからう。母として一言、注意致しますぞや』 千草『これこれモクレン、何と云ふ分らぬ事を申すのだい。テイラは此生宮の申す事を絶対服従致すと云つたではないか』 モク『ハイ、誠に済まない事を申しました。テイラ、早く、サア、おいでなさい』 と云ひ乍ら、「王様に一応申し上げよ」と、口には出さねど目を以て之を伝へた。 テイラは母モクレンの心を汲みとり、さあらぬ態にて、 『左様ならば愈捜索に参ります。生宮様、御安心下さいませ』 と早くも此場を立去つた。 千草『オツホヽヽヽ、ヤア、流石は偉いテイラ殿。これモクレン、お喜びなさい。底津岩根の大みろくの太柱、日の出神の御用を第一番に致したのは、其方の娘テイラで御座るぞや。サア早く神様にお礼を申しや』 モクレンは仕方なしに両掌を合せ、天に向つて暗祈黙祷してゐる。 千草『コレコレ、あまり訳が分らなさすぎるぢやないか。モクレン其方は、どこを拝んで居るのぢや。空虚なる大空を拝んで何になる。天にまします大みろくの神は今や地上に降臨し、此処に御座るぢやないか。神を拝めと申すのは此生宮を拝めと云ふのだよ。ても扨も、訳の分らぬ代物だなア』 モクレンは心の中にて、「エーこの狂人女郎、何を吐しやがる。馬鹿らしい」とは思へども、そこが主従の悲しさ、色にも出さず、 『ハイ、左様で御座りましたか。何分愚鈍の妾、現在目の前に結構な神様が御出現遊ばして御座るのに気がつかないとは、何と云ふ馬鹿だらうかと、吾乍ら呆れはてて御座ります。然らば御免下さいませ、生宮様』 と三拝九拝、拍手した。 千草姫は益々得意になり、ツンとあげ面をさらし乍ら、 『ヤア、善哉々々。其方こそ此生宮を神として認めた第一人者ぢや、必ず必ず信仰をかへてはなりませぬぞや。サア、かうきまつた上はモクレン殿は暇を遣はす。随意に吾家にかへり休息なされ。これからハリスに向つて折入つて特別の御用がある、吾居間においでなさい。結構な結構な三千世界に又とない弥勒成就の御用を仰付けますぞや』 ハリ『ハイ、仰せに従ひ参ります』 と千草姫の居間に伴はれ行く。千草姫はドアの戸を堅く締め四方の窓を閉ぢ、声をひそめて、 『これ、ハリス殿、この生宮が特別の大々々の秘密の御用を仰付けるからお聞きなさい』 ハリ『ハイ、謹んで承はりませう。如何なる御用なりとも身に叶ふ事ならば』 千草『ヤア、ハリス殿外でもない。其方はトルマン国きつての美貌と聞く、その美貌を楯として、太子チウインの心を奪ひ、彼を恋の淵に陥れくれるならば、其方をチウイン太子の妃となし、このトルマン城の花と致すであらう。どうだ嬉しいか、よもや不足はあるまいがな』 ハリ『何事かと存じますれば御勿体ない。左様な御命令、どうして臣下の身を以て、畏れ多くも太子様に、左様に大それた事が女の身として申されませう。第一身分に懸隔が御座りまする。又妾は右守司の一人娘、右守家を継がねばなりませぬ。どうぞこれ許りは偏に御容赦を願ひ奉りまする』 千草『これこれハリス、そんな遠慮はチツとも要らぬ。右守家の血統は天にも地にもお前只一人、成程後を継がねばならうまい。それなれば尚更、其方にとつては、打つてすげたやうな話ではないか。チウインをうまく恋に引入れたならば、其方の夫につかはす程に。何と嬉しからうがな』 ハリ『畏れ多くもトルマン国の継承者たる太子様を右守の家に下さるとは、天地顛倒も同様、ガーデン王様が決して許しは致されますまい。又太子様とて顕要の地位を捨て、臣下の家に養子におなり遊ばすやうな道理は御座りませぬ。仮令右守家は妾一代にて血統がきれませうとも、王家には替へられませぬ。この儀許りは平に御容赦を願ひ奉りまする』 千草『これこれハリス殿、其方は此生宮の命令ならば、山でも逆様に登ると云つたぢやないか。その舌の根の乾かぬ中、掌かへしたやうな其方の変心、千草姫の生宮、左様な事で承知は致さぬぞや』 ハリ『ハイ、是非は御座りませぬ。万々一妾の力によつて太子様を恋に陥し奉つた上は、王家の御世継は、どうなさいますか。それが妾は心配でなりませぬ』 千草『ホヽヽヽ、成程一応尤もだ尤もだ。人間心としては、実に申分のないお前の真心、感じ入りました。然し乍ら三千世界を自由に致す底津岩根の大みろくの太柱、現はれた以上は霊の親子たるものを御世継に致す考へだ。左様な事に心配はチツとも要らない。其方の霊はチウイン太子と夫婦の霊だによつて、日の出神の生宮が神界に於て調べて調べて調べ上げた上、かう申してゐるのだから、力一杯活動して下さい。屹度成功疑ひなしぢやぞえ』 ハリスは太子と共に大軍を率ゐ、敵軍を駆け悩ましたる女武者である。さうして太子の容色や胆力には心の底から感服してゐた。然し乍ら夫に持たう、妻にならう等との野心はチツトも持つてゐないのであるが、千草姫の言葉に否みかね、一先づ此の場を逃れむものと、心にもなき言辞を弄し、暫時千草姫の意を迎へ、嬉しさうな顔をして見せたのである。千草姫は満足の態にて、 千草『ヤア、ハリス殿、あつぱれあつぱれ、必ず成功祈るぞや。これさへ承諾した上は、最早今日は之で御用済みだ。これから家へ帰り、あらむ限りの盛装をなし、紅、白粉、油を惜しまず、抜目なく立働く準備をなさい』 ハリスは『ハイ、有難う』と丁寧に挨拶をなし此場を匆々立ちて行く。 (大正一四・八・二四旧七・五於由良海岸秋田別荘北村隆光録)
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霊界物語 70_酉_トルマン国の国政改革 15 地位転変 第一五章地位転変〔一七八二〕 千草姫は王の居間に羽搏きし乍ら、仕舞でも舞ふやうなスタイルで横柄面をさらして入り来り、言も荘重に、 『トルマン国の国王、ガーデン王殿、三千世界の救世主、底津岩根の大みろくの太柱、第一霊国の天人日の出神の生宮の託宣を、耳をさらへてお聞下され。肉体は千草姫であつても、霊は日の出神の誠生粋の水晶魂、此世の救主として現はれたので御座るぞや。其方の目から見た時は、此生宮を気違ひと思ふであらう。誠の神に間違ひは御座らぬぞや』 ガーデン王は千草姫の此態を見て、不審の眉をひそめ、あゝ困つた事が出来たわい。たうとう王妃は発狂して了つた。併し乍ら気のたつてる時に逆らふは、益々病気を強める道理、少時彼が云ふ事を黙つて聞いてやらう……と決心し、 王『成程其方は日の出神の生宮であらう。如何なる用か、聞かしてくれ』 千草『これは怪しからぬ汝が言葉、無礼であらうぞや。日の出神に対して聞かしてくれ……とは何たる暴言、頭が高い、お坐りなされ。三千世界の因縁を説いて聞かしてやらうぞや』 王『ハイ』 と不承不承に椅子を離れて座に着けば、千草姫はニコニコし乍ら、 千草『ホヽヽヽヽヽ、流石はトルマン国の王ぢや、此日の出神をよく見届けた。褒美には之をつかはす。有難ふ頂戴召され』 と云ひ乍ら、刹帝利のピカピカ光つた禿頭の上へ、左の片足をドツカと載せ『ウーンウーン』と二声唸り乍ら、左の足を下ろし、又右の足を同じく頭上にのせ『ウーンウーン』と又もや二声……『ホヽヽヽヽヽ』と笑ひ悠々として床の間に直立し、 千草『如何にガーデン王、よつく承はれ。セーロン島の浄飯王が太子悉達は壇特山や霊鷲山に上り、五ケ年の修業の後仏果を得て帰国し、父の浄飯王に仏足を頂礼せしめた例しがある。畏れ多くも底津岩根の大みろくの太柱、第一霊国の天人、日の出神の御神足を、両足共頂戴致したる汝こそは、三千世界の果報者、有難く感謝致されよ。日の出神に間違ひは御座らぬぞや』 ガーデン王は始めの間は何だか怪しいと思つてゐたが、千草姫の足を頭にのせられてから、ガラリと心機一転し、全くの活神と固く固く信ずる様になつた。サア斯うなつては、最早城内の整理は中心を失ひ、手のつけやうもなくなつて了つた。 千草『ガーデン王殿、此千草姫の肉体は、今日迄は汝が妃として、神界より許しありしも、いよいよ天の時節到来し、三千世界の救世主と現はれたれば、最早汝の妃ではない程に、汝は之より日の出神の肉宮が弟子となり、絶対服従を誓つて、何事にも違背せず尽すであらうなア』 王『ハイ、仰せ迄もなく、どんな御用でも承はりませう』 千草『オホヽヽヽヽ、満足々々、上が下になり、下が上になり、天地がかへる神の仕組、今迄の夫は妻の弟子となり、今迄の妻は其夫を弟子として使ふ神の経綸、斯くなる上はガーデン王、其方は日の出神の神勅を奉じ、三千世界の救世主が副柱なる名僧キユーバーを、一時も早く捜し出し、此城内に伴れ帰れよ。違反に及ばば神罰立所に至るであらう』 王『ハイ、委細承知致しましたが、彼れキユーバーは如何なりしか、破獄逃走致しました故、内々人を派し、捜索致して居りまするが、未だ何の吉報も得ませぬ。少時の御猶予を願ひ奉りまする』 千草『汝の言にして間違ひなくば、大方ジヤンクが隠して居るのだらう』 王『いやいや決して決して、左様な道理は御座いませぬ。彼はキユーバーを一時も早く救はむと、私かに相談致しました。早速ジヤンクの願ひを許し、牢獄に人を派し査べ見れば、彼れキユーバーは早くも何者にかさらはれ、行方不明となつて居りました』 千草『あ、さうであらうさうであらう、ヤ分つた分つた。此張本人は三五教の宣伝使照国別、照公の両人に間違ひはなからう。一時も早く彼をふん縛り、キユーバーを押込めありし牢獄へ、時を移さず打込めよ。これ決して肉体の千草姫が言葉でない。底津岩根の大みろくが神勅で御座るぞや』 王『御神勅は恐れ入りまするが、何と云つても、国家の危急を救ひ下された照国別の宣伝使を、何の科もなく牢屋に押込むなど云ふことは情に置て出来ませぬ。之許りは御容赦を願ひます』 千草『オホヽヽヽヽ、何馬鹿な事を申すか、三千世界一度に見えすく生神の目で一目睨んだならば、決して間違ひは御座らぬぞ。汝頑強にも吾神勅を拒むに於ては、立所に汝が生命をとるが、それでも可いか、返答聞かう』 王『いや、少時御待ち下さいませ。然らば御神勅の通り、照国別、照公神司を、手段を以てふん縛り、牢獄へ投込んでお目にかけませう』 千草『ウ、よしよし、それで神は満足致した。トルマン城は万々歳、七千余国の月の国は申すに及ばず、此地の上にありとあらゆる国は、残らず汝の支配にしてやらう。僅三十万の人民の父として、可惜一生を暮すも惜しいでないか。どうぢや合点がいつたか』 王『ハイ、委細承知致しまして御座います』 千草『ヤ、満足々々。次に其方に申し渡すことがある。太子チウイン、王女チンレイを修行の為一笠一蓑の旅人として一杖を与へ、一時も早く当城を出立せしめられよ』 王『仰せには御座いまするが私も老年、太子がゐなくては、国家の中心人物を失ふ道理、又王女チンレイは少し許り病身で御座いますれば、之許りはモ一度御考への上御猶予を願ひたう御座います』 千草『愚なり、ガーデン王。日の出神の生宮が底津岩根の大みろくと現はれた以上は、三千世界を一つに丸め、汝が支配の下におかむとす。汝は已に老齢、後継者の太子には広く世間を見聞せしめおく必要あり。諺にも可愛い子には旅をさせと申すでないか。汝は子の愛に溺れて、大切な吾子の幸福を抹殺せむと致すか、不届至極の腰抜爺イ奴』 王『イヤ分りまして御座ります。太子は修行の為、神勅に従ひ、旅に出すことと致しませうが、病身なる妹に旅の苦労を致させるのは親として忍びませぬ。どうぞこれ許りは御猶予を御願ひ申したう御座ります』 千草『ハテ偖、分らぬ爺イだな。神に絶対服従を誓つたでないか。王女チンレイは此門を出づるや否や、病魔は忽ち退散し、金鉄の如き壮健な肉体となるであらう。神の言葉に間違ひはないぞ。返答は何うだ』 王『左様ならば御神勅に従ひ、両人に其由を伝へませう』 千草『ガーデン王、天晴々々、汝の改慎に仍つて、速かに神政成就、ミロクの世が出現致すであらうぞ』 王『ハイ有難う存じまする』 千草『モ一つ其方に申し渡す事がある。之も絶対服従致すであらうなア』 王『ハイ』 千草『汝はジヤンクを以て、政治の枢機に任じてゐるが、彼が如き田舎者、どうして神の創りしトルマン国の政治が出来ようぞ。彼は吾国家の爆裂弾だ。八岐大蛇の霊だ。一時も早く当城を逐ひ出せ』 王『これ許りは必要な人物で御座いますから、どうぞ御猶予を願ひたう御座います』 千草『三日の猶予を致すに仍つて、それ迄に篤と云ひ聞かせ、城内を追つ払ふべし。併し乍ら彼れジヤンクに於て、キユーバー上人の在所を尋ね、城内に御迎ひ申し来るに於ては、国政の一部を其褒美として任しても差支なからう。イヤ刹帝利殿、御苦労で御座つた。居間へ下つて休息召され。最前から神の申し渡した一伍一什、必ず落度のなき様、明日迄に実行せよ』 と云ひ乍ら、又もや両手を一の字に開き、反り返つて床の間を下り、悠々として吾寝室指して帰り行く。 ガーデン王は千草姫に足の爪先から悪霊を注入され、俄に心機一転し、殆ど邪神の神憑状態となつて了つた。金毛九尾の悪狐は首尾よくトルマン城を占領したのである。 太子と王女は父母両親の厳命を拒む術もなく、旅に出かけると称し、数万の金を用意し遍路姿となつて、日の暮るる頃、レール、マークの住家を指して訪ね行き、門口に立つて、チリンチリンと鈴を振つてゐる。レール、マークは昼は互に岩窟の番人をやつてゐたが、丁度此時、男女四人食卓を共にしてゐる真最中であつた。太子は門に立つて、鈴を振り乍ら『頼まう頼まう』とおとなへば、マークは戸の隙間より外面を窺ひて、 マ『ヤ、夫婦の巡礼さま、何用か知らないが、斯様な貧民窟へ来た所で、何一つ上げる物はない、トツトと帰つて下さい。斯様な狭い家へ、今頃に来た所で泊めてやる訳にも行かず、お断り申します』 太『イヤ、愚僧は決して怪しき者で御座らぬ。レール、マーク殿の知人で御座れば、どうか此の戸を開けて貰ひたい』 レ『ヤ、スパイの奴、化けて来やがつたな、コラ大変だ。姫さまを隠さねばなるまい。サア姫さま、済みませぬが、此戸棚の中へ一寸入つてゐて下さいませ』 テイラ『ホヽヽヽヽヽ、さう慌るには及びませぬよ。何か城内に急変が起つたと見え、太子様が変装してお出になつたので御座いますワ。あのお声は太子様に間違ひ御座いませぬ』 と云ひ乍ら、テイラはガラガラと破戸を開き、 『ヤ、太子様よう御越し下さいました』 太子は『ウン』と云つた切り、チンレイと共に内に入る。 (大正一四・八・二四旧七・五於丹後由良秋田別荘松村真澄録)
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霊界物語 70_酉_トルマン国の国政改革 18 鳳恋 第一八章鳳恋〔一七八五〕 千草姫は傲然と日の出神気取で、刹帝利を脚下に跪かせ乍ら、 『三千世界の救世主、底津岩根の大みろくの太柱、第一霊国の天人、日の出神の生宮が、汝ガーデンに申し渡す仔細がある。性根を据ゑてしつかり聞けよ』 王『ハイ何事なり共仰せ下さりませ。絶対服従を誓つて居りまするから』 千草『汝が言葉、日の出神、満足々々。汝は之より三千世界の覇者となり、世界統一の神業に掛らねばならぬ大責任があるぞや。それに就ては、人間の分際としては如何共することは出来ない。此度天より天降りたる日の出神、千草姫の肉体を宿と致し、神変不思議の神力を以て、先づ第一にトルマン国の足元を浄め、逆臣を排除し、水晶霊をよりぬいて神の御用に立て、神政成就の基礎を固むべき神界の経綸なれば、一言一句と雖、決して反いてはなりませぬぞ。御承知であらうなア』 王『ハイ、謹んで御神命を承はりませう』 千草『汝は神の命を用ひず、八岐大蛇の霊の憑依せし、田舎育のジヤンクを依然として、国政に当らしむるのは、神界の大命に反き、反逆の罪最も重し。一時も早く勇猛心を発揮し、彼れジヤンクを放逐せよ』 王『ハイ、御神命は確に承知致して居りますが、トルマン国切つての、彼は人望家。三十万人の国民は彼れ一人を力と致し、三千騎の兵士は彼を大将軍と尊敬して居りますれば、如何に神命なればとて彼が頭上に斧鉞を加ふる事は国家存立上否刹帝利家存立上、最も危険至極かと存じます。何卒此儀のみは少時保留を願ひたう存じます』 千草『ホヽヽヽヽヽ、愚なり、ガーデン王、彼が如き野武士を以て、トルマン神国を統理せしめむとするは、恰も巨岩を抱いて海に投ずるより危からむ。神力無双の日の出神、天降りたる以上は、何の躊躇逡巡するところあらむ。速かに英断を以て彼ジヤンクを放逐せよ』 王『然らば是非に及びませぬ。併し乍ら、彼を放逐すれば、教政を輔弼する重僧が御座りませぬ。沢山の臣下はあれ共、何れも大衆の信望をつなぐに足らず、国帑を私し、各競うて金殿玉楼を造り、豪奢の生活を送り、大衆の怨府となつて居りますれば、ジヤンクに代るべき適当の人物なきに苦しみまする』 千草『ハルナの都の大黒主が信任厚きキユーバーを召出し、彼に国政を任せなば、国家は益々栄え、天下は太平、民は鼓腹撃壤の聖代を来さむ事、鏡にかけて見る如くであるぞや』 王『其キユーバーを召出さむにも、今に於て行方分らず、何卒々々神様の御神眼にて、在所を御知らせ下さらば、速かに彼を迎へ取り、御神慮に叶ふ様取計らうで御座りませう』 千草『汝に於て其覚悟がきまつた上は、何をか云はむ。神が引寄せるに仍つて、速かにジヤンクの職を解き、国許へ追ひ返すべし』 王『ハハア、確に承知仕りました』 千草『流石は汝は名君、神の心に叶ひし者、ヤ、満足々々』 斯かる所へ恭々しく現はれ来たのは教務総監のジヤンクであつた。 ジヤンク『謹んでお伺ひ致します。御差支は御座いませぬか』 千草『決して遠慮には及ばぬ。神が許す、何なりと申し上げて見よ』 ジヤ『恐れ乍ら、殿下に申し上げます。トルマン国の危急を救ひ給ひし、三五教の宣伝使、照国別、照公の神柱を、何の罪もなきに、城外の牢獄に投込み給ひしは、教務総監のジヤンク、合点が参り申しませぬ。如何なる事の間違ひかは存じませぬが、彼二柱の神司に於ては、一点の疑ふべき言行もなく、全く冤罪で御座いまする。何者が讒言致しましたか存じませぬが、賢明なる殿下の御考へを以て、速かに解放遊ばされ、二柱の前に其無礼を陳謝遊ばさねば、此国土は永遠に保たれますまい。此儀とくと御考へを願ひます』 王『………』 千草『愚なり、ジヤンク。汝は今日唯今より、此日の出神の生宮が、教務総監を解職する。足元の明るい内、旅装を整へ国許へ蟄居したが可からう』 ジヤ『これは心得ぬ神様の御言葉、トルマン国の教政はガーデン王様の統治し給ふ所、其教政を内助遊ばすのは王妃の君。然るに何ぞや、王又は王妃の名を用ひざる日の出神の命令に仍つて、国家を代表したる教務総監の解職が出来ませうか。ジヤンク断じて辞職は仕らぬ。尚々不審に堪へざるは、トルマンの国土を将来統治し給ふべき地位にあらせらるるチウイン太子様を始め、王女チンレイ様を、修行の為と称し、或は神の命令と称し、世界視察の名の下に放逐遊ばしたのは、いよいよ以て怪しからぬ次第では御座らぬか。教務総監ジヤンクに一言のお答へもなく、斯かる重大事を、勝手気儘に断行さるるは、自ら教国の綱紀を紊乱し、王家の滅亡を招くべき因ともなるで御座りませう。どうか賢明なる御二方様、ジヤンクの言葉に耳を傾け、冷静に御思案を願ひまする』 千草『黙れジヤンク、天地神柱の言葉に二言はないぞ。一時も早く職を去つて郷里へ帰れ』 ジヤ『ハヽヽヽヽヽ、これは怪しからぬ。未だ教王殿下より、帰国せよとの命令は受けては居りませぬ。恐れ乍ら、王妃の君には此重臣を任免黜陟遊ばす権能は御座いませぬ。又仮令教王殿下より解職を厳命さるる共、国家危急の此場合、此ジヤンク、一歩も動きませぬ』 千草『左守、右守の重臣が他界し、邪魔者が無くなつたと思うての汝の暴言、最早容赦は致さぬぞや、覚悟召され』 ジヤ『容赦致さぬとは、どうしようと仰せらるるので御座りますか』 千草『三千世界の救世主、底津岩根の大みろくの太柱、第一霊国の天人、日の出神の生宮が、立所に汝が生命を取り、其肉体を烏の餌食となし、其精霊を最低の地獄に墜してやるが何うぢや。それでも辞職を致さぬか』 ジヤ『アハヽヽヽ、モウ其長たらしい御神名は、ジヤンク聞飽きまして御座います。王妃には狂気召されたか。狂気とならば危険千万、座敷牢を造つて、病気本復する迄閉ぢ込めて置きますぞ』 千草『汝不忠不義の曲者、肉体上から云へば、王妃の君、神界より申さば、三千世界の救世主、底津岩根の大みろく……』 と云ひかけるのを、ジヤンクは手を振り面を顰めて、 『モウモウ結構で御座います。第一霊国の天人日の出神の生宮は、とつくに承知致して居ります。併し乍ら能くお聞き下さいませ。大衆同盟会なるものが組織され、千草姫様に於て此際御改心なき時は、忽ちクーデターを行ひ、教政を根本的より改革せむと、拙者の所迄挙宗一致的に申し出でて居りまするぞ。此ジヤンクは王妃様の御危難を救ふべく、大衆同盟会の幹部連をいろいろと、口を極めて説諭し、宥めてゐる最中で御座りまするが、最早拙職の力では及ばない所迄、衆心激昂し、何時大暴風大怒濤の襲来して、此殿堂を根底より覆へすやも計り知られませぬ。実に危急存亡の此場合、何卒々々御熟考を願ひたう存じます。最早申し上ぐることは御座いませぬ。之にて教務所に引下りまする。左様ならば、御両所共、よき御返詞を下さいます様、鶴首してお待ち申して居りまする』 と云ひ捨て、足音高く憤然として教務所指して出でて行く。後に千草姫、ガーデン王は少時無言の幕を下してゐた。 千草『ガーデン王殿、汝は今ジヤンクの言葉を聞き、余程心を悩ませてゐる様子に見えるが、彼が如き悪魔をして、教政の枢機に参与せしむるは危険此上なし。教王家の一大事、天下の前途を思はば、神の命に従ひ、彼が命を奪る工夫を、一時も早くめぐらされよ』 王『ハイ、絶対的に教王家に危害を及ぼし、天下を転覆する悪魔とならば、非常手段を用ひ、彼を亡ぼさねばなりますまいが、苟くもウラルの神に仕ふる者、斯かる暴虐の手を下すことは、私としては到底出来ませぬ。何卒々々、最前仰せられた通り、神徳を以て、彼が命を立所に御断ち下さらば、実に仕合せで御座りまする。一国の教王が刺客を用ひて、重僧を亡ぼす如きは、殷の紂王にもまさる悪虐、かかる事が大衆の耳に入りますれば、到底大衆は承知致しますまい。神様より命をおめしになる方法を御取りになれば、之に越したる良策は御座いますまい』 千草『如何にも、汝の言一理あり。いざ之より日の出神の生宮、ハリマの森に参拝致し、ウラル彦命と協議の上、彼が命を召取るであらう。ガーデン王殿、臣下に輿の用意申しつけられよ』 王『早速申しつけ、準備に取かかりませう』 其日の七つ時、又もや千草姫は輿に乗り、数多の番僧に護衛され乍ら、ハリマの宮に詣で、神殿にて何事か分らぬことをベチヤベチヤ囀り、狂態を演じ乍ら、再び輿に乗つて行列いかめしく帰り来る。此行列の間は、大衆の通行を禁じ、一間毎に番僧を立たせ、物々しき警戒をやる事となつてゐる。そこへ、宣伝歌を声高く歌ひ乍ら、平然として現はれ来り、輿の前方を横切らむとするや、警固の番僧は苦も無く之を取押へた。此物音に千草姫は、輿の簾を上げ眺むれば、眉目清秀の一美男子である。千草姫は忽ち恋慕の情起り、如何にもして、此美男子を城内に連れ帰らむものと煩悶し乍ら、思ひ切つて、輿の簾をあげ、半身を外に現はし、 千草『ヤアヤア番僧共、其犯人は妾に於て、自ら取調べたき仔細あれば、妾と共に城内へ引立て来れよ』 と厳命する。番僧は王妃の言葉、一も二も無く承諾し、此犯人を縛つた儘、輿の後に従ひ城内に送り届ける事となりぬ。 (大正一四・八・二五旧七・六於丹後由良秋田別荘松村真澄録)
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霊界物語 70_酉_トルマン国の国政改革 19 梅花団 第一九章梅花団〔一七八六〕 千草姫は意気揚々として城中に帰り来り、ガーデン王の居間に入り、 『日の出神の生宮、ガーデン王に申し渡す仔細がある。よつく承はれ』 王『ハイ、首尾よう御下向になりまして、お目出たう御座います。御用の趣、慎んで承はりませう』 千草『第一霊国の天人、日の出神はウラル彦命、盤古神王等とジヤンクの処置に就て、長時間協議をこらせし結果、ここ一週間の間に彼が命をたち、教国の害毒を除くべく評定がきはまつたぞや。それ迄は汝、必ず必ず、彼に暴虐の手を加ふる勿れ。自然に消滅致す神の仕組を致しておいたから……』 王『ハイ、其御神勅を承はり、大に安心仕りました。就ては教国の枢機に任ずべき重臣として採用すべきキユーバーは、神界に於て、何時御召出し下さいまするか』 千草『否、心配は致すに及ばぬ。彼れキユーバーは神界に於て、眷族を使ひ、よくよく査べみれば、当城の牢獄を破り、逃行く途中、狼に追撃され、終にはもろくも全身を群狼の為に喰ひつぶされ、非業の最後をとげたとの、眷族共の復命。止むを得ず、盤古神王と相談致せし所、第一天国の天人の霊を天より遣はすによつて、日の出神殿、其身霊を城中へ伴ひ帰り、教政を執らば、トルマン国は申すに及ばず、三千世界の支配者として、世界万民に仰がるべし、――との御告げなれば、此日の出神心も勇み、役僧共に守られて帰途につく其の途すがら、一介の男子と化し、吾輿に近よらむとし玉ふや、心眼開けざる盲同様の番僧共は、輿に危害を加へ無礼を与ふる者となし、即座に捕縛して了つたのである。てもさても訳の分らぬ俗物位困つた者は御座らぬぞや。オホヽヽヽ』 王『其身霊の宿つた男子は如何なされましたか』 千草『只今玄関口に番僧付そひ、待たせあれば、汝は最敬礼を以てお迎へ申して来れ。三千世界の救世主、日の出神の片腕ともなり、汝が教政を輔くる教務総監ともなるべき、現幽両用の大神人であるぞよ。サ、早く早くお迎へなされ』 王は『ハアハア』と頭をさげ乍ら、玄関口に自ら走り出た。警固の番僧はハツと驚き、最敬礼を施して居る。ガーデン王は捉はれ人の前に両手をつき、恐れ戦き乍ら、 王『これはこれは、第一天国の天人の霊様、分らぬ臣下共が、いかい御無礼を仕りました。何卒々々こちらへお上り下さいませ』 梅公は無言の儘ニコニコしてゐる。護送の番僧は驚いて、手早く縄目をとき、青くなり無礼を陳謝し、猫に追はれし鼠の如く、小さくなつて、スゴスゴと帰り行く。 梅公『拙者は、天津御国より盤古神王の命をうけ、トルマン国を救はむ為、人体を顕はし突然現はれし者、当家には日の出神の生宮、三千世界の救世主、大みろくの太柱、第一霊国の天人様が御降臨の筈、どうか其居間へ案内めされ』 と応揚にいふ。ガーデン王は千草姫が、第一霊国の天人といふ事は、九分九厘迄信じてゐたが、今此神人の言葉を聞いて、一層確信を強め、ペコペコし乍ら、梅公の先に立ち、千草姫の居間を指して案内する。千草姫は梅公の姿を見て、益々悦に入り、 『ヤ、これはこれは、高宮彦殿、能くマア妾が神業を助けむと、お越し下さいました。妾は神界に於ては、日の出神、又の名は高宮姫で御座います。ヨモヤお忘れは御座いますまいなア』 梅『いかにも、某は高宮彦に間違ひない。併し乍ら余は其後天国に昇り、仙術を以て若返り、今は斯の如く絶世の美男子となつて、衆生を済度すべく再臨したのだ。日の出神の生宮殿、最早安心あつて可からうぞ』 千草『如何にも、之にてトルマン国の基礎も定まり、教王家の祥兆、実に慶賀に堪へませぬ。ガーデン王殿、神界秘密の用事あれば、暫く命令を下す迄、此場をお外しなされ』 王『ハイ畏まりまして御座います。御用が御座いましたら、何時なり共、お呼び出しを願ひます。左様ならば、高宮彦様、日の出神様、ゆつくりと御休み下さいませ』 といひ乍ら、イソイソとして吾居間に帰り行く。梅公は忽ち体を崩し、大胡坐をかき乍ら、 『オイ、君、千草君、否々高姫君、能くもマア化けたものだな。どうだい、久し振で又一芝居打たうぢやないか、僕ア時置師の杢助だよ』 千草『如何にも、貴方は杢チヤンでしたかいな。何とまア、立派な御容色だ事。私、余り変つてゐらつしやるので、外の方だと思つてゐましたよ』 梅『何とすごい腕前ぢやないか。あれ程僕に固い約束をしておき乍ら、美しい男が通つたといつて、其奴を喰へ込まうといふ量見だから、本当に男は可い面の皮だ。其美貌で、なまめかしい言葉で、あやかされて了や、どんな硬骨男子でも、一たまりもなく参つて了ふよ。幸ひ僕は時置師の本人だから可かつたものの、さう小口から男を喰はへられちや約らないからのう』 千草『ホヽヽヽあれ丈、固う約束をしておいたものですもの……、貴方こそ、可い女をみつけて、妾をみすて、どつかへうろついて居つたのでせう。本当に苛いワ』 梅『馬鹿いふない。僕ア、お前の所在を捜し索ねて、殆んど三年、彼方此方と苦労をして居つたが、お前がハリマの森の神殿で祈願をこめてる時、後姿をチラツと見て、能くも似たりな似たりな、高チヤンに瓜二つ……だと思ひ、先へ廻つて、輿の中を覗かうとした時、番僧の奴に取つ捕まつて了つたのだ。お前の霊は、どこ迄も王妃の霊と見えて、偉いものだのう』 千草『そらさうです共、第一霊国の天人ぢや御座いませぬか。ヤツパリ上になる霊はどこ迄も上にならねばなりませぬからな』 梅『時にお前、之から何うする考へだ。俺と一緒に此処を逃出し、又曲輪城でも造つて仲よう暮す気はないか、それが聞きたいのだ』 千草『そら、貴方のお言葉なら何うでも致しますけれど、これ丈立派なトルマン城を扣え乍ら、別に曲輪城なんか拵へる必要はないぢやありませぬか。これから貴方と私と、此処を根拠としてウラナイ教の本山となし、三千世界の救世主と天晴現はれたら何うでせうかな』 梅『あ、それも可からう。そんなら之から、お前と一つ内々相談をしようか』 千草『どうか、さう願ひませう』 梅『此室は何だか窮屈でたまらない。お前の寝所がないか。どうか其処へ案内して貰つて、久し振で寝物語をやりたいものだがな』 千草『あ、さう願ひませう。ホヽヽ、何だか恥しいワ』 といひ乍ら、目尻を下げ、梅公の手を曳いて己が居間へと伴ひゆき、ドアを固くとざし、外から開かない様にして、絹夜具を布いて二人は枕を並べて横たはつて了つた。 梅『オイ高チヤン、久し振だな』 千草『本当にお久しう御座います』 梅『お前が自惚鏡の前で、ウツトコを映写してゐた時分も随分綺麗だつたが、其時に比べてみて、一入美しうなつたぢやないか』 千草『何だか知りませぬが、三十年も若くなつたやうな気が致しますワ。これ御覧なさい、肌の艶なんか、丸で白金の光のやうですわ。併し杢チヤンも大変綺麗になつたぢやありませぬか。丸つ切り、ダイヤモンドの様な体から光が現はれるぢやありませぬか』 梅『そらさうだらうかい。第一天国の天人の霊だもの、併し之から大神業を開始するに就ては、先づ第一に天下に向つて、お前と私との信用を得る為、仁恵令を行はねばなるまい。思ひ切つて、牢獄の囚人を解放したらどうだ』 千草『ハイ、恋しき貴方のお言葉、否む訳には行きませぬ。仰せに従ひ、仁恵令を行ふ様、ガーデン王に申しつけませう。併し乍ら特別の重大犯人丈は許すことは出来ませぬ。吾々の身辺を窺ひ、何時危害を加へるか知れませぬからな』 梅『ハヽヽヽ高チヤン、やつぱりお前は女だ。そんな気の弱い事をいふものぢやない。牢獄に一人の囚人もゐない様にするこそ、仁恵といふものだ。お前は照国別、照公の両宣伝使を非常に気にかけてゐる様だが、此際思ひ切つて放免した方が、何程お前の信用が上るか知れないよ。城下の噂を聞けば、大変な事になつてゐるよ。三五教の宣伝使を二人迄牢獄へ打込むなんて、怪しからぬ千草姫だ。今クーデターを行ひ、千草の首を取り、大衆の怨を晴らさにやおかぬ……とそれはそれはエライ悪い人気だよ。さうだから此際、お前がガーデン王に言ひ付け、仁恵を行ひ、大衆の疑をはらせ…といふのだ。之より可い方法はないからなア』 千草『成程、それも一つの政策としては可いかも知れませぬな。時に杢チヤンに折入つて願ひたいのは、あのジヤンクといふ奴、仲々のしたたか者で、日の出神の生宮の神命でさへも拒むといふ剛腹者だから、一寸困つてゐるのよ。何とかして彼奴を放り出す工夫はありますまいかな』 梅『ハヽヽ吹いたら飛ぶ如うなジヤンクが何だ。併し今彼を放逐すると却てお前の人気が悪くなり、大望の邪魔になるから、あの儘にしておけ。今に此杢助が頭を上げたが最後、ジヤンク何か、谷底へ一けりに蹴り落して了ふ考へだからな』 千草『ホヽヽヽ、そらさうでせうな。貴方の御力量はとつくに承知してをります。広い此世界に貴方に優る豪傑はないんですもの』 梅『そらさうだ、さ、一時も早う王を呼び出して、仁恵令を行ふべく取計せたが可からうぞ』 千草『杢チヤン、さう急くにも及ばぬぢやありませぬか。久し振で焦れ焦れた男女が面会したのぢやありませぬか。マア今晩はゆつくりと抱いて寝て下さいな。わたえモウ杢チヤンの面みてから、勇気も何もなくなり、ヤヤ子のやうになつて了つたワ』 梅『人気沸騰し、今やクーデターの勃発せむとする矢先だもの、一刻の猶予も出来ないよ。早く教王を呼出して仁恵令を行はしめなくちや、安心して寝る訳にも行かぬぢやないか。それさへ済めば、十日でも百日でも、三年でも五年でも、お前にひつついて放しやしないよ。厭といふ所迄抱き締てやるからなア』 千草『ホヽヽヽそんなら、教王に日の出神が命令を下しておきます。それさへ済めば寝て下さるでせうな』 梅『そらさうだ共、サ、早くやつてくれ。特別急行で頼むよ』 千草『承知しました。飛行機でやつつけませう、ホヽヽヽ』 と笑ひ乍ら、教王の居間にソロリソロリと、両手を拡げ、三つ四つ羽搏し乍ら進み入る。教王は一生懸命にウラル教の経典を、首をかたげて調べてゐた。 千草『ホヽヽヽ、ガーデン王殿、偉い御勉強、日の出神、誠に感じ入つたぞや。只今お出遊ばした神人は、天国にても名も高き時置師の神様であつたぞや。此神が現はれ玉うた上は、トルマン城は大磐石、御安心なされ』 王『ハイ、有難う御座います』 千草『就ては日の出神が其方に申し渡す仔細がある。よつく承はれ』 王『ハイ』と俯く。 千草『日の出神自ら教王の居間に現はれたのは、余の儀ではない。先づ第一に五六七神政開始の御祝として、牢獄の囚人を、時を移さず、一人も残らず、仁恵令を発布して、放免せられよ。之ぞ全く、三千世界の救世主、底津岩根の大みろくの霊体、第一霊国の天人、日の出神の生宮の神命で御座るぞや』 ガーデン王は『ハイ』と答へて、直ちにジヤンクを呼び、牢獄の囚人を一人も残らず解放して了つた。千草姫はニコニコし乍ら、吾居間に帰つてみれば、梅公はグウグウと高鼾をかいて、他愛もなく眠つてゐる。 千草『コレ、杢チヤン、起きて下さらぬかいな。何ですか、タマタマお面みせておいて、本当にスゲナイ人だワ。もし、杢チヤンつたら、目をあけて下さいな』 何程揺すつても、呼んでも、鱶の如な高鼾をかいて一寸も気がつかぬ。千草姫は止むを得ず、梅公の寝姿を少時打ち見守つてゐた。 千草『ホヽヽ何とマア、気高いお面だこと。色あく迄も白く、搗立の餅のやうなお面の生地、眼許涼しく、鼻筋通り、口は大きくもなく、小さくもなく、お髭の具合といひ、お頭の髪といひ、肌の滑らかさ、お爪の光沢、どこに一つ、点の打ち所のない、宇宙第一の美男子だワ。こんな美男子を男に持つ此高チヤンは、何といふ仕合者だらう。ホヽヽヽ、お涎が知らぬ間に一合許り、お膝の上へこぼれよつたワ。ガーデン王のやうなド茶瓶頭や、キユーバーさまの様な、さいこ槌頭をみてゐた目には、一入立派に見えて堪らないワ。味の悪い腐つたドブ漬を食た口で、特製の羊羹を食た時の様な気がするのだもの、ホヽヽヽ。ても偖も愛らしい、凛々しい、男らしい、神さまらしいお姿だこと』 と面を撫でたり、目をあけてみたり、なぶり物にして楽んでゐる。時しも城外の牢獄の囚人を解放した為、囚人が一斉に『万歳々々』と叫ぶ声、窓ガラスを通して響き来る。 千草『ホヽヽヽ杢チヤンの御発明に仍つて、牢獄の囚人が解放され、万歳を叫んでゐる様だ。囚人も万歳だらうが、此高チヤンも天下無双の英雄豪傑美男子に会うて万々歳だワ、オホヽヽヽ』 梅『あーあーあ』 と欠伸し乍ら、両手をヌツと伸ばし、 梅『ヤア、高チヤン、お前そこにゐたのか』 千草『ハイ、ゐました共、貴方どうですか。何程ゆり起しても、喚いても起て下さらぬのだもの』 梅『オイ、金毛九尾の容物、千草姫の亡きがら、高姫の再来、しつかり聞け。俺は時置師の杢助でも何でもない。三五教を守護する第一霊国の天人、言霊別のエンゼルだ』 といふより早く、大光団となつて、千草姫の両眼を射乍ら、窓の隙間より、音もなく出て了つた。依然として老若男女の万歳の声、間断なく聞え来る。千草姫は余りの驚きに暫しの間は失心して了つた。 (大正一四・八・二五旧七・六於丹後由良秋田別荘松村真澄録)
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霊界物語 71_戌_玄真坊と千種の高姫 12 泥壁 第一二章泥壁〔一八〇一〕 乱麻の如く乱れたるタラハン国の内政も スダルマン太子の即位より施政方針一変し 左守右守が朝夕に治国安民国富を 培ひ養ひ民心を得たれば茲に国内は 漸く塗炭の苦を逃れ万事万端緒について みろくの御世と称へられ下国民は一様に 新王殿下を親の如主人の如く師の如く 尊敬愛慕しながらも長き春日は闌けて行く 山野の花は散り果てて新緑滴る野の光 彼方此方に時鳥世の太平を謡ふ折り 好事魔多しの世の譬タラハン城市の目貫の場 行く道さへも広小路大廈高楼忽ちに 火焔の舌に包まれて見る見る内に倒壊し 数十軒の豪商は将棋倒しとなりにける この虚に乗じて玄真坊コブライ、コオロの両人と 諜し合せて左守司シヤカンナ館に忍び入り 金銀財宝を奪ひとり日頃の大望達せむと 神ならぬ身の悲しさに吾身に危難のかかるをば つゆ白煙くぐりつつ左守が館の裏門の くぐりを押開け忍び入る遠く市中を見渡せば 折から輝く月光は火焔に包まれ墨の如 光を失ひ慄ひゐるその光景ぞ凄じき この機に乗じて三人は奥の間深く忍び入り 宝庫の錠前捻ぢ切つて躍り込まむとする時しも 衛兵共に見付けられ一網打尽に三人は 高手や小手に縛られて本城内の牢獄へ 投げ込まれたるぞ浅間しき。 玄真坊外二人は火事の騒ぎを幸ひに左守の館へ忍び込み、宝庫を押破つてシコタマ財宝を奪はむと働く折しも、物蔭に隠れてゐた十数の衛兵に苦もなく取押へられ、タラハン城内の営倉に護送されて一人々々独房に投げ込まれて了つた。 火事は漸くにして鎮まり、四方より集まる義捐金や同情金によつて再び元の大商店を経営するの運びが纏まり、復興気分が漂ふて来たので、そろそろ三人の泥棒を調べに取りかかつた。先づ第一に玄真坊を引き出し、右守の司のアリナが調ぶる事となつた。 アリナは厳然として高座に控へてゐる。玄真坊は後手に括られた儘白洲に引出され豪然と椅子に腰打ちかけ、やや反り身となつて右守を睨みつけ、心の中で「この青二才奴、何を猪口才な、まだ口の辺りに乳がついてゐる。何程の事があらう」と口をへの字に結んでアリナの訊問を待つてゐる。 アリナ『その方の姓名は何と申すか』 玄『ヽヽヽヽヽ』 アリ『その方の住所姓名を明かに申せ』 玄『拙者の現住所はタラハン城内の第一牢獄だ』 アリ『姓名は何と云ふか』 玄『此方の姓名を聞いて何と致す。たつて名を名乗れとならば云はぬ事もない、吾名を聞いて驚くな。抑も吾こそは第一霊国の天人、天帝の化身、天来の救世主、天真坊様と云つて左守のシヤカンナが兄弟分だ。火事見舞の為にシヤカンナの館へ乗り込み類焼の難を怖れ、宝庫の宝物を安全地帯へ運びやらむと、取るものも取敢ず錠を捻ぢ切らむとする折しも、訳も分らぬ木端武者共横合より飛び出し、盲滅法界に天来の救世主を科人扱をなし、斯様な所へ押込みよつたのだ。その方の如き青二才には、仮令右守司でも相手にはならない。不審があればシヤカンナを呼んで来い、トツクリと天地の道理を説いて聞かせる程に、アーン……。こりや青二才、俺の縛を解かぬか、煙草を一服呑ませ、左守司の兄弟分を斯様に虐待致すものがあるものか、不心得千万にも程がある。火事見舞の客か泥棒か分らぬ位の事でどうして一国の右守が勤まると思ふか、チト確り致したがよからうぞ』 アリ『然らばその方に尋ねるが、何故火事見舞に出て来るのに覆面頭巾で来たのか、何故兇器を持つて飛び込んで来たのか』 玄『ハツハヽヽヽ、扨も扨も分らぬ右守だな、空からは一面火の粉の雨、火事場へ出て働かうと思へば覆面頭巾は当然の事だ。かの消防隊を見よ、一人も残らず覆面頭巾の装束ぢやないか』 アリ『然らば何故三尺の秋水を閃かして這入つたか、其の理由が分らぬぢやないか、てつきり泥棒が目的ぢやらう』 玄『アツハヽヽヽ、訳の分らぬにも程があるわい。俄火消の事とて鳶もなし、纏もなし、止むを得ず丸太旅館の火事羽織を身につけ、武士の魂たる刀を提げ万一の警戒に備ふる為だ。彼の左守の屋敷には数十人の衛兵が各武器を携帯し、三尺の秋水を抜いて警固厳しく控へてゐるぢやないか。火事の混雑によつて衛兵は七八分迄消防の応援に出掛け、左守の館は実に不安極まる無防備も同様、兄弟分の誼を以て二人の部下を引率れ応援に向つたのだ。かかる親切なる吾々の行動に対し、青二才の分際として訊問するとは片腹痛いわい。汝如き木端武者に話した所で訳が分らうまい、一刻も早く左守を此場に呼んで来い、キツト黒白が分るだらう』 アリ『その方の伴ふてゐた両人を調べて見れば何れも泥棒の目的で這入つたと申し立ててゐるぢやないか。何程汝が小利口に抗弁するとも、已に已に両人の自白によつて強盗に忍び入つたのは明白の事実だ。仮令左守司の兄弟分だと云つても国法は枉げる訳には行かぬ、どうぢや両人の自白を打消す勇気があるか』 玄『アツハヽヽヽ、左様な愚問を発する奴があるか、斯様な事はいい加減に片付けたがよからう。よく考へて見よ、コブライ、コオロの両人は、もとよりシヤカンナ泥棒親分の輩下ぢやないか。タニグク山の岩窟に立籠り、民家を苦め財物を奪ひ取つた鬼畜生の片割だ。彼等二人は元よりシヤカンナ泥棒の輩下だから、人の家へ忍び込めば泥棒に入つたと早合点するのは見えすいた道理だ、吾は天来の救世主だ、天帝の化身だ。何を苦んで目腐れ金に目をくれ、左守の屋敷へ忍びこむ道理があらうぞ。目が見えぬにも程があるわい』 と何処までも押強く、流石の右守も困り果て、 『先づ今日の調べは、之で惜いておく、又明日トツクリと調べるであらう』 と云ひ乍ら白洲の奥へと姿をかくした。 玄真坊は二人の小役人に引立てられ、もとの牢獄へと帰り行く。 玄真坊は牢獄に打ち込まれ乍ら、平気の平左で鼻唄を歌つてゐる。 『楽焼見たやうな此方の顔に 惚れるダリヤさまは茶人さま……と。 何程左守が威張つて見ても もとを洗へば泥棒さま……か。 泥棒々々と偉さうに云ふな 左守が泥棒の張本ぢやないか。 左守シヤカンナの泥棒でさへも 娘のおかげで世に光る……と。 子供持つなら娘を持ちやれ 親も諸共玉の輿……と。 タニグク谷間の泥棒さまも 今はタラハンの左守となつた。 左守々々と偉相に云ふな 井戸の底にも居る蠑螈。 右守か左守か俺や知らねども 井中の蠑螈によく似てる。 井中の蠑螈は大海知らぬ どうして天帝の心が分らう』 かかる所へ守衛が靴音高くやつて来て、 『こりやこりや坊主、静にせぬかい何を云つてゐるのだ』 玄『守衛々々と偉相にさらす 貴様は乞食の兄ぢやないか。 乞食番太に坊主に兵士 まだも悪いのは下駄直し』 守『こりや坊主、貴様は自分の事を云つてるぢやないか』 玄『俺は天帝の化身の身魂 頭は坊主に化けてゐる 仮令頭は坊さまぢやとて 俺の霊は天帝さまだ』 守『エー、仕方のない坊主だな、静にしろ、右守さまに報告するぞ』 玄『オイ、守衛、左守、右守に俺がことづけしたと云つてくれ、……俺が泥棒なら貴様等もヤツパリ泥棒だ……と云つて居つたと、之丈でいい、其の外の事は云ふな貴様の身の破滅になるといけぬからのう』 守衛はプリンと体をふり、面をふくらし一言も答へず、靴の先で牢獄の戸を二つ三つ蹴り乍ら足早やに何処へ行つて了つた。 玄真坊は退屈で堪らず獄中に縛られた儘俄作りの経文を読出した。 『摩訶般若波羅蜜多心経 無限無量絶対力の権威を具備する天帝の御化身、最高第一天国の天人並びに最奥霊国の天人、天来の救世主、天真坊様は不慮の災難によつて、今やタラハン城内の狭隘なる牢獄に日夜を送る身となりぬ。抑も人は万物の霊長、天地の花、天人の住所なるにも拘らず極悪無道の泥棒が親分、左守司と化けすましたるシヤカンナが今日の暴状、必ずや天地の神は怒らせ玉ひ、地震雷火の雨はまだ愚か、大海嘯の大襲来によつて左守右守は云ふに及ばず、大災害の突発せむは明瞭なり。あゝ憐むべし盲滅法の世の中、天に日月輝く共中空に黒雲塞がりあれば、天日も地に達せざる道理也。あゝバラモン帝釈自在天大国彦命、一時も早く、天変地妖の奇瑞を示し、此城内を初めとし全国の民衆に目をさまさせ玉へ。吾はもとより泥棒にも非ず、又左守右守が如き野心家にも非ず、只天が命ずるままに天意を行ふのみ、帰命頂礼謹請再拝、南無バラモン天王自在天、吾願望を納受ましませ』 かかる所へ右守司は玄真坊の様子如何にと只一人、偵察がてらやつて来たが此経文を聞いて吹き出し、 アリ『オイ、天帝の化身殿、大変な雄猛びで御座るな、一時も早く天変地妖の奇瑞が見せて貰ひたいものだなア』 玄『ヤア、よい所へやつて来た、その方は右守のアリナじやないか、どうだ、左守と相談して来たか』 右『黙れ、罪人の分際として何業託を吐くのだ。何と云つても泥棒の目的で忍び込み乍ら、千言万語を費しての弁解も、吾々の聰明を蔽ふ事は出来ないぞ。ここ二三日の間の命だ、喰ひ度いものがあるなら何なりと云へ。今に刑場の露と消ゆる身の上だから、此世の名残に何なりと吐いておくがよからう。その方の罪は已に死罪と定つて居るのだ』 玄『ハツハヽヽヽ、その方が何程死罪ときめても神の方、此方さまから見れば無罪で御座いだ。兎も角左守が此処へようやつて来ん事を思へば、ヤツパリ俺が恐いのだ。そらさうだ、面の皮引むかれるのが嫌さに菎蒻の幽霊のやうに慄ふてゐるのだらう。憐れな老骨だな、イツヒヽヽヽ。何程自身の娘が別嬪で、王妃殿下になつたと云つても、その父親たる自分が泥棒の親方では、到底一国の政治は行はれまい。泥棒の親分になればキツト天下は取れると国民に国民教育の手本を見せるやうなものだ。そんな事でタラハンの国家が続くと思ふか。オイ右守、タラハン国の事を思へば、さう俺が云つたと左守に云つてくれ。俺は已に已に覚悟はしてゐる、然し左守に一度会はねばならぬ。死罪なつと五罪なつと勝手にしたがよいわ。それ迄に是非とも左守に云つておく事がある。左守だつて此世の名残に会はぬと云ふ事もあるまい』 アリ『左様な世迷言は聞く耳は持たない。ま一度白洲で調べてやらう、適確な証拠が上つてゐるのだから』 と云ひ乍ら靴音高く此場を去つた。玄真坊は又もや大きな口をあけ無恰好の目鼻を一緒によせ、やけ糞になつて都々逸をやり初めた。 『逃げた逃げたよ又逃げた玄真さまの御威光に恐れ 右守のアリナが尻に帆かけてスタコラヨイヤサと逃げ失せた 扨ても憐れな代物だ左守シヤカンナはさぞ今ごろは 吐息つくづく机に向ひ昔の疵を思ひ出し 頭痛鉢巻汗タラタラと薬鑵もらしてゐるだらう ア、コラシヨコラシヨと家を建てるのは大工さま 壁を塗るのはシヤカンナだ昔の古疵ゴテゴテゴテと 泥塗り隠すシヤカンナだ娘の光でピカピカピカと 螢のやうな光出す自分は泥棒して人苦めて 俺を泥棒と苦める泥棒するならしつかりやれよ 七千余国の月の国大黒主の領分を 片手に握つて立つやうな僅かタラハン一国の 番頭さまでは気が利かぬ左守かいもりか知らねども 世間の狭い親爺どのア、コラサコラサ』 と、精神錯乱者のやうに喋り立ててゐる。格子窓の間から遠慮会釈もなく蚊軍が襲撃する。 (大正一五・一・三一旧一四・一二・一八於月光閣北村隆光録)