| 番号 (No.) |
書籍 | 巻 | 章 | 内容 |
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霊界物語 | 64_下_卯エルサレム物語2 | 12 開狂式 | 第一二章開狂式〔一八一八〕 守宮別、お花、ヤクの三人は、僧院ホテルの立派なる座敷を、三間ぶつ通しに借り切り、奥の間には、新ウラナイ教の御本尊、シオンの娘、木花咲耶姫を奉斎し、その生宮として、アヤメのお花は天晴教主となり済ますこととした。発起者は夫婦主従〆て三人、先づ祭典も無事に済み、直会の酒宴に移つた。守宮別は新宗教創立を祝する為め、酒に酔つ払つた怪しい口元から、祝歌を歌ふ。 守宮別『天も清浄地も清浄清浄無垢の御霊体 アヤメの君は今此処に三千世界の救世主 世界に名高き神の山シオンの娘木の花の 咲耶の姫と現れまして浮瀬に沈む民草を 愛と善との神徳に御霊を包み信真の 光を世界に輝かし天の岩戸を開かむと 現はれ玉ひし尊さよ扨ても世界の初まりは 神伊邪那岐の大御神神伊邪那美の大御神 夫婦の神が現れまして天の御柱国柱 見立て玉ひて汝は右へ廻らせ給へ吾は左 廻り合はむと宣り給ひ婚の業を初めまし 諸多の御子を生み生みて生みの果てには山川や 草木の神迄造りまし遂には光明赫々と 輝き渡る大日婁女天照る神を生み給ひ 広き世界に神国を立てさせ給ひし古事に 習ひまつりて吾々は那岐那美二尊にかたどつて アヤメの君と盃をいとり交しつ神の為め 世人の為めに聖場をこれの聖地につき堅め 百の人草草木迄救はむ為めのこの祭 あゝ惟神々々アヤメの君があればこそ ヤクの奴が居ればこそ守宮別の太柱 添ふて居りやこそ今日のよな誠に誠に結構な 新宗教の創立が完全無欠に出来たのだ もしもお寅が居つたなら一から百迄蕪から 菜種の屑に至るまでごてごてごてとさし出口 日の出の神の生宮を振り廻されて吾々は 一生頭が上らないこれを思へば此間の 喧嘩は却て吾々の大幸福となつたやうだ 昔の古い諺に人間万事塞翁の 馬の糞とはよく云つたわいがの烈しい女神さま 何程御神業と云つたとて鼻持ならず好物の 酒さへ味が悪くなるシオンの娘と現れませる アヤメのお花の教主さまわいがもとべらも有りはせぬ 頭に霜は見ゆれども却て雅趣を添へるよだ これも全く神さまの水も漏さぬ御仕組 守宮別も二三十年若返りたる心地する あゝ有難い有難い何より彼より第一に 命の水の酒呑みて昔の綺麗なナイスをば 座右に侍らし優姿梅花のやうな唇の 間からチヨイチヨイ現はれる象牙のやうな歯の光 瑪瑙のやうな爪の色梅花のやうな頬の艶 天地の幸福一身に独占したやうな気がしよる エヘヽヽヽヽエヘヽヽヽコンナ所をお寅奴が 一寸覗いた事ならば嘸や泣くだろ怒るだろ 二人の髻をひつ掴み金切声を張り上げて 近所合壁大騒動燗徳利は宙に舞ひ お膳や茶碗はがちやがちやと木端微塵に潰滅し 嵐の跡の花の山見る影も無き惨状を 現出するに違ひないあゝ惟神々々 御霊の恩頼を願ぎまつる』 お花『オホヽヽヽ、遉はこちの人、何とまア当意即妙の結構なお歌だ事。傍に聞いて居ても胸がすき、頭がせいせいとして来ますわ。なぜ又旦那さまはコンナ知恵を持つて居ながら、今迄隠して居たのですか。鼠とる猫は爪隠すとは能く云つたものだなア。アヤメのお花の一身に対しては、本当に旦那さまは好い掘り出しものだよ』 守宮別『これこれ肉宮さま、縁起の悪い、放出し者だなどと云つて貰ひますまいぞや。二つ目には気に入らぬと云ふて放り出されては耐らないからな』 お花『ホヽヽヽヽ。妾は決して放り出しませぬよ。旦那さまの方から放り出ないやうに頼みますわ』 守宮別『よし、そのだんは安心して呉れ。棚池の生洲の鼬がついたやうなものだ。命のない所迄離れつこは無いからな』 お花『あれ程大切にして居られたお寅さまでさへも、弊履を捨つるが如くに思ひ切つて素知らぬ顔をして厶るのだもの。第二のお寅さまにしられちや耐りませぬからね』 守宮別『そこ迄心配しては際限がない。俺がお前を愛する程度といふものは、丸切り砂糖の固りに蟻がついたやうなものだよ。も一つ違つたら、蛙を狙ふ蛇のやうなものだ、どこ迄も徹底的にくつついて行くのだからなア』 お花『ホヽヽヽ、砂糖に蟻がついたなぞと、余り有難くもありませぬわ』 守宮別『それでもお花、いや女房、生宮さま、有難いよ。甘いものはありがたがる、えぐいものや苦いものはありがたがらぬ、と云ふ事があらうがな』 お花『旦那さまは、妾を余程甘いと見縊びつて厶るのですな。砂糖に譬るとは余りですわ』 守宮別『それやお花は甘いよ、花と云ふ奴みな甘い蜜を持つて居るので、蜜蜂やドカ蜂がブンブンと喰ひつくぢやないか。俺だつてお花の蜜を吸ひたくなるのは当然だよ。お花は砂糖でもあり、砂糖よりまだ甘い佐渡の土を持つて居るから、尚ほ俺が好きなのだよ。エヘヽヽヽ』 お花『又しても又しても佐渡の土だナンテ、旧めかしい文句を云ふて下さいますな。ホヽヽヽヽ』 守宮別『これ肉宮さま。今日は創立の祝ひだから、肝腎の生宮さまから宣言歌を歌つて貰ひ度いものですな』 お花『なんだか衒れくさくて歌へませぬわ』 守宮別『ヘン、何を云ふのだい。矢張り結婚すると、娘のやうに恥かしさが分るのかいな。非が蛇でも、蟻が鯛でも、芋虫が鯨でも、山の芋が鰻になつても、笹の葉が鰌になつても、今日許りは宣言歌をお謡ひなさらにや駄目ですよ。その歌をつけとめて置いて印刷屋へ廻し、ビラを作つて自動車に乗り、市中へバラ撒かねばならぬからな』 お花『ナントまア。救世主にならうと思へば気の張る事だわい。ソンナラシオンの娘、木の花姫の生宮が宣言歌を謡ひませう。一言も漏れなくつけとめて下されや』 守宮別『エ、宜しい。承はりました。分つて居る。併し乍ら、ヤクさまの方が余程筆が達者だからなア。ヤク、お前が一つ筆記役になつて呉れないか』 ヤク『ハイ謹みて御用承はりませう』 守宮別『ウンよしよし、アこれで謡ひ役に、聞き役、書き役と、三拍子揃ふた。目出度い目出度い、サア生宮様、 歌ひなされやお歌ひなされ 歌ふて御器量は下りやせぬ あーコリヤコリヤ』 と謡ふて立ち上り踊り始める。アヤメのお花は日の丸の扇を両手に持ち、長い裾を引きずつて、すらすらとお手のものの踊を始め出したり。 お花『此処は世界の中心地点暗の世界もパレスチナの 珍の都のエルサレム三千世界の梅の花 一度に開く時は来て前代未聞の救世主 シオンの娘木花の咲耶の姫が再臨し アヤメのお花の肉体を自由自在に使用して お寅婆さまやブラバーサ訳の分らぬ宣伝使 瞬く間に打きつけ至粋至純の聖道を 開くも尊き今日の宵花も匂へよ蝶も舞へ 千歳の鶴も舞ひ込めよ亀も這ひ込んで万歳を 祝ぎまつれ神の家やがて独立宗教の 大看板を掲げつつ三千世界の民衆に 歓喜の雨を濺ぎかけ正真正銘の救世主 生神さまと謡はるる其暁も近づいた 竜宮海の乙姫も今日限り暇呉れて 三十二相又三相具備し給へる木の花の 姫の尊の肉の宮アヤメのお花が今茲に シオンの娘と現はれて三千世界の隅々も 漏さず落さず救ひ行く実にも目出度き今日の日は 天澄み渡り地の上は春の青草萠え出でて 開闢以来の救ひ主大降臨を待つ如し 思へば思へば有難や喜び祝へ百の人 慕ひまつれよ救世主アヤメのお花の肉宮を。 ホヽヽヽヽ、どうかこれ位で耐らへて頂戴な。何だか恥かしくて後が続きませぬもの』 守宮別『妙々。天晴々々。天下の救世主だなア。ヤク、お前も感心しただらう。お寅さまに比べて、どちらが立派だと思ふか』 ヤク『それやさうですな、本当にさうですよ』 守宮別『そりやさうですな、では分らぬぢやないか、どちらが優れて居るかと問ふて居るのだ』 ヤク『ヘエヘエ、それやもう、テンで段が違ひますわい、比べものになりませぬがな』 お花『これこれヤクさま、どちらが優れて居ると云ふのだい』 ヤク『ハイ、何と云つても、かんと云つても何ですな。それや矢張り、優れて居る方が優れて居ますなア』 お花『怪体な事云ふ男だな。ハツキリ云ひなさらぬかいな』 ヤク『御本人の前ですもの、大抵にして御推量下さいな』 お花は自分が褒められて居るのだと思ひ、満面に笑を湛へ、目を細め、横目でヤクの顔を一寸見ながら、 お花『ホヽヽヽ、遉はヤクさまは目が高いわい。それでこそ守宮別さまの添へ柱、確り頼みますぞや』 直会の式も漸く終了し、お花が郵便局から出して来た三千円の現金を懐中しながら、新宗教独立の運動をして来ると云ひ残し、守宮別は漂然としてホテルを立ち出で、タゴールの館へは行かず、駅前の青楼さして登り行く。 (大正一四・八・二〇旧七・一於由良秋田別荘加藤明子録) |
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霊界物語 | 65_辰_虎熊山と仙聖郷の物語/七福神 | 26 七福神 | 第二六章七福神〔一六八二〕 日の出別命の左右には道彦、安彦の両人が従ひ、初稚姫一行を導いて数百旒の五色の旗を風に翻し乍ら、百花爛漫たるゲッセマネの園にと進み入つた。玉国別一行が竜王の三個の玉を捧持して来りし其功績を賞する為め、特に埴安彦尊の命により歓迎宴が開かれた。ゲッセマネの園には種々の作物や、音楽や演劇が盛んに催されて居た。さうしてコウカス山よりは、言依別命が数多の神司を引き連れ、二三日前に早くも聖地に到着されて居た。 玉国別、真純彦は途中に於て初稚姫に『聖地は結構な所の恐ろしい所だ』と誡められ、筋肉迄緊張させ居たにも拘はらず、この大袈裟の歓迎に肝をつぶし、夢かと許り呆れてゐる。只見るもの、聞くもの意外の事許りで語る事も知らず、無言の儘初稚姫の後について進んで往く。日出別の神は俄作りの建物をさし示し、 日の出別『サア皆様、貴方方の御苦労を慰める為め、神様の思召によつて、種々の余興が催されて居ます。これから此建造物に於て、七福神宝の入船と云ふお芝居が初まりますから、悠悠気をゆるして御覧下さいませ』 玉国別は案に相違しながら、 玉国『いや、どうしてどうして、そんな気楽な事が出来ませうか。真純彦に持たせた此宝玉を、無事神様にお渡しする迄は、芝居所では厶いませぬ。是ばかりは平にお恕し下さいませ。うつかりして九分九厘で顛覆しては大変ですからなア』 と何処迄も警戒し体を固くして居る。 日の出別『決して決して御心配なさいますな。此通り貴方方の御到着を祝ふために宝の入船と云ふ神劇が催されて居るのです。貴方も宝を抱いてヨルダン河を船にて渡り、この聖地へお這りになつたのですから、宝の入船の主人公は貴方方ですよ』 玉国『ハイ。真純彦、お前はどう考へるか。どうも大教主のお言葉が私には些と許り解し兼ねるのだがなア』 真純『先生、これや神様から気を引かれて居るのかも知れませぬよ。兎も角お断りを申て、早く此玉を埴安彦の神様にお渡しして来うではありませぬか。さうでなくてはお芝居を見る気がしませぬわ』 初稚『決して御心配は要りませぬ。這入つて御覧なさいませ。いやいや貴方方が役者にならねばならぬのですよ。やがて治道居士、伊太彦、三千彦、デビス姫、ブラヷーダさまが見えることですから、七福神になつて貰ふ積りです。治道居士さまは布袋、玉国別さまが寿老人、真純彦さまが毘沙門天、伊太彦さまが大黒さま、三千彦さまが恵比寿さま、それから、デビス姫さまが弁財天、と云ふやうに、各自にちやんとお役が定つて居るのです。サアどうぞ楽屋へお這入り下さい。私等は見せて貰ふのです。実の所は貴方方に役者になつて貰ふのですから、是も御神業だと思つてお勤め下さいませ』 玉国『ハテナ、些とも合点が往きませぬわ。御命令とあれば俄俳優になつてもよろしいが、てんで台詞が分りませぬからねえ』 日の出別『台詞なんか要りませぬよ。其時神様が憑つて口を借りて仰有いますから、承諾なさればよいのです』 真純『モシ先生、イヤ寿老人さま、神様の命令だ、千両役者になりませうか』 玉国『何と云つても神様の御命令とあれば背く訳には行きますまい。勤めさして頂きませう。そして三千彦、伊太彦はもはや此方へ見えて居りますか。どうしても吾々とは二三日後れるやうに思ひますがなア』 言依別『時間空間を超越したる神の道、そんな御心配は要りませぬ。直に今此処へお出になりますよ。総て神様の御国は想念の世界ですから、想念の儘になるのです。此処が外の地点とは違つて尊い所以です。さうでなくてはエルサレムと云つて神様がお集まり遊ばす道理がありませぬから』 玉国『左様ならばお受け致します』 真純『私も先生と同様お受を致します』 と云ふや否や、二人の姿は忽ち七福神の中の一人となつて居た。いつの間にやら、治道居士、三千彦、伊太彦、デビス姫、ブラヷーダ姫其外の人々は集まり来りて、何れも七福神の姿となつて居る。愈茲に七福神宝の入船の奉祝神劇は演ぜられた。数多の神司や信者は、此広き建物の中に、立錐の余地なき迄に集まつて、愉快げに観覧し、其妙技を口を極めて賞揚した。神劇の次第は左記の通りであつた。 抑我日の下は神の御国なり天地ひらけ陰陽分れ 青人草を始めとし万物爰に発生して 天地人の三体備はりぬ天津御国の太元は 大国常立の大御神又の御名は天照皇大御神なり 地津神の太元は豊国主の大御神又の御名は神素盞嗚尊 豊葦原の瑞穂の国産土山の底津岩根に宮柱太敷立て 三五の神の都を奠め賜ひしより千代万代に動ぎなく 天下泰平国土安穏五穀成就万民鼓腹撃壤の楽みを享く 実に有難き神の国の草木も靡く君が御代 かくも目出度国の中に四海波風豊にて 雲井の空に寿ぎ舞ふ鶴や千年の松の緑の色深く 万歳の亀も楽しむ天教の山の高く澄みきる月のあたり たなびく霞の中よりも真帆をば風に孕ませつ 浮かれ入り来る宝の御船七五三の静波かきわけて 積み込む宝の数々やまばゆきばかりあたりを照らす うるはしさ 丁子や分銅の玉の袋に黄金の鍵もかくれ蓑 七宝壮厳の雨に濡れし小笠の露や玉の光と 打出の小槌七福神の銘々が 乗合舟の話こそ面白き。 中にも口まめな福禄寿長い天窓を振り立てて、 福禄『天下無双のナイスお弁さま、イナ弁財天女どの、貴女は新しい女と見えて、こんな変痴奇珍な男子計りの船の中へ、案内もせないのに、何と思つて同席の栄を賜はつたのかな』 弁天女は面恥ゆげに莞爾と笑み乍ら、 弁天『ホヽヽヽ、アノまあ福禄寿さまの御言葉とも覚えませぬ。好く考へて御覧、何程新しい女だとて、ナイスだとて、五百羅漢堂を覗いたやうなスタイルして居らつしやる醜男子の側に来られないと云ふ法律は発布されては居りますまい。五六七の御代が開ける魁として、今度エルサレムの宮に於て、玉照彦命、玉照姫命二柱の神様のお目出度い御婚礼があるので、御祝のため貴神等は、この宝舟に乗つて聖地エルサレムの竜宮城へ昇られるのでせう。何程福の神だと云つて、男子許りでは花も実もありますまい。昔から七福神は聞いて居るが、六福神は聞いた事が無い。夫れで妾が天津神様の御命令で、俄に貴神等の仲間に加はつたのですよ』 福禄『コレお弁さま、御心配下さるな。この福禄寿一神あつても下から読み上げて見ると十六福の神だよ。ヘン済みませぬナア。そこへ寿老人(十六神)を加へて三十二神ですよアハヽヽヽヽ。それよりも身の上話でも聞かして貰つた上、都合によつて加へて上げようかい』 弁天『三十二神の処へ妾が一神加はれば、三十三相の瑞の御魂ですよ。一神欠けても三十三魂にはなりますまい。女は社交上の花ですからねー。妾の素性を一通り聞かして上げますから、十六神さま謹聴なさいませホヽヽヽヽ』 六福『謹聴々々ヒヤヒヤ』 弁天『妾は神代の昔の或る歳、頃は弥生の己の巳日、二本竹の根節を揃へて、動ぎ出でたる嶋だと云ふので、竹生島と称へられる、裏の国の琵琶の湖に浮べる一つの嶋に、天降りました天女の中でも、最も勝れたナイスの乙女ですよ。自分から申しますと何んだか自慢するやうですが、神徳があまりあらたかなと言ふので、世人より妙音弁財天女と崇められ、妾の身体は引張り凧の様に日の下の国の四方に分霊を祭られて居ります。先づ東の国では江の島、西の国では宮嶋に、今一体は勿体なくも古、伊邪那岐尊、伊邪那美尊の二柱の神様が天の浮橋に渡らせたまひ、大海原に天降り、始めて開かれたる淤能碁呂嶋、その時、鶺鴒と云ふ小鳥に夫婦の道を教へられ、天照大神を生み給ふてより、又一名を日の出嶋と名付けられ、この国人に帰依せられ、福徳を授けしによつて、美人賢婦の標本として七福神の列に加はつた事は、十六福神さまも遠うの昔に御存知の筈。アナタも何時の間にやら福禄寿でなくて、モウロク(最う六)十三になりましたねー、ホヽヽヽヽ』 福禄『ヒドイなア』 六福『アハヽヽ。オホヽヽヽヽヽ』 顔色の黒いのを自慢の大黒天は、槌を持つた儘座に直り、 大黒『弁天ナイスの今の話を聞いた以上は拙者も男だ。一つ身の上話を初めて見よう。一同御迷惑ながら御聴聞なさいませ。 抑も拙者は、神素盞嗚大神の御子にて、八百米杵築の宮に鎮まりし、大国主命でござる。生れつきの慈悲心包むに由なく、貧しき者を見るに付け、不便さ忍び難く、一切の衆生に福徳を与へむとして心を砕き、チンチンチン一に米俵を踏まへて、二に賑はしう治めて、三に栄えの基となり、四ツ世の中悦んで、五ツいつも機嫌よく、六ツ無病息災で、七ツ難事もないやうに、八ツ屋敷を開ひて、九ツ花の倉を建て、十分満ればこぼるるぞ。コレ此槌は福を打出す槌ぢやない、お土を大切にして生命の種のお米を作れと知らすためぢや。モ一つには奢れる奴等の天窓をば打砕く槌ぢやわい。アハヽヽヽヽ』 福禄『アハヽヽヽヽ、コリヤ御尤もだ。オイ戎、コレサ聾どの、エベスどのエベスどのエベスどの貴神は、マア舳に出て釣許りして厶るは一体、こなたは何う云ふ福の神ぢやい。福の神にも色々あつて、雑巾を持つて縁板などをフクの神もあれば、尻をフクの紙もある。きつぱりと素性を明かして呉れないか』 戎『俺かい。おれはナ、何事も聞かざる、見ざる、言はざると云つて、庚申の眷属を気取り、三猿主義を固守し、只堪忍をのみ守つて居るのだ。徳は堪忍五万歳だ。抑も拙者は、蛭子の命と云つて、正月三日寅の一天に誕生した若蛭子だ。商売繁昌を祈るが故に欲の深い連中から商売の神と崇められて居るのだ。誠に目出度う候ひけるだ、アハヽヽヽヽ。十日戎の売物は、はぜ袋に、取鉢、銭がます、小判に金箱、立烏帽子、桝に財槌、束熨斗、お笹をかたげて千鳥足』 大黒『アヽコレコレさう踊り廻すと船の上は危険だ。モウ良いモウ良い御中止を願ひます』 大黒『エヽ時に寿老人殿、貴神は何時も何時も渋い面をして落付払つて厶るが、こんな芽出度い時には、チツと笑つて見せても可いぢやないか』 寿老『イヤ是は又迷惑千万、物価謄貴生活難の声喧しき、この辛い時節に、あまい顔をせよとは、粋にして且つ賢明なる方々にも似合ぬお言葉では厶らぬか。拙者は何時も苦い顔をして倹約を第一と守り、郵便貯金を沢山にして、他人に損をかけず、自分も損を致さねば、心労なき故、長命を仕るのぢや。長命に過ぎたる宝は厶らぬ。兎角、拙者の行り方を見習へば、たとへ福は授からなくとも、自然に福徳が保てますぞや』 福禄『ヘン、何程長命したとて、ソンナ苦い顔をして一生送るのなら、余り福徳でも在るまい。笑つて暮すのが、何より人生の幸福だ。高利貸の親父でも、たまには笑ふぢやないか。ナア、皆の福神連中さま』 寿老『イヤ恐れ入る。併し自分は是でも人の知らぬ心のよろこびに充ちて、楽しく日を送つて居るのだ。サテ、愚老許りお喋舌いたして皆様の交際を忘れて居た。余りの楽しさと、面白さと、今度の御婚礼の目出度さとに気を取られて、アハヽヽヽヽ。サア是からお交際申さう』 と傍にあり合ふ妻琴を引寄せ掻きならし、 (歌)『忍ぶ身や夜な夜なもゆる沢の螢火に夜更渡りぬる』 寿老『余り長いのは皆様のさはりになる。長い者を俗に長者と言ふさうぢや。ヤ、是はしたり、長い者とは福禄寿様へ差合ました。失礼々々』 布袋和尚は吹出して、 布袋『アハヽヽヽアハヽヽヽ、オホヽヽヽ、ハテ、コリヤ面白い面白い面白いハヽヽヽヽヽ奇妙々々』 毘沙門天は、むつとした顔しながら、 毘沙『ヤイ、そこな土仏坊主奴。何がそれ程可笑しいのだい。袋と腹とで乗合船の居所を狭めて居る癖に、チツと位遠慮召さつても可いだらう』 布袋『アヽ、コレコレ毘沙殿。さう腹立まいぞや、腹立まいぞや、立腹まいぞや。少々は乗合の邪魔にも成るだらうが、ソコは仲間の事だから、神直日大直日に見直し聞直してマアマア曰く因縁を聞き玉へ。夫れ一家一門附合、朋友、得意先、丸う無くては治まらないと云ふ道理は、拙者のこの天窓で判るだらう。眼まで丸い布袋和尚だ、ハヽヽヽヽ。まつた腹は大きくなければ、心がさもしいものだ。そこで愚僧が此大きい腹を突き出し、腹鼓を打つて一通りお話致すで厶らう。 「ソレ、この袋といつぱ」見たる事聞きたる事、よしあし共に忘れぬ様、中へ納めて斯の通り、もたれて居申すなり。又世に子宝と云へるが、稚き者ほど可愛者はあり申さぬ。その稚き者を団扇を持つて行司仕り居り候也。アヽ宜き楽みかな宜き楽みかな』 福禄『イヤ布袋どの、尤も尤も、尤も次手に笑はしやるのも尤も尤も。「笑ふ門へは福禄寿」サレバお咄し申しませう。夫れ天窓が長ければ背はズント低う厶る。低うなければ愛嬌を失ひます。先づ入口を這入るにも長いによつて余ります。天窓を下げて這入ります。それで愛嬌が厶るだらうがの、愛嬌ついでに皆さま、おはやし頼みます。 「越後の国の角兵衛獅子、国を出る時や、親子連れ、獅子をかぶりて、くるりと廻つて、首をふりまする、親父や、まじめで笛を吹く」 ヨー、ハヽヽヽヽ福禄寿さま、大当りだ大当りだ。アハヽヽヽヽ』 六福『併し獅子の頭が少々高過ぎるぢやないか。ハヽヽヽヽ』 福禄『ハテ、頭が高うもなければ納まらぬ事もある物だ。是もやつぱり世界の道具だからのう。ハヽヽヽヽ』 毘沙門天は居直りて、 毘沙『ムヽヽヽヽ、ハヽヽヽヽ面白し面白し、吾は異形の姿にて鉾携へし身乍らも、七福神の列に加はる其由来を物語らむ。そも不身持山の皆身(南)に当りて難渋ケ嶽の峰に住む、貧乏困神とて悪神あり、彼に徒党の奴原を悉く誠罰し諸人の患を救はむと、この日の国に天降り、日出る国信貴山に根城を構へ、追付悪神討亡ぼし、困窮の根をたやさむこと、此多聞天が方寸の内にあり、ハヽヽハヽヽハヽヽヽヽ、悦ばしや嬉しや』 と勇める顔色、威あつて尊く、実に有難き霊験なり。 皆一同にあふぎ立て、中に取分け弁財天。 弁天『何れに、おろかは無けれども、多聞天のおん物語、勇ましや。イザヤ発船、又の御げん』 とのたまふにぞ、さらばさらばと漕ぎよせて、竜宮館の水の面に、清き宝の入船や、七福神の霊験も、仁義釈教、恋無常、勧善懲悪聞明し、改過を作るその主は、近松ならで松の元、一とふし込し、竹本ならぬ国武彦の御助け、梅の香床しき一輪の、花の流れや汲み取る綾の、聖地の玉の井に、映る言霊影きよく、照り輝きし玉照姫や、暗をも照らす玉照彦二柱、九月八日の慶びを、筆にうつして末広く、伝へ栄ゆる神祝ぎの、尽きせぬ神代こそ芽出度けれ。 (大正一二・七・一八旧六・五北村隆光・加藤明子共録) (昭和一〇・六・一六王仁校正) |
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霊界物語 | 72_亥_スガの港(宗教問答所) | 19 旧場皈 | 第一九章旧場皈〔一八二八〕 千草の高姫、キユーバーの両人は意気衝天、猛火の燎原を焼くが如き荒つぽい鼻息で、玉清別以下、スガの宮の関係者一人も残らず叩き出し、天から降つて湧いたる儲ものに、嬉しさ余つて現三太郎となり、杢助が北町のウラナイ教本部に寝てゐる事も打忘れ、あまり虫は好かねども、言霊戦の大勝利を得せしめた原動力とも云ふべき天然坊のキユーバーを此上なきものと褒めそやし、聖場に立籠つて天下併呑の夢をむさぼつてゐた。 キユ『モシ、生宮様、キユーバーの働きはチツト許り腕が冴えてゐるでせう、決して生宮様御一人のお手柄ぢや御座りますまい』 高『そら、さうだとも、車も両輪なければ運転しない、人間も二本の脚がなけりや歩けない道理だからな』 キユ『そら、さうでせうとも、お飯食べる時でも片手ぢや駄目ですからな。箸だつて二本なくちや、香の物だつて、はさむ事は出来ませぬ。神代の昔那岐、那美二尊は天浮橋に立つて陰陽の息を合せていろいろの神様をお造り遊ばしたものですもの。どうです、ここで旧交を温めて拙僧は伊邪那岐命となり、生宮様は伊邪那美命となり、トルマン国を振出しに印度七千余国は申すも更なり、此地のあらむ限り鵬翼を伸さうぢやありませぬか。貴方もトルマン国の王妃となり遊ばした、腕利きだから、その位の事は、お考へでせうな』 高『そんなことア、キユーバーさま、云ふ丈け野暮だよ。三千世界の救世主、底津岩根の大弥勒ぢやないか、此生宮は天も構へば地も構ふ、五十六億七千万の小宇宙をも統一する天来の神柱だもの、このチツポケな地球位、統一したつて、広大無遍の宇宙に比ぶれば虱の眉毛に生いた虫の放つた糞に生いた虫の、その虫の糞に生いた虫の放つた糞位のものだよ』 キユ『何とマア大きな事を仰有るかと思へば小さい事迄御説法遊ばすのですな』 高『きまつた事だよ、至大無外、至小無内の弥勒の御神権を具備してゐる救世主ですもの』 キユ『生宮さまの広大無遍な抱負には、いかな此キユーバーも舌をまきましたよ。このキユーバーだつてハルナの都に権勢並びなき七千余国の大棟梁、大黒主様の片腕ですもの』 高『これこれキユーバーさま、大弥勒さまの前でそんな小つぽけな事はやめて下さい。此神は小さい事は嫌ひであるぞよ。大きな事を致す神であるぞよ、昔からまだ此世にない事を致す神であるぞよ』 キユ『三五教のお筆先そつくりぢやありませぬか、フツフヽヽヽ。時に生宮さま、あの杢助とか云ふ第二号をどうするつもりですか』 高『ア、あまり嬉しくつて、時置師の神様を念頭から遺失して居つた。ヤアこりやかうしては居られませぬ、キユーバーさま、お前さま、ここに待つて居つて下さい。此成功を夫に聞かして喜ばすため、一寸北町迄行つて来ますから』 キユ『モシモシ高姫さま、私の前で、あまりひどいぢやありませぬか、第一号をほつたらかしておいて、第二号に秋波を送るなんて、チツト許り聞えませぬな、何ぼ行かうと仰有つても、此キユーバーが放しませぬよ』 高『お前さま、自惚もいい加減にしておきなさい、一号処か、八号ですよ、要するに天保銭だからな』 キユ『此奴アひどい、二文足らぬと仰有るのですか、貴女の目には、それほど此キユーバーが馬鹿に見えますかい』 高『何、馬鹿処かいな、八文と云つたら大変立派な人だと云ふ事だよ、ダンダン筋の法被を着た仲仕や労働者や、旗持ちを一文奴と云ふだらう。一文奴で普通の人間だ。小説を作つたり、新聞の記事を書いたり、雑誌を著す学者を三文文士と云うだらう。三文文士にならうと思へば大学の門をくぐつて来にや、さう、安々とは、なれませぬからな。それから、ハルナの都のお役所にも諮問(四文)機関と云ふものがあるだらう、諮問機関に集まつて居る人は大黒主さまのお尋ねに一々答へると云ふ智者学者だ。それから、も一文上に顧問(五文)官と云ふのがある』 キユ『モシモシ高姫さま、顧問と五文とは違ひますぜ』 高『顧問でも五文でも、いいぢやないか、甲も乙も互に勝敗、優劣、高下のない相手同志を指して五文と五文と云ふぢやないか、さうだから五文の人間は最も立派なものだ。其上が六文だ、六文銭は、軍術の達人真田幸村の旗印だよ。真田と云ふ人物は後世迄名を轟かした大阪陣の参謀長だ。七文と云ふのはなア、昨日俺がヨリコ姫をこつぴどく問ひつめただらう、あれが七文だ』 キユ『そら、質問と違ひますか』 高『質問でも七文でもツとチとの違ひぢやないか、そんな七六つかしい質問はやめて下さい。その一文上が八文だ、八文が一番結構だよ。も一文ふやすと、苦悶と云つて苦み悶えねばならぬからな、も一文ふやすと、十文だ、銃文と云つたら鉄砲の穴だ、尻の穴もヤツパリ銃門の中だよ』 キユ『何とマアお前さまの口にかかつたら此キユーバーも盾つけませぬワ、然しこの八文をどうして下さるつもりですか。よもや八門遁甲の術を以て拙僧を、埒外へ放逐するやうな事はありますまいね』 高『マア心配しなさるな。今回の功労に免じてチヨイチヨイお尻位は、ふかして、あげますワ、大弥勒さまのお尻をふかうと思へば並や大抵の事では拭けませぬぞや。ヨリコ女帝のお前さまはお尻の掃除をやつて居つたさうだが、あのやうな、アタ汚いお尻の掃除をしてゐるより、大弥勒さまの神徳のこもつた御肥料さまの掃除をさして貰ふ方が何程光栄だか出世だか知れませぬよ、ホツホヽヽヽ』 キユ『エー、人をお前さまは馬鹿にしてゐるのだな』 かく話してゐる所へ杢助の妖幻坊は高姫の帰りが遅いので、スガ山のトロトロ阪をエチエチ上り乍ら館の前までやつて来た。 玄関口に佇んで様子を聞けば、境内はシンとして人影もなく、静まり返り、閑古鳥が鳴いてゐる。然し乍ら館の奥の方にコソコソと囁く声が聞ゆるやうにもあるので、ソツと館の裏へまはり、窓から中を覗いて見ると酒肴を真中におき、高姫、キユーバーが意茶ついたり揶揄つたり、面白さうに話し合つてゐる。妖幻坊は腹が立つて堪らず雷のやうな声を出して窓の外から、 『コラツ』 と一声叫ぶや否や、キユーバーは驚いて一間許りも飛び上り、天井裏で禿頭をカツンと打ち、再び板の間に蛙をぶつつけたやうになつて、手足をピリピリとふるはせ、ふんのびて了つた。流石、高姫はビクとも動かず静に窓の外を覗き、 『ホツホヽヽヽ何ですか杢チヤン、そんな大きな声を出したつて、聾はゐやしませぬよ。高姫の耳は蚯蚓の泣声でも聞えるのですからね、どうか騒がないでゐて下さい。今この坊主をうまくちよろまかして、三五教が百日百夜の丹精を凝らし、建て上げた此神館を、スツカリと証文つきで貰つたのですからね、マアお這入りなさい、人が見たら、見つともないから』 と平気な顔で構へてゐる。杢助は表にまはり玄関口より大手を振つて入り来り、 『一昨日の日の暮に、此坊主と出たぎり、今日になつても帰つて来ないものだから、チツト許り気がかりでならないので、スガの町々を尋ねまはり、もう尋ねる処がないものだから、此処へやつて来れやキユーバーの野郎をつかまへて、何だか妙な目つかひをやつてゐたぢやないか』 高『杢チヤン、そんな野暮な事を云ふのぢやありませぬよ。此間も貴方に云つた通り、此キユーバーと云ふ山子坊主は、一寸ばかり小利口な奴だから、うまくちよろまかして使ひ倒し、今日の成功を勝ち得たのですからね。まだまだ此奴を使はにやならぬ用がありますので、一寸いやな奴だけど色目を遣つて、つらくつてゐるのですよ。天下無双の英雄豪傑時置師の神さまのやうな立派な夫があるのに、どうしてこんな蛙の泣き損ねたやうな面した売僧坊主に、指一本でも支へさす気遣がありますか。そこは貴方の御判断に任せますから、マア御機嫌を直して一杯飲んで下さい。今日から此館は時置師の神さまの領有権が出来たのですからな、高姫の腕前も随分凄いものでせう。ホツホヽヽヽ』 杢『オイ、このキユーバーをこの儘にしておけば縡切れて了ふぞ、お前の得意な活とかを入れて、蘇生さしてやつたらどうだい』 高『杢チヤン、そんな心配要りませぬよ、田圃の蛙を掴んで大地で投げて御覧なさい。丁度此通り手足をのばしてビリビリとふるひ一時は目をまはかしますが、暫くすると目を開け古池の中へドンブリコと飛び入り、アナタガタアナタガタオレキオレキと泣くぢやありませぬか』 杢『キユーバーも蛙に例へられや、チツト許り可愛想だ。命に別条さへなけれや、いいやうなものの、あまり殺生ぢやないか』 高『何が殺生ですか、自分が勝手に飛び上つて勝手にフン伸たのですもの、チツトも吾々にかかり合はないのですからな。キユーバーが自由の権利を振つて空中舞上りの術を演じ吾々夫婦の酒の肴になつてゐるのですもの』 斯く話す折しも死真似をしてゐたキユーバーはムクムクと起き上り、ワザと空とぼけたやうな顔して、 キユ『アーア、飛行機に乗つて大空中を巡行してゐたと思へば、俄に雷鳴轟き暴風吹きまくり、飛行機諸共地上へ転落し、五体は滅茶々々になつたと思へばヤツパリ夢だつたかな。これも全く生宮様と時置師の神様の恩頼だ、南無生神大明神帰命頂礼謹請再拝謹請再拝』 杢『ウツフヽヽヽ何とマア、怪体な坊主だのう、一種異様の奇病があると見える。かう云ふ病気は親のある間に癒しておかぬと一生不治の難病になるかも知れないよ、ワツハヽヽヽ』 高『ホツホヽヽヽこれキユーバーさま、本当にお前さまは身の軽い方ですね。妾又、お神がかりかと思つて居りましたよ』 妖幻坊は膝を立直し、居直り気味になつて、 『オイ、天然坊のキユーバー、俺の女房を掴まへて何を云つて居たのだ、三文だの、五文だの、八文だのと、何の事だい。其方の出やうによつては俺にも一つの虫がある、サアきつぱりとこの杢助の前で白状せい』 キユ『メヽヽヽ滅相な、尊い尊い結構な結構な生宮さまに対し、私のやうな下劣な貧僧が恋の鮒のと、そんな大それた事が出来ますか、お言葉交すも恐れ多いと存じ忠実に勤めてゐますよ。何卒悪くはとらないやうにして下さいませ。何は兎もあれ、千草の高姫さまに、うまくたらし使にされてゐるのですからな。何れ行先はお払箱だと覚悟を定めて居ります』 妖『こりや、高姫、キユーバーの申すことに、間違ひなけりや今日は之で忘れて遣はす。然し乍ら此奴を此処に於てはチツト許り都合が悪い。幸ひ北町の本部が空く事になるから、あれをキユーバーに呉れてやつたらどうだ』 高『杢助さまさへ御承知なら、呉れてやりませう、此館を占領したのも其一部分はキユーバーさまの斡旋努力与つて功ありと云ふものですからな』 杢『オイ、キユーバー、お前の功労に免じて北町の神館を与へるから、直様帰つて休息したが宜からう。神殿も諸道具一切も附け与へるから有難く頂戴せい』 キユ『ハイ、有難う御座います、それでは頂戴致しませう。十分に念入に掃除をしておきますから、どうぞ、時折はお遊びにお出で下さいませ』 妖『いや、これ程立派な神館が手に入つた以上は最早必要を認めぬ、又行く必要もない、お前の勝手にしたが宜からう』 云へばキユーバーは喜んで頭ペコペコ下げ乍ら 『ウラナイ教の神館有難く頂戴致します 左様御座ればお二人さま後でゆるゆるお楽み』 等と言葉を残しつつ北町さしていそいそと 大手を振つて帰り行く。 (大正一五・七・一旧五・二二於天之橋立なかや旅館北村隆光録) |
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霊界物語 | 76_卯_世界の神話/朝香比女の神の物語 | 日本所伝の天地開闢説 | 日本所伝の天地開闢説 古へ天地未だ剖かれず、陰陽分れず、万物未だ成らざりし時の状は、譬へば、浮べる脂の大海原の面に漂うて、かかる所もない如く、渾沌として鶏子の黄白の散り乱れて混ざれるやうに、形状もなければ、また区別もつかず、溟涬にして牙を含むの状態であつた。 然る後に、軽く清める気は漸く昇りて清陽なるに及び、薄く靡きて天と成り、重く濁れるものは自ら沈んで濃く滞りて地となつた。 其はじめに成りたる天を高天原といひ、後に定まれる地を国といふ。天地の間に大虚ありて空しく懸る。 天地開闢のはじめ、国なほ稚く砂土浮き漂うて、海月の海水に泳げる如くに浮脂の水の上に漂へるが如く、未だ固まらざりし時に、葦牙の如き物、自らその中に成り出でて、その物は萌騰りて大虚の中に発りたるによりて、高天原に生り出で給へる最初の神を天譲日天狭霧国譲月国狭霧尊と申し奉る。天祖と称し奉るは即ち此の神である。 然る後に高天原に自ら化り出で玉へる神たちの中に、独りづづ化り出で玉へるを独化天神と申し、二柱倶に化り出で玉へるを倶生天神と申し、男神と女神と共に化り出で玉へるを耦生天神と申し奉る。また別に化り出で玉へる神たちを別天神と申し奉る。 神代七代 天地が開け初めた時に、高天原に化り出でし神は、 第一に天之御中主神 第二に高皇産霊神 第三に神皇産霊神 以上三柱神であつた。此の神々は皆配偶の無い独神であつて、其後御身を見えぬやうに隠し玉ふた。 国土未だ定かに成り整はずして恰も脂の浮ける如く、海月の海水に浮けるが如き状態であつた時、芦の芽の如うに萌え出でて成らせ給うた神は、 第四に宇麻志阿斯訶備比古遅神 第五に天之常立神 である。此二柱神も亦同じく独神で、其後も依然として御身を見えぬやう隠し玉うた。 以上五柱の神を別天神と申し上げる。 その次に成らせ給うた神は、 第一に国之常立神 第二に豊雲野神 で此の二柱の神も亦独神で御身を隠された。其の次に生れ坐せし神は、いづれも配偶の神々で、 第三に宇比地邇神女神は須比智邇神 第四は角杙神女神は活杙神[※「角杙神」「活杙神」の「くひ」の字は、戦前の初版(p5)・戦後の改装版(昭和56年発行)(p7)いずれも「杙」。古事記は「杙」である。他の文献では「枠」(わく)を使っている場合もあるが、誤字だと思われる。霊界物語ネットでは全て「杙」を使う。] 第五は意富斗能地神女神は意富斗能弁神 第六は淤母陀琉神女神は阿夜訶志古泥神 第七は伊邪那岐神女神は伊邪那美神 以上国之常立神より伊邪那美神までを神世七代と申すなり云々。(以下省略) |