第一六章八洲(やす)(かは)〔一八四七〕 (ここ)(つき)大神(おほかみ)神霊(しんれい)(みづ)御霊(みたま)太元(おほもと)顕津男(あきつを)(かみ)栄城山(さかきのやま)(くだ)り、大御母(おほみはは)(かみ)(その)()諸神(しよしん)(おく)られて、神生(かみう)国生(くにう)みの(たび)()かせ(たま)ふ。数百頭(すうひやくとう)麒麟(きりん)神々(かみがみ)()()(なが)ら、カコクケキの言霊(ことたま)(すが)しく()()()でつつ諸神(しよしん)(おく)り、鳳凰(ほうわう)(むれ)各々(おのおの)諸神(しよしん)(つばさ)()せ、タトツテチの言霊(ことたま)()()でながら、東北(とうほく)国原(くにばら)()して()()()いで(すす)ませ(たま)ふ。()()けば前途(ぜんと)巍峨(ぎが)として(たか)(そび)ゆる秀嶺(しうれい)あり。顕津男(あきつを)(かみ)(たか)御手(みて)差翳(さしかざ)秀嶺(しうれい)(のぞ)(たま)ふに、山頂(さんちやう)より(むらさき)雲気(うんき)立昇(たちのぼ)()もまばゆきばかりなり。 (ここ)顕津男(あきつを)(かみ)(ひろ)(なが)(よこた)はれる(あめ)八洲河(やすかは)麒麟(きりん)諸共(もろとも)()()(たま)ひ、白銀(しろがね)(ごと)(かがや)水瀬(みなせ)(なか)()ちて御歌(みうた)()ませ(たま)ふ。 『見渡(みわた)せば(むらさき)(くも)()(のぼ)(はろ)高根(たかね)荘厳(さうごん)なるかな』 大御母(おほみはは)(かみ)(ただち)(うた)(たま)はく、 『()はるかす(はる)高根(たかね)天界(てんかい)に その()(しる)高照(たかてる)(やま) 高照(たかてる)(やま)(はる)けく()ゆれども (われ)には(ちか)住所(すみか)なりけり』 と(うた)(たま)ひて、永久(とこしへ)()(たま)御舎(みあらか)霊山(れいざん)なることを(しめ)(たま)へば、顕津男(あきつを)(かみ)威儀(ゐぎ)(ただ)(もろ)()()(あは)せ、タカの言霊(ことたま)()()礼拝(らいはい)稍久(ややひさ)しう()(たま)ふ。 顕津男(あきつを)(かみ)足下(あしもと)(なが)るる清泉(せいせん)()(たた)へながら、 『いすくはし(これ)(ながれ)()(かみ)天津(あまつ)真言(まこと)のみたまなるらむ 霧雲(きりくも)(あめ)とかはりて足引(あしびき)(やま)にくだちし(めぐみ)(つゆ)かも ()(みづ)(みづ)御霊(みたま)のかげ(うつ)神代(かみよ)(てら)真寸鏡(ますかがみ)かも 山川(やまかは)(きよ)くさやけし(われ)(いま) 八洲(やす)河原(かはら)水鏡(みづかがみ)()(この)(みづ)(とどこほ)りなく(なが)るごと わが経綸(けいりん)(すす)ませ(たま)(ゆふ)されば(つき)(なが)るる八洲河(やすかは)清瀬(きよせ)()ちてもの(おも)ふかな 八柱(やはしら)宿(やど)(のこ)りし比女神(ひめがみ)(この)水鏡(みづかがみ)()せたくぞ(おも)(よど)みなく千代(ちよ)(なが)るる八洲河(やすかは)(きよ)きは(みづ)御霊(みたま)なるらむ 母神(ははがみ)(われ)(たま)ひし(うづ)(けもの) (さか)さに(うつ)()水鏡(みづかがみ)真清水(ましみづ)(かがみ)(うつ)(なが)むれば (われ)(さか)さに(うつ)りてあるも 百神(ももがみ)(わが)()(みち)(さか)しまに ()るも(うべ)なり(みづ)御霊(みたま)八洲河(やすかは)(つつみ)()ふる常磐木(ときはぎ)(わが)神業(かむわざ)(あか)して()てるか 常磐木(ときはぎ)(まつ)にかかれる天津(あまつ)()(かげ)(すが)しもよ御空(みそら)()れつつ 照渡(てりわた)天津(あまつ)()(かか)常磐木(ときはぎ)(まつ)のこずゑに(つゆ)(ひか)るなり 鳳凰(ほうわう)(つばさ)(そろ)()(うた)麒麟(きりん)(あし)(そろ)へて言祝(ことほ)大御母(おほみはは)(かみ)(めぐ)みに(われ)(いま) 八洲(やす)河原(かはら)清瀬(きよせ)(わた)()(かみ)(めぐみ)(つゆ)()()ちし 麒麟(きりん)(またが)国生(くにう)みなさばや (かみ)()国魂(くにたま)()神業(かむわざ)(たす)くる麒麟(きりん)はわが(たから)なり』 ()(うた)ひながら大御母(おほみはは)(かみ)御後(みうしろ)(したが)ひて八洲(やす)河原(かはら)(ひがし)(きし)安々(やすやす)()(たま)へば、諸神(しよしん)もわれ(おく)れじと一斉(いつせい)(きし)(のぼ)らせ(たま)ひ、 「ウーアー、ウーア」の(いづ)言霊(ことたま)()()(たま)ふ。(かれ)天界(てんかい)諸山(しよざん)諸川(しよせん)(はじ)めとし、森羅(しんら)万象(ばんしやう)(ことごと)震動(しんどう)して言霊歌(ことたまうた)(うた)(をど)(くる)()ふ。 大御母(おほみはは)(かみ)麒上(きじやう)(たか)御声(みこゑ)(さはや)かに(うた)(たま)ふ。 『久方(ひさかた)(あめ)八洲河(やすかは)安々(やすやす)(わた)らふ岐美(きみ)雄々(をを)しき姿(すがた)よ そも(この)(かは)永久(とこしへ)(なが)るる清水(しみづ)真清水(ましみづ)千早(ちはや)()(とほ)宇宙(うちう)(はじ)めより 紫微(しび)天界(てんかい)(つかさ)(かは)(とな)(まつ)られ永久(とこしへ)(めぐみ)(つゆ)(なが)しつつ ()雲霧(くもきり)(はら)ふべき (もも)罪咎(つみとが)(あら)ふべき そも(これ)真清水(ましみづ)(みづ)御霊(みたま)()(かみ)(あた)(たま)ひし生命(いのち)(みづ)(なれ)太元(おほもと)顕津男(あきつを)(かみ) (この)真清水(ましみづ)(こころ)とし (きよ)(なが)れを(をしへ)とし 四方(よも)神々(かみがみ)()ちもなく もれなく(すく)惟神(かむながら) (いづ)言霊(ことたま)()()げて ()(かみ)(はじ)諸々(もろもろ)(かみ)御前(みまへ)()(まつ)天津(あまつ)()()()(つき)()(あめ)(のぼ)りて(くも)となり (あめ)とかはりて()にくだち 高山(たかやま)短山(ひきやま)(うる)ほして 百谷(ももたに)千谷(ちたに)細流(こながれ)(ひと)つに(あつ)めし(かみ)(かは) (なが)るる(みづ)瑞御霊(みづみたま) 四方(よも)神々(かみがみ)うるほして 永久(とは)生命(いのち)(あた)へます 生命(いのち)清水(しみづ)真清水(ましみづ)()天界(てんかい)八洲河(やすかは)(なが)れあらずば如何(いか)にせむ (はま)真砂(まさご)(かず)なせる (ほし)神霊(みたま)(かがや)きて (てん)(はな)()()(うへ)白梅(しらうめ)(にほ)迦陵(から)頻伽(びんが) (すが)しく(うた)鳳凰(ほうわう)(つばさ)(ひろ)げて()(あそ)麒麟(きりん)数多(あまた)神々(かみがみ)背負(せお)(まつ)りて八洲(やす)(かは) 雄々(をを)しく(きよ)(わた)らしぬ いざ(これ)よりは高照山(たかてるやま)()()にかけ(のぼ)(うづ)宮居(みやゐ)見立(みた)(まつ)()大神(おほかみ)経綸(けいりん)(つか)(まつ)らむ惟神(かむながら) (いそ)がせ(たま)百神(ももがみ)よ』 と(うた)(をは)り、真先(まつさき)()ちて麒麟(きりん)足許(あしもと)チヨクチヨクと御山(みやま)()して(いそ)(たま)ふ。 (昭和八・一〇・一二旧八・二三於水明閣森良仁謹録)